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1977-02-26 第80回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月二十六日(土曜日)     午後一時六分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    稻葉  修君       石橋 一弥君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       高村 坂彦君    始関 伊平君       白浜 仁吉君    松澤 雄藏君       阿部 昭吾君    井上 普方君       上原 康助君    大出  俊君       佐藤 敬治君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       坂井 弘一君    瀬野栄次郎君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    寺前  巖君       松本 善明君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         経済企画庁長官         官房参事官   柳井 昭司君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         国土庁土地局長 松本 作衛君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵大臣官房審         議官      山内  宏君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         林野庁林政部長 小笠原正男君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         海上保安庁次長 間   孝君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  堯君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         参  考  人         (日本住宅公団         副総裁)    上林 英男君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   笹山茂太郎君     与謝野 馨君   瀬戸山三男君     石橋 一弥君   藤井 勝志君     高村 坂彦君   石野 久男君     斉藤 正男君   武藤 山治君     佐藤 敬治君   浅井 美幸君     瀬野栄次郎君   藤原ひろ子君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     瀬戸山三男君   高村 坂彦君     藤井 勝志君   与謝野 馨君     笹山茂太郎君   佐藤 敬治君     武藤 山治君   斉藤 正男君     石野 久男君   瀬野栄次郎君     浅井 美幸君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  この際、理事会の申し合わせにより、楢崎弥之助君の議事進行発言を許します。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、野党五党を代表いたしまして、以下、議事進行に対する発言をいたしたいと思います。  五十一年十一月のロッキード特別委員会によるいわゆる灰色高官公表は、田中伊三次前委員長経過説明によっても明らかなように、法的にはもちろんのこと、手続、方法においても全く誤りはなかった。  二月二十四、五両日にわたる当予算委員会福田法相答弁は、両院決議及び議長裁定を批判し、いわゆる灰色高官公表に反対の意向を表明したもので、憲法第六十二条に基づく国政調査権を保証された立法府としては絶対に看過できない重要問題である。  なぜなら、法相公表資料提供前提条件として、公表経過の誤認にもかかわらず、立法府と行政府信義則違反を問題にし、秘密を守るという国会の保証を明示すること、秘密が漏れた場合の国会責任のとり方を明確にすること、公表のためには法改正が必要なこと等を挙げているからである。  このことは、灰色高官公表そのものが違法であるという法相の認識を明らかにしたものであり、まさにロッキード事件隠し、幕引きに通ずるものである。  これはまた、福田内閣ロッキード事件など政治腐敗の取り組みに対する基本姿勢を象徴するものとして、絶対に承服できない。  全野党は、この際、本問題を重視し、徹底的に福田内閣責任を明らかにするため、議事進行について、本問題の集中論議一般質問最終日設定されるよう、委員長に要望する。  以上であります。  委員長の御見解を承りたいと思います。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの議事進行に関連しての御発言を通じての御要望の件につきましては、過般の理事会においても、これを与野党理事会において了承いたしておりますので、さよう取り計らいを進めたいと思います。     ―――――――――――――
  5. 坪川信三

    坪川委員長 一般質疑を行います。瀬野栄次郎君。
  6. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 鈴木農林大臣は、日ソ漁業交渉のため、明二十七日に出発されまして訪ソをされるわけであります。二月二十八日、三月一日と、ソ連イシコフ漁業相会談が持たれるわけでございますけれども、これに先立って、ソ連が一昨日、二十四日に二百海里を三月一日に実施すると発表したことは、鈴木農林大臣の出鼻をくじかれたと言っても過言ではありません。今回の訪ソ日本にとってただでさえ厳しい漁業交渉となることをかねがね予想しておったわけでありますけれども、そこへ追い打ちをかけられたと言うべきでありましよう。  農林大臣は、今回の一方的措置に対していかなる受けとめをしておられるか、まず御見解を承りたいのであります。
  7. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、昨年暮れ十二月の十日にソ連最高会議幹部会令で二百海里の宣言がなされておるということで、それをいつからいかなる形でソ連当局実施するかということにつきましては、最大の関心を持って見守っておったところでございます。また、重光大使並びに水産庁からは松浦海洋部長モスクワに派遣をいたしまして、ソ連側方針等を極力打診をいたしておったところでございます。しかるところ、イシコフ漁業大臣は、海洋に対する世界の情勢は変わった、今後のソ連日本との間の漁業関係は、この新しい時代を踏まえて、そして責任者同士話し合い――具体的に言っておられたそうでありますけれども、御自身鈴木農林大臣会談がすべての出発点である、これなくして交渉とか話し合いに入るわけにいかない、こういう見解が表明をされまして、私、異例のことでございますけれどもモスクワを訪問し、イシコフ大臣とひざを突き合わして会談をする、こういう決意をいたしておったところでございます。  しかるに、タス通信の報ずるところによりまして承知したのでありますが、ソ連は三月一日からこれを実施するということで、その領海海域設定につきましても具体的にそれを決定をしておるということが報ぜられておるところでございます。私は、イシコフ大臣と私との会談直前にそういうことが報ぜられまして、非常に衝撃を受け、このことを実は重く見ておるわけでございます。しかしながら、その三月の一日実施という前日ではございますけれども、とにかく日ソ漁業関係最高責任者がテーブルにつく、会談をするということは、これを設定することが非常によかった、このように考えておるわけでございまして、情勢はきわめて厳しいものと受けとめておりますけれども、この二十八日の会談を通じまして、ソ連側方針日本側の考え方、今後の新しい二百海里時代を迎えての日ソ漁業関係の全体について隔意ない意見の交換をし、両国が双方の利益になりますように事態の円満な処理をいたしたい、そのために全力を尽くしたい、このように考えておるところでございます。
  8. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 鈴木農林大臣は、今回の会談に当たって、イシコフ漁業相は今回の会談出発点である、こういうことを言ったとおっしゃいますが、今回の日ソ漁業交渉焦点となっておるいわゆる日ソ漁業条約の問題があると思うのであります。この改定問題が会談一つの大きな焦点になることは言うまでもございませんが、これに対する大臣訪ソに当たっての決意はどういうふうにお考えであるかということと、御承知のように、国際法上は、一般的には国内法より二国間条約、すなわち今回り場合、日ソ漁業条約が優先することになっているわけでありますが、今回のソ連の一方的な二百海里実施は、日ソ漁業条約を無視していると私は理解しておりますけれども、この点について政府はどういうふうに受けとめておられるか、この二点について明らかにしていただきたい。
  9. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 瀬野さん御指摘のとおり、日ソの間におきましては日ソ漁業条約というものが存在しておりまして、長くこの条約のもとに日ソ漁業関係が、秩序ある操業確保されてきておったわけでございます。また、御指摘のように、この条約につきましても、仮に当事国の一方が条約の破棄の通告をいたしましても、一カ年間は効力を有する、こういうことも明記をいたしておるところでございます。したがいまして、今回のイシコフさんとの交渉におきましても、そういう関係は私かたく堅持をいたしましてこれに臨みたい、このように考えております。  ただ、ここで申し上げておかなければならないことは、日ソ漁業条約というのは、北洋における公海上の日ソ漁業関係を規律する、公海上における日ソ漁業の秩序をこれによって確保する。漁獲量の問題あるいは操業体制の問題、あるいは監督、監視の問題これは公海前提とした条約であるわけでございます。  それからもう一つ重視しなければならない点は、この条約別表に、附属書でございますが、その附属書対象魚種というものが挙げられておるわけでございます。サケマスカニ・ツブというような対象魚種別表に記載をされておるわけでございます。しかるところ、大陸だな宣言というものがなされまして以来、カニ・ツブにつきましては、これは大陸だな資源ということでソ連としてはどうしてもこの問題は別途に扱いたい、こういうことになりまして、御承知のように、サケマス日ソ漁業委員会における審議とカニ・ツブ交渉とは、これを交渉の場も違えておりますし、別途に協議をするということになってきておるわけでございます。たとえばサケマスを東京で日ソ漁業委員会交渉いたします際には、カニ・ツブモスクワにおいて別途協議をする、こういうような形で行われておるわけでございます。  そこで、この日ソ漁業条約がそのまま現実的にいま機能しておりますのはサケマスについてである。現状を申し上げますと、そういうことになるわけでございます。したがいまして、スケトウダラその他の魚種につきましては日ソ漁業条約対象魚種になっていないという事実を私どもは冷厳に受けとめなければならない、このように考えるわけでございます。  これに対しまして、今度は二百海里の漁業専管水域ソ連設定をしたということになりますと、このソ連専管水域内におけるスケトウダラその他の魚種につきましては、ソ連側が、日ソ漁業条約とは別途に新しい二百海里専管水域という枠内において処理されるべきものである、こういう主張をしてくるであろうということも十分予測されるわけでございます。しかし、私といたしましては、日ソ漁業条約というものが今日まで日ソ漁業関係を運営するに当たって大きな一つのよりどころになって、いろいろその間にむずかしい問題もございましたけれども、この場を通じて友好裏話し合いが行われ、困難な問題も処理されてきたというこの伝統的な日ソ漁業関係、これを大事にいたしまして、今後もそういう友好関係の上に立って今回の会談にも臨みたい、こう考えておる次第でございます。
  10. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 鈴木農林大臣も明日出発されるので、いろいろ時間の関係もあるから、詳しいことはまた当該委員会で帰国後質問することに予定しておりますけれども、時間の制約もあることでありますので、たくさんお伺いしたいことがございますからはしょって質問してまいりますけれども、簡潔に要点をお答えいただいて、御出発いただきたいと思っております。  そこで、今回の交渉は、ソ連の二百海里というものを認めた上での交渉と、こういうふうに考えて行かれるのか、その点お答えいただきたい。
  11. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 瀬野先生承知のように、二百海里時代というのが現実の厳しい事態になってきておるわけでございます。わが国は、アメリカ漁業保存管理法、これは二百海里を設定しているものでございますが、これに対しましても基本条約を締結をする、その発効までの間、日本国会承認手続等関係もございますので、行政取り決めとして暫定措置を講ずる、こういうことでございますが、基本的にはこの二百海里というものを認めてやっておる。また、米ソの間にもアメリカの二百海里を認めて米ソ漁業協定がなされておる。こういうような現実を踏まえまして、私はいままでございますところの日ソ漁業条約と新たな二百海里宣言、こういう両方をにらみ合わせまして現実的な処理をしてまいりたい。また私は、どうしても今日までの伝統的な歴史的なわが国実績確保ということに最善を尽くしたい、こう考えております。
  12. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 さらにお伺いしていきますけれども日本国固有領土であります北方四島、歯舞色丹国後択捉でございますが、これをめぐる領海十二海里設定についてはたな上げ方式で臨むというふうなことが言われておりますけれども、その点も大臣はどういう見解を持って臨まれるか、お答えをいただきたい。
  13. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、この北方四島、択捉国後歯舞色丹、この四島は日本固有領土であるという国民的な主張、私もそういう信念でこの四島の問題を考えておるわけでございます。したがって、現にこの四島にはわが国領海三海里は設定をされておる。それを今回領海の幅員を十二海里に拡張するということでございますから、当然四島周辺にも領海十二海里というものが設定されるべきものだ、こう考えておるわけでございます。しかしながら、瀬野先生も御高承のとおり、わが国施政権はここに現在及んでおりません。この領土問題は両国の大きな懸案事項として未処理に相なっておるわけでございます。  私は、前段で申し上げましたように、この四島は固有領土であり、三海里もすでに設定をされておる、この付近を十二海里にする、こういう立場でこれに取り組んでおる次第でございます。いま申し上げたような、施政権が及んでない、いま係争中の問題であるということで、現実的には領土問題が解決されるというまでの間は、これと一体をなす領海の問題でございますから、両方主張平行線というような形で、現実的な処理が必要であろう、こう考えておるところでございます。
  14. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 ここで外務大臣にちょっと一言お尋ねしておきますけれどもわが国固有領土である北方四島についてでございますけれどもソ連は二百海里実施の中で北方四島を自国領として発表したわけであります。本日でしたか、政府は駐日ソ連大使を通じて抗議をなさったようでありますが、訪ソ交渉を目前に控えてこのような強硬姿勢を打ち出してきたということは、ソ連領土問題に対する既成事実をつくっておこうとするねらいがある、かようにわれわれは言わざるを得ません。そういった点について外務大臣はいかなる見解をお持ちであるか、お答えをいただきたい。
  15. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 本日午前中にソ連ポリャンスキー大使外務省に来ていただきまして、佐藤次官から日本政府としてソ連大使に対して厳重な申し入れを行ったところでございます。その内容は、先般官房長官談話をもちましてソ連措置に対しまして遺憾の意を表したのと全く同様でございますので、内容は省略いたします。  そこで、今回鈴木農林大臣が、イシコフ漁業相漁業交渉といいますか大方針をお話し合いになるわけでございます。私どもといたしましては、北方四島はもうわが国固有領土であるということ、これは先方もよく承知のところでございますので、この問題が、今回の漁業交渉におきまして、先方からこれを領土問題として交渉対象にされるということはないものと信じておる次第でございます。  以上、お答え申し上げます。
  16. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 外務大臣領土漁業問題を切り離してという意味だと思うのですが、また後でいろいろお伺いすることにいたしまして、この北方四島を含めての線引きでございますけれども、これはわが国領海十二海里設定に当たって当然のことだと思うのですが、その点外務大臣、この席で明確にお答えをいただきたいと思います。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま農林大臣お答えになりましたとおり、わが国といたしまして、わが国が主権を主張いたしております北方領土におきましても、当然従来の三海里の領海は十二海里になるもの、こう考えておる次第でございます。ただ、先ほど農林大臣が御答弁になりましたように、現実施政権が及んでいないということは、漁業問題におきまして農林大臣イシコフ漁業相との間に方針をいろいろお話し合いになることはあり得ることと思う次第でございます。
  18. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣にお伺いしますけれどもソ連の二百海里漁業専管水域外国漁船操業する場合は、ソ連の許可が必要となってまいります。またその漁獲量というものは、ソ連漁獲し切れない分のうち資源保護影響ない範囲内で外国漁船に割り当てる方針のようでありますが、私は、日本のいままでの実績をぜひとも確保していただきたい、こういう意味であえて申し上げるのです。日本ソ連の二百海里以内でとっている漁獲量というものは、昭和五十年実績で見ましても約百七十万トンでございまして、遠洋漁業の四六%を占めております。ソ連余剰漁獲分外国船にも割り当てるとは言うものの、ソ連自身アメリカ、ECの二百海里水域から締め出されるだけに、日本への割り当てというものがかなり厳しいものになるであろうというふうにいろいろ言われておることは事実でございます。そういった意味で、今回の交渉に当たって大臣は、従来の実績確保はどんなことがあっても守る、一歩も引かないという決意で臨んでいただきたい。日本漁民を守るために、また日本食糧を守るために強い姿勢で臨まれたい、そのように思うのですが、その決意を承っておきたい。
  19. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 瀬野先生指摘のとおりでございまして、わが国民のたん白食糧の過半を魚肉たん白に求めておる。また海外での日本漁業実績四百五十万トンのうち三百万トンは北方の漁場において確保されておる。ソ連のこの問題になっております海域等におきましても、相当量漁獲をしておるわけでございます。これが大きな削減を受けるということになりますと、ただに日本漁業が大変な打撃を受けるだけではなしに、国民食糧確保の面からも大きな影響をここにもたらすわけでございます。したがいまして、私は瀬野先生の御指摘のとおり、強い決意でこれに取り組んでまいりたい、こう思っております。
  20. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 また水産業界は、大臣も御承知のように突然の今回の二百海里実施に当惑いたしておりまして、不安を隠せない深刻なものがあることは御承知のとおりでございます。特に北海道釧路港を基地として東西カムチャッカ水域に出漁している北転船約百五十隻にとっては三月上旬がちょうどスケトウダラ最盛期になるわけでございまして、地元漁民も余りの突然のこの一方的なソ連の処置に対して、いま北洋操業しているわが国漁船は即時帰港することになるのかどうかということで、その対応策をどういうふうにすべきかということで大変迷っておるし、不安をつのらせていることは事実であります。全く見当つかないと言って困惑しておりますが、この点について政府はどういうように対策をとっておられるか。また今回の交渉に当たってどういうふうに進められるか。その点もひとつ大臣から承っておきたいのです。
  21. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、突然のソ連閣僚会議決定でございまして、私ども政府当局者としても当惑をしておるところでございますが、関係漁民にとりましては深刻な衝撃であろうということを私承知をいたしております。いまお話しのように、スケトウダラは盛漁期でございまして、北転船が百五十隻、また沖底びき網二百六十隻前後、それに北海道等の沿岸の零細漁船が一千隻前後出漁をいたしておるわけでございます。そこで、私といたしましては前日の二十八日にイシコフさんと話し合いに入るわけでございますが、まずとりあえず、翌三月一日から実施される、しかも日本漁船はそれだけ操業しておる、こういう事態処理しなければいけない、こう考えておりますので、この操業確保につきましては最善を尽くすつもりでございます。
  22. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 いま述べたところの北転船によるスケトウダラ最盛期とともに、三月一日から、先ほど鈴木農林大臣もおっしゃいましたが、日本海でサケマス漁が始まるわけでございますけれども鈴木イシコフ会談で二百海里についての話し合いが行われ、両国間で基本的な取り決めがなされるまでは例年どおりの操業が行えるかどうかというのが、これまたもう一つ現地の漁民の心配でございます。特にサケマス船は三月一日からの出漁を前に準備を進めておりますし、拿捕の危険がないだろうかということが大変不安で、また深刻の度を深めておることも事実です。先ほど大臣もおっしゃったように、日ソ漁業条約は、仮にどちらかが一方的に破棄したとしても一年間は有効となっております。だから、三月一日からソ連が二百海里を実施したとしても、サケマス漁の出漁については当然行っていいというふうに私は考えておるわけですが、この点も先ほど若干触れられましたけれども地元漁民のためにこの席をかりてひとつ明快にお答えをいただきたい。
  23. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今年のサケマス漁業交渉、この点につきましては御指摘のとおり日ソ漁業条約が厳として存在するわけでございますから、その場においてこれは協議さるべきものである、こう考えております。  なお、日本海のマス漁業についてお話がちょっとございましたが、御承知のように日本海のマス漁業は西の方から徐々に東の方へ魚群が北上していく、こういう状況にもございますので、とりあえずはソ連の二百海里海域の外、日本の東北並びに北海道周辺の漁場でその間は操業ができる、こういうことでございますので、それらを勘案しながら万全の対策を講じたい、こう考えております。
  24. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 今回の訪ソに当たって、大臣も十分承知だと思いますけれども、さらに私申し上げておきたいのです。昨年の第三次海洋会議のニューヨーク第四会期の最終日に出されましたところの非公式単一草案というのがございますが、第五十一条の「漁業資源の利用の配分」の項に「他国に入漁を認めるに際し」云々とありまして、「経済的混乱を最少にする必要等を含むあらゆる関連する要素を考慮しなければならない。」、こういうふうに規定してあります。これは遵守義務はないにしても、大臣はこの精神を踏まえてソ連にも徹底して認識をさせて交渉に当たるべきである、かように私思っておるわけですけれども大臣も十分承知だと思いますけれども、いわゆる地元漁民の声としてよく出発に当たってこれを心に踏まえて交渉に当たってもらいたい。大臣見解を承っておきたい。
  25. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 全く御指摘のとおりでございます。私は、北洋で働く漁業者が中小漁民が非常に多いということ、またその失業問題、雇用問題ということも日本経済に及ぼす影響と同時に、この乗組員の雇用問題として非常に大事な問題でございます。そういう点は十分頭に置きながらこの交渉に臨みたい、また先方にもそのことは十分御理解を願うように話し合いをしたい、こう考えております。
  26. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣も出発に当たっていろいろ用事もあると思いますので、あと若干、二、三点お伺いしておきたいと思います。  今後の北洋漁民を守るための対策として今回の二百海里実施に伴いまして減船問題が深刻な問題となっておることはもう御承知のとおりです。スケトウの北転船にしろツブの漁船にしろ地元はもう大変不安を隠せないものがございますが、さきの米国二百海里の実施に伴う北方トロール船はほとんどが大手ということもありましたけれども、今回のこの百五十隻に及ぶ北転船は、中小零細漁業者でございます。従来の共補償ではもうとうてい追っつかない。どうしても国の直接助成方式でやらなければ補償できない、かように思っております。こういったことを含めて、今後、こういった中小零細漁民北転船等に対する救済はどういうようになさるつもりか。その辺もひとつこの機会にお伺いをしておきたいと思います。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日米の漁業交渉におきましては、一割程度の削減であったというようなことで、大きな減船をせずに処理することができた。一部のトロール船につきましては、これを調査船に向けるとか、あるいは南方の老朽船と置きかえるとか、そういう措置でこれを処理いたしたわけでございますが、日ソ漁業交渉の結果がどういうことになりますか、わが国実績がどの程度まで達成できるか、その結果を見ませんと具体的な処理方針というものが決まらないわけでございます。しかし御指摘のように、零細な中小漁業が多いわけでございますから、その結果を見ながら政府としてもあとう限りの措置を講じてまいりたい、こう考えております。
  28. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 さらに三月一日からソ連が二百海里を実施するということで地元では農林大臣も十分承知のとおりスケトウダラの一船買いというのがすでに始まっております。いわゆる思惑買いでございます。三浦半島のかってのマグロの一船買いと同じようにスケトウダラが相当値が上がってまいりました。そういったことでいま一船買いが始まっておりまして、現地の加工業者は大変困って深刻な様相が深まりつつございます。今後ますますこういった現象が起きてくることも当然考えられますし、こういったことによって大混乱が起きてくるという可能性があるわけでございます。これに対する手を早く打っていかなければならない。そういった意味政府はこういったことに対してどういうように認識をして考えておられるか。流通に対する混乱、こういったものも防がなければならないし、ルールも十分考えていかなければならない。また低金利の融資等も加工業者に対して講じてやらなければならぬ、かように思っておりますけれども、これらに対する訪ソ前の大臣としてどういうように考えておられるか。深刻な問題でございますのであえてお伺いしておきたいと思う。
  29. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日米の漁業交渉におきまして本一割程度の削減がなされたわけでございます。また、ソ連海域におけるこれからの交渉でもある程度の削減はこれは避けて通るわけにいかない。こういう状況下にございますから、とりました漁獲物はこれを最高度に利用する、高度利用ということで加工、保蔵、流通の問題をいままで以上に力を入れて改善をしていく必要がある、このように考えまして、業界の指導に当たっておるところでございます。また、日米の関係から見て、それほど急に魚価が上がる必要はない、こう考えますけれども、どうしても思惑が先行するというようなこともございますので、その実情を十分関係者にも周知徹底をさせて、それに便乗したりいろいろな思惑買いをするとかいうようなことのないようにこれまた指導してまいりたい、こう考えております。  原料不足等の現実事態が発生いたしました場合に、加工業者に対する救済措置をどうするかという問題につきましては、その事態を十分見きわめた上で適当な対策を講じたい、こう考えております。
  30. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 外務大臣に続いて若干お伺いして、あと農林大臣に少しお伺いしておきたいと思うのです。  外務大臣、いずれ領海法という法案を提出するということでございますけれども、きょうも毎日新聞にその一部が出たようです。これは政府は関知しないということのようでありますけれども、国際海峡ということについてしばしば論じられておりますが、国際海峡の定義というものは厳密には明確でないと思うのですが、外務大臣は現時点でどういうふうに認識をしておられるのか、その点簡潔にお答えください。
  31. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 本日の新聞に領海法の政府原案の内容というふうなものが示されておりますが、これは私どもまだ何ら権威のあるものではないということを申し上げておきます。この原案にいろいろな表現がありますけれども、これらの国際海峡をいかに法律的に規定するかということもまだ全く決めてないわけでございます。ただ私どもの頭にあります、いわゆるといういわゆるつきでございますけれども、いわゆる国際海峡というものは、国際の航行に使用されておるという海峡を指しておるものと考えております。
  32. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そこで、領海十二海里の実施についてはわが党もかねてから主張してまいったところでありまして、沿岸漁民の強い要請、国際的な趨勢から見ても当然のことであります。  外務大臣、さらにお伺いしてまいりますが、この領海十二海里の実施はむしろ遅きに失した問題でございます。いわゆる国際海峡と言われる海峡についても、わが国領海として現行の条約に基づき無害通航を認めればそれでよいではないか、かように私たちは思っておるのですけれども、こうした措置がとれないのはどういうわけですか。御承知のように、昭和四十八年に政府は統一見解として、核装備艦の通航は無害通航と認めないということを明らかにしておるのでありますし、またスリランカ政府はこういつた核兵器を積載した軍艦は許可制度にするという公文書を通告しておる実例もありますので、私は例外なく日本施政権下に十二海里を通過することが可能ではないか、こういうふうに思うのですけれども、その辺についてどういうふうに外務大臣見解をお持ちであるか、これもあわせてお答えいただきたいと思います。
  33. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領海の十二海里への拡大といわゆる国際海峡の通航の仕方の問題とは、これは大変密接なかかわり合いを持っておる問題でございます。いまのお尋ねの点につきましては、先般当予算委員会におきましてもこの統一見解を求められまして、そして鈴木国務大臣から統一見解が述べられたところでございまして、私どももそこの統一見解にありますとおりのことを考えておる次第でございます。わが国といたしまして、従来から国連海洋会議におきまして領海の一般の通航よりより自由な通航制度を、これはわが国といたしましてもそういった方向で協力をしてきた次第でございますので、今回におきましても国連海洋会議の結論が出るまで暫定的に従来どおりしておきたい、こういうことでございます。御了承を賜りたいと思う次第でございます。  なおこの機会に、先ほど実は私の北方四島につきまして御答弁申し上げました中に、北方四島には現実に施政が及んでないと、私はそのように申したつもりでございますが、あるいは現実施政権が及んでないというように申したかもしれませんので、この辺は現実に施政が行われてないということを申した次第で、この点に権というものがつきますと、これは大変意味が違ってまいりますので、その点は御了承賜りたいと思います。
  34. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣は時間が参ったようですから、あとたくさんございますけれども訪ソに当たっていろいろと今後のスケジュールのこともあると思いますので、また当該の委員会でいろいろ質疑をすることにいたしまして、以下の問題は関係当局から答弁をいただくことにしますので、訪ソに当たって漁民を守るために、日本食糧を守るために、せっかくひとつ強い姿勢交渉に当たってもらうようにお願いしたいと思います。中座されて結構でございます。  引き続き外務大臣に若干お伺いしておきますが、政府領海幅三海里とする海峡は、外務省のいろいろな書類を見ましても、北海道付近が十二、本州付近が、これは日本海側ですが十カ所、本州付近の太平洋側が九カ所、九州付近が十二カ所、南西諸島二十九と、まあ日本は島が多いわけですから、全部で七十二ぐらいのいわゆる海峡があるわけですけれども、新聞その他では五カ所をいろいろ言っておられるようですが、実際に領海幅を三海里とするのはどこどこを考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  35. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この日本のたくさんあります海峡の中でどこをいわゆる国際海峡として指定するかという点につきまして、目下、鈴木国務大臣の御指導のもとに準備室を設けましていま準備中でございまして、どこの海峡を定めるかという点につきましていままだここで申し上げる段階でないのでございます。
  36. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 もう一つお伺いしておきますけれども、対馬海峡がいわゆる国際海峡というようなことを外務委員会その他でも外務大臣いろいろおっしゃっておりますけれども、たとえば対馬海峡の例を一つとりましても、対馬の周辺全部を三海里とするのか、対馬海峡の反対側の西側海岸すなわち朝鮮海峡と面する海岸は十二海里とされるのか、対馬のいわゆる西側と東側とでは領海の幅が異なるというようなことも考えられるわけですけれども、その点はどういうふうに検討しておられるのですか。
  37. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの対馬海峡の取り扱いにつきましても、この点をいま検討中でございますので、まだ私の口から申し上げるわけにいかないのでございます。御了承賜りたいと思います。
  38. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間の制約の関係で十二海里問題等については以上で一応打ち切らしていただいて、次の問題に入りたいと思いますので、外務大臣結構でございます。  次に、提案しておりました問題で経済企画庁にお伺いします。  豪雪対策の問題でございますが、戦後最大規模の豪雪は全国各地で甚大な被害を出しておることは御承知のとおりです。現在死者が六十数名、負傷者が数百名、また家屋の倒壊など、被害は続出しておる現状でございます。陸の孤島と化した被災地の住民は、降り続く雪の中で雪おろしに追われ、これも青壮年層のほとんどが出かせぎで、残っている婦女子またはお年寄りが除雪をしている。その除雪の費用も一日一万円を超すという多額の費用がかかるということで、大変な苦況に立たされていることは事実でございます。こういった中で、生鮮食料品などの生活必需物資が確保できないために地元は大変苦況に立たされておりまして、食料品については、特に申し上げますと、キャベツ、白菜、大根などの主要野菜を中心に価格もウナギ登りに上がっている。キャベツ一つとっても秋の六倍ぐらいになっているということで、地元から大変な苦情が伝えられております。また、豪雪地の住民にとってこういった被害は深刻さを増すばかりでございますが、こういった被害について経済企画庁はどのように状況を把握しておられるか、まずその点最初に伺いたいと思うのです。
  39. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  今回の豪雪による生鮮食料品への影響につきましては、御承知のように道路事情が比較的良好でありましたので、供給が不足するというような状態にはないわけでございます。ただ一部の野菜に値上がりが見られていることは事実でございまして、これは一つは全国的な寒波の影響があったということも響いておるわけでございます。私ども関係各県を通じまして豪雪地帯の生鮮食料品の需給や価格動向というものを的確に把握することが必要だということで、二月の十八日に調べましたものでは、たとえば北海道、青森、岩手、秋田、山形、新潟、長野、富山、石川、福井、鳥取、島根、福岡とそれぞれ各県に電話を入れまして、いろいろな状況を調べたわけでございます。  御指摘のようにキャベツは、北海道は一月キャベツが五割高というわけですが、これは東京もやはり相当上がっておるわけでございます。新潟もキャベツ、大根、白菜、こういうものが六割から十割高、それから富山がキャベツが二、三倍というふうに、それぞれ各地の状況が違っておるわけでございますので、その的確な状況を調べるということで、農林省がずっとただいま申しましたような県についての野菜や果物の日報をそれぞれとっておりまして、これを注意深く見ながら、各県と御連絡をしながら、供給不足になったり異常の値上がりにならないようにということをいまやっておるような次第でございます。
  40. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林省のデータによっていろいろ状況は把握しておられるようですが、事実現地は深刻な状態で、先日も災害対策特別委員が二十二日から三日間の予定で青森県等視察してこられたわけです。その報告を聞きましても、想像以上の深刻な状態でございます。この異常事態に対して、生活必需物資の高騰対策、こういったことについては強力な手を打ってもらわなければならぬと思うのですが、それに対してもっと具体的に経済企画庁の対策を、見解を聞いておきたいのであります。
  41. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えします。  ただいま青森の例を挙げられましたが、青森は、十八日から申しますと、野菜が十八日の入荷量が七十八トン、それから十九日が七十九トン、二十一日が百九トン、二十二日が九十八トン、二十三日が九十八トン、二十四日が九十八トンと、大体順調に入荷いたしておりまして、たとえば十九日ではトマトがちょっと高かったわけですが、あとは保合している。それから二十一日はキャベツがちょっと高かったのですが、あとは大体保合の状況である。それから二十二日はピーマンがちょっと高かったのですが、あとは大体保合ということで、大体いまのところわりあい落ちつきぎみであるというのが状況でございます。  ただ、一時と比べますと、寒波の影響というのが響いておることは事実でございますから、今後とも少し注意深く見守ってまいりたいと思っています。
  42. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 いまの豪雪対策で、農林省側にもお伺いしておきますが、この問題については農家も大変いま苦境に立たされておりまして、農家はことしのいわゆる水稲作付の問題から、またいろいろと今後営農する上に、融資の問題、あるいはまた除雪作業はもちろんのこと、経営の促進を図るためにいろんな問題が起きて苦境に立たされておりますけれども、こういった生鮮食料品の問題等についても十分対処してもらわなければなりませんが、農林省としては、この豪雪対策についてどういうように対策を講じておられるのか、その点、農林省側としてもお答えをいただきたいと思うのです。
  43. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の豪雪によります農林水産関係の被害は、現在鋭意被害額の集計に努めておるところでございますが、県からの現在までの報告では、約十億六千万円になっております。もちろん、森林関係の被害等はいまは定かにわかりませんので、今後若干ふえるということは当然予想されると思います。  これに対します対策といたしましては、現在判明しておりますものは、ビニールハウスとかあるいは畜舎等の災害が比較的判明をしておるわけでございます。これに対しましては、その災害復旧につきまして、公庫融資等によります融資措置によって必要な場合には対処をしたいというように考えておりますが、今後発生が予想されます農地、農業施設の災害とか、あるいは山林の被害、造林の被害等につきましては、実態が明らかになりました際に適当な措置を講じたいと思っております。  農林災害の場合は、融雪時に被害が出るのがこれまでの例でございます。施設の災害、その他田植えがおくれるとかいうようなことがこれまで出ておりますので、今後の被害の推移に十分注意をいたしまして、その時点におきまして、実態を把握した上で適切な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  44. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 豪雪対策についてはまた災害対策特別委員会でもいろいろ審議することにいたしておりますが、いま経済企画庁並びに農林省からもいろいろ答弁がございましたとおり、かつてない異常災害でございます。どうかひとつ地元民の不安のないように十分な対策を講じるように重ねてお願いをいたしておきます。  時間の制約がありますので、次に農機具問題について若干お尋ねをしておきたい、こう思います。  御承知のように、この農機具というのは、最近もう大変機械貧乏ということで農家も苦況に立たされて、いわゆる農機具の負債に追われて、営農がますます近代化とともに機械化貧乏の度が増しております。そういったことで、実際に農家が現在機械に追われて相当生活に困窮している、また苦しい状態になっているということは、農林省は十分承知しておられるか。その点、まず農林省の見解を承っておきたい。
  45. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 お答えいたします。  現在農機具の普及の度合いは非常に目覚ましい状況でございまして、この農機具の普及に伴いまして、労働時間の節約等農業生産の面でかなりのプラスの効果をもたらしていることは事実でございますが、反面、農業経営費の中に占めます農機具費の割合というものも、わが方の農家経済調査の結果によりますと、近年その割合は余り動いておりませんが、一五・一%ということでかなりの割合でもございますし、たとえばまた米生産費の中に占めます農機具費の割合で見ましても、二二・三%ということで、他の肥料費や農業薬剤費等、農業の物材費に比べましてかなりの大きな比率を占めているというようなことでございます。  また、農機具の二月あたりの購入額を平均額でとらえてみますと、大体一戸当たり十六万円ということになるわけでございますが、購入をした農家にとってみますれば、かなり経営規模の小さい農家でも相当多額の投資をしておるというような状況がございまするし、また、さらに農業固定資本形成の中でも、約三分の一は農業機械の投資であるというようなことで、かなり農機具に農家としてはお金を投入をしておるという姿があろうかと思います。
  46. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農機具の実態についてはいま農林省から報告がありましたが、農機具のウエートというものは大変農家の負担にかかっていることは事実であります。  時間の関係がございますので、例をとって申し上げる余裕がございませんが、そこで、私、問題にしたいのは、農家のこのいわゆる重なってくる農機具の費用に対していろいろな問題があるわけですけれども、最近、従来からですけれども、招待販売ということがいろいろ問題になっております。農機メーカーが、いわゆる農機購入の農家の心理を、悪く言うと悪用するというふうなことになるわけですけれども、招待販売という名のもとに、四十七年以降、再びまた最近顕著になってまいりまして、農機具を買ったならば海外旅行等に連れていくというようなことで、いわゆる農家の農機具購入をあおる傾向があるわけでございます。すなわち海外、バンコク優待セールとか、〇〇友の会シンガポール旅行キャンペーン、または歌謡ショー御招待というようなたぐいでございますけれども、いわゆるこういったことによって、農家の購買をあおるというようなことがございまして、これが農機具の購入に拍車をかけている。そして、それがとりもなおさず農家の負担にかかってくるということで、ますます機械貧乏の度を増しているというのが実情ですけれども、こういった招待販売というようなことについて、農林省は承知しておられますか。
  47. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 招待販売はかつて相当目に余る状態でございましたので、四十七年に、私どもといたしましては局長通達をもちまして、そのような行為を自粛するようにということを関係の業界に通達いたすとともに、行政当局に対しましても、地方農政局長あるいは地方農政局長を通じて都道府県知事に同様通達を発しまして、自粛を求める指導をすべきであるということをしたわけでございます。その結果、通達施行後にかなり自粛をされてまいりまして、特に問題といたしました海外の招待販売行為は一時姿を消すに至りましたが、最近また一部の地域におきまして、招待販売あるいは優待旅行というような名前で、海外への招待を農機具販売のための一つの手段として行うというような傾向が見られ始めました。私どものキャッチした限りでは、昨年の夏以降、そのようなことを実施したものあるいは実施の計画を持ったものがおおむね十件程度ございます。その程度について、十件程度のことでございますが、把握をいたしております。
  48. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 いま把握をしておるということでございましたが、その内容について一つ委員長にお願いしたいと思うのですが、その実態調査をした結果、最近のデータ等をぜひひとつ資料として出していただきたいと思います。委員長、お取り計らいをいただきたいと思います。
  49. 坪川信三

