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○坊国務大臣 このたび、
昭和五十二年四月一日から四月十六日までの期間について暫定
予算を編成することといたしましたが、その概要について御説明いたします。
まず、一般会計について申し上げます。
暫定
予算が本
予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、今回の暫定
予算におきましても、暫定
予算期間中における人件費、事務費等の経常的経費のほか、既定の施策に係る経費について、行政運営上必要最小限度のものを計上することといたしております。
なお、新規の施策に係る経費につきましては、原則として計上しないことといたしておりますが、教育及び社会政策上等の配慮から特に措置することが適当と認められるもの、たとえば、生活扶助基準等の引き上げ、失業対策事業の賃金日額の引き上げ、国立大学の学生の増募等につきましては、所要の経費を計上することといたしております。
また、公共事業関係費につきましては、直轄災害復旧事業費のほか、直轄事業の維持修繕費等について、暫定
予算期間中における所要額を計上することといたしております。
歳入につきましては、税収及び税外収入についての暫定
予算期間中の収入見込み額並びに前年度剰余金を計上することといたしております。
以上の結果、今回の
一般会計暫定予算の歳入総額は一千三百十九億円、歳出総額は一兆六千四百四十三億円となります。
なお、これは、一兆五千百二十四億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、一兆五千五百億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることといたしております。
次に、特別会計及び政府関係機関の暫定
予算につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計の例に準じ編成いたしております。
なお、財政投融資につきましても、一般会計に準じ、暫定
予算期間中に必要になると見込まれる最小限度の額として、農林漁業金融公庫、
中小企業金融公庫等に対し、合計六百三十三億円の資金運用部資金の運用を予定いたしております。
以上、
昭和五十二年度暫定
予算につきまして、その概要を御説明いたしました。
何とぞ、御
審議の上、速やかに御賛同いただきたいと存じます。
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○坪川
委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
小林進君。
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○
小林(進)
委員 私は総理に、日米首脳会談の内容について、問題を五つばかりに整理をしながら御質問をいたしたいと思うのであります。
予算の
審議中アメリカに行かれて御苦労さまでございましたが、その会談の内容については、やや賛成すべきところもありますが、まだまだ疑問とする諸点が幾つも並んでおります。その疑問とする点を、時間がありませんからまず申し述べて、総理の御意向を承りたいと思うのであります。
まず第一問は、これは米日両首脳儀礼のアクションでございましょうが、アメリカ大統領は日本を国連安保常任
理事国にひとつ推薦をしたいというお話、日本の首相は大統領夫妻の日本への招待を口にせられた。この二つのエールに対して、口の悪い人たちは、あれは空ののし袋を交換し合ったに過ぎないということを言っておるのでございまするし、なおあわせて、日本の国連安保常任
理事国ということは、これはすでに
田中・ニクソン会談にも出ていた話でありますけれども、まあ実現の問題としてはやや不可能に近いというふうにも言われている問題であります。両国の首脳が空ののし袋の交換に終わったということでは、どうも両国の権威にも関する問題でございますので、これを今後いかに具体化され、責任ある行動をとられるか、簡単に承っておきたいと思うのであります。
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○
福田内閣総理大臣 日米会談におきましてカーター大統領が、日米間のことも話し合った、また世界の問題も話し合いましたが、その中で、日本の立場に対しまして世界各国の評価が余りにも低いということを私は痛感します、こう言われておるのです。私はこの国際社会で日本がもっともっと積極的な役割りをとってもらうことを希望する、ついては、かねて言われておることではあるけれども、日本は安保
理事会の常任
理事国になっておらぬ、なるべきだというふうに言われておるが、私はその実現のために積極的にその行動をしたい、こう言うのです。いままでは、安保
理事会の常任
理事国、これになるべきだという意見はアメリカにもあったのです、あったが積極的にこれを推進しようということは今回初めてなんでありまして、私もこれは非常に積極的な態度をとったなあと、そういう感を深ういたしたわけであります。これは私は、何もリップサービスだとか何だとか、そんなようなとらえ方はいたしておりませんです。また
小林さんだってそうじゃないかと思うんです。核大国ばかり集まったあの五国の常任
理事国、その中に核を持たず、つくらず、持ち込まずという、その非核日本が常任
理事国として参加する、これは私は世界のために非常にいいことだ、こういうふうに
小林さん自身もお考えになられるのじゃないかと思う。切に御協力のほどをお願いを申し上げます。
それから、カーター大統領の訪日の問題は、これは喜んでお受けします、ただことしは私はロンドンの七ヵ国会議、これに行くだけにしたいと思いますので、その後なるべく早い機会に実現をいたしたい、こういうことでありました。
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○
小林(進)
委員 この問題にこだわっているわけにはまいりませんが、第一そういう話し合いの直後、拒否権を持っているソ連自体が、それは反対だという意思表明をしておりますし、また国連憲章それ自体も改正もしなければならぬという大きな問題もありますが、ただしかし、アメリカが言ったからにはアメカリ自体がやはり自分の言葉に対する責任を持ってモーションを起こす、やはり常任
理事国に何かの形で呼びかけるなり、われわれを納得せしめる行動がついて回らなければならぬと思いますので、その点をひとつ日本政府の方からも、言われっ放し、言いっ放しじゃなしに、その具体的行動を一面監視、一面協力の形でひとつお示しをいただきたい、こういうことを要望いたしておきます。
第二問として、いよいよ本論に入りますが、私は第一にひとつ韓国問題について御質問を申し上げたいと思うのでありまするが、韓国問題の中のまず第一問であります。
首相はこのたびの会談で、在韓米地上軍の撤退について最もどうも力点を置いて交渉をされたようでありまするが、これは一体首相はだれに頼まれたのだろう、国民の中のだれを代表してこういう交渉をされているのかという点に私は非常に疑問を持ったのです。ということは、これは少なくとも国会の要望でもありませんし、国民の声でもありません。むしろこの
予算委員会を通じては国民はそういうことを、在韓の米軍が隣国に長く滞在するようなアジアの情勢じゃ困るというような立場で、総理にしばしばここで質問が繰り返されたはずであります。これに対して総理は、渡米の前にこの会場でしばしば言明をされた、在韓米軍の撤退は基本的には米韓両国間の問題であって日本は介入する考えはない、こう明確に答えておらりませんけれども、直ちに態度が変わって、米地上軍の削減が朝鮮半島の安定を失わないよう、朝鮮半島の安定を損なわないよう慎重に行うべきだという在韓米軍のいわゆる存続を懸命に主張をし、哀願と言っては何でありまするけれども懇願をされたと言われております。最後は、撤退という言葉を削減に変えてくれないかということで懇願をして、アメリカ側からそれを断られたということは、総理自身が帰ってこられてから語られておったところでありまして、これはどうも国会におけるいわゆる不干渉発言、米軍撤退については干渉をしないという不干渉発言に全くこれは違反したものではないかと考えられるが、この点首相はいかにお考えになりましょうか。
-
○
福田内閣総理大臣 私はかねがねこの国会、この席でも申し上げておるのです。米地上軍の撤退問題は、これは基本的には米韓間の問題である、わが国が介入すべき問題ではない、しかし、わが国としては朝鮮半島の平和を希望する、その平和が乱されるような形でこの撤退が行われるということは好ましくない、こういうことを何回も申し上げておるわけでありまして、そのとおりにしてきておるのだということをはっきり申し上げます。
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○
小林(進)
委員 アメリカの軍隊が引き揚げることによって、朝鮮やアジアの平和が侵害される、混乱するという根拠が一体どこにあるのか、私はいまでもわからないのであります。わからないから、これはおいおいにひとつ質問していきまするけれども、基本的には干渉しないがという言葉の陰でもっぱら撤退してもらっては困るという交渉が、これが一体まともな日本語の使い方かどうか、私は疑わざるを得ない。いまの首相の御答弁では満足するわけにはいきませんけれども、ここで足踏みしているわけにはまいりませんから次へ進みます。
今次のこの
予算委員会で、ここで一番国民の声として問題になった問題は何でありましょうか。国問題であります。韓国問題がこの国会で一番大きな問題になった。しかし、その中で論ぜられたことは、これは首相が持ち出された在韓米地上軍の撤退の問題じゃないのであります。ここで国民が一番重要視した問題の第一は、いまの韓国の非人道的行為に対する問題なんです。すなわち、在日韓国人に対するスパイ容疑による死刑の宣告というような不当な弾圧の行為が行われているじゃないか。民主主義の日本としてそれを一体黙って見ていていいのかどうか。
第二番目としては、特に金大中拉致事件に関連をしあるいはこれらの指導者、韓国の維新何とか云々とかいう実に弾圧法規にひっかけられて不当な裁判を受けている。一番日本に関係のある金大中氏は、この日本政府の当然なる権利要求も受けられずして、いま五年間という不当な刑罰を受けて牢獄の中に呻吟をしているという問題が起きている。これを一体どうするのか。
あるいは第三番目といたしましては、日韓政財界癒着に基づく不正行為だ。ソウルの地下鉄がどうだ、新韓碍子がどうだ、もろもろの不実企業の実態はどうだということが、これは血を吐く思いでここで論ぜられておる。あるいはKCIAによる政界の抱き込み工作、賄賂戦術、日本国内における不法な調査活動などが、このまま民主的な日本の中を荒らしまくってよろしいのかどうかということが本当に真剣にこの場所で論ぜられておる。しかし、これは日本の国会だけじゃない、日米両国にまたがる共通の重大問題であります。アメリカの議会、アメリカの国民もいま私どもが申し上げたこの問題に対して等しく関心を寄せておる。
しかし首相は、こういう日本の国会におけるこれほどの重要な問題、それをアメリカとの首脳会談の中にこれを何も取り上げる気持ちがなかった、取り上げてもいられない、これは全く国会不在、国会無視の日米会談ではないか。もし首相が常に言われるように連帯と協調と言うならば、こめて連帯感の一つも、協調のかけらの一つもあったら、それはやはり取り上げて、首脳会談の議題に供すべきではないか。何も出てこないじゃありませんか。私どもは国民の立場に立ってもこれは奇異にたえないのであります。首相は両国人民の最も重大な関心事を、これを在韓米軍の撤退問題にすりかえられて国民をごまかされたのではないか、だれか特定の者の意思に従って国民をごまかされた行為ではないかという気がしてたまらぬのであります。なぜ一体この国民の最大の関心事である問題を、しかも日米共通の問題を取り上げられなかったのか、真意を承っておきたいと思うのであります。
-
○
福田内閣総理大臣 金大中の問題など、これは日米の会談の対象という問題じゃないと思うのです。それが人権問題だというような立場でありますれば、これは私も人権問題主義者です。連帯と協調というのはまさに人権主義そのものなんです。ただ、それを達成する手段、方法というもの、これはいろいろあると思うのです。カーター大統領はソビエトの市民に書簡を送ったというような、ああいうやり方もありましょうし、静かに秘密裏にやるというような方法もあろうし、またそういう人権問題を論議される相手方の国情というものもありましょうし、富士山に登るにいたしましてもいろいろな道があるようなものだ、こういうふうに、わが国にはわが国のやり方がある。しかし私は、人権というものは世界の各地において確保されるということが願わしいという考え方におきましては、もう
小林さんの後に落ちるというような気持ちではございませんです。
癒着とかなんとかという問題、いまお話がありましたが、これは日韓間の問題でありまして、これはひとつこういう席で御論議願いたい、かように考えます。
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○
小林(進)
委員 金大中氏という特定の名前が出ないにしても、カーター大統領はこの韓国の現朴政権がいかに非人権的であり非人道的であるかとておられる。韓国、フィリピンそしてソ連、非常に非人権的ではないか、これが私はカーター外交のバックボーンだ。そういう人道をとうとぶカーター氏と話をされるときに、あなたも人権主義者ではだれにも劣らないと言いながら、この金大中氏が日本から拉致されていま五年の刑を受けて牢獄に呻吟していることに対して、一片の責任も同情も、感じていらっしゃるのかどうか知らぬけれども、これは日韓の問題であるから対大統領の、いわゆる人道、人権を口にする大統領との話し合いの議題の問題ではないと言ってそれをおいて、そうして在韓米軍の撤退問題が何といってもこれは日米の重大問題だからと言ってそこだけに力を入れられるという姿勢は、私は国民の側から見て何としても納得できません。これは総理、一体あなたはいま日本にとの在韓の米軍が ——いまスパイ容疑で死刑になって命をとられようとしている人、日本の政府の保護を受けて当然の権利として在住した金大中氏が連れていかれて——西独は全部取り返した。西独政府は学生に至るまで全部取り返した。日本の政府は韓国の国内法があるから仕方がないといって傍観して、いま五年の刑を受けているのに対して一言の同情もなければ涙もない、人道大統領との話の中の議題にもならないで、それはよその国の問題だという首相の姿勢は、正しいとあなたはお考えになっても、ぼくはそうは考えられない。
私は一国会人でございますけれども、ワシントンへ行きました。あなた今度お会いになったかもしれませんけれども、私はあのときにハビブという国務省の次官補に会った。韓国問題を論じました。アメリカが朴政権のあのような独裁と不正、汚職の政治を見逃して軍事を援助しているのは——あれは独裁政権だ、アメリカが一番きらいであるという共産主義の独裁よりももっとひどい独裁政権にこれはてと入れをしている、それは一体アメリカの建国の精神とアメリカのデモクラシーをアメリカがみずから否定している行為にならぬかと私は言った。私は詰問してやったんだ。そうしたときにハビブ次官補は言いましたよ。北からの侵略のおそれがあるんだから、そういうことも韓国にあろうけれどもやむを得ない、こうぬかした。何を言うかと言って私は大変な激論をいたしました。そのときは激論した。
けれども、やはりカーター大統領はやはりアメリカ人です。アメリカのデモクラシーと建国の精神を守る、いわゆる人道主義と人権主義にのっとって、ああいう非人道的な韓国の独裁政権を維持、擁護するためにアメリカの軍隊をとどめて置くことはできないと彼は言った。アメリカの軍隊はデモクラシーを守るけれども、独裁と不正と汚職を守る軍隊ではないから置けない、引き揚げると、実に私はりっぱだと思うんだ。
そのカーターに対してあなたは何ですか。そのアメリカの軍隊を韓国に駐留しておいてくれ、撤廃はいかぬから削減にしてくれなどという、そういう反動的な役割りの交渉をせられたということは、これはどうしてもわれわれの立場からは理解に苦しむ。
福田首相の真意を疑わざるを得ないのであります。どうでございますか総理、明確にひとつあなたの真意をお聞かせください。
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○
福田内閣総理大臣 私は、韓国問題についてはそう時間は使わなかったのです。私が使いましたのは、これはアジアの平和という問題、特にASEANの国、この国々との間が、
田中首相の訪問以来私の見るところではやや疎遠というか、そういう形になっておった。これを何とか修復する、これはとにかくアジア全体として近隣諸国でありまするから、その中にそういう疎遠の国ができちゃいかぬ、こういうふうに考えまして、このASEANに対して一体どういうふうにするかということ、これへ時間を使いました。それからもう一つはインドシナ半島なんです。このあり方、これも非常にアジアの平和のために大事だ、こういうことで時間を使ったわけであります。
朝鮮半島の問題につきましては、あなたは米地上軍の撤退問題だというようなことでございますが、これは私とカーター大統領との間にじきじきほとんど会話はなかった、私はこういうふうに思います。ありましたのは、まあ緊張状態が続いておる、そういう中でも、これは南北の対話があった方がいいのじゃないか、そういうことについてお互いに工夫をしようじゃないか、そういうような話があって、これは共同声明にもそう書いておりますが、撤退問題は私とカーターの間でそう論議した、こういうことではないのでありますから、その辺は誤解なきように御理解願います。
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○
小林(進)
委員 なお私はいま一つつけ加えますが、ASEANの問題や東北アアジの問題はきょうは御答弁はいただきませんけれども、韓国問題を私はお尋ねしておきます。
あなたはアメリカへ行く途中、もしカーター大統領が人権外交を表に出して朴政権の独裁制や非人道性を持ち出されたときにはどのように答弁をしようかということで大変頭を悩まして行かれた。その結論として、もし人道問題をカーターが出したら、他国の不当な人権問題を批判、忠告するときは、これはその国々の持ち味によって公にする場合とひそかにささやく場合などと、ケースケースによって、ケース・バイ・ケースによってこれは論ずべきだ、韓国に対してはそんなに公に批判、抗議するようなことはやめて、相対ずくでひそかにひそかに語らるべきであるという、こういうふうな回答をちゃんと用意して行かれた。これが事実とすれば私は実にけしからぬと思うのです。カーターの人道外交は、世界にさんと輝くべき、これはりっぱです。そういう外交をあなたがひそかにひそかに抑えようとするようにしたということは、だれの国の総理で行かれたのか。何か朴政権の代表か、韓国の代表か、あるいは韓国と緊張緩和を惹起することによってもうける一部の財界か、そういう諸君の立場を代弁して行かれたのではないか。実に私は残念にたえないのでありまするが、まあ、まだ問題はありますが、時間もありませんから言いまするけれども、私は、カーター氏はあくまでも韓国に対して人権宣言の厳しい姿勢を貫く方針でいられるということをキャッチいたしまして、非常に喜んでおる。少なくとも総理も、われわれから見ても何かどうも韓国の代弁をしていると思わせるような外交交渉の姿勢は、私はおやめになった方がいいと思う。どうしても国民はその疑惑を解くわけにはまりいません。これをまず申し上げておきます。
第二問として、一体、在韓地上軍の削減は、いま私はカーターの人道問題から論じ上げたけれども、私はアメリカがこれを撤退するにはいま一つの理由があると思うのです。その理由は何かというと、この政策はすでにニクソンの政権当時から進められておる。カーター大統領はこれを引き継いで、既定方針を継続してさらに明確にしたという問題であると私は見ている。すなわちアメリカは、ベトナム戦争後であります、アジアの戦略は、兵員面でも物質面でもアメリカ一国による多大な負担から離脱をし、個々の地域の安全保障は各民族各国家が第一義的に責任を持ちなさい、アメリカは地域の紛争や戦闘には直接巻き込まれることはもうごめんだ、巻き込まれないようにする、こういうふうにベトナム以後のアメリカの方針は変わったんだ。自来、この政策でいまアメリカは一貫しているのであります。これに対して
福田首相は、古いようでありまするけれども、古典的な自民党の対韓政策を振りかざしてこられた。これがわれわれにとって実際残念にたえないのであります。すなわち、自民党の政策は二十五年前のいわゆる冷戦構造政策です。冷戦構造論なんです。南北対立の現状を維持し、この分裂を固定化し、南北の平和統一は当分ないものとの現状認識に立って在韓米軍の長期滞在をあなたは強調し、要請をしてこられた。実にこれは古典的な物の考え方です。日米首脳会談の間に、交渉から共同声明をずっとながめていて、朝鮮の安全と平和に関し、ここにカーター氏と
福田氏の基本的な相違があるなということを私はキャッチしたのであります。いいですか。その証拠として、現にカーター政権は、朝鮮民主主義人民共和国に対し渡航制限を緩和するなど、いま関係の改善の動きを見せております。御存じのとおりであります。なお、北は侵略国家だとか侵略体制に入っているという従来のハビブやフォード政権当時の物の見方とだんだん変わってきておりますよ、アメリカは。そしていま南北の平和構造をつくる意欲を見せている。それに対して総理、あなたは二十五年前の冷戦構造を持ち込んで、南北朝鮮の固定化、分裂国家の長期永続化をアメリカに持ち込んで、両国首脳の違いを国民の前に一層明らかに浮き彫りにされたというのは、私はまことに残念にたえない。何で一体そんなことをおやりになったのか。あなたは南北朝鮮の統一をおっしゃったが、あれはあなたが言ったんじゃなくてカーターが言ったんでございましょう。カーターの言葉でございましょう。なぜこんなにして朝鮮問題に対する日米の違いを明らかにして見せなければならなかったのか。その理由をひとつお聞かせ願いたいと私は思うのであります。
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○
福田内閣総理大臣 朝鮮半島に関する考え方につきましては、私は日米間で違いがあるとは本質的には思いません。やはり日米とも南北の平和的統一、最終的にはそれが好ましい。しかし、現実の問題とすると南北には緊張がある。その緊張がその過程において破れるというようなことになると、朝鮮半島の平和というものは保てない。この平和的統一、これが念願ではあるけれども、緊張の存続している間、この緊張を乱すようなことはすべきではない。しかし、平和的統一が目的でありまするから、緊張のうちにも南北に対話が始まるということは好ましいことではないか、こういうことが粗筋ですが、これは日米間全然違いはないのですよ。何かえらい考え方の亀裂があるようなお話でありますけれども、この辺は日米首脳会談の前からずっと日米間で話し合っておる。私自身もモンデール副大統領とも十分話をやっておりますが、いささかの食い違いもない。そのことははっきり申し上げて差し支えない。
-
○
小林(進)
委員 首相が日米間に対韓国問題に対して相違がないとおっしゃれば、それは国民、われわれも幸せです。そのたてまえも私はぜひ本音であっていただきたい。しかし、国民の側、受け取る側は、何といってもカーターの人道主義といわゆる
福田総理の南北固定化、分裂の長期化という考え方には大きな開きがある。この疑いはとれておりません。この違いが一体どこから来ているのかということを御質問したら、あなたは違いはないとおっしゃったが、国民の側はこういうふうに考えている。南北対立の固定化、戦争の危機をことさらに、いままだ緊張があるとおっしゃった。これは戦争の危機があるということだが、ことさらにそれを強調されるその陰には、次の二つの思惑があるというんだ。
それは何だ。一つは、米軍の撤退に伴い、韓国政府は韓国軍の近代化と軍備の増強を推進することは決まっている。これまたアメリカもそれを要求しているのですから増強いたします。これがわが国にとっては、わが国の財界や軍事資本家にとってはもっけの幸いなんだ。そこで日本の経済援助が必要になってくる、強く求められる。経済援助を強く求められる。この経済援助に日本の財界は踊って金もうけする。このために緊張をどうしても強く言ってやらなければならない。これが韓国と癒着する日本財界のたまらない魅力なんだ。対韓経済援助増大のために冷戦構造はどうしても必要であり、首相がそういう財界の意向を受けて、この南北朝鮮の緊張問題でまだどうも危機説などを流されているのではないか、そのためにカーターにひざを屈せられたのではないかというのが一つの見方。その具体例として、わが国の産業界、財界の一部には、軍需の拡大という観点から、武器輸出の禁止政策を再検討せよという声がずっと出ていることは、もう首相御承知のとおり。これはきょうやきのうの問題じゃありません。軍需産業を再建せよという声が出ている。わが国はこれ以上韓国に対して——これはもう韓国の米軍撤退、南北朝鮮の緊張、それに対する武器の輸出、こういうコースを歩みたいんですよ、マネーオンリーの社会は。これを歩きたい。しかし、そんなことでこれ以上韓国に対して安易な経済援助や軍事援助をわが日本が行えば、日韓両国の政治的、経済的癒着をさらに促進し、朝鮮半島の南北の対立を激化させるだけであります。
いまの日本と政府に、
福田総理、あなたに必要なことは、カーター政権にならって韓国政府に対し毅然たる態度をとり、朴政権の強権独裁政治、これをやめさせることです。日本から拉致せられた金大中氏の身柄を一応日本に取り返すことです。それからまた帰っていって入れたっていいじゃないですか。一番は日本に復帰させなければいけない。KCIAの日本国内における対外活動、これをやめさせることです。そして浪費に等しい賄賂の頂点となっているような韓国への経済援助や投資、これを画然と規制することです。そのためには中国やソ連や、アメリカはもちろんでありまするけれども、そういう国々とも指導力を握って、そして南北朝鮮が自主的に対話をし、統一する方向へあなたは努力をされること、これが私は日本の総理としてとるべき道だと思いまするが、これに対する御所見を承っておきたいと思うのであります。
-
○
福田内閣総理大臣 緊張が続くことを願う、これは私はそんな考え方は持っておりません。緊張が緩和されまして、そして平和的な統一が実現するということのみを願っておるわけでありまして、さればこそ共同声明でも言っているじゃありませんか。南北の対話が始まることを期待すると、こういうふうに言っておるのです。ただ、私は
小林さんみたいに雄弁でもありませんし、また声も大きくありませんものですから、そんな大きな声は出しませんけれども、私は私なりにひそかにいろいろなことを考えておる。私には私の行き方があるということだけをお答え申し上げます。
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○
小林(進)
委員 総理、あなたと私の中ではいまのお答えで理解がっくでしょうけれども、いまは総理と私の対談ではない。国民を前にしている談話ですからね。お互いに国民のだれが一番納得すん。いま国民は、あなたのお話では、まだまだどうも理解するに至っていないのであります。何しろ時間がないものでありまするから、私、これもネックにして次に残しておきます。問題を提起しておきます。
第三番目の問題を提起いたしますが、これは原子力の平和利用の問題であります。
核燃料再処理の問題について、首相は、日本は非核三原則を持っており、核はつくらず、蓄えず、持ち込まずは憲法以上にかたい国是である。しかし、核の平和的利用は日本には重要性がある、この処理を妨げられては困ると言い、この核処理の問題、使用燃料の再処理の問題について大変総理は会談の重点に置いて、あなたも直接言っておられる。カーター氏と二人になったときには主としてこの問題に重点を置いて話をしたと言っておられる。そして日本へ帰ってきても、日本がアメリカの意思に反してこの再処理を強行する気はないが、アメリカと両方の主張が入るような結論を出したい、こういうふうな執念をお持ちになっておる。
この問題について私は御質問いたしますけれども、現在、日本の使用済みの核燃料は一体どのように処理されているのか。これは総理にお伺いしたいのでありますけれども、どこか関係大臣にもひとつ……。
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○宇野国務大臣 現在は、わが国でその施設がございませんから、英仏にお願いをいたしまして、そして処理をいたしております。
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○
小林(進)
委員 敦賀の原発でできているのは英国に持っていっている。私も調べてみましたが、この日本から運んだものは英国ではそのままにほったらかしてあるそうですな。しかし、東海村ででき上がったいわゆる天然ウランの分は、これは英国へ運んで処理をして、これからプルトニウムが生産をされる、そのプルトニウムを日本に持ってきて、東海の動力炉・核燃料開発事業団で、高速増殖炉の開発の実験用にいま使われているとば、すなわち日本にはすでにプルトニウムが持ち込まれ、使用されているということになるが、これは私は大変だと思うのでありますが、それは事実かどうか。ひとつ御返答いただきたいと思うのであります。
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○宇野国務大臣 わが国においては、この夏から使用済み核燃料を用いましてプルトニウムの製造をしようか、それがホット試験でございます。したがいまして、現在ただいまはそうしたプルトニウムは製造いたしておりません。ただ、プルトニウムは実験用として所有いたしておることは所有いたしております。製造はいたしておりません。
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○
小林(進)
