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1977-04-06 第80回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月六日(水曜日)     午後六時三分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 山下 元利君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    鴨田 宗一君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       砂田 重民君    林  大幹君       原田  憲君    村上 茂利君       村山 達雄君    山崎武三郎君       山下 徳夫君    山中 貞則君       池端 清一君    大島  弘君       川崎 寛治君    只松 祐治君       村山 喜一君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    小林 正巳君       永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵大臣官房審         議官      佐上 武弘君         大蔵大臣官房審         議官      山内  宏君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省証券局長 安井  誠君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君  委員外出席者         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       田口健次郎君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     姫野 瑛一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 四月六日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     加地  和君 同日  辞任         補欠選任   加地  和君     小林 正巳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。貝沼次郎君。
  3. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣、大変お疲れのところ御苦労さまでございます。  私は、昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案について質疑を行います。  そこで初めに、三月四日の衆議院本会議におきまして公明党・国民会議を代表して谷口議員代表質問を行いました。私そのときの議事録を読みまして非常にびっくりしたわけでございます。大臣は全部答えたと思っておりましたらずいぶん答えてないところがございます。そこで、この議事録によって主張されておりますことは、政府財政再建に取り組む基本的姿勢及び財政再建見通しとその具体的方途についてであったわけであります。その方法として、現行不公平税制を是正して歳入を確保し、歳出のむだを省くこと以外に財政再建の道はないと主張しておるわけであります。そして第一に、企業優遇租税特別措置の改廃、それから交際費課税の強化の徹底、受取配当の益金不算入制度廃止退職給与引当金縮小利子配当所得総合課税の実施、会社臨時特別税復活給与所得控除の上限の復活などの不公平税制改革に着手すべきである。さらに第二番目には、行政改革政策目的を達した補助金について徹底した整理改革を図るべきである、こういうふうに主張してあったわけでございます。この点につきましては、大臣から幾つかの答弁らしきものが出ておりますけれども、われわれはそれで納得はしておらないわけでありますので、この際いま一度この点を主張しておきたいと思います。特に後半にあります行政改革の点につきましては、たしか二月の二十四日、福田総理大臣園田官房長官西村行管庁長官山中自民党行財政調査会会長の四者で特殊法人審議会、許認可、地方出先機関縮小整理を申し合わせたというような情報があります。三月一日に閣議で総理が各大臣に対し、西村行管庁長官に協力するよう発言をしたということが聞こえておるわけでございますけれども、この行政改革の問題は実は国債論議の中で起こってきた問題でございます。大蔵大臣はこの点についてどのように知っておられるのか、またどういうふうにお考えなのか、この点をお尋ね申し上げたいと思います。
  4. 坊秀男

    坊国務大臣 一言弁解というか釈明申し上げたいと思いますが、本会議のときに総理が先に答弁に立たれまして、総理が大変該博な知識を持った人でございますから、そこでずいぶんたくさん答弁をされた、それより前に、時間が非常に貴重なのだからダブりの答弁はできるだけやめた方がいいぞという指示もどこからかあったようなわけで、そこで私が、総理答弁されたことにつきましてはこれは自分の言うべきことじゃないと思って差し控えたのが少し差し控え過ぎたということになったのだろうと思いますが、ひとつその点御理解のほどを願いたいと思います。  そこでいまの行政整理の件でありますが、行財政改革につきましては、政府としてもかねてから補助金整理合理化国家公務員定員削減行政機構の膨張の抑制等に努力をしてまいったところでございます。五十二年度の予算編成に当たりましては、厳しい財政事情にかんがみ、補助金等については全体についてこれを洗い直し、すでに目的を達したと認められるもの、それから社会経済情勢の変化に伴い実情に合わなくなったと認められるもの等については廃止減額等整理合理化を図っておるのでございます。また、行政機構については、極力既存の機構の合理的再編成等によることとしておるほか、国家公務員定員については、新しく策定した定員削減計画に基づきまして定員削減を行うとともに、新規需要につきましては、極力振りかえによることとして、増員の抑制に努めてまいったのでございます。  もとより、財政健全化は短時日の間に一挙に達成できる問題ではございませんが、政府といたしましては、今後とも簡素にして能率的な行政庁実現すべく、行財政見直しを進めて、歳出の節減、合理化に努めてまいりたい、かように考えております。
  5. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは行管庁範囲でございますから、私は深くは申し上げませんけれども……。  それからもう一点は、財政収支見直しについて、「逐次これは裏づけをいたしていきたい、」こういう答弁になっておるわけでありますが、これは具体的にその後進んでおるのでしょうか。この点について承りたいと思います。
  6. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 財政収支の性格でございますが、企画庁の五十年代前期計画というものを前提にいたしまして、そのフレームで五十二年の予算と機械的につないでできておるわけでございます。  ただいまの、もっと具体的にというお話の問題でございますが、これはEC諸国などがやっておりますいわゆる財政計画、将来の年次における歳入歳出予算をある程度予定してつくっていくというような問題をどう考えるかというような御指摘かと思うのでございますが、この点は昨日も御議論があったところでございますが、そういうようなものについてのいろいろな問題点デメリットがいろいろございますので、四十九年度の財政制度審議会に一年半ばかりかけまして勉強したリポートがあるわけでございますが、それを下敷きにしながら、当面するこういう財政困窮をどうやって打開するかというときに、そういう財政計画的な手法というのは一つの有力な手法でございますから、そういう問題点なりデメリットなりはございますが、昨日も申し上げましたようなそういう勉強会を昨年の十月以来やっておりまして、一体それをどういうふうに考えるべきであるかということをできるだけ早く検討をしたいというふうに考えております。
  7. 貝沼次郎

    貝沼委員 できるだけ早くというのは、大体いつごろを指して言っておるわけですか。
  8. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 この問題は、昨日も申し上げましたが、三つほどの視点でやっておりまして、昨年中は外国長期財政計画実態、四十九年度までにかなり勉強してあったわけでございますが、その後のいろいろなデータを集めまして外国実態勉強したという段階にございます。  それで、五十一年度の予算が終わるわけでございます。で、五十二年度の予算が成立いたしました段階で、事案の緊急性によりまして、本年度の審議の順番をまた審議会の方で相談するわけでございますので、より緊急の項目がございますと、そっちの方に先に取っかかるようなことになろうかと思います。この問題は、昨日も御指摘があったように、議会との関係なりあるいはわれわれの分野におきますと、経済見通しというのがなかなかわからない。それから、どういうような推計方法によってつくっていくのかとか、そういうようないろいろな技術的な問題もございます。そこらがございますので、できるだけ早くと申しましても、言葉のとおりできるだけ早くということで、六月、七月ぐらいに、そのいまの勉強会をどういうふうにやっていくかということの絡みがございますので、確たることはちょっと申し上げられない段階でございます。
  9. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、質問の第二番目には国債政策基本にかかわる問題ということで、わざわざ「第二は、」という言い方質問しているわけですが、財政インフレの危機それから公社債市場の育成、それから景気上昇軌道に乗った場合のクラウディングアウト危険性についてただしてあるわけであります。ところが、これについて残念ながら、この官報をずっと見る範囲におきましては、総理大臣からも大蔵大臣からも答弁が全然ないわけであります。そこで、ここで改めてその見解を承っておきたいと思います。
  10. 坊秀男

    坊国務大臣 日本の今日の財政は、連年にわたりまして公債依存度が非常に高い。しかも、それは特例公債という赤字公債を含んでいる。これをどうしていくかということが予算運営一つの大きな問題だと思いますが、ただ、公債発行それ自体がインフレを招くものではない。やはり物価上昇が起こるかどうかはそのときどきの経済バランス金融情勢など、さまざまな要因のいかんによるものであるということが考えられます。五十二年度の予算規模公債発行額国民経済バランスのとれたものとなっておる、かように考えておりますが、これがインフレを招くことは、目下のところ、まずはないと考えておりますが、なお国債発行に当たっては、従来同様に市中消化の原則を遵守して、そして経済金融情勢動向等に十分配慮いたしまして支障なきようにしてまいりたい、かように考えております。
  11. 貝沼次郎

    貝沼委員 市中消化の問題はまた後で触れますので、次に移りたいと思います。  第三といたしましては、「赤字国債償還についてであります。」ということで、結論としては、具体的にその償還方途を示せと迫っておるわけであります。これについても総理大蔵大臣両方とも答弁が出ておりません。どうしてこういう答弁がないのか、私は不思議なんですけれども、よく読んでみると実はないわけであります。これについて見解を承りたいと思います。
  12. 坊秀男

