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1977-03-17 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十七日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    熊谷 義雄君       佐藤  隆君    染谷  誠君       玉沢徳一郎君    中野 四郎君       羽田野忠文君    平泉  渉君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    岡田 利春君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    野村 光雄君       神田  厚君    山原健二郎君       菊池福治郎君  出席政府委員         農林大臣官房技         術審議官    川田 則雄君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         労働省労働基準         局賃金福祉部福         祉課長     中岡 靖忠君         自治省税務局固         定資産税課長  栗田 幸雄君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   津川 武一君     山原健二郎君     ————————————— 三月十六日  卸売市場における野菜保冷施設整備強化に関  する請願井出一太郎紹介)(第一四一六  号)  同(増田甲子七君紹介)(第一五一〇号)  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願(伊藤  茂君紹介)(第一四六一号)  同(松沢俊昭紹介)(第一四六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。
  3. 今井勇

    今井委員 大変時間が制約されておりますので、私は二つの問題について質疑をいたしたいと思います。一つOPPの問題であり、もう一つ飼料安全法に基づく問題であります。  手元にあります書類によりますと、厚生省はごく最近、食品衛生法に基づきましてOPP及びそのナトリウム塩について食品衛生調査会意見を求めることになっております。そこで、このOPPの問題について、私も去る五十年の六月五日、政府に対して質疑をいたしました。そのときに、結論から申しますと、私がこういう質問をしております。「いやしくも国民の間に危惧があり、かつ、その毒性について、単体のみならず複合的なものの場合に、まず解明されていない現状においては、他の新しい防カビ剤等政府みずからが軽々に認めることはないのだというふうに理解をしてよろしゅうございますか。」という質問に対して石丸政府委員は「こういった添加物許可いたします場合に、毒性の面から申し上げますとただいま先生指摘のとおりでございます。さらに、毒性の面以外の点からもこの添加物については考慮しなければならないわけでございまして、その必要性について国民コンセンサスが得られることが必要かと思います。」というふうな明快な答弁をされております。  確かにOPPにつきましては、FAOあるいはWHO国際食品規格委員会におきましてその安全性が評価され、一日の摂取量体重一キログラム当たり一ミリグラムと定められて、ステップ九に進んでいることは私も承知いたしております。しかしながら、このOPPにつきましては、わが国でもその毒性あるいは人間の健康に対する影響にやや不安があるという研究レポートもありますし、特に複合使用の場合の影響あるいは慢性毒生についての検討が私は必ずしも十分尽くされていない、このように思うものであります。  そもそもわれわれが食べる食品につきましては、そういった添加物などを使用しないで自然のままのものを食べるのが本来の姿だろうと私は思うわけでありますが、だんだん文明が進んでまいりまして、時ならぬときに時ならぬ物を食べようという欲求が起こってまいりますと、どうしても腐ることを防ぐようないわゆる添加物か出てくるわけであります。しかし、これは人間が長期にわたって摂取するものでありますから、いやしくもその毒性等について疑わしきものであるならば、これを採用することはわが国国民のために相ならぬ、私はこのように思うものであります。  防カビ剤につきましては、すでに四十六年二月にジフェニルというものが許可になっておりまして、これは化学構造で見ますと今度のOPPと非常に類似なものであります。OPPジフェニルにOHがその核に追加された化学構造式を持っているものでありまして、ジフェニルで用が済むものならば私はそれで十分ではなかろうかという気配すらするわけであります。  そこで、厚生省が見えておりますので、この調査会諮問をされたいきさつ、及び調査会諮問されたからにはいずれ結論が出ると思いますが、どのような経過で、どのくらいの期間をかけて結論を出されるのか、それに対して国内実験研究等は十分になされているのか、この三点について簡潔にお答え願います。
  4. 宮沢香

    宮沢説明員 御説明申し上げます。  御質問にございましたオルトフェニルフェノールと申しますのは、先ほど先生からも説明がありましたが、一九六九年に国際機関であるFAOWHOで評価をいたしまして、一日に体重一キログラム当たり……(今井委員「いいよ、そこは知っているから。簡単にやってくれ、時間がないから。」と呼ぶ)  それでは、そのいきさつでございますが、こういったものについてはすでに世界各国で使われておるわけでございますが、日本では特に国民食品添加物についての安全性関心を持っております。そういうことから特に、これは学問としては熟しておりませんけれどもわが国では遺伝学的な面からもその安全性を尽くさねばならないというように食品衛生調査会で内規がございます。そこで、先生の御指摘のように五十年の四月ごろからアメリカの方から非常に強い要請がございましたが、しかし私どもはあくまでも日本日本の審査で行うから世界で使っておっても遺伝学的なデータはどうしても必要である、そういうようなことを申して今日まで慎重に資料を要求し検討するつもりでまいったわけでございますが、昨年遺伝学データが出まして、十月十六日の日本環境変異学会報告されて、その報告書をまとめたものが昨年の暮れ提出されました。そこで私ども資料がそろったので今日まで整理をしまして、この十五日に諮問をいたしたわけでございます。  今後の進め方でございますが、私どもはただいまこの資料整理しておりまして、これから食品衛生調査会毒性部会添加物部会を招集するため先生方の御都合を伺っておるところでございます。少なくともこの資料について先生方に目を通していただき、そしてその安全性について発がん作用があるかないか、安全量WHOの決めた点に間違いがないかどうか、遺伝学的には問題がないかどうか、そういった点等々についていろいろ御意見をちょうだいいたしまして、最終的には食品衛生調査会常任委員会を開きまして、そこで報告をしていただいてその可否について答申が来ることになっておりますので、いままでの経験からしますと恐らく一カ月以上はかかるのではないかと思っております。  また、国内実験でございますが、これは御存じのように食品衛生調査会はあくまでも公表されたデータできちんと審議をする、こういうことになっておりまして、したがって、この残留農薬研究所で行われました遺伝学実験関係学会等意見も十分経ておりますので、私どもはこういったものをもとにして十分審議を尽くしていただきたいと思っておるわけでございます。
  5. 今井勇

    今井委員 ちょっと聞き漏らしましたが、審議期間は一カ月ですか。
  6. 宮沢香

    宮沢説明員 ええ、一カ月以上かかると思います。
  7. 今井勇

    今井委員 そこで、私もその専門家ではありませんから、必ずしも十分に存じておりませんが、私の仄聞するところでは、これがやはり必ずしも安全ではないというレポート名城大学先生によって究明されておるという報告も聞いております。ただいま、あなたが一九七六年の十月十六日、残留農薬研究所で、研究発表があったということも存じておりますが、そのように学説として大丈夫だというものとやや疑わしいというものがある現状では、科学者としてどちらが正しいのか、冷厳な目でひとつこれをながめる必要があろうと思います。私は、信じたくはありませんが、どうも今度のこのにわかの食品衛生調査会への諮問が、総理が訪米されるというその時期とたまたま符合しておったりするものですから、やや政治的なにおいがあるんじゃなかろうかという巷の声もあります。しかしながら、事国民保健に関することでありますから、そのようなものであってはならないわけでありまして、本当に、科学的に考えて、これが大丈夫なのかどうかということは、純理論的に詰めるべきものであろうと思います。そこにいささかも政治的な配慮があってはならない、かように基本的に思いますが、どう思いますか。
  8. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  第一の名城大学花田先生データでございます。私どもは、昨年の四月に薬学会発表されておりましたので、係員を送りまして、十分その辺の場の空気もつかみ、それから先生からその資料等もいただいてきております。こういう少しでも疑われるようなことがあってはいけないので、この先生資料審議資料として十分慎重に審議をさしていただくことをいま考えておるわけでございます。  もう一つ、政治的なと申されますけれども、私どもは、先ほども申し上げましたように、非常に慎重にいままで資料を集めておりまして、しかも、一番重要であった遺伝学的なデータが昨年の暮れという差し迫ったときにいただいたので、今日まで整理に時間を費やしてしまったということでございまして、私どもは、先生の御指摘になりますように、本当に国民が安全であるというふうに考えられるように、十分審議を尽くして、このものの検討をお願いする予定でしております。
  9. 今井勇

    今井委員 私が非常に細かく言いますのは、実は、サッカリンで非常に不信感を持っているからであります。サッカリンについては、よくあなたは御存じでありましょうが、この歴史を振り返ってみますと、幾多の変遷をいたしております。すなわち、昭和二十三年にサッカリン食品添加物として指定をされまして、多くの食品に使われてきましたが、四十五年に米国で発がん性があるという実験報告が出ましたために、四十八年には一般食品への使用禁止されました。しかし、その後、発がん性サッカリンにまじる不純物によるのではないかという見方が強まりまして、厚生省では、同年十二月に一人一日の摂取量体重一キログラム当たり一ミリグラムの範囲内で使用許可をいたしました。さらに、五十年七月二十五日には、国立衛生試験所動物実験結果では、発がん性は認められなかったとして、使用基準を大幅に緩めまして、WHOと同じく、一日の摂取量体重一キロ当たり五ミリグラムまでにしたことは、あなたも御存じでありましょう。ところが、今月の十日の新聞に報道されておりますのを見ますと、今度は、そのサッカリンが実は危ないんだということであります。すなわち、カナダにおける研究によりますれば、サッカリンがどうも発がん性の疑いがあるんだということでありまして、カナダ政府は九日に三年間にわたる動物実験の結果、サッカリンがんの原因になる危険性がきわめて強いということが実証されたとして、今年七月から食品調味料としてのサッカリン使用禁止、十一月からは食餌療法特別食以外は一切サッカリン生産を中止する。さらに一九七八年十二月からはサッカリンを使ったすべての医療品販売禁止するというふうに新聞では出ております。これを受けまして、アメリカ食品医薬品局では同日サッカリン使用禁止するようなプロポーザルを出そうとしておるわけであります。私はあちらさんの審議の様子はよくわかりませんが、私の調べたところによりますと、プロポーザルをしまして三十日以内に審議が始まりまして、六十日間の意見の聴取をしまして、議会関係者意見を聞いて、さらに三十日後に最終の決定を下すというふうになっておるわけでありますが、この審議の結果どうなるかはわかりませんが、やはりアメリカでも相当このカナダの結果について関心を持ち、自分の国でも直ちにそれに対して対応しようとしておられるわけであります。それに対して一体厚生省はどう考えておられるのかが第一点。  と同時に、このようにサッカリンというふうな、われわれがよく用いる、しかもなじみの深いこういうものが、あるときは使用をよろしいと言い、あるときは使用はだめだと言うというふうに揺れ動くのでは、一体国民は何を信頼していいのかわかりません。しかもそれが日本国政府というりっぱな行政府で、しかも十分な研究体制を整えたところでそのようにされることについて、私は非常に不信感を持っております。  もとより、これは科学の面でありますから、実験の方法が研究されることによっていままでわからなかったことがわかってくる、そういうもののあることは私は承知をいたしておりますが、それにしても、このように短期間の間に行政指導が揺れ動くことは、これは許すべからざるものであると私は思います。これに対してあなたの御意見を聞き、このようなことが今度のOPPの問題で万が一にもあっちゃいけないと、私は強くそう思いますので、見解を求めます。
  10. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  最初、第一点のサッカリンについての厚生省見解という点でございますが、実は以前からカナダでもサッカリンについて実験をやっておるということを私ども聞いておりますし、中途の段階でまだはっきりしたことは言えないというようなことでございましたが、先ほど先生の御指摘のように、この三月の九日にいまのような発表がございまして、私ども早速三月十日に外務省を通じましてアメリカカナダ両国政府に対しまして規制具体的内容、どういう規制をするのかということと、それからその規制の根拠となったデータ、そういったものについて至急送ってほしいというふうに依頼をしてございます。そういった実験データが参りましたときには、学識者がん専門家による慎重な審議をいただきまして、厚生省としてはサッカリンの取り扱いについて慎重に対処していくことを現在予定しております。  それから第二点の、ただいま先生からこういうサッカリン、あるいはサイクラミン酸のときもそうでありましたが、すぐやめたり、外電にうろたえていろいろなことをするということで、非常に国民は不安を持っておるじゃないかということでございますが、これはまことにそのとおりでございまして、私ども大変この点について責任を感じております。  したがって、私どもとしましては衛生試験所も非常に充実してきました。サッカリンにつきましてはもちろん日本でも実験をやりまして、がん原性はないということで、日本データでこういうサッカリンについてWHO基準に戻したというわけでございますし、今後もこういうわが国における研究機関を十分活用しまして、できることならすべてそういったきちんとした資料国民に不安をいささかも感じさせないように添加物安全性については今後とも慎重に対処していく所存でございます。
  11. 今井勇

    今井委員 厚生省のその考え方は、私はよろしいと思います。  念を押しておきますが、こういうものについてはある国がこう言うからこうするというふうな主体性のないことではいけません。日本の国は科学の面でも非常にすぐれた国だと私は自負いたしております。しかも厚生省はみずから国立衛生試験所というりっぱな機関を持っておられるわけでありますから、そういうところにじっくり腰を据えた研究をさせまして、その結果を裏から見、表から見て納得のいく段階において初めて決断をするということでやっていきたいと思いますし、その間に政治の面においていささかもその結果がゆがめられるようなことがあっては相ならぬというふうに、私はかたく信ずるものであります。ひとつ再度あなたの決意を聞いておきたいと思います。どうですか。
  12. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、私ども衛生試験所中心にいたしまして食品添加物等安全性について行政を推進しておるわけでございまして、これからも食品添加物等安全性については十分に慎重にわが国研究機関中心に進めていくつもりでございます。
  13. 今井勇

    今井委員 最後に、この問題につきましては十分な国民コンセンサスが得られるまで、軽々審議会等におきましても結論を出さないよう念を押しておきます。  次に、農林省に伺いますが、いまの添加物の問題に関連をいたしますが、われわれが去る国会で飼料安全法を成立させました。これはねらうところは、薬づけのえさをひとつこの世の中から除こうじゃないか、そうして国民に安心して畜産物等を食べてもらうようにしようという趣旨で、まことに結構な趣旨であります。われわれもその成立に努力をしたものでありますが、その法律が昨年七月に施行されまして、それから半年準備をいたしまして、いよいよ本年一月二十四日から本格的な実施をされております。  ところが、この法律は非常にいいのでありますが、現場生産者の中で幾つかの不安があります。時間の関係で私は二つの問題にしぼって当局見解をただしたいと思いますが、一つは、いままでのようにえさの中に薬が入っておりませんので、どうも最近のえさは育ちが悪い、あるいはいろいろな病気が発生するような気配がある、心配でたまらないという声が飼育農家にたくさんあります。これらに対して農林当局は一体どのように現場に対して指導をしておられるのか、その指導体制が私は十分でないのではないかと思います。きめの細かい指導体制をやらないと、農民諸君はいままではいろいろなものがまじっていたのでそれをやればよかったのでありますが、今度はそうはいかなくなってきているわけですから、農民諸君があなたと同じような十分な知識を持っていればこれは問題ないのですが、必ずしもそうではない。したがって、指導体制が十分でなければ不安を起こすのも当然で、結局はあの法律がなかった方がよかったというふうに思われては法の精神を全く間違うものでありますから、その点がどうなっているかが第一点。  それから第二点は、そういった農民の不安につけ込んだわけではありますまいが、薬屋さんが直接農民に対して薬の売り込みをやっております。いろいろな薬を持ってきて、これはどういうふうにきく、この薬はこういうふうにききますということで、直接売り込みに来ておるようであります。しかも、それが決してばかにならない額でありまして、それらをいろいろ使っておりますと、えさはいまのところ暴騰しておりませんが、そういった薬などを使うと結局高いものになるという農民の不満があります。私は、薬というものは薬事法でやはり獣医さんの指示書がなければ使ってはならないものだと思います。しかし、実際そんなチェックが果たしてできているのだろうか。私の選挙区では獣医さんが必ずしも十分おりません。そういうところではこれは本当に野方図になっているのではなかろうかという心配すらあります。したがって、直接農民に対して薬の使い方、そういうものに対して指導と同時に、いいかげんな薬が出回らないような監視体制、これは一体どうなっておるのか、その二点について当局見解をただしたいと思います。どうですか。
  14. 大場敏彦

    大場政府委員 御指摘になりましたように安全法飼料添加物法的規制になりまして、かなり厳しい規制が課せられているわけであります。それに伴いまして、従来添加物で抑えておった病気が顕在化するおそれがあるということでございまして、私どもその点につきましても非常に気を配っておるわけでありますが、基本的にはいまお話のありましたように薬づけの畜産というような形から脱却いたしまして、やはり薬に余り過度に依存しないような形で家畜を飼う、そういった環境をつくっていくことが基本ではないかと思っておるわけであります。  そういう意味で、五十一年度分から家畜飼養環境を特別に改善する、こういった事業を新規に豚、鶏等の大規模飼養農家に対しまして展開しております。具体的に申し上げますれば、家畜保健衛生所等中心といたしましてそういった農家環境検査をして、その検査結果に基づきまして家畜飼養環境改善のプログラムを作成する。そこで家畜保健衛生所並びに民間の技術者の協力も得まして、家畜飼養農家に対して濃密指導をしていく、こういった事業を展開中であります。さらに五十二年度からは、従来の鶏と豚に加えまして新たに乳雄につきましても対象家畜を増加いたしまして、その充実を図っている、こういった状況であります。  それから、添加物として使用規制されるということになりますと、一方におきましてどうしてもやむを得ないという場合に、たとえば伝染病が非常に急激に蔓延するというような場合には、それでは何も対応策がないかということになりますと、現行法では大部分のものが指定から除外されておりますものにつきましても、薬事法に基づきます要指示薬品として、きわめて限定された形で使用が許容されているという状況であります。しかし、これはいま先生が御指摘になりましたように、獣医師の処方せんだとか、あるいは獣医師指示がなければ販売行為もできないし、使ってはいけないということになっているわけであります。その適正な履行が一番肝心なことでございまして、これにつきましては、県、国にございます薬事監視員というものは二千名であったと思いますが、私どもそういう組織を活用して監視の目を光らせていきたい。従来はそういった点につきまして万全であったかという御指摘がありますれば、率直に申しまして私はまだ不十分であったというふうに思っておりますが、監視の目をできるだけ光らせていきたいと思っているわけであります。それからそういうことでやりながら同時に、先ほど申し上げましたように、そういった薬に頼らないような家畜飼養環境をつくっていくことが基本ではないか。こういった形で両面相まって対応していきたいと思っているわけであります。
  15. 今井勇

    今井委員 いまの方針でおおむねよろしいのですが、大事なことはその方針を実際に実行し、それが徹底をするように行政指導することが実は大事なんで、私が強調したいのはそこなんです。こう考えていますというのはそのとおりなんです。だから、ただ考えておってはいけないので、いままで法律の施行以来ずいぶん準備期間がありました。その準備期間の間に行政指導が浸透していないという感を私は非常に強く持つものでありますから、いまからでも遅くはありませんが、督励をされて、あなた方の考え方がすみずみまで行き渡るようになお一層の御努力を願いたいと同時に、農民にそういった不安を起こさせないような濃密な指導を強力に実施することを要望して、ちょうど時間が参りましたので、私の質問を終わります。
  16. 金子岩三

    金子委員長 片岡清一君。
  17. 片岡清一

    ○片岡委員 私はきょう、農業政策の上における税制の問題について質問をしたいと思います。  これは、いずれも農業政策の基本問題に関することでありますので、本当は大臣がいらっしゃるときにお伺いしたい、こう思ったのですが、きょうは残念ながら大臣がおられません。したがいまして、事務御当局の人たちにお伺いしても、法律でそう決まっているのだからしようがないのだという御返事になると思います。しかし、私がここで要望いたしたいのは、ことに農林省の方々に要望したいのは、農民を本当に愛し、そして農村のために何とか頼りになる農林省になってもらいたい、そして信頼される農林省になってもらいたい、そういう意味から今後諸般の行政にタッチしていただきたいし、これからいろいろの政策を考えられる上においてもそういう面からひとつ働いていただきたい、こう思う一つの要望として聞いていただき、それと同時に現在どうなっているかということについてもお伺いしたいと思うのでございます。  高度成長から低成長へと移りまして、それと同時に農業というものは大いに見直される時代になりました。言い古された言葉ではありますが、農は国のもとだということが再び大きく表舞台で言われるような時代になってきたと思います。時代はまさに資源有限時代だと言われておりまして、この時代においては特に食糧自給というものがまさに国家の運命、大きく言えば国家の安全保障に関する大きな問題だという認識になってきたと存じます。農林大臣が所信表明の中でもそのことをはっきりうたっておられるわけでございます。「経済社会の土台とも言うべき農林水産業の役割りはきわめて重大であり、その健全な発展なくしてわが国の真の繁栄はないと申しても過言ではありません。」ということを言っておられることから見ても、まさに農は国のもとだという考え方だと存ずるのでございます。  ところが、農業というものはもともと非常に弱い産業でございます。第二次、第三次産業に比べまして、第一土地はいわゆる収穫逓減の法則が厳として存在しておるものであり、そうして自然を相手の産業でございますから、私は、この弱い産業に対してはやはり国家が大きな保護政策をとっていくということは当然やむを得ないことだと存ずるし、また必要欠くべからざることだと思うのであります。農業の保護政策というものについてはいろいろな立場がございます。いろいろありますが、大きく分けて三つの行き方があるのではないかというふうに思います。  一つは、保護、助成の政策であります。国費によっていろいろな面から保護、助成をしていく、補助をしていく、こういうやり方が第一のやり方であり、第二は、やはり生産の安定を確保していくという意味で価格政策をとっていく。価格を保障して農村の方たちが安心して物がつくれる、こういう方法、これが第二の大きな方策であると存ずるのでございますが、もう一つ、租税の面から、税制の面から農村を保護する、農業生産というものを保護していく、私はこういうことが大事だと存ずるので、この三つの大きな方策が考えられると思うのでございます。  農林省も大体この三つの方策についていろいろな面から政策を立て、いろいろの施策を講じておられることはよくわかるのです。ところが、国費によるところの補助、助成、この問題については何も問題はないのですが、第二の価格保障の問題になると、これは農民から感謝されるよりもむしろ、農林省はおれたちのつくった物の価格を押えようとしておる、そうして生産費・所得補償方式をとってほしいと思っておってもなかなかとってくれぬというような、これはいろいろな理論があるから一概には言えません。言えませんが、とにかく農民の、農村の立場から言いますと、どうも農林省は自分たちに非常に有利に立ち回るよりは何か価格を押える方に回っておるということで、この面では農林省は農村から決してありがたがられないで、むしろ若干恨まれておるという感じがするのでございます。これは農林省の立場もよくわかりますが、素朴な農村からいうとそういうふうに思われております。  第三番目には、いわゆる税制面からの農業の保護、これが農林省にはいままで非常に欠けておったのではないかというふうに思われます。この面について、私はきょうひとつ農林省見解、あるいはまた今後の考え方、それから現にどういうふうに行われておるか、そういう問題についてお願いしたいのであります。  もともとわが国においては、産業、ことに工業の振興について明治、大正、昭和にかけて国は非常に力を入れてきた。そしてこれには通産省は非常に大きな保護政策をどんどんとってきたと思うのであります。財界、産業界と密着しておるくらいに通産省はいろいろな企業を保護する立場に回っていろいろな政策を立ててきたと思います。その大きなものには、やはり税制面での特別措置、これが非常に大きな役割りを演じてきたと思うのでございます。だから、産業界からは通産省は非常にありがたがられておる、少し癒着していると言われるくらいにまで保護しておる。ところが、農林省はどうもこの面においては余り手厚い保護がない、こういうふうに思うわけでございます。そこで、農民の素朴な願望、また何となく持っておる不平、不満、そういうものを私は平素聞いておりますので、そういう点からの問題提起をして、この税制の問題について若干御意見を承りたい、所信を承りたい、こう思うのでございます。  これは余り強くは言えないかも存じませんが、しかし、素朴な気持ちとしていろいろ言われておること、そういう意味で申すのでありますので、ひとつ率直な気持ちを聞かせていただきたい。  第一の問題は、私のところは富山でございまして、米の単作地帯でございます。したがいまして、麦作、麦をつくらそうと思います、裏作でございます。われわれの小さいときには相当裏作をやっておったのですが、この裏作について農林省は裏作の奨励金を出して保護、助成するという立場をとっておられるのですが、富山では麦の裏作をしますと稲の植え付けが大変おくれるので米の収穫が相当減る、四分の一ぐらい減る。これはちょっと大げさのように聞こえますが、実は、十アール当たり八俵ぐらいのところが六俵ぐらいに減ってしまう、こういうことでございます。そういうことですから、それに対する奨励金が十アール当たり六千円ぐらい出してもらっても、これは余り魅力がないわけでございます。したがって、なかなかその裏作はやろうという人がいない、ここに非常に大きな問題がございます。私は、これなんかも思い切って、麦の裏作については税金を免除するのだというようなくらいの大きな立場をとっていただかぬと、こういう単作地帯における麦の裏作というものはなかなか行われない。麦は九五%まで外国から買っているのだから、何とか少しでもよけい国内産にしたい、こういう願望からすれば、やはりそれくらいな措置をとってもいいのじゃないか、こういうふうに思うのです。大変思い切った言い方かも存じません、乱暴な言い方かも存じませんが、裏作奨励金でなしに免税する、そういうくらいなことに対して、農林省並びに大蔵省はどういうふうな考えを持っておられるか、これをまず承りたいと思います。
  18. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 私ども、麦の生産を伸ばすことが基本的に重要な農政の課題であると考えまして、その方向で努力をしておることは、先生も御案内のとおりと思うわけでございます。この問題を進める上におきまして、一つには価格政策というような問題がございます。それからその他各種奨励施策を拡充強化をするというような問題もございます。  そこで先生は、そういった総合的な施策の一環として、裏作の麦の生産を伸ばすために、麦による所得を免税にせよという御提言でございますが、これについては、先生も御承知のように、かねてからの経過のある話でありまして、麦の生産を奨励するための奨励補助金の問題について、その部分について、いま現在、水田総合利用を進めておりますお米の転換のための奨励金と同様の取り扱いをしたらどうかというような問題が問題となって、それをどうするかということの解決のために、ここ両三年ほどいろいろと苦心が払われてきたわけでございますが、これにつきましても、過日本院を通過をいたしました特別の措置法におきまして、昨年支払われました奨励金につきましても、米の転換の奨励金に限り、従来やっていたものを継続するということに相なったわけでございまして、税制の問題は、やはり税制の制度論としての一つの問題がございますので、先生のおっしゃることも、気持ちとしては理解できないわけではございませんけれども、私どもといたしましては、これらの問題については、参議院の大蔵委員会において大蔵大臣、農林大臣が表明をされましたように、真剣かつ具体的に検討するということにいたしておるわけでございます。
  19. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろ御意見のございました租税の優遇措置でございますが、国がある産業に対して特定の施策を推進する場合の手段といたしましては、御承知のように、歳出面の措置、それから税制面の措置がございますわけでございますが、さらに歳出面の措置に加えて税制面の措置を加えたらどうかという先生の御意見であったように拝聴いたしました。  ただいまの麦の奨励補助金の問題でございますが、そういった観点から、奨励補助金だけじゃなくて税制面の措置を加えたらどうか、優遇措置を講ずべきではないかという御主張が数年来あったわけでございます。ただ、税制の問題につきましては、麦にある優遇措置を設けました場合には、そのほかなたねですとか大豆ですとか、いろいろなものに波及していくという制度的な問題もございますものでございますから、現在までは、麦の奨励補助金は免税措置を講じないということできておるわけでございますが、今後さらに引き続き真剣に検討させていただきたいと考えております。
  20. 片岡清一

