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1977-02-12 第80回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月十二日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       愛野興一郎君    伊東 正義君      稲村佐近四郎君    宇野  亨君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    北川 石松君       木野 晴夫君    鯨岡 兵輔君       始関 伊平君    島村 宜伸君       白浜 仁吉君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    堀之内久男君       松澤 雄藏君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    井上 普方君       石野 久男君    大出  俊君       北山 愛郎君    小林  進君       佐野 憲治君    多賀谷真稔君       日野 市朗君    藤田 高敏君       武藤 山治君    浅井 美幸君       鳥居 一雄君    広沢 直樹君       二見 伸明君    正木 良明君       大内 啓伍君    河村  勝君       柴田 睦夫君    寺前  巖君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     沢田  悌君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁長官官房         会計課長    松本  弘君         国土庁土地局長 松本 作衛君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 犬丸  直君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         林野庁長官   藍原 義邦君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石炭部長   島田 春樹君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省港湾局長 大久保喜市君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省河川局長 栂野 康行君         建設省道路局長 浅井新一郎君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  堯君         自治省税務局長 森岡  敞君         消防庁長官   林  忠雄君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 森永貞一郎君         参  考  人        (日本住宅公団総         裁)      南部 哲也君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十二日  辞任       補欠選任   足立 篤郎君   愛野興一郎君   稻葉  修君   堀之内久男君   川崎 秀二君   鯨岡 兵輔君   笹山茂太郎君   宇野  亨君   藤井 勝志君   北川 石松君   松野 頼三君   島村 宜伸君   藤田 高敏君   日野 市朗君   武藤 山治君   北山 愛郎君   坂井 弘一君   鳥居 一雄君   矢野 絢也君   正木 良明君   工藤  晃君   柴田 睦夫君 同日  辞任       補欠選任   愛野興一郎君   足立 篤郎君   宇野  亨君   笹山茂太郎君   北川 石松君   藤井 勝志君   鯨岡 兵輔君   川崎 秀二君   島村 宜伸君   松野 頼三君   堀之内久男君   稻葉  修君   北山 愛郎君   武藤 山治君   日野 市朗君   藤田 高敏君   鳥居 一雄君   坂井 弘一君   正木 良明君   矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。  武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 福田総理大臣誕生以来まだ日が浅うございますから、評価をしたり点数をつけるのはまだむずかしいだろうと思います。野球ならまだ二回の表ぐらいのところですから、お互いまだ点の入らぬという状態だろうと思います。しかし、国民福田内閣にいろいろな期待も寄せておりますし、福田さんのかつての手腕、力量から見て、日本経済名医として誤らないことを国民は望んでいると思うのであります。  福田さんの施政方針演説やその後の政治姿勢は、協調連帯、こういう言葉を何度も使っておりますが、一体その協調連帯というのは行動原理行動規範とも言うべきものなのか。そのもの自体目的ではないと思うのであります。ですから、私は協調連帯という行動規範行動原理が示されたものなりと受け取っております。そういう受け取り方でよろしゅうございますか。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さような受け取り方で結構でございます。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 だといたしますと、福田内閣総理大臣期待をする目的目標ですね。個人社会国家、そういうものの目標というのは一体どういうものを総理大臣として望んでいるのか。そういう一つの像、個人の進むべき目標はこうなんだ、福田内閣期待するのはこういうものですよ、それをわかりやすく個人社会国家に分けて総理の見解を聞かせてください。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、人間はみんな生まれながらに素質が違うと思うのです。その素質を与えられたがままに最も高度に発揮される、そしてその発揮された一人一人の人間調和のとれた姿で共同生活を営んでいく、そういう社会が望ましいのだというふうに考えます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、私が聞いているのは、社会だけではなくて、人間個人として、日本人としてこういう目標が好ましいのだ、と。社会としては、いまあなたがおっしゃるような、個々人が自分の特性、個性を生かしながら、しかもみんなと仲よく調和ある人間、そういうものをまず期待しているのだ、そうあなたはおっしゃる。社会全体はどうなんですか。国家目標は何なのですか。それをもう一回聞きたいのです。     〔委員長退席渋谷委員長代理着席
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、世界じゅうから、日本という社会日本という国はすばらしい社会である、国である、また、日本人という人は尊敬に値される日本人だ、こういうふうに評価されるような日本国民日本国を育て上げていきたい、こういうふうに考えます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 なぜ私がこんな質問をするかと申しますと、協調連帯という哲学あるいは概念は、同一のベースの上で同一立場にある人に対してはなるほどと共感を感ずる。しかし封建諸候と農民、地主と小作人、権力ある者とない庶民大衆、そういう者との間で協調連帯というのは一体どういうことなのか。権力者都合がいいように、諸君は協調をしなさい、連帯感を持ちなさいという響きに聞こえる。で、私が個人目標は何か、社会目標は何かと伺っているのはそういう意味で、どうも福田さんの都合のいい、総理に、政府に協力をせいという連帯協調であってはならぬのだ。したがってもっと平等、公平、そういう土台の上に立ってこそ、人間的な愛が、情けが、人の助け合いというものが生まれてくるのですね。だから、福田さんの協調連帯には行動規範はあっても中身がない、それを私は指摘したいのであります。  その中身をきょうはじっくり聞きたかったのでありますが、まあそれぞれの資質が伸ばせるような調和ある人間をつくることだ、そこまで一応聞きましたから、この論争をやっておりますと時間がなくなりますけれども、どうも物足りないですね。私は福田哲学というのはもっと中身があって、行動原理だけではなくて、哲学そのもの国民に示してくれる裏打ちがあって、協調連帯という言葉が出たと思うのですね。  協調連帯というのは元来資本主義自由競争社会には適用できないのですね。資本主義自由経済というのは弱肉強食であり、高利潤の追求であり、そういう中で協調連帯をするというのは一体どういうことなのか。労働者経営者にどういう協調連帯をしようというのか。だから、福田さんが協調連帯という言葉を使うからには、西ドイツのような共同決定法西ドイツ労働組合の代表を監査役に選んで、経営者と対等の立場経営計画、分配、あらゆる問題に参加できる、労働者自身が対等の立場で発言ができる、そういう場所ができているわけですね、共同決定法は。そういう社会ならば協調連帯というのは生きるのですね。  だが日本の、弱肉強食自由経済原理を守るのだと片方で言いながら、協調連帯を言うというのは、どうも支配者都合のいい哲学だと、こういう感じがしてなりませんが、反駁いたしますか。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この地球上の森羅万象はみんな違うのですよ。しかし、美しい地球を実現するためにそれぞれその役割りを持っている。その役割りを持って人間が一人一人違った素質を与えられて生まれてきておるわけですが、その才能をできるだけ伸ばす、そうしてお互いにその伸ばした長所を分かち合う、補い合う、そこでりっぱな社会ができていく、こういうふうに思うのであります。それは全部機械的に平等にするということはできないと思うのです。調和というところが大事である、そういう考えでございます。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 この哲学論争で時間をつぶしてはもったいのうございますが、福田さんが誕生したときに、私もすぐ隣の県ですから大変関心を持っておりました。新聞を見たら、にこにこっと笑って、上州任侠で行くかというような、庶民はこれを見て、任侠という言葉にかなり共感を感じた国民はいますね。なぜかというと、任侠というのは、大前田英五郎にしても佐倉宗五郎にしても国定忠治にしても、強きをくじき弱きを助けている、公平の原理を貫こうとする、悩める者、悲しき者、下積みの者に対して温かい思いやりがある。そこに任侠精神があるわけですよね。福田さんの、上州任侠で行こうかというその任侠中身は何でしょうか。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 強きをくじき弱きを助ける、この一言でございます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 それならば私も同感であります。まだ野球は始まったばかりですから、その評価がどうなされるか、やがて議事録を通じて、産業政策財政金融税制、あらゆる問題にあなたのいまの任侠精神がどの程度実現されるかを見守りたいと思います。  次に、総理大臣施政方針演説の中でも、高度成長期待できないし、すべきでもないと述べておりますね。私もそう思います。減速経済、低成長経済になったのでありますから。だとするならば、減速経済、低成長経済にマッチした、もっと国民の前になるほどとわかるような中期のあらゆる計画を私は出すべきだと思うのですね。金融のあり方について、預金と投資との関係がアンバランスになってきた、これをどうすべきか、いまの赤字財政がどうなるのか、いまの不公平、でこぼこ税制がどうなるのか、産業政策はこれから一体どう見通されていくのか。そして、とどのつまりは個人個人生活、幸福というものが実現をされなければならぬのでありますから、個人生活中期的にはどうなるのか。そういう三年、五年ぐらいのある程度のめどを国民の前に総理大臣が速やかに明らかにする責任があったと私は思うのであります。これが、福田さんがぽこっと突然総理大臣になったなら私はこんな酷な注文はつけないのであります。福田さんは、大蔵省きっての秀才官僚であり、かつて大蔵大臣高橋是清さんの財政演説の原稿を書いたと言われる主計官でもあるとエコノミストは書いている。日本経済名医だ、あるいはファイアマンだ、日本経済を消しとめ、正常なものにする力のある総理大臣だ、こう評価されてきた。しかも四年間も、総理大臣になれるであろうという予告期間があったのです、福田さんには。突然総理大臣になったから何もわかりませんよという言いわけのできないそういう四年間の期間があったはずであります。あなたにもブレーンはあり、あなた自身の構想もあるわけであります。にもかかわらず、国会の冒頭に、金融財政税制産業政策国民生活、これらにわたる中期的な展望を示さないということはまことに残念であります。国民はそれを知りたい。いま人殺し、犯罪、捨て子、毎日三面記事をにぎわしているその一半責任は、世の中が不透明であり、生きがいが感じられない、見通しが立たない、そういうところにも一半の原因があるのであります。だとすれば、不透明な社会をある程度見渡しができるような指針を国民に与えるのが政府責任じゃありませんでしょうか。なぜそういうもろもろの中期計画を今国会に提案できなかったのでありますか。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三木内閣でありましたが、これは五十年代前期五カ年計画というのがあるわけであります。私は、福田内閣になりましてからそれを見直しまして、おおむね妥当である、こういうふうな判断をいたしたわけで、これを基軸として経済政策を運営してまいりたい、こういうふうに考えております。それは去年の五月にもう世に発表してありますので、これをひとつごらんおき願います。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 実は私もこの五十年代前期経済計画をずいぶん詳しく何回も読んでみたのですが、どうもこれは大変ちぐはぐで、しかももうすでに一年で現状に合わない。まだ一年たちませんが、現状に合わない。その一例を見ても、税収一つ見ても、国債発行一つ見ても、ここで示されているとおり行ってない。国債発行だけでもうすでに一兆円もこの計画よりも狂っている。したがって、依然として五十年代前期経済計画福田内閣中期路線として金科玉条にこれを踏襲するのですか。これは改変しないのですか。それをまず伺っておきましょう。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまのところはそれを改変する考えは持っておりません。大体長期的な計画としては妥当なものである、こういうふうに考えております。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 この中期経済計画中身については後刻質問の項目に入れてありますので、この辺でやめておきますが、いずれにいたしましても、福田さんに期待したそういう不透明な世の中を透明にしてくれという国民期待にこたえていないということはまことに残念ですね。これも福田内閣がつくったのではなくて三木内閣当時のやつだ、しかも見通しがまるで狂っちゃっている。そういうもので国民が一体福田内閣期待するでしょうか。やはり三木内閣のときにつくったあの問題は、一年間でこのように国際情勢も変わりつつある、日本財政経済も変わっている。福田さんは、前期三年で石油ショック以後の狂乱物価は完全に片づく。狂乱物価は片づいたけれども、その後の病気がまだ完全に完治してないでしょう。操業低下、倒産、失業、所得の停滞、そういう病気で、まだ、退院はしたけれども、ふらついて歩いている日本じゃないでしょうか。     〔渋谷委員長代理退席委員長着席〕 だとすれば、こういう前期経済計画そのもの福田内閣になったら当然もっと手直しをしてしかるべきだと私は思います。しかし、あなたはやるという気がないと言うのですから、仕方ありません。  第三点は、こんなむずかしい経済でどうにもならぬということは私自身もわかります。スタグフレーションがそんな簡単に解決できるしろものでないということはよくわかります。不況でありながら物価が下がらない。本来、不況で品物が売れないのなら、どんどん物価は下がって安くなっていいはずなんです。失業者がどんどんふえているにもかかわらず、物価は上がる、この現象を福田さんが簡単に処理できるなどと私も思いません。思いませんが、せめてそういうむずかしいスタグフレーションに立ち向かう姿勢、その姿勢哲学総理就任早々明らかになっていない。これが私は残念であります。スタグフレーションをこういう方法で、こうやって解決できる、解決できないとするならば、ここまでしか行けないが、国民の皆さん、協力してくれ、もっとわかりやすくそういうスタグフレーション困難性を率直に表明すべきじゃありませんか。解決できますか。スタグフレーション日本はならぬと約束できますか。現在がスタグフレーションじゃないですか。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 世界じゅうがいま石油ショックの後非常に混乱をしておるのです。その中では、わが日本はとにかく先端を行って回復の道を歩んでおる国である、これは私ははっきり申し上げることができると思うのです。物価は、狂乱状態は完全に克服した、経済活動もともかくプラス六・七%成長、これを展望し得るようになった、国際収支均衡状態になった。これはどこから見ましても日本回復過程にある、こういうことははっきりしていると思うのです。ただ、あれだけのショックの後ですから、後遺症は残っております。しかし、スタグフレーション克服の道程にある、こういうふうに理解されて結構だと思います。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 すぐ諸外国と比較して、日本は三つの均衡回復した、だから成功だと言うけれども、西ドイツアメリカ物価上昇日本では問題にならぬでしょう。西ドイツなどは、日本物価と比較したら、ここ五年間を見たって問題にならぬ低さですよ。西ドイツは、預金金利よりも低い物価上昇ですよ。日本は、預金金利六・七五よりもはるかに高い物価上昇ですよ。だから、国民が不満を持っているのは、そういう預金の目減りをするような物価上昇。一方、百万を超す失業者があふれている。不況はさっぱり解決できない。もう三年続くのですよ、不況が。福田財政というのはデフレ財政の神様だと書物が書いているから、福田さんが総理大臣になるとまた不景気になるんだろう、そういう印象を持っている方が大変おりますが、いまのようなこういう物価問題を一つ見たって、アメリカ西ドイツの倍の物価上昇。決して成功しておるのじゃないですね。しかし、狂乱物価は三〇%も上がったから、それから見れば下がったじゃないかと言うかもしれない。しかし、西ドイツは二〇%も三〇%も上がりましたか。あれも政策手段が失敗したからあんなになったのでしょう、日本は。同じ条件のもとでも、アメリカ西ドイツの場合などは日本よりはるかに物価上昇は低いのであります。ですから日本政府はもっともっとそういう点を努力しなければならぬ。企画庁長官、この経済計画国民生活が将来どうなるかという見通しが九十九ページにありますね。表が出ていますね。国民生活の姿、個人の可処分所得が一人当たり月額幾らと比較してある。昭和五十年度が七万四千百円。それが五十五年度には十四万一千八百円になる、こういう表がありますね。税及び税外負担が、いま二万四百円が五年後には倍になる、四万二千四百円になる。消費者物価の上昇は、四十五年を一〇〇として五十年が一五九、それが五十五年には二四五になる。この五年間で物価が八五・四%上がるという計算になる、これは。年平均したら幾ら物価が上がることになりますか、この平均は。企画庁、消費者物価指数はこの比較でいくと年平均幾らの物価上昇を計算していますか。
  20. 倉成正

    ○倉成国務大臣 調整局長からお答えいたさせます。
  21. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 お答えいたします。  五十一年度から五十五年度の平均で大体六%程度でございます。
  22. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、もうすでに五十年度から六%で物価が推移するなんということは全く机上の空論ですよ。これがあなたがいま守ろうとする五十年代前半の経済計画なんです。これ一つ見ても事実がもうまるで変わっちゃっているのですね。したがって、この可処分所得の倍になるというものも、私は恐らくこうはならぬと思うのですよ。この項目一つ一つを見ても、この一年半でもうまるで情勢が変わってきている。したがって、もう一回五十年代前期経済計画というものは、書き直さなくてもいいけれども、これを補強する必要がある。早急に補強を一応しようという、補強を認めませんか。
  23. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは毎年毎年見直しをすることにいたしております。その見直しの結果、この計画の数字なんかで調整を要するという点がありますればそのとおりにいたしたい、かように考えております。
  24. 武藤山治

    武藤(山)委員 調整を要すればと——倉成企画庁長官、いまの時点でここ一年間の日本経済財政、所得、賃上げ、こういう情勢をずっと踏まえてみて、補強を必要と感じるか感じないか、企画庁長官の見解、いかがですか。
  25. 倉成正

    ○倉成国務大臣 五十五年までの五年間の計画について、昭和五十五年の日本経済のあるべき姿を描いたものが五十年代前期経済計画であります。したがいまして、この五年間において五十五年の目標を達成するために、多少の出入りがあろうかと思うのでありますけれども、しかし、五十五年におおむねこの目標を達することができれば、一応この計画は成功だと申さなければならないと思うわけであります。その点からこの計画がつくられまして、いろいろな情勢の変化等がございまして、若干この問題について検討する必要があるのじゃないかということで、関係の方々の御意見も聞きまして、「「昭和五十年代前期経済計画」の推進に関する昭和五十一年度報告」というのを、審議会を経まして提出をいたしております。ここに詳しくその間の問題を提起しているわけでございますけれども、おおむねこの計画について現在のところ大きな変更を加える必要はないというのがこの結論でございます。しかし、物価の上昇等につきまして、もう少し早く物価の安定を図っていくということが必要ではないかとか、あるいは景気の回復について、なるべく早く景気の回復ができないだろうか、そういう景気の回復物価の安安という両面について、さらに一層の政府の政策努力が必要であるということは、御指摘のとおりではなかろうかと思っておるわけでありまして、おおむね大筋としてはこの方向はそのまま考えて間違いないのではないかと思っておる次第でございます。
  26. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、景気の問題についてちょっと触れておきたいと思いますが、企画庁の月例報告を毎月ずっと読んでおりますと、昨年十月あたりからずっと、大体基調は同じようで、最終需要は全体として増加基調にあり、景気は底がたい回復過程をたどっている、これがずっと大体一月から十月ごろまでの月例報告の基調ですね。十一月の報告も「景気は基調としては回復過程をたどっているものの、輸出の増勢鈍化、国内需要の増勢一服を反映して回復テンポはこのところ緩慢なものにとどまっている。先行きこのテンポが持直す兆しも一部にはうかがわれる」、こう述べてある。十二月は「一部で景気回復テンポは持直す気配もみられるものの、そのテンポはなお緩慢なものにとどまっている。」、こう十二月に幾らかほんのわずか見方が厳しくなってきている。十二月二十四日発表の「経済の回顧と課題」という報告書を読んでみると、「一−三月の景気回復テンポは著しく速まった。四−六月には回復テンポはやや鈍くなったが輸出急増の波及効果もあって順調な回復が続いた。」、「七−九月には回復テンポは大きく鈍化した。」、「こうしたなかで、稼働率は四−六月以降上昇が止まっており、雇用情勢の改善も遅れている。」、というように「回顧と課題」の中では書いている。同じ企画庁の報告でも、片方は月例報告ですから、刻々の読みにちょっとはニュアンスの違いはあると思います。この「経済の回顧と課題」の方を信頼して一応現在の経済情勢を判断すると、一体いまの経済情勢というのは回復基調にあるのか。おとといの土光さんと総理大臣の会談のニュースによると、底がたい回復など全く考えられない、いや悪化しているかもしらぬ、こう土光さんは新聞によると言っているようですね。いまの経済状態回復状態でない、悪化している。経済の実際に携わっている産業界の親玉がそう言っている。政府の方はまあ回復に向かっていると見ているのか。本当のところいまの日本経済のこの動きというのをどのように判断されているのでしょうか。経済の専門家ですから総理大臣でもいいですか。
  27. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  現在の経済の実勢をどう見るかということは、関係の方面でいろいろ意見が分かれているところでありますけれども、産業界から見ますと、特に鉄鋼であるとかあるいは基幹的な産業について稼働率が非常に低いということで、大変な不況感を持っていることは事実でございます。しかし私ども機械受注の見通しであるとかあるいは企業投資の動向であるとかいうのをいろいろ調査をいたしてみますと、大幅なかつての高度成長のときの景気回復期と比べますと非常に緩慢でありますけれども、少しずつの上昇というのが見られるわけでありまして、五十一年の一−三月を契機としまして設備投資の減少というのが減って増加に転じてきた、その傾向はいまも続いておる、そういう分析をいたしておるわけでございます。それでまた、特に製造業の方からだんだん設備投資の方は非製造業の方に移っていっておるということも御承知のとおりの状況でございますので、この辺を勘案いたしますと、緩慢ながら回復過程をたどっておる、そういう判断をしております。ただ、力は十分ではないというのが現況ではなかろうかと思います。
  28. 武藤山治

    武藤(山)委員 一時間五十分の持ち時間で、数字を挙げて反論する時間がありませんから省略をいたしますが、政府経済見通しも現実とかなり乖離している方向じゃなかろうか。いまの五十二年度の経済見通しについてちょっと触れてみますと、現状から大分違った方向に、見通しよりは悪い方向に経済が動いておるのじゃないか。政府経済見通しと民間十一機関の五十二年度経済見通しを見ると、一番高いところでは政府経済成長よりも高い見通しを立てているところもございますね。国民経済研究協会は七・九。しかし一番低いところは、住友銀行は四・九、京都大学の経済研究所は経済成長率五・五、日本経済研究センターは五・九、三菱総合研究所も六・一、野村総合研究所が六・二。政府の六・七という見込みは意外と高い方の水準ですね。  しかも、その中で政府見通しといろいろ違う点はどこかということを調べてみますと、やはり輸出の問題が一番誤差が出ていますね。政府見通しは輸出を非常に低く見ている。民間十一機関と比較すると非常に輸出の伸びを低く見ております。それから民間設備投資ですね。民間設備投資も政府の見方はちょっと高過ぎる。こういう感じがする、十一機関をおしなべて大体比較してみると。だから政府は、五十一年度政府目標成長が達成できそうだ、だから五十二年度もこの見通しでいけるだろうという感じを持つのかもしれないが、五十一年度の場合の目標達成の一番大きな寄与はやはり一−三月の成長のげたですね。これが五十一年度の経済成長率を達成させ得る大きな要因になっている。五十二年度にはそれがない。しかも、いまのような民間十一機関との比較をしてみると、かなり意識的に企画庁、これは調整をしているな、調整局長は、こういう感じがしてならぬのであります。  ですから私は具体的に、民間設備投資が一二・二%去年より伸びる、絶対額にして二十二兆五千億円の民間設備投資があるという見込みですね、この積算の根拠、ちょっと明らかにしてください。二十二兆五千億円の民間設備投資は、どういう産業で、主としてどういう企業にどの程度あるのかということを積算してあるのでしょう。そういう具体的なものを示してもらわぬと、抽象論で、いや政府見通しは心配ないんじゃ、これで終わりになってしまうのですね。  それから、個人消費支出も同じように、一三・七%個人の消費支出が伸びるというのですね。五十二年度は百九兆七千五百億円になるというのです、個人の消費が。五十一年度は九十六兆五千億円ですから、十三兆二千五百億円個人消費がふえるというのです。百貨店の売り上げから見ても、小売店の店舗の売り上げから見ても、昨年の十二月も軒並み八・六、五・六、下っ端の方で皆四苦八苦している。繊維とか雑貨とか、そういう小さな中小企業はもう売れなくて困っておる。後で中小企業問題をやりますが、ばたばた倒産している。そういう状況なのに、個人消費が二二・七%も伸び、民間設備投資が一二・二%伸びるというのですが、私はちょっと不思議でならぬのであります。減税もしないでこんなに伸びるのか。まずひとつその中身を、積算の根拠を明らかにしてください。
  29. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  民間設備投資について民間の機関がいろいろな予測をいたしておるわけでございますけれども、御案内のとおり、民間設備投資の種態別の構成は、過去の数字から申しますと、一般法人が約八〇%、その中で大企業が五〇%、中小企業が三〇%、こういう比率になっております。それから一般法人の内訳では、製造業が先ほども申し上げましたように低下し、非製造業が増加しておるわけでございまして、昭和四十年代の前半には製造業は四三%程度であったのが、後半には三六%程度になっておる。また非製造業は、四十年代の前半には三七が四二%程度にふえておるわけでございます。そういう特色があるわけでございまして、大企業の設備投資、五十年の一般法人のものは約十兆でございますけれども、各種調査機関の調査の投資の調査額は約七兆ということでございまして、大体その調査は七割をカバーしている、こういう特色がございます。それから、同時にまた、一般の調査は中小企業の設備投資というのはなかなか十分つかみにくい点もあるという点もございますので、調査機関の調査と私どもの調査が違うのはそういう点、マクロの計算をする場合の差が出てくると思うわけでございます。  そこで、どういう積算根拠になっているかという一々のものは、通産省とあわせてのものでございますけれども、大筋の、大体の感じを申し上げてまいりますと……(武藤(山)委員「もっと簡単にできないかね」と呼ぶ)ああそうですか。しかし、積算の根拠をとおっしゃるわけですから——それでは簡単にポイントを申しますと、電力、これは年率二〇%程度は上昇が期待できるのではないか。あるいは都市ガス、これも若干の伸びができるのではないか。それから商業、陸運、こういう非製造業は一応伸びていく、そう見ております。恐らく製造業の点について御懸念を持っておられるのじゃないかと思いますが、鉄鋼業、これは五十二年度におきまして大型高炉建設が一段落したということもございまして設備投資は減少する、そう見込んでおるわけでございますが、五十三年以降はこれは横ばいないし微増の投資が行われる。石油精製、これも低いながらも若干の投資増が予定される。自動車は伸びが低いのじゃないか。石油化学、これも低い伸びじゃないか。紙パルプ、これは製紙部門の投資が期待される。セメントは非常に低いのじゃないか。そういうふうに、各企業別の民間の設備投資が伸びるか伸びないかという問題については、私自身かなりこの問題については相当、神経質になるくらい部内で検討いたしまして、そうしておおむねこの程度のものは期待できる、そういうことで積算をいたしまして提出をいたしておる次第でございます。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは企画庁長官、後で、前年度と対比しながら二十二兆五千億円の民間設備投資の積算根拠を資料でください。そうして何が一兆九千億円ふえるのか、それを知りたいのです。それを資料要求しておきますから、後で私の手元までいただきたいと思います。  時間がいずれにしてもございませんから余り深く議論できませんが、この民間の……(小林(進)委員武藤さん、資料要求、出すとも出さないとも言わないじゃない」と呼ぶ)  委員長、いまの企画庁に対する資料要求、積算の根拠、さらに民間設備投資がふえる、一兆九千億円の増加する業種がどういうところにあるのか、それを資料で提出するようにお願いいたしたいと思います。
  31. 倉成正