    坊国務大臣 やはり財政の中からこの赤字公債というか特例公債をなくしていく、つまり特例公債から脱却していくということは、これはやはり国の予算の中の歳出の面それから歳入の面、両方これをよく見まして、歳出では従来の慣行だとか制度といったようなもの、先ほど申しましたその補助金等、あるいはそういったようなものの整理等もその一環でございますが、そういったようなものを適正に歳出の面を考え見直していくということ、それからもう一つは、どうしたって歳入の面、これをやはり強化していかなければならない。むろん高度成長時代のようにたくさんの自然増収が期待されるというわけではございませんから、いまの税制体系をもってしては、これはなかなか目的を達成することができない。そこで、税収をふやすということにつきましては、これは容易ならぬことだと思っております。国民の人々の中で、増税を歓迎してくれる人はないと思いますけれども、しかしながら、このままでいきますと、日本財政特例公債といったようなものがどんどんふえてくることによって、財政破綻を免れない。財政破綻を免れなければ、日本経済がこれまた立っていかないというような事態に相なる。それならひとつがんばっていただいて、税収を甘んじてしんぼうしていただく。その税収をしんぼうしていただくためには、私は何と申しましても、不公正の税制をいつまでも置いておいたんでは、これはとうてい——何だそういうものの上に増税をされてたまるかという気持ちのおありになることはよくわかります。だから、その第一着手といたしましては、不公正の税制を公正化する。それにさらに、いま日本の国にも租税体系がございます。外国立法例もたくさんございます。そういったようなものを勉強してということで、それでもって中期税制を何か体系をつくろうということで、去年の半ば、六月ごろからこれは税制調査会で専門的に鋭意勉強をしていただいております。それの結果と申しますか、一応のめどがことしの秋ぐらいには出していただけるんじゃないかということを期待いたしておりますが、今日、私はその体系について、具体的に申し上げるような事態、その段階には到達していないことをひとつ御了解願いたいと思います。
  13. 貝沼次郎

    貝沼委員 ことしの秋という答えであったわけですが、その内容が私どもの望むような内容になりますように念願をしておきたいと思います。  それからもう一点は、わが国財政に占める国債建設国債あるいは赤字国債、すべてひっくるめての話ですが、この国債の枠というのは、大臣は何%ぐらいが適当と考えられますか。
  14. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 数字の問題なんで、ちょっと先に御説明したいと思います。  公債がどのぐらいが適正水準であるかというのは、これは非常にむずかしい問題でございまして、定量的な勉強もわれわれ絶えずやってきておるわけでございますが、これという理論もないわけでございます。一つございますのは、四十一年に公債を導入いたしたわけでございますが、四十二年に財政制度審議会で、そのとき当初予算依存度が一六・九%だったわけですが、それが二年ほど続いたものですから、四十三年の硬直化の問題がございました前の年の四十二年の十二月でございますが、景気動向にもよりますが、景気がいい場合には公債依存度を落としていくべきであるというようなことで、この数年間に五%以下に持っていくように努力すべきであるというような建議が出たことがございます。その後、御承知のように、四十六年は確かに当初予算で四・五%に落ちました。ただ、ドルショックがありましたために一二%以上になってしまったわけです。その後、さらに努力いたしまして、五十年度予算では当初九・四までいったわけです。ところが、今度はオイルショックに襲われた翌々年になりますが、税収が急に落ちまして、御承知のように補正予算で二六・三%。この十年間を回顧しますと、そういうような経緯をとっておるわけでございます。  ただいま申し上げましたように、量的に公債がGNPなり一般会計規模なりに対して、どの程度のものが適正であるかというのはなかなかむずかしい問題だと思いますが、私どもといたしましては、五十二年度予算編成の際に五十一年の公債依存度二九・九というものをピークにして、そこから下げていくべきであるというような考え方を打ち出したわけでございますが、数字的に申しますと、そんなような経緯、そのような考え方があるわけでございます。  ともかく景気情勢との絡みで、景気のいいときには公債を落とす、景気が悪くなれば国民生活なり経済情勢を見て財政支出公債によってでも適正な水準を維持しなければいかぬというのが抽象的な命題かと思います。
  15. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、これで大体本会議の分は終わりにしておきまして、いよいよ入りたいと思いますが、いま大臣答弁を聞いておりましても、この国債発行にまつわる問題点、これは五つくらいに分けられるのではないか。  その一つは、公債発行に至る経過並びにその原因となった社会的、政治的な要因、問題、そのもとにある本質、こういったものがひとつ問題ではないか。  もう一つは、赤字国債発行の是非ということがあります。たとえば世代間の不公平という問題がありますので、こういった問題、及びその規模方法、また所期の目標が達成できるかどうかというようなことがあろうかと思います。  さらに三番目といたしましては、公債償還方法、先ほどお尋ねいたしましたけれども、そのめど財政再建の問題ですね。手段としては、さっき大蔵大臣からお話がありましたように、歳出の節約、つまり歳出内容優先度の選択になると思いますが、福祉切り捨てというのは、ややもするといきかねない心配を私は持っているのですけれども、決してこういうような弱肉強食にならないように、これはわれわれ監視していかなければならない。それから歳入増、つまり増税でありますけれども、これはやはり弱者擁護の立場に立ったやり方をしなければならない。いままでよくこの歳入増付加価値税のにおうような、そういうような話もちょこちょこ出ておるわけでありますけれども、そういったことをよく研究しながらやらなければならない。  それからもう一つは、借金財政の歯どめとなると思うのです。公債依存度をどうするかということですね。それから公債発行の影響ですね。  そうして五番目には、公債管理、やはり流通市場の問題があると思います。これにかかわるいろいろな市中消化あるいはクラウディングアウトインフレとか証券市場金融政策との絡み、こういったような問題に分けられると私は思うわけでありますが、これ以外にないということは言い切れないと思いますけれども、一応こういうようなパターンでこの問題を考えるべきではないか、こういうふうに私は判断するものでありますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  16. 坊秀男

    坊国務大臣 いまずいぶんたくさんの項目について御意見か御指摘かいただきましたが、そういったようなことすべてが、これはひとつ検討していかなければならない大事なファクターということになろうと思います。  ただ、歳入政策につきましては、先ほど来も私はまだ何も決まっておりません、体系をつくるものは何も決まっておりませんと申し上げたとおり、こういった税はやらぬのだろう、これはやるとは申しませんが、やらぬのだろうというようなことにつきましては、まだ白紙白紙といっても勉強はしてもらい、私も若干その勉強はしておりますけれども、いかなる決定をするかということは、これは何ら決まっていないということを申し上げておきたいと思います。  その他、公債発行に際しましては、いまおっしゃられる公債管理だとか市場の整備だとか、それはいろんなことをやっていかなければ、これだけ多額の公債支障なく発行して公債政策を遂行していくということは非常にむずかしいことになろうと思います。ただ、いまの金融情勢からながめてみますと、それほど心配はないということでございますけれども、将来をながめてみれば、景気を刺激して、景気が上昇してくる、そうすると資金需要が民間に起こってくる、そこへもっていってどんどんと公債が出てくるというようなことも、これは当然そうなる経路をたどると思いますから、そこらのところに非常に力点を注いでいかなければならぬ問題が起こってくる、私はかように考えております。
  17. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、この国債の細かい問題を議論する前に、政府公債発行特例に関する法律案提案理由説明についてお尋ねをしておきたいと思います。  この提案理由説明を読みますと、五十二年度の予算編成に当たっては、景気の着実な回復と国民生活の安定を図るということ、それから財政健全化に努める、この二つの課題を達成することを主眼とした。そして五十二年度では、歳入面で、中小所得者負担軽減を中心とした所得税減税、それから現行税制の仕組みの中で当面の経済運営の方向と矛盾しない範囲内において増収措置を講じたい。しかしそれでもまだ足りない。そこで歳出面では、財政体質改善合理化を図るとともに、社会経済情勢に相応した適切な予算規模を確保する必要がある。これは必要があるという言い方になっております。こういうような状況なので、五十二年度も特例公債発行によらざるを得ない。もちろんこれは望ましいことではないので、財政健全化を実現するよう全力を尽くしていく決意、こうなっておるわけであります。したがって、この文章を見る限り、こういうような赤字国債を出さなければならなかったというのは、これは技術的に書いてありますけれども、その根本的な要因、たとえば石油ショック以来の経済動向とかそういったことには全然触れられておりません。いわゆる行政ペース技術論でこれは書かれているような感じがして私はならないわけでありますけれども、この原因について大臣から答弁を願いたいと思います。
  18. 坊秀男

    坊国務大臣 大体御理解をしていただいておるようなことでございますけれども、私いま申し上げましてもそこから余り出ることにはならぬのでございますが、五十二年度の予算の眼目は、何といいましても景気を浮揚するということで、一番需要創出効果の多いと思われる公共事業力点を置いた、こういうわけでございます。そうして景気を刺激していくということは、いまはそんな心配は私はしておりませんけれども、それに余り急であるということは、過ぎたるは及ばざりけりで、これはまた物価を刺激するというようなことにならないように、そこのところをどうあんばいしていくかということが大変これは心配をされたことでございますが、いずれにいたしましても、この予算をつくるに当たりましては、景気浮揚、これはぜひやらなければなりませんけれども、しかし今日までとにもかくにもだんだん豊かになってきておる。あるいは国民福祉だとかあるいはまた教育だとか、大事な政策があるわけなんです。それから物価の安定というようなことがある。そういったようなことをやるためには、やはり予算規模のある程度のものを維持していかなければ、これは予算規模はどんどん圧縮してしまっていいんだというわけにはまいらない。そういったようなことを考えますと、あの大きな自然増収は期待できませんし、それから中小所得者に対する負担軽減ということもやらなければならないという、四方八方からお互いに相反するような要請、これを満たしていかなければならないというようなことから、どうしても普通歳入に期待しておってもやれない。これはまことに私どもといたしましては赤字公債というか、特例公債に踏み切っていくということは心苦しい、言うなれば千万無量の思いをしながら特例公債に踏み切っていった、こういうわけでございます。
  19. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、いま大臣答弁は大体そういうふうに私も理解はしておるわけでありますけれども、ただ、この提案理由説明を見る範囲においては、なぜ不況になったかという説明がありませんということを言っておるわけであります。もちろんこれは去年も、この後にいま私聞こうと思っているわけですけれども、「このような歳入歳出両面状況に顧み、昭和五十二年度においても、前年度に引き続き、財政法第四条第一項ただし書きの規定による」云々と、こうあるわけですね。去年もやったんだからもう説明は必要ないと、こんな感じがここにあるんじゃないかと思うのです。ところが、「前年度に引き続き、」という言葉がありますけれども、前年度から引き続いているものというのは一体何なんだということです。何が一体これ、前年度から引き続いてきたのか。国会はこの間に選挙があって、国民の代表は変わったんです。それで、前年度に引き続き、さらに、国債自体も別に引き続いているわけではない、これは単年度で全部やっているわけでありますから。この「前年度に引き続き、」というのは、これは一体何が続いたという意味なんでしょうか。
  20. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 国民生活の安定と景気の回復という要請と、それに対応する財政特例公債をお願いしなければならぬという必要性、そういう客観的な情勢と必要性が五十一年度の場合、五十二年度の場合同様の条件にあるという意味で、「引き続き、」という言葉を使ったわけでございます。
  21. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう条件が同じであったので引き続きですか、条件が引き続いたという、こういう意味ですか。
  22. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 条件が引き続いておりまして、必要性が同様にあったという意味でございます。
  23. 貝沼次郎

