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1977-04-19 第80回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月十九日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 西宮  弘君    理事 青木 正久君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 金子 みつ君    理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君    理事 米沢  隆君       友納 武人君    中西 啓介君       中村  靖君    平泉  渉君       中村  茂君    馬場猪太郎君       宮地 正介君    藤原ひろ子君       依田  実君  出席政府委員         経済企画政務次         官       森  美秀君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         通商産業政務次         官       松永  光君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      石田  徳君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ————————————— 四月十五日  公共料金値上げ反対等に関する請願佐野進  君紹介)(第三二五五号) 同月十八日  公共料金値上げ反対等に関する請願林孝矩  君紹介)(第三四七七号)  同(林孝矩紹介)(第三五七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 西宮弘

    西宮委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村靖君。
  3. 中村靖

    中村(靖)委員 いろいろお伺いしたいことがたくさんあるのでございますが、時間の制約もありますし、きょうは私は、主に最近問題になっております円高の問題、あるいはまたこれに関連いたしまして石油政策等について幾つかの質問経済企画庁並び通産省にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  まず経済企画庁にお尋ねをいたしますが、三月十八日の閣議のときに福田総理から、できるだけこの円高による為替差益消費者に還元させるようにという発言がありました。それを受けて三月の二十二日だったと思いますが、経済企画庁として主要な輸入品について価格動向追跡調査を実施することになったというふうに伺っております。参議院の予算委員会あるいはまた本委員会におきましても経済企画庁長官あるいはまた物価局長よりそのような趣旨の御答弁があったわけてございますが、すでに現在具体的にこの追跡調査をお始めになっていらっしゃるかどうか、この点からまずお伺いをいたします。
  4. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 円高差益というものがどの程度反映しているかということにつきましては、一月末ぐらいから二百八十円台のレートになりまして、それから三月の終わりごろに七十円台を記録したということでございまして、最近円高傾向が非常に顕著に出ているわけですが、ただ、現実円高の効果が出てくるまでには、在庫品等が十分消化されまして、そして新しいレートで入ってきた商品が市場に出ていくという事態、そういうところまで考えないといけませんので、やはり調査に着手するまでには時間が多少要るのではないか。そういう意味で時間がかかったわけでございまして、現在、調査方法、それから、委託して調査するわけですけれども、その委託先等について検討しているところでございます。できるだけ早く始めたいと思っております。
  5. 中村靖

    中村(靖)委員 いまどういう方法調査をおやりになるか準備を進めていらっしゃるという御答弁でありますが、特に今回どういう品目について重点的に調査をされるおつもりなのか、煮詰まっておりましたら、お聞かせをいただきたいと思っております。  それから、いま御答弁でも触れられましたように、いろいろな段階における調査をおやりになるということになれば、非常に時間もかかる、日にちもかかるということになると思うのでございますが、福田総理の御発言にもございますし、また世論としてもできるだけ為替差益消費者に還元する、あるいはまた円高物価抑制のためにいい意味で利用するというような世論でもあるわけですから、できるだけ早くこの調査をお進めいただきたいというふうに考えておりますので、先ほどお聞きいたしました品目の点と、それからこの調査がいつごろには具体的な結果としてあらわれるのかという点についてお答えをいただきたいと思います。
  6. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 この調査は、前回、円の切り上げそれから変動相場制移行のときにおきましても行ったわけでございますが、やはり国民生活に密接な関連を持つ輸入消費財が第一の対象になるかと思います。それから第二には、やはり輸入依存度が高い原材料を主として使う、そういうことによってできました消費材、この二つが対象になるかと思います。  現在、その品目についてどれを選ぶかということについては、先ほど申し上げました調査方法その他と一緒に検討しているわけですが、実際の調査につきましては、先ほど申し上げましたように、輸入品在庫というのはかなりありますので、その在庫がどう市場に出ていくかということが第一に問題になるかと思います。それから、実際に輸入されて小売段階まで行くのには相当の段階を経て行きますので、その時間が多少かかるのではないか。それから、現実流通段階でその差益の問題が取り扱われます場合には、一方で流通コストの問題がございますので、そういうコストの分析もしないといけないということで、かなり調査としてはむずかしいものになろうかと思うわけでございます。  そういうことで、前回のときには一方で関税引き下げとか輸入自由化というようないろいろな措置がとられた関係で、円の切り上げとあわせて価格引き下げかなり行われたものも出ているわけです。今回はフロート下円高という問題だけに限られておりますし、その辺についてどういうふうに分析するかということについてはいろいろ勉強する必要があろうと思っておりますが、時間につきましては、前回は大体六カ月かかっているわけです。今回はもっと早くしたいと思っていろいろ準備しているわこでございます。
  7. 中村靖

    中村(靖)委員 経済企画庁として、過去の円の切り上げあるいは円高のときに、何回かこの価格動向追跡調査というものを行っていらっしゃるわけでありますけれども、その前に何回か行いました調査やり方と今回の追跡調査やり方というのは全く同じことをおやりになるおつもりなのか、あるいは今回特に何か変わった、前回と違った調査方法をお考えになっているのかという点、どうでしょうか。
  8. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 調査の大体のやり方としては、従来と同じ方法でいいのではないかと思っております。
  9. 中村靖

    中村(靖)委員 調査方法は、先ほどちょっとお触れいただいたかと思いますが、いわゆる民間会社委託をされるというような御方針でしょうか。
  10. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 全部を委託するということになりますと、なかなか委託先その他についての限界がありますので、一部は関係各省でもっと大まかな動向調査といいますか、全体としての輸入価格がどうなっているか、そしてそれが卸売価格でどう反映しているか、小売価格はどうなっているかということで、大まかな見当をつけるようなことは別にしたいと思っております。
  11. 中村靖

    中村(靖)委員 この調査の結果が具体的に出なければ、なかなか細かい品目についてこうしようああしようということを御答弁でおっしゃりにくいと思うのですけれども、たとえば輸入品の中でウィスキーのようなものは、国内価格の中で関税とか酒税というものが非常に大きな部分を占めていて、そして原価は非常に安いということで、今回の程度円高では影響は非常に少なくて、なかなか目に見えた値下げは無理だろうというようなことが言われておるようでございます。これは確かにそうだと思うのですけれども経済企画庁として、輸入品の中で特に今回はこの品目については値下げができるのではないだろうか、あるいは特にこの品物については値下げ指導していきたい、こういうような具体的な何か品目がございますでしょうか。
  12. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 やはり調査をしてみないと、何とも申し上げられないと思います。ただ、一部の、たとえば書籍などについては、三月に円高になった時点で、従来洋書業界はそのレート実勢に応じて輸入価格についての引き上げ引き下げをわりに弾力的に行ってきているわけでございますけれども、今回も三月に一部の引き下げを行っているところがございます。
  13. 中村靖

    中村(靖)委員 いま輸入書籍の例を引かれたわけですれども、この輸入書籍の三月の、たしか私の聞くところでは十円レート引き下げたというふうに伺っておるのですが、これは業界として自主的にお下げになったということで、経済企画庁としてそういう指導をされたというわけではないわけでございますか。
  14. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 企画庁として指導はいたしておりません。業界の自主的な行為でございます。
  15. 中村靖

    中村(靖)委員 先ほど申しましたけれども、重ねて、この調査をとにかく早く実行に着手していただいて、そしてその結果によって、ぜひできるだけ消費者に還元していただきたいし、また円高を物価安定に生かすようにお努めをいただきたいというふうに要望をいたしておきます。  それから、通産省にお伺いをいたしますが、石油業界の最近の為替差益かなり大きなものがあるというふうに言われておりますし、五十一年度の上期におきましては四百四億円の為替差益が出たというふうに伺っておるわけですけれども、五十一年度の下期につきましては、どのくらいの数字になりますのでしょうか。
  16. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お話のとおり、五十一年度の上期では四百億程度為替差益が出ておるのは事実でございます。ただ、五十一年下期につきましては、まだ決算が出そろっておりませんので定量的に申し上げることは差し控えたいと思いますが、少なくとも上期以上の差益は出るであろうというふうに推測いたしております。
  17. 中村靖

    中村(靖)委員 確かに石油業界は過去の円安時代差損というものも無視はできないわけですけれども、当面これだけの莫大な差益が生じておるわけでございますし、現在、ことし一月のOPEC値上げ影響による国内石油製品値上げが各元売りより発表されておる、そういう意味では重要な時期でもございます。そういう意味で、もっと積極的に通産省として値上げ抑制指導をするというお考えはございませんでしょうか。
  18. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちといたしましても、為替差益をできるだけ還元すべきであるということについては是認するものでございますが、ただ、そのためには幾つかの前提がございまして、いわゆる総合的なコストとの関係をどう見るか、いまも御指摘になりましたように、他の製品と違いまして、OPECの二重価格制と申しますか、五%ないし一〇%の引き上げといったような原油代の上昇と為替差益との関係をどう見るかという問題もございますし、かたがた差益の実態というものをどのように把握できるかという問題もあろうかと思います。あるいは五%、一〇%の値上げによりまして、それぞれの企業によって原油コストの差が出てきておるといったような問題も前提として考えなくちゃいけないと思うわけでございます。  価格というものは、石油価格にかかわらず、本来は需給の実勢と申しますか、あるいはマーケットメカニズムを通じて決めていくべきものだと思うわけでございますが、ただ、例外的には、現在、御承知のように、灯油につきましては価格抑制指導をしておる。しかし、これは本来の形ではなくて、むしろ需要期であった、特に異常寒波で非常に寒かったというようなことも勘案いたしまして、行政指導をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、将来の情勢がどうなるかという問題もございますが、当面はただいま申し上げたような事情もございますので、供給サイド需要サイド、両当事者の価格交渉を見守っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  19. 中村靖

    中村(靖)委員 この問題につきましては、後ほど時間があればまた突っ込んでお伺いをいたしたいと思っておりますが、いまエネルギー庁長官からの御答弁の中で、特に家庭用灯油については今需要期値上げを抑制するというような形で指導してきたんだというお話があったわけでございます。事実、非常に積極的に指導をなさっていただいて、家庭用灯油につきましてはかなりよく守られておると思うわけです。ただ、そろそろ需要期が終わりまして、また今後の家庭用灯油価格の問題あるいは家庭用灯油需要見通し等家庭生活には最も密接な関係のあるこの灯油の問題というのは、私どもにとりましても忘れることのできない大事な問題だと思いますので、次の需要期に向かう家庭用灯油の今後の価格の問題、需要見通し等につきまして、簡単で結構でございますが、お答えいただけますでしょうか。
  20. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 家庭用灯油というのは年々需要がふえております。特にことしはそのふえ方がひどかったわけでございますが、一般的に申し上げて、需要は年々伸びていくというふうに見てよろしかろう。五十二年度につきましては、五十一年度に対してかれこれ六%程度消費伸びがあるのじゃなかろうかと見ておりますので、量的にも価格的にもできるだけ安定的に供給できるように対処したい、かように考えております。
  21. 中村靖

