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1977-03-15 第80回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十五日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 金子 一平君       愛野興一郎君    越智 通雄君       川崎 秀二君    井上  泉君       上田 卓三君    小川 国彦君       小林  進君    日野 市朗君       武藤 山治君    安井 吉典君       坂井 弘一君    寺前  巖君    兼務 石野 久男君 兼務 土井たか子君    兼務 野坂 浩賢君 兼務 二見 伸明君    兼務 渡部 一郎君 兼務 大内 啓伍君    兼務 大成 正雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    今村 久明君         防衛庁長官官房         防衛審議官   渡邊 伊助君         外務大臣官房長 松永 信雄君         外務大臣官房会         計課長     柳  健一君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  分科員外出席者         警察庁警備局外         事課長     城内 康光君         科学技術庁長官         官房参事官   石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力局調査国際協         力課長     川崎 雅弘君         法務省刑事局公         安課長     石山  陽君         外務省経済局外         務参事官    溝口 道郎君         外務省情報文化         局文化事業部長 西宮  一君         大蔵省主計局主         計官      吉居 時哉君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         厚生省年金局年         金課長     高峯 一世君         厚生省援護局援         護課長     佐藤 良正君         水産庁漁政部長 森実 孝郎君         運輸省航空局監         理部国際課長  山田 隆英君         建設省住宅局住         宅総務課長   京須  実君         日本電信電話公         社総務理事   山本 正司君     ————————————— 委員の異動 三月十五日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     中村  直君   武藤 山治君     井上  泉君   竹本 孫一君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   中村  直君     北川 石松君   井上  泉君     小川 国彦君   中井  洽君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     川崎 秀二君   小川 国彦君     安島 友義君 同日  辞任         補欠選任   安島 友義君     山田 芳治君 同日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     上田 卓三君 同日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     日野 市朗君 同日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     安井 吉典君 同日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     武藤 山治君 同日  第一分科員野坂浩賢君、第三分科員大成正雄君、  第四分科員石野久男君、土井たか子君、二見伸  明君、大内啓伍君及び第六分科員渡部一郎君が  本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 金子一平

    金子主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計予算外務省所管について説明を聴取いたします。鳩山外務大臣
  3. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昭和五十二年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  同予算の総額は一千七百七十六億五千九百九十八万八千円でありまして、これを昭和五十一年度予算一千五百七十六億七千四十一万四千円と比較いたしますと、百九十九億八千九百五十七万四千円の増加となり、一二・七%の増加率を示しております。  申し上げるまでもなく最近の国際情勢のもとにおいては、南北関係、海洋問題、さらには通商、資源、環境等の諸問題が依然として容易ならざる様相を呈し、南北間における対話協力の促進が引き続き大きな外交課題となっており、また、わが国を含む先進民主主義諸国間においては、広く国際的諸問題につき、建設的な協力関係強化し、もって世界の平和と繁栄を図ろうとする努力が行われております。このような情勢に対応して外務省の職務と責任が急激に増大しつつある実情にかんがみ、今後わが国国際地位にふさわしい役割を果たしつつ、わが国のため望ましい国際環境の実現を目指し、開発途上国に対する経済協力充実強化し、流動する国際情勢に機動的に対処し得る外交実施体制を整備し、国際的な相互理解を増進するための広報文化活動強化海外子女教育充実強化のための諸施策に重点的に配慮を加えた次第であります。  これをもちまして外務省関係予算概要について説明を終わります。よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物主査において会議録に掲載せられるよう御配慮願いたいと存じます。  以上でございます。
  4. 金子一平

    金子主査 この際、お諮りいたします。  外務省所管関係予算の詳細なる説明につきましては、お手元に配付されております印刷物会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 金子一平

    金子主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 金子一平

    金子主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 金子一平

    金子主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は必ず的確に、要領よく簡潔に行われますようお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野坂浩賢君。
  8. 野坂浩賢

    野坂分科員 最近の国際情勢等についていま外務大臣から御説明がございましたが、特に日韓の問題につきましては連日新聞をにぎわしております。特に米軍韓国からの撤退問題、あるいは日韓癒着疑惑問題、たくさんの問題がございますが、その前に私は、日韓条約締結をされました一九六五年の状況と今日の政治情勢は大きく変わっておるという観点に立って、外務大臣考え方をお尋ねをしたいと思うのであります。  御案内のように、日韓条約は一九六五年六月二十二日に締結をされて、わが国も批准をしておるのでありますが、この第三条の国連決議百九十五号(III)に依拠して韓国朝鮮における唯一合法政府であるという規定に基づいて、それぞれ外交関係なり国交を結んでおるということが当時の状況であったと思うのであります。しかし、一九一七五年、第三十回の国連総会において南北両方決議案が採択、決議をされたことは御案内のとおりであります。したがって、六五年当時から考えてみますと、両国が国連総会においては決議案をそれぞれ認めた。特に共和国側韓国側決議案よりも反対が少なかった。日本動きは、そのときには共和国側の提案に対しては反対をするという立場をとっておりましたけれども国連総会決議に依拠しておるという状況になりますと、その情勢というものは変わってきた、こういうふうに一般の国民は、またわれわれもそう考えておるのでありますが、この依拠しておるという立場に立って、国連動きに対応して、わが国はこの国連決議を尊重するという意味と、世界情勢から考えて、また日韓条約の当時の締結意味から考えて、情勢は変わってきたと御認識されておるかどうか、お伺いをいたします。
  9. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓基本関係条約は、これは一九四八年だったと思いますが、そのころからと今日との間に相当な情勢進展はあったものというふうに当然考えるべきであろう、こう思います。この基本条約の三条に言及されました。国連決議を引用してあるわけでございますが、確かにその当時といたしまして、朝鮮半島におきまして韓国政府というものが、その地域において、朝鮮半島当該部分につきまして唯一の合法的な政府である、こういうふうにうたってあるのでございますので、条約自身は今日ともこの条約で差し支えないと思いますけれども、実態的に朝鮮半島は相当な進展をしておるというふうに考えてしかるべきと思います。
  10. 野坂浩賢

    野坂分科員 外務大臣の御答弁は、当時とは情勢は変わっておる、条約はそのままにしておるけれども政治情勢の推移は認めるということでございますが、私から言うと、その三条問題、百九十五号(III)というものから考えてみますと、両方決議案が通るということは、その百九十五号(III)というものは実質的には崩れていったということに、わかりやすい考え方に立つとそのようになるではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点はいかがですか。
  11. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 アジア局長から答弁させます。
  12. 中江要介

    中江政府委員 御質問国連決議百九十五号(III)というのは日韓基本関係条約の第三条に引用してあることはもう御指摘のとおりですが、このときに国連決議を引用しましたということと、この国連決議状況がいま続いているか続いていないかということとは実はちょっと次元の違う問題で、当時この日韓基本関係条約を結びましたときに、日本政府として韓国政府との間で、大韓民国政府をどういう性格の政府認識するかというときに、当時有効でありましたこの国連決議百九十五号(III)というものを借用することによりまして、大韓民国政府というのはこの決議にありますように、通俗的な意味で言いますと三十八度の南にだけしか管轄権を持たない政府であるという政府の性格づけをしたというのが真意でございます。したがいまして、その当時から三十八度以北というのは白紙に残すという立場がいまも続いているから、したがって、朝鮮半島の北の情勢がどうであるということは、この条約を維持していても特に影響がないということを大臣は言われたわけでございます。  他方、では北の情勢はどう変わっているかということにつきましては、いまもお話にありましたように確かに情勢は変わっておりまして、国連でも南北双方がオブザーバーを置くということになっておりますし、また国際連合のいろいろな専門機関の中で六つ専門機関には南北鮮がともに加盟しておるという状況になっております。そのほかにも、たとえば列国議会同盟のような国際機関双方代表を送るというふうに情勢が変わってきておるという認識は、これはまた事実として認識しておる、こういうことでございます。
  13. 野坂浩賢

    野坂分科員 先月の二十四日、アメリカカーター大統領北朝鮮ベトナム、ラオス、カンボジア、そういう関係国とも改善をしたいということで、ベトナムには五人の代表を送るということに決まりました。そして友好関係国交回復をやっていきたい。朝鮮民主主義人民共和国とも関係改善をやりたい、こういうことを明らかにしております。この点については、日米という関係から見て、アメリカはそのような関係改善を図ろうとしておるわけでありますが、これをどう考えるかということと、日本政府はこれに対応して、隣国でありますから、また国連情勢も変わってきたという認識でありますから、この関係改善をすることは私は隣国として当然だと思う。そして、真に朝鮮自主的平和統一外務大臣もお望みでありましょうから、実質的にそういう作業に入るということは私は望ましいことではないか、こういうふうに思いますがどうでしょう。
  14. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和を維持すること、これまた大変大事なことであります。そういう観点から北朝鮮わが国初め友好国であるアメリカその他と関係改善されることは大変好ましいことには違いないわけでございます。わが国といたしましても関係改善につきましては努力を積み重ねておるところでございますけれども、問題は、その関係改善すると言いましても、その方法とかそういう問題であろうかと思うわけでございまして、そのためには何より必要なことは、やはり朝鮮半島にあります南北政府同士対話再開をするということが関係改善の大きな前提になるのではないか、そしてその対話再開ということを何とかできるような、そういった雰囲気を醸成すると申しますか、そういった方向わが国政府としては努力をいたしておるということでございまして、カーター新政権がわが国と同じような考え方で臨んでもらえることがわが国としても好ましいことであるというふうに考えております。
  15. 野坂浩賢

    野坂分科員 アメリカ朝鮮民主主義人民共和国関係改善することは日本としては好ましい、そういう立場に立つ、われわれもこれは歓迎するけれども、まず南北対話前提である。私は、アメリカ北朝鮮関係改善を持つ、日本北朝鮮関係改善を持つ、こういうことになれば、あなたが考えておられるような方向というものがあるいは出るかもしれぬ、そのことの方が朝鮮の自主的な平和統一というものは前進をする、だれが考えてみてもそういうふうに考えるだろう、こう思うのですよ。それが、前提がやらなければとこっちからこういうふうになっていけば——国際場裏に立っていまあなたが御説明になったように、平和的にすべての各国と友好関係が結ばれていることは望ましいと、いまおっしゃったんですから、そういう方向は当然として考えられる。関係改善方法はいろいろあるとおっしゃったわけですから、そういう方向を積極的にとるということは大切じゃないですか。
  16. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしまして関係改善されることはまことに望ましいことでございます。しかし、先ほど申し上げましたのは、その前提といたしまして、やはり南北間の政府がお互いに話し合いを始めるという、そのような情勢になってまいりませんと、これがなかなか進まないわけでございます。何よりも私どもが願っておりますことは、南北政府間の話し合いを始めてもらいたい、現在のような南北政府が非常な対立関係を持っておる、大変な相互不信を持っておる、こういう情勢のもとにおきまして、直接的に政府が、日本政府にいたしましてもアメリカといたしましても、政府が直接に北朝鮮政府間の関係を持つということができない、こういう情勢にあるわけでございますので、そういったことが進められるような環境をつくり出すことが大事なことである、こういうことでわが政府といたしましても、いろいろ民間の方々の交流を積み重ねるというようなことによりまして、南北間の対話再開できるような、そういった雰囲気の醸成に努力をするのが当面わが国としてとるべき道であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 中江要介

    中江政府委員 大臣の御説明で尽きるわけでございますが、その前提といたしまして、先生の御質問の中にアメリカ北朝鮮との関係改善を望んでいるという部分がございまして、その部分につきましてひとつ誤解があるといけませんので私ども承知しておるところを申し上げますと、確かに朝鮮半島緊張緩和に資するものであるならば、大臣もおっしゃいますように、いずれの国も関係改善していくことが望ましいのですけれどもアメリカ政府がいまとっております態度として私ども承知しておりますのは、北朝鮮話し合いをいたすにいたしましても、韓国を抜きにして、あるいは韓国を無視したような形で北朝鮮と直接話をするということはアメリカ政府は全く考えていないということを言っております点が一つと、もう一つは、緊張緩和であり、あるいは南北話し合いということでありますならば、当事者はあくまでも南と北でございますので、先ほど私が申し上げましたように南北朝鮮国連専門機関にも六つも席をともにするような状況でありながら、北朝鮮の方が韓国を無視する形でアメリカとのみ直接話をするという態度をとっていくという、その態度は私どもの目から見ますと必ずしも現実に即してないという点がございますので、南北緊張緩和という前提として、大臣もおっしゃいましたように、南北が直接話し合う、つまり北が南を実態として認めるということがやはり一番根本ではないかと言われましたのは、そういう趣旨であるということをちょっと補足させていただきました。
  18. 野坂浩賢

    野坂分科員 アジア局長がいろいろと補足をされておりますけれどもアメリカとしてはそういう従来の敵国なり潜在敵国とも友好関係を結ぶ、こういう基本方針ですから、どのようなことがあっても、韓国がある程度抵抗してもそれを説得して世界平和のために進める、共和国側は、御承知のようにアメリカとの平和協定、いわゆる国連というものを抜いて文字どおりアメリカが指揮をしておる、そういう意味で、それを国連の中で提起をしておるわけですから、そういう関係から私は前進をするという姿勢になるだろうと思うのです。その点については、いま外務大臣お話しになったように、民間ペースでこれから盛り上げ、それがいわゆる政治的な交流に引き変わって関係改善をぜひ進めていただきたいということを要望しておきます。  時間が早く動きまして非常に時間がございませんが、この間の予算委員会一般質問で、米軍韓国からの撤退については、いろいろ不協和音がわが国の中にもありますけれども、平和を脅かすものではない、外務大臣はそういうふうに答えておられますが、私もそうだと思います。これについてはいま一度確認をしておきますが、アメリカ軍韓国撤退は決して平和を脅かすものではない、私はこういうふうに考えておりますが、そのとおりと考えてよろしゅうございますね。
  19. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和と安全を確保することはだれが考えても絶対に必要なことであろう、こう思うわけでございまして、アメリカ陸上軍撤退あるいは削減されるというときに、それがまた平和を乱すもとになっては困る、こういう考え方は根本的にあるだろう、こう思っております。そういうことから、南北間の力のバランスが急激に壊されるということは平和を脅かす一つの大きな原因になるであろう、こういうことから、撤退問題につきましてはきわめて慎重な配慮が加えられるということを伺っておりますので、そういった点も十分配慮された上で実施されることを私どもとしては強く期待をいたしておりまして、そういう意味から申しまして、それが朝鮮半島の平和を損なうようなものであってはならない、またそうならないだろうということを期待をしておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  20. 野坂浩賢

    野坂分科員 まことに政治的な御答弁でよくわからぬのですよ。慎重にあるいは損なうものであってはならぬとかですが、私は、損なうものではない。またアメリカわが国以上にそういうことは十分認識をして、また共和国側の意向も十分打診をして撤退をするわけですから、平和のためになるという立場ですから、そういうことは脅かすことはない、こういうふうに私は信じておるわけでありますが、外務大臣としては脅かすものでないという認識か脅かすものであるという認識か、どっちですか。
  21. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 現状におきまして朝鮮半島状況というものは、やはり南北間の強い不信があることは事実であろう。残念なことながら現状はそうだということであります。これから相互努力によりましてこの不信が解消されて、そして南も北もそういった侵略を受けるという心配が全くなくなる、こういう情勢になりますれば状況は大分変わってくるものと私は思うわけでございます。現状認識といたしましてはまだまだ相互不信が強い。そういう意味から、この問題につきましても、南北間の対話再開ということもそれに一つ大きな関係を持ってくるのではあるまいか。そういう意味から、ただいま現状認識から申しまして急激な力のバランスというものが破壊をされることは好ましくないというふうに考えておるのでございます。
  22. 野坂浩賢

    野坂分科員 あなたは衆議院の外務委員会で、韓国の平和と安全が日本の平和と安全に密接な関係を持つのは事実だが、米軍の削減が朝鮮半島の脅威を増すとか平和を阻害するということはないだろうと想定しておる、こう言っておるじゃないか。そのとおりじゃないですか。私が聞いておるのは確認しておるわけですから、そうでしょう。このとおり言われて、脅かすことはないと私たちは判断をしてもいいじゃないか、こう思っております。私はりっぱな答えだったと認識をしておるのですが、そうじゃないですか。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和が乱されるということは起こってはならないし、あるべきことではない、こういうふうに思います。そういう意味で、あのような過去に起きました大変な悲惨な事態が再び起こらないということ、そのためにやはりそれぞれ万全の措置をとっておるわけでございますから、そういう意味から言ってそのようなことは起こらないだろう、そういう意味日本に直接影響を受けるようなことはないはずである、こういうふうにその点は現在もそのとおり私も考えております。
  24. 野坂浩賢

    野坂分科員 脅かすことはない、こういうふうに私も判断しております。あなたのお話の裏に、南北間の緊張、そういうもので共和国側武力朝鮮統一をしようとしておるというふうにお考えなんですか。緊張緊張という言葉がありますが、どうですか、その点は。
  25. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そういうことを申し上げておるわけじゃございませんで、やはり北と南の間が相互に、北の方は南の韓国政府というものを認めていない、そういう状態にありますから、南北間が信頼し合った情勢にないということでございます。そういうことから、現状のところでやはりある程度の力のバランスがないと不安で仕方がないというのが率直のところいまの状態であろうと思います。しかし、世界はどんどん進歩しつつあるわけでございますから、将来ともそういう状態が続くと必ずしも私どもも考えておりませんし、朝鮮半島南北間の不信が徐々になくなって、そして対話再開されて将来とも安全が確保される、そういった事態の来ることを私どもは願っておるわけでございますので、そう御意見が私と違うというふうには考えないのでございます。そのように考えておる次第でございます。
  26. 野坂浩賢

    野坂分科員 もう一度お尋ねしますが、朝鮮民主主義人民共和国は、常にどの本を見てもどの論文を見ても、朝鮮半島の自主的な平和統一を進めていくということは一貫しておるというふうに私ども認識をしておりますし、あなたの所属する政党の中でもそういうことをよく承知をして、この間久野さん等もあなたとお話しになったはずであります。だから私は、武力によるそういうことを抱いていない、こういうふうに考えております。私も会ってまいりましたけれども外務大臣もその点についてはそうだという御認識のようだと承知をしておりますが、そうじゃないですか。
  27. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いま朝鮮半島にそういう武力の行使が行われるであろうというようなことは、私は現状において毛頭考えておるわけではございません。しかし、それぞれの国民が安心することができるということのためには、もっと両国政府不信を取り除いていくことが好ましいというふうに考えております。
  28. 野坂浩賢

    野坂分科員 その前の問題を取り除いて——そういう警戒心ではない。たとえば、この間あなたも行かれたのじゃないかと思いますが、東京で日韓の議員連盟総会というのがありましたね。あのときの共同発表の中に、北朝鮮による武力攻撃の可能性が依然解消していない情勢にかんがみ、こういう前置きでいろいろ書かれて、ことに北朝鮮をして武力による統一の企図を抱かしめないため、こういうような共同声明の内容がございますね。御承知だと思います。こういうことがそういう敵対関係をむしろ助長し、問題を投げかけていくのではなかろうか、こういうふうに憂慮するわけです。だから、今度あなたは福田総理と一緒に近々のうちにアメリカにおいでになるだろうと思いますが、そういう認識アメリカとも違うのじゃないかと思います。特に自民党安保調査会等は、アメリカ軍韓国からの撤退問題について、あるいは人権抑圧問題について、アメリカは人権抑圧問題については、特にフィリピンなりあるいは韓国は問題がある。そして外務大臣にずいぶん言っておりますね。こちらの方は特殊事情だというような——人権抑圧そのものは、いまあなたが説明をされた日本の民主主義、世界の民主主義を進める上に立って最も忌避すべき問題だ、そういうふうに私は思っておるのです。そういう問題を、特殊事情というようなことがまかり通って、いまの韓国の人権抑圧の問題が当然として認識されるようなことは、日本の民主主義の問題にとっても重要だと私は思っておるわけです。これについては時間の関係もございまして多くを申し上げることはできませんが、十分配慮して、人権抑圧ということは基本的に誤りである、こういうふうに御認識だと思いますが、そういうふうにお考えですか、それとも韓国の場合は当然だとお考えなのですか。
  29. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 韓国におきます人権問題につきまして、私ども先般韓国の朴東鎮外務長官がカーター大統領に会われた後の発表等も承知をいたしております。そういう意味一つの問題であろうというふうに考えておるわけでございますけれども、この問題にわが国政府としてどのように対処するかという問題は、これはわが国アメリカ合衆国との置かれている立場の違いというものもございます。そういう意味で、いま仰せございましたけれども、外務当局といたしましては、隣国であります韓国に対しまして内政干渉的な発言をすることはきわめて慎重にすべきであろうというふうに考えている次第でございまして、これはわが国のこれからの外交を円滑に進めていく上でも、ひとつ心すべきことではなかろうかと考えているところでございます。もちろんこの人権の抑圧というようなことにつきましては、そういったことが全世界からなくなることが好ましいことには違いないわけでございますけれども、それぞれの国にはそれぞれの国内事情というものもこれまたあるわけで、私どもとしては内政干渉にならないように慎重に配慮をしたい、こう考えておるところでございます。
  30. 野坂浩賢

    野坂分科員 もう私の持ち時間は経過しておりますので、後同僚の皆さんからもいろいろお話があろうかと思うんですけれども、基本的にはあなたは人権抑圧は民主主義遂行上妨げになる、阻害になる、しかし内政の干渉になってはならぬ、立場が違うということで御表現になりました。しかし、基本的には人権抑圧というものは否定すべきだ、そして民主主義というものは言論の自由がなければならぬ。それを抑えて発展をすることはファッショに通ずるわけですから、私は基本的に政治の原則をゆがめるものだ、こういうふうに考えております。十分御検討いただきまして、まず基本が一番の原則でありますから、それに基づいて対韓国との折衝なりアメリカとの折衝をされることを望んで、私はこれで質問を終わりたいと思います。
  31. 金子一平

    金子主査 次に、大内啓伍君。
  32. 大内啓伍

    大内分科員 きょうは核燃料再処理の問題と、それから私費留学生に関しましていま問題が起こっております国際学友会の問題の二点について質問をさせていただきたいと存じます。  核燃料再処理の問題につきましては、外務大臣あるいは御記憶かと思うのでございますが、二月の予算委員会におきまして初めてこの問題を私どもの方から提起をいたしました。時間の経過とともにこの問題の重要性が出てきたように思うのであります。昨日、新聞を拝見いたしますと、福田総理を初めといたしまして、外務大臣あるいは通産大臣科学技術庁長官、官房長官等々が協議をされまして、核燃料再処理につきまして一つの方針を固められたようでございます。と申しますのは、東海村で建設しております第一再処理工場の操業を、計画どおり操業したいということをアメリカに対して申し入れられるという方針を確認したというふうに伝えられておりますが、それは事実でございますか。
  33. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨日、福田総理大臣のところで宇野科学技術庁長官、私と田中通産大臣、官房長官が同席をしました。これは、これからワシントンに参りましたときにどういう態度で交渉に臨むか、こういうことが主題、テーマでございますが、その結論は、ただいまおっしゃいました東海村の再処理工場、現在あるあれを第一と申しますか、その工場を動かすということ、これをぜひ実行したい、これは確かにその中に含まれることでございますけれども、それだけでということでは決してないのでございまして、従来から御説明申し上げているように、日本のこれからの長期的な核燃料サイクルをぜひ確保したい、こういうことでございまして、これは別に昨日そのような具体的なことを決めたということはないわけでございます。従来の方針によりまして強く米国政府に要請をしたい、こういうことでございます。
  34. 大内啓伍

    大内分科員 私もこの問題は日本の国益の問題として議論をしておりますので、党利党略とは全く関係ございません。  そこで、東海村の第一再処理工場を仮に七月から運転するということにいたしますと、大体五月ごろまでにはアメリカの了解を取りつけておきませんと操業ができないように思いますが、いかがでしょうか。
  35. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのとおりに考えております。
  36. 大内啓伍

    大内分科員 そうしますと、いまの予定では日米首脳会談が今月の二十一、二十二日の両日行われると伺っておりますが、ただここで一つ問題は、三月十二日付のロサンゼルスタイムス紙によりますと、福田総理が東京支社長のサミュエル・ジェムソン記者とのインタビューに応じられております。この中で、こういうことを福田総理は言っておるわけであります。  再処理工場の試運転については、アメリカの承認が得られないという最悪の事態が起こることは考えない——もしそうであれば私どもも大変好ましいことだと思っているわけなんでありますが、同時に、総理は同じインタビューの中におきまして、この問題が首脳会談で取り上げられることは間違いないが、意見の不一致の調整は後で処理されることになると思うと述べております。この場合の首脳会談は日米首脳会談でございますが、どうも日米首脳会談に臨む前から意見が不一致になることを予想されておりますですね。これでは外交としてちょっとまずいのじゃございませんか。やはり外務大臣が今度の国会におきましてもるる説明され、また総理も説明されておりまするように、日本には日本としての原子力の平和利用政策があるわけでございますので、しかもそれがアメリカとの間に重要な問題があるわけでございますから、首脳会談において、できれば、細部の事務取り決めは別にいたしまして、両国が合意に達する、そういう方向に向かって全力を尽くすということが外交の基本姿勢じゃないかと思いますが、しかし総理は、意見の不一致の調整は後で処理したいというような、これは活字でございますから、まあそう言われたんだろうと思うのでございますが、外務大臣はこの辺をどういうふうにお考えでしょう。
  37. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の日米の首脳会談におきまして、わが国の核燃料のリサイクルが確保できるように、わが国立場を御説明し、必要なことをアメリカ側に認めてもらうことを要請をする、こういうつもりであるわけでございますが、一方、カーター新政権のこの核燃料の再処理につきましてのアメリカとしての新政策、これはいろいろ選挙中の話はありましたけれども、新政府としての確固とした新しい政策というものはまだ決まっておるわけではない。その新しい政策が決まる時期がどうも四月ごろになるのではないか、こういうことから、私どもの希望としては、アメリカの新しい政策を日本の要望に十分に理解を示したような新しい政策にしていただきたい、こういうことを考えておるのでございまして、したがいまして、今回首脳会談が行われたときに内容まで固まるということはちょっと無理ではないかというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、今回はわが国の事情をよく理解をしていただいて、わが国は核兵器というものは絶対持たないんだ、核拡散の心配は全くわが国にはないということをよく理解をしていただきたい、そういう趣旨でございまして、今回話し合いがつかないだろうというようなことを予想しているわけでは決してないのでございます。
  38. 大内啓伍

    大内分科員 けさの朝日新聞によりますと、きのうの福田総理を中心とするこの問題に対する協議の結果、この問題の結論は日米首脳会談でも出ずに継続して協議することになるであろうという見通しについて全員が一致したと書いてありますし、いま外務大臣がおっしゃられたアメリカ側の事情から言いましても、日米首脳会談の段階でアメリカの、つまりカーター政権の新原子力政策が固まる状況にはまだないということをあわせ考えますと、むしろ日米首脳会談で、いま日本がこの問題について考えている方針をアメリカにきちっと納得させる、そういう意味の決着をつけるということはなかなかむずかしいんじゃないでしょうか。そういうふうにはお考えになりませんか。
  39. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 内容的にきちっと決めるということはなかなかむずかしいというふうに考えておりますので、日本の事情なりにつきまして十分な理解を得るということに主眼を置きたいと思うわけでございます。
  40. 大内啓伍

    大内分科員 この問題は決して日本だけじゃなくて、西ドイツその他同様の問題があるわけであります。そこで、恐らくいまの状況でいきますと、日米首脳会談でこの問題が決着がつくとは思われません。ただ、いま鳩山外務大臣がおっしゃられたとおり、日本側の原則的な考えについてカーター大統領に理解していただくという意味ではあるいは前進が得られるかもしれません。しかし、問題はやはりなお基本的な面で非常にむずかしい問題が残っておりますから、もし残るといたしますと、五月に先進国首脳会談がございますね、ここでは西ドイツその他と話し合いながら、ここの場で話し合いを進めるということを日本政府としては予想しておられますか。それともこの問題はあくまでも日米二国間の交渉、これによって最終的に処理をしたい、しかしそれだけではなかなかむずかしいだろう、やはり先進国首脳会議があるわけでございますから、ここにも日本の原子力の平和利用、その権益を確保するために国際的な話し合いはいずれにしても必要だと思うのですよ。そういう方針をお持ちじゃございませんか。
  41. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 五月のサミット、首脳会談につきましては、いまいろいろ準備中でございます。あるいはそういった問題も触れられることがあるかもしれませんけれども、いまちょっと予測は困難でございますし、議題までまだ決まっておる状況でないものでございますから、ただ、わが国立場といたしましては、これは国際的に世界各国、わが国と事情が非常に同じような環境にあります西ドイツと密接に連絡をとる必要は痛感をいたしておりまして、現にそういう連絡をとりつつございますけれども、しかしわが国といたしましては、どうしても燃料関係を非常に多くアメリカに依存をしておるものでございますので、また、両国との間に原子力協定というものがございますので、そういったことからアメリカ政府の理解を何よりも必要としておるというふうに考えております。
  42. 大内啓伍

    大内分科員 この問題は非常に日本のエネルギー政策の根幹に触れる問題でございますから、どうか外務大臣におかれましても、日本立場を貫徹するために一層の御努力をいただきたいと思います。この問題は議論すれば果てしなく議論が広がりますので、もう一つの問題に移らしていただきたいと思います。  これはある新聞におきましても非常に大きく報道された、小さいようで考えようによってなかなか大事な問題であるように思うのでございます。もうすでに御案内のように、東南アジアを中心といたします私費留学生を国際学友会が昭和十年以来受け入れてまいりまして、日本語教育であるとか寮を提供するとか、いろいろな意味で貢献をしてまいったのでございますが、この国際学友会がこの段階におきまして二億一千八百万円という赤字を生み出したことによりまして、その赤字の返済もしなければならないということから、いままでありました寮を取りつぶす、それによりまして私費留学生、ここには百四十七名入っているそうでございますが、現在立ち退きが要求されまして、留学生問題についての一つの問題を提起しているように思うのでございます。そして学生側は、三月七日、理事者側に次のような申し入れをしているようであります。すなわち、学生側と一切話し合いなしの一方的やり方に抗議し、寮を含まない建てかえ計画に反対する、三月中に出ていけという一方的通告を一時たな上げして話し合いに応じてほしい、こう言っているそうでございますね。それからもう一つ、なぜいままであった寮を取りつぶして寮を建てないのかということにつきまして、この国際学友会の専務理事である千葉さんという方は、寮を後回しにしたのは政府の財政事情で予算がつかなかったからだ、実はこういう談話を出しているようでございます。そういたしますと、何かこれだけを見ておりますと、監督官庁である外務省の意向によりまして予算が取れないために、この伝統ある国際学友会の寮の建設が不可能になり、その結果、日本で勉強されておる東南アジアの学生が大変困る状態に入ってきたというふうにこの文面だけでは見えるわけでございますが、外務省としてはなぜ寮の建設をできないようにしてしまったのでございますか。
  43. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 経過等につきましては政府委員からお答えさせていただきますが、初めに、この東南アジアを主体とする留学生の皆さんを国際学友会でいろいろお世話をしている、その留学生諸君にこの三月いっぱいで立ち退いてもらわなければならないという事態になりましたことは、私といたしましても本当に残念と申しますか、これは大変な問題であるというふうに考えます。このような事態になりましたことはまことに遺憾でございまして、このようになりました上は、全力を尽くしまして留学生の皆さんの学業に差し支えの起こらぬように、できる限り万全の措置を講じたいということだけ申し上げさせていただきます。
  44. 大内啓伍

    大内分科員 いま日本に来ております私費留学生というのは約四千五百人あると言われております。また国費の留学生を合わせまして五千五百人でございます。この四千五百人の私費留学生のうち各地で寮に入っておりますのが約四百人と言われておるわけであります。そしてこの国際学友会はその四百人のうち百五十人分を大体受け持っていたわけでございまして、それがなくなってしまうということは留学生にとってもさびしいことだろうと思うのです。私もかつてアメリカにおきまして留学生活を送ったことがございますが、何といっても住宅がきちっとしていることが安定した学業の基礎でございまして、特に日本の場合は外務大臣御存じのとおり住宅事情が非常に悪い。私はいまの政治の一番のおくれは住宅にあると思っているのでございますが、この住宅事情が悪いという中で、私費留学生や国費の留学生を受け入れる。しかもこれらの留学生というのは、特に東南アジアにおきましては大体将来指導的な立場に立つ人でございまして、その学生時代における日本への印象が将来広い意味日本と東南アジアの友好に有形、無形の形で寄与をしてくるといたしますと、私費留学生に対してまで何も寮を確保してやる必要はないじゃないか、あるいは私費留学生といってももう学校を卒業した人までその中にいるじゃないか、また近所からもいろいろな苦情が来てぐあいが悪いという面もあるということもありましょうけれども、もっと広い視野に立って留学生に対する処遇をする。これは中国の人的交流、招待外交をごらんいただいてもおわかりのとおり、これが非常に大きな力を発揮しておるわけで、この問題はそう軽視してはならない。  いろいろな事情がございましょうけれども、また、いろいろな義務とか責任という面から見れば、私費留学生に対して寮を何としても確保しなければならぬという法律的義務があるわけじゃございませんけれども、政策として外務省としてはもっと温かい配慮をする必要があるのじゃないか。そしてこの国際学友会側におきましては、五十三年度の第二期分といたしまして二百名分の寮の補助金を申請をしたいというふうにこれまでも考えておったようでございますので、たとえばこういう寮については政府としてできるだけ取りつぶさないように、第二期工事以降で考えるとか、あるいはこれからの私費留学生の受け入れについては各大学で責任を持ってある程度のパーセンテージの、寮については確保させるとか、そういうような具体的な施策なり指導をすることが必要なのではないかなと思うのでございます。現に東京工大におきましては、ことし七十名の寮を建設いたしますし、またその他の大学におきましてもそういうことが実際に検討されておるようでございます。その辺についての外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  45. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 来年度と申しますか五十三年度に実施したいという寮の建設につきまして、今年度の予算折衝におきましてこれが約束を得ることができなかったのでございます。財政当局としてはいろいろな考え方を持っておると思うのでございます。特に戦後の国際学友会の経営というものが必ずしも円滑でなかった結果におきまして、毎年毎年赤字経営が続きまして、土地の売り食いというようなことでしのいでまいったわけでございますが、この赤字が非常に膨大なものになったということで、したがいまして、そういう状況のもとに来年度のことまで約束をとりつけることができなかったというのが率直なところではあるまい・かと思っております。  しかし、これからいままであった寮が全くなくなるということは、これからの東南アジア各国との友好親善の上からいきましても大変残念なことでありますので、何とか来年度は確保したいというふうに考えております。しかし、今日の段階でそれを約束することができないということがまことにつらいところでございまして、努力をするということで御勘弁をいただきたいのでございます。  それから、こういった学生諸君の寮でございますので、やはり規律ある運営がされるべきだと思います。そういう意味からいって、あるいは各大学ともに持たれる方が規律の上からは好ましいということもありまして、文部省当局に対しましても私どもの方からいろいろお願いをしているところでございます。  今後とも努力をいたしたいと思います。
  46. 大内啓伍

    大内分科員 文部省当局といたしましても、海部文部大臣の方で、留学生対策としては寮の問題をこれから重点的に取り上げていきたいということも言明されておるようでございます。そして、今度のこの国際学友会の取りつぶしによりまして、ことしの計画といたしましては、御存じのとおり日本語学校三百人分、留学生ホール四百席分、それから事務室しか建てない。実際には寮がゼロになりまして、いま一生懸命あっせんをやっておりますが、この寮というのは月八千円なんでございますね。ですから、これからあっせんをいたしましても、留学生の諸君は二万円とか三万円とか、そのほかに礼金、敷金というようなものを払って入居をしなければならぬ、食費も非常に上がってくるということで、もう帰ろうかなというお話もぼつぼつあるんだそうでございます。したがってこういう問題は、外国から来る留学生ができるだけいい環境のもとで勉強ができる、そういうことをできるだけ保障し、また日本政府としても、留学生を受け入れる以上は、その御当人に対していろいろな意味での規律を求めていくということはこれは大事なことだと思いますから、そんなことは遠慮する必要はないと私は思うのですね。素行において問題があればそういうことを厳重に注意されればよろしいと思うのです。しかし、九州大学の綾部恒雄教授の留学生のアンケート調査によりますと、やはり留学生の七割ぐらいがぜひ寮に住みたい、どうも日本一般の住宅というのは、風俗、習慣が余りにも違い過ぎて、初めはなかなかなじめない、だから、どうか寮に住めるようなそういう体制をつくってほしいということも留学生の大勢的な要望であるとすれば、外務省といたしましても、この問題につきましてはどうか——いま外務大臣から大変前向きなお答えをいただきましたが、私は決してこの問題について単なる言質をとろうとかそういう意味で発言をしているのじゃなくて、少なくとも私費であろうが官費であろうが、将来外国において指導者になるであろう人々に対して日本が本当に縁の下の力持ちのような形でいろいろな細かい配慮をする、そういうことは両国の友好、諸外国との友好という面で非常に大事な問題だ、これから特にそういう問題が大事になってくるのじゃないかなと思いますので、重ねてこの種の寮問題に対しましては、小さな問題というのじゃなくて、ひとつ前向きに取り組まれますように外務大臣の再度の御漢意をお伺いしまして、時間でございますので質問を終わらせていただきたいと思います。
  47. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま大内先生からお話のありましたとおりで、私どもといたしましては、従来の運営の仕方にもいろいろ問題があったろうと思います。これから改善しなければならない点が非常に多いんだろうと思うのでございます。その改善が従来どうもなかなかむずかしい、実行することがむずかしいということを続けてきたためにこのようなことになったのでございまして、これを機会に、これから新しい寮をつくるにつきましてはこれはよっぽど決意してかからなければいけないことであろう、こういうふうに思います。そういうことでこれから一生懸命努力をいたしたいと思います。
  48. 大内啓伍