委員 これは重大問題だ。私は何も製造とは言っておりません。天然ウランをイギリスに運んだ。そのイギリスでプルトニウムを製造をしてもらって、それをまたイギリスから日本へ持ち込んできて、東海村で高速増殖炉の実験用に使用しておりますね、ということを言っているのであります。使用しているか使用してないかをお聞かせいただければよろしいのであります。
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○宇野国務大臣 御承知のとおりに、いまのウランはカナダから輸入いたしまして、アメリカで濃縮をして、それを使っておりますから、それを再処理に委託をいたしまして、その再処理に委託する場合に、米国との間においては協定がございまして、米国の許可を仰がなくてはなりませんから、日米原子力協定に基づいてそうした許可のもとにすべてが動いているわけであります。
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○
小林(進)
委員 だから、英国へ再処理に持っていったものの濃縮ウランの方の廃棄物は、廃棄物じゃありませんけれども、使用済みの分は英国でそのまま放置してあるけれども、いわゆる天然ウランの分はすでにプルトニウムをつくり上げている、そしてそのプルトニウムを日本に持ってきて東海村で使っておりますねということを言って取るのです。使っておるんでしょう、いま。現に入っているじゃないですか。
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○宇野国務大臣 高速増殖炉は現在実験炉でございますから、おおむね三百ぐらいはそこで使っておるわけであります。
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○
小林(進)
委員 それを言っていただけばよろしいのです。
委員長、この分だけ少し時間を食いましたから延ばしてください。こういうむだなことをやるから私は持ち時間がなくなって困るのだ。参議院方式ならこの心配は要らないのでありますけれども。
そこで、プルトニウムは日本にあるのですよ。もう入っているのですよ。そのプルトニウムが一グラムあれば百万人の人間に肺がんを起こす、この世で最も毒性の強い物質であるということなんです。これは私が言うのではない。ノーベル医学生理学賞の受賞者であるハーバード大学のG・ウォールド教授の権威ある発言なんです。こういう恐ろしいものがすでにわが国において使用されているというのだ。問題は処理の問題じゃないですよ。いまわれわれの足元にあるこの危険な問題を、一体どう国民にこれを知らせ、これを一体どう安全に保持するかというのが当面する重大問題なんです。何で一体いままで隠しておいたのですか。こんな恐しいものをなぜ隠しておくのですか。
総理はそういう原子力の安全を、あなたはその再処理の問題を大統領に懇願されるからには、安全性の問題についても十分考慮せられていると思うのでありますが、このプルトニウムというものはそんなに安全なものでありますか。
総理、時間がないから私は例を挙げて申し上げます。
日本は、プルトニウムだけではない、まだウランの処理その他、いわゆる核燃料に対しては技術を持っていないのですよ。日本のウランに関する安全その他は全部アメリカに依存している。東芝も日立もアメリカの技術を買っているのだ。だから美浜なんかでも、事故が起きたって手がつけられないのだ。アメリカに頼まなければどうにもならないのだ。故障の原因を解除する能力もいま日本には何にもないのです。さすがに西ドイツは、そういうアメリカの核技術、核燃料から独立をした。みずからその技術を開発し、そうして自主独立性を持ってプルトニウムの再処理の方式もいま手に入れた。そういうふうな西独に比べて、日本は何にも知識がない。ちょっと事故が起きても、はいアメリカさんと手を伸ばして頼まなければならぬわが日本が、そのプルトニウムという恐るべきものを、あなたは日本に再処理をさせてくれなどという願い事をするのは、私は足元を見失った大変間違った交渉の仕方ではなかろうかと思うのでありますが、一体この点はいかがでございますか。
ちょっと時間がありませんから、私が総理の啓蒙運動を兼ねて、プルトニウムというものがどんなに事故を起こしたか、私は例を持ってきましたから……。
プルトニウムに関して、すでにアメリカにおいて一九五八年一月に、ロスアラモス研究所において連鎖反応を起こして、臨界事故で三人が死亡している。一九六四年七月にも、ウッドリバーの工場で同じ事故が起きて一人死んでいる。一九五九年十一月には、オークリッジ国立研究所で爆発事故が起きて、実に五十グラムのプルトニウムが建物を突き破って大気の中にばらまかれておる。一グラムあれば百万人を殺戮するプルトニウムが五十グラム吹っ飛んだのでありますから、五千万人が、これは中国の言葉で言えばスーラスーラですが、殺戮をされるという、こういう事故が起きている。そういう問題をあなたは知っていられるかどうか知らないが、日本に核処理をさせてくれというふうな要求を、そんなに執念を持って交渉せられるというその真意は一体どこにあるのか。これもわれわれは疑わざるを得ないのであります。御所見を承りたい。
-
○
福田内閣総理大臣 わが国はエネルギーのほとんど全部をいま石油に依存しているのです。ところが、石油の将来の展望は非常に暗いわけでありまして、どうしても代替エネルギーの開発をしなければならない。そういう際に、まあ二十一世紀ごろになりますといろいろな代替エネルギーの開発もできましょうが、その谷間におきましては、どうしても原子エネルギーに頼らざるを得ない。そういう認識です。ところが、その原子エネルギーですね、これはウラニウム、その資源というものをわが国はほとんど持ってない。このウラニウムを大事にしなければならぬ。廃棄物ができた、それを再生利用するということを考える、これは資源に乏しいわが国として当然の考え方になる、こういうふうに私は思うのです。
私も、プルトニウムの危険性ということはよく承知しております。これはもう一番危険なことは、容易に原子兵器化する可能性を持っておるということです。まあそこに着目いたしまして、カーター大統領は、このプルトニウムの再処理、不要燃料の再処理を禁止しようじゃないか、こういう提唱になってくるのだろう、こういうふうに思いますが、私は、基本的な考え方としてカーター大統領のその考え方には賛成なんですよ。ただ、ですから私は、世間で言われておりますように、これから再処理をする国は再処理をしてはいけません、いままで再処理施設を持っておる国はよろしゅうございます。そういうようなことになったら、それは非常に不平等な事態になるんじゃないか、そういうことを申し上げておるわけなんです。
そこで具体的には、英国は一体どうするのです、ドイツはどうするのです、フランスはどうするのですと、こう申し上げる。そうすると、フランス、ドイツ、英国に対しましてもそういう交渉をいたします、こう大統領は言うのです。それはわかった。それじゃソビエトロシアは一体どうするのです、こういう話もしておるわけなんです。ソビエトロシアに対しましても交渉いたします、こういうことなんです。それから世界じゅうがそういうふうに平等に使用済み燃料の再処理はやめましょうということになれば、私は喜んでわが国もそれに従わなければならぬ、こういうふうに思いますけれども、わが国だけが不利な立場に立つというそういう行き方になることにつきましては、これは絶対に承服ができない、こういう立場を表明しておるわけであります。
-
○
小林(進)
委員 首相の後半のお話で、若干私の疑問も解けました。確かにおっしゃるとおりソ連はまだ再処理の技術はできておりませんけれども、これはやがてソ連もできてくるが、そのソ連が核処理の問題に勝手なことをやられたのでは、これは話にならぬ。おっしゃるとおり西ドイツはいまもうブラジルに工場を輸出しておる。再処理ではありませんけれども、核をカナダはインドに売っている。あるいはフランスはパキスタンに売っている。あるいはどこかの国がエジプトに売っているという。こういうふうに核拡散防止条約に入らない国々が皆勝手なまねをするときに、日本だけがどうもひとつ逆立ちしてみたところで問題の処理になりませんから、それはおっしゃるとおりです。総理のおっしゃるように、世界各国がやはり統一した行動をとる方向の中で日本の生きる道を見出していただきたい。その点だけは同感であります。
そこで、私は次にお伺いいたしますが、政府は核燃料処理問題について、二十九日、核燃料特別対策会議というものをお設けになった。政府の対米交渉団の派遣を早急に決めたいと言っておられるけれども、一体、団長及びメンバーは決まったのかどうか。これはどっちでもいいですがね。ただ、その第一回核燃料特別対策会議というものを、これは何か宇野
科学技術庁長官のもとにお開きになって、そこで国会筋にも働きかけた。国会としてもアメリカ議会に日本の立場を認識してもらうために、野党の協力を得て交渉団を送る方針を決めたとか決めないとかと書いてあるけれども、これが一体事実かどうか。事実とすれば、野党第一党の社会党といたしましては、これはきっぱりお断りいたします。きっぱりお断りする。はなはだ迷惑至極であります。それは言わぬでもわかりわれはここを通じて、核の安全性と、いかに核の危険防止をするかをわれわれは声を上げて叫んでいるじゃないか。そのわれわれの主張や国会の
審議を全く無視して、そうして何か再処理の機構でもこの日本につくってもらうようなそんな交渉に使われたら、まるでわれわれのいままでの主張を、これは泥でほっぺたをなでるようなものだ。無感覚もはなはだしいのでありまして、実際そんなことをおやりになったのかどうか、事実かどうか、私は宇野何とかという長官にお伺いをいたしておきたいのであります。
-
○宇野国務大臣 先ほどのお答えの中で、一言だけ私、つけ足しておきたいと思います。
それはプルトニウムは保有しておるというお答えをいたしまして、国民に隠しちゃいかぬというお話でございましたが、少しも隠さず、すでにこれは国際原子力機構のIAEAが三週間に一回ずつ参りまして厳格な計量の検査をいたしておりますので、その点お答えすることを忘念いたしましたから、つけ足しておきます。
なおかつ、対策会議が昨日の朝でございましたが、いろいろお話をいたしました。今日アメリカの議会におきましてもカーター大統領の新しい核政策がいろいろ議論されております。そうしてわが国といたしましては、もし伝えられるところのような再処理問題が万が一にも、新政策が実現することになれば、わが国の再処理に重大な影響を与えますし、そのことに関しましては、過般来、衆参両院の科学技術特別
委員会におきましても、与野党の先生方からいろいろと質疑を賜っております。そしてお答えいたしておりますが、与野党を通じまして、中には、しっかりやれというふうな御激励も賜っておる面もあるわけなんです。そういうふうなこともございましたから、したがいまして、アメリカの議会でも非常に関心が深い問題だから、これは政府がする問題じゃないが、党に諮ってもらっていろいろと御相談申し上げたらどうであろうかということを私は御進言申し上げました。
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○
小林(進)
委員 時間がありません。この問題でゆっくりお聞きする時間もありませんから先を急ぎますが、ともかく、今次この
予算審議において、一兆円減税、日韓問題にあわせて、核に関する質問が非常に重要な
審議の過程であった。核の安全性、核の危険性について繰り返し繰り返し質問し、警告を発している。その国会の声、国民の声を無視して、むしろこれをあざ笑うがごとく、こんな危険なものを日本で製造する交渉を命がけでやっておられるなんというものはいかにも国民感情を逆なでした行為だ、私は大変残念にたえませんが、総理のいまの御答弁を聞いて、そうでもないようでありますから、若干安心をいたしましたけれども、こういう誤解を国民の中にわかさないようにしてもらいたいと思う。
特に言葉を継いで言いますけれども、日本には現在十三基の原発があります。そのうち十二基はアメリカ製の軽水炉原発ですが、この十二基のうち、現在八基が定期検査の名のもとに停止している。これは皆事故なんです。運転しているものはたった四つしかない。浜岡原発、玄海原発、美浜三号、それから日本原電の敦賀原発の四基だけであります。耐用年数二十年というキャッチフレーズだが、もう原発は大体五年か六年使うと全部使えなくて、事故に続く事故で全部休んでいる。こんなむだなものをなぜ一体国費を浪費してつくらなければならぬのか。まあ、民間の会社と言ったって、ツケはみんな国民に回ってくるのであります。こういうむだなことをおやりになる前に、私は、原発政策というものは、なるほど核燃料のその必要性、欠乏性はわかっておりますけれども、それだからといって、十二基のうちの八基も休ませて国民の財産を湯水のごとく使うようなばかなことはやめて、スタートから考え直す必要がある、これが一つであります。
それからいま一つとして、いま総理のおっしゃった増殖炉や、いわゆる再処理工場は、世界的な管理機関を設けて、アメリカもソ連も含めようなことはやめて、世界の統一した管理機関の中にこれを設けるというふうに、私は、総理がそういう指導力を発揮して発想の実現に向かって邁進せられるべきものと思う。総理、簡単でよろしいのですが、決意のほどをひとつ承っておきたい。
-
○
福田内閣総理大臣 第二点の御質問でありますが、核再処理の問題は世界的合意のもとにおいてのみ行え、こういうお話でございます。私は、全くそういう考え方に賛成しているのですよ。ただ日本だけが置き去りだ、こういうことに抵抗を感じ、これに対しましては承服できないということでございます。
第一点の方は、
科学技術庁長官の方からお答え申し上げます。
-
○
小林(進)
委員 時間もありませんから、その決意を承っておけば結構であります。
時間があと十分しかありませんから、第四問に入ります。
核の軍縮につきましても、共同声明の中に核軍縮の問題があります。「首相と大統領は、最も緊急な課題である核軍縮への第一歩として、あらゆる環境における核実験が早急に禁止されなければならないことを強調した。」、これは私は、言葉としてはそれで結構だと思います。けれども、一体具体的にどういう話し合いをされたのか。言葉ではなくて、その裏の実行、行動を私は承っておきたいと思うのであります。
いま、世界で核の実験を最も強く推し進めている国はどこですか。あなたがお話しなさったアメリカじゃありませんか。ソ連じゃありませんか。この二つの超大国が核の競争をしたり、核の実験をしたり、それにあおられて世界はふるえ上がっている。やむを得ず、窮余の策としてフランスが実験をしたり、中国が実験をしたり、あるいはカナダが実験をしたり、インドが実験して怒られたりしているというこの状況なのであります。この核実験をもしあなたが本当に禁止するとおっしゃるならば、まずアメリカからやめてもらったらどうですか。米ソ超大国の間でこの実験をまず先にやめるべきだと言うくらいの自信と確信を持った会談が日米首脳会談の中に出てしかるべきだと私は思ったけれども、この共同声明の中にはあるが、あなたのその具体的な会談の内容が何も出ていない。残念にたえないのであります。これが一つ。
いま一つは、現在行われている米ソのいわゆるSALTIIの交渉であります。このSALTの交渉について、首相はアメリカに対して何か自分の意思表示をされたのか、されぬのか。そのままにしてこられたのかどうか。アメリカまで行かれたのなら、韓国の地上軍なんて吹けば飛ぶような問題に力を入れなくたって、いま世界がふるえ上がっているこの第二次のSALT交渉にこそ、原爆を受けた世界の唯一の国として、あなたの強い発言がなければならぬと私は思っているのでありますけれども、それがなかったというのだから残念至極なのです。いま、アメリカとソ連、この二つの国が持っている核兵器なんというものは、全人類を壊滅せしめてなお余りあるものなのです。これにみんなふるえているのですよ。これが世界に恐怖を与え、平和を乱している。この問題にあなたが触れられないというのは、全く首脳会談に値しない、事務官僚の話だとしか見れない。残念至極であります。
そこで、お伺いいたしますけれども、両首脳会談の中で、核実験禁止の問題に関連してSALT交渉を一体どのように持ち出されたか。持ち出されなければ、今後も、日本の総理大臣として、どうしてもこれを世界外交の中心に置いてやっていただかなければならぬと私は思うのでありますが、いかがでございましょう。
この問題につきまして、私が、SALT交渉のかつてのアメリカの責任者であり、核兵器軍縮
局長であったイクレー
局長、それから当時の国防長官シュレジンジャー等と会見いたしましたときに、二人ともこう言いました。SALTは戦略兵器の軍縮だと言っているけれども、実際は増強ですよ。片っ方が、おれの方は数が少ないからおまえのところまで数をつくると言ったら、片っ方は、いや、おまえのところは数あったって、おれのところは質が悪いから、今度は質をよくするわいと言って、質で競争、量で競争で、SALT交渉はまさに軍拡の競争であるということを残念ながら認めざるを得ないと言っていました。これが世界に脅威を与えているのです。この軍拡競争のSALTIIを日本首相の立場からそれこそ命をかけてやめさせる、こういう毅然たる姿勢と交渉がなければならぬと思いますが、いかがなものでございましょう、核軍縮の問題に関連いたしまして。
-
○
福田内閣総理大臣 小林さんは大変誤解されていると思うのですがね。私がアメリカとの間で話す政治的な最大の課題は何だと言えば、それは核廃絶を中心とした核平和ですよ。しかし、核の廃絶というものは、現実の問題としてそう簡単な問題じゃない。それへの段階といたしまして、まず、とにかく実験を禁止するということが現実的じゃないか。それからSALTの問題も、私は、いま
小林さんから話があったような話を、この間モンデール副大統領が来訪されたときもくどくど申し上げてあるのです。今度訪米した際にも、カーター大統領に対してSALTの成功を祈る旨の発言をいたし、カーター大統領は、あしたバンス国務長官をモスコーに派遣しますとまで言っておるわけでありまして、決して核問題について、私はこれを等閑視しているとか軽視しているとか、そんなことはないのであって、わが日本が世界に向かってできる最大の外交は、核廃絶その他軍備の縮小ということに向かって大きな発言をしていくことである、こういうふうに考えておるわけなのです。持たんとすれば持ち得る力を持っておる日本がそういうものを持たない、こういう立場ですから、わが日本は本当にそういう発言をする最も有力なる立場にある、そういうふうに私は考えております。
-
○
小林(進)
委員 もう時間が参りましたからこれ一問で簡単に終わりますが、総理の言葉にまだ反論もしたいのでありますけれども、時間がないのが総理の救いでございまして、第五問に移りたいと思うのであります。
日米首脳会談の中に、残念ながら世界の平和に対してお互いに責任を持つというビジョンが出てない。その結果、対安保、対ソ対策がにじみ出ているのであります。これは私だけじゃありません、東大の坂本教授なんかもそう言っておる。残念ながら、世界の平和、アジアに対する総理のビジョンが出ていない。
そこで、私は申し上げますけれども、本当に世界の平和というものは、国連憲章にもある、平和五原則にもある、民族の独立と国家の独立を他国の干渉なしに進めていくというのが平和への道なのです。原則なのです。それをあなたは、よその国の軍隊をよその国に置くのが平和への道だと考えているのかどうか知りませんけれども、アメリカの軍隊を韓国に置いてくれ、これがアジアの平和だ、アメリカの軍隊を日本の領土に駐とんせしめてくれ、これを懇願し要求することにあなたは終始してこられた。これは共同声明の中でずいぶん長いじゃないですか。アジア・太平洋地域、何でもアメリカのものを置いてくれ、これは平和のビジョンから見れば逆なのだ。民族のいかんを問わず、それぞれ独立国家として、他民族または他国家の干渉や軍事駐留を認めないところにこそ真の世界平和が樹立されるというのが国連憲章、平和の原則であります。経済大国としての日本はその方向に進むべきであるにもかかわらず、もしその平和の方向、原則を否定して、やはりアメリカ、おまえが日本に置いてくれなくちゃ日本はうまくいかぬわいと言うのならば、それは原則に対する例外だ。例外だから、例外としてアメリカのいわゆる軍事協定が必要だから、なぜ必要かということを、そのアメリカの軍隊を日本に駐留していただかなければならぬその原因、理由というものは明らかに国民に示さなくちゃいかぬ。あなたにはその努力が足りません。なぜ一体必要なのか。しかし同時に、やはり真の世界平和は、それぞれの各国が所を得て、他国の軍事基地なんか提供もしないし、いてもらっても困るのが真の平和であるならば、暫定的にアメリカに日米安保がありながらも、一方にそれを不必要とする平和の方向へ常時不変に努力というものは重ねていなければならぬ。その努力が、具体的に言えばいわゆる対ソ交渉であり対米交渉であると私は言うのです。何もおやりにならぬじゃないですか、あなたは。まずその積み重ねとして、日中平和友好条約なんというものはすぐやるべきです。ソ連だってそのとおりです。正当な要求があるならば、北方領土の返還なんて命がけでやったらいいじゃないですか。何であんなところで、あのソ連の軍事基地を北方領土につくったままにしておくのですか。しかも、きのうやきょうあたりはどうですか。ソ連は貝殻島も含めて日本固有の領土を四つの島をみんな取っちゃって、その周辺の二百海里もいわゆる専管水域にしておいて、そしてその中における日本の漁民の裁判権までよこせ、わが日本の憲法を否定し、わが日本の条約批准の規定もほごにして直ちに返事をよこせ。これは何ですか。これこそ大国の思い上がった姿勢ではないですか。私は、日米交渉、首脳会談をおやりならば、なぜこういう問題を話にされないのですか。いま日本が当面している一番現実の重大問題は対ソ関係ですよ。領土関係ですよ。日本の主権の問題であり、独立の問題であり、しかも日本の防衛の問題であり、安全の問題なんです。それを脅かしているのはソ連じゃないですか。何もアメリカへ行ってそれを懇願せいと言うのじゃないのです。けれども、ソ連がやはり四つの島を占領している。その言葉の裏には、サンフランシスコ条約によってこれはもう解決済みだと彼らは言っている。そのサンフランシスコ条約はだれがやった。アメリカが指導力を握ってやったのだからアメリカに責任なしとしない。少なくともそういうことの現実の事態を正しく理解せしめて、アメリカから理解をし、アメリカの責任もとらせるというのが私は日米首脳会談、日本の立場から言わせるならば私は一番重要じゃなかったかと思うのです。おやりになりましたか、総理。
-
○
福田内閣総理大臣 平和主義をを国是とする日本の国の歩む道というものは、世界平和が実現するまではこれはなかなか厳しいものだなとつくづく思います。しかし、そういう中でも、わが日本としては国益を踏まえまして全力を尽くしてまいります。
-
○
小林(進)
委員 ソ連との関係、いまの交渉の決意、答えてください。この二百海里の問題も含めていま当面の問題じゃないですか。どうされますか。
-
○
鈴木国務大臣 日ソ漁業交渉はただいま重要な両国の主張の隔たりによりまして難航をきわめてておりますが、いま
小林さんが御指摘になりましたような、私も同じ考えのもとにこれが打開に全力を挙げておるところでございます。
-
○
小林(進)
委員 時間が参りましたから、これで終わります。
-
-
○
上原委員 私は、わずかの時間ですから、主に今回の日米首脳会談における共同声明の第五項の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
そこで、最初に外務大臣にお尋ねをしますが、在日米軍の防衛区域と行動範囲は一致しますか。
-
○鳩山国務大臣 ただいまのお尋ねは、五項の西太平洋のお話でございますか。
-
○
上原委員 もう一度お尋ねしますが、在日米軍の防衛区域と行動範囲は一致するかということなんです。
-
○山崎政府
委員 在日米軍は、御承知のとおり、日本の安全を守るために、また極東の平和と安全に寄与するために駐留しておるわけでございます。そういう目的のためにおります。それが
上原先生のおっしゃる意味での防衛区域かと了解いたしますが、ただ、そういう防衛目的を達成するために在日米軍が行動する範囲は、必ずしもその極東の範囲には限られない。その目的を達成する限りにおいてはその防衛区域外に及ぶことはあると思います。
-
○
上原委員 これは非常に重要な問題を含んでいると思いますが、そうしますと、今回の共同声明の第五項において、いま外務大臣少しお触れになりましたが、初めて共同声明の中でアジア・太平洋地域というような表現が出てきているわけですね。これまでは佐藤・ニクソン共同声明あるいは三木・フォード会談、それ以前の日米の首脳の共同声明にもこういう表現は出てこなかった。そこで、私たちが日ごろから指摘をしてきたように、本来いわゆる安保条約第六条に規定されている在日米軍の施設区域の使用の問題とかあるいは防衛区域、行動範囲というのが沖繩返還を起点にして拡大をされてきたということが、軍事専門家あるいは私たち野党の一貫した指摘であり主張だったのですが、そのことがより定着をしてきた方向に進んでいると見て差し支えないと思うのです。
そこで、アジア・太平洋地域というのは、これは参議院の方でもいろいろ議論されて、政府の統一見解的なものが出されているわけですが、具体的に地域を言うと、どこどこを言うのか。アジア・太平洋地域に対する政府統一見解は、私が承っているところでは、東アジア及び太平洋地域を指す。きわめて漠然としているわけですね。一体、東アジア及び太平洋地域を指すということはどこどこの地域を指すのか。国名を挙げるとどういうふうになるのか。明確にしていただきたいと思うのです。
-
○鳩山国務大臣 共同声明の第五項の第三項のことをおっしゃっていると思いますが、ここで「今後ともアジア・太平洋地域に強い関心をもち、同地域において積極的かつ建設的役割を引続き果すことを再確認した。」、この文章におきまして「アジア・太平洋地域」とは、私ども東アジアと大洋州を指しておるものと観念をいたしております。そしてこの項は、建設的な役割りということで、これは軍事的な意味はここには入っておらないというふうに私は解釈をしておるところでございまして、一般にアメリカがアジア・太平洋地域、この地域に対しまして関心を持っておるということを表明をいたしておるところでございます。
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○
上原委員 それは少しおかしいですよ。大洋州を指すということは、大洋州を含めての範囲はどこどこになりますか、明確にしてください。
-
○山崎政府
委員 大臣からただいま御答弁がありましたように、われわれとしては、アジア・太平洋地域とは東アジア及び大洋州の両地域を指すものと了解しております。これははっきりした地理的概念でもございませんし、その場合場合によって必ずしもどこの国を指すかということがはっきりしているわけではないと思いますが、大体の概念としてとらえた場合に東アジア及び大洋州地域を指すものとわれわれは解し、アメリカもそのように解しているものと了解しております。
-
○
上原委員 どうして大洋州はどこどこを指すかということに対して、そう漠然としたお答えしか出ないのですか、政府は。太平洋地域にはミクロネシア、そういうのも入るのかどうか。これは明らかにしていただきたい。大洋州というのは一般概念としてオーストラリア、ニュージーランドを含む太平洋地域を指すのか、この点明確にしてください。大臣が答えてくださいよ。
-
○山崎政府
委員 大洋州地域というのはもちろん豪州、ニュージーランドを含む地域でございます。
-
○
上原委員 太平洋地域にはミクロネシア諸島も含むのですか。何遍聞いたらお答えになるのですか、西太平洋地域。
-
○鳩山国務大臣 別に、特にここで排除をするという必要もないと思っております。
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○
上原委員 排除もする必要がなければ、なぜ素直にお答えにならないですか。西太平洋地域というのは、米軍のいろいろな軍事資料などを見ますと、日本、朝鮮半島、台湾、フィリピン、マリアナ、太平洋地域あるいは第七艦隊が行動をする範囲というような規定もあるわけですね。こういうふうに見ていいわけですか、ここで言う西太平洋地域。それにミクロネシアは入るのか入らないのかということを私はお尋ねしているのです。
-
○山崎政府
委員 西太平洋という概念につきましては、この間外務大臣から御答弁もございましたように、ハワイより西側の米軍が存在している太平洋の地域でありまして、これは洋上を含むというふうにわれわれとしては解しておりますが、これはまあそういう軍事的観点からとらえた概念でございます。
ただいまミクロネシアが入るのか入らないのかというお尋ねがございましたが、この共同声明で軍事的存在というふうな観点でこの西太平洋というものを申しておりますので、その観点から申しますと、まあ米国が現在信託統治下に置いているミクロネシアは、第一義的には入らないのではないかというふうにわれわれは解しております。この点は、たとえばグアムについても同様でございます。
-
○
上原委員 いまのようなあいまいとした御答弁では、総理、これは国民はなかなか理解しにくいのですね。それで、私はきわめて重要な面があると思いますが、時間がありませんので……。
たとえば第五項の後段では「大統領は、米国が、太平洋国家として、今後ともアジア・太平洋地域に強い関心をもち、同地域において積極的かつ建設的役割を引続き果すことを再確認した。大統領は、米国がその安全保障上の約束を遵守し、西太平洋において、均衡がとれ、かつ、柔軟な軍事的存在を維持する意向である旨付言した。」。これに対して総理は「米国のかかる確認を歓迎し、日本がこの地域の安定と発展のため、経済開発を含む諸分野において、一層の貢献を行うとの意向を表明した。」。したがって、今後は米国のかかる確認を、いわゆるアジア・太平洋地域における安全保障上の約束を遵守し、西太平洋において均衡がとれた軍事的存在を維持する意向である。これを歓迎をして、日本も経済的発展を含む諸分野において、この地域の安定と発展のために貢献をするね。したがって、日本もアジア・太平洋地域において役割りを果たしていく。今回の共同声明で出たいわゆる政治的役割りの重みということが非常に強調されてきたのですが、一体ここで言う、この地域の安定と発展のため経済的発展を含む諸分野において一層の貢献をする、この具体的な中身はどういうことをお約束なさったのですか。総理の方から明確にしてください。