    貝沼委員 それなら何も「前年度に引き続き、」なんて書かなくても、前年度と同様にとか、何か書きようがあるのじゃありませんか。この「引き続き、」というのは、何となく私はここから感じられるものは、この前も特例国債を出した、そして五十五年度ゼロになるまで、とにかく五十四年度まで出すのだ、もうこんなものは既定の事実である、引き続いておった、だから引き続きなんだ、こういうふうに何となく行政ペースの継続費的なそういう発想が、既得権化されたそういうにおいというものが実は私はここに感じるわけであります。そういうような感じが出てきたら、これは赤字国債には非常に恐ろしいことでありますから、そういうようなことはみじんもないのだろうなということを私はただしたいためにこれを出しているわけでありますが、その点いかがでございますか。
  24. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 御指摘のとおりでございまして、私どもは、五十二年を財政再建の最初の年にしたいという意気込みで、昨年七月以来鋭意努力をいたしたのでございますが、御指摘のようなふうにとられかねない状況に相至りまして、非常に残念に思っておるわけでございます。決して既得権とか当然であるとかというような思いはみじんもないわけでございます。
  25. 貝沼次郎

    貝沼委員 その点は確認いたしましたから、それでは次の問題に移ります。  先ほど、日本の不況の原因、私は石油ショック以来ずっと続いている問題だと思いますが、その根本に流れておる問題、これはやはり資源問題ではないかと思うのです。今回も、アメリカのカーター政権ができましてから、プルトニウムの問題、つまり再処理の問題はいけないというように言われて、日本はいま大騒ぎをしておるわけでありますが、先般の大蔵委員会で、私は大蔵大臣に、この再処理問題は将来日本の重大問題であるから、これはこの福田・カーター会談で当然議題になるのだろうなということをただしましたけれども、あのときはどうも的確な答弁は私はいただけなかった。しかし、非常に残念であったわけでありますが、今回こういうような情勢になってきて、大蔵大臣もさぞかし認識を深めただろうと私は思いますので、お尋ねをしておるわけであります。こういうような石油ショックという資源問題、こういうことがこれから起こり得ないのか、起こり得るのかということですね。こういうような問題が起こるたびに日本経済ががたがたして、そうして赤字国債を出していくようなぶざまなことをやっておったのでは仕方がないわけでありますから、そういうようなことも計算に入れて、財政運営はやっていかなければならぬと思うのです。  そこで、通産省にお伺いいたしますが、こういうような問題は今後起こり得る状況にあるのかないのか、この点について答弁を願います。
  26. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  石油の長期見通しにつきましては、自由世界の原油生産のピークが一九八〇年代の末から一九九〇年代にかけて訪れる可能性があるという見方が実は少なくないわけでございます。それからまた、最近OECDで発表されました見通しによりますと、一九八五年の世界の石油需要でございますけれども、自由世界の七六年の生産実績が約四千四百八十四万バレル・パー・デーということになっておりますが、八五年には六千五百万ぐらいまでふえるのではないか。それに対しまして、OPECに対する供給必要量と申しますのが、ただいま大体三千万バレル・パー・デーぐらいでございますけれども、八五年には三千九百万バレル・パー・デーぐらいにふえるのではないか。いま物理的な生産能力というものが三千九百万というふうに言われておりますけれども、これは三千九百万のキャパシティーで三千九百万出しますと、本当にきちきちになる。それから、キャパシティーがありましても、先回の石油ショックのときのように人為的に供給制限をする、こういう可能性もあるというようなことで、将来につきましては、特に需給情勢のみならず、それぞれの産油国がどういう政策をとるかということの問題でございますので、的確に予測することは非常にむずかしいわけでございます。私どもといたしましては、当分の間、依然としてエネルギーの相当部分を占めざるを得ない石油をほとんど海外に依存せざるを得ないということで、自主開発についても力を入れていきたい。それから輸入につきましても、実は中東からの輸入が全体の約八〇%を占めておるわけでございまして、輸入地域でございますとか、あるいはメジャー以外のいわゆるDDでございますとか、GGでございますとかといったようなことで、輸入ルートの多角化を図る。それから御承知のとおり備蓄法に基づきまして、五十四年度末までに九十日備蓄を何としてでも達成してまいりたいということで、こういう御質問のような事態が来ないように努力する。それから、来た場合にも備蓄をできるだけもっていくというふうに努力したいと思います。お答えになるかどうかわかりませんけれども、いつどのような時期にどういう形で何が起こるかというようなお答えは非常にむずかしゅうございます。
  27. 貝沼次郎

    貝沼委員 結論としてはわからないということですね。努力はする、しかしわかりません、こういうことですが、この前の石油ショックのときは、通産当局としては、いわゆる石油ショックと言われておりますけれども、本当にショックだったのですか。それとも来るべきものが来たということなんでしょうか。
  28. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  先般の石油危機の場合には、七三年秋の中東戦争の勃発に際しまして、アラブ諸国が、増大し続ける世界の石油需要を背景としてでございますけれども、石油の生産削減等を政治的な武器にしたものだというふうに考えております。当時通産省といたしましては、中東におきます政治、軍事情勢が不安定さを増しておるということは十分認識していたと思います。それからまた世界の原油需給におきましても、大分逼迫ぎみで、七三年の初めのころから大分価格が上がりぎみであるといった事態は十分認識していたと思いますけれども、石油の輸出削減があのようなタイミングで、あのような形で具体的に行われるということは予測することは困難であったかというふうに考えます。
  29. 貝沼次郎

    貝沼委員 ああいうような状況で起こるとは予測はできなかったということですね。こういうことを参考にして、今後こういうようなことのないように、これは当然やっておると思いますけれども、こういう資源問題のネックになるのは外交のあり方だと私は思うのです。ここで外交を論議するつもりはありませんけれども、要するにあらゆる国々と思想信条を越えて、人間であるという立場から、私どもは等距離完全中立外交ということを言っております。それはなぜかというと、こういうような資源のない国にとって、どうしても外国と仲よくしていかなければならないということが前提条件になるわけでありますので、これを主張しておるわけであります。  そこで、たとえば衣食住の関係を見ましても、日本は、米を除いてほとんど外国依存度が高いわけですね。羊毛にしても一〇〇%、綿花九九・六%になっております。それから大豆が九六%、これは有名でありますが、小麦九五%、それからこのほか最近水産では二百海里問題が出てまいりまして、これまた大変。それで住宅関係で見ても、アルミニウムの原料となるボーキサイト、これは一〇〇%輸入になっておるわけです。鉄鉱石九九%、それから製鉄用原料炭が八四%、木材が六〇%、原油が九九・七%、こういうような状況でありますので、いろいろなところで日本は首根っこをつかまれておる。それに今回のウラン、これが一〇〇%実は輸入しておりますから、ああいうようなカーターの政策いかんによって、日本はどのようにでも料理されるというような、非常にぐあいの悪い状況になってきておるわけでありますが、こういうような体制というものが果たしていいのかどうか、いいとは私は思いませんけれども、こういうものをどう乗り切っていこうとするのか、これは非常に大事な問題だと思うのです。特に財政を担当しておる大蔵大臣は、どのような見解をお持ちでしょうか。
  30. 坊秀男