    大内分科員 どうもありがとうございました。
  49. 金子一平

    金子主査 次に、大成正雄君。
  50. 大成正雄

    大成分科員 新自由クラブの大成正雄でございます。  きょうは、本国会に提案されております日韓大陸棚の共同開発協定の承認をめぐる案件等に関連いたしまして御質問を申し上げます。本件につきましては、いずれ外務、商工両委員会等で十分論議が詰められることと思うのでございますが、その論議に先立ちまして幾つかの点について確認をしておきたいと思いますので、お願いいたしたいと思います。  海洋資源の開発という問題については非常に厳しい環境に置かれておることは御承知のとおりであります。きょうから始まりました日ソ漁業協定の問題につきましても、エコノミックゾーンの問題をめぐりまして非常に厳しい環境であることは御承知のとおりでございます。そこで、本国会に提案されております大陸棚の協定をした当時の海洋資源をめぐる国益と今日とではいろいろな考え方の違いが出てきていると思うのでございますが、まず大臣にお伺い申し上げたいことは、日本の国益として、いわゆるエコノミックゾーン、排他的な経済水域という問題に対しては日本としてはどのようにいま考えておられるのか、この点をまず承りたいと思います。
  51. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 法律的な点につきましては後ほど条約局長からでも補足してもらいますが、いま特に漁業交渉が始まりましたので、今日最大の問題になっておりますのは漁業水域の問題であろうと思うのでございます。これとともに地下資源等いろいろ経済水域という問題が他方に出ておるわけでございます。漁業と経済水域とは、海洋法会議の場におきましても従来から考え方が必ずしも一本になっておらないのでございまして、現実問題としては漁業問題が先行してしまったという形でございます。この二百海里の漁業水域という問題、これはもう世界の主要国がこれをとるようになったということから、わが国としても何とか考えなければならないことであろう。また、その点につきましては海洋法会議がまだ結論を出していないわけでありますけれども、もう二百海里時代と言われるようになってしまったという現実でありますので、わが国としてこれにどう取り組むかということが焦眉の問題になってきた。鈴木農林大臣が先般イシコフ大臣との会談におきまして、日本としても二百海里の漁業水域を設定する方針だということを述べられたわけで、これはまだ国内的な措置は進めておりませんけれども、そのような必要に迫られたというのが実情であろう、こう思う次第でございます。
  52. 大成正雄

    大成分科員 領海以外の漁業資源、これは公のものである、この考え方は結構だと思うのでございますが、世界の大勢としてこの漁業資源もいわゆるエコノミックゾーンという範疇の中でやはり理解されていかなければならない時代が来ておるわけでございます。そこで、先ほど私がお聞きしました日韓協定当時の海洋資源に対する考え方と今日の考えとではおのずから違いが出てきている、時代の変化があると思うのでございますが、それを認めておられるかどうかについて承りたいと思います。
  53. 中江要介

    中江政府委員 先生の御質問の諸点に、まず前提といたしまして、当時とどういうふうに事情が変わってきているかというその当時のとらえ方だと思うのですが、そもそも日韓大陸棚協定の交渉の始まりましたといいますか、このことが問題になりました一九七〇年なり七一年のころの状況というのは、国連海洋法会議がまだどういうふうになっていくかということについて大きな見通しは立てがたい状況ではありましたけれども、この二百海里の経済水域の問題と大陸だなの資源の問題、それがいずれも何らかの形で相当な議論になるであろうという見通しはあったわけでございます。この両者が、経済水域は経済水域として、大陸だな資源の問題は大陸だな資源の問題とし別途に審議が続けられて、また別途のアプローチで結論に到達するであろうという点では当時もいまも変わりはない、こういうふうに思います。  他方、資源の問題で大陸だなに関して言いますれば、大陸だなの中の特に石油資源、石油エネルギー資源については、この協定が結ばれましたのは一九七四年の一月でございますが、その締結までの過程におきましても、また締結の時点におきましても、七三年の暮れに訪れましたエネルギー危機というようなものの直前の状況であったわけでございますので、石油エネルギー資源に対する関心の持たれ方、持ち方というものは本件が問題になりました当時とは非常に変わってきている。その変わってきている方向は、このエネルギー資源は非常に大事であるので何とか有効に開発したいという期待が強くなっているという意味情勢は変化している、こういうふうに受けとめております。
  54. 大成正雄

    大成分科員 五八年の大陸棚条約においても水深二百メートルの問題はありますけれども、それは統一した解釈ではございませんし、いま第三次海洋法会議でこれが論議されているわけでありますが、その条約の精神から言ってもこの大陸だなの海底資源というものは大陸だなに帰属するものだという解釈はあったと思うのです。この日韓の協定当時に、この地下資源も、また本協定の区域は御承知のとおりわが国の貴重なアジ、サバ、イカ等の漁業資源であり、特に繁殖地とも言われておりますが、そういった貴重なわが国の大衆魚の資源地域であるということは外務省もお認めであったと思うのですが、そういう中においてこの日韓間の中間線の中に取り込まれたこの区域を共同開発区域に入れたという考え方はどこにあるわけですか。
  55. 中江要介

    中江政府委員 私が冒頭に申し上げましたように、特に御質問にございます水中の漁業資源の問題、これをどういうふうに守るかあるいは分配するか、漁業調整をするかという問題はもっぱら経済水域の概念の中で検討が続けられ、大陸だなの中にあります石油資源の開発の問題はそのこととは別な角度から、いま御指摘のように前の大陸棚条約の延長線上のものとして、つまり大陸だなをどういうふうに定義づけ、それが相対立する国の間で共通の大陸だなを共有しているときにどういうふうに分割し、そしてその海底の石油資源なら石油資源に対する権利の行使はどういうふうにあるべきかということで、これは上部水域の漁業資源とは全く別の角度から大陸だなの石油資源開発ということで話が進んでおりまして、その間の調整がつけられないままにきておるわけであります。したがって、日韓大陸棚協定を結びますときは、まずこの協定の大目的がいま申し上げましたように大陸だなの中にある主として石油、天然ガス資源の開発ということにあるとはいいながら、その上には水域があるわけですし、その上はおっしゃいますように西日本を中心とする漁業の非常に重要な漁場になっている。したがって、これを害することなく、しかもその海底の石油資源を開発するというところに私どもも当初から問題意識を持ちまして、非常に慎重に交渉いたしまして、でき上がりました協定及び付嘱の文書の中で、この漁業資源の確保またそれに及ぼすことがあってはならない公害発生防止の施策というものについて種々の取り決めをして、この大陸だな資源の開発が上部の漁業資源の開発と相矛盾しないように、抵触しないようにという配慮をしている、こういうことでございます。
  56. 大成正雄

    大成分科員 漁業資源を害する害しないは別問題として、その以前の問題として、本協定締結当時にはいわゆるわが国の譲ってはならないというか最も大切にしなければならない西日本のこの漁業水域というものの権利を強く主張されたのかどうかということなんですが、ちょっと余談になりましたけれども承っておきたい。
  57. 中江要介

    中江政府委員 これは結論を一口で言いますと非常に強く主張したわけです。それを主張しなければならなかった一番大きな理由というのは、韓国韓国立場に立ちまして国際法上十分な根拠があると言って一方的にこの地域を開発しようとしていた、それが全く当時において非常に最近の問題として危惧されていた。したがって、そういうふうに大陸だなに対して主権的権利を持つからといって一方的に開発して、その結果として上部の日本側が持つ漁業権益が害されることがあってはならないということは、大陸だな資源に対する権利主張と同様に、漁業資源についても私どもはこれを守らなければならないという意識で交渉いたしたわけでございます。
  58. 大成正雄

    大成分科員 エコノミックゾーンの公平の原則から言うならば、この日韓の中間線を中心にしてその共同開発区域が振り分けられておるという形であるならば、われわれはこれも常識的な解決の仕方かなというふうに考えるのですが、一方的にこの中間線よりも日本側にこの共同開発区域を取り込んでいるところに、私どもとして非常に何か疑念が出てくるわけでありますが、この点について……。
  59. 中江要介

    中江政府委員 これは先生もおっしゃいますように、海を上から見ますと全く中間線で分けるのが最も合理的であって、下の方にもぐって向こうの共同開発区域が出てきているというのはおかしいということになるのですが、今度は海の中にもぐって横から断面を見ますと、韓国の言う大陸だな理論、つまり自然延長論というのは相当根拠を持つような地形になっておる。具体的に申しますと、あの東シナ海に横たわっております大陸だなに、琉球列島に沿いまして沖繩海溝という深いみぞが割り込んでおるわけでございまして、韓国立場からしますと、自然延長の理論に基づいて、そのみぞのところまでずっと韓国のみが開発の権利を持つという主張をしたわけでございます。この主張には相当国際法上の根拠もあったわけであります。日本立場は、そういう海溝がありましても、それはただ単なる一つのみぞ、ひだが入っておるだけであって、同じ一つの大陸だなに相対しているのであるから中間線であるべきだという議論をいたしまして、そこのところがまさしく最後まで平行線であったわけで、これは中間線という分け方のみが非常に公平で、しかも妥当であると言い切れない海底地形の姿になっておるというところがむずかしい点であったかと、こう思います。
  60. 大成正雄

    大成分科員 予算委員会の論議の中で、外務省としてはこの両国の大陸だなは一つであるということを言っておられるわけでありますが、いまのお話からすると、この日韓間の大陸だなは韓国のものであって、日本の大陸だなではないという意味における一つだというふうに理解してよろしいかどうか。
  61. 中江要介

    中江政府委員 もしそう理解されましたら、私の説明がまずかったので、日本立場からいたしますと、日本韓国一つの大陸だなをはさんで相対しておる、韓国立場からしますと、韓国から張り出して沖繩海溝で終わっているところまでが韓国のみが主権的権利を持つ大陸だな、こういう主張になって、まさしく今回の協定の共同開発区域に当たる部分日本の主張と韓国の主張とが全く重なっている。したがって、それを共同で開発するという実際的解決に持ち込んだわけでありまして、日本韓国の間に一つの大陸だなしかないんだという立場にもし立ちますれば、これは韓国としても中間線までしか権利はない、こういうことになる、そう思います。
  62. 大成正雄

    大成分科員 海底の構造から言うならば、専門の学者の意見からしますと、これは中国の大陸だなであるという意見もあります。特に共同開発区域南部においてはそういった地形になっておるようでございますが、この中国の大陸だなあるいは経済水域というものに対してはどのようにお考えであるか、特に共同開発区域に対して日韓間だけで取り決めをして資源開発をすることが対中政策としていいのかどうかということですが、いかがでしょう。
  63. 中江要介

    中江政府委員 まず経済水域の問題につきましては、中国が自国の漁業水域なり経済水域なりを設定しようという考えを持っているという情報は全くございませんし、いま日中間は日中間の漁業協定で円滑な漁業活動が調整されているということですので、それはそういうことで当分続けて差し支えなかろうと思います。  他方大陸だなにつきましては、御承知のように中国としては、この大陸だなの境界線画定については関係諸国が一堂に会して相談して決めなければならない、こういう立場でございまして、日本といたしましてもそれが最も望ましい、そうありたいとは思うのですけれども、残念ながら関係諸国の中にお互いに国交がないあるいは承認し合っていない国があるものですから、これはなかなか実際上そういう関係諸国が一堂に会するということがむずかしい。この大陸だなは地勢あるいは地形学上、学者の意見といたしましては、あるいは中国大陸から——中国という国からではなくて、中国大陸から延びておる大陸だなであるからということはあろうかと思いますけれども国連の海洋法会議で大陸だなの議論が行われておりますのは、そういう地勢学的にどうかというよりも、その大陸なり島なりを占めている国と国との間で、ともにその大陸だなの上に乗っているときに、それをどういうふうに分けるかということの方が問題の焦点になっておるわけですので、大陸だなの地勢学的なあるいは起源からする定義をいたしてみましても、直接の解決にはならない。やはり国家主権に基づく管轄権の分配という問題になるわけですので、そういう考え方からいたしますと、この東シナ海の大陸だなの部分には韓国が主張し得る部分、中国が主張し得る部分日本が主張し得る部分というのはそれぞれあるわけです。したがってこの三国の間で話ができれば一番いいのですが、中国と韓国との間には話し合えるような承認関係がないわけですので、この協定を締結するに当たりましては、日本としては細心の注意を払いまして、中国が主張するであろう部分には触れることなしに、日本韓国との間で境界を画定すればいい部分だけに限って協定を締結した。  しかし、これはいまおっしゃいましたように、当然中国が主張するであろう大陸だなと直接つながっている大陸だなでありますので、日本政府といたしましては、協定の署名に先立って中国にこの話を外務大臣レベルで説明して、また署名の前後に詳しい地図を付して中国側に説明して、いつでも中国との間で必要があれば日本としては協定に隣接する部分について話をする用意があるということを繰り返し繰り返し申しておりますけれども、中国の方からそれでは話をしようという感触はまだ伝わってきていないということでありまして、政府としては、もし中国の方でその意図があるのであれば、できるだけ早い機会に話し合って、そして中国の方に不安だの疑惑のないような形にしたい、こういうふうに思っているのが現状でございます。
  64. 大成正雄

    大成分科員 本問題は非常に複雑でありますし、重大でありますが、時間がありませんので、いずれ違った機会に十分論議をさせていただきたいと思います。  最後に、去る十二月八日から十日間政府が派遣いたしました対韓経済調査団でございますが、いわゆる韓国の第四次経済開発五カ年計画に対する日本の援助のあり方を模索するために派遣した調査団であるというふうに聞いておるわけでございます。一方情報によって承るところによりますと、韓国側日本に対しましていわゆる総借款額の一九%、十八億五千万ドルに及ぶ、過去の日韓間の援助以上のものを期待しているというふうに承っておるわけでありますが、この調査団の正式な報告はいつ政府に出されるのか、またこの第四次五カ年計画に対する日本側の援助の基本的な考え方は何なのか、いかなる立場なのか承って終わりたいと思います。
  65. 菊地清明

    ○菊地政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいますとおり、昨年の十二月八日から十七日にわたりまして中安閑一さんを団長といたします調査団を派遣いたしました。この調査団の使命といいますか、この政府使節団の使命というのは、ちょうどことしから始まります韓国の第四次経済開発五カ年計画の具体的な内容と実施と、実施のためにとられる諸措置につきまして韓国側説明を聴取し、また関係の産業の視察を行うということでございました。そうでございますから、具体的にこの第四次五カ年計画に対する日本側の援助の姿勢というものを決めるというよりは、その前の段階でございまして、具体的に計画内容を韓国政府当局者から聴取するということが第一の目的でありました。  ただ先生おっしゃいましたとおり、韓国側の要望としては、これは非公式でございますけれども、十八億五千万ドルというような数字が出たこともあるようでございます。しかしこれはあくまでも先方側の要請といいますか、考え方でございますので、この点についてはわが方は何ら態度を示しておりません。  それから、いつこの報告書が出るかということにつきましては、実は三月中にもと思っておりましたけれども、現在の見通しでは五月ごろになるのではないかということでございます。
  66. 金子一平

    金子主査 次に、井上泉君。
  67. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、日朝、日中、日ソ、三国との関係についてそれぞれ質問をいたしたいと思います。  まず日朝の問題でありますが、南北共同声明が一九七二年に出されたのですが、日本はその共同声明を支持する立場におるのかどうか、まず大臣から承りたいと思います。
  68. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島南北政府の間の共同声明のお話と思いますが、これは朝鮮半島の平和を確保する上に何よりも南北間の対話が必要でございますし、そのような方向に行くことを希望いたしておりますので、当然わが方としては歓迎すべきことと思っておる次第でございます。
  69. 井上泉

    井上(泉)分科員 この南北共同声明を歓迎すべきことであると言うのは、私は正しいことだと思うわけです。それで韓国の安全だとかあるいはいろいろなことを言うわけですが、それを歓迎するなら、その歓迎することに基づいて日本韓国との関係あるいは朝鮮民主主義人民共和国との関係、これを考えるのが当然だと思うわけですが、ただ気持ちの上で歓迎すると言うだけであって、行動の上では歓迎をした行動をとってないように思うわけですが、その点どうですか。
  70. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これは大変歓迎すべき事態が一時生じたわけでございますけれども、どうもその後の進展が、われわれが期待をするほど進展しないうちにとぎれてしまったというのが現実のところでございまして、先ほども申し上げましたのですが、わが方としてはもう一度この南北間の対話再開されることを心から期待をしておるところでございます。
  71. 井上泉

    井上(泉)分科員 南北のそういう対話ができることを期待をするとしておるならば、やはりその期待に基づいてそういう行動をとるべきではないか。たとえば朝鮮民主主義人民共和国との関係等については依然として積極的な窓を開いてない。アメリカですら、向こうが受け入れる受け入れぬは別としても、自由に往来を認めるというような状態の中にあるときに、日本は民主主義人民共和国との関係においては依然としてかたいとびらを閉ざしているのじゃないですか。閉ざしていないのですか。韓国と同じように扱っておられるのですか。
  72. 中江要介

    中江政府委員 北朝鮮日本との関係について、韓国と同じであるかどうかという御質問ですと、韓国とは同じでない。しかしとびらを閉ざしているのではありませんかという御質問でありますと、とびらは徐々に開かれている、こういうふうになろうかと思います。  それで、どういうふうにとびらが開かれているのかという点でございますが、先生御質問の中で御指摘になりましたように、南北共同声明が出されまして、一九七二年に、これはいよいよ南北朝鮮も政治的な話し合いに入るかというふうに、韓国情勢が非常に明るい見通しになりましたそのとき以来、日朝間の人事往来、文化往来あるいは経済活動、そういったものは急上昇のカーブをたどっております。しかし、そのことが即韓国と同じにまでいかない一番大きな原因は、これは外務大臣もよく御説明になっておりますように、北朝鮮の方が、南北会談を始めましたときとは異なりまして、韓国を相手にしない、アメリカとのみ話をするという態度に固執しておりますので、韓国と一九六五年以来国交を持ち、発展を続けております日本立場からいたしますと、日本隣国である韓国を無視している北朝鮮との間に韓国と同じような態度で臨めと言われましても、そこには若干むずかしい点がある、こういうのが現状だと認識しております。
  73. 井上泉

    井上(泉)分科員 韓国を共和国の方が無視しておると言うのは、何を証拠に無視しておると言っておるのですか。
  74. 中江要介

    中江政府委員 それは一番端的にあらわれておりますのは、北朝鮮立場からいたしますと、緊張緩和のためといいますか、平和的統一のためにはまず米朝平和協定を結んでということになっておりますが、その場合に韓国の参加というものは認めていないということが非常に明確にあらわれていると思います。もう一つは、いまの朴政権というもののとっている施策、特に反共的な施策を持っている限り、これとは、それを改めてこなければ話し合いに応じない、こういうことでございまして、それぞれの国にはそれぞれの政策があるわけでございますが、その政策の変更を話し合い前提にしているという点は、私どもとしては非常に遺憾なことである、こういうふうに思っておるわけでございます。
  75. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは外務省の一方的なこじつけの理屈だと私は思うわけです。  朴大統領が一月十二日の記者会見で、南北朝鮮が不可侵条約を結ぼうじゃないかというような提案をして、それに対して日本政府も歓迎するような態度をとったわけですが、それは七二年のその共同声明に反する朴提案であるわけなので、その七二年の共同声明は、いわゆる朝鮮の自主的、平和的統一、民族の大原則というこの三大原則のもとに共同声明が出されておる。それにもかかわらず朴政権は、ことしの一月十二日に相互不可侵条約を結ぼう、一つ朝鮮を二つの朝鮮に分けよう、一つの民族を二つの民族に分けよう、こういうことをやっておる。その背後にアメリカがあり日本があるから、だからこの朴政権を相手にしておっては、これは南北の自主的な平和統一というものができないということから、共和国の方が方針を出しておるにすぎないことであって、そのことはやはり韓国側に責任があるわけで、これを北朝鮮側にその態度があるなんというようなことは、これはあなたちょっと間違えていやしませんか。それはいわゆる朝鮮民主主義人民共和国に対する越権的な態度だと私は思うのですが、どうですか。
  76. 中江要介

    中江政府委員 私の先ほどの説明を、朝鮮半島現状日本政府がこう認識しているというふうにおとりになりますとちょっと問題があると思いますのは、御質問は、日本北朝鮮との間でどうして韓国のようにまいらぬかという御質問に対して私はそう答えたわけでありまして、朝鮮半島状況につきましては、南北対話のいわゆる南北調節委員会というような政治会談のところでも、これはたとえば昨年の五月に第十一回の副委員会議が予定されておりましたところが、会議の直前になって北朝鮮側の方から一方的に無期延期通告が行われて、そのまま開かれない。その時点におきます対立点を見ますと、韓国側は、経済、文化、スポーツというような交流を深めてお互いに相互理解を、誤解を解きながら話し合いをしよう、こういうふうに考えておりますのに対して、北朝鮮側は、在韓米軍撤退というような軍事問題をまず解決して、反共政策を放棄しなければ話し合いに応じない、こういうふうに言って、この二つの対立点について日本政府がどう評価するかということは、これは日本政府としてはなすべきことではございませんので、そこのところを私が評価したわけではないということだけは申し上げておきたいと思います。
  77. 井上泉

    井上(泉)分科員 この大陸棚協定について朝鮮民主主義人民共和国はどういう態度をとっておるのですか。
  78. 中江要介

    中江政府委員 北朝鮮立場からいたしますと、朝鮮半島全域が自分の領域であるという……(井上(泉)分科員「自分でない、朝鮮人民のものだということですよ」と呼ぶ)ですけれども政府立場といたしますと、その政府代表しております国のものであるという前提に立ちますから、自分の国に属する大陸だなを韓国日本との問で話し合いをつけたのは認めるわけにまいらない、こういう立場をとっておるわけです。
  79. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは外務省当局は間違っておるじゃないですか。大臣、この七月四日の共同声明を支持して、そして歓迎をして、その方向で南北朝鮮平和統一なるように日本期待しておる。その期待しておる日本が、あえてこの段階において韓国側と大陸棚協定をしょうなんというようなことは——これは北朝鮮も、何も北朝鮮のものだと言っていないんです。朝鮮人民のものだ。朝鮮のものだ。だから、それを一方の韓国とだけ協定を結ぶということはもってのほかだということを言っている。そういう南北朝鮮の対立を激化するようなことに日本は加担をしているのじゃないですか、これ一事をもってしても。大臣、どうですか、加担してないですか。正直に答えなさい。
  80. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国と相対峙しておりますのは、現在におきましてはやはり韓国政府が相対峙しておるのでございまして、先ほど来朝鮮半島におきます朝鮮南北を通じます平和的な統一ということは、理想と申しますか、朝鮮人民の悲願であるというふうに解しております。それは悲願でありまして、わが国政府といたしましてもこれが実現することをこいねがっておるわけでございますけれども、今日その理想が早急に実現をするということは現実問題としてなかなかむずかしい問題である。そういう前提に立ちまして、現在の情勢におきまして、韓国政府がやはり現実の南部におきます合法政府であるということで、わが国といたしまして韓国との間に大陸だな問題を解決することが現実的な処理としてこの道しかないというふうに考えておるわけでございまして、将来先の統一ができた暁におきまして、もし統一政府ができた場合には当然それは承継されるべきものであって、何ら朝鮮人民に対しましてわが国がその権利を侵害するようなものでは決してないだろう。こういうふうに考えて、決して南北に対してこの大陸棚協定が離反をするような問題を提起するとは考えておらない次第でございます。
  81. 井上泉

    井上(泉)分科員 これは頭のいいあなたにしては非常に歯切れの悪い答弁で不可解に思う。これは悲願だとあなたもいま言うように、悲願である朝鮮民族の自主的、平和的統一をこいねがう日本国民、日本政府として、今日朝鮮の半分に韓国政権、いわゆる朴政権の支配権が及んでいないのですから、その半分が反対をしておるものを、いまここで協定を結ぶことによって、将来統一をされたらいいんだとかいうようなことは私は詭弁だと思うわけです。これはまた中国との関係もあります。そういう点からも言葉と実行することと相一致しない、いわゆる口先だけということになってしまう。だから、国際的な信用というものも日本外交の面で重要なことではないかと私は思うわけです。その点から今度日中問題。  なぜ日中の平和友好条約締結をされないのか。福田総理も、両方が満足いく条件で早く締結したい。ところが中国側に日本との間における条件というか、協定を阻む何物もないのじゃないですか。日本側にあるのじゃないですか。その点どうですか。
  82. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日中の平和友好条約締結につきましては、福田総理大臣もたびたび申し上げておりますとおり、これは両国政府ともこの締結方向に向かいまして熱意を持っておるわけでございますので、両国間に満足のできる条件、そういう表現を使っておるわけでございますけれども、この点につきましては、ここでいろいろ議論するよりも、実際に協定が実現できますようにどうか御理解を賜って、静かに見守っていただきたいというのが政府の現在の状態でございます。
  83. 井上泉

    井上(泉)分科員 この問題についてはずいぶん論議もされておると思います。当分科会あるいは外務委員会等で論議されておるわけですが、静かに見守るということにつきましても、基本になるものはあの日中共同声明であるということは間違いのないことだと思うし、そしてその問題の条項というものも、覇権問題等についてもこれは言い尽くされてきておるし、論議され尽くされておると言ってもいいわけでありますので、日中共同声明、これが条約の中で生かされてこそ初めて真の友好条約というものの価値があるわけなので、その点について間違いないですか。
  84. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま井上委員の仰せられましたとおり、この問題はもう論議し尽くされておるというのが現状であろうと思います。そういう意味で、そういったいままでのすべての御意見、御議論を踏まえた上で、そして両国がともに満足できる条件を見出す、こういうことであろうかと思う次第で、その方向に向かいまして最善の努力をいたす所存でございます。
  85. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで私は今度日ソ問題について、日中の平和友好条約の速やかな締結期待し、続きまして日本の国としても一番関係の深い日ソの関係について大臣の見解を承っておきたいと思うのです。  いま日ソ間で、モスクワでも東京でも漁業関係会議が開かれておりますが、そこで問題になるのはやはりソ連側のいわゆる漁業専管水域二百海里ということ、その二百海里という中で、日本の固有の領土である千島の問題、これをいわばソ連がおれの国のものだという形で専管水域の二百海里を設定しておる。これに対して外務省はどう対処しておるのか、その点承りたい。
  86. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ連におきまして、閣僚会議の決定をもちまして二百海里の施行をして、その線引きを発表したわけでございますが、北方四島周辺につきましても線引きが行われたことは御承知のとおりでございまして、これに対しましては直ちに官房長官談話をもちまして、北方四島周辺の線引きにつきましては日本としてはそれは承服できないということを明らかにいたし、またソ連大使に外務省に来訪を求めてその趣旨を伝達いたしたところでございます。それに対しましてソ連側といたしましては、本国政府からの意向として、日本政府の言っていることは認めることができないという先方の意思表示があり、これに対しましてその場で、これは外務省の事務次官が面会したわけでございますけれども、当方からはソ連政府の言い分は認めることができないということを口頭で伝えておるような次第で、この北方四島周辺の海域につきましては、両国間のどうしても話の決着のつかない問題であるというふうに認識をいたしております。
  87. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう実態の中でソ連が一方的に二百海里を宣言する。そしてソ連は、ソ適沿岸に接続する水域における生物資源の保存及び漁業規則に関する暫定措置に関するソ連邦量局合議幹部会令ということで、これは日本の固有の領土であり、それがまだ返還されていないときに、二百海里というものを宣言して、そしてソ連の国有の領土であるがごとくに振る舞われては、これはもう日本はたまったものじゃないわけなので、いま外務省は官房長官の談話とか声明とかいろいろな交渉をされているように聞くわけですけれども、なぜ日本はこれに対抗するといいますか、そういう中で日本はもう二百海里の宣言をし、いわゆる領海は十二海里の宣言をして、日本の漁民の生活、権利を守るような、漁業の生産基盤を守るような措置が講ぜられないものか。  いまの状態であると、ソ連の言いなりに日本の外交が押しまくられておる、こういう感じを深くするわけですが、外務大臣としてはこのソ連の態度に対していま言ったようなことでこれに対抗するという——別に私はソ連にいわゆる対抗するというあれではなしに、日本の固有の領土であるからソ連がそれをやることはいかぬ、いかぬから日本も二百海里の宣言をすると同時に十二海里もして、そして日本の漁業権、漁民を守るというそういう対応措置というもの、日本漁民に対する対応措置というものを講ずるべきだと思うわけですが、その点について、これは一番関係の深い水産庁もおいでになっておると思うのですが、水産庁ではこのいまの漁民の困惑をした状態の中でどうやったらよいとお考えになっておるのか、簡単に御答弁願いたいと思います。
  88. 森実孝郎

    森実説明員 領海問題につきましては、かねてから御答弁申し上げておりますように、政府といたしましては、沿岸漁業の権益の擁護その他の点を考慮いたしまして速やかに十二海里にしようではないか、ただ、いわゆる国際海峡というような海域については、国連海洋法会議の動向を見きわめつつ処置することとして当面は現状どおり三海里のままとしたらどうだ、こういう方向で方針を決めておりまして、現在各省集まって法案の作成準備中でございます。できるだけ速やかに国会に提出いたしまして御審議を賜わりたい、こう思っております。  それから、漁業専管水域の二百海里の問題でございますが、確かに世界の大勢といたしましては、漁業専管水域の二百海里というものはわが国としてもやはり大勢として受けとめざるを得ない状況になってきていることは事実であろうと思います。この場合、わが国は先生御存じのように遠洋漁業国でございまして、ソ連以外に中国、韓国等、多数の近隣諸国の二百海里の海域内において漁獲実績を持ち、また同時に漁業に関する双務協定を締結してその操業の確保を図ってきているところでございます。そういった事情も考慮して、特殊な配慮を払って二百海里の設定を行うことが至当ではないかと思っておりまして、これは、この五月から開かれます国連海洋法会議等の動向も見て、できるだけ早い時期に方針を決めて、法案としてまた御審議を賜らなければならぬということになっておるわけです。
  89. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は水産庁の苦悩というものはよくわかるわけですが、それにつけてもやはり外務省が、たとえば新聞で見るところによると、もう専管水域二百海里内のことについては一切日本側はくちばしを入れられない、二百海里外のことでやりましょう、こういう態度に出ておるわけですが、こうしたことに対してなぜ外務省日本の漁民を守るために——問題になるところはのけて次をやっていいんですよ、いま水産庁の言われるように。そうしてやはり二百海里を宣言して、その上に立っての外交交渉等をやるのが対等の立場の上に立っての外交交渉ではないかと私は思うわけです。日本は二百海里もやらぬ、十二海里もやらぬ。ソ連は二百海里を宣言する、日本は三海里だから、五海里沖まで来て盛んに漁獲をしていく。こういう差のある不平等な形において漁業交渉をやるとか外交交渉を持つとかいうようなことは、私は外交の方針としてもまずいことじゃないかと思うわけです。私なんかより外務大臣ははるかに専門家であろうし、玄人であろうし、知識もあろうと思うわけですけれども、国民感情としてはやはり、日本の漁民を守るためには、そして日本の固有の領土を守るためには、日本としても二百海里を宣言するんだ、そして十二海里も宣言するんだ、そしてその上でのお互いの国と国との話し合い、交渉というもの、漁業の問題というものはこれは交渉によって解決しようじゃないか、こういう話になるのが理の当然ではないかと思うわけですが、私の主張が間違っておるのかどうか、外務大臣の見解を承りたい。
  90. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 井上分科員のお考えは私はちりとも間違っておるとは考えておりませんし、日本の国民感情としても、外国が二百海里にどんどんしていくという状況にありまして、日本はなぜ二百海里をやらないのかという問題は、これはなかなか納得が得られないところではないかというふうに思います。  ただ、従来わが国が率先して二百海里の漁業水域を設定しなかったという点につきましては、やはりわが国としての、総体的にどちらが国益に沿うかという問題があっただろうと思うのでございます。今日になりまして私どもといたしましては、これは国連海洋法会議で議論されておりますけれども、その推移を見守りながらこの二百海里の専管水域を設定する必要があるということを強く認識しておる次第でございまして、これにつきましては関係省庁と十分連絡をとりながら、なるべくこの積極的な施策を早急に講ずべきものというふうに考えておる次第でございます。
  91. 井上泉

    井上(泉)分科員 これはアメリカもソ連も、それぞれの国は、別に海洋法会議の結論を待たずに二百海里の宣言をしておることはあなたも御承知をしておると思います。それで、これはあなたのお父さんによって日ソの交渉、日ソの国交が回復をされた、その光栄ある方の御子息としても、今日のこのソ連の措置に対しては、やはり早くから、海洋法会議の結論を待つとか、あるいは諸外国の推移を見るとかいうことでなしに考えるべきであった。いままでは二百海里にしなかったこと、あるいは三海里ということが日本の国益に沿うことであったでしょう。ところが今日の段階では、ニシンなんか全面禁漁になる、あるいはああいうような北洋で働いておる人たちはずいぶん転換をした、つまり政府が底びきから転換をさせてやらせたわけで、あの荒波の中で零細な漁業者としての操業を続けておるわけですから、そういう日本国民、日本漁民のやるせない、もう本当にどうにもならないような気持ちというものを考えた場合には、やはり日本は、領土問題とは切り離してとこう言うわけですけれども、領土問題というものがソ連との間にはあるのだから、それをこれはわが国の領土だということで二百海里を設定しておるわけですから、この領土問題と切り離して二百海里の問題を論議するのは間違いであるし、そしてまたこれを切り離して対策を立てるということは間違いなので、やはりこの領土問題というものを外務省としての外交の中心課題の中に位置づけて、日ソの外交交渉というか、漁業交渉というものを考えなければいかぬではないか、こういうように私は思うわけですが、大臣の見解を承りたいと思います。
  92. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領土問題は、これはもう日本としては絶対に譲ることのできない問題でございます。その問題と今回の日ソの漁業交渉という問題とは、これは切り離すことができない部面があるという御指摘でありますけれども、しかし、私どもは領土問題は領土問題として決着をつけるべきである、そういう意味で、漁業交渉とは切り離して交渉がされることをいま期待をいたしておるわけでございます。しかし、領土問題がありますから二百海里問題が実施できないとか、そういう問題とは全く考えておりませんので、二百海里漁業専管水域の問題につきましてはもう積極的に取り組む、仮に今回の海洋法会議におきまして結論が出ないというような場合におきましても、それでは先々結論が出るまで待つか、こういうことではなしに取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  93. 井上泉

    井上(泉)分科員 その外務大臣の、海洋法会議の結論を待たずにその結果がどうあろうとも対処したいということでありますので、この質問を終わるわけですけれども、ソ連は、幹部会では自国沿岸というふうにもう日本の領土を規定をしておるのです。第三回国連海洋法会議において作成せられつつある国際条約締結を待たずに、自国の沿岸において二百海里までの経済水域または漁業専管水域を設定をする、こういうふうに、よその国、つまり日本とのきわめて密接な関係を持っておる、因果関係を持っておる国がもう海洋法会議の結論を待たずにやっているので、いま大臣の言われた海洋法会議の結論を待っておったのではなかなかほど遠いので、早く結論を出して、私は、日本の外交として漁業者の権益を守るように奮闘していただくようにお願いして、質問を終わります。
  94. 金子一平

