○
内閣総理大臣(
福田赳夫君) ただいま
質問を通じまして、竹入さんの、これからの
日本社会を一体どういうふうに持っていくんだ、その
構想について承ったわけであります。
昨年暮れの私とあなたとの間の
党首会談におきまして、あなたは「
福祉社会トータルプラン」という、この一冊の著述を私に下さいました。私も大体これを通覧いたしたわけでございますが、あなたの
考え方は、これからの
日本社会は、
高度成長路線の単純な
軌道修正であってはならない、
成長政策を清算する、そして
福祉経済路線に
転換をする、もって
生きがいのある
社会の
建設に
転換するんだ、こういうようなことと理解いたしておりました。また、この労作を見まして、私は、そういう
福祉社会をつくるには金がかかるんだ、
国民の
負担を、これから五年間を
考えてみましても三・五%ぐらいはふえざるを得まい、こういう
見通しも示されておるのでありますが、そういう観察をされることに対しまして私は深く
敬意を表する次第でございます。(
拍手)
ともかく、竹入
委員長がこのような
考え方を示されたことに
敬意を表する次第でございまするけれども、また、その具体的な適用につきましてはいろいろと異なる点も出てくる、この点もまた御了承おき願いたいのであります。
それから、竹入さんは、次にロッキード問題についての私の
所信を求められまして、果たしてこの
事件は
個人の問題であるのか、あるいは
自民党政治の
構造問題か明らかにせよ、こういうお話でございますが、この種の問題は、AかBかというふうに割り切るわけにはまいりません。これは
個人の問題である。しかし同時に、私は、この問題にはこれを醸し出した背景というものがあると思うのです。土壌というものがあると思う。それは何か。私はいつもこう言っているのです。このロッキード問題というものは刑事
事件としてこれを処理する、これはもうもとより大事なことでありまするけれども、これには根っこがある。この根っこから吹き出した一つの芽、これが
ロッキード事件である。この根っこを剔抉しませんと、第二、第三の不祥
事件というものが起こってくる。この根っこを剔抉することこそが大事な問題であるということを申し上げてきておるわけでありますが、私は、この問題の根っこと申しますのは、一つは
社会風潮であると思うのです。
つまり、高度成長
社会の中で、やはり金、金、金、物、物、物、こういう
社会風潮がある。(発言する者多し)その
社会風潮というものは、行き過ぎておる、私は、これは
是正を必要とするというふうに
考えておるのであります。私は、
社会エゴというもの、また金の世の中、こういうものに対しまして、これはどうしても
是正をする、
転換をする必要があると
考えておるのであります。この問題が、この
事件を吹き出したところの背景として、強く、広く横たわっておるということを指摘したいのであります。
それからもう一つは、私は自由民主党の反省を要する点であると思うのです。自由民主党は、三十年近く政権を担当しておるわけでございますが、その長い政権担当の中で、緩みが出てきておる、おごりが出てきておる。この問題が
ロッキード事件の背景にある。私は、その点が昨年暮れの総
選挙においても強く批判をされておるというふうに
認識をいたしております。
私は、そういう
認識に立ちまして、
施政方針演説でも申し上げましたけれども、今日の
社会風潮を「協調と連帯」、つまり
社会をよくする、そういう方向へ大きく
転換をしなければならぬ、 エゴや物や金の
社会であってはならぬということを強調しましたけれども、同時に私は、私の自由民主党に対しまして根本的な
改革を要求いたしておるわけであります。この問題は、いろいろある。
とにかく、自由民主党が結党された、そのときから伏在しておる問題でありますが、派閥体質の問題、あるいは
国民政党とは言うけれども、一部の限られた人の政党であるというような組織の問題、あるいはその
政治資金が法人寄付に偏重しておるというような問題、いろいろ
改革をする問題があるのでありますけれども、私は、この一、二カ月の間にこの
改革を断行したい、かように
考えておるわけであります。(
拍手)まあ、そういうところに私は
基本的な
考え方、焦点を置きながら、
制度的、また
行政的にも努力をしなければならぬ、こういうふうに
