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1977-02-21 第80回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月二十一日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君       足立 篤郎君    伊東 正義君      稻村佐近四郎君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    金子 一平君       木野 晴夫君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    藤井 勝志君       古井 喜實君    松澤 雄藏君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    小林  進君       佐野 憲治君    新盛 辰雄君       多賀谷真稔君    武藤 山治君       池田 克也君    坂井 弘一君       二見 伸明君    松本 忠助君       大内 啓伍君    河村  勝君       寺前  巖君    安田 純治君       菊池福治郎君    田川 誠一君  出席公述人         全国中小企業団         体中央会副会長 稲川 宮雄君         東洋大学教授  御園生 等君         日本大学教授  名東 孝二君         株式会社三菱総         合研究所専務取         締役      牧野  昇君         税制経営研究所         所長      谷山 治雄君  出席政府委員         総理府総務副長         官       村田敬次郎君         経済企画政務次         官       森  美秀君         沖繩開発政務次         官       國場 幸昌君         国土政務次官  佐藤 守良君         大蔵政務次官  高鳥  修君         文部政務次官  唐沢俊二郎君         農林政務次官  羽田  孜君         通商産業政務次         官       松永  光君         運輸政務次官  石井  一君         労働政務次官  越智 伊平君         自治政務次官  中山 利生君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     新盛 辰雄君   浅井 美幸君     松本 忠助君   矢野 絢也君     池田 克也君   三谷 秀治君     安田 純治君   大原 一三君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   新盛 辰雄君     藤田 高敏君   池田 克也君     矢野 絢也君   松本 忠助君     浅井 美幸君   菊池福治郎君     大原 一三君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。昭和五十二年度総予算に対する各位の御意見を拝聴し、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくよう特にお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず稲川公述人、次に御園生公述人、続いて名東公述人順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、稲川公述人にお願いいたします。
  3. 稲川宮雄

    稲川公述人 全国中小企業団体中央会稲川であります。  私は、予算性格とか構造とか、あるいは基本方向という一般的な問題でなく、中小企業立場から、主として五十二年度の中小企業関係予算について意見並びに希望を申し述べたいと存じます。  まず最初に、政府案によりますと、五十二年度の中小企業対策費は、合計いたしまして千七百二十八億円でございまして、前年度に比べまして一六・四%の伸び率になっております。予算全体の伸びが一七・四%でありますので、それに比較いたしますると一%下回ることになります。比率の低い中小企業予算平均を下回っているということは不本意でございますけれども、しかし、これは国債費でありますとか、地方交付金でありますとか、あるいは公共事業費という大口の予算が大幅に伸びているためでありますので、これを差し引いて考えますと、一六・四多という伸び率は、他の部門との比較において言えば、決して低いものとは言えないというように考えております。  次に、内容を具体的に各項目について見ますと、大体におきまして、中小企業庁あるいは通産省の要求が大筋においてほとんど認められております。中には要求額を上回るものもありまして、新聞記事などによりますと、百点満点という表現さえ用いられておるほどであります。  すなわち、まず第一に、私ども中央会中小企業組織化を推進することを主要な目的とする団体でございまして、その中でも特に組織化のおくれております零細な小企業者組織化を推進することが必要である。中規模になりますと七〇%組織されておりますけれども小規模層におきましては三〇%しか組織されていない。その組織化が必要であるというので、その推進費並びに官公需組織によって受注するための指導事業、こういう点に特別の配慮が加えられております。  二番目に、商工会議所商工会等中心として行われております小規模企業対策におきましても、経営改善事業充実、さらには小企業等に対するいわゆる無担保、無保証人特別融資制度における貸し付け対象事業者の規模の引き上げ等が認められております。  三番目に、中小企業者退職金と言われております小規模企業共済制度強化が図られまして、運営費の増額が認められております。  四番目には、中小企業振興事業団は、いわゆる高度化事業を推進するところでございますが、これにつきましてもいろいろ配慮が加えられております。  五番目に、中小企業金融公庫国民金融公庫、商工組合中央金庫等のいわゆる政府系中小企業専門金融機関に対しましては、前年度比一八%増の財投が加えられることになっております。特に、商工組合中央金庫に対しましては、前年度と同様、前年度に引き続きまして五十億円の政府出資が予定されております。  また、信用補完事業に対しましても、最近の代位弁済が急増しておる。こういう事態に対処いたしまするための手当てが講ぜられまして、保険準備金が百三十億円、それから融資基金が二百三十億円、合計いたしまして三百六十億円の追加が行われている。  以上のような諸点から考えますると、財政大変不如意の折からにもかかわりませず、中小企業対策としてきわめて行き届いた配慮が加えられたものとして、これを評価するのに決してやぶさかではございません。  それでは、中小企業予算はこれで十分であるのか、何も言うことはないのかといいますと、必ずしもそうではないのでございます。中小企業対策そのものは実にきめ細かく行われております。この点で、日本世界のどの国に比べましても遜色がないどころか、けた外れ、段違いに多くの対策が講ぜられていることは事実であります。最近、中小企業に関する国際会議が毎年開かれておりますが、日本は、中小企業対策におきましては世界各国の見本である、模範であると言われておるくらいであります。  ところが、この中小企業に対しまする予算という面になりまするときわめて貧弱でありまして、国の予算総額に占める割合は、よく言われることでありますけれども、〇・六%にすぎないのであります。中小企業の数は五百万を優に超えております。従業者の数は三千万人を上回っております。出荷額におきましては五〇%を超え、また、小売販売額におきましては八〇%を占めております。わが国経済の重要な担い手であり、その地位役割りの大きいことは言うまでもないのであります。しかも、それは経済面だけではなくて、雇用の場として、また、社会安定勢力として中小企業は重要な地位を占めているのであります。この膨大な中小企業に対する予算が全体の一%にも満たない。しかも、その中身をしさいに検討いたしますると、その多くは貸付金、つまり資本的支出が大部分でありまして、経費の占める割合はその一部にすぎないのであります。もちろん、別に財政投融資でカバーをするとか、あるいは一般予算中小企業に均てんしないというわけではございませんから、直接中小企業予算だけを見るのは適当ではないかもしれませんけれども、それにいたしましても、政策の数は非常に多くても予算そのもの総額が少ないというところに問題があるというふうに思います。  表現の適否を別として申しますならば、中小企業予算は各論において賛成でありますけれども、総論においてはにわかに賛成しがたい、こういうことになるかと思います。政府予算案におきまして、中小企業対策の各項目に温かい配慮が加えられているということは前にも申し述べたとおりでありますが、問題は、いま中小企業はどのような現状にあるかということであります。申し上げるまでもなく、中小企業は、長期にわたる不況のため、いまや深刻な苦難のうちにあり、まさに累卵の危機にあると言っても過言ではないと思います。業種業態によって、また企業間において、あるいは地方別に見まして、ばらつきが多いということが今回の不況一つの特徴であるというふうに言われておりますけれども一般的に申しまして、いまや名状すべからざる困難な事態にあるということは、企業倒産の空前の多発が端的にこれを物語っておるところであります。  したがって、個別の中小企業対策対策として、また、中小企業予算予算として、いま中小企業が強くかつ等しく望んでおりますものは景気回復であり、不況からの脱出であります。自律回復力を失ったかに見える最近の事情から考えまして、この際、予算措置によって、すなわち財政主導型の方法によって景気回復ができますことを中小企業は切望しておるのであります。  景気回復については、公共事業減税かということが論議の焦点になっておるようでありますが、中小企業といたしましては、公共事業関係者から言えば、公共事業拡大を望んでおります。また、公共事業に直接関係の薄い、たとえば一般小売商という層から申しますと、消費購買力をふやすということが期待されております所得減税ということで、必ずしも一律ではありません。正直に申しまして、両方が必要だということでありますが、強いて言えば、仕事が減少して困っているというのが中小企業現状でございますので、公共事業官公需として大幅に直接中小企業に回していただきたいのであります。  予算について特にお願い申し上げたいと思いますことは、その早期成立実施の繰り上げであります。予算の施行がおくれるということは、景気に大きな関係を及ぼし、また、心理的にも予想外影響を与えるということは経験に徴して明らかであります。特に東北や北海道など冬の訪れの早い地方におきましては、予算早期実施を強く求めているのが実情であります。公共事業減税か、問題はあると思いますけれども、いずれにしても早期予算成立実施中小企業は望んでいるのであります。  なお、最後に、予算に関連いたしまして税制について一言申し述べたいと思います。税制につきましては申し上げたいことはたくさんございますけれども、それらは割愛いたしまして、特に二点だけをお願いしたいと思います。  一つは、法人税段階税率の採用であり、二つは、資本蓄積の可能な税制の改正であります。  法人税率段階を設けるということは、法人税性格上問題がないことはないと思っております。問題はあると思いますけれども、現に所得七百万円を境といたしまして二段階税率が採用されているのであります。これを多段階とするということは、理論上においても実際上においてもそれほどむずかしいものではないというように信じております。  それから、資本蓄積でありますが、これからの安定成長経済下におきまして、中小企業に特に必要なことの一つ自己資本充実であります。いまの税制におきましては、この自己資本蓄積を妨げているという面があります。これを改正いたしまして、特に中小企業資本構成の是正に役立つ税制をお願いしたいのであります。  以上をもちまして私の意見開陳を終わります。(拍手
  4. 坪川信三

    坪川委員長 どうもありがとうございました。  次に、御園生公述人にお願いいたします。
  5. 御園生等

    ○御園生公述人 昭和五十二年度の予算案の最大のねらいが、現在低迷を続けております景気回復にありますことは、政府提案理由説明にまつまでもなく明らかなところであります。  私も、景気低迷が、雇用の不安、中小企業倒産の未曽有増加等国民生活の不安定を招く要因である点におきまして、財政を通ずる需要拡大効果をもって景気回復を図ることにことさら反対するものではありません。しかしながら、一方、日本経済をめぐる国際情勢変化及びこの影響を強く受けながら、わが国経済政策の基本的な方針が従来のそれと大きく変わらなければならないこと、日本経済が大きな転換期に差しかかっていることもまた認識しなければならないところだと思います。特に、資源問題に見られるさまざまな条件変化、あるいはわが国輸出激増に対するアメリカ及びEC諸国等の批判が現在集中しつつある事実、これらの事実を考えますときに、私どもは、日本経済運営について、いままでとは異なる基本的な転換をしなければならない。よく発想の転換というようなことが言われますけれども、そのことが現在ほど当てはまるときはないというふうに考えられます。     〔委員長退席栗原委員長代理着席〕 特に、いままでのように、資源の無制限な輸入と乱費、これを賄うための輸出振興政策一本やり、こういう前提のもとで、国内において民間設備主導型の高度成長を推し進める条件というのは現在根本的になくなっているということであります。  二百をもってすれば、これからの日本経済は、輸出振興よりも国内経済重視への転換を、また、資源輸入の上に立つ重化学工業中心高度成長ではなく、国民生活重視安定的発展に移行しなければならないものと考えます。財政政策もこのような日本経済転換前提にして編成されなければならないことは言うまでもありません。そしてこの点は、五十二年度予算重点目標とされている景気回復方法についてもまた当てはまるところであります。  ところが、五十二年度予算案内容を拝見いたしますと、大蔵大臣提案趣旨説明にも明らかなとおり、公共事業費について拡充を図ることを通じ景気回復をねらう一方、その他の経費、たとえば社会保障関係費は対前年比一七・七%、予算全体の伸びとほぼ同じ程度に圧縮されているわけであります。また、その内容を見ましても、健康保険初診料引き上げ入院費の一部負担増、あるいは老人医療無料化所得制限引き上げ等、財源の効率的配分のために節減の対象とされている面もなしとはしないわけであります。  一方、もはや当委員会においてかなり論議されていると聞いておりますけれども所得税大幅減税、たとえば少なくとも一兆円程度大幅減税による景気回復効果、また、それが公共投資と比べてどの程度いわゆる乗数効果において優越があるか等の点につきましても、国民は率直に言って疑問を持っているということを申し上げなければならないと思います。  第一の問題点は、今後の日本が真に国民生活向上国内経済重視政策を基調としなければならないとすれば、景気刺激即効性よりも、むしろ大幅減税による国民生活向上の方をとるべきではないかと考えられるわけであります。それにもかかわらず、公共投資に基づく乗数効果の大なるをのみ注目して大幅減税を見送られているという点につきましては、従来の大企業本位高度成長政策のもとに国民生活は相対的に圧迫されてきた、そのことの繰り返しが再び起こるのではないかという危惧を私もまた国民もともに持っていることを率直に申し上げる必要があるように思います。  また第二に、景気刺激効果そのものについても、果たして政府の御説明のごとく公共投資の方が減税よりも大であるのかどうか、そういう点についても問題があると考えられるのでございます。なるほど、企画庁のモデルを初め、各庁各種計量モデルによる需要拡大乗数効果なるものは、初年度において公共事業の方がまさっていることは否定できません。けれども、二年度以降両者は接近し、その持続力において、むしろ減税のもたらす効果が大きいというふうに考えられるわけでございます。  政府は、公共事業費支出を五十二年度前半に集中することによって景気を刺激し、その波及効果在庫投資拡大を通じ民間設備投資等増大をもたらし、もって五十二年度後半の景気自律的回復に期待しているように考えられますが、しかし私は、日本経済景気回復自律性民間設備投資再燃に期待することは、少なくとも四兆二千八百億円程度公共事業費程度ではかなりむずかしいのではないかと思います。現在、製造工業稼働率は意外に低く、統計よりも実際はむしろ悪化しているということが言われております。また、日本並びECアメリカ等景気低迷状況、特にECアメリカ等諸国から日本に対する輸出規制強化に対する要望が強くなっているという点を考えますと、この点につきましても、民間設備投資再燃が、日本経済の前途不透明という条件のもとで、冷え込んだままである可能性の方がむしろ強いというふうに考えられるわけであります。  こうして考えますと、五十二年度個人消費支出増大を、政府見通しによりますと一三・七%増を見込んでおりますけれども、果たしてこれだけの個人消費支出増が期待できるのかどうか。もし個人消費支出増大政府見通しどおり期待できないものだとすると、政府経済見通し、五十二年度の経済成長率六・八%でしたか、これが達成できるかどうか、かなり問題であると言わざるを得ないのであります。少なくとも個人消費支出が五十二年度において一三・七%程度増加するためには、物価政府見通しのとおり消費者物価八%前後というところに抑えられることが前提になると同時に、少なくとも今春闘ベースアップ率は一〇%以上を見込まなければ、とうていこれだけの個人消費支出増大は見込みがたいと考えられるわけでございます。果たして今春闘ベースアップ率が一〇%以上というような、現在の景気状況に比べますとかなり高額の結果が得られるかどうか、経営者の態度を見てもかなりむずかしいのではないかというふうに思われる次第でございます。それにつけましても、大幅減税、特に戻し税減税方法による個人消費増大を図ることがより重要である、それにより留意すべきものであると考えられるわけでございます。  また第三に、公共事業費内容につきましても疑問がございます。と申しますのは、政府案は、道路整備事業港湾整備事業あるいは空港整備事業等重点を置く一方、住宅対策においては、持ち家対策重点を置く一方、公営住宅八万五千戸、公団住宅六万戸と、ほぼ今年度並みとなっておりますが、私は、むしろ、現在の土地価格の値上がり、建築費上昇等を考えますと、住宅対策公営住宅強化重点を置くべきである、また、特に一戸当たりの面積の拡大公営住宅環境整備等により重点を置くべきではないかと考えるわけでございます。  総じて、五十二年度予算案におきましては、景気回復においても迫力が十分ではない、その反面、国民生活向上という経済運営基本目標において不十分であるという点において、どっちつかずの財政という感が深いわけでございます。  また、物価、この点につきまして、政府経済見通しによりますと、年度平均上昇率消費者物価八・四%、卸売物価五・七%というふうに見込んでおりますが、すでに現在、五十一年度政府経済見通しを、消費者物価もまた卸売物価も大きく超えているのが実情でございます。  また、公共料金引き上げ等を考えますと、今後、消費者物価卸売物価両面に向かって上昇圧力が強まる可能性もまたなしとしないと考えられます。特に、五十二年度の景気回復にもし失敗するとすれば、企業製品価格値上げへの圧力が一層強まることもまた十分考慮しなければならないところであると思います。  特に、この点につきましては、独禁法強化が今国会において論議対象になっておりますし、また、政府におきましても、政府案として独占禁止法強化を今国会に上程する予定であるというふうに伺っておりますけれども、そのことに便乗して、たとえば不況カルテル認可要件緩和等の、むしろ独占体制強化するかのごとき便乗的な改悪案を盛り込むやの議論もまた現在行われているというふうに聞いております。そうであるとすれば、果たして、物価を一けた程度に抑え込むという五十二年度政府経済見通しが十分な施策をもって対策を講じられているかどうか、きわめて疑問であると考えなければならないと思います。特に、私は、最近の値上げ、いわゆる原油価格上昇に名をかりた新々物価体系とも言うべき製品価格値上げが相次いでいるし、鉄鋼、非鉄金属化学工業製品等値上げ気構えもまた強く存在しているということについて、議員諸公の注意を促したいと思うわけでございます。  私は、この点につきまして、独占禁止法強化のみならず、たとえばかってアメリカ上院において存在いたしましたキーフォーバー委員会、これは通称でございますが、独占小委員会のごとき特別の強力な調査権限を持った独占価格対策調査委員会を設置するなどの強力な施策をもって、いわゆるカルテルによらざる並行的価格引き上げについての施策を十分に考慮する必要があるように思います。  繰り返し申し上げるように、日本経済転換は、企業発展を通ずる国民生活向上という、逆立ちしたがっての経済政策目標ではなく、真に国民生活本位経済政策への転換を必要としております。大幅減税効果を見直されると同時に、物価対策の面においても、独禁法強化を含む強力な対策をもって臨まれるようお願いして、私の公述を終わりたいと思います。(拍手
  6. 栗原祐幸

