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小川(仁)
分科員 今年度予算を持たれたということに対しては進歩だと思いますが、具体的な実情を申し上げてみますと、岩手の場合、奥地の黒龍江省付近から帰ってこられた
人たちが二組あるわけであります。これは現在の
中国の教育事情の中で十分な教育を受けていなかった面もあって、漢字自身もわからない。まして
日本語が全然わからない。学校へ持っていきましても、これは学齢外の
人たちでございますから学校も引き受けてくれない。しかも、引き揚げた場所が親族の場所でありますから、それぞれ離れて住んでいる。こういうことになりますと、いませっかく指導員を設けられても、指導員が住んでおられる場所と引き揚げられた場所が何十キロと離れているという状態があるわけでございます。
それで、具体的な問題として私の方から考え方を提案しますので、一つお考え願いたいことは、まず、この
人たちはほとんど
日本語がわかっておりませんので、
日本語を教えて
生活をさせるために、かつての引き揚げ寮のような形でそれぞれの県の中央に
生活する住宅あるいは寮、こういったようなものを探し出してそれを貸与する、こういう方法が持たれなければ
日本語教育ができないわけであります。
それから、その場合に
生活保護はありますけれ
ども、
生活保護だけではどうしても暮らしができない。引き揚げてくるときに持ってきた品物等が非常に少ないわけでありますから、
生活保護にさらにこういう
人たちのための特別の補助ですね。
日本語ができて就職するまでこれを補助する、こういう形を一つはとってもらいたい。
それと同時に、
日本語を教えるといいますけれ
ども、引き揚げた
人たちがみんな
中国から来た
人たちだけでかたまっておりますと、どうしても言葉を
中国語だけで用を足してしまいます。ですから、
日本語で用が足せるような状態にしていくために、毎日指導員あるいは
日本語を教える人をつけてやらなければならない。岩手県では
中国人のティーさんという人を、毎週夜二時間ずつ
日本語を教育するように県の方で手配をいたしましたが、しかしそれぞれ仕事を持っておりますから毎日というのは大変なんです。手当がひどく少ないのです。往復自動車で行ってしまうともらった手当がないという状態では長期的に引き受ける人がないわけでありますから、
生活指導員ではなくて、一ヵ所に集めることによって、その次
日本語を教える人を固定して一定の報酬を支払って
日本語を教えていく、こういう体制をとってもらいたい。
同時に、
日本語習得のその次の過程として、それぞれの県に職業訓練所等がございます。その職業訓練所にこの
人たちを優先的に入れて、新しい職業を身につける方式を国の責任で行ってもらいたい。そうしましてさらに、終わった後、就職の世話をする、こうした一貫した体制をとらなければ、それぞれが引き揚げた親戚の家の中でひっそり暮らして社会から落後していく。
中国へ帰った方がいい、ここにいてもどうにもならないという嘆きの声を毎日聞かされているわけであります。
どうか、こうした一貫した政策、体制というものをぜひとるような形での、これは援護課だけの仕事ではないと思いますが、各省を通しての一貫した体制をとっていただきたい、こういうことをお願いをするわけであります。
また同時に、農業をやっている人が非常に多いわけであります。帰ってきて農業をやりたい、こう言っても、現在の農地法の
関係では農地を手に入れることができないわけであります。しかし、
日本語ができて、農業をやりたいという場合に、そういう人に農業をやらせるような措置が、農林省との話し合いの中で特別な措置としてとれないものかどうか。いま遊休した土地もあります。もう農業もできなくなった
人たちで、すでに農協等に管理を委任をしている土地もあるわけであります。これはいろいろな職業訓練よりも、もともとそういう仕事をしてきただけに一番向く就職でもあるわけでありますから、この面についてもぜひお考えを願いたい。
一貫した行政で
生活ができる態勢までめんどうを見るという政府の責任体制と、いま申し上げました具体的なことに対する対応というものをお考え願えないものかどうか、こういうことをお伺いしたいと思います。