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1977-04-07 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月七日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 竹内  猛君    理事 美濃 政市君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       愛野興一郎君    加藤 紘一君       久野 忠治君    玉沢徳一郎君       羽田野忠文君    福島 譲二君       森田 欽二君    小川 国彦君       岡田 利春君    柴田 健治君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席政府委員         農林政務次官  羽田  孜君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      久保庭信一君         農林大臣官房審         議官      石田  徳君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君 本日の会議に付した案件  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣  提出第四〇号)  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四一号)      ————◇—————
  2. 菅波茂

    菅波委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  農業改良助長法の一部を改正する法律案及び農業改良資金助成法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、この提案された二法に対して幾つかの質問をしたいと思いますが、第一に、農林大臣が本来出席すべきところを日ソ漁業問題の関係から大臣が座をはずしているということはきわめて残念であるし、これは大臣から直接に答弁をとらなければならない点が幾つかあるにもかかわらず、大臣がおられないままあえてこの質問をしなければならないということはまことに遺憾なことだと思います。したがって、最終的にこの法案を処理する段階では、やはり大臣答弁を詰めなければならない点があることを前提にしていますから質問をします。  戦後の日本農政の中で、農地法農業協同組合法農業災害補償法と並んで、今度改正をされる農業改良助長法は非常に特徴がある重要な法律だと思います。この法律は、昭和二十三年七月十五日に施行以来、今回で六回目の改正をするわけでありますが、この農業改良普及事業並びに生活改善普及事業任務というものはますます重大だ、こういうふうに私は考えているわけです。というのは、日本食糧自給率というものが大変低下をして、そして農村崩壊をし、農家崩壊をし、人間の体までむしばまれているというような状態の中で、この改良普及事業なり生活改善事業というものが意外に軽視をされている傾向にあるんじゃないか。こういうことで、これは後でその事実を幾つか取り上げるわけですけれども、この段階でこの重要な任務に対して、関係者としてはもう一度この任務の再確認をしてもらいたい。まず、その任務の再確認から私は質問をします。
  4. 羽田孜

    羽田政府委員 先生から御指摘がございましたように、いま農業を取り巻きます環境というのは非常に厳しいものがあるわけでございます。そういった中にありまして、私ども農業政策というものをこれから進めていくに当たりましては、これは要約して申し上げますと、国民に対して食糧安定的供給農業従事者の福祉の向上にあるというふうに考えております。これは農政の一つの目標だと思います。この目標を達成していくために、今日のこの厳しい農業を取り巻きます環境の中にあって、私どもはこの普及事業というものをより助長していかなければならぬというふうに考えております。このための政策手段としまして、法律制度のほかに補助、奨励あるいは金融措置などの手段がございますが、普及事業改良普及員の持つ各種機能、いわゆる情報提供機能コンサルタント機能教育的機能組織化機能農民行政との媒介機能などを十分生かし、直接農民に接して農民能力開発意識づくりなどの指導活動を行い、農民の自主的な農業及び生活改善を側面から促進、援助することによりまして農政の目的を達成しようとするものでありまして、農政の重要な部分であるということに位置づけておるところでございます。特に、いままで基盤整備等のハードの面を非常に進めておるわけでございますけれども、このソフトの面における普及活動というものは一層重要性を帯びておるというふうに、先生の御指摘のとおりに認識しております。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大変重要な位置づけをされたことは結構だと思うし、またそうでなければならないというぐあいに考えておりますが、そこで、二十三年に本法が施行されて以来今日までに五回の改正が行われ、今度は六回目という形になるわけですが、この三十八年の改正に際して附帯決議がついている。「農林水産業普及事業の総合的かつ効率的な運用をはかるため、農業、林業、水産業、蚕糸、開拓部門別に制度化されている技術経営指導及び生活改善指導体制整備するとともに、試験研究機関との有機的連けいを図りうるよう検討すること。また、農協等農林漁業団体技術指導との関係についても、技術連絡協議会を活用する等」云々、こういうふうに、研究機関普及それから各種関係団体との連携という問題について、私の承知する限りは法律的、機構的にはこの連携作業というものは必ずしもうまくいっていないと思うのですね。特に研究機関普及機関との間は、農林省においても実は研究部門普及部門とは分離をされている。末端においても農協技術員あるいは普及員との関係が必ずしも一体になっているとは思えないような状態がある。これをもっと総合性を持たせ集中的にできないものかどうか、この点はどうですか。
  6. 堀川春彦

    堀川政府委員 前回改正の際の附帯決議に触れましてお尋ねでございますが、特に研究部門普及部門が、組織としては分かれておるわけでございますけれども、これでよいかという点でございますが、農林省におきましても試験研究部門につきましては、国の農政方向に即しまして、かつ長期的な視点に立って試験研究の効率的な推進を図るという観点に立ちまして各種試験研究の横の連絡をとる必要性もございますので、農林水産技術会議が設けられていることは御案内のとおりでございます。  普及事業につきましては、従来から生産の面での結びつきが強い、密接な関係があるということから、私ども農蚕園芸局がこれをそれぞれ生産と合わせまして所管をしておるというようなことでございまして、そういう観点からいたしますと、農林水産技術会議と私ども農蚕園芸局との相互連携を密にするということによって、先生のおっしゃるようないろいろな問題に対応してまいっておるわけでございます。  それから、試験研究を効率的に推進し、普及事業につなげていくということになりますと、これも非常に重要な問題でございますので、国におきまして試験研究担当部局普及担当部局が省内におきましても研究行政連絡会議というものを開催するというような方法でその連携緊密化を具体的には図っているわけでございます。国の段階ではそういうことで対応しており、また都道府県段階におきましては、この両者の連携緊密化というのは一層重要でございますので、都道府県段階でも試験研究調整組織というようなものを設けまして、たとえば農業試験研究、それから畜産試験研究というようなものが独立の機関になっておる場合もございますが、そういう場合には、それを相互に結びつけるという意味での調整組織を持つ、あるいは試験研究機関には普及との連携を密にするという意味で必要な試験研究機関地方専技室設置する、あるいはまた、そこへ専門技術員分駐をさせるというようなこと、あるいは実用的な試験研究へは専門技術員が積極的に参加をする、そうして課題の設定等について大いに意見を述べていただいてこれを進めるというようなことをやっておるわけでございます。こういった相互連携措置を今後一層強化していくというようなことで、試験研究普及一体化と申しますか、連携緊密化を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま局長から答弁があったわけですが、実際はこの技術会議は大変高度な技術研究をされていく、それからこの普及員あるいは生活改善等々は非常にどろ臭いと言っては悪いけれども農家なりそういう部落の末端に入り込んで活動する。一方は余りそういうことがない。これは性格の違った形の活動なんだ。農林省統計によっても、この農業改良普及員にしても生活改善普及員にしても、その活動時間の七割以上は現地指導という形になっている。それで、打ち合わせ時間というのはわずかに十何%という形になっているわけだから、非常に時間の配分からしてみて、人数が足りないということもあるかもしれないが、現地指導改良普及員の場合には六七%、生活改善の方が七〇%、それから関係機関との連携改良普及員が一一、生活改善の方が五・四ということですから、打ち合わせをするといっても、この表の中ではそれほど緊密に打ち合わせができているとは思えない。だから、これは結局は数が足りないからそういうことになるかもしれないから、やはり十分に人手をふやして打ち合わせができるような、あるいはそういう調整のことをしていかなければならないということを私はこの表から痛感をするわけです。これはここで答弁をいま求めるわけじゃないが、いずれにしてもこういうことは大臣なり何なりに要請をして、もっともっと関係機関連携の強化とそれから打ち合わせのできるようなそういう時間的なものを十分にとれるようにしなければいけない、こういうふうに考えます。  それから次には、普及員減員に歯どめがかからないかどうかという問題について、きのうもわが党の松沢委員からかなり細かい話がありました。それに対して一定の答えがあったわけですが、なお私は次の問題について明らかにしてもらいたいと思う。  五十一年の二月一日現在、わが国の市町村の数は二千三百六十三、普及職員設置の数が九千六百九十七人、私の統計に誤りがあれば指摘をしてもらいたいのですが、九千六百九十七人、一市町村平均三人。また、生活改良普及員の場合には、昭和四十年に一市町村一名の設置目標によって二千三百二十人が四十一年に二千三百五十人に増員を見たけれども、それ以降、四十三年以降第一次に引き続いて第二次、第三次の減員、なお五十二年度から五十五年に及ぶ第四次の定員削減によってまた毎年三・二%、七十八名がさらに減員されようとしている。同様なことは農業改良普及員にも及ぶものと見られるが、それはどうなのか、生活改善普及員の方はかなり減員の数が明らかになっているが、改良普及員の方はこの数はどういうふうになっているのか、これはどうですか。
  8. 堀川春彦

    堀川政府委員 五十二年度から昨年の八月の閣議決定に基づきまして普及職員減員計画が進んでおるわけでございまして、四年間で三・二%でございます。その総計は四百十名減ということになるわけでございまして、農業改良普及職員関係で三百三十七名、生活改善関係で七十三名という姿になっておるわけでございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 結局これは減るということですね。そういうことですね。——そうなると、最初に私が質問したように、農業改良普及員なり生活改良普及員任務は現時点で非常に重要だ、こういうことがあり、しかも方向としてはこれは一律に減らしていく、その中間に、特に生活改良普及員のごときは一市町村に一名を目標にしていくということをうたっておきながら、しかもそれを減らしていくということは筋が違うじゃないですか。こういうことは政務次官にしっかりがんばってもらわなければならないが、これは閣議決定だから大臣の問題であって、こういうことを閣議が一遍決定をして、いつの間にかその決定と反したようなことを平気でやるということは、これは閣議決定の権威に関係することだ。だから本当は農林大臣が出てこなければだめな話なんだ。だから農林大臣を要求したけれども、いろいろな都合でやむを得ないということだが、私はこの問題は農林大臣に問う前にここで明らかにしてもらって、さらに大臣にこれは詰めていきたいと思っているのですが、まず答えてもらいたい。
  10. 堀川春彦

    堀川政府委員 いま生活改良普及員について、たとえば一市町村一名というお話もございまして、私どももできればそういうふうにという気持ちはございますけれども、しかし一方、国の職員もあるいはまた都道府県職員もこれに準じ措置するということになっておりますので、その面からは減員を避けられない、これはやむを得ないことであるというふうに思っておりますが、しかし、それによって普及活動が大きな支障を受けるということは極力避けなければならないというふうに思っておりまして、その点を補うために、先ほど申し上げましたように、機動力充実等措置でできるだけ工夫をして、現実普及事業支障を生じないような努力をしておるところでございます。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 政務次官はどういう答弁をされますか。
  12. 羽田孜

    羽田政府委員 いま先生のおっしゃる趣旨もわかるわけでございますけれども財政的な問題もこれあり、ともかくその普及活動の質の低下というものだけはしてはならぬということで、いま局長から答弁申し上げましたような施策というものを進めておるところでございます。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 特に政務次官に言っておくけれども、この問題は普及事業の基本的な問題なんです。つまり普及事業は重要だ、こう言っておきながら、人を減らしてしまって、そして今度は、後で財政の問題や機動力の問題を言うけれども、そうなればこれは実際的にはできないのではないか。そうするとこれはインチキだということになる。そういうことだけは明らかなんだ。それは学校の先生とかあるいは警察官とか、こういうものはちゃんと定員から削減されない。保健婦だってたしかそのはずだ。農業を大事にする、農民を大切にする、そういうことを言っておきながら、そっちの方を減らすなら、ぼくらは、やはり閣議というものは自分の決めたことを十分にやらないというようなことを農村で宣伝する以外にないじゃないか。そうして今度は世論を盛り上げてもっとしっかりやれ、閣議決定どおりやれというふうに言わざるを得ない。ぼくらは人間をふやすことがそんなに大事じゃないと思うけれども、少なくとも一町村に一名ということを閣議決定をしてある。四十一年に決めた。それが逆に減っていくわけなんだから、そんなばかな話はないでしょう。こういうことを現に問題点として指摘をする。  その次に、農業改良普及員なり生活改良普及員活動というものは、その町村の数なのか、面積なのか、どういうものがこの対象になって配置をされているのかということですね。つまり、特に農業改良普及員の場合には、それは確かにわが茨城県を見ても九十二の市町村に三百十四名いる。しかし生活改善の場合には、九十二の市町村に五十四名しかいない。そうなると、一人の者が何カ町村かを担当する、そういうことでどうも活動範囲任務というものに対して、何としても理解ができないところがある、この辺はどうなんですか。
  14. 堀川春彦

    堀川政府委員 ただいま先生の御指摘になりましたのは、市町村の数と、それから具体的に各都道府県で配属をしておりますところの普及員の数との対比をおっしゃったのだと思います。  そこで、その問題に関連します問題としては、普及職員予算上の定数についての配分という問題があるわけでございます。この配分都道府県と、それから私ども農林省との間の協同農業普及事業として進めておるわけでございますので、その相互の間の協議によりまして決まってきておるという姿になっておるわけでございます。それで都道府県予算上の定数配分が決まる。そこで、この際現実予算定数をどういうように配分しているかということにつきましては、多分にいままでの経緯、歴史的な沿革によるものが大きく作用しておるわけでございます。私ども改良助長法規定によりますと、十六条の二の規定都道府県別の割り当てをする場合の基準というのが書いてございます。その際に農業人口別耕地面積別のほか、市町村数別という配分基準があるわけでございまして、全体を十といたしますと、二割というようなウエートを持つ配分市町村の数にかかわらしめているということでございます。しかし総体の県の定数の枠というものが、多分にその県のいろいろの事情というものに左右された歴史的な沿革も持っておりますので、一普及員当たり町村を持つのかということを比べてみますと、県によりましてそれぞれ違いが出てくるということでございまして、これは一挙に一普及員当たり町村が適当であるというふうにもなかなか決めかねる問題でありまして、私どもといたしましても、適正な配分とは何であるかということを、従来も研究してまいっておりますが、今後も検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは配置の表を見ると、各自治体ごとに、都道府県ごとに全くばらばらだ。農業改良普及員にしても、生活改良普及員にしても、それに対して論理性がないです。それを認めますね。論理性がないでしょう。
  16. 堀川春彦

    堀川政府委員 一定の画一的な基準というものに照らしての意味でございますれば、論理性がないというようなことは言えようかと思います。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 率直に認めて結構ですが、そういうように正直に認めてもらって、そうして農業重大性から言って、どうしてもこれは大臣が来ないと話にならないことがたくさんあるのだが、何とかして、これはもっともっと末端普及員が安心をしてやれるようにしなければなりません。  年齢はどうです。年齢老齢化というものはどうなっていますか。
  18. 堀川春彦

    堀川政府委員 御指摘のとおり、老齢化等が進んでおるということは、他の職員の場合にも見られることでございますが、普及員の場合に四十歳以上の方が、特に農業改良普及員の方に多い。ウエートが非常に大きくなってきておるということは言えると思うわけであります。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 日本農業老齢化と同じように、改良普及員老齢化したというのは、あとの補給がないからです。どんどんやめさせる方だけ一生懸命やって、あと補給しなければ老齢化するのはあたりまえだ。こんなことをしていたら日本農業が衰えていくと同じように、普及事業も衰えていってしまう。だからこれを補給しなければだめです。これは自民党の皆さんもしっかりやってもらわなければまずいですよ。われわれだけ叫んでもだめです。  国家公務員定数管理計画に準じて普及員予算定数云々ということをさっき局長が言われたが、教育者警察官保健婦等はそれから除外をされていると聞いているし、事実そうですね。今後閣議決定に当たって、普及職員削減対象外として予算定数確保を図るべきだ。これはすでに四十一年にちゃんと閣議で決めていることなんだ。そうしていま年齢がだんだん衰えていって、町村は合併はしても、区域は違っても、地域というものは変わりがないでしょう、地域は広いわけだから、町村の数が減ろうとふえようと、日本の土地全体は輸出も輸入もできないのです。だから担当範囲はますます広がるばかり。そうなると仕事はどうしても雑になるし、おろそかにならざるを得ない。こういうことだから、この点をどうしても再検討してもらわなければならないことで、この法案改正の中で、これを運用する、仕事をする農業改良普及員生活改良普及員の数、位置というものについては大事だから、これは政務次官から、なお一層努力するということについて、明確な答弁をもらうと同時に、大臣にこれは最後に詰めたいと思う。
  20. 堀川春彦

    堀川政府委員 私どもも、閣議決定というのに対しまして、特別の工夫をこらし、特別の理由をもってでなければ、これを政府の一機関として考えます場合にはなかなかむずかしいということでございます。ただ、普及活動の質が低下するということを極力避けるために、私ども農村の実態というものもよく念頭に置いて普及活動あり方を、たとえば集団的な農家グループ対象として指導することを強化するとか、これは生活改善でも同じでございまして、グループ育成を中心にした生活改善普及体制をとる、あるいは状況によりまして濃密指導地区というものを設定をいたしまして、そこを重点グループ育成その他の方式によりまして適切な指導を加え、その結果がその他の地域にも及ぶというような活動方式をできるだけ工夫して、それと機動力整備とを組み合わせて普及の質が低下をしないように努力をしたいと思っておるところでございます。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この法が制定されてから今日までの歴史を見ると、食糧難の時代には、二十三年から三十二年までは小地域制で数がかなりあった。その次に、今度は農業基本法ができてきて農業を切り捨てようということを考えてくると、三十三年から三十九年、これは中地域制になった。なおこれを減らすことを合理化するためには四十年から現在まで広地域制という形でこれを理屈をつけている。これは人間削減するためにうまい理屈をつけたものだ、こういうふうにも思うけれども、こういうことがよくない。その人間を減らすことを合理化するのではなくて、やはり農業を大事にする、農民を粗末にしないということなら、そこに重点を置けばますます地域活動なり地域指導なり、そこに物と人と機材を持ち込むというのはこれは当然じゃないですか。そのためには実際金を惜しんではいけないじゃないですか。  今度のように、ソ連からあんなに十二海里だ、二百海里だ、言いたいことを言われ、やりたいことをやられている。これに対してちっとも政府が強腰でこれに対応できない。あるいは今度は石油でやられるかもしれない。福田総理資源がないないと言っている。その資源を大事にし、確保し、生産をする農民とそれを直結する改良普及員なり、その仕事をする、健康を守る生活改良普及員が本当にしっかりした魅力と期待と展望を持って仕事ができるような、そういう環境をつくってやらなければいけない。こういうことは、これは農林大臣に言わなければならないことだけれども、ひとつ政務次官もよくこれを聞いて、局長もよくこれを聞いて大いにがんばってもらいたい。これを粗末にしている、阻害しているのは一体何か。大蔵省か、それとも農林省の中にあるのか、どこにあるのですか。財政上の問題から言えば大蔵省かもしれないが、理解できないなら大蔵省にもこれは物を言わなければならない。どうですか。
  22. 堀川春彦