    栗原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、名東公述人にお願いをいたします。
  7. 名東孝二

    名東公述人 名東でございます。  まず最初に、前提条件を幾つか申し上げたいと考えております。  現在の長期停滞、セキュラースタグネーションというものとインフレーションの共存は、グローバルな場の転回といいますか、世界経済オープンシステムからクローズドシステムへ変わってきたということでございます。それと、これまでのエコノミックアニマルの当然の帰結、結果である。しかしこれを放置すれば、現在の不況深刻化と第四次の長期変動の波、これはコンドラチェフの波と呼んでおりますが、現在大体四回目の波が高原景気を歩いておる。五十年前の一九二〇年代のあの繁栄の様相と非常によく似ているということをまず申し上げておきたい。へたをすると、こういったような大きな恐慌に連なる可能性もあるということでございます。そういう意味で、この失速防止を、応急の措置として失速を防がねばならないということ。離陸する、テークオフする場合よりも、安着といいますか、安定成長の軌道に安全に着陸する方がむずかしいということであります。安定成長の軌道に乗るまでは、乗ってしまえば、二十一世紀の世界経済に関するレオンチェフモデルというのが発表されておりますが、このモデルに照応させまして大体四、五%の成長率。四、五%というと、これは少な過ぎるんじゃないかとおっしゃるかもわかりませんが、まあ御質問があれば詳細に答えたいと思っておりますが、要するに四囲の情勢からしてそれ以上は無理じゃないか。もしこれを仮に高くすると、その反動が恐ろしいということであります。それで、安定成長に乗せるまでは七%成長を目指した方がいいんじゃないかということであります。  本論は、時間の関係上、省略させてもらいます。  それで、結論を申し上げますと、第一番は、現在の政府予算では景気浮揚の決定力に欠けておる。へたをすると失速しやせぬか。よくてせいぜい四、五%の実質成長率にとどまるんじゃないか。消費者物価指数によれば、まあこの指数のとり方はいろいろと問題があるんじゃないかと思いますが、たとえば土地家屋を取得した場合にはそれは入らないというような問題がございますが、いずれにしましても、二けた台に達する可能性が強い。  第二番目に、社会保障の関係予算がわりあいに手薄になっておるということ。したがって、これを補うという必要があります。それから消費面からの刺激効果をねらうということ、もちろん、公共事業による景気の立ち直りのために、昨年度よりも二兆円増の追加支出を必要とすると考えております。GNPの一・二%または一般会計予算の八・二%に当たるわけでございますが、ただし、公共事業費の増加が七千五百四十億円と政府案減税分が三千五百三十億円ございますので、あとの追加支出は一兆円ならばと考えております。  次に、その使い道とその効果でございますが、その効果の測定において、この一兆円減税政府減税分三千五百三十億円はすべて野党主張の戻し税、タックスリベート、それとネガティブ・インカム・タックス、マイナスとか負の逆の所得税と言われておりますが、この方式で現金還付する方が好ましい。と申しますのは、この方式による現金還付の方が公共事業投資よりも乗数効果が大であるということ。なぜならば、普通の減税のやり方、すなわち所得控除方式では、一年たって年末調整で清算するために大した効果はございません。現在の政府案でも、八%所得がふえれば増税になりますから、したがって、その減税効果というものは非常に薄いと考えます。消費行動には習慣性が強くて、いろんな計量モデルが示しておりますように、御存じの企画庁とか、京大モデルとか、日経モデルとか、いろんなモデルが示しておりますように、初年度は一・二五から一・四、すなわち貯蓄率が十分の八それから十分の七。そうしますと、乗数というのは御存じのように貯蓄率の逆数ですから、したがって一・二五から一・四。第二年度が二から三ぐらい、少し高まってまいるわけであります。  この乗数効果につきましては、税額控除方式でも、やはり年末調整方式をとる限りは余り即効性は期待できないということになります。  それに対しまして、源泉徴収を受けておる者を中心にしまして、一世帯当たり三万円から五万円の現金還付ということになりますと、思いがけないたなぼた式に贈り物になりますから、限界消費性向は三分の二から四分の三、すなわち乗数は三から四ということになります。いみじくもこの間私、新聞で拝見したわけでございますが、福田総理がこの予算委員会で次のように言われたというふうに報ぜられておるわけでございます。減税なら二五%は貯蓄に回り、七五%分の需要創出効果しかないと。この後の方は少しおかしいんじゃないかと思うのですが、前段の二五%の貯蓄率ならばとおっしゃったのは、まさにそのとおりで、乗数効果は四ということになりまして、四兆円の働きをするということになるわけであります。このことは経済学の常識じゃないかと思うのです。まさか福田総理のミスではないと考えております。ミスでなければ、四兆円を認めたということになるんじゃないだろうかというふうに考えるわけでございます。しかし、この限界消費性向はだんだんと減少しますので、乗数効果は四じゃなくして三の方にさや寄せするんじゃないだろうかと考えております。これに対して、投資乗数効果の方は設備投資とか在庫投資一般が冷え込んでおりますので、そのために、せいぜい二から一・五ぐらいじゃないか。しかし、最近の冷え込みを見ますとやはり一の方に近いのじゃないか。御存じのように、五十一年度も当初二〇%以上も伸ばした公共事業費がその進捗率において前年よりもよくないということ。現に景気は冷え込んでよくないわけです。  それで結論としては、三対一・五の乗数効果の較差があるということと、それからまたGNPに占める個人消費支出割合というのは御存じのように五七%である。それに対して民間投資は約二三%でございます。こういつたようなことからしまして、現金還付による減税方式にウエートをかけて、それで従来の公共事業投資方式とのポリシーミックスが好ましい、こういうふうに考えております。  事務の繁雑というようなことを大蔵省の方々は言っておられるようでございますが、この源泉徴収義務者である事業所、会社にそれを代行させて後からチェックする。地方税の関係の職員に応援を求めてやってもらう。八万七千人おるわけであります。そういったようなことをすれば私は可能じゃないかと考えますが、ただコスト計算がございますので、したがってむやみやたらに高ければ必ずいいとも限りませんので、その点は考慮に値するだろうと思います。  それから今度は財源の問題でございますが、保険会社とか証券会社を含めました金融媒介機関、インターメディエートを中心に徴税をなさったらどういうものであろうということを提案したいと考えております。たとえば金融媒介機関の貸倒引当金の課税によって、現在二兆円以上あると思うのですが、それに課税して二千億円。利子配当軽課措置の廃止によって一千四百五十億円。また受取配当金の益金不算入廃止によって一千億円。有価証券取引税率の大幅アップによりまして五千六百億円。こういったような計算は皆様方の方がお詳しいと思いますので、こういったような金融機関を中心にして徴税すれば調達できるのじゃないか。さらに固定資産再評価税とか富裕税を絡み合わせる。しかし、この二つは将来のデノミの際に一気にやることも可能だ、いいのじゃないかと考えられます。  ただし、現在の企業の現金保有性向が高まっておると思います。たとえば現先市場が活況であるというようなことを見ても、かなり現金保有性向が不況になれば必ず高まってくるわけであります。それからさらに私は投機性向に転化するのじゃないかということを恐れているわけでございます。それからまた企業が税金ショックのために倒れたというのじゃ国民経済上困りますので、それを避けるためにも赤字国債の肩がわりを条件に課税の延期を認めたらどうだろうか。もちろん将来実需に基づいた資金の需要が起こってきた場合には取引銀行を通じて日本銀行の買いオペをする、それによってマネーサプライを行えばいいのじゃないか、こういうふうに考えております。まず手始めに国債引き受けのシンジケートの中に大企業を加えて、直接国債の引き受けをさせたらいかがなものだろうか。といいますのは、全国銀行の国債保有高というものは、総資金の中でその割合は五十一年度末予定が七・二%であって、さらにその割合が増加していくというふうに見込まれております。その資金繰りが圧迫されるのじゃないかということが懸念されておりますので、やはりこの際こういう措置をとれば企業の方々はある程度喜んで応ずるのじゃないだろうか、こういうふうに考えております。  最後に一言インフレ対策を申し上げてみますと、基本的にはやはり財政インフレの抑制と行財政の効率化ということになると思います。  第二番目は、企業集団を初めとする圧力集団、もちろんこれはいろいろな圧力集団があるわけでございますが、この圧力集団の自粛によるコスト・プッシュ・インフレをなし崩していく以外には手はないだろうと考えております。  第三は、輸入インフレは、日本はちょうど輸入輸出の間にはさまれたブランコのようなものでございますから、輸入インフレは防ぎようがない。しかし、円高誘導をすれば多少ともそれが防げるのじゃないか。そういったようなわけで、新しい勤労哲学に立脚した勤勉節約によって生活の質を高めるとともに、開発途上国への有効な援助、有効という意味が、下層にも浸透するような援助でございますが、そのためには特に政府開発援助がGNPの〇・七%に引き上げられるということとともに、その質をよくするためにグラント、すなわち贈与でございますが、そういったような無償の中間技術を援助する。中間技術というのは、先進国に適用されるような巨大なプラントとかそういう技術は役に立たない。それで開発途上国には中間技術といいまして、人手を排除するんじゃなくして割り合いに人手を吸収するような技術、そういったようなものを援助対象にする必要があるんじゃないか。この面においても、下手をすると非産油、オイルを産しない開発途上国においてモラトリアムが実施されるかもしれない。このモラトリアムは、すでに債務不履行が二十カ国以上に起こっておりまして、御存じのように国際経済協力会議要求として、政府ベース債務は贈与に切りかえてくれ、民間商業債務は二十五年の繰り延べにしてくれという要求が出ておって、もちろん先進国はそれを断っておりますが、そういう要求がすでに出ておるということでございまして、モラトリアムといえば、いまから五十年前は銀行支払い停止がモラトリアムでございましたが、いまはそういう銀行の支払い停止なんということはとうてい考えられません。五十年たった現代のモラトリアムといえば、そういう開発途上国の支払い停止じゃないだろうか、こういうふうに考えるわけであります。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 こういったようなことが実施される可能性がないと言い切れないんじゃないかと思います。そういうわけで、国内問題は非常に団結が強いというふうに外部からは見られております日本の場合でも、黒船には弱いんじゃないか、そういう危ない綱渡りをしておるんではないだろうか。あれだけ苦しいイギリスでも、海外の開発援助ということは別枠にして予算を組んでおるということを御参考にお願いしたいと考えております。  どうも失礼しました。(拍手
  8. 坪川信三

    坪川委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  9. 坪川信三

    坪川委員長 これより各公述人に対する質疑に入ります。  質疑はお一人、答弁を含めて十分程度にお願いいたします。  小林進君。
  10. 小林進

    ○小林(進)委員 質問に移る前に議事進行に名をかりて委員長に一言お伺いいたしたいのであります。  本予算委員会公聴会は、これは新憲法と立法府が持つ新しい行事でありますから、大いにこれを権威あらしめ、特に陳述は重要視しなければならない。その意味において、これは立法府だけが承るのではなくて、行政府もともにやはり謙虚な気持ちで聞かなければならぬ。だから、できれば各省大臣も来てお聞きを願いたいが、まあ大臣もそれぞれ御用事があれば不可能な場合やむを得ない。そのときには、わかって副大臣ができるだけ多く来て、そして真摯な態度で陳述を承るということになっていたのであります。そういう慣習をわれわれはだんだん手直ししながら守ってきた。ところが拝見いたしますと、大蔵政務次官、ちょこなんとすわっておりますが、あとはそこに数えてみて——手を挙げるのはやや成績よろしいと見て、まあ、いますけれども、りょうりょうたるものでございまして、これは委員長からひとつ各省に命じ、特に、来られている政務次官のところはいいが、来られないところは厳重にひとつ注意を喚起しておいていただきたいと思います。これはお願いしておきます。  次に、質問に入りますが、第一に、稲川先生に、限られた時間でございますからほんの要点だけお伺いいたしますけれども中小企業がわが日本経済に占める比重、比率というものを承った。その国家予算の中に占める率が〇・六%、少ないじゃないかというお話がございました。これをじゃあどの程度充実をすればいいのか、ちょっとこの点ひとつ具体的にお伺いしたい点が一点であります。  もう一つは、これはその資本の蓄積であります。特に中小企業者の資本の蓄積のために、それに見合う税制改革をひとつやってもらいたいというお話がございました。これも大企業中小企業問わず自己資本蓄積というものは、私は非常に大切だと思います。具体的にどういう方策がよいのか、ちょっと掘り下げてこの点も、これは税制の問題でございますが承っておきたいと思うのでございます。  次は御園生先生にお伺いをいたしたいのでございますけれども、これから新しい日本経済の方向としては国民生活向上だぞと、それから国内経済充実だと、この二点を予算編成の重大な柱にして、従来の高度成長型の予算編成を改めるべきではないかというお話があったのでございます。私どもも、おっしゃるとおり国民生活向上に大変重点を置いて物を考えているわけでございますが、ただ具体的に、この資本主義の中に国民生活向上国内経済充実と言いますが、一体この高度に発達をいたしました独占企業の製品を国民生活向上国内だけでこれを消費し得るのかどうか。結局はそれが経済成長に結びつくわけでございますから、この経済成長を横目で見た場合に、やはりこの日本の資本主義というものはどうしても一定限度に経済を成長させていかなければこれはもたない。いいか悪いかは別といたしまするけれども。これがとまれば日本の資本主義自体破産をしてしまわなければならぬ現状でございます。そのために、この兼ね合いでございますが、一体どの程度に毎年毎年日本経済というものを最小限度に成長させながら、なおかつ国民生活向上経済充実、この兼ね合いをどんなぐあいに見たらいいものか、ひとつこの点について御意見を少し承りたいと思います。以上の点でございます。ひとつどうぞよろしく……。
  11. 稲川宮雄

    稲川公述人 お答えをいたします。  まず第一に中小企業関係予算総額が国の全体の予算の〇・六%にしかすぎない、これをどの程度にしたらいいかということでございまして、私どもの仲間でいろいろ話しておるところによりますと、まあ二%ないし三%と言っておりますけれども、私は少なくともとりあえず一%程度を目標にしていただきたい。大変内輪の数字でございますけれども、せめて一%というのが私ども一つの目標でございます。  それから、資本蓄積が必要であるがどういう方法があるかということでございますが、いまの税制の中で第一の点といたしましては、同族法人、同族会社につきましては、内部留保した場合にこれに対しまして特別課税が行われる、こういう制度になっております。そういう制度になるにはなるだけの理由があってのことだと思いますけれども、しかしながら、同族法人というのは主として中小会社が多いのでございますが、そういう会社が内部に利益金を留保しようというときには特別課税をする。これはまさに内部留保、資本蓄積を妨げるものではないかというふうに思います。もちろん同族会社につきましては、いろいろ改善が加えられまして、課税最低限等も上げられておりますけれども、しかしながら内部に留保するものに対して二重の課税をするということは大変矛盾ではないか、こういうふうに考えております。  それからもう一つの点は、利益金を処分する場合に、社外に流出するもの、すなわち配当に対しましては配当軽課措置と申しますか、税率が低いのであります。一般法人税が四〇%といたしますと、たしか二八%だったと思いますが、非常に社外に流出するものを安くいたしまして、社内に留保するものに対して高い税率であるということは、やはり内部蓄積を妨げるものではないかと思います。これは株式等を募集いたしまする大会社、大企業については株式を募集するための、資本を集める一つの手段かと思いますけれども、中小会社におきましては株式市場におきまして一般から株を公募する、資本もその方から求めるということはほとんどできないのでありますから、大会社のことはともかくといたしまして、少なくとも中小会社におきましては一般の株式市場における公募ができないのでありますから、したがいまして、外に出すものを安くするよりはむしろ内部に留保するものを安くする、こういう税制が必要ではないかというふうに思っております。  それからもう一つは、これは先ほど申し上げました法人税段階税率に関することでございますけれども法人税は、法人性格上いわゆる比例税、一律の税率になっておりますけれども、現在は二段階になっておりますが、これをやはり多段階にしていただくことによりまして中小法人の方が内部蓄積がより可能になるのではないか、こういうふうに考えます。  以上三点でございます。
  12. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えいたします。  国民生活充実国内経済重視政策転換すべき時期であるということを申し上げたわけでございます。しかし、かといって私は経済成長ゼロであっていいということを申し上げるつもりは全然ございません。やはり国民生活向上発展させるためには、適当な、中くらいの経済成長率を目途とすべきことは言うまでもないことだと思います。果たしてどの程度経済成長率が望ましい中位の経済成長率であるかという点につきまして、精密な計算を私自身がしたわけではございませんので、ここで細かい数字を申し上げることは遠慮させていただきたいと思いますけれども、ほぼ六%前後という、これは政府長期的な経済目標でもあるわけでございますが、このこと自体は別段それほど過大でもないし過小でもないというふうに私は考えております。問題はその内容にあるということです。つまり五十二年度予算案にございますような、公共投資を通じて結局は民間設備投資を刺激し、それを一つの牽引力にしながら経済成長率をはかっていくという発想そのものに私は根本的な疑問を感じているということを申し上げなければならないのだと思います。  しかも、この六%とかあるいは七%とかいいます経済成長率はあくまでもフローの面での成長率です。ストックの面を見ますと、御承知のとおり国民一人当たりの公園面積につきましても、あるいは上下水道の普及の程度を見ましても、病院、学校等の充実程度を見ましても、先進諸国にはるかにおくれているというのが実情でございます。私は、やはりこの点をもっと充実させることに重点を置くべきである。公共事業一般がいけないのではなくて、そういった国民のストックの貧弱、よく言われますようないわゆる社会資本の充実のための公共投資大いに結構である。病院の充実あるいは学校の充実、住宅の拡充、発展等の面に重点を置けば、私はその面での公共事業のもたらす乗数効果を否定するわけではございませんから、まあ、ある程度景気刺激効果も生じてこようというふうに考えるわけでございます。あくまでも、初めに申し上げたとおり、何%という経済成長率程度において問題があるというよりも、むしろ私どもはその内容において十分に吟味すべき時期に来ているのではないか、そういう点において、国民生活向上国内経済重視という面を強調した次第でございます。  以上でございます。
  13. 小林進