-
○鳩山国務大臣 文章上のことでございますから、一言御説明をさせていただきます。
この第三項に述べております「西太平洋において、均衡がとれ」、この文章は、大統領がここで付言をされたということになっておりまして、これはその前の文章「アジア・太平洋地域に強い関心をもち、積極的かつ建設的役割を引続き果すことを再確認した。」、総理大臣はその確認を歓迎をしたということでございまして、この総理の御発言、歓迎をし、「この地域の安定と発展のため」という文章は、この付言の部分は受けておらないのでございます。文意上そうなので、その点は、米国が軍事的な活動につきましても諸約束を守るということが間に入っておるのでございますけれども、それは先方が付言をされたのでありまして、その確認をしたことというのは、その一つ前のセンテンスであるということ、これは参議院でも御説明申し上げたのですけれども、どうも文章が、ここに付言がちょっと入ってしまいましたので、日本と軍事的な問題との結びつきが非常に強くなるように読めますけれども、そういうことの会話ではなかったわけでございます。それはひとつぜひとも、文章が余りうまくないのでありますけれども、そこはくれぐれもひとつそのように御理解を賜りたいのでございます。
-
○
上原委員 そんなあなた、天下の総理大臣と一国の最高責任者がいろいろ会談をなさって発表した共同声明が、文章が余りできていないから何とか理解をしてもらいたい、そういうことで通るものでないですよね。第五項の問題はいろいろ、先ほど言いましたように——そうしますと、この太平洋地域における米軍のいわゆる軍事行動、防衛範囲というものは拡大をされていっているわけですね、実質問題としては。そこが問題だということを指摘をしておきたいと思います。
そこで、時間がありませんから、この五項の関連と、先ほど
小林先生の質問にもあったのですが、在韓米軍の撤退問題との関連において、六九年の日米共同声明における韓国条項ですね、総理からこれはお答えいただきたいのですが、いわゆる沖繩返還のときの「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく、」というのがあるわけですね。そして、特に佐藤元総理のナショナル・プレス・クラブにおける「特に韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従って、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」。これは明確になっているわけですね。一体、今回の朝鮮条項と言われる場合も、わが国の米軍基地の使用の問題と事前協議に対しては、ここでうたっているのと同じ認識で会談なさったのか。また、今回の朝鮮条項というのもこういう基本認識を踏まえてのものであるのか。この際、明確にしておいていただきたいと思うのです。さらに、違いがあればどういうところが違うのか、この点も明らかにしてください。
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○鳩山国務大臣 先ほどの御発言で、やはり文章上の誤解があるようでございますから申し上げたいのでございますが、第五項でございますが、第二パラグラフのところで、これは日米の安保条約関係のことを言っておるのであります。そして第三項は、アメリカがその他の地域につきまして引き続いて約束も果たすんだ、こういうことを言っておるのでありまして、日米の安保条約がこの西太平洋ということとはこれは別のことを言っておるのでありますので、その点だけは誤解のないように、絶対に広がったわけではないのであります。
-
○
福田内閣総理大臣 佐藤・ニクソン両首脳の会談の結果、朝鮮半島には緊張がある、その認識におきましては、今回も私はそういう認識を持って臨んだわけであります。ただ、当時の共同声明は、当時の佐藤総理の認識を述べたものである。今回は私の認識。緊張はあるけれども南北に対話があることは好ましい、平和統一を目指したい、こういう認識。緊張はあるけれども、その緊張のある朝鮮半島に対する対処の仕方、これは大変違ってきておる、私はこういうふうに思います。したがって、朝鮮半島で武力紛争というようなことは、よもやあるまいというふうに思いますが、万一そういうような事態があった場合に、わが国の基地から米軍が出動したい、そういう要請がある、その仮の場合におきまして、わが国が対応する姿勢、それは事前協議に対する回答として、その時点における日本の国益を踏まえまして、イエスと言う場合もあるしノーと言う場合もある、そういう考えでございます。
-
○
上原委員 そういう御答弁は何度か繰り返されてきたわけですが、念を押すようで恐縮ですが、そうしますと、いまの
福田内閣の姿勢も、事前協議に対しては前向きかつ速やかに態度を決定する方針である。この基本認識に立って今回の共同声明も発表なされ、かつ韓国に対する対応もそういう姿勢だということですか。
-
○
福田内閣総理大臣 その点につきましては、当時、この
委員会で皆さんの方から質問があって、佐藤総理が多少答弁を修正したんじゃないか、そういうふうに思います。つまり、国益を踏まえて、イエスと言う場合もあるしノーと言う場合もあるということを意味しておるんだ、あのプレスクラブにおける演説はそういう意味である、こういうふうに申しております。
-
○
上原委員 釈然としませんが、どうもそこいらのくだりについては明白でないということを指摘しておきたいと思うのです。
それといま一つは、そもそも韓国に駐留する陸上部隊の撤退というものは、韓国に存在している戦術核兵器の撤退問題が持ち上がって、地上軍の撤退というものも大きくクローズアップされてきたわけですね。今回の会談においては、戦術核の撤去という、たとえば先ほどもわが国の国是として核軍縮を大いに進めていくんだ、軍備は拡大していかないんだということを強調したというのですが、そうであるならば、核問題に対する疑惑というものを解明するということが
福田内閣の最も重大な政治課題でなければいかないと私は思うのですね。私もせんだって本
委員会で取り上げました。戦術核兵器の撤去の問題については、在韓米軍の撤退問題と関連させて全然協議なさらなかったのか、その点を明確にしてもらいたい。
それともう一つは、総理も会談後ナショナル・プレス・クラブにおいて、在韓米軍の撤退によって在日米軍基地とかあるいは日本の防衛力には一切影響を与えないのだという記者会見をなさっているわけですね。これも総理のおっしゃっていることは非常に矛盾をする。もし何の影響もないというのであれば、カーター大統領があれだけ撤退だということを主張しておられるのに対し、総理は非常に撤退ということにこだわって、削減ということを最後までやったのだけれども、とうとう振り切られたということになっているわけですね。在日米軍基地に対して影響がない、あるいは日本の防衛力整備について影響がないというのであれば、何も撤退とか削減とかにこだわる必要はないと思うのですね。これはどうなのかということ。
さらに、私はせんだって指摘をいたしましたように、私は、沖繩返還を起点に、日米安保条約の内容あるいは事前協議を含めて、基地の使用の問題が全く形骸化されてきたと思うのですね。その意味で、在韓米軍の撤退問題との関連において、沖繩基地を中心にすでに重大な変化が起きている。これについては防衛庁なり外務省はどういうふうにとらえておられるのか。たとえばすでに在沖米海兵隊とそれに海兵隊の第一航空団、さらに第五空軍隷下の第十八戦術戦闘航空団などが、有事にどのような程度の、そこを舞台としての機能なり任務を果たし得るかということで、三月下旬から四月に入って韓国軍と大規模な合同演習を行っている。在沖米軍も海兵隊も空軍も、その点は明確にしているわけですね、やっているのだと。ただそれが在韓米軍の撤退であるということまではコメントはしておりませんが、こういう動きが現に出ているということ。これなどは、明らかに私がせんだって本
委員会で指摘をいたしましたように、アメリカの議会においてはすでに、在韓米軍が撤退した場合に、在日米軍基地、特に沖繩の海兵隊はどのような機能を果たし得るかということは綿密に計画しながら今日の事態を迎えているわけですね。それを知らされていないのは、わが国民だけなんですよ。これではいけないと私は思う。ここらについてもっと明確にしてもらいたいということを私はあれほど要求をいたしましたが、そういう点はどうなっているのか。総理がプレスクラブでわざわざ、在韓米軍の撤退は何の影響もないのだと言ったのとはうらはらに、在沖米軍なり在日米軍の基地においては重大な影響を及ぼしてきている。ここいらの認識について、政府はどのように整合性のとれた説明を国民になさるのか。もう少し明確にしていただきたいと思います。
-
○鳩山国務大臣 ただいま三月から四月にかけましての合同演習のお話がございました。わが方は、在京米国大使館を通じまして、チームスピリットという演習名の通常の統合合同軍事演習が西太平洋において行われるということを承知しておりますが、なお詳細はアメリカ
局長からお答え申し上げます。
-
○
福田内閣総理大臣 韓国における核兵器ですね、この問題については今回の会談では話に出しておりません。モンデール副大統領が参りましたときの話には、アメリカのすべての在韓米軍の中で撤退になるのはどこかと言ったら、地上軍だけである。こういう話でありましたので、特に核の問題には触れなかったわけであります。
それから、撤退という、あるいは削減という、私は削減の方がいい、こういうふうに思ったのです。というのは、いずれにしても一時に地上軍を引き揚げるわけじゃないのでありまするから、それは日本語とすると削減と言った方がいいんじゃないか、そういうふうに思ったわけでありますが、実態はそのとおりだ。しかし、アメリカの大統領が選挙中撤退という文字を使ったので、撤退というその言葉を使わせてもらいたい、こういうことであります。
それから、私がナショナル・プレス・クラブで、在韓地上軍の撤退はわが国の自衛隊の増強、またわが国における米軍の行動、そういうものに影響があるかと言うから、影響はない。それは、いずれにいたしましても、カーター大統領は、地上軍の撤退は韓国軍の強化と見合いながらこれを行う、こういうふうに言っておりますので、わが国の立場に影響するはずがない、こういう趣旨のことを申し上げたわけであります。
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○
上原委員 そうしますと、念を押すようで恐縮ですが、韓国に存在すると言われている戦術核兵器の問題についてのお話し合いはなかったということですが、核軍縮なり核兵器絶滅ということを総理は非常に強調しておられますが、そのことは、本心からそうおっしゃっているとするならば、当然、核問題については、沖繩基地を含めてまだ多くの疑惑が残されているわけなんで、韓国からの戦術核の撤退というものもあわせてやるべきだということを私は要求していいと思うのですね。これからもその御意思はないわけですか。
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○
福田内閣総理大臣 それは米韓間の問題ですから、私どもが積極的にそれに発言するということはいかがであろうか。また、発言いたしましても、アメリカはこれには答えませんよ、核がどこにどういうふうになっているかということについては言えませんということを言い張ってきておるよ、ありまするが、わが国に対しましてはそういうふうに言い張ってきておりますので、私が仮にそういうことを言いましても、これは答弁の限りではありません、こういうことだったろうと思います。
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○
上原委員 そこいらに
福田総理の核問題に対する認識が浮き彫りにされていると私は思うのですね。沖繩返還は核隠し、
福田内閣は核つきではどうにもならぬじゃないですか。
そこで、いまそういうことはおっしゃらないと言いましたが、せんだって私が、沖繩基地に核が再搬入されたんじゃないのか、あるいはまだ存在しているんじゃないかと言ったことに対して、バンス国務長官に外務大臣はその正式ルートを通して問い合わせをした。いま総理のおっしゃることと矛盾するんじゃないです。おかしい。
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○鳩山国務大臣 ただいまの御指摘の沖繩に核が持ち込まれたのじゃないか、こういう点になりますと、これはわが国としても重大問題でございます。それは、いま総理がおっしゃいましたことは、核の所在を明らかにできないという先方の立場もわが方としては理解をしておるところでありますけれども、私は、バンス国務長官との会見の際に、この点につきまして次のような応答によりまして確かめたわけでございます……(
上原委員「いいです」と呼ぶ)よろしゅうございますか……。
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○
上原委員 時間がありませんので、その回答については、文書で正式に回答させてください。
委員長、よろしいですね。
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○鳩山国務大臣 これは会談の内容になりますので、実態的にほぼ変わらないものをお届けしたいと思いますが、直接の先方との文書ということでなしに、そのような御要望の点を明らかにしたものをお届けいたします。
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○
上原委員 そこで、この点については、実は先日も非公式には御返答があったのですが、私はまだ納得しないのです。と言いますのは、従来、核の存在ということを指摘してもなかなか基地の点検もなされない、査察もされないままに今日まで来ているわけですね。したがって、時間が来ましたので、総理、御検討いただきたいのですが、カーター大統領も、核問題については例の燃料処理の問題を含めて非常に積極的な姿勢を示しているわけですね。そして、今日
福田内閣も、あるいは非核三原則を遵守するとかいろいろなことを強調しておられる手前、核の疑惑については基地の立入調査を含めて明確にしていくという姿勢を確立すべきだと私は思うのです。これを本当にやるならば、私たちもそれなりに、米側の言い分もあるいは信頼できるかもしれません、日米間の高度の政治的な話し合いで出てくる共同声明なりも信頼するに値するかもしれませんが、疑惑を残したまま、ただ外交ルートを通しての回答だけでは納得できません。こういう方向に少なくとも日本政府としてはアメリカ側に強力に申し入れる必要がある、そういう段階に来ていると思うのですが、今後御検討いただけますね。
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○鳩山国務大臣 日本は安保条約によりまして基地を提供いたしておるわけでございます。したがいまして、立入検査というようなことはいたすべきではない、このように考えております。
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○
武藤(山)
委員 最初に、通告はしてないのでありますが、農林大臣にお伺いをいたします。
ソ連との漁業協定の締結ができないで、長引きそうである、そのために水産庁は、出漁している漁船はあすじゅうに母港に戻るように、こういう指令を出したと報道しておりますね。こういう状態になって、水産業界及び加工業界は大変な損害を受けておると思うのです。現に、三十日に母港に戻ってきたときに船の魚の量はがくんと減るのだろうと思うのです。一体損害はどのくらいになると見込めますか。
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○
鈴木国務大臣 三月三十一日までにソ連二百海里の域外に引き揚げるようにということを関係業界と協議をいたしまして指示をいたしておるわけでございます。これは交渉が三月三十一日までに妥結をいたしましても、四月一日以降は新たな能勢で出漁しなければならないわけでございます。許可証を交付する、あるいはまた交渉におきまして一〇〇%の実績を確保するということはなか九か至難でございますから、そういたしますと、減船の問題も起こっております。また漁獲量の割り当て等の問題も起こります。したがいまして、この交渉が長引くと否とにかかわらず三月三十一日までには帰ってくるように、こういう指示をいたしておるところでございます。
ただ、三月三十一日までにぜひ妥結をすべく全力を挙げておるわけでございますが、それが妥結に至らないということになりますと、まとまるまでの間国内の港に滞留する時間が若干かかる、こういうことになることは事実でございます。私は、ニシンのように漁期が決まっておりまして、その漁期を逸しては今年度の漁獲ができないというものにつきましては、これは決定的な損害というような事態になるわけでございまして、救済措置等は十分考えなければならない、こう考えておりますが、年間を通じまして操業いたします漁種、そういう漁業につきましては、割り当てが決まりますれば、年間で漁獲をいたすわけでございますから、私は、直ちに損害補償等の問題は起こらない、十分業界と話し合いをしながら対処してまいる考えでございます。
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○
武藤(山)
委員 そうすると、農林大臣、このソ連の二百海里の設定や、そこから締め出しを食っても、一年を計算すると、漁獲量は協定がやがて結ばれるからさして損害は起こらない、漁獲量の減少は、ソ連が今回の措置をとってもそうはない、そう理解すべきなのか。毎日、テレビ、新聞で北海道の漁民が大変心配をして大会を開いて、もう漁獲量が減ってしまうということについても。本当に心配しておる。では、ソ連の二百海里設定と今回の漁業協定の締結の長期化による損害というのはないと理解していいのですか。
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○
鈴木国務大臣 まだ不幸にして妥結に至っておりませんから、関係漁民が大変不安と動揺を受けておる、この事実は私も身にしみるほど承知をいたしておるわけでございます。しかし、先ほど申し上げたように、漁期を逸するであろうニシン漁業につきましては、これは今年度の漁獲は、たとえ割り当てが決まりましても取り返しがつかない。しかし、その他の魚種につきましては、毎年しけその他のことで操業を停止することもございます。年間を通じてのトータル、決定した漁獲量は確保できる、私はこのように考えております。
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○
武藤(山)
委員 そうすると、水産業の雇用の問題あるいは水産関係の関連加工業の漁獲高減少による収入減、そういうようなものを農林省としては全然まだ試算はしてないのですか。そういう減少はないと——それじゃニシンの場合はどのくらい減少になって収入減になるのですか。
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○
鈴木国務大臣 ニシンにつきまして、資源状態が非常に悪化をしておることは事実でございます。オホーツク海域におきましては、ソ連自体も昨年の八月から全面禁漁にいたしておるという報告も受けております。ただ、北海道沖並びに樺太の西海岸、西海域におきましては、資源状況はそう悪化をいたしておりません。昨年程度の資源は存在しておる。これは資源評価におきましても、おおむね日ソの間の評価が一致をいたしておるわけでございます。この海域におきまして、日本は二万トン余の漁獲をやっておった、こういうことでございます。
そこで、この妥結の時期がいつになるかということによりまして、また、二百海里の域内でございますから、ソ連の割り当て量がいかように決まるかということでないと、最終的にどれだけの減収になるか、どれだけの損害になるかということは、いまの時点では申し上げる段階にございません。
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○
武藤(山)
委員 農林大臣、これは素人が考えたって、もうかなりの減収になることは予想できるわけですね。たとえば、三十一日に母港に戻れという指令が出ただけでも、せっかく魚をとりに行った三百隻の船が途中で引っ返してくるわけですからね、これだけだって大変な損害ですよ。そうでしょう。漁民は全然損害ないですか。
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○
鈴木国務大臣 その問題は、先ほど申し上げましたように、この交渉が所期のように三月三十一日までに妥結をいたしましても、今度は新たな態勢で操業に入らなければならない、こういう転換期でございますから、どうしても削減された漁獲量の枠内で漁船の減船というものもやむを得ずやらざるを得ないということも起こってまいります。また、新たに二百海里域内に入りますための許可証等の交付をする、そういう問題で手続的に時間もかかるということで、三月三十一日までに妥結すると否とにかかわらず、一遍はやはり帰港をせざるを得ない、こういう状況に相なったわけでございます。
交渉が長引いたことによりまして、若干その休漁期間が延長するであろうということを、私は非常に頭を悩ましておる、また、それに伴いまして一時期、休漁によって漁獲ができないことでございますから、加工業者その他が原料の確保等に支障を来す、そういう問題もございます。しかし、漁獲量が新たに決定をされますれば、年間を通じてその漁獲量は十分確保できる。日本としては取り戻すだけの操業の実力を持っておる。こういうことでございまして、年間を通じての漁業経済に、トータルとしてどういう影響があるかということにつきましては、いまの段階では、はっきりここで御報告申し上げる段階にないわけです。
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○
武藤(山)
委員 時間が一時間しかありませんから、こればかり論じているわけにいきませんが、私が言いたいのは、入る魚が入らなかった、予想が外れたために、かまぼこ業にしても、あるいはミール企業にしても、操業がかなり落ちてしまう。その収入減を国がどう援助するのか。補助金で出すのか、あるいは雇用保険の適用をする場面も出るかもしれない、融資の場面でめんどうを見なければならぬかもしれない。そういう問題の万般を、やはり国家間の交渉、国家間の出来事によって起こる現象なのですから、国は思い切ってそういう援助措置を講じなければならぬというのが私の言いたい点なのであります。そういう点については、国は万全の措置をとりますか。
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○
鈴木国務大臣 この問題につきましては、まず第一に、三月中の操業をやめることにいたしましたニシン漁船、これは三月中の漁獲収入を当てにしまして購入した漁網代であるとか、あるいは漁具代であるとか、あるいは乗組員に対する賃金の前払いであるとか、そういうものを手形その他で融資を受けておるという事情もございますので、そういう点につきましては、直ちに支払いに支障を来さないように関係機関に指導いたしまして、御協力を願って処理をいたしておるところでございます。そして最終的にニシン漁業の今年度における操業が確定をいたしました時点で、どれだけの損害が起こったかという場合におきまして、全体としてその救済対策を講じてまいりたい。その際、三月中の融資をいたした分も含めましてその対策を講じてまいりたい、こう考えております。
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○
武藤(山)
委員 総理大臣にちょっと感じを伺いたいのでありますが、今回ソ連のとっておる態度、二百海里の魚はソ連のものである、しかし、日本の十二海里の中でイワシをとりたい、こういうわがまま勝手な主張をテレビ、新聞を通じてわれわれは知っているわけですね。こういうソ連のかたくなな態度、強引なやり方はまさに大国主義、覇権主義、こう思われても仕方がないと思うのですね。それはアメリカにもそういうちょっとした共通性がある。カラーテレビの輸入規制をする。今度は財務省に、鉄鋼についてもダンピングのおそれありと、きのうあたり報道されておる。どうもアメリカ、ソ連のやり方というのは大国主義、そういう自分自身の言うことは何でも正しいのだといううぬぼれ、こういうものを感じてならぬのであります。総理大臣は、両国の最近のこの動きについて、どんな感じをお持ちですか。
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○
福田内閣総理大臣 この漁業交渉におけるソビエト側の言い分、私は、これはまあずいぶん行き過ぎた言い分をしているなあという感じがしてなりません。しかし、いませっかく交渉中でありますから、細かい具体的な問題に触れることは避けます。
それから、アメリカが、テレビだとかその他のことについていろいろのことが行われている。これは私は、別に大国主義だとかあるいは何か不当なことをしているというふうには思いません。アメリカの国内法に従っての措置がとられておる、こういうことでありまして、これはわが国においても、何か問題があるという際に国内法を発動するということは、これはあり得るわけでありまするから、これは別に気にとめておらない、そういうことであります。
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○
武藤(山)
委員 日米共同声明の全文の中にはカラーテレビの規制という具体的な個所はありません。しかし、新聞の報ずるところによると、
福田総理は、カーター大統領との首脳会談の最初の日ですか、三月二十一日に会談をした際、カラーテレビの対米輸出規制を要求された、こういう新聞報道がありますが、カーター大統領から、カラーテレビの日本の輸出について規制をしなければならないような意向をほのめかされたのですか。
-
○
福田内閣総理大臣 カラーテレビ問題につきましては、大統領も大変関心を持っておりました。そこで、ごく軽く、まあ一言というくらい、日米貿易のアンバランス、昨年の問題です、これに触れまして、それは深入りはしませんが、カラーテレビの問題、これは弱ったものです、こういうような発言があったわけです。これはアメリカの国際通商
委員会におきまして、日本からのカラーテレビ輸出に対しましては、二五%の関税の上積みをすべしという決定が行われたわけなんです。これはいつでしたか、数日前です、その決定が大統領に報告をされたわけです。大統領はその報告を受けますと、二ヵ月以内に政府としてその報告を踏まえての決断をしなければならない、こういう仕組みになっておる。そういうさなかでありましうふうに思いますが、私はそれに対しまして、昨年のわが国からアメリカへのカラーテレビ輸出、これはまさに異常なものがあった、それは理由があるのです、アメリカでカラーテレビに対するストックが非常に枯渇した、そこへ世界の景気がよくなり、したがって、アメリカの景気もよくなって、アメリカ国民の中に購買力ができた、そこでわが国のカラーテレビが集中豪雨的に輸出された、そういう特殊な事情がある、しかし、特殊な事情があるにしても、私はそういう事態は非常に心配しておりまして、かねて業界に対しましては警告をしておった、業界におきましても反省の傾向を示しており、五十二年、ことしはもう去年のような、二百七十万台もアメリカだけに日本のカラーテレビが輸出されるというようなことはもうあり得ません、こういう話をしたのです。大統領は大変その話にうなずきまして、それでは、この問題は日米政府間において話をさせることにいたしましょう、こういう応答であったわけでありまして、私はその会談からの印象といたしましては、この日米間のカラーテレビ問題、これは両方が満足し得る形、これは必ず見出し得る、そうぎしぎしした形でなく解決されるという印象を強く深めて帰ったわけであります。
-
○
武藤(山)
委員 いまの総理の見解では、まあ政府間で話し合いをしましようや程度の軽いことであって、政府間協定を結んで数量を決めたりもしくは関税率を二〇%のむなり、そういうきちっとした結論まで出す必要はない、自動的に自然と輸出の量がことしは減る傾向であるから、このまま政府間で様子を見ながらただ話し合っている程度でよろしい、協定まで結ばなくもいいと、いまの答弁では、その程度の軽い気持ちの話しかなかったという理解を私はするのですが、そうなんですか。
-
○
福田内閣総理大臣 この問題はそんな簡単な問題じゃございません。これは日米間で話し合って、何らかの秩序ある両国間の輸出入関係というふうに私は思いますが、いずれにいたしましても、これが繊維交渉のようにああいう紛糾をしまして、なかなか、両国の間がぎしぎしするとか、そういう発展にはならぬ、両国並びに両国国民が大体満足し得るような形の結論が出し得る、そういう見通しであるということを申し上げたわけであります。
-
○
武藤(山)
委員 福田首相はカーターと話し合って、カラーテレビの輸入が多過ぎるという話をかけられた。それを何らかの規制をしなければならないと、そう認識をした。そのアメリカの主張というのには正当性があると思ったですか。アメリカがそういう輸入制限をするような態度というものは正当性があるとそう認識されましたか。その根拠は何ですか。
-
○
福田内閣総理大臣 アメリカにはアメリカといたしまして国内法があるのですよ。(
武藤(山)
委員「わかっています」と呼ぶ)その国内法に従って提訴が行われ、そして国際通商
委員会が結論を出した、その結論が大統領に報告された、こういうのですから、アメリカの大統領としては当然何らかのこの措置をとらなければならぬ立場にあるのですが、そこは大統領、日米間ということを考慮いたしまして、そういう処置をとるにいたしましても、事前に日米間で話し合い、そして両方が満足し得るような形で円滑に処理したいという気持ちがありありと見えたということを申し上げているわけです。