    坪川委員長 お聞きのとおりの資料の提出についてのお答え、よろしゅうございますね。
  50. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 まだ調査中のものもございますが、途中の段階で集計をいたしまして、わかるような形にして御提出いたしたいと思います。
  51. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 確かにいま局長おっしゃったように、四十七年五月十六日に、当時農政局長名で農業機械の流通正常化についての通達を出しております。ところが、御存じのように四十七年からもう五年もたっておるわけです。またぞろこういったことが行われて、大変農家に負担がかかってきております。こういったことで当然また通達も新たにやらねばならぬじゃないか、こう思うのですが、もう五年前に出した通達、ずいぶん古い通達ですが、それから時代の流れもずいぶん変わっております。十分これを認識して再通達してもらいたい、かように思うわけです。  そこで、農業機械流通懇談会というものがあるわけですけれども、これは農機メーカー、販売業者と全農を中心に、農林省及びオブザーバーとして通産省が入っておりますが、この構成を見ても業者サイドに立った指導通達、業界保護の姿勢というふうに私は思うわけです。そこで五年前の通達でございますから、新たにまた通達を出すと同時に――過当競争の排除、農業機械の価格の安定を図るというふうになっておるわけです。こういった意味からも十分検討して、最近またこういった招待販売が激しくなってきておりますので、農家を守るために十分検討してもらいたいと思うのですが、農林省、どういうふうにお考えであるか、お答えいただきたい。
  52. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 先ほど申し上げました通達に基づきまして、懇談会を設置をいたしまして、農機具流通の正常化の問題についていろいろと議論を重ねてきたところでございますが、それに基づいて実行をいたしました問題も数々あるわけでございますけれども、最近の実情にかんがみまして、私どもといたしましては、たとえばこの流通の秩序化、過当競争の排除というようなことについて、さらに新しい行き方を模索をする必要があるというふうに考えております。業界におきましても、景表法に基づく公正取引規約の設定について自主的に会を設けまして検討中であり、現在原案の骨子ができ上がった段階でございます。そういう動きもございますので、私どももそういう動きをこの通達の中にも具体的に反映をしていく必要があろうかと思います。  そういう意味で、見直しをし、農家の不利益にならないような形で農機具の円滑な流通が行われるという大きな基本趣旨に沿って見直しをいたしたいと考えております。
  53. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 当局も掌握をしておられるようだから、重ねて詳しく申し上げませんけれども、この農機具を農家に売りつけるために、こういった招待、優待販売というものが、いま明らかになりましたように、ますます激しくなってきておる状況でございますけれども、農家の本当の気持ちは、いわゆる招待されることについてはうれしいわけですけれども、実際にこういったものが農家の農機具に上乗せされてくる、いわゆる会社も赤字を出してまでは海外招待はしないわけですから、そういったものは一部の招待によって全体の農機具にそれがコストとして上乗せされてくる、日本の農家の皆さん方の負担になってくるということで、大変農家からも批判が出ておるわけです。また招待旅行が真に出血して会社が農家を招待してくるのであれば、これは結構なことで、われわれはこれにとやかく言う筋合いがないのですけれども、現在の行き方から見ますと、そういった傾向が強いわけです。  こういういった意味で、五年前に出されたこの通達、私は独禁法に抵触するような通達指導内容ではないかというふうに思うのですが、公正取引委員会はどういうふうにこれを見ておられるか。また、今後のこともございますので、あえてひとつ見解を承っておきたい。
  54. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御指摘の農政局長通達でございますが、これは農業機械流通の正常化を図るという目的で出されたものと理解をいたしておるわけでございますが、その内容自体が直ちに独禁法上問題になるというものではないと考えております。しかしながら、これは一種の行政指導の文書でございますから、農業機械流通業者らが、この通達の趣旨を逸脱いたしまして、あるいは誤解をして、販売価格や下取り価格などを申し合わせによって決めるというふうなことに相なりますると、独禁法上規定に抵触するという問題が起こりかねないわけでございまして、そういうことのないように十分注意してまいりたいと考えておる次第でございます。
  55. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 通産大臣にお伺いしますけれども、いまいろいろお聞きになったとおりでございまして、時間の関係で余り全部を申し上げることはできませんけれども、招待販売等、いま申し上げたわけですが、こういった商行為というものは、販売業者というよりは農機メーカー指導によるところの行為である、こういうふうにわれわれは見ておるわけでございます。  そこで、四十八年のやみカルテル事件もあったわけですが、とかく問題になる業界でございまして、先ほどの通達指導にしても、農林省が、どういう立場からか知らないのですけれども、業界指導を一生懸命やっているというふうな形になっておりますが、これに対してはわれわれもいろいろ疑問を持っておりまして、農林省の業界指導はどうかなというふうに考えておるわけです。むしろ通産省がもっと力を入れてやるべきじゃないか、こういうふうに思っておるわけですけれども、この点、生産については通産省、流通については農林省というふうなことになっておりますが、この点の問題について、どうかひとつ、セクト主義じゃなくて、農家のために、農民のためにという立場から通産大臣の御見解を承っておきたい。
  56. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  瀬野先生のお話を承っておりまして、私どもも、選挙によって出ております。農村を背景といたしております。農機具によりまする農家経済の重圧という問題については、本当に真剣に心配をいたしておるような次第でありまして、御質問いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。  なお、私、通産大臣に相なりまして、特に立場の上から申すならば、農機具メーカーを監督し、また指導しなければ相ならぬ立場にございます。かような意味から申しましても、売り込みに際しまする過度のサービスにつきましては、今後とも農業機械メーカーを通じまして、あるいは自粛するように、あるいは適正な指導をしてまいりたい、かように考えておりますが、一応申し上げますと、農業機械の価格の問題は、農家経済の大変大きな圧力になってきまするが、強力なユーザーの団体であります全農と各メーカーとの間の価格交渉によりまして実質的には決定されておるのでございまして、今後とも当事者間の交渉にゆだねる以外には方法がございませんが、政府が直接介入することは私ども控えなければならないので、ただメーカーに関しましてのいろいろ指導をしてまいりたい、かように考えております。  なおまた、一言つけ加えますが、これらの大規模になりました農具の部品の交換制でありますとか、あるいは耐用年数の問題でありますとか、十分技術的な指導を行ってまいりたい、かように考えております。
  57. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 通産大臣にさらにお伺いしておきます。  この農機具問題は大変大事な問題であります。短い時間で全部を議論することはできませんけれども、きょうは問題提起という程度にしておきますが、実は今回の八十回国会に対して、通産省も農業機械安全法案、農林省は農業機械化促進法というものを準備していろいろ検討されておったことは事実でありますけれども、これが農林、通産両省が折り合わず、ついに改正を見送ったといういきさつがあって、裏話だけでもいろいろと承知しておりますが、こういった農民のためである大事なものが、あるいは農業が国の大本であるにもかかわらず、こういったものが折り合いがつかないということでは困るわけですね。いきさつはともかくとして、こういつたことをぜひとも進めて、農家のために通産大臣もがんばってもらいたいと思うのですが、これに対して大臣はどういうふうな見解をお持ちであるか、お答えをいただきたい。
  58. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  ただいま御指摘のように、今回の安全規制の問題につきましては、なお技術的に検討すべき事項も多いために、今回は法律の国会提出を見送った次第でございますけれども、従来からの行政指導の強化によりまして対処することといたしております。  通産省といたしましては、その重要性にかんがみまして今後とも慎重に検討を続けてまいり、先ほどお答えいたしましたように、この問題については本当に重大な問題として取り組んでまいりたい、かように考えております。
  59. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 通産大臣にさらにお伺いします。  農林大臣が明日訪ソをされるので、どうしても時間の余裕が欲しいということで中座して帰っていただきましたが、特に農林大臣に申し上げたいことでもございましたが、通産大臣、次のことをぜひとも御承知いただいて、今後指導監督してもらいたいと思うのです。  農機業界が抱えている課題はたくさんございますけれども、いまおっしゃったように、安全性、耐久性、効率利用等、山積しているわけでございます。取り組むべき問題もたくさんございますが、それをそっちのけにして、先ほど申しましたように海外招待とか優待販売をしてますます値をつり上げて農民を食い物にするというような――そのしわ寄せば全部全国の農民にかかってくるわけです。こういった売らんかなという状態がますます激しくなってきております。  そういったことで通産、農林、手を相携えて、全国の農民を守るためにもぜひひとつ指導監督、また先ほど申しました懇談会等もオブザーバーで通産省も入っているわけですから、十分指導していただいて、正常化、適正化を図るように努力してもらいたい、このように思うわけです。この問題は次の機会にまた取り上げるということで、私は留保しておきますけれども、いろいろな問題がたくさんございますが、警鐘乱打の意味で申し上げておきますので、その点最後に通産大臣から一言お答えをいただきたい。
  60. 田中龍夫

