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1977-04-13 第80回国会 衆議院 地方行政委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月十三日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 地崎宇三郎君    理事 大西 正男君 理事 木村武千代君    理事 高村 坂彦君 理事 中村 弘海君    理事 小川 省吾君 理事 佐藤 敬治君    理事 小川新一郎君 理事 山本悌二郎君       相沢 英之君    井上  裕君       石川 要三君    谷  洋一君       渡海元三郎君    中村喜四郎君       中村  直君    西田  司君       堀之内久男君    加藤 万吉君       新村 勝雄君    権藤 恒夫君       和田 一郎君    中井  洽君       三谷 秀治君    川合  武君  委員外出席者         参  考  人         (国立市長)  石塚 一男君         参  考  人         (関西学院大学         教授)     橋本  徹君         参  考  人         (岡山県知事) 長野 士郎君         参  考  人         (立教大学名誉         教授)     藤田 武夫君         参  考  人         (全日本自治団         体労働組合委員         長)      丸山 康雄君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 四月十二日  行政書士法改正に関する請願石井一君紹  介)(第二九四五号)  同(小泉純一郎紹介)(第二九四六号)  同(高村坂彦君紹介)(第二九四七号)  同外一件(加藤常太郎紹介)(第二九四八  号)  同(野呂恭一紹介)(第二九四九号)  同(細田吉藏紹介)(第二九五〇号)  同外二件(堀内光雄紹介)(第二九五一号)  同外一件(増岡博之紹介)(第二九五二号)  行政書士法適用除外規定追加新設に関する  請願河村勝紹介)(第二九五三号)  同(細田吉藏紹介)(第二九五四号)  行政書士法の一部改正に関する請願愛知和男  君紹介)(第二九五五号)  同外三件(大石千八紹介)(第二九五六号)  向(齋藤邦吉紹介)(第二九五七号)  同(坂本三十次君紹介)(第二九五八号)  同(竹下登紹介)(第二九五九号)  同(津島雄二紹介)(第二九六〇号)  同(塚原俊平紹介)(第二九六一号)  同(中川一郎紹介)(第二九六二号)  同(福永健司紹介)(第二九六三号)  同(三原朝雄紹介)(第二九六四号)  行政書士法の一部改正反対に関する請願外一件  (石原慎太郎紹介)(第二九六五号)  同(大塚雄司紹介)(第二九六六号)  同(木野晴夫紹介)(第二九六七号)  同(北川石松紹介)(第二九六八号)  同(栗原祐幸紹介)(第二九六九号)  同外一件(塩川正十郎紹介)(第二九七〇  号)  同(篠田弘作紹介)(第二九七一号)  同(澁谷直藏紹介)(第二九七二号)  同(島村宜伸紹介)(第二九七三号)  同(正示啓次郎紹介)(第二九七四号)  同(田中六助紹介)(第二九七五号)  同(濱野清吾紹介)(第二九七六号)  同外一件(早川崇紹介)(第二九七七号)  同(林大幹君紹介)(第二九七八号)  同(古屋亨紹介)(第二九七九号)  同(森下元晴君紹介)(第二九八〇号)  同(与謝野馨紹介)(第二九八一号)  同(綿貫民輔紹介)(第二九八二号)  行政書士法適用除外規定新設に関する請願  (阿部文男紹介)(第二九八三号)  同(上村千一郎紹介)(第二九八四号)  同(大西正男紹介)(第二九八五号)  同(加藤常太郎紹介)(第二九八六号)  同(鴨田宗一紹介)(第二九八七号)  同(佐野嘉吉紹介)(第二九八八号)  同(篠田弘作紹介)(第二九八九号)  同外一件(塩川正十郎紹介)(第二九九〇  号)  同(田中六助紹介)(第二九九一号)  同(野呂恭一紹介)(第二九九二号)  同外一件(原田昇左右紹介)(第二九九三  号)  同外二件(藤井勝志紹介)(第二九九四号)  同(細田吉藏紹介)(第二九九五号)  同(増岡博之紹介)(第二九九六号)  同(山下元利紹介)(第二九九七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)      ————◇—————
  2. 地崎宇三郎

    地崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため参考人から意見を聴取することにいたしておりますが、まず午前中は、国立市長石塚一男君、関西学院大学教授橋本徹君の御出席を願っております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人の方から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑に対して御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず石塚参考人にお願いいたします。石塚参考人
  3. 石塚一男

    石塚参考人 おはようございます。東京国立市長石塚一男であります。  地方交付税法の一部を改正する法律案について、意見の概要を述べさせていただきたいと思います。  四月八日の朝日新聞は、地方交付税法改正案について「「臨時措置でごまかす政府原案法律違反」などと反発している五野党は、地方交付税税率引き上げを求める各党修正案をそれぞれまとめ、修正案一本化の折衝を始めた。」と報道しておるのであります。  御存じのように、地方財政不足額は、昭和五十年度二兆一千六百億円、五十一年度二兆六千二百億円、五十二年度は二兆七百億円と続いております。このことは、地方交付税法第六条の三第二項の引き続き著しく財源が不足する場合は、地方行財政面制度改正または交付税率の変更を行うものとするという規定が適用されなければならない状態を示しておると思います。  自治省におかれましては、昭和五十二年度地方財政対策のために、交付税の五%引き上げと、地方債大量発行時代に備えまして地方団体金融公庫を創設するように、大蔵省に強く働きかけ、要求をしたところでございます。  これに対しまして、大蔵省では、国の方がより窮迫の度合いが深刻であるといたしまして、この要求を認めなかった経緯につきましては、各先生方御存じのとおりのことでございます。  結局、昭和五十二年度に限りまして、地方財政財源不足額二兆七百億円の半分を地方交付税の増額、あと半分は地方債の増発で賄うという結果に相なりました。  その内容は、地方自治体に対し借金を押しつけることでありまして、交付税特別会計が国の資金運用部資金から九千四百億円の借り入れを行うということは、将来の市民負担を増大するということに相なると思っております。  九千四百億円の借り入れに伴いまして、後年度借入金償還額多額に上ることを考慮いたし、将来の交付税総額確保するために、昭和五十五年度から昭和六十二年度までの八年間に四千二百二十五億円を元本償還額として臨時特例交付金交付税特別会計に繰り入れる措置を行うということでございます。  過去二年間交付税率改正をせずに、交付税特別会計資金運用部資金からの借り入れによって当面を糊塗していたこの予盾が、昭和五十二年度地方財政対策において激化したものと言えましょう。この措置は、自治省のある高官が認められるように、地方債政府資金を圧迫することに相なり、自分の足を自分で食ってきたようなものであると言われております。  私は、この地方財政対策市民に説明をいたしましたが、非常にわかりにくい措置であり、このままでは市民不在地方財政対策であるという回答がはね返ってきたのみでございました。  昨年、地方団体共同調査によって明らかになりました超過負担額六千三百億円について、昭和五十二年度地方財政対策項目一つといたしまして、「国庫支出金については、改善合理化を図るとともに、超過負担解消のための措置を講ずる」とされております。国では四百九十五億円の措置を講じたとしておりますが、一けた違うのではないだろうかと思います。四百九十五億円と言いますけれども、それは事業費ベースで、国の支出はそのうち二百五十六億円の解消を図ったにすぎないのであります。これは数字の発表の仕方のマジックだと思っております。二百三十九億円は自治体費用超過負担解消を図るというものなのであります。  昭和五十二年度地方財政危機は当然政府としても予測されることであって、地方関係団体はすでに昨年の夏に地方財政対策についての提言を行っておるところでございます。すなわち、全国知事会は七月二日に、新しい時代に対応する地方行財政に関する今後の措置についての報告、全国市長会におきましては六月二十八日に、低経済成長下における都市政策に関する提言を、全国町村会は七月三十一日に、昭和五十二年度政府予算編成並びに施策に関する要望などであり、全国革新市長会は八月二十四日に、地方行財政改革への提言を発表いたしておるところであります。  全国知事会及び全国市長会提言を要約いたしますと次のとおりに相なります。地方交付税地方税収入を補完する重要な財源であり、その総額確保する必要がある。そのために地方交付税率引き上げる。そこで、国が政策的に地方を通じて実施してきた各種事業地方負担を考慮し引き上げ率決定する必要がある。赤字国債発行多額に上る経済環境下を考え、対象国税総額とするか、相続税物品税印紙等収入を新たに加え、これにリンクをする。国債発行額のうち、交付税相当額地方交付税として交付する臨時特別措置を講ずる。基準財政需要額実勢単価を反映させ、的確な需要が算出できるように努める。本来、交付税措置することが適当でない経費については対象から除外をし、委託費として財源措置を講ずる。都市における財政需要実態に即するよう基準財政需要額算定強化を図るべきである。地方交付税減収補てん対策を講ずべきである。なお、交付税自主性安定性確保するため、交付税及び譲与税配付金特別会計へ直接、国税収納金整理資金から繰り入れられるよう措置することが必要である。  全国革新市長会においては地方交付税について次の五点を提言をしておるところであります。  地方交付税地方自治体間の財源調整制度として今後も存続をさせる。交付税財源となる税種現行国税三税から国税全体に拡大し、交付税総額としてその四割を確保する。このことは交付税法第六条関係に該当すると考えておるところであります。基準財政収入額については、その算入率地方税の再配分状況とあわせて是正をする。すなわち、同法の第十四条関係の、地方税の再配分については、地方と国との配分を五〇対五〇に税率調整する具体案を別途に提案いたしておるところでございます。基準財政需要額算定につきましては、補助金化しております交付税事業費補正廃止の方向で検討をする。また測定単位単位費用補正係数などについても、実態に即したものに改め、算定方法を簡素化いたしまして内容を客観化すべきである。次に、国の恣意的配慮が入りやすい特別交付税につきましては、第六条の二及び第十五条関係算定根拠を明確化するとともに、その一部、すなわち三%を普通交付税に振りかえる措置を行うこと。  各論の部分についてさらに申し述べますと、次のとおりとなります。  道府県市町村配分については、現在、道府県の五五%、市町村の四五%の割合を、道府県四〇%、市町村六〇%の配分率として、あわせて事務区分を明確化すること。第十四条関係としまして、市町村に対する基準財政収入額算入率昭和三十八年度までの百分の七十に戻していただくこと。現行は御案内のとおり百分の七十五であります。標準団体規模について、これは第二条関係となりますけれども、市町村標準団体規模人口十万人と想定しておりますが、市の区分大都市、すなわち政令指定都市人口二十万人程度を中都市、五万人程度を小都市等の三段階に改め、算定基礎とすること。基準財政需要額経費種類について、公害、交通安全、同和対策病院運営等時代の要請に合った行政費目新設するとともに、予算科目と一致した経費種類としていただくこと。また基準財政需要額算定に関して、次の項目について改善を図る必要があると考えております。  すなわち基礎数値について、人口住民基本台帳を用いてもらいたいということ。従来は国調人口であります。単位費用については実際経費と著しく乖離しておりますので、改善をすること。普通態容補正について、点数差階段状から連続曲線状として実態に即したものにする。種地決定については昼間流出人口宅地平均価格などの資料は最新の資料を用いること。  当国立市は文教都市市是とし、基本構想においてもギャンブル財源に一切依存しないことを規定しておる市であります。収益事業収入は戦後約三十年にわたり継続的に増大をし、事実上経常財源化していることは否定できない明瞭な現実であります。この現状を無視して、ギャンブルによる収益事業収入臨時的収入であるという表面的な理由で、交付税基準財政収入額に算入されていないことに大きな疑問を感じておるものであります。  昭和五十年度の決算によりますと、東京多摩地区二十五市の収益事業収入は二百四億四千二百万円余でありました。一市平均にいたしますと八億一千七百六十八万円余と相なります。多摩地区ギャンブル御三家のうち二市に隣接しております当市にとって都市環境整備需要は同等と言えると思っておりますが、この二市の収益事業収入は、一方が五十億四千六百余万円で、一方の市は三十二億四千五百万円でございます。ギャンブル公害に泣く市民が多数に上る現状を考えますと、当市の市税以上の収入を図っていることについて本当に矛盾を感ぜざるを得ないのでございます。  一般的にギャンブルのある都市給与が高くなっている現状におきまして、地方財政危機自治体人件費の高騰にあると自治省は言っておられますが、多額収入がある場合、人件費が高騰することも想定できることであります。しかしながら、給与横断的賃金構造をとる傾向もございまして、ギャンブルを実施していない都市も近隣市の影響を大きく受けているという傾向は否めない事実として感じておるところでございます。  そこで十年間の経過規定を設けていただきまして、漸次収益事業収入交付税基準財政収入額に算入する措置を講じていただき、全国都市ギャンブルに頼らない道を求めることを提案いたしたいところでございます。当面の措置といたしましては、都道府県単位均てん化努力を払っている県があると伺っておりますが、自治省もぜひその指導強化をされるよう望む次第でございます。  本年は、御案内のとおり憲法が施行されてから三十年、その付属法典として施行されました地方自治法も三十年を経過をいたしました。主体性ある地方自治確立を目指すためには地域民主主義地方分権主義を徹底しなければならないと考えているところであります。  今回、参考人として発言を許される市長は私一人と聞いております。全国六百四十四市の市長の一人として発言するため、全国市長会の考えていることを若干述べさせていただきたいと思います。  今次暫定予算によります地方交付税交付額は、御高承のとおり九千二百二十四億円について四月四日概算交付されましたが、地方自治体が待望しておりました額は一兆三千四百八億円でありました。差額の交付予算成立及び交付税法改正にリンクされてくるということでございますが、四月は御承知のとおり各自治体とも資金繰りのために一円でも多く欲しいときであります。一借り等を行ってこの四月を過ごしておるというのが実情であります。したがって、暫定予算の積算についてももっと配慮をしてもらいたかったというのが全国市長会実情であります。したがいまして、今後の各先生方の御努力によりまして、善後処置を期待する次第でございます。  そこで、当面する地方行財政改革への提言を具体的に申し上げますと、地方自治体代表構成員とする地方行政審議会仮称)による行政事務の再配分検討をしていただくこと。また、財源の再配分につきましては、同じく地方自治体代表構成員とする地方財政制度審議会仮称)において検討をしていただくこと。地方債許可制度廃止をし、公債費比率一定率以下の地方自治体の起債は自動承認制とすることを目指して、地方自治体関係住民の参加を骨格とする地方団体金庫仮称)を設置すること。国庫支出金を伴う自治体の諸事業につきましては、国の予算成立後でなくては実態に即した年間の予算編成は不可能でございます。また事業着手の時期につきましても、自主的に自治体決定できない事情にございます。このような財政運営上の不合理を是正するため、国の会計年度暦年制改革をしていきたいということであります。現行予算様式は画一的で縦割りでございますので、できるならば複式簿記原理を導入させていただき、事業別予算方法をとって、財政公開原則に基づいて、市民に理解できる方策の確立をお願いしたいということでございます。自治体統治主務官庁でございます自治省上級行政機関として地方自治委員会の設置を新たにしていただき、委員長には副総理級の国務大臣を配し、都道府県代表指定都市代表、市の代表町村代表学識経験者をもって構成をいたします。委員会地方行財政に関する企画、政策立案調査調整などの機能を有し、関係行政機関地方財政に関する事務総合調整権限を有するようにしていただきたいことを強く御要望申し上げまして、私の参考人としての御要望にかえさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 地崎宇三郎