    中村(靖)委員 私は、家庭用灯油について、政策的にある程度価格を抑えるということは、一面大変結構なことだというふうに思いますけれども、反面、ほかの、たとえば都市ガス等価格に比較いたしましてかなり割り安感があるというようなこともございますし、また、最近はクリーンヒーターというような便利な暖房装置もだんだん普及してきておりまして、いま御答弁お話がありましたように、ここのところ灯油需要伸びというものは非常に大きなものがあるわけでございます。そういう意味石油精製会社は軽油などの生産を減らして、いわゆる油種別生産比率バランスかなり崩してまで、限界ぎりぎりの線で灯油増産を図っておるというふうに聞いておるわけでございます。石油業界としては、このような状態が続くと、次の需要期灯油安定供給にはどうも自信がないというようなことを私どもも聞き及んでおるわけでございます。  しかし、灯油は確かに生活に密着したエネルギーでもありますから、そういう意味で、価格という点も非常に大切なんですが、同時に安定供給ということ、行列しながらやっと買うというようなことではないようにぜひしていかなければいけないというふうに私は思いますので、特に安定した灯油供給という点につきまして、お考えをお聞かせいただけませんでしょうか。
  22. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほども申し上げておりますように、この冬は非常に寒かったということで、価格据え置き指導をすると同時に、増産指導もいたした。ピーク時には得率は一二%前後にまでなった。大体、灯油得率というのは九%前後ということでございますので、その限りにおいてかなりの無理があった。一つには、その他の製品影響を及ぼさないか、あるいはコスト的な無理がないかといったような問題もございます。しかし、緊急の措置としてさような指導をしてまいったわけでございますが、今後は夏場にさらに従来以上に在庫積み増しの努力をいたしまして、年間としてバランスのとれたような得率供給ができるように対処していきたい、こう思うわけでございます。
  23. 中村靖

    中村(靖)委員 特に備蓄の問題、タンク関係とか、いろいろ金もかかることだろうと思いますが、灯油備蓄につきましてエネルギー庁として何か特に御配慮をされるというようなことはございますか。
  24. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 灯油につきましては、特に北海道あるいは東北地区につきまして需要が格段と多いわけでございます。特に内陸部になりますと、冬場、積雪のために輸送が困難になるといったようなことも配慮いたしまして、北海道東北地区につきましては灯油対象としたような備蓄タンクを設置させたいといったようなことから、東北開発公庫等を通じて特別の融資をやることによってタンクの建設を推進する、かような方向で努力いたしておるわけでございます。
  25. 中村靖

    中村(靖)委員 石油全般にわたりましても、先ほどお話しいたしましように、為替差益をできるだけ消費者に還元するということは大変望ましいことではあるわけでございますけれども、しかし、同時に、現在のように、為替相場の大幅な変動によって石油価格がそのときそのときで著しく不安定になるというようなことは、結果的にはわが国産業経済界に大きな影響を与えかねない。それでなくても必ずしも強くない石油業界体質というものをますます弱くする危険もある、ひいては石油安定供給にも差し支えが出てくるおそれがあるのではないかというような、そういう感じを持っておるわけでございます。  そこで、たとえば一つ考え方として、変動準備金制度というものを要望する動きがあるようでございますけれども、こういう点につきまして通産省、特にエネルギー庁としてお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。
  26. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 当分と申しますか、今後も為替変動相場制というものが存続していくだろう、その限りにおいてやはり円高あるいは円安といったような不安定な要素が出てくることは当然でございます。それはひとり需要業界のみならず、石油業界に対してもかなり影響を及ぼす。特に昨今のように石油製品コストの八〇%までが原油代であるといったようなことからいたしましても、その振幅の影響というものは想像以上のものがあろうかと思います。そういったところから、われわれもいろいろとこういった変動に対して安定的にするための方策について検討もいたしておるわけでございますが、ただいま御指摘為替変動準備金だとか、あるいは為替変動基金だとか、いろんな構想はございます。過去においてもいろいろとわれわれ検討してまいったわけでございますが、たとえば為替変動準備金につきましては、利益留保と申しますか、利益準備金制度だといったようなこともございまして、なかなか実現に至らないわけでございます。その他の方法もあわせ、われわれとしても今後検討してまいりたい、かように考えております。
  27. 中村靖

    中村(靖)委員 私も、確かにこの変動準備金制度というのは何か少し問題があるような気がするのです。いまちょっとお話の中で出ましたが、たとえば私は石油価格安定基金というような、自分でもそういう名前をつけてみたのですけれども、こういう何らか為替差益が出て石油業界が潤っておるときに、将来円安の時期もあるであろうということを踏まえて、少しでも為替に振り回されないような形であるべきである、それにはこういう石油価格安定基金というようなものをぜひお考えいただいて、全部をカバーするというのはなかなかむずかしいかもしれませんけれども、その何割かでもカバーしていくというようなことが大切だというふうに思いますが、重ねて御意見を伺いたいのです。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生の御指摘になった為替安定基金というのはどういうものかということもあろうかと思いますが、仮に為替差損が出たときに、これを補てんするために何がしかの補助金を出す、その反面、為替差益が出た場合に一定の納付金基金に納入させるということで、バランスをとったらどうかという構想だといたしますと、一つ考え方であろうかと思うのでございますが、どうも為替差益が出ておるときに強制的に納付金をとられるといったようなことについても、必ずしも賛成しない向きも出てくるおそれもあるわけでございます。それから、このような問題を考える場合に、金額はどの程度までになるのかということを考えておかなくちゃいけないだろうと思います。いま御指摘の問題のほかに、たとえば複数レートを導入したらどうかとか、あるいは為替変動保険考えたらどうか、あるいは先物売買を行ったらどうか、といったようなこともあわせて検討はいたしておるわけでございますが、それぞれにつきましていろんな問題がございまして、なかなか現実のものとして実施するに至っていないというのが現状でございます。先ほど申し上げたように、今後とも検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  29. 中村靖

    中村(靖)委員 石油安定供給というものが非常に大切だというふうに私は考えますし、そういう意味におきましては、現在の日本石油業界のあり方、あるいは通産省として石油業界をどういうふうに今後リードをしていくか、指導していくかということは非常に大切な問題だというふうに思いますが、どうしてもやはり日本の場合に、外資系民族系という、それぞれの体質の違いといいますか、そういうものによりまして、たとえば OPEC値上げにしましても、影響の度合いが外資系民族系ではかなり差があるというようでございますし、あるいは、ひいてはこの為替差益の問題についても何か体質の強い方にはいい方へよけい影響するというような傾向があるような気がいたしますので、この辺の、通産省として今後、外資系民族系、特に民族系に対する援助といいますか、力をかすということにつきまして、どのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  30. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まさに御指摘のように、外資系民族系という問題は、わが国石油業界の非常に特筆的な問題、特に外資系に比べて民族系体質が弱いという点に、またよその国ではないむずかしさがあるわけでございます。  今回のOPEC値上げによりまして、必ずしも民族系外資系よりも不利だということではないわけでございますが、どちらかと申し上げますと、アメリカ系外資系企業は安い方の油を多く引き取っておる、外資系でもイギリス系企業は、むしろ民族系よりも安い油の引き取り量が低いというようなことでございまして、今度のOPEC値上げ自体が必ずしも民族系外資系よりさらに体質悪化の要因になっておるとは申し上げられないかと思います。ただ、いままでも、設備が外資系の方は非常に古い、したがって資本償却費が安い、あるいはいわゆる白ものの得率の方が外資系では高いといったようなところで企業格差が存在いたしておるわけでございます。  われわれといたしましては、かように企業格差のある民族系を育成するためにいろいろ対策考えておるわけでございますが、本来的にはやはり構造改善の問題があろうかと思います。いろいろとわれわれも対策考えておるわけでございますが、この構造改善の問題ということは、結局、企業みずからが自分の置かれている環境というものをよく判断いたしまして、どのような組み合わせで構造改善を進めていったらいいかということを、本来的に企業の立場で考えるべきだと思います。  ただ、最近、業務提携と申しますか、精製について受委託をするとか販売についての業務提携をやるとか、そういった動きは比較的活発になってきております。ただ、本来的に、よく言われるところの合同、合併といったようなところまでの形はまだ出てきておりませんが、われわれといたしましては、そういった方向企業みずからが判断し、そういった行動に出ていくことを側面的に支援していきたい、かように考えておるわけでございます。
  31. 中村靖

    中村(靖)委員 そろそろ時間が参りますので、最後の質問にさせていただきたいと思います。  ちょっと順序が戻りますが、先ほど灯油の御質問をいたしましたが、日本では家庭暖房に使う灯油というのはいわゆる白灯油というのでしょうか、非常に上質な灯油を使う、そういう傾向があるわけですが、最近、クリーンヒーターのように、燃やして、その排気ガスなり、そういったものは外へ出してしまう非常に便利な装置も開発されて非常に普及してきているわけですから、日本でも欧米のように、粗灯油という表現でいいのでしょうか、いわゆる蒸留装置から留出したままの灯油精製をされる前の、そう手をかけない粗灯油というものをもう少し利用したらどうかなあということを私は考えておるのですけれども、これについてお考えをお聞かせください。
  32. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一応われわれとしては検討させていただきたいと思います。  ただ、御指摘のように、日本灯油というのは非常に上質である、したがって、中間三製品と申しますか、軽油、A重油、灯油、こういったところの価格バランスがとれておらないと、われわれが価格行政指導する場合にも非常に頭に置かなくてはいけないのは、仮にその三製油の中で、御指摘のように灯油が一番良質である、それが軽油よりも安くなるというようなことになりますと、メーカーとしても生産を手控えることにもなりましょうし、かたがた、いままで軽油を使っておった人が、それよりも安くていい油が手に入るということであると、たとえばバス、トラックのたぐいは軽油を使っておるわけですが、これが灯油需要をかえてくるというふうになってまいりますと、せっかく民生用の暖房用の灯油を確保いたしましても、需給バランスが崩れてしまうといったような問題も一つ悩みの点でございますので、ただいま御指摘の点についても、公害を発生しないかどうかというような問題もあわせて検討しなくてはいけないかと思いますが、御指示の点についても考えてみたいと思います。
  33. 中村靖

    中村(靖)委員 石油政策は、非常に私ども生活にも密接に関係をし、また産業経済界の発展のためにも大事な問題でございますので、これからきめ細かにひとつ御配慮をいただきたいと思います。  時間が参りましたので、質問を終わります。
  34. 西宮弘