    堀川政府委員 数がもっと多ければ、さらに充実した活動ができるということは、これは私どもも率直にそのとおりだと存ずるわけでございます。しかし、先ほども申し述べておりますように、閣議の大方針というものもございますので、それに従うことはやむを得ないというふうに思っておるわけでございまして、ただ広域普及体制をとっておるということが単に人減らしのために好都合だからという気持ちでやっておるわけではございませんで、農業の将来の発展のあり方を考えてみますときに、やはり広域的な問題が非常に多く生起をしてまいります。こういうものに対応する体制、それから昔は市町村に駐在制等をとりまして、そこに起きてくる農業問題、技術問題、経営問題にまんべんなく対応するということをやっておりましたけれども、昨今は非常に問題の起こり方が高度に技術的、専門的にもなってきておりますと、やはり専門の分野を担当するところの改良普及員一定の広がりの地域を持つ普及員連携プレーをとりまして活動をするということの方がむしろ合理的であるという、もちろん欠点も出てまいりますけれども、そういう活動方式の方が相対的に観察をすれば合理的ではないかというようなことに対応して、広域普及所を設置しておるわけでございます。しかし、これもいろいろ地域地域の実情に応じて、普及員のたとえば分駐とかいうようなことも実情によっては認めておるわけでございますし、要は普及活動の質が現在日本農家なり農業の求めておるものに対応できるようにできるだけしていくということであろうかと思いまして、われわれはそういう気持ち努力をしたいということを申し上げておるわけでございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 閣議決定を大いに守るという話はあったけれども、それじゃ閣議決定が守られているかどうかということをもう一つ具体的な例で今度は聞きます。  ここには閣議に列席する人がいないから、これは聞いたところで答弁はできないと思うけれども、しかしここで述べておかないとまた次の段階で締められないから申し上げておきますが、五十年の九月二十三日の閣議決定で婦人問題企画推進本部というものができている。その中で内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部の設置について閣議決定が行われたが、そういうことの中で、「農山漁家生活の質的向上を図るため、家庭経営、生活技術、生活環境改善等生活全般についての普及教育訓練を地域の実情に即して推進するとともに、その一環として、婦人の状況の改善に関する情報の提供・交換、自主的グループの育成、国際交流活動の促進を図る。また、農村計画地域社会活動への婦人の参加を促すため、意識の啓発、コミュニティ施設、高齢者の文化活動施設等の整備・活用等によってその活発化を図る。さらに、農山漁村における健康生活指導を充実するとともに、特に婦人の過重労働を解消するため、家事労働の合理化、農作業条件等の改善を進める。」次に、「これらの施策の円滑な実施のため、十分な指導を行う所要の生活改善普及職員配置する。また、その資質の向上、機動力等の強化、市町村等との連携の強化による活動の効率化を図るほか、生活技術の開発を行う。」こうなっておる。  「十分な指導を行う所要の生活改善普及職員配置する。」、こういうことになっている。これは閣議決定ですよ。それを今度は何年か先には七十八人減らすということはこれはどういうことです。これは筋が通らない。ちっとも通っていない。閣議決定を守られていないのだ。これは政務次官、よくここのところを聞いてがんばらなくちゃだめですよ。閣議決定閣議決定というけれども閣議決定は十分に配置することになっているのに、それを今度は減らすということはどういうことです。
  24. 堀川春彦

    堀川政府委員 いまの御指摘の婦人の問題に関係しますいろいろの諸施策の方向づけの中で、生活改良普及員の数に触れる表現があるわけでございます。それは先生のお読みになったとおりでございまして、ここに書いてございますのは「十分な指導を行う所要の」ということでございまして、「十分な指導」というものをどう見るかということになるわけでございます。  必ずしも一町村一人というようなことをこの文章が示しておるわけじゃございませんが、いずれにしても、現状からいたしますと生活改良普及員の方々の数をできるだけ確保をしたいということで私どもいろいろ工夫をこらしてみたわけでございますが、私どものこらしたような工夫ではなかなかいかないという面もございまして、私どもとしてはこれは生活改良普及員に対しましてもできるだけ資質の向上なりあるいは活動方式工夫をする、あるいは機動力を付与するというようなことで対応をしたいというふうに思っておるわけでございます。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 昭和四十一年の閣議決定では、一市町村に一人ずつ配置をするということを閣議が決めた。それで五十年の九月には、今度はこういう条件で行くのだから十分に配慮をするということも閣議で決めた。そうして今度は、そのうちに何年か先には七十八人やめさせるということもまたどこかで決めてそれを持ってくる。おかしいじゃないですか、これはだれが見たって。手品師じゃないのだからそんなうまい話ができるわけはないじゃないの。だから、こういうことを大臣に聞かなければだめなんです。政務次官どうだね、これは。筋が通っていると思いますか。
  26. 羽田孜

    羽田政府委員 いま先生が先ほど来お話がございました件につきまして、これは閣議決定というんじゃなくて、閣議の報告だったというふうにいま私ども報告を聞いておるわけでございますけれども、いずれにしましても一番初めにもお答えいたしましたように、この新しい時代の農業というものを取り巻きます非常に厳しいものがございます。そういった中にありまして、いままでのような、ただ技術的な問題だけではなくてソフトの面というのは非常に重要になってきておるわけでございまして、私どももこの点を十分踏まえまして十分な活動ができるような体制、これを今後ともつくり上げていきたいというふうに思います。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これ以上言ったところで大臣じゃないのだから、だから大臣が出なければぼくは質問しないと言ったけれども、これもしようがない。まあいろいろな日程上やむを得ないからやるけれども、それはおかしいですよ、本当に。こんなもの、小学校の一年生が聞いたっておかしいと言うよ。四十一年に一町村一名を決めて、五十年には報告であろうと何であろうと、重要だからこれを大事にすると言って、そして今度は何年か先には人を減らすという。だって人と物と銭がなかったら動きがとれないじゃないか、観念ばかりあったって。世の中理想主義じゃ動けないのだ。これは大臣にこの次のときやります。  次の問題は、農林省統計調査の報告によると、農家における婦人労働力の占める比率というものは昭和四十年に六〇・四%あったものが昭和五十年には六二・四%と男性の三七・六%を大きく引き離している。これを見ると、どうしても生活改善普及事業というものは非常に重要なんだ。つまり女性の労働力というものが日本農業のある意味においては基幹的な労働力にもなっていると言っても過言でないぐらいになっているのです。それにもかかわらず、今度はそれをどんどん減らすというのだが、そういうふうに減らせば、それは自民党の政府がやることだから私たちは大いに農村に行って宣伝するけれども、余りきれいな話ばかりしてもだめなんですよ、この辺で閣議決定なり何なりというものはしっかり守ってやりました、それでもできなかったらどうするか、こういうことにならなければいけない。どうです、これは政務次官だな、答弁するのは。
  28. 羽田孜

    羽田政府委員 先ほどから申し上げておりますように、農村を取り巻く環境というものは非常に厳しいものがございます。それと同時にいま先生から御指摘がございましたとおり、近年一層婦人の農村において占める役割りというのは大きくなっておりますし、また農業就労人口の中で婦人が占める割合というものは非常に高くなっておる現状であります。また、それと同時にその御婦人方は各家庭にあって生活を守る一番の中心でもあるわけでございまして、一層われわれは普及事業の中で皆様方が健康の面でもあるいは仕事で働く面におきましても、働きやすい環境づくり、このために普及事業というものは一層働いてまいりたいというふうに思っております。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題も定数の問題やあるいは機動力の問題や財政の問題と不可分の関係にあるから、今後の農業というものを考えるときにこういう大事な問題に対してもっともっと真剣に取り組んでもらわなければだめだということをつけ加えて次に移ります。  さらに資料によりますと、基幹的農業従事者、つまりこの法律のねらいは従来の改良普及員に後継者の教育をする資格を与えるということが一つのポイントになっている。なおいままでの補助金を分担金という形に改めて出そうということにもなっているが、それでは一体その対象になる農村年齢構成はどうなんだということになると、こういうことでしょう。これは昭和四十年ですが、十六歳から十九歳までが二%あった。二十歳から二十九歳までが一二・九%、三十歳から三十九歳までが二四・五%、四十歳以上が六〇・六%であったものが、十一年後の昭和五十一年では、十六歳から十九歳が〇・四%で一・六%減った。二十歳から二十九歳は八・一%でこれまた四・八%減っている。三十歳から三十九歳は一四・九%と、九・六%の減であり、四十歳以上は七六・六%と、一六%も増加している。この傾向は一体農村の中で好ましい傾向だと思うのか思わないのか。これは政務次官どうです、いまの傾向は。
  30. 羽田孜

    羽田政府委員 いま先生のお話しのとおりそのようにいま推移をしておるわけでございます。やはりこれからの農業というものを考えましたときに決して好ましい傾向ではございません。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 正直に認めたまではいいけれども、それならばどうするかという、つまり日本農村は病気にかかっているんだ。大病なんだよ、これは。その病気にかかっている実態がこうなんだ。この病気にかかった日本農業を健康なものにしていくというのがつまり農林省仕事であり、その仕事の重要な任務農業改良普及員であり生活改良普及員でしょう。そういうことを考えるときに、なおそれでも人間を減らそうじゃないか、こういうことで、予算も削ろうじゃないか、おかしいじゃないの、それは。だれが考えたっておかしいよ、これは。おかしいと思わないかね、どうです。
  32. 堀川春彦

    堀川政府委員 確かに若年層の農業の基幹的従事者が比率として少ないということはお説のとおりでございます。したがいまして、一番重要なのは、農業をやろうという若い方にできるだけ農業に円滑についてもらうということをやる必要があるということから、今回の法律改正もそういう考え方の一環として出てきたものでございます。もとより、これだけで若年層の農業の後継者を農業内部にどんどん獲得をしていく、あるいは維持をしていくということは困難でございます。他の施策の強力な展開と相まってこういうこともやってまいりたい。そういうことによってできるだけ年齢構成におきましても比較的若い方が農業を担う中心になるという姿を将来の姿としてできるだけ実現をしたいという気持ちでございます。
  33. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題も重要な問題だから、やっぱり重症にかかっている日本農業というものを健康な体にするためには若い血液と、その若い血液によってふるい立つような展望が与えられなければだめだ。  ここに私の地域で「独立農業青年の会」というのがある。農業をやっていこうという後継者だ。この法案でいう、皆さんのあれが教育すべき対象になる者がいまの農政について何と言っているか。いまちょっとここのところを長いけれども読んで皆さんに全部聞いてもらって、本当にこの青年の言うことがうそなのか、いやあれはうそだというなら、その青年と直接話をしてきてもらいたい、こういうふうに思っている。これは「独立農業青年の会」という、青年ですよ、後継者ですよ、霞ケ浦の周辺にいる若い二十代の人たちの会です。  「現在の農政農業をだめにするだけでなく、農民の考える力、自主性をマヒさせたりして精神的なものまでダメにしている。農業基本法・総合農政をはじめとして、殆んどの施策は資本の資本による資本のための農政であった。資本が農業農民から求めているものは、一貫して水と土地と労働力、そして安い原料(農畜産物)であり、出来た製品(原価は秘密)を一方的な宣伝力によって高く買わせる購売対象でしかない。昭和三十五年に千四百五十万人の農業人口は昭和五十年に七百九十万人となった。六百六十万人の減で、更に七百九十万人の七〇%が六十歳以上の老人である。後継ぎのない職業ほど未来に望みはない。子に託そうとしても子はいない。腰がまがっても一家の主人公として働かねば生活が出来ない。兼業は一段と増加し、出稼ぎ職場の条件の悪化にもかかわらず、生木を裂くような妻子との別れを我慢して日常化している。事故、労働災害、職業病も増加している。どのような形態の農業経営でもたいがいの農民は異常な体で病気をもって働いているとの報告もある。しかし明日の生活労働の忙しさから無理をし一そう病気を慢性化させて働く。医療も厚生連がありながら農民のための医療とは程遠い採算主義になっている。土地は優良農地一〇〇万haがつぶれて大半は大資本が買いしめている。」云々。こういうことで、その次に、「農民一人一日当りの自家労働三千五百八十円で製造業常用労働者五人規模以上平均一日当り現金給与額は六千六百七円で半分でありその差は拡大している。農民の労働が低く見積られている証拠でもある。」ということで、ここに価格問題が出てきております。  それからずっと飛びまして、「「誰よりも農民を愛す」、その「農民を愛す」総理の下での五十二年度予算中、農林予算は一〇%以下に低下している。加害者と被害者を同列にして協調と連帯を説いている。」福田総理ナンセンス、こういうふうに書いている。  さらに、この法案に関連するところでは、この青年たちは「農業の協同化をテーマにした「東ドイツの協同農業」「新利根開拓の協同農場」の二本を放映した。参加した人達の意見は、一致して皆感動し、可能ならば是非協同化の道を行きたいという意見であった。この試みは、地域の人達へも呼びかけての映画会であったので多数の参加者があり、いろいろの人の感想や意見が出て、班内の映画会とはまた趣を異にした非常に有意義な学習となった。」ということであるわけですが、これが農村青年のまとまった一つの意見です。この意見に対して、もっともだと思うのか、これは誤りだと思う向きがあるのか、どうです。
  34. 羽田孜

    羽田政府委員 純情な、純真な青年たちの考えの中にそういった考えというものが現実にあるということを私どもも承知いたしております。ただ、高度経済成長という中にありましてこういった風潮というものが生まれ、そして農村から若い人たちが流出していったという現状がございます。しかし、やはり高度経済成長から低成長、そして安定成長に移行していく今日、改めて農業というものに対して本当にこれをやっていかなければならぬという青年が徐々にまた芽生えつつあるんじゃないかというふうに認識しておるわけであります。  それと同時に、かつてはあの高度経済成長の中にあって、ほかの職種と比較いたした場合に、やはり耕地面積が狭い国土で一層多くの方が従事しておったということで、狭かったのじゃなかろうかと思います。そんな中で、だんだん農業に対してもう一度考え直す人がふえたと同時に、規模そのものも徐々にふえつつあるんじゃなかろうかというふうに考えております。  いずれにいたしましても、農業がやはり国の基本になるという考え方はいまだに変わらない不変の事実であるわけでございますので、そういったものを踏まえながら、私どもも、本当に農業にいそしむ方々が希望を持っていそしめるような農業というものを確立するためにこれからも施策を進めてまいりたいというように考えます。
  35. 竹内猛

    竹内(猛)委員 希望と期待はいいけれども現実にいまのように労働力が婦人化し、しかも若い労働力が減って年寄りがふえている。こういうような状態の中で霞ケ浦の周辺で働いている、レンコンやあるいは水田や野菜をつくっている農村の青年の叫びというものは、これはそのまま正直に受け取ってそれに対する対応をしてもらわなければいけないと思うのです。その中にあるものが、一つはさっき言った価格の問題でしょう。その価格については、もう畜産物の価格を決めるときに大議論をした問題でありますが、この問題についてもなお議論をしたいし、農業改良普及員が最末端で、農家の庭先であれをやりなさい、これをやりなさい、米をつくりなさい、構造改善事業をやりなさいあるいは土づくりをやれ、こういうふうにいろいろ指導している。では、そこへ何を植えてどうしたら一体所得になるのかということを聞かれるときに、これは大変迷うと思うのですね。それは日本農政の中に、一貫した計画的なあるいは段階的なビジョンというものがやはり欠けているのじゃないか。あるときには米をつくれと言って稲作の問題に集中的にやった。ところが、今度は米をつくっているうちに減反、こういうふうになってきた。そうして今度は、せっかく指導したものにやめろということを同じ普及員が言わざるを得ない。農家では最も収入が安定しているといわれた米をやめろということは、自分のかわいい子供に自殺をしろと言うことと同じぐらいに悲しいことなんです。それならば、米にかわるべきものに対して、喜んでそれに転作をし、移るためには、重要な農産物には同じような価格の支えがなければいけないのじゃないか。ところが、価格の決定方式というものは作目ごとにばらばらなんです。だから、農業に対して本当に真剣な農村青年なり跡取りが中央の指導についていけないというところがある、こういうことだと思うのですね。  農業政策についてはもう時間がないから余りものを言う機会がないが、そこで、改良普及員のいる事務所という問題について、現地の声は合同庁舎の一角に普及事務所があるということについては余り好ましくないと言っている。何とか自分たちは農民の自主的な創意的な意見を集中的に集めてこれを農政に反映していきたい、そのためにはやはりこの事務所は青少年センターとかあるいは農業者大学とかそういうところで、土足で農民がもっと自由に入れるようなところでなければ本当の農民気持ちはくみ取れない、こういうことも言うわけだ。茨城県の場合は必ずしも合同庁舎だけにあるわけじゃない。石岡においては石岡営農センターの横に改良普及事務所があるあるいは岩井市においては農業者大学と一緒に普及事務所があるから、これは一つのいい方向だと思うけれども、そういうことについての統一した指導なりあるいは考え方というものは出されているのか。それは勝手にやれと言っているのかどうか。
  36. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生指摘のように、合同庁舎に改良普及所が入っておるというものが全国で半分をやや超えたところということになっております。それから、独立庁舎を持っておりますのが四割強でございます。残りはその他ということになっておるわけでございますが、私どもも、できれば独立庁舎で、しかもその位置なりそれから構造等、普及事業の中枢を占める改良普及員の詰める場所として適切なものであってほしいということは思っておりますが、合同庁舎であっては困るとか、そういうことは具体的に申しておらないわけでございます。     〔菅波委員長代理退席、片岡委員長代理着席〕 そういうことから、合同庁舎で、たとえばその普及員の方々の詰める場所が一階じゃなくて三階にあるというようなことになりますと、とかく農家の方も入りにくいとかいうようなこともございますようで、私ども、この辺はできるだけ私どもの先ほど申しましたような気持ちを、調査整備等の段階都道府県が可能なものならばくんで実現してもらいたいというふうに思っておるわけでございます。
  37. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう大体時間が来たようですが、補助金という問題について、これは再検討しなければならぬ。補助金はためになる補助金とためにならない補助金がある。そんなことを言うと、何を言っているのだ、こういうふうに言われるかもしれないけれども、実際最末端に届いて、農家がなるほどと言って喜ぶ補助金もあります。しかし、補助金は中央から出ているけれども、それが砂の中に水をかけたように途中で消えてしまうものもあるわけだ。その補助金の問題についてはいずれ別な段階で議論をしなければならないと思っていますが、私は、補助金を全部やめろなんというそんな暴言を言うつもりはない。  そこで、最近補助金は農民の主体性、自主性を喪失させる、そして依存性を強めて中央における権力の支配が補助金を通じてますます強化される、こういう形で、これは改良普及員から言われているわけじゃないが、最末端農業をよくし、農民の声を聞こうとすれば、中央の政策とかなり相反するようなことを言う者もいるかもしれない、そういう声も率直に聞く必要があるだろう。農林省がよく宣伝をしている静岡県の豊岡村は、まさに補助金の行政から融資によって村づくりをしている模範的な村だと言われているが、ああいうように金融問題でもちゃんと融資でやれるような方向をとっているところもある。それを見ると、やはり補助金を中心として中央に依存をする農政、そうするとそこには官尊民卑というような考え方も生まれてきて、常に中央に従属するという、自主的な、自立的な、創意的な農民の魂をゆすぶってしまうところもあるわけだから、この補助金問題についてちょっと考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  38. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農林予算の中で補助金のウエートが非常に高くて、その補助金行政についてただいま御指摘のように農家の依頼心を高めるとかあるいは零細であってその執行についてはいろいろ問題が多いという点につきましては、われわれも十分自覚しておりまして、自戒をいたしまして適正な補助金行政の執行に努力をしていきたいと考えております。私どもの考えといたしましては、農業基盤整備だとかあるいは集出荷施設等の社会資本的な投資につきましては、これは国がかなり積極的に援助をしていくべきである。また集団的な利用とかあるいは共同利用の機械等先駆的なものにつきましては、補助金行政という中で援助をしていくことが今後とも必要であると思っておりますが、個別農家に対する補助はできるだけ融資に切りかえていくことによりまして、必要な資金の援助ということによりまして自主性を高めていくという方向で対処していきたいと考えております。  また、角度を若干変えますけれども、零細補助金、使途について余り上から規制の強い補助体系をできるだけ是正するという意味におきまして、総合助成的なやり方で、現地の実情に応じて農家なり農業団体を選択できるという補助体系にウエートを置いていくというような配慮も加えながら是正をしておるわけでございますが、今後とも御指摘の点につきましては十分念頭に置きまして適正な運営に努めてまいりたいと考えております。
  39. 竹内猛

