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1977-03-10 第80回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 鈴切 康雄君    理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    宇野  亨君       関谷 勝嗣君    塚原 俊平君       中村 弘海君    藤田 義光君       増田甲子七君    湊  徹郎君       上田 卓三君    大出  俊君       安井 吉典君    新井 彬之君       市川 雄一君    柴田 睦夫君       中川 秀直君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         運 輸 大 臣 田村  元君  出席政府委員         外務大臣官房長 松永 信雄君         外務大臣官房審         議官      内藤  武君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         水産庁次長   佐々木輝夫君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         気象庁長官   有住 直介君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   越智 啓介君         文部省学術国際         局国際教育文化         課長      川村 恒明君         文部省学術国際         局留学生課長  光田 明正君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   中川 秀直君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   依田  実君     中川 秀直君 同月十日  辞任         補欠選任   栗林 三郎君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     栗林 三郎君     ————————————— 三月八日  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願  (柴田睦夫君紹介)(第一二二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三号)  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一五号)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより会議を開きます。  運輸省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、去る三日すでに質疑を終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論申し出がありますので、これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 この法案につきましては、過般、質疑を終了いたしたわけであります。特にこの際、採決に当たりまして、幾つかのわれわれの希望、意見を開陳をしまして、法案につきましては賛成の意思を表明をいたしたいと思います。  この法案の中で、新しく気象衛星センター設置いたしまして、画期的ともいうべき気象衛星の打ち上げ等の業務を行わせる、こういうことに相なっておるわけであります。  異常気象の問題がさまざまに国民生活の上にも不安を与えている、そういう中で気象業務が技術的に改善をされていくということにつきましては、われわれも大きな期待を持つわけでありますけれども、それとあわせて、一番肝心な国民へのサービスの面、いろいろと問題が起こっておるわけでありますけれども、たとえば通信所廃止の問題であるとか、あるいはまた一方の技術革新に伴って、一番国民に密着をしたサービスの面というのが廃止をされる、縮小をされる、そういうようなことになりますと、国民生活国民立場から見ますと、やはり相手自然現象でありますから、できるだけ行き届いたサービスがほしい、こういう念願も強いわけであります。そういうことを勘案いたしまして、この法案の成立に当たりまして、これからの気象観測予報ないしは通報、サービス面にわたって管理上、業務上、万遺漏のない体制をとっていただきたい、こういう希望でございます。具体的なことにつきましては、すでにそれぞれ気象庁を初め、その他のところにもいろいろの形で問題が反映をしておるはずであります。  そのことを踏まえまして、当委員会のわれわれとしましても、特にサービスについて万遺漏のないような体制をとるべし、こういうことを申し添えまして、賛成討論を終わります。(拍手
  4. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  5. 正示啓次郎

    ○正示委員長 運輸省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 正示啓次郎

    ○正示委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村運輸大臣
  7. 田村元

    田村国務大臣 ただいまは運輸省設置法の一部を改正する法律案について慎重御審議の結果、御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  私といたしましても、本委員会における審議内容を十分尊重いたしまして、気象予報の精度の向上、航空交通の安全の確保等運輸省に与えられた任務の遂行に全力を尽くす所存でございます。ありがとうございました。(拍手
  8. 正示啓次郎

    ○正示委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 正示啓次郎

    ○正示委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  10. 正示啓次郎

    ○正示委員長 在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。関谷勝嗣君
  11. 関谷勝嗣

    関谷委員 外務大臣また外務省当局に、外交姿勢につきましていろいろお伺いをいたしたいわけでございますが、それは後ほどにいたしまして、まずこの法案自体のことに関しまして、お考えを伺わせていただきたいと思います。  私は、その中で一番問題になると思いますのが子女教育手当、この問題であろうと思うわけでございます。これは昭和四十八年に一万二千円でスタートをいたしたわけでございますが、今回それが五〇%アップの一万八千円になるわけでございますけれども、この子女教育手当ができるまでの経過、沿革といいましょうか、そういうようなものをまず最初にお伺いいたしたいと思うわけでございます。
  12. 松永信雄

    松永(信)政府委員 御質問がございました子女教育手当でございますけれども、御承知のように、現在、私ども外務省職員在外勤務しておりますときには、原則としては、家族を同伴してその国に在住をし勤務をするというたてまえになっております。しかるところ、同伴いたします子女教育につきましては、もちろんこれは年齢によるわけでございますけれども、その土地学校その他の教育機関においての教育を受けるということが当然必要であるわけでございますけれども、そのための経費が非常に高くかかるというのが現実の情勢でございます。子女教育手当というのは、こういう教育に必要な経費、具体的には授業料でありますとか入学金であるとかいう経費でございますけれども、そういう経費を支給するという考え方から制定されているものでございます。  ただ、いま申しましたように、現実には非常に多額の経費を必要とするということでございまして、現行法におきましては一律に一名につき月額一万二千円の手当を支給しておりますけれども、これではとうてい不足いたしますので、今回法律改正お願いいたしまして、五〇%アップ月額一万八千円の支給をいたしたいと考えて、今度の改正法案を作成いたしまして御審議お願いするということにいたしたわけでございます。
  13. 関谷勝嗣

    関谷委員 そうなりますと、外務省の場合はすっきりしておると思うわけでございますが、ほかの省がございますが、その方々海外へ行く場合は外務省からの派遣という形を通すんだろうと思います。したがいまして、ほかのたとえば通産省であるとか運輸省であるとか、そういうところから出ていく場合にもこれが適用されるわけですね。
  14. 松永信雄

    松永(信)政府委員 政府関係機関から外務省に出向されまして、外務省職員としていわゆる在外公務員として勤務される職員の方にも、当然のことながら適用されるわけでございます。
  15. 関谷勝嗣

    関谷委員 そうすると、ジェトロなどの場合、そういう方はどういうふうな状態になっているか、あるいはまた商社関係にこういうようなことが給与体系の中に取り入れられているのだろうかどうか、そのあたりを教えていただきたいと思います。
  16. 松永信雄

    松永(信)政府委員 外務省以外の商社等につきましては、私ども必ずしもつまびらかにいたしておりませんけれども、一般的に申しますと、子女教育手当につきましては二通りの考え方がございまして、いわば定額を支給するという考え方と、もう一つは実費を支弁するという考え方とあると思います。現在の在外職員につきましては、前者の定額を支給するという方式をとっておりますけれども、一般の商社の場合にはむしろ後者の考え方、すなわち実際にかかった経費をできるだけめんどうを見るという考え方に立って子女教育手当というものが支給されているようでございます。私どもが知っております限りにおきましては、大手商社三井物産等の五社はいずれもその考え方をとっているようでございます。もちろんその場合に、必ずしも必要とします経費全額を実際に見ているということではないようでございまして、一定額の範囲の中で支給するという方式をとっているようでございます。
  17. 関谷勝嗣

    関谷委員 そうしますと、どういうのでございましょうか、外務省職員として出ていく場合に、日本人学校とかあるいは現地学校というものがある場合にはいいわけでございますけれども、そういう学校がない場合、どうしても中学生以上になってきますと日本へ置いて出ていくということも可能ではあろうと思うわけでございますが、小さな小学生の年齢においては、親子が別々に生活するというのも非常に問題点が多いと思うわけでございます。そういうことで、実際はどれぐらいの割合の方々子供を連れて行っておるのか、そういう学校がない場合は給与面におきましてどういう対処の仕方をしておるかということをお伺いしたいと思います。
  18. 松永信雄

    松永(信)政府委員 これは、もちろん在勤いたします土地学校その他の教育施設整備と申しますか状況によって、実は世界じゅう非常に状況は違うわけでございます。一般的に申しますと、先進国に在勤します者はその土地教育機関子女を入学させているというケースが多いと思います。他方、現在毎年お願いして設置をしてきておる日本人学校がございますところでは、もちろん多くの者がその日本人学校子女を入れているわけでございます。  在外給与の面におきましては、現在の法律のもとにおきましては、同伴いたします子女教育年齢に該当する子女に対して子女教育手当が支給されている、それ以外の教育関係経費手当としては支給されていないというのが現在の状況であります。
  19. 関谷勝嗣

    関谷委員 結論的な質問になると思いますけれども昭和四十八年七月の衆議院外務委員会の小委員会におきまして「海外子女教育等に関する件」ということで決議がなされておるわけでございます。その中に、個条書きにいたしまして六項目ばかりの問題点が書かれておるわけでございますが、その内容につきまして全部細かく言うと時間がございませんけれども、その後どのように実現されているか、その概要をお伺いいたしたいと思います。
  20. 越智啓介

    越智説明員 お答えいたします。  日本人学校は、現在、現地在留邦人が共同してまず設立して運営を行っているものでありますが、政府としても、海外子女教育重要性にかんがみて従来よりこれに対する種々の援助を行っており、今後ともその充実を図っていく所存でございます。この決議の趣旨を踏まえてやっております。  まず、海外子女教育については、この決議に基づきまして関係予算の大幅な増額を図り、必要に応じて全日制日本人学校新設、たとえば五十二年度においてもアルジェほか四校新設の予定でございます。現在までに全日制は四十五校できております。それから補習校も現在までに六十五校できております。そして、派遣教員の増員、施設教材等整備拡充、こういう方向へ向かっております。  それから、派遣教員は大多数が公立学校教員から成っておりますので、各都道府県身分上の扱いが県によってまちまちになっております。公務上の災害その他で非常に問題があるので、現在文部省とこの問題について前向きに鋭意検討中でございます。
  21. 関谷勝嗣

    関谷委員 その中で一番問題になってくるのが、先ほどおっしゃいました日本人学校への派遣教員の問題であろうと私は思うわけでございますが、いまの制度によりますと、各都道府県公立学校教員に委託しておるわけでございます。そんなことでその身分関係が非常にまちまちです。その内容を見てみますと、県から派遣される場合に、研修出張という形で出ている場合はいい方でございまして、ほかは特別休暇だとか、あるいは極端に休職、そしてまた職務専念義務免除という形などで出ていっておるわけでございまして、その身分が非常に不安定な状態にある。そういうことで、五十一年度の総数においても、四百四十八名の定員といいますか、その人数が必要であったのでございますが、現在のところ四百二十四名と、二十四名も不足しているということが起こっておるわけでございます。先ほど鋭意努力しておるということでございましたが、その内容をもう少し詳しくお話を聞かせていただきたい。そういう派遣教員が喜んで行ける体制ですね。その定量が足らないような状態が起こらないように、どういう努力をされているか。
  22. 越智啓介

    越智説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、研修出張が二百三十六名、職務専念義務免除が九十七名、特別休暇が十三名、休職が三十七名、これが公立学校の場合でございます。国立学校の場合は出張が十七名、私立学校教員その他が二十四名、合計四百二十四名という形になるのですが、これは、実は本年度も文部省と大いに詰めまして、人事院、大蔵省、自治省といろいろと検討しております。いまいろいろ案がございますけれども、最終的には、身分保障のため来年度新しい法律を出すか、要するに、行く場合には国家公務員として行けるような形にする、あるいは地方公務員国家公務員をダブらせて行かせる、そして帰ってきた場合に戻れるような体制にするとか、行っている間は国がこれをすべてあれするとか、まだ文部省とわれわれの間でいろいろ案を練っておる最中でありまして、われわれとしては全力を挙げてこれを関係各省と相談してやっていきたい。もう一つのやり方としては、現在、教育の問題は、特に外国の、相手政府がございますので、それをある意味では刺激しない形の方がいいという議論もございます。それは事業団とか、そういう形で形を変えて出すということも一つの案として検討されておりますが、いまいろいろな案について利害得失を検討しておる最中でございます。
  23. 関谷勝嗣

    関谷委員 そのように、五十二年度では日本人学校が五十校にふえるということでございますし、ますます海外へ出る職員数、その子弟も当然ふえてくるわけでございますので、公務員という立場に早くしていただくようにお願いをいたしたいと思います。  それから、これは一万八千円というふうに一律になっておるわけでございますけれども文化教育環境の非常に悪い、外務省で言っております瘴癘地、その公館が今後とも外交関係を広めていく上においてもふえてくるわけでございまして、そういうことで経費も非常に高くなってくると思うわけでございます。これは、そういうことを見越して、一律でなくしてブロックに分けていくとか、現在の状態でそういうふうにしていく、逆に言うとそれが教育の均衡だろうと私は思うわけでありますが、そういうお考えはございませんか。
  24. 松永信雄

    松永(信)政府委員 子女教育に必要とする経費については、できるだけ必要である額は全額手当によって見てまいりたいと私ども基本的には考えているわけでございます。この問題は、必ずしも先進国、あるいは不健康地健康地の間の差別というものとは関係なしに考えるべき問題だろうと思います。  ただ、事実上は、いまおっしゃいました瘴癘地においてはよけい教育関係経費を必要とする。たとえば、そこには学校がなくて、よその国の学校に入れなくてはならないというような場合が間々あるわけでございますから、非常によけいにかかるという状況はあるわけでございます。こういうことにつきましては、私ども今後ともなお一層の努力をいたしまして、子女教育に必要とします経費負担は、国ができるだけめんどうを見るという方向努力してまいりたいと考えております。
  25. 関谷勝嗣

    関谷委員 子女教育の件に関しましては、そのあたりで終わりたいと思います。  次に、中近東、アフリカあるいは中南米地域に対しての資源の開発、また、外交関係設定に伴って新しい国の承認というふうに、いわゆる大変な土地柄瘴癘地への職員もますます今後ふえてくると思うわけです。そして、そういう方々は、精神的にそしてまた肉体的に想像以上の負担が非常にあると思うわけでございます。マラリアなどの地区へ参りますと、それにかからないためにどうしてもキニーネなどを飲む。それを飲みますと肝臓が非常に悪くなる。肝臓も悪くしたくないし、またマラリアにもかかりたくないというようなことで——私も初めてこの瘴癘地という字を見たわけでございますが、これまた、実にむずかしい字でございまして、調べてみますと、なれない気候、風土のために起こる伝染性の熱病というふうに書いてあるわけでございます。辞書を調べますと、偶然その横に奨励、激励するとかそういう意味言葉がございまして、私はその方の意味かと思いましたが、そういうむずかしい言葉を使わなければならないほど大変な地区が今後ふえてくると思いますが、そういう地区勤務する人に、特殊勤務地手当というような独立した手当をつくってあげなければ、行く人も非常にいやだろう。そしてまた、現実に聞いてみますと、外務省でも、そういうところに行きそうな人は、いろいろ理由をつけて延ばしているというのが現状らしいのですけれども、そういう特別な手当考える必要があるのではなかろうか。その点いかがでしょうか。
  26. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいま御指摘がございましたいわゆる瘴癘地——瘴癘地という言葉が適当でありますかどうか、私どももその点は問題があるかと思っておりますけれども、いわゆる瘴癘地勤務する職員が最も頭を悩ませます問題の一つに、健康管理の問題があるわけでございます。健康を犠牲にしながら勤務しているというのが現在の実情であると思います。この健康の管理につきましては、やはり国が十分の手当てをして、後顧の憂いなく勤務させるということが、最も基本的な問題であろうと思います。このために、現在の在勤手当の額を決定いたします際に、不健康地の度合いというものもその考慮の一部に含められております。しかしながら、そういう在勤手当の中で部分的に考慮するということでは不十分でございまして、私どもといたしましては、こういう地域勤務します職員健康管理制度をより完全なものにするということが必要かと思っております。このために、健康管理に必要な休暇を十分与える、あるいは健康診断、あるいは先進医療施設の十分備わっております地域に行かせまして十分治療させるとか、そういう健康管理制度を完備させるという方向で今後一層の努力をいたしていくべきものと考えております。
  27. 関谷勝嗣

    関谷委員 それで、給与体系の問題は先ほどの質問で終わったわけでございますが、先ほどの衆議院外務小委員会決議された中にありましたことで、たとえば、外国大学日本大学単位をお互いに認め合うということはその後どのような状態——実際に向こうでとった単位日本大学で使うというか、認められているのかどうか、そのことをちょっとお聞きしたいと思うのです。
  28. 光田明正

    光田説明員 昭和四十七年度より三十単位を限って、国内、国外問わず、他大学で勉強した単位をも認めるようにという制度が発足いたしました。したがって、それに応じまして、たとえばカリフォルニア大学と横浜国立大学単位の交換をしようという話をしているとかいうような事柄がございます。  簡単ながら……。
  29. 関谷勝嗣

    関谷委員 その子供が帰国して、今度は日本学校教育に直ちに順応できるかどうかというようなことでございますけれども、そういう子供さんの帰国地域というものを調べてみますと、首都圏が大体一年間で四千五百名、そして阪神の方が九百八十名ほど帰ってきておりまして、特に東京都がずば抜けて多いわけでございます。ですから、つい最近の新聞に載っておりましたけれども、特に東京都では、今年から都立の三田高校に二十名ほどの海外帰国の生徒を受け入れる門戸を開いておるわけでございますけれども、こういうような国の施策が私は今後ますます必要になってくると思うのですが、この件に関しまして、文部省考えはどのような状態でございましょうか。
  30. 川村恒明

    川村説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘をいただきました海外から帰ってまいります子供たち受け入れという問題、これは私ども文部省として全力を挙げて取り組まなければならない問題だというふうに考えているわけでございます。  そこで、現在では、ただいま御指摘いただきましたように、東京都の三田高等学校を初めとして、幾つかの学校にこの子供たち受け入れるための帰国子女教育学級というものを設けましたり、あるいは帰国子女のための教育につきます研究協力校というふうな制度を設けまして、帰ってくる子供の多い大都市を中心にそういう学校研究お願いし、また受け入れお願いしているわけでございます。  ただ、それだけでは非常に不十分である、今後海外から帰ってこられるお子さんの数が非常にふえるというようなこともございますので、五十二年度から新たにこういう子供たち受け入れを主たる目的とする私立高等学校設置につきまして特別の助成をいたしたいということでお願いをしているわけでございます。これは高等学校レベルが最も受け入れの問題が多いということでございますので、そういうふうな言葉のトラブル、いろいろな教育上の障害を持つ子供たちに対して特別の適応教育をやるということで、五十三年から受け入れを開始するということで進めている次第でございます。
  31. 関谷勝嗣

    関谷委員 大いにその点に関して努力をしていただきたいと思います。  いままでは、外地へ連れていった場合に、語学をマスターするという機会には恵まれるわけでございますけれども日本のような受験地獄が相変わらず続いておりますと、外地にいながらもどうしてもその受験のことが親御さんは心配になってくるというようなことで、本当に国際的な教養を持った優秀な人材をつくる機会が非常に少なかっただろうと思います。そんなことで、特別な受け入れ体制というものをつくってその点の問題を解決していただきたいと思うわけでございます。  したがいまして、外務省文部省の間の連絡、意思の疎通を欠かないようなそれだけの努力というものが実際にどういうふうに行われておるんでしょうか、そのあたりを聞きたいと思います。日本のいままでの悪い例でございますけれども、どうしても省と省の間は、どういうのでしょうか、範囲があったり、これはそちらだ、これはこちらだというようなことで、もう一つしっかりした連絡がとれていないと思うのでございますが、そのあたり……。
  32. 越智啓介

    越智説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、この問題は文部省外務省まさに一体となって取り組んでおります。現に、私の方の領事一課というのがこれを担当しておりますが、そこには文部省から一人出向していただいて、一緒に文部省会議を詰め、あるいは昼となく夜となく、一種の案ができればすぐお互いに飛んでいって検討し合う。これはまさにどっちが外務とかどっちが文部とかいう形じゃなくなって、渾然一体となって目下取り組んでおる次第でございます。
  33. 関谷勝嗣

    関谷委員 学校関係のことで最後にお尋ねしたいわけでございますけれども、今度は逆に、国費でこちらへ呼んでいる留学生がたくさんいると思うわけでございますけれども、現状として、その滞在期間とか、あるいは費用はどのぐらい出しているのか、そしてその後の効果というものを多少聞いてみたいと思うわけでございます。  私も三年半ばかりカナダの方へ留学したわけでございますけれども、そこでいろいろ勉強にもなりましたが、逆に言いますと、そこでいろいろ人種的な問題でいやな感じというか、そういうようなことを感じたことが多々ありました。そういうようなことで、国費でそれだけの努力をして諸外国から留学生を受け入れても、それが逆効果を持つようなことがあったのでは大変なことでございまして、どれだけの留学生に対するアプローチの仕方といいますか、それだけの細心な努力をしておるかというあたりを教えていただきたいと思うわけでございます。
  34. 光田明正

    光田説明員 国費留学生、現在千五十名日本に在留いたしております。そのうち八割が研究留学生と申しまして、大学院レベルの学生でございます。  経費につきましては、五十一年度、月額でございますが、研究留学生十二万一千円、学部学生八万八千円でございます。五十二年度から上げまして十三万三千円、九万七千円とする予定でございます。そのほか、医療費の八割は支給することにいたしております。  国費留学生につきましては、駒場の留学生会館というのを経営いたしております。それから日本語の教育の充実を図っております。それから宿舎の整備を年々進めてきておりまして、五十一年度には東京工業大学に留学生宿舎を建設いたしました。五十二年度には大阪大学に宿舎を建設する予定でございます。  帰国後のアフターケアといたしましては、文部省の補助金によってできております財団法人日本国際教育協会において、留学生が帰国後それぞれ専門の研究を進めるのに必要とする学術図書、雑誌等を購入して五年間定期的に送付し、帰国後も絶えず連絡を保つように努めております。予算は年に約九百万円でございます。  また、五十一年度には新たに帰国外国人留学生短期研修制度というのを発足いたしまして、一度学びまして帰国した留学生を十人ばかり招いております。  お尋ねのその効果等につきましては、担当官が募集の際立ち会いに現地に行きますときなどに、かつての留学生を集めて様子を聞いたりいたしておりますと、なつかしい、感謝しているというような発言がよく聞かれるところでございます。以上。
  35. 関谷勝嗣

