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1977-03-18 第80回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十八日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稻村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       武藤 山治君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       古川 雅司君    薮仲 義彦君       大内 啓伍君    河村  勝君       寺前  巖君    藤原ひろ子君       安田 純治君    大原 一三君       田川 誠一君    西岡 武夫君       山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         警察庁刑事局長 鈴木 貞敏君         警察庁刑事局保         安部長     吉田 六郎君         警察庁警備局長 三井  脩君         行政管理庁行政         監察局長    川島 鉄男君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         防衛審議官   渡邊 伊助君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      竹岡 勝美君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁長官官房         審議官    伊勢谷三樹郎君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房会         計課長     高木 壽夫君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省援護局長 出原 孝夫君         社会保険庁医療         保険部長    岡田 達雄君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山本 秀夫君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         自治大臣官房長 近藤 隆之君         自治省行政局長 山本  悟君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     副島 有年君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     古川 雅司君   矢野 絢也君     薮仲 義彦君   藤原ひろ子君     安田 純治君   大原 一三君     山口 敏夫君   田川 誠一君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   古川 雅司君     浅井 美幸君   薮仲 義彦君     矢野 絢也君   安田 純治君     不破 哲三君   西岡 武夫君     田川 誠一君   山口 敏夫君     大原 一三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、締めくくり総括質疑を行います。  近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 昨日、一日で二件のハイジャックが起きる、こういうようなかつてなかった事態が発生したわけでございますが、昭和四十五年以来、金属探知機なりX線等機器を備えて対策をとってこられたわけでございますが、四十五年以来十回も起きているわけです。そういう点から考えますと、警備体制であるとかハイジャック防止対策がずさんな点があったのじゃないか、このように思うのですが、政府からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  4. 田村元

    田村国務大臣 ハイジャックの発生を未然に防止して、航空輸送安全確保を図るためには、その意図を持つ者を事前に発見する必要があるわけでございます。そのためには、乗客に対して搭乗前に検査を行って、脅迫に使用する可能性のある凶器類航空機内へ持ち込むことを防止すること、不正な意図を持って空港作業員に擬装して航空機に接近することを防止すること、そういう必要があるわけでございます。  搭乗前の検査につきましては、航空会社責任におきまして行わせておりますが、この検査の的確な実施確保するために、抜き打ち臨検を行ってその徹底を図っております。また、空港作業員に擬装して航空機に接近する不法者防止につきましては、場内通行証による入門のチェック及びパトロールを行っておる次第でございます。  なお、今回の事件を機会に、ハイジャック防止機器が正常に行動しているか、検査員業務執行訓練に欠陥はないか等につきまして、地方局長に点検を命じました。人権を損なわない範囲内で可能な限りのチェックをいたしておるのでございますが、あのような不祥事が、しかも一日に二度も起こりました。何ともおわびの申し上げようもないところでございます。慎んでお騒がせしたことについて国会を通じて国民の皆様に深くおわびを申し上げるものでございます。
  5. 近江巳記夫

    近江委員 いろいろ防止策につきまして現行やっておられることについての御説明があったわけでございますが、特にこの点が抜けておったじゃないか、後で御調査をなさってはっきりしたことがわかると思うのですが、特にここが一番穴じゃなかったかという点はどこですか。
  6. 田村元

    田村国務大臣 昨日はあのような状態で大変混乱をいたしておりまして、いまその原因をしさいに検討をいたしておるところでございます。それによっていろいろと問題点も出てくるかと思いますが、目下のところ特にこれというその原因の発見にまでは至っておりません。
  7. 近江巳記夫

    近江委員 十分な調査もしていただきたいと思いますし、今後機械が正常に動くかどうか点検するとか、現行やっておられることをさらに強化するとかいうことをおっしゃったわけでございますが、さらにそうしたことを踏まえてもっと強化をする必要があるのではないか、このように思うのです。大臣の御答弁以外に、さらにこの点を強化するという点があればお答えいただきたいと思うのです。ですから、運輸大臣国家公安委員長にお伺いしたいと思うのです。
  8. 田村元

    田村国務大臣 人権との兼ね合いの問題もあるわけでございますが、現在やっておりますチェック方式というものは、常識で考えられる範囲内で当を得ておるのではないかと思います。問題は、これをいかに機械の故障がなく、しかも厳しくやっていくかということであろうかと存じます。たとえば、不審の点が出た場合には身体検査をする、それを拒否された場合には警官がこれを行うとか、いろいろな手を打っておるわけでございますが、なおも警察当局と十分に打ち合わせをいたしまして、万遺憾なきを期したいと存じております。
  9. 小川平二

    小川国務大臣 警察といたしましては、関係機関と協力いたしまして、航空機犯罪の予防、検挙に努力をしてきておるところでございます。昨日のように相次いで二件もこの種の事件が起こったという事態にかんがみまして、これから先も、空港における安全検査強化あるいはまたガードマンの訓練、教養というような点について警察が協力をいたしてきておりますが、今後もこれを徹底する、あるいはまた職務質問徹底というようなことに一層努力をいたしまして、この種事犯の絶滅を期したい、こう考えております。
  10. 近江巳記夫

    近江委員 両大臣から今後の対策なり決意がお述べになられたわけですが、総理としてもこれはゆゆしき問題でございますので、十分な監督体制をとっていただきたい。総理から一言。
  11. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ハイジャック防止問題は、これはなかなかむずかしい問題でありますが、しかし、このようなことが頻発するということは見逃すことはできません。あらゆる工夫をこらしまして、こういうことが再び起こらないようにということにつきましてひとつ努力をしてみたい、かように考えております。
  12. 近江巳記夫

    近江委員 次に、ちょっと外交の問題についてお伺いをしたいと思いますが、三月八日、駐日ソ連大使ポリャンスキー氏が外務省を訪れて、北方領土に対するわが国領土主張に対して抗議して、日ソ間には未解決領土問題は存在しないと言ったということでございますが、これは一九七三年の日ソ共同声明におきまして、両国首脳は戦後の未解決問題を解決して平和条約を結ぶため、交渉を継続することに合意したわけですが、その際、田中総理は、この未解決問題とは領土問題にほかならないことを再三強調したわけであります。福田総理も同様に解釈されておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  13. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私ども日本政府見解といたしましては、一九七三年の田中総理大臣ブレジネフ書記長との会談、この会談の結果生まれた合意、これを日ソ間の領土問題に対する正式の見解というふうにかたく受けとめております。
  14. 近江巳記夫

    近江委員 そうしますと、総理としては、この共同声明に述べられているとおり、領土問題についてソ連政府はわが方と交渉する義務を負っている、このように解釈されておりますか。
  15. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおり理解しております。
  16. 近江巳記夫

    近江委員 もし、日ソ共同声明に述べられておりますこの未解決問題が領土問題であることが日ソ首脳によって明確に合意されたとするなら、今回のポリャンスキー日ソ連大使日本政府への申し入れは、明らかにこの日ソ共同声明に反することになるのじゃないかと思うのですが、それについてはいかがですか。
  17. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのようなことになるという理解でありまして、さような在日ソビエト大使申し入れに対しまして、外務当局はかたく反発の意見を申し述べておる次第でございます。
  18. 近江巳記夫

    近江委員 そうしますと、政府としてはもっと明確な対応をなさる必要があるのじゃないかと思うのですね。共同声明の不履行に対して抗議あるいは再考をソ連に促す、もっと明確に、国民にわかる形でこれはやるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  19. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先般、ポリャンスキーソ連大使外務省に参りまして、いま申されたような発言をされたわけでありますけれども、これも口頭でなされました。これは御承知のように、二月の二十五日に官房長官談話をもちまして、ソ連閣僚会議の決定につきまして日本政府抗議をしたということにつきましての反論というような形でなされたものでございます。したがいまして、口頭申し入れがありまして、私どもは口頭で強くそれに対して反駁をいたしました。  そういうことでございますので、今後領土問題につきましては、これからまた私自身ソ連に参りまして必要な交渉をいたしたい、こう思っております。
  20. 近江巳記夫

    近江委員 日本政府態度いかんによりましては、この領土問題というものは漁業問題に絡んで非常に要求ができにくくなるのじゃないかというような懸念がされると思うのです。そこで、政府領土問題についての対ソ交渉のそうした決意を重ねてお伺いしたいと思うのです。
  21. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北方領土問題は日本といたしましての悲願でございますので、この交渉につきまして、日ソ友好親善関係を増進する見地から、何よりも増して北方領土問題を解決することが何より大前提である、このような信念に基づきまして先方と折衝をいたしたいと思います。
  22. 近江巳記夫

    近江委員 北方領土の問題並びに漁業交渉動向いかんによりましては、日本国民対ソ感情に影響することも憂慮されるわけです。こういう事態を回避するためにも、この二つの問題に取り組む政府責任というものはきわめて重大ではないかと思うわけでございます。そういうことで、ソ連政府に対しても十分に認識してもらう必要があるのじゃないか。これに対して総理としてのひとつの御決意をお伺いしたいと思います。
  23. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私のかたい考え方は、は漁業領土領土、これは截然と分離して論ずべき問題である、そういうふうに思うわけでありまして、そういう立場において、漁業問題と領土問題を絡ませるということはしないように努力していきたいと、かように考えます。
  24. 近江巳記夫

    近江委員 昨日の私の質問に対して総理は、鳩山外相ソ連に派遣するとおっしゃっておられたわけですから、その際はひとついま総理がおっしゃったその趣旨を十分踏まえて、外相としては交渉していただきたい、これを要望しておきます。  次に、十二海里の領海実施におきまして、政府としては現状凍結する海峡というものをほぼ煮詰めたのですか。これについてお伺いしたいと思います。
  25. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま関係省庁間で最終的な検討を進めておるところでございます。三月中には成案を得まして国会提案をし、御審議をお願い申し上げたい、こういうぐあいに考えておりますが、まだ公表をするに至ってはおりません。  その内容とするところは、日本沿岸漁業者等の利益を保護するために領海の幅員を十二海里にするということ、及び国際航行に利用されておりますいわゆる国際海峡、この部分は現状を変更しない、こういう内容にいたしております。国際海峡の具体的なものにつきましては、いましばらく最後の詰めをいたしたいと考えております。
  26. 近江巳記夫

    近江委員 いままで言われておりますのは五カ所ですね。この五カ所というのは、いま大臣から御答弁をお聞きしていますと、三月中に提案をしたい、こういう点からいきますれば、ほぼ政府としては完璧に近い線、結論に近いところに来ておるんじゃないか、こう思うのですが、五カ所ということですか。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 五つの海峡が最も条件等におきまして有力な海峡として最終的な詰めをいたしておる段階でございます。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 それではお伺いしますが、現状凍結をしようとする目的は何なんですか。その点をひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  29. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 近江先生承知のように、いま国連海洋法会議におきまして、いわゆる国際海峡と言われる海峡につきまして世界各国が大きな関心を持って検討を進められておる段階でございます。わが国も、御承知のような海外に資源エネルギー等を求めて、日本経済の繁栄を図っていく、国民生活確保を図っていく、またそういう意味で通商航海に大きく依存しております国柄でございますので、いわゆる国際海峡につきましては、領海における航行無害航行よりもより自由な航行確保ができるようにという立場主張を続けておるところでございます。  そういうような観点からいたしまして、わが国におきましても、いわゆる国際海峡に相当する海峡につきましては、国連海洋法会議結論が出るまで、当分の間これを現状を変更しない、こういうことにいたしたいと考えておる次第でございます。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 通商航海ということを非常におっしゃっておられたわけですが、いままで政府答弁を聞いておりますと、マラッカ海峡ということが盛んに出てくるわけですね。マラッカ海峡におきましては、御承知のように沿岸三カ国はすでに規制してきているわけですね。海底から船底の間は三・五メートルであるとか、これは実質上の無害通航をしているわけですよ。そういう点からいきまして、これはわが国領海を十二海里として無害通航とする、そういうきちっとした政府態度が必要じゃないかと思うのです。無害通航であれば、一定の条件をつけて通せばいいわけですから、これは海洋法会議を待って考えるとかなんとかいいますけれども、これは今後もそのままいわゆる現状凍結という線でいく可能性というものはきわめて大であります。これは十二海里にすべきですよ。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま、マラッカ海峡につきましても沿岸三カ国で取り決めをいたしたのであるから、日本が最大の関心を持っておるマラッカ海峡問題はもう解決を見ておるではないかという御趣旨の御質問があったわけでございます。  このマラッカ海峡は、水深が浅いという地理的な特殊事情がございまして、海洋法会議が開かれると否とにかかわりませず、この航行安全確保を図るためには、UKC規制等の何らかの規制はもともと必要とするところでございます。今般、マラッカ海峡沿岸三国がとることとした規制は、基本的には一応かかる方向に沿ったものと言えると思います。  他方、海洋法会議におきましては、海峡沿岸国がいかなる範囲で、またいかなる手続により規制権限を有するかとの法的問題が議論されておりまして、これは、今般のマラッカ海峡におけるUKC規制という、特定海峡におけるところの特定の措置の問題とは次元を異にする問題であると考えております。海峡沿岸国規制権限の問題は、海洋法会議における国際的解決にゆだねられておりまして、同会議帰趨いかんによっては、マラッカ海峡における規制の態様も大きく異なるのではないかということで、わが国としても重大な関心を払っておるところでございます。  またマラッカ海峡のほかに、通商航海世界各国関心を持っております海峡はいろいろあるわけでございます。御承知のように、ドーバー海峡もあれば、ジブラルタル海峡もあれば、ペルシャ湾とアラビア海の間のホルムズ海峡、いろいろたくさんございます。こういう問題につきましていま海洋法会議の大きな問題点として検討が進められておる、こういう段階でございます。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 いろいろおっしゃっていますが、それはあくまで政府の解釈でありまして、政府の本心というのは、やはり核の問題なんですよ。いわゆる核兵器積載艦船の自由通航をいかにするかという点からこういうようなことが出てきていると思うのですね。  そうなってきますと、問題は非核三原則、これは国是であるということは総理もいつもおっしゃっているわけです。国是というものは、これは憲法に匹敵する、政策上の大原別なんです。この例外は私はあり得ないと思います。これに反する政策を勝手にとるということは、政府としてはできないはずであると思うのです。国是というものに対して、政府はどのように認識されているか。非核三原則の堅持というものは、与野党一致したものなんですね。この変更には、与野党の了解を必要とすることはもう当然であります。今回の一部凍結というものは、この国是に例外をつくり、否定し、歪曲されるものではないか、このように思うのです。そういう点において、私は絶対にこの現状凍結ということは認めることができないと思います。総理の御所見を伺いたいと思います。
  33. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 非核三原則がわが国の不動の国是であること、これはもう一点の疑いもなく私どもはさように考えておる次第でございます。  今回の領海問題、これは先ほど農林大臣から申し上げたとおりです。わが国といたしますると、どうしても世界の海の自由航行ということが確保されるべき問題であるという立場を堅持せざるを得ないのであります。そういう際に、マラッカ海峡を初め国際海峡が不自由になる、こういうようなことになりますれば、これはわが国としては非常に大きな打撃を受ける、こういうことになる。どうしても、他の国の国際海峡につきましては、わが国として自由航行主張しなければならぬ立場にあるわけです。その立場にあるわが国が、わが国国際海峡を不自由にする、こういうような立場はこれはとり得ないことではなかろうか。しかも、航行の自由は確保する、こういう立場から、海洋法会議におきましても国際海峡については例外を設けて、そして何とか航行の自由を確保しよう、こういう動きになっておる。そういうやさきでありますので、その海洋法会議の決定を見てから、それに順応した構えをわが国としてはとることが、わが国の国益に合するゆえんではあるまいか。さしあたり、わが国国際海峡につきましては現状を凍結しておく、こういう判断をなすに至った次第でございます。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 確認しておきますが、非核三原則に反する条約は結べない、このように理解をすべきだと思いますし、また、この非核三原則を無視するか、またはこれを回避するような政策は無効である、このように思うのですが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  35. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の権限の及ぶ限りにおきまして非核三原則はこれを堅持してまいる、これは不動の政府の方針でございます。その考え方に反する法律だとか条約だとか、そういうものは考え得られざるところであります。さような見解でございます。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 そういう考えを披瀝されたわけですが、しかし現実は、もう国民だれしもわかっているわけですよ。結局、こういう凍結をしたのは核積載艦を通す政府の苦肉の策だ。こういうことはやはりきちっとして、そうして国是というものを守るべきである、これを私は強く重ねて総理に申し上げておきます。非常によくないと思います。これは議論をさらにしても同じ答弁しか出てこないと思いますから、次に移りたいと思います。いずれにしても、こうした現状凍結につきましては認めるわけにいかないということを申し上げ、強く抗議を申し上げておきます。  次に、私は地方財政等の問題をちょっとお聞きしたいと思うのですが、この地方財政の問題につきましては、戦後最大の危機に見舞われておるわけであります。五十年度収支で見ますと、赤字の自治体数が全体の四五・三%、千四百八十四団体に及んでおるわけです。こうした赤字の原因はいろいろあろうと思うのですけれども、国庫補助事業等に見られるいわゆる超過負担等も大きな原因じゃないかと思うのです。五十一年十二月、全国知事会が発表いたしました自治体の超過負担額は六千三百六十億円に上っております。しかしながら、政府昭和五十二年度予算での解消額は四百九十五億円にしかすぎないわけであります。  そこで、この地方財政悪化の原因として看過できないのは、国が地方自治体に対して負担をかけてはならないと禁止されているのに、長期にわたって全くむとんちゃくに地方自治体の土地を無償で借りておる事実なんです。これは非常にきわめて広範にあります。  まず、私は具体的に労働省にお伺いしたいと思いますが、労働省所管の雇用促進事業団が全国の施設用地として無償で自治体から借りている概況というものについて、説明をいただきたいと思います。
  37. 石田博英

    ○石田国務大臣 雇用促進事業団が現在地方自治体から無償で借り受けております施設は三百七十八カ所、総面積で三百四十八万六千平方メートルに上っております。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 その中身はどういうふうになっておりますか。何が何カ所というのか。
  39. 石田博英

    ○石田国務大臣 勤労総合福祉センターが十五カ所、それから簡易宿泊所が十四カ所、職業訓練施設が七十カ所、心身障害者職業センターが十カ所、勤労者体育施設が百三十七カ所、農村教育文化体育施設が三十三カ所、港湾労働者福祉センターが三十六カ所、共同福祉施設が二十一カ所、憩いの村・野外趣味活動施設などが四十二カ所、以上であります。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 厚生省はどうですか。
  41. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 厚生省関係では、社会保険事務所が四十五カ所、それから健康保険の保養所が十三カ所、健康保険病院の診療所等が十二カ所、船員保険の寮が二十三カ所、船員保険の休養所が二カ所、その他厚生年金有料老人ホームが二十三カ所、厚生年金スポーツセンター等が二カ所などが、いまのところ調べた限りでわかっているところでございます。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 そこで自治省さんにお伺いしたいと思うのですが、地方財政再建促進特別措置法第二十四条第二項はどう書いてありますか。
  43. 小川平二

    小川国務大臣 再建促進法の二十四条二項は、国と地方の財政秩序を保持するため、同時にまた、地方財政の健全性を維持するという目的から、国あるいは公社等に対しまして金銭等を寄付してはならない、このように規定しております。金銭等を寄付するという中には、本来有償であるべきものを無償で貸与するという場合も含まれておるわけでございます。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 そうしますと、労働省から説明がありました、つまり雇用促進事業団が三百七十八カ所、三百四十八万六千平米を無償で自治体から借りておる。こういたしますと、ただいまの法律の第二十四条から、これは違法であると断定していいのじゃないかと思うのですが、内閣法制局長官の所見をお伺いしたいと思います。
  45. 真田秀夫

    ○真田政府委員 国と地方公共団体との間の財政の秩序を守る、確立する、それからまた地方の財政を確立するというために、地方財政法の中に、国は地方公共団体に対して強制的に割り当て的な寄付金を求めてはいけないという規定があるわけなのですが、これは国の方から地方に対して強制的に負担をさせるということを禁止しているわけなのです。それとまたうらはらといいますか、先ほど近江委員が御指摘になりました地方財政再建促進特別措置法の二十四条の二項は、今度は地方公共団体のサイドから条文を起こしまして、「地方公共団体は、当分の間、」国なりあるいは公社、公団、事業団等の特殊法人に対して、「寄附金、法律又は政令の規定に基かない負担金その他これらに類するものを支出してはならない。」、ただし、一定の場合はこの限りでない。こういうふうに地方公共団体の方を抑えまして、これは自発的であろうと強制的であろうと、とにかく寄付金等を支出してはならない、こう書いているわけなのです。  そこで、先ほど来おっしゃっております雇用促進事業団等への土地の無償の貸し付け、これはいまの条文に照らしますと、寄付金そのものではないことは当然なんですね。寄付金の支出に当たらない。当たらないの、だが、この規定は、先ほど自治大臣もおっしゃいましたように、地方財政の確立を図るという趣旨で設けられておるものでございますから、この規定の趣旨から見れば、形は寄付金の支出でなくても、地方公共団体の所有の土地を国なりあるいは公社、公庫、公団、事業団等の特殊法人に無償で貸し付けるということは、やはりその二十四条の第二項の趣旨に照らせばよろしくない、適法な行為とは言いかねるということは言えると思うのです。ただ、ただし書きがございまして、一定の場合、つまり政令で定めているわけでございますけれども、その一定の場合に該当して、それで自治大臣の承認を受ければこれは適法である。これは条文の上から明らかでございますが、これに該当しない以上は、私の方から見ましても、どうも適法だと言うわけにはいかないということでございます。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 まあ内閣法制局長官立場として、違法であるということは言いにくいから、適法でないという言い方をなさったわけだ。しかし、同じことでありますから、そういう点は確認ができました。  自治省財政局長は、四十八年七月二日付の労働省職業安定局長あての申し入れ書で、この点で違法ということを指摘されているわけですが、この点はどうですか。間違いありませんか。確認だけです。
  47. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま御指摘をいただきましたように、四十八年に実情を具しまして違法の分もあるので是正をしてくれるようにと各省に求めております。
  48. 近江巳記夫

    近江委員 どことどこに申し入れたのですか。
  49. 首藤堯

    ○首藤政府委員 四十八年には文部省、労働省、それから社会保険庁、これに対しまして是正方の申し入れをいたしました。
  50. 近江巳記夫

    近江委員 総理、いま法制局長官からもそうしたはっきりとした御見解が出されたわけですが、今日地方自治体が非常に赤字で苦しんでおるわけですね。当然こうした施設を見ますと、非常に福祉的な施設が多いわけですね。そういう点で、まあ地方からの融資もあったというようないろんな事情もあろうと思います。しかし、きちっとすべきことはきちっとして、そしてこうした運営の問題につきましての経費であるとかそうしたものについては国がやはり十分見ていく、そういうことをきちっとすべきだと思うのですよ。これをやらなければいけない。この問題につきましてひとつ総理からお伺いしたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御指摘の地方負担の問題につきましては、これは超過負担のような実態もあるような問題でありまするし、また法律との関係もある問題でありますので、ただいま自治省当局からお答え申し上げたようにこれが是正に努力をいたしたい、現にそのような努力をいたしておる最中でございます。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 それで、この一例としまして、奈良県の一例ですが、雇用促進事業団が橿原市から無償で借りたことによって同市にどれぐらいの財政圧迫を与えているか。これを内輪に推計してみますと、一年間の使用料として六百四十二万四千二百八十六円、これは本当は事業団は地元に支払わなければならないわけであります。また、全国の無償借り受けの総面積を計算しまして、それを一平方メートル当たり二千二百円というような最低の土地単価で——そういうような土地はもうほとんどないわけですけれども、一番最低で見積もったとしても、年間の使用料は四億九千百七十四万九千百四円、こういうようになるのですね。  そこで、こうした点は総理も今後解決する、是正をしていくということをおっしゃっておられるわけですが、これはぜひやらなければいかぬ問題だと思います。そしてさらに、こうした施設の運営について政府はきちっとしためんどうを見ていく、筋はきちっとしていく、法治国家ですから。それをぜひやらなければならぬと思うのです。大蔵大臣、あなたがこの会計を握っておるのですから、きちっといま総理がお答えになったわけですが、あなたもきちっとその女房役としてやられるかどうか。
  53. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  本件につきましては、総理大臣外関係各省及び長官がお答え申し上げましたから、実態はそのとおりでございますが、これにつきましては、地方の強い要請がありまして、それでこれをつくったというケースが大変多いと思いますけれども、しかしながら、それぞれの事態によりましていろいろな事情もこれあることと思います。そういったようなことも勘案いたしまして、関係各省と協議をいたしまして、改めるべきは改めていこうというようなことでこれから努めてまいりたい、かように考えます。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 それで、それをきちっとしていきますと、こうした施設の経費なり何なりが当然またふえるわけですね。そういう点は、これは密着した問題でありますから、十分にひとつ配慮していただきたい。これをひとつ総理から。
  55. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御指摘の点、十分配慮いたしまして、改善に努力をいたします。
  56. 近江巳記夫

    近江委員 次にお伺いしたいと思いますのは、農業の問題でございますが、わが国の農業は機械化貧乏と言われるほど昨今大変な勢いで機械化されつつあるわけであります。農用トラクター、耕運機等の台数は十年間で百七十七万台も増加しておりまして、五十年二月現在の調べでは三百九十二万六千台にも上っておるわけです。この農業機械化の趨勢を支えておりますのが農業近代化資金。今年度四千五百億、昨年度も四千五百億利子補給をやっておりますね。これは国が一.五%、県が一・五%、農協は六%、こういうようなシステムのもとでやっておるわけでございますが、そういう運営の中で、取り上げる中に非常に不公平がある。こういう乙とはやっぱりきちっと法律に基づいてやっていくべきであるということを申し上げたいわけです。  まず第一に、農家が近くの商店から農機具を買う場合、農協を通じて近代化資金を借り入れ利用するわけでありますが、農協の販売する農機具を農家に買わせるために、農協以外の一般の商店から購入する分については近代化資金の融資をしないという不公正取引があるわけであります。公正取引委員会としてはこのような事例については勧告をしておりますか。どのようにつかんでおりますか。
  57. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御指摘のような点につきましては、独占禁止法第十九条で規定しております不公正な取引方法に該当する疑いがございます。そういう端緒がありますれば、調査を行いまして、違反事実が認められた場合には必要な排除措置を実行いたしております。
  58. 近江巳記夫

    近江委員 これはあなたの方で現実に勧告した例もあるのでしょう。これからの問題と違うでしょう。
  59. 澤田悌

    ○澤田政府委員 実例を挙げますと、最近三つの例がございます。いずれも御指摘のような内容のものでございます。
  60. 近江巳記夫

    近江委員 その三つのケースについて要点を言ってもらいたいと思うのです。
  61. 澤田悌

    ○澤田政府委員 農業近代化資金の貸し付けに関しまして独禁法違反として勧告いたしました事件でございますが、斐川農協の場合、これは、農協が販売する農業機械等を購入する者に限って融資を行う、農協以外の販売業者から購入する者には融資を行わないという拘束をつけた事件でございます。それから那須町の農協及び鶴岡市の農協の場合には、農協と売買契約をした組合員に対してのみ融資を行う、農協以外の販売業者に対して農業機械の購入申し込みをした場合には、農協がその販売業者からこれを仕入れてそして当該組合員に販売する、こういう手続を強制した。こういう事件でございまして、いずれも排除の勧告をいたしました。前二件はこれに応諾いたしましたが、最後の件はまだその応諾期限が来ませんので、勧告いたした形で残っておるわけでございます。
  62. 近江巳記夫

    近江委員 いま公取委員長からお話があったわけですが、乙の農協による事務費、手数料の二重取り問題なんですね。農家が一般商店からこの資金を受けて機具を買うとき、農協がその商店から手数料や近代化申請用紙代を取っているケースがあるのですね。そういうことをしていいんでしょうか、農林大臣
  63. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農機具を購入いたします場合に農業近代化資金を使用する、この問題につきまして、いろいろ苦情でありますとか陳情でありますとかそういうことがございまして、農林省としてもこのことを重視をいたしまして、調査等もいたしておるところでございます。  また、公正取引委員会におきましても、そういう具体的な事例につきまして調査等をおやりになっているということ等もございまして、私どもは、制度資金の運用についてそういうことがあってはいけないということで、通達等を出しまして強く指導をいまいたしておるところでございます。
  64. 近江巳記夫

    近江委員 そういう事例につきましていま農林大臣にお示ししましたが、十分了解されたわけであります。  いわゆる申請手数料であるとか、こういうようなことをやっている。これは完全に独禁法違反だと思うのです。公取委員長、いかがですか。
  65. 澤田悌

    ○澤田政府委員 先ほど申し上げましたように、その近代化資金の貸し付けについて、農協を通じて農業機械を買うのでなければこれを融資しないというような拘束条件がつきますれば、明確に違反でございます。
  66. 近江巳記夫

    近江委員 それからまた、こういうケースもあるのですね。現品を商店から農協に納入したように見せかけて、そしていわゆる手数料を取るというようなケースであるとか、さらに、福岡農業機械商業組合加盟店四十六のうち二十七店がいまのような手数料を取られているわけです。これと類似のことは全国的に行われておりまして、大分県、埼玉県、山形県、新潟県、その他の府県も非常に出てきているわけですね。こうしたことをごらんになられて、農林大臣、また公正取引委員長としては、こういう不公正なことを放置しておっていいのかという問題に対しまして今後どのように対処されるか、それをお伺いしたいと思います。
  67. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほどお答えをいたしましたように、いま御指摘がありましたような事例があるようでございまして、いろいろ苦情、陳情等も承っております。そういう事態に対処いたしまして、早急に改善をする必要があるということで通達も出し、また、地方農政局、県を通じまして指導を徹底するように努力しておる段階でございます。
  68. 澤田悌

    ○澤田政府委員 先ほど申し上げたような事例が具体的にございますと、ほかにも遺憾ながらこういうことがあるのではないかということは必ずしも否定できないのでありますが、私の方といたしましては、端緒をつかみ次第厳正に対処して排除してまいりたいと考えておる次第でございます。
  69. 近江巳記夫

    近江委員 政府の一つ一つの行政を見てまいりますと、やはりこういういろいろなことがたくさんあるわけですね。ぴしっとけじめをつけ、正すべきは正す、こういう姿勢で関係各省やっていただきたいと思うのです。  次に、防衛問題につきましてお伺いしたいと思いますが、ナイキ部隊あるいはホーク部隊、防衛庁としてはいままでいろいろと計画をされてこられたわけでございますが、ナイキ部隊につきましての防衛庁の計画につきまして、概況をお伺いしたいと思います。
  70. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 防空体制につきまして、要撃機と防空ミサイルとで防空体制を編成いたしておりますが、ミサイル部隊につきましては、陸上自衛隊がホークを八個群、それから航空自衛隊がナイキを六個群、これが防衛計画の大綱でお示しをいただいた規模でございます。  従来と違っておりますのは、四次防までは、この六個群のほかにもう一個群の準備をいたしたいと思っておりましたが、今回の防衛計画の大綱におきまして、六個群でナイキの全部隊というふうにお決めをいただいた次第でございます。
  71. 近江巳記夫

    近江委員 そこで、第一から第六高射群ございますね。予定はどのようになっておりますか。
  72. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 第一高射群が関東地区でございます。第二高射群が北九州地区でございます。第三高射群が北海道の千歳地区でございます。第四高射群がいわゆる中央といいますか近畿地区でございまして、第五高射群が沖繩でございます。それから、第六高射群といたしまして青函地区を予定いたしております。
  73. 近江巳記夫

    近江委員 それぞれこの地区はどこになるのですか。
  74. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 高射隊の置いてあります地域は、中隊ごとに置いてあるところと二個中隊集めているところがございますが、具体的に申し上げますと、第一高射群は入間、習志野、武山、霞ケ浦でございます。第二高射群は芦屋に二個高射隊を置いてございまして、そのほか築城と高良台、これは久留米でございますが、置いてございます。第三高射群は千歳に二個高射隊、それから長沼に一個高射隊置いてございます。第四高射群は岐阜、饗庭野、白山それぞれ一個隊置いてございます。第五高射群は那覇、知念、恩納でございます。第六高射群は青函地区でございまして、このうちの一個高射隊を八雲に置く予定にいたしておりますが、残りの二個高射隊はまだ決定いたしておりません。
  75. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、第六高射群におきましては、二カ所が未定である。あと防衛庁として予定されておりますのは、この二カ所ということでございますか。
  76. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 そのとおりでございます。
  77. 近江巳記夫

