○武部
委員 確かにこの
物価の上がり下がりを前年に比べてどうだということを一言で言え、あるいは
一つの数字で言えということになれば、総理府統計局の数字を言わざるを得ないと思うのです、これは平均的な数字ですから。しかし、現実にそれを調べてみると、あなたはいま、国際的な十分なる資料に基づいてと、こういうことをおっしゃったわけですが、
日本の消費者
物価の品目というのはどんどんふえてきまして四百八十五品目ですね。アメリカは二百七十四、ヨーロッパはみんな二百以下です。このとり方にも非常に問題があるのです。五年ごとに総理府の数字は変えていきますが、イギリスなんかは一年ごとです。これだけ生活実態はどんどん急
テンポに変わってくるのですから、五年に一遍などということをやったってそれは実感とは全然かけ離れたものではないかということを何回か論争したこともございました。
それはそれとして、総理府がなぜそういうような
物価指数の全資料を秘密にするのか、なぜ公表しないのか、われわれはそういうことをやったことがありますが、何か統計法第十四条の守秘義務にのっとってその資料というものは公開できぬのだ、こういうことで結果だけを発表する、こういうことに現在もなっておると私は思うのです。そうではなくて、具体的な資料というものを全部出すべきだと思うのです。統計法十四条の守秘義務、プライバシーの侵害になるという、これは消費者
物価の
調査とは
関係のないことなんです。縁のないことなんです。そういうことを秘密にしておることに何か統計上作為があるのではないかと
国民が疑っても仕方がないと私は思うのです。これは、あなたは統計
局長じゃないからここで言ったってしようがないことですけれ
ども、そういうもので出てきた数字、それが一体
国民の本当の信頼を得る数字だろうか、この点については大変私は疑問に思うのです。かつて第一銀行が
調査をしたときに、家計簿の中に一年間に百回記入された品物をずっとより出してきて、十品目、一番目から十番目まで持ってきてどのくらい上がっておるかということを
調査したら、総理府統計局の一・五倍から二倍の数字が出ておるのです。あなたがおっしゃるように、その数字も平均化して入っておるかもしれません。しかし、それは生活必需物資なんです。買わないで済むものじゃない。教養娯楽費なんというものは切り詰めれば切り詰められるでしょう。生鮮食料品というものは買わなくて済むものじゃない。そういう生活の実感に合ったものがあなた方の統計上からも見て——私も資料をいただきましたが、五分位階層によって出ておりますね。出ておりますけれ
ども、あれが一体
国民の中にどれだけ浸透しておるかというと、浸透しておりません。とにかく、いや八・何ぼだ、いや九・何ぼだという数字だけしか、テレビや新聞で
国民の前に出ないのです。実感はそれよりも二倍も三倍も高いものを、
国民の側から見れば、毎日の生活を通して
考えておるから、
物価というものに対して政治と
国民との間に非常に大きなギャップがある、私はそのようにずっと思ってきました。ですから、これからの
物価政策というのは、そういう
国民の生活実感をもとにした、本当の庶民の台所を中心にした
物価政策というものに重点を置いてもらわなければならぬのだということをぜひ
長官に申し上げておきたいと思うのです。
福田さんが大蔵
大臣のときに、やはり金利よりも消費者
物価は下回らなければならぬのだということをおっしゃっていました。私は、宮澤さんが
経済企画庁長官のときにこういうことを言われたことをよく覚えております。米とか、みそとか、しょうゆとか、ジャガイモとか、そういうものの値段というものは上がったり下がったりしないものだ、こういうふうに
国民が思い込むような世の中でなければそれはりっぱな政治だとは言われぬということを宮澤さんはおっしゃったのです。確かにそうだと思う。そういう毎日買っていくものが大暴騰したり大暴落するような世の中はりっぱな政治とは言えぬ。特に私は
物価行政の中においてはこれは非常に重要なことだと思うのです。そういう
考え方でこれから先の
物価政策というものをぜひやってほしいということを特に要望しておきたいと思います。
そこで、この三月末八・六%、これが福田内閣の公約であります。先ほ
どもお話がございましたが、一体この年度末の八・六%という数字が可能だろうかどうか。このことについて
片岡先生からも、これはちょっとむずかしいじゃないかという話がございました。先日、
日本の各界の代表的な
企業百社の意見が述べられておりましたが、全部そろって
政府の
見通しを下回るようなことは絶対にないということが報道されておりました。八・六は不可能だということを
企業も認めておるようです。
私がこれから申し上げたいことは、かつて、
物価上昇率をどうしても一五%にやらなければならぬ、福田さんが音頭をとって三月末は一五%に抑え込むのだということをおっしゃって、一五%になったときがございました。確かになった。そのときに福田さんは「これにて一件落着」という文句を吐いておられました。これにて一件落着、めでたしめでたしということが新聞に載ったのです。私はふざけたことを言っておるなと思ってその新聞記事を見ていました。一体あの一五という数字——今度は皆さんは八・六ですが、その数字が本当に正しい意味での数字だろうか、私は大変疑問に思うのです。
それはなぜかというと、ずっと前からその数字に近づけるためにどういうことがやられてきたか。今度もそうですか、農林省はずっと一年に二回バーゲンセールをやっていますね。今度は
通産省までこれに加わって二人三脚で、三月になぜそういうことをやり始めたのか。安売りは私は悪いとは言いません。安売り結構でしょう、安く買えるのですから。それは結構だが、一体何の目的でそういうことをおやりになるのか。それも三億七千万か八千万という費用、宣伝費を
経済企画庁が出しておるのでしょう。そして時あたかも三月、農林省は一日から十四日、それから
通産省はたしか四日から十四日ですか十日間、片一方は二週間、その期間を区切って大バーゲンセールを全国でやる。大都市ですけれ
ども、その
調査は統計上出てくることになっておるのです、調べてみると。私が
指摘をしたいのは、八・六というものに近づけたいために、これを達成するためにそういうことが政治的にされておる、ここが問題だと思うのです。三月中にやること自体がまず第一、問題です。それから総理府統計局の数字というのは十二日の前後、たしか火、水、木ですか、その辺の一日をとって調べていますね。そういう中にちゃんと当てはまるようにこの大安売りの日にちが設定してあるのです。安売りの品目もほとんど、一番ウエートの高いもの、
物価指数に当てはまるものが選ばれてこのバーゲンセールの中に加わっておるのです。
こういうことを
考えたときに、明らかに
政府が三月末の八・六という数字に固執しておられる、何としてもこれをやり遂げるためにこういう作為的な、政治的なことをやって数字というものをつくろうとしておるのではないか。これは私は
国民に対する冒濱だと思うのです。ありのままの姿、そういう中で
物価はこうなんだ、しかし
政府はこうするんだ、そういう姿勢というものが
国民の中に本当に入っていかなければ私は政治に信頼というものは保たれないと思うのです。そういうことについて
長官は一体どうお
考えでしょうか。