-
○
武藤(山)
委員 それはだから、アメリカのエゴじゃありませんか。共同声明の中にもありますように、「両者は、世界経済の健全な発展のためには自由な世界貿易体制が緊要であることにつき意見の一致をみ」たというのでしょう。自由貿易体制こそ世界経済を発展させる唯一の道だということの意思統一がなされておって、それと相反する輸入制限ということは世界の貿易政策に反するアメリカの態度ですよ。アメリカの横車ですよ。これは
福田さんは、かなり集中豪雨的でこうで、長い目で見てもらわぬと困るということで抵抗線を張ったのが新聞記事にありますよ。だから、アメリカの言い分は正当性ないのですよ。アメリカのエゴなんです。そういうもので世界貿易をリードされたら、いままで言ってきたアメリカの開放体制経済、自由貿易経済、ケネディ・ラウンドによる一括関税引き下げ、東京ラウンドの実施、そういう開放体制、自由経済体制というものを推し進める上においては、アメリカの今回とった態度は、
福田さんに要請したカーターの態度は、世界のそういう体制に反するんじゃありませんか。矛盾するんじゃありませんか。どうですか。
-
○
福田内閣総理大臣 アメリカも日本も自由貿易体制を堅持したい、そういう基本的な方針をとっておるのです。かるがゆえに、アメリカといたしましては、また日本もそうでありますが、話し合いで解決いたしましょう、こういうことなんです。ちっとも矛盾するところはない。むしろ、これをぎしぎしした貿易戦争みたいなことにしちやいかぬ、こういうことで、ひとつ話し合いで万事解決いたしましょうよ、こういうので、自由貿易体制の路線を守るという姿勢をとっておるもの、こういうふうに理解しております。
-
○
武藤(山)
委員 総理、その自由貿易というのは、日本の商社なり日本のメーカーからテレビを買いたいと言って注文をしてくるのはアメリカでしょう。アメリカの業者でしょう。企業でしょう。法人でしょう。だから、アメリカで欲しいから注文が来るんで、日本が無理やり持って行って街頭でダンピングしておるわけじゃないんでしょう。そういうものを急にブレーキをかけようとすることは自由貿易体制に反するんじゃありませんか。それはアメリカは失業者が出てアメリカのカラーテレビ会社が少々困るからと言ったって、それは理由にならぬでしょう。日本の場合どうですか。コカコーラやペプシコーラが日本に上陸して、日本のラムネやサイダー会社が困る困ると言ったって、大資本に押しまくられて百二十三社もつぶれちゃったんでしょう、日本は。ラムネやサイダーの小さい会社はみんな。それは自由主義経済の法則ですよ。だから、私はアメリカが大国主義だというのは、そういう手前勝手な理屈をくっつけて国内貿易を保護するために日本みたいなこういう貿易国家に損害を与えるような態度をとることは大国主義だと思う。余りにも手前勝手で、それだったら初めから開放体制だとか自由貿易主義だなんということを共同声明の前段なんかにうたわなければいいんですよ、そういう制限をしたいのなら。まことに卑屈なやり方ですよ。そして総理とそういう意見が一致して自由貿易体制でいきましょうと言っておきながら、最後の九項目では今度は少し日本を縛っておくようなことを、「両国間の貿易、漁業及び航空問題を討議した。両者は、日米両国間で懸案となっている事項につき相互に受け入れうる公正な解決がえられるよう、両国政府間で今後とも緊密な協議と協力を行うことが重要であることに意見の一致をみた。」。前段では自由貿易が世界経済のために一番いいと書いてある。今度はここへ来ると「貿易」という言葉をちょっぴり入れて、この中にカラーテレビが含まれたかっこうになっているわけですね。この文章の中にはカラーテレビの規制は一言も出てこない。いまのところの「貿易」という二字の中に含まれている。だから、これを読んだ限りではほんの小さな問題のようにしか思えない。しかし事は重大なんですね。
その問題で、さらに総理は新聞記者会見の中でも集中豪雨的に輸出が行われるのは好ましくない、だから集中豪雨的でない方向に政府間で話し合いたいという意味だと思うんですね。集中豪雨的な輸出というのは、具体的にはどういうことなんですか。どの程度の規模が集中豪雨的なんでよか。
-
○
福田内閣総理大臣 どの程度が集中豪雨的だというのは常識で判断すればすぐわかることで、申し上げることは差し控えますが、とにかくテレビの昨年の対米輸出というのは、たしか二倍半くらいに一年の間でふえたのです。そういうふえ方。これでアメリカの労働組合等から非常な反発も出、また現に不安も感ずる、こういうような状態であって、私もこれを見ておりまして実は心配しておりまして、業界にも警告していただいておったわけで、自粛の方向というものが出てきたわけなんです。業界といたしましても、これはかなりの自粛をしなければならぬかなあという、そういう階段での日米会談であったわけであります。とにかくアメリカといたしましても、これをぎしぎしした形でない円滑な処理、こういうふうにしたいと、こう言っておりますので、私はこれはそう重大な問題となるというようなことはあり得ませんという認識を持って帰ったわけです。
-
○
武藤(山)
委員 なるほど輸出の量が、カラーテレビだけを見ると、一九七五年が百二十一万五千台、金額にして二億一千六百万ドル、それが七六年には二百九十五万九千台、金額にして五億三千百万ドル、確かに二倍以上になっていますね。五十年と五十一年を比較すると二倍をちょっと超えております。しかしこの一月になると、一月、二月の統計を見ると、百三十六万台が一月、二月が百六十六万台。このペースでもし企業側が輸出を続けていったとすれば、去年の数量の半分になる。そうなると政府間協定を結ばなくも一、二月くらいのペースで百三十六万台、百六十六万台、この辺のところを行ったり来たりする程度ならば政府間協定を結ばなくともよろしいということになりますか。
-
○
福田内閣総理大臣 先々のことは、自由に放任した場合においてどういうことになるか、これはわかりませんから、とにかくそういう状態の中で、アメリカの大統領は二ヵ月以内に決断をしなければならぬ、その前に日米間の政府間交渉をしたい、こう言っておるので、まことに私はアメリカの態度といたしましては妥当な態度をとっておると、こういうふうに思っております。
-
○
武藤(山)
委員 ただいまの発言の中で、一月、二月の台数を間違えましたから、速記の方を訂正してください。百三十六万ではなくて、一月十三万六千台、二月が十六万六千台であります。
そこで、アメリカはITCで、二年間は二〇%の高関税をぶっかけるぞ、三年目四年目は一五%にする、その先は一〇%にし、その後に本則の五%の関税にしろと、こういうことを実はITC、関税
委員会で決めたわけですね。それを受けてカーター大統領がこれから処理するわけでしょうが、日本とした場合、関税率を高くして規制をした方が得なのか、それとも量的な規制をして昨年度の半分くらいのところの量で規制をする方がいいのか。仮にいまの円高を考慮に入れると業界としては一五%くらいに関税率が高まっても輸出できる価格になるのか、その辺は一体通産省としてはどう見ているのですか。
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○
田中国務大臣 ただいまの御質問でございまするが、当方といたしましては増田
審議官を代表と決めまして、この折衝に当たるわけでございます。まだ先方の意見もこちらの方の主張も、これからの交渉でございますので、双方が何も決めておらない次第でございます。交渉によりましてこれからひとついいところで決めていきたいと、かように考えております。
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○
武藤(山)
委員 福田総理、カラーテレビ以外に鉄鋼、自動車、カメラ、電卓、農業用トラクター、これなどもかなり輸出の問題でいろいろ相手側が問題を投げかけておる。こういう問題については、カーター大統領との話し合いの中では一言もカラーテレビ以外の問題については発言はなかったのですか。
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○
武藤(山)
委員 総理は、カーター大統領と約束をした中で、政府間協定を結んで処理をしようということを約束したようでありますが、いつごろまでに結ぶというお気持ちでいらっしゃるのですか。
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○
福田内閣総理大臣 まあ協定というようなことになりますか、了解というようなことになるか、その形なんかを含めまして両国間で話し合う、こういうことになるのですが、いずれにしても大統領は二ヵ月以内に結論を出さなければなりませんから、それに間に合うように交渉はしなければならない、そういうふうに考えております。
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○
武藤(山)
委員 そうすると、協定なんという四角四面なものでなくてもいいのですか。業界の自主規制で行ける、あるいは価格を幾らか引き上げれば相手方がのみそうだ——これは外務省かな通産省かな。恐らく相手側の関税
委員会ですでにもう結論を出して大統領に答申しているわけでありますから、その間、外交ルートを通じて、アメリカ側の本音はこの辺だ、この辺ならば大体話し合いがっきそうだということはかなり探ってはあると思うのですね。それで一体どういうところへ努力をしていけば大体落ちつきそうか、通産大臣。
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○
田中国務大臣 その辺が交渉のむずかしいところでございまして、まだ明確に態度を打ち出すわけにはまいりませんが、樽爼折衝よろしきを得たいと考えております。
-
○
武藤(山)
委員 総理大臣、記者会見の中で、米国の要請を入れながら同時に日本の国益を損なわない方法を考える、なかなかうまいことを言っているのですね。米国の要請を入れながら同時に日本の国益を損なわない方法でやる。どういう方法ですか。数量を減らさないで——減らせば日本は損するわけだ。業界はそれだけ利益も減るわけだ。収入も減るわけだ。日本は損する。業者が損することは対外的に比較した場合には国益を損するわけです。両方ともうまいぐあいに損しないで、そんなうまい方法が
福田さんの脳みそならできるのかどうか。そこらをひとつ聞かしてください。
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○
福田内閣総理大臣 アメリカにも満足してもらう、わが国といたしましても、業界を含め、満足し得るような結果になる、私はこういう確信を持っているのですよ。どういうふうにするのだというのはこれから話をするのですから、そこを申し上げたら、これまた交渉にも支障を生ずるというのですからお許し願いたいと思います。
-
○
武藤(山)
委員 通産大臣、政府間協定と言うのか何と言うのか、いずれにしてもアメリカとしては、カラーテレビが余りにも来過ぎる、もっと減らしてくれということなんですね。あるいは関税をうんと高くして、来ないように向こうでやりますよ。そうすると、考えられるのは、行政指導で数量を抑えるということ、貿易管理令を発動して抑えること、あるいは輸出カルテルの結成で価格を引き上げること、あるいは業者が自主的に自発的に輸出規制を行って量を減らすこと、第四はアメリカのITCの関税率二〇%か、それを一〇%に話し合いをするか、一五%で落ちつけるかというこの四つしかいま考えられないですね、方法としては。通産大臣としては、この四つのうちどの辺が妥当だと考えますか。
-
○
田中国務大臣 まだ交渉前でございますので、その四つのこれを選ぶとか、これとこれと併合するとかというようなことも申し上げにくいと存じます。
なお、日米間の貿易の全体を考えてまいりますれば、本件だけが日米間の貿易ではございませんので、できる限り双方の主張も妥協いたしまして、そうして日米全貿易の中においてさらに拡大均衡の上においてよろしきを得ていきたい。本件に関します具体的な、先生がお挙げになりました四点につきましては、交渉前でございますので、交渉にゆだねていただきたいと存じます。
-
○
武藤(山)
委員 今回の日米首脳会談によってこういうカラーテレビの輸入規制にやすやすと応じてしまった
福田内閣、こういう姿勢は諸外国にどう映るだろうか。アメリカは大国で世話になっている強い国だからやすやすと受け入れる、ECやあるいは開発途上国からの日本に対する注文については抵抗する、ということも外交上なかなかできない。一つの前例になる。したがって、これから世界経済が自由貿易体制に発展をするのではなくて個別協定の貿易に逆に戻っていく、そういうきっかけをつくるような大きな出来事である、今回のカラーテレビの輸入規制は。
そこで、イギリスでは自動車の規制を日本に強く迫っている。また、イギリス、フランス、イタリー、西ドイツからはベアリングがダンピングだといって、これもEC
委員会に訴えられて、暫定関税が二〇%に引き上げられているわけですね。六月で切れるわけだったのをさらに延長するでしょう。八月までまた暫定関税を二〇%ベアリングにはふっかける。さらに西ドイツと日本の造船の問題についてもごたごたが続いた。こういう出来事の事実を見ても、自由貿易体制によって世界経済の発展を図るのだ、拡大再生産を図るのだという論理には相反する傾向が強くなってきていますね。そうすると、五月に総理大臣が先進国首脳会議に出席したときに、日本だけがこれらの国々からやり玉に上げられて、日本の輸出だけがどうも不当に安い値で、あるいは不当に量が多く入ってくる、
福田さんだけが四面楚歌になるような危険ありと私は推察をするのです、五月の首脳会談のときに。したがって、今回のこういうカラーテレビの規制などについては、貿易哲学の
福田さんの持論である自由経済体制論をもっと述べないと、日本みたいな貿易立国はやっていけなくなっちゃうのじゃないか。海では魚が二百海里で制限をされて漁民が大変な騒ぎをしている。エネルギーでは核燃料の再処理ができなくなりそうである。貿易では個々の商品がこのように諸外国から反撃を食っている。日本は一体これからどうしていったらいいんだろうか、国民は素朴に大変な不安を持っております。
そういう意味で私は、今回のカラーテレビの輸入規制問題が意外と簡単に承認をされたところに大変な不満を持つ一人であります。こういう状態で五月の首脳会議に臨む
福田さんは、大変重大な決意をしていかないと、ECからもアメリカからもこういう貿易問題、経済問題で日本が非難、攻撃を受ける、あるいは荷物をしょわされる危険ありと思いますが、総理の見解はどうでしょう。
-
○
福田内閣総理大臣 昨年、対米カラーテレビ輸出に見られたようなああいう状態を日本が放置しておくということになったら、これは私は世界じゅうから非難されると思うのです。アメリカといたしまして、このカラーテレビにつきましては国際通商
委員会があれだけの決議をしておる。大統領はその方向を受けておる。そうして二ヵ月の間にはその結論を出さなければならぬという立場にある。日本が本当にああいうことをしたのじゃ国際社会に済まぬ、こういうような立場に立ちましてやっていこうという日本の姿勢にアメリカの大統領は着目をいたしまして、これはひとつ政府間で話し合いをさせましょうということになったので、アメリカとしてはかなり自由貿易体制というものを傷つけてはならぬという配慮を示しながらそういう態度をとったんだ、私はそういうふうに理解をいたしております。カラーテレビが一年の間に二倍半も一国に集中的に出て、そして会社がばたばたと倒れる、失業者が出る、そういうような状態。私はこれを日本政府として放置するということは妥当でないと思うのです。私は今回の日米会談、アメリカも襟度を示した、こういうふうに見ておりますが、日本としてはああいうことがあってはならぬ、こういう態度で国際社会には対処すべし、さように考えております。
-
○
武藤(山)
委員 首相はASEAN諸国を一度歴訪したいというようなことを、正月ごろでしたか、新聞報道でちょっと見たのですが、東南アジア諸国を歴訪する予定は考えているのですか。
-
○
福田内閣総理大臣 私はアジアの一国といたしまして、アジア近隣諸国の動きには非常に大きな関心を持っておるわでけあります。そういう中で、アジアと申しましても、韓国などと比べますと少し離れた立場にあるこのASEANの国々との関係が、ちょっと疎遠になり過ぎておるんじゃないか、そんな感じがしてならない。あの四年前でしたか、五年前でしたか、
田中首相が訪問をいたしております。あのときああいう残念な事件が起こった。あの後ASEANの国々の首脳はわが日本を訪ねる人が多いです。しかし、わが国といたしましてはそういう動きをしなかった。そういうこともありますが、いま私は政治日程といたしまして、ASEANの諸国を訪問をする、そういう決まった考え方は持っておりませんけれども、何とかしてASEANの国々ともっと近い関係を持ちたい、こういうふうに考えておりますので、政治日程なんかがこれを許すという状況でありますれば、ASEANの国々を訪問して、そして関係の修復を図りたい、かような気持ちでおる。まだ決まった考えは持っておりません。
-
○
武藤(山)
委員 先進国首脳会議で恐らく南北問題も議論になると思うのですね。南北問題が議論になる際には開発途上国のASEAN諸国の問題も当然含めての議論になるだろう。いま開発途上国が一番悩んでいる問題は、何といっても国際通貨の問題、外貨準備の問題、すなわちさらに国内経済の不振の問題。世界銀行が発表した数字をちょっと見ても、開発途上国の債務、借金は、一九七四年末で千五百十四億ドル、一九七七年年初、ことしの初めで二千億ドルをちょっと超えるだろう、これが世銀で発表した数字であります。そういううち半分弱が先進諸国の市中銀行からの融資である。民間の市中銀行からの融資が半分を占めている。契約では年間二百十五億ドルも返済をしなければならないが、なかなか思うように返済できない状態にある。
そこで日本の態度が問われる場合に、日本政府の方針としては、為替銀行からことしの三月三日にペルーに三千三百万ドル、それから本年中にブラジルに一億ドル、この借款を行った以降は途上国融資を控える、債権確保がむずかしくなってきたし、返済能力の問題があるから、日本政府としては一国だけの融資というようなことはこれは差し控えなければならぬ、こういう方針のように承っておりですが、これは答えるのは外務大臣かな、だれが一番適切なんですか。そういう方針を一応いま固めているのかどうかをまず確認して、もし固めているとすれば、これが首脳会議の席でやり玉に上がる一つの問題点になるような気もするわけです。そこでその次に総理大臣の見解も聞いておきたい。これはだれですか、外務大臣かな通産かな。
-
○鳩山国務大臣 いわゆる累積債務の問題は、これは大変な大きな問題でございますので、わが国といたしまして、諸外国とも連携を保ちながら結論を出す努力を続けているところでございます。特にCIECの会議が間近に迫っておりますので、目下検討中のところでございますが、あるいは政府
委員からでも説明をさせたいと思います。
-
○菊地政府
委員 先生直接の御質問の、日本のシンジケートローンというものをペルーとかブラジルに対してやった後は、その後慎重にしているというお話の御質問に対しては大蔵省の方が適当かと思いますが、全般的に発展途上国の債務、特に産油国でない、非産油発展途上国の債務というのが非常に苦しい状況になっておりますので、この問題はASEANに限りませず、発展途上国全体の問題といたしましてこれらからいろんな主張が出ております。中には非常に過激なものも出ておるわけでございますけれども、この問題を含めまして、国際経済協力会議その他で検討しておるところでございます。
-
○
武藤(山)
委員 国際経済をもう少し質問しようとしたのですが、もう時間がありませんから、国内問題について最後の十分間ちょっと尋ねておきたいと思います。
三月十二日に公定歩合が引き下げられて六%になりました。公定歩合が下がるとプライムレートもその下げ幅だけ下げるという慣行でいままでやってきた。今度は日銀総裁は必ずしもそれに連動しなくもいいですよと新聞発表しておりますが、全銀協中村会長は従来どおり下げましょう、こういうことになって、プライムレートも六・二五%になりますね。大体このプライムレートを利用できる企業というのは全国で何社ぐらいあるのですか。
-
○
後藤(達)政府
委員 社数その他はそのときの金融情勢によって非常に動いております。したがいまして、何社ぐらいということを一概に申し上げられないのでございますが、最近の時点でプライムレートの適用を受けておる貸し出しの額の総貸し出しに対する割合、それで申し上げますと、大体十数%ぐらいの貸出額がプライムレートの適用を受けております。
-
○
武藤(山)
委員 優秀企業で大企業はこの安い六・二五%の金利で金が利用できる、大変結構な身分であります。いま日銀の経済観測の調査対象となっている主要企業五百四社、これの金利負担は、今度プライムレートが〇・五下がったことによって年間どのくらい軽減されるかというと、千二百一億円利息だけで軽くなる。五百四社のうち製造業の三百四十四社だけでも六百六十八億円金利負担が軽減される、こういう報道がなされているわけであります。この数字は当らずとも遠からずの数字であると大蔵省は追認するかどうか。
-
○
後藤(達)政府
委員 ただいま私、手元にその借入額その他の数字を持っておりませんので、いま先生の御指摘の数字が正確かどうか、ちょっと御返答できないので恐縮でございますが……。
-
○
武藤(山)
委員 いま貸出金利をずっといろいろ調べてみて、公定歩合が下がったからわれわれ企業も金利が安くなると中小企業などは手放しで喜べない。たとえば都銀の最近の貸出金利からずっと各銀行の比較をしてみますと、去年の五十一年十二月末の日銀統計で見ると、都銀が長期資金で、短期の割引は別として七・九五九、地銀が八・二五、信託銀行が七・八五八、長信が八・九八二、相互銀行が八・九六三、信用金庫が九・二九三、国民金融公庫が八・九、
中小企業金融公庫が八・九、商工中金も八・五、長期で九・二五ぐらいですか、実はこういう貸出金利になっております。手形割引はそれよりちょっと低目になりますが、いずれにしてもこういう金利が、公定歩合が下がったうちその下げ幅の半分ぐらいは貸出金利が低下するというのが、大蔵省から出されているグラフでわかるのでありますけれども、なかなかしかし末端の中小企業が借りている資金は下がらない。それはなぜかというと、都市銀行や地方銀行は、商業銀行といえども一年の短期で貸してそれを転がしているわけですね。実際は三年、五年という融資をやっているわけですよ。ただ、名目だけは一年ということになっても、書きかえ、書きかえで三年間、五年間の融資をしているわけです。ですから、そういう都銀や地銀で比較的安い方の金利を使える人と——相銀、信金、国民金融公庫や中小企業公庫を使っている中小企業は、公定歩合の引き下げの恩恵をほとんど受けない。ですから、公定歩合の引き下げというのは何ということはない、大企業の金利負担をストレートに安くする作用が働く、こういう作用を現実に起こしているのですね。
自民党の諸君は、この間の日本経済新聞の報道によると、あと公定歩合を思い切って二%引き下げろ、西ドイツ並みに四%ぐらいにしろ、そして補正
予算も一兆六千億円追加出せ、こういう乱暴な議論が自民党の内部から出たといって報道されている。それだけ下げたって中小企業に余り潤いないんだよ。また、そんなことができるはずがないんだ。いまの金利体系の中であと二%このまま公定歩合を引き下げるなんということは、現状ではなかなかむずかしいのであります。しかし、そういうことが新聞に報道されているから、かなり国民の中には、自民党が言うんだから信頼性があるだろう、こう思っている者もたくさんいる。総理は、これ以上公定歩合の引き下げをやったり、補正
予算を組んだり、そして景気対策をやるという気持ちがあるのですか。
-
○
福田内閣総理大臣 私は
昭和五十二年度
予算、またそれに先立つ五十一年度の補正
予算、これが実行に移されるという段階になりますると、景気は回復過程に向かうというふうに考えておりまして、ただいまのところ新しい政策手段ということは考えておりません。
ただ、どうも私の見通しのようにいかないというようなことがある際には、臨機即応の措置はとるという考えでございます。
-
○
武藤(山)
委員 割り当ての時間があと一分でありますから、質問を並べてずっとしますから、答えてください。
大蔵省、
中小企業金融公庫、国民金融公庫、さらに皆さんの監督している商工中金、これらの金利が非常に硬直しておる。都市銀行や地方銀行のように常時標準金利が下がっていく、そういう作用を全然及ぼさない。したがって、下げられない理由は私もわかります。大蔵省資金運用部資金が七・五%で貸し付けるのですから、その資金を元手にしている三機関がそう金利を下げることができないという理由もよくわかっています。わかっているけれども、八・九%というのは先ほど申し上げた各銀行の貸出金利と比較して高過ぎる。だから、できるところからもう少々下げるべきである。商工中金、国民金融公庫、
中小企業金融公庫、下げられるところから下げるべきであると思うが、大蔵省の指導方針を聞きたい。
それから
中小企業金融公庫の総裁に、せっかくおいでになって質問しないで帰ってもらうのは失礼でありますから。
中小企業金融公庫の融資を受けている業者はたくさんおります。かなり助かっておりますね。しかし、いまの不況が長引いたために、公庫から借りているのは設備資金が非常に多いわけですから長いわけです、五年、七年。ちょうど四十八年、四十九年ごろ借りたのがまだ返し切れない。返済が不況のために非常に苦しい。返すために借金をするという状態なんですね。ですから、この際、これは総理大臣にもぜひ徳政令をしくぐらいな気持ちで、各企業で資金繰りが苦しい場合、申し入れがあったら、各金融機関は報復手段を考えないで素直に聞いてやりなさい、そして返済の延期を図ってやる、この際はそういう徳政令的なものを総理大臣としてやるべきじゃないか。もちろん、民間の銀行に対して特にそういう行政的な要請というものが必要な時期ではないかと私は思うのであります。それについてはどうお考えになるか。中小企業公庫はこれ以上金利を下げることは全く不可能であるか。
それから郵政大臣は、預金金利の引き下げは当面やらない、いまはやらないと言っているが、参議院議員選挙が終わったらやるのかやらないのか。参議院選挙が終わっても郵便貯金の金利の引き下げはやらぬと約束ができるかどうか、この点をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
-
○
後藤(達)政府
委員 私の所管の関係についてお答えを申し上げます。
三機関の金利の引き下げの問題でございますが、先生も御指摘のように、コストの問題あるいは長期金利という性格の問題等もございまして、両公庫につきましての引き下げは当面大変困難でございます。ただ、商工中金につきましては、ただいまの御指摘もございますし、また先般要求払い預金の金利の引き下げ等によりますコストの軽減という要素も考えられますので、どの程度できますかは検討次第でございますけれども、引き下げる方向で検討させていただきたい、こう存じます。
それから、返済猶予の問題でございますが、これは政府機関につきましては昨年年末融資追加の際にも重ねて通達を出しまして、これは企業の実情に応じて、返済猶予等弾力的に対処するようにという指導をいたしております。
また、民間の金融機関につきましては、これは各金融機関いろいろ実情が異なっておりますが、要は金融機関が企業の立場に立って、全体どうしてやればうまくいくか、こういう気持ちで対処されることだと思いますので、そういう気持ちを持って対処するように、これはいろいろな機会に私から要請をし、指導いたしておるところでございます。
-
○
渡辺説明員 お答えいたします。
私どもの公庫は、既往債務の償還の猶予につきまして、再三部店まで指示を出しまして、また代理店の方にも連絡をとりまして、返済困難な企業に対しましてはできるだけ償還条件を変更するということについて努力いたしております。
それから、徳政のようにそれをしばらく返さぬでもいいというようなことになりますと、私どものところはやはり金融機関でございますから、返またほかの方に、新規の貸し出しの方に向けておるということで、資金を図っております。
それから、私どものところの金利の問題でありますが、これは長期の金利でございますから、長期の金利全般が変わらない限りは、いま
後藤局長から言われましたように、当面これを引き下げるということはなかなかむずかしいかと思っております。
以上、お答えいたしました。
-
○小宮山国務大臣 参議院選挙後に金利を引き下げるかどうかという話でございますけれども、金利は参議院選挙と関係がございません。経済情勢そのものでありますし、郵便貯金法第十二条の趣旨を踏まえて、今後とも慎重に考えたいと思っております。
-
○坪川
委員長 これにて
武藤君の質疑は終了いたしました。
午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時五十一分休憩
————◇—————
午後一時三十六分
開議
-
○坪川
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
近江巳記夫君。
-
○近江
委員 総理も日米首脳会談からお帰りになり、参議院の総括質問等で非常にお疲れかと思いますが、御承知のようにわが国を取り巻く内外の情勢というものはきわめて厳しいわけでございます。そこで、私はまず日ソ漁業問題につきましてお伺いしたいと思っております。
きょうは三十日、いよいよあすで今月が終わりなんですね。そうしますと、暫定取り決めの締結というものは三月いっぱいということは農林大臣も向こうへ行かれてお決めになったわけでございますが、御承知のように非常におくれておるわけでございます。この交渉のおくれた原因、またその責任という問題につきまして、ご承知のようにモイセーエフ・ソ連代表が、難航の責任はすべて日本にある、このように言っておるということがきょうの朝日新聞でも大きく出ているわけでございますが、この点につきまして、農林大臣の率直な感想をひとつお聞かせいただきたいと思います。
-
○
