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1977-02-16 第80回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月十六日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稲村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       武藤 山治君    小川新一郎君       坂井 弘一君    春田 重昭君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    中井  洽君       米沢  隆君    浦井  洋君       寺前  巖君    大原 一三君       川合  武君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         行政管理庁行政         監察局長    川島 鉄男君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁長官官房         長       亘理  彰君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      竹岡 勝美君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      古賀 速雄君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         沖繩開発庁振興         局長      井上 幸夫君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         国土庁土地局長 松本 作衛君         国土庁大都市圏         整備局長    国塚 武平君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省証券局長 安井  誠君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         社会保険庁医療         保険部長    岡田 達雄君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁石炭部長   島田 春樹君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 中村  清君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省行政局長 山本  悟君         自治省財政局長 首藤  堯君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         参  考  人         (石油開発公団         総裁)     倉八  正君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     春田 重昭君   矢野 絢也君     小川新一郎君   大内 啓伍君     中井  洽君   河村  勝君     米沢  隆君   田川 誠一君     川合  武君 同日  辞任         補欠選任   小川新一郎君     矢野 絢也君   春田 重昭君     浅井 美幸君   中井  洽君     大内 啓伍君   米沢  隆君     河村  勝君   川合  武君     田川 誠一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、石油開発公団総裁出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  4. 坪川信三

    坪川委員長 続いて、総括質疑を行います。二見伸明君。
  5. 二見伸明

    二見委員 本日は、エネルギー問題、行政改革地方財政等についてお伺いしたいわけでありますけれども、本論に入る前に法務大臣の御見解を承りたいことがあります。  それは、けさのニュースでも報道されましたように、きのう、仙台の高裁でもって、弘前大教授夫人殺人事件に関する那須隆さんについての判決がございまして、殺人については控訴を棄却して無罪とするとの判決が出されました。これに関して法務大臣の御見解を承りたいわけでありますけれども、三点ございます。  一つは、この判決検察側は尊重するのかどうか。もう一つは、那須さんは冤罪であったわけでありますが、那須さんの失われた人生、また失われた名誉に対して国はどのような償いをするのか。もう一つは、こうした問題の背景には再審開始に至る要件が非常に厳しいのではないかという指摘があります。そうした問題点指摘されているわけでありますけれども、そうした点について法改正をするお考えがおありかどうか。法務大臣の御見解を承りたいと思います。
  6. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  この事案につきまして無罪が確定をいたしましたことは私も承知いたしておるところでございますが、これについて検事側控訴するかどうかという点は、まだ報告を受けておりませんから、これは政府委員の方から感触をお答えする方がいいのじゃないかと思うのであります。  それから、こういうような無罪になった場合の賠償金といいますか、国としてどれだけの手当てをこれにしたらいいのかということについては、これは非常に少ない。われわれが見ても若干少ないような感じがいたすのでありますが、その額等についても政府委員から答弁させますが、これはやはり一つ問題点ではなかろうか。人生、長い間とにかく獄舎につながれておって、そしていま無罪になったという段階で、いかにも何か私は金額が少ないような感触がいたします。こういう点も政府委員から答弁をいたさせます。  なお、裁判について控訴といいますか、再審要求をすることについては、お説のとおり非常に厳しい条件が付せられておりますが、これはまた余りルーズにいたしますと裁判の権威というものがなくなるわけであります。しかしまた、できるだけ誤審をなくするという意味合いにおいてそういう面も考慮いたさなければならないかと思うのでありますが、これらの点につきましてもあわせて政府委員から答弁をいたさせたいと思います。
  7. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘の、判決に対しましていわゆる上告をするかどうかということにつきましては、判決そのものを尊重しながらも、法律的観点から、仙台高等検察庁としては最高検察庁と協議の上で慎重に対処するものと思っております。いまだ結論は出ておりません。  それから、これに対する補償の問題も、この無罪判決が確定いたしました場合におきましては、御案内刑事補償法によりまして、拘禁一日八百円から三千二百円という金額の範囲、恐らく従来の例からいきますと、確定いたしました場合には最高額でもって補償がなされるものと思いますが、これは裁判所の判断でございまして、最高一日三千二百円という金額拘禁の日数を乗じました補償金額が当然に支払われることになると思います。  なお、私どもとしては当事者に故意過失はなかったものと信じておりますけれども、これが国家公務員故意過失による違法行為であるという観点が認定されますならば、国家賠償法賠償の対象になる。その場合には、刑事補償法は、補償金額から、国家賠償を受けた場合にはその金額を差し引くということになっております。  それからもう一つは、再審事由を広げるべきではないかという議論は、日本弁護士連合会その他でいろいろ議論がなされておるわけでございますが、私ども考えますに、再審事由そのものは、御案内のとおり、今度の場合は、有罪の言い渡しを受けた者に対して無罪または免訴を言い渡すべき「明らかな証拠をあらたに発見したとき」というのが条件になっておりまして、この再審事由そのものはドイツやフランスの制度と比べて決して狭いものではない。問題はその解釈、運用にあるというふうに私ども考えておりますが、その解釈につきましても、最近の白鳥事件におきまして、いわゆる「明らかな」という判断を、疑わしきは被告人の利益にというたてまえから「明らかな」という要件解釈するという判例の方向が示されておりますので、制度そのものとして狭くないのみならず、解釈といたしましても従来よりも広がりつつあるということで具体的な正義は保障されるのではないかというふうに考えておりますので、再審事由そのものを広げるべきだとは思っておりません。ただ、再審の請求の手続において、たとえば国選弁護人をつけるとかあるいは口頭弁論主義にするとかいう手続そのものについては、なお検討を要する点があるように思っております。  以上でございます。
  8. 二見伸明

    二見委員 では、本論に入りたいと思います。  私は、エネルギー問題というのは今後の日本経済にとって最も重要な課題だと思っております。総合エネルギー調査会答申によりますと、昭和五十年から昭和六十年に実質GNP成長率六・六%を達成するためには、昭和五十五年で原子力が千六百六十万キロワット、LNGが二千六十万トン、石油が約四億キロリットル、昭和六十年ですと原子力が四千九百万キロワット、LNGが四千二百万トン、石油が四億八千五百万キロリットルが必要になるという答申が出ているわけでありますけれども、昭和四十八年度の石油依存度が七七・四%でございますから、それから比較いたしますと、昭和五十五年度は六八・九%、六十年度は六三’三%と低くなることはなります。しかし、依存度は低くなるけれども、絶対量としての石油は依然として大きいし、私はやはりエネルギー問題の当面の中心課題石油にあるだろうと思います。  総理大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、石油需給についてはいろいろな説があります。一九八〇年代の後半から国際的に需給が逼迫するのじゃないかというようないろいろな見通しがありますけれども、総理は、大体いつごろから石油事情が悪化するというふうな見通しをお持ちになっているかどうか。
  9. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はしばしば申し上げているのですが、これからの世界情勢というものは、資源有限時代という意識のもとに動かなければならぬ、こういうことでございます。そういう前提に立ちますと、資源エネルギー供給、その前途はなかなかこれはむずかしいと思うのです。しかし、これが昭和五十五年の時点で相当大きな問題が起こるというふうには考えておりません。あるいは昭和六十年までの時点、この辺、まあまあそう大きな問題はなかろうか、こういうふうに思うのです。しかし、昭和六十年以降というような時期になると、石油供給問題、これは非常に深刻な問題になってくることを考えて対処しなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。しかし、石油にかわる新しいエネルギー源開発されるか。核融合、太陽熱、といろいろ言われておりますけれども、これは客観的に二十一世紀を待たなければならぬだろう、こういうふうに言われておるわけであります。その谷間の時期ですね、谷間の十五年、二十年という間、一体どういうふうにするか。これはなかなか深刻な問題になってくるだろう。そういう認識で資源エネルギー問題にいまから対処を始めなければならぬ、こういうふうに考えております。
  10. 二見伸明

    二見委員 過日の当委員会で社会党の石野委員質問に対して、六十年度の原子力四千九百万キロワットはかなりむずかしい。むずかしいけれども努力するというような御答弁があったように私聞き及んでおります。石油にかわるエネルギー源としての原子力昭和六十年が一応四千九百万キロワットの目標でありますけれども、総理としては、何が何でもこれを達成させることによってエネルギー需給バランスを図ろうというお考えなのか。それとも、原子力にはいろいろな問題があります、立地上の問題もあれば安全性の問題もあれば、いろいろな問題を含んでおります。むしろ、四千九百万キロワットという目標値にこだわるんではない、場合によってはそれを下回ってもやむを得ないというようなお考えをお持ちなのかどうか。そこら辺はいかがでしょう。
  11. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 総合エネルギー需給計画をつくりましてからその後のエネルギー開発状態を見ておりますと、最も食い違いが出てきたのは原子力エネルギーなんです。当時、昭和六十年の時点で四千九百万キロワットという目標を設定したわけなんですが、そういう推移を見ておりますとなかなか四千九百万キロワットはむずかしくなってきている。できれば四千九百万キロワットを達成したいです。したいですけれども、客観的冷静に考えまするときになかなか目標達成はむずかしいので、それが減った場合に他のエネルギーをどうするかというような問題もあります。そういうことも含めまして需給計画を再検討しなければならぬ、かように考えております。
  12. 二見伸明

    二見委員 いまエネルギー需給計画を再検討されるという御答弁でございましたけれども、ということになりますと、昭和五十年代前期経済計画、これもある程度の手直しはやむを得ないということになりますか。
  13. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 石油需給計画は、これはかなりゆとりを持っておるわけです。二見さんもお話しになりましたが、六・六%成長を達成するに足る需給計画である、こういうわけですが、昭和五十年代の成長率は大体六%、そういうふうに見ておるわけです。それからその前期は六%強である、こういうわけでありますので、かなりのゆとりを持って考えておりますので、需給計画を変更したから経済中期計画長期計画を変更するということにはならない、こういうふうに考えております。
  14. 二見伸明

    二見委員 将来、石油にかわるエネルギーとして考えられるのは、これは原子力であります。私は、この原子力という、悪魔のエネルギーというものに対して非常に嫌悪感を持っております。できるならば、使わずに済むならば使わない方がいい。しかし、エネルギー事情考えれば、代替エネルギーとしては原子力に結局は頼らざるを得ないのではないかという考え方を持っております。したがって、原子力エネルギーを活用する場合には、安全性を確認の上にも確認しなければならないし、いまの安全性に対するわが国の取り組み方が決して十分だとは私考えておりません。しかし、それでもなおかつ原子力エネルギーに頼らなければならないところに、私は人類の一つの悩みがあるのじゃないかなという感じを持ったわけであります。  ところで、原子力エネルギーの主要な柱というのは、一つ天然ウランであり、ウラン濃縮技術であり、それから原子炉であり、それから再処理技術、こう思います。天然ウランはメジャーがほとんど押さえてしまったと言われておりますけれども、これは科学技術庁長官にちょっと見通しを伺いたいわけでありますけれども、原子力開発前提として、ウランを今後日本長期安定供給を受けることが間違いないのかどうか。それとも、アメリカか何かの事情によって、売ると言ったけれどもやめるよというようなこともこれから何年か後には起こり得るのかどうか。そこら辺についての見通しはいかがでしょう。
  15. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 代替エネルギー開発わが国産業経済のためにも欠くべからざるところでございます。したがいまして、わが国といたしましては今後原子力発電等々、原子力開発に全力を挙げていかなくちゃならない、かように存じておりまするが、御指摘のとおり、資源有限時代で、そのウラン自体も有限である。特に、わが国におきましてはおおよそ一万トンばかりしかございません。だから、どういたしましてもその核燃料は海外に仰がなければならないわけでございます。現在は、主としてカナダから輸入いたしまして、これをアメリカにおいて処理をしていただいて、そうして処理をされました濃縮ウランを輸入して、それを核燃料として使っておるというのがわが国原子力発電の実情でございます。  そこで、御質問ウランの確保は大丈夫かという問題でございまするが、一応われわれといたしましては、原子力発電による発電量六千万キロワット、これに相当するウラン契約済みである。同時に、そのウラン濃縮役務協定に関しましても、その役務契約を終えておるという段階でございます。
  16. 二見伸明

    二見委員 総理大臣にちょっと伺いたいのですけれども、昨年十月にフォード大統領ウラン濃縮技術使用済み燃料の再処理技術の輸出を凍結するという方針を明らかにしましたし、カーター新大統領もその方針を踏襲するのではないかと予想されているわけであります。もしそれがそのとおりその方針が実行されますと、わが国核燃料サイクルを確立するという時点では非常に大きな支障が出てまいります。さらに考えれば、わが国経済の根幹にもかかわってくる問題にもなるのではないかと私は思います。フォード声明、これは核の不拡散という大義名分が掲げられておりますけれども、それとは別に、アメリカに何かほかに軍事的あるいは経済的な、核というものを利用したねらいがあるのかどうか。この間モンデール副大統領が見えたときにも、この再処理についてのいろいろな話し合いがあったと聞いておりますけれども、その辺は総理はどのように受けとめておられますか。
  17. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 アメリカ考え方は、核が拡散されましてこれが兵器化する、武力化するということについての危険性を感じておるのじゃないか、その憂い、おそれを断つということを考えておるのじゃないか。これがフォード大統領がああいう声明をした意図である、こういうふうに私は理解しております。同時に、カーター政権におきましてもその考え方を踏襲しておるものというふうに考えております。
  18. 二見伸明

    二見委員 天然ウラン濃縮ウランを初め、核開発技術というものについては日本アメリカとの間の力の差というものはもう歴然としていると思います。アメリカは核をバーゲニングパワーとして、今後、たとえば日米外交に臨んでくるんじゃないか、こうわれわれは考えるわけであります。来月、総理大臣アメリカを訪問されます。カーター大統領ともいろいろな問題で話し合われるだろうと思いますけれども、聞くところによりますと、アメリカ原子力問題を重要議題として話し合いたいというような意向をわが国に示してきた、こう聞き及んでおりますけれども、その点については事実なのかどうか。また、日本としてはどういう立場で、どういう基本的な態度でもってその問題に臨むのか。そこいら辺を明らかにしていただきたいと思います。
  19. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日米会談の議題につきましては、まだ双方とも話をしておりません。おりませんが、あるいはただいま二見さんがお話しの核問題がアメリカ側から話があるかもしれない。そういうことがありますれば、これははっきりわが国の態度を言わなければならぬわけでございますが、わが国としては、アメリカ側のそうした核が拡散されて武力化するというおそれを持っておるということにつきましては理解を示す、こういうふうに考えております。しかし、その武力化する、兵器化するおそれのないわが国、そういうものに対する平和的利用のための核協力、これは妨げるべきものじゃない、私はこういうたてまえの主張をしたいと思っております。
  20. 二見伸明

    二見委員 これは交渉の問題ですから、見通しその他について伺うのは無理な話かと思いますけれども、アメリカが投げかけた問題というのは、日本だけをねらい撃ちにしているわけじゃなくて、いわば世界的な問題としてアメリカは投げかけておるわけです。その場合に、変な話ですけれども、日本だけ特別扱いしてもらえるのかどうか。日本だけは別枠として考えましょうというところまで日本として強力な交渉が可能なのかどうか。また、そこまでやってもらわなければならないわけでありますけれども、そこいら辺についての総理の決意はいかがでしょう。
  21. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 核が武力化、兵器化するということを阻止する、これは妥当な考え方であろう、こういうふうに私は思います。しかし、核の平和利用、これは、エネルギー資源、これの世界における先々のことをいま考えるとどうしても助長しなければならぬというたてまえにあるので、そのことにつきましてはひとりわが国ばかりではありません、これは世界各国共通した問題であり、共通した立場であろう、こういうふうに思います。ただ、その中でもわが国は特殊の立場ですよ。非核三原則を堅持いたしております。そういうような特殊な立場の国でありますから、特殊な立場であるということもとにかく強調はする、またできる立場でありまするけれども、同時に、核の兵器化の問題と平和利用の問題とは、これは別の問題である、普遍的な問題である、という立場もまたこれを堅持したいと思います。
  22. 二見伸明

    二見委員 私は最近、わが国の核エネルギー外交といいますか、それについては、いままで日本としても本気になって取り組んできたとは言いがたいと思います。むしろ、いままでエネルギーだとか資源だとかいうものはいつでも自由に入るんだというような気分がわが国にありましたし、したがって、エネルギー外交についても日本の姿勢というのは本腰ではなかったと私は思います。昨年十月、フォード声明が出されましたけれども、私は、これは突如として出てきたんじゃないだろう、アメリカがこういう考え方を明らかにするには、過去にいろいろな動きがあったし、アメリカ側のいろいろな意向というものが示されていたんではないかと思います。  これは外務大臣に伺いたいわけでありますけれども、一九七五年から七六年にかけて数回にわたってロンドンでもって核供給会議が開かれたはずであります。参加国名は明らかにしないというたてまえになっているそうでありますけれども、聞くところによれば、アメリカ、イギリス、ソ連、フランス、西ドイツ、カナダ、それに日本という七カ国がこの会議に参加していると言われているわけでありますけれども、核の問題について広範な話し合いが行われたわけでありますが、どういうような話し合いが行われていたのか。また、その会議での日本の役割りというか立場というのはどういうものだったのか。これをお示しいただきたいと思います。
  23. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの問題につきまして、国連局長から答弁させていただきます。
  24. 大川美雄

    ○大川政府委員 核の拡散防止の問題につきましては、御案内のとおり核拡散防止条約が国際間の協力の基本になっておりますけれども、この条約のほかにさらにいろいろその補完的な措置を講じていく必要がだんだん国際的に認められてきておったわけでございます。その一環といたしまして、ただいまおっしゃいましたロンドンにおきまして核技術及び物質、資材関係の輸出国が集まりましていろいろ協議をいたしたわけです。趣旨は、どこまでも核防条約の体制を補強、補完いたしまして、核関係の物質、資材の輸出を通じて拡散が行われることを少しでもさらに防ぐ方法を相談し合ったわけでございます。参加いたしました国は、当初は七カ国でございまして、現在では十四カ国に数がふえております。  ここで相談いたしました結果、核の拡散を防ぎますために輸出の面でどういう政策をお互いにとっているかということを通報し合うということを決めまして、その通報を昨年の一月にやった次第でございます。たとえば原子力関係の資材、物質を輸出したときに、受け入れた国がそれを核兵器あるいは平和核爆発にすら使わないことを約束させることとか、それから盗難防護のための十分な措置を講ずることを条件とするとか、いろいろ技術的なことがございますけれども、そういった趣旨で今日まで進んでまいっております。
  25. 二見伸明

    二見委員 昨年二月二十五日の報道で、アメリカの軍備管理軍縮局当局者は、日米など主要工業七カ国が核技術の輸出管理及び新しい歯どめの措置を開発する秘密協定に合意していることを確認したという報道が去年の二月二十五日にあったわけであります。この問題については、やはり昨年の四月二十三日の外務委員会で、わが党の渡部一郎議員の質問に対して、外務省は協定や条約という形のものはないと否定されたわけであります。しかし、アメリカの合同原子力委員会第二回年次報告によりますと、そうした取り決めがあったという報告がなされておるわけであります。それを読み上げますと、こういうふうになっております。「一九七六年二月二十三日、スチュアート・サイミントン上院議員を議長とする軍備管理・国際機関・安全保障協定小委員会の聴聞会の席上、軍備管理・軍縮局長のフレッド・C・アイクル博士は、アメリカが他の輸出国とともに将来の核輸出について一定の原則を適用することを決定したと発表した。アイクル博士の述べた諸原則は次のとおり。」と言って、幾つかの項目が列記されております。  私は、このロンドン会議の席上でいろいろなことが話し合われた、そして秘密協定という言葉が強過ぎれば、秘密の合意があったのじゃないか、そのときからすでにアメリカとしては核に対してはかなり厳しい態度を示していたのじゃないかと思うわけであります。ですから、フォード前大統領の声明にしてもあるいはカーター新大統領方針にしても、突如として出てきたのじゃなくて、私は、そうした火種というか考え方というものは、もうこの二、三年の間アメリカにあったのじゃないかと思います。しかも、西ドイツとブラジルの間で核協定が行われた。それに対してアメリカがかなり厳しい圧力を西ドイツに加えてきた。合同原子力委員会の第二回年次報告でも、そのことについてはかなり厳しい調子でアメリカ議会は言っておりますけれども、そうした状況が過去にあったのだから、わが国としてもそれに対応するだけの新しい核外交政策というものを考えておかなければいけなかったのじゃないかと私思うわけですけれども、その点について外務大臣、いかがでしょうか。
  26. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 核の拡散防止につきまして、特にインドが核爆発実験をやったというころから急に核に対する技術の問題、特に再処理の問題について大変な問題になったというふうに私どもは理解をしておりまして、日本としてもその方面につきましては、日本原子力開発を進めるために、平和利用を進めますために最大の努力をいたさなければならないときに来た、こういうふうに理解をいたしておるわけであります。
  27. 二見伸明

    二見委員 この問題について議論しても恐らくお互いに水かけ論になると思いますので、この程度に打ち切っておきますけれども、科学技術庁長官に伺いますけれども、アメリカ方針が変えられなかった場合、アメリカが既定方針どおりわが国に臨んできた場合には、ことしの夏に予定されております東海村の再処理工場、これは始運転が予定されておりますけれども、この始運転は取りやめになりますか、どうでしょう。
  28. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ことしわが国の再処理工場は、御指摘のとおりホットテストの段階に入ります。これはわが国の今後の核原子力開発の面におきまして非常に重要な試験段階を迎えるわけで、その経緯を踏まえて明年度からはいよいよ本格操作に入らなければなりません。そして先ほど申し上げましたとおり、核はまことに貴重な資源でございますから、だから、そのウランを極力有効適切に利用するその技術もわが国において何としても独自のものを開発しなければなりません。そうしたことで、今後わが国における核燃料サイクルの自主確立というものは、わが国の今後のエネルギー生産にとりましても本当に生命線だ、私はこういうふうに思う次第でございます。  だから、アメリカフォード大統領の声明が出されまして、多分カーター政権もそれを踏襲するであろうと思いますが、どのような範囲でどのような規制をするかということはまだ全貌が明らかになっておりません。だから十八日に、私の代理を務めていただいております井上原子力委員長代理をアメリカに差遣いたしまして、十二分に向こうといろいろの話をすることにいたしております。これはまだネゴという段階ではございません。最終的には日米原子力協定がございます。この日米原子力協定に基づきますと、アメリカより受領いたしました核燃料の再処理に関しましては、その保障措置に関して日米が同時に決定する、こういうふうな同時決定という重大な段階がございますから、私たちは、そういう段階を迎えるべくアメリカと十二分にわが国の立場を話していきたい。いやしくも断られて、そうしてホット試験ができないというような段階では、これは一大事でございますから、この辺は本当にわれわれの切々たるそうした気持ちをアメリカにも伝え、そうしてお互いにこの平和利用のために今後ともどもにやはりエネルギー問題に真剣に取り組まなくちゃならないというわれわれの真意を相手に伝えたい、かように考えております。
  29. 二見伸明

    二見委員 長官、ちょっと先の話になっちゃうわけですけれども、第二再処理工場を建設しようという計画がありますですね。昨年佐々木科学技術庁長官は、この第二再処理工場について、これを極東全体のものにするか、要するに日本だけのものじゃなくて極東全体の共同処理場にするか、あるいは日本だけのものにするか検討中だという答弁があったわけですけれども、長官は、この第二再処理工場については極東共同の処理場にしたいというお考えなのか、あるいは日本だけのものにするというお考えなのか、その点はいかがでしょう。
  30. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 再処理工場の第二工場が必要であるということは、これはもう論をまちません。現在の再処理工場が本格操作に入りましても、年間に二百十トン程度の処理しかできません。わが国の今日の計画をいたしております電源開発、原発から考えましても、これはとうてい無理でございます。したがいまして、第二再処理工場が必要なことは論をまちません。一方におきましては、IAEAが極東センターをつくってはどうかという話がございますから、昨年はその極東センターと第二再処理工場とのいろんな関係があるいは議論されたかもしれませんが、現段階といたしましては、私はあくまでも第二再処理工場は日本独自のものとしてこれをつくっていきたい、そうしてわが国独自の核燃料サイクルを確立したい、これでございます。
  31. 二見伸明

    二見委員 先ほど申し上げましたように、わが国の核エネルギー外交というのは確立しているとはお世辞にも言えないだろうと私は思いますし、このまま行きますと、日本経済的にもアメリカの核のかさの下に入り込んでしまうのではないか。いまアメリカがとっている態度を日本の立場から考えてみますと、アメリカは核エネルギー技術というものを戦略武器として一種の恫喝外交をやっているんじゃないかという感じさえするわけでありまして、日本の核エネルギー外交というものをいまこそ本気になってやらなかったならば、日本は軍事的にもアメリカの体制下に入り、核エネルギーを武器にして今度は核エネルギーのかさの下にも日本は組み込まれてしまうんじゃないかという感じがするわけであります。日本がこれから国際社会の中で生き抜いていくためには、アメリカとの協調関係は当然としても、アメリカと友好関係を結んでいくことは当然としても、いやしくもアメリカの軍事的にも経済的にも核のかさの下に入るということは、決して好ましいことだとは私は思いません。それに対して今後日本がどういう立場で臨んでいけばいいのか。たとえばアメリカ一辺倒にならずに済むために、ウラン供給先を多様化する、分散する、こういうことも必要だろうと思うし、あるいは日本型の技術の開発も私はこれから急務になってくるのじゃないか、アメリカに依存しなくて済むような体制をつくっていかなければならないのじゃないか、こう思います。その点について総理大臣はどのようにお考えになっているのか。
  32. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 原子力開発に関しましては、確かにアメリカより多少わが国の方がおくれておるであろうと思いますが、技術の面におきましては、今日、わが国も独自の技術を開発いたしまして、相当な水準に達しておることは事実でございます。たとえば、二十一世紀の夢と言われる核融合に関しましても、これのプラズマ実験において日本は世界でもまれなる成績を示しておりますし、あるいは今日においてはもう世界一であるかもしれないという学者がいるぐらいでございます。さらに一番大切な濃縮技術に関しましても、御承知のとおり遠心分離法を用いておりますが、この技術も高く評価されております。そういうことで、先ほど来申し上げております核燃料サイクルの自主的な開発、そして技術の確立、これはわが国独自のものとして将来にわれわれは期待を寄せてただいま全力を挙げておるというところでございます。
  33. 二見伸明

    二見委員 長官、ちょっと私の言葉を誤解されたようでありますけれども、もとのウラン日本にないのだから、結局それを武器にして、日本アメリカの核外交のもとにひれ伏さなければならないような立場に追い込まれるのじゃないかというおそれを私たち持っているわけです。そこでどうするのだと聞いているわけです。技術がアメリカより進んでいるとかどうとかというだけじゃなくて、もとが押さえられているのだから日本の立場は苦しいでしょう。こういうことなんです。
  34. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 長期に見渡しましたときには、確かにウラン資源がわが国にございませんから、その根っこを外国に押さえられておるという弱みはあるかもしれません。しかし、そうしたことをおもんばかりまして、先ほど来二見委員が御指摘なさいましたとおり、一九八五年、昭和六十年、このときに私たちは原子力発電四千九百万キロワットということを目指しておりますが、今日ただいまではややそれは至難な状況ではないかと思います。しかし、そうしたことを目指しながらも、先ほどお答えいたしましたとおり、六千万キロワット、これに相当する天然ウラン、それの確保及び濃縮技術役務契約、これを終了しておるから、その間にさらに核燃料外交を展開しなくちゃならない、かように申し上げておるわけであります。
  35. 二見伸明

    二見委員 もう一点伺いますけれども、ちょっと先の話になってまことに申しわけないのでありますけれども、日本型の技術が将来再処理まで含めて、特許の問題もいろいろ絡んでくるでしょうけれども、ワンパッケージでもって輸出できるまでになった、そうなると、実はこれはいまから考えておかなければいけない問題なんだけれども、わが国としては相手国も平和利用なんだからいいだろうと思ってワンパッケージで輸出する、しかし、相手の国はわが国の意図に反して、プルトニウムができれば原爆になりますからね、そうしたら軍事的に転用されるおそれもあるわけです。核不拡散という立場からいって、ワンパッケージでの輸出というのは、輸出産業としては非常に魅力的だけれども、今度は新たなる火種を日本がまくんじゃないかという別の問題も起こってくるわけです。この点についてはどういうふうにお考えになっているのか。あるいはこれは外務大臣の方がよろしいかと思いますけれども。
  36. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そういうおそれがあるからフォード声明が出され、さらにはカーター政権がより一層厳しい規制措置を講ずるであろう、私たちはそういうふうに考えます。  そのとき日本は仰せのとおり原子力基本法におきましても、すべては平和目的にかなうべし、こう書かれておりますし、特に原子力関係の資材及び技術、将来この輸出があるとするならば、これは当然原子力基本法に基づく平和利用、それに照らしての輸出でなければならない、私たちはかように考えております。  念のために申し上げますと、現在輸出されておりますのは圧力容器だけでございます。
  37. 二見伸明

    二見委員 私は、この輸出問題というのは、やはりそのときになると非常に大きな問題になってくると思います。わが国の方では平和目的だと言う。平和目的のために輸出したつもりであっても、相手国がわが国の意図に反した利用の仕方をする気になればできるわけであります。これは国際査察もあるかもしれないけれども、その気になればできるわけであります。私は、この輸出に対してはかなり慎重な態度で臨まなければいけないし、場合によっては非常に魅力のある、これは商売という点から見ればあるいは魅力があるかもしれないけれども、ちょうどいま武器輸出をわが国ではしないのと同じように、そのぐらい厳しい態度で臨むことも検討していく必要があるのじゃないかと思いますけれども、そこら辺はいかがでしょう。外務大臣、いかがですか。
  38. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 特に核燃料の再処理等に関する技術そのものにつきまして、これが今後どのように国際的に管理されていくかということがこれから恐らく相当な議論の対象になろうと思います。これらの国際的な動向というものも考えながらわが国としても対処すべきである、こう考えておる次第でございます。
  39. 二見伸明

    二見委員 次に、やっぱりエネルギー問題で石油問題について若干伺いたいと思います。  私は、石油問題というのは幾つか問題がありまして、石油対策というのは幾つかの柱があると思いますけれども、一つは、やはり当分の間必要量を安定的に確保しなければならぬという問題があると思います。もう一つは、省エネルギーエネルギーの節約であります。もう一つは、民族系石油会社の体質を強化するという点があると思うし、もう一つは、自主開発についてどういう態度で臨むか。この四つが一番大きな問題であろうと私は思います。  安定供給を確保するためには供給先を分散するという方針がいまとられておりますけれども、しかし、埋蔵量から考えれば、やはり中心となるのは中東諸国であります。したがって中東対策、中東外交というのはこれからかなりの大きなウエートを持ってくるのではなかろうかと思いますけれども、しかし、中東諸国自体もいろいろと問題を抱えております。サウジとイラクが対立関係にあるとかいろいろな問題、複雑な要因があるわけでありますけれども、そうした内部事情を十二分に承知した上で、わが国としては中東諸国に対してどのような基本的な姿勢でこれから臨んでいくのか。  その点をお伺いしたいことと、もう一つまとめてやはり伺いますけれども、日本と中東諸国との経済協力というのは、イラクとはかなりうまくいっているようでありますけれども、サウジやイランとは余り進んでいないようであります。それはいろいろな理由がありますけれども、たとえばサウジの提示してくるプロジェクトが大き過ぎるとか、そのために日本が引き受け切れないとかという問題もあるそうでありますけれども、しかし、やはり石油供給先を確保するという面から見ると、サウジアラビアとの友好関係というものも必要だろうと思います。これらの諸国に対し、関係を深くするためにバーゲニングパワーとして日本はどういうものを考えているのか。  また、現地精製という声が現地からかなり上がってきております。これは日本石油業界にとっては余りありがたくない話のようでありますけれども、日本としては現地精製の要望があれば、これに対して積極的にこたえていく、そうしてその見返りというとちょっとえげつない言い方になりますけれども、原油を確保するというようなことまですでに戦略としてお決めになっているのかどうか。これは通産大臣、それから外務大臣にお願いしたいと思います。
  40. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  石油ショックの当時、中近東方面からの原油を量的に確保いたしまするために、御案内のとおりに、いろいろのプロジェクトの要望に対して、われわれの方では精製設備あるいはペトロケミカルのプロジェクトをいたしました。そういうふうな問題につきまして、やはり何と申しましても中近東の油というものが全体の七割を占めておりますわけで、これを絶対に確保いたしますためには、向こうの要望にこたえるというあのプロジェクトの問題も、その後いろいろと約束はいたしましたけれども、一向に実行しないじゃないかというようなこともございまして、その関係から、御案内のとおりに、昨日閣議決定いたしましたボンド保険の問題とか、それから基金の問題とか解決いたしまして、今後相当程度、ただいまお話しの石油精製設備その他化学関係のプロジェクトもこなしてまいるというようなことで、サウジアラビアの問題のみならず、イラン、イラクその他クウェート等の各方面との協調もますます緊密化して進められてまいると存じます。  なおまた、お話しの分散の関係からいいましても、あるいはインドネシアあるいはまたソ連その他各方面との供給源を分散して、長期安定供給を確保するということは最も重要な問題と存じます。
  41. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中東諸国との経済協力につきましては、近時非常な発展をしてきたわけでございます。なかんずくエジプトに対しましては円借款、あるいはイラン、イラク等に混合借款を進めておるわけでございまして、全体としては急激に進んでおるわけでございますけれども、最近のわが国の業界の非常な困難な問題、不況を通じまして、特に石油化学関係のわが国が主体となってやろうという企業自体が大変今度力を失いつつあるという点もあって、いささか進展が阻害されている面があると思いますが、これらにつきましては、当初からの計画の実現に努力してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  42. 二見伸明

    二見委員 石油問題は、安定的な供給を受けるということと、もう一つは省エネルギーでありますけれども、省エネルギー産業部門、民生部門、それから輸送部門と三部門に分かっての省エネルギー政策がこれから進められていくはずでありますけれども、総理大臣、実はいまGNPに対する石油の弾性値というのは、日本の場合は一・一一二ぐらいだと思います。そうすると、省エネルギー政策というのは、ただ単に石油を減らせばいいというだけのものじゃなくて、石油を減らしながら一方ではある程度の成長を維持しなければならないという非常にむずかしい問題だろうと私は思います。できれば弾性値を一以下にしたい。〇・九、〇・八にしていければ、これはそれにこしたことはないわけでありますけれども、そのためにどのような産業を伸ばし、どのような産業を抑える、と言ったらば語弊があるかもしれませんけれども、伸びをある程度抑えるといいますか、こうした政策をこれからとっていかなければならぬだろうと思いますが、そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  43. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御指摘の弾性値問題、これはこれから非常に重大な問題になってくると思うのです。早く一%以下に持っていく、〇・九、その辺にはぜひ持っていきたいと思いますが、それにはやはり産業構造の問題が一つあると思うのです。  それから、これともまつわりますけれども、関連して省エネルギー装置の開発、そういう問題があると思うのですけれども、あらゆる角度から省エネルギーという問題には真剣に取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  44. 二見伸明