    ○小林(進)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
  14. 坪川信三

    坪川委員長 次に、武藤山治君。
  15. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 初めに稲川さんにちょっとお尋ねいたしますが、稲川さんのいまのお話を聞くと、中小企業は大して心配するほどの状態ではないという印象を受ける。ちょっと楽観的な見方に受け取りました。しかし、倒産件数を見ると、銀行取引停止処分を受けている企業数というのは五十年度ですでに六万件、五十一年度は六万六千件ぐらいになりますね、日銀統計全部調べてみると。そういうものに対して実際の当事者の皆さんは、いまのような状態で、まあ間引きされるものはやむを得ぬ、独占がどんどん強化され、拡大されていく反面、中小企業はばたばたつぶれていく、これはもう自己責任だ、つぶれるものはやむを得ぬのだ、こういう姿勢で一体いいのだろうか。そこで、倒産防止あるいは倒産救済基金、何か新しいそういうものを必要とする段階ではないのか、私はそんな感じがするのでありますが、そういう業界に携わる当事者としては、そういう倒産の状況についての何か歯どめと救済の新しい制度を考える段階ではないのだろうか。社会党は倒産防止基金制度というのを提案をしているわけでありますが、そこらについてどのような構想をお持ちであるか、ちょっとお聞きをいたしたい。  それから第二は、官公需をもっと中小企業に回してほしい、当然であります。しかし、現実はやはり競争入札で、地方の学校やあるいは市役所の庁舎や、ちょっと大きい仕事は皆もう大企業が落札をしてしまう。中小企業はほんのかすの方の細かい仕事だけですね。あるいはまた大企業の下請化して、上下水道にしてもほとんど大企業の下請ですね。ですから、もうこの辺で分野調整法をもっときちっとしたものにする。あるいは中小企業産業分野の確保に関する法律、いま野党がそれぞれ強く要求をしておりますが、そういう法制度できちっと中小企業の分野というものを確保してやらぬことには、もう力に押しまくられるのじゃないか、こういう事態がいま来ている。戦前の財閥よりもいまの財閥の方が強力な系列化をしているということは御園生先生の専門でありますから、後で先生にお尋ねしますが、中小企業側としてはそういう点の新しい制度、体制というものを要求しないと、予算を少々ふやしたからといって解決できる問題ではない。自由経済の弱肉強食のシステムの中でどう産業界を交通整理するか、これが当面の大きな問題点ではないかと私は思うのでありますが、その辺についてはどうお考えになりますか。  第三点の、資本の蓄積法人税段階税率社会党案と全く同じであります。われわれは五段階制を要求して、所得の少ない、資本力の弱い中小企業税率は最低を二六ぐらいにしていく。そして最高は四五までぐらいにランクをつけていく。ドイツの法人の負担を見ますと、地方税、国税含めての法人の負担は七〇%を超えていますね。日本は大法人になるに従って実効税率は低くなって、三八ぐらいですね。ですから中小企業はそういう実態をもっとえぐり出して、政府に対してそれに対応した、中小企業税制をもっと深刻に受けとめて運動を展開すべきじゃないのか、そういう感じがしてなりません。  いま、留保金課税の問題も所得一千五百万が限度になりましたか。ついこの間までは三百万、百五十万。だんだんにこう引き上げてきて廃止をしないわけですね。ですからこういう問題も、やはり中小企業者自身が、国から援助をもらったり、補助をもらっているから余り本当のことは言わぬ方がいい、各論は賛成だが総論はちょっと気に食わぬ程度では、中小企業問題はもう解決できないのではないでしょうか。そこらの点の認識をもう一回ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  それから、御園生先生は独占の研究では日本の最高権威者と言われる方でございますが、いまの財閥形成というものが戦前と比較してどういう点がどのように最近は変わってきたのか、それが他の中小企業の分野や他の産業に与えている悪い面というのは一体どういうものがあるのか、そこらの点を御園生先生にちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  それから、経済の年と言われるゆえんの最大の課題は、私は国際経済の問題と日本経済へのはね返りだと思うのですね。それで、いまのこの不況というのは国際的な不均等発展が最大の原因にあると思うのですね。この世界貿易なり世界経済の不均等発展というものを解決する方法というのは、一体首脳会議の協調で解決できるものなのか、あるいはフランスのジスカールデスタンが言っているような個別規制というか、個別割り当て貿易というようなものまで踏み込んでいかぬことには不均等発展というのは解消できない段階なのか。もう強い者はどんどん強い、持たざる開発途上国は、先ほど名東先生がおっしゃるように、債務がどんどん累増して輸入ができなくなる。それをまさか海外援助で先進国がただで援助し切れるはずがない。一定の限度がある。だとすれば、貿易構造全体をこの辺で転換をしないと世界資本主義そのものが行き詰まる。私は過剰生産から来ている不均等発展ではないと思うのであります。アフリカにおいても、あるいはアジアにおいても、まだまだ過剰どころではない、足りない国がいっぱいあるわけでありますから、地球規模で物を考えたときには過剰生産恐慌ではない、不均等発展から来ている不況である。これを解決するのが大変むずかしい。学者先生は、非常にむずかしい問題でありますが、それについてどんな見通しを持っていらっしゃるか。名東教授にも一応その問題はちょっとお尋ねをしておきたいと思います。御園生先生とお二方にその点を説明していただければ大変ありがたい。  それから、一兆円減税については御園生先生も名東先生も賛成であり、公共投資にばかり偏るという五十二年度予算については大変不満である意味が表明されました。これは私どもも大賛成であります。福田さんがおっしゃっているのは、公共投資乗数効果は二・二だ、税の方の場合は一・四かそこらだ、だから公共投資の方がいいんだ、こういう形で逃げているわけですね。その辺をお二方からもうちょっと触れていただいて、名東先生は先ほど、初年度は確かに公共投資の方がいい、しかし二年度、三年度と言えば減税の方が波及効果はより浸透して経済全体にいい影響を及ぼすんだ、こういう見解が表明されたわけでありまして、その点私も賛成であります。その点もう少々説明をつけ加えていただいて御説明いただければ大変ありがたいと思います。  以上です。
  16. 稲川宮雄

    稲川公述人 私に対しまするお尋ね、三点ございます。これに対しましてお答えを申し上げます。  中小企業現状は大して心配することはないのではないか、あるいは自己責任でやればそれでいいのではないか、こういうように私が申し上げたということでございますが、そういうふうには私は全然申し上げたつもりはございません。むしろ、いまや中小企業は累卵の危機にある、もう倒産が多発してこのままではどうにもならないというまことに憂うべき状態にあるということを申し上げたのでございます。倒産が多いということは、その倒産の数字は負債金額一千万円以上でございますので、いままでは物価に換算して考えますると、倒産が多い多いと言われましたけれども物価の点から申しますとそれほどではなかった。しかし、ここへ来てみますと、もうとうてい放任はできないという状態に来ておるというのが私どもの認識でございまして、心配することはないというような感覚では全くございません。  それから、その倒産を防止するにはそれではどうしたらいいかということでございます。国の施策といたしましては、中小企業信用保険制度によりましてお金を借りやすくする、特別の信用保証なり信用保険をつけていただくということでカバーされておるのでございますが、お話がございましたように、何か基金制度なりあるいは特別の保険制度、たとえば不渡り手形の保険制度でありますとかそういうものを設けるべきではないか、こういう声がございまして、私どもも近く金融委員会を開きまして検討したいと思っておるのでございますが、まず保険をやれという声がございますが、どうも保険にいたしましても、あるいは基金でも、政府の方で積んでいただくならいいのでありますが、自分たちでやる制度になってまいりますと、どうもこれは保険になじまない。倒産しそうな人ばかりが加入するということでは保険になりませんので、どうも保険制度になじまないという点、それから一体どの程度の事故率を見たらいいかというそういう保険数理から申しましても、その見当がつかないという点で非常に困難がございまして、何か倒産防止の思い切った対策をしなければならぬという感覚は持っておりますけれども、的確な方法もございませんので、今後さらに研究をしたいと思っておりますが、現在は政府中小企業信用保険制度によってカバーされておる、こういうことでございます。  それから次は、官公需でございますが、官公需につきましては、政府のお力によりまして最初は二六%程度のものがだんだん上がってまいりまして現在では三〇%を超える、あるいは三二、三%を目標にするというところまで出てきておりますけれども、しかし、中小企業出荷額は半数を超えておるのでございまするし、特に政府施策としてやっていただく官公需でございますから、私どもは将来もう少し比率を高めていただきたい、こういうふうに思っておるのでございます。その場合に、やはり発注側にもいろいろ問題がございますし、受注側にもいろいろ問題がございまして、なかなか簡単にはまいらないのでありますが、先ほど申し上げましたように、五十二年度の政府予算におきましては、私ども中央会に特別の対策費が講ぜられておりまして、個々の中小企業ではなかなか受けにくいので、組合を結成いたしましてこれを組合単位で受注する、こういう方法を私ども中央会において指導することになっておりますので、これに対しまして全精力を傾けていきたいと思っておるのでございます。しかしながら、私の考えといたしましては、むしろ公団とか事業団とかあるいは特別の会社とかそういうものをつくりまして、ある程度ここで引き受けていく、こういうような構想まで将来はぜひ持っていっていただきたい、こういうことを考えておるのでございます。  それから、思い切って分野調整でやったらどうかということでございまして、この点は私ども全く同感でございます。したがいまして、ぜひ今回の国会に分野法の実現を期待しておるのでございます。その内容が、分野を確定するのかあるいは調整するのか、いろいろ方法があると思うのでありますが、私ども中小企業といたしましては分野が確定するに越したことはないのでございますが、技術的に非常にむずかしい問題があるのではないか、こういうふうに考えておるのでございます。  それから三番目に、段階税率のお話がございまして、この点はもっと深刻に運動すべきではないか、こういうお話でございましたが、この問題につきましては、私どもは、毎年の大会を初め各中小企業団体に先駆けましてこの問題に取り組んでおるのでございますが、法人税の体系から申しましてこれを崩すということは非常に困難でございます。いわゆるシャウプ勧告というものが前提になっておりますので、これを崩すということは非常に困難でございますけれども、すでに現在二段階になっておるのでありますから、ぜひともこれは将来解決さしていただきたいということに思っておるのでございまして、今後とも精力的にこの運動を展開していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えいたします。  財閥形成の問題ですけれども、財閥という言葉は、戦前の三井、三菱、住友、安田といったような古い財閥を表現するのに適当な言葉でございまして、戦後、御承知のとおり企業集団という形で最高の大企業集団、独占資本集団が形成されつつあるというふうに私ども言っております。このうち、御承知のとおり三井、三菱、住友、この三つの企業集団は、まさにこれは財閥の再編成形態であるというふうに考えられますけれども、そのほか、特定の大銀行、都市大銀行を中心にいたしましたいわゆる企業グループとか企業集団とか申しますものが、二つないし三つぐらい現在形成されつつあります。これは財閥再編成と申しますか、あるいは戦前の財閥の戦後形態であるという基本的な性格は持っておりますけれども、戦前の財閥と比べますと、幾つか大きな変化もまた生じているのが事実でございます。たとえば、戦前持ち株会社を本社にしておりました組織形態、いわゆるピラミッド型の組織形態が、戦後におきましてはアメリカのインタレストグループ型の多角的な結合形態に変わっている。たとえば社長会というのがございますが、これは決してかつての財閥本社のような強い司令部的な存在ではなくて、むしろ各企業の社長が集まって協議をする機関であるという性格のものに変わっているわけでございます。また、その結合の形といいますか、性格から言いましても、どうも戦前のような単に株式所有あるいは役員兼任というような面だけではなく、もちろん戦後もそういう点は結合の帯としてございますが、それ以上に、技術的なつながりですね、企業提携という面、こういう言わば生産力的なつながりが非常に重要になってきている。これはやはり戦前戦後の大きな違いだろうと思います。どちらが強いかということは一概には言えませんけれども、やはり戦後のさまざまな条件、産業社会への進展という条件の中で、戦後的な財閥と申しますか、企業集団が形成されてきたというふうに考えるべきだろうと思います。  したがってまた、その弊害面もやはり戦後的でございまして、戦前では財閥が個々の産業における価格引き上げを直接指揮するといった場面もかなりあったわけですが、戦後においては、戦後の企業集団は、個々の商品取引分野における独占、市場制限、そういうものよりも、むしろ全体として参入障壁ですね、新しい企業が、これら企業集団が主として支配を行っている分野に参入するときに阻止的な効果を果たす、そういう弊害の方が大きいのではないかというふうに思います。また、ことに最近第二の産業再編成期にあるということが認められます。第一の再編成期は、私は、安保と三池というふうによく言われました六〇年当時だろうと思います。つまり、石炭から石油への転換に代表されておりますような時期が第一の転換期であった、再編成期であった。現在の再編成は、重化学工業からいわゆる知識集約型産業への産業転換、産業再編成というようなことが言われておりますような内容を持っているわけですが、そういう場合にたとえば海洋産業であるとか、あるいは住宅産業であるとか、開発産業であるとか、いわゆるシステム型産業が非常に有利になってくるわけです。従来の産業分類に基づく細かい中分類、小分類ではなく、各産業にまたがった新しいシステム型の産業が非常に今後の発展産業として重要視されなければならない、そういう状況であるわけです。だとすると、これは企業集団がまさにそのままの形で新しい知識集約型なりあるいはシステム型の産業を受ける受けざらになる形を持っている。そういう点におきましても、中小企業は御承知のとおり、七〇年代通産政策あるいは長期ビジョン等におきましても、労働集約型の従来の産業はむしろ後進国に譲った方がいいというようなことを政策当局も堂々と言う始末で、最近における中小企業の倒産は、単に不況影響だけではなくて、産業構造の転換に基づくいわば構造的な倒産という性格のものがかなり含まれていると考えられるわけでございます。そういう点におきまして、再び戦前のような独占支配体制のもとに日本経済を硬直化させないためにも、現在においてその復活形態である企業集団をいかに規制するかというのが実は独占禁止法を含めた産業政策一般についての非常に重要な問題になっているというふうに思う次第でございます。  なお、この点に関連いたしまして、現在の国内経済は、先ほど私、国内経済重点政策目標を移すべきだと申しましたけれども、しかしそれは相対的なことでございまして、やはり国際的な関係というのは断ち切ることができません。その点につきましても、企業集団は余り思わしくない国際的関係を持ちつつあるわけです。つまり、時間がありませんから簡単にいたしますけれども、いわば日本中心にいたしました主としてアジア諸国でございます北東アジアあるいは東南アジア諸国等にまたがる、いわば一大下請生産体制ともいうべきものが形成されつつある。ちょうどその中心企業集団なりあるいは総合商社が位置すると言って過言ではないのではないか。してみると、日本企業の海外発展というのは、現地に歓迎されるどころか、むしろ現地に何も残さずにうまい汁を全部日本に吸い取ってしまう、こういう批判がいま集中されつつあるとおりの事態が今後一層強まってくる危険性もまた大いにあるという点を申し上げる必要があるように思います。  それから不均等発展、まさに現在国際関係におけるさまざまな矛盾を集中的に表現する言葉だと私も存じます。そういう点を考えますと、基本的には、これも時間がありませんので簡単に申し上げるしかないのですが、基本的にはやはり日本の勤労国民が十分な生活を営む状態にあるということが、国際社会において日本が十分な発言権を得る、あるいは国際経済全体のバランスのある発展を図る根本である、基本であるというふうに私は思います。  たとえば日本の自動車あるいは鉄鋼、電気製品等が非常に安くて、品質がいい。まさに奔流のごとくECあるいはアメリカ輸出されている。そのことが日本に対する非難が集中するゆえんになっている。これほど勤労国民の側からすれば不当なことはないということでございます。汗水たらして働いた労働の成果が、よくて安い製品の輸出になっている。そのことが逆に日本に対して輸出規制が行われざるを得ない海外からの圧力になっているということです。したがって私は、根本的には低賃金という状態あるいは十分な休暇もとらずに労働強化にあえいでいる日本の勤労国民が、国際的な水準から見て十分な賃金とまた十分な休暇を得られる、そういう状態のもとで多少製品コストが上がったとしても、そのことは決して日本経済全体から見れば憂うべきことではなく、むしろバランスのある、世界経済の中での日本経済をもたらす基本になるというふうに考えるわけでございます。
  18. 坪川信三