鈴木国務大臣 イシコフ漁業大臣と私との間で三月三十一日までに暫定取り決めを行う、こういうことで合意をいたしまして、それに沿いまして代表団をモスクワにも送り、鋭意努力をしてまいったわけでございます。しかしソ側としては、近江さんも御承知のように、私とイシコフ大臣との間で合意されました以外の問題、たとえば、わが国が国会の御承認を得て設定しようとする領海の十二海里、この中におきましても、三海里から十二海里までの間のソ側の実績を認め、この間でも操業ができるように要求をしてきておる。また基本的なその他の問題につきましても、ソ側の原則を主張してなかなか会談がスムーズに行われない、こういう状況で停滞をいたしておるわけでございます。しかし、代表団も重光駐ソ大使を含めましてあらゆる努力をいま重ねておるところでございます。
なお、三月三十一日までに暫定取り決めができない場合はどうなるかという御心配が関係漁民の間にあるわけでございますが、この点につきましては、モスクワにおける感触、東京における感触等を総合判断いたしましても、引き続きこの交渉は継続しよう、こういう意向がソ側にもあるようでございますので、私どもは三月三十一日までに全力を挙げますが、もしもずれ込むことになりましても、わが方の主張実現のために最善を尽くす努力を傾ける所存でございます。
-
○近江
委員 モイセーエフ氏は難航の責任は日本にということに対して、農林大臣はこうした硬直化したソ連の出方にあったということをお述べになったわけでございます。そうですね。もう一度確認します。
-
○
鈴木国務大臣 先ほど申し上げたように、
鈴木・イシコフ会談で合意されました書簡の内容、これを逸脱した無理な難題と申しますか注文には私どもは応ずるわけにはまいらないというのが交渉停滞の大きな要因でもあるわけでございます。
-
○近江
委員 ソ連は、日本の十二海里領海内でソ連漁船の操業を認めよ、こういうように要求しておりますが、こういうことは全く国際的な類例のない非常識な要求である、これは全く沿岸国の主権を無視した不当な要求であると私は思うのです。また暫定取り決めの中で操業許可証、入漁料の徴収、違反漁船の取り締まり、裁判権等のそういう基本問題が解決されなければ、ソ連の二百海里水域での日本漁船の操業、漁獲割り当て、漁獲対象魚種の話し合いに応じない、こういう独断的な態度というものは私はまことに遺憾にたえないと思うのです。こういうソ連の態度というものは日本に対する友好的な態度とは言えないと私は思うのですね。この点につきまして農林大臣の率直なお考えをひとつお伺いしたいと思います。
-
○
鈴木国務大臣 いま近江先生御指摘になりましたように、そもそも基本協定の前に暫定取り決めをやろうと言いましたことは、わが国の国民の基本的な権利義務を制約するような条項は、国会の御承認を得てそして批准をするということでなければこれをなし得ない、行政取り決めの中ではそれはなし得ないということはるる私がお話を申し上げて、そこで基本協定と暫定取り決めという二つに分けたわけでございます。そういう面からいたしましても、私はソ連側の言い分というものは納得がいかない。なおまた、十二海里海域の中で操業を要求してくるということは国際慣例にもないことでございまして、このような無法な申し出に対しましては断然これを私は容認しない、これを拒否するということは再三申し上げておるとおりでございます。
-
○近江
委員 容認ができない、納得できない。そういう条件を押してくるということは、少なくとも私は友好的ではないと思うのですよ。友好的でないと大臣はお思いですか。
-
○
鈴木国務大臣 日ソの友好のきずなになっておった、日ソ友好のかけ橋になっておりましたものがこの長い伝統的な北洋漁業でございます。その北洋漁業に対して、こういうような態度で来ておるということに対しましては、私はきわめて遺憾に存じておるところでございます。
〔
委員長退席、
田中(正)
委員長代理着席〕
-
○近江
委員 外務大臣はこういうソ連の態度に対して友好的と思いますか、どう思いますか。
-
○鳩山国務大臣 ただいま日ソ間には真剣に最終的な折衝が行われておるわけでございます。いまお述べになりましたようなことは、わが国といたしましては大変残念なことでありますけれども、目下最終段階に入りつつありますので、直接的な御返事は差し控えさせていただきたいと思います。
-
○近江
委員 やはり外務大臣として、もう少し率直な御答弁をされた方がいいと思うのです。
総理はかかるソ連の態度につきまして、こういう態度は友好的ですか、どのようにお思いですか。
-
○
福田内閣総理大臣 友好的であるか非友好的であるか、そういうことまでこの微妙な段階で私から触れますことは、どうもいろいろ不都合なところがありはしないか、こういう感じがするのです。しかし私は、どうもソビエトの出方というものは、無理押しをしておるという感じは率直に持っておるわけであります。
-
○近江
委員 総理は無理押しをしておるということを言われたわけですが、総理が言われた無理押しのこういう姿勢、ごり押しの姿勢は、私はまさに大国主義、覇権主義と言うべきじゃないかと思うのです。これは国際連合憲章にも反すると言うべきじゃないかと私は思います。この点、こういう無理押しの姿勢というものは大国主義、覇権主義ではないかと私は思うのですが、総理はどのようにお考えですか。
-
○
福田内閣総理大臣 とにかく領海が十二海里になりますと、そのわが国の領海の中で漁業を自由に行う、こういうような主張をすることは、私はちょっと常識では考えられないのですがね。とにかくかなり無理押しをしておる姿勢である、こういうふうに考えております。
-
○近江
委員 こうした無理押しの要求、提案をすること自体、私は強力な国力を背景とした威嚇的な姿勢ではないかと思うのです。これにつきまして農林大臣、どのようにお考えですか。
-
○
鈴木国務大臣 私は、十二海里内で操業を要求してきておるという問題につきましては絶対に譲り得ないという立場に立ちまして、しかしいろいろ私も考えておるわけでございまして、相互の利益に合致するような打開策も考究中でございます。具体的な内容につきましては、この際交渉の段階でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
-
○近江
委員 非常に政府も苦慮されていることは私もわかっております。
そこで、ソ連のこういう無理押しの姿勢、これの真意というものはどのようにお考えですか。たとえば北方領土権の放棄をねらっておるとか、あるいは日中関係の牽制材料としているんじゃないかとか、いろいろなことが憶測されておるわけでございますが、総理はどのようにお考えですか。
-
○
福田内閣総理大臣 非常に広く、総合的に考えまして、本当に私は無理押しだ、こういうふうな感じがしてならないわけでありますが、その背景がどういうところにあるのか、その辺ちょっと私ども理解に苦しむくらいなんです。どうも国際的な常識、そういうところから考えて、ああいう姿勢というものはとれないんじゃないかと思うんですがね。どうも理解に苦しむ、こういうふうに申し上げた方が正しいのかと思います。
-
○近江
委員 今日のこの日ソ間の問題というものは、単なる漁業問題だけじゃないと思うんですね。これは日ソ両国間のいわゆる基本関係に触れる重大な段階に来ておると私は思うのです。こういうソ連の強圧的な態度というものは、国民の間に終戦時におきます満州における事態を思い起こさせるんじゃないかと私は思います。われわれは日ソ間のそういう関係の維持という点からも、わが党としましては等距離中立政策を外交の基本理念としておる立場からいきまして、いまこそこういう反ソ感情というものを起こさせることがあってはいけない、このように思うわけです。しかし新聞の論調等にもその危惧が述べられておるわけですが、政府としまして、こういう事態を国民の間に起こさせないためにも重大な決意を持って対ソ交渉に臨むことが必要じゃないかと私は思うのです。この無謀な、国際通念に反するソ連の要求というものは決して日ソ友好に資するものではないということ、これははっきりしておるわけでございまして、ソ連の再考というものを求めなければいけない、このように思うのです。
こういう局面に来ておるわけでございますが、この打開を図るために、政府としてはどういう対策をお考えになっておるか。たとえばコスイギン首相あるいはポドゴルヌイ・ソ連最高会議幹部会議長に総理の親書をだれか持っていくとか、あるいは特使を派遣するとか、農林大臣がまた行かれるのか。これはもう何らかの政治的な行動というものが必要じゃないか。このように私は思うのですが、いかがお考えですか。
-
○
福田内閣総理大臣 いま、この交渉は非常に重大な段階に入ってきておるわけであります。これが最後の段階の折衝がどういう結果になるか、結果がどういうふうになっていきますかに対応いたしまして、いかなる態度、いかなる方策をとるか、これらの点につきましては、十分各種有効な手段をいま考えておるところでございますが、これから最後の段階がどういうふうな結果になってくるか、その結果を見ました上、それらの施策を発動したい、さような考えです。
-
○近江
委員 その有効な手段というものにつきましてはいろいろあろうかと思うのですが、たとえばどういうことをお考えですか。たとえば特使を派遣するとか、どういうことですか。
-
○
福田内閣総理大臣 いろいろ考えておるわけでありますが、いままだそういう段階まで来ておらないのです。いま最後の煮詰めをしておる、その煮詰めがわが方も満足し得るというような状態でありますればそれでいいわけでございますが、交渉の最後の段階の推移をいま見守っておるという次第でございます。
-
○近江
委員 もしソ連がいまのような態度を硬直化して変えないというような事態が続いた場合、わが国としては交渉の中断もあり得るというようなことも考えておるのですか。
-
○
鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、イシコフさんと私の間の取り決めは三月三十一日まででございますけれども、ソ側も場合によっては四月にずれ込んでもなお交渉する用意がある、こういうようなことでもございますから、最後まで粘り強く、この交渉の妥結を見るように、わが方の主張も十分反映できるように努力をいたしたい、このように考えております。
-
○近江
委員 この問題につきましては国会決議もいたしまして、政府に最大の応援もしておるわけでございます。これは本当に全国民的な大変な問題でございます。それだけにひとつ政府も腰を入れてがんばっていただかなければ、これは私は国民生活に与える影響、また日ソ間の問題等々、余りにも影響が大き過ぎると思います。ひとつ総理の決意をお伺いしたいと思います。
-
○
福田内閣総理大臣 わが日本が不当な要請をしておるというのなら、これは格別でございますが、わが日本政府としては非常に謙虚な態度でこの交渉には対処しておる、さように考えておるのであります。どうしてもわが国の主張が承認されなければならぬ、そういう筋合いである、こういうふうに概略考えておりますので、そのような認識に立ちまして、最後のまた最大の努力をしてみたい、かように考えております。
-
○近江
委員 そこで漁民の被害の問題これは午前中も出たわけですが、これは生活の基盤が崩れるわけでございまして、漁民にとってはもう想像以上に深刻な問題であります。ニシンを初めといたしまして、本当に政府として力を入れていかなければならない問題だと思います。この問題につきまして具体的に何を考えておるかということを、ひとつ農林大臣と総理からお伺いしたいと思います。
-
○
鈴木国務大臣 漁期を逸しては全く七七年度中の漁獲ができないものと、またしばらく休漁いたしましても年間を通じて漁獲量の達成ができるものと、いろいろ漁業の種類、対象魚種によってあるわけでございます。一番漁期が差し迫っておりますのは、御承知のようにニシンでございますが、ニシンは五月いっぱい、六月に若干かかりますけれども、そういう漁期の制約のある魚種でございます。したがいまして、私どもはニシンはできるだけ早く日ソの間で漁獲量あるいは漁業の条件、方法等について妥結を見出したい、こう考えておりますが、オホーツク海におけるニシンの資源状況は相当悪化をいたしておるということにつきましては、日ソの資源評価がおおむね一致をいたしております。しかし、北海道から樺太の西海域の資源は昨年程度ないしやや上回っておるというような資源評価でもございますので、私どもは、できるだけこの北海道、樺太西海域のニシンにつきましては昨年どおりの操業ができるようにということで、いま強力な交渉を続けておるという段階でございます。
しかし、三月中に操業を休漁いたしたわけでございますから、その三月中の漁獲を当てにした漁具代あるいは漁網代、乗組員の給料前払い、そういうものにつきましては、手形の決済の時期も来ておると思いますので、そういう融資の面等につきましては関係方面に御相談をし、融資の措置等を講じておるところでございます。そして今年度のニシンの全体の結果を見まして、三月分の融資等も含めて全体として救済措置を講じてまいりたい、このように考えております。
その他の魚種につきましては、サケ・マスは別でございますが、スケトウダラその他は年間を通じて漁獲されるものでございますから、交渉の過程において若干の休漁期間がありましても、年間を通じて漁獲量の確保は可能である、このように考えております。そういう点を総合的に判断をいたしまして、救済の問題等も考えてまいる所存でございます。
-
○
福田内閣総理大臣 いま全国の漁民はかたずをのんでこの交渉の推移を見守っておるというのが現状である、かように考えます。そのときに、私どもの自由民主党とすると、とにかくベテラン中のベテランである
鈴木農林大臣が日夜を分かたずこの折衝に当たっておる、そういうことでありますので、何とか政府は全力を尽くしまして国民の期待にこたえてまいりたい。また、よって影響をこうむる漁民に対しましては、ただいま農林大臣から申し上げましたような措置をとってまいりたい、かように考えております。
-
○近江
委員 そういう点につきましては、最大の努力を払っていただきたいと思います。
それと、もう一遍ちょっと繰り返して恐縮ですが、ここまで行き詰まってきておるわけですね。その局面打開のために最も有効な手段をいま考えておるということでございましたが、その中には特使の派遣ということも当然入ってくるわけですか、どうですか。
-
○
福田内閣総理大臣 最後の段階のいま交渉をしておるわけですので、この交渉がまあまずまずというところにいきますれば、それでよろしいわけでございます。それがうまくいかないにいたしましても、そのまた程度の問題もある、こういうことでありますが、いろんなことを考えておりますが、とにかく国益を踏まえまして本当に手落ちのないような万全の対策をとる、こういうふうに御理解願います。
-
○近江
委員 政府は、十二海里、それからまた漁業水域二百海里、この問題につきまして、領海については法案、漁業水域につきましては閣議了解、こういうことで昨日対策をお立てになったわけであります。
そこで、この二百海里という問題になってまいりますと、中国、韓国という問題になるわけですが、この二十六日、在日大使館を通じて事前通告をしたということを聞いておるわけですが、中国、韓国は二百海里を実施しないという見通しであるのか、その点を確認したいのと、反応はどうであったかという問題であります。
もし二百海里を両国が行うということになってまいりますと、現行の二国間漁業協定は当然再検討せざるを得なくなるんじゃないかと思うのです。いまソ連のそうした強硬な姿勢というものが日本だけではなく 韓国漁船も非常に日本近海に来ておるということも報道されておりますが、そういう状況下におきまして、政府として接触されたわけですから、その反応についてお伺いしたいと思います。
-
○鳩山国務大臣 韓国並びに中国に対しまして申し入れをしたのでございますが、その反応は、まだ申し入れたばかりで私聞いておりませんので、政府
委員から御答弁します。
-
○中島政府
委員 お答え申し上げます。
わが方から韓国及び中国に対しまして、先生がいまお挙げになるました十二海里の領海法案提出の意向及び二百海里の漁業水域設定の方針について説明いたしましたところ、先方のとりあえずの反応は、いずれも、現在わが国とそれぞれの国との間にありますところの現存の漁業秩序、具体的には漁業協定によって維持されているところの漁業秩序を急変するという意向は特にない。いずれにせよ、日本側のいまの二百海里漁業水域の設定のやり方について、今後そのやり方を見守っていきたい、そういうような反応でございました。
-
○近江
委員 二百海里の閣議了解ということは、これは宣言ということに直結するわけですか、法制
局長官。
-
○真田政府
委員 昨日の閣議了解は、わが国も二百海里の水域をいずれ設定するという方針を決めたものであって、昨日それが対外的にあるいは対内的に宣言という形で、二百海里の効力、効果が出たとは考えておりません。いずれまた検討しまして立法措置をとるということに相なろうかと思います。
-
○近江
委員 そうしますと、これは単なる閣議了解ですね。
そうしますと、ちょっとお聞きしますが、日本の漁業水域二百海里内におきます裁判権、入漁許可証、違反漁船の取り締まり、入漁料の徴収等につきましてはどうするのですか。
-
○
鈴木国務大臣 わが国が日本列島周辺の二百海里に漁業水域を設定をするその内容、要件はどうか、こういう御質問のようでございますが、これは海洋法会議におけるいろいろの議論もございます。また、二百海里水域を設定した国もたくさんあるわけでございまして、そういう国々の事例も十分参考にいたしまして、これから法制的に煮詰めてまいることに相なるわけでございますけれども、近江先生おっしゃったようなことも、これは漁業資源に関しますわが国の管轄権を二百海里の中に設定するわけでございますから、ただいまのお話のようなことも一つの要件になろうか、こう考えております。
-
○近江
委員 この二百海里の漁業水域の設定問題につきましては、閣議了解にとどめて、これを実施するために必要な立法措置というものは次の国会までということを政府はおっしゃっているわけですが、私はこの理由というものを明確にしなければいかぬと思うのです。この閣議了解のみで対応できるものでないことはもう明らかなんですね。たとえば、ソ連船団の二百海里以内における漁業操業は、立法措置を講じない限り従来と同様自由であり、一方、ソ連近海においては二百海里漁業専管水域が堅持されており、政府の言うソ連と同じ土俵に上るということはできないと思うのです。こういう緊急を要する重要問題を、次の国会まで立法措置をせずにあえて遅延さす政府のそういう意図というものは、私は心ある国民の理解しがたいところであるばかりでなく、この間における関係漁業者の被害を考えると、この五月二十八日まで今国会の会期もあるわけですし、この政府の閣議了解を一歩進める決断によって、今国会に、中国、韓国などは先ほど事情をお聞きしたわけでございますが、一応対象外として、二百海里漁業専管水域法案を速やかに提出してその成立を期すべきではないかと思うわけです。もちろん海洋法会議のこともわかるわけでございますが、これはもう世界の趨勢になってきておるわけでございますし、この点について政府はどのようにお考えですか。
-
○
鈴木国務大臣 私も近江さんのお考えのとおり、わが国も二百海里漁業水域をできるだけ早く設定をいたしたい。今後関係国といろいろ交渉いたしますにしても、やはり領海十二海里、漁業水域二百海里、こういう同じ土俵で交渉することが国益を守るゆえんである、このように考えておりますので、できるだけ早い機会にこれが国会の御
審議を得て成立することを心から期待をいたしておるものでございます。
-
○近江
委員 そうすると、できるだけ早くということは、参議院選終了後の国会ということではなくして、できれば今国会でも成立さしたい、こういうことですか。
-
○
鈴木国務大臣 これはいろいろ慎重に検討すべき内容、事項等もあるわけでございますから、政府としては昨日の閣議了解をもとに関係各省庁でその準備のための協議機関をつくりまして鋭意検討作業に入ったところでございます。その推移を見ながら、総理の御判断並びに国会の御都合等を伺って方針が決められることだと考えております。
-
○近江
委員 法制
局長官にお伺いしますが、閣議了解では宣言にならぬとおっしゃいましたね。法律をつくらなければ宣言にならぬわけですか。宣言の行為についてひとつお伺いしたいと思います。
-
○真田政府
委員 二百海里の水域を設定するということにつきましては、これは対外的な面と、国内と言いますか対内的な面と両方あるわけでございます。
対外的な面では、いまの国際法がだんだんと変わってまいりまして、沿岸国が国家の意思としてそういう設定をすれば、これは対外的には通用することだろうと思うのです。それで、対外的には沿岸国が国家の意思として決めればいいわけなんですが、今度は対内的には、その国の法制の枠のもとにおいて手続をとらなければならないわけなんで、いまの日本の法制のもとにおいては、単に宣言をしたというだけではどうも違反者を取り締まったりあるいは海上保安庁がそこで職権を行使したり、そういう国内法が働くという形になりませんので、閣議了解だとか閣議決定とかあるいは宣言とかという形式では、どうも国内的な手続としては不十分である、そのように御理解願いたいと思います。
-
○近江
委員 長官、もう一遍聞きますが、閣議了解をして、政府としては、ソ連なり韓国なり中国、そういう関係があるから打診をしたわけでしょう。それは宣言したことになるのですか。宣言の行為というものはどういうふうになるのですか。政府は閣議了解をしたわけでしょう。それはいわゆる世界に向かって宣言したことになるのですか、それはどうなんですか。
-
○真田政府
委員 諸外国に向かって宣言をするという方式がどういうことになるのかは、これは外務省の方の御意見も聞かなければいけませんけれども、とにかくきのうの政府の行為は、きのう即時に二百海里を設定するという意思を決めたのではございませんで、近き将来二百海里の水域を設定するという方針を確立したというのが実態でございますから、いまおっしゃいましたような宣言とは結びつかないのだろうと思います。
-
○近江
委員 外務大臣、同じ問いに対してお答えください。
-
○鳩山国務大臣 昨日の閣議了解は、実態的に昨日決めたということは、将来わが国も二百海里をなるべく早い機会にやろう、こういう意図を決めた、こういうことでございます。その点は法制
局長官と同じように理解をいたしております。
-
○近江
委員 これは法制
局長官も外務大臣も非常にあやふやですね。だから私は先ほどから言っているのです。これは先ほど私が申し上げた裁判権の問題であるとか、あとまた漁業水域内での沿岸国の追跡権の問題であるとか、さまざまな問題があるわけですよ。こういうことをやらなければ、幾ら政府は方針を決めました、閣議了解しておったって、漁民はこれでは何も救われませんよ。だから速やかに立法化しなさい、こういうことを言っているわけです。
総理、おわかりになったと思いますが、この立法化を速やかに、次の国会を待たずに それはいろいろな事情があることはわかりますよ。しかしそれは最大の努力をして、一日も早くこの立法化を促進する必要があるのじゃないかと思いますがいかがですか。
-
○
福田内閣総理大臣 お話はもう全く筋としては近江さんのおっしゃるとおりでございますが、作業の手続がなかなか、この国会中ということで間に合いますかどうか、その辺法制当局も非常に心配しておりまして、この国会提出という方針にまで申し上げかねておるわけですが、いずれにいたしましてもこれは早いほどいい、こういうことでございますので、急ぐことにいたします。
-
○近江
委員 総理、これはひとつ速やかに進めていただきたい、特に要望しておきます。
それから、政府は十二海里実施に伴って凍結される五つの特定海域を定められたわけですが、この根拠と基準は何ですか、これらについてお伺いしたいと思うのです。
-
○
鈴木国務大臣 一つは、日本列島周辺、わが国固有の領土を含めまして、領海の幅員を三海里から十二海里にするということでございます。
それから、いま御指摘の特定海域、いわゆる国際海峡につきましては、この前の
予算委員会でも御説明申し上げておりますように、海洋と海洋を、公海と公海を結ぶところの国際航行に利用されておるその海峡、これを私ども国際海峡とし、それに接続する一定の海域を特定海域として確保しよう、こういうことでございます。
-
○近江
委員 こういう措置をとっているのは世界のどこにあるのですか。どこかありますか、日本政府がとったようなこういう措置をとったのは。あればひとつ列挙してください。
-
○鳩山国務大臣 特定の海域、いわゆる国際海峡につきまして一般の領海幅と違った領海をとるという例は、恐らく私はないだろうと思っております。ただ、領海の幅を違えているという例は、これは一つの島だけにつきまして、その島につきましては違った領海幅をとっているというところはございます。これもいろいろないきさつ、必要から起こったことだろうと思っておりますが、直接の、今回の例と全く同じ例は私は聞き及んではおりません。
-
○近江
委員 ないわけですよね。これは前にも私が申し上げましたように、いわゆる核積載艦の通過、これに深いかかわり合いがあるわけですよね。
時間がありましたら、私はこの問題、さらにうんと詰めたいと思うのですが、きょうは非常に限られた時間でありますので残念でございますが、この海峡の問題で、あとちょっと聞いておきたいと思います。
まさかと思いますけれども、凍結された特定海域で第三国間で武力紛争が起こったりそうした場合には、閉鎖したり、交戦国に通航禁止その他の規制条件を付することはできるわけですか。
-
○中島政府
委員 まことに申しわけありませんが、先生の御質問のポイントが必ずしもよくわかりませんでしたので、お答えが明快を欠くかもしれませんが、現状は公海のままになっているわけでございます。これらの海峡につきましては。——いま申し上げましたように、現状におきましても、これは公海になっておるわけでございまして、問題はそのような水域において戦争が起こった場合に、中立国としていかなる措置を取り得るか、そういう問題でございましょうか。いま私、突然のお尋ねでございますので、戦時国際法規上どういうことになっていたかという点、ちょっと調べさしていただきたいと思いますが、いずれにしろ、伝統的な意味での交戦法規が、現在の国連憲章のもとにおける武力紛争にそのまま適用になるかどうかという基本的な問題もございますので、ちょっとその点については調べさせていただきたいと思います。
-
○近江
委員 やはりこういう世界に例のない特定海峡、こういうことをやりますと、いろいろな心配があるのですよ。
この間、わが党の議員が外国漁船の問題について質問しました。これはいわゆる農林大臣から答弁ありまして、漁民は一応ほっとしておりますが、私がお聞きしたのは、まさかと思いますけれども、こういうような問題もあるわけですよ。いろいろな問題がたくさんあるわけです。これは後でまた、調べたら知らしてください。
それから十二海里に伴って、またこの二百海里の漁業水域に伴って、海上におきます保安業務の問題でございますが、これは当然第一義的には海上保安庁にあろうと思います。自衛隊はどのように考えておりますか。
-
○三原国務大臣 お答えいたします。
通常の場合は、いま近江先生も御指摘のように、人命、財産の保護なり治安の維持等につきましては、海上保安庁においてその任務を遂行しておられるわけでございます。自衛隊におきましては、通常の場合には訓練あるいは調査活動をやっておりまするので、そういう範囲で海上に異状を認めたときは海上保安庁に早速通報して処置を待つということでございます。しかし、これが海上保安庁においても、どうも自体で処理することは困難であるとか、たとえば海賊的な行為が頻発するとかというような事態が起こったことを言っておられると思いまするが、そういう場合には、自衛隊法の八十二条が御承知のようにあるわけでございます。このときには、特別必要な処置をせなければならぬという事態でございますれば、総理ような処置をとることがあるわけでございます。
-
○近江
委員 そうしますと、領海が三海里から十二海里に拡大された、そういうことであっても自衛隊法の八十二条は変更しないわけですね。改正しないわけですね、確認しておきますが。
-
○三原国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、八十二条を改正する意思はございません。
-
○近江
委員 確認いたしますが、この凍結海峡の核積載艦船の通航は自由であるか、これが一つです。凍結されない海峡の核積載艦船の通航は当然不可能と思いますけれども、念のためにこれは確認しておきたいと思います。
-
○鳩山国務大臣 従来どおりの領海を凍結されるところの海峡におきましては、そこの通航につきましては従来どおりである、当然そのようになると思います。また——凍結される海峡につきましては、従来の領海の通航と同じ取り扱いになろうかと、こう思うのでございます。——凍結されないところは領海でありますから、凍結されない海峡につきましては、従来の領海の通航ということになろうかと思います。
-
○近江
委員 これはわが国の非核三原則との関係で、時間がありますれば私は本当に質問したいのですが、きょうは時間がありませんから次の機会に譲りたいと思いますが、こういう形で行うということについてはわれわれとしてはもう納得できません。それを申し上げておきます。
次に、日韓大陸棚協定につきましてお伺いしたいと思いますが、日韓大陸棚協定は今国会で批准しなければ韓国側は一方的に開発を行うという見通しを政府は持っているのですか。韓国側から正式にそういう意思表明が政府にあったのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。あと時間がありませんから、簡潔にひとつポイントをお答えいただきたいと思います。
-
○中江政府
委員 正式に外交チャンネルを通じてそういう意思表明があったことはございません。この
昭和四十九年の一月締結には、海洋法の動向、これは単一草案が
昭和五十年に出ておりますが、この内容を踏まえてやったのですか。
-
-
○近江
委員 踏まえたということをおっしゃったわけでございますが、この大陸棚協定のできた経緯と、今日のいわゆる国際海洋秩序の動向を比較しますと、これは海洋法秩序にきわめて重大な事情変更があったということを私は思うわけでございますが、いまこういう大きな事情変更があるということは認めますか。