    竹内(猛)委員 最後に一点だけ指摘をして終わりますが、何といっても大臣答弁をしなければまとまらないようなことばかりいままで申し上げてきましたけれども、これは整理をして、そして次には明快な答えができるように準備をしてもらいたいと思います。  私は、農業改良普及員仕事なりあるいは生活改良普及員任務というのは、この段階で非常に大きなものがあるということを最初に確認をした。そして、やはりこれは、自主的で創造的な農政、それを担う後継者が生まれる、こういう農村でなければならぬ。後継者というものは、後継者そのものではないので、農村に魅力がなければ農民は残らない。幾ら後継者に金をやったから、百万円貸したから、二百万円くれたから、そんなことで残るほど農村の若い者は律儀的じゃない。いまは、金は金、自分のことは自分のことで、どこへでも行ってしまう。行ったって別に罰せられるわけじゃないのだからね。そういうようなことではなくて、農村に残ってやりたいというような農業にしていく。そのためには、いままで農村の中にある、依然として官尊民卑という考え方があるでしょう、それを、官民一体という方向にもって行くためには、そこに信頼関係がなければだめだ。信頼関係をつなぐものは何か。一遍決めたことをどんどんひっくり返すようなことではなくて、決めたことは守る。やめるときには、なぜやめるかということを明らかにしなければ、これは皆納得しないわけですよ。こういうことでまず農政の基本の問題がある。  それから予算の編成の場合でも、補助金制度から価格決定や何かに至るまで、交付金なりあるいは金融でできるような農業というものが必要であり、農民の自主的なものをやはり育成をしていく。そのためには、農民生産費の補償されるような農畜産物の価格体系というものができてこなければいけない。だから、われわれは、政治は生産農民が安心して生産をしやすい生活環境生産環境、価格決定あり方あるいは国際的な農業との関連、こういうようなことを整えて、そしてこういうふうになったから若い農村青年に農村に残ってもらって、そして一億一千三百万曲の国民の食糧生産をする意欲と勇気を与えるような、そういう農政環境づくりに努力をし、それをつなぐものとして生活改良普及員があり農業改良普及員があるはずだ、こういうぐあいに位置づけをしてもらいたい。  こういうことを要望して、ひとまず私の質問を終わりますが、これで終わったわけじゃないですよ。これからが本当ですからね、どうぞひとつ……。
  40. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 次は、野坂浩賢君。
  41. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま、後継者に農業に対する魅力と勇気を与えよという最終的な意見が述べられたわけでありますが、私は、この農業改良助長法の一部を改正する法律案に基づいて、いまお話があった後継者の問題を最初に取り上げて、政府の見解をただしたいと思います。  農業後継者の育成の問題については、さらに前進をさせていく、そういう意味でこの法案提出をされておるわけでありますが、どの程度これからの後継者というものを育成をしていくという考え方であるのか、まず伺いたいと思います。
  42. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業後継者として一般にどの程度の人数がどの程度の質の人として必要かということについては、これは具体的にそういうものは持っておりませんが、私ども、できるだけ優秀な後継者を育成、確保するという観点から、今回御提案申し上げております改良助長法の規定によりまして、農民の研修施設を整備し、そこで教育研修をする者の数としては大体四十三校の整備目標といたしておりますが、一年にそこから出てこられる方が三千人から四千人という規模の整備をまず当面の整備目標といたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  43. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま局長からお話をいただきましたように、仮称でありますが、県の農業者大学校とでも言いますか、この教育施設の現状は、四十三校あって、入学の定員というのは四千四百四十名、こういうふうに承知しております。これに対して実際の在籍人員というものは四千百三十九名と私は承知をしております。そういう実態を見て、定員に満たないという数が出ておるわけでありますが、これについてどうお考えになっておるだろうか、なぜ定員に満たないだろうか、この点について伺いたい。
  44. 堀川春彦

    堀川政府委員 これには種々の原因があろうかと思います。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕 いまやっております教育研修のあり方に十分納得ができないというようなこともあろうかと思いますが、やはり高校卒業後そこへ行きまして、そこで研修を受けまして直ちに農業へつくということについて諸種の条件が厳しいということが基本的に影響しておろうかというふうに思うわけでございます。
  45. 野坂浩賢

    ○野坂委員 諸種の条件ということでは非常に具体性がなくてよくわかりません。だから、本当の意味の後継者をつくり、教育施設を充実をして、真の後継者を育成するということのためには、定員をオーバーするような措置をやはり教育施設は講じなければならぬ。その諸種の条件、こういうものは分析をされて、これから大いに入っていく、こういうふうな体制にしなければならぬわけでありますが、問題点をどういうふうにお考えになっておりますか。
  46. 堀川春彦

    堀川政府委員 私どもとしましては、この新しい研修教育施設におきましては主として高校卒程度の学力を持つ方に入っていただきまして、おおむね二年程度の実地に即した研修を徹底的にやるということで、しかもその際できるだけ入ってこられる方の希望に即応できますように、たとえば畜産の、酪農なら酪農という部門を将来志したいという方に対しては、相当程度納得できるような技術あるいは経営の方法というようなものを体得していただく、そういう意味でかなり体系的に、しかも徹底した実践教育をやっていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、そういうふうに体系的に整備するにはやはり物的施設でございますとか教師の陣営でございますとか、そういうものに現状ではまだまだ不備なところが多うございますので、これを充実をしてまいればかなりよくなる、恐らくその定員を超えるくらいに希望が出てくるようになるだろうというふうに思っておるわけでございまして、内部のそういう研修教育体制の充実に今後取り組んでまいるつもりでございます。
  47. 野坂浩賢

    ○野坂委員 教授陣の整備と設備の内容の充実をことし一年で図れますか。いつできますか、それは。
  48. 堀川春彦

    堀川政府委員 いままでのこの種の研修施設に対します助成は、設備に対する助成しかございませんでした。今回の考え方に立ちまして改良助長法に基づきますところの助成をやっていくわけでございますが、この中には運営費の助成というのがございまして、その中に、できるだけ優秀な指導官、教官の方の手当というものも助成対象にするということで、できるだけ優秀な人についていただきたいというものも入っているわけです。そういうものが新たな助成対象となるわけでございますし、また、その地域の実情によく通じた適切な体験を持ったりっぱな普及員の方に指導官、指導職員にもなっていただくという道を開いておりますので、そういった指導体制の面では今後充実が図られるものというふうに大いに期待しているところでございます。
  49. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この教育施設を卒業した人の就農率というのは、あなた方の参考資料によりますと六六・二、継続してやっておるために見込みの就農率というのは八八・五、こういうことになっておりますね。せっかく意欲に燃えてそういう後継者の教育施設に入校しながらなぜ農業につかないのか、なぜそこにそういうふうになっておるのかということはどうお考えでございますか。
  50. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生いま数字をおっしゃいましたが、そのほかすぐ就農しないでさらに研修を深めた上で就農をしたいという気持ちを持っておる方がおられまして、そういう人を加えますと、五十一年の場合に見込み就業率といたしましては、全体として八八・五ということになるわけでございます。しかし、さはさりながら、そこで幾らかの方々が直ちに就農しないわけでございますが、その場合にはそれぞれの研修を受ける方のいろいろの個別事情が左右していると思います。  私どもは別途いろいろ就農をする意思を持つ後継者の方の意識調査というものをやったことがございまして、そういうものの中にも一たん他の職業についた後就農をする、それはまだ経営主であります方が元気で、もうちょっとたった後に、むしろ跡継ぎとして戻ってくれた方がいいというような希望を、個別の事情でございましょうが持っておる家もあるわけでございまして、そういうような個別事情がかなり影響をしておるのではないかというふうにも思うわけでございます。
  51. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたは、いま私の質問に対して見込み就農率八八・五だ、こうおっしゃったのですが、それはそのとおり私も受けとめております。初めからそう言っております。このあなたからいただいたのを読み上げたわけですから。私は、親が若いからほかのところに就職をされて、それから帰ってくるんだというのは甘いと思いますね。本気で農業者大学校に入っておいて、それから普通の商事会社や普通の工場に働いて、それから農業に帰るというのでは、やはり学校を卒業してからしばらく時間があるものですから、私はそういうふうにとりあえず入っておいてということではないだろうと思うのです。だから、その辺についてはどこに問題があるだろうかということを考えていかなければならぬ、こういうふうに思うのであります。  次に、日本の国の耕地面積といいますのは、私が承知しておるところでは五百五十万ヘクタールぐらいある。それから農業の就業人口というのはいま竹内議員も話しておりましたけれども、専業農家が六十一万六千ある。そして農業の就業人口というのは、男が二百九十七万五千人、女性の方が四百九十三万二千人、大体七百九十万人程度いらっしゃるのではないか。間違ったら指摘をして直していただければ結構でありますが、そういう現状ですね。いま後継者といいますか、中学校や高等学校を卒業をして農業に従事する方は、五十年度は一万人足らずで、今度五十一年の統計を見ますと一万二百人就農するというふうに出ておると承知をしております。そういたしますと三十年を世帯更生あるいは四十年を世帯更生の時期と考えても、このままでいくと、三十年の場合は三十万人になるのだ、四十年の場合は四十万人になるのだ、これでいま七百万人からに上る農業就業人口というものと対比をして考えてまいりますと、将来のわが国の農業というものは一体どういうことになっていくだろうかということに非常に疑念を持ち、心配をいたします。  そこで、政務次官は副大臣でありますから、私は農林大臣としてお尋ねをしたいと思うのでありますが、こういう現状を踏まえて、将来の日本農業に対してどのようにお考えになっておるのか、いま就農する人たちが一年に一万人しかないというようなことではどういうぐあいになっていくだろうか、この点についてはどうお考えでありますか。
  52. 羽田孜

    羽田政府委員 ただいま先生から御指摘ございました数というのは新規の学卒者でございまして、そのほか、先ほど局長の方からもお話ししておりましたように、Uターンですとか、新たに、ほかの仕事につきながらまた農業を目指していこうという方々もあるわけでございますので、それを考えますとあれでございますけれども、しかし、この間国土庁や何かから報告されましたものは、何年でございましたか、三十数年後も非常に少ない就労人口になるであろう、そのときの食べさせなければならぬ人口といいますか、それが一億三千数百万人というようなことでございまして、こういったものを考えましたときに、私どもは、あらゆる方策をもちまして本当の農業に従事する方をつくり出していかなければならぬというふうに考えております。
  53. 野坂浩賢

    ○野坂委員 御答弁としてはそう言わざるを得ないかもしれません。あらゆる方策を考えて就農する人口を確保したいというお話であります。新規卒業者だけではなしに、Uターンする者もあるし、定年を過ぎてやってくる人たちもあるしと、いろいろ意見はあるでしょう。しかし、羽田政務次官堀川局長が相当のお年になって田舎へ帰って百姓すると、物にならぬと思いますね。なまくらになっておってすぐには農業に役立たぬというのが実態だろうと私は思うのです。それは、政府が認めておりますように、そういう兼業農家や年とった方々では自給率の向上ということにはつながらないのだ、だから、若い青年就農者というものをぜひわれわれは確保していかなければならぬ、いつも皆さん方はこうおっしゃっておるのです。しかし、現実にはそれとは正反対な方向というものがいまあらわれておるというこの実態を私たちはしっかりと受けとめて対処をしなければならぬ。そのためには、いまもいろいろお話しになりましたが、魅力のある農業にするためにはどうするのだ、どういうぐあいにしたらいいのかということであります。  たとえば、私のところに岩美町というところがありますが、この間浜崎という御老人がおいでになりました。私の息子はある電気会社に勤めております。息子の嫁は看護婦をしております。ずいぶん遅く帰ってきます。だから私は息子の嫁の応援をしてやることもできぬ。また息子の仕事を応援してやることもできぬ。まことに残念に思います。そこでみんな家内集まって協議をしました。その結果、いま牛を三十二頭飼っておる。搾乳牛は十七頭おる。一町二反の百姓だ。これで近所にも迷惑がかかるし、公害もあるし、したがって山の方に行って四町なり五町を耕したい。しかし、話をするけれども、できない。なかなか土地を求めることができぬ。どうしたらいいだろうかというようなお話であります。また、私は鳥取県でありますが、大山の香取というところに開拓地があります。七人の息子を持っておる。若い人たちはみんな百姓をすると言うのです。みんな相談をして、一人に一町ずつやるとこの七町が全部つぶれる。一町では百姓ができぬ。やはり勤めていかなければならぬ。だから、意欲のある人たちはたくさんあるのですけれども、経営の規模の拡大ということができない。ここに一つの問題点があるわけであります。どのようにしたらいいのか。個人と個人との話し合いや取引ではなかなか成立しない。積極的に地方自治体なりあるいは国なりがそういう政策なり制度を進めて経営規模の拡大をやらなければ、後継者はなかなか擁立できぬじゃないか、こういうふうに私は思うのです。そして、他の産業との所得の格差というものをどうやって縮めていくか、そのことに農林省は全力を挙げていかなければ、何らかの方法で将来の農業を担う者はできるであろうと、なすがままに、経済の動くままに、政策を介入させないで投げておけば一体どうなるかということをやっぱり基本的に心配しながら、そういうことの歯どめと、具体的にその期待にこたえる方策というものを打ち出してもらわなければ、後継者養成というのは口ばかりで現実にできなくなるではないかということを私は心配をいたします。その点についての施策なり方策なり具体的な策があるならばお話しをいただきたい、こう思います。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕
  54. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農業後継者が進んで農業に就農するということを促進するためには、基本的には農業に対して将来に希望を持ち意欲を持ち得るというような展望を後継者自身が持たなければならないということは御指摘のとおりでございます。そういう意味から言いますと、他産業に従事すると同じような農業所得を将来とも安定的に得られるという見通しが客観的にも立ち得るということでなければいけないわけでございますが、そのためには御指摘のとおり農業経営の規模を拡大するということがどうしても必要になろうかというふうに私どもも考えておるわけでございます。  経営規模の拡大をする場合、先生御承知のように、畜産だとか園芸のように必ずしも土地がそれほど必要でない分野につきましては、これまでも相当規模の拡大というものは進んでまいりまして、それなりの所得も得られておるわけでございますが、土地利用型農業と申しますか、土地を必要とする農業、普通作、米作あるいは普通畑作等につきましては、土地の集積がなかなか容易に進まないということのために一つのネックになっておる、これをどのようにして解決するかということが現在の農政の一番大きな課題だということで、われわれも苦慮をしながらできるところからやっておるわけでございます。  先般の農振法の改正によりまして土地利用増進計画という制度を発足させておりますが、これはスタートして間がないのでまだ十分評価できませんけれども、ある程度の成果を上げ得る展望を私どもはいま持っておるわけでございます。賃貸借なり受託なりあるいは請負とかいうような形、いろんな形があると思いますけれども、何らかの形で実質的に農業に意欲を持つ農家に農地が安定的に集積されるというような方向を今後とも進めていく必要がある。そのために、ただいま申しました利用増進計画のほかに、各県にございます合理化法人の事業あるいはまた公庫によります農用地の取得資金の貸し付けということも含めましてやっておるわけでございますが、今年度の事業といたしましては地域農政特別政策といいますのもねらいはそのようなところにあるわけでございまして、部落におきます相互の話し合いの中から意欲のある農家に土地が集積するということによりまして、兼業農家ももちろん他の産業に安定的に従事しながら土地を提供するという形で農業経営に参加するという相互の利益がうまく調和できるような形で後継者、担い手の育成なりあるいは規模の拡大を達成するという方向をねらう一つの手法としてやっておるわけでございます。御指摘の点は私どもも全く同感でございますが、具体的にはいまのようなことをやっておりますが、今後ともさらに工夫をこらしまして進めていきたいと考えております。
  55. 野坂浩賢

    ○野坂委員 官房長から一応の御答弁をいただきました。ことしの目玉は地域農政だ、部落で話せ、いままで政府や地方自治体がいろいろやったけれどもみんな当たらぬ、だからみんな集まって、いろいろと話し合いの補助金も出すからそれで何とかやってくれというふうに変わってきたというのが一つの経緯でありますが、それに任せておくということではなしに、後継者が後継者たり得るように、その意欲を挫折させないような方策に今後も積極的に取り組んでいただきたいと思うのであります。  文部省からもおいでいただいておるでしょうか。——いまいろいろと議論をしておりましたが、現在の農業高等学校の卒業者の動向についてお伺いをしたい。  今日大学に進学をする子供、あるいは他産業への就職、農業への就業状況、こういうのは一体どのように把握をされ、どのような推移をしておるのか。相当他産業に従事をするわけでありますから、これについては文部省はどのようにお考えになっておるのか。いま新たに県の農業者大学校というものが法案として出てきて充実をするわけでありますが、いままでも四十三校あるわけですから、これらとの関連はどのようにされてきたのか、話し合ったことがあるのか。話し合ったことがあるかどうかは文部省も農林省側も御答弁をいただきたいと思います。
  56. 久保庭信一

    ○久保庭説明員 御説明申し上げます。  ただいま高等学校の中での農業関係学科の入学定員は約六万でございますが、そのうち自営者、農業経営者になる者の教育をする学科、これは定員が約三万でございます。そのうち、五十一年の資料によりますと約二一%の者が就農しておるわけでございますが、卒業後農業高校の専攻科または農林省での研修施設、これらに進み就農確実な者も含めますと約三割の者が就農するということになっております。それで、そのほか大学等へ進学する者は農業科全体を通して約一割近くでございます。それ以外の者は他産業に進んでおるわけでございます。  私ども文部省といたしましては、農業後継者の育成はきわめて重要な課題であると考えておりまして、農業後継者育成のために、特に自営関係の学科の中で自営者養成のための全寮制の学校を整備をいたしまして、これは三十九年からでございますが、現在三十六校整備をいたしまして、特にそれらの学校での卒業生を見ますと、五割程度の者は就農しておるということでございます。  今後、農業教育におきまして小、中、高等学校を通じましてまず教育内容の改善を図るべく現在検討中でございますが、農業教育につきましては、中学校を卒業して直ちに社会に出る者はきわめてわずかになっておりまして、農業教育が職業教育としての基礎教育であるということを十分明確にいたしまして、実験、実習等の体験的な学習をさらに強めまして、基礎的、基本的な事柄を十分身につけるように教育をしたいという方向で検討を進めております。  また、きわめて地域性の強い産業でございますので、それぞれの地域に応じての教育ができますように、国の基準はできるだけ弾力的にするという方向でも検討を進めております。  また、入学してまいります生徒は、将来の進路が就農するということに明確な意思を持っておる者、また客観的な条件が就農することが確実であるような生徒をまず入学させることが重要でございまして、すでに栃木県、愛知県、福井県等におきましては、中学校長からの推薦をもって入学を認めるというようなことも進められておりまして、他の数県においてもそのことは検討が進められておりまして、高等学校での農業科の卒業生が将来農業につくような方向での検討が入試選抜においても検討されておるということでございます。  そのほか教育を行う者の中核は教師でございますので、教師の特に実践的な面での研修等についても強化もしていきたい。  また、施設設備について国が助成しておりますが、これらもできるだけ地域に応じた施設、設備になるように強化をしてまいりたい、このような方策で現在検討を進めておるところでございます。  また、卒業いたしました者のうち、先ほど申し上げましたように高等学校の専攻科または農林省の研修施設等へ進む者が約三千おるわけでございますが、これらにつきましては、それぞれの地域の実態に応じて連係が図られておると聞いておるところでございます。  以上御説明申し上げました。
  57. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業高校の卒業生の面につきましての御報告はいま文部省の申されたとおりでございまして、私ども、先ほど来先生も御指摘になっておりますように、近年の新規学卒者が一万人程度就農しておるという数との対比で考えますと、またそういう中で高校卒が約八割であるということを考えますと、農業高校と就農との関係は非常に重要であるという認識をしておるわけでございます。  そこで、私どもの方で新たな農民研修施設をつくっていく、設備していくという考え方が出されておるわけでございますけれども、これとの連結がうまくいきませんとぐあいが悪い、所期の効果が上げられないということになるわけでございます。そういう意味から私どもは、文部省とはかねがねお打ち合わせをしておりまして、いま文部省の方から御報告がありましたように、農業高校におきます農業に関します教育の中身は、これは産業教育審議会の報告も出ておりますけれども、職業教育として基礎的なものに相当重点を置いてやる、私どもの方はその基礎教育がしっかりできておるという上に立ちまして、かなり専門的な、かつまた実践的な研修をやるということで、そこがうまく連結するようにいたしたい。農業高校におきます教育がちょっとどの辺をねらっているかわからぬというような中途半端なものでございますと、私どもの研修教育施設でもまた基礎からやり直す、それから応用力のつくような、実践力を持たせるような研修をやるというのがうまくマッチいたしませんので、その辺は、文部省の基本的な考え方の中には私どもの考えておりますことも十分反映をされておるものと思います。産業教育審議会からの御報告の中にも私どもの考え方と合う点が非常に多いわけでございまして、そういう方向で文部省とは今後も十分連絡をとって、学校教育と私どもの研修教育との連結ということを強く考えてまいりたいと思います。
  58. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がないんですけれども、文部省の方の課長にもう一遍お伺いしますが、四十三校というような県の農業者大学校がすでにあるわけです。いまお話がありましたように、基礎的な農業の教育は農業高等学校の教育において充実をする。実践的なこともやっておるということでしたが、農業者大学校を見られて、いままでも何回となく話し合ったような御答弁農林省側からありましたが、あなたの方から見て、入学定員に満たないというような現状があるわけですから、どのようなところに問題がある、どのようにしてほしいということを文部省側から農林省側に話されたことがどの程度あって、内容としてはどのようなお話をされたのか、集約として伺いたい。
  59. 久保庭信一