    金子主査 次に、小川国彦君。
  95. 小川国彦

    小川(国)分科員 最初に成田空港に関連する問題につきまして、外務省と運輸省の国際課と双方質問いたしたいと思います。  まず成田空港の開港の見通しでございますが、これは福田内閣で開港の大号令をかけたということですが、現実にはさまざまな問題が山積をしておるわけであります。そういう中で、政府が現実の問題としてとらえているならば、それに対応するいろいろな方策というものがとられているというふうに考えるわけでございますが、もし仮に政府の言うように十一月開港というようになった場合に、外国航空会社が国際線は一様に成田に移転をされるわけであります。ところが御承知のように、日中航空協定の締結の際の約束によりまして、中国民航を成田に、中華航空を羽田に、こういうような形になってまいりますと、いろいろな諸条件から見まして、特に政府が成田空港の立地で非常に大きな誤りを犯した、当初航空審議会の答申では、東京から一時間以内、土地の取得が容易、気象条件がよい、こういういろいろな要件から新空港を決めるということを言っておりましたが、実際には自民党内の党利党略、派利派略のために、現実には成田という二時間半から三時間、場合によっては四時間もかからなければならない場所に新空港の位置を設置してしまった。こういうことから、羽田を利用する航空会社と成田を利用する航空会社の間には大きなハンディの差が出てくると思うわけですね。そういう場合に、諸外国の航空会社をおしなべて成田に移転をして中華航空だけを羽田に残すということは、これは非常に大きな問題だというふうに思うわけですが、この辺の対処をどういうふうに外務省なりあるいはまた運輸省の国際課なりはお考えになっていらっしゃるか、その辺をまずお伺いしたい。
  96. 山田隆英

    山田説明員 運輸省といたしましては、日中航空協定締結当時の経緯から、台湾の航空企業は羽田に現状どおり残す、それ以外の国際線はすべて成田に移すということで現在作業を進めております。
  97. 小川国彦

    小川(国)分科員 そういたしますと、たとえば国内線から乗ってきた者が国際線へ乗りかえる、その乗りかえの時間は、羽田の中で行えば六十分以内で済む。ところが現実には、羽田と成田の間の交通手段というものは全くいま立っていないわけです。私、毎日成田からここへ通勤しておりますけれども、電車で参りまして大体二時間、車で参りますと三時間半から四時間、成田を朝八時に出発してもとうていお昼にはここへ着かない場合がございます。とても車では安心して都心へは通えない、時間の約束はできない、こういう状況にあるわけで、この十一月開港といった場合に、他の国際会社がみんな成田に行かされた、中華航空だけ残った、その場合に、台北−東京、それから東京−アメリカ間、こういう間の国際線にはいずれももう競合する路線があるわけです。それが現実に台北から東京へ飛んでくる時間よりも東京から成田へ来る時間の方がかかってしまうというようなことでは、これは他の航空会社がみんなし忍込みをする、そういう状況を現出しかねないわけですね。しかも残った航空会社の方が便利であるということになれば、それを皆利用するようになる。残った方が圧倒的に有利で、成田へ移転させられた航空会社が圧倒的に不利だ、こういうことになると、これは非常に大きな問題になるのじゃないか。そういう場合、運輸省はどういうふうにこの対処を考えておられるのか、外務省はこの問題にどういうふうに対処を考えておられるのか、その辺、もう十一月開港という福田内閣のことですから明確な方針を持っておると思いますので、ひとつその御方針を伺いたいと思います。
  98. 山田隆英

    山田説明員 ただいま先生のおっしゃられました、台湾の航空機が羽田に残る場合非常に有利になるのではないかというお話でございますが、この点につきましては、確かに現在の交通事情から申しますと、ただいまのところは羽田の方が有利になることは間違いないと思います。私どもといたしましては、現在、成田へ移転する航空会社といろいろ話し合いをいたしております。その過程の中で、確かにほかのエアラインが羽田に残るということを問題視する航空会社もございますが、それに対しては、日中間の特殊事情というものを説明いたしまして納得してもらうようにいま折衝を進めております。  それから羽田と成田との連絡の問題につきましては、将来の問題として、たとえばその間を航空便でつなぐ、そういうことも検討することになろうかと思います。
  99. 小川国彦

    小川(国)分科員 いまの問題については、各国航空会社ともいずれも赤字に悩んでいる現状の中から、成田に移ることによってさらにいろいろな赤字の増が予想される。燃料のコスト一つ見ても、海から直接羽田に上がってくる燃料と、燃料パイプラインですね、タンクローリーで燃料を運んでくる成田とでは、もうコストの違いが圧倒的に出てくるわけです。赤字路線を抱えている会社がただでさえ成田へ行くのをいやがるのに、さらにそういう問題を残すと、あなたがおっしゃるような形でスムーズに解決しないだろう。これは当然日中間の問題にも響くであろうし、他の外国航空会社との関係にも響くであろうし、中には外交ルートを通じてこの問題に決着をつける、こういう意見も出てきているという状況ですね。そういう問題が起こった場合、外務大臣の方ではこういう問題にどういうふうに対処されるか、日中航空協定の経過もありますし、十一月開港ということになれば当然こういう問題もどういうふうに解決するか、その方針がなければならないと思うのですが、現在までにそういう申し出があったかどうか、それからそういう申し出があった場合にこれにどういうふうに対処されるおつもりか、その辺、外務省の方針をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  100. 溝口道郎

    ○溝口説明員 私の承っておりますところによりまずれば、いままではそういう申し入れば来ていない由でございます。もちろん、そういうことがございますればこれは外交問題としても重要な問題でございますので、国際的な面あるいは国内的な面、運輸省ともよく御相談して対処をしていくことになるかと存じます。
  101. 小川国彦

    小川(国)分科員 中国に対しては、中国民航は成田に、中華航空は羽田に、これは航空協定の締結時にはっきりしているわけでございますね。
  102. 溝口道郎

    ○溝口説明員 先生のおっしゃるとおり政府の方針としてそういうふうになっております。
  103. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうしますと、外務省は航空協定を結ぶ際にそういう約束をしてきた、しかし運輸省はこれを片してもらうように納得してもらう、こういうことですが、その辺はどういうふうに意見調整をされるわけですか。外務省の方針、外務省のやってきた経過と運輸省がこれからやろうということは完全に食い違うわけですね。
  104. 山田隆英

    山田説明員 ただいまの台湾の企業は羽田に残す、それから中国の企業は成田へ移すという方針は政府として決定したものでございまして、その決定当時、外務省と運輸省と十分御相談して決めたものでございます。運輸省といたしましてはその方針に基づいて具体的にどういうふうにするかということを現在検討しております。
  105. 小川国彦

    小川(国)分科員 それはわかるのですが、変えなければならない事態が来ているわけでしょう。先ほどの国際課長からの答弁では、これも一緒に移ってもらうように、あるいは残すなら残すように納得してもらう、どちらで納得してもらうつもりなんですか。
  106. 山田隆英

    山田説明員 台湾の企業は羽田に残すという方向で納得してもらうというふうに考えております。
  107. 小川国彦

    小川(国)分科員 その場合に、予想される航空会社が一斉に成田移転を拒否した場合にはどういうふうな処理をされますか。
  108. 山田隆英

    山田説明員 私どもとしてはその辺の事情を十分説得いたしまして、先生が御心配になるような事態はないというふうに信じております。
  109. 小川国彦

    小川(国)分科員 あくまで残すということで運輸省は方針を貫徹される……。
  110. 山田隆英

    山田説明員 少なくとも現時点におきましてはそういう方針を堅持しております。
  111. 小川国彦

    小川(国)分科員 非常に心細い話ですね。現時点の問題じゃなくて、十一月開港を主張されている運輸省のあなたも一員なんですから、十一月開港時にはその問題はこういうふうに処理される、これが明確になってなければならないですよ。現時点の問題じゃなくて、政府が大号令をかけてやろうというからにはそういう問題は当然解決されてなければならない。それについては、あなた方はその問題についての各国航空会社との話し合いは現在やっていらっしゃるのですか。
  112. 山田隆英

    山田説明員 現在、関係の航空会社に打診をしております。その結果私どもは、台湾の企業だけを羽田に残すということであればさほどの支障はないという感触を得ております。
  113. 小川国彦

    小川(国)分科員 台北−羽田、羽田−アメリカ関係会社が相当数に上っておるわけですね。この辺の打診は何社くらいおやりになって——関係会社がそれぞれわかるわけですが、そのうち何社くらいとお話し合いをされてそれをまとめられたのですか。
  114. 山田隆英

    山田説明員 現在までのところ特に個別の会社とはしておりませんが、日本に乗り入れているすべての航空会社で組織する委員会がございます。そこの代表を通じて現在折衝をしております。
  115. 小川国彦

    小川(国)分科員 何の委員会でございますか。それで代表者はだれでございますか。
  116. 山田隆英

    山田説明員 現在代表者はキャセイ航空の支店長でミスター・フリードマンだったと思います。名前はBORと言いましてボード・オブ・リプレゼンタティブ、外国航空会社の代表で組織する委員会でございます。
  117. 小川国彦

    小川(国)分科員 何委員会ですか。
  118. 山田隆英

    山田説明員 ちょっと正確な名前はいま承知しておりません。BORだったと思います。ボード・オブ・リプリゼンタティブ。
  119. 小川国彦

    小川(国)分科員 これはあなた方のの問題の把握はまだきわめて浅いと思うのです。そのキャセイ航空の委員長だけに話をしてみて、その感触だけで解決するというふうには私は思わないのです。先ほど申し上げたように成田移転に伴う航空会社の赤字というのは増大する見通しです。そこへもってきてまた先ほど申し上げたような成田移転のためのさまざまな時間的ハンディ、それはまた経済的ハンディにつながるわけですが、しょわされるということの中では、簡単に納得しないだろうと思いますが、あなた、十一月までにこれをまとめ上げる自信はおありでございますか。
  120. 山田隆英

    山田説明員 現在、私どもといたしましては、その成田の開港に合わせてこれを実現するということでやっております。
  121. 小川国彦

    小川(国)分科員 次に、外国航空会社が特別着陸料というのを現在日本に払っていない、かなりな滞納額に上っているということでございますが、それはどの程度の額に上っているか、その金額それから滞納会社の数。
  122. 山田隆英

    山田説明員 現在、私の手元に正確な金額についての資料がございませんので、申しわけありませんがお答えしかねるのですが、現在、航空会社の数といたしましてはアエロフロートと中国民航、それ以外のすべての外国の乗り入れ航空企業が特別着陸料の支払いを拒否しております。
  123. 小川国彦

    小川(国)分科員 その額はおよそどの程度に上っておりますか。
  124. 山田隆英

    山田説明員 申しわけありませんが額については私どもちょっと承知しておりません。
  125. 小川国彦

    小川(国)分科員 これは外務省になるか運輸省になるかわかりませんが、国際航空協定を各国と結んでいる上で、こういう特別着陸料という日本の国内法律で決めているものを全く払わない、こういうものに対して航空協定上問題にならないのですか。これに対して支払いを厳格に求める、あるいは支払いを行わない者に対しては、たとえば乗り入れ制限をするとか便数制限をするとか、あるいはまた入港阻止をする、停止を命ずる、そういう措置はとらないのですか。
  126. 山田隆英

    山田説明員 現在、この着陸料支払い問題については裁判所で訴訟になっております。私どもとしてはこの裁判所の手続に従って解決すべきである、こう考えております。
  127. 小川国彦

    小川(国)分科員 この問題については外務省とも運輸省とも相談をして、航空協定に基づく少なくとも国内法規を守らない、そういう者に対する外交的な措置というのは何ら講じてない、こういうことですか。
  128. 山田隆英

    山田説明員 航空協定では空港の使用料を支払わないということだけで相手方の航空機の乗り入れを禁止することはできないと考えておるわけでございます。
  129. 小川国彦

    小川(国)分科員 航空協定そのものではそうかもしれませんが、少なくとも外交的な問題というのは、法的な外交の問題も、国際法、国内法の問題もありましょうし、それからもう一つは経済的な問題に対して外交的な措置をとるということは、私、当然あり得ると思うのですよ。現に日ソの漁業交渉だってそういう問題があるわけですね。国際法上あるいはまた海洋法会議の中の二百海里のルールに基づいて、操業停止という経済的な外交的な措置をとってきているわけでしょう。そういうように、日本が一切の航空会社に対して払わせている特別着陸料を外国航空会社が払わない、こういうことをただ裁判をやればいいということじゃなくて、当然外交的な措置がなされてしかるべきだと思いますが、外務省、運輸省の中ではそういう御相談はないのですか。
  130. 山田隆英

    山田説明員 これを外交交渉に持ち上げるかどうかということにつきましては、いまのところ特に外務省と御相談しておりません。ただし、たとえば日米航空交渉、現在行っておりますが、その中でこれについて話し合いをしているということは事実でございます。
  131. 小川国彦

    小川(国)分科員 いま羽田について新規乗り入れの申し出が非常にあるというふうに運輸省では言っておられるのですが、現実には、新規乗り入れの申し込み国があってもそれを制限しているということなんです。これは外務大臣でも外務省の方でもいいですが、外交関係において、それを制限しているということは何ら支障はないということでございますか。
  132. 山田隆英

    山田説明員 先生おっしゃいますように、現在羽田は非常に混雑しておりますので、原則として新規の乗り入れもしくは既存の航空会社の増便ということは認めないという方針で臨んでおります。その結果、諸外国との間では若干の問題が生じているというふうに私どもは考えております。問題と申しますのは、結局、空港事情がない場合には認めてしかるべき増便なり新規乗り入れというものが、空港事情のために一律に抑えられている、この結果、各国から非常に強いプレッシャーを私どもは受けておるわけでございます。
  133. 小川国彦

    小川(国)分科員 この問題は、外務省の外交ルートの、外国との国交上の問題としては支障がないかどうかということを承りたいわけです。というのは、先ほど運輸省に聞いておりますように、外国の航空会社が、特別着陸料というのを騒音対策に充当されるものとして支払いを求めているわけですが、一斉にこの支払いを拒否しているという事実があるわけですね。そういうことに対して、経済外交的な措置は運輸省としては何ら講じてないという実態にあるわけです。そしてまたその一方で、外国からの増便の申し入れについて外国にはいろいろ意見があるようだ、プレッシャーも多少あるようだということなんですが、一方ではそういう着陸料の支払いに対しては何ら要求はしないという状況にあって、一方では便数をふやせという要求が来ているわけですが、運輸省サイドが言われることは、こういう増便を断っていることは国際外交上きわめて支障があると言うのですね。一方から取れるべき税金が取れないでいて、増便の要求だけが来ている。そういう実態の中で増便を断るということが、外務省としては外交上支障になることかどうか、その辺の判断はどういうふうに——それらの問題は一切運輸省ぺースでやっている問題で、重大な問題ならこれは当然運輸省が外務省に相談をして、この増便問題にこたえないということは国際外交上儀礼を欠く非常に困る問題だからということならば、当然外務省に相談があってしかるべきだと思うのですが、その相談はないわけですね。
  134. 溝口道郎

    ○溝口説明員 着陸料の問題でございますが、これはもちろん先生のおっしゃるように、航空協定なり外交交渉なりという可能性もあると思いますが、当面は、まずできるだけ話し合いによって問題が円満に落着することが望ましいわけでございまして、運輸省を通じて相手の航空会社の説得を行っていらっしゃるということでございますので、これはもちろん究極的に外交交渉の対象になることも可能性としてはあると思いますけれども、まず話し合いによって解決することを希望しているということだと思います。  それから、新規乗り入れば、御指摘のとおり三十カ国くらいから申し入れが来ているそうでございますが、これはもちろん相手国の要望が非常に強いところもございますので、外務省としては運輸省にいろいろと検討していただいておるわけでございますが、これは国内的な事情もございまして、御指摘の羽田空港の混雑というような国内的な要因もございますので、この辺は相手国によく説明をいたしまして、状況まことにやむを得ないんだ、しかし、そういう相手国の事情も考えて、できるだけ早い時期にそういうことが実現するようにしたいというふうに答えておるわけでございます。
  135. 小川国彦

    小川(国)分科員 その申し入れをしてきております国は、何カ国くらいで、その交渉の程度は、公文書とかそういうもので来ているのか、強硬な方針で来ているのかどうか。  それから、いま伺うと、そういう増便の話が外務省に来て、外務省はそれを受けているようですが、特別着陸料を支払わないというような問題については運輸省段階でとどまっている。その辺は外務、運輸の連絡関係がそういう経済的な問題についてはないわけですか。
  136. 溝口道郎

    ○溝口説明員 いや、航空問題に限りませんけれども、運輸省と絶えず連絡をとって協議をいたしております。  それから、増便の問題と新規乗り入れの問題とございまして、新規乗り入ればサウジアラビア、イラク、ニュージーランド、フィンランド等、約三十カ国から申し込みが来ております。
  137. 小川国彦

    小川(国)分科員 結構です。その中に特別着陸料を支払っていない国の検討などはされていないわけですか。現在国内法に従う税金を払っていないという国は……。
  138. 山田隆英

    山田説明員 新規乗り入れの国は現在羽田に乗り入れておりませんので、着陸料は現在全然支払っておりません。といいますか、特別着陸料を拒否しているわけではございません。着陸料そのものを払う必要がないということであります。
  139. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、いままで来ている国からそれを滞納させておいて、今度新規の国からそれを取るというわけには当然いかないわけで、やはり皆さんの方で既存の外国のエアラインから当然取るべきものを取って——そういうものが解決をしていない段階で、国内的には騒音問題に対するいろいろな要望があって着陸料というものを決めたにもかかわらず、それを納めない、そういう状況の中でまた新規があるからといってそれを受け入れていったら、国内法規を無視されたまま外国便をどんどん引き受けていくということになりゃしませんか。
  140. 山田隆英

    山田説明員 特別着陸料につきましては、先ほど申し上げましたように、現在訴訟で争っておりまして、私どもとしてはこれをできるだけ早く解決したい、またこれで解決されるというふうに考えております。
  141. 小川国彦

    小川(国)分科員 まあ大変心もとない話で、一方で裁判をやらなければならないし、一方で受け入れなければならない。そういう態度では、私は航空政策に対して自信が持てないと思うのですよ。一方の問題は裁判で、一方は受け入れなければならないということについては、外務省もひとつ十分心して臨んでいただきたいと思います。  最後に一点、これは問題が違いますが、銚子沖におけるソ通船のごみ不法投棄の問題がございます。  これにつきましては、地元の銚子市を初め関係漁業団体から昭和四十九年の十二月に陳情がございまして、当時石田博英氏からソ連大使館に、森代議士から水産庁漁政部などに要請が来ておりますが、昭和四十四年から銚子沖におけるソ通船の操業の問題と大きな問題はごみ投棄、その不法投棄のために大変な被害を受けているというので、四十九年に始まって、五十年の二月四日、五十一年の二月、それから本年に至りまして五十二年の一月二十一日と、毎年外務省あるいは水産庁に対して漁業被害を救済してくれ、ごみの不法投棄をやめさせてくれという要請が出ておりまして、五十一年はごみ投棄によるいろいろな漁具、漁網の破損、漁場の被害が一億一千六十万、五十二年には漁獲損料、漁具損料合わせて七千二百六十六万、いずれも約でございますが、こういう漁業被害を受けているわけです。ところがこれに対する外務省の対応が、口頭で抗議をして口頭で回答をもらっているというやり方ですね。これでは、銚子漁民の生活をかけた問題が昭和四十四年から続いている、七千万も一億も被害が出ている、そういう重大な問題に対して、口頭で抗議をして口頭で回答をもらっているということでは何ら記録に残らないわけで、やはりソ連に対しても言うべきはきちんと文書で、外務大臣なり局長なりの署名入りの文書で相手国に抗議を伝え、そしてまたきちんとした文書で回答をとっていく、こういう外交のやり方でないと、昭和四十四年から起こっている問題が、毎年毎年漁業被害を受けて、この一月、二月には外務省、水産庁に陳情に来なければならない、こういう事態になっているわけで、外務省の毅然たる外交ルートの中での態度というものがなければならないのじゃないか。なぜ文書で抗議をし、損害の補償を要求し、文書で回答を求めるということができないのか、大変疑問に思うのですが、この点大臣なり局長なりから御答弁願いたい。
  142. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたとおり、近年ソ連の大規模な漁船団がわが国近海に操業いたします結果、漁網、船体等の破損及び特にただいまおっしゃいました廃棄物の投棄によりまして非常な損害を受けておりますことは事実でございます。これに対しまして、御承知のとおり一方におきまして、政府昭和五十年六月に漁業操業に関する協定をソ連との間に締結いたしまして、損害の賠償を請求するための委員会を設けて解決を図るというための協定でございますが、これができました結果、発効いたしましたのは昨年の暮れでございますので、まだ比較的日も浅うございますので、実際に解決を見て補償が行われたという例はございませんが、むしろこれは今日までは抑止力として働いた効果がございまして、かかる損害の数は大幅に減っております。  それからただいま直接にお尋ねの点でございますが、廃棄物につきましては、外務省はしばしばソ連側に抗議をいたしまして、最近におきましては、ことしの一月二十六日に外務省の東欧一課長がソ連の参事官を呼びまして、これは資料を付しまして一応書面で抗議をいたしておりますが、ただいまおっしゃいましたように、局長の署名入りあるいは大臣の署名入り、こういう種類のことはいたしておりません。これは重要性がないということではございませんけれども、事柄の性質上おのずからそういう形式をとったわけでございます。これに対しまして、実は昨年の二月も非常にきつい、厳重な抗議をソ連側にいたしまして、これに対しましてソ連側から、海洋汚染防止の観点及び損害防止、その他の観点から厳重に注意をする、こういう回答をとっておりますが、実はその後もソ連の廃棄物が大変に多くなりましたので、申し上げましたように今年また一月二十六日、二月九日二回にわたって抗議をいたしました。  それからこれは御参考まででございますが、ことしの二月十九日から三月二日にかけまして、千葉県庁と水産庁が協力をいたしましてこのような海中の投棄物の掃除をいたしました。この間三日ほど休んでおりますが、ソ連船の退去を命じまして廃棄物の掃除をいたしました。この結果現在廃棄物はなくなりまして、その後の様子はなお注目いたしておるところでございます。
  143. 金子一平

    金子主査 小川君、持ち時間が終了いたしましたので結論を……。
  144. 小川国彦

    小川(国)分科員 それでは結論として申し上げますが、いまの答弁を伺っていると、漁業被害が減ったような話をしていますが、一昨年が一億で、昨年が七千万で減ってはいないわけです。これは金額としてはいままでずっと上昇線をたどってきている。それからあなたはいま日ソの漁業損害賠償の請求処理委員会ができたとおっしゃいますが、六百件もこの審査が出ていてまだ一件も解決していない。銚子市の佐藤貞雄さんという人の第三共盛丸の事件などは、昭和四十九年十一月二十五日に事故が発生して今日までまだ解決を見ていない。四十九年十一月からですから、二年余りもかかって、七十九万の請求に対して書類作成料だけで五十万近くかかった。こういうことならもう請求しない方がいい。請求したために手間はかかる、金はかかる、結局かかった金が被害金額と同じ、歳月も二年以上かかる、こういう処理委員会では処理に出すだけむだではなかろうか、こういうことになっているので、この処理委員会の活用についてももう少し、外務省の指導のもとでやっているようですから、きちんとやるようにということと、それから、ミグ戦闘機が日本の領土内に入ってきたときなどは口上書できちんとソ連政府に抗議しているわけですよ。ミグ戦闘機の場合にはまだそれほどの大きな被害ともいえない。そういう状況でも口上書で外務省は抗議をしている。銚子沖に来ている船団は毎年来ているわけですよ。四十四年以来毎年来ている。しかもそれに外務省が抗議をしていてもさっぱりこの問題が解決されない。いまあなたは水産庁が予算をかけてごみをさらったというけれども、これは日本国民の税金でごみをさらっているわけで、外務省がきちんとソ連船あるいはソ連に対して抗議をしてそういうごみ投棄が完全に中止できるならば、何も日本の税金を使わなくても済むわけで、これは外務大臣外務省からソ連政府に、こういう漁民の問題は生活につながる重大な問題ですから、抗議をされるときはひとつきちっと文書をもって抗議し、文書をもって回答をもらう、こういうことを実施していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  145. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 銚子沖のごみ、特にかん詰のかんなどたくさんで、私も地元の漁業者の方にお目にかかりまして事情もよく伺いました。早速東欧一課長からデニソフ参事官に厳重に抗議を行ったわけでございます。この問題は漁民の立場からいえば大変な問題でございますので、御趣旨のようなことによりまして、私もこの形式のことはよく存じませんけれども、厳重な申し入れをして、先方も日ソ間の約束を守るということを言っておりますが、なおこういうことが起こりませんように努力をいたしたいと思います。
  146. 金子一平

    金子主査 本会議散会後直ちに開会することとし、この際暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  147. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査は都合によりおくれますので、その指名により私が主査の職務を行います。  外務省所管について質疑を続行いたします。小林進君。
  148. 小林進

    ○小林(進)分科員 それでは外務大臣にお伺いをいたします。  内閣の継続性の原則に立ちまして、前の三木内閣当時の問題について再確認をしておきたいと思って質問を申し上げるのであります。  それは、昭和五十年の十二月二十四日、「金大中氏の自由、その他に関する質問主意書」というものを前尾議長を通じて内閣に提出をいたしました。その内容の一部分についての政府の回答書が納得できませんので、改めて御質問するわけでありますが、それは、私の質問書の中にこういうことがあります。   外国公権力の日本国内における行為について、次の点を明らかにされた。  (1)金大中事件以後、外国公権力によって、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が犯された事例はあったか。  (2)もしあったならば政府はその事実にどう対応したか。  (3)韓国中央情報部のその後の国内の活動について、どのような調査を行い、どのような調査結果がでているか。  (4)その調査結果に基づき、どのような外交措置がとられたか。   以上四点を明確に答弁されたい。これが私の質問の趣旨であります。これに対して政府は、昭和五十一年の一月十六日、内閣総理大臣三木武夫の名において、衆議院議長前尾繁三郎を通じて回答書をお寄せになったわけでありますが、それによりますと、私がお問いいたしたことについて、  (1)及び(2)我が国において、外国の公権力の行使により、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が侵害されたような事例は承知していない。  (3)及び(4)政府としては、韓国中央情報部部員が日本国内に存在し、かつ活動を行っているとの事実はは握していない。したがって、特別の外交措置を執るという問題は生じていない。こういう回答をお寄せになっているのであります。この回答をいま外務大臣は訂正をする必要をお認めになるかどうか、お伺いをいたしておきたいのであります。
  149. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 小林委員御提出の質問主意書を拝読いたし、その回答も拝見いたしたわけでございますけれども、今日、金大中事件以後、外国の公権力によって日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が犯された事例は、私も承知をいたしておらないのでございますし、「(3)及び(4)」につきまして、ここに答弁書に書いてあるように、日本政府といたしましては、このような韓国中央情報部のその後の国内の活動につきまして把握をいたしておらない次第でございます。  予算委員会の総括質問におきましていろいろ御指摘があり、金大中事件そのものにつきまして現在なお捜査が継続中でございます。この事実の調査につきまして新たな確固たる証拠が出てまいるというような場合におきましては、わが政府といたしましてももう一度考え直すべきである、こう思いますが、現在までそのような新しい事実の発見が行われておらないという状態でありますので、御了承いただきたいと思います。
  150. 小林進

    ○小林(進)分科員 そういたしますと、どうも私は外務省の御答弁が納得いかないのであります。金大中事件以後とおっしゃいましたな。指紋のあらわれた金東雲のあの金大中拉致事件の問題は、一体どう解釈したらいいのでございましょうか。これは宮澤外務大臣のときもわかったようなわからないような答弁で終わっているのであります。確かに金東雲は、金大中拉致事件のときも、当時在日公館における一等書記官の地位におりながらこの拉致事件の主要なる役割りを果したというのか、果たしていない、関係はないが、まあ韓国公務員として姿勢その他が若干よくないからこれを公職の地位から追ったという意味なのか、この点はまだ外務省でも公式の答弁はないのでありますが、これは一体どういうことなんでありますか。
  151. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 金東雲氏の指紋と見られるものが発見をされたことは私も承知しておりますし、これが韓国政府の方に送られて捜査の有力な手がかりにされたと思うのでございます。しかしながら、結果におきまして証拠が不十分であるというようなことから、はっきりした犯罪事実が証明できなかったというふうに伺っておるのでございまして、私ども疑いが全くないというふうには解しておりません。そういう次第で、なお警察当局としてはほかの証拠の捜査を行っておる、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。
  152. 小林進

    ○小林(進)分科員 金東雲の証拠は出たが、まあ疑いはあるが、韓国の公権力のわが国におけるそういう暴力行為、不法行為はあったと証明はできない、こうおっしゃるわけなんです。まことに金大中という人が、公権力の活用もなければKCIAの活動も何にもない、忽然として独立国家わが日本から韓国の京城にあらわれたとしかあなた方はおっしゃらない。わが日本の国内にはいささかそういうような動きはないとあなた方はおっしゃる。私はそういうようなことで、そういう技術的な答弁で私どもをごまかしておいて、われわれの後ろにいる国民をごまかしておいて、それが通る世の中だとお考えになりますか、あなた。あなたのような理屈が通ったら日本の民主主義はやみですよ。石が流れて木の葉が沈むというんだ、外務省説明というのは。みんなあなた方は、木の葉が沈むような、そういうへ理屈ばかり言っているんだ。こういう厳然たる事実があるにもかかわらず、それを取り巻く一切の環境状況をすべて否定しておいて、それじゃ私は言いますけれども、レイナードがアメリカの議会で特に宣誓している。アメリカの議会における宣誓と日本の議会における宣誓とは、宣誓の価値が違いますぞ。アメリカの議会は、キリストの名において彼らが宣誓するときには、キリストの名にかけてうそは言わない。その宣誓をした上に何回も、この日本における金大中事件その他に関連してKCIAの活動があるんだ、韓国中央情報部の活動があるんだということを繰り返している。しかしあなたはそれを肯定されない。いいですか、なおかつ、駐日韓国大使館員がいかにKCIAの二枚鑑札を持ちながらわが日本においてわが国主権の独立を侵すような活動をしているかということをしばしば繰り返されている。鳩山さん、それも認められませんか。そんなこと全然ないですか。どうですか、みんなないとおっしゃるのですか。
  153. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども先ほどから、そういう証拠を把握してない、あるいはそういう事実を把握してないというふうに申し上げておるのでございまして、そのようなことは全く、天地神明にないんだというふうに確信をしているということではないのでございまして、やはり外交当局としてそのようなことを申し上げるには、確固とした確証があってでなければそういうことはなかなか申し上げるべきでないということで、そういう意味で申し上げているのでございます。
  154. 小林進

    ○小林(進)分科員 あなたは、金東雲だけの問題に関連して疑いはあるとおっしゃるんだ。四十九年からも五十年も疑いがあると言うんだ。あるんなら、その疑いに対して、これほど日本国民は挙げてそういう日本の主権が侵されたということで悲憤懐慨をしているんだから、積極的にその疑いを解く姿勢を示したらいいじゃないですか。晴れ晴れしたんじゃない、疑いはありますということだけで 、あなた方は永久に日本の国民と日本の国会をごまかしていく考えでいらっしゃるのですか。一体どう処置されるつもりですか、それじゃ。そのうちにまた宮澤君のように外務大臣をやめていったら、後は野となれ山となれ、それでごまかしていこうとあなたはおっしゃるのか。頭の上でおじいちゃまが泣いていますよ、あなた。明確に答えてください。そんなことじゃいけません。
  155. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 事件は、刑事事件が起こったわけでございまして、刑事事件につきましては警察当局が捜査を続行しているわけでございます。やはりこの種の事件は、捜査当局がそういった事実をつかんでもらわなければ、私ども外交当局として、それを基礎に主張するわけにいかないものですから、先ほど来そのようなことを申し上げておるのでございまして、なお捜査の究明に私は警察当局に努力をしてもらいたいというふうに考えておる次第でございます。
  156. 小林進

    ○小林(進)分科員 警察当局、お見えになっていましょうから、その後の経過をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  157. 城内康光

    ○城内説明員 本件捜査につきましては、被害者及び重要関係者がわが国にいないという困難な状況にありますが、警察は現在も捜査体制を保持し、捜査を継続中でありまして、新たな情報の掘り起こしと裏づけ捜査、関係者の洗い直し、既存捜査資料の再検討及び補完捜査などによりまして、共犯者の割り出し、連行ルートの割り出しに努めておるわけでございます。
  158. 小林進

    ○小林(進)分科員 もう警察庁からも同じ答弁を耳の痛いほど聞きました。言葉は山ほどあれども、何とも捜査の内容は進展しない。これは、私どもはだんだん疑惑を深めると同時に、不愉快にならざるを得ないのでございます。それほど何十回もおっしゃるんなら、一言くらい新しい事実をひとつお持ちになったらいかがですか。  そこでまた私は同じことを言うのですが、外務大臣、同じことを言うのですよ。韓国の中央情報部が——これも五十一年の一月三十一日の速記録だ。速記録ですが、それは韓国の中央情報部の発表なんだ。その中央情報部は「当部は」と言っている。「当部は、いわゆる韓国中央情報部は、その間、日本大阪を中心とした関西地方一帯に北傀、」北の鬼というのです。「北朝鮮の対南工作拠点が暗躍中という端緒を捕促し、犯証、犯罪の証拠を継続収集しながら鋭意注視してきたが、一九七五年十月初旬、韓国青年同盟大阪生野支部国語教師として従事したことがあり、大阪韓国青年会議所広報委員職にある間諜白玉光が青年会議会議参席名目で国内」国内というのは韓国であります。韓国内「に潜入し暗躍中であることを確認、検挙することでこれら間諜団を一網打尽にするに至りました。」とこう言っている。中央情報部がいかに日本国内においてそういう捜査活動をしたかということは、彼らみずからが語っているんですよ。なお続けて「特に、日本大阪を中心とした関西地方には、在日同胞六十余万中約五〇%に該当する三十万七千名が居住しており、朝鮮総連組織活動が他の地方に比べ強勢である点等から見て、日本大阪を中心とした関西地方でも北傀の対南工作拠点が間違いなくあるものと判断し、鋭意注視観察してきた当部は、七五年二月中旬本事件に関する端緒を捕捉し、一年近い内査工作を通じ、この事件の嫌疑事実に対する確証を得ることができた。」こういうふうに「内査工作を通じ」てと言っているんだ、これは。内査工作というのは何かということを聞いたら、日本語で言えば内密の捜査を続けてきた、こういうことなんだそうでございまして、これは完全なる警察活動です。こういう、中央情報部がこのように活動しましたということを公式に発表しているんだから、それを日本外務省や捜査当局が、そんなことはいささかも証拠がないから知りません、存じませんと言って過ごして一体いいことですか。私はそれを言っているんだ。この回答こそは実に、頭隠してしり隠さず、ずいぶん人を小ばかにした回答ではないかと私は申し上げたい。  そこで外務大臣にお尋ねしますけれども、これは五十年の十月二十三日から十一月にわたって、一週間ぐらい継続的に韓国中央情報部が発表した、その公式の記録から私は持ってきて質問しておるのです。当然外務省はおありになるはずでございますから、この韓国中央情報部の記録をそっくり私の手に御提出を願いたいと思いますが、いかがなものでありましょうか。
  159. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 調査いたしまして、入手いたしましたならば御提出申し上げます。  なお、この件につきまして、いまお読み上げになりましたような、KCIA自身がそのような発表をしているということであれば、これは大変不当な、不法なことであると考えます。  当時のことで、とりました措置につきましてアジア局長から御答弁申し上げます。
  160. 中江要介

    中江政府委員 ただいま小林委員の御質問の中にございました中央情報部の発表というのは、私どももその時点で大変これは問題であるということで、早速在京の韓国大使館の高官を呼びつけまして、何事であるかということを調べさせました。調べさせましたところ、向こうから本国政府に照会してきた報告というものを私のところに伝えてきましたところによりますと、これは中央情報部が嫌疑をもって逮捕した在日韓国人の自白その他からつづり上げたものであって、韓国情報部が公権力の行使として捜査をやったというものではないという説明でありましたが、私どもは、それでは必ずしも釈然としない、もしそういうことが実際にわが国で行われているということがはっきりいたしますれば、これは公権力の行使として厳重抗議をし、しかるべき措置をとる必要がございますし、かりそめにもそういうようなことがあるということであれば、これは韓国としても容易でないということを厳重警告したという状態でいまに至っておるということでございます。
  161. 小林進

    ○小林(進)分科員 外務大臣、お聞きのとおりであります。確かにこういう中央情報部の公式発表があったということは、いま局長が言ったとおりであります。けれども日本外務省がそれに対して大使館を通じて文句を言ったら、そういういま捕えられた人たちの自供とか自白とか、そういうものをもとにしてつづった公文書であって、何も中央情報部自体が日本の中にスパイ活動とか捜査活動をして、そしてつくり上げた公文書ではないという言いわけがはね返ってくる。いかにも子供だましのようなそれは言いわけでございますよ。そういうような言いわけを聞きながら、わが日本の独立が侵されているということを、そんなつまらない言いわけで問題を打ち切られているという政府の弱腰、それが一体どこに原因があるのか、これがわれわれはわからない。外務省も弱ければ、またそういう子供だましのようなごまかしの理屈を聞いては、どうも捜査当局の捜査の方針が進展をしていかない。三年一日のごとく回答を繰り返しておられるということは、どうしても納得できません。  そこで、繰り返して言いますけれども、それはいずれにしても公文書であることには間違いはないのでありますから、中央情報局の発表の公文書を全文ひとつ資料としてちょうだいいたしたいと思います。これを強く要望いたします。委員長、確認をしていただきたいと思います。
  162. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 外務省、いまの資料提出、よろしゅうございますね。
  163. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 入手いたしましたならば必ず提出いたします。
  164. 小林進

