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1977-05-24 第80回国会 参議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十四日(火曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————    委員の異動  五月二十日     辞任         補欠選任      青木 薪次君     羽生 三七君  五月二十一日     辞任         補欠選任      木内 四郎君     小林 国司君  五月二十三日     辞任         補欠選任      小林 国司君     志村 愛子君  五月二十四日     辞任         補欠選任      志村 愛子君     小林 国司君      木村 睦男君    久次米健太郎君      藤田 正明君     長田 裕二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上林繁次郎君     理 事                 岡本  悟君                 中村 太郎君                 瀬谷 英行君                 三木 忠雄君     委 員                 江藤  智君                 長田 裕二君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 佐藤 信二君                 永野 嚴雄君                 福井  勇君                 安武 洋子君                 和田 春生君                 松岡 克由君    国務大臣        運 輸 大 臣  田村  元君    政府委員        運輸省船員局長  横田不二夫君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        文部省大学局技        術教育課長    瀧澤 博三君        海上保安庁警備        救難監      山本 了三君        海上保安庁警備        救難部航行安全        企画課長     馬場 一精君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○海上衝突予防法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  海上衝突予防法案を議題とし、質疑を行います。  御質疑のある方は御発言願います。
  3. 和田春生

    和田春生君 海上衝突予防法案改正につきましては、すでに衆議院、参議院、またそれぞれの外務委員会等審議をされてまいりました。本院におきましても、外務委員会条約国内法に関する原則的な問題については質問をいたしました。外務大臣並びにそれぞれの方から御答弁をいただいているわけであります。したがって、すでに議論したことはできるだけ重複を避けますが、いままでの質疑応答の中で問題となったことを踏まえながら、具体的にいろいろお聞きをいたしたいと考えておるわけであります。  また、時間を節約する関係もありまして、質問のへーハーはあらかじめ要点別整理をして出しておりますので、できるだけ的確にお答え願いたい。このことをまず最初に要望いたしまして、いろいろ資料を扱う関係もありますので、座ったままで質問をいたしますので、当局の方もそういう形で答弁していただいて結構だと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、国内法では三十八条、三十九条の「補則」に定められておりますけれども、新しい国際条約では第二条というふうに総則の中に定められているわけでございます。そこで、国内法としては後の方でありますけれども、もともと国際条約を下敷きにしているわけでありますから、国際条約順序に従って、ここからまず最初質問をいたしたいと思います。  国際条約では新たにA部ハートA 「ジェネラル」、「総則」として一番最初にこれを持ってまいりました。しかも、第二条では「責任」、「リスポンシビリティ」という形で大変重要視しているわけですが、国内法でこれを「補則」の方に持っていったという理由はどういうことでしょうか。
  4. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 表現の問題でございますので私の方からお答えいたします。  私ども、今回の法案をまとめますに当たりましては、できるだけ条約に忠実な形でまとめたいということで工夫をしたつもりでございます。したがいまして、特に第一線の船員の方々が御利用になります航法あるいは燈火信号等につきましての表現規定順序、そういうものについてはいじっておりませんけれども、まあ国内法国内法としての一つスタイルというものもございますので、全体としては国内法スタイルにもできるだけ合わせるということで考えたわけでございます。  そこで、このハートA部分でございますけれども、この(a)項というものは、これは全体の適用関係というものを示しておりますから、国内法でも第二条ということで「総則」に持ってくることは適当かと思いますけれども、あとの部分につきましては、いわば航法関係とか、そういうものについての例外的な事項、あるいはほかの法律で申しますれば罰則に該当するような事項、そういうものを書き込んでおりますものですから、国内法スタイルとしてはこういうものはできるだけ後に持っていくというのが普通かと思いまして後の方に持ってまいりました。
  5. 和田春生

    和田春生君 何か国内法罰則に類するものは後に持っていくというようないま説明もあったんですけれども、これまでの質疑でも私が申し上げたように、また政府側も認めているように、これは一般法律とは違うわけです。衝突を回避するための船舶運航に関しまして、国際的な共通の基準を決めるということなんです。  しかも、ハートAルール2というのが大変重要視されてこれが前に出てきた。これは罰則関係するという性質のものではないわけなんですね。で、条約の二条「責任」の(a)項においても決めているように、「この規則のいかなる規定も、この規則を遵守することを怠ること又は船員常務として必要とされる注意若しくは」云々と、そういうことを怠ったことによって生じた結果に対して、「船舶船舶所有者、船長又は海員の責任」は免除するものではないんだと、この規則には十分注意をしろというのをまず(a)で定めている。  そして、次いで(b)においては、この規則解釈及び履行に当たっては、運航上の危険や衝突の危険に対して十分な注意を払わなければならないけれども、切迫した危険な特殊な状況という場合には、その危険を避けるためには、この規則によらないこともできるんであると。つまり、航法全般にかかわる衝突予防法適用、ないしはそれを見て運航者が判断する場合の原則に関することを定めている。それを、罰則関係するものだとか、それは「補則」だと言うのは一体どういう了見ですか。これは保安庁長官から伺いたいと思う。
  6. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私も、先生おっしゃるように、条約A部の第二条の(a)、(b)項というものは、ともに大事な条文だと思います。そういうつもりは私どもも決して考え方において違いはないと思います。  ただ、どうも「補則」とかという言葉遣いがありますけれども、私どもはこの条文の重要さはわかっておりますけれども国内法整理のやり方からこういうことになったということでありますが、この条文の大事さはよくわかりますので、今後とも私どもの基本的な考え方としては、十分そういうことで周知徹底方なり、教育なりということは図っていきたいと考えているところでございます。
  7. 和田春生

    和田春生君 国内法整理ということを優先したようですけれども国際法にできるだけ忠実にやるという点は、このまず出発点において、法の組み立て方においておかしなことになっていると、その印象はぬぐえないと思います。  さらに、第二条の「責任」の条文は、船の運航者がだれでも見ればよくわかるように、(a)項の方は、これはこの法律を守ることに対しての原則を決めている。(b)項の方は、特殊な場合において、この規則によらなくても衝突回避のために臨機措置をとるべしということを定めている。そういう配列になっているのですね。それをさらに後へ持っていったばかりではなく、条約の第二条「責任」の(a)と(b)をひっくり返して、特殊な場合における例外措置をとるべしというのを先へ持っていって、そうして、これをしかもひっくり返しているというのは一体どういうことなんですかね。
  8. 馬場一精

    説明員馬場一精君) これは先生よく御承知のように、現行法では二十七条ということで、第二条の(b)項の方は「航法」の方に入っておる規定でございます。このように、いわば航法の中でも非常に特殊な、切迫した危険のある特殊な状況の場合には緊急避難的なことも認められるという、いわば航法の一環として書いておるものかと思われます。  それから第二条の(a)項、これは現在の法律では第六章「雑則」の二十九条で書いておりますけれども、これは前に書いてあるすべての燈火関係とか形象物とか、そういうものも含めまして、そういういろいろこの法律に書いてあること、あるいは船員常務として要求される注意義務というものを怠った場合の責任関係を書いておるということで、物事の流れといたしましては、やはりそういう前提となるものを先に書き、それについての責任関係は後で書くというのが素直かということでこういう整理をいたしておるわけでございます。
  9. 和田春生

    和田春生君 それが全く法文をいじくっている法律屋的な感覚で、船の運航基準ルールを決めていくという感覚で見るとおかしいんですよ。まず、この法律をきちんと守りなさい、守らないことについての責任は免除されませんよと、こういうことを言っておいて、しかし、特殊な危険が生じたという場合には臨機の処置をとることができるんですと、こういうことが法案全体にかかっている。単に航法だけではありませんよ。信号その他についてもこれはかかってくるんです、条約二条の(b)というのは。たとえば停電をした、ランプをつける、破壊をされた、燈火信号をどうするかと、こういう場合だってあるわけですね。私自身だってそういう経験をしているわけです。  ですから、いままでのいろんな経緯にかんがみて、これは特に重要視するという形で、「航法」の中とか「補則」ではなくて、いわゆるハートAの「ジェネラル」、「総則」の中に持ってきて、これを海上衝突予防法全体に関する原則として定めたというのが、国際条約を決める際の審議の過程においても議論をされていることなんですね。そうでなけりゃ、前へ持ってくる必要ないんです。それを、こちらは航法の方だから自然の流れだとか、前の法律では「雑則」に決めておったが、今度は「補則」でいいなんていうのは、衝突予防法というものの性格自体を理解してない証拠なんです。単なる、その法律条文さえあちこちいじくればいいという全くの法律屋的感覚だと思いますね。  しかも御承知のとおり、海上衝突予防法の伝統というものは、米英法的な感覚に基づいておって大陸法的ではないんです。それは当然だと思うんです。そういう考え方で各国の船員もこれに取り組んできているし、われわれも商船学校時代からそれをたたき込まれてきた。そうすれば、法案流れということを答弁されたんですが、法案流れというものを重視するんならば、今度の新しい改正条約国内法に持ってこようというんですから、当然これを先へ出すのはあたりまえですし、(a)と(b)をひっくり返すなんていうのは逆立ちしていますよ。(a)がついてきているから、(a)に対する(b)としての臨機措置と、こういう形になる。国内法では臨機措置の三十八条の方が先にやってくる。そして全般的な、原則的な規定というものが、三十九条でわざわざひっくり返して後へ持っていっている。何でこんな小細工をしなくちゃいかぬのですか、保安庁長官
  10. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私ども、実は国内法整理としてこういうかっこうをとったんですけれども、要は先生のおっしゃるとおり、この条文は大事な条文であるということはよくわかりますので、後で先生から御指摘いただく点についても、私、あるいは同じ答弁を申し上げるかもしれないんですけれども、今後の周知徹底、解説、広報というときにこの条文の重要さというものについては十分触れていきたいということで御了解いただきたいと思うわけでございます。
  11. 和田春生

    和田春生君 なお、これは私がそういうことを申し上げるのは理由があるんですね。現行法規定による二十七条の場合には、これはもともと航法に限定した例外規定であったわけですね。それは一九四八年のルールで決められて、六〇年ルールでもこの点は変わっていないんです。その場合の条約原文言葉は「フロム ジ アバブ ルールズ」と、こういうふうに書いてあるんです。つまり以上のルールについてと。ところが、七二年ルールにおいては、その言葉が「フロム ジーズ ルールズ」と、つまりこの(b)項、新しい「補則」におけるところの三十八条ですね、意味が変わってきているのです。前は航法に限定したことについて、以上の航法規定に対する例外規定ということになっている。ところが、七二年のルールでは「フロム ジーズ ルールズ」と、つまりこの衝突予防規則全体のルールからも例外という形でかかっているわけですね。  それを、国内法の三十九条は航法に関するもんだから、流れとして前に持っていっていいと、そういうのは、ぼくは説明にならないと思う。やっぱり条約条文言葉を変えているというのは、そこに意味があるわけでしょう、私が先ほど言ったように。条約の二条の(b)項というのは航法だけの問題ではないのです。「ジーズ ルールズ」、全体の規則に対してなんです。ところが、旧法の場合の原則になった四八年ルール、六〇年ルールの場合には「フロム ジ アバブ ルールズ」、つまり航法の中における以上の規則と、こうなっているわけでしょう。そういう点ですから、当然これは前に持ってくるべきだったと思う。これはやはり今後の問題もあるので、ぼくは厳重に政府当局注意をしておきたいと思うのです。  保安庁長官は、十分その点については趣旨徹底をするということですけれども、間違いないようにしてもらいたい。旧法航法に関してのことなんです。新法は全体の規則にかかっているんだと。その点については、かりそめにも間違いのないような解釈というものをやっていただきたいと思うのですね。  なお、この法律に関連して多少技術的になりますけれども国際ルールにおいては、「この規則を遵守することを怠ること」と、日本文で言うとそういうふうに訳されている。ところが、国内法では三十九条で「適切な航法運航し、燈火若しくは形象物を表示し、若しくは信号を行うこと」と、いわゆる旧法スタイルに似た列挙主義をとっているんですが、なぜこういうふうにしたんですか。
  12. 馬場一精