    ○久保庭説明員 御説明申し上げます。  私、まだ一年になりませんものでございまして、私が参ります以前のことになりますけれども農林省協議会を持ちまして検討した経緯がございます。  それから、先ほどの御説明の中でも申し上げましたけれども農業はそれぞれ地域性の強い産業でございまして、それぞれの地域に即した形態があろうかと存じます。  また、その農業高校の卒業生の進路は、先ほど申し上げましたように、高等学校に定時制の農業特別専攻科というようなものもございまして、そこで就農しながらさらに学校においての教育を受けるということによって経営力をつけていくというような制度も、文部省としては努力しておるところでございますが、農林省での今回の農業研修教育施設につきましても、農業高校での基礎的な教育の上に、その基礎的な教育の内容を十分把握された上で、継続的に教育を進められるように、これまでも意見を申し上げているところでございます。
  60. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は、文部省から見て、農業者大学校というものの運営、いわゆる学習と実践的な活動と、そういうものから見て、高等学校の卒業生が入っていかないという数字が示されたので、どこに問題があるのか。大学校の問題ではなしに、農業に魅力がない、こういう意味で、高等学校の卒業生は八割程度が他の産業へ従事する、あるいは大学へ行く、こういう結果になっております。だからこの点が問題なんですということを、この農業者大学校をいま充実をするこの時期に具体的に提言をされたであろう、こう私は思っておるんです。それが、いまの御答弁では、地域農業が強いもんだから、各県の教育委員会は適当にやっておるんだろう、そういう文部省なのですか、それでは困るから、具体的に何かやりましたかということをお聞きをしたい、こう言っておるわけです。
  61. 久保庭信一

    ○久保庭説明員 御説明申し上げます。  高等学校の生徒の意識調査等を伺いましても、やはり安定した職業、将来への職業の展望というようなことが非常に関心のあるところでございまして、先ほどから御議論のございますように、農業が魅力ある産業となり、また将来の農村での生活が豊かなものとなる、そういうことがやはり農業者、後継者育成の上での重要な事柄ではなかろうかと思う次第でございます。
  62. 堀川春彦

    堀川政府委員 文部省との話し合いなり、これはまた神奈川県の農業の高等学校とそれから農民研修施設を両省が視察をいたしまして、現場でもいろいろ話を聞き、実地も見たということの上に立ちまして、私どもの立場から、農業高校教育へは、幾つかございますけれども、主として、農業高校に入ってくる生徒に学力差が非常にあるようなのだけれども、これは何とかもう少し縮まるようなことにはならないのか。これは制度の問題ではないかも存じませんが、そういうようなこととか、農業の基礎的知識、技術をしっかりやって、変化に対応できるような能力、システムというものを備えるように教育をしていただくことがいいのではないか。それから研修生に対しまして、私どもの立場から言いますと、たとえば農業簿記というようなものを教えるわけでございますが、その基礎となる数学等の知識が欠けておって、もう一遍、ちょっと手取り足取りというようなことをやらないとのみ込んでいただけないというような方も中におるというようなこともございますので、そういう意味からいたしましても、基礎的な問題を、これは数学といったからすぐ農業というわけでもございませんが、やっていただきたいというようなことを申したわけでございます。  一方、文部省の方から私どもの方への期待と申しますか、御注文ということで承っておりますのは、農業高校教育を全くこの研修施設で繰り返してしまうというようなことでは重複が非常に多いので、できるだけ高校教育の成果の上に立った、特に専門的分野にある程度重点を置いた研修ということにしてほしいというようなこと。それから、高校教育の次に連続しまして、間が抜けるということなしに、継続して研修をやるというような形に、研修教育機関整備なり教育内容を考えてほしいというようなこと。それから、実践と理論とがつながって行われておるとは必ずしも言えない、こういう点もありますので、研修教育の内容については十分考えてほしい。それから、研修生に対する指導教官的な立場にある方、指導職員の方には、これはできるだけ教育的な立場といいますか、そういう立場に立っての研修をおやりいただくようにしていただいたらどうかというようなこと。それからあとは、職員体制なり施設整備が必ずしも十分でない、そういうところは充実してもらわねばならぬのじゃないか。こういうような点が私どもに対しまする御注文といいますか、そういうことでございます。
  63. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。時間がありませんから、文部省は、いま堀川局長があなた方を代弁して言っておられますが、そうなのか、文書で私のところに出していただきたい。お願いしておきます。  それから農業改良普及員の問題についてこれからお尋ねをいたしますが、この普及員の資格で農業者大学校に入りますね。その人たちはいまの改良普及員の中から入れるのか、いま二十名なら二十名の農業者大学校におる人たちを、その五名なら五名、六名なら六名を改良普及員として規定づけてそこで指導するのか。だから、したがっていまの改良普及員が、たとえばわが鳥取県では百三十三名でありますが、プラス五で定員は百三十八ということになるのか百四十ということになるのか、そしてそれが定員となっていくのか、この点。
  64. 堀川春彦

    堀川政府委員 それはどちらの方法も可能でございます。どちらでなければならぬというふうに申し上げるつもりはございません。それから、たとえば今度の研修教育施設になりましたときに、現にそこに普及員の資格を持った方が職員として働いておられる場合に、その方はもちろん普及員の資格を持っておるわけでございますから、普及員として今度は研修教育に当たれるわけでありまして、そういう意味では、予算等との関係で申せばその方々を含めて定数の枠内ということになるわけでございます。
  65. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十一年一月二十八日の農林事務次官の通達で、「普及職員の業務について」という項でこういうふうに指示しておりますね。「普及職員は「直接農民に接して農業又は農民生活の改善に関する科学的技術及び知識の普及指導にあたる」等の職務を担当する者として設置されるものであることにかんがみ、普及職員をしてその職務に専念させるようにかねてより指導してきているところであるが、今後もその職務に専念させることについて十分に配慮されたい。」云々で、「例えば補助金の交付事務、許認可事務のような普及活動とは認められない一般の行政事務に従事させることのないようにされたい。」、こういうふうな通達が出されておりますね。これはそういうことがあったということですからね。したがって、あなた方の参考資料を読みますと、現地の指導は六七、関係機関との連携は一一%、先ほどもお話がありましたが、所内打ち合わせ事務が二・八%、研修は六・二%、その他四%、こういう活動状況になっておるということであります。それで、普及員農民側から一体どう見ておるのだろうか、どういう評価をしておるだろうかということであります。たとえば、こういうことを言っております。普及職員行政の枠に縛らず、行政の伝達者に陥らせず、行政農家との板ばさみにさせないで、地域に溶け込んで農民と苦楽をともにしてもらいたい、こう言っております。あるいは、最近の普及事業は国の意向を体し、農民に対してその施策を強いる先兵のようなものとなって行政事務に追い回され、普及職員は本当に農民の味方なのかと疑わしいという側面もある、こう書いてあります。一方、この普及職員の皆さんの実態はこう述べております。「農業事情が混迷しているので、普及活動の実効が挙げ難い。」あるいは「普及職員の知識および能力が時代の要請に応じ難い。」、こういうことが言われておる。これは普及職員協議会の皆さん方が集約をされた意見を述べたわけですが、そういう面があるんだろうと私は思うのですね。  そこで、普及職員ももっと勉強したい、こういうふうに思っていらっしゃいます。私たちの村でもいろいろ農業関係あるのですが、いまの農業者は、農家の皆さんがいわゆる創意工夫をするのを改良普及員が助長するわけですから、そのために先進県の視察等を改良普及員の皆さんにいろいろ御相談をする。それで行くわけですね。長野県とかいまお話があった茨城県の土浦やその他に行く。行くと、農家の皆さんはカンパをしてバスで行きます。改良普及員は、なかなかその旅費がないわけですから、大きな顔をして自動車に乗れぬわけです。一番後ろの方に座ってついでに便乗させてもらってついていくというようなかっこうがしばしば見られます。これではやはり勉強していくための旅費等は思い切ってつけてやらなければならぬじゃないか、こういうことが一つと、それから研修が六・二というと、一カ月を二十五日とすると大体一カ月一・五日、一年間で十八日間、これだけしか研修をやらぬ、あなた方の資料によるとこういうデータですね。これではいまの混迷する農業——農林省自体が混迷しておるのですからね。農工並進だといい、いや自立経営農家といい、いや地域農政だと今度はなっている。そういう混迷をする農業事情の中で農民の側に立って改良普及助長をしていかなければならぬ。そのためには、農民の中に一人入っていくわけですから、いろいろなことを承知しておらなければならぬ。そのための研修をもっとする必要があるではないか。こういうことが一つ。あるいはそういう旅費についても十分やっていかなければ、これからの農業というものは、先ほど政務次官以下皆さんが日本の今日における農業の実態というものを十分お話しになったわけですから、それを改良し、発展していかなければならぬ、壁を突き破っていかなければならぬ、それは、改良普及員が国の行政の先兵ではなしに農家の皆さんを引きずっていく先兵としていかなければならぬ、そういう意味の旅費なりあるいは普及事業費、そういうことが潤沢にできるような方法をとってもらわなければならぬと思うのでありますが、その点についてはどうです。
  66. 堀川春彦

    堀川政府委員 普及員の旅費の問題でございますが、旅費につきましては巡回指導旅費、事業旅費、それから研修旅費という形で普及所に流れてまいるというのが一般の姿でございます。  そこで、先生おっしゃいましたような管外の先進地に対しまして視察をする、そういう形で研修をするという場合の旅費につきましては、改良普及員の研修費の中の一般研修という形で予算化されておるものの中から出すわけでございますので、県が必要に応じて措置することはできますが、予算が限られておるということで、多くの普及員の方々がこれを利用するということには限界があるということも事実でございます。しかし、普及員の方々からこの種の要望が強いこともよく承知をしておりまして、今後の普及事業に対します予算の仕組みの中で改善できるものは改善をいたしたい。それから基本的に、研修を充実すべきだという点は、私どもも十分そのように考えておりまして、各種の研修を国なりあるいは県の段階でやっていただいておるわけでございますが、今後ともその充実に意を用いてまいりたいと思います。
  67. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんが、たとえばわが県では研修旅費というのがありますね、これはたしか補助は二分の一だったかな。国からいただいておるのは百九十六万九千円いただいております。わが県で県単で出しておるのが三百四十六万六千円です。合計して五百四十三万五千円ですよ。こういうことで県は、二分の一とか三分の二をずいぶん出すと言うけれども、実態はこれだけ財政が窮迫をしておる地方自治体に大きなしわ寄せが来ている。  それから今度はこの改良普及手当というものが百分の十二のままになっております。これは賃金管理事務所からも言われておることですが、これを百分の十六に引き上げることはできなかということが一点と、こういう情勢を踏まえて、たとえば農業改良普及職員設置費、補助率は三分の二。全国の平均のうち、あなた方の資料で、五三・五%しか出しておりません、こう書いてあります。三分の二は六六・六%になるはずですからね。たとえば農業改良普及事業費の補助率は三分の二、四二・九%国が見ておる、こういうことです。あるいは生活改良普及職員設置費、いまも話がありましたが、これも三分の二、これはざっと五六・六、まあまあというところであります。そのほか生活改善普及事業費も五二%、あるいは農業改良普及事業費の補助率、そういうものから見て、ほとんど補助率というものは三分の二、二分の一、決まった以下で抑えられておる。財政が、財政がと言う前に、地方自治体の財政の方がもっと苦しいのだ。そして、それで足らざるところは農家の皆さんが負担をしていかなければならぬというようなことでどうして日本農政が進みますか。この補助率は確実に三分の二なり規定されておる程度出してやる、それができなければ大蔵省にもっと厳しく当たっていく、その点についてはどうお考えですか、副大臣である政務次官にお伺いをしたい。
  68. 羽田孜

    羽田政府委員 ただいま前段でお話がございました旅費等の問題につきましては、いま局長からも答弁申し上げましたように、実態がそういったいろいろと皆さん方の要望がある、また必要というものがある現状というものを認識しておりますので、今後ともよく検討してまいりたいというふうに思います。  なお、三分の二というものを下回っておるという御指摘があったわけでございますけれども都道府県の給与水準が一般に国に比べまして高いこと、並びに先ほど御指摘もございましたけれども、近年高齢者が普及員の中に非常にふえてきているという傾向の中で都道府県の持ち出しがそれだけふえざるを得ないというところに一番大きな原因があるわけでございます。そういった中で五十二年度には都道府県の負担の軽減を図りますために従来国庫補助対象でございました公務災害補償費及び共済組合長期掛金、こういったものを補助対象といたしまして拡大を図っていく、こんな措置というものをいまとっておるところでございます。
  69. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまも竹内君からも話があったのですけれども、だんだん改良普及員の皆さんも年をとるに従って、若くはなりませんから、地元の人たちは、農家の皆さんは、なれて経験も知識も豊富な人たちはえらい人になって、机の前に座る、まだ若い人たちが出ていくという、そういう点についてもいろいろ意見を持っておりますよ。それで、いまの改良普及員の三分の二の補助で、これは上がったから、もう国よりも高いのだからというようなことではなしに、やはり調べて、五十年ですか、一遍実態に即応して調整をされた。しかし、現実にはこの三等級八号俸というようなことは主任専門技術員だ、あるいは改良普及の所長は三等級の九号俸だというように一応規定はされておりますが、いまの実態に即してもうちょっとそれに合わせるようにやはりしなければ、なかなか自治体は年輩の方が——若い人たちも入った人たちでも、普及員というのはずっと年齢が上がっておりますから、それに合わせてちょっと変えてもらわなければならぬ。そうしなければ地方自治体はもっと財政が大変だということが一つ。  それからいまも旅費のことなんかは考えてあるということですが、たとえば超過勤務手当なんかにしても、みんなこのごろは打ち切りですよ。普通の会社に勤めておる労働者なら基準法違反でがたがたするところなんです。おまえたちは普及手当があるのだからそれでいいじゃないか、こういうかっこうで押さえ込む。財政が逼迫をしておるからという大義名分というか、そういうことを言いながら押さえていくということが、普及事業にも非常に支障になってくるから、おおらかに農家の諸君たちと一緒になって日本農業を支えていく先兵となっていくような方法をとっていただくように、私は強く要求をしておきたいと思います。  御答弁があれば御答弁を承って、時間が超過しておりますので、私の質問を終わりたいと思います。
  70. 堀川春彦

    堀川政府委員 改良普及員に対します手当の問題は、これは一二%ということでやっておるわけでございまして、これは昨日も御答弁申し上げましたけれども、私ども調査もやっておりまして、いろいろ他の職員の方と比べてみまして、私ども必ずしも実態的に——それは多少、それよりもあるいは改良普及員の方が有利あるいは改良普及員が不利というようなものはございます。総じて見ますと、この普及手当を現時点において直ちに改正しなければならぬという結果は出てきていないというのが実情でございます。  それからなお、三分の二までいっていないではないかというお話につきましては、やはりこの普及事業関係経費の中で一番基本を占めます、ウエートの大きい人件費についての物の考え方でございますが、予算で組んでおりますのは、やはり職種別に一定の号俸というものを設定をいたしまして、その中でやっておるということがございまして、これは各県でそうでなしに運用をしておるというような実態があらわれてきておるということとのギャップをどう調整するかという問題でございます。したがって、私どもはその辺は今後も必要に応じ実態調査をいたしまして、前回五号のグレードアップをしたわけでございますが、そういうデータをもとにした対応を今後もいたしていく考え方でございます。
  71. 野坂浩賢

    ○野坂委員 最後に、いまの普及手当はたしか一二%と八%ですから、賃金管理事務所からもいろいろと言われておるように一六%ということにぜひ進めていただきたい。御検討いただきたい。それから改良資金の問題については残念ながら時間がありませんので、またの機会にぜひ質問をやらしていただくように委員長にもお願いをして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  72. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後三時二十一分開議
  73. 金子岩三

    ○金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  74. 武田一夫

    ○武田委員 政府の「総合食糧政策の展開」、この点について最初に、これは政務次官にお尋ねいたします。  政府が七五年八月に発表した「総合食糧政策の展開」で、私は新しい農政の路線が一応これで出されたのではないかと思いますが、その中で私は何点か伺いたいと思うのであります。  過去の日本農政を見てみますと、農業観の転換、農政の理念というもの、あるいはまた路線の変更というのが非常に反省と検討がなく行われていたような気がしてなりません。私は、日本農業の中で、いろいろの事情があったでしょうけれども、たとえば高度経済成長の中でなぜ日本農業がこのように破壊されたのか、そしてまた、いま農業がこのような危機に見舞われている事態というのはどこにその原因があるのか、あるいはまた、日本農政それ自身が農業を破壊してきた、あるいは崩壊に導いているという、そういう推進力にさえもなっているんじゃないかというような、そういう原因究明というものが余りにもなされないままに、いろいろと路線の変更があったような気がしてなりません。世間で言うネコの目農政とか、あるいはノー政であるというような、そういうようなまことに恥ずかしいことが言われている日本農業政策に対して、私は、農林省あるいは政府自身が、どういう反省とそしてどういうそれに対する対処をもって、今後の農業政策というものを行うため、こうした食糧政策への展開というものに入ったか、まずその一点を、これは政務次官にお尋ねいたします。
  75. 羽田孜

    羽田政府委員 ただいま御指摘のありましたように、近年、いわゆる高度経済成長という中で、農地の改廃の問題、あるいは若年労働者といいますか、一番の基幹になりますところの農民が流出していったという現実がございます。そういったこととあわせまして、経済成長と一緒に、食糧というもの、いわゆる食生活というものも向上してきた。そんな中に、全体的に食糧の自給力というものが下がってきたのが今日の状態じゃないかというふうに思います。そこへもってまいりまして新たに例の漁業専管水域二百海里というような問題も出てまいりまして、いよいよもって、食糧を中心といたしまして、農産物に対してもう一度私ども見直さなければならない時代が来ておると思います。  こういった問題を私ども踏まえまして、一層わが国の農林漁業の体質、これを強化し、食糧自給力の向上を図っていく、これが私どもがこれから進めていきます基本的な考え方でございます。
  76. 武田一夫

    ○武田委員 政府が七五年八月に発表した「総合食糧政策の展開」その柱となるもの、これは食糧自給度の向上あるいはまた農業生産の増強というものを農政の中心にしようとしている、こういうふうに伺っておりますが、その点はいかがでしょうか。
  77. 羽田孜

    羽田政府委員 そのとおりでございます。
  78. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、その柱に九つの柱があるように聞いておりますが、その中に農業基盤の整備の促進とか、あるいは麦対策、米対策、いろいろありますが、その中の二、三の点につきましてまずお伺いいたします。  第一番目に、粗飼料生産対策について伺いたいと思います。ここでは草地の開発のほかに特に水田の裏作、あるいはまた畑への飼料作物の導入、あるいはまた反収の増加の技術指導、こういう点が特に強調されております。ただ私は、この粗飼料生産対策について非常に問題点あるいは疑問が残されているのじゃないか、こういうふうに考えます。また、農林省は、国内の濃厚飼料の生産対策に対して極端に消極的な感じがするのですが、その点どうでしょうか。
  79. 石田徳

    ○石田説明員 確かに、わが国の飼料の自給度というのは残念ながら低いわけでございます。その中で濃厚飼料と粗飼料とあるわけで、いま先生のお挙げになりましたのは粗飼料の方でございますが、われわれといたしましては、粗飼料に重点を置きまして、これから飼料の増産を大いに図っていこうというふうに考えているわけでございます  これも、先生方御承知のように、六十年度の見通しでは、基準でありました四十七年度に比較いたしまして、粗飼料はTDNで申し上げますと約二倍、数字で申し上げますと、四十七年度が四百七十三万七千トンでございますが、昭和六十年度は九百二十六万九千トン、こういう目標のもとに目下草地開発その他の事業を計画的に進めているところでございまして、粗飼料の増産は何よりも重視して実施をいたしておるところでございます。
  80. 武田一夫

    ○武田委員 国内生産の濃厚飼料供給量が、これは基準年の一九七二年度、昭和四十七年の五百六十二万八千トンに対しまして、昭和六十年、一九八五年に五百八十三万七千トン、これはパーセントにすると三・七%の増加しか見込んでいない。ところが反面、輸入濃厚飼料が、これは同じ時点で九百八十八万八千トンから六十年に至って一千四百七十七万二千トンと、五〇%の増加を見込んでおります。この点の事情を説明していただきたいと思います。
  81. 石田徳