    地崎委員長 次に、橋本参考人にお願いいたします。
  5. 橋本徹

    橋本参考人 橋本でございます。  平素、地方税財政制度につきまして研究をしておりますものでございますが、基本的な考え方に基づきまして、今般の地方交付税法の一部改正に関する法律案について、意見を申し述べたいと存じます。  今般の地方交付税総額確保のための特例措置中心とする地方財政対策は、今般の国、地方を通ずる財政危機に深く思いをいたしますときに、仮にベストではないにしてもベターなものとして、いわば次善の策として、賛成の意を表したいと思います。しかしながら現在の時点で見ましても、そしてやや中期的に見ましても、幾つかの問題点を含むものと考えております。それらの問題点を順次申し述べてみたいと考えております。  財政危機と申しますれば、地方財政に関しましても四十九年ごろから五十年、五十一年と非常な深刻な危機が続いておるわけであります。私もこの二、三年私の居住地の近くの自治体や府県の財政調査委員会などに参加させていただいておりますが、その実態に触れまして本当に危機感を抱いておるのであります。  先ごろ発表されました地方財政白書によりますと、実質収支において赤字団体となりましたのは都道府県において四十九年度団体が五十年度実に二十七団体大都市におきましては四団体が六団体、そして都市では七十九団体が百十九団体町村では七十四団体が八十八団体と増加しております。都道府県のごときは、単年度収支では四十七全団体赤字でございますし、大都市でも神戸市を除く八団体赤字であります。特に注目したいのは、財政構造の指標となります経常収支比率悪化状況でありまして、都道府県では四十九年度七五・二%が五十年度八九・三%、特例地方債を考慮に入れますと八一・六%、市町村では四十九年度七六・八%が五十年度八三・四%、これも特例債を入れますと八〇・三%という状況でありますが、大ざっぱに申しますれば、経常的に入ってまいります財源のうち、ようやく都道府県にして一割、市町村にして二割が投資可能財源に充てられるという状態であります。とりわけ大都市中心といたします規模の大きい都市や、大都市圏域を抱える都道府県ないしは比較的規模の大きい都市において、経済不況がもろに法人税関係税収減収影響いたしましてこのような事態に到達したのだと思われますが、これが今般の地方交付税につきまして密接に関係していると考えられるのであります。  私は、第一に総額確保を取り上げましたのは、この財政危機と関連して考えるからであります。たとえ財政危機であるからといいまして、地方財政に課せられた課題は山積しております。とりわけ老人福祉児童福祉等福祉需要大都市圏域における義務教育並びに幼稚園、高校等学校建設要求、さらには生活環境整備不況対策としての公共事業費の推進を考えますときに、地方財政危機はすなわち住民生活を根底から揺るがすのみならず、国民経済全体へ大きな影響を持つと考えざるを得ないのであります。  ここで地方財政を運営するときの基本的な原則というものを考えてみたいと思います。  私は、一つには地方自治原則があると思います。二つには公正、エクイティーといいますか公正、公平の原則があると思います。三つには資源配分の効率を確保するという原則があります。四つには、経済安定に関しては中立性を保っていくという原則があると思います。五つ目には行政上の原則、いわば簡素にして取り扱いやすい、わかりやすいものでなければならないという原則があろうかと思います。  このような原則を考えますと、財源保障と申しますのは、地方交付税交付を通じまして、地方自治原則とそして公正の原則を守ろうとするものであると考えられます。とりわけ、いずれの地域におきましても住民負担地域格差があってはならず、かつ住民が享受する行政サービス水準一定水準確保しなければならない、こういった公正の原則を考えますと、現行地方税制を一様に地域的に適用いたしますれば、とりわけ所得課税やあるいは能力原則中心とする課税でございますと、地域間に税収格差が生じますので、言うまでもなく一定行政水準確保するためには財源保障が必要であります。  このように交付税機能を考えますときに、今般の財源保障ないしは総額確保というのはきわめて重要な事柄であります。  少し古い話でありますが、シャウプ勧告の文書の中に「地方団体が翌年必要とするところについて毎年中央政府の慈悲にすがることがないという保証」これが地方自治原則であると掲げられていたのであります。  ところが、かつての地方財政平衡交付金制度におきましては、毎年総額決定をめぐりまして国と地方団体とに紛争が生じたために、長期的な財源保障といたしまして二十九年度から現行地方交付税制度に変わったわけであります。ところがその地方交付税所得税法人税及び酒税の三税の一定率であるために、今般の不況がいわば裏目に出てきたと言えないこともないわけであります。  このように財源保障をいわば第一の交付税機能と考えますと、現在直面しております低経済成長下におきましては、いわば交付税制度そのものが曲がり角に来ていることを象徴的にあらわすものだと思われるのでございます。  総額確保につきましては、地方団体側意見はすでに出尽くした感がございます。先ほども国立市長さんが、全国知事会あるいは全国市長会の御意見をるるお述べになりましたので繰り返しませんが、おおよその線は国税三税に赤字国債額を加算した額を対象とするなどの措置とか、あるいはまた繰入率の引き上げを講じるとか、こういったものが全国知事会なり全国市長会の御趣旨であると思われます。とりわけ知事会の表現などでは、「最近二年間に講じられたような臨時応急対策はもはや限界にきており、財政需要の伸長に伴う所要一般財源が不足している実態面からも、地方交付税制度改正および交付税率の引上げを行うべき時期にきていることは明白である」と述べられております。  このように、交付税総額確保するためにすでに意見は出ております。今般の政府改正案は、先ほども市長さんもお述べになりましたように、財源不足額二兆七百億円のうちの半額を地方債に、そして半額を交付税に、またその交付税の半額を将来の国の一般会計の負担といった臨時特例的な措置を講じたのであります。  いわば交付税会計が借り入れるあるいは地方債が振りかえるということを考えてみますと、その総額確保に関しまして次の二つのことをつけ加えて述べておきたいと思います。  一つは、先ほども触れられました交付税法第六条の三の第二項の、引き続き著しく普通交付税総額地方団体財源不足額と異なる場合、地方財政もしくは地方行政に係る制度の改正または交付税率の変更を行うものとするという問題でございます。確かに五十年、五十一年、五十二年と三年間引き続いたわけでありますから、制度改正が望ましいわけであります。  ここで思いをいたしたいのは、最初に財政危機という点を取り上げましたが、三月に国並びに自治省から国会に出されました五十二年度ベースの財政収支試算を拝見いたしますと、一般会計においては五十五年度でようやく特例公債をゼロにいたしましても、ケースAの場合に公債残高が五十四兆七千億と試算されております。一方地方財政におきましては、地方債残高が同じく二十兆四千億と試算されております。しかもそれは税負担率を四十八年度から五十年度に比べて対国民所得比三%増加するという前提の上で計算したものであります。  このように、ここ数年まだまだ予想される財政危機とそれを克服する制度改正でなければならないと言いました場合に、いま直ちに、たとえば繰入率を引き上げるといったような措置が果たして可能であるかどうか。すなわち、その分だけ国債発行額を増額することに終わるかもしれないわけであります。いわば交付税会計の借り入れであるか、それとも赤字公債の増発であるかといったような、単なる振りかえに終わるおそれがあるわけであります。  その意味で考えますと、現行交付税率が三二%に引き上げられましてから、いわゆる国債を抱いた財政時代に突入したわけであります。幸いにも、四十年代の前半におきましては税の自然増収が好況によりましてあったために、総額確保は問題になりませんでした。しかしながら、四十六年以降ぐらいから国の一般会計が国債に依存する度合いがまた増大するに従いまして、この総額確保が問題になってまいりまして、交付税会計でも借り入れ措置をしております。そういたしますと、いま直ちに三二%を引き上げるか否か、三二%が無理であるということは確かでありますけれども、これをまた赤字国債対象経費に入れるか、それとも率そのものを上げるか。そういうふうに考えてまいりますと、根本的には、結局のところ、赤字国債から税へ振りかえられなければ基本的な解決はないと私には思われます。もちろん、その際に所得税あるいは法人税といったようなものが増加するのか、それとも基幹税目として現在ヨーロッパ諸国で行われておりますような一般消費税が導入されるのか、別途検討する必要があることは申すまでもないわけでありますが、もし仮にそういった基幹税目が加わるといたしますれば、そのようなものが対象税目に組み入れられて初めて基本的な解決ができると思います。  第二に、総額確保を離れまして、先ほど取り上げました地方税原則から申しまして、資源配分の効率性の原則なり、行政上の原則という観点から、今後の交付税制度のあり方について一言所見を述べたいと思います。  もちろん、今後のあり方を考えます場合には、現行制度の問題点を挙げなくてはなりません。先ほど現行制度の持っております問題点については、全国市長会のお考えなり、非常に詳しくお述べになりましたので、技術的な問題についてはつけ加えることはございません。お聞きしておりますと、むしろ、であるからこそ、私がいまから、申し上げたいことがいわば意味があるのではないかと思われるのであります。簡単に言えば、現在の基準財政需要額算定の仕組みは複雑過ぎるのではないでしょうか。確かにこれまで地方交付税制度になってから、改正の流れは実態に合わせてということでありました。たとえば標準団体道府県では百七十万、市町村では十万であるから、これは実態に合わないとか、あるいは人口急増、人口急減に即して動態的な要素が考慮されていないとか、あるいはときには種地につきまして、県庁所在地からたまたま何キロメートル以内になければならないのに、市役所がわずか五百メートル離れているからどうも点数が低い。これは昨年、段階補正を変えまして、いわば曲線的にしたわけでありますけれども、われわれから見ますと、ずいぶんおもしろい話が出てくるわけであります。こういったことが確かにこれまでには意味があったわけであります。そしてそれは投資的経費を算入するということをやってきたわけであります。しかし、その結果何が起こったかと言いますと、交付税は本来、一般財源として使途に制限をつけてはならないというものであります。しかしながら、地方財政のいわば理事者と申しますか運営の皆さんは、往々にして、いろいろな市民からの要求等がありますと、交付税で見てあるとか、いや見てないとか、こういった特定の財源措置のような表現を使います。あるいはまた、地方財政の運営の指針のごとく基準財政需要を考えていらっしゃる方もあるわけであります。特に、いわば財政をめぐる政治の問題という点から、私は問題があると思います。理事者がそういった算定方式を自己の団体に有利にすることのみを考えてみたり、あるいはまた特別交付税の獲得に奔走したり、あるいは基準税率にいたしましても、これはある自治体の某氏から聞いたことですが、いや、税金を集めたところで、税収はつまるところ二五%しか使えないのだから、こういうふうなことを申しております。確かに都市の場合、基準税率が七五%、あるいは県の場合八〇%でありますと、所期の目的は徴税のインセンティブを図るということでありましたのに、意図は、二五%しか使えないものなら、税金を集めても始まらないといったようなことが出てまいりますと、自治体が自律的かつ自由に財政運営を遂行することが自治であるという自治の原則に立ったり、あるいはまた市民の立場から見て何が自治であるかということを考えました場合に、このように交付税の枠の中で自治を考えるということは果たして望ましいことであろうかと思うわけであります。地方自治の発展のために地方財政の運営の仕組みが住民に理解されてこそ、住民の自治への関心と責任が高まるわけであります。  参考になるかどうかわかりませんが、先般から行っておりますアメリカのレベニューシェアリングではきわめて素朴な形で、各州の人口、一人当たり所得、そして徴税努力といったような簡単な指標で配分をしております。そのような簡単な指標で配分したところで、現在のように複雑な仕組みで配分したところで、それほど大きな差はないのではないかというふうにさえ思えるのであります。  少し建設的に申し上げますならば、国債を抱いた財政の中では、基準財政需要額には経常的経費算定して、投資的経費はむしろ地方債で賄う。そして今般のこの法律案の中にありますように、たとえば五十一年度の財政対策債の元利償還を基準財政需要額に算入するという措置がございますが、あのように、いわば地方債の償還費を交付税で見ていく方式が簡素化に寄与するのではないだろうか。私は、現在の地方財政の仕組みが余りにも複雑であるために住民が理解しないという点を深く憂えるのであります。  最後に、地方交付税の目的は、もちろん地方団体財源の均衡化にもあったわけであります。現状は、東京、愛知、大阪の三団体のみが不交付団体であり、九指定都市のすべてが交付団体になっておる事実から、財源の均衡化、財政調整という性格はすでに変化し、財源保障のみが強調されているように思わざるを得ないのでありますが、交付税制度の意義を認めるにやぶさかではございませんけれども、地方自治確立のためには、そしてまた資源配分の効率を確保するためには、地方行政サービスというものは、住民が直接負担した税金で地方団体がサービスをする、それこそがいわば住民の選好に基づいて、住民の責任の上で行政サービスが行われるという意味できわめて望ましい。その意味では、交付税を増額するよりも、むしろ地方税を増額するという考え方が正統的な考え方ではないだろうかと私は考えております。  その意味では、たとえば関連して、いたずらに国庫補助金の項目をふやすばかりでは、いわゆる超過負担論争のみを生むわけでありまして、国庫補助金に関しては包括的な補助金なり、あるいはブロック補助金といいますか、あるいはメニュー方式といいますか、そういった形で補助金もなるべくは交付税化する。交付税はむしろ一般財源に振りかえる。そして一方では、投資的な経費については地方債を活用するということが必要ではないだろうか。もちろん、地方債の引き受けを容易にするためには、今般は流れましたようですけれども、地方団体金融公庫の構想、地方公営企業金融公庫の拡大といったものが必須になろうかと思います。もちろん国全体の財政金融の仕組みは問題でありますけれども、基本的に考えていく必要があろうかと思うわけであります。このような理解がございませんと、財政危機に際しまして、いたずらに、国が、といったような話が出てまいりましたり、そしてまた、住民も、地方税についていまだに重税感を訴える。はなはだしきは、受益者負担引き上げに反対して、それは公正に反するといったような議論がございますけれども、私はここ数年地方財政実態に触れまして、むしろ今般の財政危機は、いわば反面教師の役割りを果たして、使用料の適正化等がかなり順調に進んでいるということは結構なことだと思いますが、今後はむしろこの財政危機の本質をめぐって国会の先生方におかれましてもあるいはまた国民レベルにおいて、大いに議論が展開されてこそ今後の地方自治の道が開けると思います。  以上、まことに学者として理想に走り、机上の空論にすぎない感もあるわけでございますが、重ねて申し上げますならば、二十九年度地方交付税が変わり、四十一年度に三二%アップし、あれからそれぞれ十年の年月がたちました。五十年代の低経済成長下におきましては、地方財政のあり方を根本的に改革する時期にきておるという認識に基づきまして、地方交付税制度におきましてもいわばきょうから基本的な改革の方向へ進むべき時期ではないだろうかと思いまして、一言私見を申し述べた次第であります。ありがとうございました。(拍手)
  6. 地崎宇三郎

    地崎委員長 これにて参考人からの意見の聴取は終わりました。     —————————————
  7. 地崎宇三郎

    地崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷洋一君。
  8. 谷洋一

    ○谷委員 両参考人から、市長としての体験を通じて、また調査研究としての学者の立場からいろいろとお話をお聞きしたわけでございますが、古い話は別として、昭和四十年、四十一年に交付税改正になりましてから以後の、きょうまでの十年間を振り返ってみて、端的にお伺いしたいのですが、地方自治確立という立場から、きょうの姿と四十五年といいますか、振り返っての姿と、どういうふうに地方自治確立という根本から考えてお考えになるか、簡単で結構でございますからおっしゃっていただきたいと思います。両先生でございます。
  9. 石塚一男

    石塚参考人 お答え申し上げたいと思います。  大変基本的な大きな問題ですから、簡単に答えろと言われましても、なかなか的確に共感を呼ぶ言葉というのは直ちに出ません。ただ言えることは、私の考え方から申しますと、地財法そのものが確かに税金で賄えるという方向を志向していることは事実でも、今日高度成長から低成長に至ってどうしても資本の論理を地方財政に、いわゆる収益を上げて効率的な行政運営をとか、あるいは能率、これはいわゆる公務員の労働密度を高める、このことはわかるにいたしましても、資本の論理を通して何か、もうける、当然百万円かかるものについては五十万円で措置をしなさいといったような形では、今日の市民要求意識に順応する地方財政確立はできないというふうに考えておるところです。それがまず第一点。  第二点目は、何といたしましてもいまの場合はいろいろな仕組みの中で今日的には中央集権的でございます。私は、やはり地方自治体基礎であって、その上に調整機関としての都道府県があり、国が当然都道府県に行うべきこと、市町村に行うべきことを明確にしていくという必要があろう。ただ単に中央に吸い上げて下におろしていく、こういう物の考え方では地方自治確立はあり得ない、ほど遠いというふうに考えております。  大きく申し上げて二つを答弁申し上げておきます。
  10. 橋本徹

    橋本参考人 地方自治というものを考えます場合にいろいろな考え方があろうかと思います。私は、現在の国民経済の中で公共サービスがなければ国民生活が成り立たないという認識を最初に持ちますときに、その公共サービスは申すまでもなく価格機構を持っておりません。そこでその価格機構を持たない公共サービスが住民の選好に合致するような形で使われるという使われ方はどういうことだろうか。地方自治と申しますのは、そういう住民の選好、需要に合った形でサービスを供給する、これが地方自治であろうと思いますが、それは価格機構にかわるものとして住民がそのサービスを評価する、その場合に、評価するには物差しが要るわけですから、税金を出してこの税金と見返りに教育サービスや福祉サービスやあるいは交通サービス等が得られる。税金を出す方が望ましいのか、税金を出さずにサービスがない方が望ましいのか、そういう頭脳の中に入っておりますいわば精巧なコンピューターを一気に回しまして、そうして投票をしていくというのが地方自治だと思うわけです。ところが、その機構を全く働かせずに、住民負担を全くせずに、そうしてサービスが望ましい数字になるかどうかを判断せよと言っても、それは無理であります。地方自治法の第十条に書いてありますように、ひとしくサービスを亨受すると同時に、また負担を分任するというのはそういった考え方だと思います。  その意味で申してみますと、先ほど御指摘の四十五、六年といまとはどう違うかということでございますが、いま資料を見てみますと、四十五年、六年ぐらいから、府県はちょっと違いますけれども、市町村経常収支比率がいわば棒上げの状態であります。六十数%から今日の八〇%まで五年間上がっております。このまま見ておきますと、私の知っております自治体では、すでに一〇〇%を超えておるところがたくさんありますけれども、市民からしてみると、一体これは何だろうかということになると思います。そういう意味で、この五年間はいわば自治どころではなくて、その場その場の出てくる問題へ対応していたというのが正直なところではないでしょうか。この際、基本的に地方税の意義を考えることが地方自治確立に寄与すると思います。もちろん経済構造を考えますと、地域間の経済構造がございますので、先ほど申し上げましたように、地方交付税の持っている財源保障の役割りは無視できない。むしろ非常に重要なことであります。しかしながら、一方で全く住民負担とサービスとを切り離したときに果たして地方自治ができるだろうか、こういうことを考えます。いわばもっと素朴に地方住民地方自治を考えてもらう手段という点では、住民税にせよ、固定資産税にせよ、あるいは事業税にせよ、住民負担する税金、もちろんそれは企業の課税もありましょう、あるいは消費課税もあると思いますけれども、そういった地方税負担するという原則があってもいいのではないか、こういうふうに考えております。
  11. 谷洋一

    ○谷委員 いろいろとお二人のお話をお聞きしたのですが、私も昭和三十年から地方自治地方議員として、特に四十年以降地方自治体の長としてあるいは地方議員としての立場からながめた場合、いろいろな見方があろうと思うのですが、三十年代と四十年代とは非常に違いますことは、四十年代の地方自治体、特に市町村という立場から言いますと、それぞれの自治体の長がその住民の暮らしを守るために、あるいは豊かな町政を推進するためにということで、非常にアイデアを織り込んだ町政ができ得る可能性が出てきたような気もいたします。  そういう面でお伺いしたいのは、現在、都市といわず農山村といわずいろいろな悩みを抱えておりますけれども、たとえて言いますと、都市にあっては高校急増対策に追われ、追われ、追われておる。あるいは、老人福祉の問題も、まあ老人福祉に限らず、福祉の問題について住民の強い要望がある。そのすべての要望を賄いたいという熱意もあるように思います。そういうことで考えてみますと、公害対策あるいはいわゆる先取り行政との立場から、四十七年からきょうまでの五年間というものは、私はむしろ余りにもアイデアに走り過ぎたというか、あるいは非常に発想の展開が速過ぎたといいますか、着想に現実が振り回されたという感じもありまして、財政需要額だとか、あるいはいま先生方がおっしゃったいろいろな問題は、結果論においてこうなったという感が強いんで、そこで、地方交付税の問題あるいは地方税の問題の今後のあり方を私なりに十分考えるとする前に、まず今日の地方自治体のあり方、特にいま申し上げた高校対策であるとか福祉の問題、公害の問題、そういうよろずの問題があるのをどういうふうに的確につかんでおるか。それぞれのばらつきがあると思うんですね、各府県によって、そして各市町村によって。それはただ税がないというだけでなしに、三割自治は三割自治のところにおいて、二割自治は二割自治の範囲において非常に真剣な考え方をしておるけれども、余りにも格差がついておるようでもあるんです。それはあるところによれば走り過ぎたきらいもあるし、それがすべて国の責任だというようなところで強く糾弾されておるような面もあるんですね。そういう点でまず反省をして、その地方交付税の問題以下、地方自治をめぐる問題について討議したい気はあるんですが、どうですか、いまこの問題については両参考人ともお触れにならなかったように思うんですが、一言両参考人にもお話をお聞きしたいと思うんです。
  12. 石塚一男

    石塚参考人 お答え申し上げたいと思います。  まず、三十年代、四十年代、今日現実に五十二年に入っているわけですが、この間の推移の中で、御案内のとおり、スターリン・ショックあり、あるいは最近ではオイルショックというような中で、特に日本の経済状態というのは、アメリカがくしゃみをするとかぜを引くという言葉を引用されておりますけれども、地財法にいたしましても、また今日の提案されております地方交付税法にいたしましても、何ら変革がないということは、やはり地方自治体に反省を求める以前の問題として、国自体も反省を必要とするという立場に立って口述申し上げておるところです。  それから二番目の、いわゆるアイデア町政、アイデア市政ということで、老人福祉等、あるいは公害等の先取り行政ということでございますが、私どもはやはり、市民がその自治体に住みつく、いわゆる市民の願いというものを前提に政策を考えていくという立場でありますので、どうしても国の方から見るとそれが先取りだ、あるいはばらまきだという印象を免れないものがあろうと思います。しかし、これは、市民の願いはすなわち国民の願いだという中で、決して高度成長の波に乗ってガバガバと、よく言われるばらまき行政を積極的にやってきたということではございません。  それから御指摘の高校増設の問題でありますが、これは大変恐縮でありますけれども、戦後、東京都の場合を引用した場合に、特別区と多摩の実情というものは、高度成長の中でよく言われたドーナツ現象といって、郊外の多摩に人口がどんどん流入してくるわけです。その場合に、昔の町村状況においての教育施設であっては、これはもう教育そのものが具体的に要求にこたえられないという実態の中で、どんどん流入されてきたわけであります。したがって、三十年代のみならず、私どもの方では二十六年以来、この校舎建築等の問題については強く文部省の方に要請をしてまいったところであります。しかしながら、この高校増設について、義務教育も含めて多摩の実態から申し上げますと、どうしても自衛隊機の校舎の防音については防衛庁、それからおんぼろの木造校舎については文部省、それから民間航空については運輸省ということで、市町村長があっちへ行ったりこっちへ行ったりしてお百度を踏まないと校舎の建築ができないという実態のまま、三十年から四十年代を過ごしてきているという中で、結局高度成長のひずみで多摩においては多くの高校人口を抱えるというのが、実情に即した高校配置をしろという父兄の願いとなって、今日国の方にまでその要求が出ているということだろうと思います。ですから、この問題については、私どもは決して先取り行政というふうには思っておりません。  また三点目の老人福祉等の問題でありますが、確かに市税収入が目減りをし、交付税現状というものが伴わない場合には、首長としての判断で、その範囲内において、できるだけ老人福祉施策そのものを目減りさせない努力をしていくという姿勢は当然でありますけれども、しかし一たん実施をされたものを全くゼロにしていくということは、これは国の場合もそうだと思いますが、あり得ないわけですね。すると、初年度やったものは翌年度においては必ず、物価等の問題で幅が多少広がっていくということは、もう御経験されておわかりだと思うのです。その場合に、限られた一定の歳入の枠内でどう歳出を見ていくかという場合に、国の方が政策上考えておったのを極端に減らされていく場合、物価の上昇等がありますから、自治体に対する財源のしわ寄せというのは、老人と同じようにどうしても末端に参ります。そういった点で、時代実情に即さない行財政の方向があったというふうに私は考えております。したがって、低成長下における今後のこういった福祉施策等の問題については、お金のある人はお金を出してもらう、口を出す人は口を開いてもらう、行動できる人は行動をしてもらう、すなわちボランティア活動、また一部受益者負担ということも、応能主義において、私は自治体として実施をしていかなければならぬだろうというふうに考えておるところです。
  13. 橋本徹

    橋本参考人 私は学問的に物を考える場合に、私自身も一市民でございまして、その市民の立場としてこの四、五年間、あるいはいまの私が住んでいる市を通じて、地方行政のあり方なりそれから国の政治のあり方なり、そういうことを考えることはございます。  最近、私の市は人口急増都市でございますので、私どもから見ますと、一番必要なことは、学校の新築であろうというふうに思われました。現にその新築にいわば追われております。で、経常収支率が悪くとも、とにかく新築をしていかなければならぬので、毎年のように新築をしております。ところが、市民と学校というのはどういう関係にあったかと言いますと、ちょっと想像がつかないのですけれども、その新築の工事のダンプカーが入ってくるのがうるさいからという理由で、資材の搬入がストップして、国庫補助金を流しながら、子供をプレハブに入れて、二年も三年も開校しないという事実があるわけです。それは全体と個といったような形で評論家風には言うことはできますけれども、ここに地方団体の悩みが象徴的に出ていると思いました。そういった中で、一方では、実はカエルとネコの話というのは私雑誌に書いたことがあるのですけれども、その時点で私の市でも、私は市長さんに、本当にあなたもネコの不妊手術に踏み切るのですか。そういうことをしたら私は税金不払い騒動を起こしますよというぐらいに冗談に申したことがあるのですが、それでも隣接市がネコの不妊手術をやれば、四十九年においても犬の不妊手術までおっかぶせてやるわけです。考えてみますと、わずか数百万でいわば行政ができるといいますか、関心を買えるといいますか、そういったところがいわば財政節度という形でゆがめられていた。その問題と、いわゆる老人医療の上乗せとか、あるいは保育所の増設という問題は峻別しなければならないことは確かです。しかしながら、たとえば医療費の問題にいたしましても、国の制度の変化が御案内のように健康保険の改正で、政府管掌健保のいわゆる定額補助から、政府管掌健保に対する定率補助に切りかわって、そしてあの一〇%の定率補助に切りかわったところから実は政府健康保険の財源というのは急速に伸びております。それは国民健康保険にそのままはね返りまして、そして病院における在院率あるいは診療率、受診率、そういったものがアップします。しかし、一方では国保の引き上げはできない、それは負担だから。こういう議論で終ってしまうわけです。そうしますと、一々自治体で防衛的に考えたところで、全体の仕組みで社会保険なり社会保障の制度そのものが出てまいりますと、いわばその影響自治体は当面は国保を上げてはいかぬという形でしか対応できないものですから、赤字を残して一般会計から繰り入れる。そこでまず一般会計に繰り入れることができるのは収益事業収入を持っておるところであります。先ほど国立市長さんが触れられましたが、収益事業を持っているところは年間何十億というお金があるものですから、国保の繰り出しも水道の繰り出しもやれるわけです。そうすると、ない市は、隣りは国保を抑えて繰り出しをしているじゃないかという要求があれば、そこへいく。そして肝心の学校の方は置いていく。  そこで私は、サービスの中で大きく分けて二つあると思うのです。一つは、市民が全体で等しく利益を享受するような公共サービス、道路とか治水とか、そういったものが典型的でありますが、もう一つは、一人一人の人の生活に受益するところのサービスとあると思います。それは往々にして再分配効果を伴う場合がありますが、その一人一人が受益するところのサービス、たとえば子供を保育所にやるとか、幼稚園にやるとか、こういったことは、やっている人は非常に利益を受けます。利益受けて、なおかつ今度は負担になりますと、幼稚園の保育料がたとえ五百円上がるのでもまず反対であります。そこで、その間で市としてはいろんな工夫をしているようですが、私の市でいま一番おもしろい問題は、学校給食を調理師は置くけれども給食は民間に委託しよう。いいじゃないですか。別にサラダを切るのに役人が切らなくてもいいので、役人が切ったサラダでなければ食えないというのなら、われわれは汽車弁当食えなくなる。だから、要は学校給食というのは栄養があって、しかもちゃんと衛生管理が行われたものであれば、それを子供に与えるということに意義があるのであって、直接調理をする人がだれであるかということは別じゃないでしょうかというふうに私は思うのですが、しかし、現実の政治の場では、いまもめてストップしております。どういうふうに解決つくか知りませんが、そういった大きな流れと、その自治体の防衛という中で市長さん方がいわゆるアイデアを盛り込んだ非定型的な行政サービスをしてきたと思いますが、私はやはり全体の仕組みの中でどう動かすか。市民も県民であるし、県民はまた国民でありまして、国は大きな再分配、社会保障、そういったものにお金を使ってくれます。実際の仕事は自治体がやっています。教育も土木も民生も衛生もみんな自治体がやっています。そういたしますと、第一線でやっております自治体がやりやすいような仕組みへ持っていくための全体のシステムをつくるのが国の役割りである、こういうように考えます。いたずらにアイデアのばらまきというのはともかくも、どうも感じとしてはそのばらまきが、何か解決しなければならぬ問題をこっちに置いておいて、当面三百万か五百万でできる仕事で糊塗したという点が一つあったのではないか。もちろん老人福祉とか児童福祉のように、国の重い腰を上げさせるために、たとえば国民年金にしましても、昭和三十四年にできる前に、たしか兵庫県とか岡山県、大分県は先にやっておったと思いますし、児童手当にしても、新潟県の何とかいう町でやっておったと思います。あるいは老人福祉にしましても、いわば先駆的に自治体がやっていた。老人医療にしても、先駆的にやっていたものを国が制度化した。そういうことで、その意義は私は大いにあると思いますが、ある意味では、いま申しましたように、大事なことはほうっておいて、と言ったら語弊がありますけれども、全体の受益になることは置いておいて、個人個人が受益することが市民から歓迎される。その辺に若干問題があるのではないかというのが、これは学問的に言いますと、われわれは前者をソシアルグッズといいますか社会財と呼んで、後者をメリットグッズ、価値財という言い方をしておりますけれども、どうしてもいまの自治体行政の中ではそういうメリットグッズ、価値財の方が人気があるという点が一つ問題であるというふうに思います。
  14. 谷洋一

