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1977-03-10 第80回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 西宮  弘君    理事 青木 正久君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 砂田 重民君    理事 金子 みつ君 理事 武部  文君    理事 中川 嘉美君 理事 米沢  隆君       愛知 和男君    宇野  亨君       友納 武人君    中西 啓介君       中村  靖君    平泉  渉君       堀内 光雄君    中村  茂君       野口 幸一君    馬場猪太郎君       宮地 正介君    東中 光雄君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君  委員外出席者         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ————————————— 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   三谷 秀治君     東中 光雄君     ————————————— 二月二十五日  公共料金値上げ反対等に関する請願井上一  成君紹介)(第七一〇号)  同(後藤茂紹介)(第七一一号)  同(沢田広紹介)(第七一二号)  同外三件(只松祐治紹介)(第七一三号)  同外七件(横山利秋紹介)(第七一四号)  同(浅井美幸紹介)(第七四七号)  同外一件(上田卓三紹介)(第七四八号)  同(長谷雄幸久紹介)(第七四九号)  同(森井忠良紹介)(第七五〇号)  同(新井彬之君紹介)(第七六四号)  同(大野潔紹介)(第七六五号)  同(草川昭三紹介)(第七六六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第七六七号)  同(山田太郎紹介)(第七六八号)  同(大野潔紹介)(第八二七号)  同(太田一夫紹介)(第八二八号)  同(川本敏美紹介)(第八二九号)  同(沢田広紹介)(第八三〇号)  同外三件(楢崎弥之助紹介)(第八三一号)  同(森井忠良紹介)(第八三二号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第八三三号) 同月二十八日  公共料金等値上げ中止等に関する請願浦井  洋君紹介)(第八六七号)  公共料金値上げ反対等に関する請願浅井美  幸君紹介)(第八六八号)  同(飯田忠雄紹介)(第八六九号)  同(大野潔紹介)(第八七〇号)  同(小川新一郎紹介)(第八七一号)  同(加藤万吉紹介)(第八七二号)  同(佐野憲治紹介)(第八七三号)  同(沢田広紹介)(第八七四号)  同(野村光雄紹介)(第八七五号)  同(林孝矩紹介)(第八七六号)  同(美濃政市紹介)(第八七七号)  同(宮井泰良紹介)(第八七八号)  同(森井忠良紹介)(第八七九号)  同(薮仲義彦紹介)(第八八〇号)  同(和田一郎紹介)(第八八一号)  同(井上普方紹介)(第九二五号)  同(小川仁一紹介)(第九二六号)  同(大野潔紹介)(第九二七号)  同(鍛冶清紹介)(第九二八号)  同(草野威紹介)(第九二九号)  同(柴田健治紹介)(第九三〇号)  同(嶋崎譲紹介)(第九三一号)  同(田口一男紹介)(第九三二号)  同(谷口是巨君紹介)(第九三三号)  同(伏屋修治紹介)(第九三四号)  同(森井忠良紹介)(第九三五号)  同(矢野絢也君紹介)(第九三六号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第九三七号)  同(米田東吾紹介)(第九三八号)  同(浅井美幸紹介)(第九八一号)  同外二件(大島弘紹介)(第九八二号)  同(大野潔紹介)(第九八三号)  同(岡田利春紹介)(第九八四号)  同(小林進紹介)(第九八五号)  同(古川雅司紹介)(第九八六号)  同(松本忠助紹介)(第九八七号)  同(八百板正紹介)(第九八八号)  同(湯山勇紹介)(第九八九号) 三月七日  公共料金値上げ反対等に関する請願浅井美  幸君紹介)(第一〇〇四号)  同(上田卓三紹介)(第一〇〇五号)  同(貝沼次郎紹介)(第一〇〇六号)  同(金子みつ紹介)(第一〇〇七号)  同(春田重昭紹介)(第一〇〇八号)  同(松沢俊昭紹介)(第一〇〇九号)  同(松本忠助紹介)(第一〇一〇号)  同(宮地正介紹介)(第一〇一一号)  同(浅井美幸紹介)(第一〇三四号)  同(大野潔紹介)(第一〇三五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一〇三六号)  同(中川嘉美紹介)(第一〇三七号)  同(二見伸明紹介)(第一〇三八号)  同(古川雅司紹介)(第一〇三九号)  同(松本忠助紹介)(第一〇四〇号)  同(渡部一郎紹介)(第一〇四一号)  同(阿部昭吾紹介)(第一〇八六号)  同外一件(有島重武君紹介)(第一〇八七号)  同(大久保直彦紹介)(第一〇八八号)  同(長田武士紹介)(第一〇八九号)  同(河上民雄紹介)(第一〇九〇号)  同(坂井弘一紹介)(第一〇九一号)  同(沢田広紹介)(第一〇九二号)  同(田中昭二紹介)(第一〇九三号)  同(竹内勝彦紹介)(第一〇九四号)  同外三件(広沢直樹紹介)(第一〇九五号)  同(森井忠良紹介)(第一〇九六号)  同(有島重武君紹介)(第一一六三号)  同(上田卓三紹介)(第二六四号)  同(権藤恒夫紹介)(第一一六五号)  同外一件(沢田広紹介)(第一一六六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一一六七号)  同(森井忠良紹介)(第一一六八号)  同(福岡義登紹介)(第一一六九号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一一七〇号) 同月八日  公共料金値上げ反対等に関する請願石田幸  四郎君紹介)(第一二二四号)  同(上田卓三紹介)(第一二二五号)  同(加藤万吉紹介)(第一二二六号)  同(権藤恒夫紹介)(第一二二七号)  同(柴田健治紹介)(第一二二八号)  同(市川雄一紹介)(第一三四六号)  同(権藤恒夫紹介)(第一三四七号)  同(武田一夫紹介)(第一三四八号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一三四九号)  同(薮仲義彦紹介)(第一三五〇号)  公共料金等値上げ反対に関する請願浦井洋  君紹介)(第一三四四号)  同(岡本富夫紹介)(第一三四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 西宮弘

    西宮委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  3. 片岡清一

    片岡委員 質問の第一陣を承りまして、二、三の問題について、長官に御質問を申し上げたいと存じます。  まず第一にお伺いいたしたいのは、この間の大臣所信表明の中に、最近のわが国経済を見ますと、景気基調としては回復過程をたどっておって大体順調に進んでおるけれども、しかし昨年夏以降景気回復テンポが緩慢になってきておる、と御指摘になっておるのでございます。この点についてお伺いいたしたいと存じます。  いわゆる景気中だるみをしたということは、どういう原因によってなったのであろうかという問題でございます。われわれが端的に考えますのは、昨年、財特法の成立が大幅におくれて、政府景気浮揚の一番目玉として考えておられました公共事業大変執行がおくれた、こういうことが一つの大きな要因でなかったかとわれわれには普通考えられるのでございます。そのほかに、この中だるみ状態というものは、これはわが国だけでなしに、いわゆる欧米の経済先進国においてもやはりその現象があらわれておるのでございまして、そのことを考えますと、それらのあおりがわが国にやはり影響を及ぼしておる、こういうふうにも思われるのでございます。しかし、もう一面、政府が大体去年の春からの好調の状況を見て、昨年中には相当景気回復が見られるというふうに国民に予想をして発表しておられました関係から、国民の側から言うと、何か景気中だるみしたということは政府見通しの誤りからきたのではないか、政府がそれぞれ打つ手をてきぱきと打っていかなければならないのが、それができなかったために景気中だるみを来した、こういうふうにも国民は疑っておるのでございまして、彼此いろいろの原因があると存じますが、大臣はどういうふうにこれらの問題についてお考えになっておられますか、その辺の御所見を承りたいと存じます。
  4. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  わが国経済は、四十九年のマイナス成長からだんだん回復してまいりまして、実質国民総生産も徐々に四十九年、五十年また五十一年と回復過程をたどってきておることは、ただいまお話しのとおりでございます。  そこで、五十一年の景気の動きでありますけれども、前半は、特に五十一年の初め、一月から三月くらいまでの景気は、非常に輸出の好調に支えられて急角度で伸びてまいりました。輸出の後に設備投資あるいは個人消費がついてきたわけでございますけれども、それから後、少し景気回復テンポが鈍ってまいりました。特に夏ごろから回復テンポが鈍ってきたわけであります。  その原因幾つかあるわけで、ただいまお述べになりました点に大体尽きると思いますけれども一つは、やはり輸出の好調を支えておりました背景である世界景気中だるみをしてまいりました。その反映として日本輸出伸びが鈍化をしてきた。相当高い水準ですけれども、しかし、ひところよりも鈍化してきたというのが第一の理由でございます。第二は、やはり需要の大宗を占めます個人消費、これは春闘の賃金とか夏のボーナスが低かったということもありますし、夏が非常に寒かったということも一つ原因であります。それからまた冷害等によって農家の支出が減ってきたということも一つ原因ではないかと思います。いわゆる個人消費が少し冷えてきた。それから三番目には、ただいま御指摘のように、政府支出、これは電電国鉄値上げ法案がおくれてその支出がおくれたということも一つ原因でありますし、また同時に、地方財政の方がなかなかうまくついていけなかった。そういう点での支出がやはり思うようになかった。そういう幾つかの原因が重なり合いまして景気回復が、回復基調はありますけれども、非常に緩やかなものになってきた、というのが現在の状況でございます。  そこで、それについて政府の施策に手落ちがなかったかどうかというお話でございます。私ども政策当局者としては一生懸命やったつもりでありますけれども、いまから振り返ってもう少し何かいい方法はなかったかというようなことを考えますと、いろいろ意見はあるかもしれませんけれども、とにかく何よりも一番大事なことは、景気判断を的確にするということが非常に大事なことでありまして、その景気判断を的確にするための手段というのを、さらにこれから十分そういう事態に対応できるような準備を進めておるところでございます。したがって、この景気回復テンポ緩慢化に対応しまして、御案内のとおり、昨年の十一月十二日には公共事業執行等七つ項目にわたる景気刺激策をとってまいりました。また、本年二月、補正予算を提出いたしましてこれが国会を通過させていただいたということでございまして、その効果は徐々に出つつあるというのが現況でございます。
  5. 片岡清一