    ○石田説明員 粗飼料の方の自給率の向上というのはかなり高い率を見込んでおるわけでございますが、何分にも、穀類につきましては土地の制約等もございまして、また一方においてはわが国の畜産特に中小家畜、鶏あるいは豚は非常に伸びております。こういうような中小家畜の必要といたします穀類等につきましては、生産が国内ではなかなか追いつかないということもございますので、これは現実問題として外国からかなりの量を入れざるを得ないということで、この量が先生お挙げになったように伸びているわけでございます。
  82. 武田一夫

    ○武田委員 そういう状況ですが、私はそれだけではないと思うのです。その姿勢の問題だと思うのです。というのは、七五年に農政審議会が今後の食糧政策の基本方向なる建議を総理大臣に出しておりますけれども、その中で濃厚飼料につきましてこういうふうに言っているのです。「飼料穀物、とくにとうもろこし、こうりゃんは、——より有利な他の畑作物との競合関係にあること、2風土等の制約があるほか、とくに大型機械化体系による大規模栽培に適した作物であること等からみて、国内自給力の向上を図ることは、困難な面が多いが、これらの国内生産の可能性について技術、経営的な側面の研究努力を続けることは今後とも必要である。しかしながら、その需要量が巨大であることから、需要の大部分は、やはり輸入に依存せざるを得ないものと考えられる。」こういうふうにあくまでもその根底には「輸入に依存せざるを得ない」というところに重きがある、こうわれわれは受け取る。ここのところに一つの問題があるというように私は思うのですが、どうでしょうか。
  83. 石田徳

    ○石田説明員 飼料は、濃厚飼料たると粗飼料たるとを問わず自給度を高めること、これが好ましいことはもう当然でございますが、現実問題といたしまして、国民の畜産物に対する需要も大変旺盛でございます。その際、これに対応する場合に、大家畜だけでは時間的にも容易に対応し切れないという現実問題がございます。大家畜については特に国内の草資源等を利用する方向で進んでおりますけれども、豚あるいは鶏等につきましては、これは現実問題としてえさが要るわけでございますので、これをその畜産農民に対してえさの手当てをしないというわけにもまいりませんので、現実問題としては濃厚飼料がふえるわけでございます。ただ、国内で生産し得るものはできるだけ伸ばしていきたいということで、大麦の生産については目下のところ力を入れているところでございます。
  84. 武田一夫

    ○武田委員 それはそのくらいにしまして、それと並行して技術指導の強化という点ですが、いま大麦の話が出てきましたので、それと関係してちょっとお聞きします。  技術指導の強化という点、その問題もまた不可解なところがある。自給力を高めるということはいまの農政の柱の一つであるということはいまも話があったとおりですので、これは技術の改良の面では当然これから力を入れていかなければいけない。ところが、どうも現場の方の声を聞きますと、技術の強化というのは作期を早める、早目に収穫する、たとえば麦の場合であれば二週間くらい早目に収穫をしていくというような、早く実るという、そういう方向の品種の改良には力が入っているけれども、いま日本として実際問題非常に悩んでいることは、全体的に収穫量が少ない、反収の伸びがないということ、外国などから比べると非常にけたが違うわけなんで、この点の解決がこれから早急に考えられなくてはいけない。ところが、反収を高めようというような技術を考えるべきであるけれども、どうもその方向体制が十分にいっていない。話が出てくるのは、早く収穫を上げるような話しか聞こえないということが現場で聞かれますが、その点はいかがでしょうか。
  85. 下浦静平

    ○下浦政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、最近の麦類の試験研究でございますけれども、これは作期、収穫期を早めるというところに一つの重点があることはそのとおりでございます。これはなぜかと申しますれば、最近の水稲の栽培でございますが、これが昭和四十年代に入りましてから田植えの機械化という問題が出てまいりまして、稚苗を機械をもって移植をするという技術が開発をされたわけでございまして、最近では相当部分がそういう作業体系で作付がされているということでございます。そうなりますと、どうしても麦の収穫期との競合という問題が起こってまいりますので、できるだけ収穫期を早めるということが一つの重要な研究問題になったということでございます。しかしながら、収穫期を早めるということになりますと、どうしても麦類の場合には、小麦の例をとって申しますと、一日早まるということは八キロないし十キロぐらいの収量減につながるということがございますので、できるだけそれを落とさない方向で何とかそういう目的を達せられないかということに研究の主眼を置いて現在研究を進めつつあるところでございます。
  86. 武田一夫

    ○武田委員 次に、国有林野の活用という点ですけれども昭和四十四年の土地改良の補足調査によりますと、今後草地に振り向け可能な国有林の面積、これは土地造成に直しますと二十二万七千二百三十五ヘクタールある。ところが、現在時点でそれが草地に活用されている分は幾らかとなりますと、わずか二万五千九百八十五ヘクタール。国内の自給率を高めるために真剣に取り組まなければならないというにしては、これは余りにも草地に利用というのが緩慢過ぎるのではないか、私はそういうふうに思いますけれども、この点どうなっているのでしょうか。今後の見通し、その点についてもお聞きしたいと思います。
  87. 石田徳

    ○石田説明員 先生がいまお挙げになりました二十二万七千ヘクタールという林野の草地用の土地改良面積でございますが、これは可能地面積でございまして、土地の自然条件等から草地に変えることが可能だという調査の面積でございます。そういうことでございますので、これは林野側といたしましても国有林の経営等の問題もあると思いますが、そこで林野と話し合いをしまして可能なものから手をつけていっているわけでございます。現在のところ、草地にいたしました面積は約二万八千ヘクタールでございまして、先ほどの面積に比べれば一割でございますけれども、これが全部草地になるというものではないわけでございます。そのほか、国有林の畜産的利用をいたしております、たとえば放牧共用林野等も約二万八千ヘクタールほどございます。ございますけれども、今後は国有林野の側とも協議いたしまして、できるだけ畜産の利用を高めていきたいと考えておりますし、先般の畜産振興審議会の飼料部会におきましても、特に国有林の活用を図れ、こういう強い要望もございましたし、林野当局からも、これには今後は積極的に協力していくという答弁もございましたので、今後はさらに推進を図っていきたいと考えております。     〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕
  88. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、九つの柱の中の一つとして中核的農家の育成、中核的農家の担い手の問題についてお伺いします。  基本法では、初めは御承知のとおり自立経営、こういうことを非常に強調してました。ところが、いつの間にか中核農業というものに変わってきた。これは、農林省が自立経営というもの、自立経営者というものを育成する自信がなくなってしまったのではないか、私はこういうふうに思うのです。そのために一昨年の八月に作成された、先ほどの「総合食糧政策の展開」の中において「中核的担い手の育成確保対策」というのが重点施策として打ち出されたのではないかと私は思うのです。ところが、中核的農家というものは果たしてどういう性格のものかというと、専業農家でなくてもいい、第一種兼業でもいいというふうに非常に焦点がぼけてしまった。考えようによっては、国の政治の中で非常にまずい点としていつも指摘される薄く広くお金さえ農村にばらまけばいいじゃないか、そういう勘ぐりがなされても当然でないかと思うようなそういう中核的農家の育成という問題、この点につきましてはどういうふうな考えでこういうふうな結果になったのか、まずその点を伺います。
  89. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農林省はかねて自立経営農家の育成ということを農業経営の目標としてその育成に努めてきたわけでございますが、自立経営農家は、先生御案内のように農業所得だけで他産業従事者と均衡する所得を実現できる農家というとらえ方をしておるわけでございます。昭和五十年度で見ますと三百十万円以上という基準で、それを超えるものは自立経営農家だというようなとらえ方をしておりまして、五十年度の場合だとそれが全農家の九・二%ということになっておるわけでございます。  そこで最近、中核農家の育成という点を強調して、これを経営の目標として育成にも努めておるわけでございますが、考え方といたしましては自立経営農家というのがもちろん中心になるわけでございますけれども農業生産の場合は非常に季節性があるということで、一年間、通年農業に就業するのはなかなか困難な事情がございます。したがいまして、通年就業しないということになりますと、農業所得だけで他産業並みの均衡する所得を確保することがなかなかむずかしいということもございますので、自立経営農家を中心としながらも、もう少し広い概念で農業を自分の職業として農業に意欲を燃やして積極的に取り組むような農家を中核的な農家というとらえ方をいたしましてその育成を図るというような考えに立っておるわけでございます。  したがいまして、中核的農家といいますのは、具体的な基準といたしましては基幹的な男子農業専従者がいるような農家というとらえ方をしておるわけでございます。これを五十年の数字で申し上げますと約百二十五万戸になるわけでございます。その中にはもちろん専業農家といいますか、あるいは自立経営農家が中心でございますけれども、そのほかに一種兼業農家というのがかなり入っておる。これらの方々は、先ほど申しましたように農業を自分の職業だというふうに観念をして農業生産努力をされておるというような、まさに中核的な担い手にふさわしい方々であろうということで、その方々を育成し、さらにそういう基準に引き上げるというようなことを具体的な目標にしておるわけでございまして、自立経営農家を育成するということを否定をするということではございませんので、それを中心としてもう少し幅を広げて担い手の育成を図るという考えでございます。
  90. 武田一夫

    ○武田委員 それではもう一つ伺いますが、農業に大事な問題は、やる気があるということだと思うのです。またやる気を起こさせる農業をつくることだと思います。  いま、いろいろ土地が遊んでおりますが、土地はあっても農業をしないというのがいろいろなところで見られます。ところが、反面、もともと農家に生まれたのではないけれども農家出身以外の者でも、私は農業をやりたいという人の声が聞かれます。そういう方々、要するに農業でもって将来を過ごすのだという方々が、こういう世の中でございますから今後出てくる可能性もあるのじゃないか。そういう方々に対する農業への新規参入というのもいまから考えておく方がいいのではないか。こういう不景気になって都会では就職難だ、そうすると都会にあふれたたくさんの人たちが、若い連中が農業というものの魅力を改めて感じてそういう方向に走ってくることもあるのじゃないかということを考えたとき、こういう問題を考えて農用地の開発整備とか金融措置などの問題を考えるときに来ているのではないかとも思うのですが、その点に対する御見解なりお考えを伺いたいと思います。
  91. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農業に対する新規参入者、具体的に申し上げれば、既存の農家とは関係のない都会の青年その他が新たに農業を始めるということも考えながら行政をやるべきではないかという御指摘でございますが、私どももまさにそのように考えておるわけでございまして、先ほど申し上げましたような中核的農家を育成するという場合、やはり農家の子弟、いわゆる後継者が父親の跡を継いで農業に新規に参入してくる、これも広い意味では新規参入者になるわけでございます。それが中心になるということは当然だと思いますけれども、従来、農業に全く関係のなかった方が新しい感覚で農業に入ってこられて、新しい感覚で経営を始めるということは、農業の発展のために技術なり経営の革新を図っていくということのためには非常に意義があることだというふうに考えております。  したがいまして、農林省におきましては、それらの方々が土地の取得なり、あるいは金融制度の対象として制度資金等を借りられるというようなこと、あるいは普及事業の中におきまして指導対象になる、あるいはただいま御審議いただいております法案とも関連します各種の研修事業の中で、そのような新規参入者も既存の農家あるいは農家の子弟と同様に対象にして研修なり技術指導なり、あるいは制度金融の貸し付けなり土地の取得のできるようにということで、現に門戸を開いて実施をしておるところでございます。今後とも、そのような方々が農業を始められる場合、農地制度の範囲内におきまして農地が取得できるように、制度資金の貸し付けなり技術指導なりにつきましても配慮してまいりたいというふうに考えております。
  92. 武田一夫

    ○武田委員 もう一点、その中核的担い手の育成という問題に関係のあるいわゆる将来に向かっての一つの方向づけとして、都道府県における青年農業士、指導農業士というものをつくって称号を贈る、そしてそういう方々への研さん事業を助成するという問題をこの法案の中で取り上げておりますけれども、どんな人がこれに当たるのか、現在、果たしてこういう方々が自分から希望を持ってどんどん出てくるという状況なのか。またこの制度から青年農業士とか指導農業士という人たちが出てまいりますけれども、こういう人たちに与えられるメリットというものは何があるのか、さらに普及員とか農協の営農指導員という方々との関係性はどういうふうになっていくのか、まずその点お聞きいたします。
  93. 堀川春彦

    堀川政府委員 青年農業士なり指導農業士の問題でございますが、これは一部の県ではかなり前からやっておったわけでございますが、私どもそういう指導奨励の措置をとる県がふえてまいったことに対応いたしまして、昭和五十一年度から青年農業士と指導農業士に対します助成の事業を興したわけでございます。これは一口に申しますと、一定の研修教育を受けました後継者であるところの意欲のある就農青年を青年農業士という形で県が認定をいたしまして、その農業青年に将来の目標と励みを与えるというのが青年農業士の認定制度でございます。また農村の青少年の指導に当たるようなすぐれた農業経営者を選定をいたしまして、そしてこの方々を指導農業士という名称を与えて認定をする。その方々はその地域におきます他の若手の農業後継者たらんとする意欲のある方々に対して自分の体験を通じて指導をしていただく、あるいはまたそういう若手の後継者たらんとする人を自分の経営の中に受け入れて実地にいろいろと御指導願う、こういうようなことをしておるわけでございます。現在、五十一年度の実施状況でございますが、青年農業士は千五百八十名くらい、また指導農業士は二千五十名くらいが認定をされておる状況でございます。今後ともこういう方々がだんだんふえてまいる。そうしていま先生の御指摘のように、農業団体の営農指導等とも密着した形で、もちろん普及事業との連携を強めていただいて普及事業の立場から見れば協力農民であり、また後継者でもあるというような形でこれが育つことを期待をしておるわけでございます。
  94. 武田一夫

    ○武田委員 現実問題として、私ども宮城県の例ですが、ある郡の四町村で今回指導農業士という立場になる方が二人しか出てこない。それでもってその二人の方がたばこと牛、四町村見なくてはいけない。しかもそういう方々は中核的な、本当に模範的な農業をしながら、地域では信頼のある方々です。そういう人に限ってたくさんのほかの役職を持っている。町内会の役員とか何とかかんとかというようなことで大変な、そういうものを持っている人ほどこういうものに非常に意欲的だということも一面ではある。たった二人しか出てこない、大変ですね、やむを得ない、しかも聞いたら、手当は年間一万円だ。自分の仕事も大変、周りの方々とのいろいろの仕事、そういう農業の中における指導的な立場に立つ人たちの確保というのは非常に困難であり、本人もそういうかなりの負担があるのではないかと思うときに、宮城県の場合では、合計しますと七十八市町村に対してわずか四十一人しか確保できないという現実です。これに対してどういうふうに対処していこうとするのか。私は、このままいったらそういう方方が非常に苦労するのではないかというように思えてしょうがありませんが、そういう点どうですか。
  95. 堀川春彦

    堀川政府委員 私どもの制度として仕組んでまだ日が浅いわけでございまして、先生のおっしゃいますように、こういう方々、指導農業士に対しましては私どもも若干のお手当を差し上げる、しかしこれは恐らく県単で多少の継ぎ足しをいたしまして一万円という金額になったものと思いますが、これは本当に感謝のおしるしであるということでございますが、この制度が国が取り上げて助成するということになってまだ日が浅いということもございまして、できるだけ意欲のある農業青年を青年農業士として認定できる、また指導農業士の方には非常にいろいろと御苦労かけるわけでございますが、こういう方々を中心とした研究会とか情報交換会というものを通じて仲間がふえていくというようなことを私どもはこれからの課題と考えて努力してまいりたいと思っております。
  96. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつそのおしるしを中身の濃いものにして、本当に実りある、効果あるような、そういう指導士の育成というものを私はお願いしたい、こう思います。  今度は普及員の問題に移ります。またこれが大変です。普及員、こんな大変なものないと私つくづく思いました。不眠不休員というんですね。わかりますか、どういう意味だか。不眠不休員という代名詞があるのです。どうですか。
  97. 堀川春彦

    堀川政府委員 それは非常に困難な課題を抱えて、非常に努力しておられる姿を指したものと思うわけでございます。現実に昨年の冷害等の技術対策につきましては、私ども耳にしておりますところでは、本当に朝早くから夜遅くまで現地を御指導に回っていただいたというようなことも直接耳にしておるわけでございます。そういう意味では非常に大きな課題を困難な中でこなしていただておる普及員の姿であるというふうに思っております。
  98. 武田一夫

    ○武田委員 非常に劣悪な条件の中で苦労しながら一生懸命やっている、そういう現実をひとつまず認識した上で聞いていただきたいのですけれども、最近この行政事務が非常に膨大になってきた。何でもしなくちゃならない。書類を作成する、資金の問題についても相談されれば断るわけにいかないというようにして、肝心かなめのそういう普及員仕事というもの以上に行政的なものが膨大になってきた。ある人などは、十年前に比べるともう十倍だ、こういうふうに嘆いて、技術指導が十分に行き届いていない、できなくなったという悩みを訴えております。不眠不休員というのが出たのは、たとえば霜の対策あるいはまた農薬の散布など、また去年のように冷害などの問題になりますと、たとえば農薬の散布のときなどは、雨がどうか、天気がどうかということで、もう朝の三時ごろから待機していなければいけない、そして飛んでこなければいけない。そういうことが、雨が降ってきょうもだめ、まただめだというようなことで、もう本当に大変だ、寝ずにがんばらなくちゃいけない。しかも、そういうときには残念ながら何ら手当もないのだそうです。そういうような実態の中で普及員が苦労しながら、何とかりっぱな農家をつくろうと、指導ができるようにとがんばっているわけであります。そこで、そういう方々に対するやはり国の温かい政治というものが必要になってくるはずなんですが、ところがそれが全然なされていないように伺うわけであります。やはり普及員というのは現場主義、これが私は第一義だと思います。ところが、人員が非常に少ないです。まあ国の方では一つの基準はつくっているのでしょう。私の聞いたところによりますと、たとえば農業改良普及員の場合は一人当たり三百戸くらいが基準だ、生活改良普及員の場合は八百戸くらいだというように聞いているわけですが、その点はどうなんですか。
  99. 堀川春彦

    堀川政府委員 特にその一人当たりの担当戸数の基準というものを示しておるわけではございません。
  100. 武田一夫

    ○武田委員 大体どの程度のものを一人の普及員の方に担当させる、そういう基準というものは特に考えていないわけですか。
  101. 堀川春彦

    堀川政府委員 それはいろいろの考え方があり得るわけでございまして、私ども実は、普及員配置と申しますか、定数と申しますか、そういうものの基準というものが、何らか幅のあるものにしてもつくれないかということで、あらゆる角度から検討してみたわけでございます。まだ検討中でございますが、その合理的な基準というものが何であるかということは、私ども現在の段階でも、いろいろその地域地域の事情も違いますし、経営部門によりましても違いますし、それはいまのところ結論としてこの辺がいいんだということを見出しかねているわけでございます。
  102. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃみんな苦労しますよ。たとえば私の県の場合を例にとりますと、農業改良普及員一人当たりが約五百戸、生活改良普及員の場合は何と五千戸です。これ現実問題としてできますか、五千戸ですよ。しかも、生活改良普及員の場合は女性が多いでしょう。これはもう肝心かなめの庭先指導が全くできないという地元のそういう担当者の声というのが全然取り上げられていない、私はそういうふうに思います。しかも、これは人間的なつながりの中でいままで行われてきたものというのは、永遠にこれからも変わってはいけないと私は思うのです。そういう点で、もしこういうふうに大量のものを見なければならないとなれば、どうしても人を集めるとか集団的なものになりかねない。肝心の個々の問題を話し合うとかいろいろ指導するのは、もうこれは不可能になってくるんじゃないか、こういう問題をどういうふうに解決していくか。そうしますと、農家普及員との遊離というのがますますひどくなっていくんじゃないでしょうか。ですから、最近普及員の人はわれわれと遠い存在になった、普及所ははるかかなたの方にあるということが言われているわけです。しかし、現実問題として改良二法案を見てもわかりますように、それを充実していくんだ、こういうふうに言っているのです。そこの点をどういうふうに説明しますか。
  103. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生のいま御指摘になりました農業改良普及員で五百戸ぐらい、生活改良普及員では五千戸というふうにおっしゃいましたが、私どもの考えでは、各県によっていろいろ事情の善がありますが、平均してみますと、農業改良の場合五百戸という姿は、平均の姿からそうずれておるものではないというふうに思いますが、生活改良の方の関係では、平均の姿よりも担当戸数が倍ないしそれ以上くらい多いというふうに伺ったわけでございます。普及員が担当する戸数との対比で多い少ないというのも程度をはかる一つの要素でございまして、私ども確かにそういうことから農家普及員あるいは普及事業との密着度が薄れたという御批判も再々いただいておるわけでございますが、広域普及体制のもとでもできるだけ地域の実情に合った形を工夫しながら、しかも普及事業の質をできるだけ落とさないように体制整備に努めて、農家の側に密着感がないというような御批判がなるべく出ないように普及活動のやり方も工夫をいたしまして、今後対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  104. 武田一夫