    田中国務大臣 御指摘をいただきましたことは、本当にありがとうございます。なお私の方も真剣にこの問題に取り組んでまいりたい。なかんずく通産、農林の間で本当にこの問題の解決に対しまして、また農家経済の安定のためにも全力を挙げて努力いたしますことをお誓い申し上げます。
  61. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 次に、水俣病認定問題について、石原環境庁長官にお伺いをいたします。  まず最初にお伺いするのは、政府は、水俣病被害者の迅速な救済を図るため、現行制度の抜本的な改正を速やかに実施されたいということでございます。  本件については、去る二月十日、熊本県並びに熊本県議会から直接石原環境庁長官に要請したところでございます。すなわち、公害の原点と言われる水俣病は発生以来二十年を経過しておりますが、その間、昭和四十四年の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の制定及びそれにかわる昭和四十八年の公害健康被害補償法の制定を見て一歩前進したことは事実であります。ところが、熊本県は水俣病被害者の迅速な救済を図るため、認定業務の促進に最大限の努力を傾けてきたのでありますけれども昭和五十一年十二月十五日、熊本地方裁判所における水俣病認定不作為の違法確認請求事件に係る判決において、認定に関する本来的困難さや申請者数の増加と、これに対する医師の不足という種々の隘路があることを認め、熊本県の処理能力には限界があるとしながらも、被害者の迅速な救済のために速やかな処分をなすべきとして、被告熊本県知事の不作為が違法であるとの判断が示されたことは御承知のとおりでございます。  熊本県としては、全力を挙げて水俣病認定業務の推進に努力を続けているのでありますが、さきの判決結果については、幾つかの問題点もありましたけれども、公害被害者の迅速な救済という法制定の原点に立ち返って控訴は断念したのであります。  このような状況の中で熊本県は、認定検診、審査の促進のために種々努力を重ねてまいりましたが、一、水俣病に関する医学的判断の困難なこと、二、検診、審査を担当する専門医が少ないこと等のため、熊本県の努力も限度にきております。  しかしながら、現行認定制度のもとにおいていまだ審査認定基準も明示されないまま、認定申請者は急増し、昭和五十二年二月七日現在で申請数四千六百四十九件、うち認定が法施行前の四十四人を加えて九百四十五人、棄却百九十八人、未処理累積数は三千五百五十人となっております。  現在、行政庁としては、不作為の違法状態を一日も早く解消すべき責務がありますが、専門医の不足等のため、熊本大学を中心とする認定検診は月約五十人が限度であり、認定審査会の審査も月約八十人が限度であって、しかも水俣病の病像が確立していない現在、環境事務次官通知の中にある「否定し得ない」ものまで含めた判断はきわめて困難となっております。処分可能な答申は月二十ないし三十件にすぎず、その他は保留として残り、熊本県としては、迅速な救済という法律の趣旨に対応できない状態でもう限度にきております。かつ、これらの申請者が二十六都府県にまたがっておることも事実でありまして、違法な不作為状態を解消することはまさに至難のわざであり、すでに一県の能力をはるかに超え、このまま推移すればいわゆる機関委任事務を返上するのやむなきに至る。こういうことで三月二十六日から始まる県議会でもこれが重要課題として深刻なところまできております。  そこで、昭和五十一年十二月、熊本県の水俣病認定業務については、現行制度を抜本的に改善することなく、このまま踏襲していくことは被害者の迅速な救済という法の趣旨から許さるべき問題ではないということを指摘し、熊本県の水俣病認定業務は、国の責任において直接処理されるよう数回にわたり強く要求してきましたが、今日まで何ら見るべきものがございません。したがって、速やかに現行制度を抜本的に改正し、水俣病認定業務は国において直接処理されるよう措置を講ずべきだと考えます。これが最大の問題でありますけれども環境庁長官も十分検討して本日は委員会に臨んでおられると思いますが、環境庁長官から意のある御回答をいただきたい、かように思うわけであります。
  62. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 お答えいたします。  瀬野先生の御発言と同じ内容の陳情を先般熊本県議団から受けまして、環境庁としましても、県のこの厄介な問題に対するいままでの非常な努力を評価するものでございますが、御存じのように、四十八年の例の最低千六百万パーヘッドという認定患者に対する補償の裁定が行われました時点から認定の申請者が非常にふえまして、同時に病像が非常に多様化し、不全性、非顕性と申しましょうか、そういう患者がふえた形になりまして、非常に作業が困難化し、物理的な事情もありまして認定業務が渋滞しておるわけでございます。まあ県は努力をしてきてしかもどうも解決策がないということで、この際、機関委任事務を国に返上という論もあるようでございますけれども、しかし環境庁としましては、これはやはり国が直接認定業務をするということが決して問題の解決の促進になるという判断はいたしかねる次第でございます。やはり、基本的な方針としましては、あくまでも問題解決のために県の指導のもとに認定業務の促進を図るべきものだと心得ますし、具体的な方策としましては水俣病の病像の明確化、これは先ほど申しました不全性、非顕性の患者を含めてでございますが、それからやはり申請者のそちら側の理解とひとつ協力もいただきたいと思います。  それからまた、この認定は非常にむずかしい作業でございまして、それのための経験と知識のあるお医者さんをできるだけ多く確保する努力、そしてまた検診機関の拡大というものを考慮いたしまして、業務の遅滞が一歩でも二歩でも進みまして問題解決に努力をしてまいる所存でございます。  私も就任早々でございますけれども、いろいろな方にもお目にかかりましたし、私なりに何か打開の方法がないかと思って現在積極的に考えておる次第でございますが、時期が来ましたら現地にも赴きましていろいろな方々の御意見をお聞きし、与野党関係の議員の方々からもお知恵いただきまして、協力いただきまして、ひとつ一歩二歩と言わず、十歩、二十歩前進する方式を考えたいと思っております。  ちなみに、国が認定業務を実施しましても、いろいろ問題ございまして、やはりこれは県民福祉に直接かかわりある問題でございますから、これを県に行わせることとした機関委任事務の本旨にもやはりもとることになります。同時に、これを返上されますと、国全体の行政に非常に大きな混乱を生ずるおそれもございます。また、やはり水俣病のこれにかかる医学的な見識を持たれたお医者さんはほとんど現地においでになりますし、また、確かにたくさんの都道府県に患者がわたっておりますが、実質的九割以上の患者はやはり熊本在住でございますし、それからまた現地の地域的な、ローカルな事情というものに通じたお医者さんでございませんとなかなか感情的にも心理的にも患者の協力が得られませんので、そういう意味でもやはりこれは県が主導し、国ができるだけこれに協力するという形で解決すべき問題と心得ます。
  63. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 石原環境庁長官は、こういった水俣病の認定業務については国の責任ではいたしかねるというような意味答弁でございますけれども、いまも申しましたように二十六都府県にまたがっておるし、毎月五十名ずつふえ、しかも三千五百五十名というまだ未認定の申請者もおるわけです。そういったことで、もういまの能力から言っても、仮に医師が百人いてもこれはとても五年、十年、二十年で解決できない限度を超えた問題であるということで、県の方もいよいよ極限に達したということで、先般来しばしば長官に対してもまた国に対しても要請があったわけです。それで、その解消の見通しは全くいま立っておりませんし、万策尽きたというのが県の実情であります。また、県民も不信感がつのるばかりであります。何としても大臣の勇断をひとつお願いしたい、かように思っております。二十六都府県中九割が熊本県とおっしゃいますけれども、私はこれはひとつ環境庁長官も新しく就任なさったわけですけれども、そこをあなたが破って何としてもこういった患者の要望にこたえるというのが大事だと思うのですが、再度お答えをいただきたい。
  64. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 この機関委任事務返還ということになりますと先ほどのような問題が出てまいりますが、やはり熊本県の主導のもとに国の協力を従来以上に、その量をふやす、質をふやすということで努力をすべきものと心得ます。
  65. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 ぜひともいわゆる国の責任において処理していただきたいというのがわれわれの一貫した願いでありますが、国の責任でやるというまではどうしてもやはり患者を救っていかなければいかぬということで、私たちは医師の充足、いわゆる医師はどれくらいおるのか、国は水俣病を検診する専門医がどのくらいおるか掌握しておられるか、その点を伺いたい。ぜひとも審査、認定の基準を決めていただきたい、かように思うわけです。  それから、やはり県の財源も限度がございますので、まず国が責任を持ってやるまでは財源を十分見てもらわなければこれはできないことでございます。そういった点についてどういうふうにお考えであるか、あわせて伺いたい。
  66. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 財源につきましては、環境庁としましても、熊本県の実情を踏まえてことし、五十二年度の予算においては県の負担を軽減するように、かなりの努力をいたしました。  ちなみに、健康被害救済特別措置費の熊本県分は、五十一年度は二千五百万円でございましたが、五十二年度は四千八百万円、一九二%の増になっております。あるいは申請者医療費研究補助金も、五十一年度は五千五百万円でございましたものが五十二年度には七千八百万円、一四二%という形になっておりまして、これ以上の努力をすべきかもしれませんけれども、いろいろ財政的に限度があることでございますから、環境庁なりの努力はしたつもりでございますが、その認定の基準を、これは非常にむずかしい問題で、なかなか申請者の方々全部に満足いただけるようなものができてくることは本当にむずかしいと思いますけれども、やはりあるところで一つの線切りをするということをしませんと問題落着しませんし、その際はひとつ現地の与野党の先生方にも説得の御協力を賜りまして一つの基準を設け、それにのっとった認定の作業を行うべきかと思っております。  それから、国が確保できる医者の数の予測につきましては、政府委員から答弁させていただきます。
  67. 野津聖

    ○野津政府委員 お答えいたします。  いわゆる水俣病につきましてでございますけれども、もう先生御存じのように、やはり現地のいろいろな状況につきまして熟知しておられる医師が非常に大事な問題であろうと思っておるわけでございます。私ども、たとえば関西以西におきますいわゆる神経内科の専門家とかあるいは神経眼科の専門家、あるいは耳鼻科の専門家という形での医師の数につきましても調べてあるわけでございますけれども、たとえばその面だけの専門であるということでは、一つの症候が集まりました水俣病でございますので、必ずしも水俣病に対しての専門的な知識という形にはいかないのではないかというふうに考えております。  したがいまして、現在私ども数といたしまして把握いたしております先生方は、新潟、熊本、鹿児島と三地域におきまして各科の専門の医師でございますけれども、ほぼ二十六、七名という形になっておられるのではないかと私ども考えているところでございます。
  68. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 このような専門医が少ない状況でなかなか審査が進まないわけです。これはもう国で責任を持ってやる以外にないと、かように私は長官にも言っておきますが、そこで先ほどの答弁で審査、認定基準、これはいつをめどに長官やる予定ですか、お答えいただきたい。
  69. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 瀬野先生先ほどみずからおっしゃいましたように、非常に病像が多様化し、また極端な患者は非常に早く認定されましたが、非常に不全型あるいは潜在性の患者がいま焦点になっているわけでございまして、これを認定、救済するという基準は非常にむずかしいので、環境庁もいろいろな知見を集めて努力をしておりますが、どうも鋭意積極的に検討中という以上の確たるお答えができないのは残念でございます。
  70. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 じゃ、最後に簡単にお伺いして質問を終わりたいと思いますけれども、多数の申請者を迅速に救済するために、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律とか原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律というのが原爆の場合はあるわけですけれども、これにとられている原爆手帳方式というものを水俣病認定業務にも導入していただきたい、かように思うわけですけれども、この点についてどういうふうにお考えであるか。また、水俣病認定申請患者協議会は被汚染者健康手帳というようなものを交付して定期健康診断、治療、調査を実施してくれというふうに言っておりますが、これについてお答えいただきたい。  なお、環境庁長官は四月にぜひ熊本の現地を見ていろいろ対策を講じたいということをおっしゃっているようですが、実は地元ではすでに、長官御存じのように、一月二十七日の週刊文春で「公害が原因でない人も患者の中にはいる。」というようなことを長官が発言されたということでいろいろ問題になって、すでに守る会からも文書が来て、長官はそれに対して回答されておられるけれども、文春の方では間違いないというようなことを回答したようです。また、長官のもとへつい先日地元から抗議文も来ていると思いますが、これに対して長官から最後にこの席をかりて答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  71. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 原爆方式は、現行の補償制度の中ではなかなか仕事が進まないということで、一つの代案として出てきたものと存じますが、ある意味で非常に暗示的でございます。ですから、私たちはこれを決して無視せずに、それをそのままなぞらえるということではなしに、水俣方式と申しましょうか、そういう別個の方式を原爆方式をもとにして考えられないかと検討中でございます。これをこのままなぞらえますと、いわゆるPPPという原則、ポリューターがペイしていくという原則が崩れるおそれもございますので、そこの背反というものを起こさないような形で、やはり原爆手帳に匹敵する水俣手帳と申しましょうか、新しい方式を考えるべきだと私は思います。ところが、これがある程度具体化いたしますと、患者の方々の立場によって非常にまた意見が分かれましてなかなか統一方式ができにくいという事情があることも御承知と思います。そういう意味で非常に暗示的な提案でございますので、これを大いにしんしゃくして新しい方式をできればつくりたいと私は個人的に考えておりますが、そのためにも現地に赴いていろいろな方々の御意見を伺いたいと思います。  それから、私の発言でございますけれども、週刊誌を相手にしますとこれは行ったり来たりの議論になりますが、自分の責任で申しますけれども、私も現地を調査してから発言するという前提で陳情の方々にもお答えしているわけでございますから、確かにいろいろなお手紙なり投書の中には、水俣病の患者でない人までが認定されているという投書もたくさんございます。しかし、これがどの程度当たっているかということを私自身が調査したいと思いますし、同時に、水俣病というのは、初期のころ発見されましたああいう重症の患者だけでなしに、非常に広い地域に及ぶ水銀の恐ろしい汚染でございまして、どのような形で後天的に、あるいはもっと遠い将来その影響があらわれてくるかということはいままでの知見ではわからないと思いますので、そういうものも勘案した上で、水俣病が何であるか、患者が何であるか、ということを私自身把握したいと思っております。
  72. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 以上で終わります。
  73. 坪川信三

    坪川委員長 これにて瀬野君の質疑は終了いたしました。  次に、佐野憲治君。
  74. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 きょうは先般の総括質問に引き続きまして、具体的な地方財政対策に対しまして質疑を行いたいと思います。  そこで私はまず最初に、交付税問題につきまして二つの面からお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕  一つは、地方交付税法の第六条の三の第二項、この規定は大臣も御承知のとおり、交付税総額が引き続き財源不足額と著しく異なることとなった場合に、地方財政制度もしくは地方制度または交付税率を変更するものとする、こう規定いたしておるわけですけれども、この規定の解釈をめぐりまして政府見解をただしておきたいと思うのであります。  ここにある「引き続き」とは、私たちは二カ年以上引き続き、かつはまた三年目におきましても不足が見込まれる場合、「著しく」とは、交付税が一〇%程度の差額が生じた場合を指す、このように解釈いたしておるのでありますけれども大臣見解はいかがですか。
  75. 小川平二

    ○小川国務大臣 その点は仰せのとおりでございまして、かねてこの委員会におきまして当時の自治大臣が仰せのとおりに表明をいたしておる、こう承知いたしております。
  76. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 といたしますと、昨年度の予算委員会も集中審議をやってこの問題を取り上げておると思います。各市長さんなり町長さんも出席を願っているそこでも論議されてまいりました。そうしてその中から、やはり交付税法違反の疑いがあるのではないか、五十年度、五十一年度にこのような大きな財源不足が出ておる、と同時に五十二年度もそれが見込まれる、にもかかわらず措置をしないのは交付税法違反ではないか、こういう容疑と申しますか、そういうもとで論議が進められたと思います。そういう点に対しまして、大臣はいろいろ経過報告を聞いておられると思いますが、一体どのように受けとめておられますか。
  77. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま地方財政が直面をしております事態は、まさしく交付税法の六条の三の二項に該当する事態だと存じますから、したがいまして、法律の規定に従って交付税率の改正をするか、行財政制度を改めるか、いずれかを実行しなければならない、こう考えております。
  78. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 そこで大臣昭和四十年度にも大変な不況に襲われたと思います。この場合にとられました措置というのと、四十一年度、この二年度におきまして引き続き財源が不足をする、こういう事態に直面したときの政府のとった態度を一応思い起こしていただきたいと思いますが、四十年度の場合は、主税の減収に伴う交付税の減額並びに地方税収の異常な減収が出てまいったわけであります。そのときにとられましたのは、政府として昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律を四十年度には提案いたしております。それによって三税の減収に伴う減額、これを減額しないで全部一般会計によって見ている。こういうことで、一般会計から交付税特別会計に繰り入れるという措置をとっておるわけです。と同時に、当時におきましては公務員給与の改定の問題で人事院勧告に従いまして、これに対しましても三百億円を交付税に増額しておる。その地方税の減収対策としては四百億円を地方債の枠を追加して百五十億円を運用部資金から引き継ぐ、こういう措置をとって、当時の地方財政に対する対策を明らかにしたわけです。ですから、二年目におきましてもっと事態が深刻であるということを憂慮してとられた措置は、交付税を二九・五から三二に引き上げる、二・五%引き上げる、こういう交付税率の変更、いわゆる六十条の三の二項の趣旨に適合した措置をとっておるわけですね。それからそのほかに臨時地方特例交付金が四百十四億円交付されておる。こういう措置をとっておるわけですね。  そうしますと、五十年度、五十一年度、このときにもやはり不況の中における重大な問題が出てまいった。五十年度におきましては主税減収に伴う交付税の減額が一兆一千五億円である。そしてまた、地方税の減収が一兆六百三十二億円である、こういうことが明らかになってまいっておるわけですから、それに対する措置といたしましてとられたのを見てまいりましても、五十年度におきましては一兆一千五億円に、百九十五億円、これは公務員の給与改定等の需要、それを加えまして一兆一千二百億円、これをやはり運用部資金から借り入れてこれに充当する。しかもこれで初めて新しい例としてとられましたのが、いわゆる交付税の中に繰り入れるけれども、この一兆一千二百億円というのは二年据え置き十年間、五十三年度から六十二年度まで金利は一般会計で負担するけれども、やがてこれを地方は負担をしなくちゃならない。そのほかに特例交付金として二百二十億円、こういう措置がとられておるわけです。四十二年度の場合のように全額を見るというのじゃなくて、こういう臨時措置がとられてまいった。  それから五十一年度を見てまいりますと、一兆三千七百億円を――それは財源不足が二兆六千二百億円にふくれ上がってきた。ですから一兆三千七百億円は地方税で補てんをする。五百五十九億円は臨時地方特例交付金として一般会計から繰り入れる。それで残りました一兆三千百四十一億円、これは運用部資金から交付税特別会計が借り入れる。これは返済をしなくちゃならぬ。この場合は利子をやはり一般会計で見る。しかし、元金は五十四年度から六十一年にかけて返済をする、こういう借金政策をとっておられるわけですね。ですから、ここで当然交付税法違反じゃないか、こういう議論が出てくるのは私は当然だと思います。  そういう中で、私、大臣、こういう二つのとられた方法を考えてまいりますと、こういう中におきましてやはり指摘いたしておきたいと思いますことは、こういう論議の中で、結局政府としての統一見解、こういうことになってまいりまして、二月の二十七日だと思いますが、この委員会におきまして当時の福田自治大臣は、交付税率の引き上げをも含めて地方行財政制度の見直しをことしじゅうにやる、このことを約束しておられるわけですね。大平大蔵大臣は「財政もまた中央、地方を通じて流動的な段階でございますので、根本的な制度の改正というようなことにはなじまない時期」でありますけれども、「検討はいたします」。三木内閣総理大臣は、「大蔵大臣の申すのは、いまの経済状態、こういう中でなかなかむずかしい問題だということを現実に即して言ったのですが、やはり行財政というものの根本的見直しはいたさなければならぬわけでございますから、大蔵大臣指摘するように、いまはなかなか困難なときではあるけれども政府は取り組みたい考えでございます。」、このように検討を約束しておられるわけですね。このこと、大臣は受け継いでおられますか。
  79. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  ただいま引用なさいました担当閣僚等の発言につきましては、この場で承ったわけでございますが、その中にも出てまいりますように、交付税の引き上げあるいは制度の改正を含めてこの事態に対処すべく検討いたしたわけでございますが、ただいまの時期は抜本的な改正をいたしますには必ずしも適当な時期でない。これは前回この問題について御質疑のありましたときお答えを申し上げておるとおりでございまして、したがいまして、交付税率の引き上げということは実行できなかったわけでございますが、これにかわるような御高承のような措置をとったわけでございます。これは実質において三・六%交付税を引き上げたのと同様の効果を生ずる措置を法律に明定して行うことでございますし、あとはこの前申し上げました今後交付税特会が借り入れました四千二百二十五億を五十五年度以降償還をいたします都度、それに見合うものを臨時地方特例交付金で解決をする。これはあらかじめ法律で予定しておくという意味において制度の改正である。こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  80. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 五十二年度の対策を聞いておるのじゃないのです。五十一年度において検討する、行財政、交付税率を含めて本年度中には検討します、こう自治大臣国会で約束しておるわけですね。大蔵大臣は、困難だけれども取り組みます、総理大臣は、国としても政府としても真剣に取り組んでまいります、そういう困難な状態や流動的な経済状態であることを前提に置いて、統一的な見解が示されたわけですね。大臣として受け継がれたわけですけれども責任の継続性という意味からも、こういう国会におきまして検討を約束したが、五十一年度においてどういう検討がなされたか。大蔵大臣、やはり大平大蔵大臣と同じ見解でしょうけれども、しかしそうであったとしても、検討します、かように大蔵大臣国会に約束しておられるわけですね。総理大臣もまた約束しておられる。それはどういう検討をなされたかということです。少なくともそれは国会に報告するぐらいの私はやはり責任があるのじゃないかと思うのです。何ら報告せずに、五十二年度ではという形でいくのじゃなくて、五十一年度でどう検討してきたか。中央、地方を結ぶ行財政に対する根本的な改正、そういう交付税率の引き上げ、これに対しまして政府の中において一体どういう検討を具体的になされてまいったか、こういうことがちっとも明らかになっていないのじゃないか、かように考えるのであえてお聞きいたしますが、どういう検討をなされましたか、簡単に……。
  81. 小川平二

