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1977-05-10 第80回国会 衆議院 法務委員会 第14号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
五十二年五月十日(火曜日) 午前十時十二分
開議
出席委員
委員長
上村千一郎
君
理事
羽田野忠文
君
理事
濱野 清吾君
理事
山崎武三郎
君
理事
稲葉 誠一君
理事
横山
利秋
君
理事
沖本 泰幸君 木村 武雄君 坂田
道太
君 篠田
弘作
君
田中伊
三次君 福永 健司君 島本 虎三君 西宮 弘君 飯田 忠雄君
長谷雄幸久
君 正森 成二君 加地 和君 鳩山 邦夫君
委員外
の
出席者
参 考 人 (
東京大学教
授) 鴻
常夫
君 参 考 人 (
日本公認会計
士協会会長
)
宮坂
保清
君
法務委員会調査
室長
家弓
吉己君
—————————————
四月三十日 土地・建物の
更新料禁止
に関する
請願
(
小林政
子君
紹介
)(第四〇三四号) 同(
不破哲三
君
紹介
)(第四〇三五号) 同(
松本善明
君
紹介
)(第四〇三六号) 五月六日
法務局
、
保護観察官署
及び
入国管理官署職員
の
増員等
に関する
請願
(
柴田睦夫
君
紹介
)(第四 六四七号) 同(
田中美智子
君
紹介
)(第四六四八号) 同(
正森成
二君
紹介
)(第四六四九号) 同月九日
法務局
、
保護観察官署
及び
入国管理官署職員
の
増員等
に関する
請願
(
米田東吾
君
紹介
)(第四 七二〇号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
社債発行限度暫定措置法案
(
内閣提出
第四五 号)(
参議院送付
) ————◇—————
上村千一郎
1
○
上村委員長
これより
会議
を開きます。
社債発行限度暫定措置法案
を議題といたします。 本日は、
本案審査
のため、
参考人
として、
東京大学教授鴻常夫
君及び
日本公認会計士協会会長宮坂保清
君の両名に御
出席
を願っております。 この際、
参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人
には、御多用の中を本
委員会
に御
出席
いただきまして、まことにありがとうございます。 当
委員会
におきましては、
本案
について熱心な
審査
を行っているのでありますが、本日は、特に深い御見識を有せられる両
参考人
から忌憚のない御
意見
を承り、もって本
委員会
の
審査
の
参考
にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。 なお、初めに
鴻参考人
から十五分程度御
意見
をお述べいただき、その後に両
参考人
に対し
委員
から
質疑
がありますので、さよう御了承をお願い申し上げます。 それでは、まず、
鴻参考人
にお願い申し上げます。
鴻常夫
2
○
鴻参考人
鴻でございます。 この
委員会
で御
審議
になっておられる
社債発行限度暫定措置法案
について、私は、
参考人
として、
最初
に
意見
をまとめて申し述べます。 この
法案
は、その
提案理由
にありますように、「最近の
経済状況
にかんがみ、
株式会社
の
長期安定資金
の
調達
を容易にするため、」この時期に、
社債
の
発行限度
を引き上げる
措置
を講じようとするものであります。また、
提案理由説明
の方にもありますように、「
社債権者
の
保護
を図りつつ、
社債
の
発行限度
を拡大する」
措置
を講じようとするものでありまして、この
法案
は、
社債
の
発行限度
の
法規制
としましては、
現行商法
よりも格段に合理的であると認められますので、私は、この
法案
に基本的に賛成であることを初めに明らかにしておきたいと存じます。この方が、これから私が申し述べますところを御理解いただくためにも便宜ではないかというふうに思われるからであります。 御高承のように、
現行
の
商法
二百九十七条は、
一般
の
株式会社
について、
社債
は、その
資本
及び
準備金
の
総額
または最終の
貸借対照表
によって
会社
に現存する
純資産額
のいずれか少ない方の額を超えては募集することができないというふうに
規定
しております。そして、この
規定
は、明治三十二年に制定された
現行商法典
の起草に当たりまして、
ベルギー法
、
イタリー法
あるいは
ポルトガル法
の例にならったものだというふうにされておりますが、その
趣旨
は、
会社債権者
、ことに
社債権者
、それも特に、すでに
発行
されておる
社債
の
所持人
の
利益
の
保護
のためには、
会社
に現存する
資力
以上に
巨額
の
固定債務
を負担するのを抑制する必要があるというふうに考えられたものであります。しかし、
現行商法
の定める
社債
の
発行限度
は、多分に形式的でありまして、行き過ぎであるという批判が早くからなされてきております。それはどういうことかと申しますと、
社債
の
発行限度
を
資本
及び
準備金
の
総額
で
制限
したのでは、
企業
の
担保価値
を
最小限度
にしか利用することができないからであります。
会社
に現存する
資力
以上に
巨額
の
固定債務
を負担するのを抑制するというのならば、
社債権者
の
担保
となるべき
会社財産
なしに
社債
を
発行
することを
制限
すればいいわけでありまして、そのためには、
社債
の
発行限度
として
会社
の
純資産額
の方のみを
基準
とすることで十分とも言えるわけであります。現にその
趣旨
の
提案
が学者によってなされております。しかし、翻ってよく考えてみますと、果たして
社債
の
発行限度
を
資本
及び
準備金
の
総額
や
純資産額
の
範囲
に限るということが絶対に必要なことなのかということがそもそも問題であります。
現行商法
の二百九十七条のような
立法
は、
外国
の
立法例
としましては、いずれも、古い
立法
か、新しい
立法
でも、それを引き継いだだけの
立法
にのみ見られるところでありまして、この種の新しい
立法
は、その例が全く見られないところであります。現時では、
先進国
の中ではわずかに
イタリー
の
法律
があるだけという
状況
でございます。のみならず、
社債
の
発行限度
を
現行商法
の
規定
のように法定すれば、それだけしておけばそれで
社債権者
の
保護
として確実かといいますと、決してそうではないのであります。この
制限
は、
社債
の
発行
の際の
制限
にすぎません。
社債
を
発行
した後まではこの
制限
は及ばないという、きわめて不徹底なものなのであります。さらに、そればかりではなく、
商法
二百九十七条の定める
発行限度
内で
社債
を
発行
している
会社
が、その後に
金融機関等
から個別的な
借り入れ
をすることによりまして、どんなに多額の
債務
を負担することも
商法
上はその
会社
の自由でありますし、また、その
会社
が他の
会社
の
債務
を保証するといったことも
法律
上は全く自由というわけですから、結局、
現行商法
の定める
社債
の
発行限度
というものは、
社債権者
の
保護
としては、
規定
の表面から受け取れるほどには実質的なものではないということになるわけであります。過度な
起債
に対する歯どめとしまして
担保面
の
制約
というものと
ディスクロージャー
、
開示制度
の
強化
によって行うのが望ましいということを
経済界
でも言っておりますが、この
意見
は、いま申しました限りでは、
ポイント
をつかんでいると言ってよいのでありましょう。
社債
の
発行限度
の拡大を認めるべきかどうかという
法律論
の
ポイント
は、私の考えますところ、
社債投資家
の実質的な
保護
になる
担保面
の
制約
と
ディスクロージャー
の
強化
をいかに保障し、これを実現し得るかということにかかっていると言えるわけであります。これらの点の
裏づけ
となる
手当て
があるならば、
社債
の
発行限度
それ自体は、
欧米先進国
と同様に、これを法定しないという
立場
に切りかえてもよいはずのものと考えられるのであります。 以上が、
暫定措置
にもせよ、私が
社債
の
発行限度
を拡大しようとするこの
法案
に基本的に賛成する理論的な基礎であります。 次に、この
法案
が、
担保付社債
、
転換社債
及び
外国
で募集する
社債
に限って、
商法
二百九十七条の定める
限度額
の二倍の
範囲
内まで
発行
できることにし、しかも、同条の
制限
を超えて
発行
される
担保付社債
を公募するに当たりましては、その
社債券
の募集または売り出しについて、
証券取引法
の本則であります
大蔵大臣
への
届け出
を義務づけ、
社債発行会社
の
内容
を公示させることにしているわけでありますから、実質的に見ても、
先ほど
申し上げました
担保面
の
制約
と
ディスクロージャー
の
強化
という両方の面で、
社債権者
の
保護
の点について、いやが上にも慎重な配慮を加えていると言えると存じます。 以上の点から見ても、この
法案
は、実際的見地からいっても、
社債権者
の
保護
の面で、
社債
の
発行限度
を拡大するに当たっての
裏づけ
となる
手当て
としては、十分に念の入った
法規制
となっていると考えられるわけであります。この点が私がこの
法案
に基本的に賛成すると申しました実際的な
理由
であります。 以上で、この
法案
に対する私の基本的な考えを申し述べましたが、ところで、この
法案
は
社債発行限度暫定措置法案
という名称になっており、第一条の
規定
の中に「当分の間」という文句が入っております。この
法案
の
内容
が
暫定措置
となっておりますのは、
提案理由説明
にもありますように、
法制審議会
における
会社法
の
全面改正
についての今後の
審議
の結果、
商法青
九十七条の
規定
の
改正
が予想されるからでありまして、その
意味
で、
会社法
の
全面改正
の実現までの間の
暫定
という
趣旨
を示すものでありますが、同時に、
会社法
の
全面改正
を待てない
緊急性
がある
改正
であるということが内包されており、また、
社債
の
発行限度
についての根本の
考え方
の相違が人によってあるにもかかわらず、
緊急改正
の必要があるという認識では一致したがゆえの妥協的な
内容
のものでもあるという
趣旨
が込められているものとも見ることができるように思います。この点におきましても、この
法案
は、急激な切りかえを避けた慎重な
立法
と評することができるわけでありまして、私は、この
法案
の
内容
が
暫定措置
であるという点にも賛成いたしたいというふうに存ずるわけでございます。 この
法案
は、わずかに四カ条でありますが、これが
法律
として成立し施行されることによりまして、
企業
の
長期安定資金
の
調達
が円滑になり、
企業
の
設備投資
の
活発化
につながり、ひいては
企業
の
財務内容
の
改善
、景気の浮揚及び雇用の安定をもたらす
一つ
の重要な支柱となるものと考えております。また、そうなってくれることを私は強く期待しているわけでございます。 大変簡単でありますけれ