    二見委員 いまここで産業構造についての具体的なことをお尋ねしても、あるいは無理だろうと思います。しかし、早い時期に一つの青写真を示していただきたいと思います。と同時に、省エネルギーにとってやはり輸送部門に対する対策というものが重要だろうと思うのです。もっとありていに言いますと、輸送体系というものを変える必要があるのじゃないか。長期エネルギービジョン研究会では「大量輸送機関の拡充とモータリゼーションの減速化等により、輸送量に占める自動車の割合が現在の三四%程度から二〇〇〇年には三〇%前後に低下していく」、こういう考え方が述べられているわけでありますし、やはりエネルギーを節約するという面から考えると、輸送体系というのは思い切って改革しなければならぬと思います。しかも現在ある総合交通政策というものは、オイルショック以前の昭和四十六年に作成されたものでありますから、当然省エネルギーという立場から総合交通政策というのは見直す必要があるだろう、これを改定しなければならぬと思います。と同時に、輸送量に占める自動車の割合を低くしなければならぬだろうと思います。その二点について総理大臣、それから自動車の割合についてはあるいは運輸大臣の方がよろしいかと思いますけれども、お答えいただきたいと思います。
  45. 田村元

    ○田村国務大臣 いま御指摘のありました点は、やはり検討すべきことだと思います。また、現に検討いたしております。総合交通体系が示しております基本的な点は、私はやはり正しいものが多いと思うのです。しかし、経済情勢の大きな変化等を考えますと、当然エネルギー対策ということについては検討しなければならぬのじゃないか、このように思います。  それから、自動車の問題でありますが、特に貨物輸送等につきましては、これは慎重に検討しなければならぬ問題だと存じます。ただ問題は、エネルギー効率という点だけで自動車と鉄道というものを簡単に割り切ることもなかなかむずかしい。いろいろな面の効率あるいは輸送形態等も考えなければなりません。でありますから、簡単に割り切るわけにはまいりませんが、ただ、私どもとしては、現在の姿でいいのかという点については、やはり問題点を抽出して検討しなければならぬのじゃないか、このように考えております。
  46. 二見伸明

    二見委員 農林大臣にちょっと伺いますけれども、日本の農業というのは、最近は非常に石油を食う農業になりまして、機械化、近代化ということで石油を食う農業になりました。一説によりますと、一キロカロリーのお米をつくるのにエネルギーを一キロカロリー使うという話もあります。そうしますと、これは私は、農業の近代化という名目でもって個別の農家に機械を売りまくってきたいままでのあり方に問題があるだろうと思うし、そうしたやり方ではもうこれから農業の面でもまずいのじゃないかと思うのです。やはり農業でも省エネルギーということを考えるならば、農業のあり方、経営のあり方、一キロカロリーの米をつくるのに一キロカロリーのエネルギーを使うなんというばかな形態をもっと改善しなければならぬのじゃないかと思いますけれども、その点について農林大臣はどうお考えになりますか。
  47. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 二見さん御指摘のとおり、農業の場合におきましても石油の消費量が年々ふえてきております。それは農業の機械化が進んでおる関係もございますが、この点につきましてはエネルギーの面と、また営農という面からいたしまして、私ども十分あり方について検討を加える必要がある、こう考えております。と申しますことは、機械の農業生産の面におけるところの投資が非常にふえてきておりまして、経営上も大きな圧迫になってきております。そこで、今後はその共同化を進めるとか、できるだけ機械に依存する度合いを軽減しながら、また省エネルギーという観点からもそういうことで見直していきたいと、こう考えております。
  48. 二見伸明

    二見委員 石油の価格について伺いたいと思いますけれども、OPECが今度二本立ての値上げをしたわけであります。OPECとしては、これからも世界のインフレに合わせて恒常的に原油価格を引き上げるという方針がすでに出されておるわけでありますけれども、その原油の値上げ分をだれが負担するかということがこれからの大変な問題だろうと思います。  為替差益が毎年あるならば、それは石油企業に、レートが高くなったんだから七%や八%原油が上がったって苦しくないだろう、おまえがしょえと、こう言えますけれども、そう毎年毎年レートが高くなるわけじゃないし、為替差益でもって事を済ますわけにはいかないだろうと思います。といって、これを放置しておけば、最終的にはツケが国民に回ってくるんじゃないか。一回きりじゃなく毎年上がっていく原油の値段の値上げ分をそのまま放置しておけば、ツケが国民に回ってくるんじゃないか、こう私は思います。  いまの石油価格の体系というのは、ナフサと重油、これは大口需要者が電力、鉄鋼、石油化学、こういったところであり、力関係からいって、どうしても低く抑えられる。近ごろの報道によりますと、ナフサの値上げは認めないという業界の強い意向も示されておるようでありますし、これはどうしても低く抑えられる。それから灯油につきましては、これは国民生活に非常に深い関係がありますから、政策的配慮というのは絶えずしていかなければならないだろうと私は思います。軽油はバスやトラックが利用するために、これは公共料金に関係してくる。結局どうなるかと言えば、ガソリンの大幅値上げということで原油価格の上昇分をカバーするということも結果として起こってくるんじゃないかと思います。私は、ガソリンの大幅引き上げが、たとえばマイカーを規制するためにガソリン価格を大幅に引き上げるんだという政策意図があっておやりになるならば、それは検討の対象にはなるけれども、結果としてガソリンにだけしわ寄せをするということになれば、私はこれは問題だろうと思います。  いずれにいたしましても、これから毎年恒常的に行われる原油価格の引き上げというのは、最終的には国民の負担にもかかってくるわけでありますし、これこそ国民の合意を得なければならない大変な問題だろうと思います。これに対して、この値上げ分をだれが、たとえば鉄鋼とか石油化学とか電力とかあるいは自動車保有者とかあるいは消費者とか、いろいろな対象がありますけれども、だれがどの程度負担すべきなのか。また、どの程度負担してもらいたいと政府は考えているのか。そうしたことについての国民の合意を得るための検討材料というものを示していただきたいと思うのです。ただ上がるからしようがないんだ、しようがないんだと言っていたのでは、この問題は解決しないだろうと思います。私は、エネルギーが安く手に入る、石油が昔みたいに安く好きなだけ手に入るという時代は終わったと思います。エネルギーはこれからは高いんだという、私たちにとっては非常にいやなことだけれども、高い時代に来たんだという認識を私たちは持っております。それだけに国民が合意できるような案というものを政府の方からお示しをいただきたいと思いますけれども、総理大臣のお考えはいかがでしょうか。
  49. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話は、まことに根本的な問題でございまして、考え方によりますれば、戦後たどり来ました日本経済の、また国民生活の根本にも触れる重大な問題でございます。さような関係から、政府といたしましても、昨日、総理を中心といたしましたエネルギー対策の閣僚会議を新たにつくるということに決めたわけでございまするが、ただいまお話しのような価格の問題がどう転嫁されていくかという問題につきましても、近くは御案内の出光の価格引き上げの問題、あるいはまた本日ですか、きのうですか、大協とかシェル等の価格値上げの問題がございました。しかしながら、これらのやはりOPECを中心といたしました近く上がりまする価格の問題の一つの現象でございますが、なお鉄鋼業界あるいはその他各産業界、業界とのこれからまた交渉に入りますから、それがどの程度に落ちつくか、まだまだ後の問題でございますが、ただいまお話しのございました灯油の価格のごときは、これはもう重大な国民生活上の問題といたしまして、通産省といたしましては、この価格を行政的に措置をし、不当な値上げがないように行政指導いたさなくてはなりません。  そのほかどういう程度の波及効果があるだろうかという問題につきましては、御案内のサウジアラビアの方の五%、それからイラン、イラクの方の一〇%という問題もある程度調整されるだろうと存じますが、その全体の波及の問題は、原油価格の上昇というものが七、八%と見た場合の一定の条件をつけて試算をしてみたものによりますれば、これは経済企画庁の分野かとも存じまするけれども、消費者物価の方は〇・三程度の上昇があるんじゃないか。それからまた卸売物価におきましては〇・七から〇・八程度の上昇がありはせぬか。こういうことで、総じまして経済成長率の方におきましても〇・四から〇・五程度の逆に減少があらわれやしないか。こういうふうな非常に重大な、国民全般の生活にも直結いたした問題であります。この点はもう政府の根本の政策を構造上の問題としても取り上げて、再検討を要すると存じます。  なおまた、ただいまの値上げの発表の方は、大協ではなくて共同石油でございましたので、訂正をさしていただきます。
  50. 二見伸明

    二見委員 何かはっきりした見解、具体的な考え方をお持ちになっていないような印象を受けます。やむを得ませんので、当面した問題だけについて、もう一度お尋ねし直しますけれども、灯油についてはどうするのか、ガソリンについてはどう考えているのか、それから軽油については、現時点においては、出光が今度は一つの問題を提起したわけでありますけれども、あれを踏まえてガソリン、灯油、軽油、それから電力や鉄鋼が使う重油については、この価格引き上げについては通産大臣はどう考えているのか。灯油はいまのお話ですとどうも抑えるというようなお話ですけれども、本当に抑えるのか。ガソリンについてはこのまま放置しておけば絶対値上がりしますけれども、その点についてはどう考えているのか。いかがでしょう。
  51. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま申し上げました全般的な問題につきまして、具体的に、灯油についてはどうする、ガソリンはどうなる、詳細な点につきましてはエネルギー庁長官の方からお答えいたします。
  52. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回のOPECの値上げによりまして、先ほど大臣がお答えいたしましたように、大体七ないし八%程度の影響が出てくるのではなかろうかと見ております。外貨にいたしまして約十八億ドル、邦貨にいたしますと五千億ぐらいになろうかと思います。この分が外貨流出と申しますかコスト負担の増分になるわけでございます。そういった意味合いから、先ほど為替差益のお話もございましたが、石油企業が全体としてこれを受けとめるということにはまいらないという状況ではなかろうかと思います。ただ、その次の段階といたしましては、油種別にどのようにこれをコスト負担と申しますか価格に反映していくかということになりますと、これは非常にむずかしい問題でございます。とりあえず灯油につきましては、需要期であり、特に例年よりも寒いということもございまして、これに対しましては直ちに昨年九月末時点の価格に据え置くよう指導いたしたわけでございますが、その他の製品につきましては、それぞれについてどこまでの価格への反映を実現するかということにつきましては、これは、一つには需要業界自体も非常な不況の段階にある、一方、ただいま申し上げましたように石油企業の体質も非常に弱くなっておる、吸収できないといったようなところから、これはやはり供給サイドと需要サイド、両当事者間でいわゆるコマーシャルベースに従って十分話を煮詰めていくというのがよかろうかと思います。  ただ、先生御指摘のお気持ちの裏には、標準額でも設定したらどうか——ということになりますと、製品別の価格が出てくるわけでございますが、これにつきましては、御承知のように平均して七ないし八%の影響ではございますが、石油企業それぞれによりまして、五%分、一〇%分の油の輸入の量が非常に区々まちまちでございまして、そういった意味合いからいたしまして、まず一本の価格で標準額を設定するということも事実上不可能である。そういったことを前提といたしまして、私たちといたしましては、需給両サイドでの話し合いの結果を見守る、とりあえず灯油については行政指導を行ったと、こういうことでございます。
  53. 二見伸明

    二見委員 石油問題というのは、供給先の問題にしろいまの価格の問題にしろ、非常に大変な問題を抱えております。と同時に、石油業界それ自体もいま非常に大変な受難期にあるのじゃないかと私は思います。総理大臣も御存じのように、いままでは原油を買う場合には買い手市場だったけれども、いまはOPECの攻勢が強くて売り手市場です。しかし、国内に持ってくれば、今度は買い手の鉄鋼だとか電力だとかいう方が強くて、石油企業と買い手の方とでは買い手市場であります。ですから、石油企業というのは両サイドから攻められているというのが実情だろうと思います。特に、今度の二本立ての価格値上げで相対的に被害の大きいのは、メジャーの参加した外資系の会社よりも民族資本だろうと思います。私は、民族系石油会社の育成というのは、これを放置しておけばメジャーによる国内支配体制が確立してしまいますので、民族系の石油会社というものは何とか体質を強化しなければいけないし、日本の国内での安定供給を確保するためにも、民族系の石油会社というものは力をつけなければいけないというふうに考えております。  と同時に、石油というのは、石油政策というか、原子力もひっくるめて、エネルギー対策というのは大変な金がかかるものだと思います。一説によりますと、一九八五年までの間に約五十兆の金がかかって二〇〇〇年までの間に百五十兆円のお金がかかるというふうに言われております。私は、これからエネルギー問題、総理大臣は真剣な立場で取り組んでいくということを再三表明されているわけでありますけれども、しかし、やっぱりもとになるのはかけ声だけじゃなくてお金の問題だろうと思います、俗な言葉で言ってしまえば。一体これからエネルギー問題に取り組んでいく資金というものをどう考えていくのか。  もう一つ。もっと具体的な細かい問題で申し上げますと、いま備蓄というのを始めているわけです。五十四年度末までに九十日分の備蓄をやるということになっております。この備蓄費用というのは大変なお金であります。原油の積み増し分であるとか施設であるとかをひっくるめて約一兆五千億、あとそれを維持していくための金利だとか減価償却は、そのほかに五千七百億円ぐらい必要とするというような、大変なお金がかかります。そうすると、いまの政府のお考えですと、この備蓄一兆五千億円、さらにそれにかかる金利負担等五千七百億円というのは、どうも石油会社だけにおっかぶせるんじゃないかという感じがするわけです。そうなった場合に、いまの日本石油会社でもってそれだけの資金負担にこたえられるだけの企業があるんだろうかどうだろうか。狭い備蓄の問題を見てもそういう問題があると思います。私は、備蓄の問題については、石油会社だけじゃなくて、需要家である鉄鋼だとか電力にも応分の負担をしてもらってもいいんじゃないかと思います。また、長期見通しになって考えれば、一九八五年までの五十兆円をどうやって捻出していくのか、だれが負担するのか、あるいは二〇〇〇年というロングサイトで見た場合に百五十兆円というお金はどの部門がどういうふうに負担していくのか。そのうちに国としてここまで責任を持とうというものがあるのかどうか。まとめた質問になりますけれども、これは大蔵大臣に……。
  54. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  石油備蓄は、今日の日本にとっては本当に大事なことでございまして、その備蓄をやっていくためには、備蓄の設備をつくること、それから備蓄のための原油を購入すること等に対しまして大変な資金が要ります。資金を調達するためにどうしたって石油のコストというものは上がってくる。このコストをだれが負担するか、こういうことでございますが、本来、自由経済ならば、これはやっぱり石油の販売価格というもので調整をしていくというのが、これはそういう姿でございますけれども、それはとうていその価格政策から申しましてもさようなことはできるわけのものではございません。そこで、何といたしましても、いまおっしゃいますとおり九十日分を五十四年の末までに完全に備蓄できるような設備をつくるという、非常に迫った要請が起こってきておる。そこで、それらのコストをそのまま石油の価格におっかけちゃあたまったものじゃありませんから、価格政策から見てもそれは困難である。国といたしましては、備蓄コストの緩和を図りますために、石油備蓄購入資金について低利な融資をする、それからまた共同備蓄会社に対しまして出資及び財政投融資をする、それから石油企業の備蓄施設整備のために財政投融資を行っていく等、いろいろのことをやりましてそれの緩和をしてまいりたい、かように考えております。
  55. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣はそうおっしゃいますけれども、ことしの手当てを見ても、私はこれは答弁をいただくつもりはありませんけれども、五十二年度の手当てを見ても、原重油関税を百十円引き上げたんです。この増収分が三百四十億です。しかし、それはそのまま備蓄に使うのかというと、そうじゃないでしょう。三百四十億円のうち、一部は備蓄に使うし、もう一部は開発費でしょう。石炭石油特会に入れて、石油開発公団の原資として恐らく開発費に使うわけです。三百四十億円原重油関税を払うのは石油会社です。そこから税金を取っておいて、備蓄に使うんじゃなくて、一部は備蓄だけれども、一部は開発でしょう。だから、これだけの手当てをします、備蓄コストに低利に融資しますと言っても、そのもとになるお金はやはり石油会社から取っているんじゃありませんか。これは国としてやっているというよりも、石油会社から税金を取ってそれでやっているだけの話で、石油会社にしてみれば特別手当てしてもらったという感触は私はないだろうと思います。  時間がありませんのでこれについての答弁はいただきませんし、これは後ほど大蔵委員会に法案がかかるはずですから、そのときに改めて議論させていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、大蔵大臣、石油に限らず、エネルギーというのは大変な金がかかります。私はここで一つ石油諸税というものを見直してもいいのではないかと思う。うちの矢野委員質問に対して総理大臣は、揮発油税に対して、道路需要が多いのだから揮発油税を目的財源から外すわけにはいかないという御答弁をされました。しかし、道路をつくることも大事だけれども、日本の将来のエネルギーをどうするかということの方が私はよっぽど大事だろうと思うのです。むしろ揮発油税を道路財源から外して一般財源にしてしまう、そして、エネルギー特会と言ってもいいかもしれないし、あるいはエネルギー財源というものを私は充実する必要があると思うのです。総理大臣、その点についていかがでしょうか。
  56. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま石油関係の諸税は道路整備の特定財源、こういうふうにしておりますが、この仕組みは私はかなり説得力のある仕組みだと思うのです。つまり、石油関係から徴収する税を石油の需要を促進し確保するための道路の建設に充てます、こういうのですから、これは国際社会に対しましてかなり申し開きのできる根拠を持っている仕組みである。こういうふうに考えますが、さて、これから先々を考えますと、ずいぶん石油諸税の徴収額が多いわけです。それを全部道路に充てるか、こういいますと、いまの国の状態では、道路に全部充ててもそれでもまだ足らない、こういう状態なのです。しかし、道路に充てて余りがある、こういう情勢でありますれば、それを何がしかまた他の方に使うというようなこと、これも当然考えてしかるべきものである、こういうふうに存じます。  それから、もう一つは、石油関係の諸税が非常に複雑なのです。これをもう少し簡明にして、国民にもわかりやすくできないか、こういう問題があります。それから、いま御指摘の、エネルギーの重要性というようなことにかんがみまして石油諸税を今後一体どういうふうに考えるかという問題もあると思うのですが、ひとつよく検討してみる、さようにいたしたいと存じます。
  57. 二見伸明

    二見委員 本日は石油開発公団総裁に御出席いただいたわけでありますけれども、時間がありますればいろいろと貴重な御意見を承りたいわけでありますけれども、時間がありませんので、まことに申しわけありませんけれども、一、二点お尋ねして御意見を承りたいと思います。  一つ日本の今後の開発のあり方についてのことでありますけれども、たとえば欧米では開発から販売まで一つの一貫体制になっております。しかし、日本の場合にはそういう体制ではなくて、いわゆる上流部門と下流部門というのは真っ二つに割れております。これは日本の特異な体制でありますけれども、石油開発公団が乗り出しての自主開発にしても、いまは開発だけで、精製、販売部門というものはありません。私は、これからの開発考えた場合には、やはりこうした一貫体制あるいはそれに準じた体制というものをつくる必要があるのではないか、こう思います。その点についての総裁の御意見を承りたい。  もう一つは、石油開発については日本は正直のところ後発国です。そのためにメジャーと比べれば情報だとかその他のいろいろな面でわが国がおくれていることは、もう否めない事実だろうと思います。しかし、そうしたハンディをしょいながらも、日本はこれからやはり開発に乗り出していかなければならない。私は総裁が何かの席上で言われた言葉に非常に印象を持っておりますけれども、日本に油を持ってくるということだけのために開発するという時代は過ぎたのだ、むしろ石油供給力をふやすという立場からも日本開発しなければならないのだという、総裁が何かの座談会か何かでお話しになったのを私記憶しておりますけれども、そうしたことを考えれば、今後の開発に対してどういう点を改革したならばスムーズにいくのか。この点について、時間がありませんのでひとつ簡単で結構ですから、御意見を承りたいと思います。
  58. 倉八正

    ○倉八参考人 お答えいたします。  二点御質問がありまして、第一問の一つ開発体制のあり方という問題でございますが、御指摘のように、日本以外の石油会社は全部精製から開発まで一貫体制でやっております。これについての利点というのは、結局製品、原油を販売し、それによって資本蓄積を増大するとか、あるいは開発原油の引き取りということで、非常に好ましいことは事実でございますが、ただ、日本の現状としましては、開発企業というのがきわめて歴史が浅うございまして、また従来からのいろいろの経緯もございまして、まだ一貫体制になっておりませんが、こういう問題につきましては、今後政府が開発体制のあり方、あるいは石油産業体制のあり方ということを研究問題として取り上げるということをわれわれは伺っておりますから、それに応じましてそういうことも十分に論議していきたいと思います。  それから二つ目の、公団の業務としまして、開発からダウンストリームまで一貫的にやったらどうかということでございますが、公団の発足の趣旨というのが開発に重点を置きまして、ダウンストリームの問題につきましては、民間企業のバイタリティーあるいはその能力というものを十分に発揮して、できるだけ私企業のよさというのを発揮させるということが根底に横たわっておりますから、公団としましてすぐさまダウンストリームの方にまでタッチするかどうかということは、今後の研究問題として残されておるかと思います。しかし、公団としましては、ダウンストリームの一部であります備蓄とかあるいは構造改善につきましては、先生方の御賛同を得ました法律改正によってすでに実施しております。  それから第二の質問でございますが、世界の供給力を増すというのが私は結局最大の安全確保だろうと思います。これにつきましてはいろいろ考え方がありますが、やはり多角化しまして、石油の銀座と言われる中近東諸国はもちろんのこと、日本の周囲の大陸だな、こういういろいろの方面にわたりまして多角化して開発していくことが大事かと存じます。
  59. 二見伸明

    二見委員 ただいま一つの情報が入ってまいりましたので、総理大臣にこれを伺いたいと思います。  実は、福田総理大臣と外務大臣が日韓議連総会に出席したという確実な情報が入ってまいりました。  そこで伺いたいわけでありますけれども、総理はけさ日韓議連総会に出席されたのかどうか。その出席された意図は何なのか。また、どのようなあいさつをされたのか。また、外務大臣が出席されたというけれども、それは事実なのか。そのほかまだ出席された閣僚がいらっしゃるのかどうか。その点お願いいたしたいと思います。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日韓議員連盟ですね、この会議に私は出席いたしました。外務大臣も出席しております。そこで私は開会に当たってあいさつを申し上げたわけでございますが、この両国の常時の緊密な関係、これは意思疎通が大事だ、問題が起こったときにその疎通があると滑らかに解決する、その役割りを尽くしてもらいたい、そういうことをお願いしてまいりました。
  61. 二見伸明

    二見委員 外務大臣も出席されたのか。そのほか、出席された閣僚がいらっしゃったらお名前を教えていただきたいと思います。
  62. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私も出席をいたしました。総理大臣出席されますので、お供をしておったわけであります。
  63. 二見伸明

    二見委員 私は総理大臣の行動について拘束する気もありませんし、とやかく言う気はありませんけれども、日韓問題というのは当委員会でもかなり重要な案件になっております。そうしたときに軽々しく出席されるというのは果たしていかがなものだろうかという感じを持っておるわけでありますけれども、総理大臣、その点は。
  64. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は別に軽々しく出席したと思っておりません。慎重に考え出席をしておるわけであります。  議員連盟というのは、日本の国は多数の国との間にそういうものがあるわけでありまして、あなたの方はどういう立場をとっているか存じませんけれども、とにかくいずれの国とも仲よくしていくというたてまえであります。決して何らちゅうちょを必要とする問題ではない。かたくそういうふうに考えております。
  65. 二見伸明

    二見委員 次に、行政改革について総理大臣に伺いたいと思います。  まず最初に、西村長官にちょっと一点伺いますが、西村長官は、二月十日の閣議後の記者会見で、行政改革についての問題について、首相の発言は心構えを述べたものだろう、まだ改革の作業に着手していないし、段取りもないとそっけないコメントをしたという報道がありますけれども、長官は行政改革については本気になっておやりになるのですか。それとも、まあしょうがないやという軽いお気持ちなのですか。いかがでしょう。
  66. 西村英一

    ○西村国務大臣 行政改革につきましては、社会、経済の情勢も変わっています、かたがたまた、大変厳しい財政状況でございますので、かねて総理からも、これはひとつ積極的に取り組んでやろうじゃないかということで、私もその心構えをいたしております。そのときの記者会見、それは少し書き方がオーバーじゃないかと思いますが、用意をするのには、総理も言っているように、まだ多少の日時をかしてもらいたい、したがって、いまかれこれ言うような構想を皆さん方に示すような段取りになっていない、とこう言ったのです。そこを、あたかも何も考えていないように言われておりますが、考えは十分しておるけれども、いま具体的に発表する時期ではない、こう言ったことがそういうような記事になったと私は思うのでございまして、今後も取り組んでいくつもりでございます。
  67. 二見伸明

    二見委員 総理大臣に伺いますけれども、総理大臣はことしの夏に行政改革についての具体的な案をお出しになるというお話でありました。ちょっと確認でありますけれども、いままでは行政改革の案というのは、まず行政監理委員会の提言というのが出まして、それに対して行政管理庁の案というのが各省に内示されます。最終的に閣議了解という形になるわけですけれども、総理大臣がことしの夏に出されるというのは、その閣議了解されたものをことしの夏に提出していただけるわけでありますか。それとも行政監理委員会の第四期提案というようなものになるわけですか。いかがでしょうか。
  68. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いずれ行政監理委員会の意見も伺いたい、また御検討も願いたい、こういうふうに思っておりますが、とにかく政府としての最終的な意向を八月ごろ決めたい、こういうふうに考えております。
  69. 二見伸明

    二見委員 閣議了解のものというふうに理解いたします。  それで、長官、お尋ねいたしますけれども、スタートしてまだ間もないのでなかなか詰めていらっしゃらないと思いますけれども、行管として考えているのはまず行政機構の改革、機構の改革そのものについても検討されるのかどうか。その中には、たとえば省だとか庁だとかいうものの統廃合についても検討されるのかどうか。それから特殊法人、これは五十年十二月だったと思いますけれども、そのときの閣議了解では十八法人についてのみの閣議了解が出されまして、今度の国会でもってそのうち二つなくなりますけれども、残りの十六法人についてだけの見直しをやるのか。もう一度特殊法人そのものを根っこから洗い直して答えを出していただけるのかどうか。それから各種審議会、いろいろありますけれども、そうしたものについてももう一度最初から洗い直していかれるのか。というのは、三十九年の臨調の答申もありますし、第一期、第二期、第三期の行政監理委員会の提言もあるわけです。そうしたものを下敷きにすれば、それは時間がないと言えばないけれども、やる気になればかなりの答案が書けるのじゃないかと私は思うのです。その点をひっくるめて、どの程度のものをお出しになるのか。前回の閣議了解程度のものだったならば、総理大臣が本会議であるいは予算委員会でもって夏じゅうに出すという決意を表明されたものとは大分趣が違ってくるわけでありますけれども、長官の方針、御決意はいかがでしょうか。
  70. 西村英一

    ○西村国務大臣 いままで閣議了解あるいは閣議決定したものにつきましては、現在も仕事を進めておるわけでございます。しかし、今回、やはりこういうような情勢でございますので、行政の全般についてひとつ見直しをしたい。それには行政機構の問題もあります、特殊法人の問題もありましょう、行政事務の問題もあると思うのでございますから、やはり一回すべてについて見直しをしたい、時代に合ったような行き方をしたい、こう考えておるのでございます。  いまの省庁の問題はどうか。そこまで対象にするかせぬかというようなことについては、まだ決定をいたしておりません。  審議会の問題ですが、この審議会も実にたくさんあるわけです。二百四十六ありますが、この問題もいままで相当にやってきておる問題です。昭和四十一年、四十四年、二回もやってきて相当に統廃合をやってきておるのですが、今回もやはりこれも少し見直したい。時代も変わっておりますから見直したいと思っております。全般についてひとつ見直して、時代に合った行政体制をとりたいということでございます。  何かその他ありましたか。
  71. 二見伸明

    二見委員 行政改革に本腰を入れて取っ組んでもらいたいわけでありますけれども、ただ、いままで何回か提言がなされた。しかし、それがほとんど、ゼロとは言いませんけれども、ほとんど着手されなかった。私は、それは理論や理想とは別に、現実に置きかえた場合にはかなりむずかしい人的な関係もあるだろうと思います。総理大臣はそこら辺を十分に承知した上でやると決意されているのだろうと思いますけれども、これは本気になってやっていただけるのかどうか。その点、いかがでしょうか。
  72. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はかねて申し上げておりますとおり、世の中が大変な変わり方をするわけです。それに対しまして国も地方公共団体も企業も家庭も姿勢を転換する必要がある。そういう際でありますから、政府はとにかく率先してその姿勢転換を行わなければならぬ。そういう基本的な認識の上に立って行政改革ということを申しておるわけなんです。本当なら五十二年度予算でそれが具現されればよかったのですが、組閣早々でありますので、そこまでいきかねる。そこで、八月を目途といたしまして政府の考え方を決めたい。こういうふうにかたく考えているわけであります。
  73. 二見伸明

    二見委員 行政改革に関連してもう一点伺いますけれども、地方事務官制度の問題であります。  これはもう長い間の懸案でありまして、衆議院でも「五十一年三月三十一日を目途として地方公務員とするよう努める」という附帯決議もなされておりますし、同じ趣旨の附帯決議は参議院でもなされております。しかし、依然として地方事務官というものは廃止されておりません。総理大臣、廃止されてないばかりじゃなくてふえているのです。たとえば厚生省関係は、昭和四十九年九月には地方事務官の定員は一万四千八百十六人だったのが、去年の十二月には一万五千三十七人とふえているのです。労働省も同じです。四十九年九月に二千二百五十七人が五十年の十二月には二千二百七十九人。運輸省は二千六百三十八人が二千七百三十人。総計で一万九千七百十一人が二万四十六人。廃止するという附帯決議があり、廃止しようと決議していながら、現実には廃止されるどころかふえているのです。これが現実の姿であります。国会で決議したことが省に持ち帰ったならばできないということは一体どういうことなのか。厚生大臣は非常に蛮勇をもって鳴る厚生大臣でありますから、恐らく地方事務官制度については率先をしてやっていただけるものと私は信じておりますけれども、厚生大臣、運輸大臣、労働大臣、いかがでございましょうか。
  74. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 地方事務官がふえておるのは事実でございます。それは、御承知のとおり国民皆年金というようなことになりまして、年金の成熟化に伴いまして非常に受給者がふえておるわけです。たとえば厚生年金を例にとりますと、四十九年百八十六万人の受給者が五十一年度の推計では二百五十一万人、これは一つの例でございますが、非常にウナギ登りにふえておる。国民年金の拠出年金などは四十九年は百二十七万人のものが五十一年は三百四十一万人、これは倍以上ですね。非常に受給者がふえておりますから、これはどうしても事務量がウナギ登りにふえておる。まして相談件数に至ってはもっとふえておる。こういうようなことで結局それらのサービスをするためにはこれはふやさざるを得ないというのが実情でございます。
  75. 二見伸明

    二見委員 要するに問題は、その地方事務官を地方公務員にしようという附帯決議があるわけでしょう。その制度そのものを廃止しようじゃないかという決議があるわけでしょう。ふえるならば、それは地方公務員にすればいいじゃないですか。そして県庁にやってもらえばいいわけでしょう。県庁でも、現場でも、国家公務員と地方公務員が一緒に机を並べているというのは人事管理上も困るという苦情もありますし、これはきのうきょうの話じゃなくて、できたときからの長い間の懸案事項なわけでしょう。こういうわけで事務量がふえたからふえたんですということでは私は回答にはならぬと思うのです。いかがでしょう。
  76. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり社会保険業務というものは国が統一的に画一的に行っておるわけです。したがって、地域によって差があるとか、そういう問題じゃございません。また、いろいろな、厚生年金等でも北海道におったり、またその人が九州に行ったり、また東京に来たりというようなこともしょっちゅうあります。そういうような者の、おれは幾ら年金をもらえるんだというような、相談等がいろいろございます。したがって、これを各県にばらばらに落としてしまうのがいいのか、それとも国が統一的画一的に日本全国をきちっと把握できて、どこの人がどこに転勤してもお答えがすぐにできるというようなことにするのがいいのかという問題になりますと、国が経営の責任を負ってやることでございますし、統一的画一的な保険料の徴収、給付、こういうことをやる国営事業でございますから、私は、地方事務官制度を廃止するという点についてはすでに決められておることでございますが、やはりこれは国で一本でやることの方が望ましいというように考えておるわけでございます。
  77. 二見伸明