    近江委員 防衛庁の当初の計画というものはもう少し地域をふやすというような計画であった。しかし、ナイキ自体が兵器が陳腐化しておるとか、地元の問題があるとか、そういういろいろな要素のもとにこの計画の縮小ということをなさってこられたと思うのですが、その間の状況につきまして簡潔にお答えいただきたいと思います。
  78. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 四次防までは質量ともにふやしたいという考えのもとに第四高射群、すなわち近幾地区の高射群につきましてももう一個隊置きたいということ推計画いたしておりました。しかしながら、いま先生おっしゃいましたが、陳腐化というのではなくて、むしろナイキにつきましては、第一高射群、第二高射群はナイキアジャックスでございましたが、昭和四十二年以降ナイキJを国産をいたしまして、射程におきまして三倍程度の能力のあるものにかえてまいりました。そうなってまいりまして、第三高射群以降というものは四個隊の編成を三個隊でやってきております。その間ポスト四次防といいますか、防衛計画の大綱におきまして、現在のような状況を前提にいたしまして、日本全体の防空体制の中では一応三個隊でいくというような方針が定められましたので、それに従いまして第三高射群以降というのは三個高射隊で編成しておる次第でございます。
  79. 近江巳記夫

    近江委員 そうしますと、確認しておきますが、京阪神地区におきまして能勢というのが当初予定されておったようでございますが、いま防衛庁の御見解をお聞きしますと、これは完全に第六の計画にも入ってない。この第六でもってナイキ部隊の設置については終わりということからいたしまして、能勢についてはこれはなくなるわけですね。
  80. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答え申し上げます。  いま局長が申し上げましたように、四次防時期におきましては、いま御指名の能勢地区を近幾圏の防空関係で一個隊を設置しようという企図を持っておりましたが、今回の防衛計画大綱に別表をもって明示いたしておりますように、能勢地区はとりやめることに決定をいたしておるわけでございます。今後設置する考えはございません。
  81. 近江巳記夫

    近江委員 わかりました。防衛庁としては断念された。いずれにしましても、防衛問題というものにつきましては非常に国民としては注目をいたしておるところでございますので、国民の理解と協力、こういうことを十分前提として今後進めていただきたい、このことを全体の問題として要望いたしておきます。  それから次にお伺いしたいと思いますのは、もう一度ちょっと農林大臣にお伺いしたいと思いますが、今日漁業問題がこうした非常に厳しい情勢に入ってまいりました。国民としましては、魚というものにつきましては昔から重要なたん白源として欠かすことのできない食品でございます。それが一体どうなるのだろうかという非常な心配をいたしておるわけでございますが、今後わが国漁業がどういう影響を受けていくのか、時間もございませんので簡潔に見通しをお述べいただきたいと思います。
  82. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 厳しい二百海里時代を迎えまして、わが国の海外における四百五十万トン、全体の漁獲量の四〇%に相当するものの実績がいかようになるか。私ども全力を挙げて実績の確保努力をいたしておりますが、どうしても漁獲量が削減を見るであろうことは必至でございます。そのためには、これを補いますために、日本列島周辺の沿岸、沖合い漁場の積極的な開発、資源の培養、栽培漁業等の振興を図って、海外で失う分を沿岸周辺で補っていくように今後とも努力をしてまいりたい。なおまた、とった漁獲物は最高度にこれを利用する。高度利用するというために、加工技術のさらに一層の改善、開発、保蔵の問題、流通の問題、そういう問題にも努力をいたしてまいる考えでございます。  なお、最近ソ連等の交渉が厳しいということで、スケトウダラその他の漁獲量が減るのではないか、それに伴って便乗値上げ等のことがあってはいけない。現在かまぼこの原料になりますすり身は在庫も十分あるわけでございますけれども、最近値上がり等も伝えられております。そういうことでございますので、便乗値上げ等があって国民生活に影響があってはいけないということで、業界に対しまして強く指導いたしておるところでございます。
  83. 近江巳記夫

    近江委員 私たちはオイルショックを思い出すわけです。あのときに本当に石けんがない、トイレットペーパーがない、本当に国民は買い占めに走ったわけです。いまこういう漁業の厳しい状態というものが心理的に非常に大きな圧迫を来しておりまして、どうなるんだろうかと国民は非常に不安を覚えている。そういうさなかに商社等が海外においてもまた買い付けに走り出す。たとえばアラスカ等の漁場を訪ねてすじこ買いに狂奔しておるというようなことでまた商社の競争になってきますと、日本人同士が争って値段をつり上げてくる。これは本当に第二のオイルショックと同じですよ。ですから本当にここで企業も自粛しなければいかぬ、自分たちが競り合って値段をつり上げ、そして国民に負担をさせていく、こういうことは許せることではない。いろいろと私も情報を聞いておりますけれども、最近卸売市場におきましても鮮漁等が総じて高い。大阪も東京もそうだということなんです。こういう状況からいきまして、特に商社の買い付けであるとか、こういうことは、厳にそういうむちゃくちゃなやり方をやらないようにしなければいかぬと思うのです。こういう点については十分な指導監督をする必要があると思う。これについては農林大臣はいかがされますか。
  84. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 近江先生ただいま御指摘のように、たとえばすじこ、かずのこ、これは日本人以外に余り食べないものでございます。それを日本の商社等が過当競争でみずからつり上げていく、それが消費者価格にも影響してくる、こういうばかげたことが行われるようなことがあってはいけない。私どもは今後ともこれからの事態も考えまして、一層この指導につきましては徹底するように努力をしてまいる考えでございます。
  85. 近江巳記夫

    近江委員 経企庁長官は物価の問題としてどうされるのですか。
  86. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいま農林大臣の申されたとおりでございますが、最近の魚の卸売市場の少し高いのは、入荷の量が昨年より少ないというのが響いているということでございます。したがいまして、私どもも関係官を絶えず市場にも派遣をいたしておりますし、その価格の状況を監視している状況でございます。なお商社間のそういう過当な競争ということについては十分目を光らせて、さようなことのないようにいたしたいと思っております。
  87. 近江巳記夫

    近江委員 漁獲量が減少してくるということは、農林大臣もいま今後の見通しとしておっしゃったわけですね。しかし人口もふえてくるし、国民としてはやはりますます魚を必要としてくる。非常にこれはジレンマですね。これは重大な問題だと思うのです。  そうしますと、動物性のたん白源をとるとするならばいわゆる畜産そして魚、こうなるわけですね。畜産については、わが国としてはどんどんふやせる見通しというものはあるのですか。どうなんですか。
  88. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 食糧の中でたん白食糧の問題が重要になってくるわけでございます。食生活が高度化する、多様化するというようなことでたん白、脂肪食糧、そういう需要が高まってきております。一方、いま申し上げたようなたん白食糧の五一%以上を賄っております魚につきましては、どうも漁獲量が削減の状況にある。こういうことでございますので、イワシでありますとかあるいはサバでありますとか、そういう多獲性の大衆魚、これが七〇%ぐらいまで飼料あるいは肥料等になっておるわけでございますが、こういうものをできるだけ食ぜんに上せるように努力をしてまいりたい。  同時に、畜産の振興に努力をいたしておるわけでありますが、畜産は最近飼料価格等の安定に伴いましてわりあいに着実に伸びております。しかし畜産はなかなか一挙に増産というわけにまいりませんので、今後は構造政策、価格政策あるいは飼料対策等、総合的な対策を講じまして着実にこれを伸ばしていきたい、このように考えております。
  89. 近江巳記夫

    近江委員 農林大臣、そうしますと、魚の輸入というものはこれからはふえてくるわけですか、いかがですか。
  90. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 どうしても現在日本では一千万トンから一千百万トン、十年後の展望に立ちますと千三百万トンぐらいの魚肉水産物が必要になってまいります。これは沿岸漁場開発整備事業等、着実に施策を展開をしてまいりまして努力をするわけでございますけれども、一時的に需給の関係はやはりどうしても窮屈になるということは必至でございます。その場合、輸入ということが考えられるわけでございます。加工業者等も原料難で非常に中小の加工業者も困るという事態もあります。ただ日本漁業を圧迫するようなことでは困る、たとえば日本が買ってくれるからといって日本に対する漁獲量の割り当てを極度に抑えて、そして自分のところでとってそれを日本に買わせる、こういう日本漁業の将来に競合するようなもの等につきましては、IQ制度等もございますから、十分配慮しながらやってまいりたいと考えております。
  91. 近江巳記夫

    近江委員 畜産につきましては、畜産振興事業団、これが調節弁の役目を果たしているわけですね。今後魚の輸入ということになってきますと、こういう畜産振興事業団にかわるような魚肉振興団ですか、何らかのそういう対策を考える必要があるのじゃないかと思うのですが、大臣としてはどういうようなお考えですか。これは国内の漁業者を守るというような、そういう仕事をしなければならないわけですし、また、国民のたん白源も確保しなければならない。こういういろいろな状況から考えまして、その辺はどういうようなお考えを持っておられますか。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 近江さん御指摘のように、これからある程度の輸入も考えなければならない。しかも、開発途上国の漁業につきまして日本も技術援助その他の協力をいたしまして有効利用ということを促進していくわけでございますが、現地の国民の需要を満たして余りあるもので日本の必要とするものはこれを輸入をする、こういうことになるわけであります。その場合に、どうしても開発途上国では遠洋漁業等はできませんから沿岸漁業の漁獲物が大部分になってくる、それを輸入するということになれば、日本沿岸漁業者との競合、こういう問題が出てくるわけでございます。したがいまして、畜産振興事業団のようなああいう、そのままずばりの形のものは、なかなか魚種も多様でございましてむずかしいと思いますが、何らかのそういう対策を講ずる必要がある。沿岸漁業者との競合を避けつつやっていく方法を考える必要があると私も考えまして、いろいろ検討を進めておる段階でございます。
  93. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間ですから終わりますが、総理、非常にいま魚の問題というものは国民が不安を覚えております。ひとつ商社の買い付けであるとか、そういうふしだらなことが起きないように十分な監督もしていただかなければならないし、こういう国民の不安を本当にいかに解決していくか、全力を挙げて取り組んでいただきたい、これを強く要望しておきます。以上、終わります。
  94. 坪川信三

    坪川委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、寺前厳君。
  95. 寺前巖

    ○寺前委員 総理が日米首脳会談にお行きになるようでございますので、外交の基本的な姿勢として二、三お伺いをしたいと思います。  まず第一に、今日の軍備拡張、とりわけ核軍拡競争の現状は、人類の平和と生命にこの上ない脅威を与えるものとなっています。したがって、各国がこの問題にどう立ち向かうかが重大な関心事になっているわけですが、国連の事務総長のウ・タント氏が一九七一年「軍備競争および軍事費の経済的社会的影響」という報告書を国連に出しております。私、外務省からその報告書を下さいと言ったら、これを持ってきました。残念ながらこれを訳さないことには私はこのままでよく読めません。訳本を私は探したのですが、なかなか出てきません。さて、そこで私がそれなりに頼んで訳をしてもらった内容をちょっと見てみますと、非常に重大なことが述べられております。たとえば事務総長のこの報告の前文ではこう言っています。  「国際連合の第一の目的は、国連憲章に規定されているように、国際の平和と安全を維持することである。国連憲章は、また、この主要目的は、「世界の人的および経済資源を軍備のために転用することをもっとも少なくする」ことによって促進されると規定している。国連憲章が一九四五年六月二十六日にサンフランシスコで調印されて間もなく、最初の原子爆弾が爆発し、核時代が開かれた。それ以来、軍縮、とくに核軍縮の問題が世界の直面するもっとも重要なものとして認識されてきた。しかし、国連の内外での集中的な努力にもかかわらず、実際に達成されたことは期待からほど遠いものであった。軍備競争は依然として続いている。軍事費は着々と増え、より効果的な大量破壊兵器が開発され、貯蔵されてきた。兵器は、地球上の全生命を絶滅させうる以上に蓄積されている。その結果、事態は国際の平和と安全を真に脅やかすまでになった。したがって、軍事競争が不帰点、すなわち取返しのできなくなる時点に達する前に、それを中止し、方向を転換させることが、国際社会の重要な関心事となってきた。」ということが前文の一番最初の書き出しであります。  長文の内容のものでございますので、はしょって幾つか私の感じた点だけを御紹介をします。  ずっと述べた前文の終わりの方には「国際社会は、この報告書に集められている事実と数字、それにのせられている結論を受入れることによって、軍備競争を中止し、それを別な目的に転用すべく効果的行動をとるよう希望したい。」ということを強く述べております。そして報告は、経済的負担となっている軍事費について一九六一年から一九七〇年の十年間で一兆八千七百億ドル、日本のお金にすると五百六十一兆円、年々増加する一方であり、報告書作成時点では年三千億ドル、六十兆円となっていますことを示しております。軍事費が保健に対する政府支出の二・五倍、教育費の一・五倍に達していることを示しております。ウ・タント氏は、もし年間軍事費がいままでと同じ割合でいくなら、一九八〇年までに、一九七〇年価格で三千億ドル、九十兆円から五千億ドル、百五十兆円にも達し、七〇年代での全費用は二兆六千五百億ドル、七百九十五兆円に達することを指摘しております。  時間がありませんので、長々とこれを御紹介するわけにいきませんけれども、本当に全世界の角度から見て、この軍備競争のひどさというものを国民生活との関連性においても指摘している内容を、非常に感銘をもって私は読ましていただいているのであります。  総理は、この報告書をお読みになったことがあるんでしょうか、これが一つ。そして、この報告書とあわせて決議が出ております。もともとこのレポートを出すに当たっての二六六七号という決議が出ておりますし、それから一九七一年十二月十六日には、二八三一号という決議がこのレポートをめぐって出ております。  したがって、私はこれらのレポートと決議というのは非常に重大だと思いますので、あわせて、一九七一年の決議二八三一号をお読みになったことがあるのかどうか、まずこれを聞きたいと思うのです。そして、お読みになったとするならば、その御感想をいただきたい。
  96. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、ウ・タント事務総長の報告並びに国連の決議、これは読んだことはありません。ありませんが、概要は聞いております。  特にその報告につきましては、私は、その報告を、わが日本くらい、わが意を得たりというような形で評価できる国はないというような感じがいたしておるわけであります。私は、人類のあるべき方向というものは、まさにその報告をかみしめて打ち出されなければならぬだろう、その方向はわが日本がすでに打ち出している方向なのです。私は、この報告並びに決議は、これはわが日本立場とほとんど変わるところはないので、この立場を踏まえまして、世界諸国にも何とかひとつ軍備というものを軽くするという方向の努力をすべきであり、また、それができる立場にある国である、そういうふうに考えております。
  97. 寺前巖

    ○寺前委員 総理は報告書をお読みになっていない、だけれども報告は聞いておられる、こういうことでした。  私はあわせて、決議文についてどうだろうかと思って、外務省から決議文もいただきました。そうしたら、外務省から、この点でもまた英文が持ってこられました。私は、これをいただいてもすぐに理解することができません。一体何が書いてあるのか、外務大臣、これを持ってこられたのですから、これを教えてください。何て書いてあるのですか。ここですぐ説明してください。(寺前委員、資料を示す)
  98. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これは二八三一号でございまして——国連局長から御説明いたします。
  99. 大川美雄

    ○大川政府委員 国連決議二八三一号、これは日本語をつくってませんで、はなはだ申しわけなく存じます。実は、毎年の国連総会で採択されます決議の数が、年によって違いますけれども、百幾つにもなりますので、私どもの事務能力で、必ずしも全部を直ちに翻訳する事務能力がない点を御了解いただきたいと思いますけれども、はなはだ私どもの努力が不十分であるということをおわびいたします。
  100. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、私はこれをきのうもらって、たった二ページのものですが、私、これをここでようやりませんから、あなたにいろいろのところを読んでほしいですけれども、たとえば、これの四番を読んでください。どういう意味ですか。
  101. 大川美雄

    ○大川政府委員 すべての加盟国政府に対して、この専門家の報告書をできるだけ広く各国に頒布するということを勧告している趣旨でございます。第四項でございます。(寺前委員「正確にそこだけ読んでくださいよ。全部読んでください。四番だけでいいです」と呼ぶ)国連総会は、すべての政府に対し、各国における世論に周知せしめるために、この報告をできるだけ広く配布することを勧告し、同時に、国連の専門機関並びに政府間、国内及び非政府間機関に対して、それぞれその人員を通じてこの報告の広報に努めるよう勧誘する、こういう趣旨でございます。
  102. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、総理、もう一度言いますと、こう言っているわけでしょう。すべての国の政府に対し同報告書をできるだけ広く配布せい——これを配布せいということですか。こんなものを配られたって、私読めませんよ。外務大臣でさえも、すぐまた国連局長に言わせてしまった。こんなもの配布しておったのですか。私は受け取ったのはきのう初めてですけれども、広く配布せいと書いてある。自国の世論がその内容を十分に知ることができるようにせい。こんなものもらって十分に知ることができますか。かつ専門機関、政府間機関、国家機関、民間団体に対し同報告が広く知られるようにせい。政府機関の中でさえも、あの人がここへ来て初めて説明するだけで、これは大臣の皆さんここへ配られてすぐわかりますか。皆さんどうですか。これで報告されていると総理はおっしゃったけれども、報告されておるのだったら、その決議の中に広く知られるようにせいと書いてあるのだから、知られるようにすることをまずやらなければいかぬじゃないですか。何でしなかったのですか。これは総理どうでしょうか。
  103. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この決議を見ますと、本件報告書を国連刊行物としてできるだけ広く出版することを要請する、こういうわけで、日本政府の刊行物としてということではないのじゃないかと思いますけれども、この趣旨政府部内ではみんな知っているわけでございますから、その趣旨趣旨として広く理解されている、そういうふうに思います。
  104. 寺前巖

    ○寺前委員 総理、出版物として発行し云々というのは三番のところに書いてあるのです。私は苦労しました、これをきのうもらって。一々訳してもらわなかったら、手に入らないのだから、私はそんなものはわからないのだから、三番でそう書いてあるわけだけれども、四番目は違いますよ。すべての国の政府に対して同報告書をできるだけ広く配布し、自国の世論がその内容を十分に知るようにせい、これをわかりやすくせいというのです。それで外務省に聞いたら、訳したものはありませんというのです。訳したものなくして、どんなに広く知られるようにしますか。これすらも配らないどころか、こんなもの配られたってどうにもならないのだから、訳さなければいかぬのじゃないでしょうか。忙しくてできませんという話と違うでしょうが。だから、これを本当に感銘深く理解したのだったら、これはあなたのところへ来る報告がインチキですよ。それで私はその前後の文章をもらったのですよ。訳したものをくれと言ったのです。そうしたらその前の一九七〇年の二千六百六十七号の訳、これはちゃんと印刷したものがあるのです。その後のものも一九七三年のも訳がちゃんと来る。一番大事なこのレポートと、それからいまの決議文、この二つの訳本は来ないのだ。わざわざ何でここのところが隠されているのか、私はそう思わざるを得ないのです。非常に大事な感銘深いものを何で日本国民に知らそうとしないのだ。これでもって、被爆国としての、また非核三原則を持っている国としての、日本政府としてのそういう立場ということを声を大にして総理はおっしゃっておったけれども、国連で日本からも専門家が加わってつくったこのレポートを、何で日本国民に広く知らすようにしないのか。私はこれは遺憾なことだ。総理、そう思いませんか。そして直ちにこれを日本国民に翻訳をして知らせるようにすべきだと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  105. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 一九七一年に提出されましたレポートが広く頒布されてないということをいま知りまして、大変遺憾なことだと思います。このレポートは五年前でございまして、御承知のように、この修正につきましての意見、情報をいま集めているところでございまして、日本としてもそれの作成に協力をいたしております。恐らくことしには修正版が出るという手はずになっておりますので、その修正版につきましては、これは広く国民の皆様方に御理解いただくように万全の措置をとりたいと思います。過去のことは私存じませんが、今度は、乏しい予算でありますけれども差し繰りまして十分に措置いたします。
  106. 寺前巖

    ○寺前委員 次へ移ります。  世界で最初に核兵器を使用したアメリカへ総理は行かれます。そして、世界で最初にその兵器で被害を受けた国の総理です。両国の総理が、そういう核兵器をめぐってのそれぞれの世界的に注目を浴びるところの首脳が会われるのですから、私は、この首脳会談で核をめぐっての態度、一体どういうふうにお話しになるのだろうかということを注目して見ているわけであります。アメリカの新しい大統領は、ことしの一月二十日に就任の演説の中で、われわれはことし地上からすべての核兵器を根絶するというわれわれの究極的な目標に向かって一歩踏み出すだろうという就任あいさつをやっております。そういう大統領に会われるわけですが、この首脳会談で当然私は核兵器の廃絶に向かって決意を示されると思うのですが、具体的にこの両首脳会談において総理は何をお出しになるつもりなんだろうか。国会決議では、核兵器の全面的な禁止の決議を上げておりますことは御存じだと思うのです。当然国際的な条約としてそういうものを結ばそうじゃないかということをお話しになると思うのですが、総理、どういうものなんでしょうか。
  107. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほどの国連の報告にもあるとおり、私は、核兵器が使われるというようなことになれば、これは地球のおしまい、人類の死滅に通ずる、これは終局的には何としても廃絶という方向でなければならぬ、こういうふうに思うのです。しかし、いま核兵器というものが方々の国で開発されまして、その多数の核保有国の間に核廃絶についての合意を得るということ、これは実際問題としてなかなかそう一朝にはいかぬのじゃないか、そういうふうに思うのです。段階的にそういう方向を逐次実現をしていくというほかないのじゃないか。そういうふうに思いますが、その段階的な第一の手法といたしましては、私は、核実験、これを包括的全面的に停止するということを国際間で合意するということが現実的じゃないか、そんな感じがするわけなんです。そういう合意ができるというようなことになれば、わが国は地震国であります、地震に対するいろいろ経験と知識を持っているわけで、この核の実験をしたかしないかというような確認、これは非常に大事なことになってくるわけですが、わが国はそういう確認の問題なんかにつきましても貴重な貢献ができるのじゃないか。そんなような感じがいたし、とにかく核につきましてはそういうステップをとるべきだというのが私の見解でございます。
  108. 寺前巖

    ○寺前委員 いままであれこれの措置が行われてきました、部分核停条約なり核防条約なり。そして現実どういう事態にあるかというと、ストックホルムにある国際平和問題研究所の報告は、広島、長崎の時分と比べて、いまや核兵器は、TNT火薬換算五百億トン、広島型原爆四百万発に相当する核兵器が世界に配備、貯蔵されるに至っている。非常に恐ろしい段階に今日ある。現実的には、毒ガスを禁止するとかあるいは細菌兵器、化学兵器について禁止する国際条約はあるけれども、現実にこういう恐ろしい武器が存在しているときに、それこそ私は、部分的な解決の道という一歩、段階という話もあるかしらないけれども、本当にいま国際的な世論を統一させなければならないのは、一たん使わせては大変なことになるというところで、核廃絶の旗を高々と掲げる国際的な団結が必要なんじゃないだろうか。使わしてはならないということを注目しなければならないと思うのですよ。そういう立場から見るならば、核廃絶に向かっての意思統一を強くしていただきたい。これは、カーター大統領自身が廃絶を目標にしようということを言っておられることを考えるならば、むしろ、日本の方からその全面的禁止協定に向かっての積極的提言をすべきではないでしょうか。また、具体的にそういう条約案を提起している日本の学者先生もおられます。たとえば京都大学の名誉教授の田畑先生を初めとする七名の方々が、そういう条約案なるものを提起して出されたりしておられる点を考えてみたときに、日本の被爆者を含めて積極的な皆さんの意見を政府自身がくみ上げて、国際的な世論づくりの先頭に立つという、そういう条約案準備もやったらどうなんだろうかと私は思うのですが、いかがなものでしょう。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 アメリカの大統領がその演説において、核廃絶、これは終局の目標としたいということを言っておる。もとよりわが国におきましては、核廃絶、これはもう世界に先駆けてそれを言っておるわけでありますから、これは話がぴったりと合う問題なんです。私は、核廃絶に向かいまして国際世論を喚起する、これは非常に重大なことだろうと思います。そういう立場において、日米両国でどういうふうな話し合いをするか、それは寺前さんのお話、これはまあ私も全面的に賛成ですが、どういうふうに具体的に処置するか、これはなお考えてみます。
  110. 寺前巖

    ○寺前委員 あわせて私は、来年の五月ないし六月に核軍縮を含めた国連軍縮特別総会が準備されていることを聞いております。三回にわたる準備会をこれからやっていくんだ、そして四月の十五日までには軍縮会議の議題と関連する諸問題に対する各国の政府見解を提出するように問題が出されているというふうに思います。この核軍縮を含めた国連特別総会は、非同盟諸国と平和愛好国の力によって実現したものであって、国際的にも初めての政治的な、あるいは軍縮の国連総会としてきわめて重要な位置を占めると思うのです。日本政府は当然これに参加されるだろうから、したがって、ここに対する議題というものは、日本政府としてどういうふうに考えておられるのか。私はその意見を総理に聞きたいと思うのです。で、私は、なかんずく被爆国の日本のことですから、核廃絶に向かっての先ほど提起した問題についてこの場に御提案なさるだろうと思うのですが、総理いかがなものでしょうか。
  111. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 来年の軍縮特別総会に提案いたします議題並びにその関連する問題点につきまして、四月十五日までに提出することになっておりまして、目下準備中でございます。ここに私どもの考えておりますことは、もうただいま総理がおっしゃったとおりで、日本といたしまして何よりも大事なことは、核軍縮の問題究極的には核の全廃まで日本の悲願として主張をすべきであるということは当然であります。またそれとともに、化学兵器の問題、また通常兵器につきましても、、いま何よりも資源的な面で、大部分がやはり通常兵器に相当な資源が使われておることも事実でありますので、この通常兵器につきまして特に近来非常に国際的な移転が増大をしている、こういった点につきまして、わが方といたしまして当然のことながら主張をいたしたい、こういうことを考えておる次第でございます。
  112. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、核兵器の全面禁止の国際協定を結ぼうじゃないかという具体的提起をこの場でやっていただくことを要求をしたいと思うのですが、重ねてその点、後からまた御発言をいただきたいと思います。  総理、一九六九年の佐藤・ニクソン会談での韓国条項、一九七五年の三木・フォード会談での新韓国条項に対して、この間予算委員会で聞いておりましたら、基本的な認識は同一であるというような御発言でありました。私がここでちょっと聞きたいのは、アメリカが在韓米地上軍の漸次的撤退を打ち出していることに対して、日本政府高官筋がいろいろ発言をしています。南北の軍事的バランスが崩されないようにしてもらいたいとかいろいろあります。枠組みを変えるなとか力関係がどうなるとかということがあります。私は、こういうことをめぐって、今度首脳会談をやられるに当たって、米軍の漸次的な撤退による減少を埋める政治的、軍事的、経済責任日本が負うようなことになっては大変だなということをこれらの発言をめぐって感ずるのです。すなわち、バランスを崩すな、いや私の方は引き揚げます、だから君のところがそれじゃ協力してくれるかなんというような話になって、日本がそういうバランスが崩れるのだという認識に到達さしたところから、日本が新たな分担を背負わされる、こういうことになるのじゃないだろうか、断じてそういうことにならないような立場を堅持することが重要だ、そういうふうに思うのですが、総理どうでしょうか。
  113. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の問題、特にアメリカ・カーター大統領が選挙のときなんかに演説しておる朝鮮半島からの米地上軍の削減問題、これは話の中に出てくると思うのです。そういうことが話に出るという際におきましてのわが方の立場、これはしばしば申し上げておる。基本的にはこの問題は米韓両国の問題である。しかし、朝鮮半島における平和、これはわが日本にとっても重大な関係があり、ひいてはアジア全域の平和にも至大の関係がある、そういう問題でありますので、朝鮮半島の平和を支えておる微妙なバランス、これが崩れないように配慮されたいという意見は強く申し上げるつもりであります。  そういうことでございますが、恐らくアメリカといたしましても——これは会ってみなければまだよくわかりません。わかりませんけれども、米地上軍の削減、これは現実的処理というか、私が申し上げているような南北の均衡が破れるというような形のことはよもややるというふうには考えておりません。したがいまして、この問題がそういうふうに処理されるということになったなら、そういう前提をとる限りにおきまして、これは私は、わが国の防衛に朝鮮半島の軍事情勢の変化が影響してくるというような見解は持っておりません。いずれにいたしましても、わが国がこの問題に関連して新たなる負担を負うというようなことは一切いたしませんから、御安心願いたい。
  114. 寺前巖

    ○寺前委員 在韓米軍削減論をめぐって、日本の基地の安定的使用が米軍の側からいろいろ今度は発言が出ております。一九六九年に佐藤元総理のナショナル・プレス・クラブの発言があります。「万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府として」「事前協前に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針」という意思表示であったと思います。これを受けて、一九六九年の十一月二十一日には、ジョンソン当時のアメリカの国務次官が、重要な約束をこういうふうにしたんだという話を受けて立っております。ところが、一九七一年にこの国会で、十一月十一日です、「前向きに」ということでは不適当だという発言を総理がされておりますけれども、日本国会ではそうなっておっても、アメリカでは、前向きにこれを受けて立つんだということでもって、これは重要な約束をもらっているんだという立場で今日まで貫いてきているというのがその姿であろうと私は思うのです。事前協議の対象がこういうふうに選って縮められてきている。前向きに選ってどんどん作戦行動が行われるようになっている。これは私は非常に問題だ。一方では、いま新しい事態を引き受けては帰らないとは言うけれども、前に提起してあるこの問題については、どうも私は決着がついていないように思うので、日本国会で発言された内容、この内容について改めてアメリカに、「前向きにかつすみやかに態度を決定する方針」であるということについては、あれは日本政府としてはとらないんだ、あれを基礎にしてあなたのところの国務次官が、重要な約束をもらっているんだということを言っておったことに対しては、あれは改めてもらいたいということを強く私は要求してくるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 事前協議の問題につきまして、国会等の場におきまして、イエスの場合もあるしノーもあるというようなことで推移してまいったわけでありますけれども、その経過につきましては、当方からアメリカ合衆国の大使館を通じまして先方によく周知してあるものであります。したがいまして、わが方の立場というものは、先方もよく理解をしておるものと、こう理解をしておる次第であります。  なお、必要があれば、山崎アメリカ局長からでも補足をさせます。
  116. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、今度行かれたときに、改めてその立場を明確にしておいてもらいたいことを要求したいと思います。  次に行きます。  カーター大統領のアジア政策を、ホルブルック米国務次官補が、米下院の国際関係委員会東アジア太平洋小委員会で発言をしております。その中で、韓国の人権抑圧に強く批判し、米国は人権政策を改善するよう強く圧力をかける方針とまで言っております。特に政治活動の自由が制限されている問題を指摘しているわけですが、そういう、韓国に対しては援助の削減の警告までやっている。これがアメリカの新しい政策として打ち出されておるわけでありますが、この韓国に対して日本政府としてどういう態度をとられるのか。このアメリカの態度を支持されるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  117. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 カーター新政権の人権重視の政策につきまして、私どもも高く評価をいたしておる次第でございます。わが国といたしまして、外国の国内に生起しております事柄につきましては、いろいろな配慮が必要であろう、それは外務当局といたしましては、内政に干渉するようなことは差し控えるという、そういう考え方のもとに人権問題については取り組んでまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  118. 寺前巖