    ○小川国務大臣 鋭意検討いたしました結果、五十二年度についてはすでに御高承のような措置をとったわけでございますが、それに先立ちましてどのような検討がなされたか、これは私が就任いたす前のことでございますから、政府委員からお耳に入れることといたします。(佐野(憲)委員政府委員はいい、大蔵大臣から」と呼ぶ)
  82. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私も小川自治大臣と同時に就任いたしておりますので、その前のことについてはつまびらかにいたしておりません。
  83. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 けしからぬじゃないですか。やはりきのう来の問題のように、内閣の責任の継続性、こういう考え方に立ちましても、私は、やはり私の国会の経験から申しまして、検討するという言葉はありましたけれども、なかなか検討しない、やむを得ないものですから、法律の中に異例の措置ですけれども、「検討するものとする」、こういう言葉を入れざるを得なかったという経験を持っておるわけですね。しかし、政府国会で約束した、しかも集中審議をやらざるを得なかった、さらにこれを詰めなくちゃならない、そういう中で約束された検討というのは、単に引き継がなかったということじゃなくて、もっと重大に国会に対してやるべきじゃないか。こういう点で私は非常に不満です。おかしいじゃないですか。後からまたお尋ねいたしますけれども、どうもおかしいですね。  しかし、そのことは別として、さっきの大臣の説明はもっと後から聞くといたしまして、じゃ五十二年度の財政対策として一体何がとられたか。二兆七千億円の財源不足が三年目も出てまいった。二年目に当然予想されるような措置をしなくちゃならないのに、いままでの財政収支試算に驚きましても、Iケース、IIケースを見ましても、五十二年度には財源が不足する、こういうことは明らかにしておるわけですね。ですから、予想よりも大幅に上回って、いろいろ事情はあるでしょうが、二兆七千億円という財政欠陥が出てまいった、不足が出てまいった。これに対しましてとられた措置を見てまいりますと、内容は別といたしまして、交付税率の引き上げはやらなかったの外すね。その点だけ……。
  84. 小川平二

    ○小川国務大臣 交付税率の引き上げは実行しておりません。
  85. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 では、地方財政の制度並びに地方行政にかかわる改正というものはどうですか。
  86. 小川平二

    ○小川国務大臣 制度の改正をいたしましたことは先般御説明いたしたとおりでございます。
  87. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 どうもおかしいですね。交付税率の引き上げはやらなかった、財政制度あるいはまた地方行政制度、こういうものに対してはメスをほとんど入れてなくて、交付税率に見合うものを、それは政府が現年度なり後年度において交付税特別会計に対しまして責任を持って返す、こういうことが大臣間の約束であった、だからこれを法律の中に明記する――それはおかしいじゃないですか。さっきも言うように、こういうことを約束されたのに再検討に入らない。閣僚同士で政府として決定したことを法律で書く、これが制度改正ですか。どうもおかしいじゃないですか。制度改正というのは、しかも、内容はまた後でお尋ねしますけれども、これは一体どうですか、これが何の制度なんですか、財政制度なんですか。
  88. 小川平二

    ○小川国務大臣 前回も申し上げたわけでございますが、物事が一定のやり方といいますか、ルールに従って解決をされるような仕組みというのが、これが制度だろうと理解しておりますから、五十五年度以降毎年交付税特会が返済をいたします都度必ず臨時地方特例交付金で埋める、こういうことを予定してあらかじめ法律に書いておくわけでございますから、これは制度と理解すべきだ、こう考えておるわけでございます。
  89. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 どうもおかしいですね。そんなことは、政府間において特例交付金なりあるいは一般会計において利子は持つとかというのは、みんなそれ式でやっておるのでしょう。政府間でそんなに信用できないのですか。何もそんなことをしなくたって。四千二百二十五億円を政府が繰り入れるのだ、こんな約束したことを法律の中に書く、これが財政制度ですか。あるいは行政制度の中に入る、だから法律違反でない。どうもおかしいじゃないですか。委員長、これは明らかに法律違反だと思います。このことを本会議で、わが党の代表質問の中で成田委員長指摘しております。それに対する総理大臣答弁というのは、法律違反ではないか、こういう事態指摘している質問に対しましても、いや交付税のお話ですから、交付税の場合は交付税に相当するものを五千百七十五億円見ていることになっているのでそう心配要らないのだ、こういう形で、財政制度なり地方制度なり、そしてまた交付税率の変更を規定しておるこれに違反しておるではないかということに対してこういうことを言っておられるわけですけれども、交付税を上げなかったけれども、交付税にかわるべき相当なものを見たんだ、こういうようになっているのですね。しかしこれは明らかに法律違反である、このことを自治大臣、認識しなければならない問題じゃないか。こういうごまかし、と言ってはおかしいのですけれども、制度改正を装った全く見え透いたトリックだ。地方自治団体の人たちはみんなそういう受けとめ方をするでしょう。政府間で約束して返す、それを明らかにいたしているわけですから、それをあえて法律の中に書く、書いたものは制度改正につながるのだ、こんな制度改正を装った全く見え透いたトリックをやっておるにすぎないじゃないか、こういう非難が地方自治団体の中からごう然としてわいてきておる。地域住民は、そうだ、全く政府のやり方は、政府みずから法律違反をやる、そういうぐあいにトリックを使っておるんじゃないか、こういう指摘が日増しに高まっておるではありませんか。大臣、これでも法律違反ではない、かように確信されますか。
  90. 小川平二

    ○小川国務大臣 先ほど来申し上げます意味におきまして、これは財政の制度の改正である、こう理解しておりますので、法律に違反してはおらない、このように信じておるわけでございます。
  91. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 最近の傾向として、法律に違反しておるじゃないかという疑いをかけられる問題を国が地方に押しつけておる、こういう場合がたくさんあると思います。それだけに今度の、地方財政をこの機会に、困難だろうけれども、困難なればこそ、平常時において考えられなかったけれども、矛盾が明らかになってまいった、このままでは一体どうなるのだという不安、これに対してこたえてもらいたい。それを前国会における集中審議をもってして問題点を明らかにしたわけでしょう。それに対して、単なる三・六%に相当する分と言われる五千百七十五億円を交付税率の中に入れなくて、こういうやり方というのは、大蔵大臣一つは、こういう国民にわかり過ぎたトリックのようなことをやる、全く地方自治を無視したこういう政府の考え方に対しまして――どこからこれが起こってきたのですか。この点につきまして、大蔵大臣、お聞きいたしたいのですけれども、やはりことしの国債依存率を二九・七に抑えた。三〇%ラインをどうしても死守したい。これが財政当局の一つの考え方かもしれませんけれども、しかしいま自治大臣の言われるような、交付税特別会計が運用部資金から借りて、その分に対しまして政府は五十五年から六十二年度にかけて、利子は政府が一般会計で持つと同時に元本も実はお返しするのだ。一般会計債八兆四千八百億円にこの四千二百二十五億円を加える。こういうのは全く特別会計債だと言ってもいいと思います、政府責任を持つわけですから。こういう特別会計債を合わせますと合計幾らになりますか。八兆九百億円を超えますね。そうすると、これを公債依存率で見てまいりますと三一%に該当するわけですね。三一%を割っては大変だ、こういうので実は特別会計債というような形で切り離してしまった。こういう苦肉の策の道具に地方財政が使われておるじゃないですか。大臣、こういう屈辱的な財政措置、財政当局の要求をのんで、しかも地方自治体の真剣な要望、国会指摘に対してこたえたという道は、こういうやり方にしかすぎないじゃないですか。こういう屈辱的な措置というのはありますか。これが制度改正だ、だから法律違反ではない、こんなことを言って普通の常識において通ずる道だと考えますか。この点お聞きしておきます。
  92. 小川平二

    ○小川国務大臣 いま仰せになりましたような意図でかような措置をとったわけでは全くございません。
  93. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 全くわけのわからない奇妙な金だ、こういうことが出ております。返済の要らない借金、しかもこれを制度改正だと言う。全く奇妙な金をもらうのだ。それから臨時地方特例交付金にいたしましても九百五十億円、これも一体何だろうか。特別措置法によるところの源泉分離課税に対して地方税で非課税になっておるという点に対して見合うものを含めて、地方財政の現況にかんがみて根拠もわからないこういう金を上げますよ、こういうようなやり方がすべてを貫いておるじゃありませんか。大蔵大臣、こういう事態の中におきまして、先ほども指摘しておりますけれども、こういう借入金というものが、いわゆる交付税特別会計が運用部資金から借り入れる、こういう措置をとって十年返還という措置をとっておるわけですけれども、もう五十年度分は五十三年から始まるわけですからね。五十一年度分は五十四年度。今回における措置の場合を見ましても、政府責任を持つというのは別にいたしましても、五十五年度から返済していかなくちゃならない。こういうやり方に対しまして、一体なぜ根本的に交付税を改正するという措置をとらないのですか。こういうおかしなことを連続してやっているところに地方財政の混乱なり、秩序が全く異常な事態を示してしまっておるじゃないですか。こういう点に対して、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  94. 坊秀男

    ○坊国務大臣 五十二年度の予算編成に際しての御質問でございますが、私どもも地方交付税法六条の三の二項というものと現在における国及び地方の財政状況というものをよくにらみ合わせまして考えました。これを考えましたが、いまの状況から考えますと、地方も国も非常な苦境に遭遇しておる。総理が常に申し上げるとおり、地方と国とは車の両輪のようなものであって、これを円滑に運営していかなければならないということは申すまでもないことでございますが、そういったようなときに、いま御承知のとおり、国、地方もともに、日本の経済が非常な激変と申しますか苦境にある、したがいまして、両方の財政がまことに苦しいというようなときに、これをどうして挽回、回復していこうかということをまず考えなければならない。この両方の財政がまことに異常な状態にある。その異常な状態にあるときに、御承知のとおり、交付税というものは、これは両方の財政を通ずる一つの構造上の恒常的な仕組みである。その仕組みをこの異常な実情の上において変えていくということは、これは先ほど自治大臣も申し上げましたが、必ずしもそれは適切なものではない。そこで、交付税法六条の三の二項ですか、その中には、そういったような場合には、ひとつ地方の財政上の制度を変えていくか、あるいは交付税を変えていくかというような規定がございますので、まことに暫定的なことでございますけれども、恒常的な交付税を変えるということを避けまして、そして、制度というものを変えていくというような方法をとったわけでございます。
  95. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 関連質問もありますので、時間が詰まっておりますけれども大臣、私はこういう皆さんの考えなり地方財政の現状に対する認識に大きな違いがあるんじゃないか、今日における地方財政の現状というものは、大臣指摘されるような、あるいは一時的、循環的な要素もあるでしょう、だから少し待てという考え方、しかしながら、私はやはり長期的な構造的な要因も相絡んでおると思います。それだけにやはり制度の改正なり交付税率の変更というものをなすべきときがいま来ておるのではないか。しかも、交付税法の言うごとく、二年引き続き、翌年度も財源不足が見込まれるという場合にこういう措置をとれということ、この規定に対してあなたたちは重大な法律違反だと思いますので、やがて地方行政委員会等におきましてもこの問題に対する追及があると思いますし、また違反であるということを私たちは指摘せざるを得ないと思います。こういうごまかしの制度改正というものは認めるわけにいかないと思います。そういう点を指摘しておきまして、ただ私は最後に、関連の方もお待ちでありますので、こういう中において第二の点としては、交付税制度そのものが崩壊の危機に瀕しておるということを指摘しておきたいと思います。  財政調整、財政保障のための交付税が、そうではなくなってきてしまっておる。こういう中にまず一つ指摘いたしたいのは、昭和四十一年度から交付税率の改正が行われなかった、として制度に対するところの事務並びに財源に対する再配分が強く要求されながら、これも実行してこなかった。それだけではなくて、本来国が措置をしなくちゃならないと言われる警察官や教員の定数増、あるいはまた人確法のような形におけるところのいわゆる待遇改善費、そしてまた、先ほど問題になりました公害、環境対策あるいは消費者行政、そしてまた国土利用計画に伴う、あるいは社会福祉施設というものにかかわる地方経費を安易に地方交付税の中に取り入れてきておる。逆に、本来地方交付税において措置しなくちゃならない公共事業その他に対する地方にかかわる経費を交付税から外してしまって、起債にこれを振りかえる、こういう措置をもって一時的、応急的しのぎをやってまいりましたことが、もはや交付税が地方財源の保障であるという性格から逸脱してしまっておるではありませんか。国の政策、国の方向に上意下達機関としての立場上、一時的なやりくりをする、こういうことがもはや交付税そのものを崩壊の中に追い込んでしまった。私はこの崩壊の実情に対しましても、具体的にいろいろ取り上げていきたいと思ったのですけれども、また別の機会にいたします。  それから第二の点として、ひとつこれは要望として、国債を発行する、その結果、リンクしているわけですから、国税三税そのものの比率が非常に問題になってくると思います。この割合につきまして、国債を発行しないという昭和四十年度以前のを見てまいりますと、国税三税と歳入総額を調べますと、六六%の大体の水準を保ってまいった。公債がどんどん発行されてまいりますと、五十一年度になりますと四九%まで下がってしまっている。これに対して交付税率は三二%でリンクしていくわけです。異常な事態が発生するのは私は当然だと思います。この公債が地方におけるところの経費の増高となって迫ってくる。そういたしますと、交付税というものの機能そのものが麻痺する原因がここにある。ということは、国債発行と交付税の関係、こういう関係の上に根本的なメスを入れなくちゃならぬじゃないか。  そういう意味合いでも、私は制度に対するところの改革というものはやっぱり必要だし、それに見合う交付税率というものは当然変更しなくちゃならない、こういう原因がすでにあるではないか。しかも、地方の実情にいたしましても、本来地方自治体がやらなければならないという需要はどんどん交付税の中で削り取られていく、逆に新しい需要がふえてまいっておる、国の機関なり委任なり、こういうものを交付税の中に受け入れてしまう、こういう半身不随の状態になってきた交付税制度そのものを大臣ひとつ腹を据えて検討していただくというとおかしいのですけれども、もう前回の国会に取り上げて、超過負担問題なども含めて交付税の危機、崩壊、この問題が真剣に取り上げられての再検討だったと思います。ですから、そういう点を指摘いたしまして、またこの問題にも関連いたしまして佐藤委員からも質疑がありますので、一応関連質問の要請もありますし、かわりたいと思います。委員長、よろしく。
  96. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 関連質疑を許します。佐藤敬治君。
  97. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 関連して御質問を申し上げます。いま佐野委員からかなり詳しく交付税の問題について質問がありましたので、私はできるだけ重複しないように御質問申し上げたいと思います。  まず第一に、自治大臣と大蔵大臣の考え方をお聞きしたいと思います。  地方自治は民主主義の基盤である、こう言われております。私どももそう思っております。ところが、現在の地方行財政の状態、特に地方財政の状態というものは、まさに破滅のふちに立っている、崩壊の危機に瀕しているわけであります。したがって、もしこの地方財政というものがこのまま進行して破滅するならば、日本の民主主義の危機である、こういうふうに私どもは考えておりますけれども大臣はどうですか。
  98. 坊秀男

    ○坊国務大臣 国の経済でも財政でも、中央地方を通じてこれが健全なる姿、健全なる発達をしていかなければならないものであるということは、これは申すまでもないことでございます。
  99. 小川平二

    ○小川国務大臣 大蔵大臣答弁をいたしましたのと同じ認識を持っております。
  100. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、先ほど佐野委員の質問に対して両大臣答弁を聞いておりまして非常に憤慨にたえません。というのは、いま私がお聞きしました民主主義のいやしくも崩壊に直面しているこの地方自治、地方財政の問題を論じております。しかも、先ほど聞いておりますと、前のことだからわからないという発言を二人ともやっておる。私は非常に残念に、憤慨にたえないで聞いておりました。三木首相は、私が本会議で質問して、根本的に洗い直し、見直しをするとはっきり言っております。福田前自治大臣もはっきり言明しております。それから官僚である松浦現事務次官、これもはっきり言っております。現在の首藤財政局長もはっきりそう同じようなことを言明している。内閣の間に継続性という責任があるならば、これはまさに公約違反なんです、現在の状態は。しかも、今度の代表質問、各党一人残らず代表質問でこの問題を重大な問題として取り上げているのです。それを当の責任者である自治大臣と大蔵大臣が二人とも、おれは知らぬという答弁が一体ありますか。委員長、こういうような答弁はふまじめですよ。
  101. 坊秀男

    ○坊国務大臣 率直に申し上げまして、私が大蔵大臣に就任したときにはすでに五十二年度予算を編成するその真っ最中にございました。そこで、いま御指摘になったような事実につきましては、私が大蔵省へ参りまして、そのことは知らぬと申しましたが、聞くことは聞いております。聞くことは聞いておりますけれども、その就任したときの財政の実情から見まして、これはなかなか容易ならぬことである、先ほどお答え申し上げましたとおり、いまのこの事態に処して何が一番大事か、とにかく中央、地方の財政の現在におけるこの異常を、これを脱却していこうということがこれが一番急務である、かように考えましてこういう措置をとったわけでございます。
  102. 小川平二

    ○小川国務大臣 地方財政が非常に深刻な、かつ不健全な状況に立ち至っておるという点につきましては、私も全く同様の認識を持っておるわけでございます。先ほど来、いろいろな時点で担当閣僚等が発言をいたしました内容をお聞かせ賜ったわけでございますが、その一々について、いかなる状況下で、どういう御質疑に対してお答えをしたのか、それらの点については私は知悉しておりません。ただ、いずれにいたしましても、かような深刻な状況をどう打開すべきかということを鋭意検討をした、また地方制度調査会等の御意見も聞いたと承っております。その答申の趣旨を尊重して、現状のもとで、私といたしましては、五十二年度の問題として、あとう限りの措置を講じようとしておるわけでございます。
  103. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今度の五十二年の地方財政の欠陥につきまして、二兆七百億についてここで申し上げるまでもない措置がとられたわけです。当初、私どもが聞知しておるところによると、自治省はもうどうしても今度は例の六条の三の二項、これを実現するのだという大変な勢いでもって大蔵省に取っかかったけれども、とうとう大蔵省の厚い壁を破れないで現在のような状態になったようであります。しかしながら、その後の経過を見てみますと、どの新聞を見ても、自治省で発行したどの雑誌なんかを見ましても、大蔵省は今度の結果でもって、措置でもって名を取った、自治省は実を取った、地方は金を取った、こうしてお互いに自慢し合って、余は満足だというような記事ばかり書いてある。松浦事務次官に至ってはこれは九十五点だ、首藤財政局長は相当なできばえだと、言ったか言わないかわかりませんが、こういうふうに書いてある。  しかし、これは非常におかしい。新聞によりますと、エリートをもって鳴る大蔵、自治両省の官僚がしぼった知恵がこの方法だと非常に自慢しておる。しかし私はこれを見まして、一体こんな方法があるのか。税率も上げない、行政改革もしない、足りない金は、返すめどはないけれども、去年もおととしも借りたから借金してやってやる、来年のことはわからない。今度の措置は簡単に言うとこういうようなことなんです。これで九十五点というのは、自分でつける点数にしても少し私は甘過ぎると思う。これからもっと真剣な取っ組み合いをしてもらわなければいけない、こういうふうに思います。私から言わせれば、今度のものは九十五点どころではなくて、最も根本的な問題を、命題をすりかえられて、そんなに満足するようなものではない。こんなに満足しておるのを見れば、これはもう来年もこの方法でまたやるんじゃないかという気がしますけれども、来年はどうしますか。
  104. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  名を捨てて実を取ったと申しますようなことは世間の一部でそう言ってくださるわけで、私自身はさように考えてはおりません。先ほど来制度の改正をしたと申し上げておるのですが、これはもとより恒久的な制度だとも考えておりませんし、抜本的な改正であるとも考えておらない。現状のもとにおいてやむを得ざる措置だと理解いたしておるわけでございます。  来年の問題はただいまの時点で何とも申し上げかねるわけでございますが、いかなる方法をとるといたしましても、地方財政の運営に大きな支障が生ずることがないような措置を必ず講じる、ただいま申し上げられるといたしますれば、これだけは申し上げるということであります。
  105. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 その地方財政に支障のないような一時的なことをやるということが問題なんです。五十年も地方財政に確かに支障があったと思いますけれども、一応形式的には、ないような措置を講じました。五十一年度も同じようなことをやりました。そして五十二年度もやりました。まさに、あなたの言うように、地方財政に支障のないようにやったかもしれませんけれども、これがどんどん積もってどういうふうな状態になっているか、これはもうあなた方も考えておられるだろうと思いますけれども、私がこれから言います。  これは先ほど佐野委員が、もうこんな状態では地方交付税は財政調整機能を失っておる、まさに私はそのとおりだと思います。これはちょっとお伺いしますけれども、毎年こういうふうに一種の政治的な取引によって処理される、これは地方財源としてすこぶる不安定きわまるもので、地方財源として不適当なものになってしまった、私はこういうふうに考えるのです。一年一年は形は整っているかもしれませんけれども、これを通年して見るならば、すでに地方交付税というものはその機能を失っておる、交付税として不適当なものになってしまっておる、こういうふうに思いますけれども、あなたはそう思いませんか。
  106. 小川平二

    ○小川国務大臣 御発言の御趣旨はよく理解できるのでございますが、繰り返して申し上げますように、今日は一つの転換期であり過渡期でございます。一切が流動しておる時期でございますから、こういう時期に交付税の制度あるいは交付税率の抜本的な見直し、改革ということはなかなか実行しがたい。政府が今日までとっております。またこれからとろうとしておる景気浮揚策というものが効果をあらわす時期が必ず来ると信じております。経済が安定した成長の軌道に乗る、何がしかの自然増収を見込むことができる時期も参ると存じます。また、そういう時期には、今日の国、地方を通じての税制というようなものにつきましても、抜本的な改革が実行されるに違いない、さような時期に交付税の制度あるいは税率というものについても根本的な見直しをし、かつこれを改正していかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  107. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 適当な時期にと言うけれども、そういう悠長な事態ではないのです、事態は。もう二、三年このままで続けていったらもう地方財政はまさしく破綻しますよ。そんな適当な時期に、いつやるかわからないけれどもやる、そういう事態ではないと私は思いますよ。たとえば地方交付税、五十年度は一兆一千百九十九億交付税会計が借りていますね。それから五十一年度は一兆三千百四十一億、今度は九千四百億借りました。これの返済金がこのままでいけば、六十年になれば約五千億になりますよ。ところがこれが五十二年度で終わりじゃありません。これからしばらく続いていく。あなたの言うある時点まで続いていくでしょう。これがずっとあれして五十五年まで、たとえばことしのような九千四百億借りる、あるいはもっと大きくなるかもしれませんけれども、そうしていきますと、六十年には六千七百億ぐらいの返済金になるんです。そうしますと、幾ら一般会計から交付税会計につぎ込んでも、つぎ込んだ分を全部返さなければいかぬ。六条の三の二項に含まれたところの総額確保の精神というものは全く踏みにじられていくんです、このままいけば。何もならぬということになる。こういう状態なのに、あなたはいまのんきな話で、そのときが来ればやります、こういうことではだめなんだ。もう問題はあしたのことなんです。来年のことなんです。だから、私は、来年を一体どうするかということを、少なくとも、はっきりした見通しがっかなくてもこういう方針で自治省はどこまでも突っ張る、ことしは負けたけれども、来年は大蔵省には負けないぞとか、何とかはっきりした覚悟を示してもらわぬと、地方団体は不安でやっていけませんよ。どうですか。
  108. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいまるるお言葉がありましたが、私も同様の危機感を抱いておるわけでございます。ただ、今日のような状況下で、あるいは福祉を充実する、おくれた社会資本の整備をするといいまする場合に、やはり地方債の活用という手段に頼らざるを得ない、あるいは交付税特別会計が借金をする、これはやむを得ざることだと思っておるわけでございます。一日も早く、先ほど申し上げましたような根本的な改革をする時期が到来いたしますように、私自身も努力したいと思っておるわけでございます。  来年、どのような措置をとるか、具体的な方法はいまなかなかこれは申し上げかねるわけでございまして、今後の経済の動向等も見きわめた上で決定すべきことでありますので、この点はひとつ御容赦をいただきたいと思います。
  109. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 非常にそこがおかしいのですよ。じゃ、この今度の措置というものは単年度限り、五十二年度限りの措置ですか。
  110. 小川平二