    坊国務大臣 これはきわめて抽象的なお答えしかできないのでございますけれども、やはりこれから日本が立っていくというためには、とにもかくにも経済がどうにかこうにか世界の中では優秀な方の経済の成長をやっておる。しかし、それは御指摘のとおり資源におきましては日本ぐらい古来貧困なる国はなかろうと思いますが、何にいたしましても、経済の成長をするためには資源を大事にしなければならない。その資源の輸入をしなければならぬ、こういうことでございますが、昔から、とにかく明治時代は、日本が自分で富国強兵といって成長、発展しさえすればそれでよかったということでやってきた日本でございますけれども、とてもそんなことは昔の夢でございまして、何と申しましても世界の各国と手を握って、広い意味の経済生活というものをやっていかなければ、これは干ぼしになってしまうということは、とにかく石油ショック以来、なるほど日本が資源貧困だということは考えておりましたけれども、しみじみとこれはいかぬぞということを考えたわけでございます。  そこで、やはりこれから日本の国が経済的に立っていくためには、世界の各国、これは先進国といわず発展途上国といわず、東といわず西といわず、南北といわず、そういうところの人々と相協調して、それで福田総理が協調と連帯などということを言っておりますが、恐らくはそういうことを言っておるのではないかと私も思いますが、それでもってやっていかなければならない、こういうことを考えておる次第でございます。これは非常に抽象的なお答えでございまして、まことに申しわけございませんが、そう思っております。
  31. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは抽象的にならざるを得ないわけでありますが、私も抽象的に聞いているわけですから。そこで、なぜこんな議論をしているかというと、日本財政が資源によってずいぶん影響される。さらに、この提案理由説明の中に、「国民生活の安定を図る」、こうなると、必ずしも安定は財政だけでは図れませんよという意味であります。  そこで、もう一つの要素として問題になってまいりますのが、いわゆる電力の問題になるわけですね。ことしは、もう電力が不足に入っておりまして、恐らくことしの夏は北海道では足りない。これは本州と続いておりませんから、北海道だけの電力ですから足りない。中部も恐らく足りなくなるのではないかというようなことで、電力不足によってクーラーも売れなくなるとか、いろんな面が出てくるわけでありますが、こういうことに対して、それなら水力発電を進めればいいじゃないないか。ところが、この水力発電そのものがダムをつくって、そしてダムを運営していく上において、集中豪雨があったとき全部開放してしまったり、そして岡山県下などではずいぶん被害を受けた。そのためにいま水力発電というものについてはすぐに住民から反対が起こってくる。あるいは火力発電を取り上げてみても、亜硫酸ガスの問題でずいぶん非難が多いし、さらにその他の地熱とか風力とかいろいろありますけれども、そういうものも非常に小さい。こういうようなことで、なかなか発電というものは進まない状況になっているわけでありますが、この辺の状況について通産省からお願いいたします。
  32. 姫野瑛一

    ○姫野説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のとおり、五十二年度における電力需給バランスを見ますと、北海道電力の予備率が九%、北海道は本州の方と送電線がつながっておらないものですから、やはり一五%程度の予備率が必要なわけでございますが、そういった情勢のために電力の需給逼迫が予想されております。それから中部電力につきましても、やはり予備率が五%台なわけですが、中部電力につきましては、東京電力とか関西電力とか、そういう他の地域と送電線はつながっておるわけですが、やはり八%程度の予備率がほしいということで、中部電力につきましても需給逼迫というのが危惧されているわけでございます。  それから、こういった需給逼迫がなぜ起こったかということでございますが、その点につきましても、先生ただいま御指摘いただきましたように、電源立地問題というのは、環境保全の問題、それから安全確保等の問題につきましての地元の了解の取りつけとか、電源開発のための手続に要する期間が長期化する傾向にあるといったことで大幅におくれておりまして、これが電力の需給逼迫、電力不足といった背景になっておることは先生の御指摘のとおりでございます。
  33. 貝沼次郎

    貝沼委員 こんなことばかりやっていてもしようがないですけれども、そこで、こういうような資源問題は、実は財政と切り離して考えることはできない。それならば、それだけの電力は当然使うのだから仕方がないという判断に立つこともできない。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 やはりできるだけ省資源政策というものを進めて、そうしてエネルギー消費量というものを少なくした上で、総合的な政策でやっていかないと、ただ景気をよくするために赤字国債を出すというやり方だけでは、私は賛成できないということを言っておるわけであります。  そこで、省資源の例として、これは申し上げるだけにしておきますが、たとえば電気を一番食うと言われておるのがアルミニウムなんですね。アルミニウム一トンつくるのに物すごい電力を食うわけでありまして、たとえば一万四千キロワットアワーの電力を食うわけであります。一年間のアルミニウムの生産が日本では大体九十七万トンから九十八万トンぐらいでありますから、そうすると、大体それを掛ければどれくらいの量になるかというと、四国電力で使う電力の半分は日本のアルミニウムに使っておる、こういうことなんです。ところがこのアルミニウムはどういうところに使われているかというと、サッシュその他もありますけれども、たとえばジュースとかビールとかのアルミかんがぽいぽい捨てられておるだけで、非常にむだな使い方をしておる。こういうようなところから、こういうような政策をも加味した政策をとっていかないといけない。試みに、鉄なんか粗鋼でどれくらいの電力でやるかというと、一トン大体五百九十八キロワットアワーですから、鉄の大体二十何倍の電力をアルミニウムは食っておるわけでありますから、こういうような省資源政策あるいはその他の政策を充実して、そしてその上に立った財政政策、こういうものをやらなければならない、こういうふうに私は思うわけでありますが、一言だけ感想を言っていただきます。
  34. 坊秀男

    坊国務大臣 まさにおっしゃるとおりのことだと私も感じます。それに対して、しからば対策ということにつきましては、これはその簡単にむずかしい問題に対する対策を、それじゃ電力を無限にふやすということもいかぬし、それからプルトニウムの問題もさらにこれあるし、原子力発電所といったようなものもこれまた容易ならざる問題でございますので、解決策ということになりますと、ちょっとここで明快にお答え申し上げるには余りに私は微力でございますが、感じはそのとおりでございます。
  35. 貝沼次郎

    貝沼委員 御認識いただけば私はよろしと思います。先ほど申し上げましたように、総理がアメリカに行くときに、再処理問題をお尋ねしたときに答弁がなかったもんですから、この際、大体に深く認識をしていただきたい、こう思って、私はきょうはわざわざこういうことを言っているわけであります。  次に、財政の再建問題について質問をいたしたいと思います。  大蔵省は、何としても昭和五十二年度を財政再建元年にしたい、また、せめて赤字国債を減らして国債依存度も前年度より二・三%低めたい、こう言っておったわけでありますが、現実は前年度に一兆二千億円も上積みの八兆四千八百億円、うち赤字国債は前年度に三千億円も上積みした四兆円とふくれ上がったわけであります。また国債依存度を見ても、前年度二九・九%、今回は二九・七%で、たったの〇・二%ダウンしたわけであります。これでも大臣財政の節度を守ったというわけで胸を張っておるようでありますけれども、私は率直に、どう考えてみても、これは財政再建に取り組む政府の姿勢が甘かったのじゃないか、胸を張るようなところまではいってないのじゃないかという感じがぬぐい切れないわけでありますので、この点、大蔵大臣はどのようにお考えなのか、もう一度伺っておきたいと思います。
  36. 坊秀男

    坊国務大臣 私は決して胸を張っておりません。この結果につきましてはまことに恥ずかしい思いをいたしております。ただ、そういったような決意といいますか、とにかく土俵を踏み切らなかったということだけは私は感じております。踏み切らなかったのですから、ぜひともこれを歯どめといたしましてこの自分の考え方を後退せずにやっていきたいと私は思っておりますけれども、まことに恥ずかしい思いをしております。
  37. 貝沼次郎

    貝沼委員 非常に謙虚な答弁でございますので……。  それから、果たして財政再建元年と言い切れるかどうかということなのであります。すなわち、五十二年度の予算で収入のほぼ三〇%を借金で賄っておるわけでありますが、この借金返済のために利払いなどの国債費が前年よりもたしか四一・一%ぐらい増になっておる、そして二兆三千五百億円ぐらいになっております。つまりこれは、赤ちゃんも含めまして日本の人口全部、一人年間大体二万二千五百円、四人家族、標準家庭でありますと九万四千円、約十万円ということになるわけであります。赤字国債返済のためにこういうものが負担になるわけでありますが、三月三日、政府財政収支試算によると、五十五年度赤字国債発行をゼロとしても国民負担は一人大体四万七千五百円、四人で十九万円以上、非常に大きな金額になっております。世界各国の国債依存度を見てみましても、たとえば米国が七七年度で一一・三%だと思います。英国が七六年度で一六・八%、それからフランスが一五・九%、これは七五年であります。西独二〇%、これは七六年度。これに比べて日本は二九・七%。こういうような実態から見ても、〇・二%下がったから財政再建元年になるんだというようなことが果たして大きな声で言えるかどうか、こういうふうに考えるわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  38. 坊秀男