    ○寺前委員 日韓会談、日韓条約以後いろいろ経済協力などをやっている韓国の事態に対して、私たちがやはり明確なこういう問題に対する態度を表明するということは、外交上きわめて重要な問題だと思います。  そこで私は、人権の問題について聞きますが、一九六六年の十二月に採択された国際人権規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、そして選択議定書の三つから成り立っているわけですが、これに対して日本はいまだに批准をしていないわけであります。十年以上もたった今日、人権の尊重を云々されるならば、当然この問題に対しての取り扱いをどうするかという立場が明確にされなければいけないと思うのですが、総理、どういう見解をお持ちでしょうか。そして、これをもしも取り上げるのだ、支持するのだと言われるのだったら、いつまでにそれを批准するように準備をされるのか、お聞きをしたいと思います。
  119. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘の人権規約につきましては、わが国といたしましても、その趣旨につきましては全面的に賛成でございます。これに批准をいたしたいのでございますけれども、その批准に際しましては、やはり国内体制がとられる必要があるという観点から、その国内法の整備に努力をいたしておりますが、残念ながら、今日まで国内法制上、技術的な点と申しますか、法律的に措置がまだ済んでおらないわけでございます。その加盟ができますように、国内的な対策、特に日本に居住する外国人の取り扱いにつきまして、まだ日本国民と同一の制度が適用されるに至っておらないのでございます。この点は、外務省といたしましては関係各省に強く要望いたしておるところでございますが、その点がまだとられていない。そのような、主として技術的な面からこれを批准することができないということでございます。今後努力をいたしたいと思います。
  120. 寺前巖

    ○寺前委員 総理、主として技術的に国内の問題だと、こう外務大臣は答えております。技術的な国内的な処理だったら、総理、積極的に音頭をとってやらせなければいけないんじゃないでしょうか。そんな技術的な問題だったら、積極的に、国際的に人権がこれだけ問題になってきているときに、日本人権をこうやって尊重していくのだという整備を急ぐ必要がある。どうです、いつまでにこれをやらすつもりですか。
  121. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この技術的と申しますのは、たとえば、国民年金制度のような問題になりますと、これは大変長い期間の掛金を要するわけでございます。この在留外国人につきまして、そういう長い期間の掛金を掛けた方がいいのかどうか。掛け捨てになるという危険も相当あるわけでございますし、その他そのような非常に法律技術的な問題が多々あるのでございます。これを日本人と在留外国人と全く同じような制度にのせることがいいのかどうか。こういう、本人に技術的な意味のいろいろな問題がございまして、なかなか法律の改正までできないというのが実際のところでございますので、いましばらく時間をおかしいただきたいのでございます。
  122. 寺前巖

    ○寺前委員 私は強く検討される乙とを望みます。早急にやられる必要がある。そして、取り扱いというのは、部分的には留保するという取り扱い方もあるのだから、いずれにしたって、基本的に支持するという以上は、基本的に支持をするという表明を具体的にまず確立をさせて、その上で検討していくというやり方もあると思うのです。私は、いずれにしたって、人権を尊重するということを声を大にして言われるならば、もう十年たっているのにいつまでもこのような姿に置いておくということを改善していただきたいと強く要求しますので、総理からその決意のほどを最後にお聞きをしたいと思います。  そこで私は、あと時間がわずかしかありませんが、お手元に「サラ金の「書き替え」の例」というのを配らしていただいております。  最近私のところに弁護士さんから手紙が来ました。   最近特に深刻な社会問題となってきております「サラリーマン金融」問題について、「法」改正を含め、是非とも国会で追求していただきたく、お手紙をさしあげる次第です。   私のところにくる法律相談、生活相談の三割が「サラ金」問題です。サラリーマン、主婦、商店主など生活や営業が苦しく、つい「サラ金」に手を出したため家をとられたり、職を失い、あげくの果ては夜逃げをしたケースもあります。具体的ケースで申しますと、   Aさん、地方公務員(区役所勤務)、住宅ローンでやっと家を購入したのですが、安給料のため五年前に五万円を借りました。利息は月九%、最初のうちは借りたものを返していたのですが、約二年前位から返済が苦しくなり、利息や分割金の支払いのために他の業者からまた借りるところまでいき、雪だるま式にふくれあがり、私のところに来たときには業者数八十名、元利合計二、〇〇〇万円となっております。区役所を退職し、退職金で住宅ローンを支払って、家を第三者に売却して業者に支払う計画をたてました。しかし、利子や分割金の支払いが  一回でも遅れたりすると、業者は昼となく夜となく取立のため家にやって来て、大声でおどしたりするのです。これがため本人をはじめ奥さん、子供さんまでがノイローゼとなり転居しないと生活も出来ないところにおいこまれておりました。しかし転居は業者に内緒にするのですが、義務教育の子供がいると転出証明が転校に必要なため、すぐに新らしい転居先がバレてしまう。このために子供が学校に行けないという深刻な事態が生れています。 こういう手紙です。  さらに、売春を強要されたりいろいろの内容の訴えが出ておりますけれども、私はこういう報告を聞いて、そこで改めてサラ金の問題を見てみました。何と、私の住んでいる京都でいうと、電柱という電柱を見直してみると、張ってあるものがすべてサラ金の宣伝になっております。団地へ行ってみたら、いろんなビラが入っております。ここにもあります。こういうビラがあります。こういうビラがあります。こういうのが入ります。いろんな種類のこういうビラが入ってくるわけです。サラ金というものがいかにたくさんの人たちの面前にあらわれているのかということを私はつくづく知ったわけです。  そこで私は、まず法務大臣に聞きたいのです。ここに一つの例がありますから、例について聞きたいと思うのです。十万円、お金を借りた。条件は日歩三十銭である。十回の元利均等で月一回償還で返していくのが一番左側の1表です。十カ月たったときに、十万円借りたものが十四万九千五百円となって初めて返すことができた。十カ月後にはもう一・五倍近くのお金になってしまう。ものすごい高利だと思うのですが、これは不当な支払いとは言えないのでしょうか、こういうお金貸しは。法務大臣、どうですか。
  123. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  このサラ金の問題は、最初できたときにはかなり利用価値があるという意味がありましたが、最近に至りますと、いま御指摘のような非常に悪質なものがふえてきております。  そこで、こういうものが法的に見てどういうことになるかということは政府委員の方から答弁をいたさせます。
  124. 香川保一

    ○香川政府委員 利息制限法の関係で申し上げますと、御承知のとおり、この例のように、元本が十万円の場合には制限利率が年一割八分でございます。それを超える利息の約定は法律上無効だということに相なっておりまして、この無効ということをかような例に即して具体的に申し上げますと、一割八分の計算の制限利息を超える分を払いました場合には、その超えた部分が法律上当然に元本に充当される、つまり超えた分だけ元本が弁済された、かようになるわけであります。そういたしまして、そのうちに、結局いま申しましたような計算で元本が全部完済されたというふうに法律上相なりました場合に、その後に知らずに割賦金を返済しておったというふうなときにはその分が不当利得ということで返還請求できる、かようなことになっておるわけでありまして、これは昭和三十九年の十一月あるいは昭和四十三年の十一月の最高裁の大法廷判決が明示しているところであります。  お示しの例によってざっと計算いたしますと、二回目の書きかえでございます。一回目が二万一千三百八十四円、こういう形で支払う書きかえの契約ができた時点で二回目まで支払われますと、先ほど申しました利息制限法の規定の適用上は、ここで十万円がすでに完済になっておって、利息として約二千円ぐらい超過して支払っているというふうな計算になるわけでございます。したがいまして、かような事例の場合に、いま申しました利息制限法は周知されておって、みずからのさような権利を守るということで十分法律を知っておりますればお示しのような結果になることはないのでありますけれども、その辺の法律知識が十分まだ行き渡っていないということでございますので、私どもといたしましてもさような関係のPRに努力したい、かように考えます。
  125. 寺前巖

    ○寺前委員 要するに第1表のこういう計算は利息制限法から言うならば不当な利子を取っていますと、こういうことですね。だから、それはその表の下の方に書いておきましたが、利息制限法で、十カ月返済だったら十一万五千円で済むはずのものなんです。したがって、三万四千五百円余分に取り過ぎることになっている。そこで、返済することを要求したら返さなければいかぬということになるわけですね。  そうすると、この利息制限法の第一条の二項というのは、こう書いてあります。「債務者は、前項の超過部分を任意に支払ったときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。」というこの項と、いまのお話とは矛盾をすることになるのじゃないでしょうか。最高裁の判決とこれとは矛盾してくるのじゃないでしょうか。そこはどうですか。私は、これは改正しなければいかぬところに来ているんじゃないだろうかと思うのですが、間違いありませんか。
  126. 香川保一

    ○香川政府委員 最高裁の先ほど申し上げました三十九年の十一月の大法廷判決は、不当な金利による債務者の保護という観点から法律技術的にきわめて巧妙な論理を使いまして、先ほど申しましたように超過部分は元本に充当されるという手法を用いたわけでございます。そういたしまして、元本に充当されますから、本人は元本の一部と利息を支払っているつもりでございますけれども、法律的にはどんどん元本が減っていく。したがって超過利率の方もふえていくわけでございまして、その結果、法律的には元本が全部完済されたことになるというときに、いまお尋ねの一条二項との関係につきまして最高裁の昭和四十三年十一月の判決は、超過しているということを知らないで払っていって元本がいつの間にかなくなっておるというふうになった場合には、不当利得の返還請求ができるのだ。つまり、一条二項は、知った上で払った場合には返還請求ができない、だから知らないで払えば不当利得の返還請求はできるのだ、かような判断を示しておるわけでございます。
  127. 寺前巖

    ○寺前委員 私の言っているのは、素人がこんなことを言ったってわからぬから、二項がなくてもいいじゃないか。法改正をやっといたら、そしたら利息制限法によって返してもらえるのだということがわかるじゃないか、要らぬことになっておるのじゃないのかというふうに思うのだけれども違うかと聞いているのです。違うかいいかだけでいいです。
  128. 香川保一

    ○香川政府委員 やはり二項は、かような利息制限法超過の貸し付けが現実に存在する、つまり、それだけの言わば必要悪的に需要があるという現実を踏まえての一つの妥協的な立法というふうに言われております。
  129. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間がないからそれはやめますけれども、それで第1表から実際にはこのお金を借りている人はどうなっていくかというと、毎月一万四千九百五十円ずつ払っていくわけだけれども、二回ほど払うと払えなくなる。そこでお店へ行って、済まぬけれども待ってくれぬだろうか、こう言うと、お店の人がどうするかというと、ここに書いてある書きかえというやり方をやる例があるのです。それじゃここで一たんこの話は打ち切りましょうか、残っているお金はということで、一万四千九百五十円以下三回目から十カ月目までのところの分を全部足して、それを元本として新しくお金を貸しましょう、こう言うのです。なるほど私は借金しているんだから、二回分払った残りの分はこれだけ新しい借金になるんだな、だからそれだけ分をそれじゃまた改めてお金を借りて、それをまた十回払いで返す、これはしようがないな、むしろ親切に言ってくれたなと思って、第2表のような別契約がそこで始まります。こういうやり方を進めていくのですが、このやり方はいいんでしょうか、悪いんでしょうか。  このやり方を進めて三回、第4表までいきました。そしたら、この人はうまく第四回目で終わってしまったわけですけれども、十九カ月目には、全体として払った分を足してみると三十六万四千百六十八円になってしまう。借りたお金は十万円で、一年半後には三十六万四千円になってしまった。ものすごいお金になってしまうのです。この書きかえの過程にインチキはないのだろうか、問題はないのだろうか。警察に聞いた方が早いかな、説明してください。問題はあるのかないのか、あるとすれば何か。
  130. 安原美穂

    ○安原政府委員 この契約の民事上、利息制限法上の問題は先ほど民事局長が申したとおりでございますが、端的に申しまして、その利息制限を超えます利息につきまして、非常に高金利の場合には出資取締法の第五条で高金利の取り締まりの規定がございまして、一日〇・三%を超える利息を取ってはならない、それを超えた場合は三年以下の懲役、三十万円以下の罰金に処するという刑罰規定がございます。そういう可罰的な罰則をもって臨むような高金利取り締まりの規定がございますが、その規定から申しますと、いま寺前委員の御指摘の第一回目の十四万九千五百円を毎月割賦で一万四千九百五十円ずつ返していくこと、そのことは計算上はちょうど日歩三十銭、いわゆる日に〇・三%の利息の最高限度内でありまして、これは直ちに罰則にはかかりませんが、その次の切りかえのときに元本を十七万八千八百円とするということ、そのことは、私どもの計算では本来元本は八万七千五百六十五円になるところが、これが十七万八千八百円になっている。これは元本に組み入れるべきでない将来の利息を入れて元本にしておる、そこに問題があるわけでありまして、正しい元本の計算からいきますと、この段階からいわゆる高金利取り締まりの第五条の規定に違反する高利の契約になっておる。これは罰則をもって臨む契約、金利の制限の違反であるというふうに考えております。
  131. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間がありませんのでまたの機会にやりますけれども、利息制限法の範囲を超えるところ、しかも出資法にかからない範囲のところにサラ金業者が存在しておって、その人から借りるところにいろいろ問題が起こってくるというところから、出先の諸君たちがこういう問題を出しているんです。このサラ金業者というのが健全でなければ困るじゃないか、そのためには監督指導できるようにしてもらいたい。すなわち現在の届け出制を許可制にせよとか、あるいは資格基準を明確にせよとか、あるいは出資法の第五条は改正してもらって金利をもっと下げるようにしなければいけないとか、あるいはまた貸借の契約の書式を統一して利用者にちゃんと交付することを義務づけるとかいうようなことをやらないことには適切な指導はできないんではないか。そういうものをやる必要があるのじゃないかということを第一線で働いている警察官やその他の諸君たちは声を大にして言うのです。それだったらそのことを検討する必要があるのじゃないか。政府としては一体どうしているのだろうか。  もう一つ問題を提起したいと思うのです。同時に、そういうサラ金業者でなくして、政府機関自身がもっと駆け込み融資をするような制度を全国的に考えるべきではないか。自治体においては駆け込み融資として年末にお世話をするような制度をやっているところがあるけれども、これをもっと広範囲に考える必要があるのじゃないか。そのためには警察関係もそうだし、法務省関係もそうだし、あるいは大蔵省の直接の金融指導関係者もそうだ。みんながひとつ力をしぼって新しく法改正なり指導体制なり、あるいはまた、第一啓蒙宣伝がやられていないのだから啓蒙宣伝に打って出るべきだということをどこへ行っても聞かされるのです。そこで私は、まず警察の担当者がその意見に対してどう思うのか、そして総括的に私の提起した問題について大臣から、どなたがお答えになるのか私は御指定しませんので、出てきて御答弁をいただきたいと思います。
  132. 安原美穂

    ○安原政府委員 お断りしておきますが、私は警察を代表して申し上げる資格はございません。ただし、ただいまお尋ねの点につきましては、私ども取り締まりの分野からは、先ほど御説明申しましたように、このように巧妙な高金利の違反につきましては厳重な態度でもって臨む、そして場合によっては公判請求までもするという強い態度で臨むべきだと思います。  あと、そのような貸し金業者の実態をいまのままでいいかどうかというようなことにつきましては、私どもとしては、こういう不況下に弱みにつけ込む人がぼろもうけをするというような事態はよろしくないと思っておりまするが、どういうふうに規制していくかということにつきましては、大蔵省なりあるいは経済企画庁の方からお答えいただきたいと思っております。
  133. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私どもの関係の方を申し上げますと、まず一つは、先生御指摘の後段の方でございますが、政府機関その他金融機関がそういう資金需要にこたえるために努力すべきではないかという点でございます。この貸し金業に対します資金需要の実態はなかなか詳細に把握できないのでございます。しかし、その中には事業金融的な部門とそれから消費金融的なものとあるように承知いたしております。事業金融的な部門につきましては、これは政府機関、民間金融機関を通じまして、順便にこれを図るということは当然のことでございまして、それに努力をさせることだと存じます。それから消費金融的な部門につきましては、これは資金配分としてその方に極力金を配分すべきかどうかという点は問題があろうかと存じますが、民間金融機関におきましては、サラリーローンとか学資ローンとかそういう形での資金の供給は量的にはかなりふえてまいっておるのが実情でございます。  それから、これを制度的にどうするかということでございますが、これは先生も御指摘のように非常に問題が複雑でございまして、関係各省非常に広範にわたっております。私どもの関係について申し上げますれば、やはり自由営業をたてまえといたしておりますので、五年ほど前に自主規制の助長に関する法律が議員立法で制定をされておりまして、そして自主的に良質の業者を育成をしていくというたてまえがとられておるわけでございますが、この法律ができましてまだ五年ほどでございます。したがいまして、まだ成果は十分ではないと存じますが、これからさらにその成果を上げるように努力をすることを要請してまいりたいという点が一点でございます。  それからさらに、今後どういうふうにするかということにつきましては、関係各省非常に多いものでございますから、今後関係各省相集まりまして、それぞれその所管の関係から全体につきましてどうするかということを一緒に検討してまいりたい、そういう段階にあるのでございます。
  134. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  都道府県知事に届け出ることによって営業しております貸し金、サラリーマン金融の業者が昨年の末で十五万、五十一年だけで一万三千もふえている現況でございます。その中には、御指摘のように非常に悪質な業者がいて、大変庶民が泣かされているという実情をわれわれも伺っておるわけでございまして、警察の取り締まりを十分やっていただくということも大事でございますが、やはりこういう被害にかからないように、被害の実例等をできるだけ知らせるということが大切ではないかと思いまして、従来までテレホンサービスや広報紙等でやっておりますが、まだ不十分と思います。今度ゴールデンウイーク前のテレビ番組でひとつこの啓蒙宣伝をやっていきたいと思っておりますし、また今後いろいろ工夫をして、そういう事例を国民に知っていただいて、こういう被害にかからないようにいたしたいと思う次第でございます。
  135. 寺前巖

    ○寺前委員 総理に、さっき提起した問題について……。
  136. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 何と申しましたか、人権協定ですか、これの批准問題でありますが、これは先ほど外務大臣からお答え申し上げたように、鋭意努力いたしまして、そうして批准し得る環境を整え、速やかな批准に持っていきたい、かように考えます。
  137. 坪川信三

    坪川委員長 これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時十七分開議
  138. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山口敏夫君。
  139. 山口敏夫

    山口(敏)委員 いよいよ五十二年度予算も終局の段階を迎えておるわけでございますが、私どもは、与野党伯仲国会というこの状態、またそういう状態に限らず、立法府と行政府の関係というものが大変歪曲された形で正しい機能を発揮しておらない、そういう立場に立ちまして、いまこそ国会の機能というものも改革をしていかなければならない。また野党といえどもその責任を果たしていかなければならない。こういう立場から、河野代表の本会議における代表質問にいたしましても、これまでの立法府と行政府の関係を根本から見直すべきである、いままでの学者や評論家の提案ではなくて、国会という現場におる政治家からの具体的な提案も申し上げたわけでございます。また、当委員会における西岡委員質問におきましても、いわゆる国会のあり方というものを、審議の効率化、予算委員会の運営というものに対しましても、基本的な改善を提案申し上げておわるけでございます。この点につきましては予算委員長の預かりという形になっておりますが、少なくとも今国会の終了時点までにおきましては、何らかの具体的なひとつまた結論もお出しをいただきたいと思うわけでございますけれども、これはわれわれが提案をした審議の効率化、あるいは国会の行政への弊害除去等々の問題の中におきまして、こういう予算委員会の運営のあり方にも鋭くメスを入れていかなければならない。予算の審議と同時に、予算関連法案も並行して審議をしていく、そのためには、いろいろな慣例はありましょうけれども、それを乗り越えたところに新しい国会の運営というものもあるわけでございまして、私どもの国会改善の提言の中で、答弁要求の出されておらない大臣は御退席をいただいて結構ですということは、テニスをおやりに行っていただいて結構ですということではないわけでありまして、お役所に帰って十分国民の声にも耳を傾けなければならない、また法律の審議の促進についても十分研究をしなければならないということでもあろうと思うわけでございます。  そういう意味で私は、働こう内閣の一つの基本的な姿勢でもあります点から、石原環境庁長官、昨日も予算委員会におきまして問題が出されておりましたけれども、いわゆる環境庁長官としての国民との接点といいますか、対話の姿勢、そういうところに福田内閣の姿勢があらわれておるのではないか、こういう疑念も含めましてひとつ環境庁長官の御答弁をいただきたいと思うわけでございます。
  140. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 お答えいたします。  国民大衆と行政府の接点ということはいろいろあると思いますけれども、主に陳情の問題だと思いますが、私が一つのルールの中で陳情を受けよと申しましたのは、いかに開かれた自由な社会でも、よけいな摩擦やトラブルを省いて能率よく物事を運行するための常識にのっとった黙約というものがあると思います。それが黙約として守られないならば、やはりそれを最低限の必要条項として文書にするなりして心得合う必要があるということで陳情のルールを決めて、そこでいかなる方々にもそのルールの中でお目にかかろうということを申したわけでございます。そういう意味では相手を選ぶということでもなく、まただれを忌避するということでもなしに、すべての方々にそういう常識の黙約の中で積極的にお目にかかりたいと思っているわけです。
  141. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、この問題に触れましたのは、やはり総理が対話と協調ということを内閣のスタートに当たって訴えたわけでございますし、特に国会の中におきましては与野党伯仲国会でありながら、なかなか野党との積極的な話し合いや、また予算審議における修正論議にも当初は耳を傾けなかった。そういう国会内における問題、特にまた国会の外におきましては石原長官の例に代表されるように、非常に国民不在の行政、そういう中に内閣の支持率というものも象徴的にあらわれておるのではないか。私どもは党利党略の立場から言えば、それは内政干渉でありますし、相手の評判が悪いことは別に気にするところではないわけでありますけれども、しかし政府を預かっていただいておる以上、やはり国民にとって役に立つ、また信頼に足る行政を進めていただかなければならない。  私は石原長官に、環境庁というところは、確かに民主主義は一つのルールでありますから、しかるべき手順を踏んで自分の意見を開陳するということは当然の礼儀であります。しかし、環境庁とか厚生省とかそういう国民に直接結びついた役所においては、やはり法律以前あるいはそういうルールを越えたところの触れ合いというものをしかるべき行政の最高責任者が持たなければ、何らの公害問題の前進や改善というものは成り立たないと思うのです。あなたがネクタイを外してと言うその気持ちのように、フランクに接触をする中で一つ一つの問題が改善をされてくる、そういう努力といいますか、相手が何党のシンパであろうとも、特定のイデオロギーに支配されておろうとも、やはり公害というものの中にかかわり合いを持った人間であり、国民であることは否定できないわけであります。  そういう立場に立って、むしろ役所での制約をもって会わないというようなことではなくて、自宅を開放してまでそういう人たちと積極的に時間を持ち合うという気持ちがなければ、私はそれらの不信と大きな断絶の中にある人間関係を調整するということは不可能に近いと思うのです。対話と協調ということをうたい文句にしておる内閣の閣僚の一人として、今日まであなたのとられた環境庁長官としての御姿勢について、何らかの反省なり意図するところがあるか否か、もう一度ひとつお聞きしたいと思います。
  142. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃいますように、公害問題について私は、役所だけではなしに、ある場合には自宅も事務所も開放して、フランクにいろいろな方々とお目にかかりたいと思います。しかし、自宅にしろ事務所にしろ役所にしろ、そこで本当に効率のいい対話をし、フランクに物を言い合うためにも、それなりのルールというものがあると私は思うのです。ですから、それを、つまり黙約で済ますことのできない人たちがいらっしゃるならば、やはりその方々には、ほかの方々が一々字に書いて説明しなくても、ごく常識的に、世間のそういう常識にのっとった黙約というものをちゃんと履行されて、紳士的にフランクに話し合える方がたくさんいらっしゃるのに、それをどうも守り得ないような方々には、やはり世間でごく常識的な一つのルールと申しましょうか、そういうものを確認し合った上でお話し合いすることが、話し合いをスムーズにし、フランクに物事を究明し合える最低の絶対必要条件だと私は思うわけでございます。そういう線で私、これから行政に取り組んでいきたいと思います。
  143. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、福田総理があなたのような方を閣僚に任命をしたということは、官僚的な弊害に陥らない一つの民間人としての行動というものを期待したと思うわけでありますけれども、その石原長官においても、やはり効率とかあるいはルールとか秩序という、一つのかたくなないままでの政治や行政の枠組みの中に押さえ込まれてしまっておる。  私は、この後、行財政の改革の問題も取り上げたいと思うわけでありますけれども、総理、現在の制度や運営の中におきましても、その行政の長に立つ政治家、閣僚というものが真剣に国民に対する奉仕というものに取り組めば、多年未解決であった問題でありますとか、大きな懸案を抱えて停滞をしておる問題とか、私は何らかの進展や改善がなされるということを確信をしておるわけでございます。しかし、非常に期待に胸をふくらませて閣僚になった途端に、この官僚機構の中で、いまの石原大臣の発言に見られるように非常に観念的な、形骸的な仕事しかなさらない。そこに私は、今日の政治不信の大きな要因が一つひそんでおると思うわけでございます。一人の閣僚が、一人の大臣が、その役所に一つずつ任期中に何らかの国民に対する大きな責任を果たすだけでも、行政や政治に対する国民の信頼といいますか、関心というものは大分変わってくると私は思う。そういう意味において、総理が対話と協調ということを言っておるわりには、働こう内閣ということを言っているわりには、具体的な形で国民の一つの願望というものを果たしておるものは残念ながら今日までにおいては見受けることができない。その点、内閣の基本的な姿勢といいますか、総理としての決意をいま一度伺っておきたいと思うわけでございます。
  144. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は組閣当初、初閣議において閣僚の諸公にも申し上げているのですが、とにかく率先垂範だ、閣僚は公私を峻別し、その身を持すること厳に、とにかく国民の儀表たらん、こういうことでございますが、私は、私の内閣の閣僚はそういう気持ちでやっていただいておる、こういうふうに思います。しかし、人間ですから足らないところもいろいろありますから、そういうことを皆さんの意見を聞きながら顧み、正すべきは正して、そうしてただいま申し上げたようなわれ国民の儀表たらん、こういう姿勢でやってもらいたい、かように考えております。
  145. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ひとつ総理決意の中に立って、各省庁におかれましても十分その責任を果たしていただきたいと思います。特に石原長官個人に云々するものではありませんけれども、やはり内閣の目玉として御就任をいただいたわけでありますから、このままでは目玉商品ではなくて、まさに魚の目的存在に陥るということもあるわけでありますから、ひとつ国民に信頼される内閣の役割りというものを果たしていただきたいと思います。しかしこれらの問題は政治姿勢の問題でありますからこれ以上触れませんけれども、特に私どもがこの予算の最終段階におきまして非常に苦悩しておるといいますか、苦慮しておりますことは、仮に予算が成立過程にありながら、まだこの時点におきまして予算関連法案というものの具体的な審議も、また修正の状況もどの程度にあるかということが全く行われておらない。仮に予算が採決をされたという時点におきましては、こうした予算の関連法案というものは手が届かないといいますか、非常に不合理な事態が生ずる恐れがあるわけであります。そういう問題を真剣に議論すればするほど、私ども、この責任国会にあるのか政府、行政の側にあるのか、意見が分かれるわけでございますけれども、そういう意味で、特にこの後の国会における重要法案でもございます国鉄の問題につきましてひとつお伺いをしたいと思うわけでございます。  昨年も国鉄料金の改正ということが行われたわけでありますけれども、ことしもまた国民生活を非常に圧迫する値上げ法案が提出をされておる、健保もそうでございますけれども。与野党間がこの予算委員会において画期的な政府修正を行ったということは、この物価高の中で国民生活が圧迫をされておる、そういう中で政府もでき得る限り節約をして、財政調達をして、少しでも国民の皆さんにお返しをいたしましょう、そういう一つの決意の披瀝でもあったと思うのです。しかし、一方においてはそういう行為を認めながら、一方においては運賃値上げ等におけるあるいは負担料の引き上げ等における問題が解決をされておらない。そういう賛否の問題は後にいたしましても、たとえば、国鉄総裁あるいは運輸大臣でも結構でございますが、国鉄経営というものについて、仮に国鉄法案というものが国会審議可決という形になったとしても——欧米諸国なんかにおきましては、国鉄経営そのものが非常に行き詰まっておるわけですね。有名なリスボン特急なんというのもいよいよ追い込まれておるというようなことも私どもも聞き及んでおるわけでありますが、過去、何度も何度も再建計画というものが出されては、これさえしっかり国会で通していただければ、国鉄は健全経営ができるのですという約束のもとに国鉄料金の改正というものが行われた。しかし、結果としてはそのとおりになったためしはない。特にことしは、去年の大幅引き上げからまだそのほとぼりもさめない、石油ショック以来依然として国民経済は停滞をしておる、そういう中にもかかわらず、また同じような言い分のもとにこの法案を提出をしておる。本当に再建が可能なのかどうか。国民は大変不信感を持っているわけですね。特に私ども国会立場においても、何かもうオオカミ少年でありませんけれども、国鉄当局や運輸省当局の主張にそのまま素直に耳を傾けるという気持ちにはなれない。その点、総裁で結構でございます、ひとつ国鉄再建の真剣なお気持ちを御答弁いただきたいと思うのです。
  146. 高木壽夫

    高木説明員 率直に申しまして、現在の国鉄の経営は非常にむずかしい事態になっております。したがいまして、再建ということにつきましてもいろいろな方途を尽くさねばならぬわけでございまして、その場合にやはり基本になりますのは、国鉄の労使と申しますか、国鉄の経営に当たる者、それからその仕事に従事する者の再建についての心組みが一段とバネになって働くということでなければならぬではなかろうかと思っております。そういう気持ちは、今日までの再建計画の過程におきましても決してなかったわけではないと思いますけれども、最近は御存じのようなきわめて押し詰められた状態にございますので、ようやくそのような雰囲気が生まれつつあるというふうに思っております。世界的に見ましても、各国ともなかなか経営が容易でないという事情にはありますが、よその国に比べますと、日本の方がいろいろな条件が恵まれておるわけでございまして、ヨーロッパ諸国がほとんどきわめて困難な経営状態に陥っておりますけれども、それに比べますれば、日本の場合は能率その他はまだ大変すぐれておるわけでございますので、職員あるいは経営者一同、一段とふんどしを締め直して取り組んでいけば何とかなるんではないか、またなさねばならぬというふうな感じでおるわけでございます。
  147. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総裁の決意はわかりますけれども、しかしもう大変後手後手に回って、私ども素人の目から見ても、なすべき努力をした上で国会にこういう重要法案を出しておるとは理解できないわけでございます。運賃値上げや国の助成というものは、国鉄の経営が完全に確実に行われる、そういう前提がなければ、これはもうざるに水を注ぐがようなもので、とにかくいままではそうだったわけでありますから、やはりそういったきちっとした政府の指導といいますか、国鉄の経営改善というものをはっきりさせてからでないと、私どもは国会審議ということも同調できない。運輸大臣どうでございますか。
  148. 田村元

    田村国務大臣 国鉄再建の決め手になるものは何か。私は国鉄当局者が早く労使の正常化を図り、経営努力を思いを改めてやっていく、これが基本的なものだと思うのです。まずそういうような国鉄当局の基本姿勢の上に立って、もう親方日の丸なんということじゃなしに、その上で国鉄を再建していくための諸施策を講じていく。まあ運賃値上げも一つでございましょう。運賃値上げというものは——特に今度の法案の一番のねらいは何かと言えば、適時適切な運賃値上げができるという、言うなれば基本的な問題でありますから、運賃値上げも最小限必要であろうと思います。それからまた、国鉄は膨大な土地を持っておるわけです。こういうものを全然利用しないで今日まで来ておる。従来の再建方式というものはもう運賃値上げばかりに頼ったようなかっこうであった。だから、国鉄が関連事業収入というものもどんどん得ていくということもしなきゃなりますまい。そうして本来国鉄が負担する枠外にあるような公共性の強いもの、そういう点においては国も思いを新たにして助成すればよい。このような大きな柱の上に立って国鉄を再建しよう。ですから、いわゆる投資対象の範囲の拡大もするようにして差し上げよう、適時適切の運賃値上げもできるようにして差し上げよう、国会にお願いもしましょう、だから思いを新たにしてやるんですよと、いままで国鉄はぼやいておったのですから。そこで、五十二年度内に、本年のうちにすばらしい再建案をつくってらっしゃい、それは国鉄の責任だ、従来のように過保護のような、政府が、運輸省がほいほいと抱いたりおぶったりということじゃだめです。国鉄自身がりっぱなものをつくってらっしゃい、そうして国民に理解を得るような再建をすべきである、こういうことで……(「らっしゃいはまずいよ」と呼ぶ者あり)いらっしゃいと言うと言葉は悪いかもしれぬけれども、しかし、私はそれだけの経営に対する責任感というものがあっていいと思うのです。そういうことで、今度の問題に意義があるわけでございます。
  149. 山口敏夫

