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1977-03-01 第80回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月一日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稻村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    笹山茂太郎君       白浜 仁吉君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    井上 一成君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       木島喜兵衞君    小林  進君       佐野 憲治君    多賀谷真稔君       中西 績介君    藤田 高敏君       武藤 山治君    新井 彬之君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    大内 啓伍君       西田 八郎君    田中美智子君       寺前  巖君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣         農林大臣臨時代         理       渡辺美智雄君         通商産業大臣  田中 龍夫君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         沖繩開発庁振興         局長      井上 幸夫君         国土庁長官官房         審議官     紀埜 孝典君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 旦  弘昌君         大蔵省理財局次         長       戸塚 岩夫君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      吉里 邦夫君         文部省管理局長 犬丸  直君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         通商産業大臣官         房審議官    織田 季明君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸大臣官房審         議官      真島  健君         労働政務次官  越智 伊平君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省都市局長 中村  清君         建設省河川局長 栂野 康行君         建設省道路局長 浅井新一郎君         建設省住宅局長 山岡 一男君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第五局長  東島 駿治君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   上原 康助君     井上 一成君   佐野 憲治君     木島喜兵衞君   多賀谷真稔君     中西 績介君   浅井 美幸君     新井 彬之君   松本 善明君     田中美智子君同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     上原 康助君   木島喜兵衞君     佐野 憲治君   中西 績介君     多賀谷真稔君   新井 彬之君     浅井 美幸君     ――――――――――――― 三月二十八日  昭和五十二年度予算審議に当たり一兆円所得  税減税実現等に関する請願(加藤万吉君紹  介)(第八八二号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第八八三号)  同(竹本孫一紹介)(第九二三号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第九八〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。  西田八郎君。
  3. 西田八郎

    西田(八)委員 私は、まず最初に通産大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  今日の日本経済は、まさに冷え切ったままでどうすることもできないような状態になってきておるわけでありますが、その中でも繊維産業不況というのは、四十八年のオイルショック以後しばらくはよかったのですが、四十九年以降、まさに三年間不況不況を続けておる状態であります。そういう中にありまして、繊維産業の中では、構造不況という言葉を使いまして、みずからがその構造を改善しながら、何とか繊維産業を守るための努力がなされております。また、政府もこれに対して、特繊法あるいは繊維新法等をつくられまして、日本繊維産業構造改善やその繁栄のために努力をしてこられたわけでありますが、構造改善については余り効果が上がっていないようでございます。  しかし、繊維産業が今日までわが国の経済発展のために尽くしてまいりましたことは大臣も御承知のところでありまして、古くは明治時代日本工業化の過程にありまして、いたいけな少女を使っての製糸工場から始まりまして、戦後は、平和産業としていち早く復興を目指してまいりました。一時は日本の輸出の大半を繊維が占めておったことは、大臣も御承知のところでございます。なお、人間が裸にならない限り、将来にわたって繊維産業はつぶすことのできない重要な産業一つであると考えるわけであります。  しかし、最近欧米諸国の輸入その他についての制限がきわめて厳しくなってきておる反面、近隣諸国、特に日本の資本が非常に多く進出をしております韓国、台湾、香港等におきまして、繊維産業追い上げの急追が始まっておるわけであります。  そういう中にあって、今日の繊維産業不況打開について通産大臣がどのようにお考えになっておられるのか、まずその点から伺いたいと存じます。
  4. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  ただいま御質問構造不況と言われておりまする繊維産業でございますが、昭和四十九年の春以来不振を続けまして、昨年の前半若干回復いたしましたが、再び苦境に立っております。これは短期的な変動要因によりまする面がありますと同時に、発展途上国からの突き上げといったような問題、あるいはまた消費需要面への対応のおくれ、この構造的な要因によりまする面も大きいのでございますが、こういうふうなことで、短期的な対策にとどまらず、抜本的な構造改善を進めることが必要である、かように考えております。  かような意味で、繊維工業審議会提言方向に沿いまして、今後、われわれは、知識集約化を目指しました構造改善につきまして、徹底的にこれを推進いたしたい。同時にまた、競合度合いの低い高付加価値分野重点を移しまして、また、消費者指向を明確化する、かような方向によって業界指導してまいりたい、かように考えております。
  5. 西田八郎

    西田(八)委員 そうしますと、当然そこでは現在の設備が過剰になっておるということになるわけでありますが、その過剰設備を一体どう処理するかというのが非常に重要な問題になってくるわけであります。  いわゆる稲葉提言、繊工審の「新しい繊維産業のあり方について」の提言によりますと、自助努力をしながら日本繊維産業構造を根本的に変える必要があるのではないかという提言がされておるわけであります。すなわちそれは、いままでは川上から川中、川下へと流れ一つの作業として成っておった繊維産業ではありますけれども、主導権川上のいわゆる素材メーカーが持っておったわけであります。しかし、この提言によりますと、そうした素材から川下への流れを変えて、むしろ川下におけるアパレル産業、いわゆる被服、衣料産業重点を置き、国民需要の変化に伴って、国民の皆さんが、消費者が希望する衣料の提供の産業への転換ということが言われておるわけであります。それにはかなりな犠牲が伴うと思います。したがって、そうしたいわゆる過剰設備廃棄の問題、こうしたものについて一体どうお考えになっておるのか、お伺いをいたしたいと存じます。
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 施設廃棄の御質問でございますが、大企業の場合の自主的な廃棄と異なりまして、中小企業の場合におきましては、設備の更新、廃棄という問題につきましても、共同化をいたさなくては相なりません。かような次第で、特にわれわれの方といたしましては、繊維関係と一概に申しましても、なかなか多種多様でございまして、また、業態別にもいろいろ利害ふくそういたしております。かようなことから、特に中小企業規模繊維関係につきましては、既往特別融資に関しましての償還能力を勘案いたしまして、返済条件緩和でございまするとか、あるいはまた期限延長でございますとか、あるいは繊維製品在庫の過剰に対処するための倉荷証券とか、いろいろと問題がございます。先生の特にいろいろと御心配に相なっておりまする問題につきまして、きめの細かいいろいろな施策をいたしておりまするが、担当政府委員からでもよろしければお答えをさせていただきとうございます。
  7. 西田八郎

    西田(八)委員 そうすると、過剰は当然廃棄をしていかなければならぬ、こういうことでありまするが、その廃棄の仕方なんですね。これは従来もその特繊法ができましたときには当然過剰を廃棄しなければならぬということで、スクラップ・アンド・ビルド、いわゆる古い機械を壊して新しい機械一定割合で新設していくという、そうした形がとられたわけであります。ところが、そこには、いわゆる業者の自主的な生産目標というものにゆだねてしまって、政府需給見通しというものが明確でなかった。そのために、過剰の廃棄したはずの設備がいつの間にか復活してしまっておる。現在の設備錘数からいけば、当時の設備錘数よりはかなり減っていることは事実なんです。減っていることは事実なんですけれども、いろいろと連操体制等がとられまして、生産の上においては数倍の能力を発揮しておるというのが現状であろうと思うのです。したがって、廃棄後のアフターケアといいますか、処置そのものがきわめて重要なんだと思うのですが、そういう問題について、先ほどのアパレルへの移行という関連と連動させて考えてみたときに、きわめてむずかしい問題であると同時に、重要な問題であると思うのです。したがって、そういう面についてどのように処置をされていくつもりなのか。ひとつその辺についてお伺いをしておきたいと存じます。
  8. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御指摘のとおりに、繊維産業の内部的におきましてもいろいろの苦心をいたしておるところでございまするが、さらにまた廃棄後の転換問題等につきましては、先般も繊維工業審議会提言に即しまして、中小企業事業転換対策臨時措置法施行等を通じまして円滑な処理をしてまいりたい、かように存じまするが、担当政府委員からお答えをいたさせます。
  9. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  過剰設備処理の問題を主として御質問いただいたと存じますが、過剰設備処理につきまして、従来せっかく処理いたしたにもかかわりませず、また時間がたちますと同じように過剰状態が生じておるというのはお示しのとおりでございます。したがいまして、今後、現在の過剰状態を解消していきますためには、お話しのように、何らか将来にわたりまして再び同じような状態を来さぬよう処置をしなければならない、かように存じております。  お話しのございましたように、全体の需給見通しといいますか、将来の繊維産業全体のビジョンといいますか、そういうものをまず描きませんと、やはりなかなか目標も立ちにくいということでございまして、私ども、このたび繊維工業審議会の中に貿易需給部会というものを新しく設けていただきまして、そこで全体の需給状況というものを年間また四半期別にもつくって一つ指標にしてまいりたい、このように考えております。その間いろいろ全体が非常に過剰であるという認識につきましては、今回は、不況の深さも関連いたしまして業界の方でも非常に深刻に受け取っておりますので、従来とは違った形で将来へ向かって廃棄処理がなされるのではなかろうかと期待いたしておりますが、政府といたしましては、そういうことで指標をはっきり示しまして、またできる限り行政指導をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  10. 西田八郎

    西田(八)委員 いままでにない通産省の姿勢であろうと思うのですが、ぜひともひとつその需給見通しですね、これを十分な情報等によって把握しながら、適切な指導を私は大臣に期待をしておきたいと存じます。  ただ、その中で、中小企業のそうした企業設備廃棄、そうしたことからくる中小企業の問題があるわけなんです。そこで、いま中小企業が一番困っておるのは、五十四年の六月までといわれる現在の新繊維法に基づいていろいろ構造改善がそれぞれの分野で進められておるわけであります。しかし、この繊維産業構造というのは非常に複雑にできておりまして、したがって、ただ単に紡績部門だけ抑えればそれでいいということにはならないわけで、それから織布、染め――その織布も最近ニット等が非常に大きく量がふえてきております。そうした中小企業が現在構造改善に取り組んでおるわけでありますが、ここ十年間かかってもなかなか成果が上げ得られなかった、最近にしてようやく自分たち努力によって、自助努力によってひとつ構造改善をしようじゃないかという、そういう意気込みが見えてきたことは事実だと思うのです。ところが、そこに一つの障害が出てきておる。それは、今日の不況のために川上からの圧力と川下からの流れの停滞、そういうことからくる中間にあるそうした第二次加工をやっている中小企業、そういうところが資金的に非常に苦労をしておるわけであります。そこで、この中小企業に対してひとつ特別の処置を講じてもらえないかどうか。  それは、一つは借入金。現在構造改善のために事業団等からかなりの金を借りております。その借りた金の返済期がもう迫ってきておるわけでありますが、それを返すために自転車操業を繰り返さなければならぬというような、こういう実態になってきておるわけであります。その企業数だけでも約十万に達すると言われておるわけでありまするが、そういうような処置ができないかどうか。  また、現在さらに構造改善を進め、一定の安定した産業として定着させていくためには、どうしてもそこには新しい資金を必要とするわけでありますが、その資金を借りるための条件というものが備えられていない。すなわち、もう出すべき担保をほとんど出してしまっておるというような状況でございます。こうしたようなために、政府系機関の金もなかなか融資をしてもらえないというのが実情であるわけでありますが、二番目には、その担保条件緩和あるいは融資の枠を拡大するというような方法をひとつお考えいただけないかどうか。これはもう中小企業の死活の問題でございますので、ひとつお伺いしておきたいと存じます。
  11. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問は、繊維産業でありますと同時に中小企業としての共通の問題も含むわけでございますが、御案内のとおりに、商工中金国民金融公庫等々の政府系機関によります融資制度及び信用補完制度活用等措置は当然とらなくてはなりません。また、繊維産業につきましては、こういった措置にさらに加えまして、既往特別融資に関しましての償還能力を勘案いたしまして、個々実情に応じました中間据え置き等返済条件緩和という問題、あるいはまた最終期限が到来しました時点での期限延長の問題でありますとか、きめの細かい配慮をすることといたしておりますが、また繊維製品在庫過剰に対処しまするために倉荷証券担保といったような方式によりまして商工中金等融資を行うなど、在庫金融円滑化を図ると同時に、先ほど申しました転換の問題も指導いたしてまいりたいと存じます。  なお、さらに詳細なことにつきましては、政府委員からお答えいたします。
  12. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、既往債務が非常に累積をしておるという問題でございます。いま大臣からお答え申し上げましたとおり、既往債務累積分につきまして、それの期限延長の問題が一番大きな問題かと思います。期限が参りませんものをあらかじめこれを延長するということは一律に非常にむずかしい問題であろうかと思いますが、その時点が来ました際にこれを一挙に取り返すということではなくて、延長しますというか、返済条件を変更するというふうなことは可能であろうかと思いまして、実は、そういうものの取り扱いにつきましてきめの細かい処置をするように、中小企業庁大蔵省と双方、課長の共同通牒という形で通達を出しておりますので、御心配のような向きはそれで解決できるかと思っております。  それから、一般構造改善等資金でございますが、これにつきましても同様、返済問題もありますと同時に、今後の資金問題につきましては、条件の運用をきめ細かくやりまして、実態に合った構造改善が進められますよう配慮いたしてまいるつもりでございます。
  13. 西田八郎

    西田(八)委員 特にその点は十分な配慮をお願い申し上げたいと存じます。  もちろん、期限の来ていないものをまた先に延ばすということは無理な話でございますが、もうすでに期限が来ているものが相当多数あるわけであります。したがって、そうした問題については、もちろん個々企業とのケース・バイ・ケースということもあろうかとは存じますけれども、いまの通達が出されましてもなかなか末端まで到達するには時間がかかるし、また通産省考えておられることと地方通産局等考えていることとは若干食い違いが出てくる場合が往々にしてあるわけなんですね。その点についてひとつ十分な処置をしてもらえるようにお願いをしたいと思うのですが、大臣、ひとつ引き受けていただけますか。
  14. 田中龍夫

    田中国務大臣 当面いたしました通産行政の中におきまして、この繊維産業現状をいかにして打開いたすかということは、最も重大な問題であり頭の痛い問題でございまして、私どもも本当に心から真心をもって親切に指導していかなければならぬと思います。ことに、いまお話しのように、中央と現場の通産局との関係も、本当に緊密な指導のもとに連携をとりまして処理をいたしたい、かように存じております。
  15. 西田八郎

    西田(八)委員 次に、構造改善を進めるに当たりましても政府資金を大量に投入していただいておるわけでありますが、中でも地方産業地場産業として育成するという意味で、この構造改善事業地方自治体が一枚かむことになっているのですね。そして、地方自治体もこれに対して協力するということで、たしか六〇、一〇、三〇――三〇がいわゆる自己資金ですが、その一〇という地方自治体負担が決められておると思うのです。ところが、各地方自治体は、御承知のとおりの状態で、最近は財政が非常に硬直化してきております。なかなかそうしたところへ出す費用の捻出に苦慮しておるというのが現実でなかろうか。そのためにこの構造改善事業そのものが進まないという欠陥が生まれてきておるわけであります。そうしたことについて、この地方自治体負担割合、こういったものを幾らかでも緩和するという方向というものは考えられないものかどうか。ひとつ一〇をたとえば五にするとか六にするとかいうような割合、その地方自治体について軽減した分をあるいは国で負担するとか、あるいはまた企業と国とで折半をするとか、いろいろな方法考えられると思うのですが、そうした地方自治体負担軽減について何らかのお考えがないかどうか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  16. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  構造改善事業につきまして地方自治体負担分の問題でございますが、実は、通常の事業に比べますと、繊維産業構造改善につきましての地方自治体負担といいまするものは、比率としては比較的低いわけでありまして、現状でこれより下げるということは制度としては非常に困難であろうかと思います。私ども、それぞれやはり地方産業でございまして、地方自治体の方でもその振興のためにひとつお力をかしていただきたいと実は思うわけでございます。  現実問題といたしましては、地方自治体の補助が得られないために進んでいないというケースは比較的少のうございます。大体、私どもの方でいろいろ御相談にあずかりましたケースにつきまして、推進しましたケースについて、地方自治体の補助がつかないのでうまくいかないというケースは、いまのところまだわりあい少のうございますが、おっしゃいましたように、全体これから大いに進めるに当たりましては心配がないわけではございません。
  17. 西田八郎

    西田(八)委員 心配がないということですが、一部のということですね。その一部が困っておるわけですよ。だから、そういうことに対して、官庁というところはなかなかしゃくし定規に物を考えるところで、特別にということはないのかもわからぬけれども、しかし、そのために困っておるということ、特にそうしたことで困っておるところは製品をつくる末端工程であるアパレル衣料縫製関係が一番困っておるわけなんですね。ですから、そういう点についてもう一回確認をしておきたいと思います。
  18. 藤原一郎

    藤原政府委員 おっしゃいましたように、確かに一部でというところで問題があることは承知いたしておるわけでございますが、その府県だけ特別ということはやはりできないかと思いますので、私ども、大いに説得いたしましたり、何か努力を続けたいと思っております。
  19. 西田八郎

    西田(八)委員 それでは、そういうところへは政府のこういう姿勢であるということをひとつ積極的に打ち出して、そうした点について都道府県、地方自治体が協力をするように、ぜひともひとつその処置をお願いをいたしたいと存じます。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕  次に、そういうふうにして産業全体の構造改善を図っていく場合に、この繊維産業というのは、他の産業と違って非常に、企業の分類といいますか、もう小はミシンを一、二台置いて家でそのミシンを踏むという家内工業から、大は数百人、数千人を使うという大工場まで、非常にたくさんあるわけですが、特にこの繊維産業の中堅をなしておるのが、中小企業という概念に合わない、といって中堅企業よりも下に位するといういわゆる中間、人員で言いますならば五、六百人、資本金で言いますならば七、八億円、十億円以下というような企業が無数にあるわけであります。そういうところから、中堅企業としては市中銀行からの借り入れが他の大きな企業のようにはスムーズにいかない、といって政府関係三金融機関の金も借りられないというところが非常にたくさんあるわけであります。そういうところに対して、何か中堅の下というのか、中小企業の大というのか、そういう分類というものが必要になってくるのではないかと思いますが、そうした点についてどうお考えになっておるか。またそれについて何らかの処置考えておられるかどらかをひとつお伺いしたいと存じます。
  20. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話の、繊維産業におきましても特に零細な小企業分野に属する問題でございますが、この問題は、御承知の、金融と同時に信用補完制度におきまして細かいいろいろな指導を、あるいは信用保証協会によります保証でございますとか、さらにそれに対する保険公庫の問題でありますとか、業種指定に基づきます特別な問題、あるいは無担保無保証の問題の動員でございますとか、さらに地元のそういうふうな零細企業の当面いたします苦境に対しましては、各県とともに現場の通産局の方できめの細かい現地の指導をいたしたい、かように考えております。
  21. 西田八郎

    西田(八)委員 大臣がここで答弁されるほどうまいことはいっていないのですよ。それがうまいこといっておれば、そんなに苦労をしない。本当に中小企業の中というのですか大というのですか、そういうところは非常に資金繰りその他で困っておる。私はただ企業を助けるという意味からここで通産大臣質問しておるわけじゃなしに、そういうところで働いておる人が一番気の毒なんです。しかも、そういうところで働いている人というのは、御承知のように繊維産業というのは大半が女子であります。今日、高校進学率が九十何%というような数字になってきておるにかかわらず、なお高校へ行けない、そして親元を離れて遠くから働きに来ている本当にいたいけな少女が犠牲になるわけであります。したがって、私はそうした人たちを救うためにも、やはりこの企業の存続というものは非常に重要である。こういう意味からこの点特にお願いをしておるわけでありますが、ひとつ十分な措置をしていただきたい。できるならばこれは大蔵省等とも相談の上で、いま言う中小企業一つの定義というのですか、それに当てはまらない、といって、中堅企業と言われるにはまだもう一歩という中間に位するところに対する何らかの措置をぜひともお考えいただきたいことを強く要請をしておきたいと存じます。  次に、最近の繊維産業不況の原因になるかどうかは別といたしまして、やはり近隣諸国からの追い上げがあるわけですね。そこで、MFAという多国間協定が結ばれて、この十二月で期限が到来することになっておることは御承知のとおりだと思うのです。その場合に、いろいろと規制をしていくと、原糸段階でだめだということになると、今度は二次加工品の撚糸でふやしていく、撚糸でだめだということになってくると、今度は製品にして入ってくるということで、だんだんと手をかえ品をかえ、ものすごく輸入がふえてきておるわけですね。しかも輸入元である各国のその資本を提供している、また技術を提供しているのは日本の資本だ。こういうことになると、自分のなわで自分の首を絞める、いわゆる自縄自縛というような状態が生まれてきておるわけであります。そういう輸入問題に対してどのように処置していかれるか。私は、日本が貿易国である限り、そう厳しい輸入制限をすることは好ましくない方法であるということは百も承知の上でありますが、しかし、少なくとも日本産業が崩壊させられるような状態にまで他国の商品を輸入するということは考えものではなかろうかと思うのです。したがって、秩序ある輸入を守っていくことこそこれからの自由貿易を促進していくきわめて重要な課題の一つになってくると思うのです。したがって、お互いにガットなりあるいはMFAなり日米繊維交渉なり、私は強く反対いたしましたけれども繊維に関する日米政府間協定等が結ばれたと思うのです。したがって、わが国はいまみずから降りかかってくる火の粉を払わぬというわけにはいかぬと思うのです。そういう意味で秩序ある輸入を確立するために何らかの措置考えておられるのかどうか、お伺いをいたしたいと存じます。
  22. 藤原一郎

    藤原政府委員 繊維の輸入問題でございます。お話のとおり、かつての繊維協定の時代とは事変わりまして、輸入を心配する時代になってしまったわけでございますが、お話のように輸入が非常にラッシュをするということになりますと、せっかくいま構造改善その他鋭意努力をいたしております繊維工業の整理が進みませんということにもなりますので、私どもといたしましては、仰せのとおり多国間繊維協定、MFAのラインに沿いまして、輸入につきましては秩序ある姿をとっていきたい、このように考えておるわけでございます。特に、昨年の末に繊工審から提言をいただきました中にもあるわけでございますが、非常に急激にある特殊の品物がフラッドをするというようなときには緊急的にこれに対して適当な措置をするということも考えたいということで、そういうふうな仕組みもつくっていきたい、このように考えております。基本的には自由貿易のたてまえでございますので、常時繊維について輸入規制をするというようなことは考えられないわけでございますが、秩序ある輸入ということで、国際協調の上で国内産業にも被害の及びませんよう極力努めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  23. 西田八郎

    西田(八)委員 それはぜひひとつ守っていただきたいと思うのです。ということは、日本の糸がどんどん下がっているときは別ですけれども、少しでもよくなってくるとすぐに輸入をして、そしてそこで値を崩すというようなことが起こってくるわけであります。もちろん、国民の被服の関係を提供している繊維産業のぼろもうけをたくらむというようなことを考えるわけではありませんけれども、少なくとも適正な価格というものはやはり市場その他の商品との関連においてあると思うのです。それが常に輸入の脅威によって変動させられるというようなことが起こっては大変だと思うので、そういう点は十分ひとつ今後の措置をお願いを申し上げたいと存じます。  最後に、そうした関係で一番影響をしてくるのが商品取引所における三品と言われる相場制度ですね。これが結局、生産を非常に大きく阻害しておる。私は、商業資本が中心となって日本工業化が定着するまでの間は、こういう工業製品が一つの取引所に上場される、そういうことによって、ある意味においては投機的なことがさらには次の産業飛躍へのあるいは踏み台になっておったかと思うのです。しかし今日、日本工業化をしてきておる現在、しかも計画的に生産のできるこうした工業製品が一つの投機というよりもむしろギャンブルの材料として商品市場に上場されておること自体、若干不思議に思うわけであります。したがって、こうしたものは取引所法の改正によって撤収するということでなければならぬと思うのですが、なかなかそうはいくまいと思うのです。こういう関係業界も非常にたくさんあることですからそうはいかないと思いますけれども、少なくとも私はそのために日本繊維のみならず他の工業やあるいは企業に影響を及ぼすようなことのないように一つ処置をすべきではないかというふうに思うわけです。  日米繊維交渉のときによくトリガー方式というのが使われました。危険な状態になったときには引き金を引いてそれを停止せしめるかあるいは改善をさせるという、そういう方法が必要ではなかろうかと思うのですが、そうしたことについて、ひとつ大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  24. 田中龍夫

    田中国務大臣 取引所問題につきましてお答えいたします。  繊維品の取引所の問題につきましては、過度の投機が相場の乱高下を招きましたり業界の安定を損なっておる等の指摘がございまして、先般の繊維工業審議会審議の過程におきましてもいろいろと議論が行われたところでございます。同提案に即しまして、当面の取引所に対しまする監視と規制を強化することによりまして、過度の投機を抑制してその健全な運営を図ることに努めてまいりますが、去る二月、委託証拠金の引き上げの措置を講じさせたところでございます。また、毛糸につきましては、引き続き関係業界間の協議を促進いたします等、この取引所の問題につきましては、御指摘のように本省といたしましても十分監視を続けてまいります。
  25. 西田八郎

    西田(八)委員 次に、労働大臣がお見えにならぬのですが、関係政府委員がおられたらひとつお答えをいただきたいと思うのです。  いまお聞きのように、繊維産業、これから構造改善を進めるということになると、過剰になった設備を相当数廃棄をしていかなければならぬ。それは川上から川下まで総体的なトータルで改善をしなければならぬわけです。そうしますと、相当数の従業員の雇用問題が起こってくるわけであります。この労働者、そうでなくてさえ今日いろいろと取りざたをされておりますので、職場では恐らく戦々恐々としておるというのが実情ではなかろうかと思うわけであります。そういう点で、ひとつこれに対する雇用措置をどうお考えになっておるか。せんだっての国会でこの雇用給付金制度、いわゆる雇用保険法が制定をされました。その中で雇用調整給付金制度というものができたのですが、私はそれだけでは今度の場合とても追っつかぬのではないかという気がするわけであります。しかも、先ほど申し上げましたように、大半の人が二十以下の非常に若い少女であるということ等を考えますと、国の健全な青少年を育成するという上からも、きわめて重要な問題であると思うのです。そういうことについて、ひとつ政府考え方をお聞かせをいただきたいと思います。
  26. 越智伊平

    越智政府委員 先生御指摘のようなただいまの状況でございますが、政府といたしましては、雇用安定資金制度を創設いたしましてこれに対処したい、かようにお願いをいたしておりますが、これは十月一日の実施を目途に、ただいまお願いをいたしておるような次第でございます。  それまでの間におきましては、雇用調整給付金、この制度を大いに活用いたしまして、対象業種の追加等によりますこの給付金制度の活用、あるいはまた能力開発事業による企業の行う職業訓練に対する助成措置、なお失業者に対しましては失業給付、職業転換給付金の支給、こういったこと。なお、全国四百数十カ所ございます公共職業安定所をフルに積極的に活用いたしまして、大いに求人開拓をする。こういったところで十月までいまの制度をうまく運用いたしまして対処してまいりたい、かように考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  27. 西田八郎

    西田(八)委員 そういう処置はなかなかむずかしいと思うのです。もう法律が現在あって、その法律で新しい法律ができるものを先取りするということは、恐らく法治国家においてはできないことだと思うのです。ただし、現在のものを運用をうまくやれば決してできないことでは、私もないと思うのです。ですから、そういう点で特に御留意をいただきたいということ。  もう一つは、御承知のように繊維産業は、十六万五千企業と言われているわけですが、非常にすそ野の広い産業であります。その特に川下と言われる第三次加工、いわゆる縫製衣料関係では、非常に農村地帯に広くその根を張っておりまして、家内工業を中心にしたものが多いわけで、ここに働いておられる人が約八十万人近くおられるのではないかというふうに言われておるわけでありますが、こうした家内労働者、しかもそれが中高年齢者が多いわけですね。しかも、その人たちの収入が今日疲弊してきておる農村の経済に対して非常に大きな寄与をしてきておる。この人たちが、今度はこの改善事業が進み、ある程度の縮小をやられると、撤退をする企業かなりできてくるのではないか。これは非常に大きな問題になってくると思うのです。特に私どもの知っている範囲では、六十を超したおばあさんがうちへ帰って縫製をしたりあるいは撚糸機の台つきをしたり、いろいろな仕事に参加をしておられるわけです。こうした人たちが、それがまたその家庭の生活の資金として非常に大きなウエートを占めておる実情にあるわけであります。こういう家内労働者、特に中高年齢の労働者には特別の配慮をする必要があるのではないかと思うのですが、それに対して何らかの構想があるのかどうか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 北川俊夫

    ○北川政府委員 お答えいたします。  いま西田先生御指摘のように、繊維産業川下、特に家内労働でいまの繊維産業を支えておられる方々につきましては、従来も家内労働法によりましてその労働条件の維持、改善に努めてきたところでございますけれども、今後繊維産業構造改善によりましてそれらの方々が転職をする、離職をするという場合の問題でございますが、問題点としましては、雇用関係がございませんので、先ほど政務次官からお答えをいたしました雇用調整給付金の対象とかあるいは雇用保険法の支給対象にならないという非常にむずかしい問題がございます。したがいまして、その点につきまして、われわれ措置をいますぐにいたすというわけにまいりませんけれども、そういう方々の転職につきましては職業紹介機能の充実あるいは短期の簡易な職業講習、訓練等の実施によりまして、なるべく行き届いた就職のお世話ができるように万全の対策をとりたいと思っております。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 西田八郎

    西田(八)委員 それはそういうふうに答弁せざるを得ないと思いますけれども、しかし手の届かぬところにたくさんおられるわけですよ。その職業安定所の近くにおるならいいけれども、安定所までいくのに半日かかるというところもあるわけですよ。そういうところへ一体きめの細かい指導というが、どういう指導があるのか。出張して指導するとか何とかいう方法があるのかどうか、そういう点についてひとつ。
  30. 北川俊夫

    ○北川政府委員 御指摘のように安定所というものは全国で四百八十しかございませんので、へんぴなところまでなかなか手が回らないことが多いと思います。それに備えまして職業相談員あるいは中高年の就職促進員、そういう民間の者あるいは行政のOBの者を委嘱いたしまして、そういう方々への巡回相談あるいは指導というものをいたしておりますので、さらにその充実に努めてまいりたいと思います。
  31. 西田八郎

    西田(八)委員 そこで最近、革新市町村がふえてきておるわけですが、しかしまだ大部分は保守とも革新ともつかぬ無所属市町村長が多いわけです。特に農村地帯にいきますと、労働問題なんというものはまだちょっと毛色の変わったもののように判断されておるものがたくさんあるわけです。したがって、そういう労働者の雇用の問題だとかいわゆる職業指導問題等を扱う窓口そのものが市町村にないと思うのですね。それでは労働省独自の運動をしようといったって、なかなかその活動はできないと思うのです。そういう面で今後やはりそうした市町村に労働省もひとつ積極的にそういう窓口を設けてもらうように私は努力をすべきではないかと思う。いままで労働省からそんなことを言ってきたことはないぞというのが大半だと思うんで、労働省ももっと窓口を開いて、ただ企業あるいは労働組合や、あるいはそういう安定所や職業訓練所やというだけではなしに、もっと広い意味で、これからの労働問題というものは私は単に組合を対象にするとか企業を対象にするだけでは済まされない重要な問題が発生してくると思うのですね。もうすでに発生してきておるわけです、いまの問題のように。そういう点についてやはり十分な措置を講じていくべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  32. 越智伊平

    越智政府委員 先生の御指摘のように、田舎の町村まで十分手が届いてないという御指摘でございますが、この点につきましては、県の機関を通じ、各町村に対しましても、産業と労働と両方の問題でこの職業安定についても配慮していただくように積極的に働きかけたいと思います。
  33. 西田八郎

    西田(八)委員 特に府県の段階になりますと、これは労政課なり商工労働部なり、いろいろな労働という名をとったポジションがあるわけです。ところが、市町村になるとない。しかも、府県の場合は職業安定業務というのは国の仕事とされておりますから、そこで全然管轄が違いますね。管轄が違うから、府県もこの問題については余り力を入れない。ですから、そういう点を十分考慮されまして、その問題に対してはぜひともいまおっしゃったような方向で、私の言うような方向努力をしていただきたい。特にお願いをしておきたいと思います。  次に、厚生大臣にひとつお伺いいたしたいのですが、医療制度の抜本改正が言われまして久しいわけでありますが、これはなかなか古い問題であって新しい問題、取り組みにくい問題であろうと思うのです。しかし、私の考えますのに、同じ工場で仕事をしておりましても、ひとつかぜを引いても、本人は被保険者ですからこれは全く金はかからぬわけです。しかし、保険料の面からいいますと、政府管掌の保険料率が高いというようなことで差がついておるわけです。まして家族ということになりますと非常に大きな給付の差がついてくるわけです。そういうようなことがあってはいけないと思うのです。やはり公正な医療給付のためにこの際医療制度というものをひとつ抜本的に見直す必要があるのではないだろうかと私は思うわけですが、ひとつ大臣の所信を最初にお伺いをしておきたいと存じます。
  34. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 お答えをいたします。  御指摘のように各種保険については、それぞれ給付の差等もございます。非常に古くて新しい問題でもあります。これにつきましては、なかなか一本化ということは言うべくしてすぐにできることではございませんが、それは望ましい姿だと私は思っております。したがいまして、少なくとも当面各制度間の格差、これは是正しなければならぬなというようなことで、老人医療等の問題も含めて改革の方向で厚生省としても取り組んでまいりたい、かように思っております。
  35. 西田八郎

    西田(八)委員 具体的に一体どういう方法でやられるのか。いま一本化を期していきたい、その方向で取り組んでいきたいということですが、これは私は六年ほど前のやはりこの予算委員会でも時の厚生大臣田中さんに聞いたことがある。同じことを答えた。ところが、一向よくなっておらぬ。むしろだんだんと格差は広がっていっているわけです。一体このままでほっておくのかどうか。これは本当に英断をふるわなければできないことだと思うのですが、ひとつ渡辺大臣の本当の腹というか決断を聞かしていただきたいと思います。
  36. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 本当の腹は改革をしたいと思っておるわけであります。
  37. 西田八郎

    西田(八)委員 要するに、改革をしたいと言っているというだけでなしに、ひとつもっと具体的に示していただきたいと思いますね。これはきょう言うてあしたというわけにいかない。ことし言うて来年というわけにいかぬでしょう。長い間のそれぞれの歴史があるわけですから、その歴史の上に積み重ねられてきたそれぞれの保険という本のを一遍に統合するというのは困難かもわからぬけれども、徐々に統合していく一つ方法というものがあると私は思うのです。たとえば給付制度を統一していくとか、あるいは保険料率を統一していくとか、いろいろな方法から取り組めばできない問題ではないと思うのです。ぜひひとつ努力をしてもらいたいと思います。  そこで、おっしゃるようにいま保険制度に危機が迫ってきておるわけです。特に政管健保については、また今度の国会で保険料を引き上げたり、あるいは診療費の自己負担をふやしたりということを考えられておる。政府は改正案と言うけれども、われわれは改悪案だと思っておるのです。そういう中で、一体どんな点に悪化していく原因があるのか。いわゆる医療費が増大しておると言われておるわけですが、医療費が増大している根本的な原因は何にあるというふうに把握しておられるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  38. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 医療費の増大をしている原因はたくさん実はございます。  一つは、昭和四十八年の十月に家族の給付率を五割から七割に上げた、こういうようなことも負担が増大する一つの大きな原因です。  それから毎年物価、人件費の変動に対応して診療報酬の引き上げを行っておる。四十九年二月には一七・五%アップをしておりますし、同じ年の十月には一六%の診療報酬のアップをしておる。こういうようなものも当然医療費の増加にストレートにつながってくるわけであります。  第三番目は、人口構造の老齢化によりまして、長生きしてくださって大変これはうれしいことでございますが、どうしても老人がふえると若い元気な人よりは病気が多いということも事実でございますから、こういうようなものも医療費の増高につながっておる。たとえば、全国の人口に占める六十五歳以上の老人の割合昭和三十五年は五・七%ですが、五十一年の推計では約八%ぐらいになるのじゃないか。年々ふえていく。これはこれからもふえていくから、どんどん医療費もそれに伴ってふえるのじゃないかという心配があります。  第四番目は、疾病構造の変化による医療費の高額化。いろいろな医学が発達いたしましていろいろな病気が発見される。治療法も発見される。いままで保険適用でなかったものが保険の適用になる。脳外科の手術を保険でやったり、腎臓移植を保険でやったり、あるいは人工透析も保険でできるということになりますから、そうすると何十万、何百万というお金が一人の患者のために使われる。それによってその人の命が助かる。ともかく長生きされる。大変ありがたいことですが、その半面医療費はかさむ。これもございます。  それから薬学が進歩いたしまして新薬ができる。この間も新聞にちょっと出ておりましたが、たとえば小人症のようなものが保険でできるということになりますと、ともかく一回一万五、六千円の注射代がかかる。しかも、これは保険でできるということになって何年間もやらなければならぬ。というようなことは、やはり新薬の開発によって人が助かるが、その半面たくさんの医療費がかさむ。これが五番目の原因だ。  第六番目は、やはり医療のいろいろな新技術が開発されて、先ほど言った人工透析なんというのはそれですが、保険適用になる。一カ月に六十万円かかる。これも本人の場合はただでやれる。これも医療費がかさむ原因になっておる。こういうことなどであります。  そのほか、検査。やはり薬害とかなんかの問題があるし、やたらに手術をするといっても万一の場合が困るということで、かなり最近は一週間も検査をしなければ手術しない、そういう慎重な措置をとる、それで検査料がかさむというようなことなどがあるわけであります。  また、看護の質の向上というようなこともございまして、患者に対する看護要員というものもふえつつある。  こういうようなことなど、そのほかにもございましょうが、重立ったものをちょっと拾い上げてみましても、どうしてもこれは、人間の寿命が延びることと医療費かさむこととは正比例をしておるので、ある意味においては避けがたい現象である。だからといって野放しというわけにはいかぬ、こういうふうにも思っておるわけでございます。
  39. 西田八郎

