○村山喜一君 私は、ただいま
趣旨説明のありました
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の
規制に関する
法律の一部を
改正する
法律案について、
日本社会党を代表して、総理及び
関係大臣に所信をただしたいと思います。(
拍手)
この原子力規則法の
改正案は、形の上では、NPT
保障措置協定に関連して、国際
規制物質の
使用に関する
規制を
改正すること、再
処理事業民営化のための
規制の
改正を行おうとするものでありますが、
内容的には、
わが国のエネルギー戦略、
原子力開発利用計画の根幹に関する重大なものであります。
総理にまずただしたい点は、第一に、
政府はどのようなエネルギー戦略方針を持っているかということであります。
無資源国である日本がどうやってエネルギーの安定を図るのか。それは、独立ではなく、依存戦略にならざるを得ないと思います。となれば、対外的に相互依存の安定性をどう実現しようとしているのか。石油も米国のメジャーに、濃縮
ウランも米国に依存しておればよいという時代は過ぎ去ったのであります。ロンドンの先進国首脳
会議、
国際原子力機関のザルツブルク
会議の中から総理が得られたものは何かを含めて、方針を明らかにされたいのであります。
第二点は、カーター大統領の新原子力政策の背後には、フォード財団のマイター
報告があることは周知のことであります。ノーベル賞を受けたハーバード大学のケネス・アローを初め二十一名の共同研究の集積があります。核不拡散のカーターの哲学があります。
総理、あなたのブレーンにだれがおりますか。総理は、経済には強いかもしれないが、原子力に弱いことは、新聞が報道しているとおりであります。総理がみずから今日までの原子力政策を総点検して、反省の上に見直しをすべきではありませんか。
第三点は、日本国はアメリカの核戦略体系の中に組み込まれ、原子力の
平和利用についても、原料も技術もアメリカ一辺倒の発電システムになっております。日本に
ウランを供給するカナダもオーストラリアも、アメリカと完全に歩調をそろえて、核拡散防止の
規制を強めようとしております。
核燃料サイクルをめぐる困難な国際情勢の中で、
政府の再
処理プルトニウム利用の計画を実現させることができるのか。独自の技術もない日本国側がどうして相手側の譲歩を得られるのですか。
宇野長官は、記者会見で、東海工場の運転開始を認めてもらうという陳情ではなく、もっと強い態度で臨むと述べておりますが、実現できる自信がありますか。
第四点は、国民の多くは、原子力開発について、電力業界も、原子力メーカーも、
政府をも信用をしておりません。信頼をされていないということは重大なことであります。
環境アセスメント
法案を
提出できなかったのは、通産省が
反対したからであり、その通産省と電力業界とは同じ穴のムジナだと見られております。事故があっても
報告を怠り、虚偽
報告がなされるなど、業界との癒着は目に余るものがあります。
もうかればよろしい、安ければよい、アメリカの
原子炉は完全なものだという神話を持ち込んだ結果、原電の操業率は五〇%を割り、最近の
定期検査では全部故障という状態であります。
これは、通産省だけではないのであります。「むつ」をめぐる問題では、原子力
委員会も、科学技術庁も、運輸省も同罪でございます。日本の原子力が国民から信頼を失った最大の原因は、原子力基本法の自主、民主、公開の三原則を原子力
委員会も、
政府も、
関係業界も実行しなかったことにあります。
日本の軽水炉型発電施設は、安全の上から見て研究段階にしか達しておりません。この中で、なぜ
政府はより危険な再
処理を急ぐのか、未完成の核燃料再
処理技術なのに民間に再
処理を認めるのか、明らかにされたいのであります。(
拍手)
第五点は、再
処理の問題は、主観的な意図は別に、客観的には、一トンの
使用済み燃料から、核兵器に転用できる九キログラムのプルトニウムと〇・五立米の高レベル放射性廃棄物が出ることになります。
わが国は、
平和利用に徹する国是がとられているが、再
処理に成功した場合には、潜在的な核兵器所有国になることを意味します。核兵器に転用しない歯どめをどう保障するのか、総理は内外に明らかにする責任があります。お答えを願います。
総理、昨夜のNHKニュースで、米国の一大学生が二千ドルで広島型の二分の一の破壊力を持つ原爆を開発したことが明らかにされました。二キログラムのプルトニウムがあれば、簡単に製造されることが
説明され、核のハイジャックの危機が再
処理によって手に届くところにあることが明らかになりました。ハイジャックを防ごうとすれば、原子力基本法の自主、民主、公開の三原則を破らなければなりません。カーター大統領の主張していることを頭から否定してかかれなくなりました。
私たちは、日本自身の核武装を完全に拒否してきたが、
政府は、核武装をしたがっている他の国に対して、また核大国の限りなき核武装強化に対して、歯どめの具体的な施策をとってきたのであろうか。