    ○倉成国務大臣 積算の根拠につきましては調整局長から……(武藤(山)委員「資料要求だから答えなくていいんです」と呼ぶ)マクロの計算をいたしておりますので、個々の業種の、一々ここが幾ら伸びるというブレークダウンの問題は私どもの最終の問題ではないと思いますので、ちょっと調整局長から補足いたしたいと思います。(武藤(山)委員「資料を出せばいいということです。答えは長々要らないのです」と呼ぶ)
  32. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 経済見通しにおきます設備投資はマクロの指標を使っておりますので、そのマクロの関連の指標を提出いたします。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 よろしいです。  いまの経済見通しについては、民間では、政府見通しは余り当てにならないだろう、当たらないだろう、そういう見通しもかなり強いのであります。ここで一例を、たとえば住友銀行や京都大学の研究所などの説明を読むと、政府の公共事業予算をふやしたといっても、こんな程度のものでは景気を浮揚させる力にはならない。それから公共投資といっても地方の財政難や住民の反対、技術者不足などのネックがある。支出のかなりの部分が土地に食われてしまう。公共投資の内容が、住宅や下水、公園などに中心が移ったことによって、セメントや鉄鋼の使用量ががくんと減ってくる。あれやこれやを勘案すると、公共事業費をふやしたからといって景気浮揚にさほど力にならない、こういう見方をしているのですね、京都大学や住友銀行の調査員の説明は。さらに、減税もほんのちょっぴりで、三千五百三十億円程度では購買意欲をそそるような力にはならない、等々から見て、政府見通しは間違うであろう、狂うであろう、実はこういう見通しをしておるところもたくさんあるわけであります。  私はそこで、公共事業の問題について少しく触れたいのでありますが、公共事業費をふやして景気をよくするのだというのは、昨年度もそういう説明がなされたわけであります。五十一年度の予算を見ると三兆五千二百七十二億円。五十年度が二兆九千九十五億円ですから、差し引き六千百七十七億円五十一年度公共事業費がふえた。ふえたのが六千百七十七億円であります。今度の五十二年度予算では幾らふえたかと調べてみると、五十一年度が当初予算三兆五千二百七十二億から、今度の追加がありますね、二千六百三十八億円、今度の補正、十八、九日に出てくるものですね、それから予備費が一千五百億、当初予算にあったわけですから、公共事業費に入れていいと思うのですね、そうしますと、公共事業費の合計は三兆九千四百十億円。五十二年度は四兆二千八百十億ですから、差し引き勘定、五十二年度の公共事業費の絶対増は三千四百億円ですよ。三千四百億の公共事業費を全国五十県に仮にばらまいたとしたら一県幾らになりますか。ほんのわずかです。こんなことで景気が浮揚するわけがない。土光さんが総理のところへ、頼む、と来るはずなんですね、公共事業費のこんな状態では。しかも、公園、下水道が多くなったことによってセメントや鉄鋼の使用量が、従来のような道路中心や建設中心から比較すると、そういう使用量というのはがくんと減っていくという心配があるわけであります。これで一体、総理大臣、公共事業の波及効果は二・二倍だと計算をしても約七千億円。こんなでかい日本経済の中で七千億円公共事業費がふえて、それで雇用状態が悪化から防げて、もっと求人倍率がよくなり、稼働率がよくなり、個人消費がふえるようなことになりますか。——あなたに聞いてないのだ。総理大臣とやっておるのだ。よけいなことを言うな。まだおれは話し中だ。  そういうような公共事業の実態というのを考えてみると、公共事業も景気浮揚のために必要だが、同時に減税も必要だ。土屋清さんがこの間新聞に書いていますね。お読みになりましたか。私は土屋さんのこの文章を読んで、総理大臣を大変心配をしてくれていると思うのですよ。ちょっと読んでみますと、「国民消費がこのままで推移することを望んでいるのでしょうか。石油危機以後は消費の低迷が続き、これが景気回復の足を引っ張っていることは、周知の事実です。一兆円減税はこの消費に活力をとりもどさせようという狙いであって、決して高度成長下の過度消費——貴下のいわゆる「昭和元禄」——を復活させようというのでありません。いまの段階で消費増大を罪悪視するような言い方は、それこそ自殺的行為のように思われます。」  土屋清さん、経済評論家、政府のいろいろな機関の審議委員にも入っておる。この人が、公共事業か減税かではなくて、公共事業も減税もで野党が要求しておることを素直に福田さん聞くべきだ、こういうことを切々と訴えておる。「貴下」とあなたを呼んでね。  最後に、「古い考え方捨てよ」ということで、「与野党の勢力伯仲という新情勢の下で、五野党一致しての要求を十分考慮することは、政府の当然とるべき途ではないでしょうか。もしこの処置がこじれますと、予算の成立がおくれたり、他の重大法案の審議に甚大な支障が及ぶ惧れも出て来ます。私は当代の政治家の中で、貴下を力量識見第一と常々信じているのですが、それだけに貴下が自信満々、古い財政考え方にとらわれて、いたずらに自説を固執することがないよう、切に望んでおります。」、土屋さんの新聞に出したやつですね。まだ中間大分ありますが、土屋さんのこの心配は、アメリカのあのニューズウィークの十一月号でしたか、福田内閣ができるころ、新聞にちらっとおもしろい文章が出ておったのでありますが、それとこの土屋さんの今回の「正論」という論壇は非常によく似ている。  私はいまの公共事業の点を数字を挙げて総理に申し上げましたが、このようないまの景気刺激策で、アメリカのカーター大統領が期待するような国内景気浮揚策をとったと自信を持って言えますか。総理の見解をひとつお聞かせください。
  34. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 財政にゆとりのあるときでありますれば、これはあなたの言うように公共事業も減税もということが言えると思うのですが、財政にそうゆとりがないのですよ。そこで、限られた財源ならばどうだ、こう言うと公共事業費の方が減税よりは決定的に効果がある、こういうふうに申し上げておるわけです。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは福田さん、与野党話し合って、なるほどなと財源が見つかれば、総理大臣、減税よろしいとゴーのサインを出せますか。
  36. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは具体的によく検討してみないとわからぬ。これはそんな名案があるような感じは私はいたしませんです。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 私はこれからは、政治家福田赳夫、政治家武藤山治として、少し十分間ばかり議論してみたいのであります。役人の知恵での答弁は無用であるという立場から少し財源問題を論じてみたいのであります。  一つは、総理、五十一年度予算二十四兆円の中で、福田さんの努力によって三千億円節約をしました、五十一年度予算は。一千億円、約九百六十九億円が行政の中からの節約であります。予備費が千六百億円。約二千六百億円を節約をしましたね。ですから私は、二十八兆円の予算になった五十二年度予算の中で、三千億円ぐらいの節約をすることは可能である。総理大臣が腹を決めれば、二十八兆の中で三千億円の節約というのはできる、私はそう信ずる。やるという決意があるかないかの決意の問題である。これが一つであります。  第二は、政府の減税案ですでに三千五百三十億円財源はある。そのうち地方団体にはね返る分を差し引いても、所得税減税の財源として三千億円は使えますね。これでもう六千億はある。六千億。法律をつくらなくも、政令で税金を年度内にいま直ちに取れる、政令事項で、退職給与引当金もある、貸し倒れ準備金もある、償却資産の耐用年数も政令で自由に動かせる。法律は要らない。予算修正権があるかないかなんていう議論しなくもできる。この税法はできる。仮に、いま政令でふやせるものをちょっと計算しただけでも、私の試算で三千億円は取れる。  たとえば、福田さん、いま退職給与引当金というのはどういう制度になっていましょうか。どんなでかい銀行も、新日鉄も、どんな大きい商社も、従業員の半分までが、いつばちっと首を切られても退職金をまるまる払えるだけの積立金を認めているわけですね。銀行や大企業が一挙に半分失業するなんということがあり得ますか。あり得ない。銀行が一つつぶれそうだと言えば、恐らく日銀の特融で助ける。ですから、そういう大企業に退職給与引当金を目いっぱい、五〇%認めておく必要があるでしょうか。いままで主税局長をやった、いまの主税局長は別として、吉国さんや泉さんや高木さんや、歴代主税局長、大蔵次官が、退職給与引当金なんていうものは大変なものだ、こういうものは一回きれいに洗い直したがいいと言っている。エコノミストというこの雑誌にちゃんと三人の対談が出ている。しかも、中小企業はほとんど使っていない。高木さんはこう言っている。「退職給与引当金もそうとうまだ問題があるんじゃないかね。退職給与引当金を活用している企業が平均的であればいいけど、やはり余裕のあるというか、大企業ほど退職給与引当金を活用できる可能性があるものだから、利用する。そこで、大企業の実質税率がぐっと下がるんだな。しかし、ほんとうに引当てを必要とする中小企業はそれほど利用していないんではないか。」。積む余裕がない、中小企業の方は。全国で、総理、いま退職給与引当金の総額がどのくらいあると思いますか。五十年度末の総額累積はすでに四兆円を超えているのだよ。四兆二千四十二億円ある、五十年度末残の退職給与引当金、五〇%一挙に首切られたときの用意ということで。これの資本金五億円以上の大企業の分については、どうですか、倒産もそうないのだから、これを四〇%か三〇%に率を落としたら。政令でできるのです。これだけでも一兆円減税の財源の半分は出せるじゃないですか、やろうと思えば。総理が財界に気がねをしない、上州任侠精神をこのときに発揮する、強きをくじき弱きを助ける、ここに初めて福田内閣の真価が問われる重大な問題があると思う。  私がいま申し上げた節約、政令で増税できるもの、退職給与引当金、政府の減税のすでに三千億の財源、これをうまく福田さんの能力でミックスして考えるならば、私は実現可能だと思う。大蔵官僚の言いなりになった総理大臣だったらできない。これはやはりあなたの政治家としての決断にまつ以外にない。というのは、福田さん、過般の総選挙で、無所属で後で入党した人の得票数を入れても、自由民主党と無所属の取ったのが二千四百十七万三千票、他の野党の合計が二千九百六十八万五千四百票、五百五十一万人も野党の方をよけい国民は支持しているのです。この事実に連帯感を持たなければなりません。協調しなければなりません。真の協調連帯はこういうところになければいけない、総理。私はそういう意味で、福田さんに政治家として、減税問題は木で鼻をくくったような態度ではなくて、そういう項目についても真剣に検討してみて、なおかつ、国民諸君、こういうわけでこれこれこうだと、どうして皆さんが納得できるような説明ができますか。いまの私の申し上げる三つの点、私は政治家として考える際に、さほど無理な問題を言ってないと思うのですが、総理大臣の御見解はいかがですか。
  38. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まず法人税の増税ですが、これはなるほど政令でそういうことができないとは言い切れないと思うのです。できるものもある。ただ、その場合に、企業の方でもこれはそれだけ金が取られてしまうわけですから、企業の方の消費が減るわけです。つまり、賃金の支払いあるいは投資、そういうものが減ってくる。これは企業から持ってきて個人に回す、これは結局プラス・マイナス・ゼロだ、こういうふうに言わざるを得ないかというふうに思うのです。  それから、一般の経費の節約、これはかなりやっているのです。これはいまだかつてないくらいの節約をやっているので、まあびた一文どうのこうのとは申し上げませんけれども、これはきわめて余地が少ない問題である、こういうふうに考えております。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうするとあれですか、総理、退職給与引当金など四兆二千億円も、つぶれる心配のない大企業が税金のかからない積立金を認められているというこの制度——国民感情からいったら、国民はいまなぜ一兆円減税しろと要求しているか、福田さん、単なる景気浮揚のための減税じゃないのですよ。去年度全然減税しないのですよ、びた一文も五十一年度は所得税を。そのための所得税の負担はどうなっていますか。去年一年減税しなかったために、仮に年収二百万の所得者を基準にしてちょっと計算してみても、一〇%ベースアップが行われた人は、二百万の収入で一万七千三百三十円税金はふえた。三百万の人で三万五千六百円ふえた。去年のことですよ。物価は一〇%も上がった。ですからこれはもう帳消し。それ以外に、公共料金を幾ら上げましたか、去年。公共料金は軒並み引き上げし、健康保険料は引き上げ、そういう公共的料金だけで二兆三千億円国民のふところから取っているのですよ、去年だけで。二兆三千億円サラリーマンから公共負担、料金を引き上げておきながら、減税はびた一文もしない。そしてことしも、三千五百三十億円、物価調整でことしの物価分だけは何とかなるという。われわれが言っているのは、去年もしないのだから、去年とことしの分合わせて実質生活水準を低下させない、そのためには一兆円減税は当然だ。世の中何のためにあるのですか。一人一人の生活がよくなるために世の中はあるのでしょう。一人一人の福祉を増進させるために、幸福な道を一歩でも前進させるために政治はあるのでしょう。政治は大蔵省のためにあるのじゃない。政府のために政治はあるのではない。国民福祉のためにあるのでしょう。その国民の実質生活水準が低下をする。減税を去年もびた一文しなかったということ一つを見ても、ことしは二年分で一兆円は当然じゃありませんか。土屋さんは景気の観点から減税論。私はそうじゃない。政治は国民の福祉に責任を持つ、国民の未来に責任を持つ。そしてだれもが明るく楽しく生きがいを感じながら人生を送れる世の中をつくるのが政治の目的じゃありませんか。それが不公平な税制がばっこし、大企業に有利なような今日の租税特別措置法がそのまま放置される、そして国民にはがまんせよ、協調連帯だとはいただけない。この国民の実質生活水準の低下について総理は血も涙もない、理解を示さない。任侠を示さないのですか。依然として土屋さんが言うような古い考え方に固執するのですか。もう一回見解を聞きたい。
  40. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 武藤さん、私も政治家です。でありまするから、減税というような話題がありますれば、私だってもうそれは大変な減税をしたいですよ。一兆円どころじゃない、三兆円でも五兆円でも減税をしたい。しかし、それがいま国のためにいいことかどうかということを真剣に考えておるわけでありまして、いま将来のことを考えますと、とにかくもういままでのような調子の社会というものは運営できない。そういう中で最も私が心配しておるのは石油ショックの後遺症です、財政危機なんです。これが破綻しましたら、本当に日本社会をひっくり返す。その辺をひっくり返るようなことのないように綱渡りをしていかなければならぬ。その非常にデリケートな、薄氷を踏む思いの運営をしておるわけなんです。そこで私は、三兆円でも五兆円でも、減税をしてくれと言えば、したいような気持ちはあるけれども、それが果たして国家国民のために妥当であるかどうか、こういう点を考えておるのです。その辺をしかとひとつ御理解願います。私は、任侠精神は他のだれにも劣らぬ、こういうかたい自信を持っております。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、福田さんが非常にりっぱな財政家であり、日本を憂えている政治家であることは十分認めておるのですよ。私は、そのために福田さんの過去の経歴なども十分調べてみた。昭和四十年のときに、国債が初めて発行されるときに、私は福田さんと大蔵委員会で、福田さん、これは大変なことになる、このことについてあなたは将来責任を持たなければならぬ、日本を滅ぼす原因になりますよ、この国債発行はと私は責めた、あなたが大蔵大臣のときに。議事録をここにきょう持ってきてあります。そのときに福田さんは、武藤君の言うこともしかと心にとめて、日本財政を紊乱させるようなことは絶対しない、責任を持ってやる、あなたはそう約束した。流通市場も早急に検討する、そういう国債問題の答弁。私、あなたの答弁が本気であるかどうかということをやはりアフターケアしてみたいと思って調べてみた。四十一年度、福田大蔵大臣のときの国債発行、このときはわずかだった。翌年の四十二、四十三年、水田大蔵大臣になったら、途端に八千億円、六千四百億円、国債依存率が二八・二%、一〇・九%とはね上がってしまった。その次に福田さんがまた大蔵大臣に戻った四十四年、四十五年、四十六年は、国債が四千九百億、四千三百億とがくっと半分に減った。したがって国債依存率も一七・二、五・四、四・五と福田さん努力した。福田大蔵大臣の後、また水田さんが四十七年になったら一七%の国債発行率になってしまった。この一事を見て、福田さんという人は財政を大事にする人である、財政の紊乱は大変なことになるということを身をもって実行した大蔵大臣だ。これは後世の歴史に残ります。福田さんのとった態度はりっぱです。亡くなった水田さんが悪いというわけではありませんが、大蔵大臣がかわったら途端に国債が二八・二%、一七%の率になってきている。福田さんがことしも二九・九、二九・七のほんの〇・数%、重箱のすみをようじでつつくようなことに気を使ったのも、この依存率を少しでも減らしたいという福田さんの心境がよく私はうかがえるのであります。だがしかし、だからといって、こういう苦しい財政だから減税はできないという理論はいただけないのであります。この赤字財政をどう再建するかというのは別な観点からまた徹底的にやらなければいけません。  大蔵官僚は怠慢ですよ。二年も前にすでにこういう時期はわかっておるのだ。私は、二年前にもうすでに本会議でも、三木さん総理大臣のときに、こういう方法でこうすれば日本財政の赤字を解決する道筋はできるということを提言している、七項目にわたって。どれ一つとして大蔵省やろうとしない。この間、石橋書記長がここで提案をした、幾つかのたとえばの税制改革案を出した。翌日大蔵省反撃。新聞で石橋書記長の質問に一つ一つ反論してけちをつけている。この根性。これで一体協調連帯がどこにあるのですか。こういうことでは日本は官僚政治だ。大臣なんというのはいすに座って答弁しているだけで、実際の政治を動かしているのは全部官僚だ。これでは日本を誤る。カーターのようにゼロから予算をやり直してみる、そのくらいの思い切った政治を福田さんがやらなければ、日本財政はそう簡単に片づきませんよ。まあ話を先へ進めますが、福田さんが日本経済名医で終わるか、最後は有終の美を飾れずに野たれ死にをするかは、私は、この財政に対する総理の見解にかかっていると思うのです。しかし、これ以上あなたと論議をしても、これは平行線です。  もう一つ、いまの赤字財政を解決するために政府財政の一応の見通しを立てて、去年国会財政収支試算を出しました。これはもう初年度から全然問題にならない。ことし九千億円もあの約束の数字と外れちゃっているわけですからね。たとえばケースIIの場合で見ても、公債金収入、五十二年度の国債発行は七兆一千八百億円というわけだったのでしょう。それが八兆四千八百億ですか、これではもう全然、一兆円違っちゃっている。こんな紙っぺら何百万枚つくったって全然現実に合わないものじゃ、国会を乗り切るための便法にすぎない。本気で、赤字国債を発行しない方法はこうだと納得できる案を総理出してくださいよ。それを出してくれなければ、赤字財政だから減税はできないのだ何だ言われたって説得性はないですよ。五年間なり六年間なり十年間でこういう方法で日本財政均衡、健全財政にします、それをきちっと一応見積もりを出して、それを個人から取るのか法人から取るのか、中小企業にウエートをかけるのか大企業から取るのか。だれかが犠牲にならなければならぬのですよ。それを勇気を持って、大きいところは余裕がある、個人から取るよりも法人の積み立ての中からいただく、そういう方向を選ぶべきじゃないですか。法人から取ると法人の利益がなくなっちゃう、月給が少なくなっちゃうぞなんておどかすけれども、そんなことはない。  総理大臣、この間の決算見てください。六カ月決算で住友銀行の利益は三百五十三億円じゃありませんか、半期で。このペースでいったら一年で一銀行で七百億もうかっちゃう。富士銀行が三百四十二億円、東京電力が三百三十七億円、関西電力が二百七億円、野村証券が、これは一年法人決算で五百三億円、パイオニアというのは二百三十五億円、熊谷組が二百十九億円。でかいところはみんなもうかっているじゃないですか、総理。まだ総理は依然としていまでも高貯蓄、高利潤、高成長を夢見ているのですか。資本主義高度成長は高貯蓄、高利潤、高成長でしょう。新しい社会、新しい産業に対して総理、このキャッチフレーズに対偶するキャッチフレーズは何ですか。高貯蓄、高利潤、高成長、それに対して低成長の場合どうします。
  42. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 適正貯蓄、適正利潤、適正成長、かように考えます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは、いみじくも私が書いてきた原稿とあなたの答弁がそっくりなのです。だから、福田さんの考えている頭の中も私の考えていることもそんなに違わないのですよ。違うのは福田さんのかたくなな態度なんだ。土屋さんに言わせれば古い財政観なんだ。これを変えなければだめなんですね。せがれのような私がお父さんのような総理大臣にこんな失礼なことを言って、本当に内心申しわけないと思っているのですよ。思っているのですけれども、国家国民のためにやはりお互いが大いに議論をして、国民のためになる政治にしたい、そういう一念から私は失礼を申しているのです。やはりがんばってもらわぬと困りますね。  そこで総理大臣、いま幾つかの大企業の利益をちょっと申し上げましたけれども、この間石橋書記長が、土地再評価、土地増価税、そういうようなものを考えないと、中期財政として日本の健全財政はむずかしい。そのときに総理大臣も、いつの日かそういう再評価はしなければならないと思う、しかし税を取るか取らないかはわからない、こう答えている。総理の心境としては最後の方にウエートがあったと思う。税を取るか取らないかわからないというところにウエートがあったような気がする。私どもの方は税を取るところに再評価の意義がある。後ろの方は聞かなくてもいいことをこの間答えているのです、総理は。これは財界の圧力、財界に対する気がね、大資本奉仕、こういうことが腹の中にあるのですね。だから、ああいう答弁がぼこぼこ出てくる。もう再評価して税金取るべきですよ、総理。  何となれば、私、いまここに幾つかの会社の有価証券報告書を持ってきてみた。これを見ると、ひどいものですよ。総理は、一体どのくらいそういう実態と離れているかということを御存じなのでしょうか。いま大企業の土地で一番安い土地は坪どのくらいのがあると思いますか、総理、感じで。
  44. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほどから武藤さんから御高見を拝聴いたしまして、大変重大なる御意見がたくさんおありになる。それで、私から一つ申し上げておきたいことは、いまとにかく五十二年度の予算というやつは、御心配いただいておる景気浮揚をする、そのためにいかなる方法をとってやるかということにつきましては、われわれもいろいろ考えた、考えた結果、これはまあ公共投資でやろう、こういうことで考えてやっておるわけでございますけれども、それじゃ物足りない、そんな公共投資というようなことだけでなくて大いに減税をやれ、減税をやる方法についてはひとつ教えてやるから、こういうお話なんでございます。拝聴いたしております。  そこで、いま私考えますのは、いまの日本のこの財政なり経済なりの状態というものは、大変ぎりぎりのところへ来ておる。ぎりぎりのところへ来ておるときに、いかなる手段、方法でもってこれを是正していこうか、改正していこうかというときには、そんなにいろいろな手はないのですよ。あの手この手、あれもこれもというようなことでやっていけるということならば、事態はまだそれほど厳しくない。もうこうなったら一番有効な手、しかも、これは副作用も起こさないし、デメリットもないしといったようなものを考えてみると、それの最高、最善のものというのは、あれもこれもでなくてあれかこれか、この一つであろうと私は考える。そういうようなことで、ともかくも今度の五十二年度においては公共投資でやっていこう、こういうふうに私は考えておるのです。しかし、だんだんと世の中にゆとりが出てくるということになれば、私は、あれもこれもというふうなことになってくるということを……(武藤(山)委員質問に答えなさいよ」と呼ぶ)それから御質問何でしたか。(「質問を忘れて何を言っている。冗談じゃないよ」と呼ぶ者あり)いや、最初に総論をひとつ。私、武藤さんからずいぶんお聞きしましたからね。だから私も考えておることをまず……(武藤(山)委員「冗談じゃないよ、おれの持ち時間を取って。総理に聞いているんだから。そんなばかな話ないですよ」と呼ぶ)はい。それで、土地の含み資産に対して税をかけろ、こういうお話でございますが、私はその最低の簿価というものについては存じておりませんから、これは政府委員からお答えいたしますけれども、土地増価税につきましては、これは大いに研究をいたしまして、中期税制のときにいろいろな題目がございますから、それについてお答えをいたしたいと思います。(発言する者あり)
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣余分なことを言われたけれども、別に質問を求めているわけじゃないので、まあ長い大蔵委員同士で親しみがあるものだから、坊さんもつい長々としゃべり出したのだと思いますから、ちょっと御勘弁してやっていただきたいのです。やっぱり武士の情けですよ。(笑声)  総理大臣、これは大蔵省の局長が講演をした原稿なんですが、ある製鉄会社の所有土地の一坪当たり帳簿価格は十円である。そしてそれをこの会社は三百万坪持っている。時価で評価すれば三百三十億になるのが帳簿にはわずか三千三百万円しか計上していない。こういう製鉄会社がある。これは大蔵省の現職の局長が講演した文章ですよ。坪十円ですよ。日本じゅうどこの土地へ行って坪十円で土地を買えるところがありますか。庶民が聞いたらびっくりしますよ。  それで私は、こういうことが本当にあるのだろうかと思って、有価証券報告総覧を調べてみた、でかいところだけ五、六社買ってきて。そうしましたら、千葉県にある大きな製鉄所の土地が二百五十九万七千六百九坪。約二百六十万坪ですね、坪で。平方メートルでいうと八百五十七万二千百十七平米。簿価一坪当たり六百六十六円。いま六百六十六円の土地なんというのは日本じゅうどの辺でしょうか。これがれっきとした日本の指折りの製鉄工場の敷地ですよ。だから、地方首長が外形標準課税をいろいろ考えるとか、固定資産税を工場だけは、大企業だけは少し評価をばんと上げて地方自治団体の収入をふやす態度を考えてくる、こういうふざけた状態が続いているから。  国土庁長官、丸の内一丁目、二丁目、三丁目付近の地価というか公示価格は大体どの程度ですか。
  46. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 地価公示の具体的な問題でございますから、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし田沢さん、丸の内あたりが、三十六階のそこを建てたときの例もあり、大体の常識でこの国会の前の方、丸の内近在、坪五、六百万円で買えないことは事実でしょうね。
  48. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 突然のことでございますので、正確を期す意味において、おおよそということを答弁するわけにまいりませんので、後ほどお答え申し上げますから御了承をいただきます。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理、東京駅前あたりの新丸ノ内ビル、あの辺の土地、あの近辺は恐らく実際は買えないでしょうけれどもね、しかし値つけをして売買という場合の価格は坪一千万円近いんじゃないでしょうか。それがどのくらいの簿価になっていますか。有価証券報告書を見ると、丸の内の一番いいところ、日本の最も中心的なところ、坪七万二千八百十円だ。買えるはずないね。こういうのを庶民が見ると、大会社というのは、実際の価値あるものを小さく見せて税金を余り納めないのだなという感じになるのですよ。さっきの引当金や準備金だけの話じゃない。  だから、われわれがインフレ利得旅して含み益にある程度の税金をかける、土地増加税というものを取れ、三、四年前から、あの狂乱物価以後こういうことを社会党は提案しているのです。社会党はちゃんと法律案まで出している。社会党と公明、民社三党でそういうものをやろうじゃないか、こういって具体的な法律要綱にして、条文にして国会に出している。それを真剣に検討しようともしない。これで一体日本国債発行赤字財政が本当に解決できますか、こんな姿勢で。本当に国を憂えているのですか。私は、自分の地位だけ、自分の立場だけ守れればいいという安易な気持ちがまだ充満しているような気がしてならない。いまのこのような状態を見て総理はどう思いますか。丸の内が七万二千八百十円。
  50. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 簿価と実際の価格の乖離、これは土地インフレで大変なことになっていると私は思うのです。ただ、実害がいまそう生じておるわけじゃございませんものですから、急いだ問題じゃございませんけれども、いずれは再評価しなければならぬ。その再評価をする場合に、税とこれを絡ませるかどうかということは、これはまたその時点において検討すべき問題である、こういうふうに申し上げておるわけなんです。公示価格制度でも普及いたしますれば、やはり土地の再評価、これはしなければならぬと思っておりますが、まあとにかくいま実害がそうあるわけじゃございませんものですから、公示制度あたりが整備したところでやったらどうだろうか、かような見解でございます。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 こういうべらぼうな企業の利益が生まれるような今日の地価の状態というのをこのまま放置しておくことは、やはり不公平感覚を国民がますます強める。これはやはり政府に対する不信を一層強める。協調連帯なんて、言葉は体裁はいいが、国民一般大衆には何も関係のない言葉だ。空疎に聞こえますよ、こういう不公平をそのまま置いたら。これはやはり直さなければいけませんね。やはりある程度の税は取るべきですよ。全然税を取らずにただ評価額だけ評価替えをして、会社の資産内容だけ、自己資本の比率だけ高めるという、そんな虫のいい考え方は断じて許すべきでないですね。それこそ財界のほんの一部の者の言い分に総理は屈服したことになりますよ。こういうふうなものは、ある程度税によって財政の赤字を埋めていくための中期的なプログラムとして真剣に考える必要があるのじゃないですか。もう一遍見解を聞かせてください。
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 再評価税を取るべきかどうかにつきましては、真剣に検討いたします。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 真剣に検討するということですから、ぜひひとつ大蔵官僚も総理の答弁を忠実に守って早急に検討していただきたい。地価のそういう具体例を出せと言えば、いつでも提言をしたいと思います。  次に、国際問題に入りますが、時間がなくなりますから、それの前に中小企業問題にちょっと触れておきたいと思います。  総理大臣、いま景気はやや回復に向かいつつあると言いますけれども、倒産の状態は大変な勢いですね。どのぐらい倒産があるかということを調べてみますと、いままで新聞に出ていたり大臣が答弁しているのは、資本金百万以上、負債額一千万以上、そういう大きい倒産だけですね、あの統計に出ているのは。日銀の統計月報にはちゃんと個人企業、個人も含めて銀行取引停止を食った件数が出ていますね。それを見てみると、五十年が六万四千百七十八件取引停止。六万四千件。五十一年が六万六千九百件になる。約六万七千件。これだけの人たちが銀行取引できなくなってしまっている。いわゆる倒産ですよ。これは個人を含めての計算。こういう状況を見て総理はどんなお気持ちですか。何か御感想はありませんか。
  54. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いままでの景気循環でありますと、まあ大体一年以内で景気が回復される、こういう状態でありましたが、いま、とにかくあれだけの高度成長の後を受けましてスタグフレーション状態に入った、しかも、それが三カ年続いておる、こういうような状態ですから、その年々の経済は、私は、経済全体として見るときには、これは上昇過程にある、これはもうはっきり申し上げることはできると思うのですが、ただ、その間におきまして、一つ一つの企業をながめて見るときに、大企業としても中小企業といたしましても、とにかく不況長きに及んで非常にくたびれてきておる、その結果が倒産現象となって中小企業に多くあらわれておる、こういう状態かと思うのです。そういう国全体の経済の苦しいときでございますから、やはり弱い立場の人にその打撃が強くあらわれておるというのが今日の現象ではあるまいか、さように考えております。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまのような倒産状況を見ると、福田さんが指導権を持つようになってから倒産が激増しているんですね。昭和四十九年、五十年、五十一年、この三年がとにかく従来の倍。四十八年は大体七千件ちょっとです。四十七年はもっと低い。四十六年が大体一千万以上のものが七千件ぐらい。ところが、四十九年になると一万六千。五十年になると一万九千ぐらいになりますね。五十一年が二万件ぐらいになりますね。四十九年の福田さんの短期決戦、総需要抑制政策が始まった年から従来の平均の倍の倒産の数です。それがずっと三年続いているのです。いまの状態でいくと五十二年もこういう状態ではなかろうかという観測がかなりある。通産大臣、この倒産の状況は五十二年度は五十一年度と比較して減ると思うか、ふえると思うか、情勢の判断はいかがでございますか。
  56. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  五十二年度の見通しでございまするが、冷え込んでおります経済の実態を何とかして引き上げなければならぬ、かように存じまして、ただいまの統計のあれから申しますると、十二月の千六百八十五件から一月は千二百八十五件に、大体四百件ばかり減っておりますことは私ども非常に心強い次第でありますが、この線に沿いまして何とかひとつ五十二年度の中小企業をあらゆる制度を活用いたしまして引き上げたい、かように考えております。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 あらゆる制度を動員してと言うけれども、倒産に対する制度が一体あるのか、私は疑問に思う。  そこで聞きたいのでありますが、この間新聞報道によると、通産省、中小企業庁は倒産防止への総合策を立てる、そういう新聞記事が出ておる。どんな総合策を立てるのですか、具体的にひとつ説明してください。
  58. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも倒産の状況については非常に心配をいたしております。これを少しでも少なくするために先般とりました措置は、各通産局ごとに財務局、日銀、政府関係金融機関等を通ずる連絡会を設けまして情報の交換を密にする。さらにそのほかに府県ごとにそのような組織を設けまして、問題が事前に把握できるように、また問題が起こりましたときに迅速に対応できるようにという措置を講じた次第でございます。具体的な対応策としましては、御承知のとおり政府関係金融機関の融資を確保する、また信用補完制度におきまして倒産企業の指定あるいは不況業種の指定等を機動的に行って金融上の不安を解消する、さらに下請企業のあっせんを積極的に行う、以上のような措置を総合的にかつ機動的に展開いたしたいと考えておるところでございます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 その場合に連絡協議会をつくった。しかし、実際に不渡りに追い込まれるような企業が相談をする場合にどこへ相談をして、その企業が担保が足りなければ、やはり結果的には見放されるのだと思うのです。保証協会は無担保で保証額をふやすなんということは恐らく八百万以上しないと思うのです。それができるような制度まで考えて救済しようとしているのか。ただ事情を聞いて、どこの会社がつぶれそうだぞ、どこの中小企業は危ないぞという意見交換だけされたら、逆に情報がばっと漏れて早く倒産させるようなものですね。だから問題は、具体的にどういう救済策をやるのか。保証協会のいまの無担保保証八百万円という限度を、いまのそういう六者か五者の協議によって認定したものは、無担保で事情を勘案して、何千万まではめんどうを見るのだ、そういう機関ができるのかできないのか。前に福田さんが大蔵大臣のときに、もう十一年前ですけれども、各市町村、自治団体に商工課か何かに窓口をつくって、そういうときに相談でもできることができないかなどうかな、検討してみましょう、という答弁をしたことがある。だけれども、なかなかその後できない。これは自由経済では非常にむずかしいけれども、いまのように倒産がばたばた、とにかく何万件、六万六千件もつぶれている事態をやはり弱肉強食自由経済だからやむを得ない、しようがないと放置しておくのですか。何かここに工夫して、これを半分ぐらいに減らすことはできないのか。これは真剣に追求する価値があると思うのですが、総理大臣いかがでしょうか。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 中小企業の倒産状態が依然として高水準にあるということは本当に胸の痛い問題です。まあしかし、中小企業の中も千差万別でありまして、投機をやったというような人もありましょうし、あるいは事業経営が間違っていたという人もありましょうし、いろいろあると思いますけれども、すぐこの問題は金融機関の窓口で問題になるわけです。金融機関においてすぐ日本銀行にこういう問題があるということを申し出る、そうすると日本銀行は通産局または財務局等と連絡をとってそして相談をする、何か手があるというものにつきましてはそこで倒産防止の手が講ぜられる、こういう仕組みにいま聞いておるとなっておる、こういう話ですが、そういう仕組みを活発に動かしまして、そしてできる限り本当にまじめな経営者が倒産というようなことにならないように措置すべきものである、また一生懸命それをやっている、こういうふうに考えております。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、先ほどの答弁はそういう教済策をやっているというところまではいっていないんだな。連絡をしていろいろ情報交換をしている。特別に今度の倒産件数が多いからこれに対する救済策が具体的に施せるようなことにはまだいってないでしょう、通産省。
  62. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも、大型倒産が起こりますと、それが連鎖をしないようにということにつきましては、関係の窓口を総動員して対応策に当たっておるところでございます。現に中小企業庁にも一日に何件もいろいろの相談が見えまして、これについて在庫手当てをどうするか、金融手当てをどうするか、具体的な案件について相談に乗りながら倒産回避を図っておる。こういう形を、中小企業庁だけではなくて各都道府県の窓口でも通産局の窓口でもまた商工会議所の窓口でも、それぞれの持ち腸持ち場ごとに分担をして対応策に現に当たっておる最中でございます。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間があと十分しかありませんから先へ進みますが、総理大臣、ひとつこれからの改善策として中小企業問題で考えてもらいたいのは、ちょっとした大きい会社は会社更生法の適用を受けますね。中小企業、零細企業は会社更生法の適用なんかほとんど受けられませんから、これはもうだめですが、やや中堅以上になると会社更生法の適用を受けられる。そうなった場合に、適用を受けた親会社は助かるが、その下請の仕事をやっていた関連企業は管財人に好き勝手に自由に切り捨て御免で債権を切られてしまうわけですよ。この会社は配当二割、この会社は配当一割ということで自由に整理されてしまうわけですね。しかしこれは裁判所へちゃんと申し立てて会社更生法の適用を受けたのだから、その管財人の言うことは聞かざるを得ない。そうすると、中小企業は結局何のことないのですね、会社更生法の適用を受けた場合は下請関連企業が全部泣いてしまって、そしてその更生決定を受けた会社だけが再建できる、こういうことになってしまうのですね。これはどうも私は、何らかの形で会社更生法の適用を受けた企業の関連下請企業の債権だけは確保してやる、そういう法律に直さないと下請中小企業なんてうだつが上がらないですね。総理大臣、幾らか事情を知っていますか。いまの私のこの話で感じますか。
  64. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 会社更生法は私は非常に貴重な立法だ、こういうふうに思っておりますが、反面、武藤さんがおっしゃるように、会社更生法の適用を受けた企業は助かって、そしてそれに対する債権者という立場にある企業が迷惑を受けるという一面があって、しかもそれが強く出過ぎるというまた一般の感想もあるわけですね。そういうようなことで、私も常々いま御指摘の点につきましては関心を持っているのですが、なおよく検討していただくということにいたしましょう。
  65. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいまのはぜひ検討していただきたいと希望を申し上げておきます。  もう一つ通産省。東洋バルヴがいま倒産をして、関連企業八十八社もあって、これもまた大変な——東洋一の設備を誇るバルブ会社のようですが、通産省の指導としては、この会社に対してはどういう考え方をもって再建しようとするのか。もうやむを得ぬということでつぶれる運命をたどるのか。どんな状況ですか。
  66. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  東洋バルヴにつきましては、現在保全管理人によります会社の管理が行われておるわけでございますが、私どもとしましては、債権者との話し合いのもとで一日も早く更生計画の方に持っていけるように期待をいたしております。なお、これに関連いたしまして、関連のたとえば流通段階あるいはメーカーの段階につきまして、関連の混乱が起きないように周辺の対策につきまして慎重に対処いたしてまいりたい、かように考えております。
  67. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、日銀総裁せっかくお出ましでございますので、簡単にお尋ねをいたしますが、最近のマネーサプライの状況をずっと過去三年間の統計をここで見ながら感じるのでありますが、昨年末の状況一三・七%、それの前が一五・七。一五・七、この辺を上下しておる。大体名目経済成長率の範囲内ぐらいにマネーサプライが動いていると私は見ているわけでありますが、ただ、問題はこの一三・七%程度のマネーサプライの中で、前年よりこれだけふえた要素の中で、国債との関係でマネーサプライがふえたと思われるパーセンテージというのはどのぐらいを占めるものであるか。その中身をちょっと総裁にお聞きして、これ以上ふえていくということがかなり金融政策の弾力性を損なうな、すでにそういう限界点なのか、まだ余裕があるのか、その辺の見解をひとつ総裁に聞かせていただきたいと思います。
  68. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  十二月のマネーサプライ、平残で申しますと一三・八でございましたが、末残で申しますと一三・五でございまして、それに対する寄与率がどうなっておるかということでございますが、民間向け信用に起因するものが一一・九%、それから政府向けの信用に起因するものが四%でございます。政府向けの信用に起因するものの比重が五十年の後半から逐次増加いたしておることは御指摘のとおりでございます。これは金融機関が国債を引き受けるというかっこうでの消化になっておりますことから逐次その比重がふえてまいったわけでございますが、いまのところは民間資金の需要が比較的落ちついておりますので、総体としては一三%台におさまっておるわけでございまして、この程度のマネーサプライであれば格別問題もないのではないかと思っております。先々この民間資金がどうなるか、景気が回復するに従って資金需要がふえてきた場合にどうなるかという問題があるわけでございますが、当面の資金需給の動向から考えますと、近い将来には金融機関の民間向け貸し出しが急増するようなことはないやに見受けられるのでございまして、引き続きこの程度のモデレートなマネーサプライで推移するのではないかというふうに考えておるわけでございます。万一景気が急速に回復いたしまして民間資金需要が起こりました場合にはどうかという問題はあるわけでございますが、その場合は景気回復に伴い租税収入も増加することでございますので、それに対応して国債発行額もぜひとも減額をしていただかなければならぬ、そういう事態もいずれは来るかもしらぬという感じもいたしますが、目下のところは問題なく推移いたしておると考えております。
  69. 武藤山治

    武藤(山)委員 この五十一年十二月末の国債残高が二十兆九千億円。そのうち日銀が持っているのが三〇%、六兆三千億円。市中金融機関が四三%で八兆九千億円。大蔵省資金運用部が一五%、三兆二千億円。個人、法人が買っているのはわずか一二%の二兆五千億円。こういうことになっていますね。この市中金融機関の四三%というシェアが、やがて金融操作上大変な災いを起こす原因になって金融全体の動きというものがかなり弾力性を失ってくる、あるいは銀行の姿勢からいって、利益の追求から見てこういうものの保有はもはや限界であるというような時期が、もうそろそろ来ると思うのですね。結局、アメリカも、イギリスも、国債を大量に発行してどうにもならなくなり、いろんな試みをやり、苦しみに苦しみ抜いて、結論は、市場性を持たせて、結局証券を流通させる以外にないという結論になったわけですね。そうして現在はアメリカもイギリスもオープンマーケットで、国債というものは自由に流通させる。そうすると、金利の上がり下がりがある。政府は金利が高いときに発行したのでは負担が重くなるから公債発行量を減らす。そういうような市場におけるメカニズムを通じて自動調節をして発行量というものを決めていく。そういう歯どめになっておるわけですね、アメリカもイギリスも現在。そういう点を、日銀総裁として、やはり国債はそういうマーケットで自由に値づけしてもらって、政府も、御用金調達的な考えでなくて、自由市場における需給関係で決まってもやむを得ない、そこまでもう踏ん切る時期ではないか。また、いま、長期金利が比較的下がっているいまの時期で、そういう時期に来ているのではなかろうか、チャンスではなかろうか。  もう一つは、去年一年間の外国投資家が日本の社債を買った金額が十六億ドルありますね、約五千億円ですか、かなりの金額外人投資家が日本の社債を買っているわけですね。そういうものは、国債が発行されると、恐らくかなり国債を買うという傾向にもなると思いますね。ですから、私は、条件としてはいまの低金利のときに踏み切らなければ、国債を市場流通に切りかえていくという時期がなかなか、またなくなっちゃうのではないかという感じがするのです。これは感じです、私、素人ですから。日銀総裁としてその辺はどんな見通しなり判断というものをお持ちになっていますか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  70. 森永貞一郎

    ○森永参考人 私も、公社債の流通市場が速やかに正常化されまして、市場機能がフルに働くような状態が一日も早く出現することを心から望んでおるものでございますが、それにはやはりいろいろな段取りがあるわけでございまして、今日一挙にそこまで持っていくことにつきましては、障害がまだたくさん残っております。  そこで、私どもといたしましては、その段取りの第一番といたしまして、やはり、公社債発行条件の弾力化、市場の条件に適時フォローしていくという、その弾力化みたいなところから着手することが公社債市場の正常化をもたらす第一弾の手段ではないかと思うわけでございまして、その辺の要請もいたしてまいりたいと思っておりますが、大蔵省におかれましてもそれらの点はいろいろと考えておられるようでございまして、公社債市場の問題につきましては本格的な検討が始まるようでございますので、その結論にも大いに期待をいたしておるところでございます。
  71. 武藤山治