    二見委員 時間がありませんのでこの問題についての押し問答はいたしませんけれども、地方事務官制度廃止の一番の反対の拠点というのは厚生省だと聞いております。私はそれで大臣に蛮勇をふるっていただきたいということを期待したわけでありますけれども、答えは逆なので非常に残念に思っております。残り時間がわずかでございますけれども、最後に地方行財政についてまとめてお尋ねをしたいと思います。  最初に総理大臣に感想を伺いたいわけでありますけれども、毎年予算どきになりますと、全国から知事さんを初め市町村長が大挙してやってまいりまして、各省庁をめぐって陳情してくるわけです。いわば一種の陳情政治というのが繰り広げられるわけであります。私の友人が目撃したところによりますと、これはその官庁の名前を言うと差しさわりがありますので申し上げませんけれども、地方から出てきた年老いた市長さんが、年の若いお役人の前でぺこぺこ頭を下げながら何とか補助金をもらいたいと頼み込んでいる姿を見て、非常に情けなくなったと私の友人は語っておりました。予算編成時期になるとそうした風景が至るところに見られるわけでありますけれども、総理大臣はそうした陳情政治をごらんになって、官庁の中にはそう来るのが地方の熱心度を示すものだなんて考えている役人もいるそうでありますけれども、そうした姿を見て、ああ日本の地方自治というものは大したものだ、戦後三十年間、日本の地方自治は隆々として確立したというふうなお考えを持つのか、まだまだ中央集権的な色彩が強いとお感じになるのか、それを私、総理大臣に伺いたいのです。  それから、これは自治大臣に伺いますけれどもも、今度地方財政が三年間の赤字になりまして、地方交付税率を上げるか上げないかということが予算編成の最大の問題になりました。二兆七百億円の地方財政の赤字のうち、半分の一兆三百五十億円は地方交付税で国が負担する。そのうち四千二百二十五億円と臨特の九百五十億円、五千百七十五億円、これは国がまるまるしょうわけですね。この分があるから、地方交付税率は引き上げなかったけれども、実質的には三・六%の引き上げと同じなんだ。こういうふうに自治省は言っているわけです。私は違うと思うのです。確かに単年度だけで見れば三・六%のアップかもしれないけれども、これは単年度限りの処置であって、五十三年度、五十四年度もこれが踏襲されるという保証は全くないわけです。しかも、地方交付税法の第六条の三だったか、要するに交付税の総額が引き続き著しく過不足を生じたときは、地方行財政制度を改正するか、あるいは地方交付税率を変更することになっているわけです。しかし、今回これをやらなかった。それは大蔵省にすれば、国の方も借金を抱えているんだから地方も泣いてくれということだろうと思います。国も国債を抱えて大変なんだからその点は勘弁してくれよということで、恐らく今度はこういう足して二で割るような処置になったのだと私は思いますけれども、自治大臣は今度のこの措置で本当に、ああ自治省としては名は捨てたけれども実は取ったという、そういうばかな考え方を持っているのかどうか。  また地方財政というのは来年度は改善されるという見通しは全くないわけです、国の方が危ないんだから。そうすると、来年以降の問題として地方交付税率はどう考えるのか。しかも地方行財政に対する見直しをしようという制度的な足がかりというのは今度の措置では何にもなかったのでしょう。その点についても自治大臣はどう考えているのか。一体地方行財政の抜本改正というのはいつやるのか。またどういう条件ならやるのか。ここも明らかにしていただきたいと思いますし、最後に、地方行財政の抜本的な改正をいつやるかという問題、これは日本の政治、地方自治の根幹にかかわる大変な問題だろうと私は思います。これについては一番最後に総理大臣の御決意なり方針を伺いたいと思います。  最初に陳情政治についての感覚から。
  78. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 陳情政治という御指摘でございますが、まあ地方自治に限らず、ある程度の陳情があるということは、私はこれは決して排斥すべきものじゃないと思うのです。やはり机の上だけで物事を調べたり考えたりするよりは、じきじき生の地方の声を承る、そういうことは有効である、こういうふうに思いますが、二見さんの御指摘では、地方自治というものが一体あるのかないのか、その辺の認識はどうだ、こういうのですが、私は、戦前には率直に言いまして地方自治の実態というものが非常に薄っぺらなものだった、こういうふうに思うのです。本当に実のある自治体制ということになってきたのは、これは戦後だと思うのです。戦後三十年、そういう中で今日の状態になってきたのですが、そういう短い間の地方自治、それから国、その関係ということを見てみますと、私はまあまあそう基本的に問題があるという意識は持っておらないのです。そういうただいまの国と地方、全く車の両輪として地域社会をつくっておる、その姿を漸次是正していきますればいいのであって、いま基本的に自治の体制を変える必要があるという認識は持っておりませんです。  それから、最後にお尋ねのありました地方の組織を一体どうするんだ、こういうお話でございます。私は、中央がこうしなければならぬというようなことを中央から言いますることは、これはまさに地方自治に介入するということになりますので、これは私は避けなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、しかし先ほども申し上げました国の方でも行財政の改革をやる、こう言うのですから、地方の方も率先してその地方行財政の改革をやる、そのやる間におきまして、中央、地方がお互いに話し合って、そして調和のとれた改革が行われるようになるように期待をいたしておるわけであります。
  79. 小川平二

    小川国務大臣 お答えいたします。  今日の地方財政の実情は、お言葉のとおり地方交付税法六条の三の二項が想定しております事態であると存じます。  そこで、交付税の税率引き上げでございますが、ただいまの時期はいわば一つの転換期と申しますか過渡期であって、経済の帰趨も見定めがたい時期でございます。交付税の税率変更ということは、要するに長期的な財源配分の問題でございますから、かような時期にこれを実行するということが困難でございますので、御高承のような措置をとったわけでございますが、五千百七十五億、これは交付税率を三・六%引き上げましたのと効果において少しも異ならない措置だと信じております。そういう措置を法律に明定して行うということは、これはもとより恒久的な制度とは申せませんが、なおかつ制度の改正である、こう信じておりますので、政府が法律に違反しておるということにはならないのではなかろうか。あるいはまた、別の角度から考えまして、制度という言葉をいかように定義するかという問題があろうと思いますが、要するに、物事が何かのルールで解決されるような仕組みというものが制度であると常識的に私は理解しておるわけですけれども、この交付税会計が借り入れました四千二百二十五億というのは、償還が始まります五十五年度以降八年間にわたって償還の都度それに見合う金額を臨時地方特例交付金として埋めていく、その都度やっていくわけでございますから、そういうことをあらかじめ法律で定めておくということは、これは制度というものであろう、こう信じておるわけでございます。  抜本的改正をいつやるかというお話でございますが、必ず遠からざる機会に経済が安定する時期が来ると存じます。さような場合に、地方制度審議会等の御意見も承りまして、いかような形で抜本的な改正をするかということを検討したい、こう考えております。
  80. 坪川信三

    坪川委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  81. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野憲治君。
  82. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私、まず最初に、いま地方財政が非常に危機に直面しておる、こういう中にありまして、この現状に対しまして、総理としてどのような診断を下し、かつまた認識しておられるか、この点をまず最初にお尋ねしたいと思います。
  83. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま地方財政は非常に苦しい状態だという基本的な認識です。これは地方ばかりでなくて国も同様でありますが、とにかく、国も三割を借金に依存する、こういう状態ですが、地方もその国から多額の財政協力を得なければならぬ、これは大変なことだろうと思う。そのよって来る根源というものは、これは世の中が変わってきている。どうしてもいままでのような高度成長というわけにはいかない。そういう中で経済不況、少なくともいままでのような高度成長というものが期待できない。そうすると、税の収入が中央も地方も減ってくる。ところが、歳出の方はどうかというと、従来の勢いで伸びたい、伸びたいという勢いはある。そういう辺で、歳入歳出の間に大きなギャップが出てくる。いろいろありますよ。ありますけれども、基本的には、世の中がそのように移り変わってきたというところであろうかと思います。
  84. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 ついでに、自治省所管の小川大臣からもこの問題に対する見解をお伺いしたいと思います。
  85. 小川平二

    小川国務大臣 ただいま総理がお述べになりましたように、非常に長い間不況が続いておりますること、あわせて、経済が低成長経済へ移行しつつある、そういうことで、国、地方を通じまして財政収入が大幅に鈍化をした。こういう結果、地方財政におきましても三年連続して相当巨額の赤字を出しておるわけで、五十二年度におきましても、二兆七百億という財源不足が見込まれる、まことに深刻な状況に立ち至っておる、かように判断いたしております。
  86. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 続いて総理に。総理は、新しい転換に対応するという言葉をよく使っておられるのですけれども、そういう意味におきまして、今日の地方財政の危機に対しまして、どういう基本理念をもってどのような対策と、しかも展望を持つことができるか。こういう点に対して、総理から率直な御意見をまず伺っておきます。
  87. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はしばしば申し上げているのですが、そういう時世の変転に対応いたしまして、国も地方公共団体も姿勢の転換を行わなければならぬ、こういう基本的な考え方でございます。  国におきましては、午前中も申し上げたのですが、行政改革をやる、行財政の整理をやる、その時点は八月ぐらいに基本的な考え方を示す、こういうことにいたしておるわけでございます。それに先立ちまして、五十二年度予算では、これは制度改正はやりませんでしたけれども、一般的経費につきましては、思い切り節約をいたしておるわけです。相当の節約です。  そういう措置をとっておるわけでありますが、地方も、私の気持ちとしては、同じような姿勢をもちまして行財政に対する姿勢の転換をやってもらいたい、こういうふうに期待をいたしております。中央の方から地方自治に対しましてこうしてああしてという差し出がましいことは申し上げませんけれども、やはり地方におきましても、時世の変転を深く省察いたしまして、そして大きな改革をやっていただきたいということを、これは期待をしておるわけであります。
  88. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 総理は所信表明演説でわずか地方財政の問題に触れられておるのですけれども、わずか五、六行の中で、「新しい転換の時代に対応して、自主的な責任で」ということを述べておられるのですけれども、地方自治団体の自主的責任とは一体どういう意味ですか。
  89. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地方団体には地方団体の長があり、また、住民の代表をもって構成するところの地方議会というものもありますから、その地方の体制の中から出てくる改革案、そういうことが期待される。中央でああせいこうせいという地方自治への介入はいたさない。こういうことを申し上げているわけであります。
  90. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私は、先ほど総理も述べられておりますけれども、今日の地方財政の危機、これをつくり出した原因につきまして、やはり政府としても大きな責任があるんじゃないか、そういう謙虚な立場で問題に取り組んでもらいたかったと思いますけれども、これらの点は、後ほどまた具体的な問題でいろいろ総理見解をただしていきたいと思います。  自治大臣、どうですか、先ほど申し上げましたような新しい転換に対応した基本的理念をどう持っておられるかということと、この地方財政の危機に当たりまして、担当大臣としてあるいは政府としてどのように対策を立て、かつまた新しい展望を切り開いていくことができるか。こういう点に対して率直な大臣の見解を聞かしていただきたいと思います。
  91. 小川平二

    小川国務大臣 お答えいたします。  ただいま総理からも述べられましたように、今後は高度成長時代のように巨額の自然増収に期待することができないわけでございますから、限られた財源を重点的、効率的に配分をする、一般行政経費も極力節減をしていただく、こういう方針で地方自治体を指導してまいりたいと存じます。  今日は一つの大きな変動の時期、転換の時期でございます。すべてが流動的な状況下にあるわけでございますから、こういう時期に一挙に抜本的、長期的な改革ということを実行するのがなかなか困難でありますけれども、少なくとも当面地方財政の健全な運営が阻害されませんように必要な措置を実行しなければならない、かように考えております。
  92. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 ただいま大臣からも見解を聞きましたですけれども、しかしながら、しばしば諸外国の論文の中なんかで指摘されておるのは、日本の高度成長というものは世界に比類のないものであり、それを生み出した原因というものは、一つには財政、金融を通ずるところの資本に対する保護政策、こんな大きな保護政策をとっておる国はない。二つには、税制によるところの優遇措置、これも世界には比類のない措置をとってまいった。第三には、地方自治と言いながら地方自治団体が上意下達の機関と化してしまっている。この三つの条件が高度成長を支えた力だ。こういうぐあいに指摘もされておるわけでありますけれども、そういう意味におきまして、やはりもっと率直に——地方自治団体の人たちは、政府の言うとおりに、政府の方針に従って今日まで道を歩いてまいった。ですから、先般この国会におきましても、ある県の知事は、暗く冷たく凍るような寒さの中で、長いトンネルの中で手探りをしておるんだ、このことを訴えておられますし、地方の市町村長にいたしましても、穴蔵の中に入っているようなものだ、突然穴蔵の中へ突き落とされた、こういう気持ちで、政府の政策、政府の方針に従ってきたがゆえに、このような立場に立って住民の苦悩に耐えなくちゃならない、何とかこの穴蔵から出れるその方向をぜひとも示してもらいたい、このように訴えられるわけですね。そういう地方自治体の皆さんの真剣な気持ち。この危機と真剣に取り組んでいく、どんなに困難であっても、どんなに苦しくても新しい道が開けるならばやっていこうではないか、こういう真剣な取り組みをやっておりますときに、まるで他人ごとのように、高度経済成長から低成長に変わったんだ、だからやむを得ないんだ、国も苦しいんだ、こういう言い方は私はどうも納得できないわけですけれども、また具体的な問題でいろいろと御意見を交わしてまいりたいと思っております。  そこで、まず総理にお聞きいたしておきますが、昨年の十一月十二日に不況対策として七項目を決定されたわけでありますが、この緊急七項目がいま成果をどのように上げておるか、この点についてひとつお話し願いたいと思います。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  93. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  十一月十二日に経済対策閣僚会議で決めた七項目につきましては、第一番目は、公共事業等の執行促進という問題でございまして、これについては、公共事業の執行について地方公共団体とも連絡をとりながら進めておるところでございます。  なお、日本国有鉄道、日本電信電話公社に対する措置。工事費削減分の四千億の取り戻し、これは手当てをいたしまして、この取り戻しに従って所要資金の追加をいたしましたので、工事の発注が行われておるところでございます。  住宅建設の促進については、住宅公庫の貸付枠の二万戸、八百十億円の追加ということで、この計画に従って一月から住宅の募集等を進めておる。  それから民間設備投資の促進については、電力の発注の繰り上げについて関係の業界とお打ち合わせをして、この建設を進めておるということでございます。  プラント輸出については、今度ボンド保険もできることでもございますし、それぞれの商社を督励して輸出の促進を図っておる。  また、中小企業に対する融資につきましては、年末追加において四千八百七十億の追加をいたしまして、それぞれの機関におきましてその執行を図っておる。そういう状況でございます。
  94. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 去年の予算委員会におきまして、いまの総理経済企画担当、倉成さんが委員としていろいろ論議をしておられる記録を読ませていただきまして、やはり倉成さんは、今日の不況に対して不況を正しく診断する、不況に対する理解を持つ、このことはまず何よりも大事だし、ここから出発しなくちゃならない、そういう意味においていまの不況というのはどうなっておるか、どうして生まれてまいったか、この事実認識に対して非常に鋭く当時の経済企画庁、副総理に迫っておられるわけです。その中で、私は速記録を読みながらも感じたのですけれども、「現在の不況がどういう状況にあるかということをしっかり診断することに出発しなければならない」という点を述べておられる倉成さんに対しまして、福田大臣、当時の副総理は、「五十一年度を展望してみますと、世界情勢というものが急転換をしてくる、それを背景としてわが国経済も活発な上昇過程に乗るであろう、そういう見解でございます。」、そしてまたさらに「今日の経済情勢は、普通過去においてわが国が経験してきた景気循環と」違った事情にあるという点を述べて、「とにかく早くそういう苦しい状態を脱却させなければいかぬ、」「しかし、四月以降経済の活況を呈するとともに、この雇用情勢も改善をされてくる。それから倒産、そういう問題もこの二、三月くらいはなお厳しい状態ではあるまいか、こういうふうに思いますが、これも春以降においてはかなり改善をされる。経済的に悪い時期である一−三月、これを経過いたしますと、国全体の経済は明るい方へ明るい方へと向かっておる、そういうふうに考えております。」、と非常に楽観的な現在に対する認識を述べておられるわけです。そこへ十一月十二日に七項目の緊急対策を立てなくちゃならない、こういう点を見てまいりますと、やはり過去二年間私も速記録を読ませていただきまして、どの予算委員会におきましても、いまが一番底なんだ、一番苦しいんだ、やがて後半期になれば景気が回復過程に入る、こういうぐあいに述べておられるわけです。しかしながら、後半期に入ってまいりますと、大変だ、中だるみだ、だから緊急対策だ、そういう意味におきまして、一昨年も第四次不況対策だ、昨年は七項目における対策、こういう形をとっておられるわけでありますけれども、私、日本経済がいま直面しているこれにはいろいろな原因があると思いますけれども、やはり循環的不況という要因と長期構造的な要因とが国際情勢と絡んで結ばれておる、かような面におきまして、地方財政もまたそういう影響の中に立っておるんだ、こういう認識のもとで対策を進めていただきたい、かようにお願いいたすわけです。  同時に、私はさらに総理にお尋ねしておきたいと思いますことは、前年同期の、下半期でいいですけれども、地方公共団体の公共事業の進捗状況はどうなっておるか。こういう点をもし把握しておられましたら、総理が無理ならだれがいいですか、どうぞ……。
  95. 小川平二

    小川国務大臣 政府委員から答弁を申し上げさせます。
  96. 首藤堯

    ○首藤政府委員 昭和五十一年度の地方公共団体の事業実施状況でございますが、第三・四半期までを一応通観をいたしますと、補助事業等につきましては昨年度よりもむしろ執行率を高めておりまして、前半で大体七六、七%、七七%近くまでの実施が終了しておるようでございます。ただ単独事業につきましては若干伸び悩みがございまして、五十一年度の第三・四半期の状況で六三、四%、そのくらいのところで、前年度よりは若干下回る、こういった状況かと思います。両方通算をいたしますと、ほぼ前年度より若干進んでおる、こういう状況のように把握をいたしております。
  97. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 いまそういうことをお聞きしておるのじゃなくて、国の公共工事の発注者別のシェアなり、あるいはまた上半期においてどういう状態になっておるか、こういう点をお聞きいたしておるのであります。  その前に私は、上半期の点につきまして私の持っておる資料が間違いないかどうか、そういう点をひとつ最初に確かめておきたいと思うのですけれども、公共工事に対する発注者別シェア、これは前半ですから四月から九月まででありますけれども、ほぼ同じような形をとっておると思います。国の工事は一〇・三%、公団、事業団が一一%、政府企業が一〇・四%、都道府県が二七・四%、市町村が二九・二%、地方公営企業が七・二%、こういう工事発注者別シェアが出ておるわけでありますが、と同時に、五十一年度の上半期、四月から九月における公共事業の着工の対前年同期の伸びを調べてみますと、国が一〇・五%である、公団、事業団は五・五%、政府企業はマイナス一四・二%、都道府県が二二・一%、市町村は三・八%といった数字を示しておるのでありますが、政府企業のマイナスは国鉄と電電公社の工事削減に伴うものであると思いますけれども、市町村の公共事業の着工が非常に悪い。これは一体どこに原因があると判断しておられますか。また、この資料が間違っておるかどうか。
  98. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまのお尋ねの点につきましては、まこと恐縮でございますが、少し時間を拝借いたしまして、事務当局の方で調べました上でお耳に入れさせていただきます。
  99. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの御質問に直接結びつくかどうかわかりませんが、恐らく御指摘の趣旨は、国、地方を通ずる政府支出、国民経済計算における政府支出が四半期別にどうなっていたか、それがおくれてはなかったか、そういう御指摘じゃないかと思いますが、そういう点でお答えいたしますと、昭和五十一年の一−三月におきます政府支出は実質で二・四、それから四−六が三・〇、七−九でマイナス〇・九と、確かに七−九におきまして政府支出が伸び悩んだということは事実でございます。恐らくこれは、国鉄、電電の値上げ法案のおくれということが大きく響いております。約六千億。それから地方の単独事業等が財政の苦しさからおくれてきたということが原因ではなかろうか、そう判断しておる次第でございます。
  100. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 いや、私の聞いているのは、おくれたとかどうという問題もありますけれども、もっと、国の行政投資ですね。自治省あたりでは、毎年いろいろな政府機関なりあるいは地方自治団体なり、全部を集計して、たとえば昭和四十九年度には十四兆円、こういう数字を出して、どのようなもとで工事が進められていっておるか、こういう点も明らかにいたしておるわけですわね。そういう意味で私が言ったのは、五十一年度の四月から九月までの工事の発注状況、これに占めるシェア——国自体は平均たった一割しかやっていないわけですわね。そういう状態の上で市町村は、先ほど示しましたように二九・二%の仕事を発注しておるわけですわね。県もまた二七・四%。国鉄その他の場合は、悪いとはいっても一〇%の発注をやっておるわけですわね。そういうことを考えてまいりますと、これだけ町村が大きなシェアを占めておった、しかしながら前年度の同期と比較すると大変な事態が出てきておるんじゃないか。こういう点に対してどう感じられるか。下半期は一体どうなっておったか、こういう点を明らかにしていただきたい。  私は前半の問題を指摘したけれども、この資料は間違っているかどうかとただすことが一点。第二点は、そういう中におきましてそれなら後半は前年と比較して一体どうだったのだろう、こういう点をお尋ねしておるわけです。
  101. 首藤堯

    ○首藤政府委員 私どもの方におきましては、地方公共団体の実施をしております事業、その分だけしか資料がございません。それを調査をいたしておるわけでございますが、第二・四半期、つまり上半期までの執行状況は、都道府県、市町村を通じまして、予算額に対しまして公共事業関係は五七%強、六割弱でございます。それから単独事業関係は四三%程度、このくらいまでが第二・四半期に執行されておりまして、第三・四半期、つまり十二月末までになりますと、公共事業関係が七七%程度、それから単独事業が六三%程度の執行になっております。  なお、前年に対しますこの伸びの状況でございますが、第三・四半期までの予算額におきましては、五十年度対比約一二%程度の伸びが補助事業でございまして、単独事業の方もやはり一二%これは弱でございますが、そのくらいの伸び。こういった予算になっておるような状況でございます。
  102. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私が聞いておるのは自治省関係ではわからぬでしょう。政府関係機関なりあるいは公社、公団なり、それから国自体がどれだけの工事を発注しておるか、それから前年度との比較はどうなっておるか、こういう点を尋ねておるのですから。自治省では、後で行政投資の行方を調べる、そういう意味においていろいろな資料を集めておられると思いますけれども、そういう点は一体どこが担当するのですか。  たとえば、鉄鋼連盟がありますわね。鉄鋼連盟の月報なんか読んでみますと、われわれの予算が通るか通らないうちにもはや数字を出してまいっておりますわね。たとえば鉄鋼と非常に関係の多い道路、港湾、治水、鉄道、通信、水道、この六項目の中において一般会計、地方財政、財投融資から算出された総需要は幾らか。こういうことを計算して、その中で鉄鋼が幾ら使われるかという計算をいたしまして、対象が八兆七千五百四十三億円だ。この中で鉄鋼は五百十一万トン、昨年から見ると三十二万トン、六・七%上回る。こういう計算を出して、それで鉄鋼関連の産業というものに対する着工に対する条件というものをいろいろ調査をやっている。こういう形にやっておるわけですね。ですから、恐らく政府にしても、景気を刺激するために公共事業その他がより効果的だ、乗数値にいたしましても二・二倍だ、こういう形にして言っておられるわけですから。一つにはそういう、この予算の中に、鉄やセメントやその他木材なり一体どういう動きをやるだろうかということ、その中において、それらを包んでおる工事を施行する政府機関なりあるいはまた公団、事業団、それから国、市町村、どういう状況になっておるか。地域的には一体どう分かれておるか。あるいは農村地帯と都市との間における変化も出てくるでしょう、前年度のことですから。前年度にそういうものが明らかになって五十一年度はどうだろうか。こういうことを理解するために私は質問いたしておるわけですけれども。
  103. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 佐野委員の御質問の、地方公共団体も全部含めたものでございませんが、国だけの関係について十二月末までの契約状況を御報告いたします。
  104. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 ちょっと待ってください。私は国だけを聞いておるのじゃないのです。国には財投融資を受ける公団、事業団があるでしょう。それから政府機関、公社がある。そういうかっこうのもの、あるいは国自体がやっているもの、あるいは県、市町村。こういう形の中で、先ほど申し上げましたように二八%は占めておるけれども前年から見ると三%しかふえていないというような状況が町村の場合に極端な数字として出てきておるでしょう。なぜだろうかという疑問がまず起こるわけですよね。では、下半期に行ってどういう状況になっただろうか。仕事が集中したから町村が発注しにくかったのか、下半期にはどう変化をしていったのだ。その七項目の政府が決定しなくちゃならぬ条件というものはその中にどう理解できるか、こういう判断のために、実は数字で恐縮だったのですけれども、あえてお聞きいたしているわけですよ。
  105. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 それでは、いまの御指摘は、一般会計だけじゃなくて特別会計も政府関係機関も公団、事業団も含めまして、国の分だけちょっと御報告いたします。  十二月末の契約状況でございますが、一般会計につきましては去年が八二・四%でございましたが、ことしやや促進いたしまして八四・一%。それから特別会計でございますが去年の八〇・一%に対しましてことしは八三・七%。政府関係機関は佐野委員の御指摘のとおり国鉄、電電等の落ち込みがございましたので、去年の八六・九が七八・〇と激減いたしております。それから公団及び事業団につきましては、去年の七五・六に対して七七・五。  以上、国の財投などを含めました公共事業関係全部やりますと、去年の八一・六に対しまして政府関係機関のおくれが響いておりまして八一・〇。それから年度末までに、国のこういう関係の公共事業の促進につきましては各省各庁に契約限度額いっぱいに消化するようにということで、各省各庁がいま独自に進めておりまして、あと二、三日すればその計数が集まるか、こう聞いております。
  106. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 それで私はやはり考えなくちゃならぬと思いますのは、自治省がやっております行政投資の大別のところ、いろいろな分析をやっておられる。これは自治省の発表しておる数字なんですけれども、こういう中におきましてやはり主要事業別事業主体別投資額ですか、こういう構成比を見ておりますと、結局四十九年度におきましては国が二七・八%事業主となっている。県は三二・七%、市町村が三九・五%、約四割を市町村が引き受けておるわけですね。町村の役割りというのは非常に大きなものだということ。十四兆円の行政投資の中で四割が市町村の投資になっておる。  そこで工事の発注状況なりどうなんだ、こういうことを見てまいりますと、やはりその中にも出てきておるわけです。非常に高い。国が一〇%なら町村は三二%の数字を示しておる。しかし、前年から見ると大変な落ち込みをやっておる。こういうように、地方財政の中でも町村が非常に苦しい状態に追い込まれておる。特に力の弱い市町村というものはいま大変な状態になっておるということをこの数字は示しておると私は思います。と同時に、過疎、過密、こういう大きな変化というものもまたこの中に出てきておると私は思いますがね。それは事業区分別に見てまいりますと、それをまた各県別に分析して見てまいると、大都市と地方における状況なり、農林地帯を中心とする過疎地帯の府県なり町村というものと都市における要求、受け入れが、しかも相当な変化を示してきておる。逆に、農村関係におきましては道路関係その他が伸びてまいるし、いわゆる都市におきましては、福祉その他のものが全然逆の姿をたどりながら、しかも財源不足の中で非常に苦しい歩みを実は続けながら、国の要請にこたえておる。こういう意味における町村のこの状態に対してどのように判断をしておられるか。こういう点を政府としてもやはり真剣に取り組まなくてはならないのじゃないか。そういう意味における現状に対する認識をまず最初にお伺いしたいのと、その背景は一体どうなっておるのだ、こういうことをお聞きしたがったのがこうなったわけです。そういう点に対して、また見解を承りたいと思います。
  107. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  佐野委員の御指摘は非常にごもっともな点でございまして、景気の現況をつかむために、国の財政支出の状況だけではなくして、地方の財政支出あるいはその状況がどうなっているかということを的確につかむことができれば、それが一番理想的な姿でございます。そういう問題意識は私どもあるわけでございますが、御承知のとおり地方公共団体が、全国の市町村三千余に及ぶものがございまして、その一々を、全部の状況を的確に把握するということがなかなかむずかしい状況になっている。したがって、指定統計として出てまいりますとかなり時間がおくれてくるということで、その認識が相当な時間的なずれが出てくる。何とかこれを早める方法はないだろうかということを、いまいろいろと検討いたしておるところでございます。しかし、昨年の夏以降の政府支出につきまして、やはり地方の団体の財政が苦しいからなかなか裏負担あるいは単独事業がおくれているであろうというような点につきましては、自治省等もいろいろとそれぞれの地域の模様を判断しておった次第でございます。そういうことを総合的に判断いたしまして、やはり輸出の鈍化と個人消費の停滞、それにやはり公共支出のおくれということを考えまして、七項目、十一月十二日の項目を決定した、こういう次第でございます。  また、詳細な分析につきましては、経済企画庁としては国民所得の四半期別の統計をとっておるわけでございますけれども、このいわゆるQEと称する四半期別のものは時間的に若干おくれてまいりますので、現在までは五十一年の七−九の数字までしか出ていないわけでございます。これをなるべく早く、もう少し的確にこのQEを出す方法はないのだろうか、アメリカやあるいはカナダ等の方法も取り入れてみたいということで、いま検討いたしておるところでございます。
  108. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 どうも質問とすれ違って困るのですけれども、まあ、こういう雰囲気ですからやむを得ないと思いますけれども、私の言っていますのは、いま国が公債も発行して大変苦しいんだ、しかしながら、これによって乗数効果は出るんだ、景気がよくなるんだ、このことをいつも繰り返しながら、実は暮れになってまいりますと、中だるみであり、輸出の停滞が起こった、投資熱がさめたというようなことをもって対策を立てなくてはならない。こういう中にあって一体市町村の財政というものはどうなるだろうか。町村に、先ほど申し上げましたような自治省の調査によりましても、国並びに補助事業がありますし、政府機関、電電公社、これらも含めた全体の動きの中で、しかも町村というものは大変な背負い方をやっておるわけですね。ですから、この工事着工が下半期におくれてまいった。なぜだろうか、こういうことをまた知りたかったし、そういう中におきまして、皆さんも御存じのとおり、地方財政の中で町村が一番——しかし、町村にもいろいろな種類があると思います。この間決算が発表になっておりますから私ども分析させていただきたいと思いますけれども、町村別にこれをながめますと、いろいろな問題が出てくると思います。と同時に、単なる建設事業という形だけではなくて、その町村が補助事業と単独事業とをどういう形において組み合わせておるか。恐らく公共事業を受け入れなければならない。そのために住民に密着している福祉なりいろいろな問題に対しましてもカットしなければならない。こういう中で実は生まれておるのではなかろうか。そういう意味において、単に国債を発行する、公共事業を進める、その中から景気が出てくるんだ、こういう考え方はこれで三回も実は裏切られてきておるわけでしょう。ですから、いまこの予算委員会におきましても、将来は明るいんだと言われましても、そういうような状況に対しましての取り組みが真剣になされるんだろうか、こういうことを実はお伺いしたかったわけですけれども、すれ違いになりますので、次に進めさせていただきたいと思います。  そういう点から見てまいりまして、いま一番欠けておるのは、地方財政に対する対策が全くなされていない、こういうところに多くの原因があるんじゃないかということを実は私は痛感するわけです。大蔵大臣もおられますけれども、大蔵大臣の施政演説を聞いておりますと、わずか三行、地方財政に対しましては、数字は三二%の数字と、九百五十億円の特例交付金と借入金に対する利子補給をした、合計五兆七千五十億でありまして、もはや次に移っていってしまったわけですね。国民が非常に注目しておるのに、こんなわずか三行か四行。しかも交付税の中身だけの説明、内容じゃないですよ、数字だけを説明して、以上終わりという形で次の問題に移っていかれておる。いろいろな時間的な制約があったといたしましても、皆さんがいろいろな予算をつくり、いろいろな事業をやるにいたしましても、皆さん自身がやるのではない、大部分は地方公共団体がこれを担当していかなければならない。そういう場合に、どれだけの仕事量をやっておるだろうかということを考えてみても、このインフレと不況、スタグフレーションというものは大変な事態だし、また政治としても中央政府としての責任を国民に対して感じなければいかぬと思います。このような状態に陥れて、このような状態に苦しんでおるこの人たちに向かって、政府としては責任を持ってこういう方法をとっていくんだ、こういうことをやはり率直に述べられるべきじゃないですか。その点非常に遺憾だったのですけれども、大蔵大臣にお尋ねしてないので、大蔵大臣として、この地方財政の危機に当たって一体どう感じておられますか。しかも、国と同じような循環的な、短期的な面と長期構造的な面から迫られておる問題があると思います。そのために苦しんでおる。しかも倉成さんが議員として当時の副総理にやはり質疑しておられるように、現状認識、正しい診断がなければ対策が生まれてこないのじゃないか、安易な対策しか出ないんだ、こういう点を非常に警告しておられただけに、大臣、どうですか、そういう面に対しての御意見を伺いたいと思います。
  109. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えいたします。  地方財政が五十二年度において非常に苦しんでおるということは私も痛感いたしております。地方財政が苦しんでおるということは、これは中央の財政も御承知のとおり大変苦しいんで、三割の予算公債依存度、そういった公債を発行してやっておるということでございますが、さしあたって五十二年度には地方財政で二兆七百億円の赤字が出ておる。それを、どういうふうにして穴を埋めていくかということにつきましては、地方財政に対しまして二兆七百億円のうちの半分の一兆三百五十億円というものを地方財政に補給していく。さらに残りの半分の一兆三百五十億円というものを、この赤字をまず埋めて、そしてその他のいろいろ起債だとか何かというようなことについては、いまお話ございましたが、この危機というものは、総理も常に言われておりますとおり、中央と地方との財政というものはこれは全く車の両輪というようで、そこでその両者が相持ち、相助けていかなければならないということはもう申すまでもないことでございますが、そういった考えの上に立ちまして、そしていまのこの異常な事態におきまして抜本的な、恒久的な制度といったようなものをやり直していくということは必ずしも適当ではないということで、とにもかくにもこの五十二年度をどうして片づけていこうかということにつきましては、地方、自治省当局とも十分審議、相談をいたしまして、そして五十二年度の地方財政計画というものを立てたというのでございまして、決して地方に対して五十二年度御不自由、非常に困るというようなことにはならないというような施策を講じておると思っております。
  110. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 どうも私、そんな予算書の内容はもうわかってしまっておるわけですから、そういうことをお聞きしておるのじゃなくて、私、先ほど冒頭に申し上げましたように、世界の人たちが、日本の高度成長を助けた一つの大きな面として、地方自治体が国の上意下達機関になってしまっておる、自治は奪われた日本の公共団体だ、こういう指摘をしておられる。やはり私も考えてまいりますと、たとえばドイツを見てまいります。ドイツにおきましては固有の事務がはっきりしておる。景気が、日本のように、総需要、景気刺激、これは地方団体とは——地方団体の自主性を尊重しながら、こういう事態に直面した、協力を求める。そのためには委員会制度としてもうできてしまっておる。そしてこのための景気の刺激、このための総需要抑制、それは法律に明らかにして、この問題はこうやりますよ、だから地方住民の皆さんの理解を求める。そこには制度としてそういう委員会が発足しておる。しかもそれらは法定化しておる。日本の場合はそうじゃないでしょう。一年間のうちでも、いや景気がよくなるんだ、暮れにいけばまただめなんだという形で、いろいろなことが直接地方自治体に入っていってしまう。上意下達が、違った意味でいて、なおもいま姿を出してまいっておる。しかも、こんな困難なときに、それでは実際これら不況に対して取り組むことができるだろうか。そういう意味からも、このときからこそ制度改正の時期が来ておるのではないか。  特に日本制度がそうなっておりますから、たとえば交付税一つを見てまいりましても、四十一年までは公債が出なかった。そのころは、一応自然増収がある、あるいはまたそれによって交付税はふえてくる、と同時に国の仕事をやってもなおその余った分で単独事業なり独自の地域の住民のための施策というものを取り入れていった。それが今日になってまいりますと、そうじゃなくなってきただけに、いろいろな問題点をいま洗いざらいして、本当に地方自治団体が独立して自立と自主性を持って住民自治をやっていけるか。全くそれとかけ離れてしまった日本の景気刺激、総需要抑制、大資本なりそれらがつくり出したそのことのしりぬぐいをするために地方自治団体がいま苦しい状態の中に立っておるのじゃないか。こういう点を私は指摘しながら、お互い検討すべき時をいま迎えておるのじゃないか。  国も苦しいから地方もがまんして、苦しい、こういうこと自体がおかしい。制度としてそれはあってはならないことです。そういう制度がないところに、そういう問題がやはり国会の中において、国政を担当する大臣が、国も苦しい、地方も苦しいという、全く憲法の精神というものをじゅうりんしたことがあたりまえだ、間違ったことがあたりまえだという感覚で取り組んでおられるところに大きな問題があるのじゃないか、私はかように考えます。  と同時に、時間も進んでまいっておりますので、「地方財政収支試算」というのが昨年の国会に出されておるわけですけれども、これを見てまいりましても、ことしの予算折衝なり大蔵大臣が決定されたのを見ておりましても、たとえばケースIによる試算を見てまいりますと、地方財政規模は二十九兆一千五百億円だ、財源不足は一兆九千二百億円だ、こういうぐあいになっておるわけです。しかしながら、ことしの皆さんが提案されました内容ともはや、去年はその年度を中心として柱を立てておられましたけれども、しかしながら本年度、二年度になってまいりますと全く違ってしまってきておる。こういう点に対して、一体どうしてこんなに大きく狂ってしまったのか、そういう点を考えて、近く再改定をして国会に提出すべきである。そういうわけで、参考として出される「試算」でありますけれども、このように最初からもう狂ってしまっておる。将来どうなるのだろうか。これに対するところの検討の資料も実は出てこないわけですね。こんなでたらめになってしまっているものを、五十五年までの一つの展望として「試算」として示されても意味ないのじゃないか。こういうことが一つ。  もう一つ、いま国会の予算審議は進んでまいっております。しかし、いまなお地方財政計画が出てこないわけですね。先ほども申し上げましたように、皆さんの金が、予算が七割も地方に行って、地方はそれに上積みをして実は事業をやるわけですね。国会としても財政の規模なり内容というものをやるためには、地方財政計画を地方が受け入れる、その計画と一体となって審議しなければ、ただ単に公共事業は四兆幾らだと言っても、これが八兆円になってくるわけですね。そのことによって日本経済にインフレ再燃の危険があるか、あるいはまたどういう状態が生まれてくるか、景気が本当に回復の道をたどるかどうかという、こういうことを判断として大きく私たちは求めておるわけですね。それが国会の審議だと思います。ですから、地方交付税法におきましても、できるだけ早く国会に報告する、一般の国民に公表する、このことを約束しておるわけですね。ですから、地方住民に対しましても、国の財政は地方とどう結ばれてくるか、地方の財政はどういうぐあいに運用されるのだろうか、その指針として実はあのように法的に規定しておるわけですね。それが、もはや地方議会が予算をつくろうとしておるそのときにまだ公表もされない。われわれが国会で審議をしておる、その審議が終わろうとするときにやっと地方財政計画が出て、国、地方一体としての行政投資はこのように使われます、こういう判断材料が出てくる。私は、全くおくれて、間違った道を歩いておるのではないか、こういう感じもいたしますので、本予算委員会にできるだけ早く地方財政計画を提出願いたい。  と同時に、この場合におきましても、地方はやはり予算を組まなくちゃならない。そうしますと、総務部長さんを集めて、実はこうであるだろう、ああであるだろうという通達なりなにをしておられるわけですね。通達がなければ予算も組めないというくらい中央に従属しなければ独特の歩みはでき得ないという制度と財政組織になってしまっておる。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 こういう点に対しましても、やはりこの機会に検討しなければならぬ問題点ではなかろうか、かように考えますので、二つの点どうですか。
  111. 小川平二

