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1977-04-14 第80回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月十四日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 長谷川正三君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       塚原 俊平君    藤田 義光君       増田甲子七君    上田 卓三君       上原 康助君    栂野 泰二君       矢山 有作君    安井 吉典君       新井 彬之君    市川 雄一君       柴田 睦夫君    東中 光雄君       中川 秀直君  出席国務大臣         文 部 大 臣 海部 俊樹君  出席政府委員         文部政務次官  唐沢俊二郎君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      今村 武俊君         文部省社会教育         局長      吉里 邦夫君         文部省体育局長 安養寺重夫君         文部省管理局長 犬丸  直君         文化庁長官   安嶋  彌君         文化庁次長   柳川 覺治君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      山口 健治君         外務大臣官房領         事移住部長事務         代理      橋本  恕君         外務省アメリカ         局北米第一課長 渡辺 幸治君         外務省国際連合         局専門機関課長 中村 昭一君         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 長尾 立子君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     堀内 光雄君   塚原 俊平君     田中 六助君 同日  辞任         補欠選任   田中 六助君     塚原 俊平君   堀内 光雄君     宇野  亨君 同月十四日  辞任         補欠選任   栗林 三郎君     上原 康助君   柴田 睦夫君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     栗林 三郎君   安藤  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     柴田 睦夫君     ————————————— 四月十二日  扶助料及び遺族年金の改善に関する請願(園田  直君紹介)(第二九四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提 出第一六号)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより会議を開きます。  文部省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長谷川正三君。
  3. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま議題となりました文部省設置法の一部を改正する法律案関連いたしまして、この際、文部大臣文化庁長官その他政府委員に御質問申し上げたいのですが、あらかじめ、私きょうは三十分しかいただいておりませんで、残余のものは後にさらに質問を続行させていただくことを御了承いただきたいと思います。  そこで、早速本題に入りますが、今回の文部省設置法につきまして中身を見ますと、国立婦人教育会館文部省付属機関として設置すること、国立国際美術館文化庁付属機関として設置すること、この二つが中心であると存じますが、文部大臣提案理由説明の中に、まず国立婦人教育会館につきまして「昭和四十六年以来諸般の準備を進め、」とあります。そこで、私、内閣委員会では多分きょうは初めての質問だと思いますので、大変素朴な質問で恐縮でございますが、ひとつ御親切な御答弁をいただきたいと思います。  この四十六年来、国立婦人教育会館を設立するという方針をお立てになって準備を進められたということでありますが、そのことはあらかじめ国会において何らかの機関でその方針を承認を受けているのかいないのか、その点をまず、私、大変不勉強で具体的な事実を知りませんので、お尋ねをいたします。
  4. 吉里邦夫

    吉里政府委員 お答えをさせていただきます。  この婦人会館設置そのものについての議会での御議論があったわけではございませんで、予算の中で、四十六年以来調査費を計上いたしてきておりますので、予算を通じましてわれわれの方針なり意思を先生方にお伝え、また御了解を得てきているというふうに存じております。
  5. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 わかりました。いずれもそういう形で、物を設置するときに予算にまず示すということで、調査費等から始まって準備を進められるのですが、本来的にこういう問題は内閣委員会なり文教委員会で十分討議して、その方針が確認されて、その上で進むのが私は正しい政治の進め方ではないか。きわめて一国民的な立場に立ってもそういうふうに考えますが、いかがでしょうか。文部大臣から……。
  6. 海部俊樹

    海部国務大臣 先生指摘の御趣旨は私もよくわかるのでございますが、調査費とかあるいは建設費というものになって芽を出してまいりますときには予算面にはあらわれてくるんですが、そのときに、こういうようなものもこういうことで検討しておりますというようなことを何らかの形で御了解いただけるような方法があればなお徹底する、こう思いますので、やり方等については一度また研究をさせていただきたい、こう思います。
  7. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これは大変初歩的な質問で恐縮なんですが、私は大変大事なことでないか。私、内閣委員会に初めて参りましたので、わりあいそういう新鮮な受け取り方をしたと思うのです。このことは、やはりこの際もう一回問題にする必要がある。そうでないと、たとえば予算説明の際に各党を回られたり、あるいは文教関係の方に予算説明をするときに、こういうのが含まれていて将来婦人会館というのを設立する方向で進んでおりますというような話は、非公式には各党にも伝わっておるのではないかとは思います。思いますが、責任ある機関で何のそういう、まあ予算委員会も責任ある機関と言えばそれまででありますけれども、その問題を本格的に取り組むべき文教委員会なり内閣委員会なりというものが、何らかの形であらかじめそういう方針を立てるときには、一つ法案としてではないにしても、そういう方針について説明をしておくとか了解をとっておくとか、そういうことが必要ではないんではなかったか。なぜかと申しますと、そうしませんと、すでに予算の方に出してありますということで、中身説明は当該の文教委員会なりあるいは内閣委員会ではないまま、いよいよそれが実現して予算化して、もう着工して、でき上がって、スタートするときに初めて正式にかかるという形になるわけです、予算問題等は別として。そうしますと、これは単なる追認追認ということにしかならぬのじゃないか。万一内閣委員会でこれが否決になったならば、すっかり準備を進めて、そしてやってきたことはどうなりますか。そういうふうに私は思いますので、私はいま、だからこの法案に反対とかという意味ではないのでありますけれども、筋として、そういう点はやはり明確にしておくことが必要だと思います。いま文部大臣は、ひとつ研究させてほしい、確かにそういう面があるだろうとおっしゃったので、私もほぼ納得をいたしますのですが、再度この点について大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  8. 海部俊樹

    海部国務大臣 私も、初めてこういうところでこういう問題の御答弁をするわけでありますから、きょうまでの経緯とか、具体的にどうなされておったということをちょっとつまびらかにしませんのでいけませんが、先ほど先生に申し上げましたように御質問の御趣旨は私もわかるわけでありますし、現に予算の中で調査費とかあるいは建築費ということで芽を出してきますときには、この中身はこういうものでございますということを、別に隠し立てする必要もないことでございますので、どういう方法委員会の皆さんに御承知願ったらいいかということは、ちょっとこれは研究させていただきたいと思いますが、御趣旨はよくわかりますので、しばらく時間をおかしいただきたい、こう感じます。
  9. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私の申し上げた趣旨はよく理解されたと受け取りまして、今後ひとつ御検討をいただいて、いま私のような疑問が残らないような今後の運営の仕方をぜひ工夫していただきたい、かように思います。  二番目に、この婦人教育会館婦人教育の一層の振興を図るという目的で設立されると説明されておりますが、私はそういう機関ができることそのことは大変教育全般振興の上にもいいこととは思うのですが、一点杞憂することは、今日の民主憲法下文教行政の中で、特に婦人教師などの占める位置が社会的にも非常に大きくなっている、そういう中で、これがいわゆる自発的な婦人教育研究というようなものの振興に大きく寄与することが期待されていると思いますが、運用を誤ると非常にこれが、そういう民主的な方向ではなしに、教育権力支配国家統制を強める一つ機関としての作用を果たす、そういうおそれが、よほど、心しないと起こるのではないかと私は危惧するのでありますが、その件に関して大臣の御見解をお尋ねいたします。
  10. 海部俊樹

    海部国務大臣 国立婦人教育会館設置します目的というのは、やはり婦人の生涯学習あるいは生涯教育と申しますか、いろいろな意味学習の意欲が高まっており、また長年にわたって、地域婦人団体とかあるいは婦人教育団体の方から、ぜひこういうものをつくってほしいという御要望等も事実ございまして、そういう意味でつくったものでありますから、先生指摘の杞憂されるような方向に進んでいきますことは、せっかくつくりました趣旨目的にも大きく反することに相なりますので、そういったことにならないように十分配慮もいたしますし、また運営するについては運営委員会というものをきちっと設けて、そして決して官僚独善とか国家統制とかいうような面が出てこないように、制度の上からも心構えの上からも十分に気を配ってやってまいりたい、またそのように指導もしていく決意でございます。
  11. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま大臣、明確に、国家統制とか民主主義的な方向を害することのないように十分留意して運営したいというお話でありますから、ぜひその点は積極的に、そういう意図がなくても、こういう文部省付属機関というようなもので運営いたしますと、そうなりがちな傾向を持つ側面がありますから、十分戒心していただきたいと思います。  同時に、本当の婦人教育振興のためには、むしろ地方地方で自由に婦人研究に参加しあるいは集会を随時持てるというような、あるいは資料が随時得られるというような、そういう施設地方地方に大きく発展させることがむしろ肝要ではないかと思いますが、そういう点についてはどうお考えであるか、この点お尋ねいたします。
  12. 海部俊樹

    海部国務大臣 もちろんおっしゃるように、各地方においてそういった婦人会館のようなものが置かれて、そこでやっていかなければならぬということは従前からよく理解もいたしておりましたし、また現に既設地方公私立婦人会館、百二館ございますけれども、その百二館の地方にあります既設のものの中心的な役割りと申しますか、そこで婦人教育全般について研修をしてみたり、あるいは全国的な規模での研究をしてみたり、あるいは国際交流等で集まりますときはやはりこういう大きな規模のものも中心的な存在として必要ではなかろうか、こういう観点に立って設置されるものでございますから、地方婦人会館との連絡協調、そして相互に役割りを十分自覚した上で有機的に効果を上げていくようにしたい、こういう考えでございます。
  13. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいまの点は今後とも十分御留意をいただきたいと思います。これは同時に文部省のみならず自治省等とも十分な連携をとって進めるべきことではないかと考えます。  次に、このたびの国立婦人教育会館、ある意味では国際婦人年等もあった時期でありますから非常に大きな国民の期待を持たれていると思いますが、この場所が埼玉県比企郡の嵐山町に定められましたその理由お尋ねいたします。
  14. 吉里邦夫

    吉里政府委員 お答えをいたします。  この機運が起こりまして以来、婦人団体その他の有識者を集めまして、この施設が持つ機能はどうあるべきであるか、またその機能に合った土地あるいは距離等はどうあるべきであるかということがまず先行いたしまして、その方針に従いまして近辺のいろいろな府県、いろいろな誘致もございましたが、この比企嵐山池袋から一時間でございますし、そのうちに高速もつきますので、首都圏近郊といたしましては大変流れの清い都幾川を中心にしたいい土地ではないかということで、機能を先に決めて土地を探したという形に相なっておるわけでございます。
  15. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ちょっと交通が不便ではないかという心配があります。ただ、環境としては武蔵嵐山はいい場所であるというふうに私も理解するのですが、その構造、規模交通機関、こういうことについて、詳しい中身を存じておりませんので伺うのですが、池袋から一時間と申しましても、ああいう環境ですと、一泊なり二泊なりしながら研究をするとか集会をするとか、そういう機能もあわせているのかどうか、つまり宿泊施設等を伴っているのかどうか、そういう配慮を今後持とうとしているのかどうか。これはいま詳しいことを、ここにありますけれども、その点についてひとつ御説明願いたいと思います。
  16. 吉里邦夫

    吉里政府委員 この施設の一番のねらいは、御婦人あるいは婦人教育大変関心を持っておる方々が、できれば宿泊をともにしまして、ヒューマンリレーションあるいは研修をやるということを本命にいたしております。したがいまして、宿泊のスペースといたしまして、三百五十人収容という形で用意をいたしておりますし、その施設も、これは先走って悪うございますけれども、体の悪い方とかいろんな方も利用できるような配慮までいたしておるわけでございます。
  17. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま局長のお持ちの資料は私どもいただいておりますか。
  18. 吉里邦夫

    吉里政府委員 実はきのうの夜でき上がってまいりましたものですから、それと余り違っておりませんけれども、建築中のものが相当進みましたので、写真を入れかえたということでございます。後でお配りをいたしたいと思います。
  19. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それをいただいておけば、いまのような質問の必要はなかったのでありますが、国立国際美術館の方はいただいておりますが、それがなかったものですから質問を申し上げました。それでは、宿泊準備も十分できているということですね。  自動車駐車場等も用意されておりますか。
  20. 吉里邦夫

    吉里政府委員 できるだけ土地施設を使うというようなこと、あるいは電車を使うということを考えておりますが、東京近郊からバスなり自動車で来ることも予定しておりますので、プールをつくっております。
  21. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 わかりました。それでは、婦人会館についての御質問はこの程度にいたしまして、時間がありませんので、次に国立国際美術館についてお尋ねをいたします。  今度のこの美術館は、万国博のときの吹田市にあります万博美術館施設を利用してここに国際美術館を建設するということで、これは結構だと思うわけです。国立博物館西洋美術館近代美術館がみんな東京にあり、京都近代美術館がございますが、今度大阪にこういうものができるということは大変結構だと思います。  そこで、国立西洋美術館国立近代美術館と今度の国際美術館との関連ですね。どういう特徴、どういう中身の違いを持って設立されるのか。文面を読みますと、要するに国立博物館国立西洋美術館やあるいは東京京都近代美術館等に入っているものを除くそれ以外の、何か国際的な、そして日本美術進歩関連ある資料作品をというふうになっておりますが、この点はどういうところにおおむねの方針と線を引いて中身を形づけられるのか、その点をひとつ明確に伺いたいと思います。
  22. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま御指摘がありましたように、東京京都近代美術館近代美術というとでございまして、時代的な一つ制約があるわけでございます。それから西洋美術館は御承知のとおり松方コレクションが、基本でございますが、美術品の収集の対象は一応西洋ということで、地域的な制約があるわけでございます。それに対しまして、今回の国際美術館は、御指摘のように万博の跡地に万博美術館を利用してつくるというようなこともございまして、万博基本的なテーマでございました人類の進歩と調和というようなことも踏まえまして、日本美術というものを国際的な脈絡の中において理解をしていきたいということがねらいになっておるわけでございます。御承知のとおり、日本美術は、古代以来中国、インドその他から非常に大きな影響を受けておりますし、その後東洋、あるいは十七世紀に至りましては西洋からの影響もございましたし、さらに明治以降になりますと、さらに活発な外国からの美術交流もあるわけでございます。日本美術の発展というものをそういう外国との関連において理解をするということをねらいにいたしておるわけでございまして、そういう点がほかの博物館と違う。また、逆に申しますれば、ある点においてほかの博物館とのダブリの問題も出てくるわけでございますけれども、博物館としてのねらい、観点は、ただいま申し上げたようなところにあるわけでございます。
  23. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 国民が全国的にそれぞれ近い地域でこういう芸術に接することができるように配慮することが大事であるとともに、やはりできればそれぞれの特徴が十分はっきりしているような、そういう美術館にしていただきたいということを強く要望いたしておきたいと思います。  これに関しましてもこの機会にお尋ねしたいのですが、先ほどの婦人教育会館と同様に、こういう大きい、いわば政府直営美術館があることは大切でありますが、同時に、本当に日本文化振興のためには、地方地方国民の創造的な活動あるいは国民の美を追求する要望にこたえる施設、そういうものが全国的に配置されて、国民が日常の生活の間にそうした豊かな文化の吸収が行われるように配置することこそさらに大切なことではないかと思うわけであります。恐らく文化庁としてもそういう点には御留意なさっていると思いますが、その点についてどの程度進んでいるとお考えか、今後どのようにそういう面での施設整備等を行おうとしておられるか、その点をお尋ねいたします。
  24. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘のように、地方における文化施設の計画的な整備ということは、きわめて重要な事柄だと思います。私ども、文化行政長期計画につきまして、先般懇談会から御意見をいただいたわけでございますが、その中にもそういうことがうたってございまして、ぜひともそういう方向整備をしていきたいというふうに考えております。ただ、文化の享受あるいは文化活動への参加ということになりますと、いろいろな範囲がございまして、非常に日常的な範囲、あるいは都道府県単位とする範囲ブロック単位とする範囲、国を単位とする範囲と、いろいろな段階があるわけでございますが、それぞれの段階に対応いたしまして、地域要求に即する文化施設整備するということが基本であろうかと思います。市町村段階におきましては日常的なもの、府県段階におきましてはやや高度なもの、あるいはブロックにおきましてはやはりブロックの特色を生かした文化施設整備する、国の段階におきましては全国的な視野に立ったものを整備していく、こういうことで、文化地図とも言うべきものを考えながら今後文化施設の積極的な整備を図っていきたいというふうに考えております。
  25. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただ地方施設等の場合は、具体的には文化庁が御指導なさるにしても、予算、直接の設営、そういったことは地方自治体が行う場合が多いのではないかと思いますが、その関連については、いまどんなふうになっておりますか。つまり文化庁指導あるいは補助金、こういったものがあって、地方がそれにこたえてやっていけるような状態になっているのか、なっていないのか。
  26. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 地方文化施設にもいろいろな種類がございまして、いわゆる文化会館、ホールが主体でございますが、こうしたものにつきましては、文化庁補助金を計上いたしておるわけでございます。それから歴史民俗資料館、こうしたものは文化財の保護という観点から、これまた文化庁補助金を用意いたしておるわけでございます。が、現在の文部省内における事務の配分からいたしまして、美術館博物館博物館法による施設ということになっておりまして、博物館法社会教育局の所管であります関係上、その行政の一部は社会教育局で御担当であるということでございます。したがいまして、広く文化施設と申しました場合でありましても、一部は文化庁助成をし、一部は社会教育局助成をする、こういうたてまえになっておるわけでございます。
  27. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま社会進歩いたしまして、一方週休二日制というようなこともだんだん定着をしてきまして、国民の時間の余裕というものがいろいろな健全な文化活動に向かうということはきわめて私は大切だと思います。そういう際に、地方地方で創造的な活動を始めているたくさんの、きょうは美術館のことですから美術だけに限りましても、多くの動きが活発に出ておりますが、その方たちの困っている大きな問題、隘路は、発表場所発表機関というものがきわめて制限されているということであります。たとえば東京都におきましても、都立の美術館が決して都民の直接美術活動を自由に発表したり交流したりする場にならずに、全国的ないわゆる既成といいますか、歴史を持っておる美術団体等が一年間の使用をほとんど分割して争っておって、なかなか一般都民がその中に割り込めない。むしろ東京美術館東京都民が自由に使うので、ああいう全国的な組織の自由に発表できるような美術館というものは、これは当然国が全国に計画的に配置をして、主要都市に、そういうものをブロック別でもいいですから整備をし、そしてまた都道府県なり市町村がつくるものは、それぞれの身近な発表場所になっていく。個展一つ開くにも、グループ展一つ開くにも、いわゆる画廊の狭い一角を借りて高い使用料を払ってやっている、こういうような状態は枚挙にいとまがないのが現状で、この点は文化庁長官もよく御存じだと思いますが、そういう点について、いまの国民要求というものにこたえるためにどういう御方針をお持ちであるか、この点をお尋ねいたします。
  28. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 基本的な考え方といたしましては同感でございます。  先ほども申し上げましたが、文化行政長期計画の中にこういう事柄がございます。すなわち「自ら収蔵美術品を持たず、美術国際交流を進めるため、又は全国的な視点からの要請にこたえて美術作品の展示」を行う場の設置について検討をするということがございます。先ほど来御指摘がございましたように、近代美術館にいたしましても西洋美術館にいたしましても、これは貸し美術館貸し会場ではないわけでございまして、みずからの作品を展示する、あるいはみずからの企画展を実施するという場所でございます。したがいまして、大規模な展覧会をいわば持ち込まれましてそこで行うということを本来の任務とするものではございません。が、しかし一方そういう要請があるということも事実でございますので、そういう要請に何らかの形で対応すべきであろうということは御指摘のとおりでございまして、私どもも同感でございます。ただ文化庁といたしましては、ただいまの国際美術館もそうでございますが、ほかに第二国立劇場の問題でございますとか、歴史民俗博物館の問題でございますとか、能楽堂の問題でございますとか、文楽劇場の問題でございますとか、演芸資料館の問題でございますとか、文化施設整備につきまして非常に多くの課題をいま抱えておるところでございますので、いますぐそういった構想に着手するという用意はございませんけれども、今後の課題といたしましてはぜひ検討していきたいことだと考えております。
  29. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 次の質問者が見えましたし、私の時間は経過しておりますから、あと一つだけ御質問して残余は次に回したいと思います。  直接美術館関係はないのですが、同種の問題として国立第二劇場、このことがもう数年前から各所から非常に要望が出ており、恐らく文部省文化庁でもいろいろ御検討をなさり、具体的な構想や場所の選定等にもいろいろ御苦心をなさっているやに聞いておりますけれども、どうも一向進んでいる気配にも見えないのです。すでに、残念ながら亡くなりましたけれども、わが国のオペラ界におきまして大きな足跡を残されたあの藤原義江さんなどがもう何回となくお百度を踏んで、オペラのできるような国立第二劇場をぜひ交通の便利のいい場所に、あるいは環境のいい場所につくってほしい、こういうような要望を再三直接伺ったこともいままざまざと思い起こすのでありますが、この国立第二劇場について現状はどうなっているのか、構想ができているのか、進んでいるのか、もう放棄してしまっているのか、その辺についてお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  30. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 第二国立劇場の設置につきましては、四十一年に現在の国立劇場法が衆議院の文教委員会を通過いたしますときにも、速やかに現代芸能に関する国立劇場を設置するようにという附帯決議がございました。そういったような事柄並びに関係方面の御意向等に沿いまして、四十六年以来第二国立劇場の設置につきまして調査費が計上されまして、自来調査検討を続けてきておるわけでございます。基本的な構想はほぼ成案を得ておるのでございますが、何分にも敷地がなかなか得がたいということで難航いたしておる次第でございます。文化庁といたしましては、東京教育大学が筑波に移転をいたしましたその跡地といたしまして、駒場の農学部の跡地にこの第二国立劇場を建設したいということで大蔵省その他に申し入れをいたしておるわけでございますが、しかしさらに適地があればその土地についても検討したいという考えでございますが、現在のところは駒場ということで折衝が進んでおるわけでございます。御承知のとおり教育大学の移転跡地の処理につきましては、駒場だけではなくて全体的に決定の状態でございます。それが決定されます時期におきまして、その中の一環としてぜひ必要な用地を確保するように努力をしておるということでございます。
  31. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 じゃあ質問は終わりますが、いまのお話ですと、駒場ということの方針はまだ変えておらないということですが、大分激しい反対運動や他の要求が地元から出ていて、成田空港ではないけれども、何かそういうことでもっていつまでもこれが先に延ばされていくということになるのではないかというように心配いたします。東京都内でも他にも適地は探せばあるし、喜んで迎えるところもあるのではないかと私聞いておりますけれども、こういう点については、ともかくりっぱな第二劇場が早く誕生いたしますように特段の御努力をひとつお願いいたしまして、幅を広く考えて御検討いただいたらどうかと思いますので、その点だけ一言お答えいただいて終わります。
  32. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 駒場を第一候補といたしておりますが、先ほど申し上げましたように、さらに適地があるならば、その土地について検討する余地はございます。
  33. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 終わります。
  34. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、安井吉典君。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 文部省設置法の審議に関連いたしまして、ちょうど文部大臣がおいでですから、文教関係のいろんな問題についてお尋ねをするよい機会だと思うのですが、時間の関係もありますので、そのうちぜひ前からお聞きしておきたいと考えておりました、問題は小さいかもしれませんが、大学医学部の関連教育病院の問題、それからもう一つは高校増設の問題、ついこの間沖繩にも行ってまいりましたが、高校の問題が焦眉の急を告げているという実態も痛感してまいりました。その二つの問題についてだけ、きょう、わずかな時間でお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず医大の関係でございますが、実は厚生大臣が見えたときに自治体病院の深刻な赤字や、抱えている多くの問題についてお尋ねをするつもりであって、その各論として実は関連教育病院の問題もあるわけなんですが、きょうは先に文部大臣においでいただいた、そういう状況の中では、各論の方で恐縮でございますけれども、伺っておきたいと思うわけであります。  全国で自治体病院は千六十六病院あります。それに対して累積欠損金は四十九年度で千四百三十二億円、五十年度で千七百九十八億円、五十一年度になりますと、恐らく二千億円近くの額になるんじゃないかと思います。千の病院で二千億の赤字というのが実態で、大病院は大病院なりに、小さい病院は小さい病院なりに深刻な事態に今日陥れられており、診療報酬の改定の問題やら特殊な診療を預けられているその問題をどうするかとか、とりわけ累績赤字をどう解消するかというのが政治の大きな課題になっていて、自治省もそのためのたな上げ債を貸し出す等の措置が今日までも行われてきておる、こういう状況の中にあります。こういう中で、地域医療確保のため大学の医学部の新設、これは非常に大きな意義があると思いますし、私ども将来への大きな期待を持っているわけです。そしてまた今度の新しい医大に関連教育病院制度というものを導入したということも、これなりの一つの意義を感ずるわけであります。  ところが、この関連病院はわずか一部を除いてはほとんど県立や市立のいわゆる自治体病院への委託であります。公立病院としての任務にもつながるわけですから、大学とその自治体病院とが連携協力して臨床教育に当たっていくということは、これまた一つ意味を持っていると思います。そして四十八年以来八県にわたってこの医大がスタートしているわけですが、いよいよ五十二年度から三つの病院で実習が始まっていくという段階で、いま問題なのは、昭和五十二年度の予算の中で若干計上はされておりますけれども、それへの財政措置が十分ではないのではないかという点であります。自治体病院全体の非常に苦しい経理状況の中にもっと手厚い対策があってよいのではないか、こう思うのですが、相変わらずまだ不満が残っているようです。ですから、その中の設備整備費に対する補助金の問題と、それから教育実習委託費に対する補助金の問題、この二つあるわけですが、これらの五十二年度の予算化、これについてきわめて不十分だという自治体側の声に対して、文部省としてどうお考えになっておられるか、まずそれから伺います。
  36. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のように、五十二年度から一番最初にできました旭川医科大学以下三医科大学につきまして、その関連教育病院における教育実習の受け入れが始まるわけでございます。これを控えまして、昨年の夏概算要求の時点で全国自治体病院協議会の方からも一病院当たり二億二千万円程度のいわば委託費と申しますか、助成要望するという趣旨要望書をいただいたことも事実でございます。  この二億二千万円の考え方は、臨床教育を担当する医師あるいは教育補助職員の人件費、あるいはそのほかに設備費なりあるいは施設の管理費等を全部ひっくるめたものだったわけでございます。  これまで国の方は、すでに御案内のように、設備費につきましては四十八年から五十一年まで一番最初の旭川医科大学等につきましては七千万円の設備購入費の助成を行ってきておりますし、五十二年度はこれらに対しては一病院当たり二千五百万円の設備費の補助を行うわけでございます。問題は、新たに学生の臨床実習を開始をする三病院に対する御指摘の臨床実習に必要ないわば経費についての委託費の問題でございます。これについては五十二年度の予算では五千六百六万円、一大学当たり一千八百六十九万円を計上いたしまして実習の指導に当たる医師に対する謝金や光熱水料等の助成考えているわけでございます。  この額につきまして、病院によってはなお不十分であるという御要望があることは承知をいたしておりますけれども、何分にも五十二年度から初めて実習の委託が始まるわけでございますので、そういった今後の実習の状況等も考えながら、これからの改善についてはなお検討させていただきたいと存じております。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 大まかな一応のお話を大学局長から伺ったわけですが、まず設備整備補助金中身についてちょっと伺います。  五十二年度の一億七千万円の計上、これは設備の基準について自治体側の要求に達せず不満を残しているのではないか、つまり、実際はこれぐらいの設備が要るというのに、その要求を完全に満たし得るような基準で算定していないのではないか、対象や単価について各病院の要求に沿うものとなっていないのではないかということをまず心配するわけでございますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  38. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 設備費の補助は四十八年度から逐次始めてきているわけでございますが、私どもといたしましては、これは不均等ではございますけれども、十年間の年次計画で設備の購入に対する補助を行い、それぞれの病院における設備というものを標準に近づけていこうという考え方でございます。われわれは、現在、十年間を通じて一病院当たり二億八千万円程度の助成を目途にして行いたいと考えているものでございます。もちろん、十年というかなりの期間をかけて行っていくものでございますし、その間における医療機械の進歩等の問題がございますから、計画の進行に応じましてさらに検討をしなければならない点が生じてくるということはわかりますけれども、現在の時点では、当初設定をした十年の不均等の計画のもとにおける二億八千万円の設備費の助成というものを実現するために努力しているわけでございます。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 四十八年度に決めたので、十年間といいますと五十七年度までですね。とにかくいまのような世の中では医療の設備などというのは恐ろしい発展や進歩を遂げているのではないかと思うのですよ。またインフレーションで設備費そのもののコストも上がっていると思います。ですから、それを四十八年度に決めているから、ただその十カ年計画を進めていけばいいのだという機械的な進捗だけのお考えでは困ると私は思うのですね。いまの御答弁の中にも、これからの経過の中で検討の余地がある、検討したいというふうに受け取れるお言葉もあったと思うのですが、今後検討されますね。
  40. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のとおり、十年にわたることでございますし、いろいろな情勢の変化というものはあるわけでございますから、計画の進行の状況を見ながら、改善すべき点については改善を検討しなければいけないと考えております。何分にもこれは財政当局と協議をしながら毎年の予算で決めていくことでもございますので、今後の財政当局との折衝等を通じて検討すべき点は検討してまいりたいと考えております。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 ぜひ検討していただきたいと思います。十年前の医療機械がそのまま十年後に使えるような、そういう日本の医療あるいは医学教育では困ると思うのですね。しかも、更新という問題も出てくると思います。いまお約束をいただきましたので、ぜひ改善措置をこれから後の段階でお考えおきをいただきたいと思うわけです。  補助率についても、三分の二に上げてほしいという要求がございますが、これはどうですか。
  42. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 いまのところは、補助率について変更する考え方は持っておりません。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 設備の改善を日進月歩の中で考えていかなければいかぬ、大学局長の御答弁もそういう趣旨だと思うのですが、大臣からもやはりひとつ伺っておきます。
  44. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のように、いろいろな研究の結果非常に進歩の早い昨今の世の中でありますから、十年を一区切りにして、それを全く不変の固定的なものであるとするようなかたくなな態度はとらないつもりでございます。そのときどきに応じて関係省庁と相談しながらやはり検討すべきことは検討し、改善すべきことは改善しなければならない、そういう努力もまたしなければならぬ、こう心得ております。
  45. 安井吉典

    ○安井委員 なお、補助率のこともこれからの課題としてぜひ取り組んでいただきたいと思います。  それから教育実習委託費の点でありますが、先ほど局長から御答弁がありましたように、一校当たりといいますか一病院当たり千八百万円余りの計上で五千六百万円というのが五十二年度の予算のようでありますが、どうもこれでは人件費や光熱水費までの管理費全部が含まれているとは思えないような額のように思うわけであります。この一病院当たり千八百万円という算定基礎をちょっとここでお知らせいただきたいと思います。
  46. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 これは臨床実習の指導を担当します病院側の医師に対する謝金その他光熱水料等の謝金でございます。病院の側には、実習を受け入れるに際して、その指導に当たる指導医なり教育補助職員の人件費については、全額を医科大学側で委託費として負担をした方がいい、あるいはすべきであるという御要望がございます。しかし、関連教育病院における臨床実習の指導というのは、関連教育病院におけるいろいろな豊富な症例に接しながら、そこにおける診療の状況を通じて医科大学の学生に対して臨床実習を行っていく、いわば関連教育病院の仕事そのものの中に溶け込んで指導を受けていくということでございまして、病院の仕事の上に完全に臨床指導の分を上積みするという考え方では必ずしもないわけでございます。そういう面から病院における臨床実習の指導のあり方について、大学の方と関連教育病院の方とで従来からいろいろと御相談が行われてきているわけでございますし、そういった点をさらに今後とも詰めながら、この千八百万円で学生の臨床実習の委託の相当部分は補われるわけでございますので、それによる円滑な臨床実習の指導が行われることを期待しているわけでございます。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 その千八百万円の内訳でありますが、常識的に言って、光熱水費といういわゆる管理費ですか、そういうものと人件費との割合はどれぐらいになるのですか。
  48. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 大半が指導医に対する謝金でございます。光熱水料その他の経費も計上してございますけれども、これは、学生がその病院に臨床実習に行ったときに、やはり御厄介になりますので、その部分について若干を見ようという程度のものにとどまっているわけでございます。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 ことしは一学年だけが関連病院に世話になるわけですが、来年から二学年ということになりますね。ですから、その千八百万円という算定基礎、私はそれを肯定するわけじゃありませんけれども、明年度はこれが、いわゆる平年度化された場合はふえるのですか。そういうお考えですか。
  50. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 まず、ことしの臨床実習がどの時点から開始されるかという問題がございます。これは各病院によって異なりまして、五十二年中に入っていくものもございますし、場所によっては五十三年の一月から臨床実習が実際上は行われるということになっていくものもあるかと思います。そういった状況のもとにおいて最初の関連教育病院における臨床実習が行われるわけでございますから、そういった状況を見まして、明年度、五十三年度の概算要求でどのような委託費の要求の仕方をするかという点は考えていきたいと思っております。
  51. 安井吉典

    ○安井委員 ことしの年度は途中から委託が始まるということをお認めになっていながら、来年度は一〇〇%の委託ということは間違いないわけですから、来年、第二学年の段階で四月から始まらぬなんていうことは言えないわけでしょう。ことしは中途から教育実習が始まるのだということを前提にして千八百万円というふうに計算されているのじゃないですか。そうでないとおかしいでしょう、いまの御答弁は。来年度はいわゆる平年度化された形で予算が計上されていかなければ、話が合わないわけですよ。どうですか。
  52. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 ことしの千八百万円の積算というのは、予算上はもちろん十二カ月分を予定をしているものでございます。
  53. 安井吉典

    ○安井委員 はっきり答えてください。これはしかしことしは一学年でしょう。二学年のところはないでしょう。すると、来年は学生の数が倍になるのじゃないですか。それでも千八百万円。
  54. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 五十三年度における委託費の額をどのようにするかという点につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、ことしの状況を考えなければなりませんけれども、御指摘のように、二年目に入るわけでございますから、その状況に応じましてどのような予算要求をするかということを検討させていただきたいと考えているわけでございます。
  55. 安井吉典

    ○安井委員 大臣、いまの問答をお聞きになっていてどうお考えになるのですかね。来年からは二カ学年分が預けられるし、ことしは一学年分だけと言うのですからね。ことしの千八百万円のことは後でもう少し詰めますけれども、来年も余りふえそうもないような御答弁で、どうも何か筋が通らぬように思うのですが、どうです。来年は来年で、ことしの実績を踏まえた、二倍の新しい学生がお世話になるのだという立場での処理というのは当然なされなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  56. 海部俊樹

    海部国務大臣 学生の臨床実習の具体的な方法等につきましては、現在関係大学において各関連教育病院と協議を進めてもらっておるところでございますが、御指摘のように、五十三年度になりますと一学年ふえていくことはこれまた事実でございますから、そういったこと等も前提として十分検討させていただきたい、こう思います。
  57. 安井吉典

    ○安井委員 そういうことで新しい基礎での計上が来年はなさるべきだ、私はそう思いますね。  そこで、根本的に謝金という言葉がどうも私は気にかかるのですけれども、つまり、国立大学の学生を預けるいわゆる委託費的なものがこれではないのか、こう思うのですよ。それを何か謝金というかっこうで、お世話になるからお礼だけ上げますというようなことで問題をごまかそうとする気配があるような気がするわけです。学生を委託するのだ、教育を委託するのだという立場に立てば、これはもう当然必要経費を国が全額負担をするということでなければならぬわけです。謝金という考え方そのことに私は根本的な疑問を持つのですが、どうですか。
  58. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 もちろん事の性質は、先生指摘のように、臨床実習を関連教育病院に委託するに必要な経費でございますが、予算技術上その内容を謝金ということで組んでいるというように御理解をいただきたいと思います。
  59. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、謝金という言葉はただ技術的な問題だとおっしゃるが、指導医師の人件費や、それからお医者さんだけじゃないはずですよ。臨床検査技師とか何かの補助要員の人件費もあるはずです。いろいろな研究の費用もかかっているはずだし、設備の管理費もあるし、機械の設備費等もある。こういう状況で、さっきもちょっとお話がありましたけれども、平年度で一病院当たり二億円ぐらい必要だというのが病院側の主張なわけですね。それが千八百万円では、たとえ初年度にしてみても、余りに開きがあり過ぎる。その根本的な問題は、これは単なるお礼を払うんだという金一封くらいなつもりで文部省はいるのじゃないか。委託をするというのなら、赤字で困っている自治体病院に対する問題でありますから、かかった経費は全部見るというのがたてまえではないかと私は思う。とりわけ自治省も文部省に、財政的な措置については必要な額は十分やれという通知も出ていますね、ここに資料もありますけれども。それをまつまでもなく、これは自治体病院の本来の仕事じゃないのですから、国の仕事なんですから、自治体の財政と国の財政との財政秩序を明確にすべきだという規定は地方財政法の中にたくさんあるわけですよ。単なる金一封くらいで濁そうという仕組みは、まさに地方財政法違反で、文部大臣は法律を守れと言う教育の責任者でもあるわけなんですが、そこで地方財政法違反を犯されたのでは困るのではないかと私は思います。単なる技術的な謝金という言葉の問題というふうに考えずに、かかった経費はしっかり全部見るんだという構えを、地方財政法のたてまえを踏まえて明確にすべきだと思います。どうですか。
  60. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたけれども、例を引きますと、関連教育病院に行きまして、実際にそこで診療に当たっておられる医師の方のその診療を通じて臨床実習を学生は受けるわけでございます。その医師は当然関連教育病院のお仕事をされているわけであって、そのお仕事を通じて学生は指導を受けていくわけでございますが、そこのところについて、病院側は、その医師の人件費を指導医である以上は全部国費で見るべきであるというお考えに立ち、われわれの方は、そういう病院のお仕事をなさっている医師の費用を全部見るというのではなくて、その医師が指導をしていただくことについての経費というものを見ていこう、そこのところが金額が非常に違ってくる一つ理由になっているわけでございます。  もちろん私どもは、先生指摘のように、関連教育病院における臨床実習というものをお引き受けいただく以上は、それに必要な経費については十分に措置をしていかなければならないというふうに考えておりますし、決して金一封というふうなことで事が済むと考えているわけではございません。それであるからこそ、いままで設備費の助成も行ってきましたし、また臨床実習の委託費の計上も今回いたしているわけでございます。内容の改善につきましては今後の実施の状況を見まして、財政当局ともさらに協議をしながら検討をいたしてまいりたいと存じます。
  61. 安井吉典

    ○安井委員 いまの私の主張の理論的根拠は、医学専門委員会の医科大学設置に伴う年次計画についてというふうな資料や、大学設置審議会特別委員会の医学部設置基準改善の中間報告等を見ますと、今度の新しい付属病院の考え方は、関連教育病院を持っている場合には、従来の必要病床のうち六百床を超える部分は関連教育病院の病床で充てるという方針になっているわけですね。つまり、国立の医大の付属病院は六百床しかつくらないんだ、それをオーバーする分は関連教育病院に預けるんだということになれば——関連教育病院というのは医学教育の一部じゃないんですか、国の教育の一部を預けるのですから。そのことが明確な以上、私は、地方財政法だけを盾にとるわけじゃありませんが、やはりかかった費用は全部国が負担をするというたてまえを貫くのが当然だと思うわけであります。ことしのものはもうスタートしてしまったから仕方ないかもしれませんけれども、明年度はこれはやはりはっきりさせなければ問題だと思いますね。大臣、どうですか。
  62. 海部俊樹

    海部国務大臣 いろいろな事情があるようでございますので、検討をさせていただきます。
  63. 安井吉典

    ○安井委員 大学局長、これは大蔵省がきつくてなかなか予算がつかない、こういうことなんですか。もしそうだとすれば、これは大蔵省自体が、いまの地方財政の基本的な考え方に対する理解をもっと深めなければいかぬわけですよ。足りなければ、今度また出てきてもらってもいいのですが、きょうは大蔵省を呼んでおりませんけれども、やはりもっと明確な御答弁をいただきたいと思います。
  64. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 もちろん全体として困難な国の財政事情というものがございますけれども、関連教育病院に対する助成をどのようにしていくかというのは、文部省が責任を持って判断をすることであり、大蔵省が渋いからとかなんとか、そういうことでは決してございません。私の方で責任を持ちまして今後の関連教育病院に対する助成のあり方というものを、先生の御指摘を十分考えながら検討をいたしてまいります。
  65. 安井吉典

    ○安井委員 いまの問題はどうもまだ行き違いのようでありますけれども、これは来年の話をすればいま少し早過ぎて鬼が笑うのかもしれませんけれども、大事な問題ですから、ひとつ今後の段階で明確にしていただきたいと思います。  それからもう一つ、一月に全国知事会が公立高校の新増設調査をやった結果は文部大臣の手元まで行っていると思うのですが、五年間に六百八十七校が必要であり、ざっと一兆一千億円の経費が必要だ、こう言われているわけであります。ことし初めて若干補助金の計上が行われたということは、私は決して評価するにやぶさかではありませんけれども、額がまだ小さいし、全国のこういう実態に対してとても及びもつかないような状況にある。とりわけ用地費が大変なわけですよ。それらの問題を含めて、とにかく五年間に一兆一千億円もという額なのですから、気の遠くなるような話でありますけれども、もっと積極的な、意欲的な対応というのが、文部大臣、必要じゃないでしょうか、どうです。
  66. 海部俊樹

    海部国務大臣 知事会からの御要望も承っておりますし、それから文部省といたしましても、人口構造の移り変わりというものから判断をいたしまして、五年間計画で四百三校公立高等学校をつくらなければ現在の進学率を維持できないだろうという計算も立てまして、そして高等学校の建物に対する建築費の補助、一定の条件はございますが、今年度から跡み切りましたのは、その五年間の急増対策と申しますか緊急対策のために初めて踏み切ったことでございまして、きょうまで地方財政に依存しておった建物の一部の助成に踏み切れたのは今年度が初めてでございますので、またこの増額等についてはできるだけ努力をしていきたい、こう考えておるところであります。
  67. 安井吉典

    ○安井委員 もっとお話し合いをしたいのですけれれども、私勘違いをしていて、時間の配分の関係でもう終わりにしなければなりませんが、この間沖繩で聞いた話でも、沖繩県に中学浪人が四千人いるわけですね。人口百万人ぐらいの県に中学を卒業して高校に行けない人が四千人もいるという事態は、私は重大ではないかと思います。これは高等学校の校地の確保がまずできないのですね。  いずれにしても高等学校が非常に足りないわけですよ。沖繩だけじゃなしに、大都市近郊は同じような状況になっているわけでありますが、特に沖繩の実態だとかそれから大都市近郊だとか、そういう厳しい状況にあるところには、学校用地の問題をも含めて、いま意欲的な取り組みをという大臣のお話もございましたけれども、やはり具体的にそのお気持ちを数字の上にあらわしていただかなければいかぬ、こう思うのですが、どうです。
  68. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 沖繩の公立文教施設につきましては、特に復帰後本土水準に早急に近づくということで、五カ年計画あるいはその後改定いたしました三カ年計画で推進しております。特に高等学校につきましては、現在の進学率が全国平均九二・六%に対して沖繩の場合には八一・一%ということで、おっしゃったような高校への進学をもっともっと高めなくてはいけないという事情にあることはよく存じております。したがいまして、私ども、建物につきましては、本土の場合にはことしようやく一部分始まったのでございますけれども、すでに補助率三分の二ということで推進してまいっております。ただ土地の問題につきましては、これは非償却資産であるということで非常に補助になじまないという性格もございまして、義務制においてようやくいま少し手がついておるという段階でございまして、今後の研究課題であろうかと思っているわけでございます。
  69. 安井吉典