    関谷委員 ぜひ、留学生に対しては細心の努力をしていただいて、その効果を上げていただきたいと思うわけでございます。  次に、逆に国費による日本人学生の海外派遣ということでございますが、これは年に百六十名程度が出ておるようでございまして、また教員養成大学からも百名少々の人が出ていると思うわけでございますが、こういう制度はますます大きなものに広げて、国際人——私は、国際人をつくるとか国際感覚を持った人をつくるとかいうことも大きな目標ではあろうと思うわけでございますが、それよりも、外から日本というものをじっくり見て日本立場というものを理解して、本当に真剣に日本考える人物をつくる、そういう方向に向かっての最大の努力をしていただきますようにお願いをいたしておきます。  次に、この法案とは離れるわけでございますが、全般にわたりましての大臣の所見をいろいろお伺いさせていただきたいと思うわけでございます。  ちょうど日米の新政権が発足いたしまして早々に日米首脳会談というものが開かれるわけでございますが、これは非常に時宜を得た有意義なものだろうと思います。日本とアメリカとの関係も、戦後三十年たって非常に円熟の域に入ってきておると思いますが、これに臨みます大臣の基本的なお考え方、それをお伺いいたしたいと思います。
  36. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日米会談に臨むわが方の考え方という御質問でございます。  両国の首脳がとにかく新しい政権をつくったという段階におきまして、なるべく早く隔意なき意見の交換をぜひ行っていく必要がある。これは、今日日本が世界におきまして占める責任と申しますか、こういったことから考えますと、たとえば国内の政策を決めます場合におきましても、日本だけで離れて決めるというよりも、どうしても広い世界的な視野の中で政策決定が行われなければならない。そういう観点から、世界的な視野のもとに政策を決めるということになりますと、日本とアメリカの両首脳が隔意なき意見を交換されるということが何よりも必要なことである、こう考えておる次第でございまして、また後ほど御質問があると思いますが、議題等も、特にどういったものをということをまだはっきり決めてあるわけではございませんけれども、特に、今日世界経済が大変苦しい立場にある、先進国相互間においてもそうでありますけれども、また南北間におきまして、特に開発途上国のオイルショック後のいろいろな問題で大変苦しい立場にある国が多いわけでございまして、これらの観点から両首脳に隔意なき意見の交換をしていただければ、こう思っておる次第でございます。
  37. 関谷勝嗣

    関谷委員 そういったお考えでぜひ努力をしていただきたいと思います。外交ということをいろいろ考えてみますと、日本の地理的な状態は外交の考え方に非常に影響する点が多いと思うわけでございます。日本の隣接する大陸は中国、ソ連という二大社会主義国家ですし、また朝鮮半島は南北に分かれて紛争がある。また南方の方には東南アジアといういずれも開発途上国がございますし、いわゆるインドシナの社会主義政権の誕生というような、体制とか立場の相違がいろいろあるそういう国に囲まれている地勢上の位置考えたときに、多面的な外交ということに特に留意してやっていかなければならないと思うわけでございますが、その点に対しまして大臣は特にお考えがございましょうか。
  38. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本の外交上、東南アジアあるいは東アジア、アジアの問題が大変大事であるということはいま仰せられたとおりであると思います。そして、今日アジアにおきましても体制を異にする国が非常に多いわけでございますので、日本外交姿勢といたしましては、これらアジアの諸国と、体制を同じくするものあるいは異にするものを問わずやはりわが国が友好を深めていくこと、これがわが国の平和憲法下の外交姿勢であると考え、いずれの国とも国交を積み重ねてまいるという根本的な考え方で臨んでいくべきである、こう考えております。
  39. 関谷勝嗣

    関谷委員 私が意図いたしましたところを大臣に先に答弁されまして、次の一つ質問が片づいたわけでございますけれども、私も海外で生活しまして感じましたことは、日本の外交ももう対アメリカ、対ヨーロッパということ、これはもちろんいままで以上に緊密なものにしなければならないのでございますが、アジアの中の一つの国がわが日本だということを考えましたときに、もっともっと東南アジアに対して日本の外交というものを重点的に広げていただきたい、それを非常に感じましたので、ぜひ東南アジアに対しましてお願いいたしたいと思うのです。  その一つの例といたしまして、内容は私も詳しく知りませんけれども派遣いたします大使にしても、アメリカとかヨーロッパへは、どう言うのでしょうか、大物と言うとどういう人が大物かと言われますとこれも基準がむずかしいでしょうけれども、そういうアメリカ、ヨーロッパだけではなくして、東南アジアに対しても特に大使の派遣にも配慮を行うべきではなかろうかと思っておるわけでございますが、その点はいかがでしょう。
  40. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまのお話でございますけれども、やはり大使はそれぞれその人によりまして得手不得手ということ、あるいは適材適所ということがあろうと思いまして、いま仰せられたとおりアジアの外交が大切でありますから、そういう観点で大使の人事等も行っておるところでありますし、これからもぜひそうしてまいる所存でございます。
  41. 関谷勝嗣

    関谷委員 次に、そういう考え方に基づきましてASEANの問題につきまして御質問をさせていただきたいと思うわけでございますけれども、ついせんだって外務省のある方の講義を聞きましたときに、ASEAN諸国は中国、ソ連の方へもいろいろ手を伸ばしていった、しかしそれも満足するような結果が返ってこなくて、今度はアメリカ寄りの姿勢を打ち出しているところも大分出てきた、ところがアメリカにおきまして生まれましたカーター政権は、東南アジアに対しましてはかつてのような重点的な考え方を持っていないということで、ASEAN諸国は日本に対して非常に期待をしている。ですから、いまの時点に日本がそういうASEAN諸国に対してもっと機敏なるアプローチの方向を打ち出すべきではなかろうかと私は考えておるのでございますが、何か特別なる外務省の現在の態度といいますか、考え方があるのでしょうか。
  42. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ASEAN諸国がわが国に大変大きな期待を持っておることはいま仰せられたとおりでございます。符にベトナムの以後、ASEAN諸国の中に新しい動きが出ておりまして、特に自由体制を維持しておるASEAN諸国が団結をして自分たちの抵抗力を強めなければならないということを非常に真剣に考えておると思う次第でございます。特に日本に対しましては、——自国の力をふやす、力の中ではやはり経済力が非常に大事だということを考えておられるのではあるまいか、そういった意味で、経済的な面におきまして特に日本に対する期待が非常に強まっておると考える次第でございます。
  43. 関谷勝嗣

    関谷委員 ぜひそういったことでASEAN五カ国に対しましてもアプローチしていっていただきたいと思うわけでございまして、先進首脳会議に力を入れますのもいいわけでございますけれども、東南アジア開発閣僚会議とかあるいはアジア太平洋協議会というものがあるわけでございます。この内容に対しまして、関係各国がその活動に対して熱意を失いつつある。アジア太平洋協議会などにおきましては、ある部分の活動が七三年以降事実上停滞しているような状態が続いておるわけでございますが、ぜひそのあたりに力を入れていただいて、いろいろな会議が十分に討論されて実のあるものになるような努力を今後ともしていただきたい、そのように思う次第でございますが、そういういろいろな会議に対してはどういうような努力外務省がされているか。
  44. 中江要介

    ○中江政府委員 先生御指摘一つ目の東南アジア開発閣僚会議につきましては、御承知のようにこのメンバー国の中にインドシナ諸国が入っておったわけですが、そのインドシナ諸国がベトナム紛争の終結に伴いましてそれぞれ体制を変えてまいりました。そういう事情もございまして、この東南アジア開発閣僚会議を、新しい体制のインドシナ諸国を含めてどういうふうに開催していくのがよかろうかということは各国とも慎重に検討しているところでございまして、現在までのところ、インドシナ諸国の方ではまだそういう会議に強い関心を示すに至っていない。つまり自国の再建に専念しているという状況でございますので、いまのところはしばらくこの状況を見守るのが適当ではないかというのが多くの国の考え方でございます。  アジア太平洋協議会につきましては、最近御承知のように太平洋諸国つまり南太平洋諸国もアジアの一つの部分ということでアジア太平洋のグループというものに関心が集まってまいっておりますので、日本政府といたしましてもこのアジア太平洋協議会の動き方については関心を持って、積極的にできる面があれば協力していくべきだという考え方を強めているのが現状でございます。
  45. 関谷勝嗣

    関谷委員 次に、EC貿易の不均衡の問題でお尋ねしたいわけでございますが、ついせんだっても造船の問題で会議がなされたわけでございますけれども、非常にジレンマ的なむずかしい問題が含まれているようでございまして、日本国の対EC輸出の拡大についてどのような立場を今後日本がとっていこうとしているのか。たとえば造船においては、船価を五%アップして自粛の姿勢を打ち出していっておるわけでございますし、極端に言えば操短もやらなければならないのではなかろうかというふうにも言われている。造船界自体は不況であるわけでございますが、対EC関係に対しては日本の輸出の関係が八五%も占めてしまうというようなことで、フィフティー・フィフティーにやっていこうというような結論になったようでございますけれども、不況である、それにまた海外からそういうふうに締めつけがだんだんひどくなってくる、それに対して外務省はどういう姿勢で臨もうとしているのか。
  46. 本野盛幸

    ○本野政府委員 先生御指摘のとおり、私どもにとって非常に苦しい問題でございます。国内の不況、ことに造船関係が当面している苦しい状況というものがございますし、またヨーロッパにおきましてはいまのECとの貿易インバランスがある。去年では輸出七十二億ドル、輸入三十六億ドルで、これは貿易収支だけでございますけれども、その赤字幅は三十六億ドル、ちょうど半分になるわけでございますけれども、それは全体の貿易額の約三三%です。日米貿易についていろいろ大変だという認識もございますけれども、これはまだ二〇%程度である。しかも、ヨーロッパにおける状況が、不況によります社会的な問題、失業、それからまたいわゆる政治的な意味でも先行きに対するいろいろな不安がございますので、非常にむずかしい環境になっている。その中で、私どもとしてはやはり、自由貿易のために国内のそういう保護貿易主義的な突き上げに対して闘っている各国の政府立場を少しでも容易にすることによって、この保護主義的な波が大津波にならないような方向にある程度節度を持った姿勢をもって問題に対処していくということでございまして、造船の面におきましても、そういうようなことで、いま御指摘がございましたような方法によりまして、向こうの状況を慎重にながめながらぎりぎりのところで対処していくという姿勢で臨んでいる次第でございます。
  47. 関谷勝嗣

    関谷委員 その造船の問題ですけれども、新聞等で見てみますと、日本がそれだけの非常に苦しい状態の中で努力をしておりますのに、何か運輸省の方へ英国の公使が来られて、イギリスは造船業界に対して政付の援助をやりたいというような話が出て、局長が、いや、そういうことは認めるわけにはいかないと言うようなケースがあったというようなことを新聞で見たりいたしましたが、そのあたりはその後どうなっておるのでしょうか。
  48. 本野盛幸

    ○本野政府委員 そのイギリスの公使は恐らくジェファード公使かと存じますけれども、謝敷局長のところに来られてどういうことを言われたか、私も直接その点を確認しておりません。ただ、一般的に申しまして、ヨーロッパの造船国、ECは軒並みでございますけれども、やはり何らかの政府による補助措置を考えておる。それをもってしなければ、生産規模を縮小しないといまの需要の減少というものに対応することはできないという認識がございますので、そういう方針で対応しておるというふうに承知しております。
  49. 関谷勝嗣

    関谷委員 時間が余りございませんのではしょって御質問したいと思うわけでございますけれども、そのようにEC関係で非常にトラブルが起こってきたりいたしますのも、一つの原因として、十分なる日本状態、いわゆる広報活動ですか、そういうものが行われていないことも一つの原因ではなかろうかと思うわけでございます。  造船ということに対しましては、日本人の技術の優秀なこと、そしてまた契約期間には必ず完成するというようないろいろな利点があるわけでございますから、そういうようなことを、造船だけではなくして、いろいろなことに対して、国際社会の相互の依存度というものがますます大きくなってきておるわけでございますけれども外務省はそのような広報活動ということを実際現状にしてどれくらいやっているのか、それを教えていただいて、ぜひその広報活動というものをもっと広げていかなければならない。そして特に、その広報活動も、私の想像しますところでは、アメリカとかヨーロッパが主になっているのじゃないかと思いますが、先ほど言いましたように東南アジア、中近東、そういうところにも特に力を入れて広報活動をやっていただきたい。その現状を教えていただきたいと思うのです。
  50. 本野盛幸

    ○本野政府委員 関谷先生御指摘のとおりでございまして、いまのヨーロッパの問題は、昔でございますと保護主義的な動きというものは、その競争相手によって影響を受けた企業が、政府に陳情して保護的なあれをする。ところが最近では、そういう社会的な問題になってきたということを背景にして、新聞世論が非常に激しく取り上げてきた。その根底には日本の事情に対する認識の不足があるということは御指摘のとおりでございまして、私ども、その点に対しまして、在外公館を通じても、また東京でもEC関係先進国の報道関係者との接触をなるべく緊密にとって、またヨーロッパからも招待の形で経済記者を訪日させるというような計画もやっております。幸い、最近ではヨーロッパでも、先般新聞に報ぜられておりましたように、先週フランスの日曜紙でジュルナール・デュ・ディマンシュというのが一面を割いて、きわめて公正な報道をした。ところが、そのいろいろな工作の中に、ヨーロッパにおける大企業が、向こうは向こうなりに新聞操作をして、かなり排日的なキャンペーンをやっているという事実も私ども掌握しておりますので、それに対してまたそれなりの対策も講じてまいりたいと思っておる次第でございます。
  51. 関谷勝嗣

    関谷委員 そういったことで、ぜひ広報活動を大きく広げていただきたいと思います。  最後に大臣にお尋ねいたしたいわけでございますが、ガットの事務局長が来られまして大臣もお会いになられたことでございますが、東京ラウンドの進め方について大臣としてどういう所信があるか、それを聞かせていただきたいと思います。
  52. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ロング事務局長が見えましてお目にかかりまして、また総理との会見も傍聴させていただいたわけでございますが、ロング事務局長としては、東京ラウンドの成功に並み並みならぬ熱意を持っておられました。わが日本といたしましても、日本で開かれました大会におきまして決められた路線でありますので、何とか成功に導きたい、こう思っております。  そのお話の中で、アメリカの新政権の御意向としても大変積極的であるということも伺っておりますし、いまオイルショック後に大変な経済混乱があったわけでございますけれども、これが各国が保護主義に走るというようなことになりますと、これまた不況を激化する方向に行ってしまうという危険もあるわけでありまして、今日の現状におきましてはなおさらこの東京大会をぜひとも成功に導きたい、そういう必要が非常に大きいのだということを、認識を新たにした次第でございまして、これから鋭意関係各省の御協力を得まして進めてまいりたい、こう思う次第でございます。
  53. 関谷勝嗣

    関谷委員 どうもいろいろありがとうございました。  最後に外務省お願いいたしたいことは、ぜひそういったことで各分野にわたりまして大いに努力をしていただきたいわけでございますが、対外姿勢として、どう言いましょうか、駆け引きではなくして、正しいことそして当然主張しなければならないことはどこまでも主張するという力強い外交というものを今後とも進めていただきますようにお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  54. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、木原実君。
  55. 木原実

    木原委員 きょうは法案に関連をして、主として外務大臣に当面の外交政策について幾つかお伺いをしたいわけであります。  先ほどもお話がありましたけれども、間もなく総理がアメリカに赴いて大統領との会談その他が予定をされていると承っているわけです。ただ国会としましては、参議院の予算の日程の問題もこれあり、手続はまだ終わっていない、参議院は予算の審議の上から見ても総理の訪米については反対であるという意思表明などが行われておる様子でございます。したがいまして、国会の中のそういう動きというものを前提にしながら、ただ政府側としてはそれでもなお日程として首脳会談を用意をされておると承っておるわけでありますけれども、こういう時期に訪米をされて大統領とお話しになる、首脳会談を行われる、そういうことになりますと、この会談で主たるテーマになるのは何か、あるいはまた日本側として主として強調したい点は何か、あるいはまた米側からわが国に対して要請があると想定されるようなものは何か、主としてテーマの問題についてまず見解を承っておきたいと思います。
  56. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 首脳会談におきますテーマのお尋ねでございますが、まだ先方との間でこういったテーマでという詳しいものまで決められておらないわけでございます。私どもは、両首脳が会見なさるものでございますから当然こういったことは問題になるであろうという推測でいろいろな準備を進めておるのでございまして、そういう点をまず御理解を賜りたいと思いますが、当然、今日の世界の経済情勢の中で日本とアメリカが果たさなければならない役割りは何かということがまず大きな問題になろうかと思います。これは、過去におきましても首脳会談というものが世界の経済政策を、うまく調和のある政策をとっていかなければこの不況がなかなか脱却できない、こういうことが主要な問題でありましたから、当然これは今回の会談におきましても大きな問題になるであろうというふうに考えるわけでございます。それと並びまして経済的な問題といたしましては、やはりどうしても先進国の間のいろいろな問題、そのほかに開発途上国の抱えておるいろいろな経済的な諸問題につきましての考え方もお話し合いが行われるであろう、こう考えるわけでございます。  それから二番目には、やはりアジアにおきます唯一の先進国と申しますか工業国といたしまして、アジアにおきます日本の責任を果たす上におきましてアジア政策を日本はこのように考えていくということ、それに対しましてアジアの国々がまたアメリカに対するいろいろな要望を持っておりますので、これらの点につきましても隔意なき意見の交換をしていただきたい、このように思っております。  それから、現在非常に問題になっております核拡散の問題がありますので、これにつきましては、先般井上ミッションを派遣をいたしたわけでありますけれども、なかなかこの問題は大きな世界的な問題でありますので、この問題につきましてもよく話し合いをしていただきたい。主としていま申し上げましたようなことが非常に大きな主要な問題であろうと思うわけであります。
  57. 木原実

    木原委員 問題を幾つかに分けてこの際お尋ねをしておきたいわけでありますけれども、まず最初に、大臣もおっしゃいましたように、日本の経済的分担といいましょうか、最近はスリーエンジンなどという言葉が伝わってまいりまして、世界的な不況脱出の新たな役割りと責任を日本にも求める、こういう声があるやに聞いております。ただその際、われわれがいまの現状のような中で、言葉の上では責任を果たしていく、分かっていくということは、せりふとしてはりっぱなわけなんですが、その可能性と限界ですね。私どもの見解では、日本状態そのものが意外にひ弱なところがあるわけです。弱いところがあるわけです。ですから、ずうたいは大きいわけですけれども、弱い側面をあわせて持っている。そういう日本の経済の体質などからいきまして、そういう大きな責任にたえられるのかどうか、そういう不安もあるわけであります。したがいまして、当然出てくるであろう日本の経済的な責任の分担、こういうことを考えます場合に、やはりその可能性と限界というものについては政府の側できちんとしたものをある程度持っておりませんと、個々の問題はともかくとしまして、総枠の中での可能性と限界といったようなことについての御見解はいかがですか。
  58. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いま木原先生が御指摘になりましたように、これは、今日の世界の経済の問題に対しまして日本が何をなし得るか、これが余り過大な期待を世界に与えるということはそれ自身いいことではありませんし、また日本自体の経済が破綻をするというようなことがあっては大変でございます。特に今日の経済としてやはり心配になりますのは、インフレの傾向というものはなお強くまだ残っておるわけでありますので、アメリカとのいろいろな話し合いにおきましても、インフレというものはまた逆戻りしたのではだめだということは大きな前提として忘れてはならないことであるということは当然のことであると考えておりまして、そのような意味で、日本の力の限界ということも十分認識しておくべきだろうということは御説のとおりだと思います。
  59. 木原実

    木原委員 大臣は最近まで行政の中で財政運営を担当されておられた方ですし、外務大臣としても非常に困難な経済外交の推進といいましょうか、刷新といいましょうか、そういう役割りを期せずしてお持ちになっている立場だと思います。私どもの心配いたしますのは、確かに日本が応分の責任を果たしていかなければならないという立場におることは、これはもう当然のことだと思うのです。しかしながら、おっしゃったように過大な責任を引き受ける、あるいはまたそれに便乗をしていく、国内的な要因を見ましてその可能性というものが一体どこまであるのだろうか。ある意味では、たとえば来年度の経済見通し等につきましても、政府がお出しになっていらっしゃいます六・七%の成長、あるいはまた国際収支の七億ドル程度の赤字などという経済見通し、これでさえも、明年度に向けての経済運営の姿を見ておりますと、果たしてこれが達成できるのかというような考えを国内的な問題として持っているわけですね。その上に、御指摘ありましたように、インフレにいたしましても諸外国に比べまして大変に高い、一歩誤りますと、責任分担はいいわけですけれども、そのはね返りで国内が参ってしまう、こういう危惧を私どもは抱かざるを得ないわけなんです。ですから、そこで国際的に果たしていかなければならない役割り、それから国内的な対処の仕方、幻想ではなくて、やはり国内の問題を土台に据えてどの程度のことができるのかというめどについてはかなりはっきりしたものを示した上での話し合いということがなければ、そう言ってはあれですけれども、背伸びをした形ですとかえって無責任のそしりを免れない。そういう点について、これは再度ひとつ御見解を承っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの御指摘はまさに本当に大事な点に触れられておると思います。ただ、今日までの情勢を振り返ってみましたときに、やはり諸外国から見ますと、日本が諸外国の景気の回復に伴いましてどんどん輸出を伸ばしたという点につきましては、これはかなり、表面的にそういう主張をするかどうかにかかわりませず、恐らく腹の中では日本はほかの国の景気回復を利用しているではないかというような批判があるのであろうと思います。そういった意味で経済政策がうまく合いませんと、むしろほかの国に被害を与えると言うと大げさでございますが、そういったことにもなりかねないわけでありますので、これから日本としては、むしろ諸外国の経済の実質的な発展に、日本も応分の、歩調を合わせて協力をしていくという態度は少なくとも必要であろうと思いますし、日本が今日世界の中で大幅な国際収支の黒字という実績を上げておるものでございますから、やはりその点は責任を果たさなければなるまい、こう思っております。  ただし、いま現実に問題になっておりますのが貿易の面だけに見られておるわけでございます。これは直接に各国に対して目に見えておるから非常に貿易の面が強調されますけれども日本は貿易外におきましても相当多額な支払いをしなければならない。アメリカに対しましてもあるいはヨーロッパに対しましても、相当な貿易外の支払いというものがあります。これらが総合されていまの円のレートというものは決まっておるわけでありますから、その点は私どもは主張すべき点ははっきり主張をして、国際収支の本当に総合収支のところで考えていただくように、これは日本としての立場は堅持すべきであろうというふうに考えておるところでございます。
  61. 木原実

