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1977-03-17 第80回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十七日(木曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稻村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白濱 仁吉君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    土井たか子君       藤田 高敏君    武藤 山治君       坂井 弘一君    谷口 是巨君       広沢 直樹君    伏屋 修治君       二見 伸明君    大内 啓伍君       河村  勝君    玉置 一徳君       寺前  巖君    藤原ひろ子君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁長官官房         長       亘理  彰君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      竹岡 勝美君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁長官官房         審議官    伊勢谷三樹郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房会         計課長     高木 壽夫君         大蔵大臣官房審         議官      額田 毅也君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁徴収部長 安岡 正明君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      今村 武俊君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         社会保険庁医療         保険部長    岡田 達雄君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業大臣官         房審議官    平林  勉君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸大臣官房審         議官      真島  健君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山本 秀夫君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設省計画局長 大富  宏君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君         自治省行政局長 山本  悟君  委員外出席者         日本国有鉄道常         務理事     橘高 弘昌君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   井上 普方君     土井たかこ君   浅井 美幸君     伏屋 修治君   矢野 絢也君     谷口 是巨君   大内 啓伍君     玉置 一徳君   正森 成二君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   土井たかこ君     井上 普方君   谷口 是巨君     矢野 絢也君   伏屋 修治君     浅井 美幸君   玉置 一徳君     大内 啓伍君     ————————————— 三月十六日  昭和五十二年度予算審議に当たり一兆円所得  税減税実現等に関する請願(武田一夫君紹  介)(第一四二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、締めくくり総括質疑を行います。  楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 十五日に、画期的な予算修正政府みずからの手で行われました。本院に新たな原案として提出をされたわけであります。それで、この修正原案の問題について、二点だけ念を押しておきたい問題があります。  一つは、書記長幹事長書記局長会談で確認されたそうでありますが、本院ではややあいまいになっておる問題ですけれども、私どもが、一兆円減税の場合の財源の大きな柱として、不公正税制改革の問題を提起をしておったわけであります。今度の修正原案ではその点が抜けられたわけですが、総理にお約束をお願いしたいのですけれども、来年度、五十三年度にはいろいろの不公正税制改革に手をつけるとお約束できるでしょうか。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆる不公正税制でありますが、これにつきましては、過般の与野党折衝におきましていろいろ論議が闘わされたわけであります。その論議の経過を踏まえ、また野党の皆さんから述べられた御意見等もまた踏まえまして、昭和五十三年度の税制改正におきましては、これらの問題の再検討をいたしたい、かように考えております。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま一つ、いわゆる政府修正原案の中の三千億の上積みの点でございますが、この財源措置について、赤字国債で埋めるようなことは絶対ないと確約できますか。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の与野党合意に基づく財源欠陥三千億円につきましては、赤字国債によらないで処置したい、かように考えております。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いよいよ総理も十九日にはワシントンに立たれて、カーターアメリカ大統領との最初の首脳会談に臨まれるわけであります。本院で具体的に、切迫した訪米についての目的なりあるいは内容の細かい点について十分お伺いをしておりませんので、きょうはまず日米首脳会談における問題点になるであろうと思われる事項について、総理の御見解を承っておきたいと思います。  きょう正午には野党の各党首ともお会いになるそうでありますから、私はみずからの意見は差し控えまして、総理の御見解だけをお伺いすることを主体にしたいと思います。  まず、今度の首脳会談で、いままでと変わった問題点が私には二つ大きく浮かび上がっておるのでありますが、一つは、カーター外交の中で主要な位置を占めるであろう、今日すでに行われておる人権外交の問題でありましょう。いま一つは、いわゆるアメリカの新核政策と関連をいたしまして、原子力の平和利用に対する問題点であろうと思います。その他、順を追ってお伺いしたいと思いますが、まず人権外交についてどういう対応をされるのか、その点お伺いしたいと思うわけですけれども、まず、今度の日米首脳会談一体国民は何を期待したらいいのでしょうか。恐らくおみやげは何にもないであろうということが言われておりますけれども、どういう点について国民の期待にこたえたいと総理は思っておられるか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の日米首脳会談は十四回目になるわけです。過去における会談のとき、とかく、みやげは何だとか、あるいは荷物は何だとか、そういう話がよく出た歴史があります。しかし、私は、今度の会談は、日米間とするとそう大きな問題はないと思うのです。いわゆるバイラテラル、こういうことにつきましては、そう深刻な問題はない。一つ、核再処理問題、これがありますが、とにかく、沖繩返還交渉でありますとか、あるいは通貨論争でありますとか、あるいは繊維問題でありますとか、あるいはアメリカによる頭越し外交の問題とか、そういう角度の問題はないんです。まあ私は、日米二国間においては最も問題の少ない会談である、こういう理解であります。  それじゃ問題になるのは何だ、こう言いますと、カーター政権が一月二十日に発足をする、わが国政権も暮れに発足をする、そういう発足したばかりの日米会談であり、特にわが方として見まするときに、カーター政権がまだ新政権施政方向を打ち出していないのです。想像するのに、四月ごろから続々と公にされる、そういうまだカーター政権施政方向が固まらないその時期に、日米両国首脳会談いたしまして、日本側意見を申し上げておく、これが非常に大事なことである。私は、これは日本のためにも大事であるし、同時に世界のために大事なことである、そういう趣旨で、この時期を選びまして訪米さしていただくということにしたわけであります。  その首脳会談において議題となります問題は、やはりまず第一は、いまの世界経済情勢、ひいては社会情勢、これが三年前の石油ショックで大変な影響を受けた。そこでまだ混沌としておる、全体とすると非常に混沌状態であります。特に南の国々、これの困窮は厳しい。さあ、そういう際に、先進工業国がこれに対して有効な協力ができるかというと、この先進諸国がまた、それらに対して有効な協力をなし得るような安定した状態じゃない。そういう中で、日米欧、その三極はまあ比較的石油ショックから抜け出すというような態勢に動いておる。そういう状態考えまするときに、その三極一つであるところのわが日本の責任というものは非常に大きなものである。私は、五十二年度というこの年度は経済の年である、こういうふうに言っておりますが、それは、わが日本の船の経済社会に活力を与えるという意味ももちろんありまするけれども、同時に、世界経済の混乱からの脱出に対しまして、わが国がいささかなりとも貢献をすべき立場にある、こういうふうに思うのです。  そういうことを考えますときに、これはわれわれの立場を述べてアメリカにも同調を求めなければならぬ。恐らくアメリカもこれには同調すると思います。  同時に、こういう厳しい世界情勢の中では、ややもすると保護貿易主義国々によるところの孤立主義的傾向というものが大きく浮かび上がってくることなしとしないというおそれを感ずるのであります。そういう傾向に対してどういうふうに対処するか。第二次世界大戦争を引き起こしたあの以前のような各国によるブロック体制だとか、あるいは厳重な為替管理体制だとか、ああいうものを復元させてはならぬ。そういうために日米両国世界に向かってどういう対処をするかということもまた大きな問題になってくるだろう、こういうふうに思うのであります。  私は、そういうことを考えますと、国民は何を期待するか、こういうことになりますが、期待してもらいたいのは、わが国世界における今日の立場を踏まえて、日本世界のためにも大いに尽くせということを大いに期待してもらいたい、こういうふうに考える次第でございます。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 さて、人権外交への対応でございますけれども、これはカーター大統領自身の哲学あるいは宗教的立場が非常に反映している部面が多いわけですけれども、まず、外交というものに道義というものが必要であるかどうか。その辺、総理はどのようにお考えでしょうか。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 カーター大統領が、非常に精力的に道義外交といいますか、人権尊重という外交路線を打ち出しておる。私は、それに対しまして、人権はいかなる社会においても尊重されなければならぬということにつきましては、カーター大統領と全く同感であります。一国の社会におきましてもあるいは国際社会におきましてもそうだろう、こういうふうに思うわけです。  ただ、そういう考え方外交上具体的にどういうふうに展開していくか。そういうことになりますると、相手国事情等もありましょう、また、相手国わが国とのいろいろな歴史もあり、あるいは現在置かれている事情というようなものもある。そういうようなこともありますので、これを具体的にどういうふうに推し進めていくかということにつきましては、これは慎重に配慮しなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。  問題は、道義社会世界国々どこででも実現されるということであろうと思うのです。それを有効に実現するためにはどういうふうにしていくかということ、これが非常に大事な問題であるというとらえ方をいたしております。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 過去の歴史を振り返りますと、ときとして外交道義を度外視して血も涙もないやり方をやった時代もあります。これは、今度のカーター大統領のこの人権外交への姿勢は、根本的には支持すべきであるという総理の御見解のようであります。もちろん、カーター大統領も、人権は普遍的な価値であり、すべての国によって尊重されるべきである、こう言っておる。この一般原則については支持をする、こういう立場に立って、米上院外交委員会は、十二日に、援助問題と絡ませて、世界各国人権抑圧の実態に関する調査報告書を公表したことも御案内のとおりであります。  いまの総理の御見解を承りますと、これは十日の外人記者クラブにおいてもしかり、あるいは昨日の内閣記者会においてもそのような御見解を披瀝されたようであります。この点について日米両国立場が違う、つまり、日本日本立場人権外交考えるということのようであります。  そうすると、この点についてはカーター氏の見解人権外交に完全に同調するという考えはない。そういうふうにわれわれは受け取ることになりますけれども、そうですね。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考え方基本につきましては、これは私は完全に一致すると思うのです。ただ、その具体的特定国に対する適用につきましては、それはわが国としてはわが国手法がある、アメリカにはアメリカ手法がある、こういうことであります。そういうことは間々あるのですよ。これは人権問題ばかりじゃない、あらゆる問題についてそうだろうと思うのです。登る富士山の頂きは一つである、こういたしましても、登り口は吉田口もある御殿場口もあるというようなものじゃないか、そういうふうに思います。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのような首脳会談で、総論賛成であるけれども各論はノーコメントで、果たしてこの問題を通り抜けられるでしょうか。私はその点非常に懸念をするわけですよ。すでに上院が発表した報告書の中には、特に韓国については、市民に対する監視活動が行われておる、あるいは大統領緊急措置により弁護士もつかないで強制連行あるいは長時間の尋問が行われておる、さらにまた、拷問を受けたという政治犯の証言があるにもかかわらず韓国政府拷問を否定をしておる、というような点を列挙して韓国においては人権は侵害されておる、と報告書で明確に述べておるわけですね。だから、日本にとっては、特に韓国人権問題というものは重要でありましょう。特に、金大中事件がまだ未解決である。そうすると、いまの韓国に対するこのような人権侵害の事実があるという米政府指摘に対して、総理はどのような見解をお持ちでしょうか。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は非常に機微な問題でありますので、特定のどの国がどういう認識を持つかというようなことにつきましては、まことに恐縮ですが、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかし、首脳会談の重要な討議の内容になる問題でありましょう。総論には賛成原則賛成だけれども、具体的な問題についてはノーコメント、差し控えるで果たして切り抜けられるかどうか。私は先ほどからその点を何回も言っているわけです。  では別の観点から言いますと、たとえば、三木・フォード会談のときにも取り上げられたわけですけれども、一般原則あるいは一般価値観として、個人の自由と基本的人権を尊重する政治体制と申しますか、それが一般的な価値でありましょう。韓国に対しては、個人の自由と基本的人権を尊重する政治体制であるというような御認識でございましょうか。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 特定の国を指してその政治体制を批判するということは、その特定の国とわが国との歴史的な関係、いろいろ複雑なものもあります、微妙なものもあります、また、今日の置かれておる両国関係、そういうこともある。そういうことで、特定の国を名指しましてこの問題を論議するということにつきましては、これは何とかひとつ御容赦願いたい。これはわかっていただけると思うのですよ。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、この点ははっきりするのじゃありませんか。アメリカ政府はずっと人権抑圧に遭っている世界国々における具体的な指摘をしているわけですね。カーター政権は、そういうふうにたとえば韓国でも人権抑圧が行われておる、こういう指摘をしておるのです。総理のいまの御見解を聞きますと、結論としては、先ほど申し上げたとおり、この点についてはカーター大統領との間にやはり完全なずれがある。同意できかねる点がある。そういうことになりますね。アメリカの方は個々に問題を出しておる。総理は個々に問題を出すべきではない。そういう立場であれば、これはもうずれておることはわかります。はっきりしていますね。だから、その点についてはいわゆる完全な同調はあり得ないということになるわけでしょう。どうでしょうか。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほどから申し上げているとおり、基本認識におきましてはいささかの違いがないと私は思うのです。ただ、具体的適用という問題になりますと、これは、日本には日本的な手法がある。そういうことで、アメリカとの間に違いが出てくる場合もなしとしない、こういうふうに思います。しかし、それを総括して言う場合におきまして、この認識においてアメリカとの間にいささかの違いもない、こういうことははっきり申し上げることができると思います。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 平行線をたどっておるわけですが、次に、アジア外交への対応の点についてお伺いをしてみたいと思います。  最初に出てくるのは、当然朝鮮半島の情勢に対する日米両国基本的な認識の問題でありましょう。ここで、当委員会でもしばしば問題になりました在韓米地上軍の撤退の問題、これについて、カーター大統領は、すでに去る十日の日に、訪米いたしました朴東鎮外相に四、五年間で米地上軍を撤退させると通告しておるのは御承知のとおりであります。これに対して政府考え方は、簡単に言えば、南北のバランスが崩れないようにしてもらいたい、バランスが崩れないならば賛成であるという立場のようであります。で、そのバランスあるいは安定を損なわないこと、これが一体どのような形で行われることを日本政府としては望んでおられるのですか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 終局的には南北が平和的に統一されるということがいいと思うのです。しかし、そこまでいくにはまだ時間がかかる。その過程におきまして紛争、混乱が起きては困る。そこで、その過程におきましては、今日一つの過程の段階でございますけれども、これは微妙な形ではありますけれども南北にバランスがとれておって、そうして紛争、混乱が起こらない、こういう状態であります。そのバランスの状態が維持されるという形、これがただいまの時点としては好ましい、こういうふうにとっております。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この点もまだややあいまいでございますけれども、いずれはっきり討議をされると思います。  次に、懸案の韓国条項でございますけれども、六九年の佐藤・ニクソン共同声明においては、有名な、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であると、ずばり表現をされておる。七五年の三木・フォード共同声明では、その間にワンクッションを置いて、韓国の安全は朝鮮半島の安全にとって大事だ、そして朝鮮半島の安全は日本を含むアジアの安定にとって大事であるという、このワンクッション置いた共同声明になっておる。今回はどのような形にこの韓国条項がなるのでありましょうか。あるいは韓国条項というよりも、三木・フォード共同声明における前段の、韓国の安全はというものはのけて、いきなり朝鮮半島という認識で語られるのか。つまり、韓国条項というよりも、朝鮮半島条項というような形で論じられる、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあその辺は煮詰めておりませんけれども、韓国の安全は朝鮮半島の安全のために平和のために必要である、朝鮮半島の平和はわが国の平和と安全のために必要である、こういう基本的な認識は、私は前の三木さんのときと変わりはございません。けれども、この共同声明、これにどういうふうにこれを表現するか。それは会って論議をしてみてからの話でありまして、いまここで予断をするということはできない。こういうことを御理解願いたいと思います。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 施政方針では、私がいま言ったような認識をお示しになったわけですね。つまり、朝鮮半島の情勢は、わが国を含む東アジアの平和と安定に深いかかわり合いを持っておる、こういうふうに施政方針演説ではやられておる。その態度を貫かれるということでよろしゅうございますか。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の立場はそうです。つまり、これは日本ばかりじゃない、東南アジア全域に影響のある問題だろう、こういうふうに思うのです。現に東南アジアの諸国の中には、その問題に、朝鮮半島の問題に言及して意見を申し越してきておる国もあるというくらいでありまして、私が日本の安全それから東南アジアの平和のために朝鮮半島の安定というものは深いかかわりがある、こういうふうに申しておるのはそういう趣旨でございます。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、やはり韓国条項というよりも朝鮮半島条項と申しますか、あるいは新々韓国条項というふうな形になっていくのではなかろうか、そのように私どもは思うわけですけれども、そこでこの在韓米地上軍が撤退をするということになりますと、例の休戦協定における国連軍、署名者の一つである国連軍というこの米軍はどういうふうになるのでありましょうか。
  26. 中江要介