    坊国務大臣 先ほどの御質問に対しましては大変恥ずかしい思いで声を小さくしてお答え申しましたけれども、今度のこの御質問に対しましては、私はどうしてもこれを遂行、実現をするという決意に燃えておるということを申し上げます。決意だけではしようがないじゃないかということも必ずや反問があるだろうと思いますが、大蔵省は挙げて、これに対しまして全力を挙げてやっていきたいと思います。そのことにつきまして、いま私の決意を受けて事務当局が、数字が並びますから、私よりははるかに明快にお答えすると思いますから、どうぞひとつ事務当局から。
  39. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいまお述べになりました数字のとおりでございまして、ただ私どもは、余談になりまして非常に恐縮でありますが、不思議に思いますのは、いまごらんになっております数字で、われわれの場合は名目成長率と歳出の伸びでは歳出の伸びの方が大きいわけでございますね。ほかの国はみんな歳出の伸びが小さいわけです。たとえば西独の場合などは、七七年の場合に名目成長率が八・五ないし九・五であるにかかわらず歳出は六・三である。どうしてこういうことがよその国の場合できるであろうか。おととしぐらいからずっと同じ表で数字を入れかえてきたわけでございますが、絶えずその点が疑問になりまして、われわれもできるだけ歳出の洗い直しをやらなければならぬ。歳入の問題もございますが、歳出担当の部局といたしましてはできるだけ経費の優先順位に全力投球しなければいかぬ。しかしながら、どうしてこういうふうに一けたの、しかも小さな方にできるのかということは非常に疑問なんでございます、これを思うに、いろいろの経済の熟練度だとか公共資本の整備水準だとかあるいは社会福祉の年金の成熟度だとか、わが国の場合、まだかなり未発展のいろいろな制度があるのではなかろうか、それから人口の老齢化の度合いがわが国の方がはるかにまだ若さがあるというようないろいろなことが考えられます。それにいたしましても、本年の場合も再建の第一年ということで意気込んでやりまして、まことに残念ながらそういうふうにいかなかったわけでございますが、今後もできるだけ歳出面について合理化、効率化を図らなければいかぬというふうに考えております。
  40. 貝沼次郎

    貝沼委員 歳出の方につきましては後でお尋ねしますが、政府が新しく財政収支試算というものを発表いたしましたが、この点について、かなり無理があるのではないか、これは何人かの方がそういうような指摘をしておるのを私ども聞いておりますが、確かにこれは無理がある。しかし長引いていいということを言っておるのではありませんで、非常に無理があるじゃないか、はっきり言って実現不可能なものではないかという感じがするものであります。  そこで、ただしておきたいことは、これは単なる試算でありますがこういうような試算でも責任というものは伴うものなのかどうか。これは計算してみただけのことであって、そのとおりいかなければいきませんでしたというぐらいのものなのか、それともこれは政府としてかなり責任を持って実行いたします、実行できない場合においてはこれだけの決意がございますというような責任を持ったものと解釈すべきでしょうか、この点いかがですか。
  41. 坊秀男

    坊国務大臣 五十五年度の日本の国の財政経済の姿を描いてみまして、それを手がかりとして真っすぐ線を引いて、そしてその途中におきましては——これは計画でも何でもございません。しかし五十五年度の姿というものだけは、と申しますことは、何回も申しますけれども特例公債から脱却して健全なる財政の姿をそこへ築いていくということにつきましては、私どもとしてはこの目標はぜひ達成いたしたい、かように決意をいたしております。
  42. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、先ほどの責任という問題はどうなりますか。
  43. 坊秀男

    坊国務大臣 私は政治責任を十分感じております。
  44. 貝沼次郎

    貝沼委員 それ以上私は深追いする気はありません。  そこで、実現性に乏しいと私はいま申し上げましたけれども、その具体的な問題として、一つ税収の面から見るとそうではないか。政府見通しでは、二通りとも租税弾性値を一・八三ぐらいに見ておるようであります。つまり、四十年度から四十九年度の十年間を見ても、租税弾性値は平均一・四ぐらいですね。ですから、これは高度成長のときよりも非常に高い。すなわち、毎年GNPが一%伸びるごとに、税収はその二倍近い一・八三%伸びないといけないということですね。このことは、既存の税法による自然増収ではほとんど不可能ではないか。したがって、税体系を変えようという考え方なのか、いわゆる新税を導入しようという考え方なのか、それとも、既存のものを増税するという意味なのか、この点について伺っておきたいと思います。
  45. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 財政収支試算で、これだけの税収が確保されないと、社会資本の充実、社会福祉の向上を図りながら、なおかつ特例債から脱却することはできない、その場合に一・八三という弾性値が必要になるということは、ただいま御指摘のとおりでございまして、しかも、過去の平均値から言えば、いまの税制のままで自然増収でそれが出てくると思うのはおかしいのだという点も、まさしく御指摘のとおりであります。したがいまして、私どもは、再々申し上げておりますように、昨年の六月から税制調査会に、いまの税制をまず基本的にもう一度見直していただきたい、負担の増加を求めるとすればどの税目に求めるのが最も適当かという角度から、つまり、増税という人気の悪い政策のために調査会として仕事をしていただきたいということをお願いしているわけでございますが、その検討の経緯につきましては、当委員会に資料をお出ししてあるとおりでございまして、いまある税目のどれかについてどれぐらいの幅の負担の増加をお願いするのかということも、まだこれからの問題になっておりますし、また、それでは足りないとかあるいは適当でないということで、何か新しい税を考えなくてはいけないのかどうか、それもまた、これからということでございます。それは審議経過にあるとおりでございます。
  46. 貝沼次郎

    貝沼委員 要するに、いま税制調査会審議していただいておるということですね。ところが、これはもう五十五年には出さないわけですから、ことしは五十二年ですから、三、四とあと三年しかないわけですね。したがって、その結論というものがいつまでもいつまでもかかっておったのじゃ、これは間に合わないのですね。実際間に合いません。したがって、早い時期に結論が出てこなければならぬと思うのですが、大体いつごろをめどにこれは考えておるわけですか。
  47. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 本日の貝沼委員の御質問の冒頭で大臣がお答えいたしましたように、ただいまの委員の任期がことしの十月早々に切れますので、そのときにはある程度の方向づけをぜひしていただきたいというお願いを私どもとしてはいたしております。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに私が申しますのは、たとえどういう税体系になろうが、どういう税を増税するにしても、やはり国民的なコンセンサスがなければこれは非常にむずかしいわけでありますから、できるだけ早くそういうものを発表し、そして国民の合意を得るということが非常に大事じゃないか、そのためには時間が必要であるということを申し上げたいわけであります。  そういうようなぐあいで、ただいまもまだどうやるかは決まっておらないということでありますから、果たしてこの計算どおりいくかどうか。たとえば、主税局長は、三月二十四日の参議院大蔵委員会で、今後の租税弾性値を過去の平均値と等しい一・四と仮定するならば、五十五年度に赤字国債発行をなくすためには、同年度に四兆五千六百億円の増税が必要になるというふうに答弁しておるわけでありますが、とても実現はむずかしい、こういうふうに思うわけであります。大臣いかがでございますか。
  49. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 大臣からお答えをいただきます前に、その数字の点につきましては、速記録がお手元におありのようでございますが、いまの数字は、五十三年度、五十四年度に何もしない、つまり、後へ後へと仕事を送った場合にはそういうことになるかもしれないという意味で申し上げたわけでございます。
  50. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一つは、きのうも話が出ておりましたけれども、桜田日経連会長による桜田私案との関係であります。言うまでもなく、桜田氏は財政制度審議会の会長でありますし、大蔵省の試算ともかかわりのある人でございます。この私案は民間の立場からまとめたものというふうになっておりますが、同一人であるところから、非常に意味があるのではないか、こういう意味でお尋ねしたいわけでありますが、この私案と政府案を比べてみると、幾つかの食い違いがあります。  その第一は、税収の面であります。大蔵省の見通しだと、五十五年度は三十五兆五千八百億円、これはAですが、私案では三十四兆七千億円、八千八百億円少なく見積もってあるわけであります。第二は、歳出規模でありますが、大蔵省は五十五年度を四十三兆五千八百億円、桜田私案では四十四兆円、その差四千二百億円。それから第三は、赤字国債について決定的な違いが出ておるわけであります。すなわち、大蔵省は赤字国債発行は五十四年度までで、五十五年度はゼロ、桜田私案では、五十五年度も二兆円の赤字国債発行しないとやっていけないというふうになっておるわけであります。この判断の裏にはいろいろな要因があると私は思うわけでありますが、やはり増税にはおのずから限界があり、現実的にはむずかしいということが反映しているのではないか。  そこで、大蔵大臣にお尋ねしたいわけでありますが、まず総括して、こういうような私案に対してどういうような感触をお持ちか。
  51. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 数字の問題でございますので、先に御説明させていただきたいのでありますが・二月の中旬に、日経連の会長でございます桜田さんが調査部を指導されまして御指摘のような計算をやられましたことは承知いたしております。数字も、そういうふうに、われわれの方は五十五年度赤字公債がゼロでございますが、桜田さんの方はまだ残るというふうな数字になっております。  ただ、私どもといたしましては、桜田さんの方のおつくりになった前提条件がわからない、もう一つは計算方法がわからないというようなことがございます。私どもの方の前提条件なり計算方法は、三月三日に予算委員会に提出いたしまして、当委員会にも同日提出いたしましたとおりでございまして、昨年の五月に経済企画庁の方で閣議決定いたしました経済計画のフレームを用いまして、そのGNPに対して一定の機械的な計算を使ったもので、非常に単純明快に前提と方法がはっきりしておりますが、桜田さんの方は、ただいま申しましたような前提条件、推計方法をつまびらかにいたしませんので、計数の比較について云々することは適当でないだろうと思うわけでございます。ただ、あの表のおもて紙に書いてございますように、関係者の不退転の決意を望むというような点をわれわれとしてはかみしめて、五十五年赤字公債ゼロという目標に向かって不退転の決意を持って努力しなければいかぬというふうに受け取っておるわけでございます。
  52. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいま加藤次長が申し上げたとおりでございますけれども、桜田私案というものは——桜田さんは財政審議会の会長を長いことやられて、長い間大蔵省を指導し大蔵省の相談に応じてくれた人でございます。政府の五十年代前期経済計画も、それからそれを手がかりとした財政収支試算も十分御存じの上の桜田さんでございますが、その桜田さんがあえて桜田私案というものを世に問われたということは、財政計画だとかあるいは収支試算といったようなものを、こんなものはだめだという破壊的な意思でもってやられたものではないと信じております。私は、桜田さんはわれわれ後輩に対しましておまえらしっかりやらなければ、うっかりすると私案みたいなことになってしまうぞというふうな警告と申しますかあるいは私どもに対する厳しいむちでございますか、そういったような意味におきまして桜田私案というものを出してくれたものだと思いまして、さらに一層、桜田さんのその先輩の好意に対しても報いるためには、どうしてもこの財政試算というものを何とか目鼻をつけてかっこうをつけるというような決意を新たにしておるのでございます。
  53. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣のおっしゃるように桜田私案ができたものかどうか私は確かめておりませんのでわかりませんが、恐らくそういう意味ではなしに、本当はこうだよという意味のものではないかと私は思います。  それで時間がだんだんなくなってきましたので、もう一つは、この政府財政収支試算は昭和五十年代前期経済計画をベースにしておるわけでありますが、私もこの経済計画をじっくりと読ましていただきました。それでこの収支試算の根底には、失礼な言い方かもしれませんけれども、これまでの国会で大平前大蔵大臣とか坊大蔵大臣が五十五年までには赤字国債をゼロにする、こう言い続けてきた手前、その公約どおりに見通しを合わせざるを得ないというようなものがあったんではないかという気が実はするわけであります。もし間違っていたらお許しいただきたいと思うのですが、率直に言ってそんな感じがする。私は、これだけ大きな赤字国債になったら国民の協力なしにはとうてい解決はできないわけでありますから、政府も本当のところ実はこうなんだ、大臣はこういう答弁をしてきたけれども、本当はこうしなければこの赤字の償還はできませんという正直なものをやはり出して国民理解を得るのが本当ではないかと思うわけでありますが、そういうような気持ちは全然ないわけでしょうか。これは事務当局にお尋ねしたいと思います。
  54. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 今度の経済計画は、経済審議会の方でもおっしゃっておりますが、途中年次についてフォローアップをやるということになっておりまして、昨年の暮れに五十一年のフォローアップをやられたわけでございます。それでその結論といたしまして、経済計画で考えている経済の五十五年に至るフレームというものは変更する必要がない、それから計画に盛られております基本的な政策目標というのは変更する必要がないというような中間的な報告が出ております。私どもといたしましては、そういう経済見通しなり経済計画における基本的な政策目標を、五十一年の場合と同じとするならばという前提のもとでやるという態度をとったわけでございます。決して無理無理に五十五年に赤字公債がなくなるというふうにつくったわけではなくて、そういうような経済計画との関係で、基本的な政策目標なり経済のフレームなりが変更ない限りそういう覚悟でやらなければいかぬという考え方をとったわけでございます。
  55. 貝沼次郎