    西宮委員長 中村君の質疑は終了いたしました。  次は、加藤紘一君。
  35. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 いまの中村議員の質問に、同じテーマですけれども幾つかの点で補足の質問をさせていただきたいと思います。  いま、最初に灯油の話が出ましたけれども通産省としては、この問題はかなり深刻に考えているということはわかります。  今月の十四日の日本経済新聞によりますと、油種間のバランス考えた政策をとらなければならぬということが大々的に出ておりますけれども、まず、得率というのはどの点までがぎりぎり可能なのか。一二%が理論値として最高であって、それ以上になるともうめちゃくちゃになりますというような記事も出ておりますけれども、その辺を、適正なものとマキシマムと、どの辺とお考えなのかをお伺いしたいと思います。
  36. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 得率と申しますのは、仮に一キロリッターなら一キロリッターの原油からどのように有効な各種製品を産出できるかという問題もございます。それから、かたがた各種製品ごとに需給の問題があるわけでございまして、そういったところから定まる得率もございます。  ただいま先生の御質問にございますように、物理的にどこまで可能かといったような見方もあろうかと思います。ただ、どこまで可能かというのは非常にむずかしい問題でございまして、過去の実績からいたしますと、大体灯油というのは、需要がふえるにしたがいまして少しずつ得率はふえてきております。かつて七%であったものが八%になり、あるいは九%になって、特に五十一年度のように、異常寒波等の関係もありまして、指導した結果、一月、二月ごろのピーク時には一二%程度得率になっております。しかし、平均しては一〇・二、三%ぐらいだろうと思うわけでございます。  ただ、その場合に考えておかなくてはいけませんのは、先ほども申し上げたようなことからいたしまして、他の油種に影響を及ぼさないかどうか、ということは、これは、得率を上げればその他の製品得率を落とさなければいけないという問題も出てくるわけでございます。下げれば、今度はほかの製品がふえてくるといったような、その他製品の需給との関係もございます。それから、ある程度以上に無理をいたしますと、それだけコストが当然上昇してくるわけでございまして、それと市場価格との相関性といったような問題もあろうかと思います。私も技術屋でございませんので断定的なことを申し上げかねますが、大体灯油は九ないしせいぜい一〇%どまりというところが適正な得率ではなかろうか、かように思うわけでございます。
  37. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 その九ないし一〇というのは、日本のいろいろな産業、それから民生用の需要等を考えて、産業政策上から見て九とか一〇あたりが適当だろうなという総合判断の上での話ですね、技術的な話ではなくて。
  38. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 産業構造と申しますか、民生用あるいは産業用というような需要構造との関係もございます。それからいま一つは、現在、日本が入手しておる原油の種類、いわゆる重質油と軽質油の問題がございます。灯油の場合は、軽質油が多くなければなかなか得率は上げられないわけでございますが、御承知のように、だんだん原油は重質化の方向に進みつつあるわけでございます。したがいまして、重質化に相応したような設備を設置していけばまた別でございますが、現在の設備の状況からいたしますと、まずまず九ないしせいぜい一〇%というところが灯油の適正な得率ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  39. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 そういうある一時期をとっての得率の問題と、それから、灯油需要が非常に落ちる夏の時期をもすべて考えて、そして年間の得率で見る場合と、いろいろお考えだろうと思うのです。通産省のお考えとしては、灯油需要期における灯油備蓄体制をしっかり保っていれば、まあまあいまの需要伸びに対して、得率九ないし一〇%ぐらいでやっていけるというお考えですか。
  40. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおりでございます。九月までに積み増しをしておきまして十月以降の需要期に備えていく、できるだけ平均の得率をならしておく。ただ、特殊な場合、ことしのように異常寒波が来たような場合には、一、二月は一二%程度得率でやっておりますが、大体年間ならしていくというのが一つ方向でございまして、そのために九月末までに積み増しをしている、こういうことになろうかと思います。
  41. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 それに関連した問題ですが、灯油需要について、将来の見通しということがその判断をする際に一つ必要な要素であろうかと思うのです。現在、暖房用のエネルギーを全国見ますと、灯油で行われておるものが八五・四%、そして電気が四・五、都市ガス三・五、LPG、いわゆるプロパンが六・五、こうなりますと圧倒的に灯油の比率が高いわけです。それで、値段にしましても、灯油を一〇〇とすれば、電気が三四八ぐらいの価格差になれば、人間は、当然灯油でやっていこうと思うのはごくごくあたりまえのことですね。そうしますと、日本暖房というものがこのまま灯油だけで進んでいっていいのだろうか。それでいいんですと考えるのか、それとも若干政策的に灯油暖房の比率が多くなるような政策をとり過ぎたかなというような感じがあるのか、その辺についての討議はなさっておりますか。
  42. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、一般消費者家庭暖房用に何を使うかというのは、結局、消費者の選択の問題ということになろうかと思います。ただ、いま御指摘のように、価格的にも灯油の方が安いということもございますし、また一方で、灯油の熱効率と申しましょうか、早く部屋が暖まる、あるいは部屋全体が暖まりやすいといったような効用も手伝って、灯油に対する需要が他の暖房源よりも多く使用されておるということになっておるんじゃなかろうかと思います。
  43. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 この問題は、ちょっとこちらもむずかしい話なので、これからの検討ということで、これまでにいたします。  次に、中村議員がお聞きになりましたいわゆる円高差益の問題について、若干追加の質問をいたします。  五十一年下期で石油各社四百億以上の差益ということになりますが、四月では一カ月でどの程度になりそうと予測されておりますか。
  44. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 五十一年の上期で四百億程度差益があったわけでございますが、下期で幾らになるかというのは非常にむずかしいと思います。ただ、単純に申し上げますと、為替相場が一円動きますと、旧価格であれば大体一キロリッター当たり八十円、それから、新しい価格と申しますか、OPEC値上げ後は八十五円ぐらい響くんじゃなかろうかと思います。仮に一円動くといたしますと、月の輸入量がかれこれ二千五百万キロリッターでございますので、八十円とすれば約二十億、八十五円とすれば二十四、五億、これは計算上の問題でございます。  ただ、為替差益が発生する態様としては二つございまして、一つは、値決め交渉をする場合に、過去三カ月の為替の平均実績をとりまして、それをもって為替レートとして換算しておるわけですが、それが値が決まった後、実際の売買が行われる時点におけるレートとの関係でどの程度のギャップが出てくるかということでございます。それからいま一つは、産油国から船積みをする際のレートと航海日数、中近東であれば二十日ぐらいかかるわけでございますが、その一定の航海日数を経て通関後一定のユーザンスが過ぎた後、現金で支払うときのその時点におけるレートにギャップがあるわけでございます。そういった大きく分けて二つの態様が考えられると思います。  したがいまして、私がいま単純に計算いたしますと二十ないし二十四、五億と申し上げましたのも、現実の問題になってくると、あるいは個々の企業によりましていま申し上げた二つの態様との関連で、必ずしも個別、具体的には幾らということは言いづらいと思います。ただ、単純計算でいけば二十ないし二十五億円、こういうことでございます。
  45. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 去年十二月に通関ベースで、原油の輸入額は幾らですか。
  46. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 昨年十二月は通関ベースで二千三百万キロリッターでございます。
  47. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 額にして幾らですか。
  48. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 十二月の平均値が二百九十五円でござあますから、金額にいたしまして約五千八百億円でございます。
  49. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 と申しますことは、約二十億ドルですね。そうしますと、大体通関ベースのときと一定の船積した計上日のときとで若干の輸送期間の差があるわけですね、四十日。しかし、この時期はまだだんだん下がっていたわけですから、そうしますと、通関のときと決済日、百二十日間のユーザンス期間を経た決済日と考えますと、去年の十二月がことしの四月でどうなっているかということで比較できる、非常にラフに言えば、そう言えると思うのです。そうしますと、去年の十二月の平均が二百九十五円、そして四月が大体二百七十五円ぐらいの平均にはいく、そうするとドル当たり二十円。そうしますと、通関ベースで二十億ドルの場合には約四百億円の差益が出る、大体ラフな推計でそういうことが言えますか。
  50. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 単純に計算すると、あるいは御指摘のような計算式になるかもしれませんが、トータルの問題と個別企業、個別の船積みとの問題というのはまた別になってくるかと思いますので、たとえば十二月のこれは平均値、あるいはいま御指摘のものは四月の平均値であるわけでしょうが、その間、言ってみれば、一船ごとに毎日向こうを出航して毎日日本に入ってきている、その都度また同じく円高基調の中でも差が出てくるかと思います。だから、やはり個別に計算をしてまいりませんと一概に……
  51. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 確かに個別にはそうなんですが、約二十億ドルというのは通関ベースの金額ですね。一ドルにつき一円ずつ安くなったとしていくと二十億円の差益になりますね。それが二十円差がついたら四百億と案外単純にいけるんじゃないのですか、それはレートも、ある非常に高いところとか安いところをとっているわけではなくて、十二月の平均をとって二百九十五円ということですから。
  52. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 概算としてどの程度になるだろうかということは、いま御指摘のような計算でいいんじゃなかろうかと思います。ただ、それに基づいていかなる対策を打っていくかというときになりますと、やはりもう少し精細に計算する必要があるかと思います。趨勢としておおむねどの程度だといったような場合には、御指摘のような試算も一つ方法ではなかろうかと思います。
  53. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 その対策というのはこれから論ずるとして、大体その差益というものが、一カ月いまのようなレートが続いたならば何十億ベースなのか、何百億ベースなのか、そういうオーダーというのをちょっと知りたかったから申したまでなんであって、そんなにオーダーが、二けたのものが三けた、三けたのものが二けたになるというような話じゃないと思うのですね。ですから、やはりいまのレートが続いたら差益は非常にあるということは言えると思いますね。五十一年上期で四百億、五十二年度は四月一カ月で、もしかしたら、二、三百から四百億のものが出るかもしれぬという状態ですから、この問題についてみんなが論議するのはしょうがないと言えると思うのです。  さて問題は、通産省石油業法で石油製品価格が不当に高騰または下落のおそれがある場合には標準価格等を決めることができるということになっていますね。いま中村議員に対する御答弁をお聞きしてみますと、これは業界の需給関係によって決まるものです、それをじっと見守っておりますという感じですが、いまのこの差益が出たような場合も、あくまでもじっと見詰めておりますという感じの態度を続けられますか。
  54. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 いま加藤委員指摘のように、石油業法あるいは国民生活安定緊急措置法、こういったもので標準額あるいは標準価格を決定することができるように規定はされております。ただ、私たちといたしましては、いまそういった異常事態であるかどうかということのほかに、先ほども申し上げましたように、五%アップの油と一〇%アップの油、これが各社によって引き取り量が違うわけでございます。したがいまして、二重価格ということ自体が異常な事態であると言えばそういうことでございますが、日本の各石油企業石油製品コストがそれに従って異なってきておるわけでございます。もう少し具体的に申し上げますと、今度の値上げ発表などを見ましても、油代だけで見ましても最高と最低で八百円ぐらいの差があるわけです。それから、原油代のほかに、たとえば防災上の施設費だとか備蓄費だとか人件費だとか、いわゆる原油以外の上がりの部分につきましても最高と最低で四百円の差がある。そういったところから各社区々のコスト、それについて御指摘のように価格指導をする場合にどのようにいたしたらいいかという技術的な問題があるわけでございます。  そういった点もありまして、われわれといたしましては、特に需要業界が非常に不況に呻吟しておるといったような事態でもございますので、両当事者で話し合いをする過程で、当然為替差益の問題も交渉の中で出てくるだろう、そういったところから、われわれとしては需給両当事者間の値決め交渉を慎重に見守っておる、こういう段階でございます。
  55. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 長官の苦悩もよくわかるのです。その際、特に民族系を主体とした経理の悪いところと外資系とどっちを基準にして見ていくのかというあたりになりますと、非常に悩みが多いと思うのですけれども通産省としては何とかして民族系企業が存続し力強くなってもらうということをこいねがっておると思うのです。私たちもそうあってもらいたいと思うのですが、では、それに合わせてやった場合には、片一方の外資系は非常な差益が生じる、これについて恐らくまだお答えもむずかしくて固まっていないと思うのです。その辺について、現在の段階では基本的な考え方というものはある程度固まっておられますか。
  56. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちといたしましては、外資系民族系にかかわらず、石油安定供給を十全に果たし得るような企業であってほしい、こういう立場になるわけですが、そうは言うものの、現実には民族系の方が非常に体力も弱いわけでございますから、それ相応の対策考えていかなければいけないと思うわけでございます。ただ、御指摘のように、コストの高い方に基準を置けば、コストが安く上がっているところはそれだけよけいな利益を上げることになりますし、かといって、コストの安い方に焦点を合わせますと、ますますコストの高い企業の存続が困難になる、こういう問題もございまして、先ほど来申し上げておるように、両当事者間の話し合いを見守るということにならざるを得ないわけでございます。  ただ、御承知のように、三月に値上げを打ち出したところと四月に値上げを打ち出したところ、これは為替差益等の差もございまして二千円と二千四百円という数字を打ち出したことは御承知だと思いますが、結局は、二千四百円の方は矛をおさめて、いまの値決めのベースになっておるのは、四月一日以降値上げを打ち出した二千円というのが基準になっておるようでございます。結局、コストの安い方と申しますか、オファー価格の低い方に当然のことながらしわ寄せされていくということが現実ではなかろうかと思うわけでございます。
  57. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 そこで、もう一つの問題は、各業界間の力関係とか需給関係、そのネゴを見守っていこうということですが、現実には力関係の強いユーザーは石油業界の言うことを聞かないで何とかがんばっていく、しかし弱いところは泣き泣き聞いてしまう。特に供給停止、抑制というような手を打たれますと非常にまいってしまうものですから、聞かざるを得ないという傾向はあると思うのですね。  現実に去年の十月、C重油のキロリッター当たり六百円の値上げの問題がありましたが、これが実現できた業種とできなかった業種をちょっとお知らせください。主なところで結構です。
  58. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 C重油につきましては、鉄鋼業界についてはなかなか交渉がうまくいかなかったというふうに聞いております。
  59. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 そのように現実に六百円が実現できたのは、鉄鋼を除き、たとえばセメントとか紙パルプ、日本全体の企業としては鉄鋼に比べれば格段に力というか政治力というか、ネゴの力、バーゲニングポジションが弱そうなところは実現させられて、鉄鋼のように一番強いところは免れているという感じですね。これは業種間ではそうですけれども、これが消費物資により直接関連の強いようなところは概して弱いような業界が多いわけで、結局、強い者は何とか主張を通すけれども、という形にならざるを得ないんじゃないでしょうか。その辺の問題で不平等が生じないか。その辺の感じについて、政務次官、基本的に若干介入しなければならぬのではないかというような感じはお持ちになりませんか。
  60. 松永光