-
○中江政府
委員 大陸だな理論については大きな変更があったとは思いません。他方、漁業水域についても大きな変更があったとも思いません。
-
○近江
委員 あなたの認識というのは私はおかしいと思いますよ。いまこれだけ海洋法会議におきまして——二百海里漁業専管水域、これは即経済水域になるわけでしょう。経済水域ということになってきますと、地下資源まで入るわけですよ。これはいま、そういうような世界の趨勢になってきているのです。そういう情勢ということをあなたは踏まえてないとすれば、政府の実際の責任——どなたが持っておられるのか知らぬけれども、そういう認識がないということは重大問題ですよ。そういうあなたは、海洋法の動きということを認識していないのですか。
-
○中江政府
委員 経済水域が海底資源まで及んでいるということは、当初経済水域の概念が出ましたときから存在したわけですが、他方大陸だな理論というのは、あるいは大陸だなに関する条文、条項というのは経済水域とは別な概念として同時並行的に
審議がされておるわけでございまして、その限りにおいては、この日韓大陸棚協定を締結しました時点といまの時点とでは変わりがないということを申し上げたわけでございます。
-
○近江
委員 これは海洋法会議でいずれは決定されるわけですが、これは世界の趨勢なんですよ。
〔
田中(正)
委員長代理退席、
委員長着席〕
そうなってきますと、日韓が共同で進めようというこの地域につきましては、非常にわが国の権益に重大な問題になってくると私は思うのです。
私はここに、これは外務省が線引きした二百海里の線であります。これであります。いま総理に地図をお見せいたしておりますが、それは外務省が二百海里が線引きをした地図であります。それからごらんになりますと、そうした大陸だななり両国の二百海里の線というものがふくそうした場合は中間線でということは、これまたいまや世界の常識になってきております。中間線で引きますと、全くこれはわが国の中に入り込んでいるわけです。全くわが国のいわゆる中間線から内側であります。こういう状態にいまなっておるわけでございます。こういうようにいまや国際的に非常に情勢の変更というものが起きてきておるわけです。いま政府は特定海峡については凍結をするということをおっしゃっておるわけです。ところが、こういういわゆる全くわが国の中間線から内側にある政府が行おうとしておる共同開発地域について、なぜ批准をそんなに急ごうとするのか。これでは論理が矛盾しておりますよ。特定の海域については凍結をする、それならこの批准の問題についても、世界の動向、海洋法会議の推移を待つべきですよ。なぜそう急がなければならない理由があるのですか。背後に何かあるのですか、これは。
-
○中江政府
委員 簡潔に説明すべく簡潔に申し上げたわけですが、いまの先生の御質問の中にあります経済水域、二百海里の経済水域につきましては、おっしゃいますとおり、ぶつかった場合には中間線ということに原則としてなっておることはそのとおりでございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、その経済水域という概念と、それとは全く別個に海洋法会議では大陸だなに関する管轄権をどうするかという問題が
審議が進んでおりまして、その方では、いまおっしゃいましたように二百海里で中間線というような基準ではなくて、大陸だなにつきましては自然延長論と中間線論というのが相変わらず対立しておるわけでございます。のみならず、その中では自然延長論の方がだんだん優勢になっているというのが大陸だな理論に関連します最近の趨勢であるわけでございまして、いまの地図でお示しになりました海域につきまして、仮に中間線で下まで及ぶといたしましても、その下の海域が大陸だなであります場合には、大陸だな理論の方が今度は頭をもたげてくるわけで、経済水域と大陸だな問題とがそこで衝突するわけでございまして、その大陸だなについてはどうするかという点は、先ほど申し上げましたように中間線論よりも自然延長論の方が優勢になってきておる。それがこの問題について、もし海洋法会議の動向を待てばどうなるかという設問に対しましては、日本が主張しております大陸だなの境界線としての中間線理論は大陸だなの境界線としての自然延長論よりも不利な方に展開しているということが、海洋法会議の関係におきまして見た場合の、この協定を早く締結し発効させた方が有利だという理由でございます。
その問題を除きまして、この協定を急いだ方がいい理由という点は、外務大臣から御説明いただいた方が適当かと思います。
-
○近江
委員 それはあなたは大陸棚条約だけを引っ張り出してきて言っていますが、経済水域というものは、いまやこれは世界の趨勢になってきている。漁業専管水域二百海里イコール経済水域イコール水面下に入りまして、その二百海里の線まではいわゆるその地下資源もその国のものである、そういう考え方がもう非常に強くなってきている。いまこういう流動化しておる状態でしょう。そういう状態の中で、ただ大陸だなのそれだけを引っ張り出してきて、わが方としてはこうだ。それじゃ経済水域というものは、これは世界的に確定された場合どうなるのですか。そういう非常に流動化しておるときでありますから、特定海峡は凍結をすると言っているのだから、この大陸棚条約についても、しばらく韓国側と協議をするとか、海洋法会議の結論が出るまで凍結をするとか、やはりそういう政治的な配慮をする必要があるということを私は申し上げているのです。総理、いかがですか。
-
○鳩山国務大臣 近江
委員のおっしゃることはよくわかります。それで、私どもも中間線をとった方がわが国として有利であることは当然でありまして、わが国としてもそのような主張を続けておったわけでございます。ところが、自然延長論というのが大陸だなにつきましては大変優勢になってきつつあるわけでありまして、この大陸だなの行きました場合と経済水域とがぶつかった場合にどうするか、こういう問題になるわけであります。そしてこれは、結局は隣接する二つの国、関係する国が話し合いによって決めるほかないというのが現状でございます。したがいまして、このまま紛争を続けていけばいつまでもわが国のそばにある石油資源が開発できない。したかいまして、隣接する国の間で話し合いをつけてこのエネルギーを開発を図るというのが、わが国の国益上ぜひとも必要なことであるので、どうかこの共同開発は御了承をいただきたいわけであります。(「中国とはなぜ協議しないのだ」と呼ぶ者あり)ただいま中国の話が出ましたからここで申し上げますが、中国に対しましては、誠意を持ちましてこの連絡をしでおります。それは大平大臣のころから申し入れをしておるわけでありますが、あらゆる観点から、中国の権利といいますか権限は絶対に侵さないように、これは重々慎重な上にも慎重の上この共同区画の線引きをいたしておるのでございますので、中国側から非難を受けるようなそのような線引きにはなっていないということをぜひとも御理解をいただきたい。
-
○近江
委員 この問題は、中国もかつて抗議をしておるわけでございまして、そういう点で三国の問題でございます。特に、いま私が何回も申し上げておりますように、経済水域二百海里という、これのやはり権益というものがそういうようにいまいろいろと世界的な動きになっております。地下資源までというようなことになってきますと、これは全く日本の地域になるわけです、中間線でいってもですよ。だから、そういうようないろいろな問題があるわけでございますから、これは韓国とも中国ともよく協議されて、何もこれはそんなに急ぐ必要はないわけですよ。だからよく十分協議をされ、海洋法会議のそうした結論も待って、それからまたよく話し合って進めていく、そういうことが大事だと思うのです。いずれにしても、なぜそんなに批准を急いでいかなければならないのか、そういう背景があるのかということを、時間があればまた聞きたいわけですよ。だから、そういう点は慎重に時間をおかけになった方がいい。総理、時間がありませんから、この点をひとつ簡潔に御答弁いただきたいと思うのです。
-
○
福田内閣総理大臣 この条約は、調印をいたしてからもうずいぶん時間もたつことでございますので、今国会においてはぜひともひとつ御承認を願いたいとお願い申し上げます。
-
○近江
委員 外務
委員会等でもこの問題はまたいろいろ論議していきたいと思いますが、いずれにしましても、私は凍結を主張いたします。そしてよく韓国側とこういう海洋法の動向等につきまして、十分な協議をすることを政府に対して申し入れをいたしておきます。
次に、いま問題になっております大阪空港のエアバス導入の問題でございます。
昨日、運輸省が大変な、六十ヵ所にもなる資料の訂正を発表したわけです。大阪空港は、高裁でも判決が出ておりますように欠陥空港であります。大体ああいう密集地域にあれだけの国際空港が存在すること自体が問題である。ですから、判決等におきましても、将来に対する賠償まで命じておるわけです。そういう欠陥空港でございまして、毎日住民は苦しめられておるわけでございますが、大型機乗り入れにつきましてのそういう資料にこれだけのミスが出ておる。これは一体どういうことかと私は思うのですね。こういうずさんなぶざまなことをしたことについて、運輸大臣はどう反省しておりますか。
-
○田村国務大臣 積算上の誤謬やミスプリントがございまして、関係の皆さんに大変御心配をおかけしたことをまずもっておわびを申し上げます。
ただ、幸いなことには、その数値の誤謬も基準そのもの以下であって、大勢に影響が全然なかったということがせめてもの救いでございました。
-
○近江
委員 せめてもの救いでしたなんて、そんな自己満足をしているようじゃだめですよ。こんなことでは信用できないじゃないですか。あなた方が根拠として出した大事なデータでしょう。何カ所間違ったのですか。正式に一遍報告してください。訂正は何ヵ所ですか。
-
○
松本(操)政府
委員 お答え申し上げます。
全体の数といたしましては六十二ヵ所でございますが、そのうちの大部分は、いま大臣がお答え申し上げましたようなミスプリント、「ガルフストリーム」を「ガルフストーム」と書いたとかそういうふうなミスプリントでございます。次は、環境庁のお出しになりました747の一酸化炭素の基本的な数字のところが違っておりましたので、それをそのまま使って計算をいたしました部分が、結論として同じように全部間違っておったわけでございまして、この点が十二ヵ所ばかりあるわけでございます。あとは、計算の間違い及び非常に細かな表から拾ってこちらに書きましたときに、表の隣の行を、これは大変ぶざまな話でございますが、そういう点を見損なってそのまま載せてしまったという程度のものでございます。
-
○近江
委員 いずれにしましても、これはお粗末な話ですよ。今日の空港対策がいかにお粗末な行政になっておるか。きちっとしておれば、こういうデータだってやはりきちっとしておるはずですよ。一事が万事ということがある。これは、あなたが謝ったから、次に進みます。
環境庁に対しては、従来から国民は、環境を守ってくれるのが環境庁だ、こういう感じがあったわけですね。ところが、これは運輸省に非常に迎合しておるわけです。たとえばNOxの問題にいたしましても大変な量なのです。騒音が若干軽減するだろうからということで、運輸省の回答に対して同意なさっておるようでございますが、たとえばNOxの排出量が、エアバスを導入した場合、一日百回として年間で千七十四トンになるわけです。現状の一・七三倍になるわけです。これは、全国一の公害病認定患者発生地域である大阪市西淀区全体におけるNOxの排出量年間二千二百四十トンに対比すれば、いかに大量のNOxが空港周辺にばらまかれるかということになろうかと思うのです。こういうことで将来住民の健康が守られるかという問題なのです。そんな二者択一の、状況はわかるけれども何とか騒音が低くなるから入れるのだという環境庁の姿勢は問題だと私は思うのです。
環境庁長官、どうですか。
-
○石原国務大臣 お答えいたします。
この問題につきましては環境庁も非常に悩んだわけでございますけれども、現地で行われております訴訟の一番基本的な争点がやはり騒音でございますので、これをできるだけ緩和する、その反面、NOxがふえることは事実でございますが、これはエンジンの改良、その他移動発生源、自動車の排気の規制、あるいは工場に対する規制等で、ふえた分すべてとはまいりませんけれども、将来軽減できる可能性がございますので、こういう見解を述べたわけでございます。
-
○近江
委員 時間がありませんからもうこれで終わりたいと思いますが、エアバス導入によるNOxの汚染寄与率は、運輸省の環境庁への回答によりますと、豊中市の野田で〇・七五%になっておるわけですが、最も騒音と大気汚染に苦しめられております地域、勝部、走井等については何にも触れられていないのですね。都合の悪いところはそういうように資料に載せないのです。ところが、単純な計算でこれを出してみますと、勝部地域においては七・二%、走井地域においては一二・三%もふえるわけです。こういう直下のところについて何にもデータを挙げてない。しかも、現地は騒音に苦しめられておる。それじゃ排気ガスについては苦しめられてないのか。本当に大気汚染というものは、ぜんそくを生み出し、子供たちが鼻血を出したり、いまいろいろな健康障害を起こしておるのです。たとえばボーイング747の場合、一機で、一酸化炭素は千六百cc自動車に換算しますと三百四十一台分、炭化水素は三百七十四台分、二酸化窒素は二千七百八十七台分出るのですよ。これだけのものが直下に秒速六百メートルで吹きつけられるのです。それでなくてもあの地域一帯は、NOxの全国基準からいっても非常に高い数値になっているのですね。そういう総合的な環境という点から考えていかなければいけないと思うのです。
ですから、大型機の乗り入れについては、本当に政府としては、いまの状況においては差し控えるべきである。あれだけの密集地域に簡単に乗り入れるということは全く国民無視ですよ。しかもテストフライトをやるのだ。結局、それはまた導入にもつながってくるわけでしょう。資料等においてもこれだけのミスが運輸省からも出ているわけです。ですから、やはりこれは政府としてはもっと再検討をすべきだと私は思うのです。その上で地元住民のそうした了解を得る、やはりこういう政治姿勢が必要だと思うのです。総理はいかがお考えですか。
-
○坪川
委員長 近江君に申し上げますが、かなり時間が経過しておりますので……。
-
○田村国務大臣 いま机の上で出されております数値、それが実際にテストフライトの結果合っておるのかあるいは間違っておるのか、それより多いのか少ないのか、そういう点も調べなければなりません。でありますから、私は、テストフライトというものはやはり一種の検査でございますから、これはなるべく早くやって、その数値を発表するということがいまのところとるべき道であろう、このように考えております。
-
○近江
委員 もう時間がありませんから終わりますが、総理、最後に一言日だけ……。
-
○
福田内閣総理大臣 テストフライトをやって十分実際上の調査をした上、乗り入れをするかどうかということを決めます。
-
○坪川
委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。
次に、大内啓伍君。
-
○大内
委員 さきの首脳会談におきまして、
福田総理並びに関係大臣の御努力に対して敬意を表します。お疲れさまでございました。
そこで、実はこの首脳会談におきまして日米間で対立をいたしました核燃料の再処理問題を中心にひとつお伺いをさせていただきたいと存じます。
まず最初に、共同声明にかかりますので、これは外務大臣の方からお願いをいたします。この共同声明によりますと、「米国の新原子力政策の立案に関連して、エネルギーの必要に関する日本の立場に対して十分考慮を払うことに同意した。」、こういうふうに書かれております。つまり、この原子力の平和利用については日本の立場に対して十分考慮を払うのだということが、この共同声明に書かれてありますが、日本の原子力の平和利用は、言うまでもなく核燃料のサイクルを確立するということを政府は一貫して言ってきたのでございますが、その中には言うまでもなく再処理計画というものがあります。この再処理計画に対しましても十分考慮を払うという意味なのかどうか、そういう可能性を持ってここに書かれているのかどうか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
-
○鳩山国務大臣 ただいまお尋ねの点は大変大事な点でございます。その折衝の過程におきまして、わが方といたしまして、この原子力の開発利用計画、わが国が持っておるところの開発利用計画というものには、当然のことながら核燃料の再処理というものも含むというふうに、わが方はその実現に向かって進むことが緊要であるということを力説をしたわけでございます。それに対して大統領の申し述べたことは、「日本の立場に対して十分考慮を払う」ということでありますが、この「エネルギーの必要に関する」ということが入っておりまして、ストレートに日本の開発利用計画を全部そのとおり認めるということでは、てそれだけ限定をされた意味ということはできないということも解されるわけでありまして、その辺がこれからの折衝を要するところだと思うのでございます。
-
○大内
委員 私は、できるだけ、政府の首脳におかれましてはその場限りの答弁をなさらないようにお願いをしたいのであります。特にこういう問題は、国益を踏まえた重要な問題でございます。いま鳩山外務大臣は、この日米共同声明で言っているところの日本の立場について十分考慮を払うという意味は、必ずしも再処理計画まで同意するということまできちっと認めたものではないであろうという趣意のお答えとして理解いたしましたが、でも、鳩山外務大臣は三月二十四日、訪米直後に外務省で記者会見をやられておりますが、このときに、外務大臣お忘れではないと思いますが、この共同声明に言われている趣旨は、「米国は当然、再処理工場の運転についても日本の立場を考慮するものと理解してもらってよい」、こういうふうに書かれております。これは新聞記事が間違いでしょうか。そう言った覚えはございませんか。いまの答えとは全然違いますよ。
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○鳩山国務大臣 「考慮を払う」ということは、それはわが方のこれだけ必要性を主張をいたしたのでございますから、何らかの考慮を払っていただけるものと確信をいたしますけれども、いま申されましたように日本の再処理計画を認めたのであるか、こういうことになりますと、そこまではいってないというふうに理解をいたしております。
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○大内
委員 別に私は、認めたとか認めないとかという議論をしているのじゃなくて、日本の原子力の平和利用にとっての核サイクルというものが日本の基本政策であるなら、再処理という問題が当然日本にとっては重要な政策なわけです。そういう問題が一括されているのが原子力政策でございますから、そういう日本の立場についても十分な考慮を払うということであれば、その中に再処理という、
福田総理が一生懸命カーター大統領との間に議論した問題についても考慮を払うという余地を含んだ文言なのかと聞いているのでございます。そうしたら、その当初の記者会見においては「考慮するものと理解してもらってよい」とみずからおっしゃっておって、いま御答弁なさっておる段階では、そうではないと、もう自信を喪失したようなお答えになっているので、私は、できるだけ首脳のお答えというのは責任持ってお答えをいただきたいと申し上げているのでございます。どっちが本当でございますか。
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○鳩山国務大臣 「考慮を払う」という点につきましては、当方から申し述べたことに対しまして御返事でありますから、考慮は払っていただけるものと思います。しかし、それをもって先方が約束をしたというところまではいかないというふうに理解をいたしております。
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○大内
委員 福田総理にお伺いいたしますが、この日本の立場に対してアメリカが十分考慮を払うという中身は、再処理問題についてはぶつかったわけでございますから、これはアメリカはアメリカの立場を留保していると思うのですね。ですから、ここで言われている共同声明のアメリカの趣意というのは、たとえばウランの供給の保証についてはいたしましょう、しかし、その他についてはなおアメリカとしてはペンディングです、そういう内容として理解することの方が正確じゃないのですか。どうでしょう。
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○
福田内閣総理大臣 まあそういうところかと思いますが、つまりウラン供給、これはそう言ってました。私の方でお引き受けいたしましょう、こういうようなことですが、その他の点になりますと、日本の置かれておる立場、それから私から申し上げたこと、そういうことについて理解は持つ、しかし、アメリカがリプロセスの問題を直ちに容認した、こういうところではないというふうな私は理解であります。これからそれらがいろいろ話し合われる問題であろう、さように考えます。
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○大内
委員 伝えられるところによりますと、
福田・カーター会談におきまして、カーター大統領は、一つはプルトニウムの危険性というものをはっきり指摘した、それからもう一つは、経済的に再処理はむだである、こういう二つの点を強調されたというふうに仄聞をいたしておりますが、それは事実でございますか。
-
-
○大内
委員 アメリカの一貫したこの問題に対する姿勢というのは、申すまでもなく、プルトニウムを抽出する再処理工場の運転と、それからそのプルトニウムを燃やす増殖炉の開発を世界的に抑制していく、これがアメリカの最近における一貫した姿勢だと思うのでございます。ちょうどその日米首脳会談が行われました三月二十一日、アメリカの民間のエネルギー政策研究グループがカーター大統領に対して報告書を提出しまして、そして再処理についてはこれを全面的に中止せよ、こういう申し入れをやっておりまして、これを受けるような形で、三月二十五日にシュレジンジャー大統領補佐官が、核燃料の再処理と高速増殖炉建設計画を全面的に中止する、こういう方針を発表しておりますね。つまりアメリカは、日本に対して再処理のストップを求める一方、自国においても、これは民間ベースだと思いますけれども、まず範を示すことによって日本の再処理をもストップさせよう、こういう措置を具体的にとっておられる。したがって、日本の再処理計画というこの原子力の基本政策というものと、アメリカのいまとっている政策というものとは真っ向から対立せざるを得ない状況にあるのじゃございませんか。どうなんでしょう。これはどなたにお答えいただきましょう。日本の政策とアメリカの政策は真っ向から対立しているじゃございませんか、その点では。
-
○宇野国務大臣 伝えられるところによればそのような解釈も成り立ち得ると存じますが、しかし
福田・カーター会談において、カーター大統領から、私の決意が成り立ったこの本、これをひとつ見てくださいというので、一冊の本が渡されております。それは大内
委員も御承知のとおり、フォード財団が二十一名からなる執筆者によってつくった本であります。あそこには、私もずっと要約を読みましたが、必ずしも高速増殖炉並びに再処理、それを全面的に否定しておるということは書いていないわけでございます。むしろ、二十一世紀にはそのような時代をつくり出さなくちゃならないからその準備をすべきである、そうしたことも書いてあるわけであります。
なおかつ、この本に対しましては、ちょうど一昨日二十八日、アメリカの国会におきまして、やはりフォード財団報告書に対して、米国原子力産業会議のグリソン副会長が徹底して矛盾点をついております。フォード財団報告書は再処理及び高速増殖炉問題について誤った結論を出しておる、こういうふうにも批判をいたしておりますので、やがてこうしたことも、アメリカ政府も私は恐らくいろいろしんしゃくするのではなかろうかと思いますから、現在ただいまでは、そのように真っ向から対立しているような面が見えるかもしれませんが、そこはインフォメーションギャップもございますから、日本の立場を今後切々と向こうに訴えて、そして十二分に聞いてもらうつもりをいたしております。
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○大内
委員 そういたしますと、日本についてだけ特別の扱いをするという余地があるとお考えなんですか。そういう可能性は本当にありますか。責任を持って答弁しておいてくださいよ、後でまた変わっていただいても困ってしまいます。
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○宇野国務大臣 一応昨日も、私はアメリカの責任者であるシュースミス代理大使とお目にかかりましていろいろと話し合いをいたしましたが、現在のアメリカはグローバルという言葉を用いております。で、特殊扱いはしないのだという意味であります。しかしながら、われわれの主張を申し上げるのならば、やはり英国とフランスと日本とは違う、あるいはまた他のユーラトムと日本とは違う、あるいは、再処理工場を持ちたいと思っていらっしゃるが、まだNPTにも参加しておらない国々とも日本は違う。こういう幾つかの相違点があるわけでございますから、そうした面を一括してグローバル、グローバルとおっしゃいましても私たちは納得するわけにはまいりません、かように申しておりますので、今後は日本の特殊性というものを十二分にアメリカに知らしめる方法をなお一層強く持たなければならない、かように存じておるわけであります。
-
○大内
委員 そういう御努力をされることは当然でございますし、またそうなることが一番望ましいのでございますが、しかし、やはり問題には一つの限界があることも長官御存じのとおりです。なかなかこれはむずかしいです。
そこで、もう一回ちょっと振り返って確認しておきたいと思うのでございますが、わが国の原子力政策の基本は、言うまでもなく核燃料サイクルを確立する、そういうことが一貫して言われてきた。そして核燃料サイクルの中には言うまでもなく再処理問題を含んでいる。そうすると、そういう全体の核サイクルというものが認められない場合は、わが国の原子力利用は妨げられるとお考えでしょうか。長官、いかがです。
-
○宇野国務大臣 私たちの長期計画によれば、やはりいま御指摘のとおり、再処理によりましてプルトニウムを抽出して、それを燃料とする高速増殖炉、これが資源小国の日本にとりましても、また世界にとりましても一番大切なことではないかと思うのであります。ということは、今日のままの軽水炉でございますと、ウラン資源も有限ですから、二十年であるいは寿命が来るのではないかと言われております。アメリカはこれに対しまして、最近アメリカにはたくさんウラン資源が見つかったから大丈夫だと反論いたしておりますが、一般的には二十年ということが世界の常識となっております。高速増殖炉は、そのウランの効率から申し上げますと、軽水炉の六十倍であると言われております。さような意味からも、私たちは一九九〇年代に高速増殖炉を持ちたいと、かように存じておりまするから、現在の日本といたしましては、何と申し上げましても資源がないわけでございますので、十分安全を考えながら、それを確立しながら、やはり再処理ということを目玉にした核燃料サイクルの確立、これが一番大切であると存じております。
-
○大内
委員 これは
福田総理にぜひ確認をしておきたいのでございますが、アメリカ等の核保有国については再処理が許され、そして日本のような非核保有国については再処理が禁止されるということになりますと、これは不平等になることは間違いない。そして、それは日本の原子力の平和利用を妨げることになるといま長官はおっしゃったのですが、そのとおりにお考えでしょうか。
-
○
福田内閣総理大臣 そのとおりに考えております。
それで、なおつけ加えますが、私はカーター大統領が再処理廃棄、このことを盛んに言いますから、それじゃ現に処理施設を持っておる国々はどうするのですか、イギリスはどういうふうにするのです、ドイツはどうするのです、フランスはどうするのですとまで聞いたのです。既存の施設を廃棄するということを求めたいと思います、と。わかりました、それは結構です。それじゃ一体ソビエトロシアが持っているという話であるが、これはどうするのですと、こう言ったら、これまた廃棄することを求めると、こうおつしゃる。とにかく私はあの話において、わが日本だけが不利をこうむる、不平等な扱いをするということは絶対に許されないということを主張したわけです。
-
○大内
委員 いまアメリカは現実の問題として再処理工場を持っている。日本はこれから七月に試運転をやろうかなという状況の中で、ストップをかけてきた。
ここで実は核拡散防止条約を想起していただきたいのですけれども、あの核拡散防止条約の前文並びに第四条一項においては、この核の平和利用というものが妨げられないということで明確に書いてある。そしてさらに、一九七五年、当時宮澤外務大臣が核防条約の趣旨説明をやっておる中でも、この条約をわが方が批准すれば核の平和利用というものは保証されますと言われ、そして一九七六年の六月に出されました政府声明においてもそのことが言われている。しかし、にもかかわらず現実には、いま
福田総理も
科学技術庁長官も、それはわが国の原子力の平和利用の問題でございますと言い切った再処理については、きちっとストップがかかってきている、これは間違いないと思うのです。そうしますと、私ども国民とか国会という側からすれば、政府の言ってきたことがうそになる。あるいは政府という立場からすれば、アメリカから批准をしてくださいとさんざんせっつかれて、わが方の原子力の平和利用は大丈夫でございますねと聞き直して、大丈夫だといって批准をした。そうすると、結局アメリカが、この核防条約批准に対してわが方がとった態度に対して裏切り行為をやっているか、そういうことになると思うのでございます。アメリカはいまの段階では核防条約違反の提案をやっていると考えておりますか。いかがでしょう。