    小川国務大臣 さきに国会に提出申し上げました「中期収支試算」と現実との間にずれが出ておりますことは御指摘のとおりでございますので、ただいま改定の作業を進めております。その際、国の方の作業と並行して行なうのが当然でございますし、それによって国との整合性を保っていこう。これは改定したものができ上がり次第国会に提出を申し上げます。  地方財政計画の策定を急がなければならないというゆえんについてはいまるるお話がございました。仰せのとおりでございます。先般来作業を急いでおりまして、きわめて近い将来に提出申し上げられると存じます。これは今週いっぱいに国会に提出を申し上げる予定でございます。
  112. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 「収支試算」はいつごろ改定して国会に提出されますか。
  113. 坊秀男

    ○坊国務大臣 それでは国の方を申します。  改定作業を進めておりますが、提出の時期につきましては、できるだけ早い時期にといまのところは申し上げてお答えといたします。
  114. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 国会に「収支試算」を提出して財政におけるところの現状に対する参考資料として、それがもう一年度目から狂ってしまっておるものをそのままにしておいて、それで予算委員会は進行していっている。全くおかしいのじゃないですか。  と同時に、自治大臣、私、先ほどドイツの例を言いました。自主財源がはっきりしておる、地方のやるべき仕事は地方の財源でやっていく。そのために国がどうしても必要な場合には法律をもって明らかにして、ここに協力関係としての制度がある。日本の場合、いまのお話のように、国の方が決まらなければわしの方は全然決まらないのだ、こういうような考え方を持っておられる中にも、私、危険なものがすでに私たちの中に習慣化されてしまっておるのではないか。本来は地方自治団体と国とは対等な立場に立たなくちゃならぬし、そのために財源なり税源なりというものも明確にしなくちゃならなかったのが、実はやってこなかった。ここに大きな問題が傷跡として残ってきておるのではないか。そういう点に対しましても実際残念だ、遺憾だと思いますけれども、それはそれとして、次に入ります。  ここで私は、ことしの予算の決まりました経緯に対しまして、国民もまた、どうして、どうなったんだということが、あんまり理解されていないのじゃないか、そういう声を聞くので、一応明らかにしていただきたいと思いますが、一月九日、大蔵原案が内示前に、地方財政対策の具体的内容が一切詰まらない中で、五十二年度の財政規模二十八兆八千億円、財源不足二兆七百億円、こういう点に対して大蔵、自治省の間には合意ができた。こういうぐあいに新聞が発表しておるのですが、内容の具体的な対策が全くなくて合意が成立した、これは一体どういうことなんだろうか。いわゆる財政規模と不足額が合意されたというのは、きわめて不自然じゃないか。内容が決まらないのに規模と不足だけが合意された、こういう点ですね。しかも、国会に提出して、参考ではありますけれども、「収支試算」と大きくかけ離れてしっておる。そういうもので合意を実はされたわけですね。そういう点に対して自治省と大蔵省の交渉経過というものは、一体どういうことでそうなって交渉が積まれてまいったか。その点を明らかにしていただかなければ、地方自治団体と国との間におきまして、対等の立場に立って、しかも規模と不足額だけは成った、不足額は一体どういう積算の根拠があるのだろうか、これも明らかにしてもらえないですか。しかも、財政規模もまた実は勝手に変えてしまっておる。なぜ変わったのか、このことも明らかにされていないわけですね。  しかも、もう一つの問題は、いままでの推移から見てまいりますと、いわゆる地方財政の規模が国家財政よりも多くなってくる。それが当然のこととし、内容もそうなっておると思います。ところが、今度の場合におきましては、三%低くなっておるわけですね。なぜ三%低くなったんだろうか、こういう点も国民としてわからないわけですな。そういう点も何ら発表することなく、実はこの不足と規模だけは合意になったという不自然さ。こういう点に対しまして、時間もなにですけれども、ひとつ説明していただきたいと思います。
  115. 小川平二

    小川国務大臣 二兆七百億という財源不足を見込まざるを得ない、そういう点について、大蔵、自治両省で合意を得ました経過につきましては、いま政府委員からお耳に入れます。(佐野(憲)委員「いいです。それは事務当局の話ではなくて……」と呼ぶ)
  116. 首藤堯

    ○首藤政府委員 数字的な経過でございますので、御説明させていただきます。  御案内のように、地方財源の過不足額を策定いたしますのは、ただいま地方財政計画、こういった様式を通じまして、歳出の見積もりを立て、歳入の見積もりを立てまして、過不足を算定いたしておるわけでございます。したがいまして、従前のようなルールに基づきまして、地方財政計画に計上してありますような各費目、つまり人件費でございますとか、投資的経費でございますとか、公債費でございますとか、こういうものの明年度の見積もりを立てますことは容易にできるわけでございまして、これは私ども立てました見積もりをそっくりそのまま大蔵省に御同意をいただいた、こういう経過をたどっております。問題は、公共投資の額がどのくらいになるか、これが国の予算に関連をいたします。その分で財政規模が動いたり地方負担が動いたりするわけでございますが、これは予算編成前からいろいろ打ち合わせをいたしまして、若干の異動は前提にいたしますけれども、ほぼどのくらいの見込みである、こういった見込みを立てまして歳出の総額をはじきます。それから、歳入でございますが、これが中期計画と若干の変動がまいりましたのは、地方税の収入見込み額、それから地方交付税の収入見込み額、これが御案内の国民所得の伸率に差ができましたことと、中期計画では五十五年までの間に国、地方を合わせまして三%の租税負担率のアップ、こういうものを前提にいたしておりました関係上、これが減少いたしてまいりました。そういったものの減も立てまして積算をいたしました結果、二兆七百億、こういう財源不足が見込まれ、これについては何としてでも財源補てんをしていただかなければならぬ、こういうスタートラインに立ちまして折衝を開始いたした、こういうことでございます。  それから、国の財政規模の伸びより地方財政規模の伸びが若干低くなりました理由でございますが、これは国の国債費、それから地方交付税の国の一般会計における支出額、こういったものに非常に大きな伸び率がございます。そういうものを除外いたしまして両者を比較いたしますと、決して国の伸び率より地方財政の伸び率が低くなっていないのでございまして、見せかけ上の上額がそのようなかっこうに相なった、このようなことでございます。
  117. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 そういう点を明らかにして、たとえば国債を発行するために交付税はこれだけ入ってこなくなるのだということなのか。その影響はどう地方財政に響いてくるか。余りにも国に隷属されてしまっておるから下請機関のような形になり、上意下達、こういう形でやってくるから、なおさら国民にはわからないわけでしょう。それまでに試算が出ておった、その試算とがらっと変えてしまう。そういう点もやはりもう少し明るく、地方自治体と国とは対等だ、憲法の趣旨からいっても。また、地方自治法にいたしましてしも、自主性、自立性というものを非常に強く憲法を受けてうたっておるわけであります。だから、皆さんが発言されるのは、全くどこの国の発言を聞いているのだという感じさえするわけです。  そういう論議は別といたしまして、ただ、ここで私一つ気がかりになってくるのは、五十二年度予算の政府固定資本形成の伸び率は一五ないし一六%だ。これは一般会計の公共事業の伸び率二一・四%はもちろん、財投の一八・一%を下回る数字だ。その原因は、地方公共団体の公共事業に多くを期待し得ないという危惧なり、そういう判断が動いておったのではなかろうかという感じもするのですけれども、その点はどうですか。
  118. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの御質問は、政府支出の中の資本支出、十八兆二千五再億でございますが、これは前年度に比較しますと一五・九%の増でございます。ちなみに五十年から五十一年に対する伸びは九・六でございまして、国、地方を通ずる公共事業、これは国の一般会計のみならず、公社、公団、また地方の地方自治団体の予算、それに地方の公営企業、こういうものを全部足しまして、重複計算を差し引いて、それから土地代を差し引いたものが御案内のとおり資本支出でございます。これが十八兆二千五百億、かなりの伸びであると判断いたしております。
  119. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 それから、地方財政計画の作成の中における試案だろうと思うのですけれども、地方税の伸びを一八・二%と見込み、法人関係税の伸びを二三ないし二四%、きわめて高く見込んでおられるわけですね。歳出面では逆に非常に抑制をしておる。しかし、その点を見てまいりますと、給与関係費が大変抑制されておる。結局、給与費の伸びを抑えることで規模を抑制しておるんじゃないか、こういう疑問も出てくるわけですね。  あわせて、税務関係の皆さんから、法人関係税が二四%、とても無理だと、大都市並びに都道府県の皆さんが言っておられるわけですけれども、そういう点に対しましても、国が一応税収の中に見込んだから地方もまた見込んだ、こういうぐあいに解釈されるのか。地方財政の観点からどうしてもこの程度の税収を上げなくちゃならないという、上げ得るという確信のもとにそういう判断が出てまいったんですか。第一線の税務を担当しておる人たちは、今日のこの中におきまして一八%の伸びを持つということはとても不可能だ、かように指摘いたしておるわけですけれども、そういう場合におきましても、やはりその点においてもし間違いあったら、そういう歳入欠陥が起こった場合において、予定よりも少なかった場合にだれが一体責任をとるか、こういう点もはっきりしておいていただきたいと思います。  また、財政補てん債なんという形で借金を後に残すという形の一時的、糊塗的なやり方、いままで進められてまいったと同じような行き方はひとつやめていただきたい、こういうことを一応つけ加えておきます。
  120. 首藤堯

    ○首藤政府委員 税収入の見積もりでございますが、これは明年度の経済見通し等の伸率、国民所得の伸率一三・九%、こういうことが経済計画上予定をされておりますが、そういったデータに基づきましてはじいたものでございまして、これだけ確保しなければならないといった観点からはじいたものではございません。その点、国の法人税関係と地方のたとえば法人関係税、これは根っこの基盤が同じでございますので、国の税収見積もりと同じデータ、同じ根拠に基づいて算定をする、こういうかっこうになっておるわけでございます。その結果、全税収を通じまして御指摘の一八%余り、こういった伸びでございます。  それから、人件費関係でございますが、これは昨年のベースアップの状況等がわりに低うございましたので、そういった影響でいままでよりは伸びが低くなっておるわけでございますが、的確にアップ率等を計算いたしまして、人員の増減もはじきまして、はじきました結果が九・三%の伸びになっておる。  なお、この分につきましては、先組みというかっこうで、国の予算も同じでございますけれども、五%程度の五十二年度におけるベースアップ、これを前提にして先組みをしたかっこうでの推計額、このように相なっております。
  121. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 そういう意味におきまして、法人関係税というのは地方税として非常に不安定な要素を持っておると思います。好況、不況の中に常に計算を狂わされてしまう、こういうのではなくて、法人の事業税というのは物税としての考え方で創設された、このように私たちは理解しておるわけですけれども、やはり企業におけるところの社会活動、特に府県におけるところの負担、府県の負担に対するところの受益を中心としてそれにこたえる、こういう物税的な立場がとられておったにもかかわらず所得課税となってしまった、ここに問題があるんじゃないかという気がするのです。本来のたてまえは、そういう物税的な性格を持って景気、不景気に動揺しない、地方の企業が地方におけるところの行政なりいろいろな意味におけるところの利益を受けておる、その負担を求めていくんだ、こういう物税の性格と所得税という形における事業税というものと、全然違うんじゃないか。ガスや電気は収益的な課税標準になっておる、その他はすべて所得だ、こういう形でいわゆる事業税もまたその中に入り組んでしまった。ここにゆがみもあるし、こういうことは高度経済成長なり景気のいいときに直してしまわなくちゃならない。しかも、いろいろな投資をする、いろいろな産業開発に自治体が協力をする、そういう中において、その協力を受けながら、不況になってまいりますと実は金もわずかしか納めないんだ、こういう形でまかり通るという税法そのものが最初の出発のところに戻ることはそうむずかしい問題ではないと思うのですけれども、その点はどうですか、外形標準課税に移すということは。
  122. 小川平二

    小川国務大臣 いまお言葉にありますように、この税は、企業の事業活動、それから地方自治体の行政サービス、この間の応益関係に着目をして取る税でございます。物税でありますから外形標準によるのが至当だと存じておりまするし、そういう税として本来出発したわけでございます。  そこで、この際、この税の性格を明瞭ならしめると申しますか、あるいは本来の姿に近づける必要があるだろう。同時に、これもいまお言葉にありましたように、所得を基準といたしておりまする税は景気の変動に対して非常に敏感である、過敏である。こういう不況の際には、この税に強く依存しております府県が非常に苦しい状況に立ち至る、こういう事情がありまするので、先般来、自治省といたしましては問題を提起しておったわけでございます。  この件につきましては、税制調査会の御意見を求めました。所得基準をあわせ用いることがいいかどうか、その際どのような基準を用うるべきであるか、税率はどの程度にすべきであるか、あわせて御審議をいただいたわけでございます。承るところによりますと、即刻導入せよ、こういう御意見もあった反面に、今日の景気に与える影響をも考慮して慎重に検討すべき問題だという御意見もあったと聞いておりますが、結論的には、少し時間をかけて検討をすべし、こういう御答申をいただきましたので、私どもといたしましては、今後関係方面の御理解も得まして、何とか外形標準を導入する方向で決着をつける努力をしてまいりたい、こう考えております。
  123. 坊秀男

    ○坊国務大臣 法人事業税の外形標準化でございますが、これは大変重大な問題です。税の根幹に触れる問題でございまして、いま税制調査会におきまして、いま自治大臣から御答弁あったように、真剣になって検討をしてもらっておる。  そこで、いずれにいたしましても、この問題につきましては、税制調査会の検討の結果、これは根幹に触れる問題だけに慎重に考えてまいりたい、かように考えております。
  124. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 大臣、話を聞いておられたのですか。本来は物税として外形標準に移さなければ、出発しなければならないのを、待った待ったと言って延ばして、いつの間にか所得課税になってしまったのでしょう。ですから、本来、景気、不景気であっても、地方におけるところの事業活動をやるために府県の非常に大きな利益を受けておる。これに対して、当然それを払うのだという考え方から物税としての立場をとっておるわけでしょう。そういうふうに出発したし、そういうぐあいに着目してやってきたわけでしょう、できたときは。それを所得税に変えてしまったわけでしょう。実はそれは、たてまえが全く崩れてしまっておるわけですね。それをもとに戻すというのに対して、大変税制の根幹にかかわる重大問題なんというのは大体おかしいじゃないですか。もとへ戻すというのはそんなにむずかしい問題じゃないでしょう。何百億円の会社があり、しかもそこにおいて、赤字だからといってやはりわずかしか事業税を納めない、住民税も納めない、こういうところだってあるというわけでしょう。地方住民から考えても、大きく企業活動に対しまして便宜あるいはまた産業基盤、そのために努力してきたのに、不況だから金は納めないのだ、こういう物の考え方がとられてはいけないからというので、シャープさんが来たときでも論議があったごとく、いわゆる景気、不景気に左右されなくて自主的に予算を組んでいく、地方住民の福祉のためにやっていく、こういう課題とそれにこたえる影響のない財源、こういう形でつくられてまいったのでしょう。税の根幹に関する重大問題でも何でもない。——まあ、いいですよ、時間がありませんから。(「言いわけしたいんだから、さしてみたらどうだ」と呼ぶ者あり)
  125. 坊秀男

    ○坊国務大臣 初め外形標準であったものが所得主義ということになった、なったことは大変悪いことだというふうにお考えのようでございますが、なったのはなったで、そういったような理由があってなったのでございますからね。だから、そういったようなことを一つ私は申し上げますと、外形課税ということになりますと、所得の有無にかかわらず税が課せられるといったようなこともあるのですよ。だから、いろいろな角度から考えまして、そうして税制調査会で目下検討をしてもらっておるのです。その結果を見まして、そうしてこれは決めていくということが、これが知は適当なるやり方だ、かように思うものでございますから、一言つけ加えておきます。
  126. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 景気のいいときはおれは税金を納めているじゃないか、おれはおれはと、こういう形で企業はのさばるわけですね。だから問題はちっとも解決できない。こういう不況のときこそ真剣に企業の社会責任というものをみずから判断をする、こういう形で地域社会と一緒に歩む、そのためにはどうするか、こういうことを真剣な企業者はやはり考えておると思います。また、間違った道を歩いてきたのだからもとへ戻る、山で道に迷ったらもとへ戻るのが一番賢明だと同じようにもとへ戻る。このことはそんなにむずかしいことじゃないと思いますけれども、これは議論の場ではありませんので先へ進みます。  ただ私は、財政対策を見ておりましても、たとえば二兆七百億円の財源が不足した、それを地方が半分、こっちが半分、一兆三百五十億円、こういう形、どこに一体根拠があるのだろうか。足して二で割るというような物の考え方では、やはりその場ばかりの何かお互いの立場を助け合うというような形しか考えられないわけですね。しかも、私たち見ておりまして、では一兆三百五十億円がもらえるのかと思いますれば、逆に九百五十億円という特別臨時地方特例交付金だ。九百五十億円の積算の基礎は何だろうか。こうやって、皆さんの予算書からも説明がちっとも出てこない。「新情勢の現況にかんがみて」という言葉しか出てこない。もっと深く聞いてみますと、分離課税の選択のアップが、地方税の場合は遮断されてしまっておる。それではせっかくアップをしたのに地方に税収がない。こういう意味も含めて九百五十億円の積算の基礎がなっておるのだ。その他、一体何ですか、わからないものが私たちの中に感ずるわけです。後でいいのですけれども、そういう中からやはりもう少しすっきりして国民を——新しい内閣ができて、福田内閣に対する期待も国民は大きいと思います。やはり福田さんという人は温かくて清潔で知性に満ちた人だ、いままでの政治家のように、二で割って、理屈はわからぬけれども、ともかくこの金でよかろう、金、物中心主義、このことこそ日本を毒したのだと言って、わかりやすく、だから知性がある、しかも清潔で温かい、こういう福田さんに対する期待が高まろうとするとき、何だ、こんな予算やっていられると——九百五十億、やはり大変な金だと思います。根拠があるのかないのかわからぬけれども、ともかくくれてやると言われる。しかも、田舎におきましても、いまどき半分持ちしようじゃないかというような形でやるというようなのじゃなくて、やはり一つの計算をして納得ずくめでやっていく、こういうことが国民の目に、政治はわかりやすい、その理屈ならおれたちも参加していけるのだ、こういうことが出てくるのではないかというのが、今度見ておりまして、わかりにくい措置がずいぶんとられておるというのは非常に残念だと思うわけですが、そういう点もつけ加えて、時間もなんでありますから、具体的な問題で少し問題を詰めていきたいと思うのです。  まず最初に、私は機関委任事務という問題につきまして、この機関委任事務というのは世界にもあるが、戦後の日本の特有な制度であろうと思いますが、この制度日本の場合においてぐんぐん大きく高度経済成長が始まると同時に数がふえてまいった、こういう特徴があるのではないかと思うのです。ですから、府県の場合を見てみましても二百五十からある、自治法の別表の三の一に列記されておりますがね。市町村長の場合におきましては百十を数える。しかも、県知事が管理執行しなければならぬ中に占めるのは、県は八五%になってくる。町村におきましても七〇%を占めてくる。総事務に対しまして、県の場合八〇%、いわゆる市町村の場合には四〇%、これだけの多くの機関委任事務というものが生まれてきておるわけですね。こういう点に対しましても、私、機関委任事務というのは自治法の百四十八条ですか、本当に準禁治産の扱いだと思うのですね。国が機関として委任をする、指揮監督する、もし言うことを聞かなければ高等裁判所に訴えて罷免をする、この機関に関しましては首長を罷免する、こういう強いのが自治法に規定されておるわけですね。しかも、議会におきましては、これは審議する権利もない、監査委員は監査する権利もない、こういう形におけるところの事務というものがこんなに多く占めてきてしまっておるわけですね。ですから、市町村長にしてみれば、これは機関委任事務だと言ったら議会がとても審議にならないので、みんな黙って、これは固有事務だというような形で実は審議してもらっているのが実情ではないか。これぐらい機関委任事務が大きくなっている国はないと思います。一時期を見てまいりますと、二倍以上にふくれ上がってきておりますね。こんな数々の機関委任事務というものは、一体地方自治の本旨なり地方自治の自主性、自立性に対しまして、真っ向から実は信用することはできないぞ、おれたちが監督する、場合によってはおまえはやめさせるのだ、これを前提として仕事をやれ、こういう態度というのは許されるだろうか。これに対する反省が起こるのではなくて、逆にこれがふえてまいっておる。だから、ドイツの公法学者のギルケーはいみじくも言っておると思います。トロイの悲劇だ。地方自治体はこれによって国から金がくる、それで仕事をやればいいじゃないか、理屈は後だという形で機関委任事務を受けていってしまったことが、戦後の荒廃の中で少しでも金が欲しい、少しでも金が欲しいということの中に入ってまいりましたのが、この機関委任事務がよみがえってしまった。これがまた高度経済成長を支えるために、一つの方向に、高度経済成長の方向に地方自治団体を向けさせる大きな武器としての働きも実はやってまいった。  こういう点に対して、私は地方自治体の責任という、地方自治体が困難だから国も困難だというのではなくて、そういう機関委任事務で、しかもがんじがらめに、罷免権までも持つ強力な仕事をおまえたちに預けておるのだ、そのかわりに金はやるぞという形で来たことが、私今日の景気問題を考え、直面したとした場合におきましても、これから新しい道を歩こうといたしましても、大変な問題がやはりここから出てきているのではないか。こういう意味におきましての機関委任事務に対してどういう考え方を持っておるか。総理、こういう国の機関としての機関委任事務というものがこんなに数多くなってしまっておる。こういう自治体が一体あるだろうか。世界の国女を歩きまして、国が罷免権を発動して仕事をやらせるのだ、こういう強い態度を持っておる。しかも、毎年毎年これがふえてまいってきておるわけですね、自治法に列記してある分がこの程度ですから。そうではなくて、法律の中に——法制局長官もおりますけれども、法律の中において代執行ができるとか、あるいはまた、機関委任事務と変わらない法律用語というものは、しかも団体委任かわからない要素を持つ言葉が非常に法律の中に多く出てきておると思いますね。こういうことも地方秩序、財政秩序、行政秩序をゆがめてしまっておる。こういう点に対する見解をひとつ……。
  127. 小川平二

    小川国務大臣 機関委任事務の問題につきましては、しばしばこれは御批判もいただいておることでありますので、そのあり方を慎重にかつ根本的に検討をしてまいりたいと存じます。それによって地方自治体に過重な負担を強いるというような事態が起こりませんように研究をいたしてまいりたいと思っております。
  128. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私はこの場合はまた物、物、金、金、金が足らぬようなことで仕事を預けないんだ、こういうものの考え方でなくて、憲法に言う地方自治の本旨に従って地方自治体の組織、運用を決めなければならない。地方自治の本旨に従ったら、こういうドイツの公法学者ですらも指摘しておるようなことを日本の中において復活しておるというのは全く恥ずかしい。しかも、信頼することができ得ない、こういう国の態度も傲慢じゃないか。こういう行政秩序としてもこれは考えなければならない問題じゃないか。何も機関委任しなくてもいいものを機関委任事務としての形をとって、金はやるから勝手なことをしたら首だぞという考え方をちらつかせながら進める行政というものは、もう根本的に考え直すべきときに来ておるじゃないか、私はこういう点を指摘しておきます。  それと関連いたしますけれども、各種の長期計画——長期ではないのですけれども、自治省あたりは長期計画という言葉を使っておりますから措置法に言うところの五カ年計画でしょうけれども、こういうものがどんどんできてまいるわけですけれども、この場合におきまして私は二つの行政の場合を考えるわけですね。たてまえと本音というものは常にぎらぎらした姿を示してくるのではないか。たとえば、計画手続法になってまいりますと、非常に住民の意思を聞かなくちゃならない。たとえば国土利用計画をつくった場合におきましても、案を決める前にいわゆる住民の意思を聞かなくちゃならない。都市計画の場合におきましても、公聴会その他を設けて案をつくらなければならない。こういうぐあいに、金のかからないところに対しましては非常に民主的な本音が出てきておるわけですね。それがあたりまえだろう。しかしながら、金をよこすぞ、事業法の形をとってくる、こういう長期計画になって、計画事業になってまいりますと、やはり最初私も——大臣も余り、大蔵、企画の方だけしか歩いておられぬからでしょうけれども、たとえば一つの緊急措置法で五カ年計画をつくる、この場合におきましても、どのあれを見てまいりましても、主管大臣が他の大臣と協議をする、それで閣議で決定をする、事業量と目標を明らかにする、決まったらこれを県知事に通告する。あるいはまた、公園法のように地方自治団体は協力しなければならぬぞという添え書きまで入れている法律もありますけれども、大半はもう一方的に国が決める。主管大臣が他の大臣と協議をする、そして閣議決定をする、それを県知事なりに通報する、こういう形をもって法律体系がなっておるわけですね。私はこういう本音があると思いますね。ですから、その場合にいたしましても、直轄事業、直轄事業と言って国が直接やるのはいいのですけれども、これには負担金を要求しておるわけですね。直轄事業に対して負担金を要求する。県の仕事に対しましても補助金は二分の一なり三分の二という規定を置いている。おまけに単独事業をまたここで決めてしまう。君たちのやる事業量は目標はこれだけだぞ、こういう形で最初から決めてかかってしまう。こういうやり方というものは、本当にいまの政府の本音とたてまえというのは、法律の中にはっきり出てきておるのじゃないか、私はこういう感じ方すら実はするわけですが、総理、国民に対してこんな本音とたてまえを分けた形における国からの行政というものはやはり改めなければならぬじゃないか、かように考えるわけです。それはどの計画を見てみても、みんなそうだと思いますね。  後ほどまた触れる場合があるのですけれども、たとえば公園なら公園を見てまいる。公園の場合におきましても事業費が一兆五千四百億円、このうち国が七千三百四十六億円、これに対しまして地方は八千五十四億円、こういう形になって出てくるわけですね。ですから国がそういうぐあいに決定をして事業をやっていく。しかしながら、この場合におきましてもまた内容を分析いたしますと、たとえば公園の場合におきましては、四七%は対象にしますよ、その中の半分は削っていきます。その半分の分に対して二分の一なり三分の一の補助をしますよ。用地費が三分の一、施設が二分の一、こういうことになって、七〇%か八〇%は地方がやらなくちゃならない、こういう形になってくるわけですね。地方は七割も八割も持つ。国が二割か二割五分しか持たない。こういうのを大臣が閣議決定をして、おまえら、これに協力しろ、こういう形でくるという考え方の中に、私は非常に危険なものが含まれておるんじゃないか。総理が一番指摘される金、金、物、物、こういう風潮を何としても避けなければならない。この再建の道を——それがいまあなたの担当する内閣の中において堂々とまかり通っておるでありませんか、本音とたてまえとが違う姿をもって。こういう点も総理大臣、ひとつ考えていただきたい。  私が言いますのは、こういう形におきまして、たとえば起債にいたしましても、総理、三十年前に起債は、建設公債は公共債として地方自治団体がやってもよろしいぞ、こういうことを規定を置きながら、三十年間、当分の間自治大臣の許可を受けなくちゃならない、こういう形に縛ってしまっておるわけですね。当分の間これを見直すものとするという解釈論が出てまいりましたけれども、これは法制局の解釈から言えば、当分の間許可を受けなければならない。その当分の間というのは、期限が明示してないから幾ら延ばしてもいいんだ、こういう行政解釈というものがまかり通ると、これはやはり私は国民に不信感を与えるんじゃないか。  本来は起債権というのは、公債発行の限度額があるでしょう。自治体がその地域における必要に応じて、福祉なりいろいろな形において公共投資なりしていくという場合に、当分の間自治大臣の許可を——これを三十年間も、実はなおも続けてまいってしまっておる。しかも、こういう状況になってまいりますから、ますます必要性があるというような形で、またこの問題が大きな、地方自治団体なりあるいは地方団体金融公庫というような動き、考え方もここから出てくると思いますが、そういう点に対しましては、やはり私は先ほど何回も指摘いたしますように、ドイツの場合において、景気、不景気というのはそれほど自治体を苦しめない。独自の自主財源を持っておる。しかも国の景気対策なりあるいは総需要抑制の場合には、法律をもって明らかにして、しかもそれを協議する、制度としての協議を持っておる。こういう国と、いま申し上げましたような長期計画を見ましても、機関委任事務を見ても、起債の状況を見てまいりましても、全く地方の自主権というものを奪い取ってしまっておる。こういう中から私は、これからの新しい時代の転換に対応するという勇気と決断を総理に求めたいと思うのですが、どうですか。
  129. 小川平二

