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竹本分科員 マーシャルであったと思いますが、
経済は
経済心理学であると言った
言葉がある。要するに、最近の不況というものは、不況になるんだということで必要以上に萎縮して、必要以上に不景気を招き寄せている。この点では私は、
経済企画庁で出された前期
経済計画といいますか、あれの閣議了解を得た五十年の一月ですか、それから閣議決定をした五月。この二つを見て驚いたのですけれ
ども、一番言いたいことは、一月の閣議了解の中には書いてあるのですね。それは、いまの
経済は企業も個人も将来に対して非常な不安感を持っておる、そして全然確かな見通しがない、それがためにみんなが萎縮して
経済は悪循環をしておるということが書いてある。私はいままさにそのとおりだと思うのですね。しかもその一番大事なところが、どういうわけか知らぬけれ
ども、閣議決定の方には、ほかの形で文章がちょっと書いてあるところがありますけれ
ども、大体その節は消えちまっているのですね。しかし、いま一番大事な問題は、マーシャルは別としても、その萎縮心理である。これに活を入れなければならぬということで、以上のことを申し上げたわけであります。
第三番目の問題は、ツーローと言っておりますが、私が勝手につけた単語ですから、それこそ科学的じゃないかもしれませんが、調子が低いということは別の
言葉で申しますと、改革の
意図と改革の戦略がない、こういうことなんですね。福田さんは、
資源有限、連帯と協調ということを言われた。まさにそれはそのとおりでございますから、卓見であると思います。そして私は、福田さんにも
倉成さんにも、そういう線でひとつ大いにやってもらいたい、こう思うのです。そして坊大蔵大臣の施政方針演説の中には、油ショック以後の構造
変化にいかに対応するかということが一番大きな問題である、こう書いてある。それも言やよしですね。そのとおりなんです。
資源有限そしてこの客観
情勢の
変化に対応する構造
変化が要るんだ、あるいは構造
変化に対応する構造改革が要るんだ、こう書いてある。しかし、これは悪口を言うわけではなくて、お願いをするわけですけれ
ども、われわれは、
政府・自民党さんの御努力を評価する面は評価しておりますが、じっと見ておって、それではいま、この
政府は何をどの
程度まで改革をしていこうとしておるのかということについて、強い印象が何もないのですね。一生懸命やっておられるなということは感じますけれ
ども、何をどうしようとしておるのかということについて、全然われわれにはわからない。ぼくらにわからないのだから、
国民にはなおわからないと思うのですね。それでは政治も
本当に生きた政治にはならぬ。
資源有限だ、だから何をどうしようというのか、いつまでにどうしようというのかという点が、何も明確に示されていない。そして
言葉はありますけれ
ども、この戦略判断というものがない。
きょうは減税論争をやるわけでもありませんから、ただ私が、あの一兆円減税について非常に熱心に今度やったつもりなんですが、そのやった理由を簡単に申し上げます。
それは、いまの
経済の現状は、
政府が考えておられるよりも、より深刻だとぼくは思っておるのです。これではもう絶対景気は出てこない。いつか、それこそ
経済企画庁の次官ですか、
宮崎さんという方でしたか、小島だったか忘れたが、次官が、景気はこれでよくなりそうだ、回復
基調に乗ったようだと言って何か大きく新聞に出た。詳しく読んでみると何も根拠はないです。十一月の鉱工業
生産が二・二%ふえたというのと出荷が三・五%ふえたという
程度が根拠になっておって、
経済全体の動きについて何の分析もない。何言っているんだとぼくは思っていたら、その翌月からだんだん
経済また危なくなってきた。そこで私は、この不況というものの認識が、
経済が非常に深刻だということが、どうも
政府に
本当にわかっていないのではないかという心配を
一つ、している。その深刻な