    坪川委員長 なるべく簡明にお願いいたします。
  19. 御園生等

    ○御園生公述人 時間がございませんので、簡単にいたします。  三番目の一兆円減税乗数効果でございますが、これは結局は企画庁のモデルであるとかあるいは日本経済新聞のモデルであるとか電力中央研究所のモデルとかいろいろございますが、初年度は比較的公共投資に有利で、減税の方の乗数効果は小さい、ところが二年度以降はそれが接近するというのはどこのモデルでも同じでございます。これはどこに問題があるかといいますと、結局は減税分がどれくらい消費に回るかという想定の違いにあると言っても過言ではないと思います。大体二〇%から三〇%ぐらい消費に回るというふうに想定した上での乗数効果がいま言ったように計算が出ているわけですが、私は、戻し税方式等をとる場合には、決してこれは二、三〇%程度の消費ではなくて、より以上の消費が期待できる。だとすると、初年度——二年度以降はもちろんのこと、初年度においても私は相当な乗数効果減税によって期待できるのではないか。むしろそれよりも基本的には、一体経済政策というのは大企業発展させるためにあるのか、あるいは国民生活向上させるためにあるのかという基本的な姿勢の問題のように思います。  そのことを申し上げて御答弁といたします。
  20. 名東孝二

    名東公述人 まず、国際関係でございますが、いままでの市場経済、すなわち自由競争というものは強者の、強い者の論理だということをやはり考えねばいかぬのじゃないか。お互いにギブ・アンド・テイクで、輸出輸入するんだから、したがってこれはあたりまえじゃないかとおっしゃるかもわかりませんけれども、しかしやはり弱い者の立場に立てば、それはもう自由競争をすれば弱い者が負けるに決まっているわけですよ。したがって、資源のない国が社会主義といいますか、社会主義の名のもとに民族国家をつくるとか、資源のある国はやはりはっきりとそういったような資源を武器にして立ち上がってくる、そういったような世界的な一つの大きなシュトルム・ウント・ドランクといいますか、立ち上がってくる、平等の要求。基本的には、やはり食べ物のようなものですら、アメリカ人、これは家畜でいえば大体インド人の五倍と言われていますね。日本人が大体二倍か三倍。食糧ですらそういう不平等があるということがはっきりと自覚されて彼らが立ち上がってきたということ。したがってその解決する方法は、もちろん資本主義ではだめだし、それかといって計画経済がもうだめだということは大体御存じだと思うのですよ。したがって混合経済というようなものが出ていますけれども、これも、たとえばユーゴとかイスラエルを見てもまだ決定的な要素になり得ないということで、やはり現在は流動的に模索している段階であって、したがって世界経済がどうなるかということは、これははっきり申し上げたら、恐らく現在の学者でそれを解いている人はまだいないと思うのですよ。いままでの経済学とか経営学をわれわれ習ってきましたけれども、はっきり言ってこれは四十億の人口の中でわずか十億か十五億の人にしか役立たない経済学であり経営学であったということで、四十億の人に役立つ経済学はこれからじゃないかと思うのです。そういう新しい経済はこれから出てくると思いますよ。  それから一言、いまの乗数効果ですが、これはいま御園生さんがおっしゃったように、消費をどの程度に見るかの見方によって違ってくるわけなんですよ。したがって結論的に言えば、現金還付でいけばそれは消費性向が高いですから、したがって、効果はあるということになるわけで、それをいままでのような要するに減税方式でいけば、それは低いことは明らかじゃないかと思いますよ。しかし、やはりいまそういった乗数効果を単なる乗数効果の問題じゃなくして、基本にある現在の生活状態なり、それからまた社会資本の充実ももちろん結構ですけれども、しかしやはり基本的に現在の景気とかインフレ、長期停滞とインフレの共存が現段階においてどういうような状態にあるかという現状認識において違うんじゃないか。政府の方々の方がやはり楽観的じゃないか。自動的に上がってくるという見方をするか、そうじゃなくして自動的には上がらないよ、やはり相当持ち上げなければこれは危ないですよという認識の相違が基本にあると思いますね。簡単ですけれども……。
  21. 坪川信三

    坪川委員長 次に、二見伸明君。
  22. 二見伸明

    ○二見委員 最初に、稲川さんにお尋ねいたしますけれども官公需の問題が指摘されましたけれども、私たちは、官公需はできればフィフティー・フィフティーぐらいにしたいという主張を持っているわけです。これは受注側にも問題があると思いますけれども、現実的には稲川さんの方では官公需はどの程度まで確保したいとお考えになっているのか。と同時に、現実的に能力の問題としてどの程度可能なのか、それをお教えいただきたいと思います。  それからもう一つは、やはり中小企業にとって厳しいのは、下請代金の問題だと思います。私たちは、下請代金支払遅延等防止法というものを改正強化したいという意見を持っておりますけれども、下請代金についてはどういうお考えを持っているのか。  もう一つは、非常に抽象的な質問になってしまいますけれども中小企業対策というと、どうしても守る点に重点があるわけです。中小企業団体の方々も守るというところにあるわけですけれども、私は、中小企業対策というのは二つあると思いまして、守る問題ともう一つは新しい経済状態に的確に適応していくという、守る言葉に対するならば攻める問題があるだろうと思います。その場合、これからの日本経済、しかも国際経済の中にリンクされた日本経済を考えた場合に、その点ではどういうことをお考えになっているか。あるいは国に対して要求をしたいのか。その三点を稲川さんにお尋ねしたいと思います。  それから、御園生教授にお願いしたいのは、独禁法改正の焦点の一つは私は企業分割だと思います。いま、政府・与党の中でも独禁法の改正についての論議が闘わされております。その企業分割、構造規制について御園生教授の御見解を承りたいと思います。  もう一つは、国内産業重視という言葉を先ほど言われました。私も国内産業重視の経済政策国内経済国民経済重視の経済政策というのは賛成でございますけれども、ただ日本立場というのは、資源がほとんどない。したがって、国民生活を豊かにするためにも外国から資源を買わなければならない。そのためにはやはり日本から品物を売り込まなければならぬ、こういうジレンマがあるわけですね。しかも、いまECを初めとする先進諸国も、それから開発途上国も、これだけ大きくなった日本に対して、今度は日本は加害者だ、おれたちが被害者なんだという立場で臨んでまいります。国際経済秩序という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、そういう面ではいま一つの新しいルールが、いままでと違った経済のルールというのができつつあるんじゃないかと思いますけれども、そういう一つのジレンマに立った日本としてどういうような方法でいくべきか。いまの問題は、申しわけありませんけれども名東教授にも同じ問題でお願いしたいと思います。  それから今度は名東教授にお願いしますけれども名東教授は先ほど、ことしの五十二年度経済は四、五%じゃないかという非常に厳しい見方をされました。政府は六・七%実質成長率を見込んでおりますけれども、四ないし五%というと、かなり政府見通しとは隔たりがあります。その根拠をお示しいただきたいと思います。  以上です。
  23. 稲川宮雄

    稲川公述人 お答えをいたします。  まず第一の官公需はどのくらいを目標にするかということでございますが、先ほど申し上げましたように、中小企業の出荷は現在大体五二%ということになっておりますので、私どもとしては少なくとも半分くらい、五〇%くらいを目標にしたいと思いますけれども、しかし、ここに達するまでにはかなりの道のりがあるのではないか、当面のところはやはり三分の一程度、こういうことでございます。  それから、下請代金の強化でございますが、これにつきましてはいろいろの問題がございますが、一番私どもが要望しております点は、下請代金支払遅延等防止法によりますと、納品いたしましてから六十日以内に支払いをしなければならぬということになっておりますけれども、その支払いが必ずしも現金でなければならぬということになっておりませんで、手形払いが多い。中にはオール手形があり、あるいはその手形が非常に長期であるというところに問題がございますので、この手形期日というものを短縮するような措置というものがぜひ願いたい。  同時にもう一つは、下請業者の従業員に対しましては給料を払わなければならないのでありますが、労働基準法によりますと、給料は通貨をもって、現金をもって払わなければならぬとなっておりますが、受け取るものが手形でありましては、現金払いに大変支障を来しますので、少なくとも下請業者が従業員に対して支払います賃金相当分は現金をもって払うようにしていただきたいというのが、私どもの大きな希望でございます。  三番目に、中小企業対策は守る対策になっておるのではないかということでございまして、確かにそういう点はあると思いますけれども、私は、中小企業基本法によりますと、二つの目標がございまして、一つは事業活動の不利の補正という点は確かに守る線でございますけれども中小企業が時代に合うように、特に国民、消費者のニーズに合うような方法、いわゆる近代化、高度化、構造改善を進めていく、こういうことによりまして社会のニーズに合うような方向にいくというのは、私どもは攻める政策であると思っておりまして、この方にさらに重点を置いていかなければならぬというふうに考えております。
  24. 御園生等

    ○御園生公述人 簡単にお答えいたします。  独占禁止法改正案につきまして、先ごろから構造規制の是非が問題になっているのも私はよく承知しております。私は現在の独占が、先ほども触れましたように、単にカルテルという明示の協定によって価格を引き上げるという形態だけではなく、いわゆる並行行為として、暗黙の了解に基づいて大企業が相互ににらみ合いながら価格を引き上げる、こういう形態が非常に多くなっているということもまた御存じのとおりだと思います。この後者につきましての独禁法の規制は、現在のカルテル規制に重点を置いた規定だけでは十分ではないということになりますから、したがって、企業分割を含んだ構造規制がこの面での有効な独占禁止上の対策であるということになるわけで、その点は私も認めるものでございます。  ただし、現代の巨大寡占、これに対する規制が独占禁止法という法律だけで十分であるかどうか、この点になりますと、私は根本的に疑問を持つものでございます。もちろん構造規制を含んだ独禁法強化は、これは必要であると思いますが、それだけで現代の寡占に対するさまざまな社会的な規制が十分であるかどうか、その点はおのずからまた別の次元での寡占規制対策を考えなければならないのではないかというふうに考えることを申し添えさせていただきたいと思います。  それから二番目の、資源輸入というわが国経済の持っている運命的とも言える性格でございますが、これはもちろん鉱業資源について、あるいは食糧のうち若干のものについても将来とも輸入にまたなければならないということは当然だと思います。したがって、少なくとも輸入資源の外貨を獲得するに足るだけの輸出はしなければならないということも私は当然だと認めているわけでございます。ただしその点につきまして、決して過大な輸出を期待すべきではないということ。御承知のとおり国際収支は、日本側の黒字は当然相手側の赤字を招来するわけでございますから、この関係を考えますときに、少なくとも収支バランスがとれた貿易収支あるいは国際収支という点を常に考慮しながら、輸出について十分な、やはり世界経済の秩序を乱さない輸出ということを考慮すべきであって、単にそれを現在のように国際市場分割カルテル政府版というがごとき方法によって規制するだけで問題は解決しないというふうに思います。  また、輸入につきましてもこれは同じことでありまして、先ほどもお話に出ましたとおり、私は発展途上国の持っております資源、食糧等を正当な価格で輸入するということをもってこれらの国々の経済発展にプラスの要素をもたらすという使命を、少なくとも日本を初め各先進国は持っているし、また、そのことが発展途上国の最も強い要求であることは御存じのとおりだと思います。  以上でございます。
  25. 名東孝二

    名東公述人 では簡単にお答えします。  まず、独禁法については省略しますが、一口に最近はスモール・イズ・ビューティフルといいまして、いままでのように大きいことはいいことじゃないんですね。小さいことはいいことだ、スモール・イズ・ビューティフルという、そういうはやり言葉が世界的にはやっております。こういったスケールメリット自体が反省されつつあるという時代の動きを御賢察願いたいということ。  それから、国際経済の場合に、やはりいま申し上げたように輸入輸出の宙ぶらんこになっていますから、宿命的に日本経済世界経済の中に織り込まれていかざるを得ないという宿命があるわけですね。ただし、やはりそこには限界があって、輸出さえすればいい、輸入さえすればいいという、そういうふうなことはもうできないことは明らかではないか。  で、参考までにいま最初に申し上げましたレオンチェフモデルというのを御紹介しますと、これは国内総生産のシェアが一九七〇年と二〇〇〇年、二十三年間の後でありますが、アメリカが三二・九から二一・〇というふうに落ちるわけです。西欧も落ちる。日本はわずかに六・二から六五というふうに上がってくる。こういったようなモデルが非常に精密にでき上がっておるわけでありまして、この場合の日本の実質成長率が四・九%、こういうふうに策定されておるわけで、これはかなり詳細なデータによっておるものでございます。これを見ましてもわかりますように、やはり日本の持ち前、持ち分というものがおのずからあるのではないかということであります。そこに新しい秩序の中に日本役割りを高めていくということはできますけれども、そこにおのずからやはりあるべき姿があるんだ。新しい秩序は、たとえばECがやったロメ協定のような、ああいう開発途上国ですね、旧植民地の国々と一緒になって新しい援助協定を結んでいくという考え方、日本では、私の知っている範囲では、三木内閣が取り上げようとしてだめになったと思うのですが、ああいったような新しい考え方が今後自由主義経済にかわって出てくる可能性が相当にあるんじゃないかというふうに見ております。  いまの四・九%というレオンチェフモデルから考えまして、たまたま日本の現在問題になっております今年度六・七ですか、これが私は実現むずかしいと見ている根拠は、今年度は大体五・六が可能じゃないかと思うわけです。そうすると、御存じのように去年の一月−三月にかなり急激に成長しましたね。このために、要するにげたをはいたわけです。これが大体三・二と言われています。そのために四月からだらだらだらだらと余り伸びない。それを差し引きますと、二・四ですね、実質的に大体二、三%ぐらいしか伸びてないわけですよ。ところがことし、今年度、いま一月、二月でしょう。三月、あと一カ月あるわけですが、余り高くなる見込みはないのじゃないでしょうか。せいぜい見て二%いけばいい方じゃないでしょうか。そうすると、大体景気の立ち直りは今年度並みぐらいに見た方が、下手をするとちょっと下がりぎみじゃないかと思うわけです、私の見方は。政府の方々はそれは上がりぎみだと見ているわけでしょうが、これは少し下がりぎみに見ているわけです。そうすると、二%に二%を足せば四%ですね。少し高目に見たところで五%。四、五%というのはそういうところからきているわけでありまして、まあそう無理な数字じゃないのじゃないかと考えております。
  26. 坪川信三

    坪川委員長 次に、河村勝君。
  27. 河村勝

    ○河村委員 大分時間もたちましたから、一点だけ稲川さんにお尋ねをします。  いま中小企業の実態は非常に苦しい。さっきのお話でも、倒産続出して累卵の危機にあるということでございます。そこで、本質的な回復というのはいろいろなことが必要でありますが、私どもは現在の金利というものに非常に関心を持っております。四十九年公定歩合引き下げが始まってから、金利もだんだん下がっておりますが、しかし金融が緩んでいるわりあいにはまだ高いように思われる。私どもは部分的にしか知りませんが、そのために特に中小企業の下請、第二次下請以下のところが非常にその現象が強いのですけれども、仕事はあってもマージンの非常に少ない仕事を請け負う。一方で金利が高い。さっきお話がありましたように、手形は大体いまや六カ月ぐらいが常識だというふうに聞いております。そこで、そのために、わりあいと健全な仕事をやっていながら倒産に瀕しているというものがかなりあるように思われるのです。  そこで、私どもは、いま申し上げましたように部分的な地域のことしか本当はわからない。稲川さんとされては、全国的にずっと見られて、一体金利負担というものがいまの中小企業に与えている影響、これについてどういうような認識をお持ちであるか、それを伺いたい。お願いします。
  28. 稲川宮雄

    稲川公述人 中小企業が非常に困っておりますのは、やはり金融は以前のように緊迫しておりませんけれども、むしろ金よりも仕事が欲しいという声が非常に強いのでございます。そういうわけで、金融はわりあい緩んでおりますけれども、しかし、だからと言いまして、お話のように金利が非常に低いとかあるいは金利負担が重くないということではございませんので、かなりコストによって苦しめられておる。これは金利だけではございません。一番大きな負担はやはり労務費の上昇でございまして、ここ数カ年における上昇によりまして、そのコストはかなり上がっております。しかし、これは従業員に対するものでございますから、それなりに意義があると思いますけれども、金利負担というものが続きまして非常な負担でございまして、経営費の中に占めます比率は、それはもう労務費とか材料費とかそういうものから見れば低いのでございますけれども、しかしながら金利負担が非常に高いということが一般の声になっておる状態でございます。私どもといたしましては、ぜひともこの金利引き下げをお願いしたいというように考えておるわけでございます。
  29. 坪川信三