    小川国務大臣 お話の前段は、この長期計画の策定に際して、地方団体の意思が計画に反映されるような仕組みになっておらないではないか、そういうことは何でもかんでも国で決めて、地方団体に押しつけようという基本的姿勢のあらわれではないかという御趣旨であったかと理解いたしますが、いろいろな長期計画を決めまするときに、知事、市町村長等が参画する仕組みになっておる事例というのが、私の知り得る限りではずいぶんあるように承知いたしております。たとえば三全総におきましては、知事、市長、町村長、この三団体の代表が参画する仕組みになっておりまするし、国土利用計画では、四十七県の知事の意見をことごとく聞く、こういう仕組みになっておると聞いております。北海道総合開発計画、これは開発法の規定で、これまた知事が参加するという仕組みになっておる。そういう仕組みで、自治団体の意向というものは長期計画に反映できることになっておるのではなかろうかと承知しております。  後段のお話は、起債の許可権のことと存じまするが、今日資金は全体としてなお有限でございますから、これを民間部門、公共部門にどう配分すべきか。公共部門の中でも、府県、市町村にどのように分けていくか。これはやはり客観的な必要性と申しますか、緊切度によって配分をしていく必要があると存じます。そうでありませんと、信用力の弱い自治体、公共団体はお金が借りられない、力の強いものは幾らでも借りるということになってもいかがかと思いますので、やはりこの起債の許可権というものは当面存続をしていく方が至当ではないか、こう考えておるわけでございます。
  130. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 中央と地方は車の両輪でありまして、これは相対立するものじゃない、むしろ相助け合い、相補い合うことが必要である、こういう立場にあると思うんです。ですから私は、この二つの中央と地方というものが、これが対立をして争うという姿でなく、相助け合うという形でおのおの担当する使命を全うするということがいいんじゃないか、そういうふうに思いますが、御示唆のいろいろな点は十分注意してまいります。
  131. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私は、自治大臣の言われるように形式的なことを言っておるんじゃないですよ。と同時に、これは法制局長官もおいででありますけれども、こういう法律をつくることの無神経さを言うんですよ。地方自治、やはり財源を確保して独立の自主的な行動をする、このたてまえになっておることを考えれば、そうじゃなくてこういう法律でいくんだ、県でやるんだ、金はやるんだからというものの考え方、金でその場を解決していくという考え方が法律の中に出てきてしまったというわけですね。  解釈論とすれば、その法律を執行する上におきましては、私はいろいろな方法がとられておると思います。しかし、法律の中にも、おまえら無権利なんだよ、しかしながら、おまえの管理しておるものをおれのところもちゃんと目標を立てて事業量も決めてやっていってあげるよ。こういう乱暴な法律というのは、乱暴ですから、そんな乱暴じゃいくわけにいかぬですから、話し合いの場を求めるということになってくるだろうけれども、そういう意味でやはり私は自主財源を与えるということ、独立をした人格を持つということ、その中にこそ国と対等の協力というのは、総理の得意な協調と連帯というのは、対等の中から生まれてくるのではないか。財源は七割は国が吸い上げていく、三割しか地方に残さない。所得税の場合におきましては二割しか地方に残さない、八割は国が持っていく。仕事は逆に地方に七割はやらせる。さっき行政投資の内容を見てまいりましても、県が三割、町村が四割、国が三割、こういう形が出てきておる。  こういうような形の中で、やはり激しくもなるでしょう。しかし私は激しいんじゃなくて、そういう形の中におけるところの意見だということで、本当の連帯と協調なら、国、地方におけるところの事務権限、財源を根本的にやはり見直すときをいま迎えておるのではないか、その中から総理の言われる協調と連帯というのは育ってくるんじゃないか、こういうことを指摘しておくにとどめまして、時間がありませんようですので、私はそういう問題をひとつ大きな問題として考えていただきたい。現実的にやはり解決しなくちゃならない問題というものについて、熱意をもって私は当たっていただきたい。  かように考えますのは、たとえば道路の問題、町村道路一つ考えてまいりますと、日本の道路は悪いと言われる。ですから、世界の道路の舗装率をとってまいりましても、日本が一番悪いわけですね。三三・六%だ。イギリスは一〇〇%、イタリアでさえ九三%、西ドイツは九〇%、フランスは八九%、これだけの道路の舗装率を誇っておる。日本におきましては、それがわずか三三・六%だ。しかし、おかしいじゃないか、東京近郊はあれでも道路はちゃんと舗装されておるし、高速道路も走っておるじゃないかというような感じを持たれるのは、私は当然だと思います。ここにやはり数字の魔術があるので、実はこの道路のうちの九十万キロまでは町村道である。国道、県道というのは、わずか十万キロしか実はないわけですね。ですから、そういう面で道路の種別で見てまいりますと、国道は九一・四%だし、主要地方道は八六%、県道一般が七三%、こういう形の数字が出ておりますから、だれが見ても日本の道路というのはよくなってきたというのはわかっております。しかしながら、九十万キロを占めておる日本の生活道路と言われる住民の生活の中を走っておるこの道路がわずか二五・六%だ。ですから平均しますと三三%、世界で一番悪い道路を持つ国だという数字が出てくるわけですけれども、こういう点に対しましても、特定財源なりを見てまいりましても、やはり考えなくちゃならぬ点があるのではないかと思うんですね。  国がほとんど財源を持っていってしまう。県にいたしましても、それぞれの道路譲与税なり軽油引取税なり与えられておりますが、しかし町村は一体どうだろうか。ようやく先般、県に来る道路譲与税の五分の一、二〇%だけは町村に上げなさい。重量税ができたとき、町村道路を改良するためのなにとして出しなさい。自動車取得税のうちの三割は県で、七割は町村だ。九十万キロあるのに、この程度の財源手当てしかしていない。ですから、この不況になって、景気刺激なり、いろいろな意味において購買力をつけるためには町村道路に取り組めばいいじゃないかと言っても、その財源もないから取り組めない。そうしますと、やはり起債の中において臨時町村道路整備費というような形、実は借金で町村道路を改良する、こういう行き方しか出てこないというところに悲劇があると思います。しかも国民が一番生活をしておる、この中に走っておる道路。ですから群馬県なんか行きますと一番最高じゃないんですか、全国で自動車を持っている数から言えば、山が多いですから。山の中においてどうしても自動車で行かなければならないということが今日の交通環境の変化として出てくる。東京あたりであれば四〇%だ。群馬は農業用の小型トラックをまぜますと一二〇%、一戸世帯ずいぶん行っている。  こういうことから考えましても、道路に対する需要というものは全然変わりつつあるのではないか。そういうときに一番困っている山の人たち、町村の皆さんたちの一番困っているこの道路に対して、自主財源はほとんど与えていなくて、全部国が吸い上げていく、県が吸い上げていってしまう。しかしながら、町村道路に対しまして非常にやっておるのだ、こういうことを言われるわけですけれども、しかし数字から見てまいりましても、ことしなんか二千億円は財投資金と同じように起債という見方をとっていきますと、町村に対しましてわずか七百億円程度のものしかないわけですね。その七百億円程度のものにいたしましても、半分は特定立法によるところの過疎なり離島なりという方面に向けていく。残りましたものはわずか三百か四百億の金しかないわけですね。これで九十万キロある町村道路に対しますところの手当てだ、こういうことにしかなってこないわけです。ですから単独事業でやらなければならない。国から来る事業をやっていくためには単独事業をカットしなければどうしてもやっていけないというところに、いまの町村財政の苦しい姿が、決算を見ればよく出てくると私は思います。その中で国の要請にこたえておるという、全くおかしな話が平気で行われているというのが、やはり私たち考えなければならない問題ではなかろうか。  この道路に関連いたしまして、法制局長官もおられますけれども、普通河川に対しましてはどういう法的解釈を持っておられるのですか。いわゆる河川法の中にも入らない。河川には一級河川、二級河川がある、準用河川がある。しかし、それでもない、法律の適用を受けないけれども、実は国有財産だ、そういう川が災害になると非常に被害を引き起こしておる。しかし、この管理責任は一体だれなんだ、こういうことになってくると思いますけれども、法制局としてこういう問題に対して……。
  132. 真田秀夫

    ○真田政府委員 河川法には、御承知のとおり一級河川、二級河川、準用河川等がございますが、なおそれにも当たらないようなものについての実態は、私よく存じませんので、建設省の専門家が来ておるはずでございますから、どうぞそちらからお聞き取りを願います。
  133. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 こういう問題は深刻な問題で、地域内で災害が起こり、あるいは都市化していけばどぶ川になってしまっている。だれが管理するのだ、だれが維持する責任者なんだ。国有財産なんでしょう。自然公物として国の財産となっておる。この場合におきましても、これを県知事に恐らく機関委任か何かして形をとっているのだと思います。ところが、県知事にしても、何ぼ機関委任と言われましてもその川を管理していくということは実は大変なことだ。見かねて県知事が少し補助を出しておる、こういうような形がとられておるわけですね。しかも、それは十二万の河川があるわけです。建設省で調査をされますと十二万ですね、二十万キロ。この川が国有財産であり、しかもまただれが管理しているかわからないという形で、建設省は河川法にない川でありますから、これは担当するわけにいかぬでしょう。準用河川という形で少しはやっておるらしいのですけれども。  そういう問題に対しましても、やはりこういうむちゃなことが日本の中で、しかもまじめに働いておる人たちの中にこういう川があって、しかも国も県もめんどうを見ない。町村長、おまえのところにあるから管理しておけ。その川を工事か何かをやりますと、国有財産だから金をよこせ、これは厳重に、財務部、どこから調べてくるのか知りませんけれども、必ずそういう場合におきましては国有財産に対するところの買い上げを要求するわけですね。普通はほうってしまっておる。十二万の河川、二十万キロ延長の河川がそのような状態の中にあるというところにも、やはり総理考えなければならぬ問題があるんじゃないかと思うのです。法制局長官もまた、どうですか、その法制的な位置づけというものはやはりやらなければ、国有財産がそのままになっているのに法制局あたりが全然知らない顔をしているというのはおかしいんじゃないですかな。
  134. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘の普通河川は、河川法の適用も準用もない河川でございまして、公物法的な管理を受けていないものでございます。このうち特に河川管理上重要なものにつきましては、毎年一級、二級河川あるいは準用河川の指定がえを進めております。四十九年、五十年で約六千河川、一万キロメートルの格上げをいたしております。  なお、普通河川に災害が起こりました場合に挙きましては、災害復旧費の国庫負担法の規定によりまして、国庫負担の対象といたしておる、そういうことでございます。
  135. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 それは準用河川であろうとなかろうと、そういう自然的公物が破損された場合におきましては、災害復旧の対象になりますよ。準用河川であろうとなかろうと、変わりないと思います。ただ準用河川というのは川に準じますよ、こういうのはわずかながら、最近私たち委員会で取り上げて、ようやく準用河川というものはいま出てきたので、そのうち町村の管理上大変だろうと思われるものが準用河川という形で、わずかの予算ですけれども、ついておるというのが現況だと思います。こういう不自然をそのままにしておくことはどうかと思いますけれども。  時間がありませんので、環境庁長官にひとつお聞きしておきたいと思うのですけれども、やはりあなたの文明論がなにですけれども、こういうようなことに対してはどう考えますか。「一国の文明の度合いは、その国が環境の保全にどれだけの努力を傾倒するか、また、破壊された環境の復元にどれほどの能力を有し、熱意を示しているかにあると言っても過言ではないと考えております。私は、いまや環境問題こそ政治の出発点であり、この問題の解決は、われわれに課せられた至上の命題であると確信いたすものであります。」、こういうことを所信表明として述べておられる大臣もおられるわけでありますけれども、新しい大臣はどうですか、こういう文明論に対しましては。
  136. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 まことにそのとおりだと思います。  ちょうど高度成長の最盛期の一九六〇年代の終わりごろ、未来学者のハーマン・カーンが日本に参りましてした講演、シンポジウムを私聞きましたが、そのときに、彼が、恐らく日本は今世紀の終わりごろアメリカをGNPで抜くだろうが、しかし、いまから日本人が新しい意味と目的というものを発見する努力をしないと、たとえアメリカを追い抜いたとしても非常にむなしい思いに駆られるだろうということを申しました。私、非常に印象深くそれを聞きましたが、環境問題は、まさしくその新しい意味と目的の発見の最も重要な取っかかりになるものだと思いまして、私たち本当に文明的、文化的に成熟するためにも欠かすことのできない一番敏感な基尺であると思います。
  137. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 それでは後から、時間もありませんものですから。  長官、そういう意味におきまして、環境アセスメント、昭和四十七年の六月の閣議決定をしておるわけですが、と同時にまた、所管大臣は委員会か何かにおきまして、事前にこれが環境を破壊するということでないということが明らかになるまでは事業を進めさせない、そういう事前環境アセスメントの手法を今国会でつくりたい、こういうぐあいに述べられてから時間がたっておるわけですが、環境庁においてもそういう意味におけるところのアセスメントに対する要綱なりいろいろやっておるらしいのですけれども、それが法案として提出されてこない。これに対して、大臣としては慎重に問題を詰めていきたいというようなことが新聞紙上に出ておるわけですけれども、この点に対してはどうですか。
  138. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ようやく機が熟してまいりまして、中公審からも中間的な答申を受けまして、それを土台に環境庁の原案をつくりまして、いま関係省庁の言い分を聞いて、今国会に提出するべく慎重ではなしに積極的に努力をしておりますが、この間石橋委員にもお答えいたしましたけれども、従来の行政原理になかった法律案でございますので、いろいろ疑心暗鬼があったり、あるいは反対もございまして、しかし、それを調整しつつ目的を達する法律案として提出するつもりでございます。あくまでも、これを法律として通しました方が、現在起こっておりますいろいろな環境問題にかかわる紛争、問題をスムーズに解決するために必ず役に立つものと信じて努力をいたします。
  139. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 いろいろお聞きしたいこともあったのですけれども、では問題をしぼりまして、簡単でいいですけれども、お聞きします。  たとえば、イランに東洋曹達が、苛性ソーダ水銀法電解を使う、これを輸出するという問題があります。特に日本におきましては、いわゆる水銀問題、水俣問題なり、あるいはまた魚が汚染されたという大きな事件の中で、水銀法電解は使わない、五十三年三月までにやめる、そしてまた技術上もいろいろなプラントも輸出しない、こういう申し合わせになっておるのに、実はイランに進出をする。どうも国民感情から見ても考えなくてはならない問題があるのじゃないかという点に対して、協議を受けておりますか。受けてなければいいです。時間がありませんから、次の機会にまた……。
  140. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 受けておりません。
  141. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 いいですよ。それは三木さんが環境庁長官であり座長として関係閣僚会議を開いて決定、あるいは通産省がそれに対して担当したと思いますけれども、いずれまたお聞きする機会もあると思いますから。時間がありませんので……。  文部大臣、理科実験の薬品を大量流しておった、横浜におけるところの大変な問題だと思うのですけれども、いわゆる水質規制法を学校には適用しない、そういう面があったにいたしましても、いわゆる公害問題に取り組んでおる学校においてこういう有害物質がたれ流しされておる。しかも、単にこの横浜の報告だけでなしに、全国において、一万何千かになる中学校におきましてそういう危険なものをたれ流して公害の発生をやっておる。こういうことに対しまして、処理施設なり何なりというものは持っていないのですか。
  142. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、特に職業高等学校で薬品等を大量に使用する実験については、水質汚濁防止法の改正により昭和五十年十二月からいろいろ指定を受けまして、学校数において八百八校であったと記憶いたしますがございます。それらにはやはり処理施設を設置することが望ましいわけでありますから、昭和五十一年度から国は設備費の融資、補助を始めまして、昭和五十二年度においてはこれを増額し、三億八千四百万円を計上したわけでございます。  なお、ただいま先生御指摘の横浜の件と申しますのは、この指定から外れる中学校のこの間報道された件だろうと思いますが、私ども新聞を読みまして、これは放置できないと思いまして、早速横浜の市の教育委員会に実情を問い合わせたのであります。御承知のように、文部省は「学校教育における廃棄物、廃水等処理に関する手引」というのを出しておりますが、横浜市の教育委員会においてもすでに手引書を御作成願っておりまして、しかも、横浜市の場合は、現場の理科の先生とか指導主任の方にもお集まりいただき、御意見を聞きながらつくった手引書を全学校に配付いたしておる。さらに、学校の実験で一定以上の薬品を使いますときには市の公害対策部に協議をして指導を受けるように、こういう詳しい通達を各学校に出していただいておるという御報告も横浜市の教育委員会から承っておりますが、新聞報道された実態等がございますと、これはやはり影響があるわけでございますから、横浜市の教育委員会にお願いをして、その実態、実情を詳しく御報告いただくとともに、現在われわれも手引書をつくって指導をしたり、あるいは設備を置いていただくための予算措置等も講じておりますが、この趣旨をさらに徹底させていくように努力をしていきたい、こう考えております。
  143. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 時間が参っておりますので、最後に国土庁長官に……。  豪雪対策本部を設置されておられますけれども、私は、災害対策基本法をつくりましたときの審議に当たりまして、豪雪もまた災害だ、こういう定義を実は挿入いたしたわけですが、それと同時に、議員立法として豪雪対策特別措置法という法律をつくってそれに呼応いたしました。雪も災害だ、こういう意味におきまして、交付税におきましては、普通の積雪に対しまして四百億円程度は見込まれておりますけれども、こういう豪雪はやはり災害だという場合におきまして、特交だとかそういう形でなくて、明確に災害だとしてそのランクを設けて処理に当たってもらう、こういう制度もひとつ検討していただきたいということを私の最後の質問といたします。
  144. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  豪雪対策については、ただいま御指摘の豪雪対策特別措置法によって、私たちは、豪雪地帯における産業の発展あるいはまた生活の向上等に障害を与えている雪の害を排除して今日まで参っているわけでございます。ところが、豪雪地帯は御承知のように年々恒常的に雪の害に見舞われる地域でございますので、その地域はどうしてもやはり産業の発展あるいは生活向上に大きな影響を与えてまいっております。しかも、御承知のように、住民のいわゆる生活欲求といいましょうか、その点、もう一つは、生活様式の高まりによりまして、災害の範囲というのはだんだん拡大していっているのは事実なんでございます。ですから、私たちといたしましては、これらのことを踏まえまして、ただいま先生御指摘の点については今後十分検討してまいりたいと考えております。
  145. 坪川信三

    坪川委員長 これにて佐野君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  146. 上原康助

    ○上原委員 私は、主として防衛問題、在日米軍基地とのかかわり合いで沖繩の問題を含めて、大変限られた時間でありますので、時間の範囲内でお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず最初に、総理にお尋ねをしたいのですが、せんだってから私もこの委員会で、いろいろ外交、防衛の問題なり、またそのほかの御質問に対する総理のお答えをじっと聞いておったのですが、どうも国民の知りたがっていること、あるいは福田総理としてまた福田内閣として当面する外交、防衛、なかんずく安全保障の問題に対して、非常に避けて通っておられる感を持つ面が多かったような気がいたします。それではいかないと思いますので、きょうは私が調査をしたことなど含めてお尋ねをしますので、率直に総理としてのお考え、また福田内閣として、もちろん総理という場合のお答えは福田内閣ということになるわけですが、内閣全体としての問題をもう少し国民の前に明らかにしていただきたいと思うのです。  そこで最初に、少し漠然として恐縮ですが、総理は一体、わが国の防衛問題に対して基本的にどういうお考えを持っておられるのか、どういう認識で防衛問題というものを今後進めていこうとしておられるのか、ここいらをいま少し明らかにしていただきたいと思います。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 非常に基本的なお話でございまするが、同時に抽象的な御質問でありますが、そういうことにつきましては、私は、専守防衛、これは歴代の内閣がとっておりますが、専守防衛、これを防衛の基本的な考え方といたしておるのであります。同時に、国の安全を確保するという意味合いにおきまして、その足らざるところは日米安全保障体制を堅持するということによってこれを補う、これが基本的な考え方でございます。
  148. 上原康助

    ○上原委員 総理のお答えは大体そんなものだろうということで私もお尋ねをしているのですが、まあ安保条約、安保体制というものは堅持をなさる、歴代の自民党内閣、自民党政府はそういう姿勢でやってきたわけですね。そこで、これと密接に関係をするいわゆる在日米軍基地に対する総理の御認識はどういうものか、これもちょっと漠然とはしますが、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  149. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは条約並びに協定に従いまして、日米安全保障条約の趣旨に従って提供する、これが基本的な立場であります。
  150. 上原康助

    ○上原委員 いまの御認識は在沖米軍基地も含めての御認識ですか。
  151. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 沖繩につきましても同じであります。
  152. 上原康助

    ○上原委員 これから私が進めていく質問といまの総理のお答えは非常に関連しますので、お尋ねをしてみたわけであります。  そこで、基本的にはそういうお答えだろうと思ったのですが、総理は非常に連帯と協調ということを強調しておられる、政治姿勢として。これは内政面だけであってはいかないと思うのです。安保条約が締結されてから今日までのわが国を取り巻いている諸情勢、アジア情勢ということ、あるいは国民の安保問題に対するとらえ方のいろいろな変遷過程というのがあると思うのですね。また、従来のように、基地問題にしましても防衛問題にしても、自民党単独で強権的に力で押しまくって、法律を制定するとかあるいは自衛隊の装備を拡大していく、基地の安定的使用の問題等をやろうという政治的環境ではなくなりつつあるとわれわれは見ているわけです。そうであるならば、当然基本姿勢においてそこいらのものに発想の転換というものがあってもいいんじゃないかという感じを私は持ったから、漠然として申しわけありませんがということでやんわりお尋ねをしたわけです。そういう発想はお持ちでないわけですか。防衛問題に対しても、与野党の伯仲勢力という立場に立った見方というものはお考えにはなりませんか。
  153. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ与野党の勢力が伯仲する、こういうことになっても、私は連帯と協調、こういうことなんです。それは私は前からそういう考え方で国政に臨んでおるわけでありまするが、いよいよ伯仲ということになれば、好むと好まざるとにかかわらず、連帯と協調の精神で国会の運営には当たらなければならぬ、そういうふうに考えております。
  154. 上原康助

    ○上原委員 いまのお答えは、私がお尋ねをしていることとはちょっとすれ違いなんですね。それはこの今後の話し合いでもう少し明らかにしていきたいわけです。  そこで、いま総理がおっしゃったそういう基本姿勢に基づいて外交、防衛問題をやっていかれるということですが、具体的に少し入っていきます。確かに今年度の防衛予算をこう見てみますと、従来より、まあ不況下で予算が全体的に抑制されているわけですから当然そうなることは常識的に判断できるわけですが、次年度の防衛予算は非常に抑制されたんだ、GNPの一%以内に抑えられたんだ、伸び率も一一・八%でしたか、そういう一一%前後だということで大変強調して、いわゆる防衛費の拡大といいますか、増強というものは非常に低く抑えられたんだということを国民の前に強調しておられるわけですね。しかし、二、三中身を調べてみた場合には、大変ボリュームの厚い面も出てきているのも御案内のとおりだと思うのですね。五十二年度は一兆六千九百億円、伸び率にして一一・八%という予算になっているわけですが、一体、今後五十三年度以降の防衛費の伸びというものはどういうトレンド、傾向になっていくのか、このこともいま少し明らかにしないといかない問題が私は含まれていると思うのです。その点は、大蔵大臣、いかがですか。
  155. 坊秀男

    ○坊国務大臣 政府委員をしてお答えさせます。
  156. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 本年の防衛費の伸びでございますが、過年度の債務負担行為の歳出等が大きな原因になりまして、物件費系統につきましては若干の伸びを示したことは事実でございます。  明年度以降の防衛費の形でございますが、これは、今後の基盤的防衛力の整備に伴いましていかなる兵器の購入計画が決まるかとか、そういう点から、まだ確定的なことはわかりませんが、人件費が相当部分を占める防衛予算でございますので、人件費の伸びが鈍化してくれば伸び率も落ちついてくるんではなかろうか、こう思っております。
  157. 上原康助

    ○上原委員 聞きたいことは全然明らかにしないじゃないですか。では、防衛庁でもいいですよ、お答えください。今年度の防衛予算の中で、特に新しい装備として重点的に取り入れられているのはどのくらいあるのか。また五十三年度以降、後ほど少しお尋ねいたしますが、基盤的防衛計画という中で目玉としているのはどういうものなのか。これと今後の予算との関係はどうなっていくのか、そういう面を明確にしてください。
  158. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 来年度以降の予算の流れについてのお尋ねでございましたが、それは、国防会議で決めておられます一%以下だという程度を超えないようにというような一つの枠がございますこと、それから財政、経済あるいは他の国政におきまする諸施策、そういうものとの調整等も勘案をしてまいりまするし、そういうことで、急激なそうした防衛費の伸びというようなことは考えられないようなコントロールができるようになっておるわけでございますが、具体的ないまお尋ねの装備等の中身、防衛力整備の中身等につきましては、政府委員に答えさせます。
  159. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 御説明いたします。  防衛力整備につきましては、御承知のように、昨年の十月二十九日お決めいただきました防衛計画の大綱に従いまして、防衛力の内容を充実するという方向で努力いたしております。従来の四次防までと違います点は、五年計画という形で質量ともに整備に努めるという形から、量は一応四次防というものができた段階において概成されているという御判断のもとに、その内容を充実するという方向で防衛計画の大綱をお示しいただいておるわけでございます。  その線に従いまして、本年度の予算におきましては、陸上自衛隊の装備品等につきましては、リプレースの分というものが主になっております。したがいまして、いままでの各年度で取得した数量というものが一応基準として認められております。そのほかに、たとえば改良ホークというのがございます。これは新しくホークをリプレースするときに新しいものにかえていくという計画でございまして、その最初の一個大隊の半分、すなわち教育用の分として予算が認められておるわけでございます。それからもう一つ新しいものといたしまして、陸上自衛隊ではAHという対戦車ヘリコプター一機の購入が認められております。これは御承知のように、対戦車に対する戦闘でございますが、戦車をもってするもの、あるいは対戦車火器をもってするもの等がございます。(上原委員「簡単にしてください、時間がないんだから」と呼ぶ)運用研究ということで一機お認めいただいておるわけでございます。  なお、海上自衛隊、航空自衛隊におきましては、艦艇、航空機につきましては、いわゆるリブレースといいますか、現在の大綱で決められました部隊を維持する、その中で装備品をお認めいただいているわけでございます。その他後方支援体制の中では、四次防のとき一応計画いたしまして実現いたしませんでしたマイクロ回線の、自営回線の初年度の計画分が認められておるわけでございます。  以上でございます。
  160. 上原康助

    ○上原委員 それは予算書を見れば、いまの御説明のことはある程度理解ができるわけですが、私が指摘をしたいのは、長官がおっしゃるように、GNPの一%以内に防衛予算はとどめるのだ、それが防衛費に対しての基本的考え方だということ、これは前々から明らかにしていることなんですね。しかし、高度経済成長下における一%と、低成長下における一%というものは、国民負担としては質的に非常に変わってくるわけですね。そこが一つ問題があるということ。  もう一つは、たとえばいまも御答弁ありましたが、対戦車ヘリコプターがいわゆる陸上の新しい装備として出てきている。あるいはF4EJも、これはFXの問題と関連いたしますが、次年度に延びたというだけで、リプレース、いわゆる補うという、補完するという形でどんどん量的に拡大をしていっている。それに多額の予算がかかっているということは指摘せざるを得ないわけですね。  そこで、じゃ、これまでの固定化方式をやめて、一次防から四次防までの間大体五年ないし三年の計画で防衛計画というもの、装備計画というものはなされてきたわけですが、今後は年じゅう転がし方式をとるのか、五十二年度だけがいわゆるローリング方式なのか、今後の防衛整備計画というものは固定化方式はとらないということははっきりしているのか、そこいらの方針は一体どうなのか、これも明確にしておいていただきたいと思うのです。
  161. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  先ほどの御意見で、高度成長時代一%以下であったではないか、現在においてもそういうことで、低成長下においてと条件が違うではないかということでございましたが、四次防までの時代のわが国の防衛力整備につきましては、建設時代であったなということを考えております。そういうことでございまするから、この程度までだという一つ目標を掲げて、それによってその整備の中身を中心にして検討されてきた。今度基盤的防衛力という新しい構想のもとに本年度の予算なども編成をしたわけでございまするが、そういう時点におきまして、これから先ももとのようにぐんぐん目標を伸ばすということでなくて、いまの段階で、大体新しい常備防衛力というものがこの程度で概成されたものだという主体的な立場で、そういう考え方を持っておるわけでございまするので、その中で一つの歯どめがいろいろあるわけでございまするが、その歯どめの中で私どもはいま言われた更新の問題であるとかいうようなことを考えていくと思いまするから、これから先ぐんぐん伸びるというようなことはないと思うわけでございます。  なおまた、いまお話しのようなローリング方式はこれから先の方針としてやるかということでございまするが、そうした方針のもとにやってまいる方針であるわけでございます。
  162. 上原康助

    ○上原委員 きょうはこの問題で議論を深めていくわけにはいきませんが、私はいまの長官の御答弁なり事務当局の答弁では、防衛予算という面で納得できない面が非常にあるわけですね。なぜなら、一、二点だけ指摘をしておきたいわけですが、確かに数字というものは非常にとり方によって違うし、また用いる人の手法によっても国民の受ける印象というものはいろいろ変わってくる面があると思うのですね。一九五〇年から今年、いわゆる一九七六年まで二十七年間の防衛予算はざっと十一兆四千八百十億円程度になると思うのですね。しかし、いまおっしゃった基盤的防衛計画というものが質的に充実をしていくということで、来年度スタートする一九七七年から一応五カ年と従来のように仮定をしてみても、およそこれに匹敵する予算が伴うということは、大体いまおっしゃっておるようにGNPの一%以内にとどめるといってもそれだけの額になるんですよ、前年度一兆六千億余っておるわけですから。したがって、その間にこれだけの膨大な予算が防衛費に食われていっているというこの事実については国民はまだ明らかにされていないわけですね。どれだけ基盤的防衛力整備計画というものが多額の国民の税金によって賄われているかということについては、私はもっと解明するいろんな要素を含んでいるということをきょう指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、これは防衛二法とかいろいろ今後審議の過程でもっと解明されていくでありましょうが、その点を指摘をしておいて、先ほどお尋ねをしましたが十分お答えいただけませんでしたが、次期主力戦闘機と言われているいわゆるFX問題、また非常に疑惑を招いているPXLの問題、さらにAEWの件、これなども基盤的防衛計画に入っていると見ているわけですね。これの調達についてはどういうふうになさるのですか。  もっと具体的に、時間の都合がありますので、FXというのはまだ国防会議では決定していませんね、もちろん閣議でも決定していませんね。したがってF15というものも政府の確定した方針ではないと私は理解しているんだが、それでいいのか。PXLというのは一体どういうふうに調達しようとしておられるのか。AEWというのは果たして必要なのかどうかという議論もまだされていない。しかし、これもまた調査団を米国に派遣をしていろいろやろうという計画を持っておられる。この三つの点に対して、防衛庁は一体今後どういう方針でやるのか。これを防衛庁が計画をしている範囲で考えるとすると、どれだけの予算がかかるのか、これも明確にしていただきたいと思います。
  163. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 FXそれからPXL、AEWでございまするが、これはお説のようにまだ国防会議にも出ておりません。閣議の決定はいたしておりませんが、ただFXにつきましては、一月の七日の国防会議において、私からことしの概算要求時点ごろまでには最終的な御決定を願いたいということは申し入れをいたしたのでございます。  そこで、この三機種の点について触れてまいりまするが、FXは、御承知のように104の耐用命数がやってまいりまして、それの補充を考えねばなりません。防空の任務を達成するための展望に立ってまいりますると、大体八〇年代の中期ごろからいま申し上げましたような104がダウンしてまいります。それに対処いたしたいというわけでございます。  一方、PXLは御承知のように対潜哨戒につきましての能力を、各国の潜水艦の質の上昇等を考えてこれに対処してまいらねばなりませんので、現在ございますPXLの耐用命数等を考えながらこれの補充的な措置をせねばならぬ、そういうことで進めておるわけでございます。PXLにつきましては、いま御指摘のようにどれを選択するかというようなことにつきましては、アメリカにおきまするS3Aでございましたか、ああした新しいものが出てまいりましたし、カナダのCP140というようなものが出てまいりましたから、そういうもの等も勘案しながら、どれにするかというようなことはまだ決めておりません。  それから、AEWにつきましては、これは御承知のように低高度で進行いたしますあるいは航行いたしまする外部からの進入に対して現在の地上レーダーでは把握がしにくい、これに対処したいというわけでいま研究をいたしておるという事態でございます。  したがって、そういうようなものでございまして、改めて申し上げますれば、FXについてはすでに防衛庁がみずからの行政的な措置として実は防衛庁ではF15をひとつ選定をいたしたいと思っておりますという意思表示をいたしております。しかし、それはいま申し上げましたように、国防会議にかけまして、そして最後の御決定を願わねばならぬというわけでございます。これの機数は百二十三機という一応の数字も申し上げておる事態でございます。しかしPXLの方は、いま申し上げましたが、まだ庁内で研究をしておるという段階であり、そして具体的に国防会議にかけるという状態ではございませんけれども、これもできますれば来年の概算予算要求時点ごろまでには何とか国防会議におきましてもはっきりさせていただこうという企図をいま持っておる段階でございます。AEWの方はまだいまのところそこまでいっておりません。  なお、これからの全体の将来の予算なり費用とどう関係をしてくるかというような具体的な問題等につきましては、政府委員に答えさせます。
  164. 江口裕通

    ○江口政府委員 予算的にどの程度の規模になるかということでございますけれども、FXにつきましては先般防衛庁の方で一応F15ということで内定をいたしておるわけでございますが、その際、私どもの方で考えておりました値段といたしましては、大体第一次契約分というのがございます。これは、こういう大型プロジェクトでございますと第三次、第四次というふうにいろいろ分けまして分割発注をいたしますが、その際のいわゆる第一次契約分で考えますと、大体平均が七十二億程度になっております。これに付属品等を入れますと、大体八十五、六億のものになるわけでございますが、それを百二十三機ということでお考えいただければ、大体一兆円程度の買い物になろうかと思っております。  それがFXでございますが、それからPXLあるいはAEW等につきましては、まだ具体的な候補等を設定しておりません。したがいまして、いまの段階では数字等はまだ確定いたしておりません。
  165. 上原康助

    ○上原委員 いまさわった分だけでもこれだけの金がかかるということが答えとして出てくるわけですね。国防会議の議長はたしか総理ですよね。百二十三機、現時点で八十六億ぐらいかかるんだ。大蔵大臣、これだけあると一兆円減税どころじゃないし、学校も五千校あるいはそれ以上、ほんとできますね。そういう極論は別としても——極論というよりそういう議論はかみ合わないからやりませんが、なぜ百二十三機も必要かという疑惑はだれも持ちますよね。冒頭おっしゃったように、専守防衛と言いながら、なぜあれだけ足の長い、核装備もできるF15が必要かという疑問もわれわれ国民は持ちますよね。こういうことを解明せずして、安易に決めてはならぬと思うのです。  そこで、PXLについてはP3Cという特定をして考えていない、防衛庁も政府全体としても、現在のところは全く白紙であるというお立場ですね。
  166. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 防衛庁において、行政の所掌の範囲において研究はいたしておりまするけれども、まだ政府段階において、あるいは国防会議等においては全く白紙の状態でございます。
  167. 上原康助