    武藤(山)委員 最後に、日銀総裁、この間総理大臣は公定歩合の引き下げをそろそろというニュアンスをお話ししたようですが、今度は日銀総裁は、公定歩合はまだ五十二年度予算の執行状況を見て考えるべき段階である。しかし、私ども素人が考えると、いまの不況状態が、繊維とか雑貨とか大企業製品以外のものはおしなべて不振であります。倒産もそういうところに圧倒的に多いわけであります。今度公共事業費の予算をふやしても、繊維工業などは全然おこぼれはありません。そういうようなことをあれやこれや考えてみると、やはり全体的に金利水準を下げるという以外にない。銀行の利益は先ほど申し上げましたように半期で三百五十億円、三百億円ともうかっているのですから、〇・二五%が限界で、それ以上公定歩合を引き下げれば、それは預金金利を引き下げる以外に手だてがないというのがいままでの発想ですが、もう少々金融機関に、そう長いことずっとやるわけじゃないのですから、景気がある程度浮揚し、上向きになり、企業の採算性が少々明るくなってくれば公定歩合をまた上げたっていいのですから、そういう短期間の間ですから、銀行の利益少々減ってもい一年間に六百億も七百億ももうける必要ないと思うのですよ、銀行は。資本金の二割ぐらいもうかればいいと思うのですよ、こういうときには。国民全体が苦しんでいるときなんですから。そういう点で、公定歩合をこの際いじって、財政にばかり景気浮揚、負担をかけないで、この際、財政金融両々相まって、心理状態を、みんなの気持ちをもっと明るくする、そういうねらいが、心理的な効果がやはり金融政策の発動によって私はもたらされると思うのですね。賢明な総裁ですから、恐らく相当情勢判断していると思うのですが、国民から見ると、総理大臣はもうおろすべきだということをおとといあたり言って、今度は総裁は、いや時期ではない、どっちを信頼していいんだかわからぬ。総理大臣が言うべきことでなかったとするなら言わなければよかったのですが、言ってしまったのですから、今度は総裁も何とか言わなければどっちを信用していいのだかわからぬ、こういうことになると思うのですね。総裁の見解をひとつ聞かせてください。
  72. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  公定歩合をいつどのように操作するかという問題は、少し極端な言い方をしますと、寸時といえども私の念頭から去ったことはないわけでございまして、いつもその問題が念頭にあるわけでございますが、いま直ちに具体的に公定歩合を引き下げるということは考えておりません。  経済情勢につきましては、ただいまお話しのように足踏み状態が長く続いておるわけでございますが、私はこの情勢が失速の危険をはらんでおるというようなほどの状態ではないと思っておりますし、政府で昨年来講じておられまする景気調整策、あるいは補正予算、あるいは来年度予算等によって相当のいい影響も出てくるわけでございまして、その面に期待をしておるわけでございます。  金融の面では、昨年春ごろから金融緩慢が大幅に進行しておりまして、量的にはいまや緩慢の度が大いに進んでおる。金利の方も市中金融機関の努力によりまして、緩やかではございますが、いまだに金利の低下状態が続いておるわけでございまして、いますぐに金融面から何らかのてこ入れをしなくてはならぬというふうには考えておりません。もちろん今後の情勢の推移いかんによるわけでございまして、そのときどきの情勢に即して適時適切な対策を講ずべきことはもちろんでございますが、目下のところは財政面からの施策の影響その他の経済情勢の推移を見守っておる、熱心に見守っておる、真剣に見守っておるというところでございます。
  73. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間ですから最後に、これが最後ですが、総理大臣に締めくくりで最後に、国際経済を少し質問しようと思って通告しておいたんですが、時間がありませんからやめます。  西ドイツは人口は日本の半分ですね、そして外貨準備は三百四、五十億ドル。日本の倍ですね。そして貿易も非常に強い。にもかかわらず、西ドイツは余り世界的になじられない。ダーティーフロートなんて言われない。攻撃受けない。日本西ドイツの倍の人口があり「それだけ生産力も多いはずであり、外貨準備は西ドイツの半分なのに、どうして日本が世界各国から攻撃をされ、ヨーロッパ、EC、アメリカから非難を受け、西ドイツは受けないのか。(「時間だよ」と呼ぶ者あり)いや、先ほど大臣がつまらぬことを言ったから二、三分よけいやらせてもらうよ、それは。そういう西ドイツ日本と比較した場合に、なぜ西ドイツは非難を受けないんだろうか。日本はどうしてダーティーフロートなどとかあるいはダンピングだとか言われて非難を受けるのか。それは白と黄色だという人種の違いだけじゃないと思うのですね。大臣は率直になぜだと思いますか、ドイツが非難を受けないのは、そして日本が受けるのは。その違いだけ聞いて終わりたいと思います。
  74. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ドイツが非難を受けるというか非難を受けないという状態じゃないと私は思うのです。多少どうも外貨の手持ちが多過ぎるじゃないかとか、まあいろいろ批判をする人がありますよ。ありますが、しかし外国のことというよりはわが国のことは一体どうだ、こういうことになれば、これは私は昨年上半期に世界経済がよくなった、それに乗じてわが国の輸出が大いに伸びたわけですが、その輸出の伸びたあり方について非常に批判があるんじゃないか、そういうふうにとらえておるわけです。たとえば一地区に一商品が集中的に輸出される、そしてその相手国に脅威を与える、こういうようなことが主たる原因ではあるまいか。そういうふうに考えまして、そしてそのことをなからしめるように、経済界に対しましても通産省に対しましても強く要請をしておるところでございます。
  75. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間ですから……。
  76. 坪川信三

    坪川委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後零時五十六分開議
  77. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず第一に、安定成長下における社会保障政策の基本について総理からお聞かせ願いたいと思うのですが、その前に、成長なくして福祉なしと、こういうことを佐藤総理がおっしゃったわけです。確かに成長が高ければ福祉政策をやるのにしやすいということは事実であります。しかし、一体わが国の場合にあれだけ高度成長政策を遂げたのにもかかわらず、福祉が前進をしたか、こういいますと、残念ながら余り前進をしていない。それはすなわち、内閣総理大臣の諮問機関に国民生活審議会というのがあります。これが、将来における望ましい生活の内容とその実現の基本的政策いかんという諮問に対して、昭和四十一年に答申をしておる。その答申の中で、千五百ドルに国民所得一人当たりがなれば、社会保障給付の基礎的保障分が九%になり、所得比例分を上乗せすると一六・六%になる。さらに二千五百ドルになれば基礎保障分が九・八、所得比例上乗せをして一七・九になる、こういうように言っているのです。ところが現在、もうすでに日本は一九七五年で三千七百七十ドル、こういう形に一人当たりの国民所得がなっている。しかるにまだ社会保障給付の国民所得における割合が、厚生省の統計では一九七四年に七・九五だと書いてある。約八%ですね。一体、なぜ三千ドルを超えたのにこれだけしか給付がないのか。今日のイギリスの社会保障体系は三百ドルのときになったんですよ。日本はその十倍の三千ドルを超えておるのに、依然として社会保障給付の割合が一〇%にならないというのはどこかに欠陥があるんじゃないか、こういうように思うんですが、総理はどういうようにお考えですか。
  79. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の社会保障政策は、これはそう進歩しないという認識は私は持っておりません。つまりわが国は、戦前には社会保障というような考え方が政策の、国政の中で占める比重というものは非常に軽微だった、社会保障というものが頭を出してきたのは戦後なんですから。私はずっと長い間国政に参画しておりますが、社会保障予算が一千億になったというのはちょうど二十年前ぐらいですよ。私は、一千億達成目標というのでずいぶん努力した。一千億目標を達成したというので乾杯したことがある。いまはどうですか。一千億が五兆六千億までなっておるわけです。大変な飛躍をしたわけであります。しかし、何せわが国の社会保障体系というものは発足が諸外国におくれておるものですから、形態はできた、形は先進国型でありますが、その中身においてまだ充実の足りない点がある、私はこういうふうな理解でございます。この上とも努力いたしますれば、これはかなりのものになる。特に年金なんかは、厚生年金あるいは国民年金、こういうものをとってみましても、これはアメリカよりもイギリスよりもかなりいい、こういうところまで来ておるのです。福祉年金なんかになりますと、いろいろな財政の事情、あの制度のできたいきさつ、そういうものから見るとまだおくれておりますけれども、これも逐次積み上げていきますればりっぱな社会保障体系というものが内容においても充実される、そういう認識でございます。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 体系は諸外国に比べてそう遜色ないけれども、内容がない、貧困である、こういうことをおっしゃっていますけれども、体系に内容をくっつければいいじゃないですか。じゃ、現在社会保障の対象のお年寄りがいないかというと、いるのですよ。七十歳以上のお年寄りで福祉年金一万三千五百円をもらっている人は七五%もいるのですよ。なぜ成熟をさせないのですか。どこの国だって制度ができたらすぐ成熟させているのですよ。日本のような国はないのですよ。厚生年金ができて——昭和十七年でしょう、今日すでに何年ですか。もう三十四年もたってまだ成熟しないなんという年金がありますか。これは仕組みが成熟さすようにしていないのです。そこに問題があるわけでしょう。  私は、今度の予算編成の過程で非常に遺憾に思いましたのは、なぜ福田内閣はお年寄りをいじめるのかということです。老人医療無料化の制限とかなんとか、みな年寄りの問題でしょう。大蔵省のごときは激しいですね。福祉年金を全然上げないで原案を出すなんてありますか。一体どういう感覚だろうかね。福祉年金一万三千五百円をそのまま据え置きにして大蔵省原案として示したでしょう。それはやはり年寄りに与える影響というのは甚大なものですよ。年寄りだけじゃないのです。われわれ年寄りに近い層だって、将来は医療は無料だと思ったところが、将来取られるのじゃないかと思ったら、いままでの生活態度をその面においては変えなければならぬですね。でありますから、こういう老人医療の無料化の問題であるとか福祉年金の問題は、政策として動かさないようにぽんと出す。それを最後の大臣折衝に使うなんということはもってのほかだと私は思うのです。それだけ動揺するわけですよ。坊大蔵大臣、これは一体どういうつもりでこの問題に対処されたのか。大蔵省原案に福祉年金の増額が全然なかったなんということは、私は許されない政策だと思うのです。
  81. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘の老人福祉年金につきまして、大蔵省が最初に上げなかった、こういうお話でございますが、福祉の関係につきましては、でき得る限り予算編成の真っ先にやりましたが、この点についてはまだ要求に決まってなくて、それで大蔵省へまだそこの具体的なものが来ていなかった、こういうわけでございます。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 新聞でも、それからいろいろ意見を聞いても、今度千五百円上げて一万五千円になるのだというのは、もう公知の事実だったのですよ。われわれはもちろん反対です。そういうのがなぜ原案に出てこないか。これは本当に親不孝予算編成ですよ。こういうことはわれわれ政治家として一番反省しなければならぬ問題です。予算のいろいろなやりくりをお年寄りの層に及ぼすなんということはもってのほかだと私は思うのです。これはひとつ反省を願いたい。もう一度答弁願いたい。
  83. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いまも申し上げましたとおり、私どももこれは尊重すべきものだ、こういう考えは持っておりましたけれども、しかしながら、初めの要求にはこのことについてはなかった、こういうことでございまして、それで要求がないというのは必要がないからないというのではむろんなかったろうと思いますけれども、具体的な要求がなかったから、こういうことでございます。
  84. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 例年の例によりまして、大体そういう大きなものはいままでもずっと数年間額で要求をしないで、実は枠要求をしてあるわけであります。したがいまして、ことしも枠で要求をいたしまして、最終的には厚生、大蔵両省の話し合いによって決めた、そういうことでございます。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 枠の要求というのは何ですか。社会保障予算の要求の枠を言っているのですか、厚生省の枠でもいいですけれども。その枠によってお年寄りの福祉年金が上がったり下がったりするのですか。
  86. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 老齢年金の問題とか、個別のものは全部要求を出しておるわけですが、非常に大きな問題でございまして、大体枠で要求をしておきまして、その中で額を決める、こういうようなことを例年やっておるわけですから、ことしもそういうことをやったということであります。
  87. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 厚生省の枠を要求して、そうして福祉年金については政治的に決める、そういう行き方が私は納得できないのですよ。そういうお年寄りの問題等は、非常に心配しているのですから、不安がっているのですから、さっさと政府原案というものを出して国民に示すべきです。それは最終的にたとえば健康保険の赤字をどうするかというふうな問題は、私はやはり政府の金を幾ら出すか、保険料を幾ら取るかという問題になると思いますけれども、福祉年金は全然保険料を取るわけじゃないでしょう。ですから、私はそういう行き方はけしからぬと思うのです。  そうしたら、福祉年金を今度千五百円上げて一万五千円になった算定の根拠は何ですか。
  88. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 年金の問題は全部横並びの問題もございます。御承知のとおり五十一年度では財政の再計算を行いまして、それぞれの年金の給付水準等は、相当大幅な改善をしたのは御承知のとおりでございます。したがいまして、今回は五十二年度では財政再計算はいたしませんから、五年に一遍という慣例もございまして、そこで大体物価水準等を加味して決めるというようなことをやっておりますが、物価関係がまあ大体九・四%ぐらいというふうに思われたわけでございますけれども、特に福祉年金についてはまあ額そのものも十分であるとは申せませんので、それを上回って一一%の額で一万五千円を最終的には要求をして一万五千円で決めてもらった、こういうことであります。
  89. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 昨年も実はわれわれは二万円ということを約束いただいたのが一万三千五百円になったのですが、その際も一万二千円が一万三千五百円になったのです。そうして、その際は生活保護は一二・五%上がっておる。今度は生活保護は一一・八%上げておるわけでしょう。福祉年金は一一・一ですよ。一体なぜ、いわばそのときの政府の恣意的な考え方一つで上がったり下がったりするのですか。全然基準もない。しかも今度は生活保護基準よりも低い基準で決めておる。私どもは生活保護も満足はしていないけれども、福祉年金というのは徐々にずうっと率を上げて——そして言うなれば昔は十年年金と同じ額だったのです。千円と言ったとき十年年金は千円だったのです。ところが、本来福祉年金は経過的にだんだん国民年金の標準に近づけていく。三木さんが主宰をされておるのかどうかわかりませんが、あのライフサイクルでは、とにかく将来は福祉年金は国民年金と同じ基準になる。政府は大体そういう方向でいっておるのじゃないかと思ったら、今度は生活保護よりもずっと下がった、こういう基準でいっておるわけですよ。それで、ちなみに福祉年金の上がる率を見ますると、福祉年金は確かに昭和三十四年に千円で発足しましたから、今日一万五千円ですから十五倍ですね。これは十五倍、大したものじゃないかとおっしゃるけれども、一般会計は三十四年が一兆四千九百五十億、今日が二十八兆五千億でしょう。十九倍ですよ。一般会計は十九倍。それからGNPも昭和三十四年が十三兆六千億、今日は百九十二兆二千億ですから、これだって十四倍。ですから、国の予算の平均でいったのではいけないのですよ、福祉年金は。こういう制度は漸次普通のカーブよりも上げていかなければ到達しないのです。それが差がだんだんつきつつあるというのはどういうわけですか。
  90. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 多賀谷先生よく御承知のとおり、年金は横並びであります。国民年金でも十年年金、五年年金、それから無拠出の年金とこうあるわけでございまして、掛金を掛けておる五年年金よりも掛金を掛けない福祉年金を上に上げるというわけにもなかなかいかない。したがって、掛金を掛けておる額のものについては九・四%を上げるということになりますから、たとえば国民年金の五年年金を見れば、去年は一万五千円でございましたがことしは一万六千四百八円。しかし老齢福祉年金についてはいまのような諸事情もございますので、ただ単に九・四%というばかりでなくて、さらにそこに上乗せをして一万五千円、こういうふうに丸めたわけでございます。その結果が一一・一%になりました、こういうことで御了承をいただきたいと存じます。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府の方はそういう理屈を立てておりますが、いままでの例は全然違うのですよ。五千円から七千五百円、一万二千円、その次は千円しか上げないのです。国民年金の五年年金は千五百円上げた。これだって全く基準がない。今度は同じ額の千五百円しか上げていないのです。しかし生活保護は昨年よりもよけい上げておるでしょう。ですから、こんなことを質問しておる時間はありませんけれども、とにかく率直に言うとそのときどきの風の吹くままですね。そこには何の目標もない。  これは金を出す大蔵大臣にひとつ答弁してもらいたい。こんな制度が一体あるだろうか。お年寄りの不安は一層増大しますよ。それはあなたの方は不安を増大さそうと思っておるのじゃないですか。どうなんですか。
  92. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お年寄りに対する福祉でございますが、御指摘のようにこれは尊重していかなければならないということはよく考えております。さような見地に立ちまして、五十二年度において、財政事情は全く厳しゅうございましたけれども、老人初め社会的に弱い方々でございますが、これは重点的にきめの細かい配慮を加えまして、福祉対策費といたしまして一兆三千八百五十二億円を計上し、五十一年度に比べまして二千八百億円、二五・一%の増でございますが増額をしておりまして、決して無力な老人にしわを寄せておるというようなことではありませんことを御理解願いたいと思います。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理、どうもこんなに将来が不安であれば、国民はやはりみずから生活防衛のために貯金しますよね。あなた方は、貯金をさして、それを原資として成長をさして、それをインフレによって目減りをさして、そうして高度成長を遂げたわけですよ。われわれの世代になると老人医療無料化だって本当はわからぬぞ、こういうことになれば、みんな一生懸命貯金しますよ。しかしその貯金は、残念ながらインフレになって目減りしていくわけですよ。どうも日本高度成長の姿を見るとこの方式ですよね。ある程度不安にして刺激を加えて貯金をさせ、そしてその貯金は実は個人で言えば目減りをしたのが金融機関あるいは生命保険を通じて産業に流れる。それから年金でわれわれが出した金は財政投融資へいく。こういうことで、そして多くが五分五厘−利子は六分五厘ですが平準計算の保険料としては五分五厘でいく、こういう日本経済のパターンになっておるのじゃないか。ですから、こう見ますると、これは大体厚生省で調査をさせたのですが、個人所得を一〇〇としますと、公的負担が日本では一三・七、可処分所得は八六・三、しかし貯金は二二・二、ですから貯金と税金、保険料を入れますと日本では三五・九、これは個人所得の公的負担と貯金です。それから西ドイツが三九・〇、イギリスが二八・六、フランスが三三・九、スウェーデンが四〇・一、結局公的なルートを通じて老後を見てくれるとかあるいは住宅を保障してくれるとか病気のときに困らないようにしてくれるというのが少ないために、やむを得ず貯金せざるを得ないのです。そういう仕組みになっておるでしょう。それは教育費も要るでしょう、住宅もストックもないでしょうけれども。そうすると、その貯金は、実は国民だけが貯金しておるのですよ。政府が貯金しておるわけじゃない。国民だけが貯金して、それはインフレで全部収奪されているという仕組みになっておるのですよ。ここに問題があるのじゃないですか、総理。一体総理はどういうようにお考えですか。私が言うこのパターンが間違ってますか。いままでの高度成長は全部そうでしょう。貯金をするのは国民ですよ。個人が一番貯金をしているのですよ。そうでしょう。その貯金は、年金の形でいけば積立金で財投に回って、そして安い利子で貸されている。そして一方、一般貯金や生命保険になれば、それも産業に主に回る。それはインフレで価値がなくなる。常に貯金をしておっても追いつかない。しかし、老後は不安だ、やらなければならぬ、こういう仕組みでしょう。それを否定されますか。
  94. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あえて否定するとは申し上げませんが、多賀谷さんのお考えは、個人と国を対立的に考えておるという点は私は賛成できませんね。つまり、われわれは個人生活もしておりまするけれども、同時に、そのうち何がしかを持ち寄って、出し合って共同生活をしておるわけです。社会国家であります。ですから、対立して物を考えるという考え方はどうかと思うですな。個人と国というものは、これは連帯協調ですよ。本当に相互一体の関係にある。それを、どうも国が個人をいじめて、そして国だけが何かうまいことをしているのだ、こういうような発想は根本から私の考え方とは違う、こういうふうに私は申し上げます。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国と言うのが悪いならば企業でもいいですよ、ことに大企業。融資を受けているのは、ほとんど大企業ですから、企業でもいいですよ。事業主でもいいですよ、逆に言えば。そういう形になっておるのです。第一、われわれが厚生年金の賦課方式を主張するのに、あなた方はなぜ積立方式を主張されるのですか。これはひとつ総理からお聞かせ願いたい、あなたは財政通だから。厚生年金についてわれわれは賦課方式賦課方式と言っておるのに、なぜあなた方は依然として積立方式とおっしゃるのか。まずこれからお聞かせ願いたい。
  96. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 一長一短ございます。ございますが、後世の世代の負担の問題等も考えて、日本においては積立方式の方がよいという専門家の結論に従って積立方式でやっておりますから、積立方式でやっておるわけでございます。
  97. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは答弁にならぬですよ。総理から……。いまのは答弁にならぬです。
  98. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一応現在の制度で定着をしておる、こういうふうに見ておるのです。しかし、いろいろ議論もありまするから、そういう方向の議論も踏んまえまして検討はいたしておるのです。私がその検討の結果についていろいろ聞いてみますと、賦課方式がいいか積立方式がいいか、まあその辺は実益のない議論となりつつあるというふうに承知しております。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実益がないというのは、だんだん金が足らなくなる、こういう意味でしょう。後代が大変だとおっしゃる。確かに年寄りが多くなるから、後代は大変でしょう。そうしたら、なぜ保険料を一般国民だけに積み立てさせるのですか。なぜ政府はしないのですか。政府はしてないのですよ。国民だけが三十数年間してきたのですよ。政府は保険料のときに全然出さないのです。そうすると今度は、逆に言えば後代の者は税金を出さなければならぬ、保険料も上がらなければならぬ、こういうことになるのですよ。全くあなた方の方は理論が通ってないのです。税金で政府も保険料の何割かを積み立てる。そしてそれがずっといくならば、一つの積立方式として体系をなしておるわけです。いや、政府はいつでも金を持っておるのだから、給付時に払いますよ、こう言うならば、後代の者は税金で出さなければならぬ、保険料も上がる、こういうことになるでしょう。しかも、被保険者が積み立てたのはだんだん価値が減っておるわけですからね。なぜそれをおやりにならぬのですか。ところが、国民年金はやったわけです。昭和三十六年からの積み立ては、保険料の半分を政府が国庫支出として出した。その都度出してきた。ところが、去年になって政府は積立方式をやめたのです。そして給付時に給付の三分の一程度を出します、こうなったんですね。私は、実に論理が一貫しないと思うんです。国民には、いま給付を上げたら後代が大変だと言う。政府みずからは責任を果たしていないんですよ。しかも、利子は御存じのように五分五厘で計算をする保険システムになっておるのです。御存じのように、いま利子を五厘上げますと保険料は一分下がるんですよ、長期ですから。利子を五厘上げると保険料は一%違うのです。でありますから、五分五厘の計算でなくて八分、国債の八分で計算をすると保険料は半分でいいんですよ、こういう状態になるでしょう。それは長期積み立てで、三十年も四十年も積み立てるのですから。それを政府は、自分の方は全然積み立てようとしないんですよ。しかも、それは安い金利で計算をし運用しておる。一体どうなんですか、総理大臣。これは大きな財政問題ですよ。
  100. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは負担の問題と裏表だと私は思います。たとえば、国民所得に対する費用負担の国際比較をいたしますと、日本はつい最近のもので二三・四%。ところがドイツが四八・五%、フランスが四八・一、イギリスが四二・九、アメリカが三七・二、こういうようなことで、要するに租税及び保険料等の合計額の国民所得に対する割合というものが、日本の場合は半分か六割くらいになっておるわけですね。したがって、そういうふうなことでありますから、負担をうんとふやすということならば、そのようなこともやればできないことはないんでしょうが、いままでの日本のやり方で、積立方式でやってきておるものですからそれでやっております。こういうことを言ったわけです。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 意味がわからないですね。私が言っているのは、あなた方が積立方式であるということをおっしゃっておるけれども、実際政府自身の金といいますか国庫負担は全然入っていないんですよ。それは給付のときに出すようになっておるんですよ。そうすると、後代の負担がなかなか多くなると言うなら、後代は税金でも出さなければならぬ、保険料にも出さなければならぬ、こういう形になるんですよ、私はこう言っておるのです、徹底しないじゃありませんかと。そうすると、インフレ目減りを意味がないというならば賦課方式にしたらどうですか、こういうことを言っておるんですよ。あえて言うならば、国民年金は厚生年金の轍を踏まないように、政府みずからが、保険料を拠出するときにそれに応じて国庫支出をしておったのに、それをおやめになった。これもまた一貫してないじゃないか。後代は大変だ、大変だと言うのに、全然一貫してないじゃないか、こういうことを私は聞いておるわけです。  そこで、時間がありませんから、私、説明しましょう。
  102. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ですから、要するに日本の場合は租税負担というものが少ないわけですよ。(「それは関係ない」と呼ぶ者あり)いやいや、それは関係あるんです。財源の問題と関係あるわけです。ですから、非常に少ない。しかしあなたのおっしゃるように、国が出さなければ今度は保険料をどんどんふやしていかなければやっていけなくなるではないかというようなお話があるわけですね。そうでなかったら国が出せ。国が出すか個人が出すかという話ですから、出すことはだれかが出すわけですから、結局国が出せば個人は少なくてもいいだろうし、個人がよけい出せば国は少なくてもいいでしょう。(発言する者あり)
  103. 坪川信三

    坪川委員長 静粛に願います。
  104. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 国の方が出すからには、やはりこれは税金か何かの形で取らなければ国は出せないのですから、赤字公債を発行して出すわけにはいかないんだし、ということになれば、負担の問題とも絡んでいる問題であって、保険料という形で出すか税金という形で出すか。保険料がうんとふえてきて大変だということになって、ともかく積立方式でもメリットがないではないか、賦課方式がいいじゃないかというりっぱな御議論のあることも承知をいたしております。したがって、この国民年金を含めた年金制度全体の問題についても、いま年金制度基本構想懇談会というのがございます。一年前から発足いたしまして、目下専門家が検討している最中なんです。したがいまして、皆さん方の御意見も踏まえて、ことし一年か、まあもう少しかかるかもしれませんが、そこでもう一遍洗い直しといいますか、再検討をしていこうという作業をいまやっておる最中でございます。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は財政運営に限って質問しておるのですよ。ほかのことを言わないでください。財政運営に限って私は質問しているのですよ。ですから、その財政運営について言うなら、なぜそういう方式をなさっているのですかと、こういうことを聞いているのですよ。政府みずから積立方式の方式をとっていないじゃありませんか。せっかく取りかかった国民年金の方はおやめになったじゃないですか。そうして、高齢者社会が来る、大変だ大変だ。大変だ大変だと騒ぐ。それよりも現実の年寄りを何とかしてあげたらどうですか。そうしなければコンセンサスが得られませんよ、後代の者だけに、われわれは今度は年をとったら見てくれなんて言えませんよ、いまの年寄りを見ていないのですから。いまのお年寄りは、七十歳から一万五千円で抑えて、おれのときは十何万円くれ、そんな理屈は通らないです。ですから、一体政府としてはどう考えているのか。もうそんなことは考えていない、前のしきたりだ、金が足らなくなったからもう積み立てはやめて、まさに国民年金は賦課方式にしたのだ。これでは議論にならないじゃないですか。政府は理論というものはないですよ。行き当たりばったり。それをどういうようにお考えですかと聞いているのです。総理から御答弁を願いたい。
  106. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 老人対策が十分でない、こういう問題ですが、私はその中心は何と言っても年金だと思うのです。年金について言いますれば、とにかく、わが日本はスタートは遅かったけれどもかなり充実してまいりまして、厚生年金なんかいま十万円年金でしょう。国民年金は、これは八万円年金。そういう水準まで行っておるわけですよ。ただ、おくれておりますのは、福祉年金、これは一万五千円年金が五十二年度において実現する、こういう段階です。ただこれは、あれができたときのいきさつ、そういうようなことから考えまして、そうにわかに国民年金、厚生年金と肩を並べてというわけにはいかなかったこの事情は、これは御承知だと思いまするけれども、しかし、いずれにいたしましても、一万五千円年金というものはもう低いに決まっております。これは生活の保障なんというような、そういうようなことは全然言い得ざる立場でございますが、これは逐次充実していかなければならぬ問題である、かように考えております。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも皆さん、やはり年金とか社会保障を基本的に勉強していただかないと、私の質問していることがよく御理解ないようですね。ですから、私、非常に残念に思うんですよ。これはこういうようになっているんですよ。  私が説明するとちょっとおかしいのですけれども、国民年金ができたときに、将来インフレになるじゃないか、いやそんなことはない、イギリスは百年の間ほとんど物価は上がらなかった、じゃあひとつ物価は上がらないという前提でつくりましょう。そうすると、積立金の運用はやはり高利回りにしたらどうか、いや、それは高利回りにすると私企業の生命保険だとか銀行の仕事を圧迫をするからそれはやめよう。しかし、それを安く低利回りで産業に貸したら日本経済は伸びていく、日本経済が伸びていき、国力がつけば、そのとき国庫負担をふやしたらいいじゃないか、こういう議論になっているんですよ、議論は。安く貸した、そうすると産業が伸び、国力がつくから、国力がついたときには国庫負担に弾力性を持たすべきだ、こういう議論になっている。ところが、国庫負担は一つもふやそうとしない。国庫負担をふやそうとしないで、もう立法の趣旨も何も全部没却をして、その日暮らしのような年金運営をしている、それが事実なんです。それは総理大臣は知っていられて言うのか、知らぬで平気で言っておるのか知りませんけれども、十万円年金になったじゃないか。十万円年金になった人は一体何人おるのですか。何%おるのですか。平均はどのくらいですか。それは実に哀れな人がおりますよ、厚生年金でも。一体、二十八年であなた方が計算する標準モデル以上もらっている人は受給者のうち何人おるのですか。
  108. 木暮保成

    ○木暮政府委員 お答えいたします。  九万円を超えておる者は現在の受給者の四二%でございます。(発言する者あり)四二%であります。現在の年金受給者の中で九万円を超えている年金をもらっておる者は四二%でございます。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そんなはずはないですよ。それは大間違いだ。
  110. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ちょっと御説明が簡単でございましたけれども、昭和五十一年九月に新規裁定を受けた人の中で、九万円から十万円に当たる者は一八%、十万円から十一万円の人が一七%、十一万円以上が七%でございまして、合わせて四二%でございます。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が言っているのは、いま厚生年金の老齢年金の受給者のうちで、一体九万円以上の人は何%おりますか、こう聞いているんですよ。
  112. 木暮保成

    ○木暮政府委員 一九%でございます。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうして老齢年金の最低は幾ら、平均金額は幾らですか。(発言する者あり)
  114. 坪川信三

    坪川委員長 御静粛に願います。
  115. 木暮保成

    ○木暮政府委員 厚生年金の場合には、五十一年三月末で平均年金額が五万五千六百五十五円でございます。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうですよ。平均が五万円、まだ下もいるのです、少なくとも三万三千円まで。ですから、これはもうひどいんですよ。それはモデルの一番いいところで、二十八年勤めて、そうして平均給与が九万何千円の人は幾らと、こうなるんですよ、奥さんを含めて。そんなものを一般がもらっていると思ったら大間違いですよ。そういうことを平気でぬけぬけと言うから、モデルなんというのもけしからぬと思うんですけれどもね。  そこで、これはまさに緒論で終わるようですけれども、いま税金で取るのも保険料で取るのも同じだなんて言っていましたけれども、税金で取るのと保険料で取るのは大違いなんですよ。それは国民年金税のような形で取れば別として、所得の再配分が税金の方が効くのですよ。税金の方が、いろいろな法人税も全部含めますから、再配分効果が税金の方が大きいのですよ。それは、あなた大蔵委員におられたからわかるでしょう。保険料よりもずっと再配分効果が大きいのですよ。ですから、私どもは、税金の国庫負担を増せ、こう言っているのですよ。保険料だけでは再配分に限度がある。ですから、所得の再配分を言うならば、まず公正な税金ということになる。いま問題になったのは公正な税金ですよ、国会で問題になったのは。ですから、公正な税金というのが問題になり、それから保険料で言うと、労使の負担のフィフティー・フィフティーというのが非常に珍しいということですよ。いまあなたは新しい資料でとおっしゃいましたから、恐らく一九七一年のILOが久しぶりに出した統計資料だと思いますね。この統計資料で見ると、労使の負担割合、政府の負担割合で、ことに労使の負担割合で、日本西ドイツ、イギリス、それからフランス、イタリアで、労が一番高いのは日本ですよ。すなわち、これは今度出たILOの保険料の資料ですけれども、労働者の方が、被保険者が三三・四、それと事業主は三一・二ですよね。そうしてかなり違うフランス等は、被保険者は一八・八、それから事業主が七〇・二ですよね。そしてフィフティー・フィフティーであると言われた西ドイツでも労の方が低いのです、被保険者が低い。労と言うとちょっと誤解がありますが、被保険者が低い、三九・七、事業主は四〇・〇。イタリアは被保険者が一四・七・事業主は六四%、こうなっておりますね。  ですから、問題は二つあるのですよね。公正な税制という問題、もう一つは保険の負担割合という問題。これが日本の場合は、被保険者に非常に不利である、過重である。ここに問題がある。その過重な被保険者にずっと積み立てをさしてきておる。そしていま申しましたように、安い利子で貸して国力をふやすんだふやすんだと言ったけれども、国庫補助の弾力性というものは全然認めてない、上げてない、これを私は説いておるわけです。(「国庫補助を積み立てないのはどういうわけなんだ、返事をせよ」と呼ぶ者あり)  そこで、総理、いま発言がありますけれども、なぜ国庫負担金は積み立てないのですか。あなたたちは、後代は年寄りが多くなって高齢者社会だ、こう言っているのに、なぜ政府は国庫負担を積み立てないのか。自分が総理大臣の間は、自分が大蔵大臣の間だけはやりくりをうまくする、こういうことしかないじゃないですか、率直に言うと。どうなんですか。
  117. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 なぜ国庫補助をふやさないか、(「なぜ積み立てしないかということ、それを聞いているのだよ」と呼ぶ者あり)それらの問題につきましては、この保険の問題も医療の問題も、いろいろな問題が出てきているのです、実際問題として。したがって、先ほど申し上げましたように、各党でもいろいろな構想等も発表されております。そういうものも踏まえて、田中大臣のときに年金の基本構想懇談会というものをこしらえて、そこで専門家にいまいろいろ検討さしております。そういう問題も含めて、将来のあり方については抜本的に一遍検討してみようということで目下やっておる最中でございます。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはうそですよ。それは全体的な年金問題については検討するということになっておるけれども、国庫負担率を、保険の拠出のとき出せという議論はどこにも書いてない。もうお手上げをしてそういう問題は議論になってないのですよ。私が言うところの問題は議論になってない。もう政府は金がない金がない、こう言う。政府は第一諮問しませんよ、そんなものは。もう政府は、保険料は国民から取るけれども、政府は出しません。あとはいつ金がなくなるかを待っておるだけです。そのときは賦課方式でいきましょう。こういうことしか議論になってないのですよ。いま政府のお金を保険料と一緒に前もって積み立てましょうなんという議論は一つもない。またあなた方も考えてない。そうでしょう。昨年やったばかりですから。昨年、いままで積み立てたものをもう積み立てないことにしたんですよ。それをまたもとへ返しますか。返さないでしょう。そんなのはもし役人が——役人はそんなこと教えませんけれども、大臣がそう思っておられると、それは大間違い。それは議論になっていない。  そこで私は、総理にお聞かせ願いたいのは、本当に国民だけの犠牲の年金積立制度になっておるということですよ。そこで、一体これをどういうようにするのか。私は、時間がありませんから具体的にお聞かせ願いたい。  第一、福祉年金を幾ら上げるか。一万五千円ではとても足りませんよ。生活保護だけいきませんよ。大体、福祉というのは何か。高福祉とは何か。高福祉というのは、具体的に言いますと最低基準をつくることですよ。高福祉というのは、最低基準をつくることというのが第一高福祉なんですよ。具体的にいろいろ議論をしてみるんだけれども、高福祉とは一体何だと言ったら、最低保障限度をつくることですよ。これが言われるミニマムの問題です。ですから、一体年金のナショナルミニマムはどう思っているのか。それから福祉年金はそれとどういうように連関をするのか。そうして福祉年金というのは、大臣にいまさら言うまでもないのですか、決して保険料を全然払っていない人ではありませんよ。かつて厚生年金時代から保険料を払ったけれども、期限がなかった人あるいは脱退一時金をもらった人、そういう人々がいま皆対象になっておるのです。それからもう一つの問題は、福祉年金というものは経過年金だから、制度がなかったんだから、あなた方は保険料を納めていないからというのでほっておくわけにはいかない。そのことはまた心理的にも思想的にも後代に影響しますよ。いまのお年寄りをそのままにして、将来賦課方式をわれわれが唱えても、後代の青年はとても応じてくれないでしょう。いま給付の少ないときにやらないで、そうして給付の多くなったときに賦課方式を言っても意味がないでしょう。応じてくれない。国民のコンセンサスを得ることができない。だから、いま給付が、全体的なお年寄りが少ないのですから、いまのうちにしないでどうしてやりますか、こう言っている。ひとつこれらをお答え願いたい。
  119. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 国の負担の問題は、財政の問題とも密接に絡んでいるわけですよ、実際問題として。たとえば、老人福祉年金でも、それは千円積み増しすれば六百億円かかるわけです。だから、財政の問題を離れて社会保障が全然一人歩きしてしまうなんということはあり得ない。そうなりますと、先ほど言ったように、国民所得に対する租税負担の割合という問題は、日本は外国の半分ぐらいしかない。ですから、それは国がうんと持つということになれば、どういうような形でその財源をこしらえるのかということも大きな議論になるでしょう、現実問題として。それから、いまのようなままでいったらば、保険料がどんどんふえるでしょうという議論もあるのですよ。ですから、そんなにぶん投げておかないで、去年からもう検討に入っているわけですから、年金問題については基本的なそういう幅広い問題も含めて、ひとつ専門家の間でいろいろ検討してください。それには皆さん方が提唱されているようなことも当然それはもう参考にして検討せざるを得ないわけですから、それを全部含めて目下検討中でございます。ですから、どういうふうにするんですかという結論についてはまだ持っておりません、こういうことを申し上げたわけです。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、私が言っているのは、財政のしわ寄せをなぜ年寄りにするのですかと言っているのですよ、初めから言っているのは。福祉年金千円上げて、これは六百億になることはあたりまえですよ。当然そういう計算になる。上げたらいいじゃないか。だんだん差がついておるのはどういうわけですかと、こう言うのですよ。だんだん差がついている。本来差を縮めなければならぬのに、だんだん差がついていくのはどういうわけですか。これを聞いておる。  時間がありませんが、私はとにかく、現実問題として、明治四十四年の四月二日以降に生まれた人は、自分は国民年金に入っていないけれども、やがて福祉年金がもらえるだろうと思っておっても、この人は永久にもらえないのですね、いまの制度では。  それからもう一つは、これはいま役場の窓口に行きまして、年金がいろいろ言われておりますから、私も入りたいと思います、三十五歳以上の国民年金対象者が行きましても、いや、あなたは入られても、二十四年掛けられても、老齢年金はもらえませんよ、途中でけがをされれば障害年金はもらえます、そうして御主人が亡くなって母子家庭になれば母子年金をもらえます、しかし、あなたは幾ら二十四年掛けられても老齢福祉年金はもらえませんよ、こういう返事なんですよ。一体こういう問題をどういうように処置するのですか。これはもう全く緊急な問題ですよ。窓口は困ってしまう。いまから二十四年掛けても一銭も老齢年金はもらえないのですよ。ですから、その人が来たら、受け付けようにも受け付けられぬでしょう。これは一体どうするのですか。
  121. 木暮保成

