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上原康助君 私は、ただいま
政府より
趣旨説明がなされました、
沖繩県の
区域内の
駐留軍用地等に関する
特別措置法案、いわゆる
基地確保新法案に断固反対する
立場から、
日本社会党を代表して、
福田総理並びに
関係閣僚に若干の質問をいたします。
福田総理、あなたはまさかお忘れではないと思うが、もう一度次のことを思い出していただきたい。
すなわち、
昭和四十七年第六十八回
国会において、
佐藤元
総理は、その
施政方針演説で、「
返還に際し、
沖繩には
核兵器が存在しないことが
確認され、
沖繩における
人口密集地及び
産業開発と密接な
関係にある
地域に存在する
米軍の
施設、
区域については、
復帰後できる限り
整理縮小することについても
米側の了解を取りつけることができた。」と述べられ、そして、「戦中、戦後を通じて大きな
犠牲を払ってきた
沖繩同胞の苦悩を忘れることなく、平和で豊かな
県づくりに全力を挙げ、
沖繩を緑の島としての
環境を保持しつつ、その
開発と発展を図り、
県民の
福祉の
向上に
最大の
努力を傾ける」などと約束されたことであります。
また、出時
外務大臣として
沖繩返還に一役買ったあなた御自身、その
外交演説の中で「
核抜き本土並み返還の
確認、
返還後の
米軍施設、
区域の
整理縮小」など積極的に推進していくことを明らかにされたのであります。
総理、六年前の
沖繩国会で、
佐藤元
総理やあなたがその
施政方針で明らかにしたように、真に
沖繩県民の
立場に立って
復帰諸
施策を推進してこられたとするならば、
復帰五年たった
沖繩の
現状は、いま少し
県民生活に安らぎと落ちつきを取り戻し、
復帰してよかったという
環境になっていなければならないはずであります。(
拍手)
しかし、いまさら多くを指摘するまでもなく、
復帰して五年を経過しようというのに、
県民生活は
復帰前にも増して一層苦しく、
核兵器及び
生物化単
兵器存在の疑惑も何ら解明されず、
基地の
島沖繩の実態はいささかも変わっていない
現状であります。
ちなみに、
復帰時に約二億八千三百万平方メートルあった
米軍基地は、いまだに二億六千五百万平方メートルが
米軍基地であり、依然として県土の約一二%を占めておるのであります。
この五年間に
返還された
軍用地は、わずかに一千七百万平方メートルで、その一部は
復帰と同時に
自衛隊が強奪し、実際に
地主に
返還された
土地は一千四百万平方メートルにすぎず、しかも、見せかけの
細切れ返還であるため、
跡地利用がほとんどできないまま放置されているありさまであります。
返還された
軍用地はわずかに全体の五%以下であるのに対し、
復帰時約二万人いた
基地労働者は、その六五%余が一方的に解雇され、
沖繩の
失業率を
全国平均の三倍も上回る七%の高いものにし、雇用不安を一層悪化せしめる結果を招いているのであります。
一方、
政府が
沖繩振興開発の
起爆剤にすると過大宣伝して進めてきた
海洋博も、
本土企業を中心とする一部の大
企業には奉仕したものの、
沖繩の農業や
地場産業を破壊し、
中小企業を倒産に追いやり、
失業と不況を
本土よりはるかに深刻化させるなど、
沖繩経済にはかり知れない打撃と
後遺症を残して終わってしまったのであります。
このように、
政府・
自民党が進めてきた
沖繩に対する諸
施策は、
県民生活の
安定向上よりも、いかにすれば
沖繩の巨大な
米軍基地を自由かつ安定的に
米軍に
使用せしめることができるかに最重点が置かれてきているのであります。
提案された
基地確保新法案も、
政府・
自民党のその基本的姿勢を端的にあらわしていると言えましょう。
そこで、
総理に伺いたい。
一体、あなたは、
沖繩の
現状をどう
認識され、
政府が進めてこられた
沖繩施策は、
県民の意にかない、期待にこたえるものであったとお考えなのか、あるいはもし反省する必要ありとすれば、何をどう改められるのか、今後の
施策を含めて率直な御見解を承りたいのであります。(
拍手)
さて、
沖繩の
土地の
位置境界や
地籍が不明になった要因は、過ぐる太平汗
戦争によって
土地関係の台帳、
公簿、
公図などすべて消失してしまったこと、戦後は、
米軍が布告、布令を乱発し、銃剣とブルドーザーをもって引きならして地形や
形質を完全に変えてしまったこと、
復帰に当たって、
米軍が不法、不当に強奪した広大な
基地を、
自民党政府が現行
暫定措置法を数の暴力で強行可決して、
地籍さえ明確にすることなしに継続
使用してしまったことにあります。
今日までこの重要課題を放置してきた
政府・
自民党の
責任はきわめて重大であるにもかかわらず、
政府提出の
法案は、現行法の
期限切れに伴って、
県民多年の
地籍明確化要求を逆手にとったあめとむちを織りまぜた一段と
違憲性の強い
土地強奪法でしかないのであります。
地籍の確定という
土地法制の根本にかかわる問題と、
軍用地の確保、継続
使用という軍事的、
政治的な問題を混同関連させていることは、
法律構成上も無理があり、
政府の意図が
地籍の
明確化にあるのでなしに、
基地の確保と継続的無
期限使用にあることは明らかであります。
この
法案は、憲法で保障された法のもとの平等の原則を著しく逸脱した、
沖繩にのみ
犠牲と忍従を強いる差別立法であり、その正当性、合理性は全く存しないのであります。
また、現行公用地法による
暫定使用期間が五年と定められておったのに対し、本
法案では
期限も定めてなく、事実上無
期限の強制
使用の
特例を設けようとしていることは、
土地所有者の財産権をより不当に侵害するものと言わねばなりません。(
拍手)