ども
、以上をもって、この
法案
に対する私の
意見
の陳述を終わります。
参考人
としての
意見
を述べる
機会
を与えられましたことを、
委員長
初め
委員
の皆様に感謝いたします。どうもありがとうございました。(拍手)
上村千一郎
3
○
上村委員長
これにて
参考人
の
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
上村千一郎
4
○
上村委員長
これより
参考人
に対する
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
横山利秋
君。
横山利秋
5
○
横山委員
ただいまの
お話
、短い時間ではございますが、まことにごもっともな
お話
だと思います。要するに、前段として、鴻さんが
資本
及び
準備金
の
総額
で
制限
をするよりも、
会社
の
純資産額
を
基準
とすることが妥当ではないか。あるいはまた、
発行
した後
借り入れ
をしたり保証をしたりしたのでは何にもならぬではないか、何のための
基準
だ。こういう
趣旨
の
お話
がございました。まことに妥当な
指摘
だと私も思います。 しかし、いまの
二つ
の御
指摘
は、今度の
改正法
をもってしては基本的な
改善
はできない。
担保つき
で
発行
した
社債
それ
自身
については
担保
がついているからいいようなものの、それ以前に
発行
されております
既発行
の
社債権者
に対しては、むしろ
担保
を取られるから
マイナス要因
になる、こういう結果を招来すると思われ、
お話
は、むしろ、その
担保付社債
以前の
既発行
の現状及び欠陥がこの
法案
でますます
マイナス要因
となって、御
指摘
がかえって悪くなる、御
指摘
がますます鋭くなる、こういうことになるのではございますまいか。この点についてまず御
意見
を伺いたいと思います。
鴻常夫
6
○
鴻参考人
横山
さんの御
質問
に
お答え
をいたします。 今度の
法案
にありますような形で、
担保付社債等
を
現行
の
商法
二百九十七条の
限度
を超えて
発行
するような場合には、
既発行
の無
担保
の
社債権者
といいましょうか、あるいはさらに考えていけば広く
会社
の
債権者
全部、そういうことになるかと思いますが、そういうものに対する
関係
で、より不利にといいますか、一層悪い
経済的条件
に置くことになるのではないかという点の問題の御
指摘
であったかというふうに思いますが、これは純理論的に考えまして、
横山
さんの御
指摘
になった点は確かにあるのではないかと思います。しかし私は、
最初
の
一般
的な
意見
の中でも申し上げましたように、またいま
横山
さんの御
質問
の中にも出ておりましたように、これは
企業
あるいは
株式会社
が、
社債
の
発行
の
方法
によって
資金
を
調達
するか、その他の
方法
による
資金
の
調達
、
先ほど
も言及いたしました
金融機関等
による
借り入れ
、これは最近といいますか
大口融資規制等
もありまして、そういう面の
制約
もあるかと思いますけれ
ども
、
資金調達
の
方法
のいかんによって結果が違うという問題ではないかと思います。 また、
横山
さんの御
指摘
にあった点が、特に
既発行
の無
担保
の
社債権者
の
立場
からいってどうかという点に重点があるといたしますと、これも無
担保
の
社債
というものが今日非常に多く出ておれば、御
指摘
の点は非常に重要な問題になってくるかと思いますけれ
ども
、
現実
の問題としてはそういう例はそう多くないといいますか、例外的な場合であるというふうに考えられるのではないかと思います。 私は、この二百九十七条が、制定当時、今度の
暫定措置法案
に見られるように、これから
発行
する
社債
について
担保面
で
制約
をつけるとか
ディスクロージャー
を
強化
するというこれだけで二百九十七条の問題が全部解決するという、そういう
立法趣旨
でできた
規定
だとは考えておりません。しかし、
先ほど
の
一般的意見
の中でも申しましたように、
既発行
の
社債権者
の
保護
を考える場合にも、二百九十七条のように、
社債
の
発行限度
を
法律
で
制限
するという形で
制約
するのが、
商法
の
規制
として
一般
的に合理的なものであろうかどうかという点に問題があるのではないかというふうに考えておりまして、そういう
意味
で、今度の
暫定措置法案
の行き方というものには賛成していいのではないかということを申し上げたわけでございます。したがいまして、
横山
さんの御
指摘
の点は、私は、全く問題がない、理論的に考えて問題がないということはないと思いますけれ
ども
、実際的にはそう不都合はないのではないかというのが私の理解でございます。
横山利秋
7
○
横山委員
私も
指摘
し、かつ鴻さんが
指摘
した
既発行
の
社債権者
に実際的には被害がそうないという点については、恐らく
意見
が一致すると思います。ただ、しかし、理論的にはおかしい。理論的には、あなたが御
指摘
をくださったように、
資本
及び
準備金
の
総額
の
制限
、
純資産額
の
制限
、そういう
制限
をして
社債
の
発行
を認める
現行法
、その
現行法
は
会社
に現存する
資力
以上に
巨額
の
固定債務
を負担することを抑制する、私はそのとおりだと思うのでありますが、そういう
制限規定
を置いておいて、
発行
したら後はどんなに借金してもいいよ、保証してもいいよという、
現行法
の理論的な
矛盾
を鴻さんは鋭く
指摘
された。あなたの論文を拝見いたしましても、そういう感じがするわけです。しかし、実際的被害が仮に少ないとしても、それはおかしい。なるほどそうだと私も思ったわけであります。なるほどそうだと思っておるところへ、その
限度額
の中にある
担保
を
担保
として
担保付社債
を
発行
するとなれば、いまある
現行法
の
論理矛盾
をますます深めることになるのではないか、こういう判断をせざるを得ないのであります。そこを、そういうことについてでなくて、それらのことを含めて、過度の
社債起債
の歯どめをどこに求めるかという点について、いま
お話
によれば、
担保面
の
制約
、
ディスクロージャー
の
強化
というところに
お話
があったように思いますが、そこのところはどうも理論的にふっ切れないものを感ずるわけでありますが、重ねて御教示を願いたいと思います。
鴻常夫
8
○
鴻参考人
横山
さんの重ねての御
質問
でございますので、重ねて
お答え
をすることになるわけでございますが、
横山
さんの
質問
の
ポイント
は、
先ほど
御
指摘
のありました点、すなわち
現行法
の
矛盾
を今度の
暫定措置法
がさらに深めるのではないかというところに一番
ポイント
があるように承ったわけでございます。私が申しましたことが、
社債
の
発行限度
を、
既発行
の
社債権者
を特に考えまして、その
利益
を守るために
資本
及び
準備金
の
総額
なりあるいは
純資産額
というもので抑えておるというのが
現行法
の
立場
でございますけれ
ども
、今度の
暫定措置法案
のように、これを含めて何らかの
意味
でこれを拡大する、あるいは徹底すれば撤廃するということを考えましたときに、それは
法律
のそういう
意味
の厳格な
規制
を外したままですべて問題がないという
趣旨
にもし受け取られたとしたら、私の言葉が足らなかったわけでありまして、
先ほど社債権者保護
のための
裏づけ
としての
手当て
として
担保面
の
制約
と
ディスクロージャー
の
強化
ということを申しましたが、
担保
の問題は、
社債権者保護
のために万一の際に備えて
担保
をつけなければならないような
会社
は当然
社債
の
発行
に当たって
担保
をつけるべきである、しかしまた、十分な
担保
があるにもかかわらず、法定の
社債発行限度
というものがあること、そのことによって合理的な
企業
の
資金調達
が
制約
されるというようなことになるということは、果たして
商法
が
社債
の
発行
を含めまして
社債
に関する
法規制
をするに当たって合理的な
規制
の仕方と言えるのだろうかというふうに考えているわけでございます。 しかし、この
担保
の面を、しからばどういう場合にはそれをつける必要があるかとか、あるいはつけなければ
社債
の
発行
というものが健全とは言えないかという点を判断するのは、
経済界
、とりわけ
担保
の面については、
日本
の
社債制度
の発達の初期から今日に至るまで
担保
の問題についての豊富な経験を持っている
受託銀行
というものの妥当な
運用
を同時に考えなければ、問題が残るだろうというふうに私は考えております。その
意味
におきまして、
横山先生
の御
指摘
は、いま
担保
の面についてだけ申しておりますけれ
ども
、
現行法
の
矛盾
を深めるという点は、そういう実際面における
運用
の面においてより厳しいものが要求されるということは当然に出てくることではないか。それなくしては、
横山先生
の御
指摘
になったような点というものの
問題性
というものが全くないとは言えないと私考えておるわけでございます。それからまた、
ディスクロージャー
の
強化
の点につきましても、本来、こういう
社債
といったようなものは、
株式
あるいは中間的な
転換社債
というものがございますけれ
ども
、そういうものを通じた
投資対象
となっている
証券
でございまして、こういうものにつきましては、今日
証券取引法
が
一般
的に
証券発行
の
届け出制度
というものをとっておりますので、
担保付社債
について、
証券取引法
が、
昭和
二十八年の
改正
でしたか、当分の間これを適用しないとしている点
自身
、これは
一般
的に再
検討
してみる
——結論
がどうなるかはまた
検討
の結果といたしまして、そういう点は
検討
の余地ある問題として残っていることかと思います。そこで、
暫定措置法案
が、一口に言えば、
社債
の
発行限度
を二倍にする
機会
に、そういう点の再
検討
もあわせてするという
いき方
も考えられないことではなかったかと思いますけれ
ども
、そういう点を
検討
すれば、
先ほど
申しましたこの
暫定措置法案
の目的とする緊急的な
改正
であるという点と抵触をしてくることもあるということで、そういう点は今後の
検討
に残したのではないかと思います。
横山
さんの御
指摘
は、
既発行
の
社債権者
の
保護
ということになりますと、
既発行
の
社債
それ
自身
の
発行
に当たって、今後
発行
される
社債
について、本来は、いま
横山
さん初め私
ども
が
検討
しているような点を十分
検討
した上で
発行
するということが理論的に考えますとあってしかるべきことかと思います。しかし、
現実
にそういう点は十分に
検討
がなされないで、いわばイージーゴーイングな
社債
の
発行
がかつてなされておったという前提に立ちますと、あるいは
横山
さんの御
指摘
になった点は確かに現在でも問題としてあるだろうということになるかと思います。しかし、私の考えておりますところは、
商法
の
社債
に関する