    ○安井委員 残った問題、とりわけもう少し詰めたいと思う問題もあるのですが、次の機会に譲ります。ありがとうございました。
  70. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、市川雄一君。
  71. 市川雄一

    ○市川委員 文部省設置法の一部を改正する法律案につきまして、まずお尋ねをしたいと思います。  この中で国立婦人会館設置がうたわれておりますが、婦人教育振興を図るためということでございますが、どういう階層を対象にして何を教育するのか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
  72. 吉里邦夫

    吉里政府委員 この婦人教育会館で私どもが果たしていただきたいと思っている中身は、成人の婦人、もちろんお年寄りもいらっしゃいます。と同時に、婦人教育というのは男性と御婦人一緒になって支え、振興しなければいけませんので、男性でありましても関係者の御参加を得て、中身といたしましては、グループ活動の育成であるとかあるいは婦人学級その他の指導者の養成であるとか研修であるとか、設置法の法文に書きましたように実践的な実際に役立つ研修をやっていただく、あるいは婦人教育全般につきましての調査、専門的な研究をやっていただくというようなことを現在想定しながら考えておりまして、この中身につきましては、実は私どもが構想を立てるに際しまして関係婦人団体、学識者に御参集いただきましていろいろな議論をしていただきまして、それにのっとった運営、のっとった姿勢でこの会館を設置し、運営したい、こう考えておる次第でございます。
  73. 市川雄一

    ○市川委員 どうも抽象的なお話でまだ何となくぴんとわからないのですが、二十歳以上の成人の御婦人教育するというのですが、どういう社会的な必要から何を教えるのか。実践的研修、こうおっしゃるのですが、じゃ実践的研修というのは一体どういうことを言っておられるのかよくわからないのです。もうちょっと具体的にお答えをいただきたいと思います。
  74. 吉里邦夫

    吉里政府委員 お答えをいたします。  実践的な研修の例を言いますと、たとえば婦人学級等で指導者としていろいろな婦人に対する指導をやるわけでございますが、そのためには全国の府県なりあるいは団体なりを通じましてそういう方々に参加をしていただく。それで会合の持ち方、あるいは問題の分析の仕方とかそういうことを勉強していただくというわけでございまして、そのほかにそれぞれの婦人団体婦人関係団体が研修プロジェクトを持って現在いろいろなところで動いていらっしゃいますが、現状を見ますとなかなか場所が少ないとかあるいは全国的に集まるところがないとかいうようなこともございましてそれを構想したわけでございまして、ひっきょうそういうボランティア活動団体をやっていらっしゃる方々のプログラムに従った運営というか、利用も計画しておるわけでございます。
  75. 市川雄一

    ○市川委員 婦人問題とか婦人会館について、いまの御答弁の中でも婦人団体や何かの御要望にこたえて御意見もよく聞いたというお話でございますが、私も二、三の婦人団体に当たってこの問題についていろいろ意見を聞いてみましたが、初めて聞いたという方もいらっしゃる。そういう点で、婦人の問題というのはやはり御婦人でないとわからない面もたくさんあるわけですから、そういう意味婦人団体要望というものを十分に聞いていただきたいというふうに思いますし、また会館の運営に当たって、上から一方的に何か押しつけ的に教育をやるということではなくて、お茶や趣味を行うための会館になさらないように、婦人教育に当たって有効な会館としての運営ができるように十分御配慮をいただきたいのですが、その点についていかがですか。
  76. 吉里邦夫

    吉里政府委員 貴重な意意見をいただいておりますが、いろいろな関係者の意見もまさに先生の御意見と同じようなものでございまして、相当突っ込んだ地についた勉強というか研修、あるいは技術的なことでも体験を発表しながら、いろいろな反省もしながらやっていただくということで、趣味趣向にわたるだけのやかたにはしたくないと思っております。
  77. 市川雄一

    ○市川委員 時間を短かくしてくださいということでございますので次に移りたいと思います。  国立国際美術館の問題でございますが、これを万博記念美術館から国立国際美術館に移管して開設するというのはどういう理由から行うものでございますか。
  78. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 万博美術館は、申し上げるまでもないことでございますが、万博施設として整備されたものでございますが、その跡施設の利用方法といたしまして財団法人日本万国博記念協会から残された施設を国立の美術館として利用するように申し入れがございました。地元の大阪府、市並びに美術関係団体からもそういった強い御要望がございました。全国的にみましても、美術館東京に二館、京都に一館ということでございまして、大阪地区には美術館がまだないわけでございますし、また京阪神の地区は人口的にも非常に大きなものを抱えておるわけでございます。そういった諸般の事情を勘案をいたしまして、大阪に国立の美術館を設けることが適当であろうと判断いたしたわけでございます。  建物につきましては万博記念協会から国に寄付になっておりますが、敷地につきましては借用という形で発足したいと考えております。
  79. 市川雄一

    ○市川委員 そこで問題なのは、美術館があっても中に展示する美術品がそろわなければ余り意味がないと思うのです。従来ややもすると、建物はあるけれども予算が伴わないためにそこに展示する美術品がそろわないということで四苦八苦しているという話も聞いておるわけでございますが、今回この美術館にどういう美術品を購入するお考えなのか、その予算はどの程度お考えになっておられるのか、その辺のことをお聞かせ願いたいと思います。
  80. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 五十二年度の美術品の購入費は五千五百万円でございますが、前年度の五十一年度から購入費の予算計上をいたしまして若干のものを購入いたしております。一、二実例を申し上げますと、マンズの彫刻の「枢機卿立像」でございますとか、版画といたしましては「マリリン・モンロー」アンディ・ウォホール作のものでございますとか、高松次郎氏の絵画「影」でございますとか、そういった作品を購入いたしておるのでございますが、五十二年度におきましても引き続き購入を進めたいと考えております。  ただ実際問題といたしまして、御指摘のようにこの美術館は収蔵品が非常に少ないわけでございます。東京近代美術館あるいは京都近代美術館でございますと、設置以来相当の年月もたっておりますので収蔵品もある程度充実しておりまして、所蔵品で常設展示をすることが可能なわけでございますが、この美術館はいま申し上げたようなことでございます。したがいまして、さしあたりは企画展示に重点を置きまして、国立の美術館はもとより公立、私立の美術館あるいは近隣の博物館あるいは所蔵者、そういった方々の御協力をいただきながら企画展中心にしてここ当分は運営をしてまいりたい、その間に逐次所蔵品の充実を図ってまいりたいと考えております。ただ美術品というのは、もちろんすぐれたものは数がきわめてわずかでございます。これを買うことは実際上もまた予算的にも非常に大きな問題でございます。先ほど申し上げましたように国際比較ということが基本でございますから、場合によりましてはパネルでございますとかリプリカでございますとか、そういうものも取り込みながら展示を進めたいというふうに考えております。
  81. 市川雄一

    ○市川委員 次に、この際、国立美術館ではなくて私立の美術館の問題についてお伺いをしたいと思います。  文化財あるいは美術作品には、歴史的な背景あるいは地域的な背景というものも当然あるわけですね。それから、その地域の風土から生まれてきた作品というものもあるわけですが、そういう意味で、いま私立の美術館の抱えている問題ですね、国からこれに対して助成していくという考えがあっていいのではないかというふうに私は思うのですが、実際、私立の美術館美術品を寄贈しようとした場合、国立の美術館ですと、これは寄贈が免税になっておりますが、私立への寄贈ですと、これがみなし譲渡所得という扱いを受けて、作品の時価に対して寄贈者に課税されるという現状でございますが、こういうことですと、せっかく私立の美術館に何か寄贈しようと思っても実際できないということが起きてくるわけでございますが、こういう点について文部省としては一体どういうお考えでいらっしゃるのか、まずお伺いしたいと思います。
  82. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま御指摘がございましたように、国立の美術館博物館に対しましては、ちょっと年度は忘れておりますが、数年前から、美術品を寄贈いたしました場合には譲渡所得の税がかからないということになっておりまして、一昨年でございましたか、さらに公立の美術館がこれに追加されております。ところが、御指摘のように、私立の美術館がまだそういう扱いを受けておりません。今後の課題として努力をしてまいりたいというふうに考えておりますが、ただ、個人の遺産の相続等の問題が絡みまして大変困難な課題のように税務当局からは伺っております。
  83. 市川雄一

    ○市川委員 もう一つ、重要文化財に国が指定した場合に、ふだんから当然、重要文化財に指定した美術品の維持保存に、国が文化財に指定したわけですから、これにある程度の配慮をするというのが筋ではないかと思うのですが、現実には、作品が傷んで、修復するというときになって初めてこの修復に対してわずかの援助が出るというのが実態だと思うのですね。重要文化財という、国が指定した以上は、やはりその美術品の維持保存に対しても、常日ごろから助成を行うべきではないかと思うのですが、この点についてのお考えはどうですか。
  84. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 指定文化財に対する補助は、御指摘のように臨時的な経費が中心でございまして、修理修復の場合に補助をいたしておるわけでございますが、経常的な経費に関連するもの、類似するものといたしましては、防災の経費、これについては補助をいたしております。それから、建造物の場合は、たとえば屋根のふきかえというような場合には、カヤぶきの屋根等の場合におきましては、何年に一度かは必ずふきかえなければならないわけでございますが、そういうものには補助をいたしておるわけでございます。一般的に管理費に補助をするというところまではまだ考えていないわけでございますが、今後の課題として検討すべきものであろうかと考えております。
  85. 市川雄一

    ○市川委員 結局、私立の美術館の経営者は、そういう作品の維持費が大変なために、せっかく持っている美術品を売却せざるを得ないというケースも実際起きているわけですね。そういう意味で、日本の大事な美術品を保護し、これを維持していくということについて、もっと積極的な態度とお考えを示していただきたいと思うのですが、今後の重要な課題という程度でございますか、それとも、ある程度やっていこうという御意思があるのかどうか、その辺はいかがですか。
  86. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 重要文化財の維持費の補助というお尋ねでございましたので、今後の課題として検討したいと申し上げたわけでございますが、ただいま御指摘のように、私立の美術館博物館で、維持管理費と申しますよりは、むしろ美術館博物館を開館するに必要な経常的経費の負担が困難であって、したがって、俗に申しますならば開店休業のような状況になっておるものがあるということを聞いております。そこで、私どもといたしましては、国が収蔵庫を設置をいたしまして、そういう美術館から美術品をお預かりをし、そしてそれをその他の美術館の御希望に応じて貸し出すような、そういう構想の、収蔵美術館と私ども呼んでおりますが、そういうものができないかどうか、実はいま懇談会を設けて検討しておる状況でございます。
  87. 市川雄一

    ○市川委員 私立美術館美術品の維持費ですね、これについて、これからの課題として検討なさるというお話でございましたが、ぜひ実現される方向で御検討いただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。  次に、きょうは文部大臣がお見えになっておられますので、幼児教育の問題についてぜひお伺いしたいと思うのですが、私の認識では、幼児教育というものが必要なのかどうなのかという問題が一つあると思うのです。それからもう一つは、何歳から必要なのかという問題があると思うのです。三歳からなのか四歳からなのか、あるいは五歳か、一年保育でいいのかどうか、二年保育なのか三年やるべきなのか、こういう議論が十分になされてないんじゃないか。あるいは、そういう議論が十分になされた上で幼児教育の必要性というものが十分国の教育政策なり教育制度の中に位置づけがはっきりされないまま、今日に至っているんじゃないか。しかも、社会状況としては、何か幼稚園に行ってないと子供じゃないみたいな扱いを受けるような社会状況が生まれてしまっておる、いまこういう状況じゃないかというふうに私は認識しておるわけでございますが、まず、いま当面問題になっております四歳児、五歳児の幼児教育、この必要性という問題、あるいは文部省がいま教育全体の中でこの四歳児、五歳児の教育という問題にどの程度のウエートを充てておられるのか、あるいは位置づけを持っておられるのか、まずその辺のお考え文部大臣にお伺いしたいと思うのです。
  88. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘の幼児教育につきましては、やっぱりこれは必要であるという基本的な考え方を持っております。ただし、これをどのような形でどのようなふうに教育をしていって、どの程度のことが必要なのかということにつきましては、ときどき国会でも御論議をいただきますように、何歳からが適当なのかという議論とか、どの程度やったらいいかということがございます。文部省といたしましては、学校教育法の定めに従いまして、幼児に適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的として幼稚園を設置しておるわけでありますが、大体六歳児からの九年間の義務教育の制度というものがきちんとございまして、その前段の四、五歳児の教育でございますが、これにつきましては、学校教育法に定めてある目的に従い、目標としては次の五つぐらいのことです。健康な体づくり、それから社会性の育成、お友達との交流を通じての共同生活、団体生活というもののはだでの感じとり、それから知的好奇心の涵養、絵本とか紙芝居とかいろいろなものに対して好奇心を持ってもらう、正しい言語生活への導入、日常の話し言葉なんか、そういったようなことに対してやはり教える、豊かな情操の育成、お友達とかあるいは家庭とか社会において守るべき態度とかなすべきことというようなこと、そういったことを育成していくのは大切なことだというので、その目標を達成をする。  現在文部省ではどうしておるかというお尋ねでございますが、四、五歳児の方で幼稚園に入園を希望する人は全部入園できるようにしたいという努力目標をつくりまして、いま年次計画をつくって、五十七年度にはそれを達成したいということで計画を立てて努力をしておるさなかでございます。
  89. 市川雄一

    ○市川委員 それで、いま実際の幼児教育の普及率でございますが、これは私の調査した資料もございますが、大体四歳児、五歳児を中心にして調べてみますと、小学校へ上がる方で幼稚園か保育所を通ってきた方、これが一九七五年、昭和五十年現在で約八九・一%、こういう資料が出ているわけです。そうすると、これはもう大半の児童が幼稚園か保育所に行っているという実態が出ているわけですね。昭和四十一年ですとこれが七〇%、それから昭和四十四年で七三・八%、それが昭和五十年で八九%、約九〇%に迫っているわけでございます。こういう普及状況について当然御認識されておられると思いますが、この中で特に問題なのは、私立の幼稚園に対する依存が非常に重いということですね。昭和五十年のデータで見ましても、幼稚園の場合は、二一・二%が国及び公立幼稚園、私立幼稚園が四三・二%、圧倒的に私立幼稚園が占めているわけです。こういう八九・一%という幼児教育の高い普及状態が生まれている、しかもその普及されている状態が私立にはなはだしく偏っているという状況について、どういう御認識とどういうお考えを持っておられるのか、承りたいと思います。
  90. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘になりました数字は正確な数字だと思います。私たちの調査いたしましたところでも大体そういうことになっております。ただ、幼稚園というものが設置され、普及されてきました歴史をたどってみますと、いろいろな宗教家の方であるとか、あるいは幼児教育を先覚的な立場に立って開拓していこうとされた教育者の方とか、みんなそういう方々が設置されてきて幼稚園が普及されていったという先人の歴史的な業績の経過もございまして私立が非常に多くなっておることだと思いますが、現在問題となっておりますのは、国公立と私立との間における父兄の負担の格差、これが特に問題になっておると思います。文部省といたしましては、これを放置しておいていい問題とは決して考えておらないわけでございまして、年々就園奨励費を増額していくとか、五十二年度予算ではたしか五十五億円になっておると思いますが、あるいは幼稚園の運営費補助をできるだけ増額していくとか、国公立と私立の幼稚園の経費の格差を何とか埋めるように努力をしていきたい、こう思っておるところでございます。
  91. 市川雄一

    ○市川委員 いま文部大臣から父母の経済負担が問題だというお話がございましたが、まさしくそのとおりでございまして、いま、東京と神奈川県で調べてみますと、公立の入園料が千円、一カ月の保育料が大体千八百円から二千五百円。私立ですと、入園料が六万三千円それから六万四千円、場合によっては十万円というところもございます。一カ月の保育料が約一万円から一万二、三千円。また、神奈川県の川崎では、公立が入園料が千円、保育料が千五百円。私立の場合は入園料が六万円で、これは平均ですが、保育料が一万円、こういう極端な父母負担の格差が生まれているわけでございます。こういう状況はいい状況ではないというふうにいまおっしゃっておられましたが、そこで先ほど、普及率が高いことはわかっておる、それから幼児教育が必要であることもわかっておられる、五十七年度をめどに何とか幼稚園の幼児教育をめどをつけたいというお話でございますが、普及率は高い、しかも私立と公立では経済格差が著しい、じゃお金がないから幼稚園に行かせなくて済むかというと、隣近所多くのお子さんがみんな幼稚園に行くのに自分の子供だけ幼稚園に行かせないというわけにいかないわけですね。そうすると、そこで無理して共かせぎしても幼稚園に行かせたいということになる。そうすると今度保育所がないという問題に突き当たってくるわけでありまして、こういう悪循環をどこかで切らなければいけないと思いますし、現実問題として公立の非常に少ないところもありますし、あるいは公立があっても抽せんに漏れて入れないという方が生まれてくるわけです。ところが私立の幼稚園に上げるほどの経済力を持っていない。こうなってきますと、一種の社会的な暴力に近い圧迫を父兄は受けるわけですね。幼稚園に子供を行かせたい、だけれども経済的に無理だ、しかし周りの状況では何かみんな行ってしまっておる、こういう状況が生まれておるわけでございますが、先ほど文部大臣がおっしゃった五十七年めどという話は、幼稚園に行きたいという希望を持っておられる方を全部受け入れられるような状況をつくろうということですか、どんなお考えのめどのことなんですか、その辺をお伺いいたします。
  92. 海部俊樹

    海部国務大臣 普及率は大変高くなってはおりますけれども、まだ行きたくとも行けない方もあるわけでございますから、幼稚園に行きたいという入園の希望を持っていらっしゃる四、五歳児を全員収容できるようにしたい、こういうことでございます。
  93. 市川雄一

    ○市川委員 そういうふうになった場合には、先ほどなぜ位置づけということを伺ったかと申しますと、そういう文部大臣のお考えがあるなら、これは普及率から見てもそうですし、父兄の要望が強いこともはっきりしておりますし、要するに国としては、準義務教育という考え方に立って公立幼稚園による幼児の受け入れ体制というものをつくっていくのだ、こういうお考えはないかどうか。どうでしょうか。
  94. 海部俊樹

    海部国務大臣 心構えといたしましては、入りたい方すべてが入っていただけるように何とかしたいということで、これは私立幼稚園側にも、ちょっと文部省の管轄ではございませんが、厚生省が所轄される保育園にも御協力を願って、そして希望する方すべてと、こういう考え方でございますので、直ちに公立ですべてその責任が果たせるかということはちょっと申し上げかねるところでございます。実情を御理解いただきたいと思います。
  95. 市川雄一

    ○市川委員 公立で全部というのは無理だと思うのですけれども、問題は、私立であっても公立であってもまず経済負担の格差がどうなるのかということですね。文部大臣がおっしゃっておる五十七年までに全部入れる状況ができたと仮にしても、やはり経済負担の格差が残っておるのでは実際は入れないわけですね。そういう経済負担の格差を是正するという前提で全員お入りになりたい方をお入りになれるようにしたいということなのかどうかということですね。たとえば私立に対する助成をするとかしないとかという問題もございますが、その辺はいかがでしょうか。
  96. 海部俊樹

    海部国務大臣 これは、ほかの問題を全部抜きにしてこのことだけを考えますと、できるだけ増額をして、理想を言えば格差がないようにしたいという心構えで取り組んでおるわけでありまして、先ほど申し上げました就園奨励費とか運営費補助、これは文部省がやっております直接の財政支出に属するわけでありますが、そのほかにも地方交付税措置の中でいろいろとお願いをしておるわけでありまして、何とかこの格差が是正されていくように年々努力を重ねていきたい、こう考えます。
  97. 市川雄一

    ○市川委員 それで、そういうことを考えた場合に、先ほども質問が出ていたと思いますが、公立幼稚園の建設費に対する国庫補助の実態ですね。私の調査ですと、これは東京の世田谷の例で申し上げますと、五十二年四月にオープンした幼稚園でございますが、土地が五百坪、約四億五千万、昭和四十八年九月に取得した土地でございます。建設費に約一億、備品に九百万、総計で約五億五千九百万かかったわけでございます。これに対して国からの補助が二千百二十九万五千円。自治体側から見た超過負担が二千八百七十万五千円、こういう超過負担が生まれているわけでございます。そういう四歳児、五歳児の教育についての父兄の要望が非常に強いということ、現実に普及率が非常に高いということ、それから経済負担の格差が公立と私立では非常に極端にあるということ、こういうことを考えますと、やはりこれは——もちろん公立の幼稚園がなかった時代から私立の幼稚園を営々努力してこられた方々を圧迫してはならないという面も当然考慮しなければならないと思うのですが、やはりこれから公立の幼稚園をふやしていくという方向は間違ってないのではないかと思うのですね。そういう方向を踏まえますと、こういう超過負担を生むようなやり方でいいのかということですね。やはりもっともっと国庫補助というものを前向きに改善していくべきじゃないのかということと、それから用地代については補助がついてないと思うのですが、この辺についての改善、どういうお考えがあるのか。五十七年までに何とか全員が幼稚園に入れるようにしたいという以上は、受け入れ体制について今度は具体的にそういう国の行政というものを変えていかなければできないのじゃないかというように思うのですが、その辺についてのお考えを承りたいと思います。
  98. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 幼稚園の希望者全員入学というためには、文部省としても逐年計画を持って補助をいたしておるわけであり、また、おっしゃるように公立幼稚園の増設ということに力を注いでおるわけでございますが、ただ最近の情勢を見ますと、地方財政の問題等もありまして若干公立幼稚園の設置計画というものが、当初私どもが考えておりますよりも少な目であるという現実がございますので、その点につきましては各教育委員会にいろいろお話をしまして、ひとつできるだけ公立幼稚園の増設に努力をしてくれ、こういうふうに申し上げておるわけでございます。そして、ただいま補助についての御質問もございましたが、五十二年度の幼稚園の建設費補助は公立、私立合わせまして九十億ほどになっております。そして、そのうち公立の補助が六十億、私立が三十億ということでございまして、補助の金額が現実にかかる経費に比べて少ないではないかという御指摘もございますが、この問題につきましては、補助の単価等は現在のいわゆる公立文教施設補助として義務教育学校の建設に対して国が補助をしておりますその補助と同じようにやっておるわけでございます。そして、この補助の増額につきましては、ただいま申し上げましたように、現実に市町村の幼稚園設置計画の拡大ということがなければまたこれは到達されないわけでございますから、一方においてそうした予算の増額に努力いたしますとともに、市町村におきましても幼稚園の設置について一層熱意を傾けていただくということで対処をいたしたいと思っておるわけでございます。ただ、敷地、用地の問題につきましては、これは幼稚園まではちょっと現在の財政の問題としては考えられないということで、もっぱら施設あるいは設備の助成ということに力を置いてやってまいりたいと思うわけであります。
  99. 市川雄一

    ○市川委員 自治体に言うと、自治体は国がお金をくれないから幼稚園ができないのだ、こう言い、国に言うと、自治体が熱心じゃないからだというお答えで、やはり実際困っているのは庶民の方でございまして、やはり国が確固たる幼児教育に対する方針というものを持って、それを自治体がつくりやすいようにどんどん進めていけば、もちろん自治体だってやっていくと思うのですよ。たとえば、保育所の方が補助率がいいから、幼稚園よりも保育所を先につくってしまおうじゃないか、保育所をつくったという実績を先につくってしまおうじゃないか、保育所を幼稚園がわりにというようなところもあるようでございますが、そういう実態を見るにつけ、これは決して自治体が幼稚園をつくりたくないわけではなくて、やはり超過負担という問題の解決を抜きにしていまの御意見はちょっと私は納得しかねるわけですね、住宅もつくりたいけれども関連社会資本がかかり過ぎてしまうので自治体としてはつくれない、病院もつくりたいけれども赤字になるのでつくれない、幼稚園をつくりたいのだけれども超過負担でとても財政圧迫になるからつくれない、つくりたくなくてつくらないわけではないわけですよ。つくりたいのだけれども財政的なそういう制約があってできないわけですから、そういう財政上の制約というものを解決する方向に国がもっと前向きに取り組むべきじゃないかと思うのですね。たとえば川崎市の場合ですと、これもことしの六月一日にオープンの予定の幼稚園なんですが、これは小学校に併設した幼稚園ですから建設費は約七千百万円で、国から補助が二千五百十四万、これで約一千万の超過負担をしているのですけれども、川崎の場合、地盤が非常に悪いので、他県では十三メートルぐらい掘れば三階建ての建物がつくれるのに、川崎の場合ですと四十五メートルも掘らなければ三階建ての建物をつくれない、こういう違いがあるわけですね。もちろんそういう違いはある程度考慮はされておられるのでしょうが、そういうことを考えますと、一律の何か画一的な基準単価でやっておられるような感じを受けるわけですが、そういう点も十分に改善をなさっていただきたいというふうに思うわけですが、いかがですか。
  100. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 施設の単価の問題につきましては、幼稚園のみならず文部省関係の文教施設全般の関連もございますので、なおよく検討させていただきたいと思います。  それから、幼稚園の問題で特別なのは、いま一つは保育所との関係で、全県的に見ますと非常に保育所の多いたとえば長野県みたいなところ、それから逆に幼稚園教育の非常に普及している香川県のようなところで、それぞれの県の考え方といいますよりも今日までの歴史的な経過というものがそういう非常にいろいろな実態をもたらしておるという点、それから公立幼稚園と私立幼稚園の関係にしましても、たとえば神奈川県のようなところは、横浜市はあれだけ大きな都市であっても私立の幼稚園に依存しておるというようなところもございまして、それらの点が今日の幼稚園のあり方についていろいろ問題を投げかける一つの原因になっているかと思うのでございまして、そういう意味で私どもはすべての市町村に幼稚園教育の重要性というものを一層認識していただきたい、こういうことでやっておるわけでございます。
  101. 市川雄一

    ○市川委員 次に、幼保の一元化という問題でございますが、昭和五十年十一月二十五日に行政管理庁から、文部省と厚生省の間で保育所、幼稚園の行政についてばらばらにやっているのではなくて、協議してやったらどうか、こういう勧告がなされていると思うのですが、この勧告を受けてどういうことをいままでやってこられたのか、それをお伺いしたいと思います。
  102. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 先ほど申し上げましたように、幼稚園と保育所の関係というのは、本来それぞれの役割り、分担は異なっておるわけでございますが、現実にその普及の状況がまちまちであるために、実際には混同されておるようなところがある。そこで、昭和三十八年であったかと思いますけれども、文部省と厚生省の担当局長の共同通達をもちまして、保育所の場合もその保育の内容は幼稚園教育要領によってやることが望ましいんだということを通達いたしまして、かつ、その幼稚園と保育所の設置についてはそれぞれ連絡を密にしてやるようにするということをいたしておるわけでございますが、そのようなことでありましたけれども、昨年行政管理庁の方から幼稚園、保育所の実態についての監察の結果として、幼保一元化と申しますか、それぞれの施設整備計画について整合性を持った計画が立てられるようにしなさいという勧告があったわけでございまして、この勧告を受けまして、現在、厚生省と御相談をいたしまして、それぞれの省から適当な関係者を御推薦申し上げまして、そこでそれらの関係者の方々に協議の場を持っていただいて、そしていまの幼保の一元化といいますか、幼保の整合性ある計画を一層進めるための方策について御討議をいただく、こういうことでただいま準備を進めておるところでございます。
  103. 市川雄一

    ○市川委員 どうも抽象的で、何をやっておられるのかよくわからないのですけれども、もうちょっと具体的にどういうテーマでやっておられるのかを聞いていたわけですが、幼保の一元化という問題について、幼児が教育を受ける権利を平等に保障していくという、ここに一つ考え方の基礎があると思うんですね。保育所へ行っておりますと、四歳児、五歳児になった場合に、幼稚園に行っている児童と比べますと、幼稚園で行われているような教育は保育所では受けられない、そういうことから幼保の一元化という問題が生まれてきたと思うんですね。あるいは幼稚園に行っている児童の方でも、保育所と同じような機能を幼稚園に持ってほしい、こういう要求もあったと思うのです。  まず、この行政管理庁の勧告は幼保一元化ということは触れてないわけですね。ただ、行政を密接に連携をとってやりなさいということしか言っていないわけですが、将来の方向として、この幼保一元化を目指すべきものと考えておられるのか、それともいまのまま保育所は厚生省、幼稚園は文部省という形で別々にして、ただ連携をとっていけばいいのだというお考えなのか、その辺のことを、よろしかったら文部大臣お答えをいただきたいと思うのです。
  104. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のように、幼稚園が幼稚園教育要領というものをつくって四、五歳児にはこの程度のことをと、先ほど申し上げましたような目標を設定してやっておりまして、保育所にいらっしゃる四、五歳児の方には、幼稚園教育要領に準じて教育内容は同じ程度のものをやっていただきたいということは、かねて文部省から厚生省の方を通じてもお願いをし、またそういうような方向でやっていただいておると私は考えております。  なお、将来一元化のことはどうかとおっしゃいますと、中央教育審議会の答申のときにも指摘がございましたように、これは初等教育の始期をいつにするかというような制度の根本に触れる問題をはらんで、われわれとしては長い目盛りでいま検討に着手しておりまして、一体義務教育年限を早めるのがいいかどうかということについていろいろな研究等もいま行っておりますし、また、もしそういうもののあり方がどうなるかという制度全部にかかわってくる問題でございますから、慎重にいろいろな研究実習を指定して行ってもらったり、いろいろな努力はしておりますが、いま直ちにここでどの方向だと御返答を申し上げる結論に到達しておりません。御了承いただきます。
  105. 市川雄一

    ○市川委員 幼稚園にしても保育所にしても、いろいろな問題を抱えていることは私も認識をしておるわけですが、たとえば保育所の性格なんかも、婦人の労働権拡大のために置くのか、婦人労働者の子を企業にかわって置いてあげるのか、あるいは福祉的な、母親がいないとか勤めに行かなければならないという母親のために置く、そういう福祉的なもので保育所の性格を位置づけるのか、その辺がはっきりしていないという問題が一つあるわけですね。ですから幼保の一元化といっても、保育所の持っている機能、保育に欠ける幼児の親がわりとなって保護してあげるという保護という機能ですね。それから幼稚園はこれは明らかに就学前の児童の教育ということが対象になっているわけですね。そういう保護と教育という機能の違いが保育所と幼稚園にあるわけですが、いまどうも幼保一元化ということが、文部省のお考えになっておられるのは、保育所の保護機能をベースとして、保育所にプラスアルファ、幼稚園年齢該当児に対して幼稚園に準じた教育をプラスしてあげるというものではないのかというふうに思うわけですね。これはあくまでも幼保の一元化ということにはなっていないわけですよ。要するにまだ保護というものがベースであって、ただ準じて教育をプラスしてあげるというだけの話しですから、これを一元化ということになればやはり保護と教育というものを有機的に一つ施設で行わなければならないわけですね。すると、これを担当なさる教員の資格という問題が生まれてくると思いますし、私たちとしては、財政的な問題もあるし、あるいはそういう父兄の強い要求ということも考えますと、いま大臣おっしゃたように、これは確かに義務教育年限の出発点をどこにするのかという問題も含んでいるとは思いますが、この四歳児、五歳児については、幼稚園に保育所の持っている保護という機能を完璧に備えさせて、そして幼稚園教育も行えるし保育所に預けたと同じような保護機能も行える、四歳児、五歳児についてはたとえば幼稚園に一本化して吸収していく、こういう方向一つ考えられるのじゃないかというふうに思うのですね。この年齢で切るという考え方ですね。そういうことや何かを含めて御検討されているとは思いますが、こういう幼保一元化が必要というふうにお考えになっておられるのか、それともいまの状況では必要か必要でないかということもわからないという段階なのか、どの辺の段階にいま議論があるのか、その辺ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  106. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 確かにこの幼保一元化という言葉の意味がかなりあいまいな点もあるわけでございますが、私どもが考えておりますのは、御指摘のように、幼稚園の目的は幼児に対して適当な環境を与えて心身の発達を促すという教育であり、保育所は保育に欠ける子供の保育だということでありますが、現実にはかなりそのあり方がばらばらになっておる。そこで行管の勧告の趣旨なども、保育所というものが預かる子供の数等はやはり一定の限度があるはずじゃないか、したがって、全国的に見た場合に保育所はどのくらい、あるいは幼稚園はどのくらいということで、それぞれの目的に応じてきちんと設置されていなければならないはずだ。そういう観点からすると、現状は各府県においてかなりばらばらである、そこで幼保の一元化といいますか、そういう設置状態あるいは設置の数というようなものを全国的にこれからさらに調整をしていこうというのが一つございまして、そういう点ではその実態の調査なども現在進めておるわけでございます。それが一つございます。  そういう前提に立って、それではその保育所と幼稚園のやることが全くばらばらでいいかといえば、それはやはりそうじゃない。三、四、五歳の最も人間の発達の著しいこの時期に何らかの教育作用を施してその発達を促すという意味では保育所も幼稚園も同じはずだ、そこで、保育所と幼稚園というのは機能的あるいは制度的には違うけれども、そこで行う教育内容は、保育所においても幼稚園の教育内容に準ずるようなものをやっていくようにしよう、こういうことで施設そのものの設置状況と、それからそこにおける教育のあり方というものをそれぞれ一層適正化をしていこうという考えで私どもはやっておるわけでございます。
  107. 市川雄一

    ○市川委員 いまの幼保一元化の問題について、たしか厚生省の方がお見えになっておられると思うのですが、厚生省の方ではどういうふうにお考えになっておられるのか。
  108. 長尾立子

    ○長尾説明員 お答え申し上げます。  保育所という制度は児童福祉法上に根拠を持つ制度でございますけれども、その目的といたしますところは、お母様が働いていらっしゃるとか御病気であるとかいう事情で保育に欠けるという要件に該当いたしますお子様をお預かりいたしまして、お母様にかわりまして、日中大体八時間ぐらいでございますが、先生のいまお話ございましたように養護と教育という二つの目的を総合的に勘案いたしまして機能として持っている施設でございます。ただいま文部大臣からもお話がございましたように、幼稚園年齢該当児につきまして文部省がおつくりになっておられます幼稚園教育要領に準じまして、私どもの方では保育指針というものを定めておりまして、これを各保育所におきまして保育の指針にするように指導をいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、保育所におきまして保育を担当いたします職員につきましては、これは保母という資格でございますが、現在、高等学校を卒業いたしましてから約二年間の養成資格を要請いたしておりまして、この教育課程の中では幼稚園の教諭とできるだけ合わせる内容を盛り込むように、私どもの保母養成所の指定基準の中で定めておるわけでございまして、現実問題といたしましては、幼稚園教諭の資格を取得いたします者と保母の資格を取得いたします者が相当にダブっておるというのが現実でございます。  私どもといたしましては、実は行政管理庁から勧告をいただきました後すぐ児童福祉審議会におきまして、この問題の勧告があったという形の報告をいたしたわけでございますが、その際、児童福祉審議会から、これは保育所の問題を主管いたしております保育特別部会というものがございますが、保育特別部会で保育所の問題を幼稚園の関連も含めてこの機会に基本的に検討し直したいという御提案がございまして、実は保育部会でほぼ一年間にわたりまして御検討いただいたわけでございます。  その御検討の結果が五十一年十二月十六日に「今後における保育所のあり方」という形で中間報告にまとまりまして、私どもの大臣あて意見具申をいただいたわけでございますが、その中では、幼稚園の関連というものに触れて申し上げますと、保育所における教育機能というものを、その当該年齢児についてさらに重視するということを私どもに対しまして強く御指摘をいただいておりますことと、ただいま先生からお話がありました担当の職員についての資質の向上ということについて、今後強くその措置を図っていくようにという内容の御意見をいただいておるわけでございます。  こういう御意見を受けまして、私ども本年度から、文部省関係の審議会の先生方から成る懇談会を設けるという形でこの問題を中心に御検討いただくという意味事務当局と御相談をさせていただいておるところでございます。
  109. 市川雄一

    ○市川委員 それでは次に、高等学校の問題をお伺いしたいと思います。  これも文部大臣非常によく御存じだと思うのですが、高校進学率が非常に高い。全国平均で九一・九%、東京では九六・六%、神奈川県では九四・三%、広島県では九七・三%、いまこういう高校進学率になっておるわけでございます。しかも先ほどの幼児教育とまさに似たような面を持っておるわけです。公立高等学校と私立高等学校の経済的な負担というものは非常に格差がある。公立の場合ですと入学金が千円で授業料が一ケ月千八百円、年間で二万一千六百円、私立ですと大体入学金が平均で十万八千八百七十九円、授業料が一万三千六百十八円、年間十六万三千四百十六円、こういう平均の数字が出ておるわけですが、こういうように入学金あるいは授業料負担が非常に違うということですね。しかも、神奈川県で計算をいたしますと、公立高校生一人当たりについて自治体が負担している費用が年間約三十一万円、この三十一万円から授業料分を引いたとしても約二十八万七千円を支出しておるわけですね。しかし一方私立高校の場合は逆に、助成金等は計算に入っておりませんが、高校一年生の場合で入学金を入れて一人当たり約二十七万三千円という負担をしておるわけですね。一方では公費で一人当たり年間二十八万七千円の負担をしてあげている。一方では自分が私費で二十七万三千円を負担しておる、こういう格差があるわけです。これは私立高校に通っておる高校生と公立高校に通っておる高校生の負担の格差という問題と、それからもう一つは、高校へ進学なさる方と進学なさらない方、パーセントにしては非常に少ないわけですが、そこにも負担の不公平という問題が起きているわけです。  お金が十分にあって私立に行きたくて行くんだという方は別といたしまして、公立へ行きたいんだけれども、入れなかった、私立へ行かざるを得ないという形で行く、しかも経済負担が重い、こういう実態を考えますと、これもいろいろな問題はありますが、やはり高校全入という方向考えざるを得ないんじゃないかというふうに思うのですが、文部大臣、高校教育というものについてこういう実態をどういう方向で解決していこうとされておるのか、その辺についてお伺いをしたいと思うわけです。
  110. 海部俊樹

    海部国務大臣 最近の高校進学率というものは、全国平均で見ましても非常に高くなっております。そして志望する人の合格率というのからいきますと、たしか九八・六%ぐらいは進んでいただける。だから特定の学校へ行きたいからという方を除くと、高校へ行こうという意思のある方のほとんどが現在進んでいらっしゃるのではなかろうか、こう考えるわけであります。  ただ、中学終了の時期にいまなお高校進学を選択しない人がいることも事実でございますし、それから人生には多様な道がある、また多様な道を選択する意思のある方がいらっしゃるということで、たとえば専修学校の制度あるいは五年制の工業高等専門学校の制度、いろいろな道等も設けて、やはり能力を持ち、希望をする方がすべて中学校卒業後も、高等教育を受ける前の段階で後期中等教育を受けられるようにしていかなければならぬ、心構えとしましては、希望する、能力のある方が全部入れるようなそういったことを目指して取り組まなければならないということでありますから、今後の高校が、じゃどれくらい足りなくなるかということで文部省としまして五年間に四百三校というものをはじき出しましたその計算の基盤にあります精神も、やはり現在のような合格率や進学率を落とさないようにしていこうということで作業をしておるわけでありますから、その取り組む姿勢は御理解をいただきたいと思います。
  111. 市川雄一

    ○市川委員 問題は私立と公立の格差ですね、これが非常に問題であるというふうに思うわけです。  それで、先ほど申し上げた全入制というのは高校教育を義務教育化せよということではなくて、もちろんいろいろな事情から別の人生のコースを選択される方もいらっしゃるわけですから、当然そういう選択の自由というものは残しておきまして、高校進学を希望される方——特定の学校へ絶対入るのだという方は別としまして、そういう高校進学を希望される方が経済的負担から行けないとか、あるいは高校へ入ったのだけれども家族が非常に経済負担で苦しむとか、こういう事態をやはりなくさなければいけないのじゃないかと思うのですね。この辺についてのお考えはどうなのかということを伺いたいわけでございます。
  112. 海部俊樹

    海部国務大臣 一〇〇%結果があらわれておりませんことは、これは率直に認めなければならぬのですが、精神としては、いま市川先生のおっしゃるように経済的理由だけで行けなくなるような人がないようにしなければならぬ、こういう取り組みでございますし、五十二年度予算におきまして、私立の高等学校等に対する経常費の補助というものは三百億円、これはたしか六六%の伸び率であったと思いますし、また交付税措置等もされておりますし、さらにまた、個々の学生を対象にする育英奨学資金の貸付金のことも、国公立の高等学校よりも私立の高等学校へ通う生徒には月額貸与額を多くしておるというように、いろいろきめの細かい政策努力を続けてまいらなければならない、そして一〇〇%実現するようにできるだけ努力をしていきたい、こういう姿勢で取り組んでおりますので、御理解をいただきたいと思います。
  113. 市川雄一

    ○市川委員 本会議の予鈴が鳴ったそうですから、あとまだ多少残っておりますが、本会議が終わった後に質疑を続行さしていただくことにいたしまして、これで終わりたいと思います。
  114. 正示啓次郎

    ○正示委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  115. 正示啓次郎

    ○正示委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  116. 正示啓次郎

    ○正示委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。市川雄一君。
  117. 市川雄一

    ○市川委員 本会議で中断いたしましたが、先ほどに引き続きまして高等学校の問題について御質問申し上げたいと思います。  私が申し上げたいと思っておりましたことは、要するに四歳児、五歳児の幼児教育の問題、高等学校の教育の問題ですね、現状では義務教育になってないが、しかし普及率が非常に高い、もう義務教育に近い普及率を現実には持っているということですね。ですから、そういう意味では、親の意思とか個人の意思で行くとか行かないとかいうことを決める余地を、もちろん残すことはいいことなのですが、しかし、また同時に、大半の人がそういう意思に関係なく行かせざるを得ないという状況もあるということですね。そういう強制力も社会的に生まれてしまっているということ。そういう状況にありながら、公私の格差が、これは特に経済負担という面で見た場合にひどい格差があるということです。文部省では、幼児教育も大事である、高等学校の教育も大事であるという認識を持っておられると思うのですが、そういう状況の中で、そういう認識を持っておられるにもかかわらず、いつまでもそういう大事な教育を、私の家計を破壊するような重い負担のままで置いておいていいのかということです。この問題について、やはり憲法の教育の機会均等という精神から考えても、なるほど普及率という点では、大臣おっしゃるように、間もなく幼児教育も高等学校も、希望すれば幼稚園に入れます、あるいは希望すれば高等学校に入れますという状況は生まれるかもしれませんけれども、そこにある経済的な極端な負担の違いという問題をなくさなくてはいけないのじゃないかというように思うわけです。その場合、公立高等学校を増設するということと、私立の高等学校に対する助成金を拡大していくという二つの政策的な対応が考えられるわけでございますが、こういうことについて、こういう公私の格差、しかも経済負担のひどい格差というものが現状でいいと考えているのかどうか、あるいは近い将来これはなくしていく方向でやっていこうという決意があるのかどうか。海部文部大臣、私たちと同じ若い世代の大臣で、教育に対して情熱を持って取り組んでおられると思いますので、その辺の御決意を伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  118. 海部俊樹