    片岡委員 いまお話のございましたように、いろいろの手はお打ちになり、それぞれ対策を講ぜられたとは存じますが、国民はいまお話公共事業執行促進等項目の措置その他いろいろおとりになっておりましたことについてはよく承知いたしておりますが、どうもやはり政府判断が若干甘かったのではないかというようなことは国民としてどうしても思われるのでございまして、もう少し何かてきぱきと対策を講じていただければ、今日のような中だるみ不況というものは来ないのではなかったか。ことに、後から申しますように、大変倒産がふえてその状況が非常に深刻な状況にあるわけでございます。そういう点で、いささか国民の側としては、もう少し何とか方法がなかったのかというふんまんがあることはひとつ御了承願っておきたいと存ずるのであります。  時間がありませんので余りその問題について論議をする余裕はございませんが、次には、景気停滞が相当長期化するのじゃないかということでございます。政府はそういうことにならないように先般の五十一年度の補正予算あるいはまた五十二年度の予算で相当大幅の公共事業をやっていくというようなこと、あるいはまた、いま問題になっております減税の問題等にいろいろ腐心をしておられるのでございますが、どうも現状は相当厳しいものがあるということは否めないと存ずるのでございます。  先般二月二十八日に通産省が発表したものによりますと、これはかなり厳しい見方をしておるわけでございます。その第一の点は、昨年一月から三月までは非常に順調に回復された企業収益は、十月−十二月期から回復が鈍化してきたという実績、これを第一に指摘しておるのでございます。第二には、生産、出荷が昨年の秋から、十月からずっと足踏み状態になっておるということでございます。それから第三番目は、不況型の倒産がふえておる。これは放漫経営の結果倒産するということはいつの時代にもあるわけでございますが、今回の倒産不況型の倒産が非常に多い。売れ行きが大変悪いということから倒産しておるものが多いことを指摘しております。第四番目には、設備投資は相変わらず低迷しておる。こういうことで、景気回復のためには相当時間がかかるということを通産省自体が発表をいたしておるのでございます。  この点で、物価及び景気のための主管官庁である経済企画庁長官としていろいろお考えがあろうかと存じますが、この際、私は、この停滞が相当長引くのではないかということについて特に御所見を承りたいと同時に、私の方の富山県を含む北陸三県は、これは北陸のみならず東北、新潟も加えてでございますが、十四年前のいわゆる三八豪雪にまさる大豪雪に襲われておるのでございます。三八豪雪のときには、わりあいに短期間で降って短期間に消えましたので、被害は一時的には大変大きかったのですが、今回の豪雪は昨年の十二月の末から三月の初めまでという二カ月以上の豪雪になりましたので、さっきから申しました不況に加えてこの豪雪というダブルパンチを受けたという形でございまして、このための倒産は非常に大きなものでございまして、その件数、負債総額から言いますと、二月の倒産史上最高という北陸三県の状態になったのでございます。  民間主要調査機関でありますところの東京商工リサーチ富山支店というのが二月の終わりにまとめたものを発表いたしておるのでございますが、これは北陸三県の倒産負債総額一千万円以上のものを数えますと、二月だけで三十二件に上っておるのでございます。負債総額が七十三億七千万といういままでにない最高になったのでございます。五十一年の二月が三十二億五千万円で、これが過去の最高でございましたが、それの倍の七十三億余円ということになったわけでございます。業種別に見ますと、建設会社が一番多くてこれは十一件で三四%、金属関係企業が七件で二二%、繊維が三件で一〇%、こういうことでございまして、公共事業が十分行われなかった関係から建設会社倒産が非常に多くなったということでございます。それから原因別に見ますと、これはもちろん放漫経営というのがその中でかなり多く占めておりまして、これは十件で三一%。ところが、その放漫経営以外のいわゆる販売不振というものが九件で二八%、それから、ややこれと同じですが、他社の倒産の余波を受けて倒産したというのが七件で二二%。  こういうことでございまして、いずれにいたしましても、昨年末からの豪雪が直接間接を問わず経営不振に拍車をかけておるということは、これは間違いのない事実でございます。ことに豪雪が続きましたために、ほとんど建設事業が進まなかった、仕事に手をつけられなかったということが大変大きいのでございます。  それと同時に、この際、特に大臣にお考えをいただきたいのは、五十一年度の補正予算がようやくこの間通ったわけでございます。これがすぐ執行に移されたのでございますが、ちょうどそれが豪雪の最中でございますので、これはどうにもなりませんし、また、これから工事に取りかかるにいたしましても、ことしの豪雪のために雪消えの時期は相当大幅におくれまして、これは着工もしたがって大幅におくれざるを得ないという関係にあることは御了承いただけると思うのでございます。  そういうことで、これらのことを考えますと、この不況は相当長く停滞が続くのではないか、こういうふうに思われるのでございますが、これに対して長官は、この景気回復の時期は大体いつごろの見通しであるか。これはなかなかむずかしい問題とは思いますが、国民はやはりいつまで待てばいいんだ、いつまでがまんすればいいんだという気持ちを持っておるわけでございますので、この点、まず何とかひとつ責任大臣として確信のある御所見を承りますなら、大変ありがたいことと思います。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま富山地方の例を引かれまして、特に豪雪によって地域経済が非常な打撃を受けているというお話でございましたが、私も、全く今回の豪雪地帯関係の皆様方大変なものであろうと、深く御同情申し上げている次第でございます。  景気伸びが非常に緩慢化したということを申し上げましたけれども地域別また業種別に見ると非常に格差があるわけでございます。業種別には大変落ち込んでいる繊維であるとか造船であるとか、あるいはその他の不況業種を抱えている地域というのはまた大変な状況である。この業種別地域別格差というのが一つの大きな特色になっておるわけでございます。したがいまして、こういうことを頭に置きながらこれからの景気政策というのはやっていかなければならないと私ども心得ておるわけでございます。  そこで、景気はいつ回復するかというお話でございますけれども、確かに昨年の十二月ころまでの状況を見てまいりますと、景気回復というのは、マクロで見ますと、非常に緩やかでありますけれどもやはり徐々に回復過程をたどっておるわけでありますけれども、その中の一部の指標を見ますと、鉱工業生産が横ばいをするとかいろいろそういうものがございまして、大変テンポがおそいという状況であったわけでございます。しかし、ことしの一月以降になりますと、そのテンポが少し速くなってくるという傾向がございまして、これは一つは七項目補正予算というのもずいぶん効いておりまして、早速国鉄電電注文というものが出てきたり、あるいは地方支出がふえてきたりという姿がすでに出てきておるわけでございますし、また住宅投資等もさらにふえてくるというようなこともございますし、輸出の高水準ということにも支えられまして、ことしの一月以降現時点に至るまでの状況というのは、昨年の十—十二月の状況と比べるとよくなってきておると申さなければならないと思うわけでございます。したがいまして、私ども今日の状況にかんがみまして何としても昭和五十二年度の予算をひとつぜひ早く成立させていただいて、この予算一つのてこにしてさらに今日の景気回復テンポを速め、また安定成長路線に乗せるようにもっていかなければならないということを考えておるわけでございまして、予算成立ぐあいその他にもよりますけれども、私は、春が参りますと、そう遠からず景気回復状況というのが明らかになってくると思います。  ただ、ここでひとつ御了解をいただきたいのは、すでに減速経済に入ったという事実でございます。それはもういままで百キロから百二十キロで走っておったのが五十キロから六十キロでこれから走らなければならないという時代でございますから、五十一年度の経済成長実質五・七%、これは達成できると思います。しかし、これも一ころと比べると半分の速度である。五十二年度の経済成長も、実質六・七%といいましても、かつての昭和四十年代の成長に比べると半分よりちょっと超したくらいの成長であるということを考えると、やはりこの減速経済、いわゆる低成長時代に入ってきたということを考えてまいりますと、企業収益であるとかあるいは雇用であるとかあるいはその他の問題が、かつての感覚で考えると、なかなかうまくいかないということは御理解いただきたいわけでございまして、特にその問題が端的に出てくるのはやはり雇用関係じゃなかろうかと思うわけでございます。企業過剰雇用を抱えておると、少しくらい注文が多くなりましても残業時間を延ばすということで対応していく、そして雇用の増加ということにはなかなか踏み切れない。また、昭和四十七、八年ころに将来の高度成長、一〇%以上の成長を見越して設備をした人たちはやはり過剰設備を抱えているわけです。そうすると、なかなか設備投資ということには踏み切れない、そういう点があろうかと思います。  しかし、私は、中長期的に見ますと、まだ日本は非常に勤勉な労働力を持っておるし、またいろいろなストックが不足しておるわけですから、逆に言いますと、投資のチャンスがあるということでありまして、世界的に見れば、われわれの政策よろしきを得ればまだまだ活力のある社会としてやっていけるのではないかと思っております。
  7. 片岡清一

    片岡委員 ただいまの長官お話で、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、念のためにちょっとお伺いしたいのです。  景気も春とともにだんだん上向いてくる、それで夏から後半期にかけて大体上向いてくる、楽しみに待っておれ、こういうふうにおっしゃっておられる、こう伺ってよろしゅうございましょうか。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 春からだんだん上向いていくであろうということは、ただいま申し上げたわけでございます。それから先どうなるかという問題でありますけれども、私どもは五十二年度の経済成長が六・七%という成長を目指しておるわけでございますので、この成長が円滑な形で行われますように政策努力を続けていきたいと思っております。  ただ、これから先の日本経済運営考えなければならないことの一つは、対外的な非常に不確定の要素があるということでございます。昨年の十二月にOPECの値上げがありまして、あるところは一〇%、あるところは五%という値上げがありまして、平均して七、八%の原油の値上げがあったわけでございます。これはわれわれとしてはいかんともしがたいものでございますので、対外的なそういう不確定な要因というものを絶えず頭に置きながら、やはりこれに機動的に対処していかなければならないんじゃなかろうかと思っておるわけでございます。国内的にもいろいろな問題について従来よりも非常に不安定な要素が出ておりますから、そういうものを頭に置いて適切な経済運営をやっていけば、着実な安定成長路線につないでいくことができるのじゃないかと、そう考えております。手放しで私ども思っておるわけではございません。
  9. 片岡清一

