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1977-05-17 第80回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月十七日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 西宮  弘君    理事 青木 正久君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 砂田 重民君    理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君       関谷 勝嗣君    友納 武人君       中西 啓介君    中村  靖君       平泉  渉君    堀内 光雄君       中村  茂君    草川 昭三君       宮地 正介君    小林 政子君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省保険局長 八木 哲夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         水産庁漁政部水         産流通課長   塩飽 二郎君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ————————————— 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     草川 昭三君   藤原ひろ子君     小林 政子君   依田  実君     大成 正雄君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     石田幸四郎君   小林 政子君     藤原ひろ子君     ————————————— 五月十四日  公共料金値上げ反対等に関する請願(新井彬  之君紹介)(第五〇七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 西宮弘

    西宮委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  目下、運輸委員会において審査中の内閣提出国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について、運輸委員会連合審査会開会申し入れを行いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西宮弘

    西宮委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 西宮弘

    西宮委員長 物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平泉渉君。
  5. 平泉渉

    平泉委員 一番初めにお伺いしたいのは、コンシューマーズ・リポートアメリカで非常に行われている雑誌がございますね。消費者リポート。今度の国民生活白書を拝見いたしますと、比較情報誌購入ということで、わが国では二千人に一人だが、アメリカ西ドイツでは百人に一人で、二十倍の負担をしておる、国民負担が足りぬぞ、こういうことを書いておられるのですね。果たして国民負担が足りないのか、それともそういう買うようなものがないのか。それはやはり買うものですから、商売ものだから、これはやはりだれが見ても飛びつくような雑誌でないと買わない。一体、日本ではそんな負担をするだけのものがあるのですか。
  6. 井川博

    井川政府委員 先生がおっしゃいますのは、商品比較テストを記載した消費者雑誌ということだろうと思うわけでございます。日本におきましても、比較テストというのは国民生活センターでも行っておりますし、そのほか民間では「暮しの手帖」あるいはまた消費者協会等で行っているわけでございます。ただ、はっきり申しまして、アメリカ民間で行っております商品比較実態というのは、非常に広範に、しかも権威を持って行っておるわけでございまして、これに対して一般消費者が物を買おうとする場合に、常にそういう雑誌を見てから買うという習慣になっているようでございます。その違いが、いまおっしゃいましたような、要するに、そういう機関はあるし、比較テストは行っておりますけれども消費者がまだ基準とするところまでいっていないというのと、それからもう一方では、すでにもう信用があるために非常に手段が普及しているという違いがあることは事実でございまして、われわれといたしましても、今後消費者が頼るべき商品比較テスト情報というふうなものは大いに出していかなくてはならぬと考えておるわけでございます。
  7. 平泉渉

    平泉委員 どうしたらいいですか。
  8. 井川博

    井川政府委員 基本はやはり商品比較テストというものをもう少し幅広く充実していくということだろうと思います。そういうことで、まず中心になります国民生活センターが現在も比較テストをやっております。しかし、設備人員等関係で年間十機種程度ぐらいしかやっておりません。こういうことでは一般消費者の要望にもこたえられない。それからまた、御案内のように、国民生活センター地方消費生活センター中心機関という役割りを持っておりまして、そういう地方からも、いろいろな意味での商品比較テスト機能の拡充を中央で図ってくれ、こういう声が強いものでございますから、五十二年度から五十四年度までの三年間にわたって現在の機能を倍にしようということで予算措置をとっているわけでございます。したがいまして、五十四年には少なくともいまの倍程度商品比較テストがし得る設備が完成するようにわれわれとしてはその準備を進めているわけでございます。
  9. 平泉渉

    平泉委員 コンシューマーズ・リポートというのは、あれは全然政府関係ないのですね。
  10. 井川博

  11. 平泉渉

    平泉委員 あれはもうかるんだと思うのですよ。もうからなければいかぬと思う。日本の場合、あれは政府でやっておられるので、相当予算——政府でやっておられると言ったらくあいが悪いかもしれませんが、相当予算も出ておる。読んでみますと、余り読めないんじゃないか。非常にお説教は多いけれども実態的に実のある情報が入っていないですね。いまおっしゃるように、非常にたまにある。特選をして、たとえば電気洗たく機の各メーカーについて一応調べるというのはあります。  コンシューマーズ・リポートは非常に読めるものなんですね。あれを読んで買う癖が日本にはないとおっしゃるけれども、ないのでしょうか。そういうものを買えるような状況、そういう基礎的なデータというものがすぐに手に入るのかどうか、そういう商売をやれる状況になっているのかどうか、もう少し問題を掘り下げてみていただけませんか。私、これは非常に大事なことだと思うのです。
  12. 井川博

    井川政府委員 一つは、国民生活センターという政府関係機関でやっているということと、それから民間民間立場で自由にやるという立場の違いがございます。そういう意味で、国民生活センター商品比較テストの方は、ある程度客観的事実だけを公正に消費者皆さんに伝えるという立場にとどまらざるを得ないわけでございますが、この点、純粋な民間ですと、もっと立ち入った立場からいい悪いというふうな判断が出せる。こういう違いが確かにあろうかと思います。それと同時に、いま先生おっしゃいましたように、広い商品についてたくさんそれがあるということによって初めて、こういうものについてはあそこに載っておるというふうなことがやれるわけでございますが、日本のいまの現状では、そうたくさんの機種について、ない。したがって、反対から言いますと、そういうものについてあるかどうかも消費者皆さんはよく御存じないという点があろうかと思います。したがって、一方におきましては、そうした商品比較テスト機能を充実して広くそういうものを行うということが一つ、広く行うことによって消費者がその比較テストがあるというふうなことを感づかれますと、これはやはりそういうデータを求められるということになろうかと思います。現状は、大体、中央国民生活センター等のそうした比較テスト情報地方消費生活センターに行っておりまして、一部地方のそうした関心のある消費者皆さんは、地方消費生活センターへ行かれてそこらあたりを検討されておるということでございますが、まだまだアメリカ等に比べればきわめて利用の程度は少ないと申さねばならないと思います。充実してまいりたいと思います。
  13. 平泉渉

    平泉委員 長官、私、これを特に取り上げたのは、最近、広告の問題が非常にあるわけですね。長官は大変御専門家で、広告についての税の問題とか、いろいろむずかしい政策問題が出てきておるわけですが、いま、われわれに与えられている商品に関する情報というものが非常に偏り過ぎているのじゃないかということで、それについて騒がれている。そうなると、消費者商品情報を提供するという仕事は、マーケット経済をやっている国ではこれをやらなければ——どうも物価対策といいますと、おたくの方では第一番に独占政策が出てくるのですけれども独占政策というのはマーケットエコノミーに対する一つ対抗力のものであるという認識はあっても、それだけでなしに、同時にこういう商品品質についての情報というものは非常に大事なことであります。外でわからないブラックボックスの技術が非常にふえてきている。そういう中でこれはぜひ何とか推進をしていただきたい。  おたく白書を見ますと、どうも消費者認識が少ないのだと国民をおしかりになる方が先に立っているのですけれども、しかし、われわれ幾らそういう関心を持っても、情報が手に入らないのでは仕方がない。せっかく政府相当の資金をお出しになって国民生活センターという——これは物特もそこの視察に行っておるわけでございますけれども、そういうところが運営されているにもかかわらず、それがベストセラーになる傾向がどうもない。せっかくの政府予算をお使いになっているのでございますから、民間から本当におもしろいこういう情報雑誌が出られるように誘導をなさるという行政をなさるおつもりはないか、あるいは、しばらくの間、政府が自分でおやりになるならもっと、たとえば国民生活白書の中で具体的な情報を現在の法の範囲内でできる限りおやりになれる、そういう努力をもうひとつしていただけないか、ひとつ長官からお願いします。
  14. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの平泉先生の御提案、私も全く賛成でございます。賢い消費者になることが必要であるし、賢い消費者になるためには正確な情報を持つことが必要でございます。たとえば東京うまいもの店とか、そういう食堂とかホテル、レストランについての情報の本も出ておる、あるいはホテルとか観光旅館についての一つのランクがつけられているとか、そういう形での情報はかなり進んできたと思うわけでございますが、ただいまお話しのように、個々の商品についてのもう少し的確な情報というものをもっと把握して、これをわかりやすい形で消費者に伝えていくということは、これからの課題であろうかと思うわけでございます。  実は国民生活局が誕生したのが昭和四十年の六月でございますけれども、どちらかというと、日本行政消費者行政という点では必ずしも十分でなかった、また今日でもまだ十分ではないという感じを私自身持っておるわけでございまして、今回、行政機構改革のさなかでございましたけれども、昨日付で消費者行政のために消費者行政の第一課と第二課というふうに課を二つに分けました。そして充実をしたということでございまして、非常にささやかなものでございますけれども消費者行政をもう少し充実していかなければならないという姿勢を示したものでございます。幸い新しい井川国民生活局長は非常に積極的にこの問題に取り組んでいこうという姿勢をいま示しておりますし、私自身がひとつ国民生活局、また消費者行政というのを経済企画庁中心部に据えたい、そういう意欲を実は持っておるわけでございまして、現時点でとらえますと、御指摘のように、非常に足らないところだらけではなかろうかと思いますけれども、いろいろな御提案をいただきまして、一歩ずつ進めてまいりたい、そういう気持ちでございます。
  15. 平泉渉

    平泉委員 社会主義経済の場合だと、こういう消費者サイドにおける情報というものがたとえあっても、生産の方面に必ずしもそれがすぐ影響できないというのが非常に大きな問題であります。そこで、マーケットエコノミーというのは、消費者がそこで買うか買わないかということが生産にすぐにフィードバックされるので、非常に能率のいいエコノミーだということになっておる。それが最近だんだん市場で買ってみてもわからない、こうなりますと非常に重大な問題だと思いますので、特に第一に取り上げさせていただきましたが、ぜひ御協力をお願いいたしたいと思っております。  いま長官のお話の中で、日本経済の中でどうもいままで消費者サイドというのはおくれていたんだという御発言がございましたが、私も、明治百十年、ここらでひとつわれわれの経済の来し方を振り返って、これからの国民的合意による経済発展というものを考えなきゃならぬ非常に大きな転回点に来ておると思うのであります。  その中で考えますと、そろそろわれわれも、一体ある物が高いとか安いとかということ、前年同月比何%上がった、何%下がったというのは数字統計で最近非常に精密に出てきましたけれども、果たしてそれだけで物価対策あるいは国民生活を守るという経済政策として妥当なのかどうか、そもそもその基準になっている価格そのものがどういうふうになっているのか、そういう点を私はやはり注意をしていかなければならぬと思う。  その際、やはり人間は衣食住と申しますので、食生活が非常に大事ではないかと思います。物価対策といえば生鮮食料品価格の値上がり、値下がりが問題になるわけですけれども、その中で、先般来この委員会でも堀内委員から牛肉の問題について、また今度は魚の問題について、特に現地調査を含めた特別な調査委員長のところでなさる、こういうことでございますが、私、きょう特に、時間も限られておりますけれども、大体国際的に見て日本食料品というものはどのくらいの値段なのかという点について、ひとつ情報をできる限りいただきたいと思うわけでございます。  さしあたって、私の方で資料要求をいたしましたところが、出てきた資料の性格がはなはだ問題があるのではないかと思うのですね。これは経済企画庁からいただいたのですけれどもフィナンシャル・タイムズ特派員が方々回って、ホテルで五日間泊まっていろいろやってみたというのがございますね。それから住友商事広報室というところで、これは恐らく商社の各特派員というのですか、現地駐在員の方々を通じてやったというのをいただきました。それからもう一つ、これは経済企画庁独自でいただいたのもございます。数字大変ばらばらでして、全然わからぬのでございます。つまり、ある情報による価格とある情報による価格とが非常にばらつきがある。物によると、非常に日本が安いというような情報が出されているものと、大変高いという情報が出ているのと、ばらばらになっているわけです。この辺、まず基本的に日本の食物の消費者価格、これについて調査をやっておられるのか、またやられるのか、その辺のところをひとつ担当、専門の方からお伺いいたします。
  16. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 家計を構成いたします各品目につきましての国際比較というのを組織立ってやっているわけではございませんで、特にただいま御提出した資料の中で見てまいりますと、どうも生鮮食料品などは、日本でもそうなんでございますけれども季節的に豊作、不作というようなものが価格に大きく影響して乱高下するということがあったりするものですから、どうもなかなか的確な比較はできない。もちろん、その間に品質の問題もあるかと思うわけでございますが、そういうものを統一的に比較するということになりますと、かなり精密な調査を行わなければならないと思いますので、その点についての的確なお答えができないのははなはだ申しわけないと思います。全般的に、いま収集できる資料は、いまおっしゃったように、あるものはフィナンシャル・タイムズだとか、あるものは住友商事調査だとか、非常に区々でございますけれども、そういうものから見てまいりますと、日本食料については、米のように日本が特殊な生産物として生産を行っているようなものについての比較というのはなかなか困難でございますが、野菜とか魚なんかで見ますと、非常に幅がございまして、大体のところは、野菜などは、その数字から見る限りにおきましては、余り差がないのじゃなかろうか。魚についてもそんな程度じゃなかろうかと思います。特に一番高いと思われますのは食肉関係でございまして、これだけは明らかに日本の肉が高いという実態が出ておるわけでございます。  そういうようなことで、家計調査のようなものからの接近などをいたしまして、少しでも国際的な家計比較等について的確な判断を下せるようにいろいろこれからも勉強したいと思っておりますので、またそういう数字が出てまいりましたときには御報告をしたいと思います。
  17. 平泉渉