    西田(八)委員 理由に挙げられたほとんどのものは当然予測された問題なんですね。そういうことを行うことが医療だというふうに判断をするなれば、それが上がったから、こういうものが新しく発見されたからということは、私は理由にならぬと思うのです。そんなことは予測した上に立って医療制度というものを考えていかなければならぬ。それであるとするならば、そういうものに対しては政府の特別の交付金を出すとか、何らかの方法はあると思うのです。それもとにかく、本会議でも大臣、自由社会においては生きていくのは自前がたてまえだ、こうおっしゃったわけですが、病人というのは自前できない人たちなんですよね。だからこそ保険が必要であり、また国の手厚いそうした福祉の政策というものが大事なんです。それを理由にしただけで、私はそれが医療費の値上がりの根本だと言われると腑に落ちないわけです。それよりもっと現行の制度の中で改正すべき多くの問題があるのではないかというふうに考えるわけです。  その一つに診療報酬体系、これが薬価と技術料その他いろいろと考えられておるわけですが、どうもいまのところ薬価に偏重しておるようなきらいがあるわけです。医師会等も、もう少し医者の技術等を認めてほしいということを言うておられる。人対人の診療がしたいというのが医師会の希望でもあるというふうに私は聞いております。そういうことから考えますと、いま現在の医療体系というのは、何か薬を出すことによって、それで事足れりという傾向もあるのではないかというふうに感ずるわけですね。ですから、この診療体系をもっと考え直す必要はないか。特に公立病院なんかの場合は、看護あるいは事務の経費、そうしたものがどんどん捻出できないというようなことも言われておるわけで、市町村から年々持ち出す医療費は膨大なものだと聞いておるわけであります。さらにまた、一部の不正な人であろうと思うのですけれども、この診療費の水増し請求があるようなことも聞いておるわけです。そういうものを徹底的にチェックしていけば、いま言われたような問題が仮に、予測できることではあるけれども、予算として計上されていなかった、あるいはそういうものが勘定の中に入っていなかったと言われても、そういうところから捻出することは可能ではなかろうかと私は思うのですが、いかがでございしましよう。
  40. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私が先ほど申し上げましたように、それは野放しというわけにはまいりませんと言ったのはそれでございます。当然、医療費がかさむというのは、いま言ったような原因によってかさむわけでございますが、これは、かさむこと自体を抑えるというのはなかなかむずかしい。しかし、医療費がかさめばだれが払うんだという話が第二番目に出てくるわけでありまして、それは本人が払うか、あるいは国が払うか、あるいは市町村が払うか、だれかが払わなければならないわけです。国の方においても、ことしなどは医療に対して国庫補助は約二兆五千億円ぐらいのものを出しておるわけです。したがって、国民健康保険等には一兆四千億円程度のお金をつぎ込んでおるわけですから、国の財政から見れば、かなり、できるだけのことはわれわれとしては実はやっておるわけです。だから、もっと国が持てという議論も一つあるでしょう。これは財政との関係でございますから、もっと持てと言ってもなかなかそんなに持ち切れない。じゃ、保険料の値上げか。これだって、保険料の値上げというものは、そう際限なく上げるのは困るよと必ず言ってくるわけです。そこであなたがおっしゃいましたように、一つは保険組合の中でもっとプールするようなことが考えられないかという話があるんだろうと私は思います。確かに黒字の保険組合があって、赤字の保険組合があって、ともかく丈夫なときはある組合に入っているが、退職したらそこからの恩恵を受けなくて国民保険に入るということは、そのままでいいのかという議論が当然出てくるわけです。それと同時に、いま言ったように、それじゃ医療費の請求というものが本当に正確に請求されているのか、水増しもあるんじゃないか。私は大部分の医者は良心的に請求しておると思いますが、ときどきそれはあるわけですよ。不正請求というのはあるわけです。それに対する監査等も厳重にやっておりますし、また支払基金等で検査もやっておるわけです。やっておりますが、それは、満足なことをやっているかと言われると、徹底的にやっておりますということもなかなか言い切れない、これも事実だと私は思います。
  41. 西田八郎

    西田(八)委員 私は、チェックの方法に問題があると思うのですよ。せんだって、日にちは忘れましたけれども、健康保険問題がテレビの話題になったときに、テレビに出ておられた方が元保険の審査をやっておられる人だった。名前を言えば、有名な人だからすぐにわかるだろうと思いますけれども、その人のおっしゃっておるのに、十五秒に一枚の割合で医者からの請求書を皆見ているわけですよ。それを各府県に支払基金の職員がおられて点検をしておられる。それは本当の点検というだけで、点数の合計が合っているかどうかというだけの話。その病気に対して適切かどうかというところまではとてもやっておられない。そこで、それをやるために特別審査官がおられるわけですね。その審査官がわずか十数名しかおられない。そんなことで、一億万枚に及ぶ保険請求をとてもじゃないが私は審査し切れないと思うのです。だからそこでもう少し厳重な審査をするようにすれば、むだな費用を払うようだけれども、結局はそれがむだにならないのではないか。だから保険Gメンと言えばいささか言い過ぎかもわかりませんが、私はもう少し厳正にチェックしていく必要があるのではないかというふうに思うのですが、どうでしょうということと、もう一つは、いまおっしゃったように、確かに黒字の保険組合もあります。しかし保険組合は環境もいいでしょう、条件も整っておりますけれども、それ以上に、やはり保険事業を赤字にしないという努力が行われておることも事実であります。しかし私が言いたいのは、そうした保険組合がどうの、政管健保がどうのということを言うておるのじゃないのです。少なくとも病気の心配から解放されるということ、さらには失業の心配から解放されるということ、物価が安定して生活の心配から解放されるということ、そうして老後の生活に対する心配から解放されるということは、福祉社会をつくっていく重要な条件ではないかと思うのです。その一つが病気の心配から解放されることであるとするならば、医療制度は国を挙げて取り組むべき福祉政策の一つではないか。それを保険だけに頼っていこうというところに問題があるのじゃないかということを申し上げたいし、仮に保険に頼るとしても、そこでは不公正があってはならない。やはり国民は法のもとに平等であらねばならないわけでありますから、そのためにもう少し平等な制度というものを考えていく必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、ひとつ大臣の再答弁をお願いしたいと思います。
  42. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 確かに審査件数というものは、政府管掌などで統計を見ましても非常にふえております。昭和五十年度で診療報酬請求書の審査状況というものが統計されておるのですが、それで見ますると請求点数が三千八百四十三億点請求されておって、審査率は医科の場合は〇・六五、歯科の場合は〇・三四、こういうような審査状況です。したがって、確かに審査をもっとやれ、もっとやったらばもっときちんとした請求がつかめるのではないか、これは私は本当に貴重な御意見だと実は思っておるわけです。しかし、人数をふやして今度は審査をうんと厳格にやるということも、口では簡単なんですが、なかなか抵抗もあるはずなんですよね。したがって、こういうことは、やはり各党のコンセンサスによってこういうことができるようになるとか、あるいは業界自体が良心的に自発的な検査をもっと強化していくようにするとか、何らかの方法を講じて不正の防止というものをやっていかなければならぬ。審査委員の数も確かにふえてはおります。昭和四十一年当時約四千人ぐらいのものが約五千人近く昭和五十年にはふえておるわけですが、それでも業務要員一人一月当たりの取扱件数というものは十年前から見るとやはり五割増しぐらいになって、一人一月五千七百件見ていたのがいま七千三百件だというのですから、七千三百件を見るということはなかなか大変なことでもあるし、微に入り細にわたって見るというわけにはいかぬだろうというようなことも当然考えられますので、今後それらのいろいろな問題を改定するときにあわせて、これは皆さんの合意を得なければなりませんから、権力的に検査をうんと広げたなんということになると、またこれは騒ぎの種になることでございますから、そういうことでなくして、もっと自発的に良心的に、どうしたならば民主的に検査体制がきちっとなって、正直者がばかを見ないようにできるか、不正者を追い出すことができるかというようなことを一緒に考えていきたい、かように思っておるわけでございます。
  43. 西田八郎

    西田(八)委員 その点はぜひひとつ努力をしてもらいたいと思います。  いま言われるように、七千三百幾らかの件数を一人の人がチェックしておったって、それはできるはずはない。一日八時間と計算して、一週六、八、四十八時間。最近は週休二日もふえておりますが、四十四時間ぐらいで四週間、百何十時間しかないわけです。それを一年にしたって相当膨大な数字になるわけで、私が直接聞いた話では、本当にこう見るだけだと言うんです。最盛期でたくさん出てくるときにはアルバイトを雇ってやっているというような状況です。アルバイトの人がそんなものを責任を持って私は精査することはできないと思うのです。ですから、ぜひひとつその点は努力をしてもらいたい。  それから、これは非常に物議を醸すことになるかもわからぬけれども、医者の技術の問題、技術評価の問題。これはどのお医者さんに聞いても技術単価が低過ぎるということを言われるわけですが、これについてはどうなんですか。適切に行われているというのかどうか。これは私は医師会の肩を持つわけでも何でもないのですけれども、保険の適正化ということを考えていけば、やはり医者の技術というものはもう少し評価してもいいんじゃないか。歯科医の場合なんかは非常にそういった面で私どもにも苦情が来ておるわけですけれども、そうした点について、厚生大臣、今後の方向としてどう考えておられるか。
  44. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、現在の保険は点数制になっておるわけであります。したがって、その技術料もその中に含まれておるわけでありますが、これで十分満足であるというように、私は断定はいたしません。したがって、毎年保険の点数というものはある時期で見直されて、ほかの物価、賃金の値上がりというようなものと比べながら訂正をしておるわけです。また、同じ点数表の中でも、物によって、一律にばかり上がっておるわけではなくて、調整も医師会内部等との相談によって行っておるということでございます。ただ、技術料だけを別に取り出して何点くれるということは、いまのところ考えておりません。
  45. 西田八郎

    西田(八)委員 これも余り突っ込めば社保審の問題にもなってまいりますから、私は大臣の答弁を聞いておくだけに過ごしたいと思います。  次に、最近問題になっておる夜間休日診療、救急診療、救急対策、これが非常に立ちおくれで、現在のところ、たらい回しのために手おくれとなって、あたら命を失ったという人もおるというようなことが常に新聞の種になっておるわけです。ことしはこの面についてかなり努力をされるということを伺っておるわけでありますが、この救急診療、さらに夜間休日診療その他について、特別に何か大臣の所信があるのか。また、今後どうしていくのかというような点について、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  46. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 この前もお答えを申し上げたのでございますが、今回の厚生省の大きな柱の一つとして救急医療体制を確立する、こういうことをうたい上げたわけです。したがいまして、予算の面等においても、去年は二十六億円ぐらいが救急関係の全体の予算でございますが、ことしは百一億七千万円、役所的な物の考え方からすれば、一挙に四倍にするということはなかなか、果たしてそれだけ人がくっついていけるのかどうかというような疑問もこれは出てくるのですが、それぐらい熱を上げてやろうじゃないかというようなことを考えておるわけです。  したがって、その中で夜間の救急医療体制の問題につきましては、御承知だと思いますから簡潔に申し上げますが、現状では十万以上の市に休日夜間急患センターというようなものをつくっておるわけであります。五十一年度で百七十三カ所が整備を図られるというようなことになっておるわけです。それからまた、地域医師会の在宅当番制、こういうような問題もやっておるわけでございます。  しかし、五十二年度におきましては、さらに休日夜間急患センターの整備対象人口というものを、十万以上の市ということでなくて、五万以上というぐらいまでにうんと広げていこうじゃないか、こういうふうなことを考えておるわけでございます。  そうして、この情報を的確につかんで、二十四時間体制の広域救急医療情報センター、こういうものも十五カ所程度整備をして、どことどこの病院があいているのかということがわからなければ一番困るわけですから、そういうふうな情報が的確につかめないために、あいている病院があっても、何カ所も電話をかけなければあいている病院にぶつからなかったということがたらい回しと言われる声を大にしておるので、そういうようなことがなくて、あいている病院とあいてない病院は一目瞭然、すぐわかるというような体制をとってまいりたい、こう思っておるわけであります。
  47. 西田八郎

    西田(八)委員 五万市といえば、大体現在の法律に基づく市の要件を整えたというところになるわけですが、私は、そういうところと、もう一つ重要なのは、広域にわたって市町村合併して五万単位ぐらいに考えていく必要があるのではないか。やはり一番困っておられるのはそういうへんぴなところなんです。ですから、そういうところにもぜひともいまのようなシステム、そうして仮にコンピューターを導入するとするならば、情報システムを十分確立をして、いやしくもたらい回しをされたというような問題が起こらないように十分な処置を講じられるようにお願いをしておきたいと思います。  次に、総務長官お見えになっていますか。  一昨年、メキシコで世界婦人会議が開かれまして、世界の行動計画というのが決議をされました。それに基づいて、この二月一日付で閣議で報告を求められて日本の国内行動計画というのが出されたわけですが、どうも私、拝見しておると、いままでの婦人に対する対策がほとんど羅列をされているというだけで、目新しいものが何もない。特に私が読んで感じたことは、婦人に対して意識を高め、婦人に認識せしめるという方向のものが多くて、それに対して男性のどういう理解を得るのかということまでには及んでいないと思うのです。そういう点で、非常にこの行動計画が発表されてからいろいろな人がいろいろな論評を加えておられるわけですが、よくできておるという論評は一つもない。ほとんどが厳しい批判のものである。特に、この行動計画をつくられるについて意見を徴された世界婦人会議の決議を実現させる婦人の会というのがある。これは四十一団体で組織をされておるわけですが、それらの団体からも厳しい御批判が出ておる。こういうことであってはならないし、また労働組合の関係では、雇用婦人労働者に対しては、むしろいままでよりも後退しているのではないかという意見さえ出ておるわけであります。  こういう行動計画が出されると、これは世界会議の後を受けてつくられた国内行動計画でありますから、世界の人たちも注目をしておるわけであります。それに対して、やはりこういうきわめて厳しい批判があるこの行動計画を見直しされるつもりがあるのかどうかということが一点。  もう一つは、この行動計画を読んで、十年後に、それでは男女平等がどのような形において確立されるのかということも私ははっきりしないと思う。したがって、年次別にことしはこれをやる、あるいは年次別がむずかしければ、あと十年といってももう八年しかないわけですが、この間に何をやるということを具体的に今後逐一つくっていく、そういう考え方があるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  48. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいまの御批判はよく承るのでございますが、先生御存じのとおりに、この国内行動計画は昨年の五十一年四月にまず概案を発表いたしました。そうして国民の各界各層の方々から御意見なり御批判をいただきまして、五十一年の十一月に婦人問題企画推進会議というのを、藤田たきさんを会長にいたしまして、約三十名ぐらいの方々にお集まりいただきまして、そこでまた御検討いただいたわけでございます。その上におきましてことしの二月一日に発表した。こういうことでございまして、十分に国民の各階層の方方の御意見も承った上でこれはつくった、こういうことでございます。おっしゃいましたようにいろいろ御批判いただいております。しかし、中には御激励も実はいただいております。  それから、その次の問題の年次別の計画をつくったらどうか。これはもうおっしゃるとおりでございまして、年次別の具体的な計画をつくるつもりでおります。五年が一つのターニングポイントですから、五年目には大きな見直しをやろう。ですから、まず最初に十カ年計画のうちの五年間の年次計画をつくっていく、それは五十二年度の上半期、九月の末か十月早々にはこの点についても発表を申し上げたい、かように考えておる次第でございます。
  49. 西田八郎

    西田(八)委員 その場合にぜひともひとつ、いまのような直接参加しておられた人の中から批判の出ないように、これは当然自説を通すためには多少の文句は出てくるだろうと思うけれども、まあまあという及第点が与えられるようにひとつ努力をしてもらいたいと思うのです。この推進会議の中、各次官でつくっておられますから、女が入らぬというのは当然かもわかりませんが、特別にやはり女性も入れるということも考慮されていいのではないか、そういうことの配慮こそ私はきわめて重要ではないかというふうに思うわけであります。  そこで、この基本的な方向と展望というテーマのもとで五つか六つ出されておりますね。その中の第三項に「母性の尊重及び健康の擁護」という課題があるわけです。最近母性保障というのは非常に重要な問題です。出産する乳児の死亡率というのは先進諸国に比べて日本が一番高いわけです。これはやはり私は母性の保護が十分行き渡っていないからだと思うのです。男女は同権であるけれども、同時に母性というのは私はもっと大切にしなければならぬ問題だというふうに思うわけです。したがって、この母性の保障について、何か長官の方で今後どうするかというようなことについてお考えがあるかどうか。ということは、私もこの問題については古くから携わっておりまして、母性保障法というものを制定しようということを提唱をしてきておるわけですが、なかなかまだまとまらない、全体のコンセンサスを得るまでに至っていないわけですけれども、これはきわめて重要な問題の一つだと思うのですね。女性は男性と同権である、同時に男性には父性があり女性には母性がある。その母性というものが今日まで余り大切にしてこられなかったというところに私は問題があるように思う。したがって、この母性についての保障、そうしたものについて今後法制化する意思があるかどうか。そうした問題をどうとらえていくかということについて、長官の意見を伺っておきたいと思います。
  50. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃいました推進会議で男性ばかり多くて女性が少ない、これはちょっとおかしいのでございますね。推進会議のメンバーは藤田たき女史を会長にいたしましてその八割方が女性でございます。ごくわずか二割方男性がまじっておられる、こういう会議でございます。  それはそれといたしまして、いまの母性の保護の問題でございますが、これはもう先生おっしゃるとおり、この母性の保護ということは大変重要な問題と考えております。五つの柱が国内行動計画の中にございますが、その三項の中に確かに子れをうたわれておるわけでございます。ただ、新しい立法をここで必要とするかどうかということでございますが、御承知のように母子保健法とか労働基準法とか、あるいは勤労婦人福祉法とか健康保険法等々にこの母性の保護に関しましてはずっとうたわれておるわけでございます。これらのことがございますので、これの各省庁と運用を密接に連絡をしながら、強化しながら、この国内行動計画の第三項目にうたってある母性の保護を果たしていきたい、現在ではさように考えておりまして、新しく立法を講ずるという考えは現在では持っておりません。
  51. 西田八郎

    西田(八)委員 いまのなには推進会議の問題ではなくて、推進本部ですね。本部は、これは政府でつくっておられる中には、総理大臣が本部長、それで総務長官が副本部長、本部員がずらっと次官が並んでおられるのですね。そのメンバーで本部が構成されておるわけですから、この中に女性を入れろというのは私の要求の方が無理かもわかりません。少なくともそうであるとするなら、もう少し婦人会議なりあるいはその他諸団体の意見を十分に取り入れられるようにしてもらいたいということを申し上げておるわけであります。  それから、その法制化する意図はないということですけれども、将来にわたってもですか。
  52. 藤田正明

    藤田国務大臣 いま申し上げましたように、年次計画を作成するに当たりましては、ただいまの対策本部と別に婦人推進会議ですか、それなり、各階層の御婦人方と意見の交換は大いにしてまいりたい、かように思っております。  それから将来にわたって立法する考えはないのかとおっしゃいましたけれども、これは余り先のことは別といたしまして、とにかく五年間の国内行動計画の重点項目を決めますので、それらと一緒に検討はいたします。いま現在はないということを申し上げた次第でございます。
  53. 西田八郎

    西田(八)委員 これはぜひひとつ、各界の婦人層からの強い要請でもあるので、母子福祉保健法ですか、母子保健法、母子福祉法あるいは労働基準法の中にある女子、年少者の取り扱い、そういうようなものが幾つかあっちこっちに混在しておるわけですけれども、やはり母性保障という立場からひとつ考えていく必要があるのではないかというふうに思うので、特に要請をしておきたいと思います。  最後に一つ建設大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、最近産業活動が停滞してきておりますので、排水の問題等も余り大きな問題になっていないようでありますけれども、昭和四十七年に立法化されました近畿圏の水がめの琵琶湖の総合開発について、非常に難航をし、工事がおくれておるわけであります。県はそれなりに努力をしておられるようですし、他府県からもこれは近畿圏の水がめだということで非常な御協力もあるようでありますけれども、やはりネックになっておるのは、今日地方自治体財政硬直化の中で公共用下水をどのようにして敷設し、どのようにして進めていくかということが一つの大きな問題になってきておるわけであります。これについて当初特別措置法ができましたときには、他の市町村が進める公共下水と、この特別措置法でやる場合との間には国の補助金が少し差があった、むしろ優遇されていたと私は思うのですけれども、翌々年四十九年からこれは廃止されて全国一律になったわけですが、しかし、他の府県と特別措置法でこうしなければならぬと決めたこととを同様に扱うということは、当初の立法趣旨からいっても若干問題があるのじゃないか。したがって、今後特別に国が指定する事業に対しての補助率、こうしたものを特別扱いする意思があるかどうか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  54. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 西田さん御承知のように、四十九年の改正によっていままでよりは、全国が同率になってしまった、こういうことでございますので、おたく、琵琶湖開発からすると五・五から六%になったのでございますから、幾分か上に行ったのですけれども全国が平均化したじゃないか、そうするとぼくの方が下がったのじゃないかという御質問のようでございますけれども、それはどうもちょっと御無理のように考えられるのです。先ほども西田さんにお聞きしてから、行ってから帰って、それでいろいろ話を聞いてみたのですけれども、いますぐこれを考慮するか、もう少し特別開発法というものがあったのだから、特別に上回るのが当然じゃないかという御意見もまあごもっともなんですけれども、いろいろお話し合いをした結果なんですけれども、いま現在すぐどうこうということはできませんけれども、いずれにしても水問題がこれだけ大きく取り上げられている今日でございますので、当然近畿圏の水がめとおっしゃった、そのとおりでございますので、いずれは考えなければならない時代も参る、そのときに十分そのお気持ちを、ただいまのお話を受け入れていきたい、こういうふうに考えます。
  55. 西田八郎

    西田(八)委員 ひとつ特別に配慮をしてもらいたいということを重ねてお願いをしておきます。  次に、農林大臣がお留守でございますので、関係者の人に一言だけお聞きしたいのですが、いま農業は食える農業になっていないですね。たばこと雑貨品を若干並べて商売をしておっても飯は食える。ライトバンに焼きイモのかまを積んで走っていても飯が食える。ところが、農業を一ヘクタール、一町歩やっておっても飯は食えない。機械代を払い肥料代を払っておると、ほとんど生活というものに回ってこないというような実情になっておるわけであります。ところが、世界の食糧危機の時代を迎えるということを言われておるし、わが国の食糧自給率も非常に悪い。政府で発表しておられるオリジナルカロリーの計算でさえ五〇%前後だ。食糧自給率は五〇%前後だと言われているわけです。そういうふうにしてくると、結局昔は半農半工と言われたのですが、いまは八工二農ぐらいですね。ほとんどの収入を工業というか労働者として働いた金で得てきて、あと農業の収入は二割ぐらいしか生活に入れられないという実情だと思う。食える農業にするためには、農業従事者の持っておられる土地というものの所有権と、それからそれを利用するということを別個に考えて、新しい共同経営による農業をやっていく必要があるのではないか。いままでやってこられたのは圃場整備でありあるいは土地改良である、あるいは水路の整備ということだけであって、本当の農業の経営基盤を拡大する方向にはいってないと思う。したがって、これこそいま本当に一番重要な農業政策の一つだと私は思うのですが、そうした経営規模の拡大ということについてどう考えておられるか、お伺いをしたいと思います。
  56. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 農林大臣の臨時代理でございますので、私からお答えをいたします。  経営規模の拡大につきましては、かねていろいろ工夫をしてきておるところでございます。合理化法人をこしらえたりあるいは土地取得資金を出したり、いろいろなことをやっておりますが、問題は、なかなか農家の方が土地を手放すということしたがらない。そこで、私もあなたと同じ考えを持っているのです、いままで自分でやってきておりますから。それにつきましてはやはり農振法の一部改正等を行って、農家の方が市町村の介入等によって、土地を一年限りで貸してもいいですよ。しかし、農地法の適用から除外されます、貸したらもう十年間返してもらえないなんということは困るわけですから、一遍貸してみて、よかったらまた来年も貸す、その次も貸すというようなことで、農業はやらなくても、勤めがあるからその方に行きたいんだという方の所有権を維持しながら、その土地を最も有効に使うために専業農家に土地が集まるようなことは、これは農地法の一部改正、農振法の一部改正でそういうことをやってきておるわけでございます。したがって、今後ともそういうように基盤整備をやらなければ、だれが土地を借りるといっても、飛び地は借りる人はないのですから、やはり一カ所に集めて、基盤整備をしながら有効利用ができるようにさらに施策を進めてまいりたい、かように考えております。
  57. 西田八郎

    西田(八)委員 もう時間が来たようでありますから、まだもっと議論をしたいのですけれども、これで終わりますが、問題は、やはり土地を手放すということについて抵抗のある農村の方々のそういう気持ちというものを取り入れた、しかも、お互いに自分たちがそれをやってきた人たち、経験者ばかりですから、もっと相談をしてやればできることだと思う。私は、一つの集落経営方式というものを持っておるわけですが、きょうは時間がないのでやめます。委員長、これで終わります。
  58. 坪川信三

    坪川委員長 これにて西田君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、新井彬之君。
  59. 新井彬之

    新井委員 ちょっと質問の順序が前後いたしますが、官房長官お忙しいようでございますので、先に官房長官の分について質問をいたしたいと思います。  わが国におきましては、地震の常襲地帯であるということで、過去におきましても、再三にわたって地震の被害を受けてまいったわけでございます。そこで、政府としても「大都市震災対策推進要綱」、これが四十六年五月二十五日にできて、それをもとにしていろいろの施策を講じておるわけでございますが、行政管理庁からの監察結果によれば、昭和四十九年の八月に出ておりますけれども、なかなかその進展はしていない、こういうことでございます。  そこで、中央防災会議等でいろいろ下から案を練られて上に持ってきて決定されるわけでございますけれども、現在の状況からいきまして震災については大きな被害が出るということが予想されております。したがいまして、私は、本来ならこれは総理に言わなければいけないわけでございますけれども、震災について、要するに地震についての閣僚協議会を設けて当然強力に推進をしていかなければならぬ、こういうぐあいに思うわけでございますけれども、その件について官房長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  60. 園田直

    ○園田国務大臣 災害基本法はちょうど私が委員長をやっておりますときに、各位の協力を得て成立した法律でございます。それに基づいて中央防災会議をつくってやっておりますが、御指摘のとおりに、ややもすると事務的に積み上げたものを承認するというかっこうに堕しがちでありますけれども、災害、特に地震については近時いろいろ国民の不安を買っているときでありますから、いまの御指摘のとおりに中央防災会議をもっと閣僚会議以上の存在にして、そしてなお総理が中心になって実質を上げますように、この防災会議に官房長官は入っておりませんから、検討して私も入れてもらうなり、あるいはいま総理府で所管しておりますが、この所管をどうするか、御指摘の点が十分通るように検討したいと考えております。
  61. 新井彬之

    新井委員 それでは、防衛庁長官にまずお伺いしたいのでございますが、カーター米大統領が在韓米軍の撤兵を行う理由、これはもう総理なりあるいはまた外務大臣等からの答弁が出ておりますけれども、在韓米軍が撤兵するということについてはどういう意図があるかということについては、やはり一番関心を持っておるのが防衛庁長官ではないかと思うわけでございます。したがいまして、どのような判断を防衛庁としてはやっておるのか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  62. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  まず、カーター政権がいかなる考え方のもとにああした政策発表をしたかということでございますが、この点につきましては、一九七〇年代にニクソン・ドクトリン政策をアジアにおいて推進をするということを決めたわけでございますが、その路線の延長として私どもは受けとめております。カーター新政権ができたから急遽そういうことになったという考え方でなくて、一貫したアメリカのアジア政策の路線のものであろう、そう受けとめておるわけでございます。  だが、カーターさんが政権の座につきます前に、選挙時期にすでに発表いたしましたように、在韓米地上軍と戦術核兵器を撤去するという主張をいたしたことは御承知のとおりでございます。そうしたこともございましたけれども、現在の状態考えてまいりますると、日韓両国との協議の後に慎重に行うということも述べてまいっておりまするし、御承知のように、いまだその規模でございますとか、あるいは時期、あるいはそれの代替策等もはっきりいたしておりません。そういう時期でございますが、いまその様相が明らかでないときに私が具体的にどうだということも申し上げるわけにはいきませんが、しかし、韓国に対しまするアメリカの今日までとってまいりました防衛公約の維持でございまするとか、朝鮮半島におきまする軍事バランスの維持の必要性等についてアメリカが確約をしてまいっておるわけでございます。仮にいま撤退が行われるといたしましても、朝鮮半島を中心といたしまするアジアの安定を急激に損なうようなことはとらないであろう、十分慎重な配慮のもとにそうしたことが行われるであろうという、そうした背景を考えておるところでございます。
  63. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、いままでの質疑の中で総理も言われておりましたけれども、微妙なバランスの上に立っているんだ、バランス論を非常に強調しておるわけでございますが、軍事上のバランス、それだけでなくて、経済上とかいろいろなことがあるからというニュアンスで総理は逃げておるわけでございますが、防衛庁としては、軍事上のバランスという状況をどのように判断されておるか、お伺いしたいと思います。
  64. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたしますが、軍事上のバランスという問題でございまするが、一般的には相互の軍事的な配備の状況を表現したものであろうと思うのでございます。しかし、限定して朝鮮半島の問題ということでとらえてまいりますれば、この軍事バランスの維持という場合には、北と南の相互の兵力体制が対峙をいたしておるというような状況と、さらに今後双方の兵力の整備の見直しがどうなされていくであろうか、あるいはまた朝鮮半島をめぐります周辺の諸般の情勢を含めて私どもは判断をせなければならぬと思いますので、そういう意味で大勢を見てまいりますると、現状におきましては大規模な武力紛争等の事態は惹起しないのではないか、私はそういう判断をいたしておるところでございます。
  65. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、ことしの三月にカーター大統領との会見ということで総理が渡米されるわけでございますが、そのときの会談置について、防衛庁として総理との打ち合わせ、意見具申と申しますか、その内容については、どのようなことを総理に言うのか。それからまた、新韓国条項については防衛当局としてはどのような構想を持っておるのか。それをお伺いしたいと思います。
  66. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたしますが、その前に、総理が先般この予算委員会で申し上げたことはすでに先生御承知と思いまするが、総理がその際に答弁として申し上げましたのは、朝鮮半島における均衡を支えている国際的枠組みを大きく壊すことなく、南北間の緊張緩和を進めることがより安定的な平和をこの地域にもたらす現実的な方途と考えております。そこで、在韓米軍の問題に関しましても、このような考え方を米国と話し合っていきたいと思いますという趣旨をここで回答申し上げたのでございまするが、この旨につきましても、総理の意見については全くそのとおりだと私も考えておるわけでございます。  なお、先生お尋ねのいわゆる韓国条項という問題は、いままで佐藤・ニクソンの場合、それから三木・フォードの共同新聞発表等があったわけでございまするが、この点につきましては、私どもその時点における当時のわが国政府の認識であった、とそう受けとめてまいっておるわけでございます。しからば、現時点でどう考えておるかということでございまするが、韓国の安全を含む朝鮮半島の平和の維持は、やはりわが国の平和と安全に深い関係を持っておりまするし、この点は、いま申し上げましたいわゆる韓国条項におきまする当時の認識も、現在におきまする基本的な私どもの認識も変わってはいない、そう考えておるところでございます。
  67. 新井彬之

    新井委員 軍事上のバランス論というのを見てまいりますと、いままでの第一次世界大戦、第二次世界大戦、いろいろございますけれども、バランスが保たれているときには平和が保たれる、しかしそれが壊れたときには危険な状態になるという考え方で、結局韓国の方と北朝鮮なら北朝鮮のバランスがとれている場合は問題ないけれども、どちらか一方がバランスが壊れた場合にはそういう状態になるということになるわけです。したがいまして、これは当然逆の面がございまして、韓国の方が強くなった場合は逆に今度は北進をするということも考えられるというような、いつまでたっても解決しないというのがバランス論の一つ考え方ではないか。こういうぐあいに思うわけでございますが、そういうような現在の国際情勢のいろいろな中にありまして、在日米軍基地の縮小というのは可能と考えるかどうなのかということですね。その点についてはいかがお考えになりますか。
  68. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いま仮定的な御意見と申しますか、いろいろなそうした将来を憂慮しての御意見がございましたが、自衛隊の使命というか任務についてはもう御承知のとおりでございますが、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つために直接侵略及び間接侵略に対しましてわが国を防衛する任務を持っておることでございます。したがいまして、仮にいまのお話のように韓国の安全が問題になったと仮定いたしましても、それはわが国に対する直接侵略あるいは間接的な侵略というふうに私どもは受けとめてはいないわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、韓国に紛争が発生いたしましても、日本がすぐそれに呼応するというようなことはいたさないわけでございます。なお、そうしたことでございまするから、すぐ日本の防衛体制にどうだという受けとめ方はいたしておりません。  ただし、いまのお尋ねのように、さてアメリカの基地がどう影響するかというようなことでございましょうが、その点につきましても、先ほどから申し上げておりまするように、まだアメリカの在韓米軍の撤退に対しまする規模でございまするとか、あるいは時期、代替措置等が具体的に明確でございませんので、いま私どもからその点についてアメリカがどうだ、基地にどう影響するかというようなことについては申し上げる立場にもございませんし、私はそれで急激にどうも変わるというようなことは考えておらないのでございます。
  69. 新井彬之

    新井委員 沖繩が返還をされますときに、核抜き本土並みということで基地が非常にたくさんあったわけでございます。それについては開発庁長官よく御存じだと思いますけれども、沖繩県の願いといいますか、県庁からもよく出ておりますことは、基地を何とかしてもらわなければいけないということで、復帰前からもそうですけれども、復帰後の五年間も、整理縮小ということを再三にわたって言っているわけでございますね。そういう中で米軍の基地の返還についてはいろいろ打ち合わせをされておるわけでございますが、まだ返り方等がはなはだ少ないという感じがするわけです。私も現地に参りましていろいろのところを見せていただきましたけれども、不用のところで返してもよさそうなところ、それが余り返ってきてないというような感じがするわけでございますが、開発庁長官として、沖繩県の県民の皆さんの願いというもの、基地の返還とそれから地籍に対しては具体的にどのようにお受けとめになっているか、お伺いしておきたいと思います。
  70. 藤田正明

    藤田国務大臣 沖繩県民にとりまして、やはり基地の整理統合といいますか、縮小といいますか、これは一つの願いであることは間違いないと思います。それからまた、地籍の明確化につきましても、沖繩県の振興開発についてはこれが一つの基本的な要素になる、かように思っております。開発庁におきましても、その意味では県当局と協力をいたしまして、この地籍の明確化には現在努力中でございます。
  71. 新井彬之