    説明員馬場一精君) まず、この法律を遵守すること、その内容が何かということを考えました場合に、ここに書いてありますような「適切な航法運航し、燈火若しくは形象物を表示し、若しくは信号を行うこと」を怠ることということであろうかと思うわけでございますので、いわばわれわれといたしましては、できるだけ表現をやわらかく、関係者にわかりやすくするという意味で、これをかみ砕いて書いたというつもりでございます。
  13. 和田春生

    和田春生君 そうしますと、重要な疑問が残るんです。大体われわれが新ルール解釈をしているのは旧法の二十九条、ここに決めていることのうち、「見張り」は新ルール条約で言えばB部の第五条に移った、「燈火形象物」は新ルールC部の第二十条に移った、「信号」は新ルールD部の第三十二条から第三十六条に移ったというふうに、それぞれきちんとその規定をしているわけ。したがってそれらのことを踏んまえて、全部をひっくるめて「この規則を遵守すること」と書いたわけなんです。いまの御説明によると、個々に列挙した方がいいと言いながら、衝突回避に立って最も重要な、それでは「見張り」の項を除いたのはなぜですか、三十九条で。なぜ見張りをここに書かなかったですか。
  14. 馬場一精

    説明員馬場一精君) いわゆるここに書いてございます「適切な航法運航し」という中には当然含まれておるものと考えております。
  15. 和田春生

    和田春生君 それは詭弁ですよ。列挙すると言うなら、現行法にだって書いてあるわけですから、「適切な航法運航し」、とりわけ見張りを厳重にやれということを書くべきで、一番初歩的な、大事なことの見張りを除いて、それは「適切な航法」の中に含まれていると一方で説明をしておきながら、列挙した方がわかりやすいなんというのは、こんなものは完全な詭弁ですよ。だから、ルールのとおりにやって、全部を包括してしまうか、あるいは列挙主義でするなら、大事なポイント全部列挙すべきではないですか。どうしてそういう恣意的な選択をやったのですか。
  16. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、「適切な航法運航」ということが、すなわちこの中では安全な速力で航行することも一つの適切な運航でしょうし、現行二十九条で書いてある適切な見張りという、これもやはり航法の中の一つとして書いてあるということで、そういうものをいろいろ、予防法の中で書いてある航法関係というのを適切に使ってやりなさいということを一つ言葉としてここにまとめたわけでございます。
  17. 和田春生

    和田春生君 それは答弁になっていないんです。あなたは先ほど、全部大事なことは並べて書いた方がいいとおっしゃったわけなんです。そうしたら、特に重要な見張り等については並べるべきなんです。ところが、恣意的に見張りだけは「適切な航法」の中に入るから除いたと、そして燈火とか形象物とか信号ということについてはここに入れてきていると。だから説明と、出てきた法文というものには明らかに食い違いがあるわけなんです。で、国際条約のとおりに「この規則を遵守することを怠ること」というふうに全部包括をしていけばすべてが入るわけなんですね。それをこういうふうに小細工で変えようとするものですから、いま言ったようなおかしなところが起こるわけです。  さらにもう一つ、この国際条約の二条の(b)項では「この規則規定解釈及び履行に当たっては」と「総則」に持ってきている。そういうところの関係もありますけれども、「解釈」というのが入っておりますね、ここにちゃんと。で、この言葉国内法では削除をしておりますね。これは一体どういう理由によるんですか。
  18. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 国内法履行するに当たりましては、文字どおり国内法解釈しながら履行するということは当然のことかと思います。そういう意味で、当然のことであるということでカットいたしました。
  19. 和田春生

    和田春生君 そうすると、国際条約で「解釈」「コンストルーイング」という言葉を入れたのは全くナンセンスだということですか、意味のないものを入れたということになるのですか。
  20. 馬場一精

    説明員馬場一精君) この後いろいろな御質問の中でも出てくるかと思いますけれども、この国際規則では、国内法的に見ますと重複、あるいは同じことを表から裏から両方言っているというようなものが多々ございます。そういうものにつきまして、われわれはできるだけ国内法としては簡明にということで、そういう重複を省くというような作業をいたしておるわけでございます。
  21. 和田春生

    和田春生君 その答弁はそれとして、ここに記録をいたしておきますが、先ほど申し上げましたようにこれを「総則」の中に持ってきたと、こういうことは、この規則解釈する場合においても、特殊な状況については十分な注意を払うし、そういう特殊な状況ができた場合にはこの規則適用、これについても解釈が基礎にあるわけですから、法文というものはすべてのものを網羅的に決めているわけじゃありませんから、そういうものについても、何よりも衝突を避けるということのために臨機措置をとる必要があるんだという形でこの規則は決められているというふうに解釈をするのが、私たちとしては当然だと思うわけですね。  しかし、運輸省当局説明によると、国際規則では同じようなことを裏から表から決めていると、そういうようなものについてはできるだけ簡明にするために国内法では整理をしたと、こういうふうにおっしゃっているわけですから、それはそれとして、また後で戻ってくるかもわかりませんけれどもここに置いておきたいと思います。  それでは、その次の質問に移りたいと思います。  いろいろ各条にわたってたくさんございますけれども、やはり何といっても一番議論を呼んでまたのは九条、十条、十八条に関係する問題でありますから、まずその九条、十条、それから十八条、これに関する問題から御質問いたしたいと思います。  まず最初に、第九条の第二項ですが、ここのところで条約では、「二十メートル未満船舶又は帆船」と、こういうふうに一括して一つ規定にしてある。それを二十メートル未満船舶帆船とを、国内法では二項と六項に分けて、そして国際条約では一つ表現になっているのを、国内法ではこの表現をそれぞれ変えている、その理由は何でしょうか。
  22. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 国際規則におきましては、動力船帆船との航法関係につきまして、九条の(b)項と十八条の(a)項ということで、分割されて規定されておるわけでございますけれども、これは後ほど御議論の対象になるかと思いますけれども一般船舶漁労船との関係と同じように、現行法の、われわれといたしましては二十条の思想と変わってはいないというふうに考えております。したがいまして、現行法との継続性、法的な安定性というものを示す意味で、現行法二十条第一項及び第二項というものを一本にした九条第二項というものを今回規定したわけでございます。したがいまして、ここで書いてあります表現ぶりといいますものも二十条一項、二項の表現ぶりと同じにしているわけでございます。  また同様に、二十メートル未満動力船につきましては、現行法第二十五条第三項という規定がございます。これと趣旨内容について全く同じでございますし、したがいまして、この二十五条第三項というものの表現ぶり、それをそのまま今回の法律でも使ったということでございます。
  23. 和田春生

    和田春生君 国際法では同じことを裏から表から決めていると、そういうものをできるだけ国内法では簡明にするように整理したとあなたさっき言いましたね。ここのところでは国際法では大変簡明にして「長さ二十メートル未満船舶又は帆船は、狭い水道又は航路筋内側でなければ安全に航行することができない船舶通航を妨げてはならない」、こういうふうに決められているわけですね。  それを今度は並べて決めるんじゃなくて、国内法の九条では二項と六項に分けて、しかも同じ表現で簡明に縛られているものを、国内法では、片方では「この規定は、帆船が狭い水道等内側でなければ安全に航行することができない動力船通航を妨げることができることとするものではない」と、読んでも舌をかみそうな、前々からこの規定は余りいい文章だと思っていないんですが、それをそのまま旧法のやつを持ってくる。そして改正法の六項では、「長さ三十メートル未満動力船は、狭い水道等内側でなければ安全に航行することができない他の動力船通航を妨げてはならない」というふうに表現を変えてかえって複雑にしたのはどういう趣旨ですか。
  24. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 今回の条約では、条項というのが相当大幅に整理されております。そういう意味で、一面から見ますれば、狭い水道における航法というものを九条、それから操縦性能の違う船舶間の航法については十八条ということで、それだけを見ればわかりやすくなっておるわけでございますけれども、それでは狭い水道においての操縦性能の異なる船舶間の航法関係はどうなるのかということになりますと、十八条と九条両方を見なければわからないということで、ここに誤解を生じる余地も出てくるわけでございます。  したがいまして、われわれといたしましては、国内法的にはそういう誤解をなくすということ、それから現行法でも一条で書いておるという現行法との継続性、そういうものを示す意味でこういう表現ぶりにしたわけでございます。
  25. 和田春生

    和田春生君 そうすると、政府の考え方は、片や先ほど聞いた「総則」の規定については、国際条約では非常に何といいますか、同じことを裏から表から規定をしていると、そういうものがあるから、それは国内法では簡明に整理したという立法態度をとったと。事ここにくると、国内法では非常に整理をしている問題について、わざわざ複雑でわかりにくくしたと。立法態度が二つに分かれているということになりますね。保安庁長官どうですか、それは。
  26. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 国内法化するときにいろいろ考え方が違うじゃないかという御指摘ございましたが、さっきの説明で簡明にしましたということは、「総則」のところの御説明ではちょっと私まだ早過ぎて、まだちょっと先生から御質問いただいている次のようなことに少し話が移り過ぎたんじゃないかと。  したがって、その場所によりまして重複を避けて簡明にするというような場所の考え方をとったところもございますし、それからここでいま御議論にしていただいている条約上で九条と十八条に分かれているものを、今度の新しい法律では九条でまとめて書いてあるというようなことで、かえって複雑じゃないかという御指摘の部分は、これはちょっと先ほどの簡明にしたというところとは筋が違う話でありまして、むしろ私どもは、海事関係者の間ですでになじんできた表現を、現行法を踏襲してとっていくことによって、新しい法律の中に盛られていることは従来の扱い方と変わりはないんだということの理解をしていただくための手段としてとったという説明の方が私はこの部分については適切かということでありますが、国内法化するときに多少そういう、部分によっては簡明にしたところもあるし、あるいは、なじんだ概念をとったというような点がございます。
  27. 和田春生

    和田春生君 大分苦しい答弁のようですが、もう一つ重ねて聞きますけれども条約では「長さ二十メートル未満船舶又は帆船」というのを一つにくくったのを、どうしてこれ二つに分類しなくちゃいけないんですか。一つであっては困るという理由は何ですか、逆に。端的に答えてください。
  28. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 十八条との関係を九条の中で盛り込むという私どもの立場を是認していただきますならば、帆船については十八条との関係を触れざるを得ないということで分離せざるを得なかったわけでございます。
  29. 和田春生

    和田春生君 十八条との関係と言うけれども、これは狭水道に関する規定をここに持ってきているわけでしょう。狭水道に関する規定において、なおあえてこれを分けなくてはいけないその理由は一体何ですか。
  30. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 狭水道におきましても、十八条の一般原則はやはり働きます。現行法どおり働きますということを明らかにするためでございます。
  31. 和田春生

    和田春生君 それはそれとしておきましていま聞いておきます。後と関連の力がありますから。  そうすると、狭い水道における条約の(c)項ですね。新しい改正法の九条の三項になっております。これが表現を変えたという理由は何ですか。
  32. 馬場一精

    説明員馬場一精君) これは、いま九条の(b)項との御議論にありましたように、漁労船とその他の船舶との関係につきまして十八条と九条の関係を、現行三十六条と変わらないんであるということをはっきりさせるためにこういたしました。
  33. 和田春生

    和田春生君 現行二十六条と変わらないということをはっきりさせるためにこういう表現にしたと言いましたね。国際条約との関係はどうなるんですか。
  34. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 九条、十八条というものをあわせ読みますれば、国際規則との関係でもこういうことかと思います。
  35. 和田春生