    ○谷委員 余り時間がございませんので、十分言えないのですが、市長さんの場合、やはり責任を持っていらっしゃる市の立場をお話しになる、あるいはまた全国市長会といいますか、全国市長さんの立場から御発言になる。私も非常に質問がしにくいのですけれども、先ほどおっしゃった市民要求市民の幸福につながり、それは国民の幸福につながるということはわかります。ところが東北新幹線、北陸新幹線をつくるのに東京都民が反対なさる。これもおわかりいただけると思うのです。それから各地に見られますが、本当に病院をつくろうと思ったら、やかましくてしようがないというので反対運動がある。片一方では非常に切実な総合病院の建設を叫びながら、あるいは高等学校にきょう自分の子供を入れなければならぬと言われながらプレハブで——おっしゃるとおりの現実が私の兵庫県にもたくさんございます。それに本当に手をやいておるというのが現状でございます。  ですから、市長さんに私が申し上げたいのは、やはり全体の立場でやっていただくという姿勢でもって考えていただく。そうなりますと、東京都で法人税の超過が取れる。取れるところはありがたいという知事の声もよくわかっていただけると思うのです。取れるところはいいのです。わが兵庫県も取りました。取ってもあたりまえです、取れるのですから。ところが取れない県、いろいろと税の面でも苦慮しておりながら、百万円の金もなかなか考えても取れないという町村もあるわけですね。そういう点から考えますと、交付税のあり方についても三二%をただ積み重ねするだけではなしに、今日の経済変動の激しいときに対してどういうふうに取り組むか、そういう具体的な問題についてもう一言おっしゃっていただきたいと思います。
  15. 石塚一男

    石塚参考人 先ほど参考供述の内容で具体的に申し上げておりますが、いろいろな角度から御指摘、御意見が出るわけでありますけれども、基本的に私は、まず国の予算についても、自治体現状というものを十分踏まえていただくという姿勢がない限り、この議論というのは、国全体のことを私どもは見て、全国市町村実態、現実を見て、実際に即応していくということは非常に現状の制度の中では困難があります。  御指摘のように、確かに法人市民一つとらえましても、大変恐縮ですが、私の市は学校ばかりです。大企業はありませんよ。工場はありません。固定資産税だって交納付金でしょう。いま一橋大学がありますけれども、実際二万坪で年間二百万円、これが勤労者住宅として開発されると、三億四千万円固定資産税と市民税が入る。国立市はそういう体質の市です。それと、おっしゃるように、東京都という大きな会社の本社がいっぱいあるところは、知事さんのみならず、恐らく谷議員さんも知事さんだったら、これはやはりいただけるものはいただこう、こういう厳しいときですから。そのときに、政府がそういうふうにすることは好ましくないとするならば、富裕団体にしても交付すべきものは交付していく、起債を認めていくものには起債を認めていくという措置を大胆に行っていきませんと、時代はどんどん進んでいるのに、シャウプ勧告以来のそのことだけでとどまっているというところに、私は国においても考えていただかなければならぬだろうということを申し上げておるわけです。  新幹線の問題あるいは公害等の問題の住民の中でのいろいろコンセンサスが得られないという問題については、それぞれ新幹線は新幹線なりのプロセスの、いわゆる問題に対する住民感情というものもあるでしょうし、公害についても、過去においては国の方はなかなか手を出しにくいものを、自治体みずから市民の告発の中で手を出してきたという経過等を見た場合に、何としても市民サイドに立った見方において国政なり国家予算というものを組んでいただくことこそ、今日の段階では重要だろうということを強調したいところです。
  16. 谷洋一

    ○谷委員 終わります。
  17. 地崎宇三郎

  18. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 御苦労さんでございます。石塚さんに二つだけ御質問をさせていただきます。教えてください。  先ほどお話しの中で、国立市はギャンブルに依存をしていないというお話でございました。二十五市の中でも少ない方だと思うのですけれども、ギャンブルに依存しないでいっている市と、それからギャンブルに依存している市との行政上のいろいろな差、財政上の差、そういうのがあると思うのです。そういうことを少しお聞かせいただきたいし、またギャンブル市に対しての市長の考え方をお聞かせください。
  19. 石塚一男

    石塚参考人 まず、数字的には先ほど申し上げましたが、東京都においては二十六の市があります。二十五市と申し上げましたのは、私の市がギャンブルをやっておりませんので、二十五市がやっているわけです。昭和五十年度実績だと、二十六に平均いたしますと大体八億円余のギャンブル財政が入っている。それがやはり一部に御三家と言われる大きい市に、これは関西でいうと尼崎市も大きいですが、六十億ぐらい入っていると思うのです。この行政格差というのは当然出てまいります。先ほども若干触れましたように、人件費がラスパイレスでいった場合、国公一〇〇%を超えるものがほとんど東京都の市であるということも言われておりますけれども、これもどうしても当事者能力で、相手がありますと交渉の中で決まる額というのは、国立のような市民税と国、東京都に依存する依存財政でなければやっていけない市の場合と、ギャンブル収入がある市の場合は、まだ三十億あるんだからその中からやればいいやという、どうしても安易なものになりやすい。その結果の影響というのは隣接市としては受けるということであります。  それから行政の面からいいますと、どうしてもそういう自己財源を持っていますから強いですね。単独事業をやるという場合に、東京都がうるさく言う、あるいは自治省がなかなかうんと言ってくれなければ、おれのところはやっちゃうとやれるわけですね。やっちゃうわけです。ところが当然基準財政需要額というファクターに、事業をやりますから入ってきますよね。そうすると私どものような市は、全くそういった意味の自己財源に乏しい場合に、事業はやりたくとも翌年に繰り越すなり、あるいはギャンブルをやっている市は単年度でやるものを三カ年でやったりというような形で、おくればせながらできるだけ格差を是正していくという非常に厳しい配慮をもって財政の運営をしているということでございます。
  20. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 ありがとうございました。  もう一つ、先ほどお話しの最後の方で御提案がありました地方自治委員会でございますか、何か特別な構想があるようでございますので、もう少し詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  21. 石塚一男

    石塚参考人 まず第一点は、よく言われます国からの委任事務、この事務事項を整理整とんする。自衛隊の募集はいま市町村でやるわけです。ところが警察官だとか消防官というのは市町村を通らないのですね。だとするならば、自衛隊の募集は自衛隊みずからやってもいいんじゃなかろうかという素朴な疑問があります。しかも交付金というと二万円か三万円ですね。でも私どもは金をもらうからやるのだというのじゃなくて、そういう制度上の委任事務等の問題を整理する委員会。それからきょうのこういった地方交付税あるいは先ほど言った起債あるいは交納付金、こういったような税制上における配分の問題、言うなれば財政委員会的なもの。それともう一つ自治省を——やはり自治省は何だかんだ言っても私ともの唯一無二の窓口でありますので強化をしていかなければいかぬ。その場合に、いま言った行財政等の問題と、先ほど谷議員さんが言っておられた国というものを考えた場合の予算、財政を仮に付与するというような問題については全体的な問題としての審議会構成。この三つの区分をして、最終的に自治省をバックアップする機関というのは副総理大臣級の方になっていただいて、それぞれの委員会はもちろん市町村代表、知事代表学識経験者、こういったような構成で直ちに設けていただかないと、これはもう高度成長の際にも私ども参考人として出ましたけれども、下の方で見ていますとさっぱり、声がどこで受けとめられているのだろうということをつくづく感じます。ですから、そういったような審議会、委員会を具体的な問題としてぜひ本委員会でお取り計らいいただければという願いで御提言申し上げたわけであります。
  22. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 ありがとうございました。なかなかいい提案だと思いますけれども、設置をするとなるとどういうふうな構想でやるか、またどんな機関に置くかということでいろいろ問題があると思いますけれども、勉強させてもらいます。  橋本先生、三つほどお伺いさせてもらいます。先ほど基準財政需要額が非常に複雑だということで、無論これも私どもわかっているのですが、何かいい方法はございませんか。先生がお考えになっておられる、こんなことをしたらうまくいくのじゃないだろうかというようなお考えがあったら教えていただきたいと思いますし、またアメリカの例をちょっと出されましたけれども、そういうことも含めてちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。
  23. 橋本徹

    橋本参考人 アメリカの例を出しましたのですが、ある意味では地方交付税あるいは地方財政平衡交付金というのはシャウプが日本に来てやりまして実験して、そしてもちろんその前に日本では配付税とか長い歴史があるわけで、私は制度としては日本の制度の方が先進国だと思います。先進国であるのですが、日本的な解決の仕方をいままでしてきまして、先ほどちょっと申しましたように、精緻に精緻になりまして非常に小さな項目まで入れてしまう。私は正直言いまして、交付税法を勉強するのは一番いやなんです。というのは、追いついていけないのです。一年度ずつ法律が変わっていきますので、学問的な対象としては追いついていけないという感じがするのです。たとえば交付税というものを持っているのは日本だけではなくて、イギリスでもアメリカでもある。アメリカの場合は数年前初めて取り入れたわけですね。数年前取り入れて、実は私は昨年の十月にアメリカの各市に行きまして、最後はワシントンで交付税を配っている局に行きましてお話を聞いたのですが、感じとしては、われわれが聞いてその場でほぼわかる程度の簡単さですね。と申しますのは、要するに人口が多い州にお金をたくさん出す、それから一人当たりの所得が低いところへ配分する、それから徴税努力といいますか、ある所得に対してたくさん税金を取っている、たくさん税金も取っているから出す、こういう三本の柱なんですね。  ところで、日本の基準財政需要額によって配分された現在の交付税額を私どもが勝手に机の上でデスク計算しますと、単純に人口とか面積で配分したものとそんなに大差ないわけです。大いなる複雑さというのでしょうか、非常にたくさん盛り込んでいるけれども、結局は人口と面積で非常に簡単なものに通じている。  それからイギリスの場合も、イギリスの地方税制度は日本と違いましてレート一本やりでございますね。ですから、レート一本やりでただ固定資産税を上げるという形で来ていますけれども、あのレートサポートのグランツにしましても最近かなり変えてきていると思うのです。そして変えてくるときに、日本のように複雑に変えるという方向でなくてもっと簡単に変える。  いま私は、これがいいという決め手はないのですが、先ほど言いましたように、四十年代までで大体ある程度の投資は終わった。地域格差がないとは申しませんけれども、全国どこに行ってもりっぱな舗装道路がありますし、学校もりっぱですし、むしろ大都市の方が学校がなかったりしていますけれども、そうしますと経常的な経費——いまの段階でいくならば、基準財政需要というのは経常的な経費対象にして議論をする。そしてはみ出た分は地方債で見ていく。財政力の弱いところは元利償還を見ていけばそれで補える。いま複雑になったのは、投資的経費が入ったから複雑になったんだと思うのです。それで何よりもこわいのは、私は地方税のときに思うのですけれども、一例を言いますと、固定資産税のあの複雑な改革ですね。あれは一番いい例だと思うのです。数年前これはここで申し上げたのですが、税金も交付税もなるべくわかりやすくする。私、財政委員会なんかで市役所に行きますと、交付税のことを知っているのは財政課の数人である。これは失礼ですけれども、では市長さんなり助役さんなりが細かいことまではっきり知っているか。それは無理ですね。あの一冊の中から非常に細かい計算をして、こうなっていますと言われても——だから私はもうお手上げだという感じがする。  ですから、それほどはっきりしたアイデアはありませんが、アメリカは人口それから所得あるいは徴税努力、こういったようなものですばっと割っているわけですね。要は簡単に、結果として人口と面積あるいは所得ぐらいしか依存してなかったら、何をあれだけ何メートルを何円何十銭にするかという気がするわけです。
  24. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 ありがとうございました。  二番目の御質問のところまで大分入ったのですけれども、いまイギリスの話が出ましたが、ヨーロッパの方ではどうでございますか。交付税みたいなものを日本のようなかっこうでやっているのか、それとも何か違うような方式でやっているのか、おわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  25. 橋本徹

    橋本参考人 はっきり言いまして余りよく勉強しておりませんので的確に言えませんが、たまたまイギリスのテキストを学生と一緒に読んでおりまして、ここ数年の間に次々に交付税、グランツを変えておるということだけを了解しております。だんだん変わるものですから、これまた追いついていけない感じで変わっております。それからドイツの場合は、いわば連邦が税金を取っているというよりも、昔から逆所得税構想、こう言われますけれども、アメリカにしてもイギリスにしてもドイツにしても、一つ日本との大きな違いは、さっき言いましたイギリスの場合には、日本で言えば固定資産税が地方団体の唯一の財源である。そこで財政需要があれば自分のところで評価をアップして税率をアップする。ですから自分で計算します。今度アメリカに行きましたら、アメリカはシティーが持っておる機能は非常に小そうございます、カウンティーがいろいろやりますから。税金は、カウンティーが評価するわけですが、税率を決めるのはシティーなんですね。ある小さな市に行きましたら、これだけ財政需要があるからこれだけ税金を上げるということはやはり議会に提示するわけですね。そして議会で否決されれば、その財政需要はだめだ。ところが市としてはやりたいということで、何度も何度も市民などにアンケートをしまして、警察官を増員したい、何ぼ税金をふやせばいいんじゃないか、そうすると市民が賛成している、それでこれを議会に出すわけですね。議会はまた否決するわけですね。五回ほど否決したと言っておりましたが、そういった財政需要と税金とをリンクさせておけば、一方では交付税の役割りがはっきりしてくる。財政力の弱いところへやるという仕組みになる。  それと、私はイギリスの場合は軽々に議論できないと思いますのは、地方制度そのものの大きな改革をしておりますね。日本の場合はいわば行政支出の方の制度がほとんど変わってきておりませずに、それどころかいろいろな立法でどんどん仕事がふえております。制度が余り変わらずに仕事がふえて、そして税制も変わらずに財源不足が来ている。ですから、イギリスの例がすぐ使えないような気がするのです。やはり参考になるのは、自治体自分課税しているものですから、本当に仕事の量と課税と評価、それを、グランツと言いますか、交付税というのは大きく補ってやる。イギリスでももちろん財源はもうグランツが大きくなっておりますし、それからアメリカもいまから交付税がどんどんふえるだろうと思います。しかしさっき言いましたように、アメリカの地方に行きましてもらったのですけれども、何か簡単な感じがしまして、そんなむずかしいものじゃないという感じがしております。ヨーロッパのことはそのものはそれほど詳しく勉強しておりません。
  26. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 ありがとうございました。  最後に、先ほど先生のお話の中で地方税の増額をして、交付税はできるだけ上げない方がいいんじゃないか、こういう御意見だったと思うのですが、それも一理だと思いますし、一つの考え方だと思います。しかし、地方税の増額は住民の税負担が大きくなるんじゃないだろうかという気がいたしますけれども、その辺はいかがでございますか。
  27. 橋本徹

    橋本参考人 この点は学者はずいぶん無責任な話で、当然なんですね。いまから十何年か前に所得税の税率を二%落として県民税の税率を二%上げた法律がございましたね。所得税を八にしまして県民税を二%上乗せした。そうしたら世間では住民税が非常に重くなって所得税が安くなった、こういう受けとめ方ですね。だけれども、税負担というのは国税住民税と一緒に合わせたものが税負担でありますから、個人の能力に応じて所得税住民税とをどう分けるかという話であって、住民税がふえたからとかいう話じゃないと思うのです。もちろんこれは非常に説得が要るわけでございます。  ただその場合に、私がいま考えておりますのは、これは私案ですけれども、従来二つ考え方があると思うのです。私は一方をとるのですが、私と違う考え方の方は、所得税の勾配がずっと累進で上がっていますね、それの真ん中をすっととって、先ほど国立市長さんは五、五と言われましたが、これは住民税と所得税を半々に分けよう、しかも累進度はそのままにする。そうすると住民税の累進度がいまよりもっと重くなって、たとえば八千万ぐらいの人は限界税率が三〇なら三〇というふうなものにしようという考えが出るかもしれません。私は行政の簡素化と、個人の税負担能力に合わせるということであれば、住民税はもうフラットでいいのじゃないか、比例税でいいのじゃないか。あるいはやや緩やかな、いま県民税は二と四でございますね。ですから市民税ですと一〇%ぐらいにしてしまう。そうすると、いま現実には市民税の均等割りは二、三、四、五から一四まであります。ところが、実際には各都市が取れているのは七か八ですね、限界税率で。多くのところが三とか四ですね。ですから一〇にしまして、その分所得税を移譲する。そうすると、絵でかきますと、基礎部分を自治体に渡す、そして上の累進の分を国が取る。そうすれば、現在のかなり税収の低いところも、国税の分が行けば入ると思います。その場合に全く税収ができないのは、たとえば鹿児島県を例にとりますと、鹿児島県は、国税総額地方税総額を加えたものよりも交付税総額が大きいわけですから、鹿児島県は、極端に言えば国税を全部地方税にしたところで、それではいまの財源にならないわけですね。ですから、どうしてもそういうところはできてきますけれども、比例税にする。  それからもう一つは、固定資産税はあくまでもやはり自治体の重要な財源である。そして府県に関して申しますと、税制では、これは意見が分かれているのですけれども、私は外形標準課税を導入することを主張したいと思います。これは赤字法人であるがために全く負担しないというのは、やはり本来の事業税の考え方と違うのではないだろうか。事業税というのは、やはりそこの地域で活動しているために徴する。そうすると、もちろん結果としては、従来赤字で全く税負担がなかったところへ、そういう外形標準を入れれば税負担がふえてまいります。しかし、これは全体としての問題ではない。  それから最後に、そういうことを全部ひっくるめまして、やはり先ほどの財政収支試算にございますように、国税地方税を通じる税負担率はアップするものではないだろうか。ただ、その場合に、サービスの中で、さっき個々にいくサービスがあると言いました。たとえば、幼稚園の保育料で賄うのが正しいのか、幼稚園を税金で賄うのが正しいのか。いま東京と大阪と大分違いますけれども、関西は幼稚園も公立、保育所も公立なのです。それをほとんど無料に近い状態でやっております。ですから、もしこれを、国民が幼稚園も義務教育に準ずるものだと考えて、税金で払うべきだと考えれば増税せざるを得ない。しかし、それは義務教育に準ずるのであって義務教育でない、だからもっと個人の負担を出せというのならば、行っている人が払う。そうすると、いわゆる使用料というものと税金というものとをやはり一緒にして考える。そこに、いま言いましたように、公共サービスの対個人サービスがふえてきた場合に、これに対する負担を、ただ公共がやっているという理由だけで税金で賄うのはいかがであろうか。そうしますと、そういう受益者負担の適正化、使用料等の適正化と、税で賄うべき仕事は何かということはやはり再整理して、全体としてあるべき方向としては、いまよりも総合的な税負担率は増大していくのではないだろうか。  そんなことを言いますと、必ず市民政府のお金の使い方はむだだ、こう言います。だから、それにこたえるだけの厳しさを自治体が持たないと、私も納税者ですから、そう言っては悪いのですけれども、私と同じ年齢の同じ学卒の人が役所におったら、私よりずいぶん月給が高うございまして、これは役所に入るべきではなかったかと思うぐらいでございまして、これは別に個人的にひがんでいるだけでございますけれども、やはり市民はそういう議論をしますね。やはり何か役所も規律を持て、これは市民がそう言っているのですから、聞かなければいかぬのじゃないか、こう思っております。
  28. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 ありがとうございました。私はこの三点で十分でございます。それから国立市長さん、ありがとうございました。私たちが常々主張しているようなことをいろいろ言っていただき、教えていただきまして、これから努力をしてまいりたいと思います。  質問を終わります。
  29. 地崎宇三郎