    山口(敏)委員 まさに当局の労使間の正常化あるいは親方日の丸的な意識を除去していかなければならない、それはもう言い尽くされたことでございます。要は、田村大臣のまさに蛮勇をもって、そういう実行をいかに国鉄当局に迫り得るか否かという問題でもあろうと私は思うのです。現実に労使協調というものが、正常化というものが行われているか。この前も、あの落石事故のときも、国鉄労働組合員の声明、大臣もお読みだと思いますけれども、いまさら読むまでもなく、「営利優先、合理化強行の国鉄施策によって、またもや身の毛のよだつ重大事故が発生をした。」、これはいかにも他人事の、何か第三者が客観的にこの事故に対する評価を示しているような言い方。身の毛のよだつのはわれわれ国民なんであって、国鉄労組の方がおくめんもなくこうした声明を天下に発表し得るこの感覚ですね、この認識。西ドイツなんかはもう四十万の国鉄職員を二十万に、半分に減らすというくらいの革命的な一つの改善に着手しようとしておる。(「日本でやっているんだよ」と呼ぶ者あり)いや、日本はまだやってないですよ。日本もそれをもっともっと積極的に進める必要がある。  それからいま一つ、親方日の丸というのはそういう労働組合員だけではなくて、やはり幹部当局、役職員にもそういう事態があると思うのです。  私は運輸大臣に、大変細かいことでありますけれども、ちょっと御認識かどうか申し上げておきたいのは、いわゆる駅とか国鉄車内の広告がございますね。あれは私鉄におきましては七対三なんですね。要するに、私鉄が七割取って三割がしかるべき広告会社に支払われる。国鉄の比率は、幾らか。——まあそういう細かいことを聞いても失礼ですけれども、申し上げますけれども、三対七なんですね。私どもが調べた限りにおいては三対七。その三割を国鉄がいただいて、七割が広告あっせん会社に支払われておる。こういう事態が正しいあり方かどうか、ひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  150. 田村元

    田村国務大臣 そういう問題も含めて運輸省としても総点検をしておるところでございます。国鉄の場合は、関連といいますか関係の企業や団体といいますか、まあ世間様から見れば、それとのなれ合いのような面があると思うのです。でありますから、やはりきちっとけじめをつけるべきだ。そして先ほどおっしゃった国鉄の運営ということについては労使双方すべての従業員に——これは総裁以下みんなに責任があるわけです。ですから、早く労使の関係を正常化して、みんなが力を合わせて国鉄の再建を図り、運営に努力をする、これは当然のことであろうと思います。
  151. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういう労使協調大変結構なんですけれども、抽象的な利害調整ということではなくて、真剣な深刻な体質改善というものに取り組んでいかなければならない。にもかかわらず、こういうような問題が、肝心なものがたくさん取り残されておって、安易に値上げとかあるいは国の助成を期待をする、そこに問題があるんだ。その点を総裁なりにも努力はしていただいておるようでございますけれども、運輸大臣としてもやはりきちっと管理監督を指導していただかなければならない。  いま私が申し上げたこの広告媒体業の問題でも、東京メディア株式会社、あるいは高架管理業でございますけれども東京高架という会社がある。その東京メディアの役員は、九人中何と八人が社長を含めて国鉄の役員、職員、が就任をしておる。その会社が三割しか国鉄に支払わなくて、七割を取っている。これは総裁、東京メディアの社長のその比率分配に応じて国鉄が支配をされているのか。国鉄が民間企業——一応形態は民間企業なんですから、民間企業の料金を決めるのか。そういう初歩的な問題に対しても、何にも手が加えられておらないのですね。うわさでございますけれども、そういう会社から国鉄関係の政治家にもしかるべき献金がなされておるというようなことも、こういう場所におきましては私は深追いはいたしませんけれども、やはりこういうような問題、こういうことをきちっと整理をした上で、国民の皆さん方にも乗客の皆さん方にも御負担をいただきますように、そうでなければ説得力が私ははないと思う。  そういう意味におきまして、たとえば今回の値上げ——この前値上げをしたらお客が減ってしまった、グリーン車がまた値下げをした、こういうようなサル芝居のようなこと、目の前の見通しさえも立たない。この一九%という値上げの問題についても、こういう状態を据え置いたままで、政府と与党が一緒になって国民のための予算修正をした、こういう認識の上に立ってもまだ一九%という問題にこだわるのか。私は運輸大臣にもう一度その点の御見解を聞きたいと思うのです。
  152. 田村元

    田村国務大臣 一九%の値上げというのは、人件費、物件費の値上がり分を埋めよう、こういうわけでございます。でありますから、五十二年度の予算の算定基準としてこれが使われておるわけであります。もちろん一九%という値上げを私どもは予定いたしておるわけでありますけれども、しかし、政治は生き物といいますか、いろいろとまた考えなければならぬ点もあるかもしれません。しかし今日の段階では、一九%の値上げというものは、本来五〇%値上げするという予定があったのを、総理の非常に厳しいコントロールがありましてここまで思い切って下げたということで、この値上げというものは予定をいたしておるわけであります。
  153. 山口敏夫

    山口(敏)委員 今月中には具体的な経営改善計画も出されるということでもございますし、五十二年のプランの実行状況によっては五十三年度以降は値上げをしないというような判断も伝え聞いておるわけでございますけれども、総理、このように一九%の問題でも私は運輸大臣が多少含みのある答弁をしたと理解をしております。しかし、政治は生き物でありますから、当然運輸大臣答弁は適切であります。私はいい方に解釈をいたしますけれども、やはりこういう問題が再三出てくるわけですね。予算案と予算関連法案という問題が。いままで与党と野党が大変差があったという時点における国会と、それからまたこういう伯仲の中における国会においては、やはり新しい国会のあり方、立法府と行政府のあり方というものが大きく改善されなければならないというふうに私は思うのです。後で健保の問題も聞きますけれども、その点についてひとつ総理の御見解を承っておきたいと思います。
  154. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は国会の勢力が保革伯仲だというからそうだと言うのではないのです。国会というものはそもそもそういう伯仲の時代でなくても、話し合い、そういうルールでいくべきだ、こういうふうに考えておるのです。まして今度は伯仲ですから、好むと好まざるとにかかわらず話し合いでやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。話し合い、せっかくこういう機運が出てきましたから、この基調は私は非常に貴重な基調である、こういうふうに考えまして推し進めていきたい、そういう所感でございます。
  155. 山口敏夫

    山口(敏)委員 こうした国鉄再建等におきましては、大臣も、駅周辺の広大な土地をいわゆる民間以上の活力を持ってやっていかなければならないというようなお話もございましたが、当然そうした一つの国鉄再建に対する自主的な努力というものを一層傾注しなければならないと思うのです。しかし、また同時に国鉄も——私どもは運輸委員会を通じて、先ほど申し上げたような肝心の国鉄自体の内部におけるまだまだメスを入れなければならない問題につきましては、継続的にひとつ指摘をし、運賃法の中で一つの結論を出していく、そういう留保をしながら取り組んでいくということを申し上げておきたいと思いますので、ひとつ総裁におかれましても、十分国鉄自身の内部改革というものに対して革命的な手段を講ずるぐらいの決意を持って、御研究もいただいておきたいと思うわけでございます。  と同時に、国民生活にとって大変影響のある一つの問題はやはり健保であろうと思うのです。人間、言うまでもなく健康な状態における自分自身の問題というものはそれなりに解決がつくわけでありますけれども、やはり病気になって労働力が失われて、経済的にも肉体的にも家庭的にも大変深刻な状況になったというときに、やはりいまの保険制度は、いろいろ制度間の問題でありますとか矛盾はありますけれども、それなりに国民生活に寄与はしておると思います。しかし、そういう自覚の上に立っておるとするならば、いまのような状況において、ましてボーナスというような形の中におくめんもなく二%、財政が逼迫をしておるということは、そのいきさつは承っておりますけれども、だからといってすぐ保険料の引き上げを安易に組み込むことは私はちょっと納得しかねるわけでございます。この予算委員会におきましても、衆参本会議におきましても、渡辺厚生大臣は五十三年度以降の見直しというものを非常に言っておるわけでございますけれども、そういう中に、たとえば退職者の医療給付でありますとか、要するに一生懸命働いているときは、若いうちはそんなに病気にならない、定年退職した後、老後とともに足腰もいろいろ痛みが出てくる。そういう肝心なときに、さんざん保険料を払っておって給付額ががたっと七割に下がってしまう。また、いまの組合健保を初め政府管掌健保にしても家族給付が七割の状態に据え置かれている。そういう問題に対して私はもっともっと受給者に対しての努力改善といいますか、いわば善政を施した上でこの保険料の引き上げというようなものが妥当だと思うわけでありますけれども、五十三年度以降でも結構でありますが、厚生大臣のそうした問題に取り組む姿勢、お考えをお聞きしたいと思います。
  156. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 お答えをいたします。  国民医療の問題は非常に重要なことでございます。最近に至っては総医療費が、つい最近まで五兆円と言われたのが七兆円になって、八兆円になって、ことしは九兆円を恐らく超えるんではないかという推測がされるわけでございます。そのうちの大部分は御承知のとおり保険によって支払われておるわけでございます。このことは国民医療が徹底をして、あるいは高額医療が採用されたり高級な薬が使われる、こういうようなことのために費用がかかるということも事実でございましょう。それによって国民が機会均等を得てお医者さんにかかれてというようないいこともたくさんございます。しかしながら、しょせんはそれだけの金はだれが出すかというふうなことになってまいりますというと、それは被保険者が出すか、足りないところを政府が出すかということになってまいります。御承知のとおり、経済もいままでは高度経済成長で順調に歩んでまいりまして、政府の負担も年々ふえておって、現在でもすでに二兆五千億円は医療費の補助という形で出ておる、そのほか老人医療費やあるいはまた生活保護の医療費はまた別に出ておるわけでございますから、数兆円の金が実は使われておる、これも事実でございます。今後ともこういうことがどんどん続けていければ一番いいことでございますが、一方においては老人の数がだんだんふえるというようなことにもなってくると、果たして現在のような惰性でやっていけるのかどうか。それがいいのかどうか。あなたのおっしゃるように、確かに退職医療の問題も組合保険で退職医療が用いられていない、みんな国民保険に流れ込んでくる、こういうようなこと、これでいいのかどうか、いろいろな問題があります。国民の負担の問題もあるし、国の助成の問題もあるし、それから医療費の中で日本は薬を使い過ぎるじゃないか、これはよく国会でも外国の倍も使っているじゃないかという御批判もございます。それにベッド差額なんか取ってはけしからぬ、やはり病気の程度に応じて病人は待遇すべきじゃないのか、これも私はもっともな御意見だと思います。ですから、そういうような問題等を含めて根本的な見直しをしなければなるまい。したがって、医療制度の懇談会や協議会やあるいは社会保険審議会等においてこれは根本的にやっていこう。きょうから実は社会保険審議会は発足をして、そういう問題を含めてやっていきたい。ついては山口先生のように厚生省の副大臣としてつい最近までお勤めになって、いろいろそういうことを御勉強になった方の御意見は十分聞いてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  157. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そうした五十三年度以降の見直し、制度間の格差是正の問題でありますとか、いろいろ現行の医療保険制度の矛盾点を総ざらいしよう、こういう御決意を厚生大臣が披瀝をしているわけでありますし、渡辺大臣のもとで、福田内閣、自民党内閣のもとで、五十三年度以降の計画が練られれば結構だと思うわけでありますけれども、しかし来年はこうなるから、ことしはこの赤字負担分はボーナス給付でひとつ御勘弁いただきますというだけでは、やはり問題解決しないと思う。やはり安易な一つの手法という指摘を受けざるを得ないと思う。その二%という問題、いまだ予算が成立をされておらない、社会労働委員会においても具体的な審議をされておらないという状態でありますけれども、私はこういう安易な国会の保険料引き上げという問題当然金がなければしようがないじゃないかという主張はわかります、しかし、その方法が、いま厚生省が出された案だけで解決できるものかどうかという点からすると、やはりいろいろな問題が出てくると思うのです。ですから、そういう二%という一つの数字をどうのこうのいまここで申し上げることはできないかもしれませんけれども、私はこれは冗談ではないか、御冗談で、こういう修正というものも十分承知をした上で出された数字ではないかと思うわけでありますけれども、厚生大臣いかがでございますか。
  158. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、昨年といいますか、五十一年度で健保の大改正をやったのは御承知のとおりでございます。五十一年と五十二年で赤字の解消を図ろうということも計画されたのは御承知のとおりでありまして、ことしは五十二年度でありますから、残ったものの赤字解消というものをやっていかなければならぬ、それをしなければ支払いがつかなくなることもこれも御承知のとおりでございます。  そこで、一面には健保の特別会計を改正して、そして金をどんどん借りられるようにしたらいいじゃないかという御議論もございますが、これは、やはり赤字累積になってしまってにっちもさっちもいかなくなって、これからこういうことは二回と繰り返すまいということでつくられたものでございますから、この改正を今国会に出して通るとは思っていないということになれば結局支払いがつかなくなる。大蔵省の方との関係は、やはり支払いがつく見通しをきちんと立ててもらえなければそういうお金は貸せないことになっておるわけですから。したがって私どもといたしましては、それは緊急やむを得ざるものとして今回保険法の改正を上程をしたわけでございます。
  159. 山口敏夫

    山口(敏)委員 その二%の数字というものは、それじゃいわゆる譲れない数字であるということでございますか、多少とも。多少というのは——国会という、この事態において、福田総理といえども予算修正に応ぜざるを得なかった。厚生大臣、どうですか。ひとつもう一度御答弁願います。
  160. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは実際問題としていま予算を上程さしておりまして、そして私としてはともかくこれは提案をしておるわけでございますから、ぜひともひとつ通していただきたい、こういうことを言っておるわけなんです。しかし、最終的に法律案は国会で決めることですから、国会でそれは決めたようにしか、なるようにしかならないことも、これは厚生大臣どうしようもないが、私としてはぜひともこれはこのとおりお願い申し上げたい、こういうことを言っておるわけでございます。
  161. 山口敏夫

    山口(敏)委員 運輸大臣も厚生大臣も、私は、かなり率直に国会での審議等の結果を待ちたい、こういう御見解であろうと思うのです。そういった健保にしても、本来、総理は常々審議会の答申を十分踏まえてということをおっしゃるわけでありますけれども、これは社会保障制度審議会においてもにわかに容認できないというクレームがついたボーナス保険料がみごとに無視されて、こういう形で国会に出てきておる。しかしその当事者の大臣は、国会が決めるということであればこれはまた厚生大臣の権限の枠の外である、こういう立法府を曲がりなりにも尊重した意見を申し述べていただいておるわけでございますけれども、やはりそういう決意があるならば、私は、もっと国民にとっては事前の段階で、与党と野党といいますか、政府と立法府が国民生活に関する重要な問題、わけても予算等の問題につきましてはひとつ十分な理解と運営に対する責任を分かち合う、そういう認識が必要なのではないか。私たちは代表質問におきましても、予算委員会における総括質問におきましても、それを再三にわたって申し上げておったわけです。総理がその時点において書生論のごとく片づけられましたけれども、この予算の終局の場面において私ども新自由クラブがこの提言をしておった一つの形の中で予算委員会というものの経過がたどられておる。われわれは、そういう伯仲国会であるなしにかかわらず、立法府と行政府の関係というものは根本的に改めなければならないということでございます。  したがって、具体的に提案として申し上げますけれども、昨日外遊をめぐって党首会談をしていただいた、なさらないよりはしていただいて意見交換をすることは大変結構なことだと思いますけれども、六党なりの党首が一時間の時間を、カレーライスを食べる時間も含めれば、真剣にこの大事な日米関係について議論するには余りにも時間的に少な過ぎる。党首会談によってお茶を濁せばという気持ちはないかもしれないけれども、結果的には予算の前の党首会談においてもみごとに野党側の要求は無視されて、国会の中で二転三転しながら認めざるを得なかった、そういう状態もあったわけであります。私はそこで、たとえば五十三年度以降の予算、あるいは予算関連法案との問題もあります。そういう立法府内における政党の矛盾を克服する上においても、また予算権は政府にありますけれども、政府国民に対する責任を果たす意味におきましても、十分な、この予算を通じた関係法案、国民生活にかかわる問題を事前に議論をしていく必要があるのではないか。たとえば、八月なら八月の時点においていろいろ概算要求が各省から出てくる。その前に政府と与党、野党というものが、こうした国会の場を通じて大ざらいの意見を開陳し合う。たとえば、国会の手続の問題であろうと思うのでありますけれども、委員長初め予算委員会の理事の皆様方にもひとつ御検討いただきたいわけでありますけれども、閉会中審査のような——ことしは参議院選挙もありますけれども、したがってその後の臨時国会ということもあり得ると思いますけれども、閉会中審査のような形で七月なら七月、八月なら八月という時点においてそういう大ざらいの予算を各党が開陳し合う。総理にもその予算の編成の大綱を十分認識をしてもらうし、改府側の意見も言ってもらう。こういう形で国会が要求をした場合に、総理政府責任者として、予算編成の責任者としてどう対応なさるか、御見解を承りたいと思います。
  162. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、あらゆる社会各般の活動で協調と連帯、こういうことを言っておるのですが、国会の活動におきましてもそのとおりであってほしい、こういうふうに思います。そういうことで昨年の暮れ、忙しい中でありましたけれども、党首会談もやったのですよ。きのうは一時間という短い時間だ。これ以外に時間がとれない。そういうことで、時間的制約があったわけでありますが、それでも党首からいろいろ御意見を拝聴する、こういうことまでやっておるわけなんです。私は、国政全般につきまして、国会でも終わりますれば時間的な余裕もありますから、しばしば各党の党首と会談いたしまして——これは予算ばかりではないですよ。あらゆる問題につきまして、賛成、反対は別として、与党はどういうふうに考えておるか、政府はどういう考え方でやっておるか、各党はどういうふうな考え方であるかということを相互に腹に置くということは、これは非常にいいことだ、こういうふうに思います。そういう精神でやっていきたいと思います。
  163. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そうしますと、国会の各党の要求といいますか、これに応じて、総理もひとつ前向きに、そうした新しい国会における基本的体制については十分理解を示していただくというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  164. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま私は国会政府との関係について申し上げたのですが、国会におかれましても、そういう形でやっていただきたいことを自由民主党の総裁として希望いたします。
  165. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういう一つのことで、もう一つ私は、そういった総論だけを、総ざらいを洗い出すというだけではなくて、やはりこの柱ですね、その中で具体的に予算が詰まっていく段階において、柱です、今国会における修正論議に見られたような柱を決めていくという作業も、私はいろいろ意見調整といいますか、交換をし合う、理解し合う必要があるのではないか。私どもの予算の手順の理解におきましては、九月の一日ごろ、主計局のヒヤリングが終わりました後、九月の中旬には閣議報告がなされるわけでありますけれども、国会における中間報告といいますか、閣議報告と同じような形で、国会に対しても中間報告のような形をやる決意があるかどうか、その点もお伺いをしておきたいと思います。
  166. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 根幹を決めてそれから予算の編成にかかる、これは私は非常にむずかしいと思います。これは国会側から言えば審議権を放棄した、こういうようなことにもなるのでしょうからなかなかむずかしいことかと思いますが、政府がどういうことを作業しつつあるとか、どういう考え方であるとか、各党がどういう考え方を持っておるとか、そういうことを相互に知り合うということはそれなりに意味がある、私はこういうふうに思いますので、国会から要請があれば、できる限りの協力を私はするつもりでございます。
  167. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理の、そうした国会における立法府と行政府のあり方、予算編成のかかわり方等におきましても一つのお考えを承ったわけでありますから、ひとつ最後に、私は、いずれ国会が終わりますと参議院があるわけでありますけれども、政府責任者として、今国会は五月二十八日に終わるわけですね。そうしますと、公選法の規定によると六月二十八日から七月二日の間に参議院選挙が行われなければならない。いままでは大体参議院選挙というものは日曜日に行われておったわけでありますけれども、そうすると会期延長をしなければならないという場面も出てくる。これは国会とのかかわり合いもあるわけでありますけれども、その参議院選挙の投票日につきましては総理としてはどういう御判断にあるか、その点だけお伺いしておきたいと思います。
  168. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 うかつで、今度の夏の参議院選挙の投票日は、私、まだ検討しておりませんです。
  169. 山口敏夫

    山口(敏)委員 参議院選挙というものはやはり国政を預かる大変重大な選挙でありますし、特に選挙を控えたこの大事な予算が参議院に行った後のいろいろな手順にも影響してくるわけでありますから、まだ考えておりませんということではなく、ひとつ十分早目に御検討いただいておきたいと思うわけであります。  特に最後には、私は訪米に先立って総理に一言申し上げておきたいと思いますことは、私ども新自由クラブといたしましては、こういう国際化時代においては首脳会談というものは頻繁に行われてもこれは差し支えない。むしろ相互の理解を深めることによって国民的な利益というものを追求していくことは当然でありますから、できるだけ国会としてもそういう総理政府の閣僚の海外出張には御協力を申し上げていくということはやぶさかでないと思います。しかし、先ほども総理が言ったように各党間の代表の意見も十分聞く、国会の論戦の経緯もひとつ十分踏まえた外交をしていただきたいと思います。  そして特に最後に提言をしておきたいと思いますことは、この五月に先進国首脳会議がロンドンで開かれるということでございますけれども、総理はこの開催国について早々に、この開催国の問題についてはこだわらないという見解を発表された。それは一見非常に豪快のような形でございますけれども、私が言うまでもなく、ECなんかにおきましても、日米関係におきましても、いろいろな問題が山積をしておる。特にEC間におきましてはこの日本という国に対する理解というものが十分なされておらない。フランスとかイギリスのような国営放送の堂々たるニュースキャスターが、まだ小学校しか出てないような、あるいは女工哀史のような中に安い賃金でダンピングをして、そして過当競争といいますか、黄色い旋風を巻き起こしているというようなことを堂々とテレビやラジオで開陳をしておるわけですね。そういうことに対して私は開催国にはこだわらないというような総理見解というものは、外交の責任を持つ総理としてはいささか軽率のそしりを免れないのではないか。むしろヨーロッパ先進諸国の、あるいはヨーロッパのいろいろな国々や各国の首脳をでき得る限り日本に呼んで、日本国民が一生懸命働いた成果の上に今日の日本経済や産業があるのであって、そういう不当な相手の誤解の中における過当競争なり経済攻勢ではないんだということをやはり十分理解をしてもらう。それも私は首脳外交以上に大事なことではないかと思うのです。そうした総理の外交におけるセンスが、まさにこだわらないということは明治三十八歳的発想なんであって、やはりこの二十一世紀を迎える国際社会における日本の政治責任者としてはもうちょっと大所高所から御判断いただかなければならない。その点について最後に総理の御見解を承って、質問を終えたいと思います。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 貴重な御意見として拝聴いしたしておきます。
  171. 坪川信三

    坪川委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  次に、武藤山治君。
  172. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは、昭和四十八年一月二十六日の日米合同委員会で合意を見た「関東平野における合衆国軍施設の整理統合計画」、いわゆる関東プランなるもののその後の状況あるいは処理の方針、一口に言う米軍基地跡地の処分問題についてお尋ねをしたいと思います。初めは事務当局からいろいろ事実関係や実態を少し浮き彫りにしていただいて、最後に総理大臣としての御見解をお聞かせを願う、そういう順序で質問をしてみたいと思うわけでございます。  大蔵省、この関東プランに基づく米軍基地の返還土地面積、すべてでどのくらいになるのか。諮問した文書の中には二千ヘクタール、六百万坪ですか、二千ヘクタールと書いてあるのでありますが、具体的にはどのくらいの面積になって、国土庁の表示価格でもしこれを計算をすると、貨幣価格にしてどのくらいの価格になるものなのか、冒頭にちょっと明らかにしてください。
  173. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 お答えします。  ただいま御質問の関東プランによる返還米軍基地跡地の問題でございますが、四十八年にこれらの跡地の処理につきまして国有財産中央審議会に諮問しておるわけであります。それは関東プラン以外にも米陸軍の施設なり海軍の施設も若干含んでおりますが、全体として十大財産であります。個別に申し述べますと、府中空軍施設、キャンプ朝霞、立川飛行場、大和空軍施設、関東村住宅地区、ジョンソン飛行場住宅地区、水戸対地射爆撃場、キャンプ渕野辺、横浜海浜住宅地区、北富士演習場であります。このうち返還済みの国有地は二千四十一万五千平方メートルであります。それから価格については、公示価格に基づいて幾らになるかというのを具体的に計算はいたしておりません。
  174. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 約二千ヘクタール、それを首都圏に分類をすると、東京都下の面積、それから埼玉県、神奈川県、その他と、この四つに分類したらどういう面積割合になりますか。
  175. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま申し上げました二千四十一ヘクタールのうち、東京都に属しますのが百六十六万七千平米、それから神奈川県が六十六万平米、埼玉県が四百四十三万六千平米、その他、これは茨城県の水戸射爆場等がありますが、その他が千三百六十五万二千平米でございます。
  176. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これだけの膨大な土地を、大蔵省は国有財産中央審議会において三分割有償という方針を打ち出した。それによって地方自治団体と話し合いをしようとしているようでありますが、話し合いは一体進んでいるのか、どういう状態になっておるのですか。
  177. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 昨年六月に国有財産中央審議会からその処理方針につきまして答申を受けまして、われわれとしましてはこれを指針としまして、個々の返還財産ごとに具体的な利用計画の策定に努力してきているところであります。ただ、地方公共団体の中には、このわれわれの原則基準に対しましてなお異論もあるようでありまして、これまでのところ全体的に大きい基地について具体的な話し合いが進んで、いろいろ結論が出ているという段階までには至っておりません。
  178. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 自治大臣、いま大蔵省の答弁では、いろいろ異論があって話が進まないようだ。その異論というのは一体どういうものだと、地方自治団体を統括している自治大臣としては認識されておりますか。
  179. 小川平二

    小川国務大臣 これは場所によっていろいろだと存じますが、申すまでもなく貸与等の条件等をめぐって意見が食い違っておるものと存じます。
  180. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 貸与や譲渡の条件によって意見が異なっている、大蔵省の方針と地方自治団体の希望とが全くかみ合わない、だから同じテーブルにつかない、話し合いはさっぱり進まない、こういう状況だというわけでありますが、自治団体とすると、一番問題にしているネックの条件とは一体どんなものだと自治大臣はお考えになっていますか。
  181. 小川平二