    ○小川国務大臣 今回の措置は五十二年度限りの措置でございます。
  111. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 五十二年度限りの措置であるということになれば、私は、この六条の三の二項に違反しているんじゃないかと思いますね。
  112. 小川平二

    ○小川国務大臣 これは理屈を申すようで、はなはだ恐縮なことになるんでございますが、これは制度の見直し、行財政の制度を改めよと書いてあるわけでございまして、必ずしもこれは恒久的な制度でなければいけないということを要求しておるものとは考えておらないわけでございます。
  113. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それではお伺いしますけれども、五十年に、あるいは五十一年に同じように一般会計から交付税会計に金を繰り入れていますね。なぜそのとき制度の改正として法文に明記しなかったんですか。
  114. 小川平二

    ○小川国務大臣 私の理解がもし間違っておりますと大変恐縮なことになりますが、この六条の三の二項が、これはどういう条文になっておりましたか、長期にわたってとなっておりましたか、これは三年連続というふうに理解をいたしておるわけでございます。したがいまして、五十二年度で三回続いて大幅な赤字を出すという事態が出たわけで、五十二年度において交付税法の六条の三の二が規定しておる事態が出てきておる、こう考えますので、したがいまして、五十年度でございますか、そのとき法律に明記する必要はなかったんじゃなかろうかと、こう考えております。
  115. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それならことし単年度だけでこの制度を――来年また変わるわけでしょう。あなたいま、三年だと、こう言いました。三年たたない来年変えるじゃないですか。前の論理とこれから後の論理と全然違うじゃないですか。矛盾しているんじゃありませんか。
  116. 小川平二

    ○小川国務大臣 三年連続して大幅な財源不足が出ましたので、交付税法の六条の三の二に該当する事態がここで出てきたと、こう考えておるわけでございます。
  117. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 いまの答弁を聞きながら、私は最初に解釈を聞いたでしょう。引き続きとは、二年以上、三年目になおも不足が見込まれる、こういう場合における三年であって、二年目にもうすでに三年目がそういう状況にあるという場合においては、二年目に当然やるべきだ、それが前国会におけるところのいわゆる交付税法違反ではないか、その疑義が非常に強い、こういうことで、集中審議なりあるいはまた予算委員会におきましても、最後のときに詰めとして、政府国会との間に検討を約束するという方法をとられたんじゃないですか。だから私は、最初に聞いておるでしょう。引き続きとは二年、そして三年目に予測される、見込まれるという場合を指すものですねと言ったら、あなたはそうですと言ったでしょう。三年続くというよりも二年ですでにそういう問題に対するところの措置をとらなければならない。おかしいじゃないですか。どうぞ答弁してください。
  118. 小川平二

    ○小川国務大臣 二年引き続いて現実に財源の不足が出てきており、三年目も相当の財源不足が出てくるということが見込まれる時点で、五十二年度の御承知のような措置をとったわけでございます。
  119. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 さっきも私言いましたけれども、あなた、三年目だから法の改正を明記したと言うでしょう。そして今度は、ことしやったものを来年やれと言うのでしょう。たった一年しかありませんよ。三年なければやられないじゃないですか、あなたの論法を当てはめても。どうですか。
  120. 小川平二

    ○小川国務大臣 恐縮ですが、ちょっと御発言意味が理解しかねますので……。
  121. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私はこう言ったんですよ。ことしなぜ法律に明記したか。ところが、三年たったから明記したと。なぜ五十年、五十一年にやらないかと言ったら、三年たたないからやらないんだ、あなたこう答弁したんだ。三年たたなければやられないものであるとすれば、今度のこの措置というものは単年度で来年また変わるのですよ。三年たたないじゃないですか。もう明らかにことしのものを来年変えれば制度の改正でしょう。
  122. 首藤堯

    ○首藤政府委員 交付税法第六条の三の二の解釈でございますが、御指摘がございましたように、二年間引き続き赤字、さらに三年度以降もずっと引き続いて赤字、こういう見通しが立つときには、まさしく六条の三の二の事態になった、こういう解釈をいたしておりまして、したがいまして、五十年度、五十一年度はなるほど御指摘のように財源が足りませんでしたが、そういった六条の三の事態にはまだなっていなかった、五十二年度にその事態に相なりましたので、所要の制度改正もしくは率の引き上げ、こういう要請に対処をしなければならぬ事態になった、こういうことでございます。  それからさらに、いま御質問がございましたのは、あるいは誤解でございましたらお許しいただきたいと思いますが、ことしこういう制度改正をしたから、そこで一応中断をいたしまして、明年、つまり五十三年度それはまた改めて一年目になるのか、こういう御質問でございますれば、そんなことはございませんで、五十、五十一と赤字でございますし、五十二も足りませんし、なお五十三も足りなければ、五十三年度も同じ条文の適用のある事態、このようであろうと解釈をしております。
  123. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 どうもおかしいですね。私はしばしば言うのですけれども、繰り返すことは避けたいと思いますけれども、四十年度、四十一年度と二年連続で、四十二年度においても赤字が見込まれる、こういうので第二年度目に交付税率の変更をやったんじゃないですか。ですから、前国会におきましても、五十年度、五十一年度、五十二年度も見込まれる、この間の財政収支試算表を見ても今日の状況において見込まれる、だから五十一年度で税率の改正あるいはまた制度の改正をやらねばならぬのじゃないかというのが前国会における論議の集中された重大な点でしょう。それを一体いま何の説明をされるのですか。三年間見込まれていたんじゃないのですよ。二年間であって、かつ三年目も見込まれる。そうすれば、五十一年度で処理すべき当然の責任があるのじゃないですか。そのことを私は冒頭に解釈としてお聞きしたではありませんか。そのとおりだと言う。どうもおかしいじゃないですか。三年たつのじゃないですよ。二年目においてそういうことがある、現実に起こっておる、そして翌年度も見込まれる場合にはその措置をとらなければならぬということを命じておるのでしょう。当然五十一年度でやらなければならぬのをやらなかったわけですよ。だから国会において、検討します、ことしは申しわけなかったけれども来年度はやりますと、交付税法違反に対する容疑は十分解明することはできなかったけれども、そういう点が指摘されたわけでしょう。おかしいじゃないですか、大臣
  124. 首藤堯

    ○首藤政府委員 交付税法の第六条の三の二項の解釈でございますが、これは御指摘のように、二年間引き続いて赤字でかつ三年目以降もなお赤字が見込まれる、こういう事態を言うことでございます。したがいまして、ただいま御指摘をいただきましたように、二年間赤字であったその二年目に六条の三の二項が適用される事態がすでに発生をするというようには私ども解釈をしていないのでございまして、事態が二年続いて赤字であった、三年目以降もなお赤字である、こういう事態であり、しかもその額が一割を超すというような重大なものである、こういう場合には制度改正をする、その時点は三年目でございます。
  125. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 どうもおかしいじゃないですか。前国会において予算委員会としても集中審議をとられ、かつはまた、特に予算委員会の中におきまして問題を提起して、政府の統一見解を迫った。こういうときに、交付税法違反だ、こういうことが大きな論議になったのは五十一年度だったと思います。そのとき以来政府の謙虚な反省というのは全くないじゃありませんか。だから、私は冒頭に解釈を述べておるわけです。ですから、皆さんの財政収支試算表の中におきましても、もう引き続き財源不足は起こってくるんだ。明らかに五十一年度当初において不足しておるじゃありませんか。四十年度、四十一年度、四十二年度もなるであろうというので、四十一年度にちゃんと法の趣旨に適合して税率の改正をやっておるじゃないですか。そんな勝手な解釈では――だから私は最初に大臣に聞いたら、そのとおりであります、こうあなたは答えたのでしょう。五十一年度でもはやその問題は国会の大きな焦点になっておったじゃありませんか。おかしいですよ。大臣、どうですか。
  126. 首藤堯

    ○首藤政府委員 お答えを申し上げます。  五十一年度、去年の財政措置をとりました時点においてすでに六条の三の二項の事態が発生をしておるので、五十一年度の地方財政対策で制度改正を行わなければならぬ、このように考えておったのではないのでございまして、五十年、五十一年と赤字が起こりまして、五十二年度もまた大きな赤字が出る、こういう事態がはっきりなりましたその時点において制度改正といったことを考えなければならぬ事態が発生をした、こういうことでございます。(佐野委員「四十一年度の場合はどうですか」と呼ぶ)あの場合は、六条の三そのものの規定を三年目になったから適用して云々ということではございませんで、そのほか給与改定の問題等もございましたし、さらに先ほど御指摘をいただきました全般的財源不足等の対策が起こりましたので、それに応じまして措置をした、こういうことでございます。
  127. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 まあ、時間がありませんので、この問題は今度は地方行政委員会でまたやりましょう。  ただ、この明記したというのは、法律にこうあるから明記したということじゃなくて、これを明記しなければ、まずだれも今度の措置というものを六条の三の二によるところの制度の改正や税率のアップだと考えないのですよ。あなた方はそうだと強弁しているけれどもね。だから、逆に法律にこうして明記しなければだれも考えないから法律に明記しているんですよ、と私は思います。しかし、この点はあなた方も異論があるでしょうから、今度また地行の委員会でやることにしまして、ここではやめます。  さっきからのいろいろの議論、大臣のお話を聞き、それからまた、この前からの予算委員会のいろいろなやりとり、本会議のやりとり等を聞いておりますと、大体大蔵省の考え方というものはこういうものだと思いますね。地方財政の抜本的な見直しというものは国の財政が立ち直らなければできない、国が無理な間は地方の再建も無理だから、応急手当てを積み重ねていくしか手がないのだ、こういうふうな考え方だと思います。しかし、これは非常に国を中心にした、いわば中央集権的な考え方だと私は考えるのですよ。これは地方自治の立場からいけばどうも納得できない。それほど国と地方というものは、なるほど精神的には対等な立場にあるかもしれないけれども、実際の財政力、行政力等においては対等ではないのです。  今度の五十二年度の国の一般会計を見ますと二十八兆五千百四十三億です。地方財政計画は二十八兆八千三百六十五億です。これはほとんど同じ金額です。しかし、金額は同じだけれどもこれは大変な違いがある。国にはこのほかに財政投融資十二兆五千三百八十二億というものを抱えて、財政、金融、産業、その他あらゆるものを支配するところの強力な統一体なんです。ところが、これに対して地方団体はどうかというと、四十七都道府県、六百四十三市、二千六百十四町村、合わせて三千三百四という小さな団体に分けられて、行政、財政能力等も国の枠の中で締めつけられて、ばらばらの非常に弱い存在なんです。これだけでも国と非常に違うのです。たとえば、この間発表されたところの各地方団体の財政力指数を見ますと、これは歴然なんです。四十七の都道府県の中で財政力指数が〇・五に満たないもの、半分に満たないものが実に二十八、六割あるんです。三千二百五十七の市町村の中で半分に満たないものが二千七百六、八三・八%もある。一以上のものが三千幾つの市町村の中ではたった五十団体で、一・五%しかない。一以上の財政力指数を持ったものは府県ではたった四つしかないのです。これを見ましても、非常にあわれなもので、こんな極端なことを言えばあれかもしれませんが、財政力の点から見るとこれはもう吹けば飛ぶようなものなんです。こういう感じがしまして、決して同じようなものではないと思います。  大蔵大臣は、この間二月十六日のこの予算委員会の席上で、ここにおられる佐野委員の質問に対して、いまも言いましたが、国と地方の財政は車の両輪だ、両輪は相持ち相助けていかなければならない、こういうふうに言っているのです。その理論自体には何ら異論を差しはさむところはありませんけれども、同じ二十八兆でも国の二十八兆と地方財政計画の中にある二十八兆では、量は同じでも質的には大変な隔たりがあるということです。自治大臣はそういうふうに思いませんか。
  128. 小川平二

    ○小川国務大臣 仰せのとおりでございます。
  129. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そこで、車の両輪だ、こう言うけれども、強いものと弱いものがお互いに助け合うということは、強いものが弱いものをもっとめんどう見なければ弱いものは死んじゃう。そうでしょう。国も借金しているんだから地方も同じように借金するのがあたりまえだ、こういう論理では、いま言ったように力の弱い地方は破滅してしまうのです。国はもっともっと大きな力を持っているからどうでもなるけれども、小さな市町村においては何ともならない。特に市町村は非常に困っているのです。だから、私は、いまあなた方が言われるように国と同じように膨大な借金財政を強制するというようなことをやめて、早急に法律に明記されておるように交付税の引き上げなりあるいは行政の改革をするなりして、徹底的にこの時期にやって、そして地方財政だけでも安定を図るべきではないか、こういうふうに思うのです。あなたは先ほどこれはいつやるかわからないと言ったけれども、このまま一時しのぎの借金財政を続けていけば二、三年の間に必ず破滅しますよ。どう思いますか。
  130. 小川平二

    ○小川国務大臣 御趣旨はよく承り、私も同感でございます。お言葉にありますような点を配慮いたしまして、五十二年度の措置をいたしますについても、一兆三百五十億の半分は、そのうち九百五十億を五十年度に臨時地方特例交付金で解決をする、残余は五十五年度以降これまた臨時地方特例交付金で解決する。この年度の地方財政の負担ということを考慮して措置をいたしております。御趣旨は、まことに仰せのとおりでございますから、私自身も御趣旨に沿うような気持ちでこれからあとう限り努力をしてまいりたいと思います。
  131. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御意見でございますけれども、私は国と地方とを対立的に考えるということはいたしたくないと思っております。要するに、日本の国の財政経済でございまして、国も地方もともにこれは調和のとれた発展、成長をしていかなければならないものであるということを、まず前提といたして考えてまいりたいと思います。  そこで、強いとか弱いとかいうようなことについても、それから国の財政のどこに欠点がある、地方の財政のどこに弱点があるというようなことは、これはしさいに検討していかなければなるまいと思いますけれども、たとえば両方が相ともに成長していかなければならない。いま、先ほどからいろいろ問題ございましたけれども、たとえば国が借金が地方より多いんだから地方も借金をしたらいいじゃないか、そんなことは全然考えておりません。そこで、私は、たとえば国の財政収入の中におきまして、税収入とそれから公債収入とがあるが、その税収入の中で、先ほど御指摘ございました三税が地方交付税の税源になっておる。そうなってきますと、国の財政の収入の中でやはりこの主税というものがウエートが大きいか、あるいは公債のウエートが大きいかというようなことによって、この交付税が大変違ってくるということは、もう御指摘のとおりなんです。だから、できるだけ国の財政の上において国も公債依存度というものを圧縮していきまして、そして昔普通歳入と言いましたが、この税収入、その中でも主税収入というものが充実してまいりますれば、おのずから地方交付税というものもふえてくるわけでございますから、どうかひとつ、私は、国と地方との関係というものは、これは本当に一にして二、二にして一の関係にあるというようなことで、財政の運営をしてまいりたい、かように考えております。
  132. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私も何も国と地方を対立して考えているわけじゃないのです。対立して考えているわけじゃないけれども、あなた方のあれはいつもこう言っているわけだ、国は大変だから国が立ち直るまで地方は待て、どれを見てもほとんどこういう論理なんですよ。しかし、その論理はおかしいじゃないか。それは対立するわけじゃないけれども現実の問題として国は強力な統一体であるし金融も財政も動かすことができるけれども、市町村なり県なりというものは全然そういう能力がない。合わせれば大きいだけであって、一つ一つは何もないのです。だから、私は、お互いに相助けるならば、強い者がもっと弱い者をめんどう見てやるべきじゃないか。さっきから皆さんが指摘しているとおり、最大の地方の頼みの綱である交付税というものは崩壊の危機に瀕して、すでにその機能を失っているじゃないですか。そうしておいて立ち直れと言ったって、いつまでたっても地方財政が立ち直れるわけがないんです。しかも地方財政というものは、一番先に私が申し上げましたように、地方自治の基盤である。基盤が崩れればだめだ。何とかもう少し手をあれして、いまあなた方は一生懸命やっていると言うけれども、これだけではつぶれてしまうことは歴然としているんです。もう少し何とかこれに力を加えてやることはできないか。  あなた方は国も大変だからがまんしろと言うけれども、私はこう思いますよ、こういうような非常時でなければ、思い切った行政改革なり財政の改革はできない。町でも同じです。私は、何遍も火事を出して都市計画をやりましたけれども、火事になった方がよけい金がかかることがわかっても、火事にならなければ都市計画をやれないんです。同じですよ。財政のいいときは、悪いところがあってもがまんできるからやらないんです。国も市町村も県もがまんできなくなったぎりぎりの土壇場こそ、いまこそこの行政を、国、地方を通じての行財政を改革する最大のチャンスである、こう思うのですよ。それをあなた方、立ち直るまで待て、立ち直るまで待てと言っても、いつ立ち直るか見当もつかないじゃないですか。もう二、三年たてば崩壊するのです。どうです、これを最大のチャンスにして、ピンチじゃなくチャンスにして、そうして国、地方を通じての真剣な行財政の改革をやる、見直しをやる、こういう意思はございませんか。
  133. 小川平二

    ○小川国務大臣 御発言の御趣旨には全く同感でございますから、遠からざる将来において行財政の根本的な見直しをし、かつ実行しなければならない、こう考えておりますが、五十二年度の問題といたしましては、るる申し上げましたように、やむを得ざる措置として御高承のような措置を実行したわけでございます。
  134. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、国の財政と地方の財政というものを別々に考えていくということは、これは別に考えなければならぬときもありましょう。ありましょうが、別々に考えていくことが私は必ずしも適切なものではない、やっぱり……(「やらないということじゃないか」と呼ぶ者あり)さようなことは考えておりません。大きな声で言われましても、さようなことは考えておりません。両方を調和のとれた財政というふうに持ってまいりたい、かように考えております。
  135. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 大蔵大臣、あなた口では調和だ調和だと言っているけれども、実際にはちっとも調和していないと思う。  長くなりますからやめますけれども、もう一つ自治大臣にお伺いしますが、近い将来というのはいつごろですか。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 小川平二

    ○小川国務大臣 これはいつごろとここで申し上げるということはなかなかむずかしいことと思いますが、まあ五十年代前期計画というようなものもございます。五十五年までに赤字国債の依存から脱却をする、そういう一応のめどを立てておるわけでございますから、五十五年が到来いたします以前に、少なくとも経済が一応安定の軌道に乗りました時点で抜本的な改正を実行すべきものだと考えております。
  137. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私が言っていることを、さっきからあなた余り理解しておらないようですが、私は、安定するまで待てない、しかもやるならば、こういうピンチになっているときにやるべきだ、安定してしまえばやれなくなりますよ、こう言っているのです。それをあなたは、やるけれども安定してからやります、これでは、これは全然かみ合っていないのです。もう一遍……。
  138. 小川平二

    ○小川国務大臣 交付税率を引き上げるというようなことになりますと、国と地方の財源配分の問題でございますから、これを長期にわたって固定をするということになるわけであります。ほかの諸条件が一切流動的でありますときにこれを実行するのはどうも必ずしも適当ではないと存じますので、先ほど申し上げましたような、遠からざる将来に税制の抜本的見直し、改正というようなものが実行されます際に、どういうことになりますか、先のことですからこれはわかりませんですが、少なくとも国、地方を通じて租税負担率の相当の引き上げを国民の理解のもとに実行していかなければならない、そういう際、既存の税の増徴によるのか、あるいは新税を起こすということも考えられるでございましょう、新税を起こすというようなときに、その一定割合を地方に配分するような仕組みというものを考えるということもこれはあり得ることだと考えておるわけでございます。そういう時期が一刻も早く来ることを期待いたしておるわけでございますが、いつということをお約束申し上げるまでのことはできませんので、御容赦願いたいと思います。
  139. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この問題は金だけの問題ではないのです。国と地方を通じての行政の制度にも大変な問題がある。しかもこれをやらなければ、金の問題が解決できないという状態だ。しかもこれが非常にむずかしい問題だから非常に時間がかかる。もうすでにやらなければ、あなたが約束した五十五年までとてもできないと思いますよ。来年から、金の問題は別にしても、国、地方を通じての行政の改革に取り組む意思がありますか。
  140. 小川平二

    ○小川国務大臣 仰せの点は非常に大事な問題でございますので、いわば低成長下における地方財政だけでなくて、行財政のあり方いかんという点につきましては、地方制度調査会においていま御審議をいただいております。結論を得ましたならば、それを尊重いたしまして、真剣にかつ急いでひとつ検討していきたいと思っております。
  141. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 くどいようですが、もう一遍お聞きします。  国、地方を通じての各種の行政の改革の案というものは出尽くしているのです。地方制度調査会からも何遍も出ています。やらないのは政府なんです。方策はもう出ているのです。あなたはいま、これから審議会で審議してそれからというようなことを言いますが、何遍も出ておるのです。何ぼ出しても政府がやらないから審議会が怒っておるのですよ。どうですか、もう一遍……。
  142. 小川平二

