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1977-04-25 第80回国会 衆議院 農林水産委員会内閣委員会外務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十五日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員   農林水産委員会    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    愛野興一郎君       加藤 紘一君    熊谷 義雄君       佐藤  隆君    染谷  誠君       玉沢徳一郎君    中野 四郎君       羽田野忠文君    平泉  渉君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    武田 一夫君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君   内閣委員会    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 長谷川正三君       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       湊  徹郎君    栂野 泰二君       矢山 有作君    安井 吉典君   外務委員会    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君       稲垣 実男君    川田 正則君       佐野 嘉吉君    玉沢徳一郎君       中島  衛君    井上 一成君       岡田 春夫君    中川 嘉美君       渡辺  朗君    寺前  巖君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         防衛庁長官官房         防衛審議官   渡邊 伊助君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         農林大臣官房長 澤邊  守君         水産庁長官   岡安  誠君         水産庁次長   佐々木輝夫君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         海上保安庁次長 間   孝君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  領海法案内閣提出第六七号)      ――――◇―――――
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより農林水産委員会内閣委員会外務委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、農林水産委員長の私が委員長の職務を行います。  領海法案を議題とし、審査を進めます。     ―――――――――――――  領海法案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 金子岩三

    金子委員長 本案の趣旨につきましては、お手元に資料を配付いたしてありますので、これにより御承知願うこととし、質疑に入ります。  この際、御質問される各委員に申し上げます。質疑は申し合わせの時間内で御協力をお願いいたします。  なお、政府当局におきましては、その答弁を簡潔にお願いいたしたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。有馬元治君。
  4. 有馬元治

    有馬委員 私は、領海法案の中で、いわゆる国際海峡部分について御質問を申し上げたいと思います。  私、外務委員でございますから、先ほど来外務委員会において、大陸だなとの関係においてこの領海法案の問題が大変議論されておるのでございます。それは鮫瀬という岩礁を基点として十二海里を拡大した場合に、共同開発区域の一部に抵触する、重なり合う、こういう問題でございまして、外務当局の御答弁でこの関係ははっきりいたしたのでございますが、なぜ私が領海問題をやかましく言うかといいますと、この問題も、全体の共同開発地域の面積から言いますと〇・〇四%にすぎない問題でございますけれども領海領土、領空と並んで日本領域そのものでございますから、領海の問題は厳粛に取り組まなければならないと思いまして御質問をする次第でございます。  今回の領海法案によりますと、附則の第二項で「特定海域」という海域を設けてございますが、これは領海ではないわけでございますが、この部分公海と見ていいわけでしょうか、外務当局お尋ねいたします。
  5. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 「特定海域」の取り扱いでございますけれども、これは国際法上の取り扱いといたしまして公海のまま維持をするという考え方でございます。
  6. 有馬元治

    有馬委員 そうしますと、ただいま提案になっております漁業水域に関する暫定措置法案、これによりましてこの「特定海域」にも漁業水域という水域がかぶってくると思うのですが、特にこの「特定海域」については暫定措置法の方で漁業禁止区域といいますか、漁業禁止海域にもなっておるわけですが、この暫定措置法による漁業禁止海域ということになってもやはり同じ公海であるということには問違いないですね。
  7. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのとおりでございます。
  8. 有馬元治

    有馬委員 そうしますと、宗谷海峡ソ連側領海は恐らく中間線に敷かれておると思いますが、わが方の領海は三海里凍結で、その中間線との間に公海部分が残ることになると思いますが、その公海部分海底はどういう海底になりますか。
  9. 中島敏次郎

    中島政府委員 いま御指摘海底わが国大陸だなでございます。
  10. 有馬元治

    有馬委員 残された海底わが国大陸だなだということでございますから、そうしますと、その海底に生息する甲殻類並びに海底資源は当然大陸だな資源として扱われるわけでございますか。
  11. 中島敏次郎

    中島政府委員 今回御審議を仰いでおります漁業水域に関する暫定措置法案におきますところのわが国管轄権を及ぼすところの資源の中には、いま御指摘のような大陸だなの上にありますところの水産動植物をも含んでおります。
  12. 有馬元治

    有馬委員 海底鉱物資源は、先ほどの話によると大陸だな資源として考えられるようでございますが、甲殻類はこの漁業水域に関する暫定措置法による水産動植物ということになるわけでございますか、その点ははっきりお答え願いたいと思います。
  13. 中島敏次郎

    中島政府委員 そのとおりでございます。
  14. 有馬元治

    有馬委員 領海であれば、わが国防衛上あるいは一朝有事の際には、海峡といわず一般領海といわず、無害航行停止も可能でありましょうし、また防衛措置わが国独自の立場で講ずるということもできると思うのですが、この点の御見解はいかがでございましょうか、防衛庁長官
  15. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  防衛関係につきましては、この海峡ができてまいりましても、海峡の現在の状況というのは現状を変えないという状態でございまするので、特に防衛上いままでやってまいりました状況と特別変わったものとは考えておりません。したがって、今日までと同様、防衛庁としての任務現状のままでやっていけるということで考えておるわけでございます。
  16. 有馬元治

    有馬委員 そうしますと、わが国領海は他国の艦船通航の自由を認めておるわけでございますが、わが国の安全に重大な影響がある場合には無害航行停止したり、あるいは今度の特定海域というのが非常に怪しいのでございますが、領海法による特定海域は、その場合に防衛上の万全の措置を講ずるということができるのかできないのか、その点をはっきりお答え願いたいと思います。
  17. 三原朝雄

    三原国務大臣 特定水域に対しましても万全の措置がとれると私どもは考えておるわけでございます。しかし、海上一般的な人命の保護でございますとか財産の保護あるいは治安上の維持というのは、一般的には海上保安庁がおやりになる。防衛庁はそれの後拠的な立場で積極的な協力をいたしてまいっておるのが今日までの状況でございます。したがいまして、防衛庁といたしましては、そうした体制のもとに今後とも積極的に海上保安庁任務遂行に対して協力をしていこうという考え方でおるわけでございます。それで万全の措置がとれるものと思考しておるわけでございます。
  18. 有馬元治

    有馬委員 私は海上警察取り締まりを聞いておるのではなくて、わが国の安全上重大な危機があった場合に領海における無害航行停止もできるわけでございますから、今度の特定海域における防衛上の措置として艦船通航停止する、禁止するという措置がとれるかどうか、この点をお聞きしておるわけでございます。
  19. 三原朝雄

    三原国務大臣 いま言われまするように、平常は海上保安庁にその警備なりをやっていただいておるわけでございまするが、しかし、特に必要であると認めるような事態が起こりました際には、海上保安庁におきましては総理の承認を得て警備行動をとるということが可能でございます。なおまた、非常に緊急な事態で、大きな組織的な攻撃を受けるとかいうような事態に対しましては、また自衛隊法に基づいてそれに対する行動をとれる仕組みになっておりまするので、そうした有事の際にとります治安行動なりあるいは防衛行動等についてはその措置を適用してまいらねばならぬ、そういうことで考えておるわけでございます。
  20. 有馬元治

    有馬委員 多少答弁が苦しいようでございますが、漁業の問題は、漁業水域暫定措置法の第五条で漁業禁止海域としたわけでございますから、これで補完できると思うのですが、先ほどからお聞きしておりますとおり、この特定海域はあくまで公海だというお話でございます。私もそうだと思います。公海だとするならば、わが国の安全上ゆゆしい事態が生じたときにわが国主権でもって防衛措置を自主的にとるということはできにくい理屈じゃないでしょうか。
  21. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生が言われました御質問の中で二つに分けられると思いますが、平時の場合と有事の場合でございます。有事の場合には、自衛隊というのは領土領海、これの安全を維持する任務がございます。そしてまたその行動は、その安全を維持するために必要な範囲において行われることになります。したがいまして、有事の際には、海峡通航させるということがわが国への侵略に対しまして非常に大きな要素であるというときには、実力をもってそれを阻止するということは可能であると考えておるわけでございます。
  22. 有馬元治

    有馬委員 有事の際に特定海域という海域のままで適当な防衛措置が講じ得るという防衛局長の御答弁でございますが、やはり公海のまま残すということは、有事の際といえども日本主権を行使するには行使しにくい海域である。にもかかわらず、今度の領海法案で当分の間とはいうものの、この五海峡について三海里凍結をしておることは、漁業の点については解決できますけれども防衛の点についてはどうも納得がいかない。なぜこれを附則でもって凍結をしたのか。逆に言いますと、これだけ大きな国家的な利益、権益、主権を自主的に制限してまでもなぜ凍結をしなければならなかったのか、これを逆にお尋ねいたしたいと思います。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 特定海域につきまして三海里の領海をそのまま維持するという点につきましては、予算委員会のときでもたびたび御質問がありまして、政府といたしましては統一見解もお出ししたわけでございますが、国連海洋法会議におきまして、この領海を十二海里に広げよう、広げるべきだ、こういう議論と、いわゆる国際海峡通航方法をどうするかという二つの問題がパッケージで論ぜられておるわけでございまして、そういう状況のもとに政府といたしましては沿岸漁業者の切実な要望にこたえまして、領海を十二海里に広げることによりまして沿岸漁民利益を緊急に保護しなければならない、こういう現実の必要が起こってまいったのでございまして、国連海洋法会議結論を待たずに十二海里に領海はぜひ広げたい、広げるべきだ、しかしいわゆる国際海峡通航問題はまだ問題として残っておるものでございますから、一応現状どおり凍結をするほかない。このようなやむを得ざる措置に出たわけでありまして、国連海洋法会議結論が出れば、その結論に従いまして特定海域につきましてもその措置ぶりをその際に決めさせていただきたい、こういう考え方なのでございます。
  24. 有馬元治

    有馬委員 領海十二海里とパッケージにして国際海峡の問題が国連海洋法会議議論されていることは承知いたしております。むしろアメリカが十二海里に領海を広げる条件として、この国際海峡自由通航制度を持ち出しておるいきさつがあるわけですから、領海の十二海里拡大をやるならば、当然国連海洋法会議の動向ということからするならば、堂々と国際海峡として位置づけたらいい。領海を広げて自由航行を認めればいい。そのときに支障となるのは、恐らくわが国非核原則だと思うのです。非核原則との関係を考慮して、苦肉の策としてやったのではないか、われわれはそうとしか受け取れない。その辺はいかがでございますか。
  25. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 非核原則は厳守いたしたい、こういった政府態度があるものでございますから、本件の処置が非核原則関係からこのような領海を三海里に凍結するというような方策に出たのではないか、このようなお尋ねでございます。私どもといたしましてその点はるる御説明を申し上げておるのでございますけれども日本海洋国家である。世界じゅう海峡通過に対しまして、日本先進工業国の一員として、海洋国家として大変関心を持っているところであるということから、わが国といたしましてはむしろ一番関係してくるのは、大型タンカーの規制問題が現に話題に出ておるわけでございますので、そういったことを考えて海洋法会議結論を待ちたい、こういうことを申し上げているのでございます。  いわゆる核保有国核艦船通過に関して関心を持っておることは私どもも承知をいたしておるところでございますけれどもわが国としての立場はそこにあるのではなくて、わが国自身世界じゅう海峡通過に対しまして一般領海よりもより自由な通航を支持する、それを主張してきておる、こういうことからこのような措置をとった次第でございます。
  26. 有馬元治

    有馬委員 どうもはっきりいたしませんが、マラッカ海峡の問題がすぐ出るわけでございますが、マラッカ海峡でも領海を広げて自由航行制度を認める国際海峡にすれば、それなりに制度としてはりっぱに運用できるわけでございますから、マラッカ海峡をこの特定海域に引き出すのは少し的外れだと私は思います。  私はもう結論を急ぎますが、政府の御提案領海法によりますと、特定海域ということで現状凍結しておる考え方でございますけれども、十二海里に広げるならばこの海域も十二海里領海に広げて、その中で、現在海洋法会議で討議されておる改定草案趣旨に従って国際海峡として自由な航行制度を打ち立てていけばいい。そうしないといつまでもこれが公海として残り、海底部分はどこの海底かわからない、大陸だな理論をわざわざ持ってこなければカバーができない。お魚の点は今度の漁業水域法禁止区域としてはっきり打ち立てておりますが、海底資源の問題、海底の問題については領海にしないことには日本主権が完全に及ばない。こういう中途半端なやり方は、領海という非常に重大な問題でございますから、厳粛に考えて対処をしていかなければならない。と同時に、これは領海に広げることによって一朝有事の際のわが国防衛措置が自主的にとれるものでございます。  さらに、非核原則があるから、その持ち込みという中に通過も入れて解釈をしておるために政府側は非常に困難をしておると思いますけれども、持ち込まずというのは通過を含むというのがむしろおかしいのであって、この際こういう不自然な三原則は思い切って改めて、そこは国際法として世界に通用する国際海峡としての通過通航制度を正面から認めていくべきではないかと思います。  私はそういう意見を持っておりますので、政府のこの部分見解とは違いますけれども、もし私の見解に御意見がありましたらお述べいただいて、もし意見がいただけなければ、それで結構でございます。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来有馬さんの御質問拝聴いたしておりましたし、また外務大臣防衛庁長官、さらにそれを補足する意味で伊藤防衛局長からも御答弁があったわけでございます。私ども海運国家であり、海洋国家であり、また工業先進国である、そういうような立場から国連海洋法会議におきましては、いわゆる国際海峡というのは一般領海よりも、また無害通航制度よりもより自由な航行を確保しなければならない、これが総合的な国益に合致するものである、こういう観点に立ちまして海洋法会議でもわが方は終始このことを主張しておるわけでございます。そういう主張をやっておりますわが国が、いわゆるわが国周辺国際海峡におきましてそれと異なる政策をとる、無害通航よりもより自由な通航制度主張しながら、わが国はそれと違う政策をとる、こういう点につきましては政府としてはどうしてもこれは一貫した政策をとってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  また防衛につきましても、防衛庁長官からもさらに伊藤局長からも、一朝有事の際においては、わが国防衛上必要な措置は十分とるんだということも明確にいたしておるところでございます。  いま有馬先生の御指摘では、まずわが国としては全部を十二海里にして、そして当面自由通航を認めるような措置を講じながら海洋法会議結論を待ってその際対処したらどうか、こういう御所論と伺ったわけでございますが、私どもはそれとは反対に政府としては海洋法会議議論がそういう方向に向いておるということに着目もいたし、わが国がそういう主張をやっておるという観点からそういう措置を講じていくべきである、こういう方針でこの法案を御提案申し上げておるところでございます。  また、主権制限になるのではないかという意味合いの御発言も先ほどあったわけでございますが、わが国が従来十二海里領海をとっておって、この部分を今回三海里にする、特定水域にする、こういうことであれば御指摘のとおりだ、こう思うわけでございますけれども、私どもは総合的な国益という観点からこの部分海洋法会議結論を待って対処する、当分の間はそうする、その他は十二海里にして沿岸漁業等に対する被害を排除しよう、こういう総合的な国の判断としてやるわけでございますから、私ども主権制限というようなことではない、このような立場に立っておるわけでございます。この点をひとつ御理解を賜りたいと存じます。  また非核原則について持ち込まずということと核積載艦がただ通過をするというのは違うのではないかという御意見もございます。この問題は非核原則について各野党を含めて全政党がそういうお立場をとる、こういうことであると、非核原則に対するわが国の確固たる一つの方向づけができるわけでございます。各党でこの問題について意見が分かれるということになりますと、この非核原則の問題について国会全体の御意思が分かれる、こういうことにも相なりますので、私どもはいまの非核原則に対して、核積載艦通過非核原則には抵触しないんだという各政党の一致した御意見がそこに結集できるかどうか、これもひとつ御研究賜りたい、こう思うわけでございます。  私、きわめて率直な答弁をするわけでございますけれども、御理解を賜りたい、こう思うわけであります。
  28. 有馬元治

    有馬委員 政府の意のあるところはわかりましたので、終わります。
  29. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 関連で、まだ三、四分ありますから。  十二海里というものは、国の主権に関するものです。これは政府に聞くのはどうもおかしいと私は思いますが、これは委員長にもひとつ聞いていただきたいのですが、十二海里というものをお魚に重点を置いて、二百海里というまさにお魚の問題と一緒に農水の委員会審議するという考え方は、主権というものに関して少し考え方がお間違いではないだろうかという考えが、私にはどうしても抜け切れないのであります。これがまず第一点。これは御答弁要りません、きょうはもう時間を守りたいですから。そういうふうに考えて私はどうしても抜け切れないから、いずれまた書面ででも御返事いただければ、私はこれを記録に残しておきたいと思います。  それから、十二海里というものをつくらなければならぬ理由は、るる御説明いただいてわかりました。わかりましたが、二百海里をやれば私はそれで解決する問題ではないかと思う。これは同じときに出てきたからこういうことになってしまったことはわかるけれども、二百海里をやればあの三海里の外でやっていたことを防ぐということはできるではないか、何かダブるじゃないか、この点の説明がどうもよくわからない、これが第二点であります。  第三点は、シュムシュ島からウルップ島までの十八の島、クリルアイランドというものは、日本放棄はしたけれどもいまだかつてソ連領土であると認めたことはない。そこを基点として二百海里というものを認めるということは、この十八の島がソ連領土であるということを認めたことになるのか。ならざるを得ないじゃないか。そうすると、いままでわれわれはポツダム宣言によって放棄はしたけれども、これはソ連に渡したのではないということを言ってきたこととどういう関係になるだろうか。この三つが主としての問題です。  もう一回申し上げます。主権の問題ですから、十二海里というものを、いかに大事でもお魚の問題と関連して考えることは間違いではないか。これは私は内閣委員会なり外務委員会なりが主管をして審議すべきものである、そういうふうに考えます。これはどういうわけだろうか。  もう一つは、十二海里というものはお魚で出てきたでしょう、主権の問題とかなんとか言ったって。二百海里というものをやればこの辺でとってくださいよ、それから量はどのくらいですよ、漁の時期はいつからいつまでですよということをこれからやるんでしょうから、それで解決つくじゃないか。それじゃダブるじゃないか、できるだけわが国海洋法会議が終わってからという態度で今日まで来たのですから、私はそれでいいだろうと思います。  それから、いまのウルップ島からシュムシュ島までをソ連領土として認めるのかということです。  それから最後に、有馬委員からもお尋ねがありましたが、それと関連して、津軽海峡はわかりますよ、宗谷海峡の方はうちの方が十二海里にすると、ソ連の十二海里とくっついてしまうから自由航行するところがなくなる、それだったら両方が下がればいいじゃないですか。それを交渉もしないでわが方だけ三海里にしておいて、そこのところに自由航行のところをこしらえるということはちょっとおかしいじゃないか。うちの方が十二海里にする、おたくと同じにすると自由航行のところがなくなるから、どうでしょうか、両方でもって等距離ずつ下がろうじゃありませんかという交渉ぐらいしたっていいだろう。交渉もしないで下がっているということはいかがなものであろうか。津軽海峡はわかりますよ。津軽海峡一緒にしなければならぬという理由は、私にはよくわからない。  時間が参りましたからこれでやめますが、このことについては、私はお答えを文書に書いていただきたいと思います。後日私は外務委員会国際情勢審議のときに、いただいた文書を読んで記録にとどめておきたいと思います。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま二百海里漁業水域法並びに十二海里領海法の御審議をお願いいたしておりますので、漁業の担当大臣として第二点の御質問だけにつきましてお答えをしておきたいと思います。  いまの専管水域漁業水域ということだけでございますと、これはその漁業水域内における操業海域なりあるいは漁業実績というものはなかなか排除できない。現にソ連が三-十二海里の間についても、実績があるのだ、ここに入れるべきである、こういう主張をしてきております。そこで、二百海里の漁業水域法だけではこれは排除できない。私ども領海領土の延長であるということで、十二海里になりました場合におきましては、この中では韓国であろうとソ連であろうと外国船の操業は一切許さない。ただ、その外側の百八十八海里については、実績等を勘案をして、そして一定のクォータによって入漁を認めましょう、また一定の操業方法、条件によって認めましょう、こういうことでございまして、二百海里法だけでは、この三-十二海里の間のいまのソ連漁船等あるいは韓国漁船等のああいう無秩序な操業を排除することができない、こういう考え方でございます。この点を明確にいたしておきたいと存じます。
  31. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 これで終わります。
  32. 金子岩三

    金子委員長 竹中修一君。
  33. 竹中修一

    ○竹中委員 時間が制約されましたので、簡単に御質問申し上げます。  このたびの領海法提案理由説明として、海洋法会議の動向、それから最近における新しい海洋秩序への国際社会の急速な歩み、これを考慮して沿岸漁業保護に当たるという趣旨でありますけれども、時間がありませんので要点だけお聞きしたいと思いますが、そうしますと、沿岸漁業保護を図る、領海が十二海里まで拡大される、そのために国防上の問題あるいは警察権の問題が追随してきたのか。実際に国防上、警察権上十二海里に拡大することが必要がなかったのか。要するに漁業に国防、警察が追随してきたのかどうか、その辺を外務大臣お尋ねしたいと思うのです。
  34. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回政府国連海洋法会議結論を待たずに十二海里を早急に実施したいというのは、もっぱら外国船による沿岸漁業に対する被害の増大等、直接の必要に基づいての措置であったというふうに考えております。
  35. 竹中修一

    ○竹中委員 そうしますと、外国の漁船を主に考えたということであると、十二海里に領海が拡大されるからそこまで主権が及ぶのだという考え方で、漁業とは別に三海里がいままでの領海でした、領海のすぐそばまで外国の漁船が来ている、外から見ると漁労に従事しているだけだと思われるかもしらぬけれども、いろいろ国防上の問題がその中に含まれていると私は思うのです。そういうことで、防衛庁としていままでの三海里でいいのか、やはり十二海里の必要があったのかどうか、その辺のところを防衛庁長官にひとつお尋ねします。
  36. 三原朝雄

    三原国務大臣 防衛庁といたしましては主権が拡大をされて、要するに領土が拡大をされて十二海里になることは大いに歓迎をする、好ましいことだと思っておるわけでございます。また、従来も、国の安全と平和を守り、自衛のためには必ずしも三海里という領海に限られてはやっておりません。自衛のためには公海においても警備防衛の任に当たっておるわけでございます。そういう事態であるわけでございますので、特に今回十二海里になったからどうだというようなことで、われわれ、防衛上非常に変化があるという事態にはなってまいりません。
  37. 竹中修一

    ○竹中委員 それでは議論の進め方の整理の都合上お尋ねいたしますが、現在領海侵犯に対していかなる措置を講じているか、また領空侵犯に対していかなる措置を講じているかということをお答えいただきたいと思います。
  38. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 領海の中における不法行為の取り締まりにつきましては海上保安庁がその責任を負っておるわけでございます。しかしながら、自衛隊法の八十二条におきましては、海上保安庁がやっております取り締まりの中で特に暴力的な不法行為があって、海上保安庁の力では対処できないような場合には海上自衛隊警備行動を命ぜられると規定されております。  領空侵犯につきましては、これは領海の場合と違いまして、領空に近寄ってくる、領空に入るだけでこれは侵犯ということになりますので、このことにつきましては航空自衛隊自衛隊法に基づきましてその措置についての責任を負っておるわけでございます。この場合に、領空侵犯に対しましては侵犯の事実があってからこれに対処するのでは間に合いません。したがいまして、私どもの方では防空識別圏というものを持っておりまして、もっと広い範囲で、いわゆる航空機というものはすべてフライトが記録されておりますので、その記録にない不審な飛行機があった場合、しかもそれが領空に近づく可能性がある場合には前もってスクランブルをかけましてこの領空侵犯に対する措置を行っているのが実態でございます。
  39. 竹中修一

    ○竹中委員 防衛局長にもう一度お尋ねしますが、そうしますと領空が三海里から十二海里に拡大されることによって現在の防衛庁すなわち航空自衛隊警備体制はほとんど変わらない、そういうふうに理解していいのかどうか。
  40. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいまも申し上げましたように、領空侵犯が起こってからスクランブルの措置をやっているわけではございません。したがいまして、かなり遠くの時期に必要なものはスクランブルに上がっております。領空を侵したかどうかということは、十二海里と三海里とでは当然違うわけでございますが、この距離というのはジェット機にとりましてはほとんど数秒というような時間でございます。したがいまして、直ちに新たな体制をとる必要はないというふうに考えております。
  41. 竹中修一

    ○竹中委員 海上保安庁お尋ねします。  いま、領空、空の場合はほとんど現在と変わらないというお話でありますけれども領海が十二海里になること、さらに漁業水域が二百海里になることによって海上保安庁としてはどういうふうな対処の仕方をすべきでありますか。
  42. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いま先生からお尋ねがございましたように、まず私ども海上保安庁法の第二条で、領海警備について責任を負っております。それから実際領海警備についてどういう法規で取り締まりを現状でやっておるかということにつきましては、領海条約で無害通航権というものが一般に外国の船舶にも認められておりますが、その無害通航に違反するような場合には沿岸国として必要な措置をとることができるということになっておりますので、それに基づいて海上保安庁法に基づいて立ち入り検査もやりますし、航路の変更も命ずる、停船も命ずる、いわば領海外に退去を求めることということで現実にやっております。それからまた国内法に違反するということになりますと当然国内法で、刑事訴訟法に基づいて逮捕するということが可能になります。  それから現在の装備を申しますと、実は巡視船艇が三百十隻ございます。航空機が三十四機ございます。大体巡視船艇の方は百三十二の基地に張りつけております。航空機は十二基地に張りつけてございます。  しかし、先生からお話ございましたように、十二海里に広がる、二百海里に広がる、警察権の拡大は当然でございますので、それに応じた装備の強化を図っていかなければならぬ。五十二年度の予算ですでにヘリコプター搭載の巡視船一隻、三十ノットの高速巡視艇二隻、日本海に美保の航空基地とヘリコプター一機、それから大型航空機一機の増強を図っておりますが、予想以上の速度で二百海里の問題が出てまいりましたので、それに対応して私どもは整備計画の見直しをして強化を図っていかなければならぬというのが現状でございます。
  43. 竹中修一

    ○竹中委員 警察機の行動範囲が広がってきた、そういうことによって五十二年度の予算から装備、編成の強化のために努力を始める、こういうことでございますけれども、現在の財政状況からいけば、一遍に新しい体制に対応するような装備あるいは編成はできないと思うのです。そうなってくると、非常に警戒海域が広がってくるということで、どうしても自衛隊協力が必要になってくると思うのですが、その辺の話し合いというものはどういうふうになっておるものでしょうか。
  44. 三原朝雄

    三原国務大臣 新しく領海が十二海里になった場合のことについてはすでに申し上げたとおりでございますが、二百海里の漁業水域に拡大された場合の警備行動についてどうなんだということでございます。  もちろん基本的には、いままで申し上げましたように、領海の拡大に基づきます体制で行くことはそのとおりでございます。しかしながら、実際上、いままでの状態で海上保安庁一般的には中心になって警備行動をやっていただくということになって、防衛庁がこれを支援する体制をとる、後拠の体制で進むという基本的な方針は変わりません。変わりませんが、今後非常に一挙に拡大された体制の中で十分な警備行動がとれるかどうかということを心配しての御意見だと思うのでございます。基本方針はそうでありまするが、将来のことも考えて、わが自衛隊として積極的に協力をし、また、何がなせるか、何をしなければならないかというような点につきましては、いま鋭意検討を進めておるわけでございます。これは政府部内におきましても関係各省庁が連絡しながらこれに対処していくということで検討を進めさせていただいておるという状況でございます。
  45. 竹中修一

    ○竹中委員 関係省庁で検討しているということでありますが、自衛隊法の改正が必要なのか、現在の体制のままでやっていけるのか、お答えをいただきたいと思います。
  46. 三原朝雄

    三原国務大臣 自衛隊法、特に八十二条に関係があるわけでございまするが、これをいま変えるというようなことは考えておりません。現在の体制において警備行動協力して万全を期してまいりたいというような方向で検討いたしておるわけでございます。
  47. 竹中修一

    ○竹中委員 鋭意検討しているというお話でありますが、領海法が施行されるとわが国土、主権が拡大されるわけであります。それを他から侵されないように、また専管水域二百海里法案が通って公布されるその場合に、せっかくそれをやっても外国の船が依然として領海内に入る、漁業水域内に入る、これを実力をもって排除しなければいけないと思うのです。そういう点で遺漏のないように私は心から切望するものであります。  次に移りますが、先ほども有馬委員からお話がありましたが、特定海域、これは御承知のとおり海洋法会議でも船舶あるいは潜水船の無害航行が一応定説として認められている。しかし沿岸国の法令に違反しないようにというふうになっているわけですけれども、軍艦はやっぱり不可侵権と治外法権を持っている。こういう前提のもとにいまの特定海域の問題についてお尋ねをしてみたいと思うのです。  それは、もし津軽海峡領海になった場合、適用除外をするかしないかは政令で決めることになっておりますけれども、第三国の軍艦が通航する場合に、先ほどもお話がありましたが、われわれは非核原則の国是を持っております。不可侵権、治外法権を持っており、しかもそれは無害航行権を持っている外国の軍艦に対して、核兵器を搭載しているかどうかということをわが国として尋ねることができるのかどうか、防衛局長
  48. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この問題は外務省からお答えするのが適当だと思いますが、私どもといたしましては、不可侵権を持っている外国の軍艦に対して、それを核兵器を積載しているかどうかを調査する方法はないと理解いたしております。
  49. 竹中修一

    ○竹中委員 いま防衛局長から一般的なお話がありましたが、米国の艦船に対しては、わが国が核兵器を搭載しているかどうかを尋ねることができますか、外務大臣
  50. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国アメリカ艦船に対しまして直接調査することができるかという点につきましては、私どもといたしまして、やはり軍艦というものは国際法上の地位を持っておる、ただほかの国と違いますのは、安保条約上の約束事がございますし、もし核を装備した軍艦が領海内を通航するあるいは日本に寄港するというような場合におきまして、これは事前協議の対象になるということでございます。
  51. 竹中修一

    ○竹中委員 そうしますと、いまの御答弁で米国の艦船は日米安保条約によって事前協議の対象になるということであります。そうすると、アメリカ以外の第三国である外国軍艦の通航に対しては、核兵器を搭載しているかどうかを尋ねることはできないというのが防衛局長答弁であります。それでよろしゅうございますか。
  52. 中島敏次郎

    中島政府委員 尋ねること自身が禁止されるということはないと思いますが、それを確認する手段が軍艦の不可侵権にかんがみてこちら側にない、こういうことでございます。
  53. 竹中修一

    ○竹中委員 そうしますと、現実問題として、津軽海峡領海になっても、外国の軍艦が通航する場合に核兵器が搭載されているかどうかを確かめる手だてはないということでありますか。
  54. 三原朝雄

    三原国務大臣 いままで、核兵器を搭載しているかどうかという判断は、われわれで、外国間の状態も情報として知っておりますから、たとえばポラリス潜水艦のごときは核搭載艦である、そういう型式等で判断をしてまいっておるというのが今日までの状況でございます。
  55. 竹中修一

    ○竹中委員 そうしますと、積んでいるかどうかということは聞くことはできるけれども、積んでいないと言われると、そのほかの手段で確かめることはできないわけですか。
  56. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 それは、ただいま条約局長がお答えいたしましたように、その方法はないと思います。
  57. 竹中修一

    ○竹中委員 そうすると、津軽海峡に限定するわけでありませんが、津軽海峡領海であっても公海であっても、外国の軍艦が核兵器を搭載しているかしていないかを確かめる手段がないということになると、少なくとも非核原則から津軽海峡その他の五つの海峡を除外しているというふうに考えるということは、別の問題になるわけですか。非核原則からこの問題が起こっているとは考えないということでありますか。いまいろいろ非核原則の問題が絡むのでわざわざ五つの海峡を特定海峡として領海から除いているといういろいろな議論もあるわけです。その辺を確かめたいわけです。
  58. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど有馬さんにも御答弁申し上げましたように、わが国海洋国家であり海運国家である、また近代工業国家として、また資源小国として海外から原材料等を自由に確保しまた輸送をし、さらに貿易によって国を立てておる、こういうような観点から、国連海洋法会議におきましては、一般通航制度、特に無害通航よりもより自由な航行制度というものを多年にわたって主張し続けてきておるわけでございます。これは総合的な国益からそのように判断をしておるわけでございますが、そういう主張をやっておりますわが国としては、わが国周辺のいわゆる国際海峡につきましても、無害通航よりもより自由な通航制度というものを確立をする、そういう政策をとっていくということが首尾一貫した主張である、こういうたてまえから、このような措置をとったということに御理解を賜りたいと思います。
  59. 竹中修一