考えております。
制度的な問題といたしましては、あるいは贈収賄罪の規定を
強化する問題でありますとか、また、御指摘がありましたけれども、
政治資金の問題。この問題は、やはり
政治資金の問題に結局返っていくと私は思うのです。しかし、
政治資金という問題をさらにこれ以上
改革をするというためには、
選挙制度を
改革する必要があると思う。私は、
選挙制度、
政治資金の問題、これは各政党間の共通の大きな問題である、かように存じますので、これは各党間において共同の土俵づくりの問題でありますので、ひとつ協議を進められたらいかがでしょうかと、かように
考えておるのでありまして、そういう
考え方を進めてまいりたい、かように
考えております。
それから、
選挙制度の問題は、
選挙の仕方の問題、区割りの問題、定数の問題、また
選挙資金の問題、各方面にわたりますが、いま御指摘の参議院の定数問題、これもつとに皆さんから御指摘を受けておる問題であります。この問題も各党間において相談をして、速やかに結論が得られることを期待いたします。
それから、小
選挙区制を導入するという
考え方についてはどう思うかというお話でありますが、私は、小
選挙区ということを前面に出したくないのです。やはりこれは
選挙制度、これを金のかからないきれいな
選挙制度にするにはどうしたらいいのだろうかと、そういう議論の過程において、小
選挙区がいいじゃないか、比例代表制がいいじゃないか、あるいは他の方法がいいじゃないかというようなことが出てくる。これはその流れに従えばいいのだと私は思いまするけれども、その
考え方の
基本は、金のかからないきれいな
選挙ということを目指して、各党間において相談をすべき問題である、かように
考えておるわけであります。(
拍手)
また、竹入さんは
地方自治の問題に触れられました。これはいろいろ問題があることは承知しております。私もそれらの諸問題につきましては、行
財政改革ということを
考えているのです。つまり、私は就任早々でありまして、行
財政計画というものは、まだ
考え方が決まらないのです。しかし、世は
資源有限
時代である。国も
地方公共団体も、あるいは
企業も家庭もみんなそれに対応する構えを示さなければならぬ。そういう際に、
政府は、まず率先して機構の
改革に取り組むべきである、
財政の
改革に取り組むべきである、さように
考えるのであります。
そういう
考え方をもちまして、ただいま鋭意その検討を進めておりますが、夏ごろまでには結論を得て、法律を要しないものはこれを直ちに実行する、法律を要するものは、次の
通常国会にこれを御審議願う、こういうふうに
考えておりますが、その一環といたしまして、
地方自治をめぐる諸問題も検討してみたい、かように
考えております。
独占禁止法の
改正問題に触れられましたが、竹入さんは、
改正の
内容こそが問題なんだと、こういうふうな指摘をされました。私もそう思います。この問題につきましては、
さきの
党首会談におきましても、あなたから御指摘があったわけでございますが、これは結局、私は、もうこういう状態にほうっておいてはいかぬ、この
国会において何らかの決着を得たい、こういうふうに
考えておるのです。しかし、決着を得るためには、野党だけの賛成じゃ、これは成立するわけじゃないのです。与党もまた賛成しなければ、この法案は成立しないのです。その与野党を通じてのコンセンサスづくり、これを私は進めてまいりたい、かように
考えておる次第でございます。
また、
中小企業と大
企業の
事業分野調整法につきましても、ただいま鋭意検討をいたしております。この
国会に提案を申し上げたいと思っておるのであります。
それから、
中小企業対策として、官公需の発注を五〇%
目標にせよ、こういうお話でございますが、中央
地方を通じますと、現在、その
目標に近接をしておるわけであります。これは、さらにこの方向を推し進めたい、かように
考えておる次第でございます。
それから、
消費者保護の問題につきまして幾つか触れられております。
欠陥商品対策をとれ、
やみカルテルを許すな、
誇大広告について注意をせい、
マルチ商法、悪徳訪問商法、こういうものに対しまして措置を講ぜよ、集団
訴訟制度を採用せよ、いろんな問題が提起されておりまするが、おおむねその方向で検討いたしたい。ただ、集団
