○福田(一)国務大臣 御案内のように、選挙区では私が戒告決議を受けたということについて非常な関心を持っておりますから、どういうわけでどうなったかということでありますが、それは私は、法律の内容から見て、刑事訴訟法の本来の立法の趣旨から
考え、それからまたそのたてまえから言えば、秘密ということが非常に大事な問題であるということは御案内のとおりだと思うのです。それから、実際問題として人権を尊重するというたてまえも貫かれなければならない。そういうことでありますから、私が戒告を受けた決議の一番もとになったことは、今後はこういう種類のことば発言したくない、すなわち、灰色と言われるような人のことについては発言しないということを言ったのが問題の発端であったわけであります。でありますから、問題はそこに一番大きな論点があると見なければなりません。私は、そういう意味から言うと、議長裁定があったことと、それからロッキード
委員会の
理事会でもってこういうものの灰色の高官名は出した方がいいということがあったのでこれは出したのだけれ
ども、これからは私は出す
意思がないという意味のことを、そういう同じような手続がとられれば別でありますけれ
ども、それは出す必要はない、出すつもりはないのだ、こういうことを私は述べておったわけでありますが、
委員会において述べておったことはそういうことであったわけなんです。私は、これは法務大臣をしておって言う言葉としては余り——議員として私は言いたいことなんですけれ
どもね。議員の一人として言いたいことなんですけれ
ども、私は秘密会で出したというに至った
法務省の経緯を実は聞いておるのでありますけれ
ども、それはもうできるだけひとつ秘密に取り扱ってもらいたい、何となれば、これは確定した事実ではないのです。調べたことは調べました、調べたということは述べましたけれ
ども、これは罪であるという確定事実ではないのだから、その取り扱いは特に慎重にお願いをいたしたい、こういう気持ちであったわけですね。ところが、実際に
委員会で取り扱われた姿を見ると、そのまま直に発表されてしまっておるわけですね。そこで、きのうも二階堂先生も言われましたけれ
ども、大体これは秘密などというのは守れるはずがないじゃないか、秘密会などというのは、
国会においては、そういう秘密会というようなものは秘密が守れる形の秘密会になっていないのだ、こういう意味のことを二階堂君も言われたと思う。私も実はそう思っております。
それで、私はあのときに四時間半、ずいぶんいろいろ仰せになったけれ
ども、私は何もその大筋において、何といいますか、議長裁定があって、しかもロッキード
委員会においてこういうものは出すべきだということを
理事全員でもって認められたということであればこれは出さざるを得ないと思うけれ
ども、その後はそういうことがあり得ない、今後はあり得ないと私は思っておりましたし、それからまた、今後の問題としては、私はその席でもちょっと触れたのでありますが、アメリカがウオーターゲート
事件を処理するときに、ちゃんと秘密会の規程をつくって、秘密会をして、そして連邦
裁判所から資料の提供を受けて、そしてちゃんとそれを調べた上で、決定はいたしましたけれ
ども、その間の経緯は一切発表しないという形をとっておりますね。私は、日本の場合もひとつそういうようなものがあったらありがたいな、そうするというと個人の人権も守り得られるじゃないか、こういう
考えを持っておるわけであります。そういうことからいって、あのときには、いろいろ御質問で、私はそれなりの御答弁はしたつもりでありますけれ
ども、すべておしかりを受けたということに相なっておるので、私はその意味では、今後の
国会と行政府とのあり方についてやはり
一つのけじめというものをつけておく必要があるんじゃないか。あのときな
ども、大変おしかりを受けたのに、
国会のことについて行政府が発言するとは、
意見を言うとは何事だというようなおしかりもありました。しかし、いやしくも行政をやっておる者が私は
意見を述べて悪いということはないと思うんですね。それは
意見を述べることは、採用するしないはそれは
国会においてお決めになればいいし、また
国会で御
意見を述べられたことを行政府がやるかやらないかということも、これもまた政府の見識でやればいいのですから、
国会のやったことについて
意見を述べるのはけしからぬ、こういうような意味のことを言われたことについては、
委員長がやられたことだからそれについてはやむを得ないと思うということは私は言っておったけれ
ども、私は本当の気持ちは、そこが割り切れない気持ちがあったということは事実であります。私は、政府が
意見を述べてはいけない、たとえばどういうことにしても、立法府のやられることにしても
意見を述べることは、採用されるされないは別であるけれ
ども、それは
国会というものは
意見を述べ合う場所であるだろうと思うのです。だから言って
一つも差し支えないんじゃないか、こういう感じが私はいたしておる。その
国会のやったことについてけしからぬというようなことで大変おしかりを受けたことは、私には納得いかない。そういう本当に自分で割り切れてない面があるわけですからして、だから、私はこれからは一切言わないと言ったことについてはこれは間違っておったと思っておる。それだからおわびをしたわけです。いままでのように、ロッキード
委員会でこれだけは出すべきであるということが全会一致で決まれば、これは
国会の両院議長の裁定もあるわけですから、これは出すべきであろう。それを私が一切言わないというようなことを言ったことは、これは私が間違っておったからおわびをしなければいかぬ。その点はわびておりましたけれ
ども、その他のそういう経緯について、人権を尊重するというたてまえからいって、まだ確定しない事実を述べて
法務省が出したという場合においては、それがもうすぐに確定されたことのごとく報道されるような形になることは、私は決してこれからも人権を守るという意味では好ましいことではないと思っておるわけであります。この点はいまでもその
考え方は変わっておりません。
それからいま
一つ、私が
意見を述べたのはけしからぬというようなおしかりを受けたことは、実は非常に私は不満でありました。しかし、あの
状況下で、あなたお
考えをしていただいてもわかるように、ちょうど予算の編成の時期でもあったし、いろいろのこともある。私には一点、そういう絶対出さないと言ったところにおいて私は間違っておったと思っておる。そこだけはこれはおわびをせなければならぬと思うから、いろいろ言いたいことはあったけれ
ども言わなかったという気持ちがあったということでありまして、私は、そういう意味で、何もわかったようなわからないようなことを言うというふうにとれたかもしれません。というのは非常にむずかしいんですよね、あれを解釈すると。議長裁定といい、刑事訴訟法といい、立法の趣旨を踏まえてといい、そしてまたいろいろむずかしいことがあったということも事実だと思うのです。だから私は、そういう意味で一点だけ間違っておった、あれだけは言わない方がよかったんだなとは思いましたけれ
ども、しかし、あのことも、秘密会ということを言ったのに秘密会でなくてそのまま直に発表されておるということは、実は私は、余り素直な姿ではないんじゃないか。そうすると
委員長のやり方を非難することになりますから、だから私は触れなかったんだけれ
ども、心の内にはそういうものがあったということだけは事実なんであります。たとえば資料が出たけれ
ども、それならばその
本人を呼んで、本当にどういうことだったんだ、君、どうなんだということをまず聞いてから、それからこれを発表すべきものだ。いやそれはやはりいかぬ、そういう裁定を下されたのならば、それは非公開でなかったとしても余り文句を言うべきじゃなかったと思うけれ
ども、出てしまった後の次の日になって
意見を述べさせたのたからそれでいいじゃないかというところにも、私はいかがかなという感じがあるわけであります。これは私の率直な気持ちであります。