    ○武田委員 これは一つには大きな問題というのは毎年のように人員の削減がある、あるいはまた仕事が大変多くなってきたけれども、依然として全然人数がふえない、こういうような問題が必ずそこに出てまいります。要するに、ずっとデータを取り上げましても毎年とにかく三十人、四十人と減っています。それでも仕事はふえてくる、人は減る、こういうような繰り返しです。こういう人員の確保ということに真剣に取り組むならば、まずこの問題はある程度の現場の要求というのが満たされると思うのです。そういう人員の確保という問題について今後どういうふうにしていくか、これをお答え願いたいと思います。
  105. 堀川春彦

    堀川政府委員 実は、その問題につきましてはいろいろと複雑な要因もあるわけでございます。一口に地方財政事情が窮乏しておるからということでは片づかない問題もあるように思います。私ども予算定数上は一定の枠を確保しているわけでございますけれども現実には各県の事情に差はございますが、総体として見ますと、私どもこれほどあってほしくないと思うような欠員が生じておる、充足がされておらないというような実情でございます。私どもまずこの普及事業にかかわりますところの組織、機構というものは、本来協同農業普及事業でございますので、そういう機構の改編等を行う場合には、できるだけ事前によく御協議を願いたい、なお改良普及職員定数を異動させるというような場合におきましても、県からは事前によく連絡をしてほしいという趣旨の通達を出しまして、できるだけ普及員の数の確保を図ることが重要だという趣旨のことを、地方農政局を通じまして県の方に強く申し入れを昨年いたしたところでございます。いま言った定数と実員との問題ばかりではございませんが、できるだけその面からも私どもよく現実を把握をし、助成も必要であればそういうことも考えるということを含めまして、適切な指導をしてまいりたいと思います。
  106. 武田一夫

    ○武田委員 その問題はぜひやっていただきたいと思います。  それで、いま待遇の問題も出ましたが、普及員の間では、仕事は大名、待遇は足軽、そういうことを言っている人もいます。仕事は大名、待遇は足軽、これは逆にして、それでなかったら、それにふさわしいようにしなければならぬということで、待遇の面も、補助金制度が負担金と改まったときですから、この際考えていただきたいし、考えるべきだと思います。  特に、これはどういうことか知りませんが、普及所の普及員にはいままで一二%の手当がついていたが、今度実践大学ですか、その方の教員になると手当が出ないのだとかいうようなことで騒いでいる向きもあるのです。いままで手当をいただいていたのが、今度は手当がもらえなくなった、大変じゃないか、だれもなり手がないのじゃないかということもあるのですが、この点もどうなっているのか、ちょっと説明していただきたい。
  107. 堀川春彦

    堀川政府委員 現在の改良普及職員に手当が出ておりますのはもちろんでございますが、今回の法改正によりまして、改良普及所に属さずに新しい農民研修教育施設に属して指導に当たることとなった普及員の方の手当は、実は改良普及員に対する手当の性格からいたしましてこれは政省令で一定基準がございまして、改良普及員農家を巡回する職務の特殊性に着目をして創設された手当でございますので、これをそのまま適用するということは考えておらないわけでございます。  しかしながら実態といたしまして、現時点でいろいろと調べてみますと、各県の事情はございますけれども、類似の農民研修教育に当たっておられる普及員の資格を持った方も、そこの指導職員としての特別の手当をもらっている場合が多いわけでございまして、そういう手当の内容を見てまいりますと、改良普及手当が支給されないことによって、若干内容が変更されるというのもありますけれども、そう全く不利益になるというような実態ではないというふうに認識をしておるわけでございます。
  108. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、現在よりは悪くはならない、安心しなさい、こういうことですね。
  109. 堀川春彦

    堀川政府委員 非常に大ざっぱな言い方をすれば、先生のおっしゃるとおりというふうに申し上げたいわけですが、各県でそういう研修教育関係の方々の手当は横並びの関係もにらんで決めておられる場合が通例のようでございます。それじゃ全く一円も下がらぬかということになりますとそういうことはないと思いますが、大きく達観して考えれば先生のおっしゃるとおりだと私は理解しております。
  110. 武田一夫

    ○武田委員 それは重大問題ですよ。もし給料が一銭でも下がったら騒ぎます。ですから、上げればいいのです。上げるわけにいかないとなれば、現状と同じ線で送ってやるということは当然のことですので、これはやはりきつく監督をして、そうならないようにすべきだと私は思うのです。  時間がないですから、待遇の面と人員の確保の面、ひとつ努力をしていただくことをお願いをして、次に、この改良普及所の設置状況について、その内容についてちょっと聞きます。  こういう苦労をしているところで、いま広域化になっております。ですから自動車が必要だ。これは当然です。ところが一普及所平均四台、その他オートバイとかあるいは土壌、作物分析診断機材とかビデオ、視聴覚機材とかというのが整備されているという、これはそのとおりあるわけですけれども、ところが自動車が一普及所平均四台必要なんだというような、その基準というものも、これもまことに、非常に何と言うのかずさんな問題だと思うのです。これをきちっとやっているものは私の宮城県ではどこもございません。六人に一台とか五人に一台とか、平均して四・七人に一台というふうに、いずれにしても足りないわけです。足りないとどうしているか。自分の車を使ってやっているのです。しかも中には、女の方が普及に行くときは男の普及員が乗せていかなくてはいけないのです。こういうむだと言えばむだというか、大変な苦労ですね。こういうことをやって、それではその車に対する油はどうなっておるのだと言ったら、これはもらえないと言うのだ。もし事故が起こったときはどうするのだと言ったら、それに対する何らの対策も講じられてない、こういうことなんですが、どうなんですか、その点については。
  111. 堀川春彦

    堀川政府委員 普及員活動力を低下させないように自動車の整備を図っていくということは既定の方針を立てておりまして、すでに本委員会でも御説明したとおりでございますが、油代につきましては、自家用車を使ったときの油代の支給につきましては、これは各県まだ精密な調査はできておりませんが、実費程度のものを支給をしておるものと、必ずしも支給しておらない県と分かれるようでございます。  それから事故の際の問題につきまして、自家用車を使用いたしまして普及活動に出かけるというときには、おおむねの県は所長の許可を要するということに手続上なっておりまして、その反面、許可を得て自分の車で普及活動に出かけたという場合に、勤務中に事故が起こったというときの補償は官用車を使用してやった場合の補償と同様のことをやっておるという例が多いというふうに見ております。
  112. 武田一夫

    ○武田委員 これはそういう例があるとかないとかということは、あるところはいいが、ない例があって、もし万が一事故があったらどうするかという、これは重大な問題じゃないですか。たとえばガソリンの問題にしても、やっている県もある、やってない県もあるなどという、こんないいかげんなものであったら大変ですよ。現実問題として車が足らないから、そのために、やむを得ず自分の車を使うわけです。しかもいまのこういう自動車がたくさん出ているところで、オートバイをたくさん買っているのですね。危なくて乗らないというのです。こういうこともやっているわけです。ですから結局は自分にかかる負担というのが、仕事の量が多いほかにガソリンも食うとかというふうに、事故があったら大変だということの恐れと不安の中で仕事を一生懸命やらなくてはならないという状況というものをもっと的確につかんだ上で、これは国が全体的にきちっとした指導というものをしなければ、安心してこういう普及員というものは育たないのじゃないか、私はその点きちっとやってほしいと思うが、どうですか。
  113. 堀川春彦

    堀川政府委員 まさに普及活動に出かけますのに自分の車を使用して、たとえその所長の許可を得たにしても、そういう姿は決して私どもは好ましい姿だとは思っておりません。したがって私どもが考えておりますのは、普及所にできるだけ早くそういった普及活動のために必要な車の整備、それからその他機材の整備を図っていくということであると思っておりまして、その計画整備に力を入れてまいりたいというふうに思っております。
  114. 武田一夫

    ○武田委員 これはぜひ早くお願いします。  時間がないので次に移ります。後継者の育成の問題について、これは日本農業にとっては非常に問題な点です。後継者が年々歳々減っている。ところで、その減っている後継者を確保するためにいろいろ努力をする、対策を講ずるというわけですけれども、まず第一点に聞きますけれども、大体毎年どの程度の新規農業労働力というものを補充できるか、そういう見通し、もしあるならば聞かしていただきたい。もしなければないでいいです、時間がないですから。
  115. 堀川春彦

    堀川政府委員 新規学卒ではいまのところ一万人ぐらいございます。そのほかにUターンで入ってくる者がかなりあるということでございます。
  116. 武田一夫

    ○武田委員 私は、こういう新規労働力というのを獲得するというこの問題は農業後継者の問題に非常に大事な問題になってくるわけですが、大体その後継者が後継者たらんとしない理由というのはいろいろありますが、その一番大きな問題というのは農業経営の不安定というものがある。他産業の勤労者、労働者に比べて非常に不安なそういう生活というもの、そのわりあいには機械化された云々と言ってもいまだに大変な仕事の内容であるということが敬遠されている原因だ、こういうふうに私は思います。となれば、その農業経営の安定ということが、まずこの後継者を確保する最大のこれが本当に一番大事な問題だ。この問題にもっと本格的に取り組む姿勢というのがあっていいのじゃないかと思うのですが、この点どういうふうに取り組んで、どうしていくか、そういうことを簡潔にひとつお話しいただきたい。
  117. 堀川春彦

    堀川政府委員 やはりこれは、冒頭の大臣のお話にもございましたように、農業を魅力あるものにするということと農村を住みやすいものに変えていく、この二つだと思います。
  118. 武田一夫

    ○武田委員 そのために最大限の努力を払っているのだということが農村の青年に、家庭にわかれば、私はそんな農業離れはないと思うのです。私も農村出の一人です。ですから、農家に行きますと、一生懸命農業に誇りを持っている青年もおります。     〔菅波委員長代理退席、今井委員長代理着席〕 そういう連中と離れようとしている人間との間に、いまのような話がもっと具体的に響くようなものを私はひとつお願いしたい。聞きたいことがありますのでその辺にして、これはまた後の機会に聞きます。  私はこれは教育の問題があると思うのです、農業教育、農学校、短大を含めて。大体小学校、中学校、高等学校、大学と一貫した農業教育というのが私は必要だと思うのです。大体三つ子の魂百までです。そういうことを考えますと、どうもいまのカリキュラムのつくり方にしましても、農業高等学校の例を一つとってもいいです。果たして後継者として、中核農業者として育つべきそういう子供の教育のためのカリキュラムがつくられているか。また、中学校の段階に行ってそういう子供たちに農業に希望と喜びと、そして誇りを持たせるような、そういう中学校の教育というか指導というのがなされているか、これは大問題だと思うのです。聞くところによりますと、頭のいい子は普通高校、おまえは頭が悪いから農業高校へ行けと言われて、おれは頭が悪いんだと自信を持って農業高校へ行くと言うんです。どうですか、この点。
  119. 久保庭信一

    ○久保庭説明員 御説明申し上げます。  小、中学校は国民の義務教育でございますが、その中におきまして、農業につきましては、小学校では五年の産業の中で取り扱っております。中学校におきましても同じく社会科の中で地理的分野の中での地域の産業、または公民的分野では日本の経済という中でわが国の農業について知識、理解を与えるようにしてございます。  ただいま小、中、高等学校を通じまして教育課程の改定作業を行っておりますが、その中で強調されておりますことは、知識、理解のみならず、子供たちに物をつくること、育てること、勤労体験の重要性、これらをいろいろな機会において、学校教育の中で重視してまいろうということでございまして、今後ともそのような方向努力してまいるつもりでございます。  また、農業高校につきましては、農業高校の中では、食品製造等自営者にならない学科がございますが、農業科または畜産科等の直ちに自営者になることを目的としております学科におきましては、学校での教育内容のおよそ半分程度を専門的な教育に充て、中でも実験、実習等体験的な学習を少なくとも四割以上はするということを基準にいたしておりまして、自営農業後継者の育成、確保という面におきまして、十分力を注いでおるわけでございますが、また、教育課程の改定におきましては、高等学校が職業教育の基礎でございますので、基礎教育に十分徹しまして、教育を行うように現在改定作業を進めておるところでございます。
  120. 武田一夫

    ○武田委員 昔、学有田とか学有畑ですか、こういうものを農学校は持っておりまして、そこで、土に親しみながら、生活をしながら覚えてきたというものが必要でないか、私はそういうふうな感じがしてなりません。ですから、そういうような制度の復活というものをこれから考えて、やはり何でもなれるということ、親しむということは私は教育の根本だと思うのです。スタートだと思うのです。その中で教育というものが、農業というものが行われる。たとえば、高等学校の段階でも結構です。そこのカリキュラムの中に入っていく。そういうところに国が金を出して保護していくというような方向というのを考えていくべきじゃないか。木を植える、植えた木のすくすく育って大きくなる、そこに金にかえられない喜びというのが出てくる。それが、子供たちの心の中に植えつけられ、おとなになってそれが消えないという、そういうものが私は教育の中でできるはずだと思うのです。そういう点についての考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  121. 久保庭信一

    ○久保庭説明員 お説のとおりと思います。
  122. 武田一夫

    ○武田委員 それではひとつ検討して、それはやっていただきたい。これは現場の先生方の共通の声です。やらなかったら大変なことになります。そのとおりだと言っておりましたと私は言っておきます。  最後に、嫁さん対策、嫁が来ないというのはこれは深刻な問題です。もう嫁さんを集めるために高砂銀行とかをつくってみたり、あるいは何とか相談所などというものをつくって、そして真剣にその町や村の有力者と言われる方、学識経験者と言われる方々などがもう必死の思いで仲人さんの役を引き受けて、がんばっているわけです。こういうような問題について、もっとやはり国としてもいろいろと協力、応援すべきでないか。大体、嫁さんに来たくないかというと、聞いてみますと、そうじゃないです。あるアンケート調査によりますと、行きたくないというのは、これは労働がつらくて収入が低いからだ。百人のうち大体半分くらいそう答えると言いますが、半分くらい、やはり魅力ある農家ならば、後継者ならば私は行きたいというのが現実問題として半分くらいあるわけです。それをとどめることができないというところに、これは問題があるんじゃないか。これは一番最初に申し上げたときの農業の根本的な問題に関係するわけですけれども、それはそれとしてやっていただくけれども、それとまた別に、現実問題として嫁さん対策というものをやはり国としても考えるべきだ。  たとえば、北海道に池田町という農村の町があるんだそうです。その町で、わが町は農村のモデル地域だということをテレビで全国的に放映したそうです。そうしましたら、東京の主婦から、そんなところに私の娘をぜひ差し上げたいと言って手紙が来て、役場の方々が非常に感銘した、そういう話。あるいはまたその地域の状況などをよく見せて、そして農業というもののよさというものを理解さして、そこに嫁に行って、現実に都会から田舎に行って、それで一緒になって農業をしているという、そういう例もあるわけです。こういう地域の苦労に報いるために、国としてもこの嫁さん対策、これはひとつ取り組んでいただきたい。大体テレビってあれはいけないと言うのですわ。田植え機のあの宣伝にかわい子ちゃんが出過ぎるって、ため息まじりで見てるって、おれは機械よりも嫁さんがいいって、こういうような悲劇は農家の中に、笑い事でない、親子ともどもあるわけですが、だから、いま言ったように、一つの例ですが、そういうものを通して農村のよさというものを教え、PRをしながら、農村というものに嫁がどこからでも来れるというような、そういう環境づくりのために私は取り組んでほしい。この点についてお答え願います。
  123. 羽田孜

    羽田政府委員 先生指摘ございましたとおり、やはり農業後継者の中にありまして、結婚という問題に対する関心度は非常に強いようでございます。昭和五十年の農林省が実施しました調査によりましても、結婚問題、これには生活上の悩みとして二二・三%、最も高い。これはその他というのがございますけれども、具体的に挙げてある問題の中で一番大きく悩みとして取り上げられているところでございます。こういったことを私どもも踏まえまして、また実際に私ども歩きましたときにこういった問題を相談されることも非常に多いわけでございます。それには、たとえば農業というのはやはり特別な勤務体系といいますか、また仕事といわゆる生活の場というものが一致しておるということ、あるいは家庭生活の中におけるおじいさん、そうしてお父さん、また若夫婦というような中の家庭構成、こういったところにもいろいろとむずかしい問題があるようでございます。いずれにいたしましても、私どもそういったものを踏まえながら生活する場というものを確立すること、あるいはお嫁さんたちに過重な負担がかからぬようないろいろなもろもろの施策というものを進めていかなければならぬというふうに思います。  一つの例を申し上げますと、酪農経営なんかしておりますと年じゅう牛にくっついていなければならぬという中で、テレビなんかがいま各家庭に入ってきておるわけです。こういうものを見ていますと、サラリーマンの人たちは花見だ、やれ何だというので旅行もできますけれども、酪農経営者は夫婦若いうちは泊りに出ることもできないなんという悩みもございまして、こういったものに対して例のヘルパー制度というようなものもだんだんいま進められておるところでございますので、そういった面を十分踏まえながら、農村に本当に誇りを持って、喜びを持って嫁に来れるような農村づくりをこれからも努めてまいりたいというふうに思っております。
  124. 今井勇

    ○今井委員長代理 神田厚君。
  125. 神田厚

    ○神田委員 私はこの農業改良関係の二つの法案に対しまして全般的な御質問を申し上げたいと思うのでありますが、非常に限られた時間でございますので、ひとつ御答弁の方、大変恐縮でございますが、簡潔適切にお願いをいたしたいと思うわけであります。  まず最初に、技術導入資金の問題でございますが、この貸付金の限度額の改正につきまして、いわゆる農業改良制度の創設の当時と比べて、現在非常に成長作物の増大やその他の問題でこれが変わってきている。こういう中でこの貸付限度額の拡大がされているわけでありますが、私は一番基本となるべき標準資金需要額そのものが引き上げられていないのではないか。この点につきましてやはりこれを引き上げるということが本当にこの制度の実効をもたらすのではないかという考え方を持つと同時に、この貸し付けの限度額の拡大につきましても、いわゆる農業近代化資金や農林漁業金融公庫資金などのほかの制度金融との関係で百分の八十ということでおさまったというふうに聞いておりますけれども、これらの制度の中にも百分の九十程度の貸し付けをしているものもある、こういうふうに聞いております。  そういう意味で、一般のいわゆる金融と異なって単に資金を貸し与えるという趣旨でつくられている問題ではないのでありますから、農業技術普及農政の誘導という立場から、普及事業との関連から非常に大切な位置づけをされている本資金の役割りと機能を十二分に発揮するためには、もう少しこれを思い切って百分の百、限度額いっぱいの引き上げを行うべきである、こういうふうに考えるわけでありますけれども、その点に関しましていかがお考えでありましょうか。
  126. 堀川春彦

    堀川政府委員 まず先生お話しの中に、標準資金需要額を基準としていままでは都道府県が定める額の百分の七十、八十ということでございました。標準資金需要額自体に問題があるという御指摘でございますが、これは石油ショック等で資材価格が非常に高騰したというようなときには直しておりますが、一般に技術導入資金の性格といたしまして、補助金と一般融資との——一般融資と申しますか、制度融資も含めまして金融との中間に位置づけられておるという性格からいたしまして、それからまた償還期間等そう長いものでないというような性格を持っておるものでございますので、その都度引き上げというようなことはやっておらない。ただ、新しい種目の資金を入れるというようなときには、当然のことながらその単価等を実情を調べてみまして、その上に立って標準資金需要額を定めているというところでございます。  それから、百分の百ぐらいに融資率限度を上げたらどうかというお話につきましては、これはやはりいま申しましたようなこの資金の性格を考えますと、まあ七十というのはいろいろ沿革がございまして七十でございましたけれども、これは補助金から移行してきた等の経緯がございまして七十になっておるわけでございますが、制度資金、特に農林漁業金融公庫の資金あるいは農業近代化資金の融資率というものも参考にいたしまして百分の八十というところに持っていったわけでございまして、百分の百というのは、私はこの資金の性格からいってどうかというふうに思っているわけでございます。  それからなお、現実に百分の九十というのがあるではないかというお話につきましては、これは法律の趣旨から見まして必ずしも適当でないというふうに思っておるわけでございます。
  127. 神田厚