    ○竹中委員 そうすると、よく世間で言われる非核原則の絡みで特定海峡を定めたのではなく、あくまでも海洋自由の原則に基づいて、たとえばマラッカ海峡その他のことを考えての適用除外であると理解してよろしゅうございますか。
  60. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのように御理解を賜りたいと思います。
  61. 竹中修一

    ○竹中委員 終わります。
  62. 金子岩三

    金子委員長 矢山有作君。
  63. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、領海法案の問題に関連して御質問申し上げるのに際しまして、やはり領海の問題というのは領土の問題と不可分であろうと思いますので、直接問題になっておる領土関係の問題について御意見を承りたいと思います。しかし、何分時間が限られておりますので、お尋ねも簡略にいたしますが、お答えも要点だけを簡単に願いたいと思います。  まず第一は、北方領土また竹島、これらについて領海十二海里の線引きをやるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  64. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  北方領土並びに竹島につきまして、わが国の固有の領土である、こういう主張をいたしておるわけでございます。したがいまして、領海が広がる場合におきましては、北方四島並びに竹島につきましては領海が拡張するもの、当然のこととしてこう主張をいたすわけでございます。ただ、現実問題といたしまして、北方四島には施政が行われておらないという現実があるということ、また竹島におきましても、残念でありますが、韓国の警備隊が交代で勤務をしているというような実情にあるわけでございますから、その法的な問題と現実の問題とに乖離があるという点は認識をいたしておるところでございます。
  65. 矢山有作

    ○矢山委員 北方領土についても竹島についても、日本は従来領海三海里ということを言っておったわけですね。そうすれば、その領海三海里の幅を十二海里に広げればいいのだから、領海の幅はこれこれですという線引きは実現可能なはずなんです。線引きをやった実効がどうなるか、どうならぬかということは別として、線引きは可能なはずなんです。したがって、それをやるのか、やらぬのか。
  66. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃられた線引きということの意味を必ずしも私は明確につかんでいないかもしれませんが、先ほど外務大臣から御答弁がありましたように、現在でも北方領土と竹島の周辺には三海里のわが国領海があるわけでございます。ところで、わが国領海の幅を一般的には三海里から十二海里に拡張するということになれば、これらの水域の周辺の領海も当然に十二海里に拡張されるということになるわけでございます。
  67. 矢山有作

    ○矢山委員 それは当然ですね。現在領海三海里があるのだから、その幅を十二海里に広げればいいのですから。したがって、この範囲が十二海里のわが方の領海ですということは言えるはずなんです。だからその辺はあいまいにぼかしてはいかぬと思います。  それから、政府が言っておる北方領土というのは、先ほどの答弁を聞いておりますと、いわゆる北方四島、歯舞、色丹、国後、択捉、これに限って考えておるわけですね。
  68. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 さようでございます。
  69. 矢山有作

    ○矢山委員 そこでお尋ねしたいのは、ヤルタ協定に対する政府見解は、私どもが承知しておるのは、当該協定は米英ソ間の協定である、したがって、わが方はこれに対して何ら拘束されるものではない、こういうふうに政府の方は主張しておられるということを理解しておりますが、そのとおりですか。
  70. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 政府もそのような見解でございます。
  71. 矢山有作

    ○矢山委員 カイロ宣言は領土問題に関して、米英中三大同盟国は、「領土拡張のなん等の念をも有するものに非ず」ということで宣言をしておりますね。参考のためにその宣言を読んでみますと、こう言っているわけでしょう。「又領土拡張のなん等の念をも有するものに非ず 右同盟国の目的は日本国より千九百十四年の第一次世界戦争の開始以後において日本国が奪取し又は占領したる太平洋における一切の島嶼を剥奪すること並びに満洲、台湾及び膨湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することに在り 日本国は又暴力及び食慾に依り日本国が略取したる他の一切の地域より駆逐せらるべし」こういうふうになっているわけです。ここで言っておる「暴力及び食慾に依り日本国が略取したる他の一切の地域」この中に全千島が入るのか入らないのか、見解を承りたいのです。
  72. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 全千島は決してそのようなことではないと考えております。
  73. 矢山有作

    ○矢山委員 わが国ポツダム宣言を受諾して降伏したわけですね。ポツダム宣言はカイロ宣言を踏まえているわけですから、そうすると全千島について正当な領有権をわが方は主張できるはずなんです。連合国としてもこれを日本から奪うということはできないはずなんです。私はそう理解しておるのですが、どうなんですか。
  74. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国立場といたしまして、サンフランシスコ平和条約によりまして千島に対する領有権を放棄したという事実からいたしまして、現在におきましては全千島に対する主張は、その時点におきまして根拠がなくなった、ただし北方四島につきましては、これは法的にもまた歴史的にも日本の固有の領土である、このような見解をとっておるところでございます。
  75. 矢山有作

    ○矢山委員 法的に言うなら何ら放棄する必要のないものをサンフランシスコ平和条約でわが方が放棄した、そこから問題が起こっているわけですね。これは挙げて吉田政府の責任ですよ。それをどう考えていますか。
  76. 中島敏次郎

    中島政府委員 サンフランシスコの平和条約は、当時わが国が占領下から主権を回復して国際社会に復帰するための平和条約ということで締結したものでございまして、当時の国会の御承認を得て締結されたものというふうに考えております。
  77. 矢山有作

    ○矢山委員 私は責任の所在をはっきりしろと言っているのです。わが方は戦争に負けたとはいいながら、ポツダム宣言を受諾して降伏したのですよ。そうだとするならば、いま御答弁なさったように、全千島はわれわれが放棄せねばならぬ義務はない。あくまでも日本の領有権を主張できるものだった。戦敗国であるからといってこれを主張しなかった、そしてそれを放棄してしまった、これが今日の北方領土の問題を起こしておる根源じゃありませんか、その責任を政府は痛感されるのかされないのか、これが問題なんです。
  78. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 サンフランシスコ平和条約の責任はどうか、こう仰せられますけれども、当時の情勢からいたしまして、この四島を除く千島の権原を放棄せざるを得なかったということは、これは私は敗戦のしからしめるところであるというふうに考えます。
  79. 矢山有作

    ○矢山委員 いかに敗戦のしからしむるところとは言いながら、理不尽な要求に応ずるべきではないのです。戦勝国の理不尽な要求に屈服するというような、そういう外交姿勢が今日まで依然として続いておるところに私は問題があると思う。私は、この問題については、政府は大きな責任を痛感すべきだと思います。  そこで、次に承りたいのですが、ソ連は平和条約に署名もしていなければ批准もしていませんね。そうすると、日本放棄したからといって、これに対しての領有権を主張することはできない、それは先ほど議論されておったとおりだと私も理解しておりますが、そのとおりですね。
  80. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国立場から申し上げますと、全千島に対しましてサンフランシスコで約束したことは、これはサンフランシスコの条約締結国の間でございますけれども、それは承認せざるを得ない、こういうことでございまして、締約国でないソ連に対しましては、これはサンフランシスコ効力が及んでおるわけではない。ただ、わが国といたしましては、権原を主張し得ない立場にある、このように考えておるところでございます。
  81. 矢山有作

    ○矢山委員 権原は主張し得ない立場にあるけれどもソ連は適法に領有権を主張する根拠はない。つまり、ソ連の全千島の領有は不法占拠であるということを私は言っておるのです。そうじゃないのですか。
  82. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしまして、ソ連との間に平和条約がまだ締結されていない、こういう事態にあるわけでございまして、領土関係の明確なる処理というものは平和条約を締結しなければならない、このように考えておるところでございます。
  83. 矢山有作

    ○矢山委員 ソ連にえらい気がねをしながら慎重な言葉遣いをされているようですが、私はこういう問題ははっきりさせておかなければいかぬと思うのです。不法占拠なら不法占拠である。不法占拠であるという実態を踏まえて初めて返還のための真剣な交渉ができるのじゃないですか。その辺をあいまいもことさせておくから、腰が抜けてろくな交渉ができない、こういうことになるのじゃないですか、はっきりさせてください。
  84. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしましては、北方四島につきましてソ連が占領していることには、法的な、また歴史的な事実から申しまして根拠がない……(「不法だ」と呼ぶ者あり)不法である、こういう主張をしておるわけであります。
  85. 矢山有作

    ○矢山委員 そうなると、私は当然全千島の返還を要求しなければならぬと思うのです。それをなぜ政府は歯舞、色丹、択捉、国後に限っておるのですか、そこのところをお伺いしたいのです。
  86. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 たびたび申し上げるのでございますけれども、サンフランシスコ平和条約というものを日本は締結いたしましたので、全千島の返還ということを要求し得る立場にない。したがいまして、日本といたしまして北方四島につきまして返還の要求をいたしておるわけでございます。
  87. 矢山有作

    ○矢山委員 サンフランシスコ条約で放棄をした千島は、かつて西村条約局長が国会で明らかにしたところによると、全千島を意味しておるのですね。そうなると、サンフランシスコ条約で全千島を放棄した日本が、なぜ四島だけに限って返還要求できるのですか。矛盾してくるじゃありませんか。
  88. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま外務大臣からも御答弁がございましたように、わが国は千島列島に対する権利、権原及び請求権をすべて放棄しているわけでございます。ただ、そのうち、北方四島については、その放棄した千島列島に含まれていないということで、わが国の固有の領土としてそれをわが国に返すべきであるという立場をとっているわけでございます。  ただいま、西村条約局長答弁にお触れになられましたので、補足申し上げますと、西村条約局長も、その答弁においては、南千島と北千島とは歴史的に見て全くその立場が違うということも触れまして、そのことは吉田全権がサンフランシスコ平和条約の演説において明らかにしたとおりであるということを述べ、あの見解日本政府としてもまた今後とも堅持していく方針であるということを述べております。  いずれにせよ、北千島、南千島というような論議が当時行われて、誤解があり得るといけないということで、その後その点を明確にしておく必要があるということで、昭和三十一年二月十一日に衆議院の外務委員会におきまして、当時の森下外務政務次官から政府の公式見解を発表いたしまして、その中で「サンフランシスコ平和条約にいう千島列島の中にも両島」これは国後、択捉でございますが、「両島は含まれていないというのが政府見解であります。」ということを明確に述べておる次第でございます。
  89. 矢山有作

    ○矢山委員 私が承知しておるところでは、日本政府は、全千島はおろか、南樺太についてもソ連が正当な領有権を主張する根拠はないのだということで返還の要求を続けてきた、これは国会で政府自身が明らかにしておるところじゃないですか。それが四島返還に変わった、その時期はいつかというと、これは一九五六年の七月、モスクワで日ソの第二次交渉が行われたときに、重光外務大臣がこのことを明確にした。そのときから日本は四島返還に変わった。そのときにどういうことを言っておるかというと、こう言っておるのですよ。「日本固有の領土である国後、択捉両島に対する日本側の立場が認められるなら、サンフランシスコ条約の領土規定をソ連に対して確認することに異議はない。」こう重光さんは日ソの第二回交渉で言っているわけです。このときに日本は四島返還に切りかえたのではないですか、全千島の返還要求あるいは南樺太までを含めての返還要求をこのときに切りかえたのではないですか、違いますか。
  90. 中島敏次郎

    中島政府委員 先ほど来申し上げておりますことは、国後、択捉、歯舞、色丹の四島については、平和条約で放棄した千島列島に入っていない、したがってわが国放棄していないという法律的な主張を持っているわけであります。  さてそこで、先生のおっしゃられる千島列島全島ないし樺太につきましてのお話でございますが、この点につきましては、平和条約第二条で権利、権原、請求権を放棄したことは事実でございますので、たまたまソ連が平和条約の当事国でないという事実をも踏まえて、わが国といたしましては政治的な主張として当時そのような主張をしたことはあっただろうと思いますが、純法律的な問題といたしましては、サンフランシスコ平和条約でわが国放棄した千島列島には、これら四島は入っていないから、依然としてわが国の固有の領土であるという立場が変わっていない。したがって、これら四島の返還を法律的にも求める、こういう立場でございます。
  91. 矢山有作

    ○矢山委員 私どもはこう考えるのです。法律的に言うならば、全千島を放棄する法的な根拠は何もない。したがって、これは当然平和条約のときに日本が領有を主張していい問題だ。ところが、先ほど言ったように、敗戦国だからというような理由ですべき主張をしなかった、そして千島全島を放棄してしまった。その責任というのは私は重大だと思う。  そこで、その責任を何とかカバーするために北方領土四島、つまり歯舞、色丹、国後、択捉はたまたま歴史的な過程が違う。それをよりどころに、これだけは放棄した千島列島には含まれてないのだということを言い出したわけです。これはまさに政府が犯した大きな失態をカバーするための便宜的な主張だと思う。そういう主張は許されない。法的に言うなら、先ほど来の論議で明らかになったように全千島は日本が正当な領有権を主張できる。それを放棄させられた平和条約に問題がある。であるなら、問題は平和条約をどうするかというところまでさかのぼらなければならぬ。それをやる気概が政府にあるのかないのか、意思があるのかないのか、どうなんです。
  92. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 サンフランシスコ平和条約は、日本がこれを承認いたしたわけでございますから、今回、サンフランシスコ平和条約をまた白紙に戻すというようなことはとうていなすべきことではないと考える次第でございます。  ソ連との関係につきましては、平和条約におきます一番大事な問題として領土問題の解決ということがあるわけでございますので、この点はソ連との交渉におきまして、わが国主張すべきことは十分主張する、このような考え方でございます。
  93. 矢山有作

    ○矢山委員 たとえば平和条約をいまさら白紙に戻すわけにはいかぬとはおっしゃっても、全千島は、平和条約に署名もしてない、批准もしてないソ連に対しては何らの意味を持たぬわけでしょう。ソ連が平和条約を盾にとって、日本は全千島を放棄したのだから、それはわが方のものだと言う法的な根拠はないのでしょう。であるとするなら、なぜ四島返還などということをやるのか、なぜ全千島の返還を要求しないのかと言うのです、私が言うのは。主張すべきものは正々堂々と主張すべきじゃありませんか。全千島はソ連には帰属してないのですよ。どこが領有するかは未定なんですよ。これをソ連は実力をもって占拠しておるのですよ。であるとするなら、わが方はソ連に対しては全千島の返還を要求すべきじゃありませんか。そのことはサンフランシスコ平和条約があろうとできるはずなんです。この日ソ間の全千島にかかわる領土問題は日ソ間で解決すればいいのです。日ソ間で解決して、もし問題が起こるなら連合国の了解を取りつければいいのです。なぜソ連に対して全千島の返還要求をしないのですか。そういう点が日本政府立場はあいまいもことしておる。そのときどきの状況に応じて主張すべきものも主張しないで問題をごまかして通ろうとする。それが問題なんじゃないですか。
  94. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしましては、北方四島の返還ということで今日まで主張をし続けてきたわけでございまして、これはいわばわが国民の悲願とも言えるものであろう、こう思う次第でございまして、その立場をいまここで変えるということは適当でないと考える次第でございます。
  95. 矢山有作

    ○矢山委員 国民の悲願と言うなら、北方領土四島に限るんでなしに、ソ連が領有する法的根拠が何もない全千島を返してくれというのが国民の悲願ですよ。そこのところを間違ってはいけないと思います。私どもは、全千島の返還要求をソ連に対して政府主張することをこの際、強く要求いたします。  そこで、参考のために申し上げておきますが、一九一七年十月二十七日、レーニンが平和についての布告を出しました。この布告は無併合-領土をとらないということです、無賠償の即時講和を呼びかけたものであります。さらに、一九二〇年十月二十八日、列国のパリ条約によってベッサラビア地方をソ連はルーマニアに帰属させられたわけでありますが、このことに対して一九二四年四月三十日付、関係各国に送った抗議の覚書があります。その中でどういうことを言っているかと言うと、領土の引き離しはその地域が属していた国家の同意なしには合法的とみなされぬ、これは戦争状態にあった国々にも及ぼされ、国際法の基本原則としてあらゆる国に遵守されてきた云々とソ連主張しておるのであります。このレーニン主義の原則に立つなら、ソ連が全千島の領有を主張するという根拠は根底から崩れるのです。  あなた方は一九七三年の十月に、田中・ブレジネフの日ソ両首脳の間で、北方領土問題を日ソ間の未解決の問題に含めるという確認ができておると言っておられます。とするなら、なぜ北方領土解決のために直ちに行動を起こし、積極的な姿勢でもって全千島の返還を要求する平和条約の締結に向かって邁進しなかったのですか。いままでどうして放置しておったのですか。
  96. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 田中・ブレジネフ会談の後におきましても、わが国といたしましてはソ連邦との間に領土問題の解決を含む平和条約の締結につきまして努力を続けておったところでございますけれども、現実問題として進展がなかった。その後、外相会談を二度行っておるわけでございますが、現実問題として進展がなかったということはまことに残念でございますが、今後ともわが国政府といたしまして、この領土問題を含んだ平和条約の締結につきましては、格段の努力をいたす所存でございます。
  97. 矢山有作

    ○矢山委員 せっかく北方領土問題の解決を含めて平和条約交渉をやることが確認されておるのなら、やはり積極的にやる。その場合に、先ほど来しつこいほど言っておりますが、全千島の返還要求という線を避けてはならぬと私どもは思います。  次に、北方領土問題の解決には日米安全保障条約が絡んでおるというのは、ソ連政府当局からのたびたびの発言にも出ておることでありますし、また国会論議の中でもこの問題が取り上げられておる経緯がありますが、一体北方領土と日米安保条約との絡みをどう考えておられるのですか。
  98. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども、この北方領土問題に関するいろいろな議論におきまして、日米安保条約というものが関係のあるというような御議論も聞くわけでございますが、実際、いままでの正式の場におきまして、これがどのようにかかわり合いがあるのか、ないのか、担当局長からお聞きいただきたいと思います。
  99. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 一九六〇年にいわゆるグロムイコ覚書というものがございまして、この覚書は、要するに日本に外国軍隊が駐留している限りは歯舞及び色丹諸島を日本に引き渡すという約束の実現は困難である、こういうことを述べたものでございます。
  100. 矢山有作

    ○矢山委員 やはりこの北方領土問題と日米安保条約の絡みというのは、いまの御説明にもあったように、私は避けられぬ問題だろうと思うのです。事実、昨年の九月ですか、ミグ25事件が起こったわけでありますが、このときに日本は米軍と協力して機体の解体調査をやりましたね。このことが今度の日ソ漁業交渉の中でも出てきたわけです。この間、訪ソ超党派議員団とボドゴルヌイ議長との会談の中でもこれが持ち出されておる。さらに園田特使とコスイギン首相との間でもこの問題が持ち出される。そして日本のきわめて非友好的な態度だということで厳しい非難を受けたわけですね。これらを見ると、やはり私は、ソ連の頭の中にはこの日米の安保条約というものがあると思うのです。したがって、千島を日本が返せと言っても、この千島を日本に返したら日米安保条約下にある日本現状からするなら、ここに米軍基地がつくられるかもしれない、だからとても返還なんかできない、こういうような気持ちもあるのかもしれぬと私は思う。そうすれば、やはり本当に北方領土問題を解決しようと思うなら、私は日米安保の条約の問題にまで真剣に触れていくという姿勢がなければならぬと思うのです。したがって、こういうような軍事色の強い安保条約などというのはやめる。そうして日米の間には友好条約を結べばいいのです。そしてソ連との間にも平和友好条約を結べばいい。これが私は北方領土問題の解決の一番の問題ではないか、こういうふうに考えておるのですが、これに対する御見解はどうですか。
  101. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先生の御趣旨は承りましたけれどもわが国防衛といたしまして日米安保条約はこれを堅持するというのが政府政策でございますので、それ以外のことは申し上げるのは控えさしていただきたいと思います。
  102. 矢山有作

    ○矢山委員 国の政策というものは、先ほどどなたか言われたように、そのときどきの国際情勢なりいろいろな情勢の中で変わっていっていいと私は思うのです。であるとするなら、やはり現在の国際情勢の中で北方領土問題を解決するのには、むしろこの安保条約というような軍事的な色彩のある条約をなくして、友好条約にする。日ソの間には平和友好条約を締結する。むしろ考え方によってはいい時期なんじゃないですか。そういうような方向に私は頭を切りかえていってほしいと思う。  そこで、この北方領土問題についてまとめて申し上げておきます。北方領土問題、全千島の問題は、ソ連がこれを占有する、占拠する、領有を主張する法的根拠は何もない。これは日本が領有を主張することのできる日本古来の、日本固有の領土であります。したがって、北方四島などといって限定するのでなしに、全千島の返還を要求するという姿勢を貫き、そしてそこに十二海里の領海を設定してもらいたい、これが私は日本の国民の悲願であると思うし、まして、現在出されておる漁業水域二百海里の問題と絡んで、これはあなた方がよく言われるわが国国益にとってきわめて大きな影響を持つ問題であります。この点についての政府の善処を私は心から要望しておきます。  次に、時間が迫ってまいりましたが、もう一つ、時間のある限りで竹島問題についてお尋ねをしたいと思います。  竹島の現状は一体どうなっておるのですか。
  103. 大森誠一

    ○大森政府委員 竹島には、現在、韓国の海洋警備隊員数名が交代で常駐しておりまして、各種の構築物を設置している模様でございます。  韓国政府による竹島の不法占拠につきましては、政府は従来から海上保安庁の巡視船などによります竹島周辺の海上巡視の実施などを行って、また、繰り返し韓国政府に対し文書または口頭によりまして抗議を行いますとともに、韓国官憲の竹島からの即時退去を要求しており、竹島がわが国の固有の領土である旨のわが国立場を明らかにしてまいっておる次第でございます。
  104. 矢山有作

    ○矢山委員 まさに竹島を韓国が実力をもって占拠しておる状態というのは不法な状態と言わなければならぬと思うのですが、ここで一つお聞きしたいのは、この竹島をめぐる紛争というものを一体政府は具体的にどう解決しようとするのですか。ただ一片の抗議をする、このことも価値はあると思います。しかしながら、ただ単に抗議の繰り返しをやっておっても現実には実力によって占拠されておるのですから、これをどうして解決するかということをお伺いしたいのです。
  105. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 御承知のように、竹島問題は日韓条約の際におきまして解決することができなかった問題でございます。この種の問題はやはり条約によりましてきっぱり決着をつけるべきものであるわけでございますけれども、それができなかったわけでございまして、そのときの紛争の解決につきまして、紛争の解決に関する交換公文というものを日韓両国政府で合意をしたわけでありますけれども、この具体的な紛争の解決として、外交交渉によりましてもなかなか決着がつかない場合には調停によって解決をするということでありますが、私どもといたしましては外交交渉を粘り強く続けながら、先方がこの調停段階に入ってもらえるような、そのような努力を続けるべきもの、このように考えておるところでございます。
  106. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、この日韓条約締結のときに、おっしゃるように竹島問題は本来解決をすべき問題だったのが解決されなかった、したがって、後に解決を延ばさざるを得ないということになって、紛争解決に関する交換公文というものを取り交わし、そしてそれによって解決していくんだ、こういうふうに政府は考えておるんだろうと思うし、その当時の国会における答弁等も、そうした意味でなされておったと私は思うのです。ところがそこに一つ問題がある。問題があるというのは何かというと、通常の外交上の経路によって解決できないのでしょう。外交上の経路によって、何ぼやっても解決できないから、したがって日韓条約を締結するときには、その問題は残してしまって、そして今後「両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決」するということになったわけですね。ところが、一体この調停というのは法的にはどういう効果を持つのですか。外交交渉で解決できない、調停に持ち込む、調停に持ち込むときには調停に持ち込むためのいろいろな手続その他についてこれは合意をしなければならぬ。合意をしてやっと調停に持ち込んだ。調停というのは一体どういう法的効果を持つか。これは当事国を拘束する力はありませんよ。こういう紛争解決手続でこの竹島ほどもめてきた問題の有効な解決が図られると考えておるのですか。
  107. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  調停は、先生御承知のように紛争当事者間の交渉に両者が同意する第三者を立てて、その第三者が両当事者の間に立って両方の合意促進を図るということでございまして、そこで両当事者が合意する解決に到達すればそれは当然に両当事者を拘束するということになるわけでございます。
  108. 矢山有作

    ○矢山委員 調停というのは両方が合意してしまえば、それは拘束力を持ちますよ。ところが、調停については両当事者が合意しなければならぬ義務は何もないのですよ。調停はやる、話し合いがつかない。話し合いがつかないときに、話し合いをつけるために一つ提案を調停委員会がやる、それはできるでしょう。しかしながら、それは何も合意をする義務はないのですよ、この問題については。合意をしたら拘束するのはあたりまえですよ。調停のときの提案に対して両当事者は合意をする義務はないのです。こんなことで紛争が解決できるのですか。いまの韓国の竹島にとっておる態度を考えて御判断ください。
  109. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま先生のおっしゃられたように、具体的な解決方法の内容について当事者の同意がなければそれを拘束しないことは先生のおっしゃられるとおりでございます。ただ、御理解いただきたいと存じますのは、本件につきましては、わが国といたしましてはそれ以前にたとえば国際司法裁判所への提訴というようなことも提案したわけでございますけれども、先方の同意するところとならないで、いわば強制的に問題を解決するという道がなかったわけでございます。そこで外交交渉または調停によって解決するということを合意したわけでございます。
  110. 矢山有作

    ○矢山委員 ところが、そこで私はもう一つこれとの関連で申し上げたいのは、日韓両国間の漁業や請求権及び経済協力についてはそれぞれ協定の中で、その協定の解釈及び実施についての紛争の解決手続というのがちゃんと書いてある。それによると、「まず、外交上の経路を通じて解決する」ここは竹島紛争と同じ。二番目が違う。それによって解決することができなかった紛争は「仲裁委員会に決定のため付託するもの」として仲裁委員会の構成について詳細な規定が置かれております。さらに、日韓両国は仲裁委員会の決定には服する義務があるということを明文で決めているじゃありませんか。漁業や請求権及び経済協力に関する紛争についてこれだけの手続が定められておるのに、竹島という国家の主権にかかわる領土問題についてなぜ先ほどのような決め方をしているのか。これは大変な問題ではありませんか。その当時恐らく議論になっておったと思う。どうなんですか、これは。
  111. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいま先生指摘のとおり、日韓国交が正常化いたしました際に幾つかの協定が結ばれているわけでございますけれども、たとえば漁業とか請求権に関する協定におきましては、日韓双方の間に紛争の解決に関する手続につきまして明確な合意が成立いたしましたので、それぞれの協定においてその手続が詳しく定められた次第でございます。  他方この竹島の領有権をめぐる問題につきましては、日韓双方のそれぞれの立場、双方ともこれは自国の固有の領土であるという主張が続けられまして、双方の合意、いずれにこの鳥は帰属するかという合意に到達することができませんでしたので、この紛争に関する交換公文というものを結びまして、今後平和的な手段によってこの問題の解決は図られていく、かようになった次第でございます。
  112. 矢山有作

    ○矢山委員 その日韓条約がそれぞれ日本、韓国両国の国会で論議をされておったときに、韓国の国会の中での論議の中に、竹島の問題は全然議題にも出ていないんだ、わが方が竹島の領有を主張した、それを日本側は認めたからそれは議題にもならなかったんだ、こういうような意味の発言があったわけですね。その当時、恐らくこの発言をめぐって、国会で論議があったはずであります。そういうような解釈を韓国側にさせた一つの原因は、やはりこの紛争解決のための手続について日本漁業協定その他の紛争解決手続よりも数歩も数十歩も後退したような、恐らく有効性を期待することのできないような紛争手続を認めた、こういうところにも私は問題があると思う。  その当時のことを私は蒸し返すわけじゃありませんが、なぜ蒸し返すかというと、事ほどさように北方領土の問題、竹島の問題、取り上げてみると、日本政府は国家主権というものに対してきわめて重大な問題として考えていない、これに対する取り組みがきわめてあいまい、優柔不断であるということを言いたいのです。それは恐らくすべてのものについてではないでしょう。そういう姿勢が強く見られるのは、ソ連や韓国に対する姿勢であります。  私は、現在竹島で起こっておるような状態を解決するために政府が真剣に取り組もうとするなら、考えるべき方法、とるべき手段、それは幾らでもあると思う。第一、つい最近も、大陸棚協定の批准にしろ、その圧力が韓国から厳しくかかってきているじゃありませんか。そして大陸棚協定の批准をしなければ漁業専管水域二百海里を施行するぞ、漁業協定は破棄するぞ、あるいはまた一方的に大陸だな開発に手をつけるぞと、まさに恫喝に等しいようなことを言ってきておる。その韓国に対して有効にわれわれが対処するのには一体何をしたらいい。これほど非友好的な韓国に、日本政府は何のために莫大な経済協力をやっておるのですか。経済協力をむしり取られながら、言いたいことを言われて、わが国固有の領土ですら占拠されておる。この実態を一体日本政府は何と考えておる。御所見を承りたいのです。
  113. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓の正常化の際に解決のできなかったこの竹島問題のために日韓間で行われておる経済協力の問題につきまして、これを打ち切るとかそのような御議論があることはたびたび伺うところでございますけれども、日韓間の経済問題はやはり経済問題として処理をさるべきものである。それはなぜかと申しますと、日韓間にはいろいろな経済関係がございます。日本の輸出から見ましても、日韓間というのは日本の大幅な輸出超過になっておるわけでございまして、この経済協力の問題はやはり経済問題として、韓国の福祉の向上という観点から従来の方針を続けてまいることが日韓間の友好促進の上からも必要である。そのような情勢のもとに、この竹島問題につきましても日韓間の友好関係が増進されるという背景のもとでなければ解決不可能な問題になるというのが私どもの考えでございまして、矢山先生の御意見は御意見として承らせていただきますが、これは経済問題と切り離して措置をいたすべきもの、こう考えておるところでございます。
  114. 矢山有作

    ○矢山委員 日韓間の友好というのは、何もかにも韓国の言うままになるということが日韓間の友好ではないのです。主張すべきものは主張する、正当なことは実現をさせていく、その上にこそ真の日韓の友好が生まれるのだということを考えてもらいたい。  領海の拡大に伴う海上警備の問題であるとか、領海の設定に特定地域を設ける問題等について、御質問申し上げる時間がなかったわけでありますが、またの機会に譲るといたしまして、これで私の質問を終わらせていただきます。
  115. 金子岩三

    金子委員長 木原実君。
  116. 木原実

    ○木原委員 まず、鈴木農林大臣にお伺いをいたします。  これからの交渉政府はいわゆる領土漁業は切り離すのだ、福田総理も農林大臣御自身も強調をしておられるわけですが、いままでの交渉の経過やソ連態度から見て、果たしてそれは可能なのか、わが方の一方的な願望ではないのか、こういう疑念があるわけですが、御所見を承りたい。
  117. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の日ソ漁業交渉についてでございますが、領土問題と漁業問題は切り離して処理するのだ、こういうことを総理も申し上げておるところでございます。これは、わが国は北方四島の問題は一九七三年の田中・ブレジネフ会談における合意、共同声明等によりまして、戦後未解決の問題である、このように私は確認をしておるところでございます。したがいまして、今後この問題を解決して日ソの平和条約を締結するということでございますから、その解決を待ってでなければ漁業協定はできない、こういうことになりますと、これは長い時間を要することである。その問題はその問題として並行して、今後、平和条約締結の前提として解決すべき問題ということにいたしまして、その未解決の実態に即したところの海域の指定、そういう形でこの漁業問題を処理したいというのが領土漁業問題は切り離すという趣旨でございまして、そのことをはっきり申し上げておきたいと思います。
  118. 木原実