    ○片岡委員 大体皆さんのおっしゃることは予想のとおりで、しかもこの問題については、従来のいろいろな行きがかりがあるようでございます。私のように、乱暴な意見かも存じませんが、そういう素朴な——私の方はことに裏作でやるものだから、国のために協力して麦をつくるんだというようなことで、そんなものをつくらぬでもそこらへ働きに出るともっとよけいに取れるんだ、そういうのをがまんして国策に沿おうというときには、どうしてもやはりもう少し国として奨励策を根本的に考えるということをしてもらいたいなあという素朴な農民の声だということをひとつ御了承いただいて、今後の対策に参考にしていただきたい、こう思う次第でございます。  第二番目には、これもいまの規則からなかなかできぬことでございます。しかしまた、いろいろ租税の上でも配慮が重ねられておるようでありますけれども、たとえばその経営移譲を受けた者が農外収入を得るためにいろいろ工場へ働きに行く。そして工場では、その賃金に対してそれぞれ源泉課税をされ、それに応ずる所得税を納めておる。ところが家に残ったおばあちゃんなりあるいはお母ちゃんなりがいわゆる二ちゃん農業で、また自分も帰ってきてから片手間に兼業をやって農家を経営しておる。こういう場合に、そのできたものに対して、賃金の所得とそれから農産物による所得とが総合課税されておる。そして非常に大きなといいますか累進課税で取られておる。これもどうも農村としては納得がいかない。これは手続やその他の点で大変むずかしいようでありますが、たとえばお金持ちの人たちは、預金の利子やあるいは株の配当、これらに対してはみんな総合課税でなしに分離課税でやられているじゃないか。そういうところにえらいえこひいきがある。農村に対して、農村の人たちがとにかく国民の大事な食糧をつくっているのだ、あんたたち、しっかりやってくれえとこう言うのだから、こういうものに対してなら、何かもう少し農産物に対する分離課税といったような制度を、それはいまの税制の建前からできぬだろうが、それをひとつ租税の特別措置として何か考えてもらいたい、こういう素朴な意見もあるわけなんです。これも大変むずかしいことであることは私も知っております。知っておりますが、しかし、農民の声として、そういう声が非常に強力にささやかれておるということもひとつ考えていただきたい。これらについても、時間が余りありませんから、まだほかの問題について例を挙げましてお願いをしたいわけです。後から一緒に御返事をいただくことにいたします。  次は、たとえばビニールハウス、このビニールハウスについても、地方税として一・四%の固定資産税がかけられておる。これはもちろん十分でないビニールハウスについては免除されております。鉄骨や何かでつくられたものについては、これは普通の税金がかけられておる。ところが、これも非常に付加価値の高い工業、生産業である場合に、そこの工場は、同じ坪数でもそこから出る利益は大変大きいのです。ところがビニールハウスに栽培をしておるものは、これはそうもうかるものではありません。やはり自然を相手にしてつくるものでありますから、そんなにもうかるものではありません。ところがそれにもかかわらず同じ固定資産税がかけられるということについて、やはり何となく農村は置き去りにされておる、それでしわ寄せされて、本当に農民をだれよりもだれよりも愛すると言いながら、何も愛していないじゃないか、こういう不平不満があるということであります。これらの問題についてもひとつ農林省の考え方と、それから、これは地方税にも関係しますので、自治省、大蔵省等の考え方を承りたい、こう思う次第です。
  21. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま先生御自身の御質問の中にもありましたように、農業用ハウスにつきましては、そのうちビニールハウスについては、季節的にビニールを取りはずす簡易なものが多うございます。したがって、一般的には固定資産としてはみなされず、課税されておりません。ただ、コンクリートの基礎で固定された大型鉄骨ハウス、それから、これはビニールでございませんでガラス室、こういったある程度資産価値のあるものは、一部の市町村では固定資産税が課税されているという実情にあります。特に最近、施設園芸が普及するにつれまして、経営規模も大きくなって、かなり外見もりっぱなそういう施設ができているということから、だんだん課税の対象となるものが多くなってきているという実情にございます。固定資産税そのものは、当該市町村行政との応益関係に立脚した税制であるというふうに思われますが、私ども農政を担当する立場からいたしますと、農業経営の観点から、税負担の低いことが望ましいということは言うまでもございません。今後ともその負担が施設園芸農家に及ぼす影響を考えながら、必要と認められる場合には、自治省にもお願いをしまして、過重な負担にならないようにできるだけいろいろお計らいをお願いいたしたい、運用面上の問題もあろうかと思いますので、そういうような努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  22. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 ただいま農林省の方からお答えがございましたように、ビニールハウスといわれているもので季節的に取りはずすことが常だといったようなものであれば、一般的には家屋ではないということで課税をいたしておりませんし、ただガラス張りの温室等で、不動産登記の対象になるようなものは、一般的には家屋として課税の対象になるということでございます。それから、家屋とならないもので、いわゆる構築物といたしまして事業の用に供しているものは、償却資産でございまして、課税されるわけでございますが、これも償却資産の免税点が百万円ということでございますから、大規模なものは別といたしまして、通常は課税されないのじゃないかというぐあいに考えているわけでございます。  それで、この課税されるビニールハウスにつきまして、課税の特例を設けてはどうかという御質疑でございますが、現在の固定資産税が土地、家屋、償却資産というものを対象といたしまして課税をするという建前になっておりますので、他の事業用資産との均衡といったような問題等から考えますと、ビニールハウスについてだけ特別の考え方を導入するというのは、なかなか困難な問題ではないだろうか、このように考えているわけでございます。
  23. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 第一点の分離課税の問題でございますが、問題が二つあるのではないかと思います。一つは、兼業農家につきまして、農業所得と農外所得とを分離して課税する制度を導入すべきものであるかどうかという問題と、それから、現在農家につきましては、青色申告をしておる農家は非常に少のうございまして、ほとんど大部分は白色申告でございますけれども、そういう場合に、家族労働の分を分離して課税する制度を設けるべきかどうかという二点の問題がございますが、これらはいずれも所得税の基本にかかわる問題でございまして、なかなか問題も多いわけでございますが、私たちとしましては、今後税務当局とも十分協議をいたしまして、農業者に対する適切な課税について配慮してまいりたいと考えておりますが、問題としては、先生おっしゃるようになかなかむずかしい問題であろうかと思っております。
  24. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 分離課税の問題にお答え申し上げます。  ただいま制度的に分離課税が認められておりますものは、退職所得、それから山林所得でございます。これは、長期間にわたって所得が徐々にできてまいりまして、ある時期に一度に課税される過酷さを救おうというものでございます。それからもう一つは、先生指摘のございました利子配当の分離課税でございますが、これは非常に沿革のあるものでございまして、ただ現在、それが大変な不公平税制であるということで問題になって、総合課税の方に向かおうとしているわけでございます。そういう意味で、ある特定の所得を、先生のおっしゃるように制度の面で分離課税にするというのは、なかなかむずかしい問題ではなかろうかと思いますが、兼業農家の場合の課税の問題につきましては、御主人が官庁に勤めに出ている、奥さんあるいはその御両親が農業に従事している、それを御主人の方に合算して課税するかどうかという認定の問題でございまして、その辺は、現在、税の執行面で比較的弾力的に扱うように配慮いたしております。
  25. 片岡清一

    ○片岡委員 大体皆さん方はそういう御返事しかできないと思います。しかしながら、たとえばビニールハウスに課税するよりは、何十万、何百万という所得のある医師、あれから税金を取ったらいいじゃないか、ああいうものから取らないで、一生懸命汗水たらしてやっているビニールハウスに固定資産税をかけるのはやはり納得がいかぬという素朴な農民の声というものをくんで行政をしていただきたいということを、私は要望するわけでございます。  もう時間がありませんので、最後にトラクターやコンバインの問題についてですが、これも軽自動車税によって道路運送車両法の小型特殊自動車としてコンバインも課税され、そしてこれは特に初めはキャタピラを持っておる自動車として高い方を取られておったのだが、その後これは農耕作業用の自動車として安い方になって、年間一千三百円という地方税でございます。これでございますが、その経緯は私もよく知っておるのですが、これが昨年の九月に、いままでコンバインあたりはほとんど町村で税金を取っていなかったのです。ところが自治省が、それはけしからぬ、あれはちゃんと普通税で取るべきものなんで、取る義務があるのだ、それをほったらかしてあるのはけしからぬ、地方の赤字財政のくせにそういうものを取ってないのはけしからぬと言って、非常に強い通牒が去年の秋に出た。そのために町村もびっくりして課税をするようになった。農民の立場から言うと、何だ、おれたちが一年間にたった一回しか使わぬ、それも四、五日せいぜい一週間、後はみんな納屋の中にあってさびてほったらかしてある、そういうものに対して税金を取るというのは酷じゃないか。これはもうわずかなものですけれども、気分的に——農民を愛すると言いながらちっとも愛していないじゃないか、そういう気分がやはりあるわけでございます。  私は、この税金というものは、これは何かそれ自体財産的価値があるとか、あるいはまた普通の小型自動車であれば、それに乗って非常に便利だ、年がら年じゅう使って便利であるとか、あるいはそれによって道路を損傷する、その損傷した部分を負担させる、そういう意味で税金を取るということならいいのですが、農村のコンバインとかトラクターというものは、一年に一回、一時期しか使わない。しかも今日みんな、そんなものをたくさん買わされて、いわゆる機械貧乏といわれておるわけでございます。ですから、これは決して資産でなくしてむしろマイナスの資産でございます。それなら買わなきゃいいじゃないかと言うのだが、やはり兼業農家で合間合間でやろうとすれば、自分の好きなときに使えるというふうにしたい、こういうことですから、どうしてもやはり買うということになります。そうなると、それが機械貧乏で、それは決して資産でなくして、むしろマイナスの資産である。それから、道路を傷めるというようなことは全然ないので、そういう点から言うても、この課税は非常に無理なように思うのですが、これも法律上それはやむを得ないことでしょうが、将来ひとつこれは考えていただきたい、こういうふうに思いますが、時間もありませんので、簡単に一言……。
  26. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 税制の趣旨や経過は省略いたしますが、私ども、昨年の三月に自治省に対しまして、この問題を取り上げまして農蚕園芸局長名で申し入れました主要な論点は二つあるわけでございます。一つは、自脱型コンバインは、農業の効率的な生産を進める上において必要だから、これは機械化の促進という中でウエートを持って推進する必要のあることであるというのが一点と、二番目は、いま先生もお触れになりましたが、従来認められておりますトラクターなどと比べて農作業上の差異が認められないということ、それから、道路走行回数などにしてみればかえってトラクターよりも少ないであろうということ、そういう二点でございまして、こういう二点を申し入れまして、先生も御案内のように扱いが変わったばかりでございます。ということで、制度の実行上どうやってきたかという問題は、これは実行上の問題でございまして、これについてわれわれがどうこう言うのもおかしいと思いますが、制度問題としては、こういう形で直していただいて農家に有利にしていただいたばかりでもございますし、新たな理屈が何があるかということについてはなかなかむずかしい点がございますが、なお検討を続けていきたいと思います。
  27. 片岡清一

    ○片岡委員 時間が来ましたから、これで終わります。
  28. 金子岩三

    金子委員長 新盛辰雄君。
  29. 新盛辰雄

    ○新盛委員 私は、農業生産体制の強化を含める地域の問題について質問をしてみたいと思います。  わが国の農業は産業としての基盤が脆弱化して、農村は農家と非農家が混在する社会に変化するなど、激しい事態に直面をいたしております。国内の農業生産体制を強化して食糧の自給率を高めることが当面の重要課題となっているときであります。わが国の食糧供給基地を目指す南九州農業の重要性がさらに高まってきております。このために畑地灌漑、圃場整備などの土地基盤整備をさらに強力に推進をしていくことが必要だ、そうした面で二、三質問をしてみたいと思うのです。  すでに本国会では、特殊土じょう地帯災害防除及び振興臨時措置法の期限延長及び対策事業の強化が、南九州特有のボラ、コラ、シラスなどの火山カルデラ、いわゆる火山性地質の中での対策として可決成立を見たことは、われわれとしても、これからの政策を進めていく面できわめて重要であり、その成立を喜んでいるわけであります。  こうした中で、特殊農地保全整備事業、シラス対策事業及び特殊土壌対策事業事業費拡大がさらに強力なものにならなければならないし、また、現在の割り当て事業費では工期が大幅に延びて営農改善の推進が大変困難になっております。そうした面から予算枠を増大することはできないのか、また、今回の予算でどのように見ておられるのか、その面もお伺いをしたいわけであります。  特に、特殊農地保全整備事業として、このシラス対策事業を含め、あるいは特殊土壌対策事業こうした面についての予算のあり方については、さらにその額を拡大するなどして、当面の農業基盤の整備を図る必要があると思います。その面から、特殊農地保全整備事業改善と合わせながら、特にこの関連工事にかかわる部分の補助率を四五%から五〇%に引き上げてほしいという要求がすでに出されているわけでありますが、この四五%を五〇%に引き上げる要求に対して、農林省当局はどういうふうにお考えになっているかをお聞かせいただきたいと思います。  さらに、農業生産基盤の整備についてでありますが、国営及び県営畑地帯の総合土地改良事業として進められてきている鹿児島県薩摩半島南薩地区大規模畑地帯の総合土地改良について、この計画は、御承知のように、薩摩富士と言われる南端の開聞岳に対してできている池田湖の水を、東部、西部、南部に揚水機場、いわゆるポンプを使って揚水し灌漑をするということであります。広大な南薩地帯にファームポンド方式による圧送をして、スプリンクラーをつけて国営の灌漑排水事業を行う、こういうことの中で行われる南薩大規模畑灌事業は、きわめて重要な食糧提供基地としてその完成が急がれなければならない現状であります。しかし、この灌漑事業がいまだに遅々として進んでおりません。土地改良事業の進捗状況の全体の中での問題もあるかと思いますけれども、この目標を達成させるために、現在までの進捗状況、さらにはその経緯、さらに今後どのようにこの問題についてお取り組みになるのか、御質問をいたします。当初の予定は五十三年度が大体完成する目標であったというふうに言われておりますが、いま五十九年度にそのめどを持つというような話もちらほら聞いているわけですけれども、このことについて、その経過、進捗状況、さらにこれからの見通しなどについて、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  30. 森整治

    ○森(整)政府委員 前段の特殊土壌地帯の防災関係、農地保全関係の補助率の問題でございますが、御承知のように、全般の農業基盤整備の事業というのは、一応長期計画十カ年ということで、四十八年から五十七年の十カ年で、予備費を入れまして十三兆円、入れないと十二兆円ということで進めておるわけでございますが、御承知のように、公共事業の抑制が四十九年、五十年と連年ございまして、そこで非常に工期が遅延しておるということは大変申しわけないことだと思っておりますが、五十年の補正以降相当の伸び率を示しております。その中で、来年度は御承知のように一二二・四%、一般公共をはるかに上回る伸び率になっておるわけですが、その中で農地保全につきましては二四・一%アップということで一二四・一%、防災関係については、昨年度の災害もこれあり、相当考えて配慮をいたしておるつもりでございます。  そこで補助率の問題でございますが、工期の遅延化をどうするかという問題がございます。そこで補助率をアップするということは、常に大蔵省には毎年度予算折衝の段階でいろいろ大いに議論をいたすのでございますが、やはり工期短縮の方にとりあえず重点を置いてまいりたいということで、今後の課題にさせていただきたいと存じます。
  31. 新盛辰雄

    ○新盛委員 工期の短縮をやるということなのですけれども、南薩地区の大規模畑地帯の総合土地改良工事、これの進捗状況について、国営のいわゆる畑灌漑の基幹施設であります六千四百四十二ヘクタールに対して百三十四億七千万、そして県営として畑地帯の総合土地改良あるいは区画整理あるいは農道あるいは農地保全、こうしたものに対する七千百七ヘクタール二百五億二千九百万、あるいは畑灌漑の機具購入などによる非補助六千百六十ヘクタールの二億二千万、こうした進捗状況を見てみますと、今日まで国営で三九・三%、県営で一八・四%、計二六・五%という状況で、もうすでに五十三年度がそこに来ているわけでありますが、一向に進まない。いま大幅に一二二・四%今回も予算はつけられたということでありますけれども、さらにこのめどを明確にしていただきたいと思います。
  32. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま先生指摘の南薩地域の土地改良、畑総関係事業について若干申し上げますと、いま御指摘のように、国営の灌排事業では、先生御承知のように、馬渡川の頭首工がすでに完成をいたしております。そこで、大体国営では四〇%の進捗率になっております。畑総関係で県営の事業といたしましては約二〇%ぐらいになっておりますが、国営と県営のそれぞれの事業の進捗度に応じて工事を進めておるのが現状でございます。そこで、五十二年度で国営で東部の排水機場にポンプをすえつけまして、恐らく五十三年には、すでに指宿地区の畑灌施設が二十五ヘクタール完成をいたしておりますので、こちらの方へ通水の試験を行う予定にいたしておるわけでございます。そういうようにそれぞれ南薩地帯では非常に圃場整備の御要望が強いわけですから、そういう御要望を考えながらいろいろ工事を進めておるわけでございます。  そこで今後の見通しということになりますと、五十二年度で国営の事業につけました経費で残工事を割りますと、大体六十年ということに相なるのではないか。ただし、来年の予算でそういうことでございますから、今後の伸び率、畑総関係には相当つけておりますから、そういうことでそれ以前に完了できるようにわれわれとしては極力努力をしてまいりたい。特に南薩地帯では、補正を入れますと五十一年度で十一億の金がついておりまして、これは県営の事業としては全国一に大変金をつけた地区でございます。そういうことで、われわれとしましては、今後とも相当な予算をつけまして、早期の完成を急ぎたいということで努力をさせていただきたいと思います。
  33. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ぜひそうした前向きの姿勢でお取り組みをいただくことを要望して、次に移ります。  漁業振興対策の強化については、すでに御承知のように、二百海里漁業専管水域実施が、米ソ二大国三月一日実施、世界の大勢もまたこれに追従しながら進展をしているようであります。こうした中で目下日ソ漁業交渉が激しく行われているわけでありますが、枕崎、串木野、山川、こうした日本有数の遠洋漁業基地を持っている鹿児島県も、少なからずその影響を受けることは必至であります。現地の声として、いまさら世界の流れに逆らうことはできまい、あるいは入漁料を漁民が負担をしたらもはや破産をしてしまう、強力な水産外交がぜひ必要だ、国はわれわれのことを考えているだろうか、こういう怒りやら要望やら、たくさんのものが出されております。マグロ、カツオを追いかけてタスマニアの諸島に入ったり、オーストラリア、ニュージーランド周辺あるいはミクロネシア諸島などに漁場を求めてうろうろしているわけでありますが、やがてこの二百海里の宣言国となって——いま現にミクロネシアの諸島においても独立しようという動きがあります。もともとこの国は国連の信託統治領として米国の施政下にあるわけでありますが、自主独立の機運が高まって二百海里をもしやったとしたら、これはすっぽりその専管水域に入るわけで、また漁場を失う。あるいはマグロ、カツオは回遊魚であるから規制はないだろう、こういう話もありますけれども、現実こういう回遊魚に対しても規制を行うという動きがあるわけであります。こうした中で安全操業の確保はもちろんでありますが、入漁料を国が払うべきである。日ソ漁業交渉の中でも、特に北転船あるいは北海の方は一生懸命前向きにやっておられるようでありますが、こういういわゆる南の方にかけての政策について、その見通し、そしてこれに対する手だてを国としてどういうふうにしておられるのか。高い入漁料を払って、あるいはミクロネシアにしても、もし専管水域を置くとすれば、代償としてその技術指導や経済援助を求めてくるかもしれない。こういう先行き行政対応策としてどういうふうにお考えになっているのか。そしてまた、この漁場の開発のためにいま業界も一体になって——それこそ水産庁あたりが、勝手に民間が動くなとか、あるいは地域の方でもう背に腹はかえられないのでサイパンやトラック諸島を調査をすればそれに対して差しとめをするとか、そういうような動きがあるわけでありますが、この取り扱いが近々のうちに問題になるわけでありまして、ぜひひとつこれから先の漁場確保、さらに二百海里の世界的な趨勢の中に対応して、年々カツオの一番水揚げをしている枕崎、またマグロを主体にする串木野、こういう関係の個所における漁民の不安は高まってきているし、それに対する対応策を望んでいるわけであります。まずその件について水産庁としてどのようにお考えになっているのか。本来なら農林大臣からこの種の問題についてお答えいただかなければならないのでありますが、まず事務レベルにおけるこれらの問題のとらえ方についてお聞かせをいただきたいと思います。
  34. 岡安誠

    ○岡安政府委員 非常に早い速度で各国が経済水域ないし漁業専管水域を設定するという動きがあるわけでございます。そういう動きの中で、先生指摘のカツオ・マグロ漁業について大幅な規制が行われるのではあるまいかという御懸念だと思いますけれども基本的には私ども二百海里時代の到来ということは認めざるを得ないわけでございまして、その中で強力な漁業外交を展開いたしまして、でき得る限り従来の漁業実績の確保ということに向かいまして全力を傾けたいというふうに思っております。  そこで、具体的にカツオ・マグロについてどういう対策をとるかということでございますけれども、これは先生いま御指摘のとおりでございまして、カツオマグロのように広範囲な海域を回遊する魚種、いわば高度回遊性魚種につきましては、第三次の国連海洋法会議の改定単一草案におきましても、国際委員会がその資源管理を行うというような方向が大体示されているわけでございます。私どももそういうような方向で関係国と交渉を行いながらできるだけカツオ・マグロに対します影響を緩和するように持ってまいりたいというふうに思っております。  また、開発途上国等におきましては、そういう努力のほかに別途漁業協力というものを進めまして、私どもはそういう背景のもとにできるだけ実績が確保できるように努力をいたしたい。御指摘のミクロネシアにおきましても、二百海里漁業専管水域設定の動きがあるわけでございます。  私どもも以上申し述べましたような考え方のもとで交渉をしてまいりたいというふうに思っております。
  35. 新盛辰雄

    ○新盛委員 もう時間が過ぎましたので、ぜひ要望しておきたいのは、御説明のあったように、これは何としても漁民の死活問題でもございますし、これから先の取り扱い方によっては大変なことになるわけです。積極的に、水産外交の面もさることながら、現実に漁民の皆さんが生活の不安に悩まないように、またわれわれたん白質源を必要とする日本人のもう緊急の課題でもあるわけですから、ぜひともひとつ強力な手を打っていただきますように強く要望して終わりたいと思います。
  36. 金子岩三