保護
の
規制
のやり方としましては、今度の
暫定措置法案
が言っているような、
社債
の
発行限度
は必ずしも
資本
及び
準備金
の
総額
または
純資産額
には限定しない、過度な
社債
の乱発といったようなことは別の
手当て
で
社債発行
の妥当を期するという
いき方
の方が、法の
規制
としては合理的なのではないかという基本的な
考え方
の上に立って、
意見
を申し上げたということでございます。
横山利秋
9
○
横山委員
恐縮ですが、私に与えられております時間が大変少ないものですから、連続してもう
二つ
だけ御
意見
を伺って終わりたいと思います。
一つ
は、この
法案
の根幹をなす問題として、
自己資本
と
他人資本
の問題でございます。本
委員会
、
大蔵委員会
あるいは
商工委員会
、ここ数年来、
わが国
の
自己資本
と
他人資本
については、カラスの鳴かぬ日があってもその話が出ない日はないと言われるほどに議論がされておるわけでありますが、そこで、与野党を通じ、また
政府
を通じ、常に一致いたしておりますのは、
自己資本
が
わが国
は少な過ぎるということであります。もう鴻さんは十分その点は御存じでございますから、数字をあえて申しません。その
自己資本
を充実しろと
政府
も与党も野党も
わが国企業
に苦言を呈しておる段階です。そのときにこの
法案
が出て、要するに、
銀行
から借りると金利が高い、それから
増資
をするとまためんどうくさいし銭もかかる、
社債
が一番安上がりだ、そしてこれは準
自己資本
であって
自己資本
に準ずるのだ、こういう
論理
が通俗的にまかり通っておる理論です。
現実
もそうだと私は思います。けれ
ども
、そのことが、いかにこれが準
自己資本
だと言ったところで、しかし
借り入れ
には間違いない、そして
担保付社債
へ走ることによって
増資
がかえって誘導されるのか、それとも抑制される結果になるのかと言えば、私は、
増資
よりも
担保付社債
の道ができたのだからネコもしゃくしもそれをやることは決まっているではないか、だからわれわれが言っておることと逆行するではないかというのが第一の私
ども
の疑問でございます。 それから第二番目の
質問
をこの
機会
にしておきたいと思いますが、
中小企業
の問題でございます。ちょっとこの
法案
から外れますけれ
ども
、これは
中小企業
には、この間、縁もゆかりもないと言ったら、いやそうじゃないのだ、
中小企業
でも
担保付社債
を
発行
しています。
縁故社債
でやっていますと言うのですが、それとは多少違うのですが、この
機会
に御
意見
を伺っておきたいのでありますが、要するに、
弱小会社
が、厳格な
株式会社法
の
規定
を遵守するにたえず、いわゆる見せ金の
株金払い込み
によって
会社
を設立する。いわゆる
名義株主
をつくって一人
会社
の実をおさめる。三番目に、株券を
発行
しないで
株式
を転々譲渡せしめる。
四つ目
に、
株主総会
を開かないでこれを開いたように偽装する。結局は、本来その資格がない
中小企業
が
株式会社
の名に幻惑されて形態をとるにほかならない。
社会的信用
がある、
税金対策
が調子がいいということで、
わが国
ほど
株式会社
の多いところはありません。この点についても、
結論
として
二つ
の
方法
がある。
法規
を守らざるを得ないような
措置
をとるという
方法
がある。逆に、緩和して遵守可能なようにする。
二つ
の
方法
があると思うのです。
会社法
は、
先ほどお話し
になりましたように、これからいよいよ
審議
が軌道に乗っていくわけでありますが、そういうところで
中小企業
の
株式会社
は一体どうあるべきかという点について御
意見
を伺いたい。以上、二点です。
鴻常夫
10
○
鴻参考人
御
質問
の点は二点で、第一の点は、まさにこの
暫定措置法案
の問題と
関係
して、あとは
一般
的な御
質問
かと思います。 第一の、
自己資本
と
他人資本
との
関係
、特に、今日強く叫ばれ望まれておる
自己資本充実
ということにとって、今度の
暫定措置法案
というものが望まれる
増資
を抑制する心配はないかという点でございます。私は、この
資金調達
に当たりまして、どれだけの条件があるときには
資本
増加あるいは新株
発行
の
方法
によらないで
社債
を
発行
するのか、
発行
する側の
企業
にとってメリットがあってそちらの方を選ぶのか、あるいはまた逆の条件とはどういうものかということにつきまして、そういう
意味
でのコーポレーションファイナンス、そういう
会社
金融と申しますか、財務的な面のことについては、専門の
関係
でつまびらかにいたしませんが、やはり
社債
の利率とか
株式
に対する配当率、
一般
金融機関の金利水準といったようなものの
関係
のいかんによっては、これはまた理論的には
横山
さんの御
指摘
になるような点が絶対にないとは私申し上げられないかと思います。しかし、
社債
の
発行限度
をこの
法案
のように二倍まで
暫定
的に上げるということが、ストレートに
自己資本
の充実あるいは望まれる
増資
をいたずらに
制約
することになるという問題ではないのではないか。また、
自己資本
の充実のやり方というものもいろいろ考えられることかと思いますが、現在は
転換社債
みたいなものもやはり
社債
の
発行限度
で
制約
をされるということでありまして、将来の
自己資本
の充実というものを現在
転換社債
でやるという場合にも
社債
の
発行限度
の
制約
というものがかぶってくるという点だけは、少なくとも、今度の
暫定措置法案
は若干でもそこを
自己資本充実
の方の道もひとつつくっているという面もあるかと思います。 御
質問
の第一点に対する私の理解といたしましては、ある経済的な条件というものを与えましたときに、
横山
さんの御
指摘
のような点、心配というものが絶無だとは考えておりませんが、
一般
的に今度の
暫定措置法案
が
自己資本充実
の妨げになるとか、望まれる
増資
を抑制するということには必ずしもならないのではなかろうかというふうに考えております。 それから第二点の、
中小企業
の
会社
形態というものをどういうふうに持っていくべきかという点は、今日の
会社法
の現代的課題の最大のものと言ってもいいんじゃないかと思います。これだけということではございませんけれ
ども
。そうして、厳格な
法規制
をしている
株式会社法
はとても守れない、あるいは守るにはある程度知ってなければいかぬわけでありますが、そういう点についての十分な知識もない、そういう人々によって
株式会社
形態というものも利用されているということも
現実
かと思います。
法律
の制度としましては、
横山
さんも
質問
の中で御
指摘
になりましたように、やはり
中小企業
にとって、ある
意味
では大
企業
と同じような恩典というものを与えつつ法の
規制
は緩和する、しかし緩和した限りにおいては必ず守ってもらうというような
会社
形態というものを、
会社法
の制度の中で、
商法
の
規定
として用意しておくということが一番望ましいことではないかというふうに私は考えております。
株式会社
形態をとる限りにおいては、それを守らなければそういうものの存立を認めないということを幾ら
中小企業
に言いましても、すでに現在数十万というその種の
中小企業
の
株式会社
が存在しているときに、これは実効性という点から言っても問題があるのではないかと思います。そういう点で、現在
法制審議会
商法
部会において、
会社法
の
全面改正
の中で、将来の
株式会社
の
法規制
としまして、大
会社
ないし公開
会社
というものの
規制
を整備するとともに、
中小企業
に合ったそういう
会社法
というものがどういうものであるかというものを、同時に今度の
会社法
の
全面改正
の中で解決しようということで
審議
をしているわけでございますけれ
ども
、これもなかなか問題点が多くて、全体の
検討
を終えるにはかなりの期間を要するということかと思いますけれ
ども
、到達点といいますか目標といたしましては、
横山
さんが
先ほど
挙げられた
二つ
のやり方のうちでは、後の方向でこの問題を解決すべきものなのではないかというふうに私は考えております。
横山利秋
11
○
横山委員
ありがとうございました。
上村千一郎
12
○
上村委員長
次に、長谷雄
委員
。
長谷雄幸久
13
○長谷雄
委員
本日は御苦労さまでございます。私は与えられた時間が短いものですから、二、三しか
質問
できないと思いますが、初めにお尋ねしたいのは、
株式会社
が物的
会社
の典型として株主及び
会社債権者
の
保護
という点から、
会社財産
の確保、充実、これが最大の問題であるということは
商法
学者がひとしく
指摘
するところであります。したがって、
資本
調達
の
方法
としても、
他人資本
によらずに
自己資本
によるべきである、これは
株式会社法
の定理でもあるわけでございます。先生が書かれている書物にもそのように御
指摘
がございますが、
他人資本
というのは、いずれにしても、
担保
の有無あるいは返済期限の長短にかかわらず、必ず返済しなくてはならないということがはっきりしているわけでございます。そうしますと、この今回の
法案
は、
商法
学者の通説でもあり、しかも
先ほど
申し上げましたように
株式会社法
の公理、定理とでも言えるようなこうした
資本
充実の原則から見て、著しくもとるものではないか、こう考えるわけですけれ
ども
、その辺は
商法
学者としての
参考人
の御
意見
は、どのようにお考えでございますか。
鴻常夫
14
○
鴻参考人
長谷雄さんの御
質問
の点は、
商法
の基本的な原則が
資本
の充実ということを言っているときに、こういう形で
社債発行限度
を拡大する、
発行
の枠を広げるということが、そういう
他人資本
の量がふえるということが
商法
の基本的な
考え方
と
矛盾
をするあるいはもとるということになるのではないかという御
質問
、御
指摘
だったかと思います。しかし、
商法
の方の
資本
の充実という点は、
先ほど
横山
さんの御
質問
の中に関連して出てまいりました
自己資本
の充実という
意味
での
資本
充実というのとは、どちらかと言うと、それは経済的な
意味
での
資本
の充実であり、
商法
の原則としておる
資本
の充実というのは、
資本
が何によって構成されるかという点について
商法
に細かい
規定
がございますけれ
ども
、基本的には、投資家である株主の払込金というもの、これは
会社
が
最小限度
保有しなければいけない。これは
会社債権者
にとっては、いざというときの唯一の
担保
財産でもあるということで、これをみだりに減らしてはならないという
趣旨
のことでありまして、それを超える
他人資本
というものを持つことが、
商法
の原則、基本的な
考え方
というものに
矛盾
するとかもとるということは
法律
的にはないのではないか。
自己資本
の充実ということは、私も今日の
日本
の
株式会社
においてはきわめて喫緊の要請であるというふうに考えておりますが、
他人資本
というものを
資本
及び
準備金
の
総額
、あるいは純資産と言ってもいいですけれ