    ○木暮政府委員 先生お話のございましたように、昭和三十六年に国民年金をつくりましたときに、当時すでに五十五歳以上になっておりました人につきましては、拠出制の年金に適用することを除外いたしまして、七十歳到達と同時に福祉年金を差し上げる、こういうことにしたわけでございます。  それから当時五十歳から五十四歳までの方々につきましては、選択を認めまして、十年年金、その後五年年金ができましたけれども、そのいずれかに入ってもらうか、あるいは七十歳になると同時に福祉年金を支給する、こういうふうにしたわけでございます。  当時三十一歳から四十九歳までの人につきましては、これはもう二十五年の拠出をしていただく期間がございますので、その方々につきましては本来年金を適用する。しかし、その場合にも、六十歳まで保険料を掛けます時期に長い人と短い人がございますので、十一年ないし二十四年の特例をとったわけでございます。  で、そういう仕組みでスタートいたしたわけでございますが、その間に十分、いま申し上げましたように六十歳まで保険料を掛ける期間を見てございますので、保険料を掛けていただくことによりまして本来年金が差し上げられる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはわかっておりますよ。わかっておるから質問をしておるのです。要するに、昭和五年以降に生まれた人は二十五年掛けなければもらえないのですね。ですから、現実に窓口に来て、昭和五年以降に生まれた人が来て、いまから二十四年ほど掛けたいのですがどうしますか、いや、あなたは幾ら掛けたって年金はもらえませんよ、しかし、私は強制的な義務があるそうです、そうです、ですから、あなたは掛ければけがをした場合には障害年金をあげます、未亡人になった場合は母子年金をあげる、これでは答弁にならぬのですよ。全く不親切じゃないですか。そこでこれをどうするのですかということです。これはとりあえずの問題。
  123. 木暮保成

    ○木暮政府委員 大臣からお答えの前に、制度を御説明申し上げますと、国民年金に限らず、社会保険をつくりますときに……(多賀谷委員「わかっておるよ、そんなこと」と呼ぶ)強制適用ということにしませんと、社会保険の健全な運営はできないわけでございます。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そんなことはわかっている。知っているんだよ。強制年金になっていることは知っているのですよ。しかし、現実に言って、差し押さえしたですか。差し押さえしないでしょう。ああそんなことなら差し押さえしてもらえばよかったと思うでしょう。ただ差し押さえすることができるというだけで、現実はしてないでしょう。現実はしてないんだから、こんな年金がいろいろ問題になってきたときに、さて入ろうと思ったら入れない。それなら親切に差し押さえでもしてくれておったらもらえたのに、こうなるのですよ。強制年金だから言うのですよ。強制年金だから入らなければいかぬ。入らなければいかぬけれども老齢年金はもらえない、こういう強制年金がありますかと、こう聞いているのですよ。
  125. 木暮保成

    ○木暮政府委員 保険料の滞納につきましては、法律上当然強制徴収をすることになっておりまして、現実にも町村役場等にお集まりをいただきまして徴収をしておるわけでございます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全部よく知っていて質問しているのですよ。だから、私が聞いておるのは、どうするんですかと聞いておるのですよ。非常に窓口は困っておるのです。こういう問題が放置されておるのですよ、どうするんですかと聞いておるのですよ。これは重大な問題ですよ。
  127. 木暮保成

    ○木暮政府委員 いまお話のございます点でございますけれども、すでに二十四年しか掛金を納める期間が残っておらないという方につきましては、先生のお話のございましたように、障害年金とかそういうものしか受けられないわけでございます。そういう人たちにつきまして特別の措置を講ずることになりますと、保険料は年とってから納めればいい、自分の望むときに納めればいいということになりまして、国民年金の運営上非常に支障が出てくるということでございますので、現行のまま進めさせていただくのが妥当ではないかというふうに考えております。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理、こういう状態なんですよ。いいですか。いまから保険料を納めたい、国民年金に加入したいと言っても、老齢年金はもらえないのです。ところが、いままで進めておっても徹底していないですから、窓口へどんどん来るのですよ、最近。(「そういうことはないよ」と呼ぶ者あり)そんなことないですよ、私はずいぶん現場でそういうのを立ち会うわけです。それは地域によっては、非常に進んでおるところがあるが、移動性の激しい地域ですね、東京なんかほとんど進んでいないですよ。わりあいに定着した地域、余り人の移動していないところ、こういうのは、わりあいに隣組もあり町内会もあり、案外徹底しているのですよ、田舎の方は。ところが、移動性の多い大都市はほとんど徹底していない。ですから、自分の小さな地域だけで御判断になっても間違いがあるのですよ、これは。制度としてそういう制度になっておるのですから。ですから、そういう意味において、質問に私はちゃんと書いておったのですよ。そして説明したのですよ、こういう問題についてはどうするのですかと。これはひとつ早急に、私はこの総括質問までに答弁を求めたい。こういうのはどうするんだ。
  129. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先ほど局長が申し上げましたように、強制加入だけれども入らないでおった、しかし後になって、どうもほかの人はみんな入っちゃうので私も入りたい、それを無制限に認めるとこの制度そのものが崩壊しちゃうわけですよ、実際問題として。そうでしょう。それはみんなが払わないで、払わないでおいても後になってまとめて払えばいいということになれば、年々掛けるというのが原則なんですから、原則的にはこれはもう失格してもやむを得ない。しかし、現実の問題として二百万とか三百万とかという数字が過去にありました。昭和四十四年と四十八年にそういうのをまとめて例外的に加入させたという例があるようでございます。しかし、それはどこまでも例外でありまして、そういうことをちょいちょいこれからもやるんですということになれば、国民皆年金というものが徹底しないということのために、われわれといたしましては、原則論をこの際は申し上げるほかないと思っておるわけでございます。前にそういうことを二回ほどやりました。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それをやるのですか。前に二回やったから、またやるのですか。
  131. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ですから、それをちょいちょいやるということを私が申し上げると——原則としてそれはなかなかできないわけですよ。ですから、前にはやったことがあります、ありますから、どのくらいの数があるのかよく調べてみて、それは検討したいと思っております。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 よく調べてみてどのくらい数があるかと言うが、数を把握してないのです。把握しておったら言いますよ。把握してないのですよ。さっきのように、いや大体終わっておるという人もおる。厚生省だって把握していないです。ですから、これは保険経理がどうにも混乱をするなんということはないのでしょう。あなたに説明をするとまた時間がかかりますけれども、勤め人の妻の場合は、一年、二年掛けてももらえるのですよ。それは空期間というのがある。ですから、勤め人の妻は、国民年金に任意ですから入れば、二年分の国民年金でくるのです。ですから、強制年金といったって、差し押さえするわけでもないし、十分知らすわけでもないのに、いままで放置しておって、PRするわけでもないでしょう。役場の回覧くらいですよ。そういう程度で、今日非常に問題になっておる。しかも個人から言えば非常に深刻ですよ。ですから、これは総括質問中にひとつはっきりした答弁をお願いしたいと私は思うのです。それはどうですか。
  133. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 よく検討いたします。(「総括中にということなんですよ、どうですか」と呼ぶ者あり)ですから、総括中に検討してお答えをいたします。
  134. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 妻の年金権その他もありますけれども、かなりそのことは論議されておりますから、省略したいと思います。  年金制度の抜本的な問題については、実は質問したかったのですが、こういうようなていたらくですから、質問をしても余り効果ある答弁は得られないと思いますから、これも省略したいと思います。  次に、医療関係についてちょっと質問いたしたいと思います。  老人医療無料化の問題について、まあいろいろ議論があっているわけですが、与党といいますか、あるいは大蔵省というか、一体老人医療無料化を制限するとかというのは、根拠はどこから出てきているのですかね。これをひとつお聞かせ願いたい。
  135. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 老人の医療問題につきましては、いろいろな議論が行われましたが、終局的にはこれは現状どおりとするということで、今回の予算は決定をしたのでございます。
  136. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 老人医療無料化を制限しようというのはどういう根拠で議論されておるのですかと、こう聞いているのです。
  137. 坊秀男

    ○坊国務大臣 老人医療無料についての所得制限ということをお聞きになっておるのかと思いますけれども、これはできるだけ恵まれない、弱い老人の方に対して福祉を実行していくということでございまして、ある程度現社会においてまあまあ恵まれていないということはない、恵まれていると見てもいいであろうというような方々に対しましては、これを制限する、こういう趣旨でございます。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 福田赳夫編という最近出た木がありましたね。ちょっと私、ここへ持ってきてないのですけれども、あの中に、老人医療無料化をやったことは痛恨のきわみであると、こう書いてある。私はこれはひどい内容だと思う。老人医療無料化をやったのは痛恨のきわみであると書いてある。これは総理は御存じですか。
  139. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 存じません。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 あなたが編集責任者ですよね。恐らくあなたの派閥の方で政策研究なさった。そして、あなたが序文も書いて、あなたの責任で出した。それに老人医療無料化は痛恨のきわみである。さらに、保育所について、夫婦共かせぎで保育所に自動車に乗ってきて子供を預ける。そして安い保育料の保育所に来る。市町村は負担に耐えない。これは無法きわまるものであると書いてある。こんな無法がまかり通る、けしからぬと書いてある。私はどうも感覚がおかしいと思うのですよね。いま勤め人だって遠くにいますから、子供を預けるときは自動車に乗ってきて、そして預けて、帰るときにまた連れて帰るのですよ、夫婦共かせぎですからね。そんな保育所に預けることは無法がまかり通るものだという、その感覚がおかしい。それもあなたの責任ですよ。それは最近出た本ですね。あなたは本が出たことは御存じでしょう。あれは名前はどういう本でしたかね。
  141. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本の名前は承知しておりませんが、こういう性格だけは承知しております。つまり、勉強会がありまして、その勉強会グループは名前が八〇年委員会、そしてそのグループが学者だとか評論家という人からレクチュアを受けたわけです。そのレクチュアを速記して編集したという性格のものでございます。
  142. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いや、どうもあの文章から言うと、私はそのレクチュアをそのまま載っけたとは考えられないですね。それはレクチュアを受けたでしょう、受けたけれども——残念ながらいま持ってきてないので、会館に置いてあるのですけれども、その二点、私は社会保障のところだけ見たのですけれども、この感覚、発想自体が大変問題だという感じを受けましたよ。  そこで、お年寄り医療の無料化というのは、お年寄りにとってはまさに最近にない福音なんですよ。これはまさにいまお年寄り福祉の頂点にあるのです。ですから、いろいろ問題はあるでしょう、あるでしょうけれども、これを後退させるようなことはさしてはならぬというのです。それはいろいろの人もおるでしょうからあれでしょうけれども、私は、それについては、病院がかなりベッドがふさがったらナーシングホームをつくるとかハーフウエーハウスをつくるとか、そういうものをやればいいのですよ。そうしてお年寄りの場合は比較的慢性病が多いわけですから、急変しないわけですから、そういうようないわば中間的な、老人ホームと医療機関の中間的なようなものをつくればよい。そういうものをやはりつくるべきですよ。ですから、私はそういう意味においてはひとつぜひそういうようにしていただきたいと思います。これについて、ナーシングホームとかハーフウエーハウスはいまどういうようになっているのですか。研究はどうなっているのですか、予算は。
  143. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 老人医療に関連いたしまして、いわゆる中間施設をどのように整備するか、あるいは訪問看護等の事業をどうするか、いろいろ関連施策がございます。私どもは、そういう関連施策すべてを含めまして、五十三年度予算を一応目途といたしまして、現在関係懇談会を中心に審議を重ねておるところでございます。
  144. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 問題は、七十歳から無料化になっても、定年は五十五歳ないし六十歳。そうすると、問題は六十歳から七十まではどうなる。これは国民健康保険あるいはまた息子の扶養家族、こういうことでしょう。高負担になる。ですから、退職者医療をどうするかという問題です。先般早川厚生大臣が、退職者医療については健康保険組合において五年間任意継続をし延長をする、それが負担をするのだということを記者会見で述べられた記事を見ました。渡辺さんはどういうようにお考えですか。
  145. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 退職者医療の問題も、非常に実は制度の根幹に触れる問題でございます。御承知のとおり、保険組合等で退職をなさった方が職がなくなってから国民健康保険に入るとそのために国民健康保険は大変な赤字になるといって、これは保険を一本化すべきだという議論が一方にございます。ところが他方においては、そう言っても歴史がそれぞれあるものをすぐに一本化と言ってもなかなかできないではないか、したがって、ともかく会社でも五十五まで勤めさせて、丈夫なときにたくさんの掛金を掛けさせて、特に医者にかからずにやめたのだから、その人をほっぽり出すのは気の毒じゃないか、しからばその保険組合で何年か見てやったらいいではないか、こういう議論もございます。ところが、事業者の方では、仕事をやらない人の保険負担まではできないという議論もあります。しかし、このままではいずれにしても困ることでございますから、これは老人医療の問題と絡んでいることでございまして、いずれも制度の根幹に触れる問題でございますので、やはりこれはことし一年かけてそれについての検討をしたい、こういうことで目下鋭意勉強会をやっている最中でございます。
  146. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはぜひまとめていただきたいが、ただ早川厚生大臣の話は健康保険組合ですね。健康保険組合は大体千名以上の企業でしょう。千名以上の企業は五十五が定年でしょう。そうすると、その人は五十五でやめて今度は政府管掌の健康保険に行くでしょう。中小企業に行く。中小企業に行って入りますから、何も五年間見てもらわなくても、五年間は中小企業の政府管掌の健康保険法の適用を受ける。  ですから、日本の場合は、年金問題でもそうですけれども、後から労働大臣にも質問したいと思いますが、定年というのがあらゆる制度を乱しておるのですよ。ですから、年金でも最終の給与の標準をとればいいじゃないかという、公務員のようなものをやろうとしても、残念ながら定年になって他の企業に行ったら賃金が半分ぐらいになるでしょう。ですから、最終の賃金は非常に安い。ですから、これも年金の財源にとれないのですね。民間の場合は非常にむずかしい。ですから、これは統一してやらなければなりませんけれども、退職者医療の問題は、老人医療無料化の問題とともにぜひひとつ検討をする必要がある。それで早く結論を出してもらいたい。私は来年度を期待しておきたいと思います。  そうして、あなた方はただ財政から物を言うからいかぬですね。国民健康保険が赤字だからどこかへ移そう、そういう物の発想じゃだめなんですよ。人生で長い間勤めておって、そして一生懸命保険を納めて大事な病気のときに役に立たないような健康保険があるか、こういう発想でなければいかぬですよ。どこか持ってくれぬかと言って、年寄りの費用負担をどこかで譲り合っておるような、それでは物の考え方がだめなんですよ。ですから、児童手当のように、いまおる労働者を雇っておる賃金の何%というのをいまの企業から取ってもいいのですよ、過去を言わないで。要するに、健康保険というのは短期保険じゃないということですよ。長期保険である。一生を見る保険である。こういう物の発想に立って制度の改革をぜひやっていただきたい、こういうように思います。  次に、救急医療について、今度は七倍予算をふやしたというのですけれども、問題は、これは残念ながらものすごい不採算医療ですね。そうして二次、三次の救急体制の整備というものがなければこれは非常に困る問題ですね。ですから、一体どうするのか。  それから、救急医療については残念ながら根拠法がないのですね。あるとすればそれは消防法ですね。救急患者が出た場合には搬送するという、その義務が消防法で市町村に課せられているのですね。そして基本の医療法にないのです。これらを一体どういうようにやるのか。  現実に具体的に言いますと、越谷市というのがあります。昭和四十年には人口が七万六千人。今日二十万人ですね。ですから、お医者さんが今度できた病院の三十三名を含めて六十七人しかいない。その病院がなかったときは、朝の二時から子供の順番をとっておった。朝の二時からお母さんが行って子供の順番をとっておった。ところが、これはどうしても病院が必要だというので病院を建てようとしたら、医師会からいろいろ条件がついた。結論的にはそれは話し合いができた。話し合いができたけれども、一応お医者さんの紹介がなければ受け付けてはならないとか、あるいは婦人科はあるけれども産科がないとか、あるいは脳外科はあるけれども整形外科がないとか、救急医療の場合は入院さしてはならぬとか、いろいろ条件がついてきた。ですから、これは当然赤字になるわけですね。そこで、五十一年の一月十二日にオープンしたのですが、この十二月までに、建築費も赤字があるのですが、運営費として十一億四千万円ぐらいの赤字になっている。これはとても市町村としては見切れない。こういう状態であるが、四十九年度に病院のたな上げ債をやりましたね、こういう処置ができるのかどうか。これは、救急医療の問題は相当不採算ですからね。ですから、これを一体どういうようにするのか。これは厚生、自治省からひとつお聞かせを願いたい、かように思います。
  147. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 救急医療の問題は非常に大きな問題だと存じます。まして週休二日制というようなものを迎えてまいりますと、やはり医者がいないというのは大変なことですから、これはやはり整備をしなければならぬ。最近の統計だと一年間に百四十万件が救急車で運び込まれるという例があるそうです。しかも、そのうちの半分が実は内科。いままで救急医療というと、大体交通事故とかそういうふうにしか思っておりませんが、内科が問題であって、したがって、まして週休二日制等をしかれると内科の問題をどうするのだということでございますから、厚生省といたしましては、先ほどお話にもありましたように、去年の四倍近い予算を確保いたしまして、第一次、第二次、第三次というような医療体制をこしらえてやろう。ところがこれには法律がない。法律で強制的にやらせると言ってもなかなかできない。そういうことから、やはり助成したり融資をしたり、あるいは理解と協力に基づいてこれはやっていくほかない、こういうことでやっておるわけでございます。  また、起債の問題等については他の省から答弁をすることと存じます。
  148. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  救急病院の病床、ベッドにつきましては、特別交付税で十分の配慮をいたしております。
  149. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 厚生大臣は、法律がないから予算で助成処置をしております。法律をつくればいいじゃないですか。あなた方は一国会に二百も法律を出すのですから、法律をつくればいいじゃないですか。  それからもう一つは、立法者でないような話をしてもだめですね。立法者ですから、あなた方は提案権があるのですから、出されればいいでしょう。  それからもう一つは、交付税で見てあります。これは足らぬから話をしているのですよ。ですから、一体どういうように具体的にされるのか。四十九年度のような処置、これは縁故債でしたけれども、これは運用部資金から借りることはできないか、これをお聞かせ願いたい。
  150. 首藤堯

    ○首藤政府委員 公立病院関係で救急医療等を扱います場合には、御指摘のように非常に不採算性が強うございますので、その病床数に応じまして一定のルールを設けまして、特別交付税で配分をしております。  それからまた、建設費につきまして起債を充てるわけでありますが、病院全般につきましての建設につきましても、必ずしもその建設費を完全償還できるだけの採算性というものが維持しにくうございますから、これもまた施設費には一定のルールで交付税を充てる、こういうかっこうにいたしておりまして、これは十二月の配分の際にもうすでに配分をしたところでございます。
  151. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 累積赤字について四十九年特別処置をしたでしょう。そういう処置はされないのですか。それをしてもらいたいということをさっきから聞いているのです。
  152. 首藤堯

    ○首藤政府委員 御指摘のように、四十九年度に病院全般の赤字につきましてのたな上げ債の措置はいたしました。ただいまのところその四十九年度の措置、それの継続があるだけでございまして、新たに出ました赤字につきまして、再びこのような措置をとるかどうか、これは公立病院全般の運営に関しての医療費問題等の関連もございますので、目下検討中でございます。
  153. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 厚生大臣は控え目に四倍とおっしゃったけれども、七倍ですよね。それはいいのですけれども、救急医療というのはやはり不採算ですよ。ですから、いままでの赤字はさらに増大をしてくる可能性がある。ですから、これは十分に赤字対策を起債等で見てもらいたい。ですから、私が言っているのは、四十九年と同じような処置をしてもらいたい。いま検討するということですから、これはぜひ表裏一体のものとしてお願いしたいと思うのです。  そこで、雇用政策とかエネルギー政策がありましたが、これはとても大きな問題ですから別の機会にやりたいと思います。  そこで、かなり個別的な問題に移りたいと思います。  昨年ILOでILO百四十四号、国際労働基準の実施を促進するための三者協議に関する条約というものが採択された。この条約は非常に特徴がありまして、いままでの、ILOからいろいろ総会前に出るテキストに対する政府の見解を出すときの協議であるとかあるいは批准してない条約、まだ実施されてない勧告について、それらの実施及び適当な場合には批准を促進するためいかなる処置をとることができるかを検討するため適当な間隔で再検討するということで、政府と使用者と労働者の三者協議会をつくる手続を決めておるのです。こういう条約なんです。この条約は、連帯協調をおっしゃる福田内閣にはうってつけの条約じゃないかと思うのですけれども、これは批准されるわけですか。
  154. 石田博英

    ○石田国務大臣 この条約は昨年成立した条約でございます。そしてその条約の中で指摘されております問題の中でなお検討を要する点もございますし、それから実際上の運営に当たりましては、ほぼその条約と同じような行為はとっておるわけであります。制度として確立しているわけではありませんが、実際上は運営上そういうことをやってまいっておるわけであります。したがって、検討を続け、問題点の解明、それからその条約の意図している字句等についての理解等にいま努めておる段階でございます。各国ともそういう段階で、現在のところ批准しておる国は一つもございませんが、検討を加えた上で善処をいたしたいと思っております。
  155. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この条約採択に当たって労働者、使用者は賛成しておるのですが、日本政府は棄権しておるのですね。なぜこういう条約に棄権するのですかね。その政府の態度はおかしいんじゃないですか。
  156. 石田博英

    ○石田国務大臣 勧告の方は賛成をいたしておるわけです。条約となりますと、字句その他意図するところの諸点について明確に理解をしておかなければならぬ点もございますので棄権をしたわけであります。  実際上の運営は、これは多賀谷さんの御存じのとおり、政府が勝手に労使と相談をしないで提案をしたりテキストを配ったりなんか、そういうようなことはやっておりません。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはり国際場裏に行って、労使が賛成しておるのに政府は棄権だという。これは余り政府に強い義務づけをしておる条約じゃないですよ。(石田国務大臣「わかっていますよ」と呼ぶ)わかっているんなら何も棄権なんかしなくとも、勧告に賛成するぐらいで、なぜ条約に賛成しないのですか。もう実に官僚的ですよ。大臣が石田さんじゃなかった時代ですから言いませんが、しかも、これは重要ですよ。未批准の条約または実施されてない勧告について三者で検討する、これは非常に重要で、やってないでしょう、いま。——いやいや、時間がないから続いて質問しますが、やってないのですよ。それでILOができまして五十周年のときに、ぜひこの基本条約は批准しなさいというので十七条約の指定があります。日本が批准した条約は非常に少ないのですけれども、やはり百三号の母性保護条約とか、それからすでに九十一カ国が批准している、これはストライキ権に関係あるのですが、強制労働廃止条約とか、それから百二十二号、雇用政策条約とか、こういう条約は率先して批准すべきですよ。一体どこが批准できないのですか。私は、そういう点にやはり協議会をつくってやらなければならない理由があるのじゃないか、こういうように思うのです。
  158. 石田博英

    ○石田国務大臣 百四十四号の中で指定されております中で、ILOにいろいろ発議したり提案をしたりあるいはそのILOからの提案に対する日本側の態度、政府の態度を決めるときには、実際上の運営としてやっておる、こういうことを申し上げたわけであります。  それから、いまの十七条約のうちで、八つは御承知のように批准しております。そしてそのうちの二つ——一つは条約そのものが改定になってしまっておるので、これは消えてしまいます。それからもう一つは植民地に関するものでありますから、これも日本には植民地はありませんから、ないわけです。残りの御指摘の条約については、それぞれ国内法の関係で、労働行政としての実際上の運営ではほぼ満足するようなことをやっておりますけれども、国内法との関係がいろいろございます。その国内法との具体的な関係についての答弁は、ひとつ事務当局にさせていただきたいと思います。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がありませんから結構ですが、九十一カ国が批准しているような強制労働廃止の条約をいまだに批准していない。そうして婦人年間であったあの時期においても母性保護条約が批准されてない。こういう条約は国内法を直して率先して批准すべきですよ。なぜできないのですか。私はこういう条約こそ石田さんの時期に、母性保護はあるいは両方かかるかもしれませんけれども、基準法の改正が多いですけれども、これはぜひひとつ批准を進めてもらいたい。これを御答弁願いたい。
  160. 石田博英

    ○石田国務大臣 ILOの条約はできる限り批准するように努力をするのが、私、たびたびこの役所をお預かりいたしました基本的な考え方でございますので、そういう方向に向かって検討を加えてまいりたいと思っております。
  161. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ひとつこの百四十四号条約は早急に批准してもらいたいと思うのです。これはいいでしょう、勧告に賛成しているんだから。
  162. 石田博英

    ○石田国務大臣 これはまだ去年できたばかりの条約でございまして、そして世界中でどこの国もまだ批准していないのです。で、われわれの方としてもその条約に書いてありまする字句その他について十分理解をした上で、書いてあること自身、別に大してむずかしいことではないから勧告の方で賛成をいたしたわけでございますが、条約となりますと、いろいろな拘束力を持ち、国内法との関係、制度との関係を配慮しなければなりません。しかし、先ほど申しましたように、ILOの条約はできるだけ多く批准をするように、またその精神に沿って労働行政を進めるという基本的な考えには変わりございません。
  163. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ひとつぜひ早く批准するように、この条約くらい日本が最初に批准してみたらどうか、こう思うのですけれども、要望しておきます。  そこで、さっきの本は「続・これからの日本祖国新生論 福田赳夫 一九八〇年政策委員会」、この本ですよ。そして私が読みましたくだりは「問題だった老人医療の無料化」ということで、最後に「いわゆる「革新自治体」が無料化を掲げたことに端を発して、大勢がなだれを打っしまったのだが、いまわれわれは、このことを痛恨こめて反省しなければならないと思っている。」、こういうことが書いてある。それからさらに、「「無法」がまかり通る現状」というところで、保育所の話があって、こうしたいま私が申しました子供を保育所に預けるという、「これはもう「無法」と呼んでさしつかえないものである。」、それからお年寄りがベッドを長期占拠していると書いてあるのですが、「こうした「無法状態」を野放しにしておいて、社会的公正を唱えなくてはならないということは、実際、恥ずかしいことでさえある。」、その題は「「無法」がまかり通る現状」です。私は、どうも福祉に対する感覚を疑わざるを得ない、こういうように思うのですけれども、総理はどういうようにお考えですか。
  164. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はそれを読んでおりませんので詳しい論評はできませんけれども、いま多賀谷さんが御指摘になった部門につきましては、多賀谷さんに近い感触もちょっと感ずるわけでございますが、いずれにいたしましても私はその著述につきまして責任を持っているわけじゃありませんから、その点は誤解のないように御理解願います。
  165. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで、独禁法について質問したいのですが、田中通産大臣は一月二十七日、関西の財界人との懇談会のあと記者会見において、企業分割条項を盛り込むことに否定的な見解を打ち出したと新聞は書いておる。そうして福田総理は二月九日の本予算委員会における答弁で、日本のように国土が狭く資源に乏しい国では、ある程度の寡占体制はやむを得ない、素手で世界二、三位になった企業がある、しかし大企業のビヘービア——ビヘービアとおっしゃった。これは振る舞いですね。これが社会に害悪を及ぼすのは制限しなければならない、こういうように言われておるのですが、一体自民党が提案をしてきたあの営業の一部譲渡の条項について、この個所は修正してないのですよ。これは政府提案ですよ。これは一体賛成なのですか反対なのですか。
  166. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  多賀谷委員からの御質問でございます関西におきます私の発言でございますが、誤解があるといけませんので、はっきりと申し上げておきます。  ただいま独禁法の問題は、企業の自由競争、公正な取引という点で、目下各党におかれましても、また政府関係省庁におきましても真剣に検討をいたしておるような次第でございます。私ども通産行政に携わる者といたしましては、企業の活力という点におきまして、この厳しい国際場裏において、あるいはまた国内の景気対策においてぜひとも活力を培養するということだけが最も関心事でございまして、同時に関係各省庁の鋭意検討いたしておることにつきましては、大いに賛成をいたしておる次第であります。
  167. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆる問題の営業譲渡条項につきましては、ただいまのところ賛成とも反対とも申し上げかねます。目下各党の意見を聴取しておる、その調整段階である、かように御了承願います。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理府長官おられますか。これは御存じのような経緯で五党共同修正案が出たわけです。これは衆議院を通過したのですが、その後に、昨年、政府の方で五党修正案とは違った法案を出された。なぜ改変をして出されたのか。出された個所とその理由、これをお聞かせ願いたい。
  169. 藤田正明

    藤田国務大臣 多賀谷先生御承知のように、七十五国会で出しました法案につきましては、これは衆議院では通りましたけれども、参議院に行きまして廃案になったような次第でございます。これにつきましては、参議院内部におきまして、特に自由民主党におきまして相当な反対があったということは御承知のことだと思います。したがいまして、七十七国会に三つの点において改正を加えて出したわけでございます。一つは違反カルテルについてこれを除外いたしました。と申し上げますのは、「影響」という言葉がこの中にございますけれども、この「影響」が原状回復、現下の原状回復命令にまで拡大解釈ができるというふうな意見がございまして、これはやむを得ず削除した次第でございます。  それから二番目は、独占状態に対する措置。これに対しまして、これまた各種の議論が沸騰いたしまして、なかなか一致いたしませんので、これまた削除をさしていただきました。  それから第三番目は、審判手続及び訴訟に関する規定の整備でございますが、これは審判手続と訴訟をより公平にいたすべく改定をいたした次第でございます。  この三つの点を改定をして七十七国会に提出し、廃案になった、こういう次第でございます。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、率直に言いますと、自民党の皆さんは勉強をしないで反対しておるんじゃないかと思うのですね。この条文は、総理が言うとおりになっているのですよ。弊害があった場合には、その弊害を制限しなければならぬ。これはよく企業分割、企業分割と言いますけれども、この条文は構造規制だけではないのですよ。どうも条文を十分熟知をしないで、いやあれは構造規制だ、そしてあれは分割だという観念で反対しておるんじゃないか。これはそういうようにできてないのですよ。  これは御存じのように、まず一社が五〇%、二社で七五%の企業集中度、そうして新規参入が困難である、それからあとは行儀が悪い、相当期間需給及び費用の変動に照らして価格上昇が著しい、そうして価格の低下が僅少である、さらに標準を超える率の利益を得ておる、それから標準よりも著しく過大な販売費用とか一般管理費を支出して独占状態をつくっておる、こういうものが営業譲渡の対象になるんだ。ですから、それはまさに構造的な問題、市場行動の問題、それから市場のパーフォーマンス、成果の問題、この三つをあわせて規制しているのですよ。それをただ大きくなればあれは分割をするのだ、そんなことは全然書いてないのです。これは大きな企業が悪いというのじゃない。大きな企業で行儀の悪い、そういう弊害を及ぼすような場合に初めて対象になる。  それでもう一つ条件があるのですよ。それは国際競争力の問題が書いてある。国際競争力を阻害するような場合は困る。ですから、あらゆるところに条件がちゃんとついておるのですよ。それでなぜ反対するのですか。構造規制なんて言って分割が大きな問題になっておるが、問題になっておるのは分割じゃないのですよ。いま申しましたように市場構造とそれから市場行動と市場の成果と、この三つを一体にして営業の一部譲渡等を命ずることができると書いてある。大きくなったらそれを分割するのはけしからぬ。そんなことはどこにも書いてない。一体、なぜ総理は決断をされないか。総理、書いてあることはあなたがおっしゃることですよ。要するに、そういう大きな企業が害悪を流した場合に初めて制限する、そうなっておる。どうなんですか総理、決断をしなさい。あなたはよく読んでおるのですか。
  171. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いずれにいたしましても、私は、この国会でこの問題の最終処理というか、決着をつけたい、こういうふうに考えているのです。そうなりますと、国会に提案をした、後でごたごたが起きる、こういうような状態なら決着にならないですよ。そこで、事前によく根回しをいたしまして、国会に出したならばさほどの議論もなくこれに全員が御賛成願えるような状態をつくりたい、こういうふうに考えているのです。私は野党の党首と会談した際に、野党の皆さんのおっしゃることはよく承知しました。問題は与党の方であります。与党の方だって御賛成を願えなければこの法案は成立しないのですから、そこにわれわれの、私の、並み並みならざる苦心が存在する、こういうふうに御理解願いたいのであります。いませっかく意見を調整中であります。あなたのいまの企業の営業譲渡条項、これなんかも利害もよく承知しております。いませっかくそれらの点も調整中である、かように御了承願います。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはひとつよく理解をしていただきたいと思うのです。非常に苦労をしたのですよ。ですから、ただ分割だとか、大きくなったものは分割するのだ、そんなことは全然書いてない。そしてもう一つは、さっきの第七条、カルテルの場合の「影響」ということになれば原状回復命令は出せるのじゃないかという危惧がある。大体私は自民党あるいは政府の発想というものは非常に矛盾しておると思うのですよ。どこが矛盾しておるかというと、アメリカ型の構造規制にいくか、あるいはイギリスやドイツがやっているような価格引き下げ命令まで出して弊害を除去する方向にいくか、こういう大きな法体系に分かれておる。しかし、イギリスも最近は分割の規制を入れました。それからドイツも最近は合併した者の場合の分割規制を入れておる。そういうように変化はしておりますけれども、日本の場合は構造規制の方も反対、価格介入もそれは自由主義経済に違反するのだ、両方ともやらないと言う。本当は、こういうわからない政府はないと私は思う。これはアメリカ法でもないのです、アメリカは御存じのように構造規制だけでいくのだから。そういうように両方ともやらないという態度はいけないのじゃ、ないか、これは意見で申し上げておきます。  最後に一点だけ、これは例の中小企業の事業分野の確保法案ですね。これは率直に言いまして事前にどうして規制するか、気がついたときは遅い、そこで事前に業種指定をどうするかというのがポイントだと思う。紛争が起きての調停では遅い。ですからそれをやれるかどうか、この点だけ聞いて終わりたい。
  173. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま御指摘の点も含めまして、目下検討中であります。これも今国会に提案をいたしたい、かように考えております。
  174. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 終わります。
  175. 坪川信三