    ○中江政府委員 在韓米地上軍が撤退するという前提自身がいま問題になっておるわけでございまして、いまアメリカ考えておりますのは在韓米地上軍の削減、行く行くどういう形で完全撤退になるかというところについての展望が示されておりませんので、具体的な態様としてお答えはできませんけれども、抽象的に申し上げますと国連軍というのは国連決議によって設置されております一つの軍隊でございまして、在韓米軍は米韓間の合意によって駐留している米軍でありますので、理論的にはそこは区別が可能ではないか、こういうふうに考えます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、そんなことはわかっていますよ。あなた、わざわざここまでお越し願わぬでも。一体どのようになるであろうとお考えなんですか、地上軍が撤退したら。つまり朝鮮決議、いわゆる休戦協定の署名者の一人である国連軍としての米軍がいなくなるということになるのかどうか。それを聞いているのですよ。
  28. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 地上軍が撤退をした場合に国連軍はどうなるかとこういう仰せでございますが、陸上部隊の撤退はあっても空軍その他は残るというようなお考えのようであります。しかし、これは大変な問題であろうと思いますので、恐らくこれからの問題でございますけれども、国連等におきましても論議の対象になるのではなかろうかと思います。しかし、ここでいまどうなるかということは私どもの方から申し上げることではないと思うのでございます。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 こういう点を考えますと、今度の米軍の地上軍撤退というのは単に軍事事件だけでなくて、いわゆる朝鮮半島をめぐる国際的な枠組みの再編成に発展するのではなかろうか、こういう問題を含むという御認識を外務大臣はお持ちですか。
  30. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 直ちにどのようなことになるか予断をするわけにまいりませんけれども、一つの問題となってくるであろうというふうに思います。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いわゆる作戦指揮権の問題が出てくると思いますが、防衛庁長官、どのような観測をお持ちでございますか。これは米軍から韓国軍に作戦指揮権は移るというような観測をお持ちでしょうか。
  32. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  問題は、いま申されましたように作戦指揮権はいまのところ米軍が持っておるわけでございますけれども、その地上兵力の撤退に基づいて指揮権問題が問題になるであろうという予想もいたしておりまするし、すでに御承知のように韓国軍におきましては一つの問題の提示があっておることも承知をいたしておりますが、実際に撤退の内容が明確でございませんので、いま私からどうだということを申し上げることができません。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、私は観測をお伺いしておるのですよ。いろいろ想定をして防衛庁は事に処せられておることはわかり切ったことですからね。——言えないならそれでいいでしょう。  そこで今度は朝鮮半島のいうところのバランス問題でございますが、ホルブルック国防省次官補は、この撤退に関連をして韓国の自主国防五カ年計画の総額五十億ドルのうち三十五億ドルの軍事借款の大部分を米国が提供する方針であるということを報道で示しておるわけですけれども、では、わが国はこのバランスを崩さないために一体どういうことが要請されるのであろうか、当然経済協力に力を入れてくれということが話題になろうと思うわけですね。そういうことを防衛庁長官もおっしゃっていますね。つまり軍事問題だけでなくて、政治、社会経済諸問題のバランスだという、そういうお考えも示されたようであります。すでに報道によりますと、韓国の第四次五カ年計画に必要な外貨百億ドル、このうち日本から十八億五千万ドル、内訳は政府借款五億ドル、民間借款十三億五千万ドルを期待しておると伝えられておりますが、この辺についての経済協力は一体どのようになるのでありましょうか。
  34. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもの承知しておりますところでは、いま楢崎先生のおっしゃいましたような数字が報道されてはおりますけれども、政府レベルでそういった意向が正式に伝えられてきているということはございませんし、いままでやっておりますように日韓の経済協力は案件ごとに政府レベルでよく詰めて、できるものをやっていく、こういう方針で臨むことになっております。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ますます経済協力の要請が強くなるであろう。だからこそ当委員会でも昨日も集中論議がありましたような、この日韓の経済協力の問題についてよほどきちっとした対応がなければ、またいろんな問題がこの中に介在して起こってくる、そういうことを私は懸念をしておるわけであります。  次に、ASEANへの対応の問題でございますけれども、二月二十四日でございますか、ASEANの外相会議が行われた。そこで、日本並びにアメリカとの対話を歓迎する。この首脳会談でしょう。大変な期待を持っておるようです。それから平和、自由、中立地帯創設に向かっての努力の再確認。さらには第二回首脳会議をASEAN十周年記念として八月にクアラルンプールで開くという共同声明が出される。このASEANの問題も当然今度のカーター大統領との話し合いの一つのテーマになろうと思いますけれども、ASEANの政治経済的な安定に果たすべき日本経済協力のあり方というものは、またこれは別個に問題になってくることは当然でありましょう。まず総理はこの八月の第二回首脳会議に出席される予定でございましょうか、どうですか。
  36. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ASEANの首脳会議に私が出席するということは、これはないのです。つまり、わが国はASEANのこの会議の構成メンバーじゃありませんから。ただ、ASEANの首脳会議が行われるというそういう際には、ASEANの首脳が一堂に会するわけですから、その会議が終わった後とかあるいはその会議が開かれる前とか、ちょうど一堂で日本総理大臣と会えるんじゃないか、そういう機会ともなるのでありまして、そういう意味合いにおいての私とASEAN首脳との会談ということは考えられることだと思います。そういう性質の会談がこのASEAN諸国一致の意見として決まり、私に参加を求めるということでありますれば、私は国政の都合の許す限りその会合に出席いたしたい、こういうふうに考えております。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このASEANの今後の方向としては、インドシナ諸国との関係もありましょうけれども、すでに報道されておるとおり、カーター大統領が特に選んだ代表団がベトナムに入りましたですね。このASEANのいま志向しております中立化構想と申しますか、この方向総理は支持されますか。
  38. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ASEAN諸国がみずからの発意で中立化の態度をとる、しかもそういう中でASEAN諸国が相協力して自立体制を達成しよう、こういう方向に動いていることは、これは私は歓迎すべきことである、こういうふうに考えております。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 当然ASEAN共通のプロジェクトへの経済援助が問題になろうと思いますが、このASEAN共通のプロジェクトに対する経済援助についてはどのような御見解総理はお持ちでしょうか。
  40. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまお尋ねのASEANの共通のプロジェクトというものにつきましていろいろお話は伺っておりますけれども、まだ具体的な計画というところまでに立ち至っておらないものですから、今後十分検討をいたしたいと思っております。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、懸案の対中国問題であります。今度の首脳会談では、対中政策についての共通の確認が行われるのかどうか。当然米中国交正常化の問題あるいはそれに伴う台湾の処理、そして日中の平和条約締結等が中国問題に関してはやはり議題になると思うんですが、どうもこの対中国姿勢について、いろいろ福田内閣は揺れておるようであります。私どもが受ける印象というのは、どうも全般的にいって、福田総理外交的な選択というのは、まず第一が対米、二番目が対韓、三番目が対ソ、そして中国政策はどうも優先度が低いような感じを受けるのです。たとえばさきにモンデール副大統領が見えたときも、東郷駐米大使あるいは西山駐韓大使は帰国をさせましたね。しかし、小川駐北京大使の帰国は命じられなかった。一つの現象ですけれども、その後問題があります。どうも優先順序が、対中問題の優先度が非常に低いような感じをぼくらは受けるわけです。そういう点について、当然首脳会談問題点になるであろう対中国政策について、どのような立場から総理は臨まれようとされておるのか、明確にしていただきたいと思います。
  42. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日米会談におきまして、中国問題、これも話題に出ると思います。ただ、議題として何か両国で共通の方針を確認するというような性格のものじゃなかろう。わが国わが国の方針を述べ、またアメリカアメリカ考え方を述べる、こういうことにとどまるのじゃないかというふうに思います。  わが国の対中国姿勢、いま楢崎さんから、どうも中国を軽視しているんじゃないかというようなお話がありますが、これは少しゆがんだ見方ではあるまいか、こういうふうに考えております。わが国は中国も大事な国であり、またソビエトも大事な国である。両国とも平和友好条約を結びたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。わが国といたしましては、中国に対していま日中関係はわりあいというか、まずまず順調に推移しておるという認識でございます。また、わが国の今後中国に対する姿勢は、日中共同声明を忠実に遵守する、こういうことにある。それから懸案になっておる平和友好条約につきましては、これは両方が満足し得る条件が整えばこれを締結をする、こういうことなんで、その考え方を率直に申し述べたいと、かように考えます。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 率直に聞きますけれども、福田内閣で日中の平和条約締結を仕上げるという決意はおありですか。
  44. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 両国の満足し得る形において、そして皆さんから祝福されるというような環境になって、そしてなるべく速やかに平和友好条約を締結したい、これが基本的な考え方でございます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 努力をなさらないとだめですね、向こうからそういうことが落ちてくるわけじゃございませんから。どうもデリケートな問題を含んでおりますから、それ以上はこの場では言えないと思いますけれども、これは重要な、わが国外交政策の私どもから見れば最優先に考えられるべき問題であろう。それで、つまり両国考えが一致すればという、どこに最後の問題があるのですか、ずばり総理考えられまして。
  46. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 条約でありまするから、条約の条文をどういうふうに整えるかというようなことが主たる問題になるわけですが、この条約も相当な広範なものでありまするから、いろいろな点において両方がすり合わせをしなければならぬという問題があるのです。しかし私は、日中平和友好条約の締結は、これは余り過去数年間論議が多過ぎたと思うのです。(発言する者あり)それがまた、この条約の締結を阻害しているという面もありますので、私自身としては多くを語りたくないのですが、私の考え方は先ほど申し述べたとおりです。両方が満足し得る条約、それを早く協議いたしまして、そしてその締結の時期が早からんことを期待している、こういうことでございます。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと、いまも声が入っておりますけれども、論議が多いってどういう意味でしょうか。いま、どう言われたのですか。
  48. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が申し上げましたのは、これは非常に微に入り細にうがって政府はどう考えるかああ考えるか、というような議論が私は余りに多過ぎたと思うのですよ。そういう結果、この条約の推進が多少おくれた面があるのじゃないかという、これは私の認識です。楢崎さんがどう考えるか、これは別の問題でありますが。でありますので、私はこの問題については多くを語りたくない心境だ。しかし、基本姿勢は基本姿勢で先ほど申し述べたとおりである、ということを申し上げておるわけであります。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっといまの総理のお答えは、これは素通りするわけにはまいらないのですがね。政権の党が、いわゆる自民党政府が、この対中国政策、どういう姿勢で臨むか、こういうことを国会でわれわれが論議するのは当然じゃありませんか。それをやり過ぎた、それが影響しておると言うのは、みずからの責任を国会の論議に転嫁される。これはわれわれとして承服できませんよ、そういう言い方は。国会でわれわれがいろいろ政府に聞き過ぎたからこじれたんだ、これは私は承服できませんよ、そういうお考えは。
  50. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、国会の皆さんの御論議を言っているのじゃないのですよ。私ども政府として、そういう論議、御質問等に答えて、余りどうもいろいろ言うのはかえって条約の円満な進行を妨げるのじゃないかなという感じがしてならないのです。ですから、なるべく私は多くを語らないようにしておるわけなんですが、しかし基本姿勢は先ほど申し上げたとおり、この両国が満足し得る状態、それが早くでき上がることを期待しておる、こういうので、その点はひとつ御理解を願いたい。楢崎さんの御質問をとやかく言っているわけではありません。私の答弁が余り具体的になりますと、またいろいろ反響を呼びまして、そしてまた締めくくりに骨を折ると、こういうことでありますので御理解を願います。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは、あなたの党の中の問題じゃございませんか、いろいろ何かちょっと言い間違ったら問題がすぐ起こるというのは。どうもわれわれに向かって言われる言葉じゃないのじゃないでしょうか。つまり、今日の外交というものは、特に対中国外交というものは、そんなアヒルの水かきみたいな時代は過ぎているのですよ。隠微なあるいは隠密あるいは秘密外交という時代は過ぎているのですよ。もはや福田総理の決断の時期ですよ。決断の時期だと思うのです。だから、もうわれわれ多くを言う必要はないのです。もう一度その決断について明確にしていただきたいと思います。
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中両国が満足し得るような条約案文ができて、そしてなるべく早くこの条約が締結されるということ、これが私の基本的な考え方なんです。そういう状態が早くできることをじっと見ておる、こういう状態でございます。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 やはりずばり言って覇権条項に対しての日中の認識の一致ができればいいという、そこにしぼられておるのでしょう。どうなんですか、それは。そこが決断の問題だと言っているのです。
  54. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 覇権条項の問題もありまするし、また他に、条約ですからいろいろな問題を書かなければならぬ、その条約の条文の表現、そういうことにつきましてまだ幾つかの問題点があるというふうに承知しております。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はもう総理が決断なさっていい時期に来ていると、このように思うわけです。  次に、今度首脳会談一つの大きな問題になるであろう原子力の平和利用の問題についてお伺いをしたいと思うわけです。もうすでに明らかにされておるとおり、行かれる前から問題点は明確になってきた。つまりカーター政権は、いわゆる核の拡散防止という観点からこの問題を取り上げる、福田総理の方からは代替エネルギーとしての核の平和利用、これを主張されるんでしょう。そこで、すでに御承知のとおり、七月からは東海村の第一号再処理工場が試運転を始める予定になっておるようです。この核燃料の再処理の問題について、総理カーター政権の了解を取りつけ得る自信がありますか。
  56. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は、ただ一つと言っていいくらい日米間に横たわる重大な問題という認識でございます。私はカーター政権が言い出しておる核拡散、これを恐れなければならぬという考え方、これについては全く同感であるのみならず、アメリカ以上の真摯な態度をもちましてこの問題には対処していきたい、こういうふうに考えておるわけです。ただ、核が兵器として使われるということは、そのように考え、またこれを恐れなければなりませんけれども、しかし同時に、これからの資源エネルギーの有限時代という大勢の中で、核が平和的に利用されることが阻害されるということは断じてあっては相ならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。いまアメリカ側の最終的な考え方は決まっておりません。おりませんが、いまその流れを見るときに、どうも平和的利用を阻害する恐れを感ずるわけであります。また同時に、核保有国による核の平和的利用と核を持たない国の立場における核の平和的利用というのが、これはどうも差別をされるというような結果にもなりかねない。特にわが国といたしますと、いま石油にエネルギーの主力を依存しておる、その石油は海外から九九・七%受け入れなければならぬという立場わが国とすると、どうしてもこの原子力にその代替を求めなければならぬという立場にある。わが国としては、この核の平和的利用、当面する東海村の再処理施設の稼働の問題、これはどうしても譲ることのできない問題であるという認識でございます。この考え方は強くカーター大統領に申し上げたいと、かように考えています。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 了解が取りつけられなかったら再処理工場も宙に浮いてしまうわけですがね。どうなさるおつもりですか。
  58. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の会談でこの問題の結論が出るんだと、こういうふうに私は実は見てないのです。と申しますのは、アメリカ側のエネルギー政策の総合的な取りまとめは、四月ごろ、あるいはずれて五月ごろになるのじゃないかというような話を聞いております。それまでの間にこの問題をめぐりまして政府間折衝が行われる、そういう過程に入っていくというふうに思うわけであります。すでにその予備的な話し合いもしておるわけですが、しかし、その背景としてどうしても重要な意味を持つのは、私は、カーター大統領と私の会談である、こういうふうに思います。そういう性格のこの両首脳の会談でありますが、この会談におきましては、強く日本立場を申し上げて、それに引き続く政府間折衝の基盤をつくっていきたい、かように考えておるわけです。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理は、昨日の内閣記者懇談会で、核軍縮について具体的な新しい提案をするということを言われたそうですが、その内容はどういうものでしょうか。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いま、核というものを兵器化いたしまして、そしてあるいは各国が競ってそれを持とうとし、また強化しようとしておる、これが使われたら、地球のおしまい、人類のおしまいになります。そういうものが使用されるという可態性というものは非常に少ないのじゃないか、ですから、核兵器競争をするというようなことは、これは愚かなことである。みんながその核を持たないということに国際社会で合意ができますれば、こんないいことはないと思うのですよ。しかし、そこまで一挙にいくということはむずかしい。少なくとも実験はやめておこうじゃないか、全面的に、包括的にやめておこうじゃないかなんというようなところから始めていかなければならぬのじゃないかというような感じがするのですが、私どもは、この核をそういう立場において兵器化するあるいは兵器化の進行を阻止するということを主張するのに最もいい立場にあると思うのです。非核三原則がある。また、わが国は最初の被爆国である。その犠牲を受けたただ一つの国なのですから、そういう立場におきまして、わが国はその主張を展開するのに非常に有力な立場にあるし、また、わが国の工業力、経済力をもってすれば、持たんとすれば核を持ち得るのです。そういうまたもう一つの大きな立場を踏まえておる。そういうことでありますので、核の包括的実験禁止というようなことについて積極的な働きをしていいと思うのですが、そういう角度で諸問題を話し合ってみたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 すでに、カーター政権核政策考え方は、彼自身の選挙期間中の公約にあらわれておるのです。それがそのまま出てきておるわけですね。特に再処理の問題については、米国内の再処理は、その必然性、経済性、安全性が実証されるまでは実施しない、こう公約しているのです。もし再処理をするとすれば、多国間で実施し、使用済み燃料貯蔵も多国間ベースで国際的に働きかける。そのとおりにいま主張しているわけですね。そして、さらに重要なことは、原子力というものを代替エネルギーのうちの最下位に置いているのです。まず石炭、次に節約、次に太陽熱などの多様化、そして四番目にその必要最小限の原子力の順位と、こういうことですね。だから、もし原子力を代替エネルギーとして今後やっていく、そういうものに使う研究開発費があるならば、太陽エネルギーを中心に他の分野に振り向けるべきである、これがカーター政権考え方ですよね。そして、先日参りました国務省の原子力担当補佐官シャインマン、あるいはギリンスキー原子力規制委員会委員の方々が日本に来ての発言を見ましても、核拡散の危険性と同時に、原子力発電所いわゆる原発の安全性、これが十分でない、だから、いまのまま進めれば、いわゆる反原発の国際的な運動が起こるであろうということをこのシャインマン氏はわざわざ日本に来て言っているんです。  で、私は以下原発の安全性の問題に関連をしてお伺いをしたいと思いますが、その点について、これは去る二月十二日の当予算委員会におけるわが党の石野委員と宇野長官の質疑までさかのぼらなくてはなりません。そのときの議事録がここにあるわけでございますけれども、石野委員が、原発そのものの事故の問題、さらにそれから起こる人身への被曝の問題を取り上げられました。この問題について特に宇野長官は「いままでのところ幸いにいたしまして被曝者はおりません。」と、議事録にはそうありますから、そう答えられましたね。だから私は関連質問した。さらに宇野長官はこの問題について「やはり一元的にその状況を把握する必要がある。そして中央においてそのことを登録する必要がある。そして管理をしなければならない」と。この、一元的にその状況を把握する省はどこでございますか。
  62. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 本年度の予算でお願いをいたしておりますが、中央で管理センターを設けたいと存じます。したがいまして、これは科学技術庁でございます。公益法人としてそういうセンターを設けたいと思います。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そしてどうされるのですか。
  64. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 各原子力施設で働いている方々の被曝状況は、被曝手帳あるいはその事業所においてきちっと管理されておりますが、特にそうした原子力施設、なかんずく発電施設には定検がございます。その定検の際には、下請会社がございまして、その下請会社の従事者の方々は、言うならば転々とあちらこちらの原発で働かれるものでございますから、一カ所におきましてその被曝状況が把握されておらないといううらみがございます。これでございましては御当人のためにもなりません。したがいまして、そうしたことを一元的に管理をするセンターをひとつ設けようではないかと、そうした場合には従事者の方々を今後、健康管理の上におきましてもあるいはまた再就職の場合におきましてもそうしたことが照会されるであろう、その照会に対しましてきちっとしたデータを差し上げて、なお一層その被曝管理を強化しなくちゃならぬ、そういう意味合いでつくろうとするものであります。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの答弁を聞きましても、いままでは完全にずさんであったということの証明になるわけですよね、これからやろうと……。だから、ここで宇野長官は、「いままでのところ幸いにいたしまして被曝者はおりません。」という、この答弁、認識は、これは撤回なさいますか。
  66. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私の聞き及んでおりまする限りにおきましては、放射線による人身障害はなかったということでございます。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 「被曝者はおりません。」とおっしゃているんですよ。だから、取り消されますかと聞いているのです。
  68. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 被曝による人身障害というふうに変えさしていただきたいと存じます。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 被曝者のうち死亡された方の具体的な追跡調査をやられたことがございますか。
  70. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 この間楢崎委員から特にその点の御発言がございましたから、したがいまして本庁におきまして資料を整えさしました。そして、その資料に基づきまして安全局において調査を進めた次第でございます。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、具体的に亡くなられた方の追跡調査をなさいましたかと聞いているんですね。いまの調査をさせたということは、恐らく該当の各電力会社に報告を求めた程度じゃないんでしょうか。どうでしょうか。
  72. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  原子力施設、特に原子力発電所に働いております従事者の死亡ケースにつきまして従来も何回か問題になったことがございまして、たとえば東京電力の福島の発電所につきましてたしか昨年の初めごろ問題になったこともございます。そのときにも一応の調査、これは主として電気事業者がやったものでございますが、そういうことを行っております。  なお、今回の楢崎先生の御指摘に対しましても、電気事業者に連絡をいたしまして追跡調査な行わせておるわけでございます。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまお答えのとおり、政府みずからが追跡調査をしたことはないんです。原発をやっている電力会社の報告を求めたにすぎない。それは確認しますね。
  74. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力施設の従業者の健康管理の責任は、第一義的には原子力施設者にあるわけでございます。そういう立場からいたしまして、原子力施設者がまずこれを調査するということになるかと思います。  なお、約一年前のことでございますが、福島の場合につきましては、念のために、科学技術庁といたしましても一部につきましての調査はいたしております。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一部とはどこのだれですか。
  76. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいま詳細な資料を持ち合わせておりませんので、後ほど御報告申し上げたいと思います。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 詳細な資料はないんでしょう。この場を逃れるためだけのそういう答弁をやっちゃいけませんよ。  そこで、宇野長官は正しいことを言われているんです、この十二日の答弁の中で。「安全なくして原子力の開発はございません」、裏を返せば、安全性がなかったら原子力の開発はすべきでない、こうなりますが、それでよろしゅうございますね。
  78. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 現在のところ、原子力発電は安全でございます。先ほど申し上げましたとおりに、原子力発電所における放射線によるところの障害はわが国においては今日までない、これが私に対する報告でございます。  しかしながら、やはり原子力は国民に十二分にまだ理解を仰いでおりません。その点におきましては、いままで安全性の確立に行政面においても欠くるところありはしなかったかと、こうしたことから、御承知のとおり今日法案をこの国会にも提出をさせていただきますが、いわゆる安全委員会を設立をする、さらにはまた、安全の規制に関しまして各省庁一元化する、そうした新しい政策を今後強力に進めていかなければならない、こういうことの意味で申し上げたわけであります。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ついせんだっての報告でございますけれども、福島原発で事故が起こっておりますね。ノズルの事故だと言われております。いま福島の原発所在地周辺に、機械を提供しておるゼネラル・エレクトリックの社員の人が、われわれの調査によると二百名ぐらい来ておる。一体どういう事故であったのですか。ノズルと言われておるけれども、そうではないでしょう。重大な事故が起こっておるはずです。恐らく原子炉そのものももう撤回しなければならないほどの事故が起こっておるはずですが、どうですか。
  80. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の点は、福島の炉におきまして定期検査中に、給水ノズルと申します部分の検査をいたしまして、その部分におきましてクラックが発生しておるということが確認されたわけでございます。これはその原因も推定をいたしまして修理をいたすわけでございます。ただ、この案件は、もちろん看過するほど軽微なものではございませんけれども、非常に重大な事故であってそのために原子力施設の安全性全体が損われるというものではない、と私どもは理解をいたしております。なお、この修理につきまして……
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いいです。その答弁であったらいいです。  何でGEの人たちが二百人以上も来ておるのですか。
  82. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  この給水ノズルのクラックにつきましては、米国の原子力施設、特に沸騰水型原子炉で当初発見をされまして、わが国においても同様の原因からあり得るということで、定期検査の機会を利用いたしまして調査をいたしました。(楢崎委員「簡単にしてください」と呼ぶ)その関係がございまして、つまりこの沸騰水型の原子炉は米国のGEが開発したものでございます。この福島の施設につきましても原子炉の設計は当初はGEの設計になっておる、こういうことでもございますので、GEとは常に連絡をとっておる、こういうことでございます。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私どもいま内部調査を急遽やっておるところです。単にノズルの故障ではない。先ほど言ったとおり原子炉の内部にずっとひびが入っておる。そしてそのために相当の被曝犠牲者が出ておる。すでに放射線被曝許容線量を大多数の人が超えておる。そういうものを含めていまGEから応援に来ておる。恐らくそれが実情だと思います。だから、政府の方もそういう観点からひとつ厳密に調査を進めていただきたい。  そこで、私は同期生だから言うわけではないけれども、宇野長官になって非常に姿勢が変わってきた点は評価をいたします。そのうちの一つ調査に対する協力であります。それは評価をしたいと思っております。で、私が問題を提起してからやっと、急遽、電力会社からいわゆる被曝にかかわる死亡者の、因果関係は後で言いますけれども、報告が出された。報告を私見ました。われわれがすでに調査している点と合わせてみました。われわれの調査しておる人たちが含まれておりますから、その人たちについてはやや信憑性がある。そこで、いま長官が、被曝によって亡くなられたというような人はいない、その判定は一体どこからされたのか。すでにお手元に資料を配っておりますけれども、たとえば各原発ごとの表を出しておりますね。この表を見て、あわてて、電力会社の方からのそういう因果関係はないという報告だけで問題はないと判定されておるのじゃありませんか。どうですか。
  84. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  先生からお示しいただきました資料、たとえば「放射線被ばく死亡下請労働者(業務外)」七十八名、その内訳が、たとえばがん関係三十三、白血病三、こういうふうな数字をいただいております。この下請労働者はかつて原子力発電所で働いておった方であり、退職後死亡された方を調査したわけでございます。その中には放射線作業に従事した者もおりますれば、従事しておらない者もおるわけでございます。この数字がどういう意味を持つかということにつきまして、これはきわめて医学の専門にわたることでもございますので、とりあえず私どもで第一次的にこれの解析を私どもなりにいたしたわけでございますが、まず一つ申し上げられますことは、この程度の数字でございますと非常に少数例でございますので、統計上の判断ということがどの程度的確にできるか、多少疑問はあるかと思いますが、それを一応前提といたしまして、たとえば全国平均での死亡者の中に占めるがんとか白血病とかそういうものの発生率と比べてみまして果たして有意の差があるかどうか、これが問題かと思われるわけでございます。これはなお詳細な調査を今後続ける必要があると思いますけれども、ただいま私どもが一次的に試算しましたところでは、それほどの有意の差はないと考えられる、こういう所見に達しております。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま表のことを出されましたが、これは私は提出された資料でこういう集計をやってみたわけです。日本原電の敦賀原発、業務外の十名、これは美浜とダブっておる面がございました、精査してみますと。だから、これは七になって、そのうちのがん関係五が四になり、脳関係が二になり、心臓関係がゼロ、したがって、合計のところ、七十八が七十五になって、がん関係が三十二、脳関係二十三、心臓関係十二、このように訂正をしたいと思います。なお、これは全調査ではありません、電力会社の中には追跡調査八五%というところもありますから。ただいま出されておるものは、運転を開始してから今日までの、正確に言えばことしの二月までの統計になる、このように思うわけです。  まず、この表から私どもすぐわかりますことは、この表にあります死亡原因ですね、死因だけ見てこれを判断できない。たとえば、そのために、もう一つの資料にありますとおり、別表の1にありますとおり、これは七二年、日本医学放射線学会が発表されたレントゲン関係に従事しているお医者さんの物故者でございますけれども、死因を見て判断できないというのは、この「主な障害部位と状態」を見られればわかるとおり、「死因」はたとえば「脳出血」となっておっても、あるいは「狭心症」となっておっても、「心不全」となっておっても、それまでの具体的な症状を見てみないとこれは判断できない。まずそのことが一番に言えるわけですね。  それで、厚生大臣にお伺いしますが、いま全国の死亡者のうち、がん関係は何%ぐらい占めておるのですか。
  86. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 五十一年の統計はまだまとまっておりませんが、おおむね十三万六千名ぐらいになるのじゃないかと思います。したがって、総死亡者が七十万ぐらいでございますので、パーセントといたしましては二%弱でございます。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 さっき原子力安全局長は、全国平均をとってみてもこれがそう多いとは思わないとおっしゃいましたが、いまの報告だけ聞いても、がん関係は死亡者のうちの二%です。原発関係では七十五名のうち三十二名です。半分近いですね。あるいは脳関係、心臓関係、これも被曝と関係がある、後ほど申しますけれども。この数字を見ただけでも、これは異常だ、こう思わなくてはなりません。専門家の分析をお願いしても、そのとおりであります。  そこで次に、問題は、ここには被曝線量は外部被曝だけであります。重要なのは、外部被曝というよりもむしろ内部被曝である。そしてこれは時間をかけて出てくる。そして、外部被曝のときに問題になるのは、体の深部まで浸透するエックス線、ガンマ線あるいは中性子線。内部被曝のときには逆にアルファ線やベータ線が問題になる。ここが重要なんであります。そこで、この内部被曝が一体どのように計測されておるか。いま私も行ってみまして自分でわかったのですけれども、まずポケット線量計は何ミリレムまであらわれますか。
  88. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在原子力発電所で一般に使用されておりますものは二百ミリレムまでの目盛りがあると承知いたしております。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それを超したらどういう状態になるか御存じですか。
  90. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  それを超して振り切れるということは一つの問題でございますが、それに備えまして別途フィルムバッジを備えて、フィルムバッジの方でその量をさらに確認をする、こういうことになっております。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 また、入るときにアラームメーターを携帯させられる。アラームメーターは何ミリレムで鳴るのですか。
  92. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 作業場の状況によりまして、設定点が一定であるかどうか、ちょっと詳細を私は存じておりませんので、後刻御報告申し上げます。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 つまり、このフィルムバッジやポケット線量あるいはアラームメーター、これはガンマ線による被曝線量の計測にしかすぎない。それはそうですね、間違いありませんね。
  94. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから内部被曝に一番重要であるアルファ線あるいはベータ線は出てこないわけですね。  次にその内部被曝ですが、これはホール・ボデー・カウンターでやっております。ホール・ボデー・カウンター、これでアルファ線、ベータ線が出てまいりますか。
  96. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように外部被曝よりも内部被曝の方が重要である、まさにそのとおりでございます。そういう観点から、私どもといたしましても原子力施設者に対して十分な管理を行うように指導をいたしておるわけでございますが、先生のただいま御指摘ございましたように、内部被曝の検査につきましてはホール・ボデー・カウンターを使う。あるいは尿の検査をする。こういうふうなことをいたしまして……(楢崎委員「私の質問に答えてください」と呼ぶ)アルファ線、ガンマ線の核種が捕捉されるのはホール・ボデー・カウンターでございます。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 本当ですか。
  98. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 いま少し詳細に申し上げますれば、出てまいりますガンマ線のエネルギー準位を十分測定いたしまして、その結果どういう核種が体内に取り込まれておるか、こういうことを調べるわけでございますから、非常に厳密に申しますればアルファ線そのものをはかっておるわけではございません。そういう意味では私の御説明は不十分であったかと思いますので、訂正させていただきます。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しょせんガンマ線だけでしょう、これも。
  100. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 放射性核種が放出いたします放射線は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、いろいろ組み合わさって出てまいるわけでございます。したがいまして、アルファ線を放出する核種をはかりますときに外に出てまいりますガンマ線のエネルギーその他の特色から推定することができる、こういうことであると私は理解いたしております。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのホール・ボデー.カウンターではガンマ線しかだめなんですよ、局長、あんなに言っているけれども。それは後でお調べになるさっきの点と一緒に報告してもらいたいのですけれども、結局内部被曝にとって大事なアルファ線やベータ線をはかれない、それをまず明確にしておきたいと思います。  そこで、いまこの被曝と病気あるいは死亡との因果関係について国際的に一生懸命検討されておるのです。ローレンス放射線研究所の有名なタンブリン博士は、その研究の結果、内部被曝はそのときの外部被曝の五倍から十倍だ、そう指摘しておる。とするならば、この表にあらわれた被曝線量は五倍から十倍してみないとわからない、判断できない、こうなります。十倍すればほとんど許容線量を超える、こういう結果が出る。つまり逆に言えば、いま国際的に言われておる年間五レムあるいは三カ月三レム、この許容線量は高過ぎる、もう少し低くしなければならない、十分の一にしなければならないということがいま言われておるのですね。だから、この電力会社が許容線量として以下だと言っている、このことにまず問題があるということを宇野長官ひとつよく認識をしていただきたいわけです。後ほど労働省の昨年十一月に出しました——これもやっと出した。労災認定基準の場合の被曝の関係を改めて放射線量と絡めて出してまいりましたね、これも私は後で指摘をしますけれども、この因果関係というものが、やはり放射線が直線的に入るんだ、ちょっとでも被曝を受けたらこれはもう因果関係ありと見る方が正しい、もしそうでないならばそうでないという挙証責任は事業者側にある、こういうことなんです。  そこで私は、この表の中から被曝線量のもうとても少ない方、少ないけれども実際にはどういう状態であるか、その例を一、二挙げたいと思うわけです。これはここに書いておるとおり、別表の3の二です。名前は全部わかっておりますけれども、御家族等の問題もあるし、プライバシーの問題もありますから名前は伏せます。お医者さんの名前も伏せます。この少ないけれども実際には本人はどういう状態であったか。  これは敦賀原発のS氏の場合であります。住所北海道、死亡年月日五十年四月二十五日、三十四歳で亡くなられた。所属は北海道電力、職務内容は定期検査研修、被曝線量は〇・〇三レム、作業期間は四十五年十月三十日から四十五年十一月二十七日、死因は慢性骨髄性白血病、被曝手帳の保管場所は原電、こうなっています。このSという方は北海道電力の原子力部の計測の技術者でありました。北電は岩内に原発をつくる計画がある、その教育訓練のために四十五年九月三十日から行われた敦賀原発の定期検査の研修に派遣をされた。約一カ月出張しておるのですね。そして定期検査に立ち会った。この定期検査のときが実は非常に危険なんであります。そして、その後本人は、四十六年から約二年間、日本原電に出向しておるのです。やっと本人が白血病であることがわかったのは、出向した四十六年の健康診断のときであった。四十八年からだんだん症状が悪化をいたしまして、北海道大学の付属病院で亡くなった。病名は慢性骨髄性白血病であります。残された遺族の方がこの被曝との因果関係を非常に心配をし、問題にし始めたところが、昨年の四月一日付でその未亡人を北電の正式社員として採用した。これはほかにも例があります。文句を言うとその未亡人を雇うのですね。悪く考えれば口封じということになるでありましょう。これが一つの例であります。  次に、別表5の1であります。これは私は過去診察をされた、あるいは死亡診断書を書かれたお医者さんに全部照会をいたしました。約半数が返ってきました。このお医者さんの回答を見ますと、非常に良心的なお医者さんと、木で鼻をくくったような回答をしたお医者さんとあります。非常に顕著であります。それで、このお医者さんから来ました来信によって別表5は書いておるのですね。  たとえば神戸市のE氏の場合です。これは美浜。〇・〇二レム、この人は膵臓ガンです。そして詳しくここに書いておるとおりでありますが、もちろんこれは被曝と病気の因果関係についてはそれ以前に診察していないからわからない、これは本当だと思いますね。だから、元ABCCなりあるいは放医研あたりの権威ある専門家に聞かれた方がいいのではないか、これは私正直だと思うのです。  ところが、同じ方が三菱の神戸病院にもかかっておる。この神戸病院の返事は、ほかにいろいろ私は聞いておるのにそれは何も書かないで、ただ一点書いておるのは何か。放射線被曝と病気との因果関係はなかった、そのほかのことについては医師の守秘義務があるからだめだ、こういう回答ですね。  私はこの二人のお医者さんの回答ぶりを見まして、同一人物に対する二つの病院の対応の仕方、まことに特徴的であります。実は、入院加療をして、死亡診断まで書いたのは海星病院の方です。だからこっちの方が詳しい。三菱病院の方は一番最初にちょっと見せに行って初診をしただけですよ。初診をしただけのくせにこういうふうに因果関係がないと言い切っている。詳しく診ておって、そして最期死に水までとったお医者さんの方は、因果関係についてはよくわからない。なぜか。はっきりしているのです。三菱の神戸病院は三菱重工の病院だからです。つまり隠匿をしようという理由、それ以外にないわけでしょう。もし因果関係が問題になると、親元の三菱重工の責任が問われるからでありましょう。だから、非常に良心的なお医者さんはそういうふうでにわかに判断はできない、これが世界の大勢でもあるわけですね。  そこで、今度はこの表で全然被曝がゼロの人がありますよ。ゼロの人は全く関係なかったか。具体的に当たってみましたら、これが別表4です。別表4にあります。どういう症状になっているか。これは作家の吉原公一郎氏の調査結果ですから、すでに明らかにされておりますので、氏名もここに明らかにしております。  この方もリンパ腺腫瘍、すなわち白血病です。ここに報告しておるとおりです。最初の症状は死亡する一年前、そして食欲不振、倦怠感、胃の調子が悪い、のどのリンパ腺がはれる。そして病院側は、これでもそうですけれども、病院側は被曝の事実があったというのをほとんど知らない。なぜならば、大臣はいろいろおっしゃっているし、局長もおっしゃっているけれども、本人たちはこの放射線管理手帳というのを持たないのです。被曝手帳を持たない。だから自分がわからないから、お医者さんがわかるわけがない。もしわかっておれば別の治療方法もあったろうということをおっしゃっているお医者さんもある。  それから今野忠という方です。この方もこれに書いておるとおり。つまり、その原発に働きに行っておる途中でだんだん鼻血が出てきた、これが急性骨髄性白血病。この表で、たとえ被曝線量がゼロの人でもこういう症状です。白血病です。つまり、ここに出ておる外部被曝線量では問題にならない。内部被曝線量こそ問題である。そして内部被曝線量はホール・ボデー・カウンターでやっていると言うけれども、全部やっていない。私、調べた。社員の人はやっております。下請労働者はやられていない。つまり使い捨てなんです。  それでまたこういうことを学者は言っているわけです。放射線の被曝は、線量の合計が同じでも、短期被曝の方が長期被曝より影響がはるかに大きい。すなわち、被曝線量のほかにどれだけの期間にそれを受けたかが大きな意味を持つわけです。だからこういう表ではわからない。この期間のうちのどこでどの現場で何時間働いたか、そしてそのときの空間線量はどうであったか、またその近所のいろいろな機械についている表面の被曝率はどういう状態であったかということまで見ないと、簡単には判断はできないのですよ。さらに、放射線による急性の障害では、致死量と影響を与えない量との間、つまりちょっとの量の間でも余り大きな開きはない、急性の障害の場合。その例が先ほど挙げた三十四歳の方です。短期間に浴びている。致死量を浴びたかどうかは問題じゃないということになるわけであります。  それから、次に被曝手帳。この被曝手帳は、作成義務というのは法的な強制力はありますか。
  102. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 法律に基づくものではございませんで、いわゆる元請業者が自発的にその従業員の放射線管理の目的のために使用しておるものでございます。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これも被曝の登録制度ができたらきちっとなるわけですか。どうですか。
  104. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在、原子力発電事業者、つまり原子力発電所側では台帳を十分備えて、それで管理いたしておりますが、それで十分であるか、先生御指摘のようにいわゆる被爆手帳も整備させるという方向でいくか、十分検討をさせていただきたいと思っております。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は美浜を調査に行ったときに、その下請の幹部の人にぜひおってくれという連絡をした。そして、特定の人を私が指名をしまして、その台帳その他の資料を見せてもらった。何年か前に亡くなられた方ですけれども、出てきた台帳は真新しいのですね。そして、もう時間がありませんが、書かれておる線量は非常に間違いがある。私が行くから急遽そのようにつくられたのでしょう。だから、台帳とおっしゃいますけれども、台帳が全部完全にそろっておるとは思えない。  そこで、私はさらに聞いてみたいと思うのですけれども、これから先労働大臣に関係がありますが、下請の労働者はやはりこの種の問題についての知識がない。しかも、会社の方もごまかそうとする姿勢でございますから、そこで結局本人も知らない。知っておってもごまかすのです。なぜかと言うと、許容線量に非常に近い被曝を受けた下請労働者は、賃金の安いところへ配置がえをさせられるか、首です。だから、生活がかかっているから、恐ろしさを余り知らないのでごまかす傾向がある。それで、危険度の多いところと少ないところで賃金の差がある。これは危険なところは、一日五分間で一万円。一日五分間入っただけで一万円です。危険度の少ないところは日給三千円、こういう状態ですね。被曝があの許容線量に近づきますと、その人はそういうところから外されるから、賃金の高い職場から外されるわけです。だから、ごまかすという傾向が出てきておるわけですね。これが実態です。さらに、結局手帳を本人が持ちませんから、お医者さんに行っても自分はどれくらい被曝しておったか言えないわけでしょう。だから因果関係を証明しようと思ってもその下請の人は証明しようがないのですよ、これは労災との関係が出てきますけれども。  労働大臣、わかりますか。だからいま、そういう被曝歴が明らかでない人はどういう取り扱いをするかというのは国際的にすでに定着している。一定の量、つまり、私は三十ではありませんけれども、三十歳の人ならば被曝歴が明らかでない場合はそれから十八を引く。そうすると十二になりますね。それに五レムを掛ける。六十レム。六十レムがかかったものとするようになっているのですね。これは御存じのとおりです、厚生大臣ももう知っておられると思いますけれども。そういう状態ですね。しかも、いつの時点で犠牲者がふえるかと言うと、原発が事故を起こしたときです。原発の事故があったときは運転を停止する、そして修理に入る。だから下請労働者がそのときふえる。そして危険なところへ行って修理作業に従事する。だから事故があったとき統計的に見てもずっとふえておるのですね。だからこの因果関係というのは大変むずかしい。臨床的にやるのはむずかしいから統計学的にこれを見ていくという方法がいまとられつつあるのです。  たとえば、私もびっくりしたのですけれども、全がん、白血病にしぼって厚生省に調査を依頼した。コンピューターをはじいて出していただきました。この別表2であります。この別表2で見ますと、全国平均それから福井県、その中の敦賀市、美浜町と出してもらいました。ここで粗死亡率のところを見てみますと、美浜町のごときは四十九年度は全国の平均が男の場合一四〇に対して二七七。二倍ですよね。そうして今度美浜町だけに限って見ますと過去の二倍になっておりますね。美浜町はたとえば四十八年が一三九。これに対して四十九年は二七七。二倍になっている。これは一体何を物語るか。やはり因果関係というものを抜きにして考えられないと私は思う、こういう異常な状態というのは。だからこれから一体どのようにすべきか、これを考える必要があると私は思うのです。たとえばこの表の中で死亡者数のところで白血病がありますね。この中の美浜町に四十八年一名、四十九年一名。これは役場に行って調べてみた。幼児であります。その両親も調べてみました。親の方が日雇いで原発に働いておった。これが事実であります。ここにも私は大変な懸念を感ぜざるを得ないのであります。  それで石原さんに聞きたいのですけれども、あなたは核問題についていろいろ言われておりますが、このような現象に対してどうお考えになりますか。それが一つであります。  それから午後にやりたいと思いますけれども、この種の測定、これは全部、この表もさっき言ったとおり企業側からきておる。このような測定は企業に任してはごまかしが起こる。これに対して対策があるはずですね。どのようにやっていかれますか。
  106. 石原慎太郎

    石原国務大臣 放射能の汚染の問題は、現在の法体系では科学技術庁に属する問題でございますが、われわれの生活環境にとって欠かすことのできない要因でございます。そういう意味でアメリカのNEPA等ではアセスメントの中にもこれを入れておるわけでございますけれども、日本の場合にはそうもまいりませんので、科学技術庁と緊密に連絡をとってそういう事態が起こらないように監視をしていくつもりでございます。(大原(享)委員「聞いてないじゃないか」と呼ぶ)聞いております。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 まじめにやってくださいね。ここはテニス場じゃないから。  いま私が言ったような統計上の問題について環境庁長官としてのお考えを聞いてみたい。  それともう一つは、さっき聞かれたとおりです。これからいろいろな追跡調査なりあるいは、午後問題にしますけれども、測定等をやっていく。こういう報告でもわかるとおり企業側に任しておったのではごまかしが出てくるから、きちんと資格を持った人がやらなければいけない。そういうことについて用意があるでしょうとわざわざ言っておるのです。
  108. 石原慎太郎

    石原国務大臣 昨日も石野先生の御質問にお答えをいたしましたわけでございますけれども、環境庁がこの放射能の汚染を調査するということになりますと、非常に高度の技術を要するものでございまして、人材の確保等非常にいろいろな問題がございます。関係の役所間に決して不信感があるわけではございませんので、科学技術庁と緊密に連絡をとりまして、美浜に限らずそういった懸念の起こらないように努力するつもりでございます。
  109. 楢崎弥之助

    楢崎委員 約束の時間が参りましたから、後に回しますけれども、いまのようなお答えではまことに頼りない。これは午後再び問題にしたいと思います。  それで先ほど二点ほど調べてみるという問題がございましたから、午後その点の御回答をいただきたいと思います。一応これで終わります。
  110. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの保留されている質疑のお答えを、午後答弁を願いたいと思います。申し上げておきます。  午後一時十分より再開することとし、この際休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  111. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  112. 楢崎弥之助

    楢崎委員 午前中に引き続いて、この安全管理のずさんさについて質問を継続したいと思います。  島根でもいま事故が起こっておるわけですが、これは最も優等生と言われておった原子炉でありますけれども、今回のあの圧力容器内のひび割れというのは、いままでにない初めてのケース。そこで、日立製作所の方は二カ月間で約一千人の作業員を送り込んでおると思います。そして作業時間は一日に五分、ということはいかに危険な区域で作業が行われておるかということを証明するわけですけれども、特に私どもが接触したところによると、なるたけ労働者の人は一般の住民と会わないように、接触しないようにしなさい、専用のタクシーまでそのために使っておる。そういう状態について御存じでございますか。
  113. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  島根発電所につきましては、制御棒駆動水の戻りノズルにクラックがございまして、これにつきまして修理が必要でございますので、御指摘のとおり修理工をいわゆる計画被曝と申しますか、ある線量以上は絶対に放射線を受けないという厳重な管理のもとに修理をいたすということになるわけでございます。ただその場合に、一般的には一日の被曝量をたとえば三百ミリレムに制限するとか、一週間に千ミリレムに制限するとかというふうなこともいたしておりまして、法規上は三カ月三レムという上限、年間五レムという上限がございますが、一度にそれをなるたけ食わない、消費してしまわないような配慮をいたすというのが基本的な指導の方針でございます。
  114. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことを聞いていないのですよ。いま日立から千人ぐらい動員されて送り込んで、いま急遽やられておる。しかも一人一日に五分間ぐらいの作業、そういう状態の中で行われておるというのを確認していますかと聞いているのです。事故の内容は知っていますよ。
  115. 武田康

    武田政府委員 お答えいたします。  島根発電所につきましては、本年一月早々から定期検査に入ったところでございます。定期検査で調べております過程で、制御棒駆動水を原子炉の中にまた戻すというようなノズルがございまして、そのノズルの一部に軽微なひび割れでございますけれども、発見をいたしました。それで、これにつきましては詳細を調査いたしまして、いかなる処置をするかということを決めるわけでございますが、実は同時に福島発電所で定期検査中に発見されております給水ノズルでのひび割れがございまして、これの要因とある程度共通するような性質を持っているかと思われますが、その辺、調べまして処置する予定でございます。  なお、定期検査につきましては、原子力発電所の各パートにつきまして、いわば分解して、それで欠点といいますか、故障あるいはその傷等、そういうものを全部片づけまして、それでしかるべき処置をして、それからまた組み立て直す、こういうようなのが定検のプロセスでございますけれども、その過程で、何分にも原子炉本体を構成するようなもの等を取り外しましたり点検いたしましたり、そういう作業がございます。これは御指摘のように放射線被曝といいますか、放射線レベルの高いところの作業でございまして、かなりの人員を要します。島根発電所につきましては数百人、八百人とか九百人というようなオーダーで聞いておりますが、そういう作業者が発電所でそういう作業に従事するということを聞いております。  なお、島根発電所につきましては、先ほど申しましたような制御棒駆動水の戻りノズルでございますけれども、そういうものも発見されましたので、定検期間がやや延びるかと思っております。  先ほど御指摘の、一日五分間とおっしゃったかと思いますけれども、そこについては、何分間で制限ということについては私どもいまの段階では聞いておりません。  それからなお、定検作業に当たりまして、そういう場所でございますので、たとえば一日何ミリレム以下にコントロールするとか、あるいは定検期間を通じてこの範囲にコントロールするというようなコントロールレベルとでも申しましょうか、そういうものをそれぞれの事業所が決めて、その範囲で作業を進めるというようなことをいたしておりまして、そういうような関係もございましてかなり人数が多くなっておるというのが現状でございます。
  116. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これも私は大量の被曝者が出てくるのではなかろうかと心配をしておるところであります。  労働省は昨年十一月急遽通達を出されて、この放射線に係る疾病の業務上外の認定基準について、その前に出されておる通達、昭和三十八年三月十二日ですね、どこが違うのですか。
  117. 石田博英

    ○石田国務大臣 放射線障害の労災法における認定にはいろいろ問題がございまして、認定基準をつくるのに努力をしておりましたが、いまお話しのように、昨年の十一月に専門家会議の結論を得ましたので、認定基準を改定いたしまして通達したわけでございますが、具体的な相違点その他は基準局長からお答えをいたします。
  118. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 お答えをいたします。  昨年十一月につくりました新しい認定基準と旧認定基準の違いを申し上げますが、大まかに申しまして、第一は疾病の範囲を拡大いたしたことでございます。特に各部位における悪性新生物、退行性疾患等に注目いたしまして疾病の範囲を広げたわけでございます。  第二番目は、従事年数と疾病を起こします被曝限界値、あるいは因果性の認められます線量を明示しまして、言うなれば、先ほど先生がおっしゃいましたように、統計的な方式を入れまして、少しでも被曝をしました場合、特に白血病等につきましてはその認定をしやすくするという方式を取り入れたわけでございます。  それから三番目には、線量評価の方法を示しまして、個人の測定値偏重の危険性というふうなものを指摘いたしております。その他環境調査等の方法を明示いたしました。以上です。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この新しい通達でやりますと、これはほとんど認定されませんよね。この中に書かれておる考え方でいけば、広島か長崎の原爆のああいう大量の事故が起こらないと認定されない仕組みになってます。一体この線量はどこから出してきたのですか、こういう高い線量。しかも、大体現在国際的にどういう考え方になっているかというのを知っているのですか。これでいったら、つまりこの通達は労災認定から被曝労働者を切り捨てるという方向になっているのです。  それで、もう一度確認をしておきますけれども、いままさにこの通達は企業側が考えておる考え方と同一なんですね。つまり一定量以下の被曝は障害がないんだ、そこに閾値を設ける、こういう考え方ですよね。全く企業側と一緒なんですよね。それで、現在ICRP、つまり国際放射線防護委員会、これが一番権威があるわけでしょう。そうでしょう。ここの考え方はどうなっているか知っていますか。つまり放射線被曝による生体への効果というものは閾値というものを設けない、閾値が存在しないと考えることを原則としておるのですよ。これは全く逆の方向です。企業と同姿勢なんですね。根本的にその問題がある。  それで、いま線量といろいろな病気との関係、これは直線的な関係がある、もう大体こうなっているのですね。たとえどのようなる量の被曝を受けても、その人はそれに応じた障害を受けることはもう明らかなんであります。ただ、低線量の場合については確率的な障害が考えられるわけですけれども、いずれにいたしましても被曝をすれば補償をするという観点に立たなければこれは何にもならない、はっきり言えば。先ほども申し上げたとおり、結局これは、その因果関係についてはむしろ企業側に挙証責任があるのであって——今日の考え方もそうでしょう、因果関係がないんだというのを証明するのは企業者側ですよ、この挙証責任は。しかも類型をずっとしてありますね。この類型の意味というのは一体何ですか。たとえば短期、長期分けていらっしゃるけれども、結果は同じですよ。遅いか早いかだけの話でして、こういうことは意味がない。むしろこういう分け方をするならば、長崎、広島の原爆患者、原爆被爆者、この被爆者が保健手当をもらうときの病名がありますね。十挙げておられますね。ここにありますけれども、十障害。これすらまだ問題があるけれども、むしろこっちの方がいいくらいです。障害名がずっと具体的に書かれております。だから、こういう通達を出すということは、もう結果としてはその労災認定が受けられないというような方向になるんじゃないかと思うのです。ここに解説がありますけれども、解説も一緒ですよね。解説が書かれておりますけれども、いま私が言ったような点がやはり問題であると思うのです。とにかく被曝すれば、どのように線量が低かろうと影響があるものという認識に立つことがまず第一番に必要である。それから、特にがんあるいは白血病、これはむしろその因果関係というものを肯定的に考えるべきである、こういう傾向にだんだんなってきておるのですね。ここにいろいろ、こういうふうに書きなさいということがありますね。これは一体だれが書くのですか。実地調査表というのがありますね、これは一体だれが書くのですか。
  120. 石田博英

    ○石田国務大臣 なるべく労災認定が広く受けられるようにという意図のもとに作成したつもりでございます。しかも専門家会議の結論を待ってつくったもので、いま申しましたような意図のもとにつくったものでございます。ただ、私は専門家でございませんので、担当局長より……。
  121. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 お答え申し上げます。  別表の調査表は、問題が起こりましたときに担当官が参りまして、一々チェックして書くものでございます。
  122. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どの担当官が行くのです。担当官がこういう調査をずっとやるのですか。
  123. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 具体的な認定に当たりますために、労災認定を担当いたします担当官が参りまして、チェックをいたすわけでございます。
  124. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何からチェックするのです。——そこにおってください。何からチェックするのですか。
  125. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 具体的な実地に基づきまして、チェックしていくわけでございます。
  126. 楢崎弥之助

    楢崎委員 こんな線量をはかるのですか。作業の具体的な内容なんかはどうやってこれへ書き込むのですか。
  127. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 作業所に備えつけておりますいろいろな記録によりまして、チェックしていくわけでございます。
  128. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、さっきから言っているとおり、これはあなた方自身がやるんじゃないでしょう。企業がやるんでしょう。企業がデータとっているものをそのまま写す、そういうことになるのでしょう。
  129. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 安全衛生法及び電離放射線予防規則によりまして、事業主は一定の必要な記録をしなければならない。その記録に基づきまして、先生おっしゃいますようにチェックしていくわけでございます。
  130. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのもとになるのはだれが一体つくるのですか。
  131. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 それは企業がやっております。
  132. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何度も同じことを言わせないでくださいね。だからだめだと言っているのです、私は。もうそのまま写すだけなら、こんなこと直す必要ないのですよ、こんなことなら。  環境法に基づく環境測定士というのはどういうことをするのですか。
  133. 坪川信三

    坪川委員長 早く。担当官だれですか。
  134. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 作業環境測定法に基づくものでございますれば作業環境測定士が測定をする、こういうことになっております。
  135. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはどういう立場の人ですか。
  136. 山本秀夫

    山本(秀)政府委員 お答えします。  国が行いました試験に合格をした者を測定士として登録するわけでございます。
  137. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、これに書き込む場合に、その人と関係ないのですかね。どういうことを測定するのですか。
  138. 山本秀夫

    山本(秀)政府委員 測定士は企業内に設置する場合と、それから企業外におりまして企業から依頼を受けた際に測定をするということになっております。
  139. 楢崎弥之助

    楢崎委員 とにかくお聞きのとおりですよ。何もかにも企業ですよね。これでは納得のいく安全管理ができるわけがないのですね。もう少し政府自身の責任の体制というものを明確にできないのでしょうかね。しかも、各省ばらばらでしてね。これから現実の問題になるのですよ。私は、今度総理が行かれて、こういうことが問題になると思いますよ、この安全管理の問題は。そういう問題があるから核拡散だめだと言うのですから。  環境測定士というのはどの機関に所属して、だれがそういう試験をやるのですか。
  140. 山本秀夫

    山本(秀)政府委員 企業内に所属する場合と、中小企業を例にとりますと企業外におりましてそれを業とする場合とがございます。この試験は、労働大臣が行う、あるいはまた労働大臣が指定をした試験機関がこれを行うということになっております。
  141. 楢崎弥之助

    楢崎委員 とにかく非常に無責任な体制ですね。それを労働大臣もぜひ認識していただきたいのです。原発をどんどん進める。進めるはいいが、そういう犠牲者に対しての管理というものは一体だれが責任を負うのか。国の方がそういう政策を推進をして、責任はとらない。  特にこの中で、肺がんというのは認定の場合にどういう取り扱いを受けるのですか。
  142. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 肺がんにつきましても認定基準をつくりまして、そしてこの問題、相当因果関係がむずかしゅうございますので、本省に稟伺をさせまして、関係の専門の方々と相談しながら決めていっております。
  143. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どういう場合に認定されますか。
  144. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 特に内部被曝に注目をいたしまして、その所見を専門の方に御相談しながら決めていくことにいたしております。
  145. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その別表三に記しておりますけれども、これは美浜原発の下請労働者の場合ですけれども、被曝線量が四・〇五レム。相当高いですね。もう許容線量そこそこです。実際にこの方の状態を調べてみました。五十年十一月十三日に亡くなられております。元請は関電興業、下請、宮川興業、職務内容は清掃及び管理区域出入口のチェック。具体的に聞いてみますと洗たく機等の係。この洗たく機というのは、行ってみればわかりますけれども、危険区域に入るときに着がえますよね。その着がえたものを出るときに出す。そういうものを洗うから汚染されている。これは非常に汚染度の高いところです。この方は、五十年の七月にたまたま交通事故で足をけがしたので、十日間入院した。そのときに初めて調べられて、肺がんでもう手おくれだと言われたんですね。ところが、この人は同年の二月に健康診断を受けている。二月のときは何ともなかったのです。ずっとそれまで働いてきて、被曝の集積線量が高まってきておったんですね。そこで、もともと本人は非常に強かった。だからそういう自覚症状がなかった。それで仲間の人のうわさによりますと、非常に危険な場所にこの方は入っておった。しかも防護服などをつけずに入っておったことがある、こういうことですね。それで、このF氏の御家族に会いますと、家族の人はもう完全に被曝のせいだ、こう思い込んでいるのです。もちろん被曝手帳はない。見舞い金というのは香典ともにたったの五千円。こういう人の場合一体どうなるのか。私はもう時間がないから出しませんけれども、データを全部調べてみますと、美浜から敦賀原発に行って、敦賀からまた美浜に帰ってきて、美浜からまた敦賀に行っている。しかも、敦賀原発に行ったときは非常に線量が多いんですね。  もともと運転歴が古い原子炉ほど汚染度が進んでおります。いま大体原子炉というのは耐用年数は何年になっているのですか。
  146. 武田康