訴訟問題なんかでありまするとそう簡単じゃありませんから、そういう問題もあることを御承知おき願いたいのであります。
公共料金につきまして、
国民福祉料金体系というようなものに差しかえたらどうだろうか、こういうお話でございまするけれども、
公共料金はやはり一律一般的でないと現実的ではないと思うのです。もしそれで階層別から見ましてこれは不均衡がある、こういうのならば、それこそ
社会保障体系の中でその
是正を行うべきである、かように
考えまして、体系的に料金
制度を
改正するという
考え方は現実的ではないのじゃないか、さように申し上げる次第でございます。
国鉄運賃法案は、この
国会に御審議を願いたいと思っているのです。そして、料率の
引き上げもありまするけれども、同時に、今後の料率
引き上げ、これにつきましては、完全
法定主義というのを若干緩和していただきたい、さような
考えでございます。
次に、今日の景気情勢から見まして、消費を刺激するために一兆円
減税を断行せよ、こういうお話でございますが、これはそういう気持ちにはなれません。しかし、この問題は野党がこぞって一兆円
減税を断行せよというようなお話です。そこで、その野党の
立場ということもよく私はそしゃくし、吟味してみたのです。しかし、結局、一兆円というような大幅な
減税を今日この時点において採用することは妥当でない、中央
地方を通じまして四千三百億円程度のものが妥当である、こういう結論になったわけであります。
竹入さんも、これからの国づくりということを
考えていきますと、
国民の
負担は
増加しなければならぬ、三・五%もこの五カ年間でふえるのだ、こういうふうにおっしゃっておられるくらいです。(
拍手)そういう際に、この際所得税を一兆円
減税せよ、こういうことがどうして出てくるのだろうか。つまり、いま竹入さんのおっしゃるのは、消費を刺激する、こうおっしゃるのだけれども、いま
日本の置かれている
立場というものは、消費を
政策手段まで使って刺激しなければならぬという状態でありましょうか。
わが国は、ここまで来たこのいきさつについてのいろんな議論はありましょう。ありましょうが、今日この時点におきましては、とにかく
歳出の三割近いものを公債に依存をいたしておるのです。この状態はそう簡単には直らない。
赤字公債だけを
考えてみましても、五十五年にこれを
解消する、これが精いっぱいのところであろうか、こういうふうに見ておるのです。そうすると、その五十五年に至るまでの間をとってみましても、多額の公債が
発行されるのです。その多額の公債が消化されないということになったらどうなる。
日本銀行が札を刷って、そうしてばらまくというようなことと同じことになっちゃうのです。これじゃ
インフレーションです。これは
日本社会を揺るがすようなそういう非常な結果になってくるわけであります。どうしたって出すところの公債が完全に消化されなければならぬわけなんです。消化されるということは何だというと、
個人がその
生活費の中から公債を買っていただくということなんです。
個人が公債を買っていただかぬでも、貯蓄をしていただく。そして、
個人にかわって金融機関が公債を買うということである。そういうことが絶対に求められているそのときに、さあ、いま国が
不況です、景気を刺激する必要があるのです、そのために
減税をしてやりましょう、やりましょうから、大いにそれを使ってくださいというような
考え方は、これは自己矛盾もはなはだしいということになるのじゃないでしょうか。(
拍手)
さらに、景気刺激ということから見ましても、この
減税で刺激
効果がどこまでありましょうか。それよりも、的確に出てくるのは
公共事業をやることです。下水道
事業をやることです。
住宅を
建設することです。あるいは上水道をつくることです。道路を
建設することです。そういうことによって、この資材が求められ、そうして
経済活動が活発になってくる。
しかも、いま大事なことは、納税者が幾らか楽になるということではないんです。まだ納税もできない失業している人、そういう人もずいぶんおるんです。そういう人に職を与えなければならぬということじゃありませんか。(
拍手)私は、この
減税論には賛成することができません。
しかも、