    ○松永(光)政府委員 先生御指摘のように、同じ油がユーザーの力関係で、力の強い業種については安く、力の弱い業種については高く仮に売買がなされておるとするならば、望ましい姿ではないと思います。しかし、その価格に直接通産省が介入できるかというと、直接介入することは望ましいことじゃありませんので、どうすべきかよく検討してみたい、こう考えておる次第でございます。
  61. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 時間もそろそろ参りましたのでやめますが、最後にひとつポイントを長官にお聞きしたいと思います。  原油の輸入に際してドルの差益金が出ました。円が強くなったということは、日本国民、日本の全産業の努力によって円が強くなるということなんですね。国民が一生懸命働いたからだ。それを一つの業種に、たとえば製油業界だけにその利益を与えていいものではない。逆に見れば、円高になったということで輸出が不利になって、かなりかぶってくる企業もあるわけですね。ですから、少なくともそういう輸出産業の方にかなり均てんさせてあげなければならぬのではないかという感じですが、輸入主体の業種と輸出主体の業種の問題についてもやはり業種間の話し合いでございますという感じですか、それとも通産省としてある程度の基本的な考え方がありますか、お聞きして、質問を終ります。
  62. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点は全く私も考えさせられる問題であるわけでございますが、具体的にそれをどういうふうにやればいいかという問題になりますと、なかなかむずかしい問題で、特にこの為替レートというのは、釈迦に説法で恐縮でございますが、常に不安定で流動的である。為替が動くまにまに、あちらに金をやる、こちらで受け取るということをやっておりますと、経済の安定性というものが阻害される。したがって、一つには、長期的な問題として、今後もずっと変動制が続くわけでございましょうから、日本の産業構造全体がそういった振幅に耐えられるように、きわめて観念的な言い方でございますが、そういった方向に持っていくしか、現実としての具体的方法はないのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  63. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 終わります。
  64. 西宮弘

    西宮委員長 加藤紘一君の質疑は終わりました。  次は、武部文君。
  65. 武部文

    ○武部委員 先ほどから円高の問題について与党の方からいろいろお話がございましたが、福田総理が二月十八日に、消費者に利益の還元を図れ、あのような発言をされた。そのときのドルの相場は、前日十七日で二百八十四円三十銭、そういう相場であります。輸入業者やあるいは流通業者に差益によるところの利益を滞留させないようにしろ、こういう指示を閣議で与えたわけですが、経済企画庁はこの指示についてどういうことをこれからしようとしておるのか、大分時間もたっておるわけですが、一体何をしたのか、まず最初にそれを伺いたい。
  66. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 最近の円高傾向は、御承知のとおりでございます。過去こういう円高が起きた時期が二回あったわけでございます。四十七年と四十八年でございますが、そのときと若干現在の様相は違うと思います。一つは、変動相場制のもとでの円高であるということがございます。それから、当時は輸入の促進を図るということで、輸入自由化とか関税引き下げというような措置もあわせてとっておるわけでございまして、かなり価格面に大きな影響を及ぼしたわけでございます。今回の問題については、そういう事情が異なるということもございますが、全体としては大きく分けて二つについて考えてみたいと思っております。  一つは、生産財のようなもの、たとえば原材料、燃料等につきましては、やはり取引当事者というのが非常に大きな力を持っているわけでざいますので、現在のような需給の状況から見ますると、やはりそれぞれの当事者間の話し合いで落ちついていく、いわば市場の機構に任せて落ちつく価格というものが、結局は差益が還元されるという方向に向かっていくのではないかと思っているわけでございます。一方、直接消費財的なものになりますと、これはなかなかいまのような当事者間の話し合いに任せるというような状況ではございませんので、消費財についてはやはり目を光らせていく必要があろうというふうに思っております。  そこで、その消費財に対する措置でございますけれども、これは実際に入ってきた品物がどういうふうに輸入の段階、卸の段階、小売の段階を経て消費者に渡るかということを具体的な事例に即して調べてみて、そしてその間に生じた円高差益というものがどういうふうに吸収されていったのか、また反映したのかということをよく分折をして、そして実態を把握した上で、適当な指導なりその他の措置をとっていく必要があるのではないか。そういうことで、現在調査準備をしているところでございます。
  67. 武部文

    ○武部委員 先ほども聞いておりますと、前回は六カ月かかったというような話ですが、そういうように非常に時間がかかるようなことでは、この問題は解決にほど遠いというふうに思うのです。総理のそういう発言が閣議であった後、今度は四月八日の日に、総理の諮問機関である物価安定政策会議円高の問題が取り上げられて、物価の引き下げに生かす手だてはないかという論議がされたということが報道されておるわけです。そのとき、前日の円相場は二百七十三円二十銭、総理の発言からすでに十一円円高になっておる。こういうふうに、順次円高傾向というのが高まってきておるわけですが、いまのような話を聞いておると、とても悠長な話で、六カ月も先に対策が出てくるというようなことではどうにもならぬ、私どもはそういうふうに思うのです。したがって、たとえば西ドイツにおいては、マルクの値上がりについてガソリンの値段を下げたというふうに報道されておるわけですが、西ドイツのマルクがどのくらいだったか私はよくわからませんが、そういうふうに西ドイツは、マルクが上がった、それを直ちにガソリンの値下げに結びつけた、こういう具体的な現実の姿があるわけです。後で具体的にこの円高傾向を申し上げますが、そういうことがなぜわが国にできないのだろうか、この点、企画庁の見解をひとつ求めたいのであります。
  68. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 いまおっしゃいました物価安定政策会議の政策部会でも確かに議論が出てまいりまして、一部の委員からは、西独の例を引かれての指摘がございました。その際にも、他の委員からは、フロート下円高ということについてどう考えるかということ、たとえば輸出についての差損等が一方にある場合において、どこまで介入できるのかというような意見も出されたわけでございます。  私どもとしては、やはり円高消費者に還元されるという問題については、実際に円高になって入ってきたものが売られた段階でないと、差益という議論は出てこないのです。実際には輸入品在庫というのはかなりあるわけで、その在庫を最初は売っているだろう、後から入ってきたものを先に売るということもあるかもしれませんけれども、まあ一般的には在庫期間というものが経過しないと売れていかないだろうということがございます。  それから、実際の調査につきましては、輸入の段階からいろいろな流通業者の間を通って消費者に渡っていくまでに、やはり相当時間もかかるということがございますし、非常にいまの流通経路の中には複雑なものがございますので、一つ一つ追跡をして調査することが非常に時間がかかることも考えられるわけです。また、流通コストの上昇ということもやはり一方であるものですから、そういう実態も調べなければいけないということで、調査としては非常にむずかしい調査だろうと思います。  先ほど、前回調査が六カ月かかったということを申し上げたわけですけれども、今回はそれをできるだけ早くしたいということで取り組んでいるわけでございます。
  69. 武部文