    片岡委員 ここでちょっと長官にお願いを申し上げたいのでございます。これは直ちに長官の御所管ではないのでございますが、国務大臣としてのお立場からお考えいただきたい。これは各省一人一人に確かめればいいのでしょうが……。  と申しますのは、豪雪のために五十一年度の補正予算による事業等の工事が大変おくれるわけでございます。これは何か府県、市町村から早くやれ、早くやれと建設会社がせっつかれるのですが、この雪の中で棒ぐいを立てたりいろいろなことをしても、しばらくたつと、またそれがだめになっちゃうというようなことで、これは早くやろうにもなかなかやれない。したがって、工事が相当大幅におくれていく、こういう実情はどうしてもやむを得ないことでございますので、この工事の完成期を相当大幅に、財政上のいろいろの規則がありましょうが、大目に見ていただかないと仕事ができない、こういう事情があるようでございまして、私の方へもそういうのをひとつ何とか工期を延ばしてもらうようにお願いしてくれということを言ってきておりますし、それからまた、豪雪の中でいろいろ仕事を無理にやりますと、暖房のいろいろの処置を講じたり、あるいは最初やっておいたものが雪でまた足場がみんな崩れてしまったとか、いろいろのことで相当工事単価が上がるという現象があるということでございます。これらの問題についてひとつ閣議の席ででも長官からおっしゃっていただいて、各関係公共事業の担当大臣の皆さん方にも事情を御説明いただいて、その点を御配慮いただくように、ひとつぜひお願いをいたしたいということでございます。  それから、時間が余りありませんから次の問題に移りたいと思いますが、ただいま大臣からお話がございましたように、一般にはやはりどうしても昔の夢が忘れられない、いわゆる高度成長の夢が忘れられないというとでございます。いままさに減速経済に入っておるのでございますから、そういうことはやはりあきらめなければならぬと思います。ところが、わが国の五十二年度における実質成長率が六・七%と見込んでおられるわけでございます。私はこの数字が本当にうまくいくのかどうか、どういう基礎において御確信があるのか、その点がいささか心配になるわけでございます。何といっても経済の規模が大きくなりましたから、回復すれば相当いくだろうということもわかります。しかしながら、昭和四十九年がマイナス〇・三、マイナス成長でございます。五十年度が三・四%、そして、ことし五十一年度は五・七は大体うまくいくだろうという長官のお見通しのようでございます。  ところが、先ほど申し上げましたように、景気の先行きは決して安心はできないという状態にあるほかに、さらに、いま大臣からお話がございましたように、国際関係が非常に関係してくると私は思います。特に私が心配になりますのは、これらの国際経済というのはやはり日米独が機関車の役目をとっていかなければならないということで、日本経済のこれからに対して相当大きな期待がかけられておる。期待がかけられるということは、相当重荷を負わされるおそれがあるということでございます。アメリカのカーター大統領の経済顧問であるペンシルバニア大学教授のクライン博士などは、何か円とマルクは大変強過ぎる、これは一〇%くらい切り上げなければならないということを言っておるようでございます。これらの空気が、さらに来るべき今度の日米の首脳会談あるいはまた五月のロンドンにおける先進国首脳会議、これにおいて相当風当たりの強いものが出てくるのではないかというふうに思われるのでございます。そのときに、日本が依然として六・七の成長をやっていくんだということが可能であるのかどうか。ことにアメリカやドイツが、五十二年度といいますか、日本の五十二年度に当たる期間の成長率をどういうふうに見ておるのか。いままでは三%ないし四%というのが普通だったように思われるのでございます。そういう点から言うと、どうも日本のこの六・七というのは、日本経済界から政府が突き上げを食って、それくらいやってもらわぬとやっていけぬぞというようなことから、ちょっと無理な数字が出ておるのではないかというふうに思われるのでございます。もちろん完全雇用というのは望ましいことではございますが、これは高度成長のあの時代において初めて日本で成し遂げ得たことでございます。これは失業対策というものもあるのですから、保険というのもあるのですから、余り完全雇用にとらわれ過ぎて無理な経済成長をやろうとすると、そこにまた物価高が起こってインフレの要因が出てくるのではないか、こういうふうに思われるのでございますが、それらの点について大臣の御所見なりあるいはまた御確信を拝聴いたしたいと思います。
  10. 倉成正

    倉成国務大臣 欧米先進国、世界の経済の中で二極分解というのが言われておりまして、日本とドイツとアメリカ、この三カ国、これとイギリス、フランス、イタリアに代表される国々、こういう国々とが、成長率あるいは国際収支あるいは物価、失業率、そういうのでよく比較されるわけでございます。国際的に見ると、日本経済というのはその二極分解のよい方の部類に入ると申しても差し支えないと思うのでございます。  ただ、この三カ国の中でもいろいろ特色がございまして、物価の安定という点から見ると、やはりドイツ、アメリカの方が日本よりも安定しているということが言えると思いますが、一面、失業率の面から見ると、日本の失業率は二%前後でございますけれども、ドイツの場合にはやはり四%を超している、アメリカの場合は七・五%くらいというようなことで、失業という面は、日本の終身雇用制という雇用制度の相違もありますけれども日本の方が効率がよいと申しても差し支えないと思います。  それから成長率の点でございますけれども、これはドイツやアメリカの成長率よりも日本の方がやや高いというのがいまの実情でございます。OECDでもドイツあるいはアメリカの成長率の見通しをいたしておりますけれども、しかし、カーターの景気刺激政策あるいは西ドイツの最近の景気の現況等から見ますと、それらの見通しよりも高い成長になるのじゃないかということを考えておるわけでございます。しかし、それにしても日本の六・七%というのはこの三カ国の中では最高成長率になっているということで、日本経済が六・七%成長をすることが世界の経済に非常に大きく貢献する、また開発途上国の経済に対して非常に大きなよい影響を与えると考えておるわけでございます。内需で一%日本経済成長伸びてまいりますと、アメリカのGNPに〇・一%影響を及ぼす、ドイツやカナダには〇・二%ずつGNPを押し上げる、その他のOECDの国々合わせまして〇・一五%くらい上げる、そういうOECDの報告も出ておるような次第でございまして、また、インドネシアやフィリピンやその他の国々の輸出の中で日本向けの輸出というのが四割以上占めておるわけですから、やはり日本経済自体がこの六・七%成長を遂げることが世界経済に大変好影響をもたらすというふうに考えておるわけでございます。  クラインさんがモデルを計算しておるときに円の一〇%の問題を話されたということをわれわれもちょっと聞いておりますけれども、これはアメリカの正式の発言ではないわけでございまして、モデルをいじっている過程においてのことを述べられたのではないかというふうに思っておるわけでございます。  いずれにしましても、最善の努力をしまして、六・七%の成長が達成できるように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  11. 片岡清一

    片岡委員 ただいま日本経済から言って六・七%の成長率は無理ではないのだというようなお考えなんだろうと思いますが、アメリカ、西ドイツでもそんなに高くないのに、日本が六・七%の成長率を実現するということは、日本の国際的な、経済的な使命を果たす上に非常に大きな好影響を持つことはわかるのでございますが、経済基盤がかなり大きな米、独でさえも五%以下というようなものだと思いますが、それなのに日本がそれだけいけるというのは、やはり日本の何か経済的な体質から言ってそういうことができるのでございましょうか。その点をわれわれ素人にわかりやすくお願いしたい。たとえば日本の産業界における技術が非常に進歩しておるとか、あるいは機械が非常に新しいとか、何か米、独にまさる成長率を保ち得る素質を持っているのだということであるのかどうか、その点をお聞かせいただけば大変ありがたいのですが。
  12. 倉成正

    倉成国務大臣 まさに大変大事な問題を御質問でございますけれども、率直に申しまして日本経済がまだ若い、活力を持っている、一言にして申すとそういうことではなかろうかと思うわけであります。冒頭に私が申しましたように、日本には投資の機会がまだ非常に多く残されておるということではないかと思うわけであります。民間の企業設備にいたしましても、これらの国々と比べると日本の比率は高いと申せるわけでございます。  それから、五十二年度の経済見通しの六・七%がどうして達成できるかということを、時間の関係もありますから、かいつまんで申しますと、五十一年度は中の需要項目が多少入れかわりまして、輸出というのが当初の見通しよりも多少好調であったということは言えるのじゃないかと思うのでございますが、五十二年度は輸出の点では、五十一年度大体二〇%弱の輸出というのを、世界の貿易の関係から考えますと、一二%弱の輸出ということで輸出の比重をちょっと下げておるわけでございます。それから個人消費も、物価も少しずつ安定し賃金も伸びていくという過程において、だんだんふえていくであろうということも考えておりますし、民間の設備投資は、製造業の方は非常に引っ込む、鉄鋼を初め引っ込んでくる。しかし、非製造業が電力を中心にして伸びていくということで、政府見通し程度の伸びはできるのではなかろうかということを考えておるわけでございます。住宅も、またかなりの予算の裏づけをしておりますし、金融等の状況を見ましても、この程度の民間の住宅は伸びるのじゃなかろうかということでございますが、それでもまだ十分でないということで、昭和五十一年度の予算の中で公共事業を中心として需要創出効果の多い公共事業等を中心として予算を組んでおるわけでございます。政府見通し関係で申しますと、政府の財貨サービスの中の資本支出というのがありますが、これが国の一般会計、公社公団の会計、それに地方の会計、地方の公営企業、そういうのを全部足しまして重複計算を差し引く、すなわち国から補助金を出した分は差し引く。それから用地代を差し引くわけであります。そうすると、それが大体政府の資本支出、これに細かい技術的なことを申しますと在庫が入っておりますけれども、しかし、大まかに申しますと、公共事業的な性格を持ったものでございます。これが十八兆二千五百億あるわけでございます。この十八兆二千五百億というのは昨年に比較しますと一五・九%の増加ということでありまして、これでひとつ何とか景気浮揚を図っていって、全部こういう需要項目を足してまいりますと六・七%の成長になるということでございます。決していいかげんな形で六・七%というのを考えたものではないということを御理解いただきたいと思うわけであります。
  13. 片岡清一