    木原委員 お話に出ました貿易の問題ですけれども、責任分担というようなことと絡みまして、いずれにしましても片貿易の問題はアメリカにとりましてもECにとりましてもきわめて今日的な問題である、こういう問題もあるわけです。  話が少し飛ぶわけですけれども、昨日の報道によりますと、カラーテレビについてアメリカの国際貿易委員会で御存じのとおりの厳しい裁定があった。報道によりますと、きょうあたりそれの大統領に対する勧告が出るのではないのか、こういうような措置が報道されているわけですね。日本の業界としては大変に不満があるというわけですけれども、これもきわめて象徴的な問題ですね。首脳会談の議題になるかどうかは存じませんけれども、カラーテレビの扱い方の問題は、当然のことですけれども、アメリカとの関係で言えば鉄鋼の問題にも、あるいはまたわれわれの側の柑橘等の懸案の問題にも貿易上絡んでくる問題だと思うのですね。さしあたって、これは直接大臣の所管ではないわけでありますけれども、そういう問題をぶつけられているさなか、これらの問題については何らかのアプローチといいましょうか方向といいましょうか、考え方をお示しになる必要があるといいましょうか、御見解をお持ちでしょうか、どうでしょうか。
  62. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 二国間の経済的なトラブルと申しますか、こういったことにつきまして、今回首脳会談におきましてはなるべくそのようなことにとらわれないで、もっと大事な問題を集中的にお話し合いを願いたいと実のところは考えております。そしてこのような問題はやはり、もうこうなりましたので実務的にこの処理をしてまいりたい。これが政治的に大きく取り上げられるということは、むしろわが方としては余り好ましくないだろうというふうに思います。  ただ、モンデール副大統領が見えましたときにも、先方からもカラーテレビの問題が、これは本当に軽く触れられましたし、それからわが方といたしましても、カラーテレビにつきまして、あのような措置が、通商法上あるいは関税法上のいろいろな措置が現に進められておるということは、わが方の立場からいっても自由貿易主義のたてまえからこれは大変困ることであるというふうに、わが方からも触れたわけでございます。その結果が今日残念ながらあのような国際貿易委員会の採決と申しますか、決まったわけで、きょう恐らく勧告が出るのではないかという段階であります。しかし、これは私ども日本の輸出の形がどうも特定の商品に非常にかたまって急増しているという点に全く問題がないかというと、これは大変大きな問題だと根本的には考えておりますので、これらは実務的に解決を図りたい、こう考えておる次第でございます。
  63. 木原実

    木原委員 これは私もここで外務大臣相手にカラーテレビの一業種の問題にこだわるわけではないのです。しかし、この扱い方というのは、いずれにしましても、二国間の貿易収支の改善という問題について仮に向こうから問題が出されたときに、こちら側もやはり答えを用意しなければならぬと思うのですね。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 あるいはまたこの勧告等に基づいて他の商品にも及ぶ、つまりアメリカの新政権の対外的な貿易政策の方向をある意味では占うような要因がある。二国間の関係についても同様なことが言える。そういうようなことになりますと、これはどうもわれわれも、実務的に処理ということもおっしゃいましたけれども、政治的な問題としてやはり重視をしていかなければならない動向ではないか、こういうふうに考えるわけです。ですから、そのことを踏まえて、仮にアメリカと二国間の貿易収支の改善の問題について何か措置を求められる、話題になるといったような場合に、それに対する答えは用意をされるわけですか、どうですか。
  64. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私どもといたしまして、やはり今日のガットの体制のもとにおきます自由貿易ということ、それには公正なルールがなければならない、こういった根本的ないまの仕組みというものをあくまでも尊重しなければならない。そういう立場に立ちまして、むしろ経済政策の調整ということで臨むべきではないかという点につきまして、先般モンデール副大統領が見えたときも、そのようなことでいくべきであるということが福田総理との間で話が出ておりました。私どもはそのような方向で進みたい、このように考えて、日本としても貫くべき筋は貫くべきであるという考え方で臨みたいと思っております。
  65. 木原実

    木原委員 原則論はそうだろうと思うのです。しかし、具体的な形で問題が出てきているわけですね。それだけに私どもは、おっしゃったように経済政策の調整という実務レベルでの問題の改善というところに問題をおろして、ガットの枠の中でとおっしゃいましたが、ただそれだけで果たして処理できるだろうか。これは対アメリカだけの問題じゃなくて、ECの関係の中にも御存じのような問題が出ておりますね。あるいは日本の経済分担を問われる場合に深く関連をしてくる問題だ、こういうことになりますと、われわれも大臣のおっしゃる経済政策上の調整という形で処理をしたい。それじゃ中身はどうだということになりますと、これはかなりむずかしい問題があると思うのです。しかし、調整の方向はやはりある程度こちら側もきちんと持たなくちゃならぬと思うのです。それはお示し願えませんか。
  66. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 あくまでも自由貿易体制というものを守りながら、しかも現実的に処理を図らなければならないということは御説のとおりでございます。昨年の十一月以来、特にECとの間では個別的にいろいろな問題の解決を図ってきたところでございまして、この点は先方の事情とまた日本の事情をそれぞれお互いが本当によく理解し合って、何らかの緊急措置と申しますか、この急場をどうするかということにつきまして、それぞれの国との本当に腹を割った話し合いを通じましてこの緊急的な解決を図らなければならない。そういうことで、大きな筋としては自由貿易という筋を貫いていく、しかし、個別のトラブルが出てまいりましたときには緊急的な措置で何らかの解決策を図っていくということで、これはどうしてもケース・バイ・ケースといいますか、そういったことにならざるを得ないのでございますので、その点につきましてはそれぞれ本当に理解し合って解決策を見つけ出していく、こういう態度が必要であるということは申すまでもないことと思っております。
  67. 木原実

    木原委員 ECの問題につきましても、ある意味では一方的とも言うべき、ある意味ではわれわれの方にも問題があったと思うのですけれども、大変に手厳しい非難を受けている状態が続いているわけですね。そういう中で改めて責任分担は要求される、こういう立場にあるわけです。  ついでにと言ってはあれですが、お伺いしておきたいのですが、昨日でしたか、報道によりますと、吉野審議官がパリで、ECとの関係に対処するためにたとえば専任大使を置くとか、新しいECに対応するこちら側の政策機構、経済機構といいましょうか、そういうものをつくって対応したいといったような談話が見えていたようですが、そういう用意はあるのですか。
  68. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 まだそこまで具体的な話は進んでおらないわけでございますけれども、先方からの要望として、特にEC諸国からそういう声が出ているということは私も承知はいたしておるのでございます。
  69. 木原実

    木原委員 そうしますと、これはECの側から、日本側にECに対応する調整機関でもつくったらどうかという話があった、こういうことなんですか。日本側の対応として、EC問題は大変どうも複雑な様相を見せているから、専任の大使でも置いて、貿易上の調整機構みたいなものをつくって対応していく、こういう考え方ではなくて、EC諸国の側からむしろ要求されたということですか。
  70. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これは正式な要求とかということでございません。先般トライラテラルの会合がございましたときに、EC側のある方からそういうようなことを私自身が直接受けましたのでいま申し上げましたので、そういうまとまった正式なものでは毛頭ないと思っております。
  71. 木原実

    木原委員 ただ批判を言えば、EC問題についても何か後手みたいなものですね。問題がむずかしくなって、複雑になって正面から非難攻撃をされる、こういうような状態になって、何か後を追って対応していくような姿勢が見えるわけです。いままでも今日のような事態を招く要因がなかったわけではないわけですね。ある意味では、それはその都度処理をしてきたはずでしょうけれども、それがある意味ではたまりたまって、いまいきなりぶつけられているという姿をわれわれは見るわけですね。そうしますと、国民の側からすれば、経済外交不在という声になってあらわれざるを得ないわけです。ですから、専任大使を置くのがいいのか、調整機構を置くのがいいのか、これは別個の判断ですけれども、しかし、いずれにせよ、たとえばECについては将来のことも考え、現状も考えてそれに対応する措置、もしくはわれわれ内閣委員会ですから、機構とかなんとかいうことには関心を持つわけですけれども、対応する姿勢というものは考えていく余地はあるわけですか。
  72. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いまECに専属の大使が行っておるわけでございます。私が先般伺ったのは、そういうことよりも、EC各国の間を常時巡回するような役目の大使が欲しい。任地、任国にはそれぞれおる、またECはECの担当のがおりますけれども、各国を回って歩いて、それぞれの事情につきましてそういった機敏な対策がとり得るようなことをやってもらえないものだろうかというような話として、先般私はちょっと耳にしたことがございます。そういうわけで、特に貿易問題につきまして事前にといいますか、早目な対策がとり得れば非常にいいと思います。このような結果になる前に何らかの方法があればいいのでございますけれども、現在の自由貿易といいますか現在のたてまえで参りますと、事前にチェックするのはなかなかむずかしいということで、被害が現実に発生をしているというところになって、それに対する救済措置をどうするかということが論ぜられるような現在の仕組みでございますので、これを何とか外交努力によりましてそういった大ごとにならないように、今後も努力をいたすべきだと思う次第でございます。外交がどこまで入っていくかという点につきましては、なかなか微妙な問題があろうかと思います。
  73. 木原実

    木原委員 この際一言だけ申し上げておきたいと思うのですが、私ども幾つかの国を回りまして痛感をすることがあるわけですけれども、経済外交という範疇といいましょうか、取り組みの姿勢といいましょうか、個別的な問題については意外に深くタッチをされている。しかしながら全体的な流れといいましょうか、そういうものに取り組む姿勢が経済外交と言われる範疇の中で意外に薄い。ですからちぐはぐになります。それは石油ショックなどが起こったときもそうでした。あれ以来特にそういうことを痛感するわけですね。ですから、従来のいろいろなしきたりや、外交的にアプローチする限界というものはもちろんあるでしょうけれども、しかし、これだけ貿易によって飯を食っていかなければならない国としては大変な痛手を、あっちこっちでたたかれていて、そうして義務と責任だけは要求されるという立場まで追い詰められているわけですから、ある意味では、ECの問題と言わず対米関係もそうですが、それからまた後でお尋ねをしたい途上国等に対する援助のあり方なども含めまして、かなり広範な分野にわたっていままでの外務省の国際経済問題に対するアプローチの仕方、あるいは個々の貿易問題に対するアプローチの仕方を一遍洗い直してもらって、そうして必要なところにはやはり必要な対応の姿勢を次々と積極的に立てていく、そういうのが伴いませんと、仮にスリーエンジンだ、機関車だと言われてエンジンを巻かれても、対応するものが出てこないだろうと私は思うのです。国内的には非常な不安定な要素がある、こういうことですから、外交の枠の中で、経済外交というものについて既存のものについて一遍点検をし、洗い面し、いまの情勢に対応する新しい必要なものはやはりきちんとつくっていく、こういう方向で進んでもらいたいという、これは批評といいましょうか、感想ですけれども、いかがでしょうか。
  74. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 当然、いまおっしゃいました点、外務省といたしましても真剣に取り組んで改善の方策を考えたいと思います。
  75. 木原実

    木原委員 それから、関連をしまして、大臣おっしゃいましたアジアの関係の中にかかわる問題ですが、たとえば首脳会談の中で、アジアの問題について、特に開発途上国に対する援助、何か新しい案といいましょうか、考え方というものは用意をされておるわけですか、お持ちになっていらっしゃるわけですか。どうですか。
  76. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 まだ成案というものは持っておりませんし、また日本が援助を考えますときに、大変見直すべき時期に来ておるのではないかという気が私自身はいたしておるわけでございます。しかし、現在行われておりますのがいろいろな大変細かい法制の上に乗ってつくられておるものでございますので、これを根本的に見直すにはいささか時間がかかるような気がいたしております。  そこで、ことしの経済協力面におきましては、主体といたしまして、やはり無償協力といいますか無償援助に力を入れて増額を図った次第でございます。これでありますと、わりかた時期に応じた措置がとれるものでございますので、ことしの援助はそういった予算をお願いしたわけでございますけれども、これから、たとえば経済協力基金とか事業団でありますとか、あるいは輸銀の融資といった問題につきまして、これは私はできますならば、関係各省との御協力によりまして新しい方策を見つけ出す努力を私自身いたすべきであると考えておるわけでございます。
  77. 木原実

    木原委員 ここでも、何といいましょうか、アジアの工業国としての日本の分担といいましょうか、それが問われると思うのです。具体的には、経済援助というのもその一つの大きな柱だと思うのです。  アメリカの首脳と会談をする場合に、幾つかの下敷きはお持ちだと思うのですけれども、いまおっしゃったようなことも含めてアメリカ側に対してどういうような提案といいましょうか、考え方をお述べになる、つまり日本のアジアの中における責任を果たしていく上で、われわれとしてはかくかくの決意があるんだ、考え方があるんだ、ついてはアメリカもこうしてほしい、こうやるべきだ、こんなような話になるのかどうかわかりませんが、そういうことを想定をしまして、大まかな方向、アジアの中における日本の責任を果たしていく上での日本考え方、そういったものはどういうようなことですかね。お示しをいただけますか。
  78. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いま御質問の点につきましては、これは大変むずかしい問題でございます。それは恐らく今回も両首脳の間でいろいろお話し合いがあろうかと思いますけれども、今日の南北間の問題は非常に問題が大きくなっておるわけで、特に累積債務の問題は大変——とにかくオイルショック後の緊急事態を何とか切り抜けてまいりましたけれども、これから先どのようにしていけば世界の経済が保たれるか、こういう観点から当然考えられなければならない問題であろう、こういう問題とこれからの日本の政策というものはどうしても無関係ではいかれないと思う次第でございます。あるいはCIECの会議もいずれ開かれるはずでございますし、これらの会議に臨みますアメリカ側の姿勢というものはどうであろうかという点を今回はやはり何とかして私ども方向を確かめてまいりたい、その上で日本のこれからの対策を考えなければならない、そういう段階であろうと思うのでございます。
  79. 木原実

    木原委員 それはわかります。ただ報道によりますと、たとえばASEANの首脳会議、総理の出席が用意をされておるような報道があったり、あるいはまた外務大臣御自身がASEAN諸国といいましょうか東南アジア諸国を回りたいという報道なども見えております。ASEANの性格につきましてはわれわれも政府とは違った見解を持っておりますけれども、しかし東南アジアの諸国との平和的なと申しましょうか協力関係を充実さしていくということについては新しい意義があると思います。  そういうような観点から少しばかり伺っておきたいのですが、いずれにしましても、東南アジアの諸国の側の共通した要求は二つありましてね。日本の援助は乏しいぞ、少ない。それから、いずれにせよ片貿易で非常に収奪的だということと、それから援助をしていてもそれが余り民生に役立っていないといったようなことで、援助は与えながら不満を聞くというケース。それから確かに、どう言ったらいいんでしょうか、GNP対比で見ましても、総額が、地域のばらつきがあるにしましても、少ないといったようなことが、私どもが歩きましてもそういう声は共通した声として聞くわけですね。そういう状態があるわけですから、援助の問題を中心にしまして、ASEAN諸国の、一つは適切な会議等が開かれる場合に総理自身が今年度中にでも出席をなさるのか、外務大臣御自身が実情掌握をしてこれからの対応策を立てるためにも、東南アジア諸国をお回りになるのか、そういうスケジュールはお持ちですか。
  80. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 総理の御予定は、私いま申し上げるわけにはまいりませんけれども、福田総理自身としては大変な御熱意を持っておられますので、私どもといたしましては、総理が何らかの機会に、まあASEANの首脳が一堂に集まるような機会があって、そしてその首脳の皆さんがそろって招待をされるというようなことになれば、私は、総理は行ってくださるのではないかと観測はいたしております。私自身は適当ななるべく早い機会に各国を歴訪いたしたい熱意には燃えているわけでございます。しかし、それに際しましてASEAN諸国が何を求めておるか、日本に何を期待しておるかという点につきまして、やはり事前にもう少しコンクリートなものを得たいというふうに考えている次第でございます。
  81. 木原実

    木原委員 端的に言って援助計画、ふやせという共通の声があると私どもは承知をいたしているわけです。ただ、そのことに関連をいたしまして、私は東南アジア諸国への経済的な協力、それから援助一般は大変結構なことだし、改善をしていかなくちゃならぬという側面が多いと思うのです。ただ、ASEANという形になりますと、私はどうしても政府立場にくみすることができない。御承知のような政情の中で、どう言ったらいいのでしょうか、一つの連合をつくっているわけですけれども、やはり政治的な立場でいうものが濃厚であります。しかも、東南アジア全体の政治的な動きというものはきわめて流動的、その中で政治的な立場というものを持っている。端的に言えば、アジアの中に残っている冷戦的な、冷たい対立のあった時代といいましょうか条件といいましょうか、そういうものを背景にして動いていると判断をせざるを得ない。それはいいのですけれども、ただそういう、つまり政治的な背景を持った動きに対する経済協力ということになりますと、どうしてもそこに経済的援助が政治的援助に転化をする側面というものがあるわけですね。援助を受ける側は、その国の政府にとりましても政権にとりましても意味があると思うのですけれども、どうもせっかくのわれわれのその国に対する援助というものが、政治的に使われるといいましょうか、政治的に転化をされる。そうしますと、われわれの税金というものが本来の意味での、どこまでそれらの国々の経済の発展や民生の安定に役立っているのだろうかという危惧が残るわけですね。そういう複雑な絡み合いがありますから、私は東南アジア諸国の途上国にわれわれのできるだけの援助を惜しむものではありませんけれども、それが特定の政治的な偏りに媒介をされると、経済的な効率の問題も含めて、効果の問題も含めて疑念が残る、こういうふうに考えるわけなんですけれも、その辺の見解はいかがでしょうか。
  82. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本といたしましては、アジアの安定といいますか平和を確保するという、これは何よりも大前提でございます。そういった意味日本がまたASEAN諸国の問題を考えますときも、ASEANの人々の真の福祉の向上に役立つという、そういった観点でこの協力が行われるべきものであるということは私どもも心すべきことであろうと思う。  当然体制のいろいろな違いというものがアジアの国家間にはあるわけでございますし、当然わが国と体制を同じくするような国々にまた日本としても期待をかけられておるということも事実であろうと思うわけでございます。そういうわけで、どういう体制だから日本は援助するとかしないとかいうことでなしに、日本が何がなし得るか、また日本が何を期待されているかということも考えて、やはり現実的な経済協力を進めてまいるということで臨みたいと思っております。
  83. 木原実

    木原委員 こんな機会にことさらに申し上げるのは、いま国会の中でも韓国との関係をめぐって、たとえば癒着の問題であるとか、黒い関係が生じているとかということがいろいろ政治的な問題になっているわけですね。東南アジアの諸国の中にも、残念ながらやはりその種の問題が、少なくともうわさとしては絶えないわけですね。インドネシアにおいてもタイにおきましても——ども議院から派遣をされまして、一昨年でしたかタイへ参りましたときに、ちょうど例の学生騒動のさなかに参りました。われわれ日本から行った者としては面を覆いたいぐらいの気持ちなんです。進出企業と向こうの政府との黒い関係とか、当時の向こうの副総理の人と日本政府といいましょうか、黒い関係があるとかといったようなことがいわばあの騒動の背景の中にあって、それが新聞だとか町に流れるチラシなんかで出ているわけです。そうしますと、タイの中にいろいろな政治的な動きがあるということは、外国のことですから、言ってみればわれわれの問題外であるわけですけれども、しかし、その中に日本の経済援助に絡まる問題というのがある意味では打ち出されているわけですね。そういう状況の中で、われわれとしてはこれは面を上げて歩けないという思いを、与野党の同僚議員と一緒に参ったわけですけれども、体験をしたことがあります。  そういうものが生ずる背景というものについては、私は、この際に援助のあり方という問題について相当点検と改善を要するんじゃないかと思うのです。私ども考えでは、いま申し上げましたように、援助というものがどうしても政治的な媒介、仲立ち、そういうものによってやられ過ぎる、何かそういう思いがするものですから、せっかく経済援助一般については充実をさせなければならないという時点であるならば、経済援助のあり方についても——韓国の問題は後で少しばかりお伺いしたいと思うのですけれども、そのこととあわせて、途上国に対する開発のあり方ということについては、援助のシステムを一度行政的に洗い直してもらいたい、こういう気持ちを持っているわけです。そして、やはり必要な改善は立法措置を含めてやらなければ、ただわれわれの税金がむだになるというだけではなくて、援助がかえってわれわれをトラブルの中に巻き込んでいくという形にもなると思うのです。そのことで援助の姿勢が非常に問われていると考えておるわけです。御見解を少し伺っておきたいと思います。
  84. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本の援助が援助を受け入れる国にとりまして、いまおっしゃいましたような、何と表現していいでしょうか、あるいは正しくないようなことにそれが何かかかわり合いを持つようなことになりますと、私はこれは大変残念なことであろうと思います。当然のことながら、これからそのようなことが全く再び起きないように、これはもう厳重に対処していかなければならない、こう思います。  ただ、従来の日本の援助方式と申しますか、これは賠償以来日本人の役務で払われたという、それが日本のいろいろな援助の根本的なスタイルをなしております。そういうことから必ず日本の経済協力は日本の輸出入といいますか、貿易と一緒になった仕方になっておるわけでございます。そこに日本の従来からの商慣習といいますか、いろいろなことが絡み合ってくる危険があるというので、この点につきましては日本の貿易界あるいは経済団体の方から、海外に進出する企業のモラルを厳正にしようという動きも出ておりますし、そのような観点から、日本の援助のみならず、日本が進出する企業、これらが特に開発途上国におきまして正しい倫理の上に立った事業をしていただきたい。この点につきましては、経済団体の方も大変一生懸命やるようになっておりますので、これからは大分改善されることを期待しております。また、政府としてやるべきことは何かという点につきましても、鋭意検討いたしたいと思う次第でございます。
  85. 木原実

    木原委員 いずれにいたしましても、援助の方法ということにつきましては、これは本当に改善の余地が多過ぎるという思いをいたしております。別の機会にわれわれの側からも改めて提案その他をしたいと考えておりますけれども、改善の方向ということでわれわれも了承したいと思います。  それでは、ちょうど午前中の時間が参りましたのでこの程度で終わり、午後は、韓国の関係の問題、あるいは中国との条約関係の問題等について一時間ばかり伺わしてもらいたいと思います。  では、午前中は終わります。
  86. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  87. 正示啓次郎

    ○正示委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑を続行いたします。木原実君。
  88. 木原実

    木原委員 午前中に引き続いて、韓国をめぐる問題について、まず少しばかりお伺いをしたいと思うのです。  アメリカとの会談の中で、わが方から韓国をめぐるいろいろな問題について物を言われるという御用意はおありですか。
  89. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和の問題はわが国にとりまして直接影響の非常に大きい問題である、深いかかわり合いがあるということは、皆様方御了解いただけると思うのでございますが、そういった観点と、また、アジア全体としての平和を維持するという問題が大変大事だろうと思います。そういう観点から、福田総理とされましては、日本としての考え方をお述べになるだろうと私ども推測はいたしておるところでございます。
  90. 木原実

