○有島
委員 国語あるいは
日本語の問題につきまして文部
大臣、
文化庁長官に質疑あるいは問題提起をさせていただきます。
国語の問題と申しますと、これはまさに
文教施策の
基本にかかわる大問題でありますし、あるいは
日本文化の根本問題にかかわってくるような大きな問題ですから、わずかの時間で片がつくとは思っておりませんけれ
ども、この種の問題、本格的な論議というのが久しく本院においてはなされていなかったのではないかと思います。いま明治から百年、戦後三十年、後二士三年で二十一世紀というような大きな時代の転換期のように思いますので、こうしたときにいまから手をつけていかなければならない、ねらいを定めて手
がけていかなければならないというような
幾つかの重要問題があるのではないかと思います。
〔登坂
委員長代理退席、
委員長着席〕
そうしてその中で国語の問題というのは
一つの柱になるのではないかと思いますので、あえてここでもって二、三要点だけ挙げて
大臣の
一つの御決断をいただく、あるいは実行に移っていただくということを要望したいわけであります。
先に大体三つほどの項目を申し上げますと、文部
大臣はひとつ国語審議会に対して新たな国語問題全般に関する諮問をしていただきたい。諮問と言ってもこれはそれではあす、あさってにやりましょうというわけにはまいらないと思いますけれ
ども、今後はどのような諮問をすべきであるかということをひとつ御用意を始めていただきたいということです。現行の審議会は、その内実といたしますところは大体現代の共通語に限られておる、これは
一つの特徴であると思います。しかもその中で漢語あるいは漢字問題、ここに集中しておるのではないか。もう
一つは、現行の審議会がいわゆる表記上の問題に集中して論議をされておるのではないかということです。それで、もとより
日本語、国語というのはさらに大きな幅を持ったことでございますから、さらに総体的な諮問をなさって、いまから十年、二十年かけて
一つの国語の審議をしていかなければならないのではないか、これが第一番です。
第二番目のことは、これは
文化庁長官の問題になろうかと思いますけれ
ども、
日本の国の和語の辞典を編さんする、これに
着手をしていただきたいということです。申すまでもなく、
日本語の母体は和語であって、その中に漢字だとか、あるいは外来語であるとか、混種語であるとか、そういうものを交えて使っているわけです。その中で日常用語といたしましては、標準的な共通語も使いますけれ
ども、いわゆる方言が多いわけでしょう。私たちもこうして
委員会に出てまいりますと、共通語、標準語を一生懸命使いますけれ
ども、これはかなり意識しながら骨を折って使っているわけでありまして、東京生まれで東京で育った私などはそれほど気がつきませんけれ
ども、それでも東京の方言を使っているわけです。そうした生活の実態は方言なわけですね。その中における漢字、漢語中心の御審議というのはいままでずっといろいろとなされておった。それにはそれなりの、六十万語を含むような漢和辞典というりっぱなものがあったわけです。土台があったわけですね。ところが和語に関しましては、方言あるいは現在使われている和語あるいは古語、こういったものを網羅しての和語の集大成というものはいまだないようであります。ぜひともこうしたものを網羅した辞典を
日本の国につくっておかなければいけないのではないかと申し上げるわけです。
これは後からもう少し詳しくやりますけれ
ども、辞書というのは、たった
一つ完璧なものがあればいいというわけにはまいりませんで、これは学問的に考えても複数、二つないし三つあってよろしいわけです。ですから、
一つには
文化庁長官が国立国語研究所に命じて官選の辞典というものをお進めくださるがよろしいだろうし、そのほか民間の方に委嘱して、これに国庫補助をしてつくらしていくというようなこともしなければならぬのではないか。これが二つ目です。
それから第三番目は、文部
大臣、小、中、高の学習指導要領の改定にいま努力しておられますけれ
ども、特に国語の
教育について
配慮しなければならない点が
幾つかあるのではないだろうか。このことについて申し上げておいて、お考えを承っておきたい。
以上三つの問題についてここで時間を使わせていただきます。そのほかあと二、三の問題を、時間があればなお追加させていただきたいと思っております。
そこで、順序として学習指導要領の問題から入っていきます。
学習指導要領を見ますと、小
学校におきましても中
学校におきましても高校におきましても、真っ先に出てくるのが国語でありまして、そのまた真っ先に出てくるのが「生活に必要な国語」云々と、こう出てくるわけです。「生活に必要な国語」というのは一体どの辺に考えていらっしゃるのだろうかという問題であります。
中
学校の指導要領を拝見いたしますと、「目標」のところに「国語の特質を理解させ、言語感覚を豊かにし、国語を愛護してその向上を図る態度を養う。」と大変いいことが書いてあるわけです。それから、「各学年の目標および
内容」のところには、一学年には「ことばに関する
基本的な知識を得させて理解と表現を正確にするようにさせる。」二学年のところには「ことばに関する知識を深めて理解と表現を的確にするようにさせるとともに、国語の特質について気づかせる。」三学年には「ことばに関する知識を整理して理解と表現をさらに的確にするようにさせるとともに、国語の特質について理解させる。」このように書いてあります。私たちはこうした指導要領のもとでもって国語を教わったわけではございませんけれ
ども、国語の問題というのは別に専門家だけの問題ではなしに、私たちが全部利用者であり、またそれを後代に伝えていく、望むと望まざるとにかかわらずこういったことになっているわけですから、ここで
基本的なことについて文部
大臣の御見解また
文化庁長官の御見解を承っておきたい。
そこで「生活に必要な国語」、これは一体どの程度に考えていらっしゃるのだろうか、これをまず承っておきたいわけです。