    坪川委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  30. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席の両公述人にごあいさつを申し上げます。  両公述人には御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  昭和五十二年度総予算に対する各位の御意見を拝聴し、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じますので、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、牧野公述人、次に谷山公述人の順序で、お一人約二十分内の程度で一通り御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑のお答えを願いたいと存じます。  それでは牧野公述人、お願いいたします。
  31. 牧野昇

    ○牧野公述人 三菱総合研究所の牧野でございます。  予算について意見を述べよということでございます。約二十分くらいお話を申し上げたいと思います。  主として公共事業減税かということが中心になっておりますので、普通の見方と少し変えまして、公平という原則でどちらがいいかということでひとつコメントを申し上げたいと思います。何しろ政治というのはやはり公平の原則というのがございますので、それをベースにしてお話を申し上げたいと思います。  まず、公平という観点からの第一でございますけれども、何はともあれ産業間における破行現象を直すということが一つあります。何はともあれ、不況だから少しことしは経済の年だということがございますが、いまの不況というのは、産業の中では非常に大きな破行現象があるわけでして、ある分野では大変うまくいっているけれども、ある分野では落ち込んでいる、こういうことがあるわけでございます。     〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 簡単に例をとりますと、消費財関係は、昭和四十八年度のピークを超しまして、すでに十二〇%、家電、テレビですと二〇%を超している、乗用車も二〇%を超している、こういう状態でございます。ところが片方で、生産財、資本財、たとえば鉄鋼とかセメントとかあるいは土木機械、化学機械、この辺になりますと一〇%マイナスです。私が言っているのは、耐久消費財の方は四十八年のピークを二十数%超しているけれども、生産財、特に鉄鋼、非鉄、セメントあたりはまだ一〇%以上落ち込んでいるんだ、これを直すには一体どうするかということがやはり公平の原則からいっても必要だし、産業の均衡ある回復からいっても必要だ、こういうことでございます。  そういたしますと、一体どれにどういう形で資源を回したらいいかということになりますと、当然のことながら、われわれとしては、耐久消費財、言いかえますと、個人減税によって耐久消費財その他消費財をふやすという形の分野というのは、ピークよりも二十数%いい、ところが、鉄鋼、セメントその他はまだ一〇%あるいは十数%落ち込んでいる。そうすると、産業におけるそういう破行現象を直すためにはどこに投じたらいいかということになると、非常にはっきりしているのでございますけれども、これはやはり公共事業費であろう、これが第一番目であります。  公平の原則から見てどちらがいいかということの第二でございますけれども国民支出の問題でございます。GNPというのはどこかが買ってくれるわけでございまして、個人が買うか、企業が買うか、政府が買うか、あるいは輸出として外国のお客さんが買うか、倉庫に入れるかのこ五つのお客さんがいるわけでございますけれども、それが実際過去の不況の間にどういう伸びを示したかというのを日本とドイツとアメリカと比較さしていただきます。  個人消費支出日本は、七三年の十月から十二月、ピークから一九七六年の四−六月までの伸び率をとりますと、個人消費は実質九・二伸びているのです。米国は五・六です。西ドイツは三・五です。ところが、民間設備投資はどうだということで比較さしていただきますと、日本はピークからマイナスの二六・〇、米国はマイナス一三・二、西ドイツはプラスの一・四でございます。言いかえますと、日本というのはこのくらいアンバランスなんですね。言いかえますと、個人消費支出についてはまずまず、アメリカやヨーロッパに比べて倍とか三倍だけれども、けた違いに落ちているのが民間設備であります。ここに現在における欠陥があるのだ。こういうことにいたしますと、それじゃ政府公共投資減税とどうなるということになりますと、当然民間設備投資に対する影響は、一千億、一千億といたしますと、政府投資一千億ですと八百五十八億、減税ですと四百九十九億で、これは効果が倍違うのです。言いかえますと、国民支出項目間の不均衡というのを直すためには、効果からいっていまは公共事業費しかしようがないだろう、そういうことですね。これが公平の原則から見た第二でございます。  さて、公平の原則から見た第三でございますけれども、これは恐らく国民所得が一体どうだろうか、こういう問題でございます。国民所得の間でいわゆる差があるんじゃないか、貧乏人にうんと出せ、こういう話でございますけれども、これで一つ、ちょっとお話し申し上げたいと思います。  これはOECDのレポートで、つい最近出た相当分厚いレポートから一つ出してまいったわけでございますけれども、一億人のうち一千万ずつ、貧乏の人から金持ちに一千万、一千万、十階層に分けます。言いかえますと、一番貧乏の層の十分の一が占める比率が、日本が全所得の三・〇、二階層まで入れて七・九です。ところがアメリカはどうだということになると、一階層がわずか一・五です。二階層が三・〇、合わせて四・五ということです。けたが違うのですね。言いかえますと、これは私が言うのじゃなくてOECDのレポートそのまま言うのですけれども日本ぐらい国民所得の中における分配が均一なところはないよと実際に書いてあるのです。そうですね。これは私が言っているのじゃない、書いてあるのですよ。そういたしますと、実は違うのだ。アメリカの場合には金持ちから貧乏へトランスファーするんだ、日本はそういう意味ではアメリカほどではないんだ、こういうことでございまして、非常に平均化しているんです。  さて、公平の原則から見た第四の問題点でございます。国民生活における資源配分でございます。私が言っているのは、国民が生活しているいろいろな意味での資源がどういう配分をされているんだということから意思決定しなければならない、これが政治だと思います。そういたしますと、これについてどういうことがございますかといいますと、下水道の普及率をとります。これをとりますと、日本が二一です。アメリカが七一です。英国が九四、西ドイツが七九、フランスが四〇でございます。これは舗装道路でも同じです。日本が十・六、アメリカが二十三・九、英国が二十二・三、西ドイツ二十一・二、言いかえますと、社会資本においてはべらぼうに日本の方がおくれているの、だ。それではテレビの方はどうだ。よろしゅうございましょうか。国民生活個人消費対象とするテレビは、千人当たり日本は六百五十八台です。アメリカが五百二十三台、西ドイツが二百九十六台、そういう耐久消費財の普及は、欧米先進国より普及し過ぎているわけですね。ところが下水、道路は非常にプアだ。じゃ皆さん、ここでどこへ投ずるところがあるか。あり余る資源じゃございません。一定の資源をどこに投ずるかということになれば、だれが見てもはっきりしているのは、下水とか道路に投ずるというのが、これが公平の原則と言えるのじゃないでしょうか。  さて、公平の原則から見た第五の点でございます。いわゆる税金分担のアンバランスでございます。私が言っているのは、税金というのは一体どういう形で投ぜられるのか、どういう形でこれを受けるのか、これが政治の非常に重要な問題でございますが、スウェーデンのリンドベック教授のデータをとりますと、国民の税金の中で、——いわゆる国民が払う税金ですよ、企業じゃなくて。これはスウェーデンではGNP比で一九・九です。われわれが目指すところの福祉国家のスウェーデンでは一九・九です。ところが日本では四・四です。よろしゅうございましょうか。  次に租税負担率をとります。租税負担率で日本と先進国で平均でございますが、アメリカ、イギリス、西ドイツと比べますと、日本は一八・二、これは皆さん御存じだと思いますので詳しくは言いませんけれどもアメリカは二七・九、西ドイツが三〇・五、日本は一八・二、よろしゅうございましょうか、個人の租税負担率です。  さて、課税最低額をとらしていただきます。言いかえますと、どのぐらいの貧乏から金をかけるかという形でございますが、これは日本では夫婦子供二人の場合に、これはレートは五十二年一月七日の為替相場によりますけれども、二〇一五、二百一万五千円、アメリカが一九九二、イギリスが八四二、西ドイツが一一三一、こういうぐあいでございまして、比較的高額からということでございまして、かなり下の方は保護しているのだ、こういうことでございます。これが公平の原則から見た五つの点でございます。  もう一つございます。公平の原則から見た減税公共投資かということを決定するための第六の問題点は、世代間の格差です。これは私が言おうとするのは、いま赤字国債その他で借金しております。借金をして減税をしてわれわれがいま使うのです。高級レストランへ行く人もいるでしょうし、テレビを買う人もいるでしょう。しかし、われわれがそれをやって物を買うけれども、そのお金は次の世代にツケを回しているわけですよ。これは家庭で言えばおかしいわけですね。お父さんが使って子供に借金をつくって……。われわれは、そういう形で残すのなら道路として残さなければいけないんだ、消費として残すのは問題だ、こういうことでございます。世代間の格差是正という、公平の原則からいった第六の点、以上公平という点からだけ私は申し上げました。  公平の点から、六つの観点から言いまして、いまや何を選択するべきかということが非常に明らかになっているんじゃないかと思います。  さて、時間がありませんので次に移りたいと思いますけれども、よしわかった、公平の点では六つばかりの点で、いまや公共事業費であって、減税は問題だよ、こういうことになりますと、次に、では効率はどうかいということになるのです。これは確かに効率ということと公正というのは当然必要でございまして、やはり公正ばかりじゃいけないだろうということはあるわけであります。そこで、今度は効率の点から三つお話を申し上げたい。  第一は、同じ金を投じた場合に、いわゆる需要創出効果と言いますね、景気を持ち上げる需要創出効果というのが一体どちらが強いかということですね。これは私はいまさら言うことはないと思いますけれども、データ、私のところのモデルもございます。経済企画庁のモデルもございます。通産省のIOモデルもございます。全部調べてまいりました。ほとんど差がありません。ほとんど差がないというのは、初年度かあるいは有効率をどのくらい入れるかで違いますけれども、たとえば公共投資を一期一千億やりますと、一年、二年合計して、乗数効果で言いますと、需要創出効果ですね、それが二・六四、個人減税一千億が一・七四、こういうことでございまして、これはIOモデルで生産創出効果を見ても同じです。ただ有効率が変わりますので、片方は二・三になって片方は一・三、こういう違いはありますよ。大体同じレベルですからね。あるいは初年度だけとって、経済企画庁の青木次官が言っているのは、たとえば〇・七に対して一・三、これも同じですね。大体そのぐらいの差です。倍近い差。そうすると、これは貧乏で大変金が決まっているとすると、景気を戻すためにわれわれは効率という点から考えて一体どこへ投ずるか、これははっきりしているわけですよ、公共事業費だということになるわけです。そういう意味で言うと、効率という観点から見てわれわれがまず第一に考えることは、需要創出効果という効率から言うと、公共投資の方がはるかに大きいんだということが言えるわけでございます。  さて、二番目の効率の点でございます。需要の打ち消し効果はどうやということ。これはどういうことかというと、個人減税でとっていくけれども、その分だけは企業からひとつ取ろうや。そういたしますと、簡単に言うとこれは打ち消し効果が出るわけですよ。非常に卑近な例で言えば、鉛筆を一本家庭でよけい買う場合に、企業の方は困るから一本減らすわけです。これはそういうことじゃちょっとわからないというので、モデルでひとつやらしていただきますと、個人減税を一千億やりますよ、法人増税を一千億やりますよ、そうしますと、初年度の効果はプラスの七億ございます。しかし二年度は再生産効果がございません。マイナスの二千七十八億、マイナス効果です。初年度はほとんど変わらない。そういたしますと、われわれの需要の打ち消し効果というのを考えた場合に——どういう財源をとるかは別ですよ、私が言っているのは、片方で増税して片方で減税するということは、日本全体の需要効果から言えば打ち消し合うものだということをひとつ頭にお入れいただきたい、こう思うわけでございます。  さて、私は効率の点でいま話しているので、効率から見たところの第三点でございます。効率から見た第三点は何かというと、これは実施における手続の効率化です。どっちが手間がかかり、どっちがおくれ、どっちがごたついた、そのあげくに景気が停滞するというのは、どっちが手続上めんどうかという問題でございます。これは恐らく議論がずいぶんおありになったと思いますけれども、たとえば戻し税という形になりますと、これは大変でございます。それはなぜかというと、税金を納めない人をどうやってピックアップするんだい、どこがそれを金として出すんだい、現ナマで払うとすると、そういう問題がいっぱいあるわけですよ。それでは計算は一体どこがやるんだい、会社にやらすのかい、あるいは現在のような形でいきますと、いわゆる年末調整方式というのはこれは簡単ですわね。しかし年末調整方式でいきますと、これは需要創出効果が、年末ですからだめなんです。どうやるかよくわからない。どうやろうかと言っているということは、効率化がすごくごたごたしているということを証明しているわけですね。そうでしょう。そういたしますと、非常にクリアにわれわれができることを始めないと日本景気はもちませんよ、こういうことなんですね。そういう点で効率の三点から私が言うのは何かというと、やはり公共事業費ということにならざるを得ないんじゃなかろうか、こういうことでございます。  私が公平という原則から六つのポイント、効率化というポイントから三つのポイントを挙げた。いずれも公共事業費というもののいわゆる優位性というのがおわかりいただけたんじゃないかと思います。  予算全体から言いますと、ここにポイントがあるのですけれども、われわれの産業サイドから見た場合に、金利というものをもう少し下げていく必要がどうしてもあるんだということであります。これは、いま日本の場合に金利を決めるのは二本立てでございます。郵政審議会と金利調整審議会、私は郵政審議会の委員を実はしておりますものですから、郵貯の金利を動かすのは大変でございますね。しかし、実際大変だと言っても、いまの金利では景気の立て直しはむずかしいのです、さっき私言いましたね、民間設備投資その他が非常に。そういう点の流動性というのを金融の実施過程においてひとつ御検討いただけたらと思うわけでございます。  ちょっと時間を超過いたしましたが、以上で終わります。どうもありがとうございました。(拍手
  32. 大村襄治

    ○大村委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、谷山公述人にお願いいたします。
  33. 谷山治雄