    金子委員長 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  37. 金子岩三

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。美濃政市君。
  38. 美濃政市

    ○美濃委員 若干の質問をいたしたいと思いますが、まず第一に、てん菜の作付奨励金についてお尋ねをいたしたいと思います。  新しい制度をつくりまして、金額の多寡は別として、てん菜耕作奨励上は制度としてはいい制度ができたと私も思うのですけれども、ただ奨励金を出す要領その他に非常に疑問を持たざるを得ないような点が考えられるのです。私からいろいろの問題を挙げて尋ねる前に、新しい制度でございますから、どういうふうにしてこれを出すのか、それからまた聞くところによると、四万五千ヘクタールという反別が出されておるが、この反別と前年対比三千ヘクタールの反別を増加する、それと奨励金とはどういう関連を持たせて奨励金の交付要領をつくろうとしておるのか。それからまた現在もうすでにペーパーポット等が始まっておりますから、現在の北海道における取りまとめ状況はどうなっておるか。私がそう心配せぬでも四万五千ヘクタール以上つくられて交付金は確実に渡るような情勢にいまのところは大体到達しておるというのであれば、あえてそう心配する必要もありません。どういう状況になっておるか、まずその説明をしていただきたいと思います。
  39. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 先生のお尋ねは、新しく生産振興奨励金を二千三百円出すということに関連してのお尋ねと存じますが、これにつきましてはもう申し上げるまでもなく、昨年の価格決定時における経緯にかんがみまして、私どもが考えております将来に向かってのてん菜生産振興といいますか、生産の増強、こういう基本方向に沿って、近年減退を続けてまいっておりますてん菜生産をさしあたり本年産のものにつきまして伸ばしたい、伸ばすというのを市町村を中心といたします市町村単位の増反型で伸ばしていくという形になった場合において生産奨励金を交付する、こういう基本思想で予算の要求案が組まれ、目下御審議をいただいておるわけでございます。  現在の段階では補助要綱の具体的な細目についてまだ検討中の過程でありまして、詰まり切っておらないわけでございますが、先ほど申しましたように、市町村中心の増反型ということでもって仕組んでおりますので、その基本思想に従ってまず道全体の生産目標をどう見るか、これにつきましてはすでに道庁の方で準備をいたしておりまして、現在の見込みでは末端の農家における意欲もかなり強いということから、さしあたり五十二年度において予算上予定をしております四万五千ヘクタールは達成できるんじゃないか、こういう目途のもとに目下各市町村、農業団体等と市町村別にどういう形にまとめられるかというのを鋭意協議中というふうに聞いております。
  40. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの局長のお話はよくわかりました。ですから、きょうの段階で余り詰めた話をすると、要領を作成するものとのあれで、でき上がっていない要領ですから、きょうの場合は余りはっきりした答弁はできないと思います。  そこでひとつ私の方から要領に対してこういうことを考えでもらいたいという意見を一応申し上げて、検討中だというお話ですから、きょうの場合それに対する答弁は要りません。     〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕  まず第一に、私どもは北海道畑作の輪作計画あるいは寒地農業確立のために、やはり四万五千ヘクタールを一応目標で考えられておる。これから三年間で三千ヘクタールずつ、ことしはさしあたり四万五千、来年は四万八千、三千ヘクタール毎年ふえるわけですから、その次は五万一千です。こういう政策目標を掲げて強く行政的に奨励金をつけててん菜を指導するということについては異議ございません。ただ、余りそれを唯一のノルマ条件にして、それに達しなければ奨励金を交付しないなどということになると、いままで誠意を持って反別から見て相当高い密集度でてん菜の入っている町村が、それ以上何ぼでも労力的に輪作的につくれるかというと、そういう作物でもございませんから、そういう点を十分配慮して、やはり全体でそういう反別の伸びがあれば非常に結構なことでありますし、進める過程において極端に反別の伸びというものを交付条件にきちっと組み入れて、それに達しなければ、今度は奨励金が変じて奨励に対して懲罰的なような役割りを果たすような奨励金というものはどうかと私は思う。たとえば麦にしてもあるいは大豆にしてもあるいは稲転の奨励金にしても、それに達しなければ交付しないという、いわゆる懲罰的条件というものはついていないわけですから、そういう点をひとつ要領をまとめていく上において十分加味ができるように、そういうことにならないように、やはり奨励金が奨励金の役割りを果たして、そしてことしの場合であると四万五千ヘクタール以上、たとえば四万六千ヘクタールなり四万七千ヘクタールなりそれ以上、やはり生産者が本当にそういう制度を理解して、そしてその制度で締めつけて反別を伸ばすというんではなくて、自然的な創意と工夫の中からやはり寒地畑作農業の確立要件の中で反別が伸びていく、しかも国が政策として出した奨励金でありますから、そういう奨励金によってさらにその意欲が高まって、総体的な反別が確保できる、こういう点に重点を置いてもらいたい、こう思うのです。確たる答弁は要らぬですから、そういう考え方でひとつお願いしたい、こう思うのですが……。
  41. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 さしあたり、ことしの生産増強は四万五千ということで考えております。それから先のことは、具体的に面積をどうするということは決まっておりませんが、少なくとも伸ばす方向であることは間違いないわけでありまして、その生産増強、生産面積の拡大を誘導的手法でやりたいということでございますので、先生おっしゃいますように懲罰的と申しますか、そういうことは考えてはおらないわけでございますが、基本思想として増反で伸ばしていくということを市町村中心でやるということでございますので、道全体の四万五千の目標を各市町村単位に、いかに生産動向なり営農条件というものを考慮しながらうまく調整して配分するかということがまず基本の話になろうかと思います。  その辺のところで、先生から御注意ございました点は、道庁も十分念頭に置いて目下鋭意御指導になっているというふうに思いますので、私どもも気をつけてまいりたいと思っております。
  42. 美濃政市

    ○美濃委員 もう一つは、そういう過程で、道は一応四万五千ヘクタールから上限——上限という言葉が適切かどうかわかりませんが、四万六千五百ヘクタールを目標に、北海道の各支庁管内別目標を示していま推進をしておると思うのですが、四万五千ヘクタールを上回った場合、これは予算限度で打ち切るのか、補正して、たとえば四万六千五百ヘクタール、道としての上限目標は四万六千五百ヘクタールで推進しておるわけですが、そういう面積に到達した場合、二千三百円はやはり予算限度で打ち切るのじゃなくて、補正して、その指導目標を上回れば全反別に二千三百円出る、こういうふうに解釈しておって間違いはないかどうか。
  43. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 この問題は、目下関係の予算を御審議いただいてまだ成立を見ない段階でございますから、ちょっと予算の規模を実績においてどうこうするというのも確たる申し上げ方はできないわけでございますが、私どもとしましては、昨年の価格決定来の経緯、それから予算要求のときの考え方からいたしまして、先ほど冒頭に私が申し上げましたような、基本思想に合う、ルールにのっとった要綱ができまして、その要綱に基づいて実施をした結果、反当二千三百円を、面積がふえたから薄めて二千三百円以下にするということは絶対にあり得ないことというふうに考えております。
  44. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは、次に、畜産問題について畜産局長にお尋ねしたいと思います。  最初に、五十一年の加工原料乳の生産状況です。もう今日の段階になれば五十二年度価格を決定しなければならぬ段階に来ておりますから、大体確定に近い、三月三十一日はまだ入っておりませんけれども、いまのところ限度数量の百三十八万トンからどのぐらいオーバーする見込みであるか、お尋ねいたします。
  45. 大場敏彦

    大場政府委員 本年度に入りましての、現在、一月までの生乳の生産は、対前年比一〇七・一%の伸びであります。それから一方、飲用牛乳の伸びが一〇一・九%でございますから、両方とも伸びてはおりますが、ギャップが出ている、そういう状況でございまして、加工原料乳の発生が非常にふえているという状況でございます。  現在の見通しといたしましては、まだ確定的なことはもちろん申し上げられませんけれども、百三十八万トンという年度当初に設定いたしました限度数量に対しまして、十四万トンないしは十五万トンぐらいはオーバーするのではなかろうかと見通しております。
  46. 美濃政市

    ○美濃委員 このオーバー分について、これはやはり加工原料乳は保証価格ですから、不足払いが、いわゆる補給金が伴いませんと、約一カ月で総体ではこれだけの量になる、大体三月乳代というものは基準取引価格で打ち切られてしまう、補給金は三月の加工原料乳代には伴わないという状態に大体なると思うのです。あるいは二月分にも多少食い込むかもしれない。十五万トンというと二月分にも食い込むと思うのです。これに対していまどういう措置をお考えになっておるか。
  47. 大場敏彦

    大場政府委員 加工原料乳の限度数量は、やはりこの不足払い制度の趣旨が、財政負担をかなり巨額にいたしまして、そして生乳の安定的な生産の拡大を図っていこう、こういった趣旨に基づくものから発しているわけでありまして、言うなればそのときそのときの需給事情に即応いたしました合理的な生産の指標というものを生産者に与える、生産者側はその指標に従っていろいろ生産の調整をしていただく、こういう意味で設定してあるわけでありますから、限度数量をオーバーしたからといって直ちに限度数量を改定するということにはつながらないと思うわけであります。  しかし、実際問題として限度数量をオーバーする分が発生していることは事実でございますから、これを放置しておきますれば、やはり酪農経営に及ぼす影響ということもいろいろ考えなければならないという点がございますので、これを何らかの形で対策を講じたいということで、これは大臣からの指示も受けております。受けておりますが、いま財政当局と折衝中で、できるだけ早く結論を得たい、こういうふうな努力をしているところであります。
  48. 美濃政市

    ○美濃委員 合理的な生産の指標というのはだれがつくるのですか。それからまた、合理的な生産の指標というものに問題があるのではないか。五十二年度問題ともこれは絡んできますが、こういうふうに切れないように指標をつくらなければならぬと思うのです。たとえばその指標というものが全く正しいので、それをオーバーしたということは何か悪いことなのか、それとも生産の指標が低い、現実の把握が不十分で限度数量を加工原料乳の生産がオーバーするということ、これは飲用乳の需給見込みとの関係も出てくると思いますけれども、そこらの関連はどうお考えになっておるのか、お尋ねしておきたいと思います。
  49. 大場敏彦

    大場政府委員 限度数量をオーバーしたこと自身が悪いとかいいとか、そういうことの批判は私は差し控えたいと思います。それぞれ酪農家の方々が意欲を燃やして生産に励まれた結果だと思うわけでありますけれども、しかし、不足払い制度の趣旨が本来的にはやはり市乳化の促進ということにあるわけでありまして、市乳化促進を進める意味で加工限度数量というものを農林大臣が毎年度当初に設定するというようなことに決めてあるわけであります。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、やはり原則として限度数量というものは守っていただく、その枠内で加工原料乳の不足払いをする、あるいはもう少し詰めて言えば、その枠内であっても、できるならば加工原料乳の方に回らないで市乳化の促進の方へ回る、そういった形が望ましいわけでありますが、そういうような形で過去限度数量を決めてあるわけであります。  当初の需給見通しが違ったではないかという御指摘が次にございました。そういう御指摘を受ければ私どもそのとおりだろうと思うわけであります。先ほど申し上げましたように生産が非常に伸びておる。北海道の例を申し上げて恐縮でございますが、最近の十二月とか一月の例で言いますと、前の年に比べまして一八%も伸びておる、こういう状況でございますから、われわれの想像をした以上に、あるいは政府だけではございませんで一般の方々も含めてだろうと私は思うわけでありますけれども、想像した以上に生産が非常に伸びたということ。それから、確かに飲用牛乳の消費は伸びてはおりますけれども、それに比べましては伸びが足りないというところから出たわけでありまして、見込みが違ったと言えば、それは客観的事実としてはそのとおりであろうと思うわけであります。
  50. 美濃政市

    ○美濃委員 いまちょっと局長から異なことを承ったと思うのですが、この加工原料乳補給金法をつくったとき、これはやはりいわゆる日本の酪農を安定的に発展をさして、加工原料乳と飲用乳と両方生産自給を図るという趣旨で、加工原料乳地帯に消費の実態、実情と生産との関係から不足払い補給金制度を設けて酪農振興を図るという趣旨でつくったと思うのですね。市乳化を促進するために補給金をつくったというふうに聞こえたのですが、私どもは加工原料乳補給金というものは市乳化促進のための補給金だというふうには解釈してない。どうでしょうか、私の聞き違いでしょうか。そういうふうにいまお話があったと思うのです。
  51. 大場敏彦

    大場政府委員 不足払い制度は、法律の名前が暫定措置法というぐあいについておりますように暫定的な制度というふうに私どもは理解しております。その暫定的な制度という意味の一つとして、この細長い日本列島というのは、南と北は加工原料乳地帯になっている、市乳化の波に洗われていない。しかしこれはいずれば市乳化の波に洗われていくであろう、そういう市乳化の波に洗われていくことを期待している。しかし現実には、たとえば北海道を例にとってみますれば、生乳生産の本拠地であるにもかかわらずそれを販売する条件——なかなか市乳化が進まないという意味で販売条件、マーケットとしての不利が現実に存在する。いずれは北海道も市乳化の波に洗われていくわけでありますけれども、それまでの間という意味で暫定的であると私は理解しているわけであります。マーケット上の不利を補ってそこにおける生乳の再生産を確保するためにこの不足払い制度を創設したというのが暫定の一つ趣旨だったというふうに私どもは理解しておるわけであります。
  52. 美濃政市

    ○美濃委員 じゃ加工原料乳はどうするのですか。そういうふうに考えると、将来の展望は、乳製品というものは輸入に依存するのだということなんですか。
  53. 大場敏彦

    大場政府委員 四十一年にこの制度が創設されましたときに、実はそこでの議論が十分であったかどうか、乳製品の自給の問題がどういう議論になっておったか、どうも私はその点はまだ必ずしもはっきりしてなかったのじゃないか。そこにみんなのコンセンサスがあったかどうかは私もちょっと確信を持って言えないような状況であります。  もちろん現時点におきまして、私ども乳製品も自給化の方向に持っていきたい。現実に六十年見通しにおいても飲用乳は完全に国内自給する、それから乳製品につきましてもできるだけ自給度を高めていく、こういう見通しを立てておるわけでありますから、全体として自給力を高めてその不足分を海外に依存する、こういう考え方に立っておるわけであります。  しかし、それはそれといたしましても、やはり基本といたしまして政策のプライオリティーをどこへ置くかということになりますれば、それは農家の側からいたしましても、飲用乳に振り向ける場合の農家が得る対価と言いますか、そういうものと加工原料乳と比べますと、飲用乳、市乳化に向けた方がはるかに得、有利であります。それからまた、全体として需要が伸びておるにもかかわらず内地の方に乳が現実のものとして足りない、そういったことからすれば、市乳化を促進するというところに政策の大きなウエートを置いて進めていくということは当然であろうと思うわけであります。
  54. 美濃政市

    ○美濃委員 現時点では市乳が余り伸びませんね。市乳化を促進すると言っても、市乳、飲用乳というものが現実には伸びない、いまこういう現象を示しておると思うのですが、いま局長の言った——私が議会へ出てきた年にこの法案をつくったのですが、そのときの速記録があるのです。そういう加工原料乳補給金はいわゆる市乳化、飲用乳化を促進する手段なんだと、当時の畜産局長はそういうことを言っておりません。  私どもはやはり日本における酪農というものは、乳製品と飲用乳と両方の需要量を確保するという基本政策でなければならぬと思うのです。その中からいま言った市乳に比較してマーケットの問題、あるいはそういう格差が出てきておるからその格差を全部——たとえば輸入品と比較した市乳、市場の実勢価格で加工原料乳あるいは乳製品をつくるということは、日本の酪農がまだこれをつくった当時の規模は小さいし、将来、乳製品と飲用乳両方を自給する、その生産確保を図るために加工原料乳補給金法というものをつくり、もちろん暫定措置法でありますけれども、そういう目的達成のために補給金を出すというふうに私どもは決めたと思うのですよ。これは全く市乳化の促進の手段だ、もちろんそれは商品の流通でありますから、加工原料乳地域から市乳、飲用乳の消費量が伸びて飲用乳化されていくということを阻止しようとかそれはいけないとか言うのじゃなくて、自然条件でそういう変化現象が起きることは当然であるけれども、そういう現象が起きればさらに生産を増強して両面の自給を確保する、これがやはりこの制度のねらいだと私は思うのです。加工原料乳補給金というものは原則として市乳化促進の手段だ、これは私としてはきょう初めて聞いた話で、そういう考え方はどうかと思うのですが……。
  55. 大場敏彦

    大場政府委員 暫定措置法の暫定という意味は実は二つあると私は理解しております。  一つは、日本の酪農がまだ基盤が弱い、いろいろ国際的な競争力もまだ非常に弱い、そういう意味でこれを何らのてこ入れなしに放置しておくことは実際問題として存立はむずかしい。しかし日本の酪農も急速に経営合理化、進歩の過程にあるわけでありますから、やがては国際競争力がついてくるだろう、それまでの間という暫定措置という意味が一つあったと思います。  それからもう一つは、先ほどの繰り返しになるわけでありますけれども、現在は相当部分が加工原料乳に回っている生乳の生産地帯がある。しかしこれもやがては市乳化の方にいくだろう。しかしそれまでの間、市乳化の方へ回そうとしても、現実に飲用乳の需要が伸びない限りそういったマーケットは形成されておりません。といってそれをそのまま放置しておけばその生産の維持というものは非常にむずかしい状態になるという意味で、市乳化を促進する一方、それまで原料乳自体が持っている価格条件の不利というものを補うという意味で、再生産を確保するという意味で不足払い制度がしかれている、そういうような暫定的な意味と二通りあったというふうに私どもは理解しているわけであります。
  56. 美濃政市

    ○美濃委員 この論争を続けておると、これは平行線になると思いますから、いずれ私自身ももっと検討して……。  そういうことで市乳化促進の手段が主たる目的であるとするならば、やはり加工原料乳、すなわち乳製品の確保は政策上放棄した形になりますから、その関連をもうちょっとはっきり言ってくれませんか。市乳化促進とそれから加工原料乳の確保、これは大切なことですね、乳製品の消費があるわけですから。これは市乳化促進と言ってしまうと、全部を市乳化するということに通じますから、私はそういう——現時点では市乳化促進と言ってみても、現時点の消費の実態というものは、それは多少加工原料乳地帯で飲用乳の消費量が伸びておりますけれども、ことしの現実から見ても、結局皆さん方が、農林当局が合理的な生産の指標としてつくった百三十八万トンは、いま言ったように一カ月分以上生産が上回る、こういう実績が出てくるわけですから、そういうものに対してもやはり、上回ったのだから不足払いは払えないのだというのじゃなくて、原則から言えば、私は限度数量を改定して不足払いとして払っていくように制度改正が必要である、こういうように考えるわけです。だから二つに分けて、一つはそうしたら将来、いまの加工原料乳地帯の牛乳を市乳化促進一本というのは私はおかしいと思うのです。それは飲用乳地帯は農業生産の立地条件から余り生乳が伸びない、飲用乳が伸びる分は比較的酪農に条件のいい加工原料乳地帯から——どうしても切れれば補充するという考え方は私は異議がございませんけれども、もう一つは、やはり乳製品を確保する、食糧自給というたてまえから確保する、この両面でなければならぬと思うのですね。  それと、いわゆるもう一回お伺いしたいのは、合理的な生産指標というもの、これをもっと明確にしてもらいませんと、やはり責任の分野になり、あるいはただ思いつきで指標というものがつくられて、そうして限度数量をオーバーしたのは合理的な生産の指標を上回ったのだから、限度数量の改定はできません、それじゃ余りにも法律、制度と行政の姿勢とが伴っていないのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  57. 大場敏彦

    大場政府委員 繰り返しになるわけでありますが、この制度は国の財政負担を通じまして生乳生産が需要に見合ったような形で安定的に拡大していくということを促進しようという制度でありまして、その一つの手段として合理的な供給の指標というものを設定して、それに応じて生産者生産もペースを合わしていただく、こういったことから出てきているわけであります。そういうことによりまして市乳化を促進するという意味があるんじゃないかと私は思っておるわけであります。  そこで、それじゃ加工原料乳から生産される乳製品の供給というものを何も一切考慮しないのかということでは決してございませんで、それはもちろん考慮する必要はあると思うわけでありますが、限度数量を現在の時点において直ちに——私は絶対改定しないということを申し上げているわけじゃなくて、現在の時点でこれを改定することが果たして妥当であるかどうかという判断になりますれば、やはりこれは限度数量を現在の時点においては改定するのは適当ではないというふうに思っておるわけであります。  具体的に申し上げますれば、乳製品の生産が非常に著増しておりまして、結局生乳の生産が増加し、飲用乳に回る量がそれほどは伸びていないということでございますから、加工原料乳の方に回る量が多く乳製品も増加しておる。これから乳製品の現実の荷動きというものもほとんど少なくなってきておりまして、生産されるものは在庫という形で非常にふえているというようなことでございますから、また市況も急速に悪化している、こういう状況でありますから、限度数量を直ちに改定して生産を刺激するというような、現在の時点においてはそういう需給環境ではないのじゃないか、こういう意味で申し上げているわけであります。  それから、限度数量をそれじゃ一切固定的に考えるのかということを農林省は考えているのかという御指摘があるいはおありかもしれませんが、必ずしもそれは固定的に考える必要はない。その年その年、毎年当初におきまして、その年の需給事情というものを見通して、そしてことしは幾ら、来年は幾らというぐあいに設定していくということがルールじゃないかと思っておるわけであります。そのときに前年とイコールである、あるいは前年より減るとか、そういうことを必ずしも固定的に考え、固定観念を持つ必要はないと私どもは思っているわけであります。
  58. 美濃政市

    ○美濃委員 それで、五十一年度の限度数量のオーバー分ですが、これは何か別途考えるというふうなことなんですが、それは具体的にはどういうふうにお考えになっていくのですか。
  59. 大場敏彦

    大場政府委員 私どもが実は検討して大蔵省と折衝しているという事柄でございますが、実は昭和四十三年に限度数量がやはりオーバーした例がございます。八万トン弱ばかりオーバーしたということでございますが、そのときには畜産振興事業団の助成勘定から指定助成事業という形でそのオーバー分に対して助成をした、こういった例がございます。そういった例を踏まえまして本年度におきましてもそういったものにならったような措置がとれないか、とるべきであるという形で現在財政当局と折衝して、できるだけ早く結論を得たい、前向きの努力はしている最中であります。
  60. 美濃政市

    ○美濃委員 これは限度数量のオーバー分にそういう助成勘定から形は変わっても該当する措置が行われる、このように解釈してよろしゅうございますか。
  61. 大場敏彦

    大場政府委員 四十三年の例は、ちょっと単価は忘れましたけれども、八万トンオーバーした数量に、その当時の不足払いの単価がありましたが、その単価を掛けた金額を助成勘定から交付した、こういうような形になっておりますので、それにならったような形で大蔵省といま折衝しているところであります。  参考までに申し上げますれば、仮に十五万トンと数字を置きますと、いま限度数量の不足払いの単価が、先生御存じですが、キログラム当たり二十四円七銭でありますから、それを掛けますと、三十六億というようなことになるわけであります。
  62. 美濃政市

    ○美濃委員 わかりました。  次に、五十二年度の限度数量ですね、これはいま、保証価格から全部やっておると思う。価格上の問題なんかは、私は時間の関係でそこまで行きませんので、あと島田委員質問する予定になっておりますから、そういう点に質問が及ぶと思いますが、私は限度数量と負債整理、これだけで、きょうは決められた時間いっぱいになってしまうと思うのです。  そこで、五十二年度の限度数量については、やはりいわゆる合理的な生産指標として加工原料乳になる全量を一応把握して限度数量を表示する。それは飲用乳との需給関係もございますから、結果は申し上げるまでもなく過去においてはお話のとおり不足した年もあるし、若干限度量が余った年もあるわけです。それは結果ですから、それをはっきり責任を負えと言ったのでは何人もこれはできないと思います。ですけれども、やはり年度当初において合理的な生産の指標というものは、加工原料乳の限度について必要量を一応把握して限度量として表示する、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。結果については余る結果が出ることもあるし、足らぬ結果も出ることがある。それを設定する目標はやはり必要量を把握して、その時点においては必要量の全量を把握して指標とする、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  63. 大場敏彦

    大場政府委員 五十二年度の限度数量をどうするかというのは、実は私もまだ具体的な数字の心証はありませんが、考え方としてはいま美濃先生がおっしゃったやり方ではじく、そういうことがルールであろうと思っております。
  64. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、前年の保証乳価を決定したとき、酪農は規模拡大によってかなり高額な固定負債がある、固定負債というよりも高額な設備投資負債が増加して、それが経営を非常に圧迫しておるから、酪農経営安定のためにそれを制度資金によって救済するということが一応価格決定の附帯条件になっているわけですね。その後、加工原料乳地帯、都道府県、まあ都はありませんが、府県に実態調査が去年行われた。その結果どのくらいの金額がまとまって、いまの時点でどういう措置がとられようとしておるか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  65. 大場敏彦

    大場政府委員 御指摘のように北海道とそれから内地の数県で実態調査、どの程度の負債があり、どの程度の重みを経営に与えているかというようなことを調査しております。これは悉皆調査でありません、サンプル的なものでありますから、数量についてどうだということはまだいまのところちょっと手持ちに数字がございませんので、後刻資料を差し上げることでお許しを願えればと思っておりますが、いずれにいたしましてもその調査結果をもとにいたしましてこの負債整理といいますか、負債が酪農経営に与えている経営圧迫要因にかなりなっているわけでありますから、それを除去するための何らかの措置をとるべく、これもいま大蔵省に折衝中であります。できるだけ今月末までには結論を得て酪農家の方々にお示ししたいと思っておるわけであります。
  66. 美濃政市

    ○美濃委員 財政当局に折衝中ということでございますから、その折衝の細かい問題はよろしゅうございます。折衝の基本、やはり新しい酪農経営安定化のそういう負債を借りかえる資金制度、これはいろいろ方法があるわけです。政府資金の肩がわりで要請しておるのか、基本はどういうスケールで財政当局とお話し合いになっておるか。現時点では交渉中だということですから、いまここで公表できる範囲でよろしゅうございます。余り無理なことを聞いて、かえって交渉に水を差すようなことになってもという配慮もございますから。それは言えると思いますので、どういう基本方針で財政当局と話に入っておるのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  67. 大場敏彦

    大場政府委員 結局、負債の実態を分析いたしますと、酪農家は、当然規模拡大の過程で畜舎だとかあるいは家畜の導入だとかいうような設備投資がございますからそれを制度資金でかなりの金を借りている。それからまた制度資金では足りない部分を農協から借りている。こういうのは、これは先生がよく御存じなわけですね。  それで、制度資金の償還期に入っている場合には、それを今度は農協からの証書貸付で借りているというような例もあります。だから農協側の金利がかなり実際問題として北海道の場合高うございますから、それがかなり、その利子負担が経営圧迫要因になっているというのではないかと思っております。それを何らかの形で解決するという方向で折衝中でありますが、具体的には金利の資金を酪農家の方々に供給するということで対応したらどうかという形で折衝中であります。
  68. 美濃政市

    ○美濃委員 それではいま負債整理の問題、もっと次の機会に、もう少し推移したときにお伺いしたいと思います。  あともう少し畜産関係質問を続けたいと思いましたけれども、あと五分で別の話に入っても要を得ませんので、時間を残しまして、これはちょっと委員長にお願いいたしますが、島田委員の方に五分時間を残しますから、島田委員の時間を五分多くする、こういうことでお願いしたいと思います。  終わります。
  69. 金子岩三

    金子委員長 野坂浩賢君。
  70. 野坂浩賢

    ○野坂委員 米の生産調整の問題に関連をして、長官及びその他の方々にお尋ねをします。  五十二年度に九十万トンの米の生産調整をやるということでありますが、小麦の輸入はやあ五百万トンとか五百十六万トンとか五百五十万トンとかいろいろ言われております。麦類に関連をして、正確にどれだけどこから五十一年度は輸入をし、五十二年度の見通しも含めて御説明をまず最初にいただきたいと思います。
  71. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  米の生産調整との関係でございますので主食用の小麦が中心になると思いますが、これにつきましてはおおむね総量といたしまして五百三十万トン、うち三百万トンはアメリカから、百三十万トンはカナダから、オーストラリアから残りの百万トンという従来の輸入実績に基づいて輸入を計画しております。
  72. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いや、大麦とか裸麦、全部言ってく、ださい。
  73. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 ただいま主食用の小麦についての数字でございますが、そのほかにふすま増産用の小麦は約百二十万トン前後、それから大麦は主として飼料用でございますが、これが百十五ないし百二十、それから主食用の大麦は三十万トン。大麦は先生御案内のとおりカナダ及び豪州でございまして、その二国に限られております。
  74. 野坂浩賢