    坪川委員長 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  176. 坪川信三

    坪川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  日本住宅公団総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  178. 坪川信三

  179. 正木良明

    正木委員 公明党・国民会議を代表して質問をいたします。  質問の要旨はすでに通告をいたしておりますが、ちょっと順序が変更になります。  最初に、物価問題について質問をいたします。  本会議、予算委員会の論議を通じまして、昭和五十二年度の最大の政策課題というのは、やはり景気を回復するということであるということはよく承知いたしております。そういう中で、この物価問題というものも非常に重要な比重を占めてくるだろうというふうに私は考えるわけです。なぜかなら、五十年、五十一年と景気が低迷いたしておりましたが、そういう中で失業者は、完全失業者百万人という高水準、企業倒産毎月一千件、昨年の十一月、約一千七百件というような事態も発生しているわけですね。そういう景気低迷の大きな原因というものは、個人の消費支出が景気下支えの役割りを果たしていない。いわゆる内需の喚起というものがこの際非常に必要なのでありますが、これは減税という問題と大きくかかわり合いを持っておるわけでございますが、同時にこの個人消費支出の停滞というのは、異常な物価高というものともやはり影響をしてくる。いわゆる個人消費をしなくなる、個人消費が伸びなくなるというのは、やはり異常な物価高と先行きの不安ということで財布のひもが締まるということもある種の影響があるだろうというふうに私は考えます。したがいまして、物価の安定ということも景気の回復の中で重要な柱として同時に考えていかないといけない。たとえばアメリカ西ドイツ物価というのは安定しているし、同時に景気が回復してきている。ところがイギリス、フランス、イタリア、これは非常な物価高でございますので、景気が低迷している。こういう関係も同時に考えていかなければならぬだろうと思うわけであります。この景気回復物価の抑制、インフレ抑制ということは非常に二律背反的なものでありますが、非常に重要な問題だと私は思うわけですね。したがって、この物価安定ということについて当然総理もその御方針であろうと思います。  そこでまず最初に、公共料金問題について御質問を申し上げたいわけですが、福田総理が、最も新価格体系がおくれているのは公共料金だ、だから逐次料金改定を図っていくということをかつておっしゃいまして、そして公共料金の値上げというのが相次いで行われたわけです。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 しかし、公共料金が国民生活に与える影響というのはきわめて大きいものがございまして、景気停滞下の現在においては、物価の上昇が与える影響というものは高度成長期とはもう全く比べものにならないほど大きいと考えなければなりません。  そこで、これは政府から出てきた資料でございますが、これを見ましても、四十九年、五十年を見ましても、公共料金の消費者物価に占める寄与率は、従来、それ以前の〇・三ないしは〇・七%に対して、四十九年では一・三%、五十年は一・五%というふうに大きくなってきているわけですね。したがって、最近はこの赤字を理由に、利用者負担という形で全面的な負担を受益者ないしは利用者に押しつけるという形で公共料金の値上げが行われているわけです。これに対して政府は、新物価体系、新物価水準、こういう形で公共料金の値上げをしてまいりましたが、五十二年度予算では、国鉄の値上げを引き続いて平均一九%おやりになろうといたしておりますが、そのほか米価の問題等々、公共料金に類するものについての政府考え方というものをお示しいただきたと思います。
  180. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 正木さんが御指摘のように、わが国は、総体として見ますと、石油ショック後の立ち上がり、これは米、独と並んで最先端を行っている、こういうふうに私は見ておるわけですが、ところが、物価の面になりますと、そこだけを引きますと、これはドイツ、アメリカと比べて非常に遜色がある。そして特に消費者物価の上昇水準が高いのですが、それはなぜそういう状態になっておるかというと、三つ私は理由を挙げることができると思うのです。ほかにもありますけれども、主なものは三つである。  一つは、わが国は資源有限下におきまして、海外の資源を使う度合いが他の二国に比べまして非常に大きいわけでございます。ところが、その海外資源の値上がり傾向、でありまするから、わが国が最も海外の資源の値上がりの影響を受ける、こういうことになる。  それからもう一つは賃金です。賃金が、米、独に比べましてわが国におきましてはかなり高水準で上がる。この問題。  それからもう一つは公共料金なんです。わが国はこの三年間で大体あのショックからの立ち上がり、これの体系ができましたけれども、後遺症が残っちゃった。その後遺症の最大のものは財政です。これは国の財政もしかり、それから企業財政もしかり。そういうふうなことで、そこで物価に公共料金が大きく作用してくるのです。私は前に大蔵大臣をしておりました、それから企画庁長官もしておったわけですが、そのとき、この公共料金はあの事態収拾のために厳重な抑制方針をとった。とったけれども、これはとりっ放しにしておくわけにはいかぬ。そこで五十年度、五十一年度、五十二年度の三カ年に主要公共料金の改定を行いたいということを申したことは御承知のとおりと思いますが、五十二年度はその公共料金改定の三年目に当たるわけなんです。ところが、最近の物価の情勢なんかも考えてみますると、三年目に主要公共料金全部が改定できるかというと、そうでなくて、国鉄が必要な五〇%改定ということができないで一九%だ、こういうことになる。  したがって、三年と考えた主要公共料金の抜本的改定、この問題は多少後年度に尾を引く、そういうようなことになりまするけれども、とにかく私は、相当大まかに言いますると、電電料金の改定は五十一年度の物価に相当の影響があったわけです。これは一応済んで、そしてその一部が自動的に五十二年度において実施される、こういう問題もありまするけれども、とにかく公共料金全体としますと、五十一年度に比べて物価に与える影響は、国鉄の一九%を実施するといたしましても若干緩和される、こういうふうに考えているのです。その状態が五十三年度になればさらに緩和される。そういうようなことで、物価に与える公共料金の影響というものはかなり除去されていく、こういうふうな見通しであります。それも一つの根拠といたしまして、これから先々消費者物価はだんだん安定化していく、そして五十五年度の時点では六%以下の水準に持っていける、こういうふうに考えておるわけでございますが、そういうことで、公共料金がいま物価体系の中で非常に重圧になっておるということにつきましてはそのとおりに考えておりまするけれども、この問題をよけて通ることはできないんだ。ただいま申し上げたような段取りをもってこの問題に対処していきたい、かように考えております。
  181. 正木良明

    正木委員 公共料金というのは、その性質から国民生活、家庭生活に非常に影響力の強いものである。同時に、選択性の非常に狭いものであるということが言えるわけですね。確かに日本は無資源国でありますから、資源を輸入するに当たっての国際経済的な影響をもろに受けるということはよくわかります。ただ、その議論はドイツの場合も同じことでありまして、そういう意味から申しますと、それじゃドイツは石油が出るかというと石油が出る国じゃありませんし、そういう意味では無資源国に近いわけだ。そういう意味では、私はそれだけを理由にしてというわけにはまいらないだろうとは思います。  その議論をしていると時間がありませんから、それじゃ、公共料金は非常に安いのかといいますと、決して安い水準ではない。たとえば、昭和三十年を一〇〇にした消費者物価指数は、五十年の十一月には三六四・九%になっておる。要するに三・六五倍ぐらいになっているわけですね。ところが、公共料金もそれぞれ国鉄は四四五・六%、私鉄は三八二・六%、診察料三〇一・一%、バス代五二六・九%、タクシーは三〇〇・七%、郵便料金一四七・一%、電報五七一・四%、米は三六〇%というふうに、そんなに公共料金は低い水準にとめ置かれておるものではないということが言えるわけです。  そこで、話を進めてまいりますが、公共料金の家計に及ぼす影響というものを、経済企画庁の資料で見てまいりますと、四十九年の場合でございますと、家計支出に占める公共料金の割合は、それぞれの各収入階層によって非常に下に重く、上に軽い。これは当然そうなるでしょう、逆進的なものでありますから。第一分位では一五%、第二分位では一四%、第五分位、これは高収入の方でございますが一〇・九%。第一分位、第二分位という低収入層に対するいわゆる公共料金の家計支出に占める割合というのは非常に重くなっている。  東京都の調査がございますが、これは一世帯当たり一カ月の公共料金支出の生計分析で、これは所得階層七階層になっておりますが、この中で五十一年八月の家計に占める割合が出ておりますが、第一階層から第五階層、これは低い方です。低い方から平均の方ですが、これが二三・六%から一八・五%にも達している。事実国民は、この公共料金というものが特に低収入者については非常な重圧になっているということになるわけです。  そこで、一つの提案がございます。従来公共料金の算定の仕方というものは、受益者負担の原則、利用者負担の原則というのをそのまま当てはめているという形が非常に多い。そこで、このように低所得層に対しては、公共料金は一律な形での負担ということになると当然に割合が負担増になってまいるわけでありますから、何らかの形でそこに応能負担的な要素であるとか、生活必需サービスの負担というものを、格差を設けて軽くするという方法が導入できないだろうか。もちろん利用した人と利用しない人と同じというわけにまいりませんから、利用者負担の原則というものもその中には当然存在してよろしいと思いますが、これだけではなくて、その能力に応ずる応能負担の原則だとか、生活必需サービス的なものを導入できないかというのが私たちの考え方であるわけです。  たとえば特に電気、ガス、水道——水道は地方自治体の条例に委任されたものでございますけれども、そういうどうしてもなくてはならないというようなものがたくさんあるわけです。私は地方議員をしているときに、この水道料の値上げのときにいろいろと申しましたが、現在都市生活者が日常使用する飲料水を手に入れるために全く上水道に頼るよりほかにこれは選択の余地ないです。あとは井戸を掘って水を自分のところへくみ上げるか、屋根の上にたらいでも乗せて、雨の降るのを待ってためておくしかない。これは全く上水道に頼るよりほかに選択の余地がない、こういう状況がある。これは同じ公共料金でも、交通料金というものと比較してまいりますと、私鉄にしろ国鉄にしろ、値段が上がったからあと自転車で行こうかとか歩くとかという、しいて言えば選択の方法がある。しかし水の場合、電気の場合、ガスの場合、この選択の余地がないわけです。したがって電力料金については、ある意味においてミニマムをつくって、そのミニマムの限度内においては値上げ率を低くいたしまして、そうしていままで逓減制をとっておったのを逓増制というふうに変えたという、ある意味でのわれわれの言う福祉料金体系へ一歩足を踏み出しているようでありますけれども、こういう考え方というものをこの公共料金の中に導入していくという考え方はないだろうか、これはいますぐそれをやりますとか、やりませんとかと言うわけにまいらないと思いますけれども、少なくともわれわれはトータルプランの中でも、こういう公共料金の算定の仕方というものを導入すべきであるということを主張をいたしておるわけでございますが、その点総理いかがですか。
  182. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公共料金の問題を考える場合の基本的な考え方は、受益者負担、そういうことになるわけです。それじゃその受益者の支払い能力というものはどうやって考慮されるのかといいますと、これは税でありますとかあるいは社会保障政策とか、そういうような他の対策によって所得を考慮する、こういうことでいくのが妥当である、こういう考え方なんです。正木さんのおっしゃることは意味合いはよくわかりますけれども、公共料金は応能的な配慮のできるものもそれは一部にはあります、またそういう配慮が使われておる公共料金もありまするけれども、とにかく基本的な考え方としては一律だ。その方が運営上も非常に経済的にやっていける、そういうようなこともありまするし、公共料金自体は一律の受益者負担主義がいい。しかし応能的な要素を入れるべきだという御趣旨はよくわかりまするが、それは他の施策によってやっていくべきである、こういうのが基本的な考え方であります。
  183. 正木良明

    正木委員 従来の政策選択の方向からまいりますと、恐らく総理のおっしゃるような形になるでしょう。しかし、低成長下におけるこれからの経済運営ということを考えてまいりますと、応能というと響きが非常に強いようにお聞き取りになったかもわかりませんが、応能といえば応能でありますが、少なくとも生活必需サービスについては段階を設けたらどうかということです。  たとえば一カ月の電力使用量をシビルミニマム幾らにする、それ以上家の中でテレビを何台もつける、冬になると電力の暖房を使う、ないしは夏になるとどんどんクーラーをつける、こういうふうなものはミニマム以上にしていいと私は思うのですよ。そういうものは高くいただく。しかし、最低生活を維持するその容量については、これは値上げをしないとか値上げ幅を小さくする。こういう形のものは私は考え考えられないものではないだろうと思うのですよ。そういう国民生活を守るための生活必需サービスについては何らかの形で段階を設けてミニマムは確保してやろう、こういうことは十分に検討に値すると私は思うのでございますが、さらにどうでしょうか。
  184. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 たとえばいまお話しの電力料金、これは私はいまエネルギー問題なんか考えますと、みんなに節電をしてもらわなければならぬ、こういうふうに思うのです。そういう際に、家庭なんかで多量に電力を消費するということにつきましては、これは料金の決定を電力消費量に比例いたしましてそれが高くなるのだ、こういうような配慮はできると思うのですよ。したがって、それがまた完全にそういうふうに言い切れるかどうかわかりませんけれども、大方は電力少量消費の家庭、つまり能力が少ない家庭の便益につながっていく、こういうようなこともあろうかと思います。ものによりましては、いま正木さんのおっしゃられるような考え方が導入できない、私はこうは言い切れないと思うのです。また、そういう考え方を導入した方がいい、こういうものもあると思いますが、しかし基本的に言うと、これは応能という考え方を公共料金決定の原則としていくという考え方は妥当じゃなくて、むしろ一律主義でいって、受益者負担主義でいって、そしてそのおっしゃられるところの応能面の問題の解決は他の施策、税だとかあるいは国の歳出による収入補てんというところで考えるべき問題だ、私はこういうふうに考えます。しかし、私の言っているのは原則でありまして、例外がないわけではない。その例外面につきましては、十分に検討さるべき問題である、こういうふうに考えます。
  185. 正木良明

    正木委員 それはそれなりに私はわかるのです。ただ、公共料金の問題で、そういうわれわれの言う言い方で言う福祉料金体系というものを採用していくということになると、これは税の問題とか社会保障の問題とかで考慮すべき問題であるというふうにおっしゃられるわけですね。ところが、社会保障の問題、それじゃ満足に近い形で進んでいるかというと決して進んでいない。税の問題も不公正というものは依然として存在している。ここらがやっぱり、私は政策議論として原則的な話、理論的な話としてはなるほどという気持ちもないことはないわけですが、現実の問題になってまいりますと、もうむなしく聞こえてくる。要するにこれは逃げ口上ではないのかというふうに私は考えるわけです。  確かに非常に問題はあります。たとえばガスの問題を申しましたけれども、実際私自身もガスの問題は、それじゃ都市ガスはそういう形がとれたとしても、プロパンを使っているところはどうなるのかということもありましょうし、また収入の証明書で一々切符を買うわけではありませんから、交通料金なんかはどうするのだということも出てくるでしょう。電気だとか水道だとかというのは私が言ったようなものが適用できるかもわかりませんが、まあ適用の範囲は狭いかもわかりません。しかしそういうもので、こういう形の憲法二十五条で言うところの健康にして文化的な最低生活を営む権利というものを一つ一つ築き上げていくことも大事ではないか。たとえば交通料金の問題でも、それじゃ生活必需サービスとしてはどういうことがあり得るかというと、どうしても電車に乗って通勤しなければならない、通学しなければならないというものもその中へ入れるべきか入れるべきでないか、こういうことを議論をし検討を進めていくという形でなければ、やはり本当の意味のいい方向へ今後日本が進んでいかないのじゃないかという気がいたします。そういう意味で、その点はひとつぜひ御検討の対象にしていただきたいと私は思うわけです。  きょうはたくさん質問がございまして、次に進みますが、さて、公共料金のほかにもう一つは、非常に弾力性を欠いておる、硬直化しておる大企業製品の値上げの問題があるわけです。  この問題について、実は公正取引委員会が集中度関係の調査をいたしております。これは昭和四十六年と五十年の両不況の場合を想定しているわけです。——私が配った資料はこのまだ後になります。それではありません。それは独禁の方へ入りましたときに申し上げます。  ここでは九〇%以上一〇〇%、八〇%から九〇%未満というふうにグループを九〇%グループ、八〇%グループ、七〇%グループとずっと順次二〇%、二〇%未満ということにしてございます。公取の調査によりますと、この中で九〇%グループ、八〇%グループというこのグループは何を意味するかというと、三社の合計でのシェア、占有率を示しているわけですが、三社で九〇%以上の業種、これについては昭和四十六年不況のときには、この不況の最中に製品価格が下がった回数が四回、最大下落率が〇・六%となっています。八〇%グループでは下落回数が三回、最大下落率が〇・六%、こういうふうになっているのですが、一昨年の昭和五十年不況のときには、九〇%グループでは下落回数は一回もありません。したがって下落率はゼロです。八〇%グループにおいても四十六年に三回あったのが五十年ではゼロです。最大下落率はゼロです。七〇%グループになりますと、四十六年不況のときには四回下落して〇・六%が、三社でようやく七〇%のシェアを占めるこのグループで、五十年不況で一回で〇・五%です。こういうふうな形で、いわゆる昭和五十年不況のときには、専門の言葉で言う下方硬直的な形を示しているわけです。むしろ不況になったら、素朴な経済原則から言えば需給の関係が逆転するわけでございますから、物の値段というのは下がらなければならぬのにそれは下がらぬ。  しからばその九〇%グループ、三社集中度の九〇%グループにどんな業種があるかというと、私どもが調べましたところでは、調製粉乳、化学調味料、マヨネーズ、インスタントコーヒー、ビール、ウイスキー、溶解パルプ、石灰窒素、合成石炭酸、レーヨンフィラメント、それからビニロン、写真フィルム、ガラス、ブリキ、アルミナ、乗用車、小型乗用車、腕時計、ピアノ等々がある。八〇%グループは、粉乳、グルタミン酸ソーダ、カーバイド、ポリビニルアルコール、アセテート、写真印画紙、コークス、電気亜鉛、広幅帯鋼、帯鋼、鋳鉄管、マイクロバス、大型バス、貨車、こういうふうなものが非常に集中度の高い業種でございますが、全然下がっていない。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  いわゆる集中度の高いグループ別の硬直品目というものを見てまいりますと、九〇%グループでは、四十六年のときには該当品目が十九のうち十三品目が硬直している。いわゆる六八・四%までがそうです。五十年度には二十一品日中硬直品目数が十四。八〇%グループでは二十一品日中六が四十六年、これは細かい数字でありますから、要するに下がらぬのですよ。これらをどういうふうに抑えていくかということを一つの大きな問題点として考えてもらわなければならないわけであります。  そこで当然に、現在の日本経済のまた現在の独占禁止政策のもとでは、経済の好不況関係なくいわゆる寡占企業と言われるようなものについては、もう高物価体質というものが定着していると見なければなりません。要するにこの長期不況の中では、企業のビヘービア、生産の拡大というよりも、値上げによるところの収益の確保を図ろうとする考え方が非常に強いということです。いわゆるやみカルテル、同調値上げ、また石油業界や鉄鋼業界のように、通産省の行政指導減産によって需給を人為的に、要するに人為的に品薄状態をつくってそうして価格を上げていく、このようなことを考えますと、通産省なんて物価の値上げのためのしり押しをしているんじゃないかと疑いたくなるわけでございますが、要するに需給ギャップがあるから製品価格は上がらないというのは中小企業の話であって、大企業ではそういうことはあり得ないということをこれが示していると私は思うのでございますが、この点について通産大臣、どうでしょうか。
  186. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話の企業の集中度の問題と価格等の関係でございますが、御案内のとおりに、本件につきましては公取の方におかれましても先般詳細な調査をなさっておられるわけでありますが、われわれの方といたしまして、寡占度の問題と成長率の問題、寡占度の問題と価格の問題、これらにつきましてはただいまお話しのように、その問題につきましては真剣に検討をいたしつつございます。  なお、これらの集中度の問題、さらに独禁法との問題等につきましては、目下政府内におきまして真剣に検討を続けておりまするが、集中度と価格の問題につきましてさらに詳細な御質問がございますれば、政府委員をしてお答えいたします。
  187. 正木良明

    正木委員 先ほど多賀谷委員が独占禁止法の問題について御質問なさいましたから、その後を受けたという形で進めてまいりますが、私は、やはり独占禁止法が本来の独占禁止政策というものから見ると非常に甘いという関係から、いろいろな弊害が起こっていると思うのです。  前内閣の三木さんは、独占禁止法を強化するということは盛んにおっしゃって、結局の話が何もやらずに終わってしまいました。先ほどの御答弁の中で総務長官は、三つの部分についての改正をして、そうして昨年の通常国会へ出したのだというふうにおっしゃいましたが、私は、あれは改正だと思いません。あれは改悪です。  そこで、案はこれから決めるのだとおっしゃっておりますので、その案が出てからじゃまた別な議論になるかもわかりませんが、まあ大体第七十七国会へ出された、私たちはこれを第二次政府案と言っておりますが、第二次政府案というのは三つの重要な要素が落っこちたもの、これと比較してこれから話を進めていきたいと私は思うのです。  基本的な問題として申し上げますが、七十五通常国会でいわゆる五党修正案というのが通りましたね。これが参議院の、特に参議院の自民党のという総務長官のお話でございましたが、ある意味での造反が起こって流れてしまった。これは事実はそうでありますけれども、総理がおっしゃるように、野党の方の意見は党首会談で聞いたけれども、自民党の方の意見がまとまらないからというお話でございますが、あの第一次修正案というものを、五党修正案を考えていただきますと、その五党修正案ができ上がった経緯から言いますと、私はもう自民党の中では十二分に議論が尽くされたものであると思いますよ。あの独禁法改正問題懇談会というのが四十九年十二月二十七日につくられましたね。これは総理府の中に置かれて、いわゆる経済学者の皆さん方、実際の仕事をなさっている皆さん方、これはいろいろ議論を尽くして、そうして自民党は五十年二月に独禁法改正特別調査会というのを、いわゆる山中委員会と言われるものをつくられて、ここで十分に議論を尽くされて政府案としてお出しになってこられたのですよ。いわば当時の野党四党が野党案を政府に押しつけたという形ではなくて、むしろ野党案を後退させて、ある意味においては政府案を尊重した形であの五党修正案というのはできているのです。これをいまごろ自民党の意見をもう一回調整しなければいかぬという理由はどこにあります。
  188. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あのいわゆる五党修正案というのは、衆議院では満場一致になったわけです。ところが、参議院に行ってこれは廃案になった。これは一体どういうことか、こう言いますると、これは自由民主党の中で意見が本当に練り合わせられておらなかった、こういうことが私は原因である、こういうふうに見ておるのです。  私は、今度の国会でこの修正問題につきましては決着をつけたい、こういうふうに考えておるわけですが、決着をつけるためにはやはり自民党の方のああいうようなことがないようにしなければならぬ、こういうふうに考えまして、ただいま意見の調整をやっておる最中であるということなんでございます。  正木さんが、五党修正案をつくるときに自民党はもうよく検討したじゃないかというお話でございますが、そう言われると自由民主党とするとまことにお恥ずかしい次第なんですが、本当はそういう調整が完全にいっておらなかった、そのゆえに参議院で成立しなかったんだ、そういう経緯を顧みまして、とにかく今度は自由民主党も政府案が出たら衆参両院を通じて一致してこれを支持する、こういう形にならなければならぬというふうに考えまして、せっかくいま調整中である、こういうことでございます。
  189. 正木良明

    正木委員 繰り返すようでございますが、学者、専門家によるところの懇談会の議を経た、——これもずいぶん時間をおかけになりました。何回かの委員会で、まだかまだかと言われるくらい時間をおかけになった。伝えられるところでは、当時山中委員会では百時間以上の議論が調査会の中で重ねられて、しかも総理、そのメンバーは自民党の衆議院議員ばかりじゃないんですよ、その当時、自民党の参議院議員も自民党のこの調査会のメンバーで発言なさっております。その結果出てきたいわゆる政府一次案に野党は全面的にと言ってよいくらいに譲歩をして、そうしてあの五党修正案ができたわけでございます。七十七国会、去年のいわゆる第二次政府案がその重要な個所で三本抜けているわけです。なぜ抜けなければならぬのかというのを、ちょっと総理おっしゃってくださいよ。
  190. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 なぜあの三点を修正しなければならなかったかということにつきましては、私は詳細には承知しておりませんけれども、いま私が、いま党内で調整しておる、こういうふうに申し上げますのは、そのことも一つの材料です。しかし、野党から五党修正案を主張しておるということも一つの材料である、それらを踏んまえまして、どういう程度のものでありますれば全会一致、こういけるかどうか、その辺を模索しておる、こういうことでございます。
  191. 正木良明

    正木委員 そこで総理、私が非常に残念なことは、そういうふうに自民党内で事前に十分議論されておったにもかかわらず、突然ああいう形で一あのときは酒、たばこ値上げ法案なんかとの絡まりがあったし、当時は総スカンを食っておった三木さんが総理大臣であったからそうなったのかもしれませんし、これはわかりませんけれども、そういう状況から察すると非常に条件が悪かったのかもわかりませんが、いずれにしても、野党がそれこそ大きな譲歩をして、全党一致になって衆議院を通過したあの五党修正案が仮に通っておれば、こういう事態は起こっていなかっただろうというのが、いまお配りしたこの表なんです。  ここに書いてありますように五党改正案が廃案、これは国会の終了期でございますが、昭和五十年七月四日です。それからの独禁法違反の勧告件数というのがこれだけあるんです。この表は公取委員長ごらんいただいたでしょうか。これは間違いないかどうかひとつ御確認いただきたいと思います。
  192. 沢田悌

    ○沢田政府委員 ただいまの七十五国会以後におきまする御指摘の期間の独禁法違反事件の勧告件数でございますが、概略申しますと四十七件ございます。その行為の類型別の内訳を申しますと、カルテル関係が三十六件、そのうち三十件は価格カルテルでございます。それから不公正な取引方法関係が十一件、こういう形になっております。
  193. 正木良明

    正木委員 確認していただきましたから、これは間違いのない資料だとお思いになっていただきたいと思います。  この中で、石油化学は五十年七月四日以降と五十一年度を合わせて五件、石油・プロパン五件、窯業(ガラス、セメント)七件、化学繊維、これは不公正取引が一件、薬品二件、紙・一件、電機・精密が四件、非鉄・金属四件、建設三件、サービス一件、その他四件、合計三十六件、その中の価格カルテルが三十、不公正取引が十一、全部で四十七件。これは起こってないとは私は断言できません。もし、あの五党修正案が成立しておってあれが法律として有効に作用しておったら、これは全然なかったかどうかということについては予想の域を出ません。しかし、少なくとも現行の独占禁止法では、こういうやみカルテルをやったときには公正取引委員会から臨検の検査が行われて勧告が行われますが、どうも済みませんでしたというので新聞へ広告を出したらそれでちょんなんです。課徴金も価格引き下げも何もないのです。要するに、この独禁法審議のときに、私もまた同僚議員の皆さん方が再三指摘したように、現在の独占禁止法ではやみカルテルはやり得なんです。しかも、この隣に表を、代表的なものをつけてみましたが、この白い丸がついたのはカルテルを組んだ時期です。二重丸が公取の臨検検査を受けた時期です。そうして三角が公正取引委員会から勧告を受けた時期です。値段は下がっていますか。下がらぬでしょう。この中に入っておりませんけれども、中には下がったものもあります。これは公平な立場から言って下がったのもあります。しかし、この代表的なものは下がっておりません。なぜか、企業は全然痛手を受けぬからです。この分だけ国民が損をしたとお考えになっていただきたいですよ。やみカルテルをやっても、やった企業はやり得であって、やみカルテルの解散と陳謝の一片の新聞広告さえすれば、それだけで済んでしまう。そういう独占禁止法の実態がいま残されておる。  もし、仮にあの五党修正案が参議院の自民党の造反によってひっくり返されなくて、これが成立しておって、その法律が有効に作用しておれば、このやみカルテルの全廃、ないしは何割かは減ったでしょう。大部分は減ったでしょう、やれば課徴金を取られるのですから。そう考えてくると、きわめて重要な問題がここに含まれているじゃありませんか。どうです、通産大臣。——通産大臣より、もう一回公取委員長に聞きましょう。私のいま言ったことは間違いがありますか。
  194. 沢田悌

    ○沢田政府委員 御質問言葉にもありましたように、この法案が通っておればどの程度防げたかということについては、確たる推定はできませんけれども、幾分なりとも防ぎ得たのではないかということは申し上げられると存じます。
  195. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  その後の違反の件数等々お調べいただきましたが、独禁法で厳しく禁止されておりまするやみカルテルの行為を行うことは、いかなる事情がありましょうとも許されるものではないんでありまして、なお、これらの問題に対しての法が通過しておればというようなお話もございます。私どもも取引の公正と国民生活の安定、さらにまた景気の回復という意味から申しまして、ただいま、先ほど来総理が申されておりますように、本国会にぜひとも独禁法が各省の調整並びに各党の御調整を経まして通りますることを期しておる次第でございます。
  196. 正木良明

    正木委員 どうですか、総理
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はいまのお尋ねは、沢田委員長がお答えしたとおりだと思います。ただ、正木さんが御指摘になっておる具体的ケースは五十年ですね、五十年の価格の動きをごらんになっておりますが、あのときは、物価狂乱状態の非常に厳しいときでありまして、とにかく四十九年、五十年というその二年度にわたりましては、もう物価がうんと上がったんです。狂乱物価の翌年のごときは、卸売物価だけでもとにかく三七%上がる、消費者物価も二七%、賃金が三三%上がる。ですから、価格が上昇しない、これが抑えられるというような状態ではなかったのです。これは四十六年と本質的に違う点だろう、こういうふうに思いますが、四十六年の動きと決定的に違う状況だ、こういうふうに思います。でありますので、価格の点につきましては、これは具体的な御指摘がありましたけれども私は感想を異にいたしますが、何がしか、独禁法の改正が実現しておったならばその後の動きには影響がなかったというふうには考えません。
  198. 正木良明

    正木委員 影響がなかったと考えられない——あったということですね。両方一緒におっしゃいましたが、それは関連はあることはあるんですよ。この表のこちら側なんかは、これ五十一年です。アルミサッシの場合なんです。ですから、アルミサッシの場合なんか、いま四十九年、五十年は物価狂乱だからどうしようもないというふうなお答えですけれども、これはもう五十一年ですね。要するに臨検を受けたのが昭和五十年の十月で、勧告されたのは昭和五十一年です。そのときには一一六・四%、これが一一七%になって、現在では、五十一年十二月には一二五%に上がっているわけですね。板ガラスの場合は、五十年から五十一年当初にかけての表しか出ておりませんけれども、こういう形をとってきておるわけです。したがいまして、やはり重大なことは、これは企業がうまいことしよったなということだけでは済まぬ問題なんです。これは全部国民生活物価問題に大きなはね返りが来ているということです。そういう意味では、私はもっと深刻にこの点を受けとめていただかなければならぬだろうというふうに考えるわけです。  そうして、寡占の支配体制という問題からいけば、あの株式の保有制限の問題も非常に重要でございます。それが次のページの資料三というのにございますが、これも公取から資料を出しまして私どもがこれをつくってみたわけでございますが、これは公取委員長、この資料をお持ちですか。——大体間違いないと思うのですが、いかがでしょう。これは公取の公表された資料の中からわれわれは集約したものでございますが、御確認をいただきたいと思います。
  199. 沢田悌

    ○沢田政府委員 おつくりになりました資料のとおりでございます。
  200. 正木良明

    正木委員 これは要するに、金融機関を除いた企業の株式の保有の制限ということが五党修正案であるわけです。現行の独禁法では金融機関の株式保有制限はございますが、一般の企業の株式保有制限はございません。五党修正案で初めて出てくる問題でございますが、これは会社の名前、資本金、純資産、株式所有額、基準額を超える株式の所有の額、これは億円で出ておりますが、総合商社は、その九社合計で制限を超えるものが三千三百五十億円であります。事業会社においては十三社ございまして、それを超えるものが七百四億円です。これは一番右側の欄に書いてある数字がそうです。これが五十一年の三月期の資料でございますが、四十九年九月期を見てまいりますと、その次の右側にある活字で打ったものでございますが、基準額を超える株式所有額が、総合商社においては九社三千六百四億円、事業会社においては六社二百九億円。  要するにあの五党修正案ができておりましたならば、この事業会社なんかは、減っておってもふえるはずはないんです。それがこれだけ持ち株がふえております。持ち株がふえるということは、その支配体制がより強固になるという意味においては独占禁止政策からは逆行する問題です。逆行する問題だからこそ、独占禁止法の中でこれを、持ち株制限をしようとする法律をつくろうとしているわけですけれどもね。こういう状況を考えますと、いかにあの五党修正案が五十年の七十五国会において成立しなかったために独占禁止という政策が進まないでむしろ後退せざるを得なかったかということを、ごくごく象徴的なものを二つ挙げて申し上げたわけでございます。そういう意味から言って、やはりどうしてもこの独占禁止法というものをあの五党修正案の線で早急に成立させることが望ましいと私は思うのですが、総理、どうですか。
  201. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は正木さん御指摘のように早く成立した方がいいと思うのですよ。一刻も早くこの問題の決着がついた方が私はいいと思うのです。そこでいま与党内の意見調整をしておるんですが、もちろん、野党の皆さんから一致していわゆる五党修正案を基準にして政府案をつくるべしというお気持ちはよく理解できまするけれども、同時に与党の方でも若干の意見がある、その辺もよく調整をしなければならぬ、こういうふうに考えております。なるべく早く問題の決着を得て、そうして今国会ではあの法律案が成立して改正案が施行される、こういうことになることが望ましい、こういうふうに考え、鋭意努力をしておるという最中でございます。
  202. 正木良明