    新井委員 この前の答弁では、地籍の明確化について大分進んでいるんだとかいろいろの答弁がございましたね。具体論でいかないとおわかりにならないと思いますが、与那原なら与那原で、一体村役場の方々が実際これでできると言っているのか、できないと言っているのか。あるいは沖繩県において、そういうたくさんの町の中で、いまの集団和解方式というやり方でやれると言っているのか、やれないと言っているのか。やれると言うなら、どこが、だれがそんなことを言っているのか。やれないと言うなら、一体具体的に何が引っかかってやれないのか。そういう点についてはどのように認識されていますか。
  72. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま先生のおっしゃいました与那原町に関しましては、これはちょっと特殊な地域だと私は思います。御承知のことだと思いますが、終戦時にあそこは米軍の物資集積所になりました。二十一年にそれが撤去されて、二十一年の終わりでございましたか、これは返還されたわけであります。そのときに割り当て地として約八十坪ぐらいずつ皆さんに割り当てたわけでございます。そういうふうなことで割り当て地もすでに市街地化してしまっている。ですから、これは大変特殊なところでございまして、西原村のようなところは集団和解方式で現在も進んでおるわけでございます。与那原地域と似た地域がもう一つございます。そこもやはり割り当て地があったところでございます。その割り当て地のあった地域も、この集団和解方式でもって進めるべく現在検討中でございますので、これがうまくいきますれば、いまの与那原地域についてもある程度の成算が持てるのではないか。現在与那原地域が大変もめていることは十分承知いたしております。
  73. 新井彬之

    新井委員 現実的には確かに集団和解方式である程度解決している地域がありますけれども、いま五年間たって解決しないような地域というのはどうしても解決しようがないのだ、集団和解方式というのは一人が反対してもだめでございますから、これはやはりいつまでたっても解決できない、こういうことだと思います。  そこで、地籍の問題一つ考えましても、地籍の問題というのは、軍用地にしましてもあるいはまた民有地にしましても、これは解決してほしいということはだれの願いでも一緒ですね。そういうことで、軍用地としてまたすることとは当然別に考えなければいけないという考え方を沖繩の方がお持ちだということはよくおわかりでしょう。そうしますと、ちょうど復帰のときに公用地暫定使用法ができて五年間たってそれができなかった。そこでまた今度は沖繩県の区域内の駐留軍用地等に関する特別措置法を出してくる。この出してきた内容を見ますと、これはもう日弁連ですね。確かにこれは法制局でいろいろ詰めてあるわけですから憲法違反ではないかもわかりませんですよ、だけれども、少なくとも普通の者が見てこれはちょっとやはりおかしいのじゃないか。たとえて言うと、憲法第二十九条であるとか憲法三十一条とかあるいは憲法十四条、憲法九十五条、こういうことに該当するようなおそれがあるのじゃないかと言われるようなものをもってやるということ自体が。開発庁長官とあるいは防衛庁との打ち合わせの中で、開発庁というのは、沖繩県民のいろいろな意見というものはこういうことがあったのだ、こうするべきだという立場に立つのか、一体どっちの立場でやってあげているのか、その辺はいかがなんですか。
  74. 藤田正明

    藤田国務大臣 もちろん開発庁といたしましては、沖繩県民の総意をくんで、ニーズをくんで、その上に立って施策を進める、これが基本方針でございます。
  75. 新井彬之

    新井委員 そういうわけで、私これは防衛庁に申し上げたいのでございますけれども、少なくとも今回のこの法律案というのは、もう一遍見直すために撤回をしまして、もう一遍再提出をしていただきたい、このように要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、話がまたもとへ戻りますが、米軍基地を返してほしいという希望がある。たとえて言いますと、読谷村にあります読谷補助飛行場ですね、その飛行場は現在どのような使用状況になっておりますか、お伺いしたいと思います。
  76. 斎藤一郎

    斎藤(一)政府委員 読谷のいわゆる補助飛行場でございますが、これは現在米空軍及び海軍が、パラシュートによる物資などの投下訓練、そういうために使用しております。それからまた、すぐそばに楚辺通信所というのがございまして、それの電波障害防止の区域として隣接する地域が必要であるというふうにこの読谷補助飛行場を理解しておる次第でございます。
  77. 新井彬之

    新井委員 余り現在使われておりませんですね。沖繩県における米軍の提供施設面積というのは、全沖繩で一一・八一%、沖繩本島で一八・四三%を占めております。読谷村におきましては五三・五八%が米軍の施設でございまして、いままで農業をやるにしましても産業の振興をするにしましても、えらくとられて何にもできないというような状態です。本来ならば補助飛行場でございますから、戦後間もなくはたくさんの飛行機が使っておったわけでございます。ところが、滑走路だって、途中で暴走族が走らないように土地を穴をあけましてつぶしちゃっているような状態。それからもう一つは、落下傘の降下が行われていると言いますけれども、それも数も大したことありませんし、またそのことによっていろいろな被害が起こっているということも、現状は知っていることだと思うのですね。したがいまして、この読谷補助飛行場等については、やはり沖繩開発庁がその実情を聞き、そして防衛庁に言って、当然やはりこういうものについては返していただきたい、こういうぐあいに本来ならやられるべきじゃないかなと思うのでございますけれども、そういうようないきさつについてはいかがになっておりますか。
  78. 斎藤一郎

    斎藤(一)政府委員 ただいまお話がございましたように、読谷補助飛行場の必要性については十分検討する必要があると私ども考えております。ただ、昨今問題になっておりますのは、米軍が那覇空軍航空施設日本側に返還したことに伴って、米海軍機が嘉手納飛行場に移っております。それに関連して、あの地区にアンテナを立てる必要があるということで、昨年七月から米海軍機に関連するアンテナ建設に入ったわけでございますが、これに関連して、地元の読谷村あるいは読谷の地主の方々が、これは基地の恒久化につながるのだ、あるいは、元地主たちへ戻すことを非常に困難にするものだという反対がございまして、現在のところアンテナ工事が一時中止されておるのは御承知だと思いますが、政府としましては、先ほど申し上げたようにいろいろ検討しました結果、このアンテナについても何とか、やむを得ないものなら地元の方々の御了解を得るようにということでいろいろ努力しておりますが、まだその糸口が見出せないという状況になっております。  それから返還につきましては、いまのアンテナを立てておるところ以外のもの、読谷補助飛行場というのは全部で二百六十五万平米ございますけれども、すでにいままでの第十六回安保協議会においてそのうちの百万平米、東側の部分でございますが、これは返すということに方針が決まっておりまして、この当該地区の返還条件を早く実現したいというふうに努力しておるところでございます。
  79. 新井彬之

    新井委員 アンテナのことを別に質問しなかったのですけれども、出ましたから一言申し上げておきますけれども、このアンテナの問題については、いまもお話がありましたように、これはもう本来ならば国有地ではなくてわれわれの土地であるというようなこともございますが、やはりこれ以上この土地を返してもらわなければどうしようもないという一つ考え方の中で、いろいろと防衛施設庁にも申し入れをしたりしているわけですが、全然進展がない。したがいまして村長は、村民の方、もう全団体ですね、これは婦人会だって青年会だって何だってそうですけれども、本当に村全体が何とかしてほしいという要望の中で、このところにはそういうアンテナを立てないでほしい、そういうことで自分が防衛施設庁に行ってもいい返事がないから米軍の司令官のところに行ったり、それで話がつかなければ横須賀の在日米軍の司令官に会って、それでいろいろと何とかしてくれという話をしている。それでだめだというので、今度はカーター大統領まで手紙を送っているわけでしょう。そういう、本当にその人たちが間違いなら間違い、正しいなら正しい――国の方としてこういうことをお願いするならお願いするで結構でございますけれども、皆がそうやっているような中でそっぽを向いているようなことであるならば、開発庁だってあるいは防衛施設庁だってやり方としてはまずいのじゃないか、こういうことを私は本当に感じたわけでございます。  そこで、いまも話がありましたが、この読谷補助飛行場の問題でございますが、大蔵省から昭和五十年度の国有財産増減及び現在額総計算書、こういう計算書が出ております。これはいま国有財産だということでわれわれに正確に公表されておるわけでございますが、この計算書に報告されている国有財産のもとになるものは国有財産台帳にちゃんと登録されておると思いますけれども、間違いございませんか。
  80. 坊秀男

    ○坊国務大臣 国有財産の元帳に記載されております。
  81. 新井彬之

    新井委員 この報告書の中には当然読谷補助飛行場が入っていると思いますが、明確に入っておりますか。
  82. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 読谷飛行場の国有地分についてはその中に含まれております。
  83. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、これだけではどういうことで入っているかわかりませんので、読谷補助飛行場分のその国有地分、この国有財産台帳にはどう記載されているのか。たとえて言いますと、口座名には地目がありますね、それから面積、そういうものはどのように記録されておるか、説明願いたいと思います。
  84. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 読谷飛行場の国有地分につきまして国有財産台帳には、口座名としましては「旧読谷飛行場」ということであります。それから種目としては「雑種地」と「宅地」があります。それから沿革としては「旧軍購入」ということになっております。それから全体の面積といたしましては「二百十六万七千平米」であります。
  85. 新井彬之

    新井委員 そうすると、国有財産台帳の、沿革は聞かなかったけれども、いま説明されましたが、旧軍の購入ということですね。  そこで、国有財産台帳には、登記について登記年月日などを記入することになっておりますね。それはどうなっておりますか。
  86. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 沖繩のその国有地につきましては、戦時における戦禍によりましていろいろ証拠書類が滅失した関係上、戦後米民政府時代にその所有権確認作業というものが行われまして、それに基づいていわゆる所有権の確認が行われたわけです。それで、読谷村長からその読谷飛行場の国有地分については所有権確認書というのが交付され、それに基づいていわゆる復帰前の米民政府時代の登記がなされておったわけです。沖繩復帰に伴いまして、四十七年五月十五日にその登記を受け継ぎまして、現在は日本の現行法令に基づく国有地として登記されておるわけであります。
  87. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、登記欄の記入もないし、それから記入年月日も、記入者の印もないわけです。これはもうてんで――これは普通の国有財産の台帳でございますけれども、これには明確に書かれてこそ初めて国有財産ということでこの表になってくるわけです。そうすると、そういうものがないということですね。もう一遍念を押しておきます。
  88. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま申し上げましたように、沖繩本島におきましては、そういう終戦前における売買を証明する書類が滅失しておりますので、戦後米民政府によって行われた所有権確認、それに基づく登記をそのまま引き継いだということであります。
  89. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、その証明書に書いてある村長の名前、それから国に交付したということになっておりますが、その証明書のあて名は国のだれのあて名になっておりますか。
  90. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 お答えします。  その読谷飛行場についての土地所有権証明書を発出されました当時の村長さんの名前は、これは何と読みますか、當山眞志、そういう名前になっております。それで、そのあて名といいますか、そこでもって最後に「よって一九五〇年四月一四日付琉球軍政府特別布告第三六号に基いて読谷市町村長當山眞志は日本政府が第一項表示の土地の所有者であることを証明する」、こういうふうに書かれておるわけであります。
  91. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、この証明書だけが国有地であるという証明ですか。本来なら――これは確認ですよ、確認をさしていただきたいのでございますが、国有財産台帳には、だれのだれ兵衛さんから何坪の土地を幾らで買いました、それで登記はどうなっておりますということが、沿革も全部書かれて、内容もぴしゃっと書かれて、初めてだれからもこれは国民の財産ですと、こう言えるようになっておりますね。これはそのとおりだと思います。違ったら後で言っていただきたいのですが、そうしますと、そういうものは一切ないけれども、この村長さんが出した証明書だけが国有地であるという唯一の証拠である、これで間違いありませんか。言ってください。
  92. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 一般の国有財産台帳でありますと、ただいま先生おっしゃいましたように、購入したものであるなら旧地主だれから買ったというようなことが書かれております。この沖繩本島におきます国有地につきましては、先ほど来申し上げておりますように、戦火によりましてそういう売買の証明書とか、その公簿とか、そういう書類が滅失して現在ないわけであります。しかしながら、同じ沖繩でありましても戦火を受けませんでした宮古とか八重山というところにおきましては……
  93. 新井彬之

    新井委員 質問したことに答えてないですよ。私の聞いているのは、読谷飛行場で、いまの補助飛行場でこれだけが国有地という証拠ですかということを聞いているのです。ほかのことを聞いているのじゃないのです。
  94. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま宮古、八重山の話を始めましたのは、われわれが読谷飛行場、沖繩本島におけるそういう国有地について、それを国有地であると判断しているいわゆる関係状況資料を申し上げようとしているところであります。  そういう戦火を受けなかった宮古とか八重山島におきましては、やはり本島におけると大体同時期においていろいろ旧陸海軍の飛行場が造成されておるわけです。それで、そういう戦火を受けなかった先島諸島におきましては、土地の売り渡し証書とか代金の受領書とか、そういうものが多数収集されておる、それから登記も当時終戦前から国有地として登記がなされておるということであります。それで、われわれは本島におきましても、当時の状況からして同じような手続を経て買収行為が行われたはずである、そういうことに基づきましてこれは国有地であると判断し、かつ形式的には、先ほど先生がおっしゃいましたように、復帰前米民政府により行われました所有権認定作業、それに基づいて村長から出されました証明書、それに基づいてつくられました登記簿を引き継いでいるわけであります。
  95. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、その証明書の内容はどのようになっておりますか。状況はこんなたくさん調べてあるのです。たとえて言いますと、その当時この方の登記であった――読谷補助飛行場のど真ん中ですよ、これは。あるいはこれも全部そろっております。旧登記ですね。一体これが何で国有地になったのか、それがはっきりしないわけでしょう。  そうすると、いまの村長さんが証明書を書いたと言うのですね。その証明書の内容についてどのように書いてあるのか、お答え願いたいと思います。
  96. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 その読谷飛行場に係る土地所有権証明書の内容でありますが、まず最初に「土地の表示」としまして、位置、地番、地目、それから面積が書かれておりまして……
  97. 新井彬之

    新井委員 内容を全部読んでください。
  98. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員   一 土地の表示   1 位置 読谷村字楚辺中上原   2 地番 二四七九   3 地目 飛行場   4 面積 三二、八四六坪  二 第一項表示の土地は一九四六年二月二八日附琉球軍政府指令第一二一号に基いて本人      により又は上記本人の為にその指定代理人      又はその最近の親等人      により本人の所有に係るものであることが申告された  三 読谷市町村長當山眞志は前記指令に定められた権限により読谷市町村土地所有権委員会を組織し当該委員会は所定の手続により前記本人が第一項表示の土地の所有者なる旨の申告を調査しその申告が真正且つ確かであると認めた  四 沖繩群島知事平良辰雄は前記本人の所有権を正式に確認されたい旨の市町村土地委員会の具申を承認した、最後に本証明書は一九五一年三月一日から一九五一年三月三十日迄三十日間読谷村役所に於て一般の縦覧に供されたが異議の申立が無いので前記本人は真正の所有者と認められる これは先ほどお答えしましたが、  五 よって一九五〇年四月一四日附琉球軍政府特別布告第三六号に基いて読谷市町村長當山眞志は日本政府が第一項表示の土地の所有者であることを証明する こういう内容になっております。
  99. 新井彬之

    新井委員 結局いま読みました証明書がどのようにしてできたかということですね。  それで、もう一つわかっていればお伺いしたいのでございますが、米国海軍政府布告第七号とい評がございますね。「財産の管理」、これの第二条はどのようになっておりますか。――わからなければわからないで結構ですよ。
  100. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 現在手元に持ち合わせておりませんので、わかりません。
  101. 新井彬之

    新井委員 申し上げます。   米国海軍 政府布告第七号 一九四九年六月    二十八日「財産の管理」  第二条(財産管理官に委任する財産)   本布告の有効期日より米政府下の区域内における左の財産は、財産管理官に委任する。    (イ)すべての遺棄財産    (ロ)すべての国有財産    (ハ)国際公法の下に賠償なくして略取したるすべての私有財産 こういうことになっておりますね。  そこで、このときにこの法律に基づきまして――本来ならばその地域に土地所有者がいたわけですね。いたけれども、この布告に基づいてその方々は申請することができなかったのでしょう。なぜここのところで空白になるのですか。この土地所有権の――いま読んでいただきましたね。これはずっと言葉の先で読んでおりますから、文章としてはちょっとおわかりにならないと思いますが、「第一二一号に基いて本人」、本人の名前を書くようになっておりますね。あるいはまた「その指定代理人」、それからまた名前を書くようになっておりますね。それから「最近の親等人」、これも名前を書くようになっています。ところが、これが空白であった理由は一体何で空白になっているかおわかりですか。
  102. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 先ほど読み上げました所有権証明書、これは文章が国有地、公有地を問わず、私有地にも適用されるひな形になっておりますが、ここで国有地なり公有地につきましては、村の委員会が代表するという意味で、これが具体的な名前は書かれてないというふうに聞いております。
  103. 新井彬之

    新井委員 それはおかしいじゃないですか。委員会が代表するからこの名前が書いてないということは。申告されたとなっておるのですよ。  それならもう一つ伺いしますけれども、このときの状況というのは、先ほども言いましたように、米国海軍政府布告第七号におきまして土地の調査をやったわけでしょう、これはだれのものですかと。ところが、その第二の(ロ)の項において国有地として米軍財産管理官のもとに置かれたものについては、旧地主の所有権の主張のための調査は拒否されて、それはそのまま米政府下の財産管理官に委任されてしまっているということですね。したがいまして言いたくても言えないわけでしょう。そういう逆の一つの布告があって、それで調査をして、だから名前も何にも出てきょうがない。出てきょうがなくて、その上でそれを今度告示した。出せないわけですから、言うこともできませんね。それを証明したというのですから、もともとできないことを証明したような文章をもってそれが証拠になるということはどういうことなんですか、一体。そのことについてお伺いしたいと思います。
  104. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 先ほどお答えしましたとおり、村委員会は、この所有権証明書を作成した場合、三十日間一般の縦覧に供しているわけであります。それで異議のある者はこの期間中に異議の申し立てができるということになっております。そして異議のない証明書について村長はこれを承認して、署名捺印し、土地所有者に交付したわけであります。さらに、交付された証明書について争いがある場合は、巡回裁判所に訴訟を提起し、裁判所の決定を待って所有権証明書を交付するというふうに書かれておりまして、所要の手続を経て行われたものと理解しております。
  105. 新井彬之

    新井委員 だから、さっきから言っているでしょう。米国海軍の政府布告第七号によって、ここからここはとにかく旧飛行場であったんだ、したがってこれは国有財産とみなして、これについては調査をしてはいけない、だからこっちからこっちについて調査をして、それにおいて布告をしているわけでしょう。どういいますか、ここに明確に公示をしているわけでしょう。それを見て、自分のところは調査もされぬし、やれないことになっていることに対して言いようなんかないじゃないですか。そういう前提があるでしょうが。そういう前提のもとにつくられた証明書というのは、それは証明のしようもなかったし、どうしようもない。だから、これは証拠にならぬですよ。
  106. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま申し上げましたように、そういう異議の申し立てとか巡回裁判所に対する訴訟の提起の道が開かれておったわけでありますが、現に読谷の一部につきましてそういう争いがあって、その後民有地主に返還された部分も現にあるわけであります。
  107. 新井彬之

    新井委員 とにかくこの証明書について、この証明書がそういうことで正しい、これだけをもって国有地としているということはどう考えても納得できない。これは後でよく見ていただきたいと思うのですけれども、とにかく片っ方ではできないということになっているのですよ。こっちはそういうことをしてはいけない、そうしておいて、自分のものですよということが申告しようがないようにしておいて、そうしてこれはこれでよろしいですかという告示をする。一月置いておいた。自分のものだということが言えなくてやっているわけでございますから、これを証拠だということについてはどうも納得ができない。これはこういうことでございます。  そこで委員長、これはどちらにしましても一つの決着というのをつけなければいけない。この問題については当然大蔵省側としても、先ほども言いましたように、いままでのデータとか資料とかそういうものが全部あると思いますね。したがいまして、やはり裁判でやりなさいなんと言いましても、ここにはちゃんと登記簿とかいろいろあります、ありますけれども、売った買ったという証拠書類はないんですよ。実際に大蔵省にもないし、どこにもないんです。だから、多分大蔵省は買っただろうと思っているわけです。そうでしょう。地元の方の見方をすれば、売ってないだろうと思っている。それはおれはその土地をまだ金をもらってないから売ってないと言えば、本人の言うことですから正しいと思いますけれども、買った方にすれば、直接本人しかわからないことですから、多分こういうことで客観情勢から買ったんだろう、こう言われていると思います。したがいまして、私も当委員会に、このことの当時の責任者であった官側の責任者をここの委員会に出席していただきまして、その当時本当にどうだったのかということを明確にする必要があるのじゃないか。ということは、少なくともこの国有財産台帳に明確に、これは国民の財産ですと出ているのです。そして決め手となるものは、いまも言ったようなこんな証明書しかない。その証明書自体が、できないような内容を伴ってやってきたものでございますから、私は委員長に後で理事会を開いていただきまして、当委員会にそういうわかった参考人なり証人を呼んでいただいて、明確にこの土地の問題についての決着をつけていただきたい、このように私は要望いたしますが、いかがですか。
  108. 坪川信三

    坪川委員長 非常に大事な問題でもございます。したがいまして、大蔵省並びに総理府、いわゆる沖繩開発庁におきまして、当時の状況等をよく調査していただき、また適当な参考人という問題点もひとつ御検討おき願いたいと思います。その趣旨にのっとって理事会で協議したいと、こう思います。
  109. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この問題につきましては、委員長の方でおっしゃられるとおり非常に重大な問題だと思いますが、ひとつ関係の各省でなお一応検討をしまして、そしてその結果を委員長に御報告を申し上げる、こういうことでひとつ御了解いただきたいと思います。
  110. 新井彬之

    新井委員 ありがとうございました。これは私も当時の官側の責任者にお会いしまして、それは申しわけないことをしている、買ってないことは明確なんだ、だから私はこの国会において証人として出て、そしてその当時のことをお話をしたい、それでなければ、当時のあれだけ読谷村の方方に協力を願って、あれだけの苦労をかけたことに対して報われない、私はもう死んでも死に切れないからぜひとも証人として呼んでくれ、という方もおられるわけです。  それから、私がなぜそういうことを言うかというと、さっきからの話の中で、旧軍が購入したということが明確なら問題はないわけですけれども、あくまでも証明書でございますから、これはもう間接の間接ぐらいの証拠にはなっても、これはなかなか本当の証拠ということではないわけですね。そういうことでお願いをしているわけでございます。  次の質問に移らせていただきますが、初めに国土庁長官にお伺いしたいと思うのです。  地震の問題というのは本当にどうなのかということがいま多くの方から聞かれているわけでございます。この前も東海地方の方では、地震が来るのだったらいまの家を建て直すのはやめようかとか、どの程度の規模があるのだとか、こういうぐあいに言われているわけでございますが、とにかく地球はもう何十億年も前から地震みたいなものを繰り返しながらずっとやっておるわけでございますから、それは地震が来ても当然おかしくはない。その中で、その説の中では六十九年期説であるとか、あるいはまた十年に一回は震度五ぐらいの地震は来ているんだとか、そういうことが再再にわたって言われております。そこで、国土庁としても地震予知連絡会とか、あるいはまた東大の研究所とか、あるいは気象庁、国土地理院というものをまとめまして、そして何とかこの予知をきちっとしなければいけない。ところが、いまは予知といいましても、学者の方がこういうことじゃなかろうかという程度でございまして、それが警戒警報だとか空襲警報になるのか。その場合に、今度は、地震予知と防災対策とかそういう面の連動的なものは一体どうなのかということについては、具体的にはいろいろやっておるようですが、なかなか詰まった問題で出てきていない。  そこで、国土庁長官、いままでの予知という一つの問題に対して、一体地震というものが来るのか来ないのか。長官が恐らく今度は来ますなどと言うと大問題になるでしょうから、大体いまの予知のできるパーセント、五〇%当たりますとか、七〇%ぐらいいけます、いまこういうことが言われておりますというようなことについては、予知についてはどのようなお考えを持っておるか、お伺いしておきたいと思います。
  111. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  地震予知については、今回の五十二年度予算においても、科学技術庁あるいは文部省あるいは通産省その他に相当程度の予算を編成いたしまして、その対策に当たっているわけでございます。  御承知のように、地震の問題で一番社会的に大きな話題を呼んだのは、東京大学の理学部の石橋助手が、去年でございますか、遠州灘沖から駿河湾にわたる地域に大規模の地震が発生するであろうということを発表いたしまして、それで、これについて先ほど申しました編成メンバーの予知連絡会議でいろいろ検討した結果、あの地域はいまの段階では地震発生の事前現象というものはまだ発見されない、しかし、あの地域はやはり地震発生の周期性が見られる地域でございますので、やはり一層これの観察、観測は進めてまいらなければならないということが、ただいまの一番の問題点になっておるのでございます。  ただいま新井さん御指摘のように、地震予知というものと、直ちにそれが警戒態勢に入るということは、いろいろ社会的な不安、動揺等が伴うものでございますので、直ちに警戒警報の態勢を整えるかどうかということは非常にむずかしい問題なのでございます。ですから、私たちとしては、まずできるだけ地震予知によってこの災害の被害を防止しようということ、それから、気象庁の各気象機関がたくさんございますので、そこを通じてもできるだけ地震の把握をしていくというようにただいまいたしているような状況でございます。
  112. 新井彬之

    新井委員 予知については、いつごろになったらきちっとしたものが出て、そしてこういうことですということになるのかということでありますが、とにかくほとんどの学者の方も、地震が来ることは来るんだ、それも大型のものが来ることは来るんだ、ただいつどこへということがわからないんだというぐあいに、来ることはみんな確信を持っているわけですね。そういうわけでございますから、そういうことについても、やはり予知とそれを一体いかに活用するかということ。これがなければまた中途半端だろう、来るよ来るよと言ってかえってまた混乱を招くというようなことになると思いますので、そういう面についてはひとつ全力を挙げてやっていただきたい、このように思うわけです。  それから、昭和四十九年八月に行政管理庁から、「大都市における震災対策に関する行政監察」の結果ということで、非常に厳しい勧告がありますね。この勧告の中で、各省庁がそれぞれお互いの責任をなすり合っている。こういうことで批判をされておるわけでございますが、現在三年を経過しておりますから、それから大分充実をしたと思いますけれども、これはもう外務省を除いて各省庁全部にまたがる問題だと思いますが、厚生省の場合、一体どういう任務を持っていて、そうして一体どこまで具体的に進んでいるか、その点をお伺いしたいと思います。
  113. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 地震と厚生省ということでございますが、私の方は、直接法律的に災害救助法の発動の許可をする権限を持っておりますから、災害救助法を発動する。その実施は、これは県知事に事務は委任をいたしてあるわけでございます。  いま具体的にどういうことをやっておるかと言われましても、具体的にこうということはなかなかお答えしづらいのでありますけれども、地震の問題については、まず水の確保をしなければならぬ。その次は、血液を含めた医薬品の確保、それから医療機関の協力体制、そのほかにもあろうかと存じますが、大きく分けると大体そんなところじゃないか。  水の確保の問題については、水道の管が破裂をするとか、あるいは停電のために浄水場の機能がとまる、そこで、それについては電源は二つ実は常時用意をしておるわけであって、この二つともとまってしまうとこれはお手上げということになるのでありますが、そういうふうなことで、また管の破裂については、埋没ばかりではなくて、土の上を臨時的にホースその他で配管をするというようなことなども考えられようか、こう思っておるわけでございます。  薬品の問題は、薬局や何かに薬品はあるわけでございますが、地震になるとどういうふうな火災が起きるのかわかりませんので、どういう常備薬を持つように勧めたらいいのかどうか、まだそこまでは実は指導はしておらないのであります。
  114. 新井彬之

    新井委員 この地震の問題というのは、いつ来るという予定がないのです。あした来るかもわかりませんし、さっきも言いましたように、昭和五十三年からはまさに周期に入るのだ、危ないのだ。防衛庁とかあるいは消防庁なんかはそのことに対して全力を挙げてやっておりますね。ところが、いま言いましたような血液とか薬品あるいは医療班の派遣の問題ですね、これに対して、この前の行管の指摘が三年前でございますから、いまもしも起きたとしたら、厚生大臣、これは何か具体的にできておりますか、どうですか。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  115. 上村一

    ○上村政府委員 まず血液についてお答え申し上げます。現在全国で六十五の血液センターがあるわけでございますが、ことしの二月二十八日現在、昨日現在でございますが、血液センターにおける保存血液の在庫数量が約四万六千本ございます。この数量と申しますのは、五十年度の実績で見ますと大体約五日分でございますので、通常このような状況で行われておりますから大体応急の間に合う、大体現在の備蓄量で応急の間に合うというふうに考えておるわけでございます。  それから一般の医薬品については、製薬団体なりあるいは卸の団体に連絡をすれば、全国の一部の地域で起こった場合に、配送し得るというふうに考えております。
  116. 新井彬之

    新井委員 医療班の派遣のことは答弁がなかったのですけれども、そうしますと、いま四万六千本の血液というものがあるから平常のときは大丈夫だ。これは大丈夫だと思いますよ。  そこで国土庁長官にもう一度お伺いしておきたいと思うのですが、まあ来る来ないは別にしまして、もしも東京で、首都圏に関東大震災並みの地震がいまあったとしたら、損害はどの程度になりますか。どのように計算されておりますか。
  117. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 一九二三年九月一日のいわゆる大震災がマグニチュード七・九、震度六でございますから、今日の東京の過密あるいは人口の増加、あるいは高層化、あるいは生活環境というものが非常に高度化したために電熱器だとかその他が入っておりますから、火災を招く度合いが非常に高い、危険物が多いというような状況から言いますと、関東大震災で死亡者が九万九千三百三十一名、それから行方不明が四万三千、家屋全壊が十二万八千、焼失が四十四万七千ということでございますが、これだけ考えますと、これ以上の災害が起きはしないかということを私たちは本当は心配しているのです。それを想定しながら、その対策考えているというのが事実なんでございます。  そこで、私はいままでの地震対策については、関東大震災の例も、あるいはまた新潟あるいは十勝沖地震等を例にとって、私たちは、できるだけ地震が起きた場合に最小限度の被害にとどめようとしていま努力をいたしておるわけでございますが、東京大震災の場合に、先ほど申し上げました死亡者が九万九千三百三十一名でございますが、実際に地震で死亡した方々というのは千人から千五百人だというのですよ。あとの大部分、九九%というのは火災あるいは火災に関係した死亡者であるということがいま統計上出てきているのです。  それからもう一つは、地震発生時に百三十一カ所から発火したんだそうです、あの当時。その中で六十六カ所は消火することができましたけれども、六十五カ所は消火することができませんで、それが蔓延してあの大惨事をもたらしたということでございますので、私たちはいま防衛庁あるいは消防庁あるいは東京都等々いろいろ連絡をとりまして、地震発生時から三時間内の防災体制というものを一番活発に進めてまいらなければいかぬ。それで地震の破壊以外に火災というものを起こさないような方法をいかにとるかということを中心にしていま進めておるわけでございます。そのためにはいろいろ長期的な、いわゆる耐火耐震建築だとかいろいろなものもございますけれども、とりあえず私たちは、まず地震時における火災からどう守るか、火災をどう起こさないようにするかということに最大の力を入れているような状況でございます。
  118. 新井彬之

    新井委員 さっき厚生省が言っていましたが、血液一つとりましてもそんな状態です。そうすると、国土庁が想定をしておる事故の状況、これはまだまだ少ないと思いますよ。たとえて言いますと、関東大震災当時の木造密集地域というのは三・二倍にふくれ上がっておりますし、それから自動車なんかも五百五十倍にふくれ上がっておりますし、それからガソリンスタンド等を考えますと、これは大変なことになるわけです。これは国土庁長官、自動車で震度六のあれにお乗りになったことありますか。
  119. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 ありません。
  120. 新井彬之

    新井委員 ないのですか。あれに乗って――ぼくもお話を聞いたんですが、立っているどころの騒ぎじゃないというのです。とにかく自分のこともできないぐらい、下にへばりついていなければならないという状態になるそうですね。だから、目の前にガスがあるから消しなさいとか、そんなことは絶対できない。それから関東大震災に遭われた方のお話を大分聞きましたが、とにかく縦揺れと横揺れでばさっと来る。自分たちは逃げなければいけませんし、火が初めは消えていたんですけれども、後、さっき話があったように火事になりましたね。そうすると、そんなものを消しているなんという人はいないんだというのです。だから、もう本当に大変な状況になるということになるわけですね。だからそういうことを想定してやらなければ、やはり幾ら防災対策をやっておりますと言っても、なかなか現実には進みませんし、予算面としても大きくこの対策に対してはとっていかなければいかぬ、こういうことになるわけです。せっかく運輸省も呼んでいますので、大臣はきょうはあれですけれども、運輸省はどんなことをやっておりますか。
  121. 真島健

    ○真島政府委員 大都市震災時において、私どもも災害対策基本法その他関連の法令に基づきまして一員となっておりますので、十分その任務の重大性を自覚しながらいろいろ努力を続けておるところでございます。  具体的に申しますと、運輸省という職掌柄、交通面についての課題が多いということでございまして、震災の事前対策というような意味におきまして、各施設の整備、点検を常時行っていくような指導をやる。さらに震災時におきまして旅客の安全な避難誘導というようなことについてのマニュアルの作成指導、あるいはこれはもうできておると思いますけれども、新幹線等、震度四ないし五になると自動的に停止するような装置を備えるというようなこと、さらに海上保安庁その他、通信網を持っておりますので、情報収集について本部の中での必要な協力体制をとるというようなことがあるかと思います。海上保安庁という機関も運輸省にはございますので、これは現場機関というような形で、海上におきまして震災時に大量の流出油で事故が起こる、あるいは海上火災が起こるというような問題に対しまして、油回収船あるいはオイルフェンス、油処理剤、流出油防除の器材、消防船艇というようなものを配備いたしまして、海上保安庁として応分の任務を果たすことにしておる次第でございます。  先般、海上における汚染防止の法律の改正をいたしまして、防災体制の強化に努めるというようなこと、海上防災センターを設置いたしまして、その辺の体制も着々と整えるというようなことが運輸省の役割りかと存じております。  震災後の応急物資あるいは被災地に対する応急物資の緊急輸送というような点について、やはり私どもの相当重い任務ではないかということで、もちろん震災時の各種の情報をとりながら、輸送すべき物資の種類とか量、輸送区間、こういうものを徹底しまして関係事業者に協力を求める、あるいはさらに必要な場合には、道路運送法、海上運送法等に基づきます緊急輸送命令というようなもので、物資の、特に生活必需物資等の被災地への輸送の確保というようなことを考えておるわけでございます。
  122. 新井彬之

    新井委員 いまみたいな作文を読んでいるようではだめですね。ということは、現実的にいまいろいろ打ち合わせをされて、もうあした来てもいいということで、いまは未熟だけれどもこれで動くんだということでなければならぬわけですね。運輸省とすれば、民間の輸送体制の協力と言う。こういうことが表にできたからできたと言っているんじゃないのです。まだほかにもいろいろありますが、細かいことを言っていると時間がありませんけれども、とにかくここで油断をして、まずは地震の被害がどのように食いとめられていくんだ、その中の役割りは運輸省としては何かということを明確にして真剣に取り組んでいかなかったら、これはやはり大事故につながるというふうに思います。  それから、これも時間がないからこっちで言いますけれども、建設省では避難道路をつくっているわけです。ところが、現在百二十一カ所東京都ではございますが、これは各大臣に皆お聞きしてもおわかりだと思います。自分の住んでいるところからどの道路を通って避難場所に行くかは、それは大臣の皆さんはよく御存じだと思いますが、実際問題、歩いてみてここが危ないというところがあるでしょう。そうして大体最長で六・八キロメートル、平均で四・七キロメートルですよ。それでみんなあれだけの人ロ――東京の銀座みたいなあんなような状態で人が出てきて、だっとその狭いところを行くということは不可能ですね。したがって、東京都でいろいろそのことについて実地調査した結果、これは何の役にも立たぬというものが案に立てられておるのでしょう。そうでしょう。そうしますと、こういうことについても、本来ならば自動車も何も通らない、本当の避難道路としての大きな道路をつくってやっていくようなことまで、震災だけを考えた場合には理想的には当然考えられるというようなことにもなるわけでございますけれども、とにかく、こういうような一つ一つのことが表にはできておるが、現実にはえらい大変な問題になるということを、時間がありませんから指摘だけいたしておきたい、このように思うわけでございます。  そうしてもう一つお話をしておきたいことは、東京都はこう言っているわけです。今度、東京都震災予防条例という条例をつくりました。その中の言っていることは、こういうぐあいに言っておりますね。「いうまでもなく、地震は自然現象であるが、地震による災害の多くは人災であるといえる。したがって、人間の英知と技術と努力により、地震による災害を未然に防止し、被害を最小限に食いとめることができるはずである。」、そういうわけでこの条例をつくったのだ、こう言っているわけです。したがいまして、国土庁長官も、国におきましても大都市震災対策推進要綱がありますけれども、明確に予算の裏づけのあるそういう地震対策というものを推進していかなければならぬ、こういうぐあいに思うわけでございます。その件のことについてどういうお考えか、お伺いして次に行きたいと思います。
  123. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 御指摘のとおりだと私も思いますので、今後そういう点については十分検討してまいりたいと考えております。
  124. 新井彬之