    ○野坂委員 国民の嗜好に基づいて、それぞれに輸入をされるわけでありますが、わが国の食糧の自給率を高めるためにも、麦作に力点を置いていらっしゃることも承知をいたしております。しかし、これだけ入っておるわけでありますから、国内消費需要という意味で、ことしはこの輸入麦はどういう経路をたどるであろうか、そして米は昨年と比べてどのように上昇するであろうか。米の消費拡大については、相当予算も盛って、これから努力をされるわけでありますから、それらの中身をお話しいただきたい。
  75. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  麦は、食糧庁が、輸入麦について、内麦ももちろん含めますが、需給計画を立てて一元的に輸入しておるわけでございます。考え方といたしましては、需給上必要なものを入れるのは当然でございますが、最近の傾向を見ますと、麦製品の原麦換算の消費量は一人当たり約三十一キロで、ほとんど横ばいでございます。人口増並びに飼料用の増がございまして、輸入量は若干、一、二%の増加になるのではないかと考えております。  他方、お話しの米につきましては、端的に申し上げますと、われわれとしては、潜在的な生産力は千三百万トン、これに対して総需要を千二百十万トンと見て、いま先生お話しのように、九十万トンの生産調整をいたすことになっております。それでは個々の消費量の動向いかんというお話のようでございますが、端的に申し上げますと、やや昔にさかのぼって恐縮でございますが、昭和三十七年の一人当たり百十八キロ、これが最高でございました。その後、食生活の大幅な変化、すなわちでん粉質食糧が減り、畜産物その他の消費がふえるという形で、四十五年くらいまでは年間三キロぐらいの低下でございました。その後、その減退の傾向がやや減りどまりまして、最近の時点においては、一人当たりの消費量は一キロないし一・五キロという程度にやや減りどまってきておるというのが実情でございます。もちろん人口増加がございますので、先ほど申し上げましたように、総体の需要量は千二百万トンないし千二百十万トンと判断しております。  さて、先生のお話は、消費拡大の成果いかんということでございますが、この点につきましては、しばしば当委員会等においても申し上げておりますように、直接の消費拡大としては、たとえば学校給食、これは週二回を目途にして米飯の本格導入を実施いたしまして、五十一年度は総量を一万一千トンぐらいに予定しておりましたが、五十二年度は二万二千トン以上給食用の米の需要があるものと判断して予算にも計上しております。その他の消費拡大につきましては、やはり米の内外の食糧情勢とか今後の食生活のあり方に関連して、基本的主食としての米の見通しということから逐次その消費を拡大するという考えでございまして、われわれといたしましては、消費拡大の成果が五十二年度単年度で一人当たりどのくらいあるか、あるいは全体としてどうかというようなお話につきましては、実はお答え申し上げることができないわけでございます。  なお、御必要がございますれば、消費拡大に対する施策の内容とか予算措置等についても申し上げるわけでございますけれども、直接先生のお尋ねに対してお答え申し上げたわけでございます。
  76. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この間もいろいろ議論したのですけれども、役所というのは、できてもできなくても、数字がなければ予算の裏づけができませんから、消費の拡大というかっこうで予算もついておりますし、ある程度の展望が開けなければならぬ。六十年にはこれだけ米をつくるのだ、十アール当たりはこれだけなのだということがあなたから出されたものに書いてありますね。そういうことであれば、消費の拡大と相まって生産調整が考えられてくるわけですから、去年の実績で生産調整はこうだというようなことではやはり議論にはならぬのじゃないでしょうか。だから、五十二年度、五十三年度、そういう展望がなければならない。むやみやたらに国の税金を使うことはできぬわけですから、一応の計画があるはずでしょう。それを出してください。
  77. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 消費拡大につきましては、米の基本的主食としての見直しから、御案内のとおり、昨年から生産者団体、消費者団体あるいは配給団体、それに農林省で、米の消費拡大推進ということで取り上げたわけでございます。その場合におきましても、これは米に対する見直しの浸透ということでございまして、量としてこれをどの程度見込むかということについての的確な数字を計量的に申し上げることはなかなか困難かと思いますが、五十二年度の千二百十万トンという需要量等についても、それらの努力を相当加味して需要量を確保いたしたいということでございます。
  78. 野坂浩賢

    ○野坂委員 昨年とどれだけ違うのですか。
  79. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 昨年の全体需給は、やはり千三百万トンに対して千二百十万トンということでございます。
  80. 野坂浩賢

    ○野坂委員 同じじゃないですか。見直しをして需要の拡大を図るというようなことを言って、去年と同じことじゃないですか。何があるのですか。
  81. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 先ほど、一人当たりの米の消費、パーヘッドの消費の数量の動向を申し上げましたが、残念ながら、かつてのような急激な減り方ではございませんけれども、一人当たりの消費量が一キロないし一・五キロ減っておる。その中で、消費の拡大の努力によって全体的な需要量を確保するということでございます。
  82. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いつまでも議論したってしようがないですけれども人間はふえるわけですからね。一・五キロでそれがとまれば、これは拡大になるわけです。あなたは何でも計数が確かで、計画を立てられるのですけれども、去年と一緒だということはやはり努力が足りぬのじゃないか。食生活の拡大、消費の拡大の浸透を図ると言うだけで、いまのような観念的、抽象的な御答弁では食糧庁長官に似つかわしくないことですから、十分計画を立て、その目標に向かって努力をされることが望ましいと思うのであります。  しかし、一方、生産者側は、いいかげんだと言うと大変失礼でありますが、そういう消費の拡大は数字としてはあらわれていない、こういう中で九十万トンの生産調整を受けなければならぬ。いま農家の皆さんは、やはり米が一番中心です。あなた方から出された統計を見ても、三三・六%ですか、それだけは米だ。農業所得の中で一番率が高いという関係になっております。そういう意味で、この九十万トンは面積では十九万五千ヘクタール減にするわけですね。去年の実績は十七万一千ヘクタールであったと理解しておりますが、これは自主的に政策を誘導して稲作の転換を図っていくというもので、いわゆる天下り的に強制をするものではないと考えております。  これは農林経済局長でしょうか、お互いに関連がありますから、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  83. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 お答えを申し上げます。  五十一年度からスタートいたしました水田総合利用の政策の中で、米の生産の転換の目標面積は、先生のおっしゃったとおり十九万五千ヘクタールでございます。それに対しまして実績は十七万七千ヘクタール、定着分を引いて計算いたしますと十七万一千ということになるわけでございますが、一応十七万七千の実績というものは上がったというか、目標に対しまして九一%の達成率でしがなかった、こういうことになるわけでございます。五十二年度はその第二年目を迎えるわけでございますが、この水田総合利用の政策は、国として全体の需給を踏まえまして、そうして奨励補助金等交付いたしまして実行する計画でございます。しかし、これに対しましては県、市町村の行政当局が御協力いただくという形はもちろんのことでございますが、農家の方々あるいは農家の方々の組織する生産者団体の自主的な御協力、御理解を願いつつ進める性格のものでもあるということは当然でございます。
  84. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまのお言葉は農家の皆さんの最終的な協力あるいは県の協力ということで、割り当てはするが、自主的に協力をしてほしい、いま米の需給関係はこういう状況だ、こういうことを御説明になっておろされておると思うのですが、各県は各県に割り当てられたものをそのまま市町村に流しておるということなのか、これだけはどうしても確保せいというかっこうで厳しくやられておって、県はそれに上乗せをして、歩どまりを見て出されておるのか、その辺の指導はどういうふうにされておるわけですか。
  85. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 私ども転換分の十九万五千ヘクタールが五十二年度の目標面積でございますが、これを県別に割り振りまして指示してございます。これを各県がどのように各市町村に目標をおろしていくかということは、地域の生産動向、需給の動向等諸般の事情を考慮して県が各市町村に目標面積をおろしておるわけでございまして、その際、上積みとかいうようなことについて私どもは特段の指示をいたしておらないわけでございます。
  86. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、この目標は達成をせよ、去年もこういうことだったですけれども、達成率は九一ですから、農家の皆さんの自主的なそういう動きによって、かわれるものならかわってくれという自主性を尊重しておろしておる。目標をこのように考えております、こういうふうに農林省は考えておると受け取ってよろしゅうございましょうか。
  87. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 先ほど食糧庁長官からお話し申し上げましたとおり、潜在生産力で千三百万トン、需要は千二百十万トンということでございますが、米の過剰基調が一層強まっておりますので、そのギャップの九十万トンの数字はぜひとも達成をしていただきたいというふうに私どもは考えて御協力を要請しておるところでございます。
  88. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その問題をまずここに置いておいて、今日農業の実態等を考えてみまと、食糧庁からいただきました米価に関する資料の中身を読んでみましても、農業の就業人口というのは、五十年度は中学校や高等学校の卒業者の就職の総数というのは六十二万九千人のうち一万五千人だ、こういうことになっております。それから耕地面積というのも、三十五年が六百七万一千ヘクタールのものが、五十年は五百五十七万二千ヘクタールというふうに減っております。農林省としてこの経営規模の拡大ということを盛んに言われますけれども、農地の平均価格は今日平均で十アール当たり二百八十一万八千円、平たん地では三百八万二千円、こういうふうに示されておりますね。そうすると、経営規模の拡大ということは、一般的に何かをつくってそれを回収するということになれば、この金額で何をつくったら引き合うだろうかということをよく私どもは聞かれます。まあ三百万で買って、一割の利息がついて三十万円ということになりますと、それだけのメリットのある農業というのは一体何だろう、こういうことをよく農家の皆さんから問いかけられます。そうするとなかなか答えに困って、経営規模の拡大というものが実質的になかなかむずかしくなってくるのじゃなかろうか、こういう状態だと思っております。  いま申し上げた諸点について、これが農業の実態であり、これからの展望として、この現状を、政策責任者といいますか、農林省の首脳部としてはどのように分析をされ、今後どのようにしてこの学卒者の問題なりあるいは耕地面積のこの現状というものを把握し、発展をさしていくのか、あるいは経営規模というものはどうやってやるのかということを、どちらでもいいですからお話しいただきたい。
  89. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  先生のお言葉をおかりさせていただければ、省の幹部として本問題についてどういう認識を持っておるかというお話でございますが、新規学卒者の農業に対する定着の低さということはしばしば指摘されておるところでございまして、数字をもってただいま先生お示しのところでございますが、担い手の育成なりあるいは後継者の確保という問題につきましては、当委員会等においても大臣以下しばしば申し上げておりますように、やはり後継者が残り得るような農業をつくり上げていく。それはいろいろの経営の諸問題なりあるいは土地基盤整備なり、さらに基本的な条件の問題なりあるいは価格政策その他の整備とか諸般の施策を講じて、後継者が残り得る条件を確保する条件をつくっていくということが基本であると思うわけでございます。  それから規模拡大の問題でございますが、御案内のとおり地価が、高度成長の過程で他用途転用の影響等も受けて非常に上昇いたしまして、自作地型の規模の拡大という点についてはなかなか困難でございまして、これは当委員会においても先生方審議願いました農振法というようなかっこうで一借地型の規模拡大という点について一層推し進めるということで、そのほか作業の受委託その他生産組織の育成によります実質的な中核農家の経営規模の拡大というような諸方策を推進していただくのが本来の方向であるというふうに考えております。
  90. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いわゆる農振法による借地型経営規模拡大は、法律が施行されてからどの程度拡大をされておりますか。
  91. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  もしその数字が誤っておりましたら後ほど訂正をしかるべき形でさせていただきますが、農振法制定後の最近の、私どもが省内の資料によって承知しておる限りでは、四千七百ヘクタール程度、これは五十年でございますか、われわれが農振法による規模の拡大は当初の数年はなかなかむずかしいだろうというふうに判断いたしましたが、まあスタートの実績としてはまずまずではないかというふうに考えております。
  92. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全体の規模拡大ということにはつなかっておりませんが、いまお話をいただきましたように、基盤整備事業とか価格政策の整備とかそういうことをやって、これから農業を伸ばしていくのだ、こういうお話です。確かに、言われるように、農家の皆さんはいまは重点というのは農畜産物の価格ということに焦点が合わされておる、そうだと思いますね。それはよく御存じだと思うのです。自分のつくったものを自分で値段が決められないというのが農家現状でありますから、当面、米価というものについては非常な関心があります。だから、自分たちの意見を本当に述べてもらう、そして生産者の立場というものを十分理解してもらう、そういう意味で米価審議会だけではなしに、あるいは畜産物の価格審議会、そういうものについては非常に関心がありますし、また農林省としても十分そういう方々の選考は慎重にやっていらっしゃる、こう思うのです。これから畜産物の価格審議会も始まっていろいろ御審議をいただくわけですが、それはみんなりっぱな方だと思うのですよ。でも本当に生産者の立場に立って議論してもらう——皆さんも農家の意向というものを十分尊重して農民のための農政をやるということはいつも大臣が言っていらっしゃいますし、長官だってそうだと思うのですね。だからこういう審議会の構成というものは、たとえば四人と四人で、あとは中立委員というようなことではなしに、それぞれ三分の一ずつやればまず世間的に見て公平じゃないか。あなた方が余りいままでどおりを固執されると、農林省はちゃんと決めておるのだ、しかし、そういう審議会を隠れみのに使って民主的にやったように見せかけるのだ、こういうふうに思われるのですよ。だから、そういう誤解を解くためにも、今度、米価審議会等はこの六月ですか、任期満了になるわけですが、そういうことを十分踏まえてやる、農家の声をよく聞く、そして慎重にやってもらうということが構成上必要ではないか、民主主義のルールじゃないか。圧倒的に生産者を半分以上出すということではなしに、それぞれ三者構成の平等論というのは筋が通っておるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうでしょうね、関係の長官なり局長は。余り抽象的ではなしに……。
  93. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの問題につきましては、米価審議会の構成に関連いたしまして当委員会でもいろいろ御質問ございまして、大臣御自身からもお答えを申し上げておるところでございますが、事米価審議会に関しましては、先生御案内のとおり、昭和二十六年発足以来、その構成についてはいろいろ変遷がございました。経緯がございました。その結果今日に至っておるわけでございます。生産者米価を取り上げますと、これは米作農家にとって最重要のものでございます。したがって、その意見の反映ということは当然でございますが、なお米価そのものは消費者の方々の購入する米価にも関係いたすことはもちろんでございますが、個別物価の中でやはり国民生活なり国民経済にとって最重要なものでございます。それからまた、その米価の決まり方は物価その他の関係はもちろんでございますが、米管理というものが食管の中心でございますが、その管理のために所要の財政は、当然負担は確保しなくてはならない、その財政負担がどうなるかというような問題等もあるわけでございまして、米の生産、流通、消費というような面から生産者米価についての意見を賜ることはもちろんでございますが、さらに進んで国民経済なり財政というような立場から、広い視野で御議論を願って決めていただくということが今日までの構成をとっておるゆえんであると思うわけでございます。そういう意味で、また、先生十分御案内のとおり、審議会の意見が多数決では有効性をとっておりません。それぞれの意見を集約して答申することは、この数年の答申を見ていただいても、また事実、審議会の運営についても承知していただけるかと思うわけでございます。そういう意味で、現在の運営について、われわれとしては米価の決定について御諮問申し上げる審議会としては適切なものであるというふうに考えてきたわけでございます。  しかし、先般も大臣が申し上げましたように、各方面から、ただいまの先生の端的な御意見を含めていろいろな御意見がある、それらのものを十分承りながら十分研究していきたいということで、先生のただいまのお話もございましたように、任期も六月下旬でございますので、時間もございますから、事が長い経緯のもとにおいて構成された現状でございますので、なお慎重な検討をしていきたいというのがわれわれの偽らざるところでございます。
  94. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私が言ったことについては別段不都合の点はないはずですから、あなたがおっしゃっておる国民経済の広い視野に立っていただく方も出ていただいて結構なんですから、本当に米をつくっておる人、本当に米を食べておる人、そういう方を出していただきたい、そういう意味ですから、十分前向きに検討していただきますようにお願いをしておきます。  時間がありませんから、あとの問題についてはこの次またやるとしますけれども、米価審議会でも農林省の考え方を、あるいは畜産物の価格の審議会でも農林省の案を出すのですね。それはいつごろ出すのですか。
  95. 大場敏彦

    大場政府委員 十四日に実は諮問はしております。具体的な試算値は、食肉の場合には二十八日に部会を開きますから、その日に試算値を出すつもりであります。それから酪農の場合には二十九日に部会がありまして、その日に試算値を出す、こういう心組みでおります。
  96. 野坂浩賢

    ○野坂委員 何日間審議して決めるのですか。
  97. 大場敏彦

    大場政府委員 食肉部会が二十八日、それから酪農部会二十九日という一応予定をしておりますが、審議会の運営につきましては審議会の御判断にお任せして、特に一日だけというふうに限定的に私どもはお願いしているわけではございません。
  98. 野坂浩賢

    ○野坂委員 例は悪いのですけれども、米価審議会も同じようなことをやっていらっしゃる。たとえば会社の総会でも、あるいはいろいろなことを決める会でも、事前に議案というものを流されて十分に審議してくるのですね。農林省畜産物の価格とか米価審議会というのは一日か三日等で、全農家の皆さんが注目をしておる、そういうのをぱっぱっと審議している。だから、本当は農林省はちゃんと決めておって、審議会という隠れみのを使って、いかにも民主的に決めたような形式だけを整えるというふうに思われるのですし、また見られるし、そうかもしれない、こういうのが実態だと思うのです。たとえば、農協なんかは前にこういう状態はどうかといって積み上げていろいろ出す、それを農林省は知っておってもなかなか出さない。もっと対比して、われわれも事前にこういう場所で議論をさせてもらいますと非常に民主的に全国的にそういうことが周知徹底をする、こういうふうに思うのですけれども、一日や二日では、幾ら賢い人であっても農林省意見を聞いて判断をする以外にないということになるわけですから、私はもっと事前に、少なくとも一週間ぐらい前にそういうものは出して、世論というか議論を尽くすということが必要ではないかと思いますが、なぜ一日や二日でぱっぱっとおやりになるのですか。そういうことの改善をするお考え方は全然ございませんか。
  99. 大場敏彦

    大場政府委員 畜産審議会の場合には総会がございまして、総会に諮問申し上げてそこでかなりの議論をしていただく、それをさらに、総会が細かな具体的なことにつきましては部会に付託する、こういう運営の順序になっておりますから、そういうことで例年かなりの審議は尽くされているというふうに私ども理解しております。  それから具体的な数字につきましては、私ども毎年できるだけ係数の整理を急ぐわけでありますが、やはりどうしても物理的にはその当日の間際というところまでかかってしまうというのが実態でございますので、決して故意におくらせておるということではございません。
  100. 野坂浩賢

    ○野坂委員 食糧庁長官にも答えてもらえばよかったのですが、もうあと三分しかありません。細かいことについてはその日がいいんだというような意味にとれるのですけれども大場さんは新しく畜産局長になられたんですが、非常にいい人ですから、十分事前に討議材料、資料というものは出していただいて、そしてやはりどこでも議論ができるような、そういう体制でなければ、農林省への不信というものは払拭できませんよ。  たとえば労働時間の算定でも、労働費の問題でも、やれその製造労賃だとか、あるいは計算にしても、米の場合は家族労働費というのはこういうかっこうである、乳の場合は何か農村型の臨時労務費というようなかっこうで、やってもなかなかわかりにくいですね。なるべくわからないように努力しているというふうに見えます。米なら米の高いところに合わせてみんなずいぶん不満があるわけですから、そういう計算をして答えを出して式を合わせるという方法をやめて、素直に農家の皆さんの言うことを聞かなければ農業の進展というものはないと思うのです。だから、自然のうちに、もっと純朴に、農家の皆さん方の期待にこたえてやっていただきますように、大河原長官に含めて要望しておきますから、ぜひ審議会の方たちなり農家の皆さん方の批判を買うことのないように、農林行政というものを進めていただくように、要望しておきます。答弁をされるようでありますから、そういう考え方に立ってやっていただけるかどうか、長官が代表して答弁をしてください。
  101. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げますが、先ほど、加工原料の乳価等の審議会に対する諮問なりその他数字に基づいた結果については、なかなか先生の御指摘のようにはまいらない事情もあるということを局長から申し上げましたが、われわれといたしましても、事米価でございますので、審議会に諮問をいたすぎりぎり直前まで財政当局その他との算定諸要素についての議論を重ねるのが通例でございます。特に、端的に楽屋裏を申し上げますと、印刷に間に合うかどうかというようなところまで物理的に許す限りに詰めまして、諮問案をつくり、試算値をつくるというような経緯があることを率直に申し上げたいと思うわけでありますが、事諮問いたしましたことについて、大方の御議論と御批判を得るようなこと等についての工夫、努力ということについては、われわれとしても御指摘のとおり今後一段と努力をさしていただきたいと思います。
  102. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで終わりますけれども、長官なり局長、たとえば乳の場合は三月の末、米の場合は七月だ、たばこの場合は、大蔵省の関係ですけれども、八月の末だ。農家の皆さんも東京にお出かけになるわけですから、これを集約して一気にすべてを解決をする、ばらばらにやらないで、米なら米の時期に合わせてそういう価格決定をやる、そういうことも踏まえて検討されたらどうか、こういうふうに思うのです。  それから、ぎりぎりまでやらなければできぬのだと言うが、そうですがね。そういうふうにはみんな受け取っていないですね。もっと余裕のあるように、頭のいい人たちが多いわけですから、十分やって、そして概括でも、大蔵省とぎりぎりまで折衝するということですけれども農林省はこう考えるというものを出したらどうなんですか。そうして大蔵省がその足を引っ張ったら、大体どういうふうな考え方かといういうことが政府部内でもわかるわけですから、そういう考え方で大胆にやはり発想を変えていかなければこれからの農林行政ば前向きになりませんよ。そういうかっこうで進めていただきたい、こういうことを要望しておきます。だから、価格決定問題等についても、私が申し上げた意見というものも十分参考にしていただきたいと思うのでありますが、どうでしょうか。
  103. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  価格決定は、御案内のとおり予算の要求なり査定内示というような形ではなくて、一定の算式に基づく諸要素を持ち合って財政当局とも最終の了解を得るというような形でやっておりますので、農林省がこの額でこうだというような形、予算要求等の形と同じような形で従来詰めておらないことをまずお断り申し上げます。  それから、先生お話しの価格決定の同時期の問題につきましては、ただいまそのような御意見もございます。大臣も当委員会において申し上げておりますように、農産物価格の総合的検討ということを省内でも行っておりまして、その場合には、方式はもちろんでございますが、適切な時期と、時期を統一すべきなのかあるいはどうかというような時期の問題等についても検討の素材として検討してみたいと考えておるわけでございます。
  104. 金子岩三