    海部国務大臣 このまま放置しておいていいなどとは決して考えておりませんし、それから、御指摘のように国公立と私立の間の格差の問題は、これは一幼稚園、一高等学校段階に限ったことじゃなくて、広く高等教育全般にも大きな問題があるわけでして、日本教育全体の立場からやはり私学の助成ということには十分に力を入れていかなければならぬと、私はこういう気持ちでおります。したがいまして、従前私学に対しては施設に対する補助をしておったものを経常費に対する補助にまで踏み切り、しかも私学振興助成法という法律をつくって、努力目標も定めて一生懸命努力をしておるところでありますし、また、経常費の助成のみならず、たとえばいま御議論になっております私立の高等学校に対しては地方財政の方でも交付税措置をお願いしておったり、あるいは生徒一人一人を対象とする奨学資金の問題でも、私立学校の生徒には国公立よりも毎月の貸与率を多くしていこうという、いろいろきめの細かい、気のつく限りの政策努力を積み重ねまして、格差是正という大きな目標に向かって一歩でも二歩でも近づけていこう、こういう決意でやっておりますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  119. 市川雄一

    ○市川委員 そういう努力を私たちが全然評価してないわけじゃないわけでして、もちろん文部省のそうした努力というものは評価することにやぶさかではありませんが、しかし事態は非常に深刻だということです。のんきな状況ではないんだということを申し上げたいわけです。ですから、もう普及率が高い、義務教育レベルに近い、あるいは公私の格差がある、にもかかわらず著しい経済的負担がある、こういうことを考えますと、やはりもう四歳児、五歳児の幼児教育あるいは高等学校の教育という問題について、国が全面的に責任を持ってやっていくんだという方向に変えなければいけないんじゃないかというふうに思うわけです。どうも、先ほどから御答弁伺っておりまして、それなりの努力をされていることはわかるんですが、普及率が高くなったのも、もちろん文部省の努力もあると思いますが、どちらかと言えば重い負担の中で必死になってやってこられた多くの方々の、ある意味では個々のそういう努力の方が普及率を押し上げてきているわけですね。その状況が生まれてきて、これはどうも公立高等学校をふやさないとまずいぞ、公立の幼稚園をふやさないとまずいぞ、だから公立の幼稚園はふやします、公立の高等学校はふやします、助成金も私立の方には出しましょうということで、何か教育行政が状況の後追いをしている感じですね。そうじゃなくて、そういう国民的な要望が強い、しかも、文部省として、日本の将来を考えた場合に、いまの六三制という義務教育年限を、幼児教育段階から高等学校まで、これは小中学校に全く同じにしろという意味ではなくて、準義務教育化の方向でやっていかなくてはならないんだ、やっていこうと、こういう強い方針というか、そういうものをもうお持ちにならないと、状況の後追いばかりで、状況を大胆に先取りして、それに対して対応していく政策をやっていくということができなくなるんじゃないか、またできないんじゃないか、そういう意味から私は何度も申し上げているわけでございます。そういう意味で、四、五歳児の幼児教育と高等学校の教育を、国の教育政策、行政の中で国が責任を持ってやっていくんだ、そのくらいのウエートと位置づけというものをはっきりお持ちいただきたい、こういうふうに思うわけですが、この点に関して特にお考えがあれば承りたいと思うのですが、文部大臣いかがでしょうか。
  120. 海部俊樹

    海部国務大臣 その問題に関しましては、義務教育にすべきかどうかという角度の根本的な議論もございますし、それからその根本的な議論は六三三四の根幹に触れてまいりますから、先ほど御答弁申し上げましたように、いま指摘されておる問題の研究をしたりあるいは実証的な資料を集めたり、問題をどう把握し、どう結論を出すかという検討をしておることは事実でございますが、これはやはり非常に目盛りの長い話になってまいりますので、御指摘のように、当面今日現在、四、五歳児で幼稚園へ行こうと希望してもまだ入れない人があるということや、あるいは今後五年間、高等学校適齢期の人口構造を見ておると、五年間に四十三万人ほどふえていくということもわかっておるわけでありますから、まさに御指摘のように、後追いにならないようにそういう状況を先取りして、当面解決しなければならぬ、当面問題になることがわかっておるものについては、たとえば高校の増設であるとかいろいろなことにもいま政策の手は打っておりますけれども、やはり幼小期の教育をどこから義務にするのか、あるいは高等学校というものをどうするかということにつきましては、いろいろな問題が絡んでおりますので、いまは当面の問題を全部解決するように努力しておりますが、これを国の責任で義務教育としていけるのかどうかということに関しましては、いま少し慎重に判断をする時間をお与えいただきたい、こう思うわけであります。
  121. 市川雄一

    ○市川委員 義務教育にするかどうかはそのとおりだと思います。ですからこれは慎重に御討議いただいて結構ですが、当面の問題についてどうかひとつもっともっと積極的な機動的な施策を打っていただきたいというふうに御要望申し上げたいと思うのです。  それで、先ほども質問が出ておりましたので簡単に済ましたいと思うのですが、公立高等学校の建設費の国庫補助の問題です。私が調査いたしましたら、こんな簡単なデータでございますが、神奈川県では五十一年度に六校の高等学校を建設したわけでございます。用地費が約百八十九億円、建設費が百五億円、合計で二百九十四億円かかっているわけですが、国庫補助が七億円という状況でございます。いまの高等学校の不足ということを考えますと、もっと国庫補助についてふやしていくことが必要であるし、また用地等についても国庫補助というものを新しく考えていく必要があるんじゃないかということを考えておるわけでございますが、この辺の問題についてこれから前向きにやっていくお考えがあるかどうかひとつお答えをいただきたいと思います。
  122. 海部俊樹

    海部国務大臣 高等学校の建築の問題につきましては、やはりこの五年間というのがとりあえず緊急増設が必要な時期であるという判断に立ちまして、いままでは地方財源で賄っていただいておったのですが、やはりそれではいけないということで今年度から初めて建物補助という方向に踏み出したところでございますので、制度が今年度から始まったところでありますから、来年度はさらにまた政府部内で財政当局との話し合いの問題もございますし、また他の関係省庁といろいろ検討もしなければならぬ問題がございますけれども、文部省といたしましては、せっかく始めた制度でありますから、これはできるだけ地元の御要望に沿うようにも努力をしていきたい、こういう考えでございます。
  123. 市川雄一

    ○市川委員 国庫補助の問題に関連しまして、人口急増地区はさらに人口急増に伴う深刻な事態を迎えておるわけでございます。特に東京都あるいは神奈川県、埼玉県、千葉県という都市圏の県が人口急増に伴う高校不足問題にいま見舞われているわけです。  神奈川県の事例で考えますと、昭和五十一年四月一日現在で公立全日制高等学校の設置状況が約百五校。それで、四十八年から六十年までの十二年間で約百校建設しなければならない。四十八年を起点にして五十五年までの七年間で約六十校建設しなければならないという状況に置かれているわけです。大まかに申し上げまして、明治百年で約百校の高等学校をつくってきた。しかし、それを十年間でこれから百校つくらなければならない、あるいは七年間で六十校つくらなければならないという事態にいま直面しておるわけです。  神奈川県の事例でさらに申し上げますと、五十八年三月の中卒予定者が十万七千人、現在の進学率九五%と仮定して、恐らくそのうち十万一千七百人が高校へ進学するであろう。四十九年時点の公立高等学校等の収容能力が五万八千七百人、そうすると、四十九年から五十八年までで四万三千人の受け入れ体制をつくらなければならない。そうすると、近隣の都市圏への進学を考慮したとしても百五校の建設をしなければならない。大体一校当たり三十五億から四十億かかるという計算も現実に出ているわけですが、これを四十九年度を起点として、もし五十八年までの九年間でこなすとして考えても、全体で約三千六百七十五億、一年間で四百八億円の高校増設のための経費が必要になってくるわけでございますが、こういう人口急増地区は切実な問題に直面しているわけですね。したがって、今年度から新しく建設分についての補助がつくようになったという、そういう制度ができたばかりなんだというお話、その御努力は評価するにいたしましても、こういう人口急増のために極端に高校増設を急がなければならない地区に対して、他の自治体との公平という問題も考慮しなければならないとは思いますが、人口急増地区に対してもっと機動的に対処するという考え方は持ち合わせておりませんですか、どうでしょうか。
  124. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 大臣からも申し上げました高校の補助をことしから初めて始めました。その始めました理由は、やはり急増の現象に対して対処する、そのための応急五カ年間措置ということで始めたわけでございます。したがいまして、実際の補助金の配分に当たりましては、そういう状況を勘案いたしまして、一定の条件のもとに要件に該当するものについて補助金を配分するということで、おっしゃいましたような非常に急増の状況が激しいところ、そこに優先的に回るようなそういう配分の方法をとっております。
  125. 市川雄一

    ○市川委員 そういうふうにおやりになっているんだろうとは思うのですが、この人口急増というのは、神奈川県なら神奈川県が人口誘致をして神奈川県に人を呼んだわけではありませんでして、やはり戦後の高度成長政策、重化学工業優先という政策の中で神奈川県のあのコンビナートがつくられ、農村から若い労働力が神奈川県に急激に引き寄せられたという経緯があるわけですね。それから、学校の問題だけではなくて、この人口急増地区におきましては幼稚園、保育所の問題はもちろん住宅、病院、こういう生活関連の公共投資も莫大な投資をしなければならない切実な面を抱えているわけですね。  昭和四十七年の経済企画庁の発表した経済白書の推計によりますと、都心で千人の就業者がふえたときに、それに伴ってどの程度の追加的社会資本の建設が必要とされるか、行われたか、こういう試算が経済企画庁の推計で出ております。地下鉄の建設のために約六・一億円、学校、住宅及びその周辺の社会資本のために二十一億円、主要なものだけで三十三億六千万という、大体年間一人当たり三百三十六万円の公共サービスの分野での投資が必要になる。就業人口が千人ふえただけで、年間三十三億六千万かかる。こういう人口急増地区には、そういう社会関連資本というもののお金がかかるわけですね。ですから、高校だけの問題ではなくて、住宅とかほかのものにも切実に直面しているわけですから、どうかこの高校建設については一層の御配慮をいただきませんと、中学浪人をたくさん生んでしまうという事態をつくってしまうわけです。そういう点で、どうか一層の御配慮があるように御要望いたしまして、高校の問題は終わりにしたいと思います。  最後に、塾の問題をお伺いしたいんですが、大臣、参議院の集中審議やいろいろなところで塾の問題について御答弁されておられるようですが、一貫して塾の問題については、公的教育のゆがみを是正する、で対処いたします、こういうふうに大臣お答えになっておられるように私は記憶しているわけです。もちろん、公的な教育のゆがみが是正されれば、それなりに塾に対する一つの対策にはなると思いますが、私は、それだけではないんじゃないかというふうに考えているわけです。  一つは、やはり学校教育と塾というものを比べてみた場合、いまの小中学校の教育の欠陥というか欠点というか、なぜ塾が生まれてくるかという背景を考えてみると、結局学校の役割り、性格が非常にあいまいだということですね。人格の完成という一つ教育目標は持っておりますが、目的が非常に抽象的で、内容が非常に広範にわたっている。  それから集団教育の限界というんですか、子供の能力の発達の速度や興味の方向が子供によって違う。それが集団教育のために、個別に対応ができないということですね。わからなければ先生質問すればいいんですが、しかし自分がわかるまで一人で質問するというわけにいきませんから、やはりそこに、わかってもわからなくても、教師の授業が生徒の理解よりも優先して先にどんどん進んでしまうという、こういう集団教育の限界をいまの学校教育は持っているんじゃないか。  それに対応して塾というのは、むしろ目的役割りというのははっきりしている。教える方も教わる方も、非常に目的役割りが一致しているために、塾でははっきりとした教育ができる。それから無学年制で、一人の先生が小人数を担当して塾で教えている。ですから、個人というものは非常に重要視されて、生徒の能力に応じた指導学習が塾ではなされている。こういう学校教育に持っていないものを塾の方では持っているという面があるわけです。  そうすると、大臣のおっしゃる公的教育のゆがみの是正というものを考えた場合に、じゃいま学校教育、集団教育から起きてくる落ちこぼれ、おくれた生徒、これをどうするのかということですね。この問題について何か具体的な回答を持っているのかということです。たとえば、一人の先生が持つ生徒の数をもっと少なくするということになれば、教員をふやさなければならないという問題が起きてきます。こういう問題は、いま非常に父兄には切実な問題なんですね。私も小学生を自分の子供で持っておりますから、父母参観なんかに行くんですが、学年の先生が全部集まったところへ学年の父母が全部集まって、先生と討議する場所がこの間もあったんですけれども、そこで出た御意見は、たとえば算数がわからないとか国語がわからないとか社会がわからない、理科がわからないという子供別に、学年単位でいいから先生が補習やってもらいたい、お金がもし必要なら、お金出してもいいから、学校で補習をやってもらいたい、こういう御意見が強く出されたんですけれども、先生の方は全然それに応対ができない。私たちの判断する次元の問題ではございませんということで先生は逃げちゃっているわけですけれども、こういう光景を現実に目にしておりますし、じゃ、その公的教育のゆがみの是正とおっしゃいますが、そういう集団教育の限界から来た落ちこぼれの問題を具体的にどういうふうに対処していくのか。  もう一つ、塾が持っている機能として、やはり受験教育あるいは受験準備のために塾へ通うという問題があると思うんですね。これは高校や大学の入試選抜制度というものがある限り、やはり塾というものは残ってしまうと思うんですね。私は何も、全然競争のない社会が望ましいとは思っているわけではありません。もちろん、人間の社会ですから、ある程度競争があって、努力した人が進んでいくということがあっていいと思うんですが、それが極端にいまみたいに過熱してくるということは、好ましいことではないんじゃないかというふうに思っているわけでございまして、そうなってきますとこの塾の問題というものは、大学の入試、高校入試というものを改善しなければならないという問題に突き当たってくると思うんです。この辺について、何か具体的な大学入試や高校入試の改善策をお持ちなのかどうか、まずその二点についてお答えをいただきたいと思います。
  126. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のように、塾の問題を解決するためには、一面からだけの問題指摘で解決するのじゃなくて、入試の問題ももちろんございますし、あるいは落ちこぼしか落ちこぼれか、とにかく現在の授業内容というものが多過ぎるのかむずかし過ぎるのか、あるいは現場で立っていただく先生指導力にもう少し創意工夫をお願いしなきゃならぬ点があるのかどうか、いろいろな面からの解決策を求められております。  私は、基本的には塾というものができるには、それだけのやはり理由があってできてきたんだろうというふうに受けとめまして、文部省全国で塾の問題についての調査をいたしてみました。いま御指摘のように、なぜ塾へ行くかというのに一番多かった答えは、子供が行きたいと言うから行かせるというのが一番多かったんですけれども、しかし学校の内容が非常にむずかしいので、家に帰ってきてから教えることができないから塾へ行かせるとか、あるいは学校の授業がおもしろくない、わからないから行くとか、いろいろな理由がございました。  このことについては、まず文部省としては、じゃどこをどう改革していったらこの問題に対処できるか、具体的にいま取り組んでおります学習指導要領の改定作業の中で、基礎的、基本的なことに精選をいたしまして、学校教育というものがもう少しゆとりのある、充実したものに変わっていくことによって、公教育が責任を果たせば、塾へ走っていっていただかなくても、国民として必要な基礎的、基本的なことが身につくようになる、それにはどの程度の教科内容、どの程度のものが必要なんだろうかということを、いま学習指導要領の改定作業で洗い直し、見直しをやっている最中でございまして、これには現場の先生方にも一教科ごとに十数人ずつ御協力願って、御意見を聞きつつ、無理のない妥当な線を出すことによって、学校の授業がむずかしいから、わからないから、おもしろくないからというような角度の問題点は、具体的に一面解決していきたい、こう考えるわけです。  それからもう一面の、いままた御指摘がありました、学校の先生がいろいろ自分たちの範囲、判断を超えることでわからないとおっしゃった例をお引きになりましたが、また一面では現場の先生も非常にこのことには気を使っていただきまして、この間私は、日教組の委員長ともいろいろなところでお話をしておりますが、みずから三ト追放ということも向こうから言われて、アルバイト、プレゼント、リベート、この三つのトは追放すると言われます。私は、もう一つトを加えて、ストもやめて四ト追放にしてもらったらなおありがたいということを言っておるわけでありますけれども、そういうときに、やはり国語はできるが数学ができない子供がおったら、なぜ数学できないんだろうか、教材が悪いのか、家庭の環境が悪いのか、自分の教え方が悪いのか、いろいろなことを反省しながら、やはり子供を引き上げるように、授業のときに目をきらきらさせるという表現を使われましたが、目をきらきらさせるような授業というのはどうやったらできるということに、教師自身も心を配って考えてみましょうというようなお話もあります。  そういうことで、現場とも歩み寄って創意工夫してもらうとともに、いま先生指摘の入学試験にまた最終的な問題も参ります。要するに、いまの中学校なり高等学校なりの教科課程を誠実に勉強しておっただけでは入学試験の問題が解けない。何か学校で教わること以外に専門的な受験術とでもいいますか忍術のような術を覚えてこないと学校に受からないというような入学試験はいけないわけであります。われわれはこれを難問奇問と呼んでおりますが、まず出題者側にこのことをお願いして、入学試験の中に難問奇問が出ないようになったならば、学校で習うことをきちんと勉強しておれば入学試験のときは困らないのだということがきちんと制度の上でも保障されますと、これはやはり学校生活を通じて受験生にもゆとりが出てくるし、公教育を信頼することができるようになるわけでありますから、高等学校の出題に関しましては各教育委員会にそのことを十分通達して指導しております。また大学に関しましては、ただいま国会にお願いをしております法律改正の中にも、大学の入試センターというものを設置して大学の共同利用機関にするわけでありますが、これは昭和五十四年度からの入学生を対象にしての共通一次試験というものを実施する機関である。議論しておると長くなりますから結論だけ申し上げますけれども、そのとき国立大学協会でいろんな問題を整理された結果、やはり試験問題を出すときには高等学校の教科を誠実に勉強しておればその中から必ず出ますという、そういう出題をするのだということも調査の結果おまとめを願っておりますので、そういう入学試験の制度等に変わっていくことによって塾の過熱の問題もまた一面から解決ができるのではなかろうかと思います。  ですから文部省の担当します学習指導要領の改定、教科書の見直し、入学試験制度の改革の問題、それと現場の先生方の自覚と創意工夫をして授業に当たっていただくという指導工夫の問題、こういったものにみんなが力を合わせ合って公教育の責任をきちっと果たすことによって、現在社会問題となっておる塾の過熱した状況、家庭経済にも与えるよくない影響というものを是正をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  127. 市川雄一

    ○市川委員 時間が経過して大変申しわけないのですが、あと一問で終わります。  塾の問題に絡んでいろんな問題点がございますが、この大学入試制度というものを考えた場合に、いまの日本の大学制度は非常に入るのにむずかしくて、出るのにやさしい、入るときは極端な受験勉強をしなければならない、しかし一たび入ってしまえはわりかし楽に——楽ではないかもしれませんが、楽に出られるというその制度自体にも問題があるんじゃないだろうか。むしろ入りやすくて出づらいという大学制度に変えてみたらどうなんだという提案を私たちは持っているわけなんです。大臣もよく御存じだと思うのですが、アメリカの大学なんかでは現実にこういう制度がかなり採用されているようです。  それからもう一つは、結局、いい学校、悪い学校という格差が余りにも激しいから受験戦争というのがある一面では起きてくるわけですから、経済負担のみならず学校の教育レベルの格差をなくしていくということが非常に大事じゃないかということを思うわけです。そういう意味で、たとえば大学間の単位の互換制という制度がいまあるようですが、これをもっと拡大して早稲田の学生でも東大のある教授の講義を一年間聞く、その東大で受けた講義がそのまま早稲田を卒業する単位として取得できるとか、こういう単位の互換制というものをもっと前進さして大学の格差を極力ない方向に持っていくとか、あるいは大学の持っている教育研究施設の条件のひどい格差をなくすとか、とにかくそういうことをやっただけても——これが万能だとは思っておりませんし、教育問題について、何か一つだけやれば解決するなんというものはないわけでして、たくさんの複雑な要素にそれぞれ対応していかなければならないと思うのですが、せめてこういうことをとにかく具体的に何か改革を前進さしていくだけでも、かなりいまの入試過熱という状態に対して水をかける効果ぐらいは出てくるんじゃないのか、こういうふうに思うのです。こういう具体的な、入りやすくて出づらい大学あるいは単位の互換制というものをもっと拡大して大学の格差をなくしていくんだというような問題について、大臣はどういうお考えでございますかということをちょっと……。  それから塾の問題で、教育的な素養も教育的な配慮もないと言ったら失礼でございますが、そういう方々が、もうけんがために塾を経営している場合があるわけでございます。こういうことを全然放置しておくのはやはりまずいと思うのです。そういうことに対してもっと文部省は——いま塾を担当する局が文部省にはないそうでございますが、現実にすぐ塾をなくせなんという乱暴な議論をするつもりはありませんし、やはり塾があってもいい面があるとも思いますし、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  128. 海部俊樹

    海部国務大臣 御質問の前半の大学の入るにむずかしく出るにやさしいということは、これは私は市川先生と同じ時期に同じ学校におりましたので、確かにわれわれの学んだころにもそういうことがあったのかなといま思いながら御質問を聞いておったのですが、アメリカなんかと比べますと日本の場合は、入った学生が非常にたくさん卒業をしていきます。ただ最近は、在学中にきちんと身につけることは身につけたければならぬという考え方も幾らか定着をしてまいりました。日本の場合は一年度に入った学生が四年間たって何%卒業するかと申しますと、このごろそれがだんだん厳しくなってきまして七五%前後になっておったと私は記憶しております。ただアメリカの場合は五〇%ぐらいでありますからまだまだ差がございます。そういったことをきちんとやっていくためには、社会全体にそういったことをひとつ認めようという社会心理と申しますか世の仕組みもできることが大切でございまして、たとえば中途退学した者に対する社会の評価の問題とか、あるいは中途でやめた人がよその学校へ行きたいというときの門戸開放、受け入れ安易というような問題とか、いろいろなことがございますのでいま直ちに手のひらを返したようにはならないかもしれませんが、できるだけ大学生にふさわしい学力を身につけてもらうように、指導には万全を期していきたいと考えます。具体的に御指摘単位の互換制度は、昭和四十七年度にこの制度というものが初めて法的にもつくられまして、以来御賛同願った大学の学部が六十八、大学院は七十を数えるわけでありますから、現実にそれが具体的な交流がもっともっと行われていくように、今後文部省としてもこの制度は拡充をしていきたい、こう考えております。  それから御質問二つ目の塾の問題で、商業主義に走って金もうけ一辺倒というのは、これは私はもう論外だと思います。それから、やはり申し上げたように、塾をとらえていい塾だ、悪い塾だということにこちらが入り込んでいって判断をして、いい悪いを決めるということには、これはきわめて慎重であらねばならぬと思います。同時に、そういう塾ができてきて過熱状態になってきて悪い影響がいろいろと出ておるわけでありますから、それは先ほど御指摘のような問題点を解明することによって過熱状態やよくない面が是正されていくように、文部省としては、公教育がその責任を果たして国民の皆さんの信頼を取り戻すというところに大きな宿題と大きな取り組まなければならぬ解決の壁があると受けとめまして施策を進めておるところでございます。
  129. 市川雄一

    ○市川委員 終わります。
  130. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、受田新吉君。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 開かれた大学というものはどんなものでございますか。
  132. 海部俊樹

    海部国務大臣 たとえて申しますと、一般の公開講座のようなすべての不特定多数の国民の皆さんを相手にしていこうというような講座の考え方、あるいは現に他の大学にいても、その他の大学にいる人がいま申しましたような単位の互換制度というようなことで、大学と大学との間で交流ができるというようなこととか、あるいはまたこれはまだ創設準備をしておる段階でございますけれども、たとえば文部省が構想しております放送大学のようなものであるとか、そういったものが開かれた大学というものを頭に描いてやっておる制度とか姿である、こういうふうに私は考えております。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 現在の大学は開かれておりますか、おりませんか。
  134. 海部俊樹

    海部国務大臣 現在の大学は、門戸開放、機会均等で、広く国民の前にある意味では開かれておる。それはすべての国民の皆さんの中で大学を受けようという方が来られれば受けて入っていただけるわけでありますから、そういう意味では全く開かれた大学だと思うのですけれども、ただ単位の互換制がなかったりあるいはよそとの交流というものが十分でなかったというような意味からいくと、開かれ方が足りなかったのではないかという反省に立っていろんな新政策に取り組んでおる、私はこう理解しております。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 これは文部大臣でなくて結構ですよ。文部大臣が余りお話しになると失言のおそれがありますので、局長で結構でございます。  受験の機会を与え、多くの国民に大学で学校教育法の規定に基づく教育を受けさせるという意味であれば、それは開かれた大学という言い分も成り立つと思うのですが、開かれた大学の考え方というものは、大学局長はどういう御判断をされますか。単にそういう学生のことだけで判断してよいかどうかです。
  136. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、開かれた大学であるということを言う場合にはいろんな側面からとらえることが必要であろうと思います。もちろん入学時の機会均等ということはございますけれども、そのことをもって開かれた大学と言うことはできないのであって、一つ大事なことは、大学における教育研究の成果が広く地域の住民に対して開かれているかどうか。これは公開講座であるとかあるいは聴講制であるとか、そういう形で生涯教育の一助として大学が自分の教育研究の内容を公開しようとしているかどうかという点からの判断が一つ。それからもう一つは、他の大学に対して開かれているかどうか。これは学生の交流の問題あるいは教官の交流の問題、そういったことが一つの大学でいわば閉鎖的に行われているのではなくて、大学間における教官、学生の交流というものが行われているかどうかという点から開かれているかどうかの判断をしなければなりませんし、それからもう一つは、国際的に開かれているかどうか。わが国だけで交流ということではなくて、広く国際的にわが国の大学が外国の大学との間で教官なりあるいは学生なりの交流を行うという形で門戸を開いているかどうか、そういった点を考える必要があろうと思います。  私は、いずれについてもその三点についてはわが国の大学は、最近できるだけ努力はいたしておりますけれども、まだまだ不十分な状況にあると思います。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 いま御答弁の三つの問題点、これを掘り下げて質問をいたします。  日本の大学は率直に言って開かれていない。特に国立大学においてしかり。最後の国際的な開かれた大学という意味におきましても、OECDの教育調査団等が大変な注文をつけておることについて、なおほとんど手をつけておらぬ。  国立大学は、研究教育ともう一つ行政機関としての性能を持っておると思うが、いかがでございましょう。
  138. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 大学は教育研究機関であるというふうに私たちは考えておりますが、御指摘行政機関という趣旨を私ちょっと理解いたしかねておるわけでございます。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 国立大学には行政機関の性能を持った部分があるのではありませんか。
  140. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 もとより非常に大きな施設を管理し、学生を受け入れ、教官、事務職員の人事を行っていく、そういった面で非常に行政的な機関としての性格はもちろん持っているわけでございますが、そういった機能というのは、いわば大学における教育研究機能を十全に果たすために機能しているものであろうかと思います。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 そのとおりですね。行政機関的な性格を持っている部分があるのです。研究教育と同時に行政機関的性格を持っている部分がある。それの調和の上にりっぱな大学というものが成立しているわけです。  私立大学は行政機関の性能を持っているかどうか。
  142. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 同様に法人はもとより大学の管理を行っているわけでございますが、これは行政ということではなかろうと思います。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、日本の大学教育において国公私立の間に問題点があるわけです。国立、公立は国家予算あるいは地方公共団体の予算で成立されている、私立は学校法人によって成立されておる。そこで行政機関的な性格を持っている国立大学と違って、私立大学においてはその大学の管理運営というところに非常にデリケートな問題がある。つまり学園の自治、ある私学の特色を発揮しようとするものに対して文部省の強権の発動ができない、こういうことが言えますね。
  144. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 大学に対しましては、もとより大学の自治という非常に大きな命題があるわけでございますから、国公私立を通じまして、文部省が大学に対してどこまで物を言えるかということについては、非常な留意すべき制約があるわけでございます。特に私学の場合には、建学の趣旨というものを掲げて独自の運営をされている面があるわけでございますから、そういった点について十分に慎重でなければならないと考えております。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 全国で、公立を抜きにしましょう、国立大学に学ぶ学生と私立大学に学ぶ学生の比重を最近の統計でお示しをいただきたい。同時に、そこで専任の教師がどういう比率になっているか。国立と私立との一人の専任教師に対する学生数を比較検討したお答えを願いたいのです。
  146. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 現在国公立と私立の学生の比率は、私立が八〇、国公立が二〇という状況でございます。これを入学者でとらえますと、このパーセンテージは国公立の方がもっと少なくなりまして二〇%を若干下回る状況にございます。  教官一人当たりの学生数という形で教師の状況を見ますと、これはとり方によって異なりますが、国立の場合には教官一人当たりおおむね八名ないし九名、私立の場合にはたしか三十二名くらいであったかと思います。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 先般、衆議院を通過した国立学校設置法、その中に大学の教員定数を大幅に加えるものが、総定員法のあるにもかかわらず特例としてこれが計算されていたわけは、皆さんがよく知っておることです。八名か九名に一人の専任教師を置いて教育する国立大学、三十名以上の学生を一人の教師が教えている私立大学、教育効果を上げる上に国公私立のバランスをとるという大事な国の政策に大きくもとる現象があることを、文部大臣、御存じいただかなければならないのです。私学はそれだけ多くの学生を抱えて少数の教師で教育をやっている。国立は余りにも恵まれ過ぎる。少数の学生に、比率から言えば大ぜいの教師がこれに当たっておる。教育の効果を上げるのに私立にいかに大きなマイナスがあるか、大臣おわかりだろうと思うし、これを打開するのにいまの学生数と教師数とを比べただけでも大変な問題があることを、大臣はまず一国の文教の責任者として国立と公立と私立との教育の格差を是正する大変大事な問題として頭に入れておいていただかなければならぬのです。御所見を承りたいのです。
  148. 海部俊樹

    海部国務大臣 お話の趣旨は、私も十分肝に銘じてしっかりと頭に入れておきます。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 私立学校振興助成法が誕生して、それに基づいてことしも千六百億、三百億という大学、高校以下に助成をするのだと、さも鬼の首を取ったような御発言をされておるわけでございますが、しかし全面的に国費で賄う国立大学と、そして少数の教師で大ぜいの学生を教育する私立大学に、それだけのささやかな財政的贈り物で国立、私立のアンバランス是正という国策が遂行できましょうか。  日本育英会から出す育英資金、これは国立大学の学生は何人に一人恩典に浴し、私立大学の学生は何人に一人恩典に浴しておるか、御答弁を願いたい。
  150. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 昭和五十年度の数字でお答えをさしていただきますが、日本育英会が貸与した奨学生数とその学生数に対する比率は、私立大学の場合には七万六千二百七十名に貸与をいたしまして、比率は全学生数に対して五・九%、国立は七万一千六百九十八人に貸与をいたしまして、全学生数に対し二九・七%ということになっております。  なお、先ほどお答えをいたしました教官一人当たりの学生数、私立について三十・七人と訂正さしていただきます。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 国が出す育英資金も国立に大きな比重が置かれ、私立には非常に軽い協力しかしていないのです。  文部省で目下文教行政に当たっておられる課長以上の方々の中に、国立出身の公務員と私立出身の公務員の数がどうなっているか。これは国公私立を担当する、教育の全面的な振興を目指す文部省として資料がちゃんと出ておらなければならぬ。それさえ出ぬようなことであれば、これは文教の府としてまことにだらしないと思うのでございます。お答え願いたいのです。
  152. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 資料をつくり上げておりますが、いまこちらへ持ってきておりませんので、すぐ取り寄せます。(受田委員「大まかに言って」と呼ぶ)いまちょっと、正確な数字をすぐ照会いたしますから。恐れ入ります。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 大臣は私学の出身者として、国立、公立、私立の格差是正に先頭指揮をしておられる。ところがあなたの部下である、少なくとも課長以上の公務員の皆さんに私学の出身者をどのように採用しているかというその実績、これは十分検討しなければならない問題です。他の官庁であれば、それはもう試験一本のかっこうで、従来の官学万能主義で押し来ったと言って主張されるならば、ある意味においてはやむを得ぬところもございますが、大学の学生の八割は私学である。二割が官学である。その八割の出身者の中から、文教の府に何人おるかというその実情を見るときに、文教の府が、私学に力を入れようとしても、官学の出身者だけで占めておる、しかもある特定の官学だけで占めておるようなことで、どうして私学振興に力を入れることができるかということです。やはり私学の苦労を身につまんだ人が文教の府におってその国立、公立、私立のアンバランス是正に熱心に取っ組む、こういう行政府の人的配置が当然考えられてしかるべきである。それは少なくとも他の省に比較して二倍か三倍、あるいは五倍程度の配慮というものが当然されてしかるべきである。試験一本でエスカレーター方式にいく他の官庁とは違うのだ。人間をつくる役所である。人間をつくる役所、人間を大事にする役所が試験一本で評価されて課長局長といく、そして先を争うて重要ポストにつくことをやっておる、こういうことであるならば、物よりも人を大事に、金よりも心を大事にする文教の府としては残念だと私は思うのです。海部大臣はその点を十分配慮しておられると思うし、また、学歴社会是正のために企業に対しても強烈な要請をしてこられた。所信を御披瀝願いたいと思うのです。
  154. 海部俊樹

    海部国務大臣 先生指摘のごとくに、私は、社会において学歴というものが必要以上に幅をきかすことは間違いであると考えておりますし、同時に、人間は、その人の持っておる資質とか能力というものが公平に評価をされなければならない、これが、私の基本的な考えでございますから、いまやはりその人の能力とか資質に直接の関係のない学歴だけが幅をきかせ過ぎることは間違いだと思って、いろいろな機会に具体的なことを申してまいりました。また、文部省といたしましても、先生指摘のように、ただ単に試験だけで、試験に受かったということだけですべてのコースを決めてしまうというような態度はきょうまでもとっておりませんでした。また現在もとらずにがんばれということで、省を挙げてやっておりますが、その人がどこの学校を出ておるとか出ておらぬということよりも、その人がどんなに能力を発揮して、どんなに誠心誠意がんばっておるかということがやはり評価される、その人の資質や能力が正しく評価されなければならぬという角度でございまして、いま資料が参りましたら官房長が詳しく申し上げると思いますが、この間の予算委員会のやりとりがございましたので、記憶にある程度で申し上げますと、先生のおっしゃった、上級試験を取っておる課長さんとおらぬ課長さんの差を言われまして、たしか試験に受かって課長に任用されておる者が三十七名、それから試験を取らないで課長になっておる人が八名あったと私は記憶しますし、それから最近の人事異動で、課長の上の審議官になった人が、すでにいままでもあると思いますが、去る二月の異動でも二名追加をされた、こう私は記憶をいたしておりますし、また今年度の文部省の、これは上級試験を受かった者の新規卒業生の採用でありますが、特定大学からだけ採っておるのではございませんで、特定大学は全採用者数の半数以下で、あとは地方の大学とか私立大学からも応募者があり、能力のある優秀な人は採用しておる、このように記憶いたしておりますので、あくまで、その人の学歴ではなくて、資質と能力に重点を置いた制度をやっていかなければならぬ、これは先生指摘のとおりでございますから、私もそういう心構えで取り組んでまいりたい、こう思っております。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 海部大臣が着任された直後の昭和五十二年度の新規採用者、大臣の所信にできるだけかなうような配慮をされた最近初めての措置であったかどうか、官房長として、大臣の命を受けて、その採用者に配慮された実績を御答弁願いたいのです。
  156. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいま、本年度の人事院試験の上級試験合格者のうち、文部省で採用した数並びに文部省として最終決定しますときにどういうふうな留意をしたかというお尋ねでございますが、結果は、上級職採用者十六名でございます。十六名のうち東大が七名です。そして大学数にいたしますと、相当私立大学も含めてございます。  文部省の場合、人事院から提示されます採用候補者名簿を、局長以上で面接をいたしまして最終決定をいたすのでございますが、文部省では従前から、特定大学に重点を置いて選考することはいたしておりませんでしたけれども、ことしは特に個々一人一人の方々の大学における勉強の状況であるとか、そういうものをフランクに判定さしていただきまして、十六名中七名が東大、こういう結果になりました。  なお、非常に御無礼しましたが、先ほどお答えを留保いたしました件についてお答えをさしていただきます。  課長以上が三月末九十二名でございます。九十二名のうち国立大学出身者が八十二名、約八九%、公立大学が一名、私立大学が六名、それから文部省の場合に、旧制の大学ではなくて、いわゆる旧制の専門学校等の卒、そういった大学以外が三名、これが三月末現在の課長以上の出身学校別の数字でございます。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 他省に比して、私学出身者が比率の上において少し高いと判断されますが、六名です。  それからもう一つ。中級職、初級職等から採用した者を課長以上に何人採っておりますか。
  158. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 御質問の全部の数字が手元になくて恐縮ですが、三月末現在で、課長として在職をいたしております者が文部省では四十五名で、四十五名のうち上級試験合格者三十七名、その他八名ということで、上級職の試験任用が八二・二%でございます。その際、ただいまお尋ねのございました初級、中級の試験合格者で課長になっておる者は、ただいまございません。  なお、私ども手元に持っております資料として、大蔵省と通産省の資料がございますのでちょっと披露させていただきますと、大蔵省の場合、課長六十一名、うち上級職試験で任用した者五十八名、その他三名で、上級職の試験任用者のパーセンテージが九五%。通産省が上級職試験採用者七十九名、その他一名、計八十名でございまして、上級職試験の任用が九八・七%。この点、ただいま先生からお尋ねがございましたが、各省に比較をいたしますと、文部省の場合に、上級試験任用以外の任用をしておる数、パーセンテージは、他省庁よりも多いかと存じます。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 文部省には教育専門家としての登用の道が開けている、これが文部省のお役所の特質でもあると思うのです。そういう意味では、試験採用以外の線から、教育実際家の中で優秀な人材を簡抜するという道があるのじゃないですか。
  160. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいま先生指摘のように、教育内容の面でありますとか、スポーツでありますとか、そういった文部行政の中で、教育活動の内容に即した行政分野がございますので、先生指摘のように、文部省課長として適任者を選びます場合に、上級の試験任用者の範囲を超えて適任者を選ばなければならない面が、ほかの省よりも多いかと存じます。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 そういう人々を除いて、いま御指摘の数が幾らになりますか。
  162. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 いまここに全部の名簿を持ってきておりませんが、先生指摘のように、社会教育の面、スポーツの面、婦人教育の面、こういった教育内容を担当する課長のところに、ただいま申しました上級職の試験任用以外の者を登用しておるものが非常に多いかと存じます。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、通産省、大蔵省と比較して、決していばるような結果にならぬと思うのです。文部省というお役所は、人を大事にする、人づくりのお役所なんです。行政機関として権能を発揮するというよりも、いかに優秀な次代の国民を養成するか、いかに優秀な社会人を養成するか、そこに大きな目標を置いておるお役所であるだけに、そういうところで十分能力の発揮できる、識見を持った人を簡抜すべきであって、課長以上のポストにもそういう専門家から、徳育、体育あるいは社会教育等で進んでくる人、それを大幅に採用していくべきである。試験一本の人材でなくして、試験というのはそのときガリ勉をすればちょこちょことやれるのです。それから後怠けておってももうエスカレーターでいく。文部省はそういうお役所であってはならないのです。上級試験に合格した人がその後において遅々として進まぬ中で、営々と努力する人材を初級、中級からどんどん簡抜して、課長以上にどんどんすべきだ。そういう判断は、大臣は適宜おかわりになるけれども、事務当局は常にそこに大きな目を向けていただいて、物的機関としての他省とは違って、人を大事にする役所らしく、吉田松陰があの人材を育成したように、文部省は国家、社会に貢献する人を育成する人づくりの根源です。試験で評価するお役所ではないのです。思い切った改善措置を、海部先生お若いことで、その点大所高所から特に御判断ができるお立場であるし、そして良識を持った各局長たちの知恵をかりて、これからの文部行政に新しい方向、開かれた文部省、特定の大学と特定の試験に合格した者だけに道を開いてきた旧臘を打破して、新風を文部行政の上に送る大英断をふるっていただきたい。そこに文部省に対する信頼がわくわけです。各局長以下も海部大臣の雄大な構想に御協力をしていただいて、古いタイプの因襲を打破して、国民とともにある文部省としての権威と誇りを高らかに実践をしていただきたいのです。これは大臣だけに申し上げているわけじゃないのです。大臣と、そして文部省の公務員を代表して官房長さんと、お二人に御答弁をいただきたい。
  164. 海部俊樹

    海部国務大臣 文部行政の責任の大きさ、重さというものは私も厳しく受けとめております。せっかく先生からただいま御理解ある温かい御激励も賜りましてまことにありがとうございます。私どもは職務の重大さというものを十分に自覚して、国民の皆さん方から信頼をいただくように今後も誠心誠意努力をしてまいりたいと思います。
  165. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 貴重な御意見といたしまして、われわれ今後のいろいろな問題を考えてまいります際の基本に据えてまいりたいと思います。ありがとうございました。
  166. 受田新吉

    ○受田委員 大学の問題に返ってまいりますが、三年前ですから昭和四十九年、四月から筑波大学が発足した。当時いろいろな世論もあり、国会の中もいろいろな対立抗争がありました。けれども、これは一応スタートしたのです。このスタートした筑波大学は研究教育を分けることに新提案をして、学群、学系という二本の面から新機軸を開いてきたわけでございまするが、これはまた見方によれば、教育の改革としては画期的なものであったわけです。世評も厳しいものがある。副学長を五人置くという——われわれは五人も副学長を置く必要なしと提案したけれども、まあ五人置かれておる。この五人は多過ぎる。副学長をそれぞれの分野で一人ずつとっていくというようなことは、いま顧みて、五人も副学長がおるというような大学というものはきっと反省があると私は思うのです。いわゆる行政機関的な性格を露骨にやり過ぎた。大学の権能発揮の上においては問題点が発生したと思う。しかし、とにかくスタートして以来ここに三年の日月が許されたわけで、この構想は、田中元総理が日本列島改造の雄大な構想のもとに筑波学園都市というものの地域開発を力点にするという、見方によればなかなかふるった案でもあるわけでございますが、それにマッチしてスタートした問題です。この大学は新しい類系のパイオニアであると文部省は誇ってきたが、他の大学でこれをまねた大学があるかどうか、御答弁願いたいと思う。
  167. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 筑波大学がとりましたような学群、学系という形で教育研究基本的な組織を考えている大学はその後出ておりません。ただ、たとえば北海道大学の法学部におきまして、教育研究機能的な分離ということを考えたものがございます。これはしかし、筑波が考えたような意味でのものではございません。  副学長制につきましては、新設の医科大学におきましては副学長制が導入されております。
  168. 受田新吉