    ○武部委員 参議院の予算委員会で論議があったことを私、議事録でずっと読みますと、具体的な項目がずんずん挙がっておりますね。いまの企画庁のように、これから品目を決めて追跡調査をして、六カ月後に確かにおっしゃるように取引がなされて、それから対策だということと、もう一面は、この円高によってこれこれのものについてはこれだけ利益が想定されるのだから下げたっていいじゃないか、こういうような論議がすでに参議院の予算委員会でされておりますよ。たとえば電力料金、ここに議事録がありますが、これで見ると、九電力が為替レートを、値上がりのときの中間を二百九十九円と見て、仮に二百八十円というレートをとった場合には、一円で三十三億円電力会社がもうかるのだ、為替差益が出るのだ、合計で六百二十七億円というのが答弁になっていますよ。仮に二百七十円のレートとしますと、二十九円という差額が出ますから、九電力で九百五十七億円為替差益が出るのです。一歩譲って二百八十円として計算した場合には、標準家庭で百五十キロワットの電力を使う家庭ならば、一カ月に百二十六円値下げが可能である、こういう具体的な数字がすぐはっきりと出ますよ。国民は、少なくとも総理がああいうことを言っておるのだから、そうすれば為替差益でもうかっているところのものについて政府が何らかの行政指導をして、価格について介入するだろう、あるいは指導するだろう、こういうことを考えるのですよ。当然だと思うのです。総理は、特に公共料金の問題についてこの為替差益を還元させたい、こういう答弁をしていますね。だとすると、いまの企画庁のような悠長な答弁ではなくて、後で石油の問題も言いますが、具体的にこれこれしかじかのものについてはこれだけの差益現実に出ておるのだ、だから料金問題についてはこういう対策が必要なら必要だということを国民の前に明らかにする義務があると私は思うのです。総理が閣議でああいうことを言ったならば、それが具体的にどういうふうに国民の中に浸透していくかということを、国民は見守っておると思うのですよ。そういう点を私はお尋ねしたかった。  もう一点は、ついこの間、経団連の土光会長が言ったことが大々的に新聞に出ましたね。土光さんはこの為替差益のことを述べています。これを見ますと、特に肉のことを具体的に言っているのですよ。「消費者もどうして肉などが安くならないか、流通機構がどうなっているかなど、もっとしっかり研究すべきだ。」というような発言をいたしましたね。これは大々的に新聞に報道されました。経済団体の総本山で初めてこういう言葉が出たのです。一体肉の値段がこの円高の中でどういうふうになっておるかということを消費者はもっと勉強しろ、こういう発言をしておられますね。アンカレジで日航ジャンボ機が墜落した。五十六頭の牛が乗っておったことがわれわれはあれで初めてわかったわけです。まさか三百キロ以上の牛が日航ジャンボ機の貨物便に積まれて羽田に来ておるとは私ども知らなかった。あれを見たら、二千何十頭というものが十カ月間に入っていますね。そういうことで肉が非常に高い、一体差益とどういう関係があるだろうか。農林省に来てもらっておるわけですが、差益と現在の畜産振興事業団の利益とはどういうふうに結びついておるのだろうか、私は素人だけれども、ぴんとそういうことを考えるわけですが、どうでしょうか、この肉の問題は。
  70. 石田徳

    ○石田説明員 先生御承知のように、畜産振興事業団は、いわゆる畜安法によりまして、直接自分で牛肉の輸入ができないことになっております。用語は「輸入に係る牛肉」こういう言葉を使ってございます。商社が入れてきたものを買う、こういう形になっております。そこで、建て値は全部円建てになっておりますので、直接には為替差益というものが反映いたしませんけれども、ただ、入札する際のシーリングプライスを決めるときには、当然そういうものが加味されるわけでございますから、間接的には何らかの形でそこに反映しているというふうに考えております。
  71. 武部文

    ○武部委員 しかし、現実に輸入肉は、小売店の店頭に並んだときには三倍ぐらいになっておりますね。これはどういうわけですか。
  72. 石田徳

    ○石田説明員 これは輸入と放出との間に、輸入はシーリングプライスを決めて一番安いところで輸入するわけでございますが、これは海外の市況等にも関係いたしますけれども国内で放出する場合には、これは時価で放出するのを原則といたしております。これも御承知のように、わが国の牛肉の消費の中で占める輸入肉というものは、多いときにはかなり高い比率になりますけれども、大体二割あるいは三割ぐらいでございます。そういうこともございますので、輸入価格だけですべての価格が形成されるわけではございませんが、時価で放出いたしております。それは、国内牛肉を保護する、こういう観点からやっておるわけでございますので、為替差益の分は、仮に反映したといたしましても、それは事業団で微収いたしますといいますか、その差益として残るわけでございまして、直接、小売価格にはその段階では反映いたしておりません。
  73. 武部文

    ○武部委員 そうすると、円高差益が出て、もうけるのは畜産振興事業団だけですね。事業団はその利益をどうするのですか。
  74. 石田徳

    ○石田説明員 為替差益を、全部事業団であるかどうかわかりませんが、一部反映すると思います。その反映したものは事業団の差益として残るわけでございますが、これもいわゆる畜安法によりまして助成事業というのを行っております。この助成事業というのは、消費者関係に利益をもたらすような流通の合理化あるいは牛肉生産の合理化、その他いわゆる農業関係の方に使っているわけでございます。そういう金の使用の効果によりまして、間接的ではございますが、わが国の牛肉生産の基盤を強化すると同時に、生産を拡大し、また価格の安定に寄与する、こういう間接的な効果をねらっているわけでございます。
  75. 武部文

    ○武部委員 きょうは肉のことが主ではございまませんから結構ですが、確かに土光さんがたまたま肉の問題を取り上げたわけです。御承知のように、日本の牛肉は世界一高いとさえ言われておるのですから、そういうもので、輸入されてくる肉の値段がどうして下がらぬだろうかということを疑問に思うのは、私一人ではないと思うのです。こういうことが具体的に、先ほど言ったような電力の料金の問題だって差益がはっきりと出てきていますね。それから肉だっていまそういうことが出ている。そういうような具体的な問題をもっと早く取り上げて、そして具体的に国民の前に明らかにする義務が政府にあると私は思うのです。それが恐らく総理の言いたかったことだろうと思うし、またそうでなければならぬと思うのです。ですから、私は肉の問題についてちょっと疑問に思ったから、農林省に来ていただいたのであります。本題は石油の問題ですから、農林省は結構です。  先ほどからいろいろお話が出ておりますように、石油の元売会社の一方的な値上げ発表というものがなされたわけです。私は、石油製品価格体系に大きな予盾がある、このように最初に指摘をしたいのであります。  五十年の十一月二十八日、石油業法第十五条によって石油審議会が標準額を決めました。ガソリン、ナフサ、C重油であります。これは五十一年の五月に安定したというので撤廃になっておるようでありますが、問題は、その目的、標準額をなぜ決めたか、この目的は石油安定供給を確保するためだということになっておるわけです。その際に、電力、鉄鋼、セメント、そういう大企業向けに出ていくC重油の得率というものが論議をされて、三九・二、約四〇%の得率がC重油だ。ナフサも得率は一一・七%ですね。当時の金額を調べてみると、標準額一キロリットル当たり二万九千七百円のナフサは五十二年の一月には二万八千九百九十五円になっていますね。そうすると、キロリットル当たり七百五円値下がりになっておるのです。C重油は、当時決められたときの標準額は一キロリットル当たり二万四千七百円、これがことしの一月では二万三千二百六円、千四百九十四円格安であります。下がっておる。しかも、ことしの一月の原油の入手価格を調べてみると、キロリットル当たり二万三千二百六円です。C重油は、原油の入手価格よりも、わずかであるけれども、下がっている、こういう具体的な事実が数字の上から出てくるわけです。これは恐らく否定はされぬと思うのですが、これに引きかえて、当時、キロリットル当たり三万八百円だった民生用灯油、これはことしの一月には三万二千八百円、キロリットル当たり二千円値上がりしていますね。軽油、ガソリン、いずれもそれぞれ三千五百円ないし二千三百円程度値上がりをしています。  こういうふうに価格の推移を調べてみると、明らかに大企業、電力、鉄鋼、セメント、そういうもの向けのC重油、しかも得率は四〇%、こういうC重油が格安であって、そうして庶民に最も身近な灯油あるいはガソリン、そういうものがそのはね返りを受けて値上がりをしておる、こういうことがこの数字の推移を見て明らかになるわけです。この点については、それをお認めになりますか。
  76. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 数字は御指摘のようなことになっておると思います。
  77. 武部文

    ○武部委員 このように今日までの石油価格体系というものについて、私は、大きな矛盾があると思うのです。原油の価格を下回ってきたというC重油、灯油は値段は上がっていく、ガソリンも値段は上がっておる、得率はC重油が一番多い、こういうふうになってきたわけです。そういう背景の中で差益問題というものを考えていかなければならぬ、こういうふうに思います。  そこで、為替差益の問題については、先ほどからいろいろ論議もあったわけですが、確かに、どの時点でどの金額をとらえるかということはなかなかむずかしいし、先行きも非常に不明確な点があることは私もよくわかります。わかりますが、少なくとも今日、円高傾向というものはそう乱高下は行われていない。企画庁長官はこの委員会の席上で、乱高下がなければ円高は最も好ましい、そういう答弁をしておられました。特に、あるいは二百六十円台になるかむしらぬ、こういうことも観測として企画庁長官は述べておられたのであります。決して乱高下ではなくて、円高は順調にたどっておるということは、この数字を見れば明らかであります。こういう中で、標準額を決めたときのレート三百二円から今日の実勢レートを見たときに、一体どれくらいな差益が出ておるだろうか、これをわれわれは調査をしてみる必要があるし、その差益の合計をどう消費者に還元をしていくか、価格体系に反映させるかということは非常に重要な課題だと私は思うのです。  そこで、大蔵省の「日本貿易月報」によって換算レートを調べてみたわけですが、一時期、確かに標準額の決定後、円安になった時期がありますね。それは三カ月です。五十年の十二月、五十一年の一月、五十一年の二月、三カ月間は基準三百二円に対して円安となって、合計百三十三億八千万円の為替差損になっておる、これは事実であります。しかし、少なくとも五十一年、去年の三月からは円高傾向がずうっと続いてきたわけです。先ほど上期で約四百四億円程度為替差益があったというふうにおっしゃっておるわけですが、私はこれをずうっと通して調べてみたわけです。そういたしますと、二月が二百八十五円、三月は二百八十円とピッチがどんどんと高まってきましたのですが、これをずうっと三月まで実勢レートで換算をして、先ほどおっしゃったように、一円につきキロリットル当たりの差益が八十五円、これは業界の通説ですから、八十五円でよろしいと思いますが、八十五円で計算をいたしますと、この差益だけで二千億をはるかに超える金額になります。この点はお認めになりますか。
  78. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一つには、八十五円という数字は、新しい価格になった時点の原単位でございまして、むしろ昨年の十二月までは八十円と見るのが適当ではなかろうかという気がいたします。これは一般的な試算でございます。そのほかに、先ほど来何回か申し上げましたように、いわゆる船積み時点から通関のユーザンス期間を過ぎて、現実の支払いが立つ時点におけるレートの差といったようなものも、個別、具体的に計算をしていく必要があろうかと思います。
  79. 武部文

    ○武部委員 八十円と八十五円の換算のやり方については、確かにそういう意見もあるでしょう。しかし、現実に入ってきた数量、それと為替の差、そういうものを見たときに、二千億という金額が明確に出てくるのです。先ほど三カ月間の差損のことを私は言いましたけれども、それを差し引いてもそういう金額になる。たとえば三月の実勢レートは二百八十二円六十銭、したがって、十九円四十銭で八十五円を掛けますと、四百七億八千万円という金額が出てきます。これは三月だけで四百億を超える差益があったことを明確に認めることになるわけです。現在は、きのうは二百七十三円です。中心相場は二百七十三円。そういうふうに、仮に二百八十二円としても四百億ですから、これを二百七十円としたときはもっと出てきますね。この具体的な事実は否定されぬと思うのですが、どうですか。
  80. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 何度も繰り返しますが、単純計算をする場合にはさようなことになろうかと思います。
  81. 武部文