    木原委員 さしあたって幾つかの問題を抱えているわけですね。アメリカ側でも問題を持っている。たとえば地上軍の撤退の問題であるとか、あるいは人権の問題といったようなことでのアプローチがあるやにも聞いておるわけです。  そこで、在韓米軍の撤退という問題については、これはすぐれてアメリカと韓国との問題である、こういうふうに考えるわけなんですけれども、同時にそれがわれわれにとっても影響なしとしない。これまでの幾つかの報道によりますと、日本政府としては当初それには反対であるような意向が伝えられたこともあります。その後、韓国とアメリカとの問題である、こういうような見解が出されたというふうに認識をしておるわけでありますけれども、これはしかしまた個々の問題であると同時に、やはりそのことによって、たとえばアメリカの方はやや公式に、在韓米軍の撤退については韓国並びに日本と慎重に協議をしてといったようなコメントが見えておるわけですね。ですから、これは将来のことになるのか、総理がおいでになったときの話の中で出るのかは別にいたしまして、在韓米軍の撤退ということについて日本政府としてはどういう認識、考え方で対処されるのか、改めてひとつ御見解を聞いておきたいと思うのです。
  91. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アメリカの韓国におきます特に陸上部隊の撤退問題ということをカーター新大統領が選挙中にいろいろ主張をされておったということから、いろいろな論議が出てまいったことと思います。先般モンデール副大統領が見えましたときに、初めて先方の副大統領からはっきりした発言があったわけでございまして、それまではいろいろな推測の段階でいろいろな議論があったということで、私どもは副大統領が見えたときの発言を初めての政府の発言であろうというふうに受けとめております。  そして、そのモンデール副大統領の言われたことは、朝鮮半島の平和を損なうようなそういうようなことはアメリカとしてはやらないということ、そして地上軍の削減の問題につきましては非常に慎重に、しかも両国政府とよく協議をして行うものであるということをおっしゃっておりますので、私どもは、基本的にはこれは韓国とアメリカがいろいろお話をなさることだろうと思いますし、朝鮮半島の平和という観点からこの問題を日本としての考え方をまとめるべきではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  92. 木原実

    木原委員 在韓米軍の撤退という問題につきましては必ずしも新しい問題ではないわけですね。御存じのとおり、ニクソン・ドクトリン以来の問題でもあるし、一部撤退も行われてきたわけですね。アメリカの政策としては恐らく新政権がそれを継承をして進めたいという側面があると思うのです。ですから、いまさら新しい変化と言うのもおこがましいような感じもするわけです。しかしまた、あわせて同時に、アメリカ高官の正式なコメントの中には、在韓米軍を撤退させるということの中では、朝鮮半島の、言ってみれば南北の統一の環境づくり、こういったような側面もあるんだといったようなコメントがたびたび流れてきているわけなんです。それは政策の効果といいましょうか側面ですね。あるいはまた、そのことによって何か東西の話し合いの糸口をつくるんだというような考え方も出てきているわけです。ですから、アメリカの中にはそういう考え方があるということも、われわれも推測ですけれども、十分あり得ると思うのですね。と申しますのは、どうも世界の潮の流れは明らかに決まっているという感じですね。  そういう中で、後で少し伺いたいと思うのですが、その前に、もしそのことについて日本政府と協議をしたいというような申し出があるとすれば、当然のことですけれども、協議には応ずる、協議に応じた場合に、一体日本の場合はどういう立場で協議に応ずるのか、あわせてひとつ御見解を承っておきたいのです。
  93. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本の意見を聞かれたときにどうだというお話でございますが、福田総理もたびたび予算委員会の席上でも申されておりましたけれども、南北間のバランスという問題、これはまことに微妙な問題であろうと思いますが、このバランスが極端に崩れるというようなことがないようにということが根本的な考え方であろうと思います。このバランスというものはただ兵力だけの問題でもないということもあろうかと思いますけれども、兵力だけに限りましても、やはり極端にそこにアンバランスができましたときに平和が乱されるおそれがある。これが一番の問題ではなかろうかと思っておる次第でございます。
  94. 木原実

    木原委員 従来もそうですけれども、バランスの問題をいまおっしゃいました。必ずしも軍事的なバランスだけではないという側面も確かにありましょう。しかしまた軍事的な側面だけに限定をしましても、たとえば在韓米軍が抑止力として役立っているといったような場合には、当然核の存在ということを前提にしなくちゃなりません。ですから、たとえば米地上軍の撤退ということの中には核の撤退ということも含むのかどうかというような問題も実はあるわけですね。部隊の数が減りましても、たとえば強力な核が存在しているということになれば、それだけの軍事力の内容のバランスが保たれるという側面も実は一つございます。  それとあわせて、われわれのいつも心配することですけれども、それに伴って、たとえば日本の軍事的な側面での充実を求められてくる。あるいはまた日本の米軍基地ですね、日本に存在する、たとえば沖繩の基地あるいは岩国や三沢などを含めまして在日米軍の基地の使用の形態あるいはまたそれの充実、こういったようなものが韓国からの米軍の縮小、撤退に伴って求められてくる要素を考えなくちゃならないとわれわれ考えるわけですけれども、その点についての政府側の配慮、用意、そういうものはおありですか。
  95. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国の米軍の一部削減が行われるかどうか、これからでございますけれども、それが日本に駐留している米軍にいかなる影響を及ぼすかという点につきまして、これはまだ具体的な計画は全くない段階でございまして、何とも申し上げようが、実のところ用意がないのが率直なところでございます。  それから、私どももともとの発想は、韓国におきます南北の力のバランスを損なわないような形で行われるのであればこれが日本の国に——これは日本自身の自衛力というものは国力国情に応じまして逐次充実を図るべきだと思いますが、日本の駐留米軍にどう影響を与えるとは、直接的な影響はいまのところはないと考える方が妥当じゃなかろうかと想像しておるところでございます。
  96. 木原実

    木原委員 何といいましょうか、そういう面での影響をわれわれもこうむりたくないという、私どももそういう立場です。ただ、大臣しばしばおっしゃるようにバランスを壊さない範囲、こういうことになりまと、バランスの中にはある意味ではアメリカの極東軍事体制全般にかかわる側面もあるわけですね。それからまた、バランスを損なわないということになれば、当然日本の肩がわりすべき面、新しく分担すべき面、米側からすればそういう期待というのは当然起こるわけですね。それが具体的にはどうなるかということは、これはおっしゃるようにこれからのことでもあるし、そういう影響はこうむりたくないというわれわれの立場もあるわけです。ですから、バランスということになるともっと限定をして、韓国の中だけのバランスを維持するという形でたとえば縮小をしてもらいたい、こういう希望は当然われわれの側にあるわけですね。ですから、もしこの種の問題が出たときに、われわれとしては、少なくとも日本が軍事的な分担を求められているということについてはこれは応じられない、あるいはまたこれ以上日本の、たとえば沖繩基地等を含めて米軍基地が、在韓米軍の撤退に伴って使用頻度、使用形態、こういうものが著しく変わるということについても、これはわれわれとしては引き受けることができない、こういうような立場というものは維持できるんですか、主張できるんですか、どうですか。
  97. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これは私ども素人でありまして、戦術戦略関係のことはよく存じませんけれども、私どもはやはり現在の韓国に駐留しております米軍というものは、いま展開されておる位置等から考えましても、きわめて第一線に配属をされておると伺っておりますし、いまの直接的なバランスというものは、やはり朝鮮半島自体におきますバランスというものが非常に重要なのではなかろうかというふうに考えております。広い意味ではいろいろな関係はあろうかと思いますけれども、第一義的には、朝鮮半島の中におきます力のバランスというものを重視してほしいというふうに考えておりまして日本自身がそれにかかわり合いはありますけれども、直接それが影響を及ぼすようなことはないことを私どもとしては期待をいたしておるわけであります。
  98. 木原実

    木原委員 これは大事なことなんで、再度お言葉を確認しておきたいと思うんですけれども、少なくとも韓国における米軍の縮小、移動、撤退等に関連をして、軍事的に日本が何らかの補てんをするとか、あるいは影響を受けるということがないようにしてほしい、こういう立場を貫いていくということですね。
  99. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの点では、全く同じ気持ちでおるものでございます。
  100. 木原実

    木原委員 あわせて、さしあたってわれわれの懸念が一つあるわけです。これは予算委員会の中でも同僚の上原議員が指摘をいたしましたけれども、すでに韓国に存在をしていると伝えられる戦術核のようなものが沖繩の基地に移されているんではないのか、こういう懸念が実はあるわけです。幾つかの状況証拠みたいなものが現地には存在をしている、こういうこともあるわけですね。ですから、これは文字どおりわれわれの国是に反することでもあります。しかしながら、その懸念というものが去らないわけなんです。しかも非核三原則が存在するにもかかわらず、なかなかわれわれが米軍の基地の中に立ち入ってそれを点検することができないという状況に置かれている。それがあるために、やはり韓国の中の状況の変化によって、沖繩の基地に戦術核が移されているんではないのか、移されてくるんではないのか、こういうような懸念があるわけです。この懸念を、少なくとも、ないんだという裏づけの保証みたいなものをきちんとしてもらいたいと思うんですね。どうでしょうか。
  101. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 予算委員会におきましてもただいまのお話がございましたわけで、その後アメリカ大使館の方にもよく確かめておりますし、そのような懸念というものはいま私どもは全くないというふうに考えておる次第でございます。沖繩返還のときの経緯から考えましても、沖繩に核が持ち込まれているというようなことはとても信じがたいことでありますし、両国間でもこれは必ず事前協議の対象であるということがはっきり約束されております。ただいままでそのような協議を受けたことは全くございません。そういった意味で、核は全く沖繩にはないということを信じておる次第でございます。
  102. 木原実

    木原委員 われわれの委員会では、改めて沖繩の米軍基地にかかわる確保法案と称する法案審議する日程になっておりますから、そういう場で改めてこの問題については詰めたいと思うんです。  ただ、いずれにいたしましても、残念なことながら基地が存在しているのかしていないのかの点検がほとんどできない。事前協議についても、たてまえとしてはおっしゃったとおりですけれども、なかなか、どう言ったらいいんですか、無視をされている側面と言いましょうか、手続として形骸化されているという側面もあるわけです。いずれにいたしましても、状況の変化に伴って核が持ち込まれるのではないか。それから核を貯蔵するような条件、環境があるとか、いろいろな状況証拠というものが特に沖繩の場合にはあるわけなんですね。ですから、私たちは、沖繩の基地には少なくともそういうことはあり得ないんだ——先ほど大臣のおっしゃったたてまえの御主張を裏づけるようなせっかくの機会ですから、日本立場というものを改めてアメリカに強調してもらいたい、こういうことです。  それからまたあわせて、沖繩基地が減らないわけですね。復帰をいたしまして五年たったわけですけれども、漸次情勢の変化によって基地は縮小していくんだ、亡くなった佐藤総理は返還問題のときに、口をきわめてそのことを主張された。しかしながら五年たってみまして、実質的な米軍基地の返還の態様というのはまことに遅々たるものがある。そういうことが重なって、あるいは核が持ち込まれるのではないかという不安がぬぐい切れないわけなんです。そのことを含めまして、核を状況の変化によっても持ち込ませない、それからまた、特に沖繩の基地の縮小については米軍側の努力を要請をする、こういう姿勢を持ってもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  103. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまおっしゃいました点につきまして、先方と会談する機会におきまして、もし念を押せという仰せでございますれば、当然のことながらそれは努力いたしてまいる所存でございますが、いろいろな状況証拠と言われるようなものにつきまして、これは電話番号簿でありますとかいろいろなお話があったわけでございますけれども、やはり部隊でございますから、核というものについてのいろいろな訓練というものはあり得ることであろうと思うのでございます。そういったときにどう対処しなきゃならぬかということは、やはり軍の訓練としては当然予想されることでございますし、そのようなことが、いろいろな状況証拠のようにおっしゃいますわけでございますけれども、そのようなことは私どもとしてはとうていあり得べからざることとは思っておりますが、念には念を入れて確かめてまいりたいと思っております。
  104. 木原実

    木原委員 これは念を押してもらいたいわけなんです。そういう不安というものが現実に存在をしておるわけですから、状況証拠がありますと、ある意味では非常にその不安と結びついて関心が高まるわけですね。だから、その不安については少なくとも一掃してもらいたい、こういう願いがわれわれの側にはあるわけです。これはぜひひとつ機会がありましたら、いまお言葉のありましたように念を押しておいていただきたい、こういうことです。  それからもう一つ、バランスの問題に関連をいたしまして、軍事的な協力ということについては日本はできない、あるいはまた限界がある、しかし経済的な韓国との協力については改めてこれはやはり充実をしていく、その面で協力をしようといったような考え方がおありなんでございますか。
  105. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国との間には、従来から韓国の国民の福祉向上のため経済的な協力を続けてまいったわけでございますし、日本と本当に一番近い隣国でありますし、経済的な面では福祉向上という観点から協力すべきであろう。これは従来の協力関係を続けてまいるということではなかろうかと考えております。
  106. 木原実

    木原委員 経済協力や対韓経済援助の問題が、御承知のようにいまさまざま衆議院でも問題になっている、こういう状況があるわけですね。ただその前に、いまおっしゃったようなことで、かつて佐藤総理が訪米をされたときに、いわゆる韓国条項と言われる韓国の問題はわが国の安全にとって緊要である、こういう趣旨の一つの認識の表明がございましたですね。この段階で、現状のような朝鮮半島の情勢、それからまた、韓国との関係等を含めまして、過去の問題について改めて日本側の現状認識について何か表明をするというお考え方はあるのですか。——問い方が少し持って回ったようになりましたけれども、佐藤総理がかつて訪米されましたときに、韓国条項といったような形で一つ日本側の認識を表明をされたわけですね。その後の変化も推移もあるわけです。朝鮮半島の問題が国連でも改めて論議の対象になるといったような経過もございます。そういうようなことを含めまして、今度訪米をされる機会に福田総理の口から、立場から、新しい韓国についての認識、そういったようなものが表明をされるのかどうかということをお伺いをしているわけなんです。
  107. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 佐藤総理、また三木総理と訪問されまして、記者会見の席で発表をされておるわけでございますし、今日の韓国と日本との関係につきまして、やはり現在におきます両首脳の認識というものを当然明らかにすべきであろうというふうに私どもはそう想像をしておるわけでございます。これは両首脳とのお話し合いのことでございますから、私どもはここでとやかく言うべきことではないと思うのでございますが、私どもの一応の想像といたしましては、従来から触れられておる、また日本としても大事な問題でございますので、何らかの表明が行われるのではあるまいかというふうに想定はいたしております。
  108. 木原実

    木原委員 端的に申し上げまして、私ども佐藤総理が表明をされましたような認識自体について非常に懸念を持ってまいったものなんです。どういう認識を表明されるかは、これは総理の御方針でしょうけれども、ただここで私ども立場を申し上げておかなくてはなりません。私どもとしては、わが国の政府の対韓政策というのは非常に偏った危険な道を歩いているのではないか、しかも、デタントに逆行する立場を歩いているのではないかという考えを消すことができないわけなんですね。私どもが持っておる朝鮮民族に対する原点とも言うべき一つの負い目があるわけですね。過去三十六年にわたって植民地として支配をしてきた旧宗主国としての責任といったようなものがあるわけですね。そういう立場に立ちますと、やはりわれわれの願いとしては、何よりもあの五千万の民族が二つの国家に分かれて、相互に民族の統一を願いながら二つの国家が対立し合うような状況にある、そういう状況の中であればあるほど、われわれとしてはこの平和な統一、それから隣国が安定をした穏やかな国として繁栄をしていく、そういう立場からできるだけの努力をする、責任を果たしていく、そういう立場があると思うんですね。ところが日韓条約ができまして以来、ある意味ではその分断国家の上に乗っかって、一方に援助あるいはてこ入れ、こういうものを繰り返し、その結果として北側を敵視する、こういう経過から来ていると思うんですね。しかしこれは考えてみますと、こういう形で存在をしておるのは一種の東西冷戦のいわば犠牲者といいましょうか、犠牲の形なんで、いまとなっては時代おくれではないのか。かつて七三年に朝鮮半島の問題が国連で論議をされましたときに、それを傍聴しておりました私の友人が、どうも会場の空気は、まだ三十八度線をめぐってそんなような問題が極東には残っていたのかといったような空気に支配をされていた、明らかにいま存在しておるような形というのは世界のデタントの流れの中では逆行したものだ、こういう認識を持って帰ったという話を聞いたことがあります。ですから、不自然なあの朝鮮半島の不幸な事態というのは、何らかの形で穏健な統一の方向を目指して努力をしていく時期に来ている。何よりも、そういう状況の中ではわれわれの国が、そのために偏ることなく民族の統一を目指して、真の繁栄を目指してできるだけの努力をしていく、そういう立場に立つのが至当ではないかと思うんですね。ところが残念ながら、わが国の政府はそうではなくて、韓国という立場を選択をし、そこにさまざまな力添えをしてきた。その結果が、かえってわれわれの立場というのは朝鮮半島の統一を阻害をする立場に回っているのではないのか、こういう考え方を私どもは捨てることができないわけなんです。朝鮮半島の政策全般の問題を含めて、韓国対策を含めて政策を転換をする時期が来ているのではないか、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょう。
  109. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 朝鮮半島で南北に分断されておるというこういう状態は、これは朝鮮民族にとりまして大変不幸なことであるということは、私どももよく理解をしなければならないことであろうと思います。そしてまた、いまおっしゃいましたように、長い間の日本の治世であったころの責任が日本にはあるのではないかという点につきましても、これは忘れてはならないことであろうというふうに思います。そして将来にわたりましていつの日か南北の統一というものが平和裏に行われるべきこと、これもだれも異議のないことであろうと思うのでございます。  ところが現状におきまして、現実におきます南北間の相互の不信というものは大変激しいものがある。これは私ども戦争というものを経験した人でなければわからないような事情ではなかろうかと思いますが、そういった事情にあることが現実である。そういう現実のもとで、いま具体的にどうしたらいいかということになりますと、やはり南北間がまずもう一度一九七二年のときのように話し合いの糸口を見つけて、とにかく対話を再開してもらいたい、これが何より本当に現実の問題としては、そういったことが一番必要なときであろう、そしてこれから逐次そういった方向に向けまして、外交面におきましてもいろんな努力がこれから展開される必要があろうというふうに思います。そういった意味で、南北の対立が何とか解消の方向に向かうことを私どもも心から願うものでございます。
  110. 木原実

    木原委員 おっしゃるように、そういう環境づくりをやる基本的な責任というものはやはりわれわれにあると思うのです。現実とおっしゃいました。その現実の中で、相対立する条件を逆にあおるような結果ですね、われわれの善意は別にして。やはりそういう政策の道を政府はとってきたのではないのか、こういう考え方を持つわけです。  お話を一つ聞いてもらいたいのですけれども、私は一九五八年に板門店に行ったことがあるのです。ピョンヤンの方から入りまして、ちょうど秋の十月ごろであったわけですね。国境の近くまで、三十八度線の近くまで参りますと、道端におばあさんがおりまして、車をとめて立ち話をしましたら、自分の娘は隣部落へ嫁に行っているんだ、昔は丘の上に立って、おおいと呼べば返事が返ってくるような近いところだ、ところがこういうものができちゃって、ともかく手紙を出しても一カ月もその上もかかる、音信は全くとだえているんだ。冗談ですけれども、カキの名所なんだそうです。カキを送ったら干しガキになった、こう言って、おばあさんが悲しいジョークを言っておりました。私は帰りまして当時の郵政省へ参りまして、それならば通信の手紙のめんどうくらいは日本が見てあげたらどうだ、博多に専用の郵便局でもつくって郵便船を通わせるぐらいの努力をやっても罰が当たらないのじゃないのかというようなことを当時の郵政省に申し入れたことがあるのです。それができないわけですね。いまでも恐らくあるいは北京回りか何かで通信のやりとりが行われている状況があるのです。ですから、われわれは余りにも韓国側につかまえられ過ぎている。そのことがかえって対立関係を緩和していく環境づくりをみずから妨げていることになるのではないのか。環境づくりのためには、やろうと思えばやれることはいろいろあると思うのですね。私ども立場から言わせれば、南の方にあれだけの援助をやるのならば、われわれは五千万の朝鮮民族に対して負い目を持っているわけですから、それならば北の方にも、仮に国交がないにしましても、あるいはまた国交を急ぐというようなことも含めて、やはり交流の問題なども含めて条件を緩和するなり、援助をできるだけのことをするなり、そういう道があっていいのではないかと思うのですけれども、これも必ずしも十分進んでいるとは思えない。ですから結果において日本政府の選択というのは南の側にてこを入れて、その結果、さらに三十八度線の対立を激化することに力をかしている結果になっている。そういうことはもうわかり切っていることですから、もうここまでアジアの環境も変化をしてきているわけですから、少なくとも戦争の落とし子であり冷戦の中でできてきたわれわれの韓国政策、こういうものを百八十度転換をする努力というのを始めるべきではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  111. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本と北朝鮮との国交はまだできないわけでございますけれども、民間の交流を積み重ねることによりまして、また国会におきましても先生方の御努力がおありでございます、こういった交流を積み重ねることによりましていくしか、いま道のない状況でございます。政府自身が動くということはできませんので、したがいまして、いまの段階といたしましてはやはり南北間が何とか話し合いを始めてほしい。それがありますと、これからわが国といたしましてもいろいろな方途が出てこようかと思うのでございまして、そういうようなことを期待しているというのが実情だと思います。
  112. 木原実

    木原委員 それは外務大臣、改めて申し上げることでもないのですが、中国との関係の場合もそうであったわけですね。ある意味ではわれわれの頭越しに米中関係が改善の道を少しばかりアプローチをし始めた。あれだけ戦争をやったベトナムにアメリカが改めて公的な使節団を出すように状況が変化してきておりますね。われわれの隣国の中にまことに不自然な状態が存在していて、おっしゃったように原点に立ち返って対立関係を緩和する環境条件を、少なくともアメリカに先んじてやる責任があるのではないのか。それからまたアメリカ自身でさえも、撤退の問題を含めてやはり新しい統一の芽を探そうという努力があるという報道にもわれわれは接しているわけですね。ですから、いまは先を見越せば、日本政府が北との関係を含めて政策を転換する時期に来ていると私は思うのです。それをただ従来の成り行きの中で一つ立場に固執をされるということになれば、これはもうわれわれは、外交のテクニックは存在をしても、外交というものは存在をしないのではないか、そういう思いがあるわけです。しかも、朝鮮はわれわれにとってベトナムとも違うわけです。中国とも違うわけですね。いろいろな意味で歴史的にも長いかかわりを持ってきた国なんです。ですから、この状況の流れがあるわけですから、もう一足突っ込んで北との関係の改善、改革を含めて朝鮮の自主的統一のための環境づくりに日本が新しい最善の努力の道を選ぼう、こういう方向というぐらいのものは打ち出せないのでしょうかね。どうでしょうか。
  113. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国と北朝鮮との一番の障害になっている問題は、北が南の政府を認めない、南という国を認めないというところにあるのでございます。これさえ踏み越えていただければ、わが国としても道が非常に開けるというふうに思うのでございまして、そういう意味から、先ほどくどいようでございますけれども、とにかく南北で話し合いを始めてほしい。話し合いを始めるということはやはり南の政府というものの存在を認めるわけでございますから、それだけはせめて北の方が寛容な態度をとっていただきたい。そうなりますと、もっともっと広く交流が進むのではあるまいか。そういうことを念じておるわけでございます。
  114. 木原実