    ○上原委員 時間がありませんので、ほかにもお尋ねしたいことがありますから少し進めますが、いまのことと関連して、総理、たしか総理は首相に就任なされてから、国防問題に対する御発言も何度かなさって、その中で、国防会議の機能の強化といいますか、いわゆるもっと充実したものにしたいという趣旨の御発言をなさっておられると思うのですね。新聞とかそういうものを引用するまでもなく、御本人ですから御記憶があると思うのです。私は、冒頭申し上げましたように、従来のように政府がその力で押しまくるという発想でやるなら、国防会議の充実云々とか、シビリアンコントロールの面も含めてですが、いろいろ積極的にやるということには反対なんです、従来の方針を踏襲するという限りにおいてですね。しかし、いずれにしても、一機八十六億もする重爆戦闘機をなぜ日本の自衛隊が装備しなければいけないかということの素朴な疑問に対しては、もっと解明をしていく必要がある。あるいはまた、なぜP2Jではだめなのか、アメリカが持つ最新鋭のP3Cでなければいけないのかという概念もわれわれの頭ではまだ理解できない。国民も大方そういう面があると私は思うのです。そういうことに対して、もっと制服のやることに対して——防衛、装備の問題ですから、技術面はいろいろあるでしょう。しかし従来のように、防衛庁が百二十機必要だと言ったら、ああそうですか、対潜哨戒機はこれが性能がいいからこれを選びたいと言えば、ああそうですか、そういうような感覚で、盲判を押すとまでは言いませんが、やり方に対してはなかなか納得いきませんね。  そういう面で、いまP3Cについて特定をしていない、PXLについては政府全体としては全く白紙ということでした。またFX問題についても、防衛庁の方針は決まっておるにしましても、政府全体の結論というものはまだ出していない。そうであるならば、当然、これらの余りにも多額の税金を要する装備計画に対しては国防会議においても根本的に洗い直してみることが必要だと私は思うのです。そういう方針でおやりになりますね。
  168. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 上原さんのおっしゃるような趣旨のことを考えているのです。つまり、FXが何機必要であるか、AEWがどういう事情で必要になってくるか、その背景、これをやはり十分そしゃくして、そういう具体的案件を決める必要があるであろう。したがって、国防会議はいままでもいろいろ論議はありまするけれども、もっともっとその具体的事案として出てくるその案件の背景について論議をすべきである、こういう見解でございます。
  169. 上原康助

    ○上原委員 背景について御討議なさることはもちろんですよ。同時に、いま私が指摘をしましたことに対しても十分御検討をいただかなければいけないと思うのです。  そこで、これも時間がありませんから、いずれ議論に発展していくと思うのですが、国防会議におけるいろいろな重要事項がありますね。国防会議、六十二条で定められている。ここで従来の経緯を見てみますと、防衛庁が決めたことに対して事務的に処理されている面があるわけですよ。このことはもう少し議論をしなければいけない面があるわけですが、少なくとも何兆円あるいは何千億とかかる装備計画に対しては、やはりこの国防会議の重要事項として検討をしてから国会に諮るとか、いろいろなルートを踏んでいただかないといけないと思うのです。それがもし総理のおっしゃるような国防会議のあり方ということの検討であるならば、これは一歩前進あるいは国民の側からするとわかりやすい防衛の整備計画に通ずるかもしらない。従来の方は全く密室で——かつてありましたよね、PXLはあれにしよう、これにしようということで、国産にするかしまいかということで、白紙還元だ、それがロッキード問題にも発展をして、いままだその疑惑は解明されていない、PXL問題は。これもいずれかの機会に私たちは議論をしなければいけないと思うのですが、少なくともいま言った大型の買い物に対してはそういう方向での十分なシビリアンコントロールということと、国会の事前の論議というものがあってしかるべきだと私は思うのです。そういうことを御検討いただけますか。
  170. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 まず、国防会議の運営等につきましては、先般来議長でございます総理から、先ほど上原先生の御意見のように、そうした大きなプロジェクトなりの問題のときには、その背景等からひとつ審議をしていこうではないかという御指示がございましたので、そういう方向で国防会議は運営されるものだと思っておるわけでございます。私自身も、国民の血税の集まりでございまするから、また御理解を願わねばなりませんので、そうした方向で進めねばならぬという総理の御指示には全く賛意を表して、そういう方向に進めたい、こう考えております。  それから、国会に事前に云々ということでございましたが、この点は、問題は別になりまするけれども、できますれば、いま国会にお願いをいたしておりまする防衛委員会なり安全保障委員会等ができればなお結構でございまするけれども、それでなくても私自身はこういう体制の中でございまするから、与党はもちろんでございまするが、野党の方々とも、飛び込んで胸襟を開いて、そういうことを国会で制度的に云々ということができません場合には、そうしたことを話し合うということでお願いをしてみたいという気持ちでおるわけでございまするけれども、いま国会にどうするかということにつきましては、お答えをする段階ではない、そう思うわけでございます。
  171. 上原康助

    ○上原委員 それも議論残しますがね。結論を出す前に、もっと国民がわかりやすい方向で議論すべきだというのが私の趣旨なんですよ。それを早合点なさって、防衛委員会を設置するとかなんとかいうことには、発想の転換もない限りそれはだめですね。私はそんなことでは応じられません。  そこで、時間の関係がありますからこの点も一応残すといたしまして、もう一点確認をしておきたいことは、一昨日、昨日も議論になりましたが、いわゆる領海の十二海里拡大ということに関連をして、これも三原長官の横須賀海上自衛隊基地を視察をなさって後の記者会見で明らかにされ、テレビやラジオや新聞も全部報道した、いわゆる自衛隊法の八十二条でしたかを改正して、海上パトロールについては自衛隊が領海拡大をした場合にはやるんだという積極的な御発言をなさった。しかし、方々から反対の声が上がったものだから途端にあなたは引っ込めた。きのう少しく議論がありましたが、自衛隊法の改正は、十二海里に領海が拡大されてもそういう意思は改めてないということに理解をしているわけです。  それと、運輸大臣にも確かめておきたいのですが、現在の海上保安庁の装備状況で、あるいは足りない面は補強をしていくことによって、領海十二海里に拡大をされても海上保安庁の職務権限内で十分海上パトロールの問題はできる、これももう一度この機会に明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  172. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 横須賀におきまする問題でございますが、これは記者の諸公と一緒に横須賀を視察いたしたわけでございます。そこで各隊員との懇談をいたしました際に、その懇談の機会にそういうような、いま上原先生八十二条と言われましたか、八十二条の改正、警備行動あたりの条項の改正をしなければならぬかというような意見が出たということを私は話しましたけれども、現在の防衛庁の考え方としては、これを改正するという考えはございません。この点は、決してそのときに私が改正をするといった——こういう意見が出ましたが運用上でできるものと考えておるということを私はその場で申したわけでございますから、その点は決して法を改正するというようなことではございませんから。(「運用というのはどういうことだ」と呼ぶ者あり)運用というのは、法を改正するということではなくて、警備行動ということではございません。要するに、われわれの周辺海域の自衛行動で、いまのままでやっていけるということを言っただけでございます。
  173. 上原康助

    ○上原委員 これは問題発言ですよ、運用でやるということは。自衛隊法を改正することは、与野党接近だし、一票差でしか総理にもなれないわけだから、ましてや問題法案がそう簡単に通る環境じゃないですよね。しかも運用でなさるというのは、非常に魂胆があるのですね。私はいまの答弁に納得しません。  そこで委員長、運輸大臣の御答弁をいただいてから、いまの問題については重ねてお尋ねします。
  174. 田村元

    ○田村国務大臣 海上保安庁の能力で十分海上保安業務ができるかというお尋ねでありますが、結論から言ってできます。私も海上保安庁の勢力を見て、いささか驚いたというか感心したのでありますが、巡視船艇三百十隻、航空機三十四機、相当な量であります。また、練達堪能の職員がそれに当たっております。でありますから、自衛隊はあくまでも支援後拠であるというふうに私はきわめて明確にこの問題をとらまえておりますので、保安庁でできるかどうか、その点についてはどうぞ御安心を願いたいと思います。
  175. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどの私の答弁で運用と言ったのが間違ってとられておるようでございますが、現行法規で結構だ、その範囲内でできる、問題があれば、きのうも私はお答えをいたしましたように、それを海上保安庁に連絡をすればよろしいということでございまするので、決して他の運用ではございませんから御了承願いたいと思います。
  176. 上原康助

    ○上原委員 これからも長いおつき合いかもしれぬから、きょうはこの程度で勘弁しておきましょう。  そこで、ある程度はっきりはしましたが、夜陰に乗じて基地を乗っ取った前例も自衛隊はあるわけですよね。運用でやるとか、言葉は悪いですが、そういうすきあらば自衛隊の能力、行動範囲を拡大していこうというおこがましさがかえって災いを起こし、国民の疑惑を招くのですね。そこいらはもう少し政府部内に不協和音のないようにひとつやっていただきたいし、この点総理から聞く必要もないかとも思うのですが、総理はどういうお考えですか。自衛隊法を改正するとか、そういうあれはありませんね。
  177. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 自衛隊法を改正する意図はありませんです。
  178. 上原康助

    ○上原委員 そこで、次の議論に進みます。  これもたびたびすでに先輩、同僚委員の方から御質問があったことですが、在韓米軍撤退の問題なんです。私はこれまでの議論を聞いておりまして、在日米軍基地と在韓米軍の撤退問題との関係、位置づけというものを政府が一体どう認識しておられるのか、そこいらについては全然明らかにしようとなさらないわけですね、米韓間の問題だと。まあ政治的に言えばそうかもしれません。だが、国民は御案内のとおり、在韓米軍の撤退ということをより積極的に支持するグループと、あるいは困るという意見がいまあるわけですね。しかし、基地周辺の住民というものは、現在でさえ軍事基地があるがゆえにいろんな犠牲を強いられております。そういう立場からすると、この問題は決して無関心ではおれない重要な課題なんですね。あなたがおっしゃるように、ただアメリカと韓国で話し合っていいのだという筋合いの問題じゃない。  そこで、きのうでしたか、ほかの方もお尋ねしておったのですが、在韓米軍撤退問題と一九六九年の日米共同声明との関係、位置づけというものは、どういうふうに政府は御認識しておられるのですか、お答えください。
  179. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまのは佐藤・ニクソンの韓国条項の問題と思いますが、佐藤・ニクソン共同声明、またフォード・三木共同声明が過去においてあったわけでございます。これらの共同声明は、やはり日米安保条約の当事者でありますアメリカ大統領日本総理大臣との間のお話し合いである。そういった歴史的な事実として私どもは尊重するべきものであろう、こう考える次第でございます。しかしながら、それぞれ、佐藤・ニクソンの声明のときの時代的背景、また三木さんとフォードさんの時代的背景というものがございまして、今日に及んでおりますので、今日の段階におきまして、これらの歴史的な事実、両首脳の約束事というものを尊重しながら新しい事態に備えてまいりたい、こういう考えを持っておる次第でございます。
  180. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣がお答えになっていること、どうも理解しがたいのです。理解しがたいというより、ちょっと意味が私にはようわかりません。私がお尋ねしているのは——じゃ、こう聞いてみましょう。佐藤・ニクソン共同声明というのはいまも有効だ、その趣旨はいまも尊重すべきだ、今後もその共同声明の線に沿って在日米軍基地なりアジア情勢、特に北東アジアにおける関係は認識している、こう見ていいわけですか。
  181. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この二つの共同声明で言われておりますことは、韓国を含みます朝鮮半島の平和というものが日本の安全にとって大事であるということを申し述べておるのでございまして、今日でありましても、韓国を含みます朝鮮半島の安全というものが日本の平和にとって大変深いかかわり合いを持っておるという認識は変わっておらないと思う次第であります。
  182. 上原康助

    ○上原委員 それじゃ、韓国の地上軍が撤退する、米軍が撤退をするということに対しては、政府は米韓間の問題なんで介入はしない、これは総理の御答弁である程度明確になっていますから、これ以上その点についてはお尋ねしませんが、じゃ、もし有事が起きたという場合に、在日米軍基地の利用、使用というのはどういうふうに変化するのか、どういうふうにアメリカ側と使用についてやっていくのか、これもまたお答えは安保条約の範囲でと言うかもしらない。しかし、それだけでは私は納得しないわけですね。在日米軍基地の使用のあり方について、朝鮮半島から米軍撤退という問題が起きたにしても変化はないのかどうか、ここいらももう少し明確にしてください。
  183. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 陸上軍の撤退の問題が韓国の安全に大変な阻害のあるようなことで行われるということは、大変心配なことでございますが、私どもはそのようなことは起こらないというふうに信じておるものでございまして、したがいまして、この問題が日本の米軍基地の問題に関係を直接持ってくるということはないのではないかというふうに考えておる次第であります。
  184. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官は、いわゆる軍事的な面から考えて、変化なり相当なインパクトがあり得る、あるいは全然ないとお考えですか。そういう面明らかにしてください。
  185. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 外務大臣の現在の御答弁と同じ考え方でおります。
  186. 上原康助

    ○上原委員 そういうことになると、突っ込んだことを聞こうとすると、何か非常に抽象論で逃げようとするのですが、在韓米軍の撤退というのは、私はすぐドンパチが起こるということを想定しての質問でもないのです。あなた方いろいろ考えてお答えしてください。これまでの朝鮮半島からの撤退については、沖繩を含めて日本の在日米軍基地に移動してきている前例がたくさんあるわけですね。そういうことは予想されるのかされないのかということも含めて聞いておるのです。さらに、有事の際には皆さんは事前協議とかなんとか言うでしょうが、直接沖繩なり第三海兵師団なり在日米軍基地が利用され、従来よりもっと積極的に使用されることは予想できないのかどうか。そこいらも含めて、在韓米軍撤退問題というものを平和的に解決をする積極外交を私は展開すべきだと思う、軍事的側面ではなく。そういうことを総理なりあなた方の方から聞きたいのが私の質問であり、国民のあれなんですよ。それをそんな——私は、外務大臣に失礼ですが、何を言っているかちっともわからぬ。外務大臣がおっしゃっているとおりというあなたの言うことも私わからない。もう一遍お答えください。
  187. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 撤退問題につきまして、まだアメリカといたしましても計画ができておらないのでございます。そういうわけで、一体どういう影響が出るかということも、計画がありませんので立ちようがないわけでありますけれども、先般来モンデール副大統領が見えまして、いろいろ記者会見で話されたこと等から私どもは推定いたしますと、韓国から仮にこの一部の撤退が行われましても、それが日本を含めた、あるいは他のアジア地域に移るというようなことはないだろうということを申し述べておることだけ申し述べさせていただきます。
  188. 上原康助

    ○上原委員 そういう御認識で日米間の交渉を進めていくということになると、これは問題が起きるのです。余り誠意を持ったお答えとは申しにくいですね。  そこで、じゃ、私の方から聞きましょう。皆さんは、政府は、恐らくアメリカの議会でいろいろやりとりされる会議録、議事録等についてはお取りになっていらっしゃると思うのですが、下院の歳出委員会の小委員会における聴聞会の会議録というのがあるわけです。私は、今度は特に沖繩の第三海兵師団ということもあっていろいろ調べてみました。一九七三年の四月三日の会議録、それから一九七五年発行、内容は一九七四年の一月二十九日ですね。その七五年の方は在韓米軍の十年計画について相当詳細に議論がされているのですね。こういうものの中で、在日米軍基地の使用とか在沖第三海兵師団について、もし朝鮮半島から撤退をして、あるいは有事が起きた場合にどういうふうにアメリカ考えているのだということが述べられておりますが、外務省なり政府はそういうことをどなたか御存じですか。
  189. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 いま仰せのありました各米国下院歳出委員会聴聞会の議事録につきましては、われわれは随時取り寄せまして分析はいたしております。ただ、残念ながらいま手元には持っておりません。
  190. 上原康助

    ○上原委員 そこで、これは時間がありませんから私の方で読み上げますが、リチャードソン前々国防長官ですかね、それとアダボーさんという下院議員とのやりとりの一節なんです。「もしわれわれが韓国から全地上軍を撤退するとなると、沖繩駐留の第三海兵隊水陸両用軍は、北朝鮮との有事の際、韓国人をバックアップする上で役に立つことができ、なお戦争が起きた場合はわれわれは韓国人を支援する意図があることを示すことができますか。」こういう質問をずばりやっているんですね。しかも「これに対する情報は秘密事項で、委員会には別に提供された。」この会議録では秘密事項にされているんです。したがって、あなた方は先ほどから私が一九六九年の共同声明の趣旨ということとの関連でお尋ねしても何とも言いませんが、アメリカの議会においてはこういうところまで議論を進めた上で在韓米軍撤退、地上軍だけでなくして全軍の撤退ということもいろいろ議論されているんですね。そこで、委員長、これは沖繩県民にとっても国民にとってもきわめて重大なことなんです。これは明らかに戦闘作戦行動ということを想定をしてこの議論はなされている。で、委員会にはこの情報は秘密事項で提供されたということになっている。このことについては、私は解明をする必要があると思うのです。これに対する政府の見解を求めて、答弁いかんによっては、この問題で私は新たに質問いたします。
  191. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 従来アメリカの議会におきますいろいろなやりとりに関しましてお尋ねがございましたけれども、その一部のものが秘密事項として削除されておりますという場合には、この点につきまして米側に問い合わせましても、この点は提供できないというふうな回答を得ておる次第でございまして、残念ではございますが、その内容については、われわれとしてはアメリカ側から入手することは困難であるかと存じます。
  192. 上原康助

    ○上原委員 これは総理にお尋ねしますが、カーター大統領も新しく就任された段階で秘密外交をなくしたい、人権尊重ということを盛んに強調している。もちろん私は軍事問題とか外交に秘密が全然あってはいかぬという立場をとりません。しかし、事こういう在日米軍の重要な作戦行動について何も——秘密として委員会には提供されているんです、この会議録からしますと。これについてはやはり日本国民という立場でわれわれとしては知る権利があると思うのです。積極的に照会をするという立場がない限り、私はいまの御答弁には納得できません。
  193. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも私も詳しいことはわかりませんけれども、常識的に考えまして、アメリカの国会がこれは秘密事項である、アメリカの国民にも知らせることができないのだというのを、わが日本政府に知らせるということはまああり得ないのじゃないかというような感じがいたしてなりませんです。
  194. 上原康助

    ○上原委員 いや、何もこれはアメリカの国民に知らしていかないということには書いてないのです。ディレイトもしていない。しかし、そのくらいのことは外交上の秘密ということでもないでしょう。事、在韓米軍問題をこれから三月二十日前後に話し合うでしょう。私が指摘をしないと、こういうものがあるということも恐らく知らないまま、やあやあで行くのですか。いまの御答弁では私は納得しませんよ。明らかにしてください、こういった面。どういう方途を考えているか。
  195. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 日本におります米軍部隊は、申すまでもなく安保条約の第六条に基づいておるわけでございまして、その範囲において活動しておる限り、われわれとしては何ら問題にするに当たらないわけでございます。沖繩におります第三海兵師団も、もちろん日本の防衛とともに、極東におきます国際の平和と安全に寄与するために駐留しておるわけでございまして、その範囲において駐留している限り、この点に関して、その詳細についてわれわれが、アメリカが特に公表していないものを入手する必要はないかと存じます。
  196. 上原康助

    ○上原委員 総理大臣、私は一局長答弁でこれは納得できないのですよ。入手する必要はないという積極的否定しかとっていないんですね。だから、私が冒頭言ったように、従来の発想の転換をやれ、安保地位協定の問題に対しても。  委員長、これは資料要求いたしますが、一体日米安保条約との関連であるいは日米地位協定との関係でどれだけの秘密事項があるのか。何件ということじゃなくして、たとえば基地問題についてはどれだけある、あるいは防衛問題についてはどれだけある、施設関係については幾らある、これをこの際明確に明らかにしてもらいたい。この資料を要求します。  それを含めて、いまの答弁では私、納得できない。なぜなら、これはさらに一九七五年の会議録ですが、シュレジンジャー前国防長官とのやりとりなんです。この中でもこういうふうにやりとりされているのです。シュレジンジャー氏が、日本と韓国防衛との関係において話し合われているところで、「韓共和国防衛のための在日米軍基地の使用は、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるとの日本政府の認識によって十分保障されています。」いわゆる六九年の日米共同声明ですね。「さらに、日本政府は、沖繩の返還に際して、韓国防衛のため、合衆国がその在日米軍基地を使用することの重要性を公然と認めています。そのときの日本総理大臣佐藤氏は、韓国において侵略が行われた場合、日本政府は合衆国による在日米軍基地からの対応の要請に「積極的かつ迅速にこたえる」ことを宣言しております。」こういうふうに議会においてギアイモー氏の質問に対して答弁している。これとさっき言いましたこの問題とは不離一体の形でアメリカでは議論になっている。だから、これまでも何遍か戦闘作戦行動の問題なり事前協議のことを話し合ってまいりましたが、すでにアメリカ側は、韓国撤退問題と関連をさして在日米軍基地、特に沖繩の第三海兵師団の行動については自由にできますという保障を日本政府からとりつけているという判断でやっているんですよ。ここに問題があると言うのです。これをそのままにして、従来のような感覚で安保も、あるいは在日米軍基地の運用というものを考えては困る。これに対して明確な答えがない限り、私はこの議論については留保します。これを照会してくださいよ。
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも上原さんのお話はアメリカの国会の秘密資料を取れ、こういうお話でありましたが、(上原委員「秘密じゃない、会議録ですよ」と呼ぶ)まさにそのとおり言っておられたんですよ。それは私どもとしてはちょっと考え得られないことである、こういうことです。公開の資料につきましては、できるだけこれを調査いたしまして、国会に資料として提出いたします。
  198. 上原康助

    ○上原委員 これは、いま読み上げたのは公開されているのです、会議録として。じゃ、こういうようなアメリカ側の考え方で対応しようとしているわけですね。こういう前提で在日米軍基地というものを位置づけている、また在韓米軍撤退後の在沖米軍基地の使用というものをアメリカ考えているわけですね。これは、日本政府としては、じゃ了解する立場で判断をしている、コミットした立場で在韓米軍問題、安全保障の問題というものは交渉するという、これが総理の認識ですか、そういう姿勢ですか。
  199. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま資料を出せと言うから、資料は公開のものは調査して出します、こう言っておるわけでありまして、ほかのことには何も触れておりません。
  200. 上原康助

    ○上原委員 ですから、そうしますと、こういう議論アメリカでなされているわけでしょう。そういう前提で、当然アメリカ政府というものは、カーター大統領だろうが新しい国防長官だろうが日本側との交渉をやってきますよ。それに対してはどういう姿勢で臨みますか、福田総理としては。
  201. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本政府の態度は安保条約を厳重に遵守する、その一点に尽きます。
  202. 上原康助

    ○上原委員 安保条約を厳重に遵守する、そこに沖繩返還後の安保の変質というものを私たちは指摘をしてきたわけですね。  じゃお尋ねしますが、結局有事の際の在沖米軍基地にしましても在日米軍基地にしても、安保条約の第五条あるいは第六条を含めて包括的に使用せしめる、そういう立場ですか。
  203. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 もう御承知のとおりでございますけれども、仮にいま問題になっておりますこととすれば、わが国の国外に出動するようなときには、当然のことではありますが、事前協議の対象になるということでございます。
  204. 上原康助

    ○上原委員 ですから、事前協議の対象にすると言ってみたって、そこが問題だというんですよ。そこが防衛問題なり安保問題を、なかなかかみ合わないですれ違いの議論にさしてきた大きなネックじゃありませんか。少なくとも、アメリカの議会でこれだけの議論がされていることに対しては、歯どめをかけるということがいま出ていないわけですね。安保条約をかぶせて、そのまま遵守しますと言ってみたって、その中でアメリカ側としてはいつでも自由に使用できるんだという立場をとっているわけですよ。この姿勢は従来とは何ら変わりはない。積極的にそういう事態にならないような平和外交でやるとか、あるいは沖繩の軍事基地というものに対するもっと縮小というものも考えた上でやっていくというような考えは全くないで、アメリカがそういう提案をすれば、そうですかという立場でやる、こういう姿勢しかとらぬわけですか。
  205. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島に対するわが国の立場は、あの朝鮮半島の平和が維持される、またその安全が維持される、こういうことにあるわけでありまして、わが国の基地から何か事件が起こって発進が行われるというようなことは、これがないようにということをこいねがっておるわけなんです。しかし万一、これは理論的な問題です、万一何か問題があって、安保条約の事前協議、そういうようなことになりました場合には、これはイエスもありノーもある。
  206. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連。なかなか上原委員と政府側の意見がかみ合わないわけですが、とにかくまず第一番は、韓国条項の中で、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるというまで言い切っておる。そうして在韓米軍の撤退は韓国の安全に大いに関係があるから、いま開かれておる日韓議員連盟何とかでも、その撤退反対という文字をどうしようかという問題になっているぐらいですから、それを総理は、在韓米軍の撤退は米韓の問題だから日本は関係ないのだというその言い切り方はおかしいではないか。三段論法でそうなるのです。関係がありますよ。しかも、ないどころか、緊要という認識を持っているのですからね。しかも、具体的には、韓国から在韓米軍が撤退するときには日本の基地の態様に重大な影響がある、それを米軍はどういうふうに考えているかというのをいま議事録で明らかにしておるのですから。しかも、その大事な点についてはいわゆる秘密事項になっている。だが、その辺は日本にとっても重大だからひとつその資料をくれないか。そうすると、秘密事項だからくれぬでしょう。たったそれだけの話です。そうではなくて、三月二十日ごろには総理も行かれますから、こういう点についてもじっくりカーターさんと話されたらどうですか、そしてその報告をわれわれは聞きたい、そういうふうにひとつ御理解をいただけないか。(「それは違うのだ」と呼ぶ者あり)ちょっと待ってくださいよ。違うのじゃないんですよ。私も実は要求したいのだ。要求したいけれども、そういうふうにおっしゃるから、それならばその内容についてじっくりと、カーターさんも秘密外交はしないと言っているのだから、しかも日本に重大な関係があるから、その点についてはまあ聞かしてくれないか、米軍はどういう考えになっておるのか、それぐらい話すのは当然じゃありませんか、私は議事進行の点でこういうふうに今度は提案を変えてみたい、このように思っているわけです。
  207. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま楢崎先生のおっしゃることは私どももよく理解できることでございますので、できる限り先方と、総理がいらっしゃるわけでございますけれども、その機会に私としてできる限りの努力をいたしたいと思います。
  208. 上原康助

    ○上原委員 いま私の言うのはわからぬということで、私もあなたの言うことは余りわからなかったので、私が申し上げているのも、さっきアメリカ局長は積極的に否定したわけですよ、それは秘密だから照会もできませんと。しかし、外交に秘密があるというなら、会議録にはこうこういう議論をされてこういうふうになったということがあるのだから、その部分については、おっしゃるように日本にとってもきわめて重要なことなんで、政府の立場で照会することは私は可能だと思うのです。そういうことを含めて、在韓米軍の撤退問題、特に基地の自由使用、そしてアメリカ第三海兵師団の自由行動に対する規制ということについてはおやりになりますね。
  209. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アメリカヘ、当局とそういった問題について聞けということでございますか。——それは大事なことがございますから、確認は何回もいたしたいと思います。
  210. 上原康助

    ○上原委員 一応その部分について照会をして報告をするという理解で、この問題はさらに後日に残しておきたいと思います。  それと、在韓米軍の撤退問題との関連でもっと重要になっていることが、いわゆる韓国からの核兵器の撤収といいますか、撤去問題なんですね。  最初に防衛庁にお尋ねしたのがいいかと思いますが、軍事的に見て、南朝鮮、いわゆる韓国にある核兵器というものはどういう種類であると見ているのか、あるいはもうすでに撤退、撤収されたと見ているのか、そこいらについて、まずおわかりならば明らかにしていただきたいと思います。
  211. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 政府委員答弁させます。
  212. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 御承知のように、アメリカの核戦略というものはきわめて秘密でございます。で、韓国にあると言われておりますのは、戦術核というふうに私どもは聞いているわけでございますが、それ以上のことはわかりません。
  213. 上原康助

    ○上原委員 秘密にされているということはだれもわかるわけですよ。秘密にされているから非常にむずかしいし、いろいろ議論をしても、核兵器を持ってきて爆発させない限りあなた方は核と認めないという立場だから困るのですがね。だから、そこいらがきわめて不親切で、納得のできないことなんですね。もうすでに韓国にいわゆる核兵器があるということについてはアメリカ自体も公にしているぐらいなんですよ。そこで、これも沖繩国会から議論されてきたにもかかわらず、いまおっしゃるように、秘密だから明らかにできないということを再三言っているわけですね。  しかし報道によりますと、韓国からの核の撤去と関連をして、沖繩の核基地をなくするなということを、統合参謀本部長がカーターさんが大統領に御就任なさる前に提言をする、あるいは勧告をしたということがワシントン・ポストで報じられたことは事実ですね。このことはおわかりですか。
  214. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 昨年の十二月二十一日のアメリカのワシントン・ポストという新聞にアンダーソンという人の記事が出ておりまして、それに、アメリカの統合参謀本部はカーター次期大統領に対して沖繩の米軍核基地を手放さないよう勧告するというふうに書いてあります。この意味は、われわれとしてはよくわからないわけでございまして、沖繩には核基地は存在しておらないわけでございます。
  215. 上原康助

    ○上原委員 そんなふまじめな答弁がありますか、人が真剣にやっているのに。だめですよ、それじゃ。もっとまじめに答えてください。その点で政府はアメリカに照会したのですか。
  216. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 沖繩が返還されました後におきまして、沖繩に核兵器が存在しないことにつきましては、御承知のとおり昭和四十四年の佐藤・ニクソン共同声明に書いてあります。また沖繩返還協定にもこれに間接に触れております。さらに、昭和四十七年の沖繩返還時に当時の福田外務大臣にあてられましたロジャーズ国務長官の書簡の中でも、沖繩には返還時には核は存在しないということを明らかに述べております。
  217. 上原康助

    ○上原委員 私がお尋ねしているのは、ワシントン・ポストがそういう重大な記事を発表している。大統領に勧告をするということも出ている。それに対しては、重大な事項なんで、私は、政府としても関心を持って照会すべき筋合いの問題だと思うのですね。それをやったかどうかを聞いているんですよ。やらなければ、やらない、する必要はなかったと、それに対して答えてください。
  218. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 このことについては照会してみることにいたします。何分きわめて簡単なものでございますので、何の説明もありませんので、これだけ読んだのでは本当にわからない記事でございますので、確かめてみます。
  219. 上原康助

    ○上原委員 いままで確かめてないで、これから確かめるということですから、それでも少しはいいでしょう。確かめてください。  そこで私も、何も核をここに持ってきてあるのじゃないのですよ、福田さん。しかし、こういう記事の発表と関連をして、さらに、アメリカはすでに韓国から戦術核については移した、あるいは移しつつあるという報道もいろいろ出てきているわけですね。そのこととの関連において、沖繩基地の面でも重要な変化があるということは指摘をしておきたいと思うのです。疑うに十分の資料がある。  これは第一八戦術戦闘航空団で使用しているオーソリティー・ツー・オーダー・ザ・ユース・オブ・ニュークリア・ウエポンズというので、いわゆる大統領の核管理問題に対しての指揮系統についていろいろ書いてあるのです。管理からどういう指令が出される、NATOを含めて書いてある。こういうものが嘉手納空軍基地で米兵に使用されているということ、これが最近一つの事実として出てきている。  さらにいま一つは、第三海兵師団の司令部内で現在使われている一九七六年——いまは七七年ですが、現在アメリカのテレホンブックはこれなんです。この中でNBCセクションというのが堂々と出てきたのですね。電話番号まで言いますか。六二二−四三五九、こういう事実がある。  さらにいま一つは、これも、私もない知恵をしぼっていろいろ努力しているのですが、ようやくアメリカの核体制の概略についてある程度つかみ得たような感じがするのです。これは、現在沖繩の海軍が使用しているいわゆるネービー・サプライズ・システム・コマンド・マニュアル、略すると海軍補給司令部規定というふうなことになりますかね。これは全部核兵器のことが書いてあるのです。これは目下使用されている。この中では特に——ちょっと、たくさんありますのでなんですが、核兵器物資の取り扱いという項では、海軍核兵器の活動という項で、そのA項で、一般海軍の核兵器の活動は、その受領、貯蔵、積み荷、修理変更に関係しており、核兵器の送達は次の節から成っているということで、運営部隊がどういうものだ、あるいは運送能力を含む部隊はどんな組織になっているとか、核兵器の補給地点はどこどこだというようなことで、明細にこの中で出てきているわけですね。これは現在使用している。しかも、この取り扱いは、私もニュースソースは明らかにできませんが、外人だけしか取り扱っておりません。こういう動きが新たな活発な動きとして出てきているという事実があります。  さらにいま一つは、これもまた問題なんです。これはもっと調べればはっきりいたしますが、昨年の十月六日に、いわゆる韓国のチンヘイから——チンヘイですか鎮海、チンヘイというようです。これは海軍基地なんですね。私、調べました。ここから沖繩の天願港に百五十九トンの弾薬が運ばれているのですね。その中にきわめて疑惑の持たれるハイエクスプロシブという爆弾が含まれている。これも全部番号なんです、記号なんです、アメリカのやっているのは。記号で、これには、たとえばこの中で四二一あるいは四二七、これはハイエクスプロシブ。どういうものだ。核弾頭とは書いてありませんが、弾頭の明示をされているものが含まれているのです。核弾頭が入っているかどうか、そこまでは書いてありませんが、疑わしい。そういう問題。  そうして、いまさっき申し上げたキャンプ・ハンセンの電話ブックと関連をして、現在のキャンプ・ハンセンの一部にきわめて重要な、厳重な建物があるわけですね。これも建物番号は二四八号、全然出入りできません。こういう状態が出てきているわけですよ。  これだけの材料をわれわれ、ない知恵をしぼって——総理大臣、沖繩国会から今日まで、ない知恵をしぼって、やはり沖繩には核兵器が貯蔵されているか、あるいは少なくともトランシットという形で通過をしている可能性は、十分のこれ以上の証拠というのはなかなか出せないです。われわれ外交権もないし、国会の調査権もない、基地に立ち入りもできない。これだけの疑惑を持たれても、なお非核三原則でございますとか日米安保条約が厳守されておりますと言って逃げられる問題ではないと私は思うのですね。ないと思う、もうここまでくると。これに対して、一体、政府はどういう見解をお持ちなのか。どういうふうにこの問題を、疑惑を解明していく方針をとる——方針というより解明をしていかれるのか、この際明確にしておいていただきたいと思うのです。
  220. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは日米間で厳粛な約束があるわけです。日本国においては核は保有いたしません、こういうことですから、これをわれわれは信用しております。ところが、あなたから幾つかの疑問が提起されているということでございます。この疑問につきましては私どもも調査いたします。  なお、疑問とするところを、いまお話しになった程度でなくてもう少し具体的にお示しくださればなお調査のための便宜になろう、こういうふうに思います。
  221. 上原康助

