○林
政府委員 消防団に関して長い経歴と功績をお持ちの先生からの御
質問でございまして、私がお答えするのもまことにおこがましいようなものでございますけれ
ども、私たちは現在の
消防団というのは、端的に言わしていただければ、非常に健全なる精神の残っている唯一の団体ではないかと思うくらいでございます。実は物質的には大変豊かな生活になりましたけれ
ども、精神的なものでの荒廃といいますか公徳心の欠如といいますか、自分の権利だけ主張して義務を忘れるという風潮の強い世の中で、
消防団ほど昔ながらの健全な精神、それは
一つは部落共同体というものに支えられた、公共の、公の精神というものに支えられている残されている唯一の団体ではないか。言ってみれば、これから先の精神的な荒廃に対して、それを救う宝庫になる団体ではないかというくらいに考えております。もちろん国民の生命、身体、財産というものを火災から保護する、水害、地震等の災害を防除してこれらを軽減すること、これ自体が
消防団の任務でございます。
常備
消防を普及することを私たちの方は勧めておりまして、現在町村数において八〇%、それで
人口においてはすでに九五%の地域を常備
消防がカバーしておりますけれ
ども、しかし常備
消防ができたからといって
消防団が不要になるものではない。常備
消防のある区域では常備
消防と一体的に協力をして火災を消し、いま御
指摘のように、その地域の実情に応じた後片づけから何から全部奉仕的精神でやっていただく。
さらにこれに加えて申しますれば、
消防団の一番重大な任務というか
消防団に期待することとしては、災害のときだと思います。大災害、風水災、大火災といった場合にとうてい常備
消防に頼れるものではない。震災ということも考えた場合に、道路は途絶し、水利は途絶してしまうというようなところでは、常備
消防というのはほとんどその力を発揮し得ない。そういったその地域一帯の大きな災害時における
消防団の任務というか、もうそれは
消防団が唯一のそれに対処する団体である。その
意味で団の健全なる育成と申しますかあるいは待遇の改善――本来は欲得づくでなくてみずからの身を捨てて公のために尽くす団体でございますが、それらが安心をしてその任務に邁進できるように常々から待遇の改善とか、そういった非常
事態に対する十分の手当とかいうことは、もう一刻も欠かせない喫緊のことであると考えております。
あるいは後ほど御
質問いただくことになると思いますけれ
ども、その
意味での財源
措置その他が足りないではないか。端的に言わせればそういう御
指摘だと存じますが、これは数字的に申し上げれば逐年その改善には一生懸命
努力をしておりまして、なお不十分であるか、まあいまの
財政状況でこのぐらいかというような議論になるかとは存じますけれ
ども、それらの改善は
消防庁としては力を尽くして図っておるつもりでございます。しかし一方には、そういった団体であるがゆえに金銭づくではないんだ、むしろ待遇を
余り改善すると、いまが十分だとはもちろん申し上げませんけれ
ども、待遇の改善そのものがそういった基本的な、何と申しますか奉仕的精神というようなものに対して、むしろそれをゆがめるということもあるかもしれない。
つまり金だけではないんだ、むしろ金は問題ではないんだというところに
消防団の心意気を見出すということも、こういった団体では必要なのではないかと実は存じております。たとえば訓練のための出動には十分な手当を出す、実際の出動のときには原則としてただというような
考え方も場合によれば必要なのかとも存じておりますので、金銭づくではないという面も私は非常に大事だと思います。
かといって国の
消防庁が、金銭づくでないんだから改善をおろそかにするということは実は毛頭ございませんので、それはもう苦しい
地方財政の中でもできるだけ改善をしていきたいし、
地方団体の
需要を見るにつけましても、それぞれの市町村が困らないように十分な
需要を見るよう、これは
財政当局と緊密な連絡をとって逐年改善に努めている、こういった段階にあるわけでございます。