    新井委員 時間がないからまたちょっと説明させていただきますが、いま建物の中で、耐震構造に非常に力が入れられて建物が建てられてきたわけでございます。建物というのはいろいろございまして、鉄筋コンクリートとかあるいはまた鉄骨コンクリートとか、あるいはまた鉄骨のビル、こういうのがあるわけでございます。そこで耐震的にはこれだけのものが必要だということが言われてビルが建てられておる。しかしながら、建築学界等いろいろなところで問題になっておることを見ますと、いまのビルは、少なくとも鉄骨のビルについては、一つのデータからいくと九八%までが欠陥ビルである、したがって、このビルが、本来ならば震度五とか六に耐えられるようにつくられているように思うけれども、実際問題は欠陥ビルでございますから、本当にちょっとした地震でもつぶれる可能性があるということが指摘されていることはもうよく御存じのことだと思います。  そこで、いろいろな資料があるわけでございますけれども、たとえて言いますと、東京都の二十三区でもって鉄骨構造の建築の確認軒数は昭和四十九年度におきましても九千七百五軒です。そのうちの九八%というと、九千五百十一軒がもろくもつぶれるというような状態になるわけですよ。これはどこに欠陥があるかということは、まさにいままでは木造とか鉄筋コンクリートの場合はあんまり技術的に問題がなかった溶接という部門において非常な問題になっているわけでございます。溶接というのは、いいかげんな溶接をやった場合は、これはやってもやらなくともないのと一緒なんだ、柱が取れてしまうのだ。だから溶接が、たとえて言いますと、L形溶接と言いまして、きちっとした溶接をやっておる場合は強度一〇〇%です。ところが、それをちょっとすみ肉溶接みたいなやり方をすれば、その強度は一割から三割に落ちるということになっておるわけです。したがって、これはいろいろの例がありますよ。時間がありませんから申し上げられませんから、会計検査院、そういうことに対する指摘ですね、どのように指摘されていますか。
  125. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えをいたします。  溶接につきましては、先生御指摘のとおり非常に重要な要素でございまして、溶接に欠陥がございますと、構造物の強度上また耐久性ということに非常に問題がございますので、常に検査の際には私ども関心を持って検査しております。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 私ども検査に当たりましていろいろ指摘しておりますのは、先ほど先生もちょっとおっしゃいました溶接の場合の脚長と申しますか、溶接の長さが短かったり、あるいは連続して溶接しなければいけないのに断続溶接したり、点溶接で済ましておるとか、あるいは母材にえぐれが出ておるというのがございまして、こういうものにつきましては私どもも見つけるたびに指摘して、悪質なものについては検査報告に掲記しておるような状態でございます。
  126. 新井彬之

    新井委員 建設省にお伺いしておきますが、これも福岡の方で、きちっとした百貨店の倉庫でございますが、渕上ユニード箱崎流通センター、これが雨水の重さでつぶれちゃったというようなことを聞いておりますが、この内容はいかがなっておりますか。この原因は何ですか。
  127. 山岡一男

    ○山岡政府委員 渕上ユニード流通センターの事故につきましては、屋根のたわみでつぶれたわけでございますが、屋根の重量をやや過小評価しておった、たわみ量の計算が行われていないけれども、自重のみで試算をしてみますと、軒端より低い部分ができるような計算になっていたということが原因でございまして、鉄骨構造部分の詳細図に対しまして不分明な点がございますけれども、中身といたしましてはそういうふうな設計の不備によりましてつぶれたということでございます。
  128. 新井彬之

    新井委員 その設計の不備というのは溶接の不備でしょう。いかがですか。
  129. 山岡一男

    ○山岡政府委員 溶接の不備も原因の一つでございます。
  130. 新井彬之

    新井委員 また、丹沢のつり橋の落下事故がございまして、中学生や教員の方三十九名が重軽傷を負った。これも私、いろいろ問い合わせしたのでございますが、結果的には溶接の不備でございますね。これはどうしてそういうようなことになったかと言いますと、そういうつり橋をつくる設計者がいて、それでその設計者が今度は図面を施工者に渡すわけですね。施工者は今度はそういう鎖をつくる工場に渡してやるわけですが、実際問題、工場でつくる場合はどんなものに使われるかということがわからないわけですね。したがいまして普通の溶接をやった。そうすれば強度、もつわけがないわけですね。そういうような事故が起こっておりますが、いま言ったことで間違いありませんか、いかがですか。――わからなければ結構ですよ。  そこで、私、提言をしておきたいと思うわけでございますが、これは本当にいろいろなことを考えなければいけませんけれども、いまのデータを全部発表しないとちょっとおわかりにくいと思いますが、たとえて言いますと、溶接をやる人で資格を持っておる人というのは非常に少ないわけですね。だから、溶接というのは大変なことでございまして、たとえて言いますと、溶接部の管理一つにしましても、湿気のあるようなところに管理していたら溶接効かないです。あるいはまた夫婦げんかをして、そのときにいいかげんな溶接をやったら、またそれでも効かないくらい影響があるものである。これは専門家の話でございますね。ところが、もともと溶接のそういう資格もなければわからない人がたくさん従事をしてビルをつくっているわけでございますから、形だけひっつけばそれでいいというようなものじゃないわけですね。したがいまして、これはやはり明確にその方々に技術指導をしてあげるとか教えてあげるとか、そういうようなことをきちっとしなければ解決しない問題があります。  あるいはまた、もう一つの問題がありますが、たとえて言いますと、ゼネコンが非常に悪いということを言われているわけです。建設省は、公共事業に対して発注する場合に、これだけの費用だったら間違いなくいいものができるんだということで単価も決めて発注すると思います。しかしながら、それが、ゼネコンが受けてサブコンに行って、後ずっと孫請になってきますと、五〇%とか六〇%しかお金をもらわないわけでございますから、実際の仕事なんてきちっとできるわけありませんね。したがいまして、こういうところについてはこれだけの費用がかかるんだということについては明確にしなければいかぬ。こういうことで、やはりその仕事ができるような形にもしなければならぬということです。  あるいはいま建築士法がございますが、意匠設計と構造設計とあるいは設備設計というのがございますが、ほとんどが意匠設計でしょう。構造はよそへ出すんでしょうが。そうしてその構造でこれはこれだけの強度があります、間違いありませんと。ところが実際問題、それを見に行って、溶接がわかりませんから、柱がそのとおり入っていたらそれでいいということになるわけでしょう。したがいまして、アメリカではそういうことについては非常に厳しく、主事はいつでも立入検査はできるようになっておりますし、そういう専門の分野については、第三者の、どう言うか検査機関というものを設けまして、施主の方からお金を払って、うちのビルは間違いないか見てくれ、こういうようなことでやっているというのが現状ですね。したがいまして、そういう問題については、水災対策とひっくるめまして防災だとか震災だ上か言いますけれども、九八%のビルが震度が大したことなくてもつぶれるというように専門家が弊表している中にあって、これはもう早急に手直しするところは法改正をしなければいかぬ、こういうことでございます。  文部大臣もせっかくいらっしゃっていただいて、もう時間がなくなっちゃって申しわけないのでございますが、いまの学校教育は、いままでのやり方というのは、びょうでばんと打つそういう溶接ではないことを基本にまだ教えておるわけです。しかし、だんだん一歩ずつ進みまして、いまはもうとにかく溶接ということに進んでおるわけでございまして、この分野においては専門の工業高校あるいは大学、そういうところで理論的には教えますが、現実的にこれはこうだよということを教えている高校は非常に少ない。大阪大学の五十嵐教授ですか、ああいう先生のおられるところは徹底的に教えておるようでございますけれども、ほかはほとんど教えていないというような現状でございます。したがいまして、これからのこの建物を背負う一つの技術者の育成といたしまして、文部省といたしましてもそういうことで本当に力を注いでやっていただきたいということでございます。  時間がなくて、たくさん提言をいたしましたが、最後に建設大臣と文部大臣に一言ずつ答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  131. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お答え申し上げます。  詳細にわたって防災の件につきまして十分承りまして、私の方は、昭和四十六年に災害の、つまり地震対策本部をつくりまして、その趣旨にのっとっていま懸命に、そういう事態がありますときがありましても、万全を期さなければならぬという覚悟で進んでおるところでござまいす。
  132. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 新井委員御指摘のとおりに、昭和四十七年度に、溶接の基礎的研究を推進する体制を整備する必要を認めまして、大阪大学に、溶接工学に関する総合研究を目的として、この分野に関する研究者に広く共同利用させるための全国共同利用研究所としての溶接工学研究所を設置し、進展に応ずるように措置させておりますが、現在高等学校約五百校では基礎的基本的なことのみを精選して教えている実情でございますので、御指摘の点を十分心にとめて指導を続けていきたい、こう考えております。
  133. 坪川信三

    坪川委員長 これにて新井君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後再開いたします。     午後一時五分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十七分開議
  134. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。――政府閣僚諸公並びに委員に申し上げますが、時間励行でお願いします。  質疑を続行いたします。藤田高敏君。
  135. 藤田高敏

    藤田(高)委員 委員長がいま政府委員に時間励行ということを言いましたが、私はきょうの質問について通告をいたしておりますが、ある秘書官のごときは、通告しておる順序で質問をぜひしてくれ、こういう注文まで押しつけておきながら、私が質問するトップの人がおくれて来るなんということは、はなはだもって不見識。これは本当にまじめな話、私は不見識だと思います。そのことについてあまり言うことは本意ではございません。  第一に質問いたしたいのは、すでに本会議、今日までの予算委員会等で質問に出ておりますが、日中平和友好条約の早期締結に対する政府の基本認識と今後の取り組み方であります。  そこでまずお尋ねいたしておきたいと思いますが、こういう重要な外交案件でありますから、総理なり外務大臣なりあるいは内閣官房といったような重要なポストにおられる方の間において認識の相違は全然ないと思いますが、今日まで総理を中心として答弁されたことについては、内閣官房長官あるいは外務大臣それぞれ認識のずれはないでしょうか、確認を含めてお尋ねをしておきたいと思うのです。
  136. 園田直

    ○園田国務大臣 壁頭におわびをいたします。理屈なしに申しわけございません。  いまの御質問の件は、総理がしばしば発言される方針には、外務大臣も私も全く一致をいたしております。
  137. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日中の平和友好条約という日本の将来にとってもまことに大事な問題につきまして、私は福田総理の御指示のもとに、その御趣旨を体して行動をいたす所存でございます。もとより変わったことを考えていることは全くございません。
  138. 藤田高敏

    藤田(高)委員 当然のことだと思いますが、確認をいただきましたことを前提にして、具体的に質問したいと思います。  そこで、まず第一に官房長官にお尋ねしたいのですが、福田内閣発足以降、特に官房長官の立場として、日中平和友好条約の早期締結に向けまして、いろいろ私は新聞その他で拝見する限りにおいては、積極的な姿勢で対応しているやに判断するわけであります。これはきわめて歓迎すべきことでありまして、私はぜひそういう態度で今後とも積極的に終始してもらいたいと思うわけでありますが、ここで一つ、ちょっと奇異に感ずることがあるわけです。と申しますのは、園田官房長官が、公明党の竹入委員長が訪中されるに当たって、福田総理の伝言を伝えたということは聞き及んでおります。たまたまそういう時期に、牛場外務省顧問がちょうど台湾を訪問しておる。このことが台湾系の華僑の自由新聞に載っておるわけですね。一方では、野党の代表者に対して、新聞その他で報道されておるような、いわば前向きの国民外交というか、そういう政府の意思を含めた行動がとられ、一方では、外務省の顧問をしておる牛場さん、これはもう人ぞ知る福田総理の腹心中の腹心だというふうにわれわれは聞いておる。この人がまた同じ時期に台湾に行くということは、非常にこれは政治的には好ましいことではないのじゃなかろうか、私はこう思うのですが、どうでしょうか。
  139. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 牛場さんの台湾訪問につきまして、私、何ら関与いたしませんものでしたので、もし事情等がありましたら、アジア局長から答弁させたいと思います。
  140. 中江要介

    ○中江政府委員 お答えいたします。  牛場顧問は、いま先生御質問のように、外務省の顧問ということでおられるわけですが、今度の台湾に行かれますことにつきましては、外務省との間で特に打ち合わせがあるとか、あるいは何らかの任務を託するとか、そういうことは全くなくて、個人の資格で台湾に行かれたというふうに聞いております。
  141. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この問題は余り深くせんさくしようと思いませんけれども、客観的な動きの中から、お互い政治家として、政治問題として判断する限り、私は余り好ましい動きではない。個人の資格で行ったとは言いながら、外務省の顧問、こういう肩書きを持っている以上、日中平和友好条約を促進さすという前向きの姿勢の中でとられる言動としては、余りこれは利口なやり方ではないと思うのですが、その点についての見解だけをお伺いしておきたいと思うのです。外務大臣でも官房長官でも、どちらでも結構です。
  142. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの藤田委員の御趣旨はよく了解できますので、今後気をつけたいと思います。
  143. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そこで次にお尋ねしたいことは、福田総理は施政方針演説の中で、あるいは予算委員会の答弁を通じて、日中平和友好条約の締結については、双方にとって満足のいく形で今後締結促進に向けて努力を続けていく、こういう答弁をなさり、またいま一つの問題としては、いわゆる宮澤四条件あるいは宮澤四原則なるものは、原則でもなければ条件でもない、こういうふうに明確に、問題になりました宮澤四条件については否定をされております。私は、日中平和友好条約の早期締結に向けて、こういう態度をおとりになることは、きわめてりっぱな姿勢だと思うのです。  しかしそこで、これまた念のためにお尋ねをしておきますが、双方にとって満足のいく形というのは、今日段階においていまだそういう満足な条件が成熟されていないという意味なのか。もし、されていない条件があるとすれば、それは何なのか。せんだっての参議院におけるある議員のこの種の質問に対しても答えられておりますが、まずこのことをお尋ねすると同時に、時間の節約上番ねてお尋ねしておきたいのですが、宮澤四原則を否定されたこの立場というのは、いわばこの四条件とも言われ四原則とも言われたものは、政治的には白紙に返ったというふうに理解をしてよろしいかどうか。この二つをお尋ねしたいと思うのです。
  144. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いわゆる宮澤さんの示された四つの点に関してでございますが、私ども根本的に日中平和友好条約につきましては、日中共同声明でもう路線ははっきり引かれておるんだ、こういう認識をいたしております。そして両国政府の間で今日まで折衝を続けておりますけれども、現在までのところこの共同声明に盛られました貿易、漁業あるいは海運、航空というような四つの協定はもうすでにできて、余すところがこの平和友好条約ということでございます。そして、この友好条約の締結につきましてはいろいろな経過がございましたけれども、昨年来両国政府指導者がかわられたわけでございますので、過去のいろいろなことにつきましては、いままでの積み重ねがありますからこれを全く否定するものではございませんけれども、これから新しい両政権が新しい気持ちで話し合いをして、そして双方の満足のいくような決着を図りたいというのが趣旨でございます。そういうふうに私どもは考えている次第でございます。
  145. 藤田高敏

    藤田(高)委員 前段の双方にとって満足のいく条件とは。
  146. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この満足のいく条件といいますのは、この条約によりまして両国民がこれでよかったなという意味であります。したがいまして、この中がどういうことであるかということにつきましては、お互いこれからの話し合いというものがございますので、その中身につきましていろいろな規定をいまここで加えるということは、条約を締結しようということにつきましてかえっていろいろな支障が出ては困るというような配慮から、このような表現をとっておるというふうに御理解を賜りたいのでございます。
  147. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは条約締結の時期の問題にも関連をするわけですけれども、こういう外交問題ですから、何月の何日とかあるいは決定的にいつごろとかそういうことは政府として言明しにくい問題でもあろうかと思うのです。しかし、一国の総理が国会の審議を通して、双方が満足いく形で条約の締結をやるんだと言う以上は、そういう条件が今日段階において成熟をしておるのかどうかというぐらいなことは、これは言えるんじゃないか。もし成熟していない、条約締結へ満足のいかないような条件が仮にあるとすればそれは何だろうか。ないことを私は求めるわけですけれども、その点はどうか。
  148. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 条約の内容につきましては、これからの折衝事項でございます。そして現状において、もうこの内容がすっかり両国の満足する状態になっておるということにはまだ至っていないと私は思いますが、しかし、これにつきましてはやはり新しい両指導者が最終的にお話し合いになって、そして互いに譲るべき点は譲り合えば必ず到達できるもの、こういうふうに思う次第でございます。
  149. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きわめて抽象的でして少し理解しにくいんですが、この間小川大使が帰国されて、そして総理なりあるいは外務大臣に報告があったと思うのですが、それではその内容を説明してください。
  150. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 小川大使が帰られまして総理に御報告されましたこと、私も陪席をいたしておったわけでございます。  小川大使の報告されましたことは、中国の最近の政治、経済情勢から始められたわけでございまして、これにつきまして、華国鋒体制がだんだんと着実に安定化の道をたどっておるということ、それから経済につきましては、いろいろな天災等がありましたけれども、これから徐々に回復するであろうというようなことでございます。  それから条約の締結問題につきまして、この点につきましては、小川大使としては懸案をなるべく早く片づけるべきであるという趣旨のことを話されたわけでございます。
  151. 藤田高敏

    藤田(高)委員 二月二十二日、参議院の予算委員会における質疑の中で、ある議員がこの問題についてこのような質問をしております。「きのう記者会見をされて」、きのうというのは二月二十一日です。「その発表によりますと、中国も華国鋒体制で固まりつつあり、もう日中平和友好条約を締結する上において阻害要因は何もない、あとは政府の決断だけであると、こういうように総理に話をしたと聞いておるわけです。そのことは事実でございますか。」、こう質問しますと、福田総理は「大体そのとおりでございます。」、こういうふうに参議院では答えておるのですね。ですから、阻害要因は何もないんだということになれば、中国側にないということになれば、今度はあるとすれば日本の側にあるのか、こういうことになるでしょう、大体そうですということを総理はお答えになっておるのですから。あるとすれば、それは何なんですか。ないのですか、あるのですか。それを私は聞かしてもらいたいと思うのです。
  152. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この条約締結につきましては、わが国といたしましても共同宣言以来の既定の路線でございますので、この共同宣言を誠実に履行するという上からも、これはぜひとも締結をすべきであるし、また締結をしたいという意欲を強く持っておるわけでございます。そして、これから両国間におきましてこの条約の中身につきまして、やはりなお両国の満足し得るような条件に到達するように日本政府としても努力をする、こういうことでございまして、一体時期はどうだとおっしゃいますが、これはなかなか、ちょっといま時期までは明示はできないわけでございますけれども、お互いに、少なくとも日本政府としてはその方向に誠心誠意努力をするということで御了承を賜りたいと思います。
  153. 藤田高敏

    藤田(高)委員 往々にして外務省はよくこの種の問題を議論するときに、外交チャンネルを通して、こういうことをおっしゃるのですが、いわば第一線の北京駐在の大使が、いま私が披露したようなことを言っておるわけなんですね。いわゆる条約締結についての阻害要件は何らない、ここまで言い切っているわけです。総理も、そのとおりでございますと、こう言っておるのですから、私は、もうこの段階になれば文字どおり総理の決断以外にない。ですから、日本側が決断をしないことが阻害要因になっている、こういうふうに政治的に判断せざるを得ないのですが、その点は総理がおれば一番いいのですけれども、これはどうでしょうか。ちょっとしんどい答弁かもわかりませんが、内閣の大番頭としての官房長官、どうでしょう。
  154. 園田直

    ○園田国務大臣 総理の答弁された、双方満足のいく条件でという答弁でありますが、双方の満足とは、当方と相方の関係もございまするし、当方の立場もございまするし、あたりの天候、空気等もございますので、その点を考えておるわけであります。
  155. 藤田高敏

    藤田(高)委員 日ごろに似合わない歯切れの悪い答弁でして、これは所管大臣でもありませんから、これ以上のことをお尋ねすることはいささか無理かと思います。しかし、私は、こういうやりとりがこの国会の中で四、五日前展開されておるという事実を踏まえて、積極的にこの条約締結に向けて努力を払うべきだと思うのです。  そこで重ねてお尋ねしておきますが、同じく二月の三日でしたか、代表質問に対する総理の答弁の中に、覇権条項の問題については、中国側が平和憲法を理解するということを前提にして云々というような答弁があったと思うのですね。憲法の問題は、一九七二年に田中元総理が共同声明を結んだときに、中国には中国の憲法、日本には日本の憲法があるということをお互いに理解をし合ってあの共同声明を発表したわけですから、いまさら平和憲法云々というようなことは言わなくてよよろしいのじゃなかろうか。私はこう思うのですが、あの答弁には特別な政治的な意味がありますかどうか、これは外務大臣お答え願いたいと思います。
  156. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 共同宣言のときに当然覇権条項がもうすでに入っておるわけでございますから、そのときからもこれは日本国憲法の枠内であることは当然だと思います。私が福田総理のお考えを推測するのはいかがかと思いますけれども、日本の外交方針というものは、やはり日本の平和憲法というものに深く根ざしておると私は思うのでございます。日本の外交というものは、力による外交ではない、平和憲法に基づく外交方針をとらなければならないわけでありまして、そしてそういう方針で今日まで積み重ねの努力が払われてきたわけでございます。そういう意味で、日本が本当に平和憲法をいただく、本当の平和外交をしているのである、そういう趣旨から、この共同声明でもうたわれていることが憲法の範囲内のことであることは、おっしゃるとおり当然のことであろうと私は思うのでありますが、これからの日本の外交の大きな柱として平和憲法のもとにあらゆる国と平和外交を続けていくのだ、こういう精神をおっしゃられたのではなかろうかと私自身は解しておるわけでございます。
  157. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは総括的にお尋ねをしますが、平和友好条約の締結それ自体の一般的な条件というものは、参議院における総理答弁のように成熟しておる、機は熟しておる、こういうふうに理解をしてよろしいかどうか。また、いわゆる宮澤四原則については、経過としてはあったけれども、今日の段階ではそのことは一応政治的には白紙の立場に返った、内閣もかわったことだし、中国も華国鋒体制という形で新しい体制でいま建設が進んでいる、そういうことで、新しいそういう白紙の立場で今後やっていくんだ、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。私は、そうあるべきことが平和友好条約をまともな姿で締結を促進さすことになると思うのですが、どんなものでしょう。
  158. 園田直

    ○園田国務大臣 日中友好条約の環境が成熟しているかどうかという御質問は、総理のしばしばの御答弁で御理解いただけると存じます。  それから、宮澤元外務大臣の発言は、政治の継承権という点からいっても、外務大臣在職中に言われたことでありますから、これを抹消、白紙だと言うわけにはまいりませんけれども、これは条件でもなければ原則でもない。こういうことは総理も外務大臣も私も意見が一致をしておる政府の方針でございます。
  159. 藤田高敏

    藤田(高)委員 後段の四条件そのものは条件でも原則でもないということははっきりしておるわけです。少なくとも今日までの過程の中ではあった。そのことが日中間の阻害要因になって繋ったことは、これはだれが何と言おうと事実なんです。しかし、福田内閣が本気で条約を締結するのだということになれば、こういったものは経過としてはあったにしても、福田内閣としてはそのことは白紙の立場で今後当たるのだということぐらいは当然言えるのじゃないでしょうか。そうでなければ、いま御答弁になったようなことでは、やはり奥歯に何かはさまったような感じを受けますが、どうでしょうか。
  160. 園田直

    ○園田国務大臣 発言をされた宮澤元大臣にお会いをしまして、あなたが在職中に発言されたことを否定するような発言をいたしましてというおわびをしましたところ、宮澤さんも、あれは当時の私の理解を言ったものでございますから結構でございます。こういう返答でございました。これで御理解を願いたいと思います。
  161. 藤田高敏

    藤田(高)委員 このことはきわめて重要な問題ですが、いま官房長官から言われたように、気持ちとしては少なくとも白紙の気持ちでやっていこうというぐらいな気持ちだというふうに理解してよろしいですね。
  162. 園田直

    ○園田国務大臣 言葉の使い方でありますが、当時の外務大臣が言われたことでございますから、これがなかったと言うわけにはまいらぬわけであります。しかし、今後日本と中国が条約を結ぶ場合には、これは支障にはならない、条件にも原則にもならない、こういうことだと思います。
  163. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大事なところですから重ねてお尋ねするのですが、これは総理があれだけ言明されたのですから、今日の段階ではそれはもう条件でも原則でもないのだということは、一応政治的には白紙の立場でこれから当たるのだ、福田内閣としてはそういう立場で当たるのだ、そういう立場ということがもし発言しにくいとすれば、少なくともそういう気持ちで、白紙に返ったという立場なり気持ちで今後折衝に当たるのだということは、これは言えるのじゃないでしょうか。
  164. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの問題でこだわるようなことにはならぬと思います。
  165. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、この問題は大事な問題でありますが、大体気持ちとしては官房長官の言われた方向で福田内閣としては条約締結に向けて努力をなさるだろう、するのだ、こういうふうに私は理解をいたしましょう。これは顔色その他を含めましてそのように理解をしておきたいと思います。  さて、せんだってモンデール副大統領が訪日しましたが、このとき当然日中のこの問題あるいは米中の正常化の問題等々が話題に出たのではなかろうか、こう思うのですが、モンデール会談の中身について発表できる範囲のことがあれば説明してもらいたい。
  166. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 モンデール副大統領が見えましたときの会談の後の発表につきまして、いまここへ手元に持ってまいりませんでしたので、もう一度確かめてみたいと思いますが、このいまおっしゃいました日中関係につきまして、私の記憶にはこれが話題に出たことはないわけでございます。米中関係につきまして、米国としては上海コミュニケの線を継続するのだということは話が出たと記憶をいたしております。
  167. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この会談の内容にまで余り立ち入って言おうと思いませんが、もし外務当局の方で説明されることがあればやってもらいたいと思うのです。私は、当然この問題は出たと思っております。また、アメリカにおいては、去る一月二十日だったと思いますが、バンズ国務長官と黄鎮駐米中国連絡事務所長ですか、この両者との間に、かつてのキッシンジャーさんも入って、国務長官の訪中の大体の日取りが決定したやに報道されております。こういう一連の、モンデール会談なりいま私が指摘しましたようなアメリカにおける中国の事務所長との間の話し合い等から判断をして、アメリカは恐らく一九七二年の米中いわゆる上海コミュニケ、この線に沿って正常化への具体的努力を積み重ねていくんじゃないか。それはもうことしの秋口だというふうにも判断できる情報も一部あるわけでありますが、そういう方向に沿って動いているということを前提にいたします場合、日本の外交のあり方として、日本はアジアの一国なんだ、そうして中国に対してはあれだけの迷惑と犠牲を強いてきたんだ、そういう歴史的な、いわゆる覇権を求めたそういう歴史的な経過の上に立って考える場合に、再びアメリカの頭越しの後で日中の平和友好条約を締結するようなことにならない時期を選んで、わが国政府としては条約の締結に当たるべきじゃないかと思うのですよ。その点について、そういうアメリカとの関係等も含めて、外務大臣の条約締結に向けての熱意、できれば具体的には条約締結の時期を、大体のめどとしていつごろに置いていくんだというぐらいな気構えのあるところをひとつ説明をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  168. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま藤田先生の仰せでございますけれども、この条約がいつ締結できるかというのは、いまここで時期を明確化するということは私にはとてもできないことでありますし、官房長官お帰りになりましたが、まだ政府としても、これはやはり相手方のあることでございますので、時期をここでまだ全く申し上げる段階にないということを御理解を賜りたいと思います。
  169. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私がいま言ったようなアメリカの動き、ハンズ国務長官が、いわゆる恐らくSALTの会談の後中国を訪問するんじゃないか、こう言われております。これから先は私の一定の推察でありますが、恐らく、せんだって日本にやってきたモンデール副大統領も訪中するのではなかろうか、さらにはカーター大統領みずから北京に乗り込んで、いわゆる米中の正常化のために努力をするんじゃなかろうか、私は、恐らくそういう方向でこの米中間というものは急速に正常化への足取りを進めていくような気がするわけです。これはそれぞれの見方があるだろうと思うのですが、私はそういうふうに一定の推量、判断をするわけですが、そういうアメリカ――何もアメリカにどうこう気がねしてやるという意味ではありませんが、日本の場合はアメリカがもう最高のパートナーとしての関係にあるというわけですから、残念ながらアメリカの顔色も見ながらやらなければいかぬという条件もあるでしょう。あるいはそれ以外に、第三国に気がねしてはならない気がねをしておる向きも私は率直に言って今日の外務省にはあると思う。わが国政府としてはあると思う。しかしそのことを私は突っ込んで申し上げようとは思いません。しかしここで申し上げたいことは、日中共同声明の精神と文言に沿って条約締結に向けて積極的な努力を払うというのであれば、私は、時期判断の問題については仮にいろいろあるにしても、ぼつぼつ外務大臣が直接北京に行くなりあるいは総理の特使を派遣するなり、あるいは総理が直接訪問するなりそういう時期が当然今年の早い機会、それは参議院の前後になるか、いまの日米首脳会談とのかかわり合いの中でどう設定されるかわかりませんが、そういうことが具体的に外交日程の中にのせられるということが、平和友好条約の締結を具体的に誠実に追求していくのだという政府の裏づけになると思うのですが、そういう具体的な努力をなさる用意があるかどうか、お尋ねいたしたい。
  170. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 条約の締結につきましては、わが日本政府といたしましても真剣に積極的に取り組んでおるわけでございますので、いま藤田先生の御指摘の点でございますけれども、私どもの姿勢は積極的に取り組むということでどうか御理解のほどを賜りたいと思います。
  171. 藤田高敏

    藤田(高)委員 積極的に取り組むという中には、決定的なことは言えないにしても、私が言ったようなことは重要な参考になる、そのように理解してよろしいですか。
  172. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この条約の締結を積極的に進めますためには、いろいろな両国の政治日程等の問題も入ってまいることは当然でございます。そういうことも含めまして積極的に取り組むということを申し上げているわけでございます。
  173. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の主張しましたことが理解をされる形の上で、今後、条約締結に向けて努力をするということですから、ぜひその方向でやってもらいたい。  私、この際、特に鳩山外務大臣に要望しておきたいのですが、あなたのお父さんは言うまでもなく日ソ平和共同宣言、いわゆる宣言方式によって、二十年前に日本とソ連とのいわば国交正常化に向けて大きな歴史的な仕事をなさった方であります。率直に申し上げてあの当時は自民党与党の内部には非常な抵抗があった。しかしわが国民族の将来を考えるときに、どのような抵抗があってもこれは何としてもやらないとということで、あなたのお父さんはああいう決断をなさったと思うのですね。私は非常に偉いと思うのです。だからその当時日本社会党は、その批准に当たっては、たしか鈴木茂三郎委員長の当時だったと思うのですが、野党といえどもあなたのその英断に対して協力を申し上げましょうということで、あの共同宣言が今日に生きておると思うのですね。私は、いまこそ鳩山外相は、お父さんにまさるとも劣らないそういう姿勢で平和友好条約にぜひ取り組んでもらいたい、これを強く要望しておきたいと思う。  私は特に中国の場合、私も五回ばかり訪問いたしましたが、余り細かい理屈よりも心と心といいますか、お互い真心と真心の通じる外交をやる国だと思っています。そういう点では、かつて大平外相があの航空協定を結ぶときにも、あれこれぜんさくするよりも、事中国との外交については、案ずるよりも産むはやすしということで体当たり外交をしたと思うのですね。そういう点で私は、いまこそ前段私が指摘したように、この条約締結の責任ある当事者がやはり中国と直接接触する時期に来ておると思うのです。そういう方向でぜひこの具体的な努力を要望したいと思いますが、そういう方向に沿ってやるかどうかということをもう一度あなたの決意のほどを聞かしてもらいたい。
  174. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま藤田委員のお説を深く心にとめまして、積極的に折衝してまいりたい、こう存じております。
  175. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きょうは総理がおりませんので、最後のそういう意味の締めくくりはできませんが、どうぞこの点に関する限りは、担当大臣として総理をひとつ引っ張っていくぐらいな、そういうリーダーシップを発揮してもらうことを強く要望しておきたいと思います。  さて、私、次に民主カンボジア国との外交問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  はしょりますが、例のロンノル政権時代約五年間、日本はカンボジアの民族解放闘争に対してはいわば水をぶっかけてきた。いわゆるロンノル政権を最後まで支持してきた。大使館の引き揚げについても、世界各国の中で一番後まで大使館を置いて、いわばロンノル政権を支持してきたという、これは恥ずかしい外交の一ページがあるわけであります。私どもの先輩なり、あるいは北京を通じて、あるいは中国に来ておりましたカンボジアの政府首脳の、その当時シアヌーク殿下の関係のいわゆるカンボジア王国民族連合政府の代表とも私自身も会ったわけでありますが、その当時のカンボジアの政府代表の言うのには、日本はロソノル政権を支持することだけはやめてほしい、中立的な立場でこの民族解放闘争というものに理解を示してほしい、こういうことが共通したカンボジアの民族解放戦線に代表される人たちの言葉だったと思う。しかし、いま申し上げたように非常に反動的な立場をとってきたわけでありますが、一昨年プノンペンの解放がなされてかれこれ二年近くになりますが、今日の段階においてわが国政府は、このカンボジアに対してどのように政治的、道義的責任を考えているか、またその政治的、道義的責任というものを今後どういう形で実現をさしていこうとお考えになっておるか、ぜひ聞かしてもらいたい。
  176. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 カンボジア政府に対しまして日本は従来から、あるいはロンノル政権時代につきましても国交を保っておったわけでございまして、政府といたしましては、やはりカンボジア国民の幸せのために経済協力等をやるという態度であったわけでございます。しかし、結果におきましてロンノル政権というものが倒れたことはもう事実でございまして、この点につきましては、これは歴史の批判に仰ぐしがなかろう、こう思うわけでございます。しかし、これから日本が新しい民主カンボジア政府に対しましてどのような外交関係を積み重ねていくかということはこれからの問題でございまして、目下、まず大使館の設置方につきましていろいろ話し合いを進めたい、こう考えておることでございまして、新しい政府に対しましてこれから国交を積み重ねるということが外交として当然なすべきことであろうと考える次第でございます。
  177. 藤田高敏

    藤田(高)委員 罪の償いと言えば悪いかもわかりませんが、私は、平たく言えば、やはりロンノル政権を支えてきた過ちを償うに足るだけの政治的、道義的責任というものをわが国外交がやるべきだ、こういうふうに思うわけです。そこで、当面そのことだけのやりとりをやる時間がありませんので前に進みますが、小川大使を通じていわゆるカンボジアとの間に今後の外交関係をどう発展さしていくかということについて、大使館の設置の問題あるいは大使の交換の問題についても話し合いが進められておるやに聞いておりすが、現段階における大使交換の見通し、今後の展望についてお聞かせ願いたい。
  178. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 カンボジア政府との折衝でございますけれども、昨年の九月にイエン・サリ副首相が来日されまして、その際に当時の宮澤外務大臣から、できるだけ早い機会に大使館の相互設置をしたいという希望を表明をいたしております。  また、いま御指摘のような、北京におきまして、在北京わが方の大使館を通じまして先方と打ち合わせをしておるところでございますが、詳細はアジア局長から御説明申し上げます。
  179. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま外務大臣が御説明になりましたような大きな経緯の中で、さしあたってはいま藤田委員の御質問のように、北京におきましては大使館の相互設置、それがいますぐ無理なら、館員がカンボジアに出張いたしましてどういう状況か見て、またカンボジアの当局者とも話し合う、そういう機会も持ちたい、そういったことを北京の大使館同士で話し合っておりますけれども、カンボジア側からはまだそういう具体的なわが方の希望に対していいとも悪いとも、どういうことだということも反応は来ておりませんが、イエン・サリ副首相が昨年参りましたときの話でも、カンボジアは非常に大きな戦火にさらされた後の始末に忙殺されているので、いましばらく多くの国からの外交関係設定の申し出にもかかわらず、具体的にこたえていく状況になっていないのだということを申しておりましたので、現状もまだそういう状態が続いているものかと推察するほかはないということでございます。
  180. 藤田高敏