    ○谷山公述人 税制経営研究所の谷山でございます。  私は、肩書きが示しますように税金のことの、自分で専門家というのはおかしいのですが、研究をしているものでございますが、同時に、所員四十人を抱えております小企業経営者でもございますので、両方の角度を含めまして時間の許す範囲でひとつ意見を申し述べさせていただきたいと思います。  時間の関係最初に前置きを簡単に申し上げたいのですが、実は私この公述人の御依頼を受けます前に、いま問題になっております一兆円減税の問題について原稿を依頼されまして、エコノミストという経済雑誌に書きまして、実はきょう発売なんでございますが、きょう出ましたので、ひとつ私の足りない点は御参考にしていただければ非常に幸いに存ずる次第でございます。  私は、この一兆円減税という問題を中心に申し上げたいわけでございますけれども、正確に申しますと、いま野党の皆さん方が考えておられます一兆円減税というのが正確な名称であるかどうか、これは若干疑問があるわけでございまして、つまり、納税者にも非納税者にも出そう、こういうお話でございますので、私はもちろん法案の名前は諸先生方がおつけになると思うのですが、要するに生活保障と消費購買力浮揚のための減税並びに特別給付金法案、こんなようなことになるんじゃないかというふうに考えております。私はこれから一兆円減税という言葉を使わしていただきますけれども、いま申し上げましたように正確な意味では一兆円減税という言葉ではないんじゃないかと思いますが、一応そういうふうに言われておりますので、一兆円減税という言葉でこれから申し上げてみたいと存じます。  まず最初に、私は一兆円減税の意義という問題について申し上げたいわけなんですが、一国民といいますか、一庶民という立場で考えますと、とにかく現在大量の赤字国債を発行して異常事態になっているわけでございますけれども、昨年からすでに財政当局の方で中期財政展望というものをお出しになって、昭和五十五年か早ければ昭和五十四年までに赤字国債を解消したい、こういう計画をお出しになっておる。私は、まず最初に申し上げたいことは、こういう赤字国債を出さざるを得なくなったような責任がどこにあるかという点をひとつ国会でぜひ明らかにしていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、つまり一庶民の感情という観点に立ちましても、別に怠けたわけでもないし、ぜいたくしたわけでもないし、何か赤字国債をたくさん出しちゃって将来にツケが回される、しかも、それを解消するために国民所得に対して三ポイント税負担を上げる、増税をやるんだということだけ言われているんでは、大変迷惑ということになるわけなんでございまして、私はこれは大変表現がまずいかもしれませんが、一種の財政公害とでもいうような事態にあるわけで、私は、公害の問題というのは原因者を究明して、その負担は原因者に負担させるというのが原則でございますので、ぜひそういう点を国会でも十分ひとつ御論議をお願いをしたい。  国民としまして、ただやみくもに増税しなければいけないんだと言われているだけではちょっと納得いかないのじゃないかということを考えていることが、第一の一兆円減税に関する意義と申しますか問題でございます。  そうしますと、一兆円減税というのは一体どういう政治的あるいは社会的ないしは心理的役割りを果たすかという問題でございますけれども、私はいま申し上げましたように、財政当局が赤字国債解消のためということでもって増税ということで、いわば増税ムードをつくっておられる、あるいは増税癖をつくろうとしておる。増税癖という言葉は余り科学的じゃないかもしれませんが、そういうふうなムードをおつくりになろうとしている。これに対しまして私は、税収あるいは税金のボリュームは将来ふえるのは当然であると思いますけれども、しかしだれに対して増税をするかという問題になりますと、一方では一般庶民、働く勤労者に対しましては減税をしていかなければならない、そういう意味で私は、財政当局の増税癖に対しまして減税癖というものを勤労大衆に対してはつけていくべきではないか、ここに私は一兆円減税の大きな役割りがあると思いますので、ともかく増税ムード、つまり大衆課税による増収ムードに一定の歯どめをかける、こういう意義が一つあるんではないか。それで私は、一兆円減税の問題をぜひそういう角度から御論議いただきたいというふうに考えているわけでございます。これは一兆円減税の持ちます政治的、社会的ないしは心理的役割りというようなそういうような点題ではないかというふうに考えているわけでございます。  次に、第二に申し上げたいことは、いわゆる一兆円減税に反対をされているいろいろな政府側の御答弁も新聞等で拝見しておりますし、いろいろな学者の方や何かが言われておりますけれども、私は三つの問題があるんじゃないかというふうに考えているわけです。  第一は、財源という問題でございますけれども、これは単なる財源という問題ではなくて、先ほど申しましたように、私も将来を展望いたしますと、税金収入そのものを減らすということは考えられないわけで、むしろ税金のボリュームというのは今後も増大をしていかざるを得ない。そういうことになりますと、一方で減税、一方で増税ということになってきますので、そうなりますと、やはり税制の民主化と申しますか、あるいは不公平税制の是正といいますか、そういうことも大きな課題にならざるを得ない。したがいまして、私は、一兆円減税論議というのは、他の財源がどうとかこうとか、赤字国債を発行するかどうするか、そういうのが問題ではなくて、むしろ税制の民主化といいますか不公正税制の是正といいますか、そういう観点から考えてみる必要があるんじゃないか。これが私は一兆円減税問題の一つの焦点であるというふうに考えているわけで、単なる財源問題だけを焦点にしてはいけないんじゃないか、こういうふうに考えている点が第一点でございます。  次に、第二点の問題でございますけれども政府側の発表しておりますいろいろな資料によりますと、日本は税負担率が低い、あるいは所得税の課税最低限が高いということを言っておるわけでございます。私は、これもひとつぜひ予算委員会なり、しかるべきところでしさいな御検討をいただきたいわけでございまして、なるほど国民所得に対する税負担率といいますと、とにかく日本が欧米諸国に比べますと低くなっているわけでございます。私は時間の関係上余り細々したことは申し上げられませんが、私はしばしばヨーロッパとかスウェーデンなどに行きますと、日本は税金が安く大変いいということをよく言われるわけでございますけれども、恐らくそれは欧米諸国との比較でございまして、私は大衆的な課税が軽いということを考えたことはございませんが、一応税負担率という点から見ますと低くなっている。しかしながら、西ドイツあるいはフランス、イタリアなどと比べてみますと、国民所得に対する税負担率の決定的な違いというのは付価価値税の存在にあるわけでございまして、西ドイツの場合に、付加価値税を引きますと、大体負担率は二四、五%になるわけで、日本との差はぐっと縮まってまいりますし、フランス、イタリアなどは、付加価値税を引きますと日本より税負担率は低くなるということになってまいりますので、そういった点で、国民所得に対する税負担率というものだけを比べたのでは高いとか安いとか言えないのではないか、付加価値税の存在という問題が大きなウエートを持っている、この点が問題になることが第一点でございます。  それから第二点は、所得税の課税最低限でございますけれども、私も資料を詳しくまだ十分に掘り下げて検討したわけではございませんけれども、とにかく比較が大変無理なんで、大蔵省の主税局の方は非常に御勉強なすって資料を豊富にお持ちだろうと思うのでありますけれども、私は、比較の困難なことをわざと比較して日本が課税率が高いということをおっしゃっているのじゃないかという気もするわけです。たとえば西ドイツを見ますと、これはもう先生方よく御存じだろうと思いますけれども、基礎控除、配偶者控除という所得控除が日本より高いわけでございますし、キンダーゲルトという児童手当が無税で交付されますので、これを扶養控除に換算いたしますと、かなり高い課税最低限になってくるわけでございますから、これは西ドイツの一例でございますけれども、それからさらに、給与所得者についても実額控除をある程度認める、こういう制度もございますので、日本との課税最低限の比較というのは非常にむずかしい。ある意味では、欧米諸国と比べます場合にはケース・バイ・ケースで比べてみませんと何とも言えない。つまり、実額控除をとっている給与所得者の場合にどういう実額控除をしてどういうようになっているか、子供が何人いるか、そういうことを知りませんと何とも言えないわけで、その点、いま課税最低限が日本が高いということを一概に言うのは私はちょっとおかしいのじゃないかというふうに思うわけで、それが減税反対論の論拠になっておりますので、この点につきましては、しさいに資料を出していただいて検討をしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  次に、第三の問題は、要するに公共投資減税かというそういう問題でございますけれども、私は実を申しますと、あれかこれかという問題ではないと考えるわけでございますけれども、いまの点では減税が最も緊急ではないかというふうに考えておるわけでございます。実は公共投資減税かという問題は、まず背景に経済政策に関する根本的な考え方の問題があるわけでございますので、昨年減税をしないで、いわゆる引き締め政策という言葉がいいかどうかわかりませんが、政策をおとりになりまして、輸出が非常に好調になって、昨年の初期の段階では景気回復が緒についたという、そういう御発表があったようでございますが、それが依然として停滞をしている。ですから、輸出増強あるいは公共投資というのは、言うなれば重化学工業中心政策でございまして、私はそれ自身もちろん否定はいたしませんけれども、しかし、まあ現在の四十九年以来引き続きます経済不況の大きな特徴、従来と違った特徴というのは消費不況にあるというのは大体万人の認めるところでございますので、そういう点で減税というのは大きな効果がある。あれかこれかと言うわけではございませんけれども、私は減税の方が効果がある。また、公共投資と申しましても、用地の買収費が約三割くらいかかるというお話もございますので、そうしますと、全部土地所有者にお金が回ってしまうわけでございますから、果たしてそういった消費購買力の増強になるかどうか、こういう疑問もございますし、地域的な偏在ということもあるのじゃないかというふうに私は考えているわけでございます。ちょっと何分しゃべったか忘れてあれですが、そういうことでもって、一兆円減税に反対する論拠というのは、一つの見解としてはございますけれども、現在の段階では当を得ていない、こういうふうに私は考えているわけでございます。  次に第四の問題でございますが、第四の問題は一兆円という規模の問題で、私は、昭和四十九年度に平年度で所得税減税一兆七千億円おやりになったわけでございますから、あれから物価が約三〇%ぐらい騰貴をしておりますので、それからしますと二兆二千億ぐらいになるのが四十九年度並みのベースではないかというふうに考えますので、一兆円という規模が適当かどうかよく検討していただく必要があると思いますが、私は、さっき申し上げましたように、中期財政展望に書かれております増税ムードに歯どめをかけるという点、それから不公平税制を是正するという点、そういう点にも一つの大きな意義がありますし、もう一つは投資の流れを変えるといいますか、経済構造を多少変えていくといいますか、ということにも意義があるわけで、一兆円という金額はもちろん多ければ多いということになりますけれども一つの比較の問題で、御検討していただければよろしいのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  それから、次は一兆円のやり方の問題でございますけれども、時間の関係上余り詳しく申し上げることはできませんけれども、大体納税者を大別いたしますと、給与所得者につきましては二千九百万人の納税者がおりまして、平均一・二人の配偶者及び扶養家族を持っております。それから申告納税者が約四百六十万ですか、これは平均二・一人の扶養家族を持っておるわけでございますから、大体納税者を中心にいたしますと、約七千万人の人間がカバーできるということになってまいります。そういたしますと、残り三千万人ということになってまいりますので、これをどのように給付をしていくか。私は、結論から言いますと、地方自治体の窓口を通じて、とりあえず野党の方々も四千とか五千とかいういろいろな案があるようでございますが、一応まずそういう給付金を出して、あとは給与所得者については年末調整でやる、申告納税者については三月の確定申告でやる、その二段構えでおやりになれば、私は技術的には可能であるというふうに考えておるわけでございます。もちろんそれにつきましてはいろいろ技術的な問題もございまして、ここで詳しく申し上げる時間、余裕がございませんけれども、たとえば何と申しますか、所得が何百万以上については支給しない、あるいは逓減をさせていく、こういうやり方もございますでしょうし、納税額を上回るような給付をするのかどうか、そういう点もまた問題がございますでしょうし、いろいろ検討しなければならない問題もございますけれども、私は技術的には二段構えでやれば可能であるというふうに考えているわけでございます。     〔大村委員長代理退席、委員長着席〕  そういうわけで、いま戻し税、税額控除、所得控除、いろいろ案がございますけれども所得控除というのは、野党の先生方は十分に御承知のように、高額所得者ほど有利になる控除のやり方でございますから、これはやはり税額控除か戻し税に変えていただく。戻し税は技術的にむずかしいというお話もございますけれども、私はそんなにむずかしいことはないというふうに考えているわけでございます。  時間の関係上あれですけれども、最後に私は、一つの提案でございますが、従来予算に関する論議財政制度審議会がございますし、それから税金に関しましては税制調査会が内閣にあるわけでございますが、私はもちろん税制調査会の委員の方々はみんなりっぱな方だとは思いますけれども、正直に言いまして、委員の方々の約七割か八割は自由民主党支持の方じゃないかというふうに思うわけでございます。私は自由民主党を支持して悪いと決して言っているのじゃございませんけれども、しかし、委員の方々が偏っておられる。そういうことで、税制調査会をぜひひとつこの際改組していただいて、せめて政党の得票率ぐらいに委員を分配していただいて、本当に国民の声が反映されるような、そういう税制調査会の構成にぜひひとつしていただくように国会でも議論をしていただきたいというふうにお願いいたしまして、時間の関係上言いたいこともたくさんございますけれども、私の公述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  34. 坪川信三

    坪川委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  35. 坪川信三

    坪川委員長 これよりそれぞれ公述人に対する質疑に入ります。  質疑は、お一人答弁を含めまして十分程度にお願いいたします。  武藤山治君。
  36. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いま三菱総研の牧野さんからいろいろ、六つの公平化論が提言されましたが、三菱総研の五十二年度経済成長見込みあるいは各種のそれぞれの積算など見たわけでありますが、政府の六・七%の経済成長率は達成できるのだ、五十二年度予算の規模で、現在福田内閣が提案をしておる予算で六・七%の成長は実現する、こう見ておるのかどうか。  それから、政府見通しの中で個人消費支出一三・七%伸びる、こういう伸びを見込んでおるが、これは雇用伸びは一%程度、あとは給与の伸び、こう見ておるようでありますが、一体いまの春闘の状況、財界や政府の姿勢から見て、個人消費がこんなに伸び可能性があるんだろうか、これを実現するためには春闘でどの程度のベアが必要であるとお考えになるのか、その点をちょっと明らかにしていただきたいと思います。  それから、あなたは減税は当分必要でないという論拠に立って、一兆円減税に対する反対論の根拠を指摘したような論述であります。ちょっとお尋ねいたしますが、いまの所得税の課税最低限、独身で年間八十万円ですね。これを、どの程度の収入になるかと計算をすると、独身者で月給六万円、賞与を二カ月分一年間にもらう計算ですね。これでちょうど八十万円になる。もし今度の三千五百三十億円の減税をしたとしても、課税最低限八十三万一千円ですから、賞与をいままでよりもちょっと余分にもらう、いわゆる六万円の月給者の場合で十二万円、二カ月分賞与をもらうと八十三万一千円になってしまいます。一体一カ月六万円ぐらいの収入でどの程度の生活水準ができるとお考えになっているのか。アメリカとの比較や他の国との比較をする際に、アメリカの労働者の賃金は日本の賃金のまだ倍ですね。西ドイツは二五から三〇%ぐらい高いですね。したがって、税の負担率だけを計算をしても、可処分所得の状況がどうなるかということを計算すると、実態に沿わない論理になるのですね。一体一カ月六万円程度の生活水準というのが、文化国家、先進国としてほらを吹けるような水準なんだろうか。そこらの点を、ちょっとあなたの感触をお聞きしたい。  それから、一兆円減税方法論についていろいろむずかしさがあるという御指摘でございますが、谷山先生はできるという御意見のようであります。私たちも、アメリカのカーターがいま提案しようとしているような戻し税というものを日本でもやってしかるべきじゃないか。かつてニクソンがやったような減税方法一つ方法でありますが、景気の問題を考えたときには、単に実質所得の目減りを補償するだけではなくて、景気浮揚にも貢献をさせようという場合には、やはり戻し税が最も適切である。これを地方自治団体に委嘱をしてその給付業務をやらせれば可能である。しかも、画期的なことは、非納税者に対して負の所得税をやってみよう。特別給付金という名称で負の所得税日本でもやるべきである。その論拠は、去年一年間だけで公共料金的な引き上げ国民大衆から取り上げた総額が二兆五千億円ですね。これは国税を納めないような庶民大衆にとっては大変な負担であります。そういうことを考えたときには、当然この際、所得税を納められない低所得の人に対しても恩恵あるべき措置をとるべきである、こういう考え方からわれわれは一兆円減税案を要求しているわけでありますが、お二人からもう一回——手続の点で、三菱総研の方は不可能である、非常に困難である、こうおっしゃっております。谷山さんは、事業所を通じてやることと地方自治団体とミックスしてやるというような説明に受け取ったのでありますが、われわれはこの際、所得税を取られている人も非納税者も全部、自治団体の窓口ならそう繁雑にならずにその資料は把握できるわけでありますから、やろうと思えば簡単にできる、こう考えますが、御意見いかがですか。
  37. 牧野昇

    ○牧野公述人 三点御質問ございましたのでお答えしたいと思います。  ちょっと私の言っている意味を取り違えられているんじゃないかと思います。私は、減税が必要ないと言っているんじゃなくて、どちらが効率的かということです。同じ金を使うなら現在の経済にとってどちらが有効かということを比較しているのでございまして、両方できればもちろんいいわけです。できないとなるとどちらかということで言っているわけでございます。  一つ一つお答えします。五十二年度の経済見通し、うちの三菱総合研究所の経済見通しも六%台でございます。したがって可能だと見ているわけです。ただ、可能であるためには、先ほど申したように、金利がいまのように硬直化してはむずかしいです。民間設備投資その他の落ち込みがございます。こういう点の修正を入れていきたい。後は、いわゆる公共投資の出し方、あるいは個人消費の出し方ほとんど同じ、〇・何%の違いというのをネグっていただくと、われわれとしても六%台の成長可能と見ております。  非常にむずかしい御質問をいただきまして、一三・八は可能かということでございますけれども雇用伸びと給与の伸びだけをおっしゃっておりますけれども、二つ抜かしておるのです。私は実は景気を上げろということを言っておるのです。景気を上げることによって残業がふえるのだ。私も長い間三菱の会社の工場長で大ぜいの人を使っておりました。たとえばローンとかいろいろなことをやる場合は、残業の費用を充てておるわけですね。ところがこれが景気が上がればふえるということでかぶさってくるわけですね。ボーナスも——ボーナスというのは年間給与じゃございませんので、景気のいいときにこれをよけい出すわけでありますから、それを一つお入れいただきたい。  二番目は何かと言うと、現在における給与所得者というのは雇用、いわゆる金をもらっておる人たちの三分の二でございまして、残りの三分の一がございます。このファクターを当然入れなければいかぬ、こういうことになるわけであります。そういう意味で、一三・八か一三・四かという〇・幾つの違いは別として可能だ、こういうふうに私は思います。  春闘は幾らかということについては、非常に答えにくい問題でございまして、私が言えば当然うちの会社がそれに合わせるわけでございますが、恐らく一〇%少し切るということでわれわれは入れてございます。そういうあたりでいけるというふうに考えております。  第二点でございます。先生のおっしゃったことに、私が減税は必要ないと言った。そうじゃなくて、必要はあるのだけれども、原資が決まっているものからどこへ出したらいいかということで、公平と効率からこちらを選んでください、こういうことを言っておるわけでございまして、減税していただければ、私だって苦労しておりますからありがたいわけです。しかし、そういうことじゃないのだということ。  そこで、おっしゃっておる比較の数字で暮らしていけるかどうかということですが、アメリカ日本の労働者の二倍取っている——二倍取っておりませんけれども、これはさっき言ったケース・バイ・ケースで、水かけ論になりますから。この間、ソニーの盛田さんがアメリカで工場——私もジョイントベンチャー、アメリカの工場で持っておりますけれども、ほとんど労働者は差がない。言うなれば、日本というのは第一階層と第二階層の所得配分は高いですから。アメリカと西ドイツが日本より高いよとおっしゃるなら、私はもう一つお願い——こっちが言ってはいけないのですが、私が言いたいのは、じゃフランスはどうだ、イギリスはどうだ、イタリアはどうだ。これは明らかに日本よりも低いじゃないか。そういう分配で言えば先進国の中で第三位の日本が、それほど苦しいということを言うよりは、次の建設のためにやはり努力するということも国民の義務じゃなかろうか、こう思うわけでございます。  さて、非納税者に対する負の所得税という問題でございます。私が言っているのは、可能か可能でないかということを、話を聞きますと、いろいろな、たとえば三千万人を今度地方でやれ、年末調整でやれ、こういう幾つかのものの組み合わせ、これは結局むずかしいのです。そういうことをおっしゃるのは、むずかしいということをおっしゃっているわけですね。私は単純明快じゃないと物事は進まないと見ているわけでございます。そういたしますと、この部分だけは地方で、この部分だけは年末調整で——年末調整というのは意味ないですよ、ことしの暮れですから。この部分はひとつこれでいけというのでは効率が悪いと言っているのです。私はできないと言ってないですよ。私は、どんなことでもやろうと思えばできる、しかしできないのじゃなくて効率が悪いからこちらをとりなさいということを言っているわけです。よろしゅうございましょうか。
  38. 谷山治雄