ども
、そういうものに必然的に限定しなければならないという問題には必ずしもならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
長谷雄幸久
15
○長谷雄
委員
全く逆なことをお尋ねしますが、今回は
社債発行限度
の
制限
を緩和して倍にしようということでございますが、もし仮にこの
社債
限度
の
制限
を撤廃するとした場合、
社債権者
の
保護
、あるいは
社債権者
に与える影響、あるいは
発行
市場、流通市場、そうしたものに与える影響というものは、私はかなりあるのではないかと思うのです。そうした場合に、果たしてそうした問題が円滑に処理されるかどうか、またそれを受け入れるだけの周辺の諸制度というものが整備されていると考えておられるかどうか、その辺をお伺いいたします。
鴻常夫
16
○
鴻参考人
今度の
暫定措置法案
は、
先ほど
もちょっと妥協的な
内容
のものであるというふうに申し上げたわけでございますが、いまの長谷雄さんの御
質問
の、もし
社債
の
発行限度
に関する
商法
の
規定
を完全に廃止して、こういう
現行
のような制度を完全に撤廃したときにどうなるかという点になりますと、私は、やはり切りかえに当たってはいろいろな問題が出てくるだろうというふうに思います。 また、単にそういう切りかえ時だけでなしに、
先ほど
も
一般
的な
意見
の陳述の中で申しましたように、あるいはそれを補足した
先ほど
の
お答え
の中で申し上げましたように、この
社債
の
発行
というものを実際に
運用
する
企業
の側あるいは
受託銀行
の側あるいは引受
証券
会社
の側というものにおきまして、
社債権者
の
保護
というものを十分に考えた対処の仕方というものが要求されざるを得ないのではないか。また、それは単に
関係
者がそういう点を配慮し努力するということではなしに、そういう
運用
を可能ならしめるあるいは保証するような、そういう
商法
の周辺のといいますか、関連した法令の整備というものも必要になってくるのではないかというふうに思うわけでございます。 そういう点で、長谷雄さんの御
質問
にありましたように、二百九十七条の
規定
の完全撤廃をしただけということを前提にして事を考えるといたしますと、いろいろ問題が出てくる。それは切りかえに当たって当然予想されますし、単に切りかえ時だけでなしに、
一般
的な制度の
運用
としても多多問題があるかと思いますけれ
ども
、もし二百九十七条の
規定
というものを、私の基本的な
立場
は撤廃するということも将来の方向として考えていいのではないかというふうに考えておりますけれ
ども
、そういうことを具体的な形で問題にしようとするときには、十分にそのことから出てくるような影響というものに対する配慮というものを、あるいは法令の上での
手当て
というものも必要になってくるかと思います。 この点では、やはり
企業
の
発行
する
社債
というものが、
企業
の
財務内容
あるいは将来の見通し、これは経済全般の動向とも
関係
するかと思いますけれ
ども
、そういう点について的確にその
証券
のいわば価値というものを判断し評価できるような専門家の発達、今日それは
受託銀行
や引受
証券
会社
に多くを負っているわけでありますけれ
ども
、さらにそれ以上に、
発行
される
証券
そのものの価値というものの的確な分析というものができるような専門家というものが多く出てくることということが望まれ、期待されるということもあるのではないかというふうに考えております。
長谷雄幸久
17
○長谷雄
委員
先ほど
の
一般
的な
意見
の陳述の中でも
お話
がありましたが、
社債発行
について
限度
を設けている
立法例
は古い
立法例
である、新しい
立法例
では、
先進国
ではまれである、こういう御
指摘
がございましたが、いまの御説明を伺っておりますと、
発行限度
それ自体を撤廃した場合に、その切りかえ時だけでなくてその後にもいろんな問題が予測される、こういうことでございますが、そうしますと、
外国
のそうした
立法例
、つまり
制限
を撤廃している
立法例
にはそれなりの
裏づけ
というものが当然あるわけでございます。そうしますと、現在この
法案
で
限度
を二倍にするという問題でございますが、そのときに当たって、
担保つき
あるいは外債の問題、そうしたいろいろな
手当て
があるようでございますが、これで果たして十分かどうかということがいまやはり
一つ
の論議になるわけでございます。その点については、私
ども
も完全に十分であるというぐあいには考えていないわけでございますが、その点について御
意見
はいかがでございましょうか。
鴻常夫
18
○
鴻参考人
この
立法例
についての言及がいま御
質問
の中であったわけでございますけれ
ども
、
社債
の
発行限度
というものを
商法
やそれに当たるような
法律
でもって決めていない、まあ先進諸国の大部分はそうでございますけれ
ども
、その際に、それから出てくる
社債権者保護
のための
手当て
をどうしておるかということについては、
外国
のやり方は必ずしも一様ではないと言えるのではないかと思います。特に、現在の
日本
の
商法
が、
先ほど
この
規定
は、ベルギーとかイタリア、ポルトガルというようなことを申しましたが、全体としまして一口に大陸法系の
立法
でありまして、そうして特に戦前はそうであったということが言えるのじゃないかと思いますけれ
ども
、ドイツ、フランス等におきましては、この
社債
の
発行
について、それが
社債権者
の
保護
を害さないという
意味
においては、
銀行
が大きな役割りをしているのではないかというふうに考えております。これに対してアメリカは、御承知のように、
証券
取引の面での
規制
というものがきわめて厳格でありますけれ
ども
、同時に、実際の
運用
に当たるアンダーライターの
立場
にある
証券
会社
というものの
社債権者保護
への取り組み方というものも、ちょうど大陸法系の諸国における
銀行
に匹敵するような役割りを果たしているのではないかというふうに思うわけでございます。それで十分でないということになりますと、かなり
巨額
な
社債
の
発行
については、すべて国のといいましょうか行政庁のコントロールに服さしめるという
考え方
になっていくかと思いますけれ
ども
、一定の
範囲
でドイツ、フランス等はそういうことも決めておりますけれ
ども
、
社債
の
発行
はすべてそうだということではなしに、かなりの額のことを考えているわけであります。 そういう
意味
におきまして、現在、
日本
において
社債
の
発行限度
を二倍にしたというときに、そういう点で不安はないのかという点は、当然
検討
しなければならない問題であるという点は、長谷雄
委員
の御
指摘
のとおりかと思うわけでございます。そういう点は、私も
法制審議会
の
商法
部会に
委員
として加わっておりまして、そこでの
審議
の過程におきましては、ほかの
委員
とともに、当然そういう点についての確認をした上で案の取りまとめをし先に進むということをしてきたつもりでございますけれ
ども
、この点の見通しについて、いま長谷雄さんの御心配になっている点は、私としては、余り大きい、つまり今度の
暫定措置法案
で
企業
の
資金調達
の合理化を
暫定
的に図るということと比較いたしましたときに、その心配の方が大きいというふうには考えておらないわけでございます。
長谷雄幸久
19
○長谷雄
委員
どうもありがとうございました。
上村千一郎
20
○
上村委員長
次に、正森
委員
。
正森成二
21
○正森
委員
それでは、私から聞かしていただきますが、
社債発行限度
暫定措置法
ということでございますけれ
ども
、
商法
二百九十七条だけでなしに、
商法
全般にも絡んでまいりますので、そういう
立場
で少し聞かしていただきたいと思います。 まず第一に、
商法
の二百九十七条の従来の
規定
というのは、
社債権者
の
保護
という
意味
ももちろんございますけれ
ども
、釈迦に説法でございますが、
昭和
二十五年までは
社債
の
発行
というのは
株主総会
の権限になっておる、それを機動性を発揮するために取締役会の権限にすると同時に、
発行限度
を設けて、無限に
発行
はできないようにするというかっこうでの株主の
利益
の
保護
も図る面もあったというように言われているわけですね。そこで、株主
保護
という観点から見ますとどういうようにお考えですか。
鴻常夫
22
○
鴻参考人
正森さんの御
質問
の
趣旨
は、今度の
法案
というものが株主
保護
の見地からいってどういうことになるかという御
質問
でございますが、ちょっといまの御
質問
の中で、私の聞き違いでなければ、何か
昭和
二十五年の
改正
で、それまで
社債
の
発行
が
株主総会
の権限としてそこで決議がなければ
発行
できないものを取締役会で
発行
できるようにしたときに、何かその
発行限度
の点で特別に厳格にした、その見合いでそういう
改正
が二十五年に行われたかのごとく
お話
しになったように伺ったのですが、それはそういうことではないのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。しかし、それは基本的な点は
発行限度
を拡大するということと株主
保護
との
関係
ということかと思いますから、その点を
お答え
いたしますと、株主
保護
のやり方として、
一つ
形式的な
保護
としまして
株主総会
の決議あるいは特別決議がなければ
社債
の
発行
は認めないというやり方、これを
昭和
二十五年
改正
前に
日本
の
商法
がそういう
立場
をとっておったことは正森さんの御
指摘
のとおりでありまして、これも
一つ
の
保護
のやり方でございます。しかし、この点も、諸
外国
の
立法例
としまして、ちょうど
発行限度
の問題についてと同じように、古い型の
立法
にはそういうものが残っておりますけれ
ども
、
先進国
は、
株主総会
の決議を常に要求するというものは余りない、原則として取締役会の決議で
発行
できるというのが、これはやはり投資
証券
である
社債
の
発行
というものの手続としましては、機動的な処理ができるようにするという必要から、大方の
立法例
はそういうことをやっているかと思います。 そこで、正森さんの御
質問
は、せめて
発行限度
の方で
他人資本
というものがふえることがないようにという点を、そういう抑え方をする必要というものがそれだけ出てくるのではないかというお考えからの御
質問
かと思います。その点は、万一ということを考えたときに、株主の
利益
を
保護
するためには、少しでも社外に
発行
されている
他人資本
、債券というものの量、金額が少ない方がいいということはそのとおりでございます。ただ、当該
企業
といたしましては、
自己資本
調達
の形ではなしに
他人資本
である債券の
発行
という形で
資金調達
をする方がメリットがあるという判断の上に立ってやることであり、そのことによる
利益
を株主も受ける、この株主の受ける
利益
と、万一の不
利益