    ○小川国務大臣 ここへ来て、経済の状況、経済環境が全く一変をいたしておりまするから、新しい環境下における行財政のあり方はどうあるべきかということで、改めて地方制度調査会の御意見を伺っておるわけでございます。従来いろいろの答申あるいは提言をいただいておるわけで、これらはいずれも尊重すべき貴重な指針と心得ておりますが、なかなかそのとおり実行しかねておる点もあることは事実で、御指摘のとおりで、恐縮に存じております。
  143. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 その点はやめまして、今度は地方税の問題についてちょっとお伺いします。  今度の地方財政計画の特徴的なものの一つとして、地方税が非常に大きく伸びている。一八・一%前年比で伸びているし、特に問題なのは法人関係税が二四・二%伸びている、こういうふうに問題になっておりますけれども、私どもは、経済の状態がそんなに伸びていないのになぜことしだけ急にこういうふうに伸びたかということについて、もしこれができなければまた赤字が増大する、そういうような意味から非常に不安を持っているわけです。五十年度の地方税は、当初の八兆八千八百五十億円が前年度比で二三・五%も伸びた、ところが結果的には七兆八千二百十八億円、もう大変な落ち込みをしたわけです。特に法人税の落ち込みは非常に大きくて、三〇%も落ちてしまった、こういう状態です、減税の問題等もありましたでしょうけれども。ところが五十一年度、これは前年度比よりも二十億少ないのでやっておりますけれども、もし五十二年度にこういう大きな伸びを見込むとすれば、五十一年度もかなりな伸びがある、こういうふうに思われますが、五十一年度の地方税の結末はどのぐらいになりますか。
  144. 小川平二

    ○小川国務大臣 御質疑の趣旨は、地方税の税収の見方が甘いのではないかという御指摘かと思います。これは、去る二月の初めに閣議決定をいたしました政府の経済見通し、それから法人税の税収の見込み、あるいは最近までの課税実績等を勘案をして、そのほかいろいろな事情を考慮いたしましてはじき出した数字でございますが、細かいことになりますので、政府委員から詳細に御答弁を申し上げます。
  145. 森岡敞

    ○森岡政府委員 法人事業税の収入見込みについてのお尋ねでございますが、これは、政府の経済見通しとそれから法人税の収入見込み及び最近における課税実績をもとにしております。現段階で五十一年度の法人事業税まだ確定いたしておりませんけれども、当初ベースに比較いたしまして大体四・五、六%の実績の伸びがあるものと考えております。で、明年度の見通しは、生産の増を一〇%、それから物価を六%、それを相乗いたしまして一七%ということで申告法人所得の増を見込んでおりますので、それに、たとえば電気事業とかガス事業のように収入金額課税の分は電気料金の引き上げ、ガス料金の引き上げ等が加わります。さらに生命保険とか損害保険というような保険事業については、御承知のように五十年度から課税標準の強化を行っておりますが、それが五十二年度で増加要因になってまいります。それらを加えて積算いたしますと、二四・二%というのは私ども政府の経済見通しに基づいた収入見込みとして適切な見込みであろう、かように考えております。
  146. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま五十一年度の伸びが六・何%、こういうふうに言われましたが、自治省が関係して出しておる「地方財政」の一月号、これを見ますと、「地方財政の回顧と展望」という中に丸山財務調査官の書いているのがあるのですね。それを見ますと、五十年度の決算比で一四・七%伸びている、こういうふうに書いてあるのです。私はちょっと五十年度のあれがわからぬので、七兆八千二百十八億円という五十年度の修正額にこの一四・七%、これを掛けてみますと八兆九千七百十億円にしかならぬ。五十一年度の地方当初の見込み額八兆八千八百三十億、これとほとんど同じなんです。全然伸びてない、こういうふうに思うのです。ところが、いまあなたは、六・何%ですか何か伸びている、こういうふうに言っております。この差はありますが、いずれにしても伸びるということなのですから、時間がありませんので答弁は結構です。ただ私どもが非常に不安に思うのは、果たしてこの伸びが、これからの経済刺激によるところの回復を見返りにしていま伸びを見込んでいる、ここに非常に大きな危険性がある、こういうふうに思うのです。  そこで、せっかく倉成長官が参りましたので、時間がなくなって聞かないのも失礼でありますのでお聞きしますけれども、あなたはこの間私どもの佐野委員の質問に対しまして、公共事業も進めた、国鉄、電信も工事削減四千億を取り戻した、住宅も八百十億、電力の発注も繰り上げた、プラント輸出もできた、ボンドの保険もできた、中小企業に対する融資も年末で四千八百七十億やった、政府支出の中の資本支出も十八兆二千五百億で、前年よりも一五・九%よけいになった、どんどん並べまして、非常に景気がよくなるような話をしたのです。しかし私は、それをでき得べくんば信じたいのですけれども、実際にあちこちの新聞、ジャーナリズム、あれを見ますと悲観的なものが非常に多い。私は経済学者じゃないからあなたの方と経済論争するという意思はありませんけれども、たとえば二十五日、きのうの日経の夕刊に、日本最大の経営者の団体である経済団体連合会土光会長、いまの景気は底冷えなんというものじゃなくて底抜けだと書いてある。最高の経営者の団体の会長が底抜けだと言っているのですね。さらに、ジャーナリズムの日本最高と思われる経済評論家下村さんあるいはまた西村住友銀行の調査第一部長、それから佐貫利雄日本開発銀行、こういう人が口をそろえて、ゼロ成長だとか夏にかけては息切れするだとか、あるいはまた設備投資が落ち込んで何もならぬとか、全部並べてあるのです。しかも最後に、きのうの福田内閣の経済政策、これも二十五日ですね、朝日新聞の世論調査によりますと、国民の中で景気がよくなるだろうと見ている人はたった二二%しかいない。あとの八割は全部物価が高くなって景気が悪くなる、こう見ているのです。こういうのを見ますと、あなたの言うことを信用したいけれども、どうも不安がある。本当に大丈夫なのか、もう一遍念を押して聞きます。
  147. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  いま仰せのとおり、いろいろな人がいろいろな見方をしていることは事実でございます。そしてまた、土光さんのお話や下村さんのお話が出ましたけれども、基礎産業部門において非常に操業率が低いという点で不況感がある。企業の業種間、地域間の格差が非常に大きい。たとえば繊維であるとか造船あるいは砂糖あるいは平電炉とかあるいは石油化学とか、こういう部門を見ますと、本当にこれは大変だという感じを持たれるのは当然ではなかろうかと思うわけでございます。しかし、昨年の夏以来少し急角度に景気が上昇したのが、非常にそのテンポが落ちてまいりまして、現在非常に足踏みをしつつあるということは御指摘のとおりでございます。したがって、これにもう一息はずみをつける必要があるというので、いま御引用のありました七項目、また先般は補正予算を通していただきまして、これが大体年度内の需要創出効果として約一兆円と私ども考えておるわけでございますけれども、この程度のものをひとつやりながら行きますと、政府の見通しの実質五・七%の成長は達成できるというふうに考えておるわけでございます。  なお、輸出が昨年の十-十二月で大体二五%、五十年に比して五十一年の十二月は二五%程度高いわけでございまして、ことしに入りましてもちょっと落ちておりますけれども、それでも高い水準にあるということで、政府の経済見通しの数字は達成できる。しかし、なおこれが息切れしないように、五十二年度の予算で、公共事業を中心とする予算をただいま提出して御審議を煩わしているわけでございますが、一刻も早くこの予算が成立することによってこの気迷いを払拭していけば、私は決して悲観的に見る必要はないのではないかと思うわけでございます。  世界の国々と比べると、私は日本の成長というのは非常に高い方じゃないかと思うのです。ただ、こういうことは言えるんじゃないでしょうか。かつての高度成長のときの感覚があるものですから、どうしてもそういう感覚から見るとまどろしい。どうももっと何か急角度に雇用情勢もよくなったり、いろいろ景気もよくなってほしいという願望があるものですから、その辺のところが少しマッチしないという点があろうかと思いますが、御指摘の点、いろいろな点での景気の停滞ということは、私どもも非常に注意深く見守ってまいりたいと思っております。
  148. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 時間が参りましたので締めくくりをしたいと思います。  いまの地方税の問題、これからよくなるであろうところの景気にかけてあのパーセンテージをはじいておるようです。でき得べくんば、なるべくんば、そういうふうになることを望みますけれども、しかし、これは非常に危険なかけである、こういうふうに思われます。地方債の問題に入られなかったのですけれども、交付税の問題あるいは地方税の問題、こういうものを見ましても非常に大きな地方財政、不安定な状態にあることは確かでありまして、もういまや一時的な一時しのぎの借金財政、そういうものをこのまま続けていくわけにはとうていいかない。国、地方を通じての財政なり行政なりの根本的な手当てをしなければやっていけない。これは地方だけではなくて、国でも私は同じだと思うのです。だから、国も地方も一緒になってこの問題を解決していくような勇気が必要だと思います。今度のような政府措置をやっても、問題を先に延ばすだけで何ら解決にはならない、新しい火種をまたかき起こすだけだ、こういうふうに私は思います。  時間が参りましたので、これでやめますけれども、どうかひとつ不退転の決意を持って、いままで長い間の宿願であったところの国、地方を通じての行政、財政というものの根本的な見直し、これに取り組んでいただきたいことをお願い申し上げまして、終わります。
  149. 坪川信三

    坪川委員長 これにて佐野君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  150. 井上普方

    ○井上(普)委員 企画庁の長官にお伺いしますが、昭和五十年代前期経済計画、これは大体昨年の五月に策定されましたけれども、この計画が基礎になりましてあらゆる諸計画というものがつくられておると思うのであります。しかしながら、これもまだ一年たっておりませんけれども、実際問題として相当に改定しなければならぬ諸点がたくさん出てきておるように思うのですが、どういうようにお考えになっておられますか。
  151. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいま御指摘昭和五十年代前期経済計画、昨年の五月に決定した五カ年間の計画でございます。計画を策定しました初年度の五十一年度でございますけれども、当初の計画で想定しましたよりも現在の状況は企業の倒産が多かったり、雇用情勢がはかばかしくない、景気の回復が、夏までは非常に順調でありまして、恐らく五十一年度の見通しをもっと上方修正するのじゃないかというような評論家や関係の方々が非常に多かったわけでありますけれども、それが停滞して、それから今日に及んでおるという実情でございます。  確かに各需要項目から見ますと多少問題がございますけれども、成長率という点から考えますと、五十一年度の実質経済成長五・七%は達成し得るという感じでございます。個々の問題はありますけれども、大筋としてはこの計画の線を走っておる、五十二年も六・七%の成長ということで計画の路線を走っておると思っておるわけでございます。  ただ、この計画をつくりました後、御案内のとおりOPECの値上げが出てまいりましたり、あるいは将来のエネルギーの確保のための電源立地の問題であるとか、あるいは二百海里の専管水域の問題であるとか、そういう新しい国際情勢やその他の国内の情勢の変化というのが出てきておりますので、こういうものを十分踏まえながらこの計画の目標に向かって努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  152. 井上普方

    ○井上(普)委員 根本的に私は、企画庁長官の御認識が間違っておるのじゃないかと思うのです。第一に、昨年の第一・四半期の景気の上昇は、アメリカにおける減税政策の結果が家電製品の輸出につながっておる。これが非常に大きな結果であって、これらをもとにしての経済成長率をやはり計算に入れられておる。ことしアメリカにおきましても減税がやられるというようなことでございますので、あるいは期待できるかもしれませんけれども、それは皆さん方がおっしゃる、福田さんもおっしゃる一時的な効果しかあらわれないんだという考え方に立つならば、根本的に私は見直さなければならないんじゃないか、このように感ずるんですがいかがでございます。
  153. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ことしの、五十一年度の五・七%の成長が輸出というものに非常に大きく支えられたという点は御指摘のとおりでございます。しかし、この計画全体について、御案内の経済審議会で、先般いろいろ関係の各方面の専門の方々お集まりの審議会で御検討いただきまして、先ほど私が申し上げましたように、個々の需要項目について、雇用の問題であるとか、企業の業種別、地域別の格差の問題であるとか、そういう問題は確かにあることはあるけれども、しかしことしの成長は実質五・七%の成長ができると、来年度も政策のよろしきを得れば需要創出効果の強い公共事業を中心としての五十二年度の予算を一つの契機として六・七%の成長ができる。したがって、この前期経済計画の路線を走っておると、そういう御答申をいただいておるような次第でございます。
  154. 井上普方

    ○井上(普)委員 そこで、私はどうも達成できないと思うのであります。と言いますのは、公共事業に対しまして今度の予算は非常に重きを置いておるんだ、こうおっしゃいます。しかしながら、五十一年度当初予算公共事業費は三兆五千三百億、予備費千五百億、あるいは追加補正で二千六百四十億、合計いたしまして三兆九千四百億でございます。これを五十二年度と比較いたしますと、今度の予算は四兆二千八百十億でございますから、差し引き三千四百億のプラスにしかならない。しかし、ここに見逃してはならないことが一つある。それは何だといいますと、一つは物価の上昇でございます。もうすでに昨年とことしにかけまして建設資材あるいは労務費等々の上昇は恐らく一〇%を超えるでございましょう。そうするならば、三千四百億円というものは、もうこれはプラスではあるけれども、実質上マイナスになる。その上にもってまいりまして、地方自治団体の先行取得という問題があります。地方自治体がいま公共事業をやってもらおうと思って先行取得いたしました土地の価格が八千億ある。これを四十九年から計画的に実は少なくしていっておる。これも土地代を差し引きますというと、実質上このプラス要因といいますものは、三千四百億というのは、昨年度と比べますと、恐らく千四、五百億になるのではなかろうかと私は思う。そうしてくると、物価上昇率を低くすると、むしろ実質公共事業費といいますものは、昨年度予算の九四、五%しか組んでおらないではないか。これで果たして景気の回復ができるかということに相なると思うのですが、いかがでございます。
  155. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいま国の一般会計のお話を御引用になりまして、その問題についてのお話がございました。その点についてだけ限って申せば、あるいは先生のお話の点が、全部とは申しませんが、当たっている点が多いのじゃないかと思います。しかし、景気刺激という点からもし議論をするなら、やはり国民経済計算ベースの政府の資本支出がことし幾らか、昨年に比べてどのくらいふえているかということで議論した方がこれが妥当ではないか。そう考えてまいりますと、国の一般会計また公社、公団、それから地方の予算、それに地方の公営企業、これを全部合わせまして、しかし重複計算がございますからこれを差し引いて、そしてこれから土地代を引かないといけないわけですが、その土地代を引いた総額が十八兆二千五百億でございます。これが政府の資本支出でございまして、これは昨年、五十一年に比較しまして一五・九%ふえるという政府の見通しをいたしておるわけでございますので、この点から考えますと、公共事業等を中心とする、ことしの予算を中心としたもろもろの施策が景気刺激をし、そして相当な役割りを果たすことができる。本塁打の力はありませんけれども、一塁打ぐらいの力はある。したがって一塁のベースに進んでいる間に、他の需要項目が出ていって何とか景気を安定成長の路線に乗せたいというのがわれわれの考えでございます。
  156. 井上普方

    ○井上(普)委員 いまあなたの前のお話と次のお話と話が違ってきている。最初は公共事業に非常にウエートを置いたんだからことしの景気はよくなるだろう、こうおっしゃいましたので私はただいま数字を申し上げた。そうすると、あるいは公社、公団等と政府支出の金がかなりあるので、これを合わすと十八兆二千五百億になるから、実質一五・九%の増だと、こうおっしゃいましたけれども、私はどうもこれは合点がいきかねる数字なんです。たとえて言いますならば、先ほど来も地方財政の面から地方自治体の窮乏につきましてるる佐野、佐藤委員から御説明のあったとおり、しかもこれで地方団体の財政というのは窮迫しておる状況にある、恐らく公共事業も返上する団体がかなり出てくるのではなかろうか、このように思われる実態であります。その上にもってまいりまして、地方公社にいたしましてもあらゆるところで行き詰まっておる。なぜかといいますと、土地を買い過ぎまして困っておるのが土地供給公社あるいはまた各種地方公社の実情じゃございませんか。これらに重きを置いた財政計画であるならば、この景気回復という一五・九%の伸びというものは私は期待できない、このように感ずるのであります。いかがでございます。
  157. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  私は、先ほどから佐藤委員、佐野委員の御質問、非常に興味深く承っておったわけでございまして、確かに五十一年度の公共事業の支出、これは一つは国鉄、電電の保安のおくれということが大きく響きました。それからまた当初の暫定予算というのが大変大きな景気の足を引っ張った要素になったことも事実でございます。しかし同時に、地方財政がなかなか苦しい状況になって、なかなか地方財政の裏負担、単独事業が十分できなかったという事情があったことも私は率直に認めたいと思います。したがって、ことしはそういうことのないように地方財政計画を十分配慮して予算を組んでいただきまして、したがって、決して楽観はいたしておりませんけれども、十分きめ細かい配慮をしながら経済の運営をやっていくならば、ただいま申しましたような政府の経済見通しの中の資本支出の効果というのは決して小さいものではない、そう心得ております。
  158. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、これは納得しがたいものがございます。いずれこれは本予算が実施をされましたならば、あらわれるだろうと思いますので、この程度においておこうと思いますけれども、ただいま、昨年の国鉄運賃の値上げあるいは電電公社の値上げがおくれたのが去年の経済の伸びの大きなおくれの一つである、こうおっしゃいました。私はきのうこういうことを聞いた。このごろですと、国鉄の運賃の値上げによりまして、横浜に住んでおる人が家族一家で東京に出てくる場合、大体運賃が往復で幾らかかると思いますか。わかりますか。横浜に住んでおる四人家族の一家が、日曜日東京へ出てきて帰る往復運賃は幾らかかると思いますか。おわかりにならぬと思う。大体一万円かかるのです。そこで、四人が来て、いままででございましたならば、ともかく遊山に来る、遊山に来て、物を買っても残りは大体捨てておったというのです。ところが、このごろでございますと、自分のうちから弁当を持ってくる、そしてこれを持って帰るというぐらい国民生活は逼迫いたしておりますと同時に、経済の消費というのがおくれているんだ、こういうことを私は聞かされまして、うん、なるほどなという感を深くいたしておるのであります。御承知のように、国民消費が大きなウエートを占めておることは、これはもう御存じのとおりです。国民はやむを得ず自分のふところを締めざるを得ないような状況になっておる。こういう状況にあります。  私がこのことを例に出して申したのは、決して反論するがためではない。安易な考え方で経済の運営をやれば、安易な考え方で国鉄ばかりに目をつければ、このように国民消費は大きな落ち込みになっていく。これが日本の経済成長に大きな影響を及ぼすであろう、あるいは政府の計画を大きく狂わすであろう、また狂わしつつあるのが現状じゃないか。これは国民の生活防衛、自衛手段である、こう考えざるを得ないのであります。そういう点をひとつお考えになっていただいて、これからの経済運営に当たっていただきたいと、私はお願いいたしたいのであります。  そこで、建設大臣、先ほどちょっと話題に出ましたが、地方自治体が先行取得しております土地というものは、地方財政を非常に圧迫してまいりました。したがって、この先行取得の金を五カ年間でひとつ解消しようじゃないかということを建設省も考えられて、これの実施に踏み切っておられるはずであります。実施状況はどういうふうになっておりますか、ひとつお伺いをいたしたいのです。
  159. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 五十二年度を期しまして、先行投資をしていただいていたもののなるべく解消を図りたい、こういうようなことで、今回の予算の中からも、かなりそういう面で解決する面ができてくるであろう。ことし一年で解決はむずかしいけれども、徐々にやっていく方針で、その方向づけをしております。
  160. 井上普方

    ○井上(普)委員 数字を言っていただきたいと思うのですが……。
  161. 大富宏

    ○大富政府委員 お答えいたします。  五十年度末の保有量で約六千二百億、四千ヘクタールという見込みでございました。これにつきまして五十二年度、現年度予算で一千六百億、千ヘクタール、それから国庫債務負担行為で約千四百億、約六百ヘクタールの解消を図ることにいたしております。
  162. 井上普方

    ○井上(普)委員 こういうことでございますので、公共事業にウエートを置いたんだと大きな顔を福田内閣はしなさんなということです。わかりましたか。それよりも国民支出を増加させる方が経済の伸びあるいは計画の経済成長を促すゆえんのものがあるんじゃないかということをひとつ念頭に置いていただきたいと思うのであります。  そこで私は、この中期経済計画それ自体が、見てみまして、非常に実施できていない、緒にもついていないんじゃないかということを、「住宅・土地政策の推進」という項がございますが、ここでひとつ質問をしてまいりたいと思うのであります。  その先に、国土庁長官にお伺いしますが、第三次全国総合開発計画の概案というのを大体お決めになっておるようであります。この第三次全総計画によりますと、適正人口配置ということが中心になっておる。特にいまこのままの情勢で推移すると、昭和六十年には三大都市圏に約六千四百万の人口が定住し、地方圏では現在とほとんど変わらない六千万人が定住することが推定されておるのであります。この場合、人口増加の九〇%を超える人口が、すなわちこれからふえていく人口の九〇%が三大都市圏において定住することとなり、非常に問題がある。したがって各地方に人口を分散するんだ。そこで三大都市圏においては五千五百万人に、地方圏で六千九百万人にする。すなわち三大都市圏においては昭和六十年に六千四百万人になるであろう人口を五千五百万人、すなわち九百万人地方へ移していくんだという構想であります。  私はこの構想を――東京に住んでみまして、こんなスモッグの多いきたない空気で、不便なところへ住む人も困ると思うのでございますけれども、実際問題としてこれをどういうようにしてやっていくのか。計画は結構でございます。この定住計画、それが三全総の基本になっておる計画だと思いますので、あえてこの点についてお伺いしたいのです。どういうような方法でやるのか。
  163. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  三全総における人口定住構想の問題が三全総の基本目標であることは、井上さん御指摘のとおりでございます。ただいまお挙げになりました数字を目標にしながら、私たちは三全総の作業を進めているわけでございますが、御承知のように三全総は、国土の均衡ある発展を図るために、まず首都圏を整備する、そのことが一つでございます。それは水あるいは土地というものが有限でございますから、それを基本にしてできるだけ首都圏あるいは近畿圏、その他の整備を図りまして、過密化をできるだけなくする政策を考える。たとえば筑波学園都市のようなもの、あるいはまた各大学を首都圏から外へ出していく問題、あるいは立川の跡地の問題等、これからいろいろそういう構想を考えながら、水あるいは土地の有限化とあわせて、首都圏を整備しなければならないということを考えておるわけでございます。  もう一方、地方の振興を図らなければいけません。ですから、雇用の場を確保するということが一番重要なんでございますが、そのためにはいろいろ交通体系だとか通信体系だとか、あるいはまた教育、文化、医療等を見直さなければならないときにあろうと思うのです。特に私は地域性を生かすということに力を入れる、あるいはまた歴史だとか伝統だとかという地方の文化を生かした考え方で進めていくことが、地方への人口定住化につながるものであろうと思うのであります。たとえば私の県の例ではなはだ失礼でございますが、陸奥湾にホタテを養殖しているわけです。あの養殖によってあそこの人口が減っていないのです。出かせぎにも行っていないわけです。そういうようなことを考えますというと、大型プロジェクトということよりも、そういういわゆる地方の特性、伝統あるいは文化というものを生かして進めてまいるということが、これからこの三全総を作業する上において非常に重要なんです。ですから四十七都道府県知事あるいは三千数百の町村長の意見をいま聴取しております。いろいろな意見が出てきております。それで四十七都道府県別に、この定住のあり方をできるだけ具体的につくるように、いま努力を進めておるわけでございまして、いずれも国土総合開発審議会のいろいろな意見も聞きながら進めてまいらなければいかぬ。お話しのように、三全総の一番の基本をなすものでございますので、井上さんのひとつ一層の御援助をお願い申し上げる次第でございます。
  164. 井上普方