    片岡委員 それでは次に、時間が余りありませんので、最近、消費者物価が大変上昇しておることが大変心配せられております。どうも政府の年間上昇率八・六%はほとんど絶望的だと言われておるのでございます。五十二年度は七%で抑えようということであるわけでございますが、そこで、果たしてこれがうまくいくのかどうか、来年五十二年度の計画もうまくいくのかどうかという問題でございます。  それに関連いたしまして、最近、円の為替高が非常に続いておるわけでございます。これは恒久的なものでありませんからかなり浮動的なものとは言えますが、この円高によってかなり輸入の差益が出てくると思うのです。これが果たして物価の方へ響いておるのかどうか。これはほとんど響かないで、かえってガソリンの値上げ等何かあるのでしょうが、為替差益によってガソリンや灯油の値段等は抑えられるかなり有利な状況にあるのではないかと思われますが、それがさらにまたガソリンの値上げ灯油の値上げ等が言われておるというようなことは、何か国民としては非常に矛盾を感ずるのでございます。かつて石油ショックのときに国民生活安定緊急措置法がつくられたのでございますが、これは時限立法ではございませんから、依然として現在も生きておると思います。こういう為替差益等と関連いたしまして、物価に対する監視体制というものが安定緊急措置法によって、そういう状態になってきたら、当然動くとは思いますが、そういうことについて現在どういうふうに体制がとられておるのか。私は場合によったら行政指導なりあるいは監視の目を光らせていただいて国民の納得のいく強力な措置をとっていただかないと、これは石油の値上げ、OPECやOAPECの値上げによってまたいわゆる高物価というものが誘引されてくるのではないかというふうにおそれるのでございますが、その間の関係大臣でなくても、局長でもよろしゅうございますが、お願いいたしたいと思います。
  14. 倉成正

    倉成国務大臣 最初、物価でございますけれども物価は卸売物価は比較的安定した動きをいたしておりますので、大体政府見通しが達成できると思っております。  消費者物価につきましては、昨年の暮れ十二月に公共料金、電話の関係値上げ等が響きまして、またことしの一月になりまして異常寒波、これは十数年来の寒波でありまして、この寒波の影響で生鮮食料品、野菜や果物等の値上がりがございまして、東京都区部は、大体私ども昭和四十五年を基準とする指数で物価目標の経済見通しを立てたわけでございますけれども、昨年の四月からことしの一月までの年度中の上昇率は七・八%というところでございます。一月までしか出てないわけでございます。しかし、東京都区部の二月の指数が出ておりますので、このことから大体この程度二月に上昇するであろうということを考えてまいりますと、四十五年基準の指数で二月には八・五%という指数になるわけであります。そこで、私どもの八%程度の目標を達成するためには三月に若干下がらなければいけないということであるわけでございます。非常に厳しい状況にあるわけでございます。最近、野菜の値段、それからお魚の方が入荷が少し減っておるものですから、少し上がりぎみであるというような状況でございます。しかし、いずれにしましてもお天気も非常に回復してくる、あるいはお魚の入荷等も順調にいくということになれば、魚や野菜の値段の安定もできると思うわけでありまして、われわれは目標達成に最後まで努力していきたいと思っておる次第でございます。しかし、こういう季節商品を除きますと、基調としては、狂乱物価時代から比べますと、とにかく安定化の傾向にあるということは申すことができると思います。  それから為替差益、これはいま円が二百八十一円から二百八十二円前後でございますけれども、大体二百九十円台、一月の半ばくらいまでそうだったわけでございます。したがって、この状態がフロート制のもとでいつまで続くであろうかという問題があるものですから、すぐこれを物価に反映させるということはなかなか——この前の円の切り上げ、これに関連して自由化とか関税引き下げをやったときとは条件が違う。しかし、少なくとも円高が卸売物価や消費者物価にできるだけ反映できるようにするために、これらの関係の深い各物資の価格について、いま追跡調査をいたしておりまして、何とかその円高が少しでも物価安定に役立つように努力をしたいと思っておるわけでございます。  灯油については、需要期は大体値上げをしないということにいたしておるわけでございます。  それから、国民生活安定緊急措置法に基づくものでございますけれども、これは物価その他わが国経済の異常な事態が発生した場合ということで、現在は異常な状況ではないという判断をいたしておりますので、こういう生活関連物資の価格について標準価格を設けるとか、そういうことはいたしておりません。しかし、もし万一こういうことがあれば、当然この法律を発動したいと思いますが、こういう事態が起こらない、この法律が眠っておる状況が一番よい状態であるということを御理解いただきたいと思います。
  15. 片岡清一

    片岡委員 終わります。
  16. 西宮弘

    西宮委員長 次に、砂田重民君。
  17. 砂田重民

    ○砂田委員 余り時間がありませんので、経済企画庁長官に一つだけ伺っておきたいと思うのです。  それは消費者行政のことであります。どうも当委員会で消費者問題に真剣に取り組む議員は次々に落選をするというジンクスがありまして、社会党の武部文君、松浦君、公明党の渡部通子君、わが党の青木君、そして私と……。しかし、このジンクスにひとつ挑戦をしようと思いまして、この委員会で当国会でも消費者問題に真剣に取り組みたい、かように考えておりますので、この国会、ひとつ一緒に勉強をしていきたいと思います。企画庁長官にも真剣にお取り組みいただきたい。  きょうは一つだけ伺っておきたいと思うのですが、すでに国民生活審議会の消費者保護部会の企業の無過失責任についての中間報告を長官は受け取っておられると思うのです。まだこれからのことでありましょうけれども関係する各省は非常に数も多いことでありましょうし、企画庁としては大変な御努力を私も予想いたしておりますけれども、これからこの企業の無過失責任ということについて、企画庁長官としてはどういう姿勢で取り組んでいかれますか。その基本的な長官の姿勢を、それだけを伺っておきたいと思います。
  18. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま仰せのとおり、昨年の十月、国民生活審議会の消費者保護部会で、「昭和五十年代の消費者保護のあり方」の一環として、消費者被害の適切効果的な救済方法に関する中間報告が取りまとめられまして、この報告をいただいております。この基本的な理念としては、事業者の責任のあり方を明示して、早急にその検討を求めるとともに、具体的救済の改善方法について、早急に実施すべきものとそれから今後検討すべきものとを提言いたしておることは御承知のとおりでございます。政府といたしましては、昨年の十一月に第九回の消費者保護会議でこの中間報告を参考としながら、売り手の危険負担の考え方を原則とする総合的な消費者被害救済制度の確立の検討を進めることを一応決定しているわけでございます。  ただ、御承知のように、この中にいろいろ、クラスアクションであるとか、非常に基本的な問題、法制的な問題も含んでおるわけでございますので、私は、やはり基本的な姿勢としては、やれるところからやっていくということがまず第一じゃないか。それからもう一つは、やはり関係する省庁が非常に多いわけでありますから、その理解を十分深めていくという努力が必要ではないかというふうに考えておるわけでございまして、特に消費者保護基本法制定に当たりまして大変御尽力なさった砂田委員あたりのいろいろなお知恵をおかりしながら、この問題をこれから真剣に取り組んでまいりたいと思うわけでございます。余り性急にその結論を出しても、これが実際行われないということになりますとまずいのではないかと思いますので、熱意を持って、しかも関係方面の理解を十分深めていく方向で努力をしていきたいと思っております。
  19. 砂田重民

    ○砂田委員 企画庁長官に、しっかりどうぞと激励を申し上げておきます。  委員長にお願いをしたいと思うのですが、各府県市でそれぞれ消費者保護条例がずいぶんたくさんできております。ずいぶんでこぼこもあるように思いますので、私どもでこれを勉強の資料にしたいと思いますが、企画庁からこれを資料にして整理したものをひとつ委員みんなに配っていただきたい。委員長経済企画庁にお願いを申し上げておきたいと思います。  公取委員長に独禁法のことで一つだけ伺っておきたいと思います。まだ独禁法の改正案が政府から提出されておりません段階で、与党議員としては少し質問がしにくい、言葉遣いも気をつけなければならない時期でございますけれども、それだけに、基本的なことを一つ伺っておきたいと思うのです。  それは、公正にして自由な競争というものが自由経済社会という機構の中で国民経済的な大きなメリットである、私もさように信じております。一つの業界で、寡占状態であるがゆえにこのメリットが破壊された、あるいは破壊されようとした、そういう危険があったのでそれを処置したといういろいろな実例を、公取からも資料として私どもはいただいておりますし、公取として当然の処置をされたと、私はさようにこの資料を拝見いたしました。自由経済社会の中での企業経済活動、それは全面的に自由奔放、勝手気ままに振る舞っていいんだというものではないということをやはり明確にしておく必要がある、私はそう信じます。しかし、一方、一つの現実問題としては、企業努力、それによる技術開発等によりまして、そういう技術開発や企業努力から寡占状態が醸し出される、そのこと自体が商品の価格を安定させたり、消費者に対するアフターサービスというものに非常に大きな利益を与えているという、そういう実態もまたある。寡占そのものはしたがって悪ではないという議論もまたあるわけです。これは産業政策的な議論であって、それもまた間違いだとも言えない。  そこで、公正にして自由な競争によるメリットという理論と、現実問題としての寡占という状態の上に乗っている国民経済的な、そういう産業政策的に見るメリット、こういうことを公取委員長はどういうふうにこれから考えていかれるか、どういう姿勢で対処をしていかれようとされますか、その基本的な公取委員長のお考え一つだけ伺っておきたいと思います。
  20. 澤田悌

