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佐々木政府委員 本年の二月二十八日から四日間モスクワでイシコフ大臣と鈴木農相との間で一応合意されましたこれからの
交渉の枠組みといいますか筋道についてでございますけれ
ども、要旨を申し上げますと、日ソ両国が日ソ間の長期的な
漁業協定の締結のために早急に
交渉を開始するということと、それからこのような
協定が、
日本側が国会の承認を要し、発効に非常に時間がかかるということから、三月十五日から三十一日までに、一九七七年度についての暫定取り決め締結
交渉をモスクワにおいて行うとともに、同日から東京で日ソ
漁業条約に基づく日ソの
漁業共同
委員会を開催して、サケ・マス、ニシンについてはそちらで審議をするということが大筋でございます。これに基づいて、いままで十五日からモスクワと東京でそれぞれ
交渉を進めてまいったわけでございますけれ
ども、東京
交渉の今日までの経過を御説明いたしますと、資源評価のための科学技術小
委員会及び取り締まりの実施
状況を検討するためのいろいろな
専門家会議が大体終わりまして、二十五日にソ連側の方が、ニシンについては
資源状態が非常に悪いということを強調いたしまして、全面的に自分の方も禁漁するから、
日本側の方も禁漁すべきであるということで、全面禁漁を提案しております。それから、サケ・マスにつきましては、本年の
日本側の漁獲量の割り当てについて、ソ連の二百海里の水域外におきまして、五万七千トンという漁獲量の提案をいたしてきております。一応豊漁年である一昨年の割り当て量が八万七千トンでございましたから、かなり大幅な漁獲減ということ、
資源状態の悪化等を理由にして五万七千トンという数字で示してきておるわけでございます。また
漁船の隻数をクォータに見合って削減をする必要があるということと、それから
操業期間を十五日間短縮しろというような提案をいたしております。これに対してわが方は、サケ・マスについては豊漁年である一九七五年
程度の数字、つまり先ほど申し上げました八万七千トン
程度を下回らない量を、当然いまの
資源状態から見て漁獲し得るはずであるということを主張いたしておりますし、ニシンにつきましても、大体昨年と同
程度の漁獲を継続できるように当然考えるべきだということをわが方から主張して、
両方の
意見が対立したままで
話し合いが事実上一休みしている、休止の状態になっているというのが東京会談の
状況でございます。
それから、モスクワの方で行われております暫定措置につきましての
交渉経過でございますけれ
ども、これは御
指摘のとおり、今日まで大変難航しておるわけでございますけれ
ども、ソ連側の方で主張をいたしておりますのは、わが方のいろんな国会承認に
手続等がかかるということにつきまして、るる事務ペースで説明をしておるわけでございますけれ
ども、その点についてどうもソ連側の方は理解を示そうといたしませんで、ソ連の二百海里水域内でのソ連の主権的な権利の承認あるいは
許可証の発給、取り締まり、裁判管轄権の明示、こういったようなことを初めから今日まで強く主張しているという
状況でございます。この点につきましては、
日本側の理解といたしましては、そういう国会でのいろんな
手続、御審議をいただくというような
関係もあって、一遍に長期
協定ということにすぐには踏み切れないので、暫定取り決めをということを一応合意したというふうに考えておりますけれ
ども、合意文書上、暫定取り決めの
内容は当然事務レベルでの折衝の結果を待つわけでございますから、暫定
交渉の中に何を盛り込むかということまでは、先ほどの大臣間合意の中では明示はされておりません。したがいまして、ソ連側の方の理解と
日本側の理解の違いが、事務レベルの
交渉の中である
程度明確に浮き彫りになってきて、その点についての
交渉が一つの非常に大きな山といいますか、
問題点になっているというのが現状でございます。
それから、わが方の領海の十二海里の
設定後も、三海里から十二海里までの現在のソ連船の
操業実績を認めろということを、
交渉の途中から非常に強くソ連側が主張してまいっております。このこともある
程度鈴木・イシコフ両大臣間の合意の中では、相互の
操業の実績、伝統的な実績を尊重し合うといいますか、そういったようなことは
話し合いの中で出てきておったというふうに聞いておりますけれ
ども、領海の中でいまソ連がやっているマイワシ等の漁を、
日本の領海
設定後も継続して実績として認めろというような具体的な主張は、事務レベルの
段階で出てまいった問題でございまして、これもソ連側の方から言えば、あるいはそれぞれの
操業の実績を認め合うという意味の中で考えておったのだと言えば言えるかもしれませんが、
日本側としては、これは
漁業の
実態から申しましても、また今日こういった外国
漁船との競合を避けるために、領海十二海里の
設定を急がなければならないという事情から考えましても、とうてい容認できないわけで、この点でも
交渉が難航いたしておるわけでございます。こういったことを相互主張しながら、確かに三十一日までに一九七七年の
漁業についての取り決めをやるという目標でやってまいったわけでございますけれ
ども、大変
交渉が難航しておりますが、最後の
段階でまだ現地でも
努力をしているという
状況でございまして、いまの
状況で、きょうじゅうに全体の決着がつくという
見通しは大変乏しくなっているというふうにわれわれのレベルでも判断はいたしておりますけれ
ども、若干四月以降に入り込んでも、ねばり強く
交渉をやるということについて、
話し合いを続けるということは、ソ連側の方も一応原則的には了解をいたしておるというふうな連絡を受けておりますので、今後も若干四月に入っても
交渉を続行したいというふうに考えております。