    ○小林(進)分科員 あと時間はどれくらい——六分ぐらいしかないのか、だから困っちゃうのだな。まだ第二問ですわ。  外務大臣、わが日本の安全と国防の問題について、これも私は何もいま新しく言うのじゃないのですが、この前の外務省質問したけれども、三木内閣のときについに明確な答弁が返ってこなかったから、私はいま一度繰り返す。  地域の上においては日本が一番不利な状況にある。それは何かと言えば、北のクマ、西のパンダ、東のヤンキーという、アメリカとソ連と中国という三つの大国の、谷間という言葉はどうか知りませんが、その中に日本が位置しているということが、日本が地域的に一番不利な状況にある。われわれは、国防を論ずるにも平和を論ずるにしても、この三つの国にはさまれているという現実の上に立って、国防も論じなければならぬ、平和も論じなければならぬ、私はそう思っている。この問題は、私は何もここで言うのではなくて、たとえば私も一昨年アメリカあたりへ行って、やれシュレジンジャーだの、やれいまの補佐官になった何スキーだとかいう、そういう人々と話をするときにも彼らが言った。何とかいう、あのときは原子力何とか局長をやっておりましたけれども、それなども言う。日本とアフリカや南米あたりに位置する国と同格に考えてもらっては困るということは、向こうも言うし、こっちも言う。  それで日本の安全を考える場合に、どうしてもニクソンと周恩来の共同声明、上海コミュニケ、それから田中・周恩来の日中共同声明、これを政治の面で生かす努力をなぜしないかということを私はしばしば言った。三木さんにも言ったけれども、これはあなたの後ろにいる山崎君なんかが知恵をつけて、愚にもつかない答弁だけをはね返してよこすのだけれども、ともかく日本と中国との間にいま問題になっている共同声明の第七項目、日中両国間の国交正常化は第三国に対するものではない、これは宮澤もごまかしてしまって、宮澤はつまらない四項目なんか出したけれども、最初のときからこんなものは必要ないのだ。「第三国に対するものではない。」と言っているのだから、特定国を相手にする云々なんということを四条件の中に入れる必要がないのに、宮澤というのは日中平和友好条約をやらないための理屈をこういうところから持ってくる。「第三国に対するものではない。」と言っているのですから。「両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」きちっとこう言っている。アジア・太平洋地域に覇権反対の平和な地域をつくろう、こういうことを言っていますね。これは日本と中国です。今度はニクソンの上海共同コミュニケの中にもちゃんとこういうことがあるわけだ。どちらの側も、アジア・太平洋地域で覇権を求めるべきではないと言っているのだ。いずれの側も、いかなるその他の国あるいは国家集団がこうした覇権を打ち立てようとすることに反対する、こう言っている。これは中国もアメリカも、太平洋地域における覇権に反対する、他国の主権を侵さない、他国の領土を侵さない、他国の主権に干渉しない、武力を用いない、こういうことをちゃんと言っている。日本アメリカと中国と三つの国の間で、アジア太平洋地域ですから日本海も含めて、この間には暴力も用いないし他国も侵略しないぞという約束をしているのだから、四つの国の中の三つの国がこんなりっぱな約束をしているのだから、残るのは一つだけじゃないか、ソ連だけじゃないかというのだ。そのソ連に対しても、お互いにひとつアジア・太平洋地域に覇権国家にならないでおこうくらいの共同声明をなぜつくらないのか。それをやるのが日本のあなたの仕事じゃないか、福田内閣の仕事じゃないかというのだ。そうすれば、日本海もアジア・太平洋地域も、四つの国がみんな覇権国家にならない、武力を用いない、他国の干渉はしない、領土は侵さないと約束してくれれば、そこで初めて日本の永遠の平和ができるのだから、その約束に入らぬのはソ連だけなんだから、そのソ連に堂々と交渉したらどうかというのです。  どうですか、私のそれ。その私の要求をあなた政治日程にのせますか。宮澤みたいに船に乗っていって北方領土をこんなしてながめて帰ってくるだけかね。そういうことじゃだめなんだ。外交というものは哲学だというのは、私はそれを言うのですよ。鳩山さん、おやりになりますか、あなたは。
  165. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 小林先生の御意見はよくわかりましたし、また、貴重な御意見だと思います。ソ連との間に覇権反対という交渉を行うべしという御議論は、小林先生のほかにもいろいろ新聞紙上等でも拝見をいたしておりまして、一つ考え方であると思います。私ども、日ソ間の問題になりますと、北方の領土問題がどうしても未解決の問題として、この解決を図らなければならない、これは日本民族としての悲願でありますので、この反覇権の問題につきましていまのような御意見はまことに貴重な御意見でありますけれども、領土問題等との関係もありますので、これはひとつ検討させていただきたい。この場で申し上げることは、ちょっと不用意なような気がいたしますので、検討させていただきたいと思います。
  166. 小林進

    ○小林(進)分科員 時間もありませんけれども、今度は福田さんもアメリカに行くんだし、ぼくらもその話をしたのですよ、日本アメリカと。中国もその気でいるんだ。一緒になってひとつソ連をくどこうじゃないか、くどいて、われわれが覇権主義反対で日中の平和条約を結ぶと、ソ連がむしろ反対して、おれらの国をねらうだろうなどういうそういうふうな気を回されるようなソ連に対して、おまえの国も覇権主義反対の仲間に入ったらいいじゃないか、そうしてお互いにひとつ他国の侵略をしないような話をしよう、アメリカもやってくれ、われわれもやります、こういう話がなぜできないかということを言ったら、アメリカは全面的に共感の意を表してくれましたよ。しかし、アメリカ一国でそれをやったところで、こっちも原子力の核の交渉でもって忙しいから、SALTの交渉でもって忙しいからなかなかそういう手は回りませんけれども、アイデアとして非常に結構なことですと言ったんだ。外務省だってそうでしょう。あなたの先輩だろう、法眼などというあれなんかも、やはり堂々とソ連交渉を行うべきだ、覇権反対の主張でどこに間違いがあるんだ、何もソ連の特定の国をわれわれは相手にしているわけじゃないんだ、堂々と交渉すべきであるという主張者も外務省の中にもちゃんといるんだ。それをやればいいじゃないですか。ましてや、あなたは何ですか。なかなか頭脳がいいけれども、技術屋、熟練工だけれども、そろばん玉ばかりはじいてきた大蔵官僚だから、外交というものはそろばん玉じゃないのですよ。信念であり、哲学であり、行動なんだよ。しかもあなたのおやじさんがソ連へ行ってあのソ連のいわゆる国交正常化をやってきたのだから、歴史的功績を上げたんだ。私どもは外交を考えるときには、田中角榮、日本国内においていままさに裁判闘争で憂き身をやつしているといえども日本と中国との国交をやはり正常化をしたというこの実績だけは歴史に残る。あなたのおやじさんも、やはり日本とソ連とのいわゆる国交を正常化したというのは、これはやはり戦後のわが日本の歴史の上で一番大きな仕事です。大変な仕事です。そこへ、そのせがれたるべき外務大臣がいみじくもおやじの遺志を継ぐような立場に立ったということは好機だ。単なる北方領土などということも、重要です、事務屋の立場では重要だが、それより先にやはりこうした大きなひとつアイデアでもって、アジア、太平洋、日本海の地域を覇権主義反対の原則に立ってまず平和の道を開くという正々堂々と交渉を進められないかというのですよ。入る道は幾つもありましょうけれども、ここから入っていったらどうか。あなた、今度総理大臣について一緒にアメリカに行かれますか。もし行かれるならば、われわれは民間外交として覇権主義反対を、日米民間の力でひとつソ連をくどこうじゃないかという道をつけてきたのですから、あなたも政府立場でそれをひとつやってみられたらいかがですか。いまこれを要求することは間違っていますか。この筋は間違っていますか。間違っていないでしょう。間違っていないならば、せっかくできた共同声明だ、日、米、中国の三つにまたがるこの共同声明を単なる文章に終わらせないで、政治の日程にのせたらよいではないかということを私は言っているのですよ。  もう時間来ましたか、委員長。
  167. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 時間です。
  168. 小林進

    ○小林(進)分科員 そうですか。それでは時間が来ましたから、いま一つつけ加えてやりますよ。  いま、みじくも外務省からこれをもらいましたから言うけれども、こういうことを言うと、何だ、現実に即してないと言うけれども、即しているか即していないかということで私は資料をもらったのでしょう。この資料に、一九五〇年、昭和二十五年四月六日にマッカーサー司令官は、当時の日米安保条約に関連して、アメリカ日本に常時軍隊を置くことに対して反対したじゃないか。マッカーサーは、やはり日本という国の安全と平和と対アメリカ立場から考えたら、米軍日本に存続するのは誤りである、マッカーサー自身はむしろアメリカの軍隊なんか日本に置かない方がいいという考えである。しかし国防省からの圧力によって、そのマッカーサーに本国の国防省からの圧力があって、少数の基地を日本に維持することはある程度同意しなければならないと、マッカーサーが占領軍を日本に置くことにやむを得ず賛成した、こういうマッカーサーのメモも出ているのであって、この意味からいっても、やはり日本という国の永遠の平和は、アメリカの軍隊、ソ連の軍隊たるとを問わず軍隊を置かない方が日本のために一番安全だということは、このマッカーサーのメモによっても明らかになっている。
  169. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 持ち時間が終了しましたから、結論を……。
  170. 小林進

    ○小林(進)分科員 はい。それでは、その問題も含めて、ひとつ外務大臣の決意を承っておきたいと思うのであります。
  171. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほどのソ連との間に反覇権の話し合いをすべきだ、こういうお話でございまして、これは傾聴に値する御議論だと思います。ただ、先ほど申し上げたのは、ソ連との間に新しい話し合いをする場合には、どうしても日本としては領土問題というものをまず第一に考えなければならないということもあわせ、そういった事情にあることを御理解を賜りたいと申し上げた次第であります。  それから日中の平和友好条約締結問題につきましては、これはもう私ども鋭意努力いたしまして、御期待に沿えるように努力いたす所存でございますので、これはソ連との話し合いがいかになろうとも、日中の問題は日中として解決をいたす所存であるわけでございます。  また、マッカーサー元帥の昭和二十五年のときの外交機密文書が公表されたというので、これにつきましては、私どもとしては大変興味ある史実であるというふうに拝見しております。ただ、私どものこれに対する意見というものは、特別ここで申し上げるほどの意見を持っておらないのでございます。  以上でございます。
  172. 小林進

    ○小林(進)分科員 時間が参りましたからこれでやめますが、委員長、きょうはこれでやめるということでございます。
  173. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 ありがとうございました。  次に、寺前厳君。
  174. 寺前巖

    ○寺前分科員 私は、きょうは金大中事件のその後についてお聞きをしたいと思います。警察庁や法務省からもお見えでございましょうか。  二月二十二日、新聞を読んでおりましたらこういうことが書かれておりました。福田法務大臣は二十二日の閣議後、院内で福田総理と会い、そしていろいろ日韓癒着問題などに対する協議をされた後で、記者団に対して、首相には文明子女史と李在鉱氏と連絡がとれたことを報告したと述べるとともに、二人にはいずれ会わなければならないだろうという記事が載っておりました。私は、この二月二十二日の記事を見ながら、どういう内容の報告を法務省はおやりになったのか、そして、いずれ会わなければならないとおっしゃっているのだから、どういう方法で、どういう目的を設定されて、いつごろを目途に会われようとしておられるのか、その内容について具体的にお聞きをしたいと思います。
  175. 石山陽

    ○石山説明員 お答えをいたします。  ただいまの寺前委員の御質問にあります新聞にそのような趣旨の記事が出たということにつきまして、ただいま手元に資料は持参いたしておりませんが、私もそのように記憶ございます。  実はあの記事を見まして大変びっくりいたしまして、そのようなことを外務省当局でない法務省が直接総理に申し上げたことの真否ということがありましたので、一応確かめましたところ、私の理解する限りではそれは表現が少しおかしいのであって、外務当局の方で調査の結果について御報告があったということを聞かれたので、そういうことがあったようだというふうに仰せになった言葉、表現が、直接法相から申し上げ、直接何々すべきだという法相自身の御意見のように伝えられたように承っておりますので、前提がいささか違うのではないかというふうにとりあえずお答えいたしておきたいと思います。
  176. 寺前巖

    ○寺前分科員 そうするといまのお話はどういうことなんですか。外務大臣が何か報告をされたということなんですか。ちょっとよくわからないのですが。
  177. 石山陽

    ○石山説明員 その点につきましても実は私ども確認はいたしておりません。この件につきまして大臣からじかにその点を伺っておりませんでした。申しわけございませんがその点の確認はいたしかねます。
  178. 寺前巖

    ○寺前分科員 それでは外務大臣は何か報告をされたのでしょうか。それから外務省としてはこの件に関してどうなんでしょうか。
  179. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ちょっと新聞記事を拝見しないとわからないかもしれないのですが、その新聞はいつの新聞でございましょうか。
  180. 寺前巖

    ○寺前分科員 二十二日の新聞です。(寺前分科員、新聞を示す)
  181. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもの記憶によりますと二月二十二日は、参議院の予算委員会質問がございました。で、予算総括のときに質問がございまして、私が文明子女史に面会を求めるよう在米大使館に訓令をしたという答弁をいたした日になっております。それは恐らく答弁をする前に答弁の打ち合わせをしたときの記事ではなかろうかという私の感じでございます。そしてそのときのことを思い出しますと、調査をするか、こういう予算委員会における御質問でございましたので、調査ということは、これは外国のことでございますので、外交ルートを通じましてわかるだけのことはいろいろ照会してみよう、こういうことをお打ち合わせした記憶がございますので、そのときのことではないかというふうに思います。
  182. 寺前巖

    ○寺前分科員 それで、そういう訓令をされて連絡がとれたのでしょうか、あるいはとれてないとするならばどういうことになっているのか聞かしてくれますか。
  183. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これもその後の予算委員会におきまして、その後の経過を御報告申し上げました。そして、文明子女史には電話で連絡がとれましたので、そのときの応答につきまして御報告をいたしました。  そのときの文明子に関しまして、次のような報告がアメリカ大使館からあったのでございます。  金大中事件の背景に関して自分——自分というのは文明子女史でありますが、自分が二月十六日付朝日新聞等に掲載された共同電の中で語った内容は、金炯旭氏から自分が聞いたものである。金大中事件に関連する情報としては、自分はこれ以外にも多くの情報や資料を持っており、その中には金炯旭氏から聞いたものも含まれているという先方の話を聞き、そこで在米大使館からは、かかる情報や資料を日本政府に提供する用意があるか、こう尋ねましたところ、先方は、自分は日本政府のために働いている者ではないし、かつまた、金大中事件に関する情報や資料は、日本の当局が当然持ち合わせているはずのものであり、ジャーナリストたる自分としては、自分の持っている情報や資料を日本政府に提供しなければならぬ筋合いにはないと思う、こう述べたという報告が参った次第でございます。  以上でございます。
  184. 寺前巖

    ○寺前分科員 李在鉉はどうなんでしょうか。
  185. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 李在鉉氏につきましてやはり在米大使館を通じまして照会を行っておりましたところ、報告が参りました。李氏が述べたのは次のとおりでございます。  ソウルの地下鉄建設に絡む政治リベートの問題に関し自分が日本の新聞記者に語った内容は、自分が韓国において実業界及び政府関係者と話している際に得た情報である。政治リベートの存在は、韓国の実業界や政府関係の間では公然の秘密となっていた。地下鉄建設問題に関係した日本のビジネスの相手方等はこのような事実を知っているはずであると思うが、自分は直接日本関係者らか得た情報は持ち合わせていない、こういう報告が来ております。
  186. 寺前巖

    ○寺前分科員 いま連絡をとられた内容について、いろいろ資料を提供をする筋ではないけれどもこれ以上のものを持っているということが文明子女史からある、あるいは李在鉉氏もいろいろ持っておられるという状況の中で、警察庁にちょっとお聞きしたいのですが、参議院の質問のときに、レイナード証言なりあるいは文明子女史の発言について日本政府はこれを軽々には見ない、十分な関心を持って捜査の参考にしていきたいということを御答弁なさっておったように思うのですが、これを新しい捜査の進展のために採用していくという決意を持っておられるのかどうか、まず最初に聞きたいと思います。
  187. 城内康光

    ○城内説明員 警察といたしましては、捜査に資する情報はどんどん積極的に入手していきたいというふうに考えております。  ただ、本件の捜査につきましては非常に困難な状況があるわけでございます。すなわち、被害者及び重要関係者が国内にいないということでございます。これまで外務省を通じて調査をしていただいた結果も受けておるわけでございますけれども、新しい事実関係を得るには至っておらないわけでございます。
  188. 寺前巖

    ○寺前分科員 そこで、どんどん積極的に入手していきたいというけれども、困難な事情がある。そういう困難な事情のもとにおいて文明子女史が金炯旭元KCIA部長とのインタビューの取材の結果得た情報として明らかにされたものとして、金大中事件の拉致実行責任者は金在権元駐日公使である、実戦指揮の実行者は手振元元KCIA工作第一団長である、尹英老駐日大使館参事官、金東雲駐日大使館一等書記官、柳春国同じく二等書記官、劉永福横浜韓国総領事館領事の六名の名前を挙げておられます。これはもうきわめて具体的な人物を挙げての問題提起ですから、当然積極的にこれを調べる必要があると思いますが、私はここで警察庁に聞きたいのです。これらの諸君は現在どこにいるのでしょうか。それぞれ、一人一人についてお答えをいただきたいと思います。
  189. 城内康光

    ○城内説明員 ただいまも文明子が金大中事件に関しまして犯人だという個人名を挙げておりますことは私ども承知しておりますが、その六名が現在どこにいるかといった状況は、私どもはまだ把握しておりません。
  190. 寺前巖

    ○寺前分科員 積極的に集めたいと言われても、どこにおるかということもわからないようでは、捜査に進展を見ることができないのじゃないでしょうか。  私どもの参議院議員の橋本君が過般アメリカへ行きました。そして、金在権についてはアメリカのロスにおるということまで、家までちゃんと見てきました。政府機関でない人間がちょっと手を出しただけでも調査をすることができる。ですから、全面的にこの事件を解明する上で、名前の出てきた諸君たちについて、どこにおるのだ、これはアメリカにおる、これは韓国の本国におる、あるいは日本におる、一人ずつどこの国に存在しているかということぐらいは知っておらなくして、どうしてそれを外務当局に依頼をして進めることができるでしょうか。そういうことになったら、この前の二月二十二日の質問で刑事事件として追及していくと言っても、現実にはどこにおるかわからないようなことで、どうして追及することができるでしょうか。全然知らないのですか。改めて聞きます。
  191. 城内康光

    ○城内説明員 所在を確かめるためにも内外のいろいろな情報に十分な関心を持って把握に努めているという段階でございます。
  192. 寺前巖

    ○寺前分科員 この情報が出てからだけでも、もう一月からたってきているわけでしょう。情報を収集している程度だということではいけないのじゃないでしょうか。先ほど言いました私どもの橋本参議院議員一人とってみても、具体的に家まで明らかにしてきていますよ。やる気だったらできるのじゃないですか。日本には外務省があって、ちゃんと外務省の在外公館がある。所在地ぐらいは積極的にすぐ調べるべきじゃないだろうか。これはすぐに調べますか。調べないようでは、捜査の進展がないじゃないですか。  そして私は、同時にあわせて聞きたいと思います。二月十四日に三井警備局長は、犯人については「もとより証人あるいは被害者、目撃等がありますので、人数は六名とわかりましたけれども、」云々という発言がなされておりました。そこで、ここで具体的に六人まで名前が出てきたのだから、この六人の人の顔写真も準備することができるでしょうし、現に日本の国内にも目撃者がおるのだから、そうしたら、この言われた六人の人について本当に疑わしき人物として位置づけて、この顔写真などでもって照会をするということをやることができるんじゃないでしょうか。本当に積極的に捜査をするというのだったら、そういう照会をやったらどうなんですか。やったのですか、やってないのですか。警備局長自身が目撃者がおるということを明確に言っているじゃありませんか。日本の国内でもそういう捜査はできるはずです。その点はどうなっていますか。
  193. 城内康光

    ○城内説明員 犯人グループにつきましては、警察はこれまで金東雲元書記官については犯行に加担した容疑が濃厚であることを把握しておるわけでございまして、そのほか劉永福元領事所有の車両が犯行に使用された疑いがあることをつかんでおるだけでございます。その他の人物につきましては、もちろん現場付近の聞き込みなどをやっているわけでございますが、それを把握するには至っていないという状況であります。
  194. 寺前巖

    ○寺前分科員 私はそう言っているんじゃない。新しく文明子女史とか季在鉉氏などから具体的に名前まで出された。参考にすると警備局長は言っていたじゃないか。国会で、参考にするとまで言い、刑事事件としてあくまでも追及すると言っておるのだったら、具体的に名前が出た六名について、目撃者が日本におるということも警備局長自身が言っているのだから、そうしたら当然顔写真などを持って、こういう人物がそのエレベーターに乗っておったのか聞くべきじゃありませんか。何もやっていないのだったら、参考にするというのは言葉だけであって、何もやっていないということになるじゃないか。素人のぼくらだって、そうか、重要な犯人かと言うたら、すぐにそうやって調べますよ、この男か、この男見たか、違うたかと言って。これ、違うのですか。あなたたちは本当にまじめにやっているのかどうか。これについて、目撃者に顔写真の方法などをもって何もやらなかったのですか。
  195. 城内康光

    ○城内説明員 文明子氏の発表内容が真実であるかどうかということもやはり問題でございまして、文明子氏の発表内容というものがいわゆる伝聞になっているわけでございます。そういうことで、金在権氏あるいは金炯旭氏からさらによく事情を聞いた上で措置すべきであるというふうに考えております。
  196. 寺前巖

    ○寺前分科員 事情を聞くという問題、わかりました、事情を聞きたいとおっしゃるのね。  もう一つは、事情を聞かなくても、一般の捜査でも、知り得た情報をもとにして写真を十枚ほどぱあっと見せて、この中で乗っておった人、あなたわかりませんかと言って、やるじゃないですか、普通の刑事捜査のときに。そうすると目撃者は、これ、見たような人だ。そういう捜査の仕方は素人目にもわかるところの普通の捜査としてあるじゃないですか。日本の国内に目撃者が明確に存在しているというのだったら、なぜその初歩的な捜査の仕方をしないのか私は不思議でかなわない。あなたらは専門家でしょうが。そう思わないか。ぼくら素人目にはそう思いますよ、調査したいと。名前が上がってきた、その顔写真もわかってきた、そうしたら、これ、目撃しませんでしたか、普通はそうやって捜査をしますよ。ぼくは改善すべきだと思いますよ。本当に捜査をしなければならない。それが一つと、もう一つは問題を提起された人にお会いしたい、この二つが存在をするのが当たり前だとぼくは思う。  改めてもう一回聞きましょう。本当にそういう捜査の仕方は何でしないのか私はわからない。何でそういう普通にやる捜査の仕方をしないのか。するのかしないのか。
  197. 城内康光

    ○城内説明員 先ほども申し上げましたように、事件が発生しまして即刻現場付近の聞き込みなどを丹念にやっているわけでございます。それからまたいろいろな遺留指紋の捜査なども徹底してやっておるわけでございまして、われわれとしては金大中氏の逮捕、監禁、略取事件を純粋に刑事事件的な手法で現在捜査しているわけでございます。
  198. 寺前巖

    ○寺前分科員 何回同じことを言わすのですか。それは前にそうやってきたわけでしょう。金東雲までわかったと言ったのですよ。ところがその後具体的に名前が出てしまったのですよ。しかしそれは信用できるかどうかわかりませんとあなたはおっしゃる。だからせっかく出してくださった情報については、局長も参考にしたいと言っている。しかし同時に、出てきた話というものは、日本の国内に目撃者がおるのだったら、その目撃者に対して照会するという活動があってしかるべきじゃないですか。新しい時点に立って聞いているのじゃないか。あなたは人の話を聞いているのか。新しい時点に立って参考にしたいというのだったら、それを基礎にして照会して捜査をやったらどうなんですかと私はきわめて簡単に聞いているのです。
  199. 城内康光

    ○城内説明員 細かいことは把握しておりませんが、当然写真を入手したりあるいは指紋を入手したりしている者につきましては綿密な捜査が行われているというふうに承知しております。
  200. 寺前巖

    ○寺前分科員 細かいことはわからぬ、それでは照会して捜査しているのか。
  201. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 警察当局に対する御質問でございますが、私どもの現在の状況をちょっと御説明申し上げまして御理解いただきたいと思いますが、実は文明子女史の話の中から金炯旭氏、金在権氏の名前が出てきたわけでございます。そしてこの二名はどうも現在アメリカにおるらしいという情報であります。  そこで、警察当局といたしまして何らかの措置をとるにはやはりそれだけの理由が必要でありますから、外国におる方を捜査するという問題になりますと、やはり両国間の問題になります。そういうわけで、金炯旭氏、金在権氏という二人から、普通の外務省の仕事の範囲内でもう少し情報がとれないか。できたならば本人に面会を求めて、そして本人が確実な証拠なりなんなりになり得るかという点につきまして何らかの判断がほしい、こう思っておったわけでございます。そういう趣旨で、これは普通の外交の問題と違うものですから、私どももまたさらにアメリカ大使館の方に照会したわけでございますが、その点につきましてアメリカの国務省当局ともいろいろ話をしたわけでありますが、現在大使館におきましては住所等を把握しておらないのであります。そしてその住所等の調査を国務省の方に依頼をしたのでありますけれども。その段階におきまして積極的に国務省が動くということばいかがなものであろうかとむうことになりまして、現在のところ両名の所在につきましては、まだそれを日本側に提供するということは国務省としては不適当だという判断をしたというのが現在までの情勢であります。  そこで、当方としては何らかの接触をとれないかということになってそのまま今日まで経過しておるわけでありますが、そういった段階で、どうも大使館の方としてはこれ以上進めるのがなかなかむずかしい段階にいまきたということでありまして、さてこれからどうすべきかということは検討中の段階でございます。
  202. 寺前巖

    ○寺前分科員 それでは外務大臣に重ねてお聞きをしますが、先ほど文明子女史が、日本政府に対してそれについていろいろ報告する立場にないということを言っておられた。ですから、当然のことながら日本におけるところの調査活動は、日本の内部の調査活動を積極的にやってないと、外国に対して依頼する場合だって依頼しにくいというのが当然だろうと思うのです。そういう立場から言うと、私先ほど警察庁に何度も聞いているのだけれども、新しい時点に立って具体的に名前が六名出てきた、日本の国内に目撃者がおるということになれば、日本の国内におる目撃者に照会をして、あの提起されている事実は本当なんだろうかという調査をみずからの国内でできる範囲のものをやってもらわなかったら困る、という立場外務大臣としては——外国にいろいろなことを頼む場合にも、できないんじゃないだろうか、私はそう思うのだけれども外務大臣として、先ほどの警察庁の話を聞いておって私は理解できないので、外務大臣に一回そういう問題についてあなたはどう思われるのか聞きたいと思うのです。それが一つ。  それからもう一つは、アメリカに金在権は明確におります。それは私どもの調査でも明らかなんです。場所もお教えしますよ。こんなもの幾らでも提供します。それで私はアメリカにおる金在権についていろいろな調査の仕方があると思うのです。ちゃんと大使館があるんだから、大使館を通じて接触するという形のものもあるし、アメリカ当局によって調べてもらうというやり方もあるし、やり方というのはいろいろある。いずれにしたって疑いがかけられている問題というのはただ事でない。それは何かというと、日本の国内において金大中という人を拉致していったという主権にかかわる問題であるし、また李在鉱氏なりあるいは文明子女史など、あるいはその他の人々の中から出てきている情報を見ても、レイナード氏のいわゆるフレーザー委員会の証言などを見ても、殺人行為というような内容がこの中で言われています。「彼らの意図は彼を暗殺し、あるいは完全に抹殺してしまうことにあった。」というふうにこの文書の中に書いているのですよ。そうすると、そういう主権を侵害し、殺人行為をやるような疑いを持たれるようなことが、公然とアメリカの公的機関の証言として、しかもいまレイナード氏は向こうのフレーザー小委員会の顧問という立場におられるというふうに聞いているわけだけれども、そういう元米国務省の韓国部長であったような人で、しかも現在もそういう役割りをしておる人が公然と言っている問題に対して、私どもがそういう日本の主権上の問題からも、あるいは日本の国内における暗殺的な、抹殺的なことをやったと公然とそういう人から言われているようなこの事件に対して、その首謀者がアメリカにおる以上は、その人に対してやはり調査をするためにアメリカ政府協力を求めるという立場を私どもは強くアメリカに対して要求するのは当然だと思うのです。そういう点で、いま外務大臣お話を聞いておると、どうも向こう側は不適当と判断して、何かむずかしい段階に来ているというようなお話だったけれども、私はそんなことでむずかしいと言って引っ込むようなことではなくして、日本の主権と日本の国内におけるこういう行為については毅然たる態度をとらなければならぬので、協力してもらってこそあたりまえだという立場アメリカ政府に要求すべきだと思うけれども、この点についてはどうお考えになっておるのか聞きたいと思うのです。
  203. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 本件につきまして、どうもまだいろいろな情報が流れておると、こういう段階でございまして、はっきりした証拠のようなものがまだ全くないわけでございます。そこは私は、捜査当局の方もいろいろお考えだろう、一生懸命捜査をされておると思うのでございますが、外国に捜査を依頼するというところまで、まだそこまでの手づるが足りないというのが現状ではなかろうかと思うのでございます。ただ、私どもとしてできる限りのことを努力はいたしておるわけでございますけれども、何分にも関係者がほとんど日本にはおらないわけでございますから、捜査当局も大変苦労が多いところでございまして、しかしそういった苦労を乗り越えてこの事件解明のために努力を捜査当局にもしていただきますし、私どもが、通常の外交と違った面でございますけれども、そういった面で何らかもう少し資料が得られないかという点で努力をしておるところでございます。
  204. 寺前巖

    ○寺前分科員 私の第一点の問題についてはもうお答えになりませんか。私はきわめて常識的に聞いておるのだ。日本の国内で名前を挙げられたわけでしょう。いままでそんな名前は挙がってなかった人が向こうからぱっと提起された。そうしたら、日本に目撃者がいる以上、日本の捜査当局がそれに対して照会をして捜査をやらんといて、外国におってむずかしいむずかしいだけでは国際的に通用せんのじゃないだろうか。外務大臣どう思いますか。そういうような立場で警察庁がおるんだったら、外務大臣として私は当然警察庁長官にそういう捜査では困るじゃないかと言われてあたりまえだと思うのだけれども、それはどうなんでしょう。
  205. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 警察庁の方におかれましても、相当な陣容をもって努力をしておるところでございまして、いろいろ捜査のどの程度進んでおるかということは私つまびらかにいたしませんけれども、それは責任ある当局のことでございますから最善を尽くしておる、こう信じておるところでございまして、そういう意味で、この事件が大変重大な事件でありますから……(寺前分科員「私の疑問に対してどうなんです。あなたも疑問に思いませんか」と呼ぶ)それは警察当局が努力をいたしております。いま必要なことは、いろいろな御指摘があるわけでございますし、また情報としてはいろいろな情報があるわけでございます。いま警察当局が求めておるのは、確固たる事実をはっきりつかむこと、確固たる証拠をつかむこと、そういうことにあるわけで、その点につきまして鋭意努力をしておる、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  206. 寺前巖

    ○寺前分科員 理解せえってね、事実をつかむのが大事なんだから、そのために常識的に照会をして捜査をすべきじゃないか、なぜそれをやらないのか、それが疑問だと言うんですよ。これが日本で一番しやすい、一番簡単な調査ですよ。違いますか。私の疑問に思っておる点について、あなたたちは本当にばかなことを言うなあと思っているのですか。外務大臣そう思いませんか。日本に目撃者がおって、疑いの人が名前が出てきた。そうしたら写真を持っていって、いろいろな写真を見せて、あなたが会うた人この人たちの中におりましたやろうかと聞くのが普通の捜査じゃないか、それすらもせんといて、鋭意やっていますでは言葉だけじゃないか。やっておるのだったら、はっきり手を挙げて、やってます、待ってください、いまやってますのやと言うのだったら、そうかということで済む話だ。外務大臣だってそのくらいの日本国内における捜査について関心を持っておいてもらわなかったら、私は外国に行って責任持って仕事をやってもらえるというふうには思えぬのだよ。答弁があったら手を上げてくださいよ。警察庁、自信を持ってその点についてお答えができるのだったら、さっきから何回も同じことを言っているのだから。やりますね。
  207. 城内康光

    ○城内説明員 実は先ほど申し上げましたようにだれとだれの写真があるかというような細かいことについては私はまだ掌握しておりません。資料を持ち合わせておりませんが、当然のこととして私どもが入手したそういった写真のみならず、いろいろな捜査資料を現場で使いまして共犯者の割り出しに努めている、こういうことを申し上げたわけでございます。
  208. 寺前巖

    ○寺前分科員 一般的にだけ言っておるが、その六人についてやっているんだね。具体的に出た六人についてやっているんだね。
  209. 城内康光

    ○城内説明員 こういった文明子の発表内容の中に盛り込まれているのは六人でございますけれども、その六人も含めまして、いままでいろいろな風評に出ているというようなそういう対象の人物もおるわけでございますが、それぞれそういった関係者につきまして、いろいろ洗い直しをしているという段階でございます。
  210. 寺前巖

    ○寺前分科員 参考にすると言ったら、具体的には六人についてどういうふうに参考にしたかと、きちっとそういうふうに報告すべきですよ、そういう一般論でごまかさんと……。  それから前に問題になった金東雲ですね。この金東雲について改めてまた、さっきも言いましたようにフレーザー委員会でも、抹殺しようとしているというふうにここの中に出てくるぐらいですよ、レーナード証言の報告の中に。そうすると、この金東雲について、あなたたちも韓国との間に外交交渉があるのだから、金東雲を召喚するという問題について外務省としてはどうするつもりなのか。これはどうなんでしょうか。
  211. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 アジア局長から答弁させます。
  212. 中江要介

    中江政府委員 金東雲書記官の問題につきましては、御承知のようにわが捜査当局の努力によりまして指紋が発見されて、それをもとにして韓国の捜査の結果を待っておりましたところが、第一回目の捜査結果が来ましたけれども、これは日本として納得のできないものであるということで、再度韓国側の捜査を継続し、その結果を待ったところでございますけれども韓国側の最終的な結論として、金東雲一等書記官が犯行を犯したということについて確たる証拠は韓国側の捜査では挙がらなかったということになっておるわけでございまして、日本の捜査当局のつかみました唯一の証拠でありました指紋については、韓国側の捜査では十分な容疑を晴らすだけのものがなかったという現状になっておるわけです。それにつきまして、さらにどういうふうにするかということにつきましては、これは本来、先ほど外務大臣もおっしゃいましたように、日本国内で起きた刑事事件でございますので、日本の捜査当局の御努力を待って、その結果いかんによって外交的な措置が新たに必要になれば、これは私どもとしてもちろん御協力申し上げるという姿勢でおるというのが現状でございます。
  213. 寺前巖

    ○寺前分科員 ロッキード事件のときには、アメリカに対して司法当局として司法共助協定なり、あるいはこちらから検事を派遣するなり、いろいろな捜査官派遣の措置を二国間で話をしたと思うのです。金東雲については明確な証拠を持って問題が提起されている。そうすると、当然外交交渉で新しい今日の時点に立ってもう一度これについて調査をすることを考えるべきではないのだろうか、あるいは司法共助協定を結ぶなりして司法当局としても直接それに対する捜査をやるべきではないのだろうか。私は法務当局が特に金東雲の問題と金在権の問題について、アメリカ韓国政府それぞれに対してどういう措置をとろうとしておられるのか聞きたいと思うのです。
  214. 石山陽

