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戸叶武君 いま具体的な御提言がありましたように、
日本の近代化発達の中における農業における進歩の面を、中国並びに
アメリカにおいては相当詳細に研究しておるのでありまして、中国の権威ある革命家の人が、中国の革命における国家
統一において一番大きな効果というものは、国の責任において品種改良というものが十分できるということと、中国は膨大な国であるが、南北にそれぞれ
地域によって異なった作物ができるが、それを国が
統一されると、軍閥等が蟠踞していて流通を阻害した面が排除されて、そうして物がスムーズに交換されていくから、そこに中国の
統一というものによって近代国家への発展の大きな足がかりをつくると言っていまして、その人のデータによると、
日本が日清戦争の時分から第一次世界戦争のころまで、品種改良だけで米は主として三倍もの収穫を得ている。やはり
日本における品種改良の実績というものを中国では学ばなければならぬということを率直に言っておりました。
また最近において、私は一九六〇年に安保闘争のさなかに団長で北京を訪れましたが、そのときにもあの大躍進の中にいろいろな矛盾が含まれているので、あからさまに私は
指摘したんですが、あの製鉄
関係の土炮なんかは、ああいうやり方では成果はおさめられない、むだが多い。それから農村におけるデモンストレーションとしての人海作戦というものは、朝鮮問題に南下したときの人海作戦のようなまねごとではだめなんじゃないか。もっと新たな発想が生まれなけりゃならないんじゃないかと言って問題を
指摘しておきましたが、その後、中国においてもずいぶん変化の跡が見られております。私は、いま農林省の方から発言がありましたように、やはり後進的な
地域の人
たちを指導する場合には、センターを設けて、しかも モデル農場なり何なり具体的事実を示して、それによって、それから習得してもらうようなきっかけをつくることが大切なんじゃないか。やはり、いままでのような売らんかな式の商業主義的なやり方でなくて、そういう手心を加えた
一つの施策がなければだめなんじゃないか。特に私は、いま海外経済協力の総裁をやっている法眼君がもっと若いときにロサンゼルスの総領事をやっていた時分、ちょうど私は二回ほど
アメリカから招かれてカリフォルニア州の農業、米の生産並びに蔬菜類、果樹類の栽培、及びニューディール以後における
アメリカ農業の転換、インディアナ、ミシガン、イリノイというようなところの農場を持っているところの大学にいろいろなデータ探しに行ったことがありますが、
アメリカ農業で画期的な転換はニューディール以後で、
日本の水稲は水の中に入って米を植えるなんていう非常なプリミティブな農業をやっているといって軽視していたのが、そうじゃない。水を砂漠へ入れても緑地ができる。やはり水と土壌、太陽光線の受けとめ方、そういうものの中に、
日本の特に肥料におけるバクテリアの研究、
日本の納豆菌、豆腐、そういうものまで研究して、
アメリカではどうしてそういうものを探したかというと、
日本の諸大学から来るレポートをやはり検討して、それを直ちに実験に移し、カナダの農民にまで呼びかけて、土地を持っている人
たちが幾らずつかの金を出して、そうして大学と連携して農業の進歩を図るという方式をやってきたんです。
ところが
日本の、私も宇都宮大学の、農業
関係が主として発達した大学の政治学の
先生もやっておりましたが、
日本の学問は生きてないです。これはやはり、みずから農場を持ち、そして生産に従事しているところの農民と語り合って、そこで研究し実験したものを実行し、そうしてその結果を報告するというような、
アメリカの北部の諸大学とカナダの農民
たちでやっているような
一つのトレーニングを行わなけりゃだめだと思うです。
日本の本当に悲劇は、教育の場の荒廃と政治の場の荒廃で、政治はずうずうしいやつがはったりをもって、そして米をつくれ、減反だ——まるで何を言っているかわからないようなことがある。そういうふうに暴走しているならばそれが政治家だとおのずから錯覚して、その被害は田中さんの被害よりも私は今日の政治の被害が農業に及ぼす影響というのは非常に大きいと思うんです。
それだけに私は、農林省や
外務省がもっとしっかりして、
国際的な視野の上に立って
日本のいままで蓄積されたところの経験なり技術をほかの国に生かすということを考えてもらわなくちゃならないんで、私はやはり、いまブルガリアのソフィアにも、そこのホテルオータニとの結びつきによって、五十億以上も金を出してホテルがつくられますが、ああいういろいろなホテルの概念も、いままでのようなホテルの概念じゃなくて、そこがホテルであり、結婚式場にも利用される、技術を習うところにもされる、
日本の本当に文化センターになって大使館をバックアップしていくような、変な観念的イデオロギーやスパイ的と思われるような情報のキャッチよりも、そういう形によって民心を得ていくということが一番必要なんじゃないか。
日本の外交の大きな質的転換はそういうところに出てくるんじゃないかと思って、こういう問題を、産油国がみずからの富を独占するのじゃなくて、もっと気の毒な人
たちのために金を出そう、
先進国にも働きかけてこれを見習わせたこの善意の行為ですが、この善意の行為の中に本当に魂を入れることができるのは、百年足らずの間に
先進国の仲間入りをすることができた
日本人の持っている、これが
日本民族のエネルギーの源泉である、それを私は諸国に与えていくのが
日本の農業技術者の役割りであり、また
外務省というのにも、いままでのような鹿鳴館時代からの流れをくんできたようなとにかく外交でなく、もっと泥臭い、
一つのその国々の人々の心をかち取るような外交をこれをきっかけにして展開しないと、仏つくって魂入れずになるのじゃないかと思うので、このことに対してはひとつ
外務大臣並びに、金を生かして使うことをもっと積極的に考えないと
外務省がいじけた構想しか出ないから、少し大蔵省あたりはどしどしいいことにはこの機会を範として金を出すように、貧乏臭い萎縮した外交の中からは何も生まれない。もう戦争と暴力革命の時代は去ったんです。もっと生きたところに金を使って、戦争を経なければ収穫が得られないような妄念を払って
一つの積極的な外交を展開してもらいたいと思うので、ひとつ
外務大臣並びに金の方を年じゅう出し渋る傾向がある大蔵省の方から話を承りたいと思います。