    小川国務大臣 いわゆる三分法、こういう方式に対してなかなか納得しておらない団体があるという事情であろうと承知しておりますが、私は非常に詳しく各地の実態を把握しておるわけでございませんから、必要でありますれば政府委員から答弁申し上げさせます。
  182. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省は、この中央審議会の答申によると、十万平方メートル以下、すなわち約三万坪以下の返還地については三分割有償方式は適用しない。三万坪以下の土地はどういう方法でどういう指針で処分をするのですか。現にまた、したのもあるのですか。
  183. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 昨年答申をいただきましたこの方針は、面積を三つに分けて有効利用を図っていくというその面積の基準に関しましては十万平米以上の基地跡地を対象にしておるわけでありますが、それの処分していく条件、いわゆる有償の条件につきましては、十万平米未満の基地跡地についても適用になるわけであります。したがいまして、十万平米以下の基地跡地につきましては、面積的にはこれを三分することなく、それぞれの需要においてケース・バイ・ケースで、国が扱う場合もあり、地方団体が扱う場合もありということで処理していく方針にしております。
  184. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、三万坪以下の跡地も国有財産法及び国有財産特別措置法の規定に関係なしにこの答申の有償方式だ、こういう理解をしていいのですか。
  185. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 昨年の答申の中で、「返還財産については、その返還に当り相当の移転経費を要しているものが大部分である。また、これらの移転経費は、米軍基地の全体的整理縮小に伴って必要とされるものであるから、返還財産全体に対応させて考えるべきであり、個々の返還財産ごとに直接その返還財産に要した移転経費の額のみに応じて処分案件を定めることは適切とはいえない。従って、返還財産の処分に際しては、原則として有償処分とし、法令上優遇措置の認められる用途に充てる場合は、その優遇措置の適用限度について、すべての返還財産を通じ、統一を図ることとすべきである。十万平米以下の返還財産についてもこの原則を指針としてわれわれ処理していく方針であるわけでありますが、これは国有財産法にかかわりなくといまおっしゃいましたが、われわれとしては、国有財産法の中でその運用として統一した基準でやっていきたい、こういうことであります。
  186. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国有財産法によりますと、無償貸し付け、地方公共団体が必要とするものはかなりの範囲無償で貸し付けができるということになっておるわけですね。具体的には、国有財産法第二十二条を見てみますと、公共団体において必要とする場合、緑地、公園、ため池、用排水路、火葬場、墓地、ごみ処理施設、屎尿処理施設、と畜場、信号機、道路標識等々と、こういう公共用もしくは公用に供するときは無償で貸すことができると書いてある。さらにもう一つ、生活困窮者の収容の用に供する建物の敷地ですね。しかもその貸し付け期間は、植樹を目的とした土地は六十年無償貸し付け、前号以外は三十年。いわゆる公園みたいな無害の木を植えてあるような土地の場合は三十年間無償で貸せる。こう国有財産法第二十二条と二十一条で期間と貸し付け対象が書かれておりますね。これは間違いありませんか。
  187. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま無償貸し付けの対象としてお挙げになりましたものについてはそのとおりでございます。それから貸し付け期間について、植樹を目的としたもの六十年、それから堅固な建物は三十年とありますが、これは必ずしも無償貸し付けということではございませんで、貸し付けの期間を定めた規定でございます。
  188. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 無償の場合には期限なし、永久という理解をしていいのか、無償の場合も期限はつけるのか、つけるとすれば従来のケースでは何年のケースが一番多いのか、明らかにしてください。
  189. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま申し上げましたのは、ちょっと間違えてお受け取りになったかもしれませんが、六十年、三十年といいますのは貸し付けの期間を定めておるわけでありまして、ですから無償の場合もこの貸し付け期間の範囲内で運用されているわけであります。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  190. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ですから私が最初申し上げたように、六十年、三十年は間違いない、こういうことになるわけですね。  もう一つの国有財産を処分する場合の法律に、国有財産特別措置法という法律があります。この法律は、旧軍関係の財産ですね、これを払い下げをする場合の準拠法であります。ですから、今度の米軍基地跡地の処分はこの国有財産特別措置法に基づいて処分をすべき土地なのであります、私の理解では。その法律によると、第二条において無償貸し付けができると規定をしているものがたくさんあります。水道施設、港湾施設、生活保護法による保護施設、児童福祉法による児童福祉施設、老人福祉法の老人福祉施設、身障者の更生援護施設、精薄者の福祉施設、社会福祉法人の保護もしくは措置の用に供するもの、あるいは更生緊急保護法による更生保護の用に供するもの、さらに小学校、中学校、盲学校、聾学校、養護学校で、生徒の急増地域その他特別の事由がある地域、これらのものは無償で国有地を貸し付けすることができるとなっているはずであります。いまでもそういう規定は生きていると思うのでありますが、大蔵省はいかがですか。
  191. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいまお述べになりましたように、国有財産特別措置法第二条で、そのとおりのものが無償貸し付けすることができるという規定は、現在もそのまま生きております。
  192. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかるに今回大蔵省がとる方針は、指針は、中央審議会の答申によって原則として有償である。まず有償が前提になったんですね。法律は、公共の福祉や公共の用に供する場合にはこんなに無償で貸してもいいんですよと書かれているにもかかわらず、原則は有償としたところに問題がある。先ほど自治大臣は、異論があり、条件がいろいろ問題で、地方自治団体と大蔵省の話し合いがつかないものと思うと言っておりますが、問題はここなんであります。法律で無償で貸していいと書かれているのが全く無視される。全くと言わないまでも九八%無視されちゃっている。これは、法律違反とまでは言わないが妥当ではない措置だと思うのですね。そこに問題があるのです。これが地方自治団体と国との間の調整、話し合いがつかない最大のポイントであると私は思うが、いままでの質疑応答を聞いていて、大蔵大臣はどんな感じを持ちますか。——いや、大臣が答えないならよろしい。それならよろしい。大臣が答えないならよろしい、事務局は事務局とやりますから。私は、事務局ベースの話を聞いているのじゃなくて、主管の大蔵大臣として、いまの質疑応答を聞いている範囲で、今度の三分割有償というものが少々無理だなという印象を持ったんじゃないかと私は思った。しかし、何も木石のごとく感じないとするならば何をか言わんやであります。事務局に答えさせようというならば私は聞きたくない。  そこで問題は、国有財産法や国有財産特別措置法で、無償でできるとこんなにもいろいろなものが規定をされているにもかかわらず、今回の有償を原則とするということは、総理大臣、義務教育の小中学校の敷地まで今度の有償方式は時価の二分の一取ろうというのです。義務教育の小中学校の敷地まで、時価の半額はまけるが半額は払えというのですよ。いまの地方自治団体の苦しい財政事情の中で、生徒はどんどんふえて学校は欲しい、もう間に合わないというせっぱ詰まっているこういう事態の弱みにつけ込んで、この有償方針を断固強行するということは過酷じゃないでしょうか。この点だけ、総理、これはむずかしい法律問題じゃない。小中学校は無償で貸すことができるとなっているのに、今回の有償方式は小中学校の敷地も半分金を払えというのです。感じとして総理大臣どうですか。
  193. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いま武藤さんのお話を伺っていまして、政府の措置、これには武藤さんのような気持ちがにじみ出ている、こういうふうに見ておるわけであります。つまり、有償という原則は原則です。しかし、半分は無償にいたしましょう。しかも、あとの半分はこれは有償というけれども、これは国と地方自治団体との間の話です。その償還というようなことにつきましては、かなり弾力的な話ができるわけでありまして、これは気持ちとすれば、政府の考え方も武藤さんの考え方にもそう大した違いはないなというのが私の所感でございます。
  194. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは総理、理解ある福田さんの答弁としては理解がなさ過ぎる。福田さんは非常に弾力性があって、野党の言い分でもなるほどと納得のいく理の通るものについては耳を傾けようという姿勢のある総理大臣で、私は尊敬している一人なんですよ。その福田さんが、いまのような答弁をするというのはちょっといただけない。ちょっと話が細かくなりますが、私は減額譲渡できる条項をこの次に述べていこうと思っているのですよ。別の範疇にあるのです、半額減額をしていいというまた別な規定が。大体小中学校なんというのはただでいいはずなのを五割取る。しかも、五割取るのに、五年間は猶予しておきますが、五年たったらいただきますというのですね。ところが法律では、民間の法人や個人に国有地を売った場合に、延納は十年認めているのですよ。それを今度の有償三分割は、五年で小学校の敷地の金も取るというのだから、全く法律の精神を無視しているのですよ。(福田内閣総理大臣「そうじゃないですよ」と呼ぶ)いや、後で言います。今度は譲渡の分もやりますから。じゃ次の国有財産特別措置法第三条による「地方公共団体又は法人に対し、時価からその五割以内を減額した対価で譲渡」できるもの、いわゆる二分の一で譲渡していいという規定ですね。何があるかと申しますと、医療施設及び保健所の施設、社会福祉事業施設、学校施設、公民館の施設、公立図書館、博物館、職業訓練校、職業訓練短期大学、技能開発センター、身体障害者訓練校、この敷地もみんな五割引きでよろしい。更生保護事業施設、賃貸住宅施設、公害施設、体育館、水泳プール、スポーツ施設、これも半額でよろしい、こうなっている。ところが、今度の三分割有償案の中で無償でいいというのは公園と道路だけでしょう。大蔵大臣、これも事務局ですか、公園と道路だけかどうかの確認は。
  195. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほどちょっと私が御答弁いたしかねましたのには、だんだん話を聞いておりますと、法律によって無償でやることができるというふうに書いてあるのを、いわゆる三分割では二分の一ということに限定されておるということは、いかにも法律の規定とそれから三分割の規定とが違うということは、これはどうも私は不思議に思いまして、そういうことのあるのは何かの理由があってのことか、こういうふうにちょっと考えたものですから、そこで私がお答えする前に事務当局に一遍答えてもらって、そこのところどうなっておるかといういきさつを私は知りたかったわけでございますが、そういうようなことから考えまして、どうやら無償でできるというような規定のようでございますね、法律は。無償にすることができる。無償たるべしというようなことではないように——だからそういうような規定でごさいまするから、そこで今度の三分割の規定というものは、何だかそこに二分の一までというような制約があったのかと、かように思いますけれども、これは武藤委員のおっしゃるとおり、いろんなことを考えてみますと、これは相当研究を要することだというふうに私は思います。  それからなお、これはまた私のうろ覚えでございますけれども、要するに、移転ですか、移転費というものもこれに絡んでくるんじゃないかというふうに考えまして、そこで私が立つのを逡巡いたしたような次第でございまして、決して回避するというようなことではないのでございますから……。
  196. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまのあなたの答弁の中で、私の耳の中へ残しておかなければならぬのは、研究すべきと思うという点だけだね。あとのは蛇足で、これはまだ聞いてない。なぜ大蔵省がそういう有償原則を決めたかという理由は、後でちゃんと聞くのです。だから、事実関係をまずきちっとしてからでないと、立論の根拠をきちっとしてからでないと、大蔵省にああでもないこうでもないと逃げられるから、ぼくはいま石垣を積むように基礎から積んでいるわけだ。あなたは下が積めないうちに上の方を言っているわけだからだめなんですがね。  そこでいまの減額譲渡、二分の一を減額できる、こういう規定がはっきりあることは大蔵省も承知はしておりますね、理財局。
  197. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいまおっしゃいました減額規定が、国有財産特別措置法に設けられたことはそのとおりであります。  それから先ほど先生おっしゃいました点でございますが、有償原則といいますのは今回初めてとった措置ではございませんで、従来からその無償貸し付けすることができるとか、減額売り払いすることができるという規定でございますし、これはそれを最高限にすべての場合に適用するという趣旨の規定ではありません。そういうことで移転経費を要したような場合については、従来ともそれぞれの優遇措置を一〇〇%適用するということはとっておらないわけであります。ただ、それの有償の度合いが、従来は個別のケースごとに処置してまいりましたわけでありますが、今回は、多くの財産が一度に返ってきて、それを同時に処理していかなければならぬ、その間に基準を設けてバランスをとらなければならぬということで、その優遇措置の適用限度を統一していこうということから今回の措置が考えられておるわけであります。  それからもう一つ、先ほど公園と道路だけが今回の措置で無償貸し付けの対象になっておるとおっしゃいましたわけですが、公園につきましては、やはり無償貸し付けすることができるというその優遇措置を、他の無償貸し付けすることができるものと同様二分の一の範囲内で適用していくという考え方でありまして、道路につきましては、これは道路法上の問題でありますので、全部無償貸し付けなり譲与するというたてまえにしておるわけであります。
  198. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 道路だけじゃなお悪いじゃないか。公園も二分の一金を取るというのでは、いよいよもって法律の精神は全く無視だ。私はさっき八%と言ったけれども、これは九九・九%法律無視だ。もし皆さんが地方の首長だったらあるいは県知事だったら、返還される間際になればこういう法律をみんな調べますよ、市町村長も知事も部局を通じて。国有財産法はどうなっているんだ。そうなれば、こういう施設、こういう施設は無料だということになれば、そういうものを跡地に利用したいという計画を立てるのは当然じゃありませんか。しかも、大蔵省は昭和四十七年に、各財務部を通じて財務部長の通達を市町村長にもちゃんと出しておるわけですね。やがて米軍基地が返還されたときの用意まで文章にちょっと入れて、そして公共用のものに使うように十分配慮しろという取り扱い規程、膨大な通達を四十七年に出しておるのですよ。それを読んでみても、市町村長がそれを読めば、ますます無料なり二分の一減額なりで跡地は利用できると思い込むのは事の当然じゃありませんか。だから、埼玉県の返還後の跡地利用の計画を見ても、東京都の計画を見ても、返還される間際にどんどんスケジュールを立てているわけですよ、みんなそれぞれの市町村や県が。  ここにある一例のキャンプ朝霞はわりあいと面積が大きいから、ちょっと目を通してみても、東京都の方は六〇%が公園と緑地、それから学校が一八・五%、小学校、中学校、高等学校、養護学校、各一校ずつ、福祉施設が九・四%、重度精神薄弱者の施設、それから交通施設として都営地下鉄十二号線の管理庁舎が四%、道路その他が七・四%、これでちょうど一〇〇%使う計画を朝霞の場合に東京都はつくってある。埼玉県も朝霞の場合、公園、緑地が六五%、文教施設、小学校、中学校、高等学校、各三校つくりたい、福祉施設は養護老人ホーム、障害福祉センター一・四%、道路は四・四%。このように返還される間際にすでに、これらの首都圏の市町村、県は利用計画をつくっているんだ。なぜつくったかといえば、昭和四十七年の通達の中に、やがて跡地がたくさん戻ってくる、そのときには公共の用に供するように利用計画を立ててやりなさいということが書いてあるからだ。それを今度は中央審議会で一挙にがたっと一〇〇%変えた方針に変わったわけですね。これは地方自治団体が怒るのは無理ないと私は思うのですよ。怒らない方がおかしいと思うよ。だから話し合いの同じテーブルにつけないのですよ。  総理大臣、どうですか。そういう、法律は先ほど申し上げましたような無償のもの、半分譲渡のものがあるにもかかわらず、今度無償のものは道路だけ、公園まで二分の一、みんなお金をいただきますと言うのだ。しかもそれは時価だと言うのだ。もちろん、普通の売買実例よりはちょっと安いけれども、時価だと言うのですよ。それの二分の一払えと言う。いまの地方自治団体の財政窮乏の折、市町村はそれでは手がつかぬと言うのはあたりまえじゃないですか。そういう法律に規定されていることは「できる」となっているので、やらねばならないという禁止規定でないからいいんだというのが大蔵大臣答弁なんだ。しかし「できる」となっているこういう基本法がきちっとできておる限り、それの半分ぐらいは少なくも認めてくれるだろうと思うのは常識だね。道路だけだなんというばかな話にはならぬとだれも思いますよ。そういう常識の方が非常識で、今度のように道路以外はみんな金を取るという方が常識的ですか。総理は、その点だけ考えた場合はどうですか。
  199. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さっきから申し上げておるわけでございますが、この形から見ると、武藤さんがおっしゃるように、どうも国は欲をかいておるなというようなことでございますが、とにかくあの処分につきましては、二分の一は無償にいたしましょう、二分の一につきましては有償にいたしましょう。有償にはしますけれども、これはもう支払いについてはよく相談しましょう、こういうのですから、実態は私はおっしゃることと政府のやっていることとそう違いはないような感じがするのであります。とにかく地方も苦しい際でありますから、残された二分の一の支払い、そういうことにつきましては十分ゆとりを持って相談するということで万事円満に解決するんじゃあるまいか、そんなような感じもいたします。
  200. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省、皆さんが考えている三分割有償方式というのは、公園も小中学校の敷地も半額みんないただくんだ、高校に至っては三分の二いただくんだ。二分の一にまける施設は何と何と何ですか。無償は道路だけだというのはわかった。道路だけですね。あとはみんなお金をいただく。それでは、いただくのも、二分の一にまけるのもあれば、三分の一しかまけないのもあれば、いろいろあると思うんだ。それをひとつ種類別、施設別にちょっと発表してみてください。それと年限も、いま福田総理は、五年で返すという政府のいままでの答弁と違う、話し合いによってケース・バイ・ケースで年数も決められるような答弁をした。一体年数は何年で金を地方自治団体から納入させるのか。その方針はもうできておるんでしょう。まだこれからその方針はどんどん変わるのですか。それともある程度方針というのはできておるのですか。できていたら、それを全部明らかにしてください。
  201. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 最初に延納の問題についてお答えしますが、この延納の問題につきましては、まず国有財産法の本法の方に、五年以内の延納を認めることができる、それから特別措置法の方には、一般は五年以内ですが、地方公共団体とかその他学校、社会福祉法人等のような場合は十年以内の延納が認められることになっておるわけであります。われわれとしましては、延納の問題については、この法律の許す範囲内で、いろいろ現下の地方財政状況等を考えまして、最大限の御相談に乗っていきたい、こう考えておるわけであります。  それから先ほど、ちょっと補足的にお答えしておきたいのですが、小学校、中学校等の無償貸し付け期間が五年である。延納の期間が十年以内と法律で定められておるのに、無償貸し付けの期間が五年であるのはおかしいじゃないかというお話がありましたが、これは五年というのは無償貸し付けしておく期間でありまして、その五年の期間後にそれを売り渡すわけです。その代金の延納は、その法律の認める範囲内で十年まで御相談にあずかる、こう考えておるわけであります。  それから先ほど五割以内の減額売り払いなり貸し付けすることができる対象ということでございましたが、われわれの原則は、先ほど来申し上げておりますように、そういう無償貸し付けすることができるとか五割以内減額することができるという規定を半分適用していこう、ですから、無償貸し付けすることができるものについては半分無償になるということでございます。それで先ほど高等学校については三分の二になるとおっしゃいましたが、これは法律上最大限五割まで減額できるという規定になっておりますので、その五割の適用を半分までということにしまして二五%減額する、それで七五%になるということであります。それに類するものとしては、いろいろその他一般の学校なり、公民館、図書館、そういうものがあるわけでございます。
  202. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 委員長、ちょっと。  先ほど私は、二回にわたりまして、ちょっと間違ったことを申し上げたのです。それは、有償を原則とするが、半分は有償で半分は無償、こういうふうに申し上げましたが、これは間違いでありまして、半分は有償であるが、半分は優遇措置を講ずる、こういうことでございますから……。
  203. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは福田さん、優遇措置を、もともと立法府で決めた法律で、半分優遇をするような、もう減額措置ができると決まっているんだよ。決まっているものを素直に実行しようとしないところに問題がある。本来なら、福田さんの言うように優遇をするというのなら、さらにこの五〇%をまた減額するなら優遇なんだよ。  そこで、理財局、いまの減額対象というのは一体それじゃ具体的に何と何ですか。いまあなたは三つ四つ言ったけれども、ぼくはさっきずっと十挙げたですね。それから無償の場合も先ほど八つばかり挙げたね。  それでは正確に確認をしておく意味でもう一回。今度の方針で、この跡地を、これはただです、何と何と何、これは半分減額です、何と何と何、これは三分の一減額です、何と何と何、子供に質問するようで悪いけれども、もう一回、さっき質問しても答えないから……。
  204. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 今回の措置で完全に無償で貸し付けたり譲渡することを予定していますのは、道路法に基づく道路とか、火葬場、墓地、防火用水池、貯水池とか、用排水路とか、そういうものでございます。  それで、先ほど先生おっしゃいました無償貸し付けできることになっていますいわゆる児童急増地域におきます小中学校なり、それから公園、そういうものについては適用限度を二分の一ということで、半分を無償貸し付けしておくという方針でございます。  それから法律上、先ほど先生おっしゃいました五割以内の減額売り払いができるというものについては、一般的に、ですからその優遇措置を半分について適用していこうというわけでありますから、それらのものは結局二五%の減額になるということでございます。
  205. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 吉岡さん、いまの最後の部分が意味がよくわからなかった。減額譲渡は、第三条で、先ほど申し上げた十項目の規定があって、半分減額できる。この項目に決められている施設は、公民館とか公立図書館とか博物館とか体育館、プールとかスポーツ施設、こういうようなものは、本法で五〇%減額された上さらに減額をするという意味なのか、それとも、こういう施設のうち、市町村、自治団体から申し込まれたうち半分程度のものを認めようという意味なのか、最後の説明の中身がよくわからない。
  206. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ちょっと説明が誤解をお招きしたようでございますが、ただいま先生おっしゃいました医療施設とか保健所、社会福祉施設等たくさんのものが、まあ十ばかり並んでいるわけでありますが、これらは法律上対象としての採択をそうするという乙とではなくて、地方公共団体からそれらの設置の計画が出ました場合、それの用地の処分条件につきまして、五割以内減額して売り払うことができるとなっているわけでありますから、その優遇措置の適用範囲を二分の一に適用するということ、結局いまの学校用地なら、全体の半分は有償、時価で、あとの半分についてこの優遇措置を適用するということでありますので、先ほど申し上げましたように、結局全体としますと二五%減額して売り払う、こういうことでございます。
  207. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは大変だね。これはとても地方自治団体は負担できるはずがない。半分は時価で、半分のうちの半分、二分の一減額するというのですね。これじゃとても地方自治団体は買えるはずがないですね。前よりももっと、これは法律上よりももっと悪い。  福田さん、これは優遇どころじゃないんだ。本法はとにかく五〇%減額してやるのを、今度のは二五%しか減額しないんだな、小学校の敷地であっても公園であっても。(「冷遇だよ」と呼ぶ者あり)冷遇ですよ。法律より二五%後退なんだ。さっきの優遇という言葉をこれは取り消してもらわなければいけませんね。総理、何と訂正しますか。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 優遇は優遇であります。そこで、優遇になっておりますのは、支払いといっても、これはすぐ支払う、こういうわけではないのでありまして、一定の猶予期間がある。その後、支払い期限というものの中で支払っていくというので、その辺の支払い条件になりますと、これはもう国と地方公共団体との間に話し合いが円滑にできるのではないか、しかも、その地方公共団体の支払い資源は、これは地方財政需要ということで当然見積もられるわけでありまして、そう私は大きな支障が地方公共団体にこの問題から出てくるというふうには考えません。
  209. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その論争をしていると、時間有限でありますから、これは何とも仕方ありませんので先へ進めますが、いまの次長の話の中で、従来のわれわれの認識とちょっと違って一歩前進だなと思ったのは、最初各議員が質問をしているときには、小学校の場合も半額減額で、五年据え置きで、五年後に払ってもらうのだ、こういう説明だけだったのです。いまの説明は、五年は猶予期間があって、いわゆる据え置き期間があって、その後十年間で払えばいいということになると、十五年間のサイトで支払いを完了すればいいという理解になっていいのかな。
  210. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、最初の五年間は無償貸し付けですから、その後有償で払い下げる、その代金を最高限十年まで乗せていくということでありますので、合計最大限十五年になるわけであります。
  211. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省がかたくなにこの有償原則を固執をしておる、あるいは三分割、地方自治団体三分の一、国三分の一、保留地三分の一というこの分け前の比率、これに大蔵省が大変固執している、これが地方自治団体の反撃を買っているわけですね。もちろん地方自治団体の言い分は、戦前から、長いところは明治から、あるいは大正、昭和の軍国主義華やかなりしころから、農民の土地を召し上げ、地元住民の土地を追い出し、そうして軍事基地になった。軍事基地になってからはいろいろな被害を受けている。戦争中はいつこの飛行場が爆撃をされるかわからぬ、戦々恐々とする心理的な損害、戦後はアメリカ軍が駐留して、くそもすればおしっこもする、市民税は一銭も払わないのに市町村がそれを片づける、国の交付税は思う存分地方自治団体に交付してやらない、そういう不満、そういう金銭的計算による損害、精神的な苦痛等々、山積したものが地方自治団体にはある、地方住民の感情の中にもある。  そこで、そういうものにここで恩返しをする意味で当然、返還された土地は地方自治団体に使わせてくれるだろう、再開発、公共施設、文教地域、そういうものに十分活用できるだろうと希望するのは私は事の当然だと思うのです。そう思うのは当然じゃありませんか大蔵大臣
  212. 坊秀男

    ○坊国務大臣 地方の人たちの気持ちというものにはおっしゃるようなものがあろうと思います。ただしかし、返還された跡地につきましていろいろ需要が集中してきておる。その集中してきておるのをやはりうまく調整をしていかなければならないということで、この三分割という措置がとられてきたということでございます。  そこで、この三分割をあくまでも押しつけていこうということでなくて、一つの基準ということで、これに対しては先般の予算委員会でも、弾力性を持たせてやっていきたい、これを全然無視してしまうとか、これを撤回してしまうとかということでなくて、この分割基準をとにかく弾力を持たせてやっていきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  213. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、これは重要な発言であります。あなたが本当にそういう気持ちでやるとすれば地方自治団体の考え方はかなり変わると私は思う。しかし、本当にあなたはそれができますか。重要なことですよ。いまの三分割有償方式は押しつけるのではなく単なる基準である、ということは、動かし得るのだということですね。三分の一ずつの基準というのは動かし得るのだという意味ですよ。それから弾力を持って処理する、ということは三分の一、三分の一、三分の一ということにはそんなに強い拘束力はないと考えるという意味ですよ。そう理解していいですね大臣
  214. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 大臣の御答弁の前にちょっと私から申し上げたいと思います。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  いまの大臣のお気持ちは武藤委員の御質問に対しましてあらわれたお気持ちだと思いまして、私どももそういうお気持ちは非常に理解できるわけでございますが、実は、三分割方式そのものは、もう先生よく御存じのように中央審議会で半年もかかって議論したことでございますので、私どもの行政の指針といたしましては、あくまでもそれを尊重するというたてまえでございます。  ただ、先ほどからるるの御説明でございましたように、地元のいろいろな事情、そういうことを考慮いたしますと、これから同じテーブルについていただいてお話をいたすわけでございますから、かなり弾力的な考え方を私どもも持たないとこれは進んでいけないと思います。行政というものは、片一方で、私どもだけで決められるものでもございませんので、その辺は指針と心得えながら、大臣のお気持ちもそこにあらわれているのであろうと拝察いたしますので、先生の御質問に対しまして私が答えて恐縮でございますけれども、大臣の御答弁の前にちょっと一言……。
  215. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ここのところがやはり一番問題のところなんですね。地元住民や市町村は一括全面無償返還、しかも地方自治団体にくれ、これは地元の要求の原則だ。しかし、それが国有財産の処分をめぐってそんな一方的に通るはずはないと私も思いますよ、良識から見て。だからやはりどこかに何らかの歯どめと分配率を決めざるを得ないということまでは私も一歩譲りたいと思うのです。  そういう考え方に立つと、いまの大臣の発言は大変重要でありまして、この答申の中の処理基準の中に「おおむねその面積を三等分して」こうなっている。この「おおむね」というのが、概念をより具体的に詰めていくとなかなかむずかしくなるのです。「おおむね」というのは、ぴしっとしたものじゃないが、一体上限はどのくらいまで幅があるんだ。たとえば地方が五〇、国が三〇、保留地が三〇も「おおむね」の概念に入るのか。「おおむね」とは三・五以内くらいの幅しかないのが「おおむね」なのか、この「おおむね」というとろになかなか意味があるのですね。いま大臣が言った押しつけるのではなく基準であり、弾力性を持って対処するというのは、この「おおむね」という範囲においてのみの制約があるのでしょうね。そうすると「おおむね」という幅は、大体どの程度まで大蔵省は見てやろうとしているのか、これは理財局長ですか。
  216. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 お答えいたします。  「おおむね」でございますので、あくまでもおおむねでございます。ただ、武藤委員の御発言のように、地元とのお話し合いのところでは相当進むものもありましょうし、あるいは具体的な地形に至るまで、道路の問題もございましょうし、いろいろな問題があるわけでございますから、いろいろなものを見た上でテーブルについてお話をするということで、むしろ何%というようなことを言うことの方がかえってやりにくい面もあろうかと思います。その辺はおおむね三等分とかいうようなことをいろいろ考えて、ひとつ私どもとしては行政の上では先生の御趣旨もよく体して考えていきたいと思っております。
  217. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先生の意を体してよくやりましょうと言われても、私は行政官じゃないし、毎日理財局へ行っているわけじゃないので、やはりある程度一定の枠を示さないことには、それぞれ話し合いのテーブルにはつけないのじゃないですか、自治団体は。  それと、アメリカ軍が横田基地の方へ移動、移転をするためにかかった経費を地方自治団体に持たせるのだ、この発想もけちだと思うのですね。日本国という国全体の立場を考えたら、アメリカ軍の移転の費用を地方自治団体の貧乏な町や村におまえらが金持て、さんざん迷惑かけておきながらこういうものの考え方がぼくは大蔵省的発想だと思うのですよ。  ぼくは時間があれば小川自治大臣と、この辺いい知恵はないかということを大いに論じて、総理大臣に最後の労を期待をしたいところでありますが、いずれにしてもいま大蔵省が言っているのは、基地を移転するためにあるいは千四百億円経費がかかった、それに対して地方からもらう金は八百十億円くらいだとか、いろいろな憶測が乱れ飛んでいるわけでありますが、ここで聞いても恐らく幾ら地方自治団体から巻き上げる気持ちですなんということを言わぬと思うのだ。アメリカ軍の移転にかかった費用のうち、大蔵大臣、どのくらいこの土地の売却代で取る気なんですか。わからなければ答えなくてもいい。わかっていたら答えてください。常識だと思うのだけれども、どうですか。
  218. 坊秀男

    ○坊国務大臣 その経費が幾らかかったかということについては私はわかりません。で、「おおむね」ということにつきましては、「おおむね」というのを何とか数字を入れたらおおむねじゃなくなってしまうのですよ。だから「おおむね」は、大きなむねでひとつ入れていただくということで……。
  219. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それはさっきの「おおむね」論で、いまの移転経費のものはおおむねじゃないのだ。移転経費はもう確定しているのだからこれはおおむねじゃないですよ。  最後にもう時間でありますからやめますが、総理大臣、この中央審議会の答申によると、あくまで、有償というのは、原則として有償処分とする。その後に「法令上優遇措置の認められる用途に充てる場合は、その優遇措置の適用限度について、すべての返還財産を通じ、統一を図ることとすべきである。」、ばらばらでなければ、あっちの基地、こっちの基地がばらばらな形でなければ、全体のレベルをいじることは一向差し支えないのですね、この答申の中身は。優遇措置については、ただ統一的に考えてもらわぬと、あっちの町はうんと安くてこっちの町はうんと高かったというアンバランスさえなければ、この答申の趣旨は十分行政上配慮できる答申なんでございます。  先ほど来、一時間にわたって私がいろいろ法律上の規定と今回の措置の大変な隔たり、こういうものを指摘をしたわけでありますが、総理大臣として、地方自治団体の要望や希望というものを十分聞いて、自治大臣からも実情を聴取して、これらの問題についての——これは単なる行政の指針だと大蔵省は言っておるわけですから、そうきちっとしたかたいものでないのですから、柔軟的に処置しようとすれば、まだ柔軟的な余地が残っているわけですから、総理大臣として十分閣僚を、意見を聞きながら、両者がテーブルに一日も早く着けるような配慮を御努力願いたい。  最後に、総理見解を聞いて私の質問を終わります。
  220. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 武藤さんのお気持ちはよくわかりました。政府におきましても、柔軟に対処いたします。
  221. 坪川信三

    坪川委員長 関連質疑を許します。小林進君。
  222. 小林進

    ○小林(進)委員 限られた時間でございますので、簡単に積み残しの問題について締め上げの質問をいたしたいと思います。それが締め上げ切らなければ、ここで長々と寝せていただくこともあることもあらかじめお含み置きをいただきたいと思うのでございます。  まず、それに先立って、明日、総理はアメリカへお立ちになるのでございますから、アメリカにお立ちになるに先立って、二つだけ要望を込めた御質問をいたしておきたいと思うのでございます。  一つは、やはり在韓米軍の撤退の問題でありますが、自民党の中で、在韓米軍の撤退について大変反対であるという、そういう運動が根強く続けられておる。具体的には、青嵐会等が百数十名の署名をもって大使館を通じて、アメリカ国会ですか、政府に対してそういう意思表示をやられた。その文書の署名の中にはここにいらっしゃる閣僚も含まれているというのであります。これが一つ。  第二の問題といたしましても、これはここにもありまするが、自民党安全保障調査会、これは会長が坂田道太君、前の防衛庁長官でありまするが、これもやはりどうも、ベトナム戦争や朝鮮戦争での教訓を引き合いに出して、アメリカ地上軍の撤退が現在の極東の安全保障の均衡を崩しかねない危険があるということを強調して、これも撤退してもらっては困るということを言っている。  ここには、総理が渡米に際しまして、いわゆる自民党の元老と称する方々にお目にかかっておられるが、岸元首相、石井、船田、前尾前衆議院議長、椎名前自民党副総裁、灘尾元同党総務会長等の、この六人の長老がやはり総理との会談の中で、あわせて、在韓米軍撤退などアジア情勢に急激な変化を生ずるおそれがある処置については、ひとつ慎重に選ぶべきであるということをカーター大統領に対し毅然とした態度でこれを申し述べよなどという要望を突きつけていらっしゃる。  そこへもってきて、さらに日韓議員連盟の総会が、これがまた共同声明を出して、そして在韓米地上軍の削減は、朝鮮半島はもちろん、北東アジア全体の不安定を招くことに深い憂慮を示した、慎重を期すべきであるというふうに意見が一致をして、この趣旨のメッセージをカーター大統領に送ることにしたというふうな、実に激しい在韓米軍の撤退阻止の運動が続けられているのでありまするが、これに対して、大方の心ある日本人のみならず、韓国人、いわゆる朝鮮民族自体が非常に不愉快に感じる、なお怒りを表明いたしておるのであります。なお、それは朝鮮民族だけではありません。第三国の世界人士も、日本のこの自民党の姿勢に対して非常に憤りを感じているし、また疑問を持っているのであります。  そのよって来るところの原因は二つありまして、一つは、これは常から言われていることでありますけれども、朝鮮民族の最大の悲願である朝鮮民族の統一であります。朝鮮の統一を妨害して、あくまで二つの朝鮮の分裂国家を固定化しようとしている、けしからぬ、これが一つであります。しかし、これはまあいままで言い伝えられてきたのでありますが、いま一つの問題、これは総理がお気づきになっているかどうか、私はその点を非常に憂慮するがゆえに、あえて申し上げるのでございますが、いま一つというのは、朝鮮の安全また東北アジアの平和という言葉を口実にして、実は日本の反動勢力あるいは自民党は、在韓米軍と朝鮮民族の犠牲の上に日本の安全を図ろうとしている、いわゆる朝鮮民族の血の決裁によって自分は手ぬらずで、そして自分たちの安全をかち取ろうとしている、これくらいずるいやり方が一体あるか、これはいわゆる日本の古来の帝国主義的な、日本の侵略思想の変わった要望だ、これがけしからぬという、こういう声が高まっているのであります。  私は、在韓米軍の駐留を希望する方々がこういう朝鮮民族のこうした真意、われわれの血や、われわれの犠牲の上に日本の安全を図ろうとする、日本はずるい国だというふうな、そういうことを理解した上で一体こういう在韓米軍の駐留などを図っていられるのかどうかということに非常に疑問を持っているのであります。こういう点を総理はひとつ、明日からアメリカでございますから、こういう誤解が相手国に——朝鮮やあるいは朝鮮民族やアメリカの国民にこういう誤解を持たせないような慎重なこの韓国問題の取り扱いをしていただかなければならない、これが第一の要望でありまするが、これに対するお考えをひとつ承っておきたいと思うのであります。
  223. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の平和につきましては、私はしばしば申し上げておるとおりであります。私どもとしては、その平和を念願しておる。終局的には、南北が平和的に統一されるという姿が一番いいのじゃないか、その環境づくりにつきましては及ばずながら努力をいたそう、こういうふうに考えているわけです。  それからカーター新政権が言っておる韓国からの地上軍の削減問題、これにつきましては、これももうしばしば言っているのですが、これはまあ基本的には米韓間の問題である、これにとやかく深入りしますれば、これはもう韓国だって面目上これを非常に遺憾とする、こういうふうに私は思うのです。ですから、基本的にはこれは米韓間の問題である、私はこういうふうにもう申し上げておるわけであります。  ただ、わが国がどういう感想かというふうに求められる、わが国の意見はというふうに求められるという際におきましては、朝鮮半島の平和を願っておる、朝鮮半島における平和は微妙なバランスの上に成立しているので、このバランスが崩れるようなアメリカの措置は困る、こういう意見も申し述べたい、こういうふうに考えておるのです。
  224. 小林進