    ○石山説明員 先生御指摘の司法共助と申しますのは、たとえば先般のロッキード事件におきまして、法務省側からも次官以下が参りましてアメリカの司法当局との間にロッキード事件の捜査上の便宜供与方について個別の取り決めを行ってきた、あのような協定を今回もやってはどうかという御趣旨だというふうに理解させていただきます。あの場合本件とちょっと違いますのは、いわゆるロッキードにつきましては、物証、人証等を含めまして、国内捜査におきまして濃厚な嫌疑があるというところまでは国内捜査の力でまず解明ができたという条件がございます。さらに、それにつきまして外国側の政府機関も公的にこれに協力するという姿勢をお示しいただいたということと、それからその結果外国に有効な資料があってそれを入手できるという見通しが確実になったこと、これらの条件がありましたので、あの場合はきわめてスムーズにいったわけでございます。本件につきましては、法務省、検察当局では実はまだ主たる捜査をやっていただいております警察当局からの事件の送致を正式に受けたわけではございませんが、時々刻々警察当局とも連絡協調いたしながら、本件の真相を国内調査によってどの程度解明できるか。その場合に個別の司法的共助がもし必要な段階があれば、警察当局が恐らくは御要求なさることと思いますが、その段階に立ち至りますならば法務当局としてもこれに御協力申し上げてまいりたい、このような基本姿勢でおるわけでございます。
  215. 寺前巖

    ○寺前分科員 そういうふうになってくると、いよいよもって日本の警察庁がとっている態度というのは、やはり日本国内でやり得る最大限のことをやった上で姿勢を構えなければだめだということになるのではないか。そういうふうに考えた場合に、本当に外務大臣は警察庁に対して、もっと初歩的に考えられるいろいろな問題について積極的にやることを要望すべきだと私は思うのです。  そこで、私は外務大臣に次に聞きたいのですが、一九七三年十一月八日の衆院の外務委員会で、当時の大平外務大臣は、この問題の政治決着の骨組みの柱の一つとして、「韓国政府は、金氏について別件逮捕その他をしない、一市民として出国も含めて自由を保障する」ということを国会で説明をしておりました。しかし、現実の金大中氏のその後の事実は一体どうなっているのだろう。考えてみたら、一九七五年の七月の選挙違反事件として取り扱われている。そして、いま民主救国宣言事件として大統領緊急措置九号によって逮捕を受けている、近くまたその措置がされようとしている。別件逮捕をしないと言いながら、その後こういう事情でもって韓国政府が約束をほごにしているという事実に対して日本政府としてこのまま放置しておくのかどうか、私は疑問にたえないので改めて聞きたいと思います。
  216. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 アジア局長から答弁させます。
  217. 中江要介

    中江政府委員 先生は金大中氏にまつわる二つの事件をいま御指摘になったと思いますが、一つは選挙違反事件、これは御承知のように本年の一月二十二日に控訴審の第一回公判が行われるということでまだ裁判が続いておるわけですが、この選挙違反事件といいますのは、これは金大中氏が日本から拉致された事件、いわゆる金大中氏事件が起きます前から継続した裁判の問題であるということでございますので、いま国会における当時の大平外務大臣説明の中にあります別件逮捕というふうには認識していないということはすでに何度か国会でも申し上げていることだと思います。  もう一つは民主救国宣言事件、これは昨年の十二月二十九日に第二審の判決がございまして、その翌日に上告しまして、裁判は現在も係争中ということになっておりますが、この民主救国宣言事件といいますのは、金大中氏が韓国にあらわれまして後起きた事件でございますので、あの事件が起きました時点において、その後韓国国内に戻りまして韓国の中で一般韓国人と同じ扱いということでありますので、一般韓国人と同じように韓国において韓国の法令に触れたために裁判に問われているということですので、私どもとしてはそれはそれとして成り行きを見ているということでおるわけです。  そういう問題とは別個に、金大中氏事件の一つの外交的決着をつけました中の項目に、金大中氏の身柄の自由という問題がございまして、これは一般韓国人と同じように出国を含めて自由が保障されていかなければならないという点は引き続き有効な問題でございますので、それが損なわれるようなことになっては相ならぬという点で日本政府としても関心を持ち続けていることも、何度か申し上げておることだと思います。
  218. 寺前巖

    ○寺前分科員 関心を持ち続けておると言うて、現実にはこういう問題をめぐって逮捕されたままで出国を含めた自由というのが確保されていないというのが事実だから、私は新しく外務大臣におなりになった鳩山さんがこの問題についてどういうふうに見ておられるのか改めてそれをひとつ聞きたいと思うのと、もう一つは民主救国宣言を発して求刑八年、そして世論の前に押されて五年というふうにずっと進んできましたけれども、このようなことをやっている韓国を民主国家というふうに見ることができるんだろうかどうか、この二点について外務大臣にお聞きしたいと思います。
  219. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いまお尋ねの二つの点につきましては、私は私なりに考えは持っておりますけれども、ここでそれをコメントすることは差し控えたいと思います。それは先方の論理は、やはり韓国の法令に基づいて金大中氏の事件なり、いま申された選挙違反事件あるいは民主救国宣言事件というようなものにつきまして韓国の法令を適用をしておるんだ、こういうことを主張しておられるものですから、それにつきまして私がここでコメントを加えるということは差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  220. 寺前巖

    ○寺前分科員 田中総理のときには民主主義を目指す国として韓国を言ったり、あるいは木村さんが外務大臣のときには韓国的民主主義とか、それぞれ外務大臣になるとみんないろいろそれぞれの国に対して友好関係を結ぶに当たってのそれぞれの国に対する見方というのを必ずと言ってもいいほどおっしゃってきたものです。いまアメリカカーター政権のアジア政策の大綱について、アメリカの下院で三月十日でしたか、ホルブルック国務次官補が発言をなさっておりましたけれども韓国の人権抑圧政策を強く批判して、米国は人権政策を改善するよう強く圧力をかける方針だというような情報が流れてきておりました。これはアメリカのことですけれども、それなりにわれわれが関係を持つ国に対してわれわれがそれについてどういうような評価をするかというようなことは、外交上重要な課題だというふうに私は思うわけです。特に日本の国内において抹殺をされるような事件を起こしたり、あるいはまた主権を侵すような大事件を起こしておいた国が、話題の金大中さんをどういうふうにするかという問題をめぐって、われわれがそれを知らん顔をしておるというわけにはいかないだろう。それだけに私は、外務大臣自身がこの問題についてきっぱりした態度をやはりお持ちになるということは非常に大事なことだというふうに思うのです。重ねて、外務大臣はこの国を民主的な国家として評価をすることができるというふうに見ておられるのかどうか、聞きたいと思うわけであります。
  221. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いま仰せられた中で、いわゆる金大中事件というものにつきまして、日本の国内から拉致をされたというふうに断定をされた上で御議論をなさっておるやに伺うわけでございますが、その点につきまして、やはりこれは刑事事件として捜査をしておるものですから、その捜査の結論を経ないでそのような断定を私がするわけにはまいらないということが第一点でございます。  それから、民主主義が確保されているかどうかという点につきましては、これはいろいろな国におきましていろいろな国内問題を抱えておるものでございますから、それにつきましてここで私がコメントをするということは差し控えさせていただきたいということでございます。
  222. 寺前巖

    ○寺前分科員 私は、この韓国の問題についてきちっとした分析をされることが非常に重要だということを特に申し上げているのにはいろいろあるわけですけれども、ここに時事通信社がお出しになっているところの時事解説というのがあります。この昭和四十九年二月二日の時事解説を見ますと、その中にこういうことが書かれているわけです。「話は古くなるが、昨年八月二十五日付の「毎日新聞」紙上に、日本の対朝鮮政策を探るうえで注目すべき外務省の文書を引用した解説が掲載された。日本は対朝鮮政策の基本を、つねに「わが国と特に緊密な関係にある地域たらしめるる」ため、「問題によっては、先方主張に若干理に合わない点があっても、これをきき入れるという姿勢」をとることに置いているというのであった。」その文書の詳しい内容というのは次のようなものであるということで、その文書の中身が紹介されています。それを見ますと、「朝鮮半島の重要性にかんがみ、韓国を常にわが国が特に緊密な関係にある地域たらしめることを対韓政策の長期的総合的目標とし、そのための個々の政策は、必ずしも短期的な利害得失にとらわれることなく、長期的視野に立つものとする。」云々と書かれておりまして、そして、最後の方にこういうことが書いてあります。「韓国立場には常に理解に努めるとの態度で臨み、問題によっては先方主張に若干理に合わない点があってもこれをきき入れるという姿勢を打ち出す。」こういうことが対朝鮮政策の外務省の文書として出されているんだということがこの中に書かれております。これが昭和四十四年にまとめられた外交政策の一部であるというふうにここに書かれているわけですが、外務省としてこういう対朝鮮政策なるものが存在しているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  223. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私はそのような文書を見たこともございません。なお、ずっと昔のことでございますので、アジア局長から御答弁させます。
  224. 中江要介

    中江政府委員 私もその年月のときにはすでにアジア局におりましたけれども、いま申されましたような文書を耳にしたことも見たこともございません。日本の対朝鮮政策、特に対韓国政策というのは、一九六五年の日韓基本関係条約の原則に沿いまして、主権を尊重しつつ、内政に干渉することなく友好関係を深めていこうということで貫いているつもりでございます。
  225. 寺前巖

    ○寺前分科員 それではこういう指導方針、こういう外交政策はとらないということをきっぱり明言されることができますね。あわせて、私はもしもこういう政策であったならば、金大中の問題にしてもちゃんと言うべきことは言い、外交上協力すべきことは協力を求めるということでないと、当然の主権を守るためにきっぱりした外交政策がとられないことになると思うのです、もしもこういう態度をとられるなら。それだけに私はこの問題について、こういうような文書が出たことがあるのかどうかということを改めて調査をしてもらうことと、もう一つは、こういう方針をとらないということをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  226. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのような文書があるわけがないと思いますが、念のために調べてみます。仰せのような不合理なことでも認める、そのような態度は絶対に許すべからざることである、こう思います。
  227. 寺前巖

    ○寺前分科員 終わります。
  228. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 次に、石野久男君。
  229. 石野久男

    石野分科員 大臣にお尋ねしますが、福田総理が今度アメリカへ行ってカーター大統領と話をする際、核外交が一番重要な課題になるやに聞き及んでおります。核の問題についてカーター大統領一つの方針を出そうとしているようですし、また仄聞するところによると、アメリカの議会では、すでに大統領の政策が出ない前に規制に関する幾つかの法案を出したというようなことも聞いておりますが、その間の事情はどういうふうになっておりますか。
  230. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 このたび福田総理がワシントンへ行かれましてカーター大統領にお会いになりますときに、経済問題等とともに日本として一番大事なエネルギー問題、これの将来の計画からいたしましても、核燃料の対策につきまして日本として自立できますように、日本立場を御理解いただくつもりでおるわけでございますが、カーター新政権の新しい核拡散防止の考え方、特に濃縮並びに再処理という問題につきましては、これは一応しばらく一切ストップするというような考え方が非常に強く伝えられておるところでございまして、この点につきましては、日本に大変な影響を及ぼすことでありますので、日本の特殊事情と申しますか一日本唯一の原爆の被爆国である日本は絶対に核兵器を持たないのだという点につきまして理解を求めると同時に、日本におきます再処理計画につきまして理解を求めたいというところでございます。しかしながら、カーター新政権の核政策はまだ検討中の段階と聞いておりまして、一説によりますと、四月過ぎとかいうような話も出ておるようでありますが、総理が行かれた段階では、まだカーター新大統領としての政策は立案中の段階であるというふうに伺っておる次第で、これから新しい核政策に、日本の核燃料の再処理が計画どおりできますような、そういうことが可能なような新しい政策が立てられるように期待をいたしておるところでございます。
  231. 石野久男

    石野分科員 新聞などの報道あるいはニュースなどによりますと、大統領の政策は、まだいま大臣が言われるような状態で模索の段階であるようですけれどもアメリカの上下両院では、核の輸出の問題について輸出制限をするための法案とか、あるいはそれに必要な規制の法案等がすでに提出されたやに聞いておる。そういう事情はどういうふうになっていますか。
  232. 大川美雄

    ○大川政府委員 おっしゃるとおり、アメリカの議会には幾つかの議員提出の法律案が出ておることは私ども承知しております。かなりの数に上っておると思います。最近バンス国務長官がその法案に関連しまして、実はただいまカーター新政権の新しい核拡散防止政策を立案中であるので、その新政策ができるまでは議員提出の法案については検討を進めないでもらいたいという趣旨の発言をいたしていることを承知いたしております。
  233. 石野久男

    石野分科員 大臣、そういうような事情のもとで、日本の特殊な事情というものを理解させる方策、そういうものをお持ち合わせですか。
  234. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この点につきましては、日本が昨年核拡散防止条約に加盟をいたしまして、すでに核拡散防止条約には、加盟した国がいわゆる核保有国に対しまして原子力の平和利用の面で不利な取り扱いは受けないということが保障されておるわけでございまして、わが国がそのような核防条約を批准をして、そしてこれからいよいよ核燃料の再処理の東海村の第一工場は近々テストに入ろう、こういう段階でありますので、日本の原子力平和利用研究のテンポが阻害されないように理解を求めたい、阻害されないために、日本としては、核拡散防止という点につきましてはできる限りの協力をするという前提のもとにそのような配慮をお願いをしたい、こういう次第で、何とか理解を得るように努力をいたしたいという気持ちでおるわけであります。
  235. 石野久男

    石野分科員 大臣はそういうふうに願望を持っておられましても、アメリカの方では、先般日本に来たギリンスキー氏やシャインマン氏なども日本を特別扱いはできないという趣旨のことも言っておりますね。日本のそういうような願いを、福田総理が行ってアメリカと話をする場合に、国際的な連帯を考えたりあるいは他国との共同作業をしたりするということでそれを取りつけようとするのですか、もう完全に日本だけは特別な扱いをしてもらうということで押し通すというつもりなんですか。
  236. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 詳細は専門家の方から申し上げた方がいいかと思いますが、先般井上原子力委員長代理を団長といたしましてワシントンへ派遣をいたしまして、折衝というよりはいろいろな方々の意見も聴取してこられたわけでございます。その中で、日本だけを特殊扱いにするということは大変むずかしいということも報告されておりますし、なかなかむずかしいということで、簡単な問題ではないように思います。  しかしながら、日本として将来の核燃料のリサイクルを確保するためには、いまから研究段階に入らなければならない、こういうせっぱ詰まった段階にありますので、当然日本だけ手放しで全く自由にというわけにはまいらないと思いますが、国際的な規制のもとにそういったことができるような新しい政策が決められてほしい、こういうふうに考えておるところだと思います。
  237. 石野久男

    石野分科員 その国際的な新しい規制ができるようにということを日本政府が願望として持っている、そしてきのうは総理を中心にして関係閣僚が集まっていろいろ相談をしたそうですか、その問題について、何かこういう手があるというような、問題の解決に対するめどを持って行かれるのですか。それでなかったら、恐らくこれは願望にすぎなくなってしまうのと違いますか。全然策がなくて行くのですか、どうですか。
  238. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いろいろな考え方は絶無ではないように思いますが、国際的な不安が全くないという状況はどうしたらいいのかということになろうかと思います。そういった点を含めまして、隔意のない意見を交換してもらって、日本としてのスケジュールが何とか壊されないようなことを確保したい、こういうことでございますが、大川国連局長から補足をさせます。
  239. 大川美雄

    ○大川政府委員 この問題は、非常に高度に政治的な面がございますと同時に、またきわめて技術的な問題でもあります。でございますので、いろいろな角度から検討し、話し合いを続けなければならないことではないかと思います。おっしゃるように、日本は特別ですから大目に見てくださいというようなことだけで、アメリカを納得させて話し合いがつくというほど簡単な問題ではないのではないかと私どもも考えております。総理が具体的にどういう話をされるか、あるいはどういう構想を持っていかれるかということは、これからのことでもございますのでお話し申し上げる立場にはございませんけれども、少なくとも日本といたしましては、核の拡散を防止しなければ大変なことになるのだというアメリカの新大統領の認識には理解を示し、それに対して各国でどういうふうにそれぞれの立場を守りながら対処していくことができるのかということを、ある程度踏み込んで相手と話していかないと、話のつかない問題ではないか、そういう認識は私どもも十分持っております。
  240. 石野久男

    石野分科員 大臣は、道はないわけじゃない、絶対絶無ではない、こう言う。それから国連局長は、踏み込んでいかなければいけないんだという腹構えはしているんだ、こういうことをおっしゃられるけれども、それではいまの状況のもとで、核防条約第四条による保障を受けるということは日本だけの特殊な立場ではないわけですよね。これはあらゆる国に対して普遍的に言えることなんで、その中で日本を特殊扱いできないと言っているアメリカ日本が何か踏み込んで話をしなければいけないとか、絶対絶無ではないというような観念的なことではとても話にならないのではないだろうか。どういうような策があるのですか。
  241. 大川美雄

    ○大川政府委員 具体的な話は、これから総理がお出かけになってなさるわけでございますから、また私どももいろいろ現在考えている段階でございますので、具体的なことは御遠慮させていただきたいと思います。
  242. 石野久男

    石野分科員 具体的なことは遠慮というけれども、やはり日本の側で、先ほどちょっとお話があったのだが、核拡散をしてはいけないのだということを理解するということについて、日本現状のもとで核燃料リサイクルを確立するということになれば、現実にあるのは再処理工場の稼働の問題なのですよ。その問題と、核拡散の具体的なアメリカの危惧に対応してわれわれは理解していくのだということとはどういうふうにつながってきますか。その問題が具体的につながってきたら、結局東海村の再処理工場をどうするかということだけなのでしょう。その点について案がなければしょうがない。
  243. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 たとえばこういうことがあるという案を出しなさい。総理が行くのはもう少しですよ。
  244. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 総理がお会いになりまして、そこで話が決着するという性質の問題ではないというふうに私どもは考えております。それはアメリカの新しい原子力、あるいは核拡散問題に対する政策がどうなるかということがこれから最終的に決まる、こういう段階でございます。そのアメリカの政策が決まる前に、日本立場をよく理解してもらいたい。やはり世界の各国におきましてもそれぞれの国が皆いろいろな希望を持っておると承知しておりますが、そういったことから、日本の希望というものが全く一顧だに顧みられないということではないだろう、そういう趣旨で日本立場日本の希望というものを強く要請をする、こういうことを福田総理にお願いをいたしたい、こういう考えでおります。  それから、引き続いて政策決定が進むだろうと思いますが、これから両首脳の会談を終わりましても、引き続き日本としての希望条件、こういう条件ならば日本は核拡散に協力しながら、しかもアメリカが心配しているような点は全くない、そういった条件を見出すことが絶対必要なことではないか、そういうことで努力をいたしたいということでございまして、具体的なこういった案で、最終的にアメリカの政策をこのとおりの政策を決めてくれ、こういうところまで踏み込んで考えているわけではないのでございます。
  245. 石野久男

    石野分科員 日本は核の被爆国だから絶対に核は使いません、それは信じてくれよ、これはよくわかるのです。しかし、これだけではだめだということがはっきりわかったわけですよ。そうすると、再処理工場を稼働していった場合に何が出てくるのだというと、国際査察の問題が一つあります。国際査察の問題があっても、それでもなおやはり安心はできないというのがカーター氏の考え方だし、アメリカの議会はもっと積極的なんですよ。輸出までとめようというわけですし、輸出をとめるということは、当然日米原子力協定への条項が一定のところでとまってしまうことになりますね、ウラン燃料を使えないというような事情、許諾を得られなくなるわけですから。したがって安易に話を進めるといったってだめなんで、結局こっちから持っていく条件というのは何なんだということですよ。それは外交上の問題だからもうそれ以上のことは言えませんというのですか。われわれは心配しているから言うので、そこを……。
  246. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもは大事な問題でございますから、これは衆知を集めて対策を講じなければいけない、こう思っております。これは私よりもあるいは宇野科学技術庁長官の方が専門でよろしいかと思うのでございますが、しかし私どもとしては、何らかの査察関係、あるいは保障措置についての問題は確かにあろうと思います。そのような拡散を防止する有効な措置というものが、それを強化することによってできないかどうか、そういった点、それからわが国といたしまして一番御理解を賜りたいのは、やはり日本の将来のエネルギー問題、これもありますし、それに応じたところの研究開発計画というものができておるわけでありますから、そういったものが仮にモラトリューム式のやり方でありますと大変阻害される。しかし、このモラトリュームというのがただ一つ方法ではないのではないかということを私どもとしては主張いたしたいのであります。
  247. 石野久男

    石野分科員 科技庁の方で何か案があるのですか。
  248. 石渡鷹雄

    ○石渡説明員 お答え申し上げます。  私どもの理解といたしましては、今回の首相の御訪米は、まだアメリカの原子力政策が未確定である段階において、わが国立場、そして考え方を御説明なさるものであると理解しておりまするが、それでは手の内に何もないのかということでございますけれども、まだそういう説明をするという段階でございますので、交渉の時点には達していないと考えております。しかしながら、アイデアといたしましては、たとえば先般原産会長の有沢先生が御提案になりました余剰プルトニウムの国際管理を考えてみたらどうかといったようなアイデアとか、セーフガードにつきましての国際的共同研究に日本が積極的に参加をしていくといったような考え方、そういったものが一つのアイデアとして使えるのではないか、かように考えている次第でございます
  249. 石野久男

    石野分科員 大臣は先ほど日本の核燃料リサイクルの問題について理解をしてもらいたい、あるいはまたわが国におけるところの核開発についてのスケジュールを狂わさないようにしてもらいたいということを盛んに言われましたけれどもアメリカとしてはそんなことは百も承知の上で話を進めてきていることだと思うのです。アメリカが今度の問題を提起してきているのは、ドイツのブラジルに対する炉の輸出だとか、一定の協定を結ぶということに関連しての問題になってきているし、もっとさかのぼっていえば、インドの核爆発の問題もある。しかし、それは一つの言いががりであって、やはり原子炉におけるところの経済外交上の問題が非常に大きいとわれわれは見ているわけです。そういうことになれば、当然のこととしてアメリカの原子力外交というものが経済外交というものにこたえる道がなければ恐らく道は開けていかないだろう、私はそう思うのですよ。それに対していま石渡さんからお話があったような問題だけで承知できるのだろうか。私はもっときつい要請が来るのではないかと思う。たとえば再処理工場に対する共同管理の問題が出てくるとか何かというような問題が仮に出てきた場合に、それを受けとめるだけの用意があるのかどうか。そういうことはどうですか。これは大臣に。
  250. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 科学技術庁の方からお答えした方がいいかと思うのでございますが、わが国のこれからの原子力の開発計画を実施できるということがやはり一番の大事な点であって、そのために、いろいろな国際的な管理なり保障措置というようなものは、そういうことを強化してそういうことができるならば私はその目的を大事にすべきであろうというふうに考えますが、科学技術庁の方からひとつ……。
  251. 石渡鷹雄

    ○石渡説明員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、アメリカ側の基本的な立場、方針というものがいまだに明らかになっておりませんので、私どもといたしましてどこまでそういうことを考えるかということが完全に詰まっているわけではございませんが、今後アメリカに対する十分なる説明、またそれに続くでありましょう折衝の段階におきまして、先方の出方、考え方が明確になるに応じて、その対応策につきまして慎重に検討してまいりたい、こういう考え方をしている次第でございます。
  252. 石野久男

    石野分科員 私は、一つの例として、たとえば経済外交上の要求から出ていることはもうこれは包み隠しのない事実だと思いますから、当然やはりそういう問題が積極的に出てくるだろうと思います。そういうときに、たとえば東海の再処理工場についてアメリカから、日米原子力協定の問題を背景としながら、特に共同管理とかなんとかいうような問題が出てくる可能性というようなものも一つ考えられるだろうと思うのですよね。  それから、同時にまた、あなた方がアメリカと折衝するのに、日本アメリカと単独で交渉する場合もあろうけれども、たとえば西ドイツだとかフランスなどとの間で共同の作戦をとるというようなことがいま頭の中にあるのかどうか。そういうような問題について、ひとつ大臣からでも……。
  253. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本アメリカとの関係は、原子力協定がありますので、特殊な関係であります。しかし、新しいカーター大統領の核政策はどうなるかということ、これは全世界が問題にしているところでございますし、そういう関係で、日本と非常に似たような状態にあります西ドイツとの連絡などもとりながらこれは進めてまいると思います。思いますが、共同行動とかそういうことが適当かどうかわかりません。したがいまして、いろいろな各国の対応策というものも検討しながら日本としても考えてまいりたい、こういう態度だろうと思います。
  254. 石野久男

    石野分科員 そういう事情のもとで、福田総理は、カーター大統領の核政策というものはまだ固まっていない、いろいろ模索中であり検討しているようだということについて、ただお願いをしますというだけの態度で行くのか。日本の総理としては何か一つの提案を持って、世界の核政策に対して提起をしていくというような発想がおありになるのかどうか。これを一つ大臣に聞きたいし、それから科学技術庁にあともう一点聞きますけれどもアメリカがもし東海工場について共同管理などというようなことを言ってきたときどういうふうに受けとめるのかという、腹構えがあるかどうかということをひとつお答えいただきたい。
  255. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの点につきましては、科学技術庁の方からお答えを申し上げる方が適当かと思いますが、私ども一、日本の希望を何とか先方にわかってもらうということを主体としておるわけでありまして、こういう政策にぜひ——新しいカーター大統領の核政策というものはこういうものであるべきだというところまで踏み込んだものは、用意はいたしておらないところでございます。
  256. 石渡鷹雄

    ○石渡説明員 お答え申し上げます。  不幸にしてそういったような場合という仮定の問題でございますが、共同管理といったことを考えますと、関係する国が、またフランスあるいはIAEAが伴ってまいりますので、そういう国際的な協議が十分必要になろうかという問題意識を持っておる程度でございます。
  257. 石野久男

    石野分科員 いずれにしましても、アメリカでは現に、議会では少なくとも核の輸出という問題を規制するための法案の提出が行われていると聞いておる。あるいはまた、それに関連して輸出管理の法案等の改正とか何か、いろいろな法案の提起が行われているということなんです。そういう問題に対しては、政府としては、それはアメリカの国内に干渉することはできないでしょうけれども、何らかの関心を持って出先機関の諸君が接触をしたり、あるいは当方の日本側の意見や何かを申し入れるような作業はしておるのですか、どうですか。最後にそれだけひとつ聞いておきたい。
  258. 石渡鷹雄

    ○石渡説明員 現在、主として外務省にお願いをいたしまして、米国の動きについてはいろいろ情報の収集に努めていただいております。これはアメリカ政府関係はもちろんのこと、産業界あるいは議会等の動きも十分、非常に手厚く情報収集に努力をしていただいておるわけでございます。
  259. 石野久男

    石野分科員 結局は、福田総理が向こうに行かれても、ただお願いに行くというだけであって、意見は何も持っていかないのだ、向こうに哀れみを請うて、ひとつ何とか分け前をちょうだいというところで終わるという、そういうことですね。
  260. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 それはちょっとお言葉が過ぎるように思います。今回やはり、世界全体の問題といたしまして核の拡散防止といいますか、まず核兵器の問題、いまソ連との間にSALTと申しますか、これがどうなるかという問題があるわけでございますが、日本といたしましては、核拡散防止がこれから非常に強化をされる、そういう段階におきまして、原爆を持っている国はそれをちっとも減らしていかない、こういうような態勢であっては私は通らないだろう、そういう観点でまず核兵器の縮減、カーター大統領は全廃ということまでおっしゃったわけでございます。そういうようなことが一体どうなるか、どういう決意でおられるか、そういったことがいろいろな面で私は関連を持ってくるだろう。それから通常兵器にいたしましても、輸出が非常に急増しているというようなこと、こういった世界の平和を脅やかす要因というもうが現にずいぶんあるわけであります。そういった問題につきましても、私は隔意なき意見の交換が行われるであろう。そういう状況のもとにあって、この再処理工場がもし世界に広がって、そこからもう簡単に爆弾というか、危険な物が製造できるというような体制はこれは非常に困る。こういうことが出てくるのであろう、こう思いますので、そういった中におきまして、世界のあるべき問題から、両首脳間で話し合われるであろうと私は思います。そういう中におきまして、日本としての核燃料をどうするかという問題がエネルギーの問題として出てまいりますので、そういった観点から、私は、両首脳が隔意なきお話し合いをなさって——それは日本だけの力によりましても爆弾をつくることくらいはできるわけでありますが、そういったことをみずからやらないできているというようなことも十分両当事者で御議論なさることと思います。そういう意味では非常に政治的な問題でありますし、またいかにしたらこれから安全な燃料のリサイクルというものが見つけ得るかどうかという点になりますと、これはもうきわめて高度に技術的な問題になるわけでございまして、そういったきわめて幅の広い中でお話し合いが行われ、そしてその首脳同士のお話し合いが終わった段階では具体的な対策をどうするかということを、引き続いてアメリカの新政策が決まるまでに努力を傾注していこう、こういうことを考えておりますので、ただただお願いだ、決してこういうふうには考えておらない次第でございます。
  261. 石野久男

    石野分科員 時間がありませんから終わります。
  262. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 次に、上田卓三君。
  263. 上田卓三

    上田分科員 本日より開始されました日ソ漁業交渉について、まず外務大臣に所信をお伺いしたい、このように思います。  一部の報道によれば、交渉が紛糾した場合には代表団を即刻引き揚げるといった主張が政府内部にあると言われておるわけであります。漁業交渉の結果が漁民の生活に、本当に死活に関するものであるということは厳粛に受けとめてもらいたい。漁業問題の解決に冷静かつ現実的な姿勢で対処されることを強く要望したい、このように思うわけであります。特に外務大臣は、日ソ平和条約あるいは日ソの改善についてお父様以上に大きな期待を国民がしておるわけでありますから、本当に冷静な判断でもってこの関係改善していただきたい。特に実績確保だけではなしに、たとえば北洋における漁業資源の拡大再生産などを目的とするための日ソの稚魚の大規模共同養殖といったような建設的な前向きな対処をされる考え方があるのかどうか、所信をお伺いしたいと思います。
  264. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 本日から漁業交渉がモスクワと東京で並行して進められるわけでございます。これから交渉に入るわけでございますので、いまおっしゃいましたような決裂したらどうとか、そういうようなことはいまから論ずべき問題としては不適当なことだろうと思います。誠心誠意この話し合いを詰めるということに徹するという、恐らく担当の方々もそのつもりでいることは確かでございます。そういう意味で、関係の漁民の方々にできるだけ実績を確保できますように最大の努力を払うということでございます。  稚魚の点につきましては技術的な問題でございますので、担当者からお答えいたさせます。
  265. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 資源の調査研究また拡大、そういう点について何らかの努力をする用意があるかという御質問でございますが、この点につきましては、すでに一九六二年、亡くなられました河野さん、それから高崎さん等のお骨折りによりまして、ソ連の極東河川においてサケ・マスの人工ふ化放流の実施をやろうという案が出まして、以後ソ連側と逐年いろいろ情報の交換、意見の交換をいたしております。その間また、これは一九七二年でございますが、シロザケ、マス等の人工増殖に関する研究の実験をいたしまして、その後また一九七五年、一昨年でございますが……(上田分科員「簡単にやってください。あるのかないのかということですから」と呼ぶ)やっております。
  266. 上田卓三

    上田分科員 日ソ漁業交渉についてはその程度にしたいと思います。期待をしておりますので、ひとつその努力をお願いしたいと思います。  さて、世界人権宣言規約の問題について御質問をさせていただくわけでありますが、部落差別を初め沖繩差別あるいはアイヌ差別、職業差別、障害者に対する差別や男女の差別、本当にわが国社会は先進国だと言われながら国内に多くの差別が満ち満ちておるわけであります。同時に、外国人に対して差別が余りにもひど過ぎるのではないか。先進国中で一番差別的であると言っても過言ではない、このように思うわけであります。  一九四八年の世界人権宣言に基づいて国連総会は一九六六年十二月十六日第二十一回の総会で二つの国際人権規約を起草、採択したわけであります。A規約と言われる経済的社会的及び文化的権利に関する国際規約が昨年一月三日に、そしてB規約と言われる市民的及び政治的権利に関する国際規約が昨年三月二十二日に発効し、実施されておるわけであります。  国際人権規約の採択、発効は全世界の平和民主勢力の長年の運動の結果であります。国際人権規約の前文では、世界人権宣言に従い、恐怖と欠乏からの自由を享有する、自由な人間という理想は、あらゆる人がその市民的権利と同様その経済的社会的及び文化的権利を享有し得る条件がつくられて初めて達成されると述べられております。人権の国際的保障という人権に関する考え方の転換は、旧態依然たるわが国の人権保障の根本的洗い直しを迫るものであります。漁業、エネルギー、さらに発展途上国との貿易不均衡といった最近の問題を取り上げましても、近隣諸国との真の友好、すべての国々との平和的共存が不可欠であります。今日すべての国々の人々と自由、平等の精神で交流し得る国際的感覚が特に必要とされております。  とりわけアジア人に対しては、過去の歴史的事情からしてなおさらのことであります。特に在日アジア人の約九割を占めます朝鮮韓国人に対する差別の撤廃は、国際社会の潮流である国際人権規約の精神からして焦眉の急の課題であると考えるわけであります。根の深い在日アジア人、在日朝鮮韓国人に対する民族的差別と偏見を根本的に変革することが、アジアの隣人から敬意を持って迎えられる日本人になるための試金石であります。民族的差別は、在日アジア人を主要な生産関係から排除し、日本の中の貧困層を形成し、日本人のアジア人べっ視、優越感を助長させております。在日朝鮮韓国人は民族差別によって労働市場の底辺を支え、一般労働者の低賃金、低生活の沈め石としての役割りを果たされております。政治的には偏狭な民族的反目を引き起こしておるわけであります。諸国民の相互理解と友好の大前提は、民族的差別の撤廃と、国籍を問わずすべての人々に対する人権の保障にあることは言うまでもありません。国際人権規約がすでに昨年発効した今日、この課題は焦眉の国民的課題であり、一刻も放置することの許されぬ問題であると考えるわけであります。  さて、国際人権規約の基本精神及び批准の進みぐあいについて、特にA規約の労働の権利、第六条、社会保障の権利、第九条、第十条、生活水準維持の権利、第十一条について、以下の事柄について御質問を申し上げたい、このように思います。  鳩山外務大臣にまず御質問したい問題は、国際人権規約の根本精神である内外人無差別の平等とは、国籍を問わずすべての内外人の権利を保障するものと考えるが、またA規約の人権の実質条項では、すべての者云々という規定の仕方、さらにB規約第二条からして、この規約を批准した当事国は自国主権の及ぶ領土の範囲内に居住する内外人すべてに差別の撤廃を義務づけていると理解していいのかどうか、お答え願いたいと思います。
  267. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国際人権規約につきましては、その精神はまことに結構なものでございます。そういう意味で、わが国としても締約国になれるように検討作業を進めておるところでございます。  御指摘の、内外人の取り扱いが非常に違うではないか、特に在日韓国人の待遇が非常に悪いではないか、こういう御摘がございました。政府としても、法律が日本の国民に対していままでいろんな措置をとってきたものでございますから、その法律的な関係がありましてなかなか難渋をいたしておりますけれども、実行でできますものは、生活保護のようなものは極力実行、実施してまいっておるわけでありますけれども、まだ不幸にいたしまして、年金等につきまして在日外国人については適用がない、こういうことになっております。この点につきましては、人権規約もあるわけでありますので、在日韓国人あるいは外人の地位の向上につきまして、これから真剣に努力をいたすべきものであるというふうに考えております。
  268. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、簡潔にお願いいたします。  上田卓三君。
  269. 上田卓三

    上田分科員 第七十七回国会において、わが党の和田貞夫議員の質問に対して政府は、批准作業を積極的に進めたい、このような回答をしていただいておるわけであります。その進捗状態はどうなっておるのか。そしていつごろ国際人権規約を批准するつもりなのか、政府の見解をただしたい、このように思います。
  270. 大川美雄

    ○大川政府委員 政府は昨年の一月と三月にA規約、B規約がそれぞれ発効いたしまして以来、従来からの検討作業を一層積極的に推進してまいったつもりでございます。特にA規約につきましては、批准の時点では国内法制が必ずしも条約の内容と完全に合致していなくてもいい、努力目標ということになっておりますので、せめてA規約からだけでも批准の対象として検討できないかという考え方で過去一年間ずいぶんいろいろ努力してまいったつもりでございます。  他方、こういった条約を批准いたしますのに日本の従来のやり方として、国内法制が条約の内容と合致するように当初からできれば法制の方を整えて、それから条約の批准に向かうという考えをしてまいっておりますので、現在の時点では、実はまだ直ちに批准というところまではいかない、いろいろ国内法が整っていない面がある状況でございまして、遺憾ながら、いまのところ、まだいつ批准に踏み切れるかどうかという時点を申し上げる立場にございません。
  271. 上田卓三