    地崎委員長 佐藤敬治君。
  30. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 新自由クラブの方が一人質問しなくなりましたので、私ども午後の時間でありましたけれども、簡単に一問ずつ各党質問をいたしたいと思います。  橋本先生にお伺いしたいと思います。  今回の地方交付税地方財政に対する措置はベストではないけれどもベターだ、こういうようなお話でありました。現在の経済の状態、国の財政の状態、こういうものを考えてみますと、確かに本年度昭和五十二年度地方財政のつじつまが合った、こういう意味ではベターだ、こう思います。しかし、この地方財政状態というのは、いま始まったのではなくて、御承知のとおり、五十年にああいう大きな状態になり、五十一年もなり、ことしもまただ、こういう状態なのです。そのたびに、先生が言われるような、いわばベターな状態が確かに続いてきました、単年度限りで財政のつじつまが合ったという意味では。しかし、これを三年という通年した状態で時間の経過から見ますと、非常に大きな問題があると思います。たとえば、交付税会計の借り入れも、一兆円、それから一兆三千億、今回は約一兆円、九千四百億ですが、このような借り入れをして、どんどん借金が重なっていって、しかもそれをどうするかというめどが一つも立っていない。償還金がどんどんふえていく。多少国からつぎ込んでも、返す金が多くなれば、これは何にも交付税の増額にならない。いわば総額確保という面から見て非常に大きな問題がある。さらに建設国債やらいろいろな地方債がどんどんふえていって、このままでいきますと、今度、例の中期財政収支試算、地方財政の力も改定されましたけれども、来年度も多分あのままいかないと思います。そうなってきますと、ざっと試算してみますと、五十五年ぐらいになりますと三兆円ぐらいの償還になるのじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。こういうことを考えますと、ベターの中にも、将来のワーストに向かう非常に大きな問題を含んでいると私は思うのです。  そこで私どもは、こういうような借金財政でやったのでは、単年度のつじつまは合うかもしれないけれども、長い目で見ると崩壊につながる。しかも、政府は五十五年ぐらいまでにこれを立て直すと言っているけれども、先ほどお話がありました例の消費税でも、なかなかこれは成立する見通しはない。大蔵省は来年はもうやめたと発言しているような状態なのです。こうなってきますと、五十五年度までかかってもなかなか混乱がおさまるような状態にはならない。そうすれば、五十年度、五十一年度、五十二年度でとってきた措置というものが、三年度も四年度も五年度も、恐らく五十五年度ぐらいまではこの状態が続くのではないかと私どもは危惧しておるわけです。そうしますと、このままの借り入れ状態を続けていきますと、まさに地方財政というのは崩壊の危機に直面する。  そこで、私どもは交付税法六条の三の二項を問題にするわけですが、これは単に交付税率のアップだけを言っているのではなくて、こういうような状態になったならば、制度の改正をまずやれということを命じておるわけです。ところが、制度の改正に一向政府は手をつけようとしません。そして、税率もアップをしようとしないで、いわば単年度のつじつまを合わせるために借金財政をつないできた、こういう状態なんです。しかも、それを解消するめどがないというところに、私どもは地方財政崩壊の非常に大きな危機を感じております。そしてそういう意味では、先生のおっしゃられたように、いまこそ根本的に財政制度を変えるべき時期であるということは、全く先生と同感であります。  私どもも、常日ごろ政府に根本的な改革をするように迫っているわけですけれども、なかなかできない状態にあるわけです。そこで、どうしてもこの状態をまず当面、それこそベストではないけれどもベターの意味でこれを救済するためには、税率のアップしかない、こういうことで政府に迫っておるわけです。ところが今回の措置に対しまして政府は、これは交付税法六条三の二項に合致したところの税率のアップであり、しかも制度の改正である、こういうふうに、私どもから言わせると強弁をしておるわけです。ずいぶんこれはごまかしであると言って攻撃しておりますけれども、がんとしてこれは制度の改正である、法律どおり、違反ではありませんと強弁しておるわけです。私ども先生のおっしゃるように、こういうような経済状態で大変なことはわかるので、これは制度の改正ではないけれども来年は、再来年には必ずこういうふうになるから、あるいは税率をアップするからことしはこれでひとつ御免してもらいたい、こういうような形でならわかるけれども、これをどこまでも制度の改正であると言って強弁するということになりますと、私どもはこれを見逃すわけにはいかない。  そこで専門家である先生にお伺いしたいのですけれども、今回の政府措置というものが交付税法どおりの六条三の二項に合った制度の改正である、こういうふうに先生は思われますか。その点お伺いしたい。
  31. 橋本徹

    橋本参考人 初めにお断わりしますが、私は財政学をやっておるのですけれども、法律には非常に疎うございまして、いわば経済学者というのは法律でどうなるというよりも、法律はこうすべきだとは考えますけれども、法律に合致するかどうか、適法か否かという判定は全く門外漢でございます。御勘弁いただきたいと思います。正直に言いまして、私はわかりません。  ただ、それは別といたしまして、私も申し上げますし、またいま御指摘のように、このままではほうっておけないということは確かです。今度の措置交付税率で計算すると三・六%ぐらいに相当するというような、半分の分ですね、借り入れでなくて一般会計で見積もる。ところがいわば後遺症といいますか、五十一年度の対策債もあるし五十年度もある。そして借り入れ額を累積していって、ですから交付税会計で借り入れる、それを今度五十五年度以降から返すとしますと、そのときに仮に増収がありましてもその分を食ってしまうわけですから、いま先生が御指摘のようにそれは大問題である。だからそういう累増があるということは大問題である。ただ、地方団体が生き残って国が破れてもどうにもなりませんし、そこのところは、経済学者はやはり経済全体の仕組みの中、国全体の仕組みの中から、もとは一緒なんですから、仮にこっちをあっちに振りかえてやったところでそれはどうなるだろうかということを考えます。というのは、ことしの国債発行額は四兆五百億、今後の減税のは別にしまして、当初予算ではいま見ておりますと、この国会に出ておりますこれですね、市販されておりますが、これを見ますと、四兆五百億の特例公債を含めて八兆四千八百億。そうすると仮にいま四千五百億の、いわば正確に言えば数字が五千百七十五億ですか、そのうち四千二百二十五億ですか、この分が、仮にこれが三・六%であるとしますと、当初市長会とか知事会が主張していたように仮に五%アップですと、もう少しこれが六千億ぐらいになるのでしょうか。そうするとその六千億というものはどう財源をつくっていくのかということになって、それはもちろん地方団体交付税でその分仕事をすればその分国がせぬでいいという話で済むのか、国が出す分が、そこに交付税がそれだけふえるのだから。ところがただアップ率ということと措置ということとで、ただお金の振りかえだけなら、私は経済学者で、すぐ実を取りますので、どっちでもない。ただ問題は、そういう後ろに残ったものを放置してはいけないということを指摘する意味でこれはどうしてくれるのだということであれば、国の国債発行なり地方債の依存の増大、しかし外から見ますと地方債の依存度の方がまだ少のうございまして、六%、自治体によっては起債限度の標準財政規模に対する二〇%あるいは一般会計の中で一四、五%のところがありますけれども、いまのところまだ九か一〇ですね。ですから、そうなりますと振りかえていいのかどうか、私は正直に申しましてそういう問題ではないと思います。問題が非常に大変である、大危機であるということは、もう私もあちこちで声を大にして言いたいと思いますけれども、法律的に合うかどうかは行政法学者でありませんので、素人ですからお答えできません。
  32. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 わかりました。ありがとうございました。  同じ問題ですが、市長さんの方はこれを制度の改正である、こういうふうに受け取っていますか、そうでないと受け取っておりますか。
  33. 石塚一男

    石塚参考人 私どもはいただく方でありますので、こういうものは、冒頭に言ったように、強い言葉で言えばごまかしを二年も三年も続けられては困るという立場で申しております。
  34. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 わかりました。終わります。
  35. 地崎宇三郎

  36. 小川新一郎

    小川(新)委員 公明党の小川でございます。  簡単に先生にまずお尋ねいたしますが、三割自治の解消ということは長い間言われてきておりますね。地方制度調査会などもこれは年じゅう言われている問題なんです。ところが、どこからその手順をつけていいのか、またいま言ったような交付税法一つ見ても、制度の改正とか率のアップとかいうことで地方税法第六条三の二項に対する解釈がまちまちである。私どもはこういった問題をいつまでも不毛の議論として国会でもてあそんでいるもう余裕はないのだ。先ほどお聞きしたように、ギャンブルの問題などというものはもう非常に明確な問題になっておりまして、同じ地方公共団体人口急増の東京都の中でも、国立市のようにギャンブル財源のないところとそうでないところという格差が出ている。そういうところの物の見方というものの三割自治ということはおのずと違ってくるだろう。でありますので、まずこの三割自治の発想の中からどういうところから、解消するための手順と、手始めに何をやったらいいのか。これは憲法の第九十二条の地方自治の本旨とも絡み合う問題でございますので、私どもはどうしてもこの問題だけは明確にしておきたいと思っておりますので、どうぞ御高見をひとつお願いいたしておきます。
  37. 橋本徹

    橋本参考人 私はもともと地方税を充実する方の議論を絶えずとっております。ですから三割自治というのが、もしその三割という数字、人によって違うと思うのですが、たとえば国税地方税を租税の中で配分するとほぼ七対三だから三割だという説と、それから地方団体の財政支出の中での税のウエートを見ると三割ぐらいしかないじゃないかという説と、これは違いまして、論者によっていろいろあると思いますが、私はそこで、理論というか、私も理論的には地方税地方財政支出を賄う方が自治に合致すると思います。  ところが、それはたてまえであって、本当に自治体の長の皆さんが本音としてそういうことをお考えになっているかどうかがよくわからないので困るわけです。と申しますのは、たとえば固定資産税を、制度としては百分の一・四が標準税率で、百分の二二が制限税率であります。しかるに、たとえば財政需要があってその固定資産税の増率に踏み切るかというと、それにはなかなか踏み切らずに政府の財政措置を求めるという形、政府制度改正を求める。じゃ、政府制度改正でたとえば市街化区域における農地の宅地並み課税というのを国会で法律でお立てになりましても、実際には各地方団体がいまだにやっていることは、徴収しまして、同額のものを農業補助金という形で還付しておるのが実態でございます。そのうちに生産緑地指定等でだんだんと最初のねらいは違ってきた。もちろん市街地の中で農地が云々という話は別ですけれども、私は固定資産税の最初の評価のときに市の委員に出ました。ところが、どうもやはり市民の感覚と政治と違うと思いましたのは、私ども現地を見に行きまして、農地だと言う。私どもが見に行く一週間ほど前に芋かナスビか何かを植えて、そして見に行ったら、こんなになっているのです。周りは草っ原なんです。三分の一ほど畝をつくっている。私はそのときに農業委員の人に、ああこの土地はあと三カ月もしたら家が建つんじゃないですか、しかし現況は農地だと言う。農業の専門家が農地だと言われたら、われわれ財政の専門家が農地でないと言ったって始まりません。私は口頭で、こういう固定資産の評価は一体何が意味があるのですかと言ったのです。  申し上げたいのは、たてまえとして自治体が主張されることと、本音として自治体がなさっていることが余りに食い違い過ぎまして、本音は自分のところでは税金はかけたくない、なるべく国の交付税なり補助金が来た方がいいというようにしか私どもには見受けられないのです。ですから、先生が御指摘のように、どこから手をつけるかと言えば、手順としては地方税の増税ですけれども、先ほど山本先生や谷先生から御指摘になっていたように、住民負担がふえるということをどう考えるか。いまのPRの段階でいけば、地方税はすぐ即住民負担だというような受けとめ方ですので、たてまえとして地方税を増加し、国税を落とす、ましてや地方税もふやし国税もふやすような一般消費税等は、それはもう御指摘のようにできぬだろうと思います。しかし私は、できないできないと言っているうちに国家の屋台骨が、地方団体の屋台骨がひっくり返るのではないかと、暗夜ひそかに危機感に襲われておりますけれども。……しかし、手順はやはり市民にPRして地方税の増加というもの、それは先ほども申し上げましたように住民税、固定資産税、事業税の三税。やはり地方税としては三税。所得税から住民税へ、法人税から法人税割へという形で、住民税に——住民税は個人と法人がございますから、ですから所得税から個人住民税へ、法人税から法人税割へと、こういうトランスファーを税の段階でやる、それが段階的には補助金の整理等でかなりできるのではないだろうか。だから国庫支出金、国庫補助金等の洗いざらいをしてみて、ただしそれは事務との関係がございますけれども、事務との関係で洗いざらいをしまして、もっと地方団体自主性を持たせるためには、いまのように超過負担論というのは不毛の論理だと思うのです。国が何ぼ出さないと、保育所が五平米はけしからぬ、六平米はいいんだとか、七平米はいいんだとかという話を、単価が幾らだということをやっているのは不毛の論理だと思います。やはり自治体に金があって、自分のところでやりたかったり市民が納得したら、六平米でも七平米でもやってみて、困ったらやめたらいいのでして、そこのところは割り切らないと、あっちにもこっちにも都合のいいという話は私はできない。ですから、私は地方税から充実していきたい、こう思います。
  38. 石塚一男

    石塚参考人 いま橋本先生の御意見聞いておったのですが、私は現在市長でありますので、実態から見ていわゆるこの三割自治というのは、本音だとかたてまえじゃなくて現実だと思う。おっしゃられるように、確かに所得税、国に入るのが七割で、都道府県並びに市町村自治体でありますので一五で、そうすると自治体は三〇ですから、その意味では配分問題では三割自治ということも言えるでしょう。しかし、先ほど小川議員さんおっしゃられるように、国立のようなところは財政上のことでいいますと、三割自治じゃなくて、いまや一割自治だというふうに思っております。  それでは今度権限の問題でありますけれども、権限の問題にしましても、国で法に定められるとそれを条例化をし、執行していくという立場になりますと、財源が法律と同時に付与されてまいりますと自治体負担というものはありません。ところがその中身というのは、付与する、よく言う三分の一ですね、あるいは三分の一以内という、これはなかなかうまい言葉ですけれども、実態としていただくと四分の一、五分の一というのが実態ですね。それが一つ事務配分の問題にいたしましても超過負担の問題として出てきますので、この意味においても私は三割自治ということが言えるだろう。このように各論で言いますとかなりの面で三割自治ということがマクロで言い得るというふうに判断をいたしております。  そこで制度上の問題でありますが、確かに小川議員おっしゃられるように、いつまでも国だ自治体だでキャッチボールしているのはむなしく感じる。審議会なり、国では一定の機関を設けられておるでしょうけれども、私が提言いたしたいのは、今日、事務配分にいたしましても、国の委任事務ですね、これが本当に自治体の分野として全部いま定められておるものをしょうべきかどうかという事務配分の問題ですね。あるものは都道府県で、いいものもあるわけです。それから全くなくしちゃっていいというのは、幾ら言ってもわかってもらえないのは米穀通帳の事務ですね。あんなものは現実的でなければ、これは農林省だと思うのだが、切りかえちゃっていいと思うのです。こういったような事務配分の問題をやはり自治体の長とそれから学識経験者を含めて大胆に、自治体の長を中心にして意見を聞く中で現実的にしていくべきだろう。財源配分もそういった意味で、そういう財源配分だけの審議会、それを調整するのを国務大臣級の方に委員長をやっていただいて、知事あるいは市町村代表学識経験者ということで調整機能を発揮してもらうという制度をどうしても設けないと、先生おっしゃられるようにむなしいことになり、また来年私は来て同じことを言わなければならぬかなと、そういうことを申し上げたいわけでございます。
  39. 小川新一郎

    小川(新)委員 ありがとうございました。
  40. 地崎宇三郎

    地崎委員長 三谷秀治君。
  41. 三谷秀治

    ○三谷委員 先ほど橋本先生がおっしゃいましたように、交付税内容が非常にわかりにくい、計算のつかまえどころがないというんですね。たとえば大阪の例で申しますと、単位費用測定単位の数値を乗じたものですね、これが補正によって非常に変わってしまいます。それで見ますと、大阪の実例でいくと、道路橋梁費は補正によりまして二・五倍になっております。それから商工行政費は三倍になっております。港湾費が七倍、河川費が八・三倍にふえていくわけですね。補正によりましてそれだけ変化が出てくる。それから衛生費は四三%減ってしまう、社会福祉費が三五%減ってしまう。こういう事態になっております。ですから、単価を若干改定しましても、補正によりまして実態がすっかり変わってしまうわけなんですね。これでは単価を幾らとやかく言ったって実態が少しも把握できないという、こういう問題があります。  それからもう一つ国庫支出金関係で言いますと、国庫補助率が上がりますと、基準財政収入額がふえると称して交付税額を減額します。それから交付税算定単価ですね。補助単価を上げますと交付税算定単価も上がりますが、しかしこれは総枠を押さえておりますから、上がった分だけ事業量が減少する、こういう結果になっております。  これでは、あるべき行政水準などというものは全くの空文であって、現実の行政水準を維持することもできない、これがいまの交付税実態だと私は思っております。ですから、単価を現実の姿に合わせようとしますと事業量が削減される。補助率がふえたと思えば交付税交付金が減る。結局、質を落とすか量を減らすか、この問題以上に出ぬわけですね。交付税の論議なんというものは結局この範囲の中でやっている。まあこれはお釈迦さまの手の上で孫悟空が走っているという状態になっておりますね。これを根本的に何とか変えなければ意味がないという感じがするのです。  そこで私は、この積み上げ積算ですね、これを交付税の中に導入すべきではないか。交付税は一般財源でありまして、目的財源ではありませんから、生活保護費と同じように積み上げの積算をすべきである、そういうふうに考えております。こういう補正をやりましても、さっき申しました大阪なんかで河川費や道路橋梁費などがずいぶん割り増しになっておりますけれども、それでも実際に使った分から見ますと足りないというのですね。ですから、いかに交付税というものが矛盾した制度の上に矛盾した運営がなされているかということを端的に示していると思いますが、この点につきまして、積み上げということについてどうだろうかと思っておりますが、御意見を両先生からお聞きしたいと思うのです。
  42. 石塚一男

    石塚参考人 まず具体的に、大阪の例で、工事単価差の問題ですが、これは御指摘のとおりだと思います。これは物価が上がりますから作業賃も上がるだろうし、資材も上がりますからどうしても国が追っかけられるということだと思います。  それから、交付税算定単価、橋本先生もおっしゃっておられた難解だというのは、私どもも難解ですから、全く市民なんか幾ら市報で言おうが座談会のときに言おうが、しまいには関係ないやと言ってどこかの何かを説明しているようなんで白けてしまうのですね。重要なことなんだけれども白けてしまう。余りにも難解だ。この点は同感であります。ただ、現行地方交付税法を準用して物を考えた場合、いろいろな中身の各論の矛盾というものを整理しませんと、ただ積み上げ方式といっても、積み上げていったのでは幾ら金があっても足りないというのがやはり政府状態じゃないかと思うのですね。したがって、おっしゃられるように、保育園のいわゆる財政需要の積み上げ方式でいった場合、よく厚生省で言われる東京の保育園はぜいたくだ。ではぜいたくというのは何を基準にぜいたくか。東京の学校はぜいたくだと言った場合に、何が基準でぜいたくだ。やはりこういうものの基準というものは、学校の場合文部省が国という立場において一つの規範をつくり、それを自治体において納得のいく線で補完をしていくという姿勢がない限り、これは積み上げ方式だと、全国、東北でつくるもの、東京でつくるもの、違いが出てくるというふうに思います。ただ、おっしゃられるように、少なくとも自治体で必要なものでありますので、それは具体的に国の方も認めていくという姿勢を前提にしていただくことがいままずもって大事だろうというふうに思っております。  それともう一つは、やはり国の方でも、学校にいたしましても、今度の高校の予算もそうでありますが、必ずしも全国的に要求される数だけの予算であるかといいますとそうではありません。しかも、保育園についても同様だと思います。そうすると、おのずと都道府県段階におりてきた場合、数の上の制約がありますから、どうしても市の方では、未措置の子供がたくさん残っている場合に、つくらなければならぬという場合に問題が出てまいります。その場合に積み上げ方式で、仮に国立で三つなら三つの保育園が要るよというのですけれども、現行交付税の準用でいった場合、これは基本的に各論で自治体と国とがコンセンサスを得てやっていきませんと、私はかなり現実的に混乱が起きるというふうに思います。したがって、積算方式というのは一つの考え方であります。先ほどもヨーロッパの話が出ましたけれども、イタリアのボローニャの方法でいきますと、自治体が必要だというだけ使っていって、足りなければ政府が補完してくると言ったって、もう真っ赤かになったら政府の方も補完のしようがなくなってしまうという実態も出ますから、かなりそういう場合については自治体と国と各論において詰めてコンセンサスを得てやらないと、当面混乱が起きるだろう。私どもは現行交付税制度を準用しながら、これは国の方が変えていかない限り、私どもが変えろ変えろと言ったって、法が変わらなければどうにもならぬわけで、そういう中の矛盾を一つ一つ御指摘申し上げて、大胆に国の方が改善すべきものを改正していただいて、自治体の方により財源配分を厚くしてもらうということが目的で申し上げておりますので、御理解をいただきたいというふうに思います。
  43. 橋本徹