    ○井上(普)委員 長官、三大都市圏から九百万人の人間をともかく地方に移すという計画なんですよ。しかも、人口増加率の九〇%が推定では三大都市圏に集まるということなんです。いまのお話を聞いてみますと、何ら具体的な方策はないじゃございませんか。陸奥湾のホタテはまことに結構でございます。私の方にもハマチ養殖で人口の減ったところがふえたところもございます。しかし、それはほんの微々たるものじゃございませんか。基本的にどうするんだという計画がなければならぬと私は思う。首都圏を整備する、あるいは三大都市圏を整備する、整備したら人間が集まってきませんか。土地と水等についての整備をやったならばそこは住みよくなってまた集まってきませんか。どうなんです。そこをどういうようにするか、あるいは地方を住みよくするには一体どうするのかということを基本に掲げなければいけません。しかも、それは列島改造論ではございませんけれども、ある程度住民に納得せしめるような方法の産業の再配置ということがなければならぬと私は思うのです。しかも、その前提になるのは、何といいましても住民の合意が必要です。コンセンサスが必要です。その点がいままでの政府の政策において抜けておったのではなかろうか、このように思うのです。それに対しての対策といいますか考え方、それをひとつお伺いしたいと思います。
  165. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  むつ小川原が巨大開発だとか、あるいはまた志布志湾だとか新産都市の五カ年延長等、これは確かに地方振興のための産業の配置をいまいたしているわけでございますが、そのためにはあくまでも環境保全と地元住民とのコンセンサスを得るということは御指摘のとおりでございますので、今後もそういう点に力を入れて地方開発のためには努力いたしたいと考えております。  そのこともさることながら、特に私は、文化の面だとか教育の面だとか医療の面で、今後安定成長時代の三全総のあり方というのはやはりそういう点でもうちょっと考えなければならないと思うのは、たとえば、昔は農業を専攻するためには北海道大学へ入らなければいかぬ、あるいはまた哲学なら京都大学へ入ろうという人が多かったわけです。それから各高等農林というのがありまして、それぞれ東京で学問を受けなくても、それぞれの地域でそれぞれの学問をしてまいった時代があるわけでございますが、私はこれが地域の特性だと思うのですよ。  こういう一つの細かい、文化の面でも、教育の面でもあるいは医療の面でも、細かい神経を使いながら三全総の作業を進めてまいりますというと、安定成長時代の長期計画が生まれてまいるものであろうと私は考えますので、そういう点は、いま作業中でございますが、極力皆様方の御意見をちょうだいしながら、りっぱな三全総をつくるように努力をいたしている最中でございますので、よろしく御理解をいただきたいと思うのでございます。
  166. 井上普方

    ○井上(普)委員 ただいま具体的に九百万人を三大都市圏から外に出すという具体案は、まだこれから作業中とおっしゃいますけれども昭和六十年といいましても、もうすでにこれは二年たっているのです。あなた方が作業してはや三年になるのです。こういうことで一体この計画ができるかどうか、私は大いな疑問を持つものであります。  そこでひとつ、これは今後の問題としましても、特にこれは地方財政とのかかわり合いが非常に深くなってきます。一概に三大都市圏に人口は集中する、人口は集中すると言いますけれども、他の県におきましても、過疎の中における過密が起こっておる。過疎の中の過疎がさらにひどいところがある。地方財政は、学校一つとりましても、大変なんであります。いまのこの計画のように、人口増加の九〇%を地方に渡すということになりますと、地方の過疎県における、三大都市圏以外の地方都市の過密状況がこれまた起こってくるのであります。現に起こっておる。恐らく田澤長官の地元の青森であるとか弘前なんかというのもやはり人口増加が激しいでしょう。こういう現象が起こってきておるのであります。これを一体どうするのだ。  それと同時に、あなたの、具体的な方策はまだ作業中とおっしゃいますけれども、三全総のこの基本になるのは、いかにして三大都市圏から九百万人もの人間を外へ出すのだということが基本になっている以上――飯が食えなければならぬのですから、飯が食えなくて文化だ何だへったくれだ言っても始まらぬ世の中になっておることは御存じのとおりです。そこで、具体的に一体どうするのだということを私はお伺いする。それには、何をいいましても国民のコンセンサスを得る方法をまず第一番に考えなければならないのではないか、このように思うのです。したがって、その具体的なコンセンサスを得る方策をいかにして求めるか、この点についてお伺いいたしたいのです。
  167. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  この三全総の基本的な目標である、いわゆる定住人口というのを、いま四十七都道府県別に、それぞれ都道府県の知事の意向を聞きまして、それで青森県なら青森県はどのくらいの定住を必要とするかとか、また町村にもそういうように細かく意見をいま聞いている段階です。それを基本にしながら進めてまいりたい。もちろん、ですから県あるいはまた町村の意向を十分聞いた上で、定住人口のあり方というものを具体的なものを策定してまいりたい、こう考えております。ただいま具体的なものを御報告する段階でないのは残念でございますけれども、目標としてはそういう方向で動いておるということだけは御理解いただきたいと思うのでございます。
  168. 井上普方

    ○井上(普)委員 目標はそうだとおっしゃいますけれども、どうもうまいこといかぬのじゃないか。よほど国民のコンセンサスを得るような方法を講じなければならぬ、最初からそういう手法をまず考えるべきだということを苦言として呈しておきたいと思うのであります。  そこで、いずれにしましても、首都圏の整備をやるには水と土地ということに相なります。これは田澤長官のおっしゃるとおりです。そこで、きょうは土地についてまず質問いたしたいと思います。  官房長官、あなたは福田総理が行政管理庁の長官をされておったときに、御自分が行政監理委員委員長として行政管理庁長官に答申なさった「住宅対策のための土地行政の機構および運営のあり方についての答申」というのをお読みになりましたか。
  169. 園田直

    ○園田国務大臣 概略拝見しております。
  170. 井上普方

    ○井上(普)委員 これを実行できるとお考えになっておられますか。こういうことが書いてあるのです。「市街化区域内農地等の宅地化」というところで、市街化農地を宅地化しなければならぬ、この必要性を述べられた後、「これが行なわれない場合には、公的事業主体に収用、代執行等の権限を与えて事業を実施させ、計画的土地利用を強制的に実現するものとするが、この場合、地方公共団体のほか、日本住宅公団の事業施行能力を活用するものとする。」という一項があるのであります。実際問題としてできるとお考えになりますか。どうでございましょう。
  171. 園田直

    ○園田国務大臣 方針を示したもので、現法制上なかなか大変な問題と考えます。
  172. 井上普方

    ○井上(普)委員 建設大臣、いかがでございますか。
  173. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 口では言えるけれども、いま官房長官が言われたように目標と言おうか計画と言おうか、そういう方に進もうという考え方はお互いが持っておりますけれども、なかなか書いたとおりの実施というのは、私も建設省に行ってみて困難なものだなということをしみじみと身に感じておるところでございまして、たとえば調整区域の問題あるいは市街化区域の問題、これにも住宅の問題が絡んで、しょっちゅうこの問題によってなかなかうまい調整がとれていないということでございます。しかし、何といっても強制的にこれを行わしめるということは、なおなかなか困難だということを痛切に考えておるのですけれども、いま井上先生がおっしゃるように、そこのコンセンサスをどうとるのだという問題に重点を置いてかかっていかないと、思うようには進んでいかないのじゃないでしょうか、そういうふうに感じております。
  174. 井上普方

    ○井上(普)委員 官房長官、あなたの御主人はこんなひどいことを言う人です。この市街化区域内の農地につきましては公的事業主体に収用、代執行等の権限を与えて事業を実施させる、こういうことを行政管理庁の長官当時に、御自分が御自分に答申されておるのです。いいですか。いまの法制のもとで根本的に変えなければならぬでしょう。恐らく社会党が政権をとった場合にもこれだけのことができるかと申しますと私もちょっと首をかしげざるを得ないのです。いま長谷川建設大臣がおっしゃったように、行いがたいでしょうとおっしゃるのは行えないというのが実態の話なんです。それじゃそれにかわるべき方法をどうするのか。この第三期住宅五カ年計画によりますと、宅地面積は六万六千ヘクタール必要とするのです。これが一体取得可能かどうか、これが大きな問題だと私は思います。  そこで建設大臣、六万六千ヘクタールの宅地の確保についていかなる具体案をお持ちになっておられるのか、この点ひとつお伺いしたいのです。
  175. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 かなりのいろいろの手をもって交渉もしており、また現在も土地を持っております。御承知のように持っておるのですけれども、その土地が調整区域であるという点と、それに伴ういろいろな史蹟の要求等もなかなかたくさんございますし、それらについてはいろいろな要求は満たすようにということで、本年は特に道路の問題、上下水道の問題等々については、なるべくこれをこちらの方、たとえば建設省の方で持ってと言おうか、お助太刀をして、満足を与えるようにしてやろうというようなこともやっております。しかし、新たに六万六千ヘクタールがすぐ必要だという都会地周辺においては、非常な困難性があるということは言わざるを得ない、こういうことでございます。
  176. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかし、六万六千ヘクタールの宅地の新しい供給がなければ、実際五カ年計画は達成できないのじゃございませんか。
  177. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 申し上げるように、先ほど国土庁の長官がお話し申し上げたように、これに対しましてはやはり政府責任を持って、要するに文化の面、上下水道の面、道路の面、こういう面を十分に政府が見てやる、この態度が基本でなければ、その目的を簡単に達するわけにはまいりません。でありますから、特に昭和五十二年度からはそういうところに重点を置いてもう少し考えてみなければならないという、ついこの間も住宅問題につきまして省内において各局から出てもらいまして協議会というものをつくって、次官がその委員長になりましてその協議を進めておるところでございますけれども、努めてそれらの問題の解決に五十二年から当たらなければならない、当たる年だということで、いま激励をしておるところでございます。
  178. 井上普方

    ○井上(普)委員 具体的な計画について、六万六千ヘクタールの確保というのはなかなかむずかしいのじゃないか、あるいは、これは特に税制上の諸問題等々を考えなければ、なかなか六万六千ヘクタールの宅地供給というのはむずかしいのじゃないかと私は感ずるものであります。しかし、いずれにいたしましても、国民の約一千万世帯がいま住宅に対して困窮度を感じておるのであります。これをいかにしてともかく満足させるか。いま衣あるいは食は、おっしゃるとおり大体国民は満足できておると思います。しかし住宅につきましては、国民は非常に不満を持っております。これに重点を置いた政策を立てていただかなければならぬと思うのであります。  そこで、この建設省の五カ年計画を見てみますと、実は持ち家に重点を置かれておるようであります。公的賃貸住宅は、前の五カ年計画よりはるかに減って、しかも民間自力建設住宅に力を置いておるのであります。そこで私は、いまの状況のもとにおいて果たして国民は民間自力建設ができるのかどうか、これを考えなければならぬと思うのであります。それでなければペーパープランになる。特に私の持論をひとつ申し上げて、御感想を承りたいと思うのであります。  核家族はどんどんと進行いたしております。その間、われわれの世代でございましたならば、家を建てると申しましたときには、あるいは親あるいは兄弟から援助をしてもらいました。田舎の土地を売ってこれを援助してもらうということが可能でございました。しかしこれからの若い世代の諸君には、それを望むのはちょっと無理じゃなかろうかと私は思うのであります。その上へもってまいりまして、低成長時代の経済に移行したと政府はおっしゃっておられます。そうするならば、いままでのような高度成長政策の時代のような賃金上昇というものは、私はこれは常識的に見て考えられない。こうなりまして、その上にもってまいりまして年金の問題がございます。先般もわが党の年金問題に対する質問に対しまして、政府自体も好むと好まざるとにかかわらずいまの積み立て方式から賦課方式に移行せざるを得ないだろう、こうおっしゃっておられました。私もそう思います。そうしてまいりますと、若い世代に対するこれから老齢人口というものはどんどんふえてくるのでございますから、われわれの世代、私ら以上の世代の者は年金の受給は受けれる、しかも、それは若い世代の諸君に負担をかけるんだという形になってくる。しかも政府がおっしゃっておるように、その他の税金におきましても増税せざるを得ないというのが実情でしょう。そうなったときに、一体若い世代の諸君が自分の持ち家を建てることができるかということを真剣に考えなければならないのじゃないか。いまの二十代、三十代の諸君に自分の持ち家をつくれというのは酷じゃないかという気が私はいたすのであります。そうなってくると、われわれの住宅政策の将来を見込んだ政策とすれば、やはり低家賃の公共賃貸住宅、環境のよい公共賃貸住宅に、住宅政策の基本をこちらの方に向けざるを得ないのじゃないですか。官房長官いかがでございますか。
  179. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ぼくはその御指摘の点も、まだ日がたたないけれども、いろいろ同じようなことを調べて、聞いたり見たりしているんですけれども、世帯数と住宅数というものを見ると、世帯数よりも現在は住宅数の方がはるかに多いのです。しかし、それではなぜ一万二千戸近いものがあいているんだ、こういうことなんですね。公団住宅がなぜ一万二千戸もあくんだ、こんな便利のいいところでもなぜあくんだ、こういうことになる。そうすると、狭過ぎるというようなことが原因だ。かつて喜んだ2DKというのは、現在ではもう入居者が全くなくなったと同様な方向になってきているということ。それなら三DKはどうだというと、三DKでもいまではなかなか喜んではくれないので、それにリビングをつけたものに変えていかなければ喜んでもらえないというような事態にもなってきている。でございますから、現在ある公団住宅が一万二千戸近いものがあいているという原因がそこにあるとするならば、いまの二戸を一戸にするとか、三戸を二戸にするとか、そういうふうになるべく改造をして、そして住んでもらうようにしていったらどうなんだというようなことを申し上げておりまして、やっとそういう方向に現在では進んでいこう、それでもまだだめだという場所があるならば会社の独身寮か何かに買うてもらったらどうだというようなことまでも、極端だけれども言っているようなわけでございます。したがって、人間生まれ出てやはり自分の家に住みたい、自分の宅地に住みたいというのは人間の本能であろう。やはりその分も見てやらなければならぬだろう。それにはやはり持ち家住宅というものも無視するわけにはいかないから、いまの貸付金額をもう少し高めてそれに対する金利をもう少し安くしてあげるような方法をとったらどうなんだ、こういうようなことも私は申し上げまして、先ほど言ったとおり、いまそれらの面については何とか考え直す必要があるというので、次官が中心となってその協議会を開いてしょっちゅう協議をしている、こういうようなところでございます。
  180. 井上普方

    ○井上(普)委員 長谷川大臣この無能力な住宅公団のことで頭がいっぱいなんで、私は概論をお伺いしておるのだけれども、いつの間にか公団住宅についてのお話になってしまう。私はそうじゃないのです。あくまでも持ち家住宅政策というものが今後若い世代の諸君に対して期待することがわれわれの世代からして無理である、こういうことを私は申しておるのです。  ここに住宅金融公庫が調べた「持家取得家計モデル(昭和五十年度)」というのがございます。これを見てみますと、こういうことになっているのですね。大体年間所得税込みで三百万円の人が三百万貯蓄をしておっても、千二百万円の土地つきの家は買えない。というのは、あと九百万借入金をして、この間問題になりました住宅ローンを九分に計算いたしましても、大体収入の三二%を住宅につぎ込まなければ持ち家はできない。四百万円の方で、四百万円貯蓄をしておってその上に一千百万円を借りた人は、大体収入の二九・七%を償還に充てなければならぬということなんです。だから実際問題としましては三〇%近いものを払わなければならない。四百万円でですよ。五百万円の世帯にいたしましても、これも五百万円を持っておって一千万円を借りたといたしますと、これが大体収入の二二%を償還に充てなければならないということになるのです。これは部外秘なんでしょうね。部内限りの資料といって判こついてありますけれども、これを見てみますと、三大都市圏においてはもう民営の借家から自分の持ち家を持とうという者が現在でも非常に減ってきておるのです。都内の民営の住居費は、これは高くかかります。それで、どういう連中が公庫に申し込むのが一番多いのかといいますと、これは給与住宅、公務員住宅の人たちです。こういうような実態であります。  したがいまして、私が先ほど申しましたように、これからの若い世代の諸君は、核家族の進行あるいは低成長経済の中において、しかも年金等等賦課金が非常に高くなってくる、かけざるを得ない現状になる。こういう実態の中において若い世代に持ち家を持たすという政策は、私は不可能に近いと思う。したがって、環境のいい公共賃貸住宅を大量にいまから用意すべきじゃないか。これに逆行しておるのがこの第三次五カ年計画であると申しても過言じゃないのであります。経済企画庁長官、どうです。
  181. 倉成正

    ○倉成国務大臣 建設大臣からお答えされた方が適当じゃないかと思いますけれども、私どものつくっております前期経済計画の中では、五十年価格の百兆の公共投資の中で公的賃貸住宅を六兆五千億、これは用地費を含んでおりますが、これを考えておるわけでございまして、そのほか、民間住宅について七十兆の五十年価格の累積額を五十五年にというのが私どもの計画でございます。したがいまして、この中身について、持ち家を推進していくということも項目の中に書いておるわけでございますが、住宅政策の基本は、やはり宅地の供給が一つと、それからこれに関連公共施設をどう整備するかということと、それからいまお話しの住宅についての金融あるいは配慮をどの程度やることができるかということにあろうかと思うわけでございまして、御指摘のように、いまの収入で実際持ち家を持つということは非常に困難な状況になっております。  しかし、この問題については、今後いろいろな施策を進めることによって解決できるのじゃないかということを考えておりますが、政府としての責任ある施策については、大蔵大臣また建設大臣からお答えいただいたら結構ではないかと思っております。
  182. 井上普方

    ○井上(普)委員 大蔵大臣いかがでございます。
  183. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のように、これからの若い人が自分の持ち家をつくっていくということはまことに困難なことだと私は思います。将来の政策といたしまして、持ち家とそれから賃貸住宅、そういったようなものを適当にあんばいしていくというような政策は非常に重大なることであろうと思いまして、そういうふうに研究してまいりたいと思います。
  184. 井上普方

    ○井上(普)委員 適当にあんばいするとおっしゃいますけれども、適当にあんばいせられたものがことしから始まるこの第三次五カ年計画なんです。これによると、民間自力建設住宅に重きを置いておるのです。しかも、それは五十年までの過去五カ年間の実績によって民間自力建設計画を立てておるのです。実際問題としましたら、四十七年、八年、年間に民間で百二十万戸から三十万戸建ったのです。しかし、そういうことはもう望めない。望めないとすると、いま一千万世帯に及ぶところの住宅困窮者、これらに対して一体どういうような手を打つのだ。この五カ年計画の中で九百六十万戸ともかく建てるということに決めておる。そのうちで民間自力にはともかく五百十八万戸頼るのだという計画なんです。これでは計画は達成できないし、国民の住宅困窮度はさらにさらにひどくなってくる。ここでこの五カ年計画を根本的に改めて、公共賃貸住宅、しかも、それは通勤距離は一時間半ないし二時間というような不便なところに建てるのではなく、ともかく通勤可能なところに大量に快適なる住宅を建てるという必要があると思うのです。この五カ年計画は、民間自力を中心にして考えられた計画なんです。したがって、これを根本的に改める必要があると思うのですが、どうでございます。
  185. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 何の異存もありません。したがって、そういうような措置をとらなければならない段階に入ってきておることも事実であります。  ただし、私の方では、お答えはこういうふうにしておけというのもありますから、一応読みますから……(「そんなばかなことがあるか」と呼び、その他発言する者あり)いや、それはあるのです。これは基本方針ですからあるのです。基本方針はあるけれども現実はいまおっしゃったような方向になっているんだ。ですから、これのとおりにはなかなかいかないので、政治ですから、そういう面の解決はただいま御指摘になったように解決していかなければならぬ、こういうことを申し上げるのでありまして、ですから、私は別にこのとおりあれするというのではない。やはりこれから先というものはそういうふうなところに重点――なぜ解決がつかないかというのは、申し上げたとおり、つまり調整区域だとか、こういう面の土地は持っているけれども、用意はしたけれども、なかなか自治体との折衝がうまくいってない、こういうようなところに非常に大きな隘路があるわけでございます。ですから、ただいま井上さんのおっしゃるような、まさにその方向づけは、こういう隘路になるべきものをどうやって片づけるか。国がある程度責任を持っていかなければならぬ。先ほど申し上げたように、上下水道から始まって、学校施設から始まって、このごろは火葬場までつくるか、それならこれは許可するというような事態まであるわけでございますから、そういう面の解決を政府責任を持ってつけなければ、この問題は解決がつかないんだ。ですから、これには相当思い切った施策をやっていかなければならない。御指摘の面についてはそのとおりでございます。だから、そういうふうな打解の方法を五十二年を期してやっていかなければなりません、こういうふうに申し上げておるのです。
  186. 井上普方

    ○井上(普)委員 それではもう一度、これは念を押すようなかっこうになりまして恐縮でございますが、この五カ年計画はもう一度改定するんですね。
  187. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 基本方針ですから改定をすることはすぐできませんけれども、申し上げたように、たとえばいまは量よりも質を選んできておるという実態、現実。かつては六畳の間一間借りられれば、くにへ手紙をやって、お父さんが大喜びで近所じゅうを回って歩いた時代もある。その時代の考え方といまは違うのです。二DKができて、二DKが借りられたといって喜んでいたときもあるが、現在は違ってきておるのですから、量をたくさんつくることはそれでいいけれども、それと現実に沿ったやはり質という問題に重点を置く必要もある。こういう面の考え方、同じものをつくっていくのじゃなくて、こういう質のいいものをつくって、住みよいもの、いま現在要求されているようなものをつくることに変えていかなければならぬじゃないか、こういうような指示を与えているところであります。
  188. 井上普方