    ○武部委員 あなたが先ほど答弁されますように、確かに一船ごとに違うでしょう、毎日違うでしょう。しかし、われわれはそういう論議をしておったって、ここでは話にならぬのです。ですから、少なくとも平均的な数値で平均的な金額を出して、その平均的な金額でどれだけの差益というものを業界が得ることができたんだから、それをどうするかということの論議であって、一船ごとに違うし、毎日違うんだから、それは最後になってみなければわからぬという論議なら、ここは論議の場じゃなくなってしまう、私はそういうように思うのです。現実為替差益が輸入業者にこれぐらいあるんだという推定だけはできると思うのですよ。その推定に立って金額をどうするかということを論議するのがここの任務だと私は思うのです。ですから、単純計算で結構です、単純計算でなければ出ないのですから。単純計算でいって、その金額をどう消費者に還元をするか、物価政策にどう波及させるかということの論議を私は続けていきたいというふうに思うのです。そうでなければ論議がかみ合いませんから。いかがですか、その点。
  82. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のようなことだと思いますが、ただ、瞬間風速と申しますか、その価格で定着しておるという前提を置かざるを得ないかと思います。将来、今後もさらに円高になるのか、あるいは円安になっていくのかといったような問題は捨象するということがまず一つ必要かと思いますし、それからもう一つは、総コストと申しますか、原油代とその他のコスト要因がどのような関係に立つかという二つの点を前提として先生の御指摘のようなことになろうかと思います。
  83. 武部文

    ○武部委員 いま申し上げたのは、今日までの為替相場の推移による為替差益の大体の現状を数字的に申し上げたわけです。そうすると、一体これからの為替相場はどう動くだろうかということについて、私は先ほど、乱高下をしなくて大体順調に円高が続いておるということを言ったわけですが、今後の為替相場の推移をどう見ておるか。先のことだからわからぬ、急転して円安になるかもしらぬ、そういうふうにお考えなのか、それとも、このまま着実に円高というものは続いていくというふうにお考えになっているか。これは企画庁でも通産省でも結構です。
  84. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 やはり為替相場は、短期的には市場の需給関係が左右すると思いますし、長期的にはそれぞれの国の経済力、また国際競争力等が総合的に反映していく姿だろうと思うわけでございます。  そういうことから考えまして、当面のシートの基調について、これがどう推移するかということを、ここで将来の見通しを申し上げるということは非常に困難でございますし、その点について当面、当面と申しますか、こういう円高基調が始まってからこの二カ月か三カ月の間、こういう傾向をたどっているということは実際の姿として出ているわけでございます。これを将来推し進めてどう考えていくかということについては、いろいろ現在わが国でも景気対策その他をとっているわけでございますが、こういうものが全体としてそういうレートの相関関係にどういう影響を及ぼしていくかということを見きわめる必要があるかと思います。ここで断定的にこれからの見通しを申し上げることはできないと思います。
  85. 武部文

    ○武部委員 為替相場の推移という、ここにも資料がございますが、きのうは二百七十三円八十銭というのが中心相場です。三カ月の先物の終わり値は二百七十四円六十三銭、六カ月の先物の終わり値は二百七十五円二十七銭、もちろん全部そのようになるというふうに見るわけにはいきませんけれども、このずっと一覧表による推移を見ると、着実に乱高下なしに円高は続いておる、二百六十円台になる可能性すら出てくる気配があるというふうに見てよかろうと思うのです。もちろんこれは先のことですからわかりませんけれども。長官が何遍も言うように、こういう乱高下がない円高というもは歓迎すべきだし、乱高下がなく着実にいっておるのです。こういう中で、これからの業界の元売価格値上げとこの円高傾向とは一体どう結びつくだろうか、ここをこれから私はちょっと質問をしてみたいのです。  その前に、先ほど二千億円以上の差益業界は得ておるということを私は申し上げました。エネルギー庁長官答弁によりますと、上期は約四百億、下期はそれ以上だろうという話です。一、二、三月、そういうことを考えますと、ほぼ二千億に近い数字に、単純計算でいくと、なるということも恐らくお認めになるだろうと思うのです。そうすると、現在、為替差益で相当業界は利益を得ておる。これを消費者になぜ還元できないか。四十六年当時、為替差益が出たときに、消費者にこれを還元せよという非常に強い要求が出ました。四十七年に灯油一かん当たり二十円ないし三十円値引きした、そうして消費者にこれを還元したという、現実に実績があるのです。そういうふうに、これだけ不況で、物価高で困っておるときですから、この円高によるところの為替差益消費者に還元をする、そういう政策を政府側としてとる意思があるのかないのか、その点、いかがでしょう。
  86. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 為替差益を幾らと算定するかというのは、いろいろむずかしい問題がございますが、少なくとも過去に発生した為替差損の方は解消したものと見てもよろしかろうと思います。ただ、今後の問題といたしまして、どの程度この為替レートが定着するかということのほかに、一方、原油代の値上がりということは既定の事実でございます。これこそまさに下がる可能性はない。一方的に上昇するだろうというのが世界での見方でもあるわけでございますし、また、その原油代のほかに、先ほども触れましたように、防災費用だとか備蓄費用だとか、人件費の上昇といったような石油製品コストアップ要因もあるわけでございますので、そういったものとあわせて考えざるを得ないんじゃなかろうか。われわれといたしましても、ここまで石油価格も高くなってきておるわけでございますが、その中においてもできるだけ適正な価格供給いたさせたいという気持ちは持っておるわけでございますが、いま申し上げたように、今後の見通しがどうなるかという点が一つあるわけでございます。それからもう一つは、石油各社によりまして原油価格、原油の購入価格が異なってきております。言ってみれば、大きく分けて二つのコストがある。そういう時点におきまして、どのようにそれを、現実消費者への還元を考えていくかという具体的な手段との結びつきというのは、きわめて現実論としてむずかしいという問題もあるわけでございます。
  87. 武部文

    ○武部委員 私は最初に、この石油価格体系に矛盾があるということを指摘いたしました。それは、標準額決定後の価格の推移を見ればわかるとおり、C重油、ナフサ、そういうものが値下がりをしておる。そして一方、灯油とかガソリンとかは値上がりになっておる。こういうことを考えたときに——今日、灯油行政指導によって灯油の値段が据え置きになっておる。ことしの冬は上げない、まことに結構なことです。これをぜひ今度の冬も、このような差益の状態から見ても、価格体系の矛盾から見ても、継続すべきだというふうに思うのですが、その点、いかがですか。
  88. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほどの御指摘の点について若干触れながらお答えいたしたいと思いますが、C重油が標準額よりも若干下回っておるという御指摘でございます。これは、一つには、やはり産業活動が折からの不況のもとにあって停滞しておるということと、それから公害対策関係から、LNGといったような代替燃料を使っておるといったC重油に対する需給関係から、若干の値下がりがあったのであろうというふうに見るわけでございます。一方、灯油の方は、御指摘のように、確かに標準額を設定した時点より上がっておりますが、これは、一昨年の十二月時点で試算いたしますと、当時、キロリッター当たり三千円ぐらいの引き上げを妥当とする数字が出たわけでございますが、今回と同じように、たまたま需要期であったということで据え置き指導をしたために、昨年の五月以降標準額が撤廃された後、もとの価格に追随して戻ったということでございまして、ゆがめたと言えば、本来一昨年の暮れに三千円アップすべきところを据え置きの指導をしてきた結果がこのようになっておるということで、御理解を賜りたいと思うわけでございます。  それから、灯油の今後の供給についての御指摘でございますが、われわれも従来以上に灯油供給あるいは価格の安定に努力してまいりたいと思っております。今後の原油あるいはその他石油製品の需給動向といったようなものも見定めて具体的には検討に入っていきたい、かように考えるわけでございます。
  89. 武部文

    ○武部委員 先ほど与党の皆さんの質問の中にありましたように、C重油の値上げの問題について、鉄鋼側の強い反対で値上げできなかった。それは御答弁のあったとおりですね。そういう話がございましたね。六百円の値上げを鉄鋼はとうとう認めなかったという答弁が先ほどございました。このように、石油業界値上げ動きを見ておると、強い者については頭が上がらぬが、そうでない者についてはしわ寄せをして値上げをしていくという傾向が数字の上からあらわれてくるのです。そういう面から、たまたま灯油行政指導が徹底をして値上げが見送られておるということは結構なことですから、ぜひそれは続けてもらいたい。特にことしは豪雪、異常寒波、そういうことで特に東北、北海道、北陸、信越、こういう家庭は全くめちゃめちゃで、不況だし、物価高だし、豪雪である、こういう深刻な状態なんです。灯油というのはもう家庭生活には切っても切れない燃料で、米と同じような生活必需品ですから、そういう面から言うと、灯油価格というのは、価格体系の矛盾から見ても、あるいは差益の問題から見ても、当然据え置くべきだ。ことしの冬もまたそのように指導すべきだし、そういうふうに通産省としてはやられる意思があるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  90. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 家庭用灯油につきましては、価格問題もさることながら、数量の安定確保ということも必要でございますので、その方向で努力したいと思います。  ただ、御理解を賜りたいのは、先ほどもちょっと触れたわけでございますが、灯油と近辺のいわゆる中間製品の軽油、A重油といったものとの価格バランスというものをよほど考えてかかりませんと、せっかく家庭用灯油を安定的に確保しようと努力いたしましても、その価格が、いま申し上げた軽油あるいはA重油と余りだもアンバランスになるということになりますと、結局は数量的に確保できなくなるというおそれもございます。そういったことも念頭に置きまして、数量なり価格なりについてできるだけ安定し得るように努力いたしたいと思います。
  91. 武部文