    正木委員 要するに、早くやることは賛成だ。これは何か総理と話していますと、大阪の商売人が取引しているような感じなんですよね。この取引を早く成立させるためには、要するに総理は野党に向かって値切っているわけですよ。それをまけてくれたら早くできるんだけれども、まけてくれなかったらなかなかうまいこといかぬので、値切り方——先ほど多賀谷委員のときに出てきたこの三点です。いわゆる七十七国会に出てきた第二次政府案の線だと私は思うのですが、先ほど多賀谷委員もおっしゃいましたけれども、この中で一番大きな項目というのは恐らく企業分割と言われるものでしょう。独占の排除という問題でしょう。しかし、これが企業分割だとか営業の一部譲渡だとかということで、きわめてドラスチックな伝えられ方がしているのです。これは多賀谷さんも御指摘になりましたけれども、私たちは本当を言えば、こんな構造規制に及ばないようなものは実際は役に立たぬのじゃないかと思っているぐらいなんですよ。事実その取引高が五百億円以上でしょう。五百億円以上、そういう大前提があって、その中で、一つは一社で五〇%、二社で七五%以上の占有をしていなきゃいかぬのです。新規参入がきわめて困難であるという条件があるのです。そうして、過大な利益であるとか、また広告費や営業経費にも過大なものを、これは幾つも幾つも、いわば分割される側から言えば歯どめがかかっている。しかも、この条件の一つに該当すればそれの対象になるというのじゃなくて、このつけられた条件が全部充足されて、なおかつ、その上に営業権の一部譲渡においては、経理内容が悪化したり国際競争力が低下するというようなことがあるならば、これは対象にはならぬとまで、もう念の上にも念を入れて歯どめをかけているのですよ。いわばこれはもう構造規制というものではありません。ある種の行動規制でしょう。しかも、よその国のものは全部三社以上ですよ。日本の場合は二社じゃありませんか。二社で七五%じゃありませんか。それぐらい歯どめがかかった。それを企業分割と言うから、先ほど多賀谷さんもおっしゃったけれども、大きければ割られるのかというので、何もいまさら、いますぐに麒麟麦酒をぶち割ってしまってパンダビールをつくれと言っているのと違うのだから。そういうことではなくて、そこまで歯どめのかかった営業権の一部譲渡であるとか企業分割というのは、むしろそういう構造規制だ構造規制だというのでじゃんじゃん宣伝をなさっているけれども、決してそういうものではない。これは西ドイツの反トラスト法なんかと比べてみればもう無力なものです。それでもなおかつ、これがあればある種の非常に横暴な形での独占企業、寡占企業の支配というものの抑止力になるであろうからというわずかな頼みでこの条文を残せとわれわれは主張しているのです。  総理はそのことは十二分に御承知になっていると思いますけれども、何か企業が大きければぶち割ってしまうのだという宣伝ばかり自民党の方でなさって、これはこわいぞ、これはこわいぞという言い方。しかも、その対象になるかもしれないというような企業は、そのことについて物すごい攻勢を自民党にかける。これじゃ私は本当の意味の日本の独占禁止政策というものが骨抜きになってしまう。これは十分に考えてもらわなければならぬという問題だと私は思うのですが、これがなければ、恐らく公正取引委員会としては士気に関係します。恐らくやる気はなくなる。  しかも、あなたがおっしゃるように、決着をつけると言うのだから、決着をつけるというのは、やるかやらぬかどっちかということでしょう。これはやらぬ方に決着がついてしまったらどうにもならぬわけですよ。そういう意味での決着をつけるという言葉は、前向きに考えると非常に積極的に独占禁止政策を強化、推進しようという考え方だからいいようだけれども、その言葉の意味の中には後ろ向きも入っているわけですからね。もう独占禁止政策問題でごたごたするのはかなわぬから、この国会であかんならあかんでだれも口にするなというような形になってしまうおそれがあると大変なことになってしまう。この点は本当に国民の願いでもあるわけです。  これはどうかひとつ総理は、これを含めた形で——あの五党修正案というのは決して企業いじめのためではない、本当に自民党が自由経済を守るというならば、その自由経済を発達させていくそのためのルールをきちんとするのだという立場において五党修正案の提案をお願いしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  203. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 正木さんのお話はよくわかっておるのです。五党で一致してさようなことを言われておるということもよく承知しておりますが、また自由民主党の中にもいろいろの意見があるので、どこをどうというまで固まった意見じゃございませんけれども、鋭意意見を調整をいたしまして、何とかしてこの国会においては前向きの決着を得たい、かように考えております。
  204. 正木良明

    正木委員 総理、念のために申し上げておきますが、ロッキードのときに三木総理が、私は賛成だとははっきりは言わなかたけれども、あの人全部、自民党の方で、国会の方でというふうに逃げられたわけです。あなた自民党の総裁じゃありませんか、自民党の理事が言うことを聞かなければ言うことを聞かすのが総裁としての指導力じゃありませんか、こう三木さんに言うた。三木さんそれを最後までうんと言わなかった。この人はやはり指導力のない人やなあ、党内では何も物の言えぬ人やなあ、これでは余り命長くないなあと思ったら、やはり余り命長くなかったわけですが、福田総理はそんなことはないだろう。党内のたくさんの人たちから支持されて——支持されて一票違いで申しわけなかったけれども、いずれにしても、そういう立場でやはり自民党の中では指導力の発揮できる人であろうというふうに国民期待しておりますよ。そういう意味から言うと、自民党の方の意見を聞いてみてという中には、どうかひとつ自民党を説得して、そうして今後の自民党が自由経済を守るというのなら、自由経済のルールというものは確立していくという立場で、五党修正案の線でひとつ御推進をいただきたいというのが私の希望でございます。どうですか。
  205. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 せっかく努力をいたします。
  206. 正木良明

    正木委員 これからちょっと住宅問題に入ります。したがいまして、公取委員長、結構でございます。——あっ、それから公取委員長ちょっとおってもらう間にもう一つ言うておかなければならぬ。もう一つは、総理公正取引委員会違憲論というとんでもない話が出てきておりまして、公正取引委員会の改組であるとかその権限を縮小しようという考え方があるのです。これを細かく議論いたしますとちょっと時間がありませんから、一言で結構ですからはっきりとしておいていただきたいことは、これも実は政府の独禁法の改正第二次案に入っておる分でございますが、これはやはりやめていただきたい。公正取引委員会の独立性というか、これはやはり十分に守っていただかなければ、日本は民主国家として、自由主義の国として、また近代国家としての資格に欠けることになるだろうと私は思いますので、その点一言だけ。
  207. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公正取引委員会違憲論、名前は私はどういう書物であったか承知しておりませんが、そういう内容の出版が先般あったことは私も承知しております。いろいろの人がいろいろの意見を持っておるということを一々気にとめる必要はないんじゃないでしょうか。政府としては、違憲論というものがあれば、これは政府という立場で違憲でないというための議論は展開しなければなりませんけれども、そういう議論があることについて、これに容喙をするという立場ではございませんです。
  208. 正木良明

    正木委員 まさか違憲論を支持なさるとは思ってないのですけれども、要するにそういうものがある。そのことがやはりだれが言うたかわからぬということでなくて、自民党の党内にあるのですよ。そのためにこそ第二次案に変なものがくっついてきているのです。ですから、この点について、要するに第一次政府案にもなかった、五党修正案にもなかった審判手続及び訴訟に関する規定の整備等の問題で、ごちゃごちゃと、こうついてきているのです。これはやはり公正取引委員会の独立性を侵すという問題がありますから、一言でいいです、公正取引委員会の独立性というものはあくまでも福田赳夫は守っていくのである、こうおっしゃっていただけばそれで済むのですから。
  209. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公正取引委員会がいま持っておる立場ですね、これにつきましては、私どもは何らの意見を持っておるわけではございません。いま議論をしておるのは、公正取引委員会の権限をどういうふうに強めて、そして独占禁止政策をよりよいものにするかということを論じておる、そういうふうに御了承を願います。
  210. 正木良明

    正木委員 強めてかつよりよいものに——よう聞きましたか。では結構です。  住宅公団の総裁いらっしゃっていますか。——大分時間が予定より超過いたしましたので、住宅問題に入ります。特に建設大臣にお尋ねすることが多くなりますので、お願いします。  政府は第三期住宅建設五カ年計画、これは五十一年から五十五年でございますが、八百六十万戸の建設を計画いたしております。その際、六万六千ヘクタール、これの新規宅地需要というのを見込んでおられるわけですが、この中で民間が二万九千ヘクタール、公的供給が一万七千ヘクタール、区画整理事業によるところの供給、これが二万ヘクタール、大体民間で四四%、公的で二六%、区画整理で三〇%、宅地を満たそうとしておりますね。本来、住民感情だとか地方自治体とのあつれきを少なくするということから、スムーズに宅地供給をすることについては、公的機関主導で行うことが一番いいと私は思っているのです。ところが、政府計画はたった二六%ということになっているのですが、これはどうなんでしょう。こういうことでうまくいくのですか。
  211. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 おっしゃるように、本年度、公的機関によって供給するのが一万七千ヘクタール、民間供給が二万九千、それから区画整理による二万ヘクタール、大体、公的機関によるのが二六%、民間供給が四四%、区画整理によるのが三〇%、そういうふうに見込んでおるわけでございます。いままでの例から言って、よく聞いてみると、大体この程度でうまく運営が尽くされておる。ただ、最近というか、一、二年前はあの石油ショックの結果で少しおくれた面があるけれども、大体この程度が一番スムーズに進むところであろう、こういうような見通しをつけてこれを進めているわけでございます。
  212. 正木良明

    正木委員 実際問題としては、そうそう民間にばかり頼っているというような形で本当の住宅政策が進んでいくかどうかということですね。これは非常に問題があるだろうと私は思うわけです。  話を進めましょう。そこで、宅地供給は決して前途は楽ではありません。宅地供給を阻むいろいろな障害というものが出てきているわけです。その一つは、地方自治体が開発を規制するのを強化してきているということですね。なぜかというと、これは地方自治体が悪いからじゃないのです。そのことによって起こってくる財政負担というものは大変なんですね。一つは行政コストが非常に高くつくということです。というのは、総理も御存じのように、だあっと団地ができて入ってくる人は大体若い人です。われわれ同様の年のいった人は余り行きませんわ。そうすると、その人たちは収入が少ないから税金の払い方が少ないですよ。いわゆる担税能力の低い人が多くなっておる。もう一つは、公共、公益施設整備の負担というものが非常に大きいということです。これは民間企業の開発意欲というものについては相当なブレーキになっておる。都市開発協会というデベロッパーの協会がございますが、ここがいろいろな調査をしておる。大体事業規模で三〇%ないし五〇%というのは、たとえば一ヘクタールのうち〇・五ヘクタールないしは〇・三ヘクタールというのはその土地を提供しなければいかぬです、いわゆる関連公共施設のために。都市開発協会の五十年四月の調査によりますと、現金、現物負担は、有効宅地、要するに販売する宅地一平米に四千八百円かかるという計算が出ております。そうすると、一区画大体二百平米といたしますと、この公共負担だけで九十六万円、ここへ、用地を提供しますから、その用地負担分というのを加えますと、一平米一万八千三百円ですから、二百平米で三百七十万円、これは総理、分譲を受ける人、宅地を買う人の負担になる。それは民間は乗せよりますわ。自分のところ赤字出して、自腹切ってそんなことはしない。そうすると、最終需要家というものの負担になってくる。賃貸住宅が建った場合は、それは家賃にはね返ってくる。これが一つの大きな問題です。しかも、民間の不動産業者、デベロッパーの保有地の大半が都市計画区域外であるとか市街化調整区域内にあって、開発ができなくなっておる。こういうことを考えると、建設大臣、先ほど申し上げたように、四四%まで民間に頼っておりますが、これは達成できますか。
  213. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御指摘のように、宅地開発に対する公共あるいはまた公益施設の整備についての費用、これは非常に多くかかってきて、これがデベロッパーの方へかかっていく、こういうことは御指摘のとおりでございます。しかし、国の方としても、これに対する、宅地開発に対する公共施設の整備に要する費用、この分から、国庫補助を幾分かずつは皆出しておるのでございますけれども、一部負担を除き、大部分事業者が負担することになっておりますが、大体最終需要者の負担になっておるということは事実でございます。したがって、この面について、御指摘のように開発協会の調べによるとおおむね五〇%ぐらい。日本住宅公団の場合は、開発規模にもよりますけれども、おおむね三〇%ぐらいから五五%になっておりますが、それだけの、民間で企業をやっておることに対して、私の方からの通知、また自治省の方からもいろいろのお話をしてやってあるのでございますけれども、大体このごろは、何しろ来て余り人口をふやしてもらいたくないというような感じを持っているものですから、どうしてもこれをやるか、学校をつくれ、さあ道路もやらなければいかぬ、はなはだしいのになると、焼却場ならいいのですけれども、人間の方の片づけるところまでやるかという、そういうようなことまでも要求されてきているということも事実でございます。しかし、これに対しましては、このままでは何とか考えなければ仕方がないじゃないかという、この間うちも、おくれている点あわせて、一般がより必要以上にこの面に負担をかけているということに対してどうするかという話もいろいろ省内でもやってみまして、結局、これに接続する道路とかいうような面、大体ここで最初つくるときには、ここでつくって、まあ四十分あれば中央まで行かれるとか、一時間あれば中央まで行かれるというのが、今度ここへできてきますと、交通が非常に多くなってくるから時間もかかってくる、こういう面を考えながら道路の面を整備するとか、あるいは下水道の面を整備するとかというようなことにも頭を少し切りかえて、これらの方向づけをしていったらどうだという、こういうような話をしているところでございます。
  214. 正木良明

    正木委員 私は別に民間デベロッパーの手先でも代弁者でもありませんから、その利益を守るために発言しているわけじゃありませんが、しかし、実際問題として、いまも建設大臣がおっしゃったように、最終需要家のところへ全部かかってくるということです。だから、当然に分譲を受ける土地であるとか、分譲を受ける家については、相当その分が含まれて高額なものになる。この高額なものになったときに、それだけでは済まないで、その後の固定資産税であるとか都市計画税の算定の基礎が上がってくるのです。そうすると、買うときにだけ高い金を出して後は何とかというふうには考えられないで、これはもう毎年、三年ごとになにがありますけれども、固定資産税の評価というものもそれに応じて上がって来ているということは事実なんです。最終需要家がそれだけの大きな負担をしなければならないことは何を意味するかというと、要するに高額所得者でなければ入れなくなってきているということです。これが一つの大きな問題点なんです。ただ、民間デベロッパーの場合には、これは高額所得者が入るといったってそれはいいかもわかりませんが、これが公団、公社ということになってまいりますと、これは立法の趣旨からいったって、そんな高額所得者だけのための住宅建設をやるために公団ができたわけではございませんから、この点が非常に大きな問題になってくるのです。  もう一つの大きな問題は何かといいますと、それをやらないためには何をするかというと、ミニ開発というのがはやってきているのです。小さな形での開発がどんどん行われている。これが各不動産業者の奪い合いみたいな形になりまして、そのミニ開発の適地というものは急激に地価が上昇してきている。要するに五軒とか六軒とかの分譲住宅をつくるというような小さなもの、これは別に開発のために負担をしなければならぬとかなんとかということがありませんから、関連の公共事業のための負担というものがありませんから、そういうものをできるだけやろうとしている。それでもかたまってくれば、地方自治体は学校も建てなければいかぬし、道路もつけなければいかぬし、下水道もつけなければいかぬわけですから、その行政コストというものはどんどん上がってくるというような形になってくる。したがって、ここでいま基本的に住宅政策というものについてもう一度考え直さないと、このままいってしまうと、非常に都市計画上も困難を来すような、スラム化するという関係もありましょうし、同時にまた、地方自治体が過大な負担をミニ開発の結果受けていかなければならぬということにもなってくる。これが非常に大きな問題点としてあるわけです。  ただ、関連公共施設の負担の問題につきましては、私は全廃しろとかなんとかという極端なことを言っているわけじゃありません。その大規模団地を開発した民間にしろ公団にしろ、それはある程度のものは、開発したことによって生まれてくる行政費用については、やはりその負担をしていかなければならぬでしょう。ただ、その団地が開発されたために出てくる、当然つけなければならぬ道路であるとか、そういうものについては負担はさせてもいいけれども、義務教育の学校であるとか、警察の派出所であるとか、郵便局であるとか、保健所であるとか、何から何まで全部、開発する主体が公団であろうと、民間であろうと、それを何でも負担させるというかつこうで進んでいくと大変なことが起こってしまう。したがって、ここでやはり何を負担させるべきであるか、何は国ないし地方自治体で負担すべきであるか、地方自治体が財政困難な場合にはどう手当てをしてやるのかということが解決されない限り、もう都市近郊では団地は建てられませんね。これが一つの大きな問題点としてあるわけであります。どうですか、建設大臣。
  215. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お説のとおり、ミニ開発によるスプロール現象というものが非常に大きくあらわれてきているということは、そのお言葉のとおりでございます。御指摘のとおりでございますので、都市計画法による開発許可の状況を見ますと、逐年宅地開発の規模が小さくなっていっている傾向がまさにそのとおりでございます。たとえば、首都圏内で一ヘクタール未満の規模の開発面積の全体に占める割合は、四十六年度が二八・四%、四十八年度になって三六%、それから五十年度になりますと一躍五一・三%というような増加を示しております。こういうようなものを、ただミニ開発の実態がこれだからといってほうっておくわけにもいきませんで、その実態をもう少し調査をして、問題点につきましては、さらに地方の公共団体からも意見を十分お聞きしながら、実態を注視して、そして大阪府で四十九年度から五十一年度上期までに千平方メートル未満の宅地開発の面積が全体の二〇%から三〇%に増大しているというのです、特にここは。そういうような点があるわけでございますし、環境の悪化等の問題も生じてきておりますので、今後このような問題につきましては、さらに省内の意見をまとめ、そしてこれに対処しなければならぬだろうとこの間もお話をしたわけでございますけれども、これに対しては十分そのような考え方を持っておりますので、対処いたしたいというものをつくりたいというふうに考えております。
  216. 正木良明

    正木委員 もちろん対処してもらわなければならぬのですけれども、具体策はございませんか。どういうふうにしてやっていくかということはございませんか。
  217. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 中の構造の分担を、たとえばミニ開発の場合はどこまで民間に持たせるか、あとは地元で幾ら持たせるか、地方自治体で幾ら持たせるか、またはどういうところは国の方が見るかという、こういう面を少し手入れをしなければならないのではないだろうか、こういうふうに考えております。
  218. 正木良明

    正木委員 それは検討してまた別な機会におっしゃってください。  ちょっと時間が迫ってまいりましたから、公団関係をまとめて申し上げますから、お答えになってください。  一つは、先ほど申し上げましたように、住宅公団は、住宅に困窮する勤労者のために住宅や宅地を供給するということが日本住宅公団法第一条にうたってありますね。ところが、いまの公団住宅というのは非常に評判が悪くなってまいりまして、狭い、高い、遠い、この三つがそろったものですから、大分敬遠をされてきているわけです。それで、それを実際で申し上げまと、公団住宅の平均家賃が、昭和三十一年のとき四千六百円だったのが、昭和五十一年では四万三百円。これは平均です。この間募集した東京北区の赤羽北二丁目団地なんというのは、三DKで初年度は六万九千六百円、傾斜家賃で十年後には十二万六千六百円、こうなるわけですね。これは大変なことで、しかも公団は入居するときに敷金をお取りになりますね。この敷金一は三カ月分お取りになるのですわ。実はこの三カ月分の計算の基礎になる家賃は最終家賃なんですね。ですから、十年後十二万六千六百円になるこの最終家賃の三カ月分を敷金としてお取りになりますから、入居するときには、家賃はそのときには六万九千六百円であったとしても、敷金は三十七万九千八百円用意しないと公団住宅に入れないのです。これはいわゆる住宅公団設立の趣旨に反せざるを得ないような結果が出てきている。要するに低収入——低収入といったって公営住宅とはいささか趣は違いますけれども、勤労者を相手にして住宅を建設するということではない。大臣の皆さん方、びっくりしたでしょう。知らなかったでしょうこんなことは。驚くべきこと。三十七万九千八百円敷金を用意しないと公団に入れまへんね。むちゃくちゃやがなこれ。それから遠い。一時間三十分以上。要するに都心までの所要時間一時間三十分以上が大半ですよ。それから狭い。狭いのがきらわれている証拠に、ここに公団からの資料がございますが、新築の賃貸のうち七五%は空き家、入り手がない。その賃貸のうちの空き家住宅の七五%は一DK千三百六十二戸、二DK五千三百八十八一尺二LDK、これは少ない、三戸です。三K千十七戸、三DK千百四十六戸というふうに、狭いのはあきまへんわ。皆いやがりよる。分譲住宅の八四%は三DK、二千五百三十五戸。要するに、分譲住宅では最小規模のものがこれだけ売れ残っておるのです。空き家ですよ。しかも、この空き家の管理費というのは相当かかっているらしいねん。これも合わせて……。途中で切りましょう。いまのところだけ答弁してください。
  219. 南部哲也

    ○南部参考人 お答えいたします。  ただいま先先のおっしゃった数字は現実に間違いのない数字でございまして、私どもも、家賃の年々の高額化、これに非常に頭を痛めておるわけでございます。昭和四十六年には中層——中層といいますか、五階建ての団地の住宅一戸は三百六十五万円でできましたけれども、五十年に一千万円を超え、五十一年に建設費が一千百十一万に上がっております。したがいまして、これをいままでの五%あるいは四・五%ではじきますと、当然にいまおっしゃいましたような高額の家賃になる。それを何とか埋めようというので、ただいま十年の傾斜でやっておりますので、それがまた入居者に、先行きこれだけ給料が上がるかどうかという非常に大きな不安のもとにもなりまして、おっしゃるような空き家になっておりまして、現在これに対する対処の仕方をいろいろ検討いたしておる最中でございます。  公団住宅の募集をしておりますのには二種類ございまして、ただいまお話のありましたのは新設の住宅でございます。ところが、既存の、家賃の低い住宅の方は依然として三十倍、四十倍、五十倍の申し込みもございます。したがって、一般の方々には、もう公団は抽せんだ、くじ運が弱いからという認識もまだございますので、新設の分につきましてはもっとPRもしなければいけない面もありますし、おっしゃるように、狭いというものは、現在しがかり中のものにつきましても、狭さを解消するために、二DKを三DKに変更する、設計変更をやるというようなこともただいま検討中でございます。
  220. 正木良明

    正木委員 どうですか、いまの敷金の解決策はありませんか。最終家賃の三カ月分を入居のときに取らなければならぬという理由はないでしょう。どうですか。
  221. 南部哲也

    ○南部参考人 敷金につきましては、私の方でも何とかこれを再検討しなければならぬということで、財務当局ともただいまいろいろ御協議申し上げておる最中でございます。
  222. 正木良明

    正木委員 それで、この管理費はどうなります。空き家の管理費は、入っているところの家賃の方へかぶさってきているのじゃないですか。
  223. 南部哲也

    ○南部参考人 管理に関する経費は皆家賃の方に入ります。
  224. 正木良明

    正木委員 要するに、空き家であるために家賃収入がない、しかし管理費は必要である、それが入っておるところの家賃に入ってくるというんじゃ、これは大変なことになりますよ。  と同時に、ずいぶん休眠というのか遊休というのか、大変な土地をお抱えになっておりますね。これは私は予算委員会で、あれは田中内閣当時だったと思いますが、この問題についてあなたにやりましたね。要するに、大企業が買い占めてもてあましている土地を、建設省があっせんをして、そして公団に買わせたらしいのをいまだに抱えていますな。これはどれくらいあります。
  225. 南部哲也

    ○南部参考人 休眠と一応言われますのは、宅地関係で八地区千二十三ヘクタール、住建関係では十四地区五百六十六ヘクタール、合わせて千五百八十九ヘクタール現在抱えております。  取得費は、わりと安い時代に取得しておりますので、平米平均六千円くらいでございますが、一番弱っておりますのは調整地域に入っておるものでございまして、これは先ほど来お話がありましたように、地方公共団体といろいろ詰めておりますけれども、公共団体の方はむしろ人口抑制という面からいろいろ問題がございまして、目下鋭意一つずつ、それぞれの公共団体と話を継続している最中でございます。  建設省からのあっせんと申しますのは、四十八年当時公団といたしましては二千八百ヘクタールの新規の宅地造成のノルマが予算で決まっておりましたのですが、それが何としても手に入らないというところで、建設省の方へ大企業にあっせんを依頼いたしまして、それから出てきたのが、公団が取得いたしましたのが四地区ございます。そのうちの一地区はいま鋭意話が進んでおりますけれども、あとの三地区はいまだ保有をそのまま継続しなければならないという状態でございます。
  226. 正木良明

    正木委員 だから、私はそのときに警告したでしょう。要するに大企業の放出土地と言われるもの、御承知のように、横浜市長津田町三十四ヘクタール、このうち約二十九ヘクタール契約しております。三菱地所から。埼玉県飯能市、これは西武鉄道から二十ヘクタール、このうち十三・六ヘクタール。興和不動産から三十四・一ヘクタール。千葉県野田市、東急不動産から四十四ヘクタール。京都府精華町六十七ヘクタール、三井不動産、野村不動産、京阪電鉄。あかんと言ったじゃないですか、あのときに。こういうものを買っちゃだめですよ。  というのは、総理、ちょっとこれ聞いておいておくんなはれ。これは大変なこっちゃねんから。要するに、全部市街化調整区域なんです。市街化調整区域なんていうのは線引きを変えない限り家は建てられない。開発できぬのですよ。飯能の問題なんていうのは傾斜地ですよ。しかも風致地区に指定されているんですよ。そんなところを買えば利用ができなくて、それを住宅公団が抱えなければなりませんよ、抱えたままだったらばそれの経費はどうなるんですか、このことを再三——再三とは言わぬけれども二回ほど言うたのです。それを無理やり企業からおっつけられて、それで建設省を通じて住宅公団が買わされて、いまだにこれはもっちゃくしているのでしょう——もっちゃくという言葉はわからぬか。もてあましているんでしょう。どうですか。こんなことをしていてどうなるんですか。
  227. 南部哲也

    ○南部参考人 いろいろとただいまの四地区につきまして地方公共団体と話し合いを続けておりますが、神奈川県の長津田につきましては、なかなか人、口抑制の面から話が難航いたしております。その他についても今日非常に、新設団地についても空き家が出てくるというような状態の変化もございます。なるべく早く着手できるように鋭意努力はしておりますけれども、おっしゃるとおり、いささかもてあましぎみという点があるわけでございます。とにかく地方公共団体とコンセンサスを得るように、なお一層の努力を継続していく所存でございます。
  228. 正木良明

    正木委員 大臣、どうですか。
  229. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先ほどお話のあったように、大体デベロッパーからの仕事が市街化区域になっているものですから、それを許可するんだからこれをやれ、あれもやるか、これもやるかというような各種条件、幾多の条件を押しつけられて、そしてそれをうのみにしてきなければならない。本当は地方公共団体で当然なさなければならない仕事までも全部押しつけられていっている。そうしなければ仕事ができませんものですからというか、認可をしてもらえないものだから、そういうような行政をとっているということは事実なんです。  そういうことでございますから、それに対していまのようなお話がございまして、たとえば一時間半かかるということを言いますけれども、大体それを買った、取得したときから計算すると、自動車で中央まで幾らとか、歩いて何ぼだとかと出るのです。それがここへ新しい宅地ができますと、やはりその道が混雑になるものですから、それが時間がよけいかかっていくというような結果にもなっておりますし、こういう面については大体私の方でも、建設省の方でその道路や何かの方は十分見ようじゃないかということで、ある程度のものは見てやっておるわけでございます。しかしいまのお話のように、いま持っておる土地の問題につきましては、まあ何とか方法を考えなければならぬと思っておるのです。  もう一つは、大体量より質というような時代に変わってきてしまいまして、先ほど御指摘にあったように、小さい二DKだとか三DKだとか、それじゃもう足らなくなってきまして、三DKはいいけれどもそれにリビングをつけろとかいうようなことになってまいりますものですから、そういうような方向に直して、先ほどの小さいものは二つを一つにするとか、三つを二つにするとか一つにしてやるとかというように、その点は今後十分手を入れて、そうしていまの御期待に沿うような方向をとらせなければならぬ、こういうふうに思っております。
  230. 正木良明

    正木委員 建設大臣、私がいま聞いていますのは——私はこうして住宅公団の総裁に来てもらって、住宅公団の総裁がぽんぽん、ぽんぽんぼくに言われているわけですよ。しかし実態は、公団もよくないところがあるけれども、実際は建設省がそういう大手の不動産業者から建設省を経由をして日本住宅公団に買わせているのです、しかも市街化調整区域の使えない土地を。これをどうするかということですよ。これは公団ばかりいじめたってかわいそうですよ、本当に。その点は建設省はやはり十分に考えてやっていただかないといけないということなんです。何か言いたいことがあったら言ってごらん、簡単に。
  231. 大富宏

    ○大富政府委員 お答えいたします。  先ほど御指摘受けました四十八年当時、大企業の持っている土地の放出に絡む問題でございますが、御案内のとおり、この四十七年、四十八年というのは非常に過剰流動性の高いときでございまして、住宅公団を初めといたしまして、地方公共団体等公的機関が用地買収に非常に難渋いたしたときでございます。そこで、一部国会でも議論になったわけでございますが、大都市圏の住宅用地の取得難緩和の一助といたしまして、比較的大規模の土地を持っている不動産業者十六社に対しまして、公的機関にゆだねれば開発が早くできるという土地について出していただきたいということで、十六社十五団地七百六十ヘクタールが出てまいったわけでございます。これにつきまして一々吟味いたしまして、地方公共団体それから住宅公団に、こういう土地があるが使い物になるかどうかということを十分吟味させた上で、それであっせんしてまとまったものが先ほどお話ありましたように八社六団地二百ヘクタールでございます。したがいまして当初——これは何も住宅公団だけではなくて神奈川県も買っておりますけれども、押しつけたわけではございませんで、当時は地方公共団体も十分了承いたして取得したものでございます。
  232. 正木良明

    正木委員 そういう言い方をされると、時間がないけれどもこれはやらなきゃいかぬね。確かに平塚で十四・八ヘクタール、神奈川県が水道のため池用地として買っていますね。これは五十三年の十一月に着工の予定がもうきちんと決まっていますよ。建設省が吟味した上に吟味をして買ったんだ、あっせんしたんだと言うなら、この市街化調整区域のいまだに建たないところ、全部見込みあるんですか。
  233. 大富宏

    ○大富政府委員 ちょっと簡単に結論だけ申し上げましたわけでございますが、この中に六団地八社の分二百ヘクタールございますが、確かに取得時点におきましては、地方公共団体に十分了承を得て、それぞれ神奈川県なり住宅公団が買ったものでございますけれども、その後の地元情勢の変化なりあるいは人口膨張の抑制なり、あるいは具体の——大規模でございますので、水の問題とか交通機関の問題とか、具体の問題において非常に長期を要して今日まで開発に至らない事情があるわけでございますけれども、建設省といたしましても、住宅公団と協力いたしまして速やかに開発できるようにいたしたいと思っております。
  234. 正木良明

    正木委員 それはうそですよ。田中内閣当時にこの問題を予算委員会で取り上げたときに、私が、この市街化調整区域はだめだし、地元の自治体とちゃんと協議が調っているのかと言ったら、調っていると言ったけれども、しかし、事実私どもが埼玉県の当該の部局、神奈川県、千葉県の当該の部局に聞いたときに、そんなものを買ってもらっても私どもはそこへ団地を建てていただくわけにはまいりません、市街化調整区域を市街化区域に線引きを変更する考え方もありません。議事録を調べてごらんなさい、あのときに私はこの予算委員会ではっきり言っているよ。あの当時はそうでしたが、いま事情が変わってこうなったんですということではないのです。これは大問題です。ですから、その問題については、どうかひとつ建設大臣、責任を持って解決してやってください。  これだけの土地を持ちながら、これの管理費はずっとかかっているのです。私の予想の計算によれば、この管理費が家賃に大体千円か千五百円はね返ってきているはずです。これを手持ちでそのままほうっておくために、管理費が現在入居している人たちの家賃に千円ないし千五百円はね返っているということは重大ですよ。この点、建設大臣、もう一度またチャンスがあると思いますから、そのときにお聞きしますから、ひとつよく検討してみてください。いまの局長の話は違いますよ。現にここで私自身がやったのだから。それでその経緯だったのだから。その点お願いします、もう時間がありませんから。  それで、さらに公団の総裁にお聞きしますが、宅地分譲、これも実際買えないような状態ですよ。というのは、頭金が一時金として総額の三〇%要るのです。ところがそれは、三〇%というのは三〇%というだけのことであって、その人の返済能力が基本になって考えられますから、たとえば譲渡代金八百万円の土地は平均月収二十万円の勤労者は一時金は六百七十四万円要るのです。というのは、その人の年収の一五・五%を超えない範囲を返済金で充てるわけだから、この人は割賦でしかも三年ですよ。三年の割賦で払える額は百二十六万円の計算です。そうすると、八百万円の土地を公団が提供してやったとしても、月収二十万円の勤労者というのはそんなに低収入者の人ではありませんけれども、少なくとも六百七十四万円の金を一時金として用意しない限り、それはできないのです。これを銀行ローンか何かで借りてやったとしても、この土地は二年以内に家を建てなければ失格になるのです。こういうふうに、住宅公団のいまの宅地の分譲にしろ家賃にしろ敷金の問題にしろ、遠く勤労者の手の届かないような存在になってきているということをよもやあなたは認識していないことはあるまいと思いますが、この点について、建設大臣、よほど考えてもらわないと、総理もよほど考えてもらわないと、これからの住宅政策を、まだこういうことがあるんだから民間自力に任せればいいんだというので住宅金融公庫の枠をふやしているのだけれども、その住宅金融公庫の枠をふやしても住宅公団から宅地の分譲を受けようとしてもこういうふうに実際問題としては受けられない。ますます高ねの花になりつつあるということを認識してもらいたい。この私の言ったことに間違いありますか。どうです。
  235. 南部哲也

    ○南部参考人 お説のとおりでございます。
  236. 正木良明

    正木委員 ですから、この住宅政策という問題も、住宅は確かに公共事業の中でも経済的な波及効果の多いものです。要するに参加する産業が多いから。だからそれを推進されるのは結構だけれども、実際問題としての推進についてはきわめてたくさんの隘路がある。賃貸住宅を建てようとしてもそういう状況がある、分譲住宅を建てようとしてもそういう状況がある。さらにまたそれを購入するためには数々の隘路がある。しかもこの百二十六万円、三年の年賦にしてもらって年利九%取っていますのや。大蔵省に調べてもらったら民間の住宅ローンでも十年で八・七%や。二十年でようやく九%ですよ。それを三年ですよ。三年のうちに全部払って買って、その後二年のうちに家を建てぬと失格するというその利子が何と九%や。むちゃくちゃやないか、これは、本当に。これほど、やはり住宅政策をひとつ進めていくにしたっていまものすごい隘路が幾つも幾つも出てきているということをひとつ認識してもらいたいと私は思うのです。  時間がなくなりましたから、私、それじゃ用地の買収代がかからない工事の問題についていろいろ聞きたかったけれどもそれはできません。  最後に一つだけ重大な問題ですので、私の地元の問題でもありますが、新国際空港を泉南につくろうという話があるわけです。いま各地でものすごいことになっている。それの調査をしようということです。これがまた大変ですわ。幾つかずっと挙げます。これは運輸大臣ひとつよろしくお願いします。今度の調査の全体計画を見ますと、候補地付近を自然条件、社会条件、空港条件、環境影響の四項目にわたって調査するということになっている。調査の主体は運輸省航空局、第三港湾建設局、港湾技術研究所、また民間団体の関西空港調査会、また当該の府県ですから大阪府と和歌山県になるでしょう、これをやることになっている。この中で重要な周辺地域整備調査というものは、地元から要求が出ていたのだが、これを抜いた理由は何か。これが一つ。  もう一つは、調査結果の評価というものはだれがやるのかということです。これは非常に重要です。  さらにずっと列挙しますので、運輸大臣、頼みますね。書いといてくれなはれや。  今回の調査対象の区域はどの範囲にするのかということ。これがわからぬ。  そうして空港条件調査項目では、土砂の採取、運搬調査、これをやるということになっていますが、その向こうはヘドロで、サンドポンプで海底の砂を揚げて埋めるというわけにいきません。どこかから土を持ってこなければいかぬ。その土量はどうなる。どこで取る。どう運搬する。  もう一つは、泉南というのは大阪府のずっと南の端です。坊さんのところの近くや。しかし、ある審議会の推定によりますと、乗降客を運ぶ自動車の数は恐らく一時間八千七百台になるだろう。一日ですよ、大体朝六時から晩の九時までということにすると大体十五時間。八千七百台掛けますと十三万五百台。この車がほとんど、ぼくの選挙区で言うと、堺から高石から岸和田から通ってびゆっと泉南へ行くわけや。また帰ってくるわけや。どないする。橋本運輸大臣当時お聞きしましたら、まあ自動車高速道路が三本要りまっしゃろ。新幹線クラスの高速鉄道を一本入れないけませんやろ。それで海上は、びゆっと波の上を走るホーバークラフトというあれで運ばないかぬでしょう。これは現地の騒音だとかなんとかということだけ調査されては困るんです。一銭も金は落ちんと自動車だけ一日に十何万台というのが往復しよる。残していくのは排気ガスだけというのではどないなる。こういう問題も大変な問題としていま地元ではかなえの沸くがごとき騒ぎになっているのです。それはちょっと大層だけれども、大体大変な騒ぎです。どうです、これは。
  237. 田村元