    ○受田委員 学校教育法第五十九条には教授会の権能が書いてある。筑波大学は教授会というのを一応形式としては置いているが、それは非常に薄いものになっている。しかし、実際は教授会というものが他の大学においては大変大事な役を果たしておるだけに、三年間の経緯を顧みるときに、筑波大学の教授会はいかにあるべきかという反省があるかないかです。
  169. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のように、筑波大学の場合にはいわゆる学部の教授会というふうな形ではなくて、学系、学群それぞれの段階に応じて教官の会議があり、さらにその上に種々の審議会等を置きまして全学の教官の意思というものを取りまとめているわけでございます。  もちろん、まだ先生指摘のように日時がそう経過しているわけではございませんから、実績を云々するのにはやや早いかもしれませんけれども、やはり新しい仕組みの上で筑波大学の教官は全力を挙げて努力をしているというふうに私たちは考えますし、新しい機構のもとにおける運営というのはいろいろむずかしい点はありながらも、やはり順調に前に向かって前進をしているというふうに見ております。
  170. 受田新吉

    ○受田委員 局長、先ほど開かれた大学の使命の中に、地域に対する貢献度を高くあらしめたいというお話がありました。全く同感です。  たとえば私、中国の中に例をとれば、原爆の洗礼を受けた広島に国立大学、そして国立大学の広島大学にもつい去年でしたか、政経学部を二つに分けたり、その前に歯学部ができたりしてだんだんと広がってきて、日本では東大、京大に次いで三番目のたくさんの学部を抱えた大学になっておると思うのでございますが、広島には同時に公立大学もあれば私立大学もたくさんある。原爆都市広島という世界で注目される平和宣言のこの都市に、国立大学を中心にして公立、私立大学みんなが協力して、たとえば協議会のようなものをつくって地域への貢献を図ろうじゃないか、教授が第一線に行って大いに大衆教育に乗り出そうじゃないかというような、地域開発協議会のようなものを文部省指導しておられるかどうか、それに対して財政的な支援をしておられるかどうか、御答弁願いたいのです。
  171. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 広島大学は、大学としては地域に対する大学の教育研究の成果の提供というような意味におけるサービスには非常に積極的な大学でございます。五十一年度におきましても、広島大学には放送大学のいわば準備一つといたしまして、放送大学のプランを考えた放送を利用した公開講座というふうなものも実施してもらっておりますし、それは地域に非常な好評を博しているところでございます。それ以外の公開講座も広島大学では実施されておりますが、先生指摘の国公私を通じた地域研究協議会というふうなものの構想が広島大学にあるかどうかについては私、残念ながら存じておりません。
  172. 受田新吉

    ○受田委員 存じていないということよりも、さっき局長さんは、地域の開発のために大学が開かれた大学になりたいとおっしゃったのです。おっしゃった以上、それをどういうふうに実践しておられるか。せめて協議会方式のようなものでもつくって、広島にある十幾つの大学が力になり合って地域の開発に奉仕しましょうよと各大学から連絡員が集まって、そしてお互いの大学が特色のある私の特技をこういうところで生かしましょう、こういうふうにして地域の開発に貢献する、そういう協議会ができればそれに文部省補助金を出してあげる。そうすると活発に活動しますよ。それぞれの大学が独立して象牙の塔に立てこもって、私は国立だといばっておるというようなことであってはならない。それぞれの者が生きる力を結集して地域社会に貢献してもらいたい。補助金を出していくかどうか。よそごとじゃないのですよ。よう知りませんじゃいけませんよ。これは。それを文部省指導しなければいかぬのです。よそごとじゃないのですからね。文部省の所管事項ですもの、そういうものは。開かれた大学らしい権能を発揮してもらうために、私立も公立も力になり合って地域の開発に力を入れましょう、講座の開かれるときに行きましょう。私の大学はここに専門の教師がおるから、こうした難病の講義があるとき、身障者の会があるときにはうちの大学の先生とおたくの先生とがお手伝いに行きましょう、こういうふうな愛情のある措置をしていいのじゃないでしょうか。私は、そこにこそ地域の大学が、国公私立の分かちなく、大学の格差を抜きにして協力して地域の開発に貢献する、それが本当の開かれた大学、そのためには文部省予算を出してあげていいです。
  173. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 これからの高等教育整備考えていく場合に、先生指摘のようにそれぞれの地域地域において国公私を通じた大学の間の連携ということを重視をし、そうしたものを通じてそれぞれの地域における専門分野の構成なりあるいは収容力なりを考えていく必要があると私たちは考えております。国公私を通じたそういういろいろな連携というものを国立大学が先頭に立って考えるというのは非常に望ましいことでございますし、そういうことを考えて、たとえば教育研究の面で国公私を通じた連携をやろうというふうなことを工夫をしてみるとか、あるいは着手をするという大学があれば、それは広島大学に限りませんけれども、私どもの方は予算をもってそれを応援をする用意がございます。
  174. 受田新吉

    ○受田委員 これは大臣がまだ研究不足でいらっしゃると思うのですけれども、こうした地域、これは広島を例にとったのですが、それをさらに神戸にしても、また名古屋にしてもどこでも同じです。あるいはさらに九州の南端の鹿児島にしても、そういう地域地域でそれぞれりっぱな国公私立の大学がおれのところにあるんだ、その大学の先生の講義も聞ける、婦人会が、きょうはこの大学でこういう講座を開いてもらいたい、あの教室を借りてあの先生の講義を聞きたいなというときには、それに行けるように財政的な支援もしてあげる、婦人も青年も老人も、老人がおれは若いとき大学までよう行かなかったが、このたび土曜日の午後この大学で講座を開いてくれるから、きょうは一日大学生になった気分でいいなあとお年寄りに喜んでいただけるような、そういう開かれた大学が私は欲しいのですよ。それには文部省も、地域開発の共同の研修を計画する組織体に財政的支援をしてあげる、それこそ惜しみなく金を出してあげる、老人も身障者も婦人も青年も、学び得なかった大学で、大学の先生について学べるのだという喜びを感ずるのですよ。これが文字どおり開かれた大学、社会教育、大衆教育——象牙の塔に立てこもってはいけない。大学の先生もそれくらいのサービスをしていただきたい。それへ出るのに、講師料をもらおうというようなやぼな考えを持たれる先生は少ないはずです。進んで奉仕して、おれの含蓄を傾けた研究を老人大学の皆さんにわかりやすい説明をしてあげようというような、開放された大学を日本はつくるべきである。御答弁を願いたい。
  175. 海部俊樹

    海部国務大臣 最初に先生から、開かれた大学とは何だと御質問をいただきましたときに、私も真っ先に公開講座を開いてというようなことを申し上げましたが、まさにおっしゃるように、そういう公開講座というものがいろいろなところでなるべく数多く開かれて地域の住民に喜ばれること、また大学の存在の意味がそういうふうに開かれていくということはもちろん大変結構なことだと思いますし、五十二年度の予算措置等においても公開講座というものがより多く開かれていくように措置をして、そういったいい制度はなるべく広く至るところで行われるように今後とも指導なり援助なりをしていかなければならない、こう考えております。
  176. 受田新吉

    ○受田委員 これはただ単に昼間だけでなくして、昼間勤労する人々は夜——ところが、大学の施設の管理運営がやかましくて、夜はどうもならぬというようなことになってくる危険もあるわけなんです。管理運営の面でそのくらいの利便を与えて、初めて開かれた大学です。もう午後四時にはとびらを閉めて、門外の人は中に入れないという大学であってはならない。夜、開放する。昼間は学校に勤務し、夜は塾に行って塾の教師をやって、そして継続的な収入を得たというので問題になった先生がたくさんあるわけですが、そういうときに、本当に奉仕する先生なども必ずあるわけです。またそういうときには、開かれた大学に対する講師の報酬も正当に評価したものを出してあげることは、これは規定の上で認めていいことです。日本全国の大学が、庶民に開放された庶民大学の性格を一方に持つ、研究教育の一面を持つとともに、庶民に開放された大衆の花が咲いてくれる。どろ沼の中に咲くハスの花のような、きれいな教育の花が地域地域に開いていって、愛する大学よといって地域社会から感謝されるような、それでこそ文部行政の成果が上がったと言えると思うのです。それはそうむずかしい問題じゃない。やる気なら、指導によってすぐやれる。財政的な必要があれば、われわれ協力にやぶさかではない。日本の新しい時代をつくるために、全大学に開かれた大学としての全面開花の時代を迎えようじゃないですか。
  177. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 先生指摘のように、現在公開講座は非常に多くの大学で行われておりますけれども、それらは昼間、つまり土躍日とか日曜日とかあるいは昼間行われているわけでありまして、夜間がないというのは私たちも残念だと思います。大学とよく相談をいたしまして、公開講座ができれば夜間に開かれるというような形で発展をするように、私たちも心がけてまいりたいと思います。
  178. 受田新吉

    ○受田委員 ここでもう一つ開かれた国際的な大学、すでに国連大学、放送大学というように大衆化されつつあるわけですが、国際的に開かれた日本の大学教育日本の大学に外国人の先生をどのくらい招いておるか。日本は非常に少ないと思うのです。
  179. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 五十一年度でございますが、いわゆる常勤の教師の方が百九十二名、それから非常勤の講師の方が三百十六名でございます。
  180. 受田新吉

    ○受田委員 大学の教師の数から見たら、まさに九牛の一毛です。そして外国から日本に留学する学生たち、これは日本日本教育を受ける期間が余りにも短くて、すぐぶっつけ本番でやって日本語の講座で日本の学生と同じように勝負することは非常に困難です。せめて英語の講座で教育をしてあげるような道を開くとかあるいは他の外国語でやるとかいう道を開いて、外国から学ぶ人々に日本話を解しないゆえの不便とハンディキャップをなくする手だてが私は要ると思う。これは国際的に開かれた大学としての使命です。日本に学べば、おれたちはもうすぐ自分たちの常用する国語で講義を受けておるのだよ、そのうちに日本の国語も勉強するのだよ、こういう学生の便益を供与しなければならない。日本から海外に学ぶ人は、それぞれ通用する外国語で教育を受けている。日本へ来る場合には日本語で教育をされるから理解に骨が折れる、そういうことに対する御配慮、どうでしょう。
  181. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 外国から日本に来る留学生に対して行う授業の言葉の問題、日本語か英語かという問題だろうと思います。日本の大学では、日本語で教育をするという原則を非常に強くとっております。それからまた、英語で授業ができる先生の数が大変少ないといったような問題がございまして、おっしゃるような状況とはずいぶんほど遠い状況にございます。ただ一つだけ、大学の正規の課程ではございませんが、東南アジアの国々の学生が、特に天然産出物と関係のある化学と徴生物の関係について非常に関心が深うございますので、その二つの教科については英語で一年間講義をする課程がございます。大変効果を上げております。
  182. 受田新吉

    ○受田委員 私はここで局長にちょっと資料を提供していただきたいのですが、日本語を必須または選択として採用されている外国の大学をお示しを願いたい。外国の大学で外国語の中に日本語を必須か選択で入れている大学がどれだけあるかということです。
  183. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 ただいま資料がございません。調査いたしまして、後刻提出いたします。
  184. 受田新吉

    ○受田委員 はなはだ少ないのです。日本語というのはそれだけ国際語としては非常に恵まれていないのです。その日本へ学びに来る留学生たちも、それだけにまた不便を感じている。それをなくするためには、外国人の先生日本の大学へ招き、それらの人のためにある程度便益を図るためのそういう留学生向きの、またその先生の講義を日本の学生も一緒に聞くような道をどんどん開いていく、それこそ開かれた大学になるわけです。国際的に開かれた大学です。いかがでしょう。
  185. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のように、これまで外国人教師で招いているのは、主として外国語あるいは外国文学の関係の方が多かったわけでございます。しかし、最近はだんだんにほかの分野、哲学とか行政法とか物理学とか化学とか生物学あるいは産業経済学とか、そういった分野の方であっても、すぐれた方であり特にその方を必要とするという場合にはお招きをするようなことも逐次進めてきております。
  186. 受田新吉

    ○受田委員 外国の留学生を引き受けている数は、アメリカは日本の七倍、イギリスは日本の三十倍と言われるほど外国の留学生に門戸を開いている。日本は非常に門戸が狭い。開かれていない。石油ショック事件のときに、あの石油産出国がイギリスなどに非常に敬愛の情をささげた。これはイギリスの大学に学んだ石油産出国の重要ポストにある人々が、かつて留学時代にお世話になったイギリスに対する敬愛の情でイギリスに好意的な措置をとったと言われている。留学生を大事にすることは、日本とその留学生の送出国との親善、ひいては世界の親善に貢献する。この世、地球上に一緒に生まれた人間同士で力になり合いましょうという世界は一つの時代を日本がつくることにもなる。日本の大学にはその大きな国際的な花を咲かせる配慮が欠けている。開かれた国際的な大学ではない。ここへも十分な力を入れる。  明らかに外国人にとっては余りにも狭い日本ですね。国際親善に貢献しようにも、東南アジアの学生たちも、例の国際学友会のようなのが、日本語の教育を受けることができないで留学生がいま嘆いているという余りにも残念な現象がある。いま世間で騒がれている。学びに来た学生たちは、どうしたらいいのだと日本を恨んでいる。日本に勉強に来て日本を恨んで帰ってくれたのでは、これは大変なことですよ。日本はいい国だ、寮も世話してくれる、政府も親切だ、大学のお友達もいいよ、だれよりもだれよりも私は日本を愛しますよ、そういう学生になって帰っていただきたいのですよ。やろうと思えば、文部行政と外務省の協力で幾らでもできる。特に留学生を受け入れることは文部省の仕事です。  文部大臣大臣御就任以来日がまだ浅いけれども、この開かれた大学で国内的にも国際的にも美しい花を開かせる祖国、それが日本でなければいかぬのです。親善の花を咲かせようじゃないですか。日本に学んでよかったと、帰ってくれてわが日本に愛情を持ってもらおうじゃないですか。大臣、ここへ力点を——あなたのいまの素直なお気持ちで文部行政と取り組まれようとするときに、この国際的に開かれた大学、OECDの教育視察団などが率直に述べていることは素直に聞いたらいい。私もそう思う。私も、戦後二十数回海外旅行を二十五年間にやってみて、外国の留学生受け入れ体制などのよさを十分知っておる。日本にはそれが欠けておる。留学生に不親切。寮などでも安いところを世話してあげましょう、ホームビジットをたくさん展開してあげましょう。特に開発途上国の東南アジアの国々そして東部アフリカ、ケニア、ウガンダ、ザンビア、タンザニアという国々からたくさん来ておる。来ておるこれらの学生はどこか卑屈感を持って来る危険があるが、小国の学生も大国の学生も同じに愛してあげましょう。世界は一つだ、人間として尊重してあげましょう。予算が要れば寮まで世話しましょう。公費留学生だけが文部省の仕事だ、私費のものは勝手だなどと、冷たい文部省であってはならない。文部大臣、御答弁をいただきたい。
  187. 海部俊樹

    海部国務大臣 留学生の交換によって相互の国が理解を深め、そして日本が世界の国々に愛されるように、そういった先生の御発言の御趣旨は私も十分拝聴いたしましたし、また私もそれは重要なことであろう、こう考えておりますので、国際的な交流、また日本の開かれた大学というものの一つの大きな目標も国際的に開かれるという点にあるという御説も十分拝聴いたしましたので、私としても十分にそれを参考にさせていただいて今後取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございました。
  188. 受田新吉

    ○受田委員 これで最後の質問に移ります。  今度は逆に日本から海外に学びに行く人々、あるいは日本から海外に祖国繁栄の使命を帯びて赴任する外交官、商社職員その他の勉強家たちの子弟の教育が大変な問題である。私は、昭和四十一年四月、シンガポールを訪問したとき、当時上田常光という総領事がおられて、その年の四月の末に大使になった、大使館に昇格して。そのときに、シンガポールに日本語の教師が欲しい、こういう要請があって、東京から小林という先生が御夫妻で赴任されるお手伝いをしました。  外務省の資料を見ると、昭和四十一年九月シンガポールの日本人学校創設と書いてあるが、それに貢献した一人でありますから、私は在外日本人学校というものには非常に関心を持っておる。外交官にしても、海外に赴任する自分の子供の教育機関がないから日本へ置いていく、単身赴任する。単身赴任するから、心も上のそらになって帰心矢のごときものがあって、在外勤務がろくでもないことになるから、外交交渉等においても成果が上がらないおそれもあるわけです。子供の教育を一緒に現地で安心してしてもらえるような体制をしくべきである。  いま外務省から資料をいただいて、在外日本人学校の配置図で、二としもまた四つほど新設する計画を示している。相当なものができた。この十年間に飛躍的に在外日本人学校ができた。しかし、ここに赴任する日本人の子供たちは、学校教育法の教育を受けたというかっこうにならない。こっちへ戻ってくると、ある特定の外国語は勉強したが一般教科が思うようにいかぬというので、日本の学校に入るのにも大変なひもがついておる。さあ、これをどう救うか。安心して海外で日本人の代表者として勤務してもらうその子弟に、私は日本にいた方がよかったんだ、お父さんとここへ来て悪かったと生涯悲しませないためにも、学校教育法による教育を受けたと同じ、あるいはこれに準ずる取り扱い、あるいは日本へ戻ってからの入学に対する便益供与、前途に対する就職の保証、こういうようなものについて外務省と文部省はどのような配慮をされておるか。大変大事な問題です。
  189. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のように、近年海外で活躍をする日本人の数が非常に多くなってまいりまして、そして、私の記憶に誤りなければ、現在海外にいる義務教育年齢の日本人の子供さんの数は一万八千人に達しておると聞いております。おっしゃるように、義務教育年齢の人には、やはりそれにふさわしい、あるいは同等の学力を身につけてもらわなければならぬわけでありますから、現在教師の海外派遣と申しますか、数で大体四百五十人程度行っておられると思いますし、それから、教材等を送りまして、なるべく日本の国内で教育を受けていただくのと変わらないような状態がなるべくできるようにいろいろと配慮をしておるところでございます。  なお、帰国後につきましても、言葉の上の問題とか、あるいはどうしても日本の国内で学ばれた状況とは違う点ができるのはやむを得ないことだと思いますが、その違う点をやむを得ないといってほっておかないで、今度は帰国子女の教育をどうするかということで、帰国子女に対する教育研究校を指定してお願いをしたり、あるいは帰国子女の教育を専門に受け持ってもらう高等学校の新設に今年からひとつ補助金を出したり、なるべく努力を重ねて、外国へ行っておったがために自分の義務教育年齢当時の勉強は、人生において大変不利益をこうむったというように後悔されることのないように、できるだけ努力をしたいと文部省考えております。
  190. 橋本恕

    ○橋本説明員 先ほど先生指摘がございましたように、海外に長期間にわたって在留いたします政府職員、それから民間の会社、銀行その他新聞記者の皆さん方、こういう方々の海外におきます最大の悩みといいますか、問題点の一つは、連れてまいりました子供さんの教育でございます。  そこで、この十年来、文部省を初めといたしまして、関係省庁の御協力を十分にいただきまして、先ほど先生指摘のとおりに、全日制、つまり一週間のうちの週末を除きますほとんど毎日完全なる学校ということで全日制の日本人学校が四十五校、それから五十二年度予算ではこれにさらに五校をお願いしております。したがいまして、これがもし認められる暁におきましては、世界の各国に五十校に上る全日制の日本人学校ができることになります。そのほかに、月曜日から金曜日までは大体において現地の学校に参っておりまして、土曜日でありますとかあるいは日曜日に、日本語を忘れないようにということで、日本教育の機会に接するために補習授業校というのをつくっておりますが、これが現在六十五校ございます。  こういうようなすでにでき上がっております全日制学校、日本人学校あるいは補習学校、いずれの面におきましてもこれの拡充強化ということを図ってまいりますと同時に、今後各地でさらにつくってくれという要望がございますので、これにつきましても文部省と十分相談いただきまして、文部省と外務省の緊密な連絡、協力のもとに、この大きな事業を推進してまいりたい、かように存じております。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 文部大臣、在外日本人学校の子弟、義務教育課程の子供は義務教育費は国庫負担という原則を守っていただくわけですね。海外の日本人学校で学ぶ義務教育相当の子供は、ただで教育を受けておる日本と同じにするのかどうか。
  192. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 現在のところ、国内の小中学校と海外のいわゆる日本人学校とは扱いが違っております。国内は義務教育が法制上施行されておるわけでございますが、外国における日本人学校は、その基本的な性格が私立のいわば塾みたいな性格の教育施設でございます。  現在のとおろ、財源負担の関係から申しますと、建設費運営費等について父兄が負担し、教科書代、学校の教員の給与、教材費等について国が、あるいは地方公共団体が負担をいたしておりまして、その父兄負担と公の負担との割合は、大まかに言いまして五〇対五〇という関係になっております。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 それが問題です。祖国におれば義務教育を受けられる。同じ義務教育課程の子供が、国家の名誉のため、国家の発展のために海外へ父兄と一緒に行って学ぶ子供はフィフティー・フィフティで自己負担になっている。これは大きな矛盾です。せめて海外で苦労する人、その人の方に愛情を持ってあげる方が、逆に少し力を入れてやらなければいかぬ。ただ、自分で勝手に行っているのじゃないのです。日本の名誉を代表して行っている人の子弟ですよ。その予算というのはどれだけ要るのです。半分負担しているというのはどれだけで片づくのですか。文部大臣、これはやはりあなたに英断をふるっていただきたいものです。同じ義務教育課程で、海外で学べば、これ自身が塾みたいなものだから半分は負担せにゃいかぬのだというのはあわれな措置ですよ。文教行政の大欠陥だ。  もう一つ、あそこへ行く教員の身分がやっと本格化したけれども、何か海外の制約のために戻ろうとしても戻れぬ、身分も明確にしていただく、この二つを御答弁いただくことで私の質問は終わりたいと思うのであります。
  194. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 まず、後段の、日本人学校で勤務する日本人教師の身分の問題についてお答えいたします。  海外に派遣されている教員の身分取り扱いは、出身県によりまして、長期の研修という形をとったり、あるいは休職という形をとったり、あるいは職務専念義務の免除という形をとったりいたしまして全国の各都道府県から出てまいりますので、全体として統一した取り扱いがなされておりません。たとえば休職で出たような場合に、地元の県では休職でございまして外国に行って働いているということでございますが、外国で勤務している形態が日本の法律でいう公務であるのかどうかという問題に疑義もございますので、外国日本人学校における勤務の途中で、いわゆる仕事の関係で傷害が生じた場合に、公務災害補償が適用されるかどうかといったような点にも問題がございますので、過去いろいろ困った例もございます。これらの点を統一すべく、五十二年度の予算に向かって努力もいたしましたが、ことしはなかなか各省間の意見が合いませんで、うまくいかなかったわけでございます。現在、この問題については、外務省とも相談しながら、新しい教員の身分保障が的確にいくような制度を検討しておるところでございます。  前段の問題につきまして先生の御意見も十分拝聴したわけでございますが、国内における憲法あるいは国内法の適用される地域とそうでない地域の学校制度というのはなかなかむずかしい問題がございまして、国外の学校に対しまして余りに日本国が関与するというようなことになりますと、在外の日本人学校、その日本人学校のある国の主権との問題で、いろいろむずかしい問題もございますので、先生の御趣旨は十分体しながら、今後検討させていただきたいと考えております。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 パラグアイという国には、いまドイツ系の大統領がおる。パラグアイでは、あるいはブラジルにおいてもアメリカにおいても、ドイツ語を、母国の国語を教えておる。別に教えておる。ドイツ系パラグアイ人、ドイツ系アメリカ人、またスペイン人にしても、アメリカでスペイン語を教えております。絶対にアメリカはこれを拒否しておりません。サンフランシスコを中心としたカリフォルニア州の日系人が約十数万おりますが、それらも日本語の塾を開いておるが、向こうから一切干渉しておりません。そういうような、海外におっても、ふるさとの国の国語をあわせて勉強する傾向は、国際的な通念です。それは決して移住した国の勢力を損うんではなくして、同時に母国と現在の国との親善を図って、現在の国の繁栄に貢献しておるわけです。いまあなたがはしなくも、外国とのいろいろな事情があるなんとおっしゃいましたけれども、すべて国民は義務教育を受けるの義務を負うている、親が負うている。義務教育は、国の負担とするとなっておる。それがたまたま国家の使命を負って海外に行った子供さんは、それは国内の教育でないからやむを得ませんというような例外をつくっちゃいかぬです。海外においても、日本の延長と見ればいいのです。いいかげんに行っておるのじゃないのです。国内におる人以上に重い使命を負うて、外交官にしても、外国の学校の先生、大学の教授の子供にしても、商社その他の、あるいはマスコミの人にしても、むしろこういう特殊の事情にある人にこそ愛情を注いで、御苦労さん、坊や、ようがんばって帰りなさいよ、あちらの国は気候が悪いけれども、お父さん、お母さんの言うことを聞いて、がんばって帰りなさいね、日本に戻ったら、あなたはきっと日本におったと同じ将来が開けるのだよ、希望を持って海外に、お父さん、お母さんについていかせてあげようじゃないですか。この差別はいけません。  大臣、この機会に、日本の憲法の恩典に浴する国民が、勤務する場所がたまたま外国であったがゆえに、その国に制約されて差別待遇を受けるような教育方針はいけませんね、これは。海外に日本の出張所があるんだ、外国だって決してそれを怒るんじゃないのです。同等の待遇をして、むしろよけい、何もかもみんな、教育費は負担しましょう。父兄の負担に半分をしておるなどというけちな考えはいけませんね。抜本的仕事がたくさん開かれておる。大臣のやるお仕事も、外務省も力になってもらいたい。外務省も一緒に大蔵省と交渉してやればいい。大蔵省は、こんなものをけちけちするような大蔵省であれば、これはろくなやつじゃないですよ。日本のために、全日本、全世界の平和のために日本を代表して苦労される人の子供を愛することにけちけちするようなお役所があっちゃいかぬ。私はあえてこの問題の抜本的な対策を提唱して、よそごとのような、ごそごそしたようななまぬるい施策で、文部省も外務省もこれを見逃しちゃいかぬ。日本国民としてすべてひとしく教育を受ける義務を負うておる。海外に勤務しておっても、受ける義務があるのです。権利もある。国には義務があり、国民には権利がある。海外に行った子供が、不幸な運命で、祖国へ帰って差別を受けるような、そんな悲しいことをさせちゃいかぬ。勇気を持って、文部大臣、外務大臣、ひとつがんばってもらいたいし、文部省局長さんたちも、事務ペーパーでそういうものをいいかげんに扱うような、愛情のない官僚ではいけないです。文部官僚は、国民を大事にし、後に続く若人に差別をしないで、どんな小さなすみに住んでいる子供にも同じような愛情を注ぐ、ハンディキャップのある子供には一隅をよけい照らしてあげましょうよ。身障の子供、その不幸な片棒を国が担いであげよう。海外で学ぶ子供、そういう不幸な教育条件にある者をよけい愛してあげて、戻ったらかわいがってあげようじゃないですか。将来を背負う日本の子弟です。後に続く若人に、条件が悪いほど温かく愛してやる。一隅を愛する文教行政こそ、物よりも心、金よりも人を大事にする日本基本の姿勢でなければならぬ。文教行政の抜本的な開かれた教育、国際教育の根源にこの問題を取り上げて質問を終わります。(拍手)
  196. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、東中光雄君。
  197. 東中光雄

    東中委員 最初に国立婦人教育会館について若干お伺いしたいと思うのですが、この教育会館、運営の仕方によっては教育国家統制的な面を強める、あるいは官製婦人教育を行うということにもなりかねない面を持っておると思うのでありますが、ここで言われております、たとえば婦人学習を推進するリーダー等に、婦人学習に必要な知識、技術を各種の課程によって習得できる研修を行うのだ、こうなっておるのでありますが、婦人教育のリーダーというのは、だれがどのようにしてリーダーと決めていくのか、リーダーが不足している、いろいろそういう観点から見て、こういう教育が必要なんだ、こう言われておるのでありますが、リーダーとはそもそもだれか、どういう人をリーダーと決めるのかという点についてまずお伺いしたいと思います。
  198. 吉里邦夫

    吉里政府委員 これはそれぞれの地域末端でいろんなグループがございまして、たとえば婦人団体あるいは婦人学級、あるいは地域のいろんな団体がございますが、それぞれが自発的にリーダーが出てきておりまして、その人たちを婦人教育会館研修に参加をしていただくというわけでございますから、原点はやはりボランティア活動をやっているグループそのものが選出をしていただく、あるいは参加をしていただくというわけでございます。
  199. 東中光雄

    東中委員 婦人教育をやっていく上でリーダーが不足しているというようなことが指摘されているわけですけれども、不足しているリーダーを養成していくというのでありますが、だれをどういうふうにしてその婦人教育会館に引っ張ってくる、引っ張ってくるといいますか、教育をする対象として出してくるのかということをお聞きしているわけであります。
  200. 吉里邦夫

    吉里政府委員 私どもがこの婦人教育会館で構想いたしております事業の中には、会館そのものがプロジェクトをつくりまして、各県に呼びかけまた団体に呼びかけて参加をしていただくものもございます。それからいま一つは、それぞれの婦人団体その他のグループが自分のプロジェクトを持ちまして団体として参加するものもございます。したがいまして、前段の、会館が主催をするものにつきましては、パイプといたしましては各県の社会教育担当の部局あるいは各婦人団体等から参加をしていただく、選出をしていただくという形にしたいと思っております。
  201. 東中光雄

    東中委員 自主的に各婦人団体が行う場合の保証も十分あるんだというふうにお聞きをしたのですが、それでよろしいわけですね。
  202. 吉里邦夫

    吉里政府委員 あるいは言葉が足りなかったかと思いますが、この事業には二つのタイプがございますから、主催とそれから各団体のものがございますから、十分その道は、先ほどの受田先生のお話ではございませんけれども、社会教育そのものが開かれておりますし、この会館も開かれたものにしていくつもりでおります。
  203. 東中光雄

    東中委員 もう一点、各種婦人団体と、こう言われておるのでありますが、あるいはこの会館の運営委員会も、婦人団体の代表もその運営委員の中に入れるというふうになっておるわけでありますが、ここで言われておる婦人団体というのはどういうふうにピックアップしておるのか、あるいはその婦人団体範囲というものについての限定なり何なりがあるのかないのかという点であります。
  204. 吉里邦夫

    吉里政府委員 婦人教育社会教育の重要な一環でございまして、社会教育法の中に「社会教育関係団体」という言葉がございます。しかし、私どもこの婦人会館の協力を得、また対象にしたいと思っております婦人団体婦人関係団体は、主として婦人教育をやっておる団体だけに限るつもりはございませんで、いろいろな仕事の中でやはり婦人教育もある部面をやっておるというものも広く対象にしたいと考えておる次第でございます。
  205. 東中光雄

    東中委員 国立婦人教育会館設置に関する全国組織の婦人団体代表者及び会員数というのが二十一団体についてリストをいただいたのでありますが、これは二十一団体、どういう基準で、あるいはこういうふうに限定的になったのか、これは限定する趣旨でないということなのか。婦人団体について、たとえば全国組織の婦人団体と言えばずいぶんまだほかにもありますから、そういう点について、これは決して限定的ではないということをはっきりとしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  206. 吉里邦夫

    吉里政府委員 この構想が燃え上がってまいりましたのは、調査費は四十六年からでございますけれども、実はずっと前から婦人関係団体の要望がございます。それで先ほど御質問にあります全国的な団体、このリストアップは、実は府県教育委員会がタッチをしておる団体でございまして、それだけに限るつもりでリストを作成したわけではなくて、小さなグループ、大きなグループ、あるいは個々人の婦人教育関係者も、この婦人教育会館の行います研修あるいはいろいろな事業に参加をしていただくつもりでございますし、これを推進していただきましたいわゆる全国組織を持っておる団体の方々も自分たちだけが利用できるというふうにとられては困るということまで言っておりますので、御心配は要りません。
  207. 東中光雄

    東中委員 国立国際美術館万博跡につくられるわけでありますが、この際これは大臣にお伺いしたいのでありますが、文楽、歌舞伎に代表される上方芸能を中心とする国立劇場の早期実現ということを非常に強く関西、大阪で要望をしておるわけでありますが、そういう点についていま文部省はどういうふうに進めておられるか、お伺いしたいです。
  208. 海部俊樹

    海部国務大臣 今年度予算折衝をしておりますときに、おっしゃるように関西方面の各界の人々がいろいろな御意見を持っておいでになりまして、私はたしか大阪に今度は文楽劇場というのが着工されることになるというふうに聞いておりますが、詳しいことは担当の文化庁長官からお答えをいたします。
  209. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、大阪に国立の文楽劇場を建てるための準備費が本年度七百万円、予算に計上されているわけでございます。このほかに、ただいま御審議をいただいておりまする国立の国際美術館設置というのが大阪府に予定されておるわけでございますが、こうした形で大阪に国立の文化施設整備するという事業を進めておるわけでございますが、これ以外に、ただいまのところさらに大阪に国立の文化施設を近い将来整備するという計画は現在のところ考えておりません。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕
  210. 東中光雄

    東中委員 西日本地域における一つ中心地として舞台芸術活動等の創造、普及のセンター的なものをぜひ国立劇場としてつくってもらいたいということを、これはずいぶん前から言っておるわけでありますが、いま長官は考えていないと言われたのですけれども、東京に第二国立劇場をつくるというふうな方向が出ておるやに聞いておりまするので、あわせてこういう方向を、いま具体化していなくても検討をするという方向にはならぬのですか。歯牙にもかけないという態度をとっておられるのですか。
  211. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 近い将来具体的に取り上げる考えはないということでございまして、先般関経連等が中心になっておまとめになりました中之島芸能センターの構想、これは阪大の移転問題とも絡んだ問題でございまして、現状におきましては阪大の移転が、移転と申しますか跡地処理がどうなるかということにつきまして結論が出ていないわけでございますし、また構想自体も必ずしも具体的なものでないように私ども伺っております。しかしながら、方向と申しますか考え方としては、私ども非常に大きな関心を持っておるつもりでございます。繰り返しますが、近い将来これを具体的に取り上げるということではございませんが、将来の構想として大きな関心を持ち、まあ検討を続けていきたい、こういうことでございます。
  212. 東中光雄

    東中委員 その点を進めるように強く要請をしておきたいと思います。また具体化することを私たちも考えていきたい、こう思うわけであります。  問題は変わりますが、プレハブ校舎を三年で解消する、文部大臣が、夏は暑くて冬寒いプレハブ校舎解消にことしから本格的に取り組む方針を明らかにしたというふうに言われておるのでありますが、プレハブ教室の解消は非常に重要であります。と同時にプレハブ教室を設置しなければならないような過大過密学校の問題が一層深刻だと思いますのでお伺いしたいのでありますが、現在小中学校の不足教室数はどれくらいあるのですか。
  213. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 いま不足教室の数につきましては調べておりますが、プレハブの数室数をとりあえず申し上げますと、現在五十一年度で三千八百八十教室ございます。
  214. 東中光雄

    東中委員 プレハブが五十一年度で三千八百八十、不足教室数が八千六百八十三、だから特別教室その他を転用したのが四千八百三あるということでありますが、この数字は四十八年にいろいろ論議されたときの数字とほとんど変わってないんですね。解消をしていくけれども、新たにまたプレハブがふえてくるということで、三年間でプレハブ校舎解消というふうに文部大臣は言われておるのでありますが、それはもう児童数がふえていくというのは四、五年前から、出生したときから大体わかるわけですから、本当に解消するということなのか、いまある分を解消して後の分はまたふえてくるということなのか、その点はどうでしょう。
  215. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 プレハブ教室の起こる原因はいろいろございます。一番基本的な原因は急増地域、特に社会増のために児童がふえていくということで、本格的な校舎の建設が間に合わないということでございますが、なおその生徒がふえていきます段階において、中間的に、たとえば一つの建物を建て増しするとか、あるいは新しい学校をつくるまでの間少しの増加の分については当分の間プレハブ教室に入れておくというようなこともございますので、これを全くゼロにしていくということは実際上むずかしかろうと思います。この後もまた起こってまいります、そういう必要やむを得ないものもあろうかと思います。しかし、そういうことではなくて、建物が足りないために、あるいは国の助成措置が足りないために起こってくるプレハブ教室につきましては、これは極力解消することに努力いたしまして、そういう意味における不必要なプレハブにつきましては、ここ数年のうちに解消してまいりたいと考えておるわけでございます。
  216. 東中光雄

    東中委員 人口の急増地域でのプレハブ教室が建っておるところ、あるいはプレハブ教室はほんの一つ、二つしか建っていないけれども、いままであったプレハブ教室にかわる校舎をどんどん建て増していくということで、過大学校というのがずいぶんできているわけですね。過大学校の内容というのは私、本当に今度調べてみて深刻なのには驚いたわけでありますが、一体文部省は、適正規模の学校というのはどの程度のものを考えていらっしゃるのか、その点をまずお伺いしたい。
  217. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 一応十八学級から二十四学級あたりを通常の場合の適正規模考えておるわけでございます。
  218. 東中光雄

    東中委員 学校教育法施行規則の第十七条は「小学校の学級数は、十二学級以上十八学級以下を標準とする。ただし、土地の状況その他により特別の事情のあるときは、この限りでない。」ここでは十二学級以上十八学級になっていますね。私の子供のときは一学年二学級の小学校であったわけですけれども、それが大体基準のように思っておったのですが、この十二学級以上十八学級と言えば、小学校の場合一学年二学級ないし一学年三学級ということになるわけですね。いま局長は十八学級ないし二十四学級と言われましたが、学校教育法施行規則十七条はそのままで、これは訂正をされたことになるのですか。
  219. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 義務教育諸学校施設費国庫負担法の施行令で「適正な学校規模の条件」というのが規定されておりまして、原則は先生おっしゃいましたように学級数がおおむね十二学級から十八学級までと書いてございますが、しかし、いろいろな統合の場合等におきまして最高限二十四学級までしてもよろしい、そういうような規定があるわけでございます。
  220. 東中光雄

    東中委員 いや規則は法ですから、そこで十二学級以上十八学級以下を標準とする、これは原則なんですから、それを今度はまた何かで修正しておく、この原則自体は文部省だけでやられることですから、修正する必要があるのだったら修正されたらいいと思うのですけれども、その点をやはりはっきりしておく必要があるのではないか。  それから、それ以上のものは絶対にないということではないのは、これは条文にあるとおりでありますから、私は二十四学級だったらいかぬと、そういう趣旨で言っているのじゃありません。しかし、施行規則はそのままにしておいてまた別の基準を言うておるというようなことにはすべきではないんではないか。それで、文部省では施行規則に書いてある「十八学級以下を標準とする。」この基準以上の学校は全国でどれくらいあるのか。いま言われた十八ないし二十四学級を標準とすると考えた場合にも、二十四学級以上はどれくらいあるのか、この点をお聞かせ願いたい。
  221. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 法令上の標準という数字はいまおっしゃったような十二学級から十八学級でございますが、実際問題といたしまして、それよりかなり大きな規模の学校もございまして、いわゆる大規模学校といたしまして私どもその解消を図る対象といたしましては、もう少し大きなところに目標を置いておりまして、実は三十六学級以上の調査をいま数字を持っております。現在、昭和五十一年五月一日の調査によりますと、小学校で三十六学級以上のものが約七百五十二校、全体の学校数の約三%ございます。中学校で見ますと、これは三十三学級以上ということにいたしまして二百四十七校、これは全体の約二%でございます。さしあたりこの規模のものにつきましてこれをできるだけ解消を図るということを努力いたしておるわけでございます。
  222. 東中光雄

    東中委員 学校として出発したときの大きさで、そして教室を建て増す、そういったことをやって、学級数がふえるに従って学校を大きくしていくというやり方をとられておりますと、三十六学級という絶対数ではなくて、現在三十学級であっても、出発のときに十二学級の校地面積で出発して、そのままでこうふえていったという場合は大変な過密学校になるわけですね。だから三十六という数字は、これは基準が施行規則で十二ないし十八と書いてある、そのときに出発した学校が二十四になり三十になりということになってくれば、過密学校をなくすという点で言えば、三十六学級という基準では実情に合わない。それ以下の分であっても、初めから三十学級で出発した学校は、三十六、三十七学級になったとしてもそれは大したことないわけですね、過密にならないという関係があるので。これは標準を決めてある以上は、今度は標準から外れている分の実態をよく調査をしなければ、本当に学校教育教育効果という点から言ってもまずいと思うのですね。その点、単に三十六学級というふうに言わないで、実態を調査するということを一つ考えるのですが……。
  223. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 よく実態を調査いたしたいと思います。  なお統計の全体の数字を見ますと、小学校で二十四学級をオーバーしているものが四千百八十一校あるようでございます。なお詳細に調査してみたいと思います。
  224. 東中光雄

    東中委員 名古屋市の教育委員会の、指定都市における過大学校の調査を私たち聞く機会がありました。文部省へ聞くと三十六学級以上しか数字がないということで、これだけの違いがあるんだなということを感じたわけでありますが、それで見ますと、指定都市における三十学級以上の過大学校というのは、たとえば横浜は小学校で七十七校ある。大阪が七十二学校、それから名古屋が四十一学校、神戸が三十七、川崎が三十四、こういう数字が出ておるわけですが、人口急増地域において過大学校が非常にふえてきておる。これはいま五十一年度を申し上げたわけでありますが、解消に努力しているところと、それから逆にふえていくところと、市によっていろいろ変わっております。こういう点について、文部省がやはり過大学校をなくしていくという点で積極的な措置がとられなければいかぬじゃないか、こう思うわけです。  それで、過大学校の矛盾の一つとしてお聞きしておきたいのでありますが、運動場の広さは児童一人当たり小学校で何平米ぐらい、中学校で何平米ぐらいを考えておられるのか、いかがでございますか。
  225. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 一人当たりという計算ではございませんで、学級数に応じまして基準ができておりまして、たとえば十二学級の小学校におきましては運動場の広さは六千六百五十三平米、そういうような形になっております。
  226. 東中光雄

    東中委員 一人当たりどの程度の運動場の広さがあるのが標準であるか、あるいはそれは広ければ広いほどいいでしょうけれども、おのずから限度、標準というものはあると思うのですが、適正な運動場の広さというものはどれぐらいのものかということについて、文部省はそういう基準さえ持っておられないということですか。全く驚きだと思うのですが。
  227. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 むしろ、一学級から六十学級にわたるそれぞれの学級規模に応じて運動場はどれくらいでなければならないかというより詳細な基準を持っておるわけでございます。
  228. 東中光雄