    平泉委員 日本では昔から余り食い物の話というのは詳しくやらない伝統があるのじゃないかと思うのですね。これはどうもわが国の文化のなせるところかもしれませんが、私は大変食い物関心を持っておるわけなんです。それで、これは人間基本でございますから、それがやはりちゃんと食えなければ政治にならぬと思うのですね。  私はこの間、堀内委員が御質問のときに、長官から日本エンゲル係数について御答弁があったのを拝聴しておりまして、大体三割程度じゃあるまいか、アメリカは二割程度であるけれども西ドイツは三割近いのだから、大体同じところだ、こういう御答弁をなすっておられるのを承ったのですけれども、このエンゲル係数というのも、食っているものの質によるわけですね。非常に粗末なものを食わされておってエンゲル係数三割なのか、相当のものを食べておって三割なのかということは、これはもちろん大差がある。そこで、結局一々の食べ物についてブレークダウンしなければならぬということになってくるわけですが、いまの局長の御答弁だと、どうもこれはいろいろなむずかしい点があるのだ、こうおっしゃいますが、果たして本当にそんなにむずかしいかということなんです。たとえば季節によって不作があるのだとおっしゃるけれども季節によって不作があるというのは、これは農林関係の方は皆さん御存じでしょうけれども、品種は初めからわかっているわけですね。不作のないものも非常に多いわけです。それはやはり基本的な蔬菜類の中にもあるわけでございます。それから、たとえ不作があった場合でも、季節関税などをやって全体としてそれに代替し得るものを市場に供給しておる、そういう体制になっておるものも農林物資では御承知のとおりあるわけですから、全体として柑橘類のものならどのくらい、あるいは野菜で言うならば相互代替可能な野菜といえのは、いまの食生活の中で大体わかるわけです。そういうふうなものについて、私はぜひこれはやっていただきたいと思うのです。これは各特派員とかなんとかというものの主観的な情報でなしに、ひとつ権威をもって政府側調査をしていただきたい。  私はなぜこういうことを言うかといいますと、後でだんだん申しますけれども、これからの日本農林政策、こういったものをわれわれ国民で合意していく上において非常に大事な基礎データではないかと思います。その辺は本当に政府調査しようというお気持ちがあるのかどうか、ぜひ御答弁をお願いいたします。
  18. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 最初に申し上げましたように、組織的、体系的にこういう価格調査比較をいたしておりませんので、いま先生の御指摘の点については私どもも十分これから関心を持って調査してまいりたいと思います。
  19. 平泉渉

    平泉委員 どうも余りぴんとした答えがすぐ返ってこないのですが、たとえば私、ここにきょう一つ持ってきたのです。これはアメリカの非常に有名な週刊誌USニューズ・アンド・ワールド・レポート、これを見ますと、もうほとんど毎月こういうのが出てくるのですが、ひき肉の一ポンド、ベーコン、ポークチョップ、それからお魚、かん詰、コーヒー、砂糖、こういったものについて全米の十ヵ所の都市でのスーパーマーケットの全部の値段情報で提供されているわけですね。これを見ますと、たとえばアメリカでも、ひき肉値段一ポンドというのが前月と比べてどれだけ上がったというのが全部出ておりまして、しかも各地域によって非常にばらつきがあるということがぴしっとつかまえられているわけです。日本でこれはなかなかつかまえられないとおっしゃるけれども現実アメリカではこれはつかまっているのですね。どういう基準でつかまえているかということはいろいろ問題はあるかもしれませんけれども、一応の基準というものは考えれば必ずあるわけです。  そこで、現実にこの国民生活白書を見ましても、おたくの方の調べの中でも、国民が、これから物価が上がっていく中でどういうものの消費をふやしたいか、どういうものの消費をふやしたいがこれはどうしても切り下げられないのだというようなものの統計が出ているのです。その中での第一は食生活食生活については何とかいまの消費をふやしたいのだ、こういう気持ちがここに出てきているわけですね。その辺を見ますと、まだまだ私は、いまの日本食生活についてはエンゲル係数三割とおっしゃるけれども、本当はもっと使いたいということになってしまうのではないか。エンゲル係数は恐らくもっと向上するのではないか。この辺の見通しはどうですか。国民局長でもよろしいし、物価局長でもよろしいです。
  20. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 やはり全体としていまの日本エンゲル係数は、先進国の中では高い方でございます。過去の推移を見ましても、毎年下がってきておりまして、現在おっしゃったように三〇%、しかしドイツは三〇を少し割っておりますし、アメリカは二〇%近く。私ども将来のそういう生活の展望をいたしますときに、やはり所得が上昇してくるに伴いましてエンゲル係数は下がっていくというふうに予測をいたしております。今度の五十年代前期経済計画に際しましては、五十年度が三四%程度であるものが、約四%下がって五年後には三〇%ぐらいになる、そのような想定をいたしております。実際問題として、食費の方は質のよいものをさらに求めるというような意味での外食などのウエートが非常に高まっていくと思うのでございますけれども、カロリーその他たん白質、そういうものは、現在日本食生活厚生省栄養審議会基準を上回る程度になっておりますし、そういう意味で、これから食生活を充実していくということよりも、むしろ外食たくさん食べる、そういうような外食の機会をたくさん持つという形での食費がふえていくと思うのでございまして、全体として見ますと、先進国タイプの、だんだんエンゲル係数が下がっていくという方向をたどるだろう、そういうふうに考えております。
  21. 平泉渉

    平泉委員 どうも私、局長さんと認識が違うのですよ。この国民生活白書の中でも、もう食生活はかなりよくなったのだ、まだいわゆる西洋と比べると八割ぐらいだけれども、これは気候も違う——これもよく意味がわからないのですが、それぞれそういった発言の裏にはどこかの権威あるリポートが入っているのだろうと思います。それは日本は少し平均気温が夏高いから、寒いロシアに比べれば動物性脂肪は要らないのだとか、いろいろな議論があるのかもしれません。わからないけれども、そういう気候、文化の違い、趣味の違いなんかを加味する、体格も違うのだ、だからこの程度でも相当いいじゃないか、こういうようなことがこの国民生活白書、私のいただいたのにはあるのです。しかし、実際に国民の要望の方は、もっとたくさん副食物はふやしたいのだ、こう言っておられる。こういう統計が出てきている。これは私、やはり問題をはっきり正面から見据える必要があると思います。  いま日本人の体格は違うとおっしゃるけれども、われわれはいま、もはや世界のGNP大国という段階に入って、われわれは小さく倹約でやっていくのだといってもなかなか世間に通用しませんし、やはりわれわれの日本生活というものはどういう生活なのか、本当に国民の間にそこのところで不満はないのかという点を、もっと正面から、どうか経済当局は見ていただきたい。見た上で、高いなら高いで仕方がないです。しかし、その高い理由というのは何なのかという点もはっきり明らかにして、そうしてそれならその高いものをどうやってこれから国民に納得してもらうのかという手だてを構えていかなければならぬのじゃないか。  それは国民はいままで、さっき長官もお話しになったように、この明治百十年の間にいろいろな経済生活を経験してきたわけでございます。軍備は非常に一流だけれども国民生活の水準は言うに足りない段階もございました。輸出産業は大変伸びているけれども国内の生活水準はまだまだ上がらないという時代もわれわれは経験してきた。いま私ども本当に真剣に考えなければならないのは、よく巷間で言われる、日本の円は外では強いけれども中では弱いのだ。それで外国の方から、おまえの方は一体どういうことになっているんだというのが、ついこの間の福田さんの行かれた先進国首脳会議でも問題になる。百十年たってここまで成熟してきたわが国経済が、外貨獲得には非常に向いているけれども、国内の国民基本的な生活水準を相当なところまで高めるという点においては非常にまだ問題が残っているということであるならば、やはりその実態政府は率直にひとつ、ぜひ調べ求めて、発表していただいて、それに基づいて強力な政策を立てなければならない。  何か私は、演説になってしまってはなはだ失礼なんですけれども、どうもこの国民生活白書を見ますと、これは政府の文書にたまたまありがちなんですけれども、全体が少し楽観的に過ぎる。むしろ問題点を率直に剔抉していただいて、その上で、だからこういう農林政策がどうしても必要なんだ、大いに国民全体でコンセンサスを持ってやってもらいたいというような訴えかけがあった方が、われわれとしても国民に呼びかけやすいわけですね。何となく、何とかうまくいっているはずですからそんな問題ないでしょうというふうに言うよりは、あるけれども、だからこうするのだというふうに、やはり率直にぜひ言っていただきたいと思うのですが、長官、その辺ちょっと御感触はいかがでございますか。
  22. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、食生活がだんだん洋風化してきた、それは具体化にはどういう形であらわれたかと申しますと、明治以来米の消費がずっと減ってきました。したがって、主食よりも副食の方がだんだんふえてきた。これはどういう形でふえてきたかと申しますと、でん粉質から動物性たん白質にだんだんウエートが移ってきた。それからビタミンその他、そういう意味での果物の消費がふえてきた。そういう形で、一言にして言えば、洋風化してきたと言うことができると思うのであります。  しかし、私は、ちょうど二百海里の問題を迎えまして、魚の問題がいまいろいろな焦点になってきている。日本の場合に畜産を非常に伸ばしてきておりますけれども、これは外国からえさをたくさん入れて日本の畜産というものが伸びてきている。したがって、穀物をそのままの形で人間食生活をする場合と、家畜のえさとして、家畜の腹を通じて畜産物として、人間食料になる場合とでは、土地の要する量が七倍から十倍になってくるということで、畜産物というのは多くの土地を要するということであります。いわば竹馬に乗った日本の農業という形になっておるわけでありまして、私はやはり日本的な食生活というものをこのあたりで少し考えてみる必要があるのじゃなかろうかということを考えております。  これは畜産物、お魚あるいは日本国内で生産できる農産物、そういうものを取り合わせたいわゆる日本的な食生活、たとえば豆腐というようなものはすばらしい一つ日本的な食品ではなかろうかと私は思うわけであります。これにゴマを入れてゴマ豆腐というのもまた一つのすばらしい日本的な食生活ではなかろうかと思うわけでありまして、そういう洋風化と同時に、日本的な食生活というものを、ひとつ生活の知恵、国民の知恵の中で追い求めていって、これと農業政策というものがマッチしていくのが筋道じゃなかろうか。  非常にむずかしいことで、これは画一的に求めるべきものではないと思いますが、ただいたずらに洋風化し、肉の消費がふえてきたからどうもいいんだという感じでなくて、やはりこのあたりでもう一度食生活の問題を基本的に考えてみるべきではなかろうかというのが、私は最近言い出したことじゃなくて、かねてからの私の実は持論でございまして、こういうことをひとつ農林省とも、また経済企画庁国民生活の場からも考えてまいりまして、一つのある程度の目標を定めて、これに向かって農林政策日本国内でどれだけのものができるのか、どれまで外国に依存するのか、また同時に、一たん緩急あれば、と言うとちょっと言葉が大げさになりますけれども、仮に外国からそういう輸入が一時的にしろ途絶した場合に、一体どういう食生活が確保できるのかというようなことも含めて考えるべきでなかろうかと実は思っておるわけでございます。したがいまして、いま先生のお話しの点は十分基本に据えながら、そういうものをこれから模索してまいりたいと思っておる次第でございます。
  23. 平泉渉