    木原委員 いずれにしましても、そういう関係の中で、先ほども申し上げましたように、韓国との関係の中で、われわれの援助をめぐってさまざまな疑惑や問題が提起をされているわけですね。この問題につきましてはきょうここで特に詰めるということはありませんけれども、しかし、少なくとも韓国に対する従来の援助の方式、システム、こういったようなものについてはやはりこの機会に相当検討を要すると思うのですが、どうでしょうか。
  115. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 一般的に援助の問題につきまして検討を要すべきことが多々あるということは午前中も申し上げたところでございまして、ひとり韓国ということでなしに、この援助のあり方につきまして検討をさしていただきたいと思います。韓国につきましていろいろなことが予算委員会の場におきましてもずいぶん論ぜられまして、私ども、そのようなことが国会におきまして議論に出るということ自体大変恥ずかしいことであろうと思いますが、これらの点は、日本関係する業界なりのこれからの本当の倫理性と申しますか、そういった点を高揚することによりまして、いやしくもそのような疑いが持たれることのないように努力をいたしたいと思います。
  116. 木原実

    木原委員 これはもう御承知のように、たとえばソウルの地下鉄の問題というだけに限らないわけなんです。浦項製鉄所の問題や農村経済の再建のための援助その他、項目ごとに問題が存在をしておる。政府・与党の中からさえも、対韓援助のあり方については非常に疑惑が多いという声もある。あるいはまた皆さんの外務省御自身の中にも、その問題があるはずなんですね。一つの援助を決めていくケースの中にも、具体的には申し上げませんけれども、頭越しに枠が決められるとか、つまり汚職が発生するような要因というものは、疑えば切りがないぐらいなようなものが存在をしているわけなんです。ですから、これは、いずれにいたしましても、対韓援助の技術的なあり方、これは当然行政の責任の分野だと思うのですね。それらを行政の立場でもやはり厳しく洗い直し検討をして、改善の道を講ずる、少なくとも国民の疑惑を招かないようなシステムで援助をやっているのだ、こういうことを確立する姿勢をとってもらいませんと、これは問題は出しっ放しにされて疑惑だけ残って、これから韓国との援助関係につきましては、実は何をやっても疑惑が残るという状態があると思うのです。これからも、この国会の中でも、いろいろな委員会その他でこの問題がさらに検討されたり追及されたりすると思うのです。しかし、要は、われわれは援助一般を否定しているわけじゃないのです。援助のあり方やあるいはシステムそのものについて、少なくともやはり厳しい再検討をやりませんと、これだけ広がっている国民の疑惑に対して行政としてこたえる道はないと思うのですね。ですから、これは関係各省とも含めまして、対韓援助のあり方についてはいろいろな意味で基本的な疑念が出されているわけですから、少なくともそれにこたえていく道の姿勢をひとつ正してもらいたい、確立をしてもらいたい、こういう希望なんです。いかがでしょうか。
  117. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いまおっしゃいました姿勢を正すという点では、私ども全く賛成でございますし、そのためになすべき改革を要すべき点は改めるべきであろうと思います。いままでの経済協力のやり方が、たとえば韓国の問題をとりましても、韓国政府日本の業者と契約をするわけでございます。その契約というものは行政がどこまでタッチをすべきものであるか、そういう問題がありますので、それに関与いたします基金でありますとか輸銀でありますとかいうところは、そこへ金融をつけるような手段であるわけでございまして、そういうやり方でいままで経済協力がなされておるものでございますから、根本的には、やはり第一義的には、日本の請け負った業界、業者、この日本の業者というものが正しい、倫理性のかなった商売をしてもらう、事業をしてもらう、こういうことが何より一番大切なことであろう、こう私自身は思っておりまして、そういう点につきましては、関係の業界、産業界にもよく徹底をさせる、これが一番の必要なことではないかということを申し上げておるのでございます。
  118. 木原実

    木原委員 外務大臣、道徳の問題では必ずしもないと思うのですね。むしろ構造的なものであると考えざるを得ない要因がたくさんあるわけです。しかし、きょうはそれをここで追及する場ではございませんので、私たちの課題としてなお問題を残しておきたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても、余りにも疑惑の多い、それからまたいろいろな、頭越しに決定が行われるというようなことがしばしばあるという側面がわれわれとしては非常に疑惑を抱かざるを得ない要因にもなっております。これは改めて別の機会にもう少し議論をしたいと思います。  もう時間がありませんので、中国関係について少し聞いておきたいと思うのですが、アメリカの対中関係というのはかなり進展をしているというふうに御認識でございますか。
  119. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 最近、新聞紙上に債権債務のことが出ましたりいろいろしておるのを承っている程度でございまして、アメリカと中国との関係につきまして、私どもがとやかくここで申し上げることもどうかと思いますけれども、上海コミュニケというものが出ておりまして、この線に沿ってアメリカとしては臨むということを先般モンデール副大統領もおっしゃっておりましたので、私どももそのように理解をしているところでございます。
  120. 木原実

    木原委員 日中の関係でわれわれにとってさしあたっての大きな宿題は、条約の締結という問題があるわけです。この友好条約の締結という問題につきましてはわれわれも余りよくわからないのですが、先般、小川大使が帰国なさったときの新聞談話等によりますと、何かかなり明るい見通しがあるようなニュアンスの話も出ておりました。問題の覇権条項にかかわる側面が多いと思うのですが、外交ルートを通じての接触の中で、友好条約を締結する上で障害になっていた問題について前進が見られているのですか、それとも歩み寄りといいましょうか、そういうものが見られているのでしょうか、どうでしょうか。
  121. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 外交ルートを通じます折衝につきまして、ここで具体的なことは遠慮させていただきたいと思いますが、全般的に申しまして、両国とも政権が交代した段階におきまして、これからの見通しというものは、両国政府ともとにかく日中共同声明によりまして平和友好条約を締結するという方針が明らかにうたわれております。その線に沿いまして、お互いに条約締結につきまして努力をいたしておるところでありますので、私がこの席におきましてはっきりしたことが申し上げられないことはまことに残念でありますけれども、締結に向かいまして両国政府の満足できるようなそういった条件を見つけ出して、そしてなるべく早い機会に条約の締結を行うということで努力を続けてまいる所存でございます。
  122. 木原実

    木原委員 抽象的な伺い方ですけれども、早い機会にめどはつきそうなのですか。
  123. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これは福田総理の御指示もいただいた上でなければなりませんが、私どもとしては、大変希望を持って明るい気持ちでおるということを申し上げたいと思います。
  124. 木原実

    木原委員 新聞紙等は、いつも報道が大変先走るというか早いわけですけれども外務大臣の訪中もあり得るといったようなコメントが何か出ておった記憶があるのです。近いうちに、あるいは夏ごろ中国を訪問されるといったようなスケジュールはお持ちでございますか。
  125. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 具体的に時期等につきまして、まだ確たることを決めておるわけでございません。
  126. 木原実

    木原委員 われわれは問題になっておりましたたとえば覇権といったような問題については、やはり相互の歩み寄りといったようなものを期待をしたいと思うのです。私の感想をつけ加えておきますと、大変重大な条約でございまして、われわれも一日も速やかに条約が締結されることを期待をし、希望をしているわけなんです。しかしまた同時に、一国との友好を維持するために第三国を敵視をするということは、やはりわが国の方針としてはあってはならないことです。この辺に問題の覇権条項のむずかしさというものがあって、今日まで条約締結の交渉が長引いてきた、そういう側面があるというふうに認識をしておるわけです。  これ以上聞きますと、コメントできない要因が多いと思うのですが、いずれにいたしましても、相互に歩み寄って明るい見通しが立ちつつある、こういうふうに私どもは認識してよろしゅうございますか。
  127. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 やはり条約でございますから、私どもいまからいろいろ想像することはできないと思います。しかし、わが方といたしましても、誠意をもって努力をいたして、両者が満足のいく条件を見つけ出すべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  128. 木原実

    木原委員 これは大変重要な懸案の問題でございますから、どうぞひとつ努力をしていただいて、国民の了承できるような線で速やかに締結の努力をしていただきたいと希望を申し添えておきます。  もう時間がなくなりましたので、最後に一つ、二つ、これまた懸案の例の二百海里にかかわる問題です。  国連の海洋法会議が進行している中で、こともあろうに大国がそれぞれ二百海里の宣言を行う、こういうような事態に直面をし、その後、鈴木農相の訪ソの中で、日本自身も特定の海域にそういうやはり宣言といいましょうか、設定を行うんだというような報道が見えております。  一つ気になりますことは、海洋法会議の成り行き、その中で日本が主張してきたことがあるわけですね。しかし、どうもこの海洋法会議の中で、幾つかの懸案の事項について国際的な合意を得るということは非常にむずかしくなってきた、こういう感じがするわけですが、その成り行きといいましょうか、海洋法会議というものはこれからどうなるんだ、日本はそこで何をしようとするのか、その辺について少し御見解を聞いておきたいと思うのです。
  129. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ことしの五月の海洋法会議に臨む態度につきましては、あるいは条約局長から後ほど申し述べさせていただきたいと思いますが、二百海里漁業専管水域というものを大きな国々がもう実施をどんどんしてしまって、もはや二百海里漁業水域の時代が来てしまったということは、これはまことに残念でございますけれども、今日になりますと、それを尊重いたさなければ日本の漁業が操業できない、こういう事態になりつつあるのでございまして、こういう点を考えまして、日本といたしましては海洋法会議の結論を待った上で、わが国自身の二百海里の漁業水域を決めるべきである、こういうふうに思って、現在もそう思っておるわけでありますけれども、ことしの海洋法会議におきまして、そういう重要な問題につきまして結論が出ないという段階になりましたときに、日本だけが二百海里の漁業専管水域というものを実施しないでいくことはいかがなものであろうかというのが今日追い込まれた事態であろう、こう思うのでございます。そういった意味で、これは鈴木農林大臣、また十二海里の領海法の問題も鈴木国務大臣が担当しておられますので、私から余りここで申し上げるのはいかがかと思いますが、しかし、現実のところはそういう事態になりましたので、恐らく政府としても、ことしの海洋法会議の成り行き次第によりまして決断しなければならなくなるのではあるまいかというふうに考えておる次第でございます。
  130. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 大臣のいまお答えになりましたところに特に補足するべきことはないかと存じますが、先生もともと、海洋法会議の経済水域問題についてどういう態度で臨むか、こういう御質問でございましたので、若干補足させていただきますと、経済水域の二百海里の制度というものは、先生よく御案内のように、今度の海洋法会議の過程の中で出てきた考え方でございまして、海洋法会議の論議の大勢としては、沿岸国が二百海里の経済水域を持つべきである、そういう制度をつくるべきであるという点につきましては、いまやほとんど異議がなくなって、これは大勢を制した。わが国といたしましても、この一般的傾向は、趨勢は事実として受けとめて、その経済水域の内容が、たとえば航海の自由を害さないとか、わが国の遠洋漁業の利益を害さないとかいうような、わが国の国益を損なうことが少しでも少ないように、その草案の作成に努力をしておるという状況でございまして、この海洋法会議全体は、先生よく御案内のように、海洋の秩序の広範な問題を取り扱っておりますので、その進捗は当初予定したよりはおくれておりまして、ことしも五月の二十三日からまた始まるわけでございますが、果たしてそこで実質的な合意が成立し得るのかどうか、わが代表団としても最大の努力を傾けたいと思っておりますが、その見通しにつきましてはいま軽軽に判断はできないという状況でございます。ただ、その経済水域は、先生御案内のように、資源の問題のみならず、海洋汚染の問題だとか化学調査に対する同意の問題とか、いろいろな経済活動を含んだ概念でございまして、そのうちの漁業のみに関するいわゆる漁業水域の問題につきましては、アメリカ、ソ連を初め各国の設定が相続いておる、これが一般慣行化しつつあるという状況において、わが国がどう対処すべきかという問題が別途ある、こういうことでございます。
  131. 木原実

    木原委員 いずれにしましても、大きな問題が次々と出てきているわけですが、ただ、あわせまして、いずれにしましても、海洋法会議の成り行きを待って日本としては特定水域に漁業専管の水域の設定を行う、こういうふうに解釈をしておいてよろしいわけですね。
  132. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 まだ政府部内でこの問題につきまして結論を出しておらないのでございます。海洋法会議というものに外務省で臨んでおりますので、私どもの気持ちから言いますと、海洋法会議の推移を見守りながら二百海里漁業専管水域の問題を考えなければならないだろうというように考えておるわけでございます。
  133. 木原実

    木原委員 鈴木農林大臣は確かに水産の大ベテランでして、魚に関しては権威者なのですけれども、しかし、いろいろむずかしい国際関係を含めた問題を抱えて、言ってみれば担当されているというのが私ども多少奇異な感じがいたします。海は魚がいるだけじゃないわけですから、そういう奇異な感じがするわけですが、いずれにいたしましても、あわせてもう一つだけお伺いしておきたいのですけれども、問題の北方四島の問題につきましては、いずれにしましても、これはどういうことになるのでしょうか。われわれとしては水域の設定と絡めないという見解を聞いているわけです。たな上げをするといいましょうか、いままでどおりの形でいくといいましょうか、これは交渉の中に入ってくるわけなのですが、政府立場としては、北方四島については、この漁業専管水域の設定いかんにかかわらず、その中でも従来どおりの線を維持して、つまりたな上げをしてやっていきたいという希望があるわけですね。それからもう一つは、これからの交渉になるわけですけれども、しかし、ソ連側はかなり厳しいたてまえの主張をしておるわけですが、避けて通れないという事態も想定をされるわけです。そういう際の何か対処の仕方、第三の道があるのか、領土問題のいままでの経過から見ますとかなりむずかしいところへやってきたというふうにわれわれも判断せざるを得ないのです。いかがでしょうか。
  134. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 漁業問題と領土問題、特にこのたび閣僚会議の規則が制定をされたということによりまして、これはどうしても全く関係がないというわけではないのでございます。しかしながら、漁業問題と領土問題とは、これは全く別個の、全く次元の違う問題として私どもは対処をしてまいりたい、そういう考えのもとに、漁業問題は漁業問題として領土問題と関係なく解決を図りたいというのが私ども考え方でございまして、その点はあくまでも貫きたいというふうに考えておるところでございます。
  135. 木原実

    木原委員 終わります。
  136. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、鈴切康雄君。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在勤法の法律がかかっておるわけですが、この在勤法について、法案自体は私は別に問題はない、このように思っておるわけでありますけれども一つ聞いておきたい問題は、在外公館職員の子弟教育問題は非常に厳しい状況下にあろうかというふうに考えております。日本人学校の増設、整備、強化という問題がやはり在外にお勤めになっておる職員の中から、かなりの強い要望が出ておるわけですが、その点についてどのようにお考えになっておるか。また経済面で子弟教育は非常に金がかかるという問題もあるわけですけれども、それについて外務省はどう対処されるか。そのことをこの法案についてはお聞きしておきたいと思います。
  138. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 詳細は、いま官房長がすぐ戻りますので申し上げますが、在外職員が何より心配なものはやはり子女教育の問題でございまして、そして在外学校新設につきまして、ことしは超重点事項として要求をいたしまして、要求どおり五校認めていただきました。また今後ともこの教育問題につきましては最重点として対処してまいりたいということだけ申し上げさせていただきます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、官房長がお見えになりましたら、その点についてはもう少し詳しくお聞きすることにいたしましょう。  総理が近々訪米をされる予定でありますけれども、カーター大統領との間において会談が持たれるわけですが、実際にどのようにして、具体的な日程と言いましょうか、煮詰まっておられましょうか。それと同行されるメンバーはどういうメンバーが同行されましょうか。
  140. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 総理の訪米につきまして、これは国会開会中でございますので御了解をいただかなければならないことと思いますが、そういった前提で、日本として二十一日と二十二日にカーター大統領との会談を予定をいたしております。同行者といたしましては、総理にお供いたしまして官房長官と私がお供をする予定でございます。あと担当の局長レベルの方々が同行する予定でございます。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは先ほどお話がありましたように、確かに国会の予算の開会中でもありますので、その点については問題があるにしても、やはり国際信義という立場から考えればアメリカに行かれるようなかっこうになると思うわけでありますけれども、そこで、会談をされる議題となる外交問題については、その主題は大体どういうものになるかというようにお考えになってましょうか。
  142. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 会談のテーマにつきましては、私はやはり両首脳の一番大事と思っておられることをお話し合いになると思います。私ども事務的な準備、あくまでも事務的な準備でございますけれども、経済問題は、どうしても現在の世界的な規模におきまして、日本並びにアメリカの果たすべき役割りというものは大変大きいという点から、これは当然のことながら一番大事な問題としてお話しになるであろうと思います。それと並びまして、やはり先進国間の協調という問題とともに、発展途上国との関係をどう考えていったらいいのかというような問題があろうと思います。それからエネルギー関係の問題といたしまして、これからの長期的なエネルギーの問題をどう考えていくべきかという点につきましてもお話し合いが行われるのではないだろうか。それに関連いたしまして、核拡散につきまして、フォード前大統領のころからのアメリカの政策が表明をされましたし、カーター大統領も大変関心を持っておられますので、この核拡散防止に伴います平和利用、日本としての原子力燃料の再処理という問題につきまして、どのように考えたらいいかというような問題が関連してくるであろうと思います。それからアジアの問題、朝鮮半島を含みますアジアの問題につきまして、当然のことながら総理の見解を述べられるであろう。それにつきましてアメリカの考え方とのお話し合いが当然行われるのではなかろうか。こういったことが主要ではあるまいか。当然また二国間のいろいろな問題というものはあるわけでございますけれども、これらはなるべく事前にできる限り処理をして臨みたいというふうに考えておるわけであります。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは一つ一つお聞きしてまいりたいと思っておりますけれども、初めに在韓米軍が撤退をするということになりますと、やはりこれは日本の国においては関係がないというわけではないわけでして、大変重要な関係にあるわけでありますが、その前に、なぜカーター大統領が在韓米軍の撤退ということを表明をしたかという背景についてはどのように認識をされていましょうか。
  144. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私どもの理解しておるところでございますと、これは先方の本当の考えかどうかということはわからないわけでございますけれども、私どもの理解しておるところによりますと、やはりこれはニクソン・ドクトリンというようなころからの逐次米軍の、何といいますか縮減を図っていくということの延長線にある問題ではなかろうかというように根本的には考えておる次第でございまして、それぞれの国が自力で国の防衛を守っていくべきであるという考え方のもとに、それぞれの国の自衛力、国防力と申しますか、これを増強することに応じましてアメリカの兵員というものを減らしていこう、こういうことの延長にあるというふうに私どもとしては理解をしておるところでございます。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在韓米軍の撤退は従来韓国とアメリカの問題である、日本は重大な関心を持っておるけれども直接の当事者ではないということから、総理は介入しないというふうにおっしゃったわけでありますけれども、総理のその答弁は、いまもそのお考えでしょうか。
  146. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 総理の御答弁は、総理御自身が韓国の問題につきまして無関心であるということを言われたわけでは毛頭ないというふうに私どもは信じております。直接的にはやはり当事者でありますところの韓国の意向というもの、韓国が米国と十分理解し合って結論を出していくべき問題であろうということを強調されたと思う次第でございまして、日本といたしましては、とにかく一番近い隣国の問題でございますから、日本自体の問題と深いかかわりあいを持っておるという認識のもとに、第一義的には韓国とアメリカとの関係であるというふうに申されていると、こう理解をいたしておる次第でございます。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一日、二日前のテレビを私見ておりましたら、カーター大統領が韓国問題について触れていろいろ話をされている場面のテレビがありましたけれども、そのときカーター大統領は、韓国問題については、これは日本も少なくとも同じテーブルに着いて話し合い、日本の了解を得るということを明らかにしているわけですね。私はそれを聞いたわけです。となりますと、介入をしないとかあるいは期待をするというだけのことでは済まされなくなってきているんじゃないかというふうに私は思うのです。カーター大統領は、韓国のこの在韓米軍撤退に伴う話し合いについては、日本もやはり同じテーブルで話し合いたい、そして了解を得たいということを私聞いたのですけれども、そうなりますと、ちょっと向こうの、アメリカの方の考え日本考え方は食い違いますね。その点はどうでしょう。
  148. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本といたしまして、韓国の安全というものが日本の平和の維持、日本の安全にとりまして大変大事である、また深いかかわりあいがあるということはたびたび総理も申されておりますし、私どもも全くそのとおりであろうと思っております。そういう点を考えられて、カーター大統領は日本の意向を尊重する、日本とよく協議をした上で実行をする、もちろん韓国とも協議をし、日本とも協議をしながら実行をすると申されております。何より一番大事な点は、いろいろな面で不安を起こすということが、これは大変なことでありますので、私はどうもそういうことを考えますと、日本にも韓国にも平和を損なうというような事態にさせない、そういう点でとにかく不安を起こさせないという意味の御配慮ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この在韓米軍の撤退の問題について、カーター大統領の言うように日本の了解をとりながらやっていくということになれば、同じテーブルに着くということなんですね。もしそういう御要請があった場合にどのようにお答えになりますでしょうか。
  150. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 どうも、私いま御質問の趣旨がよくわからなかったのでございますが、一緒のテーブルに着いて相談をする、こういうお話のようでございますが、私どもどういうようなプログラムによりましてこの問題が進展いたしますのか、想像もちょっとできないことでございます。まだそのようなことを考えてみたことがなかったものでございますが、そのような点につきまして、やはり日本といたしましても慎重に対処すべきであろうと思うわけでございます。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在韓米軍の撤退について、もちろん韓国とアメリカと話し合うわけでありますけれども、それについてアメリカは日本の国に了解を求めるというようなことになれば、韓国問題のいわゆる在韓米軍の撤退ということは、言うならば日本とそして韓国とアメリカ、この三者の協議になるわけであって、先ごろ総理が言われました、韓国問題については当事者じゃないから直接介入しないんだ、そしてこれについて総理が言った言葉の中は、わが国としては介入しないが、朝鮮半島の微妙なバランスが破れることがないよう期待するという第三者的な話になっているわけでありますけれども、もはや第三者的な話というよりも、もうカーター大統領は、少なくともこの問題ついては日本の了解を得てやるんだということなんですから、こういうことがもし出された場合に、外務大臣としてこれを、私どもは全く知りません、朝鮮問題は一切私どもとの直接の関係はございませんから、こういうふうにお断りになるのですか。
  152. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 今回首脳会談といいますか、福田総理とカーター大統領との会談におきましても、この朝鮮半島の平和の問題はまことに大事な問題でありますから、当然のことながら総理の見解も示されると思います。隔意のない意見の交換が行われるだろうというふうに思っておりますし、日本の意見というものをやはりカーター大統領にもよく理解してもらうという必要があろうというふうに思っております。  そういう意味で、日本の意見をきわめて重く見て尊重してくださるというふうに私どもは理解をしておりまして、これが協議をするあるいは意見を聞くとか、そういういろんな表現によりましていろいろニュアンスの違いが出ようかと思いますけれども日本としては大事な問題でありますから、当然のことながら日本としての意見を率直に申し述べるべき責任もあろうかというふうに思う次第でございます。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その御意見を申し上げたいということですけれども外務大臣は総理のブレーンとしてついていかれるわけでありますが、その問題についてはどのようなお考えを持っておりましょうか。率直な意見というその率直な意見は……。
  154. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私どもは、たびたび申し上げているところでございますけれども、この朝鮮半島の平和的な解決ということが何よりも好ましい、望ましいことである、しかしながら現実には南北間の不信感というものは一向に減少していない、そしてまたこれを解きほぐすにはどうしても南北間の対話を必要とするということを主張をいたしておるわけでありますが、そういった前提のもとに、いま南北間の微妙なバランスというものが現実において必要である、これが一挙に崩れるということはかえって朝鮮半島の平和を阻害することになりはしないか、こういった考え方を持っておるところでございまして、そういう意味から南北間の微妙なバランスというものを十分にお考えいただいて、朝鮮半島の平和というものを確保していただきたいというのが私どもの率直な意見でございます。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六九年の佐藤・ニクソン共同声明のときには韓国条項が出されましたし、一昨年の三木・フォード共同新聞発表によりますと新韓国条項と言われておりますね。今度カーター大統領とそして福田さんとがお会いになって韓国の問題について煮詰められるでしょうけれども、それは恐らく共同声明のような形で出されるように私は推測するわけであります。その新新韓国条項と言われている内容でありますけれども、この内容は、前の韓国条項並びに新韓国条項と基本的な認識において違うのか違わないのか、その点はどうでございましょうか。
  156. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 このたびの両首脳の会見の後にどのような形をとって発表されるのであろうかということは全くまだ決められていないところでございます。カーター大統領はいろんな点でいままでの前例にこだわらない大統領であるというような話もありまして、どういうふうになるかということはいまの段階では想定がつかないのでございます。しかし、いまお尋ねの点は、基本認識におきまして朝鮮半島の情勢をどのように認識しておるかということでありますと、その基本的な枠組みと申しますか、それは、残念ながら、三木・フォード会見のときの発表というような時点と比べましてさほど大きな変化はまだ起こっておらないというのが私ども基本的な認識でございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 基本的な認識ということになれば、別に新新韓国条項なんて出す必要はないわけでありまして、それを出すということは、諸条件がすでに変わってきているということの上に立って今後どうしていこうかということが論議されていくわけでありますけれども、新新韓国条項の骨子というのは大体どんなものですか。
  158. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま申し上げましたように、どういう形で発表ということになるかどうかということすらもまだ全然見当がつかない段階でございますので、これはやはり両首脳が隔意のない意見の交換を行われた後に、しからばどのような発表手段をしょうか、こういうことになる筋合いのものでございますので、いまここで、両首脳がまだ会談をなされる前にその会談の結果はどういうふうになるか、どういう発表をされるかというお尋ねでありますけれども、私どもはいろいろ事務的には準備はいたします。いたしますけれども、この両首脳の会談というものはまことにこれからの世界に対しましてどういう認識を持たれるかということから始まることでありますので、したがって、いまここではちょっと想像もいたしかねるということが本当のところでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、国際情勢を見渡した上において朝鮮半島の諸情勢を分析をされ、そしてその上に立って在韓米軍の撤退というものにどういう位置づけをされながら、また日本の国がそれに対してどういうふうな協力を憲法の枠組みの中においてできるかというそういう諸問題等も、これは新新韓国条項の中に直接出てくるかはわからないにしても、一つの大きな問題点ではないかというように私は思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  160. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 御指摘のように大変大事な問題でございます。そういう意味で一般の国民の皆様方も広く関心をお持ちの点でありますので、やはり何らかそれにはこたえるべきであろうというふうに私ども考えておりますが、その中身につきましては、それはやはり両首脳の隔意のなき御意見の結果にかかわるものと、こう申し上げておるのでございます。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま越智事移住部長さんが出席されておるので、先ほどの点についてそれではちょっと……。
  162. 越智啓介