、メリット、デメリットというものをどういうふうに比較考量するかという問題にかかってくるわけでございます。取締役会だけで
発行
できるということならば、株主はそれに対して
発行
の事前の段階において
意見
を述べる
機会
がないではないかということになるかと思います。しかし、
商法
としまして、取締役会の決議で
発行
できるということは、これはたてまえでありまして、もしその
企業
の株主が取締役会に
社債
の
発行
など任されないということであれば、定款でそういう取締役会の
社債発行
権限を
制約
するということは何ら差し支えないのではないかと思います。
一般
的な制度としてはそうでございますけれ
ども
、現在の定款にそういうようなことを定めてない多くの
会社
にあっては、株主の
利益
の
保護
というものがそういう面でどうなるかという点は、おっしゃるとおり全然問題がないとは思いません。しかし、やはり株主として受ける
利益
と不
利益
のバランスということで問題を考えていくべきではなかろうかというふうに考えております。
正森成二
23
○正森
委員
ありがとうございました。 持ち時間が十分しかございませんので、御
意見
を承りながら簡潔にというように失礼なことを申して申しわけございませんが、よろしくお願いしたいと思います。 私も
株主総会
の決議にしろということを言うているのではないので、一定の
限度
が必要ではないかという
意味
で発言しているわけです。 もう一点伺いますが、
社債権者
の
保護
の
意味
では、一部の
社債
で行われております財務
制限
条項を
ディスクロージャー
以外にも取り入れるということが必要ではないかというように思いますが、この点についての先生の御
意見
はいかがですか。
鴻常夫
24
○
鴻参考人
私、
先ほど
担保面
の
制約
というものと
ディスクロージャー
の
強化
ということを申しました。そのときの広い
意味
で
担保面
の
制約
ということにつながってくるかと思います。しかしこれは、財務
制限
条項というものを
社債
の
発行
条件の中に入れるということはきわめて重要な問題であること、正森さんの御
指摘
のとおりでございます。ただ、
一般
的に言えば、やはり物的
担保
をつけるということも、財務
制約
条項をつけるということも、当該
社債
の
発行
に当たって具体的に考えて、その必要が大きい、万一が心配されるというときには、その
社債
の
発行
に
関係
する
受託銀行
にしてもアンダーライターの
立場
にしても、そういう点を
発行
会社
に強く要求するということが
社債権者
の
保護
につながるのではないか。そういう
意味
で、この点も今度の
暫定措置法案
のような
法律
が施行されたときには、そういう
関係
者のそういう
意味
での努力、慎重な対応というものが強く望まれるのではないかというふうに考えております。
正森成二
25
○正森
委員
学者の間では、
わが国
の
商法
が、
社債
の受託
会社
を
社債
権の管理の委託を受けた
会社
というようには
規定
しないで、
社債
募集の委託を受けた
会社
というように
規定
しておりますために、受託
会社
の権限等に非常に不十分な点がある。一方
わが国
の法制は
社債権者
の集会というふうなことを考えておるわけですが、それには非常に手間がかかるという
意味
で、アメリカ法などに比べて不十分であるというふうに言われておりますが、この点については先生はどうお考えになりますか。
鴻常夫
26
○
鴻参考人
いまの御
質問
は、
社債制度
の
一般
的な問題にかかわることかと思います。
日本
の
商法
——これは
担保付社債
の方の
担保付社債
信託はまた別でございますけれ
ども
、
日本
の
商法
の方の
社債
の募集の委託という制度は、これは比較法的に見ましてもやや特殊な制度であるということはそのとおりでございますし、また、今日そういう制度が
わが国
において行われておるには、それなりの歴史的な沿革というものもありたというふうに思われるわけでございます。しかし、
会社法
について
全面改正
ということを考えている今日、私の
社債
法の本などでは広く
社債
の管理という言葉を使っておりますけれ
ども
、その
社債
の管理の方式というものがいかにあるべきかという点については、やはりこれまた、いま
お話
のありましたアメリカ法ももちろんでございますけれ
ども
、大陸法の進んだ国々におけるそういう処理な
ども
十分
検討
した上で、実質的に
社債権者
の
保護
が図られるようなものに改めていくべきであるというふうに私は考えておるわけでございます。
正森成二
27
○正森
委員
最後に一問だけ伺いたいと思います。 産業構造
審議
会の報告によりますと、現在
社債
の
発行
枠の
総額
は八兆七千億円だそうです。そのうち
発行
済みの合計が六兆円で、
発行
余力が二兆七千億円だそうでございますが、一部の
企業
ではもう九〇%以上
発行
しておるというようなことで、枠の拡大が必要だ、こう言われておるわけですね。しかし、これを二倍にいたしますと、
発行
枠が十七兆四千億ということになりまして、
発行
済みのものなどを引きましても約十兆円前後の
発行
枠ができる、こういうことになるのですね。それで、
社債
の引受先を調べてみますと、
一般
事業債については約二五%が個人で引き受けられているだけで、その他は金融機関で引き受けられているのですね。そうすると、七兆から八兆円が金融機関で引き受けられるということになりますと、いまたださえ大口融資
規制
などで
中小企業
や
一般
の住宅
関係
の融資が逼迫するというように言われておりますときに、これは
社債
を
発行
し得る
会社
というのは、現在でも二百三十五とか、あるいは枠を使い切っておるのは百に満たないとか、非常に優良な大
企業
ですね。そうすると、
中小企業
とか
一般
の庶民に対する
資金
のクラウディングアウトという
状況
が起こってくるのではないかということが心配されるわけですが、その点はいかがでしょうか。法制上の問題だけでなしに金融上の問題も考えてみる必要があるのではないか、こう思うのですけれ
ども
。
鴻常夫
28
○
鴻参考人
いま御
指摘
になりました点は、最も重要で、かつむずかしい点かと思います。特に金融機関が
巨額
の
社債
の
所持人
であるというような形になっているのは、これはいろいろな金利の条件等との
関係
があるかと思います。しかし、
社債
というものは、
他人資本
と言いましても、普通の借入
債務
と違いまして、そのまとまった額の債権あるいは
債務
というものを均等割りにいたしまして、それを
証券
化して、それが広く大衆といいますか、そういう者の余裕のある
資金
による投資の対象になるということが
社債制度
の本来の姿でありまして、そういう
意味
では、現在の
社債制度
の
運用
というものが、法の理想と言いましょうか、制度本来のたてまえどおりには働いていない、使われていないという点、そのこと
自身
に大きな問題はあるかと思います。 いま正森さんの御
指摘
になりました点は、そういう
状況
がさらに拍車がかかって、
中小企業
等に対する金融機関の貸し出し余力というものに影響してこないかということでございます。これも私、金融の問題について専門外で自信を持った
お答え
ができるわけではございませんけれ
ども
、私は、二倍に
限度
を引き上げたからといって、その枠いっぱいに
企業
が
社債
を
発行
するというふうに考えるとすれば、そのこと
自身
が問題なんであって、枠を広げるということと、いかなる
範囲
で
社債
を出すことが
企業
の
資金調達
のやり方として合理的であるかということは、
発行
する
企業
及びそういうことについての
発行
に当たって専門家の
立場
で関与する
受託銀行
や引受
証券
会社
というものとで、十分その点を慎重に
検討
した上でリーズナブルな額に
社債
の
発行
をとどめるということでなければならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
正森成二
29
○正森
委員
ありがとうございました。
上村千一郎
30
○
上村委員長
次に、加地
委員
。
加地和
31
○加地
委員
最後でございますので、あと十分ほどおつき合いをお願いします。 先生の
先ほど
の御
意見
を聞いておりましても、現在よりはましだ、理想までには届いておらぬけれ
ども
現在よりはましだからという御
意見
のように思います。私もおおむねそのように思います。 いかにして
日本
の
社債制度
、公
社債制度
というものが
会社
経営なり産業面において有効性を発揮するかということについて、ひとつお教え願いたいのでございますが、その
一つ
は、現在の難点としては、新しく
増資
をするよりも、いわゆる
銀行
から金を借りた方がいい、あるいは
社債
の方がいいというように、
自己資本
の充実を妨げておるのに税法上の問題があると思うのです。いままでにも、
昭和
三十六年ごろに配当金に対する軽課
措置
、配当金に対して軽く税金を課するという制度もありましたし、それから
資本
構成を
改善
した場合の法人税額の特別控除
措置
の実施等も四十一年から四十四年ごろにもありましたし、また時価
発行
の
増資
とか時価
転換社債
の導入ということについても税法上の配慮がなされたと思うのですが、それらはいずれも不十分であったように聞いておりますけれ
ども
、先生の御研究では、税法上のネックとしてはどういう点を緊急に
改善
すれば健全な
自己資本充実
ができるか、あるいは
社債制度
が確立されていくかという点について、御
意見
をまず承れればと思います。
鴻常夫
32
○
鴻参考人
加地さんの御
質問
も、私、
商法
を専攻しておりますが、税法の方の専門家でございませんので、御期待にこたえるような
お答え
はできないわけでございますが、
社債制度
の面での税制をどういうふうに変えた方がいいかというのは、将来の問題としていろいろ
検討
すべき点があるかと思います。しかし、現在の問題は、むしろ
社債
に対応する
株式
の
発行
の方についての税法上の扱い方の方に問題があるのではないか。たとえば、いま、
他人資本
をやたらにふやさないで、
自己資本
の充実だということで、優先株制度みたいなものを出したらどうかというような議論があり、現に
発行
事例も見ているわけでございますが、やはり優先株の
内容
をいかに
社債
的なものに近づけて——優先株というのは、御承知のように
社債
と
株式
の中間でございますから、そういうふうな
社債
に近づけた
内容
のものにしても、しょせんは優先株は
株式
であって
社債
ではないということから、
株式
としての税制面の適用を受けるということで、なかなかそういう優先株の
発行
というものも普及ができないという点の方は、いろいろ問題になっているように聞いております。
社債
についても、税法上、
企業
にとってなお考えるべき点はあるかと思いますが、これはまた税制全般の問題に
関係
することで、さしあたり
社債
の税制をどうすべきかという緊急な問題は必ずしもないのではなかろうか。将来の問題としては、税制面でも
企業
の
長期安定資金
調達
手段としての
社債
の
発行