    東中委員 それでは具体的な実情で言いますと、私、この質問をするについて大阪市の豊里小学校の状態を調べてみました。これは児童数が二千十八名になっています。四十八学級あるわけですが、この中で特別教室を入れましてプレハブ教室が六教室あります。こういう学校でありますが、ここの運動場の面積を児童一人当たりで計算をしますと、わずかに一・七平米ぐらいしかないわけであります。大阪市がマスタープランで出しておる運動場面積五千四百平米以上の規模の学級数は十八ないし二十四学級というふうに言っておるわけでありますが、二十四学級で五千四百平米の運動場、人数を四十五名と計算してやると、大体一人当たり六平米当たりになるわけですね。これが十八学級の四十名クラスだとすれば七・五平米になるし、二十四学級で一学級四十五名とすれば五平米になる、こういう関係ですね。現場の校長の意見を聞くと、六平米くらいはないと困ります、こう言っているわけであります。ところが、この豊里の場合は一・七平米しかない。どういう事態が現場で起こっているかといいますと、児童でけがをする人が非常に多いのですね。毎月二名ないし三名の負傷者が出てくる。それは骨折あるいは突き指、打撲、それから歯の破損、頭部外傷、全部衝突しておるのですよ。ボールが飛んでくると、受けようと思うと隣の人もこうやってくる、がたんといく。こういう形で、五十一年度はこういう外傷で学校の保健室で応急手当てをした人が一年間四十七件あるというのです。ということは、月に大体夏休みを入れれば四件ないし五件ということですよ。学校大変ですよ。こういう状態になっておる。運動会をやろうといったら学校ではやれない。そばの公園まで行ってやる。学級数が多過ぎるから、われわれの記憶では、たとえば五十メートルとか百メートルとかいわゆる走り合いをやるときは、用意ドンから決勝まで行って、それで一着、二着、三着、こう分けましたが、そんなことをやっておる暇がないのだそうです。用意ドンで走ったら、決勝点に着く前ぐらいに次が用意ドンでざあっと走っていくというのですね。父母がこの運動会に参加をしても、自分の子供がどこにいるのかさっぱりわからない、こういう状態なのですよ。これはプレハブ教室の問題としてみたら、夏は暑くて冬は寒い、そういう問題でなくて、プレハブ教室を建てなければいかぬような状態というのは、運動場をこういう状態にするのだ、子供がけがをするような状態に追い込むのだ。低学年の児童は、休憩時間だからといって外に出て行けないというのです。出て行ったって何も遊べない。だから先生によっては、休憩時間になる五分前ぐらいに休憩にして、受け持ちの先生がそういう計らいをすることで五分間だけざあっと運動場を走ってくるというようなことさえやっている。運動場に出られないから、教室の中でゲームをやっておってもある程度よろしい。しょぼんとしておったってしょうがないからというので認めたら、トランプを持ってくる人がある、将棋を持ってくる人がある。ある五年生、六年生の子供ではカブまで知っているというのですね。お母ちゃん、カブ知っているか、こう言うたというのです。カブって何だと言ったら、そんなもの知らぬのかということになる。これは非行化の方向にも向いていく。私はそういう点では、この過大学校という問題は、教室が整備できたらいいという問題ではないのだ、非常に重要な問題ではないか、こう思うのですが、これについての、プレハブだけでなくて、具体的にこういうものをなくしていく体制を計画的に具体化することが必要だと思うのですが、文部省方針、態度をお伺いしたいと思います。
  229. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のように、都会地において大規模校が運動場の問題で非常に困っていらっしゃる例というのはいろいろあるわけでありまして、理想を言えば、やはりもっと広々とした運動場がすべてに整備されることだと思うのですけれども、そのためにはやはり大都市における土地の需要供給の問題とか、あるいはもっと根本的に土地政策の問題にも関連するわけでありまして、これは関係省庁ともいろいろこの件については検討を進めていきたいと思います。  なお、細かい現実の問題につきましては、担当の局長より御説明を申し上げます。
  230. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 いまの過大規模の学校の解消につきましては、建物の点につきましては、単にプレハブ解消ということでなしに、大きな学校を分離する場合にその資格坪数の計算等につきまして、有利な計算をする、分離しやすいような計算の仕方で、新しく学校を建てる場合にそれが補助の対象になるようにする、そういう措置をとっております。  しかし、先生の御指摘の一番のポイントは、土地の問題であろうかと思います。それで、特に急増地域におきましては用地の取得難ということが非常にございまして、それがいろいろな学校の過密状態の原因になっておりますので、本来、土地というものは補助の対象になじまなかったものでございますが、急増市町村に限りまして、土地の補助ということに踏み切ったわけでございます。すでに五カ年間の応急臨時措置ということが終わりまして、五十一年度から第二回目の五カ年間の措置ということで、土地の取得費について補助をするということが始まったわけでございます。そして、五十二年度予算におきましても二百八十八億という額を見込んでおりまして、前年の二百三十六億からかなりの増額を見ておるわけでございます。  こういったことで、文部省でやり得ます施策といたしましては、こういうようなところでできる限りのことを努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
  231. 東中光雄

    東中委員 学校の実態は、運動場だけの問題じゃなくて、たとえば特別教室はどんどんつぶされていきますし、いま申し上げた豊里小学校の場合で言いますと、非常にりっぱな理科教室があるわけです。外国から大阪市へ学校の実情なんかを見に来られた場合には、ここの理科教室は非常にりっぱなんだということで、よく外国教育関係者の人がこの小学校へ見に来るそうです。なるほどりっぱなんですけれども、それは標準の学校であったときの理科教室としてはりっぱなんです。ところが、うんと過大になっておりますから、四十八学級もあるから、もう使えないわけですよ。使えるのは週に一回、しかも高学年だけが使えるのであって、これは全くそういう意味では実態は変わったものになってしまうわけであります。あるいは給食室にしてもそうでありますし、養護室にあってもそうだ。プレハブ教室をりっぱな四階建ての鉄筋コンクリートの教室に建てかえて整備された、プレハブ教室はなくなったといったって、給食室も養護室も一緒だから、ベッド一つ、最近は二つにしたそうでありますけれども、児童がうんと多くてけがする人もふえてくるというふうな状態では、途中で気分が悪くなった児童を床の上に毛布を敷いて寝かさなきゃいけない、こういう深刻な状態になっているわけであります。しかも、そういう状態になるというのは、なってからわかるのじゃなくて、ずっと前からわかることなんですね。私いろいろ調べてみまして、たとえば川崎市のやっぱり急増地域でありますが、河原町小学校というのを見ますと、五十二年から五十三年で約百人この学校ではふえる。これは三十一学級以上の過大学校でありますが、一年に百名ふえるということが推計されております。その次には、五十三年から五十四年には二百名ふえる、その次には百名ふえるという推計がすでにされておる。あるいは、富士見台小学校というのがありますが、これは五十二年から五十三年には約三百人、その次の年にはさらに百五十人、その次の年にはさらに二百五十人ふえるというふうになっておるわけですから、現在でも過大になっておるのが、もう来年はこうなる、次はこうなるということがわかっておって、逆に言えば数年前からわかっておって、その土地の取得がされてない、こういう状態が起こっておるわけですね。  草加市の場合だって、たとえば八幡小学校というのを見てみると、五十一年は千六百四十一名でありますが、次には二百人ふえる、その次の年にはさらに二百人ふえる、その次の年にもさらに二百三十人ほどふえるという推計がされておる。  こういうふうに見てみますと、後追いをやっているのじゃないか、そして教育が実際上は非常にひどい状態になっておるというふうに思うのでありますが、義務教育でありますし、これはやはり国の責任で自治体の指導をやり、こういう義務教育でさえうんと違う条件が出てくるというのについては、単に土地の取得についての特別の措置をとられたといっても、現実に進んでいないわけですから、こういう事態がずっと起こっているわけですから、その措置自体を考え直さなければいかぬのではないか、こう思うのです。そして、具体的な指導はやられるのかやられないのかということについてもお伺いしたいと思います。
  232. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 学校の過密状態の原因にはいろいろあるわけでございまして、先生指摘のようにプレハブだけがその原因ではないわけでございます。私どもは小中学校の不足の教室数というものを全体的に五十一年度で八千六百八十三と計算しておりますけれども、その中で、先ほど申し上げましたプレハブ教室以外に、いま先生のおっしゃいましたような特別教室を実は一般教室に使っておるとか、それが三千三百五十一ばかりございます。それからそのほかにも、屋内体操場を間仕切りして使っておるとかいうようないろいろな状況がございます。  それで、私どもまずそういう建物の建設費について、その補助金の増額を逐次計画的に進めてきておるわけでございます。来年度も事業量で大体前年度の一四%アップということで、小中学校の屋体、校舎増築には力を尽くしてまいります。なお、先ほど申しましたような土地の取得というようなことにつきましても対策を講ずるというようなことで、全体的に問題の解消を図っておるわけでございます。
  233. 東中光雄

    東中委員 学校用地の補助は、先ほど言われましたけれども、これは実際には事業に着手するときには十八分の一の補助しかされないことになるわけですね。足切りが二分の一あって、そして三分の一の補助で、しかも国庫債務負担行為ということで三カ年に出されるということになれば、実際にその仕事をやろうとすれば十八分の一しか補助はないということであって、私は義務教育の性格からいって大体足切りを二分の一やられるということ自体どうしても理解できないのですけれども、こういう異常な事態を解消していくということから言えば、足切りを二分の一にするということはこの際やめて、本当に過大、過密学校をなくしていくという措置を積極的にとるべきじゃないかと思うのでありますが、いかがでございますか。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 土地の補助というものは、本来的に校地の取得というものはそれぞれの自治体で措置するということが基礎にございますので、交付税措置なりあるいは起債措置で行う。特に土地というものはその団体の財産になる、いわゆる非償却財産でございますので、起債措置のようなものが本来の措置であるという考え方を打ち破りまして、とにかく補助をするということに踏み切ったわけでございまして、そういった意味合いにおきましていろいろ足切りであるとかというようなことがあるわけでございます。実際に主なる責任はやはり自治体に負っていただく、それを助成していくという立場での補助が行われておるわけでございます。それにいたしましても、補助の金額が少ないためにいろいろ実際の配分の場合には圧縮されるというようなこともございますので、来年度は大幅な増額を見込みまして、多少ともそういう状況をなくしたいというふうに考えておるわけでございます。
  235. 東中光雄

    東中委員 もう時間が来ておりますが、私はこの点については非常に矛盾を感ずるわけであります。特に大阪の場合で言いますと、よくこの国会でも問題になりましたけれども、先ほど申し上げました豊里小学校の場合は児童数が二千十八人、四十八学級ということで、運動場は一人当たり一・七平米というふうな状態になっておるわけであります。そのほかに、最近建てられました栄小学校という小学校があります。ここでは児童数が五百七十一人、そしてグラウンド面積を見てみますと、一人当たり十六・四六平米、十倍に近いというふうな学校があります。一方では過密でもうどうにもならないという状態。これを過密学校へ行っている学校の父兄、父母がどういう気持ちで見るだろうかということを思うわけであります。教育の機会均等というのは——義務教育の中で、しかも実質的にはこんなに差が出てくるというのは全くよくないのではないか。この栄小学校の建設の総工費はだんだん上がってまいりまして、最終的には七十七億六百七十万二千円というふうにまでなっています。最近建てられた一般校の場合と比べますと十倍、それ以上にもなっているというふうな状態があります。これは自治体がその責任でやることであると言えばそれまででありますけれども、やはり憲法上、国は義務教育を行う義務があるわけでありますし、国民は義務教育であると同時に教育を受ける権利があるわけでありますし、それが実質的にこういう不合理な差が出るということはどうしても許されないことではないか。こういうことについて国は指導できないのか、そして過密学校をなくしていくという措置がとれないのかどうか。私は、文部省として具体的なそういう過大学校の実情、二十四学級以上あるいは十八学級以上、それを調べ、その内容を教育上の観点から見て検討し、そういう措置をとられるべきだ、こう思うのでありますが、文部大臣、そういう点について決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  236. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 初めに事務的な状況を御説明いたしますと、御指摘の大阪市の栄小学校は校舎の場合に大体基準の六倍近い面積を持っておる学校でございます。ただ、この場合におきましては私どもの国の補助は入っておりません。私ども国で補助をいたします場合には、最低基準を保持するという必要性から一定の基準のもとに、基準以上のいわばぜいたくなと申しますか、ぜいたくと申しましてもいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、そういったものにつきましては補助の対象にいたしておらないわけでございますが、この場合は市と府のお考えで融資等の措置によってこういう学校をつくられたようでございます。ただ、これは同和地区の学校でございまして、同和問題に対する対策という非常に特別な考え方のもとにこういったものをつくられておるようでございまして、それはそれでその自治体のお考えでございますので、仮に補助金が使われておるということでありますればそういったものは後回しにしてほしいということを申し上げるわけでございますが、自治体御自身の財政力でやっておられることなのでございますので、特段これはいかぬというようなことは私ども申しておらないわけでございます。
  237. 東中光雄

    東中委員 もう時間ですから終わりますけれども、質問趣旨を誤解されているように思うので私は言うのでありますが、りっぱな学校をつくることはいいことだと私は思っておるのです。しかし、そのことをやる反面、そうでない標準を著しく逸脱したような学校、そして子供がけがまでする、非行にまで走っていくというふうな基礎になるような状態が、一、二起こっているというのじゃなくて相当広範に起こっているというときに、同じ小学校について文部省としては何の指導もしないのか、そういう差がある小学校というのは、たとえば教育の機会均等という立場から見てもやはり考えなければいかぬじゃないか、そういうことを言っているのであって、そして過大学校をなくするということについての文部省としての考え方なり大臣の御決意をお伺いしたい、こういうことであります。
  238. 海部俊樹

    海部国務大臣 全国的に一定の基準を置いて、その基準に達するようにいろいろ補助、助成等をしておるわけでございますが、文部省としては、たとえば当初御質問に出ましたプレハブ解消の問題とか、あるいはまだ屋内体育館等の設備のない学校に屋内体育館をつくるとか、あるいは老朽度の進んでおる学校を危険度によって建てかえなければならぬというときの優先採択とかいろいろございますけれども、御指摘の大規模な学校を新しく分離をしてきちんと整備するとかというようなことは、これはもう基準に達するための必須の条件でありますから、そういうのはやはり優先採択をして御期待に沿うような環境条件を整備していかなければならぬ、これは方向として私も全くそういう方向だと思いますので、そういう方針で今後とも取り組んでまいります。
  239. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  240. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、中川秀直君。
  241. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 お尋ねを幾つかする前にお断りを申し上げておきますが、大変時間も制限をされておりますので、文部行政の当面する問題についての背景をある程度承知をいたしておるつもりでございますので、ポイントだけお尋ねをいたしますから、大臣初め担当の皆さんの今後の御方針について簡潔な所信をお伺いしたいと思います。  まず、当委員会とこれは大変関連の深い問題でございますが、今国会において国立学校、特に新設になりますところの、無医大県につくるところの医科大学の職員定員、これを総定員法の枠外に置くという法律を国立学校設置法の附則の改正で行うということになりまして、御案内のように現在審議がされているところでございますが、大臣にまずお伺いをしたいと思いますが、この総定員法という趣旨は、私どもは国の行政機構、とりわけ定員というものが新しい時代において常に簡素で効率的なものでなければいけない、簡素な行政、簡素な政府こそこれからの新しい政治、行政のあり方であるという、そういう趣旨で、行政機構の定員を抑制する趣旨でつくられたものだと理解をいたします。いかに仕事がふえようと、新しい行政ニーズが生まれてこようと、それは本来行政の総量を考える中で定員は抑制をしていくべきはずでございまして、たとえば新しいニーズが出ても、古くからある行政需要がこれは本来民間でできるというものは大胆に民間に任せていく中で行政の総量は変えない、そういう中で行政機構というものを簡素で効率のいいものにしていく、こういう趣旨であったはずであります。しかるに、今回総定員法に全く触れずに、国立学校設置法の、しかも附則の改正というかっこうで先ほどお話しした医科大学の定員六千数百人というものを総定員法の枠外に置くということにしたのは、私は大変問題があると言わざるを得ないのであります。議運やその他の大変御経験の深い大臣になられてからのことでございますので、陰の声としては、こうしたきわめて異例の措置は大臣のお知恵ではないかという陰の声もあるのでありますけれども、しかしいかにせよそれは大変な問題でございますので、この点についての御見解をまずただしたいと思います。
  242. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のように特例措置のような、総定員法から見れば例外的な取り扱いにさせていただいておりますことはもう御指摘のとおりで、御批判は受けなければならぬと思いますが、しかし一語だけ御説明することをお許し願うなれば、御承知のように総定員法が成立しましたとき、文部省としては無医大県解消計画というような大きなプロジェクトというものを、具体的な構想として正直に申し上げてなかったわけでございまして、また教育改革に伴う新構想大学というものもその総定員法のできました後において構想されたものであります。おっしゃるように、総定員法の最高限度の枠内で、規定の定員の瀞配置によってすべてを解決する努力をすべきだ、こういう考え方も一面にはございますが、何分にも一つの医科大学ができて運営されますためには約千人に近い定員が必要になってまいりまして、どうしてもいまの枠内での再配置、やりくりということでは絶対にできないような壁にぶつかってまいります。  そこで、今度の国立学校設置法でお願いしましたのもその個々の大学の設置そのものがやはり国立学校設置法によって行われるものでございますので、その定員に関する特例措置につきましても、これは国の文教政策上の重要施策として進める、総定員法成立後に起こった新しい政策によって生まれた文教政策の一環でございますので、こういった例外的な措置を特にお認めをいただきたいと思って、国立学校設置法に記すことによって国会の御判断も仰ぎたい、こういう措置をとったわけでございます。
  243. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 正常な状態ではない、総定員法、いわゆる総理みずから言っておられるような行政改革の趣旨から言って、あるいは行政機構の本来あるべき姿から言って正常な姿ではないということは、大臣も今回の措置についてはお認めになるのでありましょうか。
  244. 海部俊樹

    海部国務大臣 これは先ほど申しましたように、総定員法後に起こった全く新しい文教政策上の大型プロジェクトとしてこれを達成させるための特例の措置としてお願いをいたしたい、こういう考え方でございます。
  245. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 そういう大臣の御発言からしますと、これからたとえば二百海里で海上保安庁のコーストガードの業務というものも大変ふえてくる。あるいは成田空港開設による要員、いろいろな問題がその当時予想しなかったものとして考えられてくるわけです。しかし、そういうものを一々国立学校設置法あるいはその省庁の設置法というようなもので、しかも附則の改正というようなかっこうでやられたのでは、本来の定員抑制という大きな、これまた国家プロジェクト以上に必要な大事な国策が完全に骨抜きにされ、またごまかされていくということになるのでありまして、私はこのようなことはこれ限りにしていただきたいと、内閣の一員である、連帯責任をお持ちになる文部大臣にも、強く強くお願いを申し上げておきたい、こう思います。  しかもこの国立学校設置法に書いてある新設医科大学等を総定員法の対象枠から外すというのは、「当分の間」こう書いてあります。この「当分の間」というのは、いろいろな御答弁によりますと、無医大県の解消計画に入っていてまだ設置されていない医科大学が設置されるまで、おおむねあと六年ぐらいかかるであろうという、そのくらいの間であるという、ややニュアンスの御発言だと伝え聞くのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  246. 海部俊樹

    海部国務大臣 御承知のとおりに無医大県解消計画の国立の医科大学だけに例をとってみましても、十二できまして、現在まだ四つが創設推進や創設準備段階にあるわけでございますから、これはただ単に医科大学をつくるというだけのことでなくて、どうしても毎年毎年、それに新校に伴う定員増も伴ってまいりますので、当分の間といいますのは、いまその推進をしております大学がいつ開校できていつ終わるかということまでまだ具体的に計画見当が立っておりませんので、準備の状況等勘案して開学の時期なんかも決めていかなければなりませんから、当分の間という表現方法になっておる点はどうぞ御了解いただきたいと思います。ただ、それはすべての学校がきちんと整備されるというぐらいの当分の間であるということであります。
  247. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 これは大学局長が御答弁になっている要旨でございますが、無医大県解消計画が一応の完了段階に達するまでになお十年ばかりの期間を要する。これは御答弁になったことがございますね。この十年の間の余裕ですが、今度の、一つもわれわれは審議したこともなければ可決したこともない新総定員法によって——新総定員法というのはこうした新しいやり方によって五千七、八百人の新しい定員の余裕ができたわけでございますけれども、この新総定員法が果たしてこの十年でも推持できるかどうかさえ、そのような御姿勢では私は疑わしいと言わざるを得ない。福田内閣は行政改革ということは新しい資源有限時代を迎えて一つの大きな施策の基本に据えるのだということになると、大臣もそのお一人としてこれはもう当然本気で取り組まなければならない問題のはずです。いかな新しい、予想できなかったニーズが出てこようと、それは本来、文部行政の枠内で、まず第一に民間に任せられるものは、行政がもう手をつけなくていい部分は、大胆に国民の合意を得ながら譲っていく、あるいは第二に、政府全体としてそういうことでその定員を収容していく、こういう御努力をしていただかないと、これは大変不安だと思うのでございます。改めてその御見解を伺いたいと思います。
  248. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のとおり他の委員会におきまして「当分の間」という期間につきまして、おおむね十年程度という御返事を申し上げたことがございます。これはいま大臣からお答え申し上げましたように、なお医科大学につきましては四つを残しております。この四つがいつ開学にこぎつけられるかというのは、準備状況によってなお未確定ではございますけれども、それが開学されてからさらに学年進行によって完了するまでの間に、先ほど御指摘の六年程度の期間がかかりますので、それらを勘案をいたしまして、おおむね十年程度はかかるのではないかというふうに申し上げたわけでございます。  なお、医科大学等の大学の定員というのは、学年進行に伴いまして毎年度ふやしてまいるわけでございます。したがって、今後とも、すでに創設をされている十二の医科大学の定員を含めて、逐次関係の定員はふえていき、そのことに応じ、また新しく医科大学をつくる場合にはそのことに応じまして、附則に規定する定員の数を変更するということを法律をもって御審議をお願いすることになるわけでございます。そういう意味で、医科大学の整備あるいは創設と、いわゆる枠外とする定員とをあわせて、一体的に国会で御判断、御審議をいただきたいという趣旨で、国立学校設置法に規定を設けさせていただいたわけでございます。
  249. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 また次回の質疑でもこのことについてはあるようでございますから私はこの程度でやめますが、重ねて重ねて申し上げますけれども、こうした方法によるのはやはり不正常なやり方でございまして、また不正常であっても、こうした方法で新しい定員というものができるのであるとするならば、それさえも不安だという指摘をしたということだけは十分覚えておいていただいて、かかるようなことは二度とやらないようにお願いを申し上げておきます。  次に、文教行政基本施策を審議するところでございます中教審、これが昭和四十九年五月に最後の答申を出しましてから約三年間、全く審議をしない。もちろん、委員も任期満了でいない空席の状態になっております。常設的な審議機関、しかも基本施策を審議する機関、全く開かれない審議会ならやめてしまえというような議論もある中で、文部大臣、このことについての御見解を伺いたいと思います。
  250. 海部俊樹

    海部国務大臣 中教審につきましては、私はできるだけ早い機会に、いま御指摘のように委員が空白になっておるわけでありますから、委員の方々を委嘱をしてそして発足をしたい。新発足と申しますか、再発足と申しますか、空白でないような状態にしたい、こう思っておりますけれども、まだそれがいつ幾日というところまでは固まっておりませんので、できるだけ早く準備しよう、こう思っております。
  251. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 もう人選には、ある程度準備段階として入っているということでございましょうか。
  252. 海部俊樹

    海部国務大臣 まことに申しわけありませんが、大体毎日国会の御質疑を受けておりますので、まだ具体的な人選まで入ったというわけにはまいりません。なるべく早くやりたいと思っております。
  253. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 長い間空白になっていた理由として、伝えられるところで拝見をいたしますと、四十六年の六月に「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」という、大変な大答申がございました。現在の文部行政はそれを実行する段階であるから、諮問する問題がないというようなことでございましたが、大臣最近御活躍のように、学歴社会の問題あるいは塾の問題、高校の進学率がこれだけ高くなってきた中での学校制度の問題、あるいは国語教育の問題、やはり新しい時代の文部行政方向について、中教審で当然の審議をすべき時期にも来ていると、私見ですが思うわけでございます。再開をするということになると、何か具体的な諮問をなさるのか、あるいはいままでの運営方法を何か変えられて運営をされていかれるのか、その辺お考えがあったらお聞かせ願いたいと思います。
  254. 海部俊樹

    海部国務大臣 再開をしようと、いつまでも空白でほっておく気持ちはございませんけれども、まだ具体的に人選もしてございませんし、また何を具体的に諮問するかという問題につきましても、御承知のようにいろいろな重大な問題がいっぱい出てきております。ですから、またその四十六年にいただいた中教審の答申に従って、いまいろいろと教育改革をやっておるさなかでございまして、どういう角度からどの問題をというようなことについても、まだ十分私自身の考えもまとまっておりませんので、これらのこともあわせて早い時期に考えをまとめたい、こう思っておる段階でございます。
  255. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 いろいろな審議会のあり方について、いろいろな議論が現在あるわけでございます。しかし私は、まさに国策の基本である教育については、特にその基本的な施策を国民合意のもとで、総合的に各方面の意見を徴しながら考えていこうということになれば、中教審のようなものは——具体的にこう諮問したいということかなくても、むしろ場合によっては白紙の立場で、文部省の各部局がいろいろな答案をつくって、これでしょうか、あれでしょうかという審議会のあり方ではなくて、まさに大臣が頭を空っぽにしていろいろな意見を聞きたいという審議会の運営方法があったって教育の場合はいい、私はそのようにも思うのでございます。大臣、もしそのことについてお考えがございましたら、お聞かせを願いたいと思いますが、ひとつ早急にお考えをおまとめ願ってお進めを願いたい、このように思います。何かございますか、そのことについては。よろしいですか。
  256. 海部俊樹

    海部国務大臣 ございません。
  257. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 それでは次に、放送大学のことについて若干お尋ねをいたします。  大変国民の間に期待もあり、またそれなりの新しい構想の大学として注目をされております放送大学、立案されて八年の月日が流れております。しかしなお、放送の方法あるいは多種多様の階層あるいは方々を対象にするということで、そのカリキュラムをどういうふうに組んだらいいかというようなことが決まらないという状況だと伺っております。背景の御説明は結構でございますが、省いていただきたいと思いますけれども、このような状態で今年度の予算で特殊法人の放送大学とするところの放送大学学園、これが落とされた、認可されなかったということは、これはもうやむを得ないことではないかと思います。五十二年度カリキュラムや放送の仕方について、引き続き実験をしたり研究をしたりするということでございますけれども、新しい構想の大学だからむずかしい点は多々あるかもしれないけれども、放送大学をやるよと新聞やいろいろな国民の目や耳に入り始めてから余りにも長い月日がたっている。これはもう相当の決意で、むずかしい、むずかしいと言っておったってなかなかできることではない。ピッチを相当速めて検討しなければいけないのではないかと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  258. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のとおり非常に長い準備期間、調査期間を経て今日に至っております。五十二年度において創設準備に入って現在その作業を進めているわけでございますが、私どもといたしましても放送大学はできるだけ早くスタートをさせて国民の期待にこたえなければならないし、そういう意味で五十三年度の概算要求にどのような形で臨むのか、これは必ずしも五十二年度の概算要求の姿にこだわらないで、もう一度、どうやれば各界あるいは各層の支持を得て放送大学を早期にスタートさせることができるのかという観点から、真剣に検討をして対処をしてまいりたいと考えております。
  259. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 やはり仕事というものはいろいろな事情変更もあるし、検討をするために月日もかかるかもしれませんが、ある一定のめどを持って、いついつまでにやるんだ、その大号令、決意のもとに総力を挙げていかなければ、こういった新しいものはなかなかできっこない。これから国会が終われば、五十三年度の概算要求に向けてその政策的な決意を固めなければならないと思われるのでありますが、そういっためどをひとつきちっと立てて仕事を進めていただきたいと思います。大学局長、これについてめどがいま心の中にあるのかどうか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  260. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 五十二年度の概算要求を行うに当たりましては、昭和五十四年度から学生を受け入れるということを目途にして案を作成したわけでございます。しかしながら、先ほど御指摘のように設置主体の問題についてなお引き続きの検討課題ということに相なりましたので、この目途は変更せざるを得ないと思います。今日の時点でいつということを申し上げるのは、予算の前でございますので差し控えさせていただきたいと思います。これからわが方の構想を固め、関係省庁と協議をして固めていくわけでございますが、私どもは、そういう事情のもとにおいてもなお、できるだけ早い時期にスタートさせたいと考えております。
  261. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 これはひとつ大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、この放送大学というのは大変な財政負担がかかるわけですね。特に放送大学独自で電波を握って放送までしようということになると、全国ネットということになると大変な放送局をつくらなければいけない。放送衛星が実用化されるまで待ったらどうかというような議論もある。周波数を独自のものを使うかどうかということさえそういった議論の中で固まってないというのが実情なんです。それは郵政省からもらうことになっていますと言ったって、現実はそうなんです。大庭はどうお考えになりますか。独自で持った方がいいのか、あるいは放送衛星というものが上がるまで待とう——これは大蔵省との綱引きの問題なんです。おれは持った方がいいという御意思ならば、その御意思で大学局もそういう方向検討をするでしょう。しかしその辺が詰まらないから、いま一つがなかなか決まらないというふうにも私は思えてならない。大臣のお考えはいかがですか。
  262. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘の点につきましては、閣議のときも、また非公式にも郵政大臣ともいろいろお話をいたしました。そして波は郵政省の方では一つそのためにある、あいておる、使用可能であるというお話もいただいておりますし、それからおくれました理由の最大のものは、予算編成時期に特殊法人、要するに放送大学の設置主体の問題についていろいろな経過がございまして、認められなかった。設置主体の問題については引き続き協議をするということで実質内容についての準備の前進は続けておるわけでございますけれども、波の問題でおくれたというふうには理解しておりませんけれども……。
  263. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 ではそれは見解の相違かもしれませんが、波の問題で、あいているということと、相当の財政負担があってもそのあいているものを使うということは議論が違うので、最初の議論のごとく、波の問題で独自の周波数を持って当初の構想のとおり放送大学はやるのだということになるのか、その辺の御見解を伺いたいということでございます。
  264. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 昨年度の概算要求の際には、テレビはUHF、ラジオの方はFMを使いまして、対象地域としては東京タワーから電波の届く範囲というところを考えてまずスタートを切るということを考えたわけでございます。御指摘のように、全国にどのようなスピードでネットを張っていくかということは、その東京タワーにおける実際の実施の状況を考えながら検討しようということになっていたわけでございますが、片方で先生指摘の放送衛星の問題が、現実の問題としてすぐ目前にあるわけでございます。よって、今後の全国ネットを考えていくときに、放送衛星とのドッキングをどのように考えるかというのは新しい課題として出てきていると私たちも考えております。そういったことを含めまして、放送というものについて、どのように放送大学に今後計画的に取り組んでいくのか、その問題も五十三年度の概算要求をする際の非常に大きな検討の課題であるというふうに思っております。
  265. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 早急に御結論いただいて、長い長い間の懸案ですから、早く開校の運びになるように御努力を願いたいと思います。  次に、文部省では学習指導要領を近々かなり大幅な改正をして発表されると聞いておりますが、昨年の暮れの教育課程審議会で教科内容を二、三割減らしなさい、詰め込みの教室の中でばかりやる教育、こうした弊害も指摘をした上で、授業時間も少し減らしなさいというこれまた大変大胆な答申を、文部大臣、お受けになったはずであります。この答申、今度の学習指導要領で、これから発表になるわけでございますけれども、教える内容がふえる一方ではいけないという過去の反省に立って大幅に削ることになるのか、この答申をどの程度生かすのか、これについて一点お伺いしておきたいと思います。
  266. 海部俊樹

    海部国務大臣 昨年暮れ、前大臣から引き継ぎを受けましたときに、真っ先に言われましたのがこの問題でありまして、それはちょうど昨年の暮れ、教育課程審議会の答申をいただいたわけでありますから、この趣旨は生かしてもらいたい、こういうことでございます。内容はもう御承知でございましょうからくどくど申し上げませんが、ただいま学習指導要領の改定作業をしておりまして、物理的に言えば学習指導要領そのものも必ず薄くなります。薄くなるということは、むずかしいことばかり残ったのでは意味がありませんから、基礎的、基本的なものに内容等もきちんと精選をいたします。そうして世の中にあります詰め込み主義であるとか新幹線教育であるとか、あるいは教科内容が多過ぎるのじゃないか、むずかし過ぎるのじゃないかという現在の教育の受けております一面の批判にできるだけこたえていかなければならぬということで作業を進めておるところでありまして、各教科ごとにも現場の教師の方の意見等も聞きながら、御理解をいただけるようなものに改定していこうと作業しておる最中でございます。
  267. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 答申をできるだけ生かすというお答えでございますが、一点、最近の問題というよりももう過去十数年の議論でございますけれども、いま大臣おっしゃったように教室の中でばかりの教育ではなくて、時にはたんぼを借りて田植えをしてみる、あるいは近所の宮社に行ったりふるさとの先祖伝来の寺の草むしりもしてみる、そういった汗を流す教育も非常に大切ではないか。体験教育とでもいいますか、そういったことを大いに重視しろという議論は何年となく続いているのであります。そういった部分についてもぜひとも、これは戦後で三回目か四回目だろうと思いますけれども、そうしょっちゅうやったのでは大変。毎年やるというわけにはいかない。少なくともここらあたりでそういったことを強く強く強調した新しい教育課程学習指導要領というものに変えていただきたい。これは母の声であり親の声であり、あるいは子供たちのもっと強い声かもしれない。大臣、ひとつそういった方向で御努力を願いたいと思いますが、お考えがあれば、簡単で結構でございますからお聞かせを願いたいと思います。
  268. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘の点は重要な点だと思いますし、また教育基本法の中にもちゃんと勤労をとうとびと出ております。したがいまして、いまの作業の中でも勤労、あるいは具体的に草むしりというようなこともおっしゃいましたけれども、学校の特別活動の中で教育全体を通じてやはりそういったことが積極的に行われるように、また学校側もそれを受け入れて創意工夫をしてやってくださるように期待もしておりますし、学習指導要領もそういうような観点でいまいろいろと考えておるところでございます。
  269. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 わかりました。  次に、大臣最近国会へ来られれば、塾塾塾と塾の問題でいろいろお尋ねがあるだろうと思うのでありますが、非常に初歩的な、あるいは何回も出ている議論をもう一回蒸し返させていただきたいと思うのでありますが、よくこういう議論があります。塾は、先生が教員の資格を持っていなくたってそんなことは別段問題ではありませんね。現在の状況では別段そういう規制はない。あるいは教師数と学生数がどのくらいだったら適正か、そんなことも関係ない。経営者がだれであるかも関係ない。そうですね。大変言葉がきついかもしれないけれども、暴力団が経営したって何らのチェックの手段もないわけです。現実にまたそういったものが、教師の数や学生の数や、あるいは経営者さえはっきりしない塾もたくさんある。学習法案というのをつくれというような議論もありますけれども、それについては先般の国会でもそこまではという御答弁があったやに聞いております。しかし、そういった現状の、まさにこの前の文部省の調査でも出ておりますような乱塾時代、大変な数の子供たちが塾へ行っている。こういう現状の中で、塾というものを法制化をしたり、あるいは法案をつくったり、あるいは専修学校のように登録制にしたりというようなことをすると、現在の学校教育という体系が崩れる、あるいは学校教育というものが、意地悪な言い方をすればだめだということを文部省がまた認めてしまうことになる、国が認めてしまうことになる、だから、そういったものは必要ないという御論旨だとすると、じゃ現実にこうした乱塾、単に多いというだけじゃない、内容的にも乱れているかもしれない、そういうような現実に対して有効な手立てがない。私はやはり、その辺は物の考え方を変えて新しい手法をそこに取り入れるべきではないか、このように思いますが、あの調査を受けていろいろな議論がいま巻き起こっている中で、大臣の率直な御見解はどうですか。現実はこうなっていることを踏まえて率直な御見解をお聞かせ願いたいと思うのです。
  270. 海部俊樹

    海部国務大臣 率直に申しますと、現実を認め、現状をそれでは何らかの形で規制をするなり、あるいは認可をするなり、法律をつくるなりしたらどうかという御意見も間々あるわけでありますけれども、それをやることは好ましくないと言われる、いろんな角度から好ましくないわけですけれども、その現状凍結をしてしまうことはなお好ましくないだろう。同時に、なぜそういうものが起こったかということを謙虚に批判を受けとめて反省をしてみますと、やはり公教育というものがきちんと責任を果たすべきであるということがまず最初に出てくる命題でございまして、私は、塾が過熱しておる状態、それが家庭に負担を与えておる問題あるいは児童の時間に与えておる問題、いろいろの角度からございますけれども、それを解決していくためには学校教育というものがまずきちんと責任を果たすこと。それから関連しますが、入学試験の制度の改善に手をつけたり、社会の学歴偏重の風潮を打破したり、いろいろ問題は際限なく広がっていきますけれども、とにかく塾に対してこれはいいとか悪いとか、規制するとかしないとかいう角度よりも、公教育がきちんと責任を果たすということによってこの過熱状態を是正していく努力をやはりすべきである、この方が問題に取り組む姿勢としては私はいい姿勢だ、こう思っておりますので、そちらの方面から取り組んでいきたい、こう考えております。
  271. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 御見解は私も実は同感なんです。しかし、同感であっても、いまのペースで公教育の改善ということが続いていって、それでこのような乱れた——乱れたと一言で言ってはいけませんけれども、乱れたものも含まれているこの塾の過熱状態というものがいつまでも続くのでは、青春を過ごす時代は一生に一遍です、その子供たちがかわいそうだなという気持ちも半面どうしても残る。そこをひとつ大いにお考えをいただきたい、こう思います。  ちなみに、その公教育の問題ですが、たとえばなぜ塾がこんなにたくさんふえてしまったかということですけれども、最近の議論の中でよく言われているのは、この乱塾時代の元凶というものは、私立、まあ公立もそういうところがございますが、特に私立の有名中学、高校の入試問題というものが、現在の公教育の中学校で学んだような知識や教育ではとてもついていけないようになっている、だから特別の塾へ行かなければ絶対に入れないということになっていると指摘をされているわけでございます。この私立の入試問題というものが中学なら中学で学ぶ教育の中で十分対応できるような問題に、そういうレベルのものにするということを文部省が何らかの形で御指導はできないのでしょうか、いかがですか。
  272. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 この問題については、調査を発表しました段階文部省から各県の教育委員会、それから知事あてに通知を出しまして、事態を是正するためのいろいろの措置についてお願いをしたわけでありますが、その一つといたしまして、ただいま御指摘のありました高等学校の入学試験のあり方、試験問題の内容という点につきましても十分に検討してほしいということを申し上げておるわけでありまして、特に、御指摘のように、公立の高等学校につきましてはそれぞれの県が一本となって試験問題をつくり、かつ試験の結果等は公表いたしておりますのでかなり是正されつつあるわけでございますが、私立の高等学校はその点、一面また私学の独自性というようなことも言うわけでございますが、しかし結果としてやはり塾に通っておる子供が非常に高いという県を見ますと、一流のいわゆる私立の有名校があるところが多いわけでございますので、その辺はわれわれとしましても県を通じましてずいぶん改善方をお願いしておる、また今後もお願いしてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  273. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 それと同じように、先般も国会で質疑がありましたが国立大学の付属高校、予備校化を改めます、小中学校については全面的に抽選制にするように努力をされる、御質疑でも文部省方針を伺っておりますが、ちょっとこの点についてお尋ねをつけ加えてさせていただきたいと思いますのは、国立大学の付属校のうちの高等学校、これは抽選制でやっているというところはいまのところゼロなんですね。一校あるのですか、名古屋で一つあるのですね。何かこの答申によると、これは四十四年に出た答申によると、四十四年というのも大分古い答申ではありますけれども、国立学校付属の「高等学校の入学選抜にあたっては、公立高等学校の選抜を参考にして行ない、進学予備校化しないように配慮する」こういうことだから、教育大駒場あるいは大塚等にしても、いわゆる東大へ行くためのエリート校、進学校になっていると批判をされているそういう高校にしても全部抽選制というわけにはいかないのだというのは、この答申が御論拠のようでございます。しかしよく考えていただきたいのは、いま大学入試制度の改善が問題になっているけれども、公立高校でさえ現実問題としてかなり進学予備校化してしまって、そういう中でこの文章を、進学予備校化している公立高校の選抜を参考にして行い進学予備校化しないように配慮する、物を知らないで単純に読んでしまえば、高校生を持っている母親なんかそのように読みますよ、この文章は。この文章を一つの根拠にして、本来頭のいい子ばっかり集めるのではない、本来教育一つの実験校としてあるべき高校がやはり入試をするということでは、これは中学校は改善になるかもしれませんが、高校は改善にならぬではありませんか。私は付属高校についても、国立大学の付属高校の本旨に帰りまして全面的に抽選制にすべきだと思いますが、この点いかがですか。
  274. 海部俊樹

    海部国務大臣 付属の高等学校が本来の設置目的を離れて御批判を受けておる点、国会の論議でもしばしば出てまいりました。付属の本来の設置目的から参りまして、たとえば独特の研究課題を設置してやっていらっしゃる、東京の双子の教育はいかにあるべきであるかという研究とか、あるいは特に性格、行動等に問題のある子供を集めて教育をやってもらう、そういう教育研究実習ということを具体的にテーマをきちんと決めてやってもらうことも非常に大きな使命でございますから、そういうことをやっていらっしゃるところには抽選制は全くなじまないものだと思います。したがいまして、付属高校で具体的にそういう教育実験校として研究実習目標を決めてやっていらっしゃるところは、それはそれで結構でございますが、そうでないところで目に余るような御指摘を受けるところがたくさんございます。そういうところは本来の目的に返って、研究目的をきちんと決めるとか、あるいはそうでなければ抽選制を取り入れて世の批判にこたえるとか、何らかの形で付属高校そのものが決意をし改革をしてもらいたい。文部省としても強い姿勢でそういったことを要請し、東京では付属高等学校の校長会も持たれてそれらの具体的な内容についての検討が始まっておるわけでありますから、私どもは今後とも接触をし、世の批判を受けないような付属高校になっていくように指導をしてまいりたい、こう考えております。
  275. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 大方八年か九年前に出た答申だけのことでこうしたいままさに大臣の言われた世の批判を招いている実態というものに目を覆うのではなくて、その答申も読み方によっては大変矛盾をはらんでいるわけでございますから、ひとついま大臣の御決意のとおり、中学も高校も含めてこの問題については御検討願いたいと思います。  ちょっと塾の問題で最後に一つだけお伺いをしたいと思いますが、これは大蔵省にお伺いをしたいと思います。  御案内のように塾については届け出もなければ登録もなければ認可もないという状態、しかし一説によれば五百億円産業だの一千億円産業だの大変なことを言われているわけでございます。国税庁においては、先般も御説明を伺いましたけれども、各国税局の調査課によっていろいろな調査をしているようでございます。たとえばテスト業者からの把握だとか模擬試験業者からの把握だとか、塾が一体どのくらいあるかということについて、いろいろな方面からその把握に努めているようでございます。ただ一点法律の制度として若干不思議に思いますのは、学習塾の経営形態の中にいわゆる人格なき社団というかっこうでやっているところがずいぶんある。これが一番多いかと言われているのでございますが、これは法人税法上法人とみなす、こうなっている。ところがその法人とみなされた上で、法人税法の四条一項には、課税をするのは法人の場合、収益事業を営む場合に限る、こうなっている。ところがその収益事業が何であるかというのを施行令で見ますと、教育関係は施行令五条の三十号ということになっておりまして、これには学習塾というのは書いてないわけです。「洋裁、和裁、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花」ずっと飛びまして「演劇、舞踊、舞踏、音楽又は自動車操縦の教授」となっている。あと学校教育法に言う学校とか、あるいは専修学校、各種学校となっているだけで、いわゆる学習塾というのは、これを見る限りは収益事業の中に何ら書いてないわけです。これでは課税をするといってもなかなかこれから大変なのではないか、こう思うわけでございます。中には医学特訓塾なんといって小学生対象に月謝を十五万も取っているような学習塾だってあるのです。これは、施行令になるのでしょうが、大蔵省としてどうお考えになるのか、これからの御方針をひとつお尋ねをしておきたい、御確認をさせていただきたい、こう思います。
  276. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 お答え申し上げます。  学習塾のかなりの部分が人格なき社団で経営されていることは事実でございますし、また、人格なき社団の課税方式がただいま先生の御指摘のあったようなことであることも事実でございます。したがいまして、こういった学習塾等に課税する場合には政令の改正が必要になるわけでございます。私どものスタンスといたしましては、五十二年度の税制改正の準備を去年の秋から暮れにかけていたしたわけでございますが、そこで学習塾の課税問題につきましても当然これは検討すべきであるという判断に達しまして、文部省とも相談したところでございます。ただ残念ながら、当時の時点におきましては学習塾の実態そのものが必ずしも定かでない点がございまして、これはひとつ五十二年度に文部省において学習塾あるいは予備校等の実態を調査いたしました上で、五十三年度の税制改正の際に、これを課税するか否か、あるいは課税するとすればいかなる方向で課税すべきかということをひとつ検討しようじゃないかという段取りになっておりまして、私どもといたしましても、前向きに課税対象に取り組む方向検討を進めてまいりたいと考えております。
  277. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  278. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、上原康助君。
  279. 上原康助