    ○上原委員 どうも、これだけの材料をもっと詳しくと言ったって——後でどうぞお読みになってください、これはうそだと思ったら。全部現実の問題なんです。電話番号だって、これは何も私がインチキして持ってきてあるのじゃないですよページ数も全部わかる。これだけの材料がそろって、しかもこれなどは明らかに、こういう大統領の指令はどうだとか、現地司令官はどういうような指示を受けるのだということまで書いてある。こういうことに対して、ただもっと解明をしてくださいというだけでは、ちょっと納得しかねます。  では、少なくともここで、むしろこのマリンの第三軍海兵師団の司令部内にある、いわゆるNBCセクションというのは一体どういう役目を現在果たしているのか、また、先ほど挙げましたキャンプ・ハンセンの部隊の一角にある建物番号二四八号というのはどういう建物なのか、このことは政府がお調べになって、調査して報告いたしますね。
  222. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのようにいたします。
  223. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的にどのような調査方法をとられますか。これはのんべんだらりと調査してみますわというような問題じゃないですから、具体的にどのようにやられますか。
  224. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ただいまお話のありました第二海兵師団の電話帳の中にNBCセクションというふうな記載がある問題、あるいはキャンプ・ハンセンの中にあります建物の問題に関しましては、アメリカ側に問い合わせてみたいと思います。
  225. 上原康助

    ○上原委員 では、この件は私は留保します。照会したお答えを聞いてから、さらに進め——もっとほかにも材料はありますが、きょうは時間がありませんので、それは総括質問が——総括質問、あしたまでですから、早目にやりますね、一週間以内。どうですか。
  226. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 いまの二件に関しましては、一週間以内に返事をもらえるように努力いたしたいと思います。
  227. 上原康助

    ○上原委員 努力いたしますでは納得いきませんので、理事会でも御相談をいただいて、一週間以内に回答さしていただくようにお取り計らいを願いたいと思います。
  228. 坪川信三

    坪川委員長 努力いたします。
  229. 上原康助

    ○上原委員 委員長沖繩開発庁長官を前になさったのだから、少しはやっていただいて、私の要望にこたえさしていただきたいと思うのです。  次に、時間が大分たちましたので、まあ、きょうは在沖米軍基地の問題について触れられませんが、一つだけまず念を押しておきたいと思うのです。  まず、読谷村でいまアンテナ工事を米側が直轄で強行しているのは御承知のとおりですね。きょうも私の党の方からその件について申し入れがあったのですが、ここは御承知のように旧日本軍が強制的に取り上げて、現在大蔵省の管轄、私も沖繩国会でもこの問題を取り上げましたが、になっている土地で、地主の皆さんはいわゆる所有権の返還を求めている、政府に対して。県に対しても要望しているのですね。ここに軍直轄のアンテナ工事を強行しようとしている。少なくとも、この土地問題が解決するまでこの工事についてはアメリカ側に見合わしてもらう、きょうの申し入れの趣旨に沿うということだったというのですが、きわめて問題含みですので、このアンテナの内容にしてもあるいは経過にしても、現在の状況にしても、強権発動でそれをやる御意思はないということを、もう一度明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  230. 斎藤一郎

    斎藤(一)政府委員 ただいまお尋ねの読谷における通信のアンテナ工事の件については、かねがね地元で土地の関係者との間に紛争がございまして、私としましても米軍の施設にかかわる仕事をやっておるので、非常に重大な関心を寄せております。紛糾の原因はいろいろございますが、できるだけこういうトラブルが起きないように米軍としても何か措置をする方法がないか、私の立場でできるだけの配慮をしてみたいというふうに思っております。
  231. 上原康助

    ○上原委員 余り積極的な御答弁でないようですが、いまいろいろ問題が錯綜している中で、安易な立場での工事の再開ということは厳に見合わしていただきたいということを重ねて注文をつけておきます。  そこで、時間の関係もありますので、沖繩の基地縮小問題との関連でお尋ねするつもりでしたが、その前に、政府が今国会に、まあ先国会から提案をしておられるわけですが、いわゆる沖繩県の区域内の駐留軍用地等に関する特別措置法の問題なんです。これは現在の公用地等暫定措置法が制定されるときも、あのときはたしか福田総理は外務大臣ですよね、強行採決でやられた。しかし、あのときでさえ憲法違反だという声も強かったし、沖繩だけに特別法を適用するということはきわめて法律上からも道義的にもなじまないということが指摘された。今回も、この法律の時効に伴ってまたまたきわめて問題含みの形でこの法案を提案しておられるのですが、きょうはまだ趣旨説明なりそういう面も受けておりませんから議論するわけにはいきませんが、私はやはりこういう法律というものは決して沖繩の境界不明の地籍確定にはつながらない、軍用地の固定化と継続使用ということだけが前面に出て、沖繩の経済振興開発とか地籍の確定ということには全くつながらない内容にしかなっていない。そこで、こういう差別立法を新たに沖繩に押しつけるということではなくして、私たちもいろいろ検討して、せんだって、まだ野党の皆さんの方々ともいろいろこれから御相談をしなければいけない問題も若干残っておりますが、沖繩県の区域内の駐留軍用地等に関して、いわゆる地籍を明確化するための特別立法を一応法案をつくっていま国会に提出をする準備を進めているわけです。この問題については、また沖繩県も御承知のように、沖繩県における境界不明地域に係る地籍明確化のための土地調査に関する法律案要綱をまとめてお出しになっている。政府が出しておられる法案には真っ向から反対しておられる。こういう状況の中で、政府はあくまでも強行していこうとするのか、そのお考えを少し承っておきたいと思うのです。
  232. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いまお説の沖繩基地におきまする特殊な事情については、十分承知をいたしております。特に、長い間非常な過重な負担をさせておる、大きな地域について基地が使用いたしておるということで、私どもその点につきましては、現地の心情なりあるいは現地の具体的な経済開発等にいろいろな問題があるということも承知をいたしておるわけでございます。  そこで、いま申されました政府で提案をいたしておりますものも、まずは基地内におきまする地籍の面は、これはひとつ迅速に適切な方法で早くはっきりさせましょうということと、ただ、いま使用をぜひさせていただきたいが、未契約な分がございますのが、非常な努力をいたしておりますけれども、まだ問題があって、そこに一つの大きな問題を提示されておる点がございます。この点につきましても、所有者の権利を十分保護しながら善処いたしたいといういままで努力をいたしておりますが、その間に、県の方でおつくりになった案と、それから社会党の方でおつくりになった案とが出てまいったわけでございます。これから先の審議の中でひとつ大いに検討させていただきながら、ぜひ、安保条約に基づきます一つの責任遂行もせなければなりませんので、そういう立場でこれから先審議の中でひとつこの問題と取り組ましていただきたいと思っておるところでございます。
  233. 上原康助

    ○上原委員 幾分何か含みのあるようなお答えのようでもあるのですが、こういうときに安保なんか持ち出したら話は困るのですよ、三原さん。そこで問題は、先ほど申し上げましたように、きょう私はこの中身まで議論すると、もう議論したのだからと言って変に勘ぐられてもいけませんので——私はこの法案では地籍の明確化というのはできないと思うのですね、皆さんがいま言っているように。  そこで、開発庁長官国土庁長官にお尋ねしておきたいのですが、地籍が混乱をしている、境界が不明であるということならば、本来ならば国土調査法なりでやるべきだと思うのですね。さらに軍用地と非軍用地を分けて区別をするということもきわめて問題がある。また、自衛隊基地について土地収用法を改悪をした形で、これまで本土では前例がないでしょう、土地収用法を自衛隊基地に使用したというのは。この三点について、これでも本当に地籍明確化ができるのかということについて、開発庁と国土庁長官見解を将来の議論のために聞かしておいていただきたいと思うのです。
  234. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいまおっしゃいました地籍の明確化でございますが、現在、すでに御承知と思いますが、沖繩におきましては地籍不明確な土地が百四十平方キロございます。そのうちの軍用地が百二十平方キロ、民間地が二十平方キロでございます。この民間地の二十平方キロにつきましては、昨年、ことし、来年と、集団和解の方向でこの明確化が進んでおります。すでに去年、ことしそれから来年度、五十二年度も進むという予定のものがついております。私たちは二十平方キロメートルにおきましては、この集団和解方式で進んでいける、土地の明確化ができる、地籍の明確化ができる、かように思っております。
  235. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  沖繩の地籍調査につきましては、御承知のように国土調査促進特別措置法によりまして、国土調査十カ年計画のもとにいま沖繩県で実施をいたしているわけでございます。昭和五十年までは百六十七平方キロメートル、それから今年は十四平方キロメートル実施中でございます。  そこで、軍用地等のいわゆる接収地の問題でございますが、これについてはいま三原防衛庁長官からもお話がありましたように、この土地の確認が非常にむずかしい状況にございますから、そういう点から言いまして、いま私たちが国土調査法の運用によってこれを進めることは非常にむずかしいと思うのでございます。ですから、いま開発庁あるいはまた防衛施設庁でそれぞれ解決のために努力をいたしている状況でございますので、国土調査法の本来の精神から言えば当然先生のお話のようでございますけれども、一つの問題のある状況において、ただいま防衛施設庁あるいは開発庁で鋭意努力している段階でございますので、私たちとしては、ただいまの段階では国土調査法を積極的に適用する段階ではないということを申し上げておきます。
  236. 上原康助

    ○上原委員 本来そうなのですよ。これはきょうは議論しませんが、特別な地域だからこそ国土調査法を適用すべきだと私は思うのです。やろうと思えば国土調査法の六条の二なんかでもできない相談じゃない。総理大臣が特定地域と指定をしてやればできるのです。しかも、開発庁長官の御答弁は私はきわめて不満足ですね。大変失礼ですが、沖繩の担当大臣としてはもう少しはお考えになっていただかなければ困る。あなた、そんな他人事みたいなことをおっしゃっちゃいかぬですよ。二十平方キロだけ地籍確定をすればいいのですか。一九七〇年でしたか七一年の六月三十日に返還された旧上本部軍用地跡はどうなっている、返還前のあれだが。五十万坪の土地を返還前に返されたからといって、何の跡利用もできないで、いまだに地主はほったらかしの状態じゃないですか。西原飛行場の跡だけ集団和解でやったと言って、そんなことではだめですよ。沖繩開発庁の所管でやるべきだという提起までわれわれはやってあげているのに、何であなたはそんな消極的な御答弁をなさるのですか。けしからぬ。  そこで、ちょっと法制局長官にお伺いしておきますが、明らかにこの法律は沖繩国会から問題になったのですよ。一沖繩県だけに適用する特別立法なんだ。憲法十四条からいっても二十九条からいってもきわめて差別している。また本土にはそういう法律はない。見解だけ承っておきたいのですが、この沖繩県に政府がつくった法律というものは、憲法九十五条の住民投票は全く関係ないのですか。
  237. 真田秀夫

    ○真田政府委員 憲法九十五条はいわゆる地方特別法と言われる法律のことでございますが、ある法律が地方特別法に該当するかどうかということは、いまの法制上は国会がお決めになるというふうになっております。と申しますのは、地方自治法の二百六十一条を見ますと、特別法を制定したときは、最後に議決した議院の議長が手続を始めるというふうになっておりますので、実は国会で御判断になることでございますが、われわれの方でも関心がございますのでいろいろ見解は持っております。  今度提案いたしました法律も、いわゆる九十五条の地方特別法ではない。その理由といたしましては、これも再々申し上げておることでございますが、九十五条というのは憲法の地方自治の章の中にありまして、一つの地方公共団体の組織なり権能なりについて、一般法と違った特別の内容を持った法律をつくった場合に住民投票にかけろという規定でございますので、今度の法律は沖繩県というものをねらい撃ちにするのじゃなくて、そこの地域について特別の内容の事項を定めておりますので、九十五条に該当しないという考えを持っております。
  238. 上原康助

    ○上原委員 そういう御答弁ではますます理解もしないし、国民の皆さんには誤解といいますか、こじつけにしか聞こえませんよ。それも後で議論しましょう。日本弁護士会も、そういう疑いがあるということを法的立場から、御専門の立場から御指摘しておられることもとっくに御案内でしょう。  そこで、これは総理に重ねて念を押しておきたいのですが、先ほど防衛庁長官は、いろいろ野党の方でも案を考えているようなので、十分検討した上で合意が得られるように努力をしたいということでした。これは沖繩県民にとっては、基地問題との関連においてきわめて重要な法律なんです。そして、残された戦後処理の最大の県民課題なんですよ。これを政府の見解考えだけで——安保との関係も基地の問題もあるでしょうが、しかしそれはそれとしてまた議論すべきで、地籍の確定ということについては、やはり沖繩の振興開発なり県民生活という立場で考えるべき法案だと思うのです。継続使用の問題と地籍の確定というのは、明らかに別個の性格であり性質の問題だ、そういう立場でコンセンサスが得られるように努力をして、この法案の扱いについては最大の慎重を期す、そういうお立場であるというふうに理解をしたいのですが、総理見解を賜っておきたいと思うのです。
  239. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、政府から提案を申し上げております。御審議を願わねばならぬと思いますが、その間に沖繩県からと社会党から一つの法案が出てまいりました。これから先の審議を願います過程において最大の努力をして解決をいたしたいと考えておるところでございます。
  240. 坪川信三

    坪川委員長 上原君に申しますが、時間が過ぎておりますので、結論をお急ぎ願います。
  241. 上原康助

    ○上原委員 生活問題についても少しお尋ねしたかったのですが、後の方もいらっしゃいますので、では最後に。  もしこの法案が通らなかった場合は、どういう対処策をとるお考えですか。
  242. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、最大の努力をいたしまして解決をしなければならぬ問題だと思っております。
  243. 上原康助

    ○上原委員 いつまでをめどにしていますか。
  244. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 この法案は、基地の使用期限が五月の十四日でございますけれども、しかし準備等もありますので、できますればその三カ月前に解決をいたしたいと思いますが、なかなかそうもいかない。したがって、その間、予算委員会等もございますので、そういう国会の審議を見ながら御相談をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  245. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  246. 坪川信三

    坪川委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、大原一三君。
  247. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、新自由クラブの名において、総理経済政策の主として基本問題についてお伺いいたしたいと思います。  その前に、委員長に質疑がございますが、わが新自由クラブがこの前提案いたしまして、喚問のない大臣の出席は不要でございますと申し上げたのでございますが、その後いかがになっておりますか、お答え願います。
  248. 坪川信三

    坪川委員長 お答えいたします。  本問題につきましては、目下理事会において鋭意検討中でありますので、従来の慣例もございますので御了承願いたいと思います。
  249. 大原一三

    ○大原(一)委員 われわれとしては、本問題については各委員会において同じような要求をして主張してまいりますので、本日は関係のない大臣、お帰りいただきたいのでありますが、せっかくお座りいただいていらっしゃれば質問をさせていただくかもしれません。  まず、総理にお伺いいたしたいのでありますが、総理は、金、金、金、物、物、物という御意見をよく申されるわけでございますが、私も、今日の自由社会のモラル、確かに総理のおっしゃるような時代認識を持っている者の一人でございます。私はやはり、その底辺には、現在の自由社会のひずみと病根が基本的にわだかまっておるからであると考えるわけでありますが、その基本的な要因として、私は、現在の自由主義社会の経済的譜面におけるひずみが基本的に拡大しつつあるという実態的な認識を基本に持つものでございます。     〔委員長退席、渋谷委員長代理着席〕 いままで三十年間、われわれは自由の名のもとに今日までの経済生活を築いてきたわけでございますけれども、その三十年間の、しかも高度成長期における経済の著しい伸展の中に、現在のひずみは醸成されておったのである。石油危機を契機に、一挙にそれがわれわれの時代的な認識になるに至ったのでございますけれども、これまでの経済成長の過程においてその病根が蓄積されてき、それがわれわれの前面に石油危機を契機に露呈したという基本的な認識に私は立っております。  ところで、総理一つお伺いしたいのでありますが、これは四十九年でございますけれども、NHKの世論調査で、憲法意識の構造調査というのがございました。たくさんございましたけれども、その中にこういう質問がございます。現代社会で個人の自由や権利を侵しているものがあると考えるなら、それを挙げてくださいというのでございます。たくさん項目があったわけでございますが、その回答が五千三百でございますが、個人、の自由や権利を侵しているものの第一番目が大企業と答えたものが二八%ございます。二番目に、マスコミの方には大変お気の毒でありますが、マスコミと答えたものが二四%ございます。三番目に、労働組合と答えたものが一七%ございます。四番目に、政府が基本的人権を侵害していると認識しておるものが二二%あるわけでございます。これを見ますと、大企業は、いわば憲法に保障された営業の自由の旗手であると私は思います。現代までの自由社会において、弱肉強食の闘いの中にみずからの地位を築いてきた、その自由の旗手である大企業、さらにはまた、言論の自由の旗手であるマスコミ、さらにはまた、労働基本権の自由を謳歌する労働組合が、個人の基本的人権ないしは自由や権利を侵害しているという答えが、事実四十九年、これは石油危機の直後でございますが、出ておるのでございます。これにつきまして、総理の御意見、感想をお伺いしたいと思います。
  250. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 大原さんがおっしゃるように、いろいろなひずみというものが高度成長下に出てきておる、私もそういうふうな同じような認識を持っておりますが、その最大のものは、やはり自分さえよければというエゴ、これがまかり通るというような風潮になってきておる、その社会風潮というものが最大のひずみである、私はこういうふうに見ておるわけであります。私は、社会行動原則というものは協調と連帯になければならぬ、こういうことを強調しておりますが、まさに私はそのことを言っておるわけであります。自由社会といいますと、これは自分本位にどうしてもなりがちである。また、高度成長社会というものは、そういう環境をつくっていくのに非常に都合のいいような状態であったわけでありますが、私は、もう少し自分の自由を主張する反面に、他人の立場というものを尊重する、こういう風潮が打ち立てられなければいい社会にはならぬ、こういうふうに思うのであります。  いろいろいまお話を承りましたが、やはり相助け、相補い、そして責任を分かち合う、こういうことが、人間でありましても、あるいは企業でありましても、あるいは国でありましても、地方公共団体でありましても、地域社会でありましても、あらゆる面において非常に求められなければならぬような今日の社会状態である、こういうふうに考えております。
  251. 大原一三

    ○大原(一)委員 その自由が、では一体いかなる経済的部面においてひずみを露呈しておるか、私はこの問題を次の四つの部門において指摘したいのであります。  第一は国土政策の問題であります。第二番目が総理のよく言われる資源のひずみ、第三番目が食糧問題、特に日本の国内における農業政策の問題でございます。第四番目に、現在の日本の企業の置かれたきわめて厳しい諸条件、この四つの点に問題をしぼりまして、私は逐次御質問を申し上げていきたいと思います。  まず第一番目の国土政策でございますが、四十九年に新国土法ができましてから、逐次具体的な政策は手を打たれておるのでございますけれども、私は国土という問題は、総理は本会議におきまして国民財産という言葉でお答えになっておりましたが、私は、もし国土が国民財産であるならば、もう少し抜本塞源的な国土政策を展開してほしいという考え方に立つものであります。政治の、国家の、第一義的な、物質的な基礎、それはまさに国土であります。そして、そうであるならば、最も政策を必要とする場所、それも国土であると思うわけでございます。ところが、現在までの地価の上昇等々を見ますと、国土に関して大変ゆゆしい数字をわれわれは見るわけでございます。たとえば、昭和三十年から五十年までの物価の上昇割合、消費者物価は約三倍であるのに地価が四十倍上昇しておる。つまり、消費者物価の十三倍強という高騰率でございます。東京におきましては坪千五百万円近い土地がございます。五十一年一月の調査によりますと、銀座の五丁目四百十万円、これは平方メートル当たりでございますので、坪当たり約千二百万、新宿三丁目が坪日本一高い国土でございますが、千三百五十万、これはまさに世界一高価な地価でございます。考えてみますと、三十七万方キロというこの狭い国土に二百兆円という世界三番目の国民所得を乗っけたのでございますから、その地価がヒートするのは当然のことでございます。しかしながら、その実態をよく見ますと、国土の約一五%ぐらいのところに六〇%、七〇%の人口がおり、したがって、GNPの同じ割合ないしはそれ以上のGNPが乗っかっておるというひずみでございます。私は、いま地価問題を初めいろいろの国土政策の欠陥がわれわれの国民生活に大きな影響を与えておるという実態を一、二指摘したいわけであります。  時間がございませんのでまとめて御質問申し上げますが、まず、地価は物価のきわめて基本的な重要な中身であるということを申し上げたいわけであります。世に、物価政策に関連いたしまして、意外と地価の圧力というものが忘れ去られておる。たとえば、高いビルができる、そのところの下の地価は坪一千万円、地代は全部そのビルに住まわれる企業のコストでございます。それが、坪ただでももらい手のないような過疎の山村の買われる品物の家計の負担にもなるわけでございまして、私は、地価が世界一高いということは、われわれのこれからの生活条件を厳しく制約していくきわめて大きなファクターであろうと考えるわけでございます。  第二番目に、地価の高騰は生産の阻害要因に相なります。まあ、私は共産主義者ではございませんが、土地の国有をしております国で、ちなみに一億円の企業を、一億円の原資で投資をする場合には、地価はただではございましょう。そうすれば一億円の工場ができるわけでございます。ところが日本の場合、世界一高い地価でございますので、仮に都市近郊において工場をつくる場合には、一億円ありましても八千万か七千万が地球の上の乗っかり代としてまず最初に支払われなければならぬ。そうしますと、残された二千万か三千万で設備投資をいたしますので、ほかの経済的諸条件にして等しかれば、前者の国と後者の国とは将来の経済競争力において致命的な開きができるはずであります。そういう意味におきまして、地価の高騰は生産の阻害要因になり、したがって、それがひいてはやはり国民生活を圧迫する物価上昇の要因になると考えますが、いかがでございましょうか。  それからもう一つ、余りにも地価が高いということは、一方において道徳的退廃の因子にもなろうかと思います。たとえば、これはおととしの数字であったかと思いますが、東京の小学校の校長先生、四十年間勤め上げられまして、退職金が千七百四十万円であります。ところが、仮にその先生が東京二十三区内で土地を見つけるとすれば、買われる土地は二十坪か三十坪だと思います。建蔽率三分の一にして六坪か七坪の家に住まわなければならぬという実態。彼は四十年間子供に対して聖職者と言われ、真っすぐ歩きなさい、人のいいことをうらやんではいけませんよと教えてきたにかかわらず、退職金千七百四十万がどっかの地主さんに右から左にすっこ抜かれたときに、わしが教えておったことが果たして正しかったであろうかということを考えなかったら、私は彼は人間ではないと思います。そういうことが日にち毎日行われている現在の経済的実態を考えるときに、土地に関する野方図な自由が庶民の自由を圧迫し、いろいろの道徳的、経済的ひずみの要因になってはいないかということをお聞きしたいのであります。  そういう意味において、現在は庶民は土地に見放されております。やはりいろいろ住宅政策を政府でお立てになりますけれども、いたずらにと言ったら大変恐縮でございますが、建設省あたりでは住宅建築戸数をやたらに気にされておりますけれども、私は、建築戸数よりも住宅政策はまさに土地政策であり地価政策だと考えます。そういう意味において、今日の政府における住宅供給政策、この委員会においても再三各委員の方々が御質問なさいましたが、先ほど申しましたような庶民の希望からすれば、はなはだお粗末な住宅政策ではなかろうかと思います。  以上の点につきまして、総理の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  252. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えをいたします。  ただいま大原さん御指摘のように、全国土の一〇%の少ないいわゆる三大都市圏に四六%の人口が居住しておって、そして高いいわゆる社会生活を営んでおるわけでございます。反対に、残りの九〇%のいわゆる地方圏においては、若年労働力が都会に流れてまいります関係からして、過疎状態を呈しておるのは御承知のとおりでございます。こういう過疎過密の状態を解消するためには、やはり国土計画が必要であることは御指摘のとおりでございます。ですから私たちといたしましては、まず第一に国土の適正な利用を図りまして、私たちの生活環境をまずよくするということが第一でございます。それが土地、地価と大きな関係があるわけですが、もう一つは、国土の均衡ある発展を図りまして、国民が将来とも安全で豊かで住みよい生活ができるような地域社会をつくるということを目標に、新しい国土計画を私たちはつくろうといたしているわけでございます。  そのためには、まず私たちは、過疎過密の状態をなくするために、大都市圏の整備をして、まず過密の状態を抑制していくという方法をとらなければなりません。もう一つは、地方振興によりまして、あるいはまた周辺の農山漁村の整備等によりまして、地方の生活圏にいわゆる人口定住をさせるという政策をとらなければならないわけでございます。そのためには、やはり交通、通信体系の整備、あるいはまた教育、文化、医療等の国全体の再編成を考えていかなければならないと思うのでございます。そういうことを基本にしながら、三全総を昭和五十年の十二月に一応閣議に報告してございますが、いまその概案を基礎にいたしましていわゆる肉づけをしている状況にあるわけでございます。  そこで、問題は地価対策でございますが、御承知のように、都市周辺の人口が増加するということと、もう一つは、世帯が細分化されてまいります関係から、土地に対する需要というものが非常に高くなってまいっております。一方、土地全体は、やはり農作物の自給率を高めるという面からいっても農地の需要というものが非常に高くなっておりますので、大原さん御指摘のような土地の状況にあることは事実なんでございます。ですから、私たちは、国土利用法に基づきまして、まず一定規模以上のいわゆる土地の取引については、その目的あるいはその価格の面から内容を規制しながら価格の安定を図るということをまず第一にいたしております。  さらにもう一つは、都市近郊にいわゆる大規模の住宅ができてまいらないというような関係から、地価というものが上がってまいっておるのでございますので、どうしても都市近郊の地目を変える、いわゆる宅地化するためのいろいろな援助をしてまいらなければならないという点から、計画的にいわゆる農地を町村に利用していただくために、その転換のための計画策定費を四千万ほどいまの予算に盛りまして、その助成を進めているというようなことでございます。そのほか、遊休地に対する宅地化の問題というようなことも十分私たちは考えておるのでございます。  いずれにいたしましても、ただいま大原さん御指摘のように、地価の高騰は、地域的な格差をますます大きくさせる、あるいまた産業の阻害になる、あるいはまた地価の高騰が道義の退廃にもなるというような御指摘でございます。まさにそのとおりだと思いますので、私たは、地価公示等によりましていわゆる地価の動きを監視しながら、今後とも一層地価対策に十分な措置を講じてまいりたいと考えております。
  253. 大原一三

    ○大原(一)委員 大変御親切な答弁でありますが、ただいま地価公示制度のお話が出たのでありますが、この地価公示制度と申しますのは、長官よろしいですか、全国一万五千点、これはたてまえは時価ということに相なっております。時価でもって連年改定の地価を公示するということは、効果的に一体いかなる意味があるか、私は疑問に思うものです。これはまた大変えらい高くなったな、じゃ、うちも大分高くしなければいかぬなと、むしろ土地の高さを天下に公表して、逆につり上げ効果を待つんではないかという疑問すら持つわけでございます。  私は、さらに現在国土法で規定しております特別規制区域の指定をまだ知らないわけでございます。こう申しますと、長官は、四十九年以降地価は安定ですと、こうおっしゃるであろうと思うのでございますが、土地というのは資源有限、総理がおっしゃいますように、石油資源等々の一般資源よりはもっと有限でございます。再生産不可能な資源と言えばまさに国土でございます。その国土に対して、政治が多くの人の自由のためにやはりはっきり挑戦をしていかなければならぬということになりますと、私は現在の地価公示制度ではだめだろうと思います。といいますことは、この有限な国土の上にわれわれはこれから二百兆円の経済を、さらに四百兆、六百兆、八百兆の経済を積んでいかなければならぬわけでございますので、ここ一、二年間の地価の安定などというものは、かりそめの安定でございまして、やはり地価というこの猛獣には、相当厳しいおりの中へ入れなければ、必ずやまた勢いをぶり返して、経済生活、国民生活に非常に大きな影響を与える危険なしろものだと私は思います。そういう意味におきまして、土地が過剰な投機にさらされるということは、どなたか石油は諸悪の根源とおっしゃいましたが、土地こそ諸悪の根源であろうと思うものであります。  そういう意味におきまして、総理にお伺いしたいのでございますが、現在の国土法を乗り越えて、もう少し思い切った、まさに国土有限の見地に立脚した強固な地価対策をおとりになる御方針はございませんか、お尋ねいたします。
  254. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  大原さん御指摘のように、日本の国土は三十七・八万平方キロメートルでございますので、有限でございます。ですから、おのずと土地に対する需要の高いのはこれは当然だと思うのでございまして、私たちはその中で、地価公示というもので一つの価格を抑えてきている、安定さしてきているという事実だけはひとつ御認識願いたいと思うのでございます。  もう一つは、私たちは国土利用計画法と土地税制でいまの価格をこのような状態で抑えてきているということも御認識を願いたい。確かに国土法の中に規制区域というのは指定してございまして、区域内での土地取引を許可制とすることにいたしているのは御承知のとおりでございます。こういうことにしてまいりますと相当程度の規制が行われるものと思いますので、大原さん御指摘の目的は私は達成されるものと、かように考えるのでございます。
  255. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、私の質問に対してどうもお答えになっていないような気がしてならないわけでございます。  そこで、国土庁長官にお伺いいたしたいのでありますが、金丸長官のときに新聞で大きく発表されました首都の移転の問題はその後国土庁ではどうなっておりますか。
  256. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、国土の均衡ある発展を図るためには、首都圏いわゆる大都市圏の整備が必要であるということは先ほど申し上げたとおりでございます。そういう観点から、首都圏についても過密の抑制のための手段をいろいろ講じております。すなわち、筑波学園都市あるいはまた各大学の移転あるいは立川基地の今後の利用等、あるいはまた建築の高層化によるいわゆる整備等を行っているわけでございます。  しこうして、金丸前国土庁長官の首都圏の移転の問題でございますけれども、これは国土の均衡ある発展を図るという意味から言うと、確かに考えるべきものであろうと思うのでございます。しかしながら、首都圏の移転と、こうなりますというと、かなり国民的な世論というものも十分私たちは考えながらこの問題は進めてまいらなければならないと思いますので、今後さらにこの点は検討させていただきたい、かように考えます。
  257. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がございませんので総理にお聞きしたいのでございますが、私は、やはりこれからの日本の国民生活、特に経済の足を引っ張る第一番目のアキレス腱は国土であると思います。まあ狭い国土でございますが、この日本列島は泣いても笑っても減りもしなければふえもしない、われわれ日本民族の歴史の顔でございます。その国土の利用いかんは、石油よりも何よりも、もっと経済の将来にとって致命的な、死活的な重要性を持つ問題であると私は認識いたします。     〔渋谷委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕 そういう意味で、現在の国土法も、過去のいろいろなやり方に比べれば確かに一歩前進は評価いたします。ただ、いま長官がおっしゃった税制については、私は多分に疑問に思うものであります。いままでの税制で本当に所期したところの効果が上がったかどうかになりますと、私もいささか税制に携わっておりました人間として非常に疑問を持っております。総理にお伺いしたいのは、そういう死活的重要性を持つ国土に対して、現在の政府はもっと果断な国土政策をおとりになる気はないか。  そこで私は一つ申し上げたいのでございますが、首都圏、近畿圏、中部圏等、少なくとも坪三百万以上の土地のある地域について、地価の凍結をすることはいかがでございますか、承りたいと思います。
  258. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 土地の問題と言いますが、これはもう特に地価に問題があるわけなんです。地価に問題がありますのは、まあ日本アルプスだとか富士山だとかそういう奥深い山々ということでなくて、問題は首都圏それから近畿圏それからさらには中部圏、強いて言うとそういう三大密集地帯にある、こういうふうに思うのです。その土地問題をどういうふうに解決するか。まあ国全体としての仕組みをどうするかなんというふうに考えますと、これはいろいろ適用上の問題等もありまして、なかなか手がかりがつかめないと思うのです。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、首都圏、近畿圏、中部圏、この土地をどうするかといういまの大原さんの発想、これは私は妥当な着眼である、そういうふうに思います。  そこで、あれは何年ですか、四十九年ですね、日本の地価は比較的そう大きな動きはなかったのですが、四十八年ごろから動きが始まってきた。これは何とかしなければいかぬというので、四十九年に私、たまたま行政管理庁長官をしておりまして、あなたと同じ発想です、この三大密集地帯、これを目標にした対策はどうだ、こういう考え方のもとに、いろいろ私も勉強して考えたのが国土の利用計画、これが一つ。それからこの利用計画によりまして、いまおっしゃるように三大密集地帯において地価の凍結はできないか、こういうことでございまして、ところがその後事情が変わってきておるのです。つまり、三大密集地帯におきましても、地価の高騰というような現象が非常に静かになってきておる。あの国土利用計画法によりますれば、たとえば首都圏というものをあの法律による指定地域というふうに指定いたしますれば、地価は凍結できるわけなんですから、仕組みができたのですから……。しかし、これを発動するほどの事態がなくなってきた。四十九年のあの当時の地価がウナギ登りの状態というものは全く解消してきたというので、まだ指定が行われておらぬという段階でありまするが、しかし、そういう武器を持っているのですから、これは状況に応じていつでも発動できるという体制であります。ですが、そういう客観情勢がそういうふうになっておりませんので発動しない、こういう状態でいま推移しておる、こういうことでございます。  御指摘のように土地問題、これは経済的側面だけじゃないと思うのです。御指摘のように、社会、人心に及ぼす影響、これは大変なものだというふうに思いますので、今後とも地価の動きということにつきましては厳重に目を見張ってまいりたい、かように考えております。
  259. 大原一三