    貝沼委員 まあそう答弁しなければならぬと思いますが、そこで大臣に一言お伺いしたいと思います。  ことしの景気は大体四月後半、五月ごろから本当によくなるのでしょうか。もしよくなるという判断であるならば、これはまた考え方を変えなければなりません。よくならないならば、また計算の仕方が変わってくるし、悪くなるなら、またこれは全然合わなくなってくるわけでありますから、この点はどういうようにお考えですか。
  56. 坊秀男

    坊国務大臣 大変むずかしい問題でございますけれども、私は今度のこの国会で皆さん方の非常な御好意でもっていろんなことについて御協力を願っておる。すでに五十一年度の補正予算というものも上げていただいた。それから、これは今度の一番の眼目でございますけれども、何にいたしましても景気浮揚目的としておる五十二年度の予算も上げていただく。それからまた、特に大蔵委員会ではいろいろ税の法律その他たくさんの法律につきましても、これを本当に滞りなく上げていただいておるということでございますが、これは幸いにしてそういったような一連の政策、これがそんなにおくれずに実現をさせていただくということになりますれば、まあ四月一日からどうということも申し上げられませんが、四月、五月を一いまのところは景気回復の歩みはきわめて緩慢でございますけれども、しかし基調といたしましてはそれほど失速をしていない、そういう基調、その上にこの一連の政策を実現させていただくということによりまして、私は大きな希望をつないでおる次第でございます。
  57. 貝沼次郎

    貝沼委員 大きな希望は、よくなっていただきたいという意味の希望でしょうか、よくなるに相違ないという希望なのか私は非常に疑問があるわけですが、この点いかがですか。
  58. 坊秀男

    坊国務大臣 非常に細かい御質問でございますけれども、私はそういうことに希望を抱くとともに期待もいたしております。
  59. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、たとえば三月三十一日、日本経済新聞社の景気動向研究班というのがまとめた記事が出ておりました。この中に書かれておりますのは「下期の息切れ」、非常に不安が多いという記事であります。「政策の信頼回復がカギ」だという見出しで、政府の言う「ツマ先上がりに景気はよくなる」という言葉は、そのとおりにはどうも受け取れないというような内容だと思っております。好況業種の自動車、家電、これは非常に笑顔のようでありますが、繊維とかあるいはその他さまざまな業種、不況業種と言われるようなものは非常に困っておりまして、一月から三月の計画をさらに修正していまやっておるというような、あるいは造船会社なんかも非常にぐあいが悪い状況説明するまでもなく大臣御存じでありますから申し上げません。それから鉱工業生産の伸び率を四半期ごとの前期比で見てみましても、昨年は一−三月の五・八%から四−六月の五.四%まで順調であった。その後一・一%、〇・九%と息切れ状態になり、今年の一月から二月は前月比でついにマイナスに落ち込んでしまった。過去の不況を救ってきた民間設備投資も昨年は水準そのものは低いながらもまずまずの成績を残したけれども、電力、鉄鋼などの大型工事が集中したための一時的傾向で、ことしに入ってからは伸びが大きく鈍ってしまった。それから企業の操業度は八〇%程度で、設備過剰感が続いておるため経営者は二の足を踏んでおる。また、倒産も非常に多くなってきておるというような数字が出てきております。そういうようなことを全部総合いたしまして、下期は息切れがあるだろうということになっておるわけであります。  そして、最近のいろいろな報道を読んでみましても、必ずしも大臣の思うような景気がよくなるような資料は見当たらないわけでありますけれども、こういうように景気が先行き本当によくならないのであるならば、先ほどのああいう収支試算は果たして実現できるのかどうかは非常に疑問になるわけであります。この点いかがでございますか。
  60. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 政府経済見通し名目一三・七の実質六・七につきまして、いろいろ御議論があることは承知いたしております。予算委員会の席上でも再三そういう御議論がございましたが、私どもといたしましては、補正予算公共事業の追加、それから先般の四項目公共事業を中心といたします繰り上げ施行で財政面からがんばる。それから、五十二年度の予算景気浮揚を最大の眼目にいたしまして公共事業のウエートをかなり高めておるわけございます。実質GNP六・七に対して政府の財貨サービス購入の中の資本形成は九・九になっておるわけでありますが、そういうような予算が動き出せば政府の六・七という見通しは確保できると現段階では確信をしているわけでございます。
  61. 貝沼次郎

    貝沼委員 確信について私は文句を言う筋はございませんが、ただ今回こういう答弁をしておって、後になって景気がよくならない場合、どうもまずかったと言うことのないように、ひとつ責任を持った答弁をしていただきたいと思います。  私はこういうような問題を考えまして、この政府の出されました収支試算というものが果たして額面どおり受け取れるものかどうかということを考えたときに、非常に疑問であり、心配がある。やはり国民は大体そういう目で見る人が多いのではないか。それでは国民的コンセンサスはなかなか得られない。もっときちっと説明をし、納得のいくような財政再建計画を出すべきである。しかもその計画も、これをやるためにどういうような経済計画——ただ単なる前期計画だけでなしに細かい説明をつけ、そしてどれだけの収入があるというようなことも全部説明をした、そういう責任のある財政再建計画を政府が出すべきである、こういうふうに考えるわけであります。時間が来たようでありますので、これで終わりといたしたいと思いますが、その点についての大臣答弁を伺いたいと思います。
  62. 坊秀男

    坊国務大臣 むずかしい政策を実現するというためには、何と申しましても国民の御理解を得なければならないということは、私はしみじみと感じております。すなわち国民の御理解、国会の御理解ということが一番大事なことだと考えておりますので、われわれはでき得る限りいろいろな政策につきましてこれをまとめてまいりまして、そしてまたひとつぜひとも皆さん方の御協力をお願いすることにいたしたい、かように考えております。
  63. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  64. 山下元利