わが国におきましては、もう竹入さんもよく御承知のとおり、また言っておられるとおり、租税
負担が低いんですよ。アメリカでは
国民所得の中で三〇%の租税
負担でございまするが、
わが国におきましては二〇%そこそこなんです。そういうようなことをも
考えまするときに、それ以下にまたこれを
減税してしまうというようなことは、国家の前途から見ていかがなものでありましょうかということを申し上げたいのであります。
公共事業について、
国民生活関連
事業を優先すべしというお
考えは全く同感でありまして、また、
公共事業が適確に取り進められるというための
地方財政対策、これが重要であるということもよく
認識しておりますので、そのとおりの措置を五十二
年度予算においてもやっておる次第でございます。
それから、税
負担の公平の問題でありまするけれども、これは、できる限りそのようなことをやっておるのです。今度の
税制改正におきましても、利子・配当課税、これを
強化するとか、あるいは交際費課税の
強化を行いますとか、いろいろやっておる次第でございます。
しかし同時に、これらと並行いたしまして行
財政の
整理ということをしなければならぬ。これにつきましては、先ほども申し上げたとおりでありますが、少しまだおくれておりまするけれども、夏ごろまでには結論を出し、これを強力に
推進してまいりたい、かように
考えております。
次に、
赤字国債発行の絶対
条件として
財政再建計画を樹立せよ、
赤字国債償還計画を示せ、
公社債市場の
整備を行え、こういう話でありますが、
財政再建計画につきましては、ただいま大蔵省を中心といたしまして
財政制度審議会に諮り検討中でありますので、検討の結果を待って明らかにしたい、かように
考えます。また、
赤字国債の
償還計画につきましては、これは、いかなる年次によりましてこれを償還するかというようなところまではできません。できませんが、とにかく満期までには全額現金償還をするという
方針をもって、毎年毎年その準備をいたしてまいりたい、かように
考える次第でございます。
それから、
食糧基本法を
制定すべしというお話でございます。いま
農業基本法という法律があるわけでありまして、さあ、それとダブって
食糧基本法ということもいかがかと思いまするけれども、陸上の
食糧また海上の
食糧含めまして非常な事態になりつつある。そういうようなこともよく承知しておりますので、その
認識に立ちまして
食糧政策を進めていく、こういう
考え方でございます。
また、
救農土木事業を大いに実施せよというお話でございますが、去年は、とにかく東北でああいう冷害があった、また各地で災害があった、そういうようなことも
考えまして、
公共事業を五十二
年度におきましても大いにやりまするけれども、その中においてそういう救農土木的配慮をいたしておるのであります。御批判もありまするけれども、東北新幹線、あれなんかを継続
事業として
推進しておるのもさような救農土木的な配慮があるということを御了知おき願いたいのであります。(
拍手)
また、領海十二海里宣言を即時実施せよ、こういうお話でございますが、そのようにするために国内法を
制定し、御審議をお願いいたしたい、こういうふうに
考えておる次第でございます。(
拍手)ただし、国際海峡につきましては、海洋法
会議の結論が出るまでは
現状維持にいたしたいという点もまた御了知おき願いたいのであります。
それから、領海十二海里の扱いに関しまして、非核三
原則はどうするのだというお話でございますが、これは厳守いたしますから、そのように御了承を願いたいのであります。
それから、
福祉ナショナルミニマム設定ということでございまするけれども、このトータルプラン、これにも出ておるところでございまするけれども、これを一律に
社会福祉ミニマムというような形にするのはなかなかむずかしいかと思います。今日の
わが国の
社会福祉体制というものは、もう形におきましては国際水準に来ておるのです。その
内容をどういうふうに
充実するかという段階にあるわけでございまするけれども、同じ
考えです、ナショナルミニマムというような同じ
考え方のもとにこの問題の取り進めをいたしたい、かように
考えております。
また、
住宅政策について御言及でありましたけれども、
わが国におきまして