経済現状の認識がないために、受けとめ方がきわめて平板で事務的になり過ぎている。どういうふうにこの
経済を受けとめていくのか。
私の結論を申しますと、私は、
日本の
経済はそれこそ、いま油ショックの大きな構造
変化に対応するように、根本的に、それこそ福田さんの言われる出直し改革をやらなければだめだと思うのですね。構造改革をやらなければだめだと思うのです。しかしそれには戦略判断が要る。たとえば、これは大蔵省の問題になるかもしれませんが、中期五年間の財政の収支試算を見ると、五十二年度のやつはこれで別として、五十三年度は五十二年度の十八兆円の税収にさらに二七・四%ふえるという計算になっている。そして五十五年には公債をなくしようという。気持ちはわかりますが、そうなっている。
私は、野党同士が今度の一兆円減税を論ずるときも、企業に増税をするというやり方は反対だ、私は反対だということをはっきり言った。それは景気を刺激しなければいかぬ、刺激しなければならぬ段階において、あれもこれもと増税をぶっかけていけば、企業はますます萎縮してしまう。だから、景気浮揚という根本の目的と合わないから、書いておくことはまあいいけれ
ども、
本当は私は反対だということを、みんなの政審会長会談でもはっきり言った。ところが、
政府の方の計算では、五十三年度は二七%も五十二年度よりも増税をしなければならぬということで書いてある。何をやるかは書いてありませんけれ
ども、しかし、どこから取るかは別として、取らなければ増収にはならないのですね。ところが、いまのような不況の中で、来年度二七%税金をふやすという方法は一体あるかということですよ。
私は
本当のことを言えば、増税をやるためにこそ減税を一遍やらなければいかぬ。それが戦略判断。私は一歩後退、二歩前進ということをずっと言い続けておるのです。一歩後退して
国民に活を与える、心のゆとりを与える、そういうことを一遍やって、ちょっと、息を抜かせなければ——もしやるのならば、
本当は石油ショックがあった、そのときにやるべきなんです。あのときに大号令を出して、
日本は大変なことになった、昔で言うならば
経済国難、国会決議案をやったことがありますが、そういう決議案でも出して——ぼくは中曽根通産大臣のやり方に非常に不満を持っておったのですけれ
ども、たとえば石油ショックだと言って、
長官よく御存じのように同じく二億七千万キロリットルくらいの石油を買うのに、四十七年ごろは四十億ドルでしょう。いまは二百億ドル超えたでしょう。そうすると百六十億ドル、同じ量の支払いをするのにドルが、それだけよけい要るのですよ。だから私は、みんなにわかりやすく百六十億ドルというのは簡単に言えば、
日本の自動車の輸出の全部と鉄鋼の輸出を全部合わせたものだ。したがって石油ショックがいかに重大であるかということを考えるには、
日本のつくった自動車と鉄は全部太平洋に投げ込んだと同じだ。それだけわれわれの生活水準を下げるか、それだけわれわれの
生産性を
向上させるか、それしか方法はないのです、
対策は。ちょっと銀座の街灯、ネオンを落として消してみて、それから石油が入るから大丈夫だといって、またもとへ戻したでしょう。どこに構造
変化に対応する気魄と
政策があるかということですよ。ネオンをちょっと消して、またつけただけでしょう。だんだん中曽根さんの話なんかを聞いてみると、石油入らぬと思ったけれ
ども入るから、まあよかったというだけなんです。
しかし、
経済政策から言えば、百六十億ドルの過重の負担を、どう
国民が消化するかという問題がなければ、
経済政策にならぬでしょう。そういう
意味の
国民にわかるような
経済政策なり対応というものが全然ない。もし
資源有限、節約第一というならば、福田さんが言うのは、私に言わせれば、石油ショックを受けたときに、ドライブレス、ヒートレス、暖房もやめましょう、ドライブもやめましょうとアメリカは言って、フォード自身ある得度やったでしょう。あのときに
日本も
本当に生活
程度は五%下げるのだということを