    武田政府委員 お答え申し上げます。  税法上の取り扱いでございますけれども、総合いたしますと十五年ということになっております。ただし、いま申し上げましたのは税法上の取り扱いでございます。
  147. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はここで、せっかく私自身も調べてみましたから、追跡調査結果の分析をしてみたいと思うのです。それで、ぜひ今後のいろいろな手当ての参考にしていただきたい。  まず、診断サービス等々が国会で言われたけれども、まだそれはできていないんでしょう、公約をされたけれども。つまり万全の体制をとるということをいつも答弁されるんですけれども、そういうふうになっていない。それでアラームメーターが鳴るとしますね、鳴っても、のかないんですよね、実際に。管理がうまくいってないから、そこで働きを続ける。そういう状態がある。それでいまの——総理、これから先聞いておってください、アメリカに行かれる場合にですね。いまの原子炉の稼働率というのはもう五〇%を割っているのです、事故ばかりで。結局たくさんの資金を調達するための減価償却の仕組みというものは、この利用率が低下してしまっていますから何ともならない。美浜の一号炉のごときはいまゼロですね、利用率は。だから、これらにかかった費用というものは結局は一般消費者の電力料金の値上げに含まれていくのです。だから、懸案の再処理工場の問題も、いま原子力開発の行き詰まりの象徴的な問題はこの再処理工場だ、このように私どもは思うわけです。そのウランテストの段階で事故が続発しています。いま稼働しているところは世界一つもないでしょう。ありますか。どうですか。
  148. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答え申し上げます。  大きく分けまして発電所の……(楢崎委員「簡単でいいです、時間がないから」と呼ぶ)はい。天然ウラン系の再処理工場はイギリス、フランスで稼働しておると承知しておりますが、濃縮ウラン系の再処理工場につきましては、現在フランスがホットテスト中のものがございますほかは、稼働しておらないと承知しております。
  149. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、結局現在その原子力発電所というのは依然として巨大な実験炉である、このように思わざるを得ぬです、ずっと事故ばかりで。稼働率も五〇%を割っている。だから、その周辺に住む人々あるいはそこで働いている下請労働者などというものは、毎日モルモット、実験に供されている、これが実態ですよ。そして、これは環境庁長官認識していただきたいのだけれども、環境の中にどんどん死の灰がふえ続ける。それで、私は、総理アメリカに行かれてカーター大統領とこの再処理問題のお話をされるときに、よく今日の原発のこの実態を頭に入れながらやっていただかぬと困るのですよ。それで、私どもとしては、一方において被曝の事情がずっと進んでおる、それはそのままにしながら、この安全管理体制を整えますとか検討しますとか、こういうことを言ってもらっては困るのです、一方にそういうことを許しながら。だから私どもは、この際思い切って一遍全部とめてみる。そして安全管理の問題も含めて根本からこれを考え直す。それ以外に私は解決の方法がないと思う。幾ら代替エネルギーといっても、こういうものが解決されないで何のためにやるのですか。こういう状態が解決されずに実際に人身に被害を及ぼす。  ちょっと念のために聞いておきますけれども、いまカラーテレビで真空管方式のものは、電圧が上がるといわゆるレントゲン線が出ますね。どういうことになっておりますか。これはどういうふうにされておりますか。これは一般家庭の聴視者の問題でもある。この実態をどなたか知っていますか。
  150. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  家庭テレビにつきましては、電気用品取締法に関しまして具体的な規制がございます。  なお、関係の所管の方から御説明申し上げます。
  151. 武田康

    武田政府委員 電気用品取締法におきましては、各種の電気用品につきまして、型式承認をいたしましたり、それから基準を決めたりいたして、電気に伴う安全の確保を図っております。それでいま細目がどう決まっておるか、実は私ちょっと覚えておりませんけれども、電気用品取締法上は電気をもとにする障害を及ぼさないような基準を定めておりまして、そういうやり方をしているはずであると思います。
  152. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことを聞いていない。何を言っているんですか。いいですか、いまカラーテレビで通常はどのくらいのミリレムが出て、電圧が上がるとどのくらい出てくるか把握していますか。通産省はしようとしていないんです。これが実態なんです。
  153. 武田康

    武田政府委員 御指摘の数字を覚えておりませんので、ちょっと調べさせていただきます。
  154. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このくらいの、お互いの家庭にあるもののこういう放射線問題についても把握していないとは一体何事ですか。
  155. 坪川信三

    坪川委員長 非常に重大な問題ですから、至急お調べの上御報告を願います。
  156. 武田康

    武田政府委員 いま直ちに照会するような措置をとりましたので、至急調べまして御説明させていただきます。
  157. 楢崎弥之助

    楢崎委員 言わないからこれから先質問しようがないんですがね。総理、こういう状態なんですよ。だから、大きくは核拡散の問題がありましょうけれども、日常の問題でも、この種のことがいまのていたらくですよ。電圧が上がるとどんどん出てくるんですよ。どのくらい電圧が上がったときどのくらい出るか、後で報告があるでしょう。それを待ちます。
  158. 坪川信三

    坪川委員長 通産当局に申し上げますが、至急お調べの上御報告を願います。  楢崎委員に申し上げますが、その間、ひとつ後の問題に御質疑を移していただきたいと思います。(「委員長、独断専行はいけませんよ」「休憩休憩」と呼ぶ者あり)
  159. 楢崎弥之助

    楢崎委員 協力しましょう。
  160. 坪川信三

    坪川委員長 御発言ありがとう。
  161. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、その問題はしばらくおきまして、自衛隊はいよいよ有事の場合に備えて軍事用の回線建設に踏み切ったわけでしょう。本年度の予算にも出ております。どういう名前で、距離はどのくらいで、予算はどのくらいか、報告をいただきたいと思います。
  162. 江口裕通

    ○江口政府委員 防衛庁といたしましては、平時における通信網の整備はもちろんのことでございますが、特に緊急時におきまして明確な情報の伝達あるいはその機に応じました情報統制ということを行う必要がございます。そういうことから、みずから保守、整備、運用をやり得ますような回線網の整備ということに着手するということで、五十二年度予算からその整備をお願いしておるわけでございます。  具体的な内訳といたしましては、五十二年度予算額といたしまして、現在三十二億円をお願いしておるわけでございます。現在自衛隊の使っております回線のうちの約七割は電電公社からの専用回線ということになっておりまして、現在約六十万チャンネルキロメーター程度でございますが、本計画が実現いたしました五十七年度の暁には、予定といたしまして百三十五万チャンネルキロメーター程度のものを整備したい、かように考えておる次第でございます。
  163. 楢崎弥之助

    楢崎委員 名前はどういう回線の名前になるのですか。統合自営骨幹回線と言うのですか。
  164. 江口裕通

    ○江口政府委員 防衛マイクロ回線という呼称でこれから進めてまいりたいというふうに考えております。
  165. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと待ってください。ちょっとこれを見せたいと思います。これで間違いないですか。——これで見ますと、いよいよこれはいわゆる基盤防衛力の一つ対応ですね。どうですか、その点は。
  166. 江口裕通

    ○江口政府委員 先般国防会議で御決定をいただきました基盤防衛力大綱におきましても、指揮統制機能というものは特に重視をいたしております。その重要な一環をなすものというふうにお考えいただきたいと存じます。
  167. 楢崎弥之助

    楢崎委員 要するにこれは五カ年計画、市谷を中心にして自衛隊四十七基地、北海道から沖繩まで専用の通信マイクロ回線になるわけです。これによって現在の三軍、航空、海上、陸上、この三軍各自衛隊の指揮管理通信がいよいよ統合される。つまり緊急事態への対処をこれで行う、こういう状態ですね。  私は、時間がありませんからなんですけれども、ここでひとつ提案をしてみたいのであります。  いよいよ在韓米地上軍の撤退、日本では基盤防衛力、そしていままでよりも質的に兵器は向上する、そういう段階ですから、これはやはり政治の場にある者として、徹底的にこの問題をいま論議する必要があると思うのです。社会党としても避けては通りません。そこで、この防衛問題を含んだ安全保障を、国会対策上ではなしに真剣に論議し得る場、つまり安全保障問題の特別委員会というものをつくられる気はないか。そこにもし防衛関係の法律がかかりますと、やはり国会対策の問題として回転していく。そうではなしに、じっくりとこの安全保障問題を論議するという意味で、法案のかからない、そういう特別委員会を国会につくる必要があると私どもは思うのです。どうでしょうか、この点について。法案を持たないで、そういう国会対策的な問題に影響されないで論議をし得る場ということで、そういう特別委員会についてはどのようにお考えになりますか。
  168. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  安全保障問題あるいは国防問題が、いま楢崎先生の御意見のように、広く国民立場において論議をされ、検討される態勢が生まれつつあることは、私どももそのとおりだと思うのでございます。特に国会の場において、いま先生の御意見では、議運なり国対サイドというそういう立場でなくて、今日までの状態でなくて、ひとつ安全保障なり国防問題を十分論議する場をセットしてはどうかという御意見のようでございます。  私ども、いままでは、その目的も踏まえながら、またでき得ますれば、国会におきまする各委員会の機能等を考えて、安全保障なり防衛問題を単独の常任委員会なり特別委員会で、ということで今日まで取り組んでまいったわけでございます。したがって、新しい提案が出たということにもなるわけでございます。私どもといたしましては、現在の段階におきましては、いまお願いをいたしておりまする常任委員会なり特別委員会は、そこで法律案なりあるいは予算もということもお願いしながらやってきたわけでございます。しかし、それがどうしても現在の段階では困難であるとするならば、そういう問題を含めながら、私は、いまの楢崎先生の御提案についてもこなし得るような特別委員会を、まず一歩踏み込んで、そういう国会の場において与野党ひとつ踏み込んだ立場で安全保障なり国防問題を論議する場を踏まえることも考えざるを得ないかなという判断にいま立っておるところでございます。
  169. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう法案を抱える委員会ではなしに、この問題を真剣に国政の場で論ずる特別委員会をつくるという構想について、総理はどのようにお考えになりますか。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国において防衛問題がどうもまだ国民の間で論議がそう普遍的に行われてない、もう少し防衛問題についての認識国民的なものにした方がいい、それには国会で独立の委員会を持つということにするのも非常にそのために有効である、こういうふうに考え、しばしばその所見を申し上げておるわけなんです。  私は、そういう考え方で、独立の委員会を設ける場合に、その委員会が法案も抱えた方が現実的じゃないかというような感じもいたしまするけれども、これは国会多数の方がまあひとつ法案を抱えない方式でやってみようというようなお考えになられるというならば、それも一つ考え方であろう、こういうふうに思います。ぜひとにかく独立の委員会をつくっていただくということには御協力、というか私どもは大変これを願っておりますので、ひとつさような方向でお進め願いたいと思います。
  171. 坪川信三

    坪川委員長 楢崎委員に御了承いただきたいのですが、先ほどの件について御返答申し上げたいという申し出がありますが、よろしゅうございますか。——武田審議官
  172. 武田康

    武田政府委員 カラーテレビにつきましては、本体の外側から五センチ離れましたところでエックス線レベルが〇・五ミリレントゲン・パー・アワー、一時間当たりというのが規則でございます。実際はそれより低い数字に——実際と言いますか、実際に測定いたしますとそれより低い実績が出るかと思います。
  173. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのときの電圧はどうなっていますか。
  174. 武田康

    武田政府委員 通常のカラーテレビは百ボルトで家庭で使っておると思いますが、カラーテレビ内では一万ボルト、二万ボルトの電圧が出ております。  なお、変動につきましては、電気事業法で配電電圧の変動の制限をしておりまして、法律的な制限値は百一ボルト・プラス・マイナス六ボルトの幅でございます。それで、実際はもっと小さな幅におさまっておりますので、余り大きな変動がない……
  175. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうなってない。そうなってないから私は問題にしているのです。百二十ボルトぐらい上がったらどのくらいレムが増すか把握していますか。現実に家庭の中でしばしば起こっているのです。
  176. 武田康

    武田政府委員 百一プラス・マイナス六ボルトを守るようにという指導をいたしておりまして、それがほとんど守られているんじゃないかと思います。なお、電圧が上がりますと、それに比例いたしまして中身も上がってくることは十分あり得ることでございます。仮に、これは仮定の話でございますけれども……
  177. 楢崎弥之助

    楢崎委員 仮定じゃないのです。現実に問題が起こっておるのです。だから、そういう問題を国政の場で真剣にどう規制するかということを——私はずいぶん陳情を受けている。百二十ボルトぐらい上がると、一ミリレムから五ミリレム上がるのです。これがだんだん集積されていく。笑い事じゃないのです。真剣な問題なんです。これをどのようにきちっとやっていくか。問題になっても、メーカーは取り合わない。通産はそういう態度です。一体、今後こういう問題をどのように取り扱っていきますか。
  178. 武田康

    武田政府委員 配電電圧が百二十ボルトになるようなケースにつきましては、実情を調べてみたいと思います。
  179. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間が参りましたけれども、最後に、私は訴えたいことがあるのです。  原発における労働者の被曝問題というのは非常に深刻です。今後ますます多くなる。そして、この調子でいけば、恐らく原発の耐用年数は十年以内でしょう。そのように言われておるのですね。さっきから言っておるとおり、運転歴が古ければ古いほど汚染が進んでおる。それで私は、この追跡の調査をぜひやってもらいたい。われわれもやります。亡くなった方についての追跡調査を具体的にやってもらいたい。その点はどうでしょうか。  そして、私はこの場で訴えたいのですけれども、ずいぶん泣き寝入りしている人がある。私はきょう七十五名の数字を出しましたけれども、もちろん全部がそうだとは私も言いませんよ。しかし、私がいま個々に当たっているケースでも半数ぐらいありますけれども、その中の半分は疑わしい、われわれ素人が見てもあるいは専門家に聞いても。したがって、そういう形で亡くなられた方方の告発を私はぜひお願いをしたい。これはマスコミ等を通じてもお願いをしたいと思うわけです。そして徹底的にこの問題についての解決策を見出さない限りは、もう原発の開発をこれ以上進めることはできない。これが私の意見でございます。  最後に、この問題に対する総理の御見解を承っておきたいと思います。
  180. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 楢崎さんから、原発の安全性につきまして、るる御意見を交えての御質問でございましたが、私は、政府として大変参考になった、こういうふうに存じます。安全性の確保、これにつきましては、もうこの上とも全力を尽くして取り組んでまいりたい、かように存じます。(楢崎委員「追跡調査の方は」と呼ぶ)なお、追跡調査等につきましても鋭意努力いたします。
  181. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どの省がやられますか。はっきりしておいてください、今後の問題がありますから。
  182. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 直接の因果関係等いろいろむずかしい問題もございましょう。だから、先ほどからの資料をもとといたしまして、労働省とも相談しなくてはなりませんし、通産省とも相談しなくてはならないと思いますが、一応そうした省で十分に検討いたしまして、そして事に処していきたい、かように存じております。
  183. 楢崎弥之助

    楢崎委員 くどいようですが、いままでそういう答弁でずっと来たのですよ。もうこの場で決めていただけませんか、この追跡調査の問題についてはどこが責任省になると。
  184. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 この間からデータは科学技術庁がお引き受けして出したわけでございますが、いま聞きましたことは非常に重大な問題であろうとわれわれも考えます。おやめになった方と事業者との関係もございましょうし、そして現従業員と事業者との関係もありましょうし、いろいろこの問題はそうした面におきましてきちっと整理をいたしたいと思います。私といたしましても、就任後初めてのそうした楢崎委員からのお話でございますから、いま申し上げましたように、労働省とも通産省とも関係があろうと思いますので、いましばらく時間をおかし願いまして、そしてどこがどういうふうに具体的にするかということを三省で検討いたしたいと思いますから、しばらく御猶予願いたいと思います。
  185. 楢崎弥之助

    楢崎委員 以上で終わります。
  186. 坪川信三

    坪川委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 締めくくり総括質疑に当たりまして、今回の予算審議を振り返りまして、われわれ野党としましては、昨年末の総選挙の結果を踏まえまして、またこの予算審議予算の重要さということを十分認識をいたしまして、責任を持って審議に当たってまいりました。ところが、むしろ与党におきまして、いままでの絶対多数というような考え方というものが抜けないで、そして非常にかたくなな、そういう態度であったように私は思うわけであります。  総理御自身はそうがんこな方じゃない、むしろ柔軟な方じゃないかと私は思っておりますが、予算審議の初めに当たって党首会談を催されるとか、そういう柔軟な考えもあったわけです。総理がこの指導性というものを本当に遺憾なく発揮されておれば、スムーズにいったでありましょうが、総理御自身のそういう指導性という問題と、同時に、一部自民党議員、また大蔵省、内閣法制局等のそういうがんこな抵抗というものがありまして、この修正権の問題であるとか、あるいはまた一部においては中央突破をやればいいじゃないかというようなことも伝わってきておるわけでございます。そういうような考え方であるとか、また一兆円減税におきましても、妥結はいたしましたけれども、非常に時間もかかった。こういうような伯仲国会というものの認識が非常に足らなかったのではないか。そういう、いま私が何点かの問題を申し上げましたが、円満な国会運営という点からいけば、きわめて危険な考え方じゃないかと私は思うのです。  したがいまして、こうしたことを踏まえて、総理としては、今回のこの予算審議を振り返って、どういう感想をお持ちであり、また今後の予算審議なり国会運営についてはどうあらねばならないか、率直な御感想を聞かしていただきたいと思うのです。連帯と協調というようなことを盛んにおっしゃっておりますが、もっと突っ込んだ率直な御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  188. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 率直にお答え申し上げますが、私は、野党の皆さんから一兆円減税という足並みのそろった御要請がありまして、さあこれとどういうふうに政府与党は取り組んでいくべきか、これは調整なかなか容易じゃないなと、こういうふうに思っておったわけであります。それが結果におきましては与野党合意の線で、とにかくそう長い時間をかけずにまとまった。その経過を顧みてみまして、私は大変近来にない協調ぶりであった、こういうふうに評価をいたしておるわけであります。その間、いま近江さんから与党の指導性というようなことも問われましたが、私は、とにかく二百六十人の与党でありまするから、これはいろいろ意見もあります、ありまするけれども、一体性、統制において欠くるところがあったとは思いません。最後的な合意ができるということになりますれば、これは全員それに賛成だ、こういうことになったわけでありまして、とにかくこういうことはこれからの国会運営でいろいろあり得ることと思いまするけれども、この上とも連帯と協調、この精神でやっていきたい、かように考えております。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、与野党の伯仲国会である、こういう御認識で今後はひとつ遺憾なく指導性を発揮されて、円満な国会運営、これに力を入れていただくべきじゃないか、このように思いますので要望いたしておきます。  具体的な問題に私は入りたいわけでございますが、まず、追加減税の問題でございますが、坊大蔵大臣は十日の委員会で、三千億円の追加減税につきまして、事は大蔵委員会で決定されることであるが、意見を求められれば申し述べたい、ただし、きのうのきょうであるのでいまは何も言えない旨の答弁をされたわけでございますが、一週間も経過しておるわけでございますから、少しは考えがまとまったころじゃないかと思うのです。この際、追加減税の方法等につきまして、ひとつ大蔵大臣の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたい、このように思います。
  190. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  三千億の減税につきましては、いまおっしゃられたとおりです。その具体化、その内容等の詰めにつきましては与野党とともに衆議院大蔵委員会で詰めていただくということになっておりまして、今日ただいまも非常に御熱心に検討を続けられておることでございますが、今日の段階におきましては、私に対しましてまだ御相談はございません。しかし、一両日中には必ずおありになるということを承っております。私ども立案者といたしましては、それは自分のつくった方がいいと思っておりますけれども、しかし民主主義の議会制度の世の中におきましては、あえてそういうことには拘泥いたしません。そういうふうに六党が合意して、そうして大方針を決めていただいた、その方針に忠実に、しかもこの方針がうまく、遺憾なく実現できるように私も御相談に応じて御協力を申し上げたい、かように考えております。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 六党が一致した案に従いたい、国会の立場というものを非常によく理解されておると思うのです、しかし、大蔵大臣が希望をお述べになられてそれで決定に至るのかというと、現在の状況におきましてはそういうものではないし、また現実に六党が折衝もいたしておるわけです。ですから、大蔵大臣御自身の御希望としてはどのようにお考えですか。あなたの希望だから別に何もそれはイコール決定じゃないわけですから、それは各党全部了承しておりますから、やはり少なくとも大蔵大臣、大蔵省、政府として、私はこういう希望を持っておりますというものが、この段階になってあるはずですよ。いかがですか。
  192. 坊秀男

    ○坊国務大臣 とにかくお決めいただいた大方針が実現するように、そのためにはできるだけ早く立法が行われるということが何よりも大事か、かように思いまして、私は大蔵委員会における御相談及びその結果、これを今日見守っておるところでございます。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 大蔵省は当然各党と折衝し、またそうしたたたき台とかいろいろな点での考え方というものをお示しになっておると思うのですが、そういうものについてお示しいただけませんか。イコール決定ではないから、大臣自体の御希望をひとつお述べになってください。
  194. 坊秀男

    ○坊国務大臣 三千億円の減税が税額控除によりまして行われる、その税額控除のいろいろな方法、手段といったようなものはいろいろなものがあろうと思いますけれども、その中で最も適当と思うというふうにこれを実現していくことを私は希望し、かつまた期待し、それに対しての御相談には全力を挙げて御協力を申し上げる、こういうつもりでございます。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはあなたの解説であって、何も——ですから、大臣として、私はこれが最も適当だと思われるのはどういう方法ですか。
  196. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま委員会においてこれは鋭意やっていただいておるのですよ。そのときに、その委員会において詰めていただくものに対してひとつこれを実現しよう、こう思っておりますときに、そのやさきに、私からこれをこうしたいということを申し上げることは差し控えたいと思います。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは私はただ希望イコール決定ではないのだという事情を話をして、あなたの御希望を聞いておるのですが、平行線になりますから次に移ります。  次に、私は基地問題についてお伺いしたいと思います。  いま在韓米軍の撤退問題が日程に上がろうとしておるときに、在日米軍基地、なかんずく沖繩米軍基地のあり方等、国民の重大な関心を持っておるところであります。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 このときに当たって、政府はいま今国会におきましていわゆる基地確保法案を提出して、新たな対応を見せようとしておるわけでございますが、私は、これらの基地の重要問題の解明の前提として、米軍基地内における国有地の問題を取り上げて質疑をしたい、このように思うわけであります。  嘉手納、読谷、伊江島等の米軍基地内におきまして、嘉手納におきましては六十二万平米、読谷においては二百十六万平米、伊江島においては六十九万平米が現在国有地として国有財産台帳に登記されておるわけでございますが、これは政府が戦後のどさくさに紛れて民有地を取り上げた疑いというものがきわめて強いわけであります。そうであるとするならば、これは本当に憲法二十九条に違友しておることははっきりしておるわけでございますし、これらの土地は戦時中旧日本軍が飛行場を開設し、利用した経緯から、旧日本軍が地主から買収したとの確たる証拠もなく、国有地として米軍民政府の管理下に引き継がれたものであります。昭和四十七年の五月沖繩が復帰した後、これらの国有地を含む米軍用地内の土地全般について位置や境界の明確化を昭和五十二年五月十四日までに実施するために、沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律を施行したわけであります。しかし、今日まだ米軍用地内という特殊事情のために調査が進まず、再度五月十五日以降も継続することを定めた特別措置法案を今国会に提出しよう、このようにいたしておるわけであります。憲法第二十九条は国民の財産権の不可侵を規定しており、明治憲法にも同様の規定があるわけでありますが、国家権力がもし確固たる土地代金支払いという根拠もなく、一定の国民の土地を国家の物であるとして占有することがあるならば、これは憲法に触れるゆゆしき問題であります。国会としてこれを看過することはできません。  そこで、わが党の米軍基地調査に基づいて質疑を展開したいと思うわけです。まず確認しておきますが、読谷につきまして国は国有地扱いとしておりますか。これは確認の問題であります。
  198. 坊秀男

    ○坊国務大臣 具体的な問題が大分入っておりますので、政府委員からお答えいたします。
  199. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 その大部分は国有地ということになっております。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 読谷につきましては二百十六万平米、私が先ほど申し上げた数値に誤りありませんか。
  201. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 そのとおりでございます。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府が国有土地の取り扱いをしております事実について確認をしておきたいと私は思うのです。国有地というものは、国有財産台帳にすべて記載されなければならないわけでありますが、次の点はどうなっておりますか。国有土地の取り扱いとしたのはいつですか。時間がありませんから、答弁する人はできるだけ寄ってください。
  203. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 沖繩復帰の際に、国有財産台帳に登録をされております。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 理財局長、あなたはここにいすがないので非常に気の毒ですが、一々帰ってこうしていたら時間の浪費ですよ。御協力ください。次に聞きますよ局長政府の国有土地台帳に記載したのはいつですか。
  205. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 沖繩の復帰時でございます。  資料がございますので私の席に戻らしていただきます。恐縮でございます。御質問の都度資料を見たりいたしますので、私の席で……。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 事実関係はきわめて重大な問題ですからね。国が沖繩の土地を強奪するといっても差し支えないと私は思うのです。国盗り物語ですから、これは放置することはできません。答弁が一一こんなに時間がかかっていたのでは——私はきょう多くの問題をやろうとしているのだ。もっとスピードを上げることを委員長から要請してください。  政府の国有土地台帳に記載したのはいつかと聞いているのです。
  207. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま局長からお答えしましたとおり、沖繩復帰時であります。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは何年、何月、何日とはっきり入っているのですか。
  209. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 台帳上、四十七年五月十五日新規登載と明記されております。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 だれが記載したのですか。
  211. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 これは現地の担当局であります沖繩総合事務局の財務部であります。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 署名、捺印はありますか。
  213. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 台帳上、署名、捺印はしておりません。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 印鑑も押してないのですか。
  215. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 捺印はしておりません。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 国有土地台帳の沿革の欄はどうなっておりますか。
  217. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 沿革欄には、旧軍の購入と記載されております。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 旧軍の購入と言っていますが、軍は本当に購入したのですか。これは大問題であります。私は、いま大臣、総理に資料を渡しておりますが、ここに私に対しまして回答書をある人が出しておる。この人は神直道さんという人でありまして、元陸軍中佐であります。陸軍士官学校、陸大を出まして、大本営の陸軍参謀であります。非常に台湾、沖繩の戦局が逼迫してきたということで、第三十二軍参謀に昭和二十年の二月に着任をいたしておるわけです。この人が、沖繩の飛行場の一切の責任を持っておった最高責任者であります。  この人がどう言っているかといいますと、当時この飛行場をつくるめに、とにかく強制に近い形で住民に、言葉をよく言えば協力といいますか、しかし軍という威信のもとにだれしもが従わざるを得なかった。そのときに、耕作補償費、立ち退き料の一部は支払われた。支払われたけれども、お金じゃないのですよ。戦時国債をみんなお国のために買わされておる。いわゆる土地を売買した、そういう事実は一切ないということをここで証言している。この人は、許されるならば、本日委員会で証人あるいは参考人としてぜひ出席させてもらいたい。しかし、締めくくり総括ということもありまして、それは委員会の運営上できなかったわけでありますが、きょうは記者席の上の傍聴席におられるわけです。いつでもあなた方の御質問にも責任者としてお答えしたい。この神元中佐の証言によって西原飛行場が返還になっている。沖繩が本土復帰する前に、西原飛行場は返還されているのです。しかも、きょうは神元中佐だけではなく、読谷村の村長の山内徳信さん、読谷村議会議長の新垣秀吉さん、読谷飛行場関係地主会代表玉城栄祐さん、また役場の企画課長町田宗信さんが、記者席の上の傍聴席にいま見守っておられるわけです。  また、いまや読谷村挙げていわゆる返還運動を展開しておりまして、カーター大統領にも手紙を書く、もちろん米軍の司令官なり、あるいはまた防衛施設庁のしかるべきところ、あらゆる運動を展開してきておるわけです。そういう経過というものをよく知っていただきたいと思うのです。  そこで、軍が本当にそれを購入したという事実はあるのですか。
  219. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 いま先生が例を挙げて御説明になりました件につきましては、大蔵省の方にも地元の方にも、沖繩本島に対しましては、正確なる資料というものはございません。そこで、当時の状況につきまして、実は旧軍買収地につきまする復帰前後からの処理につきまして、国会でもしばしば問題がございまして、この登録簿上は国有地であるが、さらに買収の実態を早急に調べろということになりまして、四十八年度から三年間にわたりまして調査をしたわけでございます。その結果は、沖繩本島についてはほとんど物的な資料は収集されておりませんけれども、宮古、八重山につきましては、土地売り渡し証書等の物的な相当の資料が収集されたわけでございまして、それから考えました場合に、沖繩本島は非常に被害を受けて資料等がなくなっておるけれども、恐らく同じ状況ではなかったかという判断のもとに、一応そういう調査に対しての結論を出したわけでございますが、その中に、一つ申し上げたいことは、宮古、八重山につきましては土地譲渡証書や代金支払い受領証が相当収集されております。登記簿上の登記原因も収用ではなくて、売買ということになっております。当時の飛行場建設等の状況、時期等を推察いたしまして、沖繩本島においても恐らく同様であろうと判断されたわけでございますが、同時に国家総動員法に基づく収用につきましては、一定の手続が必要ではございますが、沖繩については総動員法による土地収用は行われておりません。そういう形跡は皆無でございます。したがいまして、そういうことで、どちら側にも状況を的確に証明するものはない。したがいまして、沖繩全体に及んだであろうその当時の状況から判断をいたしたわけでございます。しかしながら私どもは、地元の地主の方々のそういう御要望につきまして、なお引き続き調査をし、また御意見等を十分に伺うということにつきましては、関係省庁で協議中であり、現に検討中でございます。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたは情況証拠ということをおっしゃっておるのですが、沖繩本島と宮古、八重山というのはものすごく離れているのですよ。先島であります。私も宮古へ行っていますから、知っています。しかも、あのときに払われたのはほとんど国債ですよ。戦争で皆パアになってしまっておる。沖縄本島においては二十数万の人が死んでいる。米軍が上陸してあれだけの大変な激戦が行われた。状況は先島の上陸をしていないところとは違うのです。そういう状況が違うということもひとつよく認識してもらいたいし、よそがそうであるから、ここもそうだと、確たる証拠もなしにこれは国のものだ、そんなばかげたことが政府として言えますか。どういう根拠に基づいてそんなことを言っているのですか。おかしいですよ、これは。国有地と断定できる法的な根拠を示していただきたいと思うのです。
  221. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま局長からお答えしましたように、戦禍を受けなかった宮古とか八重山諸島におきましては十分な資料が収集されているわけであります。それで、本島におきます飛行場の建設も宮古、八重山等と大体同時期に同じような体制のもとに行われたわけでありますので、われわれとしては、それからその本島の飛行場用地についても正当な買収行為によって行われたものと判定しているわけであります。  同時に、沖縄におきます所有権の問題につきましては、終戦後、米軍時代にいわゆる所有権認定作業というのが行われているわけであります。その際各村に土地委員会というものが設けられて、それが各土地の所有権の確認作業をやっているわけでありますが、その際いろいろ各地主、関係者の申請に基づきまして認定するわけでありますが、その結果これらの、ただいま申し上げておりますような読谷を初めとする国有地につきましては、国有地であるという認定、証明書が出されているわけであります。そういうことから判断をしまして、われわれは国有地として国有財産台帳に登載しているわけであります。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 村長の証明があったということを一つおっしゃっているわけですが、それはしばらくおいて、その問題はまた私は突っ込んで質問します。  続いて、日本軍の問題についてさらに入ってみたいと思いますが、政府はこの土地を保存登記していますか。いかがですか。
  223. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 いわゆる保存登記はしておりません。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府みずからの土地と言いながら、なぜ保存登記してないのですか。これはどういう事情ですか。
  225. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 いわゆる表示の登記はしておるわけでありますが、現在、先ほど来申し上げています沖縄開発庁総合事務局財務部が事務処理をしておるわけでありますが、戦後のそれらの事務処理能力の問題もあり、かつ、ほとんどその国有地を売り払い等処分するという問題もまだ起きておりませんので、その表示登記のみで済ませておるというのが現状であります。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 いわゆる戦後処理に追われて能力がないからやってない、それが理由ですか。そんな理由通らぬですよ。保存登記ができない重大な理由があるんでしょう。そんな言い逃れやめなさいよ。率直に言いなさいよ、答弁を。
  227. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 売り払い等処分の問題が起きました際には、当然保存登記をする所存でおるわけであります。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 そんなものは答弁になりませんよ。できないんでしょう、政府は。保存登記できるんですか。できないからやらないんでしょう。事務職員の能力は、数が足らないからできないんじゃないんじゃないですか。保存登記もできないようなそんな土地を沖縄県民から召し上げて国有地と、そんなばかなことがありますか。政府は国有地として取り扱っておりますが、こういうことは有効な行政措置としていいんですか。この点いかがですか、大蔵大臣、内閣法制局長官
  229. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 一般の国有財産につきましては、先ほど理財次長が申しましたように、売買処分等の必要があるときに保存登記をいたしますが、沖縄の場合に実際上まだ測量等の十分行われてないというような部分については保存登記をいたしておりません。しかしながら、この保存登記をするかしないかという問題につきましては、大蔵省だけの問題ではなく、これは法務省の御答弁になるところかと思いますので、そちらの方の御答弁に譲りたいと思います。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは保存登記ができないというのは、いわゆるだれからだれへと明確な記載がなければいけないわけですよ。できないんでしょう。日本政府が勝手に沖縄の読谷から取り上げ、ほかにも基地があるわけですが、あなた方は勝手に台帳に記載しているんじゃないですか。これは申し上げておきます。  次に、いま政府委員は土地所有権証明書を挙げて証拠ということを言ったわけですが、この所有権作成の経緯はどうなっているんですか。
  231. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 戦後、一九四六年二月二十八日付琉球列島米国海軍軍政本部指令百二十一号というのがあります。それに基づきましていろいろ字とか村に土地所有権委員会というのが設けられたわけです。それで、それに基づいて調査した結果、一九五〇年四月十四日に、同じく琉球列島米国軍政本部特別布告第三十六号「土地所有権証明に関する特別布告」というのが出されました。それで、所有権の申請を一九五〇年六月三十日までに行うことになっております。それで村委員会というのが所有権証明書を作成し、三十日間一般の縦覧に供されたわけでございます。その間に、異議のある者は異議の申し立てをすることができるという道が開かれておりました。それで異議のないものについては、村長がこれを承認して土地所有権者に証明書を発行したわけであります。それで、さらに証明書について争いがある場合は、巡回裁判所に訴訟を提起し、裁判所の決定を待って所有権証明書を交付するという道も開かれておったわけであります。現に米軍時代国有地として管理されていたものについても、そういう手続の結果、一部については民有地主の方に返され、証明書がそちらの方に出された例もあります。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 この村長の証明書というものが日本政府の所有権の証明書になると、現在もお考えですか。
  233. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 先ほど申し上げましたように、本島につきましては、その売買の根っこの資料が消滅しております。そういうことで、米軍時代に出されました所有権証明に基づいてなされた登記というものが、復帰の際の特別措置法に基づきまして、要するに復帰後の登記とみなすという規定も、法律措置が講ぜられておるわけであります。こういうことで、それをもとにして国有地としておるわけであります。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 この証明書がいかにでたらめな中ででっち上げられたものであるかということを、私はいまから申し上げます。  日本政府は当時、村長ないし村土地所有権委員会ないし字土地所有権委員会に対して、日本政府の所有であるという申請をしましたか。
  235. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 先ほど申し上げましたように、復帰前の問題でありますので、当時の村の委員会がかわってその申請をしておるわけであります。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 日本政府が申請してなかったということがこれではっきりしました。そうすると、これは村の職員なり土地所有権委員会の人がやった、こう言うのですね。もう一遍確認します。
  237. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 さようでございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 日本政府が申請もしておらない、そういう中でつくられた、この申請書に基づいて村長がその証明書を出した。当時は、米軍のいわゆる占領下にあったわけです。飛行場についてはもう言ってはだめだということを、土地所有権委員会、字土地所有権委員会に対して言われておったわけです。だれも飛行場の問題については物が言えなかったのです。そういう背景があったわけであります。この申請書を、私はいまそこに資料を渡しておりますが、大蔵大臣、これはわが公明党の調査団が非常に苦労いたしまして現地で入手したものでございますが、ここに何枚かございます。この申請人がだれになっているかということを、大蔵大臣一遍読んでください。    〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  239. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 これは「日本政府」と記載されております。(近江委員「何枚もありますから、順番にめくって全部読んでください」と呼ぶ)最初の読谷村の分について「日本政府」、それから次も「日本政府」、その次のものには「日本政府官有」と書かれています。それから「日本政府」、それから申請者欄が空欄になっているものもあります。それから「日本ヒ行場」となっているものもあります。そういうような状態でございます。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 「日本ヒ行場」が申請しますか。申請人が何も書いてないのです。幽霊が申請しますか、総理。しかも、この米軍の先ほどおっしゃった布令は、いわゆる保証人も二人つけなければならぬ。これは保証人ついていますか。保証人は、土地調査委員であるとかそういう人がやっているのですよ。これは元の地主の両横の人が保証しなければならぬわけです。そんなもの一枚もないのですよ。こういうでたらめな申請書に基づいてそうして三十日間掲示された、こういうことなんです。こういう作成過程から言っても、いかにでたらめなやり方をやって日本政府は沖縄の土地を現在とっておるかということがよくおわかりになると思うのです。  それで、先ほどあなたは、一部巡回裁判で取り戻した例があるとおっしゃってますが、それは名前はだれですか。
  241. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 読谷飛行場の分のうち六百九十坪について、上間清子という申請人の名前の土地について、巡回裁判所の決定により、その所有者に返還されております。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府はもっとよく調べなさいよ。これは県有地にされておったのを取り戻したのです。わが党は、ちゃんとそれは調査してありますよ。そういう一つの事例を見ましても、いかにずさんな調査をしておるかということははっきりしておるわけです。  さらに、私はここに写真を持ってきておりますが、総理並びに閣僚にお見せしたいと思います。これは昭和二十年、終戦の年でございますが、十二月十日の読谷基地の撮影であります。これは米軍から入手したのです。この大きな写真で見ますと、B29や戦闘機が無数に見えますね。鉄条網が張ってある。占領下においてこの中に入ればどうなりますか。昭和二十六年には朝鮮事変が始まっておる。こういう中で、だれが入ることができたのですか。飛行場については、だれもそんな物が言えなかったのです。これを委員長、ちょっとお許しください。(写真を示す)  いま申し上げましたようなこういう事情の中でつくられたのが、昭和二十六年四月一日の読谷村長の土地所有権証明書であるわけです。私は最初に、この土地所有権証明書が日本政府の所有権の証明にはならないということを申し上げましたが、こういう実情の上から皆さん方にお考えいただいたならば、再度私はこのことを断言してはばからないものであります。これでも政府は、なお読谷村長のこの土地所有権証明書を盾に六十五万坪が国有地であると言い張るつもりであるかどうかという問題なんです。これは重大な問題であります。確かに、戦争という大きな悲劇のもとで生まれたこともわかりますよ。しかし、こうしたことがわかってきているわけです。総理は、かねがね基本的人権を守る、平和憲法を守るということをおっしゃっているわけです。憲法二十九条がこんなに侵害されておって、このままでいいのでしょうか、総理。いかがお考えですか。
  243. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 近江さんのお話も政府の方の話も両方聞いてみなければ、私の判断もつきませんけれども、お話の筋につきましては、なお政府の方でも調査をさせます。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、こういういいかげんな過程の中でつくられた村長の証明書というものを根拠として、また、日本軍から購入したんだということで国有財産台帳に記入しておるのは間違いであります。ですから、とりあえず一遍消す、白紙にするんですよ。そうして、実情をよくお調べになって、村民に、地主に返していただく。それをやっていただけますか。
  245. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 私どもは国有財産の行政に責任を持っておりますので、国有財産のあり方につきましては、現状でいろいろ批判があるものにつきましては、見直すとかあるいはまたいろいろな改善を加えて今日まで来ております。沖縄の問題につきましては、あの悲惨な戦争の結果、すべての記録が消滅しておりまして、そういう段階から、先ほど御説明申し上げましたような八重山、宮古の状況から類推したということ、あるいはまた村長さんの証明とかいうようなもので判断をすることによって、私どもとしては国有財産の認定をしてやったわけでございますが、これは当時として、私は最善の努力をしてきたつもりでございます。また、もしそういうような努力が行われておらなかったならば、逆にまた国会で御指摘を受けたであろうと私は想像するのでございますが、(発言する者あり)四十八年から三年間は国会のいろいろな御要求がございましたので、四十八年から三年間にわたりまして調査を続けたわけでございます。いま私が申し上げましたのはそのことでございますが、そういうことをいたしました結果、なおかついま先生御指摘のような問題がございますので、関係省庁と協議をいたしておりまして、さらにもっと……(「おかしいじゃないか。この間分科会では、おまえさんの方の下僚が返すと答弁したぞ」と呼ぶ者あり)現状で返すべきものと返すべきでないものとをやはりよく分別いたしませんと、これはまた国有財産の行政につきまして御批判を受けてもいけませんので、よくその点は勉強をいたしまして、実態を調査いたしまして、これは大蔵省だけの問題ではございませんで、自治省、沖縄開発庁等の関係もございますので、誠意をもって処理をいたします。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 誠意をもって処理します、抽象論ですよ、こういうことは。それは、大蔵省を中心に防衛施設庁、法務省、沖縄開発庁等でもってプロジェクトチームをつくって調査をする、こういうことですか。
  247. 坊秀男