    上原委員 文部大臣がちょっと小休止をおとりになるようですから、私の質問の順序を少し変えてお尋ねをさしていただきたいと思います。きょうは短い時間ですので、できるだけ要点をまとめてお尋ねをしますので、お答えの方もそのおつもりでやっていただきたいことをあらかじめ御要望申し上げておきます。  最初に、沖繩の混血児の問題について文部省当局と外務省にお尋ねをします。実はこの問題につきましては、児童手当の問題とか国民健康保険の適用の問題等について、私、過去に取り上げてまいりました。そういう関係は一応県当局なり関係市町村に御努力と政府のそれなりの御努力によって改善されてきているわけですが、肝心の国籍問題あるいは教育行政教育政策の立場からのこの問題については、まだまだ解決をしていかなければいけない点がたくさんあると思います。もちろん文部省だけじゃなくして厚生省、まあ福祉問題になりますと厚生省との関係もあると思いますが、きょうは先ほど申し上げましたように、主に教育行政の立場からお尋ねをさせていただきます。  現在、沖繩を含めわが国に——この混血児という呼称も若干問題があろうかと思うのですが、一応社会通念、そういうふうに言われておりますので、私もそういう表現をするのはちょっと気になる点もありますが、この実態をどのように把握しておられるのか、その点と、また教育行政なり教育政策の立場からこの混血児教育というもの、あるいは日本国籍でない児童の問題をどのように掌握をして、どういう指導なり助言なりを文部省はやってきておられるのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  280. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 沖繩県におきますところの混血児の実態につきまして私どもが承知いたしておりますのは、昭和五十年の十二月現在で、小中学校に通っております混血児童、生徒数は、小学校で五百三十三人、中学校で二百三十四人、計七百六十七人となっておるわけでありますが、このうち日本の国籍を持っておる、つまり義務教育の対象となる子供は五百八十九人、全体の七七%というふうに聞いております。それで、この子供のうち父母と同居しておりますという児童生徒は七十三人、全体の九・五%にすぎないわけでありまして、母親が職業を持っておるというのが非常に多いわけでありまして、家事あるいは無職というふうに答えた以外の何らかの職を持っているという母親が四百八十三人、全体の六三%、こういうことでございます。こういう特殊な環境にあります子供さんでありますから、教育上もいろいろ学校においてできる限りの配慮をして、よき教育環境を与えて教育をするという必要があるわけでございまして、そういう点につきましては、県の教育委員会におきましても、機会をとらまえましてそれぞれの児童生徒の実態に応じて適切な指導をしてくれるようにということを、学年初め、その他においてやっておるということでございます。
  281. 上原康助

    上原委員 いまの数字は、小中学校に通っているのが五百八十九人だということですが、これは御承知のように沖繩にはアメリカが私立で建てた小中校がありますよね、アメリカンスクールというのが。そこに通っているのも含めての数字ですか。
  282. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 沖繩県にありまするところの当該市町村設置する義務教育学校だけのように聞いております。
  283. 上原康助

    上原委員 そうしますと、俗にアメリカンスクールと言われているところに通っておる児童ももっといるわけですね。その全体の実態は掌握なされていないかという点と、最初にお尋ねしましたように、全国では一体どのくらいいるのか、こういう面の掌握はなさっておられませんか。
  284. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 全国については調査がございません。
  285. 上原康助

    上原委員 この種の調査というますかは、文部省が担当するのか、あるいは厚生省なのか、国籍の問題もあるから外務省とも関係するかと思うんだが、あるいは総理府かもしれませんよね、一般的にどこの役所が担当すべきだとお考えですか。
  286. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 当該子供が日本の義務教育学校に入っておるということであります場合は、それは担当といいますか、それぞれの学校の設置者であります市町村教育委員会においてその実情を把握していただく、こういうことだろうと思います。
  287. 上原康助

    上原委員 それじゃ結局文部省関係あるということになりますね。
  288. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 そういう意味では関係がございます。ございますけれども、ただ私の推測をするところでは、混血児の数が非常に多いというのは、沖繩のような特殊な歴史的経緯と現在の環境のようなところだろうと思いますので、その他の地区につきましてはそれほど詳細に調査をして対策をするという必要は、もちろん部分的にはあるのかもしれませんけれども、全県的に見て今日まで余りやっていないように聞いておるわけでございます。
  289. 上原康助

    上原委員 そこで、もちろん申し上げるまでもなく沖繩に混血児が多いということは、いま御答弁がありましたようにそれだけの背景と要因があってのことですが、この問題を放任とまでは申し上げませんが、現在のような状況に置くということはいけないと私は思うのですね、これは教育の面から考えても。特に教育基本法でもうたわれておりますように、教育の機会均等の面からしても、異なった国籍である、あるいは色はだが私たちと違うというようなことで教育の面で差別を受けるということは、制度上もあってはいけないと思いますし、また児童のためにも決してあってはいけないと思うのです。しかし、残念ながらこの問題は今日まで——もう指摘をするまでもなく沖繩県振興会なりあるいはまた日本国際社会事業団あたりがいろいろと社会福祉的立場から取り上げて、今日まで教育環境整備の問題、先ほど申し上げました福祉関係の改善策をとってきているわけです。残念ながら、約三千名おると言われている混血児問題というのが、十分実態も掌握されずに、教育の面からも非常な変則的な状況に置かれておる。この実態を、県当局なりあるいは関係市町村教育委員会とも十分連携をとっていただいて、文部省としても、沖繩を初め全国におるであろう混血児問題というものをもっと積極的に取り上げて、この際関係者はもとより、その混血児を抱えている市町村なり県の御要望にこたえていくべきだと私は思うのです。その責務はやはり国にもあると思うのです、相当の部分において。そういうお考えはございませんか、私は当然あると理解いたしたいわけですが……。
  290. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 沖繩につきましては、いま御指摘がありましたように、特にこの問題あるいはこの対象児童生徒が多いようでありますから、さらに実情等につきましてよく私どもも調べさせていただきまして、県と相談をしながらやってまいりたい。  なお、全国他府県の問題につきましても、機会を見ましてそれぞれの県の担当課長等の意見を十分聞いてみたい、かように考えるわけでございます。
  291. 上原康助

    上原委員 ぜひその実態をもっと、ほとんど沖繩関係については資料は出そろっていると私は見ているわけです。  そこで、細かいことは申し上げませんが、一つは、やはり母子家庭が非常に多いということです。先ほどもありましたように、両親と一緒に生活をしているというのは、先ほどお挙げになった数字からでも一〇%足らず、わずかに九%前後だということですね。いかに義務教育を受ける幼い児童にとって好ましくない家庭環境あるいは社会環境にあるかということは、その一点を見てもわかることだと思うのです。さらに、そのほとんどが母子家庭であって、母親の職業が非常に不安定であるということです。これなども、この沖繩の混血児実態調査報告、昭和五十一年三月にまとめられたものにいろいろと指摘されております。  そういう面から考えても、先ほど申し上げたような国の方針なり政策というものも私は出てしかるべきだと思うのですが、そのことを前提にして、一つは、やはりこの児童が義務教育を修了するまでの教育費の援助といいますかの問題については、各市町村なり県にただ任せるのではなくして、国としてもそれに相応する何らかの教育費の援助というものをやるべきじゃないかと思うのです。この点どのようにお考えなのか。  さらに、米国の学校に入学をしている面についても、確かにアメリカ国籍を持っているから、できるだけアメリカの学校に通わしたいという親のお気持ちもあるようですが、その場合だって、非常に授業料が高いということと、母子家庭にとってはいろいろの面で負担がかさんでいる。このことももう少し、最初に申し上げた一点との関連において改善をする必要がある問題だと思うのです。  さらに三点目として、これは沖繩の教育施設全体と関連する問題ですが、混血児の相談をする場所とかあるいは福祉等の面を促進をしていくための施設が欲しいというのが関係団体からの強い要望になっているわけです。ある面では、色はだが違うからということでべつ視をするとか差別をするとか、そういうことではなくして、やはりああいう社会環境で出てきたこの種の問題については、もっと文化的にも交流をする、あるいは児童の関係においてもすくすくと成長していく、教育をしていくという場をみんなでつくり上げていく必要があると思うのです、特に沖繩の場合は。といいますのは、今日まで三千名ぐらいいると言われておりますが、学校に通っているのが、先ほどの数字とアメリカンスクールに行っているのが大体半々ですから、約千四、五百名ぐらいおりますね。そうしますと、戦後三十年これだけの数字ですが、これからもずっと続くと見なければいけない問題なんですね。決して一時的な社会構造の中で出てきた問題ではないということなんです。これを考えると、やはりこういう立場に置かれている方々がいろいろな交流をする場所というものも、私は教育環境の立場から考えても必要だと思うのです。したがって、そういう施設といいますか、あるいは混血児福祉会館、仮称のようですが、そういうものをぜひ国の援助も受けながら、県や関係町村、特に中部地区のようですが、設立をしたいという強い要求も出されているわけです。恐らく文部省にもそういった御要望は出ていると思うのです。これについてぜひ御検討をいただいて、しかるべきときに早急に解決をしていただきたい、このことを強く求めたいわけですが、御見解を賜っておきたいと思います。
  292. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 第一点のこの就学に必要とする経済的な面の援助の問題でございますが、御承知のように、現在義務教育学校につきましては、通学用品、学用品あるいは修学旅行費といったような各般の経費につきまして、経済的に困難な家庭の子供さんには国が補助をし、市町村がそれに補助金を足して助成をするという政策をとっておるわけでございまして、この就学援助の状況を沖繩県について見ますと、全国平均の援助率四・六七に対しまして、沖繩県の場合は七・九と、かなり高くなっておるわけでございます。そこで、混血の子供であろうと否とにかかわらず、日本国民であります限りにおきましては、ひとしくそういう意味での助成を今後も手厚くいたすようにわれわれとしては努力をいたしてまいりたい、かように思うわけでございます。  ただ、いま御指摘のように、沖繩にありますところのいわゆるアメリカンスクール、ここへ行っている子供はどうなんだということでございますが、これは日本の国籍を持っている子とそうでない子があろうと思いますが、制度的に言いますならば、日本国籍のない子供については、これはそのような教育施設に入ることも自由でありましょうけれども、日本の国籍を持っております場合は、家庭的にはいろいろ希望もあろうかと思いますけれども、やはり私は日本の義務教育を受けさせるようにしてもらいたい、こう思うわけでございます。そういうふうにして日本の義務教育学校に入って、それがまた経済的に困難であれば助成の対象にするというようなことで進めてまいるのが妥当ではなかろうかと思うわけでございます。  第三点の、そういう混血児のための福祉会館というようなことにつきましては、お話も伺っておりますけれども、これはわれわれだけの問題でもないと思いますので、関係方面ともよく相談をいたしながら、なお検討さしていただきたい、こう思うわけであります。
  293. 上原康助

    上原委員 あなた、そんな画一的なことをおっしゃってはいけませんよ。確かに復帰特別措置なりそういう面で義務教育費に対する国の助成措置がなされているという程度は私もわからぬわけじゃありませんが、さっき申し上げたそういう特殊環境にある児童についてはもう少し温かみのあることを考えるのも政治じゃありませんか。教育行政の一環としてやるべきじゃないかという立場から指摘をしながら私は申し上げていることですから、そこいらはぜひお考えになっていただきたいと思うのです。  それと、福祉会館の問題は、おっしゃるように確かに文部省だけのことではないかもしれませんが、しかし、文部省がこのことについてかなり意欲をお示しになるかどうかに実現するかどうかがかかると私は思うのですね。その点を重ねて指摘をしておきたいと思うのです。  それと、これは外務省も来ていただいたのですが、もう一つ大事な点は、義務教育の問題は市町村なり県なり国の方でもっと実態を把握して進めていけば何とか改善されていくかもしれませんが、いま一つ大きな社会問題になりつつあるのは、いわゆる市民権の問題なんですね。米国籍児童の将来の国籍に関する希望調査というのが昭和五十年十月になされているのですが、この調査によりますと、米国籍保持希望者が二百一人中七十七人、三八%、日本籍に帰化希望が六十七人で三三%、迷っている状態五十七人で二九%、合計二百一人という数字が出て、大体、混血児の皆さんの将来自分の国籍をどうしようかというトレンド、方向というのは、私はこれでつかめると思うのです。  そこで問題なのは、アメリカの市民権を取得するためには、十四歳から二十八歳までの間にアメリカに渡航して、二カ年間滞在をしなければいけないという義務が課されているようです。そこで最初に申し上げましたように母子家庭とかいろいろ生活環境——そうでない方々も一割程度はいるようですが、やはり今日の事情からしても片道だけで二十五万から三十万くらいの旅費がかかる、そうしますと、アメリカ国籍を取りたいといっても、なかなかそれだけの費用の捻出とか期間の問題とか、このことが、本人はもとより親御さんの一番頭を痛めていることだと言っているわけですね。このことについては、これもやはり国の立場で解決をしていくべき問題だと私は思うのです。これについて外務省はどういうふうに考えておられるのか、ぜひ、いま言ったような費用の一部負担の問題等含めて早急に御検討をいただきたい。その御用意があるのかどうか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  294. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生指摘のとおり、米国の移住国籍法によりますと、米国人と外国人の間の子供である米国民ないし市民は、十四歳から二十八歳までの間、米国において二年以上継続して居住しない限り米国籍を失うということでございます。先生指摘のとおり、沖繩における混血の方々に対して、この二年間米国に居住させるために何らかの国の補助をすべきであるということについては、この混血の方々は米国籍、米国人であるということもあってなかなか困難な問題があるかと思います。また、このような混血児の方を周囲の環境がよく整わない間に米国に送り込むことが、果たして幸福な解決につながるかどうかという点もあるかと思いますけれども、御指摘趣旨はよく検討させていただいて関係方面とも協議させていただきたい、かように考えておる次第であります。
  295. 上原康助

    上原委員 ただ、いつものことですが、検討をさせていただきたいということでしり切れトンボにならないようにひとつお願いしておきたいのです。  そこで文部大臣、私の前段の方は少しお聞き取りいただけなかったかもしれませんが、いま申し上げた国籍の問題なり、約三千名近い日本国籍でないあるいは母親一人の混血児と言われる方々がいるわけで、これは教育政策の面からも、福祉の面からも、いま言う国籍の問題としても、私はもう少し政府全体として積極的に取り上げて解決すべきものは解決していただかないといかぬと思いますし、そういう日の当たらないところにもっと国なり県なりいろいろお互いの配慮をするというのが政治のたてまえだと私は思うのです。そういう意味大臣のこの問題に対する御所見をここでお聞かせいただきたいと思います。
  296. 海部俊樹

    海部国務大臣 混血児の問題に対しましては、基本的には偏見を持たずに、だれにでも公平、公正に対処していくことが大切でありますし、またそういったことをみんなが自然のうちに理解し、身につけていくことも非常に大切でありますから、学校教育においては、特に道徳の時間等にそういう考え方を学校教育全体を通じて指導してまいりたいと思います。具体的に個々別々の御指摘の問題につきましては、関係省庁とも協議、相談をしながら改善されていくように努力をしていきたいと思います。
  297. 上原康助

    上原委員 特に外務省、国籍問題については外交の分野にも入りますから……。もうすでに十四歳から二十八歳の間にいる方々もたくさんいるわけですから、そのことはよく御配慮をいただいて、少なくとも無国籍者——国籍をアメリカにするか日本にするかという迷いによって、ますますこの関係者が職業的にあるいは社会生活を営む上で不当な扱いとか不平等な取り扱いを余儀なくされるという事態がないように当然御配慮すべきだと思いますが、その御用意はございますね。
  298. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生の御指摘は、米国と外交交渉などによって米国籍喪失の問題について解決を図ることができるかという御趣旨だとすれば、これはやはりアメリカの国籍の喪失の要件にかかわる問題でありますので、これら案件について外交的に取り上げる余地はほとんどないのではないかという感触でございます。  他方、人道的見地からできる限り当事者間の人間関係を個々のケースについてはっきりさせていくという可能性については、今後検討させていただきたい、かように思っておる次第でございます。
  299. 上原康助

    上原委員 次に、これはせんだって、私予算の分科会でも取り上げようとしたのですが、ちょっと私の方の政府委員をお呼びする面に手違いがありまして十分お尋ねできませんでしたが、総理府の人事局いらしてますね。そこで、もちろん文部省とも関係をするわけですが、いわゆる通算を辞退した方々の退職手当の措置についてです。  ここに沖繩県みなし退職者の会から出された要望書がございます。文部省にも人事局にも行っておると思うのですが、開発庁のこれまでの内々の御答弁なりは、十分意に沿えるような措置をする方向検討されているという報告を受けてはいるわけですが、関係者——教育関係者ですね、大体八十一人ぐらいおられる。復帰に伴う沖繩県職員の退職手当に関する条例の適用の特別措置に関する条例の改正についての要請という、これは多く申し上げるまでもなく、復帰の際に、いま申し上げた特別措置法に基づいてみなし退職者ということで一応退職をして、またずっと継続して仕事は続けておられるわけですね。勧奨退職の問題とも関連しているようですが、その後退職手当の内容が改善されたがゆえに、現在の特別措置を延長してこの方々の救済措置といいますか特別な措置を新たにとらないと、何と一千百万から一千四百万、約五百万の退職手当の差額が出ると関係者の資料によると指摘されておるわけなんです。これでは余りにも——当初は政府なり県なりの要望によってそういうみなし退職者というものにしていろいろ工面をしたようですが、その後の経過措置によってこのような不公平さが出てきている。したがってこのことは、やはり関係者から強い要望が出されている以上、政府としても新たな特別措置を講じていただいて関係者の要望にこたえていただかなければいけない問題だと思うのですね。非常に深刻に受けとめておられるようです。このことについてどのような検討がなされているのか、御見解を承っておきたいと思います。
  300. 山口健治

    ○山口説明員 ただいま先生指摘の点につきましては、実は一昨年から沖繩開発庁あるいは沖繩県あるいは該当者の皆さん方から間接あるいは直接に総理府の方に事情の説明ないしはその要望等があったことは御承知のとおりだと思います。  総理府としましては、その復帰前に、復帰することが可能かどうか当時わからなかった段階において、自分から手を挙げることによって退職をしたこととして退職金をもらったということはほかに例がないことでありまして、この措置について、復帰後五年間、ことしの五月十四日までは特別措置法が認めてきたわけですけれども、これをどうするかということについて、いろいろ昔にさかのぼりまして調査もし、関係者の意見も聞き、内部で相当議論もしたわけでございます。  退職手当というのは、大体やめたときにもらうのが本来のものなんですけれども、この方々の場合には、退職したとみなして退職金を払って、その後引き続き勤務しているというようなこともあったので、いろいろ議論はあったのですが、一応現段階においては過去の資料を調査の上あるいは関係者の意見も聞き、内部でいろいろ検討した結果、やはりこれは当分の間この措置を延長してみなし退職をした方としなかった方とのアンバランスが大きくならないようにやはり認めるべきではないかというような一応の結論を得ました。これは総務長官の御了承も得て、現在そういう方向で作業いたしております。
  301. 上原康助

    上原委員 これは最終的には政令事項ですね。そこで文部省とも一もちろん教育関係者が全部ですね、八十一人の該当者。ですからいまいろいろ検討した結果、みなし退職者とそうでない方々のアンバランスが余りにも大きい、したがってそういうアンバランスをなくしていくために当分の間延長するということを総務長官の御意向も承ってやっておられるということで、私も大体そういう方向に解決していくのではないかと思うのですが、これは時間の都合で全部読み上げませんが、関係者から強い要求が出されておる以上、文部省としてもこの問題についてはぜひ実現をしていただくように改めて御要望を申し上げておきたいと思いますが、これはもう、あとは政令面、手続面が残されているだけで、関係者の要望に沿って解決できるというふうに理解をしてよろしいわけですね。
  302. 山口健治

    ○山口説明員 お答えいたします。  先ほどの説明で、私ちょっと省略いたしましたが、もう少し詳しく言いますと、先生の方にちょっと誤解があるのじゃないかと私思いますので  公務員には、大きく分けて国家公務員と地方公務員とがあるわけです。それで、いま先生がおっしゃった教職員の方々は、国立学校の場合を除いては一応都道府県の職員ということにいまなっておりまして、地方公務員になっているわけです。  それで最初、沖繩県から総理府の方に開発庁を通じまして要望のあった点は、県の教職員について、先生がおっしゃったように八十数名ほどのそういう方々がおられる。それだけではなくて、国家公務員の中にもそういう方がいる。沖繩県が切実にわれわれに訴えられた問題は、これは県職員の当事者ですから、県職員をどうにかして救いたいのだけれども、この制度のそもそもの根本が国の法律と政令によって基礎ができていて、それを、国家公務員に適用しているのを準用というか同じような考え方をとりまして、県の条例で、県職員についてもそういう措置を国とあわせて五年間だけとってきた。それが国と同じように今年の五月十四日で期限が切れることになりますので、それをどうにかしなければいけない。ついては、まずその根本である国の方をどうにかしてもらわないと県の方もやりづらい、そういうふうな話だったわけです。  それで総理府あるいは国の役所といたしましては、直接地方公共団体の職員の退職金についてどうした方がいいとかどうとかということは言えませんので、それはその県独自の御判断で措置なすってもよろしいのではないですか、こう申し上げたのでございますけれども、同じようなケースの方が国家公務員にいるじゃないですか、したがって、まずそちらの方をどういうふうにするかを見た上で沖繩県としては解決を図りたい、こういう御意見だったと思います。  それで国家公務員は約十名この該当者がおりまして、この方々については政令で措置しなければならないことになっていますので、私が先ほど申し上げたのは、その十名の方に対して特別措置を五月十五日以降延長するような方向で現在作業しております、そういうことを申し上げたのでございまして、それを受けまして沖繩がどのような措置を教職員に対してとられるかということは、ちょっと国としてはここでは何とも申し上げられない問題ではないかというふうに思います。
  303. 上原康助

    上原委員 それは結局、根元は一諾になってくるのですよ、あなたはそう言っても。もうわかりました。それはいいでしょう。  結局県も、いまの法を改善されれば条例を改定するということですから、それで文部省もいいですね。
  304. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 国家公務員につきましていまのような政令の延長がございましたら、県において、県の先生についても条例を改めて同じような扱いができるように私どもも指導いたしたいと思います。
  305. 上原康助

    上原委員 次に、これは予算の分科会でも取り上げたのですが、琉球大学の医学部設置の問題について改めてお尋ねをしておきたいのです。  なぜ私がこの問題をたびたび取り上げるかといいますと、どうも沖繩県の琉球大学の医学部設置の問題というのが、当初、政府といいますか国が掲げてこられた方針と非常に後退をしている感じを持つからなんです。なぜかといいますと、亡くなられた佐藤総理が昭和四十年の八月に沖繩を御訪問なされたことは皆さん御記憶のとおりなんですね。その沖繩訪問の際に、たまたまといいますか、推測をいたしますといろいろ政治的なねらいもあったかもしれませんが、琉球大学に早目に医学部を設置をしようということを発表なされて、そのことが今日まで一つ基本になってきていることも御承知のとおりなんですね。しかし、四十年ですから、あれから十二年の歳月が過ぎてしまった。残念ながらまだできていませんよね。ちなみに、では、先ほどもちょっと御質問があったのですが、本土の医学部のない無医大県は昭和四十年当時は幾らあったのか、時間がありませんから私の方から申し上げた方がいいかもしれませんが、四十年から今日までどれだけの医学部ができたのか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  306. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 いわゆる無医大県解消計画によってつくられておりますものが十二、そのほかに秋田大学の医学部をつくっております。
  307. 上原康助

    上原委員 あれからもう十二カ年ですから、大体一年に一県ぐらいできてきたわけですね。  私がなぜこの角度から取り上げたかといいますと、佐藤元総理が沖繩でそういう御発言をなさったものだから、各都道府県もそれから医学部誘致というものを積極的に取り上げてきた面があるわけですよ。確かに地元なり沖繩県側の取り組みなり要望の姿勢が弱かったのじゃないかという御指摘もあるいはあるかもしれませんが、その点は私たちも全く反省しないというわけでもありませんが、しかし復帰という大事業、大前提があって、いろいろそこには、ほかの都道府県とは異なった立場に置かれておる。そうであるならば、せっかく昭和四十年ごろに方針が出されたわけですから、最優先をしてでも沖繩にまず医学部をつくるということが医療行政、いろいろな面から言ったって、格差の本当の是正という面からしても私は政府のとるべき態度だったと思うのですね。それが今日まで政治的に宣伝をされてきたきらいがなきにしもあらずということを指摘をしておきたいわけなんですよ。  そこで、四十八年には御承知のように無医大県の解消計画が出されて、たしか法律も制定されたのじゃないかと思うのですね。その中にもどういうわけか沖繩県というのは入っていないのですよ。なぜそのときに入れなかったかという疑問もありますし、いま計画されているものは福井の医科大学と山梨とそれから香川、一番ビリに沖繩が入っているわけですね。これではやはり目玉は抜かれて、あなたいつになるかわからないという不満が出てくるのも私は当然だと思うのです。そこで、改めてせんだってお尋ねしますと、五十三年の開設というのはなかなかむずかしいのではないかという大臣の御見解でした。この事実関係を申し上げてみても、もっと積極的にこの点については政府が優先的に取り扱うべき筋の問題だと私は改めて申し上げたいわけなんです。このことについてどのようにお考えなのか、改めて御見解を賜っておきたいと思います。
  308. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 琉球大学の医学部の創設の問題につきましては、先生指摘のように四十年以来の経緯がございます。われわれも四十九年以来設置調査経費を計上をして、琉球大学を中心として具体的な調査研究を進めてきたわけでございます。五十二年度に創設準備ということで、五十二年度予算において創設準備費を計上したわけでございます。最近の医学部の創設のテンポと申しますか手順から申しますと、まず創設準備に入ったときには現地との調整等を中心に行います事務官あるいは技官の定員を措置するにとどめるのが普通でございますけれども、琉球大学の医学部の創設準備の際にはあえて学部長等予定者の定員までを措置いたしまして、創設準備段階からいわゆるアカデミックプランあるいは医学部の基本的な構想が検討を願えるような、そういう手当てもしているわけでございます。  ただ、実際に現地における準備の状況は、先生御案内のように、用地にいたしましてもあるいは道路等にいたしましても、その他関連教育病院の問題にしましても、なお解決すべき課題がたくさん残っております。そういった点については私どもも取り組んでおりますし、また県当局も取り組んでおりますし大学も努力をしているわけでございますが、そういった準備の進捗状況を見ながら、いつの時点で創設に踏み切るかということを検討したいと考えております。私どもも、琉大は長い懸案であるということは十分に承知をしておりますから、真剣に努力をいたしてまいりたいと思っております。
  309. 上原康助

    上原委員 ようやくそういう具体化といいますか、政府としても長い懸案であったので創設をすることを早めたいという準備準備といいますか作業を具体化してきたということは、私も評価しないわけでもありません。  ただ、先ほど申し上げましたように、そういった経緯があったし、一国の総理大臣が沖繩復帰ということとの関連において一つの沖繩の医療行政、医療水準の向上あるいは社会福祉、そういう面の本土との全般的な格差の是正という目玉に据えて約束をしたことが、十年余りも実施されていないということは、私はやはり問題として取り上げざるを得ないわけですね。確かにいま御指摘のように、沖繩県当局なりあるいは私たちを含めて、琉大の受け入れ準備、受け入れ体制、受けざらの問題等はあるわけでしょうが、そのことはそのこととしてまた関係者が努力をしていかなければいけませんが、問題は、先ほどから申し上げましたように最後まで沖繩関係を残したということについては、これは政府の約束違反だ。だから私は、有言不実行というのは少なくとも文部関係にはあってはいかぬと思うのですね。そういう面でぜひ早急に、われわれも努力いたしますから、五十三年、あるいは当初五十三年ということでしたから五十三年ないし五十四年ごろには創設できる、開設できるという方向で政府も新たに沖繩のこの琉大の医学部設置の問題については取っ組んでいただく、その意を受けて関係者も受けざらの体制を整えていく、それがかみ合って初めて実を結ぶと思うのですが、この件について大臣の改めての御所見を承っておきたいと思います。
  310. 海部俊樹

    海部国務大臣 いろいろな経緯をただいま承りましたし、それから、きょうまでまた年ごとにいろいろなことが行われておったことも、いま資料を見てつまびらかにいたしました。琉球大学の医学部を創設するために現実に抱えておる問題点もまだたくさんあるようでございますので、これからは鋭意皆様方と御相談をしながら早い機会に目的を達成することができるように取り組んでいかなければならぬと思います。
  311. 上原康助

    上原委員 きょうは、時間の関係もあるようですから、これで終わります。
  312. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、上田卓三君。
  313. 上田卓三

    ○上田委員 まず、委員会が夜間にまで及んでいるということは、文部省の都合でこういうことになっておることについて、非常に残念であります。皆さん方に本当に御迷惑をかけておるわけでありまして、逆に言うならば、上田はこんな時間に発言してみんなに迷惑をかけているという印象を与えかねないので、その点について特に申し上げておきたいと思うわけです。  さて、ことしの三月で教育基本法が制定されて三十年を迎えることになったわけであります。最初に、教育基本法で言うところの国民教育の民主主義的原則について若干質問をして、文部大臣の意見を聞きたい、このように思います。  永井前文部大臣は、文部省はサービス官庁だと述べております。このサービス官庁論は、文部行政教育目的を遂行するに必要な条件整備目的とするという同法第十条を指すものと思うが、文部大臣はどのように理解されておるか、お聞きしたいと思います。
  314. 海部俊樹

    海部国務大臣 教育基本法に書いてありますことの中で、ただいま御指摘の第十条で、国民の皆さんの持っている教育を受ける権利というもの、それのうらはらをなす受けてもらう責務、責任というものを果たすのが文部行政の大きな一つの使命であるわけでありますから、そういう意味でその使命に取り組んでおることを前大臣がサービスと表現されたとするならば、私は、その意味では文部行政はサービス行政である、全く同じでございます。
  315. 上田卓三

    ○上田委員 教育条件の整備にとって不可決の前提はやはり国民教育要求を真剣に受けとめることではないか、このように思うわけであります。  さて、朝日、毎日の新聞の四月十二日号には、特に毎日には「“身障者陳情”もみ合い 文部省の閉め出しに恐る 三人けが」、こういう見出しで記事が出ておるわけであります。ちょっと読みますと「十一日午後、文部省で車イスなどで訪れた身障者の陳情団をシャットアウト、約三時間にわたって正門などのトビラが閉じられた。全国の脳性マヒ患者などで組織している「青い芝の会」の約百人で、文部省が五十四年から実施を決めている養護学校の義務化について「差別を固定化するおそれが強い。身障者も地域の学校で学ぶ権利を保障せよ」と主張している。これまでにも二度、文部省を訪れており、公開質問書を出している。」こういう記事であります。  環境庁あたりも、石原長官がそういう陳情者をないがしろにし、テニスをしておったということも報じられておるわけでありますが、海部文部大臣はこういう文部省の役人の態度を一体どのように考えておるのか。私は、この記事を読みまして、陳情者に対して本当に胸襟を開いて打ち解けて話をすべきではないか、こういうように考えるわけであります。そういう点で、この文部省側がとった態度は果たして正しかったのかどうか、まずこの点についてお聞かせ願いたいと思います。
  316. 海部俊樹

    海部国務大臣 当日は、私は、国会の委員会がございまして、委員会が終わりましてから役所へ帰って、そのようなことがあったという報告を簡単に受けたわけでありますけれども、具体的な事実については政府委員から答弁させますが、いずれにしてもそういう、お話の内容以外のことで感情的になったりトラブルがあったりするようなことは好ましいことではありませんから、できるだけ事前に話し合って、そういうことが起こらないように応対するなり、何らかの方法で、内容以外のことでトラブルを起こしたり新聞記事になるようなことは避けたいものだと私は思っております。
  317. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 私も当日国会におりましたので、帰ってから報告を受けたわけでございますけれども、御指摘のように、身体障害の方が百名くらいおいでになった、突然の御来訪でございましたので、役所の方の担当課としても、大ぜいで一遍にお話し合いすることもなかなか混乱してできにくいから、ひとつ何人かを出していただいてお話ししよう、こういうことであったようであります。結果的にはその折衝がうまくいかずに、けが人等も若干役所の関係者にあったようでございますけれども、ああいう混乱になりましたことはまことに残念なことであると考えておるわけでございます。
  318. 上田卓三

    ○上田委員 身体障害者の方々がわざわざ文部省へ来られておるわけであります。それを、どういういきさつがあったかは知りませんが、鉄のとびらを閉じて追い帰したということに結果的になっていると私は思うのです。文部省がそういう態度をとったことに対して、全国民が非常に悲しんでいるのじゃないか、また同時に激しい怒りを感じているのじゃないかと私は思うのです。特に、いろいろいきさつはあったにしても——ただ、文書で回答するというくだりがあるわけですけれども、それはそれでいいかもわかりません。私も、最近は行きませんが、四、五年前まではよく文部省へ団体交渉に行ったものでございます。たくさんの方が来られても入る部屋がないということもあろうと思いますが、百人ぐらいならば隣の教育会館などもあるだろうし、代表者だけ上がってもらって話をする、あとの人はどこかの部屋で待機してもらうということもできるわけでありますし、今後もそういう努力が必要ではないかと思います。そういう点で、海部文部大臣は、今後、そういう代表者と会って、ひざを交えて本当に意見を交換する考えがあるのかどうか、その点お答え願いたいと思います。
  319. 海部俊樹

    海部国務大臣 先ほども申し上げましたように、これはもうお話を聞いたから全部できるというわけにもいきませんでしょうから、話の内容でいろいろ議論があるのは別といたしまして、陳情の話の内容以外のことでトラブルが起こることは非常に残念だと私は思いますので、今後は事前に十分打ち合わせをしてからお目にかかるとか、問題点はこういうことだとかいうようなことについてお互いがきちんと完全に理解をしながら都合のいいときに合う。私もきょうまで、できるだけ時間を割いてお目にかかる努力をしてまいりましたし、また文部大臣になりましてからもできるだけ時間を割いて会うように努力はいたしておりますので、今後もそういうトラブルが起こらないように気を配ってまいりたいと考えます。
  320. 上田卓三

    ○上田委員 そういう身体障害者の団体だけじゃ、なしに、多くの方々が陳情に来られると思うわけです。そういう点で、できる限り文部大臣が直接会って、まあ時間的な関係もあろうと思いますが、やはり時間を割いて、そういう方々の意見を聞くということにしてもらいたい、こういうように思います。とりわけ弱い立場にある方々が、特に手や足が悪い、不自由な方々が来られておるわけでありますから、特にそういう配慮があってしかるべきではないか、こういうように私は思います。  また、中身の問題についても、やはり養護学校のいわゆる義務化といいますか、こういうものに対して強く反対の意見を持っております。重症の場合は別でございますけれども、ある程度の軽度の場合は、普通の地域の学校でそういう子供たちが勉強できるようにするべきだ、こういうふうに思うのですね。やはり、同じ地域で生まれ育っておるのですから、そういう選別をしていく、そうして一般児童から離していくということは大きな問題があるのではないか、こういうように私は考えておるわけであります。そういう点で私は、文部省が五十四年からやろうというこの構想には基本的に反対でございます。そういう点について若干お答えをいただきたいと思います。  特に、そういう文部省のいままでの応対のあり方が非常に強権的である、非常に国民を威圧しているような感じがしないでもないわけであります。各省の中で比較的文部省と大蔵省はガードがかたいということは、私も経験いたしておるわけであります。そういう態度というものは、たとえば、明治憲法下で国民は三大義務を負わされたわけであります。そのことを国民は税金を取られるとか、あるいは兵隊にとられるという言葉となって表現しておるわけであります。だからといって、子供を学校にとられるという言葉はないわけでありますけれども、しかし考えてみると、学校に通っているうちに、権力の、政府の思いのままの、そういう人間になっていくというのならば、戦前の教育は魂をとられたと言っても過言ではなかろう、このように思うわけであります。こうした教育の義務というものから、戦後は国民の権利という形で転換をされておるわけであります。それが新憲法であり教育基本法ではなかったか、こういうように考えるわけであります。そういう点で、こういう国民に対する文部省のやり方、われわれが見るならば、本当に国民はうるさいものだとかあるいはめんどうくさいものだ、こういうような態度をとっているとわれわれは考えざるを得ないわけでありますが、そういう点で、もっと本当に開かれた文部省といいますか、国民にやはり愛されるというのですか、そういう文部省のいままでの姿勢を海部文部大臣として抜本的に改める必要があるのじゃないのか、ひとつ文部大臣の所感というものをお聞かせ願いたいと思います。
  321. 海部俊樹

    海部国務大臣 ただいま議論になっております養護学校の義務化の問題は、私どもの受けとめ方としましては、やはり国民の皆さんの持っておる教育を受ける権利、その権利の裏づけとしてわが方の持っている責務、それを果たすためにも、義務教育はすべてに行き渡らなければならぬ、こういうことで、五十四年度をめどに計画して、順次進めておるわけでございます。  ただそのときに、御指摘のようなことが起こらないように、たとえばどの程度の方は養護学校へ行っていただくか、あるいは軽い人は一般学校へ入ってやっていける例等も報道などもされていることもございます。ただ、それを私どもだけの判断でどうこうというわけにもまいりませんし、またそれをするとかえって間違いが起こってもいけませんから、教育委員会等が就学指導委員会というのをつくりまして、そこでは専門のお医者さんなんかの御意見も聞いて、そこでどうしたら一番本人のためになるだろうかという角度から考えるように指導もいたしますし、また義務化といたしましても、全部を何でも学校に強制的に連れてきて魂を奪うような、そんなことは全然考えないわけでありまして、医療を施し、生命を守ることの方が大切だという方は、もちろん医者の注意で病院にもおってもらわなければならぬ。あるいは自宅にいらっしゃるのが一番ベターだという方には、逆に訪問指導と申しますか、自宅まで行って指導するような方向考えなければならぬ。いろいろ多様な対応を考えて、とにかく国民の皆さんの教育を受ける権利を十分確保するために、わが方はできるだけの責任を果たしていこう、こういう姿勢で取り組んでおりますので、この点はどうぞ御理解をいただきたいと思います。  なお、文部省のきょうまでの態度、やり方につきまして、いろいろ改めなければならぬ点は率直に改めて、トラブルが起こらないように十分気を配ってまいりたい、これは先ほど申し上げたとおりでございます。
  322. 上田卓三

    ○上田委員 次に、義務教育未修了者の問題をお聞きしたい、このように思います。  特に、義務教育国民の権利でありますが、残念ながら小中学校を途中でやめなければならない、あるいは中学校へ初めから行けないという人々がたくさんおるわけでございまして、一九六〇年の国勢調査によりますと、十五歳以上の義務教育未終了者は百四十二万人ある、一九七一年のNHKの調査によれば二百万人に達する、このように報道されておるわけであります。今日時点の正確な実態を御報告願いたい、このように思います。
  323. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 現在義務教育を終了していない日本人がどのぐらいいるかということにつきましては、正確な調査というのはございません。ただ、現在の時点におきまして、いわゆる中学の夜間学級と言われるものがございますが、現在の夜間学級に勉強しておられる方は、ほとんど全部と言ってよろしいわけですけれども、義務教育年齢を過ぎてなおかつ義務教育を終了していないということで、もう一度年をとってから勉強したいという方が入っておられるわけでありまして、そういう数字は把握いたしておりますけれども、実際にどのぐらい義務教育を終了していない方がおられるかという点は調査いたしておりません。また、わかっておりません。
  324. 上田卓三

    ○上田委員 それは大変な問題だと思うのですね。私が先ほど申し上げましたように、一九六〇年には国勢調査で出ているということでありますし、NHKでもそういう数字を発表しているわけで、文部省でそれが把握できていないというのはおかしいのじゃないかと思うのです。もう十五歳を過ぎておったとしても、この人たちはまだ義務教育を完了していないのですから、やはり義務教育であるという以上は、この人たちに対して、夜間中学なりあるいはしかるべき方法によって義務教育課程を終わらせる、その人がたとえ七十歳の人であっても、国は最後まで教育をする責任があるのじゃないですか。そういう点で私は非常に不満でありますが、その点について再度、そういう資料がないのか、なければ私は非常に問題があると思うのです。
  325. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 これは昭和四十五年の国勢調査でございますが、その数字を見ますと、十五歳以上の国民につきまして、総数のうち、小学、高小、新制中学というものを卒業しておる人がどのくらい、旧制青年学校を卒業しておる人がどのくらい、旧中、新制高校を卒業しておる人がどのくらいというふうに、学校を卒業しておられる方と在学者とそれから未就学者とこういうふうに分けまして、未就学者の数というのが五十七万二千九百七十九人、こういうふうになっておるわけでございます。
  326. 上田卓三