住宅政策は非常に立ちおくれておる。特に
公的賃貸住宅、これは立地
条件が非常にむずかしいのです。つまり、土地の制約、それから、さあ土地がありましても、その環境というか、
地域社会において承諾を得るというような点、そういう点で非常にむずかしい問題があるのでございまするけれども、何とか努力をいたしましてそういう困難を克服し、低所得層、まあ
社会的流動層といいますか、老人、母子、身障者世帯などにつきまして有益なことになるようにと
考えておる次第でございます。
それからさらに、福祉
予算、これが足らないじゃないか、また、
年金についても不十分でないかというようなお話でございますが、五十二
年度の
財政は非常に苦しいのです。苦しい中ではありますが、福祉
対策にはかなりの配慮をしたということは御承知おき願いたいのであります。つまり、
予算全体といたしますると、一般会計の中でふえましたのは、これは国債費と
地方財政費がふえたのです。その
関係でぴんとはね上がったのですが、そういう特殊要因を除きますと、一三・六%の
増加にとどまるのであります。その中で、
社会保障関係は実に一七・七%の
増加を示しておる。この一事を見ましても、これはもうかなりの配慮をした、いま景気
対策のために必要な
公共事業費に次いでの配慮をした、こういうことになるのでありまして、ひとつ御了知のほどをお願いしたいのであります。(
拍手)
また、
年金を
充実すべしというお話でございますが、これは逐次
充実するようにいたします。
それから、
各種の
医療保険制度の
統合についての御示唆がありましたが、これは、何とか五十三
年度を目途にしてこの
制度の根本的見直しをできないものかといって、いまその方向の準備をいたしておるわけであります。
また、老人
医療につきまして、無料化を継続せよ、
所得制限を据え置けというお話でございますが、五十二
年度の
予算におきましては、まさにそのとおりにいたしておる次第でございます。
それからさらに、
教育の問題について御所見が述べられました。私は、この
教育の問題、いま
経済の問題が当面の問題になっておるけれども、長い目から
考えますときに、結局
教育、これが一番大きな問題だろうと思うのです。つまり、
資源有限
時代になってくるけれども、
日本人一人一人を、高度な知能、高度な徳育と高度な体質を持ったものという仕上げができるならば、いかなる変化がありましても、私はその変化に対応できる、こういうふうに思います。もう
資源有限
時代において、わが
日本におきましては
人間が財産であるということでございまして、その
人間形成、すなわち
教育には最大の重点を置きたい、かように
考えている次第でございます。基調といたしましては、
個人の創意、
自主性及び
社会連帯感の
尊重ということでありまして、世界じゅうから尊敬されるような、知、徳、体のつり合いのとれた国際感覚豊かな
日本人を育てたい、かように
考えておる次第でございます。(
拍手)
そのためには、
教育界の人材養成、人材を
教育界に集める、こういう問題。また、学校
教育の
整備充実、そういう中で入学試験
制度の
改革、
教育課程の改善、高等
教育の質の向上、また同時に、
社会教育の
整備、またさらに、広く芸術、文化、スポーツの振興等を心がけてまいりたい、かように
考えておる次第でございます。
また竹入さんは、国公
私立の
任意単位取得制について言及されたのでありまするが、これは
大学制度の根幹にかかわる問題でありまして、これは慎重に十分検討してみたいというお答えにとどめておきたいと思うのであります。
また、
高校、幼稚園等の増設、これを助成すべしというお話でございますが、これはすでに五十一
年度から公
私立高等学校の新増設について補助をいたしておるのであります。五十二
年度におきましては、さらにこれを
拡大をいたしております。また、幼稚園の新増設につきましても大幅な
予算の増額を行っておる、お説のとおりにいたしております。
また、環境
対策といたしまして、
損害賠償責任制度の
確立についての御提言でありますが、すでに人の健康被害につきましては
公害健康被害
補償制度があるのでありますが、その他につきましては、つまり物的損害については、現在は不法行為による損害賠償の私法的手続によって処理されるということになっておるのでありますが、しばらくその状態において推移を見てまいりたい、こういうふうに