    ○坊国務大臣 近江さんの御指摘にはいろいろと傾聴すべきものがあろうと思います。ただしかし、それをお聞きしていま消すということは、やはり今日までいろいろな経過を経て——その経過は全然だめだ、こういうお話でございますけれども、一応その経過を経てこうなってきておるものを、いまこれを消すというお約束は、ちょっと私は困難だと思いますけれども、しかし、今後この問題につきまして誠意をもってよく調べまして、そして非常に間違ったところといったようなものは、これを是正してまいりたい。ただ、消すということは、ちょっとどうもいま直ちにこれを消除することはできないと思います。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 消すのを待ってほしいとおっしゃっておるわけですが、じゃ、そんな答弁がはっきりしないならもう一遍聞きますが、申請書を出す段階におきまして、日本政府としては字土地所有権委員会なり村の所有権委員会なりに申請するように委任したのですか。これを確認しておきたいのです。何月何日委任したのですか。
  249. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 当時の復帰前の問題でありまして、日本政府として依頼するというものではなくて、その村委員会がそういう申請をしたわけであります。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、日本政府は委託も何もしておらない。勝手に「日本政府」とか「日本ヒ行場」とか白紙だとか、むちゃくちゃな、でっち上げのでたらめなこんな申請書に基づいて、しかも米国の占領下で、飛行場については物を言うな、委員会に対しても圧力がかかって、村人はだれ一人物を言えない。そんなでたらめな作成過程の中においてよく日本政府のものだということが言えますね。こういう原点にもう一遍立ち返っていただくならば、白紙にするのが当然じゃないですか。これをきちっとやらなければ、本当にゆゆしい問題ですよ。憲法を侵害しておる重大事件であります。こういう問題が本当にきちっと民主主義憲法のもとにおいて解決されなければ、沖縄の戦後は終わっておりませんですよ。これは福田総理の国取り物語ですよ。これはぜひ白紙にすべきです。再度答弁を願います。
  251. 坊秀男

    ○坊国務大臣 とにもかくにも、いまおっしゃることはむちゃくちゃな手続によって、こうおっしゃる。それは、あなたが大きなことを言うておるとかうそを言うておるとか、決してそんなことは考えておりません。おりませんが、しかしながら、今日まで、ここに至った経過ということも私は大事なことだと思います。そこで、とにかく抹消するとか消すということは、この際はさようなことはしないようにして、それで、この問題についてはよく調査をいたしますけれども、いま直ちにこれを抹消とか消すとかいうことはひとつ取り消していただきたい。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなた方、占領下、占領下ということをおっしゃっておるわけですよ。しかし、米軍の布令からいきますと、あなた方の申請した方法というものは全く布令の違反ですよ。本人の申請でなければならないとなっているのです。申請が、こういう正規の手続がないわけでしょう、これは。それは法的にはおかしいじゃないですか。これだけのでたらめな状態ということははっきりしているわけですよ。この申請書を入手、探すのに大変な作業があったわけです。これは総理がひとつここで腹をお決めになって——こういういいかげんな状態政府は県民から巻き上げておるということは、これはゆゆしい問題です。私は本当に総理の良心に訴えたいと思うのです。どのように扱われますか。
  253. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 近江さんの御指摘の問題、ここですぐ結論を出すというわけにはまいりませんが、御指摘の点は調査をしてみるという必要があるように思うのです。これは調査をいたします。そうして国有財産台帳から消す必要があるというものにつきましては消す、かように考えております。
  254. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理調査をして、事実ということであれば消すということをいまおっしゃったわけです。戦後三十二年でしょう、総理。ですから、調査をするとおっしゃっても、ただ義理か厄介のように何とか日本政府の証明にならぬやろうか、そうじゃなくして、これは本当に県民がそのように訴えておる、その立場に立って、日本政府は一たん台帳に記入してしまった、それを正当化するための作業じゃなく、本当に憲法を守り、住民の立場に立った、そういう公平な立場調査を大規模にやってもらいたい。戦後三十二年たっておって二人や三人の係官が、どのくらいの規模で調査があるのか知りませんが——その調査の規模は大きいのですか、担当は大蔵省がキャップになると思いますが。やりますというそんな抽象論じゃだめですよ。どのくらいの決意と布陣でやるのですか。そうしなければわからないですよ、こういうことは。
  255. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 この沖縄の土地所有権の問題につきましては、ただいま質問されております国有地の問題、それからそれに関連しまして民有地の問題もあるわけでありますので、大蔵省だけではできる話ではありませんので、沖縄開発庁なり法務省、自治省、いろいろ関係省庁と協議して所要の調査をやっていきたいと思います。
  256. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後調査を真剣にやるというお話があったわけであります。証明書が無効ならこれは何一つ裏づけがないわけですよ、総理。そんなことによって、国家がみずからのものであると思ったら国有地になるのだ、これほど国家権力をかさに着た国民を無視し切った姿はないですよ。これは許せる行為じゃありません。少なくとも総理がそこまで決意をおっしゃったわけですから、全力を挙げて調査をして、そして速やかに県民に返していただきたい、強く要望いたしておきます。  次に、私は外交問題等に移ってまいりたいと思います。  総理は明後十九日アメリカに出発して、二十一日、二十二日カーター大統領日米首脳会談を行われることになっておるわけでございますが、そうした問題を中心にお聞きしたいと思います。  まず初めにお伺いしたいのは、日米首脳会談におきましては対中国関係議題になることが予想されるわけでございますが、総理カーター大統領の対中国政策をどう見ておられますか。また米国の中国承認は近いと見ておられますか、いかがですか。
  257. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はまだアメリカ政権の対中国政策は固まっておらぬ、こういうふうに見ておるのです。固まっておらぬ状態日米会談が行われる。ですから、固まらぬまでもどんな考え方をしているかということ、これは聞いてみる必要があるだろう、それからわが方においてどんな考え方を持っておるということも申し上げる必要があろう、こういうふうに考えております。
  258. 近江巳記夫

    ○近江委員 ホルブルック米国務次官補が米上院外交委員会の任命承認公聴会で、三年以内に中国との国交を樹立したい、こういう証言もしているんですね。米中関係というのは相当急速に進んでいるように私は思うのです。総理は、そういう急速に進んでおるという認識を持っておられますか。
  259. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 急速に米中の正常化ができるかできないか、私には判断がまだできません。じかに会って聞いてみるというところで、感触が得られるか得られないかというところだ、かように見ております。
  260. 近江巳記夫

    ○近江委員 宮澤前外相は、昨年の七月、来日しましたマンスフィールド米民主党院内総務と会った際、米中関係正常化と台湾問題に関しまして、米中間の急激な変化は望まないと述べ、大きなひんしゅくを買ったわけでございますが、福田総理としては米中間の国交正常化につきましてどういう考えを持っておられますか。またこの宮澤前外相と異なる認識を持っておられるのですか、その点についてお伺いしたいと思います。
  261. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、米中関係が改善されていくということは米中共同声明の精神だろう、こういうふうに思います。それをどういう段取りでどういうタイミングで進めていくのだろうかということが問題なので、その辺につきましては私には予断することができない、こう申し上げているわけであります。
  262. 近江巳記夫

    ○近江委員 むろん基本的には米中二国間の問題であるといたしましても、アジア情勢ということからしまして、やはりわが国立場というものははっきりしておく必要があるのじゃないかと思うのです。当然米側からこの問題で日本政府見解を求められることがあると思うのですが、そうした場合、どうお答えになりますか。
  263. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 アメリカには米中共同声明の線があるわけです。そこで正常化を行いたいというふうにうたっておるわけでありますから、恐らく歴史の流れはそういう方向にいくのだろうと思いまするけれども、その過程、タイミングをどういうふうにとっていくかということについては、これは米中間の問題であり、わが国として口を差しはさむ問題ではないというような感じがいたします。
  264. 近江巳記夫

    ○近江委員 これまで本委員会におきまして、福田内閣の対中国政策、特に日中平和友好条約締結についての決意、あるいは基本的な立場というものにつきましてはある程度明らかになってきたように思うわけです。すなわち、共同声明は遵守する、宮澤四原則には何ら拘束されない、また双方が満足する条件で、一致する方向で平和友好条約を締結したいというものであると思います。そうすると、あと残された問題は、福田内閣の日中平和友好条約締結への具体的な行動だけになるのじゃないかと思うわけでございますが、福田総理が組閣をされて対中交渉をこれまでどういう形で行ってこられたのか。さきに小川大使を召喚して報告を受けておられるわけでございますが、今後どういう形で交渉のレールに乗せていかれるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  265. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中平和友好条約につきましては、ただいま近江さんからお話がありましたような基本方針で立ち臨んでいきますが、これからの段階は、条約のすり合わせとか、そういう諸問題につきまして、外交チャンネルを通じましてこれを推進していく。そして、それらの問題につきまして両方満足し得る形というものができますれば、その段階において調印を行う。かように考えております。
  266. 近江巳記夫

    ○近江委員 小川大使にこの日中交渉について訓令をお与えになりましたか。
  267. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いかなる外交チャンネルの交渉をすべきかということについては、まだ訓令は出しておりません。
  268. 近江巳記夫

    ○近江委員 確認しておきますが、日中平和友好条約の締結問題について、自民党内のコンセンサス並びに政府と与党とのコンセンサスというものは、これはでき上がっておるのですか。
  269. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま申し上げた方向につきましては、コンセンサスができております。
  270. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、なぜこういうことを申し上げるかといいますと、実務協定のときに非常に台湾ロビーが難色を示したという例があるからです。しかし、その点についてはコンセンサスができておるということをおっしゃったので、次に移りたいと思います。  訪中に際して総理と会った自民党の川崎秀二氏との会談で、福田総理は近いうちに外相を訪中させることも考えておるということを述べたことが伝えられておるのですが、また本委員会におきまして、わが党委員の質問に対して鳩山外相は、福田総理から指示があれば訪中したい、このように述べておられるわけですが、総理は日中平和友好条約の早期締結のために鳩山外相を中国に派遣する具体的な構想をお持ちですか。
  271. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ鳩山外相を中国に派遣するというところまでは決めておりませんが、必要とあれば外相派遣ということにもなりましょうが、まだそこまで段階が来ておらぬ、そういうふうに御了承願います。
  272. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこまでの段階に来ておらぬということを総理おっしゃっていますが、御承知のように、今年の九月で日中復交満五年を迎えようとしているわけです。総理は日中関係は順調ということを言っておられるわけですが、肝心の日中平和友好条約交渉のめどが立っておらないということを考えましたならば、何も順調であるとばかりは言っておられないと思うのですね。少なくとも復交満五年までには日中平和友好条約の締結を図る、こういう目標を立てて交渉を進める、問題に取り組むべきではないかと思うわけですが、私のこの意見に対して総理はどう思われますか。
  273. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、日中両国がともに満足し得る条件ができる、こういうことになれば喜んで条約の締結に署名をするということにいたしたいのですが、まだいつ幾日までに交渉を了するというところまで熟しておらないのです。もうしばらく私は形勢の推移を待って、その上で外交チャンネルを通じて交渉をし、そして締結まで持っていく、これが順序であろう、かように考えております。
  274. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、めども立たないというようなことでありましたら、口ではおっしゃっていますが、非常に私はその点は口先ばかりじゃないか、実行を本当に意図されていないのではないかと思うわけです。また、そういうことは中国側の不信を買い、ますます日中平和友好条約の締結が混迷する心配があると思うのです。私は、こういう機を逸しないで、本当に総理のそういう決意を固めていただいて推進をしていただくべきである、このように思います。強く申し上げておきます。  次に、首悩会談におきまして、当然朝鮮半島の問題等大きな問題になるのではないか、このように思うわけですが、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明での韓国条項、七五年の三木・フォード会談での新韓国条項が合意されておるわけですが、総理としまして、今回の首悩会談で、この韓国問題につきましてはどういう認識で望まれるおつもりですか。
  275. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 韓国の安全は、これは朝鮮半島の安全、平和に重大な関係がある、朝鮮半島の平和と安全はわが国の平和、安全にまた重要なかかわりを持っておる、そういう認識で対処していくというのが基本的な考え方であります。
  276. 近江巳記夫

    ○近江委員 韓国からの米軍地上部隊の撤退に対して、政府は朝鮮半島のバランスが急激に崩れては困る、慎重にすべきだということを要請することを決定されておられるようでございますが、このバランスを崩すことは困るということであるならば、必然的に在日米軍の強化ということは不可避なことになるのではないかと思うわけですが、むしろ日本政府が在日米軍の強化を要請するようなことになるのではないかということを感じるわけでございますが、実際に政府としては、そういうバランス論からいって要請をされるというような考えはあるのですか。
  277. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、朝鮮半島からの米地上軍の削減問題、これはまだ固まった考え方じゃないと思うのです。しかし、いずれにしても、私の展望から言いますと、これは朝鮮半島のバランスに影響のあるような形で行われるということはなかろう、こういうふうに思います。そういうことをまた私どもとしては期待をいたしておるわけであります。したがって、わが国の自衛隊の役割り等についてこの問題が影響あるというような事態ではない、こういう判断でございます。
  278. 近江巳記夫

    ○近江委員 米側からそうした要請があったならば拒否することはできないんじゃないかと思われるのですが、これについてはどのようにお考えですか。
  279. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 米地上軍の削減に関連いたしまして、日本にそれにかわる何か役割りを持てというような要請が私はあろうとは思いません。そういうような形にならない姿でこの問題は処理される、こういうふうに考えておりまして、わが国が何か荷物をしょったとかなんとかよく言われますが、そういうことは私は全然考えてもおりませんし、またアメリカ側がそういう要請をしてくるなどとは、これは予想せられざるところである、そういうふうに考えております。
  280. 近江巳記夫

    ○近江委員 私が非常に心配しますのは、韓国からの米軍の地上部隊の撤退、またバランス論というようなことになってきますと、在日米軍基地の強化あるいはまた自衛隊の強化、またそうした紛争というような万一のことになった場合には、これはいままで、特に佐藤総理のときには、いわゆる事前協議におきまして速やかにというようなことを言っているわけですね。こういうように非常に情勢も変わってきておるわけですが、この事前協議の問題ということが非常に問題になってくると思うのです。結局、いろいろな情勢を考えますと、イエスと言わざるを得ないのではないか、こういう感がするわけであります。この事前協議の問題に対しては、総理はどういう認識をお持ちでございますか。
  281. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はそういう事態があろうとは思いませんけれども、万一朝鮮半島でごたごたが起こった、そして在日米軍基地から米軍が作戦行動に出動するという際におきましては、これは日米安保条約に従いまして事前協議という段階に移るわけでありますが、その事前協議に当たりましては、わが国といたしましては、これはわが国の国益、またその時点の国際環境等を踏まえまして、イエスもあり、ノーもある、こういう従来からの考え方にいささかの動揺もございませんです。
  282. 近江巳記夫

    ○近江委員 戦闘作戦行動というものは現在以上に深刻にならざるを得ないのじゃないかと思うのですが、したがっていわゆる事前協議に対する再検討あるいは厳格な監視機構というものをぜひ考える必要があるのじゃないか、このように思うのですが、この点につきましては総理はいかがお考えですか。(福田内閣総理大臣「ちょっとよくわからない。」と呼ぶ)  いわゆる戦闘作戦行動というものはこうした情勢の変化によりまして非常に深刻になってくる。したがいまして、この戦闘作戦行動の事前協議に対するいわゆる再検討あるいは厳格な監視機構を考える必要があるのじゃないか、このように思うのですが、いかがでございますか。
  283. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 どうも監視機構という意味がよくわかりませんでしたのでありますけれども、従来のたてまえを何ら変える必要があるとは考えておりません。
  284. 近江巳記夫

    ○近江委員 たてまえを変える必要がないとおっしゃっても、そういう米軍の地上部隊の撤退ということが現実の問題として上がってきているわけでしょう。あなた方のおっしゃるバランス論という点からいきますと、何回も繰り返すようですが、在日米軍基地の強化であるとか、まあそういう紛争が生じなければいいですけれども、そうなった場合はいまよりも以上にやはりそうした事前協議の問題ということは、非常に国民は皆心配が高まってくるわけであります。ですから、それをシビアにさらに監視をしていく、協議をしていく、これが大事だと思うのです。その点の心構えについてひとつ……。
  285. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本国民にそのような心配がふえるようなことはないものということを期待をいたしておりますし、そのような考え方で臨みたい、こう思っておる次第でございます。したがいまして、いまおっしゃるようなことは必要がないのではないかというのが私どもの考え方でございます。
  286. 近江巳記夫

    ○近江委員 この朝鮮問題にさらにもう少し入ってみたいと思いますが、過日の第八回日韓議員連盟総会共同声明では、日本の無原則な北側への接近は朝鮮半島のバランスを崩すものであるということを述べておるわけです。総理もこの会合に出席されたわけですね。あいさつをされた。日韓議員連盟総会ですね。日本の無原則な北側への接近は朝鮮半島のバランスを崩すものであるということを共同声明でうたっておるわけです。それで、総理はこれに出席してあいさつをされているわけですが、この共同声明で述べておりますように、日本の無原則な北側への接近は朝鮮半島のバランスを崩すとうたわれておりますが、総理も同じ認識をされているんですか。
  287. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はその共同声明のことは存じませんが、私は開会の壁頭に総理大臣としてメッセージを述べた、こういうことなんです。いま共同声明にあることをお読み上げになられましたが、やはりいま韓国と国交を持っておる日本立場といたしますと、無原則というのがどういう意味合いになりますか、たとえば北鮮を承認するとかなんとか、そういうような事態になりますと、これは相当今日の事態においては混乱を起こすのじゃないか、そういうふうに考えます。
  288. 近江巳記夫

    ○近江委員 承認ということになってくれば混乱が起きるとおっしゃるわけですか。これは私は非常に問題だと思いますね。  それではもう一度確認の意味ではっきりお聞きしたいと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国との国交関係樹立は朝鮮半島のバランスを崩すことになるのか、これが一つであります。まず、この点についてお聞きしたいと思います。
  289. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国といたしましては、朝鮮半島の平和を心から願うものでございますけれども、直ちに承認をするというところまで立ち至っておらないその一番大きな原因は、北側の政府が南の韓国政府を認めない、相手にしないというところにあるのでございます。したがいまして、南北間の対話が再開をされる、そして北側が南側の政府を認める、こういうことになりました上でのことでございますので、直ちに承認問題をいまここで云々する段階でないのでございます。
  290. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは非常に韓国立場にだけ立った、わが国政府の行き方としては私は非常に問題があると思います。総理カーター氏との会談におきまして、朝鮮民主主義人民共和国の承認問題について話し合われる、そういうお考えはあるわけですか。
  291. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、日米会談で北朝鮮を承認をするというような話題が出るとは思いません。私の考え方を申し上げますれば、南北が終局的には平和的に統一されるということが一番好ましいんだというふうに存じますが、それに行くまでには時間がかかる。その経過の過程におきましては、これはやはり南北の平和が維持される、平和が維持されるもとは何だと言えば、南北のバランス、これが確保されておることである、こういうふうな見解でありまして、そういう立場についての話は出るかとも思いますけれども、北朝鮮の承認問題というような話題は出ない、私はかように考えております。
  292. 近江巳記夫

    ○近江委員 北朝鮮のそうした承認問題については、さらに政府として積極的な取り組みをなさるように強く要望をいたしておきます。  次に、総理カーター大統領とお会いになられるにつきまして、いろいろな項目についてお考えをお持ちであろうかと思いますが、核軍縮で具体的な提案をしたいというようなこともちょっと漏らしておられるように思うわけですが、そういう具体的な大胆な提案というのは、一体どういう提案をなさるおつもりなんですか。
  293. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、核が開発され、これが兵器化され、しかも核兵器の保有国が相競って国費をこれに投入しておる。こういう状態は非常に愚かなことだ、こういうふうに思うのです。これが使われるということにならば人類のおしまいであり、地球の破滅である。そういうことを考えると、核というものは兵器としてこれを整備いたしましても、なかなかこれを使用するというチャンスはないのじゃないか。そういうふうに思いますが、それを国費をつぎ込んで、そして競争して強化するというようなこと、これはもう恐らく核大国といえども愚かなことをやっておるという感触を持っておると思うのです。そういう状態に対しまして、核を兵器として使うことをひとつ絶滅しよう、廃絶しようという主張を展開し得る国はわが日本だと思うのです。わが日本は非核三原則というものまで持っておる。しかも、わが国は最初の被爆国である、こういう歴史を持っておるわけです。しかも、その上、持たんとすれば強大な核兵器を持ち得る工業的、技術的、経済的可能性を持っておる。その国が核を持たない。その立場というのは、私は核廃絶という問題について非常に強大な説得力を持つところの発言をなし得る、こういうふうに思うのです。そういう立場を踏まえまして、たとえば核廃絶への第一歩といたしまして、包括的核実験禁止、こういうようなことを日本が主導的な立場において国際社会で提唱していく、国連というような舞台においてもそれを強力に進める、そういうようなことは私は非常に世界のこれからの平和のために貴重な行動になっていくのだろうと思うのです。いろいろありまするけれども、そういうような話もカーター大統領との間でしてみたい、かように考えております。
  294. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点は非常に積極的なお考えをお持ちでございますが、それでは、カーター大統領に対して改めて日本の国是である非核三原則を確認し、理解を求め、かつ安保条約の事前協議で米軍の日本への核兵器持ち込みに対して、いかなる場合もノーということをいわゆる首脳会談で合意すべきだと思うのですが、どうですか。
  295. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その点は私からアメリカ大統領に言わぬでももうよくわかっていることだと思いますが、御要請でありますからその話もしてみますが、もうよくわかっていることです。
  296. 近江巳記夫

    ○近江委員 よくわかっておられても、この点につきましては総理も言うとおっしゃったので、強く要請いたしておきます。  それから、いま御承知のようにOPP、カビの防止剤の問題が非常にクローズアップされてきておるのですが、総理がひょっとすれば手みやげにされるのではないかというようなうわさも流れているのですよ。この問題につきまして総理としては、もしカーター大統領からそういうことを言われた場合、どういうお考えをお述べになるのですか。
  297. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 OPPの問題は厚生大臣の所管でございますが、アメリカとの関係でございますので私の方からお答えさせていただきます。  御承知のとおり、昨年の十二月にこのOPPにつきましての化学的な検討の結果が出ました。特に遣伝上におきます障害のおそれにつきましての検討の結果が出たものでございますので、アメリカ側といたしましては、輸入にOPPの使用が解禁されることをその当時から希望しておるのでございますが、その点につきまして、先般、十五日だったと思いますが、厚生省の方から食品衛生調査会の方に諮問が出されたわけでございまして、これは食品衛生調査会の結論を待つということでございまして、これが対米上の折衝になるという性質のものではないと考えております。
  298. 近江巳記夫

    ○近江委員 折衝になるようには考えていないとおっしゃるけれども、アメリカのレモン業者というのは必死なんですよ。カーターさんも選挙を終えて、私は公約なさったかどうか知りませんよ、しかし政治家としていろいろな陳情を受け、自分が実際の立場に立ったときに、陳情を聞いたことについてやはりどうするかということは頭にあるのじゃないか。現実にこれは大きな問題になってきているのですよ。そういうようにもしも言われた場合は総理はどうしますか。
  299. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日米会談におきましては、もう少し大きな問題を話すわけで、OPPを大統領がどうするんだなどという話は大統領の口から出るなどとは私はゆめゆめ思いませんが、もし万一そういう話が出たということになれば、国際的な立場に立って公正にこれを処理するというふうにお答えするほかないと思います。
  300. 近江巳記夫

    ○近江委員 ロッキード事件の解明が依然として進んでおらないわけでございますが、日本政府としまして、総理として、このロッキード事件解決のために新たな要請をされるかどうか、資料提供につきまして。特にSECの公表資料の問題につきましては、非常に国民は皆関心を持っております。これは正式提供を要請されますか。
  301. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード社があの事件の調査をしているわけです。そしてその結果がSECに対して四月中に多分報告をされるだろう、こういうふうに思いますが、これを報告され、公表されるという段階になりますれば、当然わが出先はその報告書を手に入れることに努力するというふうに考えております。  それから、その他のロッキード問題につきましての新しい資料があるかとかなんとか、そういうような問題につきましては、日米間に相互協力の約束もできておるわけでありますから、その約束に従って処理される、こういうふうに考えております。
  302. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう少し立ち入って聞きたいと思いますが、SECから公表されるであろう資料を原文のままわが方に提供してもらうように日本政府としては事前に正式に要請すべきだ、このように思うのです。この問題については強く要請されますか。
  303. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 報告書の中で公表されない部分が仮にあったといたしまして、それがわが法務省当局で非常に利用し得るものであるということになれば、これはいままでの司法の協力関係に基づいて当然当方からの要請を先方は聞いてくれるもの、こう思います。
  304. 近江巳記夫

    ○近江委員 このSECの公表資料というものは、日米司法共助協定とは関係のない資料なんです。またこの司法共助協定に拘束されるものではないと思うのです。ところが、わが党の二見委員の質問に対しまして安原刑事局長が司法共助協定を持ち出した意味というのは、ちょっと私たちはかりかねておるわけですが、これについてはいかがですか。
  305. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま外務大臣がこの問題についてお答えをしたとおり法務省としても考えておるので、もし安原刑事局長が何か違ったような答弁をいたしておるとすれば、これはただいまの外務大臣の答弁のとおりとお考えを願って結構だと思うのでございます。  たしかあのときに言いましたのは、三月三十一日ごろまでにはロッキード社からの報告がSECに提出されるだろう。そうすればそれを審査する時間もかかるであろうから、五月の初めには出てくるであろうと思う。しかしその場合において、もし何か秘密なものがあれば、当然われわれの方としては司法共助の関係もあるからもらえるものと思っておる、請求をするつもりである。いま外務大臣は、これは公表すると思っておる、公表すると言われておりますからね。われわれもそう期待しておるわけです。必要があればわれわれとしては司法共助の関係でこれを要求する、こうお考え願って結構だろうと思うのであります。
  306. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしましても、このSECの資料というものは、ロッキード事件解明の大きなかぎになると私は思います。そういう点でこれは強く要請されることを要望いたしておきます。  次に、このロッキード事件を発端としまして、多国籍企業、この活動につきまして何とか規制しなければならぬということは国際世論となってきておるわけですが、多国籍企業などの独禁法違反を取り締まることからも、日米協定をするとかしないとかという話が今日まで何回か上がってきておるわけですが、私はぜひ速やかにすべきだと思うのです。この点についてはカーターさんと会ったときに話をされますか。
  307. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私とカーター大統領との会談では、そういう話は、私は話題にはならぬと思います。とにかく時間の制約がありますからね。外務大臣と国務長官との間の話題になりますかどうか、とにかく——外務大臣と国務長官との会談でどういう話が出るか、それは外務大臣の方からお答え申し上げます。
  308. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 バンス国務長官との会談は、申し出ましたところ、三十分間くらいの時間がもらえたのでありますけれども、なかなか項目も多いものでございますから、目下——そのような独禁政策につきましてもし必要があれば、これから至急相談いたしたいと思います。
  309. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、独禁政策の問題につきまして、次にお伺いしたいと思います。  大平幹事長は、この十二日の記者会見で、独禁法改正案の扱いにつきまして、山中調査会で今月中に党内調整を終えるくらいのテンポで進めており、これを踏まえ、来月政府案を提出したい、このように述べるとともに、内容に関しましては、企業分割を含めた構造規制が問題になっているが、各野党の理解が得られるような方向で検討が進んでいると聞いていると、このように語ったということが報道されておるわけです。私は総理にお伺いしたいと思いますが、いつ国会へ提出されるのか、また改正作業の進行状況についてどのように把握されているか、このことについてお伺いしたいと思います。
  310. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題についての私の見解は、大平幹事長がテレビで語ったというところと全く同じであります。  提案の時期いかんと、こういうお話でございますが、今国会で私は何としてもこの問題の決着をつけたい、こういうふうに考えておりますので、その決着をつけ得るという時間的余裕を持ちながら御提案をいたしたい。その前に野党の皆さんとも十分話し合っておきたい、かように考えております。
  311. 近江巳記夫

    ○近江委員 決着をつける余裕を持ちながらということをおっしゃっているわけです。それならば大体のめどというのは出るでしょう、それは。いつごろとお考えなんですか。
  312. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ、なかなか今月中というわけにはいかぬかもしれませんがね。そうも思っておるのですが、なかなかそういかぬかもしれませんが、四月になりましてからなるべく早く提案、こういう段階にこぎつけたいというのが私の見解でございます。
  313. 近江巳記夫

    ○近江委員 内容についてちょっとお聞きしてみたいと思います。  われわれとしましては、七十五通常国会におきまして衆議院で可決しましたいわゆる五党改正案をそのまま提出すべきであるということを主張しておるわけですが、政府が予定しております改正案には、構造規制として企業分割規定が盛られておると見てよろしゅうございますか。
  314. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま総理が申し上げましたように、内容についても、与党を含めて各党に合意を得るような内容をいま調整中でございますので、ただいまここで骨子を申し上げるというわけにはちょっとまいりません。
  315. 近江巳記夫

    ○近江委員 野党の理解が得られるようなというような方向で検討するということであれば、これは当然企業分割規定が入らなければ、野党としての協力、われわれの理解、これはできないですよ。あの五党案において最大公約数でまとめたわけですから、そういう点からいけば、当然それは入れるべきだと思うのです。総理いかがですか。
  316. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題の決着ということになれば、これはやはりここでもまた協調と連帯ということでいかなければならぬと思うのです。やはり私は、この問題に最終的決着をつけるためには、これがこの前いわゆる五党修正案でつぶれた、こういういきさつを顧みてみる必要があると思うのです。あれはなぜつぶれたかといえば、自由民主党の方に異論があってああいうことになった、こういうふうに見ておるわけでありますが、今回、最終的処理、最終的決着をつけるためには、やはり野党ももちろんでありまするが、与党の方の賛成もこれは必要だ、こういうふうに考えておるのです。そういうふうなことで、野党も納得され、与党も納得するという内容にする。これが私はこの問題を決着させるゆえんである。こういうふうな見解でございまして、いませっかくその方向で与野党間の意見を調整中である、かように御理解願います。
  317. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう与野党が納得できる、一致できるという線からいけば、大平幹事長が言っておるように、そういう企業分割の規定ということはやはり取り入れざるを得ないのじゃないか、そういう方向で行かざるを得ないのじゃないかと思うのです。そういう方向については総理はお認めになるわけですか。
  318. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それを申し上げることが、私は、この問題の与野党間の決着をつけるのにいいかどうかということが頭にあるものですから、きわめて抽象的なことを申し上げておるわけでありますが、とにかく与野党間の合意が得られるようにいま鋭意努力している最中でございますから、その辺でひとつ御理解願います。
  319. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、日ソ漁業条約等の関係についてちょっとお聞きしたいと思います。  一九五六年に発効いたしました本条約は今後どうなるのかということにつきまして伺いたいと思います。  条約の第八条第二項の規定によりますと、「他方の締約国が廃棄通告を受領した日の後一年で終了するものとする。」となっておるわけですが、ソ連はこの廃棄通告をしてきたのか。今後することが予測されるのか。さらに、三月三日の鈴木・イシコフ交換書簡により暫定取り決め及び本協定を締結することになっておるわけですが、今後のわが国の北洋漁業はどのような体制のもとで行うことになるのか。日米間の例によりますと、現行条約は破棄され、来年までは暫定取り決め、来年からは本協定のもとで行われることになるものと考えられるわけですが、この日米間の本協定も含めて、この日ソ間の本協定は今国会に承認を求めることになるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  320. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 近江さんお話しのように、現在日ソ漁業条約が存在をいたしておりまして、締約国の一方から廃棄の通告があった場合にはその後一カ年間は効力を持つものである、こういうことに相なっております。したがいまして、日ソ漁業条約は附属書を含めまして、サケ・マス、ニシンがその対象魚種になっておるわけでございます。私どもは、この存続期間中は、あくまでこの条約に基づいて当該年度の漁獲量、操業の条件、方法が交渉によって決められるべきものである、こういう主張のもとに三月の十五日から東京においてこれが開催されておるところでございます。いまのところソ連の方から正式にこの日ソ漁業条約を廃棄するという通告はございません。しかし、いろいろの接触の間におきまして、ソ連におきましては近いうちにこれを廃棄するのではないかという感触は得ておるところでございます。
  321. 近江巳記夫