    和田春生君 そうすると、六〇年のIMCOのルールと、それからそれをもとにして行われた現行法と、それから新しく国際ルールが変わったと。そして、日本の国内法では改正された国際ルール表現は横っちょへ置いておいて、もっぱら現行法国内法規定に沿ってやったと、そういうことの間に相互に矛盾はないということですか。これは責任ある答弁を聞きたいと思う。
  36. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私どもは、いまお話が出ている狭い水道における航法関係について、漁船と一般船舶との間の関係は、一九六〇年の条約と、一九七二年の条約との間に何も違いはない。したがって、一九六〇年の条約をもとにしてでき上がっている現行法の二十六条と、一九七二年の条約をもとにして用意をいましておるところの新しい国内法との間には全然そういう、その関係については変わりはないということを考えておる次第であります。
  37. 和田春生

    和田春生君 いままで衆議院外務委員会、交通安全委員会でもそういう趣旨答弁は何度も繰り返されてきております。しかも、回を重ねるにつれて、もう絶対変わりはないんだ、全く同様だと、一々議事録を読むことはやめますけれども答弁していますね。いまも保安庁長官、同じようなことを答弁しているわけですね。  そうすると、旧六〇年ルールと、それから七二年ルールというものが全く変わりがないんならなぜ変えたんですか、なぜ変わったんですか、その説明が必要じゃないですか。これは技術的、立法的な、国内法がどうこうということじゃなくて、全く変わりがないものをなぜ変えることにしたんでしょう、議論を重ねて。そのことについての説明を聞いておきたいと思います。——ちょっとそれ、保安庁長官に聞きますよ、政策的な判断だから。
  38. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 条約では、すべての海域について適用される一般原則を十八条に掲げたと。それから九条で狭い水道等適用される規定について付加的な条件を書いたということでありまして、基本的には、私は考え方としては変わっていないということを考えております。
  39. 和田春生

    和田春生君 いやいや、そういうことを聞いているんじゃない。基本的に全然変わってないし、同じことなんだと言うんなら、なぜ変わったのかと、なぜ国際条約が変えられたのかと、どう判断しているかということを聞いているんですよ。判断の問題なんだ。  それをあなたが、変わっていないと思うと、日本の政府としては、旧六〇年ルールも七二年のルールも、旧法も全く同じなんだと、表現は変わったが趣旨は全く同じなんだと、こういうふうに強調しておりますが、全く同じものであるとするなら、なぜ国際ルールが変えられたのかと、その説明がつかぬでしょう。同じものなら変える必要がないわけなんだ。それをわざわざ変えた。それをどう判断をしているかと聞いているんです。条文解釈は聞いているんじゃありません、後から聞きます。
  40. 山本了三

    説明員(山本了三君) 私からかわってお答えさしていただきます。  先年御案内のとおり、新しい条約に基づきます国際規則は、第二章「航法」につきまして三つの節、いわゆる視界の状態に応じてその航法が異なるというところから、あらゆる視界の状態というのと、互いに他の船舶の視野のうちにある場合の航法、それから、霧等のように視界が制限された状態における船舶航法と、この三つの航法に分けて規定することが、船員航法遵守のために便利であろうという考え方に立っております。  で、こういった関係から、従来の二十六条の前段の規定は、十八条のいわゆるお互いに相手の船舶が視野のうちにある場合の航法の中に入れ、その後段は、これは狭水道、あるいはその航路筋における航法でございますので、「あらゆる視界の状態における船舶航法」、いわゆる第一節の九条に入れた。  そういったことで、三つに分かれた形になっておりますけれども条約審議の過程におきまして、この十八条と九条の関係、これは狭水道においてはあくまで一般原則の十八条が基本にあると。その上に九条の規定が付加されると、こういうような議論が繰り返されてそういうふうに考えられたということでありまして、別に変わってはいないと海上保安庁長官が申し上げたのがそのとおりであろうと思います。
  41. 和田春生

    和田春生君 政府側説明を聞きますと、船員に親切に、わかりやすく、間違いないように決めたと。そうすると国際条約は、明らかに表現が六〇年ルールと大きく変わっているわけです。それから、現行の国内海上衝突予防法と、表現なり配列が大きく変わっているというわけですから、いまの保安庁長官や警備救難監答弁を、正しいとすると、国際条約の変更というのは、船員に対して不親切で、わかりにくいものをつくったということになりゃしませんか。ずいぶんよけいなことをしたものですね。どういうふうに判断されますか。
  42. 山本了三

    説明員(山本了三君) 全般的な条文の構成につきましては、非常に進歩した法律になっていると思います。ただし、ここの九条のいわゆる狭水道のところでは、直接ここのいま議論になっております二十メートル未満船舶、それと帆船一般動力船関係等じゃなくて、漁労に従事している船舶とその他の船舶との関係等におきまして、条約が考えておりますいわゆる十八条と九条が併存すると、あるいは同時に狭水道では適用されるという考え方をとらずに、もっぱら狭水道では九条だけだと、こういうふうな誤解を生んでおります。で、その意味におきましては新しい条約、いわゆる国際規則案は不親切であると言って差し支えなかろうかと思います。したがいまして、私どもはそういう誤解を生まないようにという配慮から、それと変わったいわゆる本当の航法関係をここに規定するといいますか、それをあらわすというようにいたしたわけでございます。
  43. 和田春生

    和田春生君 誤解なんか生んでないんですよね。曲解をして、反対するという者が、いろいろ理屈にならぬことを言っているということはわれわれ耳にしております。これは海上の安全を維持する、衝突を予防するためのルールなんですね。それをやはり議論の末変えられた。そのことについて私の手元にも、これはこの改正作業にも参加をしておりますけれども、コッククロフトと、それからオランダのキャプテン・ラメイヤー、両方が共著の国際ルールの解説書があります。これもずっと読みました。  なお、これについては、私たちの聞くところによると、ワーキンググループのチェアマンをやったマンソンも協力をしていると。しかも、コッククロフトさんというのは、衆議院の交通安全委員会の質問に対して、そんなものは一学者の意見にすぎないなんというずいぶんたわけたことを言った政府委員がおるようですけれども、とんでもない話で、これは国際海上衝突予防法の権威で、救難監だって御存じでしょう。この名前はもう古くから著名なんですね。しかも、単なる学者ではない。英国のエクストラマスターの免状を持っている。そして、古くからコッククロフト——いまプロフェッサーですけれども海上衝突予防法というものは、われわれ海に学ぶ者はよく知っているわけですね。  それも一人だけではない。やはり参加したオランダのラメイヤー船長も協力をして、共著でガイドを出している。変えたことに意味があると書いてありますよ。変えたことに意味があると、一口で言えば。これは国会の審議ですから、一々これを読み上げることはやめますけれども。ところが、わが日本の保安庁の答弁によると、変えたことはナンセンスである、わかりにくくしてよろしくない、前の方がよかったんだと、こういうことになりますね。それていいんでしょうか。——いや、ちょっと、これは政治的な判断。法文解釈じゃないんだから。
  44. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 六〇年の条約と七二年の条約条文の構成が違ってきたと、そこで、十八条と九条に分かれたという部分が出たのは事実でございますが、私どもこの国内法を用意するに当たって、かなり長い年月をかけて関係者の意見をいろいろ伺った中に、一番この点が大事だなあということはもう私どもに非常によくわかった。  そこで、いろいろな点からその新しい条文の構成ということで、国際規定がよりよいようにということでお考えになった点もよくわかるので、できるだけそれにフォローしたわけですが、この点はひとつ、いままで解釈が変わらないという点を一番関係の皆さんに理解してもらうために、従来定着した概念で現行法律と同じようなもので従来どおりの表現になったということで、私どもは国際的な条約がよりよい方向に進みつつあるということはよくわかっておりますが、まあ特に大方の議論の中で一番問題点でありましたので、私ども関係者の理解を得るということを従来のなじんだ概念で整理をさせていただいたということでありまして、そのほかには何も意味はございません、
  45. 和田春生

    和田春生君 それでは多少技術的な問題をお伺いしたいんですが、これは六〇年ルールも、現行国内法の三十六条も訳文が読みやすいか、読みにくいかということは別にして、趣旨においては全く同様に決められている。旧ルールによる現行法の場合には、一般船舶は「漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならない」となっていますね。これは新ルールで十八条に行った、あなた方の説明のとおりである。ただし、それをただし書きはルールで読めば、「ディス ルール シャル ノット ギブ ツー」と、つまり、この規則は漁船に対して云々と、それは他の船舶も航行を航路筋において妨げることができると、そういう権利をこの規則は漁船に与えるものではない、こういうふうに六〇年ルールでは決めておりますね。  ところが、今度は七二年ルールではそれが変わったわけです。主語が変わった。一番先に「アベッセル エンゲージド イン フィッシング 」と、つまり漁業に従事している船は「シャル ノットインヒード ザ ハッセージ」と、通航を妨げてはいけないというふうに変わったんですね。全く同じでしょうか。片方は一般的な航法として、漁船と接近する場合の航法であると、だから一般の船は漁業に従事している船舶の進路を避けろと、こう言っていると、その趣旨が新ルールの十八条に大体入ってきていると、こういうことは、それはおっしゃるとおりだと思うのですね。  ところが、これは九条の狭い水道、「ナローチャンネル」に対する規定としてこちらに抽出してきたと。そういう中において、前はそうは言っているけれども、それは水道筋で他の船舶の航行を漁船が妨げていいということではありませんよというふうに規定しておった。したがって、このことは「ディス ルール シャル ノット ギブ ツー」だ、今度は新しい七二年ルールでは、頭書きが漁船は、「シャル ノット インビード ザ パッセージ」と、妨げてはいけないのだと、こういうふうにきたわけですね。それは全く同じですかね。  これが全く同じだという形になると、ぼくは法律論の英語には詳しくないのだから、まあ衝突予防法ぐらいは何とか読めますけれども、その辺のことニュアンスはわからないけれども、航行の安全と衝突を避けるというルールをつくっていくという人たちが、これは全く同じであって、趣旨は同じなんだと言っていると、ぼくは頭の方がおかしいんじゃないかという気がするんですけれども、いかがですか、これ、救難監
  46. 山本了三

    説明員(山本了三君) 二つのことをお答えいたそうかと思うのでございますが、一つは、六〇年ルールの場合、これは先生が先ほど御指摘されたコッククロフト氏の論文といいますか、解説なんでございますけれども、確かに六〇年規則と今度の七三年規則に重要な変化があると、こう言っております。で、どういうふうに変化があるかというと、現行法二十六条は、漁労中の船舶は他の船舶によって使用される航路筋、いわゆる航路筋を妨げる権利を持たないと、こういうふうに規定しておるが、今度の新ルールは、水道の「内側を航行している他の船舶通航を妨げてはならない」と、こういうふうに規定いたしておると。  で、六〇年ルールはその航路筋を常に妨げてはいけないけれども、新規則はこれを緩くしてといいますか、漁労の実態と現在の狭水道における一般動力船の航行との実態と申しますか、これに合わせるといいますか、いわゆる通航船舶の「通航を妨げてはいけない」、通るときだけ妨げてはいけない、こういうふうに変わったんだと、これは重要な変化であると、こういうふうにコッククロフトさんは言っているわけです。  この「通航を妨げてはならない」というのは、実は現行法では、原文は先生おっしゃるとおり、航路筋を妨げる権利を有するものではないということなんですけれども、日本の国内法ではそうは訳してないと。で、現行法の場合には、やはり他の船舶通航を妨げてはならない、いわゆる日本の国内現行法は、新しい七二年の、いわゆる国際規則表現になっておるということであります。日本ではすでにその七二年規則はそのままもう国内法として通用しておったということが言えるわけであります。  次は、もう一つの問題は、国際規則では九条で、操業中の、漁労中の漁船はという、漁船の方が主語になっておるということであります。で、現行法は必ずしもそうではなかったということでございますけれども、この点につきましては、条約審議の過程におきまして、こういうふうな表現を九条と十八条に分けて規定することは、十八条と九条との関係において船員の誤解を招くおそれはないかというのが相当強く議論されております。しかし、この議論に対しましては、英国側といいますか、IMCO側といいますかの担当官は、これはそういうことはないと。十八条はもともとどこにでも働くんだし、こういう九条の規定を置いておかないと、漁労中の船舶が狭水道において一般船舶通航を妨げるということを守らせることができないし、それから、そういった状態で、狭水道で漁労中の船舶が完全に妨げてしまったような場合には、今度は十八条を働かせないといいますか、そういうこともできないんだというふうな議論をしておる経過があります。
  47. 和田春生