    藤田(高)委員 後で触れますけれども、たしか二月二十六日、二、三日前の新聞では、具体的な貿易の交流がなされるような状態が生まれてきておるわけです。これは後で質問しますが、そういう条件の中で、ちょっとスウェーデンかノルウェーだったか忘れましたが、どこかの国は、たとえば北京だったら北京の小川大使をカンボジアの大使として兼任をさすというような形の外交関係をつくっておるところもあるわけなんです。そういう兼任方式はとらないのか。あくまでも専任の大使派遣まで時期を待つのかどうか。私は、そういう経済交流が具体的になされ出した段階ですから、大使の交換についてももっと具体的な見通しが今日段階でやれるのじゃないかと思うのですが、そのあたり外務大臣どうでしょう。
  181. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 兼任の大使をするにつきましても、やはり先方との間に話し合いがなければできませんので、鋭意その話し合いを詰めている段階であると思います。何分にも、ただいまアジア局長から御説明申し上げましたように、先方は戦後の復興に大変忙しい時期と聞いておりまして、また日本の経済界の方は経済面の協力をやりたいという非常に熱心な希望を持っております。これらの戦後の復興に日本が協力できますように鋭意努力をしておるところでございます。
  182. 藤田高敏

    藤田(高)委員 このこと自体についてもいま少しお尋ねしたいのですが、ぜひ専任大使の交換ができる方向で、これまた外交関係を深めるために積極的に努力をしてもらいたいということを要求しておきます。  先ほどちょっと答弁の中にもあったわけですが、宮澤外務大臣のときに、イエン・サリさんが、これは外務大臣ですか、日本に立ち寄ったときに、羽田空港に出迎えに行ったのは外務省の職員がたった一人か二人行っただけで、大事な局長、役職にある連中はだれ一人出迎えにも行かなかった、車は中国大使館か何かの方で皆めんどう見たというようなことを聞いておるのですが、そういう非礼なことがあったのですかどうか。これだけちょっと軽く聞いておきたいと思います。そんなことは恐らくないと思うのですけれども……。
  183. 中江要介

    ○中江政府委員 イエン・サリ外務担当副首相が外交関係設定合意後初めて日本に立ち寄られるということを北京の大使館から私ども知らされましたので、イエン・サリ副首相の日本における接遇につきましては、北京を出発される前に、すでに北京でいろいろ打ち合わせをいたしまして、その結果、日本におきましては宮澤外務大臣との会談を事前にアレンジいたしますということにいたしまして、さらに、空港には私自身が参りましてお出迎えをして、滞日中のいろいろのスケジュールをお打ち合わせし、そして翌日は、私自身イエン・サリ副首相と食事を一緒にするというようなこともあったわけでございまして、日本政府として、イエン・サリ外務担当副首相の接遇について特に何か手薄なところがあったというふうには私どもは感じておりません。
  184. 藤田高敏

    藤田(高)委員 余り表に出なかったので見えなかったかもわかりませんね。それはそのぐらいにいたしておきましょう。  さて、当面両国間において調整をとるべき問題としては、大使館の館員の宿舎の取り扱いの問題であるとか幾つかあると思うのですが、一つの問題としてロン・ノル政権時代のいわゆる借款問題がありますね。これは現在十三億二千万ほどいわば返済不能になっておりますが、時間の関係でお尋ねするのですけれども、こういった借款については、ビルマとかインドとか。パキスタンとかバングラデシュとかブラジルとかそういう国においては借款免除という取り扱いをしてきたと思うのですが、わずか十三億程度のことですから、これは大蔵省との関係もあるでしょうけれども、この程度のものは借款免除の対象にして、新しい国交関係を発展させるというお考えがあるかどうか。これはひとつ大蔵大臣なり外務大臣お答えいただきたい。
  185. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 過去の借款につきまして、これの戦後の取り扱いをどうするかということにつきまして、目下ベトナム国との間でもこの問題を鋭意詰めておる段階でございます。政権がかわりましても、国と国との債権、債務関係というものは一応残るというのが私ども主張している点でございます。これらにつきましては、これからお互いに誠意を持って詰めるべきものというふうに考えておる次第でございます。いまのところ、その程度しか申し上げられないのでございますけれども、日本の借款というものが実際現地におきまして経済効果という意味で発揮されているかどうかというような点につきましても、私は一つの大きな判断材料ではなかろうかと思いますが、これらにつきまして、今後これからの経済協力をどのようにするかということも関連があると思いますので、それらを含めて今後話し合いを、できる段階になればすべきであろう、こう思うわけでございます。
  186. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ロン・ノル政権時代のああいう過ちをやったわが国ですから、そういうことも含めてぜひ私が主張しておるような方向で、ひとつ前向きの姿勢でこれらの問題の処理に当たってもらいたいということをこれは強く要請をしておきたいと思います。  時間もありませんので最後になりますが、二十六日の新聞によりますと、香港にカンボジアの貿易機関、レンファン有限公司が設立されて、日本との間に鋼材が約一万トン輸出できるような商談が成り立ったということを報道いたしております。ここで時間がないので大変残念ですけれども、このカンボジアの場合は現在新しい国づくりのために、農業の面では揚水ステーションをつくるとか、ゴム液を固定化さす工場をつくるとか、農業生産に必要な工場をつくるとか、あるいは文化面では文盲を退治するとか、あるいは社会問題としてはマラリアを撲滅する方向で取り組んでおるということが言われておりますが、私は人道的な立場からも、特にこの際、アメリカではありませんが――アメリカは昨年の十二月二日にマラリア対策のために殺虫剤の輸出許可をアメリカのストーファ化学に与えたと報道されておりますが、いま私が言ったような、カンボジア自身がそういう方向で新しい国づくりのために立ち上がっておるという観点からも、医薬品とか、なかんずくDDTであるとかマラリアの予防剤であるとか、そういう医療関係の経済援助というものについて積極的に取り組まれる御意思があるかどうか。また、これは通産大臣からもお聞かせいただきたいのですが、ロン・ノル政権時代には大きな経済協力関係だけでも三十も四十ものいろいろな調査がなされて、カンボジアに対する経済交流の取り決めがなされておりますが、いまカンボジアが立ち上がろうとしておるこれらの方向に沿って、わが国の政府が外務省の所管においてあるいは通産当局の所管においてどういう積極的な取り組みをしようとしておるか。その具体的な方向があればぜひ聞かしてもらいたいと思います。
  187. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話の私に対しまするものは、最近カンボジアの商談の問題が新聞等に報道されておるということでございます。御案内のとおりに、カンボジアのあのような関係がございまして貿易の関係が中断いたしておりましたが、政府といたしましても、カンボジア側の貿易体制の整備が進み次第、今後わが国との貿易関係が発展していくことを期待いたしております。  なおまた、ただいまのお話の円借款の経済協力等々の問題は、これは外務省のGGベースのお話でございますので、外務省からお答えいたします。
  188. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま藤田委員からお話のございました人道的見地に基づきますこれからの経済協力につきまして、先方政府からお話があれば、わが方としても積極的に取り組む姿勢でおるわけでございます。何分にもまだ先方から大使館の設置その他につきましてなかなかお話がないわ毛でございますが、そのような御要請があった場合には積極的に考えるべきであろう、こういう態度でおるわけでございます。
  189. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最後に、いま外務大臣から答弁があったわけですが、いわゆる民主カンボジアから政府ベースによる協力要請があった場合には、外務省としては、たとえば経済協力あるいは国際交流基金あるいは国際協力事業団、そういったそれぞれのセクションを通して具体的に対応していく、このように理解していいわけですね。  そのことが一つと、私が前段申し上げたように、今日の段階においても非常にカンボジアは、いまマラリアや何かで医療面では――自力更生でやっておりますけれども、客観的に見て、非常に困っているんじゃないかと思うのです。したがって、そういう医療品の救済援助といいますか、そういうものについてわが国政府は積極的に取り組む必要があるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  190. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これからのカンボジア政府との経済協力をどのようにやっていくかという点につきましては、先ほどお話のありました過去の債務問題、債権債務の取り扱い等の問題が必ず問題になろうかと思います。  しかし、いまお話しのような人道的見地からの問題につきましては、私は、いまお話しのような趣旨から言って、仮にそのような問題が解決できなくても、人道上の問題というのは別個の見地からも協力すべきではなかろうかと考える次第でございます。
  191. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これで、私の持ち時間はまだあと三十分ほどあるわけですが、関連質問がありますので、それに譲ります。  ただここで、せっかく大蔵大臣と厚生大臣に御出席願って、私は肝心な医師優遇税制の問題についてお尋ねしようと思ったのですが、時間がありませんので、これは次の集中審議その他に譲らしていただくということで、御出席いただきました両大臣には、そういう意味では、非常にある意味で迷惑をかけたかと思いますが、御了承いただきまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  192. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 関連質疑を許します。井上一成君。
  193. 井上一成

    井上(一)委員 限られた時間ですので、簡潔、明瞭にお答えをいただきたい、こういうふうにまずお願いをしておきます。  私は、日韓問題について、とりわけ産業廃棄物、廃油の韓国輸出についてお尋ねしたいと思うわけであります。  昨年の三月八日通産省が許可を出した、韓国向けに対して再生資源として輸出許可を与えた廃油、ユーズドオイル一万五千トン、このことについて通産大臣並びに大蔵大臣は御承知なのか、そしてその中身については確認をされたのかどうか、まずお尋ねをいたします。
  194. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  廃油スラッジのことが新聞紙上に出まして実は驚いたような次第でございますが、ここに輸出の承認をいたしました関係から通産省としてお答えいたしますが、こういった標準外決済の承認を昭和五十年以降十件程度行っております。  なお、一般に精製業者がみずから処理しておりますいまの廃油の問題でございますが、処理代を支払って処分してもらっておるような現状でございまして、したがって、特に韓国に安い価格で輸出しておるようなことはないと考えておったのでございますが、原油スラッジの処理がどのように行われていたかにつきましては、国内の取引の実態につきましても調査をいたしてみる所存でございます。
  195. 井上一成

    井上(一)委員 輸出をしたことには間違いないですね。
  196. 田中龍夫

    田中国務大臣 新聞等で見ますとそのように相なっておりますので……。なお細かいことは……
  197. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、新聞でって、私が質問しているのですよ。新聞が質問しているのじゃないのです。再度答弁。
  198. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの井上委員の御質問に対しまして、今回このことを知りまして、いまお話し申し上げたように、これを詳細にわたりまして調べてみようと存じます。
  199. 井上一成

    井上(一)委員 いまの大臣の答弁でも、十分認識をなさっていらっしゃらない。  続いて大蔵大臣に、このような、いわゆる廃油と称して、再生資源と称して一万五千トン韓国に輸出をされた。そこで、中身を税関で調べた、検品をしたのかどうかということを簡単に。
  200. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御承知のように、関税法七十条の規定によりますと……(井上(一)委員「検品をしたかどうか、それだけでいい」と呼ぶ)中身については私は知悉しておりませんから、関税局長から……。
  201. 井上一成

    井上(一)委員 これは中身も十分検品せず、そしてまた、それらの輸出された廃油が相手国でどのように処理をされているのかも十分御承知でないわけなんですね、皆さんは。これはまさに日本産業廃棄物を、韓国に対して公害を輸出していることを承知する、許可している、こういうことが事実だと思うのです。こういうことは、いままでの両国間の国際道義にももとる悪質きわまりない行為だと私は思うのです。  そういう意味で外務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、外務大臣はこのような行為についてどうお考えでいらっしゃるのか。
  202. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 本件につきまして厚生省からの依頼がありまして、在韓日本大使館でいろいろ調査をしたわけでございます。昨年の春、釜山港の保税地域の保管中の日本から輸入された廃油スラッジから悪臭が出て、付近の住民が非常に騒いで、韓国内で社会問題化したということであります。これらから考えまして、これが貿易の形をとりまして隣国にこのような迷惑をかけるということは、はなはだ残念に思う次第であります。
  203. 井上一成

    井上(一)委員 私は日本のいまの産業政策というものが、いわゆる動脈産業に大変力を入れておるけれども、反面静脈産業には手薄である、こういうことが公害輸出をもたらしたのだ、それが新しい日韓癒着の利権を生む要因になっておることをひとつ指摘していきたいと思うのです。  いま外務大臣は、釜山における日本から輸出された廃油が二次公害を発生して韓国に対する環境破壊をつくり出している、これはまさに日本政府の責任だと私は思うのです。行政の責任なんです。政府みずからが強い反省の中で、いま野積みされておる、保税区域の中に積みつ放しになっているこの廃油については、どう処理をされようとしていらっしゃるのか。
  204. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの御指摘の点につきまして、私まだ詳細報告を受けておりませんので、アジア局長から答弁させていただきます。
  205. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもの承知しておりますところでは、すでに通関されているスラッジ、これはどういうふうに処理されておるかという点でございますが、これは韓国側で汚物清掃法というものがございまして、それに基づいて業者がこれを処理する、それは管轄の地方機関が監督するということで、韓国側の体制のもとで処理されているというふうに承知しております。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 いまお答えがあったわけですけれども、いわゆる昨年の八月に韓国は原油スラッジ以外のものは輸入を禁止しているわけなんです。それでもなおかつ、それ以後においてもいわゆる韓国で輸入を禁止している品目の廃油を、いわゆる悪質な、劣悪な廃油を輸出しておるわけなんです。すでにその積み荷のために大阪の港に先月は二隻入港しておるわけです。近日中にもさらに一隻入港するわけなんです。  さて、私はそのようなことが国益だと称して両国の企業によって輸出入が行われておるということについて、少し触れてみたいと思うのです。  日本側の輸出企業、岐阜にいわゆる本社を置く五大起業という企業が国益だという考えの中で、そして大蔵、通産両省の承認を得て韓国に輸出をしているというふうに言っているわけなんです。どういうような大蔵、通産が許可を与えたのかどうか。あるいはその代表者はかつて自民党の副総裁の秘書をしておった。そういういわゆる政府に近い人物がこの輸出に関係をしておる。片側、韓国の方ではソウルに本社を置く産資開発、これはそこの代表者金という人はいまの韓国の朴政権の中枢に食い入った重要な人物である、こういうことです。あるいは、かつてKCIAの参事として日本にしばしば来日がされたと聞き及んでいるわけです。私は、そういういわゆる正常でない形の中での貿易があるいは輸出入が行われておるところに、日韓癒着の疑惑があるわけでありまして、なかんずく韓国側の企業である産資開発については資本構成にも疑惑があるわけです。その三五%はわが日本側の提携企業の代表者が出資をしておると聞いておる。そして一五%については韓国政府が出資をしているんだというふうに聞き及んでいるわけです。私は、両国政府の承認をもらって、そして国益のためにこのような公害輸出入が公然となされておるというところに大きな問題があり、とりわけ昨年の夏東京港から仁川に向けて積み出された四百トンについては、港では軍の兵士が動員をされてこの積み荷の陸送に当たったとも言われているわけなんです。そこで外務大臣通産大臣に、このようなことが果たして国益なのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  207. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  仰せられるまでもなく、かかる問題は国益ではございません。さような次第で、なおこの通関に当たりましての輸出承認は標準外でございますので、内容のことにつきましてさらに担当政府委員からお答えいたします。
  208. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 廃油スラッジにつきましては、一般的には輸出の承認を必要といたしておらないわけでございますが、いわゆる標準外決済、決済方法が標準的でないものについて輸出承認を受ける必要があるというたてまえになっておりまして、そういった意味合いにおきまして、御指摘の企業につきましては本年一月に標準外決済としての輸出承認を与えておるわけでございます。
  209. 井上一成

    井上(一)委員 私は、非常に答弁が無責任きわまりない。標準外決済だから一あるいは輸出品目に、法に抵触しないから。それでは、どんなに相手国に迷惑をかけても、あるいは中身も吟味せずにいわゆる詐称的な形の中で輸出入がされておること、この事実についてはどのようにお考えなのか。通産大臣みずからの御答弁を願いたい。――大臣だよ。
  210. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 大臣お答えする前に一言補足させていただきますが、この輸出承認を受けるに当たりまして、相手側の輸入業者は、先ほど御指摘になりました昨年八月の韓国商工部長官の通達の中で例外的な扱いになっております原油スラッジをその対象として輸入したいんだ、これも経済的有用なものとして使いたいんだといったことを申請の窓口において説明いたしておるということを前提といたしまして、輸出承認をおろしたわけでございます。
  211. 井上一成

    井上(一)委員 委員長、私はあえてここで通産大臣と大蔵大臣に答弁を求めたいと思うのです。いまエネルギー庁の方では原油スラッジだ、そして適格な、適法の形の中で輸出を認めたんだ。いわゆる標準外決済というのは決済上の問題でありまして、私の指摘しているのは、中身も検品せずにそういう物が堂々と輸出されておる。だから、中身を検品したのか。あるいはそれが申請の品目に合致しておったのかどうか。それでは、ひとつ両大臣お答えをいただきたい。
  212. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  わが国といたしましての貿易の相手国からかような公害の輸出というような非難を受けませんように、今後さらに十分に注意をいたしますが、かような、本件のような案件につきましてその実体を調査いたしまして、問題がないようにさらに関係方面を指導いたします。
  213. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のような事実ということでありますならば、これはわが国としても非常に重大視していかなければならぬと思います。ただ、事実の関係につきまして私は知悉しておりませんので、ひとつ政府委員からお答えさせます。
  214. 旦弘昌

    ○旦政府委員 先生御案内のとおり、税関におきましてはいわゆる二十二の他法令によりまして、輸出輸入につきましての規制がございます。いま御指摘のその廃油につきましては、この他法令の規制がございません。したがいまして、税関といたしましては輸出を差しとめるということが法律上できないわけでございます。  ただ、ただいま御質問ありましたような廃油につきましては、いろいろ国際的な問題もございますので、最近大阪港におきましてそういう動きがございました件につきましては、直ちに担当の厚生省に連絡をいたしまして、大阪市の係官等立ち会いのもとに税関がその現品の検査をいたしておるところでございます。
  215. 井上一成

    井上(一)委員 いまの答弁でも、前半についてはその品目規制がないから――ちゃんと外国貿易法には、疑わしきもの、あるいは詐称的なもの、あるいは申請と中身とが検品の段階で違った場合にはいわゆる輸出入者に対しては報告をさせ、そして主務大臣は調査をしてそれを差しとめる権利があるんですよ、権限が。まあそれはそれとして、いままさに輸出をしようと、いわゆる原油スラッジでない廃油が、形式的な輸出という形はとっておるけれども、全く悪質な廃油が大阪港に現在集積されておる。そういう事実があるわけだ。私はそういう事実を確認しておる上で質問をしているんだから、もっと的確な答弁をしなければいけないわけなんです。  そこで、私はあえてさらに、なぜこういう問題が日韓癒着につながるかかわり合いがあるのかということを、価格的な問題でひとつ説明をしながら、あるいは質問を続けたい。  この価格の問題は、適法に国内で処理をした場合には、約五万から六万かかるわけなんですね。ところが、これを建て値二万円ぐらいでやるわけなんですけれども、いわゆる昨年の三月八日認可になった一万五千トンについては、一トンいわゆるドラムかん五本で一ドルなんですよ、申請では。それが通産大臣、原油スラッジが国内で幾らするか。ドラムかん一本がコーラ一本より安い。それで再利用のできる原油スラッジだ、そんな物の考え方、そんな申請書に対するいわゆる不自然な記載がなされておるわけなんです。  そういうことを考えても、燃料にもならない、あるいは再生資源に利用のできない一番悪い悪質な廃油を、いわゆる韓国に向けて掃きだめのために公害を輸出しておる。こういうことについて、私自身は先ほどから強く申し上げているように、政府行政の責任であり、それを謙虚に反省し、このようなことをやはり未然に防ぐということが非常に大切である。そしてこの価格が、いまも申し上げましたように、一ドルという非常に安い価格で許可申請を受けた。もうその時点で本当はわからなければいけないんですけれども、さらに不自然な決済方法があるわけなんですね。あるいは、これらの取引に韓国の在日公館の上級職員が関係をしたというふうに言われておるわけなんです。そういうことを考えればなおさら日韓癒着の根源の一つであると私は強くここで言わざるを得ないわけなんであります。そのような悪質きわまりない輸出入を許しておるのは、税関いわゆる大蔵省であり、そしてそれに合い議をし、あるいは許可を与えた通産であるわけであります。  そこで今後、いわゆるいま集積をされておる分も含め、あるいはその積み荷のために入港をしてくる船が近日あるわけだし、もうすでにあったわけなんですけれども、今後の輸出をされようとしているものについてどう対応されるのか、それから先ほども申し上げたように、韓国に多大の迷惑をかけておる釜山に野積みにされた一万トンについては、外務大臣はいま、よく調査をして善処方をお約束されたわけでありますけれども、通産大臣並びに大蔵大臣は、そのような形で輸出をしたことについて、どのように責任を感じていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
  216. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま仰せられましたごとくに、かような不都合な輸出の案件がありましたことをまことに残念に存じます。なおまた、それに対しましての承認を与えました役所といたしましてまことに遺憾でございまするが、いまお話しのドラムかん一ドルというような問題、あるいはまた、その後の野積みの問題等の廃油の処理等につきましては、担当官からお答えをいたさせます。
  217. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  税関自体は、先ほど政府委員が御説明申し上げましたとおり、みずからそういったような製品についてこれをチェックするということは税関みずからはできません。他の法令によって、積み荷をしてはいけないというようなものについては税関がチェックをいたします。  そこで税関といたしましては、むろん点検はいたしておりますが、さようなものがある場合には、これは関係各省に密接に連絡をいたしまして、そしてその省に協力をいたしまして、それでそういうことのないように図っていくということが税関の仕事でございまして、みずからこれをとめるということはできない。しかし日本の国といたしましては、かようなことのあるということはこれは重大視してまいらなければならない、かように考えます。
  218. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵大臣、事務的なことについての答弁を求める方が少し無理だろうとは私は思うのですけれども、ただやはり税関が、輸出をされるときに実物と申請の品目とを検品をしていくというのはこれはもう常識なんだから、そういうことがなされなかった結果、韓国に迷惑をかけているということですね。だから私は、やはり大蔵省も大蔵大臣も責任を感じて、いわゆるそれぞれの輸出入については万全のチェックをすべきである、こういうふうに思うわけなんです。  委員長、私は最後に、大変短い時間で十分な質問あるいは十分な答えを、まあ納得のできる答弁を引き出すことができなかったわけだし、まだまだお聞きをしたいことがあるわけです。そこでぜひ、いま申し上げたように、この廃油と称して公害を輸出しておる実態は、あるいはまたその決済方法等も含めて――価格についても非常識きわまりない価格である、ドラムかん五本が一ドルだ、あるいは不自然な決済方法、あるいはこれらを単なる商取引として受け取れない、いわゆるその裏に流れ資金ルート、そういう日韓癒着の全く疑惑を生み出すような要因があるわけなんです。これらのことについては、政府政府の責任として十分反省を求めるわけでありますけれども、さらに外為法にも照らして取引の実情を調査して、一般質問が終わるまでに報告を求めます。
  219. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 了承いたしました。
  220. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御趣旨に沿うようにいたします。
  221. 井上一成

    井上(一)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  222. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、木島喜兵衛君。  速記をとめて。     〔速記中止〕
  223. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 速記を始めて。  木島喜兵衛君。
  224. 木島喜兵衞

    ○木島委員 文部大臣にお尋ねいたします。  昨年の二月から今日までこの国を揺るがしておりますロッキード事件について、文教の責任者として、文教的な立場からどのような御反省をお持ちでいらっしゃいますか。
  225. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 ロッキード事件が出ましたときは、私は官房副長官でございましたので、国民の皆さんがこれほど大きな疑惑を持たれた事件でありますから、きちんとできるだけ早く解明をしなければならぬ、こういう心構えで努力をしてまいりましたが、文教の責任者としてどう思うかと仰せられましても、それまでの姿勢と同じようなつもりでこれをいま振り返っておる、これが率直な心境でございます。
  226. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ロッキードを構造汚職と言いますけれども、構造という点では、金を最高の価値とする国民の意識構造、その意識構造をつくっていった文教としての責任というものについて、今日の文教政策についての反省はございませんか。     〔澁谷委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕
  227. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 お金が幅をきかせ過ぎる社会は間違いであるということは私常々考えてきたことでありますが、社会の中でお金で解決ができるんだというような風潮がだんだん強まってきた、そういったことは望ましいことではないということをきちんと自覚をすることは国民として必要な、そして大切な資質の一つであると私は考えますので、直ちに教育だけでそういう社会的風潮が生まれたのかどうかということは、いま突然の御質問でありますから、私もいろいろと無責任な発言はできませんけれども、率直にいまの気持ちを申し上げれば、お金だけが幅をきかせてもいいんだというようなことをそのまま受けとめるようなことは、これは間違いであるということをいろいろな角度からきちんと教えていく、やはりそういったことは教育の面においても十分にこれから考えなければならぬことである、これは私もそう思います。
  228. 木島喜兵衞

    ○木島委員 福田総理の施政方針演説の中にも「「物さえあれば、金さえあれば、自分さえよければ」という風潮に支配される社会は」と言っていらっしゃいます。その点では、ロッキードのいまあなたのおっしゃった風潮は、もちろん文教だけではないけれども、しかし文教もまたそのらち外ではないだろう。そういう意味で、たとえば、いま風潮というのはとおっしゃいましたが、総理がおっしゃるように、物さえあれば、金さえあれば、自己さえよければというその風潮は、一体どのようにして生まれてきたとお考えになりますか。
  229. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これはそれこそいろいろな複雑な要因が絡み合って、金さえあれば、物さえあればというような風潮が生まれてきた。何がその一番の原因で、何が転機でそうなってきたかというようなことは、ちょっと私はいまここでつまびらかにできませんけれども、やはりいろいろなことがこんがらかってお金が必要以上に幅をきかせる世の中の風潮をつくり上げたということだけは、これは間違いない事実だと思います。
  230. 木島喜兵衞

    ○木島委員 おっしゃるように幾つか問題があると思うのですが、一つには、物、それを得るための金、そしてそこに自己の満足、自己の幸福のすべてがあるという意識、それを求めて、国民はただただ忙しく働き回ってきた。ときにはエコノミックアニマルと言われながら働いてきた。そのゆとりを失った、忙しくて時間を喪失した、その中に真実もあるいは正しさもあるいは美も芸術も喪失し、すなわち人間を喪失していって、物、金だけを追求していった。これはもちろん職場の合理化によるところの機械の部品的な人間疎外というものとも相まっていきますけれども、日本の高度経済成長政策やあるいはGNP第一主義、この物、金、自分という人間喪失の上にこれらが築かれていったのではないのか。そういう意味では、福田さんの言う物、金、自己さえというその風潮の社会をつくったものは、そういう日本の政治というものが無関係でなかったのではないのか。人間を軽視し、ときに無視し、ときに犠牲にしてきた今日までの政治に反省なくしては、福田さんがただその風潮があると言って嘆かれても、その基本、その政策、その政治というものにメスを加えなかったならば、その風潮は改まることがないのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  231. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは、文教行政を外れて大変大きな国全体の問題になるわけでございますけれども、私の感じを率直に申し上げると、一時期日本が戦後復興のために経済の向上に力を入れた。私はそのこと自体は間違っていなかったと思いますが、ただ、その高度経済成長政策の中で、ややもするとお金、物、そして心とのバランスを見失うような場面があったのではなかろうか、あるいはお金や物に頼ることがいろいろな問題を解決するときの安易な方法であったのではなかったろうか、そういう安易な方法に頼ったことがあったのではなかろうか。こういう積み重ねがそういう社会の風潮を生んだのでありまして、きょうまでの長い足跡を謙虚に振り返ってみて、そういうものの中にいけないことがあったならば率直に反省をするところからやはり見直さなければならない、私はこう考えます。
  232. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま言った政治、政策が一つ方向に行った。同時に、それを受け入れた国民の意識、あるいは頭脳構造と言ってもよろしゅうございますけれども、ここにはやはり全体主義的な思想が潜在しておったのじゃないのか。顕在とまでは言わなくても、明治以来の国家主義なりあるいは全体主義の、国あって個人なきその血液が今日もなお流れておるのじゃないのか。GNP第一主義とか自由主義国の経済第二位だとかいうような言葉は、確かに自己を忘れさせて国民の耳をくすぐります。そして、国あって全体あって個人なく、お国のためにというその言葉に人間が喪失されていったというその理念、全体主義的なあるいは全体の中の部品的意識、そういうものが今日なお潜在的にあるのじゃないか。この意識をなおくすぐるごとき、ときには高揚するごとき、あるいはときには称賛するごときそういう政治姿勢が今日までの自民党の政府の中に全くなかったとお考えになりますか。
  233. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 戦後の意識は、国あってというよりもむしろ個人の権利が非常に強く主張される風潮になっており、お金が幅をきかせ過ぎると私が申し上げましたのも、国がお金持ちになるということよりも、自分が個人としてお金が入れば、自分中心のお金とか自分中心の物とか、あるいは自分さえよければという発想は、やはり個人個人を中心に発想されたことがより多いのではないか、私はこう思うのです。     〔田中(正)委員長代理退席、大村委員長代理着席〕 そういうことが、経済成長政策の中で、先ほど申し上げましたように、顧みて間違っておったこととかあるいはどちらを選ぶかというときに、バランスを失して、心を選ばず物やお金に頼って解決しがちになったのではなかろうか、そんなふうに申し上げたわけです。
  234. 木島喜兵衞

    ○木島委員 その高度経済成長政策という政策、そしてそれを受け入れる国民の意識構造、それと相まって教育政策もまた資本なり経済に隷属しておったのではないかと私は思うのです。たとえば経済団体からの教育に対するいろいろな要望がありました。これはもう多くを語ることはないのでありますけれども、経済団体からの要望がある。すると、それがすぐに中教審――中教審そのものも経済団体からの要請によって生まれたのでありますが、そういうことの中で、たとえば技術教育だとか高校の多様化だとか能力主義の教育だとかそういうものが次々に――多様化というのも、能力の多様化でなくて機械の部品のごとき労働力の多様化。資本は、学校を安くて便利な労働力の生産向上的な見方をしておらなかっただろうか。そういう経済界に振り回された教育というものが、先ほど言いましたように物、金を中心にする風潮をつくってきた基礎ではないか。この文教政策の基本的な反省なくして、福田さんがいかに大きな声を上げて嘆かれたところで、それはしょせん嘆きであって、政治にはならない、政策にはならない。政策はその反省から出発するのではないかと思うからこそ、いまお聞きしておるのであります。
  235. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御承知のように、戦後の教育は、教育基本法に基づいて、これを理念として行っておりまして、その第一条で、やはりあくまで人格の完成を目的とするのが教育でございますから、御心配いただくような産業界の要請とかそういったことではなくて、すべての国民の皆さんに人格の完成を目指してまず義務教育を受けてもらおうということからスタートを切っておるわけでして、そこでいろいろな教育段階を経て社会に出た人が、それぞれの能力、それぞれの資質を発揮して社会のために貢献する。これはもちろん当然のことでありますけれども、初めからそれを目指して、産業界の言いなりになって、産業界のために教育をするというような考え方は決してとっておらない、私はこう信じております。
  236. 木島喜兵衞

    ○木島委員 その辺はきょうの中心のテーマではありませんから議論しません。しませんけれども、そういうことを冷厳な目でもって見なければ――福田さんが施政方針演説の中心に物、金、自己さえということを言われた、そのことを文教政策の中に持ってきたときに、そういう歴史的な流れというもの、今日までやってきたこと、そのことを冷厳に批判をし反省をしなくては、あなたは福田内閣の一閣僚として、これから将来に向かっての文教の施策が生まれないだろう、そういう意味で聞いたのでありますが、これはきょう議論しません。  そこでいま、海部さんどうでしょうかね、あなたは今日、教育の問題、文教問題で最重要な課題は一体どこにあるとお考えになりますか。
  237. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 教育の問題はいろいろなところに解決をしなければならぬことが山積しておりますが、私は昨年の暮れに永井前大臣より引き継ぎを受けまして、そのとき、長い間議論は続くけれども、どうしても芽が出かかっておるものだけは誠実にこれを育てていかなければならぬ、こういう決意をしたわけでございます。その角度から申し上げますと、ただいま行われております教育改革上の問題では、初等中等教育においては学習指導要領の改定、大学段階においては、これもいろいろ問題がありますが、芽が出ております入試制度の改善、そして永井大臣も指摘をしながら実現することのできなかった学歴偏重社会の打破、これもどうやって打破するのかと言われるといろいろございます。学校間格差の是正とか、いろいろございますけれども、そういったようなものが相互に全部関連いたしますので、何が一番重要かとおっしゃれば、いま申し上げましたようなことを、せっかく芽が出てきておるわけでありますから、後戻りさせないように前進させていくことが一番大事なことであろうと思います。
  238. 木島喜兵衞

    ○木島委員 永井さんはそれを四頭立ての馬車とおっしゃったわけです。いまあなたがおっしゃった学習指導要領とか入試とか格差の解消とか学歴偏重の風潮、この四つの馬はわかった。四つの馬はわかったけれども、その四つの馬がばらばらでなしに、その四つの馬に引っ張られてくる車は何ですか。
  239. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御承知のように、ただいまは新しい戦後の学制が始まって三十年目だと言われておりますけれども、この三十年目に第三の学制改革とも言われるような大きな学制改革の仕事に取り組まなければならぬということで、各界の方々にいろいろな御努力を願って、いまそれが緒につき始めておるわけでありますから、四頭立ての馬車が引っ張っておるものは何かとおっしゃれば、これはやはり学制改革というものを引っ張っておるのだ。この四頭立ての馬車が調和をとって完全に走りますことの中から、いまの学校制度の持っております是正すべき点とかあるいはよくないと言われておる点が改まっていって、学校教育制度というものがより教育効果を上げていくことができるようになるだろう、私はこう考えます。
  240. 木島喜兵衞