    ○田村国務大臣 この問題につきましては、とにかくちょっといままで例のないような環境アセスメントを徹底してやろう、こういう前提に立っております。さっき御指摘のありましたように、四つの調査は、これはやるわけですね。まず、さっきおっしゃったように自然現象、それから社会現象で人口がどれだけあるのか、学校がどれだけあるのか。そしてそれを調べて空港調査をやる。どういうような空港がそれに適しておるか。そしてまた、それがもたらすいろいろな公害等がありましょうから、環境影響というものも調べるというので、徹底的にこれを調べるわけなんです。  そこで、いま周辺開発の調査というものをどういうわけかしないじゃないか、こういうお話でございますが、やるのです。やるのですが、何分にも関係省庁がむちゃくちゃに多うございまして、そこへ府県ということで、これと一緒にスタートをすることができなかったことは申しわけありませんが、五十二年度のなるべく早い時期にこれをやることにいたします。参考までに申し上げますと、国土庁、建設省、農林省、通産省、自治省、厚生省、文部省、環境庁、それに私どもの運輸省と、ずいぶんあるわけです。それでこれはぜひやろうということにいたしております。  それから、仮に埋め立てをするとして土砂等を一体どこからどのように持ってきて、どのようにやるんだというお話でございますが、これはそういう調査の過程で決めていかなければなりません。はっきり言って、まだ決まっておりません。それから交通アクセスをどういうふうにするんだ、おっしゃるとおりで、私も将来のことを考えると、うならざるを得ません。私も御承知のように関西ですからあの辺のことはよく存じておりますが、こういうことも全部調査をしよう、そして特に府県の意見というものを徹底して聞こう、こういうことにいたしております。でありますから、従来ちょっとなかったような、開発計画を含めたアセスメントを徹底してやりたいということでございます。
  238. 正木良明

    正木委員 もうこれで終わります。  要するに、調査もしてくれるなというような反対運動が非常に強いのです。しかし、私は良識から言って、調査の結果を見なければどうしようもないだろうということを言っているのです。しかし、それは大阪府の黒田知事が、公害のない空港なら賛成だなんて言っているけれども、そんな公害のない空港というのはありません。だから、どれくらいの大きな影響を与えるかということが非常に大きな問題なんです。要するに、いままで議論になっておった、埋め立てをするためには、わかりやすい言葉で言うと、芦ノ湖を埋め立てるだけの土量が要るのです。それを泉南の山を削るのか、淡路島の山を削るのか知らぬけれども、どっちにしたって気象条件だってものすごく変わりますよ、山が一つや二つなくなるのだから。そういうふうに考えると、大変な問題がやはり伏在している。だから、そういう意味では、いままでにない画期的な事前評価をやろうということであるならば、それは徹底してやってください。このことは、やはり環境庁の今後を占う問題としても非常に重要な問題だと思いますから、石原長官もひとつその点についてはあなたの正義感で公平にきちんとやってもらうと同時に、後でちょっとそれ一言だけ言ってください。  運輸大臣、問題はデータを公表するかせぬかなんです。だから、全データを公表してもらわないと、いいところだけ公表されたのではあれですから、幸いこの席でありますから、そのことを一言大臣、それで私は終わります。
  239. 田村元

    ○田村国務大臣 さっきの四つの調査は、でき得る限りその都度その都度にしたいと思いますが、全資料を公表いたします。そして府県を初め十分意見を聞くつもりでございます。
  240. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 環境庁としていま考えておりますアセスメント法もすべての資料を公開するという原則でやっておりますし、そういう意味で、後先になるかと思いますが、新空港の場合にも、田村大臣が言われましたように、調査の資料を公表する形で、できるだけ、より多くの納得を得られる努力を環境庁としてもするつもりでございます。
  241. 正木良明

    正木委員 どうもありがとうございました。
  242. 坪川信三

    坪川委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。
  243. 石野久男

    ○石野委員 総理にお尋ねしますが、総理は施政演説で、資源エネルギーの確保と科学技術の振興の問題は、資源小国であるわが国にとって、まさしく安全保障的な重要性を持つものである、政府は、原子力を含むエネルギーの安定供給確保、省エネルギー対策等総合的な資源エネルギー対策を強力に推進します、こういうふうに述べております。  エネルギー政策の基本的な考え方についてお聞きしたいのです。
  244. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、資源エネルギーというものを非常に重大視しているわけなんです。資源エネルギーにつきましては、この十カ年の展望というものが一応政府にはあるわけでありまするが、その先を考えてみますると、その先が非常にむずかしい事態になってくる。いわゆる谷間の時期、つまり石油時代がだんだん先が細くなってくることが予見される。さあしからば、それにかわって代替エネルギーが開発されるかというと、これはまあ二十一世紀になりそうだ、こういうようなことで、一九八五年から世紀末にかけての資源エネルギー問題というものは大変むずかしい問題になってくるだろう。その辺を展望いたしまして、それで私は資源有限時代の意識、これを国民にいま訴えておる、こういう状態でございます。  そこで、資源エネルギー立場から言いますれば、資源有限時代、そういう世界情勢の中で、わが国の経済社会をどういうふうに運営していくか、こういうことになると、資源エネルギーをなるべく使わない状態が好ましいわけなんですよ。つまり、経済で言えば低成長、それがいいわけなんですが、さてしからば、しかしそれで日本社会としていいかと言うと、そうじゃない。やはり活力というものを考えなければならぬ。そういう見地で考えると、また適当な高さの成長も必要である。そこで資源エネルギーからくる低成長の要請と、また日本社会の活力ということを考える高い方への要請とどこで調和させるかということになると、まあこの十年間ぐらいは大体六%ぐらいを見当といたしていく必要がある、こういうふうに考えておるわけでございますが、そういう考え方に即応いたしまして、いま政府におきましても石油の輸入量をどういうふうに想定するか、また原子力発電をどういうように開発していくか。いろいろ計画を進めておるわけでありますが、これからも資源エネルギーというものを度外視した国策というものはもうあり得ないというくらいこの問題を重視しております。
  245. 石野久男

    ○石野委員 重視しているのはよくわかりますが、わが国におけるエネルギーの態様をずっと見ますると、石油にほとんど依存しているし、特にエネルギーの消費の傾向を見ると、大体産業が六〇%、そして民生で二〇%、農水あるいは運輸等で二〇%ぐらいになっておりますね。一番大きな産業部門で使うところのエネルギーに焦点を合わせた対策が必要であるということは、もう言わずとも考えられることです。その場合、産業構造の問題に手を触れないで、このエネルギー問題の解決ができるかという点が一つあります。それからもう一つは、いまの日本経済の実態は輸出依存型である。ところが、輸出については各国からの意見があって、それを遮断する、もう輸出は少し考えろというような意見がECあたりから出てきているということになると、この産業構造の問題と輸出産業中心の経済運営というようなものについても考えなきゃならなくなる。そこらの点の考え方によってはエネルギーの態様というものは大変変わってくると思うのですが、そういう点について総理はどういうふうに着意しておられますか。
  246. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういう資源エネルギー重視時代でありますから、やはり産業構造もそれに即応した転換を必要とする、こういうふうに考えておるのです。その面で一番大事な問題は二つある。一つは、低成長時代でありまするから、それに即応して企業の合理化というような体制を固めることが一つ。それからもう一つは、やはり省エネルギー型の企業ということをもうあらゆる分野において考えていかなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。いずれにいたしましても、もう非常な転換を求められている時局でございますので、企業におきましても大きな転換が必要になってきておる時期に来ておる、そういう認識でございます。  それから、輸出につきましては、これはわが国が国際社会とかけ離れてわが国だけが多くの輸出をする、こういうわけにはいかぬと思います。特に、わが国といたしましては、従来国際社会からかなりきつくとがめられている。それは集中豪雨的な輸出の増強というやり方ですね。これは本当に考えなければならぬ、こういうふうに思います。非常に国際社会過敏になっている時期でございますので、わが国としては特に気をつけながら節度をもって輸出政策には当たっていかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。しかし、この輸出というものは非常に大事になってきております。この輸出が壁に突き当たるというような事態があっては断じて相ならぬわけですから、そういう事態を招かないように四方八方に目を配ってやっていかなければならぬ、そういう認識でございます。
  247. 石野久男

    ○石野委員 私は、産業構造の変革という問題がエネルギー問題ときわめて重大な関係を持っておるというように考えておりまするから、その点についての政府の腹がしっかり決まらないとエネルギー対策の総合的な長期計画というようなものもなかなか決めにくいだろう、こういうように思います。  特に輸出入のバランスをどういうふうにとるかということと産業構造との関係は大変むずかしい問題であると思うのです。いま輸出入問題に対する世界の日本に対する声というのは、何と言いますか、昭和の初期のころのちょうどランカシャーで紡績が追い出されてくる、雑貨品がABCD線でどんどん追い詰められてくるというようなときとよく似ているような気もする。それであるだけに、やはり産業構造と輸出入のバランスという問題を考えた対応というものがどういうふうになるかということ、これは非常に大事だと思うのです。その点について総理にいま一度、そういう点を大局的に見てどういうふうにお考えになっているか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  248. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国はいま石野さんが御指摘のように石油にエネルギーを非常に依存しているのです。わが国は世界にない特異タイプである、こういうような状態であります。したがって、安定的な石油の輸入を続けていかなければならぬ。その石油輸入先の多様化というか、これはどうしてももう考えなければなりませんけれども、現実の問題とすると、幾ら考えましても、やはりOPEC依存の態勢というものをそう大きく転換することは、なかなかこれはむずかしいだろう、こういうふうに思うのです。そうしますと、いま貿易の問題に触れられましたが、やはりいま今日この時点で、石油の輸入量が二百億ドルぐらいになるわけでございますね。全輸出の三分の一ぐらいが石油だ。そうすると、このOPEC諸国に対する国際収支の赤字、これが大変なものなんです。昨年は恐らく百億近くにとどまったと思いまするが、一昨年は百億をちょっと出る、その前の年は百三十億ドルに及ぶ、こういうような状態であった。それをわが国は他の先進工業国への輸出でカバーをしなければならぬ、こういう立場にあるわけですから、そうしますとこれはなかなか、この先進諸国との輸出入を通じての関係というものは、きわめて微妙だ。私は先ほど節度ある輸出ということを常に気をつけなければならぬと申し上げましたが、いまこそ本当にそういう立場に立ちまして、そして諸外国から批判されないような、なだらかな形での輸出の増強という政策をとり続けなければいかぬだろうと思いまするし、同時に、相手国、世界各国に対しましては、わが国が石油に非常に多くを依存せざるを得ない状態にあり、したがって、その石油代金をカバーするというための輸出について、これはもう生命線というような立場において、非常に厳しい環境に置かれておるということの理解を求める努力、これが大変大事であろうか、かように考えます。
  249. 石野久男

    ○石野委員 これからも石油に依存しなくてはならぬという考え方がよくわかりました。  そこで、総理が「政府は、原子力を含むエネルギーの安定供給確保」ということをよく言っておる。この原子力を含む安定供給確保という点について、果たしてそれが総理考えておるように原子力はこたえ得られるのだろうかどうだろうか、こういう問題を私はここでお聞きしたいのです。  石油や石炭だったら、いまお話しのように、金さえ何とかして、外交交渉をやればどうにかなるということになるけれども、原子力の問題が、むしろその諸外国との関係じゃなしに、原子力自体、原子力発電自体が、なかなかやはりそう進む態勢ではないのでないかという、われわれはやはりそういう危惧を持っている。で、総理が、その「原子力を含むエネルギーの安定供給確保」ということを言う自信はどこから出てきているのだろうか、そこのところをひとつ聞いてみたい。
  250. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、原子力の問題で技術的な細かいことは存じませんけれども、原子力がエネルギーとして逐次重要な地位を占めつつあるということは、もう世界各国ともそういう認識をいたしておる、こういうふうに思うのです。わが国が、わが国の工業水準をもってして、その列外であるというような考え方は、これは持ちません。私は、原子力というもの、これは進めていかなければならぬ、最も緊切な要請を受けているわが日本立場である、こういうふうに思いますが、それをするためには安全性という問題があるのです。安全性について、技術的にこれはもう遺漏ないという体制ができる、こういう点がある。それから、原子力発電所施設、これの地域住民の協力、理解、これを獲得する必要がある。こういうふうに思いますが、まあそういう前提条件で私は原子力は逐次これを開発を進めていくことができる、こういうふうに考えております。  ただ、いま、御承知のように、四千九百万キロワット目標というやつがあるのです。しかしこの目標を達成するのは、私最近の推移を見ましてなかなか困難だな、こういうような感じがいたしておるわけでありますが、いずれにいたしましても、原子力開発が進まないというようなことにつきましては、何らのそんな見通しは持っておりません。不安も持っておりませんです。
  251. 石野久男

    ○石野委員 いま一九八五年に四千九百万キロワットを確保することは非常にむずかしいと見られるけれども、しかしそれができないとは考えてない、こういうお話でしたけれども、不安がないというのは何が不安がないのですか。
  252. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が不安がないと申し上げましたのは、石野さんが原子力開発が進むかどうかということについて自信があるかと言うから、原子力開発四千九百万キロワットという目標、これにつきましては、これはなかなかむずかしそうだ、しかしそういう数字にはいかないにしても、原子力開発が進むということについては不安は感じない、こういう意味であります。
  253. 石野久男

    ○石野委員 進むというふうに考えていらっしゃるかもしれませんが、現在日本の原子力がどういうような稼働状態にあるか、そしてまた現在どういう問題を抱え込んでおるかということについて総理はよく認識していらっしゃるのですか。たとえば、現在稼働中の発電所がいまどういう状況、概括的にどういうようになっているかということはわかっているのですか。
  254. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 抽象的には承知しております。かなり遊休中というか、稼働してない設備が多いということですね。それから、安全性の問題についてときどき問題が起こることがある、さようなことは承知しております。
  255. 石野久男

    ○石野委員 この安全性についてときどき問題が起きるという、そのことがいま地域住民の中で大変な問題になっておるし、その地域住民のところで安全性問題でごたごたしているという最大の理由は、総理はどこにあるんだと思っておりますか。
  256. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私も余り細かい技術的な点については承知いたしておりませんけれども、たとえば福井県の美浜で問題が起こった。その問題が直ちに通産省に報告されなかった。そしてその事故というか、その問題が、何か民間の人の著述の中で初めて暴露されたというようなことがありましたが、そういうようなことは住民に不安を与えると私は思うのですよ。こういう問題があったというのなら、これを起業者または政府の方で早く公表いたしまして、これはこういうことだったんです、実は軽微なことで、これは問題はなかったので、将来これからこういう対策をしますというようなことを公明正大に天下に明らかにする、こういうことなんか気をつけなければならぬだろう、こういうふうに思います。
  257. 石野久男

    ○石野委員 美浜問題で総理はもうすでにそのことを承知しているとしたら、この美浜問題についての政府の態度というものは明確になっていなくちゃいけないと私は思うのですよ。とにかく現在、新聞をごらんになるとわかるけれども、私もずっと見ておりますけれども、毎日の新聞で、原子力は安全だと書いてない日はないのですよ。本当にカラスの鳴かない日はあっても、原子力は安全だという記事はどこにでも出ているのですよ。このことと、それから原子力発電所におけるところの事故が隠されているということとは全くの逆の、百八十度違うほど数多くあるのですよ。そういう問題について政府の態度が厳正でないと、これは住民の不安というものは絶対になくならないだろうし、総理が言うように、恐らく昭和六十年代に四千九百万キロワットはとてもできるものじゃありませんが、三千万キロワットだってできないことになっちゃうだろうと思うのですよ。  私は、短い時間で非常にもったいないのですけれども、美浜の発電所の事故というものがどういうふうな経緯をたどってきているかは、これは総理によく認識してもらいたいと思っておるのです。  四十八年の定検のときにやはり美浜の一号炉の定検が行われて、燃料棒の入れかえなどもあったのです。ところが、その時点では若干の燃料棒の領域がえということだけあって、何の事故もないということの報道になっておった。その後、昨年の八月の二十五日に、実はいまお話しの「原子力戦争」という田原総一朗氏の本の中の報告があって、その報告に基づくと大変な事故が起きているということですから、私は尋ねた。     〔委員長退席田中(正)委員長代理着席〕 政府はそういう事実は全然知りません、こういう話なんです。それはおかしい。いろいろ問答の末、もし何でもないのならばぼくにそれを見せろ、こう言ったところが、いや、実はその場所は非常にアクティビティーが強いから、危険があるから近寄れません、こういうことで断られた。私は、それならばその田原氏が指摘しているところの燃料棒の状態というものを写真で見せろ、こういう要求をした。これもなかなか容易に答えられなかったのです。しかしその後、昨年十月一日のこの委員会の席上でもそのことを聞きました。ところが当時、なかなかそれに対して対応する答えは出てこなかったのです。若干の疑問点があるかもしれないから、それに答えるような努力をしましょうということでしたが、しかし原子力委員会にも何の報告もない、通産省も知らない、科学技術庁も知らないというのです。  十二月の三日に立入検査を通産省が行った。通産省が行った結果はっきりしたのが、やはり事故、問題があったということなんですね。問題があったということで出てきた案件は、いま皆さんのお手元にも配ってありますが、こういう事故が出ているわけです、燃料棒に対して。大変な事故なんです。しかし、この事故についても当時本委員会でどういうなにをしたかといいますと、この燃料棒を炉から引き出してくる、いわゆる貯蔵水槽の中に引き出してくる途中でどこかにひっかかって事故が起きたんであろうという答弁だったのです。これはもう皆さんわかるように、ここに大変な傷跡があって、いまお手元にお配りしてあるところの資料もごらんになるとおわかりになりますが、もう大変な事故なんです。しかしその当時でも、まだこれは接触で緩みが出ておったからそういうような問題になったんでしょうという程度だった。選挙があった後、私は、立入検査があったということを聞きましたので、現場に行きました。現場に行ってそれを見せてもらった。そうしますると、そのいわゆる七片の折れたものが出て、そこに置いてありました。それを早急に茨城の大洗、いわゆる原研の大洗に持っていって検査をするということですから、私は本委員会でも問題になったし、各党が皆大変重要視しているから、これはそこに持っていく前に、来年の本会議が開かれるまで待ってくれということを言ったのですが、急速に持ち運びました。これを向こうへ持ち込むことの運搬の問題でも大変問題があるのです。これは原子力、特に核運搬という問題ですから重要なんですが、これを全く手続もくそもあったものじゃない。とにかく十五日に決まって二十日の日に持っていくという応急措置を次から次へ措置をして持っていったんですね。その結果がどういうことになっているかというと、エネルギー庁から一月二十五日に報告のありましたこの資料です。皆さんのお手元にありますが、それによりますと、これでは燃料棒が非常に破損して二本だけこういうふうに崩れてしまっておる。破れてしまっておる。破れてしまった上に、ペレットがこういうふうにあちこち飛び散っておるわけでしょう。こういうような状態になっておる。そしてしかも、破片になったものは検査の結果このようにめちゃくちゃなんですよ。これはもう技術的に言えば大変なことです。とにかく被覆管がふくれておる。あちらこちらに破れがあるというようなことで、こういう重大な問題があったことに対して、ほとんどこの事故は何でもないんだというようなことでごまかしをしてきておる。特に重大だと思いますることは、私どもの手元に渡されましたこのシッピングデータというものがございます。これは放射能が燃料棒から漏れているかどうかを調べるなにでございますが、そのシッピングデータの中のいまお手元に配っておる第三領域のCの34というところは、これはごらんになるとわかりまするけれども、これは何にも事故がないように表示されているのです。この34というのがめちゃくちゃに壊れているのです。ところが、全然これはリークがないという形になっている。でたらめな虚偽の報告をしているのです。こういうような状態を通産省はほうりっ放しにしている。こういうようなことで、これがはっきりしてきた現状で、住民は、政府の幾ら安全だとか原子力発電所の会社が大丈夫周辺地に不安を与えていませんとか言ったって、それはだめですよ。私は、こういうような問題があるものについて、政府の管理監督並びに発電会社が法を守らないという点についてどういうふうに対処されるか、総理のひとつ所見を聞きたい。
  258. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまお話しのごとくに、四十八年に行われました美浜発電所第一号の定期検査の場合におきましては、本件は何ら報告をされておらなかった。その後御指摘のような田原さんの御報告がありまして初めて知ったわけでございまするが、昨年の十二月の現地調査の結果そのことが確認されましたので、先般二月の、三日ほど前でございまするが、関電の方の代表者を私のところに呼びまして、厳重に、今後のこともございますので、戒告をいたしたわけでございます。ただ、幸いにもこの事故が十二月には発見されまして、そうしてその後の措置を応急にとり、今後の対策を目下検討いたしておりまするが、私詳細に申し上げるよりも、たまたま御承知のエネルギー庁の長官が参っておりますので、政府委員からお答えをいたさせます。
  259. 石野久男

    ○石野委員 政府委員からの説明は、もらっていると時間がなくなっちゃうから、そういう事実があるとすれば、通産省なり政府は、発電会社に対して法の規定によるところの実行、実施というものを強く要求することはしないのですか、どうなのですか。法に従っての責任をとらすということをやらないのですか、どうなんですか。
  260. 田中龍夫

    田中国務大臣 もちろん今後の原子力エネルギーの開発等につきまして、このことは重大な支障に相なることでございますので厳重に措置をいたしまするが、その法の適用の問題につきましては政府委員から、私、詳細存じませんので、お答えをいたさせます。
  261. 石野久男

    ○石野委員 事実はこのように虚偽の報告をしておる。法律の適用、とにかく規制法によりますると、六十七条では報告徴収ということがありまして、主務大臣はこういう問題について業務に関する報告をさせることになっております。この六十七条の報告に対して、恐らく報告はとっているだろうと思いますが、しかし、事実は報告の中にはこのことが書かれていない。書かれていないということなら、虚偽の報告です。虚偽の報告になれば八十条の五によってこれはいわゆる一万円以下の罰金を受けることになっております。一万円以下の罰金を受けるということになれば、二十五条の二によってこれは認可の取り消しをしなければならないことになるわけです。こういう問題どういうふうにするのか。あるいはまた、二十三条の七号というのは、これはいわゆる設置許可の問題ですが、この設置許可の中には、とにかく使用する燃料の種類及び年間の予定使用量というものを届け出ることになっております。ところが、これを変更する場合、二十六条の二項によってこれは変更の届け出をしなければならない。いわゆる燃料の差しかえの届け出はしているはずです、これは通産大臣も受け取ると言っておりますから。その受け取るときにまた虚偽の報告がここに出てきておるわけです。これでもまた八十条の五の罰金刑に入ってくるし、それがまた三十三条の認可取り消しにひっかかってくる。もう至るところに問題が提起されている。また、運転規則の二十八条の二項によって当然年間二回定期的に届け出をしなくちゃならない規定になっております。その規定による様式にもまたこれは虚偽の報告をしているはずです。虚偽の報告をしていなければわかっているはずですからね。四年間もわからぬはずはない。そういうように具体的に法を無視した原子力発電所のこの実態というものに対して、あなた方は何も処置をしていない。いまからでも遅くないです。これをやらなかったら住民は絶対にこれは信用しませんよ。総理はどういうように考えますか。
  262. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのその問題につきましては規制法の問題でございますので、科学技術庁の方からお答えをさせます。
  263. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 石野委員御承知のとおり、規制法は商業炉に関しまして適用除外にはなっております。したがいまして、われわれといたしましてもちょうど通産省の定検の最中の事故でございまして、昨年の八月の委員会における御指摘によって初めて知ったわけでございますから、正式には実は十二月の三日に科学技術庁としてはその旨を通産省から報告を受けたわけでございます。だから規制法に従いまして十二月の十日に直ちに立ち入り調査をいたしまして、いま石野委員がお示しになられましたようなことを原研において確認いたしております。ただ、三月に最終的な答えを出すべくその調査を急がしておりまするし、私も過般原研に参りました。そしてそういう事情報告も承りましたが、今日ただいまの科学技術庁といたしましては、この事件は当然報告すべき事項であったであろう。したがいまして報告義務違反ではないかとの疑いを深めておるというのが現状でございます。いずれ急いで結論を出すべくただいまその調査を急がしている最中であります。
  264. 石野久男

    ○石野委員 私は、これは三十三条の二項、許可取り消しの条項にきちっとはまる内容を持っていると思うのです。政府はこれをはっきりとしなくちゃいけないと思う。この問題について総理はどういう考え方を持っておるか、もう一度はっきりここでしてもらいたい。
  265. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 原子力委員長の調査を待ってその処置の方針を決める、こういうふうにします。
  266. 石野久男

    ○石野委員 この問題と、いまはしなくも話があったように、科学技術庁長官はちょうどこの定検は除外規定になっておるものですから、通産省がやっておるわけですよね。通産省がやっておるから——通産省のやっておることの中ではこの定検報告というものは全然出てきてないわけですよ。これは法の改正にかかってくると私は思っておるのですが、いわゆる規制法の二十九条の一項で政令から定検が出てくるのですが、その定検を受けて総理府令が出る。その総理府令によって、通常の場合では、定検をしたならばそこで定検合格証を出すのです。ところが、通産省の電気事業法にいくと、合格証も何もないのですよ。だから、こういう事情が全然上へ上がってきてないのですよ。定検に行っておる人が、いわゆる主任検査官がどういうようなことをやったのかわかりませんけれども、恐らく報告が上へ上がってこないということになれば、どこかに判はついてきているのでしょうからね、その判はどういう判だというと、ちょうどお巡りさんが回覧板の巡回箱へ判を押すようなもので何にもならない。ちょうど電車の中で何か消毒をしましたということで判を押したのと同じようなことだ。こんなことでこの重要な原子力問題に対する規制が電気事業法でまかり通っているとするならば、電気事業法の定検の内容を変えていかなければいけないと思う。こんなルーズなやり方をしておったならば、とてもこれは住民は納得するものじゃない。私はこういう点について考えるべきだし、それから、通産省がこういう事実を全然上へ上げなかったということになると、通産省にも責任があると思うのです。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕 何のために定検に行ったんだ。これだけ重大なことをほうりっ放しにしておるということは、この責任をとらなければいけないと思うのです。少なくとも監督官庁としての任務を果たしていない。総理はどういうふうに考えますか。
  267. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  ただいまのお話のように、今日までの原子力行政におきまして、安全の問題並びに安全規制の問題につきまして、許認可等々の権限が非常に錯綜しておりまして一貫性を欠いておるというようなこともございました。  そこで、御案内のとおりに原子力行政懇談会、有沢委員会の答申も出てまいりまして、特にその中におきまする安全規制権限の問題については、実用発電炉は通産省、実用の船舶炉は運輸省、それから研究開発は原子炉を含めまして内閣総理大臣、こういうふうに安全の問題につきましては従来の原子力委員会に安全委員会を新しくつくり、また安全規制の問題につきましては各省が一貫して責任体制をとるというような結論をいただきました。鋭意その問題につきまして、法の改正なり安全の問題につきまして今国会に法案をお願いいたしておる次第でございます。よろしくお願いいたします。
  268. 石野久男

    ○石野委員 行政懇から出ておるところのいろいろな意見、行政改革あるいは原子力行政に対する意見は一つの参考にはなると思いますけれども、いまのような問題、いわゆる管理監督をする精神の問題に一つもここは入っていません。少なくともそういう問題をこの段階でやらなければ、原子力は安全だ、安全だと幾ら言ったって、住民、国民は信頼しません。  それどころじゃない。こういう情勢のもとで、そこで働いておる労働者の被曝というものは、これは大変なものですよ。被曝状況について通産省にしても科学技術庁でも労働省でもどれだけ十分な把握をしているかということになると、これはきわめて不十分だと私は思う。少なくとも被曝手帳を作業者に皆持たせるということについても、この被曝手帳を持っている人というのは、普通の社員は持っておるけれども、下請の労働者なんかはほとんど持っていない。そういう問題についての管理監督が非常に大事だと思うのです。  そこで、私は総理にこれはもうどうしても、いま通産大臣は行政懇の答申を受けて新しく考えるということを言っておりますけれども、少なくとも既存の法律であるところのこの七十三条で排除要項になっておる通産に移行しております業務についても、法の条項だけは完全に通産でも果たさせるようにしなければいけない、私はそう思うのです。だから、いまこの問題で、先ほど話がありました関電に対する監督官庁として、法による態度の問題と、それから通産省におけるところの責任者の問題等については、はっきりとしてもらいたい。これはここではっきり総理の所見だけを聞いておきたい。
  269. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 被曝の問題は重大なことでございますから、石野委員も御承知のとおりに、一般人におきましては年間に五百ミリレム、そして従事者に対しましては年間五千ミリレムというふうな国際的基準がございます。しかし、原子力委員会といたしましては、もっと厳重にシビアな基準を設けようというので、御承知のとおり環境に対しましては五ミリレムというところまで厳しい条件を設置いたしております。そしてまた、従事者に対しましても、そのようなことで三月三レムということで検査をいたしておりまするが、いままでのところ幸いにいたしまして被曝者はおりません。しかしながら、重大なことでございまするし、特に御指摘の定検のときに、しばしば異動をされる労務者もおられます。この方々が一番被曝の環境におられるわけでありまするから、この方方に対しましては、やはり一元的にその状況を把握する必要がある。そして中央においてそのことを登録する必要がある。そして管理をしなければならないということでございますので、本年度の予算におきましても、中央でそうした一元的な登録を行うところのセンターの予算を提出をいたしておるということでございます。  いずれにいたしましても、やはり安全が第一であります。何と申し上げましても、安全なくして原子力の開発はございませんので、この問題に関しましても、先ほど通産大臣がお答えいたしました答弁にさらに追加いたしましてお答えをいたしておきます。
  270. 石野久男

    ○石野委員 安全が第一だ、第一だと言ったって、実際の事実を明確にしないで、安全もくそもあったものじゃないですよ。実際どんなことが起きておるかということをもう少し明確にしなければいけない。労働者の被曝、あるいはそれによって障害を受けて、毎日死んでおる者もおる。そういうような問題についてもちっとも明らかになっていない。そして新聞や雑誌にはどんどん、安全でございます。安全でございますというような宣伝、こういうことをやっておるのでは、だれのための行政をやっておるのか、原子力はだれのためにやっておるのかという問題が出てくるのですよ。  いまその障害を受けた問題で、死んだ人もおるんだよ、そういう問題について、楢崎委員から質問がありますから、聞いてください。
  271. 坪川信三

    坪川委員長 楢崎君より関連質疑の申し出があります。石野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。楢崎君。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことを言われる時間の方がもったいないのです。  重大な人身に対する事故が起こっていないというような御答弁でございましたが、われわれの調査では、数年前に亡くなられた人が二、三あるのです。私のところに陳情がありました。死因がおかしい。その当時はまだこの事故の状態がようわからなかった。それで、私ども調査をいたしました。お医者も死因について語らない。関電に問い合わせても語らない。私のところに来た陳情は、その遺体が異常に変色をしておる。だから、こういう問題も含めて、私はいま石野委員が言われたことについて徹底的に調査をしてもらいたいと思う。これは重大問題です。  以上です。
  273. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いま楢崎委員の御指摘の件は、私も実は初めて承る件でございまするから、慎重に検討をいたし調査をいたします。
  274. 石野久男

    ○石野委員 いまもおわかりのように、長官がはっきり肯定しておるように、関電からは何の報告もないのです。政府は知らないと言うのですよ。私は、知らなかったのかどうかわかりませんけれども、知っている人がだれか隠したのかどうか知らないけれども、こんなことでは原子力行政に関する管理監督は全然行き届いていない。現実に、いま申しましたように、法的に言っても、すでにもう三十三条の二項による取り消しの該当にどこから見たって間違いない。こういう事実をほうりっ放しにしておるという手はないと思うのです。この問題に対する政府考え方をいま聞きたい。もし、いまどうしてもなにしないのならば、総括が終わるまでの間にその態度を明確にしてもらいたい。私は、こういうようなことをほうりっ放しにしておるままで、幾ら原子力行政をやらしてございますなんて言ったってこれはどうにもならない、こう思うのです。  それから同時に、またいわゆるこの定検に当たり、当然定検で燃料棒の入れかえをしておるのですからね。入れかえをしておるのに——なぜ入れかえをしておるか。それはごまかしておる。私はもう時間がありませんから多くを言いませんが、そういうことで、ここでもやはり通産省の責任者を明確にしなくちゃいけない。ひとつはっきりしてほしい。
  275. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘の問題は、お話のごとくに定期検査をやっておりましたそのときに、本来ならば私はわかっていなければいけなかった、こういうふうに考えておるのでありますが、そのときには全く不明でありまして、その後に至りましてそういうことがわかったような次第であります。さような意味から、私の方におきましてもあるいは科学技術庁長官のところにおきましても、責任者を呼びまして厳重に戒告をいたしたような次第でございます。  なお、それにつきまして、わが省におきまする関係者は実は後に知ったわけでございまして、さような問題につきまして、なお今後一層こういうことが再度繰り返されないように十分な措置をとりたい、配慮をいたしたい、かように存じます。
  276. 石野久男

    ○石野委員 総括が終わるまでに答弁するのか。総括が終わるまでこれ……。
  277. 田中龍夫

    田中国務大臣 わが省におきますその間の経過につきまして、政府委員からお答えいたさせます。
  278. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私の方であります定期検査は、電気事業法の第四十七条に基づいて、詳細は省令の規定に従って実施するわけでございますが、先生御承知のとおり、定期検査の業務量が非常に膨大になりまして、二、三直交代でも平均して百日前後かかるというような実情からいたしまして、いわゆる立会検査と記録確認調査と併用いたしておるのが実情でございます。  本件につきましても、専門学者の集団でございます原子力発電技術顧問会の審議を得まして、立会検査すべき項目と記録確認検査を行うものとを区別して実施したわけでございます。この際、燃料体検査につきましては、関西電力の点検結果を報告させる形をとっております。  それからいま一つ電気事業法の立場におきます問題でございますが、これは法律違反としてはいままだ調査中でございますが、届け出がなかった、報告がなかったという点においては法律違反の可能性が強い性格のものだと思います。
  279. 石野久男

    ○石野委員 だから総理、すぐにこれに対するいわゆる科学技術庁の責任と原発に対する法的処置の問題をどうするのかということを聞いているのだ。
  280. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、原子力委員会並びに科学技術庁といたしましても、この原因をいま調査いたしておる最中でございますから、早急に出します。そして先ほど来先生がおっしゃっておられる諸般のことに関しましては、この総括中に何らかのお答えができるように努力をしたい、かように存じます。
  281. 石野久男

    ○石野委員 総括中にこの回答をもらわないと困る。だからその点もう一遍、通産省はどうするのか。
  282. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員をしてお答えいたさせます。
  283. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま申し上げましたように、電気事業法体系におきましては、第百六条に基づく電気関係報告規則第六条との関連で問題があるわけでございますが、この問題は事件発生以来三年を経過いたしておりまして、すでに公訴時効が完成しておるということからいたしまして、電気事業法の体系においては、先日大臣が責任者を呼び出して厳重に注意をし改善方を指示したということにとどまるかと思います。(「そんなことではだめだ、そんなものだめですよ」と呼ぶ者あり)
  284. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまお話しのごとくに、この総括の終わるまでに政府の見解をまとめましてお答えをいたしたいと存じます。
  285. 石野久男

    ○石野委員 これは時間がたったからどうとかこうとかいうことじゃない。現実にまだ問題は、美浜の一号炉というのはとまったままになっているのですよ。しかもまだこれから、ここから引き続いてくる炉内にあるところの汚染の問題だとか、飛び散ったペレットはどうなっているかという問題は数多くある。とにかくこれは総括の終わるまでに、いま言ったなにをはっきりとしてもらう。  あともう一つ、原子力に関係して「むつ」の問題がある。「むつ」の問題について、もう四月の十五日になるとこれはむつ港を離れなくちゃならないんだが、当時青森との折衝に立った鈴木さんがいま閣僚としておられるのだが、責任者であるあなたがどういうような対応をしようとしているのか。政府はこの問題にどういうような対応をしようとしているのか。まず最初に鈴木さんからひとつ意見を聞きたい。
  286. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 御承知のように、昭和四十九年の八月の下旬でございましたが、原子力船「むつ」は、太平洋上で原子炉の臨界実験途中におきまして放射線漏れという事故を起こしたわけでございます。そのために陸奥湾の漁民は母港であるむつ港に、定係港に帰ることを拒否いたしまして、事態が紛糾をいたしたことは御承知のとおりでございます。そこで、私当時総務会長でございましたけれども、この事態収拾を政府から委任をされまして、この衝に当たったわけでございます。その際、県漁連、青森県知事並びにむつの市長、私と、四者の間で合意協定書なるものを作成、調印したわけでございます。その内容は、二年半後、来る四月の十四日、それまでにむつの定係港から原子力船「むつ」を撤去する、その他陸奥湾の沿岸漁業の振興対策。後段の陸奥湾の漁業の振興対策は完全に協定書どおり実施されております。しかるところ、新しい定係港の決定並びにむつ定係港からの原子力船「むつ」の撤去の問題は、いまだ解決を見ておりません。政府においては、新しい定係港を決める前に原子力船「むつ」の修理をしなければならない、修理港を長崎県の佐世保市にお願いをしたいということで、長崎県並びに佐世保市と目下交渉中である、こういう段階にございます。
  287. 石野久男