    ○澤田政府委員 独禁政策に関します非常に基本的な大事な御質問でございます。自由な経済体制のあり方という面から考えますと、独占あるいは寡占の弊害がある場合には、これを除去いたしまして、自由経済の長所を十分発揮できるような体制を維持し、そして自由経済に常に新しい活力を保たしめるということが肝要であることは、これは申すまでもないことでありまして、私ども基本的にそういう認識を持っておるのでございますが、御質問の関連は、ただいま非常に問題になっております独占状態に対する対応措置の立法化の問題と関連いたしておると存じますので、この観点から申し上げますと、まさにおっしゃるとおりでございまして、独占的あるいは寡占的状態につきます現在の私ども考え方、あるいはここで触れるのはどうかと思いますが、いわゆる五党修正案におきます法案の考え方、これはいわゆる弊害主義であると私は考えております。弊害がある場合には、これを冒頭申しましたように除去して、自由な競争体制を維持しなければならないという基本的な考え方でございますから、公正にして自由な競争の結果、寡占状態、独占状態ができたということだけでそれを排除するということではなく、あの五常修正案でおわかりのように、独占状態とは何かということをまず考えて、そういう状態がある場合に公正取引委員会によっていかなる措置をとり得るかということがございます。この措置をとる場合にどういうことを配慮しなければならないかということがその次に規定されるわけでございます。そういう措置を配慮する場合に手続はどうか。この手続についてもきわめて具体的に書いてあるわけでございます。  そういったふうに、あの案を例にとりましてもかなり行き届いた配慮のもとでの法案となっておるわけでございます。もしああいうような形で法案に独占状態に対する対応措置が盛り込まれました場合には、私どものそれの運用、この心構えといたしまして、御指摘のように、メリット、デメリット、国民生活に対する影響等を十分考えた上で運用すべきもの、かように基本的に考えておる次第でございます。
  21. 砂田重民

    ○砂田委員 終わります。
  22. 西宮弘

    西宮委員長 次に、武部文君。
  23. 武部文

    ○武部委員 私は、過日当委員会において長官所信表明をされた中の三項目景気回復物価の安定、経済安定成長路線、この三つが所信表明の中身だと思いますが、最初に、先ほどからやりとりありました景気回復の問題についてお尋ねいたしたいのであります。  今度の予算国会で、景気回復は公共投資か減税か、こういう論議が相当なされました。減税の問題はすでに決着を見るようでありますから、このことについては触れません。そこで公共投資、確かに公共投資景気回復につながるだろうということは私は否定をいたしませんが、現実に今回の五十二年度の予算、その公共投資伸び率というものを見ると、非常にこの問題がインフレと結びつくのではなかろうか、こういうようなことを懸念するのであります。  たとえば、この財投を一つとってみても、鉄道建設公団、これは上越新幹線の建設等が中心になったものですが、それの伸び率は前年比約三〇%、本四架橋も同様に約三〇%くらいの対前年比の上昇を見るようであります。それで、そうなった場合にこの公共投資が片寄ってくる。その場合にはそのことがインフレの引き金になるじゃないか。この本四架橋一つとってみても、鋼材は東京タワーの五百本分の鋼材を使う。これは二百万トンです。あの大きな霞が関ビルの十七杯分のセメントが投入される。こういうことがもうすでに計算上出ておる。こういうことになってくると、この公共投資に余り重点を置き過ぎて、それがまた片寄った公共投資ということになれば、この物価問題と非常に大きな関係を持つじゃないか、私はそういうふうに思うのですが、長官はどういうふうにお考えでしょう。
  24. 倉成正

    倉成国務大臣 公共事業がインフレに結びつかないかというお話でございますが、私どもは五十二年度、五十一年度もそうでございましたが、五十二年度の予算編成のときに、特に公共事業にアクセントを置いた予算編成をするときに、大蔵省とも打ち合わせをいたしまして、物資の面について不足をしたり、これによってインフレが起こらないようにということを、物の面についても予算編成のときに十分検討を主計局にもいたさせておるような次第でございます。  それから、そのことは別といたしましても、現在は非常に過剰設備を抱えておるわけでございまして、稼働率が低いわけであります。ただいまお話しの鉄鋼の稼働率は八一・一%ということでございまして、鉄鋼のそれによる値上がりが起こるくらいの公共事業であれば、それは大したものでございまして、とうていその程度のものではこの冷え込んだ鉄鋼に対する需要は起こってこないということがむしろ言われておるくらいでありまして、セメントについても大体同様な状況下になっておる。しいて言えば、木材というのが外材を入れたりいろいろいたしますので、この需給には十分注意をしていく必要があるのではないか。あるいは設計者というような問題は、御指摘の点を注意しなければならないと思うわけでございますが、注意深くやれば、この程度の公共事業がインフレに結びつくということは当たらないのじゃないかというふうに考える次第でございます。
  25. 武部文

    ○武部委員 この点は見解の相違があるだろうと思いますが、きょうは時間の関係でこれ以上のことは言いません。  ただ、私は、景気回復というのは、個人消費の拡大と設備投資の充実ということが景気回復に非常に大きな役割りを果たすのだろうと思うのです。いまは二つとも完全に冷え切っておる。このときに、一体いまおっしゃったような景気回復ということが果たして可能だろうか。公共投資だけで景気回復していくだろうかということについては、私は疑問に思うのです。特にこの消費の拡大、これは去年賃金の平均アップが八・八%、物価の上昇に見合わない。そこにもってきて所得税減税ゼロ。社会保険料は上がる。累進課税で増税になる。当然、消費は減退するはずです。だから、われわれは、大幅な所得税減税と賃上げと福祉、そういうところに投資をすることによって消費が拡大をするんだ、こういうことをいま主張しておるのです。この点については、残念ながら見解の相違で、所得税減税はあのようなかっこうになるわけですが、私どもとしては、そういうところに力を入れないで公共投資一本やりというようなことでは、いま私が申し上げたように、下手をするとインフレにつながって物価の上昇をもたらすのだということを指摘したいのでして、この辺についてはもう一度見解をひとつ聞いておきたい。
  26. 倉成正

    倉成国務大臣 五十一年度の暦年を見てまいりますと、家計調査によります全国世帯の名目の消費支出は一〇・六%伸びておることは御承知のとおりでございまして、実質でも一・二%伸びておるわけでございます。したがって、徐々にではありますけれども個人消費支出は決して落ち込んでいないわけでありまして、少しずつ伸びておる。しかし、その伸び方が低いという点は御指摘のとおりとは思います。五十二年度の消費支出は、物価が少し落ちついていき、また収入が上がってくれば、徐々に回復をしていくということは予想してもいいのじゃなかろうか。そう非常に大きなことを求めなければ、少なくとも実質消費についても政府見通し程度の伸びは十分確保できる、そう思っております。  それから、設備投資につきましても、確かに製造業については非常に稼働率が低いとか、過剰設備を抱えておる面が鉄鋼初めあるわけですけれども、これもマクロの数字でまいりますと、少しでありますけれども、少しずつ伸びてきておる。これは非製造業が伸びておるために伸びておるわけでございまして、五十二年度についても、やはり製造業は余り期待できないけれども、非製造業については電力を中心として期待できる。また卸や小売りや中小企業等についての設備投資というのを考えますと、政府見通し程度の設備投資伸びはできるのじゃなかろうかということを考えておるわけでございまして、個人消費、民間設備投資を決して無視しているわけではございません。ただ、これだけでは十分なものではないので、政府の公共支出というものを考えまして、御審議をお願いしておるということでございます。
  27. 武部文

    ○武部委員 賃上げを一〇%すると購買力の増加が一兆八千億円、こういう数字が出ています。それくらい勤労者のふところが豊かになれば購買力がふえるのだ、こういう具体的な数字がありますが、少なくとも景気回復というのは、公共投資の面やあるいは減税や賃上げや、そういうもろもろの問題が重なっていかなければ、平均的な景気上昇、普遍的な景気上昇にならぬと私は思うのです。そういう意味で、ぜひ景気回復にはそういう点を考慮していただきたいという点を申し上げて、この問題はこれで終わります。  これから物価の問題をちょっと論争したいのですが、これから申し上げる物価というのは、消費者物価だけに限って申し上げたいと思います。  先ほど、消費者物価は安定化の方向に向かっておるという答弁がございました。長官は、現在の日本の消費者物価の上昇率というのは一体どの程度の数字が理想的だというふうに思っておられるか、それをお伺いしたい。
  28. 倉成正

    倉成国務大臣 私どもの「前期経済計画」で目標といたしておりますのは、消費者物価を六%以下にしたいということでございまして、結局、平たい言葉で言えば、定期預金の金利水準というのが頭にあるわけでございます。
  29. 武部文

    ○武部委員 ことしの二月、福田内閣が発足をした直後の世論調査がたくさん出てきました。全国紙の世論調査の中で、福田内閣に何を望むか、一番力を入れてほしいものは何か、こういう問いに対して、第一位は物価の抑制三七%、二位が国民生活の安定一六%です。大体同じようなものですから、これを合わせても五三%。国民の中には物価の安定を望む声が非常に強い。私のところは非常に小さい田舎の県ですが、私の県でも県内紙が、県民は一体いま何を政治に求めておるか、こういう世論調査をことし初めてやりました。それも同じ二月ですが、その中でも、物価、流通に対しては三九・三という数字が出ておるのであります。国民すべてが今日物価の問題に非常に大きな関心を持っておる、物価の安定に期待を持っておることは、この数字を見てもう明白だと思うのです。ところが、現実には物価の上昇というものは、数字では確かに総理府の数字が出てくるわけですけれども、その数字を一体国民はどうとらえておるだろうか、私はこのことをぜひ長官といろいろやりとりしてみたいのであります。  かつてこの委員会で、物価安定政策会議の議長をしておられた中山伊知郎さんと私ども物価問題でいろいろと話し合いをいたしました。そのときに、一体理想的な物価の上昇とはどの程度のことを言うのかという話し合いをいたしましたときに、当時、銀行の一年ものの定期預金は五・五%でありました。税金を引いて五%という数字があったときに、一体五%という数字なのか、五・五%という数字なのかということをいろいろ論議をいたしました。やはり五%くらいが理想だろう、こういう話で、いま長官お話しのように、六%というのは現在の一年ものの定期預金六・七五%にほぼ匹敵する数字ですね。  ところが、この六・七五%、一年ものの定期預金の中から分離課税で税金を引くと、現実には四・七三%になりますよ。そういう具体的な数字が出てきます。私は、四・七三%というのが理想的な物価の数字だとは言いません。言いませんが、少なくとも銀行に一年金を預けてそれが何らの利子も生まないような、そういう状態は好ましいことではない、これは当然だと思うのです。そういう意味で、長官の答弁は、少なくとも一年ものの定期預金、その中から、分離課税ですから、そうでない人もいますから四・七三にならないにしても、六・七五%以下の消費者物価の数字にならなければ、それは理想的な物価政策とは言えぬというふうに理解してよろしいですか。
  30. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、ただいま「前期経済計画」の目標を申し上げたわけですが、経済政策というのは、もう武部委員御承知のとおりに、幾つかの政策目標を掲げておるわけでございます。われわれは「前期経済計画」において、物価の安定と同時に完全雇用雇用の問題あるいは生活の充実というような問題も掲げておりますし、また将来の産業基盤をつくっていく基盤づくりということも考えておるわけでございまして、いろいろな政策目標の中で物価をどう考えるかということではなかろうかと思うわけでございます。  今日の物価というのは、低成長時代に入りました後の物価というのは、需要の点からは確かに物価上昇の要因は少なくなってきていると思いますけれども、海外的な物資、特に資源の不足している石油を九九%海外から入れなければならない、その他の重要物資もほとんど海外から入れていかなければならないというような、そういう海外商品、輸入商品の値上がりによる物価ということは、やはり頭に置いておく必要があるのではなかろうか。それからもう一つは、技術革新やあるいは今後の状況考えてまいりますと、生産性の上昇というのがこれまでのように期待できないということになりますと、やはり賃金コストというのがある場合には物価上昇のコスト要因として響いてくる。また公害その他の投資というのが、そういう安全コストというのが物価上昇のコストとして響いてくるということを考えてまいりますと、やはり全体をにらみながらやっていかなければならないので、物価だけをとにかくぎりぎり抑えていくのだということになると、これはやはり全体のバランスが崩れるのではなかろうか。西ドイツあたりでは、とにかく物価ということについて非常に国民的なコンセンサスができておりますから、これに最優先の地位を与えておりますので、それはある程度の物価——これはもちろん為替政策であるとか西ドイツの産業構造という問題もありますけれども、しかし、基本はそういうところにあるのではなかろうかと思うわけでありまして、日本の場合には海外的な要因があるということと、やはり他の政策目標、特に雇用その他の問題について十分配慮を払っていかなければならないということを考えてまいりますと、「前期経済計画」で考えているものが、完全とは申しませんけれども、これが一つの目安ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  31. 武部文