    越智説明員 お答え申し上げます。  海外子女教育につきましては、昭和四十八年の衆議院外務委員会決議に基づきまして関係予算の大幅な増額を図って、必要に応じて全日制日本人学校新設、たとえば五十二年度においてもアルジェ外四校の新設の予定でございます。それから派遣教員の増員、それから施設教材等整備拡充を図っております。また補習授業校についても、人件費補助等必要な措置を講ずる等内容の充実を図っております。  具体的に申しますと、現在全日制日本人学校は四十五校、補習学校が六十五校ございます。具体的に予算の額で申しますと、四十八年度九億八千九百四十五万円でしたのが五十一年度三十億千三百二十万円、五十二年度は政府原案が三十六億百万円、着実に、徐々にでございますが、拡充を図っておる次第でございます。  派遣教員が大多数が公立学校教員から成っておりますので、各都道府県身分上の扱いその他県によってまちまちでございますので、公務上の災害その他で補償等に問題が出てきておりますので、ただいま文部省と鋭意前向きにこの問題も含めて協議を行っておる次第でございます。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどもお話がありましたように、一つはエネルギー並びに核の拡散の問題が重要な課題であるというお話でありましたけれども、このところアメリカは、使用済みの核燃料の処理についてわが国が独自の施設で再処理をするということを認めないというような強硬な考え方を示しておりますけれども、これはどうしてこういうふうなことになったのでしょうか。
  164. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 使用済みの核燃料の再処理並びにウラン自体の濃縮、この二つにつきまして、これは非常に核兵器に利用しやすいという観点から、この点につきまして核拡散防止という観点からこれが昨年のフォード大統領のときに新しい政策として提起され、カーター大統領も同じ主張をなさっておるというふうに聞いておるわけでございます。  わが国といたしましては、これからのエネルギー問題を考えますときに、どうしてもウラン燃料の再処理を行いましてプルトニウムをもう一度核燃料として使用するということによりまして核燃料の飛躍的な増加が、力の増大と申しますかエネルギー力として利用できるという観点で日本研究を進めておるわけでございますから、そういった意味で、大変問題が重要になってまいった。  それで、現在まで私ども聞き及んでおりますのは、とにかくそういった使用済み燃料の再処理の問題につきまして新しい体制をつくり上げなければならない、それにはどうしても三年ぐらいの期間が必要だということで、その三年ぐらいは現状で凍結をする、そして結論を出して、世界各国ともその新しい方向に進もう、こういうように私ども伺っておるわけで、この問題が日本のタイムテーブルの上からいきましてまことに重大な問題を生じてきた、こういうふうに考える次第でございます。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それにつきまして今度行かれましたら、これは重要な一つの外交課題ではないかと私は思いますから、この点についても——日本の国が実際に平和利用以外に核燃料を使うはずが実はないわけです。プルトニウムは核兵器に転用できるなんというようにアメリカは本気で日本の国に対して思っているかどうか。すでにわが国は核防条約を批准をしておりますし、保障協定も今国会で審議されることになっておるわけですね。それからまた原子力法もあるわけですから、そういうことから考えまして、日本の国に核兵器をつくるなんということは全くあり得ないということを理解をしてもらわないとこの問題は解決しないのではないかと私は思うのですけれども、そういうふうな中にあって、あえてアメリカ側がこんなことを言うのは大変内政干渉だというように私は思っておりますけれども、その点について外務大臣はどのようにお考えでしょうか。今度行かれるわけですから、この問題についてはっきりとおっしゃるかどうか。
  166. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま、日本はもう非核三原則を堅持して核兵器というものは絶対に持たないということを厳粛に誓っておるということは、これはもうアメリカもよく知っておるところと私は信じておりますし、モンデール副大統領が見えましたときにもそういうお話があったわけでございます。日本としても、日本は絶対に核兵器は持たないということを強く主張をしておるところでございます。この点につきまして、私どもは、日本には安心して平和利用を進めてもらえるものというふうに希望いたしますけれども、とにかく日本自体におきまして、核燃料、ウランはほんの微量しか産出をしない。主たる燃料はアメリカから来ます濃縮ウランとカナダからとっておる天然ウラン、こういうもので日本は賄っておるわけでございますので、どうしても燃料を持っておる国はとにかく圧倒的に強い、事実上の政策決定権に近いものを持つわけでありますので、日本としてはアメリカ側の本当の真の理解を得て、これからの核燃料のリサイクルができますように最善の努力をいたしたいと思います。  そこで、いま現実の問題になりますことは、やはり新しい政権がいかなる核政策というものを決めるかという点であります。この核政策の決め方が各国々によりまして差別的な取り扱いが許されるようなものであればいいわけでありますけれども、そうでなくなりますとこれは大変な支障が出ますので、私どもといたしましては、日本の原子力基本法以来の日本の非核三原則というものを持っている特殊な国として日本を取り扱ってもらいたいということを強く主張をいたすところでございます。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカが信じていないから再処理についてはやらせないというようなことになるのであって、その点について私はアメリカの対日不信を大変理解をできないように思うのです。  そこで、日本の国は非核三原則ということを国是にしているわけでありますから、日本の真意が伝わらないということは、やはり私は非核三原則が国是であるということを、少なくとも世界各国の政府に外交文書で通告をしたらどうかと思うのですがね。そうすればよくおわかりになるのじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  168. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本の非核三原則というものは、これはもうよくアメリカ政府もわかっておりますし、その点に私は心配をしておるのではございません。そうではなくて、新しいアメリカの政策というものがどういうものになるかということによりまして、やはり日本としてはそれに左右されますので、その日本が必要とする核燃料の再処理ができますように最善の努力を尽くすということを考えておる次第でございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり日米経済の中にあって貿易の不均衡という問題は、これまた一つ大きな問題として取り上げられるように思うわけでありますけれども、アメリカの方として何か貿易の問題について譲歩を求めてきそうな問題は、どういうものが考えられましょうか。
  170. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 貿易問題につきまして、私も在職中のときに通貨問題が起こったわけでございます。しかし現在におきましては、これはもう変動相場制下にあるわけでございますから、いわゆる通貨問題というような問題は起こりようはずがないというふうに私は考えております。そこで、日本とアメリカが本当に経済政策の歩調を合わせてやっていこうということが一番の大事な点になろうか、この経済政策が歩調が合わないことになりますと、アメリカの景気政策のおかげで日本が非常に輸出が伸びたのではないかというふうに考えられているわけでございますので、第一番としては経済政策の調整ということが貿易につきましても最大の問題になろうか、そしてアメリカといたしましても世界の景気を日本とともに、またヨーロッパとともに引っ張っていこうという考え方でありますので、貿易量の縮小をもたらすようなそういった考え方はアメリカはとらないというふうに思います。そういう意味で、二国間の問題よりもやはり世界的な貿易に対する考え方ということの方がより真剣に討議されるのであろうというふうに思っております。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 貿易の不均衡という問題、かなり大きな問題になりますけれども、その中でやはり日本の商品がどんどんアメリカのシェアを占めていくという問題についてかなりの抵抗がある。その中で一つの例を申し上げますと、このところ大変に問題になっているアメリカにおける日本製品のカラーテレビの進出、これについてはアメリカにおいてもかなり問題になっておるわけでありますけれども、いわゆる日本製品のアメリカにおけるカラーテレビの消費のシェアというものは大体何%ぐらいでしょうか。
  172. 本野盛幸

    ○本野政府委員 アメリカにおきます消費に占めるシェアでございますか。ちょっといま数字を持ち合わせておりませんけれども、大きなシェアではございません。二〇%前後というふうに承知しております。——いま、七六年の一−七月間の数字でございます。二四・五%というのがシェアでございます。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二四・数%ですか、四二%ですか。
  174. 本野盛幸

    ○本野政府委員 アメリカでの見かけ消費に占める比率というのは、二四・五%でございます。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、大変にカラーテレビの消費に対するシェアを占めているということで、国際貿易委員会のITCが被害の有無について被害ありというふうに判定をいたしましたね。これからどういうふうなことになりましょうか。
  176. 本野盛幸

    ○本野政府委員 御指摘のようにそういう判定がございまして、いわばクロの判定でございます。恐らく明日、この判定に基づきまして、この委員会の方から大統領に対してどういう措置をとるかということについての勧告が行われるわけでございます。  その勧告の内容でございますけれども、それは幾つかのやり方がございまして、一つは数量制限のクォータを課する、あるいは関税を引き上げる、ないしは関税クォータを課する、その幾つかのやり方を組み合わせるというようなこと、さらにそれと同じような実効があるような形で、そういう勧告を受けましたときに今度大統領はそれについて抽出秩序を維持するような自主規制協定の交渉をまた考え得る、そういう幾つかの方法がございます。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理の訪米による日米会談で朝鮮問題がやはり議題になると思いますけれども、今秋の国連総会で日米両国が朝鮮問題にどう取り組むかが話し合われると思います。現時点において、国連での朝鮮問題に対する外務省の対策はどのようにお考えでしょう。
  178. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 国連におきます朝鮮問題に対します態度は、まだ決めておらないというのが実際のところでございます。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 現在、竹島が韓国によって不法占拠されております。そして警備隊が駐在をしておりますね。私は、竹島問題で韓国が同意しない限り、政府は韓国政策を再検討しなければならないというように思うのですけれども、その点についてはどうお思いでしょうか。
  180. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島問題は、もう御承知のとおり、韓国との国交回復のときにおきまして最大の問題となった点でございまして、その後、両国ともにその領有を主張しながら今日まで及んでおるわけでございます。そういう経過から、この竹島問題に決着をつけるということを提案いたしますと、これは日本と韓国との間が大変な、ほかのことはすべてとまるというような事態に立ち至る、そういうおそれがあるわけでございます。私どもは韓国の不法占拠という事態を確認いたします都度、韓国側に対して日本側の主張を強く申してきておるところでございまして、竹島問題は竹島問題として、そしてほかの部面におきましてはやはり友好関係を持続するということが国益に沿うゆえんであろうというふうに考えておるところでございます。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 竹島が不法占拠をされながらそのままほっておくということ自体、これは国民的な感情は決してよくありません。ですから、政府は、ただ竹島が不法占拠されるときに警告を発するということだけでなくして、もっと強い手段に出られてはどうなんでしょうか。たとえば対韓経済援助を考えなくちゃならないとか、あるいはまた日韓の会談についても、いまやられておるわけでありますけれども、これは延期をするとか、あるいは国連において韓国の問題を考えなくちゃならない、これくらい強い態度に出なければ、竹島の問題はただ警告で済まされる問題ではないように思うのでありますけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  182. 中江要介