    平泉委員 いま長官の御答弁、私、大変に意見一致しているのですよ。ぜひそういうことを推進していただきたい。やはり日本食生活は明治以来非常に混乱してきたということを私は非常に感じます。ことに戦後は欧風生活というものが非常に入ってきたわけですが、その中で本当に自信のある食生活というものをわれわれは見失ってしまう。そのために価格の点でも大変アンバランスが生じたり、あるいはそれを無理やりに何とか押し込めようとするために事実上いろいろな問題があります。たとえば具体的な例を申し上げますと、わが国のソーセージというものは、一体、中に詰まっている肉は何かということを調べてみる必要があるわけです。これはソーセージという食品がヨーロッパにあるから、あるいはアメリカにあるから日本でもなければならぬ。それはある程度の妥当な範囲でなければならぬということになると、今度は質が違ってくるわけですね。これは羊頭を掲げて狗肉を売るという言葉がございますけれどもわが国食生活にはそういう色彩が非常に出てきておる。わが国のハンバーガーというものは、オール・ビーフ・ハンバーガーはほとんど見当たらない。これもやはり羊頭を掲げて狗肉を売るということになってくる。  やはり私どもそういう国民生活実態というものをもう少し正面から見て、そうしていま長官がおっしゃったように、本当の日本経済現実というものを見据えた情報国民に提供し、その中でコンセンサスがそろっていきませんと、私は農林水産の方の常任委員でございますけれども、どうもこれから先の日本の農業政策について国民のコンセンサスを絶えず得ていくためには、よほどの努力が必要じゃないかと私は思います。  そのためにも、まず日本人の食生活はいかにあるべきかということについて大いに公論を巻き起こしていただきたい。そうでないと、何か表面を糊塗した中でだんだん不満が高まってくる。いま現実に、私、かなり広く選挙区の皆さん方に頼みまして、実際に晩御飯に食べていらっしゃる献立をずっと調査いたしておるのであります。相当広く聞いて回りますと、大変皆さん苦労をした献立をしておられる。それから先日も青果市場に私ども参りましたときにも、見ておりますと、どうも野菜品質についての感覚が大分私は変わってきていると思うのです。わが国のトマトというものはたとえばどういうものなのかということも、一度調べてみる必要があると思います。確かにトマトをグリーンハウスで年間を通じて栽培できるということは、農民の所得というものを考えますと非常に大きな技術開発ではございますけれども、その中で、それではトマトというものはどういう味のものかということになると、恐らく本当の認識とは変わったものが市場に出回って、それしか手に入らなくなってきておるというような現実、そういう中を見据えまして、やはり本当の質というものと一致した食生活現実、これをわれわれは本当に調査をしていただき、またわれわれもそういうことについての認識を深めて、その中で長官がおっしゃったようなジャパニーズ・ウエー・オブ・ライフですか、日本生活のあり方というもののコンセンサスをそろそろ打ち立てていかなければならぬということを本当に痛感いたします。  いま大事なことを長官おっしゃいましたけれども、大豆にしても、いまわが国は恐らく九〇%輸入でございますから、やはり輸入原料をもとにしたジャパニーズ・ウエー・オブ・ライフですが、ただ、そういうわりあいに安価なものを中心として、日本では食生活値段のコストを引き下げることができるのだという例として長官はお示しになったんだろうと理解いたします。まあエンゲル係数のある範囲内で質の高い、なるほど日本ではこういうものをこういうふうに食べていれば、おいしくて栄養価値のあるものを実質的に食べられるのだなという辺のコンセンサスづくりというのは、私はいまの段階の日本で、また国際的にこれをアピールしていかなければならぬだろう。日本はなぜ農産物品についてこのような貿易政策をとっているのかということを、本当に世界の市場ではっきりと答えなければならない状態にいま来ておるわけでございます。そういうときにその辺が非常にぐらついておりますと、豪州の牛肉問題を初めいろいろな問題、絶えず閣議の席で長官も大変御苦労だと思いますけれども、そういう問題があるわけでございますから、ぜひお願いをいたしたい。  私、食生活だけを申したようですけれども、実はきょうはいきなりの時間でございましたので、皆さんとも十分連絡、打ち合わせもできず、余り意味のない問答になってはいけませんから、問題点だけちょっと先にお願いをいたしておきたいのであります。  国民の貯蓄性向の問題ですが、これもこの国民生活白書で非常に取り上げておられるわけです。そこで、先般経済企画庁長官と松下幸之助氏との間で論争が行われた。これは私、紙上で拝見をいたしたのでありますが、さすがに長官は非常に大事な問題を論じておられると思いました。また松下幸之助氏もなかなかおもしろい議論をしておられる。  そこで、御存じのとおり、わが国のGNPというものがどういうふうに使われているかという段階で、日本では非常に貯蓄性向が高いのだ、個人消費はいわゆる欧米諸国とは非常に違うのだ。そこで、その貯蓄というのはどういう形になるのだという問題について、投資物件はどうなっているのか、この辺一つ大きな問題があると思うのです。国民は長い間貯蓄をしてきた、国債を買った、郵便貯金に貯金をした、さらには銀行に定期預金をたくさん積んだ。貯蓄の行った先についての統計がございますが、圧倒的に銀行あるいは郵便貯金にそういう形の定期性預金という形で行った。そういう金は何に使われているのか、そういうことで循環しているわけですが、どうやら高投資、高成長の時代が変わってくるという認識の中で、この貯蓄性向というものをどういうふうにこれからわれわれは考えていったらいいのか、それをどういうふうに国民経済の中で考えていくべきか、非常に大きな問題があると思うのですね。その辺をめぐって、この間、長官はあの中で論争をおやりになったと思いますが、大きな問題だと思います。これが一点。  もう一つは、これはとても御答弁の時間をいただけないかもしれませんけれども、私、先ほど衣食住と申しましたが、国民の住生活の問題。先般のロンドンの首脳会議で、外国側からはわが国の住生活についての批判が相当出ている。経済企画庁あたりで純粋にこの問題に取り組んだ白書をぜひお願いしたい。食生活白書と住生活白書をお願いしたいのですが、そのポイントは、土地の売買、家賃、あるいは家を建てたりすることのために行われる貯蓄、あるいはそれを今度は借りてきて金利を払う、そういうセクターに大変大きな金が流れていくわけでありまして、経済もそちらの方に大きく影響を受けるということが国民経済の中でどういう意味を持つのか、日本経済発展経済生活というものをどういうふうにゆがめているのか、その辺、真っ正面に見据えなければならない段階ではございませんか。  私は、この二点がこれからの日本のことを考えますときに特に大きな問題だと思いまして、一例を申し上げたわけです。私は、この二点に非常に問題意識を持って、これから物特の場で、あるいはほかの委員会の場でお伺いしてまいりたいと思いますけれども、もう時間がございませんので、さしあたって問題提起という段階で長官の御意見を承らしていただきたいと思います。
  24. 倉成正

    倉成国務大臣 第二点の住宅の問題からお話し申しますと、日本の住宅は、量的には一応充足した、しかし、質的に非常に問題がある。たとえば国民一人当たりの所得をとりまして日本とイギリスと比べた場合、日本の方が若干高いと申しましても、現実にイギリスに行って生活するということになると、どうしても向こうの方がまだいいのじゃなかろうかという実感を持ってくる。その原因は何だろうかということになると、結局、住宅の問題に尽きる。日本の場合は住宅が非常に貧弱であるということではなかろうか。したがって、住宅に対する国民の願望は非常に強いわけでございます。昭和五十年で大体十一兆、五十一年で十三兆、五十二年は見通しで約十五兆という住宅投資が、これは民間だけでございますが、行われる予定でございます。しかし、これは土地代を除いております。いまの貯蓄、いまの金利、いまの税制、これはまだ不十分でありますけれども、上物だけであれば、もう少しインセンティブを与えれば住宅を持ち得る環境にある、しかし、土地の問題がこれに必ずしもついていない。したがって、たまたま先祖伝来の土地を持っておった、あるいは土地を保有しておる人は住宅の取得が可能であるけれども、土地を全然持たない人が新しく住宅を持つのには若干問題点があるという意識を持っております。したがって、現在の貯蓄、収入あるいは環境からいたしましてどういう形で住宅政策を展開していくか、またこれを持つことのできない人たちのための公的住宅をどうして確保するかということ、これは主管官庁とも十分御相談をしながら、国民の最大の願望である住宅政策を積極的に展開してまいりたいと思っておるわけでございます。これは私個人の私見でありますけれども、住宅省ぐらいはあっていいのじゃなかろうか、朝から晩まで住宅のことだけを考えている専任の大臣があってしかるべきじゃなかろうかとさえ私自身は思っておるわけでございます。  それから、一番目の、個人の貯蓄は、ただいまお話しのように、物価が非常に高い段階、ある意味では目減りする中で銀行預金あるいは郵便貯金に大部分が吸収されておる。あの狂乱物価の時代には、ささやかな貯蓄の中から土地に投資をしていくという動きもございましたけれども、現在では銀行預金あるいは郵便貯金という形で行っておりまして、そのほかの投資、たとえば国債も若干投資の対象に出てきておりますけれども、株式の投資とか、欧米諸国で見られるような貯蓄の利用と日本の貯蓄の将来の行き先が大分異なっておる。したがって、有利なと申しますか、日本人が将来安心して貯蓄を利用できるような方向に行くということが一つの問題点だと私は思いますが、それと同時に、住宅あるいは耐久消費財で充実していかなければならない面がまだかなりあるわけでございますから、これは社会保障の問題とも関連するかもしれませんけれども、そういう耐久消費財なり住宅なりにもつと安心して収入を向けることができるような環境というのも大事じゃないか。特に今日の段階においてはそういう感じがいたしておるわけでございまして、貯蓄性向が非常に高いということが投資を興す一つの原動力になったことは事実でありますけれども、これから先はそういうことも含めて考えていくべきじゃなかろうかと考えております。まとまった意見ではございませんけれども、感じとして申しますと、そういうことではなかろうかと思います。
  25. 平泉渉

    平泉委員 時間が参りましたので、これで終わりますけれども、最後の二つの問題は、実はただ題目予告でございますので、この次、非常に具体的な問題を中心に、また改めて時間をいただきたいと思います。きょうはこれで終わります。
  26. 西宮弘

    西宮委員長 平泉渉君の質疑はこれで終わりました。  次は、武部文君。
  27. 武部文

    ○武部委員 私は、まず最初に、五十一年度の物価の上昇の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  政府の公約は八・六%、途中で若干の修正等の見通しが出たわけですが、実際には九・四%という大幅な物価上昇の結果が出たわけであります。これは少なくとも総理が国民に何回も約束をしたことが崩れたわけでありますが、一体この原因は何であると思っておられるのか、その点をまず最初にお伺いをいたしたいのであります。
  28. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 五十一年度の消費者物価は九・四%という実績になったわけでございます。これに対応いたします五十一年度の見通しは八・六%ということでございますので、〇・八%上回ったということになったわけでございます。  この上回った理由についての御指摘でございますけれども、前々から申し上げておりますように、一月、二月の気象上の問題、異常寒波が例年にない大規模なもので、かつ広域にわたったわけでございますが、その結果、一−三月の間に野菜が約五割くらい値上がりするというようなことが、見通しとの関係から申しますれば、出てきたのではないかというふうに私どもは考えております。  それから、九・四%というものを分析してみますと、年度間で見たものでございますけれども季節商品で一六・八%、季節商品を除いたところで八・七%というような上昇になっておりまして、全体としていわば環境に非常に左右されやすいものとしての生鮮食品等につきましての上昇率が高かった。季節商品を除いたところでは八・七%ということで、この辺の数字については、基調としての見方をいたしますれば、安定化の方向にあるのではないかというふうに理解をいたしております。
  29. 武部文

    ○武部委員 九・四の上昇率の内訳のお話がいまあったわけですが、そのうちで食料品の占める率が三・四、雑費の占める率が三・七という数字を私ども承知しておりますが、これは間違いでしょうか。
  30. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 いま御指摘の中身は、かなり中分類にわたっておるものではないかと思うのでございますが、私どものあれでは、先ほど申し上げましたように、季節商品以外のところで見まして、いまの雑費等に当たると思われますサービス関係が年度間で九・一%上昇している。これは寄与度にいたしまして約二・一%になるという数字は持っておるわけでございます。
  31. 武部文