  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソ漁業交渉問題並びにOPP、養蚕、有機農業問題等について農林省及び厚生省当局質問いたします。  水産庁長官がおくれているようでございますので、予定を若干変更いたしますけれども、時まさに日ソ漁業交渉のたけなわでございまして、重大なときでございます。私は冒頭、政府を督励する意味も兼ねて日ソ漁業交渉に対して質問を申し上げたいと思っておりましたけれども、農林大臣並びに水産庁長官がおくれて来るようですから、予定を変更しまして、まずOPP問題から質問に入らしていただきたい、かように思います。  厚生省当局にお尋ねいたしますけれども、米国産グレープフルーツやレモンに使われるカビ防止剤オルトフェニルフェノール、いわゆるOPPと略しておりますが、このOPPを塗った柑橘類の輸入に対して日本側は、米国の主張するFAOWHO実験は、急性毒性と慢性毒性については行っているけれども、遺伝毒性データがなく、添加物規制が厳しいわが国では、遺伝毒性がないことが明確にならない限り認められないと従来から主張してきたところでありますが、厚生省としては、昭和四十六年以来食品添加物については削減する方向で新しい添加剤を認めてきていないところでございますけれども、カビ防止剤許可の方向へ急に傾きつつある、かようにわれわれは感触的に受けておりますけれども厚生省はこの問題についてはどう考えておるか、当該委員会で私は党を代表して改めて当局見解をお聞きしたい。
  106. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、食品添加物については国民関心も非常に高まっておりまして、私どもとしましては、なるべく必要最小限度にその使用をとどめていく、このような考えを持ってきております。しかし、食品を製造する、あるいは保存するとかいうようなことで、国民の食生活にとって大変有益なようなそういうものの場合におきましては、安全性を確認した上でその使用を認めていく、こういうような態度で現在も進んでおります。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 厚生省が、十五日、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会に遺伝毒性は認められないという研究データを添えてOPP安全性について諮問し、二十四日に食品衛生調査会毒性食品添加物合同部会で審議されることになっておりますけれども厚生省が提示したところのデータは、国内で解禁を求め、運動を続けていた日本青果物輸入運営協議会、御承知のようにこれは大手商社等の業界であります。これらが去年民間実験機関である残留農薬研究所に依頼したことは御承知のとおりであります。OPPの遺伝毒性については専門家意見も分かれておりまして、一昨年春の事件のときは、厚生省みずからが回収や出荷停止を命じ、慎重を期していたはずであります。一民間研究所の実験データのみに基づいて食品衛生調査会諮問することは片手落ちである。従来から、私も宮沢課長初め局長サッカリン問題で再三考えをただしたことがございますが、それと同じように、こういったことは片手落ちの問題である、かように私は思っております。責任ある行政とは思えない、こう思うのですが、一課長の答弁では無理かとも思うけれども局長はきょうは予算委員会でいないというから、あなたの責任ある答弁をお聞きしたい。
  108. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  添加物安全性の評価の場合に、国際機関でございますWHOとかFAOはその蓄積性であるとか発がん作用があるかどうかとか、あるいはその他慢性毒性でもってどこまでが安全量であるかとかいうような、私ども一般的な毒性と呼んでおりますが、そういう資料安全性を評価しております。しかし、わが国では、先生御存じのようにAF2のような事件がございまして、あれは遺伝学者の方から遺伝学的な問題として提起されました。まだこれは国際機関であるWHOでは、化学物質の安全性の評価には熟した状態ではないということで採用しておりません。  しかし、わが国のこういう国民関心が非常に高いという特殊な事情もございまして、四十九年、その遺伝学的な見地からの実験を今後審議の参考とするということになりまして、その審議の内規をつくったわけでございます。私どもは米国等々から以前からOPPはもう国際的に認められておるのだから早く指定するようにというようなことは確かに聞いておりました。しかし、わが国食品衛生調査会でそういう内規がございます以上は、私どもとしてはその定めた実験データが提出されるまではこれは審議はできないということで今日まできたわけでございます。  したがいまして、この安全性について、先生ただいま申されました残留農薬研究所で私ども食品衛生調査会の定めた内規に沿ってきちんと実験をし、私どもは、食品衛生調査会審議というものは国民関心も深いので、すべて公表された、みんなが知っておるデータだけで審議をしてきちんと結論を出すというふうに慎重を期しておりますので、昨年十月十六日に日本環境変異学会第五回研究発表会がございましたが、そこで公表されたものについて発表者がその報告書をまとめて、そして申請者が私どものところへ提出したわけでございまして、このようにして、私ども添加物安全性については国民の不安に十分にこたえるように、不安がないように、慎重を期して指定をしておるわけでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま答弁がありました残留農薬研究所、これは民間機関なんですね。もちろん国立の試験所もあるわけですが、私がいま申しましたように、民間機関データでこれをいろいろ検討するということは片手落ちじゃないか、こういうことを言っているのですけれども宮沢課長、どうですか。
  110. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  残留農薬研究所は財団法人でございます。私どもはこういった実験データを出す場合に、その研究所が権威のあるものであれば、そのものについて審議の対象とするわけでございます。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 われわれは、やはり国立の遺伝研究所、こういったものが権威あるものと思っているわけですよ。わざわざ国立の遺伝研究所というのがあるわけですから、遺伝毒性といった問題については、国民が税金を払って安心できるようにちゃんと試験所をつくってあるわけですから、こうした国立の遺伝研究所あたりでしっかりとした研究をして、実験研究国民の前に明らかにする、これが当然やるべきことじゃないかと思うのです。これが優先すべきじゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  112. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  新しく添加物を使わせてほしいということで民間の企業の方から申し出がありましたときには、私どもは、こういう資料等が必要だからそういう資料を整備して出してほしいというふうに申しておりまして、私どもとしては特にどこの研究所でなければいかぬというようなことは、その内規にはございません。ただ、権威があって、だれの目から見てもここの実験の成績は十分権威ある内容を持っておるのだ、そういう研究機関で出されて、しかも学会等に公表されてその批判を経た、そういうようなものについて私ども審議をすることにしております。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうしますと、あなた、そんな答弁をしておいて後で問題にならぬかどうか、よく検討しておかないといかぬが、将来に禍根を残すと私は思うのですがね。何でも権威あるものであればいい、こういう言い方では私は問題だと思う。また事実、学者の検討審議があればとおっしゃいますけれども、それでは学者の間で問題になったならば、権威あるデータでもだめにする、没にする、こういうことですか。
  114. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  食品衛生調査会学識者から成っておりまして、いわゆる一般の毒性についてとか、あるいはその遺伝学的な面についてとか、それぞれの分野からの日本の一流の先生方から構成されております。そういった先生方に、提出された資料について十分慎重に見ていただいておるわけでございます。  もちろん、ただいま先生指摘の、また将来何か問題があったときにはどうするのだと言われますけれども科学というものは年々非常な勢いで速く進んでおりますので、将来またどういうデータがどういう形で出されるか、これについては私どもここではっきり申し上げられませんが、少なくとも現在の時点で最も進んだ、そういう内容について私ども審議をして、その都度結論を出していく、こういうふうにして現在進めております。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 まあ毎回のことであるけれども、その都度その都度ぬれナマズみたいにぬるぬると答弁が変わってくるので、われわれも本当に切歯扼腕するわけだが、国民の健康を守る立場だからもっと一貫した、きちっとしたものがあってほしいと思う。  それじゃ聞きますけれども、このOPP毒性指摘している学者の中で、名城大学の花田信次郎教授等は、この実験データに対してはいろいろ批判をしておりますけれども厚生省はこの花田教授等の研究経過に対しては意図的に軽視している、かようにわれわれは思えてならないのですけれども、こういった花田教授の意見等に対しては、どういうふうに評価しておられますか、お答えください。
  116. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘の論文は、昨年の四月に薬学会発表されました名城大学の花田教授の論文のことを指していると思います。私どもはこの花田先生データももう取り寄せて現在その整理をしておりまして、これについても慎重に食品衛生調査会審議をしてもらうこととしております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いずれにしてもこれはもう巷間、新聞報道等でいまいろいろ問題になっているわけですが、当委員会でも野党の立場でこの問題を取り上げて問題にしなければならぬ。まだ論議をしていないので、私は改めてわかり切ったようなことを質問したわけですけれども、実にけしからぬ問題だと思えてならぬわけです。  と申しますのも、きょうも午前中論議が若干あったところでありますが、突然OPP諮問したことに対して、十九日に今回のカーター・アメリカ大統領及び福田総理との会談がアメリカで行われるわけですけれども、この福田総理のいわゆる交渉の一つの手みやげに持っていくということが、明らかにこうしたことが言われている。また団体等もこれを指摘しているわけです。これはもう二十三、四日になればすぐわかるわけです。そのときを同じゅうしてやっている。またぞろ農家を食い物にするというか食いつぶすというか、いつもしわ寄せになるのは農家ばかりです。こういったことを思うときに、肉の問題しても生糸の問題にしても、また従来からのグレープフルーツ、オレンジにしても、今度のOPPの問題にしても、いつもしわ寄せは農家に来る。こんなことでいいのか。私は党派を超越して声を出して叫びたい。こういった意味で、われわれも政治的にはアメリカのカーターのいろいろな政策から、いろいろ無理難題を言ってくることもわからぬではないけれども、こんなにまでして日米パートナーシップの地位を結んでいかなければならぬのかと思って、残念でならぬ。そういった意味で、政治の駆け引きに使うといったことを指摘されているけれども厚生省はそんなことは全然感じてもおりませんか、どうですか。
  118. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  実は、アメリカの方で厚生省OPP食品添加物として認めてほしいというような申し入れが正式にありましたのは五十年の四月のことでございます。そして私どもが、調査会の内規として遺伝学的なこういう実験も必要なんだ、そういうふうに申し渡したけれどもアメリカ側ではなかなか納得せず、学者などをよこして食品衛生調査会委員とも論議をさしてくれとか、再三にわたってございましたが、私どもとしては、日本日本食品衛生調査会が必要なんだということで決めた内規である以上は、この資料がなければわれわれは審議するための一つの定めている基準に合わないので、審議をするわけにいかぬ、こういうことでずっと拒否をしておったわけです。そうしまして五十一年の初めになりまして、向こうの偉い方、ベルという農務次官補でございますか厚生省に参りまして、再度要請があったけれども、私ども遺伝学データがなければ審議はできないということで拒否をいたしまして、ここで米国も、それではやむを得ないということで、実験に取りかかったのが昨年の四月ごろと聞いております。そしてそのデータ学会等の公表などの手続を経て、整理された形で厚生省に提出されましたのが、昨年の十二月の末でございます。私どもとしては、予算がちょうど年を越しましたので、その合間を縫いながら、世界各国で集めてWHO審議した資料を交えながら、その提出されたデータ整理に当たってきたわけでございまして、ようやくその整理を終えたので、一昨十五日、食品衛生調査会諮問する、こういう運びになったわけでございます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一昨年でしたか、ジフェニル許可もきわめて政治的な取り扱いがなされたという苦いわれわれの経験もありますが、厚生省もよく知っておられると思うけれども、それならば、私はこの諮問を来月でも、もっと後へおくらしたっていいじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、急な話としてやるから、それで私どもは疑念を抱いているんですよ。これはどういう日程でこうなったのですか。
  120. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  私どもは、データが出て整理が済めば、それについて局内で一通り食品衛生調査会審議する内容と照らし合わせて、満足しておれば、その時点で厚生大臣に説明をして、そして諮問をする、こういうことで従来からやってきております。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この問題でいろいろやっておりましても、結局これ以上のことはなかなか進んでこないと思いますので、私は農林省に対してさらにお伺いをしていきたい、こう思います。  厚生省のいろいろないままでの質問の内容等をお聞きいただいた、こう思いますけれども宮沢課長ではこの程度の答弁しかできないと思いますので、いままで申し上げたこと、また答弁のあったことを踏まえて、堀川農蚕園芸局長に引き続きお尋ねしてまいります。  いま厚生省に対して数点指摘をしましたが、このOPPについては局長も御承知のように、まだまだ安全性が確認されたものではないし、国民の生命と健康に重大な影響を及ぼす防腐剤を安易な調査で認めてしまっては、将来にわたり取り返しのつかない禍根を残すということになるわけでございます。また、局長農民の側に立った、あなたの守備分野にある農民のために、あなたにも慎重にこれは対処してもらいたいからあえて申し上げるわけでありますが、過去のAF2問題しかりです、また、私がかつて追及しました人工甘味料サッカリンも、米国、カナダにおいて発がん性が確認され、いろいろ問題を起こした経緯があることは御存じのとおりです。OPPの問題は、食品衛生法上の問題で所管外と農林省は言いたいところでありましょうけれども、これは避けて通れない重大な問題であります。局長として、この防腐剤許可に対してどういう見解をお持ちであるか。また、先ほども申し上げましたように、収穫後に散布すれば食品添加剤となり、木の上に、いわゆるまだなっているときに薬をまけば農薬としての扱いを受けるというように、同じ防腐剤でも非常に見きわめ方か微妙になっております。農林省はその点は掌握しておられると思いますが、このOPPについては局長も重大な関心を払って対処しておられると思いますけれども厚生省とどういうように協議をしてこられたものか、いままでの経過を踏まえて、当局見解を承りたいのであります。
  122. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 農林省食品生産のみならず、流通、消費に責任を持つ官庁でございます。そういう角度で食品が安全なものとして流通、消費されることについて、これは大変大事なことであるというふうに思っておるわけでございます。ましていわんや柑橘のごとく、国内生産が行われるものがあるわけでございますから、また、その生産への影響というようなことも配慮をして、重大な関心を持ちつつ事態の推移を注視してきておるところでございます。  OPPの具体的な問題につきましては、これは食品衛生法上の観点から安全な食品という形でそれを認めるか認めないかという話でありますし、それは科学的な知見に基づいて厚生省が適切に御処理になるであろうということから、いつごろどういう扱いになるのかというようなことについては御連絡をこちらからとったり、あるいは厚生省から御連絡を受けたりというようなことはございましたが、中身に立ち入りまして具体的にこの点が不安であるというようなことは、私どもの方にはそれを主張する資料もございません。そういう中身に立ち入ってのことは厚生省の、責任ある当局の御決定におゆだねをするということであろうう、こういうことでまいっておるわけでございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このOPPという防腐剤に対しては相当疑惑が持たれるからということで、慎重に取り扱うようにということを正式に大臣または局長から申し入れるといいますか、厚生省に正式に会談を申し入れるというようなことはなさらなかったのですか。廊下ですれ違って言ったということですか。
  124. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 これは食品の問題でございますから、慎重の上にも慎重に安全性を見きわめて厚生省の方で御決定になるべきものだということは、大臣も本院におきましても表明をしておられるわけでございまして、私どもとしても、基本的には大臣の申されました考え方と同じでございます。ただ、安全な食品が流通するという観点からやってほしいということは申しておりますが、具体的にここの点がどうか、あの点がどうかというようなことで協議をしたというようなことはございません。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、あなたももう十分おわかりだと思うが、このカビ防止剤すなわちOPP使用が仮に許可になれば、米国はもう待ってましたと言わんばかりにレモン、グレープフルーツ、オレンジの輸入量をふやしてくることは必定であります。そして、これは先年からずいぶん問題になりましたように、直接問題になってくるのは農家が直撃を受けます。ただでさえもいまミカンが過剰時代で、加工問題等価格の問題で大変に行き悩んでおるさなかに、こういったものの輸入量がふえてくるということになりますと、果樹農家はまた大変な打撃を受けてくることはもう火を見るよりも明らかであります。国内産の柑橘の価格がこれによって相当低落することも予想されますし、また農家に重大な影響を及ぼせば、結局農政上の問題としてこれは大きな批判を受けてくるということは当然です。そういった意味でこういったことが許可になると、いわゆる国内産果実が大変な打撃を受けることは火を見るよりも明らかです。局長もまたすぐその苦しみに遭遇しなければならぬわけです。われわれもまた果樹農家から厳しい批判を受けることになります。過去の例から明らかです。そういったことを踏まえて、どういうようにあなたたちはこのことを見きわめておられるのか、また、この問題についてどういうように皆さん方は受けとめておられるのか、明らかにしていただきたい。
  126. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 このOPP使用について厚生省がどのような御決定になるかはこれからの問題でございますが、過去OPPが問題になりました五十年の春から夏にかけましてアメリカからのレモンなどはかなり減ったわけでございます。しかしながら、その以降の推移を見てまいりますと、グレープフルーツにいたしましてもレモンにいたしましても、OPPのことが問題になりました前年の四十九年の水準に大体戻っておるわけでございます。先生も御承知と思うのですが、アメリカから入ってきますグレープ、レモン等につきましては、国内使用を認められておりますジフェニルというような防ばい剤を使用しているものがあるというふうに聞いておるわけでございます。したがいまして、これは厚生省もまだこれから食品衛生調査会調査審議を慎重におやりになることであるわけでございますが、仮にOPP使用食品衛生法上の立場から認められたということになりましても、そのことの理由によりまして——いろいろほかの理由は別といたしまして、OPP使用許可ということの理由によってアメリカからのグレープフルーツなりレモンが大幅にふえるのだというふうには受け取っておらないわけでございます。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 何となく歯切れの悪い答弁ですけれども局長も心の中ではちゃんとわかっていてなかなか答弁しにくいような答弁のようであります。これは本当に困ったものですね。これはまた大変な国内果樹農家の問題になってくると私は思うわけです。どうして農林サイドがいつもこんなに下積みにされるのか、私は残念でなりません。わかり切ったようなことをここでくどくど言うのも本当に残念でなりませんけれども農林省ももっと強力に農家のために手を打っていただかなければ、これは大変な問題が今年中に起きてくると思っております。  そればかりか、農林大臣がいないので局長であれですけれども、いまいろいろうわさされわれわれが接するところ、日米首脳会談でこの防腐剤使用の柑橘類の輸入規制の撤廃が問題となるばかりか、アメリカ産の桜桃が輸入解禁ということでこれもまた追ってくるということが言われて、東北各県からもいろいろと私どもに電話、手紙等で要請が出てきております。そこで、先月末にはECがわが国政府にブドウ酒などの農産加工品について関税率引き下げを要求するなど、農産物の輸入が当面の農政問題として再燃しつつあることも御承知のとおりだと思いますが、これらの一連の関係から、オレンジ果汁の自由化及び輸入枠の拡大という問題がまた起きてくるし、アメリカ産桜桃の輸入解禁問題も必ず議題に上ってくる。もう一つには、EC要求のワイン関税引き下げ、こういった問題も起きてくる。こういったことで農家に対するいろんな圧迫が、従来の肉、生糸のみならず、こういったものにしわ寄せが来る、こういうように思っておるわけです。  そういったことも農林省は十分分析しておられると思うのですけれども、こういった懸念をされる中で農林省はこういった問題についてどういうふうに情勢を分析し受けとめておられるのか、またこれらに対してはどう対処されるのか、これまたあわせて御答弁いただきたい。
  128. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 今回予定をされております日米首脳会談でサクランボの話が問題になるように先生指摘になりましたが、この問題は、米国から輸入を要請をされておりますサクランボにコドリンガという有害虫がついておるおそれがある。有害虫がついておる場合には、これが国内に入りまして蔓延をしますと農業生産に大きな打撃を与えますので、私ども植物防疫法におきましてこれを禁止をいたしておるわけでございます。しかし、このコドリンガというガ、有害虫を殺すという処置をとりまして入れるのだということになりますと、植物防疫法のたてまえからいたしますればこれは禁止をするというわけにはまいりません。わが国先生も御承知のように国際植物防疫条約に加盟をしておりまして、輸入禁止を植物検疫上の理由がないのにしてはいけないという国際的な約束に加盟をしておるわけでございますから、その限りにおきましては、完全に殺虫処理ができますという場合において植物防疫法上の輸入禁止の措置を継続するということは困難であるというふうに思っております。今回サクランボの問題が首脳会議の問題になるというふうに私ども聞いてもおりませんし、思ってもおらないわけでございます。  次に、ワインの輸入の問題でございますが、ワインの輸入の問題につきましては、これは関税引き下げということでございますとガットの問題になるわけでございまして、いまECといろいろのことがございますが、農林省の立場といたしましては、主管省であります大蔵省に、これはガット問題ではないかということを言ってもおりますし、それから、さしあたりの措置といたしまして、ワインの原料でありますところの安いバルクワインというのが入ってくるという問題につきましては、国内生産者保護のために、ほうっておくということもできませんので、国税庁ともお話をいたしまして、国内における対策をとる必要があるということから、農林省ももちろん参画いたしますが、国税庁にも入ってもらいまして、生産者の方々、ワイナリーの方々というものと、ワイン原料用のブドウの安定的な取引を図るための協議会を今回新たに設けることにいたしまして、先般第一回の会合を持ったわけでございます。そういう形で、国内のワイン原料用のブドウをつくられる農家の立場を擁護するということに踏み出しておるわけでございます。  これらの問題は、関税の問題は別にあるといたしまして、それのあるなしにかかわらず、私どもは、こういった協議会を活用いたしまして、強力に国内対策に努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つ先生のおっしゃいましたのは……。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いずれにしても、局長、農林大臣とこのOPP問題をよく相談をして、こういう情勢下でありますので、とにかく日米会談の手みやげに持っていってそして日本の顔つくりをすればいいというんじゃなくて、必ずこういったしわ寄せが農民に来るのですから、そういった意味で、農林大臣も強力に政府部内で話し合いをして、こういった問題で農民にさらに追い打ちをかけて窮地に追い込まないようにしてもらいたい。十分大臣と打ち合わせをして政府部内で折衝されるようにぜひお願いしたいと思うのでございます。
  130. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 一つ御答弁漏れをいたしましたが、オレンジ、オレンジ果汁の自由化ないしは割り当ての拡大という問題につきまして、私ども、オレンジ、オレンジ果汁につきましては、自由化なんということは毛頭考えておりませんし、輸入割り当て枠の拡大といった問題につきましても、きわめて慎重な配慮を行って今後対処してまいるつもりでございます。  それから、対外関係の調整ということはいろいろございますけれども基本的には、国内生産者の立場ということも十分考えてやってまいるつもりでございます。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 堀川農蚕園芸局長にさらに引き続き養蚕問題について若干お尋ねしておきます。時間の関係OPP問題は一応これで打ち切りまして、養蚕問題の危機に対する対策等若干お尋ねしておきます。  昨日も全国養蚕者大会が九段会館で行われまして、従来にもない熱気に燃えた、養蚕農家の危機を訴えた大会がございました。改めてお伺いしますけれども昭和四十九年以降、すなわちオイルショック後に繭の生産量、養蚕農家が激減していることは御承知のとおりでございます。いままさに危機に瀕しております。ちなみに繭生産量を申し上げますと、四十八年は十万八千百五十六トンだったのが、五十年は九万一千二百トン、五十一年は八万七千八百三十三トンと十万トン台を割りました。なだれ現象でいまこれが激減しております。また養蚕農家の戸数も四十八年は三十万五千戸であったのが、五十一年は二十二万五千戸で、八万戸も減っております。まさに幻の産業へと低落しつつある養蚕。皆さん方は、この減っている原因は何であるか、どういうことに原因があるのだということを正確に掌握しておるのか、まずお答えいただきたい。
  132. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 生産が減少しておりますのは、一つは桑園の面積の減少ということがございます。それから桑園における反収の低下ということがございます。これは地方の問題が大きくかかわってきておると思うわけでございます。  養蚕戸数の減少につきましては、これは小規模の零細な養蚕農家が、条件が悪いということで脱落をしておることが響いているのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それらの背景には、四十九年に見られましたような糸価の異常な低落というようなことがありまして、そういうことの後遺症もいまだに残っておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、従来から、四十七年及び昨年と二回、生糸、燃糸、絹織物等の一元化を図ってきたのですけれども、現在、いわゆる一元化も空洞化されたといいますか、からくりがありまして、御承知だと思うが、五十一生糸年度で見ましても、中国、韓国以外から一万俵ないし二万俵近く余分に入ってきているという事実があります。こういったことを当局は掌握しておるかどうか。いわゆる紋つきはかまのたぐいで入ってきたり、ネクタイあるいは着物として入ってくる、または撚糸をロープにして入れる、またリリヤン状にして入れるというようなことで、恐らくこれは韓国産、中国産のものでありましょうけれども、これらが米国、香港等を通じて入ってくる。そのために大変輸入がふえて、ひいてはこれが農家に打撃を与えている、こういうことになっております。  こういったような輸入規制についてどういうふうに対処しておられるか、またこういったことをどの程度掌握しておられるのか、こういった事情をよく掌握しておられるか、その点当局から見解をお聞きしたい。
  134. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 わが国に対します生糸なり生糸製品の輸出をしてまいります大宗は中国と韓国でございますが、御案内のように、先生いま御指摘のそれ以外の国からの輸入が、私ども五十一年度で当初想定しておりましたものよりもふえております。そのことは事実でございまして、そういった二次製品がふえたということが一つの理由にはなっておると思うのでございますが、その形態はきわめて多様でございまして、輸入の実態が実は必ずしも明確にわかっていない点がございます。そこで、こういった物品の所管は通産省でございますが、私どもとしても重大な関心がありますので、通産省とも連絡、協議をしておるわけでございます。もう少し実態を明らかにいたしまして、輸入動向を注視し、これに対して対策を考えてまいりたいというふうに思っております。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長から答弁がありましたごとく、実際にこういった実態をつかんでおられますように、そういった実情であります。そういったことで、きのうも大会でも大分問題になったわけですけれども、こういった外圧による国内糸価への締めつけと、国内の消費が伸びていないというようなことから、養蚕農家生産意欲をなくし、まさに衰退の一途をたどっておることも事実です。  そこで、ことしの基準繭価は二千百円、こういうふうに要求しております。実際には、繭生産費を見ますと二千四百二十五円ぐらいかかる。かといってそれをそのまま要求したのでは、これは基準糸価との関係もございますので、農家は控え目に、今回はキロ当たり二千百円ということで要求をいたしておるのが実情であります。養蚕というのはいわばわが国の民族産業であり、皆さんも十分承知のとおり、日本の独特の産業でもあります。一度これが衰退しましたものは二度と立ち上がれないという歴史を持っております。そういったことで、今回のいわゆる養蚕農家の立ち直りのために、またしかも三月末にはいろいろと検討されるわけですが、こういった糸価、繭価の問題について私は、今回のいわゆる団体が要求しております基準糸価一万六千四百円、基準繭価が二千百円、これは最低のいわばぎりぎりの要求であります。こういったことで政府も最大努力をされてこういった農家の壊滅的打撃を防ぐためにも今回の基準糸価、繭価の決定に当たっては十分慎重な検討をなさって、労賃なんかも千分検討されて、そして織り込んでいただきたい、かように思うわけです。時間が参りましたので詳しくは申しませんけれども、その点政府の考えをお聞きしておきたい、かように思います。
  136. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 私どもは確かに近年繭生産が減退してきたことは認めざるを得ないわけでございますが、昨年の減退には気象条件がかなり影響しておるというふうに思っておるわけでございます。そういうこともございまして、蚕糸業振興審議会において今後の繭生産増強の方向を昨年夏に打ち出されたわけでございまして、私どもこの方向に沿って、五十二年度予算を手始めといたしまして今後繭の生産振興に努めてまいりたいというふうに考えております。こういったこともございましてか、繭生産農家の側における意欲もかなり向上してきておるというふうにも感ずるわけでございます。その点は必ずしも悲観的になっておるわけではございません。何とか伸ばしていく考えでございます。  それから、それにつきましては価格の問題もかなり重要であるというふうに認識をいたしております。まだいろいろ価格決定について諸要素が出そろっておりませんので、私ども価格決定に際して考慮すべき諸材料というものの収集、整理をやり、検討しておる段階でございますが、いずれにしましても現段階は絹製品の需要が非常に落ち込んでおるという状況の中で、繭を生産し増産を図るということでございますから、なかなか困難な面がございますが、私ども法の精神に基づきまして、生産条件それから需給事情その他の経済事情を勘案をいたしまして適正な価格決定を行ってまいる考えでございます。
  137. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 冒頭に申しましたように二百海里時代を迎えて日ソ漁業交渉の質問を、水産庁長官が四時にこちらに来るということでございますので、時間を十四、五分残しまして質問を一応終わりまして、水産庁長官が見えた後質問を途中でさせてもらうか一番最後にさせてもらうか、御相談した上でやりたいと思いますので、一応質問を打ち切らせていただきます。
  138. 金子岩三

  139. 稲富稜人

    ○稲富委員 委員長にお尋ねしますが、農林政務次官はお見えになっていないのでございますか。
  140. 金子岩三

    金子委員長 見えていません。
  141. 稲富稜人

    ○稲富委員 見えていませんか。本来から言うならば、大臣がおられないときはやはり政務次官が出席して、そして委員会を進行するということが当然のことであると思うのでございますが、この点は委員長としてはどうお考えになっておりますか。
  142. 金子岩三

    金子委員長 理事会に相談して、できるだけそういう取り計らいをいたします。
  143. 稲富稜人

    ○稲富委員 最初から政府委員質問するということは大体不見識な問題であって、その点は今後委員会の運営上、大臣が出られない場合は大臣にかわって政務次官が答弁の任に当たる、事務的な問題は他の政府委員でこれを補う、こういうような過去のいきさつもありますので、今後そういうふうに取り計らっていただきたい。きょうはやむを得ませんけれども、そういうことをひとつ冒頭に希望を申し上げておきます。
  144. 金子岩三