    ○木島委員 学歴偏重の風潮があり、したがって有名校を出なければならない。したがって、その大学に行くには、大学の格差があるから有名校に行くようになる、そのために入試地獄となる、そのために、入試準備のために高校が大学の予備校化され、中学校が高校の予備校化されるということに四つをつなげば、一つの括弧の中に入るものは、学歴社会の打破ということが括弧の中に入ってくるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  241. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは鶏が先か卵が先かというような議論を、私なりにこちらが先だと割り切ってしまうようなお答えになるかもしれませんけれども、要は、入学試験の問題にしてもあるいは有名校偏重の問題にしましても、結局は、将来、学校を出てから自分の生涯が有利になるためにというようなことがどうしても大きくつきまとっておるようでありまして、逆に言うなれば、永井前大臣が言われた四頭立ての馬車の中で学歴偏重社会の弊風というものがもし完全に是正されるとするなれば、入学試験の問題も、あるいは学校教育の中でいま言われておりますもっとゆとりのあるというような問題も、あるいはそれに付随して塾の問題等も、私は、学歴偏重社会の弊風が完全になくなれば、必要以上な悪い面は何か伴って消えていくのではなかろうか、こんなふうに理解をしております。
  242. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま私はそういうことではないかと申し上げたので、全くその限りでは、その四つの馬が引っ張る車というのは、その車が引っ張られていくのはそれじゃないか。学歴偏重なり学歴社会というものを打破するため、そうなれば学校教育体系全体が整然としてくる。この学歴社会というものがある、そこに教育の荒廃がある、これはすべてじゃないけれども、やはり最大の課題ではないかと思うのです。  そこで大臣、学歴社会を打破するということにすると、おっしゃったように多くの問題があり、多くの問題を有機的に結合しながら施策を進めていって、この学歴社会というものをなくしていかなければなりません。  そこで一つは、そのためには、今日の学校教育が一つのレールの上を走っておる、そのレールを変えなければならない。最初のボタンをかけ直さないと全体が直ってこない。そういう意味で、今日の学校教育というのはあるいは競争原理というものが貫いているのじゃないか。この学校教育の中から競争原理というものを除いていったら、除くためのあらゆる施策というものを進めていったら、その中から教育というものは全く変わってきやしないか。すなわち、学歴社会というものも競争原理の一つでありますから、教育というものは競争なんだ、そういう競争原理からの方向転換という基本的な教育というものに対する考え方をせなければならぬのじゃないかと思いますが、どうお考えになりますか。
  243. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは現在の学校教育がそれぞれの段階で持っておりますいろいろな問題点を取り上げて、なるべく一人一人の子供の個性に応じて、教育といいますか、あるいは無限の可能性を秘めておると言われる子供の能力をどのようにして開発していったらいいのか、どうしたらまた開発していけるかというようなことについて、先ほど申し上げましたように、初等中等教育においては、まず教育課程の改善をして、もっと伸び伸びとしたゆとりのある教育ができるようにしていこうということになっておるわけでありますが、その競争原理ということになりますと、お言葉を返すようでまことに恐縮でございますけれども、たとえば高等学校への進学の場合には、いま全国で合格率はたしか九八・四%にまで達しておるわけでありまして、これを希望する能力のある人がほとんど入れるような状況にただいまなっておると思うのですが、今後五年間の間になお人口がふえるわけでありますから、そのときに合格率がまた下がるようなことがあったのでは、これは志を持っておる人に進学の芽をつまむことになって気の毒だというので、それはたとえば器の整備の方向で解決できるものならばそういった努力もしていきましょうということでありますし、また大学入学試験制度を変えようとしておりますのも、やはり大学の入学試験というのは選抜制度のたてまえをとっております以上、そこには、競争でありますけれども、これはやはりあくまで公平に平等にその人の能力に応じた競争ができるように、また逆の面から言うなれば、受験術と言われるような難問奇問を解決することによってその競争の勝者と敗者が決まるというようないまの制度はよろしくないということがはっきりしておりますので、そういった弊害を少しでも打破して、選抜制度が残り、競争の原理は残りますけれども、目につき過ぎる悪い弊害は少しでも取り除いていこうと努力をしておりますのが、ただいま私どもの取り組む姿勢でございます。
  244. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、競争原理と言ったのは、明治の初め欧米先進国を競争相手として追いつき追い越そうとしたそのことが国の活動原理だったろう。そのことの原理が、教育では帝国大学出エリートあるいは官僚指導者をつくるということになり、その登用は点数で人間の値打ちを決める。点数はテストによる。そして各大学は帝大をまねした。そして高校は帝大にたくさん入ったものが有名校になり、他の高校はそれをまねする。その高校によけい入る中学校は有名中学校になり、そして他の中学校はそれをまねする。そういう競争原理というものが今日学歴社会の一番基本ではないのかという立場でもって、学校は、だからテストによって点をつけ、点によって人間の価値を測定し順位をつける機関になったという感すらするから、そういう競争原理というものをこの教育の中から全部抜き去ってもう一回考えてみたら――いまあなた個人とおっしゃいましたね。いろいろ個人の個性を生かしてとおっしゃった。そういう意味では、競争原理を除いてみたら一体どうなるだろうかということを申し上げたのですが、いま高校の話がございましたから、高校でひとつ……。  私は、高校は、いますぐできるかどうかは別といたしまして、憲法やあるいは教育基本法あるいは学校教育法等からいうと、義務制をするのが法的な立場じゃないかと思うのですが、大臣これはちょっと専門――そういう言い方は悪いな。どうですか。
  245. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 義務教育のこれは制度の根本に触れる問題でございますけれども、先生御承知のように、六・三制の出発に当たって、それまで六年であったのを九年間とし、そして五十四年度から発足します養護学校の義務化によって義務教育の制度というものが完全なものになる、こういう努力目標を置いていま一生懸命充実をしておるところでございますが、高校の三年間に当たる後期中等教育も義務制にしたらどうかという御意見はいろいろなところから出ておることもよく承知いたしております。しかし、現在なお中学卒業の段階で高等学校進学という進路を選択しない青年がたくさんいることも御承知のとおりでございまして、あるいはまた、後期中等教育三年間のあり方も、三年間の教育課程だけでは不十分ではないかというような要請から、五年制の高専校ができましたことも御承知のとおりでございますし、また専修学校の整備等もいたしておりまして、この後期中等教育の三年間は、いまや五年制のものもでき、あるいは複雑な枝葉をそこにつけることによって多様な要請にこたえようとしておるわけでありまして、ただ、希望する人々のほとんどが、やはり能力のある人がほとんど就学できるような、そういう体制だけはしていかなければならぬという方針で、国がいろいろな面で努力をしておることも、また御理解をいただきたいと思います。
  246. 木島喜兵衞

    ○木島委員 政府の御努力等々は別といたしまして、憲法で言うと、二十六条の第二項、「國民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」とあります。この場合の「國民は」というのは親と考えています。親は「その保護する子女」――「その保護する子女」というのは元来未成年であります。けれども、いま社会福祉司だとかあるいは運転免許等で十八歳――十八歳はちょうど高校であります。「その保護する子女」は十五歳までではありません。それは高校を出るときです。そして「普通教育を受けさせる義務を負ふ。」、「普通教育」というのは――普通教育というのは余り使われておりません、初等教育とか中等教育とか。普通教育というのは、それと対置する言葉は、高等専門教育であります。したがって、高校までを意味します。それで「義務教育は、これを無償とする。」これは生存権であります。今日、中学校まで義務制でありますけれども、いま仮に、たとえばこの義務制も出なかったならば、まともな就職はできない。まともな就職ができなかったならば、まともな生存ができないという。いまおっしゃるように、やがて九八%も行ったとすれば、行かなかったところの二%は一体どうなるのだろうか。その生存権はどうなるのだろうか。憲法の規定からしても、いますぐできるかできないかは別として、憲法はそのことを志向していると見るべきではないか。そしてもし、たとえばこれがだんだんと九八%行ったとしましょうか。そうすると、行かない者は一体何か。現在でもそうでありましょうが、一つには経済的な理由でありましょう。経済的な理由は、教育基本法第三条によって、経済的に困難な者には奨学の道を講じなければならぬと義務づけております。その義務を完全に果たしたならば、経済的なものは進学できる。そして学校教育法七十五条は、「小学校、中学校及び高等学校には」「特殊学級を置くことができる。」とある。ところが、小学校、中学校には特殊学級は大変一生懸命つくっておりますけれども、高校にはほとんどないはずであります。小学校、中学校、高等学校に特殊学級を置くことができるという法律があるのでありますから、昭和二十四年にできたのですから、とすれば中学校の特殊学級のそれは、精薄学級であれ、肢体不自由児であれ、それは高校に入れることができた。そうすると、この法体系というものはまさに義務制を意味しておるのじゃないかと思うのです。  同時に、先ほど大臣おっしゃいました、今回の教育課程審議会等が、高校までを通して一貫だと、教える内容を一貫の物の考え方をしていますね。そうすると、高校まで一貫であるとすれば、中学で終わった者は一体どうなるのか。義務教育とは一体何だろう。教育課程とは何だろう。国民が生活するに最低限と言いましょうか、そういう教養、知識、技術等を教えるとすれば、高校までを一貫にして整理するということの一つには、私はそのねらいがあるのだろうと思うのです。  そういうことを深く考えていくと、いますぐできるかできないかは別として、そういう理想を持ちながら、具体的に個々に何をやっていくかという手戻りのないところの施策というものが必要であるからこそ、私はお聞きしておるのです。もしも高校が義務制の中に全部入れば、中学校から高校に行く高校のテストがなくなります。高校のテストがなくなるならば、中学校は、高校の予備校でなしに本来の教育、人間形成に戻ります。学歴社会というものを打破するために、そういう施策をひとつずつやっていかなければならぬじゃないかという、高校問題というものが、さりきあなたは四頭立ての馬車とおっしゃいましたけれども、そういう高校が一つそこにある、四頭立ての馬車のほかに。そういう意味で、学歴社会というものを今日の教育問題の最大の重要課題であるとするならば、さっきあなたがおっしゃった、有機的に総合的にいろいろな角度からとおっしゃるならば、その点もそういう方向考えていかなければならぬじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  247. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 義務教育というものについて、やはり現在の法律が定めております六・三・三制に基づく九年というのが、いまの国の法律上の姿であることは、先生御承知のとおりでありますが、ただ、方向として、初等中等教育の教育課程審議会の答申の中でも、中学校、高等学校の教育課程の内容まで一貫性を持たせるようにしながら精選をするという関連性を考えておりますことは、そのとおりでございますし、また、私たちも、高等学校の学校生活というものが何か大学の予備校のような形で、大学の入学試験の準備校みたいな状況にややもすれば置かれがちの現状を何とか変えていきたいという願いもあるわけでございますが、しかし、そのことと、直ちに高校までを義務教育に組み込むべきかどうかという議論とは、これはちょっと別にして考えさせていただいておるわけでありまして、あくまで希望する能力のある方が進めるように、臨時に国庫の支出までして、公立高校を四百校ほどこの五年間にふやさなければならぬという年次計画を立てて、そういった努力等もいたしますけれども、しかし、やはり中学を終わる段階でなおいろいろな進路を求める多様な青年があるということも事実でございますし、それからまた、いまの中学の段階が終われば、要するに、九年間の義務教育において国民として必要な基本的基礎的なことは教えて覚えてもらう、理解をしてもらうということに一応の教育課程はなるわけでございますので、そこで世に出てもらうということが必ずしも劣悪条件のままで放置するということにはならないだろうし、また、ならないように、いま教育課程の改善のときにも、基本的基礎的なことはうんと科目を精選して覚えてもらおう、こういうふうにしておるわけでありますので、直ちに制度の根幹に触れる高校まで義務教育という問題は、木島委員御指摘のようないろいろなメリットもあるでしょうけれども、直ちにここでそれを採用させていただきますという御答弁は、まことに申しわけありませんが、できない状況でございます。
  248. 木島喜兵衞

    ○木島委員 先ほどあなたが、憲法や教育基本法を中心とした教育をやるとおっしゃった、その憲法からも基本法からも、あるいはその下の学校教育法からもそうなるではないかと私は主張したのです。だから、直ちにじゃない。学校教育体系の法律的な体系からいってそうなるではないかとお聞きしておるのです。したがって、そういうことを目標にして、それは何年後であるか別であります。手戻りのないところの施策が必要ではないかといま私は言っているのです。その点、もう一回。
  249. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 高校の三年制につきまして、もう希望する能力のある人が皆入れるような準備をしていこうという基本的な心構えでおりますことは、これは先生の指し示していらっしゃる方向と、言い方が下手なのかもしれませんが、よく似ておると思うのです。     〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、高校三年間のカリキュラムでは満足できない進路を選ぶ人のために、五年間の高専学校という制度もすでに発足をしておるわけでありまして、その方は、義務教育を終わってから五年間の高等専門学校に入っておる。あるいは専修学校も整備されておる。多様な進路がそこにすでに設定をされて、皆が自由に選択をして、そこで資質や能力を開発させていこう、啓発させていこうという努力をしていらっしゃるわけでありますから、私は、そういった新しく試みましたいろいろな制度を渾然調和させながら、そういった御要求の目標にこたえるように、要するに、能力があって教育を受けたいと思っている人が少なくとも高校教育までは皆が受けられるような、しかも多様な形で受けられるような制度、仕組みを完備しつつ施策を進めていきたい、こう考えております。
  250. 木島喜兵衞

    ○木島委員 希望する者全員が入るということと義務教育は違います。憲法で言うならば、「義務教育は、これを無償とする。」という、そこが違ってきます。しかし、これらは後にまた文教委員会で議論しましょう。  本来、授業料とは一体何だろうと私は思っているのです。これは、日本においては明治以来まだ定説がないのです。文部省は多分に受益者負担の思想をとっております。しかし、高校というのは、高校にわずかしか入らないときにそこへ入れば受益者になるかもしれません。しかし、九〇%を超えた、九八%になったら、全部が入るのですから受益者じゃありませんね。個人の受益者じゃないでしょう。ですから、そういう意味では、義務教育無償という無償、すなわち、授業料とは一体何か、こういう問題もこれは議論をせねばならないところでありますけれども、きょうは、これは省きます。  そこで、いま高校のことを申しましたが、学歴社会をなくすために、四頭立ての馬車のほかに、一つは、大学の改革があると思うのです。あれは大臣もおっしゃいましたけれども、格差がある。格差があるというのは、すなわちピラミッド型になっておる。ピラミッドというのは、いわゆる大学がピンからキリまであって、東大を頂点としたピラミッド。一つのピラミッドという系列というのは、同質のものであるからピラミッドができるのです。全部大学がそれぞれ個性を持ち特徴を持っておったならば、それはピラミッドにならない、全部別々ですから。異質のものを比較をすることはできません。同質だからこそ、特徴がないから、個性がないから、だからピラミッドという同列の系列になります。ピンからキリまでになります。全部がおのおの特徴を持ったら、ピンからキリまでなくなるわけですね、いや、物の道理が。  そこで私は、ここに至るところの歴史はもう時間がありませんから申しませんけれども、このピラミッドをどう直すかということ、すなわち各大学がおのおの特徴をどう出させるか、おのおの出せば、どの大学もその大学でなければならないものがあれば、おのおの求める者はそこに行くから、したがって一つの学校に集中しない。ところがみんな同列なものですから、ピラミッドの上に行くほど断面が少なくなってくる。断面が少なくなるということは、それだけはみ出されることです。それは点数によってはみ出されていくのです。そういう。ピラミッドになっていきます。ですから、それをおのおのの大学、特徴ある大学にどうするかということ、そしておのおの求めればその求めているところの特徴のところに行くということが学歴社会を打破するところの一つの問題なのだろうと思うのです。これは質問でなくて、私の意見だけ申し上げておきます。  それからもう一つは、一体国公私立って一体何だろう。明治の初めは、先ほど申しましたように、指導者あるいは官吏を養成せねばならなかったから帝大をつくった。けれども、いま国立大学というのはなぜ、たとえば学生の二〇%――二〇%と言われますね。二〇%という国立で、安い授業料で、いい施設、言うなれば低負担、高サービスというのですかな、そういうものが二〇%という根拠は一体何だろう。国立大学という設置目的は一体何なのだろう。明治の初めはわかっていた。それはそれなりに意味があった。いま二〇%という根拠は一体何だろう。国公私立の設置目的は一体何なのだろう、教育から言ったら。私はわからないのです。どう考えたらいいのでしょう。
  251. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先生御指摘のように、進学率が三九%にも達している現在の高等教育の規模のもとにおきましては、国立、公立、私立のそれぞれの大学が本来の目的あるいは使命を異にしているというような議論はできなかろうと思います。それぞれの大学の発生してきた沿革を異にするということはもとよりあるわけでございますけれども、本来それぞれが違った任務を分担しているということは言えなかろうと思います。ただ、国立大学の場合には、これから高等教育の計画的な整備を進めてまいります場合に、その性格上、地方における大学の置きにくいところ、そういったところについて計画的な整備を進めていくということについては非常になじみやすいものでございますから、これからの高等教育の計画的な整備、あるいは特に国が確保をしなければならない人材養成の分野の確保、そういった点について努力をしていきたいと思います。
  252. 木島喜兵衞

    ○木島委員 これはお答えになれないのが当然であります。  そこで、国公私立の設置区分は一体何かということは別にいたしまして、それでは国立大学は一体、授業料は安い、授業料が安いということは国民の税金を使っているからです。すると、先ほど申しました特徴ある大学というものにするならば、国立大学というものは一体何をなすべきかということがひとつ問われていいのではないか。いまのままで果たしていいのかどうかということが問われていいのではないかと私は思うのです。国民の税金でもって賄っておるならば、それは国民全体に、社会人全体に開かれた大学ということが、国民の税金ですから、もっと開かれていいのじゃないのか。ことに学歴社会ということだけからいま私は言っているのでありまして、大学の改革にいろいろ問題があります。ありますけれども、学歴社会ということから言えば、一つは生涯教育と絡みます。十八歳の高校を出たときに大学に入らなければならない、大学へ入らなければ出世ができない、金が、物がということの思想から行くわけですが、もしも人生がいつでも大学へ入れるならば、こんな狭い日本急いで何とかみたいなもので、そのときあわてて行かなくたっていいですね。そういう社会人に、国立大学は国民の税金であるからもっと開かれていいのじゃないのか。ことに寿命は戦前から二十年延びました。そして五人子供を産んだのが今度二人になったから、十年から十五年子供を仕上げる年限が短くなりました。合わせて三十年くらい、人生の中においていままで考えなかったところの人生の、その人生をどうするかという、そういう社会教育の場というものを求めなければなりません。そういうことを含めて、たとえば国立大学、これは夜間というのは広島一つあるだけですね。広島一つだけです。通信教育はゼロです。ところが私立がやっているのです。これはペイしないのです。私立は経営だけでも困難なのに、国民に開いて、経済的にはマイナスになりながらそういうことをやっているのです。夜間、これも固定した学生でなくて、もっと公開議座のように、だれでもが求めるときにそこに行くところのそういう大学、国民に開かれた、社会に開かれた、それが国立大学の一つの任務にせねばならないのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  253. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、国立大学が開かれたものにならなければならないということは御指摘のとおりでございまして、ただ先生、ちょっと申し上げさせていただきたいのですが、国立大学では現在夜間部を置いております学校数は九つ、学部の数で十二、短期大学では二十、学科の数では五十六、それから公立大学では、大学で五大学、学部の数で十二、短期大学で八、学科の数で十三、これだけ置いてございますし、おっしゃいましたように、なるべく社会に出てからの方も受け入れられるように、機会均等、門戸開放といいますか、そういったことにできるだけ努力をしなければならないことは御指摘のとおりでございまして、また、文部省がいま考えております放送大学というものの考え方も、社会に出られた方々が、いつでも、どこででも、どんなところからでも、正規の大学の卒業資格を目指していろいろ学問することができる、勉強することのできる場を提供しようという、全く新しい発想に立っていま考えております。このことだけをどうぞ御理解いただきたいと思います。
  254. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ぼくら、劇場的学校ということを言うのですが、劇場は求めた人がいつでも好きなときに入れて、いやなら出てくる。感激すれば二回でも三回でも行って人生の糧にする。そういう、社会人がどこでも入れる、そういうものが実は国立学校の、国民の、税金だけに、社会に開かれるところの新しい大きなメスをふるわなければならないだろう。ところが、社会人をたとえば学部に入れますと、競争試験じゃだめです、三年、五年たった者と現役じゃ、労働者は働いておったら。だから、国立学校に一定の社会人を入れる枠をつくりませんか。たとえば二百名なら二百名の定員であるなら、そのうちの一割の二十人は社会人を入れるという枠をつくらなければ、そういう意味じゃ開かれないでしょう。そういうことを国立大学やりませんか。
  255. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは制度の根幹に触れる大きな問題でありますので、せっかくの御提言でありますが、直ちにここでどうとかこうとか御返答を申し上げるまだ結論を出し得ませんので、私としてもいろいろ考えさせていただきたいと思いますが、しかし、そういう構想で考えておるのが、実は放送大学というのはまさに先生のおっしゃるとおりの構想で考えておるわけでありまして、内容はそれに全く適合するように構想を持っておるものでございます。
  256. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そんなことにこだわりませんが、いまあなた、検討なさることにこだわりませんが、放送大学があるからそんなものはなくてもいいのだというのは、通信教育があるから放送大学が要らないと同じ論理であります。通信も必要ですし放送も必要でしょう。けれどもと言うのです。そうでなかったらすべて学校教育はテレビでいいという理屈になります。ではない。だからあれもこれもと、さっき私は学歴社会というものだけにしぼっているんですよ。そういう中でもってあなたはいろいろなものを総合的に有機的にとおっしゃったでしょう。そういう中の一つとしてと私は言っているんです。たとえばそういう意味で、時間がありませんから、そういう国民に開かれたあるいは私立ができない障害児、障害者の教育等もその中に入りましょう、あるいは地域の文化の格差をなくするために、たとえば私は新潟ですから新潟大学の中に新潟県の将来なり文化なり地域との密着の中でそういうものを総合的に研究する機関というものも必要でしょう。そういうようなことを国立大学というものが国民の税金でやっているという前提に立って、しかもそれが学歴社会というものをなくすという焦点にしぼっていくならば、幾つかの構想というものがわいてくるだろうと思うのです。どうですか。あなた国立大学の指名校制度でもって大臣就任以来大変御尽力いただいておるようでありますけれども、しかし、これはあなたが石田労働大臣とおやりになっても決め手がありませんね。さっき言いましたように国立大学は低負担で高サービスでありますから、したがってその企業が国立大学の出身者、卒業者を採用したときに、それによって利潤を上げるのであります。低負担国民の税金を払ったのでありますから、その利潤は国民に還元するという意味で採用税を考える。すると企業は、たとえば百万なら百万、二百万なら二百万採用税を取ればそれよりも私立の方がいいということになったらその指名校制度に象徴されるような国立大学を優先しようという考え方よりも私立の方がいいということになる。私立の方が採用されることになればおのずから国立あるいは有名校に集中するところの入試地獄というものは解消されていく。そしてそれで得たところの金、その金を私学の助成に充てるというようなことを含めて、そういう思い切ったところの政策というものをお考えになりませんか。
  257. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学歴偏重社会を何とか打破したい、そういう大きな目標を立ててとりあえずとっかかることのできる指定校制度の廃止を企業側にお願いしたり労働大臣に協力をお願いしたり一生懸命やっておりますが、ただいまの先生の御提言につきましても、私ここで直ちに何とも申し上げられませんが、いろいろとそういったことをした場合にどういうことが起こってどうなるのだろうかということをひとつ検討材料としてきょうは十分拝聴させていただきたい、こう思います。
  258. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大蔵大臣どうですか。
  259. 坊秀男

    ○坊国務大臣 突然でございますが、いまのお話は国立大学指定校の生徒を採用するのに税を取ったらどうか、こういうお話でございますか。(木島委員「指定校にかかわらず」と呼ぶ)  どうも教育と税との問題というものは相当慎重に考えなければなるまいと私は思いますので、これも考えさせていただきたいと思います。
  260. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それから、これでやめますが、国立大学の卒業証書をやめませんか。卒業証書をもらうために大学に入るのでしょう。いま大学へ入るということの中にすべてと言いませんけれども、あるいは指定校などというものもその大学で何を得たかではなしにどこを出たかであります。大学でその個人が何を得たかではなしにどこを出たか。そしてその卒業証書がパスポートになって人生のレールを決める通行証であります、指定席であります。そのことがあなたが指定校制度をやめようというところの思想でありましょう。とすれば、そのパスポートを与えなかったら聴講証明書だけなり単位取得証明だけなりその単位も互換性を拡大して、どの大学へ行くこともできる。大学の改革の中には一つは大学教授の問題があります。終身雇用制や年功序列制の中においてのぬるま湯の教授というものがよく指摘をされます。けれども、もしもどの大学の講義を聞いてもいいとするならば、この教授は研究がいいかどうかということをだれが判定するかというと、それは公権力やその他がやったらコペルニクスは生まれなかったと思うのです。だから学生が求めるところへ行って――だれも行かなかったらその教授はおのずから反省しなければならないでしょう。むしろ国民にその判断と価値を任せたらいい。そういう意味では互換制というものをもっと拡大をしなければならない。そういうことを含めながら単位の証明だけにするところの卒業証書を廃止する。学歴社会というものが卒業証書取得のために多分にある。そのために学校教育全体が荒廃しているとするならば、そのことの廃止を考えませんか。
  261. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 形式的に卒業資格を取るだけの学生生活の内容の実態とか、あるいは形式的に取りました肩書きが必要以上に幅をきかせ過ぎる、そういったことの弊害を私は打ち破っていきたいと盛んに主張しておりますから、先生の御質問の真の意味もただ単に肩書きや形式を取るためにやるのじゃなくて、大学そのものの内容がもっと充実するように、たとえば御指摘のありました単位の互換制度についての御示唆もこれは大変な示唆でございまして、互換制度は四十七年に大学設置基準を改正して、すでに六十八だったと思いますが大学が賛成してそれをさせるようになっておりますので、こういつたいい方向は今後もどんどん行うように奨励をしてまいりますが、直ちに卒業証書の制度をやめてしまうということは他に与える影響といいますか現在のこの社会の仕組みの中で、それよりもそれに伴う悪い弊害を除去することによって改善をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  262. 木島喜兵衞

    ○木島委員 時間がありませんから急ぎます。  大学問題は終わりますが、今度教育課程の中にもちょっと入りますけれども、もし試験でもってこういう問題があったら大臣どうお答えになります。雪が解けたらどうなるというテストの問題が出たら大臣どうお答えになります。
  263. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 雪が解けたら水になると私は答えると思いますが……。
  264. 木島喜兵衞

    ○木島委員 一般的にはそれが合格であります。私は新潟で大変豪雪に遭っておりまして春を待ちわびております。雪が解けたら春になると答えたら誤りになるのです。けれども、たとえばその一つの問題、これは理と情というのでありましょうかね、理だけが百点で情の世界に生きる春を待ちわびるところの一部の国民の雪が解けたら春にたるというのはこれはバッテンだろうかというように――実は私はこれをなぜ申しますかというと、どうなんでしょう、小中学校でいわゆる五段階評価。評価は必要です。個性やどこまでを理解したかという意味では文章で書く評価は必要ですが、点数というものはいま言ったようなそういうテスト、そういうものでもって点数をつける、そしてそれによって順位が決められる。あるいは国語や数学や社会や体操や工作やそういうものを合計して順位をつける。そういうものを合計して順位をつけることで人間の価値の順位をつけることができるのだろうか。ノーベル賞の湯川さんと川端さんを比較してどっちがいいなんて、ちょうど雪みたいなもので。ニュートンとシェイクスピアと比較してどっちがいいと言えないでしょう。むしろあるものが十点でもそれは十点が最高だから十点だけれども、それは二十点か三十点ということがあるでしょう。工作なら常に十点。それは十点というのが最高点だからそれしかつけられないでしょうけれども、これがいつでも二十点三十点の実力をもって、あとが一点でもその人生というものはそれでいいじゃありませんか。だのに、それを最高十点にして、あと一点だったら順位は大変下がる。そして順位がつけられる。その人間はだめだとレッテルを張る。そういう五段階評価、しかも五段階だから五までですが、それを一定割合で決める。そういうことが一体何の意味があるんだろうか。弊害があって、少しも子供たちのためにはならぬじゃないか。五段階評価というものをやめさせる、評価は必要でありますけれども、評点、点をつける、評点はやめさせるような御指導をなさいませんか、学歴社会の解消のために。
  265. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 大変これはむずかしい問題でございまして、特にいまの先生御指摘の、雪が解けたら何になるかと言われ、私は水になると答えたわけでありますけれども、子供の段階で基礎的、基本的なことだけはしっかりと教えておく、覚えておってもらうということは、その人のためになるという角度で教育が行われておると思いますので、それがどの程度理解されたかということを評価をする、それもやはり学校教育の中では私はある意味においては必要なことだ、こう考えておるわけでございます。  ただ、そのときに、雪が解けたら春が来るですか、という理解の仕方も、それは心情的には非常にわかるのですが、たとえば雪が解けてもまだ冬であることや、雪が解けたら夏だったというようなことも全国的にはあるわけでして、やはり雪が解けたら水になるというのが基礎的、基本的なこと、まあ理屈を言うわけじゃありませんけれども、であろうと私はいまとっさにそう思ったのです。そうなりますと、そういうふうに情において解釈されること、その地方に特有な問題の理解の仕方、それはそれでいいのですけれども、教育課程においてきちんと理解し、覚え込んでおってもらうことというのは、やはり一つの原理、原則みたいなものが私はあるような気がいたしますが、その到達度を評価する、ある程度評価をして、さあ励みになる、また教える方の側にもこれだけは理解してもらっておるな、これでいいなということになっていく。要するに基礎的、基本的な段階で必要なものと教えなければならぬことは何なんだろうかということが、まさに教育課程の精選の問題に突き当たっていくんだなということを私はいま漠然と考えたのですが、専門家じゃございませんので、詳しい専門的なことに関しては政府委員から――よろしゅうございますか。
  266. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大臣、あなたは専門家でないとおっしゃいましたけれども、私は、専門家ならばもう少し専門的に御質問申し上げますけれども、むしろ専門家でない大臣に期待をするから、もっと総合的に素人の目から――元来学問というのは知識量がよけいになればなるほど細分化されます。しかし、細分化されていくけれども、細分化された中でもって人間は生きるのじゃないのです。それを総合的に、学問というのはだんだんと細分化されますね。それは専門家だけれども、しかし人間はその総合された力、そういう専門を総合したもの、そういうところから判断力が生まれ、批判力が生まれ、そして創造力ができてくるのです。ですから、そういう意味で私はむしろ素人のあなたにお聞きしたいと思っているのです。総合的に判断した方がいい。専門家はとかく誤ります。だからお聞きしているのですから、余り細かいことを聞いているのじゃありません。  ただ、だからおっしゃるように評価は必要なんです、その人の個性なり、あるいはいまあなたがおっしゃった理解度なり。しかし、それは点数じゃないだろうと言うのです。雪が解けたらどうなるか。水になるが百点で、春になるが零点だ、そういう評価はできないでしょうと言うのです。そうでしょう。わかるということとできるということは違うのです。たとえば三分の一に、分子と分母におのおの二を掛けて六分の二、それは計算上通分はすぐできる。けれども、それでは三分の一と六分の二はどう違うんだ、どう同じなんだ、数字が違いますから。そうすると、その意味がわからない。わかるということと計算ができるということは違う。そういうものを人間の点数でつけるということそのものに私は問題を感じておるのです。だから五段階評価はやめなさい、そう指導しなさい。評価は必要です。文章で書く評価は必要です。けれども、点数でつける、そこから実は、点数をつけるために学校がテストをし、テストによって順位をつける、点数をつける、そのことが、高校へ、大学へ、そして東大へという道につながる、そのことが就職につながる、それが学歴社会になる。そういう観点から検討をいただきたいということであります。  時間が来ました。私の多くの申し上げたいことがずいぶん残りましたけれども、あとまた文教委員会等でいたしますけれども、大臣、先ほど申し上げているように、あなたのおっしゃる、最大の今日の課題が学歴社会の解消であるならば、そしてあなたがおっしゃるように、それを総合的に各部門を有機的に結合しながら、しかし、そのことはもっと新しい角度でもって新しい発想を持ちながら進めなかったならば、学歴社会の解消は百年河清を待つことになるでしょう。その点についての大臣の御奮闘をお願いいたしまして私の質問を終わります。どうも失礼いたしました。
  267. 坪川信三

    坪川委員長 関連質問を許します。中西績介君。
  268. 中西績介

    中西(績)委員 ただいま問題になっております学校管理職任用候補選考試験について一、二お聞かせ願いたいと思います。  教員の地位に関する勧告が一九六六年十月五日に出されまして、その中で、「昇格は、教員団体との協議により定められた厳密に専門的な」云々という文章があります。とのことに関して、この六六年十月五日に採択されたということについてはお認めになられますか、大臣は。
  269. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 恐れ入りますが、ただいま話を聞いておりませんで、恐縮ですが、もう一度……。ちょっと打ち合わせをいたしておりまして失礼しました……(「何のために来ておる、だめよ委員長こんなことでは」と呼び、その他発言する者あり)
  270. 坪川信三

    坪川委員長 諸沢局長に申し上げますが、もう少し真摯に御答弁を願います。
  271. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 はい。
  272. 中西績介

    中西(績)委員 一九六六年十月五日、国際労働機関及び国際連合教育科学文化機関の協力で作成され、教員の地位に関する特別政府会議、パリでの採沢であります。この中にある四十四項の「昇格は、教員団体との協議により定められた」云々ということがあるが、この点についてはお認めになりますか。
  273. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 そのような採択があったことを認めます。
  274. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、こういう採択された中身があり、そして現在全国的に実施をされておる管理職任用候補選考試験なるものが大変いま問題になっておること、このことについても御承知だと思います。  そこで私は、時間の関係から、この問題について最も新しく政府側から答弁のあった中身は、昨年十月二十一日、参議院での文部大臣の答弁の中に、「ただいま初中局長が御答弁申し上げましたように、やはり試験勉強に追われるという先生が校長になるということであってはなりませんので、ただいま御提案の件につきましては私ども十分検討させていただき」ますという答弁があったことについてもお認めになると思います。  そこで、この趣旨に沿って恐らくなされたのではないかと思いますけれども、昨年の十二月二日になると思いますけれども、文部省が教頭、校長登用試験の見直しをするということでもって、全国の各実態を調査をするということを決定をし、実施をされたと思いますけれども、この点についてはどうなっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  275. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お答えいたします。  昨年の秋に各府県の校長及び教頭の選考、任用の状況につきまして、調査をいたしまして、その結果をまとめまして前永井文部大臣がこの任用と選考の方法についての文部省の考え方というものを明らかにしたわけでございます。
  276. 中西績介

    中西(績)委員 その調査結果について、まず資料提供を求めますけれども、この結果はどういうところに問題があったのかを明らかにしてほしいと思います。
  277. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 調査をいたしました結果、いわゆる面接あるいは筆記といったような選考試験を実施しております県は、小中学校の校長等につきましては四十三県、教頭については三十八県ということでございまして、全部の県がやっておるわけではございません。そのうち面接と筆記と両方をやっておる県は、校長については三十九県、教頭は三十四県でございます。また、面接試験を実施している県は、校長、教頭ともに四県、それから校長について残る四県、教頭については残る九県は平常の勤務成績によってやっておるというような結果でございました。そして、その全体を通じまして、筆記試験、面接試験それから平常の勤務成績というものを総合的に評価をしておるわけでありますが、どのぐらいの割合を置いて評価をしておるかということを全体として平均してみますると、筆記試験五、面接試験三、平常の勤務成績二というようなことになっておるわけでございます。  それから、筆記試験の問題等につきましては、もちろん学校の管理運営に関する問題等もございますけれども、学校という教育機関の教育活動の総括者として、学校の経営、教育運営についての方針なり、考え方というようなものについての試験が相当出ておるようなわけでございます。  それから、その試験の結果どの程度のものがいわばその候補者として名簿に登載されるかということでございますが……。
  278. 中西績介

    中西(績)委員 問題点だけ簡単に言ってもらいたい、時間がないから。細かい資料については後で資料提供していただけばいいんで、このことに関しては大体私も握っておるつもりなんです。ですから、この任用試験についてのいま一番問題になっている点はどこが問題点なのかを明らかにしてほしい、こういうことなんです。
  279. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いま申し上げましたように、県によりまして、名簿に登載された任用の合格者とそれから実際に採用される人数との間でかなり多数の者が登載されている場合とほぼ登載されておるものと実際に年度末の異動におきまして、校長、教頭等に任用される数とが匹敵している場合と両方、両様のケースがある点が一つございます。  それからもう一つは、いま申しましたように、この問題の具体的内容についてどのような問題が最も適切であるかというような点について、各県一層その内容を検討する必要があるのではなかろうかという点がざっと申しますと一つの指摘点であろうかと思うわけでございます。
  280. 中西績介

    中西(績)委員 いま言われた問題点以外にもいろいろあると思います。きょうは時間がございませんので、これは後で文教委員会の方でいろいろ指摘をしてまいりたいと思います。  と申しますのは、この試験に際して過去から指摘をされておりますように、いろいろ長い間問題になっておる点は、塾を設置をしてみたり、学閥的な傾向による研修会をしてみたりとか、いろいろ挙げてまいりますと、たくさんの問題があります。ですから、こういう問題がやはり解決をされない限り、この内容的なものが本当に私たちが言う公平なものとして実施をされておるかどうかということについて指摘をせざるを得ないと思うわけであります。  そこでこの十二月二日の新聞の報道によりますと、その実態調査の結果、いわゆる管理偏重を反省をし、そして見直しをするという大勢にすでになりつつある、大体こういうことが書かれておるわけでありますし、そしてその指導方法については具体的には直接的にこれを強制するわけにはいかないけれども、少なくともこの実態を報告する中から反省を求めるというのが文部省の方針のように聞いておりますけれども、この点についてはどのような結果になっておるかを明らかにしてほしいと思います。
  281. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、昨年の十二月二十一日にその結果をまとめまして、前永井文部大臣が御自分で文部省の記者クラブにおいてこれからの校長等の選考、任用の方針についてこういう点を留意してもらいたいのだという点を四つほど挙げたわけでありますが、この選考の方法としてはいまの筆記試験、面接、そういうものを含めましていわば当該候補者の全人的な評価ができるような方法というものを考えてほしいのだという点であります。それから第二番目は、いまの筆記試験の問題につきましては一般教養の問題等を含めまして今日社会において校長としてあるいは教頭として必要な素養を全般的にわかり得るような問題を考えてほしいのだという方法であります。それから三番目といたしましては、平常の勤務成績だけで選考を行うという場合には、いろいろな工夫をすることによって十分全面的な公平な評価ができるようにしてもらいたいのだということであります。最後は、先ほど申しましたように、合格率と任用率との間に余りに差があるということはどうであろうかという点につきましては、その辺も各県において創意工夫をしてもらいたい。以上、四点でございます。
  282. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、こういう大変問題があり、そうして反省期に入っておる管理職登用試験、このことに関して、本年一月の九日福岡県におきましてこの試験を実施するに際して大変な問題が派生をいたしました。それは福岡県評の花田議長、福岡県教職員組合委員長大穂勝清、同書記長の白石健次郎、福岡県高等学校教職員組合委員長の待鳥恵、四名が不法にも逮捕され、そして聞くところによると本日起訴された、こういう状況が出ておるようでありますけれども、このことに関しては間違いありませんか。
  283. 三井脩