    ○武部委員 結構です。  三月までは九・四という数字が出て、あなたの方では季節商品、気象状況ということをおっしゃっておるわけです。私の方は、公共料金値上げの波及効果というものが相当大きい、国鉄運賃の値上げが五〇%あった、それの消費者物価指数に占めるパーセントは何ぼだ、これは数字上はよく出てくるわけです。問題は、それに便乗する値上げとか波及値上げというものは総理府の統計の中に出てこないということなんです。したがって、雑費というものの中に公共料金相当入っておる。だから、この九・四%になった原因としては、気象条件がああいうことになったということを否定はいたしませんけれども、やはり公共料金の値上げが相当大きな影響を与えたのではないかとわれわれは今日まで指摘をしてきたところです。  そこで、問題は四月です。四月の東京都区部の上昇率が前月比一・六%という大幅な値上げになった。現実にこういうことになっておりますが、一体その内容は何だろうか、どのように把握をしておられるか。同時に、五十二年度の物価上昇率を七・七というふうに規定しておられますが、こういう四月一ヵ月の上昇率等を見て、総理や長官が七・七%、七%台は大丈夫だということをおっしゃっておるわけですが、これについて見解をひとつ承っておきたいのであります。
  32. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 四月の前月比上昇率は一・六%でございまして、これを寄与度で見てまいりますと、季節商品は〇・一%、季節商品以外で一・五%ということになります。  四月の上昇の特徴は、季節商品が非常に落ちついた動きを示したということが第一点でございます。そのほかの問題といたしましては、民間の私立大学等の教育関係の費用の上昇、それから学習塾の月謝等が上がったこと、それから公共料金で、昨年国会で決めていただきました電信電話の基本料金の残りの分が四月から上がったというようなことで、公共料金が上がったというようなことが第二の特色かと思います。第三点には、これは季節商品の問題になるわけでございますが、全体として魚の値段が上がった。これは生鮮もそうでございますし、塩乾魚介も上がったということが第三の特色かと思います。  それで、この結果、五十二年四月の対前年同期比は幾らになったかということでございますけれども、八・四%という数字が出ておりまして、私どもとしましては、季節商品の動きがこういう落ちついた傾向を示すということによりまして、三月に非常に高かった物価というのが対前年比で八・四%にまで低下してきたということについて、季節要因というものが剥落してきたなという感じを持っておるわけでございます。  それから、年度間の七・七%との関係でございますけれども、昨年の四月の上昇率が二・三%でございました。昨年の四月に比べますれば、ことしの四月の月間の上昇率は非常に下がっておりますし、それから先ほど御指摘がございましたように、確かに五十一年度の公共料金相当大幅な上昇を示しておりまして、年度間の寄与率で約三・一%ということでございます。これが五十一年度の物価のレベルを相当高いものにしていたと思うわけでございますが、その三・一%という公共料金につきましては、私どもとしまして、先ほどの電話料金の値上げ、五月から行っております都市交通料金の値上げというものを織り込みましても、二%程度には抑え得るのではないか、こう思っておりまして、全体として卸売物価も落ちついておりますし、卸売物価から消費者物価へ波及してくる影響もそれほど大きくなることはないというふうに思いますので、七・七%の目標というものは達成できる、達成するために精いっぱいの努力をするということを考えているわけでございます。
  33. 武部文

    ○武部委員 この国会冒頭の総理の施政方針演説並びに当委員会における倉成長官のお話の中に、基調的には安定の方向をたどっておるというお話がございました。いまでもそのように思っておられるかどうかやそれをちょっとお伺いしたい。
  34. 倉成正

    倉成国務大臣 卸売物価については、御承知のとおり、安定基調にあることはお認めいただけると思いますし、消費者物価についても、ただいま物価局長が申しましたように、季節商品が確かに大きな値上がりをいたしたわけでございますけれども、また五十一年度は、狂乱物価時に非常に低く抑えました公共料金をある程度正常な状態に戻さなければならないということで、かなり大幅な値上げをしたわけでございますけれども、そのほかの物価の動向ということを考えてまいりますと、基調的に落ちついてきていると申しても差し支えないと思います。
  35. 武部文

    ○武部委員 つい先日、十三日に当面の物価対策というものが物価担当官会議で決まりました。担当の閣僚会議の了承も得ておられるようでありますが、私がまず最初にお伺いしたいのは、景気政策と物価政策の関係であります。  確かに、いま不景気の中で景気の回復ということが言われておるわけですが、いまの福田内閣の政策は、景気政策の方に余りにも重点が置かれておるじゃないか、物価政策がおろそかにされておるじゃないかというふうに実は考えるわけです。たとえば公共事業の七〇%を上半期に集中発注する、こういうことが決められておるようでありますし、ことしに入ってから二回の公定歩合の引き下げが行われた。こういうことから景気の刺激政策は非常に強く進められておるわけでありますが、その反面、それによって起こるインフレの懸念ということに対して、一体福田内閣はどういうことを考えておるだろうかということに大変懸念を持つわけです。そういう面から当面の物価対策というものが出たように思うのですが、この三点についてひとつお伺いをしておきたいのであります。  まず第一に、この項目は、公共事業が促進されることによって建設資材、そういうものの値上がりが考えられる。特に鋼材、セメント、そういうものが値上がりする危険があるからこれに対する対策を考えなければならぬ、こういうふうに言われておるわけです。このことについてはきょうは時間の関係で触れません。あと二つのことについて時間をとりたいわけですが、当然のことですからこれもぜひやってもらわなければならぬわけです。  円高の問題が第二項目に載っております。私どもは本委員会で為替差益による利益を消費者に還元しろということを石油問題を中心にして先日ここでやり合いました。なかなかこの実態をつかむことが不可能ですし、特に通産省の答弁は、為替差益の実態をどのように把握しておるのか、私どもは大変疑問に思いましたし、差益の金額についても食い違っておるようであります。そこで、だれが見ても歴然としておることは、石油業界が特に本年になって一月、二月、三月、四月、一月だけでも三百億以上の為替差益を得ておる。これはもう明白な事実であります。したがって、鉄鋼とか石油の化学製品あるいは素材関係産業、そういうものの原料の輸入コストが下がってくるということになれば、そこで利益が出るわけです。為替差益が出てくる。その分は製品の値下げに回すべきだ、これは当然のことであります。そうして値が下がればインフレの圧力は薄らぐわけですから、その懸念はないということになるわけですが、残念ながら今日そのような事態が起きてこないということはもう明白であります。これは景気刺激政策をとるにしても、差益を還元することによってインフレへの圧力というのは弱まってくるということは当然のことですから、これはきわめてやりやすいことだろうと思うのですが、一体そういうことが現実問題としてはどうなっておるだろうか、どのように経企庁は把握しておられるか、これをまず最初にお伺いしたいのであります。
  36. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 円高の影響というのが物価に反映すべきことは、私ども当然だと思います。非常に輸入依存度の高いわが国におきまして、円高ということは非常に好影響が出てくるわけでございますので、そういう点についての物価への反映についていろいろな手を打っていかなければならないと思うわけでございます。  最初におっしゃいました石油のことでございますが、石油につきましては、一円で一キロリットル八十円なり八十五円輸入価格が下がるということは出ておるわけでございまして、そういうようなことを頭に入れまして現在四月ころ打ち出された石油精製業者の元売り仕切り価格の改定につきまして、各需要家との間で交渉の段階にあるわけでありますけれども、容易には進まないという状況であるというふうに私どもは聞いております。これは何と申しましても、それだけの円高の利益があるのではないかということがやはり背景にございますのと、景気全体が緩慢化しているということもあるかと思いますけれども、そういう両者間の交渉の推移を見守るということで、かなり円高の問題というものについては適切な対応になるのではないかと思うわけでございます。ただ、灯油のような消費者が直接購入するものについては、これはほうっておけないということで、直ちにその関係につきまして元売り仕切り価格を変えないということについての措置はとっているわけでございます。  それから、私どもとしましては、灯油で申し上げましたように、やはり生活関係のあります消費財の問題については、やはり情報不足という感がございますので、そういうものについては輸入価格がどのくらい下がったか、そしてそれが流通の各取引段階でどういうふうに反映しているのか、そして最終の小売価格に対してどういうふうに波及をしているのかということについては十分調査をして、その情報を提供したいというふうに思っておったわけでございます。すでにその調査を始めておりましたけれども、全体として三十六品目を取り上げて、各省協力してやろうということで最終的にまとまったわけでございまして、それが先日の、当面の物価対策の三項目の一つの項目になっているということでございまして、こういうことで関係省庁の合意を得ましたものでございますから、これからこの線で真剣に調査を進めて、しかるべき対応をしていきたいと思っております。
  37. 武部文

    ○武部委員 為替差益の還元の問題というのは、私は非常に大事な問題だと思います。その為替差益の還元によって物価が抑えられる。そういうことになってくると、労働者の賃上げが現実に行われておるわけですけれども、差益が還元されて物価が下がれば実質所得は向上する、実質所得が向上すれば消費が拡大する、消費が拡大すれば景気を刺激する、こういうことになるわけで、そういう面で、私はこの項目を当面の対策としてとられたことについては賛成です。賛成ですが、少なくとも三十六品目というものについてはちょっと問題がありはしないかと思うのです。この委員会で為替差益の問題を話したときに、追跡調査をするということをおっしゃった。しかし、その追跡調査をしても六ヵ月以上かかるということをおっしゃったように私は記憶をしておるわけです。三十六品目というものをずっとながめて見ますと、ネクタイだとかハンドバックだとかレコードだとか、こういうものが入っておる。これじゃ総花的になってしまって、それで六ヵ月も七ヵ月もたってしまうようなことじゃ何にもならぬ。むしろその中にあるように、エビとかマグロとかいうものは遠洋漁業で向こうから入ってくる。タコもそうですか、それからここにあるような食肉加工品とか配合飼料石油製品、鉄鋼、木材、こういういわゆる物価に直接影響があり、国民生活に直接結びついたそういうものを重点的に取り上げて集中的な追跡調査をやるべきじゃないか。ネクタイも必要じゃないとは言いませんが、ネクタイやそんなハンドバックやレコードや、そういうものまで対象品目に挙げて、三十六品目も、各省庁がやられると思うのですけれども、そういうような総花的なことじゃなしに、項目をしぼって、そうして一日も早くそういう結果を国民の前に明らかにする必要があるのじゃないか。この間も石油でここでやり合ったわけですが、そのことについて電力料金の問題も出てきましたね。そういうようなところにやはり重点をしぼらなければ、日にちがたってしまって、またドルの問題がどうなるかわかりませんが、現実起きておることについて国民は注目しておるわけですから、そういうことはどういうふうに考えておりますか。
  38. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 この三十六品目の選定に当たりましては、やはり国民生活に密接に関連する輸入消費財、しかも輸入額が大きいもの、それから輸入依存度が高い原材料を使っております消費財、そういうもののほかに、輸入品に対する関心が非常に大きくて消費生活の中にある程度浸透しているというようなものを選んだわけでございまして、前回などの品目に比べますとかなり整理はいたしたつもりでございます。  それから、時間的な問題につきましては、いま六ヵ月ということをおっしゃったわけですけれども、これは六ヵ月というのは前回の平均調査期間でございます。今回はそれをできるだけ早期にまとめたいと思ってやっておりまして、多少そういうことで延びるとか、時間がかかるというようなことであった場合に、そういう品目についての整理をすることも考えてもいいかと思いますけれども、現在では、六ヵ月よりはるかに縮めたところでやるように、いろいろな調査の設計をしてやっておりますので、相当短縮はできるのではないかと思っております。当然、その緊急の度合い、それから軽重の度合い等も考えてやっていくべきではないかということについては、全くおっしゃるとおりだと思います。
  39. 武部文