    金子委員長 できるだけそのように取り計らいます。
  145. 稲富稜人

    ○稲富委員 まず私お伺いいたしたいと思いますことは、御承知のとおり、わが国の水産業が二百海里問題等の国際規制によりまして非常に漁業の収穫というものが少なくなるということが予想されます。そういたしますと、当然国民の動物的たん白資源を得るためには、今後畜産によらなければならない部面が非常に大きいものであるということをこの機会に私は痛切に思います。そういう意味から、私はまずわが国畜産の問題にいかに対処していくか、こういうことについてお尋ねをいたしたいと思うのであります。もちろん本委員会の中に畜産委員会がありますので、いろいろな、小さいと言うと語弊がありますけれども、具体的問題等は、あるいは小委員会でいろいろ論議されると思いますので、私は畜産の問題の大筋の問題について、次官がおられませんので、やむなく畜産局長にお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  まず、私たちは畜産振興に必要な大きな条件というものは三つあると思うのでございます。第一は、飼料の問題、えさの問題をいかに解決するかという問題である。第二の問題は、畜産の飼育をいかにするかという問題である。第三の問題は、畜産物の価格をいかにするか、大別するとこの三つに分かれると思うのであります。この三つの問題を円滑に解決してこそ、私は真の畜産振興はなし得られるものだ、かように考えます。  こういう意味から、私は第一にお尋ねいたしたいことは、まず飼料の問題についてお尋ね申し上げたいと思うのであります。元来飼料に対しましては、従来畜産の粗飼料対策というものを十分いままで政府検討をしてまいっておりました。かつては福島の、国の白河牧場において牧草の専門的な研究をやり、どの地方にはどういう牧草が適し、どういう土壌にはどういう牧草が適するのだという非常に熱心なる研究をなされたことも承知しておりますし、私たちもその実態を見に参ったこともあります。しかしながら、この問題も最近ではほとんど昔のような状態にはなされてはいない、こういうことを考えるわけでございますが、こういうような粗飼料対策、牧草の研究あるいはこういう問題に対してはどういうような対策を立てようと考えておられるか、承りたいと思うのでございます。
  146. 大場敏彦

    大場政府委員 牧草の生産力の向上につきましては、もちろん試験研究機関でろいいろ研究を願っているわけでありますけれども、国立牧場におきましても、たとえば熊本だとか、あるいは十勝だとか、あるいは長野、そういったところの牧場を活用いたしまして生産力の向上を図っている。それから国の予算ではもちろんのことでございますが、草地開発、外延的な拡大としての草地開発、それから既耕地をさらに使いこなすという意味での種々の既耕地における飼料の増産対策というものに特に力を入れて、五十二年度予算におきましてもかなりわれわれとしては力を入れて予算の増強に努めたつもりであります。
  147. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま局長は牧草のための草地の造成、改良等に対しては大いに力を入れている、こういうような御答弁があったのでございますが、五十二年三月に農林省畜産局が発表されました畜産関係資料によりますと、草地の造成改良面積というものはそう実は上がっていないのでございます。御承知のとおり昭和四十七年には二万五千ヘクタールであった。四十八年は二万ヘクタール、四十九年は一万三千ヘクタール、五十年は一万四千ヘクタールというようにだんだん少なくなってくるという現象を来しております。また累計を見ましてもこの前から言いますと昭和四十年からこれに統計が出ておりますが、四十七年には三十二万九千ヘクタール、四十八年は三十四万九千ヘクタール、四十九年は三十六万二千ヘクタール、五十年は三十七万六千ヘクタール、こういうように非常に努力しているということをおっしゃるにもかかわらず、土地造成、草地造成の成果というものが上がっていないのはどういうためであるか、こういうことも私たちは非常にいかがわしく思うのでございます。特にこの資料を見ますと、農林省昭和六十年におきましての飼料作物の面積の見通しというものを百四十六万九千ヘクタール、こういうことに見積もっていらっしゃるのでございますが、ただいま申しましたような状態で伸びてまいりますと果たして目途として予想していらっしゃる六十年にこの百四十六万九千ヘクタールに達することができるかどうか。この点をわれわれは非常に疑わざるを得ないと思うのであります。非常に努力はしているとおっしゃいますけれども、その内容というものはただいま申したような状態であるということを考えるときに私たちは土地造成、いわゆる草地の造成に対しては十分なる努力がされておるとは思われません。これに対してどういうようなことからこういう結果になっておるか、この点をひとつつまびらかに御説明願いたいと思うのでございます。
  148. 大場敏彦

    大場政府委員 いま先生が御指摘になりましたのは草地の改良造成面積のテンポが非常におくれておる、こういう指摘で、率直に申し上げまして当初計画しているのに比べましてかなりテンポは落ちているということはわれわれ認めざるを得ません。これは基本的には近年における総需要抑制ということでかなりつまずきがあったということ、それから予算のアップに相応いたしまして資材とか労賃とかそういったことに伴うアップによりまして、事業費の単価アップがここのところかなり激しかった。それからあるいは土地の取得価格の高騰ということも近年大きくわれわれの仕事を進めるのに妨げになった。また土地の取得難というような関係からだんだん開発適地が奥地化するということに伴いまして開発コストもかさんできている。言いわけになってしまいますけれども、あるいは環境保全のためのコスト、そういった要因もありましてかなり悪い条件、むずかしい条件がわれわれの仕事のテンポをおくらせている、こういうふうに考えているわけであります。仕事の立ちおくれということは率直に認めざるを得ませんが、結局今後われわれこれをできるだけ早く取り返すというような形で予算につきましては努力をしてまいりたいと思うわけであります。
  149. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま局長は率直にこれを認められておりますが、実際総需要抑制、その他いま申されましたようないろいろな悪条件のもとにこの目的を達成することができなかった。こういうことは本当に畜産というものは重大なものであるという基本的な考え方があるならば、ただいま申されましたようなこういう悪条件というものを克服していかにこれに対処するかということが私は政治の要諦ではないか、かように考えます。しかるにもかかわらず、六十年にはただいま申しましたような目標に進んでいきたいと思っている、しかしながらいろいろな悪条件のもとでこれを達成することができなかった、今後は何とか努力しようと思っている、こういうような逃げ口上ではわれわれは納得いかないのです。本当に今後そういう問題に取り組んでこの草地造成の必要というものを認識しながら、いま局長みずからが言われましたような条件というものをいかにして克服するか、予算の上においてもどうしてこれをやっていくか、こういう点を含んで考えなければ、いままでいろいろな条件が悪うございました、今後は何とか努力いたそうと思っております、これでは本当に草地造成に対する熱意があるとは考えられない、私はかように考えます。はなはだ失礼な言い分かわかりませんけれども、この点に対しては十分反省をしながらやっていっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  150. 大場敏彦

    大場政府委員 仰せのとおりであろうと思うわけであります。私ども草地開発関係の予算につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように来年度におきましてはかなり力を入れているつもりであります。畜産局計上の草地関係の予算を御参考までに申し上げますと、対前年一二三・六%ということでございまして、これは一般の公共事業の伸び一二一・四%というものに比べましても上回っているということでございます。  それから、こういった外延的拡大だけではなくて、同時に未利用地である林野の利用だとかあるいは既存草地の生産力の拡大とかいったところにも新しい芽をわれわれ出しているつもりであります。既耕地につきましても、水田裏あるいは緊急粗飼料増産対策、そういったことにつきましてもかなりの予算を私どもは計上しているつもりであります。
  151. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がないようでございますから、あとは簡単にお尋ねいたしますので、簡略に御答弁願いたいと思います。  もう一つ草地造成の問題についてお尋ねいたします。  林野庁からお見えになっていれば幸いでありますが、林野庁お見えになっておりますならばお伺いしたいと思いますが、かつて国有林野活用法案というものを制定いたしました。その当時里山等は草地としてこれを大いに開放する、こういうような趣旨でこれを決定したのでございますが、聞くところによるとこれが一つも活用されていないということ、この法律案をつくったがためにかえってこれが非常に窮屈な状態に置かれているということさえ聞くのでありますが、その事実はどうであるか。この国有林野活用法案というものが出ましたとき、実は私が修正案を出して、そしてその修正案が衆議院では通って参議院では流れてしまった、その翌年はその修正したものが政府案として国会に提出をされて通ったいわくつきの活用法案でございますが、この活用法案に対して里山等の利用に対しての努力はなさってないのか、簡単にひとつ承りたい。
  152. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 国有林の活用状況について簡単にまず数字を申し上げますと、四十八年に千五百ヘクタール、四十九年が三千百ヘクタール、五十二年に二千五百ヘクタール、三十八年以来大体三万六千五百ヘクタール弱活用いたしております。いま先生がおっしゃったように非常に少ないではないかという御指摘でございますけれども、林地の中で適地と申しますか傾斜等林地のいろいろな状況がございますし、そういう活用に適した林地も昔に比べればだんだん減ってきているという状況もございますし、また保安林等々もございましてその条件に適したところが昔に比べれば少なくなってきている状況がございます。しかしながら、私どもといたしましても、国有林の経営とにらみ合わせながら、その調整を図りながら調和を図った中で活用できるものにつきましては積極的に対応していく姿勢で現在取り組んでおります。
  153. 稲富稜人

    ○稲富委員 畜産局長にお伺いいたします。  次に、お尋ねしたいことは飼育の問題でございます。元来、わが国におきましては畜産と一般の農業というものは不可分の関係にあるのでございます。こういうことが言われておった。ところが、今日では一般農業と畜産というものが全然別個のものになってしまったという状態である。この状態というものは、本来から言うならば非常に嘆かわしいものではないか。やはり農業というものは、畜産というものと常に密接なる関係があって、あるいはそこに堆肥ができ、土壌の改良ができ、あるいは地力の増進というものができるのである。ところが、こういうように畜産というものと一般農業というものが遊離した原因はどこにあるかというと、やはり屎尿処理の公害の問題等が非常に大きな原因をなしているということは、われわれはこれを否定することができないのであります。  それで、こういうような問題につきまして、畜産農家から申しますと、普通の設備費というものは、これはプラスになる設備費なんです。屎尿処理の設備費というものは全部マイナスなんです。これは一つも返ってこないのです。この屎尿処理等の設備費にいろんな金をつぎ込むということは、まるっきりマイナスになるのでありますから、こういう問題に対しては、畜産の飼育上の問題において十分考えてやらなければできない問題であると思うのでありますが、こういうことに対してどういう考えを持っていらっしゃるか、承りたい。
  154. 大場敏彦

    大場政府委員 畜産を伸ばす上において環境問題が非常に大きな邪魔になってきているということは御指摘のとおりでございます。私ども、これに対しましては、一つはやはり畜産農家とそれから耕種農家とを結びつけたような形で、土壌還元するというような形でこの問題を解決するということで、所要の予算も公共、非公共事業それぞれ計上してございます。あるいはこれに対する融資あるいはリース事業、そういったものにつきましても、それぞれ前年に比べまして強化はしておるつもりであります。
  155. 稲富稜人

    ○稲富委員 強化しているつもりとおっしゃいますけれども、事実はいま申しますような現状畜産農家がなってくるのでございますので、こういう問題に対しましてはやはり政府は十分、思い切って、しかも畜産農家がそういう悩みを持たないで畜産に取り組んでいかれるように各般の情勢を醸し出すということも私は政治の大きな任務であると思いますので、その点に対しましては特に今後意を払っていっていただきたい。いろいろ申し上げておりますと、時間がありませんので、この点は特に私は希望を申し上げておきます。  最後にこの問題で申し上げたいことは、価格の問題でございます。  何と申し上げましても、私たちが畜産振興しようとするならば、畜産農家がその畜産に従事して引き合う事業に成り立たなければ、これは本当の発展を期待することはできない、かように考えます。ところが、この畜産物の価格というものは非常に変動がはなはだしい、あるいは十分なる価格が見られない、こういうような状態というものは、私たちは最も遺憾に存ずるわけでございます。  まず、今日一番問題になっておりますのは、加工原料乳の問題が、これはもう目の先の問題となっておるわけでございますが、御承知のとおり、不足払い法に基づく昭和五十一年度の農林大臣の定める加工原料乳限度数量は、百三十八万トンとなっておることは御承知のとおりでございます。しかしながら、五十一年度の実績について見ますると、生乳の生産は大幅に伸びてまいっておることも、これはもうすでに御承知であると思います。これは百五十二万トン程度には増加していると思われます。そうすると、十五万トン程度は限度数量をオーバーするということになってくるわけでございます。現行法において、農林大臣の定める限度数量に対して、補給金が交付されるということになっていることは御承知のとおりでございます。このためにオーバーするいわゆる十五万トンについて、法律農家に対する道がないわけではないのであって、これをどう解釈されるか。御承知のとおり、この加工原料乳生産者補給金等暫定措置法のいわゆる第十一条の解釈いかんによっては、農林大臣がこれに対して、この百五十二万トンを限度数量として認めればいいんじゃないかという感じもわれわれはするわけでございます。しかしながら、これは時期的な問題があってなかなか困難である、こういうようなことも言われておるのでございますが、このオーバーする十五万トンをどう取り扱おうと考えられておるのであるか、この点を十分ひとつ政府としての考え方を伺いたい。すなわち、限度数量の変更ができない場合は、これにかわるべき何らかの措置を講じてやらなければこれは実際農家としては非常に困った問題になってきますので、この点に対する考え方を承りたいと思うのであります。
  156. 大場敏彦

    大場政府委員 限度数量のオーバーの問題につきましては、法律制度としては、改定という規定が十一条にございます。しかしながら、私ども現在限度数量を改定するという手続をとることは適当ではない、こう判断しております。やはりこの際改定して生産を刺激するということは、現在の乳製品等の需給状況から見て適当ではないと判断するからであります。しかし、改定はしないで、それじゃ何も対策を講じないのかという御議論が次におありだろうと思うわけでありますが、それにつきましては、私どもこれはほうっておくわけにはなかなかまいらないだろうという判断で、何らかの措置をとるべく、いま財政当局と鋭意折衝中で、できるだけ早く結論を出して、酪農家に早くお知らせいたしたい、こういう努力をしているところであります。     〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕
  157. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは将来も起こると思いますが、改定する方法があるとするならば、潔く私は改定されることも結構であると思います。しかしながら、いまおっしゃるように、改定する意向がないとするならば、結局十五万トンが超過になりますと、これは五十一年度の金額から言いまして約三十六億円程度になりますので、いまおっしゃったような畜産振興事業団の乳製品輸入差益は、私は十分これはいまあると思うのであります。私たちが想像するのに、九十億円以上はあるんじゃないかと思いますので、これからでも出す、こういうことになりますと、もちろん大蔵省の承認を得なくてはできない仕事らしゅうございますが、これに対しては大蔵省との間に十分折衝を進めておるとおっしゃるのですか、今後進めていこうとおっしゃるつもりでございますか、こういう点はひとつそういう方法をとってやるのであるというようなことであるならば、この際これを明確にしていただきたい、こういうことをお願いしたいと思います。
  158. 大場敏彦

    大場政府委員 過去、四十三年に限度数量がやはりオーバーしたことがあります。そのときに、とった措置は、事業団の指定助成事業として助成勘定から補給金単価に見合う金額を助成した、こういう経過があるわけでありますが、私ども、そういった前例を踏まえながら、いま大蔵省と鋭意折衝中であります。できるだけ早く結論を得たいと思っております。
  159. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま局長は四十三年度の前例ならとおっしゃいますが、四十三年度においては半額は農家に乳価として支払われ、半額は事業を実施した場合の補助金として支払われている、こういうことになっているのであります。それでは私は、農家としてはかわいそうなので、その半額を支払うのではなくして、全額を補給金として支払う方法が必要である、こういうのがわれわれの考え方であるわけでございますので、この点をひとつ承りたい。
  160. 大場敏彦

    大場政府委員 確かに御指摘のとおり、四十三年のときは半分は、いわば俗に言う現金という形、あとの半分は施設等に対する助成であったわけでありますが、生産者のことしの御要求は全部現金方式で助成してほしい、こういう御要望でございますから、そういう御要望を踏まえながら大蔵省と折衝している最中でございます。
  161. 稲富稜人

    ○稲富委員 もう時間がありませんので、いろいろ聞きたいのですけれども、最後にお尋ねしたいと思いますことは、この畜産予算のうち、五十年度は千四百三十五億二千三百万円というのが畜産予算になっております。このうちの中央競馬会が国庫に納付した一千二百二十六億六千万円のうちの四分の三というのが、すなわちこの予算の中に組まれているということになるのであります。また、地方競馬会が、この畜産振興のために支出しておる金は年額八十億と言われております。こういう点から申し上げますと、全く日本畜産というものは競馬によって賄われておるというような状態に置かれるわけでございます。本当に、そういう状態であるとするならば、私は、先般、この委員会において、畜産局長質問したのでございますが、この畜産振興の立場から申し上げましても、競馬に対してもっと熱意を持って国は当たらなくてはいけないのではないか。この意味から私は、この競馬法の改正をやって、そうして単なるギャンブルだ、こういうような競輪あるいは競艇、そういうものと同一な考え方ではなくして、ひとつ今日競馬というのが健全なるレジャーとして定着しているこのときに、ひとつ時代に沿うように競馬法の改正をする。そうして取り扱うべきではないか、こう言っておるのです。そうしますると、競馬の益金というものが出てまいります。そうすると、今度は畜産の対策費用というものもまたふえてくるということになってくるので、これがおのずから畜産振興にもつながるということになってくるわけでございます。そういう意味から私は、すでにこの競馬の健全な発展を図るためには、今日競馬においては、御承知のとおり馬券に対するのみ行為等もあります。それで、やはり健全な場外馬券場等を設置したらいいじゃないか、こういうことを私たちは言っているのでございますけれども、これは、御承知のとおり、かつて三十六年の一月二十五日に公営競技調査会の長沼答申というものが出されましたが、それさえも行われないというような状態でございます。しかし、三十六年と今日とでは相当に状態が変わっております。それで、この長沼答申というものを本当に問題にするとするならば、この際、時代に沿うたような答申のし直しをやるということも方法であるし、またそういう必要がないとするならば、現在において言われるような、最も健全な立場からの場外馬券場の設置等も私は考えてしかるべきではないか、かように考えます。この点については、この間、細目にわたっては、私は本委員会において質問をし、そのとき局長が答弁されましたので、局長は十分頭に入っておると思いますので、大臣とも十分打ち合わせの上、これに対して対処してもらいたいと思うのでございますが、まず局長の考え方を承りたいと思います。
  162. 大場敏彦

    大場政府委員 三十六年の長沼答申を今日的な形でもう一回答申し直すというような考え方も一つの考え方だろうと思います。しかし、私ども同時に長沼答申をいろいろ研究いたしまして、それを踏まえまして、その今日的な解釈なり運用をしていくということも同時にあわせて行っていく必要があろうと思います。  たとえば御指摘になりました場外馬券にいたしましても、長沼答申自体しさいに読んでみますと、決して全面的に禁止しているというわけではございません。ケース・バイ・ケースでこれは判断していくということが私は正しい方向じゃないかと思っているわけであります。現に昨年場外馬券場を新しく一カ所新設の承認をしたという経緯もございますし、今後やはりのみ行為等が片っ方においてはびこっており、片っ方においてファンの要求が強いという事態を踏まえまして、現地の態勢だとか、あるいは他種競技との調整ということも必要でございますが、そういった事情を踏まえながら、解決しながら場外馬券につきましては必要なところについては増設していくということが正しい方向だと思っております。
  163. 稲富稜人

    ○稲富委員 じゃあいろいろ質問したいことはありますけれども、時間が参りましたので、私の質問はこれをもって打ち切ります。
  164. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  165. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 速記を始めてください。  山原健二郎君。
  166. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に労働省の方に伺いたいのですが、林業労働者の問題でございます。  民有林労働者に非常に青年が少なくなり、後継者がいないという問題が出ておりまして、その理由の一つに退職金制度がないという問題があるわけです。中小企業退職金制度に加入したらどうかという話もあり、またそういう指導もなされておりますが、実態としては、山林労働の実情から言いまして、転々としておるというような問題もあって、なかなかその適用がむずかしいという状態があります。  そこで、私の考えですが、建設業退職金共済制度がありますけれども、これは手帳を渡して、そうして証紙を張っていく、こういう制度であります。しかし、この制度も建設業の労働者に対しては、実態はほとんど適用されていないというので、先般この問題について私は労働大臣にお尋ねしたのですが、民有林の労働者に対してもこういう建設業退職金共済制度のごときものをつくる必要があるのではないかというふうに考えておりますが、この点についての労働省の見解を伺いたいのです。
  167. 中岡靖忠

    ○中岡説明員 先生指摘の中小企業退職金共済法による特定業種退職金共済制度でございますが、この制度も御存じのとおり一つの業種の中で異なった事業主の間を転々として移る、そういう雇用労働者、私どもこれを期間雇用者と呼んでおりますが、そういう人たちの異なった事業主の間の就労期間を通算しまして、それでその業界をリタイアするときに退職金を支給するという制度なわけでございます。ということは、その業界の何といいますか、業界挙げての協力、それからもちろん理解が必要なわけでございまして、その前提条件を欠きますと、たとえ制度をつくってもなかなかうまく動かないことになるわけでございます。  この林業についてその実態がどうなっているかということでございますが、現在のところでは、いま申し上げた業界挙げての協力態勢といいますか、これが残念ながらまだないと見ざるを得ないわけでございます。したがいまして、現時点でこの建設業並みの特定業種退職金制度をつくることはむずかしい、こう考えておる次第でございます。
  168. 山原健二郎

    ○山原委員 要は、この退職金というものが実際に給付されるかどうかという問題だと思います。そういう点からも改善しないと、まさに民有林労働者が枯渇していくという実態があるわけでして、仮に中小企業退職金制度にいたしましても、また私が申し上げています建設業退職金共済制度にしても、これは本当に適切な指導が行われて、そうして実際に給付されていくという実態がなければ、幾ら制度があっても役に立たぬわけでして、その辺の指導をどういうふうに強化されていくかという点が残ると思いますが、この建設業式なものにできないとするならば、どういう指導をされるか、ちょっと明確にしていただきたいのですよ。
  169. 中岡靖忠

    ○中岡説明員 現在のところは中小企業退職金共済事業団という特殊法人がございまして、そこで一般の退職金共済制度をやっておるわけでございます。  そこで林業のそういった労働者の人たちも、たとえば森林組合といったものを手続上事業主と見立てまして、それを通じてその中退事業団の行っている一般の退職金共済制度に入るという線で現在のところは私ども指導しておるところでございます。
  170. 山原健二郎

    ○山原委員 余り時間がないのであれですけれども、このままではどうにもならぬという状態があります。さらに林業労働者の場合、労働基準法の時間関係、たとえば八時間労働とか時間外勤務とか、こういったものが適用除外になっておりますし、一時休憩あるいは有給休暇もないという状態に置かれております。しかも健康保険法も適用されないという、言うならば、いろいろな制度はあっても全く無権利な状態に置かれているというのが日本の林業行政一つの大きな弱点になっておると私は思うのです。こういうことをいろいろ政府の方に言おうといたしましても、政府の方に、これは林野庁、農林省ですか、国に民有林労働者の相手になる、いろいろな要求を受け付けるような課があるんでしょうか。
  171. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま林野庁では、林業関係の労働問題につきましては森林組合課で取り扱うことにいたしましております。
  172. 山原健二郎

    ○山原委員 森林組合課の扱うのは、森林組合労務班約五万八千人を対象としておるというふうに聞いております。このほかに民有林労働者というのは約三倍の人たちがおるわけでして、それを取り扱う課は一体どこにあるのか。森林組合労務班は御承知のように主に造林関係でありまして、造材関係はこの班に入っておりません。したがって、チェーンソーなどの使用につきましても実態がつかまれていない。そしてまたそれを総合的につかむ課が農林省にはないのではないかというふうに考えられるわけでございますが、これらの労務関係に対する課もしくはこれを適切に取り扱う窓口というものは一体どこにあるのか、もう一回伺いたいのです。
  173. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま私、森林組合課と申し上げましたが、森林組合課は、名前は森林組合課になっておりますけれども、林業関係の労働者につきましては、森林組合の労働者ばかりではなくて、すべての林業労働者についての問題を取り扱うことにいたしております。
  174. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうお答えになると思いますけれども、しかし、たとえば先ほどおっしゃった退職金問題一つとらえましても、民有林労働者か退職金を実際に給付されておる率とか人数とか、全日本の林業労働者の数とか、その中でチェーンソーを使っておるものはどのくらいおるとかというようなことはその森林組合課で把握をいたしておりますか。
  175. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 把握いたしております。
  176. 山原健二郎

    ○山原委員 それでは、またその点についての資料などを私も後でいただきたいと思うわけですが、もう一つの問題は、これは昨年の八月三十一日に出されました林野庁長官の通達がございます。ところが、この通達は出されておりますけれども、実態はどうかといいますと、この通達は御承知のように、林野庁長官通達林野業第二百六十二号でございますけれども、これは時間規制あるいは労働安全衛生法などの法令の熟知徹底、請負人それから請負契約人に対する周知徹底の通達でございますが、通達はありましても、これがほとんど生きていないという実態がございます。  たとえば高知県の安芸営林署の場合、こういう状態があるのです。ここでは営林署の請負工事がある業者に発注されております。それは六百ヘクタールの請負で生産をするわけでありますけれども、四百五十万円、これが平米当たりで七千五百円の単価で元請におろされておりますが、その元請から下請におろされたときには、一平米二千五百円という単価でおろされるわけです。したがって、平米当たり四千九百八十円のピンはねがなされる、こういう状態です。これではこの通達の趣旨が全く守られないということなんですね。したがって、もう時間規制も守られておりませんし、この事業ではチェーンソー四台が使われておりますけれども、一日じゅうフル回転をしている。もう全くむちゃくちゃなんです。そして労働者に入る賃金というのが一日六千円と、こういう状態なんです。これが現在営林署関係の林野庁の行っている事業の下請、末端の労働者の実態であります。こういうことでは、これはもう通達を出しましても意味がないことになるわけでございまして、これらの実態というものについて林野庁は御承知でしょうか。また、これらの元請あるいは下請に対してどのような適切な指導がなされておりますか。また具体的にこのような大変ひどい搾取が行われている場合に対しましては、これは明らかに違反でございますが、そういう事業が判明した場合には、林野庁としては適切な指導あるいはこれに対する適切な処分を行うかどうか、この点を伺いたいのです。
  177. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生から事例の指摘がございましたけれども先生からお話しございましたように、林野庁では昨年の八月三十一日に、「国有林野事業の実行に係る民間事業における労働安全衛生確保対策の推進について」ということで通達を出しまして、それ以来営林局、署を通じまして、民間の方にやっていただいておる事業につきましては労働関係の諸法規を守るように指導いたしております。さらには関係の監督官庁と十分連絡をとりながら、今後そういう法に違反したような作業等を行わないように連絡調整いたしまして、いろいろな問題を関係官庁の方からも伺っておりますし、国有林で働いていただきますそういう民間の方々につきましては、法に基づいた適正な労務管理を行われるような指導を徹底してわれわれやっておりますけれども、いま先生が御指摘のようにそういう違反がもしあるとすれば、これに対しましては私たちとしても厳重な態度をとりたいと思っております。
  178. 山原健二郎