    ○木原委員 そうおっしゃいましても、大臣御自身が御体験になったように、ソ連側の二百海里の設定で、改めていわゆる線引きの問題が出てきた。ある意味ではそれに対抗する形で、わが方から新しく領海十二海里の設定、二百海里の暫定措置法案というものを持っていくわけです。そうしますと、これは言うまでもなく、わが方の二百海里の線引き、領海十二海里の設定は、間接的ではありますけれども領土問題について改めて問題を提起するということになりませんか。
  119. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点、木原さん御心配なさっておるようでございますけれども、私はさようには考えておりません。と申しますことは、戦後未解決の問題である。ソ連は現に占有しておるという立場を終始とっておるようでございます。しかし、わが方は、北方四島は固有の領土であるという主張をいたしております。そういう北方四島は未解決の問題であるということを前提にいたしますと、わが方としては、わが国領土、その沿岸の沖合いには二百海里の漁業水域を設定する、これは当然のことでございます。そういう現実を踏まえて、冷静に両国の責任者が、特にソ連の最高指導部の方々が、日ソの友好関係を将来に向かって維持発展させることが必要である、そのことを第一に考えるということであれば、この未解決の問題について現実に沿うような解決方法を見出すことは当然である。私は、この交渉は非常に困難ではあると思いますけれども、そういう大局に立って両国が冷静に対応するのであれば不可能ではない、なかなか困難な問題ではあるけれども、不可能な問題ではない、こういうつもりでこの交渉に取り組んでおる次第でございます。
  120. 木原実

    ○木原委員 困難であるということはもう認められておるわけですが、ソ連側の言い分といいましょうか、あれを見ますと、過般の交渉においても、日本側が展望のない領土問題を持ち出すのは、漁業交渉としては現実的ではない、日本の漁民の利益を顧みない交渉態度だ、あるいはまた領土問題はすでに解決済みだということを繰り返し言っておるわけですね。そこへもっていって、直接領土の問題ではありませんけれども、相互に線引きという問題で、言うまでもなく領海の問題をめぐって領土の問題が介在してくる、爼上に上る、これは避けられないことなのじゃないですか。いかがでしょう。
  121. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 幹部会令の海域の適用、この問題をめぐりまして双方の意見がなかなか一致をしない。これは、その背後に領土問題が微妙に絡んでおるということは私も認めます。しかし、ただいまお答えを申し上げたように、戦後未解決の問題であるということが両国の首脳によって確認をされておるわけでございますから、それを前提として、この漁業の問題、海域の指定問題というものを冷静に、大局的な観点に立ってやるのであれば、おのずからそこに解決の道は生まれてくる、こういう気持ちで私はこれに取り組んでおるということでございます。
  122. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、大臣、新しく交渉に臨まれる際には、北方四島をめぐる領海についてはいわゆる係争中である、未解決の問題であるということをまず相互に確認することが入り口の問題になるわけですね。どうですか。
  123. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは漁業交渉でございますから、いまの領土問題をまず片づけて、それから漁業交渉、これは私の交渉に与えられた任務を超えた大きな問題でございます。しかし、イシコフ大臣も、日ソの漁業関係というのは両国の友好のかけ橋である、これは大事にしていかなければいけない、こういうことを十分認識をされております。私は何遍も接触をいたしましてその点についてはイシコフ大臣と私との間には共通の認識を持っておるわけでございます。したがいまして、領土問題はそういう未解決の問題であるということを前提にしながら、この漁業問題の解決について双方の立場を損なわないような妥結点を見出していきたいというのが私の考えでございます。
  124. 木原実

    ○木原委員 くどいようですけれども、そういうことであるならば、大臣が会談を打ち切って帰ってこなくてもよかったのじゃないですか。イシコフ漁業大臣と共通の認識を持っている、そこまではわかります。しかしながら、ソ連側には強い主張がある。未解決の問題であるということさえも認めていないわけですね。最近の言動では、解決済みだという強い言葉がしばしば返ってきているわけです。そういうところへ、今度改めて漁業の問題で、しかも今度は領海の設定なりあるいは海域の設定なりをもって相互の話し合いに臨むわけですから、そこには当然線引きの問題をめぐって、領海の問題、続いて領土の問題というのが潜在的な問題から浮上してくるということになりはしないかということを恐れるわけですが、いかがですか。
  125. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二月二十八日から三月四日までイシコフ大臣と私は会談をいたしまして、御承知のように三月三日の合意に達しまして、書簡の交換をいたしたわけでございます。その書簡の中に、わが国も近く二百海里の漁業水域の設定をやる方針であることを明確に私は申し上げて、それは交換書簡の中にも記載されておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、交渉がこういうぐあいに難航しておるのであるから、わが方の足場をまず固めなければいかぬ。これを抜き打ちに、予告なしにやったものではございません。私は、堂々と、わが方としても二百海里の漁業水域を設定いたしますよということを申し上げて、これは十分イシコフ漁業大臣も承知しておるところでございます。したがって、今回の領海の幅員を十二海里にする、また漁業水域を二百海里に設定するということは、私は十分ソ側としても織り込み済みの問題である。交渉に当たる責任者からそのことをはっきり予告をいたしまして、そういうことを踏まえてひとつ今後の交渉をやろうということでございますから、急にこれが浮上してきて、それが交渉にどういう影響があるのかというようなぐあいには私は考えておりません。
  126. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、いわゆるこの線引きをめぐっての問題は、どういうふうな形で妥協点を見出していこうとするのですか。領土問題について係争中である、未解決の問題である、続いて、しかし北方四島をめぐっての十二海里の設定にいたしましても、二百海里の設定にいたしましても、相互に重なるわけですね。その辺はどういう形で相互に折り合いをつけようというわけですか。
  127. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 このことは、今後の交渉にかかわる問題でございますので、私、この場ではひとつ御遠慮を申し上げたいと存じます。
  128. 木原実

    ○木原委員 交渉の前であることは重々承知でございますけれども、事領土の問題は、主権にかかわる問題を含んでいると私どもは解釈しておるわけです。先ほど来も主権の問題については厳しい指摘がございました。そういう問題を避けて通れない。そうであるならば、やはりきちんとした妥協の方向、妥結の方向について政府の心構えがあってしかるべきだと思うのです。いかがでしょう。
  129. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点は、本会議場でも私申し上げましたように、今後の日ソの平和条約交渉、これにいささかの悪影響も与えてはいけない、わが方の立場を損ねるようなことがあってはいけない、これが交渉に当たっての基本的な姿勢でございます。  それと同時に、北洋におけるわが国漁業実績、これは他の国々との間にあるところの伝統的な実績とかなんとかいうようなものではない。一世紀以上にわたってわが国の漁民が営々として築いてきた、また開拓をしてきた北洋の漁業権益ともいうべきものである。これも守らねばいかぬ。  この二つの命題、これを達成するのが私に課せられた任務だ、こう心得ております。でありますから、その間におきまして妥結点を見出すということは、非常にその幅が狭いことも承知をいたしておりますが、日ソ友好という大局的な立場、両国の指導者がそういう考え方である、こういうことであれば、必ずそこに妥結点を見出せるもの、こういうことで私は取り組んでいく考えでございます。
  130. 木原実

    ○木原委員 大変善意に満ちたお考えで、御努力の方向はわかるわけですけれども、しかし努力をして善意を実らせるためには、やはり筋というものがなくちゃならぬと思うのですね。私が伺っているのは、その筋を伺っているわけなんです。ソ連の側の言動といいましょうか態度というのは、きわめて私どもには厳しいものがはね返ってきているわけですね。領土については少なくともこれはもう解決済みだ、こういう大胆な断定が返ってきておる。あるいはまた、日本側の今度の領海にいたしましても排他的である、あるいはまた二百海里の設定にしてもきわめて変則的であって、ソ連に対しては排除的である、なぜ西側の方をやらないのかといったようなソ連側の不満の声といいましょうか、批判の声も返ってきておる。なかなか厳しいわけです。しかも、繰り返すようですけれども、これからは新しく領海十二海里の設定、二百海里の設定をもって交渉に臨まれるわけですから、当然それが交渉の話題の入り口になる。その際に、問題の北方四島をめぐる海域についての妥結の方向というものはどうか、こう聞いているわけです。くどいようですが、どうですか。
  131. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連漁業省の次官が海員組合の代表者の諸君と会談したとき、どうも日本漁業水域の適用はへんぱではないかというようなことを言われたという報道があるわけでございます。しかし、これは私がしばしば申し上げておりますように、日中の間には日中漁業協定がございます。日韓の間には日韓漁業協定がある。西日本漁業というのは、二つ漁業協定によって安定的に、何らのトラブルなしに漁業が行われておる。私は、この関係というものは非常に大事にしていかなければならない。西日本漁業者は非常にこれを心配しております。そういう観点から、相互主義である。韓国が二百海里漁業水域を設定するのであれば、直ちに政令によってわが方も二百海里の設定をいたします。ソ連が二百海里の設定をやった、わが方も二百海里の漁業水域を適用せざるを得ない、これは相互主義でございます。そういう観点でございまして、ソ連がもう二百海里はやめた、こうおっしゃるなら、わが方も別にやる必要はない、このように考えておるのでありまして、相互主義である、こういうことを御理解を賜りたいと思います。
  132. 木原実

    ○木原委員 相互主義結構です。  仮定のことをお伺いをいたしますけれども、特に今度の領海と二百海里の設定をめぐって、問題の北方四島の海域について、これをソ連が仮に拒否をした、こういう場合は想定されますか。
  133. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は拒否をするというようなことは考えておりませんし、イシコフさんとの数次にわたる会談でも、日本の伝統的な実績というものは自分も評価をしておる、また北海道その他の漁民に対して操業の機会を与えようということも考えておる、こういうことでございます。ここまで言うのです。自分の国はアメリカ、カナダあるいは、EC、ノルウェー、アイスランド等々において今回の二百海里時代で相当漁獲量の削減を強いられておる、そこで、それを北西太平洋の漁場で補っていかなければいけない、またソ連の漁獲能力をもってすれば余剰というものは出てこない、しかし、日本との友好関係を考え、また日本の北洋における長年にわたるところの実績、こういうことを評価をしておることであるから、日本の漁民に操業の機会を与える、実績を認めよう、これは自分が三十年漁業大臣をやって日本の漁民諸君の実情をよく知っておるからだ、ここまではっきり言うわけでございます。したがいまして、私は、この背景にあるところの問題がエスカレートしていって、そしてもうオール・オア・ナッシングだ、そういうようなことにはならない、なってはまた両国の今後に対して、相互の利益に合致しない、このように私は考えておりますから、決してこれが破局的な事態になるとは考えておりませんし、私はそのために全力を尽くす決意でございます。
  134. 木原実

    ○木原委員 世上伝えられるように、問題の北方四島周辺の海域については、たとえば共同規制海域といったような形で問題の接点を求めたい、こういうような報道といいましょうか、話が伝わっておるわけですが、それについてはいかがですか。
  135. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 やはり幾つかの案が考えられるわけでございます。また国会の超党派の御支援もいただいておりますが、各党にもそれぞれ御意見があります。いまのような有力な御意見も私拝聴いたしております。そういう点を踏まえましてこれに取り組んでいきたい、こう思っておりますが、要は、ソ側も日本側もそれでいこうではないかという、その大人の解決策を見出していくという気持ちにならなければ、その問題はなかなか具体化してこないということであろうかと思います。
  136. 木原実

    ○木原委員 そうしますと大臣、やはり背景の問題はきわめてウエートが重い、こう判断せざるを得ません。  外務大臣にお伺いいたしますけれども、北方四島についてはいままではわが方の領土主張とは別に、少なくとも向こう側の領海規制を認めてきたという関係にあるわけですか。
  137. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北方四島周辺の領海につきましてはわが方は領海主張しておるわけでございますけれども、事実上先方の規制が行われておる、こういう事情でございます。
  138. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、現状は、はっきり言いますと、北方四島はソ連が領有中であって、わが方の施政権は及んでいない、しかし、本来わが方の主権が存在する領域である、こういう解釈ですか。
  139. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 現実におきまして施政が及んでおらないという方が適切であるまいか。わが方としては主権主張をいたしておるわけでございます。
  140. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、くどいようですけれども、そういうところに改めてわが方から領海なり専管水域なりの設定を行うわけですから、言うまでもなく、主権の存在を改めて主張をする、こういうことに相なりますね。
  141. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのようなことになると思います。領海につきましては、領海が三海里であったものが十二海里に広がるということと、わが方といたしましては、二百海里の専管水域を設定いたす場合におきましては、これはわが方の主張をいたしております北方四島というものの取り扱いにつきましては、あるいは農林大臣からお答え申し上げるべきところでありましょうが、わが方といたしましては主権主張というものを当然いたすべきものと考えておるところでございます。
  142. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、農林大臣はなるべく領土には触れたくない、漁業問題が言うまでもなく中心の重大な問題ですから。しかし、そうであっても、われわれの審議が終わって二百海里の法案が成立をするということになりますと、そのことを通じて今度は直接といいましょうか、改めて主権の問題を出すことになる。言うまでもなく漁業交渉の枠を越える問題かもしれませんが、しかし、事はこの領海の設定、専管水域の設定に絡んで主権主張しなければならないという状態になっているわけですね。避けて通れないじゃないですか。
  143. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来るる申し上げておりますように、領土問題を解決して平和条約の締結をする、これには相当時間を必要とするものではないか、粘り強い交渉が必要ではないか、このように私は認識をいたしております。したがって、その方を解決してから漁業問題を解決するということになりますと――これは関係漁民の立場あるいは日本の経済全般等考えまして、時間的な問題としても早期な解決を必要とする、このように心得ております。したがいまして、今後もこの領土問題につきましては粘り強い交渉をひとつやっていただく。しかし、そういうことを念頭に置いて、私は、今後の平和条約交渉にいささかの支障を与えたり、わが方の立場を害さないようにということを十分踏まえて漁業交渉をやりたい、こういうことを申し上げておるところでございます。
  144. 木原実

    ○木原委員 いや、もうそれはよくわかるのです。よくわかるのですが、少なくとも二百海里の設定といったようなことを持っていくわけですから、大臣がそういうふうに期待をされましても、事は漁業問題の枠を越えて主権の問題に突き当たらざるを得ない、私どもはそういうふうに認識するわけですが、大臣、その問題はその問題でたな上げをしておいて、漁業問題は円満に解決する方法があるんだ、こういうふうにお考えですか。
  145. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点は私も申し上げておりますように、非常に厳しい条件のもとに漁業交渉は行われておる、そういう背景があるということは十分私心得ております。しかし、これはいま私が漁業交渉の場によってこの領土問題をはっきりわが方が納得するように割り切るというようなことは、なかなかこれは簡単にいくものじゃないということも心得ております。そういうようなことで、その背景にいま御指摘のような問題があることは十分承知をいたしておりますが、そういう中でも、この未解決の問題という前提の上に立ったところの漁業問題としての解決、その道を私追求をいたしておるところでございます。
  146. 木原実

    ○木原委員 外務大臣に伺いますが、私どもが一番気になるのは、この領土問題についてはもうこれは解決済みだ――私どもは不当だと思うのですけれども、最近のソ連の言動の中にしばしばそういう言動がある。そうしますと、そう言っているところへ、いや、あなたたちはかつてこれは未解決の問題だと言ったではないか、こういう形で持っていかざるを得ないわけですね。一体これは、確かに鈴木農林大臣は漁業中心ですから、でき得ることならば領土問題というものはなるべく背景に置いて、できるだけ円満な解決を図りたいという善意の立場というものは理解ができるわけですけれども、しかし、それにもかかわらず二百海里の設定といったような新しい案を持って臨むわけですから、主権のことにかかわるわけですから、ソ連も厳しい態度で臨んでくるでしょう。その入り口をあけなければ漁業交渉も進まないと私は思うのですが、外務省としていかがですか。
  147. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど鈴木農林大臣からお答えがありましたように、漁業問題は漁業問題といたしまして、わが国領土問題に支障の生じないような方式でソ連との間に交渉なさるわけでございまして、外務省といたしまして、領土問題につきましては、平和条約の最大の残された問題としてこの領土問題の解決に努力をいたす、こういうことでございまして、この交渉は、これは相互に主権の問題でございますから、大変時間のかかる問題ではあろう、しかし、私どもといたしましては、まさにこの領土問題が非常に大事な問題になってきたということは、そのとおりであります。特に漁業問題がありますだけによけい領土問題が大事な問題になったわけでございますから、わが国民の悲願をなるべく早い時期に決着をつけるべく、そのために最善の努力をいたしたい。しかしながら、漁業問題と平和条約交渉というものは、これは同じ問題として処理はできがたい問題でありますから、この問題につきましては、私自身先般本会議で申し上げましたけれども、遅くとも年内には、なるべく早い時期に最大限の努力をいたしたい、こう思っておるところでございます。
  148. 木原実

    ○木原委員 これは時間がかかりましても避けて通れませんね。事は漁業だけの問題から領海の問題、海域の問題というふうに、それぞれ問題が発展していったわけですから、いずれも魚と絡み合いながら主権にかかわる問題が出てきたという事実は否定することはできませんね。だから時間がかかるから、魚の方が大事だからとこう言って、鈴木農林大臣は、それは大変むずかしい問題だからといって、まさかソ連の言いなりになるわけじゃありませんでしょうね。
  149. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、今後の日ソ平和条約の交渉に影響があっても魚の問題を解決するんだ、そういう立場をとるならこんな苦労は要りません。これはよくおわかりになっておるだろうと思うのです。先ほど来申し上げるように、その今後の交渉にいささかも支障があってはいけない、わが方の立場を損ねてはいけない、それを堅持しながら北洋の漁業権益を守ろう、この二つの命題を、困難ではあるけれども達成するのが私に与えられた任務である、こういう十字架をしょってがんばっておるということを御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  150. 木原実

    ○木原委員 大変重い十字架を背負っていることはわれわれもよく理解できるのです。ですから、私ども党を挙げて協力しようと言っているわけです。しかしながら、いままで問答を重ねましてもどこへ落ちついていくのか、われわれの側には展望が立たぬわけです、ソ連態度が強硬だからですね。  話を変えたいと思います。  防衛庁長官、少しお暇なようですから一言伺います。二百海里漁業専管水域には自衛権というものは及ぶのかどうか、どんなふうに御判断なすっていますか。
  151. 三原朝雄

    三原国務大臣 二百海里ということに限定してお答えすることはどうかと思いまするけれども、今回漁業水域というのができて、そこに二百海里というのができてまいりました。これは十二海里を除きました百八十八海里は公海になるわけでございます。したがって、自衛権におきましては、外部からの攻勢を受ける、そういうようなことに対しましては、そこまで自衛権が及ぶことになって、それに対しての警備的な行動をやらねばならぬ、そういうことに私どもは考えておるわけでございます。
  152. 木原実

    ○木原委員 ちょっとあいまいなんですが、攻撃を受けた、あるいは侵犯があった、こういうときには自衛権が及ぶ、しかしながらそうでないときは、つまり十二海里を除いた部分というのは公海並みの扱いである、こういうことですか。
  153. 三原朝雄

    三原国務大臣 質問趣旨が、私自身もきわめて明確な受け取り方をしておりませんでしたが、そういう意味でございますれば、自衛権は及ぶということに受けとめていただきたいと思うのでございます。
  154. 木原実

    ○木原委員 あわせて外務大臣見解を承っておきたいのですが、漁業専管水域というところにはいわゆる自衛権というのは及ぶのですか、及ばないのですか。
  155. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回、漁業水域として二百海里の法案をお願いしているわけでございますが、この二百海里という趣旨が、これは漁業の問題として提起されておるわけでございます。そういう意味で、これは国防の観点とはおよそ次元の違った問題であるというふうに私どもは認識いたしておるのでございまして、国防の観点からは私は防衛庁がお考えになるべきことであるというふうに考えます次第でございます。
  156. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。漁業専管水域という問題と自衛権の問題を絡めて御質問があるので解明しない点があろうと思います。自衛権は必ずしも漁業水域と関連して特に考えるべきものでなく、自衛権というのは、御承知のようにわが方では公海におきましても自衛のための行動はいたしまするので、特に二百海里の漁業専管水域がどうだからということで限定されるものではございません。したがって、私どもは先ほども申し上げましたように漁業権の二百海里がどうであるからそこまで及ぶか及ばぬかということでなくて、あくまでも自国を防衛する必要上の立場から、私ども公海においても自衛権は及ぶものである、そういう考え方に立っておるわけでございます。
  157. 木原実

    ○木原委員 少しおかしいですね。私が申し上げているのは、これは後で逐次聞いていきたいと思うのですけれども海上保安庁が警察行動をとりますね。そういう意味で、たとえば十二海里の領海内にはわが国の固有の主権の及ぶ領域ですから、当然自衛権というものがあるわけですね。憲法上の自衛権がある。二百海里の設定というのは改めてどういう主権の権原があるのか、後で聞きたいと思うのですけれども、少なくとも漁業に関してわが国と重要な利害を持つ海域を設定したわけですね。そこに果たして領海に準ずるような自衛権が存在するのかどうか、こういうことを聞いているわけなんです。それは公海上でも攻撃を受ければ反撃をするという自衛権があるのは、これは当然のことです。そういうことではなくて、十二海里の領海内には当然固有の自衛権というものがありますね。憲法上の自衛権というものがある。そうしますと、それに準ずるような形で漁業専管水域二百海里の設定が新しく行われるわけですから、その部分については少なくとも領海に準ずるような自衛権もしくは自衛権の行使というものがあり得るのかどうかということを聞いているのです。これは防衛政策上の一番根本の問題ですよ。
  158. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生の御質問の中で自衛権の問題がございましたが、領海、領空に対する自衛権は当然ございますが、それとまた自衛行動というのは必ずしも結びついていないわけでございまして、侵略されたときの自衛行動をどういうふうにしてやるかということは、自衛隊法の規定に基づいて私ども行動するわけでございます。  そこで、二百海里になりましたときに、固有の領土領海と同じ自衛権があるとは思いませんが、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、必要な自衛行動をとるということは、やはり隊法に基づいて必要な場合にはとるということになると思います。
  159. 木原実

    ○木原委員 それはどういう根拠ですか。
  160. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは自衛隊法防衛出動という規定もございますし、八十二条の警備行動という規定もございます。
  161. 木原実

    ○木原委員 そうではなくて、あなたのおっしゃる、二百海里海域について必要があれば自衛の行動をとることができるという、そのできる根拠はどういう法的根拠ですか。
  162. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは御承知のように、自衛行動をとるためには急迫不正の侵害があるということ、それから他に手段がないということ、それから必要最小限の行動を起こすという原則がございます。したがいまして、他国から組織的、継続的に侵害されているという実態がございましたならば、総理大臣の命令によりまして自衛行動に出るということはあり得るわけでございます。
  163. 木原実

    ○木原委員 外務大臣にお伺いしますが、暫定措置法案に「管轄権」という言葉がありますね。管轄権というのはどういうことですか。
  164. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  本件の場合には、距岸二百海里にわたりましてその水域内におけるところの水産資源に対して、水産資源の保存及び管理、その有効な利用の権原をわが国が持つということでございます。
  165. 木原実

    ○木原委員 これは、そうしますと、一つには施政権が及ぶ範囲ということですね、二百海里は。
  166. 中島敏次郎

    中島政府委員 通常使われておりますところの施政権が及ぶというようなことではないと思います。この二百海里の漁業水域というものは、わが国主権が及ぶ、沿岸国の主権が及ぶということではなくて、先ほども先生が御質問になりましたように、二百海里の水域は、基本的にはわが国は、公海である、二百海里の水域の法的ステータスは公海であるというふうに考えております。  なお、国連海洋法会議におきましては、その二百海里の水域の法的地位が争われておりまして、これが公海であるという主張と、そうでないという主張とありまして、いまなお論議が続いておりますが、わが国は、この水域の基本的な性格は公海であるという考え方に立っております。
  167. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、施政権も及ばない、それから主権も及ばない、こういう地域ですね。そういうふうに理解してよろしいですね。
  168. 中島敏次郎

    中島政府委員 主権の及ばない地域――地域的に主権が及ぶということではないということでございまして、その意味におきまして施政権も及んでいないということでございます。
  169. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、この暫定措置法案の中でいわゆる管轄権ということに基づいてさまざまな規制が行われますね。たとえば漁業許可証の交付であるとか入漁料の徴収であるとか、あるいは臨検であるとかあるいは違反の摘発であるとか、何といいますか、少なくとも警察権が行使をされる、その上に裁判権も行使されるわけですね。それらは一体どういう法的根拠に基づいてやるのですか。
  170. 中島敏次郎

    中島政府委員 それがまさにわが国がこの漁業水域における管轄権を持つということの意味でございます。
  171. 木原実

    ○木原委員 頭が悪いのかな、こっちが。わかりませんね。少なくとも裁判権あるいはまた警察権を行使する、これらは少なくとも施政権にかかわる問題じゃないのですか。あるいは主権にかかわる問題じゃないのですか。
  172. 中島敏次郎

    中島政府委員 先ほど私がお答えを申しましたときに、わが国がこの水域に対して主権を持つということではないということを申し上げ、そういう意味におきまして、わが国が施政権を持っているということではないというふうに実は申し上げたつもりでございます。  なお別に、先生のおっしゃられるように、この二百海里の水域における水産資源に対してわが国がその管理、保存の権原を持ち、その管理、保存を全うするために取り締まりを行い、裁判管轄権を行使するということはできるわけでございまして、それがまさにこの御審議をいただいております法案に盛られておる考え方であり、それがまた海洋法会議におけるところの観念でもあり、またアメリカソ連など二百海里の水域を設定しております国々の法律の考え方でもあるわけでございます。
  173. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、これらの権利を行使する根拠というのは、われわれの主権に基づくものなんですか。あるいはまた、何か国際的な取り決めがあるのですか。
  174. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  沿岸国がいま申し上げましたような、また先生のおっしゃられておるような権原を持つわけでございますから、その沿岸国が主権国家であるという意味においては、根源においてその沿岸国が主権を持っておるから、その沿岸距岸二百海里にわたっていまのような管轄権を持つということになるわけでございます。
  175. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、いずれにしましてもこれらの権利は、海面二百海里に及ぶわが国が行使する権利というものはわが国主権に基づくものだ、こういうふうに解釈していいわけですね。
  176. 中島敏次郎

    中島政府委員 いま申し上げましたように、沿岸国自身が主権国家であるということにおいてそのとおりでございまして、ただお断りしておかなければならないのは、領土領海において沿岸国が有するような主権ではないということでございます。
  177. 木原実

    ○木原委員 それはそうだ。そうしますと、この海域では裁判権に到達をする警察行動が行われる、これはわれわれの主権の発動の一部ですね。この海域には日米安保条約第五条の適用ということにはならないですか。
  178. 中島敏次郎

    中島政府委員 安保条約第五条は、いずれかのわが国の施政下にある領域ということになっておりまして、先ほど来御答弁申し上げております意味からいきまして、これはわが国の領域ではないということでございます。
  179. 木原実

    ○木原委員 領域ではない――そうしますと、三原防衛庁長官、この海域には自衛隊は出られませんね。警察権をもって仮に自衛隊が出動するというようなことはできませんね。
  180. 三原朝雄

    三原国務大臣 そういうことはございません。自衛のための行動をいたしております自衛隊が調査活動なりあるいは訓練をいたしまする場合には、十二海里の領海にとどまらず一般公海まで出てまいりまするし、漁業水域が決定されまして、そこに出てまいらぬということはございません。出てまいるわけでございます。
  181. 木原実

    ○木原委員 それは海は広いわけですから、それは当然なんですが、しかし二百海里の漁業専管水域について、そのための仮に警察行動――警察任務を帯びて自衛隊が出動するということは、いままでの外務省の解釈でいきますと、出られませんね。
  182. 三原朝雄

    三原国務大臣 ただいまの御質問でございますれば、自衛隊は出てまいりません。しかし、特別に必要があるということが認められまする態勢になって、八十二条の適用をする場合には出てまいる場合もあるということでございます。
  183. 木原実

    ○木原委員 それは当然のことです。ただ、二百海里の設定に伴って警備上の問題が当然出てくる。海上保安庁の装備その他も大変不十分だという話を聞いております。そこで、自衛隊が法律を改正してでも将来警備活動に参加すべきではないのかという議論も聞こえてまいります。福田総理は、将来の検討事項だというような話を、昨日でしたか、いたしておりますけれども、さしあたって自衛隊としては、二百海里設定に伴って、自衛隊のあり方について検討したり、法律を改正するというような心構えはございませんね。
  184. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  一般的には、現在の警備体制でございまする海上保安庁任務に対して協力体制でやってきておるわけでございます。現在におきましては、いまの基本的な警備体制についてこれを変更する意思はございません。したがいまして、自衛隊法を改正するというようなことは当面考えておりません。
  185. 木原実

    ○木原委員 もう時間がなくなりましたので終わりますけれども海上保安庁警備についても非常に不安なところがあります。御存じのように、われわれの憲法では、国際間の紛争を武力によって解決をしてはならないという明文があります。警察行動といえども、火力を伴った海上警備に当たる。そうしますと、少なくとも警職法に基づいて警備を担当されると思うのですけれども、しかしその中には、武器の使用の問題、正当防衛の問題、緊急避難の問題といったようなところがあるわけですけれども、必ずしもこれが明確な――どう言ったらいいのでしょうか、細かい規定にはなっているでしょうけれども、不安な要素が残ります。そうなりますと、新しく広い海域の中で、しかも、かなり問題をはらんだ形で海域の設定が行われるわけですから、第一線といいましょうか、現場における不測の事態というようなことも予想しなければならない面も出てこようかと思います。海上保安庁、お見えでございましたら、それらのことに対する海上警備のあり方について質的な強化あるいは質的な規制を新たに厳しく強める方針があるかどうか、ひとつ伺って、終わりたいと思います。
  186. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いまお話がございました点については、御承知のとおり、陸上の警察でも職務執行について一定の制限があるということは、私どもも十分承知しております。広い海域で特に国際問題が起こりますので、私どもは十分慎重に考えながら対処していきたいと思います。
  187. 木原実