    ○武部委員 この問題は、ぜひそのように調査を進めて、現実に成果が国民にわかるように、そして現実には、この為替差益というものが消費者に還元されるような、そういう政策をやってもらわなければいけないわけですから、ぜひそのことについて強く要望をしておきたいのであります。  第三の魚のことですが、当委員会は、近く現地調査をして、その後で集中審議をすることになっておるわけですから、その場合にも触れたいと思っておるわけですが、二、三の点についてお伺いをしておきたいのであります。  この魚の問題は、魚転がしとか、極端には魚インフレなんという言葉が実は言われておるくらい、いまの行政の中では非常に緊急な課題になったことは御承知のとおりであります。新聞にも魚のことが出ない日はないというぐらい出ておりますが、この二百海里問題で、先を見越した思惑買いということが値上げを呼んでおるんじゃないかというふうに、国民だれしもが思っています。ついせんだって、水産庁が業者を集めてこのことについて要請をした記事が出ておりましたが、あれを読んでみると、水産庁は、秘密を守ることを条件にして各業者から在庫量を報告してほしい、そういうことを口頭で言った。業者から、口で言ってもらったって困る、口で言ってもらったって、そんなことは下まで徹底せぬから文書で出してほしい、こういうふうに逆に言われて、文書で通達を出したということが報道されていますね。一体、こういう程度なことで、魚の問題というものに本当に真剣に取り組んでおるというふうに国民は思うだろうかというように私も思いました。水産庁は業者に対して、値上げを自粛してほしいとかあるいは在庫の放出の要請をするというようなことをやっておるようですが、一体これで効果が上がるだろうか。効果は上がらぬ。上がるどころか、現実に毎日のように魚の値段は上がっておる。こういうことですから、ここで抜本的な対策をひとつ立てなければならぬのじゃないかというふうに思うので、その点を冒頭にお伺いをするわけです。  東京都が、消費者保護生活条例というものに基づいて、冷蔵冷凍庫を調査したということが報道されています。しかし、これはただ単なる立ち入り調査であって、あの条文を読んでみても、もし妨害をすればその会社の名前を公表しますという程度のことです。ですから、ほとんど実効が上がらない。立ち入り調査をやったが、拒否をした会社があった、こういうことも言われておりますが、こういうことでは、東京都がせっかくこの問題で一生懸命やろうと思っても、何らの効果も上がらぬということをまざまざと見せつけられた事例じゃないかと私は思うわけです。  この魚転がしということが言われておりまして、これは冷凍業者の中でも公然とささやかれておることですから、経企庁もよく御承知だと思いますが、一日に三回も荷主がかわるとかいうようなことが言われる。一回転がすごとに総額の大体二・五%程度値段が上がる、もうかるということも公然とこれは言われておるわけです。そういう実態を経企庁の方ではつかんでおるだろうか、水産庁はそれをつかんでおられるだろうか、このことを最初にお伺いしたい。
  40. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 最初のお尋ねの、水産庁からの業界に対します指導の点につきまして御説明いたします。  私ども水産庁といたしましても、最近の生鮮魚介類あるいは塩乾魚介類の価格の上昇が他の物価比較しましてかなり高い上昇率を示しているということは非常に重視いたしておりまして、それなりの対策を従来から講じてきておるわけでございますけれども、ここにきまして国民の不安等も非常に高まってまいりましたので、五月六日に生産者団体、それから卸、荷受けの団体、それから大手の水産会社、商社等関連企業の参集を求めまして、私どもの方から、ただいま先生が御指摘になりましたような在庫の放出なり、あるいは価格の自粛について協力の要請を行ったわけでございます。  あわせまして、在庫について従来からもグローバルな調査はいたしておりますけれども、企業別の在庫調査は必ずしも十分に把握されていなかったといううらみがございますので、企業別の在庫につきましてかなり時間的に頻繁に調査をいたすということで協力を要請いたしたわけでございますけれども、一部に、ただいま御指摘のありましたような文書云々ということもございましたし、さらに趣旨を徹底する意味合いにおきまして、五月十三日付で水産庁長官と食品流通局長の共同の名前におきまして、ただいま申し上げましたような業界に対し、重ねて価格についての自粛の要望とそれから在庫のスピーディーな放出について要請するとともに、あわせまして在庫の調査についての通達を行ったという経緯でございます。  で、今回の調査はただいま始めたばかりでございますので、在庫量の調査につきましてまだ完全に集計が行われておる段階ではございませんけれども、順次調査の結果を踏まえまして、必要があれば今後、単に書面等による調査のみならず、現地に赴きまして実態調査についてさらに徹底した調査を行いたいというふうに考えております。
  41. 武部文

    ○武部委員 東京の区部の四月の上昇率が一・六ということを申し上げました。それは物価局長もお認めになったとおりですが、この中身で塩乾魚介類の値上げが前月比六・一%になっていますね。それから生鮮魚の値上がりが四・一%、この四月の東京都区部の物価の上昇率の中に占める塩乾魚介類とか生鮮魚の値上がりは非常に高いのです。これはいま私が申し上げましたようなことに端を発しておると思うのですが、現実に四月の数字がそのように出てきておるということだけは間違いがないわけです。そこで、調査をするとか、あるいは報告を求めるとか、そういうことをやっておるうちにどんどん転がされて、土地転がしと同じように魚転がしをやって、動かすたびに上がっておる。それで、何かこの間新聞を見ると、荷主の中に製鉄会社まで入っておるということがあったわけです。これはまさに投機の対象にされておる。製鉄会社が冷凍魚の荷主になっているというのは、これはちょっとおかしな話でして、それくらい投機の対象になっておるというふうに国民も恐らく思っておると思うのです。ですから、いまの冷凍技術から言うと、冷凍技術の向上によって冷凍すり身なんというのは六ヵ月以上ももちますね。そういうふうになっておるわけですから、転がせば転がすほどもうかっていく。そういうことが行われておる最中に、悠長なことで、報告を求めたり、ちょっと調査をしてみたりというようなことでは、問題の解決にならぬじゃないか、私はそのように思うわけです。  そこで、実はゆうべ十時に私はNHKのテレビを見ました。ごらんになった方があると思いますが、私、ずっとその数字を書き上げてみたわけです。そのゆうべ十時のNHKテレビは解説でありまして、「“魚ころがし”のなぞ」という解説の番組でした。これを見ておって、私はほとんどの奥さんたちはこれを見たと思うのですが、これはこういう具体的な数字を出していました。  まずここで魚インフレという言葉が出ておりましたが、東京中央卸売市場調査をしたところによると、ことしの三月の卸値の値上がり状況を言っておるわけです。去年の同月に比べてアジは八六%値上がり、サケは九三%、ニシンは八六%、冷凍サンマに至っては一五〇%の値上がりです。タラコが八四%。これが三月の卸値の対前年同月比の数字です。  東京に冷蔵業者が九十六業者ある。この九十六業者の入庫と出庫を調べてみると、品物が隠されておるということが数字の上から歴然と出てくるわけです。たとえばことしの二月の入庫は去年の二月の入庫に比べて三三・八%も入庫がふえておるのに、出庫は一八・六%しかふえていない。入庫の半分しか出庫していないということになるわけです。また三月は入庫が四四・八%去年よりもふえておるのに、出庫は一七・三%しかふえていない。これが九十六の冷蔵業者を調べて出てきた数字になっております。  それから、ある倉庫の名義変更を調べてみた。転がしていくという名義変更を調べてみると、ことしの二月には名義変更が千二百二十件。これは東京の九十六の業者のうちの数字です。三月にはこれが二千二百四十二件と二倍にはね上がっておる。四月には二千六百六十三件。これが倉庫の名義変更です。ある倉庫の名義変更ですよ。九十六のを言っているのじゃないです。ある倉庫の中でこれだけの名義変更が行われる。一つの件で名義変更すれば五百円の手数料を取っています。五百円の手数料を取って名義だけをどんどん変えていく。そして電話で名義の書きかえを依頼してくる。こういう具体的な事実があることを述べておったのであります。  これは明らかに土地転がしと同じように魚転がしが行われ、そして入庫、出庫の数字を見ても明らかなように、魚が相当隠されておるということだけは間違いないと思うのですが、この数字に対して、水産庁、どうお考えでしょう。
  42. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 価格状況につきましては、私どもも、先生がただいま御指摘になりましたような昨年と対比しました卸売段階での値段の動きにつきましては、ただいま御指摘になりました魚種についてはほぼ同様な値上がりを私どもの方の統計でも掌握いたしております。  ただ、業者別の入庫、出庫の状況につきまして、ただいまのような時点での具体的な数字を目下のところつかんでおらない状況でございます。  ただ、全般的に在庫の統計につきましては、毎月の月末段階で全体の主要な冷凍水産物について統計調査部の方で把握した数字によりますと、前年に比較しましてそれほど大きな在庫数量にはなっていないという状況でございます。企業別の在庫の状況につきましては、先ほど申し上げましたように、目下調査を行っておる段階でございまして、その結果によりまして、いま御指摘のありましたような点についても、さらに必要があれば立ち入って調査をしてまいりたいと考えております。
  43. 武部文

    ○武部委員 この番組は夜の十時でしたが、恐らく多くの国民が見ておる番組だと思うのです。特に奥さん方は恐らく相当関心を持って見られたと思うのです。私もあれをずっと見て全部数字を書いておるので、この数字は出ておった数字と大体間違いないという数字を書き上げたわけですが、ゆうべもこれを見ておって、確かに、全くふらちなことが行われておるというふうに私自身も感じたわけです。  いま日本水産、日魯漁業、大洋漁業、こういう大手の水産会社の株が急上昇していますね。そして決算も大幅な黒字だということが言われております。これは明らかに魚転がしあるいは売惜しみ、そういうようなことでこういうことが出てきたのではなかろうかというふうに推測できるわけです。  魚転がしというのは私はやはり悪徳商法だと思うのです。いま国民物価の安定ということに対して非常に大きな関心を持っておる。ですから、二回にわたる公定歩合の引き下げで、それに連動して預貯金の利子が下がった。そうなってくると、わずかなけなしの普通預金を今度定期預金に切りかえて少しでも目減りを防ごうとして、銀行や金融機関の前には長蛇の列ができたという報道さえあります。これはまさにそのとおりです。これは明らかにこの物価の上昇に対して国民が何を望んでおるかということを明確に物語っておるものだと私は思います。  いま西ドイツ物価の上昇四%程度ですね。長官も何遍も言っておられますが、少なくとも金利を下回るような物価の値上げでなければだめだということをおっしゃっているわけです。だとするならば、そういう努力を福田内閣としては早急に行う必要がある。その一つの例として、この魚の問題というのは庶民の台所に直結した問題です。  だとするならば、いまさしむきやることは何だろうか。少なくとも今日、石油ショックのときに政府がおやりになった売惜しみ買占め防止法という法律があった、この法律の適用をなぜやらぬのか。このことが当面福田内閣がやる一番の政策じゃなかろうか、こう私は思います。四十八年の七月に制定されたあの売惜しみ買占め防止法は、発動されてからたしか二十四品目というものが指定されて、それなりの効果を上げているはずです。五十一年の五月であの問題は全部終わってしまって、あれから一遍も発動されていない。少なくとも今日、国民皆さんが毎日の生活の中で魚の値上がりに困っておるのです。そしてその背景には、いま申し上げたような倉庫業者が隠したり転売をしたり、いろいろなことをしながら大手業者が利益を上げておることは歴然としておる。だとするならば、即刻この売惜しみ買占め防止法の適用を発動すべきじゃないか、こう思うのですが、長官、どう思われますか。
  44. 倉成正

    倉成国務大臣 実は私も昨晩のNHKのテレビ、魚の解説を伺っておりまして、私は思いは武部委員と同じでございますけれども、問題は、やはりいま一番大事なことは何かということでありますが、的確に実態をつかむことであろうかと思います。生産から消費者に至るまでの過程がどのように実際に動いているかということを的確につかむことが一番やらなければならない点である、そう考えまして、水産庁にもお願いをし、また企画庁自身としてもプロジェクトチームをつくってこの問題に取り組んでおるところでございます。  同時に、私は、できることなら、正常の取引のルートによって魚の価格が安定していくということが一番望ましい姿であるというふうに考え工おるわけでありまして、関係生産者はもとより卸業者、小売業者あるいはこれに関係する方々というのも決して良心的な仕事をしてないというわけではなくて、一生懸命にやっておられると思うのです。したがって、万が一にもそういう不心得な者が中にありまして、魚価をつり上げるということがあってはならない、そういうことで注意を喚起しておるところでございまして、きょうの閣議におきましても、私から三項目の説明と同時に、関係大臣に強い姿勢でこの問題に臨んでいただきたいということをお願いいたしたところでございます。したがいまして、買占め売惜しみ法の問題について私も絶えず関心を持っておるところでございますけれども、やはり線香花火になってはならない、これは着実にトレースをしていかなければならないと思うわけでございまして、いま真剣にこの実態に取り組んでおるというのが実情でございますので、いましばらく様子を見ていただきたい、そしてまた関係の方々の御協力をお願いしたいというふうに思っておる次第でございます。
  45. 武部文