    ○武部委員 所信表明の中に、成長は六・七で、物価の方は七・八ですね。ところが、これはマスコミも報道しておったようですが、経済企画庁が試算をしたときには〇・一ずつこれと違っておった。これがなぜ閣議で〇・一ずつ引いてみたり加えてみたり、その根拠は一体何だろうか。少なくとも経済企画庁としてはそれだけの根拠を持って発表して提出したものが閣議でなぜ、わずか〇・一かもしらぬけれども、どうしてそういうことが閣議で変更になるのか、その根拠は一体何でしょうか。
  32. 倉成正

    倉成国務大臣 閣議で変えたわけではございません。私どもは、部内で物価見通しをいたしますとき、いろいろな試算をいたしてみるわけでございます。その試算をいたしました過程において、国鉄の運賃をどうするかという問題が企画庁の物価当局でなかなかつかみかねておったわけでございまして、この問題についてはやはり政治的な判断を要するということで、私と総理あるいは運輸大臣等と話し合いをいたしまして、今日の物価状況から考えると三〇%あるいは五〇%の値上げというのはなかなかむずかしいという判断をいたしまして、九月から国鉄の運賃を一九%上げるという計算をいたしましたので、その分だけ、当初三〇%程度はやらなければというようなものといたしますと、大体〇・一くらいは下がってくるということでございまして、その過程におけるもので、決して恣意的に鉛筆をなめたわけではございません。十分根拠があっていたしたものでございます。
  33. 武部文

    ○武部委員 そういう説明ですが、どうもしっくりいたしません。〇・一を片一方引いて、片一方プラスする。これはちょっとつじつま合わせの——何か福田総理の鶴の一声だったというようなことを新聞に書いてあるわけですが、私はいまの話を開くと、何かお二人で相談なさったということですけれども、やはりそういうところに何か、数字を合わせんがためにつくり出した数字ではなかろうかというふうに、あのことを見たときに思いました。ですから、後で数字のことについて申し上げますが、これはひとつ参考に聞いておきたかったのです。  政府の発表は総理府統計局の数字、消費者物価の数字を物価の具体的な数字として発表して、それをできるだけ目標に近づけたいと努力をしておられる。これはずっとそうだったのです。しかし、総理府統計局が発表する消費者物価の指数というものが、それならば果たして現実に国民の生活の実感とどういうふうな関係を持っておるだろうか。この話は当委員会でもずっと前から、私がこっちへ出てきた十年前からいつもございました。きょうは総理府の方に来てもらっておりませんからその論争は避けるといたしまして、現実に国民の皆さんが、きょう申し上げるように、非常に高い率で物価の安定を望んでおられる。それは世論調査に出ておる。片一方で福田内閣が物価は八%だ、八・六%だと言っても、そのことを生活の実感としては受け取っていない。だから、やはり物価は問題なんだから、物価の抑制に力を入れてほしいということが出てくるのだと思うのです。そういう意味で、一体、長官は、現在の総理府統計局の数字というものが生活の実感とどういうふうな関係を持っておるとお考えでしょうか。
  34. 倉成正

    倉成国務大臣 私も確かにお話のお気持ちはよくわかるわけでございます。ただ、物価指数というのは、やはり国際的に広く認められた方式で客観的に調査、作成されたものでございまして、これは一つの意味を十分持っておるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、御指摘の実感との問題でありますけれども、生活実感では値上がりの目立つ品目についての印象が非常に強い。したがって、全体はなかなか見にくい。やはり自分の関心で、卵なら卵がいま一個大体中玉で二十六円くらいしておると思いますけれども、そういうのが仮に二十七円になれば、上がったという実感ですけれども物価指数というのは、卵の値上がりあるいは野菜の値上がりとすぐには結びつかないというような、目立つ品物についての感じが実感としてあらわれてくるということはあるのじゃなかろうか。これはちょうど不況の問題もそうでございまして、やはり不況業種の中にいる人から見ると、マクロで景気が上昇したと言っても、何を言っているんだ、われわれはこんな苦しい思いをしているんだという感じを持つのではなかろうかということが一つでございます。それからもう一つは、消費水準がだんだん向上していく、だんだんわれわれの生活がよくなっていくということが高度成長時代から今日まで続いてきておりますので、その消費水準が上昇したために生活費が上がっていく、これと物価上昇によって生ずる生活費の増加というのがやはり一緒に考えられがちであるということが、ただいまお話しのように、生活実感と物価指数との乖離と申しますか、そういう御指摘のような意味のものが出てくるのじゃなかろうかと思うわけでありまして、物価指数としては、もちろんわれわれは将来改善を加えていかなければならないと思いますけれども、十分意味を持っているものであると考えております。
  35. 武部文

    ○武部委員 確かにこの物価の上がり下がりを前年に比べてどうだということを一言で言え、あるいは一つの数字で言えということになれば、総理府統計局の数字を言わざるを得ないと思うのです、これは平均的な数字ですから。しかし、現実にそれを調べてみると、あなたはいま、国際的な十分なる資料に基づいてと、こういうことをおっしゃったわけですが、日本の消費者物価の品目というのはどんどんふえてきまして四百八十五品目ですね。アメリカは二百七十四、ヨーロッパはみんな二百以下です。このとり方にも非常に問題があるのです。五年ごとに総理府の数字は変えていきますが、イギリスなんかは一年ごとです。これだけ生活実態はどんどん急テンポに変わってくるのですから、五年に一遍などということをやったってそれは実感とは全然かけ離れたものではないかということを何回か論争したこともございました。  それはそれとして、総理府がなぜそういうような物価指数の全資料を秘密にするのか、なぜ公表しないのか、われわれはそういうことをやったことがありますが、何か統計法第十四条の守秘義務にのっとってその資料というものは公開できぬのだ、こういうことで結果だけを発表する、こういうことに現在もなっておると私は思うのです。そうではなくて、具体的な資料というものを全部出すべきだと思うのです。統計法十四条の守秘義務、プライバシーの侵害になるという、これは消費者物価調査とは関係のないことなんです。縁のないことなんです。そういうことを秘密にしておることに何か統計上作為があるのではないかと国民が疑っても仕方がないと私は思うのです。これは、あなたは統計局長じゃないからここで言ったってしようがないことですけれども、そういうもので出てきた数字、それが一体国民の本当の信頼を得る数字だろうか、この点については大変私は疑問に思うのです。かつて第一銀行が調査をしたときに、家計簿の中に一年間に百回記入された品物をずっとより出してきて、十品目、一番目から十番目まで持ってきてどのくらい上がっておるかということを調査したら、総理府統計局の一・五倍から二倍の数字が出ておるのです。あなたがおっしゃるように、その数字も平均化して入っておるかもしれません。しかし、それは生活必需物資なんです。買わないで済むものじゃない。教養娯楽費なんというものは切り詰めれば切り詰められるでしょう。生鮮食料品というものは買わなくて済むものじゃない。そういう生活の実感に合ったものがあなた方の統計上からも見て——私も資料をいただきましたが、五分位階層によって出ておりますね。出ておりますけれども、あれが一体国民の中にどれだけ浸透しておるかというと、浸透しておりません。とにかく、いや八・何ぼだ、いや九・何ぼだという数字だけしか、テレビや新聞で国民の前に出ないのです。実感はそれよりも二倍も三倍も高いものを、国民の側から見れば、毎日の生活を通して考えておるから、物価というものに対して政治と国民との間に非常に大きなギャップがある、私はそのようにずっと思ってきました。ですから、これからの物価政策というのは、そういう国民の生活実感をもとにした、本当の庶民の台所を中心にした物価政策というものに重点を置いてもらわなければならぬのだということをぜひ長官に申し上げておきたいと思うのです。  福田さんが大蔵大臣のときに、やはり金利よりも消費者物価は下回らなければならぬのだということをおっしゃっていました。私は、宮澤さんが経済企画庁長官のときにこういうことを言われたことをよく覚えております。米とか、みそとか、しょうゆとか、ジャガイモとか、そういうものの値段というものは上がったり下がったりしないものだ、こういうふうに国民が思い込むような世の中でなければそれはりっぱな政治だとは言われぬということを宮澤さんはおっしゃったのです。確かにそうだと思う。そういう毎日買っていくものが大暴騰したり大暴落するような世の中はりっぱな政治とは言えぬ。特に私は物価行政の中においてはこれは非常に重要なことだと思うのです。そういう考え方でこれから先の物価政策というものをぜひやってほしいということを特に要望しておきたいと思います。  そこで、この三月末八・六%、これが福田内閣の公約であります。先ほどもお話がございましたが、一体この年度末の八・六%という数字が可能だろうかどうか。このことについて片岡先生からも、これはちょっとむずかしいじゃないかという話がございました。先日、日本の各界の代表的な企業百社の意見が述べられておりましたが、全部そろって政府見通しを下回るようなことは絶対にないということが報道されておりました。八・六は不可能だということを企業も認めておるようです。  私がこれから申し上げたいことは、かつて、物価上昇率をどうしても一五%にやらなければならぬ、福田さんが音頭をとって三月末は一五%に抑え込むのだということをおっしゃって、一五%になったときがございました。確かになった。そのときに福田さんは「これにて一件落着」という文句を吐いておられました。これにて一件落着、めでたしめでたしということが新聞に載ったのです。私はふざけたことを言っておるなと思ってその新聞記事を見ていました。一体あの一五という数字——今度は皆さんは八・六ですが、その数字が本当に正しい意味での数字だろうか、私は大変疑問に思うのです。  それはなぜかというと、ずっと前からその数字に近づけるためにどういうことがやられてきたか。今度もそうですか、農林省はずっと一年に二回バーゲンセールをやっていますね。今度は通産省までこれに加わって二人三脚で、三月になぜそういうことをやり始めたのか。安売りは私は悪いとは言いません。安売り結構でしょう、安く買えるのですから。それは結構だが、一体何の目的でそういうことをおやりになるのか。それも三億七千万か八千万という費用、宣伝費を経済企画庁が出しておるのでしょう。そして時あたかも三月、農林省は一日から十四日、それから通産省はたしか四日から十四日ですか十日間、片一方は二週間、その期間を区切って大バーゲンセールを全国でやる。大都市ですけれども、その調査は統計上出てくることになっておるのです、調べてみると。私が指摘をしたいのは、八・六というものに近づけたいために、これを達成するためにそういうことが政治的にされておる、ここが問題だと思うのです。三月中にやること自体がまず第一、問題です。それから総理府統計局の数字というのは十二日の前後、たしか火、水、木ですか、その辺の一日をとって調べていますね。そういう中にちゃんと当てはまるようにこの大安売りの日にちが設定してあるのです。安売りの品目もほとんど、一番ウエートの高いもの、物価指数に当てはまるものが選ばれてこのバーゲンセールの中に加わっておるのです。  こういうことを考えたときに、明らかに政府が三月末の八・六という数字に固執しておられる、何としてもこれをやり遂げるためにこういう作為的な、政治的なことをやって数字というものをつくろうとしておるのではないか。これは私は国民に対する冒濱だと思うのです。ありのままの姿、そういう中で物価はこうなんだ、しかし政府はこうするんだ、そういう姿勢というものが国民の中に本当に入っていかなければ私は政治に信頼というものは保たれないと思うのです。そういうことについて長官は一体どうお考えでしょうか。
  36. 倉成正