    ○小林(進)委員 総理の真意はわかっておるのでありますけれども、くれぐれも朝鮮民族、他国の民族の犠牲や血の上に自分たちの国の安全を図ろうなどというような誤解がよその国からつゆほども出てくることのないように、ひとつその点は十分御注意をして交渉をしていただきたいと思うのが第一の要望であります。  第二点は、この日本という国が世界の三大強国、アメリカ、中国、ソ連という大きな国の谷間にいるという環境から見まして、ニクソン・周恩来の上海コミュニケと田中・周恩来の共同声明、これをこれから行われる日米の首脳会議の政治日程にどうしてものせて、真剣にひとつ討議をしていただきたい。これが私の第二の要望なのであります。  すなわち、ニクソン・周恩来の上海コミュニケには、両国はアジア・太平洋地域において覇権国家にならない、覇権を確立しようとする国家及び集団に対しては両国は反対する、こういうことが明記をせられておる。これと同じような文章と同じような約束が、やはり周・田中共同声明第七項に盛られておることは、もう総理承知のとおりであります。このお互いに覇権国家にならない、アジア・太平洋地域を平和な海にする、平和な地域にするということを、いかに政治の上に両国が具体化していくかということで、カーター氏とお話しになれば、必ずそこで対ソ連政策というものに私は突き当たると思うのです。この日本を取り巻く三つの大国の中で、日本とアメリカと中国の三つの国がいずれもアジア・太平洋地域において覇権主義をとらないという約束ができておれば、残るのはソ連だけでありますから、ソ連もまた覇権主義反対ということで仮にこれを打ち出してくれれば、この三つの大国に取り巻かれたアジア・太平洋地域は、そのままにして平和な安全な地域になることができるでありましょう。私は、これは日本国民の悲願でなければならぬと思いますし、これは無理をしてもやはり政治日程にのせて、日米首脳共同して、ソ連にも、おまえの国も覇権主義反対の約束はどうだ、やらないかというくらいの交渉をするまで私は話を進めてもらえないかと思うのであります。総理、いかがなものでございましょうか。私の政治家としての単なる夢であるとあなたはお考えになるか、あるいは政治日程にもなし得るだけの現実の問題であるかどうか。  時間がありませんから、私は、これに続いてもう一つ総理の意見を聞きたいのであります。  覇権主義というのはもはや最近では国民的常識になってしまったのでありますが、一体この覇権主義という言葉の真の意味はどういうことでございましょうか。これも時間がありませんから、私なりの——よろしゅうございますか。それじゃ一体覇権の真の意味はどういうことなのか、ひとつ承っておきましょう。
  225. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 覇権という言葉の意味につきましては、従来この委員会等で政府からの答弁もあったところでございます。そういう意味で、覇権につきまして国際法上のはっきりした定義というものはないわけでございますので、私どもといたしましては、一国が他国の意思に反して力によって自己の意思を押しつけようとする種類の行為ではあるまいか、主権尊重とか内政不干渉とかいう国連憲章の原則と相入れない種類のものであるというように従来から御答弁申し上げておるところでございまして、このようなことであろうかと考えておるところでございます。
  226. 小林進

    ○小林(進)委員 私は大まかにおいて外務大臣の御答弁を肯定するものであります。そのとおりだと思いますよ。しかし、それをもう少し砕いていけば、例の普通平和五原則と言われるあそこに盛られた条項、いわゆる暴力といいますか武力をもって他国の領土を侵害する、他国の主権を侵す、他国の内政に干渉する、他国に経済的な圧力を加える、いわゆる互恵平等の原則を破壊する、これが覇権主義という言葉に盛られた具体的な内容であると言って差し支えないと私は思いますが、結論においては外務大臣と同じだ。  そこで、アメリカも日本も中国も、武力をもって他国に対し自己の意思を押しつけないということになると、ソ連日本北方領土を占領しているということは一体何だということにならざるを得ないのであります。これが覇権主義のあらわれでないのかどうか。もしこれが覇権主義のあらわれであるとするならば、やはりわれわれはこれを黙視していくことはできないのでありますから、そういうことも含めて、私は日米首脳会談の中で問題の処理に当たるような話し合いをしてきていただきたいと思うのでありますが、総理、いかがでございましょう。
  227. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私とカーター大統領との会談は、全部入れて四時間ぐらいなのです。私、それを二回に分けてやるわけですがね。そこで、通訳を使うということを考えると、これはかなり短い会談になるわけです。あれもこれもと思いますけれども、そこまで現実の問題として話がいきますかどうか、そういうこともありますし、また、いま御提起の問題について、現実的にどういうふうに話し合いができるか、その成果の問題も考えなければならぬと思います。非常に貴重な御意見として承っておきます。
  228. 小林進

    ○小林(進)委員 総理会談のお時間がないということになれば残念でありますけれども、三大国の間でいみじくも覇権主義反対ということで歩調が一致したのでありますから、いま一つのソ連にもそれを要望する。それを要望する過程の中で、北方領土の問題が出たり、また当然日米安保条約の洗い直しという問題も出てくると思いますが、これはわが民族の将来に関する重大問題でございますので、できればほかの問題を割愛してもこういうところへ一歩踏み込んでいただきたいということを私は強く要望いたす次第でございます。  残念ながら時間もありませんので、総理に対してはこれで終わります。  次は、坪川委員長の確約の問題であります。  私はこの予算委員会で、二月十八日、二月二十三日、二回にわたって、若狭得治君全日空社長就任の件について、予算の理事会で結論を出していただきたいということをお願いしていたのであります。ところが、委員長は「いずれ理事会で協議いたしたい」と答えられ、また、二十三日の本委員会で再度この問題を質問いたしましたときには、「私としては決して放置しておりません。片時も忘れてはおりません。したがって、これからの理事会でこの問題を十分協議したい、こう思っております」と答えておられます。実に答えは明快なのでありますけれども、私はいまだなおその返事を承っておりません。もうきょうは最後の日でございますから、これはきょう返事をいただかなければ、一体もういついただくことができるのか。予算は通ったから後は野となれ山となれと言われたのでは、これはとてもたまったものじゃございませんので、いかがいたしたものでございましょう委員長
  229. 坪川信三

    坪川委員長 ただいま御指摘の点につきましては、きょうの理事会においても、未解決の諸件につきましては、今後進行形の形において協議してまいろうという話もいたしておりますので、本件につきまして大変確答のおくれましたことはおわびいたしますが、今後の理事会において必ず御指摘になりました点について協議をいたし、その御返答をいたしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  230. 小林進

    ○小林(進)委員 お伺いいたしますが、きょうの理事会とおっしゃいますと、わが党の理事の諸君も、あわせていまの委員長の発言に同調されたわけでございますか。
  231. 坪川信三

    坪川委員長 御了解を得たわけでございます。
  232. 小林進

    ○小林(進)委員 さようでございますか。そういうことになりますれば、やむを得ず矛をおさめる以外にないと思います。  それでは、なおそれにあわせて、日韓問題に関し、在米韓国人のジャーナリスト、文明子女史を本委員会に参考人としておいでを願って御意見を承るという件もまだ御返事をいただいていません。いまの委員長の御回答の中にこれも含まれていると解釈してよろしゅうございますか。
  233. 坪川信三

    坪川委員長 その件につきましても、きょう含まれての協議でありました。
  234. 小林進

    ○小林(進)委員 なお続いて申し上げますが、五十年十二月には、前荒船委員長のときでありますが、いわゆるアメリカの核兵器がわが日本国土に持ち込まれているかどうかという問題、この問題はしばしば予算委員会で論議を尽くされたことでございますから、それを結論を出す意味においても、アメリカの議会人と日本の国会議員と話し合いをしようということで、一昨年十二月、アメリカ議会へ当時の予算委員長を団長にして渡米いたしましたことは御承知のとおりであります。そこでわれわれは忌憚ない論議を重ねてまいりました。ついでにアメリカ政府とも会見をいたしました。その結果はこの国会に報告書類として非常に貴重なものが配付せられて、委員長のお手元にも行っているはずであります。この行事があってから——私は何もそれを過大評価しようというのじゃありませんけれども、自来あのやかましく言われた核持ち込みの問題が、当時この予算委員会にはそうもう大きな議題にならなくなった。この貴重な予算委員会の論議の中で核問題が一応静まったということは、私は、やはり前委員長が勇断をもってわが衆議院の代表をアメリカ議会に会談に送られたというこの決断にあったと思うのです。この経験を生かして、私は、第二回の、いわゆる本委員会の各党代表があなたを団長にしてアメリカの議会に行かれて——今度の議会の中で中心問題になったものは、いろいろありましたけれども、二つあります。一つは一兆円減税、一つは韓国問題です。で、この韓国問題についてアメリカの議会人と話し合いをされる、そういう機会をお持ちになったらいかがですかということを私が提案したことは御承知のとおりであります。これもまだ御返事をいただいておりません。どう処置されましたか、伺っておきたいのであります。
  235. 坪川信三

    坪川委員長 この件に関しましても、つい過般の理事会においても具体的に話し合いを進めておるというのが偽らない実態でございますので、この件を含めまして、改めた理事会において御協議をして御期待に沿いたいと思っております。
  236. 小林進

    ○小林(進)委員 御期待に沿うとおっしゃったのでありますから、そのお言葉を貴重なものとしてちょうだいいたしまして、委員長に対する質問を終わります。  次は、外務大臣に対する、これもまあ質問というよりは要望でありますけれども、これは、去る昭和五十年十月二十三日から約八日間にわたりまして、韓国の統一日報に、韓国中央情報部すなわちKCIAの日本国における情報活動、調査活動がつまびらかに掲載、発表されたのであります。しかも、それは韓国中央情報部の正式発表を統一日報が転載をしたにすぎないのであります。この正式発表文の写しを当委員会もしくは私の手元に御提出を願いたいということを申し上げているのでありまするけれども、まだ私の手元には届いておりません。これは一体どうなっているのか。すぐちょうだいできるのかどうか。これをあわせてお聞かせを願いたいと思うのであります。
  237. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまお申し越しのものにつきましてはもう御提出したと思っておりましたが、ただいま御提出いたします。
  238. 小林進

    ○小林(進)委員 いまもらったばかりでありまするから、これは正確なものか、略したものかわかりませんので、これはまあ一応ちょうだいしたことにいたしまして、この問題はこれで片づけます。  次に私は、これはあんまり正確な情報ではありませんけれども、実は春の叙勲、まだ発表になりませんが、この叙勲に際し、日本における著名な右翼の巨頭が運輸大臣に対し、勲一等の叙勲の申請をしてきたということを聞いたのであります。右翼の巨頭と言えば児玉譽士夫。まさか児玉譽士夫が、いま問題の渦中にありながら勲一等の申請をする、しかも運輸大臣にやるということはどうも少し形がおかしいとは思いますけれども、そういうことを私に教える人があるものでありまするから、正式にこの場所でひとつ運輸大臣にお伺いしておきたいと思うのであります。こういうことがありましたかどうか。
  239. 田村元

    田村国務大臣 児玉譽士夫氏から申請があったということはありませんし、第一、所管も全然違いますし、そういうことはあり得ないことです。  それから、右翼の巨頭というのがだれであるか、ちょっと私には見当つきませんが、そのようなことはございません。第一勲章の申請というのは本人がするものじゃありませんから、運輸省なら運輸省が賞勲局の方へするわけでございますから、一切ございません。
  240. 小林進

    ○小林(進)委員 ないとおっしゃれば、単なる風評なのか、あるいは別な人のことを言っているのか、これはまだ私はわかりませんけれども、しかしいずれにいたしましても、それは本人はやらないことはわかっております、あなたのおっしゃるとおり。それぞれやはり所管の各省へいわゆる自薦、他薦でいろいろな者が持ち込んで、最後には関係する省が責任を持って賞勲局へ申請をされるというのが叙勲の順序であります。  私は、しかし、それに関係いたしまして、実はその右翼の巨頭の叙勲申請に対しては、与野党の国会議員も相当に直接間接に運動をされたと聞いているのであります。運輸大臣に対してそういう運動をされたということを聞いているのでありますけれども、これはまあそういう国会議員がどういう根拠でおやりになったのか、私は同僚議員のお気持ちをこの際ひとつ知っておく必要があるものでありますから、あなたにそういう運動をされた方があれば、自信を持って、叙勲に値するという確信を持っておやりになったと思いまするから、ひとつできればその名前をこの公開の席上で私にお聞かせいただくか、いまの場所はぐあい悪いと言うならば、暮夜ひそかに私にお聞かせをいただけるかどうか、お答えを願いたいと思うのであります。
  241. 田村元

    田村国務大臣 一向に記憶にございません。
  242. 小林進

    ○小林(進)委員 記憶にございませんと言えば間違いないでありましょうけれども、こういうことがやはりわれわれのところまで飛んでくるのでありますから、私は相当根拠があると思うのでありまするけれども、どうかひとつ、こんなことでこだわっている必要はありません、春の叙勲が済めば秋の叙勲がまた来るわけでありますけれども、勲章というものは、わが社会党は現在の叙勲制度には反対いたしておりまするが、それはそれとして、やはり国民のだれもが納得し、国民から心から祝福を受けられるような人に正しくやはり勲章というものは授与されなければならない。いかがわしい者や、いま世論の風評の中でとやかく言われているような人を、間違っても現内閣員、閣僚が、そういうことの申請をして世論の信頼を失墜するようなこと、せっかく勲章をもらった人たちのその勲章までにも汚点を残すようなことのないように十分御注意をいただきたいと思うのであります。これは、あに運輸大臣にだけ言うのじゃありません。私は全閣僚にこれを申し上げるのであります。いかがでございましょう、総理大臣
  243. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまお話しのような話は私聞いておりませんが、叙勲は、これは厳粛にやります。
  244. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの総理大臣のお言葉を記録にとどめていただくことにいたします。  次に、公営競技調査会の設置の問題でございますが、これも実は二月十八日の本予算委員会において、私は公営競技の問題について質問をいたしまして、結論として、第二次の公営競技調査会を早急に設置して、そして時代に即応した結論を出すようにということを御要望いたしたわけでありまするが、これに対して首相は、「公営競技に関する御所見をいろいろ承りまして、非常に私も裨益するところが多かったと、こういうふうに思います。調査会の設置につきましては、小林委員の御意見も重要な資料といたしまして、早急に考えたいと、かように考えます。」と、非常に前向きな、御丁寧な回答をいただいておるわけであります。  また、これに続いて、これはまあ総理が答えられているのでありまするから申し上げぬでもいいのでありますが、参考までに申し上げますと、そこにいらっしゃる藤田総理府長官が、「総理以下と御相談申し上げまして、おっしゃいますような第二次の調査会を開くかどうかにつきましては、前向きに検討をいたしたい、かように思います。」こういうふうに、またこれ前向きという——前向きというのはやるということなんでありまするから、こういう政治答弁をいただいておるのであります。  ところが、今日に至るまで、この答弁に値するような調査会設置の進展が具体的にあるかどうかということを調べてみまするというと、残念ながら見るべき動きがない。これは何もむずかしい問題ではないのであります。法案が必要ならば——ちょっとお待ちください。もう法案ができておりますから……。  いまお配りをいたしましたように、法三章、ほんのこれだけのものをお出しくださればそれででき上がる、直ちに行動に移れるというのでございますが、どうも見るべき動きがないので、われわれが一応探りを入れてみまするというと、いわゆる関係各省の中の官僚の一部が反対しておる。また、それにつながっている関係の団体が反対をしておる、こういうことが徐々にわかってきたわけであります。官僚といえば、競輪、オートレースに関しては通産官僚、競艇に関しては運輸官僚、中央競馬に対しては農林省、地方競馬に対しては自治官僚、こういうことになるわけでありまして、せっかく総理や総務長官がこれぐらい御熱意ある答弁をなさっておるにもかかわらず、官僚が陰へ回ってもっと慎重に構えようとか、あるいは時間を少しゆるゆるして次の国会まで待たせようとか、あるいは官僚同士の、まず一つの親密度合い、話し合いを進める必要があるからそれまで待ちましょうとか、そういうようなあの手この手で、内閣の政治的行動を制肘するように動いていることはまことに言語道断であると思う。これは世はやみであります。そういうことでありまするから、私は、いわゆる内閣と官僚の誠実性に対していささか腑に落ちない点がありまするので、あえてこれを申し上げたわけでございます。  そこで、いまお手元に差し上げましたその法三章の法案です。一体内閣ですぐお出しいただくか、あるいはお出しにならなければ、それぞれ議員立法としてわれわれが国会の中で提出するか、二つに一つしかないわけでありまするけれども、少なくとも自分たちの主管の間において、大臣を抜きにして官僚はそういう動きのないように、総理総理の御答弁にそのままひとつ忠実にこれを履行していただく御決意があるのかどうかを、運輸大臣、自治大臣、通産大臣、大蔵大臣、関係大臣から一言ずつ私はお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  245. 藤田正明

    藤田国務大臣 二月の何日かにそういう答弁をいたしたことは確かでございます。各省におきましては、それぞれ担当されて何十年、いろいろ歴史もございますし、その間の紆余曲折がございます。今日に至りまして、昭和三十六年の長沼答申から十六年間を経ておりますから、長沼答申そのものが現在の実態に結びつかない点もございます。ですから、先生おっしゃるように改正すべき点はあろうかと思いますけれども、そのような長い歴史の間のいろいろな紆余曲折を考えてみますと、各省庁と総理府の方におきまして審議室を中心といたしまして現在折衝を重ねております。で、ただ単にここですぐ法案を出し、こういう調査会をつくりましても、その焦点がどういうところを、実際にそぐわない点があるか、なお矯正すべき、改善すべき点があるか、これらをやはりある程度事務担当官同士で煮詰めていかなければなりませんので……。  それからもう一つは、いま行政管理庁の方でおやりになっておりますように、いろいろと行政の簡素化につきましてひとつ八月をめどとしておやりになっております。そういうこともございますので、私の方といたしましては、まずその八月ぐらいまではいまのような事務同士の連絡をし、そして問題点を浮き彫りにした後こういうふうな第二次公営競技調査会、こういうものをつくったらいかがか。行政管理庁の方の御意見もございますので、八月なり九月なり、あるいは次の国会をめどといたしましてそれをやろう、こういうことでいま各省庁と御相談を申し上げておる、こういうことでございます。
  246. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、いまの総務長官の御答弁はまことに、全く反対であります。また、いまの御答弁は、前回のときの御答弁から非常に後退をいたします。そういうふうな問題もあり、各省間の関係もあるからこそ調査会を設けて、調査会の委員あるいは調査会の幹事を設けて、そこでひとつ忌揮なく私は問題を解明していただきたい。しかもその期間は、一年半という期間の中で十分調査してもらいたい。そのいま言われたことは調査会の中でやる仕事だと私は解釈しておるのであります。まことに不満でありまして了承できませんが、関係大臣の方々、一人一人御答弁を……。
  247. 田村元

    田村国務大臣 この調査会の問題は、その必要性をも含めて総理府で御検討をいただく、こういうことに話がなってきたという報告を受けております。
  248. 田中龍夫

    田中国務大臣 前回お答え申し上げたと同様に、ただいま両大臣が申し上げたごとく、その必要性も含めまして慎重に検討中でございます。
  249. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先般当委員会で小林委員から問題の提起がございましたので、いま総理府を中心にせっかく検討を進めておるところでございます。
  250. 小川平二

    小川国務大臣 さきに長沼答申という権威のある答申もいただいておるわけでございます。そこで、今回改めて審議会を設置するということにつきましては、先般、小林委員からいろいろ貴重な御指摘もいただいておるわけでございますが、それらも含めまして、いかなる点を問題にすべきか、どこに焦点を当てたらいいかということをまず検討する必要がある。総務長官の答弁申し上げたのと同じ趣旨で、しばらく研究をしなければならぬと思います。
  251. 小林進

    ○小林(進)委員 各大臣から責任ある御答弁をいただきましたから、これから各所管大臣のもとで、官僚等がおかしな動きをしましたら、その都度私はこの委員会で皆様方の責任を追及いたしますから、その点はひとつ厳重に御記憶にとどめておいていただきたいと思います。  次に、医療問題について、この前も私は御質問をいたしましたが、時間がなくて半分にしておきましたので、この前の続きを申し上げてみたいと思うのであります。  第一に、激増する医療費、先ほども厚生大臣お述べになりました。医療費が九兆円にふくれ上がったと言うが、これはさらに無限に近いほどに伸びていくと私は思うのでありますが、これを一体どう処理をしようとお考えになっておるのか。いま医療費の改定問題で、上限を三十八万円にするとか、ボーナスを二%、初診料や入院料をどうのこうのと言われておりますが、そんなことでいま激増していく医療費なんか解決するはずがない。もし大臣解決するとお考えになったら、それは実にナンセンスであります。できっこない。この医療費の激増する原因が一体どこにあるのか。時間がありませんから、私は私の意見を……。いろいろな理由がありますが、まだここでされた多くの質問答弁の中に出てこない問題が一つあります。それは工学関係の技術の導入の部分が増大しているということだ。現代は、医療の中で最も大きなウエートを占めていたのが実は製薬産業だ。ところが、それは四年か五年前の話であって、ここ数年は機械産業が徐々に増進をしてまいりまして、機械産業が医療費の増大の中に非常なウエートを占めて、恐らくこのままで進んでいきますと、五年、十年たつと、製薬よりもむしろ機械の方が最大のウエートを占めるのではないかと言われている。そういう中で、医療に関する国民の要望を全部実現するためには、国民の半分を占めている男の半分がお医者さんになって、国民の半分の女の半分を看護婦にしなければ、国民の医療に対する諸要求を満たすことができないだろうというのがもう通説になっているのであります。これが第一であります。こういう問題にまだ厚生官僚というものは気がついているのかどうかわかりませんけれども、ちっともこれに対処する形ができていない。  第二番目は、医療は社会保険と医療の供給体制の二つの輪、いわゆる車の両輪として動いているのでありますけれども、わが日本の保険医療は、いわゆる社会保険の赤字だけは厚生官僚はばかに熱心でありまして、こればかり手がけているけれども、肝心な医療の供給体制というものを基本的に見直すという作業は一つもない。これが大変な間違いです。特にわが日本の医療の中では開業医の位置づけ、保険医療の中における開業医の位置づけというものが一つも定着をしていない。病院と開業医と患者の取り争いをやったり、お互いに牽制し合ったり、つまらないことを繰り返している。まさに医療供給体制が混乱をしているのであります。この点に一体根本的にメスを入れる気があるかどうか。  第三番目には、医療行政というものは、大まかに言いまして、イギリス・スウェーデン型、フランス・ドイツ型、ソビエト型、それから一番あやふやな日本型というふうに分けることができると思うのでありますが、これらの幾つの型もそのねらいとするところは、国民の健康を管理すれば医療費というものは漸減していく、だんだん減っていくという前提、認識の上に立って制度を進めた。ところが、これが全く外れてしまっていることは、私がこの前申し上げたとおりです。これはもう最初からその指向が間違っているんだ。これを一体どう修正したらいいのか。問題のポイントはここなんです。厚生大臣は、この初めから思惑の外れた、方向がもうとんでもない方向に行ってしまった、これを軌道修正することをどうお考えになっておるかということを私は承りたい。  まだちょっと続けます、時間がありませんからね。  日本の患者の四割は軽病患者なんですよ。かぜを引いたとか、腹痛みだとか、こういう軽病患者に対しては、日本の医療体制はある程度でき上がっているのです。ところが、これが重い病気になると、いわゆる重い病気になって入院等を希望するということになると、いわゆる皆保険制度というものは何にも役に立たないのであります。本当に病気を治してもらいたい、本当に政府責任を持ってもらいたいという、この面においては何にもめんどうを見ていないで、私がこれから申し上げる一番重要な患者に対しては、大蔵省が先頭になっていわゆる民間保険というものを一生懸命に奨励して、なるべく政府の手から離して、こういう重病人を、いわゆる利益保険でありますから、企業の利益の対象にして、国民皆保険からこれをおっ放してしまおうという残酷なことをおやりになっておる。そのいい例が、まあ例として私は一つ申し上げますが——大蔵大臣に対する民間疾病保険の問題は後回しにしまして、いままで申し上げたことに対して、厚生大臣、あなたの所見をひとつ聞いておきましょう。
  252. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 時間の関係もあるようですから、簡潔に申し上げます。  ただいま小林先生から御発言になったそれぞれの事項は、まことに重要な問題を示唆するものばかりでございます。ことに製薬の問題はかねて言われておりますが、医療の機械費の問題などは本当に公の場で議論されたことがない問題でございまして、十分気をつけなければならない問題だと私も考えております。  また、軽症患者の問題についてはまあまあできているではないかというのですが、重症患者の問題については、高額負担制度というのがございますが、それにしても長続きするものではございませんし、これらは負担の問題と絡めて、抜本的に考え直さなければならないいずれも重要な事項であると存じます。
  253. 小林進

    ○小林(進)委員 そこで、私は総理にひとつ認識をしていただきたいと思うのでありますけれども、まず、仮にがんにかかったとします。がんに対しましても健康保険は適用される。だから、健康保険の被保険者、本人ならば、初診料や入院料の一部などわずかな医療費の自己負担があるだけで、あとは健康保険で払ってくれることになっている。家族の場合は、医療費自己負担の割合は三割であります。自己負担額が先ほども言いましたように、高額、三万九千円以上超えれば、その分は健康保険で補助してくれる。この限りでは、がんになっても医療費の心配だけはそれほどしなくともよいというふうに表面はでき上がっている。でき上がっているのだが、しかし、実際はどうかというと、超過分を補助する高額医療費の補償制度というものがあるが、これはいわゆる療養費払いであります。療養費払いでありまするが、患者は請求された医療費の全額というものを一たん払わなければいけないのだ。まず払って、その領収証をもらって、それを提示して、また改めていわゆる超過分を償還を受けるという仕組みなんです。したがって、患者は一時にせよ医療費の全額を負担することになるわけでございまして、これは患者の家庭にとりましてその経済的支障は大変な問題です。一カ月何十万円になる。これをみんな一時払わなければならない。とてもそれは普通の家庭ではたえ得るものではありません。これが第一の矛盾です。  それから、現実にがん患者は健康保険で入院できないと実際言われているのです。保険上はできるが、実際はできない。なぜかならば、いわゆる差額ベッドがいまふえている。厚生省は差額ベッドの実情の報告をされているが、あれはみんなでたらめです。実情はあんなものじゃない。もう大病院は八〇%から九〇%までみんな差額ベッドです。そうしておいて、普通ベッドはもうありません、いつでも満員でございます、こう言って断られる。それで、入院を急ぐ患者はやむを得ずして一日最低三千円から最高五万円から六万円ぐらいの差額ベッド料を支払って入院することになる。これはまるまる患者の負担であります。とてもこれはたえ得るところじゃありません。なお、多くの場合のがん患者は、少なくとも一日八千円から一万円に近い付添看護料というものを払わなければいけない。これも大抵患者の負担であります。  こうして、健康保険以外の派生的な医療費が月に数十万円必ずかかるのでありまするから、少なくとも百五十万以上の金を準備しなければ入院できないというのが医療の現実、国民皆保険の現実なんです。こういうような負担にたえ得る家庭が一体わが日本にどれだけありますか。  ここで、大蔵省の奨励しておられるいわゆるがん保険というものが、昭和四十九年を契機にして燎原の火のごとくすうっとわが日本に入ってきた。この保険に入れば毎月三十七万五千円、亡くなられれば百万円の香典料を上げますというのでありまするから、人気が爆発をしてきたのであります。  いま民間の保険というものが一体何十種類あって、民間のいわゆる疾病保険に加入せられている人員はどれぐらいいるのか、伺えれば私は大蔵大臣にお伺いをしておきたいと思うのであります。
  254. 副島有年

    ○副島説明員 お答えいたします。  現在販売をいたしております民間の疾病保険は、いわゆる疾病保険が全社二十社でございます。それからそのほかに成人病保険というものがございまして、これが現在十六社が発売をしております。そのほかに、先ほど先生の御指摘のありましたがん保険が一社あるわけでございます。  それから、どの程度の人間が加入をしているかという御質問でございますが、五十一年の十二月現在、いわゆる加入の総数は、疾病保険が一千百五十一万件、それから成人病保険が百八十二万件余となっております。
  255. 小林進

    ○小林(進)委員 その数字が正確なものかどうかわかりませんけれども、がん保険だけでも四十九年にできて、もう百万件以上加入者がいるというのでありまするけれども、それはとうてい低所得者や貧乏人が入れる保険じゃありません。  そこで、私は申し上げまするけれども、差額ベッド料とか付添看護料というものは皆保険の中に正式に許されていいことなんですか、どうですか。厚生大臣、皆保険という医療費の中にはベッド料や——完全看護、基準看護と厚生省は銘打っているのですから、これは本来保険で持つべきものと私は解釈しているのですが、これはいかがなものでございましょうか。
  256. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 理想的にはそういうことも言えるでございましょうが、現実の問題として部屋代とか差額ベッド代とかいうのを取っております。中には本当にデラックスな部屋に入って、それでベッド料を、付添人をつけて、それほどの必要のない人も入っているのも事実でございますので、一概に申し上げることはできませんけれども、やはり病気の対応というものはその病状に対応した看護あるいは医療というものを施すのが理想的であると存じます。
  257. 小林進

    ○小林(進)委員 残念ながら時間もありませんから私は急いで申し上げまするけれども、民間の疾病保険というものに対して厚生省は一体賛成なのか反対なのか、大蔵省は一体賛成なのか反対なのか、これが一つです。それから第二番目は、民間の疾病保険の監督官庁は一体大蔵省なのか厚生省なのか、主管官庁はどこだ、これが第二番目。第三番目は、この疾病保険は生命保険、生保の分類に入るのか、損害保険、損保の分類に入るのか。少なくとも損保と生保は兼営が禁止をされているはずでありまするが、どちらの範疇に入るのか。まずこの三つの点を聞いておきたいと思うのであります。
  258. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 民間保険制度そのものは大蔵省の所管だと存じます。  それから、賛成か反対かということでございますが、われわれは公的医療保険においてできるだけ見ていこうと思っておるわけでございますが、いま言ったようにいろいろな需要がありますし、全部を現在の公費負担制度、保険制度でやっていけないという点から、やはり民間の医療保険制度はそれなりの役割りは果たしておると存じます。
  259. 坊秀男

    ○坊国務大臣 健康保険という現行の制度から見れば、これは厚生省だと思います。ただ、保険制度というところから見れば、これは保険業でございまして大蔵省だと思いますが、私はここのところはつまびらかにいたしませんから、政府委員からお答えさせます。
  260. 小林進

