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安井政府委員 ただいまお尋ねの第一点でございますが、これはまさに先生御
指摘のように、
日本の公
社債市場というのが、
先進諸国、特にアメリカであるとかヨーロッパの市場に比べますと、非常におくれているということは事実でございます。具体的な例も幾つかあろうかと思いますけれ
ども、たとえば
社債につきましても、期限は十年ものと七年ものしかないとか、あるいは担保付
社債しかいまのところほとんど市場に流通していないとか、非常に変わった形でございます。私
どもといたしましては、かつての高度成
長期におきましては、こういう
間接金融というものが主体となって効率的な
資金供給を果たしてきたわけでありますけれ
ども、安定
成長へ移ってまいりましたときに、
日本の公
社債市場というものはどう
考えていったらいいのかということにつきまして、現在証券取引
審議会にお願いいたしまして、学者の委員を中心に基本問題委員会というところで、基本的に、少なくとも中
長期の
立場から解明をしていただいておるわけであります。
日本の公
社債市場を今後どう位置づけていくか、どう
改善していくかという
議論をしていただいているわけであります。その際にも、実は、いま御
指摘の、なぜ
社債につきまして既発債を個人が購入できないのかという御
議論も学者の委員から出たのでありますけれ
ども、先生御
承知のとおり、現在
社債の既発債市場となりますと、ほとんどが機関
投資家の間で
資金調達の場として利用されているわけであります。つまり、売り物買い物というものが何億という単位で行われておりますために、個人で既発債を買いたいという場合に、五万、十万というものが必ずしもそのままでは売りと買いとがぶつからない。たとえば東京
電力債一つ取り上げてみましても、
株式でありますれば東京電力の株は一種でありますけれ
ども、
社債となりますと、
発行時期によりまして、十年間しかも各月あるいは一月置きぐらいに
発行されておるわけでありますから、金利の
条件あるいは
償還期限等が違うわけでありまして、個別に売りと買いとが成立しないという
状況もあることも事実でございます。したがいまして、私
どもとしては、注文を出されて、それに対する売り物ももちろん個人のものでもあるわけでありますから、小枠のロットのものもあるわけでありますから、それはそれなりに
証券会社もその御
要望に応ずる場合もあろうかと思うわけでありますけれ
ども、通常の場合には、個人が換金のために買われた
社債を売られますと、
証券会社はそれが売りにくいために、ロットにまとめて、大きな金額の単位にまとめて機関
投資家の方に売るということの
作業の方をしているのがむしろ中心になっているかと思います。
ただ、それでは個人が既発債市場に全く関与できていないかといいますと、実は変わった形におきまして、たとえば公
社債投信という投資信託があるわけでありますけれ
ども、あの投資信託では、既発債市場からある一定
限度を超しまして、しかも市場において有利なものを購入してそれを運用しておるということもございますので、間接的な形では個人にも既発債市場への参加をしていただいているということはあるわけでございます。
しかし、いずれにいたしましても、この問題も含めまして、いま
日本の公
社債市場のあり方を基本的にどう
考えたらいいかということを現在検討をしていただいているわけでありまして、いま月に二回くらいのペースで御
審議願っておりますので、この夏ごろまでには何とか中間的な報告でもいただけるかなと
考えているわけでございます。それが第一点でございます。
それから第二点の、担保付
社債であっても、今回の
措置によりまして枠を二倍に広げたことによって、デフォルト、つまり償還不能あるいは利子の支払いができなくなるということが起こり、投資者保護に欠けることがないかというお尋ねでありますけれ
ども、確かに御
指摘のように、山陽特殊製鋼の場合であっても、また最近の興人の場合でありましても、受託
銀行が中心となりまして
社債を買い取るという形で処理が行われていることは事実であります。それは別に法律上の義務はないのでありますけれ
ども、受託
銀行が非常によくやっておられて、投資者保護のために役に立っておることは事実でありますけれ
ども、同時に、それらの
社債は担保付
社債でありまして、受託
銀行がそれを買ったところで、たとえば
会社更生法手続の中での償還が可能になる。また手続的に見ましても、個々の債権者、
社債権者が多くおられるよりは、まとめておいた方が
会社更生手続等も便利であるというようなこともあるわけでございまして、今後もこの
限度が広がりましたところで、やはり担保付
社債ということをひとつ
条件にいたしておるわけでありますから、投資者保護においては欠けるところはないだろうというふうに
考えておるわけであります。
ただ、第一の問題と関連いたしまして、アメリカなんかの場合にはむしろ担保付
社債というのは例外でございます。そのために、投資者というのは、金利の高いものを選ぶときには逆にそれだけのリスクを負わなければいかぬわけでありまして、
日本の市場にリスク感覚がないということが逆に
一つの
問題点であることは事実でございます。たとえば、
日本の
社債は、AA格からB格の間に、四種類で、わずか〇・三%、つまり四種類の格の間が〇・一%の金利差しかないのでありますけれ
ども、
外国では二%、三%の差があるのは事実でありますし、その差を少なくとも投資者が選んで、金利が高いものはリスクがあり得るんだということで投資をするという形がむしろとられているわけであります。今後、いまのままでそういうリスクを直ちに導入していいかどうかというのは問題があろうかと思いますけれ
ども、
外国との比較においてはそういう
問題点があるということだけは私は申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。