    橋本参考人 三谷先生が非常にそれこそまた細かい計算をして指摘されますと、そうだろうなあと思うぐらいで余りよくわからないのですが、実は、私も大阪府の中で、現在の機関委任事務をそれこそ積み上げて計算してもらっているのです。そうすると、交付税で何人見ている、委任事務で何人見ているということで人間を割り出してやっていくと、なるほどそれだけ来てないという話が必ず出てくるわけです。しかし、この点は先ほど先生が御指摘のように、幾ら言ったところで、総枠で地方財政平衡交付金制度のときみたいに、こっちに積み上げたものが合計してしまえば、またカットすれば、調整率を掛ければ、やはり同じことになるような気がしまして、積み上げ式の限界が平衡交付金のときにあったと思うのです。自治というものを考えるときに、税金を徴収しなければ、私はそう思うのですが、そういう考え方と、いや、金はどこからでもいいから来て、使う自治があればいいという二つあると思います。金は補助金でも税金でも交付税でもいい。使う自治が自治だという論者と、それから、やはり徴収してそれを使うのが自治だ。イギリスは大体グランツが多うございますから、タイプとしては使う自治でございますね。アメリカは集める自治。日本は、シャウプ以来どっちかと言えば税金を集める苦労をしなさいということをたてまえに持ってきたわけですから集める自治だと思うのです。いま御指摘のように、積算するというのは、集める話じゃなくて、金はどこからか来なさい、国から来なさい、わが方は使いますという使うだけの自治ですね。ですから、多分そのお考えは半分賛成し、半分反対するのじゃないだろうか。やはり使うだけでは自治にならない。私は資源配分の効率を考えたら、負担してかつ使うのが尺度としては望ましいと先ほど申し上げたとおりでございますから、積算というのは平衡交付金の時代に返る。言うたら、そういうふうに受け取ったのと違うのでしょうか。やはり上が抑えられておりますから、同じ問題点を含むような気がいたします。勉強してみたいと思います。考えさせていただきたいと思います。
  44. 地崎宇三郎

    地崎委員長 これにて両参考人に対する質疑は終わりました。  両参考人は御多忙のところ御出席をいただき、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  45. 地崎宇三郎

    地崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案を議題とし、午前に引き続き、参考人から意見を聴取いたします。  ただいま御出席参考人は、岡山県知事長野士郎君、立教大学名誉教授藤田武夫君、全日本自治団体労働組合委員長丸山康雄君の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の皆様には、御多用中のところ、当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきましては、忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人の方々から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑に対し、御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それではまず、長野参考人にお願いいたします。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  46. 長野士郎

    ○長野参考人 私ども、地方団体で日夜行財政の運営をさしていただいておる立場から、少しばかり実情を込めてお話を申し上げ、御参考になれば幸いだと存ずる次第でございます。  申し上げるまでもなく、いわゆる石油ショック以来景気が落ち込んでおりまして、本県岡山県の場合におきましても、産業構造の特殊性と申しますか、そういうところから大変大きな影響を受けておりまして、四十九年度を境に県税収入の減少による自主財源の低下を来しております。歳入中に占める税収の割合は、四十九年の二九・三%から最近では二三%ないし二五%程度に低下をいたしておるのでございます。  このような事態に対処いたしまして、岡山県では、昭和五十年度に行財政対策懇談会を設置いたしまして、歳入歳出全般にわたりまして検討をいたしました。そして超過課税の実施あるいは使用料、手数料の適正化、職員定数の削減、給与の一号引き下げ、あるいは一般行政費の節減など、いろいろな手を打ちまして、こういう事態に対応いたしてまいりました。  五十年度におきましては、しかもこのような対応だけではとどまりませんで、財政調整積立基金七十七億円を全部取り崩しをいたしたような状況でございます。それにもかかわりませず、普通会計におきまして十三億円の赤字決算と相なりました。  五十一年度は、収支の均衡を図りますために、前年度当初の予算対比では、わずか三・四%の伸び率というような抑制型の予算編成いたしまして、財政の健全化を図り、単年度収支では若干の黒字になりますけれども、前年に生じた赤字の全額解消までには至らないという状況でございます。  五十二年度につきましては、災害復旧事業費、また景気対策のための公共事業費を積極的に計上いたしました。前年度当初予算対比では二一・五%という大幅な増加となったのでありますが、自主財源の低下の中での予算編成でありましたために、財源の捻出に大変苦慮いたしました。県税収入につきましては、本県経済の動向から見まして、見込み得る限度いっぱいのものを計上いたしましたが、その伸び率は一五・二%でございまして、地方財政計画の一八・二%には達しておりません。法人事業税の伸び率につきましては、地方財政計画は二四・二%でございますが、本県の場合は一四・六%ということにとどまっておるのでございます。  また、最近の地方債の増発によりまして、本県の場合でも昭和五十二年度末の地方債の現在高は約一千億となります。このうちの約三百五十億円が特例的な地方債でありまして、この償還につきましては後ほど交付税措置をされるということになっておりますけれども、これとて交付税総量との関係で問題があるわけでございまして、そういう意味では問題なしとはしないと思うのでございます。また、義務的経費の割合は最近著しく増高いたしまして、自主財源の比率が低下をいたします財政環境下におきまして、県財政の硬直化を促進いたしておるような状況でございます。  岡山県におきましては、人間尊重、福祉優先を基調といたしました岡山県総合福祉計画に基づきまして県政を推進いたしております。今回五十二年度から五十五年度までの間の後期の実施計画を策定いたしましたが、このうち県事業費は約五千四百億円と見込んでおりまして、この目標の達成のためには多額財源が必要となるのでございます。  昭和五十年度以降の地方財政対策としましては、主として交付税特別会計借り入れと特例的な地方債発行ということで対処されました。昭和五十二年度におきましても、地方財源不足額二兆七百億円につきまして、交付税特別会計借り入れなどによります交付税の増額と地方債で補てん措置が講じられるように承知しておるのでありますが、国、地方を通ずる厳しい財政事情のもとではやむを得ない面もありますけれども、私どもとしてはこのような措置は本年度限りのこととして、そして来年度以降におきましては、ぜひとも交付税率引き上げを含む抜本的な対策をお願いしたいと考えておる次第でございます。  交付税につきまして、交付税率の問題が出てまいりましたが、いま申し上げましたように、交付税特別会計借り入れ臨時特例の措置によって応急対策がとられてまいりましたが、五十二年度におきましても、国の厳しい財政状況のもとで資金運用部資金からの借り入れを行い、その一部について後年度一般会計で補てんすることを内容とした交付税法改正案となっておるわけでございます。  この後年度の補てんを法定したということは確かに一歩前進であると思うのでございますが、現行交付税率昭和四十一年以来据え置かれたままでございます。その後、教員あるいは警察官の定数増あるいは消費者対策、環境対策、社会福祉施策の拡充等による新しい財政需要が生じておることは御承知のとおりでございまして、これに対する所要一般財源が不足しておる実態に徴し、また交付税法の趣旨からいいましても、昭和五十三年度においては抜本的な改革として少なくとも五%程度引き上げ等によりまして、地方財源確保を図っていただきたいと思うのであります。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕  交付税率引き上げの問題になりますと幾らがいいか、多ければ多いほどいいかという議論になりますが、これは必ずしもそうはまいらない。むしろ税財源の抜本改正ということによりまして地方の税源を充実してほしいということを前提にしながら考えていきますならば、私どもは五%程度であろうというふうに思います。もしそうでなければ、このままの状態であれば、さらに割合を高めなければなりませんが、これはやはり地方財政自主性という点からいって必ずしも適当な措置とも思えません。したがって、大体その程度のところがいいのではなかろうかというふうに考えます。  さらには最近における地方債発行額の増大並びに政府資金率の低下に伴いまして、縁故地方債が府県の場合は特に急激に増加をいたしておるのであります。そういう意味で、公営企業金融公庫の改組ということは、私ども多年要望してまいったところであります。縁故地方債の激増によりまして、指定金融機関との間の公金預金と、それから地方債残高とのバランスが従来に比べて大きく変化をいたしてまいりました。そういうこと等の問題が金融機関から強く指摘をされておりまして、それが縁故地方債の消化あるいは発行条件に一々影響をしてまいります。その点で大変苦慮いたしておるところでございます。  したがいまして、新たなる機構のもとに従来の公営企業債だけでなく、普通会計債までも融資できるように、地方公共団体が一致して要望をしてまいりました公営企業金融公庫の改組ということが見送られております。その場合でも公庫の改正が一部行われまして、公営住宅建設事業とか産業廃棄物処理事業が融資対象に加えられましたことは前進ではございますけれども、地方公共団体の希望する所期の目的にはほど遠いものがあります。ぜひとも早急に抜本的な改革を行っていただきたいと思うのであります。  さらに直轄事業負担金の廃止の問題がございます。私ども直轄事業負担金制度については、その廃止を強く要望してまいっておるところでございますが、いまだにその実現を見ていないのはまことに遺憾でございます。直轄事業と申しますものは、国土保全あるいは全国的な視野に立って国家的な政策に基づいて行われるものでございまして、国の責任と費用によって行われるべきものと考えます。また、制度の運用面におきましても、事業の計画とか実施変更に当たりまして、地方公共団体との間に十分な事前協議が行われないなどいろいろ問題があるわけでございます。  したがいまして、国と地方の責任分担と財政秩序を確立する見地からも、直轄事業負担金制度はぜひ廃止することにしていただきたい。そのかわり事務配分といいますか、政府が考えております行政改革の際には、特にこのことを今後実現をしていただきたいと思うのでございます。特に維持管理費につきましては管理主体が負担すべきものでありまして、早急に廃止をしていただかなければならないというふうに思っておるのでございます。  それにいたしましても、五十二年度の問題といたしましては、やはり公共事業を積極的に推進をするということと、いろいろな景気浮揚対策が講じられておることでもございますが、本県の状況を見ますと、必ずしもその効果が確実に上がっていくというふうなところまで現在どうもうかがわれないような状況でございます。このために今後とも積極的な景気対策を講じていただきまして、経済の立て直しを行われるように特に御配慮を願いたいと思うのであります。  交付税法の一部改正法案につきましては、今年度普通交付税の四月の概算交付暫定予算に基づくものとなっておりますけれども、今後公共事業あるいは災害復旧事業の早期施行等の必要もございまして、地方団体の資金収支に支障を来さないように、今回の財政措置について一日も早く実現できますように、交付税法についてはいろいろ問題もあるかもしれませんが、現に予算も通過をいたしておりますから、われわれは執行の一日も早いことを望んでおる次第でございます。そういう意味で交付税法の一部改正法律案というものの早期の成立をお願いいたしたいと思う次第でございます。  大変急いで申し上げまして恐縮でございましたが、一応これで私の陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  47. 地崎宇三郎

    地崎委員長 次に、藤田参考人にお願いいたします。
  48. 藤田武夫

    ○藤田参考人 ただいま長野知事から地方の財政の実態について広く御報告がございましたが、私は今日の題目であります地方交付税の問題について、それも時間が非常に限られておりますので、その総額の問題と、それから地方交付税の役割りを左右いたします基準財政需要額の問題、この二つにしぼってお話を申し上げたいと思います。  まず、総額の問題でございますが、これはもう御承知のように三国税の三二%、それから資金運用部から九千四百億、それから臨時特例交付金千五百五十七億、その他で五兆七千五十五億、約五兆七千億。ところが、この五兆七千億というのは、御承知かと思いますが、前年度に比較して一〇%しか伸びてない、こういうことも非常に重要だと思うのですが、この伸びの一〇%というのは二十九年に交付税ができて以来最低であります。大体いままで過去十年間は大抵二〇%から二五%伸びている。一〇%というのはこれでいいのかどうか。それから歳入の構成比は一九・八%で二〇%を割っております。これも四十三年以来の最低の構成比であります。この問題は後でまた取り上げます。そしてとにかくこの交付税というのは四十一年に三二%に引き上げて以来、実際は足りないところを臨時特例交付金とか借入金とかそういうことでとにかくつじつまを、その場その場をしのいできた。そして五十年度補正予算から五十二年度の今度の予算までに、それだけでも三兆四千億を超える借金をしている。この借金はいずれ今後八年度間に毎年償還しなければいけない。それだけこれからの地方交付金が減額される。ことしは四千二百二十五億円が幾らか追加されますが、こういうことをもって見ても、すでに交付税というものは総額において破綻を来しているということはもう常識であります。  それで、今度の五十二年度の対策でありますが、御承知のように九千四百億円の借り入れのうち四千二百二十五億円は国が肩がわりをする。そしてその四千二百二十五億円が交付税率の三・六%に当たる、こういうふうに言われております。  ところで、この金額の問題ですが、これにもいろいろ問題があります。一つは、三国税の三・六%は、私の計算によると五千百二十億円くらいになるので、これは私の読み違いかもしれませんが、四千三百二十五億円とは少し開きがある。それからこの金額だけの問題でなしに、この四千二百二十五億円というのは、別にことしだけこれだけ国が肩がわりしてくれるのじゃなくて、五十五年度から六十二年度の八年度間にこれだけ肩がわりしてくれる。その点がうっかりすると見落とすわけで、五十五年度などは、この法案によりますと三百二十億しか肩がわりしていない。三百二十億というのは三国税の〇・二%、最後の六十二年度になってやっと八百五億円を補足する、そういうことなので、交付税の三二%というのは毎年それだけくれるわけですね。この三・六%というのは毎年くれるのじゃないのです。八年間なし崩しで、それの合計が三・六%、その点は議員さん方も御承知かと思いますが、ひとつ十分御検討願いたい。  それからこの措置は、法文にも書いてありますが、五十五年度から六十二年度までの限りの措置だと書いてある。全くの暫定措置だ。こういうことから見ても、地方交付税引き上げなければならないという必要は当然にあるわけです。それで、ここで地方交付税法の第六条の三の二項の規定違反という問題が野党方面からいろいろ言われておりますが、あの規定は、すでに御承知で詳しく申しませんが、つまり、基準財政需要額収入額の不足する分と交付税の税額が引き続いて著しく不足する場合には、行財政制度の改正交付税率引き上げる、こういうことになっております。ところが、ことしは行財政制度の基本的な改正はありません。それからこの「引き続き」というのはどれくらいか。これは自治省の首脳の方なんかの国会その他の答弁でも、二年続いて、三年目になれば何とか考えなければいけない、こういう答弁であります。「著しく」というものについても、まあ一〇%以上と言われております。ところが、不足は約二〇%、一九・二%になっております。  こういうことで、当然引き上げなければいけないのですが、それで社会、公明、共産、新自由クラブ、そういうところでは交付税率を四〇%に引き上げる。民社党は三五・六%ですが。ところがきょうの新聞で見ますと、これはまあいろいろな政治的な調整影響でしょうが、三七%に後退している。これでいいかどうか。これはまあ引き続いて申しますが、それで、この四〇%で計算するという場合にも、国税でこれの三千億円、所得税が減税になりますから、それを差し引いて計算しますと、四〇%で五兆五千六百七十六億円。ことしの五兆七千億円よりは一千四百億円ぐらい少なくなる。これを三七%にしますと五兆一千五百億になる。約五千五百億ぐらいことしより少なくなる。これでいいのかどうか。まあ数字だけで問題を解決するわけにもいかぬでしょうが、ことしの五兆七千億というのは、先ほど申しましたように、伸び率は二十九年以来最低の一〇%。それから歳入の構成比も四十三年以来の最低であります。  こういうことで、果たして三七%で将来やっていけるのかどうか。今後の低成長の時代には三国税収入も伸び悩むでしょう。また、地方自治体財政需要もふえることはあっても余り減ることはないと思います。それから地方税収入も、低成長でいままでのようにふえない。こういうことを考えた場合に、この交付税率引き上げの幅というものはよほど慎重に考えていただきたい。  自治省で五十二年に地方財政収支試算というものを出しておりますが、これに基づくと、五十五年度赤字解消するためには一般財源を一・六七倍しなければいけない。まあ税収を一九%から二四%引き上げると言っておりますが、交付税を一・四倍と仮に押さえましても、交付税率は四五%に引き上げなければいけない、こういうことであります。  それで、この地方交付税総額確保するための改革案というものは、これは財政学者やいろいろな団体からいろいろな提案がございまして、三国税のほかに相続税とか物品税を入れるとか、国税収入全体にリンクするとか、あるいは国債が発行されている場合にはそれに見合った交付税相当額を追加するとか、税源配分あるいは交付税、補助金、譲与税、地方債を含めて全体の財政調整をやるとか、いろいろな案が六つも七つも提案されております。私としては、このうちで、国税全体にリンクする案が適当でないかというふうに思います。  その理由は、一つは、この三国税というのは御承知のように景気の変動を最もシビアに受けます。そして低成長の場合には伸び悩みが大きいわけであります。国税全体にすると、その影響がないとは言えませんが、わりあいに緩和される。それからこれはシャウプ勧告の思想ですが、交付税というものは特定の税金に結びつけるのではなくて、国の財政資金全体に結びつけて十分な機能を果たさせるべきだという意見がありますが、これにも通ずるのではないかと私は思います。  国税全体に結びつけるということを申し上げたわけでありますが、最近、一般消費税、付加価値税の導入と結びついて、その一部を交付税に回すというふうな意見もございますが、これはよほど警戒すべき意見でありまして、私としては、端的に申しますと、法人税の増徴あるいは租税特別措置の整理、これだけで大蔵省の試算でも減収が五十二年度に八千四百億円に上っている、こういうものによって国税税収をふやすことが妥当である、付加価値税はよほど慎重に対処する必要があるというふうに思います。  次に、基準財政需要額の再検討の問題でありますが、これは先ほども触れましたように、交付税がどういう役割りを演ずるかということについて、基準財政需要額算定方法というものは、それを決定する大きな役割りをしております。余り詳しいことは時間がありませんので述べませんが、この交付税の本来の役割りというのは、学者の間でもいろいろ意見がありますが、一般的に考えられていることは、財政調整を通じて地方自治体住民のシビルミニマム充足のための一般財源保障する、これが本来の役割りであります。ところが、高度成長期の三十年代から四十年代中ごろにかけて、この基準財政需要額算定方法が、測定単位単位費用、補正、特に補正なんかでいろいろな修正が加えられまして、詳しいことはよしますが、公共投資の拡充、地域開発、そういうことに非常に役立ってきた。そしてそれが補助金のような役割りを果たしてきた。  それを具体的にちょっと申し上げると、基準財政需要額の費目別の割合を見ますと、土木費は二十九年から五十年までの間に比重が六%から一七%にふえている、教育費は反対に四九%から四一%、厚生労働費は一〇%から七%、そういうふうになっている。それから投資的経費が重視されておりますが、その内容を見てみますと、これは私が試算をしたのですが、昭和五十年度の場合に、道府県の投資的経費において、産業基盤関係、道路、港湾とか工業用水とかそういったものが四四%、生活基盤はわずかに三%、文教施設が九%、国土保全その他が四四%、市町村では、産業基盤が四一%で、生活基盤が少し多いのですが一三%、文教施設が一八%、そう他というふうになっております。交付税にこういった産業基盤強化地域開発というふうな役割りを持たせることがいいのかどうか。交付税にもおのずから限度があるので、こういうことに余り大きく食われると、肝心の社会福祉、文教施設、そういうことに余り行かない。  それで、私の意見を申しますと、大規模の産業基盤関係財政需要、こういうものは交付税の基準財政需要から除外して、国の直轄事業あるいは国庫補助事業に振りかえるべきである、そして生活基盤施設、福祉行政施設、文教施設、そういった財政需要をできるだけ増強する必要がある。交付税総額だけを問題にすることも必要ですが、それだけでは問題は解決しないので、その総額確保された交付税が果たしてどういう役割りを行っているのか。今日、社会福祉への転換ということは常識であります。それであれば、いままで高度成長型になっておった交付税の仕組みというものにメスを加えて、それを交付税本来の住民のシビルミニマム充足のための役割りに引き戻すことが必要だと思います。  今度の交付税の税法の改正は五十三年度からということでありますが、これから一年間ありますので、どうか各政党の方も、五十三年度までに、ただ総額だけの問題でなしに、交付税の仕組みそのものを基本的に方向転換する、そのための具体案を提示されることを強く希望申します。  以上でございます。(拍手)
  49. 地崎宇三郎