    和田春生君 できるだけ要点を答えてください。
  48. 山本了三

    説明員(山本了三君) したがいまして、それは主語は変わっておるけれども、中身は変わってないんだと、国際規則は変わってないんだということだと思います。
  49. 和田春生

    和田春生君 もちろん、先ほど申し上げましたコッククロフトさんの解釈が、これはもう絶対的なもんでそれ以外にないとは思いません。しかし、これは国際的に非常に有力な解釈であるし、ほとんどこれに従うと思う。  私は、あなた方は変わってない、変わってないって言うけどね、重要なところが二つ変わっているんですよ。  一つは、六〇年ルールの場合には、先ほど言ったことの、救難監説明されましたけれども、「オブストラクティング ア フェアウエー ユーズド バイ ベッセルズ」となっていますね。そうすると、これは船によって使用されるフェアウエーですから、それをオブストラクトすると、それはいけないんだと。したがって、これを非常に厳密に解釈をすると航路筋、フェアウエーにおいては漁船はもう妨げちゃいけないから、場合によったら全部操業を排除すると、こういう意味にもとられるという解釈もあったわけですね。そういう点で、多少国際的に議論があったことは御承知のとおりだと思う。  その表現を変えたんですよ、今度はね。どういうふうに変えたかと言うと、それは「ナビゲイティング ウイズイン ア ナロー チャンネル オア フェアウエー」、つまり狭い水路かフェアウエー、航路筋内側を航行している船舶通航をインヒードしてはいけないと、こう変わったわけでしょう。これは非常に重要な変化なんです、一つの。従来は、航路筋をオブストラクトしちゃいかぬ、こういう規定だった。今度は、狭い水道内側通航している船舶のその通航をインヒード、妨げてはいけないと。  それは、最近における船舶航行のふくそうの状況、そういうものから見て漁船もふえてきたと、大型船もどんどん行くと。しかも狭水道においてはいろいろと航行に制限をされると。したがって、従来のように航路筋を妨げるということではなくて、通航を妨げてはいけない。これが非常に大きな変化の一つだと思うのですね。変わったことに意味があるんですよ。したがって、妨げないような場合には漁業してもよろしいんですよと、新法では。そういうときには誤解の余地がないようになっているわけです。やっちゃいかぬと言ってない。航路筋をオブストラクトしてはいけないということを言っているわけじゃないのだと、しかし、それを内側通航している船舶については妨げてはいけないという形で衝突を予防しようというところに一つの大きな変化がある。  それを、一つも変わっちゃいない 変わっちゃいないと、こう言って、前と同じ規定にしたと。こういう何といいますか、国内法規定というものはぼくは非常におかしんで、国際条約の方が変なんでこっちの方が正しいんだなんというのは、牽強付会の弁と言うしかない。  もう一つそれと関連して、国内の改正法が大変なところが変わっている、実を言うと。現行法と一緒だ一緒だと、長官も救難監も言われましたね。どこが現行法は変わっているかというと、現在は、漁船と接近する場合の航法ということですから、これ一般的な航法として規定をされているわけです。特別に狭水道における航法として規定されているわけではありません。そこで、現行法をそのとおり読むと、「漁ろうに従事している船舶以外の航行中の船舶は、漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならない」、現行法で言うとそういうふうに書かれております。これは御承知のとおりですね。  ところが、今度は文句が入ったのだ、よけいな文章が。どういうふうに入ったかというと、「航行中の船舶(漁ろうに従事している船舶を除く。云々。)は、狭い水道等において漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならない」、一つも同じじゃありませんよ。現行法では、一般的な一対一の関係と、一般的な運航原則としてこれは書いているわけです、「漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならないしとなっている。今度は、「航行中の船舶は、狭い水道等において漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならない」、「狭い水道等」というものを法律的に入れた。なぜこの文句を入れましたか。
  50. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 現行法二十六条、おっしゃいますとおり、あらゆる水域において適用される規定としてここに規定されております。これを今回、私どもが九条の項で「狭い水道等において」ということにいたしましたのは……
  51. 和田春生

    和田春生君 一緒だと言ったでしょう。なぜ入れたのか。一緒だ一緒だと言っているけれども、一緒じゃないじゃないかと聞いている。
  52. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 狭い水道におきましてもこの一般原則というのは働きますということをはっきりさせるために入れたわけでございます。
  53. 和田春生

    和田春生君 それでは、国際条約がわざわざ狭水道というものを第九条のルールで設けて決めたことを全部殺してしまっているわけですよ。狭い水道においても十八条でいくんだということですから、九条のこの項は要らぬということになるじゃないですか、そういうことなら、こんなこと決めなくたっていいじゃないですか。十八条だけあればいいじゃないですか。その点はどうですか。
  54. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 狭い水道における特殊な現象としての漁労船が妨げる行為というものはあり得ると思います。したがいまして、妨げてはならないという規定はやはり九条に置くべきかと思います。そのときに、私ども先ほどから長官も申し上げておりますように、九条と十八条の間で誤解がないように、この関係現行法の二十六条と同じようなことなんですという意味で、その十八条の規定を狭い水道においても働きますということではっきり書いたということでございます。
  55. 和田春生

    和田春生君 あなた方の頭の中では、誤解のないように誤解のないようにと言うが、ぼくらは国際ルールをずっと読めば、一つも誤解するところがないんです。それは法律とかルールというものは完璧ではありませんから、議論をすれば議論の余地があるでしょう。従来に比べると大変わかりやすくなっている。衝突予防という面から見れば進歩だとわれわれは考えている。だからこそ日本の政府もこれを批准しようということでしょう。進歩でないと、だめになったんだというなら批准する必要はないわけですね。  それで、国際条約にのっとって正しく国内法を制定すると繰り返し答弁しながら、ここにくると国際法は誤解を招く、ぐあいが悪い、旧法の方がよろしいと、こういう答弁を繰り返しているんですね。大変国内法改正案を提案をした政府の姿勢と、あなた方の解釈の中には重大な混乱があるんです。それが実は問題なんです。外務委員会における私の質問のときにも申し上げましたけれども、完璧なものはできないわけですから、同じものを互いが同じように解釈をしておっても、若干理解が食い違っていると、とっさの判断とか、衝突回避の行為の際に判断を誤るというか、どちらかが善意であっても衝突が起こり得るということはあるわけです。  ところが、根本になるルールそのものが、条約表現国内法表現というものが変わっておれば、その上に立っての解釈をするわけですから、その解釈の食い違いというものはむしろオーバーラップして、あなた方が頭で言うように、誤解を避けて一致するというよりも、離れていく可能性がある。それによって事故が起きたときに大変不幸なことに私はなると思うんです。現にあなた方自体の答弁の中でも混乱があることは、皆さんお聞きになっておってよくわかっているわけです。後で議事録をごらんになればわかるわけですよね。  一緒だ、一緒だ、全く変わってない、変わってないと、こう言っておる。変わってるじゃないかと、なぜ変えたんだと言えば、いや、それは国際ルールの方では誤解を生じるし、ぐあいが悪いんで、旧法どおりがいいと思ったからそういうふうにしたんだと、こう言っているわけでしょう。現に、したがって、新法と国際ルールとは変わっていないと言いながら、あえて変えた規定をしたということについては、変わっているわけですよ。そういう点において、あなた方自身の答弁自体の中に内部矛盾を持っている。そういう考え方で保安庁が衝突予防法解釈をし、現場指導をするということは、恐るべきことに私はなってくるんではないかという感じがするんです。  さらに、そのことについて今度の変わったことの大きな理由は、一緒だ、一緒だと言うけれども、実は一緒じゃないんですね。御承知のように国際の条約では、ハートBの「ステアリング アンド セーリング ルールズ」、第二章「航法」という中で、セクションI、セクションII、セクションIIIに分けていますね。セクションIというのは、いま言ったようなあらゆる視界における航法ですよね。そうしてセクションIIというものは、お互いに視野のうちにある船舶航法ですね。そしてセクションIIIは、視界不良の場合の航法というふうに分けてきちんと整理したんです。大変現場の操船者にとってはわかりやすくなっている、われわれは、これは従来から比べると大きな進歩だと実は理解をしているわけです。そのことはお認めになりますね。いいですね。——うなずいておりますから、認めていると思います。  そうすると、十八条の規定は、互いに視野のうちにある船舶です。お互いが視認し合って航行している船、しかも一般原則ですから、平常で言えば一対一のルールと言ってもいい。それがもちろん二隻が三隻、四隻になる場合もあるかもわからぬけれども一般的な、お互いが一対一の関係にあるという場合のルールである。ところが第九条は、狭い水道というものをここに持ってきましたね。従来と違って「ナロー チャンネル」の規定を設けた。しかもこれは、あらゆる視界における規定の中に入れたんです。その点の従来と変わっているということもお認めになりますね。いいですか。——うなずいておりますから認めたと見ます。  さてそうすると、改正法の「狭い水道等」の第九条の第七項に「第二項から前項までの規定は、第四条の規定にかかわらず、互いに他の船舶の視野の内にある船舶について適用する」と、こういうのを入れておりますね。これは国際ルールにはありません。第四条では、「この節」——日本語で言うと「この節」ですね、この航法規定というものは、あらゆる視界の船舶に対して適用をすると、こういうふうに決めているんです。ところが、いま非常に重要な十八条の観点で議論した。十八条は、互いに視野のうちにある相互船の関係というふうに決めていると。その方に持っていって、ここから外した理由は何ですか。
  56. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 確かに第九条、あるいは第十条も同様かと思いますけれども、あらゆる視界の状態における航法ということで規定されております。ただ、たとえば規則説明さしていただきますと、九条(b)項を見ていただきますと、「航路筋内側でなければ安全に航行することができない船舶」、あるいは(c)項では、「航路筋内側を航行している他の船舶」ということで、あと同様でございますけれども、他の船舶の存在というものを前提としてこの規定が働くということになっております。これは文理解釈上、当然に相手船の存在を認めているということは、互いに視野のうちにある状態であるということでございます。したがいまして、これを私どもははっきりさせる意味で、七項でございましたか、入れたということでございます。
  57. 和田春生

    和田春生君 それは全く、このナビゲーターとしてのわれわれの立場から言わせれば、もうナンセンスきわまることなんです。他の船が存在しなかったら衝突なんかしやしないのですからね。こんなものどうでもいいんですよ。もちろん衝突予防というのは、他の船舶の存在を前提にしているということはすべての規定に共通するわけ。他の船舶が存在しているから衝突のおそれがあるわけでしょう。その中で、この最初のセクションIは、あらゆる視界における、つまり相手の船が見えない場合でも適用される規則なんです。それからセクションIIの方は、お互いに視野のうちある、お互いに確認し合っている、お互い同士がですね、「ワン アナザー」、この航法として決めているわけですね。そしてセクションIIIは、特に視界不良の場合の航法と決めているわけでしょう。  そうすると、国際ルールの第九条というのは、もちろん他船の存在を認めているのはあたりまえの話なんだけれども、これは互いに相手を認め合っているという船の航法ではなくて、「あらゆる視界の状態における船舶航法」として決めている。ところが国内法では、九条七項を設けたことによって、「あらゆる視界の状態における船舶航法」の中の、とりわけ重要な二項、三項、四項、五項、六項をセクションIIの方に移してしまったと、こういう形になりますね。その理由は何ですか。
  58. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 繰り返しになりますけれども、「あらゆる視界の状態における船舶航法」の中で、いまこういう手当てをしております以外のものにつきましては、相手船舶の存在を認めてどうこうするということではないと思います。一般的に、たとえば見張りを行いなさい、安全なスピードというものはこういうことで行いなさい、あるいは九条の第一項でもよろしいわけでございますけれども、右側端を航行しなさいということでございます。そこで、九条二、三、四ということになりますと、相手船舶を認めて、その船舶との間での一定の航法関係を書いておるということでございまして、相手船を認めるということは、すなわちこれは、お互いに視野のうちにある場合にしか働きようがない規定であるということだと思います。
  59. 和田春生

