○中馬弘毅君 先ほど
政府から
趣旨説明のありました
国有鉄道運賃法及び
日本国有鉄道法の一部を
改正する
法律案に対しまして、新自由クラブを代表して若干の
質問をいたします。
日本列島の人の流れ、物の流れの大動脈であり、
経済、
社会面において多大な影響を持つ
日本国有
鉄道は、これまでの無為無策な政治に翻弄されて、いまや雪だるま式に
赤字を累積させていく、いわゆる不良企業に転落し、瀕死寸前の動脈硬化症状を呈するに至っております。
ここに至っては、ただ一時的な救済策や、単なる作文にすぎない
経営改善案ではなくて、いまこそ抜本的かつ
長期的な
再建案をもって取り組まなければならないときであると
考えるものであります。
私ども新自由クラブは、
国鉄はいずれ国有民営という形態に移行すべきだと提唱しています。すなわち、国家的、公共的見地に立ちつつも、独自の
経営責任において設備
投資を行い、
運賃を定め、従業員並びにその
賃金を
決定し、
関連事業を含めた採算向上を積極的に図っていくことを旨とすべきであります。私どもは、
本案の
審議に対し、このような
基本姿勢で臨むつもりであり、真に
長期的な
国鉄再建を念頭に置きつつ、検討を重ねていく所存であります。
まず、今回の
運賃決定方式の弾力化は、方向としては私どもの主張に沿ったものとして積極的に評価いたしております。しかし、
本案は、暫定的な
措置である上に、
物価変動率に一五%を加えた
範囲内という規定がついていることにより、あたかも
赤字でありさえすれば毎年
運賃値上げを認めるという結果になることを恐れるものであります。
私どもが
運賃法定制度の撤廃を主張するのは、あくまでも
国鉄が自由で強力な
当事者能力を持つことによって、一層の合理的な
経営が可能になると判断し、それに期待するからであります。
運賃値上げを容易にするために
法定制度を撤廃せよと言うのではなくて、
運賃値上げを安易にさせないために
法定制度を撤廃せよと言うのであります。この点について、
政府の本意をお聞かせ願いたい。
次に、本
年度における
運賃一九%
値上げの問題でありますが、昨年秋、
合理化計画の一環として五〇%もの大幅価上げが実施されました。その
合理化計画の方はまだほとんど具体化しないまま、またまた
値上げということでは、
国民が果たして納得するとお思いでしょうか。これまで、
値上げのたびごとに
合理化計画が出され、いずれも実施されないまま、その都度計画そのものの
修正、変更が繰り返されるばかりで、このような
政府の態度に、
国民はきわめて強い不信感を抱いております。
今回の
国鉄再建計画
要綱や
経営改善計画にしましても、具体性に乏しい総論的作文と断じざるを得ず、一九%
値上げの説得材料とはなり符ないと思いますが、いかがでございましょう。
国鉄当局も認めているように
運賃値上げは
赤字対策としてももう限界に来ております。事実、
国鉄離れという事態が深刻になってまいりました。
国鉄は、緻密な数字を積み上げてもろもろの計画を策定いたします。その割りには、
国鉄離れという重大な要素の見通しが甘いのではないでしょうか。
貨物利用が大幅に減り、また、昨年の
値上げでは、グリーン車ががらあきになったことでもおわかりでありましょう。
一体、
政府並びに
国鉄当局は、今回の一九%
値上げ、そしてそれに続く来
年度以降の
値上げで、どれだけ
国鉄離れを見込んでおられるのでしょうか。
このように需要予測においてすら不確定要因が多分に含まれている以上、示される数字にも、どうも根拠が薄弱で説得力に乏しい面があります。
さきに国債依存率二九・八%に拘泥され、そして今回の
運賃値上げ一九%というのは、スーパーマーケットの値札のように、二〇%でないということがいやに強調されて感じられ、福田さんのお人柄を見る思いがいたします。
いずれにいたしましても、もう
国鉄は、いままでのような
政府助成や
運賃値上げでは
再建できません。これは、私どもより
政府や
国鉄当局の方が十分御承知のはずであります。
それであるならば、現状では、
経営の
合理化によるコスト低減と
関連事業の拡大によって積極的に増収を図る以外に道がないことは自明の理であります。さきの
経営改善計画でも、