    ○三井政府委員 本年一月九日にそういう事案がありまして、威力業務妨害罪並びに道交法違反により現行犯逮捕し、その後、本日午前中に福岡地方検察庁において威力業務妨害罪によって起訴されたという報告を受けております。
  284. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、この威力業務妨害という罪名をつけ、そして逮捕されたと言われておりますけれども、この威力業務妨害なるものはどういう条件を指して言っておるのか、明らかにしてほしいと思います。
  285. 三井脩

    ○三井政府委員 威力業務妨害罪は、刑法二百三十四条に規定がありますように、他人の業務を威力を用いて妨害した者という構成要件でございますが、本件の場合は、福岡県教育委員会が実施をいたします簡単に言えば管理職の選考試験、これを受験するという人たちに対しまして、受験をしないように説得をし、かつ応じない人を実力で受験を阻止をする、こういう行為が行われたわけでありますので、威力を用いて他人の業務、この場合の試験というものを実施せしめなかった、こういう構成要件、犯罪事実がございます。
  286. 中西績介

    中西(績)委員 いま答弁がありましたけれども、ところがこの管理職試験は四十五年から始まっておるわけであります。そして過去七年間にわたって実施をされ、そして具体的には私もその一人として説得活動に努めた者でありますけれども、そういう条件から考え合わせてまいりますと、本年一月九日における実態状況というのは、過去におけるこの七年間の経過あるいは状況とは全く異ならず、むしろ条件としては緩やかであり、そして集団的に平和的説得が行われておったというように、私自身もそこに参加をして実態を見た中で認識をいたしておるわけであります。  この点を福岡においていろいろ調査をし、そして福岡県警本部長なりの答弁を求めたところでありますけれども、この方針については全く変わっておらないと称しながら、本年に限ってこのような実態、強制的な執行が行われたのはなぜなのかと  いうことが理解できません。この点について明らかにしてほしいと思います。
  287. 三井脩

    ○三井政府委員 説得活動等も、これが違法にわたらない範囲で行われることはもとより自由でございますけれども、違法にわたるということになりますと、警察といたしましては、その行き過ぎた程度につきまして現場で措置をしなければならない、こういうことになるわけでございます。なるほど昨年はそういうものはありませんでしたけれども、一昨年は約四千七百人で阻止行動がありました。本年は三千人を超える阻止行動、そしてここで、先ほど申し上げました四名を検挙するその現場におきましては、三百人を超える人たちが、受験のために試験場である福岡高校に入場しようとする二千名を超える受験者、これに対して説得と称して妨害をいたした、そういう事案でございまして、警察といたしましては、違法行為につきましては常にこれを排除し、現場において状況により検挙をする、こういうことでございます。  本件の場合、特にとりたてて従前と違うという点を申しますと、多数の人が直径五ミリですか、ビニールの細引きをお互いに腰に巻いて、そういう警察官の排除活動をしても排除されないというように厳重にこれを結んで、阻止行動に加わって一おったというような点におきまして、同じ阻止行動ではありますが、いままでよりは一層質において悪質である、こういうことでございます。
  288. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、いま言われましたひもでもって結わえておったということを指摘をいたしましたけれども、このことが強い阻止行動であるかどうかということは、この逮捕をするという時点において全くわからなかったわけです。ですから、私が少なくともこの実態を見たときに、あくまでも警察なりあるいはそこでの指揮の状況からいたしますと大変問題があるわけでありまして、特に機動隊が例年より大変丁寧であったということが一つ。そしてしかも、これにかかれと言って出動し、そして実際に実力排除に入った際に、私の一人置いて隣にいた高教組委員長を逮捕する際に当たっては、最初はこれを一緒に排除しておったわけであります。ところがこれが排除されておるために、これは間違ったということでもってまた一歩下げて、そしてまたそれを列に復帰をさせておいて排除をするという、こういう私たちが想像ができないようなことが行われておったし、そしてしかも県教委を突っ込ませる際に、全然別個の県職員の皆さんがおられるところに三回そこに突っ込ましたわけです。ところが、それは間違いだということを指摘をしながら、最後の段階でそのような措置をとってきた。  こうして、この状況からいたしますと、ビデオにいたしましてもあるいはさおの先につけたマイク、あるいは私たちがいろいろこの点について何とか平和的に行わせようとして努力をする際に、警察官、捜査官が横から、私たちのいろいろな話の内容についてもすべてマイクでもってこれを聴取をするという体制、あるいはカメラについてもいままでにない体制の中でやっておるという状況があります。そしてさらにまた県警の警備部長、加えて地検の公安担当検事が別の指揮車の上から、これを指導と言うといろいろまた反論をすると思うけれども、指導に近い状況でこれを指揮しておったと言って過言ではない状況であったということを、私自身がこのことを見届けておるわけです。  それともう一つ大変重要なことがあります。それは学校の現場で十日ないし一週間ぐらい前から、逮捕者が出るぞということが現場の校長から明らかにされておるわけであります。ということになりますと、このことは明らかに当初からシナリオが書かれ、それに基づいてやっておるという状況があるわけであります。そのことは、私自身が、一人置いて隣の者が排除された、ところがそれが間違いだということを指摘を受けて、またもう一歩下がって、さらにこれを今度加えてその中に引きずり込み、そして逮捕をしていくというこういう体制をとっておったということからいたしましても、まさにこの逮捕の状況というのはすでにシナリオが書かれ、それを実施をしたにすぎない、こういうように私は指摘ができると思います。この点について明らかにしてほしいと思います。
  289. 三井脩

    ○三井政府委員 事前の打ち合わせのシナリオによってやったのではないかということで例を挙げられたわけでありますが、採証活動を十分にやるということにつきましては、過去のこの種事案の経験等もこれあり、力を入れてやるということは、毎回事案の後で反省、検討いたしますので、そういうことに基づいたものと考えます。  また、現場におきまして警察官が教育委員会の人を指揮したとおっしゃるわけでありますけれども、さようなことはございません。  もとより、事前にこの試験につきましては最初から阻止行動、反対行動があるということは、組合側でも決めておられるわけでありますので、いままでの例にかんがみ、これが円滑に行われるように、教育委員会関係者と打ち合わせばいたしておりますが、また現場において警備は、また事案が円滑に行われるようなそれぞれの連絡ということはやっておるわけでございます。  また逮捕者が出るかもしれないというようなことが事前にささやかれておったというようなことにつきましては、私たちは全く存じないわけでございます。また、いまお話しの逮捕者四名というのは、この説得阻止行動の一番前列におった四名の方を現行犯逮捕したと、こういうことでありまして、この違法行為を行っておる人は他にも多数あるわけでありますけれども、その先頭に立ってやっておった、こういう人を排除し、検挙した、こういうことでございます。
  290. 中西績介

    中西(績)委員 いまの答弁では私は納得できないのは、現場で実際にそういうことがささやかれ、校長から現場の教員にそのことが言われておるのです。こういうことが事前に流されておるということが大変問題であるし、しかも、私は想像できないのは、地検のそういう公安担当検事が指揮車の上から県警の警備部長あたりと一緒に指揮をしておったという、こういう実態があったということです。そしてさらに、時間がありませんから、特に一月十日の日に鈴木警察庁官房長と私たちがお会いをした際に、先ほど言われたように、実力排除の際にひもでくくり合っておった、これがこの阻止行動については大変大きな力になったということを指摘をされましたけれども、このことは、現行犯で逮捕する、その後にそのことがわかっただけであって、そのことが何も逮捕するという理由にはならないわけであります。それからさらに、このこととあわせて大変問題なのは、一月十一日、この日に小川国家公安委員長にわが党の多賀谷真稔外二名の方々がお会いをした際に、一罰百戒だというお言葉を使ったそうであります。ということになりますと、これはみせしめだということになるわけであります。こういうような言葉が使われるということになりますと、先ほど私が指摘をしましたように、この問題については事前から中央からの指示によって福岡県警を動かし、そして逮捕させ、そして最終的には起訴するという、こういう態勢に持ち込んだのではないか。このことがはっきりこの経過を見ましても明らかであります。そして十日までの言い分はすべて強い阻止行動であったというものが、十一日以降はすべて消えてしまって、あくまでも個人の現行犯としてということに変わっていったわけであります。こういう点から考え合わせていきますと、この点はまさにつくられたものであるということを指摘をせざるを得ないわけです。しかも、人権問題について一点だけ申し上げますならば、警察での四十八時間、地検での二十四時間、この拘束時間につきましても、時間いっぱいを使い、そして実質的には八十三時間に上る拘束をいたしております。こういうことからいたしましても、すべてが敵視する考え方の中でこれが出てきておるし、中央からの指示によってこのことがなされたと、こう指摘をせざるを得ません。特にこの問題については、本当にいまの時代、考えますと、時代逆行的な、政治的なものであると断ぜざるを得ないわけであります。この刑事弾圧の不当性については、特に労働組合のこういう問題に関して、不当にも介入をし、そして大変な過ちを犯しておると言わざるを得ません。この点に関して特に私は、時間がありませんから十分申し上げることはできませんでしたけれども、これらの問題については、国家公安委員長、確かにそういうことを言ったと思いますので、この点とあわせてこの点についての答弁をお願いしたいと思います。
  291. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  警察は、正当な労働運動に対しましては厳正中立な態度をとる、そういう基本的な態度を堅持いたしておると思います。しかし、それが正当性の限度を超えて違法にわたるという場合は、これを取り締まるというのが警察の当然の職責であろうと思っております。報告によりますれば、当時多数の労働組合員が動員されて、スクラムを組んで、平穏、公然に入場しようとする受験者を実力で阻止した。これは平和的な説得の限度を超えておる違法行為であるから逮捕をした1何も逮捕しなくてもよかったではないかという御質問を私は多賀谷議員その他の方から受けたわけでございますが、現に違法行為が存在をしておるのにこれを逮捕しないということであると、法律はあれどもなきがごときことになる、いわゆる一罰百戒ということではなかろうかと、かように申し上げたわけでございます。
  292. 中西績介

    中西(績)委員 時間が参りましたので終わらしていただきますけれども、こういう実態が派生をしておるし、特に問題になっておるこの管理職試験については、文部大臣に要請をいたしますけれども、今後とも十分実態を把握した中で、よりよい方向性というものを打ち出すように努力をしていただくことを切に希望して、質問を終わらしていただきます。
  293. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御要望の趣旨に従ってよく実態を私も調べてみますけれども、ただ、警察の問題については、これは所管外でございますので、でき得れば全国で行われておりますように平穏に行われるためにはどうしたらいいかという角度から私は考えさせていただきたいと思います。
  294. 坪川信三

    坪川委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次に、田中美智子君。
  295. 田中美智子

    田中(美)委員 質問いたします。産業政策局長の濃野滋さんは出席していらっしゃいますか。――早く答えてください。――来ていますか。
  296. 坪川信三

  297. 田中美智子

    田中(美)委員 産業政策局長来ているかと……。
  298. 坪川信三

    坪川委員長 まだ来ていませんです。
  299. 田中美智子

    田中(美)委員 なぜ来てないのですか。濃野滋産業政策局長はなぜ出席していないのですか。私はお呼びしているはずです。
  300. 坪川信三

    坪川委員長 そのことを織田官房審議官お答えする予定になっております。
  301. 田中美智子

    田中(美)委員 なぜ呼んだ局長が出てこないのですかと、一番局長質問があるのになぜ局長が出ないのかと、なぜ代理人が出るのですかと、こう聞いているのです。
  302. 坪川信三

    坪川委員長 織田審議官が御質問の内容にお答えする予定です。
  303. 田中美智子

    田中(美)委員 なぜ局長が出てこないのかと聞いているんです。
  304. 織田季明

    ○織田政府委員 局長は病気のために寝ておりますので、私がかわりに参りました。
  305. 田中美智子

    田中(美)委員 私は局長を、おととい、その前から要求しています。先ほどそちらに聞きましたら、出ることになっていると言ったわけです。そこへ突然官房参事官鈴木玄八郎という方が来られまして、織田審議官を出すがいいかと言ってきたので、ならないと、局長を呼んでいるんだから局長を呼んでほしいと、こう言いましたら、帰っていったわけです。帰っていってその後、病気ですと、今度はこう言うのです。本当に病気なのでしょうか。
  306. 坪川信三

    坪川委員長 それは、責任ある官房審議官が申しますのですから、信頼していただきたいと思います。
  307. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、病気の欠席届は出ているでしょうか。公務員ですので、病気ならば欠席届が出ているはずです。その点お調べ願いたいと思いますが、委員長、調べていただけますか。
  308. 坪川信三

    坪川委員長 こちらには欠席届は出ておりませんので、織田審議官にひとつ御質問を願います。
  309. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、やむを得ませんので織田審議官でやっていきますが、この濃野滋局長の欠席届が出ているかどうか、それから何の病気で休んでいるか、私、後ほど御返事いただきたいと思いますが、委員長の責任でよろしいでしょうか。
  310. 坪川信三

    坪川委員長 通産省に申し上げますが、さよう至急取り計らってください。(織田政府委員「はい」と呼ぶ)
  311. 田中美智子

    田中(美)委員 はっきり答えてください。
  312. 坪川信三

    坪川委員長 いや、いまはっきり「はい」と言っておりますから。
  313. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは大臣伺います。責任を持った回答を織田審議官がするということを、局長にかわった間違いない責任ある回答をするということを御確認願えますか。
  314. 田中龍夫

    田中国務大臣 田中先生のせっかくの御要望の局長が病気のため出られませんことを深くおわびいたします。  なお、織田審議官が責任を持ってお答えいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  315. 田中美智子

    田中(美)委員 出られないことをおわびされるだけでなくて、出られないということをあらかじめ私に言わなかったということもおわびしてもらわなければなりません。その点、よろしいですね。
  316. 田中龍夫

    田中国務大臣 あわせておわびいたします。
  317. 田中美智子

    田中(美)委員 では次に進みます。  小売商業調整特別措置法、以下商調法と言いますが、商調法に、小売市場は一つの建物の中に野菜または生鮮魚介類を含む十以上の小売商の店舗のあるものを言うとあります。この場合、知事の許可を受けなければならないことになっています。  そこで、名古屋市の西区にあります株式会社ダイヤモンド・シティ、これはジャスコを含め百七のテナントが入っておりますが、このスーパーは商調法の適用を受けますか。
  318. 岸田文武

    ○岸田政府委員 お答えをいたします。  お話にございましたように、小売商業調整特別措置法によりますと、一の建物の中で生鮮魚介類及び野菜の販売店を含む十店舗以上がございますときには、都道府県知事の許可を要するということになっております。この条文の解釈につきましては、従来私どももいろいろ議論をいたしておりましたが、必ずしも統一されていないうらみがございました。今回、私ども、いろいろ議論をいたしました末に、この条文の解釈につきましては、従来のいわゆる伝統的な市場以外に、この条文の字句を素直に解釈いたしまして、スーパー等がテナントをその店の中に擁しておるというような場合もこれは含めて解釈をするようにいたしたい、こう考えておるところでございます。  したがいまして、いま御指摘のございましたダイヤモンド・シティでございますか、そのケースにつきましても、今後の解釈におきましては、許可を要するケースに該当するというようになろうかと思っております。
  319. 田中美智子

    田中(美)委員 今後私の質問に対して、長々としゃべらないで、その点だけを簡潔に答えていただきたいと思います。  商調法に適用するということですね。この西区のスーパーは商調法に適用すると言われたわけです。そうすれば知事の許可を受けなければならないわけですね。簡単にお答えください。
  320. 岸田文武

    ○岸田政府委員 今後の運用におきましては、知事の許可を要するというケースに該当することになろうかと思います。ただし、いま御指摘のケースは従来すでに設置をされておるという場合でございますので、この新しい解釈を過去の事例にいかに適用するかという問題が別途出ているわけでございまして、この点について私どももいろいろ検討をいたしておる最中でございます。
  321. 田中美智子

    田中(美)委員 聞かないことには答えないでください。聞いたことだけに答えていただきたいと思います。  知事の許可を受けなければならないスーパーが知事の許可を受けていないということは、ダイヤモンド・シティがつくっているこのスーパーは違法スーパーということになります。そういうことですね。これは明らかに違法スーパーです。それならばこのスーパーに、ダイヤモンド・シティに商調法二十二条の罰則をかけるという、法に違反すれば必ず罰則がかけられなければならない。罰則をかけないのでしょうか。その点お答えください。
  322. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど御説明いたしましたように、ダイヤモンド・シティのケースは、いま申し上げました解釈の統一をする以前に設置をされておるケースでございます。このようなケースについて一体どう適用していくかということについては、やはりこの法律の制定以降の経過を振り返って、その背景の上に立って考えていく必要があろうと思っております。  御承知のとおり、商調法は昭和三十四年にできた法律でございまして、その当時は小売商の形態としては大規模な店舗としては百貨店があり、他方には無数の小売店がある。その中で市場という特殊の集合形態があることに着目をして、市場の許可制というものがスタートしたわけでございます。  ところが、その後、小売形態が次第に変化をしてまいりまして、ショッピングセンターであるとか、その他一つの建物の中にテナントを入れる新しい形態が出てきた。こういう新しい事態に対応して、従来の運用は、府県によってそれを含むという解釈をとっておる府県もあり、また県によってはそれは適用しないという観念のもとに運用してきたというようなことが長いこと行われてきたわけでございますし、また通産省としても、その辺の統一について必ずしも的確な指導を行っておらなかったという経緯があるわけでございます。したがいまして、過去のケースをどうおさめるかということにつきましては、これを一律に適用いたしますと、たとえばテナントを追い出すとかいうような問題にもなってまいりますし、あるいは私どもが指導しております寄り合い百貨店をどうするかというような問題にも関連をしてまいります。したがいまして、私どもとしては、こういうケースをどうおさめるかということについては、ある意味では大人の知恵を働かせていかなければならない、こう考えておるところでございます。
  323. 田中美智子

    田中(美)委員 明らかに違法である、法律を犯している者に、大人の知恵を働かせて罰則をかけられないということをおっしゃったのだと思いますが、それでは、商調法二十二条の罰則を受けたところがいままでありますか。それについてどれくらいあるかお答えください。
  324. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いわゆる伝統的意味における市場の設立につきまして、許可を受けずに設置したということを理由として罰則を受けた事例が、私どもの調査した範囲内では二十八件ございます。
  325. 田中美智子

    田中(美)委員 私の調査によると三十七件あるように思います。ここの数がちょっと違いますが、おたくの言われるこの二十八件の中に三千平米以上の大型のスーパーは幾つありますか。
  326. 岸田文武

    ○岸田政府委員 個々のケースにつきましてその延べ面積が幾らであったかということまで、まだ調査はいたしておりません。もし必要がございますれば、私、至急に調査をいたしたいと思います。
  327. 田中美智子

    田中(美)委員 そういう逃げ口上をするというのはひきょうですよ。一つもないじゃないですか。三千平米以上の罰則をかけられたスーパーは一つもないじゃないですか。調査してすぐに私に返事をしていただきたいと思います。この質問が終わるまでの間にすればすぐわかることです。あなたは座っていてください。ほかの人に調べさせてください、この質問が終わるまでの間に。私の調査では一つもありません。もし一つでもあるならば、後からお話を伺います。  小さい市場には罰則を厳しくかけておきながら、大きいスーパーには商調法の罰則を全然かけない。そして、違法で何年も放置しておいて、いまになってこれに罰則をかけられない、大人の知恵でどうしようか。こういう問題というのは、通産省中小企業庁中小企業に対して、中小業者に対していかに冷たいかということがここにもはっきりとあらわれているわけです。  それで、お聞きいたしますが、明らかに違法のこのダイヤモンド・シティに対してどうなさるおつもりでいらっしゃいますか。あなたの大人の知恵、一体どういうことですか。
  328. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま申し上げましたように、過去この条文の解釈について、府県ごとに運用しておるその運用の仕方がばらばらであったということが問題の根源であろうかと思っております。したがいまして、申請をしておる当事者としては必ずしもこれが違法であるというような意識がなかったのではないかというような感じがいたします。この辺の基本的な認識の点が、これをどう考えるかという点についての一つのポイントではないかと思っておるところでございます。したがいまして、単に罰則を適用するというようなやり方が本当に実情に即したやり方であるかどうかという点、特に違法性の問題等の解釈についてはなお一層吟味をする必要があるのではないかと思っておるところでございます。したがいまして、罰則というやり方があるのか、あるいはこの際、解釈を統一した機会に改めて許可を受けさせるようにするというようなやり方があるのか、その辺さらに私どもも検討いたしてみたいと思っておるところでございます。
  329. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、昨年の十月二十九日の商工委員会で、この西区のジャスコの問題については、このダイヤモンド・シティについては細かく現状を話しているはずです。そのときにおたくの方で、商調法を適用するということを言っていらっしゃるわけですね。そうすると、それまでの間は商調法の適用外かもしれぬ、考えなかった。非常に怠慢であったわけですけれども、少なくとも四カ月前にははっきりと商調法違反ということはこの国会の場で明らかになったわけです。四カ月間まだ何もしないで放置していたのですか。
  330. 岸田文武

    ○岸田政府委員 御指摘を受けましたのが十一月でございますが、御指摘を受けまして、実は各府県に対しまして一体実情はどうなっているのかということを調査をいたしたわけでございます。その結果、従来の解釈は必ずしも統一していない。さらにそのことの結果として、かなりいろいろのケースが問題となり得る。単にジャスコだけではなくてほかのケースも問題になり得るのではないかという感じがいたしたわけでございます。そのような実情にございますことから、私どもとしてはこの際、新しい条文の解釈というものを前提として、いままでの運用が実際どうなっていたのかということを的確に把握をし、そしてその把握の上に立って今後の方針を決めるということが必要なのではないかというふうに考えたわけでございます。私どもは目下各府県を通じ、また直接にスーパーに対しまして実情の調査をいたしておりまして、近くその報告がまとめられることになっておりますので、それを見ました上で判断をさせていただきたいと思います。
  331. 田中美智子

    田中(美)委員 いまも許可の申請をさせるということを言っていらっしゃいましたけれども、許可の申請をしても、商調法を適用するということになれば――地図がございますけれども、ここにダイヤモンド・シティがあります。そしてここに市場がいっぱいあります。名古屋は六百メートル以内ですから、市場がありますと、申請してもこれは許可できないじゃないですか。いままで申請しないで違法のスーパーでやってきた。これからこれは申請しなければいけない。申請したって許可できないじゃないですか。どうするのですか。それと、申請して、その前のことは全部御破算ですか。六年も七年もほったらかして違法でやってきたことは御破算ですか。
  332. 岸田文武

    ○岸田政府委員 小売商業調整特別措置法によりますと、市場ができたことによりまして市場と市場との間の過当競争がないようにしていきたい、また、市場に住む小売商と周辺の小売商との間の競争が過度にわたらないようにしていきたい、こういつたことが法律の趣旨であろうかと思っております。このような趣旨を具体的に生かしますために、許可の基準というものを各府県が定めて、それを通産省に報告をするということになっております。これの運用につきましては、三十四年の法制定当時、基準の通達が出ておりまして、それによりますと、こういった過当競争の判断の一つの物差しとして、市場と市場との間の距離を考えていこうということになっております。ただ、それにつきましては、実情に応じてその画一的な基準によらない場合もあり得るというようなルールもあわせて書かれておるわけでございまして、いわば、いま申し上げましたような距離基準というものと、それから特別の場合における弾力的運用、これを絡み合わせてどう考えていくかということが問題なのではないかと思っておるところでございます。
  333. 田中美智子

    田中(美)委員 よくそんな答えができますね。四カ月前にあれだけ細かく、あの周りの商店街の売り上げがうんと下がった、市場が歯が抜けたようにばたばたと倒れているという状態をあれだけ詳しく話してあるのに、まだ周りが調整ができるならばいいようなことを言うわけですけれども、その前のことは始末書もおたくはとれないのですか。     〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 罰則もかけられない、始末書もとれない、何もできないというのですか。一言でお答えください。
  334. 岸田文武

    ○岸田政府委員 具体的適用はこれから最終的な判断をするところでございますが、私自身は少なくとも始末書はとるべきものではないかと考えておるところでございます。
  335. 田中美智子

    田中(美)委員 始末書をとって、そしてまた申請しても、その周りに市場がある。そうすれば、商調法違反になって、これは許可ができないというのが法的な正しい解釈だと思いますけれども、おたくの方は大人の悪知恵を使って何とかしてスーパーに有利にしていこうというふうにいまのお答えは感じられる節がたくさんあるわけです。このように放置されていたこのスーパーの周りの市場それから商店街、この人たちの被害というのは一体だれが責任を持つのですか。中小企業庁通産省が責任持ちますか。
  336. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまのお言葉でございますが、私ども中小企業庁は、やはり中小企業が何とか健全に育っていくということを日ごろ念願しながら一生懸命に仕事をしておるつもりでございます。ただ、その中にありまして今回の問題は、経過にも触れましたように、法律が制定されて、それが都道府県に委任をされておる。それから後十数年たつ間に世の中が次第に変わっていったということが背景にあるわけでございまして、その間各府県の解釈が不統一であった、それを見逃しておったというようなこと。正直に申せば、うかつと言えばうかつでございますが、だれの責任ということにもなかなか言いにくい問題があるのではないかと思っておるところでございます。
  337. 田中美智子

    田中(美)委員 うかつなために中小零細企業がばたばたと倒されてしまった。その責任はだれもとる人がない。裁判で告訴する以外に道がないというわけですか。裁判で告訴する以外に救う道がありますか。ないということですね、いまのお答えは。  それでは、いま実態調査をしていらっしゃる、こういうふうに言われましたが、その目的は何ですか。
  338. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど申し上げましたように、最近における小売の流通形態の変化というのは非常に激しいものがございます。たとえば、寄り合い百貨店ができてきた、地下街ができてきた、それからショッピングセンターができてきた、また、一つのスーパーの中にテナントを入れるというような形態もふえてきた。これらの新しい形態につきましては、従来統一的な調査をいたしたことがございません。したがって、その実態を踏まえた上でやはりこれからのルールづくりというものを基本的に考え直してみる必要があるのではないか、こういう認識でございます。したがいまして、小売商業調整特別措置法三条による条文、特にその新しいこれからの解釈というものを頭に置きながら、いままでの事例においてそれと違った運用が結果としてなされたケースがどのくらいあるのか、そしてそれを治癒するにはどういう方法考えられるのか、こういったことをいま調査をいたしておるところでございます。
  339. 田中美智子

    田中(美)委員 おたくからこの実態調査の調査票というのをいただきました。なかなか下さいませんでしたけれども、やっと、粘って粘って、これをいただくのに三時間かかりました。国会議員がたったこれだけの調査票を見せてほしいというのに、こんなに、三時間もかかるというふうな、こういう態度だったのです。通産大臣、よう聞いていてください。あなたのところではそういうことをしているのですね。これをよく見てみますと、いまあちこちで委託販売であれば商調法の適用外であるという形でスーパーが行われている。この委託販売の状態を見ようとしているのではないかというふうに、これを見て私はそのように思われるわけです、この調査票で。ということは、委託販売であれば商調法の適用外になるわけですね。その点どっちか答えてください。
  340. 岸田文武

    ○岸田政府委員 商調法におきましては店舗の貸し付けまたは譲渡を規制をいたしております。この解釈からいたしますと、委託販売であれば適用にはならないと解釈いたします。
  341. 田中美智子

    田中(美)委員 委託販売であれば商調法の適用でないということですね。いま私はここに神戸にありますダイエーの鈴蘭台店というところの商品販売契約書というのを持っております。これをいま皆様にお配りしてあります。そちらにもお配りしてあるはずです。この中身を全部読みますと時間がかかりますので、どういうふうな契約になっているかというと、この契約を結びますと委託販売という形で商調法の適用外になるということになって、現在このダイエーは営業されているわけですね。この中身を私が細かく分析しまして、わかりやすく書き直してみました。それで後でおたくの方でも分析していただきたいと思うわけですが、こういう中身なんですね。そのスーパーの中に入る、テナントではないのです、委託販売ですから。いわゆる出店者といま言っておきます。この出店者が自分の品物をそのダイエーの中に持ち込みますと、持ち込んだときその商品はすべてダイエーの所有になってしまうわけです。お金はもらいませんよ。全部ダイエーの所有になってしまうのですね。しかし、そのダイエーの所有になった商品が水害や災害、盗難、落雷、ネズミ、腐敗、破損などで損失が行われますと、これは全部出店者が責任をとらなければならなくなっているのですね。人の所有になったものが、ネズミがかじったからといって今度は出店者が責任をとらなければならない、こういう契約書ですね。それから今度は、販売店員を出店者が連れてこなければならないことになってくるわけですね。人を連れてくるわけですね。そして、この連れてきた従業員、店員の首を切る権限、やめさせようと使おうと、首を切る権限というのは全部ダイエーにあるのですね。しかし、その店員に対して給料を払う責任はダイエーじゃなくて、これは出店者が給料も賃金も労働法に基づく一切の義務を負わされろということになっています。その上今度は、その店員がダイエーや――大臣よく聞いていてください。ダイエーやお客に対して損害を与えたとき、これは出店者が損害賠償をしなければならないようにこの契約書には書いてあります。いいですね。まだあります。今度はその商品を売る場所ですね。この場所、普通ならばテナントですけれども、この場合はテナントじゃないのですが、行ってみれば同じに見えますからね、素人が入りますと。この中の小さなスーパーのお店ですね、ここの店の設備は原則としてダイエーがすることにはなっています。しかし実際には、出店者がダイエーの許可を得れば設備をしてもいいということになって、実際には出店者にみんな設備をさせているのですね。そうして出店者が設備をし、備品も入れ、什器を入れ、施設、装飾、これは全部やりますね。やりますとその所有権は全部ダイエーのものになるのです。ただで入れてやると言っていながら、そういうものは全部させて、これは全部ダイエーの所有権になる。だから今度、ダイエーの所有権になったわけですから、出店者がこれらの設備を傷つけたりした場合、自分でつくった施設ですね、金も何ももらいませんよ、それに傷つけた場合はダイエーの一方的査定額、一方的と書いてある、一方的査定額によって損害賠償をしなければならない。もう一つあります。売り上げは、最少責任額が決められていて、責任を果たさない場合には損害金を出さなければならないということがこの契約書に書いてあるわけです。一体これはまともな人間の契約書と言えるでしょうか。人の無知につけ込んで、弱みにつけ込んでこういう契約をした場合には、付合契約といって無効になると言われています。私はまさにこれは無効ではないかというふうに思うわけです。  この契約を見て私は本当に驚きました。まさにベニスの商人か金色夜叉かというような契約が委託販売という名によって行われているのです。これは通産大臣御存じですか。こういう契約書を御存じでしたか、答えてください。
  342. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  何分にもまだ日が浅いので、存じませんでした。
  343. 田中美智子

    田中(美)委員 日が浅くてこういうことを全く御存じない。こんなひどい契約が結ばれているということを御存じないということでは、販売契約という名目で小売商いじめを放任してきているだけでなくて――この調査票を見れば、こういう実態は全くわかりません。小売業者がどんなにいじめられているかという実態はこの調査ではわかりません。私はこの調査全部がだめだと言いません。これはこれで一つとして調査をして結構ですけれども、このような中小零細企業がいじめられている実態はこれでは出ないということです。ですから、この調査の意図というものを私は疑うわけですけれども、委託販売という名目でこんなひどい小売商いじめを放任してきただけでなく、この調査だけの結果でいまのようなこうした契約を追認しよう、そしていまの大スーパーを商調法から除外することを合法化しようとするような調査ではないのかと疑っているわけです。どうでしょうか、大臣
  344. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま御指摘の問題は二つあるような気がいたします。  一つは、賃貸、譲渡と委託販売との区分をどういうふうにルールづくりしていくかという問題かと思います。この点につきましては、私どももやはり何らかの基準があった方がいいのではないかと思っておるところでございまして、少し研究をさしていただきたいと思います。  それと同時に、いまの問題とは離れまして、一般に大きなお店の中に入るテナントが中小企業として本当に守られているかどうかという問題は、別の問題としてあるような気がいたします。いま御指摘がございましたケース、早速拝見したばかりでございますが、小売商を守るという立場から、なお私どももこういったことについてどう考えていくのか勉強いたしてみたいと思います。
  345. 田中美智子

    田中(美)委員 まさにダイエーは、それこそベニスの商人のシャイロックみたいなものですよ。だからこそ中小企業庁産業政策局長、それから通産大臣、こういうのがまさにポーシャの役割りを果たしていかなければならないのですよ。それがもう放置されているわけでしょう。そういう点で、私はいまこういう状態を何も御存じないようですのでひとつお話ししたいと思いますが、この契約を結んだダイエーの鈴蘭台店、これは神戸の北区にあるところです。これは甘いえさで結局小売店をスーパーの中に引き入れて、そしてある程度やって、売り上げのいいところは全部ダイエーの直轄にしてしまって、そしてうまくないところはどんどん、委託販売ですから権利も何もありません、あちこちに、すみっこの方に追いやられていく。結局やっていかれなくなって、このダイエーの鈴蘭台店では先月か今月の初めですか、ほとんどがみずから出ていかなければならなくなったという状態にあるわけです。こんな契約でやれば必ずそうなるに決まっているわけです。こんな契約を研究するということでは、いままで知らなかったということは、私は通産省のものすごい怠慢だと思うのです。ただで入れてやる、こう言えば、いま苦しんでいる小売業者たちは喜びます。あのテナントがただで入るのかと思って入ってみたら、実際にはこういう弱みにつけ込んでこうした販売契約を結ばされて、全く主体性を取り上げられ、義務だけ押しつけられ、そして採算が合わなくなればみずからそのスーパーを出ていかなければならない。ただほどこわいものはないというこれが実例だというふうに思うわけです。このようなわだちを今後踏ませないために私は通産大臣にお願いしたいわけですけれども、このような調査項目だけではだめです。足りませんので、至急委託販売契約と称して商品販売契約をしているところの契約書を手に入れていただきたい。私はいま一通手に入れたわけですね。ダイエーと西友ストアー、イトーヨーカドー、ジャスコ、ニチイ、この大手の五つのスーパーの委託販売契約と称して商品販売契約を結んでいる契約書を手に入れていただきたい。そして、それをおたくの方で十分に検討していただきたい。で、私の方にその契約書をいただきたい。私の方でもこれを検討してみます。そして一緒にこれをいい方向に持っていくように、いまおたくは基準をつくりたいとおっしゃったわけですから、これを検討しない限りは基準をつくるということはできないと思うのです、この状態は。よろしいですか大臣、この契約書とっていただけますか。
  346. 田中龍夫

    田中国務大臣 大変貴重な御注意をいただきましてありがとうございました。零細な業者を守ってまいりますという点では全く田中先生も私どもも同じ気持ちでございます。よろしくどうぞお願いいたします。
  347. 田中美智子

    田中(美)委員 ちょっととぼけないでくださいよ。いまこの契約書をとっていただけるか、こう言っているのですから。とってください。お気持ちは大変いいですけれども、とってください。答えてください大臣大臣に聞いているのです。
  348. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのことを調べさしていただきます。
  349. 田中美智子