について、それにふさわしいような税制というものにするということが望ましいことは御
指摘
のとおりでありますけれ
ども
、さしあたっての問題というのは、はなはだ不勉強かもしれませんが、私承知しておりません。
加地和
33
○加地
委員
今回、
法律
で二倍の枠ということになりましても、
先ほど
お答え
になり要したように、これを取り扱う金融機関なり
証券
会社
なりあるいはまた引受幹事
会社
などで
起債
会というものをつくっておりまして、公共債などを優先して、その残りが
一般
事業債の方に回ってくるというように——
法律
が変わっただけで、
資金調達
が必ずしも円滑にいくものとも言えないようでございますし、あるいは
外国
先進国
と比べて、
日本
の公
社債
市場というものがまだまだ未発達であるという言葉をよく聞くのでございますけれ
ども
、今回の
法律
の
改正
とあわせて、
暫定
法案
となっておるということは、いずれ近いうちに先進諸国に負けないもろもろの制度が確立されるということを予定されておると思うのでございますけれ
ども
、
日本
の公
社債
市場は、現在緊急にどういう点を
改善
しなければならないのかという点につきまして、先生の御
意見
を賜ればと思うのでございます。
鴻常夫
34
○
鴻参考人
ただいまの
質問
の点も、
社債制度
の全般にかかわる大きな問題でありまして、また現に
日本
の公
社債
市場が抱えている問題を御
指摘
になったというふうに思うわけでございます。
日本
の公
社債
市場が欧米の
先進国
に比べて未発達だと言われているものにもいろいろあるかと思います。一口に公
社債
市場と言いましても、
発行
市場、流通市場、大きく分けられるかと思いますけれ
ども
、とりわけ
日本
の流通市場というものは貧困であるということは、これは率直に申し上げられるのではないかと思います。
発行
市場の方についても、
欧米先進国
と比べてどうかという点になりますと、これも比較のむずかしいところでありますが、流通市場を比較した場合よりは、未発達と言わないでもいいのではないか。最近はまた、いろいろ海外の
企業
、さらには公共的な機関が東京を
資本
市場として
資金
を
調達
するということも行われ、漸次多くなってきているようでございますけれ
ども
、恐らく公
社債
市場の未発達ということが一口に言われますのは、流通市場というものが本格的にないということで、そのはね返りが
発行
市場の問題にも及んできているという面がもちろんあると思います。そういう
意味
で、いかにすれば、本来、有価
証券
というものとして債券が存在して、それはいつでも市場で現金化、換価できるということによって、
投資対象
としての妙味を持っているはずのものが、流通市場というものが十分に発達していないということでは、その面のよさを生かし切れていないということになるわけでありまして、私は、いろいろなネックもあると思いますけれ
ども
、また、この二十年来、時に及んで流通市場というものの定着といったようなことが叫ばれておりますけれ
ども
、思ったようには行っていないという点、これも御
指摘
のとおりでございますけれ
ども
、今後大いに
検討
すべき問題ではないかというふうに考えております。 それから
起債
会あるいは
起債
懇談会なんかで公共債優先、で、事業債が残った枠をどういうふうに配分するかという形で
運用
されているように私も承知しているわけでございますが、これはまた単なる
社債
市場にとどまらない、全体としての国の財政等とも
関係
するむずかしい問題でありまして、この点もそれぞれ合理的な
範囲
でどちらが優先だというようなことも、時にあっては必要なことがあるかもしれません。
一般
的な制度としては、それぞれが合理的な
範囲
で
資金
の
調達
をするというのが、本来望ましい姿ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
加地和
35
○加地
委員
最後に一問だけ。この
法律
は、
最初
の案では九年間ほどの時限
立法
の案であったように伺っておるのでございますけれ
ども
、やはり先生のお考えでも、これは完全ではない、いまよりはましだというものからいきますと、中途半端なままで日を送るということは好ましくないのであって、一定の無理でない日限を切る方がいいように思うのでございますけれ
ども
、先生のお考えはどうでございましょうか。
鴻常夫
36
○
鴻参考人
この
暫定措置法案
が「当分の間」ということで、
最初
の案、いかなる段階でありましたか、確かに十年間に限るという——約十年でしょうか、に限るという
考え方
があったことを承知しているわけでございます。 たしか、これは昨年でございましたか、国会で成立しました電気ガスの方の特例法と、
一般
株式会社
の
社債発行限度
の特別な
措置
とをそろえるというような
趣旨
もあって、初めそういう考えがあったのではないかというふうにも思うわけでございますが、こういう
暫定措置
だからといって、必ずしも何年ということに限らなければならないということでなしに、「当分の間」として、もし幸いにして、この
法案
が
暫定
とされた
理由
として説明されておる
会社法
の
全面改正
の方が、大方の期待以上に
審議
が促進されまして、早い時期に
社債
全般を含めて新しい制度というものがまたこの国会で
審議
されるようなことになるならば、これは十年と限っておったからといって、前に出してならぬということはないと思いますが、そういう期待を込める
意味
で「当分の間」というふうにすることも、それなりの
意味
があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。 また、この
暫定措置法案
にしないで、そういう
意味
での恒久的な制度というふうにするということになりますと、やはりいろいろな
考え方
の妥協としての
立法
ということもあるかもしれませんが、私、学者の
立場
では、もう少し理論的な
立場
で、
矛盾
がないといいますか、そういうような形の
立法
の是非ということも一度は
検討
すべきことなのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
加地和
37
○加地
委員
どうもありがとうございました。
上村千一郎
38
○
上村委員長
次に、鳩山
委員
。
鳩山邦夫
39
○鳩山
委員
三分ということで、一言だけ伺っておきますが、
発行限度
につきまして、
商法
二百九十七条が、
資本
及び
準備金
あるいは
純資産額
のどちらか少ない方というふうに決めておるわけでありますが、私はその
意味
がいまだによくわからないのでございます。
純資産額
イコール
資本
プラス
準備金
プラスアルファ、これを剰余金と呼ぶこともあるかと思いますが、そのように解釈してよろしいのでございましょうか。
鴻常夫
40
○
鴻参考人
この問題については、
商法
の問題でございますけれ
ども
、きょう御
出席
になっておられる
宮坂
先生の方がより的確な
お答え
ができる問題ではないかと思うわけでございますが、ただいま鳩山さんの御
質問
の点は、やはり
資本
及び
準備金
の
総額
というものと純資産というものは、いわばそれを決めていく基礎が違うわけでありまして、純資産の方が
資本
及び
準備金
の
総額
よりもはるかに多いというのが今日の
企業
の大部分だろうと思います。しかし、非常に経営がまずくなっているようなところで、
資本
及び
準備金
の
総額
にはるか足らない資産しかないという倒産寸前のといいましょうか、そういう、これまででしたら
資本
減少の手続を考えなければならないような
企業
も多い。そういう
意味
において、ある程度それが見合うということが望ましいことでございますし、
自己資本
の充実というようなことはその点を考えた問題だろうと思いますけれ
ども
、その額そのものは、両者で必ずしも必然的に一致するような性格のものではないというふうに考えております。
鳩山邦夫
41
○鳩山
委員
ただいまの先生の
お話
、計算の仕方が違うということでありますが、先生の
お答え
をいただいても、一応
純資産額
イコール
資本
プラス
準備金
プラスアルファと解釈してもいいと私は思うわけでございます。したがって、普通このアルファというのはプラスである場合がほとんどであると思います。現在
社債
を
発行
しております二百三十数社の中で、アルファがマイナスであるという例があるかどうか、それをお聞きしたいのと、またアルファがマイナスであるような場合に果たして
社債
の
発行
を許していいものだろうか、それだけ
お答え
いただきたいと思います。
鴻常夫
42
○
鴻参考人
私もただいまの御
質問
の点、記憶が正確でないというのか、初めからつまびらかにしてないのかという点問題があるかと思いますが、もしこの
暫定措置法案
が成立して
社債
の
発行
枠が広げられれば、合理的な
資金調達
として
社債
の
発行
がこの際いいのだからということで
発行
したいと思う
企業
で、純資産の方が
資本
及び
準備金
よりも少ない、つまり鳩山さんの
お話
でプラスアルファがマイナス勘定になっているという
企業
はまずないのではないかというふうに推測をいたしておりますが、これはつまびらかでございません。
鳩山邦夫
43
○鳩山
委員
どうもありがとうございました。
上村千一郎
44
○
上村委員長
鴻参考人
には、御多用のところ貴重な御
意見
をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席ください。(拍手)
—————————————
上村千一郎
45
○
上村委員長
次に、
宮坂
参考人
に対する
質疑
を行います。
横山委員
。
横山利秋
46
○
横山委員
本
委員会
は
商法
の
改正
につきまして歴年
審議
をいたしておりましたし、また本
委員会
ばかりでなくて、
大蔵委員会
、
商工委員会
等々におきましても、
会社
と
商法
、またそれに関連いたしまして共通的に公認会計士の諸問題についてもしばしば討議をしてきたところでございます。今日、公認会計士に対する社会的な期待、また公認会計士
自身
が持っております社会的な責任、これはきわめて大きなものがございまして、私
ども
は、国内におきます大
企業
を中心にいたしまして、公認会計士の監査の
状況
が適切であることが、近代社会におきます経済に寄与するところがきわめて大きいと痛感をいたしておるところでございます。 本
委員会
は、先般この
担保付社債
に関連いたしまして、公認会計士の問題について
政府
側と
質疑
を交わしました。その際、
政府
側が公認会計士につきましての問題について答弁をいたしたのでありますが、その答弁が、やや
政府
側の
意見
でございまして、公認会計士協会及びその運営、監査のあり方についての批判的な
内容
があったわけであります。したがいまして、本
委員会
としては、
宮坂
会長においでを願いまして、一体その
指摘
はどうなのかという点についてただすべき道義的なものを感じまして、きょうおいでを願ったわけでございます。短い時間でございますからどうぞ簡潔に、いろいろ
お答え
を願いたいと存じます。 まず第一に、私が最も問題にいたしましたのは、公認会計士