    ○上田委員 その調査がちょっと私わからないのですが、義務教育が徹底されるという意味で年々減ってくるということは考えられるわけですが、私の方である程度つかんでおる数字と相当食い違いがあるのではないか、こういうように思うわけであります。いまおっしゃられた五十七万、約六十万近い数字というのは、夜間中学に入学してもらえる、あるいはもらわなければならない対象者ではないか。義務教育の未終了者でありながら夜間中学などへどうしても行くことができない方も中にはあるわけでありますから、そういう人を抜いて、本当にそういう意味では夜間中学に入ってそこを卒業してもらわなければならない対象者の数字が大体六十万くらいあるのではないかとわれわれは考えておるわけであります。そういう点で、いずれにいたしましても貧困や社会的差別、さらには能力主義的切り捨て文教政策によって義務教育を終了できなかった人々、小学校すら通えなかった人々の存在こそ、教育差別のうちでも最も深刻かつ重大な差別ではないか、このように考えるわけです。こうした差別の存在自体憲法第二十六条第一項並びに教育基本法第三条に違反するのではないか、このように考えるわけであります。そういう点で国はいかなる施策をこういう方々に対して講じてきたのか、ひとつその実態報告を明確にしていただきたい、このように思います。
  327. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 この教育制度の、少しごりごりした話で恐縮ですけれども、制度的に言いますと、十五歳まではこの義務教育を受ける権利があり、また国はそれを用意する義務があるわけでございますが、十五歳を過ぎました方につきましては義務教育を終了していなくても、本人もその法律上の義務はない、こういうことになっておるわけでございます。しかしながら、御指摘のように、いやしくも日本人であります以上、少なくとも義務教育に相当する教育を受けておるということはきわめて望ましいことでありますし、国もまたそれに対応した施策を講じていく必要がある、こういうことで現在は東京、大阪等を中心にして夜間中学というような形でこの中学の教育を施しておりますし、その他の方々につきましては、一般的に言いますならば、社会教育等の面で国、地方が勉強の機会をいろいろな形で提供しておる、こういう実態でございます。
  328. 上田卓三

    ○上田委員 十五歳以上の方々については義務はないということでありますが、私はそれは非常にけしからぬ、こういうふうに思うのです。十五歳以上の義務教育未終了者についても国は最後までめんどうを見ていく必要があるだろうし、そして義務教育の完了者といいますか、終了者としての、やはり卒業証書というものを当然国として交付する責務があるのじゃないか、私はこのように思うわけであります。そういう点で、夜間中学、そういうものが全国につくられておるわけでありますが、この夜間中学をつくられるわけでありますが、あくまでもつくる以上、その対象人員がどのくらいあるのか、それが全国的にどういうふうに分布されておるのかということが完全につかめない限り、夜間中学でそれを救っていくということはできないと私は思うのですね。そういう意味で、先ほど諸沢局長がおっしゃっている、私の質問に対して十分答えられないということ自身が、文部省で把握してないで国勢調査の方である程度そういうものがキャッチされているというところに、文部省はこういうものをもう教育だと思ってない、後はもうそれは本人の責任だというような形でやはり放置しておるのではないか、このように考えるわけであります。そういう点で、夜間中学の対象者は全国で幾らおるのかということを直ちに調査してひとつ御報告願いたい。その点についてお答え願いたいと思います。
  329. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いまも申し上げましたように、夜間中学で勉強される方は、学齢期に勉強する機会が不幸にして持てなかったという方で、自分から勉強したい、こういう意欲を持ってそこへ集まってこられる方でございます。したがいまして、一般にそれ以外の義務教育を終わらなかった方の悉皆調査をいたしまして、中学校へ行って勉強しなさいというふうな義務を課するということはまたむずかしい問題でございますので、私どもといたしましては、現在夜間中学に来られておる方、将来夜間中学で勉強したいという意欲を持っておられる方について、夜間中学の充実といいますか、そういう点に配慮をしてまいりたい、かように思うわけでございます。
  330. 上田卓三

    ○上田委員 政府の怠慢、無策から義務教育を終了できなかったわけですよ。その責任はどうなるのですか。だからそういう方々に対してやはり、夜間中学という制度があります、ひとつ入学してください——国民の権利なんですから、その権利が侵害されておるわけでありますから、私は、文部省はその義務があるのじゃないか、このように考えるわけです。そういう点で非常に見解が違うわけであります。  そこで、特に、こういう未終了者がなぜ出てくるのかという原因については、まあいろいろあります。たとえばわれわれの調査によると、昼間の授業に結局ついていけなかったということであるとか、あるいは本人の登校拒否といいますか、俗に勉強ぎらいだと言われておるわけでありますが、しかしこれについても、本人の責任という形で片づけられる問題ではない、私はこのように考えます。また、中学を形式的に卒業した、実際中学を卒業したが、中身が全然ついてきてなかったということから、成人に達してから夜間中学へぜひとも入って勉強したいという方々、たとえば東京の夜間中学では、そういう、卒業は形式的にしたが中身が整ってないということで、もう一度夜間中学へ入って勉強されている方が一〇%もおるということをわれわれは聞いておるわけであります。そういう点で、やはりこの夜間中学について文部省がもっともっと力を入れるべきではないか、こういうように私は考えるわけであります。  それで、夜間中学は全国で何校あるのか、そして府県別にひとつ数字をあらわしていただきたいし、児童生徒は何人おるのか、その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  331. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 五十一年五月現在で夜間中学のあります府県は、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の六都府県でありまして、学校数にして二十八校、そこに在学しております生徒が二千四百五十四名となっております。
  332. 上田卓三

    ○上田委員 そのようであります。大阪はそのうち十校ありまして、千五百人ばかりが夜間中学に行っておるということでありますから、そういう意味で、二十八校中十校が大阪である、二千四百五十四人中千五百人が大阪であるということになりますと、一体他府県はどうなっておるのか、こう言わざるを得ない。特に北海道、東北、それから沖繩、九州には未修了者は果たしてそれじゃいないのかというように、また逆に夜間中学のないところはそういう義務教育の未修了者はいないのかということになると思います。その点、どうですか。
  333. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 推定でございますけれども、もちろんその夜間中学のないような府県にもそういう義務教育を修了しておらない方がおられると思います。
  334. 上田卓三

    ○上田委員 そういう夜間中学が現在ないにもかかわらず対象者がおるというところには、どんどん夜間中学をつくっていく考え方があるのですか。
  335. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 この夜間中学の生まれました経緯というのは御承知のとおりでございまして、戦後経済の混乱期に学齢期にありながら中学校教育が昼間受けられない、そういう子供について、昼間が無理なら夜でもとにかく授業を開設して受けさせよう、そういうようなことが起こりでございまして、その後経済の安定とともに、そういう学齢期の子供は現在ほとんどおりませんで、かわってといいますか、年齢を過ぎた人で本当に勉強をしたいという人のために、夜間中学というものが特に人口過密地帯を中心に生まれてきたという経緯がございます。言ってみれば、そういう勉強したいという人々の一般の要望を反映してつくられてきたものでございますから、今後もやはり中学という形でそれをやるという場合には、そういう事実上の一般の希望なり要望というものを考えながらやっていくということだろうと思います。  なお、夜間中学に相当する教育というものは、あるいは義務教育を終わらなかった方の教育というものは、夜間中学に限らずにやはり社会教育その他の面でいろいろ配慮していくべきことでありまして、夜間中学だけがこれに当たるんだということではない方が、むしろいろいろな機会を設けて行う方が適当ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  336. 上田卓三

    ○上田委員 義務教育国民の権利なんですからね、権利を侵害しないでほしいと思います。義務教育を修了できなかった人は、それはその人が悪いんだというような考え方、そしてそれを悔い改めて勉強する意欲があったらその施設をつくってやろうということは、本末が逆転をしているんじゃないですか。そういう自覚のある人があればそういう施設をつくってやろう、夜間中学を開設してやろうという考え方は間違っているのではないですか。  次に私が申し上げたい問題は、やはりこういう方々は昼働いて夜間勉強しようという方々でありますから、仕事を終えてすぐ学校へ駆けつけなければならぬから夕飯もろくにとれないということで、多くの方が学校給食というものを望んでおるわけでありますが、実際給食があるのは東京と兵庫だけでありまして、あとは簡単な副食だけという実情があるわけであります。健康とかあるいは勉強の意欲といいますか、そういうものに大きな支障があるわけであります。こういう点について大きく善処される必要があるのじゃないかと私は思うのですが、その点についてお伺いしたいと思います。
  337. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 国として直接その夜間中学校の生徒に対してしております助成としては、教科書の無償、これはやっております。しかしながら、一般に給食等の措置につきましては現在のところそれぞれの設置者の措置にお任せをしておるというのが現状でございます。
  338. 上田卓三

    ○上田委員 そういう義務教育未修了者の夜間中学に対しては、義務教育と同じ、いやそれ以上の施策が講じられて当然だ、私はこのように思うのです。その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  339. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 おっしゃるように、そういう不幸にして学齢期に中学校教育を受けられなかった方にできるだけ配慮をするということは、行政として努力しなければならない点でありますけれども、繰り返して申しますが、しかしそういう方々の教育は、あくまでもそれぞれの方の義務として、あるいは国がそれを義務としてやるというたてまえではございませんので、財政その他の事情の許す限り行政としても配慮してやってまいる、こういうことで努力をしたいと思うわけでございます。
  340. 上田卓三

    ○上田委員 文部大臣、いままで十五歳以上の方については、あとはもう文部省の対象外といいますか、もう義務教育でないんだから、あとは適宜やりなさい、国もちょっとぐらい援助してあげましょうというような考えであったということははっきりしているわけですが、文部大臣、どうですか、これでいいですか。いままではそういうことです。しかし、それが果たしてよかったのかということをいま私は質問しているわけであります。そんなにたくさんの予算が要るわけじゃないのですから、私は、そういう社会的弱者というか、恵まれない人々に対してもっと温かい手が差し伸べられて当然じゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  341. 海部俊樹

    海部国務大臣 不幸にしていろいろな事情があって義務教育を受けずにお年を召された方で、そしてなお勉学の意欲を持っていらっしゃる方に対して、ただいまの二十八校という数から言って、地域的にないところもあるではないかというやりとりをずっと聞いておりました。  そういう制度がせっかくあるのでございますから、これを法律で、皆さん受けていない人は強制的にいらっしゃいというのもやはり慎重を要することではございますが、こういう制度がありますということぐらいは、ある県ではお知らせをする方法考えてみるとか、あるいはない地方については、これはいろいろな問題はございましょうけれども、私は、やはり考えさしていただきたい、こう思います。
  342. 上田卓三

    ○上田委員 やはり夜間中学に入学できるような条件を整えてあげなければならぬということであろうと思うのです。そういう意味で、校舎の問題もありますが、特に先ほど私が申し上げたのは学校給食の問題であります。夜間高校の場合でもちゃんと食堂があるということでありますが、そういうものを無料にして、多くの方が学校へ通えるように条件整備をすることが必要ではないか、そういうことを私は申し上げておるわけであります。  そのことと、もう一つ加えて御質問申し上げますが、基礎学力が非常に低下しているわけであります。基礎学力の問題が非常に大きな問題になっておるわけでありますから、教員の増員というものを特に考えていただきたい、こういうように思います。それから教材の開発というものが非常に大事ではないか。普通の義務教育課程での教科書ではまだまだ間に合わぬわけであります。社会人になっている方々の問題でありますから、そういう点で教材の問題を十分に考えていただきたい、こういうように思うわけであります。  それと同時に、横浜では学校の先生が兼任になっておる。専門の先生じゃなしに兼任になっているということでありますが、全国的に見て、いま二十八校とおっしゃったわけでありますけれども、専任の先生が何人で、兼任の先生が何人おるのか、そういう点についてもひとつお答え願いたいし、全部が兼任じゃなしに専任の先生にしてもらうべきじゃないか、こういうように私は考えておるわけでありますが、その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。給食の問題も含めてお答えを願います。
  343. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いまの学校全部につきまして専任の教員が二百五十二人、兼任が百五十人、計四百二人、こういうことになっております。  ところで、その専任の先生をどういうふうに算定して配置するかということでございますが、ただいまの年次計画による小中学校の教員定数の五カ年計画の以前は、昼間の中学校の生徒と込みで学級編制をするような想定のもとに教官を出しておったわけでありますが、現在は夜間は夜間でそれぞれ学級編制をして、それに必要な教員ということで算定をいたしておるわけでございます。ただ、実際の問題といたしまして、夜間中学は規模が小そうでございますから、昼間につきましてもどうしてもそのことは言えるわけでございますが、基準どおりに配置した教官数だけでは、各教科を十分に持つに足る先生が足りないという場合もございまして、そういう場合は、昼間の、小規模中学校でも同じでございますが、時間講師を雇うとかその他いろいろなことをやって教授陣をそろえておるわけでございますので、大体そういうことで夜間中学の場合もやっていただいておるというのが実情でございます。
  344. 上田卓三

    ○上田委員 文部大臣に、夜間中学に対しては徹底してやはりいままでを反省して、今後大いにひとつ取り組んでいただく。給食の問題、専任の問題含めまして条件整備で力を入れていただこうということが一点。  それと、年々小中学校の卒業者の中で、結局卒業できずに落ちこぼれていく就学児童といいますかそういう就学未修了者が約二%、私は解放同盟の役員をしておりますが、同和地域ではやはりそれ以上の高い率を占めておるわけでありますから、そういう点でそういう義務教育の未修了者を皆無にしていく、完全な義務教育を徹底するということとあわせて、十五歳以上のそういう夜間中学の対象者に対して今後実態を明らかにして力を入れるということをひとつお約束願いたいと思います。
  345. 海部俊樹

    海部国務大臣 夜間中学のことに関しましては、私も今後十分に検討して取り組んでまいりたいと思いますし、いろいろあります問題の性質を一つ一つ研究をしてみたいと思います。  なお、義務教育を完全なものにせよという後半の御指摘でございますが、これはまさにそういうことが、国が義務教育について負うべき責務でもございます。落ちこぼれ落ちこぼしの問題等についても、いま別途の政策努力を傾けておるところでありますけれども、その御趣旨は十分承って努力をしてまいります。
  346. 上田卓三

    ○上田委員 次の問題でありますが、いわゆる高度経済成長を通して、日本社会的不公正は著しく増大をしておるわけであります。先日の文部省の塾の調査は、教育も例外でないことを示しておるわけであります。高所得者子弟には、国立一期校に入るための英才進学塾への通塾も可能であります。体を鍛えようとすればスポーツやクラブもあるということであります。また芸術的才能を伸ばそうとすれば、そういうクラブや家庭教師を得ることもできる、超デラックスな塾というものもあるやに聞いておるわけであります。勤労大衆にはこうした道は容易ではありません。教育も金で買うものに質的に変質されておるわけであります。社会的経済的関係において、教育に差別と選別の構造がつくり出されております。こうした状況の中で、勤労国民教育の機会均等の実質的保障を要求することは必然ではないか、このように考えるわけでありますが、こうした教育の荒廃、いわゆる乱塾時代をもたらしたのは一体何か、その元凶は何か、文部大臣はどのようにお考えでしょうか。
  347. 海部俊樹

    海部国務大臣 いろいろな角度から問題が指摘されておりますし、私どももそれをきちんと一度整理してみたいという考えもありまして、全国の塾の調査もしてみたわけでありますが、私は大きく分けまして、一つは、現在の学校の授業の中で、量が多過ぎるのではないか、内容がむずかし過ぎるのではないかという角度から、たとえばよく指摘され、高等学校の生徒になってからでも、分数の掛け算とか小数の足し算ができなかった人が非常にあったとか、いろいろな報告が出されております。このことについて、基礎的、基本的な問題ということから大きく超えているのではなかろうかという一面の反省もございます。  それからまたもう一つは、なぜ塾へ行くのか、これはいろいろな調査の結果わかりましたことですが、いまの入学試験の制度、特に入学試験の問題の出し方という面から言って、中学校なり高等学校なりで誠実に教育課程を学んでおったのでは、入学試験のときにそこ以外の範囲から問題が出て、受験を成功させるためには忍術みたいな受験術といったようなものが要る、それは学校で教えてくれないので、専門に教えてくれる塾へ行かなければいかぬというような塾への走り、これはやはり入学試験の制度から改めなければいかぬと思いますが、その背後には、なぜ入学試験がそうなっていくかというと、社会へ出てからの学歴が必要以上に幅をきかしておるという学歴偏重の弊風もあろうと思います。  それからもう一つは、学校がおもしろくないとか、塾の方が楽しいとかおもしろいというような子供のアンケート調査の結果等を見てみましても、やはり教育は人なりと言われておりますように、現場の先生方に、やはりこちらも学習指導要領や教科書の見直し等はいたすわけですから、授業というものを創意工夫していただいて、触れ合いと申しますか、あるいはまたどうやったら落ちこぼれや落ちこぼしがなくなっていくだろうかという観点から、現場の先生方の御協力もお願いしなければならない。そして塾というものが過熱状態になって社会に問題を提起するようになったのは、そういったことの積み重ねから来たのではなかろうか、こう判断をいたしまして、それぞれに向かっていろいろな対策を講じていきたい、こう思っておるところであります。
  348. 上田卓三

    ○上田委員 いま文部大臣のおっしゃった個々の問題については後でちょっと触れてみたい、こういうふうに思うわけでありますが、私ははっきり申し上げて、今日の教育の荒廃なりあるいは乱塾時代、こう言われておるその根本の原因あるいは元凶と言ってもいいのですが、それは政府・自民党の文教政策にあるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  なぜそういうことを申し上げるかといいますと、一昨年暮れに自民党文教部会の高校問題に関する中間まとめが出されたわけでありますが、その中間まとめでは、競争原理が人間の原理である、それから教育は遺伝に勝てない、それから高校の格差はあった方がよいと主張されておるわけであります。大企業の要請によって高度成長期に、教育課程は昭和三十三年、四十三年と改悪され、過密化され、競争原理によって冷酷に差別と選別が強化されてきていると言っても過言ではない、このように思うわけであります。この過程の中で一握りの児童生徒が、いわゆる支配層というのですか、あるいはエリート官僚として養成されていっているのではないか。大多数の勤労国民の子弟や、あるいは本当に被差別階層の国民の諸階層のそういう児童生徒は容赦のない形で切り拾て政策、先ほどの義務教育すら全うできない、そういう状況があるわけでありますが、そういう点でやはりこの貧困や差別は、生徒児童から勉強の余裕やあるいは条件を奪い、学力を低下させているであろう、こういうように思うわけであります。はっきり申し上げて、本当にいまの大企業が要望するような一部のエリートだけをつくるために、端的な言葉で言うならば、多くの勤労国民の子弟は余り賢くなくてもいいのだ、余り勉強しなくてもいいのだ、普通の教育でいいのだ、大企業が要望するところの一握りのエリートだけを文部省はつくればいいのだ、そういう意味では、一般国民教育は安上がりの教育考えておるのではないか、そこに大きな根本的な原因があるのじゃないか、こういうように私は考えざるを得ないわけであります。その証拠に、国立、公立の大学はわずかであります。そして、後で触れますが、国公立の高等学校もなかなか建てられないという現状を考えるならば、私はひがみ根性で言っているわけではないのですが、やはり文部省は少数のエリートだけつくろうとしているのじゃないかと私たちは断ぜざるを得ない、このように思うわけであります。そういう点で、本当に社会の底辺にあえぎ苦しむ人々の教育というものをもっと真剣に考えていただきたい、私はこのように思います。端的な言葉で言うならば、そういう切り捨てていく子供たちがおることによって労働市場の底辺を支えさせようとしているのじゃなかろうか、こういうようにわれわれは断言せざるを得ない状況が現実問題としてあるわけであります。特に文部大臣は、教育課程審議会の答申に基づきまして指導要領を改定し、小学校は昭和五十五年より、中学校は昭和五十六年より新教育課程を始めると述べておるわけでありますが、現にこの深刻な教育の荒廃に対して文部省はどのようにしていく気があるのかということで、私は再度文部大臣の意見というものをお聞きしたいと思います。
  349. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘になりました点にお言葉を返すようでまことに恐縮ですが、一部の大企業のためにのみ文部省教育をしようとは絶対思っておりませんから、その点だけは明確に言わせていただきたいと思います。  と同時に、高等学校の進学率も、能力のある、高等学校へ行きたいという方がいま九八・六%が進んでもらえるようになってきました。その進学率、合格率というものを落とさないようにしようという努力をいま文部省はしているところでありますし、また大学教育も、同世代年齢の四〇%に近い人が大学に入っていただくようになってきました。これは、やはり学術研究が高度になってくれば、国民の皆さんの中で高度な学術研究にみずからも参画したいという要望を持つ方は、できるだけ多くこれを収容していくのがいいことであるというので、高等教育というものをいま盛んに力を入れてやっておるわけであります。そして、その卒業生の人が今度は特にまた企業との関係において一連のつながりなんかが濃厚に出てくると、社会的な正義という面からいっても好ましくないと考えておりますから、私は就任以来、特定の企業が特定の大学からだけ就職時に人を採用しようとする態度を改めてもらいたいということを強く要請もしておりますし、また担当の労働大臣にも協議をしてお願いをして、そういったものではないのだ、教育というものは、あくまで国民の皆さん方の要求に応じて多様な選択の道を用意して学術研究の場を提供することである、大学に行っていらっしゃるということは、四年間そこで勉強してもらったということ、それ以上であっても以下であってもいけないのだ、やはり人間は能力や資質に応じて公正に、平等にいろいろな面で評価を受けなければならぬ、こういう基本で私は文教政策に取り組んでおりますので、この点だけはどうぞ御理解を賜りたいと思います。
  350. 上田卓三

    ○上田委員 私がなぜそういうことを言うかといいますと、国公立の高等学校やあるいは大学の入学試験、これがだんだんむずかしくなっているということなんですね。なぜそれをむずかしくしているのかということです。むずかしいからこそ、みんなが一生懸命勉強する、学校では追っつかぬということで塾に通うということになるわけでありますから、それは端的な言葉で言うならば、やはり大学とか高校の国公立の学校が少ない、少ないがゆえに、やはり試験をむずかしくして、そしてできるだけ多くの人間が落ちこぼれていって、少数の人間だけがそういう国公立の高等学校や大学へ入れるような、そういう仕組みに持っていっているのじゃないか、われわれはそういうふうにうがった形で見ざるを得ないということを申し上げておるわけであります。私たちから見るならば、いま中学生が勉強している中身というのは、本来ならば高等学校で十分勉強すればいいものが、もうすでに中学校の時代から高等学校の勉強をしている、高等学校の時代にはすでに大学で勉強するようなことがなされていっているという、そういうやり方ですね。端的な言葉で言うならば、やはり国公立の大学をもっとふやすとかあるいは公立高校をふやすということによってこういう受験競争やあるいは乱塾時代というものが是正されていくのじゃないか、こういうように思うわけでありますが、そういう関連についてひとつお答え願いたいと思います。
  351. 海部俊樹

    海部国務大臣 教科の内容が非常にむずかしいではないかという御指摘は、私もいろいろなところで聞いた話でございますし、また、私自身も中学校の入学試験の数学の問題なんというのにふとした機会に取り組まされたのですが、大変にむずかしゅうございました。しかし、私のその能力というのは平均じゃないかもしれませんから、私がむずかしいと思ったからどうこうということではなくて、教育課程審議会の中でも各界の人々の御意見からもそういう批判はあるわけですから、たとえば小学校の段階で身につけてもらわなければならぬ基礎的、基本的なことはどの程度だろうか。余りむずかしいことは御指摘のように中学校の段階に上げてもいいのではないか。あるいは中学校から高等学校の段階に上げてもいいのではないか。小中高を一貫した学習指導要領の精選作業にいま入っておるわけですし、また、学習指導要領そのものも、現在使っておるものよりも薄くなるという表現をときどきするのですけれども、薄くなってもむずかしいものだけ残ったのじゃ何にもなりませんから、薄くなるとともに中身も十分精選されて、これがやっぱり基礎的、基本的なこととして大事だというようなことに限るような配慮のもとにいま作業もしておりますから、御指摘のような問題は、今度作業しております教育課程の改定作業が終わる段階にはやっぱり改善を必ずされるだろうと私は思います。  それから入学試験がだんだんむずかしくなってきたではないかという御指摘についても、これは全くそういうことで、だから受験術のようなものを勉強する塾がはやってくる原因の一つでもあろう、こう私は先ほども申しました。そこで、現在取り組んでおります問題の一つに、大学の入学試験の学力試験というものは、国立大学が共通一次試験の制度というものをこれこそ長い間調査研究をされて、その結果五十四年度の入学者選抜から実施できるのだというところまでこぎつけていただき、公立大学協会の方もこれに参加しようという意思表示を願っておりますので、現在文部省は、この大学側のみずから改革しようとなさる御努力に対してできるだけ御協力をするとともに、助言もし、そのいい方向に向かうべきだ、こう思って大学入試センターの設置などもお願いをしておるところでありますが、その中の一つだけ、国立大学協会の先生方の御意見の結果としましても、入学試験の問題は、高等学校で誠実に勉強しておればそれでわかるのだ、それでできるのだ、要するに、言葉をかえて言えば、まじめに勉強しておる人から見ればむずかしい問題がむずかしい問題でなくなるのだというようなところに出題のときは十分配慮してもらうということも明らかな方針として出ておるわけでございますので、入学試験の問題が難問奇問というようなものから解放されて、教育課程をきちんと勉強しておればそれで解くことができる範囲の問題が出るようになる。このことだけとらえても、やっぱり高校生活というものは精神的にもゆとりが出てくるのではないか。勉強にも身が入るのではなかろうか。いい結果が起こることを私どもは期待をしておるわけでございます。
  352. 上田卓三

    ○上田委員 入学試験がだんだんむずかしくなっていっている、あるいは高等学校、大学の授業の中身がむずかしいように感じる、この文部大臣の感覚というのは正しいわけでありまして、確かに、むずかしくなっているということは問題があるだろう。  というのは、やはり入学試験がむずかしいから、それに合わせる形で授業内容がむずかしくなってきておるわけであります。日進月歩ということでありますから、だんだん多くの知識を身につけていただくということは私はいいことだというふうに考えておりますし、当然、わが国において技術者であるとか科学者であるとかあるいは文化人であるとか、その他いろいろの専門的なすばらしい方々が出るということは、私は決して否定しているわけじゃないのです。しかし、そういうのは大学へ入ってから伸び伸びと勉強していただくべきであって、入学試験がむずかしいからそれまでの過程で詰め込み教育をしている。それが人格の形成にも大きく問題になってくる。あるいはさらに、人をけ飛ばしてしまう、協調の精神をなくして自分の仲間をけ落としてでも自分だけが上へ上がる、そういう競争、対立だけを生んで、本当に連帯していく、互いに協調していくという精神を奪い去ってきているのではないか、こういうふうに思うわけであります。そういう点で、私の考え方について申し上げ、文部大臣とどの程度合うのかということで疑問でありますけれども、さらに問題を進めてまいりたい、このように思います。  教育基本法の第三条では、教育の機会均等を定めておるわけであります。昭和四十九年度に文部省大学局の発行しておりますいわゆる学生生活実態調査報告書は、親の所得水準によって大学進学率に歴然たる差別のあることを認めておるわけであります。こうしたデータは、経済的地位による教育的差別の現存、あるいは本当にそういう教育差別があるということを認めておるものではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この傾向に対して一体どのように考えておるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  353. 海部俊樹

    海部国務大臣 いま私手元に資料を持っておりませんのであるいは記憶に間違いがあるかもしれませんが、総理府が所得を五段階に分けて、その五段階の中で一番所得の多いのがたしか第五であったと思いますが、一番下が第一ということで、そこで国立、私立へそれぞれどれくらいの人が通っておるかという調査を発表したことがございます。私もそれをながめまして——それはすべての階層に行き渡っておることは行き渡っておるのですが、その数字からまいりますと、第五分類というのですか、第五区分に属する人の層から通っておるのがやはり多いわけでございまして、国立学校へ行っている人の中の第五分類が三四・一%、公立学校の方は四五・七%、私立学校は五四・六%、それが第四、第三、第二と来ますに従ってだんだん少なくなってきて、一番下の第一区分のところを申し上げますと、国立は一四・四%、公立は九・三%、私立は六・一%、こういうことになっております。  この表を見て何を考え、どう思うかということになりますと、教育は機会均等でなければならぬという私たちが持っておる使命からまいりますと、たとえば育英奨学金の制度をもっと分厚く考えていく努力をしなければならぬとか、あるいは国公立と私立の間にも差があるとするなれば私学の助成というものにももっと力を入れていかなければならぬ、いろいろなことをこの資料は示唆をしてくれた、私はこういうふうに受けとめて、格差是正のために努力をしていかなければならない、こう考えておるところであります。
  354. 上田卓三

    ○上田委員 分類の第五だけでも国立が三四・一%、公立が四五・七%ということでありますが、第四、第五をトータルすると圧倒的部分が高所得者というのですか一との程度から高所得者と言うかという問題はあるにしても、傾向として、そういう所得の高い家庭の子弟の比率がふえていっているということは、逆に言うならば貧乏人の子供は、私立、公立、国立を問わず、だんだん大学へ行く率が少なくなっていっているということであります。そういう点で経済的理由による差別と言っても過言ではない、私はこのように思うわけであります。  そういう経済的理由による差別というものは、児童生徒の進学時には機能するものではないわけでありますが、しかしこれらの問題を考えてみた場合に、私学助成の問題も出ておるわけでありますが、これをどういうふうに抜本的に是正していくのかということを考えないと、いまでさえもある程度——文部大臣から言うならば、私学助成の問題その他、それなりに努力してきたと言われるかもわかりませんが、そういう中でさえも、努力があったにもかかわらずこういう数字が出ているとするならば、いまこそ百八十度考え方を変えて、抜本的にこの問題を見直す必要があるのではないか、こういうように考えておるわけであります。そういう点で、小中だけでなしに高等学校においても義務教育を施していくべきではないかというようなことが世界的な趨勢になってきておるだろうと思うし、わが国においても高い比率を占めておるわけであります。この問題については後で述べたいと考えておるわけでありますが、そういう点で、文部大臣としてこの問題に対してもっと端的な形で——いままでの文部行政のひずみとして出てきておるわけでありますから、これを是正していくということが大事でありますから、この点について、いままでのような形だけではこれを是正することができないわけでありますから、ひとつお答え願いたいと思います。
  355. 海部俊樹

    海部国務大臣 文部行政の立場からだけで物を考えさせていただきますと、きょうまで、この調査が発表されました後で私学振興助成法なんかも御制定を願い、そして努力目標を掲げまして一生懸命にその増額等に努力をしてまいりましたし、また奨学金の問題あるいは学校ごとに行われる育英奨学の制度には長期低利の融資を出すとか、そういう御家庭の経済状態というものと進学をしたいという希望、意思というものとなるべく切り離した形で、国の助成あるいは奨学金なんかの制度で救済できることがあれば、それはみんな救済できるように増額していかなければならぬという制度で取り組んでまいりましたけれども、なおこういう現実がいろいろのところにあるということは否定することができませんので、今後一層の努力を重ねてまいりたい、私はこう考えます。
  356. 上田卓三

    ○上田委員 次に、一九六〇年にユネスコの第十一回総会で、教育における差別待遇防止に関する条約が可決、決定されておるわけであります。すでに世界で七十数カ国が批准したというように聞いておるわけでありますが、その実態について御報告していただきたいことと、政府は賛成をしながら、なぜわが国において批准をしておらないのか、その点についてお聞かせ願いたい、このように思います。
  357. 中村昭一

    ○中村説明員 お答えいたします。  本件条約が目的としているところの人種、言語、宗教その他種々の事情に起因する教育上の差別や制約等を防止する等の趣旨は、わが国の憲法第十四条「法の下の平等」同じく二十六条「教育を受ける権利」等の趣旨方向を一にしているものと考えておりますが、当省といたしましては、第一に、関係各省におかれて、わが国が仮に本条約を批准するに当たっても国内的に特段の大きな問題が生ずるものではないと考えられる。第二に、しかしながら実質的意味もそれほど大きくないとの意見も承知しておりますところ、なおこの条約の細部については関係省庁とも十分検討してまいりたいと考えております。
  358. 上田卓三

    ○上田委員 これは国際条約でありますから、国内法が教育基本法初めある程度整っておりますから、批准しても余り意味ないというようなことをおっしゃっておるのですけれども、私はこれは重大な暴言じゃないかと思う。十七年前にユネスコで日本政府は賛成しているのですよ。そして一九六二年には実際に発効しているわけです。だから一日も早くこの条約を批准するということが、これからのわが国の国際社会における一定の地位というものはあるわけでありますから、問題がなければなぜしないのかということで、われわれは非常に疑問を感じておるわけであります。ですから、そういう点で、いままでなぜしてこなかったのか、重大な意味がないからということでは私は納得できません。その点についての大臣答弁を聞きたいと思います。
  359. 海部俊樹

    海部国務大臣 文部省といたしましては、現在取り組んでおります基本姿勢、考えておること、やっている施策、これからまいりまして、この条約を批准することに何ら支障はありませんし、批准して困るというようなこともございませんし、また日本政府としましてもそうであればこそ賛成投票をしてきたのだと思います。したがいまして、主管庁たる外務省とよく協議をいたしたいと思います。
  360. 上田卓三

    ○上田委員 協議するというよりも一日も早く批准するように外務省に働きかけるということですね。もう一度お答えください。
  361. 海部俊樹

    海部国務大臣 外務省がたくさんの条約を持ったりいろいろなことがあるなれば、私もきょう初めてでございますから、よく外務省の事情も聞いてみて、困らないもので方向としては日本政府が賛成しておるわけでありますから、文部省としてそれを批准されたらぐあい悪いからちょっと待ってくれというようなことはないわけですから、それについては外務省とよく協議をさせていただきます。私が主管大臣ではございませんので、どうするこうするということはできませんけれども、よく協議をしてまいりたいと思います。
  362. 上田卓三

    ○上田委員 賛成しておいて批准を十五年間もしてないということは、私は国際信義に反するのではないか、こういうふうに思うわけであります。この問題については、昭和四十七年四月十九日参議院の予算委員会で、高見国務大臣が、批准に反対ではないということを言っております。反対でないということは、問題がないから賛成ということにもなるわけでありますから、即刻これを批准できるように御努力を願いたい、こういうふうに思います。  そこで、先ほど私もちょっと申し上げたわけでありますが、現在何カ国批准しておりますか。主なる国の名前を挙げてください。
  363. 中村昭一

    ○中村説明員 お答えいたします。  これまで調べました最新のデータによりますと、現在まで六十三カ国が批准もしくは受諾をしております。主な国といたしましては、英国、オーストラリア、フランス、西ドイツ、ソ連等でございます。他方まだ批准してない主要な国としてはアメリカとカナダがございます。
  364. 上田卓三

    ○上田委員 特に問題がないということでありますが、条約の特徴というのですか、そういうものについてどのように理解されておるのか、もう少し個条的に二、三ピックアップして御説明願いたいと思います。
  365. 中村昭一

    ○中村説明員 本件条約は、第十一回のユネスコ総会においていろいろ行われた議論をもとに採択されたものでございまして、一番最初に申し上げましたとおり、人種であるとか皮膚の色、性別、言語、その他諸種の理由によって教育の面で差別を行うべきではないという考え方を骨子としております。幸いにして日本の場合には、そこに挙げられている幾つかの問題については余り問題のない国柄でございますけれども、世界の国の中には、それらの点についていろいろの構成要素を持った国がございます。そういう意味で、少なくとも教育の面についてはそういう差別というものが行われないようにするということを基本的に確保しよう、こういう趣旨でございます。
  366. 上田卓三

    ○上田委員 特に第九条の規定をどのように考えられますか。
  367. 中村昭一

    ○中村説明員 第九条は、この条約を批准するに当たっては留保を行わせないということを内容としておりまして、これは国際条約の中では必ずしもすべてに書いてあるわけではございません。すなわち本件条約は、ちょうどILOの諸条約と若干似ておりまして、各国がおのおのその国内制度なり、国内での措置なりを取り決めてその水準を維持することというような一種の政策を確認するような内容の条約でございますので、いまのような第九条の規定が入っているものと考えております。
  368. 上田卓三

    ○上田委員 そういう意味では非常に厳しい中身を持っておる。条件つき賛成はいかぬということでありますから、そういう意味で、批准すればこの国際条約というのはすべての条文について日本の国は守らなければならぬということになるわけでありますから、そういう点で、文部大臣はわが国の教育には差別はあってはならないというように考えておられると思いますが、これを批准すればさらに国際的な拘束力としても、また当然わが国の憲法からしてもそのことが言えるわけでありますが、義務教育の未終了者の問題も先ほど言いましたが、一切のそういう意味では教育上の差別、それは所得によるところの差別も許されないわけですから、相当腹をくくってやらぬといけない問題じゃないか、私はこういうように考えておるわけであります。そういう点で、ただ単に条約を批准すればいいのだというようなことじゃなしに当然批准するという前提に立って、さらにわが国の教育というものを見直していくということがなければいかぬのではないか、このように思っておるわけであります。  さて次に、一九七五年の八月に大阪で起こりましたところの私立高等学校の生徒の超過学費返還請求訴訟について申し上げたい、こういうように思うわけであります。  この訴訟は、私立高校生の父母が、公立と私学の学費の格差が四十倍から五十倍にも広がっており、余りにも学費格差がひどいということ、またその学費負担が家計を圧迫しているという事態の中で起こったものであります。この訴訟団の団長が私でございます。そのこともつけ加えておきたいと思います。  大阪の高校進学率は昭和四十九年度で九四・三%に達しておるわけであります。全国的に見ても九〇%を超えておるわけであります。高校教育は半ば義務化していると考えてもいいのではないかというように考えます。これは科学技術の発展の中で労働力として高卒程度の学力が必要とされている現実の反映ではないか、世界の先進諸国に共通して見られる傾向であると言ってもいいというように私は思います。事実、日本の国家公務員の採用試験は二十一種類あるわけであります。人事院規則八−一八、第三条、いずれも高卒以上の程度の学力を前提としているということは御承知のことだろう、このように思います。また学校教育法でも、高校教育を普通教育と専門教育を施すことを目的として規定しておるわけであります。国民に共通な教養を身につけさせる普通教育として高校教育を位置づけております。したがって、中卒者がやはり強く高校進学を希望するということは当然のことであろう、このように考えます。大阪では、全国的にもそうでございますが、一部を除けば大多数は公立高校に進学することを希望している。そういう意味では、私は私学でいいのだと言う人はもう本当にまれであって、大多数は公立の高等学校へ行きたい。その理由は言うまでもなく学費の差にあるのではないか、あるいは教育条件に大きな隔たりがあるということからではなかろうか、私はこういうように考えておるわけであります。  たとえば大阪の場合でありますが、学費の差額はどのようになっておるかということでありますが、一九七五年当時でありますが、公立高校の入学金が三百円、授業料は年額七千二百円。ところが私立の高等学校になりますと、これは平均でありますけれども、十三万三千八百円、これが入学金であります。そして授業料の年額が十八万八百円であります。つまり公立高校は合計で七千五百円、ところが私立高校は入学金と授業料を合わせまして三十一万四千六百円であります。その格差は四十二倍にも達しておるわけであります。しかも五十年度の大阪府の勤労者の平均収入は百六十五万七千二百円でありますから、第一学年度は総収入の一八・七%を占める。第二学年度でも一〇・九%に達するわけであります。もちろんこれは学校に支払うだけの割合でありまして、制服代とかあるいは参考書、通学定期代、学用品代などを合わせると相当な額になるわけであります。これは勤労者所得にとっていわゆる受忍限度を超えたものと見なければならない、このように考えます。場合によっては、本当に本人が高校教育を受けたいにもかかわらず、実際は断念せざるを得ないというような深刻な状態にもなっておるわけであります。そういう点で、やはり大阪の父母は私立高校生学費返還訴訟を起こさざるを得なかったわけであります。これは今日の教育の機会均等を要求する画期的な訴訟ではないかと私は考えておるわけであります。  そういう観点に立ちまして、特に以下の問題についてお聞きしたいわけでありますが、いわゆる公立と私立の格差が四十倍から五十倍、ときには六十倍にもなっているという現実は、きわめて私は異常な事態ではないかと考えるわけでありますが、この事態は文部大臣はどのように考えておるのか、その点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  369. 海部俊樹

    海部国務大臣 いろいろお話を承りましたが、現在御指摘のように公立と私立の間にいろいろな格差があることは承知をいたしております。私どもが全国的な平均で調査いたしましても、やはり私立、公立高等学校に通う人の授業料とか入学金の差がやはり十倍近くあることもわれわれの調査でも明らかになっております。そこで、私立高等学校に対してこれはこのままほうっておいていいかということでありますが、私は決してこのままほうっておいていいという考えを持っておりません。同時に、文部省昭和五十年度から初めて私立高等学校の経常費の助成に制度として踏み切っていったわけでございますし、また従来は交付税措置で都道府県の知事を通じて助成をいたしてまいりましたものも五十二年度は大幅に増額をしてもらうとか、あるいは私学振興会の融資で私立学校が教育設備を充実されるときには長期低利の融資をするとか、できるだけの措置を講じてこの格差が縮まっていきますように政策努力をしていかなければならない、こう考えております。
  370. 上田卓三

    ○上田委員 私立高等学校も公立高校と同じくやはり公共性を持っておることは明らかであるわけであります。そういう点で、義務教育ではないにしても、やはり私学に対してもっともっと国が援助を与えていくということは当然のことだということであるわけでありますが、現実にそういう四十倍から五十倍、こういう格差があるということは、私は、考え方によれば教育費の、いわゆる税金の二重払いだと言っても過言ではないと思うのです。国公立の大学あるいは高等学校、これは税金によって賄われておるわけです。それが、税金を納めている納税者の大部分の家庭の子弟は、その税金でできた国公立の学校へ行くことができないで、それの四十倍から五十倍も高い、そして教育内容についてもやはりいろいろな見劣りがあるのじゃないか、そういうところへ行かざるを得ないということは、これはもう税金の二重払いである。いや、二重払いどころか二倍も三倍も税金を納めているということになるのではないか、こういうように考えるわけであります。  さらにそういう立場から申し上げたいわけでありますが、ここに東京私立中学高等学校協会が発表しておりますところの資料があるわけであります。これは昭和四十九年の四月に発表されておるわけでありますが、これによりますと、四十九年度の場合はどうなっておるかといいますと、公立の学校は年間二十二万七千五百十二円の費用がかかっているということであります。私立は一人当たり年間十四万五千三百三十八円、こう見ますと、やはり私立の学校よりも公立高校の方がそれだけお金がよけいかかっておる。教育にたくさんな費用が入れられている、そういうことがはっきりと出ておるわけであります。さらにこの内訳を見ますと、いわゆる私費と公費に分けますと、公立は何と、二十二万七千五百十二円のうちの二十一万七千九百十二円が公費でありまして、私費はたったの九千六百円ということになるわけであります。私立の場合はいわゆる十四万五千三百三十八円のうち公費は四万五千四百九十円、私費は九万九千八百四十八円ということでありますから、したがって、私立に通っている子供は公立と比べて四分の一の公費しか受けていない。ということは、私費の負担は公立に比べて十倍も多くかかっておるということになっておるわけであります。これは私は重大な教育上の差別ではないか、差別そのものだと言わざるを得ないと思うわけであります。そういう点で、この責任はきわめて重大であろう、私はこういうように思いますし、特に教育基本法の第十条で、条件の整備の責務を国が負っていることを明確に位置づけておるわけでありますから、こういう立場から、やはり私立高校に対して文部省はどうするのかということを、抜本策を立てる必要があると考えておるわけでありますが、その抜本策について考え方があるのかどうか、ひとつお答えをしていただきたいと思います。
  371. 海部俊樹