    ○武部委員 かねがね経企庁長官がおっしゃっておるように、伝家の宝刀はできるだけ抜きたくない、正常な形で値上がりを抑えたい、こういうことをおっしゃっておって、正常な形とは、正常な取引ということのようにあなたもおっしゃっておるわけですが、確かに全部業者が悪いとは私は言いません。しかし、現実に北洋がああいう状況になって北転船がみんなだめになっておる。そのときにどうしてこんなに大手の水産会社の利益が上がるのだろうか。これはだれが考えたって不思議だと思うのですよ。そしていま沿岸魚の国内の水掲げはどんどん上がっていますよ。これから私ども見に行けばわかるわけでありますが、そういうときに、一体どうしてこれだけの利益が上がるのか、株が上がるのか、値段がこんなに上がっておるのか。だれがやっておるのか。大手の商社がこれに介在しておることはもう歴然としておるのです。そうでなければ、製鉄会社の名前が荷主の中に出てくるようなわけはない。これはそういう人たちが言っておるのですよ。われわれのところにそういう連絡がありますよ。だれが介在をしておるのか。そういうふうに、確かにみんなを悪者扱いする必要はないと思いますけれども現実の姿はそうなんだから、少なくともあなた方としては、余り抜きたくないかもしれぬけれども、このままの状態が続くならば買占め売惜しみ防止法というものは適用すべきだ。二十四品目あなた方がおやりになったときに、あの品目ずっとございますが、やはりこれはよくやったなと思う品目もありましたよ。そうしてそれなりの成果が上がっておるわけです。いまこの魚の問題について毅然たる態度をとってこの法律の適用をやるべきじゃないか。簡単には抜きたくないということはよくわかりますが、しばらく情勢を見た上で、毅然たる態度をおとりになることが国民に対しての政治ではないかと私は思うのですが、もう一回、聞いて終わりたいと思います。
  46. 倉成正

    倉成国務大臣 武部委員が持っておられる情報がございましたら、ぜひひとつ私どもにもその情報を提供していただきたいと思います。いやしくもそういうことが明らかである場合には、断固たる処置をとりたいと思います。  買占め売惜しみ法で、調査を行うと同時に、またその物資について放出を指示したりすることができるようになっておるわけでございまして、やはりある程度の見通しを立ててやらなければ、ただ調査をしたということで、その部分的には一つの効果があるかもしれませんけれども、水産物の流通というのは非常に複雑でございますし、また非常に大量に毎日水揚げがされているという状況でございますから、やはりこの点はもう少し実態をきちっと把握することが今日における一番大事なことであるということでございますので、水産庁と協力をしながら、ただいまの御趣旨を踏まえながらやってまいりたいと思います。
  47. 武部文

    ○武部委員 終わります。
  48. 西宮弘

    西宮委員長 武部文君の質疑はこれで終わりました。  次は、草川昭三君。
  49. 草川昭三

    草川委員 ただいまも漁業問題が出ましたけれども、私の方もごく簡単に最初に触れさしていただきたいというように思います。  漁業問題に端を発しまして、加工用の原材料のすり身だとか原魚が非常に値上がりをしておるわけでございますが、これは明らかに商社や大手水産業者の魚隠しや魚転がしによる疑いが濃いということは事実だと私は思うのです。水産庁はただいまも、流通業界の値上げの自粛を呼びかける、在庫量の報告を求めるという通達を出しておりますけれども、私は、これだけで加速度がついておる魚価の高騰が抑えられるとは思っておりません。現在、東京だけでも七十二万トンの能力があると言われておりますが、たとえば東京のみの七十二万トンの中でどの程度調査をされておるのか、まずお聞きしたい、こういうように思います。
  50. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 御指摘の在庫量等の調査につきましては、対象の業界団体、その冷凍水産物を保有しておる可能性の非常に高い団体と考えられます生産者団体五団体、さらに大手の水産会社、これは六社でございますけれども、その大手の水産会社、それから大手の商社、これが約十社ございます。それから主な都市の荷受け会社、これも約十社ぐらいございます。これらの企業につきまして、毎週、週間の販売量並びに前期からの持ち越し在庫量、それから当週間末の在庫量等につきまして調査をしている段階でございます。
  51. 草川昭三

    草川委員 最近非常に高騰しておる事実の発表、数字の発表はいつごろ出されますか。
  52. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 価格調査でございますか。——価格調査につきましては、小売の段階それから卸の段階に分けまして、小売の段階につきましては総理府の方で毎月の統計が出ておりまして、東京都の区内については、四月段階の速報でございますけれども、すでに出ておる状況でございます。そういったものを活用して価格を把握しておるということでございます。
  53. 草川昭三

    草川委員 では、量についてはどうですか。
  54. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 数量についても、市場の入荷量等につきましては、一月おくれくらいでございますけれども、それぞれの市場ごとに魚種別に入荷量、販売量が統計で出てまいりますので、それらについて把握した上で、さらに私どもが行っている調査も加味した上で、内容を十分把握していきたいと考えております。
  55. 草川昭三

    草川委員 いま私どもが調べておるのは、先ほども話がございましたように、大体倉庫の中では三時間に一度ぐらいの割合で荷主がかわっているという数字があるわけであります。だから、それを動態、いわゆる動く数字で調べてもらいたいわけであります、われわれの要求する数字というのは。同時に、一回について一箱、たとえば千円とか二千円というように上がっていくわけでございますし、マージンが平均して二%から三%急増していくわけです。特に大型冷蔵庫になっておりますので、流通機構というものが、先ほど当局の方から調べられた状況での調査では、非常に急速に動いておりますから、間に合わぬわけであります。しかも、全国の水揚げの魚の二分の一が冷凍庫にストックされておるというわけでありますし、いわゆる競りにかかっていないので、魚価の監視というものが正確に反映しないのではないだろうか。でございますから、正確に反映する数字をつかむためには、たとえば倉庫業というのは運輸省の所管になっております。ですから、運輸省の方々とあるいはまた水産庁関係の方々と物価に関する諸官庁、全体の省と省がまたがるプロジェクトを組まないと、たとえば大臣がおっしゃられたような省内でのプロジェクトでは、今日のような激動する時代においては正確な実態というのはつかめないのではないか。そういう上に立っての数字というものをぜひ早急に出していただきたい。それをしないと、私はいま問題になっておる実態というのは把握できぬと思うのです。  そこで、先ほども出ましたいわゆる買占め売惜しみ防止法というもの、これは伝家の宝刀だと言っておりますけれども、即刻発動する、これが何といっても必要でございますし、その上での立ち入り調査をしないと私はだめだと思うのです。現在、水産庁に価格調査官がおいでになりますけれども価格調査官というのは非常に少ないと思うのです。たとえば東京都内に何名の価格調査官というのが派遣をされるようになるのか、あるいはそういう能力があるのか、お聞きしたいと思うのです。
  56. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 先ほど申し上げました在庫量の調査を補充する意味合いにおきまして、今後必要に応じて実態調査も進めてまいりたいと考えておりますけれども、その際には当然私どもだけではなかなか人手の面からも制約がございますので、経企庁あるいは水産庁のほかに、省内の物価担当の部局でございます食品流通局等の協力を得ながらやりたいと考えておりますので、調査に必要な人数をそういったことで確保してまいりたいというふうに考えております。
  57. 草川昭三

    草川委員 ひとつまた後ほどの集中審議でそれはぜひやっていただきたいことで、話を先に進めますけれども、非常に調査官が少ないわけでございますので、東京都がいまやっておみえになるわけでございますから、遠慮なしに重点的に取り組まれるということが、当面する魚価の安定に近づいていくことになると私は思うのです。そういう意味で、この買占め売惜しみ防止法の指定というものについて、少なくとも調査が行われなければ考えないということではなくて、前向きの姿勢でぜひ取り組んでもらいたい。その前向きの姿勢で取り組む意思があるのかないのか、大臣にお聞きしたい、こういうように思います。
  58. 倉成正

    倉成国務大臣 前向きという意味がどういうことか私よくわかりませんが、私はすでにもう相当前から買占め売惜しみ法の発動の用意ありということを言っておるわけです。しかし、それにはできることなら関係の業界の方々が十分今日の事態、国民生活状況を見て御協力いただくということが何よりも大事なことである、そういう意味で申し上げておるわけでございまして、なおわれわれとして、この法律については的確な実態の把握ということが、うわさなりいろいろなことでは言われておりますが、やはり的確にある程度実態をつかんでいなければ、やみ夜に鉄砲を撃つということになりかねない。そういうことであってはならないと思いますので、いまその状況把握に最善を尽くしているというのが現状でございます。  それから、各省庁との連絡については、各省庁が同じことを別々にやるというのは非常にむだでございますから、経済企画庁でやることあるいは水産庁でやることあるいは運輸省でやっていただくことということで、それぞれ打ち合わせをいたしてやっておる次第でございます。
  59. 草川昭三

    草川委員 わが国の資源問題等もこれから重要な問題になってくると思うのでありますけれども、いわゆる冷凍魚の保存量というのはどうしてもふえざるを得ないと思うのであります。これは生産のコントロールができるようなものではございませんので、この保存の供給量をどうつかむかというような展望を含めて、これからの対策を立てていただいて、ひとつ十分魚価の安定ということに努めていただきたい、こういうように思うわけであります。特に大臣に対して、前向きのという言葉を言いましたけれども、私はやはり早急にその姿勢を示されることが国民の皆様方が安定することになると思うのです。いま大臣は国民の協力をと言われましたけれども、魚価の安定については国民は何も協力する必要はないのです、買う方ですから。われわれが一番必要なのは、大手の業界の方々の協力を得るということが目的なんでございますから、ひとつ大臣の積極的な姿勢をお願い申し上げて、私は次に移りたい、こういうように思います。
  60. 倉成正

    倉成国務大臣 私が申し上げましたのは、関係の業者、これは生産者から卸、小売に至るまでの、大手の業者ももちろんですが、全体の協力を得るということが非常に大事だということを申し上げたわけでございまして、やはり全体がうまく動かないとなかなか末端価格は安定しないと思うのであります。私の郷里が水産県でございますので、また私自身が魚には非常に関心を持っておりますので、毎日、小売価格がどうなっているかということは自分自身でも調べております。そういうことで非常に関心を持っているわけですが、同時に、全体が協力をしていただかないと、なかなか魚価の安定というのはうまくいかない。そういう意味で申し上げたので、国民消費者に責めを転嫁するという気持ちはさらさらございませんので、その点は一つ申し上げておきたいと思います。
  61. 草川昭三

    草川委員 では、いまの防止法を早急にひとつ強力にしていただきたいことを要望して、次に移りたいと思います。  薬価問題でございますけれども、今日、薬価基準と診療機関が実際に購入しておる薬剤の価格との間には相当大幅な乖離が見られておる。これはただいま健康保険の赤字の問題について社会労働委員会でも論議になっておるところでございますけれども、私どもはこの乖離について非常に大きな疑問を持っておるわけであります。なかんずく薬価の中でも抗生物質についての実勢価格との差というものはかなり厳しいものがございまして、きょう委員長の許可を得て、「主な抗生物質の市場実勢取引価格」という全国の自治体病院の購入価格資料をいまお手元にお配りをさせていただいたわけでございますけれども、これを一つ見ていただいてもおわかりのとおりに、たとえば塩野義のケフレックス、これも非常にたくさん使われておる薬でございますが、薬価基準が二百九十四円であります。ところが、自治体病院で買うのが平均して百九十一円、最低で五十円であります。平均では六五%で現実に自治体病院は買っておるわけでありますから、かなりの差があることは事実だと思うのです。なお、この右側に関東メディカルというのがございますが、これはダイレクトメールでございますので通信販売、これだと平均より以下の百七十円。手紙を出せば買えるわけです。五七・八%であります。通信販売の例で言いますと、富山化学のラリシキンというのがございますけれども、これは二百九十四円が薬価基準です。厚生大臣が決めた値段であります。二百九十四円、これをダイレクトメールでは、何と驚くなかれ、七十五円で売るわけです。二五・五%、四分の一ですね。  こういうように、これは私どもがたまたま自治体病院を調べ、あるいはまた関東メディカルという通信販売で現実に売られておる数字でもあるわけでございますから、平均して見ますと、抗生物質の平均購入価格というものは六八・六%なのです。最低価格を見ると、これも全体を見ますと四二・一%。ところが、自治体病院の協議会の方々の話を聞きますと、まだ私の方は高いのだ、公的病院だとか私的病院はもっと安く購入しておるという報告がなされておるわけでございまして、一体、なぜ薬価基準との間にこのような乖離が見られるのか、当局の御答弁をお願いしたいと思います。
  62. 上村一