    ○中江政府委員 竹島の問題は、昨今急に始まった領土紛争ということではなくて、先生御高承のとおり、日韓正常化前から、つまり李承晩ラインが引かれましたときからの問題点であったわけでございまして、一九六五年に日韓正常化をするに当たりまして、この問題は両国間の紛争として双方が認識して、この紛争をどういうふうに処理するかということにつきましては、話し合いによって解決する。ただその方法はいろいろございますけれども、具体的に進んでいないことは事実でありますが、他方、だからといって、いま、正常化のとき以来両国間の領土にまつわる紛争として話し合いにより解決するという基本的な考え方を修正して、何らかの、いま先生が御示唆なさいましたような方法をとることが是か非かという点については、政府はまだそういうことをする段階ではないという認識を持っている、こういうことだと思います。
  183. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 報道によりますと、ポリャンスキーソ連大使は外務省を訪れられて、日本政府の北方領土の主張を反駁して、未解決の領土問題は存在しないことを申し入れたというふうに言われておりますけれども、その真意と経緯というものを明らかにしていただきたい。
  184. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 経緯につきましては欧亜局長からお答え申し上げますが、先般の、二月二十四日だったと記憶しますが、ソ連が閣僚会議の決定をもちまして二百海里の線引きを発表いたしました。その線引きの中に北方四島が含まれておったのでございまして、その点につきましてわが国政府は官房長官談話を発表いたしまして、これは承服できないことを明らかにいたしまして、さらに翌日ポリャンスキーソ連大使を外務省に呼びまして、その同じ趣旨を申し入れたわけでございます。それに対します返答として先日ポリャンスキーが来省されまして、ソ連としては北方領土問題というものはもうないんだという趣旨の口頭の申し入れをしたわけでございまして、それに対しまして当方の事務次官から、そのような主張はとうてい承服できないということを強く申し述べて会見を終わっている次第でございます。
  185. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ポリャンスキーソ連大使の未解決の領土問題は存在しない旨の発言というものは、一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明の領土問題の継続審議の了解事項を否定したものと私は思うわけでありますけれども、あるいはその共同声明の日ソの正文に不一致があったかどうか、その点について、私の考え方では「未解決の諸問題を解決して平和条約を締結する」という未解決問題の中に領土問題が入る、こういうように認識をしておるわけですけれども、その点についてどうでしょうか。
  186. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたとおりでございまして、私どもの解釈では、ポリャンスキー大使及びその背後にございますソビエト政府が、私どもがかつて到達いたしました了解を否定してきたものと解釈しております。
  187. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ソ連はすでに二百海里を漁業専管水域と決定しているわけですけれども、となると、わが国が相互主義の立場からソ連に二百海里の漁業専管水域を設けないと被害だけを受けることになるわけでありますけれども、いつ二百海里をお考えになるのでしょうか。
  188. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 漁業に関しましていわゆる二百海里時代というのが急速に来ていることは事実でございますが、こういう情勢に対処いたしまして、わが国としても漁業専管水域をいずれ設定しなければいけない、そういう必要があると考えております。しかし、一方で、わが国はいわゆる遠洋漁業国でございまして、近隣諸国を初め非常にたくさんの国の沿岸の水域で漁業の実績を有しておりますので、そういう実績を維持することにも相当な配慮を払う必要があるわけでございます。特に、近隣諸国のうちの韓国なり中国なり、これらの諸国との間では現在きわめて円満な漁業秩序ができ上がっておりますので、そういう点に配慮しながらこういう関係を維持できるような配慮を払いつつ、わが国の漁業専管水域の設定の時期、内容等を決定してまいる必要がある、かように考えております。
  189. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、韓国あるいは中国の方はそのような状態でうまくいっているけれども、実際にソ連の場合においては、御存じのとおり二百海里の漁業専管水域を設けたでしょう。となりますと、当然ソ連に対して日本の方でも二百海里の専管水域を設けなければ相互主義にならぬじゃないですか。その点はどうなんですか。しかも、五月二十三日に海洋法会議が行われるわけですけれども、その論議を見てと言うのですが、そんなに長くこの問題を放置できるのですか。
  190. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 確かに、御指摘のとおり、ソ連初めその他各国で二百海里の専管水域を設定している国がふえてまいりまして、それとの関連でわが方も対応策を、一応相互主義等も考えながら出さなければいけないのは事実でございますけれども、同時に、全般的な漁業専管水域という問題を考えますと、一方、それ以外の国々との関係で現在でき上がっております漁業秩序に非常にマイナスの影響を与えるという心配もございますので、これらの問題を総合的に考えながらいずれ近い時期に漁業専管水域を決定するということで、その内容、時期等を慎重に判断してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  191. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二百海里の漁業専管水域については、全体的に日本がすべての領土に対して二百海里の専管水域をつけなくちゃならないものであるか、あるいは相互主義的な考え方から言うならば、たとえばソ連がやったならば日本の方でも二百海里ということでソ連に対してできるものであるか、その点の見解はどうなんでしょうか。
  192. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 ただいまの御指摘のような考え方も含めまして早急に内容、時期等を検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  193. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五月二十三日に海洋法会議が開かれますが、果たしていつ結論が出るのかわからないのですけれども、そんな長い間この問題が待てるわけはないのです。それじゃ農林省の方は、海洋法会議の結論なんというのではなくして、むしろ早目にこの問題の決着をつけなくちゃならない、こうお考えでしょうか。
  194. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 先ほど申し上げましたように、韓国、中国等の近隣諸国のみならず、太平洋の南部の方の豪州、ニュージーランドその他いろいろな国とわが国の漁業はかかわり合いを持っておりますので、そういう国連の海洋法会議の動向も十分見守りながら、近くその時期、内容等を決定してまいる必要がある、かように考えておるわけでございます。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、五月二十三日まではそういう判断はしないわけですね。
  196. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 先ほど申し上げましたような考え方から、現在の段階では、今回の国連海洋法会議の動向も見守る必要がある、かように考えております。
  197. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海洋法会議の結論が出なかった場合に、やはり決断をしなくちゃならないですね。その時期のリミットは大体どれぐらいをお考えでしょうか。
  198. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 先ほど申し上げました、ソ連その他を除いた、これから二百海里を設定しようとしているあるいはまだ設定していない国々等の動向も考えながら、その時期を慎重に考える必要があると考えております。
  199. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ソ連は、南千島水域の線引きについては、南千島と日本領との中間線をとり、ソビエツキー海峡及び根室海峡ではソ連の国境を二百海里線とするという考え方をしておりますけれども、それに間違いがないかどうか、あるいはまた、ソ連が考えている南千島というのは北方四島を含んでいると考えられますけれども、ソ連の考え方についてはどういうお考えでしょうか。
  200. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたとおり、ソ連は南千島として大体北方四島を含んだ解釈をしているものと考えられます。
  201. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 となりますと、わが国が主張している、北方領土は日本の古来の領土であるという従来の考え方と完全に競合するわけですね。そうしますと、漁業専管水域は、実際には領土と切り離しては考えられない問題じゃないですか。領土をたな上げして漁業専管水域といっても、しょせんは、日本の国が、たとえば二百海里という問題を相互主義によってやった場合に、この問題は決して領土と切り離しては考えられない問題じゃないでしょうか。その点、どうも、口では領土と専管水域とは切り離して考えてやると言うけれども、結局そこで競合するとなれば、領土問題の話し合いはもうそろそろされなければならないのじゃないですか。そこへ来ないと話がつかないという現状になってきているのじゃないですか。
  202. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 領土問題の方から申し上げますと、両国のいままでの主張から考えまして、領土問題は早急に片づく問題ではないと私自身思いますし、大方の方はそうお思いだろうと思います。そういう状況のもとに漁業問題の話し合いをするわけでございますので、これは両者は全く無関係ということではありませんが、漁業問題という観点からのみこの交渉を成功させたいということを日本政府としては強く望んでいるところでございます。  なお、もし詳細が必要であれば、宮澤局長の方から追加答弁をいたさせます。
  203. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 漁業専管水域が結局領土問題と結びつくのではないかという御質問に関しましては、そのとおりのように私ども解釈しております。それで、これは間接に結びつく種類のものであると解釈しております。したがいまして、今回の日ソ漁業交渉について私ども考えておりますことは、一方においてはあとう限り自由な漁業の操業を確保すると同時に、私どもがかねて抱いております領土問題に関する主張がこれによって傷つけられない、こういうことが何らかの方法によって達し得られれば最も好ましいことと考えておりますので、ただいまそういう方針で私どもの案を作成しておりますが、その内容につきましては、これから行うべき交渉のことでございますので、こちらで申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の持ち時間が来たようでございますが、一、二、ちょっと聞いておきたいのです。  イシコフ・鈴木会談で、この北方領土のことについて、公式あるいは非公式に話し合いが何か持たれたかどうか。また、二百海里ということになれば、当然入漁料という問題が——アメリカが入漁料の問題を言っているわけですから、そういう点で何か話が出たか、その点について最後にお聞きして終わります。
  205. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 イシコフ漁業相と鈴木農林大臣との交渉の過程で、北方領土問題というのは議論をされなかったというふうに伺っておりますし、また、入漁料につきましても触れられなかったというふうに伺っております。
  206. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、受田新吉君。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 今回の提出法案に関連して外務省質問することができるわけでありますが、この機会に、外務大臣鳩山さんに、あなたの外務大臣としての職責の重大さについての強烈な御認識を願いたいことがあるのです。  あなたは、財政経済問題では最高の権威を持たれる官僚の御出身でありますが、同時に、外務大臣になられた場合に、そうした過去の力もあわせ生かしながら、思い切って羽を広げて、手腕、力量を発揮されるチャンスには恵まれておる。かつてアメリカでは、キッシンジャーが大統領の特使として、世界の主要国を忍者の出没のごとく自由に駆け回って、その外交成果を上げたことは余りにも著名です。今回、日中問題につきましても、小川中国駐在大使を呼び寄せて、書類等を、あるいは直接の言葉等を中心に日中国交回復を促進されようとしておられるようですが、そうした現地の大使を呼び戻して打診していくというようななまぬるいやり方ではなくして、外務大臣自身が関係主要国にどんどん飛んでいって、日本国民の熱意を向こうへ十分伝達し、成果を上げるということが必要だと私は思うのです。小川君、ちょっと帰ってほしいというようなことで、大使の意見を中心に外交処理をされるような消極的な外交政策でなくして、キッシンジャー顔負けの外務大臣自身の活躍を私は期待してやまないのです。消極外務大臣でなくして、積極的に中国へも飛び、ソ連へも飛んで、しばしばこちらから出かけていく。向こうが訪問したから儀礼的にまた訪問をし直すとかいうような、そうした消極外交では、この波乱に満ちた国際場裏の勝利者にはなれない。真の平和外交を推進し、日本国の国民の要望を果たすために、鳩山外務大臣にかけられた使命の重さは、外務官僚を適当に駆使しながら手足のごとくこれをこき使い、みずから先頭に立って日本外交の成果を上げるという意気込みが欲しいと思うのです。中国にもあなたが飛び、ソ連にも飛ぶ、そして熱情を傾けて外務大臣の熱情が成果を生むような外交をやってほしいと思うのですが、そういう外務大臣にはなりたくないのかどうか、御答弁を願いたいです。
  208. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 受田先生からいま激励の言葉を賜りまして、感謝申し上げる次第でございます。  私、外交の全くの素人で外務省をお預かりするようになりましたので、そういう意味で大変責任の重大さを痛感いたしておる次第でございます。しかるがゆえに、私といたしましては、日本の国益と申しますか、日本の国のために何らかの力添えになりますためには、私はこの際とにかく、いかに外交に臨むべきかという点につきまして、本当にじっくり勉強して取り組みたいという考え方で今日まで臨んでまいりました。これから先に国会からお暇がいただけるようなときになりましたならば、私は各地に自分みずから参りましてこの努力をいたさなければならない、これは世界各地におきましてそういったことが必要であろうと思っておりますので、そのような機が至りました場合には、どこへなりとも飛んでまいる覚悟でおる次第でございます。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 機会到来せば、私の発言の趣旨に沿うてどんどん飛び回りたい、キッシンジャー顔負けの戦果を上げたい、かように理解させていただきましょう。  今度の日ソ漁業交渉にしても、農林大臣に任せるだけでなくして、あなた自身も外交責任者として飛んでいかれるべきであり、あなたがそのために行かれるというのなら、国会の野党だって、外務大臣が予算の審査が終わった時点、来月早々ぐらいからどんどん出かけることにだれも反対しはしないのです。他の党だって、戦果を上げるためなら、外務大臣御苦労だが行ってくれということになりますよ。この委員会にくぎづけするのはそう長くはない。いまの熱意に期待をかけて、次の質問に移ります。  先ほどから委員諸君から御質問が出たわけですが、今度福田総理がアメリカに行かれることについて、私、一、二のポイントだけ確かめておきたいのです。  なるべく質問が重ならぬようにしたいと思うのですが、カーター大統領の発言の中に、韓国の米陸軍の撤退という意思があることは、もう世間周知のとおり。空軍は強化したいが陸は撤退したい。そうすると、ここに日韓の関係において、陸上が撤退しても日本の安保体制には何ら影響がないと見るのかどうかです。新しい韓国条項のようなものを福田総理があちらで取り決めをするのかどうかです。お答えを願いたい。外務大臣の進言の中にもそれが入っておると思います。
  210. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 カーター大統領の対韓政策と申しますか、米陸上軍の撤退ということが触れられておって、選挙のいわば公約というような形になっておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。しかし、カーター氏が大統領になられましてからの発言は大変慎重になってこられたように承っておりますし、先般のモンデール副大統領が見えましたときにも、朝鮮半島におきます平和とか安全を阻害するようなことはいたさない、こういうふうに申されておりまして、私どもは、これがアメリカ政府としての新しい考え方であろうというふうに理解をいたしております。  アメリカの陸上軍が韓国におきまして果たしつつある役割りというものは現実に非常に大きなものがあるというふうに私どもは理解をいたしておりますので、この陸上軍が一挙にいなくなるというようなことは大変なことだというふうに考えたわけでありますけれども、先般来の話はそのようなことではなくて、きわめて慎重に考える、こういうお話でありますので、これが日本の防衛にいかなる影響を及ぼすかという点につきまして、現在のところ心配をいたしておらない状況でございます。そういう意味で、逆に申せば、日本に影響が直接及ぶような形での削減というようなことは急激には起こらないのではないかというふうに現在のところは考えております。  しかし、この問題につきましては、総理訪米の際の大きなテーマでありますし、両首脳の間の隔意なき意見の交換が必要であろう、その上に立ちまして、韓国に対する日本としての考え方をどのようにするかは、両首脳が話し合われた上のことであろうというふうに考えているところでございます。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 両首脳が話し合われた結果共同声明が出される。その共同声明の中には、新しい韓国の情勢展望、極東の情勢展望等に基づいて、これは大変デリケートでありますが、佐藤元総理以来問題になってきた新韓国条項なるものがここに生まれるかどうか。いまのお話であると生まれるかもしれぬようなことでございますが、韓国問題に関係した新韓国条項というものが生まれる、佐藤総理、三木総理の前轍を歩んで新韓国条項というものが生まれる可能性があるのですか。
  212. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国の問題につきましては、日本国民の皆様方も大変御関心をお持ちであるということから、両首脳が隔意なき意見の交換をされて、その時点で国民の皆様方にはっきりお示しをすることがあればお示しすべきであろうというふうに私ども事務当局としては考えております。しかし、どのようになるかはやはり両首脳の会談の結果を待たなければ、いまここで申し上げるわけにはいかないわけでございます。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、新韓国条項なるものを外務当局は期待しておるというわけですか。これははっきりしていただいて……。
  214. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その内容がいかがなものになるかは両首脳が会談をされた上でのことでございますから、そのときの共通の認識がいかなるものになろうかということにかかわることでございます。しかし、両首脳が韓国問題、朝鮮半島の問題につきまして意見の交換をされて共通の認識を持たれた場合におきましては、国民の皆様方にその点は明らかにお示しすべき筋合いのことであろうというふうに私ども考えておるということでございまして、その内容につきましてどのようなものになるかというのは、この両者の会談の結果にまたねばならないということを申し上げておるわけでございます。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 カーター大統領の認識がどこにあるかが一応明確になっておるんだ、選挙の公約でもある。それに伴うて新しい情勢が生まれたと判断するのか、あるいは従来と変わらないと判断するのか、それによって新韓国条項が生まれるのか生まれないのかぐらいは外務当局は一応の案を持って総理に進言しなければならぬのです。総理は何もわからぬと向こうでその場で勝手な共同声明を出しても困るわけでございまして、外務省の認識、外務大臣の認識は、新しい韓国情勢に対して従来と変わらない結論でいいのかどうかぐらいのことはお持ちであろうと思うのですがね。
  216. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国問題につきましては、私は、カーター大統領と福田総理の間で相当真剣なお話し合いがあろうと思うのであります。しかし、その結論がどうなるかということは、これは私どもが決めるべき筋合いのものではないということを申し上げておるのでございまして、カーター大統領の選挙のときから今日までの経過をずっと考えてみましても、まだまだ確定した政策というところまで固まっておるかどうかということにつきましては、私どももはっきりした判断は持ち得ないところでございますので、福田総理とされましても真剣に御議論をなさるところであろう、その結果の認識につきまして、これは両首脳のその時点の認識を、私ども事務当局は、それがどのようになるかということをいまここで予断はできないということを申し述べておるわけでございます。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 軍事問題についてはいろいろ世間で不安と疑惑の中に韓国問題がさらされているわけですが、ここで変わった角度から、今後韓国に何か事態が起こった、朝鮮半島に軍事衝突が起こったというようなときに、一番近い日本の国でございますから、当然そこの難民が日本へどんどん——一番近い、すぐ対岸ですからどんどん流れてくる。その中には武装した軍人も流れてくる可能性が——これはすでにベトナムで現実に起こっている。ベトナムで、あの悲惨な戦争の終末で日本へ流れてきた避難民もまだそのまま日本におるのじゃないですか。これらを含めまして、これらの難民が日本へ逃亡してくるという事態は当然予想される問題である。その予想される問題に対して日本はどう対処しようとしているのか、外務省の見解を聞きたいのです。特に難民が日本へ流れてきたときの扱い、日本へ流れてきた武装した軍人、戦時における中立国の軍人に対する扱いというような問題を中心にして御答弁を願いたい。
  218. 中江要介

    ○中江政府委員 まず、御質問の中にありますベトナムの難民がまだ日本にいるのではないかという点につきまして若干御説明申し上げますと、ベトナムの難民といいますのは、いま朝鮮半島で先生が想定されますような戦乱が起きて、その戦乱の結果いわゆる戦時の難民として逃げて出てきたという形の難民ではございませんで、御承知のように統一後のベトナムにおいて、特にその南の部分に住んでおる人たちが、日本に向けてというよりも、船に乗ってどこかに逃げていきたいという難民が、ある場合には日本船により、ある場合には第三国船により人道的な見地から救助されて、それがそれぞれ難民の希望する先、それがヨーロッパであったりアメリカであったりするわけでございますけれども、そういうところに定着していくまでの過程において、日本に一時収容されて最終定着地への渡航を待っている、そういう状況でのベトナムの難民と——これを難民と呼びますればそういう人たちは、まだ日本に若干残って最終受け入れ国との折衝を続けている、こういうことでございまして、この難民の取り扱いはもっぱら人道上の見地、つまり公海上を漂っている人たちを人道上の見地から救出した、こういう観点でございます。  第二点の、朝鮮半島で何か紛争なり動乱が起きたときに難民が、あるいはそれが軍人であったり一般市民であったり、そういう人たちが日本に避難というか日本に流れついたときにどうするかという問題の国際法上の観点につきましては、これはあるいは条約局長からでも御説明があるかと思いますけれども、政策的にこれを日本としてどう見るかということは、一つにはその紛争の性格によると思いますし、もう一つはそういうことを超えた人道上の措置というものが当然考えられるだろう、こういうふうに考えます。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 朝鮮半島に悲しい事件が——われわれは予想したくないけれども、朝鮮半島の軍事問題を論議する限りにおいては、当然軍事衝突が起こった場合におけるこうした事件はつきものであります。しかも一衣帯水の日本近海でありまして、どこへ行くよりも、北といわず南といわず、韓国といわず朝鮮民主主義共和国といわず、南北両方から日本へやってくる可能性は十分ある。そういうことは予想しておかなければならない。それはもう国際法上の約束。つまり戦時における中立国の地位というものも参考にしながら、特に南北朝鮮の問題については、その問題もあわせてわれわれは人道的見地と国際法上の立場考えていかなければいかぬと思うのです。武装した軍人は武装解除してどうするか、あるいは波打ち際で一般の市民といえ軍人といえ分かちなく追い返すのか、そういうことは韓国の軍事衝突のことも予想した場合に当然起こる問題として考えておかないといかぬわけで、これは国際法上の問題としてやる場合と、人道的問題に触れてやる場合と、それから南北分かちなく、いま国交が回復している南といえども、また国交の樹立されてない北といえども同じような条件でやるというのか、お答えを願いたいです。
  220. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまの先生の御質問の事態が具体的にどのような形で起こりますかという点につきまして私明確な考え方が直ちにできないのでございますけれども、御承知のように朝鮮におきますところの事態は国連の朝鮮における行動という形になっております。もちろん米韓の援助条約があることも事実でございますが、一般的に言って朝鮮においてまた新たな軍事紛争が発生するということがあるとすれば、基本的にはそれは国連が朝鮮において負っておりますところの平和の維持という問題、具体的には休戦協定の違反というような事態として起こり得るのではなかろうかという推定がつくのではないかと考えます。そこで、休戦協定の違反から生ずるべき事態についてはわが国自身としてどう考えるかということも当然先生のおっしゃられるように問題になり得ると思いますが、まず国連としてその事態をどう受けとめるか、そこから派生するところの具体的な、いま先生がおっしゃられたような軍事要員が朝鮮半島からわが国なりその他近隣の所に逃れてくるという事態に対して国連としてどう対処するかという問題は、恐らくその場合に国連の枠内で討議せられることがあるだろうと思われます。わが国自身の態度として見れば、先ほどアジア局長からお話がありましたように人道的配慮ということも考えなければなりませんし、またわが国の入国管理政策一般の問題としてもどうあるべきかという点が考慮されなければならない。一応の概論でございますが、当面そのようなことを考えます。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 私たちはそういう悲しいことを予測したくないけれども、当然その結果悲惨な状態が起こる場合にどうしたらいいかということは、政府としてちゃんといつも用意しておかなければいかぬ。南北の分かちなく、これは国交回復国もそして国交を樹立せざる国も同じような扱いをすることは、国際法上また日本立場からはっきり言えることかどうか、ひとつ……。
  222. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど私がお答え申し上げましたときに、私といたしましてはいま先生の御指摘のような事態が国際連合自身の問題として出てくるであろうと考えてお答え申し上げたわけでございまして、国際連合としてそのような不幸な状態が生じたときに、その近隣諸国がどうあるべきかということが当然に論議せられることになるであろうと思います。と申しますことは、伝統的な国際法の観念で考えられているところの二国間の紛争に対してほかの国が中立義務を守るかとか、いわゆる中立法を遵守するかどうかという問題とはちょっと違うのじゃなかろうかという考え方が私にはあったものですから、いまのようなことをお答えしたわけでございます。  ただ、先生のおっしゃられる実体的な意味において南北双方に差別を設けるかどうかという点でございますが、人道的な配慮という点からいけば、南であろうと北であろうと当然人道的配慮の及ぶべき性質については変わりはなかろうというふうに推定されます。ただ具体的な事態がどういうふうにして起こるかということによっていろいろなお答えが出てくるのではなかろうかという気がいたします。
  223. 受田新吉

    ○受田委員 どうもはっきりしない感じがするのですが、そういう問題も外務当局が常に検討しておくべき問題だ。そこで、国連局長でも条約局長でも結構ですが、国連憲章に関する問題にちょっと触れたいのです。  日本は安保理事国の常任理事国になりたいという気持ちをいまでも強く持っておるのですか、どうですか。
  224. 大川美雄

    ○大川政府委員 日本は過去におきまして何度か国連の安保理事会の常任理事国になっていいではないかという意思を表明したことがございます。日本の現在の国力並びに国連に対します財政上の寄与の度合いからいたしましても、現在の日本の貢献度、日本の役割りをもう少し強化できるのではないかという気持ちを日本政府として抱いていることは間違いございません。ただ現実問題として、簡単に国連の安保理事会常任理事国になれるかどうかということになるとおのずから別の問題でございまして、現在の国際情勢が続きます限り、現在の常任理事国が容易にいまの安保理事会の構成の変更に賛成することはあり得ないのではないか、かように判断しております。
  225. 受田新吉

    ○受田委員 常任理事国になりたいという意思を常に持っている、現実はなかなか厳しいということですね。  そこで問題を提起したいのですが、国連憲章の四十二条に強制行動の規定があります。その強制行動の規定の発動された場合に、四十七条によって、つまり軍事責任者、参謀総長の委員会をつくるわけです。それが構成されて動くことになるわけですが、この参謀総長の委員会なるものはどういう予想をしておるか。なりたいという以上はその場合も想定しておかないと、なりたいだけで何にも次のことを考えぬではいかぬ。なる以上は制約がある。国連憲章四十二条には強制行動の規定があって、それが発動された場合に参謀総長の委員会が開かれる。そんなときに日本はどうするんだ。参謀総長というのは一体日本ではだれが参謀総長になるのかということもちゃんと考えた上で常任理事国になりたいという希望を述べてもらわぬと、そのことを考えないで常任理事国になりたいという希望だけ申し述べたのでは片手落ちだと思うのです。お答え願いたい。
  226. 大川美雄

    ○大川政府委員 日本が安全保障理事会の常任理事国に仮になりました場合には、その時点で現在の国連憲章の第四十七条二項の規定が現在どおりであるとすれば、日本の参謀総長に当たる人がその軍事参謀委員会委員として活動することが期待されることは間違いないと思います。
  227. 受田新吉

    ○受田委員 日本の自衛隊がどういう立場になるかという問題であるのですが、日本の場合の参謀総長というのは予想はどこへ置いているわけですか。自衛隊の統幕議長とかあるいは幕僚長とか、そういうものも具体的に考えておかぬと、ここにある規定に基づいて常任理事国の参謀総長が軍事参謀委員会をつくるというようなことで、日本はそのときどうするか。いまの海外派兵のできない日本立場ではどうするかまで考えた上でこの問題の要請をされるべきであるのですね。具体的に、日本の場合は自衛隊のどれがそれに当たるのか。あるいは文官にしていくのか。参謀総長に当たるところを防衛庁長官と見るのか。これはちゃんと用意しておいてもらわぬといかぬです。
  228. 大川美雄

    ○大川政府委員 日本が安保理事会の常任理事国になり得るのではないかというふうに考えておりましたのは、日本はどこまでも平和愛好国家として国連の平和維持の活動に貢献する資格があるのではないか、こういう観点からでございまして、仮にそのことが各国に認められて、国連の憲章が改正されて、日本も安保理事会の常任理事国となった場合に、それが直ちに日本の国連に対する軍事面での協力に結びつくかどうかということは別の問題かと思います。
  229. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、安保常任理事国になりたいというのは軍事協力、その参謀総長会議にも参加しないという前提ですか。参謀総長の会議というのは別に軍事行動を起こすという意味でなくして、ただ単なる話し合いの場合もあるわけですからね。軍事行動には参加しない、しかし会議構成員としては断るわけにはいかぬでしょう。
  230. 大川美雄

    ○大川政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、もし日本が安保理事会の常任理事国になったと仮定いたしまして、その時点で現在の国連憲章の四十七条二項の規定がいまのとおりであるといたしますれば、国連側としては日本の参謀総長に当たる人が軍事参謀委員会委員になることを期待されるだろうと思います。  現在、国連憲章再検討及び国連の役割りの強化に関しまして特別の委員会が目下ニューヨークで作業中でございまして、この作業の過程におきましていろいろの問題の中の一つとして、安保理事会の構成の問題につきましてもいろいろ検討が行われるのではないかと思いますけれども、受田先生が挙げられました御質問の事項も、そういった非常にじみちな、息の長い検討の過程においていろいろ論議されるのではないかと思います。
  231. 受田新吉

    ○受田委員 おぜん立てができるまでの準備もしないで、なりたい、なりたいと言うことは軽率であって、希望する以上はそういう場合のちゃんとしたおぜん立ても同時に仕組んでおくべきであると私は思います。  時間が進行しますので進んで質問をさせてもらいますが、大臣、あなたは経済閣僚でもあると見ていいと思うのです。つまり経済に経験を積んでおる人であるから、経済をよく知っておる外務大臣、そう考えてよいかどうか。
  232. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私も長い間大蔵省におりましたので、大蔵省関係のことはいささかかじったという程度でございます。
  233. 受田新吉

    ○受田委員 日本の外交はいまや外務省のエリートコースをたどってくる外交技術を専門にやった人だけでなくして、先進国、開発途上国を問わず、経済に対する認識の十分ある人がこれに参加しなければ実効を上げないと思うのです。したがって大使の派遣についても、ただ単に外務省の事務官僚から進んだ人だけがそのポストをほとんど全部占めるようなやり方をやめて、経済外交にも手腕力量の発揮できる人を起用して、特に後進国の中近東、アフリカ等の国々には悲惨な国がたくさんあるわけです。これらには経済協力もどんどんしてやって、人道的見地からも、国民の所得の非常に低い水準にある人々に、一応豊かな国として世界からうらやまれている日本が、愛情のある経済協力もしなければならぬ。そういう点について、経済的な知識と経験を積んでいる大使あるいは公使その他の参事官等を、いまのところ各省から少しずつは出てはおりますが、そういう者をむしろ大使に起用して、苦労される後進国の諸君に日本の愛情ある外交の成果を浴せしめるべきではないかと思うのです。ちょうど経済閣僚としても好ましい人物のあなたが外務大臣になっておるわけでありますから、かつて大平氏にこの問題を提起したのですが、うにゃむにゃ言ってようわからない。むしろあなたははっきり言われるから、はっきり答えていただきたい。
  234. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 民間の、特に経済関係に造詣の深い人を大使に起用すべしという御意見につきましては、私も、そういうことが積極的にどんどん行われるようになれば、大変結構だと思います。しかし現実のところ、なかなか人を得るのにむずかしいのが実際の状況でございまして、経済界で活躍されている方は、やはり経済界の中に入っていて活躍されることを望む方が多いわけで、なかなか、本当に大使になって、自分の従来の企業の関係はもうすっかり縁を切って、国のために外交のために働こうという、そういう方がなかなか得がたいのではなかろうかという気もいたします。ただ、外務省はいままで、やはり終戦以降なかなか陣容が十分でない、そういった中で、民間から有能なる人を外務省に入ってもらって、そして大いに活躍していただきたい、こういうことは考えておりまして、特に、定員がふえますときに各省からも来ていただきますし、また民間からもいい人があれば来ていただきたいというようなことも従来からやっておるところがございますが、受田先生の御意見はひとつ心にとめまして、これから本当に適材があればどんどん民間からも入っていただけるように努力をいたしたいと思います。
  235. 受田新吉