    ○木原委員 終わります。
  188. 金子岩三

    金子委員長 岡田春夫君。
  189. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 わが党のお二人の方から幾つかの問題が明らかにされてまいりましたが、まだ問題が政府の御答弁で明快になっているとは私は考えられません。したがって、若干二人の委員質問に敷衍をいたしながら、質問を進めてまいりたいと思います。  まず最初に、私がきょう質問をする立場を先に申し上げておきたいと思いますが、先ほどからもお話のありましたように、政府は北方領土の問題については、北方四島にのみ限って固有の領土とし、それを日ソ漁業交渉の基礎としている。しかし、私たち社会党としては、北方四島はもちろんのこと、全千島が日本の固有の領土であり、したがって、二百海里の線引きをする場合においては全域に対する線引きをすべきであるというのが基本の立場であります。これが第一点。  第二の点は、最近のソ連行動を見ておりますと、まさに覇権主義の行動の目に余るものがある。これは明確であります。政府が今度の問題に当たって交渉する場合においては、ともすれば魚を買って領土を売るという危険に陥る危険性がある。この点は鈴木農林大臣もいままでの交渉の中で、大変御努力をされてきたわけでございますが、痛感されていると思います。今後の五月の交渉はそんな甘いものじゃない。この前記者会見での御発言を聞いておりますと、三日間くらいでできるかもしれないというお話ですが、そんな甘いものじゃないと思う。あくまでも粘り強く、先ほどもお話のあったように、領土も魚も、その点での解決をするための努力はぜひとも必要である。いま首を振っておられますから、時間がありませんので、余り長い間の発言をできるだけ倹約いたしまして、問題点に入ってまいりたいと思います。  まず第一点、ソ連の最近の千島に対する関心。これは日ソの漁業交渉にあらわれた魚の問題だけではないと私は思う。ここでやはり重要な点は、ソ連の最近の軍事行動の問題で千島の問題に関連して注目をしなければならない点が幾つかある。特にわれわれ日本の国民にとって重大な問題は、ソ連の軍事行動が核保有の前提に立って進められているという点である。  そこで、今日千島が核装備の基地として使われているという幾つかの事実がすでに明らかになってきている。たとえば例を挙げて申し上げまするならば、昨年十一月SSNX18核ミサイルの発射実験が成功した。これによって南オホーツク海の水域が原子力潜水艦の発進基地として使われるようになってきた。その場合において千島というものが全島いわゆる天然の要塞としての役割を果たす、そして相手の国の潜水艦を攻撃する、そのような軍艦の潜入を防ぐという役割りを果たす、こういう点でも千島の重要性が非常に大きくなってきたと言わざるを得ない。  また、もう一つは、カムチャッカにいわゆる外洋に直接接続するところの唯一のソ連の基地がある。これが核兵器の基地として強化される場合において、千島というものがなくてはならないものになってきている。こういう点で、私たち日本人として非核原則を考えている立場から言って、千島におけるソ連の核装備の実態というものはきわめて重要と言わなければならない。  まず、そのような軍事情勢について、防衛庁長官の所見をお伺いいたしたいと思います。
  190. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  最近における太平洋岸におきまするソ連の陸海空の軍事面の体制の強化は、非常に整備されつつあることは御承知のとおりでございます。  細部につきましては、ひとつ政府委員からお答えをさせます。
  191. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま御質問のございました核基地が具体的にどこにあるかということは実はなかなかわかりにくいところでございますが、いま先生がおっしゃいました中で、SSNの8というICBMは到達距離が四千マイルと言われております。四千マイルということは、実は太平洋まで出ないとアメリカのいわゆるワシントン周辺の主要都市には及ばない。それがSSNの18になりますと、それが約五千マイルと言われておりまして、オホーツク海におりましてもアメリカの主要地区に対して攻撃が可能であるということが言われております。したがいまして、そういう意味ではこのオホーツク海におって世界的な核戦略をなし得るということ、そういう意味におきましては軍事的に重視しているということは当然考えられるわけでございます。  それからもう一点、ペトロという港、これは太平洋に面しておりまして、やはり従来ソ連の潜水艦作戦の一つのウイークポイントというのはウラジオ周辺、沿海州から出なければならなかったということでございますが、ソ連が過去十年間ぐらいに太平洋におきます外洋艦隊としての行動能力を持ってきたという事実から見まして、その重要性というものは上がってきているということは当然考えられるところだと私どもは判断いたしております。
  192. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この軍事問題についてもいろいろお伺いをしたいのですが、時間の関係がありますので具体的に領海法並びに漁業水域暫定措置法の問題に入ってまいります。  まず第一点は、先ほどからの御答弁を聞いていると、北方領土に対しても二百海里の線引きを行う、それから領海の設定を行う、こういう点が御答弁があったわけですが、御承知のとおりに五月の初めから日ソの交渉が行われる。この線引き並びに領海の設定はいつまでに行われるのですか、どうなんですか。
  193. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国会の御承認を得た後三カ月以内にこれを行う、こういうことにいたしております。
  194. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、それは法律でも知っております。実際問題、三カ月以内というのですから、あなたは今度の交渉で日ソ対等の交渉をやりたいんだ、しかし向こうの方はもう線引きを実施しているわけですね。こっちの方は、法律が成立しても実施はされない状態で行かれるのか、実施をされて行かれるのか、その問題になります。
  195. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは時間的、物理的に二つの要件がございます。一つは、この法律に基づくところの政令その他の国内の準備、そういうものが一つございます。それからなお、隣接の諸国、関係国に十分周知徹底をせしめる。またわが方の考えも十分――もういまから始めておるわけでございますけれども、そういう意味で国内手続、関係国に対する周知徹底、そういう点を踏まえましてできるだけ早く実施をいたしたい。まだはっきり一カ月後とか四十五日後とか、そういうことは申し上げられませんが、できるだけ早くやりたいということでございます。
  196. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまの御答弁を伺うと、少なくとも交渉の当初においては対等ではないということになりますね。片一方は実施している、片一方は実施していない、こういうことになろうかと思います。  話を進めてまいりますけれども、鳩山外務大臣の先ほどの御答弁を伺っておりますと、その点について関連して伺いますが、千島をソ連が現在領有している関係ですね。これは、一応政府考え方に立って私は質問を進めましょう。すなわち得撫から北、得撫から南、こう分けますね。それで得撫から北の場合、ソ連が現在占有している状態、これについて日本政府見解は、これは不法占有なんですかどうなんですか。それからもう一つ南千島、いわゆる国後、択捉、これも現在占有しているが、日本は固有の領土主張している。これも不法占有なのですか、あるいは戦時占領の継承と考えるべきなんですか、法律的にこれはどのようにお考えになりますか。
  197. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 得撫から北の部分につきまして、日本政府見解といたしましては、サンフランシスコ条約によりまして日本は権原を放棄したということでございますが、しかし逆にまだ国際的にも、それがソ連の領有であるかどうかということは明らかでないと私は思います。しかし、日本といたしましては、得撫以北につきましては放棄したのであるから、それについてソ連政府に対しましてそれを不法であるとかあるいは返還を要求するとか、そのような主張はいたさないというのがいままでの政府態度でございます。  それから北方四島につきまして、これは未解決の問題を解決して平和条約を結ぶという対象として政府が考えておることは確かでありますから、したがいまして政府主張といたしまして、歴史的にも法的にもこれは日本の固有の領土である、こういう主張をいたしておるわけであります。ただ、平和条約で決着がつくまではしからばどういう状態であるかということにつきましては、これが戦時占領であるかどうかという点につきまして、担当局長から答えさせていただきたいと思うのであります。
  198. 中島敏次郎

    中島政府委員 千島全体に対するわが国考え方及び北方四島に対する立場は、いま外務大臣おっしゃられたとおりでございますが、先生が先ほど御提起になりましたのは、戦時占領が継続しているものと認めるかどうか、こういう点があったかと思いますが、私どもといたしましては先生よく御承知のとおり、日ソの共同宣言によりまして日ソ間の戦争状態は終結しているわけでございますから、そういう意味におきまして、いずれかの部分が戦時占領されておるというふうに厳密に法律上定義することは妥当ではないだろうというふうに考えております。
  199. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 とすれば、その法的地位はどういうことになります。不法占有ということですか。
  200. 中島敏次郎

    中島政府委員 四島につきましては、法律的根拠なくしてこれに施政を及ぼしておるという意味におきまして、不法であるということでございます。
  201. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そこで伺っておきますが、線引きをする場合どういう線引きをするのですか。まず第一に、南千島の方の線引きはやりますね。北の方の線引きは、日本としてやるのですかやらないのですか。
  202. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 得撫以北につきましていわゆる線引き――線引きというのは正確な意味が余りはっきりいたさないのでございますけれども、得撫以北につきましては政府は考えておらないということでございます。
  203. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ということは、先ほどこれは鯨岡委員の言われたとおりなんです。日本の領域ではないということを確認するということですね。この点が一つあります。これは鯨岡委員が先ほど質問を留保されていますから、もうこれ以上言いません。  それでは、南千島からの線引きは二百海里でお引きになるとどこまでに及びますか。もう一度言いましょう。千島のカムチャッカまで何海里ありますか。南千島の一番北の端、択捉のところから線引きしてごらんなさいよ。全部及ぶでしょう、どうですか。千島全域を包括するでしょう。
  204. 中島敏次郎

    中島政府委員 四島を除きましたところの千島列島につきまして、ソ連漁業……
  205. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いやいや日本の場合ですよ。いいですか、もう一度言いましょう。日本の択捉から二百海里の線を引いた、それは千島全域に及ぶでしょうと言っている。そうじゃありませんか。
  206. 中島敏次郎

    中島政府委員 全く地理的な距離の問題として御提起になるとすれば、そのようなことはあり得るだろうと思います。私がいまお答えしようと思いましたのは、千島に対するソ連の二百海里の漁業水域が設定されているという事態において、両方のぶつかり合いということであれば、中間線という考え方が出てくるだろうということを申し上げようと思ったわけでございます。
  207. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 中間線の問題もあるでしょう。しかし、中間線の問題は、日本の方が引かなければ出てきませんよ。南千島から線引きをするということで初めて中間線の問題が出てくるのでしょう。そういうことですね。
  208. 中島敏次郎

    中島政府委員 先生のおっしゃられるとおりだと思います。
  209. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 農林大臣、だから、全千島の線引きの中で交渉しなければならないのですよ。四島だけの交渉の問題ではないのですよ。北方領土の南千島だけのところで線を引いてそれで交渉するとおっしゃっても、これは日本立場を正しく堅持することにはならないのだと思うのです。その点いかがですか。
  210. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点は、岡田さんもよく御研究いただいておるところでございますが、海洋法会議の単一草案等が非常に重要な基準になってくるわけでございます。  ただ、物理的に二百海里に線を引くといいましても、そこに島があるとかいろいろなものがありますれば、それを乗り越えては線引きはできないわけですね。これは単一草案にございます。だから、わが国の固有の領土、その沿岸の低潮線から二百海里の水域、これが適用海域になります。と同時に、そこに外国の島等があれば、単一草案の趣旨を十分踏まえて、具体的に線引きがなされる、こういうことで御理解を願いたいと思います。
  211. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたの御答弁が、その向こうに北の千島があるから、そこから線引きできないのだという御答弁であるならば、それは間違いだと思う。なぜならば、低潮線がどっちを向いて――円をかくのですから、完全オホーツク海の海域の中に、島もないところに線を引くことになりますよということです。ですから、この点はそういう意味でいま御答弁になったんだと思います。  それからもう一つ、今度は鳩山さん、あなたの方の見解でいくと、北方四島、そこへ領海をつくる。そうすると、国境はどこになるかという問題がありますね。その国境はウルップ島と択捉島の問の択捉海峡、そこに十二海里の線を引きますね。ところが、択捉海峡は何海里ですか。二十海里でしょう。二十海里の場合にどうやって十二海里の線を引きますか。
  212. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領海の場合は、その相手国と相対峙している場合は、中間線より先には出ないという考え方領海条約でもなっておりますので、もしウルップ島との境ということであれば観念上は中間線ということになろうと思うのであります。
  213. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どなたでもいいですが、確定的な御答弁を願いたいのです。とするならばという御答弁では私は納得できないのです。  まず第一点、択捉海峡海域は二十海里だ。したがって、そこに中間線を引かざるを得ない。ここを領海の範囲の限度とする。すなわち二十海里とするならば、十二海里同士が重なるのですから、十海里ですか、そこに線を引かざるを得ない、こういうことになるのでしょう。どうなんですか。領海だから引かなければならないのでしょう。
  214. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま大臣からお答えがありましたとおり、領海条約第十二条一項によりまして、向かい合っておる国の間の領海の境界線は中間線を越えてはならないということになっておりますので、特別の合意がない限り中間線を越えてはならないということになっておりますので、中間線を越えることはないというふうに考えております。
  215. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは伺いますが、漁業水域には、この法律案を見ますと中間線が明記されております。領海法の中に中間線がないのはどういう意味ですか。主権の範囲を明確にすべき領海法の法律の条文上中間線を明記しなければ――あなたがいま答弁をしようというのはこういう答弁ですよ。私が先に言っておきます。国際条約である領海条約の中にありますから、そういう法律上明記しなくてもいいのです、こういう御答弁をされるのでしょう。それはわかっております。しかし、主権の及ぶ範囲は条約の上に規定しているからといってそれでいいのじゃないのです。主権の範囲の問題、統治権の範囲の問題、それならば領海法というこういう法律を出して、なぜ中間線の問題をお出しにならないのか。十二海里の問題はここに出ております。どういう形でこれをおやりになるのですか。政令でおやりになるのですか、どうなんです。私はこの法律はきわめて不備であると思う。中間線の規定がないじゃありませんか。こっちの二百海里の方には中間線の規定があり、特に主権の及ぶ範囲を明定すべき領海法の中に中間線の規定がない。外務大臣よりもこれは主管大臣である農林大臣どうですか。中間線の規定がないということは法律の不備ですよ。
  216. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 法律事項ですから、法制局長官から。
  217. 真田秀夫

    ○真田政府委員 おっしゃいますとおり、領海法案には中間線の規定を設けておりません。逆にといいますか、二百海里、いわゆる漁業水域に関する暫定措置法には中間線の規定も設けております。まさしく、領海につきましては、領海に関する条約の中に中間線の規定がございまして、いかなる沿岸国といえども中間線を越えては領海を設定できないということがございますので、これはわざわざ国内法として書かなくても、憲法の九十八条で、日本国が締結した国際条約は守らなければならないということがあるわけでございますから、同じことをまた国内法である領海法案に書く必要はないということで落としてあるわけでございます。
  218. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは了解できませんよ。あなた、そんなことを言ったら、基線の引き方も低潮線であるというのは条約の中に書いてありますよ。それを何で第二条に法文が出ておるのですか。低潮線が基線であると書いてありますよ。これだけは書かなければならないのですか。こっちの方は書く必要はないのですか。中間線の問題こそ、事国際関係に関することであるから、日本の国内の問題だけではないんですよ。事国際関係の問題であるだけに、中間線を法律上明定するのがあたまえじゃありませんか。常識から考えたってそうじゃありませんか。
  219. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御提案しております領海法案の中で基線について特に規定がある理由という御質問でございますけれど……(岡田(春)委員「いや、基線の問題じゃない。中間線の問題です。中間線の問題を答えてください」と呼ぶ)基線について特に書いてある理由についてまず御答弁申し上げますが、領海条約の中には、基線につきましては領海法案にございますように低潮線それから湾口もしくは湾内または河口にかかる直線のほかに、直線基線という考え方が別にあるわけでございます。これは採用し得るということになっておりますが、領海法におきましてはそういう選択を明らかにいたしまして、領海法では、基線は低潮線それから湾口もしくは湾内または河口にかかる直線とするというふうに明らかにしたということで、領海条約にありますけれども、この領海法に明らかにしたという意味がある。ところが、中間線の問題につきましては、領海条約のとおりに私どもは実施をするわけでございますので、改めて領海法の中に規定する必要がないということでございます。
  220. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そういう御答弁では全然納得いたしません。それじゃあなた、明文上、法律上の規定なくして中間線の線をどういう方法でやるのですか。大臣どうです。技術屋さんに聞いてもちょっと始まらぬから大臣から答えてください。
  221. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは先ほども法制局の長官からもお話がありましたように、領海条約に、これは国際的にもオーソライズされておって、中間線を越えて線引きはできない、これは各国とも締約国は全部それを尊重しなければならぬわけでございます。  それからいまの問題は、なぜ一方の方の基線の問題は明確にせなければならぬか、この点については、これも明確に領海条約には低潮線というものもあれば直線基線というものもある、基線はいずれを選択するかということは国によって違うわけでございますから、わが国としては低潮線を採用する、こういうことで明確になったと思うわけでございます。
  222. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは何によってやられますか。法律上明文化されてないとするなら政令でやるのですか、どうなんですか。
  223. 岡安誠

    ○岡安政府委員 政令を必要としないわけでございます。私ども領海条約というものを承認をしてそれに従っているわけでございますので、領海条約そのものが適用されましてそれに従って実行をするということでございます。
  224. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、ここまでで明らかになってきたことは、択捉海峡の国境はいわゆる二十キロの中における中間線をとる、この中間線は政令も必要ないし法律上の手続も必要がない、こういうことが政府見解であるということが明らかになった。しかし、そういう中間線をとるということは統治権の問題ですから、いわゆる憲法の基本的構成要素に関する問題ですよ。領土の問題、住民の問題、統治権の問題、この問題を政令にもよらず法律にもよらず国内的な法的手続を行い得るとすることは、条約がそのまま国内措置をとり得るということになりますね。こういうことは国内の主権に関する問題で、私はこれは認めるべきではないと思う。領海法という法律をつくるのならなぜ中間線の問題が書かれなかったか。二百海里の方にわざわざ中間線をつくりながら、こっちにつくってないという事態に法律上の不備があると思う。  そればかりじゃありません。時間がありませんからもっと進めてまいりますが、領海法附則三項、特定海峡に対しても、その特定海峡の範囲を政令で定める、こういうことになっていますね。とするならば、特定海峡という主権の及ぶ範囲、これは政令で決める、中間線については政令で決めない、こういう点において法律の不均衡がある。またそればかりではない。主権の及ぶ範囲、統治権の問題をこのように政令で決めるということには私は非常に大きな疑念を持っている。そうでしょう。統治権は憲法の――きょう憲法を持ってきてないけれども、四十一条で、国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関である。この立法機関であることはいわゆる統治行為を決定する機関である。それを主権の範囲というような国家の基本に関する問題を政令にすべてゆだねて、特定海峡の範囲は政令で決める、一方において中間線は政令も必要がない、こういうことで、われわれ国会議員として立法権を守るという立場においてこれを許すことができますか。  率直に申し上げますが、鈴木農林大臣と私は同期です。長い間の政治生活の中でかりそめにも国家の主権を害するがごとき政令をこれによって決める、立法機関を侵害する危険性のあることを私は許すわけにはまいりませんね。このような規定はむしろ憲法四十一条の趣旨に反する危険性があると思う。後で政令の問題いろいろ私、取り上げてまいります。それ以外にも政令の問題、たくさんあります。こういう点について、お互いに立法権を守るという立場において、かりそめにも行政が独走するというような態度を再びとらせるようなことがあってはならない。そういう意味においても、この政令の問題については特に農林大臣から伺っておきたいと思う。
  225. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 立法権を最高度に尊重をすることは、もう全く議会人として私も同様に考えております。ただ、いま申し上げたような領海条約は国際的に権威あるものとして各国によって認められておるということで、私どもはそれで十分だ、そしてまた、ただいま岡田さんが御指摘になったその点は、私どもはこういう根拠でやっているんだということも国会を通じて明確にしておる、こういうことで十分そこは確保される、このようには心得ておりますが、しかし岡田さんがさらに念には念を入れろということでそのことを御主張なさっておることにつきましては、私どもも十分これを傾聴いたして検討を加えたいと存じております。  なお、政令にゆだねる事項につきましても、特定海域の線引きの問題あるいは日本の固有の領土全域にわたって領海十二海里を設定をするあるいはそこを基線として漁業水域を設定する、そしてそこから政令でもって外す海域が別途あり得るということ等につきましては、十分その際は国会に御説明を申し上げて、政令を一方的に政府がやるということでなしに国会に御説明をし御理解を賜り、また御意見も十分伺った上で措置してまいる、こういうことで最高度に国会のお立場は尊重してまいるという気持ちには変わりがございません。
  226. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いま十分納得のできるような努力をするという御答弁ですね。それじゃ、漁業水域に関する暫定措置法ですか、これを見ても先ほど木原委員の取り上げられた管轄権の内容の問題、これはきわめて不明確です。それから十四条の適用除外の問題、それから線引き等の問題、これはほとんど政令にゆだねてあります。私は、この法律を二つ読んだときに一番先に感じたのは、これは国家総動員法だと思ったのです。私はここに国家総動員法を持ってきました。国家総動員法にも目的はちゃんと全部書いてあります。対象物資、対象業務を二条、三条に明確に書いてあります。しかし、それを実施する問題はすべて勅令に譲ってあります。同じじゃありませんか。目的は明確になっている、そういう点は明らかになっているが、実際の実施上の問題は、すべて勅令ではない、今度は政令に譲ってある。国家総動員法ですよ。少なくともその危険性がありますよ。今後においてこのような悪例を残すとするならば、すべてを政令に譲るというような、そのような悪例を鈴木農林大臣が道を開いたということになりますよ。私は、同期のあなたにそのようなことをしてもらいたくないのです。そういうことのないように、あらゆる措置をとってもらわなければなりません。私は、このように政令に譲るというやり方は反対です。しかし、たとえば百歩譲ってあなたの意見に立っても、この政令の内容、関連法律というものは国会の審議に供すべきです。これは法律の必要な事項として、この事項だけは政令はこういう政令になる、柱だけでいいです、内容を全部書かなくたっていいのです、こういう政令になります、二十か三十の政令の柱が出るでしょう、あるいはそれに関連して関係法律が必要でしょう、そういうものはこの法案の成立以前に国会にお出しにならなければあなたの趣旨を貫徹したことにはならない。出していただけますね。先ほどの、十分審議をするとおっしゃるなら、それは出していただけますね。その点はっきりしてください。
  227. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 最初、木原さんの御質問、これに関連して政府関係当局からお話があり、岡田さんから重ねて管轄権の問題について明確にすべきだというお話がありました。管轄権というものは、水産資源の保存及び管理措置、この管理措置というのは適正な資源水準を維持するための漁獲量の制限、漁具、漁法の制限、漁期の制限、操業区域の制限などでございますが、及びこれらの措置を実効あらしめるための取り締まり権及び裁判管轄権の行使を意味いたします。言いかえれば、漁業水域におけるところの漁業及び水産動植物の採捕に関し立法、行政、司法上のわが国一般的権原が及ぶということでございます。これは管轄権の問題で、この機会に明確にしておきたいという趣旨で申し上げたわけでございます。  なお、政令事項について、政令の基準になるような重要な問題は国会に具体的にお示しをして、そして御審議を願ったらどうか、こういう御提案でございますが、これは前向きでひとつ検討いたします。
  228. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 前向きというのはいろいろありますので、これはやはり出してもらわないとこの法案審議が進行できませんから、これは出していただきたい。いいですか。
  229. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまそういう趣旨で申し上げたのですが、主要な事項につきましては出します。
  230. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 やはりくどいようですが、かつての戦争のときの苦い思いをあなたも私も覚えているだけに、こういうことの行政の独走をさせない、これが立法府におけるわれわれの責任だと思うものだから、こういう点ははっきりしておいていただかないと悪例を残します。大体、この法律はそんなに早く成立しなくたって、連休後だっていいですよ。あなたはさっきそう言ったでしょう。すぐには実施できないのだと言っているのだから、三ヵ月もかかるのですから、審議は慎重にやって、連休後でもいいじゃありませんか。そういう悪例を残さないためにも、そういう方法でやろうじゃありませんか。どうですか。
  231. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私はそういうようには解しておりません。と申しますことは、国会の御承認をもうすでに得たということとまだ国会でも成立をしていないのだということでは、これは交渉に当たります場合に違う。もう国会の意思決定がなされた、後は事務的な準備その他で一定の物理的な時間はかかるけれども、国権の最高機関である国会ではもう意思決定がなされたということとは、これはもう大変な違いです。だから、そういう意味で、できるだけ速やかに御可決あらんことを心からお願い申し上げます。
  232. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ鈴木さん、逆に言うならば、あなたが政令を提出するタイムリミットを設けられたということですね。そういうことでしょう、できるだけ早く成立させるためには。その前に政令、関係法律を出すという意味ですね。
  233. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政令について、こういう基本的な方針でやるのだということを、項目を提示をいたしまして、衆議院の当該委員会で御決定をいただく前にそれは提出をして御審議をお願いしたい、こう思います。
  234. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 政令がそういうように出てきてから、また審議をしなければならない幾つかの問題が出てまいりますから、そのおつもりでひとつ御了解を願いたい。  そこで、もう一つ伺っておきます。  もう余り時間がないのですが、真田さんせっかくお見えですから伺っておきますが、これは実は予算委員会でちょっと出た問題です。藤田高敏君が質問した問題について、余り掘り下げないでそのまま答弁が終わっている問題です。いいですか。この領海法によれば、五つの海域ですか、海峡、これを特定地域に限る、こういうことになりますね。そうすると、そこに住まっている国民は本来受けるべき領海十二海里の法益を三海里に制限されるわけですね。このことは、憲法十四条の趣旨に反することになりませんか。どうです。憲法十四条では、私が言うまでもないことですが、国民はすべて法のもとに平等である。平等でないことになるじゃありませんか。あなたはきっとこういうように答弁される。合理的な根拠があるならばそれは違法ではない。その合理的な根拠というのは何ですか。例を挙げて言います。たとえば十二海里の地域で、最近金大中事件のような事件が起こっていますから、日本人が某国に拉致をされた。警察行動は、十二海里まで追跡することができる、これは主権の範囲だから。あなた、ところがどうだ。宗谷海峡でつかまった、その日本人は、主権の範囲内、警察権の行動は三海里しかない。これはまさに不平等じゃないか。どういうところに、あなた、合理的な根拠がありますか。これはまさに不平等な例として私はあなたにお話ししたのだ。そこで、まさかあなたは国際的な規定が云々などというようなことをお出しになるとは思わない。なぜならば、海洋法会議でまだ決まっていないですから。これは明らかに十四条違反ですよ。こういう点で、この法文上に、領海法の中に憲法違反の疑義がある。こういう点ももっと審議しなければ、これは了解できません。
  235. 真田秀夫

    ○真田政府委員 予算委員会の席上で、この領海の幅が十二海里の部分と三海里の部分と、二色できているではないか、これは憲法九十五条の特別法になるのではないかというお話がありました。そのときに私がお答えしたのですが、それは九十五条の問題ではもちろんございません。もし御質問者の御趣旨をそんたくすれば、あるいは十四条の問題として御提起になる方がすんなりするのではないかというような気持ちで、問題をそちらの方へ移しまして、そして移した上で、やはり、十四条というのは法のもとの平等を書いているわけですけれども、これは個人の人格の価値がすべて平等だということを踏まえまして、そしてそういう理念に基づいて、国民個人の地位あるいは立場に関する法令の制定なり適用、解釈について、この理念に反することをしてはいけないのだということを書いてあるわけでございます。  そこで、ただいまおっしゃいましたようにある日本人が拉致されるときに、ある区域では十二海里まで警察が保護してくれるが、ある特定の、つまり五海峡特定海域では三海里までしか保護してくれないのではないかということになりますが、これはしかしすべての国民がそういう目に遭うわけでございまして、個人によって別になるわけじゃございませんので、決して差別待遇をしておるわけじゃございません。  ただ問題は、原則としては領海の幅は十二海里であるけれども、特定の、いわゆる国際海峡なるものについては三海里にするということ、そういう制度を打ち立てることの合理性が実は問題なんで、それにいま日本が置かれている国際的立場海洋法会議の進行状況等をにらんで、日本国益国際海峡については三海里に凍結するというのが制度としての合理性があるということであれば、それに伴う若干の枝術上の違いが出てきてもこれは憲法十四条に触れるものではない、かように確信している次第でございます。
  236. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これについても疑義があります。  本来は十二海里にすべきところを意識的に三海里にしたという、このこと自体にも合理性の問題があります。合理的であるかどうかの問題があります。しかし同時に、その地域において、たとえばいまあなたの言われたのは稚内でそういうことが起こった、その人は鹿児島の人ではないか、こういう意味ですよね、だから同じことになるじゃないか、こういう御意見ですが、私はその説はとりません。こういう点は、もう時間があと二、三分しかなくなっちゃったんで、この後政令をお出しいただいてからまた質問をさしていただきます。こういう点を具体的に質問さしていただきます。  私最後に、鈴木さんがせっかく努力をしているのに悪いけれども、予断をしたということになるかもしらぬが、今度の暫定協定の交渉はそんな甘いものじゃないし、結局これは本協定と一緒になりますよね。そうなってしまいますよ。その場合に、領土問題が出てくる。領土問題が出てきた場合に、外務大臣に伺っておきたいが、善隣友好条約を出してくる――歯舞、色丹は返す、そのかわり善隣友好条約で妥結しようではないか、こういう線、必ず出ますよ。あるいは、フィンランドあるいはインド、これに行われるいわゆる友好協力条約、こういう提案が行われる可能性があると思うのです。この友好協力条約の場合においても、歯舞、色丹は返す、それ以降は、たとえば若干色をつけて、平沢和重君のいわゆる二十一世紀まで国後、択捉は決めないでおこうじゃないかというところにちょっと色をつけたりして提案される可能性がある。  問題は、私がここで言いたいのは、領土問題をあくまでも守るというこの場合に、善隣友好条約、友好協力条約、これに対して外務省はどのような態度をおとりになるか。賛成ですか、反対ですか。この点を伺っておきたい。非公式には、外務省は善隣友好条約は反対という意見を出しておられる。これは新聞で知っております。しかし、公式にこの場において外務大臣から答弁してください。
  237. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私から一つ。  新聞記者諸君にも五月交渉の見通しにつきまして質問を受けまして、私は、その際こう言っておるわけです。五月交渉でまとまるのであれば三回か四回の会談でまとまるであろうし、その間になかなかまとまらぬということになると、これは百日交渉になるかもしらぬ、こういうことを申し上げたわけでございまして、決して私は甘い見通しの上に立っていないということだけははっきり申し上げておきます。
  238. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまフィンランドまたはインドのお話が出ましたけれども日本といたしましては、やはり戦争関係にあった国といたしまして、平和条約というものがまず国民が一番待ち望んでいるものであるに違いない。また、その過程におきまして、最大の懸案である領土問題を解決をいたしたい、こういう考えでいるわけでございますけれども、いまお話のありましたことはまことに重大な問題でございます。そういう意味で、ここで確定的な御返事は御遠慮さしていただきますが、われわれ外務省として考えておりますのは、領土問題の解決を第一義に考えたい、こういう考えでいるわけでございます。(岡田(春)委員「善隣友好条約は」と呼ぶ)ただいま善隣友好条約のお話がありましたけれども、今日の状態におきまして日ソ間の友好関係を増進させるということがいま大変大事な時期である。鈴木大臣が交渉に行かれるわけでございますから、その善隣友好条約というような話にどう臨むかということは、今日の段階でここで私の口から申し述べることは御遠慮さしていただきたい、従来の外務省の考え方はこうであるということを申し述べさしていただくわけでございます。
  239. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終わります。  私、きょうの御答弁では、政令事項に関してもその他の点についてもまだまだ納得をいたしません。これは政令をお出しいただいた段階でまたやってまいりたいと思います。現在の御答弁ではどれも納得ができません。特に、鳩山さんいろいろ御勉強中で恐縮でございますが、ソ連の善隣友好条約というのは領土問題なんですよね。国境の確定なんです。国境の確定なしに善隣友好はあり得ないという前提に立つわけです。そうすると、賛成するわけにいかぬじゃありませんか。その点ぐらいはやはり明確にあなたの御答弁の中で国境の確定をするような善隣友好条約は賛成できません、このような御答弁があってもしかるべきじゃないかと私は思いますよ。いかがでしょう。これでもう終わります。
  240. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほどの領土問題を解決するということは、北方四島の返還を期するという趣旨でございますので、この問題が解決をいたさないような条約では国民の期待に反するわけでございますから、外務省といたしましてもこの領土問題の完全なる解決を図ることがまず第一であるということを申し述べさしていただきたいわけでございます。
  241. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、残余は留保いたします。
  242. 金子岩三

    金子委員長 この際、午後二時五十分より連合審査会を再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十二分開議
  243. 金子岩三

    金子委員長 休憩前に引き続き連合審査会を再開いたします。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  244. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私は、十二海里領海法質疑に入ります前に、今日国際的にもクローズアップされているところの二、三の問題点について御質問を行いたいと思います。  その第一点は、韓国が二百海里漁業専管水域を設定するとのことでありますが、政府は、このことについて韓国より正式な通告を受けたかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  245. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのような通告は受けたことはございません。
  246. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 日本の二百海里に対抗をして、韓国も二百海里を設定することが十分考えられるかどうか、政府の御見解はいかがでしょうか。
  247. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが方からは、外務省並びに農林省から係官を派遣をいたしまして、わが方の考え方を詳細に御説明をしております。そして、韓国側が二百海里法案をおやりにならないということであるならば、わが方も先んじてやるようなことは考えておらない、日韓漁業協定を維持し、安定的な操業関係を今後も継続していきたい、こういう趣旨のことは十二分に説明をしておるところでございます。
  248. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 仮に韓国が二百海里漁業専管水域を実際に設定するということが決定をした場合ですが、政府は韓国政府に対して日本との線引きについて交渉をされますかどうか。その場合に、日本側としては中間線主張するかどうか。第三点として、もし中間線をとるならば、大陸だなの共同開発区域は全部日本漁業水域内に入ると私は思いますが、この三点について伺いたいと思います。
  249. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいまも農林大臣からお話がございましたように、韓国はまだ設定はしていないわけでございます。わが国といたしましては、韓国との間には既存の漁業協定という円滑なる漁業秩序が維持されておりまして、これをできるだけ維持することがわが国国益に沿うゆえんであるということで考えておるわけでございまして、韓国側が設定いたしましたときにどうするかという問題をいまの段階で細かく詰めて論じますことは、農林大臣の言われました趣旨にかんがみて果たして適当であるかどうかという点を疑問に存ずる次第でございます。  なお、いずれにせよ明らかなことは、漁業水域の問題は上部水域の問題でございまして、大陸だなとは別のレジームの問題であるという点は、従来外務委員会その他でいろいろ御議論が出ているところで、政府も明確にしておるところでございます。
  250. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大臣の御答弁を受けてのお答えをただいまいただいているわけですが、韓国が冒頭に私が申し上げたように二百海里漁業専管水域を設定するというその報道、情報そのものが私たちはもう当然目に触れていることでありますし、そういうことを仮定してただいま私がこの問題を伺ったわけであります。やはりこういった新たな事態というものを想定したときに、それじゃ日本は一体どうするのか、この問題についてはどうか、あの問題についてはどうかというその準備を当然考えておかなければならないと私は思います。今日の日本をめぐる国際情勢の中で、韓国だけではありません、中国、ソ連、いろいろな国との問題が表面に出てきているわけでありますので、韓国のことについてはもう一問だけ追加して御質問をしてみたいと思います。  韓国が二百海里漁業専管水域を設定した場合に、これもまた想定でありますが、一九六五年に締結をされた日韓漁業協定、これはどうなりますか。無効となりますか。この辺についてまず伺いたいということ。それから、この協定は廃棄通告後一年間が有効である。したがって、二百海里の効力は一年後に発生することになると思いますが、この点はいかがでしょうか。仮定の形でお答えをいただきたいと思います。
  251. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃられるとおり一年間の予告をもって廃棄し得るわけでございまして、そのような廃棄が行われない限り、または別途両国間で合意されるようなことがない限り、日韓両国協定は有効に存続するということでございます。
  252. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今度はソ連のことについて伺いたいと思いますが、報道によりますと、ソ連は、わが方の二百海里水域設定と、これに伴い、中国、韓国、この国々を除外することに不満の意を表している、こういうことですけれども政府ソ連政府から何らかの申し入れを受けておられるかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  253. 宮澤泰