    上田分科員 非常に不満であります。いまお答えのように、A規約については、これは比較的に問題がない、こういう発言を昨年、和田議員の質問のときにしておるわけであります。余り問題がないと言っているのですから、なぜこれだけでも先に批准しないのか、私たちは不満でならないわけであります。いまお話しのように、A規約は努力目標ということのようでございますが、しかしこれについては発展途上国の問題もあってそういうことになったわけでありますが、いわゆる先進国といわれるわが日本においては即刻これは批准をし、内外人平等という立場に立って国内関係法の早急な改正が必要だと思います。     〔武藤(山)主査代理退席、愛野主査代理着席〕  言うまでもなく、昭和四十一年に国連わが国はこれに賛成をしておるわけでありますから、もうその時点から国内関係法の整備があってしかるべきであって、去年の一月なりあるいは三月からこの問題を考えるというのはおかしいのではないか、私はこのように思うわけであります。たとえば国連局社会課長は、昭和四十五年の五月にこのような本を出して国際人権規約の必要性について説かれておるわけであります。ちょっと読みます。「国際連合は、その創立以来、人権分野でこの国際人権規約を含め十八の条約を採択しているが、これら諸条約の中で、わが国は、人身売買、売春搾取禁止条約及び婦人の参政権に関する条約、二つの条約の締約国となっているだけである。人種差別反対、人権尊重を唱えるわが国としては、この分野における努力不足の感はいなめず、一層の努力が強く要請される次第である。」こういうふうにええかっこうしているのです。国連でも賛成の一票を投じながら、それからもうすでに十一年経過しておるわけであります。そういう点で非常に不満であります。和田議員の質問からかれこれ一年になるわけでありますから、その取り組みの状況、進捗状況を篤とお聞かせ願いたい、このように思うわけであります。  特に私がその中で申し上げたい問題は、いわゆる外国人の国家公務員、地方公務員の受験資格の問題であります。任用局長にお聞きいたします。憲法第二十二条、労働基準法第三条、職業安定法第三条の根本的精神、国籍による差別禁止がA規約六条でも確認されておるわけであります。労働の機会を求める権利、就職の機会均等をはっきりと内外人双方の権利と認めておるわけであります。われわれはこういう理解をしておるわけでありますが、そのことをお認めになるのかどうか、     〔愛野主査代理退席、武藤(山)主査代理着席〕 そして国家公務員試験の受験の際の国籍による排除を改正する意思があるのかないのか、その点についてひとつお聞きしたいと思います。
  272. 今村久明

    ○今村(久)政府委員 ただいまお話がございました外国人の公務員採用試験の関係の問題でございますが、まず初めに申し上げておかなければいけないと思いますのは、外国人の国家公務員就任の資格でございますが、これにつきましては、内閣の法制局の方から意見が出ております。「一般わが国籍の保有がわが国の公務員の就任に必要とされる能力要件である旨の法の明文の規定が存在するわけではないが、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使又は国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには日本国籍を必要とするものと解すべきである。」という解釈が、これは意見でございますが、法制局から出ておりまして、私どもはこれに従いまして公務員への外国人の就官能力の問題につきまして考え方を進めておるという状況でございます。
  273. 上田卓三

    上田分科員 そういう考え方に問題があるわけです。たとえば百歩譲って、いわゆる公権力の行使とかあるいは国家意思の形成、これは私はどういう意味かよくわからないのですけれども、要するに職種をどのように判断しておるのか、具体的な基準が果たしてあるのかどうか。私は外務大臣に聞きたいわけでありますが、たとえば国家公務員や地方公務員の場合に公権力とかあるいは国家意思とかいうような形で言われておるわけでありますが、一般事務職員はそれに該当するのかどうか、あるいは一般技術職員はそれに該当するのかどうか、あるいはその場合だって該当する場合もしない場合もあるのではないか、私はこういうように思います。あるいは研究職員、医師、看護婦とかあるいは保母さん、国公立の小、中校の先生方、これは大阪などではある程度撤廃されておるわけでありますが、あるいは大学の助手は認めているけれども講師以上はあかんという形で若干整理されているところもあるわけでありますが、こういう問題、あるいは単純労務、清掃とか衛生とか汚物処理とか交換手とか、私はいろいろの職種があると思うのです。そういうすべての仕事から排除することについて納得できないわけでありますが、その点について外務大臣から答えてもらいます。
  274. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの問題は、やはり人事院当局に決めてもらうほかないと思います。いろいろな考え方はあろうと思いますが、一般の公務員の場合でも、入るときは若いうちに入りますから、それがだんだん昇進していくのが通例でありますし、どの段階から外国人を——下の段階の人ならいいというとともなかなかむずかしいことではないか。入るときは、みんな若いときに下の方から入って上がっていくわけですから、それは人事全般を考えてお決めになるべきことであろうと思います。
  275. 上田卓三

    上田分科員 それでは人権規約は、関係規約との関係を考えるならば、いつまでたっても批准できないということになるのじゃないですか。  さらに申し上げますが、たとえば非常に矛盾に満ちておるのは三公社の問題です。国鉄とか専売公社は採用しているのです。ところが、電電公社は採用してないのですね。大阪のサイチュウショク君は受験拒否をされているわけです。これは一体なぜなのか。当然、通信の秘密とかいうこともありますけれども、それ以外のいろいろな職種があるわけでありますから、電電公社の方見えたと思いますので、そういう点でひとつお答えください。
  276. 山本正司

    ○山本説明員 他の公社におきまして、採用の際国籍制限を設けておるかどうかという点については、私ども十分承知いたしておりませんが、電電公社といたしましては、在日外国人が公社の採用試験に応募してまいりました際には、公社というものは事業の性格上非常に公共性が高い、またただいまお話がございましたように、通信の秘密を確保するという性格もございますので、国の機関に準じて措置するのが妥当ではないか、こういう考え方に立ってただいままで対処してまいったわけでございます。  ただ、医療機関の職員等につきましては、ごくわずかでございますけれども、例外的に日本の国籍を持ってない者を採用している事例はございます。
  277. 上田卓三

    上田分科員 いずれにしても、国鉄、専売公社がよくて、電電公社だけがいけないということは妥当でないと思いますし、やはり国際人権規約との関係を考えて、この問題についてあなた方はもっと頭をやわらかくせぬと、わが国はいつまでたっても国際社会から取り残されますから、善処方をお願いしたい。国内関係法を改善するという約束をされているのですから、改善方向でしなければならぬのじゃないですか。一つも検討せぬと、国会とかいろいろな場では検討するとか改善するとか言いながら、いまの答えでは、いままでの自分たちの考え方一つも変えようとしてないわけでありますから、非常に不満であります。  たとえば在日朝鮮人あるいは韓国人の問題について申し上げますが、彼らは何も日本人以上の特権を要求しているわけじゃないのです。私が調べたところでは、在日朝鮮韓国人の納税総額は年間一千五百億円に上っていると推計されております。これは国税とか地方税、間接税とか直接税もまぜての話でありますが、私は、政府にこの具体的な納税額を発表してもらいたい。これは国税当局に特に要望しておきます。  もう一つは、生活保護の支給額が約六十億円と聞いておるわけでありますが、この人数と正確な予算額を提示してもらいたいと思います。地方自治体関係の管轄の八十八種の制度からこれらの人人が差別されて、本当にこれらの制度の恩恵を受けるならば三百五十億円の予算が必要であるということもわれわれは聞いておるわけであります。そういう点で、税金は納めさせておきながら、わが国は外国人に対して悪らつな差別をしておるということで非常に不満であります。特に、先ほども出ておりましたが、国民年金法に基づく老齢年金、障害年金、母子年金、福祉年金、この被保険者の資格から外国人が排除されている。そういう理由について私は全然理解ができないわけであります。  在日アジア人の九〇%を占める朝鮮韓国人は、二代、三代と、長年にわたって永住されておるわけであります。それも本人の意思じゃなしに、本当に日本のかつての植民地主義、日本帝国主義の犠牲者として、いまなお日本で差別的に苦しい生活を余儀なくされておるわけであります。外国では、たとえばスウェーデンとかデンマークとかノルウェーでは、居住年限はたったの三年でいいことになっているのですね。フランス、西ドイツ、ギリシャ、オランダ、ベルギーは十五年でいいということになっておるわけであります。居住年限の問題はあるにしても、一括してこういう社会保障や医療から外国人を差別しているということは全く納得ができない。そういう点について関係者の答弁をいただきたい。  続いて、公営住宅についても、たとえば大阪とか兵庫の一部では公営住宅に入れるが、そのほかでは入れないという問題。また、公団住宅に入れない、あるいは住宅金融公庫の金が借りられないということになっておりますので、その関係者からもお答えを願いたいと思います。  次に、軍人恩給とか戦傷病者戦没者遺族等援護法あるいは戦傷病者特別援護法、これらがいわゆる国籍要件によって支給されてないということでありますが、われわれはこの問題に対して納得できません。特に軍人、軍属で強制的に在日朝鮮韓国人が三十六万人以上戦争に駆り出されて、南方の地域で犠牲になっておるわけです。多くの人が亡くなっておるわけであります。七十二万人以上の強制連行、一万人以上が死亡しているという事実があるわけであります。韓国人については一万六千三百四十人が亡くなっております。中国人につきましては三万三百余人が亡くなっておるということになっておるわけでありまして、本当にわれわれは遺憾である。そういう点について改善をする気があるのかないのか。あるのかないのかだけ、ひとつお答え願いたいと思います。
  278. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 残余の時間が二分しかありませんから、ひとつ簡単に答えてください。
  279. 高峯一世

    ○高峯説明員 国民年金につきましては、日本国籍と日本居住要件が付されておりまして……(上田分科員「あるのかないのかだけでいいです、時間がないから」と呼ぶ)年金につきましては、長い間の拠出期間というものを必要といたしますので……(上田分科員「外国では三年ですよ」と呼ぶ)現在の国民年金は二十五年でございますので、そういう点との関連でいま直ちにそういった者に適用することはむずかしい状況になっております。(上田分科員「検討の余地はないのですな。国際人権規約に照らしてですよ」と呼ぶ)
  280. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 発言中は黙ってください。
  281. 高峯一世

    ○高峯説明員 現在の国民年金の制度はむずかしい状況に入っておりまして、このような状況ではむずかしい問題ではないかと思います。
  282. 佐藤良正

    ○佐藤説明員 援護法につきましては、国籍要件によって制限されておりますが、韓国人の問題につきましては、昭和四十年に日韓協定の中で権利についてすでに解決済みであるということになっております。したがいまして、その点では義務の消滅ということになっております。残りの部分につきましては、相互主義と申しますか、国家補償の関係でございますので、外交問題として処理するべき性質のものであろうかといます。
  283. 京須実

    京須説明員 公営住宅につきましては、大阪、兵庫以外でも、地方公共団体の判断によりまして外国人の入居を認めております。しかしながら、公庫の融資あるいは公団につきましては、まだわが国の中堅階層の住宅難が厳しいという状況から認めておりません。
  284. 上田卓三

    上田分科員 外務大臣に最後にお聞きしたいが、この国際人権規約、少なくともA規約だけでも年内にあるいは今国会中に批准すべきだ、こういうように考えるわけでありますが、批准のめどはいつにおかれるのか、一言お答え願いたいと思います。
  285. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 御趣旨の点はよくわかりました。私ども外務省としては、いま年金の問題が出ましたけれども、そういうものも含めまして担当の所管大臣に極力お願いをしてでも、なるべく早い時期に加盟いたしたいと思います。時期はいまここで……(上田分科員「時期を言いなさいよ。大体めどを」と呼ぶ)関係の各省の態度にも大いにかかわりますので、時期をここでいまお約束しても、それは自信が持てないのでございますので、なお……(上田分科員「早急にということで」と呼ぶ)極力早急に、なるべく早い機会に加盟できるように努力をいたします。
  286. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 次に、日野市朗君。
  287. 日野市朗

    日野分科員 私は、まず二点にわたって大体質問をする予定でありますが、まず、領海の問題及び国際海峡の問題につきまして、最初に伺っておきたいと思います。  今度わが国でもいよいよ領海十二海里ということになるわけであろうと思います。それで現在まで三海里をずっととっておりまして、今度は一挙に領海を拡大するということになりまして、多くの問題が出てまいりました。特に国際海峡の問題については、非常に大きな、悩み多いところであろうかと思います。過般、国際海峡について四つばかり国際海峡として外務省の方から公表されておるところでありますが、それぞれの海峡についてまず名前を御指摘いただくと同時に、それからその海峡の幅員、最も狭いところでどの程度あるのかというようなことを伺っておきたいと思います。
  288. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 条約局長からお答えいたさせます。
  289. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  まず、先生が国際海峡四つとおっしゃられました件につきましてでございますが、御了解いただきたいと存じますのは、この領海の法案の作成につきましては、内閣において領海法準備室というのができまして、国務大臣としての鈴木農林大臣の御指揮のもとに鋭意作業を進めておる最中でございます。いまだ具体的にどの海峡を選定するという段階には至っていないというふうに理解をいたしております。  あと具体的な、幅員がどこかとおっしゃられるわけでございますが、四つとおっしゃられたのが、従来国会の答弁でいろいろ代表的なものとして出ておりますのは、私どもの理解する限り、津軽海峡とか宗谷海峡とか対馬海峡の西水道、東水道というようなところであろうと思っておりますが、それを例にとりまして申し上げれば、まず津軽海峡の白神岬と龍飛崎の間が十・四海里、それから汐首岬と大間崎の間が九・六海里、それから宗谷海峡でございますが、これは二十二・七海里、それから対馬海峡の西水道は二十三・二海里それから東水道が二十五・〇海里、こういうことになっております。
  290. 日野市朗

    日野分科員 この十二海里という領海説をとってまいりますと、国際海峡としてこれらの海峡も当然、これは従来の国際慣習に従った、いま挙げられたような海峡も、これは海洋法会議関係もありますけれども、その条約が調印されて、そして批准されていくというふうな形をとるまでにはかなりの時間があると思うのですが、これを一応現在のところ三海里に、従来のままに津軽海峡を残しておくというような説明が現在なされているのでありますが、そして従来この説明がなされているのは非核三原則の問題、そのほかわが国の他の国際海峡を通航する船舶に対する影響というようなことが挙げられているわけですが、そんなところがこの三海里に残しておく原因というふうに理解しておいてよろしゅうございますか。
  291. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 これは先生、もう予算委員会の総括でお聞き取りいただいたかと存じますが、この国際航行に使用される、いわゆる国際海峡と称せられるところを現状のとおりにするという点につきましては、統一見解という形で鈴木農林大臣からお答えが出ているところでございます。趣旨は、要するに、ただいま海洋法会議におきまして領海が十二海里に拡張されることに伴って、公海部分が消滅するか、または航行に十分な公海部分が残らないというような海峡であって、国際航行に使用せられる海峡については、一般の領海におけるところの無害通航制度よりももっと自由な船舶の通航が確保せられるような制度をつくろうということで海洋法会議進展しておりまして、わが国は御承知のように海運立国、また貿易立国ということで海運に、海峡の通航の自由に依存するところきわめて大きいということで、この国際海峡における自由な通航制度の確立を期するということで会議に臨んでおりまして、そういうわが国態度からしまして、海洋法会議におけるいまの海峡の通航制度が確立するまでの間、国際海峡については現状のとおりとして海洋法会議の結論を待つということが日本の国益に沿うゆえんであるということであると思います。
  292. 日野市朗

    日野分科員 国益に沿うゆえんであるというふうにお答えいただいているわけですが、その国益が何かという問題なんですね。これは従来の国際慣習法上から、国際海峡の通航、また国際河川の通航というような問題については多くの慣習法がすでに定立されているというふうに理解してよろしいのではなかろうかと私は思っているわけなのです。つまり、いまこれは国際海峡というふうになるのではなかろうかと言われている津軽海峡を初めとして、これらの海峡であろうとも、現在の国際慣習法上から無害通航権が認められている、これはもう当然のことであろうと思うのです。ここの御見解はいかがでしょう。
  293. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 おっしゃられますように、現在の海洋法におけるところの通航制度が何であるかという御質問であれば、先生がまさに仰せられるように、現在においては無害通航制度という形になっております。それは、一般の領海において船舶はすべて無害通航の権利を有するということでございます。ただ、現在の国際法と私の申しましたのは、一九五八年の領海条約でございます。一九五八年の現行の領海条約は、御承知のように領海の幅員については決定を見ませんで、幅員の規定がないわけでございますが、領海は三海里であるというのが一般的なコンセンサスと申しますか、確立された国際法規という前提においてつくられた条約でございます。その条約におきましては、いま申しましたように、一般領海における通航制度は無害通航制度でございますけれども、いわゆる公海と公海を結ぶような海峡においては、無害通航制度を停止してはならない、そういう特別な取扱いができております。
  294. 日野市朗

    日野分科員 つまり、この国際海峡の通航については、軍艦であろうとも、無害通航であればこれは確保されているんだ、こういうふうに伺ってよろしいわけですね。
  295. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 さようでございます。
  296. 日野市朗

    日野分科員 従来の政府の見解の中では、非核三原則、これを貫いていくという必要性、これが一応述べられていると思うのですが、この非核三原則というのは、わが国の政治上の非常に重大な原則でありますから、これを貫くことは当然であるというふうに私は考えているわけです。現在、国際的にこの非核三原則というものがどの程度諸外国から理解をされているのか、または、それを理解させるためのどのような努力日本政府はとってきたのかという点について伺っておきたいと思います。
  297. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私どもは、日本の非核政策というものは、わが国の特異な戦争体験、それから平和憲法という特別な憲法その他の事情から持っております日本の特別な制度ということで、国際的には非常に知れ渡っておるというふうに理解しております。私どもも、また機会があるたびに、その非核三原則が国際的により理解されるようにという努力はいたしておりまして、たとえばジュネーブの軍縮委員会におけるわが方の朝海代表が非核三原則を紹介して、これがわが国の政策であるということを述べられた経緯もございます。一つの例として申し上げました。
  298. 日野市朗

    日野分科員 いわゆる沿岸海についても非核三原則は当然貫かれなければならない。そうすると、十二海里という領海の宣言がなされるということになれば、これはその領海全部について非核三原則を貫くというための外交的な努力というものは当然なされるつもりでしょうね。
  299. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 非核三原則につきましては、先ほども私申し上げました政府統一見解におきましても、「我が国の権限の及ぶ限りにおいて非核三原則を堅持するとの従来の立場を変更するものではなく」ということを明確に述べております。
  300. 日野市朗

    日野分科員 問題になっている津軽海峡、それから対馬西東ですね、こういった海峡について、これは非核三原則との間で非常に悩み深いところなんであろうと思うのでありますが、核を積んだ軍艦ですね、核兵器を積んだ軍艦、これらがどの程度の通航をいままでやってきたかということについての調査のデータはお持ちですか。
  301. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私どもの理解いたしております限り、防衛庁において、対馬につきましても、一年間にどのくらいの艦艇の航行があるかという点の一応の数の把握を紹介されたことを伺っております。たしか津軽につきましては、年によりますが、年間五、六十だったと聞いております。外国の艦艇でございます。商船が年間三千から五千くらいの外国船舶が通るということを伺っておりますが、その五、六十の外国艦艇のうち、どれが核を搭載しているかという点についてのお話は、防衛庁からはなかったというふうに理解しております。
  302. 日野市朗

    日野分科員 これらの海峡について従来どおりとして、他を十二海里とすることは、わが国がみずから自己の主権に重大な制限を加えているということになるわけであります。でありますから、自己の主権に重大な制限を加えるというだけにはそれなりの理由がなければならないというふうに思うのですね。自己の主権に重要な影響を加えるという場合、これはやはり核を積んでいる艦船かどうかということ、これは外国の軍事機密に属することでありましょうから、これはわからないということも一応は理解できるところなんでありますが、少なくとも、この海峡を通航する外国の艦船であって核を搭載しているものということになれば、これはアメリカとソ連にほぼ限定されて考えてよかろうかと思います。そうすると、ソ連の場合は、わが国の近海で津軽海峡を通れないとしても一応のルートはあるわけです。日本海から他の海洋に出ていくというルートは一応あるというふうに考えてよろしいのではないでしょうか。
  303. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど申しました年間五、六十の艦艇のうち、内訳を私、ちょっと記憶いたしておりませんので何とも申し上げられませんが、漠然と記憶するところ、たしかソ連の艦艇の数の方が多かったのじゃないかという気がいたしておりますが、ただ御理解いただきたいのは、今回領海の幅員を十二海里に拡張するに当たって、特定の海峡について領海幅を現状どおりとするという点につきましては、私どもは主権の放棄という問題ではない、現状のままでございますから、別に主権を放棄するというような問題ではないというふうに理解しておるわけでございます。それからまた、そのような当分の間は現状のままとするという措置は、先生のおっしゃられるような非核三原則の問題との関係からやっているのではないということも、また先ほど申しました統一見解の中で明確に述べておられるところでございます。
  304. 日野市朗

    日野分科員 これも予算委員会で、たしか福田総理であったかと思いますけれども、マラッカ海峡の通航に対する気がねを非常にしておられたのを私、記憶しておるわけであります。これらの海峡について十二海里を主張するということになると、マラッカ海峡の通航という点に非常に大きな支障が出るのではないかというようなことを言っておられたのをよく記憶しているのでありますが、マラッカ海峡は、言うまでもなく著名な国際海峡なのです。しかし、マラッカ海峡も、これはわが国の商船もしくは政府所有の艦船、これらが通航するについても全く何の支障もないのではありませんか。これはまさに無害通航権をわれわれ日本の艦船が行使すればいいだけであって、何もマラッカ海峡の通航に対する影響をわれわれ考える必要はない、こういうふうに私は思うのですが、何かマラッカ海峡を領海とする統治国から異議を申し立てられているというような事例でもあったのでしょうか。
  305. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 マラッカ海峡のわが国にとっての重要性につきましては、まさに先生がいまおっしゃられたとおりで、わが国の原油の八〇%以上がここの海峡を通ってやってまいります。また、鉄鉱石の二〇%以上もこの海峡を通って輸送されてくるわけでございます。  そこで、マラッカ海峡の通航について問題がないではないかという御指摘でございますが、ただいま政府がやろうとしておりますことは、問題は、先ほど申しましたように、一般の領海における船舶の通航制度は、先生のおっしゃられるように無害通航制度でございまして、無害通航制度というのは何であるかと言えば、沿岸国の平和、秩序、安全を害さない限りで通過するということでございます。そこで、沿岸国の平和、秩序、安全を害するか否かという点については、これは第一次的に当該沿岸国が判断する問題であります。したがいまして、そこに恣意的な判断が加わる余地がないとは限らない。これがいわゆる国際航行に使用されておる海峡においては無害通航制度では不十分ではないか、もっと自由な通航制度を確立すべきではないかというのがいまの国際海洋法会議の最大の関心事であるわけでございます。そういう意味で、具体的にどこの海峡で何が起こったかということもさることながら、一般的な制度として、世界の海運の要衝を占めておるいわゆる国際海峡においては、いまの無害通航制度よりももっと自由な通航制度をつくろうというのがいま海洋法会議がやっている事業であり、わが国がまた海洋法会議期待しておるところである、こういうことでございます。
  306. 日野市朗

    日野分科員 つまり、こういうふうに考えてよろしいと思うんですがね。マラッカ海峡の通航も、わが国で現在指摘されている津軽、宗谷、対馬西、東といったような海峡も、これはいずれも国際海峡としては全くパラレルに考えていい。もう全く並行した問題だ。異質の問題では全くないと考えていいのではないかと私は思うのです。何もこのマラッカ海峡ばかりを意識することなく、わが国のこれらの海峡についても諸外国の船舶はもう無害通航をどんどんやってもらって構わぬ。全く質としては同じ問題だ、こういうふうに言えるわけですね。そうすれば、私は何もここでみずから進んで制限——主権の制限ではない、現在のとおりだということをおっしゃいますが、それはまさに言葉のあやなんであって、ほかの領海は十二海里を宣言しておきながら、これらの海峡についてだけ三海里にみずから制限を設けていくということの必要は全くないだろうと思うんです。いかがでしょうか。
  307. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御理解いただきたいと思いますのは、現在はわが国の領海は三海里でございますから、これらの海峡においては公海部分は残っているわけでございます。公海が残っておりますからあらゆる海峡が自由に通航し得るという状況にあるわけでございます。  そこで、先生御指摘のマラッカ海峡と日本の海峡における通航と同じであるべきではないかということですが、私どももそう考えているわけでございます。要するに、これは世界全般に通用さるべき単一の通航制度ということで考えるべきであって、もちろんわが国といたしましては沿岸国としての立場と、それから海運国としてよその国の海峡を通るという立場両方あるわけでございますが、マラッカ海峡が海運立国であるわが国の国益にとってバイタルな重要性を持っておるというようなことから申しましても、世界のあらゆる国際海峡において適用さるべき単一の制度として、いわゆる無害航行よりも自由な通航制度をつくりたいという考え方でございます。
  308. 日野市朗

    日野分科員 今度は少し話題を変えます。  わが国の領海は今度十二海里になるわけですが、漁業専管水域二百海里時代を迎えて、まだ二百海里の宣言などということは私たちはしていないわけで、こうなってくると非常に島嶼が持つ意味というのは大きくなってくると思います。日本自体が島ですけれども、領土である島が本土から遠ければ遠いほどそれは非常に大きな意味を持ってくるだろうと思うんです。  ことしの一月ごろから新島誕生騒ぎがありました。硫黄島の南に日吉沖の場という水域がありまして、そこに新島が誕生するのではなかろうかというようなことで、かなり夢多い話題を提供したわけであります。  そこで、この新島について、これから領土問題というのは非常に大きな問題になってまいりますから、これを日本の領土として確保するためにわれわれも最大限の努力を払わなければならないだろうと思っているわけであります。それで、このごろは若干この騒ぎも下火になりまして、これは新島できないのかなというような感じも若干するのでありますが、もしここに島ができれば、これを日本の領土として確保するための最大限の努力がなされなければならないというふうに思っているわけでございます。  それでまず、外務省として、これを領土として確保するためのいろいろな外交的な努力もございましょうし、そのほか国際慣習に基づくいろいろな手段、方法があろうかと思います。どんなことを考えておられるか、大臣に伺いたいと思います。
  309. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 新島が新たに発生した場合の従来の国際的な慣習と申しますか、この点につきまして詳細は条約局長から御説明した方がいいかと思うわけでございますが、これは一般的には先占といいますか、そういったことが行われているわけでございますが、いかなる行為をやれば先占したというようになるかという点につきましては、これはそれほどはっきりしたものはないかと思いますが、これにつきましても条約局長から御説明申し上げます。  ただ、二百海里になりましたから大変な問題になるではないか、そういう話でございますが、一般に岩礁程度のものは、それを二百海里のもとにする基点としては一般に認められないというようなこともありますので、その点につきましても若干補足をさせていただきます。
  310. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 大臣からいまお話がありましたように、新しい島が公海にでき上がるということになれば、これは無主の土地に対する先占という形に国際法上はなります。先占を有効に行うためには、ことに無人の小さな島というような場合に、どうやればその先占が完成するかという点につきまして、必ずしも厳密なルールがあるわけではございませんけれども、一応は領有の意志を十分に推測させるような措置、たとえば版図に編入するというようなこと、それから象徴的な占有の行為、たとえば国の船舶が定期的に巡視をするというような措置がとられれば足りるのではないかというふうに考えております。  なお、この新しい島ができたときにどうするのだ、こういう御質問でございますが、その点につきましては、これは外務省と申しますよりも政府全体の問題でございますので、南硫黄島沖新島問題に関する申し合わせというのが昭和五十一年十月二十八日に関係省庁の連絡会議でできておりまして、ここで具体的にたとえば防衛庁と海上保安庁ができる限りその所掌業務実施の際に可能な範囲において協力して、南硫黄島における海底火山の活動状況を監視し、これを連絡会議に報告する。それから新島の出現が確認された場合には、その時点での状況に応じて、速やかに同島をわが国の領域とするための所要の措置を内閣官房及び外務省等を中心としてとることとする。なお、地方公共団体への編入手続は自治省が中心になって行う。こういうような申し合わせができてございます。
  311. 日野市朗

    日野分科員 いま先占が主な話題になったわけでありますが、先占の前提として、発見という行為にもある程度の効力が一応認められるというふうに理解していいのではないかと思うのです。その発見した国は、発見してから相当の期間のうちに支配権力を設ける権利があるのだというふうに一応国際法上は説かれているのではないでしなうか。そうすると、これはよく新聞なんかでソ連の艦艇が、艦艇か舟艇かわかりませんが、その辺の調査をしているような記事を見ますと、これは日本国民たる者の一人としてなかなか穏やかではない。発見が他国におくれをとらないような措置としてどのような措置を連絡会議や何かでとるようなことをしておるのか。また、それの予算なんかはどのようになっておるのか。若干御説明をいただきたいと思います。
  312. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 いま先生のお話のように、発見ということで直ちに先占が完成するというふうには私どもは考えておりませんで、先ほど申しましたように、実効的な占有支配が行い得るかどうかということだろうと思います。そのためには早く発見しなければいかぬということ、発見も大事なことは先生のおっしゃるとおりであると思います。  その発見のためにどういう措置をとっておるのかという点は、先ほど申しましたように、関係省庁の連絡会議では、主として当面の措置としては、防衛庁と海上保安庁が所掌業務の実施の際に、できる限りその発見に努力しろ、そして連絡してくれ、こういうことになっております。それらの予算関係につきましては、私、ちょっと心得ておりませんので……。
  313. 日野市朗

    日野分科員 どっちにしてもこれは早く発見して国民の失望を招かないように、ひとつ関係各省で御努力をいただきたいと思います。また、岩礁であっても、領海は一応十二海里に広がる領海を持つわけでありますから、ひとつそこらの御努力をお願いしたいと思います。
  314. 武藤山治

    武藤(山)主査代理 次に、渡部一郎君。
  315. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 三月十九日に総理訪米に伴い外務大臣も当然御訪米になると承っておるわけでありまして、目下その仕事に忙殺されておられるのだろうと思いますが、日本国政の重大問題がたくさん発生しております折から、わが国代表してお行きになった際どんなことを言われるか、輪郭のところをお伺いしたいと思っているわけであります。     〔武藤(山)主査代理退席、愛野主査代理着席〕 交渉のデテールに触れるところは当然避けるつもりでございますが、率直な御解明をお願いしたい。  まず、アメリカの新政権のスタッフのある人が、米欧日の三つのエンジンで不況の世界を克服しなければならぬと述べており、そして日本に対して経済的な支出金についてはかなりのいろいろな要求というのが行われております。つい数日前もポルトガル政府の実質的な立て直しのために三億ドルの要請があり、また総合計すると、ここのとろで三十億ドル近い支出がアメリカ側からあるいは要求され、あるいは計画として持ち込まれ、そうしたものが出ているように承っておるのでありますが、それについてどう評価されておるか、まず承りたい。
  316. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 新政権の考え方として、いまスリーエンジンという話が出ましたけれどもアメリカ日本並びに、当時は西ドイツのことが考えられましたが、広く言ってヨーロッパ、こういったところで世界の経済の立て直しをやるべきだ、こういうお話があったことは御承知のとおりでございまして、この問題はやはり大きな問題として議論されるであろうと思います。  日本が貿易収支の黒字が非常に多いということは世界が注目をしているところでありますし、その点に関心を持っておる方が非常に多い。そういう意味日本の経済をもっと内需を振興してほしいという希望は世界的に多いわけでございます。この点は福田総理といたしましてもこの景気の拡大に努力をして、先般のモンデール副大統領が見えたときには一%政策的に引き上げるのだというようなことをおっしゃっており、この点につきましては考え方としては一致をしている面が多いだろうと私は思います。アメリカ一国だけで世界の経済を引っ張っていくことはもうむずかしいということがその根底にあろうかと思います。  それから世界各国あるいは先進工業国間あるいは南北問題としての開発途上国の問題、これらにつきましても、やはり日本としては努力すべきであろうと思います。  ただ、御指摘のポルトガルの問題につきましては、これはいろいろ問題がございますので、大蔵省においてもいま鋭意検討をいたしております。いたしておりますが、私どもとしていまここでどういう態度をとるかということまで申し上げられませんが、私どもといたしましては、国際的な金融問題としてIMFというような制度がありますし、また先般OECDの中で国際金融支援協定というようなものも国会に御承認もいただいたわけで、そういった国際的な機関が活動すべき問題ではないかというような考え方をしておりますので、この点はまだどのような態度をとるかというのは決めていないわけでございます。
  317. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 ここのところわが国はお金を出せば問題が片づくというふうになりかねない。しかもこれらの膨大な、数十億ドルに及ぶ金の支出が政府の手で行なわれるということは、予算審議の本質からいっても問題があるということはすでに指摘されたとおりであります。ところが今回の場合は、このアメリカの新政権による膨大な拠出金とも言うべき日本政府に対する期待というものは金額的にはだんだん増大していく、それに対する態度を向こうに行って御相談するというだけでは、いささか大福帳的な、どんぶり腹がけの中からお金をつかみ出して福田さんがぽいと出す、外務大臣がそれを手渡しするのをお手伝いするというようなスタイルではどうかと私は思われるわけであります。この辺ひとつ十分の節度を持たれ、かつ対外的な債務あるいは対外的なこうした分担金、拠出金、負担金あるいは国際機関に対する拠出金等の内容については、今度国会に対して明示される必要があるのではないか、少なくとも今度の御訪米が終わられましたらそうした内容について刻明に御報告をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  318. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いま御指摘になったようなことが先方から話があろうとは私ども予想はいたしておりません。二国間におきます問題よりも、世界の経済に対しましてどのような考え方で臨むか、またアジアの問題あるいは核拡散の問題とかいろいろ大きなテーマがございますが、具体的に大変な負担をしょってくるというような事態は想定はいたしておらないところでございますし、また御指摘のありましたように財政面のかかわりある問題につきましては、これは当然のことながら国会の御承認が必要なことでございますので、そのようないろんな負担についての話し合いがそこで決められるというようなことにはならないと私自身は思っております。
  319. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 お話の最後の部分ですけれども、財政面について国会の承認を得るという形は、予算委員会において、あるいは今度の本予算の中において行われますけれども、対外的なそうしたものについては横断的に議論されたということが少ないというので、外務委員会においても問題になったことが何回もございます。今度の場合はだんだん金額が増大する見込みがある。しかもそれはどこで承認を受けたのだというと、予算委員会予算で一括して承認を受けましたというふうにお答えになるように仕組みができておる。こういう形で行われるわけですから、私は必ずしもただいまのお答えは正確でなかろうと思います。したがって、こうした問題については横断的に御報告の上審議をすることが必要だと申し上げているのであり、十分御理解をいただいているものと思います。ですから、この問題を詰めるのは、お帰りになってからいろいろときちっとさせていただきたいと思います。  それから、突然話が変わりますが、OPPの問題です。レモンの上の防カビ剤として使われているOPPという薬品がございます。先般副大統領が日本を訪問されて福田さんにお会いになったとき、これについて強力な要請をなさった旨紙上に喧伝されております。ところが、このレモンの上皮に使うOPPについては、わが国は食品添加物に対する規制の法律によりまして日本に入れないということをずいぶん明示してきたわけでありまして、そのためにレモンはしばしば廃棄処分に処せられ、アメリカ側からは日本の姿の見えない輸入拒否という形でまた非常に問題になったところでございます。  ところがこのOPPの問題について、突然政府は、昨日これを厚生省が審議会に諮問なさった。そしてその諮問をする際に実験データを添えられるのでありますが、OPPは無害だというデータだけくっつけて諮問された。そしてその答申を得たら直ちにそれを許可して、それをおみやげにカーターさんのところへ福田さんは走っていくというふうに見えるのでございます。まさにそういう仕掛けで動いているとしか見えない節がここのところ連続しているわけであります。  まず、厚生省の方にここのところの事情をお伺いしまして、外務大臣に締めくくりをぴしりとしていただきます。
  320. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生の御質問のOPP、オルトフェニルフェノールという化合物がございまして、これは柑橘類の防カビ剤として使用されておるものでございます。このものについては一九六九年に国際機関でございますFAOとWHOの合同委員会におきまして、一般毒性についての安全性の評価が行われまして、一日体重一キログラム当たり一ミリグラムまで摂取しても安全である、こういう線が出されまして、一九七四年には柑橘類に一〇ppmまで残っていてもよろしい、こういうような勧告値が出たわけでございます。現在、アメリカ合衆国とかカナダとかスイス、フィンランド、スウェーデン、イスラエルそれからEC諸国、オーストリア等でも広く使われておるわけでございますが、このものについて、ではWHOの評価が終えて各国で使っておるのに日本でなぜ使用を認めなかったか、その点について若干説明をさせていただきます。  まず、先生がよく御存じのことでございますが、昭和四十九年に当時豆腐の殺菌料の中に使用しておりましたフラン系化合物でAF2というのがございました。この食品添加物の安全性をめぐりまして、特に遺伝学者の方から遺伝学的に問題が多い、あるというような指摘をいただいたわけでございまして、そして食品衛生調査会で当時その安全性をめぐっていろいろ論議をされたわけでございます。しかしながら、まだこの遺伝学的毒性という学問は熟していないということで非常に困難な問題があったわけでございますが、当時の学者の論議の過程におきまして、こういうようなやり方、実験の仕方でこの評価をして、そして添加物に対して非常に国民は不安を持っておるので、遺伝学的な面からも安全性をきちんとやるようにというような内規を食品衛生調査会でも決めたわけでございます。したがって、こういったOPPの使用を認めてほしいという関係者の申請がございましたが、私どもはこういう遺伝学的な面からの資料も調査会の定めたとおりにやって、そして提出するように求めてきておったわけでございます。  それから、これも先生がしばしば国会等で御議論されますが、食品添加物の審議は公表のような形ですべきではないかというような御指摘もございました。私どもはそれ以来、食品添加物の安全性について審議をしていただくときには、その研究が関係学会で発表された後か、あるいは関係学会誌に投稿された後、つまり公表された形のデータに沿って審議をする、こういうことを厳守しておりまして、この遺伝学的なデータにつきましては、残留農薬研究所という研究所がございます。そこで遺伝学的な、その内規に沿った実験が行われました。そして一九七六年十月十六日の日本環境変異原学会第五回研究会において発表されたわけでございます。そしてこの発表に基づきまして作成された資料が、昨年の十二月末に私どものところに提出されたわけでございます。私どもは、このデータを含めまして、ことしに入りましてかう急ぎその調査会に審議をしていただくために整理を進めてきておったわけでございますが、ようやくその整理も終わりまして、大臣等にも説明をいたしました。そしてきょう諮問にこぎつけるというようになったわけでございます。
  321. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御説明で御了解いただいたと思いますが、昨年の秋に、簡単に申しますればこれはシロだ、遺伝学的な問題についてもいいんだということで、世界各国で日本だけがOPPを、なるがゆえに輸入を認めない、こういうことであったのが、それはもっぱら技術的な問題にあったということで、実際に残留農薬研究所の方から提出があったのも十二月でございます。それがたまたま、その結果諮問が本日になったということで、これはまあ訪米とたまたまちょうど時期が一緒になったものでございまして、私どもは、国際的な問題からすれば、やはり科学的な結論が出たならばなるべく速やかにこういったものは措置をしていただいた方が国際的な通商問題からすれば好ましいというふうに考えておるわけでございまして、むしろ若干遅かったという感じはありますけれども、たまたまこれが訪米と一致をしたというふうに御理解をいただきたいと思います。
  322. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そうすると、これは何もあわてて食品衛生調査会の答申を今度の訪米に間に合わせるという意味ではないものと理解してよろしいですね。課長の方からまず……。
  323. 宮沢香