    倉成国務大臣 フードウイークあるいは商品セールについてのお話のようでございますけれども、フードウイークについては四十九年以来、毎年二回全国の主要都市で行ってきたものでございます。これは小売り業者その他関係の方の御協力を得まして、その時期に、ちょうど端境期にも入りますし、品薄になるということもあるものですから、四十九年以来ずっと行ってきたものでございます。そしてこの時期に安い野菜やお肉、そういうものを消費者の方にも提供し、また食生活のあり方についてもひとついろいろな講習会等をして一緒に勉強していただく、そういうものでございます。商品セールについても、今回は通産省にお願いしましてそういう試みをいたしておるわけでございます。  これは決して意図的に物価指数を云々というものでは全然ないわけでございます。やはりこういう野菜が端境期にくるあるいは魚の入荷が少ないというときに、政府ができるだけの努力をして、そして消費者にそういう生鮮食料品が入るようにすることは、当然、政府としてやるべき役割りではなかろうかと考えておるわけでございます。  なお、調査については普通の価格を対象といたしておるわけでございますので、特売とかそういうものは直接消費者物価指数を下げるためにやったものではないと思っております。しかし、間接的には物価の安定に役立ってそれが消費者物価指数に響いていくということになれば幸いなことではなかろうかと思っておる次第であります。
  37. 武部文

    ○武部委員 結果的にそれが数字に結びついていくということは幸いなことだとおっしゃったわけですが、それは確かに結果的にはそうかもしれません。ただ問題は、農林省は十七万店ですね、通産省は十三万店、そして大型スーパーと百貨店がほとんど入っておる、調査対象になったそういうものを調べてみると、調査地区内の売り上げの高いのが総理府の数字の対象品目になっておることになるのです。ですから、こういう店の値段というものは、ほとんどその数字の中に繰り込まれる仕組みになっておるのです。私はここが問題だと言うのですよ。何も三月に事新しくこういうことをやらなくたっていいはずなんです。それを三億八千万もの金をかけてそういうようなことをおやりになるということは、明らかに数字をつくろうという意図があってやっておるのじゃないかと一般の消費者は勘ぐって見る。ずっと前からそうだったのですよ。前からそう言われておるのに、相も変わらずやっておるなと思って、私はいろいろな資料をここにもらってきました。確かにおっしゃるように教育もこの中に入ってますよ。何だかとってつけたようなことであって、真のねらいはやはり安売りによって、品目のウエートの高いものを何とか三月末の数字と合わせるようにやっておるのじゃないだろうかと勘ぐられて仕方がないのです。  また農林省は、ホウレンソウやキャベツに対して出荷奨励金を出してどんどん出しますね。いま季節商品の中で一番目玉になるのは果物と野菜と魚です。特に野菜が一番高い。そこで、三月には、端境期だという理由で、農林省が出荷奨励金を出してどんどん出して、確かに値段は下がる、ウエートは下がる。三月に集中することが問題だと私は言っておるのです。三月が過ぎれば後は野となれ山となれ、済んでしまった、もう次の段階は来年の三月だ、仮にこういう姿勢があるとすれば私は問題だと思うのです。  そういう意味で、この総理府統計局の数字というものは、その数字なりに一つの根拠はあるかもしれません。あるかもしれませんが、国民はそういうものを信用しておるだろうか。そうじゃないと私は思うのです。ですから、具体的な生活の実態というものをよく見きわめて、その中で一体日本物価を押し上げておるものは何だろうか、その安定のために経済企画庁が音頭をとって重点的な政策政府に求めていく、そういう姿勢をぜひとってほしいということを申し上げておきたいのであります。  時間の関係で次に進みますが、公共料金の問題であります。  公共料金物価に占める地位は非常に大きいものがあります。直接的には一九・五%という数字が出ていますが、大体二割が直接的な影響を与えるものというふうにわれわれは政府から答弁を受けました。しかし、これは便乗値上げを呼ぶわけです。波及効果が非常に高い。そういう意味で、公共料金というものは政府が決意をすればある程度は抑えることができる。だから、公共料金の問題はいつも論争してきたところです。  そこで、昭和三十六年と三十九年、非常に古い話ですが、そのとき、一年ずつ公共料金を全面的にストップしたことがあります。ストップをしたら物価はどういう動きをしたのだろうか。当時、昭和三十八年に、まだ高度成長のときではありませんでしたけれども、消費者物価の上昇率は七・六%、それでも当時は非常に高いというので、一年間公共料金のストップをやった。翌年の三十九年には消費者物価は半分の三・八%に下がったのであります。ところが、一年間公共料金はストップをしたが、何にも対策を立てなかったから、解除した途端に、翌年の四十年にはまた倍にはね上がって七・六という数字が出ています。こういうことを論争したことがございました。  したがって、公共料金というものをある程度抑えるならば、物価に与える影響は非常に大きいのだ、これが具体的な数字としてかつて出ておるのです。いま全面的に公共料金のストップを政府にやれとは私は言いません。いろいろの問題もございましょう。しかし、そういう過去の実績がある。だとするならば、公共料金値上げは非常に慎重でなければならぬ。去年の十一月に国鉄運賃を五〇%上げて、ことしまた九月から一九%上げる、この影響は非常に大きいのです。運賃が上がってどういうことが末端までくるかというと、私どもの田舎ではおばさん連中がみんなかごを背負って、そして山間僻地まで物を持って売りに来ます。そういう連中はもう運賃はたちどころに製品にかけてきます。当然です。そういうことが国鉄運賃あたりは具体的にすぐ出てくるのです。  したがって、公共料金というものに対して、これから政府はどういう考え方で進もうとしておられるのか。健康保険料の値上げもありますし、その他メジロ押しに並んでいるようですが、経企庁長官としてはこの公共料金についてどういう見解を持っておられるか、それを伺いたいと思います。
  38. 倉成正

    倉成国務大臣 公共料金については、基本的には、経営の合理化に徹底的に努めるということがまず前提であると思います。この前提のもとで事業の健全な運営が確保されるように料金体系が決められるべきものでありますし、またその負担は、サービスを利用する者が利用によって受ける便益の程度に応じて費用を負担するいわゆる受益者負担の原則というのが、やはり公共料金の原則であると私は考えております。  そこで、ただいま昭和三十年代の公共料金のストップのお話がございましたが、私もたまたま経済企画庁の政務次官をいたしておりまして、ちょうど中山先生や何かと一緒にこの公共料金のストップに参画した一人でございます。  そこで、そのことから申しますと、これは非常に劇薬であると私は思うのです、公共料金のストップというものは。いわばツケで買い物をするようなものでありまして、そのツケをいつかは払わなければいけないということで、下手をするとそのツケが非常に大きくなって返ってくるというわけでございます。現在、昭和五十一年の公共料金というのは物価上昇にかなり大きな寄与をしたと私も率直に認めておりますけれども、これはやはり狂乱物価のとき公共料金を抑えた、このツケが五十一年にやってきたと申さなければならないわけでありますが、まだツケが残っておるので、五十二年度は五十一年度よりは少しは少ないけれども、やはり五十二年度もそのツケを少しずつ返していかなければならないということではなかろうかと思うのでありまして、やはりこれは物価全体を見渡しながら、なるべく公共料金値上げというのが、物価に影響することがないわけではないのですけれども、できるだけ物価が非常に上がるときに少し公共料金値上げの問題を頭に置いて調整するとかいうようなことで政策はやっていかなければならないと思うのですけれども、これを余り安易にストップしたり延ばしたりいたしますと、かえってこれはひずみが出てくる。国鉄はその一番いい典型的なものではないかと思うわけでありまして、武部委員お話しのように、国鉄の利用者の立場、国民の立場から見ると、国鉄の運賃が五割も上がった、また上がる、これは大変なことだという国民感情というのは、私も選挙で国会議員になっておるわけですから、十分承知しておるつもりでございますけれども、しかし同時に、国鉄というものをこれからも国民の足として維持していくためには、この経営が健全にならなければならないということを考えてまいりますと、その調和をどう図っていくかというところに問題があるのではなかろうかと思っておるわけでございます。したがって、公共料金物価に非常に大きな影響を及ぼすということは十分念頭に置きながら公共料金の決定ということをやっていきたいと思っておる次第でございます。
  39. 武部文