    ○富澤政府委員 ソ連政府から何らの通告も受けておりません。
  254. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほどの韓国の場合と似通ったケースですが、それじゃもしソ連政府がこういったことに対して正式抗議を申し入れてきた、このように仮定をしたときに、政府はこれにどう対処していくか。われわれの立場からするならば、政府が二百海里水域を設定するのは、ソ連の二百海里漁業水域の設定とわが方に対する厳しい漁業規制に対する防衛措置であると私は思います。抗議があったときに、政府はわが方の措置の正当性をむしろ主張をすべきではないか、そして、ソ連がわが方のこの二百海里水域に対して報復措置をとることについては政府としての見通しはどうか、私はこの辺までいま実は心配をしているわけで、ひとつ誠意のある御答弁をいただきたいと思います。
  255. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが方としてはすべて相互主義でやってまいりたい、こういう考えでございまして、ソ連側がすでに三月一日から、二百海里宣言をやり、実施しておるわけでございます。わが国としても、近隣諸国とは相互主義で臨んでいきたいということでございますから、日本の二百海里設定に対して相手国が反発をするとかそういうことは基本的にあり得ないことだ、このように考えておるわけでございます。  なお、ソ側がいままでの交渉の中で、日本が二百海里漁業水域を設定した場合には、自分の方でも日本の実績に基づいて日本の近海、二百海里水域、具体的には百八十八海里の漁業水域の中で漁業をする権利を留保するとさえ言っておることでございますから、向こうもすでに織り込み済みである、しかも、三月三日の私とイシコフ大臣の合意文書、書簡の交換でも、わが方は近く二百海里をやるのだ、そういうことを明確にいたしておりますから、抜き打ちにやったわけではございませんので、その点はそのようなことにはならない、このように考えております。
  256. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大臣の御答弁からいきますと、相互主義でやるからいいのだという非常に楽観的な響きがあるわけなんですが、現実問題として、ソ連がそういったことに抗議を絶対にしてこないとは言えないと私は思うわけで、この中国あるいは韓国を除外したわが国の二百海里漁業水域の設定、これは今後の日ソ漁業交渉ソ連側にいわゆるいわれのない口実を与えるおそれがあるのではないかと私は考えます。したがって、二百海里の設定については、中国、韓国との間にも線引きを明確に行って、その上で現存する二国間の漁業協定が優先する旨を明らかにすればいいのではないか、このように思うわけです。二百海里を実施した暁でも韓国と中国との間は現状維持、こういう旨を明らかにしていけばいいのではないか、このように思いますけれども、御見解はいかがでしょうか。
  257. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、基本的にはわが国は海洋を分割し、そして資源をそれぞれ独占的にやっていくということは好ましい傾向ではない、国連海洋法会議の決定を待ちたかったわけでございますが、アメリカ、カナダあるいはソ連、相次いで漁業専管水域というものを設定いたしました。わが方は、これは国益を守るたてまえからやむを得ずとった措置でございまして、したがいまして、韓国、中国が自分の方で進んでやるという気がない場合におきましては、わが方としてはわが方から先んじてそれをやるということは適当でない、このように考えております。
  258. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間の関係もありますし、きょうはいろいろと伺いたいこともありますので、一応、先ほど来の韓国からの抗議あるいはまたソ連からの抗議ということがもしあった場合のいろいろな問題を私は提起しておいて、次の問題に進んでまいりたいと思います。  今度は中国の場合ですが、中国政府は、日韓大陸棚協定について再び抗議をしてきた。これまた抗議なのですが、とにかく、最近、すでに韓国、ソ連あるいは中国と、このように日本をめぐる各国のいろいろな抗議が報道されている。こういった抗議をしてきたことについて日本政府はどのように措置されるか、まずこの点を伺いたいことと、われわれが再三警告をしてきたにもかかわらず、中国との関係を全く度外視して日韓共同開発協定の批准に暴走する政府の責任というものは重大ではないか、政府は中国のこの抗議というものを果たして無視するおつもりなのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  259. 中島敏次郎

    中島政府委員 中国に対しましては、先生御承知のとおり、大陸棚協定に署名いたします前に、それからまたその後何度も協定の趣旨説明いたしまして、わが国といたしましては、わが国の意のあるところを十分に説明してきたつもりでございます。もちろん、そしてまたわれわれといたしましては、日韓の大陸棚協定は中国の権利を害するものではないというふうに考えているわけでございます。にもかかわらず中国側が、先生がおっしゃれたような立場をとっていることもまた事実でございまして、わが国といたしましては、わが国考え方を今後も十分に説明していきたいというふうに考えております。
  260. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 署名する前に中国の了解をとったようなお話しですが、これはこれとして、きのうきょうの報道によれば、盛んに中国が現実に抗議をしてきている。もし現実的に中国を無視するという結果を協定締結で招いた場合、日中関係に当然支障を来たすことは間違いがない、日中平和条約の締結もこのことによって懸念をされるわけでありますが、さらにあわせて尖閣列島の解決にもきわめて憂慮すべき事態が考えられるのじゃないか。政府はそれにもかかわらず、この協定の締結を強行するおつもりかどうか、この点を伺いたいと思います。
  261. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま申し上げましたように、われわれといたしましては、日韓大陸棚協定が中国の権利を不当に侵しているものではないというふうに信じております。そしてまた、大陸棚協定を早期に批准することがわが国国益にとってきわめて重要であるというふうに考えている点も事実でございます。  私どもといたしましては、日韓大陸棚協定について速やかな御承認をいただきたいというふうに念願している次第でございます。
  262. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、外務大臣に一言伺いますが、現実に中国からそのような抗議がなされたという本日の報道等も踏まえて、果たしてそういうことに対して日本政府としてはどのように対処されるのか、このことについての御意見を伺いたいと思います。
  263. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私、まだ中国から正式な抗議があったということを聞いていないのでございます。中国側がかねてからいまおっしゃいましたような考え方を持っている、そして中国といたしまして決して日韓間の大陸棚協定を承認したわけではない、かつて外務スポークスマンの声明がございまして、中国としては依然として今日でも同じ考え方を持っているのだという意思表示は承っておるわけでございます。  それに対しまして、わが国外務省といたしましても、中国の立場を決して損なうものでないということを数次にわたって御説明してあるわけでございますが、中国側が、日本政府の言っていることはよしわかったという表明は絶対にいたさないで今日まできている、こういう状態でございまして、私どもこの問題の理解のためには誠心誠意意を尽くす考えでおりまして、いやしくもこのことが日中間の障害になるというようなことはないように私どもは最大限の努力をいたす、こういうつもりでいるわけでございます。
  264. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最大限の努力に対しては私たちも敬意を表する、また表していくつもりですけれども、中国との間に支障を来さないという考え方は、まだまだ、大変失礼ですけれども甘いのではなかろうか、このように思うわけで、政府はそれでは中国から正式に意思表示があった場合、交渉に応ずると以前言ってこられたわけですけれども、今回の中国の抗議によっていよいよその必要性が出てきたのじゃないかと私は思うわけで、われわれは、問題のあるこの日韓共同開発協定の批准というものを一時中断をしてでもまず中国との交渉を行うべきではないか。政府はこの事態においてもなお協定の成立を強行しようとされるのか。もしわれわれの警告にもかかわらずこの協定を成立させるために将来の日中関係あるいは朝鮮民主主義人民共和国との関係が悪化した場合に、その責任は挙げて政府にあることを銘記すべきじゃないだろうかと私は思うわけです。この点についていま一度お答えをいただきたいと思います。
  265. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 中国との関係につきましては、先ほど申し述べましたとおり中国側の理解を得るように努力をいたす所存でございます。  それからこの問題がほかの国との外交上非常に障害になるのではないかというような御指摘でございますけれども、そのようなことがないように、そして私どもといたしましては、もう署名してから三年になりますし、韓国側の国会の承認を得てからも二年を超えたわけでございますので、やはり本協定につきましてはどうか御承認を賜りたいと心からお願いを申し上げる次第でございます。
  266. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 二年たったあるいは三年たったという期間の問題もさることながら、私はもっともっと本質的な、ただ単に日本と韓国だけの問題ではないのだという全体観に立った御判断というものがやはりいま一番要求されているのじゃないか。それは二年たった、三年たったという時期の問題もあろうかと思いますけれども、それを急いだために他国間とのいろいろな問題が火を噴くようなことがあっては断じてならないのじゃないかと私は思います。したがって、政府共同開発区域が日韓だけに関係する大陸だなである、このように言っておられますけれども、これは四月二十三日、一昨日の外務委員会で参考人の方々に対する質問を私もいたしました。この御答弁に照らしても、あくまでもそういった考え方は誤りであるということもわかってきた。政府の非常に独断的な解釈というものが表面に出てきたことを痛感した次第ですけれども、われわれは少なくとも日本、中国、それから韓国、朝鮮民主主義人民共和国、この四カ国の公正な合意のもとに区画というものが設定されなければ問題は解決をしない、しかも将来紛争の火種となるおそれが当然これはもう考えられている、そういうものがひそんでいる。われわれはこういう見通しに立って政府に厳しい警告とまた反省を要求するものでありますけれども、この点についての政府の御見解をいま一度聞かしていただきたい。ましてや採決そのものを強行するというようなことがもしもあるならば、これは国益を度外視した暴挙である、議会制民主主義をじゅうりんすることであって、われわれの断じて許すことのできない問題であると私は思いますけれども、非常に重要な時期に到来しているだけに、これらのことに対しての御見解を伺いたいと思います。
  267. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘になりましたような関係国、中国あるいは朝鮮民主主義人民共和国、これらの国々の参加を得て大陸だなというものが多数国間で決まり得れば、これは大変結構なことでありますけれども、残念ながら韓国と中国との間に国交がないということ、またわが国と朝鮮民主主義人民共和国との間に国交がないというようなことから、現実におきましてそのようなことが行われがたいことは中川先生もよく御承知のところと思うわけでございまして、今日エネルギー問題が急がれておるという段階で、日本と韓国との間で他の関係国の利益を絶対に侵さないのだという慎重な配慮のもとに二国間の協定をして、そしてこの地域の開発に当たる、こういうことでございますので、何とぞ御理解を賜りたい、また慎重な御審議を尽くされた上で御承認を賜りたいというのが私どもの考えでございます。
  268. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どうしても今日の現状を踏まえて慎重に考えるならば、いまの御答弁だけでは私はなかなか納得のいかないものがあるわけで、将来紛争の火種と先ほど私は申しましたけれども、ここでさらにこれを警告するとともに、再度反省を促してまいりたい。慎重に対処していかなければえらいことになるという時期が日一日と近づいているような実感がいたしますので、このことを申し添えて次の問題に移ってまいりたいと思います。  領海法について若干お聞きしてまいりたいと思います。  十二海里領海法を国際的に認知させるためにどういう措置が必要であるかということについて伺いたいと思いますが、たとえば領海法が制定されると同時に国際的にそれが有効となるような措置、こういうものをとられるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  269. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  領海法が成立いたしますれば、諸外国の例にもありますように、わが国といたしましては諸外国にこれを通報する措置をとりたい。通報するのは外交上のルートを通ずる等の手段によりまして通報をいたしたいと考えております。
  270. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 わが国周辺領海が十二海里となることによってわが国領海内の無害通航、これが認められる航路をひとつここで明示していただきたい、これが第一点。  それから無害通航が認められた航路以外の領海内を通航する外国船舶、これは当然領海侵犯となると私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  271. 中島敏次郎

    中島政府委員 領海におきますところの外国船舶の無害通航の権利は、領海が三海里から十二海里に拡張されましてもそのまま国際法上の権利として存続するということでございます。  それから領海侵犯とおっしゃられましたが、外国船舶は無害通航をする限りにおいて当然にわが領海内を通航し得るわけでございます。
  272. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 このことについてずっと詰めてはみたいのですが、まだかなりお聞きしたいことがあるので、このことは資料として、今度十二海里になることによって無害通航が認められる航路そのものを明示した資料、これをすべてにわたる資料というものをいただけるかどうか、これは法律が制定されてしまってからでは間に合わないので、それ以前の一日も早く、ちょうどきょうお集まりの連合審査委員の皆さんに渡るようにこれのひとつ提出方をお願いをしたいと思います。
  273. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 関係の資料あるいは海図、図面、そういうようなものにつきましても資料を提出をいたします。
  274. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もう一点だけこのことに関連をして聞きたいと思うのですが、日本政府はこの無害通航を認める航路というものをあくまでも公示する必要があるのじゃないか、このように思いますが、これはいかがでしょう。
  275. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 一般領海内でありましても無害通航はできることが国際法上の原則でありますので、いまお尋ね趣旨が、現実にどの程度の外国船舶が通っておるであろうかというような資料でございましたならば、これは海上保安庁でどの程度把握されておられますか存じませんが、一般的に、領海通航の航路ということはちょっと観念上ないのではないかと思うわけでございます。
  276. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私が申し上げたのは、この十二海里になることによって、わが国領海内の無害通航ですね、これが認められる航路というものが当然考えられるわけですが、この航路を公示する必要があるんではないでしょうかと、こういうことです。
  277. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま外務大臣からお答えがありましたように、無害通航というのは特定の航路を通っていかなければならないということではございませんで、一般的に言いまして、領海の中を、その沿岸国の平和、秩序または安全を害しない限りで航行することを言うわけでございます。したがいまして、それが具体的にどこの航路を通らなければならないということはないわけでございまして、ただ、先生おっしゃられるように、一般的に言って外国の船舶が通常通るような航路がどこが多いかというようなことは、恐らく海上保安庁としても概略のことは把握しておられると思いますが、法律上どこを通らなければいけないということはないという意味において、外務大臣のお答えされたとおりということでございます。
  278. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは次に伺うことは、暫定措置としてこの領海を三海里にする海峡の地点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。  たとえば、津軽海峡宗谷海峡、これはどこからどこまでを三海里とするか、また対馬海峡東、西、大隅海峡の三海里の部分はどうなるか、この辺をお答えをいただきたいと思います。
  279. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御質問特定海域の具体的な線引きでございますけれども、法律上は政令で定めるということになっております。  これは線引きの図示をいたしませんとよくおわかりにならぬと思いますが、その図示につきましては、すでに委員会の方に資料として御提出いたしておるわけでございますけれども、簡単に申し上げますと、宗谷海峡津軽海峡、対馬海峡の東水道、西水道、大隅海峡、その海峡そのものとそれに隣接する海峡を含みまして、一定の航路の方向というものを考え、かつ船が通航するに十分な幅というものを考えましてそれぞれ線引きをいたすつもりでございまして、案につきましては、すでに委員会の方にお手元に配付いたしてある次第でございます。
  280. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これらも具体的な資料として御提出がいただけるかどうか。私は、法律を提出しながら政令でもって出すということは実に怠慢じゃないか、このように思うわけですけれども、具体的な資料を法律が制定される前に一日も早く御提出をいただけるかどうか。
  281. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほどもお答えいたしたと思いますけれども農林水産委員会の方にはすでに提出してございますので、これで足りなければさらに御提出いたします。
  282. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 国際的にそのことを周知させるための何らかの措置をとる必要があるんではないかと私は思います。こういった何らかの措置がなければ常に領海侵犯が起こるんじゃないかというようなことも懸念される、この点はいかがでしょうか。
  283. 岡安誠

    ○岡安政府委員 当然のことでございまして、政令でもって明らかにした場合には、諸外国に対しましては、大使館等の外交ルートを通じまして周知徹底を図りたい。それがいわば法律施行に要する期間の中に入っているという意味でございます。
  284. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 政府海洋法会議の決定があるまでの暫定措置だと弁解しておられますけれども、現在までの海洋法会議における一般的な傾向というものはどういうものか、いわゆる国際海峡自由通航が大勢であるのか、またはこの無害通航が大勢であるか、このどちらでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  285. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  海洋法会議におきましては、領海を十二海里にするということとの関連で、国際海峡における通航制度をどうすべきかという点が当初から問題になっていたわけでございます。この点につきまして、先進海運国は、できるだけ公海と同じような通航制度が、いわゆるこれら国際海峡において採用されるべきであるという考え方でございまして、また一部海峡沿岸国は、一般領海と同じ無害通航制度でよいではないかという考え方も当初とっておられましたが、それらがいろいろ議論を重ねました結果、現在では、大体においていわゆる妨げられない通過通航制度ということでいくべきではないかという考え方に収斂されつつあるということでございます。
  286. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これは各国が従来の傾向として自由通航であるか、無害通航であるかという主張のどちらが大勢を占めているかといったような――またまたこれは資料で恐縮ですが、こういう資料として御提出はいただけるものですか。
  287. 中島敏次郎

    中島政府委員 その点につきましては、実は海洋法会議は、先生御承知のように非常に広範な海洋の諸問題を全部取り上げまして一括の解決を期しているわけでございまして、そういう意味で非常に複雑な問題を片づけるために、各国それぞれが会議の議事の上で行っております主張を一々外に発表するという形になることは、こういう複雑な問題をまとめるのに必ずしも適したやり方ではないであろうということで、今度の海洋法会議におきましては、各国がそれぞれ、特定の国がどういう主張をとったか、立場をとったかということは外に出さないということで、むしろ自由な討論を重ねるというかっこうで討議が行われております。したがいまして、その一つ立場をとる国がどことどことどこであるというようなことを申し上げるのは控えさせていただきたいというふうに存じます。  いずれにせよ、一般的に言いまして、先ほど申し上げましたように、無害通航でよいではないかという考え方を当初とりましたのはいわゆる海峡の沿岸諸国でございます。公海のような自由な制度をとるべきだという考え方をとりましたのは、一般的に申しまして海運先進国である。ところが、いまそれがどうなっておるかを具体的にとおっしゃられました観点から申し上げることができる点があるとすれば、それは議長がそれら各国の主張に耳を傾けつつ大勢のおもむくところは大体こういうところであろうということで書きおろしましたのがいまの非公式単一草案でございまして、非公式単一草案がいまの大勢を表示したものだというふうにお考えいただいて間違いはないのじゃないかというふうに考えております。
  288. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間が本当に残り少ないものですから、きょうはあと二、三点だけどうしてもお聞きしておきたいということを伺ってまいりたいと思いますが、二百海里法案が国会に提出されているわけですけれども、この法が適用される範囲は当然十二海里から二百海里の間の水域である、このように思うわけですが、この点はどうか。もし外国漁船が十二海里以内で操業した場合の罰則、それと、二百海里水域内で漁業をした場合の罰則、この辺の違いを伺ってまいりたいと思います。  それから、二百海里法は米ソ、特にソ連の二百海里法に対応して制定されたものでありますから、罰則もこれに対応したものでなければならないと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  289. 岡安誠

    ○岡安政府委員 漁業水域わが国の沿岸の基線から二百海里でございますけれども領海を除かれた水域ということになるわけでございまして、領海並びにその漁業水域に関する外国船の操業に対する罰則でございますけれども、まず、領海内の外国漁船の操業に対します罰則は、外国人漁業の規制に関する法律というのがございまして、これによって外国船の領海内操業は禁止されておりますので、違反をすれば、同法の第九条の規定に基づきまして、三年以下の懲役もしくは二十万円以下の罰金ということになっております。  なおつけ加えますと、今回の漁業水域に関する法律の附則によりまして外国人漁業の規制に関する法律の一部を改正いたします。と申しますのは、現在外国人漁業の規制に関する法律では外国人の漁業に関してのみ禁止をいたしておりますので、今回さらに外国人の水産動植物の採捕というものにつきましても同様に禁止するということに改正いたしておるわけでございます。それから漁業水域内の操業でございますけれども、これはわが国の許可を受ければ外国人も操業ができるわけでございまして、許可を受けないでとかまた許可の条件等に違反をして操業した場合ということになるわけでございますが、それに対しましては一千万円以下の罰金等が課されるというような罰則が課されておるわけでございます。
  290. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは最後に二つばかり問題を一括してお伺いしたいと思います。  最近この二百海里水域における監視体制に積極的に参加の希望が防衛庁から表明されておりますけれども、その場合まず外国違法漁船が逃走する際警備に当たる海上自衛艦に発砲することが考えられるわけでありますけれども、また自衛艦も自衛上これに武力を行使するおそれが考えられる。この場合は海上保安庁の巡視船とはいわゆる国際法上の性質を異にするのであってきわめて危険な関係を招来するおそれがあると思いますが、自衛艦のこの監視体制そのものへの参加についての政府の御見解をまず第一点として伺いたいと思います。  これに関連をして最後に伺っておきたいことは、わが国の二百海里漁業水域における外国の違法漁船に対する追跡権、これはどうなっているか。わが方の追跡権は二百海里外の公海にも及ぶかどうか、この辺について最後に御答弁をいただきたいと思います。
  291. 三原朝雄

    三原国務大臣 漁業海域、いわゆる水域について海上自衛隊が特にこの任務について熱心に検討を進めておるというようないまのお話でございますが、特別にそうした事態はございません。あくまでも海上一般警備等につきましては海上保安庁においてその任務を遂行しておられるわけでございます。したがいまして、海上保安庁のお立場で特別な要請等でもございますれば、そういうときには海上自衛隊協力をするという体制にもっていくということになろうと思うわけでございます。いま特別そうした変わった体制をとっているわけではございません。
  292. 中島敏次郎

    中島政府委員 第二番目のお尋ねは、わが国漁業水域内において違法操業を行う外国船に対して二百海里水域外の公海に及んでわが国が追跡権を行使し得るかというお尋ねと承りましたが、この点につきましてはただいまの海洋法会議における単一草案におきましても第九十九条第二項というのがございまして、二百海里の水域に関しても通常の領海における場合に認められている追跡権を準用するという規定がございます。したがいまして、海洋法会議の場におきましてはそのような二百海里の水域についても追跡権を認めることが合理的であろうという考え方で草案がつくられております。  なお、この点につきましては詳細についてまだ討議が固まっておりませんので、なおしばらく海洋法会議審議の模様を見る必要があろうというふうに考えております。
  293. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もう時間が参りましたので最後に。  先ほど防衛庁長官からの御答弁ですけれども海上自衛隊協力の要請があった場合にはというお言葉もあったわけで、こういうことがもし起こるといろいろめんどうな問題に発展をするのじゃないかということにおいて、また改めてこのことに関連をして機会を得て質問をさせていただくということで終了したいと思います。
  294. 金子岩三