    ○近江委員 ニシン漁業につきましてお聞きしてみたいと思いますが、去る十四日来日しましたソ連側首席代表であるニコノロフ氏は、ニシンについては東京で交渉する余地はないと記者会見で述べておられるわけですが、そうだといたしますと交渉の場というのはどこなのか。その場はないのか。政府考え方は——また関係漁業者は四月以降の操業というものを非常に期待しておるわけでございますが、その見通しにつきましてお聞きしたいと思います。
  322. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 十五日以来、この日ソ漁業合同委員会の今後の議題、進め方等について協議が行われておるところでございますが、わが方の主張を入れましてサケ・マス並びにニシンにつきましては東京におけるシャルクの場で協議をする、こういうことに相なっております。
  323. 近江巳記夫

    ○近江委員 四月以降の操業を漁業者としては非常に期待しておるわけですね。確かに交渉のむずかしいことばわかるわけですけれども、見通しにつきまして大臣はどういうようにお考えですか。
  324. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 これからニシンの問題につきましても具体的な交渉に入るわけでございますから、いま責任者である私から予断を持ってその見通しを申し上げることは差し控えた方がいいと思うのでありますけれども、ニシンの資源につきましてはソ側は非常にシビアに考えておるようでございます。北海並びに北西太平洋等におきましてもニシン資源は危機的状況にあるということをるる言っておるところでございます。また、一両年前からニシンについてはソ側は自分の方も全面禁漁をしなければならないような状況にあるということも言っておるところでありまして、今年度のニシンの操業の実績の確保ということは非常に厳しい状況の中でこの交渉が行われる、こういうことを申し上げておく次第でございます。
  325. 近江巳記夫

    ○近江委員 漁獲割り当て童につきましてお聞きしたいと思いますが、日本への割り当て量というものは五十万トンということも言われておるようでございますが、ソ連が日本の二百海里水域内から同量の漁獲を要求しておるということを聞いておるわけですが、漁獲割り当ての基準は従来の実績を尊重して決めるべきであると考えられることは、これは非常に大事なことでございますし、もとより一挙に大幅変更するということはこの漁業の秩序を混乱に陥れることになるわけでございまして、これは絶対に許されないことではないかと思います。この漁獲量の問題というものにつきましては北洋漁業にとりまして死活問題でありまして、漁民としては非常に注目をいたしております。この漁獲量の問題につきましてひとつ農林大臣のお考えを伺いたいと思うのです。
  326. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 新聞の報道等で私も見ておるわけでございますけれども、現在のところモスクワにおきましても漁獲量につきまして具体的な数字は出ておりません。また北太平洋におけるわが国の実績というのは、三十数年にわたりますところの長い間の努力によって開発をし、そして積み重ねてきたところの伝統的な実績でございます。また御指摘のようにこの海域で操業しております漁業者は、北海道その他中小零細な漁業者もたくさんおるわけであり、その背後には加工業者、そして国民はたん白食糧の五一%を依存しておるというような状況でございまして、私はこの実績の確保ということにつきましては全力を挙げて努力をいたしておるところでございます。  また、わが方の二百海里設定の場合についてソ側も日本の二百海里の中での漁獲をすることを求めておるということも事実でございますが、私は、これは今日までの実績に立って、そして向こうが一〇%、二〇%を削減する場合にはわが国の沖合いにおきましても同じようなパーセンテージで削減をするということであって、それが合理的だ、こう思うのでありまして、数量的に向こうが七十万トン、こっちも七十万トンとかそういうものではない、やはり実績の上に立って相互に納得できるような漁獲量の割り当てをすべきものである、このように考えております。
  327. 近江巳記夫

    ○近江委員 この実績確保ができるように、困難なことはわかりますけれども、全力を挙げてがんばっていただきたいと思うのです。一方的に極端な漁獲量を押しつけるというようなことになってまいりますれば、日ソの友好親善にもはかり知れない結果をもたらすということは十分予測されるわけです。  私はそこで、日ソ漁業委員会の場は場として、もう一歩より高い次元の話し合いの場を早急に持つ必要があるのではないかと思うのです。この点につきまして、農林大臣と総理から御所見をお伺いしたいと思うのです。
  328. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私どもは過去における実績、この五年間の実績を詳細にデータをそろえまして向こう側にも説明をし、そして同じ遠洋漁業国として相互に両国の利益に合致するように、また両国の友好親善に沿うように、そういう観点から努力をいたしておるところでございます。今後の推移を見ましてあらゆる努力を傾けてまいりたい、このように考えております。
  329. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日ソの関係につきましては、これは漁場問題は非常に大きな問題でありますが、同時にシベリアにおける資源開発問題もある、あるいは日ソの善隣友好の国としての文化の交流、そういう問題もあります。それら総合的な日ソ関係、そういうことにつきましては、これはことしはぜひ鳩山外務大臣に訪ソしてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、そういう機会に広範な日ソ関係というものについて話し合ってみたい、そういうふうに考えております。
  330. 近江巳記夫

    ○近江委員 農林大臣は日ソの交渉後、お帰りになって所感をお述べになった。そのときに、近く日本国の沿岸に二百海里の漁業水域を設定する方針であるということを明らかにされておられるわけですが、その時期というものは、五月の国連海洋法会議の動向を見て、五月以降になるということを示唆されておるようでありますが、具体的にいつごろを考えておられるのか。また、その方式についてはどういうことをお考えか、お聞きしたいと思います。
  331. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私は、イシコフ大臣との会談におきましても、やはり日ソ交渉は領海は十二海里、そして漁業専管水域は二百海里、こういうような条件で交渉をすることがわが国の利益を守るゆえんである、こう考えまして、率直にそのことを表明をし、交換書簡の中に明記することに相なったわけでございます。  かねてから、わが国は国連海洋法会議の動向を見て慎重に考えるということでございましたが、このようにアメリカもカナダも、そしてソ連も、現実に二百海里という時代を迎えたわけでございますので、わが国におきましても、五月の国連海洋法会議におきましてこの二百海里問題についての世界的な合意がなされなければ、いつまでも待つわけにはまいらない、さような意味合いから、この五月の状況を見ますけれども、なるだけ早い機会にわが国も二百海里を設定すべきものだ、このように考えております。  なお、そういう政府として方針が最終的に決まり、それを国会の御承認を得るという時期につきましては、政府全体として、特に総理の最高判断によって御決定を願わなければならないことだと考えております。
  332. 近江巳記夫

    ○近江委員 運輸大臣、来ておりますか。——先ほど何かハイジャックがあったということを聞いたわけでございますが、もしあったとすれば、その報告をまずお伺いしたいと思います。
  333. 田村元

    ○田村国務大臣 本日、千歳発十二時四十分、仙台行きの全日空七二四便、ボーイング727型機でありますが、機内において、離陸後間もなく、犯人が刃物、どうもナイフのようでありますが、刃物を用いてハイジャックをしようと試みました。これが十三時三分であります。ところが、乗客によって十三時十八分に取り押さえられた。同機は、目的地を変更して函館に十三時二十四分無事着陸をいたしました。十三時三十七分に犯人は警察によって逮捕されました。  本人の申し立てておるところでは、田中修、二十七歳、岩見沢の出身ということだそうであります。  それから乗客は三十六人。乗員はパイロット三人。これはフライトエンジニアを含んでおります。スチュワーデス四人。  航空機は駐機場において警察がいま現場検証中である。函館空港は再開をされた。こういう報告でございます。
  334. 近江巳記夫

    ○近江委員 犯人も逮捕されたということでございます。しかし、この種の問題につきましては、やはり対策として本当に関係者は万全の体制をとらなければいかぬと思うのです。  私も空港を幾度となく視察もしておりますが、働いておる人の話を聞きますと、どこの空港もすきだらけだというのです。やろうと思えば、別のところからでも幾らでももぐり込みができますよ、中におれば本当に穴だらけだということを私も聞いておるわけです。そういう点、今後運輸省としても、政府全体としても十分な体制をとっていただきたい、このように思うわけです。決意だけお伺いして、私は持ち時間がありませんから終わりたいと思います。
  335. 田村元

    ○田村国務大臣 現在の状況は近江さんもう十分御存じのところと思いますが、人権を踏まえて、可能な限りのことはしておるつもりでございますけれども、こういうことが起こるということは何か欠陥があるということにもなりましょうから、十二分の上にも十二分に、これからも思いを新たにして警戒の強化を図っていきたい、こういうハイジャックの予防をしていきたいと考えております。
  336. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  337. 坪川信三

    坪川委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たかこ君。
  338. 土井たか子

    ○土井委員 福田総理は、衆議院の本会議で環境影響評価制度、一般的にはアセスメント法の立法化というふうにも言われておりますが、この問題についてすでに触れて言われております。それは「環境対策といたしまして、環境影響の事前評価法を早期に制定すべしというお話でございます。これは、世論もそういう高まりを見せておるわけでございますが、やはり私も、いろいろな開発行為が行われる、その開発行為が行われる前に効果的な環境影響評価をしておく必要がある、こういうふうに思います。それを実行するための制度、体制、ただいまどういうふうにするかにつきまして、政府におきましては検討中であります。」、このように福田総理はお述べになっているわけであります。ここでは事前評価法と具体的に法案を認識し、そしてその法案を今国会で出すべく閣議了解も得ておられるようであります。  先日、私は三月三日、当予算委員会におきましてこの問題を取り上げて質問をいたしました節、もちろん環境庁の石原長官はアセスメント法案を提案するということについて確認をされておりますし、また、長谷川建設大臣、それから運輸政務次官、国土庁長官、それぞれ法案に対して異議はないという趣旨の御答弁をいただきました。ただ、通産大臣については、議事録を見てまいりますと少し微妙でございまして、「本件につきましてもたびたびこの予算委員会等でもお答え申し上げたとおり、環境影響評価制度の試案につきましても、このような観点から制度のあり方につきまして慎重に検討を進めておるところでございます。」と、また慎重に検討を進めていらっしゃるということ、これは正直というか率直というか、御答弁になっているわけでありますが、ここで問題は、法案とか法ということをおっしゃらずに制度というふうにおっしゃっているところが、少し私はニュアンスが違うのじゃないかというふうに考えるわけです。その後、環境庁の方からは環境アセスメント法の原案というのか出されておりますが、この環境アセスメント法の原案につきまして、ただいま恐らく関係各省庁間では話し合いが進められているというふうに私は推察をいたします。つきましては、建設大臣、運輸大臣、国土庁長官、大体いま、先日三月三日の当委員会で御答弁のとおり、この環境アセスメント法案について今国会で提案をし審議をするという段取りについては御了承のところだと思いますけれども、これについて再確認をさせていただきたいと思います。いかがでございますか。
  339. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 アセスメント法につきましては、ただいま省内各局合わせまして事務レベルにおいての慎重な検討を加えて、一日も早くその結果があらわれるように進めておるところでございます。
  340. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  国土庁といたしましても、実効性のある環境影響評価法案というものが実現するよう、ただいま環境庁といろいろ打ち合わせをいたしておる段階でございます。
  341. 田村元

    ○田村国務大臣 事務的に何か少し方法論で詰めが行われておるようでございますが、私はこの法案がなるべく早く提案されて成立することを望んでおります。
  342. 土井たか子

    ○土井委員 通産大臣、先日のこの予算委員会では、制度についてただいま検討中という御答弁でございましたが、法案に対してはただいまどういうふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  343. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  環境アセスメントと申しますか評価法でございまするが、私どももただ抽象的なお話だけではなりませんので、特に環境庁の方に対しまして早く法案の要綱なり内容を知りたいということを再三申しておりました。三月七日にようやっと法案の要綱の提示がございまして、九日、十日と法案の説明を受けました。十二日に文書による法案の内容が参りましたので、ただいま役所間におきまして実務的に何とかこれがりっぱなものができますように折衝がされている次第でございます。
  344. 土井たか子

    ○土井委員 やっとのことでこの待ちに待ったのが示されたという御答弁でございますが、これは昨年の通常国会のときにすでに提案が約束されていて、そして調整が難航してとうとう日の目を見ずに今日に来たという経過がございます。その節、大変調整に難航したという中には、いろいろな新聞報道等々を勘案いたしてまいりますと、通産省の方にどうしても現時点では時期尚早だというふうな御見解があったということを私たちは存じております。通産省が今回の国会においてもやはり同じ態度でこういう問題に対してお取り組みになるということになると、またまた昨年の国会と同様の結果を招くわけでありまして、この辺はただいま国民が大変に注目をいたしておるところだと思いますので、ひとつ通産省に対してお尋ねを続けたいと思うわけですが、結局通産省は、結論としては今国会での法制化に反対はなさらないということでありますか。また通産省のいろいろな考え方に合致しない限りは、今国会において幾ら法案の原案が出されても、どうも同意しがたいものに対しては今国会も見送るべきではないかというふうなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。いかがですか。
  345. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  御案内のとおりに、いろいろな産業を守っておりまする当省といたしましては、企業に対しまする活力を与えるということが最も重大な問題でございます。さような関係からも、われわれは、昭和四十年からこのアセスメントの問題につきましては最も勉強もし、またいろいろと研究もいたしておる次第でございます。ことに抽象的な問題ではなく具体的なケースにつきまして、私どもは環境庁の御審議についてむしろ前向きに積極的にこれと協調いたしまして議論を重ねておる。この議論をいたしまするということは、決して回れ右ということではございません。国民生活を守り、豊かな環境を前提といたしまして、あるいはエネルギーの問題にせよ、あるいは生産性の向上にせよ、全力を挙げてこのアセスメントの問題について努力をいたしておる次第でございます。
  346. 土井たか子

    ○土井委員 協力とおっしゃいますが、協力の仕方が問題なんです。足を引っ張るのも協力なんです。中身に対して注文づけをやって、その注文が聞かれないときにはボイコットなさるのも協力なんです。協力の中身が問題なんです。実は四十年以来種々こういう問題に対して御苦労を重ねられてきたというただいまの御答弁でございますけれども、いままでのところ、通産行政の上ではもうすでにこの環境影響評価制度というものが現実の問題として導入されている事例がたくさんございます。しかし、それに対して十分にこたえる通産行政というものがいままで行われてきたかどうか、これが実は私は大問題だと思うのです。そういうことが十分に行われずして、四十年からそのための苦労をし、今日もこの法案に対しては成立さすべく協力をしたいとおっしゃっても、これはちょっと聞けたことじゃない、このように思います。  さて、ひとつここで具体例を挙げていろいろとお尋ねをしますが、五十一年の九月に政府として決定をされました、農村地域工業導入促進法第三条に基づく農村地域工業導入基本方針の改定というのがございます。所管は通産省、農林省、労働省の共管でございますが、この中身にははっきり「必要に応じて環境に与える影響を調査検討し、公害の防止、廃棄物の適正な処理等農村地域の環境の保全に十分配慮するものとする。」と明記してある。また五十一年十一月に決まりました首都圏整備法の第二十一条に基づく首都圏基本計画の改定を見てまいりましても、この中には「住民の健康を保護し、生活環境を保全するため、公害防止計画及び公害防止関係公共事業の推進等により公害の防止を図るとともに、自然環境を保全するため、地域の特性に応じた地域指定の推進、管理体制の充実強化等必要な措置を講ずることとする。更に、環境汚染の未然防止を徹底するため、必要に応じ、環境に及ぼす影響が著しい開発行為等について環境影響評価を実施することとし、その結果に応じて見直しを行うなど所要の措置を講ずるものとする。」こういうふうにこれもまた明記をされておるわけです。  それからまたさらに、五十二年の一月二十六日になりまして、国土庁の地方産業開発審議会が諮問どおりの答申をいたしまして、政府間で合意がなされて、あとは内閣総理大臣の承認を待つばかりとなっている新産業都市及び工業整備特別地域に基づく二十三都道府県、二十一地域の基本計画の変更案というのを見てまいりますと、この中にもはっきりと環境影響評価について、「予測評価を行い、その結果に応じ所要の措置を講ずるなど、公害の未然防止及び自然環境の保全に努める。」こういうふうにはっきり明記がされているわけであります。  さらに、公害対策基本法の第十九条に基づきまして、内閣総理大臣が指示をして、そして承認をすることになっている公害防止計画、この公害防止計画がこれまで第一次から第七次まで内閣総理大臣の承認を受けているわけであります。最も新しいことしの一月二十八日に承認をされました第七次地域の公害防止計画では、これもはっきり次のように言っております。「本地域には、鉄鋼等の基幹産業の立地あるいは流通港湾基地の形成等の計画がされているが、これらの企業立地等に当たっては、事前に環境に及ぼす影響について、総合的に予測、評価を行うとともに、公害防止協定等の締結を行い、環境保全を図る。」と、ちゃんとこれも明記をされているわけであります。  いずれを見ましても、環境影響評価の実施が前提になっているんじゃありませんか。いかがでございますか。しかも、これらでは通産省も当事者の一員になっているのです。その責任を果たすためにも、環境影響評価を法制化するための義務がいま通産省自身にあると思うのです。もうすでに、先ほどから述べてきた経過から言いますと、昨年の通常国会で提案がされ、審議をされ、できたら成立ということを約束されていた法案であったこの環境影響評価法案に対して、いままで通産省は、協力とおっしゃいましたけれども、実はいろいろな注文づけの協力をなすったという向きが非常にあるわけでありまして、もうすでに通産省自身は、いま私が幾ばくかの例を挙げたとおりで、環境影響評価の実施を義務づけられたいろいろな事業に対して、その責任を果たしていくためにも、環境影響評価を法制化する義務が私は通産省自身におありになるんじゃないか、このように思うわけであります。通産省としての行政の一貫性というものを貫くためにも、これ自身大事なことだと思いますが、こういう経過からして、今回この国会では、通産省はひとつ環境保全という立場で、人間の健康を保持していくという立場で、この問題に対して取り組むという姿勢をここで明らかに表明をおできになるかどうか、ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  347. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  ただいま例をお引きになりましたいろいろの問題一つ一つにつきましても、私ども、あるいは農村の中に工業あるいは鉱山地区がありました際の、その地区におきまする環境の保全と同時に、住民の衛生の問題やら、諸般の問題につきまして検討を重ね、同時に、単行法におきましても、おのおのこれらのアセスメントの問題を取り入れておるわけでございます。また都市の環境の問題にいたしましても、その他いろいろの法制の中におきまして、私どもは片や住民の福祉のために、あるいはまた健康管理のために、同時にまた産業政策の上から申しましても、その間の調整を考え、さらにまた先般来いろいろとお願いを申し上げておりまするエネルギーの問題を考えてまいりましても、先ほど来楢崎委員からの非常に詳細にわたりまする被害状況等も承りまして、思いを新たにすると同時に、いかにこの問題が重大であるかということを一層感ずると同時に、さらにエネルギーの問題を解決いたしますためにも、われわれはまず安全の問題、その環境の整備の問題、あるいはアセスメントの問題につきまして、真剣に取り組んでまいっておる次第でございます。  なお、先生のおっしゃいました昨年来の云々という問題も承知いたしておりまするが、この問題は、抽象的な問題ではなく、本当に具体的に効果を上げまするために、先生方の仰せられておりまする立法の趣旨をなお一層強固にするために御協力を申し上げておる次第でございます。
  348. 土井たか子

    ○土井委員 立法の趣旨を正確に把握して協力を申し上げている次第だというふうな御答弁でございましたが、通産省は、昭和四十年前後から、日本の主な既存の工業地帯、たとえば四日市であるとか、水島であるとか、鹿島であるとか、千葉、名古屋南部、川崎、横浜、大阪、尼崎、そういうふうな大気汚染と水質汚濁を対象に産業公害総合事前調査というのをずっと実施をされているはずであります。ここにもその資料が、産業公害総合事前調査報告書集というのがちゃんとあるわけでありますが、この事前調査結果では、結論から申しますと、ほぼどの地域についても汚染物質は環境基準以内におさまって、健康被害などは発生しないたてまえとしてちゃんとここでは述べられているのです。ところが現実はどうだったのですか。これは私が指摘するまでもなく、通産省が事前調査した地域で、四日市を初めといたしまして、川崎しかり、横浜しかり、尼崎しかり、名古屋南部しかりであります。幾つかの地域で大気汚染によって慢性気管支炎、慢性気管支ぜんそくというものを発生させて、何万人という死者や公害病患者さんを出現させているわけです。こうした痛ましい歴史というのは二度と繰り返してはならない。これはもはやだれ一人としてこの問題に対しては反対する人はない。もうごめんだ、いいかげんにしてほしいというのが国民の実感であります。これらの事例は、いかにこうした調査がずさんであったのかを、患者発生という事実で如実に私は物語っていると思うのです。通産省は、いまも産業公害総合事前調査というものを実施しているわけでありますが、過去のこうした先見性のなさというのをどのようにいま反省をされ、そこからどのような教訓を引き出し、そうしてそれをいまどのように実行されようとしているのか、このことをひとつ承りたいと思うのです。いかがですか。
  349. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘調査につきましては、主要な大きなコンビナート地区につきましては、すでに八カ所の調査を終わりまして、ただいま大分及び鹿島につきましてこれを指定地区にいたしたいという事務手続の段階にございます。現在各省庁と協議しておりますが、一部省庁を除きましてすべて回答をいただいておりまして、近々それらの手続に入れるものと考えております。
  350. 土井たか子

    ○土井委員 大変気のない返事でありますが、いろいろ調査をされて、そうしてそれを集約をされて、そうして報告をされている中で、大丈夫だと言われたことについて、大丈夫ではなかったという過去の事実がある。したがって、そういうことから考えてまいりますと、この事前調査というのが、どうも通産省のなされた限り、客観性に乏しかった。公害の未然防止としては余り寄与してこなかったということを一方でこの事実は物語っているのじゃないか。つまりこれは企業ベースで、企業の利益ということを擁護するの余り、環境保全とか人間の健康という問題に対する考えが薄く甘く後回しにされてきたという経緯がこの中に動いているのじゃないか。こういうことがやはりこの報告を読んだときの実感としてあるわけであります。だから、通産省としては、環境保全とか国民の健康保持という問題に対して、いままでどおりの姿勢では、今回の環境影響評価法案の中身が小骨も抜かれ大骨も抜かれるというてんまつになりかねないわけでありまして、通産省のこの調整の中で、いろいろと環境庁から言われることについて注文をつけ、こうであってはならないなどということを言われる向きが大変通産省側からあるわけでありますから、いま私が指摘した過去の経緯からいたしましても、環境影響評価の法制化がどうしても必要だということを力説されるわけでありますが、このことに対して大臣はもちろん異論はございませんね。
  351. 田中龍夫

    田中国務大臣 高度の社会構造に相なっておりますただいまといたしましては、従来にも増して、昔よりももっともっと真剣に住民の健康管理なりあるいはまた環境の問題を考えなくてはいけない。そういう点では、私ども、先生と人後に落ちるものではないのでございます。  ただ問題は、せっかくできました法案を何とか効果あらしめるためには、よいものにいたしまして、具体性のある、そうしてまたこれがりっぱに立法の趣旨を貫き得ますように積極的に御協力を申し上げておる次第でございます。
  352. 土井たか子

    ○土井委員 積極的な協力ということを重ねておっしゃるわけでありますが、この積極的な協力をなされると口先だけではなくて本当にそうした姿勢があるかどうかということは、通産行政を見るということに当然なってまいります。先日も当予算委員会の席でこの問題を私は取り上げたわけでありますが、通産省が所管をされる法律で四十八年の十月に全面改正をされました工場立地法という法律がございます。この法律は、「工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行なわれる」ことを目的としているわけです。この第六条を見ますと、通産大臣などは工場立地が適正かどうかをチェックするため指定地区を設定して事前に企業を指導するたてまえになっているわけであります。  ところが、この法律が四十八年の十月に改正されて三年有半、第六条は現在全く有効に機能していないという事実がございます。先日お伺いをしますと、大分地区と鹿島地区、この地域を指定するためにアセスメントを終了して各省にいろいろ協議をしているというふうなお話でございましたけれども、各省間の協議はいま整っていますか。いかがでございますか。
  353. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 関係省庁六省庁にただいま協議しておりますけれども、一、二省庁を除きまして協議が整っております。
  354. 土井たか子

    ○土井委員 その一、二省庁と言われるのは、具体的に言うとどこですか。
  355. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 自治省及び環境庁でございます。
  356. 土井たか子

    ○土井委員 自治省及び環境庁。こういう問題に対して最も切実に考えている省庁じゃないですか。自治省は地方自治の問題に対してあずかっている省ですよね。環境庁は言うまでもなく環境保全、健康保持ということをどこまでも追求している庁であります。そこからこういう中身じゃだめなんだと言われるくらいのチェックのしようだったのじゃないですか。非常に甘いずさんなアセスメントじゃなかったのかということを私は言いたいのであります。  したがいまして、先日、大分と鹿島とすでにアセスメントを終了していると得々と言われましたけれども、やはりいま協議をなさっていることがスムーズにいかないで、各省庁の中で、特にこれについては問題があるとおっしゃっておるところを聞いてみると、やはりこの工場立地法の第六条というものは通産省によって十分に機能されていない、こういうことになると思います。これは明らかに通産行政の怠慢と言わざるを得ません。ある意味では意識的なサボタージュじゃないかとすら私は言いたい。こういうふうな態度でもって環境影響評価に対して協力すると言われても、どうもそれに対して眉毛につばを塗らなければならない、このように私は思います。  いままで環境影響評価法の立法化に対して、通産省は、企業の立場やまた工場立地の立場において、いわゆる経済成長時代のあの感覚をそのまま持って、この問題に対していろいろと注文をつけられる。このことが実は大変大きな問題でありまして、いま通産省が環境影響評価法について、今国会でもその立法化に対していままでどおりの姿勢をお持ちになるということであっては、幾らこの法律の実現を国民が期待をいたしましても、そのようにはならないだろうと思うわけであります。  ここに私は一つの資料を持ってまいりましたが、これは五十一年一月十七日に通産省が内部的にまとめられた環境影響評価法に対する意見のメモであります。ちょうどこれが出された同じころに、大臣御存じだと思いますけれども、経団連から、関西経済連合会から、日本鉄鋼連盟から、電気事業連合会から、それぞれ出されました見解がございます。いま私が申し上げたすべての見解は、中にいろいろ表現の相違はございますけれども、環境影響評価というものを制度化されることに対しては時期尚早だ、特に住民の参加を認めていこうなんというのはもってのほかであって、こういうことをやったら混乱しかない、いたずらに開発計画をおくらせるばかりだ、中にはゴールのないマラソンを走るようなものだという表現すら使われている文書もございます。しかし、通産省の出されている省内でのメモは、内容から申しますと、この業界や経団連がお出しになっている中身と違いはございません。この通産省の出されているメモについては、いまどういう御認識でいらっしゃるか。そしてこういうふうに相変わらず考えて、今回もこの法案のいろいろな調整に対しては臨みたい、このようにお考えになっていらっしゃるか、そこのところをひとつはっきりお伺いさせていただきたいと思います。
  357. 田中龍夫

    田中国務大臣 関係省との話し合いの問題は事務当局から申し上げますが、根本の考え方といたしまして、ただいま申し上げるように、むしろわが通産省が取り組んでおりまする行政ほど環境の問題と現場におきましては重要性を持っておるものはないと思うのであります。あるいはNOxの問題、SOxの問題にいたしましても同様でございます。かような次第で、やはりせっかくつくります法制ならば、実効性のあるようにいたしたいし、同時にまた近代社会に対しまして、なお一層健康管理、あるいは環境アセスメントに対しますより効果的なものといたしたい。かような意味におきまして、先生と同じ思いで前向きに取り組んでおりますことを改めて申し上げます。
  358. 土井たか子

    ○土井委員 大分思いが同じようではないわけでありますが、片思いをされたのでは返す言葉もございません。ただ、しかし、この問題については、このいま私がお尋ねした五十一年一月十七日当時通産省部内で確認をされている部内メモの中身からすると、こういう姿勢では、今回中央公害対策審議会防止計画部会、環境影響評価制度専門委員会がお出しになっている中身からかけ離れたものであります。少なくとも、協力を全面的に惜しまないとおっしゃるのならば、やはりあの中公審が出している中身どおりに、その線に沿っての御努力をなすってしかるべきであります。そういう点から言うと、このメモというのはまるで違うことを言っているのですよ。時期尚早だの、やれ手法が開発されていないだの、技術がまだこれからだの、第一住民を参加させるなんてとんでもない、こう言っているわけですよ。これについてどうお思いになりますかということを私は承っているわけです。
  359. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生から御指摘がございました工場立地法に基づく事前調査につきましては、工場立地法制定以前を含めまして十年余の調査を……(土井委員「それはちょっと私の答弁じゃないでしょう。いま私はそういう質問をやっておりませんよ」と呼ぶ)そういう手法の経験を実際に積んでまいりました私どもとしまして、また、アセスメントの手法そして基準、そういうふうなものをどういうふうに法の中に取り込んでいくかということにつきましては、私どもも経験に基づきまして環境庁と議論を重ね、案につきましての意見を申し上げておる段階でございます。
  360. 土井たか子

    ○土井委員 これは技術的な側面が一番大事な問題ではございません。中公審のあの中身をはっきりお読みになっていらっしゃいますか。あそこで言っていることは、アセスメント制度というのは、手続法を内容にして考えていく、そうして、その節、影響評価に当たって大事なのは、地域住民の意見を反映させる、地域住民に対して公開の原則を確立する、この地域住民の参加ということをうたっているところがあの中では中心課題なんですよ。ここが問題なんです。このことに対して、やれ時期尚早だの、そういうことをやったら混乱だけあっていろいろな開発計画がとんざしてしまう、そういう認識でこのメモを部内で確認をされているわけでありますから、こういうことじゃだめだということを申し上げているわけであります。  そこで、総理大臣、お尋ねをしたいわけでありますが、この環境影響評価法案というのは内閣が提出予定法案として決定をされているものでございます。今国会においては、法案は原則として三月二十二日の閣議までに決定するということでなければ、今国会で成立するという見通しも具体的につまびらかになりません。これはもう大臣に申し上げるまでもない。もう日も一両日しかこれはございませんが、大臣はアメリカにお出かけになる。二十二日より多少おくれても提出するというふうなお気持ちでいらっしゃるのかもしれません。しかし、先ほど来少しお尋ねをした限りでも言えますように、この環境影響評価法案の骨子というのはやはり住民参加のところにあるわけです。これに対して通産省は、御答弁を承っておりますと余り歯切れのいい御答弁はいまだにお聞きをしていないわけでありますが、要は企業べったりでこの法案はできないのです。企業べったりでこの法案をつくったといたしましても、それは環境影響評価という所期の目的を達し得ないものになってしまう。そんなものならない方がいいのです。したがいまして、この所期の目的を達するような環境影響評価法案、これを今国会に上程し、この成立に向けて総理大臣としては約束通りに必ずこの中身の実現に努力されるかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  361. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府といたしまして、この法律案はなかなか考え方としてむずかしい問題があったわけであります。環境庁はその置かれております立場から非常に積極的でありますが、他面、低成長時代に入りまするけれども、成長は成長ということでいろいろな産業施設を進める必要がある。それが不当に阻害されるというようなことになってはならぬというようなことから、通産省が御指摘のように消極的な、と言うたら語弊がありましょうか、非常に慎重な態度をとられたわけでありますが、まあしかし、やっと環境庁の原案がまとまりましたので、鋭意政府部内の調整を急ぎたい。これは通産省ばかりではないのです。関係各省いろいろありますので、その間の調整を図って、そしてこの法案ができるということだけではいかぬと思うのです。これはできて、それがわが国社会のためにりっぱな役割りを尽くす、こういうことが大事なんだろう、こういうふうに思います。鋭意調整に当たってみたい、かように考えております。
  362. 土井たか子

    ○土井委員 いま鋭意調整をするとおっしゃいましたが、この法案は通産省主管の法案ではないのですね。公害対策基本法の趣旨からいたしまして、環境庁が、この環境影響評価という問題に対して住民参加というものを中心にしながら考えていく趣旨というものをひとつ内閣総理大臣もじっくりお考えいただきたいのであります。そうして、通産省が相変わらず、やっぱり立地条件であるとかあるいは企業に対しての進出の問題であるとか、あるいは企業の低成長におけるそれぞれの立場擁護というふうな観点から、これに対してやはり企業の声を受けながら注文づけをなさるというのは、これは断じて、この法案の所期の意味から考えますと、別の外れた意味であります。したがいまして、この点は、内閣法の第六条に「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」と、こうあります。このとおりにひとつ、今国会においての実現を期して、総理は中身をはっきり確約をされますかどうかということを再度お伺いしたいと思います。
  363. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 鋭意調整に努力するようにいたします。
  364. 土井たか子

    ○土井委員 鋭意調整に努力をされるけれども、今国会でだめな場合には、また、慎重に検討したけれども、調整がつかなかったのでだめだったということでは済みませんよ。この問題についてはアヒルの水かき論は通用しないのです。全国民がこの問題を注目しておりますからね。現に健康を損って、そして公害のばらまかれた地域で非常に苦しんでおる国民が多いということをひとつ忘れずに、重々お考えをいただきたいと思います。  また、いまの、これからのいろいろな立地計画や企業の進出の問題などをめぐって、幾ら低成長といえども、この問題をずさんにすれば相変わらず水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、こういうふうな例は後を絶たない。このことだけはひとつ深刻に受けとめて考えていただかなければならぬと思います。低成長になればなるほど、企業の側は公害防止施設に対してお金をかけることをサボるという傾向も出てきますよ。したがいまして、こういうことから言えばいまこの問題に対しては非常に大事な時期でございますから、総理にひとつ重々この問題を申し上げたいと思います。御決意のほどいいですね。
  365. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 土井さんと考え方はちっとも変わっておりません。こういう制度をつくりまして、そうして環境がよくなるように、また、経済の発展に伴いまして環境が悪化しないように、ぜひともそういうふうにしたいと思います。
  366. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、そういう御答弁をいただいたわけですが、肝心の環境庁の方のひとつ石原長官にお尋ねをしたいのです。環境影響評価を考えていく場合には、中公審がさきに言った住民参加が中心になるというのはもはや確認されている中身でありますけれども、それから考えていくと、過去に石原長官はこの問題についてもいろいろ発言をされておりますが、これが一定しないので、私たちもずいぶん振り回されるわけであります。  一月二十五日に、公害対策全国連絡会議の陳情に対しまして、私自身の考えがある、開発計画の持つメリット、デメリットの両面を評価したいと言ってみたり、それからアセスメント法は早急につくる必要がある、しかしすべての開発にブレーキをかけるような目標でつくることは疑問だ、開発にも過疎対策という住民のメリットになることもあるとか、通産、建設などの扱う問題も含めて多角的に計量、評価できるようなものをつくりたい、これが私の基本姿勢であると言われるのですが、基本姿勢というのは、公害対策基本法に基づいて中央公害対策審議会がこの環境影響評価にどういう考えを持っているか、言うまでもなくどこまでも住民参加ということを忘れちゃならないというところにあると思うのです。このことはひとつはっきり確認をしたいと思うのですが、この石原長官の、いまの公害対策全国連絡会議の陳情に対しての御発言というのは、ひとつまずこれを確認をさせていただきますけれども、環境行政を進める際、このいろいろな開発計画に対して、また通産行政や建設行政などが進める多画的な計量評価というふうなものをその中で問題にしていくということがどうして必要なのかということを私はあえて言いたいのです。環境行政というのは、公害対策基本法から考えていくと、そういう問題を考えろとは命じておりませんよ。そういうことを考えるのにはちゃんと通産行政がございますし建設行政があるわけでありますから、環境庁長官とされては、枠を外して、域を出て、本来環境影響評価の中で考える必要のない、むしろ考えてはならないことをお考えになっているんじゃないかという向きを私は受け取ります。いかがですか。
  367. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私の当初の発言は、環境庁長官と同時に国務大臣として発言したわけでございますが、就任早々でございまして、アセスメント法の作業そのものの進展状況もつまびらかにいたしませんでしたし、本来ならばそういうマクロな、マルチラテラルな法律がつくられればいたずらな抗争というものはもっと軽減されるのではないかと思いました。しかしプロセスをずっと勉強し直してみますと、やはりいままで事業者が説いていたメリットの説得のレベルというものに、デメリットと言えるかもしれません、環境に対するマイナスの影響というものを相対比較するために最低限同じレベルまで引き上げる必要があると思いますし、また私が考えましたマルチな、マクロな法律案というものはいまの法体系の中では環境庁の主体で行えるものではないということを確認いたしましたので、やはりいまのレベルでアセスメント法というものをできるだけ早期に完成すべきであると思っております。
  368. 土井たか子