    ○武部委員 きょうはまあ最初でありますから、御答弁だけ聞いておきたいと思います。  次に、公取の委員長にお伺いをいたしたいのでありますが、先ほども砂田委員から独禁法の問題が出ておりました。この営業の一部譲渡の問題は、今度の独禁法の改正の最重要の目玉になっておるようであります。先日、これは間違いなら間違いと言っていただいて結構ですが、記者会見で公取委員長が発言をされたことが載っておりましたが、それを見ますと、この営業の一部譲渡など企業分割問題はさまざまな論議があるのでもっと時間をかけて検討すべきだ、というように記者会見であなたは述べておられるのであります。その前にはもっと歯切れがよかったのです。五党修正案でいくんだ、これが望ましい、こういうことがその前に出ておったのを私は見ておりました。そうしたら、その後にこういうような、もっと時間をかけて検討すべきだ、という記者会見をしていらっしゃるわけですが、一体、真意はどこにあるのでしょうか。
  40. 澤田悌

    ○澤田政府委員 その記事を私、実は見ておりませんけれども、前々申し上げておりますように、今回の独占禁止法問題に対する考え方は、そのいわゆる五党修正案を基本として法案が作成されることを期待するというのが一貫して変わらない私の考えでございます。恐らく、そのただいまの御質問の点は、もしそれが通らなくとも、その構造規制の問題が削除された案というようなことになりました場合には、その削除された部分については、時間がかかってもなお検討していくべき問題である、そしてその実現を引き続き図るべき問題であるというのが私の真意でございますから、それがどういうふうに書かれましたか存じませんけれども、重ねて申しますと、そういうことでございますので、御理解を願いたいと思います。
  41. 武部文

    ○武部委員 いまのは二月十日の記者会見でございまして、そういうことが載っておりましたので、ちょっと私は意外に思ったのでお聞きをしたかったわけですから、よくわかりました。  委員長のところにも届いておるかと思いますが、私どもの手元にこういうものが届きました。これは麒麟麦酒でありまして、「ビール産業の寡占構造と当社の立場」というものがついせんだって届きました。これは企業分割に対する麒麟麦酒の反論であります。この反論は大体三点に分かれておるようでありますが、お読みになったと思うのですけれども、ますこの麒麟の反論——麒麟は六三、四%のシェアを持っていますね。この麒麟が、企業分割は物価政策の面からだけでいわゆる独禁法の改正を論ずるのは早計だ、こういうことを述べております。それから第二点として、この企業分割というのは刑罰的な措置だ、やるからには十分な理論的根拠を明確にしてもらいたい。第三番目は、寡占化というのはそれぞれの産業の特性に基づいて——先ほど砂田君もちょっと言っておりましたけれども、特性に基づいて形成されるものであって、それを無視して画一的に扱うということについては事実をゆがめることになる。こういうことが大体この三つの論点のように思われます。  確かにこの麒麟麦酒が主張して記者会見でも述べておりますが、何か値段を上げるのを非常に遅くしたとか、寡占はそれなりのメリットがあるんだとか、いろいろなことを言っておるようです。しかし、現実に先日の麒麟麦酒の決算を見ますと、去年はおととしに比べて格段の増収です。ですから、かつてこのビールの値上げの論争をこの物価委員会でやったときに、ことしは一番手は朝日、はい来年はサッポロ、はい再来年は麒麟と、一年ごとにバッターをかえておるじゃないか、そいうことをやりながらこの三社でもって値上げをやっておるではないかということが論争になったことを私は記憶しておりますが、この麒麟麦酒の反論について、公取委員長はどういうふうにお考えでしょうか。
  42. 澤田悌

    ○澤田政府委員 ああいう企業分割というような意見が強く打ち出された以後、寡占的状態にある企業がいろいろな角度からいろいろ心配をしておることは事実でございます。  それで、ただいま法案作成につきましては、従来の経緯を踏まえて、意見調整中でございますから、これについて具体的に私から申すことはいかがかと思いますけれども、御質問の要点でございますから申しますと、たとえば五常修正案の営業譲渡の規定につきまして先ほど砂田委員にお答えしたのでありますけれども、ああいうふうな線にまとまってまいりますと、ただいま御指摘の三点、物価政策だけでとか、あるいは分割は刑罰的であるとか、あるいはある意味での寡占化の必然性を無視するといったようなことは少し的外れであるということが、あの案を読めばよくわかるものと私は考えておるのであります。独占的状態とは一体何かということ、より行き届いた案になっておるわけです。  それで、そういう独占的状態がある、しかもそれは弊害があるということでございます。独占的な状態によっていろいろな弊害が認められる場合に、公正取引委員会は何ができるかということがその次の措置として規定されております。その措置についてさらに配慮すべき事項というのが八項目ほど定められております。なかなか大変なことでございまして、国際的にも国際競争力の問題、あるいは従業員の問題等にわたるまで配慮すべきことが決められております。その次に、そういうことになったときに、公正取引委員会が措置をとる場合の手続につきまして、これもまた厳しい規定があるわけでございます。  そういう点を総合的につぶさに理解いたしますならば、余りに神経質な心配といいますか、あるいは独占的状態に対応する措置に対する非難、批判というものがそう性急になされなくても、国民生活、日本の一国の経済というものの全体を十分考慮した運用がなされなければならないような仕組みになっておる、そういう案であるというふうに私は考えておるわけでございまして、そういう意味で、五党修正案の線で御審議願えることが望ましいということを一貫して申しておるわけでございます。
  43. 武部文

    ○武部委員 麒麟麦酒の反論は的外れということのようですから、それはよくわかりました。それは結構です。  それからもう一つお伺いしたいのですが、分野調整法の件です。これはいまの論争というのは大企業と中小企業の問題が論争の中心になっているようですが、消費者の問題は一体どうなるのか。これは非常に大事な問題だと思うのですが、公取委員長としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  44. 澤田悌

    ○澤田政府委員 まことにごもっともな御指摘だと思います。最近のように消費者問題が非常に大きくなりますと、と同時に、従来から中小企業問題というのがまた非常に大事な問題でございます。その絡みというのは私どもも非常に重要視いたしておるところでございます。したがいまして、独禁法あるいは独禁法体系の考え方から申しますと、経済社会にいろいろ問題が起こった場合に、その解決方法を統制法的な考え方でいくか、あるいは自由な競争法的な考え方でいくかという問題を私ども考えざるを得ないのであります。統制的に分野を調整してしまうという行き方、これも一つの行き方であって、その善悪は私は申しませんけれども、独禁法の理念から申しますと、なかなか問題が多いということは言わざるを得ないのであります。しかし、次元が少しそれを超えまして、大きい企業が小さい企業のところへ入っていってトラブルを起こすこと自体が問題だということになりますと、独禁法だけの観念からは少し次元が違ってまいりますので、ああいう法案がいま審議されておりますことはこれは大事なことだと思っておりますけれども、消費者という点を、独禁法の観点から申しますと、忘れないでほしいということを一貫して希望しておるところでございます。  大企業と中小企業の調和、これが非常に大事でありますけれども、大企業はもちろんですが、中小企業といえども、商品なりサービスを消費者一般大衆に提供する事業者でございます。したがいまして、大企業と中小企業の調和のほかに、消費者との調和、三者の調和が図れるような立法がお願いできればということを希望、期待いたしておるような次第でございます。これが私の考えでございます。
  45. 武部文

    ○武部委員 わかりました。  時間の関係で最後になりましたが、公取委員長のあいさつの中に、不況カルテルの問題で説明がございました。この認可要件について、ちょっと厳しいとか、いろいろなことで緩和をせよというような動きが一部にあるように私ども承知するのですが、この不況カルテルの認可要件について緩和をする必要はないと私どもは思うのですが、どうお考えでしょう。
  46. 澤田悌

    ○澤田政府委員 具体的にどういう意見がありますのか聞いておりませんので、一般論として申しますと、元来、不況カルテルと申しますのは、御承知のように、不況が深刻化するに伴って生じますところの企業の共倒れ現象というようなことを防止する、いわば例外的な、緊急避難的な措置であると考えるのでございます。したがいまして、現在の独禁法二十四条の三には不況カルテルを認可いたします場合の、積極的要件、消極的要件と申しておりますが、積極、消極両面からの要件がいろいろと規定されておるわけでございます。その要件は、私は現在程度で差し支えないものというふうに考えておりまして、不況カルテルにつきまして現在いろいろ私どもの方に打診が参っておりますけれども、具体的に認可申請がありますれば、法規にのっとり、かつ経済の実態をよく把握した上で審査いたしたい、このように考えております。
  47. 武部文

    ○武部委員 申請から認可まで、大体どのくらい時間がかかるのですか。
  48. 澤田悌

    ○澤田政府委員 正式に申請が出てまいりますと、まあ二十日前後くらいでございまして、業界で申請までになかなか時間がかかるということもございますので、いろいろ御不満もあるようでありますが、私どもの方は極力短期間に結論を出したいということで努力をいたしております。
  49. 武部文

    ○武部委員 それでは、時間が来ましたから、終わります。
  50. 西宮弘

    西宮委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