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○宇野国務大臣 この点は過般来国会におきましても私は問題点の一つであるとして回答してまいりましたし、総理もカーター大統領にその点を強く言われたわけでございます。私もいままで接触いたしましたアメリカの当局者には、特に第四条、これは基本的な権利として参加国に平和利用は与えられておる、しかも多数国条約である、それを二国間において破られようとするのか、アメリカの真意はいずこにありや、ここまで私は言葉を強めまして申し上げておる次第でございます。
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○大内
委員 核兵器の不拡散に関する条約、これは
昭和五十一年に発効した有名な条約でございますが、この条約の第四条第一項には、この原子力の平和利用というのは「締約国の奪い得ない権利」であるとはっきり書いてある。にもかかわらず、先ほど来私が確認しておりましたように、再処理問題を含めてそれは原子力の平和利用の範疇に反する問題だとすれば、いまアメリカの言っている再処理はいかぬというのは明らかに核防条約違反じゃございませんか。総理大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
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○鳩山国務大臣 私も大内先生と同じ見解でございます。
-
○大内
委員 私どもが核拡散防止条約批准に当たって最も重要視した問題の一つが、いまここに現実の問題として起こってきたわけであります。
そこで、私は総理あるいは外務大臣に注意を喚起したいのでございますが、アメリカが日本の再処理についてストップをかけてきておる真意を、当
委員会におきましてもあるいは他の
委員会におきましても、それはアメリカが核拡散防止の見地からそういう提案を行ってきているんだ、こういうことを一貫して強調されているわけであります。しかし別の面から見ますと、アメリカといたしましては核燃料の需給を押さえることによって原子力エネルギーの面でアメリカの世界政策というものを貫徹したい、 つまりそういう原子力エネルギーを通じての世界支配体制をつくりたいという見方も一つあるのでございます。もしアメリカがそういう意図を持って実は日本にいまのような姿勢で迫ってくるということになりますと、核燃料のサイクルの確立を図るということはなかなかむずかしい問題になってきている。
そこで、端的にお伺いをいたしますが、再処理にストップをかけるアメリカの真意を日本の政府はどのように認識しておられるのか。それは核拡散の防止だけ、そういう一つの理由からだけ日本にそういう要求を出してきている、そういうふうにお思いになっているかどうか、外務大臣、いかがでしょう。
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○鳩山国務大臣 私の感じておりますところは、カーター大統領の、核の拡散が再処理技術の普及によりましてきわめて容易に起こり得るということから、また広い意味での宗教家的な信念的なものから発しているのではないかと私は考えております。
-
○大内
委員 その辺は、きわめて複雑な国際政治でございますから、今後の課題として十分御検討をいただきたいと思うのです。アメリカの本当の真意をつかむことなしに折衝することはできません。それはカーター大統領があの選挙に当たってレリジャシティーという言葉を使いまして宗教心の復活という問題を訴えた宗教家であることを十分存じておりますし、そしてそこからいまのような提案が起こっていることも事実でございましょう。しかし、それは単純に核拡散防止という見地だけとは思えない節もある。その辺を日本政府としてもこれから十分御検討を賜りたいと思うのでございます。
そこで、ひとつ具体的な問題でお伺いをいたしますが、対米交渉団を派遣するということがしばしば報道されておりますのですけれども、それは派遣されるのでしょうか。長官でございますか。
-
○宇野国務大臣 現在閣僚の中におきまして、私と通産大臣と外務大臣が対策会議を持っております。これがこの問題に対する、言うならばヘッドクォーターでございますから、したがいまして近日中に派遣する予定をいたしております。
-
○大内
委員 そのレベルにつきましては新關原子力
委員というお話も出ておるやに聞いておりますのですが、
福田総理はサンフランシスコにおきまして記者会見で、日米交渉の日本代表は
科学技術庁長官が常識であろうというふうにおっしゃっていますですね、やはり相手はシュレジンジャー大統領補佐官でございますから、ですからやはり相当トップレベルの閣僚級の人を折衝に出さなければ、対米交渉団を派遣すると言ったってなかなかうまくいかないのじゃないでしょうか。総理大臣はこれはどういうふうにお考えですか。
-
○
福田内閣総理大臣 シュレジンジャー氏がアメリカの最高責任者だ、ヘッドクォーターだ、こういうことなんですよ。わが方はそれが一人じゃないのです、三人である。こういうことで、アメリカにおいてわが方のだれと接触するかということはもうぼつぼつ決めるんじゃないか、そういうふうに見ております。
-
○大内
委員 そうしますと、いま
科学技術庁長官のおっしゃった対米交渉団と、いま総理がお答えになった日本代表団の派遣とは違うのでございますか。
-
○宇野国務大臣 全く同じでございますが、その後、シュレジンジャーさんがエネルギー政策に関する最高の責任者ではあるが、対日外交についてはそうでもないというふうな話が伝わってまいりましたから、現在では、日本からミッションを送った場合にだれがその相手をされるかということを照会中でございまして、その相手によりましてこちらも決めたい、かように存じておりますから、一両日中にその回答がございましたら決めたいということでございまして、総理のお答えと私の答えは同じ内容でございます。
-
○大内
委員 日本では再処理は現段階では言うまでもなくできない。そうしてこれまで英仏に対して二千トンでございますか、再処理をお願いをしている。そして現在日本は三千二百七十一トンでございますか、この再処理を英仏に対して要請をしている。これは大体合意をされましたのですか。
-
○宇野国務大臣 ただいまの数字は、実は四千百トンばかり、四千九百万キロワット原子力発電ができると想定した場合に、一九八五年度には累積要るであろう。そのうちわが国の再処理工場も動きます。これは年間二百十トンでございます。そしてただいま大内
委員がおっしゃいましたとおり、英仏に現在契約済みのものが二千ショートトンでございますから、大体三千三百五十トンぐらいは処理できる。しかし、あと七百五十トンばかり余る。その七百五十トンにつきましては、第二次再処理工場もつくらなければならないし、さらには英仏に追加契約をしなければならないということでございますから、まだその分に関しましてはいま交渉中であるというわけであります。
-
○大内
委員 実は、私自身はその交渉の今後について若干の疑問を持っております。と申しますのは、私どもが得ている最近のアメリカの情報では、英仏両国に対してアメリカは日本へのプルトニウム持ち帰りの禁止というものを強く迫っている。つまり、いままで日本は再処理ができないから英仏に頼んでいた。しかし、その頼み先である英仏に対して、日本へのプルトニウムの持ち込みはいかぬぞとアメリカはブレーキをかけ始めているとすると、英国もフランスもやりにくくなる、もしそれが事実であれば。そういう懸念は絶対にありませんか。
-
○宇野国務大臣 まだ正確なものとして聞いてはおりませんが、私たちもアメリカといろいろ交渉する上につきまして集めました情報の上におきましては、英仏それぞれちょっとニュアンスが違うらしゅうございます。で、先ほど私が、グローバルと申しましても英仏と日本は違うと申しましたゆえんもそこにあるので、英仏は天然ウランの資源を持っておりますし、また核保有国でございまするし、同時に再処理能力を持っておるのでありますが、アメリカの決定は、いわゆるコマーシャルベースには相当な影響を与えるであろうというので、ややこの問題に関しましてフランスは現在同意をいたしかねるという状態であろうと考えております。したがいまして、今後もそれらの問題が、アメリカの核新政策に伴いまして世界的にいろいろと動きがあるのではないか、こういうふうに分析いたしております。
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○大内
委員 いま長官がすでにフランスの動向を説明されましたように、これから英仏が日本の再処理を引き受けるということはやはりそう簡単ではなくなってくる。アメリカは、そういう意味で、世界的な攻勢をいまかけてきている。といたしますと、この問題の解決というのは、カーター政権の原子力政策立案までに解決するということはなかなかむずかしい。当初は四月二十日と言っておりましたが、これが延びているようでございます。したがって、アメリカとのバイラテラルな交渉を通じてこの問題を解決する努力はもちろん続けなければなりませんが、これはやはり世界的にも及び、特に日本にとって直接関係を持つ英国、フランスあるいは西ドイツに及んでくる。そしてこれから先を見てみれば、四月末にはロンドンにおいて十四カ国の核供給国会議が行われる。また五月の初旬におきましては、国際原子力機関ザルツブルグ会議も行われますし、また五月の六日、七日、八日にはロンドンで先進国首脳会議が行われる。したがいまして、日本としてはそういう国際会議を展望しながら、単にアメリカと交渉してこの問題を話すというだけじゃなくて、英国やあるいはフランス、西ドイツとも十分連携をとって、各種の国際会議に臨むことが必要ではないか、こう思いますが、いかがでございましょうか。
-
○宇野国務大臣 現在、私が接触いたしましたアメリカの当事者にも同様の質問をいたしまして、単に日米間だけのバイラテラルでこの問題は済まないかもしれないよと、私も実はそうしたことを期待しながら申し上げたわけでありまするが、やはり最終的にはマルチラテラル、多数国間というふうになるのであろうと思っております。しかし、日本は特殊な関係がございます。これは日米原子力協定という、そうしたものがございますから、やはりその面におきましては、両国間の努力を今後も最大のものとして続けていかなければならない、かように存じております。
-
○大内
委員 この際、総理に特に確かめておきたいと思うのでございますが、いま
科学技術庁長官は、二国間交渉というものを軸にしながら、ひとつもう少し幅広く各種の国際会議に向けての主要国との連携という問題も考慮していきたいという趣旨のお話であったように思うのでございますが、五月の七日、八日のロンドンにおきます先進国首脳会議におきましては、この問題を提起ないしは論議するおつもりがございますか。
-
○
福田内閣総理大臣 アメリカでは、エネルギー政策の全体につきましての方針を四月二十日ごろ決めたい、こう言っておったのですが、この問題は、ひとり日本とアメリカだけの問題じゃないのです。お話のとおり非常に多数の国との間の関係が出てくるわけでございます。そういうことで、四月二十日までにアメリカを中心としてそれだけ多数の国との間の意見の調整ができるかどうか。これは自然、どうもロンドンの七ヵ国会議、これにもたれ込むのじゃないかというような感じもするのですが、とにかくこの問題はそのころまでに決まらなければ、当然これは議題になってくる、こういうふうに思います。
-
○大内
委員 そこで、当面の重要な問題でございますが、これは総理の決意を聞きたいのであります、というのは、これは決して技術論じゃありませんので。
東海村の再処理工場につきましては、当初から七月試運転開始、つまりホットテストはその時点でやりたい、かねがね政府はそうおっしゃっておった。そして、そのためにはアメリカとの間に合意を図らなければならぬというので、今度もいろいろ御努力をいただいたと思うのであります。そして、つい最近出ました新聞におきましては、七月試運転変えぬという、どこから出たのだかわかりませんが、そういう方針が政府の方針として言われているというのでございますが、
福田総理は、この東海村の再処理工場の七月試運転、これはやる決意でございますか、それともアメリカの出方を待ちますか。
-
○宇野国務大臣 これは御承知のとおり、日本だけでやるということになってしまいますと、日米原子力協定違反をみずから犯すことになります。したがいまして、やはりアメリカと日米原子力協定におきまして同時決定をする、共同決定をするということが必要でございますので、現在、その共同決定をする最大の努力をしておる、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
-
○大内
委員 言うまでもなく、これは日米原子力協定の第八条C項に違反することでございますから、日本でやろうと言ったってできることではありません。しかし、アメリカの反論としてこれをやるなんという記事が堂々と出てくる。これも一つのかっこうよさでございましょうからそれも結構でございますが、日本の立場ということを考えますと、この問題の解決というのは、やはり相当粘り強く、しかも日本の国益を踏まえてやり続けなければならぬと私は思うのです。そうしますと、七月の試運転については、アメリカとの話し合いがまとまらなければ延期する、そういうふうに理解していいわけですね。
-
○宇野国務大臣 そのとおりでございます。
-
○大内
委員 そのとおりであるとしますと、これは非常に重要でございますが、はっきりおっしゃっていただいたので、これで問題がはっきりしました。アメリカは、今後恐らく再処理施設保有必要国とそうでないものとを分けてくると思うのです。ですから、日本が再処理必要国として取り扱われるためには、アメリカの再処理計画に対しても相当協力しなければならぬ。ところがアメリカは、再処理については三年間凍結してほしい、こう言ってきておりますが、必要国と認められればそれはアメリカの政策に協力するという方針を政府はお持ちでしょうか。
-
○宇野国務大臣 いずれにいたしましても、再処理工場をホットランまで持っていくということにおきましては、日米の共同決定が必要でございますから、具体的なとういう問題はどうだということに対しましては、これからわれわれの主張をしていかなければならないところでございます。
私たちといたしまして、あくまでも七月開始したいという既定方針でやっておるわけでございますから、したがいまして、こういう場合は、ああいう場合はということに対しまして、現在私はなかなかお答えしにくい立場におりますので、この点も御理解賜りたいと存じます。
-
○大内
委員 時間があと二分ぐらいしかありませんので、さらに突っ込むわけにはまいりませんが、やはり日本としては、もちろんプルトニウムも大事でございましょう。しかし、より基本的にはウラン、特に天然ウランの安定供給を確保する、こういう見通しを得なければならぬと思いますし、そのためのアメリカその他の国の保証を得なければならぬと思うのです。
そういう意味で、たとえば先般来のカナダの問題につきましても、当
委員会におきまして私が提起を申し上げたのですが、これは最近伝え聞くところによりますと、カナダとの対日ウラン輸出についての保証措置については大体合意がされたというふうに聞いておるのでございますが、カナダからのウラン再供給は具体的にどうなるのか。つまりその辺の合意はなされているのかどうか。
それから、通産大臣にこの点はお伺いをいたしますが、天然ウランの安定供給というものに対して、日本としてはどういう見通しを持っておられるのか、その辺を最後にお伺いをしたいと思うのでございます。
-
○鳩山国務大臣 カナダとの間におきまして、原子力協定の改定交渉が難航しておったわけでございまして、特に技術移転の規制の問題と濃縮に関するこの二点が問題点であるということを先般申し上げたところでございます。
その後、この交渉が実質的に合意に達したわけで、これで解決をしたというふうに私ども考えていたのでございます。しかし、合意に達したのでありますけれども、なかなかその後の手続が進まないということで、目下、この合意に達した線によりまして、一日も早くこの実現方、船積みができるように要望をいたしているところでございます。
-
○
田中国務大臣 お答えいたします。
天然ウランの安定供給確保の問題でございますが、わが国におきましては、天然ウランの安定供給を確保いたしますために、資源保有国等との協調関係を維持することによりましてこれらの諸国との長期契約の安定履行を図りますとともに、わが国の企業の海外ウラン鉱の開発に対しまして金属鉱業事業団を通じまして資金援助を行いますとともに、また動力炉・核燃料開発事業団によりまして、世界各地のウラン開発の状況の調査及び鉱床につきまして基礎的な調査を推進いたしております。
-
○大内
委員 時間が参りましたのでおしまいにいたしますが、この問題は非常に重要でございますので、総理から最後に一言だけ、核サイクル貫徹に対する決意をお伺いしたいと思います。
以上で質問を終わります。
-
○
福田内閣総理大臣 わが国は何としても
資源エネルギーの非常に乏しい国で、今日におきましてはそのエネルギー源を石油に依存しておる。二十一世紀ごろになればまたいろいろ新しい工夫も出てくるかと思いますけれども、その谷間を埋めるためにはどうしても核にエネルギー源を依存する必要があるわけであります。核サイクルの確立、わが国にとりましてはわが国の社会を保つ上において非常に重大な問題でありますので、この問題に対しましては非常に注意深く、また精力的に対処してまいる、かような方針でございます。
-
-
○坪川
委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。
次に、
柴田睦夫君。
-
○
柴田(睦)
委員 きのう参議院の
予算委員会でわが党の上田耕一郎議員が、自衛隊の持っているスパイ謀略組織の活動、訓練などについてその全貌を明らかにして、総理はこれに対してその調査を約束されました。引き続き私は、これに関連する問題について質問するわけですけれども、軍隊の持つ秘密戦略の全貌がその国の共産党に暴露されるということは世界の中においても全くまれなことだと思うのです。そういうことで私は、きょうは包み隠さず正直に答えてもらいたいということを最初に言っておきます。
そして公安調査庁や警察庁、警察の関係者が国民大衆の動向について情報を集めるというようなことはしばしば見聞することですけれども、自衛隊は政党や国民大衆の情報を集めることをやっていないか、このことをまずお伺いいたします。
-
○三原国務大臣 お答えをいたします。
先ほど御意見がございましたが、自衛隊自身がスパイ行動とか秘密情報云々とかいう言葉がございましたが、私どもはそういうことでなくして、わが国の自衛隊が専守防衛の立場をとって、憲法に規定される九条の戦闘行為はいたしませんという立場でわが国の防衛の任に当たっておるわけでございます。したがいまして、自衛隊にとりましては内外の情報収集というのはきわめて重要な仕事でございます。その中でいまお話がございました国内におきます政党情報とかその他の治安情報等につきましては警察がございますし、国会等の公刊される印刷物等もございますので、そうしたものは、その公刊されるものそれから警察とかでいただきます情報等で私どもは処理をいたしておるわけでございます。国内情報といたしましては、地形がどうだとか写真を撮っておくとかいうようなことでございます。そういうような実態であることを申し上げておきます。
-
○
柴田(睦)
委員 この十年来、わが国ではいわゆるトロツキスト暴力集団を中心とするゲバ騒ぎが頻発してまいりました。最も陰惨な連合赤軍事件あるいは世間の注目を集めた東大事件あるいは新宿の騒乱事件など、数え上げればきりがないわけですけれども、自衛隊幹部が、これらトロツキスト暴力集団との接触を図り、彼らと行動をともにするというようなことをやっていないかどうか、次にお伺いします。
-
○
伊藤(圭)政府
委員 そのようなことは絶対にございません。そして、実はいま大臣から御説明申し上げましたが、昨日参議院の
予算委員会におきまして資料が提出されましたけれども、まず、スパイ活動を行っているというような情報機関がないということは、昨年の四月の参議院の
予算委員会におきましても同様な御質問がございまして、それに対しまして防衛庁といたしましては、陸幕の二部別班というようなものはございませんということ、それから座間に常駐している勤務員というのはおりませんということ、それから陸幕の二部というのは海外軍事情勢について米軍と情報連絡をすることはございますというようなことを御説明申し上げておるわけでございますが、ただいまも大臣から申し上げましたように、自衛隊には治安出動の任務がございます。したがいまして国内の情勢も必要でございますが、これは警察等の関係機関からの情報をもらうだけで十分でございます。
〔
委員長退席、澁谷
委員長代理着席〕
それから外国の軍事情報につきましては幾つかの方法があるわけでございまして、交換資料によります分析あるいは関係の政府機関からもらう情報、あるいは通信情報あるいは米軍との情報交換、そのほか外国の旅行者などの協力による情報の収集、そういうものによって確度を確かめていく。そういった努力はいたしておるわけでございますが、自衛隊の任務からいたしましてスパイというようなことは全く必要がございませんので、従来からそういうことは全く行っていないということを申し上げておきたいと思います。
-
○
柴田(睦)
委員 きのう上田議員が明らかにいたしました自衛隊の調査学校の対心理情報課程卒業者の同窓会の機関誌であります「青桐」、抜粋を資料として差し上げております(1)の方ですが、その中のナンバー二のところ「松江一日内閣」、これを見ますと、「先般九月二十五日、松江市の一日内閣の折りには三日間島根大全共闘諸官と付合いました。」、こういうととが書いてあります。またナンバー四の「アルプス、一九六九年」、この中には「頭には所属を示すヘルメット・手にはピッケルに替るゲバ棒、ウインドヤッケには「安保反対」「大学立法粉砕」と前後に大書、黄色のヤッケときている」、それからそれに対して「恰好の工作対象の出現に一足お先に制圧出動した」ということがあるわけです。これはいずれも幹部であるわけですけれども、この自衛隊の幹部がこのような暴力浮生集団の連中と三日間も接触して行動をともにするとか、あるいは出動するとかあるけれども、これはいま言われたことに対してどういうことになりますか。
-
○
伊藤(圭)政府
委員 ただいま初めて拝見いたしまして、どうも内容がはっきりわかりませんので、これは調べてみなければわかりません。
-
○
柴田(睦)
委員 先ほど
防衛庁長官それから防衛庁の方が答弁されましたけれども、この二つだけを見ても、自衛官の幹部がそういう連中とつき合っている、情報を集めている、そういうことがはっきりすると思うのです。
さらに言いますと、同じく「青桐」の今度はナンバー三の方ですが、「「みちのく」からお便り」というのがありまして、その下段ですけれども、「仙台では暴力学生(学生と云えないと思うが)の街頭行動も逐次エスカレート、遂に街頭での火炎ビン使用、自動車の放火という階段にまで発展しました。」、こういう前提のもとに、ちょっと抜きますが、「対策上ということになりますと、先づ第一に必要となってくるのは情報、この入手手段やその伝える要領ということになって、情報組織又は情報網の確立と通信網の確立ということが協力者関係も含めて緊要且つ早期に整備しなければならないことを痛感しております。」、こう書いて、最後の方には「ニュースによりますと、あちこち荒れてきたようです。こちらもそろそろ状況図に取り組むことに致します。」、こうはっきり書いてあります。
なお、これは抜粋ですけれども、「青桐」の七号のほかの部分ですけれども、深田というやはり自衛官の幹部、この文章の中に「あわてるなダラ幹」というのがあって、「赤軍の東京戦争、大阪戦争と過激グループはもとより反戦青年委、ベ平連まで騒然としています。」、そしてこれに対して「せめて、青桐に集う方々だけでも落着いて真相を見極めていきましょう。」、こういうように書いてあるわけです。こうしたものを見ても、自衛官がスパイをしていない、そういう団体の中に入っていない、こういうことを言われるつもりですか。
-
○
伊藤(圭)政府
委員 ただいまのはその「青桐」という同窓会誌に勉強した者が出してある感想文でございます。自衛隊は御承知のように治安出動の任務を負っているわけでございますから、いろいろな場合に国内の情勢について勉強するということはございます。しかし、それを組織的に調査するというようなことではなくて、現実に目撃した者とかそういった者がいろいろの感想を抱くということはあり得ることだろうと思います。
-
○
柴田(睦)
委員 自衛官が自分でやっていることをちゃんと書いているわけであるし、そしてまた三日間接触したとか協力者関係を持つとか、これは全部を言えばまだたくさんこういうことが出てくるわけなんです。それを単に自分の勉強だ、こういうことでは済まされない問題であります。こうした自衛官の活動の背後には調査学校の教育があるわけです。この調査学校の校長をやった井門満明という人、これはいまの資料の一ページにありますけれども、「青桐に想う」、ここには「騒ぎはおさまった。欠陥青年の自伝自滅の形で。だが、事はおさまってはいない。騒がれたものの反省はないし、騒がせた連中に至っては今も大手を振り、横行しているのだから。今後より深く、より秘そかな動きがつづくだろう。そうして、誰もその行方を見届けようとはしないだろう。しかし誰かがそれをやらねばならぬ。青桐会の諸兄の眼を想いながら頭の中でこんなおもいの去来する昨今である。」これは四十四年の一〇・二一、この騒ぎのことについて書いているわけです。これは当時の資料によりますと、新宿、高田馬場など都内の各所でトロツキスト暴力集団が火炎びんを投げてゲリラ活動をし、千四百人が逮捕される、こういう事件のことを言って、そしてこのCPI出身者がそうしたものの動きをひそかになってもそれを見なければならないということを校長経験者が言っているわけです。そういう意味では、ナンバー五にあります佐藤隆、この人もそういう意味で「一〇・二一ではテレビで自警団結成の姿、群衆と暴徒の警察の分離策などが報ぜられる度びに目が引き付けられるのも教育の賜と思っております。」、「入校間得た青桐の心を生かして頑張りたいと思っております。」。こういうことで、このCPI教育の課程では、こうした問題について自分たちが取り組まなければならない、そしてまた現に取り組むということを言っているわけです。そのほかこの「青桐」の中には、新宿駅頭で教育を受けたということも出てまいるわけですけれども、これはまさに調査学校のその教育が団体や国民の中に入って一緒に行動する、そういうことまで含めた教育をやっていると思うのですけれども、その点はどうですか。
-
○水間政府
委員 先ほど「青桐」から幾つか御
紹介されましたが、「青桐」と申しますのは同窓会誌という私的刊行物でございまして、井門、佐藤外幾つか名前が出ましたけれども、それぞれ個人的所見を述べている。学校の友達との接触その他を通じまして、自衛官としていつも国を守る任務を持っているものですから、その関心を披瀝したものとして私は理解しております。
それから、CPIとおっしゃいました課程でございますが、これは以前そういう略称を用いてはおりましたが、現在は心理戦防護課程になっております。この心理戦防護課程で教えておりますのは、有事におきまして部隊と部隊が対峙しているときに敵の部隊から心理攻撃をかけられる、それに対処するために有効な防御を考えなければならないわけですが、これは平時から陸上自衛隊としましても部隊にそういう能力を持たせておく必要があるわけです。そこで敵の心理攻撃を無効ならしめるための防御方法を教える課程でございます。そこでその有効な防御方法というものを考えるためには、当然敵のやり方がどういうやり方であるかということを基礎的初歩的ではあっても教える必要があるということからそういうものにも触れておるわけでございます。ですから、先生のおっしゃるようなスパイ教育などというものは決して行っておりません。
-
○
柴田(睦)
委員 それで教育学校では生徒を山谷のドヤ街に入れて工作するということをやっているかということに対して、防衛庁では体験実習をやらせているという答えがきのうありました。この山谷に入れるという問題について、山谷には生徒を同時に行かせるのか、あるいは分けて入らせるのか、一人の生徒は何日ぐらい山谷に入って寝泊まりをするのか、そのことを結論だけ答えてください。
-
○水間政府
委員 山谷での実習はその「青桐」の出ましたころ行っていた事実があるようでございます。現在やっておりません。これはたまたまそれに該当する学生は十一期の学生でございますが、
昭和四十四年の六月七日、八日の二日間にかけまして行ったようでございます。
もう少し具体的に申しますと、学校を服装を変えて出まして、夕方上野に着きまして、上野から各自分散して山谷に宿泊する。山谷で目立たない服装、つまり山谷の一般的な服装に変えた形で一人ずつ泊まりまして、いわゆるドヤ街に泊まったわけです。泊まって教官のところへ連絡をとる。それだけの非常に原始的な内容であります。それは何のためにやらせたかといいますと、つまり自分の服装を変えて自衛官ではないという形で潜行する体験を与えたというだけでございます。再び上野に集まりまして学校へ戻った、そういう内容でございます。
-
○
柴田(睦)
委員 ごまかしてはいけないということを私は言いたいのです。山谷の行動について書いたいま言われた十一期生の文章を見てみますと、たとえば
井上一尉の場合、「まずは手始めにビラ配り夜の夜中にへんなステッカーペタペタと女房にゃ見せられぬスタイルでついたところは山谷ドヤ地下足袋精神で組織づくりに明け暮れて、」こうあります。同じ同期生の佐藤一尉の文にはやはりビラ張りや人集めのことが出てまいっているわけです。それじゃ一体どんな中身のビラを配るのか、どんな中身のステッカーを張るのか、これを明らかにしてください。
-
○水間政府
委員 ビラやポスターを張る実習は別のところで行っておりまして、それは一連の教育ではございません。ビラ、ポスターは、町をされいにしようという文句のビラを配りまして、ポスターは電柱等に一時張りますが一応しばらくたったあと撤収して帰ってきた、ビラの場合は渡したまま帰ってきているということでございます。