    ○土井委員 おかしな発言なんです。これはだんだん怪しげになってくるのですが、しかしその問題は公環特でまた追及をいたしましょう。  きょうはひとつ石原長官が一たん言われたことに対して、発言にはやはり責任を——この節環境影響評価法案が今国会でできるかできないかの瀬戸際ですから、大事な時期なのでひとつ確認をさせていただきたいのです。  この環境影響評価は住民参加というところに中心があるということを長官自身が御認識ならば、——いろいろ陳情団がやってまいります。いろいろ苦衷を訴えます。実情を聞いていただきたいという思いいっぱいで環境庁に参ります。このいろいろな陳情の方々に対し一定のあるルールをみずからつくって、会う人と会わない人というのを類別していくというふうな態度を先日来おとりになっている。このことは非常に問題視されております。  きょうも実は、聞くところによりますと、水俣の患者さんがひとつどのように会っていただけるかということを相談しようとして来られた。環境庁は戸を閉ざし、表の鉄さくを閉ざしまして、雨の中に水俣の患者さんは立たざるを得なかった。私は単に環境庁でなくたって、水俣の患者さんを雨の中に立たすというのはこれは大変な問題だろうとは思いますけれども、当初私は、石原環境庁長官が就任されたとき期待をしていた一人です。新しいことを打ち出していただけるかもしれない、福田内閣の目玉大臣と言われる、やはり若さといままで未経験であるというよさがありますよ。役人でなかったというよさがあります。かっこうもいい。非常にこれは期待をする向きがあった。初閣議を終えた長官が、二十四日の午後十二時近く、環境庁で記者会見されたときに言われたことも、私は聞いていて非常にきざだとは思いますけれども、長官自身「キザなことを言うようだが、私は昔王様に諫言したため殺されたベケットのように私がしたいながら失われつつある日本の風土のために身を殉ずる闘いを閣議のなかでもやってみたい気持ちだ」というふうに言われているのです。これは覚えていらっしゃると思うのですね、そのとおりだろうと思うのですが。  ところで、ちょっと長官に聞きたいのですが、あなた自身、日本の核保有ということについてどういうお考えをいまお持ちでいらっしゃいますか。
  369. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私は、いろいろ誤解があるようでございますけれども、日本が核を持つべきであると申したことは一度もございませんし、現在もそのように思ってはおりません。
  370. 土井たか子

    ○土井委員 ここに私は間違わないように参議院の予算委員会の議事録を持ってまいりました。先ほど福田総理は、非核三原則というのは誠実に遵守するという向きの御答弁をされておりました。これはもう間違いのないことだと思います。石原長官はこの私が持ってまいりました昭和四十四年三月十五日の参議院の予算委員会の席で「さて、ここに非核三原則なる非常に奇妙なものがございます。つくらぬ、持たぬ、持ち込まず、妙な火事の標語のようなものでございますけれども、私はどうも、何でこんなものを政府がおつくりになったか、いささか理解に苦しむ。こういうものをつくる必要がどこにあったのかと思いますけれども、これはまさしく先ほど外務大臣がおっしゃいましたように、日本人の核アレルギーと申しますか、むしろ核に対する無知、核時代の防衛に対する無知の所産だと私はあえて申し上げます。日本人にとっての核の原則とは、要するに、核については考えたくない、その一つだけです。それにしても、つくらぬ、持たぬということと、持ち込まぬということとは全く同じカテゴリーではない。われわれは、つくらぬ、持たぬがゆえに、場合によっては持ち込まなくてはならない。それでなければ完全な防衛は果たせないと思います。」と、こう述べていらっしゃるのですよ。このことは確認をさせていただきますが、よろしゅうございますね。
  371. 石原慎太郎

    石原国務大臣 そのとおり申しました。
  372. 土井たか子

    ○土井委員 さらに私は、雑誌の中から少し引用いたします。「国防」という雑誌、四十四年の十一月号、石原長官は読売新聞の堂場さんとの対談をされているわけですが、そこで石原長官の発言があるのです。対談をなさいましたね、長官は。「つまり日本に核は持たせて、日本の核の使用の主体制というのを日本人が取るとしても、その何割か、あるいは技術的なものでできるだけ大きなパーセンテージをアメリカが確保しようという形で、日本の核の技術体系にアメリカにコミットさせることはできるんじゃないでしょうか。」こうおっしゃっているのです。そうしてさらにその次に「日本の核保有に技術的なコミットを積極的にアメリカにさせる。日本が持つ意志を示し、自分でやれるところまでやりだしたとしたらアメリカはやっぱり是認せざるを得ないと思う。できればそれが一番スマートなやり方だが。つまり日本の核保有の中にアメリカの基地を作らせるという形ですね。」こう言われているのです、いかがです。
  373. 石原慎太郎

    石原国務大臣 それも間違いなく申しました。政治家はいろいろな立場、いろいろなケースについて専門的に議論するのがその義務の一つだと思います。そういう意味で私は、いろんな方といろんな角度で議論いたしましたが、なお念のためにお調べいただければ結構でございますけれども、たしか参議院時代の議事録の中に、そういった論を詰めていきました結果、私は現時点で日本はやはり核を持つべきではないがという形の論法をしているはずでございます。
  374. 土井たか子

    ○土井委員 しかし石原長官、あなたは物書きでいらっしゃるから、物を書いたことに対しては一つ一つ責任をお持ちになる。これは現在は政治家でありますけれども、やはり物をお書きになるということに対しては責任をお持ちになる、そういう政治家だと私たちは思いたい。したがってそういう点から考えてまいりますと、この「非核の神話は消えた」という文章が「諸君」という雑誌の四十五年十月号に載っているわけです。そこの中で、「非核三原則とは何と滑稽な、ことの本質を逸脱した政治指針であろうか。」こう書いてあるのですよ。政治指針としてこっけいだとおっしゃっているのです。いまもこういう気分でありますか。
  375. 石原慎太郎

    石原国務大臣 政治は生き物でございまして、ラスキ教授が申しましたように、政治を規制するいろいろな政治係数というものは変化をいたします。そういう意味で私はその時点で、御存じかどうか知りませんけれども、日本人の意識の中に——たしかある新聞のかなり大規模な世論調査の中で、日本は核を持つべきであるという数字が四十五、そして持つべきでないという数字が四十六という非常に今日から見れば拮抗した結果が出たことがございます。その時点でそういった世論というものをしんしゃくし、またそれをもたらした国際情勢なりいろいろな情勢というものを勘案した中で私はその論文を書きましたが、しかし、その後いろいろな係数の変化によって私自身も進歩と申しましょうか、変化をいたしまして、現在非核三原則というものを遵守すべきであると思っております。
  376. 土井たか子

    ○土井委員 いつごろからそのようにお変わりになったのですか。
  377. 石原慎太郎

    石原国務大臣 閣僚就任以前でございます。
  378. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、福田内閣にいらっしゃる限り、内閣の閣僚でそのようにお考えになって、内閣、閣僚をおやめになればもとのこの考え方に戻られるということになるわけでありますか。いかがなんですか。
  379. 石原慎太郎

    石原国務大臣 どうしてそのようなことをおっしゃるのか、私は論理的に理解できませんが、私は現時点で現在の政治係数が続く限り非核三原則というものは遵守すべきであると思います。それは、私はいつまで福田内閣の閣僚をしているか存じませんけれども、要するに、現在の政治状況、現在のいろいろな条件というものの中である限り非核三原則は遵守すべきであると存じます。
  380. 土井たか子

    ○土井委員 まことに御都合主義だと思うのですね、それは。いろいろな状況によってだんだん変わっていくという、この問題を考えますと、長官自身が一体この住民参加ということを中心にした環境影響評価法案に対してどれだけ執念を持ち、どれだけこの問題に対して具体的に努力を払われようとなすっているのか、これは過去の経緯からずっと今日に至るまでの長官のいろんな言動を見ておりまして非常に危なっかしい感じがするわけであります。非常に危なっかしい。住民に対してこの会う会わないをお決めになるのは環境庁長官の胸三寸というこの行き方は、私は非常に恐ろしいと思います。まず第一に、きょうは面会の約束がないからということを振りかざして、そうして環境庁始まって以来の門前払いを来られた方々に対してなすったという事実があるのです。私は住民参加ということがどこまでも今回のこの環境影響評価の中身になるということになってくれば、いまおとりになっている長官自身のこういう陳情に対しての取り扱い方、それからルールを引いて会う人と会わない人というものをつくっていかなければならないという、こういうふうな取り扱い方、これは多分に問題があろうと思うのですよ。こういうことに対して長官はどのように考えていらっしゃるのですか。
  381. 石原慎太郎

    石原国務大臣 潜越な言い方でございますけれども、余り高ぶらずに冷静に、常識的にお考え願いたいのです。私は、すべての陳情に原則的に会うと言っております。しかし、やはり役所には役所なりのごく世間に通用する秩序がございまして、向こうの都合で一方的に時間を指定して、私の仕事の状況、役所の状況というものを全く無視し、来たから会えという、そういう姿勢というものは世間で通るものでしょうか。私は通らないと思うのですね。ですから、私はきょういらした方々にも、宇井純さんにちゃんと電話をして、十七日は多分総括で私は一日院内におりますからお会いできません。この間も、あなた方が指定した時間には私は都合がありますし、一般の予算でございましたけれども、どうなるかわかりませんから、私が指定する時間にあなた方が折り合えば時間帯について話をし合ってお目にかかりましょう、私は会うことを忌避しているのではございません。私が言ったルールはごくごく世間の方が考えられてあたりまえだと思う常識的なことを申しておるわけです。何も法律で決めるみたいなむずかしいことを言っているわけではないのです。そういうことで、決して私は陳情の種類によってこれを選択するということでないのです。面会というものはごく世間の常識にかなう形で行うべきじゃないでしょうか。そうしませんと、役所も、水俣の人も大事ですけれども、ほかの人たちの仕事もしているわけですよ。それをディスターブしてまで、自分たちが来たのだから勝手に会えという言い方は、これはやはり国民の皆さんがごらんになっても、ごくあたりまえだということじゃないのでしょうかね、私たちの言い分は。
  382. 土井たか子

    ○土井委員 それでは長官は、先日来陳情の方々が来られて、いろいろいままでに環境庁に起こったことがないような事例が起こってきたわけですけれども、その原因は那辺にあるとお考えになっていらっしゃいますか。(石原国務大臣「ちょっといまの質問わかりませんから、もう一回」と呼ぶ)先日来環境庁に陳情に来られる方々が、石原長官が長官になられる以前に起こり得なかったいろいろな、たとえば締め出しに遭うとか会っていただけなかっていろいろ後紛糾するような事例が起こるというふうな事柄が相次いでおるわけです。そしてとうとう後で長官がテニスに行っておられたということが判明しまして、さらにこれは紛糾を重ねているわけでありますけれども、この原因はどの辺にあるとお考えですか、紛糾の原因ですよ。
  383. 石原慎太郎

    石原国務大臣 他の省のことは存じませんけれども、グループによりますが、私はいままで環境庁で、恐らく他の役所でもまかり通らないような、世間ではまずまかり通らないような事態があったと思います。たとえば陳情そのものを原則という言葉があやになりますけれども、とにかく私の役所でやる限り全部新聞記者の方々への公開で行う。それが非常に問題を阻害しまして、陳情の方々からぜひ新聞記者のいないところで会いたい、非公開の形で会いたいという申し込みを私は受けまして、あちこちで隠れたような形で会いました。せっかく役所があるのに隠れた形でずいぶん陳情を受けました。これは決して、容易に連想されるかもしれませんけれども、企業の方々だけではございません。私がお聞きして、ごくまともな良識的な、ある意味では開発のいろいろな問題で公害の被害を受けているような方々が、それなりの理由はいろいろあるでしょうけれども、とにかく公開でなしにお目にかかりたいということで、私は隠れたような形で何度も会いました。でございますから、陳情を公開にするか非公開にするかということは、陳情者の意思によるというふに私は改めただけで、それがお気に入らない方々がいろいろ紛糾し、ふんまんしていらっしゃるようですけれども、私がいままでの環境庁の慣行を破ったことになるかもしれませんけれども、私はごく常識的な線に戻したつもりでございます。
  384. 土井たか子

    ○土井委員 これで質問を終えたいと思いますが、常識常識とおっしゃいますけれども、水俣の例も、四日市の例も、イタイイタイ病なんかの例も、これは常識ではとても考えられない被害ですよ。そしてたくさんなくなられた方まで出して、しかも企業はそこの場所で企業経営をさらに続ける。これもまた常識で、なかなかこれは理解しようとしてむずかしい問題であります。そういうことを長官としてはよく考えた上で、いまおっしゃったような常識というのが果たして常識として通用するようなやり方でいままでおやりになってきたかどうか、そのことを私は長官に再考を促したいと思います。  実は、環境影響評価の中味というのは、住民参加というところが中心課題でありますから、住民に対してどういう対応の仕方をいま環境庁がなさっているかということによって非常に受けとめ方は違ってまいります。果たせるかな、私は今回のアセスメント法の原案を見ますと、試案に比べてずいぶん後退している向きがあるわけでありますが、これはやはりその辺にも関係があるのであろう、無関係とは言えない、このように考えております。ひとつこのことは、後に公環特の方に持って出まして質問を続行いたします。  本日は、これで私の時間も終了いたしましたから、これで終えたいと思います。
  385. 坪川信三

    坪川委員長 関連質疑を許します。安宅常彦君。
  386. 安宅常彦

    ○安宅委員 外務大臣にお伺いいたしますが、日本人である伊東玄太郎さんほか三名が、伊東さんの場合には無期懲役、こういう罪名で韓国に拘束されておったのですが、この釈放のいきさつについて、外務省からいろいろ聞きましたが、私に対してそのいきさつを、資料を出しなさい、こういうことを言ったら、出してきました。これは昭和五十年か五十一年ごろ出したものに、タイプ刷りしておるものにあわてて追加して書いてよこしました。これは四十四年ごろから書き足してきましたな。だから、三年ぐらいの分、ずっと前、私が要求した資料に足してきたのですね。非常に私疑問に思ったのは、どういうことかといいますと、五十一年十二月二十七日に釈放する旨の内報があった。これは二十七日の何時にどこで引き渡すか、こういうふうなことについて、韓国の外務部から在韓日本大使館に通報があったのだそうですが、二十七日の何時にどこで引き渡すかということを確かめたかと言ったら、確かめなかった。それでまた、五十一年の十二月二十七日に伊東さんら三名は刑の執行停止の手続により釈放されるということが内報された、決定されたということの連絡が入った。では、どこの機関でどういうことでこれが韓国大使館に話があったのかと聞いたら、その文書はない、口頭でありました、こういうことなんですね。私は、この資料の出し方もさることながら、あわてて今度は、これじゃ怒られると思ったのでしょう、もう一枚出してきたのです、同じものを。ただ、書いたものを、あわてて今度はタイプ刷りにきちっとしてきたものと二通出してよこしたのですが、非常にこういうやり方はおかしいんじゃないかと私は思っておったのです。なぜ思ったかといいますと、前提があるのですけれども、この伊東玄太郎さんほかの釈放されたということが私の耳に入った日に、当日外務省の——名前は言いません、私は。外務省の高官に、いつ到着するのか、伊東玄太郎氏ほか三名は——ほかじゃありません、含めて三名です。いつ到着するのか、何時に到着するのかと電話で聞いたのです。そうしたら、KALの〇〇二便で午後六時ソウル発、午後八時羽田着の飛行機だと聞いています、いつわかったのと聞いたら、この時間は二日前に中央情報部から大使館に連絡があって初めて知りました、期日のことは、十日ほど前、自民党の玉置さんの秘書で伊東さんと遠縁に当たるとかいう人から聞いております、なお、これは以前から教導所が大田に移っていて、沢本、夏谷と一緒になったことから、近く釈放されるのではないかということは、情報として聞いておりました、うわさとして聞いておりました、これはだれから聞いたか、玉置さんのさっきの秘書から聞きました、こういうことです。そしてKALの〇〇二便で帰ってくるときには大使館関係者は付き添ってきたのかと聞いたら、付き添いはいたしません、秘書さんです、外務省は出迎えただけですと、まことに憮然とした口調で、こんなばかなことがあるだろうかという、みずからね、そういうことがあらわに私の耳に聞こえるような口調で言われたのであります。  こういうことは、外務省として、大臣としてどう思いますか。したがって、資料とは違うのですよ。まるっきり違うのです。これは外務省の高官から直接聞いたのですから間違いありません。もし間違っておるとがんばるのだったら、高官の氏名を出しても結構です。名誉のために私は言いません。
  387. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまお話しになりました伊東玄太郎氏等が釈放されまして日本に帰られました事情につきまして、私、ただいまお話しのようなことはただいま初めて伺ったものでございますので、ちょっと判断の余地がございませんがよく事情を確かめたいと思います。
  388. 安宅常彦

    ○安宅委員 伊東玄太郎さん以下三名が釈放されたという報告はいつお聞きになりましたか。まだ聞いてなかったという意味ですか。
  389. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その報告は後に受けたわけでございますが、帰られましてすぐは報告は受けなかったわけでございます。
  390. 安宅常彦

    ○安宅委員 伊東玄太郎さんというのは、これは私が前から、この人が逮捕され、起訴され、いろいろ大きな問題を醸したときから言っているのですが、沢本三次さんと夏谷進さん、これはたとえば私の先祖が朝鮮から渡ってきたのかもしれません、またわが党の田さんなんというのは案外そうかもしれませんね。そういうのはずっと何世紀前からだか知らぬけれども、この人たちは新しく帰化の手続をとったにしても、とった以上は日本人であります。日本人が外国の政府から、たとえば伊東玄太郎さんという人は、起訴状の中には、日本からソビエト経由で朝鮮民主主義人民共和国に入った、これが罪名の一つになっているのです。これは日本の国法としては当然のことでしょう。それが起訴状に書かれて、行ったこと一つで反共法で、韓国に渡っているときに逮捕されている。こういうことを取り上げて、おかしいではないか、日本人が逮捕されておって、起訴されて、死刑の求刑をされて、無期懲役にはなりましたが、こういう問題について法務省あたりでは、これは私は余り法律の専門家でありませんからどうのこうの言いませんでしたが、安宅さん、それは血統主義という一番日本考え方の間違いの考え方で、日本人である限り、他国の政府から逮捕されて、しかもいま何だかんだ言われているKCIAやあるいはKCICあたりからやられて、そのまま投げておくという手はないじゃないかということを盛んに問題にしてきたものです。まあこれは時間がないから言いません。  とにかく釈放されるとき、大臣は、日本人が外国の政府で無期懲役の判決を受けて獄舎につながれておった、こういう人が帰ってきたときは直ちに報告をし、そしてまた、そういううわさがあったときには直ちに相手国に照会をし、そして措置をとるのが日本政府のあり方ではないでしょうか。それを、後日聞きました、釈放されたときはどういうやり方だったか私初めて聞きました、こんなことで日本の外務大臣が務まるのかということです。どうです。
  391. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 釈放につきまして、たしか翌日だったかに報告を受けたわけでございます。そういうわけで、私、大変就任間もないころでございましたのでそのようなことになったと思いますが、今後とも気をつけたいと思います。
  392. 安宅常彦

    ○安宅委員 たとえば、そういうことばあり得ないことだとあなたおっしゃるかしれぬけれども、私は事実朝鮮を初めて訪問をしたときに、船で行きました。公海の真っただ中を航行しているときに、その船を駆逐艦にとめられまして、そしてどこへ行くのか、だれが乗っているのか、積み荷は何か、二度私は検問を受けておるのです、停船命令を。私が撮影機を今度最後二回目のときに取り出したら、船長は危ないからやめてくれと言いました。それを双眼鏡で見ておったのですが、ちょうどそばまで来て今度は停船命令を発したまま、行ってもよろしいと言う前にあわ食って逃げてしまったのです。私の撮影機も大した威力あるものだなと言って大笑いしたのですが、そういう国なんですよ。たとえば安宅常彦がこういうことで韓国に行って反共法違反で、私しょっちゅう悪口言っているから、これは行けば必ずひっかかる。朝鮮民主主義人民共和国を礼賛しただけで反共法違反になるのですから、つかまるでしょうね。そうしたときには沢本さんや伊東さんやそういう人と同じ扱いになるのでしょうか。どうです、外務大臣。
  393. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 伊東さん外三名の事件の内容につきましては、これは何らかのいろんな手違いがあったのではないかと思うのでございますけれども、釈放されて、それ自体は大変よかったわけでございますが、今後外務省といたしましては、日本国民が不当な扱いを受けないように最善の努力をいたします。
  394. 安宅常彦

    ○安宅委員 前にこれに類したことがありました。たとえば——いいでしょう、時間がないからやめましょう。  それで、そういう私の場合、こういう人と同じ扱いを受けるのかと聞いている。それははっきり答弁してください。
  395. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 再びこのようなことがないように、先生の場合がそのようなことにあるとは毛頭考えも及ばないところでございますが、そのようなことが起こらないように最善の努力をいたしたいと思います。
  396. 安宅常彦

    ○安宅委員 在日韓国人の釈放やいろんな問題について、こういう人たちを守る組織があります。この事務局をやっている人が吉松さんといいます。この吉松さんが外務省にそういうことの用事で行くと、いつも鈴木さんという事務官が出てくるそうです。在日韓国人だからなかなかうまくいかないので、帰化しておったならば、非常に扱いやすいのです、こういうことを言われたというのですね。これは大変大きな朝鮮民族に対する侮辱だと私は思いますが、あなた方はそういう考え方でいるのです。安宅常彦だから大騒ぎする、早川、太刀川さんなんというと大騒ぎする、新聞も書いてくれる。ところが帰化した日本人だというと、外務大臣いつ来たかも知らないで、翌日報告を受けた。玉置さんという人は玉置和郎さんのことだと思います、その秘書から情報を得て、資料としては外務部から報告があったと言っていますが、外務省の高官は韓国の中央情報部から連絡を受けたと言っておるのであります。中央情報部と言えばどこですか、KCIAでしょう。KCIAから報告を受けて恬然としてあたりまえの顔をしているのが日本の外務省。おもしろくはないから、私に対しても先生、おもしろくないという意味の発言がありました。しかし、それはあたりまえの外交ルートではないと私は思う。そういうことは今後させないようにしなければならないと思う。これは総理どうです、答弁。
  397. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうもいまの具体的な案件についてはいろいろ手違いがあったようですが、今後そういうことのないように気をつけるようにいたします。
  398. 安宅常彦

    ○安宅委員 まさか中央情報部からの連絡ではありませんということを外務大臣、ここで言うのじゃないでしょうね。どうです。
  399. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私はそのような報告は全然聞いておりませんし、そのようなことではなかったのじゃないかと考えます。
  400. 安宅常彦

    ○安宅委員 きょうは時間がありませんから後で明らかにいたします。それで、高官が言ったのですから三人で——環境庁長官じゃないけれども公開の席でなくて、そんな会わないなんて言わないで、三人で真相を突きとめる手段でも講じたいと思いますから。  それからこの間、死刑を宣告されておった在日韓国人のうち、二人の方がこれは無期懲役になったのですが、この報告は、三月一日にそういう措置が講ぜられたのです、大統領の特赦権で。ところが、外務省はいつこれを知りましたか。
  401. 中江要介

    ○中江政府委員 外務省はそういうような新聞報道を見まして、早速ソウルで確認して知るに及びました。
  402. 安宅常彦

    ○安宅委員 こういう状況なんです、総理。よろしゅうございますか。在韓日本大使館は何をしておったのですか。日本大使館にも韓国政府は知らせないでおったということです。そうして新聞報道、十日です。その新聞報道によってわかったというのであります。これを国辱だと思いませんか。総理どうです。
  403. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 今後、連絡を密にしてもらうように交渉いたしたいと思います。
  404. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんな月並みな答弁でこの問題解決できるような問題じゃありませんよ。日本外交韓国に対してはきのう問題になったようなことを平気でやる。だけれども、こういうきちっとした外交なんかは全然やらないでもツーツーだ。韓国のことだから特別だ、こういうなれ切った態度がこういうことを引き起こしているのではないのですか。外務大臣どうです、そういうことは恥ずかしいと思いませんか。これからそういうことのないようにいたします、どうなんですか。
  405. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これから、今後の改善に努力いたしたいと思います。
  406. 安宅常彦

    ○安宅委員 どういう手段でやります。
  407. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ソウルあるいは東京におきまして、わが方から先方に申し入れをしたいと思います。
  408. 安宅常彦

    ○安宅委員 特に、伊東玄太郎さんたちの場合には日本人であります。こういうことについては、外務省とか所管が違う省であるとかそんなことを言わないで、日本政府としてこういう事例は今後あってはならない。口頭や何かではだめです。これは正式な外交文書でもって注意を喚起するということを考えませんか、総理大臣。
  409. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 先方の申し入れにつきましては、御趣旨を体しまして検討させていただきたいと思います。
  410. 安宅常彦

    ○安宅委員 ところでお伺いいたしますが、外務大臣、なったばかりだというのに気の毒だけれども、いま在日韓国人の政治犯というのは、韓国で拘束されております懲役、死刑を含めて何人いるか知っていますか。
  411. 中江要介

    ○中江政府委員 在日韓国人でスパイ事件によって韓国政府に検挙されている者というのは、私どもの承知しておりますところでしは二十八名でございます。
  412. 安宅常彦

    ○安宅委員 先ほどの吉松さんという人がいろいろお願いに行ったというときの対象者は白玉光という人です。この人のおじさんが行ったときですから、おじさんも知っているのですが、二十八名……。私どもの民間団体、私はそういうものに関係しておりますが、その調査だけでも五十三名おります。  そのうち死刑になっている人は何人おりますか。
  413. 中江要介

    ○中江政府委員 七名でございます。
  414. 安宅常彦

    ○安宅委員 現在死刑の判決を受けている人は七名ですか。——七名でしたら、氏名を言ってください。
  415. 中江要介

    ○中江政府委員 死刑の判決を受けた者が七名で、その中の二名が、先ほど先生の御指摘の、無期懲役に減刑された者、こういうふうに私どもでは掌握しております。
  416. 安宅常彦

    ○安宅委員 私らではっきりしただけで五十何名もいるのに、外務省は二十何名しかいないと言う。在日韓国人というのは、皆さん御承知のとおり、日本が戦争政策で強引に連れて、拉致してきた、そういう言葉さえ彼らが使っているくらいの大変な事情の中で来て、そしてちゃんと生きて、税金を納めている人たちですよね。五十三名と二十八名では大変な違いですよ。韓国政府に対して、それくらいは報告し、在日韓国人の問題についても氏名を直ちに日本政府に知らせてほしい、こういうことをやる意思はありますか。
  417. 中江要介

    ○中江政府委員 これはいつも与野党を問わず、また官民を問わず、日本側でいろいろな関心の表明がありますごとに、在日韓国人の方は、国籍は韓国ではありましても、日本社会に密接に関連のある方々でございますので、情報の提供は受けておりますけれども、いまの先生の御質問の数と私どもの把握しているところは相当違うようですから、これは韓国側にしかと確かめてみたい、こう思います。
  418. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は特にこの際申し上げたいのですが、去年の一月三十一日の予算委員会で当時の荒船委員長が、これは午後の話ですけれども、午前に小林進さんがこのことについて質問したんです。崔哲教という人と陳斗鉉という人の問題で、アリバイは完全にある。東京弁護士会国際人権擁護委員会などが動き出して、これは不当であるということで非常に大きな世論になっており、またやるそうですけれども、この発言を受けて荒船委員長がこういう発言をしております。「この際、本日午前中に小林進委員から御発言のありました、在日韓国人で韓国法廷において死刑の確定をした崔氏及び死刑求刑が予想される陳氏の件につきまして、先ほどの理事会において協議いたしました結果、人道上の重大な問題であり、事は急を要するものでありますので、予算委員会を代表して、委員長の私から、政府に緊急に最善の努力をすることを要請いたします。(拍手)」、それに対して内閣を代表し、井出官房長官が「ただいま委員長より御要請のありました件につきましては、できるだけ努力をいたします。」と答えているのであります。どういう努力をいたしましたか。これは官房長官の答弁ですから、官房長官から答弁してもらってもいいのですけれども、そういうことは実務機関としては、外務省なり総理府なりいろいろなそういう機関があると思いますけれども、第一義的には外務省だと思いますが、どんなことをしましたか。
  419. 中江要介

    ○中江政府委員 いま御指摘のように、一月三十一日の予算委員会におけるそういう議事がございまして、それを受けまして、二月四日に、私が在日韓国大使館の尹公使を呼びまして、この崔哲教さん外一名の在日韓国人のケースは、これは通常の在日韓国人の場合と同様に、第一義的には、韓国籍を持っておられる方ですので、韓国において韓国の法に従って訴追を受けておられること自身には、日本政府としては韓国の司法の問題でありますので介入はできませんけれども、しかし先ほど私が申し上げましたように、日本において家族とともに生活しておられる方々でありますので、日本政府としては関心を持っているという立場から、こういう考え方に基づいて、一月三十一日の衆議院予算委員会における議事の経緯をそのまま韓国側に対して十分説明いたしますとともに、このような問題が日韓間の関係に悪い影響を与えるようなことのないようにしたいものだということを申し伝えたわけでございます。  これに対しまして先方の言いましたのは、これは韓国立場からいたしますと、原則として国内事項であるので、このような問題を提起されることは隣国の友好国に対する司法権の無視につながるもので、内政干渉とも思えるということで不愉快なことであるということでありました。
  420. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうことを韓国が言うのでしたら、経済援助、軍事援助、いろいろなことで大変な大きな問題がある。いまカーター政権が人道上、道義上の話をしている。政治的自由がないということについて重大な関心を持っておるというのですね。日本の場合は対応の仕方が少し違うなどと福田さんは言っていますね。しかしそれはそれとして、あなたの信念だからそれはいい。ここで議論しようなどとは思いませんけれども、そういうことを言うくらいだったら、たとえば陳斗鉉さんが軍の記念日に副団長として向こうに招待をされていながら、突然逮捕されていますね。これは国内事情でやったんでしょうね、招待をしておいて。そういう旅券を発行したり何かするのはわが国でしょう。これに対する安全も何も保障できないことになるのじゃありませんか。そんなことを言うのだったら日本立場がある。しかも、韓国の場合には自白がもとだと彼らは言う。こっちはアリバイも全部ある。そうして証拠主義だ。それは違うかもしれぬけれども、どちらが正しいかという論争までやって、関心を持っているだけではなくて、堂々たる渡り合いをしなければならない。おんぶすればだっこみたいなことをされて、そうかそうかそうかと言っている。こっちからの分は、いつかも言ったけれども、後宮大使という人が向こうの外務部長官からどなられて黄色い顔になったなどと言われて黙っておるような国だから、ざまがないことばかり起きると私は思うのです。これは金大中さんの事件のときですね。だから、そういうばかみたいなことをやらないで、毅然たる態度をとるべきだと私は思うのです。どうですか、そういう論争をしてみるくらいの度胸が、鳩山さんおありになりませんか。あなた、お父さんの血を受けた人なんじゃないですか、どうですか。
  421. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの御意見は御意見として承らしていただきたいと思います。  なお、外務省といたしましては、やはり私どもの発言自体は、先方に非難されないように気をつけることもまた必要なことであろう。またその上に、先ほど来お話のありましたように、在日韓国人は家族もこちらにおられますし、長い間日本に住んでおられることでありますから、特殊な関係にあるということを、十分先方にも理解を得たい、こういうふうに思います。
  422. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はいま在日韓国人の論議をしていますね。帰化したといえども、それは日本人ですよ。関係ないです。報道機関なんかも、帰化した日本人だとか帰化した韓国人なんて書く新聞もありますけれども、日本人なんですよ。日本人にさえ何にも言わなかったじゃありませんか。安宅常彦の場合はそんなこと絶対にあり得ないと言うけれども、伊東玄太郎さんだって夏谷さんだって沢本三次さんだって日本人でしょうが。向こうの法律でどんなことがあろうと、やられたら関心を持って——口上書でやったとか口頭で言ったとか面会に行かせたとか、くだくだしく資料として書いていますよ。そんなことをやっていいのかという思想につながって私はいま言っておるんですよ。「帰化してくれたら扱いやすいんだがな」と鈴木という事務官が言った。私はいまはらわたが煮えくり返るような気持ちです。私は特に関心を持って徹底した調査をいたしまして、アリバイがきちっとしておって、五人の子供を抱えて松戸市の馬橋というところでパチンコ屋をやりながら——いまパチンコ屋はなかなかはやらないですよ。その中で悪戦苦闘して、ぜひこの子を助けてください、私の夫を助けてくださいと言っている崔哲教さんの奥さんの孫順伊さんという人を見て、私は、この人たちはそのままにしておけない、こう思っているのです。感情的になっているんじゃないです。情実的な問題で言っているんじゃないんです。日本の政治家として、日本政府を担当している者として、日本人を含めて在日韓国人の問題でこんな冷淡な態度をとっていいものでしょうか。予算委員長予算委員会の決議でもって、そして奥さん二人をここに呼んでこいというんです。私は買い物に行っている奥さんを、必死になって午後半日かかって電話で連絡して呼びましたよ。必ず助けてやる、あなたの夫は絶対に向こうで死刑になんかさせないよ、荒舩さんはこう握手して言ったんですよ。予算委員会がそういうことを決めたのに、外務省はたった一回そういうことを言いました、こんな冷淡な政府があるでしょうか。  私はもっと言いますよ。その当時官房副長官をしていた海部君や、いま大臣でございますけれども、いろいろな方々に、あなた方の方で——井出さんなんか正直なものですから、安宅さんどうしたらいいんだろう、これはおれよくわからぬよ、どうすればいいかわからないんだと言うんですよ。だからそういうことを、意を体していろいろな人と会って何とか動いてくれという話をしました。荒舩さんは心配して何回も何回も私らを呼びました。そして陳情に来た奥さんたちとも会ってくれました。何とかする、何とかすると言っていました。そしてもっと具体的に言うならば、椎名さんを何か特使にして派遣してもらえぬかとか、椎名さんの命令でだれかが韓国に行ってもらえないかとか、よし、じゃあそうしましょうかという話までいたしました。奇異なことに大部分の人は、いや私はそういうっては持ってない、持っているのは李秉禧だけだとみんな言う。李秉禧というのはね、福田さん、この間あなたは木で鼻をかんだような答弁を私にいたしましたが、何をやっているかというんです、日本担当の国務相だなんていって。結局スパイの上塗りみたいなことをしているだけでしょう。しかし、あの李秉禧というのは力がないんでな、安宅さん、会った人会った人、自民党の代議士皆おっしゃいましたよ。こういう状況というものは正常な外交の状況ではないし、私と会った人が全部が全部李秉禧の名前を出すなんというのは異常な状態だと私はつくづく痛感しました。日本政府はたった一遍の通告で——「緊急に最善の努力をすることを要請いたします。」これは予算委員長の発言です。「予算委員会を代表して」という発言です。政府は何にもやらなかったということですよ、たった一遍の申し入れをしてね。今後どうします。
  423. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 在日韓国人が韓国内で逮捕され、司法手続を受けた場合の取り扱いにつきましては、私どもといたしましては、やはり日本に長い間住んでおる方であり、事実上の住所を持ち、そして家族も日本におられるという特殊な身分を、これはぜひとも先方にも理解をいただきたいと思うのでございます。ただ、これは純粋に法律的なことから言いますと、内政に干渉するというような非難を与えないようにその点は注意しながら、そういうことを言われないところにおきまして、事実上あるいは民間の方のお力も借りたりして言ういろいろなやり方があろうと思いますので、そういった面で考えてまいるべきであると考えております。
  424. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はさっき重大なことを申し上げているんです。玉置和郎さんという人の秘書があらゆる情報を外務省に提供していますね。そうして外務省は伊東玄太郎さんたちが帰ってくるとき、大使館から付き添いもしませんね。その秘書なる人が付き添いしてきているんですね。新聞記者会見も玉置さんがやっていますね。外務省は憮然とするわけですよ、総理。それは何か。全部中央情報部とぴったりだからです、この人は。と同じように、その話を聞いて私のアンテナにひっかかってきたのですから、これはまだ確証は、はっきりここでは、私は公開の席上申し上げることはいたしませんが、玉置君がそんなことをやれるならわれわれもやれるはずだというので、名前は言いませんけれども、在日韓国人に、調べに対してもっと吐け、あるいは転向しろ、そうすれば伊東玄太郎さんたちと同じようにしてやらぬでもない。そしてまた、先ほど言った二人の死刑から無期懲役になった方々もそういうことがあったから罪一等を減ぜられているんです、どうですかという働きかけを一生懸命している自民党の代議士がおるのであります。これはそういうことを条件にして、転向しろということを条件に——転向という言葉は古い言葉ですけれども、韓国法廷でもっともっと謝ったり何かしなければならない。私がやってやるからというので、私もひとつ手柄を立ててみようなどという風潮をこの玉置和郎さんという人がつくったとするならば、日本外交をますます邪道に追い込むことになると私は思う。このことについては厳重に、自民党の政府ですから、ぜひひとつそういうことのないようにしていただきたいと念だけは押しておきます。重要なことですよ。これは青嵐会所属の人です。全部接触しているのは中央情報部であります。外務省の高官でさえもその資料は、韓国外務部からの通報によってわかりましたという資料は表向きは出しておりますけれども、そうではなくて中央情報部から連絡があった、こんなばかなことは絶対にやめてもらわなきゃならない。そうして、帰ってきた人はいいですよ。私は何にも非難いたしません。しかし玉置君がやったということがもしそれにつながることだとするならば、外務省は何にも知らないで——少しは知っておったでしょうが、表現上そう言いますが、とにかく秘書がついてきて、玉置さんがついてきて、記者会見もやって、外務省は手をこまねいているなどということがあっていいか悪いか。そしてしかもその風潮を利用して、よし、ひとつ私も手柄を立てて、中央情報部と話をして、あれだけはひとつ何とかせいなんていう話をするような風潮ができたならばこれはえらいことになると思うので、私は総理のこれに対する見解をこの際ぜひ聞いておきたいです。
  425. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私、その具体的ケースをよく承知しませんので的確なことは申し上げられませんが、とにかく外交、つまり二国間の関係外交チャンネルでやる。したがって、この外交チャンネルの権威、これは絶対のものでなきゃならぬ、こういうふうに思いますので、そのチャンネルの有効に働くようにぜひとも努力をしてみたい、かように考えます。
  426. 安宅常彦