    金子委員長 渡部一郎君。
  295. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず十二海里法案、二百海里法案が国会で成立しますと対ソ漁業交渉で具体的に申しますとどのぐらいのメリットがあるものか、そういうふうにもっぱら御説明が行われているわけでありますが、私は重大な疑いを感じざるを得ないわけでありまして、明快にひとつその辺をお示しをいただきたいと存じます。
  296. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は三月三日にイシコフさんとの間に合意文書を交換いたしましたが、その際にもわが方におきましても近く漁業水域を設定する方針であるということを明確にいたしてあるわけでございます。私は、ソ連領海十二海里でございますし、また漁業専管水域二百海里である、わが方も共通の土俵で話し合いをいたしますことがすべての条文の成文化の問題その他でも整理した話し合いができる、こういうようなことで十分メリットがある、これからやるのだということよりも、こういうことに日本の国会の御承認も得ておるという事態を踏まえて交渉することが大変メリットがある、このように考えております。
  297. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまメリットがある――余り詳しく言うと交渉上都合が悪いのかもしれませんから私はその辺は手かげんして申し上げるつもりですが、本当にメリットが、整理した話し合いができるとおっしゃっていますが、外交論議の上からいきますとそれは余りメリットにならないのではないかと思うわけです。  外務省の方に今度伺いますが、鈴木大臣は交渉当事者ですから余りこれ以上しゃべるとまずいだろうと思いますからちょっと引っ込んでおいていただいて、外務省に理論的にこれは伺うわけでありますが、現在北方四島及び千島列島についての領有権、立法、司法、行政の三権を保有する国はどこであるか伺いたい。
  298. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 千島列島におきまして現実の施政が行われている、その行っている国はどこかということになれば、疑いもなくソ連が現実の施政を行っておるということは間違いないと思います。
  299. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますとその領有権もまた現実にソビエト側が保有しているということを表明されたことになるわけでありますが、そうしますとわが国側がこの北方四島に対して主張できる権利というのは一体何なのか私は伺いたい。それはサンフランシスコ平和条約の際、沖繩に対して言われていたような潜在的な主権、潜在主権と言うべきようなものであるのか、あるいは将来返還されることを見通して将来返還された時点から発生する領有権の主張であるのか、あるいは将来の返還の見通しもつかないでわれわれとしてはその地域に対する領有を主張することのできる単なる主張するだけの権利しか持っていないのか、非常に粗く言っているわけですがどれだと思われますか。また別のものだったら別のものと御返事いただきたい。
  300. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問はまことにむずかしい問題を含んでおると思います。わが国は本来固有の領土であるということを主張いたしておるわけでございまして、ソ連がいま施政を行っていることにつきましては法的根拠がないということを主張いたしておるわけでございます。しかし他方におきまして日ソ間には戦後処理としての平和条約が未締結である、こういう状態にあるわけでありますから、これが沖繩のように明らかに潜在主権があるということでもありませんし、またこの点についての法律的な解釈につきましてはわが国として不法に占拠をされておる、このような主張をいたしておるものでありますので、この点につきまして条約局長からもう一度御答弁させていただきたいと思います。
  301. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま外務大臣から御答弁がございましたように、この四つの島に対しましては、わが国はこれはわが国の固有の領土である、サンフランシスコ平和条約第二条で放棄いたしました千島列島には入っていない、したがいまして、これら四島はわが国領土であるというのがわが国立場でございまして、外務大臣からもお話がございましたように、他方わが国の現実の施政がこの地域に及んでいないこともまた事実の問題として事実そのとおりでございますが、わが国の法的な立場は先ほど申し上げましたようなことでありますので、わが国ソ連がこれらの地域を占有しておりますのは法律的な根拠なくしてこれを行っておるという意味で不法であるということでございます。  なお、先生からもお話がありました潜在主権主張したものかという点につきましては、外務大臣がお答えになりましたようにわが国は施政権の行使をソ連に認めているわけではないわけでございまして、これは平和条約第三条によるところのかつての沖繩の地位とは違うわけでございまして、そういう意味では潜在主権を持っているにすぎないということではないということでございます。
  302. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると現に施政権がその地域に及んでいないとすれば、施政権の及んでいない地域の海面に対する領海主張あるいは二百海里線の主張等というものは、現実の主体となるべき領土に対する主権が施行されていないわけですから、それは単なる架空の期待であるというのが妥当ではないかと思いますが、どうですか。
  303. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもは現実の施政が行われておらないというふうに言うべきであろうと思います。施政をし得る主権というものは、私どもは固有の領土であるという意味で主権主張をいたしておるわけでございますので、その点は現実の施政が行われてないというふうに御理解をいただきたいのであります。
  304. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 現実の施政が及んでいないということと施政つまり主権主張する立場にあるということとは話は別ですね。それを二つに分けますと、まずいま主権が及んでないのですから、主権が及んでない地域についてたとえば何かを想定したり物を言ったりすることは奇妙なことですね。たとえばいまは漁業権に対する主張を二百海里線でしようとしているわけですが、主権が及んでいない四島の上で犯罪があったときにその裁判権は日本側にあると日本主張しますか。ですからいま言っていることと同じですね。この四島がこっちのものであるならば、その地域の海面についてはわが方は漁業権があると主張することになりましょう。同じように領土がこっちへ返ってきた場合には、そこについて土地の税金の申告も支払いも、裁判の権利もあるいは不動産保有税についても地方税についてもあるいは固定資産税についても租税公課というものは全部行うというたてまえにならなければならぬわけですね。ところが日本政府はそう言ってないわけですよ。たとえば北方四島の戸籍について、これは実質的には停止されておるわけですね。停止状態にある。日本のいままでの法律的な立場から言うと、北方四島について二百海里線を引くというのは、かけ声だけは勇ましいけれども実体は全くない架空の主張になるのではないか、こう思いますが、どうですか。
  305. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘のような点につきまして、私どもは本来の固有の領土であるという主張をいたしておるわけでございます。(渡部(一)委員主張はね」と呼ぶ)主張をいたしております。現実はどうかというと、現実は支配されておる、わが国の施政が及んでおらない。その状態を呼びましてソ連が法的な根拠なく占有しておる状態であるというふうに理解をいたしておるわけでございまして、返還という場合は、先方が一度領有したものを日本に返してくれということになるわけでございますが、日本国民の考え方はそうではなくして、いまソ連が現実に占有しているものを正しい所有者である日本に引き渡すべきである、このような主張をしておるのだと理解をいたしておりますので、したがいまして、そのような地域につきまして領海の問題は日本としても領海を持っておるべきであるし、また、それを根拠として二百海里の漁業水域を設ける場合におきましても、日本は本来持っておるところの領有に基づいて、本来の日本の固有の領土であるということに基づいて漁業水域主張すべきである、こういう立場をとってしかるべきものと考えるわけでございます。
  306. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣に申し上げますけれども、大臣もよくおわかりで御返事でしょうから、いま私たちがこの領土について日本の固有の領土であるという主張をし、先方の立場を不法占拠だと主張することは、主張としてはできると思います。しかし、現実に占領されているという事実、そして現実に占領されて実効的な支配を行っているのは先方であるという事実は、そこの海面に対する漁業権の行使もまた先方が現実的に行い得るものである、ここはこのとおりでなければならぬと思いますが、どうですか。
  307. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北方四島につきましてのいわゆる閣僚会議決定につきまして(渡部(一)委員「と関係なしに」と呼ぶ)そうですか。それに対しましてわが国は、国としてはそれに対して異議を申し立てておるわけでございまして、鈴木農林大臣の御苦心なさっているのもまさにその点にあるわけでございます。そういう考え方で臨んでおる。ただ、先ほど来お話がございました漁業問題は漁業問題として解決を図る必要がある。その場合におきまして、漁業問題の解決が領土問題の方に悪い影響が及ばないように、こういう考え方であるわけでございます。したがいまして、他方におきまして、領土問題としてはこれは年来の悲願を一日も早く達成するように私どもは努力をいたす、こういう立場でございます。
  308. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは、いま私が言わんとしているのもまさにそのポイントなんですけれども領土を現に先方が実効的に支配している。そうすると、その領土権の一部として領土を占有しているということから、その海面十二海里に対する実効的な支配、あるいは二百海里線に対する実効的な支配というのがくっついて出てくるわけですね。だからこれはワンセットになっておる。ところがこちら側は、その領有権が間違いだからその魚に対する主張も間違いだという立場で要求をする、それはこちらの立場ですね。しかし、それは要求しているということであって、支配しているということではないわけです。だから、その地域における魚の問題あるいは漁業権の問題を解決しようとすれば、どうしてもこの領土権の問題にさわらざるを得ないわけですね。だから、それを切り離そうという議論がおかしいのではないかと私は一つは申し上げたい。一緒にくっついているのだから、ばらばらに分けるわけにいかないでしょうと申し上げておるのです。だから、先方が自分の領土に対する支配権というものは不法であるという認識を持たない限りは、日本側の特定の漁業権に対して、しかも自分の領有権を侵すような形で漁業権を認めるということはあり得ないのではないか。それは国際法上の法理から言ったらおかしいんではありませんか。冷酷にそうした状況を見つめることが大事なのではないか。  すぐお答えにならぬでいいですから、例を申し上げますよ。今度は向こう側の立場になったら、自分が現に支配しているところ、自分が現に支配している領土に対して、その立法、司法等三権に分けて考えれば、そこに対する権利、権原を行使するについて、先方はそれを侵そうとする日本側の試みに対して反発する。また、魚をとりに行きたいという希望に対して、それは特定の要求として、たとえば恩恵として施す場合は別として、その中に線を引っ張ってきて、二百海里線なんかをさっと相手の方が引っ張ってきたとする、そうしたらソビエト側では怒り出す理由が十分にあるのではないか、かえって問題を混乱させることになるのではないか、こういう疑問が出てきますが、どうですか。それはまさにこの問題をますます解決しないことになるんではないかと私は思うのですね。その点はいかがですか。
  309. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先方の立場に立てば、先方がみずから支配をしておる地域につきまして領海主張し、また今回漁業専管水域主張するということは、先方の主張として行われておる。そして、それがいま鈴木農林大臣が何回も会談されて、この解決が今日までついてないというその根本の問題があろうかと思うのでございます。  一方、わが国立場といたしまして、先ほど来申し述べましたような立場をとっておりますので、このわが国主張を、この漁業の問題のときに先方の主張を認めるということが、これは御指摘のようになかなかむずかしい問題であるということは事実でございます。その点の大変むずかしい問題につきまして、鈴木農林大臣が御苦心をされておるところのものでございます。そういう意味で私どもといたしまして、この漁業問題が領土問題に、お互いに、日本もこの際領土問題に対して大変有利な立場に立つために何らかの努力をしておる、こういうことになりますと、先方はなかなかこれまた応ずることがむずかしい、また日本といたしましても、先方がこの際領土問題についての既成事実をつくり上げたいというようなことを考えますと、また当方も解決がむずかしい、こういうことが現実の姿であるわけで、そこが、漁業領土問題とは別個に解決を図るということを考えているゆえんのところであるわけでございます。
  310. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、御意見はだんだん一致してきましたが、交渉するポイントは二つしかない。一つ領土問題に対するわが方の立場を明快に述べて、領土問題に対する合意を取りつけて、堂々とその地域に漁業権を行使するというのが一つです。だから、これは領土と魚を分離するという案ではない。領土も魚も同時交渉を行う、そして多年の懸案を解決してかかる、こういうのが一つの手だと私は思うのです。お認めくださいますでしょう。  もう一つは、領土と魚を分離して交渉しようという立場です。この場合は、先方の領有権主張にわが方の主張がひっかからないようにするというのがこつです。なぜかと言えば、領有権主張と絡めばこちら側も譲ることができないからです。ですから、領土権あるいは領有権、あるいは権利、権原の主張に関しては一切先方の主張というのにさわらないで交渉する、こういうように態度を分けなければならないと私は思いますが、どうですか、外務大臣
  311. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領土問題につきまして、これは領土問題としてこれらを解決して平和条約にこぎつける、こういうことは、現在ますますその必要が強くなっておるということは御指摘のとおりだと思います。私もその点につきましてはわかるわけでありますが、それを同時に、いま一緒にやるということになりますと、これは大変漁業問題の解決をおくらすことになりはしないかというのが、これは総理以下皆様方の御心配の点であります。しかし、さればといって、領土問題の解決をおくらすということは、今日の事態では、これは一日も早い、これも早い方がいいにこしたことはないわけですが、この問題はなかなか困難な交渉になるということは過去の例からも当然予想されるところでありますので、いま渡部委員お述べになりました後の方も可能性を、これは選択の幅は非常に狭いわけでありますけれども領土問題と切り離して、そして領土問題に悪い影響を与えない、こういうことで鈴木農林大臣が御苦労をされておる、こうお考えいただきたいわけであります。
  312. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣のいまの御答弁は、もう明瞭に大事なポイントを逃げて言われているわけですけれども領土と魚を分けて交渉するというのなら、魚だけやりなさいと私は言っているわけです。魚の交渉のときに二百海里線なんかをさっと引いたのを鈴木さんに持たせてやれば、向こうは、自分の領土権を侵害したという立場から、鈴木農林大臣にソビエト側の領土領海、領空に対する権原を認めさせるまではがんばらなければならないでしょう。それはかえってまずいことになるのではないでしょうか。だから、お魚と領土に関することを分けて、これは、外務大臣が来たときこれについては十分お話しいたしますと、魚だけやります、ともかくとらせてくださいと言うしかないんではないですか。ところが、魚の交渉の真っ最中に領土問題についての発言とこれは抵触するなどというふうな議論鈴木さんを締め上げれば、結局鈴木さんは交渉の余地というのはなくなってくる。鈴木さんは領土と魚とを両方失った大臣として永久に記録されるしかない。だから外務大臣は、陰に隠れてないで、正面に躍り出してきて、領土はこちらでやってごらんに入れます、そちらは魚ですと交渉を分けなければいけないじゃないですか。私は、その点したがって、今度の二百海里法案、十二海里法案の出し方を見ていますと、その辺が混乱しているのではないか。魚と領土をこちらもわざわざまぜ合わせて交渉しているのではないかと見えますが、どうですか。先方がどんなことを主張しようとも、領土に関してどんなことを主張しようとも、それは先方が現に保有している北方四島に対して、それを現実的に支配しているという立場から組み出されてくる提案なんですから、わが方にとって認めがたいことは当然であります。しかし、それを覆そうとしてけんかすれば、魚も領土も失うことになるでありましょう。その辺、わざわざまぜて交渉させようというおつもりなのかどうなのか。外務大臣、恐縮ですけれども、あなたに御答弁求めなければ仕方がない。鈴木さんはこれから交渉する人ですから、私は聞きたくない。あなたにわざわざ聞きたい。もしよければこの問題は総理に聞きたい。さあどっちにするのですか。領土も魚も失うのか、領土だけを失うのかあるいは魚だけ失うのか。この交渉の仕方を見ておりますと、領土と魚の問題を混乱させているのではないか、私はそう思いますね。どう思われますか。
  313. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 鈴木大臣が交渉に当たられるわけでございます。しかし、私の立場といたしましても、ここで議論が同じ対象でありますれば、やはり私といたしましてもこれから交渉に当たられる鈴木大臣のお立場を考えまして、交渉の幅は非常に狭いですけれども、なるべく交渉の幅をもって交渉に当たられるべきであろうと思います。  そして、先刻来申し上げていることは、わが国といたしましては北方四島は固有の領土であるという前提に立っての、その領海がどうであるか、専管水域をどうするか、こういうことを申し述べておるのでありまして、このたてまえを申し述べておるわけでございます。鈴木農林大臣が先方へ行って交渉をなさいます場合のいろいろな点が検討されると思われますけれども、たてまえ論と現実論というものがあるわけでございますから、その点につきましては私の立場からいたしましても、一体どうするんだ、こう御質問がありましても、やはり鈴木大臣と同様にそれ以上のことは交渉にわたることでありますので、その点は御理解を賜りたいのでございます。
  314. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 要するに、それではほとんど交渉にならないんではないかと私は思いますね。  では、今度は別の方から言いましょうか。日本が今度二百海里線を引きますね。今度の法案で二百海里線を引く。領海十二海里線を引いた。ソビエト側はそれを認めると思いますか、認めないと思いますか。大臣お答えいただきたい。特に日本側がもし二百海里線を機械的に引いたら、日本領土基線の外側に二百海里線をばあっと引けば、千島から樺太のところまでさあっと線を引かれるわけです。それをまず認めるかどうか。これが第一問。  第二問は、伝えられるようなやり方で北方四島のところだけをぎざぎざにM型に切り取る、こうした二百海里線をソビエト側は交渉の前提として認めるか認めないか、伺います。
  315. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これはなかなか厳しい御質問でございますが、二百海里のいわゆる線引きと称されておる問題につきまして、これは直接はやはり農林省の方の御担当でございます。具体的にどのような措置をとるかということにつきましても、やはり所管の省の方の御返答があってしかるべきで、そしてさらにそれをソビエト政府が一体すぐ承認するだろうか、これが承認していただけるならば今日までこのように鈴木大臣も御苦労なさらなかったわけでございますから、その辺は私どもとしてこれからいかなる態度で臨むかということにつきまして関係大臣と検討を重ねなければならない問題であるというふうに思います。
  316. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 こんな話はいやな話ですけれども、内側に二百海里線をこうさあっと引っ張ったとします。それはもうソビエト側ではかんかんになって怒るでしょう、特に樺太と千島列島の大半は二百海里線の中へ入ってしまうわけですから。そしていままでの日ソ漁業交渉の経過を見ましても、日ソ漁業委員会のモスクワ及び東京における交渉を見ましても、そんな線を向こうが認めないことはもう明らかでございましょう。第二に、私が申し上げた北方四島のところだけM型に切り取るということだって先方は断じて認めないでありましよう。  そうするとわが国立場二つしかありません。一つは、先ほど外務大臣が言われたとおり、これはたてまえとして申し上げたのです、本音は違うのです、そんなことを支配しようとは毛頭思っていないのです、お許しください、この哀れな日本外務省及び農林省というのはこんなことも言わなければならないのですというような言い方で、へなへなへなっと後ろへ下がるしかない。そうでなかったらその主張を断固貫いて、そしてそこのところに保安庁巡視船も繰り出して先方と体当たりしてでも、その海域を確保しなければならぬということになるでしょう。第二の道はわが国の憲法のたてまえからいっても、平和外交の成り立ちからいっても当然できないことでしょう。そうすると、そういうようなM型の北方四島の海域だけに対してわが方が強烈に国内法制を持った裏づけをもって主張するということは、現実的に一体どういうことになるのか。それはたてまえ行政のたてまえ外交であると言うしかない。  この先例はすでにある。竹島を現実的に支配され、そして竹島の海域に対して海上保安庁の巡視船まで入ることができなくなった現在において、竹島をわが国領土であるとときどき主張するかのごときものであります。そして、そういうような主張を繰り返すということは、同海域、それらの海域においてよけいな紛争をさらに後へ持ち越し、わが国立場をかえって弱めるものになる場合もあり得るということを十分認識しなければならぬだろうと思います。私はまずい方の点から申し上げておるのです。  ところが、今回の十二海里法案、二百海里法案の設定によってそういう難問は一挙に解決し、ソビエト側の主張を払いのけ、その海域に特殊海域が設定されるかのごときニュアンスを国内に与え続けて交渉するということは、国民を誤るものだけではなくて、交渉の後の隣国との友好関係をさらに破壊することになるのではないか、その点は一体どうお考えなんですか。私は奇妙な交渉であると言わざるを得ない。外務大臣がそれはたてまえなんですといま言われた。領土線に対する厳しい現実を考えれば、たてまえなんですといみじくも言われた。諸外国との間でたてまえだとわかってくれというのは、明らかにそれは甘えではないかと私は思います。そんな甘ったれた話が国際外交場裏で通じるのかどうか、私はそう思いますが、どうですか。私はわざわざいま交渉の難点を申し上げました。いかがお考えですか。
  317. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘のこの問題のむずかしさ、まさにそれを詳細に分析されていまお述べになったと私ども拝聴いたしていたわけでございます。この領土問題に対するわが国の従来の主張、これを貫き、しかも今回の漁業交渉におきまして、この領土問題にいささかもわが国として不利な立場に立たされないように努力しなければならない、これが一つの要請でございます。そして他方、伝統的に従来から開発されてきた漁業の権益、これを守らなければならない、この二つわが国として譲れない線があるわけでございます。  それが先方の主張となかなかかみ合わないむずかしさを持っておるわけでございまして、この問題が根本的に解決されるには、領土問題についての解決を得て平和条約の締結を見る、これができなければ根本的な解決というものはないではないかということになれば、私もそのとおりである、そう思うわけでございます。  現状に置かれておりますこの北方四島にソ連政府が実力を持って支配をしておる。この事実に対する、それから来るところの漁業専管水域取り扱い、これが大変むずかしいこと、まさに御指摘のとおりでありますが、そのむずかしい問題につきまして鈴木農林大臣が今日まで御苦労を続けておられるわけでございます。私は渡部先生の分析をされましたことにつきまして異を唱えるものではありませんけれどもわが国としては、この二つの目的を何とか達成をいたしたい、そのために最大限の努力を現在しているのだ、このように考える次第でございます。  そして、この二百海里法が、この問題についてかえって問題を複雑にするではないか、こういうような御指摘でありますが、これにつきましては、やはり同じ土俵をつくった上で話し合いをされるということが一つの転機になり得るというふうに考えておるところでございまして、この点につきましてはぜひとも早急にこの法案に対します御承認を賜りたいのでございまして、何とぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。
  318. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、それは胸の中にじくじたるものが私はあり過ぎると思いますね。それは論理的に最後の部分は矛盾されていると思います。二百海里線の主張をなさる場合には、領土交渉をするという基点にはなり得ても魚のための交渉には私はなり得ないと思います。なぜかと言えば、先方は自分の現に支配する領土領海、領空あるいはそれに付属する二百海里専管水域に対する侵害と認め、自国に対する言うなれば広い意味の侵略行為としてこれをとらえることが可能だからであります。おまえの方はそういうふうに人の線の中に、人の権利、権原の中に線を引くのか、侵入するのか――これは侵略だと見ることが先方は可能です。そう思われたくないならば、私どものこの立場は、むしろこの国内法とともに領土問題に対する主張を掲げて、まさに領土交渉をしなければならぬという立場に追い込まれております。それを無視して魚だけの問題にゆだねようとすれば、魚の交渉はこの領土領海、領空及びそれに伴う二百海里専管水域に対する主張を先方ははじくことによって、魚の方は全く交渉の体をなさないことは明らかではありませんか。私はその部分についての深刻な御認識をいただかなければならないと思います。  ですから、日本の二百海里線を引いた、その中で、先方が軍事演習した、私たちは何と言うのですか。二百海里線の中で日本の漁船が拿捕された、日本はどうするのですか。海賊行為として海上自衛隊が出動するのですか。海上保安庁は取り締まりをどうやってやるのですか。先方の警備艇がぐんぐん侵入してきておる、日本の漁船が追いかけ回されてつかまえられた。その二百海里線というのは一体何なんですか。日本の二百海里線というのはそういういいかげんなものだと思われるじゃありませんか。  アメリカ漁業専管二百海里線は、例のアメリカの準海軍とでも言われるべき沿津警備隊の手によって数十隻の外国漁船を拿捕しても、それを守り抜こうという強い意思によって支えられております。ところがわが方の、日本の二百海里線というのは、初めから、できるときからへなちょこで、できたかできないかわからなくて、できたその日からばか扱いされて、向こうの船がすうすう走り抜けて、日本の漁船が追いかけ回されてつかまえられて、要するに日本の二百海里線はこんなものだよというルールを世界に示すことになるじゃありませんか。守る意思のない国境線なんか広げるのじゃないという言葉がありますけれども、守る意思、守られる力の存在しない二百海里線なんか引くこと自体ナンセンスじゃないですか。どうするつもりなんですか。三大臣どなたでも結構です。  それは単なるたてまえで線を引っ張れば交渉立場上うまくなるなんという甘いものじゃない。国際外交というのは腕力と腕力によって支配される冷厳な世界なんです。ここの委員会で、第一委員室でどなられているぐらいで問題が済むんだったら簡単です。わが国国益はそんな簡単な、単純な理論で守られるものじゃないじゃありませんか。そんなお粗未な考え方交渉なさったらわが国国益を損壊することはなはだしい。私は、自由民主党政府というものが、そういうところに対して本当に深刻に考えて取り組まなかったところがここにあらわれていると思います。どうなさるのですか。二百海里線は、そんなもろいものでいいのですか、漁業専管水域というのは、そんなもので。各国の船ががあっと通る。日本の船は追い回す、向こうとの競合したところは向こうの言うなりになる。そんなものでいいのですか。どうするのですか、これは。重なったところはどうするのですか。向こうが破ったらどうするのですか。明らかにしていただきたい。
  319. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 漁業交渉にわたるようなことはこの席で申し上げないことに渡部さんからの御注意もございましたので、私はその問題には触れませんが、ただ、御承知のように、北方四島の問題は、一九七三年の田中・ブレジネフ会談で戦後未解決の問題である、この戦後未解決の問題を解決をして、平和条約の締結交渉を進めるんだ、こういうことが合意され、共同宣言になっておるわけでございます。  いま日ソ間で戦後未解決の問題ということになりますと、この領土問題以外にないというのが私どもの認識でございます。私は、この戦後未解決の問題であるということを前提にして、日ソ両国の当事者がそれに相応するところの漁業協定第一条の問題をどういうぐあいに扱うかということにかかっておると思うわけでございます。したがいまして、私はソ連の最高指導部に対しても訴えておるわけでございますが、ソ連が、日ソの友好関係維持、発展をさせたい、これがソ連の世界政治の一つの大きな重要な問題である、こういう認識を持つのか、あるいはまた、日本はどうでもいいんだ、日ソの友好関係は壊れてもいいんだ、こういう立場でこの問題に取り組むのであるかどうか、私は、最後にはやはり高度の政治判断というものが両国の首脳の間で持たれなければならない、このように考えます。  先ほど来渡部さんの御意見は、この交渉の非常なむずかしさというものをきわめて浮き彫りに論理的に解明をされました。その点は私も本当に敬意を表し、勉強をさせられたわけでございますが、問題は、いま申し上げた点にあると思うのでございます。私は、そういう立場に立ってこの日ソ問題の打開を図っていきたい、このように考えております。
  320. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まことに悲壮な交渉にお出かけになるわけでありまして、私も言いようがありません。これでは手を縛って、口を縛って、耳をふたしておいて走ってこいというのとほぼ等しい。高度な政治判断という言葉でいま言われましたけれども、こうした形での交渉というのはほとんど交渉になり得ないというのが普通だろうと私は思います。事態は深刻な決着をつけるだろうと私は予測されます。こういうときに私たちがあえて行わなければならないのは、多年にわたりほうり上げてありました領土交渉というものを再開し、これに対しての決着をつけることでなければならぬだろうと私は思います。  この際、申し上げておくのでありますが、未解決の諸問題の中に領土問題が入っているという立場日本政府が堅持されることはわかりますが、それが入っているというふうにソビエト側が完全に合意していると思うことは大きなエラーになるということであります。なぜかと言えば、ソビエト側はあの田中・ブレジネフ共同声明において最終の両方が交換された文書のみが両方の合意であって、領土問題について日本側から何回か発言があったことは認めるが、それを「未解決の諸問題」に入れたことはないと公然と放言をいたしております。そして先般外務省某局長がこれについてわざわざと、日本側のメモの中には明らかにそれを指しているという部分があると述べましたけれども、こうしたものを持ち出すことはほとんど交渉にはなり得ない。先方が認めていない、合意議事録でも合意メモでもない一方的なメモを出してそれを主張するなんというのは、外交上からいって全くそれはナンセンスな出来事であります。しかも、そのときの共同声明は、すでに指摘いたしましたとおり、四十数カ所もエラーのある、誤訳のあるとんでもないものでございました。そして「未解決の諸問題を解決して」とはなっているが、事実上のロシア文を見れば「解決して」とはなっていない、調整してという程度の表現しか使われていない、これは足がかりにはなり得ない。しかもソビエトとの共同宣言において二島返還が事実上示されており、その立場を表示して以来、わが国の不法占拠という主張は非常に減殺されたものになっていることも厳たる事実であります。そういう状況にあるときに、国内に向けて交渉の前途を甘く想像させるということは非常に危険である。私は冷厳な立場から対ソ交渉についての甘い幻想を抱かせるのではなく、わが国としてはそれこそこの二百海里線に対する態度考え方を改めなければならない。二百海里線に対するわが国側の主張は、むしろ第一義的には先方と同じ立場に立つという意味ではなくて、日本の漁民に対する安全操業のできる領域というものを定めるための力のある国内措置であるという立場から、これを見直さなければならない。そしてソビエト側との交渉でこれが交渉の役に立つかどうかについてはむしろ否定的な側面の多いことから、十分の警戒を持つことでなければならない。またその二百海里線を引くに当たっては、わが国側はよほど監視をして、その二百海里線を一たん引いたからには、引いた部分についてはこれを堅持させるという信念と実力が伴わなければならない。そうでなければ、わが国に対する侮りを諸外国からさらに受けることになる。私はそうした部分に関する深刻な御認識を今後ともいただきたいと思うのであります。  また、宗谷海峡とか対馬西海峡のごときソビエトあるいは韓国と接触する海峡面において、この十二海里領海法案はわざわざ三海里にとどめているのでありますが、これなどもってのほかであります。接触する部分において十二海里線を要求すべきところを要求しない。こうしたことは今度は二百海里線において大幅に先方の中に踏み込むと同時に、主張できるところにおいて全く主張しない、この奇妙な外交のやり方というものはまさにわが国国益を損し、わが国の外交上の交渉立場を著しく損壊するものであります。  私は、最近のこの漁業交渉に関連するさまざまの政府の対応というのは、そうした面で非常に重大な難点を含むものと思います。今後の御参考に資するためにきょうは厳しく申し上げたわけでありますが、これはただここで厳しく申し上げているのではない。これから交渉される皆様方に深刻な理解を持っていただいて、少なくとも現政権が交渉するしかないのですから、現政権がもっとふんどしを締め直してやっていただくよう希望いたしまして、私の質問といたします。
  321. 金子岩三

    金子委員長 渡辺朗君。
  322. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、民社党の渡辺朗でございます。ただいま政府の閣僚の方々を先頭に大変困難な日ソ漁業交渉に取り組んでおられます、御心労のほども大変だと思いますが、どうかがんばっていただいて、その際に原則を曲げることなく、本当の意味での国益のために御奮闘をいただきたいと思います。その点、御苦労に対しまして心から感謝を申し上げます。  きょうは、領海の問題に関連いたしまして幾つか関係の方々にお尋ねをいたしたいと思います。  私、日ソ交渉原則を曲げてはならないと同じように、領海というもの、領域というものを決定する場合に、やはり変則的なものであってはならないと思うのです。その点で、今回の領海法につきまして先刻からの政府側の御答弁を承っておりますと、これは総合的に国益観点から決めてきた案である、こういうことをおっしゃっておられます。私はその点、農林大臣、外務大臣に特にお尋ねしたいと思いますけれども、その言わんとしておられる総合的な国益という観点、この中身について、まずお伺いをさしていただきたいと思います。
  323. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 一つは、二百海里時代を迎えまして新しい海洋秩序が形成されつつあるわけでございます。そういう中で、日本の近海におきましては現在領海が三海里であるということで、全く目の前で外国漁船が操業しておる、そのために日本沿岸漁業者漁業の幾多の制約を受け、また漁網、漁具等相当被害も頻発をしておる、とにかく早く領海の幅員を十二海里にしてほしいということは、これは沿岸漁民諸君の切なる要望であるわけでございます。これが第一点でございます。  それから第二点は、いわゆる国際海峡、この問題につきまして御審議を願っているような内容のものにしたわけでございますが、これは御承知のように、わが国海洋国家であり、また海運国家である、また近代工業国家として海外から原材料の輸入もしなければならない、エネルギーの問題としてこれまた大型タンカー等も就航しておる、貿易経済の面で保護貿易ということでなしに本当に自由な貿易ができるように、日本はその置かれておる国情、国柄からいたしましてそういうことを国の基本的な方針にしておるわけでございます。そういう際でございますので、いわゆる国際海峡につきましては一般領海あるいは無害通航よりもより自由な通航制度ということが望ましいということで、国連海洋法会議におきましてもそういう主張を一貫してやってきておるわけでございます。また、海洋法会議意見も、いわゆる国際海峡につきましてはだんだんそういう方向に意見が収斂されつつある、こういうようなこと等からいたしまして、今回領海につきまして、五海峡につきましてはあのような現状を変更しないという措置をとったわけでございます。  第三点は、国是ともいうべき非核原則につきまして、あくまでこれを堅持していくという立場をとっておるわけでございます。その際にいろいろの御意見がありますことも承知をいたしておるところでございます。たとえば、全部十二海里にして、そうしてシーレーンというようなものを設定したらどうかという御意見、あるいは無害通航という制度もあるわけだから、それでやっていくべきではないか、こういう御意見等もございます。また、非核原則につきましても、つくらず、持たず、持ち込ませず、ところが、核積載艦等がただそこを通るということは、持ち込ませずということの別の考え方ではないかという御意見のあることも、私ども伺っておるところでございます。私は、この核積載艦通航は、持ち込ませずという概念とは違うというようなことが、各党各派全部のコンセンサスができて、合意としてわが国非核原則については今後こういう政策をとっていくのだ、これでいくのだという国民的なコンセンサス、国会の御主張がそのように集約をされる、こういうことでありますれば、これも一つ考え方であろうかと思うわけでございます。私は、それらの意見等につきましても、果たして各党の御主張が一致するものであるかどうかということについて疑問を持っておりますし、国是としてとっております非核原則については、各党各派が本当に一体にならなければならないのではないか、こういう考えを持っております。そういうようなことから、総合的な国益というものを判断をして原案のような御提案を申し上げておる、このように御理解を賜りたいと思うわけであります。
  324. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ただいま農林大臣から御発言がありました点、大変重要な点が御指摘ございましたので、それは後ほど触れさしていただきたいと思います。  ただ、そのような総合的な観点の内容をお聞きいたしましたが、にもかかわらず一番大事な主権というものを、領海の幅を一律にするのが原則であり、また主権の当然あるべき姿だと思うのですが、それをみずからここで制限をするという、大変に変則性を生じたわけであります。そういう点について、私はまことに残念なことだと思っております。その点、外務大臣に再度その変則的な十二海里、三海里、こういうような事態にならざるを得なかった、そういう案になってしまったということの背景を、もう一度外務大臣からお聞かせいただけませんでしょうか。
  325. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領海というものは、わが国主権の及ぶ範囲でございますから、これを十二海里に拡張いたします場合には、一律に拡張できることがわが国立場として好ましいことは言を待たないところでございます。しかしながら、他方におきまして、国連海洋法会議の場において、これが十二海里まで広げることの主張をおおむね認める方向に行っておるわけでありますけれども、それとともにいわゆる国際海峡通航問題というものが強く主張をされておって、この二つ先進工業国の間の主張といたしましては、いわばパッケージになっておる、こういう関係にあるわけでございます。  他方、沿岸漁民が外国漁船によって非常な被害を受ける、こういう事態を、海洋法会議結論が出るまで待っていられないということが現実の事態でございますので、お説のように一律に十二海里の領海をとりたいということはやまやまでございますが、この海洋法会議結論が出るまでしばらくの間現状凍結せざるを得ない、まことにこれはやむを得ざるものであるというふうに考えておる次第でございます。
  326. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 まだその点について納得いたしませんけれども、たとえば、よしんば一時的にしろ変則的な領海がここでできたとします。核積載船の通過を阻止することは現実においてはできません。とするならば、将来とも三海里のまま既成事実化していくということが予想されるのではあるまいか、その不安を持っておりますが、外務大臣、どのようにお考えでございましょう。
  327. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この変則的な状態というものは、これは国連海洋法会議結論が出るまでという考えでありますが、海洋法会議結論が非常に長い間出ないというような事態になった場合には、果たしてそれでいいかという問題は当然起ころうかと思います。しかし現状におきまして、私どもといたしましては、海洋法会議結論というもの、これが早く出るように極力努力をいたす、こういう考え方でおるわけでございます。
  328. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先ほども農林大臣がお話しになられましたように、国際海峡の地位という問題、その取り扱いというものは、これは海洋法会議の中におきましても大変重要な一つであった。これが単に通商あるいは漁業、そういう問題だけではなく、安全保障、軍事的な問題とも非常に大きな関係がある。したがって、これは国際的な平和の問題とも非常に大きい関係がある。これを便宜的にあるいはこそくな手段で処理してしまってはならないと思うのです。その点私、外務大臣お尋ねしたいのですけれども、いままで海洋法会議の中で、日本は、国際海峡のステータスにつきまして、あり方についてどのような発言をしてこられましたですか。
  329. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  国連海洋法会議におきますところのいわゆる国際海峡通航制度に関するわが国立場でございますが、この点はたびたびの御論議があったところでございますが、わが国といたしましては、海運立国、貿易立国を旨とする立場からいたしまして、世界のあらゆる地域における、いわゆる国際海峡における船舶の通航制度が、できる限り自由なものであることが望ましいという立場でございまして、そういう意味で、船舶の通航制度につきましても、一般領海におけるよりもより自由な通航制度をつくるべきであるという主張をいたしてきておるわけでございます。
  330. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いよいよ国連海洋法会議もまた新会期が始まりますけれども、ここにおいてはどのような態度をもって臨まれるのでしょうか。いまおっしゃったような形で日本立場主張される、その際に、十二海里と三海里という変則性に対して、国際社会においてどのような批判を受けるか、私は、物笑いになるという懸念を持ちます。その点外務大臣、どのようにお考えでしょう。
  331. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国連海洋法会議におきましては、この十二海里の問題と、公海通過、いわゆる国際海峡通過問題につきましては、おおむお話が煮詰まりつつある段階でございますので、わが国国際海峡通過につきましてその結論を待っておるという態度をとっておりますことにつきましては、海洋法会議としてもその趣旨理解を得られるものであるというふうに考えておるところでございます。
  332. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は私は、無害通航の新たなルールを海洋国家であり海運国家である日本は前々から海洋法会議の中では新しい海洋の秩序をつくるその重要な一環だということで、日本がイニシアをとって提唱していかなければならないものであったと思っております。もともと国際海峡のあり方は沿岸国の恣意にゆだねるべきものではないと私は思いますけれども、特に今日までの海洋法会議に臨む姿勢に私は大変に不満足なものがございますので、今後の海洋法会議に対しては日本がイニシアチブをとっていくぐらいな積極的な姿勢をもって臨んでいただきたい、これを御要望さしていただきたいと思います。  先ほど農林大臣が非常に率直に総合的な判断の中身についてお話しいただきましたことを感謝いたしたいと思います。私、前々から外務大臣お尋ねしたのですけれども非核原則があるから抵触するからこういうような措置を講じたのだというお言葉はいままで聞いておらなかったのです。私はいま率直なお話を聞きましたのであえて申し上げたいと思いますけれども、私ども民社党の立場は、公海から公海に抜けていく場合に領海において、核積載をしているかどうか大変に判定がむずかしい、そのような艦船に対して、これが通過をしたことが即非核原則に言うところの核持ち込みに該当する、このようには考えておりません。まずその点を私ははっきりさしておかないといけないのではあるまいかと思いますが、その観点に立って、十二海里は国家の主権の及ぶ範囲でありますから、津軽であれあるいは大隅であれ、特定海域として指定されたこの地域、私はそういうこそくな手段で例外規定を設けるのではなくて、一律に十二海里で設定すべきだ、そしてその中に通航レーンをつくる、あるいはゾーンをつくるという形でこれを通過させるか、あるいは私が申し上げましたような核積載船とおぼしきもの、これらが通過したこと、通過することは持ち込みではないという原則の解釈に立ってこれからの国際海峡のあり方を考えるべきだ、また、領海法もそのような立場でつくるべきだと私は思っておりますがいかがでございましょう、両大臣、特に御答弁をいただきたいと思います。
  333. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 民社党さんの一貫したその御主張考え方も、私よく承知をいたしております。この非核原則はいままで国会でも超党派の決議もされておりますし、国民的なコンセンサスにもなってきておると私思っております。ただその際に、つくらず、持たず、この点はもう明確になっておるわけでありますが、持ち込ませずという中におきまして、民社党さんのお考えになっておりますように、ただ通過していくだけなんだ、それは持ち込ませずという概念には入らないのだという御意見、この問題につきまして、私は国会全体がわが国非核原則はそうあるべきだという各党各派の御意見が一致をする、また国民的なコンセンサスもそれによって結集される、私はそのことが、一つの大きな政策として国是として打ち出しております非核原則につきましては必要である、こう考えております。それがその認識において各党が全然意見がばらばらである、一致しないということでは適当でない、私はこう考えておることを率直に申し上げる次第でございます。
  334. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 民社党の御主張になっておられます核の持ち込みに対する考え方、単なる通過通航というものは持ち込みではないではないか、こういうお話につきましてはそれなりに理解できるわけでございますけれども、この点につきましては、昭和四十三年並びに四十九年の国会の御審議の際にポラリス型のような常時核装備艦の通航無害通航とは認めない、それがわが国が唯一の核の被爆国として当然ではないかという御議論があったわけで、それにつきまして無害通航とは認めないのだという答弁が行われているわけでございまして、わが国非核原則を非常に厳格に解釈をするのだということについて従来そのような考え方をとったわけでございます。このたび、その点について考え直すことの可否につきまして、鈴木農林大臣からいろいろお話があったわけでございまして、私どももこの点は国会の皆様方のコンセンサスが得られる限りにおきまして何ら異存を持っているわけではございませんが、今日までのところ非核原則についてはわが国の権原の及ぶ限りにおいてこれを厳守してまいるという態度をとっておりますので、その点は御了承を賜りたいと思います。
  335. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 違った角度から一、二御質問をさせていただきたいと思います。  いま領海の拡大あるいは漁業専管水域それから二百海里の経済水域というような思想が具体化されてきておりますけれども、これは国家の管轄権の拡大だということが言えると思います。同時にそれは海に面している国の主権の拡大という考え方が背景にあるというふうに私は思います。その際に、地上の領土における領土権と海洋上における主権、この両者の間に差はございますか、どうでしょうか、外務大臣お答えを……。
  336. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  二百海里の水域、今回の場合には漁業水域でございますが、漁業水域に対して沿岸国が持つ管轄権領土領海に対して国が持っております主権とは異なるものであると考えております。
  337. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは重ねてお尋ねいたします。どのように異なっておりますか。
  338. 中島敏次郎

