○安宅
委員 私は、
日本社会党、公明党・国民
会議、民社党、
日本共産党・革新共同、新自由クラブを代表いたしまして、
福田法務大臣戒告決議案を提出いたします。
まず、案文を朗読いたします。
福田法務大臣戒告決議(案)
福田法務
大臣は、戦後最大の疑獄事件とも言
われ、国民がこぞってその真相
究明を要求して
いるかの憎むべきロッキード事件に関し、二月
二十四日のロッキード問題に関する
調査特別委
員会及び二十四、五の両日にわたる当
委員会に
おいて、真相
究明のための衆参両院決議及び議
長裁定を批判し、いわゆる灰色高官を公表した
昨年十一月のロッキード問題に関する
調査特別
委員会の運営に介入する発言を行い、いわゆる
灰色高官名公表反対の意向を表明した。
これは、憲法第六十二条が保障した院の国政
調査権に対する真っ向うからの不遜きわまる挑
戦と言わなければならない。
しかもなお、本日の答弁においても、言葉で
は取り消した部分はあったが、本質的考え方は
依然として変わらず、反省の色を認めることが
できない。
ロッキード汚職事件解明継続こそが、今日に
おける政界浄化の最大目標とするわれわれとし
てば、この憲法に保障されたわが立法府の権威
を守るために、
国会と国民の名において、基本
的にはロッキード事件隠し、幕引きを策する福
田法務
大臣を強く戒告する。
右決議する。以上が決議案文であります。
以下、趣旨を弁明いたします。
福田法務
大臣は、三木内閣において国家公安
委員長の要職にありながら、ロッキード事件解明の
方法に対しいろいろ御不満を持っておられたことは、新聞、テレビなどの報道によって国民もすでに周知のところでありました。ところが、新内閣成立によって、今度は解明の当事者として国民の驚きと不安の声の中で就任されました。私といたしましては、たび重なる総理の言明などにもかかわらず、法務
大臣が
福田一氏では、果たしてロッキード事件の解明が十分にできないのではないかという一抹の危惧の念を持ちつつ見守っておりましたところ、果たせるかな、衣の下のよろいどころか、先ほど案文で申し上げましたとおり、堂々とよろいをまともに着て、われわれ立法府に正面から挑戦してきたのであります。まさに本音が吐露されたのであります。
すなわち、まず国権の最高機関である衆参両院が
昭和五十一年二月二十三日に行ったロッキード問題に関する決議並びに
昭和五十一年四月二十一日の五党首合意に基づく衆参両院議長裁定を批判し、決議及び裁定は法律との関係において疑問ありとし、事もあろうに院外において、いわゆる灰色高官名公表のためには法律改正の要があるなどと発言していることであります。このことは、両院議長の裁定に挑戦するものであり、議院内閣制を定めた憲法をも無視した不見識な態度であり、断じて許すことができません。
第二点として、刑訴法第四十七条ただし書きの趣旨を曲解し、
訴訟資料が公開されるのは例外的であることを強調されているのでありますが、この立法趣旨は、憲法第六十二条に保障されている国政
調査権に基づく院の記録提出請求権を予想していることは、ほとんどの刑訴法解説書などにも述べられているところであり、法務
大臣としては、まさかこのことを御存じないわけはない。とすれば、ことさらに何らかの意図を持って歪曲解釈しているとしか考えられないのであります。
第三点として、法務
大臣は、灰色高官の人権の保護を強調されているのでありますが、一般的に人権の保護は憲法及び刑訴法の精神として尊重されなければならないことは当然のことであります。しかし、去る二月二十五日の
田中伊三次前ロッキード特別
委員長の発言にありましたとおり、公共の利害に関し、公益のために、公務員などの犯罪については、刑法第二百三十条ノ二に見られるとおり別の考え方もなされるわけであり、前
国会でなされた灰色高官名の公表については、立法府として
行政府から何ら文句をつけられる筋合いのものではありません。
行政府にはそのような権限はないのであります。
第四点として、重要なことは、法務
大臣は僭越にも院の国政
調査権の行使に注文をつけていることであります。すなわち、国政
調査に対する協力として提出した資料の取り扱いについては、秘密の保持について万全を期せというのであります。これはまさに前代未聞のことであります。われわれは、院の権限である国政
調査権の行使については、その正当な行使である限り、何ら
行政府側の制限を受けるべき理由は、どこを探してもあるべきはずはありません。いわんや、秘密が漏れたことについて
国会の
責任のとり方などで指図をするがごとき態度は、言語道断と言わねばなりません。
これを要するに、
福田法務
大臣の発言は、言葉としての取り消しはあったが、事実上今後のロッキード事件解明の道を閉ざそうとする意図が明らかであり、まさにロッキード事件隠し、ロッキード事件幕引きのほかの何ものでもありません。これはひいては
福田内閣の政治腐敗に対する基本姿勢を象徴するものとして、絶対に許すことができません。
特に注目しなければならないことは、本問題の発端になったロッキード特別
委員会での
福田法務
大臣の発言は、前内閣の官房副
長官であり与党である自民党所属の鯨岡兵輔氏の
質疑に対して行われたということであります。このこと一つで、
国会及び内閣の継続性もろくにわきまえていないことが暴露されており、本人の弁明とは別に、その基本姿勢、本音がよくあらわれていると言わなければなりません。
ここに、
国会と国民の名において、本
委員会は、
福田法務
大臣を強く問責すべきであると思いますが、国政
調査権に最大限協力するという本日の答弁を踏まえ、今後の法務
大臣の動向を注目し、見守ることとして、一応戒告にとどめた次第であります。
ロッキード問題を初め、今日政治にとって最も重要な課題になっているその腐敗の絶滅こそが、政府与党のしばしば口にされる議会制民主主義を守るゆえんであることを認識され、自由民主党を含む本
委員会全
委員の諸君の御賛成を期待し、趣旨の弁明を終わります。(拍手)