    和田春生君 これ、保安庁長官に確かめますけれども、いまの解釈でいいんですか、あるいは警備救難監ですね、あなたはやっぱり船乗りの出身者なんですけれども、そういうことでいいんですか。これは法律の字句の問題ではありませんよ。いまの答弁は非常に重要で、もしそれが保安庁としての正式な解釈であるというなら、私はこの法案に反対しますよ、徹底的に。性根を決めて答弁してください、いまのところは。賛成しませんよ、断じて、そういうことであるなら。国際条約と明らかに違っているんですからね。  この九条の二項、三項、四項、五項、六項というのは、互いに相手の船を認め合った間の規定であると、したがって、「あらゆる視界の状態における船舶航法」から外して、ここに決めてあるけれども、実質上は、法体系からいけば、互いに視野のうちにある船舶の条項に移してしまったということだ。そうすると、「あらゆる視界の状態における船舶航法」のうち、一般船舶と二十メートル未満船舶、あるいは帆船、あるいは漁船と、そういうようなものに対して完全に欠落しちゃうということになるわけ。ないんです、ここには。ないと同じことですよ。したがって、いまの答弁が正しいとすれば、第九条というのは、二項から六項に至る一番重要な規定というものは、法律体系上ないわけですから、互いに視野のうちにある船舶規定として入っていったと、こういうことになりますね、第二節の中に。  そうすると、国内法では、いまの答弁説明が正しいとすると、くどいようですけれども重要な点だから申し上げますけれども、第二章「航法」、第一節の「あらゆる視界の状態における船舶航法」という中には、国際条約の(b)項、(c)項、(d)項と、あるいは(e)項等もございますけれども、その規定は完全に落ちているということになりますね、いまの説明が、正しいとすると。そうなるでしょう。  これらの規定は九条の中に決めているけれども、くどいようだけれども、お互いに認め合っている船の間の航法なんだから、十八条、結局この節からはずしたのだということになる。ありませんね、規定が、法律的には。いいですか、これは非常に重要な問題ですからね、性根を決めてきちんと答弁してください。場合によったらこの審議をとめてもらって、政府の統一見解を出してもらわぬと困る。これは衝突予防ということにおいて重大な問題です、そういう説明は。
  60. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 大事な点だと思いますので、もう一度私ども先生の御質問内容答弁がかみ行うように後刻よく考えさせていただきたいと思います。
  61. 和田春生

    和田春生君 その点は、しかとひとつ検討して答弁してもらいたいと思いますし、これは運輸大臣も、船舶のことについてはそれは御専門ではないかもしれませんけれども国際条約との関係でこれ重要な問題なんですね。法律体系でつまり、重ねて言いますけれども、九条の二項ないし六項というものは、第七項によって「互いに他の船舶の視野の内にある船舶について適用する」というふうにはずしちゃった、しかも、本来それはそういうものなんだという説明なんです。ところが、条約の中ではその除外規定ないんです。これは「あらゆる視界の状態における船舶航法」です。  これなぜ重大だということを、時間の関係もありますから一言申し上げておきますけれども一般のオーフンシーの場合には、お互いに認め合うというときに初めて衝突するかしないかという形になるわけです。しかし、狭い水道とか航路筋というものは屈折している場合もあります。しかも、非常に航行も制限をしている、こういう場合もあるわけであります。しかし、それは一対一の関係じゃない、行き会い船がある、あるいは並航船がある、そして一つの物を避けようとしたけれども別の船が来ているという場合もある、漁船だってたくさんあると、そういう状況では非常に問題である。  だからこの趣旨は、お互いに認めている場合だけではなくて、つまりお互いがそのときにおいては直接認めていなくても、二十メートル未満船舶帆船というものは「狭い水道又は航路筋内側でなければ安全に航行することができない船舶通航を妨げてはならない」、つまり、いま本船が来るということが見えなくても注意しろよと、こういうことなんですね。「漁ろうに従事している船舶は、狭い水道又は航路筋内側を航行している他の船舶通航を妨げてはならない」、つまり避けろということではないが、相手がよけようと思ったってよけ得ない場合がある。しかもそれが、屈折をしたり見通しが悪い、そういう水路の場合に、事実上妨げるような行為をしちゃいけないというところに実はこの規定意味があるわけです。  お互いに衝突するかしないかということを認め合った状態におけるこれは規定なんだと、だから第九条七項ではずしたんだという形になると、条約に決めているところの(b)から(e)の(ii)に至る規定というものは国内法には規定をされていないという形になる。規定をされていないという形になる。したがって、この点についてはきちんとした答弁をしてもらいたいと思うんです、それがはっきりしないとあとの質問進められませんよ。条約と同じだ、ちっとも変わってない、変わってないと言うけれども、大変なところで変えているじゃないですか、条約と。  ですから、そのことについて十分勉強してくるように私の方はへーハーを渡してあるわけです。十八条の質問へーハーで一、二項と、「第九条第二項及び第三項並びに第十条第六項及び第七項に定めるもののほか」が挿入されていることに関し、条約の「イン・エニー・コンデション オブ ビジビリティ」、それと「インサイト オブ ワン アナザー」の関係について説明を求めるということをちゃんと通知してあるわけですから。
  62. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) この点は大事な点だと思いますので、よく私ども検討させていただきたいと思います。
  63. 和田春生

    和田春生君 大臣が十一時五十分ごろに退席をしたいという、何か衆議院の本会議があるそうでございますから、いま相談する時間的余裕も要ると思いますから、午前中の質問はこの点でとめたいと思います。
  64. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後四時まで休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      —————・—————    午後四時三分開会
  65. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 運輸委員会を再開いたします。  海上衝突予防法案を議題とし、質疑を続行いたします。
  66. 和田春生

    和田春生君 午前中、私の質問に対する政府側としての責任ある答弁を求めておいたわけでございますけれども、それについてのもし答弁があれば承りたいと思います。
  67. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私ども、その後検討した結果に基づいて、統一的な見解を私から表明をさせていただきます。  一九七二年国際規則国内法案との間には、表現上または条文の構成において違いがございますが、国内法案の第一条において明記いたしましたとおり、国内法案は、国際規則に準拠したものであり、その趣旨において両者が異なるものではございません。  したがって、今後国内法解釈、運用に当たりましては、国際規則と背馳しないよう万全の措置をとる所存であり、船舶交通の安全の確保のため、第六条、第八条等の趣旨関係者に十分に周知いたしますとともに、国内法案では、他の船舶通航を妨げる可能性が特に強い場合を取り上げた規定ぶりとなっております他の船舶通航を妨げてはならない義務につきましても、あらゆる船舶があらゆる状態において他の船舶通航を妨げてはならないことは第三十九条の船員常務であることを重視し、その旨を関係者に十分に指導を行いたいと存じます。
  68. 和田春生

    和田春生君 午前中の政府側答弁に比べまして、かなり事態ははっきりしてきたわけでございますが、それに関連しまして特に二、三指摘をして、さらに政府側の見解を確かめておきたいと思うのです。  といいますのは、新しい国際ルールが、「互いに他の船舶の視野の内にある船舶航法」と、それから「あらゆる視界の状態における船舶航法」と二つに分けたと、これは私たちから見れば大変いい方法だというふうに考えているわけですけれども、特にこの狭水道における航行に関しまして、「あらゆる視界の状態における船舶」の条に入れたというものは——現行法でも互いに視野のうちにある船舶規定というものには現行法の二十六条は含まれていないほどです。  結局、その点については今度の新しい改正法の方が、立法技術の上で先ほど指摘したように、「あらゆる視界の状態における船舶航法」の中から、狭水道なんかのところの肝心のところがすぽっと欠落したように立法の形としてはなってしまったわけですね。それはもう、あっちへくっつけ、こっちへくっつけしたものだからそういう形になったわけです。  で、実は、これは非常に航法上重要な問題は、たとえば夜間の航行という場合に、「燈火」の項で、マスト燈やげん燈等についても、御承知のとおり五十メートル以上の船舶についてはマスト燈は六海里である、しかし長さ十二メートル未満の場合には二海里である。げん燈についても、大きい船は三海里だけれども、小型船については一海里であると。やっぱり見える範囲というものが違うわけですから、非常に天気のいい場合は別として、かなり視界の状況は、それほどひどくは悪くないけれども、ある程度よくないと、片方は見えているけれども、相手が見えてないという場合があり得るわけです。  あるいはガスがかかっておって、高いところからは見えないけれども、低いところからは相手船が見えているという場合もある。あるいは屈折した狭水道や水路等において、見通しが悪い場合に、相互に確認できない場合がある。狭水道というのは非常にそういう危険なところであるから、両方が互いに見合って、エンド・オンの状態でどっちへ避けるかというのは簡単だけれども、片方は見ておるが片方は見えない場合もあるわけですね。  だから、「あらゆる視界の状態における」ということにして、その中に規定を持っているわけであって、互いに見合っているという場合には、一般的にいえば一対一の関係のときであると。そういう点について、確かにいま保安庁長官説明されましたけれども現行法規定のまんまで法律技術的に解釈をしていくと、肝心のところが抜けることになるわけです。そういう点について、やはり十分徹底をしてもらうようにしないといけないということが一つですね。  それから、いろいろと意見がございましたけれども、漁船との関係におきまして、午前中にも申し上げましたけれども旧法の場合には、フェアウエーをオブストラクトしてはいけない、そういう権利を漁船に与えるものではないのだというふうに規定されているわけです。ということは、航路や航路筋を閉塞するような形でやっちゃいけないというものですから、この規定を裏返したら、逆に船が通っておっても通らなくても、航路筋においては漁業やっちゃいかんじゃないかという解釈が生まれる余地があった。それが非常に問題じゃないかというので議論した結果、今度はハッセージをインヒードしてはいけないのだ、そういうふうに規定されたわけですね。だからそれが狭水道航法に入ってきている。  そういう点を変に曲解をしたりしていろいろな議論が行われる。そうして、肝心かなめの衝突の予防と、海上交通の安全という趣旨が横っちょに置きやられることでは困るわけです。そういう点についても十分条約の制定の趣旨並びに条約条文にのっとって、きちんとした解釈による行政指導をしていただきたい、こういうふうに思うわけです。その点いかがですか。
  69. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ただいま先年からお話があったとおりに私どもも考えております。  したがって第一点は、あらゆる船舶があらゆる状態において他の船舶通航を妨げてはならないというのは、これは先ほども申し述べましたとおり、三十九条の「船員常務」の中にはっきりしてございます。  それから第二の、狭い水道における漁船と一般船舶との関係についても御指摘のとおりでありますので、私どもは今後ともそういう点をよくわきまえて衝突予防、海上交通の安全に十分努力していきたいと考えます。
  70. 和田春生

    和田春生君 それでは、その点は事態がかなりはっきりいたしましたので、別の項に移ることにいたしまして、第九条関係でもう一点お伺いしたいのは、第九条の四項、五項、それから八項。この国際条約においては疑問信号、あるいは湾曲部の信号をやれということが、安全のために必要だというので重ねて書いてあるわけですね。これは確かに三十四条には規定してありますけれども国際条約で丁寧に書いてあるやつを削ったという理由は何ですか。やらなくていいという意味じゃないでしょうね。
  71. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 決してやらなくていいという意味ではございません。私どもの考えといたしましては、三十四条で別途書いてございますので、重複を避けるという意味でこちらからは落としたということでございます。
  72. 和田春生