審査
会に
政府
から出されました「公認会計士制度の見直し」なる文書についてであります。この文書はいろいろと問題点を
指摘
しておりますが、特に私が
指摘
をいたしたいのは、協会運営の適正化という
内容
であります。この「協会運営の適正化」の項を見ますと、文書をもって、協会の運営が適正でない、そしてまた指導が適正ではない、こういう数々の問題が
指摘
をされています。私は、少なくとも
日本公認会計
士協会のあり方を
政府
がかくまで具体的に論ずることは、言うならば、言葉は適切ではないかもしれませんが、なめたやり方だ、またこういう文書を出される側の
立場
はなめられたものだ、ここまで私は痛感をいたしておるわけであります。
政府
側と公認会計士協会とのあり方がこういうような
関係
では困る、そう思っておるわけでありますが、まず
宮坂
会長から、いわゆる見直し問題のうちの協会運営の適正化に関連して御
意見
を伺いたいと思います。
宮坂保清
47
○
宮坂
参考人
ただいまの
横山
議員の御
質問
に対しまして、感謝いたします。 いまの協会の運営についてでございますが、私はこう考えるのでございます。このような
指摘
を受けたということにつきましては恐縮しておりますが、協会は一生懸命やっておるのであります。
会社
や役所のように完全なる上意下達のできる組織ではございません。全部責任のある会員から選ばれた役員が、それぞれ自主的にやっているのでございます。御心配していただくことは、意をよく含みましてこれからも精進していきたいと思いますが、事務的な運営につきましては、どうぞ協会の方にお任せ願いたいと思うのであります。 施策的な問題につきましては、これは監督官庁のことでございますので、疑義があって見直し論が出たと思うのでございます。そこで協会の
考え方
の基本的なことを簡単に三十秒ほど申し上げたいと思います。 特殊法人たる
日本公認会計
士協会は、公認会計士という資格で会員を登録しているのでございます。個々の公認会計士によって成り立っているのでございます。その目的は、言うまでもございませんが、監査業務の
改善
、進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行い、公認会計士の使命と職責にかんがみその品位を保持することにあるのでございます。したがいまして、公認会計士個々人がこの目的を達成するために各事業を行うものでありまして、特定に偏ったそのような方策は協会としては持つべきでないと私は考えます。 そこで、そのためには、まず第一に、会員全員が監査業務に従事することを達成しなければならない。したがいまして、制度の見直し論に対処するに当たりまして、この基本的な
考え方
を出発点として私
ども
は考えていろいろと処置したのでございます。
横山利秋
48
○
横山委員
私の
質問
はひとつ具体的にわたるわけでありますが、その前に、国会の意思というものについて、
宮坂
会長御存じではありましょうけれ
ども
申し上げておきます。
商法
の一部を
改正
する
法律
案に対する附帯決議の二項、「会計監査人の独立性を確保するため、その選任
方法
等について適切な方途を講ずること。」もちろんこれは
政府
に対する附帯決議でございますが、第四項に、「監査法人の育成・
強化
を図る反面、個人たる公認会計士の業務分野についても行政上適切な
措置
をすることとし、もって活動分野の調整をはかるものとすること。」になっています。特にこの第四項を私
ども
立案いたしました
趣旨
は、大監査法人、小監査法人、個人たる公認会計士の業務分野についても行政上適切な
措置
を講ぜよということは、それぞれ所を得さしめよ、つまり大監査法人のみにこの仕事が集中することのないように、大は大、中は中、個人は個人というふうに活動がそれぞれ行われるようにして、もって活動分野の調整を図るものとする、こういうことなんであります。 ところが、この見画しの中の
指摘
に、新しく金融機関が監査対象に選ばれましたとき、公認会計士がいわゆる五行
制限
をしたことはけしからぬとか、あるいは五十一年三月十日
日本公認会計
士協会
理事
会において決議された「会員が、三社を超えて金融機関と監査契約を結ぶこととなる場合は、金融機関監査契約調整幹事会に
届け出
て、その裁決を求めなければならないこととすべきである。」というような
趣旨
につきましても、大蔵省がいささかいちゃもんをつけたやに聞いておるわけであります。 それで、大監査法人、中監査法人、小監査法人、個人たる公認会計士、このそれぞれの業務活動分野の調整を図るという私
ども
の国会の
趣旨
については、公認会計士協会としては了とされておるわけですか、この
趣旨
に沿っていらっしゃるわけですか、簡単に
お答え
を願いたい。
宮坂保清
49
○
宮坂
参考人
いまの御
質問
は、
銀行
の五行
制限
に関連しての附帯決議の問題でございます。まず五行
制限
に関しまして三点にまとめて申し上げてみたいと思います。 その一点は、特定の監査法人に予想外に契約が集中してまいりますと、その膨大な予想監査日数を考慮したときに、それら監査法人の監査消化能力を超えるおそれを生じてきたと考えました。これは
銀行
監査調整幹事会が非常に資料を取り寄せ細かな
検討
をして進めたものでございます。そのまま放置しますと、期待された十分な監査を実施し得ないかもしれないというものを考えまして、公認会計士監査に対する社会の信頼を損なうこととなるおそれが多分にありはしないだろうか、そういう
意味
で、その当主的な解決策としましていわゆる五行
制限
を行ったわけでございます。 また、
横山
議員からの御
指摘
のように、
商法
の一部を
改正
する
法律
案等の附帯決議が、
昭和
四十八年の七月三日でございますが、この衆議院法務
委員会
において決議されました。それにのっとりますと、五千三百名の公認会計士で監査法人に所属する会員は約四分の一でございます。千六百名程度の方がこれに参加しております。監査法人以外の四分の三に当たる会員、これをどのようにしていったらよいかという思想を基本にいたしまして、いまの第一点を加味した——個々の公認会計士、これにつきましては共同事務所もあれば個人事務所もありますし、監査団というものもございます。監査に携われるような
機会
をつくっていこうというふうにしたのでございます。 第三点は、この結果、
銀行
監査のそれぞれの契約をした人は、質も上がり、制度の発展を目指して現在監査を実施しております。五行
制限
が行われるときの協会が発信した文書が手元にございますが、これも
内容
証明では出しましたけれ
ども
、ここにはっきりとその
趣旨
を書いてあるのでございます。簡単でございますからちょっと読んでみます。これは急所になりますので……(「余り
関係
ないことは……。」と呼ぶ者あり)それでは省略いたします。 以上、そういうことでやったのでございます。
横山利秋
50
○
横山委員
簡潔に
お答え
くださって結構でございます。 そこで、
企業
の監査をする上において、先般私が本
委員会
で
指摘
をしたわけでありますが、本年の一月十四日の読売新聞に、公認会計士協会の近畿会が灰色決算を内部告発をしたという問題が出ております。そこで、この間
政府
委員
に対しまして、この問題についての見解を求めました。私は、公認会計士協会が自己の会員の行った監査が他の手によって、つまり大蔵省へ行ったらそれは粉飾だと言われたり、あるいはまた他の団体から非難をされるようなことがある前に、公認会計士協会みずからが常に監査
状況
を調査し、念査し、研究し、あるいはまた、間違った監査があった場合にはみずからの手で摘発をする、そういう自主調整、自主統制が好ましい、こういう
立場
をとっております。その
意味
では近畿のこの——新聞に言う内部告発という言葉が適当であるかどうかわかりませんが、その手段、
方法
についての多少の議論はあるにいたしましても、これは協会本部及び地方の会が、そういうことについて私の
趣旨
に沿うような活動機能を持つことが必要ではないか、こう考えておるのでありますが、その点についてどうお考えですか。
宮坂保清
51
○
宮坂
参考人
近畿会の問題がきっかけになっておりますが、近畿会では毎年二月に研究大会というのを行っております。これは近畿会の研究部が主催でやっておりまして、もと近畿三会といいますか、今度は五会といいますか、五つの地域会が合同したのでございますが、このたびは「粉飾決算−その実態と教訓」ということでやったわけでございます。昨年は「公表財務諸表のニーズとその対応」、また「
ディスクロージャー
の意識の実態調べ」、その前は「
商法
監査について」、それぞれやりまして、その研究の資料をそれぞれに送っておったのですね。その送った先から新聞社へ行きまして、新聞社の取材となって、このように新聞に出たのでございます。本部としましては、その新聞にどのような形で出たかということを調査いたしました。これはいま申しましたようなことで、資料として出されたものでございます。その調査の結果を本部の方にも知らせてまいります。本部の協会としましては、監査
委員会
と会計制度
委員会
とでそれぞれの監査の
検討
などをやっております。また
審議
室がございます。いずれにいたしましても、これらの機関をもう少し拡大して統べていきたいと考えております。 なお、新聞紙上に出ておりましたような固定資産の売却、有価
証券
の売却
関係
につきましては、もうすでに会計制度
委員会
では四十五年の七月に中間答申を発表しております。また監査
委員会
では四十六年七月に出しております。現在、この二月に行われた近畿会のそれを受け取りまして、本部ではさらにこの
内容
を
検討
しているところでございます。これは会計制度
委員会
と監査
委員会
で共同調査をしております。 なお、いま御
指摘
のように、それぞれの財務諸表については、健全な会計処理ではないかもしれないが、違法とか不当の会計処理ではないことを協会でもはっきりと断定しております。 以上でございます。
横山利秋
52
○
横山委員
宮坂
さん、時間がございませんので、なるべくそのものずばり……。 私があなたに
質問
をいたしておりますのは、近畿会を契機として、公認会計士協会それ
自身
が、いまあなたの
お答え
によれば
審査
会だとか規律
委員会
だとかがあるそうでございますが、公認会計士協会本部及び地方みずからが、他や官庁に
指摘
されることなく、この監査
状況
についての調査、念査あるいは摘発、統制、それらについてもう少し百尺竿頭一歩を進めた
方法
ができないか、こう言っておるわけであります。 それから、
先ほど
五行
制限
の問題でも
お答え
になりましたが、要するに、金融機関が被監査対象に選ばれたならば、それまでは一致結束をしておった公認会計士協会が、獲物に群がるオオカミのように、お得意さんをとるために争うような印象を与えたのは大変よくないことだ。そういうところに、
政府
が言うところの指導調整能力に欠けたる点がないか、こういう
指摘
が生じてくるわけなんであります。ですから、本部会長としてのそういう点についての決意なり、本部の体制について、率直に御
意見
を伺いたいと思います。
宮坂保清
53
○
宮坂
参考人
いま御