-
○
柴田(睦)
委員 それじゃ「夜の夜中にへんなステッカーペタペタと」というのが出てくるはずないでしょう。いいかげんな答弁をするなと最初断ったでしょう。
では警察の方に伺いますけれども、ビラ張りをやって逮捕される、裁判に回されるということがしばしばあるのですが、自衛隊でもこの夜中にこっそりビラを張る、ポスターを張るというようなことは刑事事件になるのじゃないですか。
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○水間政府
委員 刑事事件前の状態であるという事実関係についてまず申し上げる必要がありますが、「夜の夜中に」というのは他の部隊の基地へ自衛官であることを隠して潜入する教育をやっておるわけです。全く心理戦防護のための教育をやっておるのでありまして、先生のおっしゃるような国内の政治的な動きを察知するような教育は必要もございませんのでやっておりません。
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○
柴田(睦)
委員 いまのことについて警察の答弁……。(発言する者あり)
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-
○吉田(六)政府
委員 警察としましては、そういう事実があったかどうかということを承知しておりません。一般的にある行為が犯罪を構成するかどうかということは具体的な事実に即して判断しなければならないわけでありますが。いわゆるビラ張り行為が犯罪を構成するものとした場合、通常予想される罪名としては、屋外広告物条例違反または軽犯罪法第一条の第三十三号違反というものが考えられます。また特殊な例外的なケースといたしましては、たとえば当該ビラが貼付された物件の効用を著しく損なうというような場合には器物毀棄損壊罪、器物損壊罪などが成立するということもあり得ると思います。
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○
柴田(睦)
委員 では防衛庁の方に聞きますけれども、いまの十一期生の入校日と卒業月日を教えてください。
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○水間政府
委員 四十四年四月十二日に入校いたしまして九月三十日に卒業しております。
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○
柴田(睦)
委員 警察の方に伺いますけれども、いまの四月から九月まで、その間に山谷ではいわゆる暴動と言われるような群衆が騒いだ事件、これがあったかどうかお伺いします。
〔澁谷
委員長代理退席、
委員長着席〕
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○吉田(六)政府
委員 四月から九月末までの手持ち資料はございませんので六月から九月までということで申し上げますと、お尋ねの期間中に山谷地区におきまして大ぜいの人が集まって集団で放火、投石等のいわゆる暴動のような事案が発生したという事実はございませんけれども、そのような事態にまでは至らないまでも大ぜいの人が集まって騒いだという事案は十一件、六月が二件、七月が七件、八月一件、九月一件という発生を見ております。
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○
柴田(睦)
委員 十一期生の在校中、山谷に入っているそのとき、そういう暴動が発生する。まあこれは七月の十九日の新聞ですけれども、「山谷で八百人騒ぐ 五人逮捕 また“暑い夏”の始り」と、こういう記事が出ているわけですけれども、そうした暴動のような騒ぎが山谷ではしょっちゅう行われていた。そういう中に自衛官が入って、ビラ張り、ビラ配り、ポスター張りをやる。これはまさにそういう暴動の挑発をやっているんだ、こういうように私は考えるわけです。
というのは、実は私も調査学校に直接行って調査してまいりました。そしてまた、陸幕二部別班にいた人でCPIの出身者の人にも、この質問に関連して、会って話を聞いてみました。その人は私と話をするときに、顔をうなだれて、そして、もう過去のことは忘れたい、こういうことを言っているわけです。暴力学生と接触して、三日間接触する、そしてまた山谷ではそういう訓練をやる。こういうことはまさにそういう暴力集団と自衛官が一緒になって行動する、こういうことを意味すると思うのです。その点はどうですか。
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○水間政府
委員 先生、そのようなことを、自衛隊で暴動の挑発のようなことをさせるとお思いになりますでしょうか。私は非常に心外でございます。
それから、調査学校でお調べになったということにつきましては、そういうことについて全く触れられていないということも私の方では承知しておりますので、はなはだ心外でございます。
-
○
柴田(睦)
委員 全く答弁にはならぬことを言って、ごまかそうとしているわけです。
で、この調査学校でそういう訓練をして、そしてそれが卒業すると、今度はその教育を生かして、それぞれの部隊で国民、団体の中に入って組織づくりを含めて情報活動をやる、さらに、暴力集団とのつき合いをやる。そうした一連の行動は、単に接触をして情報を集めるというだけではなくて、彼らと行動をともにすることを意味していると見なければならないと思うわけです。行動するためには一緒になってビラ配りやビラ張りをやらなければならない。組織づくりをやらなければならない。そしてまた、この暴力集団の行動が、これはまさに実際見ると、軍事行動にエスカレートしているわけです。これはもう単なるデモというようなものではなくて、軍事行動になっております。こういう挑発行動をやる連中と一緒に行動する。これはそういうところから見まして、まさに自衛隊がスパイ、謀略活動をやっているということが、これらの一連の資料でわかりますし、全くのごまかした答弁をしていると思うわけです。この自衛隊が国民をスパイし、暴力行動を挑発するということは、これは許さるべきことではありません。こういうことを許していたんでは、自衛隊が昔の関東軍のような大規模な謀略作戦をやる、そういうことまでなってしまうという心配をしなければならないわけです。
また、きのうも上田議員が明らかにいたしました「秘密戦概論」、これは秘密戦全体を体系づけた教科書であって、その内容は、秘密戦の意義から謀略戦の実施要領、それから防諜の問題、すべてにわたっております。テロ問題や政治謀略の問題について、その一部がきのう明らかにされましたけれども、この中の秘密戦の発展性というところ、資料(2)の方で秘密戦の発展性というのが第一章の総論の第四節の中にあるわけですけれども、それを見てみますと、この六のところで、「武力戦遂行中に於ても直接対手国軍の思想撹乱を求め若くは銃後の国民の戦意を弱化又は放棄せしめ、或は戦地及びその付近に於ける交通線を遮断したり、集積したる軍需資源の滅燼を策し、以て対手国軍の戦力に一撃を与うることは武力戦の進展に関し所謂速戦即決を求むる所以である。」ということから、さらに「戦争に与り対手国も亦国家総力戦に依り戦争遂行に努め、我が作戦軍が対手国内深く進攻するに伴い」、こういうとんでもないことが出ているわけです。
そこで伺いますけれども、
防衛庁長官は、こういう教科書を使って教育してきたこと、そういうことを知っているのか。そしてこのCPI教育、心理防護課程の教育、その全貌を調査して、どういうことをやっているのか。これを明らかにする必要があると思うのです。そしてまた、総理大臣はきのう自衛隊の問題について調査を約束されましたけれども、こうしたCPI出身者たち、こういう連中が何をしているか、これをさらに調査されることを要求いたします。これについての答弁をお伺いします。
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○三原国務大臣 さっきから話を承っておりますると、いかにも自衛隊が国内の暴動を使嗾するかのごとき意見が出ておりますけれども、御承知のように自衛隊の任務は、治安維持のための出動をいたしましたり、あるいは有事の際敵国によりまする直接間接の侵略に対して国民を守り、国家を守る立場に立つわけでございます。したがって、専守防衛という体制でおるわけでございまするが、私どもといたしましては、情報活動ということほど大事なものはございません。国内の情報を正確に把握し、それを分析し、国外も同様でございまするけれども、そうした処置をせなければならぬ立場にあるわけでございまするから、平素私どもの隊員の中から学校に入れてその実は教育をするわけでございます。
そこで、いま御意見が出ておりますような教育の教科書等の問題が出るわけでございまするが、いま挙げられましたものは教科書ではございません。いままで参考資料としてそういうものを使っておったこともございまするけれども、現在はございません。そういうものでございまするので、いかにも自衛隊自身が国民を使嗾して暴動に参画するというようなことは、そうしたことに対しましてどういうような状態でそういうものが起こるかという実習なり勉強はいたしておりまするけれども、みずからそういうことをするというようなことは絶対ございません。
そこで、最後に申し上げておきまするが、私どもといたしましては、憲法に違反をいたしたりあるいは人権をじゅうりんするようなことがあったり、あるいは自衛隊法はもちろん、その他の法規に違反するようなことは絶対に教育の中でいたすようなことはいたしておりませんので、御了承を願いたいと思うのでございます。
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-
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○
大原(一)
委員 私は、大蔵省から出されております中期の財政収支試算というのがございますが、今後の中期、長期と申しますか、財政計画ないしはそれに関連する税制計画なるものがなければならぬと思うのでございますが、いま私の手元に年次別財政収支試算ケースAというのがございます。これによりますと、
昭和五十二年度の税収十八兆七千九百億円、このケースAの経済成長率一五%、一二%、一二%、これによって計算されました五十五年度の税収は三十五兆五千八百億円となっております。この計算の前提には、公債発行額二九・七%を一五・五%に抑えて赤字公債をなくするという前提ではじかれた数字だと思います。
ところで、現在の税制のまま推移したとしましたら、五十五年度の税収は一体幾らになるんでございましょうか。事務当局で結構でございます。
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○大倉政府
委員 お答えいたします。
何度かお答えいたしておりますように、財政収支試算の五十五年度の三十五兆五千八百億という数字は、積み上げて出てきたものではございませんで、中期経済計画で予想いたしております国民
所得対比の租税負担率を一般会計ベースでは二ポイント四十八から五十年度平均に対して引き上げるという前提を置いて、まず三十五兆五千八百億の方が出てまいりまして、それをケースAなりケースBで年次別に機械的に割り振っているわけでございます。したがって、各年度で自然増収がどの程度あるかということは、これは今後の経済成長いかんによるわけでございまして、御質問に対して的確にお答えいたすということは、まことに困難かと考えております。
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○
大原(一)
委員 それでは、私の大変大ざっぱな計算でございますけれども、四十四年から四十九年までの租税弾性値一・三九になっておりますが、仮に、今後の景気の動向、大変シビアなものがございますので、一・三で計算いたしますと、三十兆円という数字が大体得られるわけでございます。つまり、現在の税制のままいったら、三十兆円しか税収がない。しかるに、この五十五年度計画では三十五兆五千八百億円という数字になっております。その差が、大ざっぱに申しまして、五兆円という金額が出てくるわけでございます。五兆円という金額をこの残された五十三、五十四、五十五年度で埋めるということになりますと、これは相当な増税を行わなければならぬということに相なるわけでございます。むろん、この間、増税以外に言うまでもなく行財政整理の問題、経費の節減等々によってこのギャップを埋めなければならないわけでございますが、こういう数字をお出しになります以上、何らかの財政計画ないしは税制計画があってしかるべきだと思うのですが、大蔵大臣いかがでございますか。
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○坊国務大臣 御指摘のとおり、弾性値一・三でまいりますと、五十五年には約三十兆という租税収入ということに相なります。おっしゃるとおり、五兆ばかりのものをこれから税収入として何とかこれを調達していかなければならないということに相なります。だけれども、そのためにはいわゆる中期税制においてあらゆる税の、直税、間税、資産課税といったようなすべての材料を、これを全面的に検討をしていくということで、昨年の半ばごろから税制調査会におきまして鋭意その努力を続けていただいております。そういうようなことで、ただいまはその中のどういう税を中期税制体系に取り込んでいくかということは、まだそこまでは到達いたしておりませんけれども、何といたしましても、これは五十五年に赤字財政から脱却する、こうしなければ日本の財政がとうていいけないということで、それをやってまいるという決意をいたしておりますが、そういうことが万一できないということに相なりますれば、これまた歳出の面におきましても、これは相当な腹を据えた考えを、もちろん今日から行財政の見直しということはやってまいりますけれども、どうしても税の調達ができないということに相なりますれば、そういった方面にもさらに一段とこれは思い切った処置を講じなければならない、こういう決意をいたしております。
-
○
大原(一)
委員 大蔵大臣の大変前向きの御発言があったのでありますが、さらに一段と思い切った措置を講じなければならないということは、赤字公債の発行ではないのだろうと思うのでありますが、現在中期税制の
審議が行われているわけでございますが、そこにいろいろの新税目が挙げられております。その中で一番取っつきやすい、と言ったらいけないかもしれませんが、税目は一体何と何でございましょうか。大蔵大臣の感じをお承りしたいと思います。
-
○坊国務大臣 もちろん、おっしゃるとおり思い切った処置を講ぜにゃならぬということは、赤字公債を新たに出すとか——赤字公債を脱却するためにこれをやっていく、こういうことでございまするから、そうではございません。そこで、最も取っつきやすい税は何か、こういうお話でございますけれども、ただいま中期税制の検討におきまして熱心にやっていただいておるときに、大蔵大臣なり財政当局がこれが一番いいのだといったようなものは、これはまだ
審議の結果、これがいいのだというところまでは考えておりません。
しかしながら、いずれにいたしましても、税の一番大本となるものは直接税では
所得税、法人税といったようなものであろうと思いますが、さらにまた間接税ということに相なりますと、いろいろ取りざたはされておりますけれども、これに対していろいろ批判とか、一長一短といったような声もございます。さらにまた資産課税につきましても、税としてどういうふうにこれを扱っていくかということにつきましては、まだそれについての決定的な意見が税制調査会においてもそこまでまいっておりませんので、私が今日御質問にお答えして、これとこれが一番取っつきやすいのだということを申し上げるには、ちょっとまだ考えさせていただきたいという事態でございます。
-
○
大原(一)
委員 お立場はわかりますが、五兆円という財源の不足額は現在の税体系で申しますと、法人税の税収より八千億少ないだけでありすす。法人税相当の税目を五十五年度までに新税かつくるということはこれは大変なことだと思います。さらにまた、現在の間接税と法人税が大体同じぐらいの金額になっておりますが、現在の間接税の税収相当額を五十五年度ベースで確保しなければならぬほどこれは大きなギャップでございます。租税特別措置法の整理合理化ということが問題になっておりますけれども、これも大蔵省の試算によりますと、全部取り払っても現在ベースでもって四千五百億円程度でございます。もちろんこれが五十五年度ベースでいけば大体四〇%上乗せされるわけでございますから、七、八千億円の税収にはなるかもしれません。ただし、これは一遍に廃止してという前提でございます。われわれとしてはいろいろ今後、税制調査会における中期の税制計画に対しては深甚なる関心を持つものでございますが、もう大蔵大臣の腹の中には、少なくとも五十五年度に財政収支を赤字国債なしでやりたいという決意のほどをお持ちであるならば、税制調査会にお示しになるこれとこれとこれというメニューぐらいはお持ちになってしかるべきだと思うのです。
そこで、私は、いま一つ富裕税の問題について大蔵大臣の御意見を承りたいのであります。富裕税という言葉がいいかどうか議論はあると思いますが、だれしも豊かになりたい、だれしもゆったりした生活をしたいということで、われわれ富裕税と言ってきておりますが、あるいは特別財産課税というような言葉でもいいのかもしれません。現に外国でも、西ドイツ、オランダ、スウェーデン、オーストリア等々には〇・七%から一・二三%の税率での富裕税が実施されておるようでございます。われわれも
昭和二十五年から二十八年、免税点五百万円で〇・五%から三%までの累進で富裕税を経験したことがございます。これは二十八年に廃止されまして、そして今日に至っておりますが、その廃止の一番大きな理由は何であったのでございましょうか。
-
○大倉政府
委員 当時、富裕税が廃止されました最大の理由は、やはり執行面での困難さ、それに伴う実行上の不公平ということで、したがってこの税を廃止して、
所得税の税率の高い部分を引き上げるという措置がとられたというふうに理解いたしております。
-
○
大原(一)
委員 結局、いわゆる税務当局の使われる言葉で、不表現資産ないし表現資産という言葉がよく言われるわけでございますが、隠れた財産、たとえば書画骨とう、貴金属、さらにまた証券、預金等々、よくつかまれないで、固定資産税みたいな税金になってしまうから、片寄った税制になるからやめます、むしろそれは
所得税に移しかえた方がいいということで、
所得税の最高税率を上げられておやめになったのでありますが、これは大変われわれにとっては貴重な経験だと思います。と申しますことは、不表現資産が現在の税務執行で把握できないということは、考えてみますと、現在の資産課税でございますところの相続税、贈与税そのものの執行にも相当な欠陥があるということを認めざるを得ないということに相なりますが、大臣、いかがでございますか。
-
○坊国務大臣 富裕税につきましては、これは中期税制の検討の一環といたしまして私は非常に重大なる税であろうと思います。そこで、税制調査会におきましてもこれに対しましては熱心に検討していただいておりますが、まだその結論は出ていないようでございます。
これはどこがむずかしいかと言うと、私はこの富裕税というものは、今日の社会におきましてうまくやられるならば私は非常にいい税だと思います。ところが、これを把握するのに、下手な把握をしますと、これはかえってまた異常な不公平が招来されるというようなこと、それから今日のこの世の中における、わが国における富の態様というものは、これはきわめて複雑なるものになってまいっておりまして、いかにこれを正確にキャッチするかということも、これは非常にむずかしい問題だと思います。いやしくもこういつたような画期的な税をこれを何とかして実現していこうという場合には、初めにへまなことをやりますと、この前に戦後にやりました——へまなことと言うと大変先輩に悪いのですけれども、いわゆる取引高税といったような税がいろいろな方面から反発を受けまして長生きせずに若死にをしてしまったというようなこともありまして、こういつたようなわが国にとって非常に重大なこれは税源であると考えられますものは、これは相当慎重な態度をとってそして実現を図っていかなければならない。かような意味におきまして、私はいましばらくひとつこの案をつくるのにお待ちを願いたい、かように申し上げたいと思います。
-
○
大原(一)
委員 この富裕税と言いましても、わが国の場合は一方で相続税体系あり、さらにまた固定資産税というのを地方税に持っているわけでありますので、二重課税になりはしないかという議論も出ると思います。したがって、そんなに高い税率で富裕税を取るということはできないと思います。大体二十八年ごろの富裕税の税収というのは、当時の相続税の税収にパラレルではなかったかと思うのでありますが、そうしますと現在の相続税大体四千億円に相なると思います。課税最低限が相続税は四千万円でございますが、四千億円ぐらいの税収しかこの富裕税でもっても確保できないだろう、とても五兆円の穴埋めに富裕税をものすごく課税するということはできない相談でございます。
ところで、私、ちょっと大ざっぱな数字をはじいてみたのでございますが、相続税の課税最低限をそっくり富裕税に持ってまいりますと四千万円ぐらいになりますが、
昭和四十五年に、これは数字が四千万というのがないので、五千万円超の相続税における納税者の割合、一一・五%でございます。現在は大体それが一億円超に見合う金額であろうと思います。仮にそう仮定いたしますと、先ほどの一一・五%は二八・五%に上がっております。これはいろいろ前提を置いての数字でございますからどんぴしゃりいかないのでありますが、そういうふうに高額資産階級というのはものすごい勢いで伸びている計算に相なっております、相続税の課税の実績からまいりますと。恐らくこの富裕税というものはかなり国民のコンセンサスを得られる税種であろうと私は思います。
そこで、この富裕税が廃止された経緯にかんがみましてひとつ意見を申し述べたいと思うのでございますが、一九六三年にケネディさんが大統領になられて即刻おやりになったのが、いわゆるソシアル・セキュリティ・ナンバー・システムであります。それをそっくりそのまま納税者番号に移しかえたわけでございますが、四、五年前納税者番号を採用すべきかどうかという議論があって、それはプライバシーの侵害になるという御意見も一方にあってそのままになっているんでございますけれども、資産課税の適正な課税を行うためには、私は個人的にはこの納税者番号システムを取り入れる以外に方法はないと思います。それが現在の
所得課税、資産課税または将来新設さるべき富裕税の公平な実施のため必要不可欠な課税手続上の大きな方法であろうと私は思うのでありますが、これについては大蔵大臣はどのようにお考えでございますか。
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○坊国務大臣 一億国民にナンバリングを規定するということは、これはある意味においては大変私は大事なことである。ところが逆に、いまおっしゃられましたように、強制的にこれをやるということはこれまた大変副作用も考えなければならない、こういうふうに考えます。そこで必要な面から言いますれば、いまの税制等につきましては、富裕税に関しましてもあるいはまた預金課税とかそういったようなものについても、このナンバリングというものがありますれば非常に公平にいけるという——ことにまたこれは税制だけでは私はないと思う。日本の国民がナンバリングをぴしゃっと一億国民が持っておるということは、私は何かにつけて非常な便利な、便利というよりも意義が深いことであろうと思いますけれども、さてそれだけにこれをつくっていくということにつきましては、いろいろな面から相当な検討を要するということであろうと私は思います。さようなことから考えまして、この重大なることにつきましては、これもここでさよういたしましょうということは私としては踏み切りかねますけれども、一つの大変ユニークな御意見としてこれは私はしっかりと受けとめまして考えてまいりたい、かように考えております。
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○
大原(一)
委員 特別措置の整理合理化ないしは廃止という問題が不公平税制のやり玉に真っ先に挙げられるんでございますけれども、私はこの制度を御採用になったら、その特別措置の整理合理化の四千四百四十億円ぐらいのお金はすぐに出てくるんじゃないかと思うのです。私は、いかにりっぱな税制を積み上げましても、その執行の面で欠陥があれば、それが単に税収の問題じゃなくて社会的ないろいろな不公平感の温床にもなり、政治に対する不信感の温床にもなろうと思うのでございます。そういう意味で私はケネディさんがよくぞ、社会保険番号ですりかえられたわけでございますけれども、採用された勇気に対しては、大いに税制の先駆者として評価しなければならぬと思うのでありますが、現在日本にありますところの社会保険ナンバーを縦横に駆使することによってソシアル・セキュリティー・ナンバーを納税者番号に技術的に代置できるかどうか、国税当局の御意見を承りたいと思います。
-
○山橋政府
委員 お答えいたします。
いわゆる納税者番号というのは、国民一人一人にコード番号をつけて関連するデータをすべて集結をさせる、その上でコンピューター処理をしよう、こういう制度というふうにわれわれ理解しておりますけれども、税務行政の立場から申しますと資料総合、もろもろの資料の総合が非常に効果的に行えるという点で、課税の充実、適正にきわめて有効でありまして、税務行政上非常に大きなメリットをもたらすものであろうというふうに考えております。しかし、先ほども大臣が御答弁になりましたように、納税者番号制度につきましては、制度上、技術上非常に検討すべき問題点も多うございまして、一概に税務行政の行政効率という面からのみの観点から判断をするということには問題があろうかと思います。
御指摘の社会保険の関係の番号を利用したらどうかというふうな御指摘でございますけれども、実はそういうふうな検討をまだしておりませんのでちょっとお答えをいたしかねるということでございます。
-
○
大原(一)
委員 税制調査会等におきましてもひとつ御検討をいただきたい課題だと私は思います。
ところで税金の話を離れまして、
中小企業庁長官、お見えになっていますか。——一言承りたいのでありますが、現在中小企業のいわゆる事業活動確保のための分野調整法、これ大変長たらしい法案が出るようでありますが、この法案をまず表題を見ますと、これは中小企業の分野調整法というふうには、どうも大変一般庶民の感覚とすれ違いがあります。御承知のとおり、これは製造業全国ベースにかかわるものでございまして、小売業が除外されておるわけでございます。現在最も問題になっておりますのは、百貨店、スーパ一等の地方進出、そこの地元商店とのトラブルないしは既存の古い地元百貨店と大型百貨店とのトラブルの問題、こっちの方が大きな問題だと思うのでございます。いままでそういった小売店等は、今度の分野調整法にわれわれの調整も入れてくれるんだろうと期待していながら、中をあけてみたら製造業だけだった。いま全国各地で起きておりますところのスーパーと大型店と地元商店とのトラブルの調整はそのままに取り置かれるわけでございますけれども、いろいろ現在も大店法、小売商調法等がございます。しかもそのたてまえが、大店法の場合は通産大臣届け出、勧告、命令、罰則までいっておる。ところが商調法の場合は、十五条でもって知事のあっせん、調停、勧告というのが入っておるわけですね。この大店法にはそれがない。しかも罰則、命令は小売商調法にはない。今度の調整法の中には勧告、公表までで終わりということで、中小企業に対するところの思いやりのある法律が各個ばらばらで大変素人わかりのしない法律になっているのでありますが、きょうお承りしたいのは、小売店に対する現在のトラブルに対する処置に対してはいかなる方法で対処されるのか。長官の御意見を承って、前向きの御答弁をいただいて私の質問を終わります。
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○岸田政府
委員 大企業の進出に伴う中小企業の事業機会の確保のための立法措置につきましては、目下大詰めの段階にございます。ただし内容といたしましては、お話ございましたとおり、小売については別の問題として処理したいと思っております。その理由といたしましては、小売につきましては、いわば立地の問題に絡みましていわゆる近隣の調整の問題でございます。こういった問題は地方地方の特色を生かしながら調整を図っていくという見地におきまして従来からも特別な法律が用意をされております。内容は、お話ございましたように大規模店舗法及び小売商業活動調整法でございます。私どもは、ある意味では小売については分野に関rる法律がすでに用意されておると理解をいたしておりますので、問題があるとすればこのすでに用意されております小売に関する事業機会確保法をどう生かしていくかということを真剣に考えていく必要があるのではないかと思っておるところでございます。従来からも行政指導をいろいろやっておりましたが、特に私、昨今考えておりますことは、小売商業活動調整法はいままで余り活用されていなかった面があるのをもう少し工夫をいたしまして、これをフルに生かしていくというような体制をとることが、当面各地で問題になっております事態に対応するかなり有効な手段になるのではないか。この意味におきして、新しい通達を用意をいたしまして問題解決のための一歩前進を図りたい、こう考えておるところでございます。
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○坪川
委員長 起立多数。よって、
昭和五十二年度暫定
予算三件は、いずれも原案どおり可決すべきものと決しました。(拍手)
お諮りいたします。
委員会報告書の作成につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○坪川
委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十二分散会