    ○宮沢説明員 私どもは、先ほども申し上げましたように、ようやく資料も整備を終えまして調査会にかける体制ができ上がったので審議をしていただくということで、本日諮問をいたしたわけでございます。
  324. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣、それは訪米のおみやげですか、おみやげでないのですか、私、それを聞いているのです。途中のいまの話は私は大分議論があるけれども、この短い分科会ではそれを議論し切れないので、おみやげに持っていくのですか持っていかないのですかと伺っているのです。
  325. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これはおみやげというよりも、日本がこれから通商問題、貿易問題でいろいろやり合わなければいけません、そういったものから考えまして、科学的に結論が出たものを実施しないということは、これは日本態度としてはきわめて遺憾であり、また国際的に非難を受けるということは確かであります。そういう面からいって、この問題が早く——これからこの調査会にかけるのでありますから、結論は調査会で出なければ言えないわけでありますけれども、やはり非関税障壁であるというような非難は受けない方が好ましいということは確かでございます。こういうことで、おみやげという性質のものではありませんで、日本としてそのような非難を受けないような体制にしていただきたいということでございます。
  326. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣は科学的知識については私よりちょっと弱いだろうと私思うのです。私は課長より大分弱いと思います。AF2でさんざん論戦しましたので御実力のほどはわかっているつもりなんですが、これは難点があるのです。これはデータは残留農薬研究所というところから出ております。残留農薬研究所というのは農薬を安全に使うために農薬会社がお金を出し合ってつくったところです。だから、日本の研究機関の中では一番優秀な方だと私は認めますが、いよいよ公的な資料、日本の国政を大事に扱うような資料を提出するところとしてはむしろ資格を欠いておるというのが致命傷なんです。国立衛生試験所というのがあるのですが、この衛生試験所というのは設備がぼろくていい研究ができない。ところが残留農薬研究所は農薬団体の出店じゃないかと言われたらどうしようもない性質を持っている。現にいままで長い間水銀汚染を大々的に日本のお米に対してつくって、日本の水田という水田を水銀だらけにしたという重大な責任を農薬会社は持っておるし、その残留農薬研究所の研究所員の幹部たちも、それに対する深い遺憾の意を表明しておるという歴史的事実がある。しかも、こうしたものについては長い年代をかけて後から判断されなければならぬものもある。科学というのは、そういうように明快な一つの答えが出ない場合というのが非常にあるわけです。  ところが今度の場合、残留農薬研究所のたった一つのあれがぽんと出ているわけだ。それに対して、これはさっき食品衛生課長が私の部屋にわざわざ持ってきてくれた、こちらがそうなんです。ところがここのところに、名城大学の花田信次郎先生というのはむしろ反対派なんです。OPPは危険だという説なんです。こういうものがちゃんと出ておるのです。賛成論、反対論、山ほどある、それがまだ煮詰まった議論ではない。だから、審議会なり食品衛生調査会なりに付託されるときには、賛成論も反対論も一緒に持ってきて付託して議論されるのが妥当だと思うのですね。ところが賛成論だけ一つかけてこれで判断しなさいとぽんと渡したら、それは後どれほど批判されても非難に答えようがない、その研究内容が優秀であったとしてもですよ。そういう危険性を含んでいる。  しかも今度の訪米で、あわててOPPについて結論を出せ、と言ったかどうか知りませんよ、外務大臣が言われたか総理が言われたか、それは知らない。非関税障壁の問題からこの問題を考えるというよりも、人間の命の安全ということから考えなければいけない。その場合に、わが国の国内にこれほど論争がある問題に対して、また強烈な反対論が現にあるわけですから、それを公開でな二いところで押し切ろうとするとはなはだ危険ではないか。むしろ、こういう外務大臣の非関税障壁に関する御発言は私は十分わかりますけれども、その非関税障壁の問題であわててはいけない。科学というのはあわてるとろくな結論が出ない。今度のおみやげにしょうなんという気配が、あやしげな妖気が外務大臣の背中のところにばっと立ち上っておる。だから、そういう妖気を漂わせて行くということは危険である。これはひとつお慎みいただいた方がよろしい。それで、十分の科学的審査を経た結果において安全ということがわが国において決着した後OPPの問題を処理すると言っても、私は外交交渉の上でマイナスではないと思う。科学を無視した外交なんというのはあり得ない。そして科学を無視した食品衛生問題もあり得ないし、それを外交の取引の道具なんかにしてばならないと私は思うのですが、いかがですか。
  327. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨年の十二月に科学的な見地から結論が出たというふうに私ども理解をいたしておりますし、そのように一般に理解されておるものですから、そういうことからいきますと、日本としてOPPを使ったものの輸入をストップさせる理屈が全くなくなってしまう、こういうことでありますので、その科学のもとになります説が正しいとか正しくないという判断、私は本当に申し訳ないのですが、科学者でありませんので持ち合わせておりませんが、そのような情勢を、たとえば端的に言いまして、アメリカの方にもそういった報告が出たことも知っておるものですから、したがいまして、この結論が出たのになぜ輸入を認めないかということになっておるのでございます。その点、科学の問題、私存じませんので、厚生省の方から……。
  328. 宮沢香

    ○宮沢説明員 ただいま先生が御指摘になりました、この名城大学の花田先生のデータでございますが、昨年の四月の日本薬学会で発表されておりまして…
  329. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 課長さん、時間がないので、そこから先の話はよろしいです。次に行きます。  要するに私が申し上げたいことは、こうしたいろいろな議論というものを十分検討され、調整される間に結論を急ぐべきではないと申し上げておるわけです。これを十分おわかりの上で処理していただかなければいけない。結論を出さなければならぬから、期限があるからということで突っ走るべきでないということを申し上げておるわけです。
  330. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  先生のただいま御指摘の、こういった批判しているデータなどもどもはできる限り全部集めまして、そして食品衛生調査会で審議を尽くす、消費者の不安にこたえるために十分審議を尽くす、こういうことで現在資料を整備しておるわけでございます。
  331. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 いや、あなたがお出しになったのは、残留農薬研究所の資料たった一つでしょう。いまあなたはそういうようにうまくおっしゃったけれども、実際にお渡しになったのは一通じゃありませんか。
  332. 宮沢香

    ○宮沢説明員 OPPについてその安全性を食品衛生調査会で審議をするのは今回が初めてでございます。したがいまして、国際機関でございますWHOで安全性の評価に用いますところの世界各国のデータのほかに、さらにその残留農薬研究所の遺伝に関するデータも加え、そしてまた批判的な結果を出しておられます花田先生のデータも加えて、そういうものを全部、私どもはあとう限り集めて、そして十分審議してもらう、こういうことでございます。
  333. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そうすると、それには相当の時数がかかると見てよろしいわけでしょう。
  334. 宮沢香

    ○宮沢説明員 これは審議をしていただかないと、どの程度かかるかここではちょっと即答しかねます。
  335. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 少なくともそれらを審議するためには会を開かなければならない。あのAF2のときに私はこりごりしたのですが、食品衛生調査会というのは、大臣、非常にけしからぬことをすることがある。委員会の構成メンバーを集めないで、やりましたなんというデータを偽造したことがある。これは実を言うと札つきの委員会なんです。それでやったかのごとく装って結論を出したり、そういうことがないことを私は期待する。少なくともそんなことは疑われないで公明正大に論議され、しかも議論のデータが、見もしないデータを見たかのごとく装ってみたり、データの一部が改ざんされたりすることのないことを私は期待する。少なくともその調査会が数日の間に調査会の会長だけの意見で、あれは結構でしたなんという答申書が出ないことを私は期待したい。その点は大丈夫ですね。
  336. 宮沢香

    ○宮沢説明員 ただいま先生申されましたような、過去における食品衛生調査会云々ということでございますが、いままでにそのようなことは一度もございませんし、これからもございません。十分その審議を尽くして結論を慎重にして……
  337. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それは、あなたは知らないのか、とぼけておられるのか、どっちかだな。私は、きょうは外務の予算分科会ですから、その問題を詰めるのはやめますが、宮沢さん、あなたは前の食品化学課長のなさったこと、その前の方がなさったことについてもう少し歴史的事実を御研究あそばされますよう私は期待します。これからはそういうことがないとおっしゃるのですから、そんな変な答申が出ないことを私は期待します。  大臣、これは本当にあわてたらあなたは汚名を残される問題だと思いますから、私は、特に洋行みやげなんてかばんの中にもう入れてあったら、OPPと書いた書類だけは出されないで、これは危険と赤マークか何かつけておかれることをお勧めいたします。  さて、まだ聞きたいことはうんとあるのですけれども、時間がありませんから……。海外子女教育についてお伺いします。  今回の予算外務省に対する分を見まして、私はかねてより海外子女教育の問題を予算分科会で取り上げてまいりましたが、海外子女教育のために日本から正規の教師が海外の日本人学校に派遣されております。それらの先生の保障の問題につきましてちょっとお伺いするのでございます。  これらの先生の保障については都道府県でまちまちの取り扱いでありまして、これらの先生が海外で安心して活躍することは不可能であります。特に政情不安定な東南アジア地域に派遣されている先生方に対しては、まず死亡の時期の補償が全くない。日本から幾ら送り出しても、亡くなられましたとき、死亡の補償ができないわけですね、海外に現にいるわけですから。都道府県がそれに対する補償措置をとっておらないわけです。だからこれは何もできない。ばらばらである。それで給料については日本側で受け取る分と海外出張費というのが両方にばらばらに分けて支給されておるのですが、その分けた比率というものが怪しいわけですから租税公課の点でばらばらの取り扱いが行われておる。それから身分保障がない。それらの先生が日本に戻ってきたときの保障がない等の大問題がいろいろあるわけであります。  これらについて適切な御措置をお願いしなければならぬわけでありますが、問題はもう簡略にいま個条書きでぱっぱっと私は申し上げましたけれども、何らかの研究、対策を外務省だけでなくて文部省にも大蔵省にも自治省にも、しかるべき関連のところ全部でお考えいただかなければならないのですが、一括してお答えいただけませんでしょうか。
  338. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いま申された点は、子女教育をこれから一生懸命やる上でまことに大事な問題でございますので、私自身鋭意努力して、また文部省にもお願いするところはいたしたいと思います。
  339. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 これはぜひお願いいたします。そうしませんと、海外子女教育の費用というのは、国会の外務委員会海外子女教育委員会で決議をいたしまして、当時の五党一致いたしましてお願いをしたとおりでございますが、その後費用の累増が非常に少なく、また学校もずいぶん意欲的につくってくださいましたけれども世界じゅうでカバーするためにはとうてい足らぬということが明らかでありますので、これはぜひお願いをいたします。  完全に時間がなくなってきましたから、最後に一つお伺いしておきますのは、海外子女教育の逆の面ですが、日本日本語学校がつくられております。これは国際学友会という名前で、昔、これは大東亜共栄圏当時にわが国においてつくられたものだそうでございますが、この建物が最近もうまことに妙なことになっておりまして、寮が閉鎖され、二千五百坪の土地のうち約千坪が売り飛ばされなければ立っていかないような状況になって、むしろ寮を実質的につぶしてしまう、学校は別のところを借りて多少やるというようなやり方になろうといたしております。これに対しては外務省予算が出ておりまして、外務省予算の出ている財団法人というたてまえになっているようでありまして、関係されておりますところでは非常な御苦労をもってやっておるようでございます。ところが、問題としては解決せぬ。寮生と激突したり、あるいは寮の執行者、あるいは寮の労働組合との関係も明瞭でなく、そして寮生に対する取り扱いにしくじった点もございますし、終業式、始業式等に外務省のえらい人が行かないで課長しか来ないなどというふんまんさえございまして取り扱いが非常にまずい、下手をすれば閉鎖等になりかねないような状況にあるわけです。  きょうは通告もしないで申し上げて恐縮でございますが、これは大臣基本方針としてこの学友会存続のために、あるいは学友会の改組という点まで含めて考えていただきまして抜本的な財政措置をお考えいただかなければ当会は閉鎖するしかない。で、閉鎖した場合のわが国外交に対するマイナスのインパクトというのは、将来にとって大きいものではないかと思われる節がございます。国際交流基金一千億というかけ声が現総理の外務大臣当時に行われたわけでありますが、現在五十億円程度というような少額の資金でありまして、これはもう話のほかでありますから、こうした点を含めてこの問題については十分の御検討をいただき十分の処理というものを、きょうの段階ではお答えになることが不能なほどの混乱状況でありますから、ルールをつくられまして何かの処置をとっていただきたいと思いますが、できれば御回答をお願いいたします。
  340. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国際学友会は大変な財政的危機を招いてしまったこと、そしてそのために主として東南アジアから来ておられる学生諸君を今月いっぱいで立い退いてもらわなければならなくなったこと、これらに対します手落ちと言ってはあれでございますが、必ずしも順調に運ばなかったことにつきまして、私自身も大変遺憾なことであると思っております。これから鋭意努力いたしまして現在、現状で何とか——どうしても千坪を明け渡さなければならない、これは何とかならないかということをずいぶん研究さしたのでありますけれども、もう期限がぎりぎり来ておるという非常に差し迫った問題であるということを知りまして、大変残念に思っておる次第でございますが、この問題は鋭意努力いたしたいと思っております。  交流基金の問題につきまして、本年度は当初は五十億円の要求を出してなかったのでありますけれども、福田総理が外務大臣のころお始めになったことで、この点につきまして非常に御熱心なことがありまして、ことしは追加して五十億にしていただくことができたわけでありますが、今後とも資金の拡充につきまして鋭意努力をいたしていく所存でございます。
  341. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 次に、二見伸明君。  委員長より政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、簡潔にお願いいたします。
  342. 二見伸明

    二見分科員 福田総理大臣が訪米を前にしておりますので、いろいろと日本側の考え方や何かをいままとめていらっしゃる真っ最中あるいはすでにまとめ終わった段階であろうと思います。私はきょうは本論に入る前に二、三点承りたいと思います。  最初は、ただいま渡部委員質問しておりましたOPPについて、私はその方の知識は全くございませんので、その点は御安心いただいてよろしいわけでありますけれども、ただ一点、先ほど渡部委員質問に対して訪米みやげではない、こういう大臣の御答弁でございました。訪米みやげではないけれども、向こうへ行った場合にOPPについては首脳会談の議題の一つとなるのか、話し合うのかどうか。というのは、モンデール副大統領が訪日されたときに、やはりこの問題が福田総理大臣との間の議題の一つになっているということもありますし、フォード・三木会談のときにも、やはりこれがアメリカ側としてはかなり大きな関心事であったと聞いておりますので、訪米する以上、恐らくこちらとしては意図しなくても向こうから持ち出してくる可能性があるわけです。したがって、OPPについては話し合うのかどうか、その場合日本としてはどういう基本的な態度を持っているのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  343. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の両国の首脳会談におきましては、世界的な規模の問題に主として時間を割きたいということから、二国間の問題はなるべくほかの機会に片づけよう、こういう態度で臨んでおるのでございます。
  344. 二見伸明

    二見分科員 そうすると、日米二国間の問題はほとんど議題にならぬということになりますか。というのは、私はOPPに関連してもう一点伺いたいのですけれども、けさの報道によりますと、アメリカの国際貿易委員会は日本のカラーテレビに対して、現在五%の関税率を二〇%アップして二五%にするということをカーター大統領に勧告することを決めたという報道がなされております。これは日本のテレビ業界にとっては、かなりショッキングなことになります。こういう問題も首脳会談で当然話し合われるだろうと私は思うのです。世界的な問題だけを話するのであって二国間の問題については話し合わないということはないと思うのです。もちろん世界的な問題について、日本世界経済に及ぼす役割りであるとかそうした問題についても、当然話し合うでしょうけれども、二国間の懸案の課題も、私は当然話し合うだろうと思うし、話し合ってしかるべきだろうと思います。そうすればOPPについても話し合うだろうし、向こうから話を持ってくるだろうと私は思うのです。また逆に、日本としてはカラーテレビの関税率引き上げについては持ち出さないのですか、どうでしょうか。
  345. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二国間の問題は全く話し合わないということを決めておるわけではございません。先般、モンデール副大統領が見えましたときも、当方からアメリカに申し述べたいことが数点ありまして、私どもの方からモンデール副大統領に申し上げました。そして先方からも、いまお申し出になった柑橘類の話と鉄鋼輸出の問題、それから日本のカラーテレビの話、これは先方からあったわけです。またカラーテレビの問題につきましては、アメリカの取り扱い方が非常にエスケープクローズのような問題が出ておりましたので、当方から自由貿易の趣旨から余り不当なことをしないでほしいということも申し述べて、カラーテレビの方は両方から申し述べたような経緯がございます。そういうわけで、そのときの話がどうなったかというようなことも、話題には出ないことはないと思いますが、しかし、そういった問題は主なテーマにはしたくないというのが現在の立場でございます。
  346. 二見伸明

    二見分科員 もちろんメーンテーマではなくて、サブテーマでもない、いろいろな話し合いの中からOPPについてもカラーテレビについても、向こうからも話を出すだろうし、カラーテレビについては関税率引き上げの勧告がカーター大統領に出されたということになればこちらからも、メーンテーマではないにしても一、いろいろな機会をとらえては日本側の主張というものはしていくだろうと思うのです。これからアメリカに行っていろいろな話をする場合に、こちらの手のうちをすべて見せるわけにいかないでしょうけれども、基本的な考え方だけはもうまとめてあるのではないでしょうか。どうでしょうか。
  347. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いろいろあらゆる準備はしておりまして、あとは会談の進行状況いかんということでございます。
  348. 二見伸明

    二見分科員 もう一点伺いますけれどもカーター大統領になりまして前の政権と非常に違うところはいわゆる人権抑圧批判、これが共産圏だけではなくてアメリカにとってみれば同盟国に対してまで人権擁護、道義外交というものを展開されております。そのためにブラジルとの間にトラブルが起こってみたり、カーター外交はいろいろな波紋を世界に巻き起こしているわけであります。もちろん、これについて話し合うというよりも向こうに望む場合に、そうしたカーター大統領の人権抑圧批判外交というものに対しての日本としての基本的な認識と言うか評価を持っていかなければ、カーター大統領との話し合いもうまくいかないのではないか。その点では政府としては、この道義外交についてはどういう評価をされておりますか、いかがでしょうか。
  349. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 道義外交の評価という点につきましては、これやはり大変大きな問題でございますので、総理とカーター大統領との間でお話し合いになるべきことでございまして、私どもそれに対しまして特別な準備はいたしておらない次第でございます。
  350. 二見伸明

    二見分科員 そうですか。そうするとこの問題については全く総理にゆだねてしまって、外務当局としては一切準備はしない、すべて総理お任せということになるわけですか。  そうすると、もう一つは、日本のいままでの考え方からいって、一般論としてはどういうような解釈なり評価を下していたわけでしょうか。いかがです。
  351. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 道義という問題、あるいは人権外交というようなことが言われましたのは、これは大変な決意の要ることであろうと思いまして、カーター新政権のあり方としてこれは大いに評価してしかるべきことであろうと思いますし、日本立場アメリカ合衆国としての立場とは、私ども外交に携わる者といたしましては、やや違った面があるということも考えております。それば同盟国同士の間の場合とそうでない場合とは非常に物の考え方が違ってくるという点もございますし、また外交のやり方につきましては、やはり何よりも相手国の内政にくちばしを入れるということは、よくよく慎重でなければならないというふうに私どもは考えておる。これは非常に消極的ではないかというおしかりを受けるかもしれませんが、日本がいままで進めてまいりました外交の姿勢からいたしまして、世界の各国とも仲よく友好を進めてまいりたい。その場合には、相手国によりまして、それは相手国の国内体制というものはいろいろ差があるわけであります。そういった国内体制の差異というものを十分両方が尊重し合いながら外交を進めてまいるという考え方をとってまいったと思うのでございまして、その点は、片方でカーター新政権の人権問題あるいは道義外交というものに対して私どもは評価をいたすとともに、わが身といたしましては、その点は心すべきではないかというふうに考えておるところでございます。
  352. 二見伸明

    二見分科員 そういたしますと、こういうことになりますか。カーター大統領がソ連に対して、その他アメリカにとっての同盟国に対して、いろいろないわゆる道義外交を展開されている、それはアメリカとしておやりになることだから、日本としてはそれなりに評価はするけれども、同じことは日本としては今度は立場が違いますからできにくいのだということになるのか。アメリカのやっていることだからそれなりにいいよという程度のことなのか。もっと具体的に言いますと、たとえば韓国に対してアメリカがいろいろなことをやってくる。道義上の問題があると批判を加えてくる、これはアメリカだからできるのであって、日本としてはいろいろないきさつもありますし、非常に関係も近いから、日本としてはそれは内政干渉にもなるし、そういう態度はとらないのだということになりますか。時間がありませんし、これでもって深い議論をしようなどという気はないのですけれども一つ認識として伺っておきたいと思うのです。
  353. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私は、どういう行為が内政干渉になるかということを必ずしもここで申し上げるつもりはないのでございます。しかし、国内体制というものはいろいろ違うということ、これをよく認識しないといけないのではないかというふうに考えるわけでございまして、日本としてはその点をよく心に置いてやり方等を考える必要があるだろうということを考える次第でございます。
  354. 二見伸明

    二見分科員 別の問題に移りたいと思います。  ベトナムの問題でありますけれどもベトナムに対して昨年とことしでもって合計百三十五億円に上る無償経済協力が行われたと思います。もし数字が違いましたら御答弁の中で御訂正ください。この無償経済協力というのは、どのような経緯によって供与することになったのか、そのいきさつを御説明いただきたいと思います。
  355. 中江要介

    中江政府委員 先生のおっしゃいました数字、昨年度と本年度で合計百三十五億、これは正確でございます。どういうことでこういう無償協力を行うことになったかという経緯は、簡単に申し上げますと、日本政府といたしましては、あのベトナムにおける長い長い戦乱の結果、ベトナムの人たちがこうむったであろう被害、それを復興して経済的に開発を進めていくという時期に参りますれば、日本としても応分の寄与を行うべきであるという考え方を当初から持っておったわけでございまして、そのことから、いまはベトナムとして統一されましたけれども、まだ統一前のいわゆる北ベトナムと呼ばれておりましたころに最初の八十五億円の無償協力が合意を見まして、それの実施の過程で統一されたわけですが、統一後のベトナム社会主義共和国に対して、さらに五十億円の無償協力の合意ができた、こういうことでございます。
  356. 二見伸明

    二見分科員 そうすると、これは昭和三十四年だったと思いますけれども、いわゆるベトナム賠償協定が行われて、百四十億ですか、四千万円の賠償を支払いましたね。それとは全く無関係で、それに見合うものだというふうな解釈はとらなくてもよろしいわけですか。
  357. 中江要介

    中江政府委員 四千万ドルだろうと思いますが、この一九五九年の賠償協定というのは、御承知のように、ベトナム全体に対する日本のサンフランシスコ条約に基づく賠償義務の履行という形で行われたものでございまして、今回の百三十五億円は、数字は非常にそれに近うございますけれども、性格といたしましては、それとは別に、先ほど私が申し上げましたような、復興と開発のための無償援助、こういうふうに法律的な性格の全く違うものであるというふうに御認識いただいて結構かと思います。
  358. 二見伸明

    二見分科員 そうすると、この百三十五億円というのは、ベトナム側からの要請で現在やっているわけでしょうか。たとえば、ことしは五十億円ですね。これはもともとはベトナム側からの要請によるものなのでしょうか、それとも日本政府の発意といいますか、こちらからの自発的な意思でもって行う行為なのでしょうか。
  359. 中江要介

    中江政府委員 無償協力、無償援助の内容は、これはベトナム側の希望といいますか、期待というものを十分にしんしゃくいたしましてこれを供与するものでございますけれども、インドシナ半島の戦乱の結果、それがおさまった暁には応分の寄与をしたいという日本政府の気持ち、これは北ベトナム国交を樹立するに当たりまして、明確にわが方からベトナム側に伝わっておったわけでございますので、どちらが先ということはともかくといたしまして、わが方の気持ちとベトナム側の具体的な希望とを勘案して合意されたものがこの無償協力というふうに考えております。
  360. 二見伸明

    二見分科員 わかりました。  それではもう一つ伺いたいと思いますけれども、いわゆる南北に分かれていたときに、わが国昭和三十五年一月から百四十億四千万円のベトナム賠償を払ったわけでありますけれども、そのほか、南ベトナムへの円借款というのが昭和三十四年五月からずっと行われております。そうすると、これに対する債権がまだ残っているはずでありますけれども、これはどこが継承することになりますか。というのは、ベトナム賠償問題のときに、南北に分かれているじゃないか、南に百四十億の賠償金を払うのはどういうわけだ、北にも政府があるじゃないかという議論がありましたね。そのときに、当時の藤山外務大臣だったと思いますけれども、これは南じゃないんだ、南北ベトナムに払うんだ、そして、債権、債務の関係というのは当然統一後の政府も引き継ぐんだ、こういう答弁があるわけですけれども、そうなりますと、この南ベトナムへの円借款というのは、性格的にはいまのベトナム政府がそのまま承継することになりますか。その点はどうなっておりしまょうか。
  361. 中江要介

    中江政府委員 旧南ベトナムに対する円借款の詳細につきましては、あるいは経済協力局長から御説明があるかと思いますけれども、基本的な考え方といたしましては、賠償の支払いは、いま二見委員のおっしゃいましたように、当時の日本政府認識といたしましては、サンフランシスコ条約の当事国としてのベトナム一つの国である、その一つの国に対して賠償の義務を履行するのであるから、それが事実上、当時北の方が実効支配が及んでいないという事態があるにいたしましても、国と国との間のサンフランシスコ条約上の賠償義務の履行というものは、全ベトナムを念頭に置いたものであるという考え方で貫いてきたわけでございます。  他方、円借款が供与されました時代といいますか、その時期におきましては、南北ベトナムがジュネーブ協定以来二つに分かれたままで、その間にいろいろの紛争が続いておったわけですけれども日本といたしましては、南ベトナムを有効に支配しておりました当時のベトナム共和国に対しまして、そのときそのときの事情に応じて、先方の希望を入れて円借款を供与してきた、こういうことでございます。
  362. 二見伸明

    二見分科員 そういたしますと、昭和三十四年に審議されて、昭和三十五年一月から実施されたいわゆるベトナム賠償というのは、これは南ベトナム政府日本として払ったものだけれども日本側の考えとしては全ベトナムに該当するものなんだ、しかしながら、昭和四十五年以降南ベトナムへの円借款が行われておりますけれども、これについては、当時の北ベトナム政府を拘束するものではない、こういうことになりますか。
  363. 中江要介

    中江政府委員 事実上、実態と日本政府ベトナムという国をどういうふうに認識していたかということの間に、ああいう特異な事情でございましたので、いろいろそごがあったわけでございますけれども、たてまえといたしましては、日本政府が北ベトナムを承認いたしましたのはずっと後のことでございまして、それまでは、南ベトナムが実はベトナム共和国として全ベトナム代表するという認識のもとにいろいろの経済協力援助をやりましたけれども、ただ、実効支配の及んでいる地域というものが方々限定されていたということは、事実上の問題として残っている。したがって、国際法上の権利義務の継承いかんという問題になりますれば、南ベトナムに供与したものは、南ベトナムの臨時革命政府がこれにとってかわりましたときには、それに継承されるべきものでございましょうし、それが北との間で統一いたしましたときには、その統一ベトナムがそういうものを権利義務を含んで継承していくというのが一般国際社会の通例であるという考え方に立っておるわけでございます。
  364. 二見伸明

    二見分科員 そういたしますと、昭和四十五年には、十二月に十六億二千万円ですね、これは融資機関は輸銀で、金利六%、期限十年ですね。四十六年には五十七億六千万円で、これは基金から出ていますね。四十七年には二回出ていまして、合計で約四十億円。四十九年には八十二億五千万円と、こう出ておるわけでありますけれども、これは統一したいまのベトナム政府がそのまま承継をするというふうに理解してよろしいわけですね、ちょっと確認いたしますけれども
  365. 中江要介

    中江政府委員 日本政府立場といたしましては承継されてしかるべきものであるという立場に立っておるわけでございます。
  366. 二見伸明

    二見分科員 その点については、私はこれは貸してある金だから全部取れなんという意味で申し上げておるわけじゃないのです。法律的な関係はそうだろう。ただしかし、これを現実の政治の場に引き戻した場合にはそうはいかないわけですから、たとえば日本政府として何らかの方針というものを明らかにする必要があるんだろう。というのは、いろいろあると思うのです。南ベトナム政府に円借款したその条件でもってそのとおりお返しくださいと言うのも、間違いない態度だろうと思うし、あるいはベトナムが戦火に焼けて復興が大変だろう、そういう政治的な配慮を加えて、たとえば金利をゼロにしましようと言うことも考えられる方策だろうし、あるいは貸したものを全部返さなくてもいいですよと言うこともあり得るだろうし、何らかの方針が立てられてしかるべきだと思うのです。そして、これは日本の私たちの税金が向こうへ行くわけですから、当然それに対しては国会に御報告があってしかるべきだと思うわけですけれども、その点についてはいまどういうふうにお考えになっておりますか。もう時間がありませんので、簡単にお願いします。
  367. 中江要介

    中江政府委員 その問題は、おっしゃいますように、わが方にはわが方の立場がございます。また、先方には先方の立場がございますが、いままでのベトナム側とのいろいろの接触を通じて現時点で言えますことは、過去のいろいろの経済協力の成果がどうであるとか、それの法律的意味がどうであったかということは、立場としてはそれぞれあるにいたしましても、大事なことはこれから日本ベトナムとの間にどういう関係を発展させていくかということにあるのであるから、日越双方とも将来を展望して、善意を持ってこの問題の解決に努力すれば不可能な問題ではなかろうということで、鋭意折衝はしておりますが、先ほど来申し上げました日本立場というものが全く無視されるようではこれはまた問題でございますので、そこのところをいま双方で苦心しているということでございます。
  368. 二見伸明

    二見分科員 くどいようでありますけれども、もちろん交渉している内容を全部明らかにしろなんというむちゃなことは私は申し上げませんが、その話し合いをしながら何となくうまい方向に行きつつあるのでしょうか、どうなんでしょうか。それだけを伺って、質問を終わりたいと思います。
  369. 中江要介

    中江政府委員 うまい方向に行くのではないかと思い始めているということだろうと思います。
  370. 二見伸明

    二見分科員 以上で終わります。
  371. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 次に、安井吉典君。
  372. 安井吉典

    安井分科員 領海法の問題をお聞きしたいと思うのですが、まず、鳩山外務大臣に伺いますが、政府世界に例のない十二海里、三海里のでこぼこ領海をつくるということをお決めになったようでありますが、国際的にそういうような事情をどういうふうに御説明になるのか、それから伺います。
  373. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国際的にこの十二海里と三海里と別々につくった、こういうわけではございませんので、もう御承知のことでくどくど申し上げませんが、わが国国連の海洋法会議の結論が出次第この十二海里を実施したい、こう思っておったわけでございます。ところが、昨年その結論が出ませんで、漁民の立場からいたしますと、いつまでも国連海洋法会議の結論を待っているわけにいかないということで、何とか速やかに十二海里を実現してほしい、こういうお話があったわけでございます。他方、海洋法会議の方で問題になっておりますいわゆる十二海里になった場合に、いわゆる国際航行に使われている海峡が十二海里でみんな領海になってしまうという場合に、そこの通航制度につきまして国連海洋法会議で鋭意議論をしておるところでありますので、この通航方法につきまして結論が出るまでの間、しばらく現状どおりにしておこう、こういうことで、それより解決の方法がないという判断のもとにそういった地域を除いた地域を全部十二海里に拡張しよう、こういう考え方でございます。
  374. 安井吉典

    安井分科員 国連海洋法会議の結論はどうもそう出そうもないように思うのですが、いまそのでこぼこ領海線というのは現実には相当続くのじゃないですかね。その辺、海洋法会議の見通しをちょっと伺います。
  375. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 海洋法会議は、ことしの会期は五月の二十三日から七週間または八週間やることは先生の御承知のとおりでございます。この会期がまさに海洋法会議がある意味で成否を決する正念場ということになり得るのではないか。御承知のように昨年の会期におきましては、深海海底の開発の問題をネックにしまして、どうも所期のいろいろな成果が上がらなかった。したがってこの大きな問題に最初に取り組んで、最初の二、三週間はもっぱらこれに集中審議して、そこのブレークスルーをひとつ図ろうということで各国ともいま所要の準備を進めている。この辺を見きわめませんと、果たして今度の会期で実質的な合意まで到達するかどうかという点は、いまの段階では判断するにはちょっと早いのじゃないかという感じがいたしております。
  376. 安井吉典

    安井分科員 そこで領海法案、名前はどうなるのかわかりませんが、いずれにしても領海を十二海里とする法案を大体三月中には提案をするというふうな政府のいままでの態度だったようでありますが、いま新聞にも、二カ条で附則がわりと長いのがついたというのがときどき出てくるわけですが、これは別に発表した記事ではないと思いますけれども、いま作業はどうなっているか、国会への提案はいつごろになるか、それを伺います。
  377. 森実孝郎

    森実説明員 内閣が出席しておりませんので、作業に従事しております者の一人として御答弁申し上げます。  三月中に国会には御提案をいたしたいと思って、現在内閣の領海法準備室において原案を作成中でございます。いろいろ決定しなければならない事項もございますし、法制上の表現もございますので、なお最終的な原案がまとまりますには若干の時間が要ると思います。
  378. 安井吉典

    安井分科員 非常に短い条文で構成されていて、重要な問題は政令にゆだねる考えだという報道があります。そうなのかどうかわかりませんが、政令にそんな重要な事項が委任されているのだとすれば、政令の予定事項も法案提案までにきちっと準備されて説明ができないといかぬと思うのですが、それはどうですか。
  379. 森実孝郎

    森実説明員 御指摘のとおりだと存じております。主権の及ぶ範囲を決めるものでございますから、極力政令への委任は制限すると同時に、政令につきましても見込み事項を整理いたしまして御審議をお願いしたいと思います。
  380. 安井吉典

    安井分科員 国際海峡という概念は取り入れているわけですね。そしてそれは新聞にはもうずいぶんいろいろ報道があるわけですが、いまの段階でどれとどれをいわゆる国際海峡ということに当てはめようとお考えですか。
  381. 森実孝郎

    森実説明員 いわゆる国際海峡の範囲をどの範囲にするかにつきましては、いま関係各省で論議を進めておりまして、判断としては一番重要な事項だと思いますが、まだ最終的な結論には達しておりません。ただ、そう非常に多い数というふうなことは考えておりません。それから国際海峡という観念で法律上表現するか、あるいはいわゆる国際海峡という実体的な観念に着目して特定の技術概念をつくるかどうかは、立法技術としてなお検討を要すると思っております。
  382. 安井吉典