    中島政府委員 領土領海に対します国の主権は、これは完全なる主権でございます。ただいま御論議になっております二百海里の水域に対する国の管轄権と申しますものは、この法案の場合には、二百海里の水域における漁業資源、水産資源の管理及び保存のための管轄権わが国が有するということでございます。
  339. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この差があるということ、これはこれからの安全保障に対する物の考え方と当然関連が出てまいるわけでございますね。
  340. 中島敏次郎

    中島政府委員 二百海里の漁業水域の法的地位がいかなるものであるかという点が、現に国連海洋法会議において論議をせられているわけでございまして、その法的地位について、ただいまのところ、一致した結論、国際的なコンセンサスが確立しているということではないわけでございますが、この論議は、一部の国は二百海里の水域公海であるという主張をいたし、一部の国は公海ではない、したがって、他国のそこにおけるところの権利は非常に限定されておるという主張をしている国もございます。わが国は、海洋法会議の場合には経済水域でございますが、そこにおけるところの海域の地位は公海である、こういう主張をしているものでございます。したがいまして、二百海里の水域の水産資源に対して、わが国がその有効な管理、保存を図る権利を有することになるという点は事実でございますけれども、その水域の性格自体が基本的には公海である。したがって、公海に伴うところの権利義務関係が依然として支配するという点については、先ほど来申し上げましたような、たとえば、領海におけるわが国主権の行使とは状況が全く異なるというふうに考えているわけでございます。
  341. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 重ねてお尋ねいたします。  そうしますと、公海である、そこに漁業専管水域を設定する、その場合の管轄権の根拠はどこになってまいりますか。よその国がそこの海域漁業をやっている場合、何によってそれを追い出したりあるいは拿捕したり、そういう権原が出てまいりますか。
  342. 中島敏次郎

    中島政府委員 先生のおっしゃっておられるとおりのことを申し上げるわけでございますが、いずれにしろ、二百海里内の漁業資源の有効な保存、管理を図る権原が沿岸国にあるということでありまして、逆に言えば、他国がこの水域内で操業を行います場合には、その管轄権を持っておるところの沿岸国の同意を得て、通常の場合には協定を通じてのみ、その水域内での操業をなし得るということでありまして、したがいまして、沿岸国がその保存、管理のためにつくりましたところの規則に違反する外国船舶の操業がある場合には、沿岸国がこれを取り締まり、裁判管轄権をも行使し得るというのが一般的な考え方でございます。
  343. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は、ここら辺がよくわからないものですから、お尋ねをいたしたいと思います。というのは、領土権と海洋における主権というのは違うんだ、差がある、領土権ほどの排他性は持っていないということだと思いますが、そのように解釈してよろしいですか。
  344. 中島敏次郎

    中島政府委員 御説のように御理解いただいてもよろしいのではないかと思いますが、いずれにしろ、領海に対しますところの沿岸国の有する権原は、これは完全な主権を行使するわけでございます。もちろん、それは国際法に従いました制約には服するわけで、たとえば無害通航の権利を許さなければならないとかいうような制約はございますけれども、それ以外は一般的にフルな主権が行使される。しかるに、二百海里の水域におきましてはわが国の場合には漁業資源の管轄に関してのみ権原を行使し得る、こういうことでございます。
  345. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私はいまの海洋における主権の問題、これとの関連で、これから出てくるいろいろな事態を想定しますと、心配なことがいろいろ出てまいります。と同時に、私はよその国で日本の漁船あるいは商船などが領海侵犯であるとか、あるいはまたそういった協定の違反であるとか、漁業協定の違反であるとかいうようなことで拿捕されたりあるいは罰金を払わざるを得ない、こういうような問題につきましてぜひ教えていただきたいと思います。  特に、私、ここにいらっしゃる防衛庁長官お尋ねをしたいと思うのですが、アメリカの場合、ソ連の場合、あるいは韓国、北朝鮮、中華人民共和国と中華民国、さらにインドネシア、これらの諸国においていろいろ日本の漁船、これが拿捕された例がございますけれども、その拿捕をした先方の、向こう側の国の官庁はどこでございましょう。たとえば向こうの国防省とか、あるいはまた海上保安庁とかいうように各国ずいぶんいろいろな制度があると思いますけれども、これら諸国によって拿捕された日本の漁船を拿捕した方、これの監督官庁、これをちょっと教えていただきたいと思います。
  346. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 拿捕されている相手の国を全部網羅してまた詳しく申し上げてもいいのですが、いま当面ソ連で申し上げますと、拿捕されたのは五十一年で三十五隻拿捕件数がございましたが、これを拿捕しているのは、ソ連では国境警備隊でございます。     〔金子委員長退席、片岡委員長代理着席〕  それから対韓国の関係では、わが方が拿捕されている実績はなくて、むしろこちらが韓国の漁船の取り締まり関係をやっているということでございますが、取り締まりをやりまして相手に引き渡すということをやっておりますが、その相手は韓国は海洋警察隊という組織でございます。  それから、アメリカは、御承知のとおりコーストガードということで、いわば沿岸警備隊、日本海上保安庁に当たるかと思います。
  347. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 後ほど詳しい資料をぜひいただいて勉強さしてもらいたいと思いますが、ただいまのコーストガードにしろ、あるいはソ連の場合、国境警備隊、こういうことになっているようでありますが、この米ソを取り上げてみましても、それぞれの国における海軍はこの問題について、自分の経済水域あるいは漁業専管水域、そういうところの警備というものについてどのような参与をいたしておりますでしょうか、防衛庁長官
  348. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま海上保安庁の方から御答弁がございましたが、私の方も実はどういう機関がこれを取り締まっているのかということをいろいろ調べましたが、なかなかわからないところもございます。しかし、いま申されましたソビエト、これは国境警備隊、国家公安委員会の機関でございます。それからアメリカ合衆国のコーストガードは運輸省がやっているわけでございまして、私ども今度の問題が起きましてからアメリカの海軍の者にこのことも問い合わせましたところが、海軍というのは、やはりいわゆるアメリカの軍事力としての力を持っているものであって、そういった漁業の取り締まり等はコーストガードに任しているんだというようなことを言っておりました。
  349. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、もし海上保安庁の方おられましたらお尋ねをしたいと思いますが、いらっしゃいますでしょうか。――それでは、わが国においての経済漁業専管水域二百海里になった場合、それから十二海里の場合、相当に海域の幅は違うと思います。領海の場合でも日本の本土の面積の三倍ぐらいにふえる、こういうことに計算されるように聞いております。二百海里の経済水域になった場合に、取り締まりをするといっても、ある方の計算によりますと三百八十二万平方キロ、こういうような広がりが出てくるという試算がございます。世界で七番目の広さになるというようなことを聞いておりますけれども海上保安庁、いまどのような能力、機能をお持ちでございましょうか、お尋ねをいたします。
  350. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現在の海上保安庁任務でございますけれども、保安庁法の第二条で、法令の海上における励行、それから海難救助、それから犯罪の予防、鎮圧、犯人の捜査、逮捕、それから海上交通安全、海洋汚染防止、もちろん水路、灯台という仕事もございますけれども海上安全の確保ということを任務としているということでございまして、領海警備について、海上警備についても第一義的には私どもの仕事であるということでございます。  それから現在の装備は、船艇で申しますと三百十隻、それが北は稚内から南は石垣島まで保安部それから保安署というもので大体百十六保安部署がございますが、そういう基地に配備をしてございます。それから航空機は、固定翼とヘリコプターと合わせまして三十四機ですが、これが十二の航空基地に配備をしてございます。今回の十二海里の問題、二百海里の問題で私ども任務とすべき海上警備を行う海の面積がふえる、仕事がふえるということは当然でございますので、私どもは当面は現在の巡視船艇、航空機を最も有効に利用して、たとえば漁業取り締まりでございますと、どこが重点的な取り締まりを要する場所であろうかということを水産庁、外務省などと、特に相手方の漁船の動向というようなこともいろいろ情報を集めて対処していきたい。ただ、現在の船艇、航空機をもってしましては、いろんな仕事をしておりますので、どうしてもその他の仕事で空白部分を生ずるというようなおそれがないとは思いませんので、整備計画を立てて、船艇、航空機の増強を図っていきたい。さしあたり初年度といたしましては、五十二年度の予算にヘリコプター搭載の巡視船を一隻、それから根室と対馬海峡用に一隻ずつの三十ノットの高速巡視艇、それからヘリコプターを日本海の基地を設けて一機、それから大型航空機の改造を行って一機ということを予算に盛ってございますが、思ったよりも実は早い速度で二百海里時代の到来ということを迎えますので、さらにその整備計画を早目に促進するという必要があって、その見直し作業を現在やっているという現状でございます。
  351. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これは実は私ども国民の立場からいろいろ見ておりますと、大変に心配になってきます。こんな広大な水域というものができてくる。本当にどういうふうにして取り締まりをやるのだろうか。聞くところによりますと、たとえば根室にある飛行基地におきましてビーチクラフトがある。それの航続距離は六百海里、そうすると、これは行って帰ってしまうともうそれで燃料切れになってしまうぐらいなものであります。さらにいまのヘリコプターにいたしましても、五十二年の三月三十一日現在では十九機、そういうものが十二の基地に配属されているということになりますと、大変に心もとない。また、巡視艇あるいは巡視船にいたしましても、そのスピードが大変遅いというようなことを聞いております。そうなると、よその国の漁船よりもスピードが遅いというようなことでどうして管理体制というものができるのだろうか。いま私はお尋ねいたしましたら、空白のできるおそれがあるということを言っておられました。私は、制限された主権であっても、またこれが広大なところであるからということで空白が出てくるというのでは、これは許されないことだと思うのです。どのようにしてこれを整備していったらよろしいのか。漁業専管水域の設定が二年も三年もあるいは五年も後であるならばこれはまた別でありますけれども、十二海里に拡大されるのはすぐであります。また、すぐにしなければいけない。二百海里の漁業専管水域をつくるのもまたすぐであろうと思います。そうした場合に、この空白というものをどう埋めたらよろしいのか、どなたからでも御答弁をいただきたいと思います。
  352. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いまちょっと私の発言が誤解を呼んだような点がございますが、まず、よく巡視船は小さいから遠洋に行けないのじゃないかというようなお話がございます。これは現在私どもが前進哨戒ということで、サケ・マスの出漁期にその漁船のために前線に出て海難救助のために備えたり、それから特に海難事故が多い北洋の時期に北洋に出かけたり、東方の海上に出かけたりあるいは南方は一番遠いところはマリアナ海域まで哨戒に参りますが、そういう性能からいたしましてもっともっと遠いところに行っておりますので、これは二百海里に行くような船がないというようなことではございません。  それから速力は、巡視船でも二十ノット、巡視艇では二十五ノットぐらいが出ておりますので、漁船に比べて追いつかないほど遅いのだというようなことでは全くございません。  それから私、空白を生ずることが心配だということを申し上げたのは、当面の領海警備につきましては、すでに私ども北方の海域が非常に心配だということは、当然このところ続いている情勢でございますので、一管区の北海道から十一管区の沖繩に至るまであります巡視船艇の中で、北方に応援に出すというようなかっこうで埋めておりますが、そういう状態をずっと続けておるということになりますと、一方、先ほど申し上げましたようにいろいろな仕事をやっているものでございますから、手抜かりができたらいかぬということが心配だから、その手抜かりができぬように整備計画を立てて、できるだけ大型の船艇、大型の航空機の充実を図っていきたいということでございます。
  353. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお話を私聞いて、安心をいたしました。そうすると、けさの新聞に載っておりましたけれども、総理大臣が、二百海里漁業水域の拡大に伴って、海上保安庁の勢力を計画的、長期的に増強する必要がある、そのことを大蔵省に指示しているということを非常に強調して言っておられるのですけれども、その必要は余りございません、そう急がなくてもよろしいということですか。
  354. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私、先ほど五十二年度の予算の中にヘリコプター搭載の巡視船、その他いろいろなものを予算に計上したということを申し上げたのですが、それは実は数年間にわたる計画の初年度としてその計画の緒についたというかっこうで五十二年度の発足を見たわけでございますが、予想以上に二百海里の時代の到来が早いものですから、私どもがかねて持っておりました整備増強計画をさらに繰り上げて促進方を図らけなればならないということでございまして、今後予算的な措置を要しないで、いまのままでやれるということではないということに御理解をいただきたいと思います。
  355. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は、これにつきましては、いろいろな方にお聞きしでまいりましたが、やはり心配をしておられる。というのは、これは非常にいい性能の巡視艇あるいは巡視船もあるけれども、そういったものはごく少ない。したがって、やはり海洋法二百海里時代に備えて、ここで急速に海の管理体制を整えなければならぬのではあるまいか、恐らくそういった国民の心配があるから、また国民の一部の中でも当然出てくる世論として、防衛庁がこれに参画をして、そして現在の自衛隊法では、これは権限がないけれども、少なくとも領海監視権、あるいはまた漁業専管水域において監視をしていく、日本の船のあるいは漁船団の所在の確認であるとか、あるいは捜査であるとか調査であるとか、そういったことにやはり参画していくというような機能は必要ではあるまいかという声が出てくると思うのであります。  防衛庁長官領海監視権、こういった問題を現在の海上警備に関しまして防衛庁海上自衛隊に与えるべきだという意見についてはどのようにお考えでございましょうか。
  356. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  先ほど来海上保安庁長官から御意見がございましたように、現在の海上警備につきましては先生御承知のように一般的には海上保安庁がその任に当たっておられるわけでございます。防衛庁といたしましては、現在持っておりまする任務の範囲内において積極的な協力を申し上げ、今日までやってまいっておるわけでございます。しかし、今回新海洋時代を迎えてまいりました。そこで、私どもといたしましては、現在の体制の中で積極的な協力を今日までやってまいったわけでございまするが、それ以上これから先私どもにおいて何をもって協力するか、あるいはいま漁業を実施されるについて非常にそういう点について心配をなさる声が国民の中にありまするし、漁業を営まれる方々に特にそういう意見がありまするので、そういう点も踏まえながら、協力の方法等についていま検討をさせておるわけでございます。しかし、いま私ども自体、自衛隊法を改正してどうするかというようなところまでは考えておりません。現在の法体系の中で積極的に協力し、なおまたこれから先何をなすことができるかということを積極的に検討させて協力をいたしていこうということでおるわけでございます。そして、いま漁業界なりあるいは国民の中にある心配の線を少なくしていこう、そういう考えで取り組んでおるわけでございます。
  357. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間も参りましたので質問をこれでやめますが、私、最後に、本当に先ほども申し上げましたように領海の拡大はすぐにもしなければいけないし、漁業専管水域もすぐに実施しなければいけない、こういう事態に来ているのに、それに伴ううらはらの関係にあるべき海洋行政の方がまだまだ各官庁でばらばらである、また、そういう点で私は分野の調整をやったり補強をしたり、そういうことを国民の目の前に明らかにして、必要性を明らかにして進めていかないといけないと思います。その点を強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  358. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 寺前巖君。
  359. 寺前巖

    ○寺前委員 きょうの領海法案の連合審査に当たって、提案理由の中に、新しい海洋の秩序を確立するために国際社会の急速な歩みを考慮してこういうものをつくるんだという内容があったかと思います。新しい海洋秩序、そこには領海があるし、二百海里経済水域という問題が日程の問題となっていろいろ言われてきている、こういうふうに思うわけです。  そこで順次お聞きをしたいわけですが、先ほどから同僚委員の皆さんがいろいろ聞いておられますから、私は気になる幾つかの点だけを確認的にお聞きをしたいというふうに思います。  二百海里の線引きをソビエトの側でおやりになる、われわれの方もそういうものを持たなかったら対等の話にならないではないかということが、先般来、日ソ漁業協定の交渉をめぐっていろいろ言われてきました。今回、二百海里の漁業水域法案が出てきたわけですが、それを見ると線引きは政令によるというふうになっていますけれども、一体その線引きというのは、島の名前とか海峡名というのが明確にされる予定なのかどうか。そこでは、北方四島とよく言われますが、あの海域についてはどういうふうに表現されるんだろうか、また、西日本の方面ではどういうふうに示されるんだろうか、こういうことが広く世間で問題になっております。どなたにお答えをいただいたらいいのか、いつごろ、政令で、どういう形であらわされるのか、御説明をいただきたいと思います。
  360. 岡安誠

    ○岡安政府委員 漁業水域に関する暫定措置法で、御質問の二百海里の漁業水域は政令で指定するのかという御質問でございますが、漁業水域に関する暫定措置法案の三条の三項に漁業水域の規定がございますけれども一般的には、漁業水域わが国の基線から二百海里である線までの海域というのが全部漁業水域ということになるわけでございまして、特段政令でもって指定する考えはないわけでございます。ただ、この三条の三項の中に書いてございますけれども領海は除くということと、それから政令で定める海域は除くということがございます。したがって、政令で特定の海域を定めればこれが漁業水域ではなくなるという、そういう規定になっております。  そこで私ども考えておりますのは、韓国それから中国との関係におきまして、韓国も、中国と間におきましても、現在わが国との間で漁業協定がございまして、円滑に漁業関係維持されているわけでございますし、また韓国も中国も両方ともいまだ二百海里の漁業専管水域というものの設定をいたしておりません。そういうことも考えまして、私どもは、この三条三項の、政令によりまして日本海の西部、それから東海、黄海等につきましては漁業水域から除外をするということを現在考えておるということでございます。
  361. 寺前巖

    ○寺前委員 いまの御答弁の中で、韓国と中国を除外するという問題がありましたが、それじゃ、朝鮮民主主義人民共和国は一体どういうことになるのかという問題、それから、日本海の西部というのはどこからを示される予定なのか、あるいはこの政令はいつお出しになる予定なのか、それをちょっと御説明いただきたいと思います。
  362. 岡安誠

    ○岡安政府委員 朝鮮民主主義人民共和国との関係でございますけれども、実際問題といたしましては、韓国との関係日本海の西部、それから東海、黄海等の海域が除外される予定でございますので、朝鮮民主主義人民共和国との関係では問題はないというふうに考えております。  それから、日本海の西部というのはどこかということでございますけれども、現在検討中でございます。韓国の漁船その他の操業の状況等を勘案いたしまして線引きをいたしたいというふうに思っております。  それから、この政令の公布の時期でございますけれども、法律が通過、成立した暁におきましては、できるだけ早くこの政令は制定をいたしたいというふうに考えております。
  363. 寺前巖

    ○寺前委員 こういう、わが国の沿岸という規定にしていくということになると、そこでは当然わが国とはどこを指すのだという領土問題というのに触れざるを得ない結果になると思うのです。朝から論議がありました。  そこで、外務大臣に幾つかの点を確認的に聞きたいと思うわけですが、千島列島は、暴力と食欲によって他国から略取した領土であるのかないのか、歴史的に日本の正当な領土であるというふうに政府は認めるのか認めないのか、その点を聞きたいと思います。
  364. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 千島列島は、ただいま御指摘のような、わが国が力をもって略取したものではないことは当然のことでございます。
  365. 寺前巖

    ○寺前委員 その千島列島をソ連に引き渡すことをソ連参戦の条件として取り決めたヤルタ協定、一九四五年の二月ですが、連合国が繰り返し宣言していた領土不拡大の原則にこの協定は反する内容だというふうに思うけれども外務大臣はどう思いますか。
  366. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ヤルタ協定につきましては、これは、それまでの領土についての不拡大という趣旨に反した協定であるというふうに考えます。
  367. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、一九五一年のサンフランシスコいわゆる平和条約第二条(C)項で、千島列島を日露戦争の結果取得した南樺太と同列に扱って放棄の確認をここでやられているわけだけれども、この第二条(C)項というのは、それでは、そういう立場から見たならば不当な結論を出しているというふうに考えられるけれども、あなたはどう思われますか。
  368. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 サンフランシスコ条約は、わが国は当然のことながらその締約国であるわけでありますから、それに対しまして、私からそれが不当であるとかどうかというコメントはする立場にないわけであります。
  369. 寺前巖

    ○寺前委員 前段で、不当な協定を押しつけておったということを御確認になりました。そして、千島列島は正当な固有のわが領土であるということを認められました。それが国際条約において不当な形とはよう言わないとおっしゃった。立場として言えないとおっしゃっただけであって、前提を考えたならば、このサンフランシスコ平和条約は不当なものと言わざるを得ないと私は思うのです。当時のことを振り返ってみますと、当時のソ連の首脳であったスターリンの大国主義的要求を利用して、日本を長期にわたって軍事的に占領し、軍事基地を存在させようとしたアメリカの政略がこの不当なことをさせたと言わなければならないと思うのです。  そこで、この千島列島を全体として放棄したわけですけれども、この千島列島を不当な形であの占領政策の中で行わせられてきているという事実を踏まえたときに、私どもは、まず領土問題の決着をつけるに当たっては、もともと日本の正当な要求としての領土であるということを国際的に意気高く示す必要があると思うのです。ところが、先ほどからの話を聞いておって、言えない立場というのは国際条約としてのサンフランシスコ条約を結んだところにあるとするならば、サンフランシスコいわゆる平和条約第二条(C)項を廃棄をするということを国際的に明らかにするということが、日本の国民の固有の領土を明らかにさせる上で一番基本的な態度にならなければならないと思うのだけれども、大臣はどう思いますか。
  370. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほどヤルタ協定につきましてお答え申し上げましたけれども、ヤルタ協定というものは、私ども何もヤルタ協定が好ましい協定であるかどうかということは申し上げる必要はありませんけれども、現実にヤルタ協定というものはあったということは否定し得ざるところでありますし、また、サンフランシスコ条約をわが国が取り結んだということにつきましては、これはもう歴史的な事実でございますから、したがいまして、いまここでサンフランシスコ条約が不当であるというようなことを申す立場にないということを申し上げたところでございます。
  371. 寺前巖

    ○寺前委員 千島列島が全体として略奪したものではないんだ、われわれのものであるという立場をおとりになるんだったら、それは南部千島であろうと北部千島であろうと同一のものだと思うのです。南部の北方四島だけを問題にされるというのは、それは千島列島の解釈論としての立場からだけおっしゃっていることになっているんじゃないだろうか。本来から言うならば、固有の領土である、略奪したものではないんだということを明確にされるならば、この際に国際的にもう一度見直して、そうして、北方を含めて千島問題というのは全体として第二条(C)項が不当なんだということをもう一度国際的に洗い直すことを提案すべきではないだろうか。私はこの際に日本政府として見直すことが必要であるというふうに思うわけだけれども、これについて重ねて大臣の御所見を聞きたいと思うわけですが、同時に、今度もしもいまの線引きがされた中においてこの北千島の問題について触れないということになったならば、サンフランシスコ条約でわれわれが固有の領土を、略奪したものでもないものを放棄するという屈辱的なことが起こっているだけではなくして、その屈辱の上塗りを合法化させる第二弾になるんではないだろうかということにおいて、あのサンフランシスコ条約の屈辱的なことを繰り返さないためにも、この領土問題について見直しをさせるように、第二条(C)項について国際的な態度をとるという検討を政府としてするべきではないかと思うんですが、いかがなものでございましょうか。
  372. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいまお述べになりましたところを伺っておりましたが、当時の状況のもと、わが国は旧連合国に対しまして桑港条約で千島列島を放棄いたしたわけでございます。ただ、その放棄しました千島列島の中には、私どもが領有権を主張しておりますいわゆる北方四島は含まれておらない、こういう解釈でございます。  ただ、その千島列島につきましては、日本が条約でこれを放棄いたしましたので、この廃棄を求める云々という点につきましては、これは国際法立場からも、わが国憲法の立場からも困難でございます。したがいまして、この千島につきましては、わが国としましては、桑港条約の立場から一応その領有権を云々する立場にない、こういう見解を持っております。
  373. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国の歴史的にも法的にも北方四島が固有の領土であるという主張の裏には、いろいろな理由があるわけで、これはもう御承知のとおりでございますから繰り返しませんが、しかし、一八五五年のいわゆる下田の条約というものは、確かにこれはわれわれとしては非常な有力な根拠になっているわけでございます。そういう意味で、わが国が北方四島だけを固有の領土であるということを強く主張しておるのも、それだけのいわれのあることであって、サンフランシスコ条約で放棄いたしました千島列島には北方四島は入らないという解釈で、しかも、これは外国におきましても、アメリカにおきましてもそのような見解を現在とっておるわけでございますので、今日、千島全体につきましてこの返還を要求する、こういう立場にはないわけでございます。
  374. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合もありますからこれでやめますけれども、私は、このことを通じて、サンフランシスコ条約を上塗りするような確認をここでやるということになるという責任を自民党政府はとらなければならない、領土問題をますます困難にさせる原因はここにある、私はそう思いますので、あえて政府が再検討されることを強く要望するものです。  次に、二百海里の警備の問題について先ほどからお話が出ておりました。そこでこれも重ねて聞きたいと思うわけですが、二百海里の漁業水域というのは領海とは違うのだ、しかしそこの漁業の保存その他の問題で、そこに主権的な権利が若干のものとして存在するのだ、それは公海上の中における特定の主権的権利なのだというお話であったように思うわけですが、漁業水域というものはそういうものとして理解しておっていいのでしょうか。
  375. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  国連海洋法会議におきまして審議の土台となっております非公式単一草案の経済水域における条項におきましては、沿岸国は二百海里以内の資源の探査、開発、保存、管理等に関して主権的な権利を有するという規定があることは事実でございます。問題はこの主権的な権利ということの意味でございますが、わが国のただいま御審議を仰いでおります漁業水域法案におきまして、わが国が有することとなる権利というのは、二百海里の水域の水産資源の保存、管理に対する管轄権を行使することになるということでございまして、これがいま申し上げました海洋法草案におけるところの主権的な権利という条項に見合うものであります。  問題は、この主権的な権利というものは、先ほど来申し上げておりますように、沿岸国が領海に対して行使するところの主権とは全く異なるものでありまして、その水域内の資源の探査、開発、保存、管理に関して必要な権原を行使する、こういうことであると考えております。
  376. 寺前巖

    ○寺前委員 公海かどうか……。
  377. 中島敏次郎

    中島政府委員 その漁業水域の法的な地位そのものは公海であるというふうに考えております。
  378. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、この水産資源の保存、管理についての警備はどこが所管することになるのでしょうか。所管庁から御説明いただきたいと思います。
  379. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上保安庁海上保安庁法第二条の規定するところに従って、法令の海上における励行、それから海上における犯人の捜査及び逮捕、犯罪の予防及び鎮圧、それから海難救助、海洋の汚染の防止、海上交通取り締まり、その他海上の安全の確保に関する事項を所掌することとなっておりますので、したがって、海上警備についても第一義的には海上保安庁が主掌して、任務としてやるところでございます。ただ、特別の必要があって海上警備行動自衛隊が、総理大臣の承認を得て行動される場合があり得るということでございます。
  380. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっとそこにおってください。――自衛隊というのは日本の平和のために存在するということが自衛隊法に示されていると思うのです。ですから、その前提となるのは侵略的行為が存在するというような場合に特別な警備任務があるのだというふうに考えてはいかぬのですか、いいのですか。その特別な場合といまおっしゃったから、「特別」というのはどういう場合に自衛隊協力するのか。
  381. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 このお答えは自衛隊法を所掌している防衛庁からお答えいただくということが筋だと思います。ただ、私の理解で間違いがなかったら、八十二条の中に書いてありますことは人命の保護のため、それから治安維持のために特別な必要がある場合ということを八十二条には書いてあると思いますが、いずれにしても、自衛隊の方から正確にお答えを願いたいと思います。
  382. 寺前巖

    ○寺前委員 おたくに聞いているのは、警備の第一義的任務をお持ちになっているのがおたくの方だから、おたくの方が協力を求めるというときにはどういうときに協力をお求めになるのかということで自衛隊の問題を聞いたので、重ねて聞きますが、どういうときに協力を求めるのですか。
  383. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私ども海上警備の仕事をやるわけですが、私どもの勢力で取り締まりが現実に非常に困難であるというような場合に限られて八十二条の発動はあり得るのではないかと考えております。
  384. 寺前巖

    ○寺前委員 これは防衛庁長官に聞いたらいいのか担当の局長に聞いたらいいのか、正確にしておいた方がいいと思いますので、どちらでも。決してけちをつけておるわけではございませんので、お教えをいただけたらありがたいのですが、自衛隊が、海上保安庁が力が薄いので一般的に警備の援助をすることができるのかどうか。八十二条でできるのかできないのか。
  385. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、自衛隊法の中に、いま海上保安庁が申されましたように、特別に必要と認めた場合は、総理大臣の承認を得て自衛隊警備出動をするということになっておるわけでございます。百一条だったと思いますが、自衛隊海上保安庁に対しましての協力の点が載っておると思うわけでございますけれども……。
  386. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、この八十二条は「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安維持のため特別の必要がある場合」というのですから、一般警備での出動は総理大臣の承認を得るということにはならないと思うのです。特別な事態が発生しているというのが前提になければならないと思うのですが、そういうふうに解釈していいでしょうか。
  387. 三原朝雄

    三原国務大臣 そのとおりでございます。
  388. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、海上保安庁の長官が自分のところが力がないからちょっと手助けしてくれと言うわけには、警備の問題として自衛隊を使うというわけにはいかないということで理解をしてよろしいか、海上保安庁長官。先ほどの話、ちょっと気になりましたので、確認をしておきたいと思います。
  389. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 八十二条は防衛庁長官がそういう特別の必要がある場合に、総理大臣の承認を得て行動することができるということを書いてございますのは御承知のとおりなので、そういった場合に当たるかどうかということは、その場合に御判断を願うということだと思います。
  390. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、先ほど防衛庁の長官は積極的な援助をする、それ以上どう協力するのか、国民の中に心配の声がある、協力の検討をいまやっているんだ、自衛隊法は改正する気はないんだ、こういうようなお話であったわけです。手薄になっているから、だから出ていくんだということは、特別なことがない限りないとすれば、法改正をやらない限りそういう協力はできないわけですね。ということは、自衛隊はこの法律のもとにおいて特別な事態が発生しない以上出られないんだという立場なんだから、協力をすると言っても、協力というのはこの八十二条で示されている特殊な範囲しか協力できぬのだから、だから明確に新しい水域の広がった活動については、当然のことながら保安庁が責任を持ってその充実のためにやるというふうにあるべきだというふうに見るのが至当だと思いますが、間違いございませんね。
  391. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、八十二条の特別に必要を認めたとき云々という条項だけが自衛隊警備出動するところの一つの法律に定める点だと私は思うのでございます。私は先ほど積極的に協力をすると申しましたのは、自衛隊におきましては海上における監視あるいは調査あるいは訓練等をいたしておるわけでございます。哨戒等もいたしておるわけでございますから、どうも海上事態が非常に危険を感ずるとか、いろいろなそういう事態を発見した場合には、積極的に海上保安庁に連絡をする、私が申しましたのはそういう状態で、そして海上保安庁がいち早く現場に駆けつけて事態の収拾をやるというような点を特に、また、私どもの持っております能力というようなもので協力をするところはないかというような点について積極的に勉強をさしておるということでございます。
  392. 寺前巖