    和田春生君 九条のほかの点では丁寧に、懇切に、わかりやすくするために一般原則も持ってきて丁寧に書く、ここでは簡単にするために整理をすると、どうも立法態度というものは一貫してないような感じがするわけですが、これは国際条約のとおりであるという形で、次は、十条について九条、十八条との関連でやはりお伺いしたいことがあるんです。  この「分離通航方式」というのはまだそれほど一般的ではございませんけれども、当然こういう措置があちらこちらでとられてくる。ところが、この「分離通航方式」においても、この第九項を設けたことによって、これが視野のうちにある船舶だけに適用される形になっておる。あらゆる視界においては適用をしなくてもいいような法律の形になっているわけです。これはなかなか問題ですが、この十条の運用等は特に国際関係の生ずる問題で、国内ではございませんが、事件が起きると非常に問題になってくる。  そういう点で、先ほど冒頭に長官から御答弁されたことは、十条のこの部分についても同様であるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  73. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 同様に理解をしていただいて結構でございます。
  74. 和田春生

    和田春生君 それでは、十八条の関係について質問がいささか残っている面を伺いたいと思います。  この第六項ですね。第十八条の「各種船舶責任」は、先ほど来の質問で大分関連してきたわけですけれども、この十八条に決めていることは一般的な原則、先ほど来申したようにおおむね一対一といいますか、お互いに確認をし合って衝突のおそれがある、こういう場合に適用される規則を決めているわけでございますけれども、その中で、六項について、ちょっと飛びますけれども条約の方では「原則として」というふうに書いてある。つまり「インジェネラル」と、こういうふうに書いてあるんですが、こっちの方では、水上航空機は、できる限り」と、こういうふうに表現が変わっている。  さらにまた、後段に「衝突のおそれがある場合には、この部の規定に従わなければならない」という形で、念を入れて規定してあるんですけれども、この後段の部分は落としてしまってある。これはどういう理由によりますか。
  75. 馬場一精

    説明員馬場一精君) まず、「インジェネラル」の話でございますけど、これは実は現行法の二十条三項におきまして「インジェネラル」という言葉を使っておりまして、現行法で「できる限り」ということで使っております。したがいまして、今回の場合もわれわれこの「インジェネラル」というのを、国際規則表現とは違いますけど、国内法に合わせまして、「できる限り」ということに使わせていただきました。  それから、後半の部分を削除いたしておりますのは、水上航空機と申しますのは、定義で見ていただきますとわかりますように、船舶ということで扱われておりますので、ほかの規定でそれぞれ義務規定というものがかかるときには当然かかってくるということで、まあこれも重複を避けるという意味で削除いたしました。
  76. 和田春生

    和田春生君 しかし、いまの現行法でそうなっているからといって、現行法規定がすべてそのまま絶対に正しいと、こういうわけではないわけでして、やっぱり「インジェネラル」というのは、一般的に、原則的にやれということですから、「できるだけ」ということとは日本語としてちょっと意味が違う。で、日本語で「原則として」という場合には、原則外の方が多いようなことになるわけですけれども、この場合にはそうではないわけでありますから、そういう点についてはひとつきちんとしていただきたいと、こういうふうに要望いたしておきたいと思います。  いま船舶の種類についての発言ございましたので、元へ戻りまして、第三条についてお伺いしたいんですが、第三条の船舶の定義ですが、これが条約国内法の定義では若干変わっているんですが、これどうして変えられたんですか。
  77. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 変わっている点、二カ所あるかと思います、一カ所は、ここで「供する」という言葉で、規則の方では「供され又は供することができる船舟類」ということで書いてございます。これも先生十分御承知のことかと思いますけど、現行法の原文も直訳いたしますればこの規則のとおりになるかと思います。しかし、現行法でも「供する」という言葉でこの両方の意味を言いあらわしておるということでございますので、今回もそれにならいました。  それからもう一つの違う点は、「無排水量船」というものを削除いたしております。これにつきましては、エアクッション船などの無排水駐船と申しますものは、すでに船舶安全法の体系等におきまして船舶ということで扱われておりまして、もうこれは相当ポピュラーなものになっておるというふうに私ども判断いたしまして削除いたしました。
  78. 和田春生

    和田春生君 そういたしますと、たとえばホバークラフトとか、あるいは最近佐渡−新潟間に就航しているジェットホイル等がありますね。あれも航海状態になりますとノンディスプレースメントの状態になっちゃう。それはもう全部船舶という形で提供するわけで、これを除いたことには他意がないと、こういう形でよろしゅうございますね。
  79. 馬場一精

    説明員馬場一精君) そのとおりでございます。
  80. 和田春生

    和田春生君 次に、第三条の第四項、漁船の定義ですね。「漁ろうに従事している」という中、表現が違っているわけであります。この点について他の委員会等で質疑をしてみると、ちょっと政府側には理解の混乱があるんではないかというふうに思いますのは、国際条約の(d)項で、最初の方の「トロール」は、TRAWLのトロールですね。後の力の「操縦性能を制限しない引きなわその他の」これはトローリングラインは、TROLLの方のトローリングで、これは違うわけです。ほかの委員会の議事録を見ますと、「トロール」に全部入っているというような説明をしていらっしゃるわけですけれども、そういう理解ですか。
  81. 馬場一精

    説明員馬場一精君) これも現行法との関係もございますけど、現行法第一条十四号をごらんいただきますとわかりますように、トロールと申しますのは、「けた網その他の漁具を水中で引くことをいう」とございます。すなわち、このトロールという漁法はけた網という網、あるいはその他の漁具というものを使うものであるということでございますので、ここで「網、なわその他の漁具」ということを規定しておれば、それで十分であるというふうに判断したわけでございます。
  82. 和田春生

    和田春生君 そうではなくて、ぼくの聞き方が悪かったかもわからないけれども、(d)項の「バット」以下に、「ダズ ノット インクルード アベッセル フィッシング ウイズ トローリング ラインズ」となっている。つまり引きなわですね。これはしかも後についているように、船舶の「性能を制限しない引きなわその他の漁具」、つまりトローリングラインでやっているやつは漁船に入れないんだとなっていますね。その条が外れているんですけれども、これは解釈運用の趣旨としては条約と変わらないんですか、変わるんですか。その点聞きたいと思います。
  83. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 趣旨といたしましては変わりません。
  84. 和田春生

    和田春生君 じゃあそういう形ですから、その点は確認をいたしておきたいと思います。  次に第六条関係。この第二号で、条約によりますと、「交通のふくそう状況」という中に、「(漁船その他の船舶の集中を含む。)」と書いてありますが、第六条の国内法の二号ではこれが省かれている。これはどういうわけですか。
  85. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 日本語で「ふくそう」と申しますのは、方々から集まること、あるいは物が一カ所に込み合うことというようなことを意味するかと思います。したがいまして、漁船なりその他の船舶が隻中しておるという状態も当然に「ふくそう」という言葉で読み切れるということで削除いたしたわけでございまして、内容が変わっているわけではございません。
  86. 和田春生

    和田春生君 ただし、「船舶交通のふくそう」というのは、行き交う船のふくそうで、漁船が集中している場合においては必ずしもそれに含まれないと思うんですが、内容では変わっていないということでありますから、先ほどの長官の答弁もございましたけれど、その点はひとつきちんとしておいていただきたいと思います。  それから、同じく第六条の(a)の(vi)で、条約の方では「自船の喫水と利用可能な水深との関係」、特にそういうふうになっている。国内法では「自船の喫水と水深との関係」、こういうふうになっておりますけれども、これはことさらに変えた意味はあるんですか。
  87. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 変えた積極的な意味はございませんけれども、私どもとしては、同じ意味を「水深」という言葉だけで言いあらわし得るものと考えまして、表現の簡素化を図ったわけでございます。
  88. 和田春生

    和田春生君 この点は、ある場合において、事故が起こったりしたときに重要なことになるのは、単なる「水深」ではなくて、そのとき走っている船によって、利用し得る「利用可能な水深」、違うわけですね、船舶の大きさ、喫水等によって。そこでわれわれは、「利用可能な水深との関係」というのは、その運航している船の喫水との関係において「利用可能な水深」ということに意味があるんで、単なる「水深」ではないと思いますね。そういう点について、私はむしろこれは省いたということは、かえってあいまいにしている面があるんではないか。条約とは趣旨は変わらないということですから、それはそれとして確認をしておきたい、こういうふうに思います。  次は第七条の方ですが、最近はほとんどの船がレーダーを装備しているわけですが、第七条の条約の(b)項で、「レーダープロッティングその他これと同様の系統的な観察を行うことをいう」と、「これと同様の系統的な」というふうになっているわけですが、今度は「レーダープロッティングその他の系統的な観察等を行うことにより」という、「同様の」ということを省いたのには何らかの意味があるんでしょうか。
  89. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 実態的な内容を変えるということで表現を変えたわけではございませんけれども、ここでもございますように、「レーダープロッティングその他の系統的な観察等」という表現、すなわち「その他の」という言葉を使っておりますので、レーダープロッティングというものが例示的な扱いになっておるということでございますので、改めて「これと同様の」という表現は挿入する必要がないと判断したわけでございます。
  90. 和田春生

    和田春生君 われわれが条約の原文を見ますと、たとえばレーダープロッティングの場合に、プロッティング・シートにプロッティングする場合もある。しかし、御承知のように、レフレクション・プロット、つまり直接やっていく場合もありますね。そういうような場合にはやっぱり同様の、つまりプロッティング・シートに一々プロットしなくても同様の効果を持つものと、そういうことを意識してこれは決めているんではないかというふうな受け取り方をしたんですが、これは立法の趣旨において省いたけれども、そういうようなことについての認識は変わりございませんか。
  91. 馬場一精

    説明員馬場一精君) そのとおりでございます。変わりございません。
  92. 和田春生

    和田春生君 次には、逐条にいきますが第八条関係ですね。「衝突を避けるための動作」と、こういう規定でございますが、この(b)項、「衝突を避けるための針路又は速力のいかなる変更も」と、「針路又は速力」と、これはどうも条約文を翻訳した日本語もちょっと条約に忠実ではないと思うのですが、国内法も「針路又は速力」と、こういうふうになっておるわけです。しかし、条約の原文では、「コース アンド/オア スピード」となっているんですね。したがって、針路または速力、あるいはそのいずれか。針路と速力、あるいはそのいずれかと、こういう形になるわけですが、これを「針路又は速力」というふうに限定をしているのは、多少条約趣旨から見まして、「アンド/オア」については忠実ではないと思うのですがどうですか。
  93. 馬場一精

    説明員馬場一精君) これは、国内法の立法例におきましては、英語で言う「アンド/オア」という言葉を「又は」という言葉であらわすというような使い方をいたしておりますものですから、ここでも同様に「又は」という言葉を使いました。したがいまして、その内容自体は、「又は」という意味は英語で言う「アンド/オア」の意味でございます。
  94. 和田春生

    和田春生君 そういたしますと、これは針路と速力、またはそのいずれかと、こういうことを立法的には表現しているということですね。
  95. 馬場一精

    説明員馬場一精君) はい。
  96. 和田春生

    和田春生君 じゃ、そういうことであると確認して、(b)項でかなり重要なことは、その後段に「針路又は速力を小刻みに変更することは、避けなければならない」。結果的に大きく変更したことになったけれども、小刻みにやっていくことは衝突を回避するための動作としては望ましくないんだということを規定していますが、国内法ではこれを削除しておりますね。ちなみにこのことについては、こちらの方の国際条約の解説では原文に大変忠実に書いてあるんですけどね、これを法案で削ったのはどういうことですか。
  97. 馬場一精

    説明員馬場一精君) これも、「大幅に行わなければならない」ということを言っておけば十分であるという判断で削除したわけでございます。
  98. 和田春生

    和田春生君 こっちの方では、特に小刻みに下げることは、変更することはいけませんよと、わざわざ書いていますね。
  99. 馬場一精

    説明員馬場一精君) そのパンフレットは、国際規則の解説ということも一つありましたものですからそう書いてございます。私ども今後つくる解説でも同様にいきたいと思います。
  100. 和田春生