    ○石野委員 鈴木さんは協定を結んだ責任者だけれども、事情説明だけお聞きしたけれども、この協定に対する責任を持とうとしていない。いま青森では四月十五日に約束どおりこれが出ていくことを前提として物事を考えている。「むつ」はどういうふうにするのか。佐世保は受けるのは困る。政府はいま四月十五日に「むつ」をどういうようにするかということについて腹構えをどうしているか、まず最初にその点だけ……。
  288. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 四者協定は最大の努力をいたしまして忠実に履行したいとただいま努力をしている最中であります。
  289. 石野久男

    ○石野委員 四者協定を実行するための努力をしているようですが、それじゃどこへ持っていくかということについては、また一つ問題が出てくる。  その前に、原子力船事業団法という法律、われわれはもうこれはなくなった、こういうふうに見ている。ところが、ことしの予算の中に「むつ」に対する予算が出てきておりますね。この法律の考え方なんです。われわれは原子力船事業団法が昭和五十一年三月三十一日をもって廃止するものとする、この「ものとする。」というところでも三月三十一日で切れている、こういうように主張してきました。自由民主党と政府は、「ものとする。」ということについて、三月三十一日が過ぎた後で延長法案を出してきた。延長法案を出してきて、それが継続審議になって第七十八国会で審議未了、廃案になっている。われわれはあくまでもこの「ものとする。」というのは時限法の立場をとっている、こう思う。ところが、延長法案がどんどん出てくるということになると、ここでどういうふうに理解すべきかということについて解釈がぐっと違ってくる。これは私は多くを言いませんが、法制局長官にちょっと聞きますけれども、時限法とそれから恒久法との間の差はどういうところにあるのか。
  290. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えを申し上げます。  限時法、時限法ともいいますけれども、これはその法律が制定当初から、たとえばこの法律は昭和何年何月何日限り効力を失うとか、あるいは施行の日から何年を経過した日に効力を失うというように確定的に失効日を予定しておる、定めておる、そういうものが限時法でございまして、恒久法はそういう規定のない普通の形の法律のことでございます。
  291. 石野久男

    ○石野委員 じゃ、「ものとする。」というのはどういうところに違いがあるのか。
  292. 真田秀夫

    ○真田政府委員 いまの原子力船開発事業団法がまさしくその例でございますけれども、たとえば五年内に廃止するものとするというふうな規定を置いてある場合は、これは先ほど申しましたような限時法ではございません。これは五年内に廃止する方針であるという立法の政策、方針を宣明したものでございまして、具体的に廃止するという法律が出るまでは、これは効力には影響はございません。そのようにわれわれは解釈しております。
  293. 石野久男

    ○石野委員 法律がどうにでも解釈できるというようなことになると、これは問題があると思うのです。方針を示したものだったら法律じゃないでしょう。(発言する者あり)
  294. 坪川信三

    坪川委員長 静粛に願います。
  295. 石野久男

    ○石野委員 この問題は理解ができない。しかも事業団法は、三月三十一日現在では廃止法案ももちろん出ていないし、延長法案も出ていないのですよ。そこでもまだ方針で続くのですか。
  296. 真田秀夫

    ○真田政府委員 いわゆる純粋の限時法とただいまおっしゃいました「ものとする。」という規定のある法律との効果の違い、この違いは私がいまここで初めて申し上げるわけじゃなくて、いままでも政府の答弁がございますし、それから過去における国会のお取り扱いもそのような考え方で処理されております。と申しますのは、いわゆる純粋の限時法につきましては、廃止法、廃止するための法的措置がとられたことがございません。これに反しまして、いわゆる「ものとする。」という規定を持っている法律につきましては、その都度廃止の措置がとられております。おもしろい例といたしましては、純粋の限時法と、「ものとする。」という規定を持っている第二のタイプの法律と、二つを統合して新しく一つの法律をつくったことがあるのですが、そのときに、その新しくつくられた法律の附則を見ますと、純粋の限時法については何も規定がございませんのに、「ものとする。」という規定を持っている法律につきましては、わざわざ「廃止する。」という規定を置いております。これなどは、先ほど来申しております二つのタイプの法律の効力について国会自身が違った、使い分けた取り扱いをされておられるということの明瞭な証左であるというふうに思います。
  297. 石野久男

    ○石野委員 法制局長官にもう一度聞きますが、五十一年十一月四日に公報が出ております。この公報の中で「本院委員会において審査未了のもの」、この審議未了になったものはどういう法律効果を持っているのですか。
  298. 真田秀夫

    ○真田政府委員 「ものとする。」という法律の五年を延長するという法案を提出いたしましたところ、それが廃案になった、その廃案になったことの法的効果はどうかという御質問だろうと思うのですが、これは、もとの法律、つまりいま問題になっております原子力船開発事業団法の効力には影響ございません。そのことは、私、調べてみましたら非常によく似たおもしろい——おもしろいと言っては弊害がありますが、例がございまして、日本原子力船開発事業団法の効力を考える場合に非常に参考になる先例がございます。  それは、肥料価格安定等臨時措置法の改正の経過でございますが、この法律は当初、附則に同じく「この法律は、施行の日から五年以内に廃止するものとする。」という附則が定められておりました。この五年の経過直前、第六十一国会でこの期間を延長する法律案が提出されましたところ、参議院でやはり審議未了となり、廃案となりました。しかし、その間もちろんこの五年間はすでに経過いたしたわけでございますけれども、その五年の経過によって同法が失効したというふうには取り扱われておりませんで、その後第六十三国会でこの五年間を十年間に改めるという延長法案が再度提出されまして、これは無事成立いたしました。この肥料価格安定等臨時措置法は、その後さらにこの期間が延長されまして、現在でも有効かつ完全に実施されております。  これも、先ほど来私が申しましたような解釈に立っているとしか考えられないわけでございまして、そういうわけでございますので、原子力船開発事業団法が、廃止する法律がない限りは、去年の三月三十一日をもって失効したとはとうてい考え得られないわけでございます。
  299. 石野久男

    ○石野委員 肥料法案の例を出しましたが、それは政治情勢が非常に違うのです。当時やはり自由民主党が衆議院においても圧倒的な数を持っておったし、当時の事情は両院とも全然違った。そういうようなことがあったのだが、しかしそれだけじゃないのだ。こんなこと許せないでしょう。こんなことやったら恒久法と限時法との差というものは全然なくなってしまう。何年たってもそれじゃ効力を持っているということになるが、そんなことわれわれ理解できないですよ。
  300. 真田秀夫

    ○真田政府委員 「ものとする。」という附則のある法律と通常の恒久法とが同じであるとは私は申しておりません。「ものとする。」というのは、立法当初においてその法律がみずから、この法律は五年内に廃止するものだよという方針を宣明しているものであって、直接その期間の経過によって自動的に失効するものではないのだということを申し上げているわけでございます。
  301. 坪川信三

    坪川委員長 日野市朗君より関連質疑の申し出があります。これを許します。日野市朗君。
  302. 日野市朗

    日野委員 いま石野委員から質問があったことについて、重ねて私の方からも伺いたいと思います。  この原子力船開発事業団法、これから私はこれを本法と呼ばしていただきますが、この本法については、内閣総理大臣に対するわが党の成田委員長からの質問に対しても同じような御答弁が内閣総理大臣からなされたと思います、この附則第二条の解釈についてですね。そこで、私ずっといままでわが国の立法例、同じような附則を置いている立法例を調べてまいったわけでございますが、かなり多くの立法例があります。これらは、大体は延長法案が期間内に出されているという経過がいままでずっとあるわけであります。つまり、法制局長官がいま言われたのとはうらはらに、わが国の国会においてはこういう附則第二条のような廃止するものとする。」という規定が置かれている場合、その法文の規定に忠実に延長法案を出しているのが通常であります。そしてまた、この附則がある場合、これによって期限切れになった場合ですね、これについては延長法案が出されない場合に廃止された法律なんかもあります。たとえば輸出硫安売掛金経理臨時措置法というようなものもあるわけですね。つまり、わが国の国会のいままでの通常の運営は、やはりこのような附則の期限が到来する以前に延長法案を出す、またはそれが出ない場合はこれを廃止する法律案を出す、これが通常の解釈としてまた慣行としてほぼ定着してきたものと思いますが、いかがでしょう。
  303. 真田秀夫

    ○真田政府委員 「ものとする。」という附則を持っている法律、本法ですか、本法の効力をどう処理するかということは、通例は、もちろんその予定されている期間の経過前に延長なら延長、廃止なら廃止という法律を提案いたします。その原子力船開発事業団法につきましても、七十七国会でその期間の経過前に政府は延長法案を出しているわけでございます。  それからもう一つ、ただいま輸出硫安売掛金経理臨時措置法、これは「ものとする。」という法の立法例でございますけれども、これは自動的に失効しているではないかという御発言がございましたが、この法律は四十八年法律七十八号によって廃止されております。これは廃止法を出しておるのであって、決して自動的に失効しているわけではございません。  それからもう一つ、先ほど申し落としましたが、原子力船開発事業団法の三十七条というのを見ますと、事業団の解散については別に法律をもって定めると書いているわけでございまして、その規定から見ましても、何ら法的手当てをしないで本法が自動的に失効してしまうなどということはゆめゆめ考えられない、そういう感じがいたします。
  304. 日野市朗

    日野委員 いま私の言ったことを長官はどうも誤解されたらしい。確かに輸出硫安売掛金経理臨時措置法は四十八年の九月六日、法律七十八号、この法律を廃止する法律によって廃止されている。そのことを私は指摘したわけであります。  ところで、このような「廃止するものとする。」というような取り扱いが、通常の日本の用語例によって読まれなければならないことは、これはもう当然のことであります。そして「廃止するものとする。」という条文があるこういう法律をずっと見ても、いま長官が言われたような、その期限が到来してもなおかつ効力を持っているのだとするならば、何ゆえにこのような規定を置く必要があるのだろうかということを考えなければならないと思うのであります。私たちは、この法律はもうすでに失効したと思うのですが、その根拠は、このような規定がある以上、その期限の到来するまでに何らかの処置がとられなければこれは失効するであろう。普通の限時法であれば、その期日が到来すれば当然失効する、こういう規定があります。でありますから、これがもしその期限が来ても何らその効力に関係なく継続するというものであるならば、このような規定は置く必要がないわけです。つまりこの規定は全く死んでいる、そういうふうに見なければならないわけですね。つまりわれわれの見解としては、延長するなり廃止するなり何らかの処置をその期限が来る前にとることができるというふうにこれは読むべきである。もしその処置をとらなければ、その期限が到来したときにこれは当然廃止されるもの、こう考えるべきであろうと思います。特に本法の原子力船開発事業団法、これの中には罰則があることも長官は十分御存じであろうと思います。もちろん罰則の適用、これは罪刑法定主義のたてまえから言えば、罰則を適用するということは日本国民の権利義務に重大な影響を持つことでありますから、その罰則の適用がこの期限後もできるかということになると、これは刑法の根本問題にまでさかのぼった非常に重大な問題になってくるのではなかろうか。罪刑法定主義の問題にまで触れてくるのではなかろうか。こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  305. 真田秀夫

    ○真田政府委員 何年内に廃止するものとするという規定規定を、それじゃ何のために置いておるのかという御質問でございますけれども、これはその当該法律を新しくつくるときの立法政策の問題でございまして、その立法政策として、もう五年なら五年たったときにぴたりと、絶対的に自動的に失効させてしまうという立法政策が立った場合には、第一のグループの限時法になるわけでございますし、それから、立法当初にこの法律は普通の恒久ではないぞ、五年なり十年なり、ある程度の期間がたったときに廃止するという方針を打ち出しておいた方がいいではないかという立法政策が立ったときに「ものとする。」という第二のタイプの附則が考えられるわけでございます。  それから、罪刑法定主義のお話がございましたが、罪刑法定主義というのはもう非常に大事な原則でございますが、いま私が申しました、附則の「ものとする。」という規定の趣旨がこういうものであるということがはっきりすれば、これは罪刑法定主義に反するわけでも何でもないのでありまして、そういう法律なんですから、その法律に従って刑罰請求権が行使されるという関係になるわけでございます。
  306. 日野市朗

    日野委員 いま長官は立法政策の問題を云々されたわけであります。これは五十一年の三月三十一日がその期限に当たっているわけでありますが、その期限を定立した立法政策は一体何であるというふうにお考えですか。
  307. 真田秀夫

    ○真田政府委員 それは、詳細なことは私はちょっとお答えする責任がございませんので、法制局ですから、当時立案当局の説明は一応聞いたんだろうと思いますけれども、私がいまここでそれを具体的に申し上げるべき立場ではございません。立案当局からお聞き取りを願いたいと思います。
  308. 日野市朗

    日野委員 少なくとも五十一年の三月三十一日という期限が明示されている以上、その法律はこの五十一年三月三十一日という期日を非常に重要なものとして定めていることだけは間違いないのであります。それを全く無視して、これを何も意味がない規定であるかのように考えて、無期限にこれを延ばしていくということであれば、これは全く関係のない条文だということになるでありましょう。でありますから、われわれとしては、これはあくまでもこの段階で失効しているというふうに考えざるを得ない。しかも、延長法案が出されて、それが審議未了で廃案になっている。こういう事情を見ますと、しかもこの延長法案というものが審議未了ということになっているわけでありますから、こういうことになりますと、この事業団法、これを私たちはあくまでも効力がない法律だ、こう見ざるを得ないのであります。でありますから、ここから現在予算要求がされていること、これは全く根拠のないものというふうに考えるのでありますが、その点についてはいかがでしょう。これは総理大臣にお伺いしたいと思います。
  309. 石野久男

    ○石野委員 いま長官が期限前の立法行為というものに触れておるのですが、本法については期限前の立法行為は行われていないのですよ、三月三十一日までには。廃止法案も出ていなければ延長法案も出てないのです。出たのは五月になってからですから、だから、その期限前には何の行為もないのだから、自動的にそれは廃案になってしまう、こういうことになる。実際に出てないでしょう。
  310. 真田秀夫

    ○真田政府委員 昨年の七十七国会、五月三十一日前に政府から十年間延長するという改正法案を提出いたしております。
  311. 石野久男

    ○石野委員 五月の会期切れのときには出しておるけれども、三月三十一日までには出していない。法律の三月三十一日と国会の会期とは違うのですよ。
  312. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 お答えいたします。  ここに科技庁並びに運輸省の記録がございますが、この改正法案は昭和五十一年一月三十日閣議決定され、翌三十一日衆議院に提出された、そういう記録が残っております。
  313. 石野久男

    ○石野委員 提出されたというが、これは議運にもかかっていないのです。政府ではそういうふうであったでしょうけれども、科技特の委員会にもまだおりておりません。だから、それは政府はそういうように決めたかもしらぬけれども、出ていないのです。調べてごらんなさい。
  314. 真田秀夫

    ○真田政府委員 七十七国会における事業団法の改正法案の閣議決定日、国会提出日は、ただいま宇野長官がおっしゃったとおりでございます。
  315. 石野久男

    ○石野委員 これは後で調べてもらいたいのです。提案がなかったから、実は社会党は廃止法案を用意したのです。用意したけれども、延長法案が出ないものだからわれわれの方も廃止法案を出さない、そういう実態があるのですから、それはもう一遍調べてもらわないと困る。調べてみてください。
  316. 真田秀夫

    ○真田政府委員 念のために直ちに調査いたします。
  317. 坪川信三

    坪川委員長 石野君、質疑を続行してください。
  318. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 昭和五十一年一月三十日閣議決定され、翌三十一日衆議院に提出された。
  319. 坪川信三

    坪川委員長 石野君、御発言を願います。——石野君、御発言を願います。
  320. 石野久男

    ○石野委員 これは仮に政府が提案しておりましても、その当時付託がされてないから、それで社会党としては廃止法案を用意したけれども出さなかった経緯があるのです。しかしこれは提出されているということで、後またもう一遍検討しますが、仮にこういう事情があったとしても、今度、延長法案が七十八国会で否決されている。そうなると、われわれは本法を予算の基礎法案とするということはどうしても納得できない。もしこの予算を出すなら、新法でこれを出すならいいですけれども、延長法案が廃案になればそのもとはなくなっているのはあたりまえじゃないですか。それをあるんだなんということになったら、国会は何のために審議するのですか。こんなこと、行政府がそんなことを言ったら、立法府はいつでも行政府の言うことを聞いていなければならない。これは立法権の侵害にかかわると思いますから、私はこれは納得できない。
  321. 安宅常彦

    ○安宅委員 関連で……。そういうときには、立法府とそれからあなたの方の政府側との考え方で言うならば、廃案になったら法律そのものがなくなるのですよ。だから継続審議の要請をするなりそういうことについてあなた方は手を尽くさなければならない。そんな、法律すぽっと廃案になったら、それこそあなた、提案されてないもとに返るのですよ。だからそういう見解も、それから仮に石野さんが言うようにそういう場合であっても、先ほど日野さんが言ったような解釈、そういう実例もある。いろんなことで混乱をしているのですから、この問題については委員長理事会で扱って、そうして政府といろいろ打ち合わせてその結論を出す、そういうことで処理をしていただきたいと存じます。
  322. 坪川信三

    坪川委員長 承知しました。
  323. 石野久男

    ○石野委員 では「むつ」の問題については理事会でひとつ検討していただきたい。  私は、核外交についてひとつ聞きたい。私たちが核防条約の批准に賛成したのは、これに日本が加盟国となった後に、非核三原則を持つ日本として、この基本政策を国際世論として拡大していく環境が強まるという大きな前提を持っておったからです。しかしその後、政府の態度を見ておると、とりたてて核廃絶に向かって非核の政策浸透の具体的な国際努力をした形跡が見られない。政府はどのような努力をしたのですか。
  324. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 核防条約によりまして日本はいろいろな義務を負ったわけでございますけれども、その負った義務が原子力の平和利用を妨げてはならないということは、政府といたしましても常々主張していたところでございます。そういった点につきまして今後とも努力をしてまいる所存でございます。  もう一つ、核の拡散防止あるいは核の実験の禁止という点につきまして努力をして、国連等の場で努力を続けているところでございます。
  325. 石野久男

    ○石野委員 核防条約に当たってわれわれに約束した努力というのは、さらにフランスだとか中国などの非加盟国に対して日本が積極的に努力するということであったのですか、そういう問題についてはどれだけの努力をしているのですか。
  326. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの核保有国につきまして、この核防条約に加盟するように努力を続けておるところでございます。
  327. 石野久男

    ○石野委員 核防条約の問題で、特にアメリカのカーター大統領が核拡散を防止するために再処理工場に対してのいろんな意見を出しております。この問題について日本はどういうような折衝をしているのですか。
  328. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 お答えいたします。  再処理問題は、言うならばわが国の核燃料サイクルのキーポイントで、何としても自主的な核燃料サイクルを確立いたしまして、その再処理の技術をもっと高めなければなりません。ところが、カーター政権になりましてから、御指摘のとおりの話が出てまいりましたので、来る十七日か十八日、原子力委員長代理をアメリカに派遣いたしまして、そして直接わが国の立場アメリカ政府に訴えるようにいたしたいと存じております。
  329. 石野久男

    ○石野委員 とにかく日本が核防条約に入ったということの政府考えている一番主眼点になるものは何であったかということが、いまわれわれにとってわからないのですよ。総理、核防条約に入って、日本のメリットというのは何に置いておったのですか。
  330. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本の現実の問題といたしましては、やはり日本がこれから原子力発電を大いにやっていかなければならない、こういった場合に、やはり保障措置が必要である。そういったことから、日本が諸外国から原子力に関するいろいろな協力を受ける場合に受けやすくなるということが当面の一番大きな点であったと、こう思うわけでございます。
  331. 石野久男

    ○石野委員 それは本音だろうと思うんだね。われわれが核防条約に入った一番メリットというのは、やはり日本が核を持たないということをはっきりさせるというところにあったと思うのですよ。ところが、核を持たないということを前提とすれば、われわれの領域の中へは全然核を装備したようなものを入れないということがそこから出てこなければいけない。ところが、いま外務大臣は、このメリットは言うなれば核燃料の確保が有利になる、こういうようなことだと言うわけですね。総理はそれだけが目的だったのですか。それが核防条約の一番主要な目的ですか。
  332. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 最初の核の拡散防止ということが世界の平和にとって大変大事なことであるということはもう当然のことと思いましてその先を申し上げたのでありますが、当然のことでありますが、世界の平和のために核の拡散を防ぐということが、これが何よりも第一の問題である、これは当然のことでございます。
  333. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、核拡散防止条約の一番のねらいが、われわれが核を持たないんだということに焦点を合わせたとするならば、十二海里の問題にとっての津軽海峡の問題が出てくるんですね。この津軽海峡、あそこは日本の領土の中だという考え方をもう政府は捨てているのですか、どうなんですか。
  334. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 津軽海峡の問題につきまして、いまこれはいわゆる国際海峡と考えられているところでございますけれども、この地域につきましては現在の領海幅をそのまま凍結をしておく、こういう考え方のもとにいま領海十二海里という問題に取り組んでいるところでございまして、法案がまだでき上がっておりませんけれども、いままでの政府部内で考えておりますことはそのようなことでございまして、領海は三海里のまま、こういったことで進めておるわけであります。
  335. 石野久男

    ○石野委員 津軽海峡、あれは国際海峡だということになると、領土の北海道と本土青森との間に日本の国土でないところがずっとあるというこの考え方を政府はとっているということですか。本土と北海道との間は一つの国土の領域の中にあるというふうな考え方でないのですね。
  336. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 現在のところは津軽海峡の中には公海部分がありますので、そういったことから、全部が、いまおっしゃったところはあるいは瀬戸内海と同じように内水ではないかということではないかと思いますが、現実にそのようなことには現在のところなってないという解釈であります。
  337. 石野久男

    ○石野委員 十二海里を主張するということになると、どういうふうになるのです。
  338. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 十二海里の領海を一律に全部日本が現在の海峡も含めてとるということになれば、ずっと日本の主権が及ぶところが連続するということになろうかと思います。
  339. 石野久男

    ○石野委員 政府はそれをどちらをとるつもりでおりますか。
  340. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この問題は、総理からもたびたび本会議でも御答弁がありましたとおり、現在は、日本といたしましては、国際海峡の通過につきまして、やはり自由な通航ということを日本の国益に沿うものである、こう考えておる次第でございます。これは日本が海洋国家であるということ、また石油等の資源を輸送することから考えましても、そういった考えに立つことが国益に沿うゆえんである、こういうことから、国際海峡の通過問題につきましては現状のままでいった方が国益に沿うゆえんである、こういう判断をしているわけであります。
  341. 石野久男

    ○石野委員 総理にお開きしますけれども、国の利益のためだということで、いまのような外務大臣の答弁がありましたが、これはマラッカ海峡との見合いでの話だろうと思うのです。しかし、領土、主権の問題ということと、その問題の対置ということは、非常に重大な民族的課題だと思うのですよね。軽々にそういうような考え方でいいのかどうか。ここのところを総理考え方をひとつ聞かしてもらいたい。
  342. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま、御承知と思いますが、海洋法会議は、国際海峡については特例だ、こういう方向で動いているのです。私は、わが国から見ると、この動きは非常にいい動きである。われわれは世界じゅうから資源を求めなければならぬ。特にOPECの石油ですね、これはマラッカ海峡を通過する、こういうことになるわけでありますが、このマラッカ海峡の通航がわが国に対して不利な状態になるということになりますと、これは重夫問題なんです。そういうようなことを考えますと、海洋法会議のいまの動きをわれわれは歓迎し、これを助長する、そういう姿勢をこそとるべきであり、わが国みずからが進んで、津軽海峡を封鎖するというか、わが国の領海である、自由航行は認めないというようなところに持っていくのは妥当でない、こういう考え方であります。
  343. 石野久男

    ○石野委員 マラッカ海峡の問題が日本に重要だということと、津軽海峡が国際海峡としてということについての非常に違うところは、マラッカは商業用の通路として日本は非常に重要なものを持っておる。ところが、マラッカ沿岸諸国が津軽海峡にどういうような関係があるかといえば、これは何も関係がないですね、ここでは。当該国間の関係というものは何も出てこないのですが、どこにそういう遠慮をしなくちゃならない理由があるか。なぜそういうことが津軽海峡を国際海峡にしなくちゃならない理由になるのか。
  344. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはだれに遠慮するわけもないのです。わが国の立場を尊重する、守る、こういう立場でございます。核、核と申しますが、核のことじゃないのです。つまり、わが国の生命線とも言うべきマラッカ海峡の自由通航、これを確保したい。それにはわが国が、わが国の海峡をみずから封鎖するというようなことになることは非常に矛盾する、そういう考え方でございます。
  345. 石野久男

    ○石野委員 その津軽海峡が国際的なことでどうしても遠慮をしなければならないというのは、どこへ遠慮しなければならぬのですか。国際海峡にならなければならない理由がどこにあるのですか。津軽海峡が国際海峡にならなくちゃならない理由はどこにあるのですか、どういう点なんですか。
  346. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いまの問題は、現在海洋法会議におきまして審議が進んでおるところでございます。いずれ海洋法会議で国際的な考え方が統一されますれば、これはそのときに考えればいいことと思うのであります。現在はまだ審議中でありますので、その結論が出るまでとりあえず——これはことしの六月に決着がつくかどうかわかりません。また延びるかもしれませんが、それまでの本当の暫定的な間だけ現状に凍結をしておこう、こういうことでありまして、その点で御理解を賜りたいのであります。
  347. 石野久男

    ○石野委員 海洋法会議になぜ津軽海峡を入れなければならないのかということを私は聞いているんですよ。海洋法会議というのには国際関係が出てくるわけですよ。北海道と青森との間に国際関係が出るのはどういうところなんですか。なぜそういうようにするのですか。
  348. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 それは海峡の幅が、仮に十二海里になった場合に、公海部分がなくなるというような海峡が方々にあるわけであります。ただ、領海が広がった場合に公海部分がなくなるという海峡、そういった海峡の船舶の通航をどうするかということがいま問題になっておるわけでありますので、この結論が出るまで現状にとどめておきたい、こういうことで、共通点はもっぱら距離的な問題とお考えいただきたいわけであります。
  349. 石野久男

    ○石野委員 私はわからないのだ。津軽海峡に太平洋からいわゆる日本海へ行く国々というのは、どこの国なんです。いま国際的に考えたって国はほとんどない。ソ連だけでしょう。ソ連との関係でそういうことになるのですか。
  350. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 津軽海峡の交通がどうなっているかにつきまして私直接知っておりませんので、運輸省の方からでも御報告さしたいと思います。
  351. 石野久男

    ○石野委員 問題はやはり十二海里を宣言をするということになれば、十二海里を宣言するというのは当然日本だけじゃない。各国ともそういう主張で、いまそれが普遍化しているわけですよ。そういうところでわれわれ十二海里の主張をしていった場合に、津軽海峡というのは内水面になってくるわけですよ。その内水面になっているところを、なぜ国際通路をつくらなければならぬか、その必要性がどういうところであるかということをぼくは聞いている。この中でどうしても国際的にそれを許さなくちゃならない理由は何なのかということを私は聞いている。
  352. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび同じことを申し上げるようでありますけれども、いま海洋法会議におきまして国際海峡の通過が問題になっておりますので、日本がまずそこを内水にしてしまえば、またほかの国がそうするかもしれない。それがまた日本の国益に悪い影響を及ぼすであろうということを考えておるわけでございまして、御理解いただきたいと思います。
  353. 石野久男

    ○石野委員 ほかの国がそうするかもしれないという、そのほかの国はどこなんだということを聞いているのですよ。マラッカ海峡は各国の船が行き来することはだれでもわかるのですよ。が、瀬戸内海になったらだれも、外国船が通ったってこれは問題にならない。あなた方はそこへ国際海峡を開くというようなことをしないだろうと思うのですよ。津軽海峡、十二海里の領域宣言をしていったときに、われわれがよその国にどこに迷惑をかけるんだということを私は聞いている。海洋法会議でなぜ津軽海峡というものはそういうような課題にされなければならないんだ、なぜ日本はその主権をこの地域に対して主張できないんだ、どこに遠慮しているのかということを聞いている。
  354. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  海洋法会議における議事の詳細でございますので、私からまず説明させていただきますが、ただいまやっております第三次海洋法会議におきましては、いわゆる国際海峡すなわち国際航行に使用される海峡、これは世界に、領海が十二海里に拡張になりますと、十二海里の倍の二十四海里、二十四海里以下の海峡であって国際航行に非常に使用される海峡というものは、私正確な数字を覚えておりませんが、百十幾らあると言われておりますが、それらの海峡におきましては、これは世界の海運の要衝でございますので、そのような海峡においてはあらゆる船舶ができるだけ自由に通航できるような制度をつくろう、こういうことで海洋法会議が進展しているわけでございます。  先生御承知のとおり、通常の領海でございますと、そこにおける船舶の通航制度は無害通航制度でございます。無害通航制度と言いますのは、沿岸国の平和、秩序、安全を害しない限りにおいて通航できる、こういうことになっておりまして、その沿岸国の平和、安全、秩序を害するか否かという点につきましては、一次的には沿岸国の判断の問題である、こういうことになっておりまして、そのような、場合によれば恣意的な判断が入ってくるかもしれないような制度では、いまのような国際海峡の通航制度としては適当でないということで、できる限り自由な通航制度をつくろうということで海洋法会議が進展しております。
  355. 石野久男

    ○石野委員 海洋法会議でどういうことがあろうと、十二海里宣言をしようという決意を持っているときに、なぜそんなことを、日本が海洋法会議がどうだこうだ——現在あそこを行ったり来たりしている諸外国の船というのは、特殊な事情を除けば、まず恒常的にはないのだ。なぜそんなに自分の主権を放棄していくようなことをするのだということを、その理由は何なのだということを私は聞いているのですよ。政府にはそれの確信がないままに海洋法会議云々ということを言う、マラッカ海峡との関係はどうなっていくのだと。そんなことあそこは関係ないじゃないかというのが私の意見だ。だから、これは政府には本当に主権を主張するなにがないのだと思うのだ。遠慮するのは、アメリカに遠慮しているのかソ連に遠慮しているのか、どういう関係なのか。それともこれは安保条約の関係でそういうふうになっているのか。そこのところ総理、はっきり言ってください。
  356. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 安保関係ではないのです。つまり、わが国とすると、これは海洋国家でありますから、どこの国の国際海峡も自由に通航させてもらいたい、そういう念願を持っておるときに、わが国自身が先んじてわが国の国際海峡を封鎖する、こういうようなことはこれは妥当ではない、こういう考え方でございます。
  357. 石野久男

    ○石野委員 私は、この地域を国際海峡とみずから規定しなくちゃならない理由はどこにもないと思っているのですよ。これはもう見解の違いです。これはやはりもう少し政府考えてもらわなくちゃいけない。津軽海峡にそういう遠慮しなければならない理由はどこにもないと思っています。むしろ、私は、これは防衛的な問題とか何かあるとするなら、なおもっと強い体制をとるべきだろうと思うぐらいですから、政府の見解には私は賛成できません。  最後に、時間がありませんから、先ほど原子力船の問題でいろいろまだ理解のできないものがありますけれども、当面「むつ」の母港の問題で、特に佐世保の方でいろいろと、宇野長官が向こうへ行って話をしてきたことだとか、あるいは根本委員長が、関係の自民党の委員長さんがいろいろ行ってきたということの中に、私たちにとって非常に解せないことがあるのですが、この自民党の佐世保支部から政府に三億円の「むつ」対策福祉基金の要求が出ているというようなことを聞いておる。それに対して宇野長官も一応の何か理解を与えたかどうだか知らないというような話も聞いておりますが、こういうようなことを政府は佐世保入港について前提として考えながら仕事をしていこうとしているのですか、どうですか。ここのところをはっきり聞きたい。
  358. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 最初にまずお断りいたしますが、私はまだ佐世保にも長崎県にも赴いておりません。それが第一点でございます。  第二点、いま御指摘の三億円は、三億じゃなくて三百億円というような巨大なことでございまして、そのとき私も直接聞きましたが、そういう具体的な数字を挙げていまこの場で話をつける段階でも何でもありませんと、私ははっきりそのように申し上げております。したがいまして、その数字は佐世保市から出された数字でもなければ、また来られた商店街の方々が出された数字でもなければ、人によりましては商店街振興とも言い、また福祉基金とも言っておりまするから、いろいろせんじ詰めますると、佐世保の自由民主党のある市会議員さんがお出しになったのではなかろうかと考えております。しかし、それに対しましては、決してわれわれが、よろしい、検討いたしましょうというふうなことは申し上げておりませんし、要するに金で面を張るというふうな態度でこの問題を考えようとは決していたしておりません。やはり誠意と誠意をもって理解を仰ぎたいと、かように存じておる次第であります。
  359. 石野久男

    ○石野委員 「むつ」が佐世保へ入ろうとすると、港則法の関係等を通じて少なくとも今月の十四日までに一つの手続をしなくちゃならない。政府はそういう問題を具体的に考えておるのですか、どういうふうにしておるのですか、そこのところを……。
  360. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御指摘のとおりに、四月十四日青森の現在の定係港が撤去されますから、その日までに出るとするのならば、総理府令によりまして六十日以前に入港届を出さなければならないということになっております。その逆算をいたしますと、確かに二月の中旬ということになりますが、今日、長崎の知事さんの諮問機関とも言うべき研究委員会というのがございますが、これが三月の初旬になれば一応何らかの結論を出そうではないかというふうな態勢でございます。したがいまして、肝心かなめの長崎県の知事の御判断がまだないままに、はっきり申し上げまして、六十日前だからというので入港届を出すというふうなことは私はできないのではないか、こう考えております。しかし、いずれにいたしましても、四月十四日青森県を離れるということに対しましては、先ほど申し上げましたとおり、ただいま最善の努力をいたしておる最中でございます。
  361. 石野久男

    ○石野委員 「むつ」は四月の十五日に離れなければならない。ところが、法によるところの手続として、二月十四日まで届け出をしなくちゃならない。そういう行動が起きてないということになれば、原子力船「むつ」というのはどういうふうになるのだ。また太平洋遊泳という形をするのかどうか、そういう問題が一つあります。これらの点について、私は、やはり政府がもし努力をしないとすると、これはまたむつにそのまま居座りということになっちゃって、これは鈴木さんが約束したことの実行も行われなくなる。  総理大臣は、こういう問題について早急な何か手を打つという方法を考えているのかどうか。全くこれは行き先のないこういう船をつくったことの責任をどのように考えておられるか、この際ひとつ聞いておきたい。
  362. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 「むつ」の問題は、いま関係省庁が総力を挙げまして満足な結論が出るというための努力をしている最中なんです。先ほども皆さんからお話を申し上げたとおりに、何とか解決したいし、できるという見当のもとに努力をいたしております。
  363. 坪川信三

    坪川委員長 楢崎委員
  364. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 資料要求をしておきたいと思います。  宇野長官の方から関西電力に、美浜原発建設以来今日まで亡くなられた下請労働者あるいは関係者の方々の氏名と、それから亡くなられた日付、住所、仕事現場、死因等々について報告を求めて、先ほどお約束のとおり、総括が終わるまでに提出をいただきたい。  以上です。
  365. 石野久男

    ○石野委員 いま楢崎委員の資料要求と同様に、私も、美浜一号炉の四十八年当時の作業日誌、それに関係した諸資料、そういうようなものをひとつ要求しておきます。
  366. 坪川信三

    坪川委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十二分散会