    山下(元)委員長代理 高橋高望君。
  65. 高橋高望

    ○高橋委員 大臣、お願いいたします。  冒頭、どうも景気がよくならない、特に私のような中小企業の友達の多いところでは大変不活発でございまして、ことに製造業の場合にはこのところ業種間の差がはなはだしい。しかも業種間ばかりではなしに同じ業種の中でも品物によって大変景気のばらつきがある。これは、きょうは中小企業庁の方をお呼びしてないので直接のお答えはいただけなくても結構でございますが、どうぞ細かな目を行き届かせていただいて、業種にとどまらずに、同じ業種の中でも品物によって景気のアンバランスが目立っておるということで、ひとついろいろな意味で御手当て願いたい。  現実に一つの例で申しますと、機械メーカーに供給している中小企業の鋳物屋さんなんかですと、オイルショック前にトン当たり二十一万円ぐらいしておりました鋳物の価格が現在十七万円ぐらいまで落ちて、落ちっぱなしでございます。どうかひとつ親企業の立場での景気のよさ、あるいは悪さと、さらに輪をかけた中小サイドでのそういったばらつきが一段とひどくなっておるということをお考えいただいていろいろの御展開を願いたいとお願い申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。  私たちが育ってまいりましたころ、大体第二次大戦の終了ぐらいまで、あるいはその後でもそうなんですが、国債発行するというと、大体これは戦争のための費用だ、軍事費だ、こういうふうにわれわれは理解もしましたし、またそういうふうに教わってきました。確かに国債が大量に発行されていたのはすべて戦争に関連もしておりましたし、戦費を賄うために国債発行してきた。そして大多数の国民はこれを一生懸命になって消化した。結果として大変手ひどい被害を受けたわけですけれども、最近、その当時の依存度に匹敵するほどの国債依存度になってきておる。もし仮に、いま私が次の世代に、国債というものはどういうときに発行するのですよということを教えようとした場合には、一口でというと大変失礼ですが、もし簡単に国債はこういうときに発行するのですよということを言いたいとしたら、大臣はどのように私にお教えくださいますか。
  66. 坊秀男

    坊国務大臣 私が子供なり孫なりに国債発行するのはどういうときかと言うことにつきましては、いまおっしゃられたような、実は私にもそういう感じがあるのです。私は、年がわかってしまうけれども日露戦争時代に生まれた人間でございますから——日露戦争の戦費というものは、これはもう国債でやったわけです。それからまた、私が若かりしころ新聞記者として接した大政治家に高橋是清さんという人がございます。私は、日本で私の接した政治家の中でだれが一番偉かったかと言えば、ちゅうちょなしに高橋是清翁を挙げますけれども、その高橋是清翁が井上財政の後の不景気でこれは赤字公債を出された。そして景気をこれ回復せられた。ところが、その後その赤字公債というものがどんどんふえていく。高橋是清翁はその赤字公債がふえていくということについて、これはほとんど陸海軍が軍費の財源としてこの公債を使っていく、そして高橋是清翁は非常にこれを憂えられました。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 そして、この公債発行を、公債漸減の法則というものを考えられまして、その当時の自然増収は——毎年毎年発行する公債自然増収だけは減らしていくというこの法則を立てられて、実に敢然としてそれを遂行された。それが結局二・二六事件の、高橋が公債を漸減法則で守っていくというようなことだと思い切り軍費がふえないというようなことが、これが高橋是清翁にある方面の恨みというものが何とかせなければならぬということで、高橋是清翁は二・二六事件の毒刃に倒れた、こういうふうに私は思っておりますが、その高橋是清翁が亡くなるや、日本公債は雪だるまが坂道を転がるようにどんどん大きくなっていった。それが私は第二次世界大戦の起こった——それのみではないと私は思います。もちろんそれのみではないと思いますけれども、あるいは支那事変だとかあるいは大東亜戦争といったようなものにつながっていった一つの大きな力ではなかったであろうかということを考えます。  ところで、今度の公債というものは、その公債発行する、どんどんふやしていくということによって私はまさか戦争になろう、そういうことは考えておりませんけれども、戦争に結びついた日本は、日露戦争ではどうにかこれよかった。ところが世界大戦に結びついたこの公債というものは、日本の国の破滅を来したというようなものである。今度の公債というものはまさか戦争には結びつきませんけれども、これがどんどんとふえていくというようなことに相なりますれば、戦争の媒介なしに日本の国がまいってしまうということを痛切に感じます。だから、私はどうしてもこの公債というものは漸減と申しますか何と申しますか、五十五年にはぜひとも赤字公債というものはなくしていかなければならないということを決意いたしております。
  67. 高橋高望

    ○高橋委員 大臣、もうちょっと教えていただきたいのですが、私が伺いたいのは今度のこういう多量のと言うか、多額の国債発行を起こさざるを得ない主因はどこにあるかというふうにお考えになりますか。
  68. 坊秀男

    坊国務大臣 先ほども申し上げましたが、五十一年、五十二年、赤字公債というのは五十年から始まりましたかね。これはやはり、先ほども話がありましたが、非常に日本の資源が不足でそのときに不幸にしてオイルショックに見舞われた。オイルショックに見舞われたために、日本の国の経済というものは非常に難局に陥った。経済が難局に陥ったら国の財政の面におきましては、これは税収が途中でがた落ちしてしまうというようなことに相なった。ところが、今日までとにもかくにも福祉国家を建設していこう、それから経済というものを成長させていこうといったような政策日本がとってきておった。それを税収入ががた落ちに落ちた。落ちたからというて一方の国民福祉だとかあるいは教育だとかあるいは社会資本だとか、そういったようなものに今日まで使ってきておったお金をストップすることは、これは私はとうてい政策としては——そういうことをするのがいいか、するのが悪いか、やらなければしようがないからやるというようなことでは国が立っていかないというふうに為政者、その当時のわれわれの先輩が考えられまして、そのためには何とかして予算規模というものをそんなに落とさずに持っていきたい、こういうふうに考えられて、そして景気を浮揚する、それから積極的な政策はそんながた落ちにしてしまわないというためには歳入の欠陥を埋めなければならないということで私は赤字公債というものがここに生まれたのだと思いますが、ちょうど高橋是清翁が景気を何とかして取り戻すために赤字公債を是清翁の手によって初めてつくったが、しかしながら、そのつくった高橋是清翁は、何とかしてこれを漸減していこうと言って努められたということでありますが、主たる原因は、やはり日本の国の国民生活、またその福祉あるいはまた社会資本、教育、数え上げればいっぱいありますけれども、それをある程度維持するとともに、これを成長と申しますか伸ばしていく必要がどうしてもあったということが、私は、この赤字公債というものに一歩を踏み出した、こういうふうに考えます。
  69. 高橋高望

    ○高橋委員 いますでに私がちょっとお尋ねしようと思うことを大臣の方で先に御発言願えたのですが、とかく私たちがこの場所で、あるいは国会内でいろいろ論議することが一般国民の方になかなかに伝わらないし、またなぜか遊離しているものに思われがちなことが当大蔵委員会に限らず私はあると思う。ここで私のような立場にすれば、できるだけこうした真剣な討議あるいはお話というものを一般国民の方に周知徹底させる必要があろうかと思うので、重ねて大臣にお伺いしたいのですが、財政危機、財政危機と、こう皆さんおっしゃる。この財政危機というものはさらに高進した場合に、暮らしの面でどういう形で出てくるのですよ、われわれが生活していく上でどういう面でこの財政危機が重なってくると大変なことになるのですよという、こういった意味でのPRを真剣にしなければいけないところに私は来ていると思う。そういう意味で、財政危機が高進した場合の暮らしの面でのあらわれてくる形、いろいろあろうかと思いますけれども、どうぞひとつ、重立った点二、三お聞かせいただきたい。
  70. 坊秀男

    坊国務大臣 経済学者でもございませんし、これは私が申し上げるよりもあなたはよく御存じのことだと思いますけれども、これから赤字公債をどんどんふやしていくということは、いままでも三十兆ある。そこで、日本の国の予算の中で公債費というものはこれはどんどんふえていく。公債費というものは借金の利子を払うとか償還するとかということで、それが日本の国の予算の中のメインの歳出になってくるということになりますと、大事な国民生活だとかあるいは福祉だとかといったようなものが予算によって賄えない。いま申し上げましたそういう経費だけではございません。これを称して財政硬直化、私はこういうことだと思います。さらに公債がどんどんとふえていきますと、公債の消化がむずかしくなってくる。公債の消化がむずかしくなってきて、そして公債が日銀にたまってしまう。通貨が成長通貨でなしに、どんどんと通貨が出てくるということになりますればインフレになってしまう。インフレになってしまったら、だれよりもわれわれの生活が、われわれも含めて中小所得者というものが一番のショックを受ける、そういったようなことになりますから、このままでどんどんいったならば日本の国の一億みんなが生活できなくなってしまう。これは幾らか極端な話でございますけれども、あなたにそんなことを言うのは釈迦に説法なんだから、恥ずかしいのですが、そういうようなことを招来しないように、どうしたって財政健全化を図っていかなければならない。われわれ当面の政治をやっておる人間にはその責任がひしひしと肩にかかってきておる、私はこういうことを感ずるのです。大変恥ずかしいことを申しました。
  71. 高橋高望