    ○安宅委員 いまの発言で、外務省の外交は有効に働いていないということをあなたはおっしゃった、こういうふうに理解します。有効に働くようにするというんですから。  それで、予算委員長がやった問題についてぜひ予算委員長にお聞きいたしますが、予算委員長の継続性なんて何も私言うつもりはありませんが、この決議というものは重要な決議でありますから、政府に対して——私は後で助言をいたします。厳重な注意を喚起して、そして外務省が一〇〇%動けるように院の立場でひとつ処置をとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  427. 坪川信三

    坪川委員長 院の立場を権威を持つ意味において、十分先ほどからの御発言も傾聴いたしております。善処いたすことをお誓いしたいと思います。
  428. 安宅常彦

    ○安宅委員 ところで、総理にお伺いいたしますが、五十一年の一月に北京で自民党の久野忠治さんが朝鮮大使館と接触をいたしました。その数日後に国際勝共連合が、ラウンドスピーカーでもって国会周辺をぐるぐる回っておりました。いまでも右翼や何か回っていますね。聞き捨てならないそのときの放送があったんです。日朝議員の久野忠治を葬れ、こういう宣伝を徹底的にして歩いていた。私は重大なことだと思いますが、警察の方来ておられるならば、それを確認しているかどうか。
  429. 山田英雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  ただいまお尋ねのございました動向につきましては、警察として承知しておらないところでございます。
  430. 安宅常彦

    ○安宅委員 田舎の道でそんなことをしゃべって歩いたんなら、それはどうか知らないけれども、国会周辺にも首相官邸周辺にも警察官ごまんといるでしょう。そういうことを報告をしなくともいい、久野忠治がスピーカーでやられたぐらいではまさか行動に出ないだろう、まあいいだろうということで報告しないような風潮がもし警察の中にあったとするならば、ゆゆしい問題であります。こういうことを私はうんと心配しているんです。ぱあっと音波になって消えてしまったから、それはこれ以上私は言いません。私は確認している、久野さんも確認していますね。ですが……。  久野忠治さんが一月に朝鮮民主主義人民共和国を訪問いたしまして、私どもといろいろ話した。向こうでの感触あるいはもっと具体的な情報だと思いますが、アメリカの朝鮮政策について決定的な時期が来ていると私は思う。ですから、これは私ども民間で議員外交といいますか、中ではもう、つまり行動をもっともっと強くしなければならないだろうということを、懇々と私は自民党の久野さんから諭されたのであります。私らはもちろんそういう見解は、日本社会党としてはきちっと持っておりましたが、しかし皆さん、その証拠には今度アメリカが旅行の制限を解除するとか、あるいは大統領が今度国連のレセプションに朝鮮の代表を招待するとか、いままでないことがどんどん行われています。こういう傾向というものは、総理首脳会談にあなた臨む直前のあれですが、どういうふうに見ておられるでしょう。
  431. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の問題は話題に出ると思いますが、どういう考え方を持っておるか、それは聞いてみようと思います。聞かないとわからない、これが私の回答でございます。
  432. 安宅常彦

    ○安宅委員 政治家ですから、特に一国の総理でございますから、アメリカアメリカと二言目にはアメリカと言うあなたの方の党の内閣でございますから、やはり何でもアメリカの物まねじゃぐあい悪い話です。いつも頭越しされたなんて大騒ぎするでしょう。そういう恥は、やはりお互い日本人というのはかきたくないものです。  あなたにちょっと御注意申し上げるんですけれども、一九七四年の十二月二日の第二十九回の国連総会、これは総会の会場ではありませんが、総会が開かれているその席上、アメリカが初めて、北朝鮮だとかそういう表現をやめて朝鮮民主主義人民共和国という国名を使ったというのです。したがって、このことを注意されて——当時の閣僚は全部、朝鮮とか共和国とかあるいはいわゆる北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国と余り国名が長いので朝鮮と略するとか、そういう呼称でやっていたんです。このごろあなたは、朝鮮半島まで韓半島なんて言ってみたり、きょうも北鮮、北鮮と言っていますね。やはりそういうけじめというかそういうものは、アメリカがやったから言うのはおかしいじゃないかと当時私は皮肉ったんですが、何か社会党あたりがわあわあ言えばその名前はそうなるけれども、正式に国会で発言しているときにいつの間にか北鮮に変わってしまったというんでは、ざまの悪い話じゃないかなと私は思っているんですが、いかがですか。
  433. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮民主主義人民共和国ですね。これは少し長いものですから、これは略して北鮮とこういうふうに言うんですよ。韓国だって大韓民国でしょう。それを韓国韓国とこう言う。約して言っているんだと、こういうふうに御理解願います。
  434. 安宅常彦

    ○安宅委員 どうせ略すなら北は要らない、朝鮮でいいんだ、北なんてつけることないの。だから朝鮮で結構ですから、何も私、教えるわけじゃないけれども、ひとつそうなさったらどうでしょうか。  ところで、そういう感覚だからか知らぬけれども、さっき公明党の近江さんの質問のときに、あなたは重要な発言をしているんですよ。朝鮮と国交を樹立すれば混乱が起きるという答弁をしていますね。これは重要だ。どういう混乱が、どこに起きるのでございますか。
  435. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の平和というのは、米中ソ、それからさらに日本を加えてもいいでしょう、そういう国々を背景として微妙なバランスができておる、そういうことかと思うんです。中国、ソビエトは朝鮮を承認をしておる、韓国は承認されておらぬ、そういう際にわが方が朝鮮を承認するというようなことになると、微妙なバランスに影響がありゃしないかということを申し上げたわけであります。
  436. 安宅常彦

    ○安宅委員 影響がありゃしないかということを申し上げたんじゃなくて、あなたは混乱が起きると言ったんですよ。だから、どこでどんな混乱が起きるかと聞いている。
  437. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 微妙なバランスが破れるという意味において、混乱がありゃしないかという私の見方を申し上げたわけであります。
  438. 安宅常彦

    ○安宅委員 微妙なバランスというのはどういうことでしょう。中国だとかソビエトだとか日本だとか、そういう国々が同意しなければやはり承認すべきでないのではないか、そうしないとバランスが崩れるんじゃないかということは、どういうことかと言うと、大国主義の最たる言葉じゃないでしょうか。おれたちが始末しなきゃ危なくてだめなんだ。内政干渉というか、その国に対する侮辱であり、大国主義的な考え方ではないでしょうかね。どうも朝鮮というのは、植民地としてあるいは内政干渉してまだ植民地にならないときの時代にお生まれになったのか、私はわかりませんが、どっちみち何か日本の植民地であった当時のどうも頭が抜けないものだから、そういう御発言なさるのかは別として、これは大国主義的な考え方じゃありませんか。  たとえば、じゃ朝鮮民主主義人民共和国を世界じゅう何カ国が承認していると思いますか。
  439. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 九十一カ国が承認をしておると記憶しております。
  440. 安宅常彦

    ○安宅委員 ついでに韓国はどうですか、いわゆる大韓民国。
  441. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 九十六カでございます。
  442. 安宅常彦

    ○安宅委員 外務省の調べはどうだかわかりませんが、私どもの方では、朝鮮民主主義人民共和国を承認しているのは九十四カ国であります。そうしていわゆる大韓民国、略して私韓国と言います、あなたと同じ。南韓国なんて言いませんがね。ようございますか、その国は九十五カ国であります。とんとんなんです。これは東側、西側なんていう表現で言うならば、西側の国がたくさん承認していますね。アメリカがレセプションに招待をする、あるいは旅券の制限を解除する、これは朝鮮戦争のときに報復手段として彼らが考えてトルーマンのときにやった処置なんですよ。長い間あったのが今度解除されるんです。そういうふうになっているときに、日本はちょうど隣の国でしょう。なぜ、朝鮮民主主義人民共和国を承認すればバランスが崩れるのでしょうか。本当に貿易だったら貿易、互恵平等でやったらどうでしょうか。およそ日本の国でいま承認していない国、これはアルバニアとか、朝鮮だとか、モロッコだとか、三カ国ぐらいしかないと思うのですね。私は余り名前を知らない国もたくさん、不勉強で申し分けありませんが、あります。しかし、一応日本人として常識的に考えている国はその三カ国です。一番近いところをなぜ承認できないのでしょうか。韓国から文句を言われるからでしょうか。そんなことを考えないでやるのが日本政府ではないでしょうか。先ほど鳩山さんが、朝鮮では韓国を相手にしないから、そういうふうに言っている態度だから承認しない、端的にそういう発言をしましたね。そんなことはわかっておっても九十四カ国が承認しているのです、鳩山さん。あなたのお父さんはソビエトとの国交正常化のために身命を賭してがんばったですね。小林さんが鬼っ子と言ったら、いろいろあるさという話だった。やはり私はあなたを鬼っ子にしたくないです。どうです、発言を訂正いたしませんか。
  443. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国政府といたしまして、朝鮮半島の平和の維持、またいまの停戦状態が本格的な和平と申しますか、そういったことになることを、何よりも当面といたしましては期待をいたしておるところでございます。行く先々は、総理も申されておりますように、平和的な統一ができること、これを念願をいたしておるわけでありますけれども、現状におきまして、朝鮮と韓国との間にやはり相互の不信と申しますか、そういったことが原因になって両方の政府としてはいろいろ言い分があろうと思いますけれども、現実の問題としてはまだまだこの話し合いが再開されてないという、そういう事態でありますので、この話し合いが再開され、韓国と朝鮮との間におきまして雰囲気が好転をしてまいる、そういった時期を待ちたいということを申し上げたのでございまして、御理解を賜りたいのでございます。
  444. 安宅常彦

    ○安宅委員 うそも方便あるいは——うそじゃないでしょうね。言葉というのは——いまさっきのは取り消します。言葉はそのときそのときで都合よくできているものでして、台湾を何とかしてつなぎとめておきたい、台湾と国交がある、中華人民共和国の方はないという時代があったときに、中華人民共和国をなぜ承認しないかと言ったら、中国は一つであると両方とも言っているのでだめなんですと、こういう言い方でしたね。ところが中華人民共和国と国交ができましたね。そういう議論はどっかに吹っ飛びましたね。ところが、いま朝鮮がある、いま何か情勢の変化があったらバランスが崩れるということは、いつまでも二つの国家に分かれていろということではないですか。そんなことを日本が言う資格あるでしょうか。これは朝鮮民族が決めることではないでしょうか。だから大国主義だと私は言っているのです。大した大国でもないくせに。そういうことを言うのは思い上がった態度なんです。たとえば両方の国を承認をしている国が重なっていて九十四対九十五になっておるのでございます。だから本当に両方とも同じ態度で臨むというくらいの度胸を持つ。アメリカでさえもだんだん変わってきておる。金日成主席が出した手紙に対してアメリカが回答を出したという情報まで入っていますね。これは国務次官補がはっきり言っていますね。ですから、こういう時代にまた今度は別な理由でもって、片一方が認めてないからなんて人のことにかこつけて、そして統一したときからでなければ承認しないというんだったら両方とも承認しなければいいのですよ、両方とも。そんなけんかばかりしていかぬと言って。片一方は承認していてバランスもへったくれもないでしょう。そういう論理になるのが普通じゃないですか。どうですか外務大臣。
  445. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 長い将来におきまして、私ども、ただいまおっしゃいましたように韓国と朝鮮両国が、両国と申しますか、両政府に分かれておりますこの地域が本当の統一的な民族国家になることが望ましいことは、これは申すまでもないことでございまして、ただ現実の姿が目の前にある、また日本は本当に隣国でありますから、朝鮮半島におきます平和というものが日本の安全に本当に密接なかかわり合いがありますだけに、この私どもの態度というものは慎重でなければならない、こういうふうに考えております。
  446. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかりました。あなたの言うことはわかりました。  それでは、日本と同じような政治体制にある国がたくさん、ドイツを含めて、みんな二つとも認めているのですよ、両方とも。それは安全にかかわりないからあれは気楽に承認しているのだ、おれはそういうわけにいかない、こういう意味ですか。そうじゃなくて、韓国から文句を言われるから承認できないというのですか。では、西側の方で承認している国は、何か日本のように重大なかかわりがないから承認したのだとさという程度であなた方は思っておられるのでしょうか、どうですか。
  447. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国を承認できるような事態になることを、私どもとしてもそういう事態が来ることを希望、期待もいたしております。しかし、現実の状態でそこまでまいることがいまの状態から適当でないということを申し上げているのでございまして、御理解を賜りたいと思います。
  448. 安宅常彦

    ○安宅委員 理解いたしません。時間がありませんからここで議論したって——これは情勢が解決するのでしょう。恥の上塗りだけはしないように福田さんに言っておきます。  ただ最後に申し上げますが、バランス、バランスと言うのだったら、福田さんも一生懸命になったですね、それからいまの幹事長の大平さんだって一生懸命になったことですけれども、佐藤内閣から田中内閣当時に至って朝鮮に対して輸銀の使用を認め、延べ払いも認めましたですね、田中さんは。それが三木さんのときに吹っ飛んでしまいましたよ。これは支払いの関係の問題いろいろあったからです。しかし、それは先ほどいろいろ問題があったように、今度は共同の投資の合弁公社をつくって日本が第四次五カ年計画の相当の分担をする、九億の金を投資するということを片一方にやっておる。片一方はタオルの製造設備のプラントをやっとオーケーを出した。あれは安宅君、おれがやったんだぞと大平さんは言っていましたよ、タオル、タオルと。それさえもだめになったのですよ。いま本当に互恵平等の貿易をやる、よし、お互い隣国だから、政治の問題は別として、あなた方の見解があるのですから、延べ払いでも何でもやりましょう、それは西ドイツでもどこだって、イギリスだって、フランスも皆やっておることですからね。韓国が文句言うから、ぎゃあぎゃあ言うからといって、そういうことでおたおたしないで、一遍やったことですから復活する意思があると私は思いますよ、総理。さっきアヒルの水かきの話が出たけれども、当時のベトナム民主共和国に対してあなたは外務省の役人をぱっと出してやるくらいの度胸がある男ですから、そういう意味で敬意を表しているのです。アヒルの水かきは通用しないと土井さんは言っていたけれども、これもまたアヒルの水かきか知らぬけれども、そういうことぐらいはやれるのではないですか、どうです。
  449. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま朝鮮の経済情勢、特に支払い問題、これが非常にむずかしい事態であるというふうに承知しているのです。そういうふうなことからいろいろ問題が起こっておるんじゃないか、そういうふうに思いますが、朝鮮とのいろんな経済交流の問題はケース・バイ・ケースで妥当に判断する、こういう方針でやります。
  450. 安宅常彦

    ○安宅委員 一遍やっておったのですからね。それで、支払い問題も政府がさっぱり動かない。私らは動く、銀行もいろいろ折衝をする、日朝貿易会などが何回も行ったり来たりする、向こうとの意見も調整する。なるほど通産省の考え方は、新しい官僚の人々は協力してくれましたよ。それでこれは解決済みなんです。だから私申し上げているのですがね。ようございますか、やはり経済情勢が苦しいような状態のときは、隣国としては当然延べ払いぐらい——逆に裕福な国に延べ払いすることはないのです。それくらいのことはやったっていいじゃないか、バランス、バランスと言うならば。あなた方が言うバランスとおれたちが言うバランスとはまるっきり違うのですね。これは南極と北極との違いでバランス、バランスと言っているのですから、いまはかみ合っておりませんが、情勢は変わってきておるのです。  福田さんに本当の最後に聞きますが、私どもは日朝友好促進議員連盟に所属し、私は事務局長です。それで会長の名で貿易代表団を近く呼ぶつもりでありますが、このことについては政府は快く、入国について介入したり何かしないようにしていただきたいのですが、そういう約束はできますか。経済代表団ですからいいでしょう。
  451. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの件につきましては、申請がございますれば検討させていただきたいと思います。
  452. 安宅常彦

    ○安宅委員 検討させていただきたいんでは困るわけでして、検討なんぞはいつでもするんだよ。検討しなくたっていいじゃないかと言っているんだ。
  453. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 前向きに検討させていただきます。
  454. 安宅常彦

    ○安宅委員 どうもありがとうございました。
  455. 坪川信三

    坪川委員長 これにて土井君の質疑は終了いたしました。  次に、玉置一徳君。
  456. 玉置一徳

    玉置委員 福田総理にお伺いしたいのですが、いろんないきさつを経まして、ようやく今明日の総括質問を終えられてアメリカにお行きになるわけであります。そこで、私思いますのは、新聞等等を見ますと、カーター大統領とともに世界の景気の浮揚、経済界の上昇と申しますか浮揚と申しますかということに一番お話の焦点が移るんじゃないだろうか。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 したがって、そこにはわが国としても何らかのできる限りの寄与をしなければならない、こう思います。というようなところでございますけれども、今度のこの予算をお組みになったときとそれから今日とで、大分やはり違いが出てきておるんじゃないだろうか。思わぬ景気の上昇がもうある程度行っておる予定であったのが、なかなかそうはまいらないというような点も確かに見受けられると思うのですが、よほどふんどしを締めてやらなければ、冷え切った、停滞した空気というものが上昇に転ずるのに相当な力が要るんじゃないか。ことにアメリカへお行きなすってまずお話し合いのときには、国内の公定歩合の引き下げ等もあるいは遅きに失したのじゃないか、アメリカ行きのために無理をしてこしらえたんじゃないだろうかというようなひやかしの新聞報道すら見受けられましたが、こういう意味では、とりあえず公共事業はやられた、個人消費の浮揚のために減税もやった、けれども冷え切った今日、期待するほどの効果が上がるか上がらぬか若干未知数であるというようなことになりますと、私は設備投資のこの冷え切ったものに、アメリカ等々がやっておるような何かの刺激策を講じないと十分な効果が上がらないのじゃないだろうか、こう思うのです。きょうの夕刊を見ておりましても、日商の総会で会頭が、景気刺激策のために設備投資に何らかの思い切った誘導策を講じてもらいたい、こういうようにお述べになっておりますが、どのようにお感じになりますか。
  457. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 最近出てくる経済指標は、大体停滞という方向のものが出てきておるのです。これはしかし昨年の十月−十二月の、五十一年度とすると第三・四半期の動きです。経済企画庁などでつぶさに検討しておるのですが、ことしの一−三の勢いというものはかなり違った様相が出てくるだろう。それを受けての五十二年度、こういうことになるわけでございますが、五十二年度になりますと、五十一年度補正予算、これはすでに成立しておる。この影響が出てくるわけです。それから五十二年度予算、これはかなり大規模の公共投資を織り込んでおりますが、これを政府考え方としては上期に集中、まあ集中と申しましても七割方上期に契約を了する。この金額は膨大なものであります。そういうようなことを考えますと、これがてことなってかなり五十二年度の経済というものは上昇に転ずるであろう、こういうふうに考えておるのです。  いま設備投資なんかについての御懸念でございますが、そういう公共投資なんかが行われ、国の需要が旺盛になってくる、こういうことになりますれば、自然設備投資の方も動意が見られるようになってくるのじゃないか、そういうふうに考えております。しかし、いろんな状況でそういう状態ができないというような際には、その際にまたそのときどきに応じた対策は講じて、とにかく六・七%というものは世界でも注目している数字でございまするから、その辺の成長はぜひ五十二年度中に実現したい、かように考えています。
  458. 玉置一徳

    玉置委員 私が心配いたしますのは、アメリカカーター大統領とお話しになったときに、国内が冷え切っておって、そして結果として輸出のドライブがかかるだけじゃないだろうかというような形で物を言われますときに、かなり言い返しのむずかしい問題があるのじゃないだろうか、こう思うのです。私たちが田舎に帰りまして一つの機業地なら機業地を回ります。本当はもう構造的にある程度の数を設備廃棄をせざるを得ないわけです。ところが直ちにその人たちが行くところがなくなる。何か人を雇う企業を探してきてくれということを懇々と言われるわけです。ところが、これだけ先行きの見えないときに、お互いにぜい肉を減らすところに最大の努力を払うのも、また企業としては当然のことであります。私は相当な刺激策を講じない限り、いま設備投資をするのは、部分的な設備投資はあり得るかもわからぬけれども、なかなか新規にということは困難なときじゃないだろうか、こう思いますがゆえに、しかも余りにも冷え切っておりますので、個人消費というものが、われわれが想像するようにうまくはいきにくいのじゃないだろうかということを想定いたしますから、いまのうちに何らかの検討を加えておいでにならぬといかぬのじゃないだろうか、こう思って申し上げておるわけであります。  その次は、きょうも夕刊を見ますと日商の総会で会頭が公定歩合の再度の引き下げを叫んでおいでになります。私は、これはだれが見てもそうとれると思うんですが、少し時期を失して、もうやるということは織り込み済みになっておるのじゃないだろうか。だからさして心理的な効果も上げ得なかった、こう思うのです。なるほどお話のように前半期は、前の補正予算、今度の公共事業等等の、しかも前半期に七〇%を発注してしまうというような馬力を御準備なすっておいでになるように私は思いますので、その点はかなりの刺激はできるのじゃないか、こう思います。ただ心配なのは、後半期停滞を始め出すと、またこれは相当な力がないと追い上げることができないわけであります。こういう意味では、もしも後半期にそういう時期が来たときに公共事業をさらに追加するなり、公定歩合も時期を見て適切な手を打つなり、機動的なしかも迅速な手をお打ちいただくように私はお願いをしたい、こう思うのですが、御所見を承っておきたいと思います。
  459. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十二年度の経済は、今度の予算が実行されるということになりますると上昇に転じ、そして大体六・七%成長の線を実現できる、こういうふうに私は思っておるのですが、経済は生き物でございまするから、これはどういう変化があるかわからぬ。わかりませんが、大体その線に沿いまして経済運営をやっていく。つまり不測の事態が起こるというふうなことでありますれば、これは財政上も金融上もこれは弾力的、機動的に対処する、こういうことだろう、こういうふうに思いますが、何としても世界が注目している日本経済目標、これはぜひ実現をしなければならぬ、そういうふうにかたく考えております。
  460. 玉置一徳

    玉置委員 それだけに、またぜひとも実現しないと経済福田というようなことが言えぬようになりますからお気をつけて十分がんばっていただかなければならないと思うのですが、ついでにお伺いしますが、この間与野党の合意に基づきまして上乗せ三千億円の減税をまとめましたときに、不公正税制の是正につきましては次の予算編成時期に、野党の申し分もよく承っておりますので、十分しんしゃくして織り込みたいと思いますと、こういう話であり、それからもう一つは、毎年の調整減税、これはできるだけ毎年の予算でこなしておいきになるような御努力を払えるかどうか、この二点について大蔵大臣の返答をいただきたいと思います。
  461. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  不公正税制は、これはもう常に公正にしていかなければならないということは、われわれ財政当局といたしましては使命だと私は考えております。そこでいまおっしゃいました野党の皆さん方の御要望ということもこれは頭の中へ入れまして、五十三年度のいずれは税制改正をやらなければなりませんが、そのときにできるだけ御趣旨を生かしてまいりたい、かように考えております。  それから物価調整減税でございますが、これは主として所得税が関係してくるわけでございますが、その所得税は今日の状況におきましては、日本の所得税は御承知でございましょうけれども、世界各国の所得税に比しまして課税最低限が決して低くない、高いということでございますし、それから各個人の所得税が、その所得に比しましての比率というものは、これは世界各国に比べまして決して高くない。さような意味から申しまして、毎年毎年物価調整減税を実行するということは、必ずしもこれはぜひやらなければならないということではないということを、この間の税制調査会の答申においてもそういうことがはっきり言われておりますことをひとつ御理解を願いたいと思います。
  462. 玉置一徳

    玉置委員 時間がありませんので次に移っていきたいと思うんですが、総理、現在の不況のどん底の中で、ことに日本の不況業種と言われる繊維産業あるいは合板、平電炉、そこへ体質の改善を必要とする造船あるいは非鉄金属、アルミサッシの工業、化学工業のある一部分、こういうものにつきましては、本当に長い長い苦労をしておりますので、体質が完全に弱り切っております。その上に、なお景気の浮揚の一日も速やかならんことをこいねがっておるわけでありますが、どちらかといいますと、先に言いましたクラスは過剰設備を蔵しておりまして、どうしてもこの際構造的なメスを加えない限り、将来に光明を見出すということは不可能に近いというのが、これはだれもの考え方であります。われわれが心配いたしますのは、どれか一つ倒れたらあとが助かるのだというような気持ちにもしもなるようなことになれば、こういう感じがしまして、一日も早く雇用不安なり企業の不安を解消しなければ、社会の大きな混乱を招くおそれがあるのじゃないか、こう私は思います。したがって、これは政府だけじゃなしに、国会も、もちろん企業も、労働組合の皆さんの協力も求めて、この際本当に思い切ったやり方をやらなければ、一大雇用問題に発展するおそれがあると私は思うんです。こういう意味で、ひとつ抜本的なあれをやらなければならないということにつきましては、いろんな金融その他のカルテル等々の諸問題も出てくると思いますが、ことに雇用問題につきましては相当弾力的な運用を現行法規でやりながら、十月一日の安定資金制度のできるのを待つというようなかっこうになるんじゃないかと思います。これについてどのように取り組んでおいきになるか、ひとつ総理の決意をお伺いしたい、こう思います。
  463. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま不況業種というものが相当あるんです。これは一時的な需給の関係からくるものもありますが、いま玉置さんの御指摘の構造的要因に基づくものも幾つかあるわけでありまして、この構造的要因に基づく不況産業につきましては、お話しのようにこれは根本的な対策が必要なんじゃないかと考えておりまして、いま通産省の方でもこれら産業幾つかをピックアップしまして、そしてどうするかということを検討しております。財界の方でも検討いたしておるわけでありますが、両々相協力いたしまして何とか根本的な打開策を講じたいと考えておる最中でございます。
  464. 玉置一徳

    玉置委員 これはいままでの内閣に長らくの間、不況個別企業に対するきめ細かい手を打たなければだめだと申し上げておったわけですが、なかなか打てなかったのは政府だけが悪いのではなしに、業界みずからがその気持ちになり得なかったあれもあったと思いますが、いまや業界も、恥も外聞もないというところまで来ている業界がたくさんになりましたから、この際本当に将来の安定を取り戻すために、ひとつ思い切ってやっていただきたい。  そのときに、いま一番考えられるのは、不況カルテルを申請するのでも、資金の自己調達ができないという業界もできております。あるいはいまの中小企業の金融については、現在、金は貸してほしい、しかしそれよりも前に、いままで借りました構造改善や日米繊維交渉その他、ちょうど返すピークの時期に来ております、これを何とかして後の方へ繰り延べてもらえぬだろうか、条件変更していただけぬだろうか、そういう声があちらにもこちらにも出ておるというのが現状でございまして、こういうことをほっておきますと、それこそ政治不信が起こるんじゃないだろうか。若干虫のいいところもありましょうけれども、現在そこまで来ておることは事実であります。百人とか五十人をどこかへ職場移転するのじゃなしに、一人ずつの移転まで頭を下げて、差額は私の方で補償しますからというようなことで、ひそかに歩き回っておるところを私も知っております。これは前はロッキード問題だった、今度はこういった不況産業に対する温かい手、適切な手が伸びなかったから政治が悪いんだというところまで追い込むんじゃないだろうかという心配もするわけであります。  こういう意味で、私は通産省の方からも大体金だけは十分手当てができるほど用意いたしておりますという話は聞いておるのですが、大蔵大臣、本当ですか。
  465. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  政府系中小企業金融三機関の融資枠について昨年十一月に四千八百七十億円の追加を行い、第四・四半期の融資枠は七千二百二十九億円、対前年同期に比べまして二九・四%の増となっております。また五十二年度におきましては、対前年度当初比一八%増の三兆四千八百六十九億円を予定しております。  その運用に当たっては、各業種の実情を十分考慮し、弾力的に対処するよう指導いたしております。また担保の徴求、評価についても、個々の経営の実情に応じ弾力的に取り扱いを行うよう指導をいたしております。  また信用補完制度については、五十二年度予算において中小企業信用保険公庫に対する出資を三百六十億円計上し、対前年比約四割増の拡充を図っておるほか、運用面において、不況業種に属する中小企業の金融の円滑化を推進するため、保証の増枠を認め、倒産関連特例保険の適用を弾力的に行う等の措置を講じております。  さらに中小企業等に対しましては、三機関に対して経営基盤の特に弱い中小企業については個々の経営の実情に応じ、いま御指摘の既往債務に対する償還猶予、返済条件の緩和など弾力的な取り扱いを行うよう指導いたしております。  民間金融機関についても政府中小企業金融三機関に対すると同様に、中小企業者について弾力的な取り扱いを行うよう指導をいたしております。
  466. 玉置一徳

    玉置委員 いまお話しになりました一番最後の政府三公庫だけではなしに、やはり中小企業といえども近くの信用金庫とかいろいろな民間企業を利用いたしております。そういうことでひとつ協力を取りつけるように大蔵省からも十分お願いをしておいていただきたいと思います。おっしゃったように担保力もすでになし、何かの形で信用の供与をしてあげないともうどうともならぬというのが現状じゃないか、こう思いますので、その点をひとつ御配慮いただきたいと思うのです。  そこで通産大臣にお伺いしたいのですが、なかなかむずかしいことではありましょうけれども、そうやって不況業界全般が構造改善に立ち上がって思い切った体質改善をしよう、こういうようになったときは、少々は困難でしょうけれども、海外から輸入される諸製品の秩序ある輸入体制をとっていただけるように、この点は、せっかく二、三割廃棄するわ、値段は上がってきたわ、どっと入ってくるわということでは何にもならぬという心配を持つのもまた当然だ、こう思いますので、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  467. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまいろいろと御指摘いただきました問題につきまして、特に先生の仰せられました問題は、どん底にあると言われます繊維企業に対しまして、私どもは全く感を同じくするものがございますので、ぜひともこの問題につきましては取り組まなければならぬ、かように考えております。  それから同時に、御指摘のように一般的な景気対策といたしまして、機動的な不況カルテルの実施でございますとか、あるいはまた構造の問題から設備廃棄等の当該産業の実態に即しました構造改善の問題も思い切ってすべき時期に来ておる。同時に、御指摘のように何しろ大蔵当局の方からいろいろと十分な枠はちょうだいいたしましても、仕事そのものが冷え切って出てこないということが非常に難点でございます。同時に、またお話しのように民間の中小企業に対しまする信用機構もございます。政府関係三機関というのは全体の総枠からいたしまして一割ぐらいでございまして、あとの九割は相互銀行でありますとか信用金庫でありますとかそういうところでございまするが、信用保証機構の制度的なものも動員をいたしまして、同時にまた大蔵当局の御協力もいただきまして、全力を挙げて景気の回復に取り組んでおる次第でございます。
  468. 玉置一徳

    玉置委員 公取委員長にお伺いします。  従来緊急避難の不況カルテルにつきまして、あるいは一カ月だとかあるいは二カ月だとかいうような非常に細切れみたいな認可が多いように見受けられたわけでありますが、こういう構造改善に入らなければならないというところまでみんな追い込まれておる業種が申請をしましたときは、十分に検討されて、必要な、適切な期間の認可があるようにしていただきたい、こう思うのですが、お答えをいただきたいと思います。
  469. 澤田悌

    ○澤田政府委員 ごもっともな御指摘でございまして、従来公取委員会は、不況カルテルの認可に当たりまして、法律の要件を十分検討いたしますとともに、カルテルの期間についても実情に合うように努力してまいっておるのでございますけれども、いろいろいわゆる市況産業というようなものもございまして、商品によっては価格の変動が非常に激しいというようなものもありまして、御指摘のように小刻みに過ぎたかと思うような例もあったかと存じます。しかし、お話のように、不況が長引きましていろいろ問題が深刻になってまいりますと、一層実態に即した措置が必要だと思いますので、さらにそういう運用方針をもって臨みたいと存じております。
  470. 玉置一徳

    玉置委員 まず一番象徴的な繊維産業をとって申し上げたわけでありまして、これはただに零細企業の川下の縫製加工あるいは染色等々だけじゃなくて、川上の方も全くまいってしまっておるというのが現状でありますので、そういう点についても十分の配慮をしていただきたい、こう思います。と同時に、同じことは先ほど申しました平電炉、合板等々の企業、それから若干変わりますけれども造船あるいは非鉄金属、アルミサッシ、化学工業というようなものも、ニュアンスは違いますけれども不況産業であることは事実でありますので、これについても、具体的に個々の実情に合うように、しかも体質を思い切って変え得るような措置を願いたいと思うのであります。  そこで、こういう問題を取り扱うにも、先ほど私は福田総理の決意のほどというようなことを申し上げたのも、要は雇用政策がどのようにうまくいくかいかぬかにかかっておりますね。この成否は一にかかって雇用政策の問題にある。石田労働大臣所用のために退席をされましたので、一言総理、というわけにもこれはいかぬかな。とにかく雇用政策がうまくいかないと、御承知のとおり構造政策をやるわけには本当はまいりません。そういう中でやるわけでありますので、どうしても十月一日に発足する予定になっております雇用安定資金制度につなぐまでの間、現行の法律、雇用調整給付金、これの運用を弾力的に活用いたしましてそこまでつなぐしか実際は道はないというのが現状であります。こういう意味では、局長で結構ですから、局長には個々の問題をあれいたします。  そこで、雇用調整給付金の弾力的運用について労働省はどのようにお考えになっておるか、お答えをいただきたいと思います。
  471. 北川俊夫

    ○北川政府委員 いま先生御指摘のような雇用情勢に即応いたしますために、この十月一日から雇用安定資金制度なるものを創設すべくいま法案の御審議を願っておるところでございます。ただ、それまでに、不況が深刻化しますいろいろの業種がございますので、これにつきましては、雇用の実態をよく把握をいたしまして、現在雇用保険法の一事業としてやっております雇用調整給付金の制度、これは本来失業を予防するという制度でございますので、その制度の本旨にのっとりまして、失業が出ないように実態に即した処理をいたしたいと思います。
  472. 玉置一徳

    玉置委員 重要でありますので、この際若干細かく伺っておきたいと思います。  不況業種の指定でございますが、再度、新規に申請をしましたときに、その実態を見まして指定をされるかどうか、お伺いしたいと思います。
  473. 北川俊夫

    ○北川政府委員 すでに雇用調整給付金の指定基準については定めておりますとおりでございまして、かつて不況産業ということで業種指定いたしましたものでも、再びそういう事態が出てまいりました場合には、改めて業種指定をする考えでございます。
  474. 玉置一徳

    玉置委員 これは一緒くたに申し上げますが、この際、指定基準でございますが、最近三カ月の生産が前年同期よりも一〇%減及び最近の一カ月が前月より二〇%減、こうなっておるのがたてまえでございます。繊維業界のただいま申しましたような実例を申しますと、原綿の高いものをいま使わざるを得なくなって、一番品物が安いときに損することは覚悟の上で、工場を動かしていないと労賃が払えないというので、もうめちゃくちゃ操業が進行しておるのじゃないかと思われる節がございます。こういう場合、その基準で言えば、同じじゃないか、むしろよけい織っておるじゃないかということになりかねないのです。こういうものについても、何か適切な基準を編み出していただいて、前向きに運用をいただきたい、実態をつかんでいただきたいというのが一つ。  もう一つ、雇用保険にかかる雇用改善事業の指定期間を、原則として六カ月でございますが、これが造船企業のような、向こうへ行けば行くほど悪くなるというのがもう現に見えておるものがございます。そういうものはさらに延長されるようなことがお考えいただけるかどうか。  それからもう一つ、他社に出向して——もう現状はそういう形になってしまっておりますが、その方々には、賃金差額を対象とし得るように組み込めるかどうか、こういうような場合の処置について御返答いただきたい。
  475. 北川俊夫