    地崎委員長 次に、丸山参考人にお願いいたします。
  50. 丸山康雄

    ○丸山参考人 私、自治労の委員長をやっております丸山でございますが、自治体に働く労働者の立場から、この委員会で御審議されております地方交付税法改正法案につきまして基本的に反対し、抜本的改革を強く要望する立場から、幾つかの点について意見を述べさせていただきたいと思います。  政府は、去る三月二十九日、昭和五十年度の決算分析を中心としまして、五十二年度の財政白書を発表いたしておりますが、この中で、地方財政は転機を迎えていると述べております。その財政赤字は一段と強まったという指摘をしておりますが、これは地方税収が戦後初めて減収となり、経常収支比率は上昇し、さらには地方債依存度が高まるという財政上の危機を指摘していることにその特徴点があると思います。  これらの状況をもとに、一方で自治省昭和五十二年度をベースとする昭和五十五年度収支見込みを推算しておりますが、それによりますと、地方債依存度はやや低下するものの、その残高は二十兆四千億円に上り、地方債償還に要する公債費は三兆四百億とウナギ登りに増加をし、財政支出を圧迫することがうかがわれます。  一方、交付税は、昭和五十年度以降の先食い分の返還が五十三年度から始まることになりますが、そのため五十五年度においては二千七百億を返還するということになり、その圧迫の度合いを一層強めることになることは間違いないと思います。  このような地方財政危機の主因が経済の構造的な矛盾によって引き起こされていることはすでに各界から指摘をされているところでありますが、また、高度成長期においてさえ指摘されてまいりました国と地方財源配分、いわゆる一般に三割自治と言われておりますが、ここにその全容が露呈したと言っても言い過ぎではないと考えられますし、ここで抜本的な政策が必要になってくると考えます。  安定成長を目指すという政府の施策が今日しかれている中で、これらの構造的な矛盾の解決は緊急な課題であり、その方策としては、税、財政制度の改革であろうかと思います。そして当面する地方財政改革に第一に着手する方策は、地方交付税率引き上げにあると思います。  政府は、先日の参議院の予算委員会において、交付税法六条三の二項の発動を本年度行わなかった理由として、経済が安定期でないこと、交付税率の改定は長期的な制度改正となること、法律の解釈として臨時的な措置を排除していないことなどを挙げておりますけれども、さきに申し述べましたように、地方財政の将来方向が長きにわたって赤字基調をとることは政府でさえ否定できない事情にあることを考えますときに、法律の拡大解釈をもって問題点をそらすということはできないのではないかと考えます。  この意味におきまして、私は、交付税法の趣旨に沿って、二年間財政赤字が続き、なおその基調が変わらない状況にあるとき、つまり本年度において交付税率引き上げを行うべきであり、前回改定が行われました昭和四十一年度以降の国税減税による今日の交付税落ち込みの額は、大体一五%となっているのでありますから、私どもが主張してまいりました四〇%以上への率の引き上げ改正はきわめて当然のことだと考えております。また、百歩譲って考えてみたといたしましても、本年度改正を解釈上の理由から行わないといたしましても、いつ六条三の二項を発動するか、その条件というのは、どういう事態のときにおやりになるのか明らかにされなければ、地方財政の将来展望が全く明らかにならないという点に、特にこの法案についての基本的な見解を申し上げる次第であります。  以上の立場から、具体的な例を二、三申し上げまして、ぜひお考えをいただきたいと思います。  その第一は、交付税算定における実態との乖離、開きの問題であります。  第一の例は、清掃職員の賃金単価の算定で、清掃職員の賃金単価は九万四千五百円となっておりますが、私どもの調査では、指定都市の現業職員の平均給料月額は、本俸で十四万四百九十一円となっており、平均年齢は四十・六歳であります。清掃職員の賃金は、たとえば東京の場合には十四万三千円、大阪の場合は十四万四千円、神戸の場合は十三万二千円、このような開きが超過負担一つの原因になっております。  さらに第二の例は、保健所保健婦の問題について触れますと、保健所保健婦の給料は、三分の一国庫負担の職員でありますが、この給与の単価は十五万一千八百円となっております。この残りの三分の二が交付税算定基礎となるわけでありますが、この国庫負担対象には、実は当然必要なこの人方の超過勤務手当でありますとか、扶養手当でありますとか、退職手当、公務災害、共済負担金などが除外されております。このために、昭和五十二年度給与単価表の道府県吏員の額ではじき出しますと、約百十六万三千百円ぐらいの数字が出てくるのであります。こういう実態からも、実態と計画上の大きな開きがある例を申し上げたわけでございます。  また、これらと同じような例としては、農業改良普及員でありますとか、生活改良普及員でありますとか、こういう場合にも出てまいっております。  第二は、超過負担の問題について申し上げたいと思いますが、すでに全国知事会の発表した都道府県における超過負担額は六千三百億円に達していると言われておりますが、昭和五十二年度地方財政政策の中では、全自治体における超過負担解消策としてとられている総額が四百九十五億円ということ、両者を対比いたしましても、その対策の不十分な点を指摘せざるを得ません。摂津訴訟と言われるこのような問題が提起されまして以来、国がその解消に努められていることは私どもはわかりますけれども、依然として福祉施設、学校等の超過負担改善されておらない事実があります。  たとえば横浜市における特別養護老人ホームの例に照らしてみても、その実態が明らかになっております。さらに、このホームの建設費ばかりでなく、措置費の問題についても超過負担の問題が大きく、これらの総和が自治体の財政に大きく影響しているということを申し上げないわけにはまいりません。  第三の問題といたしまして、住民の健康にかかわる保健衛生の行政実態について明らかにしてまいりたいと思います。  自治労は、かねてから住民の健康と福祉を守る運動を昭和四十七年から進めてまいりましたが、特に昨年の場合には、救急医療の問題を取り上げまして、俗に言うたらい回し訴訟を総評と一緒に提起したわけでございますが、自治労は、この荒廃した医療の問題とともに、今日、国も自治体も真剣に取り組まなくてはならない問題として、公衆衛生を推進する大きな使命があると思います。病気にかかる以前に予防に力を入れる公衆衛生の確立が問題であると思いますが、現実は、厚生省はなし崩しに保健所を統廃合していく傾向、つまり安上がりの行政を目指しているとしか考えられません。  厚生省は、国の定数削減計画を一方的、機械的に計算の基礎に置き、保健所業務が事実上増大しているにもかかわらず、昭和五十二年度では百三十一人の人を減らし、この十年間で二千八百五十八人の職員の定数削減が行われております。  このような具体的な例は、たとえば広島県の保健所統廃合に見ることができますし、この中で十八の保健所が十五保健所に減らされる計画で、すでに昭和五十一年度から、府中の保健所に二つの保健所を統合いたしましたが、一年経過した今日、現地ではいろいろな問題が提起されております。  一例を挙げますと、統廃合により広域化したために保健婦活動が不活発となり、検査あるいは対人サービス、あるいは食品監視などの業務が低下しております。特に保健所の業務を市町村が肩がわりさせられ、市町村保健婦の負担が重くなり、野犬の補獲、殺処分などがこの方に押しつけられたり、移動保健所の中でも、従来より密度が落ちてきております。  これらが統廃合による問題点ですが、地方財政危機に乗じて、これらの国民の健康と生命を守るべき衛生行政の安上がりの傾向については、私たちはどうしても改善の必要を強調したいわけでございます。  第四に申し上げたいことは、このような財政状況に藉口して、政府自治体の労使に対して人件費攻撃をかけ、その結果として、多くの自治体で労使の紛争が発生していることであります。  昭和五十年度に始まります戦後二度目の財政危機は、それが日本経済の構造的な変化に起因していることは論を待たないことでありますが、これを福祉のばらまき、公務員の賃金、人件費にあたかも起因しているような政府の宣伝、そして地方自治への干渉、介入ということは、財政危機打開、そして住民福祉の拡充に努力している自治体労使にとってきわめて憂慮すべき事態であると言わなければならないと思います。  恐らく、政府は、自治体行政水準を、賃金水準や制度の見直しを放置したまま、たとえば自治省に起債を、そしてまた特交での手当てを要求してくることは虫がよ過ぎるということを言う人がおりますけれども、これこそ官僚の中央集権的発想と言わざるを得ませんし、今日の財政危機が、さきに述べた構造的なことに起因しているからであるとすれば、その意味では、これらの起因を招いた責任を政策的に改善することは当然なすべき責務ではないかというふうに考えます。  自治体行政の将来を考慮するための人材確保は、自治体の人事管理政策としては当然のことでありますし、このため、好況期においてその賃金を社会条件との見合いで高くしなければならない事情があることは、民間においても同様のことではなかろうかと思いますし、このことを単絡的にとらえて、たとえば交付税法成案直後に出される財政指導通達などに見られるような行政指導、また、地方人事委員会事務局長会議における給与適正化に名をかりた賃金切り下げ指導などはこの典型的なものであり、今日市町村で多発している労使の紛争はこれに根源があると考えます。  最近においては、宮崎県三股町に見られる紛争は、労使の協議に基づいて議会で決められた給与条例を、これまでの労使協定を無視して、またその後これを議会が改悪をされ、賃金切り下げを押しつけられ、加えて現業部門に対しても、これは労働協約締結があるわけでありますが、一方的破棄を通告し、絶対に団体交渉に応じないなどといった事件は、それが財政危機を背景としているとはいえ、今後における自治体の労使関係の上では非常に憂慮すべき問題でありますし、労働基本権の上からも問題であると考えます。  昭和四十二年八月設置されました自治省公務員部は、その設置に当たりまして、第一に、自治体の労使関係については公正中立の立場を守ること、第二に、地方公務員の適正な待遇改善、適正な人員の確保、個人的権利の擁護、第三に、処分等に限らず、人事管理はあくまで地方団体自主性尊重を目的として、強制にわたる指導は行わないということは、国会の場で自治大臣が明らかにしていることでありますが、そのように、今日の政府が行っている指導は、いわゆる公務員部設置目的から大きく逸脱しているのではないか。さらに言及をすれば、人事委員会に対する指導の内容は、地方公務員法五十九条に言う「技術的助言」の範囲を超えた権限の行使であるとしか考えられません。私としても、これらの強制的指導に対しては一考を要求いたしたいと思います。  昭和三十五年六月に開催されましたILO第四十四回総会におきましては、産業的及び全国規模における公の機関と使用者団体及び労働者団体との間の協議及び協力に関する勧告を採択いたしました。これは日本でも採択をしたわけでありますが、すでに御承知のように、経済全体を発展させ、労働条件を改善し、生活水準引き上げるために、公の機関と使用者団体及び労働者団体との間並びにこれら団体間の相互の理解及び良好な関係を助長することを目的とすべきであるとされておりますように、今日の、そしてまたこれまでとられてまいりました政府の公務員制度、とりわけ労働条件にかかわる行政指導は国際世論に反するものであるという点を指摘せざるを得ません。これらの諸点から、地方行財政の円滑な運営に努力したいと願っている自治体労働者へのいわれなき強権的指導をぜひ改めていただきたいし、労働基本権と議会の議決権との調整機能の点についても今後十分明らかにしていただき、労働者の権利を擁護する立場を貫いていただきたいと思います。  最後に、私どもが、昭和二十九年戦後第一期の地方財政危機を契機として発足しました地方自治研究活動の長い歴史の中から、今日の地方行財政住民本位のものとするための改革案として、昨年八月取りまとめました行財政改革についての十の提言を参考までにお手元にお届けしておりますが、ぜひ御一読をいただきまして、自治体労働者が地方行財政に対する積極的な見解を持っているという点をぜひおくみ取りをいただき、今後の労使関係の円滑化の問題、地方自治確立の問題について一層の御指導をいただきますことを最後に申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  51. 地崎宇三郎

    地崎委員長 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。     —————————————
  52. 地崎宇三郎

    地崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川省吾君。
  53. 小川省吾

    小川(省)委員 参考人の三人の方々にはお忙しいところ御出席をいただきまして、貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。逐次、三人にお尋ねをいたしてまいりたいと思っております。  まず最初に、長野知事さんにお尋ねをいたします。  あなたはかつての自治省の大幹部でございます。いま自治体行政の第一線に立って、自治省時代を振り返っていろいろ矛盾点その他についての反省なり感想などがあると存じますが、その点に関してお聞かせをいただきたいというのがまず一つ。  二点としては、私も国会へ来て以来、先ほど丸山参考人意見の中にありましたけれども、基準財政需要額算定の問題でありますが、当然基準財政需要額として算入をさるべきいろいろな事業が、実は基準財政需要額の中に含まれていない、落とされている、こういう事実があると思っておりますが、こういう点について首長という立場からどのようにお考えなのか、その点が第二点。  第三点としては、特に後輩である現在の自治省の幹部に対して、自分の体験に照らして現在忠告なり助言なりをしたい点はどのような点か、まずお聞かせいただきたいと思います。
  54. 長野士郎

    ○長野参考人 いまいろいろ反省をというか、感想というものを言ってみろという第一点のお話でございまして、私どもが自治制度というものを運用をしていくということについて、自治省としてはその円滑な運用ができますようにということを念頭として、それぞれの時代に応じてそれなりの努力をして今日まで至っていると思います。しかし、それが必ずしも十分でないということは、かつて私どもがやっておりましたときにも、私自身非常に痛感もし、その力なさといいますか、もどかしさというものを常に感じたところでございます。恐らくいまの関係者も、そのような意味でいろいろ努力はしてくれていると思いますが、まあ百点満点ということはこの世の中にあるかどうかもわからないわけでございますから、とてもできるものじゃございません、それなりには私は努力をしておると思うのでございます。そういう意味で、一番と三番一緒になったような、お答えにならぬようなお答えでありますが、ひとつその辺で御勘弁を願いたいと思うのでございます。  基準財政需要額の算入について落ちているものがないかということであります。これはたくさんございます。しかし、これは結局、先ほど藤田先生もいろいろ御指摘ございましたが、私は総額の問題に起因すると思う。要するに額が一定しておりますから、その中へどうしても抑え込まなければならぬと言っては変ですが、抑え込まなければならない。ぴしっと額が決まっておるということから経過として起きるわけであります。したがいまして、こういうものは毎年度というわけにはいかぬにいたしましても、何年か置きには必ず実態との乖離というものを、決算その他の状況を見ながら洗い直しをしていく、そういう努力はしておると思いますが、それは現在のところでは総額との関係というものが一つ大きく影響していると思います。そういう意味では、実態と必ずしも合っていないということはたくさんございます。  しかし一面で、そのことを交付税制度だけに責任を求めるということも実は酷なところがあるわけでございます。と申しますことは、これはやはり国の制度でございますから、国の予算として、たとえば道路の単価でございますとか、あるいは家屋の単価でございますとかいうものを一応は決めて計算するわけでございます。その場合に、交付税においてだけ違う単価を使うということは実際問題として国の制度の中で矛盾を来すことに一応なるわけでございますから、そういう意味で国の予算編成とか国の予算の査定単価とかあるいは補助基準というものが、ずっと基準財政需要額算定の中にもつながってまいるわけでございます。したがって、ことしは大分改良をいただいたようでございますが、たとえば屎尿処理場その他における、例の門、さく、へいを補助金に見てやらぬというもの、このようなことは全く実態に外れるも外れるもいいところでございます。いまごろ周辺整備をしない屎尿処理場や汚水処理場をつくったら大目玉を食らって、とてもできるものじゃありません。しかるになおことしまでは、門、さく、へいは補助金の対象になってなかった。やっと補助金の対象になるということになりましたから、したがって需要の中にも算入ができるし、また起債その他の措置もとれる、こういうことができてきて、いままではそういうものが対象になっておりませんから、需要の中に算入のしようがないという、これも形式論といえば形式論でございますけれども、そういうことがあったわけでございます。私どもはそういう意味で、なお基準財政需要額というものが行政実態に合わない、先ほど丸山委員長人件費のことで大分おっしゃっておりましたけれども、いずれもそういう問題を持っておるということはありますが、これは交付税制度だけの問題ではなくて、国全体の行政、財政を通じての物の考え方を実態に即するようにぜひしていただきたい、それとの関連があるということを申し上げましてお答えとさしていただきます。
  55. 小川省吾

    小川(省)委員 前のお答えが大変簡単だったのですが、私は実は長野知事さんの先ほどの御意見を伺っておって、自治省時代とは変われば変わるものだな、首長になるとやはりこんなに変わるものかなというふうに思ったわけです。そうしますと、いまの後輩に対しては、自治省で座ってやっているようにはなかなか現地の実態というものはいくものではないよというふうな御感想ですか。
  56. 長野士郎

    ○長野参考人 どうもまことに申しづらいことになってしまうわけでございますけれども、まあ政府の中におりますと、政府のいろんな物の考え方というものを調節をしていかざるを得ない。そうすると、不十分なものの措置もある程度そこで制度的な整理をしていかざるを得ない。ところが私ども実際に毎日行政をしておりますと、ここはそのままにしてほうっておくぞというわけにいかないことになってしまいますから、したがって何らかの措置をしていかなければならないということが起こってくるわけでございます。そこの乖離というもの、これは確かにあると思います。しかし、そういうことを通じながら、結局は先ほども申し上げましたが百点満点になかなかならない、それをできるだけ努力をしておるということは私は評価しなければならぬと思っておる次第でございます。
  57. 小川省吾

    小川(省)委員 ありがとうございました。それ以上申しません。  藤田先生にお聞きをいたしたいと思います。  私、ちょっといま席を外しましたので、聞き漏らしたのかもしれませんが、私どもは年来この委員会の中で、何としても税財源の再配分をやっていかなければならぬ、こう思っておりますが、先生に税財源の再配分について、特に学問的にどんなふうにやっていったらいいのか、私ども実は迷っているわけですが、税財源配分についてうまいあれがなかなか出てこない、こういう点でお教えをいただければ幸いだというふうに思っています。  それから、私はことしの地方財政計画を見て、歳入の中で法人関係税が、現在の経済の実態からすると、二四・二%というような法人事業税の伸び、こういうようなものは確保できないんじゃないか、こういうような点を実は追及をいたしてきているんですが、実際には地方自治体の中には、さらにそれ以上の大きな伸びを見込んでいる自治体もあるわけですね。私は、こういうような点は、いまの見通しの中からするならば、二四・二%すら確保でき得ない状態ではないかというふうに思っているわけですが、この点について先生のお考え方をお聞かせをいただきたいと思います。
  58. 藤田武夫

    ○藤田参考人 最初の税財源の再配分の問題、これは御承知のように非常に大きな問題で、いろんな問題を含んでおりますので、簡単に申し上げるわけにもいかないと思いますが、基本的な方向としては、一つは、地方の税源を拡充する。現在、御承知のように七対三になっておりますが、それをいろんな方面の意見、あるいはこういうことを勉強している間での意見でも、大体は五対五、これは公明党や社会党あたりも言っておられるところですが、五対五ぐらいにはした方がいいだろう。それじゃ、どういう税金を持っていくかというふうな問題もあるんですが、これはやはり地方税というものは、住民がみずからこれを自分負担するという自覚があることが、地方自治観念の育成にも役立つとか、それから仕事の内容から言っても、非常に住民の日常生活に緊密なものであるというふうなことから、所得税中心に、あるいは法人税の一部という意見もございます。それで、五対五にするということがいいのではないかというふうに思います。  そうなると、きょう問題になっております、地方交付税財源が当然少なくなるわけです。しかし、これは五対五にすれば、今日交付税をもらっている団体でも、もらわなくなる団体もある程度出ると思いますが、それ以外の団体は、どういう税金を配分してみても、なかなか十分な仕事はできないので、今日後進地域の府県では、税金の収入が必要な歳入の一〇%か一二%しかない、交付税が三十何%占めている、こういう状態なんです。そういうことから見ると、やはり税源を与えても、交付税というものは確保しなければいけない。  その交付税財源は、所得税を与えた場合には、先ほど私が触れましたように、法人税の増徴——現在法人税の実効税率というのか、外国と比べてみますと、日本の場合に、これは地方、国を全部含めてですが、四五・〇四%、これは実効税率ですが、アメリカが五三・八七、それから西独が四九・〇五、そういうのから見ても、国際的にもまだ余裕があるというふうに思われます。また先ほど申しました八千四百億円の租税特別措置減収、これも全部というわけにもいかぬでしょうが、何とか手をつける必要がある。そういうことにすれば、交付税財源も私は賄い得ると思います。  それから補助金というものは、これは基本的にはなるべく整理した方がいい。しかし先ほど申しましたように、たとえば非常に大規模な産業基盤関係とか、あるいは地方自治体では無理なような仕事には、補助金を相当高率につける、あるいは直轄事業に回す、そういう必要があろうかと思います。  それから、ついでに大変恐縮ですが、先ほど私が国税全体について何%というふうにした方がいいと言いましたときに、ちょっと時間に追われて、それを何%ということを恐らく申し上げなかったと思いますが、これを加えないとちょっと意味がないので、つけ加えさせていただきますが、ことしの五兆七千億円というのを、今度の三千億円の追加減税を引いた国税総額で比率を出してみますと三一・八%になります。そういう意味で、私は最低でも三二%は必要でないか。これはつけ加えたいので、お断りしておきたいと思います。  それから第二番目の、地方財政計画の法人税関係が二四・二%を見積もっている。これは結論から申しますと、私も小川委員のおっしゃったとおりに、少し過大評価ではないかと思います。これは経済の成長率その他から見て、それから最近経済が一時は回復されると言いながらも、一方日銀の支店の報告で見ても、いろいろな点から見ても、経済の停滞がなお続いているという状態で、法人関係税が二四%伸びるということは、これはもとの数字があるいは抑えてあるのかもしれませんが、いずれにしても二四%は過大評価である。このことから、地方税全体の収入に狂いを生ずるのではないかということを懸念いたしております。以上です。
  59. 小川省吾

    小川(省)委員 現在交付税国税三税——法人税、酒税、所得税の三税ですが、交付税に取り込むべき税源についての話が出ますと、すぐに消費税の話が出てくるわけですが、消費税等によらないで、現在の国税の中の税目で交付税の中に取り入れるような安定をした税源というのが、先生のお考えとしてほかにあるのかどうか、その辺のお考え方を聞かしていただきたいと思います。
  60. 藤田武夫

    ○藤田参考人 なかなかむずかしい問題なんですが、これは先ほど申しました法人税の増徴とか特別措置、そういうこともありますが、新しい税金となりますとなかなかむずかしいんですが、いま御指摘があったような付加価値税の導入、これはよほど警戒すべき議論で、これは逆進的な大衆課税になる性格も強いので、相当慎重にやるべきだと思います。  先ほどもちょっと触れましたが、この消費税、一般消費税という名前でしたか、実質は付加価値税ですが、それを導入する。それで自治省大蔵省の試算では、五%の税率でも六兆円入る。これは税収入が多いんですが、それの三分の一を地方団体がもらっても二兆円になる。そうすると、ことしの二兆七百億円の赤字が一部解消する。そういう絵にかいたもちの計算をしているのですが、こういうことは付加価値税を導入するために、それに対する抵抗を緩和するといったような政策的な意味が含まれているのではないかという気がいたします。  その他の税金となりますと、これは野党の各党が主張しておられるような特別会社税を存続するとか、あるいはこの際だから、財政が非常に困って大きな国債まで出している、インフレを気づかっている、こういう場合にはある程度の定率の富裕税の導入ということを考えてもいいのではないか。その程度しか……。
  61. 小川省吾