    ○上村政府委員 薬価基準価格と実勢価格の差が大きくなっておるという御指摘でございますが、従来から、一つの理由といたしましては、もともと同じ薬でございましても取引条件によって市場価格が違いますとか、あるいはそういった価格帯から九〇%バルクラインという方式で薬価を決めるということとか、あるいは現在の薬価基準では、抗生物質なんかにつきましては統一限定収載方式をとっておりますので、いろいろな銘柄のものが一つ価格で決められておる。そういう場合には銘柄の間でいろいろな市場価格の差がある。そういうふうな点が挙げられておったのでございますが、このほかに最近の特殊な事情としまして、薬価基準価格が決まりました後も市場価格が競争で下がっていく傾向にあるわけでございますので、薬価基準の改正の間隔が広がりますと、どうしても薬価差が拡大する。ちなみに現行の薬価基準というのは五十年の一月に改正したものでございますが、そこで調べました薬価調査というのは四十九年の四月でございます。四十九年の四月というのは、同時に石油危機がありまして物価が混乱したしばらく後の価格でございます。そういった特殊事情から、いま御指摘のようなケースとして、薬価基準価格とそれから病院が購入する価格との間に差が生ずるものもあるということではないかと考えるわけでございます。
  63. 草川昭三

    草川委員 それで、特殊事情だからということでございますが、当局の方は今回銘柄別の収載に切りかえていけば薬価基準も少しは乖離がなくなるのではないだろうか、こんなことを言っておみえになるようでありますけれども、銘柄別になりますと、一体どの程度下がるか、ここを私、お聞きしたいわけでございますが、二〇%ぐらい下がるのじゃないかという薬局関係の方がおみえになります。あるいはまた厚生省当局の皆様方にお聞きしますと、そんなに下がらないとおっしゃる方もおみえになります。大体、銘柄別になりますと、どの程度下がるとお考えになっておられるのか、改めてお聞きしたいと思います。
  64. 八木哲夫

    ○八木政府委員 薬価基準につきましては、従来薬価調査を行いまして、その結果に基づきまして薬価基準の改正を行うわけでございます。そこで、今後の薬価基準の改正につきましては、現在、銘柄別の新しい調査をやっておるわけでございまして、その調査の作業中でございます。中医協その他関係がございまして、現在作業中の段階でございます。どの程度差があるかということにつきましては、まだ公表できる段階でないことは御了解をいただきたいと思います。  ただ、はっきり申し上げられますことは、最近の実績を見てまいりますと、五十年一月一日の薬価基準の影響率は一・一%、その前の四十九年は三・四%、四十七年の二月は三・九%、四十五年が三%という数字でございますけれども、少なくとも今度の銘柄別という調査によりまして、これを上回るような数字になるのではないかというふうに思うわけでございます。
  65. 草川昭三

    草川委員 そこで、大蔵省にひとつお聞きをしたいわけでございますけれども、大蔵省の方お見えになっておりますか。  健保の赤字は、財政上非常に大きな問題であることは御存じのとおりであると思うのでございます。中でも、国鉄と健保と米というのが非常に重要な問題になっておるわけでございますが、特に健保の場合は総点数に占める薬剤費の割合が四〇%前後になっております。これも赤字の要因の一つと言われておるわけですが、この実勢価格との差が指摘をされておるわけでございます。ことしの五十二年度の予算編成段階で、大蔵省はこの薬価差額の問題についてどのように認識をしておられたのか、お聞きしたいと思います。
  66. 窪田弘

    ○窪田説明員 先生指摘のように、薬価の問題というものは非常に大きな問題で、私どもも大きな関心を持っている次第でございます。御指摘のように、医療関係予算というのはいまや二兆五千八百億、社会保障関係費の半分を占めておるという大きな額に達しておりまして、そのうち薬というものの占める比率も非常に高いわけでございます。  これを予算の編成の過程でどう考えたか、どうしたかというお話でございますが、薬の問題については、一面においてどの薬をどう与えるかということは医師の判断にかかっておるわけでございます。一面においてはその適正な判断というものが期待されるわけでございます。  もう一つ大きな問題として、薬の値段の問題がございます。これにつきましては、五十二年度予算でも五千万円の薬価実態調査費を計上しております。もちろん、この点につきましては、中医協の御意見というものを踏まえて厚生省がお決めになるわけでございますが、薬の値段につきましても、いろいろな調査に基づいて適正な価格が保険の医療に反映されるように厚生省と御相談をしているところでございます。  それからもう一つ、やはり大きな問題として医療制度の問題、医療制度の面でもよく言われる薬の乱費というふうなことがないように考えていく必要があろうかと思います。これは来年度、医療保険制度が根本的に見直しされることになっております。いまの制度にそういった面からも矛盾がないかどうか、厚生省と十分御相談をしていきたいと思っております。
  67. 草川昭三

    草川委員 そうすると、大蔵省はたとえばいまの制度の面でも薬の乱費がないようにということをおっしゃられておりますが、ある程度は薬の乱費ということは認められておられるわけですか。
  68. 窪田弘

    ○窪田説明員 諸外国に比べて薬のウェートが高いことは事実でございますが、乱費という言葉が適当かどうか。私がいま申しましたのは、いわゆるということで、そういうことが世間に言われている、そういうことがないようにしなければならない、こういうことでございます。
  69. 草川昭三

    草川委員 次に、これはあれでございますが、診療機関が一年間いろいろと経理をし、それなりに税の申告等するわけでございますけれども、薬価基準と実勢価格との間の差益というのは、課税上の対象になるんですかどうですか。それをちょっとお聞きしたいと思うのです。
  70. 窪田弘

    ○窪田説明員 この差益そのものを対象ということではございませんで、税は、御承知のように、収入から経費を引いた残りについて課税の対象になる。御承知のとおり、経費率の問題等はあるわけでございますが、もし薬の面で差益があれば、それは当然収入に反映される結果になろうかと思います。
  71. 草川昭三

    草川委員 過日、厚生大臣は、非常に薬価の高い、利幅の少ないものを使う場合に、逆に税の問題でお医者さんが大変不利な条件に追い込められるというようなことを、ちょっと言われたことを記憶しておるわけでございます。税の問題についてはきょうの主題でございませんので、また別の機会に譲って次に移りたいと思いますから、大蔵省の方は結構でございます。ひとつよろしくお願いします。先ほど、銘柄別の収載になると薬価基準の安定化につながるのではないだろうかというようなことの意味も若干あったわけでございますけれども、現在の薬価基準の算定方法は、銘柄別になろうとなるまいと、結局、調査方法が一つあると思うのです。調査方法については自計調査、他計調査ということでございまして、いわゆるメーカー系列の卸問屋が自分で書き込む調査だけではだめですよということを私どもはかねてから主張しておるわけでございますが、この点は、過日の社会労働委員会でも触れられておりますので、触れません。  問題は、先ほど御答弁がございましたいわゆる薬価基準の算定方法に九〇%のバルクライン方法というものがあるわけであります。いわゆる安いものから高い方に、同じ銘柄、同じ品目の薬の値段というものを並べていって、九〇%の高いところの値段というものが薬価に収載をされるわけであります。でございますから、裏返して言いますと、薬の一一%だけ高く売れば、それが薬価になるわけであります。こういう薬価の算定方法でありますところのオンライン方法というものは、銘柄別の収載になっても、私は余り正確な薬価の実態というものは反映しないのではないか、こう思うわけです。  また逆に、現在の場合は統一限定収載でありますから、たとえば大手メーカーが薬品の開発をしますと、三年たつとそれが解禁になります。そしてぞろぞろメーカーというものが、——一般の中小の人たちが破格の安値で市場にどんどん品物を売り出すところから、ぞろぞろメーカーという名前が出るわけでございますけれども、非常に価格の乱れがあるということが、いまの実際上の実態だと思うのです。先ほど当局は、何かオイルショック以後の特別な事情だから値段の差があると言ったんですが、私はそうじゃないと思う。実際上は、三年後の解禁があって非常にぞろぞろメーカーというのが出て乱売をするところに今日の価格の差があると思うわけでございます。  逆に銘柄別になりますと、自分の銘柄だけは一一%で高いところに価格安定をすることがより安くなるわけでありますから、私は大手の製薬メーカーが非常に有利になって、高いところで銘柄別の収載ということで薬の値段というのが決まるのじゃないだろうか、こう思うわけです。いわゆるメリットとデメリットがあると思うのでございますけれども、その点についての当局の考え方を聞かせていただきたいと思います。
  72. 上村一

    ○上村政府委員 現在の薬価基準価格は、私から申し上げるまでもなく、病院、診療所の購入価格でございます。したがいまして、九〇%バルクラインというのがオンラインの形で決められておりますのは、九〇%の量までが買い得る差額、残りの一〇%というのはややノーマルでないような取引条件等が想定されて決まっておるのではないかと思います。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕  そういたしますと、何といいますか、その価格を全体的な、たとえば平均値のようなところでとりますと、購入できない医療機関というのが相当ある。購入できない医療機関相当あるということは、そこの医療機関にかかった患者にはその薬が投与されないということになるのじゃないかというふうに思うわけでございます。  それから、御指摘になりました銘柄別収載で販売競争が一体どういう形になってくるだろうか。私ども期待しておりますのは、これまでの販売競争というのは、悪い言葉で言えば、薬価基準価格とそれから実勢価格との差というのをセールスポイントに売られるケースがあった、それが姿を消して、やはり高く評価されるためには、品質の向上なり医薬品の副作用の情報といったものを提供する努力をさらに積み重ねるといった意味での販売競争というものが出ていくのじゃないかというふうに思うわけでございます。ただ、御指摘のように、銘柄別になりますと、品質管理がすぐれあるいは新薬開発能力等にすぐれておる、したがいまして、どちらかと言えば、大規模なメーカーにある程度有利な影響があるというのは避けられないのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  73. 草川昭三

    草川委員 いま当局の方からそういうお答えがあったわけでございますけれども、現在一〇%の非常に薬価基準よりも高い薬が売られておるところが現実にあるわけですね、数字で言うならば。いわゆる九〇%バルクラインでありますから。その一〇%平均薬価よりも高いところというのは、一体いま日本の中に何ヵ所あるのか。あるいはそういうところ、たとえば山間僻地のお医者さん、あるいは隣に大病院があって、すぐ隣に整形外科のようなところがあって、わずかしか薬を買わないために高い薬を買わなければいかぬ、そういうところは明らかにその薬が使えぬわけですよ。損するわけですから、逆ざやになりますから。それで安いものを買うのかあるいは仕方がないので高いものを買うのか。高いものを買うならば一体——その実態数字というものを私は厚生省はつかんでおると思うのですね。わかったら、その数字を知らしてください。一〇%の人々は現実にどういうような、山間僻地だとか、都市の中にも小病院でこういう例があるんだ、あるいはそういう医療機関が何軒あるのか、わかっておるなら、お知らせ願いたいと思います。
  74. 上村一

    ○上村政府委員 むしろ方法論的に申し上げますと、日本じゅうの病院、診療所で購入される価格というのを、購入サイドとそれから販売サイドから調べまして、それでさっきお話しになりましたように、下から九〇%を積み上げてまいるわけでございますので、調査そのものは全体を調べて上から積み上げて九〇までいくということになるわけでございますので、そのはみ出た部分があることは事実でございますが、そのはみ出た部分の実態がどういうものであろうかということについては正確な資料が持ち合わせございません。ただ、御指摘になったようなケースがそれに当たる場合が多いのじゃないかというふうに推測はできるのじゃないかと思います。
  75. 草川昭三