提案さえしていないのではないだろうか。外交政策にも取り上げてこなかった。核実験が行われるたびに形式的な抗議を繰り返してお茶を潤してきたのではないかと思います。総理の率直な反省の言葉はないのか、伺いたいのでございます。(
拍手)
宇野科学技術庁長官にお尋ねいたします。
あなたは、五月十三日、記者団に対して、今週から東海村問題で対米交渉に入り決着をつける決意表明をされたようだが、ロンドン先進国首脳
会議で決まったスタディグループ
会議、引き続く多数国間
会議と東海村再
処理工場との
関係は別個の問題だと見ているようでありますが、根は同じではないでしょうか。
私たちは、再
処理工場からの廃棄物は、現在、永久処分ができないことを知らされております。発生する核分裂生成物は八百年も人間が
管理をしなければならない。廃棄物は人類の生活環境と全く
関係のない場所に処分をすればよいと言われていますが、狭い日本のどこにその場所がありましようか。高レベル及びアルファ放射性廃棄物の処分は国際的な問題であり、まだ結論が出ていないのであります。それでもなぜ長官は再
処理を急ぐのか、お答えを願います。
政府は、今日まで英国に対して再
処理の委託を行ってきたが、その実績はどのようになっているのか。現在、米国の三つの再
処理工場も英国のウィンズケール工場も事故を起こして操業を中止しております。フランスのラアーグ工場だけが酸化
ウラン燃料の再
処理工場として昨年ホットテストに成功しただけであります。
再
処理工場の技術は、核爆弾のプルトニウム製造用はあっても、軽水炉用の
核燃料サイクルへの適用にはまだ確立されていないのではありませんか。東海村に引き続いて、民間の再
処理工場をつくろうとしておりますが、民間ベースの経営が果たして成り立つのでありましょうか。ハイレベルの放射性廃棄物のほかに出る大量の低レベル放射性廃液
処理はどうなりますか。環境安全保障の問題は解決できるのか、答弁を願います。
田中通産大臣にお尋ねします。
政府は、原子力のエネルギーコストをどう分析をしているのでありますが。産出エネルギーの大きさを得るための投入エネルギーは幾らになるのか。放射性廃棄物の
処理、保管に要するエネルギーは幾らか。プルトニウムを燃料として置きかえることができたときにはどうなるのか。計算をしたら、プラスのネットエネルギーを原子力発電所から得ることはできるのか。理工学や経済学の諸問題を生態学のレベルで統一的にとらえたらマイナスになることが、エネルギーコスト分析学者から指摘をされております。
原発ブームが去ったアメリカでは、原子力エネルギー
委員会も連邦エネルギー行政局も、クリーンエネルギーを重視しております。アメリカでは原子力以外のエネルギー研究開発費は年間二千億円、西ドイツは二百億円と言われております。これに対して日本では、年間一千億円を原発につぎ込みながら、サンシャイン計画にはわずか四十七億円しか投入をしておりません。
政府は、未開発のエネルギー資源をどう開発をしようとするのか、あわせて通産大臣の見解を承りたいのでございます。
第二に、五月七日、十七日の資源エネルギー庁の原子力発電所の
定期検査の状況発表を見ると、六発電所の全部に故障が発見をされております。単なるトラブルではない、大きな事故に発展する危険性が出ているのであります。
福島第一の一号機、敦賀、浜岡の三
原子炉は
原子炉内にある給水ノズルにひび割れが、そして福島、敦賀はさきに冷却水の再循環パイプのひび割れ、緊急冷却装置のひび割れが数カ所発見をされております。今回さらに、原電の優等生と言われた島根原発と福島一号機の戻りノズルのひび割れが発見をされたのであります。
ひび割れから破断、そして冷却水が数秒間で皆無になり、緊急冷却装置が働かなくなったら、大事故を引き起こすことは言うまでもありません。その一歩手前で発見されたことを思うと背筋が寒くなります。
エネルギー庁のこれに対する対策は、ひびの入ったステンレススチールを削り取って、普通の鉄にすぎないカーボンスチールむき出しで運転再開をしようとしております。蒸気発生器細管のピンホールも同じでありますが、同種の事故が次々に発生する場合は、通産大臣は技術顧問会にかけるだけでなく、原子力
委員会と相談をしてその原因を究明をし、原子力
委員会の
原子炉の工学的安全性の
審査にかけるべきだと思いますが、通産大臣の見解を承りたいのであります。
給水ノズルにしても戻りノズルにしても、温度差があることも、そして絶えず動くことも、初めからわかっていることであります。原因不明のまま戻りノズルに栓をして、その分だけ制御棒駆動水を減少させて、ノンリターン方式に系統変更を行うことを原子力
委員会安全専門
審査会発電用
事業炉部会は簡単に了承したようでありますが、制御機能の確認試験の結果によって了承したのか、お伺いしたいのであります。
私は、これは
原子炉本体の構造に関する問題であり、原子力
委員会の安全
審査の対象になるべきものと考えますが、原子力
委員長の見解を承りたいのでございます。
最後に、この
法案は今
国会では成立する見込みもなくなった現在、
政府が撤回することを要求をいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田赳夫君
登壇〕