    ○受田委員 西ドイツなどは、外務省も御調査されていると思うのですが、政府直結の経済貿易事務所のようなものをそれぞれの国に置いて、常に経済実務の効果があるような応援をしておる。日本でもジェトロといういわゆる貿易機関がありますけれども、これは弱い。むしろ政府が、いま申し上げたような政府直結の機関があって、第一線でずんずん能率を上げていけるように仕向けていくべきではないか。どうです。  それで、したがって私もいろいろなところで聞いておるのですけれども、たとえば商社が第一線で活躍するのに、西ドイツなどは、国家自身が、政府がそれらの商社の貿易活動、経済活動に大変な応援、支援を送っておる。日本の場合は非常に厳しいチェックをしている。後進国などの開発についても、大蔵省などで常に、弱い国には第三国の強い銀行の保証を持ってこいなどという厳しいことをやっておる。そういうような、日本の官僚が常に冷酷な目で、後進国の開発に協力をしようとする人々、そうした機関に対して、官僚の支配をむしろ楽しんでいるようなことでは、これはなかなか実績は上がらないと思うのです。そういうところへ経済閣僚を経験されたあなたが外務大臣になった。経済閣僚は経験をしておられないが、それと同じような人物と見られるあなたが、ぜひひとつこれは馬力をかけてやってもらいたいし、私が昨年当委員会で専任大使を——今度は法案に直結する問題ですが、専任大使を向こうから派遣してくれている国には、こちらからも専任大使をもってこたえるべきではないか、これは相互互恵の精神から言うてもしかるべきだということで、当時官房長からも、ぜひということでありました。今度の予算に三カ月分の予算がついておるので、ウガンダに対する専任大使派遣は、昨年私が当委員会で提案して、小さいけれども日本の温かい愛情を期待している国にサービスができておるわけです。ところが、このウガンダに専任大使を派遣するということになると、さあだれが行くか。交通の便利も悪い。ナイロビからいままで兼務した大使がときどき行きよったというようなことでは、進んで私がウガンダに行きましょうというような人もおらぬ、そうすると、ノンキャリアの諸君で長い年数のたった人を御苦労願うかというような調子になってきて、真剣に日本に対して大きな期待をかけている国々に報いることができないですよ。こうしたウガンダのような国には、むしろ最も期待される大使が行って、この国との友好親善を大いに深めていく、そして、あの近くにあるタンザニアとかザンビアとかいう国に対しても、東アフリカの国々が世界経済会議もやるようなナイロビを中心にして、日本と深い提携を図っていくようにしなければならぬ。今度予算を取った。昨年の法案審議の際に提案した問題が解決した。そのウガンダにはどういうかっこうで専任大使を送ろうとするのかという問題を含めて、いま私が提案した、大使には外務省から出た少数のキャリア組だけでなくして、むしろこういう国国の経済開発には、経済的な認識、実績、経済実務、こういうものを十分蓄えた人を簡抜して大使にすべきだと思う。外務省のキャリアでない、経済的な実力者を持っていくべきだと思うのですが、大臣、あなたのところでは、どうもならぬ外務省の根強い——あなたが行っても、鳩山君がどう言おうと、外務省の機構はめったに動くものじゃないよと陰で言われて抵抗されておるような御存在とすると、余りにも哀れであると思うのです。勇気を持って外交陣容の刷新を図っていただきたい。ノンキャリアの中で本当に尽くした人々をどんどん用いるべきである。公務員試験あるいは外交官試験で点数だけかせいだ者がすすっとエスカレートされるという時代ではないです、日本はいまや。全世界に日本の真剣な人道的愛情も裏づけする外交官が要るときです。最近、外交官の登用に対して、従来の語学一本でなくして、新しい角度から人材を発掘しようとされておる努力は十分認めますが、日本外交史上に大きな転換を図る大役をあなたが果たしてもらいたいです。人材を広く発掘して真剣に取っ組んでもらって、出世主義で小さい国は行かぬ、大きな国だけを渡り歩きたい、そんなさびしい人々は首を切ればいいです。日本のためにおれはどんな小さな国へ行っても一生懸命に尽くすぞというような意気込みのある人を、外務官僚だけでなく、広く各省からも民間からも登用してやってもらいたい。
  236. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 受田先生の御熱意、よくわかりました。特に勤務地によりまして、特に瘴癘地の方はなかなか希望が少ないとか、いろいろな事情がありまして、外務省としても大使の人事には大変苦労しているところでございますが、いまおっしゃいましたように、広く適材でかつ熱意のある人物を発掘して責任ある仕事をしてもらうように、今後十分に研究させていただきたいと思います。
  237. 受田新吉

    ○受田委員 研究だけでなくして、実行せねばいかぬですよ。研究は相当積んでいるはずです。もう研究段階ではないです。いつまでも研究大臣じゃ困ったものです。  それからもう一つ、大使で赴任される方々は、ひとつ大いに学んでいただきたいのですが、アメリカという国では、海外に大使として赴任する際に慣例として国会で証言しておると聞いておるが、これは間違っていますか。
  238. 松永信雄

    松永(信)政府委員 私が了解しておりますところでは、アメリカの場合には、大使を任命するに先立ちまして、上院の外交委員会の承認を必要とするというふうに聞いております。証言といま先生はおっしゃいましたけれども、証言をしているかどうかという点はちょっと私はつまびらかにいたしておりませんので、もしまた必要がございますれば、調べまして先生の方に御説明申し上げたいと思います。
  239. 受田新吉

    ○受田委員 証言でも承認でも、これは調べてみてもらいたいのですが、同じような内容を持っていると思うのです。上院外交委員会で承認をとる、つまり国民の代表者の承認をとっているのです。いま外務大臣の辞令をもらって赴任するという日本のかっこう、これはひとつ改めて、国会の外務委員会でもいい、あるいは衆参両院の議運でもいい、この内閣委員会でもいいです。どこでもいいから、つまり認証官となって赴任する者は、一応国民の代表者の機関においても認められたというかっこうで行くほどの大変重い使命を持って行く人であると私は思うんです。これはどうですか。官房長、早速私のいまの提案について、研究だけでなくして検討、そして善処というところまであなたの方で、大臣はよくおわかりにならぬのですが、諸外国の例なども学ばれて、ひとつ外交官が権威あるものとして、日本外交の成果を存分に発揮するようにしてもらいたいんです。外務省だけがどこかの一角に高くそびえている、象牙の塔に立てこもるようなかっこうでないようにしていただきたいんですな。
  240. 松永信雄

    松永(信)政府委員 私がここでこういうことを申し上げるのはあるいは間違いだと言っておしかりを受けるかもしれませんけれども、現在外務省が持っております在外公館は百五十幾つかございます。その大部分は、非常に経済的あるいは社会的条件の厳しい不健康地あるいは瘴癘地というものがたくさんあるわけでございます。現にそこに勤務しております外務省職員は、自分の健康を犠牲にし、家族を犠牲にして、職務に精励いたしていると私は思います。  一委任国の大使を任用するに当たりましては、もちろん私どもは、大使が日本を代表する資格を持つ人間でなければならない。経済のみならず、政治、文化その他の諸分野において、十分に日本を代表する資格を持たなければならないという見地から、その人選に当たりましては非常に慎重を期している所存でございます。他方、大使を含めまして外務省職員の資質の向上を図らなければならないという点につきましては、十分な問題意識を持っている所存でございまして、そのために日夜努力をいたしております。  現在御指摘がございました、大使の任用に際して、国会なりあるいは国会の機関の承認を求めることを検討したらどうかという御質問でございますけれども、現在の大使の任命は、認証官でございますから、これは内閣が任命する仕組みになっております。この任用の制度につきましては、私どもは、それなりに十分な理由があると考えております。アメリカにおける例は、私どもももちろん承知しているわけでございますけれども、アメリカにおきましては、日本とは御承知のように憲法も違う、議会制度もまた非常に違うところがあるわけでございまして、認証官の任用の制度につきましては、その任用の制度とその背景にございますいろいろな制度の問題もあわせて検討しなければならないだろう。したがって、任用の問題だけをとらえて結論を出すというのは、いささか均衡を欠くんではないかという感じもいたします。しかし、先ほど大臣も仰せられましたように、私どもは、こういう問題というのはやはり他国の例をも十分研究しながら勉強していかなければならないと思っておりますし、また大使の具体的な任用に当たりましても、ほかの国の場合についても十分な配慮を払いながら運用をしていかなければならないというふうに思っております。
  241. 受田新吉

    ○受田委員 もちろん、認証官の問題でございまするから、国務大臣なども国会の承認というわけじゃなくて、国会で認めた総理が任命しておるということでありますが、事外交に関する問題では、日本の国威を海外に発揚し、そして国際親善に協力するトップに立つ人であるという意味で、私はそうしたものを含めて検討を要望しておきます。  もう一つ最後に、いま外交官も海外で苦労するのに、子供の問題が起こってくる。商社その他の海外に長く滞在する人々の子供さんの教育、これはどうですか。外務省文部省の共管事項でありますが、この日本人学校なるものはいま外務省でどれだけ確認しており、そこに学ぶ生徒がどれだけおって、職員の数はどれだけあるか、お答えを願います。
  242. 越智啓介

    越智説明員 お答えいたします。  現在、全日制の学校の数は四十五校ございます。補習授業校が六十五校。職員の数は公立学校教員が三百八十三名、国立学校教員が十七名、私立学校教員が二十四名、合計四百二十四名出ております。学ぶ子供は、一万四、五千名という数字が出ております。
  243. 受田新吉

    ○受田委員 ここまで進んできたわけですが、これらの海外日本人学校子供さんは、その経費はどうなっているのか、中小学校は国が出しているのかどうか、お答え願います。
  244. 越智啓介

    越智説明員 日本人学校は、現在現地在留邦人が共同して設立して運営を行っているたてまえでございますが、政府としてもこの重要性にかんがみて、従来からこれに対するいろいろな援助を行っております。また今後とも強化を図っていく。特に、昭和四十八年の衆議院の外務委員会決議に基づきまして、関係予算の大幅の増額を図っていく。必要に応じて全日制日本人学校新設、たとえば五十二年度もアルジェほか四校、派遣教員の増員、それから施設教材等整備拡充を図っております。また補習授業についても、人件費補助等必要な措置を講ずるなど、内容の充実を図っております。  具体的に申しますと、たとえば四十八年度の予算は九億八千九百四十五万円、これが四十九年度十四億、五十年度二十二億、五十一年度三十億、五十二年度は政府原案三十六億百万円、ここまで上がっております。  それから授業料の問題でございますが、これはその学校の性格と、理事会、運営のための母体が大体決めることになっておりますが、従来のたてまえで申しますと、現地学校に行くよりはずっと安く、相当実のある教育ができる、こういうことを目指してやっております。
  245. 受田新吉

    ○受田委員 海外には、日本人の子弟の教育はその学校しかない。ほかに塾が最近ちょいちょいあるのを私アメリカなどで知っておるのですが、アメリカなどでは塾へ通うてその教育の補充をやっている。これは本質ではないのだ。だから義務教育海外で受ける。いまの外務省のあなた方のお子さんたちが海外教育を受ける、商社その他の海外派遣の邦人の子供教育を受ける、その受ける経費は、義務教育であるならば、ほかに国立や公立がないんですから、当然その日本人学校経費は国が負担してしかるべきものではないか。そうしなければ外交官だって、小さな開発途上国へ赴任するのをいやがって、奥さんも子供も置いておいて、あちらへ行っても腰が落ちつかぬのだ。早う帰ろう帰ろうというので、瘴癘地などの問題とは別の郷愁をそそって、落ちついて外交できるようなことじゃない。そういう意味から、安心して子弟の教育ができるように、奥さんと子供を連れていけるような体制にしておかなければいかぬ。その経費は国が全部めんどう見ればいいですよ、義務教育の課程は。これはどうなっているのですか。文部省はどうしているのですか。文部省、お答え願いたい。
  246. 川村恒明

    川村説明員 お答えを申し上げます。  国内におきましては小学校並びに中学校は義務教育ということで授業料は徴収をしないということがわが国の教育政策の基本になっているわけでございます。海外におられますそういう在留邦人の方の子弟につきましても、この方々日本国民である以上、日本国民にふさわしい教育を行うということは私どもに課せられた使命だと存じておりますが、ただ、海外におられるという特殊事情から、日本教育法令がそのまま海外に適用になるというものではない。これはやはりそれぞれの国の主権の問題もございますので、ただいま先生がおっしゃいました、これは義務教育である——どもも気持ちとしては義務教育として取り扱ってまいりたいとは思っておりますが、制度上は義務教育そのものではない。でございますので、できるだけそういう現地方々のお気持ちを尊重し、政府としてできるだけの援助をしてまいりたいということで、常に外務省と御相談をしながらいろんな施策を講じてまいっておるということでございます。
  247. 受田新吉

    ○受田委員 大変な問題がひそんでおる。派遣する教師はいまどういうかっこうですか。文部教官ということに決まったのですか。外務省職員であるのか、または文部省か、あるいは地方の公務員であるのか、一体どういうことになっておるのか。去年以来ちょっと検討しておるようだが、この在外日本人学校派遣教師はどういう身分か、そしてそれはそれぞれの府県の定数の中に入っておるのか、枠外で定数が認められておるのか、不安定な定数の中にあるのか、このことも含めて御答弁願いたい。
  248. 川村恒明

    川村説明員 ただいま海外派遣しております教員は、先ほどの移住部長の御答弁にもございましたように四百二十四人でございます。その大半の三百八十三人がそれぞれの都道府県公立学校の先生方でございまして、身分的にはそれぞれの公立学校教員という身分でございます。それぞれの県の職員が、県によりまして研修出張あるいは職務専念義務の免除あるいは休職というふうな身分の取り扱いを受けまして海外勤務しておられる。そういうふうな各県で身分取り扱いをされた方につきまして、外務省の方で在外教育施設における教育を委嘱をするということになっているわけでございます。そういうことでございますので、公立学校の先生方は、それぞれ都道府県の定数条例で定める県の教職員定数の範囲内に入っておるということでございます。  そこで、そういうふうな形をとっておりますと、やはりそれぞれの県の本来の教育を圧迫する。必要な教員をその定数の中でやりくりをするということは非常に不都合であろう、これでは思い切った海外子女教育の充実が期せられないということで、昨年来私ども文部省といたしましては、この派遣教員身分国家公務員に切りかえる、その間、県に御迷惑をかけずに国の仕事としてこれをやりたいということで、五十二年度の予算要求におきましてそういう趣旨の要求をしてまいったわけでございますけれども、いろんな事情がありまして、この点は本年は見送りに相なっておるということでございます。
  249. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣、いま文部省課長からお話をお聞きになったと思うのです。あなた方外務省の外交官の方は、海外での子供教育に一番頭を痛めている。商社その他の在留邦人でも同様ですよ。その子供教育に一番大事な先生の身分がいまのような国家公務員、公立は府県の定員、その府県の定員を、海外派遣する者は枠外で要求しようとしたら大蔵省に押さえられておる。そうですね。そんな悲しいことで、外務大臣、寝覚めがいいですか、どうですか。この問題は、外務大臣としてそこまで心を配らなければいかぬのです。そういう愛情の豊かな外務大臣にならなければいかぬ。大使に赴任し、参事官で行こう、しかし家族を東京に置いて、帰心矢のごとくしてどうして海外でりっぱな執務ができますか。家族を連れていけば子供教育もできる。それにいまのように文部教官であり、地方公務員である教員派遣されるようになった。かつてはみんなやめていかなければならなかった。それがいまはそこまで前進したのです。十年ばかりの歴史がそこへ前進したのです。先生は、りっぱな公務員現地にいらっしゃる。しかし海外派遣教員は定数の枠外で、定数の中へ別にこれを計算するということで措置をしようとすれば大蔵省に削られる。日本で学ぶことができない、しかし国家のために海外で苦労するその子弟は、義務教育の国庫負担の分も恩恵に浴しない。そして長い間日本語を離れてくる生活ですから、今度は戻ってきてどこの学校へ行くかがまた大変だ。海外で学んで、国内の学校教育法の教育が足らなかった者に特別の進路を開くような大学が最近できておるかどうか。文部省もそこを含めて主な国立学校私立学校などへ——海外で一万四千もの子供が学んでおる、しかもそれらは相当の知識を持った人の家庭だ。その家庭の子供日本におればりっぱな環境で勉強できるのが、海外で何年も苦労する間に日本語を忘れてくる。日本学校の学年も複式学級だというものもたくさんあるわけですから、教育に手落ちがある。その補いは、今度日本へ戻ってきたら進路、進学について道を開く、そういうことを一緒にやらぬと外務省の役人が萎靡沈滞します。そうすると商社外交、経済外交、文化外交もだめになる。だから海外派遣する人の身分を安定せよ、定数を確保してむしろ全部一括して文部教官みたいにした方がいい。そのくらいの定数を別枠で文部省外務省と相談され、大蔵省にねじ込めばいい。そして教育内容についても、学校教育法の教育を受けたような扱いをして、日本へ帰って進路が開けるように、日本で進んで入学できる枠をとってくれる学校を設けよ。いまの提案について、あなたは文部大臣のやる役割りもあわせて、国務大臣として御答弁をいただきたいのです。
  250. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 海外子女教育が大変大事な問題であるという認識につきましては、人後に落ちるものでもございません。また財政当局としましても、ことしの予算折衝におきましては、海外子女教育にはほぼ外務省の要求どおりの査定をしてもらったと聞いております。このように子女教育につきましてはみんな熱心なのでありますけれども、いま一番頭の痛いものが定員法の枠がいっぱいになっておるということで、総定員法の枠というのが、これがいろんな点でいろんな不合理を生んでいる一つの大きな原因になっておることも事実でございます。そういったことから、定員ということにつきまして非常に処理がむずかしかったのであろうと思います。しかしこれらのことは、実体的には在勤手当のようなものはみんな国の方で負担しているのでございますから、本当に定員だけの問題のような感じがいたすわけでございます。あるいは人によっては、これはわかりませんけれども、帰った場合の職ということを皆どの方でも、一時外国へ行きますときには、帰った後に職がないということは非常に困ったことでありますから、それぞれ自分の所属している各県の教育委員会におきまして自分の席が残っておるということにこだわる方もあろうかと思います。しかし、これらのことはこれからひとつ前向きに取り組みまして、とにかく受田先生おっしゃいましたような子女教育重要性にかんがみまして、一番いい制度をつくるように努力いたしたいと思います。
  251. 受田新吉

    ○受田委員 これで最後にします。私の後の質問者がきょうおられないようですから、これ一問だけお許しいただいて、非常に気にかかる日中平和交渉の問題で一言だけ聞きたい。  日中交渉の中で覇権問題以外にひっかかるものがあるのかないのか、ちょっとお聞きしたい。
  252. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日中平和友好条約につきましては、双方から原案を提出し合っておるわけでございます。その中で一番大きな問題として覇権条項という問題が非常にクローズアップされたわけでございますけれども、その他につきまして全部両国の意見が文庫の上で完全に一致しているという段階ではないわけでありますけれども、これらの点につきまして、むしろこれは技術的な問題というふうに私自身は解しております。
  253. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると覇権条項の問題が解決すれば日中関係は基本的には解決する、こう理解してよろしいわけですね。
  254. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その他の問題につきましては技術的な問題で、解決は比較的容易であろうというふうに私どもは理解をいたしております。
  255. 受田新吉

    ○受田委員 例の宮澤外務大臣のときのあの四項目に対してひっかかったのは何でございますか。
  256. 中江要介

    ○中江政府委員 ちょっと細かい面もあるかと思いますので、大臣に先立ちまして私一言だけ。  私どもの了解では、宮澤四項目と称せられておるものを中国との間で交渉したことはございませんので、ひっかかっている問題というものはない、こういうふうに認識しております。
  257. 受田新吉

    ○受田委員 宮澤四項目なるものは、いまの外務大臣は四項目をそのまま踏襲しておられないわけですね。国民の中に浸透している宮澤四項目でございますが……。
  258. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 宮澤さんの言いました四つの事項につきましては、宮津前外務大臣が自分の考え方として申し述べられたことである、しかし、これが交渉上の条件であるというようなものではなくして、覇権条項というものにつきましての外務大臣としての理解を示したものであるというふうに解釈しているのでございます。
  259. 受田新吉

    ○受田委員 今度北方領土並びに漁業問題がこういうふうにややこしくなってきておる関係だし、日ソ関係のこうした緊張のことを含むと、日中関係の交渉がこの問題にひっかかって時期おくれになる可能性はないかという懸念をいま持っているわけですが、これとは分離して日中交渉を前進できる、年内には何とかかっこうをつけたいというめどを持っていると期待してよろしいかどうか、お答え願います。
  260. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日中関係と日ソの関係、これはそれぞれ別個の問題としまして私ども最善を尽くさなければならないというふうに考えておる次第でございまして、したがいまして日中平和友好条約につきましては、第三国には全く関係のないことであるという考えのもとに鋭意努力をするということで、時期といたしましても、両国が満足し得る条件に到達できる、そういった時期が到来いたしましたならば、なるべく速やかに条約締結に、むしろ決着をつけるべきであろうという態度で臨んでおる次第でございます。
  261. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、ことしの末までには署名に持ち込んでいきたいという熱情を持っておるのかどうか。あなたはもう国会が楽になったらすぐ飛んでいきたいという発言がいまあったわけですから、あなた御自身も中国を訪問される御決意があると思います。この年末までには署名まで取り運んでいく、それだけの熱情を外務大臣自身が持っておられると私は期待しておるのですが、期待を裏切ることのない御答弁を願いまして質問を終わります。
  262. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この席で時期につきましてはっきり申し上げることはできませんけれども、できる限りの努力をいたすということで御理解を賜りたいと思います。
  263. 受田新吉

    ○受田委員 あなた御自身は中国へ飛んでいかれなければいけませんね。これは小川さんだけに任せるわけにはいかぬ、当然近く中国へ行って、直接自分がキッシンジャー顔負けの働きをする、これを期待していいのですか。
  264. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 時期が到来いたしますれば私自身、労をいとうものではございません。懸命の努力をいたしたいと思っております。
  265. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  266. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次回は、来る十五日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会