○清水勇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま
趣旨説明のあったいわゆる
中小企業分野調整法案について、福田総理並びに田中通産大臣にその所信をただしたいと思います。
さて、私は、本
法案がここに
政府の手で上程されたことに無量の感を覚えるものであります。すなわち、わが党は、他党に先駆けて、三十九年の第四十六国会に
中小企業者の
事業分野の
確保に関する
法律案を
提出して以来、終始一貫、今日までこれが成立に全力を尽くしてまいりました。しかしながら、大
企業中心の立場に立つ自民党と歴代
政府のかたくなな態度によって日の目を見ることができず、今日まで実に十三年の長い歳月を要したのであります。(
拍手)
この間、低成長
経済への移行という新しい
事態を迎え、大
企業がそれまで見向きもしなかった
中小企業の
分野へ次々と参入し、深刻なトラブルを多発するに至りました。これに対し、通産当局は、行政指導や
紛争の
調整を行いましたが、ほとんどその実効を上げ得なかったのであります。
かくて、危機に立つ
中小企業者が団結し、
中小企業分野法促進協議会が発足をいたしました。
わが党は、こうした新しい
情勢と深刻化する不況を踏まえ、与野党各党のコンセンサスとして、第七十七国会
商工委員会の
中小企業の
事業分野の確立に関する
全会一致の
決議の実現を図り、
政府が速やかに法的
措置を講ずるよう促したことは御承知のとおりであります。
福田総理、私は初めに、本
法案に関連して、あなたの政治姿勢を問わざるを得ません。
総理は、かねて保守本流を自負しておりますが、保守本流とは、すなわち財界本流を意味し、政策的には独占擁護、大
企業本位の本質を自負するにほかなりません。それゆえ、
政府案の
基本的性格が、大
企業者の
中小企業分野への参入を容認し、
中小企業者との間の
紛争が生じた場合、その
調整に当たるという後ろ向きになっているのであります。
十余年にわたって求めてきた法的
措置は、
中小企業者の
事業分野をいかに
確保するかであります。この命題に背き、事を
紛争処理に矮小化することは、断じて許されるものではありません。(
拍手)
言うまでもなく、市場
経済における寡占の弊害を除去するために独禁政策が展開をされております。ところで、独禁政策は、市場
経済を自由競争に任せ、弊害があらわれたらこれを除去し、補正する性質のものであります。しかしながら、その実効を期するには、寡占構造ができないよう予防
措置をとることが必要ではないか。また、いわゆるスケールメリットの限界がはっきり出ている今日、市場
経済のあり方にメスを入れるときではないかと思うのであります。
分野法を考えるに当たって、こうした観点と同時に、
中小企業者が地域に密着し、住民の需要を的確につかみ、商品の供給を通じて住民と一つの生活圏を形成してきたことを銘記すべきであります。
そこで、本来
中小企業に任せることが適切な
分野については、これを
中小企業者に担当させ、その上に、適正な競争、近代化や技術の向上、消費者
利益の増進など、必要な
中小企業振興政策を強化すべきと考えますが、まず、こうした
基本問題について明快に答えていただきたいのであります。
ところで、通産大臣、あなたは独禁法の
改正強化に対してもそうですが、この
分野法の制定について全く消極的であり、遺憾であります。あなたの所管する
中小企業庁は、一口に言って、国民
経済を健全にし、
経済力の集中を防止するため、
中小企業を健全に育成し、発展させることが目的であります。にもかかわらず、大
企業に目を向けて、恐る恐る
法案を持ち出すという態度は言語道断であります。身勝手な大
企業の進出を規制するのが当然ではありませんか。しかるに、業種の指定や大
企業の進出規制は、営業の自由を奪い、憲法違反にもなりかねないと主張してみたり、大
企業に対して緩やかな法規制で臨みたいなど、なまぬるいことを言い続けてきたのですが、まさに主務大臣としての責任回避であります。現に、自民党内にさえ反発が出ているではありませんか。この際、改めて大臣の心境を聞かせていただきたいのであります。
次に、具体的
内容について、問題点と私の考えを述べながら、お尋ねをしたいと思います。
その第一点は、大
企業の進出を事前に有効にチェックするためには、業種指定をとることが正しい
措置と考えます。ところが、
政府は、業種指定を避け、かわりに
中小企業団体の
申し出によって、相当数の
中小企業の経営に悪影響を及ぼす大規模の
事業の開始または計画について調査を行い、
審議会に諮って
調整勧告等を行うというだけであります。とうていこの程度で目的を果たすことはできません。
われわれはかねて、
分野法は、国民
経済上
中小企業分野として
確保することが適切な業種を定め、大
企業者の進出に必要な規制を加え、もって
中小企業の存立基盤を擁護し、
経済秩序を維持するものであるよう主張してまいりました。前にも触れたように、
中小企業者は地域社会に根差し、国民生活の向上に努めております。そうしたところへ大