    ○武部委員 これも先ほど論議があったので私もちょっと心配で聞いておったのですが、灯油得率というものが九から最高一二というふうに出ておりましたね。この得率によって業界の利益というものも変わってくるし、そういう面でむしろ、灯油はもうからぬ、だからほかのものをつくった方がいいというようなことをやりかねない業界だと見なければならぬのです。  大変失礼な言い方ですが、私は石油業界というのは決していい業界じゃないと思うのですよ。それが一番よくわかるのは、四十六年のパニックのときじゃないですか。これで石油業界体質というものが国民の前に明らかになったと思うのです。いま振り返ってみても、この石油業界というものがどういう業界であるか、この点をあと値上げの問題に絡んで申し上げなければならぬと思うのです。あの石油パニックのときにゼネラル石油が出した通達を私はいまでもよく覚えていますよ。千載一遇のチャンスだ、これが出て問題になったでしょう。あの社長は首になった。大体、石油業界というのは、四十八年一年間にやみ協定と生産制限で五回カルテルを結んでおる。これが暴露されたわけですね。そして公正取引委員会は東京高裁に刑事事件としてこれを告発して、裁判進行中でしょう。こういう業界なんです。みんなが悪いとは言いませんが、こういう体質を持った業界だということを私ども考えておかなければならぬのですよ。  あなた方は、昭和四十六年から五十年にかけて為替差損で一千億程度も損をしておるのだ、こういうことをおっしゃっておる。確かに為替差損はそういう数字が出ますよ。出るけれども、あの標準額の設定とその後の値上げでもうけて、製品値上げにぶっかけて差損というのはとうの昔になくなっていますよ。そういう業界なんです。あの石油パニックのときに、ないない節で、何にもない、これもないあれもない、あれも足りないこれも足りない、足りない節を言ったのはだれであったか。これは石油業界でしょう。そして消費者を困惑させて買いだめに走らせたのはこの業界ですよ。四十六年、四十七年のときに国民の前に明らかになったわけです。  そういう業界ですから、この得率の問題や、あるいはこれから先の灯油の値段の問題に絡んで量の不足ということさえ考えられるのです。ですから、いま長官がおっしゃったように、灯油の量の確保と値段の安定のためにはぜひ強力な行政指導をやっていただきたい。このことを特に要望しておきたいのであります。  さて、先発、後発、値上げのことが先ほども出ておったわけですが、二千四百円と二千円程度、いま漏れ聞くところによると、結果的には先発組の二千四百円というのは影をひそめて二千円程度になった、そういう発言でございましたが、これも疑えば、ちゃんとサバを読んで、初めから二千というものが出てくる可能性があって、二千四百と出しておいて後発組にこれはなる、そういうことは当然考えられたことだ。裏を返せば私もそう疑いたくなる。それは二千四百円が二千円になれば結構なことですが、先発、後発の動きの中でこれだけ差益が出て、今後も差益が出る可能性がある現段階において、あなた方はただ単にユーザーと業界との相互の成り行きを見守っておるという程度では、この問題についての積極的な姿勢とは言えないと思うのです。この点、いかがでしょうか。
  92. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点、私もよくわかるわけでございますが、ただ、先ほど来申し上げておりますように、石油業界の立場といたしますと、原油価格の上昇が企業によって差があるという問題もございます。一方、需要業界の方も、長い不況のもとにあるといったようなところから、御承知のように、現在、値決め交渉は難航いたしておるわけです。この難航いたしておるのは、いま申し上げたような理由のほかに、やはり御指摘差益問題が発生してきておるということで、ユーザーサイドといたしましては、不況下にあるということと差益問題をてことして、猛烈に反対しておるというのが実情ではなかろうかと思います。  そういったことでございますから、両当事者における話し合いの過程におきまして、現実論として為替差益をどのように読み込んでいくかということもその話し合いの中で行われるというふうにわれわれは考えておりますので、そういった意味合いにおきまして、現在、具体的に政府として介入することなく、両当事者の価格交渉を見守っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  93. 武部文

    ○武部委員 この「元売別第一次値上げ通告状況」という一覧表がございますが、先ほど申し上げたように、先発二千四百円、後発大体二千から千八百、千九百円程度になっておるようです。為替差益がこれだけ出て、笑いがとまらぬほどもうけておる連中がなぜこういうことをするのか、このことについては非常に国民は疑問に思うと思うのです。  それならば、一体どの程度の利益を上げておるだろうか、これを私は業界の資料によって調べてみました。どのくらい利益を上げておるだろうか。去年の九月決算、日本石油は経常利益が前期は四十一億、今期は百四億です。このうち為替差益が五十八億円、配当は一割二分。共同石油、前期利益十億、今期五十九億です。ゼネラル、配当一割から一割二分へアップ。九州、配当八分から一割二分へアップです。興亜、同じように配当一割から一割二分にアップ。これは九月期決算の主な内容です。こういうふうに非常にたくさんの利益を九月決算では上げておるのです。  加えて三月決算でどういう傾向になってくるだろうかという予想が出ておりますが、これは後で申し上げることにして、特にこの九月決算で顕著なことは、販売数量は減っておるのです。販売数量は減っておるのに売上高や経常利益がぐんと伸びておる。これは値上げによるもの以外にはないのです。値上げによらなければこういうふうに利益が上がるわけがない。為替差益を引いても非常に多くの利益が出ておる。販売数量は減っておるのに売上高や経常利益がふえておるということはそういうことを意味しておる、こう言ってよかろうと思うのです。  特に三月三十一日に発表されたエッソ・スタンダード、この決算は昨年の売上高が五千八百六十一億円、経常利益は二百三億、去年に比べて二・三倍の利益です。税引き利益で百五億、去年に比べて二・五倍です。会社始まって以来の利益だというのです。これがエッソ・スタンダードです。そのエッソ・スタンダードが今度のOPEC値上げでキロリッター二千円から二千八十円の値上げ考えておる、こういう事実があります。同じように、三月三十一日に発表されたモービルの決算を見ますと、売上高五千九百四十七億円、経常利益が百四十四億、前年対比七二・五%増です。税引き利益で六十五億、前年対比八四・二%増、これも史上最高記録、こういう決算がすでについ十日ばかり前に発表になっていますね。特に日本石油の経常利益というのは今期は三月決算で九月期の二倍、約二百億を超えるじゃないかというふうに予想されておるわけです。  こういう好決算、高利益を上げておる状況下の会社が第一次の値上げ通告をしたということは、私どもどうしても納得できない。通産省はこういう状態の中でこの元売の第一次値上げ通告をどういうふうに考えるでしょうか。
  94. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘のありました昨年九月期の決算がよくなっておるということは、一つはやはり標準額が浸透したと申しますか、その値決め交渉が成立した結果の問題、それからやはり為替差益が発生した、この二つの理由によるものと思うわけでございます。  ただ、本年につきましては、三月あるいは四月からの値上げを打ち出し、現在値決め交渉中でございますが、これにつきましては、本年を通じての原油代の上昇というものを見込んで値上げ交渉に入っておるものと思います。もちろん、先発につきましてはレート二百九十五円あるいは二百九十六円と踏んでおります。後発につきましては二百九十一円ということで計算いたしておるようでございます。この点が先ほど来お話が出ております為替差益を、あるいは今後円高基調というのはどこまで続くのかということとの関連において判断すべき問題ではなかろうかと思います。  ただ、いずれにいたしましても原油代が現在各種石油製品コストの八〇%にまでなっておるということもございますので、企業の合理化努力による吸収の限界というものもございます。そういったことも前提といたしまして、結果的には為替レートがどうなるかということが現実価格とのつながりになってくるのではなかろうか、かように思うわけでございます。
  95. 武部文

    ○武部委員 私が先ほど各社の決算の状況を申し上げましたが、このことについては別に異存はございませんね。
  96. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 実績については御指摘のとおりでございます。三月期決算については、いまだ全部出そろっておりませんので、断定的なことを申し上げかねるわけでございますが、為替レートの状況等からいたしまして、九月期決算よりはいい結果が出てくるのではなかろうか、これは推測ではございますが、さように考えております。
  97. 武部文

    ○武部委員 一つだけ私のこの資料とかみ合わない点がございますので、もしそこでおわかりでしたらお知らせをいただきたいのです。業界の発表による九月決算と通産省からいただきました資料とはほとんど一致するのですが、一つの会社だけが違うのです。それは日本石油であります。日本石油は百四億五千八百万円の経常利益を得ておるという点については合致しておりますが、為替差益が私の手元の資料では五十八億円であります。通産省の資料によりますと十一億円であります。ほかは全部合致しておりますが、なぜ日本石油だけこういうふうに違うのか、この辺がよくわかりませんので、おわかりでしたら、お知らせをいただきたいと思います。
  98. 古田徳昌

    ○古田政府委員 正確にはわかりませんが、恐らく先生のおっしゃった数字の中には、日本石油精製の数字も一緒になっているのではないかというふうに推察いたします。
  99. 武部文

    ○武部委員 日本石油の経常利益は非常に高いのです。ここに明確に「上場企業為替差損益の推移」として日本石油単独で十一億円となっています。私の方は五十八億円、どうして違うのか、これだけちょっと——それでは後でちょっと調べてください。  いま長官から元売の第一次値上げ通告の為替換算のレートのことについてお話しがございました。おっしゃるように、先発組は二百九十五円を換算レートにしておるようです。後発組は、きょうもお話しございましたように、二百九十円から二百九十一円、大体二百九十円五十銭ということになるわけです。そういたしますと、これからの原油の値上げ価格は、一体どの程度のものが予想されるかということについてお尋ねをしたいわけですが、原油の値上がり予想は、大体何%くらい値上がりすると見ておられるわけですか。
  100. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先生御存じのとおり、ことしの一月一日からOPECが原油価格の引上げをしたわけでございますが、五%の引き上げ国と一〇%の引き上げ国に分かれたわけでございます。昨年のわが国の輸入構成を見ますと、五%引き上げ国からの輸入の割合が四二%強ということになっております。したがいまして、ことしにつきましてもこの構成比は大きく変わらないとしますと、七ないし八%の原油価格引き上げが結果的に起こるのではないかというように考えております。
  101. 武部文

    ○武部委員 私どもの計算は、七・七で計算をしてみたわけです。そういたしますと、現在のCIF価格は五十二年の一月で二万三千二百二十一円であります。二万三千二百二十一円の七・七%値上げになった場合に、計算上、キロリットル当たり値上がり額は千七百八十八円という金額になりますね。実勢レートは若干の動きがありますが、二百七十五円で計算をした場合に、先発組の実勢レート二百九十五円の場合とここで約二十円の差が出てまいります。先ほどからお話がございましたように、キロリットル当たりの差益は八十五円でありますから、八十五円で計算をいたしますと、為替差益はキロリットル千七百円という数字になります。これはCIF価格の七・七%値上がりの千七百八十八円とほぼ同じ金額になります。百歩譲って、この後発組の二百九十円五十銭で計算をいたしますと、CIF価格に対する値上がりと比較をすると、為替差益は千三百十七円五十銭、こういう数字が出ます。仮にこの円高が続いて二百七十円、現在、二百七十一円というときもごいざましたが、二百七十円といたしますと、差益はキロリットル当たり二千百二十五円という数字になります。  いま三つの数字を私は申し上げたわけです。先発組で千七百円、後発組で千三百十七円五十銭、仮に円高がもうちょっと続いて二百七十円ということになりますと、現実には二千百二十五円、こういうことになるわけです。こういう数字を見てくるならば、当然ここで値上げというものは成り立たぬ、こういうふうに見なければならぬと思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  102. 古田徳昌

    ○古田政府委員 今度の石油会社の値上げ発表につきましては、二千円から二千四百円ぐらいということで出しておりますが、その中で織り込んでおります原油価格引き上げにつきましても、千三百円から千九百円ぐらいというふうなことで、これは先発と後発でかなり差がございますけれども、そういう金額が打ち出されておるわけでございます。  為替レートの先行きをどう見るかということは非常にむずかしい問題でございますけれども、先生がただいまおっしゃいましたような前提で計算をしますと、そういうふうな結果になるかというように考えます。
  103. 武部文

    ○武部委員 私はいま述べましたようなレート動きあるいはレート現実、そういうものから見て差益を出してくるとこういう数字になるのです。そうすれば、当然、元売価格値上げというものは成り立たぬ、これは明らかにOPEC値上げに便乗した値上げだと言ってよかろうと思うのですが、その点はどうです。
  104. 古田徳昌

    ○古田政府委員 精製各社の価格引き上げにつきましては、原油価格の上昇のほかに、備蓄コストの上昇あるいは消防法の強化、コンビナート防災法の施行といったふうな事情を踏まえましての諸対策費の上昇といったふうなことも織り込みまして、先ほど言いました原油価格の上昇にそれらを加えまして、二千円ないし二千四百円というような打ち出しをしているわけでございまして、結局、原油価格の上昇要因のほかに、ただいま申し上げましたようなその他のコスト増加要因をどう考えるかといったふうな問題もあるかと存じます。
  105. 武部文