    田中(美)委員 契約書をとっていただけますか。
  350. 田中龍夫

    田中国務大臣 できるだけいたします。
  351. 田中美智子

    田中(美)委員 私の方へ渡していただけますか。
  352. 田中龍夫

    田中国務大臣 私の方も早速調べまして、また先生と御連絡いたしましょう。
  353. 田中美智子

    田中(美)委員 それではこの契約書をとっていただいて、私の方のところに持ってきていただくということをお約束していただいたと確認してよろしいですね。  それでは次に参ります。名古屋にあります汁谷というところに千代田橋ユニーが進出しようとしていることは、十月の二十九日に国会でも取り上げた問題です。いまここで商調法が適用されるというので大問題になりました。よく御存じだと思いますが、そのユニーが進出するところの六百メートル以内に汁谷市場という市場があります。この市場がありますと商調法の適用がされるわけですね。これが適用されるということが四カ月前国会で明らかになってからユニーが何をやってきたか。よく大臣聞いてください。陰で何をやってきたかはわかりません。しかし、その市場の一軒一軒を工作して市場をやめさせる。ただでこのユニーに入れてやる。ただというのは、ただほどこわいことはないというこういう状態を何もまだ示さない、どういう契約をするかということも示さないでただで入れてやる、こう言って、市場を出るということをそそのかしているわけです。彼らは動揺して、いま市場を出ようかという状態になっています。ここに反対期成同盟というのがあるわけですが、この中がいま大混乱を起こしている。これは二十七日の新聞ですが、反対期成同盟は市場が全部ユニーに工作されたので解散したという記事が二十七日に出た。そうしましたら、これは三月一日、きょうの中日新聞、同じ新聞ですが、よく調べてみたところが違っていたというので新しい記事を出した。反対期成同盟は存続しているんだ、一部の市場の人が反対期成同盟を脱退しただけだ、この反対期成同盟はいまも存続しているんだという記事がまた出ております。ということは、もしこうしたユニーのテナントを入れるというのでしたら、テナントとはっきり言えばいいのです。これは口でいいかげんなことを言っている。ただで入れてやる。それも市場の人だけに言うわけです。周りの商店街では言わないのです。募集を全体にするわけではないわけです。  まあ聞いても同じことですので私が申しますが、先ほどのダイヤモンド・シティでは、地元の商店は一店も入っていません。おたくはよく御存だと思います。そういう状態で市場つぶしをやってきている。大臣、よく聞いてくださいよ。市場さえつぶしてしまえば商調法は適用されなくなる、こういうことをいまユニーがやっている。そのために商店街や市場の人たちは、同じ仲間でありながら憎しみと不安と不信感がまじり合って、いま大混乱がきのう、きょうずっと起きているわけです。それで、そこにうわさとして流れてきているのは、委託販売というので、おたくの方で出したこの調査表でこのようなまさにシャイロックのような契約書を追認しようとしているから、ユニーが勢いづいて建築の申請さえしょうという動きにあるということが出ているわけですけれども、大臣、このような市場つぶしをして、商調法を適用しないと言って、ユニーが来るということをどうお考えになりますか。
  354. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのようなことを私どもは本当に御注意によってよく調べてみたいと思います。ただ、私ども通産行政というものは、企業を守っていくという一つのことで、ことに零細企業、小企業というものをどう守るかということでございます。ただ一つ一線がございまして、企業同士の私契約についてそれを私の方で役所として公開するということだけはどうもできにくいのではないか、かように存じますから、その点だけはひとつ御容赦をいただきます。
  355. 田中美智子

    田中(美)委員 これは前の質問に対して答えているわけですか。前に言い損なったので、前の質問に答えているわけですか。
  356. 田中龍夫

    田中国務大臣 前でも後でもございません。企業同士の私契約につきまして、それを役所の方としては十分調査をいたし、また行政としてこれを指導し、あるいは制肘もいたしますが、しかしながら、企業体同士の私契約を公開するとか公表するとかいうことは、やはり行政の役所といたしましての限界がございます。その点はどうぞ御了承いただきます。
  357. 田中美智子

    田中(美)委員 いま言いましたのは、この汁谷の問題ですね。こういう大混乱の起きているのを、それでは大至急に調査して指導していただきたいと思いますが。市場つぶしをやっているということですから。
  358. 岸田文武

    ○岸田政府委員 御指摘の問題につきましては、早速私調査いたします。
  359. 田中美智子

    田中(美)委員 厳重に調査して、市場つぶしなど絶対させないという確約をしていただきたいと思います、大臣
  360. 田中龍夫

    田中国務大臣 零細な業者のつくっております市場でございます。ぜひ守ってまいりたいと存じます。
  361. 田中美智子

    田中(美)委員 次に移ります。  大阪の富田林というところにダイエーがキーテナントになってショッピングセンターをつくっていますが、ここでは建物の区分所有ということで商調法適用を受けていないのです。この建物の中に十三のテナントが賃貸借契約を結んでいるわけですね。委託販売ではありません。それなのに区分所有ということで商調法の適用を受けていない。これは明らかに脱法行為ではないかと思いますが、どうでしょうか。
  362. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもの調べた範囲内では、大阪府におきましては区分所有の形態をとる場合には所有者ごとに判定をするというルールを従来とってきたようでございます。私どもこの際いろいろ解釈の統一をするわけでございますが、あの条文の解釈につきまして、そういう場合は適用外とする解釈と、それも含めるべきであるという解釈と両方ございまして、いま部内で検討している最中でございます。しかし、これは放置はできませんので、何らかのルールづくりは必要であろうと考えておるところでございます。
  363. 田中美智子

    田中(美)委員 商調法の三条の三項を読んでください。大至急読んでください。――なければお貸しします。
  364. 岸田文武

    ○岸田政府委員 三条三項には「前二項の規定の適用については、屋根、柱又は壁を共通にする建物及び同一敷地内の二以上の棟をなす建物は、これを一の建物とし、建物に附属建物があるときは、これを合せたものをもって一の建物とする。」、以上のように書いてございます。
  365. 田中美智子

    田中(美)委員 そのとおりじゃないですか。柱も壁も付属していた。家も同一敷地内に二つ建物があってもこれは全部一つのものである、こうはっきり書いてあるじゃないですか。これだけ法律ではっきりしていてもまだ何かを考えなければならないのですか、大臣。  そうしたら、もう一度。こんなことを言っていたら、建物を建てるときに何メートルまでの建物しかいけないというときに、マンションがみんな個人の所有になっていますから、自分のマンションは何メートル、あの人のマンションは何メートル、全部違反じゃないと言えば天まで家が建てられることになるわけです、この解釈でいけば。こうした脱法行為が行われているのです。こういうものに対して厳重な調査と指導をしていただきたいと要請いたします。よろしいですね。
  366. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話し申し上げましたように、この問題は新しい問題として私どもとしても十分考えなければならない問題だと心得ております。十分勉強さしていただきます。
  367. 田中美智子

    田中(美)委員 法律をもう一度考え直すということですか。法改正するということですか。話にならぬですね。同じ答えが返ってくるのは時間がもったいないと思いますので、いまのような答弁を聞いていますと、明らかに商調法に違反している大スーパーやショッピングセンターに対しては法律どおり行わないで、違法をしていても罰則もかけない。しかも、そのまま営業は続けさせる。さらに、大型店のスーパーに対しては、営業の主体性の名のもとに、委託販売と称して出店者の権利を抑圧していく。そうして商調法を正しく適用するのではなくて、むしろいまお答えになっているように骨抜きにして、事実上大型店の進出を自由にしていこうという意図が非常に明らかだと思うわけです。こういう中で、一方大店舗法が、大臣、いまなったばかりでもおわかりでしょうね、四十八年でしたか国会で通りましたね。あの大店舗法は、大型スーパーの進出は原則的に初めから自由にしてあるわけです。それでは商調法は骨抜き、大店舗法は初めから自由です。これでは小売業者は踏んだりけったりで救われる道は全くありません。片手落ちもはなはだしいというふうに思います。  それでは、中小企業庁設置法第一条をちょっと大至急読んでください。中小企業庁長官、読んでください。
  368. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業庁設置法第一条を読ましていただきます。「この法律は、健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立することを目的とする。」、以上のように書いてございます。
  369. 田中美智子

    田中(美)委員 この目的のとおりだったら、いまのように商調法を骨抜きにし、大店舗法はそのままということではこの目的は全く達せられない。この片手落ちの小売商いじめを是正するためには、どうしても大店舗法を知事の許可制に改正しなければ中小零細企業を守る道はないというふうに思います。これは小売業者全体の総意です。全国小売市場連合会も、また東京都商店街連合会会長の並木さんという人から私のところにも強い要請がきております。こういう意味で、大店舗法を改正するということを強く要求しますが、大臣の御意見を聞きたいと思います。
  370. 田中龍夫

    田中国務大臣 零細企業、小企業を守ってまいります意味から申しまして、先生がおっしゃったことは社会的公正という上からいいまして、われわれ中小企業担当いたします者といたしましては、厳重に指導をしていきたい、かように考えております。  同時に、いまのような御要望につきましては、私どものところにもたくさんに参っておりますので、よく今後とも御趣旨に沿いまして検討いたしたい、かように存じます。
  371. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、大店舗法の改正を検討していただくということで、このスーパーの問題は一応終わりますが、その次に建設大臣にお伺いしたいのですが、昨年建築基準法の一部が改正されました。これによりますと、この法が施行されれば、第二種住居専用地域内には床面積の合計が千五百平米を超える百貨店、スーパーは建てられなくなります。また、三階以上を店舗として使う建物は建築できないことになります。御存じだと思いますので、政令を一日も早く出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  372. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 本法の施行につきましては、必要な政令等の準備もあります。また、地方へ徹底させる準備もありますので、いまこれらを周知徹底させるために、各地方に向かっていろいろな文書も出し、そうして通達をしているところでございます。
  373. 田中美智子

    田中(美)委員 この政令が出るまでいまあちこちで駆け込み建築をやろうとしている向きがありますので、これを認めないように指導を徹底的にしていただきたいと思います。
  374. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 政令が出るまでは自由でございますけれども、この点につきましても一応は指導をしているつもりでございます。他にもいろいろお話もございましたけれども、そういう面については行政指導でこの面を補っているつもりでございます。
  375. 田中美智子

    田中(美)委員 この点を厳重にお願いいたします。  通産大臣が早くお帰りになりたいという要請がありましたので、一応御協力申し上げまして、もう一つありますので、これを先にいたします。  それではちょっと急いでやりますが、冬の灯油の品不足の心配はないか、     〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 地域別に見ても品不足の心配はないか、簡潔にお答えください。協力していますので、そちらも簡潔に協力してください。
  376. 田中龍夫

    田中国務大臣 さようなことがございませんように、全力を尽くしております。
  377. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣はちっともわかっちゃいないのですね。品不足の心配はないのかと聞いているのです。
  378. 田中龍夫

    田中国務大臣 たとえば降雪地帯のごときは交通が梗塞いたしておりますので地域的には品不足もできておりましょう。それから北海道その他におきましても、その点につきましては特にわれわれの方で留意いたしております。
  379. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、原則的には品不足というのは量的に言ってないわけですね。よろしいですね――不足はないはずなのにいまのところ販売店には供給カットが出てきているわけです。これは、初めのうちは西日本の方から東京、神奈川、大阪、福井、松山、埼玉、愛知、福岡、こうしたところから供給カットが来ているという申し立てが私どものところに持ち込まれてきています。その系列も共石、日石、昭石、出光、シェル、この全系列で来ているわけです。この供給カットの理由が、販売店に対して言ってくる理由は、異常寒波のために北海道や東北地方に回さなければならないからだ、こう言っているわけですね。そして実際には、正規のルートからはちゃんと灯油が入ってこないで、それで不足ならば業転玉があるから、これは少し高いけれども、この高い値段を認めるならば売ってやる、こういうふうに言ってきているわけです。業転玉というのはもともとは安いものなんじゃないですか。専門家、答えてください、大臣おわかりにならないようですので。
  380. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま先生が御指摘になったようなことのないようにという配慮から、われわれといたしましては、供給量を確保するために増産を指示しております。また価格につきましても据え置きを指導いたしております。具体的には、昨年の十月からことしの一月まで約二八%、昨年より増産をさせたわけでございます。その間の需要量の伸びは、御承知のように異常寒波等がございまして昨年より一六%程度ふえておりますが、ただいま申し上げましたような増産指導によりまして、この一月末現在におきまして在庫は三百五十三万キロリットル、昨年よりも一九%大幅に確保いたしております。そういった面からいたしまして、マクロ的と申しますか、全国ベースでは供給量に不足を来すということはなかろうかと思います。ただ、これも御承知のようにことしは九州が非常に寒くて、九州だけでとりますと昨年より四割ないし五割、消費量がふえております。それに対しましても元売り等を指導いたしまして極力輸送の確保を図っておりますが、局地的、一時的に若干の不足はあったろうかと思いますが、言われるような供給カットといったような事態はわれわれとしては極力回避するための努力を続けておるつもりでございます。
  381. 田中美智子

    田中(美)委員 時間がありませんので簡単に言いますが、業転玉が高くなっているという問題は非常に重大な問題だと思うのです。これはどうしても一社や二社でできるはずはないわけです。これが高くなるということはないはずです。ですからやみ協定がなされているか、こういう疑いを私は持つわけですけれども、協定値上げをしているんではないか。そうすれば独禁法違反ではないか。アメリカで異常寒波が起きて燃料が不足したということ、これからヒントを得て新悪徳商法がやられ始めているんではないか、またいまこそもうける千載一遇のチャンスだとばかりに動き始めているのではないか、そういう疑いを持っていますので、これを大至急公取委にも通産省にもぜひ調査をしていただきたい。大手の元売りと特約店を厳重に行政指導し、調査をしていただきたいと思います。両方からお答えを願います。
  382. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 われわれも業転玉についてはいろいろ調査を続けてやっておるわけでございますが、御承知のように業転玉というのは流通過程のどの段階でも出てまいる。しかも小売商業まで含めますと十二万軒もあるわけでございまして、一般的な指導をやると同時に、あわせて個別的な具体的なケースについてそれを指導、是正していくということも続けてやっておりますので、今後とも、そういった問題につきましてはわれわれも一層努力してまいりたい、かように考えております。
  383. 田中美智子

    田中(美)委員 新しい悪徳商法がいまなされつつあるというふうに疑いを私は持っておるわけです。すっかりやられてみんなが高いものを買わされてしまってから、そしてまたその分を返せという訴訟が起きるようなことでなくて、それがならない前からの行政指導を要求しておるわけです。いま何万店というふうにおっしゃいましたが、大手元売り十三社と特約店四百社、この程度を至急お調べ願いたいというふうに思います。これを要求して次の質問に行きます。  次は厚生大臣に。厚生年金をもらっておる人が私のところに来て――五十一年度に評価基準を見直すという改正があったわけです。そうすると年金額がふえるわけですね。喜んで、どういうふうに計算するかといって私に聞きに来たわけですね。私はこうこうこうだというのでこの基準法を見せまして、いま皆さんに資料をお配りしてありますけれども、この基準法を示してこういうふうに掛けていくのだというふうにお教えしたわけですけれども、ふと気になるところがあったものですので、名古屋の社会保険事務所に行ってお聞きしたわけです。そうしましたら「業務課つうしん」の「法律改正特集号」、こういうものを下さった。これは社会保険庁の業務課が出しておるものです。これを開きますと、ここに――年金は、大臣もちろん御存じでしょうけれども、定額部分と報酬比例部分とあります。定額部分は文句ないわけですね、見直ししたところは標準報酬の計算の仕方ですから。この標準報酬の仕方なんですけれども、これについてここにやり方が書いてあるわけなんですね。これをいま読みますと、時間がありませんので読みませんが、これを一応業務課方式と言ってみましょう。この業務課方式で計算をしてみるのと、それから私がこの法律どおりに、厚生年金保険法附則第五条にこの率が出ています、この倍率をちゃんと期限ごとに掛けて計算をしてみたわけです。そうしましたら、業務課の方が年額で大体二百円から三百円少なくなっておるわけです。これは一体どちらが正しいのですか。
  384. 坪川信三

    坪川委員長 ちょっと田中君に申し上げますが、公取の澤田委員長はもうよろしゅうございますね。
  385. 田中美智子

    田中(美)委員 結構です、結構です。
  386. 澤田悌

    ○澤田政府委員 先ほど公取委員長からも答えろとおっしゃいましたのでお答えするつもりでしたら、飛ばしておしまいになったので遠慮いたしておりましたが、先ほどの石油販売につきましては、元売り、特約店に関して私の方に投書もございますので早速調査に着手いたしております。このことだけお答え申し上げておきます。
  387. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 非常に専門的なことでございますが、どちらが正しいのですか――それは厳密に言えば法律どおりにやる方が正しいと思います。
  388. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、法律どおりにやらなかったということですね、業務課が。そういうことになりますと、私が計算してみますと、最高報酬の人で、いま申しましたように年額二百円から三百円少なくなってきている。ということは、明らかに年金権が侵害されているのではないか。これは意図的にしたとは私は思いません。うっかり法律どおりにやらなかったということだと思うのです。そして、いま受給者を二百万人というふうに考えますと、約四億円国民が損しているという私の計算になるわけです。おたくの方にお聞きしましたら、幾らぐらいかやってみなきやわからない、こういうふうに言われましたので、私は大体推測四億円国民が損しているじゃないか。これをこのままに放置しておきますと、スライドしていくときに少ないところにスライドになっていきますので、ずっと一生年金が損するわけですね。ぜひこれを法律どおりにやり直していただきたいと思いますが、いかがですか。
  389. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 厚生省の方で計算をいたしまして、大体年額百円ぐらいの食い違いがあります。一番多い人で三百円、大部分のところは百円から二百円。百円が一番多い。これは、法律どおりにやるのが私は正しいと思いますが、どうしてそんなことをそれではやったのだ。去年、御承知のように、財政の再計算をやりまして、そこで、八月実施というようなことで、膨大な量で、それで標準報酬の再評価率を四捨五入をした、そういうようなことのためにこういうことになったということでございます。これは大変膨大な、もう一遍再計算し直す話なんですから、膨大な量でございますが、せっかくのお話でもございますので、保険庁は大変な量だと思いますけれども、ことしの八月に間に合うように、ひとつ再計算といいますか、それをやり直しをさせる方針で準備をしております。
  390. 田中美智子

    田中(美)委員 やり直していただいて、不足分も当然返していただくというふうに解釈してよろしいですね。
  391. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これはやり直せば当然そういうことになりますが、年金の再計算は八月のスライドの実施に間に合うようにしたい。そこの支払いは、確約できないのですがね、差額分は。できるだけ十一月の支払い期に間に合わせるようにやりたいと思っております。多少おくれるかもわかりません。
  392. 田中美智子

    田中(美)委員 それで結構ですが、その後がちょっと大変ですので、いま業務が大変だとおっしゃったのですけれども、大臣は業務課に視察に行かれたことは、まだ大臣になられたばかりで、まだないんじゃないかと思いますが、私どもの議員団では調査に行ってきまして、そこの人たちの仕事が大変だということをこの目で見てきました。これは年金に対する国民の関心がいかに高いかということで、業務課の仕事が大変に多くなって、そこで職業病ではないかと思われる方たちも出ているやに聞いています。そういう人員が足らないということが問題ですので、こういうミスを、悪意のないミスをやったわけですね。そのために膨大にふえるわけですから、大臣の責任でもって、人員をそこにぐっと大幅に入れていただきたいというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  393. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 現在で人員をふやさなければできないかどうかという問題は具体的にわかりませんから、事務当局から答弁させます。
  394. 田中美智子

    田中(美)委員 それはあなたが実際に見に行ってないからわからないのですよ。私たちは見てきていますのでわかるのですね。電話だけでも大変なんですから。ですから、私はやはり、やり方が間違っていたから、これはいつ幾日返す予定にしているから、こうだからということを新聞広告を出したらどうですか。そうしないと、電話や何かじゃんじゃんかかってきて業務課は大変だと思うのですよ。ですから、別に悪意があったのじゃないですから、これは間違いましたと素直に新聞広告でも出したら、多少は業務課の仕事も減るのじゃないですか。
  395. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ちょっとまず事務的に……。
  396. 大和田潔

    ○大和田政府委員 この問題につきましては、人員は毎年若干ずつふえております。この問題につきましての今後の作業段取り、つまり年金額の訂正、返還、これにつきましてできるだけ簡便な方法を私どもいま検討しておるところでございます。
  397. 田中美智子

    田中(美)委員 あの方、どなたですか。
  398. 坪川信三

    坪川委員長 年金保険部長でございます。
  399. 田中美智子

    田中(美)委員 業務課の人じゃないのですね。いかにも年々ふえているから業務課の仕事は大丈夫のようなお言葉ですけれども、私はそうは思いませんね。ですから、新聞広告に出すなり何なり考案をして、業務課が音を上げないようにしてほしいわけですよ。これを見てみますと、このときの社会保険庁長官というのは北川事務次官なんですよね。だから、業務課が大変だったら、問い合わせの電話だけでも北川さんの机の上の電話にしたらどうですか。そういうふうにでもしなければ、業務課の人はぶつ倒れてしまいますよ、大臣。いまの答弁は、まるで業務課の人たちは困らぬような、年々人がふえているだとか、あなた、そんな答弁をするというのは現状を知らない話ですよ。業務課の人はみんな病気になりますよ、こんなことをしていたら。
  400. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それはなかなかいいアイデアですから――本当ですよ、これは。だから、周知徹底するような方法を、テレビがいいか新聞がいいか、NHKでただでやってもらったがいいか、いろいろ考えて、余りじゃんじゃん同じことで電話がかからないように検討します。
  401. 田中美智子

    田中(美)委員 では、次の質問に移ります。  総理府長官、もうちょっとこっちへ来ていただけませんか。ちょっとこの写真をあなたに見ていただきたい。これは従軍看護婦があの戦争中病院船で重症病室で看護しているところです。そのリンゲルを持っている看護婦さんですね、この看護婦さんが私にこれを持ってこられたわけです。この顔をよく見てください。二十歳から二十五歳のまだあどけなさを残した少女というか乙女というか、こういう人たちが軍人とともに働いてきたのです。  この人はいまお年寄りになられて、老後の生活も苦しい、恩給をもらいたいのでその運動をしているが、その郵便代にも困るのだということを書いているわけですね。そして、こういうことを書いています。「こんな若い時代から召集され、帰って来たのは四十歳を過ぎていました。昭和十二年七月から最後までということになります。思えば長い年月でした。」と、淡々と書いていますけれども、涙なしには私はこの手紙は読めないと思うのです。まさに二十年間というものをこの方は働いてこられたわけですね。従軍看護婦として戦地で働いてこられたわけです。  もう一つ手紙があります。この手紙は非常に長長といろいろなことが書かれておりますけれども、これは満州で陸軍の部隊長や兵隊と一緒に捕虜になった、その捕虜の収容所の中で、みんなの生活条件をよくするために相手方に従軍看護婦の肉体提供をするということを部隊長が要請したわけです。そういうことが長々とこの手紙に書いてあるのですね。そして部隊長は看護婦に向かって何と言ったか。男は軍刀を捨てたのだ、だから女は操を捨てろ、こう言ったのだそうです。看護婦も負けていやしません、必死ですからね。それならば、私たちは兵隊さんの看護をするためにここへ来ているのだ、操を売るために来ているのではないのだ、女が要るなら部隊長、あなたの奥さんを提供したらどうかということによって何人かが救われた。しかし、何人かは犠牲になった。救われた人たちに対しては、そうして抵抗した人たちには、病気になっても薬をくれなかったり、食糧を渡されなかった、減らされたというようなことがここに書いてあります。私は、いま苦労をしたからどうのこうのとは言ってません。しかし、この最後にこういうことが書いてあるんですね。こうした目に遭ってショックを受けた者たちは、二十代なのに生理はとまり、何年もこれを見なかった者も少なくありませんでした。これはほんの一例ですが、同じ年代の先生には、これは私のことですね、十分御理解いただけると思います。御参考になれば幸いと存じ、どうぞ御判読くださいませ。これは二月二十五日に私によこされた手紙です。私はこの手紙を読んで思わず泣き伏してしまいました。  私は敗戦のとき二十三歳でしたので年はすぐおわかりだと思います。私の友人は、早く結婚した人はほとんどが未亡人になり、私のように上の学校に行ったり、それまで結婚をしてなかった人は、これはトラック一杯の女に男一匹という結婚難だったんです。敗戦のとき日本にいる者でさえそうです。まして彼女たちは、長い抑留生活の後、二十八年から三十五年ぐらいまでに戻ってきているわけですね。就職の道もなければ結婚さえもできないというひどい状態にあった。これはただ一つの赤紙で男と同じように召集をされたという結果です。昨年の三月二日の内閣委員会で、当時の共産党の中路議員がこの問題を細かく取り上げておりますので重複いたしませんが、そのときの総理府長官は、「附帯決議もなされたことでございますので、ひとつもうしばらく研究の期間をお与えいただきたいと存ずるのでございます。」、この恩給を出すという問題についてこう答えています。あれから一年たったんですけれども、どのように御検討くださったのでしょうか、御研究なさったのでしょうか。
  402. 藤田正明

    藤田国務大臣 いまお話を伺いまして、まことに気の毒に存じ上げます。私も兵隊に行っておりましたので、そのことは十分に承知いたしております。一年前に総理府長官がそのような答弁をしたということでございますが、その後、従軍看護婦の方々が戦後抑留をされた期間を恩給の方に通算をすることになっております。これは五十二年度からそういう通算をするというふうに新しく決めたわけでございます。
  403. 田中美智子

    田中(美)委員 総理府長官、おかしいじゃないですか。それは公務員だけでしょう。公務員の看護婦だけでしょう。あとの看護婦さんには恩給一銭も出てないじゃないですか。この人たちは皆一銭も出てないのですよ、この写真の人たちには。何が通算され加算されるんですか。
  404. 藤田正明

    藤田国務大臣 それは二通りございまして、従軍看護婦の方々が内地にお帰りになって公務におつきになったという場合にはそれは通算されます。そうして、公務におつきにならないで全然民間の方の立場に立っておられたという際には、申し上げましたような恩給はございません。しかし、公務におつきになった場合にはそれが通算されますし、抑留期間がいま申し上げましたように通算されるということでございます。
  405. 田中美智子

    田中(美)委員 いま言いましたのは、だから重複しないでと、早く済ませるように言っているわけですね。前の長官が答えたのは、その恩給をもらっていない人たちを適用するということで研究をすると言われたわけです。それを言っているわけです。
  406. 藤田正明

    藤田国務大臣 それにつきましては現在も検討中でございますが、これは御承知と思いますけれども、従軍看護婦の方々がそういう悲惨な目に、大変お気の毒な目にお遭いになりながらも、やはり公務員という資格がないわけであります。恩給というものは、公務員に対して、公務員として長年勤続した者に対してこれがつくという原則的な規定でございますから、ただ公務員でないという点に一つの問題が残る。そうしてまた、従軍看護婦の方のみならず軍属の方なんかもやはり、国家総動員法といいますか、そのときの応召というような形でたくさん出ておられます。そうしますと、従軍看護婦の方だけを取り上げてそういうふうにお取り扱いするか、あるいはそれがもう全部に広がって、非常に多くの人々にそういうふうなことになっていくということはございますので、この辺はもう少し検討さしていただきたい、かように思っております。
  407. 田中美智子

    田中(美)委員 もう少しっていつまでですか。もう戦後三十二年になるのですよ。もう少しというのはどれくらいですか。
  408. 藤田正明

    藤田国務大臣 先ほど来先生が言われましたように、一年前に総理府長官がそういう答弁をいたしたと思います。私もこの前、昨年の十二月二十四日になったばかりでございますけれども、私なりに検討させていただきたい。ですから、それがあと一カ月とか二カ月とか区切られても私はちょっと困りますが……。
  409. 田中美智子

    田中(美)委員 もう一度中路さんの議事録を、後でお届してもいいと思うのですけれども、大臣御存じないので読んでいただきたいと思うのです。これは「兵二準ス」ということが日赤の社令でも出ておりますし、また当時、昭和十四年の陸軍大臣通達にもこういうことが出ているわけです。しかし、法律的に恩給法ではなかなかむずかしいから研究させてくれと言うんでしょう。だから、それを重複しないようにいま話しているわけですよね。長官がかわれば、自民党政府というのは全部もとへ戻るのですか。私は現状で言っているのです。法律というのは人間がつくったものでしょう。これも明治の法律でしょう。人間のつくったものだから、幾らだって改正すればいいじゃないですか。それに、新しく法律つくったっていいじゃないですか。どうしてそんなに研究するのに――わずかな対象人員です。いまの対象人員でいけば三百五十人ぐらいですよ。それはもっと拡大していけばもっと多くおりますけれどもね。三百五十人くらいです。五千万の金でできるのです。私が与党になったらすぐにしますけれども、残念ながらやっていただけない。それで、わずかそれぐらいの問題で、何とか道を開いてほしいということを中路さんが盛んにおっしゃったわけです。それを私いま引き継いでやっているわけです。  私ちょっと調べたのですけれども、岸信介さんとか賀屋興宣さん、こういう人は一体どれくらいの年金や恩給をもらえる資格があるのか大臣御存じですか、はっきりお答えください。
  410. 藤田正明

    藤田国務大臣 残念ながら知りません。
  411. 田中美智子

    田中(美)委員 それじゃ私がお話ししましよう。  時間がありませんので、一応賀屋さんの方が――岸さんはいま現職ですから、おやめになってからこういうことになりますので、賀屋興宣さんのを私計算してみました。そうすると、戦争犯罪人であるにもかかわらず、これは切り捨てて年間二百五十万もらっています。そして議員の年金額がこれに加算されています。これが二百十六万四千円。ですから、合わせて年間四百六十七万円もらっているのです。月に約四十万円の恩給をもらっているのですね。そうして、この賀屋さんという人は、戦争犯罪人ですから十年間ブタ箱に入っていたのですよ。この十年間のブタ箱の期間はどうなっているか御存じですか、ちゃんと答えてください。
  412. 藤田正明

    藤田国務大臣 知りません。
  413. 田中美智子

    田中(美)委員 お教えしましよう。十年間戦争犯罪人としてブタ箱に入っていたこの賀屋さんという方は、判任官の公務員であるというので、この十年間にもきっちりと恩給がついているのです。これは法律がどうであるとかなんとかいう問題じゃなくて、現状はこの看護婦さんたちはいま老齢化してきて生活にも困っているのですよ。戦争を起こした戦争犯罪人が、ブタ箱に入っている期間まで恩給をもらっている。それなのに、この人たちには、恩給法がどうなこうなと言って、一銭も金を出さない。この私の計算したこの人たちは、こういう人の十人分の金があれば――この人は約五百万近いわけですから、十人分あればこれは全部できるわけですよ。こんなわずかなことがどうして自民党政府にできないのですか。男は召集されれば軍人恩給がもらえる。女はもらえない。ここにも女のべつ視があるのですよ。総理府長官、あなたは国際婦人年の行動計画を出されたわけですね。いろいろな批判があります。しかし、これで男女の差別をなくしていくのだ――いままでの差別というものはある程度お認めになっているわけでしょう。ここにも、男は召集されれば恩給が出る、女は召集されても一銭も出ない。法律論争ではないですよ、現状がこうだということを訴えている。何とかこれを法改正をするなり何なりして適用するように一日も早くしていただきたい。強く要求しますので、御決意を聞かせていただきたいと思います。
  414. 藤田正明

    藤田国務大臣 いま、男性は戦地に行けば全部恩給がつくのだ、このようにおっしゃいましたが、そうではありません。陸海軍の雇用人だとか軍属だとか、そういう方が何十万と戦地に行かれております。そういう方も恩給はついてないのです。ですから、私が先ほど申し上げたのは、確かに従軍看護婦の方々にはお気の毒でございます。よくその現状も知っております。現地で。それで、人数もわずかであることも私も存じ上げております。この間もその陳情を受けました。これは何とかいたさなければならぬという考えではありますが、現在の恩給法に照らしてみますと、公務員たる資格がないというのが一点。それからもう一つは、いま何十万という男性の軍属、雇用人の方々がやはり同じように苦労をなさっているわけです。そういう方々との比較をどうするか、こういう問題がございます。ですから、いまおっしゃいましたような男女差別とか、そういうものは毛頭ございません。
  415. 田中美智子

    田中(美)委員 あなたにあるかどうか言っているわけではないのです。あなたは男女差別をなくす立場にいまいらっしゃるのです、なくすと言っていらっしゃるのですね。そして、いま言われた軍人と軍属、従軍看護婦は違いますよ。あなたはいままで国会で討議されたことを御存じないからそんな――御存じないということを期せずして暴露していらっしゃるのですよ。あの中路さんの議事録を私お届けしますからきっちり読んでみてください。軍属と看護婦は違う。赤紙で召集されたのは軍人と同じに扱われるというふうになっているし、現状もそうです。ですから、私は軍属に出さなくていいとは言っていませんよ。しかし、従軍看護婦は違うのだということは十分に討議されているはずですよ。それをけろりとそういうふうにおっしゃるということは、私がこういう質問をするということを言っていながら、何も勉強していらっしゃらない、そういうことでは困ると思うのです。一日も早くこの人たちを救う道をあけていただきたい、そう思います。お答えください。
  416. 藤田正明

    藤田国務大臣 先ほど来何回も申し上げますように、人数もわずかな方であることはよく存じ上げておりますし、大変お気の毒であるということも十分に承知いたしておりますから、そのことを前向きに研究させてもらいたいし、若干の期間をいただきたい、それが一カ月とか二カ月とか言われたんでは困りますということを私は申し上げておるわけでございますから。
  417. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、若干の期間の研究をもって前向きに検討するということを確認いたしました。  次の質問に移ります。  次は、軍人の一時恩給の問題ですけれども、三年から七年が対象になったときに私がちょっとこれをPRいたしました。そうしましたら、電話が私の事務所に五百件かかってきたわけですね。そして、県庁の恩給係から、私自身、私の事務所が感謝されるということが起きたということは、この中身を見てみますと、大半が三年に連続しないわけです。二年行って一年行ってまた一年行って実際は四年だ、間が連続していないで切れているわけですね。これをぜひ通算をしていただきたいと、その電話の中で私は痛感したわけです。ですので、通算をしていただきたい。これは厚生年金、共済年金、国民年金、みんな通算していますよね。ですから、この軍人恩給の一時恩給も通算をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  418. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答え申し上げます。  いま先生言われましたのは、一時恩給というのは三年以上いれば出るんだけれども、二年行ってまた帰ってきて二年行った人には出ないじゃないか、そういうことだと思います。恩給は、これは先生先ほども申されましたように、非常に古い法律というぜいもありますけれども、戦前から、これはまた軍人だけじゃなくて文官も含めまして、引き続いて三年以上という規定がございまして、そういうことになっておりますけれども、いま先生が御指摘になりました点につきましては、昭和五十年から戦前にはなかった兵の階級の者に対するものも出すということになりましたので、そういうこととのバランス等の指摘もございまして、現在の制度では出しておりませんけれども、一体そういう人がどのくらいいるのかということもわかりませんので、本年度は調査をしたいということで、予算も組んでお願いを申し上げておるところでございます。
  419. 田中美智子

    田中(美)委員 その調査ですけれども、人数が多かったら出さないのか、少なければ出すのか、それとも出すことを前提にして幾ら予算を組んだらいいかというので調査をしているのか、この三点について簡潔にお願いします。
  420. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 現在はさっぱりその数が非常に漠然としてわからないものですから、そういう意味で、まず調査をし、調査をした上で検討をする、研究をするということでございますので、この場では出すとか出さないとか申すことはできませんけれども、その基本になる数字をまず把握したいということでございます。
  421. 田中美智子

    田中(美)委員 では、前向きに検討していただきたいと思います。  金額の問題ですが、最低が一万五千円、こんな金額ではせっかくいただいてもうれしくない、こう言っています。せめてうれしいと思えるように、御苦労さまでしたと言われたと思うようにこの一時金の金額を増額していただきたいというふうに思います。これを強く要求いたします。  最後に一つだけ。生活保護の夏期一時金はなぜ支給していらっしゃらないのですか、厚生大臣
  422. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 いままでのいろいろな調査で、夏には特別にそう金はかからない、そのために大体いままでの決まった額の中でやれるのではないかということで支給をしてないのであります。
  423. 田中美智子

    田中(美)委員 夏にかからないという考え方が非常に大きく間違っています。生活様式が変わってきています。いま生活保護家庭の子供たちは夏休みにどこかに行かれない。どの子もどこかへ行きます。そうすると、宿題の作文にうそを書かなければならない実態が出てきているわけです。そういう意味で、夏期の一時金の支給を何とかしてこの子供たちのためにやっていただきたいと思いますが、大臣、どうですか。
  424. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 よく検討いたしてみます。
  425. 坪川信三

    坪川委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。次回は、明二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十八分散会