    小川(省)委員 ありがとうございました。  次いで丸山さんに四点ばかりお伺いをいたしたいと思います。  先ほど労使紛争の話が宮崎県の例を引いて出されたわけですが、こういう財政状況ですから恐らく全国的にはかなり多発をいたしておると思うのであります。私どももそういう点は、何といっても自治省行政指導というよりも介入、干渉によったものが多いのではないかというふうに思っていますが、全国的に労使紛争の実態についてもうちょっとお聞かせをいただければありがたいと思います。それが第一点。  第二点としては、自治労という百十万の組織でありますから地方職員団体のいわゆる総本山として、いろいろ組合サイドから上がってくる自治体の首長の声、職員の声があろうかと思うのですが、そういう中で、いわゆる中央の指導、自治省の指導に対する地方の不満なり不信の声というのはどういう点に特徴づけられるか、その点を第二点として伺います。  第三点は、先ほど最後に申されましたが、行財政改革についていろいろ意見があるのだというお話です。事実、提言もいただきました。そういう中で私は、職員団体の声というものが当然公的な場で述べられなければならないと思うのです。この提言をよく読んでみればわかるのでしょうが、そういう公的な発言の場というものをどういうふうに求めておられるのか、第三点として伺いたいと存じます。  第四点は、特に昭和五十年以降、御承知のような借金依存財政で地方債依存の政策がとられてまいりました。そういう点で減収補てん債なりあるいは健全化債など、起債によるところのいろいろ問題点があろうと思うのですが、起債に関する見解と問題点等についてお聞かせいただければありがたいと思います。
  62. 丸山康雄

    ○丸山参考人 最初に御質問の労使紛争の例ですが、実はこの二年間、先ほど意見を申し述べましたようにたくさんの労使の紛争がございます。この場で一々そのことを申し上げるのは私ども決して名誉なこととは思いませんけれども、共通的に申し上げますと、たとえば山形県の長井というところでは、ほかの市町村にもありましたが、半年ぐらいかかって労使が激しい交渉をやりまして、最終的には中に地区労が入って一応落ちついたわけなんですが、その落ちついた状態のもとで市会の代表の方が自治省と打ち合わせをされて、賃金の決定基準というような方針を持って、議会の方から今度話し合いを下回るような合理化計画というものをつくられている、こういう形がありますし、それから島根県下の町村の場合には、地方課が町村全体に対して一つの指導指針というものをつくって直接指導される。山梨県下でもそういうことがありましたし、鳥取の場合もございました。  そういうことになりますと、長野知事さんがお見えですけれども、県の段階では知事と組合の方が丁々発止やるわけなんですが、最終的には話し合いがついた結果を議会に承認をいただくという手順になるわけなんです。従前、自治法が出ましてから三十年来、いろいろ曲折はありましたけれども、そういう形でやりましたが、最近のように自治省の方針が一本化されて地方課が全町村に画一的にやっていく、こういうことになりますと労使の話し合いというのが事実上は否定されるような形が実はたくさんふえてまいりました。ですから、私どもは、先ほど申し上げましたように、賃金の問題にしましても地方財政の問題にいたしましても、高度成長の状況の中で出てきた多少の状況というのはあると思うのです。その辺は安定成長に切りかわった中でも、労使が本当に苦労してやっておる状況を他動的に紛争をさらにふやすというような形でないように、自治省にも申し上げてきておりますし、こういう状態で、自治省筋としては三年目もやるんだというお話でありますが、私どもは、もう少しそういう意味では労使の話し合いとかあるいは地方自治体の主体性というものを尊重すべきでないか、こういうことを引き続いて主張しているのが現状でございます。  第二番目のどういう形で意思反映をするかということでございますが、本日も実はこういう場にお呼びいただいて私どもの考え方を述べさせていただいたわけですが、あらゆる機会に私ども引き続いて申し上げたいと思いますし、特に小さい冊子でありますけれども、私どもの考え方の十の提言、これは総じて申し上げますと、半分の五つぐらいは財政の改革についての考え方であります。それからあとの半分は、これと不離一体のことですが、さっき長野知事もおっしゃっておりましたが、単に交付税率の欠陥だけを主張してもだめだ、私もそのとおりだと思うのです。財源自体全体をどうするかということと、そのことには当然仕事の配分をどうするかということを総合的に考えてまいりませんと、一局面だけを強調しては、国民の理解が深まるわけはないと思いまして、私どもなりに、これは労働組合だけではありません、関係の学者先生にもいろいろ討論をお願いしまして、この中には、たとえば、本地方行政委員会でも何度となく決議をいただきました地方事務官を地方に移せということについては、その辺もひっくるめまして、この大半については、恐らく地方自治体の当局側の見解とも余り違わないような方向でこの内容がまとまっているんじゃないかと私は思います。もちろん、この改革案についても未熟でありますが、ぜひそういう点で御指摘をいただきたいと思います。  それから、地方債制度の問題につきましては、これは特に私ども先ほど申し上げましたのは、行政の話し合いの中で再建計画あるいは健全化債という形で、われわれの側からすれば合理化計画というものが事実上のまされてしまう。再建計画ということになりますと、議会に何度かかけられるわけですが、そういう点について私ども特に指摘をしてまいりましたし、地方債制度全般については、地方団体でもいままで主張されておりますように、もっと地方自治体側の立場に立って制度を改善すべきじゃないかということを私どもも主張しています。特に福岡なんかの場合には、健全化債の許可条件の中にことしは使用料、手数料を上げなさい、たとえば家賃を値上げしなさい、こういうことをうたっている。そういうことになりますと、これは住民の声もありますから、議会でそのとおりにならなかった場合に、首長側が自治省の方から責められて約束が違うじゃないかと言われても、これはまさに自治体の問題でありますから、そこまで健全化債あるいは計画ということで押し込んでいくとすれば、自治体の自主権なり議会の権限というものが大きく損なわれるのではないか。  ですから、私どもは、先ほど時間の関係で簡潔に申し上げましたが、健全化債という名前の再建計画的なやり方はやはりいけないんじゃないか、こういうことを主張している点を申し上げてお答えにかえます。
  63. 小川省吾

    小川(省)委員 最後に三人の方々に一言ずつお伺いをいたしたいと思うのであります。  それは昭和五十二年度の財政措置なんですね。六条の三の二項に違反をしておる、制度改正ではない、私どもはこう言っておるわけですが、あくまでも自治省税率引き上げに準ずるのだから、これは制度改正だという主張をしておるわけでありますが、私どもは何と言っても、どんな表現をとろうとも、これは詭弁であり、強弁であるというふうに思っているわけですが、参考人の方々はどんなふうなお考えをお持ちなのか一言ずつお願いをいたします。
  64. 長野士郎

    ○長野参考人 まあ順序でございますから、私が最初にお答えさせていただきます。  まあこれは制度改正なんというものじゃないという御意見も、まさにそういう御意見として成り立ち得るという気もいたします。しかし一面、考えてみますと、制度改正という部分が全然ないかと言えば、ないわけでもない。しかし非常に暫定的なものだ。したがって、私ども考えますことは、ボールが前へは行っておる。余り大して行ってない。ゴルフで言えばチョロをしておる。OBにはなってないけれどもチョロだというぐらいなところではないか。しかし制度改正というのは、じゃ、どういうものなら制度改正なんだということになると、これもまたいろいろ議論があるわけでございますから、暫定的なものとしても何かの制度の改正であったということは言えるのじゃないかという気もいたします。したがいまして、そもそもそういうふうな受け取り方はあるべきではないというお考えもお考えでしょう。しかし、これも私は最初に申し上げましたように、多少の前進をさしておるという点は、私があの場所におったらこれだけのことができるかということを考えてみますと、これはなかなかできない。まあわりによくやっているんだという感じもいたすわけでございます。  以上でございます。
  65. 藤田武夫

    ○藤田参考人 この六条の三の二項の問題ですが、これは先ほど私がかなり詳しくお話し申し上げたので、私がどういうふうに考えているかということはもう御理解願ったかと思いますが、もう一回ちょっと簡単に申しますと、私が一番気にしているのは四千二百二十五億円、これが国税三税の三・六%になる。これは計算するとならないのですが、たとえなったとしても、四千二百二十五億円というのは、先ほど少しくどいくらいに言ったのですが、五十五年から六十二年度まで毎年、最初は三百二十億、それから五百億とか、最後の六十二年度にやっと八百五億、それをずっと八年間集計すると四千二百二十五億円で、それが三・六%だと言っている。これは非常におかしいので、もし三・六%であれば、ことしも四千二百二十五億円、来年も四千二百二十五億円、この国税三税の三・六%なら当然そうならなければいけない。それを八年に割り振ってみて、そしてそれの合計で、これは法文を見られてもわかりますが、四千二百二十五億で三・六%である。これは普通の交付税引き上げというふうに考えていいのかどうか。つまり、交付税はこれだけやっているが、その償還の場合にこれだけ埋め合わすというので、これも普通の交付税としてくれるのとまた意味が違う。償還の穴埋めに毎年少しずつ埋め合わせてやるということだけなんで、これは交付税の税率の引き上げとは、私は少し苦しく解釈しても解釈しにくいのではないか。それと、いま長野知事も言われたように、これは全く暫定措置で、五十五年から六十二年までの年度に限ると書いてある。こういうことは、交付税の税率を引き上げる場合に、これは暫定措置だなどと言うことは普通はないわけです。  そういう意味で私は、これは非常におかしな、国の方からも公債の発行はできない、これ以上ふやせない、しかし何とか地方にも手当てをしなければいけないということで、まあ苦しまぎれにこの数字の上を合わした単なる措置である、こういうふうに考えております。
  66. 丸山康雄

    ○丸山参考人 私、先ほど申し上げましたように、この法律のたてまえ、それから四十一年度にあのときの事情で現在の三二%に引き上げられたこの実績の経緯に照らしても、いろいろな言い回しはされておりますが、もう逃げられない限度にきているのじゃないか、そういうふうに考えますし、私どもは正月来、自治大臣にも交付税引き上げの問題については、もちろん各政党の御意見もあるわけですが、これ以上、きちんと率を改定しないと動きはつかなくなりますと申し上げまして、自治大臣以下首脳部の方も、まあ自治労と自治省とは余り意見が合わない面が多いのですけれども、これだけは絶対意見が一致だということで、絶対に引かないというお話で、最終的にはああいうことになったわけなんですが、私どもも、自治省の幹部も腹の中ではこれはちょっと問題があると考えられているのじゃないか、そういうようにいまも考えております。
  67. 小川省吾

    小川(省)委員 ありがとうございました。終わります。
  68. 地崎宇三郎

    地崎委員長 権藤恒夫君。
  69. 権藤恒夫

    ○権藤委員 公明党の権藤でございます。  本日は、参考人の皆さん方にはまことに御苦労さまでございます。それぞれ一問ずつ御意見を承りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  初めに長野知事さんにお願いしたいのでありますが、いろいろと御意見の中にもありましたけれども、再度お伺いしたいと思うのですが、現行地方交付税制度というものが、都道府県では人口百七十万、それから市町村におきましては十万人を標準団体として算定をいたしております。しかし、これが今日の経済社会情勢に合わないということはもう当然でありまして、委員会におきましてもいろいろと論議をしているわけでございますが、私どもは、面積その他の要件というものを取り入れた新しい考え方をいま出して見直すべきである、こういうふうに主張しておるわけであります。このことにつきまして、何か具体的にお聞かせいただきたいと思うわけであります。  その次に、もう一つ、いまお話ございました直轄事業の分担金の件でございます。これも委員会でいろいろと論議をしておるわけでございますが、この分担金のあり方というものが、私どもは事業主体が当然負担すべきである、これはただ単なる維持管理費だけじゃないというように思っておるわけでありますが、どうしても建設省でありますとか、意見がかみ合わないわけでありまして、これにつきましての御意見をひとつ承りたいと思います。
  70. 長野士郎

    ○長野参考人 いまのこの交付税制度のお話がありました標準団体のとり方の問題、必ずしも実態に合わないのじゃないかという議論ですが、実は標準団体、いま百七十万とおっしゃいました。ちょうど私の岡山県というのは百八十万ちょっとでございまして、大体標準団体なんです。ところが、交付税というのは総額の問題もありますから、まあ余りそういうことを言ってはいけないと思うのですけれども、標準団体から見ますと、大変この標準というところが、私どもの目から見れば抑えられているのではないか。つまり、いろいろな補正をかけますから、標準団体が一番補正がかからないようなところになるわけですね。人口急増地というのは標準団体とはちょっと離れておる。あるいは過疎地域というのは離れておる。それから標準団体というのはやじろべえの中心におるようなもので、一向に上に上がらないのですね。ですから、単位費用をもう少し上げなければ実情に合わない、こう私どもは言うわけですが、ところが、いまでは補正が少し多過ぎる。これは個々の配分の問題になりますから、これまたいろいろ議論がある。先ほど藤田先生がお話しになりました、たとえば公共投資の投資補正というようなものがありますが、私もこれには多少の疑問を持っております。  ということは、交付税というのはやはり標準的な経費保障するのであって、そのときどきのそこの大きな事業とかなんとかを追いかけていって財源保障をするという役割りを全部見てしまいますと、つまり、その仕事をどんどこどんどこむやみにとっていった方が話が合うということになる心配もあるわけですね。したがって、それは過当競争みたいな変なぐあいにもなるおそれもあります。やはり標準団体というのはこうであって、必要な財源というものは、したがって、標準的な財源は見ておるよ、それ以上の特別の需要があるものは別の制度でこれを補っていかなければならぬというふうに考えるべきではないかということは、私ども昔から多少疑問に思っている点でございます。しかし、いずれにいたしましても、総額が窮屈でございますと、実際実態に合わせようと思ったって合わせようがない、答えが決まっておるのですから。決まっておる答えの中に押し込んでしまわなければならない、こういう作業が実はあるわけです。したがいまして、何年に一遍かは総見直しをしていく。そのためには国全体も総見直しをしてもらうということが必要ではないかというふうに思うのです。  それから、直轄事業の分担金の問題ですが、これは、たとえば道路について言いますと、国道というものをどういうふうに分けるかという問題になりましょうけれども、国直轄事業でやる国道というものは全部国がやってしまう、そのかわり、都道府県道というものは全部都道府県がやる、市町村道というものは全部市町村がやる、そのかわり、それに応ずる財源配分をしてしまうということをまず考える、そこから問題は出発すべきだと思います。したがって、そこまでのことを考えないと、直轄事業負担金を解消ということにはなかなかならない。しかし、負担金を解消すべきだというなら、そこまでの覚悟をしなければいけない。これは実は六団体意見が一致するかというと、なかなかむずかしいところでございます。しかし、私もいろいろ考えましたが、ここまで踏み切らなければ本当のことにはならない。そのかわり、道路に対しては特定財源がたくさんありますから、それをある時点において国が受け持つ道路、県が受け持つ道路、市町村が受け持つ道路で配分してしまう、切ってしまう、そうして、その上で直轄事業負担金などという制度はやめる、こういうことができれば一番いいのじゃないか。これは道路だけではございません。河川でも、いろんな治山治水事業でも、ある程度のところまではいくのではないかというふうに思います。これがやれるようにしようと思えば一大行政改革を必要といたしますけれども、いまのようなことをやりますと、どんどん補助金をふやしていく、市町村道でもAクラスの市町村道というのを建設省が認定をいたしまして、そうしてこれに補助金をつけるつけぬと言ってやるわけですね。したがって、何県の何郡の何町のどこからどこへ行く道路をAとするかBとするか、みんな建設省まで来なければいけない。こういうことはいいかげんにやめた方がいいということから考えましても、そのかわり、補助制度もやめる、そして市町村道は市町村道、県道は県道、国道は国道というところへ踏み切ってしまわなければいけない。そこまでの覚悟をすれば、本当に事務配分ができ、合理化もできるということがあるのではないかと思うのです。  しかし、そこまでいかない場合でも、たとえば直轄事業の維持管理費だけは地方負担するということは、いまの補助制度から、それでは府県道や市町村道の維持管理費の一部を国が持つか、持ちやしないですから、これは一方通行なんですね。そんなことはない。われわれの負担金で建設省の出張所の職員の月給を養っておるわけです。ここまではちょっとひどいではないかということは言えるのじゃないかという意味で申し上げた次第でございます。どうぞよろしく。
  71. 権藤恒夫

    ○権藤委員 ありがとうございました。  次に藤田先生にお伺いしたいのでありますが、これも申すまでもございません、五十年度決算におきましては福島県を除きましてすべてが都道府県において赤字を出しております。このように地方財政というものは五十年、五十一年、五十二年と三年連続して二兆数千億の財源不足を生じておるわけでございますが、このようなことから、地方財政は崩壊寸前である、こういうふうに私どもは言っております。このような状況下にありまして、とにかく地方行財政の抜本改革が必要である、このように言っておるわけでございますが、具体的に先生のこれに対するお考えをぜひともひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。また、その提言を実現するために、どのような手順でやるかということとあわせまして、地方制度調査会あたりでも数多くの提言をしてきておりますが、これが実行されていないわけです。こういうような理由なりいろいろなことを含めまして御高見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
  72. 藤田武夫

    ○藤田参考人 地方財政が非常に窮迫をしておって、地方財政の抜本的改革という問題なんですが、これは非常に大きな問題で、先ほどから長野知事なり丸山委員長からもお話がありましたが、基本的、根本的にはやはり国、府県、市町村間の事務配分の問題になります。この事務配分については、ただいまも御指摘がありましたが、地方制度調査会が、当時私も委員をしておったのですが、行政事務配分についての報告を出しております。その前にはシャウプ勧告に基づいて、二十五年にも地方自治中心にした行政事務の再配分の勧告が出ております。しかし、こういうのは、国の政治のあり方といいますか、行政機構全体に連なる問題で、なかなかむずかしい問題であります。このシャウプ勧告の後のいわゆる神戸委員会の神戸勧告というのがあったのですが、そのときもかなり抜本的な改革案が出たのですが、中央の各省から一斉に攻撃を受けまして、これは全く日の目を見ずに終わった。それから地方制度調査会の答申についてもほとんど余り真剣に取り上げられていない。これは、いま申しましたように、日本の場合、戦前は相当改められたとは言いながら、やっぱり中央集権的な行政機構、それの典型的なものは機関委任事務、あるいは財政で言うと直轄事業の分担金とか、いろいろなものに端的にあらわれておりますが、こういうものまで手をつけないとなかなかむずかしい。しかし、そう言っておってはしようがないので、できるだけ行政事務の再配分として地方自治体に身近なものは譲っていくという方向で行っていただきたい。  それと同時に、行政事務の再配分ができなければ財政制度の抜本的改革は本当はできないのですが、そう言っておっては財政の今日の窮迫はどうにもならないので、やっぱり、先ほどの御質問にお答えしましたように、税源をある程度大きく地方へ移譲する。五対五くらいに所得税などを中心に移譲する。そして税源をふやすと同時に、交付税も、現在ほどには大きくないかもしれませんが、必要な額を確保していく。その交付税内容も、基準財政需要算定の再検討によって——さきに長野知事からお話があったように、私も、投資補正というものあるいは事業費補正というものについては、最近書きました論文にも詳しく指摘していますが、非常に疑問を持っております。じみで細かいことであってもそういうところからやはり改革の方向に向かって一歩一歩じみちに進んでいく、これより手がないのではないかというふうに思います。
  73. 権藤恒夫

    ○権藤委員 もう一問続けてお伺いしたいと思います。  私どもいろいろと主張しております中に、自治省としましては、国の財政危機の中において制度の改革でありますとかそのような抜本的な改革はできないと言っておるわけです。ではどういう時期にやるのかと言いましても、それに対する明確なお答えというのはないわけであります。その時期でございますけれども、これから先財政の見通しが明るいということは考えられませんので、そういう意味におきましては、やはり年々、このままの状態ではやれない、暫定措置というものが続けられていくと思うわけでありますが、その時期について先生はどういうふうにお考えになりましょうか。
  74. 藤田武夫

    ○藤田参考人 これは恐らく大蔵大臣でも答弁できないのじゃないかと思うのですが、大蔵省の言い分では、国の財政が今日のような不安定な、国債を巨額に増発している、そういう場合に地方団体交付税をふやすとか、そういうことはできないので、いまおっしゃるとおりに、安定した場合に抜本的にやろうということなんですが、それではいつ国の財政が安定するかというのは、先ほどもちょっと言いましたように、景気の停滞がなお続いておって、なかなか明るい見通しが持てないということでは、これはいつ来るかちょっと見当がつかないのですが、国の方の考え方は、そう言っているわけですが、しかし国と言っても主として大蔵省ですが、これはやはり地方自治体の側から、あるいは地方自治体に関心を強く持っておられる国会議員の方々から、こういう点を改革してもらわなければ困る、地方財政は現在、先ほどおっしゃったように、一、二県以外はみんな赤字である、こういうことでどうするんだ、国の景気浮揚策の公共事業も恐らくこれではやっていけないということになるわけで、これは国の、大蔵省の言うことで、その時期を待つというのではなくて、むしろ地方の方から、あるいは議員さん方から、そうであってはならない、現実がそれを許さないんだということを要求されていく、そういうことでないと、待っておったんでは恐らく進まないということだと思います。非常に抽象的なお答えですが……。
  75. 権藤恒夫