    ○谷山公述人 戻し税のやり方についてでございますが、その前に、本人幾ら家族幾らという一律のやり方の問題ですが、これを納税額の範囲ということに限定するのかしないのか、これは一つ問題になると思うのです。もし限定しないとしますと、私はすべて地方自治体に任せて給付するということは可能だと思います。しかし、納税額の範囲内にするとか、あるいは逓減方式あるいは打ち切り方式をとって高額所得者には出さないとか、そういうことをしますと、昭和五十二年の減税となりますと、所得税は御承知のように暦年課税主義でございますから、一応この一月から十二月までの実績を見ないと精算ができない。ここでもってとりあえず景気浮揚のために、五月か六月に一億一千何百万について一応給付をする。後は給与所得者、申告者ございますから、年末調整と三月十五日にやる。これは非常に単純でできるのではないか、こういうのが私の考えでございます。ですから、これはむしろいわゆる一兆円減税のやり方の中身にかかってくる、それによって技術的にもいろいろやり方がある、こういうことをお答えしておきたいと思います。
  39. 坪川信三

    坪川委員長 二見伸明君。
  40. 二見伸明

    ○二見委員 牧野さんに四点ほどお尋ねしたいと思います。  最初に、私たちは現在一兆円減税要求しておりますけれども、ことしの景気回復を私たちは減税だけでいいんだというふうにはもちろん考えておりません。公共事業も当然必要でございますし、と同時に一兆円減税をやるべきだという、私たち考えを持っているわけでございます。  それで、牧野さん、先ほど公平という観点から、また効率という観点から、減税よりも公共事業の方がいいんだというお話がありましたけれども、今度は観点を変えまして、私たちが減税要求している一つ景気回復であり、もう一つは不公平の是正という点があるわけですけれども、不公平の是正という点から、税制改正についてはどういうふうにお考えになっているか、これは、そのまま先ほどの需要打ち消し効果との関係もございますので、その点についての牧野さんの御見解を承りたいと思います。  それからもう一つは、公共投資のあり方ですけれども、現在までの公共事業のあり方で果たしていいのだろうか、公共事業景気に及ぼす影響の大きいことは私たちも承知しておりますけれども、やり方を間違えますと、公共事業には産業間の格差、あるいは地域間の格差が出てまいります。そうした点で、現在の公共事業というものをどういうようにごらんになっているか、その点をお尋ねしたいと思います。  もう一つは、今後の日本経済というものを考えた場合に、いつまでも景気の牽引力が公共事業であっていいのだろうか。公共事業が牽引力となり、その後に民間設備投資がくっついてくるという形でいいのだろうか。むしろ個人消費支出を伸ばすというところが何とか機関車になれないものだろうか、そういう点について伺いたいと思います。  もう一つは、先ほど金利の引き下げのお話が出ましたけれども、現在の稼働率がかなり低いという日本経済実情の中で、金利を引き下げた場合の直接的な効果はあるんだろうか。心理的な効果なんだろうか、それとも直接的に効果があるんだろうか。  以上四点、お願いをしたいと思います。
  41. 牧野昇

    ○牧野公述人 四点御質問がございました。お答えしたいと思います。  景気回復についての不公平是正の問題でございます。これは実は私、公平の原則から六点言っておりますので、それを同じ観点からおっしゃっているんじゃなかろうかと思いますが、一つ、私、お聞きして違う点は、一応国民減税というものについて、そのものに触れてなくて、減税の中において、上の人からよけい取っているか、下の人からよけい取っているかということについての御質問の点だけが私、触れなかったように思うのです。それについては、日本減税の最低の所得者、これはいまほかの公述人からもお話ございましたように、非常にむずかしい問題でございますね。いま私が、この数字で、私が先ほど申したように、子供二人でこうだと言うと、これは所得の低い方だ、低いところは上がっているよというお話をしたので、そういう点では御理解いただけると思いますけれども、それでは、ケース・バイ・ケースで一本一本洗ってどうかということになりますと、それは非常にむずかしい問題だということは言えるわけでございます。ただ、私が言いたいのは、日本の第一階層、第二階層というのは、全体の所得配分の中では非常に高いあれを受けているという点で言うと、これは疑いもなく、所得配分における公正さは、先進国の中で日本が一番だということだけは言えるのではないかと思います。  第二点でございますけれども公共投資のあり方というのはどうだということであります。公共投資のあり方が、産業間格差あるいは地域間格差を生む。私、産業間格差についてはお答えしてあります。商業間格差で言えば、公共投資の方が破行的に落ちたものを上げる効果がありますから、そういう意味では結構じゃないですかということであります。  しかし、地域間格差のお話がございましたが、これは、私は触れておりません。地域間格差で言いますと、これは日本にとって非常にいいのですね。これは地域IO表を持ってくればよかったのでございますけれども、東北地方に非常に入るのです。言いかえますと、公共投資というのは民度のおくれたところに入るわけでございます。当然ですね。民度のおくれたところに入るということは、日本における地域間格差を是正する分野に公共投資というのは入るというのが、これは常識的に考えてよろしいのじゃないか。細かいデータが御必要になれば、地域IO表で全部……。  ただ問題は、これが建設投資か、あるいは通信投資か、あるいは下水道のような土木投資かによって全部違ってまいります。私が言っているのはどちらかというと建設投資を中心としたお話でございますが、一般公共投資は地域格差にとってはいい方向だというふうにお考えいただいた方がよろしいのじゃないかと思います。  さて、三点でございます。日本経済における伸び方というものは今後どういう点をベースにしていくべきかという御質問、これは私も先生の御意見に賛成でございまして、実は日本のいままでの伸び方というのは、過去十八年間に実質一五%の民間設備投資伸びた、不景気のときに列島改造を初めとした公共投資を出した、去年は輸出だったというので、いわゆるセクター別といいますか、GNPを支えていくのは、さっき言ったみたいに、個人消費政府と、それから民間設備投資と、それから外国のお客さんと在庫でございますけれども、このうち、実はいままでバランスがとれていないのです。そういう点では、お答えいたしますと、今回の場合はとれているのです。これはセクター別に、実質で恐らく個人消費が、ちょっと細かい点で持っておりませんが、五%、公共事業費が七、八%、民間設備投資あるいは輸出が恐らく六、七%だと思いますけれども、いままでになく主役のない、バランスのとれたパターンで、これは政府見通しも同じでございますけれども、そういう意味で言うと、主役がなくなって、いいのじゃないか、私はそういうふうに考えております。ただ、個人消費だけで伸ばすというのは非常に無理でございまして、個人消費というのは、企業の利益がないと給料がもらえませんから、そういう意味で、やっぱりバランスのとれたもの、そういう意味では、今度の政府見通し経済白書の見通しというのは、非常にバランスのとれた数字が出ている、こういうふうに見ております。  さて、金利の問題でございます。金利については、いわゆる精神的な問題かどうかという問題でございますけれども、実質で言いますと、これはそういう問題じゃなくて、実は低成長の中において、はっきり申しますと一九六〇年代というのは、西ドイツは五%の経済成長をしております。そして企業はちゃんと利益を上げている。そして西ドイツは来年はECの修正によると四%でございます。五ないし四で利益を上げている。日本はなぜ上げていないか。一九七〇年代に入って五年か六年しかたっていないのに、なぜそんなところにいくかというと、これは企業の付加価値に占める金融費用の中身を見ますと、実は日本の場合は西ドイツの企業の金融費用の三倍払っているのですね。これは金利だけじゃないですよ、私の言っているのは。金利だけでなくて、過去の設備投資という問題もございますし、借金経済高度成長、いろいろなことから言いましても三倍ある。これが実は企業にとって非常に痛いのだということになりますと、私が言っているのは、これは直接的な効果があると見てよろしい、こういうことであります。
  42. 坪川信三

    坪川委員長 大内啓伍君。
  43. 大内啓伍

    ○大内委員 まず、谷山さんにお伺いをいたしますが、先ほど税の民主化という問題がございまして、そういう観点から一兆円減税を論じられておったわけですが、たとえば昨年度で、私どもが見ております範囲では、大体物価も一〇%近く上昇いたしまして、さらに国鉄あるいは電電等の公共料金も相当上がっていったわけなんですが、大体物価上昇による国民の被害というのは、総額で九兆円ぐらいに達するのじゃないか。また、公共料金値上げ分だけを見ましても二兆五千億ぐらいに達するのではないかと計算をしております。それに対しまして、五十二年度の減税措置というのは、御存じのとおり三千五百億余の減税がなされている。しかもそれは物価調整減税という形で言われているわけなんでございます。ですから、そういう国民の受けている物価による被害と、五十二年度予算において組まれている減税措置との間には相当の開きがある。だから果たしてこれで物価調整減税と言い得るのかどうか。何かこうちょっとしたスズメの涙のようなそういう予算をつけて、物価調整やったやったと言われますと、国民の方では相当何か迷惑な感じがするんじゃないかとさえ思われる。もちろんこれは財源の問題もありますので、その国民の全部の被害を調整減税という形で救済をすることが困難であることは論を待ちませんが、物価調整減税という場合にはどの程度のものが救済された場合にそういうことが言い得るのかどうか。また、今度の政府の三千五百億円余の減税をもってして物価調整減税と言い得るかどうか、この辺の御所見を第一にお伺いしたい。  それからもう一つは、課税最低限の国際比較を見て、たとえば付加価値税等を見比べてみると、西独の場合はほとんどとんとん、あるいはフランス、イタリアの場合になるとむしろ日本の方がいいというようなお話ございましたのですが、御存じのように財政硬直化という中で、ある部分について付加価値税の創設という問題がいま検討されている、あるいは政府・与党の方でもこの問題が検討をされておるのではないかと思いますが、先生はこの付加価値税の導入、創設という問題について、日本についてはいいか悪いか、どういうふうにお考えになっているか、これを二つの点としてお伺いします。  次に、牧野先生にお伺いをしたいのでございますが、先ほど谷山先生のお話の中にもございましたように、昭和四十八年の石油ショック以来日本が大変なマイナス成長、低成長、そしていまは不況の中だるみという形で低迷をしているわけですが、その一つのポイントとして消費不況という問題が現実にある。昨年度の消費支出が大体一三・六%ぐらいであろうと言われ、またことしも政府の予想では一三・七%ぐらいに達するであろうと言われている。しかし、消費支出というのは、この程度でおれば消費支出というものが伸びてきたとは言えないわけで、やはり一五%ぐらいになって初めて、ああ消費支出伸びてきたな、こういう感じになろうかと思います。  そこで、これからそういう消費不況というものを打開するために、個人消費の伸ばし方は方法論としてはどういう方法があるとお考えなのかどうか。先ほど来、公共事業減税かということで、公共事業の方が、公正の原則から言っても効率化という面からいってもずっとよろしいという一つの原則論はお伺いしました。しかし、この原則論に関する限り、アメリカにおいても同じでございまして、公共事業減税かの選択ということになれば、当然効率化という面から見れば公共事業の方がよろしい。これは間違いない。にもかかわらず、フォード政権は、あのように何段にもわたって減税というものをやり、個人消費を伸ばすことによって心理的にも実効という面から見ても、単に税の公正化という問題以上に、やはり景気刺激一つ政策をとった。もちろんこれは日本の仕組みとアメリカの仕組みと違いますから、アメリカの仕組みをすぐ日本に持ってこれないことはわれわれも十分承知しているが、しかし、にもかかわらず、アメリカがそういう方式をとったということもわれわれは幾らか考えていいんじゃないか。特に日本の場合、非常に貯蓄性向が高くて、その蓄積は多いわけでございまして、相当国民の本来の購買力というのは高い。にもかかわらず、やはり不況感という形から財布のひもを締めている。ですから、そういう面で心理的に一つの呼び水を与えるという意味で、減税というものは相当大きな効果を持っているし、それは初年度のみならず次年度、三年度という面から見てみれば、その一つの回転というものは非常に大きいと私どもは思う。しかも、公共事業の場合は、御存じのとおり土地の面で大変なネックを持っている。のみならず最近においては地方財政という面で大変なネックがあって、一つ公共事業の企画も十分本当は効率を発揮していない。つまり、単純な数字の計算では答えが出ないような公共事業の非能率化という問題も出ている。これは間違いない。ですから、そういう面をもう少し実情に照らして勘案する必要があるのではないか。この辺についてはどういうふうにお考えになっているのか。これが一つの点でございます。  それからもう一つのポイントは、もちろん安定成長への定着化ないしは軟着陸という問題を考えると、大体六%強くらいがいいんでしょう。そしてそのためには成長の管理をやらなければならないし、中期計画を当然実行していかなければならない。それは見通しじゃなくて計画という形で実行しなければならない。しかし、にもかかわらず日本経済というのは国際経済の大きな影響を受けてくる。ですから、日本の計画化だけでは何ともしがたい問題がある。  そこで、たとえば一九六七年に西ドイツが財政硬直化という壁にぶつかったときに、御存じのように調整基金という問題を考えた。そして日本においても昨年は予備費三千億円あるいは公共事業の予備費千五百億円、計四千五百億円くらいの一つの弾力的な財源を持ったことは御存じのとおりであります。かつてトルーマン時代には机の引き出しにしまっておく政策というものが準備されておりました。したがって、日本もやはりこういう海外の経済に大変な影響を受けるという体質を持っている中で、これからそういう海外経済景気の変動に受け答えしていくためにも、何らかの形で調整基金制度というものが検討されなければならないのではないかというふうに思われますのですが、その点について先生の御見解を承りたい。  以上でございます。
  44. 谷山治雄

    ○谷山公述人 お答えいたします。  第一の、物価調整減税というのはどのくらいやればそう呼べるのか、そういう御質問でございますが、まず御指摘のように政府のやっております三千五百億円の金額が物価調整減税とすら言えないということは、ほぼ私、御指摘のとおりだろうというふうに思います。私は、政府が今度基礎控除、配偶者控除、扶養控除を三万円ずつ上げるという案は、実は物価調整減税ということよりも、いまその控除をほっておきますと生活保護法以下になってしまいますものですから、そこでやはり上げざるを得ないという、むしろこの生活保護法とリンクして、それでこれをやむを得ず上げておるという感じがいたしますので、何か物価調整減税というものじゃないんじゃないかという感じがするわけでございます。  そこで、どのくらいまでやったらいいかというお話でございますけれども、私は先ほども申しましたように、減税の仕方でいろいろやり方がございますので、むずかしいのですが、一応昭和五十一年は御承知のように減税ゼロであったわけでございますので、昭和五十年度を起点にいたしますと、政府経済企画庁の見通しでも、昭和五十二年度中には二二%強物価が上がるということになりますので、少なくともそういった消費者物価上昇率だけから考えましても、たとえば百八十三万の夫婦子供二人の給与所得者の課税最低限というのは、少なくとも二百三、四十万になりませんと物価調整減税とすら呼べないのじゃないか、こういうふうに考えます。もちろんいろいろ計算の仕方や考え方もございますでしょうけれども消費者物価上昇率をカバーする、それを課税最低限の引き上げで行うという考えに立てば、私は独身者の場合には約百万、それから夫婦子供四人の場合には二百四十万ぐらいまでいきませんと物価調整減税とは言えない。繰り返すようでございますけれども政府の控除引き上げというのは生活保護法以下になっては困るから、みっともないから——まあ、みっともないという言葉がいいかどうか知りませんが、それで上げている、こういうように思います。  それから第二の付加価値税の問題でございますが、私もその付加価値税に関する本も書いて出しておるのでございますが、ヨーロッパと日本との国情や財政事情の非常な違いがございますので、その辺をやはりよく検討しませんと、日本でどうとかこうとかということを一概に議論できないというのが私の前提としての考え方でございます。  具体的に申しますと、付加価値税というのは、御承知のように、まず物価引き上げるという効果を持ちますし、さらに一般消費税ということで、相対的あるいは絶対的に大衆負担が非常に重くなる、そういういわゆる逆進的な税金でございますので、私は、現在の段階ではこれは採用すべきではない、こういうふうに考えています。  そこで、もちろんこれは数兆円という規模の税源の獲得できる税金でございますので、私は、赤字国債発行のもとでは非常につくりたいということを財政当局がお考えになっているだろうと思うのでありますが、その前にやらなければいけないのは、これはもうすでにいろいろ御議論になっておりますように、大企業とか高額所得者に対する広い意味での租税特別措置がございますので、これは徹底的に是正をする、そういうことをまず一つ前提にして、それからその後が付加価値税をどうするかという、そういう話になるのでありますから、私の意見では、現状では反対でありますし、また論議するにいたしましても、私は、これは一番最後の課題として論議すべき税金である。くれぐれもお願いしたいことは、ヨーロッパ、私もヨーロッパに何回も行っておりますけれども、必ずしもうまくいっているとは思えませんし、仮にうまくいっていると仮定しても、国情や財政事情に非常に違いがございますので、その辺、やはり日本日本立場から御検討していただきたい。私の意見は、現在では反対ということをお答えしておきます。
  45. 牧野昇

