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矢野委員 四万円、五万円を使ってしまうよりも云々というお話がありましたけれ
ども、その発想は問題だと思うのです。
総理はお金持ちだから、四万円、五万円は大したことないというお考えなのかもしれませんけれ
ども、先ほど申し上げておる物価上昇で生活が非常に圧迫されておる庶民大衆の家計において、四万、五万というのはきわめて重要な
意味を持ってくる。決してこれをむだ遣いするということじゃないのです。そのことをまず指摘しておきたいと思います。
それからもう一つは、この公共事業について、共通の財産として云々というお話がありました。そのこと自体私は頭から否定するものではない。公共事業か減税か、オール・オア・ナッシングの議論で私は言っているわけじゃないのです。そのバランスが大事だということを先ほどから議論しているわけですよ。たとえば、高額所得者や大企業の大きな利益を上げているところから税金を取れば、そこの購買力が減るとあなたはおっしゃった。しかし私は、所得の
内容を見れば、そういう高額所得者の消費は非常にぜいたくなものに消費されておるというこの事実を、あなたはやはり忘れてはいかぬと思うのですよ。そういうところの消費、ぜいたくなものに対する消費は多少減ってもいいじゃありませんか。法人について、そういったところの内部留保が減ることによって設備投資が減退するかもわからぬという議論、これは私は一応認めます。これは考えなくてはならぬ問題でしょう。だから、私は昨日、租税特別措置法を改めて、新しい今日の時点における政策目標に沿った租税特別措置を考えるなら考えてもいいじゃないか、そういう今日の
経済目標に合致しないような特別措置はやめてしまいなさいということを指摘しているわけなんです。私は決してオール・オア・ナッシングのわけのわからぬことを言っているわけじゃない。
そこで、公共事業を非常に高く評価しておられるわけでありますけれ
ども、これは一応需要をつくり出す効果が大きい、あるいは即効性もある、こういうような評価がメリットとしてあることは私も認めます。しかし、これは逆にデメリットとして、ボトルネックインフレが発生するとか、地域的差があるとか、業種的な差がある。素材
関係——鉄鋼とかセメント、あるいは建築土木
関係、こういったところは公共事業によって第一次的に潤うかもわかりませんけれ
ども、私が申し上げているのは、生産活動の中で非常に大きなウエートを占めておる第三次産業部門、こういったところには直接の影響がない。間接的にはあるかもわかりません。しかも、この第三次産業部門の雇用効果というものは、非常に現在大きいわけです。この第一次、第二次産業部門の失業を、第三次産業部門で吸収しているじゃありませんか。ですから、むしろ消費を伸ばすことによって、そういった産業部門の発展を期待することの方が、
景気対策としては効き目があるということを私は指摘しておきたい。それと減税は直接消費者のマインドに訴える効果もあります。さらにまた地域差や業種差もない。しかも選択性が強い。あなたはたったの四万円みたいな言い方をなさいますけれ
ども、この四万円をどう消費していくかというのは非常に選択性が強い、影響力が大きい、われわれはそう考えているのです。
いずれにしても、
政府が公共事業ということで、昨年これが
景気対策の決め手、主力部隊だという鳴り物入りの宣伝で公共事業優先の
景気対策をおやりになりましたけれ
ども、少なくとも去年の実績から見る限り、公共事業優先の
景気対策は効き目がなかった、こう言わざるを得ませんよ。現に公共事業の消化だって、建設省のデータをいろいろチェックいたしましたが、たとえば、
政府固定資本形成の面で見ますと、昨年の七月から九月期は、対前年期比で伸び率がゼロ、横ばいです。さらに五十一年の一月から九月の対前年比で公共事業の動きを見ますと、建設着工床面積、これで申し上げますと、確かに総計では一二・六%というプラスをしておりますけれ
ども、しかし、このうち国の
関係はプラス一・二%しかふえておらない、あれだけ公共投資をぶち込みながら。逆に都道府県