    海部国務大臣 高等学校制度、後期中等教育そのものをどう扱うかという、いわゆる御指摘の抜本策ということになってまいりますと、私どもも六三三四の真ん中の三三を合わせて一貫教育にしたらどうであろうかとか、あるいはそれによって起こる弊害はどうであろうかとか、いろいろな問題についてはやや長い目盛りでいまいろいろな研究をしておりますし、それからそれに対応する問題を集めては、どちらにした方がいいのかという検討はしておりますけれども、しかしそれには、中教審の答申にもありますように、長い間のやはり慎重な検討を必要といたしますし、それから、高校進学率は非常に高くなってまいりましたが、なお現在、中学を終わる段階で高校進学をみずからの進路として選択しない人がいることも事実でございますし、また、三年制の高校へ行くんじゃなくて五年制の工業高等専門学校とか、あるいは専修学校とかいろいろ多様な進路に向かって希望をする人々もあるわけでございますので、それらのこと等ともあわせますと、いま直ちに抜本策はどうなんだと、どういう結論、見通しを持っておるかとおっしゃられても、残念ながらそれについてはまだ結論が出ておりませんので、いろいろなメリット、デメリットを検討しておるさなかでございますが、短かい目盛りの当面においては、おっしゃるように私立、公立間の格差がございますことは事実でございます。それは高等学校のみならず大学においても同じことが言える、幼稚園においても同じことが言えるわけでありますから、私立学校振興助成法の精神に基づいて、できるだけこの格差を是正するように国としては施策を進めていかなければならぬ、そういうことでございます。
  372. 上田卓三

    ○上田委員 私は高校教育というものは本来無償にすべきだ、こういうように思うわけであります。それは当然私立高校においても無償にすべきだ、こういうように考えております。私、ある人から聞いたわけでありますけれども、隣の朝鮮民主主義人民共和国へ訪問されて向こうの先生方といろいろ懇談をした。その中で授業料という話が出て、授業料とは一体何ですかということで向こうから聞かれたということですね。向こうでは、そういう授業料の意味がわからないくらい授業料という言葉が死語になっておるということであります。また、スウェーデンあたりでも高校教育は無償化しているということを私は聞いておるわけであります。当然西ドイツについては高校だけじゃなしに大学の無償化が進んでおる、こういうように言われておるわけであります。  このように、高等学校での教育の無償化というものが国際的な傾向となっておるのではないか、そういう意味で、少なくとも高等学校だけでもやはり無償化する。いまわが国の進学率は高等学校で九〇%を超えている、大阪でも九四%に達しているということでありますから、いまこそ高校全入というのですか、あるいは高校の義務教育化ということが、やはり現状の格差というものを是正するという意味から、抜本的にそういう高校の義務教育化あるいは無償化ということをやはり目標に置いて打ち出していくという必要があるのではないか、こういうように考えるわけであります。その点ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  373. 海部俊樹

    海部国務大臣 先ほど申しましたように、長い目盛りの研究課題として現在取り組んでおりますけれども、直ちにそれをどうするこうするという結論まで至っておりませんのは、やはり他の政策との整合性とか、それから、そのときにおける人生の進路を選択される中学修了者の意思の問題とか、あるいは社会のいろいろな必要に応じて専修学校や工業学校を整備していく方が、いまの段階ではそれらの人々にふさわしいのではなかろうかということをいろいろ考えやがらやっておりますが、やはり長い目盛りとして高等学校のあり方、あるべき姿というものについては、今後も十分検討は続けてまいりたい、こう思います。
  374. 上田卓三

    ○上田委員 当面やはり公立高校と私立との負担を平等にするということは、もうぜひともしなければならない問題ではないか。先ほど税金の二重払い、三重払いだということを申し上げたわけでありますが、やはり公立の高等学校へ行こうとも、私立であろうとも、父兄負担は同じであるというように持っていく必要があるのじゃないか、それが教育上の差別をなくしていくことになるだろうし、また、ユネスコ総会での決議でありますところの、そういう教育上の差別をなくするという国際条約の精神ではないか、私はこういうふうに考えるわけでありますが、その点についてそういう気持ちはないのかあるのか、お聞かせ願いたと思います。
  375. 海部俊樹

    海部国務大臣 最近のいろいろな社会情勢の中で、国公立と私立との教育負担に格差があるということ、それはもう何とかして是正をしていきたいという努力は、法律までおつくりを願って、私たちも鋭意それに向かって努力をしておるところでありますから、そういったものを放置しておくとか捨ておくという関係は全くございません。  ただ、私立学校につきましては、これは大学も高校もそうでありますけれども、やはり私学は私学としての特色、建学の精神、独特の校風を持ち、それぞれまた、それを慕って応募してくる国民の皆さんの数も多いわけでありますので、高等学校まで直ちに義務教育にしてしまうということについては、それらの問題との関連もございますから、慎重に検討を続けさせてもらいたい、こう思います。
  376. 上田卓三

    ○上田委員 高等学校の義務教育化の前段として、やはり私立高等学校へ通っている家庭の子弟に対して経費の軽減を図る、あるいはもう平等に持っていくということがぜひとも必要ではないか、私はこういうように考えるわけであります。その一つの具体策として、たとえば私立高校生の超過学費に相当するいわゆる返済義務のない奨学資金制度などを設けるということは非常に大事なことじゃないか、その差額の分を奨学資金というような形で、返済義務のない奨学資金を出すということは当然あってしかるべきじゃないか、私はこういうように思うのです。文部大臣は将来ということでありますけれども、現実にこういう差別があるわけでありますから、やはりここの格差を何としても是正していくということが急務ではないか、私はこういうように考えるわけでありますが、そういう返済する必要のない奨学資金というものを考える気があるのかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  377. 海部俊樹

    海部国務大臣 奨学資金の制度も私立、公立の格差を是正するために有効に効果を出してもらわなければいかぬと思って、貸付金の月額に差をつけて、私学の方にたくさん貸し付けをすることができるようにするとか、あるいは奨学資金のみならずほかの制度でも私学振興財団を通じて、いろいろ私学そのものの経営にも資するようにしていこう、これは大学、高等学校のみならず、私立の幼稚園についても、就園奨励費とかいろいろなものを出しまして、できるだけ格差を縮めていくように努力をしていかなければならぬ。いませっかくの御提案でありますが、返済義務のない差額を直ちに渡すような奨学資金の制度というものは、いまなっております制度の中には、そういったものがまだ入り込んでくる余地はございませんので、償還義務を伴っておる奨学金の制度を充実していくということに当面は全力を挙げて取り組んでおるわけであります。
  378. 上田卓三

    ○上田委員 差額に当たる部分をぜひとも返済義務のない奨学金としてひとつ、新しく新設されるように要望しておきたいこういうように思います。  何を言いましても、高等学校の義務教育ということになれば、あくまでも公立高校をたくさん建てていくということが、これは前提になってくるだろう、こういうようにいま思うわけであります。そういう点でたとえば、五十一年度より文部省はわずかに三十七億円を予算化をしておるわけであります。しかし、私はこれはもう全くのごまかしであると言っても過言ではないと思います。ことしからですか、いわゆる新年度からこれを約三倍にするということを言っておられるわけでありますけれども、しかし、こういう額というものは、たとえば、大阪でそういう高等学校を建てた場合、二校分もない、二つも建たないというような状況であります。そういう点で、文部省が気張って、いままでの予算よりも三倍と言っておりますが、三倍組んでも大阪で学校を建てようと思ったって、それは二つも建たないというようなことであるということをひとつ理解してもらいたい、こういうように思うわけであります。  たとえば大阪では、高等学校を建てる、そういう費用として、七十一億一千四百万組んでおるわけでありますが、しかし、国からはこれに対して、七億七千百万しか出ておらない。援助はそれしかないというような状況でありまして、非常にそういう意味では微々たる助成しかなされておらぬということに対して、非常に残念であります。私は大阪の選出の国会議員だから、大阪のことばかり結果的に資料関係で申し上げることになるわけでありますが、たとえば黒田知事は、五十二年度以降五年間に大阪では学校が百校必要なんだ、五十二年以降五年間に百校の高等学校を建てるんだ、ぜひとも必要なんだということで、これは選挙公約で立たれたわけであります。しかし、残念ながら、先般の議会において、財政難から、この百校を六十校にしなければならぬということで、後退した発言をしておるわけであります。たとえば、この六十校だということになったとしても、大体一校当たり五十億円の金がかかるわけでありますから、三千億の金が要るということになるわけであります。そういう点で、実際大阪ではどういうことをしているかと言いますと、学級の定員を、文部省の方でもはっきりされておるように四十五人学級ということでありますのを、それを五十一年度には一名ふやして、四十六人の定数にしておるわけであります。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 五十二年度からは、さらに一名ふやして四十七人学級をつくっておる。そういうことによって、約十校分の学校を建てる余裕をつくったということですね。四十五人学級を四十六、四十七にすることによって、少しでも学校が多く建つようにというような形で、苦肉の策をとっておるわけでありまして、非常にこれはわれわれとしては残念な結果である、こういうように考えるわけであります。そういう点で、やはりひとつ文部大臣として、高等学校に対して、公立高校の建設に対して、もっともっと国が大幅な助成をする必要があるんじゃないか、こういうように考えるわけでありますが、その点について、ひとつわれわれが納得いくような回答をお願いをいたしたいと思います。
  379. 海部俊樹

    海部国務大臣 高等学校を建設しようということで、緊急に五年間、文部省の計算では全国に四百校を超えるものをつくらなければならない。この取り組む姿勢は、やはり現在九二%を超えるところまで来ております進学率を、今後人口構造の変化があっても落とさないように維持をしていこうという、そういう取り組む姿勢でございますので、今年から始めました制度というのは、実はきょうまでは地方財源に高等学校の建設というのはお任せしきりのような状況でございましたけれども、それではやはり、こういう緊急な五年間にふえるという事態に対処するには、地方自治体にできたら少しでも何かお力添えしなければならぬという立場で始めた制度でありまして、確かにおっしゃるように三十九億というのは、非常に本年度、額としては不満足な額であろうと思いますが、さらに五十二年度予算においてもこれを増額するように努力をいたしましたが、これから先は政府部内のことでありますけれども、財政当局との折衝という大きな壁もございますので、私も誠心誠意これには取り組んでふやしていきますとともに、公立学校の建物補助というのは、実はこれがすべてじゃないわけでございまして、おっしゃるように二校分にも満たぬじゃないかとおっしゃれば、そうかもしれませんが、     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕 本来は地方債、地方交付税措置で扱っていただくものに対して、少しでもこれは国も強力な姿勢を示すべきである、こういうことで始めました五年間に限っての緊急の制度でございますが、できるだけこれは増額をして、高校建設の四百三校というわれわれの目標に狂いを来さないように努力をしていきたい、真剣に取り組んでまいります。
  380. 上田卓三

    ○上田委員 大阪でも百校要るということなんですから、私は全国的に見てやはり国が考えているような学校の建設ではとうてい足らぬのではないか、こういうように思います。  同時に、やはり超過負担という関係もあるわけでありますが、とりわけ用地費に対して助成をしていないというところに私は根本的な欠陥があるのじゃないか、こういうように思うわけであります。そういう点でぜひともこの建物に対する助成だけじゃなしに、土地に対しても大幅な助成考えてもらいたい。そういう考え方があるのかどうか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  381. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 高等学校の建物につきましては、ただいま大臣から御説明いたしましたように、緊急の措置として補助に踏み切ったわけでございますが、土地につきましては、これは大変地元で必要を感じておられるということはわかるのでございますけれども、本来は、こういう公共団体の財産となる非償却財産につきましては、これは補助の対象にしないのがたてまえでございまして、ようやく義務教育関係だけにつきまして臨時の措置として補助が始まった段階でございまして、いまの段階におきましてまだ高等学校の方につきましてはそこまで手が及んでおらない、そういう状況でございます。
  382. 上田卓三

    ○上田委員 ぜひとも用地についても助成の方策を考えていただきたい、このように思います。  次に、義務教育の学校施設の問題について御質問を申し上げたい、このように思います。  義務教育諸学校施設費国庫負担法によりますと「公立の義務教育諸学校の施設整備を促進するため、これらの学校の建物の建築に要する経費について国がその一部を負担することとし、もって義務教育諸学校における教育の円滑な実施を確保する」こういうように定められておるわけであります。しかしながら、この国の負担すべき一部がきわめて少額であります。昨今の厳しい経済情勢の中で、各地方自治体の財政は極端な危機に直面しておることは文部大臣も御承知のことだろう、このように思うわけであります。  たとえば大阪府下に見るならば、特に大阪市を取り巻くところの衛星都市は、近年の爆発的な人口増加に伴いまして、年々教育施設整備に追われているというような現実があるわけであります。たとえば五十二年から以降五年間、大阪の高槻市では、小学校をあと十一校建てなければならない。中学校八校である。幼稚園は十一園である、計三十の学園を建てなければならない。門真市は、小学校が三、中学校が二、幼稚園が四、合計九。枚方市におきますと、小が七、中が五、幼稚園が五、計十七。豊中によりますと、小学校が五、中学校が五、計十三。東大阪市は、小学校をあと十建てなければならぬ、中学校は三つである、計十三を建てなければならぬということであります。堺市でありますが、小学校は二十二、中学校は十三、計三十五の学園を建てなければならぬということにいまなっておるわけであります。年度が一年ずれておりますが、大阪府下の全域におきまして五十一年から五十六年の間に、小学校は百三十二校、中学校は六十九校、計二百一校を建てなければならぬというような現実にあるわけであります。  たとえば、学校一校新設するためにどれだけの費用がかかるのかということでありますが、昭和五十年に新設開校いたしました高槻市での中学校の実例でありますが、総額は五十三億九千八百四十三万円かかっておるわけであります。当然これは土地もありますし、また起債に対する元利償還も含んでおるわけでありますが、ところがこれに対する補助負担額が六億八千六百十九万円で一二・七%の助成である。市費は四十七億千二百二十四万円、八七・三%、八七%までが市費に頼っているという現状があるわけであります。そういう点で、どういいますか、二十四クラスの学校を一つ建てようということになりますと、これは平均でありますけれども、少なくともわれわれとしては小学校は四十億円要るんじゃないか。先ほど言いましたように、高槻の例のように、中学校においてもいろいろ地域によって差額がありますけれども、計約五十億要るだろう、こういうように考えておるわけであります。これは用地費、建物それから償還利息を含んでおるわけであります。そういうことになりますと、五十一年度から五十六年までに大阪府下の小中学校の学校を新設しようということになりますと、小学校で百三十二校でありますから、掛ける四十億、五千二百八十億の金がかかるわけであります。また中学校においては六十九校でありますから、約五十億というように積算しますと、これも三千四百五十億円。合わせて八千七百三十億円の莫大な予算が要るということになるわけであります。たとえば高槻のように、助成が一二・七%あるとしますならば、それだけでも一千八億円要る。市費負担が何と七千七百二十二億円ということになりかねないわけでありまして、そういう点で、どういいますか、大阪の黒田知事のような考え方になりますと、ますますそういう教育施設中身を低下することによって、薄く広くという形になりかねないわけでありまして、これはせっかく学校の先生方やあるいは地域住民が努力して学校当局なりあるいは教育委員会と話し合いをやって、いろいろ定数の問題等についても積み重ねてきたところの実績が一挙に崩れ去ってしまうという大きな私は教育危機、破壊と言っても過言ではないというように思うわけでありまして、そういう点で、二、三その問題についてひとつ御質問をさせていただきたい、このように思います。  教育に対する国庫補助事業の拡大を図る必要がある、これが急務であるということであると思いますが、補助資格内にありながら一定の枠の中で府県に配分される現状、特に数量差それから対象差を生んでおるわけでありますが、それを補う地方財政を圧迫しているわけであります。そういうものが結局超過負担となってあらわれておるわけでありますから、そういう点で、数量差、対象差について政府はその実態をどう把握しておるのか、全国でのそういう統計はどの程度になっておるのかということについてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  383. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 いわゆる超過負担の問題であろうかと思います。この超過負担というものの考え方、これは考え方がいろいろございまして、本来国が負担すべきものを自治体に負担させておるという趣旨であろうかと思うのでございます。それで、そのどこまでが本来国が負担すべきかということについていろいろ問題はあるわけでございますが、まず第一に補助単価が実際の実行よりも低いために、資格の坪数があって、それに対して積算された補助金が実際よりは下回ってしまうということがございます。この点につきましては、昭和四十二年度、四十七年度、四十九年度と実態調査をいたしまして、実際の状況と補助単価との格差につきまして調査をいたしまして、おおむねその補助単価の改善を図ってその格差是正には努めてまいっております。五十二年度の補助単価も前年度に比べて七・三%のアップというようなことでございまして、大体ここ二、三年の間、過去五十年、五十一年の実際を見ますと、卸売物価の上昇率と比べてやや上回った上昇率になっておりますので、しかも最近の情勢におきましては、これは景気の状況もございまして、実際の契約の単価等見ましても、この面で単価の点でいわゆる超過負担を生ずるというようなことはなかろうかと考えております。  それから二番目に、先生も御指摘になりました建築面積の対象差の問題でございます。その中で、一つ建築面積の問題、国の定めました基準、現在ございます基準が実際の自治体で必要とする建物よりも小さいために、実際の自治体においては基準以上のものを建てる、その部分が超過負担である、こういう御主張でございます。これにつきましても、国といたしまして四十九年度、五十年度というふうに二回にわたりまして約二〇%の基準引き上げを行いまして、できるだけ御要望に沿えるようにということにいたしております。  それで、超過負担の実態がどうであるかということでございますけれども、その二〇%のアップがまだ不足である、もっと見るべきであるという考え方のある自治体もあろうかと思いますけれども、その辺がどこまでが超過負担であるか、それからどれから先がいわば必要、ぜいたくと申しますか、余裕を持ってつくられたものであるかというようなことの判断が、これは判断の基準がございませんので、そういう意味における超過負担の実態というものは把握いたしておりません。  それからさらに、対象差につきましては、これはいろいろなことが言われております。それで特にいろいろな要望がございますので、五十二年度からはいわゆる門、囲障そういったようなものを対象にするという措置を新たに講じまして、そのために特に十四億円の計上をしております。そういうようなことで、私どもいわゆる超過負担という実態が地方で起こりがちであるということはわかるのでございますが、以上のような大体の対策によりまして、おおむね何とか解消していけるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  384. 上田卓三

    ○上田委員 おおむねには解決しないと思いますわ。  これ、どこまでが超過負担であるか云々というようなことですけれども、それははっきりしているわけであって、はっきりしたらあなたのところが困るから、その点あいまいにしているだけのことではないか、こういうように思います。補助率の問題にも大きく問題がありますし、またいわゆる単価あるいは規模等に大きな問題があるわけでありますから、大阪の例も具体的に申し上げたわけでありますが、ひとつ全国の各都道府県教育委員会あたりで把握している、今後教育施設をどれだけ必要とするか、そういう問題に対して、文部省が今後具体的にどういうように対処しようとしているのか、超過負担の解消も含めて、そういう基本的な問題について、これはできましたら、そういう具体的な資料を後日いただきたい。こういうふうに思いますので、ひとつぜひとも提出をしていただきたい、このように思います。  次に、衛星市町村の問題を申し上げたわけでありますが、それじゃ大阪市内部は問題はないのかということでありますけれども、まあ衛星都市にもまさるとも劣らない、そういう事情があるわけであります。それはやはり、どういいますか人口の急増都市ではないわけでありますが、いわゆる地域間の交流が非常に激しいわけであります。そういうことで、いままで十分できておったにもかかわらず、その学校は子供が余りふえないどころか減ってしまうというような状況になって、あるいはいままでは十分いけたやつがいけなくなったというような、まあ越境入学を防止するというような過程の中からも大きな問題が出てきておるわけでありますが、そういうことから増改築を迫られているというような問題が多く出ておるわけであります。  それから、戦前のいわゆる老朽鉄筋校舎ですね。古くなった戦前の鉄筋校舎の改造をしなければならない、非常に危険であるというような状況が出てきておるわけであります。それから、昭和二十五年ごろに建てられた木造の校舎ですね、これが非常にいま老朽化しているということで鉄筋化を急がなければならぬ、こういうような現状があるわけであります。耐久度が四千五百点に達しないということから、いずれも補助処置がとられていないわけでありますけれども、やはり起債制度もないということであるわけでありますから、当然大阪市の単独事業にならざるを得ないということにいまなっておるわけであります。そういう点で、大阪市のこういう現状というものを十分理解されまして、国庫補助事業の拡大をぜひとも図っていただきたい、図る必要があるのじゃないか。特に都市という関係がありますから、地域の防災の拠点づくりですね、いろいろな火事とか地震とかそういう場合に、やはり学校へ避難するということにもなるわけでありますから、そういう点について、ひとつこの大阪市内部の問題について一言お答え願いたいと思います。
  385. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 大阪市の問題は、やはり一番大きな問題は人口過密に応ずる急増対策だと思います。そのために御承知のとおり急増地域につきましては非常に一般よりも厚い補助率その他で対処しているわけでございますけれども、さらに先生の御指摘になりましたようなたとえば老朽鉄筋の問題とか、不適格校舎の問題とか、そういうような問題につきましては、これは一応の全国的な基準がございまして、それにのっとって配分をするわけでございますけれども、その実際の運用につきましては個別の事情、特殊な事情というものは十分考えた上で対処してまいりたいと思っております。
  386. 正示啓次郎

    ○正示委員長 申し合わせの時間ですから、どうぞ結論に入ってください。
  387. 上田卓三

    ○上田委員 十分対処していただきたいというふうに思います。済みません、えらいあれですけれども、もうちょっとですから、あと半時間くらいですから……。  小中学校の学校を建設するという場合に、二十四学級で小学校の場合は四千五百平米、それから中学校五千五百平米の文部省の基準があるらしいんですけれども、この基準に基づいた建設の実例が実際あるのかどうか、あればひとつお知らせ願いたいと思うのです。
  388. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 ちょっと資料を調べてみませんとわかりませんで、場所の御指示等ございますれば、また調べてみたいと思いますが……。
  389. 上田卓三

    ○上田委員 実際ないんじゃないですか。私もそういう調べるようなあれはないんですけれども、これはあくまでも基準であって、実際は、小学校四千五百平米と言っておりますが、結局は超過負担のもとになっておるわけであります。実際建っているのは、あなた方の文部省の基準以上のものが建っておるわけでありまして、文部省の基準どおりに建った学校が果たしてあるのか、そこなんです。そのことを私は言っておるわけであります。そういう点で、この基準面積で適正な学校建設が可能ならば、文部省の想定している青写真、この範囲でどういうような学校をつくろうとしているのか、運動場はどうなるのか、設計はどういう設計をすれば可能なのかということも私は聞かせてもらいたい。当然その際は管理室とか特別教室とか便所とか廊下とか階段その他の配慮が、この補助対象にどう生かされているかということを具体的に示していただかなければならないのではないか、こういうように思います。  また、先ほども申し上げたわけですけれども、大阪市においてもすでに市財政のやりくりは限界に来ているということの中から、校舎の立体化も画一化を無理強いされて、特色のある学校が制度的に不可能になっているということになっておるわけでありますが、こういうことも含めてお答えをいただきたいというように思います。
  390. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 いまの基準の坪数で建っている実例があるかということでございますが、恐らくあると思います。いま具体的に申し上げかねますけれども、後日調べまして御報告いたしたいと思います。  それから、いまの重層化の問題等につきましても、これは先ほど申し上げましたようなことで、やはり一定の基準がございますけれども、個々のケースに即して、その運用の中でできるだけ実情に即したやり方をやってまいりたいと思っております。
  391. 上田卓三

    ○上田委員 あるように思います言うことは、もう少ないということですな。文部省の基準どおりに建てておる学校というのはもうないに等しいということになってくるんじゃないかと思います。
  392. 正示啓次郎

    ○正示委員長 上田君、申し合わせの時間が参りました。
  393. 上田卓三

    ○上田委員 そういう点で、あればひとつ出していただいて、どういう状況になっているかということを後ほど聞かせていただいたらと思います。  時間の問題があるようでございますけれども、私も新人の議員でございまして、まあどういいますか、どの程度しゃべれば何時間というような形で思っておったわけですけれども、大分残っておるようですが、せっかく遅くなりついででございますので、厚かましいようでございますけれども、ひとつあと三十分くらいで終わるんじゃないか、三十分もかからないかもわかりませんが、できるだけ早くしたいと思いますから……。
  394. 正示啓次郎

    ○正示委員長 理事会の申し合わせがありますから……。
  395. 上田卓三

    ○上田委員 せっかく私は国民の期待を担うて国会へ上がってきておるわけでありますから、そういう御配慮をいただいて当然のことじゃないかというように思っておるわけであります。そういう熱意に対して抑えるというようなことのないように……。
  396. 正示啓次郎

    ○正示委員長 いや、抑えると言うんじゃなくて、申し合わせを守りましょう。
  397. 上田卓三

    ○上田委員 まあ申し合わせもありましょうけれども、せっかくの機会でございますので、ひとつ御配慮いただきたいと思います。  各地の学校で差別事件が続発をしておるわけであります。いわゆる同和問題ということでありますが、文部省はその事実の把握をどのようにしているのか、その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  398. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 同和地区をめぐって、おっしゃるような差別の問題というのがときどき新聞等をにぎわしますけれども、私どもといたしましては、こちらからそういうような事例が報道されました場合に、直ちに内容について県あるいは府の方に調査をして連絡してくださるように依頼をする、また一般的にこれは大事な問題だというふうに県が判断した場合には連絡していただくというようなことで、できるだけその都度連絡をしてもらうというようなことでやってきておるわけでございます。
  399. 上田卓三

    ○上田委員 大阪でもそうでありますが、全国で非常に忌まわしい部落差別事件が後を絶たないわけであります。部落の生徒に対して、あれは部落だというような形で生徒間で言うとか、あるいは学校に、四つ学校というような形で落書きがあるとか、その他、本当にわれわれとして、はらわたの煮え返るような、本当に残念な事件が枚挙にいとまがないわけでありますが、文部省としてぜひともひとつ全国の各府県市町村を通じてそういう差別の実態というものについて把握をしてもらい、また、この現象に対してどのように理解しておるのか、それをどのように今後解決していくのかというような問題について、ひとつ具体的な方針を出していただきたい、こういうように思います。  次に、昭和五十年のことでありますが、若干文部省において対処されたということを聞いておるわけでありますが、全日本社会教育連合会の発行の「二十一世紀を生きる」という本がございますが、これに一人の青年の記録として次のようなことが書かれておるわけであります。「小説「破戒」の中に書かれている部落民みたいに取り扱われるのはいやです。工員という職業が実力に応じたもので、小説「破戒」の中に書かれた部落民のごとき身分なんかじゃないということです。」こういうように言っておるわけであります。この「二十一世紀を生きる」という本の編集責任者は、元文部大臣の森戸辰男氏であります。全日本社会教育連合会は公的機関と言えるようなものでありますし、文部省も一定の援助をしているはずでありますから、文部省が推進しようとする同和教育は、果たしてこういう中身のものであるのかどうかということで大いに疑問を感じておるわけであります。そういう点で、この問題に対してどういう処置をとられたのか、今後こういう事件が起こらないためにどういう措置をとろうとされておるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  400. 吉里邦夫

    吉里政府委員 いま御指摘資料は、先生のおっしゃるとおり、社会教育連合会で募集をしましたものを出したわけでございます。初版は非常に古うございましたけれども、それを再版したようなかっこうで出しておりますが、問題が起こりまして、森戸会長の指示で廃棄処分にし、原型も廃棄し、また、それぞれに渡っておりますものも連合会の責任で回収するという形で処理をいたしております。  なお、同和の問題につきましては、社会教育の分野でも、指導者の研修であるとかいろいろな面で、いま御指摘のようなことがないように指導をいたしておるところでございます。
  401. 上田卓三

    ○上田委員 部落差別の問題については、特に新聞、テレビなどでも文部大臣はお聞き及びのことだというように思うわけでありますが、いわゆる特殊部落地名総鑑、あるいは全国特殊部落リスト、大阪府下同和地区現況という、史上類例を見ないような忌まわしい悪質な差別図書が発売され、そして、その図書を、大企業も含めて百十三社が購入をしているということで、過般もその企業なり個人に来てもらって、その真相を究明したわけであります。これは、部落差別を利用して金もうけをしようという企業、そしてまた、不況のもとで首切り合理化のために会社が、だれが同和の出身であるかということを明らかにすることによって労務管理をする、あるいは就職からオミットする、そういう意味では非常にけしからぬ、教育の問題にもかかわってくる問題じゃないか、こういうように私は思うわけでありますが、その中で、この購入企業が、関西でも本当にそういう意味では名の売れた大学が三つも肩を並べているということで、われわれとしては非常に遺憾であるわけであります。そういう点で、大学の自主性というものもあろうかもわかりませんが、やはり文部省として、各大学なりあるいは高等学校においてもこういうものを今後とももう買わないというような保証はないわけでありますから、やはりこういう点について十分の措置をとられたい、こういうように思うわけであります。  そういう点で一つ文部大臣お尋ねしますが、昭和四十年の八月十一日に、内閣のもとに設置せられた同和対策審議会がありまして、その答申が出ておるわけでありますが、この答申を文部大臣が読んだことがあるのかどうか。ひとつ、あれば読んだと、どういうことが書かれてあるのかということについても若干お聞かせ願いたいと思います。
  402. 海部俊樹

    海部国務大臣 同和対策審議会から答申が出ておることは私も承知いたしておりますし、それから、特に教育の問題について触れてあります部面はまた読み直したわけでございます。そこにどういうことが書かれておったかと申しますと、特に同和地区の児童生徒の実態の中で、たとえば進学率が低い点とかあるいは学業が不振であるとか、いろいろな点が指摘されまして、それらを改善しなければならない、そして同和地区の教育を高める施策を強力に進めることが求められておるわけでありまして、それに従って国も地方公共団体とともに協力をして推進をしてきておるところでございます。
  403. 上田卓三

    ○上田委員 それはやはりいままでの文部省行政が差別的であった、差別教育の結果として部落のそういうみじめな教育の実態があるというようにお考えでしょうか。それは部落の人が悪いからというふうに考えておるのか、あるいは教育行政の貧困から、端的な言葉で言うなら、客観的に差別行政の結果であるというようにとらまえておられるのか、その点どうですか。
  404. 海部俊樹

    海部国務大臣 何回も議論されておりますように、憲法二十六条あるいは教育基本法、そういったものの精神からまいりますと、教育を受ける権利、機会均等というものに格差、不公平があっては絶対にならぬわけでありますから、そのような心構えで取り組んでいかなければならないし、また私は、就任以来まだ日が浅いのでありますが、そういう姿勢で取り組んできたものと信じたいわけであります。ただ、同和対策審議会の答申において指摘された問題は、やはり謙虚に受けとめて、それらのことが改善されていくように鋭意努力しなければならぬ、こういう心構えも当然持たなければならない、このように受けとめております。
  405. 上田卓三

    ○上田委員 次に、いわゆる同和教育の推進地域の指定の問題でございますが、これは学校教育及び社会教育が一体となって地域的な同和教育の推進を図るということになっておるわけでありますが、それならば、なぜ一部の地域だけを指定しておるのか。これは非常に納得できないわけでありまして、そういう意味で、同和教育推進地域の指定に当たってその地域というのはどのように考えておるのか、あるいは五十一年度のその地域指定の実態等について御報告願いたいと思います。
  406. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 同和教育推進地域をどこにするかという点につきましては、もちろんその地域全般の教育問題と深くかかわり合うわけでございますので、その地域の指定につきましては、総理府の方の指定についての御意見を聞いて、それでやっておるわけでございます。
  407. 上田卓三

    ○上田委員 同和教育研究校の指定なら研究指定という意味で私はわかると思うのですけれども、やはり同和教育推進地域というものができたら、私は、同和地区を含む行政ですね、その地域全体が地域じゃないか、あるいは同和教育という観点社会教育という観点から言うならば、同和地区を含まないところでもそういう推進地域として指定して一定の補助金を流すことは当然じゃないか。それを、たとえば五十年度であれば三十一カ所しか地域指定していないというのは、私はおかしいと思うんですね。だから、そういう点で、私は少なくとも、当面同和地区を抱えている行政単位をすべて地域指定をする必要があろうと思うんですが、その点についてどうですか。
  408. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 御指摘のようなことも一つ考え方だと思いますけれども、御承知のように、現在は同和地区を含みます県が三十三ほどあるわけでございまして、それぞれの県について、当該県のうちで二地区を指定してやっていただくということで推進をしていただいておるわけでありまして、将来これをどういうふうに持っていくかということは今後の課題であろうと思いますが、現在はいまの考え方でもって、当面それぞれの県の二地区について推進地区の活動を充実していくということでやってまいりたい、かように思っているわけでございます。
  409. 上田卓三

    ○上田委員 そういう点で、やはり私が先ほど申し上げましたような形で、こういう狭い範囲考えるんじゃなしに、すべてのそういう地域において同和教育が推進できるような形で援助措置をとられたいということを、私は要望しておきたいと思います。  次に、同和対策の教員の加配の問題でございますが、これについては昭和四十四年度の標準法の改正によりまして、新たに「同和対策として教育上特別の配慮を必要とすると認められる小学校又は中学校が存する場合にあっては、当該学校の数等を考慮して文部大臣が定める数」が加配されることになったという形で、加配を認めることになっておるわけでありますが、この「教育上特別の配慮を必要とする」というのはどういう意味なのか、ちょっと明確に答えていただきたいことと、それから、その加配教員は全国でいま何人いるのか、各府県ごとにわかりましたら言うていただきたいと思います。
  410. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 同和地区、産炭地区等教育上困難な地域につきましては、教員の加配をするというのが現在の標準法のたてまえでございまして、そこでその法律の趣旨に従いまして、昭和四十四年から四十八年までの五カ年の計画年度内におきましては五百三十八名の教員を加配し、引き続き四十九年度から進行しております現在の第四次の計画におきましては、五十三年度までに六百二十四人を加配するという計画で、現在計画どおり進行をしておるわけでございます。  それで、どういう地区の学校に加配をするのかというその基準でございますが、それにつきましては、当該学校に通っておる子供のうち同和地区から来る子供がどのくらいいるか、あるいはそれが全体の子供に対してどのくらいの比率になるかということを一つの基準として加配をいたしておるわけでございますが、御承知のように、現在は、国のそうした加配定数に加えまして、それぞれの県等におきましても、また各種の要望等を勘案して、いわゆる県単の教員をそれに加えて実施をしておるというのが実情でございます。
  411. 上田卓三

    ○上田委員 たとえば四十九年までは五百三十八名、四十九年以降五十三年までは六百二十四人という形で、同和加配の教員の数が御報告されたわけでありますけれども、現場へ行きますと、定数の枠だけが行って、果たしてその同和加配の先生がだれであるかということが全然わからないというような状況になっておるわけでありまして、そういう点で、その枠の中で教頭先生であるのか、それがどの先生であるのか、こういう点で、同和教育についてはこれは先生全体が学校ぐるみで取り組んでもらわなければならぬということはよくわかるわけでありますが、そういう点で総枠の中で何かごまかされたような、同和加配の先生だけがほかの枠から外されているということで、結果的には何かもろうたようでもろうてないというような、そういう形で現場から多く聞かされるわけであります。  特に私の方で調査したわけでありますが、現在、五十二年の三月時点でございますが、全国で同和加配の先生は三千八百八十七名配置されているというように聞いておるわけであります。それは当然学級編制増によるものであるわけでありまして、これが児童生徒の学力向上に及ぼす影響は大きいということは、それ自身はわれわれも認めておるわけであります。しかしながら、いま諸沢局長もおっしゃいましたように、文部省が認めている加配教員というのはわずかであって、大部分の加配教員が府県の単費で賄われているということでありますから、私はやはりここに大きな問題があるわけでありますから、やはり現在都道府県で加配教員がおるわけでありますから、それをすべて文部省の加配教員として位置づける必要があるのではないか、私はこういうように考えておるわけであります。そういう点でひとつ、現在の府県でやっておる加配教員を国の加配教員として認めてもらえるのかどうか、それは一体どうなっておるのかということと、それから加配教員の数については私の手元にあるわけでありますけれども、正式にひとつ、私がいま言っているのは実際ある加配の教員というよりも、あなたがいまおっしゃった前期の五百三十八名、そのうちの各府県別の数字ですね。それから四十九年から五十三年度までの六百二十四人、この各府県別の数字を示してもらいたい。これは再三われわれ要求しておるわけですが、何か各府県別を示さないで総枠で言っておるところに、さらに何かそこにごまかしがあるのじゃないか。同和の方でもらっておるけれども、はたで枠を削られているということになりかねないわけでありますから、この六百二十四人のうち何ぼが大阪の分である、兵庫は幾らで、奈良が幾らである、こういう形で数字を明らかにしてもらいたいと思うわけでありますが、そのことをしていただけるのかどうか。していただけないとするなら後日それを資料としていただきたい、こういうように思います。
  412. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 教員の定数の配置につきましては、先ほども申し上げましたように五カ年を一区切りとして、逐年年次計画を立てて増員をしてくるということで、五十三年度までの計画は、先ほど申し上げましたように合わせて千名強の人員になっておるわけでございます。したがって、現在県単でやっております教員を直ちに国の負担にできないかということでありますと、これは財政の問題その他ございますからできないわけでございますが、そもそも、年次計画を立てて教員の数をふやしていくということは、いろいろな教育条件を改善するためにやっておることでございますから、ひとつ今後の課題として、この五カ年計画は五十四年度からさらにまた新しく続けなければならない問題でございますので、将来の課題としてひとつ検討をさせていただきたいと思います。  それから、現在加配しております数は各府県別にどうなんだという御指摘でございますが、その点につきましては、ただいま手元に資料を持ってきておりませんけれども、後ほどお届けするようにさせていただきたいと思います。
  413. 上田卓三

    ○上田委員 それでは各府県別のを後日いただけるわけですね。——まあ、府県単費のそういう同和加配の先生文部省の加配教員として認めるということは将来のというようなことですが、あすも将来になるわけでございますけれども、早急にそういう位置づけをされるように私は要望しておきます。  次に申し上げたい問題は、いわゆる同和対策審議会の答申に述べられておるわけであります。とりわけ同和教育に関しての分科会の報告もあるわけでありますが、特に同対審の答申の中でも述べられておるわけでありますが、文部省として基本方針がないのではないかということで、いわゆる同和教育基本方針を出すべきだということで、われわれは常に要求してまいったわけであります。同対審答申が出されてもうすでに十二年を経過しておるわけでありますが、いまだに同和教育基本方針なるものが出されておらないわけであります。出す意思があるのか、もう出す必要がないと思っておるのか。もう特別措置法はあと残すところ二年というような現状にあるわけでありますが、その点について御意見をお伺いしたいと思います。
  414. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 同和教育に対する基本的な考え方をどうするかという点につきましては、同和対策審議会等の御意見等も聞きながら検討をしてきたわけでありますが、昨年の七月に同和教育資料という形で、この基本的な考え方というものはきわめて簡単でございますが、あわせてこれまでのいろいろな同和関係方針なり、現実にやっております施策等を一つの冊子にまとめまして、これを各県の教育委員会等に通達いたしておるわけでございまして、現在の段階におきましては、私どもはこの資料を末端まで徹底していただくことによって、同和教育をより一層充実するように持っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  415. 上田卓三

    ○上田委員 同対協と相談して云々ということでありますが、やはり文部省が出す考え方があるのかどうかということが大きな問題ではないか。出す出すと言いながら十二年間ほったらかしにしてきたわけであります。そういう点で、各府県教育委員会では同和教育基本方針というのは出されておるわけでありますが、それと同じくらいか、それ以上いいものを出せばいいわけであります。それ以下のものを出そうとするからいろいろ悩みが多いのではないか、今日実現していない原因があるのではないか、私はこういうふうに思っておるわけでありまして、そういう点で、もうすでに各府県である程度の同和教育基本方針というものは出されておるわけでありますから、その積み上げの上でやはり政府として全国の実情もにらみ合わせなければならぬというふうに思いますが、やはり出す必要があるのではないか。  さらに特別措置法があと二年ということになっておるわけでありますが、全国のいわゆる同和地域の三分の一がこの特別措置法の適用の対象になっておらない、対象地域になっておらない、同和対策事業が一切なされておらないということでありますし、人口でいいますと二分の一の人口がこの特別措置法の適用、恩恵を受けていないということであります。総理大臣も認めておりますように、ある部分ではある程度進んでおるが、全然手がつけられていないところがあるということで、この問題について、法律の延長等についても十分検討していきたいということで各省ともいろいろ御検討いただいておるというふうに思うわけでありますが、やはり何としても現在の特別措置法を強化する、あるいは延長するということがぜひとも必要だと思うのです。この措置法に基づいて、文部省として同和教育振興法というような法律をつくる必要があるのではないか、われわれもそのように考えておるわけでありますが、文部大臣はそういう考え方を持っておるかどうか、あるいは御検討いただけるのかどうかについてお聞かせを願いたいと思います。
  416. 海部俊樹

    海部国務大臣 ただいま突然の御提案でございますので、このことにつきましては私もよく検討をさせていただきたいと思います。
  417. 上田卓三

    ○上田委員 前向きで、本当にそういう意味で真剣にひとつ御検討いただきたい、このように考えております。  そこで、先ほど諸沢局長から言われましたが、同和教育基本方針は出しておらないが、いわゆる五十一年七月に同和教育資料というものを出したということでありますが、この資料中身が全くもうお粗末である、そういう点で全国の同和教育研究される先生方から、けしからぬじゃないかということで、私自身もそういう意味では非常に怒りを感じておるわけであります。その中で、たとえば「地域の実情を十分把握しこれに即応した配慮に基づいた教育を推進する。」こういうように書かれておるわけであります。同和対策の審議会の答申では「地域の実情に即し、特別の配慮に基づいた教育が推進される必要がある。」という形で、そういう意味では同対審の答申の方がさらに突っ込んだ形で強調されているんじゃないか。そういう意味で同対審の答申を非常に薄めたというのですか、あるいは後退さした中身で同和教育資料がつくられているというところに根本的な問題があるわけでありますから、私はこの見直しをしてもらいたいということと、同時に、同和教育は実情を十分把握するということが大事だということでありますが、この特別措置法の強化、延長あるいは同和教育振興法の問題等もありまして、海部文部大臣は果たしてこの同和地域に足を踏み入れたことがあるのかどうかということで私も疑問があります。あるいは行ったといってもどういう形で行ったかということにもなりますので、ひとつ文部大臣として適当な地域を選んで、この差別部落、同和地域教育実態について視察することをしてもらいたい、こういうふうに思うわけでありますが、そういう考え方を持っておるかどうか、あるいはこれからそういうことを検討していただけるかどうか、ひとつお聞かせ願いたいわけであります。  それと同時に文部省として、いままで調査したといったって、それは府県の、市町村教育委員会に任せきりというような状況があるわけでありますから、文部省はみずからそういう点で重点的に幾つかの地域を定めるとか、あるいは全国的においてももっと抜本的な同和教育の洗い直しという立場から、いわゆる実態を再調査する構えがあるのかどうか、最後にその点についてお聞かせいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  418. 海部俊樹

    海部国務大臣 いろいろな問題を抱えておりますことは質疑を承りながら私もよくわかったわけでございますが、この基本計画に基づいてどうしていくべきか、あるいは今後どうしていくかということにつきましてはよく担当者の意見等も聞きますし、きょうまでの経緯も私自身も一遍よく見直してみまして慎重に検討し、取り組んでまいりたい、こう思います。
  419. 上田卓三

    ○上田委員 ありがとうございました。
  420. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次回は、来る十九日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時八分散会