企業が直接、あるいはダミーを使い、巨大な資本をつぎ込んで出てきたら、一体既存の
中小企業はどうなるでありましょう。転廃業に追い込まれるもの、生活権を失う
雇用労働者、そして
経済の集中による弊害が生ずる等、火を見るよりも明らかで、国民
経済の健全な発展を阻害することは明白であります。
まさしく、業種指定を行うことは、本法の大前提でなければなりません。
政府案のごとく、単に
事業開始の時期の繰り下げや規模縮小の
調整勧告だけではとうてい役に立ちません。本
法案をめぐり、
政府が仏つくって魂入れずと非難をされるのは、けだし当然であります。この点、特に明快な答弁を要求するものであります。
第二点は、実効
確保をどうするか。
政府案は、大
企業者が勧告に従わないときは公表すると言いますが、その程度で大
企業者が言うことを聞くとでも思っているのでしょうか。
そこで、この際、具体的な
提案を申し上げたい。
第一に、指定業種で現に
事業を営んでいる者、新たに営もうとする者は、主務大臣に届け出を行わせること。第二に、一家の指定業種について、大
企業者は新たに
事業を営み、または設備の新増設、経営規模の拡張ができない旨の制限
措置をとること。第三に、大
企業者の
事業活動により相当部分の
中小企業者が圧迫を受けると認めるときは、大
企業者に圧迫の緩和
措置をとるよう
命令できること。そして第四に、大
企業者が資本的、人的
関係において制限
措置がとられている
分野に支配力を及ぼしてはならない
規定を行い、これが違反行為の排除
措置を命ずることができるよう、それぞれ明文化すべきであります。
以上の当然包含すべき重要
規定が
政府案に全く欠落していることは、実効性を薄める以外の何物でもありません。
また、罰則について言えば、いま申し上げたような規制
措置の実効を
確保するためには、違反行為者に対し罰則をもって制裁すべきは当然であります。
政府案はまさに申しわけ的
規定であって、実効
確保は期しがたいと思います。あわせて、明確にお答えいただきたいと思います。
第三点に、規制
措置をとる業種の振興対策について伺いますが、通産大臣、
分野確保の法的
措置を講ずると、
中小企業者は安閑とし、近代化など経営努力を怠り、消費者サービスの低下が考えられるという
意見が通産内部にあると仄聞をいたします。とんでもない話であります。今日、
中小企業者は、消費者へのサービス向上が
企業の生き延びる道と受けとめて、必死に経営に当たっております。私は、むしろ大
企業の進出で、独占的な市場支配が強化されていく結果こそが消費者の
利益を損なうものと思うのであります。
さて、ここで強調したいことは、
中小企業への指導と
助成を強め、品質の向上、価格の安定、技術の改善、技術者の育成など、
中小企業に対する必要な振興
措置をとることが今日的な重要課題と考えますが、この点につき
政府は具体的にいかなる計画を持っておられるか、お聞かせいただきたいのであります。
第四点。これも大事な問題でありますが、
政府は小売業を適用除外にいたしていますが、全く納得がいきません。今日、スーパーなど大規模店の進出が地域の中小商
業者をどれほど圧迫しているか。また、書籍業などを見ると、一部私鉄大手も加わって、郊外や地方中小都市に大店舗が進出し、伝統ある地方文化の向上に寄与してきた中小書店を著しく圧迫する事例は、枚挙にいとまがありません。
これらに対し、
政府は現行の大規模小売店舗法、いわゆる大店法や小売商業
調整法、いわゆる商調法で規制できるという考えですが、大臣、それで本当に有効な規制ができますか。私は、ノーと言わざるを得ませんが、もし確信がおありなら、それをお示し願いたいのであります。
御承知のように、商調法はまだスーパーなどが存在しない三十四年の制定ですし、大店法はまた四十八年のオイルショック以前に制定されたものであります。したがって、
制度の立て方が今日の
情勢に適合しないものが随所にあることは、大臣も知らぬはずはないと思います。それとも、
分野法の制定に合わせ、この際、両法を
改正強化して、小売商業の
分野における大
企業の進出を規制するという考えを持っておられるのか、その辺も明確にお答え願いたいのであります。
最後に、
審議会のあり方と主務大臣の権限、地方自治体との
関係についてお尋ねいたします。
さて、名称はともかくとして、
審議会は当然のこととして
中小企業者の
意見が十分に反映できるよう、委員の人選、
会議の運営が保障されなければなりません。また、主務大臣の権限のうち、都道府県知事に実質的にゆだねることが
分野確保上よりベターと認められるものは、都道府県知事に委任するか、その判断を尊重することが妥当と考えますが、この二点についてはいかがでありましょう。
質問は以上でありますが、福田総理並びに田中通産大臣は、全国七百万の
中小企業者が注視をしていることにかんがみ、これが切実な願望にこたえる所信を披瀝されるよう要求し、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田赳夫君
登壇〕