    ○神田委員 いわゆるオイルショックのような特異な事情というような形でお話がございましたが、そういう形じゃなくて、年々インフレが高進しているような中で、やはり私はこういう問題は資金需要額そのものの問題について考えていただかなければいけないというふうに考えているわけでありますが、それは問題を残しておきまして、あとの問題に移りたいと思います。  次に、先ほどお話ありました都道府県との関係の問題でございますが、農業改良資金の造成の問題、これが非常に大事なことでございまして、つまり、この改良資金の造成がうまくいってないためにせっかくのこの制度が本来の機能を発揮しない、こういうふうなきらいがあるというふうに考えております。  地域の実態に応じて資金の造成がなされているのかどうか、そして、もし仮にそれがなされていないというような場合には、本当にそこでは農家の需要にこの制度がこたえていないというふうに考えるわけであります。その場合、一体行政指導としてはどういうふうにいままで行政指導をしてきて、あるいは今後こういうふうな改良資金の積み立ての非常に少ない、本来農業県と思われてもっともっと積み上げなければならないようなところで少ないところがたくさんあるわけであります。そういう県につきまして、この指導をどういうふうになされるおつもりなのか、この点をお聞きしたいと思います。
  128. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生の御指摘は、資金枠の点にかかわっている問題というふうに考えるわけでございますが、これにつきましては、県の実情等を踏まえまして御要望が出てまいります、そういうものを総計したものを基礎にいたしまして資金枠を国の枠として設定をし、これをまた県に配分をするという形にしておるわけでございます。  枝術導入資金等種目が決まっておる資金がございますけれども、その種目以外のもので資金需要がある、しかも適当だというものも地域の実情によってはございますので、枝術導入資金なら枝術導入資金の枠の中でそういった特別の地域の実情に応ずる貸し付けができるように、いわゆる特認枠というものを設けておりますが、それが枝術導入資金の種目に挙げた事業の二割にいままで枠を標準としておさめておったわけでございます。これを五十二年度からは三割に引き上げるというようなことで、さらに対応をやりやすくするというようなことを工夫をしておるわけでございます。
  129. 神田厚

    ○神田委員 特認事業の問題につきましては後で御質問申し上げますけれども、私が言っておりますのは、いわゆる本来農業県と言われるところで、たとえば北海道あたりで、国の方で十八億ですか、道の方で六億ちょっとですね、そういうふうなものを、そのまま地域から上がってきたというものだけを認めてそれでいいという形での考え方では、この制度そのものがうまく運用できないんじゃないか。あのような膨大な土地でいろいろな農業のそういうふうな問題を抱えているところならば、もっともっと多くの改良資金が本当は造成をされなければならない。そういうことについてどういう指導をなさっているかという質問をしているわけであります。
  130. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは国の予算におきまして総枠を確保する、それを実態に合ったように枠を確保して、これを適切に県に配分をするという問題でございます。  それから、これは資金造成については御案内のように国が三分の二助成いたしまして、都道府県が二分の一出していただいて、それを原資にして貸し付けるわけでございますので、都道府県側のそういった事情というものもかなり影響してくる問題があろうかと思うわけでございます。  私どもは、総体の予算でとりました国の想定する枠がこなされない、著しくあきが出るというようなことのないように地域の各都道府県別配分等を工夫をいたしますとともに、必要に応じて国の予算枠を拡大をしていく、こういう考えで対処したいと思っておるわけであります。
  131. 神田厚

    ○神田委員 それじゃ率直にお伺いをいたしますけれども、北海道の現在の状況は、それで農林省としては十分だ、適正であるというふうに考えておりますか。
  132. 堀川春彦

    堀川政府委員 やはりそれにはいろいろの理由がございますが、ほかの県との相対関係で見た場合に、どうも私どももちょっと少ないんじゃないかという印象を持っております。  その理由の一つとしましては、県単関係で北海道特有のことをいろいろとこなしておられることが一つの理由であろうかと思っております。
  133. 神田厚

    ○神田委員 私は、この改良資金の造成がうまくいかないというものを補っていく一つの方向として、いわゆる特認事業の枠の拡大、便法と言ってはあれですけれども、これを現在使っていかなければならないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。農林省地域農政地域の特殊性というものを非常に大事にした、地域農業の振興を重視した政策をとっておりますから、この点からもいわゆる特認事業の枠につきましてもこれをもっと大幅に引き上げて、そしてこの改良資金造成の消極的な県などにつきまして改良資金にかかわる農業に対する積極的な姿勢を導き出すような方向で、これをもう少し引き上げる考えがございませんかどうか。
  134. 堀川春彦

    堀川政府委員 特認事業の扱いの問題は、実はいろいろ要請もございますし、しかしまたそれなりの問題もあるわけでして、ここ二年連続引き上げということになるわけでございます。なお実態をよく調査をし、かつまた先生の御指摘の点もよく考えまして対処してまいりたいと思っております。
  135. 神田厚

    ○神田委員 この事業の貸付原資というのは大部分償還されているわけですね。したがいまして、二〇%から三〇%というふうな小幅な枠の拡大よりも、本当にこの地域農政というものを大事にしようということならば、どうかもう少しこの枠の拡大を図っていただきたいというふうに考えるわけでありますけれども、重ねて恐縮でございますが、いかがでございますか。
  136. 堀川春彦

    堀川政府委員 今後真剣に検討してまいりたいと思っております。
  137. 神田厚

    ○神田委員 次に、農業後継者の育成資金について御質問申し上げたいと思います。  現在、農村の青少年の就農が激減している、こういう状況は一体何が原因しているのか、政務次官に率直に、どうしてこういうふうに農家に青少年が住みつかなくなってしまったのか、ちょっとお伺いしたいのです。
  138. 羽田孜

    羽田政府委員 先ほど来お答え申してまいったところでございますけれども、やはり高度経済成長の中でじみなこういった農業をやるよりは、安易に収入を得られるこちらの方向というものを青年たちが近年わりあいと選んできたのではないかというふうに思います。そういった中で後継者が不足しておるという面があるのではないかというふうに思います。
  139. 神田厚

    ○神田委員 私は、これは長期的に見まして、現在のような就農状況でありますと日本農業は壊滅してしまうのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。     〔今井委員長代理退席、菅波委員長代理着席〕 いわゆる食糧自給というものをこれだけ叫びながら、農村にこんなに青年が住みつかない、こういう状況をこのまま放置しておくということは大変な問題だというふうに思っておるわけでありますけれども、この問題につきましては同僚の稻富議員が後日詳しい御質問を申し上げるわけでございまして、私は政務次官のお考えを聞くにとどめておきます。  いわゆる農業後継者育成資金の中の部門経営開始資金にしても、私はやはりこれもちょっと部門経営開始資金というふうな形で貸し付けるということ自体がほかの資金額に比べて非常に限度額が低い、枠を拡大しろという話で恐縮でございますが、低いというふうな考え方を持っているわけなんであります。その辺のところはどういうふうにお考えでございますか。
  140. 堀川春彦

    堀川政府委員 この部門経営開始資金は、その資金の貸し付けの性格といたしまして、後継者が農業経営の将来の本格的な担当者として必要となるような技術や経営の方法の第一歩の段階を実地に経営をやってみるということで修得をする、そのためのいわば初度調弁的な資金の貸し付けという性格を持っておるわけでございます。したがいまして、その貸し付けの対象となるいわゆる経営の規模と申しますか学習の規模と申しますか、それはそれだけで完結して農業経営としてひとり立ちできるというものを実は考えておらないわけでございます。そういうことによりまして、資金の限度もおのずから本格的な経営をするというときの資金需要に比べては低いわけでございます。しかし、実態に合わないというような声もございますので、今回二百万円を三百万円に、特認の場合には四百万円に上げたいということで予算を御審議願っておるわけでございます。
  141. 神田厚

    ○神田委員 私どもは必ずしもこれで満足できるというようなことではないのですけれども、次に研修教育資金について、いわゆる貸付金の償還負担の減免ということが大変論議をされております。これは何らかの措置をとって減免したらいいんではないかというような話も出ているわけでありますが、都市からUターンしてくる青年を就農に誘導する道は一体どういうことがあるんだろうかとわれわれ常々考えておりまして、民社党といたしましては現行の農業教育研修体制そのものをやはり抜本から改正していかなければならない、こういうふうなことでいろいろ議論もいたしまして、教育研修体制の確立の必要から、まず小、中学校における農業教育の充足、農業高校の整備拡充、それから農業経営大学校の設置農業教育研修の助長センターの設立というような構想を持ちながらやっているわけでありますけれども、やはり何とか後継者が農家に住みつくようないい状況をつくるためにはどうしても農業で食えるあれをつくっていかなければならない、こういうふうに考えているわけでありますが、その辺のところは別に御答弁をいただかなくても結構でございますが、そういうふうなことでひとつ本当に農業をやっていて、農業でちゃんと再生産が確保されて、農業生活ができるというような、そういう農業を育てていただきたい。そのためにはこの制度を、本当にせっかくここまでなさったんですから、もう一歩踏み出して前向きのものにもう少しつくりかえていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。  さらに、生活改善資金の問題につきましては、全般的に生活改善資金が非常に少ないというふうに私どもは考えているわけでありまして、その中でもたとえば住居利用方式改善資金などについてはこれをもっと積極的に活用させていくことがいわゆる後継者の確保といいますか、新しく後継者のための家を建てたりするような形で利用させることによって、先ほど論議されました嫁さんの問題とか、そういうふうな問題もある程度の解決ができていくというふうに考えております。  こういうことと関連いたしまして、今度は高齢者の生活資金が新設されました。私はこれは大変いい制度だというふうに思うのでありますけれども、ここで問題になりますのは、これは非常にいい制度ではあるけれども、これを実行に移すためには指導者をどういうふうにして育成していくのかという問題が第一番に出てくるんではないかというふうに思います。  さらには、指導者をどういうふうに育成していくのかというのと同時に、今後こういうものを、いま四百グループ程度を予定しているようでありますけれども、どの程度こういう制度を拡大していって、そしてどういうことをやらせようとしているのか。非常に広範囲にわたりましたけれども、ひとつ簡潔にお答えをお願いしたいと思います。
  142. 堀川春彦

    堀川政府委員 高齢者の資金の問題でございますが、これは高齢者ということに絡んだ農林省の対策としてはすでにいろいろの対策が行われております。一例を言えば山村地域高齢者林産物栽培園設置事業でありますとかその他でございますが、私どもの改良資金で取り上げております高齢者資金は、そういったハードな部分を含む助成事業ということよりも、むしろ共同で高齢の方、おおむね六十歳以上の高齢者グループというようなものを想定しているわけでございますが、こういう方々が主として生産的な活動、たとえて言えばその地域の特産物づくりでありますとか、農産物の加工でございますとか、民芸品の製作でございますとか、そういったようなことを余暇と申しますかに共同でやっていただきまして、そうして生きがいをそこに持つというふうにすることがおのずから生活の改善につながっていく、それでえらい収益を上げるということは目的ではございませんが、そういうこととして考えております。それに必要ないわば器材費、資材費、調査のための費用というようなソフトウエア的な費用を対象にして考えてみたいと思っておるわけでございます。したがって、そういうことをやっていくためには既存の施設を利用しながら進むということも非常に重要なことでございますし、先生の御指摘のようにいかに有能な指導者を獲得するかということも大変重要なお話でございます。私ども生活改善普及事業には全面的に御支援を申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  143. 神田厚

    ○神田委員 以上、制度の資金の方の面からいろいろお話し申し上げましたが、これらはいずれも改良普及事業との連携を強化していかなければ解決のできない問題でございます。  続いて改良助長法の方の問題につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に、農民研修教育施設を設置するということが出ております。原則として入学者を高卒者以上というふうな形で決めておられますが、現在でも高卒者の就農が非常に少ない中で、本当にここで言われている数字だけの人間一体そこで確保できるのかどうかという大変むずかしい問題があるかと思うのであります。     〔菅波委員長代理退席、今井委員長代理着席〕  さらにはこの教育指導に当たる教師の問題でありますけれども、これを現在の普及員定員の中から充てることにしているのか。もしそういうふうなことになりますれば、従来でもすでに普及活動が非常に手薄になっている中でやはり相当の悪い影響を及ぼしていくというふうに考えているわけでありますけれども、その辺のところはどういうふうにお考えでございますか。簡単で結構でございますからお答え願います。
  144. 堀川春彦

    堀川政府委員 私どもこの農民研修教育施設の体系的整備にこれから本格的に取り組むわけでございます。最初から所期の効果が簡単に出てくるようには思っておりません。かなりの難事業であろうと思っております。したがいまして、ある程度の期間はかかろうかと思いますが、できるだけ高校卒程度の方が喜んでそこへ入所したい、定員をオーバーするというような事態が一刻も早く来るように祈っておるわけでございます。  指導に当たる職員の方は、普及員をもって充てることができるというふうにしたわけでございまして、普及員の方でなくてはならぬということはもちろん考えておりませんが、現実にいまそういう施設になろうという予定のところでも普及員の資格を持つ方が相当数いらっしゃるわけでございます。そういう方々の中の適当な方を今回の教育施設で普及員として指導に当たるということにされることはもちろん一向差し支えない、むしろそれは望ましいというふうにも考えます。しかしその際に、やはり新しい研修機関の教育研修に当たる普及員として適切であるかということはもう一遍新たな角度から見直しをしていただいてついていただくということが適当であろうかと思います。
  145. 神田厚

    ○神田委員 私はいま普及員定員が非常に少ないという問題いわゆる定数の問題についてこれから二、三御質問を申し上げるわけであります。  普及員定数について、まず現在の定数の充足率から見ても、やめた者を補充してないというような状況があるわけであります。やめた者の充足がされてないということに対しましては農林省としてはどういうような行政指導をなさっているのか。さらには、いわゆる定数の割り当てそのものにつきまして、これをもう少し新しい基準を設けて適正な割り当てをすべきではないかというふうに私は考えているわけでありますけれども、いまのような形で、本来の姿で本当に農民の要求しているものを行政に吸い上げることができるのかどうか。そしてさらに、たとえばその割り当ての問題につきましても、全体を一〇〇とした場合、栃木県あたりでは話によりますと八〇ぐらいの充足率だというように聞いておりますけれども、全国的に大体どの程度の割り当て数についての充足率があるか、その辺のところをひとつ御説明願いたいと思うのであります。
  146. 堀川春彦

    堀川政府委員 まず普及員設置の問題は普及事業推進の基本でございますので、私ども昨年そういう指導をやってまいったわけでございますが、五十一年の一月二十八日付をもちまして通達を地方農政局長を通じまして知事さんに出しまして、普及員設置数の変更は普及活動に与える影響が大きい、普及職員の確保については特に配慮をしてください、農林省都道府県が一層緊密な連携を図りながら推進するという角度から、その設置数を変更しようとする場合にはあらかじめ地方農政局長に御協議くださいということを言って、これから普及職員設置数を変えるときには一々チェックをしたいというふうに思っておるわけでございます。  それから普及員の充足率の問題でございますが、これは五十年の年度末におきます普及職員配置状況でございますが、全体で一万二千五百七十八人でございます。それに対しまして予算上の定数枠は一万三千百六十三人ということで、全体としてはかなりのギャップがあるということになっておるわけでございます。
  147. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、かなり割り当てを下回っている県があるわけでございますね。
  148. 堀川春彦

    堀川政府委員 そのとおりでございます。
  149. 神田厚

    ○神田委員 こういう問題につきましてはどういうふうにお考えでございますか。
  150. 堀川春彦

    堀川政府委員 これはなかなか強制するというわけにもまいりませんし、私どもはぜひとも定数を充足してもらうようにお願いをしたいということで、強く指導かたがたお願いをするという態度で今後粘り強く接してまいりたいと思っております。
  151. 神田厚

    ○神田委員 これが一番大事なところなんですね。やはりどうしてもお願いをしながらという形にならざるを得ないのかもしれませんけれども、もう少しこちらで割り当ててあるのですから、その割り当てに満たない部分につきまして、何とかもっと強力に行政指導すべきではないかというふうに考えるわけであります。いわゆるオーバーしているところもあるというふうな話もありますけれども、とにかく割り当てより下回っている方がずいぶん多いわけでありますから、オーバーしている分についてはまた違うことで考えていけばいいのでありまして、ひとつそういう意味におきまして普及員の充足につきましてはもっと強力に行政指導をすべきであるというふうにひとつお願いをいたしたいのでありますが、いかがでありますか。
  152. 堀川春彦

    堀川政府委員 そういう態度でやってまいりたいと思いますし、また、関係農家あるいは市町村等からそういう声が県当局によく届くように希望をいたしておるわけでございます。
  153. 神田厚

    ○神田委員 さらに、五十二年度の予算定員にいたしましても、私は改良普及員の中で地域改良普及員の千九百五人、これが非常に少ないのではないかという考え方を持つわけであります。どうしてそういうふうな考えを持つかといいますと、農家の一番の希望はもっと普及員が巡回をしてきて、本当に自分たちの農業の身近な問題について相談に乗ってほしい、こういうふうな希望が非常に多いわけでありますけれども、現在のようなこういう人数でありますと、実際に一週間に何回来られるのか。ある統計によりますと、一つの普及所で大体十九人ぐらいで約九千戸近い家を生活改善全部含めまして見るというような中で、本来意図してつくられましたこの普及事業というものが実効のあるものになっているのかどうか、非常に疑問があるわけであります。私はやはりそういうふうなことからいいますと、ここでもう少しこの普及員の数も地域普及員を中心としてふやしていく形の中で、本来の普及事業の目的を十分達せられるようにしていただきたいというふうに思うのですが、簡単で結構でございますからお答え願いたい。
  154. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生御案内のとおり、地域担当の改良普及員は相当広範な技術面あるいは経営面のことをこなさなければならないという性格を持っております。新しい普及員を採用するに当たりまして、最近は専門を非常に深く専攻した方が多くて、一般の幅の広い普及力を持った方、すぐに役に立つという方にはなっていないということもございます。予算上は、一応の専門とそれから地域担当の枠というものはありますけれども、これは予算を取るときの枠でございまして、実態は地域の実情に応じてやりなさいということも言っておりますから、そうしますと、そのギャップを埋めるのは、研修の充実等によりまして地域担当ができるような方ができるだけ育つということも一つの重要なことではないかと思います。今後総合的に考えてみたいと思います。
  155. 神田厚

    ○神田委員 そういう中で一つ問題は、地域担当が非常に大きい地域になっている。そして、いわゆる普及指導を受ける農家が本当に限られた農家になってしまっている。これで一体日本農業というものを、技術的にもあるいは収益の面でも、本当にちゃんと指導ができるのかどうか。私は、兼業農家までも含めた形での普及員の事業というものをこれから広げていかなければならないのじゃないかというふうに考えているわけであります。その点につきましては、後でまた問題にしていろいろと御意見をお聞きしたいと思っております。  次に、補助金を負担金に改めるということを機会にいたしまして、いわゆる事業費に対する都道府県の超過負担の問題、これも早急に是正を図っていただきたい。そしてさらに、普及所の運営、経営費などにつきましてても大変困窮している状況があるというふうに聞いておりますので、その点もあわせてひとつ是正をお願いいたしたいというふうに考えております。  最後に御質問申し上げますけれども、大変古い資料でございますが、昭和二十三年八月に農林次官通達で「この事業に従事する職員には供出割り当て、配給検査、取り締まり等の行政事務を担当させないようにすること。改良普及員の勤務の重点は、農家に対する巡回訪問等の実施活動にあるので、週のうち五日程度は巡回指導にあたることとし」として、普及活動重点をそういう形で示しております。いまこそこの原点に返りまして——農業基本法以来、いわゆる農業改善事業の始まった時点から見ると、普及事業指導が大きく変わってきております。零細農家に対する切り捨て、そういうものではなくて、小さい農家に対してまでも、農家の私の経済あるいは生活、文化、そういうものに対しても非常に大事に、いわゆる普及事業の本来の精神に戻りまして事業を進めていただくことが、これからの日本農業を本当に守っていくものだというふうに考えているわけでありまして、そういう原点に返りましてのお願いを最後にいたしまして、政務次官の方からお答えをいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  156. 羽田孜