    ○井上(普)委員 大臣、違うのです。この質の転換ということが第三次五カ年計画には大きく一番に書かれておるのです、目標の。そのもとにおいてこの計画が立っておるのです。ところがこの計画は、それでは公共賃貸住宅を大量に建てるということになると国の財政がいけぬから、だから民間自力の方へほうり込んでしまえということで、民間自力を中心にしてこの五カ年計画というものは成っておるのです。だから、この民間自力建設を中心にしたこの五カ年計画を根本的に改める必要があるというのが私の主張なんです。これはもう政治家同士の話なんだから、大臣に……。
  189. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 一応五カ年計画は五十一年度に決定をしておりますので、五十二年度を迎えようとしておるのにもうこれを根本から変えようという考えではなくて、基本方針はそこに置いて、そして現実に合った政治的な問題の解決をつけていかなければならぬ。現在要求される面はその書いたとおりだというわけには先ほど言ったようにいかないから、こういう面をひとつ変えていこうじゃないかというのは、先ほど言いましたように、量じゃないよ、それからいま言ったように民間の問題、民間に移行していく――それは民間も結構だけれども、公的住宅そのもの自体がそういう要求にマッチする住宅の方へ移行していかなければならないじゃないか、こういうことを言っておるわけでございます。
  190. 井上普方

    ○井上(普)委員 この五カ年計画というのは根本的に変えなければならぬと私は思うのです。そこで、大臣もいまの現状については十分に御理解になっていない点も多々あるだろうと思いますが、しかし、いずれにいたしましても、この民間自力建設に中心を置いたこの計画というのは、さっき申したとおり私は改定する必要がある。それはいまからやらなければだめなんだ。おっしゃるように、国の責任においてやらなければならぬことをいままでやっていないがために、自治体から団地形成については拒否せられてきたのであります。その傾向は特に四十三年ごろからあらわれてきました。したがって、昭和四十七年には建設委員会の中において、公共施設、これに対して一体国の負担はどうすべきかという小委員会をつくって、それの答申を出しております。しかし、それも実際には、いま各地方自治体から指摘せられておるようなことを全部盛り込んであるにもかかわらず、政府がこれを実施しなかったからにほかならない。これはやはり住宅政策に対する国の、何と申しますか冷淡な、金の支出をちびったところに問題があるのだと私は思う。そうじゃなくて、将来の人口、若い世代の諸君に対するわれわれの責任として、これはイデオロギーを別にしての話でもよろしいんです、われわれがしなければならない責務があると私は感ずるがゆえに、あえて住宅問題をこうやって取り上げるのです。したがってこの五カ年計画を変え、公共賃貸住宅に中心を置き、さらに先ほど来おっしゃるように、民間自力につきましても、ある程度その金利の負担を国が持ってやる、補助金を出してやるという政策をいまから実行すべきじゃないでしょうかと私は申すのですが、いかがでしょう。
  191. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先ほども申し上げたとおり、いずれにしても、世帯数と住宅数を調べてみましても、世帯数よりも住宅数の方がたくさんふえているこの現実は、いまはそのとおりでいい、しかし、なぜいままだ住宅問題がこれほど話題になってくるか、常に住宅の問題が論議されるか、こういうことはやはりそれだけ国民全体が住宅という点について考えられているということが問題になってくるわけでございますから、おっしゃるようにいますぐこれを基本から変えて、そして全部公的にするように方法をとれと言ってもなかなか困難だと思うのです。ですから、お話は十分わかりますけれども、その基本は昨年つくったばかりでございますが、なるべく御期待に沿うような方向づけだけはしてまいりたい、こういうふうに思っておりますものですから、私が就任してからまだ二月の間でございますけれども、わざわざ住宅問題にもっと重点を置かなければならぬ、水問題に重点を置かなければいかぬ、こういうことで住宅問題の協議会を省内につくって、次官が委員長になりましてやっております。さらに、この中に民間の人たちも、学術経験者というか、いろいろそういうような方も入ってもらってさらに検討をして、民間の問題、公的の問題、こういう問題をもっと、一段と協議をする必要があるじゃないか、だからその問題をもう少し詰めてみたらどうだということで、まだ発足して十日ばかりでございますけれども、そういう点については十分に検討を加えております。ですから、きょうここでそういたしますとは申し上げられませんけれども、御期待に沿えるような方向づけだけはしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  192. 井上普方

    ○井上(普)委員 長谷川大臣もこの住宅問題に目をつけられたところにつきましては私は敬意を表するのです。実際、いままでの住宅政策というものは国民の要求にマッチしていない、生活実態にマッチしていない、この計画が私は五カ年計画だと思うのです。しかもそれを実施する部隊であるところの住宅公団が、私から言わしますと無能力を露呈しておる、こう言っても過言じゃないと私は思うのであります。  ここで住宅公団の総裁が来られましたので、住宅公団につきまして少し質問をいたしたいと思います。
  193. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 その前にちょっと一言。御指摘のような点もございますので、住宅問題についてというのは公団自身もみずから振り返ってみる必要があるではないか、そういうことをあわせましていまいろいろの委員会をつくって協議をしておる、こういうことでございます。
  194. 井上普方

    ○井上(普)委員 住宅問題を解決しなければならぬでしょう。特に住宅公団につきましては一万二千戸もの空き家をつくっているのです。それで通勤距離が一時間四十分、五十分とかかる団地をざらにつくっているのですから、通勤する人は大変です。入らないのがあたりまえで、少し家賃は高くてもと言って都心へ舞い戻ってくる現状にあるのです。このエネルギーたるや大変なんであります。しかし、この住宅公団について、たとえて言いますれば、ただいまいみじくも建設大臣がおっしゃったように、公共施設について当然国が受け持たなければならない、新しい団地をつくったならば学校が要る、あるいは病院も要る、これはあたりまえな話なんです。そこらの計画を地方自治体に押しつけて、町田市のごときについては、多摩ニュータウンのところは、年間に六つか七つずつ小学校、中学校をつくらなければいかぬのです。自治体とすればたまったものじゃありませんよ。当然国はそれについて考えてやるという方法をおとりなさいということを私らは四十七年に勧告しているのです。衆議院の建設委員会は勧告しているのです、もうすでにその徴候があったのだから。それをいままでともかくサボってきておるのが政府じゃありませんか。財政支出が大き過ぎるということで、地方団体に対して補助金を与えなかったのは大蔵省じゃありませんか。ここに問題があるんだ。単に公団の無能力を責めるだけでは事は済まない、挙げて責任政府にある、こういう立場で物事を考えていかなければ解決がならないんじゃないかと私は申し上げたいのであります。  したがって、公団住宅にいたしましても、この五カ年計画では、前の計画からは減らしておるのです。うんと減らしているのです。こういうようなことでは、先ほど申しましたように、公共賃貸住宅を大量に建てるということを私に同意された建設大臣としては不本意でしょう。したがって、私は先ほど来申しましたように、この計画は根本的に変えなければだめですよということを申しておるので、大体建設大臣の同意を得られたので、私はそれを強く期待いたしたいと存ずるのであります。  そこで、住宅公団について私らは申すのですが、一万二千戸もの空き家がどうしてできたのだ。原因は、遠いということ、狭いということ、家賃が高いということ、この三つなんです。通勤距離が一時間半から一時間五十分、二DK、いまおっしゃるように。そして家賃はと言いましたら五万円か六万円、これじゃ入る人がなくなるのは当然じゃありませんか。しかも金利は、政府の金利負担を入れますと、金はいかにも信託銀行とかあるいは他の銀行から民間資本も入っておりますけれども、公団が使っておる金利というのは五分五厘じゃありませんか、あるいは五分じゃありませんか。これでなぜ家が建たないんだ。私の直感から申しますならば、昭和三十年に住宅公団をつくってから今日に至るまでもう二十数年過ぎてきた。したがって公団というものは、当初の目的の効率のいい仕事をするんだ、民間のエネルギーを利用する、同時に片方、計画的にやっていく政府といいますか、公の両利点を利用するんだという考え方で発足したんだと私は思う。ところがいつの間にか、公団それ自体の性格が官僚化しマンネリズムに陥っているのじゃないか。ただ家さえつくれば、計画の四〇%か五〇%にすぎませんでしたけれども、計画のとおり戸数さえ建てればいいという考え方でつくったがために、一団地全部上水道がないという団地もつくりました。非常に計画性に欠けておる。これは一つには、私は建設省にも責任があると思う。すべて建設省で計画を立てたものを実行を公団にやらしておるからにほかなりません。ある人が、これも笑い話でございますけれども、住宅公団へ行ってその後で建設省へ行ってみると、建設省の役人の目の色と公団の役人の目の色とが違う、こういうようなことを申す人もあったのです。なるほどなということを私は感じました。そこには働く意欲というものがあり、やはり自主的に物事を計画する能力を公団に与えてやるべきだ、私はこのように思いますと同時に、根本的に公団を改組する必要がある。余りにもマンネリズムに陥り、官僚化した公団に対してメスを加えなければならぬ。根本的に考える必要がある。あるいは宅地取得を別の機関に渡すとか、あるいはまた管理部門だけは管理部門だけにしてしまうとか、こういうようなことを考える時期が来ておるんじゃございませんか、どうでございます。
  195. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 あの石油ショックごろからと言おうか、あの前、先ほど御指摘の四十三年とおっしゃいました、その後、四十四、五年ごろまでには、ああいう住宅ができることを歓迎をしていた市町村があるわけですが、きょうこのごろに至ると私がこの間うちからわずかな間行って住宅問題をいろいろ調べていってみますと、このごろは喜んで受け入れてくれているところがないということ、おっしゃるとおりなんです。ではどうしてなんだということは、これが来れば学校をつくらなければならぬ、下水道の問題がある、道路の問題もある、たくさんの問題がある。それを一切つくらなければ、たとえば民間デベロッパーにしてもそのとおりであって、それをつくる約束ができるならばこれはつくってもいいけれども、その約束ができないならつくらせないということもある。そういう面について一切お引き受けをしてしまうと、公団も、おっしゃるようにやはり家賃にかけなければならぬという面もあるでしょう。ですから、こういう面を今度は建設省自体そのものが道路の問題、下水の問題等々と、上水道の問題は別個としても、あらゆる面、学校の面もしかりであろう、国でそういうような面はなるべく見るようにしなければその推進というものは行われない。おっしゃるとおりだと思うのです。  私は、今後はそういうような住宅政策というものを変えなければならぬし、それから公団そのものも、いま御指摘があった官吏、お役人だというものではなくて、これも一つの営業で、営利が目的じゃないじゃないかと言えばそれはそのとおりだ、営利は目的ではないけれども、貸し家住宅をやる以上はやはり一つのPRと、それに対する御期待に沿うようなサービスというものが必要であるということは当然なんだ、ですから、そういう方向に向かって進むように今後の指導をしなければならぬ。また寄ってくると同じことを言うのですけれども、そういう面をもう少し考えてみろというので、この間わざわざ委員会をつくらした、こういう意味でございます。
  196. 井上普方

    ○井上(普)委員 長谷川さん、私は失望しましたね。あなたのお話だったら、PRはしなければならぬ、サービスはしなければいかぬ、そんなことを考えるような住宅公団であってはならぬと私は思うのです。当然に住宅公団というところは低家賃であって、われわれが入るのにまことに快適な住宅であるという実績を示すことがまず第一番じゃありませんか。しかも、あなたのお話のその委員会なるものをつくったら、それがPRとかあるいは国鉄のようにサービス、でかでかと一面の新聞記事を書いてみたり、広告を出してみたり、そんなことではだめなんです。実際問題とすれば、あなたは先ほどもいみじくもおっしゃった、学校を建てる、下水道をつくる、これは国の責任でもってやらなければならぬ、それも怠っておったんだとおっしゃる。そのとおりなんです。多摩ニュータウンの将来の人口を何ぼと考えています。多摩ニュータウンは四十五万の人口を考えているんですよ。四十五万の人口に対して当然学校は幾つ要る、下水道は通さなければならぬ、上水道は通さなければならぬ、交通体系はどうするんだ。当然それの配置を考えると同時に、地方の自治体との間に、これはこれだけ私の方が持つということをはっきりさせておく。これは決していま起こった問題じゃない。昭和四十三年ごろからすでにもう地方自治体から拒否反応が出てきておるのです。だから、国とすれば団地をつくるに際してはこれだけやらなければならぬということを、衆議院は政府に対して勧告しているのです。それをいままで怠ってきておるのです、あなた方は。いいですか、あらゆる点において、あらゆる審議会なるものもそれをおっしゃってきたのです。それがいままで実行できなかった。これはあなた方の責任ももちろんあります。同時に、国全体としての財政的な考え方から、地方自治体にこれを持たすのがあたりまえじゃないかという考え方でずっと終始してきたのです。四十八年の予算から多少よくなってきた。けれども、まだ十分じゃない。それは四十五万の人口をつくったら、火葬場をつくれというのもあたりまえの話です。大きな総合病院をつくれというのもあたりまえの話なんです。これを怠ってきて、すべて地方自治体にこれだけ人間ができてきたんだから、さあ学校をつくれ。一体政府はどれだけ補助金くれるのですかということになるのは当然じゃありませんか。
  197. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 井上さん、誤解をしているのです。私の言ったのは、私が言葉足らずだかもしれないけれども、いま私のところへ陳情に来るのは、たとえば、水道管とか下水道のどこかの管の一部が壊れても、なかなか公団自身で手がなければ直さない、言ってもすぐやってくれない、こういうところの不満がたくさん来ます。ですから、サービスとは、そういうようなものを迅速かつ丁寧にやる方法を考えてやらなければいかぬというのがサービスだと私は考えている。私は、公団自身がサービス、PRといったって、何も家ができましたから借りてくださいというPRをやれというのではないのです。基本はそのとおりだ。しかし貸したからいいや、おれは大家だからといって公のものだ、おまえたちに貸してもうけるためにやっているのじゃないぞというその態度で取り扱ってはならない。ですから、いろいろなことを言って、細かい話のようだけれども、たとえば下水道のどこが破れても、どこがちょっと傷んでも、家が傷んでも、指定された住宅公団のそれより直すことができないということ、そういうことであってはいけないじゃないか、もっと迅速にサービスをしてやるようにしてやらなければいかぬ。貸してある以上は、大家さんがやるのはあたりまえなんだからやるんじゃないかという話を、私はそういう話じゃなくて、サービスとはそういう細かい点をサービスと申し上げたわけでありまして、そういう点誤解のないようにひとつ、私の言うことは言葉足らずだかもしれませんけれども、誤解のないようにお聞とり願いたいと思います。
  198. 井上普方

    ○井上(普)委員 いま例に挙げられたところが、私は、公団が官僚化しておるのじゃないかと言うゆえんなんです。公団というのは民間のいいところと官庁のいいところと両方ミックスさせて効率的に仕事さすというのが公団の発足の当初からの目的じゃございませんか。それを怠っておる。ここに私はいまの公団全体を覆うところのマンネリズムがあるのじゃないだろうか、あるいは官僚主義に陥っておるのじゃないか。(「天下りだ」と呼ぶ者あり)しかも、いま発言もありましたように、理事というものは、役員というものはほとんどが天下り、しかもこれは大量におる。おととし、私は官庁名簿を見てびっくりしたのですが、住宅公団の理事といったら専売公社よりも電電公社よりも理事が数が多いのです。こういうようなことになっているからマンネリズムに陥り、割拠主義に陥り、セクショナリズムに陥ってやってきておるのであります。これを、長谷川建設大臣のおっしゃる次官を長とする委員会の意向もわかりましたけれども、もっと根本的に公団それ自体を私は考える必要があるんじゃないだろうか。あるいは宅地については宅地整備公団の方に任すとかいうような、分断して新しい活力を入れる必要があるんじゃなかろうか、私はこう思うのです。それはどうです。
  199. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御指摘の点は十分考慮する必要があると私も思っておるところでございます。
  200. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は長谷川大臣の勇断をひとつ期待いたすものであります。  そこで、これは単に住宅公団のみならずあらゆる特殊法人についてもこのことが言えるのじゃなかろうか。マンネリズムに陥り官僚主義に陥っておる。先日来の輸出入銀行の話を聞いておりましても、どうも答弁それ自体が、まあ役人出身でありますから、大蔵省の古手がみんな行っているんだからこれは無理もございませんけれども国民の声というものに対して耳を傾ける姿勢が乏しいんじゃないかと、このように私は思うのであります。  そこで官房長官、どうでしょう、政府委員の中に公団の総裁とかあるいは特殊法人の連中が全然入っていない。ここで住宅公団なり道路公団の総裁を呼ぶとしましたならば、一々参考人として呼ばなければならぬということ、これ自体に問題がある。実施部隊はもう公団に任しておる。ところがその公団がいつの間にかマンネリズムに陥るというのも、国民の声、言いかえますならば、われわれは国民を代表してこうやってしゃべっているのです、これを真剣に聞く機会がないからだと私は思う。でございますので、公団の連中を、特殊法人の連中をやはり政府委員に任命して、そしていつでもここで、国会において喚問ができる、答弁させる方法、これを考えなければならぬと思うのです。常にこれらの議論を聞かしておく必要があると思うのですが、どうでございます。
  201. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘の数々は非常に参考になる意見が多いわけでありまして、特殊法人の役員が国会の意見並びに国民の声を反映するような方法を講じなければならぬと思っております。いまは、いまおっしゃいましたとおりに、説明員または参考人として出てきておるわけであります。その根拠法は、これは国会法六十九条でありまして、国会がつくられた法律でございまして、そこで、その中の文言は、内閣は、国務大臣を補佐するため云々とあって、政府委員を任命する。この文言からして、政府委員とは、大臣が所管する省の職員をもって充てるのが妥当である、こういうのが、所管大臣が所管をする省の職員をもって任命するというのが衆議院法制局の御意見であると聞いております。  そこで、国会においては、いままではこれを監督しておる所管大臣が運営その他については御報告しておったわけであります。そしてまた、何か実際上の運営の面について意見があり、あるいは問題があった場合に、説明員、参考人として呼んでおります。  そこで、しかしいまおっしゃいましたことは非常に大事でありまして、ややもすると、特殊法人が民間の悪いところと役所の悪いところを、両方悪いところばかり持っておるというようなことになりかねないおそれもありますから、この国会法を御検討願うなり、あるいはこの六十九条を基準にして、運営面からいまあなたがおっしゃいましたようなことをやる必要があると考えております。
  202. 井上普方

    ○井上(普)委員 時間がございませんので、私はその点につきまして私の不勉強であったことを率直に反省したいと思います。しかし、いずれにしても、これは国民の声を聞かす機会、常に聞いておるということをやらさなければ、先ほどあなたのおっしゃったような、どこかの公団みたいに民間の悪いところと官庁の悪いところと両方ミックスしたような形になるおそれがあることを私は非常に憂えるのであります。  そこで先般も、私はきょうは住宅問題ばかりになりましたけれども、労働大臣、あなたが先般、私は総括質問におきまして時間がなくてまことに失礼であったのでございますが、財産形成の貯蓄ということをやらしております。これは非常に大大的に宣伝いたしたのでありますけれども、実際上住宅財形というのは、あなたのお話によりますと、政府の割り当てすらも消化できないような状況だという話であります。聞いてみれば労働省も、石田さんから初めて私は聞いたのですが、労働省の職員組合との間に契約も結んでないということではこれは困ると思うのです。しかも退職する、あるいは職場を転勤した場合、これが打ち切られるという現状があります。大蔵省の直轄下にある専売公社等、一度は結んだんだけれどもめんどうくさいからといって、まだ当局側が住宅貯蓄を実は拒絶しておるような現状であります。  あなたはどうお考えになります、あの法律を所管せられるあなたとして。しかも使用者はこれを結ばなければならないと法律で義務づけているのですね。それをやってない。政府の職員組合に対し、あるいは労働組合に対して結んでないところもたくさんあるのです。各省ともそうなんです。どうお考えになります。
  203. 石田博英

    ○石田国務大臣 実は財産形成政策というのは、昭和三十九年に私が三度目に労働省へ参りましたとき検討を命じて、四十六年から発足したものであります。貯蓄の方は非常に伸びまして一兆一千二百億円くらい、加入勤労者数は五百六十万に達して、こっちはまあいいのですが、いまの御指摘の住宅貯蓄の方、これは件数にして一割くらい、それから金額にいたしまして二割くらいなんですね、つまり家を建てるために金額が多少張りますから。で、後で具体的な数字は御入り用なら政府委員に説明させますが、枠を十分に消化できない。なぜ消化できないかというと、第一には、この契約を結ぶときに事業者が、家を建てるときは貯蓄額の二・五倍まで融資をするという約束を従業員に対してしなければならぬという、その二・五倍の二倍に当たる分は比較的低利の融資をする制度があるわけなんです、いまの資金から。これが第一なかなかできない。それから第二は、その住宅貯蓄をいたしますと、最高五万円まで税額で免除することになっている。しかしいまお話しのそれを途中でやめた場合は、その五万円までの分については、途中でやめたのですから、つまり税額を免除するという条件が壊れたわけですから、戻さなければならぬ。その戻す場合の手続を事業者にさせるというものですから、事業者がそれを厄介がるわけなんですね。このことは制度、税制上から言ってはやむを得ないことだとは思いますけれども、しかし何かもっと便利な方法、気楽に申し込める方法というものを主税当局と折衝をしてひとつやらなければならぬ、こう考えて、いまさらに折衝を命じております。  それから、肝心の労働省の契約ができていないということを私も今度労働省へ来まして知りまして、ちょっと唖然としたのであります。それで速やかに実施をするように、契約をするように進めております。  それから、会社をかわった場合、かわった先の事業者が理解を持って契約をしてくれれば、それはそのまま継続するわけなんですが、その理解を持ってくれない場合は、やはり税法上、家を建てるからといって税金をまけてもらっているんですから、そこのところが厄介だと思うのです。しかし、それも住宅貯蓄の制度自体をまだ知らない――貯金の方はみんな知っていますけれども、制度の運営については、まだ知らぬ面もありますので、こういうものの運営をもっと簡単にさせたい、そう考えておる次第であります。
  204. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、最後に申し上げたいのです。政府の推進しなければいけない労働省においてすらかくのとおりです。建設大臣、これで持ち家ができますかということなんです、本当の話。おたくの建設省の労働組合でも恐らく結んでいないでしょう。職員組合との間に結ばなければならないのです。それほどまでに冷淡な政府が、五カ年計画において持ち家を推進させようとする、これを中心にするというのは逆行しているじゃないか。それから労働大臣おっしゃいますけれども、これは西ドイツの制度を導入せられたんだと私は思うのです。しかし、西ドイツとはよほど違いましょう。住宅貯蓄をやった場合には、七年間貯蓄をすれば、税金はまける上にもってきて、二五%のプレミアをつけるのです。そこまでいっておるから西ドイツにおいては住宅事情がかちっとできておるのです。いまのお話のように、手続においても非常にしちめんどうくさいことを日本政府は言う。その上へもってまいりまして、金額にいたしましてもみみっちく、税額において五万円しかこれを控除しない。西ドイツの住宅政策と日本の住宅政策を見ればまさに雲泥の差があると申しても過言じゃないことは、労働大臣御存じのとおりです。これをひとつ私どもは変えさせなければならない。根本的に住宅政策を改めて、公共賃貸住宅を大量に、しかも安く、環境のいい住宅をつくられることを強く希望いたしまして、私の質問を終わります。
  205. 坪川信三

    坪川委員長 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る三月一日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十二分散会