    ○権藤委員 それでは丸山委員長さんにお伺いしたいと思うのでありますが、地方事務官制度のことにつきまして、この私たちの提言という中にもお述べになっているようでありますけれども、この地方事務官制度を廃止して地方公務員にするということはたびたび提言をされて、国会においても議決されておるわけであります。しかしながら、今日までにこの地方事務官を廃止するという自治省改正案というものは出されておりません。このことについての御意見を賜りたいと思います。  また、厚生省では、社会保険の事務などは国の事務として国家公務員が行うべきである、こういうふうに言っておりますが、これらにつきましても、委員長のお考えを承りたいと思うわけであります。
  76. 丸山康雄

    ○丸山参考人 地方事務官の問題につきましていま御質問がございました。このパンフの三十八ページに記載しておりますが、特に、昭和四十九年の七十二国会において、当地方行政委員会の決議として、当該年度の三月三十一日をめどにして地方公務員にするんだ。私どもからしますと、国家公務員を地方に移管する、こういうことを明確に国会の意思として決定をしていただいたわけです。私どももそのことを早急に法案として成立をさしていただきたいということで、長年政府側にも、国会の各党の先生方にも要望してまいっておりますし、今度の場合も自治大臣との話でも今度の国会に出す方向で検討するというお話でありますが、なかなか各省間の調整がつかないという現状のようでございます。  特に、いまお話のございました厚生省関係につきましては、これは、厚生省の側としていろいろな見解を述べておりますが、私どもは、これは直接仕事をやる全国知事会、長野知事もいらっしゃいますけれども、知事会の意見としてもこれは移管をすべきであるということを長年方向として決定済みのことでありますから、国と地方事務配分をいろいろ主張されるのであれば、法律の上で戦後のあの時期に当分の間ということで、いわば暫定措置として決められた経緯のものでありますから、国会の意思もありますので、早急に私どもとしてはこのことを法案として、法律として確定をしていただきたい、こういうふうに念願いたしております。
  77. 権藤恒夫

    ○権藤委員 じゃ、終わります。どうもありがとうございました。
  78. 地崎宇三郎

    地崎委員長 三谷秀治君。
  79. 三谷秀治

    ○三谷委員 二、三点お尋ねしたいと思いますが、一つ交付税総額の問題ですが、総額の問題になりますと、税率をどうするかという問題になってきます。それから税率の問題をどう扱うかという問題になってきますと、国の財政問題になってくる。そうしますと、国も足りないのだからどうにもならぬ、こういうことを政府はしばしば述べております。  そこで藤田先生にお尋ねしたいのですが、この地方自治の本旨という問題、憲法が規定しております。それから地方交付税法によりますと、「地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化する」、こういうことをうたっております。それから地方財政法によりますと、「地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資する」。こういう地方自治の独立性を強化し、地方自治の本旨を貫くという観点が地方財政関係の各法律の前段で強調されておるわけでありますから、そこで時の政府の財政政策、税制政策あるいは金融政策、こういうものの中で地方財政をそこに押し込めてみようとする考え方ですね、これが果たして正しいだろうかというお尋ねであります。  そうしてもう一つは、この憲法条項であります地方自治の本旨ということは、時の政府のもろもろの諸政策、恣意的な政策のいかんにかかわらずこれを基本にして、それを擁護しながら、それを保障しながら地方財政確保するという性質のものであろうと思いますが、この点について先生の御見解をお尋ねしたいと思います。
  80. 藤田武夫

    ○藤田参考人 非常に基本的なむずかしい問題を提示されたのですが、なるほどおっしゃるとおりに地方行財政関係する法律には、最初に皆、憲法を初めとして地方自治の本旨とか、地方自治体の独立性あるいは財政の健全化、そういうことをうたっております。これは法律のたてまえとしてそのようなことをうたうのはもちろん結構なんですが、それについて最初の御質問がちょっとはっきりしませんが、そういうふうに地方自治を法律でうたって、憲法にもうたっておりながら、それをいろいろな交付税法とか、地方財政法とか、いろいろな法律でもって法律の枠の中にはめ込むことがどうかという御質問ですか、ちょっとその点がはっきりしないのですがね、どういうことなんですか。
  81. 三谷秀治

    ○三谷委員 それは最初お尋ねしましたのは、さっき先生おっしゃいましたが、租税特別措置だとか、あるいは法人税だとか、いろいろなところで政府の税制政策によりまして欠落が生じてきている、その上に財政が足りない、こう言っているわけなんですね。ですから、そういう観点で財政が足りないとかなんとかいう議論の立て方は間違いであって、そういうことは政府の政策によって、内閣がかわれば変わっていくものでありますが、地方自治あるいは地方財政自主性というものは、そういう政府のそのときどきの政策とは関係なしに、基本的に擁護さるべきものではないかということをお尋ねしたわけです。
  82. 藤田武夫

    ○藤田参考人 そうすると、第三の御質問と大体同じようなことになりますね。  これは結論から言いますと、地方自治の本旨というものが、御承知のように新憲法で初めて挿入された憲法上の一つの非常に重要な条文であって、この地方自治というものが日本の民主化の基礎になる、そういう考えで私、憲法のそれを設けたと思います。そういう意味で、いろんな国の政策なりそのときどきの政府の政策その他によって法律はいろいろ決められるし、政策もいろいろ実施される。しかし、それが憲法が規定しているような地方自治の本旨というものを、行財政上著しくその発展を阻害するということは、これは私としては新憲法のたてまえからいうと許されないというふうに思います。そういう意味で、そのときどきの政府の政策が財政なり行政なりを通じて地方自治にもろもろの影響を与えるということに具体的にはなって、それが非常に重要な問題になるのですが、しかし、それが地方自治の発展を著しく阻害するということは、やはり憲法の地方自治保障規定に反する、私はそういうように思います。そういう意味で、そういったときどきの政策よりも、地方自治の尊重ということは、言葉は悪いかもしれませんけれども、一つ高い次元の問題ではないか、そういうふうに考えます。
  83. 三谷秀治

    ○三谷委員 この問題の一つのあらわれが財源問題といいまして、交付税率引き上げ財源がないからできないと言っていますが、しかし、これは財源問題にその問題をすりかえますことは、いまいいました地方自治を優先するという見地からしますと間違っている。  もう一つは、その財源問題でいきますと、いま現実に地方自治体の窓口から出ております歳出純計というものは七割に達しているわけなんですね。ところが財源は三割しかない。そうしますと、四割というものが国から地方に移転されておる。その四割の内容構成しておりますのが交付税であり、譲与税であり、国庫支出金になるわけですが、その中の交付税の割合を高めていくということが、つまり税率改正一つの具体的な姿なんですね。そうしますと、これは財源問題があるから交付税引き上げができないというのは全く欺瞞的な理論であって、いずれにしても国が四割というものは地方に回しておる、その中で交付税率を高める、つまり自主財源を高めていくという処置をとるということが税率の改正になるわけでありますから、ここのところで財源がないからという遁辞は論理的に成立しないと私は思いますが、この点はいかがでしょう。
  84. 藤田武夫

    ○藤田参考人 純論理的に考えればそれは私が先ほど申し上げたように、地方自治の尊重という憲法の規定から言うと、財源がないから交付税率地方が困っているにもかかわらず引き上げられないということは、純論理的に考えれば矛盾しているというふうに思います。しかし、そういった純論理的なことももちろん重要ですが、それだけでは現実の財政問題を打開することはできないので、やはりそういう地方自治を尊重するという基本的な立場に立って、その交付税率を必要なだけ引き上げていくということに、これは地方自治を生かすためには努力せざるを得ないというのが現実の事態ではないかというふうに思います。
  85. 三谷秀治

    ○三谷委員 もう一つお尋ねします。いまのは総額の問題ですが、交付税の構造の問題ですけれども、初めおっしゃいましたように、一般財源である交付税が特定財源化されつつあるという問題です。本年度措置におきましても、二兆七百億の不足分の半ばの一兆三百五十億円というものは、これは交付税に算入すべき費目、これを交付税から離しまして起債に切りかえております。これは事業費補正分と公共事業の標準的規模分の単位費目を中心にしたものでありますが、元来は交付税として、一般財源として地方に配賦すべきものでありますが、これを交付税から引き出しまして起債に振りかえる、そうしてこれは建設債でありますから、受け皿がなければこれは配賦にあずかれない、つまり明らかに特定財源化してしまっておる。この点からしますと、交付税制度の事実上の改悪ではないかと私は思いますが、この点についての御見解をお尋ねしたいのであります。  それからもう一つは、このようにして交付税というものが開発の後追いの配分に使われ出してきたということなんですね。これは非常に顕著になってきております。これは特に補正係数を用いましてこれが促進されておるわけでありますが、たとえば特別態容補正というようなものですね、これはいまは投資態容補正に統合したようでありますけれども、この特別態容補正といいますのは、算出方法というのは地方団体の総合的未開発度をあらわす総合指標と、道路や橋などの未改良度をあらわす個別指標とを組み合わせて、開発度の低い地方団体ほど道路、橋、河川、農業などにかかる単位費用を割り増しをする制度でありますが、そういう措置をとりながら、さらに事業費補正といいまして、開発事業の実績によりまして交付税を配るというようなことをやっていきますから、これは極端に開発事業に対する傾斜配分が強まりまして、この面でも特定財源化が進んできておる、こういう点につきましてどのような御見解でありましょうか、お知らせをいただきたいと思います。
  86. 藤田武夫

    ○藤田参考人 先ほど、基準財政需要の仕組み、算定方法について、その問題にメスを加えないと、交付税総額だけを確保してみても、それが交付税本来の機能を発揮するかどうか非常に疑問である。いままで高度成長期においては、高度成長のための公共投資、地域開発、そういったものに非常に交付税が役割りを果たしてきた、今後はそういう仕組みを改定して、社会福祉あるいは教育、民生行政、そういったものを——いまも入っておりますが、さっき数字でもその基準財政需要が何%になっているかということは御説明申し上げたので、三谷委員も聞いていただきたいと思うのですが、そういうことは、いまおっしゃったとおりに特別態容補正とか事業費補正、そういうものが非常に大きな役割りをしておって、実際にどれだけ事業費を使っているか、それによってあるべき施設がどれだけ金が要るのかということを計算しております。そうしてそのあるべき施設というのは、国の道路整備五カ年計画とか国のいろんな施策、そういうものの測定単位数値がとられている、単位費用もそういうものに基づいて計算される、こういうことになっているので、全く一般財源ではなくて補助金になっている。それから交付税の基準財政需要で見るべきものを地方債に振りかえる、これは四十一年から始まっているのですが、これもまた非常におかしいので、つまり交付税自分で満たすべきものを地方団体に借金をさせて、それで埋め合わしていくということなんで、これは全く交付税から外れているわけであります。これは特定財源といっても借金を与えるので、数字だけは合っても全く意味が違うわけで、そういった非常な混乱があるということは先ほども詳しく——詳しくといったって時間が五分ばかりであったので詳しくでもなかったですが、私ももうかねてから、十数年交付税の問題も研究をしてきておりますので、必要であればまたお話ししたり資料を差し上げる機会もあるかと思います。
  87. 三谷秀治

    ○三谷委員 いまの点について丸山委員長の御所見を一度お伺いしたいと思います。
  88. 丸山康雄

    ○丸山参考人 交付税の問題については、先ほどの長野知事の、標準団体のことを考えても相当抑えられているという表現に端的にあらわれておりますように、かつて昭和三十年当時も地方財政が大変赤字でございました。それが結果的に、三十五年ころから高度成長政策の中で収入が比較的伸びたという中で解消されたかの感がありましたけれども、いまのような状態のときに全国市長会などが中心にシビルミニマムという議論がありますけれども、国民としての最低の水準はナショナルミニマムという形で、それに必要な仕事、財政、それを適切に処理できる権限というものを基礎におきながらこの仕事、財源配分をやる。そういう意味では根本的な改善をぜひ早急にやっていただきたい、そういうように考えております。
  89. 三谷秀治

    ○三谷委員 長野知事にお尋ねしますが、政治的な答弁をなさるものですから、どうも質問をするのを先ほどからちゅうちょしておりました。省に尋ねておると同じような御答弁が返ってくるものですから、きょうは知事として独自性に立った御見解をお聞きしたいと思います。  一つは、自治体の悩みの種である超過負担ですが、この超過負担が国の補助単価が低いことから生じておることは言うまでもありません。ところが、交付税の単価も補助単価に合わせるものですから、国庫補助金で超過負担が生じますと交付税も不足をしてくる、こういう因果関係になっております。これでは地方自治体は二重にピンはねをされるような結果になってしまうのであって、いまの財政危機一つの要因になっておりますが、ところが従来自治省は、国が補助単価を上げれば交付税の単価も上げるんだ、交付税だけを上げますと、これは国が出すべきものを地方団体の共通の財源で補てんをすることになるからできない、だから国庫補助単価の引き上げを先決とするんだ、こういうことを言っております。そこには一定の理屈があると私は思うのです。しかし、いずれにしましても、国の方が補助単価を上げないから、交付税単価というものが超過負担が出る単価というものが基準になって算定されていく、こういう事態になっておりますが、これについて大蔵省自治省の間でなかなか話し合いがつきません。知事は自治省の次官をなさっておりまして、当時からこの問題は一つの懸案事項であっただろうと思いますが、これについて一体どのような御見解をお持ちなのかお尋ねしたいと思うのでございます。
  90. 長野士郎

    ○長野参考人 超過負担の問題ですが、いまるるお話しになりましたが、お話しのような悪循環と申しますか、そういう点が確かにあるわけでございまして、つまり、超過負担にもいろいろ議論がございますけれども、原則的には国が是正すべきことが最初に必要であって、地方がしりぬぐいをしているのが超過負担ですから、これを交付税その他で措置をしていくということになれば、地方がしりぬぐいをすることが当然だということになってしまうおそれがあるわけでございます。  ここのところが一番の基本の問題ですが、同時にこの問題は自治省大蔵省だけの問題ではございません。これは、実は事業官庁というものは財源がどうなろうが、国であろうが地方であろうがいいのでありまして、とにかく道路はたくさんつくればよろしい。これは仕事熱心ですから、とにかく自分の仕事が伸びさえすればよろしい、国がへっ込もうが地方がへっ込もうがそんなことは知ったことではない、われ勝ちにいく、この考え方が非常にこれに影響をしておるわけであります。したがいまして、私どもとしてはやはりそういうものが予算編成という際には一番問題になるわけですけれども、これは政府だけの問題ではなくして、国会の中におかれましても、そういう事業官庁の気持ちもよくわかりますけれども、やはりそこを正確に、地方の適正な行財政の運営ができますようにひとつチェックをしていただくということが一番大切ではないか。それぞれのところではそれぞれの立場で仕事熱心に伸ばしていこうとします。そうすると、少々単価が低くても、たとえば一キロの仕事をしたいというときにはどうしても一キロの仕事の方にウエートがかかってしまいまして、単価が多少ちびられましても、事業官庁としてはそれを一つの実績として考えていくということになりがちでございます。  したがって、その点はやはり自治省大蔵省あるいは地方団体政府ということではありますが、同時に国全体としてこの問題について深いかかわり合いがあるわけでございますから、ひとつその点についてのチェックを十分、洗い直しということを含めて毎年お願いをいたさなければならぬ、こういうことだと思うのであります。
  91. 三谷秀治

    ○三谷委員 今次の交付税法改正問題の一つの争点というのは、制度とは何かということなんですね。御承知のように、法律によりましては、引き続き著しく各自治体ごとの財源不足額が生じましたときには制度の改正かまたは税率の変更ということが言われております。そこで、ことし税率の変更はやりませんでした、そこで制度の改正をした、こうおっしゃっているわけです。一体制度とは何かということですが、この制度というのは、ことし限りの臨時的な措置ですね。それが果たして制度と言えるのかというのが一つの問題になっておるわけであります。そういう点から申しますと、五十年度におきましても五十一年度におきましても臨時的な措置を講じました。大蔵大臣と自治大臣が異例の覚書を交わしまして、交付税特会の借入金の返還につきまして約束をして覚書として残しております。つまり、これは借り入れましたものを後年度におきましてどう措置するかということを覚書で決めているわけです。ことしの場合も全く同じことがやられまして、一兆三百五十億を交付税特会で借り入れをする、そのうち約半分を国が措置するということを決めたわけなんですが、その半分国が措置すると決めたのを法定したから制度の改正なんだ、こうおっしゃっている。つまり、ことしだけの臨時的な措置ですけれども、たまたまそれを法律に書き込んだから制度改正になるんだ、去年やおととしは覚書で済ましたから、つまり法律に書き込まなかったから制度改正ではないんだ、こうおっしゃっている。非常に無理なこじつけの議論を自治省がなさいまして、これは追及しますとしばしばこの言い逃れに困るという状態でありますけれども、とにかくそういうことを言いながら、制度改正をしたから交付税法の違反ではないんだ、こういうことを繰り返し述べております。私どもは、これは全くの詭弁であり、あるいはその詭弁を構成するための一つの手法をそこにとったというふうに追及してまいりましたが、この点についてどのようにお考えでしょうか。先ほど長野知事はゴルフにたとえて何かおっしゃっておりましたが、要するに制度とは何かということ、果たして単年度における臨時的な措置が制度になるのかということなんですね。これについて各先生の御意見を賜りたいと思うのであります。
  92. 長野士郎

    ○長野参考人 お話のように、制度とは何かというふうに考えますと大変議論になると思います。あの条文では、恒久的な制度を頭に描きながら規定をしたのではないかというふうな考え方というものは十分あり得るわけでございまして、私どももその点では、そういう考え方というものはそのとおりに多くの方が理解するのは無理はないと思うのです。しかし反面、多少詭弁的とおっしゃいましたけれども、まあ三百代言のようなことでございましょうが、どういう制度だということまで書いてないじゃないかという議論というのがある。恐らくこれは大蔵省自治省との間で大変苦労をして、臨時的なものでもいいから制度改正的な要素が必要だということに相なって法定を始めたと思うのです。しかし、これは先ほどお話がございましたが、覚書程度のことを法律で書いたからといって制度改正になるかというお話ですが、これはしかし覚書と法律に書くこととは大変な違いがあります。これは質的な違いだと私は思います。したがって私は、その点では大変な前進である。したがってボールで言えば、横っちょへ飛んだり後ろへ飛んだんではない、前へ飛んでおる。したがってこれはOBではない、多少チョロかもしれないけれども、前へ飛んでおるぞということは評価してやってよろしいのではないか、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  93. 藤田武夫

    ○藤田参考人 いまの御質問は、この前小川委員でしたか、あるいは公明党の権藤委員でしたか、その方に今度の改正についての私の考えを聞かれましたので、そのときに詳しく、ただ数字の結末を合わしたにすぎないので、つまり国もこれ以上国債を発行するのは困る。それでことしは四千二百二十五億円を将来見るといって、それは地方へやるんだ、しかしそれの償還のときに毎年三百二十億とか五百億とか、その償還の穴埋めを国がするんだということで、決して交付税の税率を上げて制度を改正をしたというふうなものでは、これは性格から言ってもない。ただ四千二百二十五億円渡すが、それは後々八年間に国の方でめんどうを見てやるということだけ。それも一つの意味はあるかもしれませんが、そういうのであれば、いま国債を増発しなくても何とかやっていける。八年間を通じて少しずつめんどうを見てやろうということなんで、その辺に自治省あたりの苦心があるのかもしれませんが、恐らくあるんでしょうが、しかしそれはあくまでも暫定措置であり、制度改正とは受け取れないということです。
  94. 丸山康雄

    ○丸山参考人 私ども先ほど申し上げましたように、立法の経緯と四十一年度措置状況、それからいま藤田先生がお話しになったように、それで財政問題が少しでも改善をされて安泰なのかと問われれば、将来に問題を残したにすぎない、そういうふうに考えて、先ほど自治省との交渉の経緯もちょっと御紹介申し上げましたけれども、腹の中では相当無理があるのではないかと考えているのではないかと思うのです。私どももこの問題についてはやはり立法の経緯に照らして、国会の中でもこういう、俗に有権解釈というのですか、自治省はこう解釈できるということについて、果たして限度がそういう中にあるかどうかはやはり厳密に議論して方向をきちんと出していただかなければ、自治省がこういう見解だということでそのまま通るようでは後々問題が大きくなるのではないか、こういうように考えております。
  95. 三谷秀治

    ○三谷委員 長野先生、もう一つお尋ねしますが、制度の改正または交付税率の変更となっていますから、この制度の改正というものは、少なくとも交付税率の変更に代置される程度の効果性、継続性を持つものであるというのは、だれしもが考えることだと思います。その内容を申し上げますと、それは国と地方事務財源の再配分の問題だとかそういうものを含めた制度改正であろう、それでなければ、または交付税率の改定ですか、それに該当するだけの効果、価値が存在していないというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  96. 長野士郎

    ○長野参考人 制度とは何かということはむずかしい問題だというか、いろいろな言い方ができると思いますから、私は、これは幾らやっても一つの見識論といいますか考え方の問題になるのだろうと思うのです。したがって、いまのやり方というものは臨時的、暫定的なものであって、一顧の値打ちもないという議論もあり得ると思います。しかしながら、私どもとして現実に問題を考えていく立場からいたしますと、多少でも前進を図ってこれを一つの手がかりにしながら恒久制度というものの確立に、これからぜひ政府全体、国会にもひとつお願いをして前進を図っていただきたいという気持ちはもちろんいっぱいでございます。したがって、先ほども申し上げましたように、こういうやり方というものは従来重ねてきておりますけれども、これはもうことし限りにしていただいて、ぜひ来年度以降はいわゆる抜本改革というところへひとつ踏み出してもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。現実問題として、もう予算もほとんど成立しかかっているようなところでもございますし、五十二年度の問題としてこれを議論するということはほとんど実際的ではない、したがって将来の問題としていろいろ御議論をいただきまして、よき結論を出していただけるということを私どもは心から期待をいたしておる次第でございます。
  97. 三谷秀治

    ○三谷委員 どうもありがとうございました。
  98. 地崎宇三郎

    地崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、明十四日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十八分散会