国民に訴えるべきですよ。そんなときには何にもしないで、そしてもう石油が入ったから——入るのはあたりまえですよ。向こうは売らなければ食っていけないのだ。物理的に入るということと、
経済的支払いがうまくいくということは別問題です。それに対して
政府の
経済政策は何にも
説明しなかった。何の対応もしなかった。そういう
意味で、石油ショック、
資源有限、これはこれからの
日本の
経済を、下手をすれば五年、十年の長きにわたって、新しい
情勢に対応するように、ソフトランディングとかなんとかうまいことを言っていますけれ
ども、
本当に構造改革をやらなければだめなんですね。したがって、構造改革に耐え得るような
国民経済の体質と、構造改革に耐えていこうという
国民の気魄と精神のあり方を変えるという大きな政治が、ここで必要だと思うのですね。それがどうも何にも感じられない。それを私はツーロー、こう言っているのです。
私
どもは、減税の財源なんかも、いま言ったように、法人税をかけろとかなんとか言わないし、退職金をどうしろとか言わないし、減価償却をどうしろとも言わないけれ
ども、行政機構の改革は、民間だっていま減量作戦をやらなければ立っていかないようになっているのだから、この際役所だって減量作戦をやるべきだというふうに私は信念を持っている。そういうことから考えまして、とにかく、この構造改革という、
産業の重化学工業中心のあり方、あるいは設備投資主導型の
高度成長のあり方を根本的に変えなければいかぬでしょう。大変な荒療治なんですよ。その荒療治をさせるためには、
一つは福田内閣の支持率が二八%なんということではやはりだめですよ。ここで減税をやるか何をやるかは別として、
国民にもう少しぐっと支持を得るような政治姿勢に変えなければ、そんな大改革はできませんよ。
言いたいことがたくさんあるのであれこれ申し上げましたけれ
ども、基本は、
内外の
情勢から見て五年、十年にかかる
日本の
産業の大改革をやらなければいけないんだ。いま、やらないで、仕方がないから輸出に中心を置いている。
倉成さんは勉強家だから御存じかもしれませんが、今度の三月四日号ですか、「エコノミスト」を見ると、アグリー・ジャーマンという
言葉が出ている。そしてその
説明としてアローン・アット・ザ・トップと書いてある。ドイツひとり高いところに立っておって、周りのEC各国はみんな失業とインフレでまいっておる。自分ひとり高いところにとまっている。そういう醜いドイツをヒースリッヘン・ドイッチェンと書いてある。そんなものはいやだ、ごめんだと書いてある。ドイツ記事として読めばそれでわかる。しかし次は
日本に来ますよ。
日本に来てアグリー・ジャパニーズということになったら、これは反撃はもっと深刻でしょう。しかし、国内の
生産力が一〇%以上成長したままにいま来ているのですから、それが七%もむずかしい、六%が危ないというような
状態になれば、輸出によってはけ口を見出す以外にないじゃないか。しかも借金でやっている
日本の
経済だから走らなければどうにもならぬ。そういうことを考えると、輸出中心になるなといったって、ならざるを得ないようにできている。その国内市場を
充実するということの切りかえの一歩として私
ども減税を言ったのです。単に、人気取りとか、そんなでたらめを言っているんじゃない。私は
本当に真剣に考えて言っているつもりなんです。
そういう
意味で、構造改革をやるには何年間かかかるが、その何年間かの大改革に耐え得るような体質と耐え得るような政治信頼を獲得しなければならぬ。そのために大きな政治がなければならぬと思うのですね。そういう
意味から言いますと、いまの政治には
国民にそういう
意味での大きな力強いアピールがない。これは私は非常に残念に思います。そういうステーツマンシップといいますか、大きなアピールのない政治というのは、ただ行政の事務の積み重ねであって政治にはならぬ。それをロートーンでなくて格調の高い政治に持っていくように、国務大臣としての
倉成さんにぜひ御検討を願いたいと思うのですが、どうでしょう。