    和田春生君 やはりこれは、特に入れているというのには入れている意味があるわけですから、こういう点についてはいろいろな面で、解釈、運用等でやっぱり注意をしてもらいたいと、こういうふうに思います。  同じく八条の五項で、この中に「又は他の船舶との衝突を避けるために必要な場合は、速力を減じ、又は機関の運転を止め、若しくは機関を後進にかけることにより停止しなければならない」と、こういうふうに規定をされております。条約の日本語訳で見ますと、「推進機関を停止し」と、「機関」のところに「推進機関を停止し」と書いてある。国内法では「機関の運転を止め」と書いてある。ところが条約の方は、その点が違っておりまして、「ハー ミーンズ オブ プロパルション」と、こういうふうに書いてあるわけですね。これ意味が違うんじゃないか。  と言いますのは、御承知のように最近可変ピッチフロヘラ、その他、機関そのものの運転はとめなくても、推進状況についてニュートラルに持っていくということで行き足をとめられる、そういう新しい機械が昔とは違ってどんどん発達をしてきている。かつてはエンジンストップ、こういうわけだったのですけれども、そうではないわけですね。そこで、条約でこういう言葉が使われているのをいろいろ調べてみましたけれども、また専門家にも聞いてみたけれども、どうも「ミーンズ オブ プロパルション」というのを「機関の運転」と訳するのは適当ではない。で、それは推進力をとめる。したがって、機関そのものはとめなくてもいいと、こういうふうに解すべきだということを専門家にいろいろ聞いてみました。  念のためにフランス語の原文の方をフランス語の達人という人に解釈をしてもらいました。やっぱりフランス語で見ても機関の運転をとめるというのは無理だと、ここに該当するのは何らかの働きをするような一組の装置をとめるというふうに理解をするのが日本語としては一番正しいんではないかと、こういうことでありますが、これ、あえて「機関の運転を止め」というふうにした理由はどういうことですか。
  101. 馬場一精

    説明員馬場一精君) 私どもは、規則の方がここでの訳語といたしまして「推進機関を停止し」ということで訳されているわけでございます。それになぞらえまして、その「推進機関を停止し」と、「機関の運転を止め」というこの言葉の差を出したのは、意味的にはここは内容は同じだろうと、機関の運転をとめるのも推進機関を停止するのも同じだろう、そういたしますと、現行法の十六条第三項では、こういう場合につきまして「機関の運転を止め」という言葉の使い方をいたしておりますものですから、それをそのまま使ったということでございます。  なお、いま先生御指摘の可変ピッチの件につきましては、私どもこの条項の趣旨から見まして、当然にそういう可変ピッチを切ると、ニュートラルの状態に置くということも含むものとして解釈すべきものと考えております。
  102. 和田春生

    和田春生君 この点は特に私は注意を喚起しておきたいと思いますのは、そういう不幸なことがあってはいけないのですけれども、仮に衝突事故が起きたと、人身事故が起きたりいたしますと、海難審判が先行するというわけに必ずしもいかない。いきなり刑法の適用で裁判所にいっちゃうというときに、忠実にその推進力はとめておったが、エンジンが動いておったというような形で機関の運転をとめていないではないかという形に法文が決めますと、法文の文句が生きていきますから、そういう形で責任を問われるというようなことになると、はなはだ問題の点がありますから、これは機関の運転をとめるというのは、エンジンそのものをストップするということではなくて、推進力をとめるということがあればそれは有効な方法なんであるということについては、解釈、運用の面ではやはりきちっとしておいてもらわないと、これは火種になる可能性があるんではないかと、その点よろしゅうございますね。——それではそれを確認をいたしておきたいと、こういうふうに思います。  それでは次に、時間の関係もありますから急いでいきますが、十三条の「追越し」、この国際条約でいくと(d)項の前段に、「追い越す船舶と追い越される船舶との間の方位のいかなる変更も、追い越す船舶をこの規則にいう横切りの状況にある船舶とするものではなく」ということが書かれているわけですけれども、これを削除してしまっていますね。これを削除をしなければならない必要性があったのでしょうか。
  103. 馬場一精

    説明員馬場一精君) この点につきましては、本法におきましては、二船の船舶衝突のおそれの発生した場合に、一方の船舶に対しては他方の船舶の進路を避ける義務、また当該他方の船舶に対して針路、速力の保持義務というものを別途の規定で課しておりまして、これらの義務は本法第八条第四項でも明らかなように、他の船舶が十分に遠ざかるまでは働くということでございますので、あえてこれをここで言う必要はないというふうに判断いたしました。  なおこの点につきましては、先生も十分御承知のとおり、現行規則におきましても、(b)項で削除いたしました条項はそのまま入っておりまして、これも実は現行法におきましても削除されております。そういう現行法が削除しておるということ、それから、そういう今回の法律解釈としてもそれは十分に解釈できるということから削除いたしました。
  104. 和田春生

    和田春生君 何か出てくると、よく現行法においてという説明が出てくるんですが、現行法自体でも完璧なものとは言いがたいわけですし、大体忠実に国際条約に従って直訳的に決めてはおりますけれども、やはり問題があるわけですね。それを、六〇年ルールから七二年ルールに関して審議をしていろいろ組みかえたというときに、現行法規定自体も見直して、最初おっしゃったようにできるだけ親切にと言うなら、親切に規定すべきですよ。あるところでは親切に、あるところではばっさりと、なぜ削ったかと言えば、現行法に削っておるからと、これはどうも首尾一貫しないわけでしてね、これはやっぱり今後の運用上十分注意をしてもらいたい。しかし、趣旨においてはただいまの答弁内容はわかりました。  次に十七条、「保持船の動作」、これも同じような質問になるんですが、条約の(d)項では、「避航船に対し、他の船舶の進路を避ける義務を免除するものではない」、こういうふうになっていますが、これを削っておりますね。これは削った理由はどういうことですか。
  105. 馬場一精

    説明員馬場一精君) この点につきましても、この(d)項というのが単なる確認規定であるということで、すなわち、ほかの条文で避航義務を課すということで十分であるということで、重複を避けるという意味で削除したわけでございます。     —————————————
  106. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、木村睦男君及び藤田正明君が委員辞任され、その補欠として久次米健太郎君及び長田裕二君が委員に選任されました。     —————————————
  107. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 質疑を続けます。和田君。
  108. 和田春生

    和田春生君 それでは次の第三章の、「視界が制限されている状態における船舶航法」につきましてお伺いいたしたいと思います。  これは全般的に大体条約に忠実に国内法が決められていると思うんですけれども、この(b)項で、「すべての船舶は、その時の状況及び視界が制限されている状態に応じた安全な速力で進行しなければならない」ということを特に前に置いて、「動力船は、推進機関を直ちに操作することができるように」しろと、こうなっているんですが、その前段を日本の法案の2項では削除をしているということ。  それからもう一つは、(e)項で、この場合には、条約の翻訳は条約に忠実に、「必要な場合にはゆきあしを完全に止めなければならず」、こういうふうにしているのを、「必要に応じて停止しなければならない」。ゆきあしをとめるということと、停止するということについては、若干ニュアンスの差があるように思うということと、条約では「いかなる場合においても」、「エニー イブント」としている。ところが日本の法律の場合には、「この場合において」、というふうに前の方を受けているという意味でニュアンスの違いがあるようなんですけれども、この点はいかがでしょう。
  109. 馬場一精

    説明員馬場一精君) まず第一の点でございますけれども、これにつきましては、実は第六条で「安全な速力」についての規定がございます。この中で、安全な速力の決定に当たりましては、視界の状態というものを十分考慮しなさいということがすでにうたい込まれております。したがいまして、これも重複を避けるという意味で削除したということでございます。  それから、その次の「ゆきあし」という言葉と「停止」という言葉、これ、私ども内容的には同じ言葉であるかと、かように考えております。その場合に、これも現行法の二十三条といいますものが「停止」という言葉を使っております。したがいまして、そちらの言葉を使わせていただいた、こういうことでございます。  それから第三点の、どんな場合でもと、「この場合において」との関係でございますけれども、ここで言うどんな場合においてもと、どんな場合でもという言葉も、この十七条の(e)項で書いてあります場合においても、常に特段の注意を払って航行しなさいということをここで書いてあるというふうに私ども思っておりますので、そういう場合には国内法では「この場合において」というふうに規定するということが普通ではなかろうかということでこう書いたわけでございます。
  110. 和田春生

    和田春生君 多少やはり問題があるように思いますが、説明としてはそれなりに受け取れますから、その点はいまのことを確認しておきたいと思います。  なお、最初に御質問を申し上げました「総則」の「リスホンシビリティ」の関係と「補則」の三十八条、三十九条の関係については、最初質問をいたしておりますから重ねて質問はいたしませんけれども、先ほど、午後の再開冒頭の保安庁長官説明と関連いたしまして、やはりこれは条約で決められているように、「総則」の第二条(a)項においては、船員責任というものは重大なんだという形でこれを決めると。(b)項では、とはいえ非常に切迫した危険にあると、特殊の状況には臨機措置をとってその衝突を、危険を避けなさいという形でワンセットにしてこれは決められている。これが何だか「補則」という方向に入っちゃって、何だかつけたりだという感じというのはどうもわれわれとしては納得できない。  で、現行法との、国内法の体系というけれども衝突予防法ですから、この点についてはやはり、条約に沿った解釈と運用においてぜひやっていただきたいということを逐条質疑の最後に確認をしたいと思うんですが、保安庁長官、いかがですか.
  111. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) この「補則」というのを、どうも名前が悪いしできが悪いという御指摘、そのとおりに受け取らしていただきます。今後周知徹底方を図ったり、解説書をつくったりいたしますときには、これがむしろ基本になって、先生御指摘のように、ハートAルール2の一番大事なところにあるんだぞという趣旨周知徹底方を図らしていただきたいと思います。
  112. 和田春生

    和田春生君 特にこれは、きちんと教育を受けてライセンスを持っているという場合にはいいんですけれども、そうでない場合には、十分な注意を払われないという可能性もありますから、小型船とか、漁船とか、内航船の場合には、特にそういうことについては徹底をしてもらわないと、ややもすればこういうことを見忘れることがありますから、いまの保安庁の長官の説明どおり厳重にやっていただきたい、こういうふうに思います。  続けて、今度は法案の中身というよりも、関連した事項について要約的にお尋ねをいたしたいと思いますが、この海上衝突予防法改正をするという場合に適用される船種別の船舶隻数、これは船の種類、それから対象の船舶職員はどれくらいおりますか、現在。
  113. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 船種別に御必要ならば、いま補足して詳しく答えますけれども、大体四十五、六万隻あるというふうに考えております。
  114. 和田春生

    和田春生君 船舶職員の数ですね。
  115. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いいえ、隻数です。
  116. 和田春生

    和田春生君 四十五、六万。
  117. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 四十五、六万あると思います。五トン以上、五トン未満を含めて、船の種類別に航洋船なども入り、それからはしけ、引き船というようなものも入れますとそれくらいになるんじゃないかと思います。
  118. 和田春生

    和田春生君 ともかく四十万隻以上ということは間違いないですね。そうすると、当然小型船では船舶職員として運航者は船長一人という場合もありますけれども、それよりもはるかに多い適用船舶職員があるわけですね。  で、もうことしの七月十五日から発効するわけですが、いままで周知徹底、どういうようなことをされてまいりましたか。保安庁や海難防止協会が中心になって解説書を配ったり、講修会などをやったりと、一体どれぐらいの人が参加をしたのか、あるいは周知徹底するためのパンフレット等は何部ぐらいこれを配付をしたのか、その点をお聞きしたいと思います。
  119. 山本了三