政府は、いま私が指摘した諸点についてどのように考えておられるのか、明確な答弁を求めるものであります。
さらに、いま一つ見逃すことのできない重要な点は、
自衛隊用地に
土地収用法を適用する道を開こうとしていることであります。
自衛隊用地を
土地収用法によって収用し、または
使用しようとする本
法案の内容には、
土地収用法の立法経緯から見て重大な疑義があるとされております。すなわち、
土地収用法は、その三条で「
土地を収用し、又は
使用することができる公共の利益となる事業」を定めておりますが、それに、
自衛隊の用に供する
施設は含まれないとするのが、これまでの確定解釈となっているからであります。
昭和二十六年に旧
土地収用法が全面改正された際に、参議院建設委員会における
提案理由の
説明内容や、
昭和三十九年五月の衆議院建設委員会における当時の河野建設大臣の見解等からも、このことは明白であります。
この経緯から見て、
自衛隊用地の収用に
土地収用法を適用しようとすることは、いまだにその前例がないだけに、
沖繩の
地籍確定を口実にして
土地収用法の実質的な改悪を図り、
自衛隊基地拡大に強権を持ち込もうとするものと言わねばなりません。(
拍手)
政府は、
土地収用法に対する従来の見解を変更しようとするのか、
自衛隊基地を公共の利益になる事業と認定するのか、
総理より明確な答弁を求めるものであります。(
拍手)
このように
政府提出の
法案は、憲法上、
法律構成の上からも多くの疑義なしとしないのであります。
加えて、
沖繩の
地籍問題は、戦後処理の一環として、
政府の
責任で
解決しなければならないのに、その
責任を明確にしていないこと、
地籍を明確にすると言いながら、年次
計画や
予算措置をどうするのか、最も重要な点を全く不明にしていること、
地籍問題が抱えている複雑な権利調整の
手続、集団和解方式で
解決できない場合の
措置や
地籍明確化に伴う
地主への補償問題等について法的
措置を講じようとしていないことなど、不備な点が余りにも多いのであります。
さらに、
地籍調査を
軍用地、非
軍用地に区分していることは、
土地利用の効率化の上から言っても妥当性を欠き、振興
開発に大きな障害となることは明白であります。
しかも、
沖繩県当局が時間をかけてまとめた
地籍明確化のための要綱案を全く無視していることは、
県民の意思を踏みにじる暴挙と断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
軍用地、非
軍用地を問わず、
地籍の
明確化に当たって、県当局や
関係市町村の協力なくして、この難題を
解決していくことができると考えておられるのか、
沖繩県が策定した要綱をどのように考えておられるのか、明確な答弁を求めるものであります。
さらに、現行の
公用地等暫定措置法は、五年という
期限がはめられている以上、来る五月十五日以降は当然失効になるものと考えますが、御見解を承っておきたいのであります。
また、現在の
国会状況から見て、
提出された
基地確保新法案がこの五月十四日までに成立する見通しは全くないし、ましてや、
法律適用のための準備期間などあわせて考えると、絶望的と言っても過言ではないのであります。
政府は、本
法案が成立しない場合、どのような
措置を講じるのか。安保地位協定との関連で明確な答弁を求めておきたいのであります。(
拍手)
以上、私は、
復帰後の
沖繩の実情を踏まえながら、
法案の内容をただしてまいりましたが、
総理、
沖繩県民は乏しきを憂えているのではないのです。ましてや、
自民党政府に甘い期待をかけているのでもありません。等しからずを憂い、
沖繩だけに
犠牲と差別を強いることにがまんがならないのです。
なぜ、
復帰した今日も、国土の〇・六%にも足りない狭い
沖繩に、日本
全国の五三%にも及ぶ広大な
米軍基地を抱え込まねばならないのですか。しかも、
基地の面積が大きいだけでなしに、ポスト・ベトナム後も、
米軍のアジアにおける集約複合化した戦略
基地として位置づけられ、
政府がこれまでのような姿勢をとる限り、その態様は今後も変わることは期待できないのであります。
安保条約と
米軍基地は、わが国の安全と極東の平和のために不可欠だと主張するのでありましょうが、大の虫を生かし繁栄させるために、いつまでも小を踏み台にすることは、平和憲法の精神を踏みにじる虚構だと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
総理、憲法の上に安保条約を君臨させる軍事優先政策をとれ以上
沖繩に強いることはやめるべきであります。
しかるに、あなたは、近く行われる日米首脳会談で、またもや、
沖繩をいけにえにしてきたとも言える韓国条項を湾
確認しようとしているどころか、朝鮮半島の安定は日本防衛の生命線などという新しいドミノ論で、南北朝鮮の分断固定化と朝鮮人民抑圧のために、
沖繩の
米軍基地を主軸とした日米安保体制を一段と強化しようとしている態度は、断じて容認できないのであります。
総理、日米首脳会談において
基地、安保、防衛分担などで日本側が新たな荷物を背負い込むことはないと
国民の前にお約束できますか。明確な答弁を求めておきたいのであります。
最後に、
政府・
自民党がかたくなに拒否し続けてきた減税問題も、結局野党の
要求に応ぜざるを得なかったと同様、
基地や安保に関連する
法案として、これまでのように、
自民党の横暴で成立させ得る
国会状況でないことをあえて指摘しておきたいのであります。
政府案を潔く撤回し、
県民の意思と
要求を取り入れた野党三
党案を成立せしめることこそ、
政府・
自民党のとるべき責務であることを強く指摘して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田赳夫君
登壇〕