国鉄当局は、五十五年までに実質五万人の人員削減や
貨物輸送の
合理化、そして
投資対象事業の
範囲拡大を打ち出しました。これがいままでと同じように空手形にならないことを期待しておりますが、しかし、根本的な疑問点が二、三ありますのでお尋ねいたしたい。
その第一は、
国鉄の定年退職者に支給される共済年金制度についてであります。
現在の
国鉄在籍職員四十三万人に対し、年金受給者二十四万人は、きわめて過大であり、今
年度からは年金支給額が積立額を上回って、いわゆる年金の
赤字転落が必至の
状況であります。しかも、
国鉄職員の年齢構成は、いまや四十五歳以上の者が五〇%を占め、ここ当分定年退職者が急増するとともに、十年もたたずして在籍者一人に対して年金受給者一人という異常な事態になってまいります。
先日の
運輸委員会で、この点に関する私の
質問に対し、
運輸大臣並びに
国鉄総裁は、国の全般的な年金制度の問題だと回避されましたが、国全体の年齢構成は
国鉄職員のそれとは全く違ったものであり、
国鉄においてはまさに差し迫った根本的な問題であります。この問題を抜きにした
国鉄の
再建計画など、全くもってナンセンスと言わざるを得ません。
一体、この事態を
総理並びに
関係大臣は、どのように認識されているのでしょうか。具体的かつ明確な
答弁をお願いしたいと思います。
第二の問題は、
国鉄における
労使関係、ひいては職員の勤労意欲、サービス精神などの問題であります。
国鉄の
労使関係の
改善は、
国民にとって大きな関心事であります。一般
国民から見れば、
国鉄当局も
国鉄の
労働組合も、ひとしく
国民のために
国民が
経営を委託した人たちであります。
労使の対立のしわ寄せが
国民に向けられたのではたまったものではありません。
労使関係の
改善なくして、人員の削減計画も絵にかいたもちに終わってしまうでありましょう。
政府並びに
国鉄当局は、これまでとはどのように違った姿勢で
労使関係の
改善に臨むのか、
スト権問題を含めた福田
内閣の
方針をお
伺いいたしたい。
第三に、
関連事業に対する
投資範囲の拡大の問題であります。
そもそも、
鉄道事業は、直接の
利用者以外にも、沿線並びに関連の産業に対し、間接的な利益、すなわち外部
経済をもたらすものであります。民営
鉄道事業は、この外部
経済を内部化し、収益に大きく寄与させております。しかるに、
国鉄にあっては、外部
経済はすべて沿線の地主やターミナル近辺の企業あるいは商店が享受するのみであります。外部
経済内部化の道をふさいでおいて、新
線建設費
負担も含めた運行
経費全体を直接
利用者の
運賃にだけ依存することは、まことにもって不合理な制度と言わざるを得ません。
投資をすることができる
事業の
範囲を拡大することにとどまらず、みずからが
関連事業を直接
経営し、積極的に増収を図っていくことが、余剰人員の吸収策ともなり、まさに一石二鳥の効果を発揮すると思量いたしますが、いかがでしょう。
もちろん、公営企業である
国鉄がやるからには、
事業内容と
範囲についてはおのずから
限度があり、公共の利益に合致し、かつ、中小企業を不当に圧迫しない
範囲において、多角的に、かつ効果的に進めるべきことは申すまでもありません。
投資範囲拡大から一歩進めて、
関連事業直接
経営参加の方向に前向きに検討される決意はおありでしょうか。
さらに、
国鉄用地の多目的
利用、たとえば操車場等の広大な敷地の上に人工地盤を
建設し、有効的に活用するなどの方策を含め、大胆で意欲的な収益向上策を推進していくことを期待する次第であります。
以上、本
法案の
審議を始めるに先立ちまして、
総理並びに
関係大臣の明快なる
方針を開陳願いたいと思います。
最後に、私は、
国鉄の現状は数年後の
日本の姿を想起させるものがあり、身の毛のよだつ思いがいたします。いわば
国鉄問題は、行
財政全般の行き詰まりの予告編であり、第二、第三の
国鉄をつくり出さないためにも、この問題をきっかけに、行
財政改革に抜本的な対策を講ぜられんことを切に望みまして、私の
質問とさせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田赳夫君
登壇〕