    ○小林(進)委員 残念ながら時間もありませんが、問題が山ほどあります。  そこで次に、こういう保険制度というものを大蔵省が中心になって奨励されていきますと、国民皆保険はなし崩しです。だんだん崩れていきまして、そして民間のいわゆる営利を中心とした保険がだんだん伸びていって、そしてついには公的保険の地域までも侵害をされていく危険がある。結局貧乏人はもはや医者にもかかれないという結果に流れていくことは火を見るよりも明らかであります。  そこで、ここでどうしても——まあ第一番目に、こんな民間の疾病保険なんかやめて、差額ベッド制度も厚生省はなくする、完全看護も言葉どおり実施する、病気だけは貧富の境なしに、みんなが平等に健康を国の責任によって守ってもらうという制度に行くのが私は理想であると思いまするけれども、それができないとするならば、この際、公的保険といわゆる民営保険との境目、この基準を明確に規定づけてもらえるかどうか。ここまでは必ず国が責任を負いますよ、これまでは民営保険だ——たとえば先ほどちょっと厚生大臣が言われたように、自分だけは個室の中に入って静かにいたい、あるいは人より早く診療を受けたい、これなんかも考えてみると、もはや皆保険に対する、診療の内部に対する侵害ですが、早く診察を受けたい、自分だけは特別に時間をかけて丁寧に診察をされたい、あるいは精神的な苦しみまでもお医者さんと親しみを重ねながら特別に相談に乗ってもらいたい、こういう要望が国民の中にあることも事実であります。この要望をそのままにしていけば、もはや国民皆保険はもうなし崩しです。こういうなし崩しを認めて、厚生省は、これから皆保険をやめにして一体自由診療の段階まで入っていかれるのか。しかし、これはあくまでも歯どめをして、あくまでも皆保険という一つのグラウンドをちゃんと守り抜く決意でいられるのか。その基準を明らかにすることも含めて回答していただきたいと思います。これは両大臣に御回答をいただきたいと私は思います。
  261. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 厚生省としては、国民皆保険をどこまでも充実させていく、こういう方針でまいるつもりでございます。
  262. 坊秀男

    ○坊国務大臣 現在の公的保険の中では、病気になった場合、完全に担保できないというような谷間のあるということもある。そこで、直接の健康に対する経費を担保し、保険するのと、それと間接に経費がかかるというようなものに対してこれを担保し、保険するというのが現行の疾病保険であろうと私は思いますが、これは国民保険の皆保険のたてまえ上、やはり一本にするように健康保険を持っていくべきものだ、かように考えます。
  263. 小林進

    ○小林(進)委員 この民間の疾病保険というのは、まだ医療の皆保険制度ができていないアメリカシステムを日本に組み入れたものでありまして、これはわが日本の皆保険制度の大きな堕落でありまして、これはもうこんなことをやるなら、私は先頭になって、国民にもう皆保険なんかやめよ、強制保険なんかかけるのをやめなさいと、私はその運動を起こさなければならぬと思う。金だけ取られたけれども、病気になったら金持ちだけはいいベッドに入っていて、金持ちだけは丁寧に診察を受けて、金持ちだけは大変に時間をかけて大事にされて、貧乏人には振り向きもしないような皆保険ならば、ないに越したことはないと私は思います。  そこで、私は言いますけれども、医療問題の基本的な根本を洗い直しすることが必要だというのは、これも含めてでありますけれども、しかし、この問題に関する限りは、何といっても差額ベッド、付添看護婦制度というものは、厚生省は皆保険の名において縮小し、廃絶する方向へ極力努力をしていただかなければならぬと私は思いますし、この問題はいま解決する問題ではありませんから、明日も明後日も私は断固として闘い抜くことを宣言をいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  264. 坪川信三

    坪川委員長 次に、楢崎弥之助君。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いよいよ当委員会における予算の最終段階でありますが、きのう私は原発における被曝の問題を取り上げて、その安全管理のずさんさについて指摘をしたところでありますが、私の後の質疑応答の中で、そういった問題点についての反省が全くないような答弁が以下続いた。私はその点で非常に残念でならないわけであります。  そこで、一連の被曝の問題についてもう一点だけ、歯科用レントゲンの犯罪的な行為について指摘をしておきたいと思うのです。いま歯科用のレントゲンで撮影をする場合、これは胸部をレントゲンでとる場合の被曝量のどのぐらい倍率があるか御存じですか、厚生大臣。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  266. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私にはわかりませんので、専門家がおりますから、専門家にお答えさせます。
  267. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 胸部のエックス線撮影をやります場合に、間接撮影では大体百ミリレム前後、直接撮影では二百ミリレム前後であろうと思います。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何を言っているのです、あなた、時間が三十分しかないのに。歯科用のレントゲン線の場合を聞いている。被曝は胸部レントゲン線の何倍か、放射線は何倍出ているかということを聞いている。
  269. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 歯科用レントゲンにつきまして、機械によって相当差異があると思いますが、一般的に申し上げますと、歯科のエックス線写真撮影におきまして、一回当たりの被曝量が五千ミリレムというふうに考えております。
  270. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 厚生大臣、おわかりですか。胸のレントゲンをとる場合と歯にレントゲンを当てる場合、いまのあれからいきますと大体五十倍ですね。種類もありますが、三十倍から五十倍です。いいですか、まずそれを頭に入れておってください。  原子力船「むつ」で放射線漏れがありました。「むつ」の場合、あれほど騒がれた放射線漏れですね。あの放射線漏れのあれほど騒がれた放射線量の数百倍になるのですよ。いいですか、あの歯のお医者さんの放射線量は。歯の医者に行ったら、これをまき散らしているわけですね。それで専門家の推定では、現実にそのための障害を受けている人が恐らく数千人に上るであろうと言われております。野放しになっている。厚生省は五十一年五月十二日に医務局長から各都道府県の知事あてに「昭和五十一年度の医療監視及び経営管理指導の実施について」という通達を出している。この中に「医療監視について」という項目があります。これは厳格にやられておりますか。そういう調査をしたことがありますか。
  271. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 診療エックス線を含めまして医療監視につきましては、都道府県、特に保健所におります医療監視員を使いまして必要に応じて監視を行っておるところでございますが、先生御指摘のように、必ずしも十分これが行われているというふうには考えておりません。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、だれですかね。——医務局長が自分で通達を出しておって、余り行われていない。それはどうなんですか、大臣。いいんですか、こういうことで。何のためにこういう通達を出すのですか。これはいまも言われたとおり、診療用放射線被曝の防止のための通達です。いいんですか、これは。とにかく言うことは言うておくわ、後は知らない、これでいいんですかね。
  273. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 きわめて専門的なことなのでよくわかりませんが、そういうことではいけないと思います。
  274. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあ頼りない大臣答弁ですね。  具体的に聞いてみましょうか、どれだけの違法行為が白昼公然と行われておるか。あの歯科の診療所に行きますと、素人の歯科衛生士がレントゲンを扱っています。レントゲンの操作をしています。これはどういう法律に違反しているか、わかっていますか。
  275. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 診療エックス線技師法でございます。
  276. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まさにそのとおりです。これは第二十四条違反ですね。現実に違反を犯している。  レントゲン室をつくらないで、レントゲン撮影をしている。これはどういうものに違反しますか。
  277. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 医療法の設備構造基準でございます。
  278. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それだけですか。もっと具体的にあるでしょう。あなた方やっていないから知らないんですよ。あるでしょう、もう少し明確にぱっと規定したものが——これですよ、大臣総理大臣、これです。法律をつくっても、全然やってないからわからない。これはもちろん労働安全衛生法の二十二条、それから出てきたところの労働省の省令である第四十一号、つまり電離放射線障害防止規則、通称電離則と言っている。これの十五条違反です。いま議員の人も国会関係の人も、あそこの医者に行っていますね。第一会館の下の地下室にある歯の診療所、これはレントゲン室がなくてやっているのです。第二会館の方はレントゲン室があります。歯のいい方はともかくとして、恐らくそういうことに気がついた方はないと思う。わが立法府の歯科診療所ですら、第一会館と第二会館のやり方は違っているのです。第一会館の歯科診療所が公然と違法行為を犯している。さらに、あそこに働いておる方、従業員の被曝管理はだからもちろんやっていませんよ。そうでしょう。全然やってないでしょう。私、ちゃんと聞いてきているから、うそを言ったらだめですよ。どうですか、調べたことがありますか。
  279. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御質問の事例につきましては、われわれその実態を承知いたしておりません。
  280. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全然やっていないんですよね。そして行かれた方はわかっているとおり、若い御婦人が働いています。この人たちがだんだん線量が多くなればどういうことになりますか。やがて生まれてくるであろう子供に影響しないとだれが言えますか。だから、最近マスコミの方でも、このレントゲンの使用について相当シビアにやらなくてはいけないということをキャンペーンしているでしょう。わが立法府のそこですらそういう状況なんですよ。これで一般の歯科診療所を規制できますか。私は厚生大臣の注意を喚起したい。どうですか。
  281. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 大変な御貴重な話でございますから、十分検討して、そういうことのないように徹底をさしていきたいと思っております。
  282. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さらに私の調べたところによると、もちろんあの診療所の診療室の中にどれだけ被曝線量が出ているか。空間線量あるいは表面線量、これの測定もやられていない。先ほどの従業員の被曝線量の管理をやっていないということは、電離則の第二十条の違反であります。ただいま申し上げた診療所内のそういう測定をやっていないということは、これは電離則の五十四条の違反になる。そういう状態ですね。  それで文部大臣日本歯科放射線学会の防護委員会に対してどれだけ予算を出していますか。
  283. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 突然の御指摘でありますし、資料を手に持っておりませんので、後ほど調査をして御連絡いたします。
  284. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、何も意地悪するつもりでありません。この日本歯科放射線学会のこの種の被曝防護の委員会に補助金を出しているのです。それで、歯科レントゲンに対するアンケートを昨年の十月から十一月にかけてやっている。その調査結果を御存じですか。だれでもいいが……。
  285. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘の調査につきましては、われわれその実態を承知いたしておりません。
  286. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 文部省は補助金を出していろいろやらせているんでしょう。その結果について、やっていることについて全然関心がないんですか。どなたでもいいと言っているんです。これだけ政府側が並んでおられますが……。(安宅委員「総括というのは何が出るかわからないから大臣は座っていなければならないことになるんだよ。わからないことがあったら、大臣を補佐する者が出てこなければならないんだ」と呼ぶ)これは文部省の担当ですからね、いま文部大臣お立ちにならぬということは、わからないんだと思うんですね。それはもういいですよ。しかし、われわれ予算をこれだけ審議して、予算をつけてやらせておるその結果について——あなた方が予算書を出しているんでしょう、各省にわたって。それがどのように使われておるかというぐらいは知っておってもらいたいですね。そうじゃないですか。そうでしょう。あたりまえの話でしょう。それで私は、これは後ほどでいいからその調査結果を明らかにしてもらいたいと思うのです。多分、その調査結果で、いま私が申し上げたような違反を公然と犯しておるのが九八%です。ほとんどが違反を犯しているということです。つまり野放しにされておる。だから、あの歯のお医者さんのところで治療を受けている患者さんが被害者なんですよ、いいですか。働いておる人はより被害者なんです。そして、これはあの診療をしている、ジーッとやっているあの部屋だけが汚染されているのじゃないんですね。これは通りますから、隣近所までこれは及んでいるんですよ。私は、もう少しこういう事実に深刻になってもらいたいと思うのです。すぐこの結果が出る問題でないだけに、これは将来起こってくる問題だから、現在を生きるわれわれはより責任がある。したがって、こういう点について厳格にやってもらいたいと思いますが、どうですか。関係大臣、しかとここで約束してください。
  287. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 医療の監視につきましては、今後せいぜい努力をして、きちっと守られるようにやっていきたいと思っております。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕
  288. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どういう方法でやられますか。
  289. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 実際に監視いたしますのは、都道府県の職員あるいは指定都市の職員でございます医療監視員でございますので、各都道府県あるいは政令市に対しまして、今後連絡を密にいたしまして、さらに守るべき基準等について徹底をしてまいりたいと考えております。
  290. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういう通達を何ぼ出したって、後で点検しなければ何の意味もないのです。九八%が法律違反を犯しておる。こんな通達なんか何にもなってない。だから、出したものはそれがどう行われておるか点検ぐらいするのが責任ある官庁のあり方じゃないですか。きちっとやってもらいたいのです。とにかく、こういう安全管理の問題はずさんにして、まるで白昼公然と違法行為を野放しにしながら、一方において原発の開発をどんどん進めていくというような姿勢に私はがまんがならないのですよ。やることをきちんとやってやらないと、今後この被曝の問題は本当に重大化していく、このように私は憂慮をしておるのです。だから総理大臣、きのうからもおわかりのとおり、こういう問題について官庁がばらばらなんですね。特に通産省というのは一番企業寄りなんです、きのうから言ったとおり。だから、こういう点についてきのう宇野長官は何とか関係三庁で一元化したいとおっしゃっているから、これは総理からも十分その点督促をしてきちんとしていただきたい。どうでしょうか、総理
  291. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ごもっともな話と思いますので、せいぜいそういう方向で努力をいたします。
  292. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それから、時間がないから私の方から指摘をすることになろうと思いますけれども、今度は防衛庁です。陸上自衛隊の衛生学校が非常な乱脈で、そのために下の方の人はまさに士気が乱れておる。私は注意をしておきたいと思う。それで、この風紀の紊乱も含めて、三宿地区の調査隊がこの衛生学校に入った事実を御存じですか。
  293. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  陸上自衛隊の衛生学校につきましては、まだ現地を私実際に見ておりませんけれども、医官の定数不足で経営上非常に苦労をいたしておるということだけ承知をいたしておりますが、実際の状態につきましては、衛生局長が参っておりますので、つまびらかにさせます。
  294. 萩島武夫

    ○萩島政府委員 陸上自衛隊の衛生学校では、医師、歯科医師その他衛生職種の隊員を対象にいたしまして十三課程……
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が何を聞いたか御存じですか。
  296. 萩島武夫

    ○萩島政府委員 はい、知っています。存じません。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やめますよ、私は。あなた何を言っているのですか。
  298. 萩島武夫

    ○萩島政府委員 質問は存じております。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何を聞いたかわかっていますか。
  300. 萩島武夫

    ○萩島政府委員 はい。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なら、それに答えてください。
  302. 萩島武夫

    ○萩島政府委員 三りく部隊が衛生学校に来て調査をしたことがあるかという御質問でございました。それについては私は存じておりません。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 持って回ったような言い方をあなたすることないじゃないですか。
  304. 坪川信三

    坪川委員長 萩島局長に申し上げます。  ただいまの楢崎委員の質疑に対して、それにこたえるだけの確答を求めます。(発言する者多し)——三原長官。(発言する者多し)——楢崎君。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局は調査隊が入った事実は知らないということですね。それならはっきり言えばいいのです。何か持って回ったようなことを言うからわからなくなるのですよね。  それで、長官、私はこの内容は余り恥ずかしいからここでは公にしません。よく調べて報告をください。
  306. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほど申し上げましたように、医官定員が二十八名のところ六名ぐらいで非常に苦労をしておるということを私は承っておりまして、ぜひ現地の学校を見たいという考え方でおりましたが、いま楢崎先生から御指摘の線がございましたので、早速ひとつ調査をしまして、綱紀の確立とともに報告もいたします。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官、もう向こうで聞かれておっていいですが、いま医官教官が足らない。困っておる。そういう医官教官が足らないのに、いいですか、以下申し上げますよ。特定の製薬会社のつくっておる各種の薬剤について、その毒性を検査する業務に、ただでさえ手が足らないのに、衛生学校の人員と教室あるいは実験室を使って、あるいは資材を使って協力しているのです。そういう事実があります。これも調査をしてください。  さらに、私ははっきり申し上げます。関東医師製薬株式会社、この会社の毒性検査室長——名前は申し上げません、毒性の検査室長と一緒になって衛生学校の化学関係の教官を使ってその会社のいろんなことに便宜を図っている。当然そこには報酬が伴っておるはずであります。さらに、衛生学校はここに見学に行っているはずです。これも調べてください。ちゃんと昼食なんかもその会社からお世話になっている。陸上自衛隊衛生学校の学生がですよ。  さらに、それだけ医官教官が少ないのに、アルバイトしているでしょう。この事実を御存じですか。ほかの病院のアルバイトをしている。一つだけ言いましょうか。東京の大塚病院です。私の調査によれば、過去から現在全部名前はわかっている。十名の医官教官が現役も含めて内職していますよ。そういうあっせんをしておるのがだれか、これもわかっています。あっせんをした人はいま相当の地位にある人です。毎週水曜、木曜の昼間、週末の夜間、職務を怠って内職しています。そういう状態の中で医官が少ない、教官が少ない、手が足りないとは何事ですか。もう少しそういう点をきちっとしないと、いわゆる下級の人は一生懸命やっているのに、その人たちの士気にも影響するでしょう。だからこれはぜひ厳格な調査をして報告を求めたいと思います。委員長、よろしゅうございますか。
  308. 坪川信三

    坪川委員長 さよう取り計らいます。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さらに、総括の一連の質問の中で残した問題がもう一つあります。いわゆるロッキード事件に対するハワイ会談の位置づけの問題でありますが、四十七年八月三十一日午後一時から、米側はニクソン、キッシンジャー両氏、日本側からは田中角榮、牛場両氏。この中でいわゆるトライスター要請の話がニクソン氏から持ち出されたということが、あの冒頭陳述における重要な個所になっている。これに対して、せんだって外務大臣は、牛場前大使に聞いたけれどもそういう話はなかったと言われた。プライベートミーティングは一時から三時まであった。二時間会っている。正式の合同会議は三時から四時まで一時間。大事な会議の方は一時間、プライベートミーティングの方は二時間です。一体何が話されたのでしょうか。そして牛場さんは終わって、ある特定の記者と会っている。その記者にしゃべっている。もちろんオフレコになっておったでしょう。それがプライベートミーティングの中で話されたトライスター云々の件にかかわる発言をしている。もう一遍私は牛場さんに確かめてもらいたい、事実ですから。だから牛場さんしかわからないから私は証人として要求をしたが、相手のアメリカ側との話し合いの内容は相手の了解がなければ話せないというこのルールについて私は理解を示した。したがって、外務大臣の方からもう一遍いま私が申し上げた点について牛場さんに確認をしてもらいたい。よろしゅうございますか。
  310. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 牛場元駐米大使には私自身直接会いまして確めたのでございます。そして牛場さんの話は、プライベートミーティングではニクソン元大統領は日本の中国政策に大面な興味を示されて、外交問題について非常に話したということでございまして、ロッキード社あるいはトライスター、こういうような話は全く出なかったということを本当に申されておりますし、私はそれを信じておる次第でございます。  なお、ただいまのお話がありましたので、もう一度確めることは確めたいと思っております。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう一度念を押しておきますけれども、あの冒頭陳述で供述者の自供の中でこれが出てきている。法務大臣、それを冒頭陳述で述べられております。ところが田中被告は否定をしておる。牛場さんも否定をしておる。冒陳にはきちんと載っている。これはどこかにうそがあることは事実でしょう。したがって、このうそをだれが一体ついているのか、これを私どもは国会の場で明確にする責任がありますよ。これは重大です。だからその点をもう一度牛場さんに確かめていただきたい。  それから最後に一問ですが、去る二月二日に、アメリカのSECはニューヨークのインドネシアレストラン、これを不正な金を受け取ったとしてニューヨーク地裁へ告発いたしております。この内容は、米国の石油会社初め日本やカナダやイタリアやスイスなど、五十四の各国企業と個人に寄付を強要しておる、あるいは株を買ってもらうのを強要している。この経営者は元プルタミナのイブン・ストウ将軍ですね。アメリカではこういうことが告発されておる。私が数年前取り上げたジュッセルドルフにおけるレストラン日本館、これは現在も経営していますか。
  312. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 現在も経営しておると承知しております。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全くこの日本館は、イブン・ストウのニューヨークにおけるインドネシアレストランのやり方と同じです。そしてこれは外務省が公文書で支援している。私は数年前その事実を明らかにしているはずです。したがって、もう一遍この日本館の設立のいきさつを外務省はお調べになっておいた方がいいです、次回に機会あればこれをやりますから。よろしゅうございますか。
  314. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 早速調べてみたいと思います。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なお外務省が文書でこれを支援をしている事実がありますから、それも確かめておいてください。いいですか。
  316. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 承知いたしました。
  317. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで終わりますが、昨日総理及び防衛庁長官に、いわゆる法案を扱わない安保問題等の特別委員会の設置について私は提案をいたしました。これは私どもの党としては重要な提案であります。こういう政治情勢の中で、今後の衆議院あるいは参議院選挙を経れば連合の時代の到来が予想される。自衛隊の問題をどの党も避けて通ることはできない。したがって私は重ねて申し上げるけれども、法案がかかってくると別の意味でこれが利用される。そういう国会対策に左右されない——ロッキード特別委員会だって法案はないのですから、こういう特別委員会の設置について真剣に私はきのうは提案したつもりであります。法案がかかるということになると、現実には各党意見が合いませんからできない。これはわれわれが一歩踏み込んだ提案として、総理、受けとめていただきたい。もう一遍、総理のこの問題についてのリーダーシップをひとつ発揮してもらいたいと思います。最後にその点をお伺いしてやめたいと思います。
  318. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 昨日も申し上げましたが、重要な御提案として対処したいと思います。
  319. 坪川信三

    坪川委員長 これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和五十二年度総予算に対する質疑はすべて終了いたしました。     —————————————
  320. 坪川信三

    坪川委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。大村襄治君。
  321. 大村襄治

    ○大村委員 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました昭和五十二年度一般会計予算外二件の予算に対し、賛成の討論を行うものであります。  わが党がこの三件の昭和五十二年度予算に賛成する第一の理由は、これがわが国当面の最急務である景気中だるみからの早期脱出と雇用の安定のため、財政が担うべき役割りに適切にこたえている予算と確信するからであります。  現在のわが国経済の実態は、昨年における政情の混迷と、これによる五十一年度予算及び関連法案成立の大幅なおくれや、予期しなかった甚大な台風災害、冷害の影響等によって、景気が中だるみの状態になったまま推移しており、企業家の心理は冷え切っております。そのため失業も企業倒産も依然として高水準を続けていることは、御承知のとおりであります。  この景気の中だるみ状態から一日も早く脱却して雇用不安を解消し、インフレと失業のない経済安定成長の路線に定着させることは、単に内政上の最優先政治課題であるだけではなく、経済大国として世界の景気回復に貢献しなければならないわが国の国際的責務でもあります。  それには、国民総生産の中で二〇%以上の比重を占める財政がまず先導的な役割りを果たすべきことは、政治として当然のことであります。  五十二年度予算は、この現下の最優先政治課題にこたえるため、一般会計においては二年連続して公債依存度三〇%という積極的な公債政策をとり、その規模を五十一年度当初予算より一七・四%伸ばして二十八兆五千億円余の大型予算とし、公共事業の拡充促進を中心とする景気浮揚型予算として編成されています。  また財政投融資計画も一八・一%増額して景気浮揚の一翼を担うこととなっています。  一般会計、特別会計、政府関係機関を通ずる五十二年度の政府資本支出は、国民総生産の二〇%を超す十八兆余に達しますが、私はこれを五十二年度前半期に集中して執行するならば、必ずわが国の景気浮揚の牽引力となるものと確信するものであります。  財政面からの景気対策は、公共事業と減税のいずれが効果的であるかについての議論がありましたが、公共事業の方が減税の二倍程度の需要創出効果があり、また即効性があるということは、政府調査機関だけでなく、民間有力経済調査機関が科学的に算定した結果、一致して教えるところであります。  私は、政府が、公共事業等の拡充促進を景気対策の中心として位置づけたことを、賢明な選択として評価するものであります。  また野党の諸君は、公債依存度三〇%という公債政策は、はなはだしい不健全財政だとして反対しますが、財政健全化の根本は速やかに景気を回復して税収の基盤を拡大安定させることであります。そのため臨時的緊急措置として一時的に公債依存度を高めることは、財政政策として当然のことと信ずるのであります。政府が財政運営の固定観念にとらわれることなく、大胆な公債政策によって当面の緊急政治課題にこたえようとする勇断に対し、私は敬意を表するものであります。  賛成理由の第二は、五十二年度予算が景気の浮揚とともに、民生の安定充実に行き届いた配慮を払っていることであります。  その一つは、所得減税であります。五十二年度一般会計予算は、ただいま申しましたように公債依存度三〇%というきわめて財源の苦しい予算であったにもかかわらず、勤労者階層の生活安定に資するため当初の原案では所得税三千五百億円、住民税八百億円、合わせて四千三百億円余の所得減税を予定していたのであります。それが与野党の話し合いによって所得税をさらに税額控除方式により三千億円追加することとなり、合計で七千三百億円の減税となりますが、苦しい財政事情にもかかわらず、与野党の合意を尊重して所要の立法措置に基づいてこのような減税を行うこととした政府の英断に対し、敬意を表するとともに、今回の減税が国民経済の安定的成長に寄与することを期待してやまない次第であります。  民生政策の第二は、社会保障関係費予算の大幅増額であります。  一般会計の社会保障関係費予算は、修正後において約五兆七千億円でありまして、前年度より約一八%の伸びとなっており、その中で社会保障の中心をなす社会保険費は、二〇%も伸びているのであります。  これによってわが国の年金制度の中心をなす厚生年金は月額約十万円、拠出制国民年金は二十五年拠出で夫婦で月額八万一千円となり、社会保障王国といわれているイギリスの五万円、スウェーデンの八万八千円よりも高い水準となるのであります。先進国中最も低い国民負担率で、このような社会保障の恩恵を受けるわが国は、いまや低負担高福祉国家と言っても過言ではありません。  社会保障とともに、恩給も退職公務員や旧軍人及びその遺族の所得を保障するものでありますが、この恩給費予算と社会保障関係費予算を合計した額は約六兆八千六百億円となり、一般会計予算規模の二四%にも達しています。この構成比は、防衛費予算の構成比六%の四倍に当たり、この数字から見ると、五十二年度予算はまさに福祉予算ということができます。なお、与野党の合意に基づいて恩給、年金等の改善時期を二カ月繰り上げ、その財源は予備費をもって充てることとし、所要の予算修正を行うこととしましたが、このことは、現下の状況からして妥当な措置と認めるものであります。  民生重視の性格を示す第三は、住宅対策の前進であります。  核家族化の進展と、より快適な住生活への欲求からして、住宅問題は現在もなお都市住民の重大な生活問題であります。五十二年度予算と財政投融資計画は、景気対策の一環としての意義も兼ねて、特に住宅建設の促進とその質の向上を重視しているのであります。  すなわち、戸数において特に要望の多い住宅公庫融資住宅の建設を促進することとし、その計画を前年度当初計画より三万五千戸増加して三十八万七千戸とし、また公営住宅、公団住宅は規模を拡大して快適な住宅を供給することとしています。  このような住宅政策の前進によって一般会計の住宅対策費は二〇%増の約四千四百億円、財政投融資計画は二六%増の三兆円余を確保しています。  民生政策の第四は物価対策であります。  物価の安定が国民の最大の関心事であることは言うまでもありません。五十二年度予算はこれにも特に配慮し、一般会計、特別会計を通ずる物価対策予算を前年度当初予算より四千六百億円、すなわち二一%も増額し、二兆六千七百億円余を計上しているのであります。  これによって低生産性部門の生産性の向上、生活必需物資の安定供給確保等の物価対策が充実され、物価の長期的安定に資することとなるのであります。  五十二年度予算に賛成する第四の理由は、地方財政に対して従来例を見ない手厚い措置がとられていることであります。  地方財政は、国の財政と同様に五十二年度も財源不足によって困難な局面に当面しており、現状のまま推移するときは、二兆七百億円の財源不足を生ずる見込みであります。  景気回復型五十二年度予算がその実効を上げるには、公共事業の大半を実施する責任を持つ地方団体の所要財源を確保することが前提であります。そのため不足財源二兆七百億円を、国、地方が折半して補てんすることを基本とし、国は地方交付税を政府資金からの長期借り入れにより特別に一兆三百五十億円増額しているのであります。  そのうち九千四百億円については、実質的には臨時に地方交付税率を三・六%引き上げるのと同じ効果のある措置を講じています。  そのほか、地方債についても政府資金による最大限の引き受けや、利子補給等の措置で円滑な消化と金利負担の軽減を図っています。  以上のような地方財政に対する手厚い配慮は従来例がなく、私はこれも五十二年度予算の大きな特色として評価するものであります。  これを要するに、五十二年度予算は、現下の政治、経済、財政、社会事情等に照らし最善を尽くした予算であり、この予算を早期に成立させてその運用を適時適切に行うならば、当面の最緊急課題である景気の浮揚と雇用の安定はもとより、経済の安定成長への定着と国民生活の充実向上は必ずや達成できるものと確信するものであります。  そのためには、景気対策の中心となる公共事業その他の建設的事業を上半期に集中して執行することとし、財政金融の一体的、弾力的運営を確保することが何より肝要と思うのであります。  特に要請したいことは、金融政策の機動性についてであります。日銀公定歩合は去る三月十二日に〇・五%の引き下げが行われましたが、金融政策、特に公定歩合の改定等は、本来日銀の定むるところでありますが、景気動向に対する金融の影響を考え、機動的かつ適時適切に対応されるよう政府においても配慮する必要があると考えられます。  私は、五十二年度予算の適切な運用とともに、金融政策の思い切った弾力化、機動化を強く要望して賛成討論を終わります。(拍手)
  322. 坪川信三