    安井分科員 防衛庁が領海法案に関する見解をまとめて、領海関係閣僚会議で三原長官から報告するという報道を見たわけでありますが、その考え方は三海里凍結で、宗谷や大隅は反対、できるだけ十二海里でやれという内容だと伝えられておりますが、それはそのとおりですか。
  383. 渡邊伊助

    ○渡邊政府委員 お答えいたします。  新聞に報道されておるように、防衛庁が見解をまとめたというような事実はございません。したがってまた、三原長官が関係閣僚協で報告したということもございません。先ほどお話出ましたように、現在政府部内で関係省庁集まって協議を重ねておる段階でございまして、その協議の過程においていろいろな議論は出ておりますけれども、あそこに出ておりますような考え方というものでここで申し上げるような議論はございません。
  384. 安井吉典

    安井分科員 アメリカの極東戦略に領海の決定の仕方が相当影響があるのではないかと思われますが、その点について防衛庁は意見をまとめ、作業の中にそれを織り込んでほしいという要求をしているということはありませんか。
  385. 渡邊伊助

    ○渡邊政府委員 私どもの現在この問題に対処する基本的な考え方といたしましては、少なくとも現状より不利にならないようにということを最低線として考えております。したがいまして、現在政府の大体の考え方といたしまして、特定のいわゆる国際海峡に相当するような部分につきましては凍結をするというような考え方につきましては、現状と変わらない状態がそのまま存続するわけでございますので、私どもとしては、その点については全く異議はないというふうに考えております。
  386. 安井吉典

    安井分科員 また議論は後にいたしますが、防衛庁からせっかくおいででございますからこの際伺っておきたいと思うのですが、この領海の拡大やらあるいは海洋水域二百海里の問題も出てきているわけですが、そういうような中で、自衛隊法の改正で武器使用制限の緩和を図る方向で検討が進んでいるということも伝えられておりますが、それはどうですか。
  387. 渡邊伊助

    ○渡邊政府委員 いわゆる取り締まりの問題あるいは武器使用の問題等でございますけれども、現行の体制ではそのような任務はまず第一に海上保安庁が対処するというたてまえになっております。自衛隊が出動する場合には自衛隊法の八十二条に規定されておりますような海上における警備行動というものが発令された場合に限られおるわけでございます。私どもといたしましては現行のこの体制においてこの問題に対処できるというふうに考えておりますので、現在自衛隊法の改正その他現行の制度を改めるという考え方は持っておりません。
  388. 安井吉典

    安井分科員 わかりました。  そこで、この三海里の現状をいわゆる国際海峡で凍結をするという考え方は、非核三原則と関連して国会での追求を逃れるための方便だというような印象も実は受けるわけであります。大臣どうですか。
  389. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 予算委員会の総括質問の際にたびたびそういう御意見が出まして、政府としては統一見解を出せということで統一見解をお出ししたことは御承知のとおりでございますので、またここで重複は避けますが、私ども海洋法会議の席上におきまして、いわゆる国際海峡につきまして一般の領海よりももっと自由な通航制度を主張してきたところで、そのような主張をしているグループとともに行動してきたものでございます。そういうことからいきまして、私ども先進工業国といたしましては国際海峡が領海の通航と同じような規制を受けるということは何とか避けたい。これは御承知のように海洋国家であると大変な資源を海外に依存しなければならない、こういう立場にあるものとしてそのような主張であった、そういうことから考えましてこの際従来の主張と違ったような措置を日本が率先してとるのは大変ぐあいが悪いということからこのような凍結という手段をとったのでございまして、非核三原則とは全く関係のないこととぜひとも御了承いただきたいのでございます。
  390. 安井吉典

    安井分科員 それはいろいろ考えた末の外務省統一見解であって、やはり非核三原則をいかにして説明するかということに御苦労なすっておられるのではなかろうか、私はこう思うのですが、政府はこれまでに世界に向かって日本の非核三原則ということ、その重要性を十分に訴えたということを余り私は聞かないわけです。いや全然ないとは言いませんよ。言いませんけれども、十分に行われているということではないのではないか。世界の世論の中に日本の非核三原則というものをがっちり理解をさせるという行動がこれまであれば、十二海里で海峡が全部領海になっても非核一、原則、ああなるほど、その二つの問題がこれでつながるのだな、私はそういうふうに世界の世論の中でも理解されてくるのではないか、そういう努力を今日まで怠っていたことに一つ大きな問題があるわけです。それを十分やっていないものですから、今度の領海問題、非核三原則、ああ困った、こうなってしまうのではないかと思うのです。もう少し非核三原則という問題を強く訴える積極外交の展開が必要なのではないか、どうでしょう。
  391. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国の非核三原則は、たとえば先般の核拡散防止条約の際におきましても周価徹底を図っておるところでございますし、世界の方、特に関心のあるところは核保有国でございますから、核保有国には徹底をしているというふうに考えております。そういったことではなしに、現在いわゆる国際海峡というところ、現在公海があって自由に通航しておるところ、こういったところの通航方法日本が率先してふたをしてしまうということ、これは国際社会に対して従来の主張から言ってそういう立場は非常にとりにくいという点を考慮しているのでございまして、それは非核三原則の直接の問題ではない。わが国といたしましてはわが国の権限の及ぶ限りにおきまして非核三原則を厳守するということはたびたび申し上げているとおりでございます。
  392. 安井吉典

    安井分科員 私はどう言われようと、三海里ということで、たとえば津軽海峡あるいは宗谷海峡、国際海峡じゃなしに公海を残した、そういう仕組みで問題を逃れようとしているわけであります。そこに問題があると思うのですが、いま非核三原則の問題を十分に徹底しているということについて鳩山さんおっしゃったわけだが、今度福田総理大臣カーター大統領はお会いになるわけでしょう。カーター大統領は就任演説でも核兵器廃絶を格調高くこの間強調したわけです。ですから、今度の会談においても日本の積極的な態度で非核武装という問題に取り組んでいくのだ、非核三原則をもっと理解をしてくれ、そういうことを会談の中の一つ重要な要素として入れてお話し会いをすることが必要ではないかと思うのですが、どうですか。
  393. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の会談におきまして特にこの核拡散防止の問題あるいはもっと広く言えばSALTIIを含みます核の廃絶ということをカーター大統領は高らかにおっしゃったわけでございますが、核兵器の少なくとも縮減ないしこれは廃止できれば一番いいわけでございますけれども、そういった問題とわが国の原子力の平和利用の問題もありますし、それはわが国として非核三原則を厳守するということにつきましては、それはもうそういった国であるということにつきましては十分とお話があるものと思っております。
  394. 安井吉典

    安井分科員 そのことは予定されているのですね。
  395. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのとおりでございます。
  396. 安井吉典

    安井分科員 いずれにしてもその会談を初めとして今後とも一層日本には核の話は禁物なんだというそういう国際世論が高まっていく、こういう御努力を願いたい。そうなれば私は十二海里きっぱり海峡を埋めたってそう問題はなくなるのではなかろうかと思います。  そこで、三海里に縮めたということは主権の放棄になるじゃないかということが予算委員会でもしばしば議論をされたわけなんですが、たとえば宗谷海峡の場合はソ連側の十二海里と、それからもし十二海里にすれば北海道側の十二海里とがこれで重なるわけですね。ですからもしこちらも十二海里を設定するとすればその重なった部分は中間線で線が引かれるわけでしょう。ですから日本がもし宗谷海峡においても完全十二海里を主張すればソ連の領海を縮めるということになるわけですよ。そうでしょう。重なり合ったところの中間に線がくるということになればソ連の領海が減るわけですよ。それを裏返しに言えばこれはまさに日本の主権を縮小したということになるわけですよ。いろいろな角度から問題が提起できるわけでありますけれども、外国の領海と完全にクロスするところにおいては、そういうふうな問題が出てくるわけです。ですから、主権の放棄などではありませんということをいかに強弁されても、私は、それは通らぬのじゃないかと、こう思うのです。どうですか。
  397. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 主権の放棄論の問題は、予算委員会でもたびたび出ましたように、国際海峡という取り扱いをするとすれば、現状を凍結するということでございますから、そこに主権の放棄という問題は起こらないというふうに考えております。いま宗谷海峡のお話が出ましたが、まさにその宗谷海峡をいわゆる現状凍結をする海峡として選定するかどうかという点を、先ほど来の領海法の準備室の方で検討をしておる、航行の実態その他の状況等に照らして、選定すべきかどうかという点を検討しておる、こういう状況でございます。
  398. 安井吉典

    安井分科員 主権の制限にはならぬと、こう言うのですけれども日本が腹さえ決めれば十二海里でいいわけですよ、ほかは全部十二海里なんですから。それを三海里にするということは、九海里分だけこちらがバックするわけですからね、主権の範囲を狭めているのですから、幾らへ理屈言ってもこれは通らぬことではないかと思います。  そこで、いま条約局長もお触れになりましたけれども、その領海線の線引きの問題でありますが、これは政令にゆだねるという考え方だというふうに聞いておりますが、どうですか。
  399. 森実孝郎

    森実説明員 ただいま御指摘のございました領海線という意味がちょっとよくわからなかったわけでございますが、基線の問題につきましては、これは領海条約でも一つのルールが国際的にもでき上がっておりまして、これを基本的にわが国も踏襲していくということで、政令にゆだねるという性格のものではないと思います。中間線の問題は、当然観念としてあり得るだろうと思います。これをどう扱うかということが問題になるわけでございますが、これも領海条約の上では中間線というルールが国際的にでき上がっておりますので、特に政令にゆだねる云々というふうな性格の問題ではないだろうというふうに思っております。いずれにせよ、まだ検討中の問題でございます。
  400. 安井吉典

    安井分科員 海図はどうなんですか。
  401. 森実孝郎

    森実説明員 現在、三海里の領海を前提にした場合の海図につきましては、御案内のように、これは低潮線と高潮線と中位線の基線を引いているだけでございまして、三海里の幅員は海図に表示しておりませんし、湾口閉鎖線等も表示しておりません。国際的にも私どもそのような義務はないと思っております。したがって、これは今後の検討事項でございますが、特に問題になる部分以外はそういう問題は基本的にはないと理解をしております。つまり、海図に特に表示するという問題はないと理解しております。
  402. 安井吉典

    安井分科員 その十二海里と三海里のでこぼこの、でことぼこの境をどうするかということが非常に重要なので、地理学的な境界という概念からすれば、こちらの半島と半島が突き出れば、こことこちらと結んだこれが境界でしょう。しかし、そういう形で三海里と十二海里を線を引いたら、中は三海里になるかもしらぬが、入り口では十二海里と十二海里がぶつかっちゃって入れないですよ。結局、境界という地理学的な概念を外れたずうっと遠くまで三海里部分をもっていかなければ、政府が考えているように、公海部分で自由通航を認めるような図面はできないと思う。ですから、境界という概念を離れなければ、外務大臣がお考えのような、ずっと公海を引いていくようなものはできませんよ。そうじゃないですか。
  403. 森実孝郎

    森実説明員 現在審議中の問題で、まだ結論を得ておりませんが、先ほど私御答弁でも申し上げましたように、いわゆる国際海峡という概念で立法技術上表現するのか別の表現で行うかどうかというふうな問題も一つございます。それからいわゆる国際海峡、たとえば津軽海峡なら津軽海峡という議論をいたします場合、どの範囲が津軽海峡であるかどうかという問題については必ずしも定説があるわけではないわけでございます。そういった意味で、いわば国際航行の用に供せられる自由な公海部分という意味で抽象的には頭に置きまして、いわゆる国際海峡を中心にそういう水域が設定される、こういうふうに御理解をいただく必要があるだろうと思います。なお、これは立法技術的になかなか細かい点もございますので、十分論議を詰めまして、海峡ごとに具体的な資料等を添えて協議を賜わるべき問題だろうと思っております。まだ結論は出ておりません。
  404. 安井吉典

    安井分科員 そうすると、その基準はお決めになるつもりですね。
  405. 森実孝郎

    森実説明員 先ほどもちょっと申し上げましたが、たとえば国際海峡の範囲はどの範囲であるか、具体的にどの国際海峡を想定するかという問題を法律で直接表現するかあるいは政令に授権するかどうかの問題とも関連する問題であろうと思っております。できるだけ法律に表現できるものは法律で表現して御審議を賜るのが筋ではないかというスタンスで一応論議が進められているという過程でございます。
  406. 安井吉典

    安井分科員 私は、そのでこぼこ、領海線をつくれば必ずそこでぶつかっちゃうんですよ。これはもう必ず、大変な苦労をなすっていると思いますよ。ですから、海峡だなんていうような概念から離れて、地理学的なものじゃなしに、まさに政治的に、いかにして船を入れるかということで三海里線を海峡を離れたところまで持ってこざるを得ないのですよ。ですから、今度の政府の決定は、これは線引きという言葉でいいのかどうかわかりませんけれども、それで妙なものになるし、国会に提案するとこれは大変ですよ。国会にはそういう図面もお出しですか。
  407. 森実孝郎

    森実説明員 先ほど申し上げましたように、現在まだ審議中でございまして、どういう形で整理するかは決まっておりません。したがって、一概に申し上げるわけにはいかないと思いますが、ただ、国際海峡という場合、海峡という観念自体はかなり地理学的な観念だろうと思いますが、国際海峡という観念は、いわば国際通航の用に供せられている公海と公海を結ぶいわゆる水域というふうな、そういう社会経済的機能があるわけでございまして、両面から検討して整理をして御審議を受けなければならないと思っております。
  408. 安井吉典

    安井分科員 もう時間がなくなりましたので、ちょっと経済水域、漁業専管水域の二百海里の問題について、ソ連と鈴木農林大臣の交渉の中で、日本も急ぐという発言があり、しかもそれは中国や韓国などへの刺激は避けて、ソ連に対してだけの限定実施という方向を考えておられるということのようでありますが、これについて、政府はいつごろ実施するのか、伝えられているようなものになるのか、そしてまた、この手続はどうするおつもりか、これを伺います。
  409. 森実孝郎

    森実説明員 農林大臣が日ソ交渉の過程で、わが国も早晩二百海里の漁業専管水域の設定を考慮する旨を表明いたしましたことは事実でございます。遠洋漁業国としてのわが国としては、二百海里時代のこのような急速な到来ははなはだ残念な点もあるわけでございますが、今日の世界の大勢として、事実として受けとめなければならないと思います。ただ、先生御指摘のように、一体どの国を相手に二百海里を実施するのかということなのでございますが、私どもはやはり遠洋漁業国でございまして、近隣諸国との間に条約も結び、かなりの漁業実績を持っております。また、近隣諸国の中には二百海里を実施していない国もございます。そういう国には特別の配慮を払う必要が設定に当たってあるのではなかろうか、十分な話し合いが要るのではなかろうかということを申し上げたわけでございまして、ソ連だけを対象にというふうに申し上げておるわけではございません。いわば相互主義的な考えという意味で申し上げたように理解しております。(安井分科員「時期は」と呼ぶ)時期につきましては、これもすでに答弁しておりますが、五月から開かれます国連海洋法会議の動向等も見て法案をまとめて、再度御審議を賜らなければならない、こう思っております。     〔愛野主査代理退席、主査着席〕
  410. 金子一平

  411. 土井たか子

    ○土井分科員 先日私は、新聞紙上でただいま伝えられております国際学友会の現状が大変深刻な段階に到達しているということで、現場に足を運びまして、その後実情についてそれなりの調査を進めてまいりました。きょうはここに、その現場にまで参りましたときの写真がございますので、ひとつ外務大臣にごらんいただきたいと思います。いろいろございますから……。  国際学友会の目的は、「本会ハ学生二依ル国際間文化ノ交換及ビ本邦留学外国人学生ノ保護善導ヲ図り以テ国際親善ヲ増進スルヲ目的トス」という目的がございます。国際学友会の理事の名簿を見ますと、文部省の学術国際局長、法務省の入国管理局長、元特命全権大使の方が三名、それから、もう一つの大きな留学生を受け入れる団体でございます日本国際教育協会の理事長など、そうそうたるメンバーでございまして、とても今日のようなことが起こるなどとは想像もできないことでございます。外国からわが国期待をかけて、親元を離れて留学をしてこられる留学生に対する対策といたしましては、いろいろな角度から考え直して改善をしなければならないことがたくさんございますけれども、きょうはとりあえず、この学友会の事業を興し、今日まで推進してまいりました監督官庁に、学友会に関する財政問題に限ってお伺いをしたいというふうに存じます。  まず、国際学友会は、昭和二十八年に土地二千七百坪を、坪単価にして五千六百七十九円、千五百三十三万四千円で国の補助金で取得をし、建物の本館について千三十三万九千円で、これもやはり国の補助金で取得をいたしまして、出発をしたようであります。その後、第一別館は二十八年、第二別館は二十九年、第三別館については昭和三十年、日本語学校については昭和三十一年、食堂についてはおくれて昭和三十四年に、それぞれ国庫補助金で新営をしてきたという経過がございますが、このことをまず確認をさせていただきたいと思います。そのとおりでございますね。
  412. 西宮一

    ○西宮説明員 ただいま先生御指摘のとおりだと思います。
  413. 土井たか子

    ○土井分科員 昭和四十七年になりまして土地の一部を売却いたしております。坪単価にいたしまして三十九万円で、代金は九千二百六十七万一千八百円という代金になっておりますが、仮登記が四十七年八月三十日、本登記が四十八年三月六日、売却先は熊谷組、こうなっておりますが、この土地の一部売却につきましては外務省の承認が必要だったのかどうか。そうして、いつ、どういう形で外務省とされては承認をされたのであるか、それについてお伺いをさせていただきます。
  414. 西宮一

    ○西宮説明員 外務省の承認が必要でございまして、所要の承認を与えてございます。
  415. 土井たか子

    ○土井分科員 所要の承認のとき、どういう形で承認をなすっていますか。つまり中身の問題でありますが……。
  416. 西宮一

    ○西宮説明員 文書をもって承認を求めてまいりまして、文書をもって承認を与えておりますが、その文書そのものをただいま持参いたしておりません。
  417. 土井たか子

    ○土井分科員 何だかはっきりしない御答弁でありますが、外務省はこの土地の一部売却については承認をされているという事実については、確認ははっきりできるわけでありますね。先日、外務省に、この学友会の過去四十七年あたりから本年にかけて——本年はまだございませんから五十年にかけての決算書の資料要求をいたしましたところ、「国際学友会の借入金の経緯」という実に簡単な一枚の紙切れを持って私のところに来られたわけであります。これによりますと、昭和四十八年から借り入れをしてきたというふうなかっこうになっておりますが、借入金がございますが、ところが、その後、ここに私、持ってまいりました決算書をいただいて見てまいりますと、この決算書の中には、すでに昭和四十六年から四千百四十三万八千二百八十円という借り入れがございます。これについてひとつ確認をしたいと思いますが、四十六年からそういう経過がございますですね。
  418. 西宮一

    ○西宮説明員 ただいまその点は確たることはわかりませんが、事実であろうと思います。
  419. 土井たか子

    ○土井分科員 昭和四十九年になりまして、すべての土地、建物についての抵当権が設定されまして、四十九年六月十一日に富士銀行から借入限度額二億円ということで、四十九年五月三十日付の外務大臣の承認を得てこの借り入れが具体的に進められていっているわけでありますけれども、このことについても確認をさせていただきたいと思います。
  420. 西宮一

    ○西宮説明員 そのとおりでございます。
  421. 土井たか子

    ○土井分科員 五十年になりまして土地の一部が再売却予定をされているということになっております。代金は七億円というふうに言われておりますが、これについて仮契約、一部入金済みというふうにも私は聞いているわけでありますが、いつ、どういう条件で、どういう内容で仮契約がされたのであるか、そしてこの売却について外務省はどのように関与をされてきたのであるか、このことをひとつお伺いさせていただきます。
  422. 西宮一

    ○西宮説明員 学友会の再建を進めてまいります上において、この不動産の売却をする必要が生じました。この内容は、この契約を締結いたしました時期は本年の三月七日でございます。この当事者は、買い主は日本。パイロットハウス株式会社、売り主は国際学友会、こういうことになっております。この内容といたしましては、入金は三回に分かれておりまして、第一回分が三月七日の時点で三億三十三万円、あと本年の六月三十日には二億円、明年の二月二十八日には二億円、こういう入金をいたしておりました。
  423. 土井たか子

    ○土井分科員 まだお答えはその程度でございまして、私が質問いたしましたのは、一部入金済みというふうなことを言われているが、それは事実かどうか。そして、いつ、どういう条件でこの仮契約が結ばれているか、仮契約の内容についてお答えをいただきたい。
  424. 西宮一

    ○西宮説明員 第一回目の入金三億三十三万円が入金したというのは事実と思います。これは報告を受けております。  条件でございますが、骨子は昭和五十二年三月三十一日までにこの物件の明け渡しを完了しまして、所有権移転仮登記申請の手続を完了するということが第一点でございます。  第二点は、その時期までに当該物件上に存在します抵当権その他一切の権利は、完全な所有権移転の登記申請のときまでに抹消しなければならない、こういう条件が第二でございます。  第三点は、甲乙そのいずれを問わず、当事者の一方がこの契約の一たりとも違背したときは、おのおのその違約したる相手方に対して何らの催告を要せず本契約を即時解除することができる、こういう内容でございます。
  425. 土井たか子

    ○土井分科員 こういう一部土地について再売却予定を立てられ、そして仮契約の中で結ばれている条件として、この三月三十一日には入寮している留学生全員が寮から出ていかなければならない、このような条件で仮契約が結ばれている、こういうかっこうになるわけですね。したがって、その契約を履行しようとすると、三月三十一日には寮生が寮にいてはならない、こういうかっこうなんでしょう。ひとつその点は確認をさせていただきます。
  426. 西宮一

    ○西宮説明員 そのとおりでございます。
  427. 土井たか子

    ○土井分科員 ところで、きょうは大蔵省においでをいただいておりますが、こういう国の補助金でもってまず土地や建物が購入をされるというところから、国際学友会のいろいろな不動産の問題は維持管理が始まっているわけでありますが、その後財産処分や借入金の問題について外務省当局は承認をされているわけですが、これに対する返済見通しや財政の立て直しがどういうふうになっていくかという計画が明らかでない、こういう問題について行き当たりばったりで借り入れをやったり、また売却をやったりして済む問題じゃないと思うのですよ。この間の事情については大蔵省の方はいろいろ説明を受け、またいろいろと相談を受けられてきた経緯がございますか、いかがですか。
  428. 吉居時哉

    吉居説明員 財団法人学友会の市中からの借り入れにつきましては、主務大臣において承認を行うということになっておりますけれども、財政当局といたしましては、それに対しまして法令上協議を受けるという立場にはなっておりません。しかし御承知のとおり、学友会に対する補助金の予算要求というものの一環といたしまして私どもも同団体の財政状況について一般的なお話は伺っておるわけでございまして、それによりまして私ども承知しておりますところによりますと、国際学友会の現在の銀行借り入れについては、昭和四十九年度以降同会の財政再建計画の一環として執行されたというふうに聞いておるわけでございます。
  429. 土井たか子

    ○土井分科員 本日御質問申し上げた中でも明らかなとおりで、四十九年以前にもすでに借り入れがあるわけであります。したがいまして、その点については一切大蔵省としては御存じないということなんでありましょうか。いかがですか。
  430. 吉居時哉

    吉居説明員 現在の借り入れは四十八年度以降生じたものでございまして、私が申し上げましたのは現在の借入金でございますけれども、それ以前にもただいま御指摘のように借り入れがあったというお話でございますが、私どもその間のことは存じておりません。
  431. 土井たか子

    ○土井分科員 大蔵省の方には、こういう事情に対して具体的にはよく御承知ないということらしゅうございますが、外務省の方では、こういうふうな状態にまで立ち至った原因をどの辺にあるというふうにお考えになっていらっしゃいますか、率直な御意見をひとつ承りたいと思います。
  432. 西宮一

    ○西宮説明員 率直に申し上げまして、この国際学友会が財政的に非常に苦しい状況に相なったという点につきましては、その原因はやはり人件費の高騰と申しますかそれと、いろいろその他の諸経費の高騰ということが大きな要因であったように存じます。
  433. 土井たか子

    ○土井分科員 人件費と諸経費の高騰というのは、この世の一般の現象でございまして、国際学友会独得の現象じゃないわけでありますから、したがいまして、財政の組み方についても、その辺に対して先の見通しをきちっと立てて計画的にやっていこうとしたら、これはできるはずのことであります。このことがいままでずいぶんずさんになされてきたんじゃないか、実際を見てまいりますとどうもそういう気がしてなりません。今後国際学友会の維持管理に当たりまして、このような自転車操業や場当たりの見通しのない施設の運営である限りは、先ほど私が読みました国際学友会の設立の目的というものに照らし合わせましても決してその目的は達せられないというふうに思うわけであります。  片や日本国際教育協会の方は、収入の九六%というのが国庫補助金になっているわけですね。ところが、当学友会には国庫補助の割合が約四割でございまして、比率が大変に低いのです。何とか経営を安定させない限りはこの切り売りは今後もずっと続くというかっこうになりましょうし、最後のしわ寄せはどこに行くかというと、留学生の人と職員の方に向かってくるというかっこうだと思うのです。身売り、切り売りをするようなことをやめまして、この節すべてを白紙還元して、健全な見通しのある方策、計画というものを立てるべきだと思うのですけれども、外務、大蔵両省の見解をここでそういう意味で私はお伺いをしたいと思うのです。特に外務大臣には、先日留学生の方が直接会いに参りました節にお会いをいただきまして、そしてこの国際学友会それ自身が設立されました当時から、この学友会には因縁が深くいらっしゃる。そして大変に残念だ、留学生に対して迷惑をかける、申しわけないと外務大臣はおっしゃったわけであります。したがいまして、そういう外務大臣のお立場からすれば、いま財産の切り売りという問題は身を切られるような思いでいらっしゃるのじゃないかというふうに私は思うわけであります。したがいまして、こういうふうな身売りをする、切り売りをするというふうな不健全な、場当たりな放慢経営ではなくて、いまやろうとしている土地を全部売るとか、建物を売るとか、抵当権を設定するとかいうふうなことを一切白紙還元しまして、今後どういうふうにこの経営を維持していくかということに対してひとつ見通しのある計画をお立てになるべきだと私は思うのですが、外務大臣、この点はどういうふうにお考えになりますか、いかがでございましょう。
  434. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この学友会の問題につきまして、財政がこのように破綻してしまったことにつきましてまことに残念に思います。これがまた、東南アジアから見える方が非常に多いので、こういった外交上のいろいろな努力をしておるにもかかわりませず、このようなことで非常に不愉快な思いを学生諸君にかけるということも大変残念に思う次第であります。しかし、事態がここまで窮迫してしまったのは私にも責任がございますけれども、何とか国際学友会の再建を図らなければならない。それに対しましては、恐らく財政当局との問のいろいろな約束事というものもあるのだと思います。これが、いまおっしゃられましたような切り売りをやめることができるのかどうか。これをやめた場合にどういうことが起こるのか。この辺のことは、そういうことを検討する時期をちょっともう失してしまったような気がいたしておる次第でございまして、いま入っておられます学生諸君が学友会の努力、また外務省で応援できることはいたしまして、現在のとこでは大多数の方方は行き先がもうあっせんができておるようでありますけれども、まだ全部ということは聞いておらないのでございまして、何とか行き先が見つかりますように、そういったことで、現在のところは在寮生の方々の心配を何とかなくしたいと考えております。  それから、これから先の学友会のあり方につきましては改めるべき点が多々あると思うのでございまして、新しい、本当に東南アジアの方々から喜ばれるような学友会にぜひともしなければならない、こういった気持ちでありますが、なお担当の部長の方から補足させていただきます。
  435. 西宮一

    ○西宮説明員 先ほど先生のお話にありました点でございますが、従来の経営がずさんだったということについてのお言葉がございましたが、この点につきましては、先ほど申しましたように人件費、事業費、それから多額の赤字が生じてまいりまして、そのような経営状態になってきたということは私どもまことに残念であり遺憾だと存じております。しかしながら、現在の段階では、理事者側が学友会の再建及び合理化に現在まで努力してまいりました点も私どもは評価しまして、再建計画を認めて、現在国会におきまして審議していただいております五十二年度予算案に補助金を盛り込んでおる次第でございます。ただいま大臣の発言にもございましたように、私どもといたしましては、何とかしてこの事態を打開しまして、再建が軌道に乗りますように、また今後もっとしっかりした経営管理ができるというようにしたい、このように感じております。
  436. 土井たか子

    ○土井分科員 いま私が申し上げているのは、土地の切り売りや不動産に対しての抵当権の設定というふうな方向でだんだんこの不動産を縮小していくという問題、ついには国際学友会の不動産は消えてなくなるということにならないような方法一つはいま緊急に講ずべきではないか。いまあるいろいろな売買契約というものを白紙撤回するということは、いままでの経緯から考えてもう時期が遅いという御答弁外務大臣としてはされるわけでありますけれども、しかし、御承知のとおりまだ仮契約でもありますし、しかも仮契約についてこの契約条件の中にあります日時はまだ到来をいたしておりません。したがいまして、そういう点からいたしますと、いまおっしゃいました再建計画というものに対して、五十二年度の予算でも補助金を具体的に計上しているという西宮部長からの御答弁にございました中身は、恐らくは建設費三億五千万というのを指しておっしゃるのではないかと思いますが、この三億五千万の使途変更というのはなかなかむずかしい問題であるかもしれません。しかし、必要な場合は、この予備費や補正予算等によって、不動産の縮小をすることなく再建計画を練り直すべきである、緊急を要する場合には。やはりそういう方向でこの問題に取り組むべきであるというふうにも私は思うわけです。特にいまの、五十二年度の予算で計上されております三億五千万の使途につきまして、どうもこの不動産については売却をしていくという、現状の据え置きのままでこのことを進めていくということについてはかなりの問題があるだろう。したがいまして、現状打開ということからしますと、この三億五千万の使途を変更させるというふうなことも常識としたら考えられるわけでありますが、しかし、それには、外務当局と大蔵当局との間でかなり現実の問題に対して詰めをするのにむずかしいこともあるであろうと思います。しかし、そういう努力一つ、それから先ほど申し上げた予備費や補正予算などによって、不動産の縮小をすることなく何とか再建計画を練っていくという努力をすることも一つ、こういうふうな努力によって、いま当面のいろいろ財政上の危機というものを切り抜けるということが私はできなくはないと思うのです。不可能とは言い切れないと思うのですが、外務大臣、こういうことに対して御努力をお払いになるという御用意がおありになるかどうかというのをひとつ承りましょう。
  437. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この本件の再建計画なるものが昨年の秋から立てられて、それから大蔵当局との間のいろんな折衝が恐らくあったものと思うのでございます。私は、その土地の切り売りということにつきまして、御指摘のようにこれを売らないで済めば一番いいことだ、こう思うのでございますけれども、いままでの経過を見ますと、それも大変無理なような気がいたすわけでございます。来年度やると言っておりました寮の再建の第二期計画の問題、これにつきましても、ことしは自己資金がありますけれども、来年はなくなるという問題もありまして、これはなかなか容易ならざることでありますから、現在の段階におきましてもう一度この計画を練り直すだけのいとまがあれば私はやるべきだ、こう思うのでございますけれども、大筋はどうも決められてしまったという感が深いのでございます。その中で、できるだけの計画の変更等によりまして何らか来年第二期計画も考えたようなプランができないものか、これは私そういうようなことをいろいろ考えますが、事務的な処理が非常にむずかしいようでございます。ここで私も安受け合いをするわけにまいらないのでありますけれども、できるだけの努力をしたいという気持ちは持っております。
  438. 土井たか子

    ○土井分科員 これは第二期計画、第三期計画と計画が進みましても、基本になっている財源という問題がいまと同じように自転車操業やそれから切り売りでその場しのぎで賄っていくというかっこうじゃ、先細りしかないということだけははっきりするわけなんです。やはり見通しを持った具体的な計画がきちっと財源に対して組まれていなければ、これはやはり先細りということだろう、結果はそういうことになるのだろうと思います。したがいまして、いまの急場をどう切り抜けるかということに対して、土地を売ることに対して白紙撤回というのは時期が遅過ぎるとか、それから第二期計画については、すでに予算の上で計上されていることについては、昨年来の計画に従っての予算の計上だから、この使途変更ということも、どうも事務的なレベルでの折衝ではむずかしい問題もあろうとか、これはいろいろ難儀な問題があろうかと思いますが、この財源確保ということを一つははっきりやっていただかないと、どこまで行っても国際学友会について先細りというこの宿命は断つことができないと思うのですね。やはり、国際学友会の果たす役割りというものが、海外から家を離れ、親元を離れて日本に本当に期待をふくらませて留学をされる学生さんに対し、本当に来てよかったという気持ちを持ってここで学んでいただくというふうな状況を整備していくためにも、どうしても私は、やはり再建計画というのは単に目の前の建物を建てるとか建てないという問題ではなくて、基本的に財源を確保するということをしっかりやっていただかないとどうにもならないだろうと思います。外務大臣はいまできる限りの努力を、現状の中で厳しい条件はあろうけれども、安受け合いはできないが、やってみるというふうな御答弁でございましたから、ひとつそれはしっかり取り組んでいただきますということと同時に、財源確保ということに対しても一この際取り組んでいただくということがどうしても必要であるように思います。これについての外務大臣の御所信をひとつ聞かせていただいて、そしてきょうは私は質問を終えたいと思います。いかがでございますか。
  439. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国際学友会がこのようになりましたことについては、やはり沿革がいろいろあろうかと思うのでございます。そういうものが積み重なって、何となく財政当局の理解がなかなか得られないというようなこともあったのではないか。私、これは想像でありますから、自信のあることではございません。しかし、このようなことが大変せっぱ詰まりまして、土地をとにかくもう三月になって売って、しかも三月の末までに在寮生をみんな出てほしいというようなことは、いささか私は、相当な問題だと思います。なぜこういうふうになったかということにつきまして、やはりこれはいままでの国際学友会の経営なり管理なりの自体に、どうも何かいろいろあったのではないかということを私は想像するのでございます。そういうことは、確証があって申すのでございませんから、申すべきではないかもしれませんが、どうも私はそんな感じがいたしまして、これを再建いたしますのは、やはり経営と申しましても、お金はお金であります。また、どうしても経営管理というものは人がやるものでございますから、お互いに信頼関係がなければ、これはなかなかうまくいかない。そしていままでの決算状況をずっと見ましても、予算どおり決算ができたためしがないわけでございます。そういうようなことから見ましても、とかくこれは問題が複雑である。そういったことを考えまして、これから本当に再建ができることであれば、私は財政当局にも十分理解を得てその方向努力をいたしたい。ことしの予算はもうこれで決まってしまったものでございますから、今後の財政面におきます努力も、これはぜひ行わなければならないと思っております。
  440. 土井たか子

    ○土井分科員 時間が経過をいたしましたが、そうしますと、この国際学友会の当局と当事者である学生さんとの間で信頼関係というものを取り戻さないと、いかに財源を確保しようとしてもそれはむずかしい問題だろうというお考えである、こういうお考えを外務大臣お持ちのことをいま確認をさせていただいたわけですが、その信頼を取り戻すために一体それではどういうふうな努力が必要かというのが最後の問題にきょうはなるかと思います。これは具体的に申しますと、理事者側と学生さんとのいろいろな信頼関係を取り戻すための努力こそやはり肝心だということに具体的にはなろうと思いますが、このことについていま外務大臣としては大臣立場でどういうことが必要であるというふうに具体的にお考えになっていらっしゃるか。また、それに対して何らかの、外務大臣立場からこういう努力を払いたいというふうにお考えになっていらっしゃる具体的なことがいまあれば、ひとつお聞かせいただいて、私は終わりにいたします。
  441. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先般、土井先生とお目にかかりましたときにも、即刻学生諸君と理事者が本当にひざを交えて話し合ってもらいたいということを申し上げたわけでございます。ところが、今日の状況ではなかなかそれすらむずかしいような情勢では、これは大変問題ではないかという感を深くしたわけでございまして、この点につきましてやはり本当に管理体制から取りかからなければいけないというふうに考えている次第でございます。そして理事側からもこれを本当に学生諸君とひざを交えて話せるようなことを実現しなければならないと思います。また、直すべき点は多々あろうかと思いますけれども、私も実情を詳しく把握するまでに——なかなかむずかしいものですから、もっと勉強いたしまして努力をいたしたいと思っております。
  442. 金子一平

    金子主査 これにて昭和五十二年度一般会計予算外務省所管に関する質疑は終了いたしました。  以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位におかれましては、長時間にわたり熱心なる御審議と格段の御協力を賜り、本分科会の議事が円滑に終了いたしましたことを深く感謝いたします。  これにて散会いたします。     午後七時四十七分散会