    ○牧野公述人 お答えいたします。  最初に消費不況のお話しがございまして、名目で一三・七%という政府見通しの御質問がございます。これは恐らく消費者物価八%、八%か八・五かは別として八といたしますと、五・七伸びる、これは事実だということでございまして、物価調整とは何かということは私はちょっとわからないのです。物価調整をして一三・七伸びているわけですね。これが上がらなければ五点幾つ、あるいは六かもしれませんけれども、そういう意味では調整しているので、物価調整という名前がどうかこうかということはむしろテクニカルタームの定義の問題だと私は思うわけです。  御質問は実はそのことにあるのじゃなくて、個人消費を、五・七というのはだめだけれども、もっと伸ばせという御質問だと思うのです。私は、それはかなりむずかしいんじゃないかというふうに考えているわけでございます。それは、先ほども私御説明したのですけれども、一九七三年の第三・四半期、十月から十二月までと七六年の四月から六月というこの不況期において個人消費が実質でどのくらい伸びているかというと、日本が九・二伸びております。米国が五・六、西ドイツが三・五でございまして、西ドイツの三倍も伸びてもまだほどほどじゃなく少ないよということは、これは価値観の違いでございますけれども、まず、かなり不況の中でがんばったというふうに見てよろしいんじゃないかと私は思うわけでございます。  したがって、問題はこれからの高度成長をどうするかということでございます。高度成長に戻るのは無理だ、では一体どのくらい伸びるかというと、七〇年代前期経済計画というのがございまして、私も作成をお手伝いいたしました。五十年から六十年の十年間を通して恐らく五・八ないし六%ちょっとというところ、大体五%台の上の方だろうというところがまず正確な見通しじゃないかと思いますし、いろいろな見通しも大体そう見ておるわけでございます。われわれの研究所では五・四くらいだろうと見ております。そういたしますと、ことしの五・七というのは、経済成長に見合った消費の上昇だということ。私、繰り返して申し上げますように、ある分野において、あるセクターあるいはあるセクションが主役を演じて引っ張っていくというのは、これは無理なんです。ですから、全部の、いわゆる民間設備投資も、あるいは公共事業も、輸出も、それぞれほどほどの主役あるいは全体が主役となって伸びていく。その範囲というのは、全体の経済成長を大体六あるいは五・五といたしますと、その前後を振れるような形がいかがかというのが、私の意見でございます。  二番目でございます。いまの御質問の中にこういうのがございました。アメリカではなぜやるか、こういうことでございます。日本じゃやらないけれどもアメリカでは減税をしているじゃないかということでございます。これも私、さっき触れたように、日本ではアメリカに比べて比較的にそれが効果が薄いということを言っているわけでございます。比較的にで、全然ないとは言わない。それはどういうことかといいますと、たとえば社会資本をごらんになるとわかります。社会資本の投資というのは日本は低いわけですね。下水道をとりますと、二〇%を少し超すだけ、アメリカは七〇だよ、こういうことでございます。そういたしますと、どこで埋めていくかという問題ですね。われわれが後の世の世代のために残すのはどちらがいいかということになりますと、やはりわれわれは現在使うよりもこういうところで使う。ところが、アメリカは七一。七一の残りの二十幾つというのは恐らく非常にむずかしいところですね。ですから、そういう意味でいうと、日本ではまだまだだけれども、向こうでは大体だということでございます。したがって、十年、二十年たって、日本の下水道がなったときに、恐らく、減税効果こういうことかということについては、また条件が違ってくることは当然だと思います。  しかも、いわゆる貯蓄性向のお話がございましたが、まさにそうでございまして、貯蓄性向からいいますと、向こうの方は、お金をもらいますとすぐ使いますね。減税効果というのは大きいのですよ。日本の場合には減税効果というのは貯蓄に回ること、それから支払いが向こうで小切手ができること、そういう意味では、実は日本で効率が悪いけれども、向こうは効率がかなりいいのだというふうに見ていただけたらよろしいのではないかと思います。そういう点で日本はこの方がいい、こういうことでございます。  三番目でございます。安定成長への軟着陸ということでございまして、弾力性を持たせること全く大賛成でございまして、現在われわれが高度成長で物事を考えているからすべて硬直化しているわけですね。金利だってそうです。自由化すればいい金利が硬直化しているわけです。いまのように何か起きたときに、たとえば鉄道料金を上げようと思っても、半年も、一年も、二年もかかるということがあるわけですよ。だから、これが硬直化しているので、それをどうやるかということが弾力化ですよね。弾力化をするためには、われわれは弾力化を進めるためにどういうシステムをいま日本に、これが高度成長から低成長に移行する道だという意味では調整準備金を入れても同じでございます。そういう形でいうと、われわれはもう少しシステムを弾力化する必要があるのだということは、おっしゃるとおりでございます。  以上です。
  46. 坪川信三

    坪川委員長 寺前巖君。
  47. 寺前巖

    ○寺前委員 時間もあれですから、一言だけ谷山先生にお伺いをしたいと思うのです。  その一つは、先ほど先生の御発言の中に、財政公害という問題がございました。公害だとおっしゃるのですから、財政社会的に迷惑をかける政策が行われていたという、この判定が前提になければ、これは公害だというわけにはいかないだろう。財政政策上の社会的に迷惑を与えているというのは一体何をお指しになっているのだろうか、ひとつお聞きをしたいと思うのです。  同時に、公害は発生者というものが明確にあるはずだ、だから発生源を押さえないことには公害は防ぐことはできない。したがって、この発生源を押さえるということは、いま何をやることだということがその次には論じられなければならないと思います。ですから、発生源は何を押さえることが発生源なんだということを、その次にお伺いをしたいと思うのです。  それからその次に、恐らくこれとの関連で御発言になったのだろうと思いますが、財政審の問題です。せめて国民に、国民代表としてのふさわしい比例配分ぐらいはされたらどうか、こういう御提言だったと思うのです。ですから、財政審が、それでは社会的に迷惑をかけている、このような財政政策に対して、どういう役割りをしてきたかという前提があればこそ変えるべきだ、こういう御提言だったと思いますので、その点についてお伺いをしたい。これが第一点です。  それから第二点に、私はよくわからないのですが、公共事業減税かという設定の上で公平のお話を牧野先生がおっしゃいました。で、牧野先生の話はもういいです。そこで聞いておられた谷山先生は、この話を聞いて、これはちょっと酷な質問かもしれませんが、どういうふうにお考えになっただろうか。私はもう正直言って、あのお話はわからぬです。第一に、お聞きになっておられた専門的な先生にその点でお聞きしたいのは、一つの哲学があればこそああいう発想になるのだろうと私は思うのです。牧野先生の提起しておられる哲学はここに問題があると思うという先生の御見解をひとつお聞きしたい。牧野先生は、財源が決まっているのだから、そのもとにおいてやるというのは、六つに分類してみると結局ここになるじゃないかという発想として提起をされているわけですけれども、とどのつまり、ずっと歴史的な角度から、哲学があって提起をしておられるというふうに見ることができるじゃないだろうか。哲学的な分野からどうお考えになるのか、ひとつお聞きしたい。  それから第二番目に、公平の論の一番最初に産業間にも破行現象があるということを提起をしておられたけれども、正直に言って、ああいうことが公共投資の理由になるのだろうかなということを感じながら私は聞いておったわけですけれども、さっき谷山先生は輸出の問題をお述べになっておられました。日本公共投資というのが輸出前提にして組まれていって、それが何か無理があるような、結果としてうまくいかなかったような、去年の実情を踏んまえて何か御提言をなさっておられたようですが、この点もう少し明快でございませんので、時間がなかったのでそういうことだったのだろうと思いますので、日本公共投資のあり方の上における問題点をいま少しく詳しく御説明をやっていただいたらありがたいというふうに思います。これが第二点です。  それから第三番目に、総理はこの間うちから予算委員会で、租税特別措置法などによるところの特別な特権的な減免は七千億円ぐらいのものであって、それも中身は郵便貯金とかその他いろいろのものであって、それは中小業者から国民を困らすことになってできないというようなお話を何回かここでされたように思うのです。そこで、税の専門家としての先生に、不公正税制とおっしゃいましたか、不公平な税制を正すものとしてないのか、あるのか、あるとすればここだということを具体的にお示しをいただいたらありがたい。  以上三点、谷山先生にお聞きしたいと思うのです。
  48. 谷山治雄

    ○谷山公述人 大変広範な問題で御質問いただきまして、どうもむずかしいのですけれども、まず私が財政公害という言葉をあえて使いましたのは、とにかく現在の歳入の三〇%も赤字公債に頼るというのはまさに異常な状態で、これはすべて後代、と申しましてもすぐ来る世代でございますけれども、後の世代に大きな増税の約束手形を発行しているようなそういう事態でございますし、これはまたインフレーションの進展という問題ともちろん無関係ではございませんので、そういう点が私は一つの大きな点であると思います。そうなりますと、これは公害といっても少し先の、未来の話じゃないかということになるかもしれませんけれども、しかし、そういうことをやっているがゆえに一方ではまた赤字公債下だから減税はできない、社会福祉もふやせない、こういうことでもって国民生活に一種の犠牲を強いているわけでございますので、そういう点が国民に一種の迷惑をかけている、そういう一つの姿ではないかというふうに私は考えているわけであります。  そこで、なぜこういうふうになったかということにつきまして、もちろんこれは大変むずかしい問題でございますので一口には言えませんけれども、要するに昭和四十七、八年からのことを考えますと、とにかく狂乱物価というものがあり、オイルショックというものがあり、それからいわゆる総需要抑制政策というものがあって、スタグフレーションというかっこうで現在の不況が来たわけで、これが歳出の方ではインフレを反映して膨張する、歳入の方は不況を反映して歳入欠陥ができる、こういうことになっているわけでございますから、私は経済政策のかじとりが間違っておった、要するに本当は高度成長政策というものに対する反省が昭和四十六年の例のドルショックのときに深刻に、真剣に加えられなければいけなかったと思うのでありますけれども、それがまた輸出が好調で、また高度成長が続いてしまったものですから、そういう深刻なあるいは真剣な反省なしに、経済政策運営が行われてきたことが、今日の事態を招いたのではないか。私は特に税制の面について言いますと、このような歳入欠陥を生じました一つの大きな理由といたしましては、いわゆる広い意味での特別措置の問題があるわけでございまして、これはその次の、最後の御質問がございますので、ここでは簡単に申し上げますけれども、とにかく高度成長を促進するためのいろいろな特別措置がそのままずっと生きているわけでございます。しかも、それは具体的に金額にいたしますと何千億という金額ではない、せいぜい数百億というような金額にしかならない話でございますが、たとえば経済不況になりましても上場会社の場合には配当は維持をする、そうなりますと、たとえば留保に対する法人税は四〇%でございますが、支払い配当に回すのは三〇%でございます。不況になりますと配当は維持する、したがって留保は少なくなるということでございますから、法人税というものは利益が少なくなる以上に減収になるわけであります。これも一つの例でございます。  もう一つの、四十九年の所得税減税にいたしましても、いわゆる重役減税という言葉で言われておりましたけれども、高額所得者層に大幅な減税をしていく。私はむしろこの層は増税をすべき階層ではなかったかというふうに考えておるわけでございますが、これを大幅に減税をする。こういう財政、租税構造という面で従来の高度成長の時代をそのまま引き継いでやっているところに、全部ではございませんが歳入欠陥をもたらした一つの原因があるのじゃないか。これはほんの一例でございますけれども、そういう点で財政政策運営に誤りがあったのじゃないか。その原因は、いま申し上げましたように、高度成長政策というものに対する深刻かつ真剣な反省がなしに、経済政策運営が行われたところに、一つ起因をする、こういうふうに考えておりますので、この是正は私は大事ではないかというふうに考えております。  時間の関係上少し話をはしょらせていただきますけれども、そういう中で財政制度審議会なり税制調査会なりというものは、いろいろな各界の方が集まっているかっこうをとっておりますけれども、そういうことを言うと実際真剣に討議をしている委員の方に失礼なことを言うようになるのでちょっと困るのですが、結論を見ますと、たとえば税制調査会の答申というものはいつも政府・与党の答申と全く同じでございますし、それから大蔵省の主税局の考えておられることをそのまま受け継いでいるのじゃないだろうかと思われるようなことでございますので、そういう意味では全く政府政策の弁護に陥っているのじゃないか、そういう点をぜひ改組していただきたい、こういうことを私はさっき申し上げたわけで、これは財政公害という言葉がいいかどうかわかりませんが、私は一助になっている、こういうふうに考えております。  それから次の問題でございますが、経済哲学云々というお話がございました。これもお答えするのに大変時間のかかる問題でございますので、簡単に申し上げてひとつ御勘弁願いたいというふうに考えておりますが、私は先ほどの牧野先生のお話で、いま生産財が落ち込んでいるからこそ公共投資が必要だ、そういうお話がございましたが、その考え方に経済政策の一種の根本的な問題があるわけで、私は日本のいまの経済政策というものを考えますと、いわゆる重化学工業中心でもって高度成長をやってきた、そのこと自体私は頭から否定するつもりは毛頭ございませんけれども、やはり重化学も必要でございますから、これはよろしいのですけれども、しかし、福田総理の御答弁だというのを私は新聞で拝見したのですから、詳しいことじゃございませんが、どこかの経済団体でもって、消費購買力を伸ばすよりは公共投資の方がいいという御発言を総理はおやりになっているということでございます。私は、いまの重化学工業に大きな基盤を持つ日本経済政策というものは、結局まず輸出をどんどん伸ばしていく、それともう一つ公共投資を柱にする、輸出公共投資を二つの柱にして、それが民間設備投資のプロモータになって、それで従来の高度成長というものをやってきた。それがいろいろな矛盾やら問題を起こしてきて今日に至っているわけでございます。ですから、私は、この消費購買力の浮揚ということを政府が頭から否定しているとは思いませんが、しかしそれに重点を置かないということは、従来の高度成長型の経済哲学をそのままお持ちになって財政運営をおやりになっているんじゃないか、こういうふうに考えますので、私はその点の根本的な改革というものをぜひひとつ国会で御論議願えればと思いますので、私は経済哲学というのはそういう意味で申し上げたわけです。ですから、たとえば社会資本が非常に少ないことはもう紛れもない事実でございますから、公共投資の必要ということは私も考えておるわけでございますけれども、その基底にあるものは高度成長時代の経済政策そのものじゃないか、深刻な反省がないんじゃないか、このことを一つ私は経済哲学として申し上げたいわけで、それで牧野先生の言われたことは牧野先生なりに論旨一貫しているとは思いますが、その考え方自体が問題だというふうに私は考えているわけでございます。  それから最後の問題でございますけれども、これはもうすでに国会での租税特別措置をめぐる論議を新聞、テレビ等で私、拝見をしておりますけれども、結局論議がすれ違っているわけでございまして、というのは政府側、総理の御答弁というのは、いわゆる大蔵省主税局がこれが租税特別措置であるよといって発表しておられるその金額をお指しになって、五千億とか六千億とかということをお話しになっているわけでございますが、これはもうすでに御論議になっていると存じますが、私は租税特別措置というのは、租税特別措置法に規定しているものだけではなくて、客観的に税負担の公平を阻害しているものが租税特別措置だというふうに考えたいわけでございますし、そういうふうに考えるのが正しいと存じますので、そうなりますと、これは私自身もかつて計算したことがございまして、私の計算しましたのは昭和四十八年度でございましたが、当時すでに国税、地方税含めまして約五兆数千億の減免税が行われていると計算ができますし、最近では御承知の東京都の財源構想の試算がございます。これはやはり租税特別措置に対する考え方の問題でございますが、ここでちょっと論旨を明らかにしておきたい。簡単に申し上げたいと存じますけれども、たとえば宮澤喜一先生と野党の方との対談をこれも私はテレビで拝見をしたわけでございますが、宮澤先生が言われるのは、貸し倒れ引当金とか退職引当金とか非難されるけれども、これは企業会計上そういうふうになっているのだからやむを得ないというお話、だからいいのだというのかどうかちょっと忘れましたけれども、宮澤先生はそういうことを言っておられます。しかしそれは企業会計上の話であって、それを課税所得の計算にストレートに持ってくるかどうかということは別の次元の問題でございます。  そういう点で、私は企業会計上どうであろうと証券取引上どうであろうと、やはり課税所得の捕捉、課税の公平、そういう観点から引当金、準備金、減価償却の問題を論議していただきますとこの問題は論点が非常にはっきりしてくるのじゃないか、そういうふうに考えますので、ぜひこの租税特別措置あるいは不公平税制というものを狭くお考えにならずに、それからまた企業会計の原則と混同なさらないで、課税の公平化という問題に論点をしぼってひとつ御論議を願いたい。  そういうことでお答えになるかどうかわかりませんが、以上でお答えにいたしたいと思います。
  49. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  50. 坪川信三

    坪川委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、明二十二日午前十時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十五分散会