    ○北川政府委員 まず最初の、繊維等におきます指定の仕方でございますが、先生御指摘のように、現行の指定基準そのままでなかなか解釈のできないところがあろうかと思います。ただ、たとえばこれから不況カルテルが認められまして、すぐに操業がかなり落ちて一時休業が明らかに出るという場合に、不況カルテルの前の操業度をもって前年と比較してもこれは意味がございません。そういう意味で、これは先ほど申しましたように、実態に即して、しかも制度の趣旨を踏まえて、十分対処をいたしたいと思います。  それからもう一つ、指定期間の六カ月の件でございますが、これは本来的には造船等のように構造不況的なものは、新たな制度でございます雇用安定資金制度でむしろ中長期の期間指定というものを考えておりますが、その間のつなぎとしまして、雇調金の場合も六カ月の指定期間をもう一度反復するということは可能と考えております。  それから最後に、出向についての賃金差額の助成の問題でございますが、これは新たな雇用安定資金制度では考えておりますが、現行の雇用調整給付ではこの点が不可能でざいますので、新しい制度の運用を待って対処したいと思っております。
  476. 玉置一徳

    玉置委員 ただいま申し述べましたとおり、この構造的な不況業種にメスを入れることが成功するかいなかは、雇用の問題にかかっておることは御承知のとおりであります。こういうことでひとつ十分な御配慮をいただくと同時に、これは一年で済まないかもわかりません、こういう意味では、さらに中期にわたる問題を処理する方途も同時にあわせて考えていただきたい、こう思います。こういうことで、中小企業の問題につきましてはさらに深刻でありますので、またこの実情に合うような方途を考慮していただきたい、かように思います。  そこで、通産大臣にもう一つお伺いしておきたいのですが、いまやかましい中小企業の分野調整法であります。われわれは、出てきて完成してから初めてわいわい言うよりは、出てくる前に、業種指定、そういう問題が調整できるような措置を講じておかなければならないというように要請をしておるわけでありますが、新聞を見ておりますと、どうやらそういうように傾いてきていただいておるように感ずるのですが、この点はどうなのかということ。それから同法の実効性を確保するために、命令、罰則規定、これはいままでのあれにはなかったわけであります。どうしてもこれがなければ実効が上がり得ないというなにがございます。なるほど調停よりは、いま申しましたような点につきましては、命令、罰則のほうが適用が狭くなるという点はあり得るかもわかりませんけれども、ここはひとつ、多数の中小企業者が要求をしているものでありますから、希望をかなえてあげていただきたいと思うのですが、本日的確な御答弁ができるかどうか、本日のこの時期にちょっとひとつ所見を承りたいと思います。中小企業庁長官でもよろしいです。
  477. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話がございました第一点の業種指定の問題でございます。これは中小企業政策審議会でも一番議論の中心になった問題でございます。私どももずいぶん勉強いたしましたが、いま結論といたしましては、競争政策上の問題あるいは技術上の問題から、業種指定というやり方はやはりとり得ないのではないかと思っております。しかし、これは問題が大きくなってまいってから対応策を講ずるということでは、既成事実ができてしまいますので、私どももなるべく問題の早い段階で対応策を打てるような何かの仕掛けを考えることが適切なのではないか、こう考えておりまして、いま具体策をいろいろ検討いたしております。  それから第二点の、命令、罰則をもって担保すべきではないかという点でございますが、これまた同じく議論の焦点になった問題でございます。一方では、命令、勧告という非常に強い手段を用意せよという意見、それから他方では、そのようなものは必要ないという意見と、両案が対立いたしておりましたが、いわば両方から歩み寄って、勧告、公表というようなやり方でいってはどうかということになった経緯がございます。私どももやはりその経緯は尊重せざるを得ないと思っておるところでございます。社会的に勧告、公表というような措置を講ぜられますれば、現下の社会情勢からすれば、当然大企業としてはそれは尊重せざるを得ない態勢があるのではないかと思っておるところでございますし、また、従来の事例もかなりそれでもって効果を上げてきた、かように思っておるところでございます。お話がございましたように、命令にいたしますと、非常に要件をしぼってしまわざるを得ません。それよりはむしろ機動的、弾力的に勧告、公表という制度を使っていった方がかえって実を上げることができるのではないか、いまの段階では私どもはかように考えております。
  478. 玉置一徳

    玉置委員 長らくの間皆さんが非常に運動されて、期待の分野調整法ができるわけであります。これまた委員会等において修正する可能性もあるわけでありますので、一緒に落ちつくところへ先事前に話をして、事前チェックをしてやった方がお互いがまずくならぬのじゃないだろうかというようなことも考えますので申し上げておるわけであります。そういう意味で、いずれ商工委員会で処置をいたしますけれども、十分考えていただく方が望ましいのじゃないか、こう思います。  そこで、私はこういう不況の問題を取り上げたわけでありますので、この機会に、行政改革につきましてお伺いをしたいと思います。これは総理並びに行管庁長官にお伺いするわけです。  この間、大蔵省から、御承知のとおり、中期の財政計画が出されました。しかしながら、あれを見ておりますと、国債は数年を出ずして五十兆円ぐらいになるんじゃないかと私は思うのです。あのときに国債がなくなるように書いておるのは、何と申しますか、かなりの増税を見込んで計算をされておるわけです。そういうようにまいれば結構なことでありますが、なかなかむずかしい予想もされます。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことになりますと、五十兆円のものを十年据え置いて、利子だけ払って、残り十年で均等償還をする。この元利合計を見ますと、やはり百兆に近くなるんじゃないだろうか。単純な計算でございますが、これを単年度でやれば、十兆円ぐらいの元利償還をせなければならない。そこで、これはなかなか今日増税に耐えるわけにいかないということを考えれば、せめて半分は他に財源を求めるようにする、つまり、行政の思い切った改革をやることによって捻出する、それは後世へのわれわれの補償であります。こういうことをぜひともやるべき時期である。私は、三木内閣のときにも三木前総理にここで申し上げておったのです。これだけやむを得ず景気浮揚のために国債を思い切って発行して、公共事業等々、その他に充てるわけであります。これはやむを得ぬことです。しかしながら、それをやる者は後世のことも何かしておかなければいかぬ。それは何だ。行政機構の改革をいまから断行せないと、緒につけないと、ああいうものは実効を上げるのに十年かかるというのが大体普通のあれだと思います。私は、それでいいんじゃないだろうか。それをいま起こしておかなければならない、こういう考え方に立っておるわけでありますが、総理並びに行管庁長官から……。
  479. 西村英一

    ○西村国務大臣 いままでにも政府としては行政改革にはやはり部分的には十分取り組んできたと思います。またことしの予算編成の場合も、各省庁から相当な規模のいわば局、部の増設とかあるいは特殊法人の新設とかいうようなものが出ましたが、極力これは全部抑えてまいったわけでございます。しかしながら、まあ大体ずいぶん社会も変化をいたしておりますし、かたがた、いま申されましたように、財政の硬直下でございますので、この際はひとつ改めて行政の全般について見直しをしようという総理の指示もあるわけでございまして、これから十分行政改革をやりたいと思っています。しかし、一口に行政改革と言っても、なかなかこれは非常に困雑な事業でありまするが、ぜひとも取り組んで、やはりこの予算、各省の提出いたします八月ごろまでには具体案をまとめたい、こう思ってせっかくいま努力、勉強しておる最中でございます。
  480. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国をめぐる客観情勢というか、環境が非常に変わってきておるわけであります。それに対しまして、やはり、政府といたしましても率先して対応の構えをしなければならぬ。そういうようなことで行政改革ということを考えておるわけでありまするが、しかし、何せ財政面から言いますと、どうしても人員の問題という壁がありまして、そう多くを期待することはできないと思うのですが、しかし、できる限り行政を近代化する、また合理化をする、そして態勢変化に応ずる、そういう構えをとろうと思いまして、八月をめどといたしまして結論を得たいという考えでございます。
  481. 玉置一徳

    玉置委員 申し上げて恐縮ですが、たとえば何やら開発庁というようなものがあちこち地域的にありましたけれども、十年、二十年、大体その所期の目的が達せられたような感じのする役所もありますし、その場合その場合にこしらえた役所であって、そんなものをこしらえるのだったら、二つを一緒にしておいておかしくなかったし、かえってその方が目的に合うんじゃないだろうかというような役所もあります。私たちが見ましても、相当多数の余剰人員だと思われるところもあります。しかし、これは役所同士お互いに、総理の指令があったからと言うて、よその役所のあそこがおかしいじゃないかということも言いにくいものでもありますし、やはり前の臨調のようなものをつくって、他人さんでやっていただいて、中立的な方々で、しかもそれが民間の方々でああいうものをつくらぬとお互いにやりにくい面があるんじゃないだろうか、こういうように感じるわけです。ことに、われわれの党も、これをなにしまして生首をどうというわけにいかぬのですから、実際は財政面できょうあすどうということは本当はありません。しかし、十年向こう、二十年向こうにすればやはり大きなあれになるんじゃないだろうか、こういう感じがいたします。そういう意味では、この際、どうしても本格的に取り組まなければならぬことだけは絶対事実だと思うのです。  こういうような意味で、いろいろなことを考えてみますと、昔は近畿何やら農政局、大阪何やら局と各省ごとにございましたが、昔あったのはほんの一、二だと聞いております。いつしか仕事が繁雑になったということは言えると思うのですが、それと同時に、私の方の京都から東京へ来るのには、昔は六日間歩いたわけでありますが、いまは新幹線で三時間、自動電話で直ちにかかる仕組みになってまいっております。こういうものも一遍ずっと考えてみたらという感じがしてなりません。こういう意味の検討をしていただくような、そのことがなかなか、できるかできぬかはまた別としまして、臨調のようなものをおつくりになることが行政に携わる者としての他山の石になるのだと私は思いますけれども、どのようにお考えになりますか。
  482. 西村英一

    ○西村国務大臣 いろいろ申されましたが、臨調、臨時行政調査会みたいなものをつくってはどうかというように受けとめましたが、大体、前の臨時行政調査会で、その答申を受けて現在私の方に、行管庁の方に、行政監理委員会ができたのです。したがいまして、いま、私の方で今後具体案をやるにしましても、現在の行政監理委員会意見を聞きつつやらなければならぬと思っています。  先生の第二の臨調をつくったらどうかということ、これは長期的にはやはり考えられると思いますが、この八月に、いま具体案を出そうというのには、これは間に合わないと思うのですから、長期にわたったら、これはひとつ大々的にやるのにはやはり大きい機構でやらなければならぬと思っていますが、いま直ちに臨調をつくるということは考えるわけにはいかないと思っております。
  483. 玉置一徳

    玉置委員 私の申し上げておるのは、要は、お互い仲間同士ではなかなか実際問題として言いにくいことであり、指摘しにくいことである、こういうような意味で、民間人を主にしました第三者でこれは扱っていただくことが、しかも、思い切った国と地方とを一緒に考えたぐらいの規模で物を考えないと、そうあっちこっちに人が余っているというようなこともありませんし、あるいは行政の簡素化を徹底してやろうと思うときにもそういうものが必要だ、こう思いましたので申し上げておったわけです。私の方の党も、予算が衆議院を通過しましたら、この問題に全面的に取り組んでまいりますので、ひとつ、行管のあれと私の方の案と、どっちが実現可能性が多くて国民の要望にこたえておるかやってみたい、こう思いますので、よろしくお願いを申し上げたい、こう思います。  次に、福田総理の一番お得意な資源エネルギーの問題であります。これは本当に日本のような小資源国で、加工貿易で飯を食っておるというような国にとりましては、自衛隊よりも本当にこれは国防じゃないだろうか、こう思うほど重要な問題でございますが、まず、現在の電気が、北海道では五十三年−五十四年ですか、五十三、四年、それから中国地方がその翌年から、中部地方はその翌年から、次に関西電力と、こういう順番で二、三年後に電気の供給が完全に窮屈になってしまうということを、私は、国民全部もそう新聞で記憶におとめになっておらないのじゃないだろうか。一体ここまで来た原因は何なのか、これをどのように対処していかなければならないのか。資源エネルギー庁長官、おいでになりますか。
  484. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 景気の回復あるいはエネルギー需要が、使いやすい電力依存度を高めていく、こういった状況のもとにおきまして、必ずしも電源立地が順調に進んでおらないといったようなこともございまして、御指摘のように、早晩、地域によりましては供給不足を来すおそれが出てまいっております。ただいまも申し上げましたように、電源の立地難ということが一つのポイントでもございますので、われわれといたしましては、環境対策あるいは安全性の確保といったようなことを極力努力いたしまして、地元との信頼関係を確立する、そういった方向におきまして電源立地を促進して、さような供給不足を来さないように努力いたしたいと思っております。
  485. 玉置一徳

    玉置委員 総理、原子力とあわせて質問しようと思ったのですが、要するに、日本の電力エネルギーの実態をもう少し国民の皆さんに率直に将来を通じましてお知らせしなければいかぬのじゃないか。そうして協力を要請しなければ、いまのようなやり方をしておればとても需要の伸びに追いついていけないのじゃないか、こういう感じがいたします。これについてどのように取り組んでいったらいいか、総理の心構えをひとつ。
  486. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、玉置さんのおっしゃるとおり、資源エネルギー問題というのはわが国の安全保障、こういう性格のものである、こういうふうにとらえておるのです。電力一つをとりましても、いま玉置さんがおっしゃるとおりの状態です。それからもっと広く見ますと、この五年、十年の間ぐらいは資源エネルギーはどうやら努力をすればもっていけるかもしれませんけれども、さてその先になりますと、相当窮屈な時代が出てくる。私はこれは必至だと思うのです。そういう意味で私は資源有限時代ということを強調しておるのです。ただ、私はいま非常に矛盾を感じておりますのは、余りこれを強調しますと、ただいま不況、不況と言っているでしょう。やはり省資源、省エネルギーということになりますと、生産あるいは家庭生活、そういうものにブレーキをかける、こういうことになる。それが景気政策とのかみ合いでその調整をどういうふうにとるかということがなかなかむずかしいのでございますが、しかし、基本的に電力事情が、あるいはエネルギー事情が、資源事情が非常にむずかしいということにつきましては徐々に国民によくわかってもらえるような努力はしていかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。  そこで、先月、二月は省資源・省エネルギー月間といたしまして、そういう非常に基本的な問題についての国民への理解を求める、こういう努力をいたしたわけでございますが、いまちょうど大変むずかしい時期なんです。しかし、早く景気を軌道に乗せて、そしてその上に立って活発にそういう問題について国民協力を求めるということをしていかなければならぬと考えております。
  487. 玉置一徳

    玉置委員 お話がありましたとおり、石油もここ数年毎年値が上がることは事実であります。それが価格の問題だけだといたしましても、二十年すれば全く動きがつかなくなるだろうというのが石油需給の一般の想定でございますね。こういうことを考えますと、次に世界的に今日の問題としておるのは原子力であります。こういうものについて立地の獲得に非常に困難を来しておるのが現状であり、六十年に四千九百万キロワットというもの、これはとてもやっていけぬだろう、こういうのも大体の考え方であります。いずれこれは見直しされると思いますが、一体いつごろ見直されるのか。それともう一つは、自主技術でもって日本の核エネルギーのサイクルはどの程度にできるようになったのか、科技庁の長官から。  それからもう一つ、今度のカーター政権の再処理工場の考え方によって、日本の将来の自主的なサイクルの確立に非常に支障を来すような感じがいたしますが、これに対してはどういう見方とどういう見方があるのか。まさかそこまではせぬだろうという見方と、かなり支障を来すのじゃないかという見方と二つあります。これについてひとつ科技庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  488. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 原子力の今後の開発に関しましては、次のような観点からそれを急いでおります。  石油に依存している率が余りにも高うございます。すでに石油に支払っている外貨は総輸入量の三分の一ということになっております。とてもこれでは将来が案じられます。したがいまして、原子力の開発によるエネルギー、これを確保しなければなりません。ということになりますと、やはりわれわれといたしましては、現在ならばウランの濃縮も自主技術、またプルトニウムを生産いたしまして、より効率の高い高速増殖炉、これの開発のためには再処理工場も自主技術、そうしたものを確立いたしまして、いわゆる海外依存によらないところの核燃料サイクル、これを速やかに国内において確立しなければならない、かように存じておる次第でございます。現在といたしましては高速増殖炉、これが一九九〇年を一つのめどといたしておりますが、ウランも有限でございまして、今日のような軽水炉だと、世界のウラン資源もあと二十年とさえ言われております。高速増殖炉でございますとその六十倍であります。したがいまして、世界各国が高速増殖炉に目を向けまして、その燃料である再処理工場をつくって、そこでプルトニウムをつくろう、こういう趨勢にございます。  で、わが国の高速増殖炉はまだ実験炉でございますが、ようやくこの春には臨界に達します。そうしてなおかつ高速増殖炉の一歩手前の新型転換炉というのもございますが、これは明年春に臨界に達します。しかしながら、御承知のとおり原子炉は実験炉、原型炉、実証炉それから商業炉でございますから、そういうふうな経緯を考えてまいりますと、今日ただいまからやはりプルトニウムは十分生産されまして、その間の開発技術に処せられなければならないと思うのでありますが、伝えられるところのカーター政権の新政策によりますと、その再処理工場に支障があるのではないか、こういうことでございます。したがいまして、わが国といたしましては、この夏から再処理工場のホットランに入るという、そのこと自体は非常に重大なことでございますので、今後外交面におきましても、それだけの主張はしていかなければならない、かように存じておる次第でございます。
  489. 玉置一徳

    玉置委員 総理にはちょうどアメリカにお行きになる。まだ定かではございませんけれども、多少の支障はくるような感じがしますので、向こうから発言があろうがなかろうが、この問題について日本の現在置かれておるエネルギーの立場をひとつ十分理解させるようにお話をしていただきたいと思うのですが、どうでございますか。
  490. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その点はそのように心得ております。ただ、この問題は今回の日米会談で決着を得るということにはならぬと思うのです。しかしその後に行われる政府間交渉が、わが方の立場を踏まえて行われるように、私は強力にわが国立場大統領に申し入れたい、こういうふうに考えております。
  491. 玉置一徳

    玉置委員 もう一つ総理のおっしゃる資源有限時代という言葉は、だからこれはますます入りにくくなり高くなるのだという言葉とまたうらはらになり得ると思うのです、そのままじゃないかもわかりませんけれども。こういうことについてはひとつ資源の再利用とか省資源とか、この運動も日本立場としてはどうしても思い切った運動をやらなければいかぬのじゃないだろうかと思いますが、通産当局か総理か、ひとつ所感を聞いておきたいと思うのです。
  492. 田中龍夫

    田中国務大臣 資源の再利用という問題でございまするが、当該問題につきましては工業技術院等でいろいろといたしております。担当の政府委員からお答えいたします。
  493. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私の方では省エネルギー問題を担当いたしておりますので、その点についてお答えいたしたいと思います。  先生御承知の昭和六十年における総合エネルギー需給見通しの中におきまして、九・四%、石油に換算いたしまして八千万キロリッターの節約を前提として組み立てられておるわけでございまして、省エネルギーということは総合エネルギー政策推進の中でもきわめて重要な柱の一つでございます。具体的な措置といたしましては時間の関係もあって省略させていただきますが、一つはやはり熱の使用効率を上げていくということ、第二には節約を推進するということであり、第三には省エネルギー技術開発を促進してまいる、かようなことにあろうかと思います。部門といたしましても産業部門のほかに、輸送部門あるいは民生部門といった部門におきましても、たとえば低燃費車を開発し普及していくとか、あるいは断熱性の高い住宅を促進していくといったようないろいろな対策も講じていく必要があろうかと思います。現在総合エネルギー調査会の中に省エネルギー部会を設置する準備を進めておりまして、この部会におきましてさらに従来以上により効率的な実効的な手段を検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  494. 玉置一徳

    玉置委員 いずれにいたしましても、エネルギーの供給が窮屈になってきておるのは事実であります。これは石油ショック以来、先ほどのお話しのように非常な不況の時代にかかわらず、こういうようにタイトになってきたわけですから、普通のときだったら、考えたら本当にそら恐ろしく感じるのでありますが、いずれにしろ石油もまた、原子力に思い切って力を入れることはもちろんでありますけれども、石油に頼るべきなにもまだ相当な年数は要すると思います。それで、一つ日本近海の大陸だな等の資源の入手を、開発を促進することが一つ。二番目に、中東アジアにもう少しプラント輸出等々を積極的にやることによって、向こうから石油だけ買うんじゃなしに、バーターで向こうにも買ってもらう。しかも、そのことは向こうの外交面も非常によくなる。アメリカカーターとの会見にまた及びますけれども、これは内需と同じことでありまして、その波及効果は、国内の景気上昇の波及効果は非常に大きいし、しかもその国々には喜んでもらえる。しかも石油のそれにバーターが似たところまでいけば、これほど幸いなことはないわけであります。こういう面で特段の向こうへのプロジェクトのチームとか、あるいは外交面の一層の努力を払わなければならないと私は思うのですが、総理、どのようにお考えになりますか。
  495. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりに考えておるわけです。で、近海における油田の開発、これも努力をしておりますが、特に私どもが重要視しておりますのは日韓大陸だな、これはわが国の石油政策上ぜひとも早く批准をいたしたいというふうに考えておりますので、御協力を願いたい、こういうふうに存じます。  それから中東につきましては、これはもう御指摘のとおりです。わが国はあそこからずいぶん石油を輸入する。その関係わが国の国際収支から見ますと、中東対わが国の貿易バランスが実に百億ドルを超えるわが方のマイナスになる、こういうような事情があるわけで、何とかしてあちらへプラントを出すということは、そういうわが国の国際収支の立場から言いましてもどうしてもやってのけなければならぬ。かたがた中東は大事な国でございまするから、中東との経済交流を盛んにする、こういう意味合いもあるわけで、いろいろと工夫をいたし、今国会におきましてもこれを助成する意味のボンド保険の創設という法案をお願いしておるわけですが、これもひとつ御協力を賜りたい、かように存じます。
  496. 玉置一徳

    玉置委員 プラント輸出が去年五十億ドルだったものが、ことしが八十ないし百億ドルという想定がされるわけであります。ただ、各国のシェアを見ますと、まだまだ日本はかなりの伸びを示し得る実力を持っておるわけであります。こういう意味では一層の御努力をいただきたい、こう思います。  そこでもう一つ、エネルギーの輸入に関して気をつけておかなければいかぬのは、石油は、エネルギーだけじゃなしに、ナフサを素材としまして石油化学工業の原料でもある、こういう点を考慮をせなければいかぬと思うのです。御承知のとおり石油を精製して出てまいりますいろいろな製品を、ナフサ以外に灯油、ガソリン等々をどこへ値段をどういうように位置づけるかによりまして、あれは違ってくるものであります。こういう意味ではそれが多くの化学工業原料であるということも考えないと、外国と比べまして非常に高くなるような形では、化繊だとかそれを素材とするその他の工業までが次々萎縮をしてしまうわけでありますので、この点を特にひとつ注意を喚起をしておきたい、こう思います。  なお、ここでもう一点気をつけなければいかぬのは、為替変動によりまして、入ってくる石油の値段が上がったり下がったりいたします。これがそういう素材にそのままはね返るようなことでは、本当は工業原料としての安定性を欠くわけであります。こういうものをどっかでプールすることによって、並行的なものとして上下をせぬでもいいような形に、比較的安定帯を持ち込めるんじゃないかというような感触がするのですが、これについてもひとつ検討をお願いしたい、こう思います。  原子力ばかり言うておってもいけませんので、宇野長官、これはむずかしいことでわれわれも十分承知をいたしております。ただ扱いが、日本の原子力の進歩のための象徴みたいな形でありました「むつ」であります。答えにくいだろうと思うけれども、一体、大体いまどのような見当で御努力なすっているか、お願いしたいと思います。
  497. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ただいま青森、長崎両県に対しましていろいろとお願いをしているところでございます。何と申し上げましても、入り口と出口、この二つを同時に御理解を得ないことには「むつ」の問題は解決いたしません。しかし、残念にいたしまして、青森県には、四月十四日が母港撤去の約束の日取りでございますが、これは若干おくれるという旨を先般も県知事並びに市長さんにお伝えしたところでございます。そうしたことがございますから、長崎に対しましても極力速やかに受け入れていただきたいということをお願いいたしておりまして、来る二十三日に県知事の諮問機関である研究委員会が最終的な結論を出す、こう考えております。それに基づきまして知事も決意し、また佐世保の市長も決意する、同時に両方の議会もそれに基づきましていろいろな措置をとる。われわれといたしましては受け入れていただくことを希望的観測として、今後も努力をいたしていきたい、こういう段階でございます。
  498. 玉置一徳

    玉置委員 先ほどの事件によりまして、運輸大臣が退席されました。したがって、ちょっと質問が宙に浮くわけですが、国鉄からおいでいただいておりますので、ちょっと国鉄へ質問するのと違うのですが、やはり総理にひとつ、やりますか。  今度の国会に一九%の値上げを含んだ計算でもって国鉄予算が組まれておるわけであります。と同時に、ある程度の幅の値上げは国鉄当局にお任せいただきたい、こういう法案と、二つが問題であります。私たちはかねがね、国鉄の問題は過去債務をどうするか、それから現在運行しておる地方の線、それから一般に不採算線をどのような形で国が補助するか、このルールが決まらないと、何ぼやったって手がつかぬじゃないか、こういうように申し上げておったわけです。今度の国鉄の予算編成につきまして、国側としてもかなりそういう面では努力をされた跡は見受けられます。率直にその点は評価しますけれども、まだルールというところまではいき切ってないということが現状であります。われわれはこの点が明確にならない限り、ある部分といえども勝手に上げなさいという形にはオーケーはしにくいのじゃないだろうか、こういう感じがするわけであります。  そこで、総理に質問を申し上げたいのは、速やかにこの際、私は、公共企業体の市電、市バス、あるいは地下鉄——地下鉄が一番あれでしょうが、ございますが、ああいうものについても、主として国鉄ですが、どのようにこれから国が財政援助をしていくのか、この点はこうだぞというような形のものを決めないといかぬときに来たのじゃないか、こう思います。世界各国いずれも赤字であることは事実でありますし、現在の日本の国有鉄道が高崎線、新幹線そして山手線を除いては多かれ少なかれ不採算線であることも現実であります。こういう中で、過去債務だけやってやるからやっていけというような形で、しかもいままでの内閣のそのままの計画によりまして新幹線その他どんどん複線、電化等をやらなければいかぬわけであります。これはとてもそれを独立会計がやり得るはずがありません。現在でも地下鉄は新建設に六割六分の補助をしておることも事実であります。国有鉄道なるがゆえにそのままほっておくという形では、独立会計でありますから、これは一つの企業体、企業体ということは一つの地方の自治体と同じことであります。こういう考え方で新造線、つまり複線、電化、新幹線の施設等々にはどれだけの補助をやるのだ、これは地下鉄と同じことだと思いますし、あるいは道路に補助がつくのと同じことだと思いますが、あるいはまた営業係数によって百円のものが百三十五円要るというようなもののある程度の分を決めておいてどうするかとか、どちらか何か一つの明らかなあれをこしらえなければいかぬのじゃないだろうか、こう感じておるところであります。  そういうような意味で、田村さん帰りましたものですから、お気の毒ですが、総理からひとつ答弁だけいただきましょうか。
  499. 坪川信三

    坪川委員長 国鉄橘高常務理事
  500. 玉置一徳

    玉置委員 ちょっと国鉄には無理なんです。
  501. 坪川信三

    坪川委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  502. 坪川信三

    坪川委員長 それでは、どうか速記を始めて。
  503. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 運輸関係のいろんな企業体があります、私企業を含めまして。それに対して統一的な国の助成というようなことはなかなかむずかしいのだろうと思いますが、例を国鉄にとりますれば、私は、一つは当面の国鉄のあの困窮をどういうふうにするかと、こういう問題があると思うのです。これはよく言われておりますが、三方一両損と、こういう形ですね。つまり利用者の負担、つまり料金問題ですね。それからまた、国鉄自体の合理化という問題があると思うのです。それからさらに政府が援助すると、こういう三本柱で当面の危機を切り抜ける。その後におきましては、私は、まあ公共企業体ではありまするけれども同時に——同時にというか企業体でありまするから、やっぱり企業会計原則に従って独立採算、利用者負担、これが基本考え方でなければならぬ。ただ、国鉄には、他の運輸機関と違いまして相当国家的業務をやっておる、それにつきましては政府が責任を持つ、こういう形で運営されると、こういうことが妥当である、こういう見解でございます。
  504. 玉置一徳

    玉置委員 私は、輸送については競争線がたくさんありますから、もう値上げは当分の間あれで限度だと思います。本当にお客さんが乗っておいでにならぬ地方線の方へ乗りますと、お気の毒のような感じすらするわけであります。あれは士気に影響するんじゃないかということすら思いますね。そういうような意味では、また一九%値上げというのではなしに、ことしはことしで何か資金の手当てをしておいて、利子だけは政府が持つ、あと十年ほどで消化していくというようなことをしながら、速やかに抜本的なルールづくり、一年でできぬかもわかりませんが、徐々に三年ほどかかって大体ルールに乗せていくというような形になりますと、向こうも合理化努力をする気持ちにまた私は積極的になってくるんじゃないかと思う。こういうようにして初めて私は国鉄の再建ができるような感じがしますので、十分なひとつ御検討をいただきたい、こう思います。  そこで、この間新聞で見ました解雇者の再雇用の問題について国鉄の常務理事にお伺いしたいのですが、大体どういう実情で、どのような数をどうされたのか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  505. 橘高弘昌

    ○橘高説明員 ただいま御指摘のありました件でございますが、案件は十三件ございまして、その内容は、かつて国鉄がいたしました解雇、免職の数がこの十三件の中に百三十九名ございます。なお、新潟地裁に全く同様の案件がかかっておりますので、それを入れますと百四十一名の解雇並びに免職者がございます。  組合側は、これにつきまして雇用関係存続と申しますか、存在と申しますか、の確認請求訴訟を起こしておったわけでございますが、裁判長の和解勧告もございまして、いろいろ途中経過がございましたけれども、最終的には組合側も裁判長の和解勧告を入れまして、全員の解雇を有効と認めるということになりました。そのかわりといたしまして、このうち何名かの者、正確に申しますと十九名の者については、一たん解雇を認めた上で再採用してはいかがということでございまして、この裁判長の和解勧告を受け入れたのでございます。
  506. 玉置一徳

    玉置委員 こういうことを質問しますのも、その措置はその措置で、長らく係争中のものであって、裁判長の和解勧告があったので、しかるべき措置をされたんだと理解できると思います。ただ問題が将来のそういう問題に波及しないかどうかということだけの心配なんですが、その点についてはどのようにお考えになっていますか。
  507. 橘高弘昌

    ○橘高説明員 ただいま御指摘のとおり、そこが一番ポイントだろうと思います。私どもは、今日労使関係の正常化と厳正な職場規律の確立ということを二つの大きな目標にして職場管理をやってまいっておるわけでございます。もちろん裁判に係っておる問題につきましては、私どもあくまでも処分の正当性を主張して争っておるわけでございますけれども、ただいま申し上げましたような件は、現実的な処理として裁判長から強い勧告もありました中で、先生御指摘の、今後の問題としていかがなものかという点につきまして、慎重に配慮しまして、と申しますのは、訴訟を争っている状態で職場の対立がますます激化するという面もございます。それから和解を受け入れることによって現場が若干疑念を持つという面もございますけれども、この差し引きの勘定をいたしました場合に、私どもとしては今後の職場管理を、何と申しますか、先ほど申し上げましたような目的に沿ってきちんきちんとやっていくためには、むしろ裁判長の勧告を受け入れてこの事案を処理した方がいいと総合的に判断して決断を下したのでございます。
  508. 玉置一徳

    玉置委員 監督局長お見えになっているのだったら、ただいまの点について、今後の国鉄の秩序維持あるいはそういうものが間々出てこぬように十分注意するのにはどうしたらいいのか、所見を伺いたいと思います。
  509. 住田正二

    ○住田政府委員 今回の再雇用の問題は、先ほど国鉄から御説明申し上げましたように、裁判所の和解勧告というものが前提になっております。今後どういうような場面があるかわかりませんけれども、やはり職場の労使関係に与える影響は、いい意味でも悪い意味でもいろいろあるのじゃないかと思いますので、そういう点を十分踏まえた上で適切な判断をするように国鉄を指導していきたい、さように考えているわけでございます。
  510. 玉置一徳

    玉置委員 今後の成績のいかんによりまして、今度の評価ができると思うのですが、ひとつ十分な注意を払われて努力を願いたい、こう思います。  そこで、文部大臣、学歴社会の問題ですが、いま問題になっておるのは、どういう原因で、どうしようとお思いになっていますか。
  511. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学歴というものが学力と離れて必要以上に幅をきかせ過ぎるのは間違いだと私は思っております。そして、いま問題になっておることはずいぶん多岐にわたりますけれども、やはりその第一は、大学の卒業の段階で就職試験なんか受けますときに、排他的な指定校制度というものがある、これはいけないことだと思っておりますし、あるいはまた、大学出なるがゆえに、その人の資質とか能力とかを離れて、一生をエスカレーターで保証するというような学歴偏重という風潮は改めていかなければならぬと思います。そのためには、大学間格差の是正であるとか、社会の御協力とか、いろいろなことが必要である、こう考えております。
  512. 玉置一徳

    玉置委員 私は問題が二つあると思うのです。  一つは、同じ優秀な学校の者が、たとえば東大なら東大が——この間雑誌にも載っておりましたように、本省の局課長のうちの九割何ぼは東大出だということになっていますが、この問題は、一つは、やはり頭のいいのがここに集まるのじゃないだろうか。それが試験を受けるから通る可能性も私はあると思うのです。これはひとつ認めておいていいと思うのです。ただ、それが余りにも同じ社会に大ぜいになりますから、一つの学閥というようなものを少なくともほかの者に感じさすのじゃないだろうか。このことが民主的な物の運営によくあるか、よくないかという問題に一つはしぼれるのじゃないか。  この問題にしぼって物を言うと、一遍東大と京大をなくしたらいいのじゃないか。一遍東京大学院大学にやってみい、そしてあらゆる学校から本当に学問の好きな者がそこへ集まればいいじゃないか。私は東大だけでいいと思うけれども、私は東大出じゃないから、あいつひがんで言っていると思われたらいかぬから、母校の京大の名前もついでに出しておくのですが、これも一つ考え方。  だから、学歴社会が悪いか悪くないかという問題は、ちょっと考え直さぬといかぬのじゃないか。どんな貧富の差があろうが、どんな貧しい子であろうが、頭がよかったら、努力をしてがんばれたら、相当なところへ行けるというのが、学歴社会一つのあれかもわかりません。それでないと、身分のあれによってみんな決まってしまうという形になってもこれは変な形でありますから。だから、弊害は何かということを考えて、その弊害を根本的に削除してしまうのはこんな方法だというような形でないと、言うべくしてなかなかできないのじゃないか。今度の選挙のときにそのことをずばっと私が演説で話しておったら、喜んでおいでになる人の方が数が多いですから、東大出じゃない人の方が。よかったような感じがしますが、だから、やはり学歴社会の自然性は自然性で率直に認めておいて、それで集団してそうなるということになれば、また別な方法があるのじゃないだろうか。こういう感じもしますので、ちょっと質問をしたわけです。したがって、先ほど申しましたように、いま一番そういう意味でぐわっと優秀な者が集まる象徴は東大だ、だから東大をばらまけというのだったら、東大をなくして東京大学院大学というようなもので、専任教授を置いて、徹底的に学問の好きな者がそこへ行く、それで役所へは入ってきたって、大学を出た者と同じ試験しか受けさせぬぞ、だから三年か四年損するというような形にさえすれば、これは入ってくる者もなくなるのじゃないか。その時分は、文部大臣の早稲田が次はいかぬというようなことになる可能性も出てきたら、これはまた出てきたときの話で、というような感じもするわけで、学歴社会の問題をひとつ根本的に、何が問題だということを考えなければいかぬのじゃないだろうか、こう思ったものですから、申し上げた次第であります。  委員長、先ほどから聞いておりましたハイジャックがうまくおさまったように思いますけれども、ひとつ経過を御説明いただければありがたいと思います。
  513. 田村元

    ○田村国務大臣 大変御心配をおかけしました。ハイジャックの情報を御報告申し上げます。  全日空八一七便、東京から仙台へ向かう飛行機でございます。ボーイング727、乗員七名、機長、副操縦士、機関士それにスチュワーデスが四名、乗客百七十三名。  十八時三十分、羽田空港を出発いたしまして、約五マイルの地点でハイジャックされました。  十八時四十一分、当該機が羽田に引き返してC滑走路北側に停止して、犯人はピストルらしきものを持っている、こういう状況でございました。  十八時四十四分、犯人は、燃料のある限り東京—仙台間を飛べと強要いたしました。  十八時五十九分、犯人はトイレに座り込みをいたしました。  十九時十二分、乗務員が犯人を取り押さえました。  十九時十三分、警察官が機内に乗り込んで、十六分に犯人を逮捕いたしましたが、犯人はその直後に死亡いたしました。自殺の模様でございます。これは同乗しておった医師が確認したそうでございます。  当初、乗客一人が頭にけがを負ったという情報でございましたが、まだ未確認ではございますけれども、乗客にはけが人はない模様でございます。  どうもお騒がせをし、御心配をおかけしました。
  514. 玉置一徳

    玉置委員 ハイジャックが無事に被害なしにおさまったのをあれしまして、もう少しやりたかったのですが、終わります。
  515. 坪川信三

    坪川委員長 これにて玉置君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十三分散会