関係はマイナス一〇・五%ということで大幅に落ち込んでおる。市区町村では〇・九%マイナスである。これは建設着工の床面積で申し上げたデータであります。つまり、幾ら公共投資だ公共投資だと言っても、国の増加はたったの一・二%、都道府県はマイナス一〇・五%、市区町村は〇・九%。あるいはまた建設受注の面で申し上げても、総計はマイナス〇・七ということになっておりますが、官公庁
関係はマイナス三・八というふうに、むしろ全体よりも低くなっておる、マイナスである。こういったことから見ても、公共投資優先の
景気対策というものが、余り効果がないのじゃないか。
さらにまたもう一つの問題点は、この公共投資の乗数効果というものが非常に阻害されておる原因の一つとして、用地買収費に余りにも巨額の
予算が食われ過ぎておる。たとえば、東京の
関係で国道十五号線、これは総事業量の六三%が土地代。これは千十五メートル伸ばす、幅四十二メートルの工事で、総工費が九十一億七千百万円、この九十一億の中で用地補償費が五十八億一千。六三%です。あるいは国道四号線で申し上げると、用地補償費で全体の八一%も土地代に食われておる。これは百十七億の総事業費のうち九十四億六千万円、八一%が用地補償費に食われておるのですね。これはほとんどが地主さんから銀行という形で、有効需要をつくり出すという効果から見て余りこれは期待できない、こう言わざるを得ません。
この公共事業の
景気対策としての乗数効果、これは私は頭から低いとは言いませんけれ
ども、
景気対策としておやりになるのであればもう少し乗数効果の高まるやり方、それは一つは実施の面での地方
財政に対するてこ入れということもありますし、もう一つは、用地費が余り要らない公共事業というところに力点を置かれた方がいいのじゃないかという気がするのです。その具体的な問題として生活関連主導、これが有効であるという認識を私たちは持っておりますけれ
ども、いままで公共事業の範疇に入っておらなかった学校教育施設や保健所、こういうものの整備も公共事業
関係費で促進をされるべきではないか、これが一点。
第二点は、老朽校舎の建てかえ、これも用地代が要らないで公共事業の効果が出ます。これは現在、老朽校舎で改築を要するものが六百八十三万一千平方メートルということになっているわけですね。非常に数多くの校舎が老朽化しておる。これを
政府の補助率ベース、これが低いのですけれ
ども、仮にこのベースですべての老朽校舎、六百八十三万一千平方メートルを改築する、こういう仮定で計算をしますと、二千三百八十七億、これで老朽校舎すべてが改築される。一遍にやれと言ってもそれは無理だということはわかっておりますけれ
ども、要するに、金額というものはこの程度の
予算ですべての老朽校舎の改築ができるのですよということを申し上げているわけです。つまり、用地買収費に八〇%も食われる公共事業よりも、こちらの方がよっぽど教育環境の改善、
景気対策両面から見てプラスになる、これが二点。
第三点は、公立小学校、中学校の屋内運動場、体育館、この設備を備えていない学校、これがずいぶん多いわけです。こういう老朽校舎の解消とともに屋内体育館の整備、これも土地代要りません。乗数効果として非常に高い。これが第三点。
第四点は河川整備事業、これは用地費がほとんど不要でありますし、しかも
国民の財産、生命を守るという
立場から必要な仕事であります。これはかなりことしはふやしましたというお答えがあるかもわかりませんけれ
ども、五十年末現在でわずか一二・八七%しか整備されておらない。八七%以上、つまり総延長で六万四千百キロメートルが未整備。周辺住民に対して非常に危険を与えているわけですね。こういうことから見て河川整備事業、これにより一層の力点を置いた公共事業の配分がいいのではないか、いまのが四点。
次は五点でありますけれ
ども、農業基盤整備。これも用地費が要らないし、しかも人件費が二八%という形で、人件費やあるいはそういった面での支出が多くなって、土地代というのはほとんどゼロ——ゼロとまでは言いませんけれ
ども、少なくて済むわけですね。こういう農業基盤整備事業に力点を置く。
あるいは公営住宅の建てかえ、これはまさに用地費が不要でありますし、住宅問題解決のためにきわめて有効な
施策であると私たちは思うのです。
こういう具体的な公共事業の
内容転換、これが有効需要を高め、
景気回復という
立場から有効ではないかというふうに思いますが、
総理の所見を、時間も余りありませんので、簡潔にお願い申し上げたいと思います。