考えております。
また、環境
対策といたしまして、環境影響の事前評価法を
早期に
制定すべしというお話でございます。これは、世論もそういう高まりを見せておるわけでございますが、やはり私も、いろいろな開
発行為が行われる、その開
発行為が行われる前に
効果的な環境影響評価をしておく必要がある、こういうふうに思います。それを実行するための
制度、体制、ただいまどういうふうにするかにつきまして、
政府におきましては検討中であります。
次に、
日中平和友好条約の問題であります。私は、この際、竹入
委員長が先般北京を訪問されまして、私の
中国問題に対する意見を正確に先方に伝えられたことに対しまして、深く
敬意を表し、お礼を申し上げます。同時に、その正確に伝えられた私の
考え方に対して、
中国側がこれをまた評価してくださっておるというお話を承りましたが、これも私として欣快にたえません。
日中平和友好条約につきましては、双方の満足し得る状態が整うということの段階におきまして
締結をいたしたい、かように
考えて鋭意努力をしてまいりたい、かように
考える次第でございます。
なお、日ソ平和
条約の
締結につきましては、先般、ミグ25戦闘機の問題があって、若干ぎくしゃく両国の間がいたしました。しかし、日ソ間には
経済問題という大きな協力
関係があるのです。それから、文化交流あるいは人的往来、そういう非常に緊密な
関係があるわけでありまして、
日ソ関係というものは、これは私は将来大きく発展していく可能性があると思うのです。でありますので、そういう一つ一つの交流、接触を積み上げてまいりまして、
わが国民のかねての悲願であるところの北方領土の返還を実現し、それを前提といたしまして平和
条約を
締結するという方向を力強く、また粘り強く推し進めてまいりたい、かように
考えております。
日米安全保障
条約を
合意によって廃棄し、
日米友好不可侵条約を
締結すべしというお
考えでございますが、これは賛成いたしかねます。さような
考えは持っておりません。(
拍手)
それから、核軍縮についてどういう
考え方であるかというお話でございますが、私は、わが
日本という国は、核兵器の問題につきましては特殊な
立場にあると思う。つまり、最初の被爆国である、また、
わが国は非核三
原則を世界各国に対して宣言をしておる、そういう
立場にある
わが国であります。
わが国は、いまとにかく工業力においては、アメリカ、
日本と言われるようなところまで来た。持たんとすれば核兵器まで持てる
立場にあるのです。そういう力を持っておるのです。その力を持ちながら、あえてわが
日本が核兵器を持ちませんという
立場をとっておることは、私は、世界に対して非常に大きな重みを持つことである、こういうふうに思います。力もない国が核は持ちませんと言うよりは、力はあるけれども核は持たぬ、他の諸国も同調されたいという
立場をとり得るのはわが
日本だけなのです。私は、この
立場を国際
社会において強く推し進めてまいりたい、かように
考えておる次第でございます。
最後に、
予算案の
修正についての私の
考え方をお尋ねになられましたが、私は、
党首会談で申し上げたかと思うのですが、私ども
政府が提案をする
予算案、
法律案、そういうものにつきまして、これは提案をしたからそのメンツの問題がある、メンツの問題からその原案にこだわるというようなことは、これは絶対にいたしません。私は、与野党の協議といいますか、
国会の審議を通じまして、
政府案に欠陥がある、
政府案をこういうふうに直した方がいいのだということが発見される、それが客観的なものであるということでありますれば、
修正すること、これはもとよりやぶさかではございません。
しかしながら、いま私どもが御審議願っておるところのこの
予算案、特に
減税についての皆さんのお
考え方、これはるる申し上げたとおりに、私はどうしても同調できないのですよ。しかし、せっかく皆さんが言われるものでありますることも考慮いたしまして、中央
地方を通じまして四千三百億円の
減税という結論になったわけでありますが、私どもの
考え方も篤と御理解くださいまして、御賛同くださらんことを切にお願い申し上げます。(
拍手)