指摘
のことでございますが、本部協会といたしましては、前向きに、第一番目の社会に対するアピール、技術的な問題についての前向きな開発というような問題について、大いに
審議
室あるいは監査
委員会
などを
強化
し発展させていきたい、そういう社会のそれにこたえようと考えて決意しております。
横山利秋
54
○
横山委員
簡潔におっしゃったのですが、どうぞそれが具体的に近い将来体制として
強化
されるように……。その
意味
では、大蔵省の
指摘
がこういう文書で公式の場面に出すようなやり方は言語道断だと思うのですけれ
ども
、やはり火のないところに煙は立たないという感じは免れがたいところでございますから、
内容
的に本部の指導調整能力というものが充実されて、毅然とした公認会計士協会の運営がされるよう期待してやみません。 その次の
質問
は、この附帯決議にも関連をいたしますけれ
ども
、私はこう考えていますがどうですか。 まず第一に、それぞれ所を得せしめるということの第一に、
外国
の監査法人を認可するか否かという問題が歴年の問題になっています。私は、今日の
日本
の公認会計士協会の大監査法人といえ
ども
、まだまだ国際的な力が必ずしも十分でないから、
外国
監査法人を認可したならば国内の市場が席巻されるから、まだ早い。 第二番目には、その
意味
では、
外国
の監査法人と
日本
の監査法人とが対等平等に、すでにモデルがございますように、対等平等な
立場
で監査協定を結んで提携をするということが第二番目。 第三番目には、この見直しの文書の中にもあるわけでありますが、速やかに国内の監査法人の認可
基準
を緩和すべきだ。緩和をして、よく言うのでありますが、鉄砲を持っておったらカモがいなくてもひとつ商売を許せ。つまり、いままでは大蔵省は、お客様がいなければ監査法人は認めないという
立場
であったけれ
ども
、お客様がいなくても、資格を持ち監査法人としての体制を整えておるならば認可すべきであるという、監査法人の認可
基準
を緩和すべきであるというのが第三。 第四番目には、個人の公認会計士の業務分野を拡大いたしますために、先般も総理府から来てもらったわけでありますが、
政府
、地方自治体に関連する公益法人並びに民間の公益法人についての監査
基準
というものを速やかに決めて、それを逐次
政府
の直接指導、財務指導よりも公認会計士の間接指導に渡すべきである。 そういう点を私は歴年主張しておるわけでありますが、これらの点について会長としてどうお考えでございますか。その点をひとつ簡潔に
お答え
願いたいと思います。
宮坂保清
55
○
宮坂
参考人
第一点の、
外国
公認会計士の認可はまだ早いということでございますが、御説のとおりと思います。ところが、この
外国
公認会計士の監査法人化には、従来
日本
に事務所を開いている
外国
の公認会計士、監査法人に移行しない方々との関連、こういうものをはっきりしませんと、名義貸しのような形になってしまう。これは早くするとか遅くするとかいう
意味
と基本的に違うものでございます。そういうものをやはり整理していただく、これが基本でございます。それから、早い中にも国際的に
日本
の公認会計士が発展する必要がありますからその力をつける。たとえいまのような名板貸しその他が整理されましても——そのような
意味
で
横山委員
のそれに賛成いたします。 二番目の対等平等の業務提携については、これはそのとおり賛成でございます。 三番目でございますけれ
ども
、監査法人の
日本
の認可
基準
の緩和の問題でございます。確かに、契約云々について言わないで、いわゆるだれでも許したらどうかということを基本にして、ただここでしなければならないことは、監査の充実でございます。それは
審査
機構というものでございます。私は、監査法人だけが
審査
機構を持つと思っておりません。これは個人でも共同事務所でも監査団でも、その仕事をするということになればそれぞれのものを持つはずでございます。そういう
意味
で、緩和は私は大賛成でございます。 ただ、一点お願いしておきたいことは、大きな
会社
はだから監査法人だということはやめていただきたい。そういうようなことはやはり平等でいくべきであるということを申し添えておきます。 第四点でございますが、公益法人その他についての問題でございます。これは分野調整といいますか、附帯決議で、大きい監査法人も個人もというような
意味
合いのそれが含まれていると思いますが、どうぞこのような
法律
が出るときには、何か
法律
の中または附帯決議でもよろしゅうございますから、個人の公認会計士の尊重をうたっていただきたい、そういうようなことをお願いしたいと思います。 また、これに関する監査
基準
、監査
方法
等の問題について早目に手を打て、全くごもっともな御
意見
でございます。そのように考えております。 以上でございます。
横山利秋
56
○
横山委員
一つ
聞きにくいことを聞くのですが、監査報酬の問題でございます。 私のいまの実感を申し上げますと、公認会計士が、私を監査人として雇ってくれ、委嘱をしてもらいたいということを
会社
に申し出る、その申し出る弱みというものがあると思うのであります。何か、聞くならく、監査報酬についてはあなたの方で一定の
基準
があると思いますが、結局は、それは売り手と買い手の
関係
で、
会社
と公認会計士協会ないしは監査をする公認会計士及び法人との商取引になっておるという感じがしないではありません。 一方、監査日数についての一定の
基準
があるわけでありますが、これまた、そんなにたくさんやられては困る、おれのところは、大蔵省から日銀から税務署から、それから公認会計士から、あらゆるところで年がら年じゅうやられているんだから監査日数を減らしてくれ、いやそれではこちらは自信が持てないから監査日数をふやしたい、そういう実際の論議があるようであります。 そういう中で、監査報酬というものが一体どう決められたら望ましいのか。一体、売り手と買い手、
会社
と公認会計士の間の自由裁量に、手打ちに任されるものであるかどうか。これを税理士あるいは司法書士あるいは弁護士等の報酬と比べてみますと、公認会計士の報酬というのは、どうも売り手と買い手に任されておるような気がする。他の人たちは、
政府
が認可する、あるいは弁護士会は弁護士会できちんとした統一したやり方でやる、もちろんそれに若干のニュアンスはあるにしても、弁護士の方は比較的統一された
基準
というものがあるが、公認会計士のいまの報酬のあり方についてはどうもその辺がすっきりしないような気がしてならない。一体報酬制度のあり方というものはどうあればいいのかという点について、御
意見
を伺いたい。
宮坂保清
57
○
宮坂
参考人
報酬のあり方でございますが、その前に、会員がそれぞれのところへ競争で行ったということも大きな原因ではないか、こういうようなことも
お話
がございました。 よい監査をすれば報酬が上がる、こういうようなことを言われますけれ
ども
、私はそう思いません。公認会計士は、十分な監査を実施する日数と、それに見合う報酬がなければ、やはりりっぱな監査に進むことはできない、後継者を育てることもできない、そういうふうに考えます。 それならば、そのような醜い契約の取り方をどうしたらいいのか。これについては、協会は、もし懇請の問題が具体的に見つかるならば、厳しい姿勢をもって当たるようにいま進めております。 また、契約の報酬の決め方の問題でございますが、これは当事者でそれぞれ利害
関係
があるだけでやっておるということ自体の問題と、弁護士さんと比べられたのでございますが、公認会計士の監査が法定監査に偏っているわけですね。任意監査がたくさんできてくればこういうことはないのです。言うならば、医者でも弁護士でもそれぞれ決められた以外に任意の仕事という、いわゆる決められた以外のものがたくさんあるわけです。こういった
意味
で、公認会計士の監査というものをもっと社会的にPRする、そのためには、もちろんいい監査をすると同時に、官民ともにやはりその方に進めていかなければならないと思うのでございます。 なお、契約の報酬の定め方の問題につきましては、できれば、いまの当事者間のほかに、学識経験者とかあるいはそれぞれの
関係
者が入っていただくとか、そういったものをつくっていただくとか、あるいは別にそのような報酬調定というような機関をつくっていただくということは——弁護士や医者と比べて、いま
日本
においては法定監査を任されておりますから、公認会計士の位置づけはもっと社会的なんでございます。そういう
意味
で、何かそういう機関の設置ができればと願っているものでございます。
横山利秋
58
○
横山委員
最後に、せっかくおいでになりましたからには、本
法案
についての御
意見
を伺わなければなりません。
先ほど
から
鴻参考人
と私
ども
の
質疑
の中でお気づきのように、問題点は数々ございます。しかし、詰まるところ、本
法案
の意図するところは、
担保つき
の
社債
ならば
制限
を緩和して倍にするということについて、それは
日本
企業
の最も欠陥であります
自己資本
が少な過ぎるという、われわれがかねて議論をいたしておりましたことについて逆行するのではないか、いやそうではない、それは準
自己資本
と考えるべきだ、それがこの
法案
が通過をしたならば、
増資
の傾向が減る、いや誘導して
増資
の道を開く等々の議論があるわけであります。もちろんそのほかにもたくさんの問題がございまして、当
委員会
は慎重な
審議
をいたしておるわけであります。公認会計士協会は、
会社
、
企業
の監査に当たって、これらの点については十分御経験がおありだと思いますので、本
法案
についての御
意見
を伺いたいと思います。
宮坂保清
59
○
宮坂
参考人
本
法案
に対して御
意見
を申し上げます。
自己資本
の充実ということについて、
日本
企業
が官民ともに非常にこれを進めてきたわけでございます。本
法案
はそれに対して反しているということを言っても否めない事実だと私は思うのであります。しかし、諸
外国
の状態を見ますと、このような
担保
がついているものについては
限度
を決めないで行われている、こういう情勢、また現在の
日本
におきましても、
自己資本
の
増資
に優先株というのがございます。この優先株にもいろいろな優先株がございます。むしろ
社債
の性格を持つような優先株もあるのでございます。そういうところから考えますと、よくはないけれ
ども
仕方がないだろう。特に
増資
に対して阻害があるかないかというのが
ポイント
でございますが、いろいろとそういうところを基本に置きまして、よくはないが現在ではやむを得ないだろうというふうに私は考えております。
横山利秋
60
○
横山委員
質問
終わります。
上村千一郎
61
○
上村委員長
以上で
参考人
に対する
質疑
は終わりました。
宮坂
参考人
には、御多用の中を長時間にわたり貴重な御
意見
をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。 次回は、明十一日午前十時
理事
会、午前十時十分
委員会
を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二十一分散会