    羽田政府委員 先生から御指摘がございましたように、普及事業の果たしてきた役割りというものは非常に大きかったものがあるわけでございます。こういったものを踏まえながら、いま新しく農村から要請されております問題について回答をし、そして本当に農民が誇りの持てるようなあすの農政を進めるために、普及事業というものが大きな役割りを果たしてまいりますために、今後とも、先ほど来いろいろと御指摘がございました点を踏まえまして進めてまいりたいというふうに考えます。
  157. 今井勇

    ○今井委員長代理 津川武一君。
  158. 津川武一

    ○津川委員 すぐれた後継者を育成する、農村青少年に対して農業のいろいろな研修教育を施すための改善でありますので、私たちも賛成の立場から問題を少し進めてみます。  そこで第一の問題は、農業をする人、働く農民をどうするかという立場からの質問であります。いままで基本法農政だとか構造改善だとかいろいろやってまいりました。この中で選択的拡大をやるといって、酪農農家は規模を拡大し、その結果は、いま背負い切れない借金であります。負債整理の立法をせよなどということが農民の心からの要求になっています。  またもう一つには、生産性の向上、このために機械化をする、これをやりました。農民は機械化のために貧乏、その借金を返すために、いま出かせぎをしております。その結果、農村は老人と婦人だけが多くなり、農村に来るお嫁さんもなかなかなくなってまいりました。自民党政府のこれまでの農業政策は、こういう形でアメリカなどへの農業にはかなり奉仕した。大企業の製品を遠慮なしに農民に押しつけて、大企業が農民から吸い上げることができて、結局犠牲にされたのは農民でした。耕地も大切、機械もいいでしょう。生産性向上も悪くありません。米の限度数量を押しつけることもあり得るかもしれませんが、要は、農政の基本の一つは人間の幸せ、農業をする人たちが生き生きとして暮らせる、ここに一つの重点があります。働く農民が大切にされる、働く農民が幸せになる、働く農民農業をする意欲が燃えてくる、そんな農政こそ本来の農政でありますが、この点、働く農民を大事にする、働く農民の幸せをつくる、こういう点で農政は根本的に見直さなければならないと思いますが、いかがでございますか。
  159. 羽田孜

    羽田政府委員 今日までもそのつもりで政策を進めてきたところでございますけれども、ただいま先生からお話がございました御指摘、そのとおりでございまして、やはり実際に農業に従事する人たちが農業にいそしむことに誇りを持てる、あるいはそこで生活することに非常に快適さを覚える、こういったものでなければ本当の農業は進まない、それと同時に、わが国の食糧も確保できないということでございまして、後段の点についてはもうそのとおりでございます。
  160. 津川武一

    ○津川委員 その点では一緒にやっていけると思います。  そこで、この農業をやる働く農民が何を目指していけばいいのかという問題です。私の小学校の同級生で、同じ年です。篤農家のその人から、この間孫息子をどうするかで相談を受けた。私は、小学校はその人と同級生で、中学校、高等学校、大学に進んで、医学部を出てお医者さんになり、病院長をしている。そこであなたみたいになるのだったら、おれは田畑を全部売り払って、この孫息子をそういう形でやろうか、これがその人の相談。ところが、しわくちゃな手を出して、このおれを見ろ、八反歩あったリンゴ畑が、五十年働いてまだ八反歩、借金は残り、腰が曲がっている、同じような運命を子供には繰り返させたくない、農業してよかったと安心して極楽に行けるような境地で一生を終わりたかった、おれには目標がなかった。六十年間同じことを苦労してきて、残ったものは借金と腰曲がりだ。農林省の中で働いておる人は、農林省に入ったときに農林省の係になって、やがて係長になり課長補佐、専門官、課長、部長、審議官局長、よければ次官、とにかく農林省に職を奉じた人は、局長になるという一つの野心、目標がある。農業をやったときに何の目標があるか、どこに精魂を傾ければいいかということなんです。とにかくまじめにさえやっていれば係から係長、課長補佐というふうに上っていく段階がある。農民にはどこにその段階があるのかと言うのです。二十代に二ヘクタール、三十代に三ヘクタール、四十代に四ヘクタール、こういう段階を踏めるような道があるのか。三十代にハウス園芸をやったが、五十、六十になって子供が跡を継いでくれないと言うからハウス園芸やめている。そういう点で、目標をどうしてくれる、目標のある農業、一つの生きがいのある農業を。その人は、年いったときに借金がなくて、息子がちゃんと跡を継いでくれていて、そして安心していければそれでもいいんだが、そういう目標だけ与えてくれないかと言うのです。農林省に職を奉ずると、やがて定年退職していってもそこで生活の道があって安心できる、借金はないだろう。農民にそういう一つの進んでいく段階、最終的な安心立命の境地のあるような農業、この点で何か考えてくれないかというわけなんです。私にも考えがないのです。農林省として何かこういうことを考えたことあるのか、こういうことで一つの検討をしてみる余地があると思いますが、いかがでございます。
  161. 羽田孜

    羽田政府委員 農業に従事する方がそういった気持ち生産にいそしめるような農政というものを進めなければならないことは、いま先生の御指摘のとおりでございます。ただ、いま先生のお話の中に、残ったのはただ借金と腰曲がりだけだということが一番の基本になっておりましたけれども、しかし、私どもがいろいろと施策をしていくに当たりましても、やはり借金というものは経営を圧迫しているという中で、今度の価格の問題に関連いたしましても、そういった借金というものをできるだけ整理するというような施策もとっておるところでございます。また、確かに地位とかなんとかというものはないが、しかし多くの方々はやはり自然と取り組みながら物を生み出していくという中に大きな生きがいと意気込みを持っていらっしゃることも私どもたくさん知っておるわけでございます。いずれにしましても、ただ哲学的なことあるいは文学的なことだけではいかぬわけでございますので、でき得る限り労力というものを少しでも少なくしていく、それと同時に多くの収入を上げられるようなそういった生産基盤あるいはまた生活する基盤というものの充足、こういったことに対して役所としていろいろと施策を進めていかなければいけないというふうに考えます。
  162. 津川武一

    ○津川委員 係から係長、課長補佐というふうに一つの前進がある。そこで、これからこの法律で育てていく農民にもそういう、きょうよりもあした、あしたよりもあさってという希望の持てるような農政をひとつ本気でつくってもらうように要求しながら進めていきます。  そこで、今度の法律改正で、その点から言うと農民の中で一番下層にあるのは中卒です。いま高校進学がぐんとふえてきた。そこで中卒の後継者はだんだん少なくなったがまだ残っているんです。私たちの青森県で言うと百人ぐらいある。その人たちはいろいろな悪い条件の中で高校に行けないで、中卒のままで農業に従うのです。とすれば教育、技術を授けることの重点が、われわれの政治の光がこの中卒者に当たらなければならない。ところが、青森県の計画にしろ秋田県の計画を見てもそうだ。これから農業者大学をつくる、この中卒を付属学院にするというのです。逆じゃないか。中卒が遠慮なしに、そこが中心になって、この人たちの技術教育、この人たちの育成、これが基点でなければならない。こういう形の技術指導、教育、こういうことでなければならないと思うのですが、この人たちをそういう形で引き上げてくれる方針かどうかということが一つ。とすれば、これからつくる農業者大学のカリキュラムもそこを中心に編成していくことが必要であると思います。この二点を答えていただきます。
  163. 堀川春彦

    堀川政府委員 現状の農民の研修施設におきます中卒の比率はまだまだある程度あるわけでございますが、年々数が少なくなり、また比率が減少をしていっておるのも事実でございます。それからもう一つは、農業後継者で新規学卒で就農される方の中の高卒は、先ほど来御説明しておりますようにもう八割というふうに高くなっておる。一方、農家の子弟の進学の状況等を調べてみますと、中学から高校に進学する率が私どもの調査では九〇%を超えておる。九四%というような数字もあるわけでございますが、そういうことになってまいりますと、やはり私どもはこれから先の農業を考えますときに、高校卒程度の学力を基礎にしてこなせるような農業ということも相当ウエートを置いて考えなければならぬというふうに考えまして、今回体系的に整備するものは、おおむね高卒程度の学力を有する者を主として対象とするところの農民研修施設であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、しかし、これに中卒の研修施設を併設するということを否定しておるわけでもございませんし、また中卒の方でも、一定の研修等を受けるというようなことがありまして、この高卒程度の学力を有する者と実質的に同じに扱ってよろしいという認定ができるような方については、高卒の方と一緒に研修を受けるということは十分考えられるわけでございますから、その辺は運営の問題になってまいりますので、私どもやり方は十分工夫をしてやってまいりたいというふうに考えております。
  164. 津川武一

    ○津川委員 先ほども話したとおり、農業をする人間の幸せをどうするかということです。とすれば、数からいけば高校卒と同じぐらいの学力がある人は多いが、現実に不利な条件のもとで中卒して農業に入るこの人たちを、付属的に教育するというんじゃだめです。この教育を柱に据えてその上に高校ということならいいけれども局長の言うみたいに学力があって追いつける者なら一緒にやるというんじゃなく、やはりこの中卒の人たちプロパーに光を当てるものでなければならないと思う。それは運営の問題ではなくして、この教育研修の基本がそうだということなんです。この点は次官いかがでございます。
  165. 堀川春彦

    堀川政府委員 お言葉でございますけれども、私ども、現下の状況やこれから先の推移の見込み等をも考えてこういう制度は考えていく必要があると思っておりますので、おおむね高校卒程度ということを対象にしたものにしたい。ただし、中卒を基本に置けということにつきましては、まず中卒の研修施設を整備してからにしろというような意味であれば、それはそういうことではないだろう。私どもはあくまでも——まあ、ここは選択の問題でございますから、国が助成をして力を入れる協同農業普及事業の中に位置づけるものとしては、おおむね高卒程度の方を受け入れるものとして整備するのが適当であるというふうに思っておるわけでございます。  なお、中卒のまま就農をできるだけ早くしたいという希望を持っておられる、あるいはそういうふうにいろいろの条件からなっていく方といいますか、そういう方の研修施設といたしまして、これは県のものではございませんが、先生御案内の民間研修施設もいろいろあるわけでございます。国が助成しているものもあるわけでございまして、中卒程度を対象にしてやっておる教科もありますから、そういうところに極力ごあっせんをするとか、中卒を軽んずるという意味ではございませんで、とにかくこの法律の体系の中にさしあたり整備する基本は高卒程度を基本に置いていく。さりとて、それは中卒の方が研修を受けて農業に就農するということを軽んずるという意味ではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  166. 津川武一

    ○津川委員 ほらほら化けの皮が出てきた。本体が出てきた。それでは、最低限今度の農業者大学に、付属学院でいいよ、中卒の人のためのカリキュラムを組んで、そのための教科というものが行われるような形に、最低限そこまではできないか。ここのところを要求して、次に進みます。
  167. 堀川春彦

    堀川政府委員 ただいまのところ国の方針としてそういうことにするということは考えておりません。県の自主的判断で実情に応じてそういうことをされることは結構であると思っております。
  168. 津川武一

    ○津川委員 この点は後刻大臣にひとつ質問することを保留しておいて、進めていきます。  次の問題は農村婦人の問題です。  いま何と言っても、農業の労働のかなりの部分、主力を担っていると言ってもいいのが婦人であるし、それから婦人の苦しみというのは、肉体的にも精神的にも大変なものだ。また婦人は、技術のこと、農家の経営をやっていくことに対して勉強したいという意欲も非常に大きい。この婦人をどうするかということ。私はこのことで、農業後継者に婦人を軽んじているという質疑を一回やったことがあります。いまは特に国際婦人年の問題で行動計画ができて、総理が本部長になっている。そこで、この行動計画の中には七十七項目にわたる農村地域の女子青年と婦人のために総合的または特別の訓練プログラムを発展させるべきだという項目がある。こういう項目の中で取り上げられている一つの問題は農村婦人の労働が過重過ぎる、これを適正化せい、二つ目には、農村婦人の健康生活の維持と、その健康の増進、三つ目には、農家生活の担い手であるので、農村婦人の家庭管理の向上、それから農村婦人の自主的活動の促進、四番目には、農村生活環境の改善の問題、村づくりに婦人が積極的に参加していく問題、五つ目には、農村婦人の農業技術の向上とその改善の問題、こういう問題が幾つかその七十七項目の中に取り上げられております。そこで今度の法律改正と関連して農林省は、この農村婦人の解放のプログラム計画をどのようにつくって、どのように実行しているか、まずここのところをひとつ教えていただきます。
  169. 堀川春彦

    堀川政府委員 私ども農村の婦人問題というものは非常に重要な問題であるというふうに考えております。政策的にこういう婦人問題に取り組むということはやはり農家生活の改善に直接携わっておる改良普及事業の中でこなしていかなければならない面が非常に大きいのではないかというふうに考えまして、生活改善事業の強化を図る、適切な運営を図るという方向でやることを一つの基本に据えておるわけでございます。  先生のおっしゃいましたような、農村では農家の婦人の方の労働が少し重過ぎるんじゃないか、そこから、これは婦人には限りませんけれども、健康問題というのが非常に出てくるんじゃないか、特に農村婦人にそれが過重に出てきているような形になっているのじゃないか。そういうことが出てまいっておりますので、私どもは、農家生活改善仕事の中で、できるだけ住みよい村づくりと適切な運営管理のできる家庭を同時につくっていくという目標を立てまして、生活改善事業の中でも健康管理の問題、こういうことには特に力を入れていくと同時に、生活環境整備の問題にも取り組んでいく。それからもう一つは農業と生活とのかかわり合いが非常に深いわけでございますので、特に労働の配分問題にはそれが強く出てまいりますから、これは農業の改良普及関係と十分連携をとりながら農作業の合理化を図っていくと同時に、それが生活に及んでくる面について、生活改善普及員組織を動員して対応していく、いろいろの工夫をこらせばそこで改善できる、それがまた農業生産の発展にもつながる、こういうふうに循環、連関をしておりますので、そういうことを基本に置いて生活改善普及事業を進めてまいりたいと思っております。
  170. 津川武一

    ○津川委員 花嫁さんが足りないという論議が久しく前からされている。私は、農村における若い婦人、未婚の婦人がこの農業者大学に入ったならば、二年間の研修を受けて終わったならば、かなり農村の花嫁として残ると思います。いままで農業後継者対策というと婦人はむしろ疎外される、農業者年金でいくと婦人は道があるのだけれども、疎外されている。この農業者大学では婦人は差別しないでしょうね、この点が一つ。そういう点で、家庭の経済や、いろいろいま局長が話した点で、特別にやはり婦人向けのカリキュラムをやらなければならない。農村に行ってみた。借金のことも出た、土地改良のことも出た、農地拡大のことも出たけれども農村婦人が一番大きな問題にしたのは大根の、野菜の根こぶなんです。婦人には婦人なりのそういう要求があるわけだ。そこいらの要求を中心にしてカリキュラムを組まなければならないと思うわけです。そこで、この農業者大学の中では婦人を絶対に差別しないで、むしろ花嫁不足を解消する意味合いも兼ねて、極端に言うと、一〇〇%婦人ばかりでもいい、ここまでも考えるわけです、そうはいかないでしょうけれども。そこで、そういった家庭管理能力の向上だとか農村の生活環境の改善などというカリキュラムを当然組むべき必要があると思うのです。この点はいかがでございますか。
  171. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生のお話しのとおり、農村の後継者は、婦人であろうと男子であろうと区別はないわけでございます。ただカリキュラムの内容等は、やはり家庭の主婦という立場につくことを期待しつつ研修をするわけでございますから、先生のおっしゃるような項目は当然女子の研修生に対しては必要であるというふうに思っております。具体的には、カリキュラムの内容等を細かにもう少し検討して考えてみたいと思っております。
  172. 津川武一

    ○津川委員 最後に改良普及員仕事ですが、現地の改良普及員は本当によくがんばっています。私も、あの方たちの仕事には感心させられています。特に生活改良普及員、婦人の人たちは本当に寝食を忘れておやりになっている。私のところの弘前の農業改良普及所に行ってみたら、婦人が三人、本当によくやっている。ところが車が足りないんだな。きのうも局長が別の人の質問に話しているけれども、五十四年までに五人に一台なのを三人に一台というわけだけれども、これはかなり早める必要があると思う。生活改良普及員の女の人でも車を運転する人もあるけれども、どちらかというと、免許を持っている人はまだ少ない。そういう点でも車の配慮は特別に必要であって、私は、生活改良普及員の方から先に回せと言うつもりはないけれども、そっちの方に一つの重点がいかなければならないのじゃないか、この点が質問の一つ。  もう一つは、本当に忙しい中でこの改良普及員たちは何をやっているかというと、近代化資金、自創資金、改良資金、稲作転換、こういうものの相談を受けている。これは当然相談に応じればいい。ところが、その手続をさせられている。いま神田委員がはしなくも言っていたでしょう、本来の仕事をさせろと。私たちもその点で法律を見てみた。いまのこの法律の第十四条四項「改良普及員農業改良普及所に属し、直接農民に接して農業又は農民生活の改善に関する科学的技術及び知識の普及指導にあたる。」いま一番改良普及員が困っているものは行政をやらされていること。その行政が自創資金の手続、稲転のための手続。法律はそうじゃない。ここの点が非常に大事になってきて、これは切り離すことができるかというとできないんだな。稲転のいろいろな世話して指導していて、自創資金があると説明して、いざ手続をとったときにその専門家が構わなかったら、これもおかしいもんだ。したがって、法律本来の目的を達成させるとすれば、定数削減はこの点でやっぱりやめなければならぬ。ふやさなければならぬ。現状のままだったら行政を切らなければならぬ。ところが先ほど話したとおり、稲転の説明してこういうことをやりなさいと言っていて、その手続をとらないのもこれまた不親切なんだ。現実に現場に行ってみると、一番の悩みがこれを聞かされる。何とかしてくれというわけなんです。どうしてくれますか。
  173. 堀川春彦

    堀川政府委員 行政と一口に言われましても、いろいろなことがあると思うわけでございます。金融などは、これは借り受け手が本来いろいろ書式の決まっておりますものに書き込みまして、そして出していく。出していく過程で、経営の改善とか将来の作目の選定とかということにかかわって御相談をしたいということで普及員のところに参るのならいいのでございますが、ところが書式は決まっておってもどう書いていいかわからなくて、まごまごして結局普及員の方が手をかすというような形でのことをおっしゃっておられるのではないかと思いますので、そういうことがないとは私は申し上げません。それから稲転のいろいろの事務、これは市町村系統を通じましてやるというような行政のルートを通じてやるのが決まりになっておるわけでございますが、これも転換する作目をどういうものを選んだらいいかということの御相談に応ずるのは、これは私は普及員本来の仕事であり機能であろうというふうに思っておりますので、先生のおっしゃいますお気持ちもわからぬではないわけでございますが、一概に行政ばかりに振り回されておるというふうに断じ去るのもいかがかという面もあるわけでございます。私どもは、できるだけ農家の個々のところを本当に回って、技術なり経営の指導ができるという、先ほど先生のお読みになりました法律の趣旨、こういうものができるだけ完結できるというように、方向として私はそういうことだろうと思います。  そういうことで、定員削減ということはございますが、実際に置く人間を減らすのは、いまでも定員と実員との差はあるわけでございますから、そういうことも考えてできるだけ努力をしてまいる。あるいはまた、機動力整備もさっきお話がございましたが、五十四年と先日申し上げましたのはちょっと年次を間違えておりまして、五十六年が農業関係、五十五年が生活改善関係ということになっておりますが、要するにできるだけ機動力を充実をする等、あるいは普及機材の問題もございます。総体的に普及活動の質が落ちないようにやってまいりたいというように考えております。
  174. 津川武一

    ○津川委員 これで終わりますが、私いつもお世話になっている弘前の普及所は二十人からいる。ここで行政のために一人半から二人くらいとられている。そう多いわけでもないけれども、その上に今度は人員削減なんだな。したがって、いま言われたように本来の行政行政の方にやらして、法律規定どおりに仕事ができるような形に指導も援助もするべし、国政をそこに持っていくことを要求して、質問を終わります。
  175. 今井勇

    ○今井委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会