    ○武部委員 その他のコストのことはさておいて、原油価格そのものから見れば、私の言ったことはそのように通産省もお認めになりますか。
  106. 古田徳昌

    ○古田政府委員 石油各社は、価格引き上げ幅を計算します場合に、過去三カ月の平均をとっているわけでございます。したがいまして、先発六社の場合はその時点での過去三カ月の平均の二百九十五円、後発の場合は、それ以降円高がさらに続きましたので、二百九十一円前後というふうなことになったわけでございます。そういうことで、これから先もさらに円高が現在の水準で続くかどうかということは、先ほど言いましたように、非常にむずかしい問題でございますけれども円高がさらに続いていくということになれば、その計算の根拠もおのずから変わってくるというふうに考えます。
  107. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、おっしゃるように、三カ月間というものの平均をとっておるわけですから、当時は二百九十円五十銭なり二百九十五円という数字が一応出た根拠になっただろうと思うのです。しかし、現実はそうじゃありませんね。現実はそうじゃなくなっておる。とすれば、この元売の一時通告というものの根底は崩れたと見てよかろうと思うのですが、それでよろしいですか。
  108. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先生がおっしゃるとおり、その後の円高傾向が続きましたために、計算の根拠は変わったということで、現在、需要業界との交渉が難航している、こういうことでございます。
  109. 武部文

    ○武部委員 原油代のことはそれでわかりましたが、その他の経費というのが大体同じような金額なんですね、先発組も後発組も。大体七百円台、低いところで六百円台ですが、この内容はどんなものですか。
  110. 古田徳昌

    ○古田政府委員 この計算は各社ごとに非常に区々になっておりまして、一律的な言い方がむずかしいのでございますけれども、内容としましては、先ほど私、ちょっと触れましたけれども備蓄コストの上昇分あるいは防災コストの上昇分、そのほか精製費や販売管理費の増加分といったふうなものが含まれているわけでございます。
  111. 武部文

    ○武部委員 そうすると、これから先、業界のそういう相互の交渉を見守っていくということをおっしゃっておるわけですが、まずこの換算レートが変わって根拠が変わってきたわけですから、この根底はさっきから言うように崩れてしまった、新しいレートに立ってこれは考えなければならぬということはもうお認めになったわけです。そうすると、これからの値上げの中で、たとえばいまおっしゃったような消防ですか、それから備蓄関係ですか、そういうものについては、向こうの指摘をしておる金額は妥当な金額というふうに思っておられるのですか。たとえば七百円、七百八十円、七百四十円、七百六十七円というふうにまちまちですが、この根拠はあなた方としては間違いなくこういう数字だというふうに見ておられますか。
  112. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先ほど言いましたように、会社ごとの事情が非常に区々になっているわけでございます。たとえば土地手当てがすでに済んでいる会社の場合は、備蓄コストは総体的に安く済むというふうな事情もございますし、その逆の場合は高くなるというようなことでございまして、私どもとしましては、それにつきまして一律的な数字はどうだというふうなことは打ち出したくないといいますか、打ち出さないということにしております。
  113. 武部文

    ○武部委員 いろいろやりとりしたわけですが、むしろ積極的に通産省は、これだけの円高となって為替差益というものが非常に多くなってきたし、現実に決算を見れば、先ほど述べたように、明白に莫大な利益が上がっておる。こういう状態が背後にあるわけですから、そのときにただ単にこの業界とユーザーとの間をわれわれは見守っておるのだという消極的な立場ではなくて、これだけの利益も上がり、円高もこうなっておるのだから値上げはすべきではないというふうな積極的な指導というものはする意思がないのですか。
  114. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先生御存じのとおり、現在の景気動向関係需要業界も非常に苦しい状況にございます。そういうことで、現在、私ども石油精製業界価格引き上げに対しましてだけある価格指導を行うというふうなことになりますと、むしろこれは結果的に下支え的な効果を持つのではないかというふうなおそれすらも持っているというわけでございまして、そういう観点もございまして、かつ為替レートの先行きの動向といった問題も勘案しまして、需要業界精製業界との価格の交渉の推移を見守りたいと考えているわけでございます。
  115. 武部文

    ○武部委員 確かに一面、いまおっしゃったように、下手をすれば下支えになるという危険はないとは言えません。それは確かにそういう危険もあるでしょう。しかし、不況だといったって、現実にこれだけの利益を上げておるということを考えたときに、ただ単に消極的に見守っておるということではなしに、先ほどちょっと読み上げましたけれども、電力の問題だってああいうことで指導をするとおっしゃっておる。政府は公共料金にまでこの円高の問題で介入したい、そして下げる努力をしたいという答弁を参議院でやっておられますね。総理自身がやっておられる。そういう状態なんですから、やはり一番ぴんとくるのは石油なんですよ。為替差益でこれだけのものがもうかっておるだろう、だとするならば、石油業界はまさか上げることはやるまい、いや彼らは上げるかもしらぬが、政府はこれには厳しい態度で、これだけの差益があるのだから上げるべきでないという指導をするだろうというふうに国民は見守っておると思うのです。これについてあなたの方はただ単に交渉を見守っておるという態度ではなくて、一歩出て、このことについて積極的な指導をする意思はないのですか。
  116. 古田徳昌

    ○古田政府委員 繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、二月の中旬に出光ほか先発各社が値上げを打ち出したときにも、先生ただいま御指摘いただいたような問題を私どもいただいたわけでございますが、そのときも私どもとしましては、先ほど言いましたように、その時点での価格につきましての介入はむしろ下支え的な効果を持つのではないかというふうにお答えをしたわけでございますが、その後の推移を見ますと、私どもが恐れていた方向といいますか結果が、むしろその後の動向からしますと裏づけられたというふうな感じもしているわけでございます。  現時点で精製各社の値上げの実行状況を観察してみますと、たとえばガソリンにしましてもナフサにしましても、精製各社は値上げをしたいということで努力はしているようでございますが、全く実現していない。それから灯油は私ども行政指導に従ってこれは全く行われておりません。それから軽油、A、B重油、C重油、いずれも需要業界の抵抗が強く、あるいはたとえばA、B重油の場合は日ソの漁業交渉の関係等もありまして、そういう諸般の事情との関係値上げが全く実現してないというふうな状況でございます。
  117. 武部文

    ○武部委員 福田総理はこういう答弁をしていますね。輸入原油への依存度が高い電力、ガスなどの公共料金体系について、為替相場変動するのですぐ結論は出せないが、円高相場が一年程度の幅をとって定着するなら価格政策上問題も出てくるので、相場の推移を見ながら料金体系を検討していく、こういう答弁をしていますね。これは一年程度安定するならという前提がもちろんこれについております。  そこで、相場の変動をずっと見てみますと、確かに円高は、変動は続けておるけれども、何遍も言うように、乱高下はないのですよ。ずっと大体同じ傾向をとってきておるのです。これは五十二年の一月から四月までずっと調べてみると、大体同じ傾向をたどっておる。これが急転をして円安になるなんということはちょっと考えられない。こういう場合に総理自身が、そういう輸入の差益為替差益から生ずるところの公共料金の問題にまで手をつけなければならぬということを言明されたわけですから、さしむきあなたの方で、いま当然出てきておるこの灯油値下げの問題とか据え置きの問題とか、そういうものをもっと積極的にやる必要がある。  ですから、いま確かに将来の見通しについて、それじゃ来月は幾らだ、再来月は幾らだというようなことを言えと言ったって、これは言えぬと思うのですが、間違いなくこれは着実に円高になっておるわけですから、このことに対する政府としての指導というものはこの時点でやはり明確にやる必要がある、このように思うのですが、もう一回ひとつ答弁してもらいたい。
  118. 大永勇作

    ○大永政府委員 先生御指摘のように、為替相場につきましては相当円高傾向が続いておりまして、今後これが続く可能性も十分あるかと存ずるわけでございますが、この価格問題につきましては、先ほどからるる説明がございましたように、原油のCIF価格のアップもございます。それから原油以外のコスト上昇もございますので、その辺をやはり総合的に勘案いたしまして判断すべき問題ではないかと思うわけでございまして、この為替相場円高だけの理由で価格引き下げの結論を出すというのはいかがであろうかと考えるわけでございます。
  119. 武部文

    ○武部委員 私は全面的にそういうことを言っているのじゃないのです。確かにほかの要因もあるでしょう。あるけれども現実にこの石油業界の決算その他製品価格値上げの推移、そういうものを見たときに、この業界というのは、たとえば為替差損があったってちゃんとそれは取り戻しをしておる、そのようにわれわれは調査の結果しっかりとした資料を持っています。為替差損が五年間に一千億あった、だからその為替差損差益の中から見てもらわなければならぬとかいろいろなことを言ったって、そんなことは私どもは認めるわけにはまいらぬ。為替差損をそのままほったらかしにしていくような石油業界じゃないことは、先ほど言うように、四十六年、四十七年のあの業界やり方を見れば明白なんです。この為替差益も、黙っておればそのまま利益に計上してあるいは留保に回していくような傾向を持っておる業界だという前提条件を置かなければだめだということを私は言いたいのですよ。ですから、十分その辺も監視をしてもらいたい、これを特に通産省にお願いをしておきたいのです。  それから、経企庁の長官がおられぬわけですが、経企庁の長官はこの為替差益について消費者のことを非常に強く憂慮しておられるのですね。消費者為替相場について知識が乏しい、全くそのとおりです。知識が乏しい、だから輸入業者が円高による利益を値段に反映させなくても消費者には対抗手段がない、だから政府は厳しく監視する必要があるのだ、こういう答弁を随所でやっておられますね。当然だと思います。消費者保護の立場に立つ経企庁としては当然のことだと思うのです。ですから、消費者には対抗手段がないのだから、それならば政府がそういう現実の姿を十分把握をして、そうして消費者にかわってこの差益を還元していく、あるいは物価対策にこれを反映させるという努力を経企庁自身が先頭に立ってやってもらわなければ困る、このように思うのです。  きょうは木材のことは出しませんでしたが、木材だって同じことが言えますよ。輸入物資については小麦だってそうですよ。みんなそれぞれ問題を抱えておるのですから、そう六カ月も七カ月も先のようなことじゃなしに、当面する具体的な国民生活に最も密接なそういう品目についてピックアップをして、その為替差益はどうなっておるか、値段はどうなっておるか、これをどう物価に反映させるか、政策をどうするかということをすぐにでも着手してもらいたい、こう思うのですが、どうでしょうか。
  120. 森美秀

    ○森(美)政府委員 武部先生のような大先輩を前に置きまして大変恐縮でございますが、物価というものが国民生活に最大の影響を与える、これを私ども肝に銘じておりまして、今回の円高の問題が消費者に及ぼすいろいろな、ことに灯油等に関しまして、私ども一生懸命努力をしてまいりたいと思います。
  121. 武部文

    ○武部委員 きょうはこれで終わります。
  122. 西宮弘

    西宮委員長 武部君の質疑はこれで終わりました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十分散会