    草川委員 私は結局この一〇%の医療機関というのはほとんどないと思うのです。現実的にはメーカーの方がいわゆる薬の値段というものを高くつり上げるために、一一%の薬の値段というものを確保しておいて、そして後で赤伝票を切る、いわゆる値引き交渉をする、こういうことだってあり得ると思うのです。現実に私はここに関東メディカルのダイレクトメールの数字を持ってきておるのです。だから、何なら、一部の機関しかないとおっしゃられておりますけれども、私にお金を貸していただけるなら、私はこの関東メディカルにダイレクトで注文して、関東メディカルのいま皆さんにお配りをしました、平均をしまして大体六〇%とか五〇%の値段で薬が買えるわけですよ。もちろん、全品目を関東メディカルが売っておるとは限りません。しかし、いま一番たくさん使われる薬というのが、現実にこの通信販売で売られておるわけでありますから、この実態を当局がつかむことによって、ずいぶん薬価というものについてのまた別な形で価格を安定し、正規に医療機関に技術料としてお医者さんにそれを還付することができるのではないだろうか。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕  不自然な状況のままやるというのは、明らかに現在の数字の取り方に問題があると私は思うのです。乱れを放置しておることになる、こう思うのです。一般的に私もこれは、ずいぶん乱れのある数字をどのように平均的につかんだらいいのかというので、専門家の方々に御意見を聞きましたけれども、やはり数字実態というのは、一つは総理府がやっておりますように、単純に売り値というものを調べてきて、小売物価指数じゃないけれども一つ数字を出す方法、それからもう一つは、何といっても加重平均だと思うのです。いわゆる物の値段掛ける物量、量を掛けてそのトータルで数字を割ってみる加重平均というものを調べるのが一番正しい方法だと思うのです。この加重平均方式でいきますと、九〇%のオンラインでもいわゆるテレスコープ方式というものがあるわけであります。このテレスコープ方式というものをどうして当局は採用しないのか、お聞かせ願いたい、こういうように思うわけです。
  76. 八木哲夫

    ○八木政府委員 薬価基準の設定のあり方についてどうするかということにつきましては、従来からいろいろ御議論のあるところでございますけれども、中医協等におきましても関係者の御理解を得て現在とっておりますのが九〇%バルクという方式であるわけでございます。先ほど薬務局長からも御答弁申し上げましたように、いまの診療報酬体系の中におきます薬価基準のあり方というものについては、大部分の医療機関が購入できる方式をとるべきではないかというようなことから、先生先ほどお話しございましたような現在のオンライン方式、下から数えまして九十番目のところの価格をとるという方式をとっておるわけでございまして、確かに、御指摘のように、加重平均方式といたしましてテレスコープ法でございますとかあるいはカットオフ法とかいろいろあるわけでございますけれども、そういうような方法をとりました場合には、九十番目のいまのオンラインの価格より相当下がってくることは間違いないわけでございます。そうなりますと、大部分の医療機関が購入できる価格というものを考えるべきであるというようなことから言いますと、かなりの医療機関が購入できない価格になってしまうということから、現在の九〇%オンライン方式というものが採用されているというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
  77. 草川昭三

    草川委員 私は経済の原則というものはそういうものではないと思うのです。トータルの中で、物量の量で平均というものが出るならば、それ以上の上限というものは必ず下がってくると思うのです。同時にその平均以下で売られておるものはそこまで上がってくるわけです。いわゆるメーカーというものは経済的な原則がありますから、原価を割ってまでこれは明らかに売りっこないわけです。赤字を出してつぶれるというような商売は成り立たぬわけであります。だから、おのずと平均的な量の平均的なところまで下は上がり上は下がることは間違いがない。現実に、特定の薬かもわかりませんけれども、少なくとも三百から四百近い品目のダイレクトメール販売、通信販売で薬を売る会社がりっぱに営業しておるわけですから、だからやろうと思えばやれる。六〇%なら六〇%。現実にこれはインチキ会社でも何でもないわけでございますし、りっぱな銘柄の品物をダイレクトで売っておるわけですから、こういう企業がありながら、なおかつ厚生大臣が薬価を決めるという国の責任がありながらも、なおかつ九〇%オンラインのバルク方式に厚生省当局が固執をされることに私は疑問を持つわけです。これを本質的に解決をしない限り、薬価の基本的な解決はないと私は思うのです。  同時に、このオンライン方法というものは、本来は生産者米価、日本のように非常に山間僻地でお米をつくっておって高い原価がかかるところ、あるいは非常に広大な農地改良をして機械で大量にお米ができるところ、おのずと原価は違うわけです。こういう場合には、やはり山間僻地で苦労をして原価がたくさんかかる、そういう値段というものを米価なら米価の購入価格にしなければいかぬときに、初めてオンライン方法というものは採用されるべきものだと思うのです。今日のように、近代医業になって、非常に大都市において高度に生産性を高めて、将来は日本の国の基本的な輸出産業にもしなければいかぬ業界においてこれが取り入れられるということについては、いいかげんのところで考え方を変えていただかなければだめでないか、私はこう思うわけです。  このオンライン方法というものは、これはもちろん専門家なりあるいは審議会にも諮らなければいかぬことでございますが、当局としては一つの案としてこれをいつまでもとられる考えであるのか、ひとつ考え方についてお聞きしたい、こういうように思います。
  78. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生からいろいろな御意見をいただいたわけでございますけれども、私ども基本的なあり方といたしましては、薬価基準のあり方というのは実勢価格にできるだけ近いものにすべきだ、これは中医協の御議論もそうであるわけでございます。現実には薬価基準とそれから現実の医療機関の購入価格との間にかなりな差があるということは、中医協におきましても皆さん御承知なわけでございます。したがって、ある意味では潜在技術料だというようなことで、できるだけ薬価基準と実勢価格を近づけるというようなことから、先ほど申し上げましたように、銘柄別方式というのが中医協の中でも関係者の合意を得まして、今回銘柄別の方式で採用しようというようなことでございます。  いろいろなお考え方があろうと思いますが、いずれにいたしましても、中医協の関係者の間におきましても、できるだけ実勢価格というものを薬価基準に反映する、そこで出てまいりました潜在技術料というものは本来の技術料に向けるべきではないかという方向でございますから、ただいま先生の御指摘になりました問題も含めまして、できるだけ実勢価格に近づけていくというのが中医協の考え方でございますから、これからも中医協で御論議いただきたいというふうに思っているわけでございます。
  79. 草川昭三

    草川委員 中医協に対する材料の提供は明らかに厚生省だと思うのです、原局は。でございますから、中医協の中でいろいろと論議をなすっていただくためにも、いまの薬価の調査の方法なり算定方式を基本的に変えるという材料をぜひ提供してもらわないと、いろいろな論議がかみ合っていかないのではないか、私はこう思います。  さらに、私はいま九〇%のオンライン方法のことを申し上げましたが、もう一つ矛盾点があるのは、二倍の法則というのがあるわけです。  二倍の法則というのは一体どういうものかと言いますと、たとえば小さい薬を買います。ところが、隣は大病院で、薬を大量に使いますから、大箱で薬を買います。大箱で薬を買えば当然安いわけですよ。ところが、大箱の方の安いところに値段というのは決まりません。小さい箱の値段が相変わらず二倍の法則というので薬価に決定される。一体どういうときにその小さい方の薬の値段が薬価に算定されるかというと、二倍にならなければその薬の値段に決まらない。ということは、結局、中身が、片一方小さい方は百錠なら百錠、片一方は千錠なら千錠。ところが、箱が二つになるまで、たとえば一万錠からマイナス一つになっても、箱が二倍にならない限りは小さい方の箱の値段が薬価に算定をされる、こういうことであります。こんな、都合のいいというのですか、明らかに片一方は大量に使われておるのだけれども、箱が二つにならなければ、マイナス一個であるならば、二倍の法則といって二倍にならなければ、常にマイナス一であるならば二倍にならぬわけですから、高い値段が薬価に算定される、こういうことであります。こんな計算方法というのは、言っては悪いですけれども、私はどこにもないと思うのですね。だから、明らかにこれは厚生省の、原局としての考え方でございますから、これも当局にしてみれば、山間僻地へ行けば小さい箱しか買わぬじゃないか、大病院の値段、そんなものは算定にならぬと言うのですが、それを放置するならば、結局正常な価格というものはできぬ。そういうものは算定されない、こういうことになると思うのです。二倍の法則についての見解をお聞きしたいと思います。
  80. 八木哲夫

    ○八木政府委員 薬価の算定につきまして、先生指摘のように、現在は二倍の法則を採用しているわけでございますけれども基本的には先ほどの考え方と同じでございまして、医療機関の購入の現状というものを十分踏まえて、その上で薬価基準というものが算定されるべきである。そういうことでまいりますと、やはり現実の医療機関がどういうような包装単位、それからどういうような使用頻度で行われるかということを基礎に行われるわけでございまして、そこで最小の包装というのを基準包装といたしまして、その最小の包装から見ました場合に、もちろん包装単位が大きくなれば薬価は割り安になるのは当然であるわけでございますけれども現実の使用状態、販売数、施設数というものをできるだけ反映するというようなことから、現在の大多数の医療機関——現実には薬価基準というのは実費を補償すべきものでございますから、医療機関が損をするというようなことがあってはならないわけでございますので、最小の包装単位というのを基準にしまして、それ以上に頻度が大きいとかあるいは販売数が多いという場合に、二倍ぐらいになれば次の基準を考えていいじゃないかというようなことから、いまの原則がとられているということでございます。
  81. 草川昭三

    草川委員 いろいろと答弁がありますけれども、それはそういう態度を続けられる限り、正当な、正確な薬価というものが把握できないのではないか。二倍と言いますけれども、常にマイナス一個でいわゆる価格が高くつり上げられるというところに基本的な問題があるわけでございます。きょうは時間がございませんので、この二倍の法則というような、どちらかと言えば、われわれの一般的な常識から言うならば、からくりに近いような価格算定というものがある、こういうことを御指摘申し上げておきたいというように思います。  最後になりますけれども、社会保険審議会、この中に健保問題等懇談会ができまして、四月の八日に厚生省は四項目にわたる、いろいろと健康保険についての問題提起をいたしたわけであります。これは全部で十八項目ですか、柱があるわけです。「給付及び費用負担」あるいは「医療保険制度の体系」「医療費及び医療費支払制度との関連問題」「周辺問題」があるわけですが、この中に医薬分業ということがないのですね。この医療分業というものは、将来の健保問題ばかりではなくて、日本の医療体系の非常に大きな問題になってくるわけでございますけれども、今度の懇談会でなぜこの医薬分業ということが取り上げられてないのか、お聞きしたい、こういうように思います。
  82. 八木哲夫

    ○八木政府委員 社会保険審議会は、本来は政府管掌健康保険、船員保険、日雇い労働者健康保険、これの制度のあり方というのが基本の審議する範囲になっているわけでございます。しかしながら、医療保険制度の基本的な見直しをするという際に周辺問題についても議論しようじゃないかということから、ただいま決めました二十二項目の中に、医薬分業の問題につきましては、四番目に「周辺問題」というのがございまして、その(2)の「医薬制度との関連問題」という中で医薬分業の問題も当然入るということで、実は先週、周辺問題で議論がございまして、この次は医薬分業問題についても議論しようというようなことになっておりますので、この次はこの問題が議論される予定になっております。
  83. 草川昭三

    草川委員 時間がないので終わりたいと思いますけれども、いまのお話の中では、この中で当然関連されるというように思いますけれども、やはり見出しの中、項目の中に出てこないというのは、当局の考え方に非常に熱意がないというふうにとられても仕方がないと思うのです。私は、今日医薬分業の問題というのは、将来の制度問題等についても非常に重要な問題だと思いますので、ぜひ大きな柱のアイテムとしてこの問題は取り上げられてしかるべきではないだろうか、こう思います。  時間が来ましたので、最後に御答弁を願って、終わりたいと思います。
  84. 八木哲夫

    ○八木政府委員 医薬分業の問題は大きな問題であることは間違いないわけでございます。ただ、社会保険審議会につきましては、所掌事項がはっきり法律で書いてございますので、前半の方に本来社会保険審議会で議論すべき問題というのを入れているわけでございまして、そういう意味から、社会保険審議会の所掌事務から見まして、周辺問題ということでこの問題が入っているということを御理解いただきたいと思います。
  85. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  86. 西宮弘

    西宮委員長 草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時散会