    ○大原(一)委員 そういう考え方に基づいて、一歩一歩具体的な政策を果断に総理に実行していただきたいと要望いたします。  次に、時間がございませんので資源の問題に入るわけでございますが、やはり資源政策の有無がこれからのわれわれの成長の非常に重大な問題を提起するであろう、私はかように考えるわけでございますが、総理のおっしゃる資源有限時代に即応して、われわれは一体いかなる立場に立って現在の厳しい諸情勢に対応していくべきであるか、それぞれエネルギー政策につきましては各委員の方々から細かい設問がございましたが、私ひとつ、いつの数字でございましたか、昭和四十年から四十八年ペースで日本石油の消費が伸びていき、国民総生産もあのころと同じペースで伸びるといたしますと、四十八年、石油ショック以前でございますが、わが国の世界石油輸出に占める輸入のシェアが、二〇%が今後二十年の間に五〇%に上昇するであろう、それから二十年といいますと、一九九〇年前後になるわけでございますが、あのペースで伸びたら、世界の石油輸出の五割をわれわれが消費しなければならぬ、これは大変なことでございます。五十一年でも、石油並びに石油製品の輸入が総輸入に占めて三六%にも達するという大変な数字でございますが、私は、まさにこれからの石油戦略——石油だけではない、九割以上を外国の資源に依存しなければならない重要原材料等々について、果たしていまのような政策でもって今後われわれに資源の確保が許されるであろうかという問題でございます。  現在、資源ナショナリズムの高まり、つまり資源の怒り、これはいわゆる南北問題にまつわる、いわば資源供給国の低生活水準、アラブにおきましても、わが国の国民所得に比べて一人当たりで八分の一から十分の一、石油はどんどん輸出して、日本経済はその十倍も大きくふくれていくが、お返しがない、その資源の怒りが四十八年のような事態になって爆発したと私は思います。石油のみならず、たとえば鉄、ニッケル、すず、銅、ゴム、マンガン等々、わが国にその見るべき資源のないものについて、OAPECないしOPECの後を追うように、国際鉄同盟、国際銅同盟、国際ラワン同盟が結成されたことはわれわれの記憶に新しいところであります。  そういう意味におきまして、私は総理にお願いがあるのでございますが、資源外交の抜本的な新しい展開を御要望申し上げたいと思います。と申しますことは、いままでの国外資源対策というものが、もちろん民間主導型で行われたわけでございますが、その結果、いわゆる黄禍論あるいはエコノミックアニマルというような批判を受けることに相なりました。私は、やはり資源の前にもう少し開発途上国に対して親切な外交政策があってよろしいのではないかということを考えるわけでございます。  たとえば、現在われわれに資源を提供するところの開発途上国に対しまして、政府主導型の援助体系の整備が必要であろうと思います。それにつきましては、いわばその国の特殊事情に応じたコンサルティングを、開発体系を、政府の費用によって、政府の力によってコンサルティングを行い、開発体系の整備をお手伝いを申し上げるということができないか。私は、現在の日本政府の国際協力度合いというものは大変低くて残念でございますが、そういう意味において、低開発国におきまして、去年地球の上で餓死した人が二千百万人、大変な数でございます。餓死寸前と申し上げると大変失礼でございますが、国連統計で年間所得五十ドル、といいますと一万五千円でございますが、以下の人口が約五億に近いと言われるわけでございます。これらの人が求めるものは、鉄でもなければ石油でもございません。第一次的には食糧であります。その次が衣料、その次が住宅、その次が道路、その次が通信であろうかと思います。そういう国民生活の基礎的部門にかかわる開発体系を、まずもって、資源で大変お世話になる国に対しましては政府の力で援助体系をつくるような外交の展開が必要であると思いますが、総理のこの点についての御感懐を承ります。
  260. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の今後の社会を運営していく上におきまして、資源エネルギー、これはもう片時も忘れることができない問題であります。その基本といたしまして、資源を順調に入手し得るための外交、これはもとより大事なことでありますので、また御協力を得まして、逐次というか、急速に充実していきたい、かように考えます。
  261. 大原一三

    ○大原(一)委員 外務大臣、いま申し上げた点について承りたいと思います。
  262. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いま大原さんは、資源外交、また援助の問題に触れられたわけでございます。今日の国際経済問題の中で、一つは、資源国と申しましても、いわゆる産油国は比較的外貨の累積があるとかいうので、わりかた裕福な面があります。いま一番困っているのは、油を産出しない国国であろうかと思うのでございます。いま、いわゆる累積債務の問題というのが、一説に千五百億ドルあるいは二千億ドルに近づくのではないか、このようなことが言われておりまして、資源外交も大事でございますが、援助の問題も、そういったことを考えますと、大変むずかしい問題を含んでおります。この開発途上国の問題にいかに対処するかということは、今日、CIEC、国際経済協力会議という会議が近々結論を出さなければならない段階になっておりますけれども、たとえば累積債務が余りにも膨大である、こういったものにいかに対処するかということが、私ども先進工業国と言われるグループの大きな責任であろうかと思うわけでございます。これらの大変むずかしい問題に対しまして、日本としてどう対処したらいいかというのが、いま最大の問題であろうかと思います。こういった点につきまして、日本が世界に対して果たすべき責任をいかにして果たしていくかということにつきまして鋭意努力してまいりたい、こう思っておる次第であります。
  263. 大原一三

    ○大原(一)委員 鋭意努力をしていただきたいのでありますが、現在のDAC十七カ国の目標〇・七%、対GNP政府援助がことしの予算で〇・二八%、DAC諸国の平均〇・三六%にも及ばない。重要資源を世界に類例のないほど多消費の経済を営みながら、DACの平均水準にも到達しないということは、大変残念であります。どうか総理ひとつこの辺も、来年の予算の話をすると鬼が笑うかもしれませんが、大いに御反省いただきまして、少なくともDACの平均水準までは国際協力政府援助の額を増額していただきたいと思います。  そこで、一つ提言があるのでございますが、GNPの一%を経済協力として先進国は目標にしておるわけでございますが、こういう考え方はいかがでございましょうか。まず、石油だけではございませんが、各種重要資源につきまして日本の企業がその資源国に行って開発をやります場合、まあ開発が失敗した例は別といたしまして、成功した場合に、その開発に当たった会社に対して投資額の一定割合、これは低いもので結構でございますが、を政府に無償で提供させ、政府はそれを原資として、先ほど申しましたような政府主導型の開発国援助にその資金を回すことはできないかどうか、その点をお伺いいたします。
  264. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御意見はまことに興味のある御意見とは存じますが、結局開発が成功した企業からパーセンテージで取るということはタックスと同じような意味を持つのだろう、こう思うのでありますけれども、それがさらに次の段階において拡大されて、コンサルティングだとかあるいは大きなプロジェクトの原資に充てよう、こういう御意見だろうと拝察いたします。御高見に対しましては、興味のある御意見として承っておきます。
  265. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がだんだん迫ってまいりまして、申し上げたいことがいっぱいあるのでありますが、次に国内備蓄体制、六十日を九十日に五十四年度までにする。一兆五千億円。もとより先進国に見習い、平均百二十日ぐらいのベースまで備蓄しなければならないということは、日本の資源状況から当然のことであります。これ自体には反対はないわけでございますけれども、私はこの備蓄によって当面を何とかしのいでいこうという政策は限界があると思います。  これも大変唐突な考え方かもしれませんが、専売公社の塩の管理がございます。専売公社の塩というのはどうなっているかといいますと、これは輸入業者が専売公社へ行って許可をもらって、何万トン買っても紙切れ一枚、一枚十五円か二十円で許可をいただいて輸入するわけでございます。その輸入の細目は、輸入国とトン当たりの値段と、それから輸入を取り扱う商社名、今年度幾ら在庫が残りますかまで書いてある。塩が地球の上になくなれば別でございますけれども、いまのような状態では全く自由輸入が認められておる。九百万トンのうち八百万トンは工業塩、国内塩が百万トンというのが今日の塩の需給実態でございますが、ただ、一たん緩急あれば政府が買い出動に行って、政府が精製を命じて、政府が配給することができるという仕組みに専売制度でなっておるわけでございます。  私は、現在たくさんあり余るところの塩について、大変御丁寧な制度が温存されておると思います。それよりも、九割以上外国に依存する資源について、政府は同じような手法を、同じような仕組みを用意されておく覚悟はございませんか。これからわれわれは、石油のみならず、九〇%も輸入して、その資源がパニックになって入らないというときに、一たん緩急あったら、普通の場合は自由で結構でございますけれども、もしそういう事態があった場合には、専売公社の塩の先例があるわけでございますが、そういう手法をあらかじめ用意しておくことはいかがでございましょうか。どなたにお聞きしたらよろしゅうございますか。
  266. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御意見の根本は、液体燃料と申しますか、エネルギー源であります石油その他の莫大な資源に対しまする原資を何に求めたらよろしいか、こういう御意見だろうと存じます。その原資を専売の塩のごとき政府収入の財源としていたすかどうか、これも先ほどのお話同様に、われわれといたしましても膨大なエネルギーの原資を必要とするときでございます。御意見を拝聴いたしまして、われわれもまた、いろいろと財政法その他の根本問題にも触れるものでございますので、十分に研究さしていただきます。
  267. 大原一三

    ○大原(一)委員 大臣、財政法なんか関係ありません。これは各業法において通産省で御検討なさればそうむずかしい問題はないわけでありますが、多少唐突に感じられてさようなお答えになったかと思います。あの狂乱物価のときに、アメリカでサムエルソン教授が、現在の狂乱物価の危機はメイド・イン・アラブじゃなくてメイド・イン・ワシントンであると言いました。ちょうどそれを現在反省しながら、同じような言葉をかりれば、あの狂乱物価はメイド・イン・アラブじゃなくてメイド・イン・トウキョウではなかったかと思うのでございます。そういう意味において、われわれは将来の石油パニックを回避するために国内的な安定供給の手法がないことはありませんということを申し上げたつもりでございます。  時間がございませんので、次に農業問題に移ります。  農林省でおつくりになりました自給率でございますが、私はオリジナルカロリー計算を欲しかったのでございますが、残念ながら最近は計算していらっしゃらない。穀物自給率の数字を見ますと、三十五年が八三%、四十七年が四二%、六十年が三七%と、これは大変な減りようでございます。私は、ほかの食糧はともかくといたしまして、仮にわれわれの食糧の自給率が四〇%を割るというようなことになりましたら、これはゆゆしき問題だと思います。と申しますことは、先ほども申しましたように、地球の上で餓死をしている人が現におる。寸前の人もたくさんおられる。そして、ある統計によれば、三十年たつかたたぬかのうちに地球の人口が倍になると書いてございます。そういう諸条件を近い将来に予測するときに、いまと同じ値段でわれわれに食糧が提供されるという保証はございません。恐らくそのころは石油よりも高い食糧を買わなければならぬ国になるかもしれない。現在、総輸入額に占める食糧の輸入割合は二割、最近ちょっと下がりまして一六%ぐらいの水準にあるわけでございますが、そういうような人口過剰、食糧の危機的状況がもし仮にやってきたときに、食糧の輸入が輸入額の五割も六割も占めるようになったら、私はこれは日本経済としては縮小再生産、鉄も要りません、ニッケルも要りません、すずも要りません、ゴムも銅も要りません、食べる物だけくださいという経済の仕組みに落ち込んでいくのではないかと思います。そういう意味で、食糧の自給率はどんなことがあっても、穀物自給率でも結構でございますが、今後二十年、三十年の間に六割から七割の水準に絶対に引き上げなければならぬというのが、国家百年の大計のためにも必要だと考えます。  ところが、農業基本法が制定されてから十六年、十七年でございますか、食糧の自給率は確実に下がっておる。そして専業農家も三分の一に減っておる。第一種兼業にしても二分の一に減っておる。日本の農村にまさに希望がない。荒廃という言葉があるなら、まさに日本の農村に的中する言葉ではないかと私は思います。私のうちもたばこをつくり、畜産をやっておるのでございますが、とにかく未来に希望を持てない。こういうことでは、私は日本経済没落の第一のアキレス腱が農政ではないかと考えるわけでございますが、総理大臣いかがでございますか。
  268. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は農業問題というのを実は非常に心配もし、重要視しておるのです。しかし、これからの日本農業というものは、私は、大原さんが見通すような暗いものじゃないと思います。私は、農業というものがわが国社会の中で再び見直される時期に来ておる。高度成長社会ではどうしたって工業中心ですから、工業は大変な伸びを示すけれども、農業の方はとてもそう伸びない。そこに農民と工業並びにそれの周辺に働く人たちとの間に大変な格差が出てくる。そこで、農村の人口がどんどんどんどん都市へ都市へと流出をする、そういうことになり、人手不足というようなことにもなり、したがって、自給率なんかもずっと下がってきた、こういう状態になりましたが、先ほどから御指摘がありますように、これからの人口、また出生率、そういうものから考えますと、食糧の世界的な立場というものが非常に重大になってくる。同時に、わが国におきましては、今度は均衡ある成長政策ですから、農業も工業も肩を並べてと、こういうような時代になってくるわけですから、私は、農村に帰れ、こういうような動きさえ始まってくるのじゃないかとも思うのでありますが、私は、これからの日本農業というものはそう暗いものじゃない、適正に農業政策が運営されれば、農業というものは非常に大きく見直される時期に来ておる、明るい展望を持っています。
  269. 大原一三

    ○大原(一)委員 農村と都市の所得の格差のお話が出たのでございますが、現在のような格差が開いておれば、結局農村にとどまる青年がいなくなる。したがって、死活の問題でございます食糧の自給率は上がらない。  そこで、私は、時間がございませんので、二つ提案があるわけであります。  その第一番目は、生産費所得補償方式を、少なくとも農林省が現在関与されている農林物資、農産物につきまして御採用になる気はないか。というよりも、採用しなければならぬと思うわけございます。現在、生産費所得補償方式が曲がりなりにも採用されておりますのは、葉たばことお米でございます。葉たばこにつきましては、十アール当たりの労働時間が四百二十時間強でございますが、そのうちの二百四、五十時間が五百人以下の労働賃金に評価がえされております。これでも半分ですね。お米の場合は七、八十時間でございますが、千人から五人までの企業の労働賃金に評価がえされておる。ところが、政府関与物資と申しますと、小麦、大豆、なたね、カンショ、バレイショでん粉、サトウキビ、これはパリティでございまして、所得の補償は何ら補償されて——何らと言ったら大変恐縮でございますが、所得補償方式は体系的に導入されていないわけでございます。それから、安定帯価格が加工原料乳と豚と牛肉と繭でございますが、そういう仕組みを、まだ不十分であるが、少なくとも米とタバコの例に準じて所得補償方式を導入してほしいということが第一点でございます。  時間がございませんので、第二点の質問はちょっとややこしいのでございますが、現在の農地法ではとても現在の農業危機を克服できない。農村に農地法なし、私は、農地法なんかやめてしまって、新たに農地集中化法案をおつくりになっていただきたい。これはどういうことかといいますと、農村の設備投資は機械ではございません。農村の所得をこれ以上上げるためには、第一種兼業ないしは専業農家に荒廃農地を集約化していく以外に方法はないと思います。それがためにはお金がかかるわけでございます。そのお金は、いまのやり方でいくとなかなか農林省には稔出ができない、できないが、ことしも食管会計の赤字が八百億ですか、解消されております。現在の食管会計の赤字の解消分を利子補給原資としてそれを、それに見合う元本をおつくりになること、現在八千億ありますから、金利八分とすれば十兆円のお金がここにできるわけでございます。いずれ将来は食管会計の赤字を解消なさるのでしょうから、それを農林省の既得権とされて農地集約化のための原資にお使いください、そして三十年年賦、場合によったら金利ただ、十年据え置きで、先ほどの精農家に農地を集約化する手だてを農地法にかわってしなければ、これは農村に若い青年がとまらない。農地はよだれが出るほど欲しいけれども取得できないという現在の状況は直らないと思います。  私は、日本にゴルフ場が約千五百あるそうでございますけれども、横浜の港をきょう締め切って、そしてゴルフ場を芋畑にしたら、二十九年の食糧水準に落ちるという計算を農林省のどなたかされたのを見たことがございます。これは芋畑にしてですよ。二十九年といえば千九百カロリーでございます。現在は日本は飽食宣伝よろしく、三千カロリー食っておるそうでございますけれども、そのゴルフ場に数兆円の金をかけられる経済であれば、食管会計の赤字を利子補給原資にして十兆円の金でこれくらいのことをやらなければ、将来の食糧自給率の拡大は絶対にできないと思いますが、いかがでございますか。  もう一つ国有林野でございますが、現在日本の林地の約三分の一を占めております。これが大変な赤字でございます。去年に比べてことしは赤字が倍増、四百億が八百二十億、こんなりっぱな財産を持ちながら、現在の国有林野特別会計では黒字経営ができないわけなんです。私はこの林地を精農林業農家へ払い下げられたらいいと思う。そうして、この人たちに任せれば自分の土地、自分の農地でございますので、必ずや林野庁と違った採算のとれる経営の仕組みができるのではないかと思います。国有林野の林地財産は、全然これは長い間払い下げが行われていないわけでございますが、これも先ほどの原資でもって勤勉な林家に集約化していく、払い下げていくという仕組みをつくられたらいかがでございましょうか。  以上、三点について大変大きな問題でございますが、お答え願いたい。
  270. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 三つの問題につきまして、きわめてドラスチックな御提案が大原さんからあったわけでございます。  一つは、農業の価格政策。すべての農産物について生産費所得補償方式をとったらどうか、こういう御提案でございます。この点につきましては、御承知のようにそれぞれの作目につきまして価格を決めております。御指摘のように、米等につきましては生産費所得補償方式をとっておりますし、麦等につきましてはパリティ方式をとっておるわけでございます。また、肉類等につきましては、畜産事業団等で安定帯価格というものをつくりまして価格の維持安定を図っていく、こういうことでその対象の作目等によりまして価格をいろいろの方式でやっております。  ただ、私どもは、生産農漁民の所得の向上、生活の安定を図るということが一つ、それから総合的な食糧の自給率を高めていく、こういうような観点に立ちまして、現在の価格政策をもう一遍見直す必要があるということでは大原さんのお考えと一致するものがございまして、農林省の中に価格政策検討委員会というものをつくりまして、せっかくただいま検討中でございます。  それは価格だけでなしに、生産奨励のための助成等もいたしております。また土地改良その他、基盤整備等構造政策もとっておるわけでございます。そういう点を総合的に勘案をいたしまして、どの作目を選んでも、生産農民の所得がおおむね平準化する、そういう方向で総合農政が円滑にできるように誘導してまいりたい、このように考えておるわけでございます。  第二の点は、農地の集約化を進めるために農地集約化法案というようなものを出したらどうだ、こういう御提案であるわけでございますが、いま農地が細分化されておりまして、高度の土地利用が、有効利用がなされていないという面があることは御指摘のとおりでございます。しかし、農民の農地に対する、これを非常に大事にする、手放したくないという感情も、これも強いわけでございまして、そういう意味合いからいたしまして、現在の農地法の適正な運用によりまして、細分化されております農地を農協等の生産組織、生産体制を整備をして、共同耕作をするとかあるいは賃貸借をしてそれを経営をするとか、いろいろな方法によりまして現実的にこれを処理して、農地全体の生産効率を高めるように対処してまいりたい、このように考えております。  第三の点は国有林野の問題でございますが、この林業は木材の生産を確保するという機能のほかに、国土の保全あるいは水資源の涵養、確保、いろいろなそういう公益的な機能も持っておるわけでございまして、そういうような観点に立ちまして、現在の国有林制度というものを、私は、これを全部解体をして民間に開放するということは、現段階考えておりません。国有林野の運営、経営の改善等を図りますと同時に、この公益性というものを十分私ども認識をして、国有林野の涵養、保全に努力をしていきたい、このように考えております。
  271. 大原一三

    ○大原(一)委員 私の満足とする御答弁が得られないのは残念でありますが、どうか農林大臣、前向きで、私の言ったところと同じでなくとも結構でございますので、この面については御検討並びに前進を要望いたします。  私、時間がなくなりましたが、あと一つ企画庁長官に承りたいのですが、新物価体系論というのが私はわからないわけであります。と申しますことは、農業の話に関連して申し上げるわけでございますが、かの狂乱物価のときに大企業の卸売物価が直ちに三割上がりました。そのときの春闘ベースも三割でございます。石油が上がったから物価は上がる、賃金も上げなければとても生活ができないということで、大企業と非常に恵まれたエリートの労働者集団、それはいきなり三割上げました。だからアラブの直撃は完全にこの人たちは回避できたわけでございますが、そうでない、五千四百万の中の四千四、五百万の働く人々の、中小企業、農業、林業、水産業の部門の人々には、まさにアラブの王様の直撃弾がいきなり来たわけでございます。本当に新物価体系ないしは国民春闘という言葉があるならば、農家の人の作物も全部一、二の三で三割上げるべきであったと思うのであります。ところが、よく考えてみますと、みんな上げたということはみんな上げなかったと同じですね。差し引き三割一万円札を減らせばもとに返るわけでございますが、私は、新物価体系なるものがいかなる意味を持つのか、その辺わからないのでございますが、お教え願いたいと思います。と申しますことは、強いもの勝ちの物価体系ではないかということを承っておるわけでございます。いかがでございますか。
  272. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  新価格体系という言葉の意味がなかなかむずかしいわけでありますけれども、恐らく四十八年の十月、石油の価格が四倍になった、このコストの増加のためにこれを製品価格に転嫁していく、そういうことの過程が新価格体系ではないかと思うわけでありますが、これらのコストの増加は、それぞれの需給関係と照らし合わせましてそれぞれの部門において転嫁されてきたと思っております。これは需給状況と見合って行われてきたと考えておるわけでございます。ただ一つ、公共料金の部門におきましては、狂乱物価に対する対策として非常に低く抑えられておりますので、現在その部門における調整が行われておる、そう心得ております。
  273. 大原一三

    ○大原(一)委員 私の知りたいところにはお答えにならないのでありますが、時間がございませんので次の最後のいわゆる企業問題に入りたいと思うのでございます。  企業問題、私は、企業にも病ありと申し上げたいのでございます。いままで申し上げました国土、資源、食糧問題にいわば前がん症状とも申すべきわだかまりがある、それを現在の政府が果たして解決できるであろうかという疑問があるわけでございますが、企業についても同じことが言えるわけでございます。  その第一点は、企業の借入金が、借り入れ資本が八七、八%、自己資本比率がわずかに一三%ということでございます。これはどうしてこうなったかと言いますと、どう考えましても、日本の資本市場の未発達が禍因になっていると思います。いわゆる間接金融偏重、直接金融市場の未熟、それがこういう形になって企業にも大きな影響、ひずみを残しておると思います。やはり経営基盤の脆弱、不況になると倒産が多いということを考えますと、どうしても企業の自己資本を充実していかなければならないということでございますが、いま申し上げましたように、資本市場、特に証券市場の未発達、これに対しまして大蔵大臣、抜本的な処方せんがあるでございましょうか。お答え願いたいと思います。
  274. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  御指摘のとおり、日本の企業は自己資本がまことに低位にございまして、これは日本の企業のまさに構造上の一つの弱点だろうと私も思います。だから、どうしてもこれを是正をしていかなければならないということでございますが、まず第一には、企業自体がこの問題について真剣に取り組んでもらうということが大事なことでございますけれども、しかし、今日までここまで来たこの状態を、企業自体の力でもってこの弱点を是正していくというのもとうてい私はできることではないと思います。さような意味から、何としてでもまず企業の自己蓄積力というものを強化してもらうということは大事なことでありますけれども、資本市場を通じて増資の促進を図ることも有効な方策の一つでありまして、資本市場の育成が必要であることについてのいまのお説は私も全く同感でございます。このような観点から、資本市場政策の立場から転換社債といったようなものの普及、それを資本市場を通じて資金調達の手段として普及させていくというようなことなどに努めてまいりたいと私は思いますが、今後も私はそういう方向に努力をしてまいりたい、かように考えております。
  275. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、この資本市場の未熟さが個人の家計の蓄積にも大きな影を落としておると思うものです。と申しますことは、個人の金融資産に占める有価証券の割合というのは先進国に比べて非常に低いわけでございます。わが国の場合、預貯金が六割で有価証券は一六%、アメリカは有価証券が四二%、イギリスが三〇%という数字になっております。で、巷間われわれよく預貯金の目減りという議論をするわけでございますが、六分五厘に対して、物価が一割上がったから三分五厘損をしました、三十年たったら百万円がただになる、何とかしてくださいとおっしゃいますが、やはり証券市場があれば、それがインフレヘッジになって家計の防衛にも役立つのではないかと思うのです。ところがそれがないために、ストレートに預貯金にいって損しましたとおっしゃるわけでございますが、いわゆる企業の含み益というものは証券市場において株価に化体されるわけでございます。その含み益は、どっちかと言いますと、経済計算からいけば預貯金の目減り分があるいは企業の土地になり機械になって含み益が実現されているわけですから、大衆のロスがこっちのキャピタルゲインになってあらわれているわけなんです。それを大衆にはね返す仕組みというのは証券市場しかないのです。百万円で土地を買うわけにもいかぬ、株も買う力を持たない、技術もない。それを証券会社という機関投資家が零細貯蓄者にかわってその含み益を預貯金者に還元できる仕組み、私はそれは投資信託だと思うのですよ。ところが、日本の投資信託というものはまことに貧弱でございまして伸びない。これはやはり証券会社の責任が相当あったと思うのでございますが、そういう意味で、日本の資本市場の貧弱さが個人家計にも、さらに企業にもしわを落としているということ、これは一朝一夕では直りません。私も大蔵省におりますときに証券市場の育成ということで配当軽課措置を入れなされ、いわゆる株式配当は益金不算入にせよ、さらにまた受け取る配当の税額控除等々、諸般の政策が行われたにかかわらず、着実に企業の自己資本蓄積割合は減るばっかりでありまして、ことしも落ちているのです。こういう状況では私はいけないと思います。せっかくりっぱな大蔵大臣が来られたのですから、証券市場の育成には思い切った馬力をかけていただきたいと思います。  以上、私は大体、現在の日本経済にわだかまる四つのひずみについて申し上げたわけでございます。これはいま一朝一夕でできる問題ではございません。そのときの政府がすぐおかわりになるからいけないのですよ。できることなら福田総理に三十年間総理大臣をやっていただいて、三十カ年長期計画をおつくりいただいて、食糧庁は食糧省にしていただいて三十カ年食糧需給計画をおつくりになっていただかぬと、その都度限りのびほう策でいったら、これから先三十年後の日本が思いやられるわけでございます。そういう意味で三十年間、それもいままで自由だ自由だといってきたそのひずみがこういう形であらわれたのだ、もう一度われわれは自由の原点に帰って、できるだけ多くの人に豊かさと自由を取り返す必要があるのではないかと思うのです。それが、われわれが考えるところの新自由主義でございます。これは答えをいただきたいのでありますが、どうも時間がなくなりました。  私は、地方財政の問題も、たとえば地方自治団体の貧富の差に応じて補助率を変えるべきだという議論を持つものであります。貧富の差に応じて補助率を変える。何でもかんでも三分の一、三分の一ではだめであります。やはり補助率を貧富の差に応じて変えていかなければならぬ、そこまできめの細かい財政政策をやってほしいと思うのです。いや、それは地方交付税率で見てあれしますとおっしゃるならば、その結果、国家公務員に対する賃金の一二〇%のところがあれば八割のところもある。でこぼこになっておるのですから、その議論は成り立たないわけであります。その賃金ベースをむしろ補助率の削減ないしはプラスの指標にされたらいいと思う。そこまで私は申し上げたかったのでありますが、地方財政につきまして関連質問がございますので、川合委員とかわります。
  276. 坪川信三

    坪川委員長 川合武君より関連質疑の申し出があります。大原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。川合武君。
  277. 川合武

    川合委員 関連して、地方財政について質疑をいたします。  先日、西岡委員が質疑をいたしまして、国と地方との責任分野を明確にして相伴って財源も分配すべきである、国庫補助金制度はそれと裏表の関係にある、こういう趣旨を述べまして、総理も同感の意を表されたと思うのですが、そこで大蔵大臣にお伺いいたしたい。  私たちは国庫補助金は原則として廃止すべきだ、こういう考え方でございます。しかしいまの段階では、ワンステップとしてさしあたり同じ目的の、また類似した国庫補助金はもう統合して、その範囲内では地方団体が自分の判断で効率的に使えるようにすべきじゃないか、こういう考えでございます。ところが、五十二年度予算案を見ましても旧態依然でございます。私が抜き出しました例、同一目的、類似目的の国庫補助金の表でございます。時間の関係で表をつくってまいりました。一つだけ地方コロニーの例で申し上げますけれども、各県が実施いたしておりますところの地方コロニーこれは申し上げるまでもなく、社会福祉施設を総合した施設、手近な例を申し上げますならば、炊事場だとかあるいは洗たく場、共用すべきものは共用してということで総合した施設、地方コロニーの特色はその総合にあるはずでございます。しかるに、そこにあらわれた実態、姿というものは、私の調べたところでは、補助対象を一つにしてもいいというのは十の中二つございますけれども、あと八つは縦割り行政で、ばらばらの補助の仕方であり、補助基準も別々だ。大蔵大臣、こういうことでいいのでございましょうか、お考えを伺います。
  278. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  国庫補助金は社会保障、教育、農政、公共事業等各般にわたる国の特定の行政施策を実現するための手段でありまして、この意味から、極端な統合は補助金制度の存在意義そのものを少し否定するというようなことでございますので——極端な統合ですよ、これは私は早急に賛成はいたしかねますけれども、しかしながら、政府は補助制度の効率化及び事務の簡素化を図る見地から、必要に応じ、従来から補助金の統合、メニュー化を進めておりまして、五十二年度予算編成に当たりましては百三十件についてこれを見直して、そしてその百三十件を六十一件に縮めてまいったというようなことでございまして、今後も私はやはりこういったような方向に向かって改善をしていくべきものだと思っております。
  279. 川合武

    川合委員 大蔵大臣と私どもの認識は多少違います。私どもは、国庫補助金は原則として——無論原則ではございましょうが、しかしできるだけこれは廃止して、そして国と地方との事務配分をはっきりし、責任分野を明確にし、伴って財源の再分配をすべきじゃないか、そういう見地から、国庫補助金につきましては原則としてこれを廃止する方向だ、こう思います。しかし、私といえどもいま直ちにそれが実現できるとは率直なところ思わない。けれども、整理統合、これはしなければならない。いま大蔵大臣はやっておるとおっしゃいましたけれども、私がそこに示した表のごとくまだ多くのものは残っておる。こんなものは、総理、やろうと思えばできるのじゃございませんでしょうか。どこに分けておく必要があるか、細分しておく必要があるか。行政簡素化というお言葉がちょっと出ましたけれども、それにむしろ反対じゃないのか。複雑多岐なるいまの行政機構を温存する手段として、省、局、課、係、ここまで分けてそれぞれに一つずつ補助金をつける。行政簡素化に逆行する、むしろいまの複雑多岐なる行政機構を温存する手段として補助金があるのじゃないか、こんなふうにも私は思います。  しかも御承知のように、補助金の交付と獲得のためには国も地方も大変な経費を費やします。補助金額の一割か二割は諸掛かりに食われてしまう、こういうふうにも言われております。類似しているもの、同一の目的のもの、こういう補助金についてはもっとずばりと統合すべきだ、かように考えます。重ねて大蔵大臣のお考えを伺います。
  280. 坊秀男

    ○坊国務大臣 最初前提となさっていらっしゃる、補助金はもう廃止すべきものだということについても、私は非常に傾聴に値するお言葉だと思います。で、そういったことにつきましても、これは真剣に考えていかなければなりませんけれども、早急にこれを廃止してしまうということは、川合さんもこれを主張なすっていらっしゃるのじゃないように私は受けとめさしていただいておりますが、補助金のことについてちょっと申し上げますと、五十二年度の予算でいきますと九兆近くの金額があるのじゃないか、そういうような大変な金額の中で、大体八兆ですかね——八兆、それが社会保障だとかあるいは学校だとか、あるいは公共土木だとか農林だ、中小企業だといったようなものに出ておりますので、そう簡単にはこれは廃止はできませんけれども、いまのお話によりまするいろいろな縦割りで複雑にいっておるということは、これは私も、大変効率を阻害しておりますし、できるだけそういった方向にこれを研究して実現をしてまいりたい、かように考えております。
  281. 川合武

    川合委員 次いで地方債のことにつきまして、これは総理にお伺いいたしたいと思います。  総理は、予算編成に当たって、国と地方は車の両輪だというお言葉をしばしばお使いになりましたですね。ですけれども、できたものを見ますると、私は大きな車の輪と小さな車輪とアンバランスの両輪のような気がしてならないのです。たとえば国債については、予算決定に先立ちまして、金融機関等にその引き受け消化について了解をとられておる。しかし、地方債については、二兆円が地方縁故債、その資金調達も地方任せになっておる。総理は公共事業、あえて言えば不確定要素のある不安定なこの地方債を当てにして、そして公共事業をもくろんで、これで景気刺激をなさろうとしておる。景気刺激の唯一の施策とおっしゃるところの公共投資の実体は地方任せじゃないか、こんなふうに思うわけです。  そこで伺いたいのは、予算編成のときに地方団体は公営企業金融公庫の改組を熱望したわけでございます。御承知のとおりでございます。いつまでも何から何まで銀行銀行と言わないで、新しい工夫をこらして、そして融資対象も公共事業を加えよう、そして地方団体が熱望したこの公営企業公庫の改組、これは行うべきじゃないか、こういうふうに思いますが、総理考えを伺いたいと思います。
  282. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まさに国と地方団体は、これは車の両輪ですから、両々相立つようにしなければならぬ、こういうことでございます。  そこで、公営公庫の問題でございますが、これも政府部内においてつぶさに検討したのですが、地方団体、それを受けて自治省で公営公庫の改組、これを提案をする。しかし、大体提案の結果どういうメリットが出てくるか、こういうそのメリットにつきましては、これを十分充足をするという形で始末をしたわけでございますが、この問題はさらに今後検討課題にする、こういうふうに考えております。
  283. 坪川信三

    坪川委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  284. 坪川信三

    坪川委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが理事会において協議いたしました結果、公述人は、  全国中小企業団体中央会副会長稲川宮雄君  東洋大学教授御園生等君  日本大学教授名東孝二君  株式会社三菱総合研究所専務取締役牧野昇君  税制経営研究所所長谷山治雄君  大阪大学名誉教授木下和夫君  日本証券業協会会長渡辺省吾君  岐阜県中小企業団体中央会常任理事渡辺嘉藏君  慶應義塾大学経済部長大熊一郎君  立教大学教授和田八束君  全日本労働総同盟書記長前川一男君  京都大学教授森口親司君 以上十二名と決定いたしました。  なお、公聴会は来る二月二十一日、二十二日の両日開会いたします。     —————————————
  285. 坪川信三

    坪川委員長 次に、お諮りいたします。  理事会の決定に基づき、昭和五十二年度総予算審査中、参考人として日本銀行及び特別会計予算総則第十六条に掲げる公団、事業団等の出席を求め意見を聴取する必要が生じました場合の取り扱いにつきましては、その都度、理事会において協議の上、委員長に御一任願うことといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  286. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十二分散会