    ○山原委員 もちろん私どもがそういう事実を知りました場合には、その業者の方にも、また営林署の方に対して話をして問題を解決する場合もありますけれども、しかしもともとそういうことで解決すべきことでもないと私は思います。そういう点で、いま長官おっしゃったように指導をぜひ強化をしていただいて、末端で働く林業労働者の生活権というものをぜひ保障していただきたいと思うのです。  それからもう一つの例は、これは営林局直営事業の場合ですが、特に不採算部門についての民間との請負契約があります。ところがこの請負契約の場合に、コストが大体大規模生産と同じ単価でおろされます。しかし、この下請になっておる小さな業者の方たちはそれで請け負わざるを得ないわけでございますけれども、その請け負う場所というのが大変悪いわけです。小さな業者であればあるほど条件が悪くて、搬出のためのケーブルなど地形が悪いために四苦八苦してやるわけですが、それでも効率が悪いためにコスト高になってしまいます。しかし、コスト高になっても、営林署の方では割り増しをしてくれないということから、結局どういう事態が起こるかといいますと、これもいま申し上げました昨年の八月三十一日の通達とは全く逆に、採算がとれないものですから、二時間のチェーンソー使用規制も破らざるを得ない、賃金も安くならざるを得ない、労働条件もきわめて劣悪な状態で働かなければならぬ、こういう状態で、労働安全法で決められた規制も全く野放しになるのが事実上の実態でございます。通達を生かすためにも、こういう実情をよく知りまして、実情に合ったところの割り増しの契約をしてやるべきだと私は思うのでございますが、この点について長官の見解を伺いたいのであります。
  179. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 林野庁におきましては、国有林の製品生産事業で請負でしていただく場合には、不採算林分を請負に出すという考え方ではございませんで、やはりその請負の有しますそれぞれの特質を生かすという形で、それぞれの地域の実態に合わせまして、請負でやっていただくか、直営でやっていただくか決めておるわけでございます。そういう点で請負に出します場合にも、たとえば予決令でいろいろそういう問題は決まっておりますし、法令に合わせたような形で、その取り引きの実態なり、仕事の作業の難易なり、あるいは量がどのくらいであるかということを勘案いたしまして契約金額というものを決め、そして事業をやっていただいておるわけでございまして、先生が御指摘になりましたようにその契約の単価が非常に不当に低過ぎるということは、私どもとしてはないというふうに考えておりますけれども先生からそういう御指摘がございましたので、私どもといたしましては営林局署で行いますそういうものが適正に行われるように、今後とも指導はしてまいりたいというふうに考えております。
  180. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つの問題は振動障害との関係でございますが、実は私が知りました一つの例でございますけれども昭和四十八年に新採用されました若い国有林の労働者の中に、白ろう病の認定労働者が出ておるのでございます。これは、もちろん国有林の場合でございますから、この安全規制に基づきましてチェーンソー使用二時間規制が守られているわけでございますけれども、それでも振動障害が出てくるという実態が出てまいりました。そうするとこの二時間規制という問題が、果たして今後、将来を考えましたときに適切なのかどうかということをいま私は感じているわけです。改めてこの振動障害の問題については実態も調べまして、よく検討してみる必要があるのじゃないか。二時間規制ということでいいのかどうかという点も問題になると思いますが、林野庁の方におきまして、この点について御検討なされたことがあるのでしょうか。
  181. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生おっしゃいましたような具体的な事例は、私ははっきりは聞いておりませんけれども、新規採用者の中で振動病の認定を得た人はいるようでございます。ただし、そういう場合に、その方々の民間における前歴等いろいろございまして、国有林に入ってきてからすぐチェーンソーを使ったのかあるいは民間でどの程度やったのか、その辺は調査いたしませんとはっきりわからないような気がいたします。  そこで、私どもといたしましても四十四年に二時間規制をつくりまして、振動障害の方々が出ないような努力をしてまいりましたけれども、遺憾ながらいまだに振動障害にかかる方がおられますので、ただいま労使の間でもどういう取り扱いをしたらいいか、さらに検討を進めておる次第でございまして、今後あるいは新しい機械をつくり出して振動のないリモコンチェーンソーとかあるいはロータリーチェーンソーとかいろいろ対応しながら、振動障害の認定者が出ていかないような方途を現在検討しておる次第でございます。
  182. 山原健二郎

    ○山原委員 私も、この若い労働者の例ですが、国有林労働者の場合、前歴があって、他の業種、民間その他で働いて多少振動機を使って、そして病気が起こる原因が他にあったのではないかと思って調べてみたのですが、そうでなくて全く新採用で、そして営林署へ入って使っておる方なんですね。そうして、また営林署の方で新しく採用される場合にはちゃんとどういう状態かをお調べになって採用するわけですから、その前の原因というのはない場合のことを私はいま例として申し上げたんですね。だから、二時間規制ということがありますけれども、二時間ということが果たして適切なのかどうか、これもまた今後の問題として検討していただきたいという意味で申し上げたわけでございます。そういう点でもこの問題についてさらに検討していただくように要請をいたしまして、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  183. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 島田琢郎君。
  184. 島田琢郎

    ○島田委員 私はもう五年目、農水で質問をしているんですけれども、納得できるような議論を一回もしたことがないので、本当にもどかしく思っているわけです。また三月がやってまいりますと避けることのできないのが、先ほどから議論になっております各種畜産物の価格の問題であります。  きょうは畜産局長と少し議論したい、こう思っておりますが、先ほど稲富先生はさすがにベテランでありまして、私は畜産局長とここでやり合えばいいのかなと思っていたら、五年もやっていて気づかない、政務次官がいるのになぜ出てこぬかという話が出てきましたね。なるほどなあと思っているのでありますが、その政務次官は先ほどメモによりますとまだ大分先まで来ないそうでありますから、恐らく私の時間帯ではきょうは大場局長と主としてやり合うということになるのだろうと思います。  私は、先ほど来、各委員がこもごも立って、当面の乳価を中心にした畜産物の価格問題に触れてお話しをされているのを聞いておりましても、まことにどうも感じとして、農林省あるいは大蔵省つまり政府側がことしは早々と乳価を初め畜産物価格に対する逆攻勢をかけてきている、これはいままでにないことですね。日本農業新聞に、ことしの畜産物価格というのでシリーズ物を出しておりますが、その主要な人の発言を切り取って、改めて並べていま見てみました。そうしますと、大場局長と古橋主計官とが同じようなことを言っておりまして、そして最近また、きのう、おとといと私の手元に配達されてまいります酪農の新聞を見ましても、かなりいままでと違った、つまり昨年までと違った形で細かに論陣を張って、ことしはもう上げる要素はない、極端なことを言えば乳価は据え置きたいといったような意味のことを盛んにキャンペーンを張っている。私は畜産局長キャンペーンと言うのでありますけれども、どうもこれは一体どうしてこういうふうな考え方がいまから出てくるのだろうか。例年ですといまごろ乳価の話なんかすれば、いやまだ実は検討しておりません、データも集めておりません、こう言って逃げ隠れしていたのが、ことしは早々と表に出てきて、もう上げるわけにまいらぬ、こう言っているのですが、果たしてそういう認識というのは適正なのかどうかというのに私は非常に多くの疑問を持っています。特にあなたも古橋主計官も異口同音に言っておりますのは、この農業新聞の見出しにも出ていますが、「生産性向上が急務だ値上げするよりは構造政策に力を注ぐときだ」と、これは二人で同じことを言っているのです。これは二人でしめし合わせたのですか。すでに大蔵省とはこんな話し合いがついているのでしょうか。
  185. 大場敏彦

    大場政府委員 古橋君とは議論したことはございません。
  186. 島田琢郎

    ○島田委員 そうお答えになるでしょうね。まさか、もう相談したよなんて言ったら、これはえらいことになりますから……。しかし、余りにも符節を合わせているのです。  構造政策というものをいままで自民党の皆さんはおやりになってきた。そのためにひずみも出てきたということは、いままで国会でもずいぶん議論されて、そして、それを是正せねばならぬ。一口に言いますと、私どもは構造政策のいわゆるしり馬に乗って、一生懸命構造改善をやりました。土地改良もやってきたし、また、牛舎も古くてはだめだから近代建築に直しました。サイロも、三十年前建てたサイロではとても小さくて、酪農の近代化とはおよそ縁遠いということにいまではなっているから、これもとてつもないお金をかけて私どもは近代化に踏み切りました。牛乳も、小かんで運び込むようなそんな非近代的なことはやめろと言うから、これも莫大なお金をかけてバルククーラーを入れました。そのために必要な電気も、単相でいいものを三相にも直さなくちゃならない、タンクローリーが入ってくるから道路もちゃんと整備せねばならぬ、ずいぶんやったのです。ところが、結果としては借金が後を追いかけてくるという結果になっている。そのことは何人も否定しようのない結果だと私は思うのです。それをまたぞろ構造政策に力を入れるんだと、こう言うのです。つまり、もう一回借金を改めてやり直せということにどうも聞こえてなりません。私どもは、もうこれ以上借金は御免なんです、正直言うと。だから、いまの状態の中で何とか少しでももうかる酪農にしたいし、また、牛を飼っていてよかったなという、そういう気持ちを持って何とか一生を終わりたい、こう思っていますが、結果はどうでしょうか。離農者は依然として後を絶っていないんですね。それは、最近の状態を見ますと、大きい人も小さい人もおしなべて、酪農はどうももうからぬからいやになった、逃げ出したくなった、逃げ出そう、こう言って、離農率はほかの業種よりもはるかに高い。これは局長御存じのとおりなのであります。一体どういう考え方をもとにして構造政策にまたぞろ力を入れるとおっしゃっているのでしょうか。
  187. 大場敏彦

    大場政府委員 キャンペーンをしたという御指摘があったわけですが、私はそれほどの力は持っておりません。ただ、私、最近いろいろの、そう多くはございませんが、二、三の機会に御説明申し上げておりますのは、最近の生乳の生産状況、飲用牛乳の消費の状況とか、あるいは乳製品の需給状況はどうなっているか、あるいは食肉の価格関係はどうなっているかということを中心にして御説明申し上げている次第であります。私どもの考え方といたしましては、乳製品にいたしましてもあるいは食肉にいたしましても、ことしはかなり需給が緩和しそうだという感じを持っております。そういう意味で、価格政策の運用に当たって一番留意しておかなければならない事柄は、やはり消費の拡大、需要の拡大というところに逆らったような形で価格の運用をしてしまうと、かえって農民に迷惑をかけるということを申し上げた記憶はございます。それから同時に、いろいろ比較的環境が、一ころのあのパニックから立ち直って、次第に落ちつきを取り戻しつつある現在でありますから、そのときにやはりいろいろ生産対策あるいは経営改善対策、そういったところに重点を置くべきではないだろうかということを申し上げた経緯はございます。
  188. 島田琢郎

    ○島田委員 あなたは、日本農業新聞の記者に答えて最近の情勢を述べておられるわけでありますけれども、これ以上生産刺激を行うと、つまり過剰になってしまう、こういう考え方を根底にお持ちになっているように見えます。この日本農業新聞の記者も指摘をしているようでありますけれども、昨年私はこの酪農近代化基本方針に触れて、かなりの時間をかけて大場さんと議論をしたことがあります。そのときに私は、一次、二次と達成率の低い点を指摘をして、このままでは日本の酪農というのはあなたがお考えになっているような方向で進むかどうか大変危惧されますということを言いました。第三次酪近は、そういう経過を踏まえて、そして、もっと近代化の名前に値するような、つまり、酪農の設備投資を新たにやるといったようなことだけではなくて、文字どおり日本の酪農の近代化という意味で、酪農家がこれならついていけるという、そういう計画を示してほしい、こういうことを言ったと思います。その中でも特に、大型化していく経営に実はついていけない、一ころはゴールなき拡大なんという言葉で表現されたことがありましたが、現実には、私は、現場においてゴールなき拡大は依然進行していると見ています。それはできない人もいます。でも、できる人はどんどん大型化していかざるを得ないということで、まだこの枠組みの中から抜け出せないでいる。これは何を意味するかというと、私は経営の自転車操業だと思って見ている。構造改善のために多額の資金を投入をして先行投資をしました。つまり設備の近代化もやりました。これが全部借金といいますか、借入金になっていて、それを払わんがためにはどうしてもいまの規模の中ではだめだから、それをもう少し大きくしていく。しかしそれでも足りない、また大きくするという、つまり自転車操業式なやり方というものが依然まだこれは正常化していないのですね。そういうことを考えますと、私は、そうした部分で近代化基本方針というものを作成するとすれば、従来のような考え方を政府みずからひとつ改めて、何らかの具体的な手当てをそこにしませんと、これはなかなか一たん、四十頭以上の規模を目指せ、五十頭にしろ、七十頭にしろ、というようなことを言って、それに必要ないわゆる装備をした者にとっては、その借金に追いまくられて、幾ら経営の方向を変えろと言われても、なかなか変え切れないというところがあります。したがって、これは自発的にやるというようなことはなかなか現場でも許されません。だから、近代化基本方針を立てるというなら、単なる方針ではなくて、具体的に一体何をするのか、また、政府としては何をここにしていかなければならないかもあわせて明示してもらいたい、こう言ったのでありますが、この点は残念ながら畜産局長と私の考え方は大きくすれ違って、いまだに平行線だと思うのです。つまり、あなたのおっしゃりたいのは、基本方針とはおまえの言うようなものじゃないんですと、つまり、毎年毎年のいわゆる刺激策でその年の自給率が高まったり低くなったりするという性質のものではなくて、一定の目標を立ててそこに近づく努力をするということがこの酪近の最大の目標だから、あなたの言うような考え方とこれは違うんですと、根本的にはそんな考え方で立てるというふうには酪振法でなってないんですという、こういう答弁が返ってきて、私もがっくりしたことがある。これは相当時間をかけないと大場さんの頭をおれの力で変えるなんてことはできぬなと、こう思って、あのときはそれで一たん打ち切りましたけれども、しかし私は、現場に返っていろいろ考えてみたら、やっぱり私の言っているようなことでないとこれはとてもついていけない、こういう感じがするんです。  ですから、本題に戻しますと、私はそういう意味で、あなたがいま考えの中に入れている日本の酪農の近代化と現場における酪農の近代化とでは、ずいぶん大きく食い違っているというこの事実をきちっと踏まえて、そこからやっぱり日本の酪農をどうするんだというものをもう一遍考え直さないといけない、その大事な年にことしが当たっているんだと私は思うのです。だって第三次酪農近代化基本計画の第一年目に入ったのですから、そういう意味でことしの乳価というのは大変な意味を持ちますよ、まずそこを前提に踏まえて考えますと、これから本題に入りますけれども、加工原料乳と言われるこの牛乳については、従来のような考え方で価格を決定していくということは改めなければいかぬのでないか、そういう意味で、まずきょうは算式の改善という問題について私は幾つかの提言をしたいと思うのです。ぜひひとつ局長の率直な考え方を述べてもらいたいと思うのです。食い違っていたら、また詰めていくために幾度でも議論をしたい、こう思います。  そこで第一点ですけれども、前段の、こういう現場の事情、そういうものを考えていきますと、どうしても決められた保証価格の中で経営の採算を求めていくということは相当の部分の酪農家は不都合で、とてもついていけない。現にそれが証拠に、非常にたくさんの負債が累積されつつある。これは第一次をやってもらったのだから、本当はなくなっていなければならないんだが——私は前々農林大臣の安倍さんともこのことを大臣室で議論をしたときにも、大臣は、冗談じゃない、あなた、借金なんてあるわけないじゃないですか、おととしやったばかりなのに借金なんかあるわけがないと言うから、その点では、ある、ないということで最終的には水かけ論みたいになっちゃったものですから、私は水かけ論をやっていたってしようがないから、それじゃ調査をしてみてくれ、こう言ったら、それじゃ調査しましょう。昨年たまたま乳価の決定の時点で、負債という問題は農業団体からも持ち出されてきまして、大臣は公約をされた。こういう点で、先ほどの質問の中にもこの負債の問題についての議論がなされていたようでありますけれども、あなたの発言の中でも、負債が現に相当部分あるという点については認識をお持ちになったと私は理解をしております。つまり、そんな借金が出てくるというのは、単年度のいわゆる収支償わず、赤字が生じて、それが固定化し、つまりわれわれの言う負債になっているわけです。ここで勘違いはお互いにしちゃいけないわけですけれども、私はきょうの議論の中の負債整理という問題は、あくまでも払い切れなかった固定的な負債ということで限定して申し上げます。そうでありませんと、あなたがおっしゃっている投下した資本はみんな負債だと言うのはおかしいという議論でまたこんなになっちゃって——私はそれも負債だと実は思っているのですけれども、きょうのところはそこに限定しますが、その部分だけの調査でも相当の数字が積み上がってきているはずだと思うのです。手元でおわかりでしたら、発表してください。
  189. 大場敏彦

    大場政府委員 細かなデータを持っておりませんが、先ほどもほかの委員の方に御説明申し上げましたが、昨年の暮れに北海道と内地の数県に委託しました結果が出て、いまそれを集計、整理して、大蔵省に持ち込みつつある、こういう状況であります。負債の状況を見ますと、借入金は、これは平均でありますから頭数規模によっていろいろ差があるわけでありますが、北海道の例をとりましても、たとえば四十九年度が五百六十四万四千円というのに対しまして、五十年度は七百六十二万八千円というぐあいに伸びております。伸びておる理由は、財政資金、農協系統資金それぞれ伸びておる、こういうことでございまして、私ども、酪農家の方々の負債の利子負担が非常に経営の圧迫要因になっておるというような御議論を伺い、さらにいろいろお教え願っておるわけでありますが、やはりそれは、系統資金の償還期に入った場合に、それを農協から証書貸し付けで借りて、農協の金利が高いわけですからそれが利子負担として重荷になるとか、あるいは直にその他の制度資金が足りない部分を系統資金で賄う場合に高利な金利に頼らざるを得ない、こういったことがどうも経営上非常に問題だというような苦衷を酪農家の方々が訴えられているわけであります。そういう意味で、それに対する対策をどうするかということは、何らかの形でそういう御要望におこたえいたしたいということで、いま大蔵省と鋭意折衝中ということであります。
  190. 島田琢郎

    ○島田委員 固定的な負債と目されるものはこのうち幾らぐらいになっていますか、北海道だけで結構ですから。
  191. 大場敏彦

    大場政府委員 ちょっといま手元にその固定的なものとの分離ができておりませんので、恐縮ですが後ほど資料で詳細に御説明させていただきたいと思います。
  192. 島田琢郎

    ○島田委員 それでは借入金というところの部分で議論をしたいと思いますが、四十九年対比の五十年の借入金ですでに二百万円もふえている。いま若干の要素について触れたようでありますけれども、一年間で二百万もふえたというのは、先ほど私が指摘をした構造改善のために、つまり酪農の近代化のために相当思い切った投資をこの時期にしたということがこの数字になってあらわれているのだろうと思うのです。そうしますと、これがどういう種類の資金になっているのかは詳細調べてみないとわからないのですけれども、少なくとも一定の時期が来れば返していかなければならない金であります。私は、経営の原則として、これは何も農業経営に限らず企業にしてもそうでありますけれども、借り入れした金というのはやはり正規にきちっと支払いがなされていくということで初めて経営が正常になったということが言えると思うのですね。ところが、それが返されないために、第一次の負債整理を四十九年、五十年にかけてやったわけですね。それがまだ終わったか終わらぬかといったときに、また負債が出ましたよという声が、ちらちらと思っていたら、そのうちに大きな声になって去年は出てきた、こういう一連のことを考えただけでも、現在の八十六円何がしかの乳価では酪農経営そのものはとても単年度収支償っていないということの一つの証拠だ、こういうふうに言い切る人に対して私は反論する勇気を持ち合わせていないのであります。そうだという気がする。私自身の経営を見ていても、そうであります。だから、こんなことを幾ら繰り返していたって、投下した資本に対して支払いの時期が来たらそれが不幸にして固定化されておったら負債整理対策をやればいいのであって、乳価とは本来かかわりのないものだというふうに考えているのでないでしょうか。局長、いかがなんですか、この点。
  193. 大場敏彦

    大場政府委員 先ほど借入金の推移を申し上げましたが、それをさらに財政資金、系統資金と分けますと、四十九年が財政資金が三百十七万九千円でございます。それから五十年が四百七十六万九千円でありますから、先ほど先生のおっしゃいましたように全体で二百万ばかり一年の間にふえているという中で、そのかなりの部分、つまり八割に該当する百六十万円は財政資金の借り入れであります。財政資金の借り入れということから当然類推されるわけでありますが、これはいろいろの固定施設に対する資本投下というものに対する借入金でありまして、これはまた議論を蒸し返すようで恐縮でありますけれども、やはり固定資産、資産という形で一方において計上されているというものとの反射的な表現ではないかと私どもは思っているわけであります。
  194. 島田琢郎

    ○島田委員 しかしこれは返さなくちゃならない。これは認めますね。返さなくちゃいけませんね。ところが、いまの乳価で返すというのにはとても返せるような状態にない。このことはどう感じていらっしゃるのですか。もう生であなたと幾らもやり合ったから、きょうのところは二番せんじか三番せんじの話をしているようでおかしくなるのですけれども、率直な話をきょうは公式の場でやらしてもらえると思っているのですが、いわゆる固定化されつつある負債という点の認識においてはまだ必ずしも全面一致しているとは言い切れませんけれども、しかし、いまの若干の議論を通じても、酪農家の負債というのは必ずしも減っているのじゃなくて、むしろ大きくなってそれが経営に大きな重圧になりつつあるという認識においては局長も一致するんだろうと思うのですが、いかがなんですか、そういう認識はまだお持ちになるところまで行っていませんか。
  195. 大場敏彦

    大場政府委員 私の認識といたしましては、酪農経営や規模拡大の過程においていろいろ資本装備を高度化していくということに伴いまして、やはり借入金が増大しているというふうに判断しております。ですから、乳価水準との問題で、乳価水準が安いために直ちにそれが借入金の増加になってつながっているというぐあいには必ずしも判断はできないのではないかと思っているわけであります。ただ、もちろん、だからといって借入金の利子負担、この返済というものは経営上なかなか酪農家の方々にとってはいろいろな問題があるということは重々認識しておりますから、それに対する負担的な対策というものは別途いま大蔵省と折衝中であるということを申し上げているわけであります。
  196. 島田琢郎

    ○島田委員 しかし、財政資金が八〇%を占めているということは、これは容易ならぬことでありまして、つまり固定施設に対する投下が大半を占めるわけでありましょう。そうしますと、これは建てたものを売り飛ばして借金を払うわけにいきませんから、何で払うといったら乳価で払う以外にないのですよ。それか、固定化されちゃったら負債整理対策でやってもらうか何か、それ以外にはありませんね。あと切りかえて、そのときが来て償還できなかったら繰りかえ繰りかえしながら引き延ばしていくという策が精いっぱいのところであります。それだって限度がありますよね、いつか払わなければいけません。そのうちにだんだんかさが大きくなって夜逃げせんきゃならぬという結果にこれはなってしまうのであります。そのことを私は考えますと、やはりわれわれ酪農家は、乳をしぼってそこでちゃんと借り入れしたお金がきちっと払われていくということでないと、とてもやれないわけなんです。  そこで、私は、いまの価格を上げる要素は少ないというあなたのおっしゃり方というのは納得できない。それどころじゃありませんよ。私はふだん厳しいことを言うのですけれども、われわれの経営が人によっては企業的な経営というようなことを言いますね。これは政府も一ころは盛んにそんなことを言ったことがありましたよ。私は企業的な経営というようなことなんかとてもとても及びもつかぬことであって、一般企業であれば、単年度でもってもうかった分の内部保留を二五%も多い人はするなんというようなことが許されている。ところが、われわれにはそんなどころじゃないですよ。再生産を確保するなんてことがいまの状態の中ではできないわけで、単年度の収支をどうやって償うかということで精いっぱいなわけですからね。だから、せめて借金が順序よく、しかも固定化しないように払っていくことのできるようないわゆる手だてだけは講じてもらわないと、これはとても酪農を息長く続けていくことはできないというのは私はあたりまえの要求だと思うのです。そういうことを考えて、私どもは今度の加工原料乳保証価格の算定に当たって、次の点をぜひひとつ改善をしてもらいたいと思うのです。  その第一は、農業団体が出してまいりました価格の基本になっている部分で、大分農林省、つまり政府が従来やってきたこととは要求の側とで食い違いがありますね。この点はどうですか。私は整理する必要があるんだ、こう思うのです。  たとえば同じ生産費所得補償方式だといっても、その方式においては名前は同じだけれども中身においてはずいぶんこれは違うわけです。たとえば最もその基礎になっておりますのが生産費の調査のやり方であります。農林省政府は、昨年から一道一県で、北海道と岩手県の生産調査結果を用いているわけでありますけれども、しかし現実にはまだ確かに法律で言うところの過半数を割っている、そういう状態のところはありますけれども、しかし以前、かなりの保証乳価部分といわれている生産県があるわけでありまして、それは青森だとか山形だとか福島、鳥取、長野なんというのは、これはかっては五〇%以上の加工原料乳を生産した地域であります。それが次第に飲用乳に取ってかわりつつあるということは否定し得べくもありませんけれども、しかし、主産県だけではなくて、全国に多少なりとも加工原料乳という性格の牛乳が生産されているのでありますから、そのうち沖繩まで含めて全県それをとれということを私は言っているのではない。また、農業団体もそれを言っているのではないのですから、せめて四、五年前まで採用しておりました一道六県ぐらいのいわゆる生産調査結果をもとにして試算をされるというのが、数字的には平均値を求めるという点できわめて好ましいんではないか、私はこういうふうに思うのです。これは昨年からもうずいぶん固執していて、法律に基づいて云々と、これは恐らく答弁されるんだったらそれ一本で押し切られるに違いない。そういうことではなくて、もっと全国的な平均のいわゆる価というものを求めていくという考え方に立って、一道六県ぐらいを最低に採用されるということのお考えにぜひ変えてもらいたい。これが第一点です。  それから二点目は、労働のいわゆる評価の問題であります。昨年もずいぶん大きな話題になりまして、自民党の方でも生産者の要求をおおよそ入れるような考え方に立って、そして労働評価の一本化をやろうというところまでいったのに、畜産局長の手元でこれはつぶしたのです。私はいまでもそう思っている。自民党の諸君は一生懸命やったと思うんだよ。それなのに畜産局長は一人で握りつぶした、悪いやつだと、いまだにこれは忘れられないのです。どうなんですか。これはことしはどうしても一部いままでと違って、労働の評価というのは盛んに、局長流に言えば新労賃でやるということに、これは生産調査の結果もそうなっておりますからそうなりますけれども、しかし二本立て労賃をやめるとまでは言ってないのですね。この辺のところは、私はもう——昨年もおととしもあんなに大きな問題になり、立法府の方もおおよその意見は全部がまとまったようではありませんが、自民党も半分くらいに割れたようでありますけれども、ここにいらっしゃる農林議員の人たちはみんな賛成して、恐らく一本化しようと言ってくれた人たちだろうと思うのでありますけれども、とにかくこんなばかげたことが旧態依然として残っておって、口で構造政策を推進するだの、近代化を促進するだのと言っても、この価格の算定の仕方そのものが古色蒼然としており、しかも納得もできず、どう考えたって、頭のいい人が考えたんだからぼくらみたいなぼんくらな頭にはわからぬけれども、飼養管理労働費が六百八十一円と割り出してきて、飼料づくりが四百三十七円八十九銭、それを二つ足して二で割って五百五十九円、これは大野伴睦さんじゃありませんけれども二つに重ねて割ったような価格というのは、自民党筋でもいまごろは全く通用しない価格だと思うのですよ。そういうものがいまだに整理されていないというのでは、日本の酪農の近代化が泣こうというものです。この点を二点目に私は指摘をしておきたいと思うのです。  さらに、重ねて労賃でありますけれども、私どもは同じ白い乳を生産するという立場に立って、乳業労働者の皆さん方のいわゆる労働賃金というものとも、そんなにいきなり一遍に一緒にということは無理だとしても、しかし相当これに近づいた労賃を採用してほしい。また春闘で労賃というものの問題が毎年出てくるわけでございますが、私は全国労賃にも比べて大体見劣りしない。本当は、私なんかは苦労の仕方が違うと自負しておりますから、そういう点ではどの業種の人よりも高い労賃を出してもらって罰は当たらぬと思っておりますけれども、そうは言っても歴史的な流れが一つあっていきなりそこに持っていくのには抵抗もあるでしょうから、私はそこで急激に持っていけとは言いませんが、もうそろそろこれを改めていくという考え方が出てきませんと若い人たちはどうも納得しない。私どものような年になってくればもういまの経営に何割かあきらめて、牛が好きだ、ベコが好きだから一生懸命やるというようなことでやれますけれども、若い人たちに新しい経営を任せていくということになりますれば、こうしただれが考えても納得のできないような部分をそのまま放置しておいて経営の跡を継げと言ったってこれはむちゃくちゃというものであります。この点、ことしは思い切って直してもらいたいと思いますが、以上、とりあえず二点についてだけ、私の考え方を提起いたしましたので、局長の率直な意見を求めたいと思います。
  197. 大場敏彦