    坪川委員長 次に、武藤山治君。
  323. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になりました政府提出の昭和五十二年度一般会計予算、同特別会計予算及び政府関係機関予算に対し、反対の意思を表明し、討論を行うものであります。  今国会における予算審議の大きな特徴であり、かつ成果は、三千億円の所得税減税の追加であり、一般会計の六百三十四億円の増加修正であります。それは一兆円減税要求に含まれた意義、国会審議のあり方及び予算編成の問題など、多くの点で将来に及ぼす影響はきわめて重大なものがあります。今回の予算修正による措置でわれわれの要求が十分達成されたとは言えません。しかし、その実現に向かって第一歩を踏み出したことは事実であり、減税規模は三千億円の上積みにとどまったが、減税方式としての税額控除の採用、さらに社会保障関係では、年金、手当の改善時期を二カ月繰り上げ、対象者は一千七百万人、措置費も一千億円を確保できたのであります。  だが、それにも増して意義あることは、自由民主党政府と官僚とによる予算編成のいわゆる聖域に、国民の声を正しく反映させるべく踏み込んだ政治的意義は、予算編成の民主化にとって不可欠な布石と言っても過言ではありません。(拍手)五野党共同の要求は、すなわち国民の過半数の要求であり、それを具体化できないとなれば、国会審議の不毛性にととまらず、さらに進んでは国会不信を醸成しかねないのであります。良識の府たる国会が、今回それだけでも回避し得たことは、同僚諸君の良識によるもので、深い敬意を表するとともに高く評価するものであります。  とはいえ、政府提出の五十二年度予算は、われわれの要求する予算とはほど遠い内容で、修正後においてもなお多くの欠陥を持つのであります。  そこで、政府予算に対して賛成できない具体的理由を申し述べたいと思います。  まず、予算編成の目標についてであります。  政府は、当初五十二年度予算を財政再建と景気浮揚を目標に編成する意図を有していたが、実際には財政健全化の方針は大きく後退してしまっております。五十一、五十二年度に引き続き歳入の三割を国債に依存する借金財政は、三年目を迎えるが、これから脱却する目途は全く立っておりません。昨年政府が提示した財政収支試算では、五十二年予算の税収は二十兆円、国債は七兆五千億円であったが、編成された予算では、税収は十八兆七千九百億円、国債は八兆四千八百億円と大きな狂いを生じているのであります。財政収支試算では、五十五年度予算にいわゆる特例国債を発行しないとしているが、この目標達成の不可能なことは抜本的税制改革を放置していることから明らかであり、五十三年度の税収を二四ないし二七%の伸び率を見込んだ試算には信頼を置くわけにはいきません。  また、財政再建を放棄して最重点課題とされた景気の回復も、個人消費は停滞し、民間設備投資も過剰設備に先行き不安が重なって、政府の見通しのような動きにはない。しかも、輸出の増大も、数量規制、円安批判となって景気先導の役割りを期待できない状況になりつつあります。公共投資が土地買収費に二〇%強も充てなければならないことを考慮すれば、予期する景気刺激的効果もなく、財政インフレに加担するだけに終わりかねないのであります。  次に、予算の具体的内容について見ると、第一に借金財政がますます深刻化し、国債の負担が将来の財政にも重くのしかかってくることであります。国債費は二兆三千億円を超え、構成比も八%を超えてしまった。この重荷は、財政収支試算の改定版によって見ると、五十四年度、五十五年度の国債費は、それぞれ三兆九千七百億円、四兆七千五百億円に達し、五十五年度には歳出の一〇%を超える事態を招き、しかも国債収入の七〇%相当額が国債費というゆゆしい局面に立ち至るのであります。国債残高は五十四兆七千億円と国民一人当たり五十万円の借金を背負い、財政負担の増加と財政硬直比は一層深刻になります。また、国債管理政策の確立されていない現在、国債の増大イコール・インフレの激化という道をたどる危険があります。政府は真剣にこの問題に取り組んでいるとは言えない状況であります。  第二には、税制改正の問題であります。  利子配当の分離課税の税率を見ても、昨年秋の四〇%への引き上げ構想が、金融界を初めとした財界の圧力で三五%に抑えられ、五十五年まで固定化する政府方針を見て明らかなように、資産所得者、大企業に対する課税の強化は高ねの花と言うべきでありましょう。発想転換は少しも見られません。今後の租税政策が増税方向をたどるのは当然であるが、勤労国民に対しては、生活防衛を基本にした物価調整減税の実施と不公平税制是正による財源確保とを一体にして財政危機に対処すべきであるが、政府にはいまもって取りやすいところから税を取るという姿勢に変化はないのであります。  第三には、高負担低福祉の予算となっていることであります。  年金の引き上げが物価調整程度に抑え込まれる一方、中小零細企業の労働者を対象とする政府管掌健康保険法を改悪し、ボーナスに対する二%の特別保険料の新設などで一千六百億円もの増収を図るものとなっております。年金、福祉手当受給者、障害者などは、低成長イコール低福祉政策によって生活水準の維持が不可能な状態に追い込まれております。国鉄の運賃法定制度の緩和、再値上げが、公共料金や諸物価値上げの口火となり、物価上昇に拍車をかける要因となることは避けられません。中小零細企業の倒産は増加する一方であり、失業者は百三十万人に達しようとしています。二百海里経済水域の設定による漁場の制約は農漁民の生活権を脅かしております。経済危機のしわ寄せはこれらの層に集中しているにもかかわらず、その対策は依然として糊塗策の域を出ておりません。  第四には地方財政危機の問題です。  地方の財源不足額は二兆七百億に及び、地方交付税法の規定を遵守すれば当然地方交付税率の引き上げ措置が講じらるべきでありますが、地方に借金政策を押しつけて地方自治体いじめの政策を行っております。地方財政の強化なくして福祉の充実は成り立たないことは周知の事実であり、しかも、政府の公共事業拡大にしても、地方の単独事業量を保障しないのでは効果はあらわれないのであります。国の財政危機を理由にした地方財政の放置は、結果はみずからにはね返ってくることを知るべきであります。  第五には、反動的経費の計上です。  文教予算圧縮の中で、教員の主任手当が盛り込まれ、防衛費は、兵器の新型化、国産化を重点に、兵器の研究、開発、専用通信回線の建設など、ポスト四次防計画の初年度とし、総じて後方支援体制強化に莫大な予算計上がなされていることであります。わが国の唯一の安全と平和は積極中立政策以外にないことは、日本の自然条件、国内の経済体質、財政危機、今日の世界経済の動向を見ても明らかであります。また、国民の血税である政府資金を不明朗な日韓経済協力に費消し、その結果は、南北朝鮮民族の自主的、平和的統一を阻害することとなり、断じて許されないのであります。  以上に見たように、政府の予算は、その前提としての日本経済現状及び経済転換期における予算の機能について基本的に誤った認識に立脚して編成されております。  今日の経済危機は、景気の中だるみ現象といった循環的性格のものではなく、構造的なものであり、したがって、高度成長過程で形成された各種の構造的要因を改革しない限り克服できません。それは独占支配に対する規制強化であり、生活関連社会資本投資の拡充、農林漁業の再建、資源エネルギーの多消費型産業構造の改革、輸出偏重から内需拡大による景気対策への転換、貿易構造の変革であり、不公平税制の是正と地方財政の強化等々であります。しかも、資本主義世界経済の同時的不況という一般的傾向に見られるように、貿易依存率の高い日本経済は、国内的要因だけでなく、対外的要請でも最終需要の拡大を考慮せざるを得ないことは言うまでもありません。したがって、経済改革は、中期的展望のもとに実施する必要があり、予算はそのための主要なてことされなくてはなりません。  かかる観点に立てば、昭和五十二年度予算の課題は、当面の緊急課題として、インフレと不況から国民生活を防衛し、雇用の安定を図り、同時に、国民生活優先の経済を確立するための国民生活防衛、制度改革への予算とすべきであります。それは従来の制度を全面的に再検討することであり、制度改革に着手する初年度でなければなりません。  最後に強調したいのは、今日の経済危機は、社会の各分野に格差と不公平の拡大をもたらしており、その実態を直視すれば、総理が事あるごとに主張される「今年は経済の年」といった経済主義的対応では、問題の解決策となり得ないことであります。まさに政治の季節を迎えており、日本の社会変革の時代なのであります。政治の責務はきわめて重大でありますが、政府にはその認識が欠けており、意欲も見られないのであります。  五十二年度予算の使命は、制度改革の将来展望を示し得るものでなくてはなりません。政府予算にはその芽生えさえ見出すことができません。致命的な欠陥を持つ予算であります。  以上で、私の反対討論を終わります。(拍手)
  324. 坪川信三

    坪川委員長 次に、近江巳記夫君。
  325. 近江巳記夫

    近江委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度予算三案に対し反対の討論を行います。  五十二年度予算の課題は、政府みずからも標榜するように、物価安定に配慮しつつ、景気の着実な回復を図り、また財政の再建の道を開くことであることは多くを論ずるまでもありません。  ところが、政府予算案は、これらの重要課題に十分こたえず、これまでの政府・自民党の経済政策並びにその運用の失敗に反省するところなく、場当たり的な対応しかしていないのであります。  われわれは、与野党合意に基づいて当初の政府案が修正され、税額控除方式による三千億円の減税上積み、生活保障受給者に対する年金、手当等の五十二年度引き上げ分の二カ月繰り上げ支給が実施されることになったことは、五野党が一致して要求したいわゆる一兆円減税には満たないものの、もちろんこれを評価するものであります。しかし、それは来年度予算の国民生活軽視の性格を変えるほどのものにはなっていないのであります。  以下、来年度予算案に反対する主な理由を申し上げます。  第一は、景気対策がはなはだ不十分であることであります。  当面する経済情勢は、経済指標で見られるとおりきわめて深刻であります。とりわけ、個人消費の停滞は、政府が五十一年度予算において所得税減税を見送り、社会保険料の引き上げや一連の公共料金値上げを強行したことによるものであると言わなければなりません。  したがって、本来ならば政府は、あくまでも、不況と物価高で打撃をこうむっている大多数の国民の生活を守り、あわせて個人消費需要を高め景気回復を図るために、五野党が一致して要求したいわゆる一兆円減税を断行すべきであったのであります。  五十二年度予算案による政府の景気対策は、依然として公共投資に偏り、また、その公共投資も道路整備費が三分の一を占めているなど、産業基盤整備に重点が置かれ、産業間、業種間の需要格差を拡大し、ボトルネックインフレの危険をはらみ、また景気に対し幅広い波及効果を持つものではありません。しかも、公共事業の裏負担を強いられる地方自治体への財政対策は、借金押しつけ政策になっているのであります。  地方財政は、五十年度以来三年連続して二兆円以上の巨額な赤字を生じており、また五十年度決算では全都道府県と市町村の四五・三%に当たる千四百八十四団体が赤字に転落しているのであります。こういう状況のもとでは、政府が公共事業を拡大しても、結局は地方自治体の単独事業を減少させ、景気回復の効果も思うように進まないと言わなければなりません。  第二は、政府は来年度予算の課題として財政再建を掲げながら、逆に借金財政を拡大したことであります。  財政の再建を図るためには、まず課税に対する国民の不公平感を取り除くことが重要であります。高度経済成長に戻ることができない今日、現行の不公平税制を徹底して是正し、歳入を確保するとともに歳出のむだを省くこと以外に道はないのであります。にもかかわらず、政府の税制改正では不公平税制の改革がきわめて不徹底であります。また、行政改革や政策目的を達した補助金の整理にも熱意を欠いているのであります。  このように財政再建のための具体策を講じないまま、本年度を大幅に上回る赤字国債を発行することをとうてい認めることはできません。  第三は、政府予算案は、不況と物価高で苦境に追いやられている国民生活に一層犠牲を押しつけようとしていることであります。  今日の国民生活は、長期不況で、失業、倒産、賃金の抑制という犠牲を負わされ、一方では物価高を押しつけられているのであります。こうした状況下において、特に老人、身障者、母子家庭、生活保護世帯など社会保障受給者、中小企業、昨年の冷害で被害を受けた農業者などの生活は、極度に圧迫され、破壊寸前にあると言わなければなりません。しかしながら、一般会計予算案に占める社会保障関係費は二〇%を大幅に下回り、一七%台へ落ち込み、大きく後退しているのであります。  与野党合意によって決まった年金、手当等の五十二年度引き上げ分の二カ月繰り上げ支給になったことで、それがわずかながらも社会保障受給者の生活費の補てんになるとしても、もともと給付水準の低さの問題は依然として残されているのであります。われわれは、生活できる年金制度の実現を目指し、制度の抜本改正を強く主張せずにはいられないのであります。  また、医療給付内容の改善に努力をしないまま、政府が予定している医療費の患者負担の増大やボーナスに対する社会保険料の徴収は、社会的に弱い立場の人ほど生活の上に多くの負担を強いることになります。われわれは、国民生活に大きな犠牲を押しつけるこうした措置を絶対に認めることはできません。  国民が最も要求している物価の安定についても、政府予算案は前向きに取り組んでいないのであります。すでに値上げが決まっている電話料金に加え、国鉄運賃、国立大学入学金、タクシー、消費者米価、麦価などが引き上げられ、またさきに指摘した医療費の初診料、入院費の引き上げ、社会保険料の値上げなどが物価上昇を主導し、企業の製品価格の値上げ攻勢と相まって、政府の物価見通しの達成は困難であると言わなければなりません。さらに、巨額な赤字国債発行による財政インフレも予想されます。特に、財政再建をあいまいにしたまま国鉄運賃の値上げを予定し、しかも運賃値上げの法定主義緩和を図ろうとする政府態度には断固反対するものであります。  農林関係予算についても、農家の経営、生活を守るにはほど遠いのであります。農産物価格補償政策一つをとってみても、他産業従事者の労働報酬よりも著しく低い水準のままで放置しています。これでは農家の経営及び生活を守り、農業再建と食糧自給率向上もあり得ないと言わなければなりません。  中小企業予算についても、多くの中小企業が長期不況で破産の危機に直面している中で、その対策はきわめて消極的であります。景気対策が不十分であることとあわせ、中小企業と大企業の分野調整問題において業種指定を見送ろうとしていることや、下請代金遅延の防止等の強化に積極的に取り組まないようでは、中小企業者の経営と生活を守ることにはならないのであります。  第四は、文教政策、エネルギー対策が不十分なことであります。  文教予算について言えば、国民の教育費負担軽減につながる私学助成、高校新増設や人口急増地域での学校不足解消に対し積極的な措置を欠いているのであります。また、教育の管理強化意図する主任手当を予算化する一方で、教育の質的内容を高めるためとする政府の教職員増員計画をおくらせていることは、矛盾もはなはだしいのであります。  エネルギー対策については、資源エネルギーの安定的供給を確保するために、石油のメジャー依存の供給体制を改め、石炭対策強化を含め、総合エネルギー政策の確立のための抜本策を講じていないのであります。その一方で、原子力施設の安全確保にも十分な取り組みをしないまま原子力開発を急ごうとしているのであります。  反対理由の第五は、政府予算案は、ポスト四次防の基盤防衛力構想の実現を目指して防衛関係予算を本年度よりも千七百八十二億円も増額し、一兆六千九百六億円も計上していることであります。  これは、量より質へと防衛力、装備力の増強を図るものであり、平和憲法に逆行するとともに、厳しい財政事情のもとで生活関連予算を圧迫するものと断ぜざるを得ないのであります。したがって、防衛費の大幅削減を要求するものであります。  以上、五十二年度予算三案に反対する主な理由を述べ、反対の討論を終わります。(拍手)
  326. 坪川信三

    坪川委員長 次に、竹本孫一君。
  327. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民社党を代表し、ただいま議題となっております昭和五十二年度一般会計予算、同じく特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算案に対し、一括して賛成の討論を行いたいと思います。  わが民社党は、昭和三十五年の結党以来十八年になりますが、政府予算案に賛成の討論を行うことは全く初めてのことであります。この際わが党が予算案に賛成する最大の理由は、昭和三十一年以来実に二十二年目にして、民社党を初め野党各党一致した一兆円減税の要求によりまして、本格的かつ国民生活上重大なる予算修正を実質上政府・自民党をして行わしめたからであります。このことは戦後の議会政治史上画期的な成果と言っても過言ではありません。  確かに、野党の中には、今回の予算修正は、二十八兆円の予算の中でわずかに一%強の修正を行っただけにすぎないではないかという、みずからのこれまでの努力の成果を過小評価する意見があることも承知いたしております。しかし、そのわずか一%強の予算修正さえも、この二十数年間政府をして行わしめたことはないのであります。今回の予算修正の持つ意義は、決してその量の問題ではなく、与野党伯仲下において、これまでの行政府優位から、立法府、国会優位への重大なる質的変化を遂げたことの象徴的成果たる点にあるのであります。私は、これこそが新時代の与野党間の協調と連帯のあり方で、今後の運営は、すべからく国民責任を持つ与党と野党との建設的協力の中で力強く展開さるべきであると信じております。  特にわが党は、昨年の総選挙結果を踏まえ、その後の党首会談国会の代表質問を通じ、与野党伯仲時代における国会のウエートの増大と、それに伴う野党の責任の重大さを再三再四訴えてきました。一兆円減税問題は、まさにその試金石であったと言わなければなりません。  この際、改めて民社党の一兆円減税に取り組んできた姿勢を明らかにして、その決着の評価を行うことが、本予算に賛成するわれわれ民社党の責務であると考えます。民社党は、昨年の通常国会でも所得税の一兆円減税を主張し、その後、総選挙を通じ、補正予算でまず五千億円の減税を行うよう訴えてきたのであります。景気回復のかぎは、アメリカの前大統領フォードさんも言っておるように、減税であります。減税によって百兆円に上る個人消費を刺激する以外には道はありません。しかし、政府・自民党は、われわれの要求をことごとく無視し、結果的には現在の深刻かつ長期にわたる不況を招来したのであります。経済政策の要諦は、その内容とともにタイミングであります。昨年、そのタイミングを失したことはまことに残念なことであり、政府責任は厳しく追及されなければなりません。  この経過を踏まえ、この国会におきましても、民社党がなおかつ一兆円減税の実現を強く政府に追った理由は四点あります。第一は、倒産と失業で長期間萎縮し、低迷しつつある景気を浮揚させることであります。第二は、不況下の物価上昇に苦しむ国民生活の目減りをいささかでも救済することであります。第三は、同じく停滞する国際経済において、日本経済の牽引車的役割りを一層強めることであります。三〇%増、五〇%増といったようにひとりみずから輸出を盛んにして、アグリージャパンになってはならないのであります。最後に、不公正税制の改革を推進することであります。これらは相互に関連していることは申すまでもありません。  その間、三月九日に至るまで、減税問題については幾多の交渉と変遷がありましたが、結局、野党減税案の大筋である税額控除方式並びに社会保障受給者等への特別措置が講じられて、額も地方交付税までも考えますと、総計八千億円に達したということは大きな前進であると評価したいのであります。政府の御協力も感謝します。  振り返って、この三カ月間の政治交渉を通じて、そこに幾つかの教訓がありました。  第一は、野党にも実現可能でかつ具体的政策を構想し、立案する能力があることを示したことであります。自民党だけが決して責任政党ではないのであります。  第二は、自民党の絶対多数の陰でこれまで通用してきた官僚的、行政技術的解決の手法がその脱皮を迫られているということであります。予算は無修正のまま、法案だけ一部修正して通ろうというようなこそくな手段が最後には破綻して、予算の本格的修正に追い込まれたことがその証拠であります。  第三に、国会の本来の機能である立法活動が今後ますますそのウエートを増し、それに伴い野党の責任がますます重くなるということであります。これまでの行政府優位、内閣優位は明らかに崩れつつあります。かくて与野党合意の政治の領域が広がらざるを得ないことは、衆参両院委員会の中で、与野党逆転のものが十六、同数のものが八つにも上っておることを見ても明らかであります。  しかるに、野党の中になおこれまでの惰性から抜け切れず、予算委員会は逆転委員会であるという事実に目をつぶって、みずから要求して修正した予算案にみずから反対してその成果を拒否するということは不可解なことだと言わざるを得ません。修正部分だけ賛成、原案には反対という態度も、たとえて言えば、木の幹と枝とが一体である事実を忘れて、枝はよいが幹は切り倒せという矛盾を犯すに等しいものであります。従来こうした政治的、理論的、法律的矛盾が許されてきたのは、自民党絶対多数下の政治のもとにおいてのみであります。いまや与野党伯仲下の今日的状況においては、要求はするがその責任はとらないというがごとき自己矛盾はもはや許されないのであります。幹がなければ枝はなく、枝だけの勝手なつまみ食いは許されないのが、責任野党の厳しい選択であります。  もちろんわが党も、いまの予算には多くの欠陥があり、是正すべき問題が数多く残されておると考えております。鉄道運賃、健保等々これらの問題については、いままでもたびたびその矛盾を指摘してきたところであります。したがって、三十を超える個々の今回の予算関係法案については、わが党の自主性を堅持しながら、是々非々の立場で取り組むことは申すまでもありません。しかし、みずから要求して受け入れられた修正案については、当然その原案を含めて勇気を持って賛成し、責任政党の立場を貫き通したいのであります。この点は必ずや国民の理解が得られるものと確信いたしております。  最後に、今日の予算修正に密接に絡み合い、今後に残された問題があります。不公正税制の改正、行政改革の断行並びに景気の回復の推進、エネルギー対策の確立、教育改革、地方財政の強化等々であります。  わが党は、政府・自民党がこれらの懸案事項にいかに取り組むか、今後監視の目を一層強くするとともに、わが党自身これらの問題にも真剣に取り組み、政府に対しても建設的立場から具体的提言を行うことを申し添えて、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  328. 坪川信三

    坪川委員長 次に、安田純治君。
  329. 安田純治

    安田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の昭和五十二年度予算三案に反対の討論を行います。  まず、最初に指摘しておかなければならないことは、本委員会の審議を通じてますます明らかになってきた福田内閣の本質と性格の問題であります。今国会の最重要な課題は、深刻な不況、インフレのもとにある国民生活を防衛し、財政、経済政策を国民のためのものに根本的に転換すること、ロッキード疑獄や新たな疑惑を生じている日韓癒着を徹底的に究明することなどであったと言えます。  ところが、この国政の基本にかかわる重大な問題に対し、政府のとってきた態度はどうであったでしょうか。  国民の広範な運動ともなり、五野党の一致した要求ともなった一兆円減税要求の問題に対する政府態度は、国会の権限である予算修正権の侵害ともなる見解を表明し、減税の実施はあくまで渋り続けるなど、国民国会へのきわめて不誠実な姿勢をとり続けたのであります。それに対する国民的運動と国会での追加減税実施を要求した予算の修正提案は、当初の三千五百三十億円にさらに三千億円を追加させるという一定の成果をもたらしたのではあります。しかし、これは、必ずしもわれわれ満足すべきものではございません。  また、ロッキード疑獄の究明に関しては、福田法務大臣の、灰色高官名公表に反対するごとき発言に端的にあらわれているように、院議や五党首の合意を踏みにじったばかりか、中間報告による事実上の幕引きさえももくろんだのであります。さらに、新たな疑惑に包まれた日韓癒着の問題にも、政府みずからは何らその真相の究明に努力していないのであります。  また、沖繩の米軍基地の用地を確保するための法律を提出し、沖繩県民の要求を踏みにじろうとしていることは、断じて許すことができないのであります。  このように、折に触れては国民に背を向け、国会に挑戦する姿勢は、福田総理の言う協調と連帯がいかにごまかしのものであったかということを雄弁に物語っているのであります。本予算案においても、福田内閣のそうした反国民的な姿勢が織り込まれていることを指摘せざるを得ないのであります。  以下、政府提出の予算三案に反対する理由を申し述べます。  反対する理由の第一は、高騰している物価を抑えるどころか、政府が先頭になって大幅な公共料金の値上げをもくろんでいることであります。  国鉄の二年連続大幅値上げ、国立学校授業料などの引き上げ、病気の際の受診料負担の強化などが国民の生活を直撃することは歴然たる事実であります。  国鉄運賃の大幅な値上げが国民生活にどれほど厳しい打撃を与えたものであるかは、昨年の値上げ後、高い新幹線には乗れないと新幹線利用者が激減していることによっても明らかであります。ところが今回は、一九%と言われる大幅な値上げとともに、国会審議を経なくても、大臣が値上げしたいときに引き上げることができるよう、憲法にも反し、国会審議権を踏みにじるがごとき国鉄運賃法制定を持ち出してきております。国鉄運賃が諸物価に与える多大な影響をあわせて考えれば、これは断じて容認できないものであります。  さらに、健康保険料をボーナスから徴収することは、受益者負担の名による国民への負担の転嫁であり、初診時の一部負担の二百円から七百円への引き上げなど診療費の改定は、病人の受診を抑えようとするきわめて反国民的なもので、福祉予算の切り詰めとあわせ、政府の冷たい姿勢を感ぜざるを得ないのであります。  大型公共料金の値上げは取りやめ、値上げの本当の原因となっている仕組みの改善に取り組むべきであります。社会福祉は、国民生活の破綻が進んでいる今日こそ、まさに重点を置くべきであります。  また、審議の中で明らかとなった液化天然ガス、いわゆるLNGの値段の不当なつり上げなど大企業の横暴にメスを入れ、物価の引き下げが図れる具体的な手だてを直ちに打つべきであります。  反対する第二の理由は、公共事業の中味が依然として産業基盤重点とされ、生活基盤整備を促進させるには不十分なものとなっていることであります。  景気対策を口実に、一般会計では対前年度比二一・四%増と大幅に枠をふやしていますが、一般公共事業費の実に三二・九%が道路に回され、しかもその道路の内訳では、事業費のうち七〇%に当たる一兆四千五百億円が高速道路や本四架橋三ルートの建設に充てられ、国民の生活に直結する地方道路には全体の一五%、わずか三千億円しか予定していないのであります。  このような産業基盤重点のやり方を切りかえ、生活道路や住宅、下水道などへ大幅に振り向けるべきであります。さらに、地方での公共事業の実施主体である地方自治体に対する援助を強めて、実際に事業が促進できるようにすべきであります。  反対する第三の理由は、税制、財政の中に根深く温存されている大企業のための仕組みに手を触れていないことであります。  五十一年度の減税見送りに続く五十二年度の減税では、五野党要求で若干の追加があったとはいえ、社会的不公正に何らメスを入れていないのは重大であります。年間三兆円、新日鉄一社だけでも二百二十億円といわれる大企業への特権的な減免税は依然として続けられ、今回の租税特別措置の見直しなどによる大企業からの増収は、初年度わずか七百三十億円にすぎないのであります。さらに、大企業への直接の補助金は、外航船舶利子補給金九十二億円、YX開発補助金十億円などを計上するほか、五年間で一兆五千億円を上回る石油九十日備蓄のための費用や対外進出を援助するボンド保険などの施策を取り込み、ますます大企業のために役立つ予算としているのであります。  また、ファントム戦闘機十二機の追加発注や艦対艦ミサイル積載艦の新規発注など、不要不急の最たるものであり、ひいては大企業向けの需要の喚起となる軍事費を一兆七千億円も組んでいるのであります。よく、戦闘機一機分の予算があれば、などと言われますが、以上のような大企業のための支出や軍事費など不要不急の経費を大幅に節減し、国民のため、なかんずく福祉予算として組み替えるべきであります。  反対する第四の理由は、赤字国債四兆円を含む八兆四千八百億円の長期国債を予定して、インフレに拍車をかけるとともに、財政破綻を一層強めるものとなっていることであります。  大企業のためのふんだんな公共事業費や大企業援助のための支出など放慢な財政運営の財源を国債に求める政府の無責任態度は、きはめて重大なものであります。このため長期国債の累積発行残高は三十兆円を超え、年間予算をはるかに上回るものとなるのであります。五十二年度二兆三千億円を超える元利償還のための国債費は、すでに予算総額の八・二%にも及んでおり、これが硬直化要因として財政の危機を一層深刻にし、さらには、将来の長きにわたって国民への重税となってふりかかることは明らかであります。  財政の健全化を図るためにも、国民への負担を軽減するためにも、財源は安易な国債発行に求めるのではなく、まず大企業、大資本家への実質上の補助金となっている特権的減免税の洗い直しを初め、不要不急の経費の節減にこそ求めることを第一とすべきであります。  以上、指摘しましたように、本予算案は、国民への負担を一層強めるとともに、従来の大企業本位、対米従属・依存の政策に何の反省も加えないもので、断じて容認できないものであります。  私たち日本共産党・革新共同は、国民生活防衛を最優先とし、大企業本位の税制、財政の仕組みの転換を図ることこそが、わが国の深刻な経済危機を打開し、経済再建への道を切り開くただ一つの道であるということを強く主張し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  330. 坪川信三

    坪川委員長 次に、大原一三君。
  331. 大原一三

    大原(一)委員 私は、新自由クラブを代表して、昭和五十二年度一般会計、特別会計、政府関係機関三予算案に賛成の態度を表明するものであります。(拍手)  われわれは、去る二月の四日、総理大臣の施政方針演説に対する河野代表の質疑を通じて、当面の急務が不況克服であるならば、五十二年度当初からおくれることなく執行が望ましいことを前提にして、野党各党が共通して主張している一兆円減税について、次のような提案を行ったのであります。すなわち、与野党伯仲下の国会審議を踏まえ、各野党が強く念願している一兆円減税について政府がかたくなな姿勢をとり続けるとすれば、予算委員会において政府案は必ず否決されるでしょう、五十二年度予算案の早期実現を政府が真に望まれるなら、政府みずからが修正案を用意して予算審議に臨むべきであるとその決意を促しました。そして、もし政府にその決意がないならば、不況下の国民生活を目の当たりに痛いほど感じているわれわれは、この国民生活を守るため、予算の早期成立を考えて、あえて先例にこだわらず、速やかに野党各党に組み替え動議を提出すべきことを提案したところであります。結局は、予想どおり政府案の修正という事態に立ち至ったわけでありますが、その間の政府の対応がおくれ、予算審議に空白が生じたことはきわめて残念なことであります。  今回の予算の修正は、われわれにとり決して十分なものとは言えませんが、政府が野党の共同提案の一部を入れ、予算の修正に応ぜざるを得なかったことは、戦後国会史上における画期的なことでありました。このことは、与野党伯仲下の国会審議の実態を踏まえるとき、旧来の伝統的予算編成のあり方に大きな反省をもたらしたものと思います。  政府は、予算政府案の決定に先立ち、各野党の要請に謙虚に耳を傾け、十分時間をかけて共通のテーブルに着き、胸襟を開いて野党との事前の対応を行うべきことを重ねて強く要請するものであります。そのことは、ひいては国会の民主的運営の質を高め、ともすれば旧来のマンネリ化した実り少なきすれ違い論議に活路を開くものであると信じます。つまり、政府並びに各省庁においても、旧来の伝統的保守主義のからを破り、目まぐるしく変転する社会に適応できる発想の転換が可能になり、さらに野党側においても、真に現実即応の責任野党として、政府と共通の場所を持つことができると信じます。  第二に、特にこの際申し上げなければならぬことは、予算審議のあり方に関してであります。  われわれは、国会審議の能率化を図る見地から、予算とその関連法案の同時審議を本委員会の冒頭に提案したわけでありますが、大方の賛同を得られなかったことはまことに残念であります。いま五十二年度予算案はここで採決されようとしていますが、しかし、予算関係重要法案の審議は完了しておりません。予算は通ったが、関係法案は審議未了である。このような事態はまことに奇妙な事態と言わなければなりません。予算は通りましたが、予算関係法案は宙に浮いて、事後的に関連法案の修正が行われても、すでに採決された予算には手が届かないという不合理な事態が生ずるからであります。予算案が採決されたことは、すべての関連法案の採決を拘束するものでないことは言うまでもありません。しかし、関連法案の十分な論議のないまま予算案が先行する事態は、国会審議のあり方を改めることによって改善されるはずであります。われわれとしては、このような不合理を是正するため、財政法の要求する予算案及び予算関係法案の早期提出、予算案との同時審議等を強く主張し続けるものであります。  第三に、今回修正された減税額三千億円、六百三十六億円の社会保障関係費の追加は、十分なものではないが、政府の対応を評価いたしたいと思います。  われわれは現在の不況の深刻さを、失業、企業操業率の低下、輸出超過という三点でとらえ、いわゆるデフレギャップの大きさ、貯蓄超過経済の実態に着目し、当面短期の赤字国債を発行して、消費需要をできるだけ早期に喚起することを主張してまいりました。そのことが、公共投資と公定歩合一%の引き下げの二つの柱と相補完し合い、景気のなだらかな進行に寄与するものであると考えるからであります。しかし、現在の景気対策としてこの程度の減税規模は十分でありません。さらに、公定歩合の引き下げもいささか時期を失したと考えます。いまとり得る措置は、公定歩合の追加引き下げと予算の早期執行以外にはないと思います。  なお、申し添えますが、減税の方法について目下大蔵委員会において検討中でありますが、実務の許す範囲内においてできるだけ早期に一括還付の方法を提案いたします。それが景気刺激にとって有効であると考えるからであります。  第四に、われわれは現在の国民生活と景気に着目して、短期の赤字公債による減税を主張したのでありますが、われわれは決して永久減税論者でもなければ、赤字公債を常に勧める者でもないことは言うまでもありません。現在の景況がますますその深刻さの度合いを深めているとき、まさに減税適状にあり、赤字公債適状にあると判断するからであります。公共投資、公定歩合、減税のいわゆるポリシーミックスにより、現状をできるだけ速やかに適正成長路線に軌道修正することがまず先決であると考えるからであります。適正成長路線に復帰した後において、われわれは、不公正税制の是正並びに税体系の整備等を果断に実行し、さらに国債償還計画並びに管理政策の抜本的改正を考えるべきであると考えます。  企業、家計がアンバランスのとき、財政のみがひとり均衡を求めることは間違っております。現在の赤字は将来の黒字につながるという財政政策の原点に立ち返り、旧来のともすれば国庫主義的財政政策から長期的視野に立った真に国民経済のための財政政策の展開を所期するものであります。  以上、五十二年度予算案の採決に当たり新自由クラブの基本的考え方を明らかにしたところでありますが、われわれは与野党伯仲下における今回の画期的な予算修正という事実を踏まえ、よりよき予算編成の慣行が今後政府側において真剣に検討され、さらにもっと合理的な国会審議の慣行が樹立されることを前提とし、さらに沈滞し切った経済に対する五十二年度予算の迅速かつ適確な運用を求めて、賛成の討論を終わります。(拍手)
  332. 坪川信三

    坪川委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  333. 坪川信三

    坪川委員長 これより採決に入ります。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して採決いたします。  右三件に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  334. 坪川信三

    坪川委員長 起立多数。よって、昭和五十二年度予算三件は、いずれも可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  335. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  336. 坪川信三

    坪川委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る二月五日に昭和五十二年度総予算の審査を開始いたしまして以来、減税問題を初め国会の予算修正権問題、不況対策あるいは政治姿勢など、重要かつ広範な諸問題につき、連日真剣な論議を重ねてまいりました。  また、審査途次において、減税問題等について、与野党合意のもとに、政府が当委員会の論議を踏まえ予算の一部修正を行うという予算審議の上に画期的な足跡を記すに至ったのであります。  本日ここに、延べ四十余日にわたる総予算の審査を終了するに至りましたことは、ひとえに非力その器でなき委員長にお寄せいただきました委員並びに関係各位の御教導と御厚情のたまものと深く感謝の誠をささげ、重ねまして連日審議に御精励されました委員各位に深甚なる敬意を表する次第でございます。  長期間にわたり、まことに御苦労さまでございました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会