    ○寺前委員 これは二十一日の三原防衛庁長官の記者会見での発言からかなり疑惑が広範に持たれた問題ですから、これを基礎にして海上自衛隊が増強されていくというふうに批判がいろいろ出ているだけに、私は警備一般については違うんだということの問題として理解をしておきたいと思います。  次に移ります。今度の領海法で五海峡について特別に三海里という位置づけを設けられております。これは相手国がある海峡については、相手国は何海里になっているのでしょうか。もうわかり切った話ですが……。
  393. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  相手国と申します点がはっきりいたしませんでしたが、いずれにしろ、一般的な原則から申し上げれば、領海条約第十二条に従いまして、向かい合っている二国間の領海の境界は特別な合意がない限り中間線を超えて拡張してはならないという原則に従うものと考えております。(寺前委員「いや、五海峡の話、五海峡の中で他国と向かい合っているところ、宗谷海峡でしょう」と呼ぶ)法案に出ておりますところの五つの海峡につきましては、具体的には対馬の西水道と宗谷海峡が他国に向かい合っているという形になりますが、これらについては領海幅を現状どおりにするということで、わが国としては三海里にとどまっておる、こういうことでございます。韓国の場合には、韓国は領海三海里の立場をとっておるというふうに理解いたしておりますし、宗谷海峡につきましてはただいま申し上げましたとおり、中間線を越えて領海を拡張することはないというふうに考えております。
  394. 寺前巖

    ○寺前委員 相手とこっちが違うという事態部分的に生まれるというのもおかしな話だし、国内においても特殊なところを設けるというのはおかしな話だとだれもが思う話です。  もう時間がありませんので、この問題について、なぜそういう特殊な地域をつくるかという問題としては、例の核兵器積載艦の領海通航への規制という問題をめぐっての話がここには存在するわけです。そこで私は聞きたいのですが、日本としては非核原則領海の中で堅持をしていくという態度は変わりませんね。そこで非核原則が、それでは今度の国際海洋法会議、いまの草案で進められている内容になると、従来の領海条約では沿岸国の発言権によってその通航について無害の内容を云々することができたけれども、いま進められている海洋法会議の内容では沿岸国の恣意によって決めようというのではなくして、国際条約として国際海峡についてはこれこれの条件を無害通航というんですよということで決めるという方向が主要な流れになっているというふうに思うのですが、その点はどうなっているのか。そしてそれが確認されたときには、この核積載艦の問題については、無害通航という範疇の問題から外れて、結局非核原則が守られないという結果になるんではないかというふうに思うのだけれども、そこはどういうことになるでしょうか。
  395. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいまの先生の御指摘の点は、一般領海の問題といわゆる国際海峡におけるところの通航制度の問題と両方を御指摘になられたものと理解いたしておりますが、ただいまの海洋法会議における論議は、一般領海については無害通航制度をそのまま維持して、ただしその内容をできる限り明らかにしていこうという態度審議が行われており、またいわゆる国際海峡につきましては、無害通航制度では不十分である、無害通航制度よりももっと自由な船舶の通航を許すような制度をつくるべきであるということで審議が行われておる次第でございます。(寺前委員「中身は。核積載艦の問題」と呼ぶ)その場合に、いわゆる国際海峡における通航制度といたしましては、ただいまの海洋法会議審議の土台となっておりますところの非公式単一草案は、いわゆる通過通航制度というものをつくりまして、船舶、航空機が継続してその国際海峡通過する場合にはそれを沿岸国は妨げてはならないというのがいわゆる妨げられざる通過通航制度の内容でございます。  それから、一般領海におけるところの無害通航制度は、本質的には現行領海条約におけるところの無害通航制度と変わっておりませんで、ただ、その無害通航の無害性喪失要因をもっと明確に詰めていこうという態度審議が行われている、こういうことでございます。
  396. 寺前巖

    ○寺前委員 私は端的に外務大臣に重ねてお聞きをするわけですが、非核原則わが国では守ってきていた、これからも守るのかどうか、これが一点。  それから第三次海洋法会議は、日本から参加している代表も、あるいはここの第二委員会ですか、ここで担当している議長も、ともに言っているわけですけれども、どこからも意見がなくて、大体こういう方向で固まるであろうということを言っています。そうすると、その核兵器積載艦の領海通航の規制という問題については、いま進行している内容では、これは非核原則を守れない国際条約になるのではないか、いまの条項ではそういうふうに理解するんだけれども、そこはどういうふうに見ておられるのか。したがって、そういう国際条約だということになったら、日本政府としては従来の日本の国民の願いであった非核原則との関連においてぐあいが悪いから、それは受け入れるわけにはいかないんだという強い態度海洋法会議で闘われるのかどうか、はっきりした御答弁をいただきたいと思います。
  397. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 海洋法会議結論がいかなる形になるか、ただいま御指摘になりましたようにおおむねの方向は決まっていきつつあるわけでありますけれども、いま御指摘になりましたそのような点がやはり一番の問題点であろう、こういうふうに考えておりまして、私ども海洋法会議結論を待って考えたい、こう思っておりますが、いずれにいたしましても、最初のお尋ねの、わが国といたしまして非核原則、これ自体は、わが国の権原が及ぶ限りにおきまして厳守いたしたいというのが繰り返し申し述べているところでございます。
  398. 寺前巖

    ○寺前委員 もう終わりますけれども、重ねていまの点を聞きたいと思うのです。  海洋法会議で、日本としてはいままでこの非核原則通航自由の問題の中で発言して闘ったのかどうか、そしてこれが確定されるという、現行のままでいくということになったときには、非核原則が崩れてしまうということになるけれども、あなたはそう見られないのか。見られるのだったらどういう態度をとられるのか。いままでどう闘ったかということと、これが土台になってしまうということになったら非核原則はつぶれるという事態のものとしてこれを御理解になっているのかどうか、はっきりお聞きしたいと思います。
  399. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 一般領海通過におきまして、この領海が三海里から十二海里になります、その際には、この領海通過といたしまして、たびたび申し上げているように無害通航とは認めないということを決めてあるわけでございます。海峡通過の場合は、その海峡通過自身がいかなる形になるか自体が問題になっておるわけでございますから、したがいまして海峡通過の仕方が、国際的に大きな原則が決まった場合には、わが国といたしましてもそれを尊重せざるを得ない、そういうことになろうかと思いますが、それをもちましてわが国非核原則放棄したということは当たらない、このように考えております。
  400. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が参りましたので、残念ですがこれで打ち切ります。いまの問題については、私は甘いと言わざるを得ませんので、この点についてはまた外務委員会などで引き続いて明らかにしていくようにしたいと思います。  終わります。どうもありがとうございました。
  401. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 伊藤公介君。
  402. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 領海法に関しては、私どもなりの主張はしてきたわけでありますけれども、何点かについて再び明らかにして、私どもなりにさらにこの領海法について万全な対策を私たちは立てていきたい、こう考えておるわけでございますが、まず漁業専管水域領海であるのか、あるいは公海であるのか、お尋ねをしたいと思います。
  403. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  この点につきましては、先ほど来いろいろ御論議が行われたところでございますが、私どもの御説明しておりますところは、この漁業水域の法的性格をどうとらえるべきかという点につきましては、実は国連海洋法会議における論議の焦点の一つになっている次第でございます。これを公海と観念すべしとする主張とそうではないという主張とが対立しているわけでございますが、わが国はこの漁業水域の法的地位は公海であるという立場に立っておりまして、今回の御審議いただいております漁業水域法につきましても、その水城の国際法上の法的地位は、これは公海であるというふうに考えているわけでございます。
  404. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日本の二百海里漁業専管水域に関しても公海自由の原則をとるのである、こういう御答弁をいただきました。公海自由の原則の定義をお聞かせをいただきたいと思います。
  405. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  現行の公海に関する条約第二条は次のように定めております。これがお答えになるかと思われますので、読み上げさしていただきます。「公海は、すべての国民に開放されているので、いかなる国も、公海のいずれかの部分をその主権の下におくことを有効に主張することができない。公海の自由は、この条約の規定及び国際法の他の規則で定める条件に従って行使される。この公海の自由には、沿岸国についても、非沿岸国についても、特に次のものが含まれる。」といたしまして、ここに「航行の自由」と「漁獲の自由」「海底電線及び海底パイプラインを敷設する自由」「公海の上空を飛行する自由」ということ、四つを挙げております。  そこで問題は、この二番目にありますところの「漁獲の自由」という点が、この漁業水域国際法規範として確立しつつあるところの状況にかんがみて、漁獲の自由ということが従来の公海の自由から外れていく、それを二百海里に関する限りは、沿岸国がその漁業に関する管轄権を持つに至るという状況があるわけでございます。
  406. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 公海自由の原則は、公海に関する条約の第一条、第二条にはっきりとうたわれております。「「公海」とは、いずれの国の領海又は内水にも含まれない海洋のすべての部分をいう。」第二条では「公海は、すべての国民に開放されているので、いかなる国も、公海のいずれかの部分をその主権の下におくことを有効に主張することができない。」こう言っているわけでございます。  そうしますと、たとえば第三次の海洋法会議で経済水域というものが決定をしたときには、これは公海と言いますか、あるいは公海と言わないのですか。
  407. 中島敏次郎

    中島政府委員 先ほど私が国連海洋法会議における審議に触れましたのは、まさに非公式単一草案におけるところの排他的経済水域に関しての論議を申し上げたわけでございます。したがいまして、海洋法会議審議しておりますところの排他的経済水域の地位が公海であるかいなかという点が議論をせられておるということを申し上げた次第でございます。
  408. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 この公海に関する条約の中では、はっきり「公海のいずれかの部分をその主権の下におくことを有効に主張することができない。」こううたっているわけであります。しかし、ソ連主張してきた、またわが国のとっている二百海里漁業専管水域は、これには裁判権、取り締まり権、漁業に関する管轄権が及ぶ、主権的な権利が及ぶと言っているわけであります。これは矛盾をしませんか。
  409. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 伊藤さん御指摘のように、海洋自由の原則がそのとおりに広範に適用され、維持されておるという時代は残念ながら去ってまいりまして、国連海洋法会議の単一草案等におきましても、水産資源の保存、有効利用というような観点から沿岸国が二百海里の漁業専管水域を設定をする、そういう方向に進んでおりまして、そういう意味では新しい海洋秩序の時代が到来をしておる、こう申さなければならないと思うわけでございます。  しかも、世界の政治、経済のリーダーであるアメリカがまず最初に二百海里漁業専管水域というものを設定をした。それにカナダ、ソ連も追従をした。ECあるいはその他の国々もやっております。いま世界の六十カ国がすでにそういう漁業専管水域を設定をしおる、こういう時代に入ってきておるわけでございます。まさに海洋自由の原則に立つところの海洋時代というものが新しい時代にいま大きく転換をしつつある、このように認識をするわけでございます。  私どもは、そういう国々がやっておりまして、わが国がこういうことは本当に残念でございます。わが国としては、やはり海洋自由の原則の上に立つ海洋の水産資源、私、農林大臣でございますから申し上げるのですが、そういうものも国際的管理のもとに有効に保存、管理がなされるということであれば、これは一番望ましい理想の姿であるわけでございますが、残念ながら、いま申し上げたとおりになっております。  そこで、わが国国益を踏まえまして、わが国の沖合い二百海里の中におけるところの水産資源の保存と有効利用を考え、それに対する管轄権をとにかく適用して、今後の新しい時代の漁業秩序に即応するところの体制をつくっていこう、こういう考えでございます。
  410. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうすると、いまの農林大臣の御答弁によりますと、この公海に関する条約の第二条の「公海の自由」、これは明らかに変わった、こういうことでございますね。
  411. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 世界の六十カ国がすでにそういう方向に踏み切っておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  412. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 世界の動きについてはわかりますけれども、いま申し上げたこの第二条の「公海の自由」、この内容に関しては明らかに変わった、こう言わざるを得ないわけですね。
  413. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 世界の大勢はそういう方向に行っておる、このように認識をいたしております。  なお、委員長、ちょっとこの機会に訂正させていただきますが、六十カ国と申し上げましたのは領海十二海里、漁業専管水域については二十五カ国ということでございますので、ここで謹んで訂正をさせていただきます。
  414. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 具体的な問題でお尋ねしたいのでありますけれどもソ連艦隊が日本の二百海里漁業専管水域の中で演習をした場合に、たとえば漁業に対して被害が出た、こういうときにはわが国としてはどういう処置をとられるのでしょうか。
  415. 中島敏次郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、漁業水域の法的地位は基本的には公海でございます。したがいまして、いま農林大臣からもお話がありましたように、国際法上の制度自体が変わりつつあるわけでございますけれども、旧来の観念からいきましても、公海に伴いますところの公海自由の原則というものが漁業水域に関する管轄権で排除されていない限りにおいて依然として適用されるわけでありまして、ここで軍事演習を外国が行うという場合にも、他国の利益に合理的な考慮を払わなければならないという関係は変わっていないわけでございます。そこで、沿岸国が二百海里の水域の水産資源に対して妥当な管轄権を行使するということはいまや国際法の新しい規範として確立しつつある状況でございますので、その管轄権を害するような形で外国の軍事演習が行われるということになれば、これはその当該外国によるところの不当な権原の行使ということになりますので、それによって被害が生ずるということになればそれなりの救済を求めるということになろうかと思いますが、いずれにせよそのような漁業上の被害が生じないように適切な手段をあらかじめ講じてまいるということになると思います。
  416. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 確認をしておきたいのでありますけれども、新しい海の秩序の中でわが国漁業専管水域二百海里というものは公海である。     〔片岡委員長代理退席、金子委員長着席〕 しかし、公海であるという立場をとりながらも、二百海里漁業専管水域という中には主権的な権利が及ぶということでありますから、もちろん二百海里の漁業専管水域の中に起きた他国の、たとえばいま申し上げたソ連の艦隊が二百海里内でわが国にとって多大の被害を生むという場合には、明らかに日本わが国主権的な権利があるという立場からソ連に対してその姿勢を示せる、こういうことでございますか。
  417. 中島敏次郎

    中島政府委員 わが国漁業水域に対する管轄権の行使の妥当な、正当な行使を妨げるということのある限りにおいて、これに対する適切な処置を求めるということになると思います。
  418. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もう一つ確認をしておきたいと思います。  これはいまソ連が二百海里の中で主張をしているように、わが国の二百海里漁業専管水域内に関してはわが国主権的な権利が及ぶわけでございますね。
  419. 中島敏次郎

    中島政府委員 御審議をいただいております漁業水域法案には主権的権利という言葉は特に使っておらないわけでございまして、水産資源の管理、保存に対するわが国管轄権を定めているわけでございます。いま先生指摘のように、主権的な権利という言葉がソ連漁業水域の法令に出ていることは事実でございますし、また国連海洋法会議におけるところの非公式単一草案にも経済水域との関連でそのような言葉が使われていることも事実でございます。私どもはいずれにせよ漁業資源の管理、保存を沿岸国が行う、その実効を期するために取り締まり裁判権をも含めて有効な管轄権を行使し得るということであろうと考えております。
  420. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いまわが国の国会にかかっている領海十二海里、そして二百海里漁業専管水域の問題は、日ソ漁業交渉一つのきっかけにしてソ連と対等な立場で日ソ漁業交渉を進めよう、こういうことに出発があったわけでありますけれどもソ連は二百海里漁業専管水域の中に明らかにソ連主権的な権利が及ぶ、こう言っているわけでありますけれどもわが国の二百海里漁業専管水域の中にはわが国主権的な権利は及ぶわけですか、あるいは及ばないわけですか。
  421. 中島敏次郎

    中島政府委員 先ほど来申し上げておりますことは、主権的な権利という言葉を使うか使わないかと関係なしに、沿岸国はその漁業資源に対して有効な管轄権を持つということになるということを申し上げたわけでございまして、ソ連の法律に主権的な権利という言葉が書いてあることも事実でございますが、いずれにしろその場合の沿岸国の持つ権原は、たとえば沿岸国が領海に対して持つところの主権とは全く異なる権原であるということを申し上げているわけでございます。
  422. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それではその言葉はともかくとして、ソ連がいま主張している裁判権、それから取り締まり権、漁業に関する管轄権等あるいは漁業に関する許可、こういうものは日本でも行使ができる、こういうことでございますか。
  423. 岡安誠

    ○岡安政府委員 漁業水域に関します暫定措置法におきましてわが国は水産資源の保存及び管理について管轄権を有するわけでございますが、その管轄権の具体的な行使の態様としましては、いま御指摘のように農林大臣の許可を受けなければ外国船は漁業ができないとか許可につきましてはいろいろ条件をつけますけれども、条件違反をすれば許可を取り消したりまた罰金その他の制裁を加えるというようなことがございますが、それはおおむねソ連邦の二百海里幹部会令ですか、それとほぼ内容は同じでございます。
  424. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 これは日本にとっては必ずしも領海ではありませんけれども領海に準ずるような、しかも主権にかかわる大変大事な問題でありますから私は重ねてお聞きをしたいのでありますけれどもソ連がいま主張をしている主権的な権利とはどういうものなのか、どういう形でいま理解をしているのか、受けとめているのか、お尋ねをしたいと思います。
  425. 中島敏次郎

    中島政府委員 二百海里内の漁業資源に対して排他的な管轄権を行使するということであると理解いたしておりまして、その点につきましてはいま御審議をいただいておりますわが国漁業水域法案においてわが国が持つ権原と基本的には変わりはないものだろうというふうに考えております。
  426. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いま申し上げた裁判権、取り締まり権、漁業に関する管轄権、こういうものはわが国主張ができるわけですか。
  427. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま水産庁長官から申し上げましたとおり、わが国も当然そのような権利を行使することになるわけでございます。
  428. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 対等な立場で私たちは交渉にぜひ臨みたい、こう思っているわけでありますけれども、どうもこの主権的な権利が及ぶということが大変大事な意味を持っているような気がするわけでございます。日本としても同じようなことで、わが国もこの漁業専管水域二百海里内にわが国主権的な権利が及ぶとはっきり言い切れますか。
  429. 中島敏次郎

    中島政府委員 先ほど来申し上げておりますような取り締まり、裁判権をも含めてわが国が権原を行使することになるわけでございまして、それを主権的な権利というふうに表現するか否かは表現の問題ではなかろうかというふうに考えております。
  430. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 主権的な権利が及ぶと言ってもいいわけでございますね。
  431. 中島敏次郎

    中島政府委員 ただいま御審議いただいております漁業水域法案においてわが国が持つような権原を主権的権利というふうに表現するのであればそうお考えいただいて構わないということでございます。この点については先ほど来申し上げましたようにソ連がその法律に基づいて行使する権原とわが国が今般の法律に基づいて行使する権原とは基本的に変わりはないということでございます。
  432. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ソ連主張する主権的な権利とわが国のこの二百海里漁業専管水域における主権的な権利そのものは内容が同じであるというふうに理解をさせていただきたいと思います。  もう一つ。今度この領海十二海里ということになりますと北方領土の問題と竹島の問題が論議をされてきたわけでありますけれども、北方領土の中にはわが国の憲法が及ぶのでしょうかどうなんでしょうか。
  433. 中島敏次郎

    中島政府委員 憲法の問題でございますので法制局長官にお尋ねいただくことが適当ではなかろうかと思いますが、私とりあえず考えますのに、わが国はこれら四島はわが国領土であるという立場に立っているわけでございますから、その立場からいえば観念的には憲法がここに及ぶであろうことはそのとおりであろうと思いますけれども、いずれにせよわが国が現実にそこに――これを法的に認めるわけではありませんけれども、現実にそこに施政を行い得ない状況にあるものですから、実態的な意味において憲法をそこで行使する、施行するということができない状況にあるということだろうと思います。
  434. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうすると、法的にはこれは憲法が及ぶわけですか。法律的には北方領土にはわが国の憲法は及ぶわけですか。
  435. 中島敏次郎

    中島政府委員 これら四島がわが国領土であるという立場に立つという意味におきまして及ぶというふうに考えていただいてよろしいのだろうと思います。
  436. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 二月二十四日、ソ連邦閣僚会議の決定の中で、わが国の固有の領土の北方領土ソ連側にした線引きをしてきたわけでございますけれどもわが国は北方領土は固有の領土だ、こう主張しているわけでありますが、これに対してわが国政府ソ連側に抗議をされたでしょうかどうでしょうか。
  437. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二月二十四日に出まして、翌二十五日に官房長官談話を発表いたしたところでございまして、了承することができないという趣旨の官房長官談話を発出いたしたわけでございます。
  438. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 多少不明確な点がありますのでお尋ねしたいのでありますけれども、この領海法案の第二条の二項の政令の内容また政令については、これは大変急がなければならない条約でありますから、すでに午前中の質疑にもたしかあったかと思いますけれども、いつごろ政令を決めるのか、またその政令の内容についてほぼどういう内容になるのか、わかる範囲内で御答弁をいただきたいと思います。
  439. 岡安誠

    ○岡安政府委員 これはやはり政令規定見込み事項でございますので、先ほど御指摘ございました、漁業水域に関します暫定措置法案の政令規定見込み事項と同様に至急御提出いたしますが、とりあえず御答弁をいたしたいと思いますのは、二条の二項の政令規定事項は二つございまして、一つは二条の一項本文に規定する線を基線として用いる場合の基準、これが一つでございまして、その他基線を定めるに当たって必要な事項ということになるわけでございます。  前者につきましては、たとえば低潮線につきましては、海図に記載されている低潮線を用いるというようなこと、または湾口に引かれる直線につきましては、その天然の入り口の両側の低潮線上の点の間の距離が二十四海里を超えない湾のこれらの点を結ぶ閉鎖線を用いるというようなことを規定をいたしたいというふうに思っております。  後者につきましては、湾というものについての定義というようなものを書きたいというふうに考えております。
  440. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 先ほど北方領土の問題について触れたわけでありますけれども、あわせて議論をされてまいりました竹島の問題について、竹島はわが国領土だという形で線引きをされるということは、政府答弁にも何回も繰り返されてきたわけでありますけれども、しかし竹島について一九五二年から、これは外務省から出たものでありますけれども、毎年年中行事のように口上書あるいは口頭で抗議をしてきた、こう言って出ているわけでありますが、一体わが国領土である竹島に対する主張が、口上書や口頭による抗議だけで実際にいいのか、近い将来あるいはきわめて近いうちに竹島について、再び何らかのはっきりしたわが国の意思表示をする用意があるのかどうなのか、お尋ねをしたいと思います。
  441. 大森誠一

    ○大森政府委員 竹島がわが国固有の領土であるということ、その竹島を韓国の官憲が不法に占拠しているということに対しまして、韓国側に対するわが方の立場を明らかにすること、及び即時竹島から韓国の官憲が撤去するようという趣旨のことは、先ほど先生指摘のように、過去繰り返しわが方より韓国側に対して申し入れてきたところでございます。  私どもといたしましては、わが国のその基本的な外交方針に基づきまして、この竹島問題というものも平和的に解決されるべきであるというふうに考えておりまして、現在竹島を不法に占拠している韓国官憲を実力をもって排除するというようなことは差し控えている次第でございます。  私どもといたしましては、今後とも外交上の経路を通じまして粘り強くこの紛争の解決を図っていきたい、かように考えている次第でございます。
  442. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 実力をもって竹島の問題を抗議せよと、私は申し上げるつもりはありません。しかし、すでに五十二年の一月二十八日付のこの抗議から、何回も同じようなことを繰り返してきている。しかも主権が明らかに侵害をされているというのに、それに対して具体的にどうしてやるのかということを、政府としては大変大事な主権の問題でありますから考えなければならないと思いますけれども外務大臣、きわめて近いうちに何らか、日本側の政府のどなたかがこの問題についてはっきりした形で韓国と話し合う、こういう用意はありませんか。
  443. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 竹島問題につきましては、御説のように、これ日韓条約のときからの問題でございまして、日韓正常化の際におきましても、御承知のような経路で解決を見ることができなかった、それほどになかなか解決困難な問題となっております。韓国側におきましては、この竹島問題になりますと、これまた国民的な主張になっておるわけでございますから、なかなかこれ容易な問題ではないわけでございますが、ただいまアジア局の方から御答弁申し上げました。一体、いつまでそのようなことをやっているんだ、こういうおしかりがあるわけでございますけれども、この問題につきましては、先般来漁業施設が設けられるのではないかというようなことがありまして、その点につきましては先方の意向もよくただしましたが、そのようなことは現実に考えておらないという一応の先方の説明はあったわけでございます。しかし、この問題につきましては、外交交渉を通じましてこれが解決を図るほかありませんので、これは定期的な協議の場等を通じまして努力をいたしたい、こう思っております。  なお、経済協力その他と絡めて解決を図れないかということも、たびたび御指摘があるわけでございますけれども、私どもは日韓関係を悪くする方向では、この問題もとてもなお解決困難でありますので、経済協力は経済協力として日韓間の友好関係を深めながら、本件につきましてもわが国主張を十分先方に理解させるように努力をいたしたい、こういうふうに考えているところでございます。
  444. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 竹島の問題は、新しい海洋法時代のわが国にとって十二海里の問題、二百海里の問題、さらには日韓大陸棚協定等々に関し、この線引きに関しては常に問題になる大変大事な問題であります。こういう新しい海の秩序をいま私たちはつくっていかなければならない、大きく動きつつある海の秩序をつくる場合に、わが国の北方領土問題や竹島の問題は、この時期に私たちはきちっと解決をする姿勢を示して、何らかの私たちは動きを始めなければならない、こう思っているわけでありますが、外務大臣、あなたの責任において、少なくとも竹島の問題について何らかの新しい提案を韓国側に対してする用意はいま全くお持ちでないですか、私の願望も兼ねてお聞きをしたいと思います。
  445. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 竹島問題につきまして、私どもといたしましても機会あるごとに努力をいたしておるわけでございますが、これは両国関係の問題といたしまして、やはり日本といたしましても領土関係の問題である、また先方も全く同じ意識を持っておりますので、なかなかこれはむずかしい問題である、そのように考えておりますが、粘り強く努力を積み重ねるということで参りたいと思っております。
  446. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 大臣のそういう答弁は私はもう何の意味をもなさない。いままでそういう繰り返しをしてきたわけですから、いま私たちがこの新しい海洋法をつくるという大変大事なときに解決をしなければ、ほとんど永久に未解決のまま行かざるを得ない。われわれは、政府がはっきりとした強い姿勢で主権の問題にぜひ臨んでいただきたい、こう思います。  時間が参りましたので、農林大臣にちょっとお尋ねをしたいのでありますけれどもわが国は二百海里漁業専管水域の問題に関して、対ソ連というものを考えながら、ソ連に対しての二百海里というものを当面設定するということになると思いますけれども、これは政令の中では具体的にどういう形で書かれることになるのか、できるだけ具体的にお尋ねしたいと思います。
  447. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この漁業水域法は、日本の国土の沿岸、低潮線から沖合い二百海里、これに全部漁業水域法は適用されるわけでございます。ただ私どもは相互主義でやってまいりたい。日韓関係、日中関係につきましても、韓国側が、あるいは中国側が二百海里をおやりにならない、こういうことであればわが方も政令によってその関係水域というものは削除しておくと、こういうことでございます。基本的には、国土の沿岸二百海里の沖合い全部に漁業水域は設定される。しかし相互主義で、隣接した国々で自分の方でおやりにならぬという場合には政令でもって当該海域はこれを適用から外す、こういうたてまえで政令を運用してまいりたい、このように考えております。  いま御承知のように日韓の間には日韓漁業協定がございますし、日中の間には日中漁業協定があって、西日本わが国漁業というのはその基礎の上にきわめて安定的に、何らのトラブルなしに円滑に運営されておる、この漁業秩序は私は大事にしていきたい、こういう考えでございます。しかし相手国が二百海里をおやりになるということであれば、わが方は直ちに政令によって対処しなければならない、こう考えておるわけであります。
  448. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 農林大臣は間もなく、国民の期待とそれから不安を担って日ソ漁業交渉をおやりいただかなければならないわけでありますが、私どもがかなりソ連に精通をしている方々からのお話を聞きますと、今度の二百海里漁業専管水域に対して、わが国の政令の内容を大変注意深く見守っている。そして対ソ連ということだけに配慮されているということは、まず日ソ漁業交渉の冒頭にソ連側からかなり強い考え方が示されるであろう、こう私どもは聞いているわけでありますけれども、むしろわが国は二百海里漁業専管水域をこの際、思い切ってはっきり全部宣言をして、そして韓国や中国に関しては漁業の問題で協定をしていく、話し合いをしていくということの方が、やがてこの二百海里時代というのは、韓国自身も二百海里の問題がすでに新聞の中でも活字が出てきた、こういうことを考えますと、むしろ二百海里漁業専管水域というものを対中国や韓国にもはっきりした形で、対ソ連というだけではなしに宣言をして、そして漁業の問題だけそれぞれの国との協定をしていくということの方が私たちは現実的だと思いますけれども、いかがでしょう。
  449. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は私が二月二十八日から四日間にわたりまして、イシコフ大臣と相当突っ込んだ話し合いをいたしました。そしてその際に、わが方も近く二百海里漁業水域を設定するということも申し上げまして、交換書簡の中にもはっきりそれを出しておるわけでございます。でありますから、その後訪ソいたしました際にもそれはソ連側としてももう織り込み済みのことでございまして、日本の二百海里が設定された際にはこの日ソ漁業協定の見返りとして自分の方も日本漁業水域の中に入る権利を留保しておく、こういうことも言っておるわけでございまして、ソ連を意識して抜き打ち的にこれをやったとか、そういうことでは毫末もございません。その点は誤解のないようにひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。あくまで相互主義でございまして、あえて向こうがおやりにならぬ場合にわが方が先んじてそれをやるというようなことは、賢明な方策ではない。西日本漁業者の諸君はそのことを非常に心配をしておるということは伊藤さんもよく御存じのところだろうと思うわけでございます。現実的に国益を踏まえて対処していきたい、こう考えておるところでございます。
  450. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 持ち時間が終わりました。  最後に農林大臣、ぜひ日ソ漁業交渉において成果をおさめられますように、多くの不安を抱いている漁民の方々の生活にかかわる大変大事な問題でありますから、それぞれのいろいろな立場を越えて今度の国会でも各野党が協力をしようという姿勢もあるわけでございますので、ぜひ成果をおさめていただきたい、こうお願いを申し上げ、もう一つだけ、私たちは新しい海洋法時代に先駆けて、すでに漁業専管水域のみならず、わが国はつい先日の本会議におきましても、福田総理みずから、わが国は海洋国であるから世界どこにもない法律であってもわが国は先駆けてつくっていくのだ、こういう御答弁がありましたけれども、それならばまさに、いまや私ども漁業専管水域二百海里などと言っていずに、経済水域二百海里として新しい海洋法時代に備えるべきだと思いますけれども、農林大臣のお考えと、そしてもし経済水域二百海里とした場合にわが国にとってどんな不利益があるのか、お考えをお聞きをして、私の質問を終わらせていただきます。
  451. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは外務大臣の方から御答弁いただいた方が適切と思うのでありますけれども国連海洋法会議の論議等を見ておりますと、経済水域につきましては、まだ世界的なコンセンサスが熟していない、収斂されていない、こう思うわけでございます。わが国は、そういう意味合いからいたしまして当面急がなければならぬのは漁業に関するところの措置であるというようなことで、漁業水域の設定ということにいたしたわけでございます。
  452. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 不利益がありますか。
  453. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 不利益とか利益とかいうことよりも、やはりわが国はこういう海洋国家でございますから、世界的なコンセンサスが熟してくることを十分見きわめながら対処していくべきものだ、このように考えております。
  454. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 最近の二百海里時代の到来というものの内容が漁業専管水域という形で広まってきたわけでございまして、その意味合いから、今日、日本が二百海里の漁業水域を設けるということにつきましては、これに対して国際的な非難と申しますか、そういったものはまずないであろうと思われます。しかしながら、経済水域という観念になりますとただいま農林大臣がおっしゃいましたようにまだそこまで実効的に支配的になってきておらないということでございまして、その点は、国連海洋法会議におきまして経済水域という観念がとられつつあるということでありますので、経済水域ということになりますと、やはり国連海洋法会議結論を待って国際的に認められた形の方が好ましい、そのように考えているところでございまして、わが国といたしまして率先的に海洋の資源の分割にまず一番先に手がけるということにつきまして、これは国際的な承認が得られにくいということを考えておるわけでございまして、不利益があるか――利益、不利益わが国だけの観点から言えば、それは不利益というものはちょっと考えられないと思うのでございます。しかし、国際的な社会で生きていくために国際的な動向に従っていくということが好ましいという考え方をとっているわけでございます。
  455. 金子岩三

    金子委員長 以上で本連合審査会は終了することとし、これにて散会いたします。     午後六時五十四分散会      ――――◇―――――