○松本(操)政府
委員 お答え申し上げます。
先生御案内のように、現在航空交通管制のうちの航空路管制、管制部で行っておる管制でございますが、これは大体東経百六十五度から同じく東経百二十一度あたりまで、それから北緯二十一度辺まで、
日本の北の方は、ほとんど
日本海の真ん中辺、これだけの広い空域の中を通っております航空機の中で、計器飛行で飛んでおります飛行機、これについての管制をしておりますのが航空交通管制部でございます。このうちの
東京航空交通管制部、ただいま問題になっております
東京航空交通管制部というものは、そのほとんど全部の面積の中を飛んでおります飛行機の管制をする、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、今回この設備を拡充するということを議案としてお願いしておるわけでございますが、実は
昭和四十六年から発足いたしました第二次の空港整備五カ年
計画の中におきまして、
わが国におきます航空交通管制
能力というものの飛躍的向上を図ろう——飛躍的向上と申しますのは、内容は二つに分かれるわけでございまして、
一つは安全性の向上でございます。もう
一つは、フレキシビリティーと私
ども呼んでおりますが、要するに管制
能力に弾力性を持たせよう。ぎりぎりいっぱいのところでねじりはち巻きでやるというのではなくて、弾力性のある管制
能力を持たせよう、この二つが実はこの
計画の大きなねらいであったわけでございます。そのための手段といたしまして、
東京管制部の例で申し上げまするならば、
東京管制部の中に管制情報処理システムというものを大々的に導入をすることにいたしました。これによりまして、従来管制官が自分で小さな計算尺のようなものを使って計算をしておりました飛行機の
予測位置の計算、こういうふうなものは全部コンピューターがはじいてしまう。今までの管制というのはマニュアル管制と申しまして、そういうふうに
予測位置を計算機ではじきましたものを、ストリップと申します短い紙に書きまして、それをたくさん並べておきます。そうしますと、たとえばアンカレジから
東京へ向かって飛んでくる飛行機があったといたしますと、何時何分にどこを通ったということを飛行機の方から通報してまいりますと、そのときの飛行機の早さ、向かい風であるか追い風であるかといったようなことを念頭に置きまして、管制官が計算尺のようなもので計算をいたします。次に経度で十度を置いた次の
予測点に来るのは何時何分になるだろうということを計算をいたしまして、ストリップに書いておきます。そういたしますと、
一つの航空路の中を、大洋の場合に二十分置きに飛行機が飛んでくるわけでございますので、これがうまく二十分間隔で参りませんと後ろの飛行機が追いついてしまうというふうなことになって、管制上安全の問題が起こってまいります。こういうふうなのを管制官が手でやる、手で計算をする、そのためにまた位置を確認する、それは一々無線電話で聞いてやる、こういうふうなことをしておったわけでございますが、この位置を聞いてやりました場合に、それをコンピューターに入れてやりますと、コンピューターが自動的に風の
状況その他を全部記憶しておりまして、コンピューターがそういった
データをもとに複雑な計算式によって計算をして、それをちゃんとストリップに打ち出して、管制官の手元まで出してくる、こういう仕掛けが、従来
東京管制部だけでしか使っていなかったものを全国に広げよう、先ほど申し上げました東経百六十五度から百二十一度まで、北緯二十一度まで、北は
日本海の真ん中辺まで、この広い
範囲を
東京管制部がほとんど持っておりますが、そのほかに札幌管制部、福岡管制部、那覇管制部、全部で四つの管制部が連係動作をとりながら管制をしておるわけでございます。従来は
東京管制部だけにコンピューターがございましたものを、全部のこの四つの管制部全体をコンピューターで計算をしてしまう、こういうふうにしようというのがまず
一つでございます。
次に先ほど私がべーシックにはマニュアル管制である、つまり耳で聞いたものをストリップに書いて、それを管制官が頭に入れておきまして、そろそろこの次の飛行機が後へ来ているはずだからということで呼び出して、相手の位置を確認をするというふうなやり方をしておりましたものを、全国的に八つのレーダーを置きまして、従来二カ所しかございませんでした航空路監視レーダーというものを八カ所にふやします。そういたしますと、
日本の国内線のほとんどの幹線はこのレーダーでカバーすることができます。これによりまして管制官はレーダーの上に飛行機がいまどこを飛んでおるのかというのを時々刻々見ながら管制をすることができる。その場合に、ただレーダーの上で見ておりますと、レーダーの上に点にしか映ってまいりません。つまり地図を見ているのと同じことになりますので、この飛行機が高いのか低いのかという高度がわからない。この飛行機はJALの飛行機なのかANAの飛行機なのかというのもわからない。これは全部ストリップに書いておいたものを、管制官が頭の中でレーダーの画面とストリップを組み合わせまして管制をするというのが従来のやり方であったわけですが、このレーダーを八つにふやしますと同時に、このレーダーにもコンピューターを一緒に組み合わせてしまいました。その結果、まだ現在完全に動く段階に至っておりませんけれ
ども、これが完全に動く段階になりますと、レーダースコープの上の飛行機の映像が、ただの点ではございませんで、たとえばJL何便、つまりJALの何号機である、高さは幾らである、こういうふうなことが全部出てまいります。したがって、二つの点が非常に接近しておる場合には、管制官は間隔がとれなくなったのではないかということで心配をいたしまして、従来ですと、この両方の飛行機に無線電話で話をしながら確かめなければならなかったわけですが、この装置が動き出しますと、レーダースコープを見ておりますと、ちゃんと高度が出ておりますので、これで安全だ、こういうことが確認をできる。このように管制官がよけいなことに頭を使わないで、管制間隔の設定でありますとか、効率のいいルートの決定でありますとか、こういうことに力を注ぐことができるようにしよう、この二つのねらいを持ってこの仕掛けをつくってまいったわけでございます。したがいまして、先生御
質問の安全度の向上という点につきましては、私は飛躍的に安全度が向上した、こういうふうに御理解いただいてよろしいと思います。
それから次に、
能力的な問題になりますと、これは非常にむずかしゅうございまして、管制
能力を上げますということはどういうことかと申しますと、限られた空域、エアスペース、この中に何機の飛行機を詰め込んで安全に動かすかということが、管制能率、管制
能力というものの基本になるわけでございます。レーダーで見ておりますと、従来の耳で聞いておりますのに比べて管制の間隔を詰めることができますから、そういう意味においては、限られた空域の中により多くの飛行機を入れることが可能でございます。しかし、そのためには全部がレーダーでつながってしまわないといけません。一部はレーダーで、一部はマニュアルでと、こういうことになりますと、やはりより安全ということを考えました場合には、マニュアルの間隔で飛行機を詰め込まなければなりませんので、せっかくのレーダーが生きてこない。したがいまして、現在なお八つのレーダーが全部動くには至っていないわけでございますけれ
ども、五十二年度内には、これらのレーダーが全部運用を開始することになりますので、この
状態になりますと、管制
能力をふやし得る素地というものが出てまいります。
これが冒頭私が申し上げました管制
能力に弾力性を持たせる、こういう意味でございまして、いままでは少し機数がふえますと、それこそねじりはち巻きで管制官は管制をしなければならない。安全度は落としません。しかし管制官のロードが非常にふえる。これが今度の装置が完全に動き出しますと、多少ふえても、管制官は従来と同じ
程度のロードで十分に管制ができる、こういうことにもなりましょうし、いずれ飛行機がふえた場合には、十分に
対応できるという素地があるわけでございます。