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市川委員 本当にその問題をもうちょっと突っ込みたいのですが、時間がありませんので、もっと具体例で申し上げたいと思うのです。抽象論をやっていても意味がないと思いますし、これから一つの例を挙げます。
これは国の行政全般から見れば神奈川県の逗子市の小さな問題であるかもしれませんが、しかし、この
施設に端的に一つの精薄児対策のおくれというものがあらわれているわけです。そういう立場から申し上げるわけです。先ほどねむの木学園の話をしましたが、このねむの木学園のミニ版と考えていただいたらいいのじゃないかと思うのです。社会的に弱い立場にある精薄児に対して、個人がやれば市や国は気づいて
施設の設置に動き出してくれるだろうということで、ある一人の獣医師の方が立ち上がって逗子市に逗子治療教育センターというものを十年前につくったわけでございます。市内を転々としまして、現在はある篤志家の方から提供された民家約百五十坪ぐらいのところに、かつては旅館で使っていたところが旅館で使えなくなって古くなってぼろぼろの建物なんですが、取り壊しの話が出ていたものを、どうぞ、そんなに困っているならお使いくださいということで、借り受けて使っているわけです。対象児童は大体三歳から七歳の精薄児。十年間でこのセンターから巣立った児童が約七十五人。しかも、逗子市でやっているのですが、実際この七十五名のうち逗子市の児童は十七名でございましてあとは横須賀とか横浜、鎌倉という他の市からわざわざ五十八人も来ているわけです。現在大体九人の児童を、学期がかわりましたから預かってやっているわけです。大体一週間に三回で、午前九時半から午後一時四十五分、お母さんが児童と連れ立って通園して指導員と一緒にやっているわけです。保育料が一万円。保育指導員が約三人正規の資格を持った人がおりますが、お母さんの中に一人資格を持った方がいて、手伝っていただいて四人でやっている。こういう
施設でございますが、年間の支出経費が三百三十九万円。これに対して公の援助金が逗子市から約二十万出ているだけでございまして、あとは自力で努力してこの十年間やってきたわけです。保育、入園料が年間で百十四万。これと市の援助の二十万で百三十四万。残りの二百五万については、賛助会員をつくって賛助会費をいただいたり、寄付金をやったり、バザーをやって辛うじて収入をやりくりしている。そのほか、庭が壊れて直すとかあるいは雨が漏れて困るから屋根を直すとか、そういうのは全部地域の大工さんやガラス屋さんに無料奉仕でやってもらっているわけですね。バザーで百十九万の収入が五十一年度はあったのですが、これだって、ここへ通っている児童のお母さんが徹夜したり何かしてお人形をつくったりセーターを編んだりして、いろんな地域のお母さんに呼びかけて手伝ってもらって売って、ようやく百十九万つくり出した。こういう地域のボランティア活動に支えられてこの
施設があるわけです。ここで働いている職員というか指導員の待遇ですけれ
ども、大卒で指導員の資格をちゃんと持った人が三人おりますが、その中心でやっている一人の方、二十八歳で、結婚してお子さんが一人いるのですが、本俸五万円、諸手当がついて七万五千三百二十円というお給料でいまやっておるわけです。奥さんも一緒に毎日
施設に来て手伝ってやっておるわけです。自分の子供を持ちながら御夫婦で働いて七万五千三百二十円。これをほかの、たとえば川崎市にある市の
施設に勤めている職員の給与と比べますと、同じ年齢で同じ資格で
幾らもらっているか申し上げますと、諸手当全部で十七万八千二百三十三円。ちゃんとした資格を持ちながらそういう市の公立のところで働けば十七万八千円の給与がもらえる。ところが、こういう困った方のためにということで奉仕してやっている方は御夫婦で働いて七万五千円、こういう実態がある。本人は文句を言っているわけじゃないのです。甘んじてアルバイトをしながらがんばっているわけですね。また、これを中心になってやっておられる獣医師の方は、自分が往診のときに賛助会員をつくって、一万円ずつ出してください、そういう形で集金をしながらがんばってやっておるわけです。保育料も非常に安く設定してやっておるわけです。普通ですと週三回で二万二千円、週二回で一万八千円、週一回で一万四千円。ここは週三回で一万円なんです。というのは、ダブルハンディの児童が多いために
医療費にもお金がかかるだろうということで、極力父母の負担を軽くしてあげようじゃないかということで一万円に抑えてやっているわけです。
こういう
施設がありまして、私も何回か行ってお母さん方の話も聞いているし、実際に保育している現場も拝見をしているわけなんですが、これはもちろん無認可です。それは個人が好きで勝手にやっているんだというお考えは恐らくないだろうと思うのですが、こういう無名の善意に支えられて
施設があって、その
施設へいろいろなお子さんが通ってきて、助かって感謝している手紙が寄せられているわけです。いわば県とか国だけとは申し上げませんが、県とか国とか市とかいう公の対策がおくれている部分をこういう無名の人たちが一生懸命善意で支えてがんばっているわけです。これを勝手なことをしているというふうにとらえれば、これは法律の基準がありますから、無認可ですし基準に合いませんからだめですというふうに切るのでしょうが、しかし社会の中で一生懸命自分が奉仕の精神でやっているというものは、そういう一片の通達とか行政ということではなくて、守り育ててあげようという政治の、行政の姿勢がぼくは欲しいわけですよ。こういうことについて、いきなり大臣と言ってもあれかもしれませんが、
局長さんでも大臣でも結構なんですが、積極的に援助してあげてもっと守って育ててあげよう、そういうお考えはないのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。