    説明員(山本了三君) 現在までのところやっております周知活動につきましては、講習会を開催いたしましたのが四月末日現在で回数は二百六十九回、受講の人員は八万五千七十七ということになっております。つくりました資料等ですが、パンフレットにつきましては五万部、リーフレットも同じく五万部、それから主要改正点についてのリーフレットが二万部、レーダーフロッティング関係が二万部、こういったものを作成いたし配布いたしております。スライドの制作、これも六十五本を制作して各地に配付しております。  あと広報関係といたしましてはポスター一万、立て看板、あと新聞、テレビの広報をやっておりますけれども、今後の対策といたしまして私どもが考えておりますのは、六月一日から七月の二十日、これを周知活動期間といたしたいと思っております。特に七月一日から二十日の間は、全国海上交通安全運動週間を催しますので、この期間に総力を挙げてPR活動を行いたいと、そのように考えております。  この際の実施項目といたしましては講習会、それから周知用のパンフレット、リーフレット、これをさらに十万部ほど作成いたしまして、配付すると。もちろん英文のパンフレットは一万部ほどつくります。また解説書もつくりたい、こういった考え方で、その他スライド、ポスター、あらゆる方法を使って周知に全力を挙げたい、そのように考えております。
  120. 和田春生

    和田春生君 それなりに海上保安庁として努力はされたと思いますけれども、こんなにおくれて、せっぱ詰まったというのは運航者責任がないわけです。私自身衆議院におるとき七二年ルールができたと、いつどうするんだということをすでに質問をしておる。もうそれから数年近くかかっているわけですね。それから参議院におきましても、去年にもどうするんだということを聞いておるけれども、とうとうせっぱ詰まってきたわけです。実際発効すると、不徹底であると、いろんな面でこれ混乱をすると思う。したがって、普及徹底、しかも正しく改正条約趣旨にのっとって説明をするというのには、異常な努力をやらなければならぬと思います。これは全く政府の責任であります。  そういう点については、単に従来の予算措置、従来の延長線上では考えられないほど努力をしなくてはいかぬ。現に数十万の対象者がおるのに、いま配られたパンフレットというのは、陸上の関係者もとっていますから、せいぜい船員に渡ったというのは、よほどうまく渡ったとしても十分の一、十人に一つぐらいじゃないでしょうか。これは問題だと思うんですね。そういう点について、これ運輸大臣、これは法文の中ではございませんからお伺いいたしますけれども、やっぱりひとつ責任持ってきちんとやってもらわなくちゃいかぬと思うんですが、いかがですか。
  121. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 警救部長会議もやるそうでございますが、大いにきちっとやるようにいたします。
  122. 和田春生

    和田春生君 大いにやるようにするというだけではなくて、積極的に取り組んでもらわないと時間がないんですよ。七月十五日から発効するわけです。何十万の適用対象者がおる、そこへいきなりこういう法律ができるわけですから、単なる、大いにやるというおざなりのことではなしに、これはやっぱり運輸大臣が積極的にハッパをかけてもらわないと、法律が徹底していないために知らなかった、事故が起きたでは、やはり行政当局責任が果たされぬと思う。その点をひとつまた確認しておきたいと思います。
  123. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 私は、全く同感であります。積極的にやるように督励をいたします。
  124. 和田春生

    和田春生君 それと関連いたしまして、これが発効いたしますと、船舶職員はそれに基づいて船舶運航しなくちゃならない。一つは、船舶職員の海技試験が行われます。これは新法によってやらなくちゃいけない。いつからそれをスタートをさせるか、それが一つ。  それからもう、一つは、関連いたしますが、ことしの九月には商船高専の卒業生が出てまいります。また商船大学の卒業生も出てくる。そうすると、学校出て海技免状でライセンスは取るわけですけれども、これはいきなりでは困るわけで、新しいやつを教育をしなくちゃいけない。これは文部省の所管になると思いますが、そういう商船大学、商船高専等においての教科書、あるいはその授業への対応策、こういりものを両方あわせてそれぞれお聞きしたいと思います。
  125. 横田不二夫

    政府委員横田不二夫君) 海上衝突予防法、これに基づきます命令を含めまして、海技従事者国家試験の科目に入っておるわけでございます。法規関係の科目でございます。それで、この法律が七月十五日から施行になる予定でございますけれども、同日以後に開始されます海技従事者国家試験、七月の定期試験の口述試験が一番最初だと思いますが、それから新法による試験を行うことにいたします。次いで十月にも同様に定期試験がございますが、これは先ほどおっしゃいました大学、商船高専の卒業者の口述試験でございますが、これはもちろん新法で行うわけでございます。  そこで文部省からもお答えがあるかと思いますけれども、私どもの方では航海訓練所におきましてもうすでに出かける船もございますが、「海王丸」、「日本丸」、それから「青雲丸」、「銀河丸」、それぞれ太平洋航海、あるいは世界航海に出ますけれども、この船の中で、船内教科といたしまして新法を教える、かようになっております。その教材は、すでにここにございます法案とか、それから先生のお手元にございますこのパンフレット、そういうものを使って教えると、かようにいたしております。以上でございます。
  126. 和田春生

    和田春生君 文部省。
  127. 瀧澤博三

    説明員(瀧澤博三君) 関係の大学、高専ともすでに海上保安庁からの御連絡を受けまして、条約内容等については十分承知をしているわけでございまして、教育の面につきましては、現在カリキュラム上の計画、それから新しいテキストの用意等、その他もろもろの準備を進めている段階でございます。なお、かなり多くのところでは、すでに現行法教育とあわせて、新しい条約内容を盛り込んだ教育等も行っている次第でございます。今後、この法律が成立した焼におきましては、運輸省とも十分御連絡をとりまして、教育面におきましての徹底について間違いないように進めるということを考えております。
  128. 和田春生

    和田春生君 この点は、特にきょうの審議におきましても幾つかの問題点が浮かび上がりました。政府側からの答弁もあったわけです。だから、法律条文だけではなくてそういう解釈、運用、適用という面が実際的には必要なんですから、その点も含めまして航海訓練所、また商船大学、商船高専の教育ということについて、テキストを含めて、ぜひ至急に万遺漏なきを期してもらいたいと思うのですが、そういう意味での新しいテキストはいつごろまでにできる予定ですか。
  129. 横田不二夫

    政府委員横田不二夫君) ことしの卒業——九月に卒業します大学、高専については、テキストとしてまとまったものが間に合わないかもしれませんけれども、先ほど申しました遠洋航海の途次において船内で教える、その際の資料といたしましては、早速に海上保安庁からきょうの御論議を含めた最終的な正解のあれをいただきまして、航海訓練所の方に渡すようにいたしたいと思います。それから、その他のものにつきましては、たとえば海員学校など、あるいは海技大学校でもやっておりますが、いずれも三月卒業でございますので、本案成立後正式の資料を作成して、これを海上保安庁からいただきまして、これを教材にいたしたいと、かように考えております。
  130. 和田春生

    和田春生君 商船学校あるいは海技大学、航海訓練所だけではなく、海技試験には例の講習を全国で非常に幅広くやっているわけですね。そういうような面について、やはり至急徹底するように——先ほど運輸大臣も積極的に取り組むという答弁もございましたけれども、その点はひとつ大車輪をかけてやっていただきたいということを特に要望いたしておきたいと思います。  それから、これはもう最後に運輸大臣への質問でございます。  実は、今度の海上衝突予防法改正について運輸省、海上保安庁当局がそれなりに苦労したということを私は認めるにやぶさかではないと思うんです。ところが、その経緯というものをいろいろと各方向から検討してみますと、一々ここではどんな経緯があったかということは触れません。しかしどうも、海上における衝突を予防する、海上における安全を確保するという趣旨がねじ曲げられているきらいがあるのではないか。  たとえば、そんなことをされたのでは、もう魚がとれなくなるのでお手上げじゃないか、どうしてくれるかというような議論も出ています。それは生活権という意味でそういう意見が出るということは、いけないとは私は言わないわけですね。しかし、本当にそれがぐあいが悪いのならその部分を、一般船舶を通すことによって関係漁業に従事している人々の生活権を脅かす、その方が大事であるというのなら、むしろそれは通航を禁止をするなりなんなりのことを考えるのが筋なんですね、本当にそれが大事であるとするならば。  しかし、とは言うけれども、その関係漁船の船員の諸君でも、使っている網とか、あるいは糸とか、船とか、エンジンとか、一体それは何でつくられているか。それは鉄でつくられ、あるいは合成化学製品でつくられ、工場でつくられているわけですから、それがなければ漁業ができないわけです。総合的な経済生活に必要な海上の輸送を確保しなければならぬという形になれば、やはり事故が起こらないように交通整理をするということを優先して考えるということが、こういう安全関係法規の趣旨だろうと思うのですが、どうもそういう安全対策というものと、経済的な面の政策的な主張とか要求というものはこんがらがってきて、本当に何をしなくてはいけないかということがともすれば薄れそうになる。保安庁はそれではいかぬというのでがんばったのでしょうけれども、そこが問題だと思うのですね。  この委員会で他の同僚委員質問に大臣は、私も、もっぱら公害のないところの漁業関係を選挙区に持っているので当初は反対でしたというようなことをちょろっとおっしゃいまして、大変正直でよかったと思うのですけれども、実はそこが問題なんであって、これはやっぱり衝突の予防という原則に立って考えるべきだ。その結果、よって生ずる問題については、やはり別個の方策なりで考える、あるいはそういう趣旨をきちっと説得をするということでなければいけないのじゃないか。  陸上でも、交通がふくそうするから横断歩道を決めて渡らせよう。しかし、おれの店と倉庫がちょうど道路の向かいにあるのだ。行ったり来たりするのに横断歩道を迂回しなくちゃならぬのはおれの生活権に関するから自由に通せという形になると、事故が起こったときに被害を受けるのはその人なんですね。  ですから、そういう意味でいくと、事故が起きれば漁船も含めて被害が起きるわけなんですからきちんとしなくてはいけない。そういう政府の安全政策の基本姿勢というものがしっかりしていなかったところに、国内法改正が非常に時間をかけておくれて、国際条約発効のぎりぎりのときに、どろなわ的と言っては失礼かもわかりませんけれども、あわててこの法案をつくって通さなくてはいかぬというところに追い込まれた、こういう点があると思うのです。ですからこの点、今後の海上のみならず、一般の安全対策についても関係があることですけれども、とりわけ海上は国際的に関係のあることですから、ひとつ大臣の今後のそれに臨む所信と方策というものを承りたいと考えます。
  131. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 和田さんのおっしゃること、よくわかります。海上衝突予防法というのは、もう申すまでもなく海上交通ルールに関する基本法でございますから、この法律の根幹が崩れるようであっては大変なことであります。特にこの法律解釈面で誤解が生じましたら、これはもう大変なことになりますから、その点で、関係者の理解に誤りのないように、現行法にできる限り近い表現を使ったという事情もひとつお察しをいただきたいと思います。で、七二年ルール内容表現上明確にするための手当てを行った、そこに非常に苦労もございましたけれども。  そういうことでございまして、もうまさに航行安全ということの確立のためにやったという、最大の眼目にしたということでございますが、いずれにいたしましても、船舶の航行の安全確保そのものが何よりも大切なことでありますから、和田さんのおっしゃったとおりなんで、御指摘のとおりでございますから、今後も十分留意いたしまして努力をいたしたい。特に海上保安庁に対しては、せっかくつくられた法律に対して無知である、あるいは誤解があるということでねじ曲げられては大変なことでございますから、PRその他、念には念を入れてというぐらい努力をいたさせますので、どうぞまたよろしくお願いをいたしたいと、こう思います。
  132. 和田春生

    和田春生君 終わります。
  133. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 御異議ないと認め、これより採決に入ります。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  136. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、ご異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  運輸大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。
  138. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) ただいまは、海上衝突予防法案につきまして、慎重御審議の結果御可決をいただきまして、まことにどうもありがとうございました。  海上における船舶交通の安全の確保につきましては、本委員会における審議内容を十分尊重いたしまして、今後とも遺憾なきを期する所存でございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  139. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会     —————————————