    大場政府委員 生産費に基づきまして価格を決めているわけでありますが、まずその生産費のとり方、対象地域の問題であります。これは御承知のとおり法律で、その生産される生乳の相当部分が加工乳として認められる地域の再生産を確保するために云々、こういうような規定がございますので、私どもその規定に基づきまして対象地域を設定している、こういうことでございます。決定的な理由というのはもちろんございません。ございませんが、しかし単年度だけをとっては問題があるということでございますので、過去直前の五年——従来のやり方を申しますれば、従来は少なくとも過去直前五年の数字をとりまして、その中で生乳の生産量と飲用向け処理量というもの、あるいは逆から言えば加工に向けられる分でありますけれども、加工に向けられる率が五〇%を占めている県を拾い上げている。こういうような形で、それが結果として北海道と岩手というような一道一県が昨年度の生産費価格決定のときには採用されたわけであります。一道六県というような御指摘がございましたが、たとえば福島にいたしましても五十年を例にとりますとすでに六三・五%というような市乳化率になっておりますし、青森にいたしましても六六%、山形が七一%、鳥取が七八%というような高い市乳化率になっております。岩手も単年度だけをとりますと五〇%を超えて五八・八%というようなことでございますので、現実に単年度をとればかなりの市乳化が進んでいる、こういう状況でございます。しかし単年度だけをとるのも余りにもラジカル過ぎるという意味で直前五年をとっている、こういうことが従来の経緯であります。  それから一道一県というといかにも限定されたふうに一般的には理解されて困るわけでありますが、実際は加工原料乳の生産の中で占めるウエートは北海道は八三%それから岩手が約三%でありまして、この一道一県だけで八六%というような、ほとんどと言っていいような生産を占めているのが実態でございますから、極端に対象地域をしぼったというぐあいに私は思ってない次第でございます。それから労働評価の問題。これは私ども内部でまだいろいろ検討中でございまして、もちろん最終的な結論というものは出しておるわけではありません。いろいろ皆さんの御意見を聞きながら勉強している最中でありますけれども、従来の例で申し上げますれば、飼育労働につきましては、その労働の特殊性からいたしましてその地方の五人以上の製造業労賃で評価がえをしているということでございます。そこで、足して二で割るようなやり方はおかしいじゃないかという御指摘がいまありましたが、牧草をつくる栽培労働につきましてはいろいろ過去の経緯も踏まえ、畜産危機の後遺症から完全に抜け切っていないというようなことも考えまして、農村日雇い賃金と製造業労賃の平均値をとったというのが昨年の経緯でございます。  そこで来年度どうするかという話でございますが、これは従来とはいささか様子が変わってきている点があります。と申しますのは、従来は農村日雇い賃金というものを農畜産物の自家労働の評価の一般原則として使っていたわけでありますけれども、それがいろいろな問題が出てきた。つまり婦人労働だとかあるいは年寄りの労働だとかというような形、それから労働の質も補助労働に変わってきているというようなこともございまして、量的、質的にもそういった労働市場は非常に少なくなってきているということもありまして、問題意識としてわれわれ持っているわけでありますが、今度、農林省全体といたしまして、統計情報部では農畜産生産費の自家労賃の一般評価の原則として新しい労賃方式をとる、こういう方式を採用することといたしております。そのデータも来年度は間に合うわけでありますので、それとの兼ね合いをどうするかということもあわせていま検討中であります。
  198. 島田琢郎

    ○島田委員 乳業労賃はもうわかっておるのじゃないですか。
  199. 大場敏彦

    大場政府委員 乳業労賃とおっしゃいますのは……。
  200. 島田琢郎

    ○島田委員 中で採用する……。
  201. 大場敏彦

    大場政府委員 飼育労働でございますか。
  202. 島田琢郎

    ○島田委員 いやいや、メーカーの労賃……。
  203. 大場敏彦

    大場政府委員 乳業メーカーの労賃というものはまだ把握してないそうであります。しかし生産費のとり方のときに農家の自家労働をどういう評価基準で評価するかということはいろいろ議論が分かれるわけでありますけれども、そのときに乳業者といったような片方の企業に従事している労働賃金を採用するということはこれはやや議論を呼ぶところじゃないかと思っておるわけであります。一つは企業に雇われてそして労賃という形で賃金を受け取る、一つは自家経営、一つの経営者というかっこうで自己の販売物を生産してそれの対価の中から所得部分を得る、いろいろ形が違うわけでありますから、その中に同じ乳業関係に従事するという意味で乳業メーカーの賃金を持ってきて導入するということについてはやや議論を呼ぶところじゃないかと私は思っております。
  204. 島田琢郎

    ○島田委員 残った部分はまた引き続き小委員会等でやらしていただきますが、残り時間少なくなってきましたので、先ほどからこれも各党の委員から話題にされております、また分科会等でもあちこちから局長が問い詰めを受けているようでありますが、私もこの点ひとつはっきりさせておきたいと思いますが、限度数量であります。限度数量という問題をいろいろ議論いたしますと、これだけでも相当時間がかかるわけですけれども、私は端的に言って、百三十八万トンをオーバーしたからそれがどうのこうのといったようなことを言うのは本来おかしな話で、法の精神とか何とかいうことを言っていますけれども、そうでなくとも私どもこの十年間にえらい損したようなつもりがしているのですよ。その点は余り厳しく言ってきませんけれども、いまの牛乳の取引というのは全部三・二%で統一されておるわけでしょう。ところが最近は脂肪がどんどん上がってきまして三・五以上あるのですよ。もう十年ぐらいの間三・二以下になったところは余りありません。特に北海道なんというのは大変脂肪率が高い。補給金はその三二%に対してくれるのじゃないのですよ。つまり中身は脂肪率が何ぼあろうと、乳脂量が幾らあろうとそんなことは関係なしに、一キロのどんぶりに入った牛乳にいわゆる二十五円というものをくれておるわけですからね。私は去年一年間計算したらそれだけでもっておおよそ四十億ぐらい損をしておるような気がしています。十年間たったら一体どれだけになるのでしょうか。そこのところを、これも近代化すべきだと思うのです。取引の近代化。そういう意味から言えば、政府はそんなところでごまかさないで、ちゃんと三・二%に換算した牛乳に一キロ幾らで払ってくれるのがしかるべきだと思うのです。いまさらそれを払えと私は言いませんけれども、オーバーした分の三十六億ぐらいの金は、さっき稲富さんのお話を聞いておりましたら、半分をどうのこうのとごちゃごちゃ言っていたので、私はあれひどいことを言うぞと思って、いままで言わぬことを言ったので腹が大体固まったのかしらと思ってえらい警戒の念を強めているのです。皆さんが言っておるのはそうじゃないですね。現金でくれ、そうでないと局長の言っておるような経営の内容にはなっておらぬのだからそんなところはひとつ——データをずっと見てみたら、四十一年の制度発足以来、限度数量をオーバーしたというのは四十三年と四十四年にちょびっと出ただけなんです。あとは計画どおり限度数量内で、一生懸命やってもここへ及ばなかった。たまたま十年たって、ことしは一割ほどオーバーしたというのに何も目くじら立ててちびったりすることないじゃないですか。そんなのは酪農家の期末手当、ボーナスくらいの気持ちで出したっていいじゃないかと私は思うのです。お金がないというならあるところを何ぼでも探してきますよ。ですからこれはひとつ現ナマでばちっと出してください。そのことをきょう歯切れよくおっしゃってくださいよ、もう私やめますから。
  205. 大場敏彦

    大場政府委員 生産者の気持ちもよくわかりますし、いま先生のおっしゃったこともよくわかりますが、一方におきましてやはり限度数量は限度数量じゃないかという議論もかなり強くあるわけであります。それの内と外とまるっきり同じであっては限度数量をつくった意味がなくなるんじゃないかというような議論もあるわけであります。そういう議論もありますから、この問題折衝上非常にむずかしいということは先生御理解願いたいと思います。しかし、先生のいま御発言になりました気持ちはよくわかりますから、いろいろ努力はしている最中でございます。
  206. 島田琢郎

    ○島田委員 わかりました。  終わります。
  207. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 瀬野栄次郎君。
  208. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソ漁業交渉問題について岡安水産庁長官にお伺いいたします。  農林大臣にお伺いしたいところでありますが、本日は大臣が所用があって出席されませんので、長官からひとつ責任ある答弁をいただきたい、かように思います。  二百海里時代の日本漁業を占う日ソ漁業交渉が一昨日の三月十五日より東京とモスクワで並行して始まったわけであります。すなわち、今回の日ソ漁業交渉は、一つには、日ソ漁業条約に基づく日ソ漁業委員会として今年のサケ・マス、ニシンの漁獲規制を決める東京交渉と、二つには、鈴木・イシコフ会談に基づき二百海里漁業専管水域を互いに認める日ソ漁業長期協定と、三つには、それができるまでの暫定取り決めを行うモスクワ交渉でありますが、日本とモスクワにおける両交渉ともにかってない厳しい交渉の雲行きであることは御承知のとおりであります。国会においても、本日の本会議において日ソ漁業交渉に関する決議を行ったところでございます。  私はいまから数点長官に質問するわけですが、日本国民の動物性たん白質を守るためにも、日本の先祖が命をかけて開拓した漁場を守るためにも、今回の交渉は強気でそして国民のために体を張って闘ってもらいたい、こういう決意で、あえて私は本日の本会議で決議したこの機会に激励を含めて数点を質問するものでございます。  日ソ漁業交渉に関する両交渉の今日まで三日間の進行状況また成り行き、こういったものについてまず水産庁長官から率直な感想と今後の見通しを冒頭に承りたいのであります。
  209. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先生指摘のとおり、現在東京とモスクワと分かれまして交渉を行っているわけでございます。  まず、東京におきます日ソ漁業条約に基づく日ソ漁業委員会の進捗状況でございますが、十五日の午後開会式を行いました。その後非公式の話し合いをその日並びに翌十六日いっぱいをかけましてやってまいりましたのでございますが、大体十六日中に議題の整理が内々できまして、本十七日、三日目の朝から本会議を開きまして、まず今会期の議題の決定をいたしたわけでございます。その後、それぞれ科学技術の小委員会それから取り締まりの専門家会議等々小委員会に分かれまして、現在科学技術の小委員会におきまして資源の評価等につきましての両国の考え方の表明というのが行われているわけでございます。  今後はその日程に従いまして交渉が行われるわけでございますけれども、われわれといたしましては、なるべく早く交渉の成果を上げる。特にニシンにつきましては、樺太の西並びに北海道周辺におきましては大体三月から四月というのが主要漁期でもございますので、なるべく早く結論を出したいということで、まずニシンを取り上げるという心構えで交渉に臨みたいというふうに思っております。  それから、モスクワにおきます交渉でございますけれども一つは、御指摘のとおり今年いっぱいの漁労を可能にならしめるための暫定取り決めと、それから基本協定の交渉と二本あるわけでございますが、まず基本協定の交渉につきましては、先般一応それを開始するというようなセレモニーが行われたわけでございますけれども、今月中に決着を見なければならない暫定取り決めを中心にいたしまして現在交渉が行われているわけでございます。これも十五日に始まりまして、それぞれ交渉団の団長から基本的立場の表明があった後、私どもといたしましては交渉を早く決着をさせるというような考え方から、まず暫定取り決めの日本側の案というものを提示いたしましていろいろ説明をいたし、ソ連側から質問があるというようなことを第一日にやったわけでございます。  第二日におきましてはさらに私どもの方から、従来の北西太平洋におきます日本の漁業の実績というような詳細な資料を提出いたしましてその説明をし、向こうの意見を聞くということと同時に、ソ連側の暫定取り決め案文の考え方というものを聴取いたしたわけでございます。  三日目、本日六時間おくれで十時から会議が続行されておるようでございますが、その内容はまだ私どもの方に到着をしておらないというわけでございます。  このモスクワの暫定取り決め交渉は、御承知のとおり今月いっぱいに決着をつけなければならないということでございますので、ひとつ精力的に交渉を進めたいというふうに思っております。
  210. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 岡安水産庁長官から概括的に御説明をいただいたわけですけれども、われわれが聞くところによると、モスクワにおける日ソ漁業取り決めの交渉において、ソ連側がソ連二百海里水域内での日本漁船によるサケ・マス漁の禁止を図っていることと、また同水域内でのサケ・マス問題を東京の漁業交渉からモスクワの交渉に移したい意向をほのめかした、こういうふうに聞いておりますけれども、これが事実であればわが国漁業は大打撃を受けることは必定であります。そこで、この真意と、これに対するわが国の対応はどうしておるのか、その点をまずお伺いしたい。
  211. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ソ連沿岸二百海里内のサケ・マス、ニシン等につきまして、ソビエトは資源が非常に枯渇をしているというような理由のもとにこの漁労をやめたいというような意見が、東京におきます日ソ漁業委員会の団長であるニコノロフさんが東京に着きました際の記者会見において発言をしたということが伝えられているわけでございます。私どもは、サケ・マス、ニシンにつきましては日ソ漁業条約に基づいて日ソ漁業委員会において討議をされるべきものであり、それがどういう資源状態にあるかということも当然当該委員会においてお互いに意見を述べ合い、評価がされるはずのものでありますし、その漁労について万一規制をする場合におきましても、日ソ漁業委員会の場において合意がなされなければならないという立場でございます。確かに日ソ漁業委員会の議題を整理する非公式な交渉の場におきましてもそのような意向を向こう側の代表は表明をしたようでございますけれども、私どもはあくまでも科学的な資源評価に基づきまして今後の漁労活動は決定されるべきものというふうに考えまして、今後の日ソ漁業委員会の交渉に臨みたいというふうに考えております。
  212. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この交渉は大変な努力が要ると思いますけれども、いま長官がおっしゃったように、大臣ともども科学的な資源評価等をおっしゃって、ひとつ強力な交渉をしてもらいたいと思います。  また、いまの問題に関連して、東京における日ソ漁業委員会第二日目の昨日ですけれども、ソ連側がニシンの全面禁漁の方針を改めて打ち出す一方、現行日ソ漁業条約の存続についてもことし限りとの基本態度で議題から外すことで押し切ろうとしたというふうに聞いておりますけれども、これが事実とすれば実質的に漁業条約の破棄通告に踏み切った、こういうふうにみなされるものか、また政府はそんな軽々にこれを認めるわけはないと思うけれども、こういった問題に対する受けとめ方は、当該水産庁長官としてどういうふうな見解を有しておられるか述べていただきたい。
  213. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず、ニシンの話でございますけれども、議題の設定交渉の場におきまして、私どもはニシンにつきましてはサケ・マス同様、この日ソ漁業委員会におきましてニシンの資源状態とその漁業規制に関する必要な措置というものについて話し合いを行おうという提案をいたしたわけでございます。それに対しましてソ連側は、ニシンの資源状態が非常に悪い、そこでソ連としても全面的にニシンの漁労を中止するというような意向でもあるので、日本側におきましても資源状態を勘案いたしましてニシンの漁労はやめてほしいというような考え方から、議題の採択に当たりまして、ニシンの資源状態についての話し合いはするけれども、漁業の規制に関する必要な措置の話し合いは必要でないというような意見があったわけでございます。それに対しましても私どもは、先ほども申し上げましたとおり、ニシンの問題につきましては科学的な資源評価に基づいて初めて漁労をどうするかということになるべきであるので、あらかじめニシンの漁労はしないという前提で交渉に入るわけにはまいらないということで説得いたしまして、結果的には昨年どおりニシンにつきましてもサケ・マス同様、資源状態についての評価並びに漁業規制に関する必要な措置について検討をするということになったわけでございます。  それから、二番目の御質問の日ソ漁業条約の廃棄についてソ連側はどういう感触かというお話でございますが、これも議題の採択に当たりまして、私どもの提案といたしましては、従来どおりこの委員会におきまして次回の日ソ漁業委員会の招集の場所、それから時期等についてやはり今回の委員会で話し合いをすべきであるという提案をいたしたわけでございます。それに対しましてソ連側の委員は、日ソ漁業条約というものは近く廃棄されるべきものであるから、今回の漁業委員会においては次回のことを相談する必要はないというようなことを言ったというふうに私ども聞いております。ただ、これはソ連側の委員がそういうような感触のもとに議題の採択についての意見を述べたというふうに私どもは聞いておりますので、ソ連側の正式な条約の廃棄通告というふうには考えておりません。ただ、そういうような意見が述べられたということは、ソ連もこの条約の廃棄についていろいろ検討をしているということを感ぜざるを得ないというのが現在の感触でございます。
  214. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官のいまの答弁で幾らか私も理解しましたが、この問題についても仮に一国が破棄を通告しても一年間は有効であるということになっておるわけですから、その辺はしかと心にとどめておられるはずですが、ひとつ強力に推し進めていただきたいと思います。  それから、いまニシンの問題が出ましたが、これに関してもう一点お伺いしておきますけれども、ニシン漁はサハリン沖合いを漁場とする沖刺し網漁業、沖合い底びき漁船約八十隻がさきの鈴木・イシコフ会談で三月いっぱい禁漁となって現在出漁を待機中であります。北海道の漁民はもういつかいつかということで日ソ漁業交渉の成り行きを見守りながら一日千秋の思いでいら立った気持ちで待っておると同時に、また生活権にもかかってくるし、日がたつにつれて焦燥感が出てくることも事実であります。私も党の農林水産局長をいたしておりますものですから、あらゆる階層から、またあらゆる団体から電話、手紙等たくさんいただいて激励を受けておりますが、きょう本会議でいわゆる決議をした機会でもあるのであえてこの問題も一問水産庁長官にお伺いするわけでございますけれども、この水域では御存じのように年間二万七千トンのニシンをとっておりますけれども、三、四月が漁期であるために早急に結論が出なければ手厳しい打撃が日がたつにつれて重なってくるということで地元には悲壮感が漂っております。その辺も十分考えて交渉に当たっておられると思いますが、仮に全面禁漁になればサハリン海域だけでなく最大の漁場であるオホーツク海域を失うことになってわが国のニシン漁は事実上皆滅することになるわけであります。わが国の先祖が命をかけ血を流して開発した伝統的漁獲実績を確保してもらいたい、この点は強力な交渉をしてもらいたい。こう思うのですが、長官の答弁で昨年どおり検討をするということで議題には上ったものの、まだ昨年どおりのいわゆる漁獲ができるという保証が何もないわけです。この点さらにがんばってもらいたいと思うが、あなたの決意のほどをさらに伺っておきたい。
  215. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かにニシン漁はソビエトの言うとおり、主たる漁場がソビエトの沿岸二百海里の中にあるわけでございます。樺太の西、北海道周辺さらにオホーツク等を漁場としておりますが、すべてソ連の二百海里内にあるわけでございます。私どもといたしましてはこの漁業の従来の実績等を十分承知いたしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に厳しい態度でソ連側が出てくるということが十分考えられるわけでございますが、私どもは日ソ漁業委員会の場において十分私ども意見も申し上げて、できるだけ伝統的な漁業実績が確保できるように全力を尽くしたい、このように考えておる次第でございます。
  216. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間も詰まっておるようですから、あとそれじゃ簡潔にお伺いして、長官の今後の強力な交渉を待ちたいと思いますが、東京交渉で北方四島周辺水域の扱いが最も困難な問題として、私たちもいろいろ推察しておるところでございますけれども、ソ連側はすでに四島をすべて自国の二百海里水域内に入れているために、四島周辺水域における裁判管轄権や入漁許可証をめぐって、この交渉によってデッドロックに打ち上げるというようなおそれもあるのではないかというふうにわれわれ危惧してはたから見ておりますけれども、この点はどういうふうにいまのところ見ておられますか、その点をお答えいただきたいと思います。
  217. 岡安誠

    ○岡安政府委員 東京交渉は従来の日ソ漁業条約に基づくものでございますので、当面といいますか、御心配のようなことは恐らくないというふうに思いますが、モスクワにおきます長期協定、基本協定の取り決め、それから暫定取り決めの交渉等におきましては、ソ連の出方いかんでは困難な問題の発生もないわけではないと思います。  ただ、私どもまず急がなければならない暫定取り決め交渉におきましては、これはあくまでも行政取り決めでございますので、政府のできる権限の範囲内でしか約束をするわけにはまいらないということでございます。したがって、いま御指摘許可証とか取り締まり、裁判管轄権等の問題につきましては、これはもっぱら基本協定の交渉対象になるべきものでございまして、暫定取り決め交渉では私どもは行政府として取り扱うことはできないということを相手方に従来からも強く申しておりますし、今後も主張いたしたいと思っております。  四島問題も、当然のことながら、われわれは北方四島がわが国固有の領土であるというような立場をいささかも変えるつもりはないわけでございまして、今後の交渉におきましてもそういう立場の上に立ちましてソ連の理解を求める、それによりまして暫定交渉による今年いっぱいの漁労を確保するという方針で交渉に臨みたい、かように考えております。
  218. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 岡安水産庁長官は三月二十日からモスクワ交渉に急遽赴かれると聞いておりますが、交渉の成り行きいかんによっては、再度鈴木農林大臣をモスクワへ派遣し、政治折衝等の必要なんかも起きてくるのではないかと思いますけれども、当該担当の水産庁長官として今度モスクワに行かれる、またその結果によってはそういうこともあり得るのか、その点どういうふうに見ておられるのかお聞きしておきたい。
  219. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現在水産庁の松浦海洋漁業部長が代表として出ております。交渉が非常に困難を伴うものではないかということが予想されますので、国会にもお願いをいたしまして、私もモスクワへ出かけさせていただきたいというふうに思っております。  私ども全力を挙げて交渉いたしまして、本日の院の御決議にもございますとおり、従来からの北洋漁場におきます伝統的な漁業実績と安全かつ円滑な漁労の確保という点に向かって全力を傾けたいと思っております。相手方のある交渉でございますのでどういうことになりますか、私ども現在では、われわれ代表が全力を傾けて交渉いたすというつもりで出発をいたすということを申し上げておきたいと思っております。
  220. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、岡安水産庁長官もいま重大な決意を述べられましたが、今度の交渉はまことにソ連の一方的な強い交渉によって、日本は厳しい守勢に立たされている、かように思っておりますけれども、私は、本日は国会でも決議されたし、当委員会でもこのことがいろいろ論議されたということを踏まえて、もう出発されるまでに委員会でこういったことが論議されるかどうかわかりませんが、十分ひとつ国会の意思を体して、また一億一千万人の日本国民をバックに、体を張って、強力な交渉をしてきていただきたい。  と同時に、先ほどから申しましたように、今回の日ソ漁業交渉に当たっては、いわゆる北洋におけるわが国の伝統的漁獲実績と安全操業の確保、そして三、四月に控えたニシン、サケ・マス漁、こういったもののいわゆる出漁が一日も早くできるように、ひとつ国民の名において強力な交渉をしていただくように重ねてお願いしたいわけですが、あなたの決意を最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  221. 岡安誠

    ○岡安政府委員 重ね重ねのお言葉ありがとうございます。一生懸命やってまいります。
  222. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、御健闘を祈って、質問を終わります。
  223. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十七分散会