    ○高橋委員 先ほど加藤次長の話を伺っていて思ったのです。景気がよければ国債発行しないとおっしゃっておられた。いろいろな御解釈があろうと思うのですが、私たちの党並びに私個人も、現在の赤字財政をつくった背景、われわれの暮らしに対するいろいろな希望、こういうものを勘案していった場合に、どうも一つ原因として、昭和四十六年を中心とした例の過剰流動性の処理に何か大きなうらみが残っているように思うのです。と申しますのは、当時円高に甘えたところが少しあったのじゃないか。これは率直に申し上げて与野党にあった、日本国民全体としてあったのじゃないかと思うのです。この過剰流動性の処理で何か現在うらみが残っている。はっきり申し上げて失敗した。もっと言うならば、当時国債発行によって、国内にだぶついたドル異変による資金を早く吸収すべきだったのじゃないか。死んだ子の年を数えても仕方がありませんけれども、これは政治の失敗ではないかというふうに私は思いますが、この辺についてはいかがでございますか。
  72. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 四十六年後半から四十八年ごろにかけまして、おっしゃるようにいわゆる過剰流動性問題ということがあったわけでございますが、当時国内の景気が大変停滞をしておるということとあわせまして、スミソニアン体制の前後にかけましても、なお国際収支面の黒字超過という問題がございました。したがって、国内の拡大政策をとらざるを得なかったという事情があったことも御承知のとおりだろうと思います。いま過剰流動性をどういうふうに表現いたしますか、たとえばマネーサプライというようなもので表現いたしますと、確かに四十六年後半から四十七年にかけましてかなり高水準で参っておりました。しかし当時、たとえば物価面の卸売等は前年に比べますとまだ下がっておるという状態でございまして、景気拡大策をとらざるを得なかったという当時の事情はそれなりにあったろうという気がいたします。しかし金融政策面におきましては、物価の方が低下がとまりましてやや反騰の気配が見えました四十七年の後半からは、むしろ貸し出しを抑制するという方へ転換いたしてまいっております。ことに四十八年に入りましてからは、総需要抑制策ということで抑制をしてまいったわけでございますが、先ほど大臣お話しのように、その四十八年の秋ごろ、総需要抑制策の効果が出ようとしかかりましたころに、大変不幸なことには石油ショックが起こったわけでございます。したがいまして、輸入石油に対する依存度の高いわが国としましては、物価面に非常な後遺症が残りまして、四十九年にかけまして大変物価の高水準が続くということにならざるを得なかった、こういう経過ではなかろうかと思います。金融当局のこの措置につきまして、タイミングその他の点でいろいろ御批判のあることは私ども承知をいたしておるのでございますけれども、当時の情勢等を考え合わせますと、これはやむを得なかった面が非常にあったように思います。一番不幸なことは、資源過小国である日本が、石油ショックという異常な事態にちょうど政策効果が出ようというときに際会をした、こういうことではなかったかとは存じますけれども、しかし当時の経験は、これからの金融政策運営等の面では私どもは十分頭に置いてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  73. 高橋高望

    ○高橋委員 私、ここでちょっと話題を変えて財政改革基本について少しお伺いしてみたいと思うのですが、現行財政法が制定された原点、これを私たちは考え直さなければならないのではないか。戦争とインフレで崩壊した財政の信用を立て直そうというのが当時の原点であったと私は理解します。  そこで、この国債依存度の引き下げの中期的なめどは一応五%にされる、これもわかりますが、とにかく四十三年度ごろまでは、まだ財政運営に何か健全な感覚が生きていた。こういう形にしたい、しなければいけないんだ、財政当局にこういういわば規律があったと私は思うのです。規律と言うとちょっと言葉が違いますかな。何か……(「自制心」と呼ぶ者あり)そうですね、自制心と申しましょうか、そういうものがあったように思う。ところがだんだんそれが変わってきてしまったと言いましょうか、力に負けちゃったとでも言いましょうか、ずるずると、ない袖は振れないとか、あるいは逆にあるときは使っちゃえとかという感じの中で、財政のそういった規律が失われてきてしまって、さあ今日になると、建設国債自体だって反省してみて、私はなぜかそういう意味では規律の失われたものがあるように思えてならない。行き着くところが赤字公債発行しちゃえ。——発行しちゃえと言うとちょっと失礼ですけれども赤字公債でおっつける、こういうふうに原点から大分ずれてきて、われわれが期待しているような財政の展開ではなくなってきているように思うのですが、こういう枠の中で、もう一度財政法の原点に返って考え直していただく、この御決意はございませんでしょうか。
  74. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 財政の規律という言葉が、私どもの職場言葉でございます。それからよその財政当局も、フィスカルディシプリンというのを日本語に訳しまして財政節度とか財政規律とか言います。そういうものが失われたかという問題でございますが、私どもといたしましては決してさようなことはないので、本年の場合も、昨年の公債依存度よりわずかではございましたが引き下げるということにフィスカルディシプリンというものを求めたわけでございます。  それから財政法は確かに昭和二十二年の制定でございますが、四条の精神というのは財政一般に通ずる原則でございまして、普通歳出というものは普通歳入で賄わなければいけないという健全財政の趣旨を書いたものというふうに言われておりますが、この点は主要国を見ますと、どこでも大体そういう考え方でやっておるようでございます。決して最近になってフィスカルディシプリンをまあいいやというようなことになったということはないわけでございます。  先ほど銀行局長からお話がありましたが、計数的にいま回顧いたしますと、ドルショック、オイルショック、米国以外の主要先進国の財政当局がひとしくそれに打ちひしがれまして、国際収支の赤字と財政の赤字に見舞われたわけでございます。その場合にどういうふうにそれを克服していくかということが問題になるわけでございますが、七五年からの経緯を見ますと、イギリスなりフランスなりドイツなりアメリカなりは、その財政赤字を着実に回復しつつある。わが国の場合は、私どもはできるだけのことをいたしたつもりでございますが、率直に申してわずかな改善にすぎない。これはしかし先ほど大臣が申し上げましたように、国民生活の安定、景気の浮揚、国民福祉の充実というような要請と比較勘案いたした結果そういう行財政水準を維持する必要があるという判断のもとに予算規模が設定されて、そこから普通歳入を引きますと赤字になる。その場合、建設国債だからいいんだというような考え方は毛頭持っていないわけでございます。先ほど申しましたように、公債政策というのはもろ刃の剣というふうに四十一年の財政制度審議会基本的な報告にも述べられておりますが、使い方によっては国民生活の向上に役立つが、使い方を誤ると国民生活の困難を来すというようなくだりがございますが、そういうことで四条公債といえども決してイージーに流れてはいない。いわんや特例公債をやということであって、フィスカルディシプリンはどうでもいいというような点は全くないわけでございます。計数的に見ますと、率直に言ってドルショック、オイルショックの結果歳入歳出が一年ぐらいずつずれたような感じになっているわけでございます。それを五十一年、五十二年にかけて少しずつ取り戻してきておるような感じがいたすわけでございます。ですから五十五年の目標に向かっていろいろな工夫と努力を尽くしてそういう政策目標を達成したいというふうに考えておるわけでございます。
  75. 高橋高望

    ○高橋委員 私、十年前に皆様方が考えられた国債発行時のことについても、そのことをお考えになっていただきたい。十年前に皆さんが国債発行しようと踏ん切られたときにはどういうふうな発想でこの国債発行に踏ん切られたかということですね。私はこれはただ単に入ってくることばかり考えて出る方を抑えよう、こういった次元だけではなかったと思うのです。もっと合理的な、何かこう財政支出水準を合理的にしようというところから国債発行なさったのであって、ただ単に俗に言う入るをはかって出るを制すというようなその程度の発想では国債発行していらっしゃらないと私は思う。この十年前の国債発行の原点を、皆様恐らく第一線でおやりになったかと思いますので、その当時、この踏ん切られた原点というものはどのようなお考え国債発行に踏み切られましたでしょうか。
  76. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 四十年に急に税収欠陥が出たわけでございますが、そして四十一年から四条公債というものを、福田大蔵大臣でございましたが財政新時代ということで、そのときの考え方は二つございまして、一つは戦後の復興過程で非常に国際的にも地位が確立されてない。国内的にも生産設備をほとんど二割なり三割なりやられちゃったわけですが、そういう経済の基盤になっている財政をどうやって運営するか、その場合には均衡財政が一番無難である。非募債主義という考え方財政を運営していこう。三十年代の後半に入りまして、そろそろ公債政策というものを導入してもいいんではなかろうか。要するに財政政策一つの有力な政策手段を装備しようではないかというような積極的な発想のもとに、財政新時代のパンフレットにも福田大臣の当委員会あるいは予算委員会における発言が編綴されておりますが、積極的な意味合いにおいて、より国民経済なり国民福祉の向上を図るために財政手段に有力な道具を装備しようという考え方に立って導入いたしたわけでございます。あのとき、私事にわたりますが、私主計局の総務課におりまして、この四条公債のいろいろな仕分け作業などをやらされたわけでございますが、将来に対して財政が非常に積極的に寄与するという観点で四条公債が導入されたわけでございます。ただ、その後二年ほどたって引き続き一六%台の依存度がございまして、このまま推移せんか財政硬直化というような問題が生じ、国債費なり国債残高なりから来るいろいろな経済の撹乱要因に対してこの辺で公債制策を見直さなければいけないんじゃないかというので、第一回目の財政硬直化キャンペーンというふうに言われておりますが、四十三年度予算編成の際に公債依存度を一〇%以下にしよう、そして数年の間に五%以下に持っていこうという政策が打ち立てられまして、実績においてもそういうふうに行われたわけでございますが、先ほども申し上げたように四十六年四・五%の依存度まで行ったのでございますが、年度途中にドルショックが起こって、その結果財政面からてこ入れせざるを得ないというようなことで公債を年度途中で増発いたしました。一挙に一二%以上の依存度になっちゃったわけでございますが、その後また経済が正常に戻るに従って公債の減額に努力いたしまして、五十年度当初予算においては九・四%まで依存度が落ちたわけでございますが、その年もまた年度途中で税収欠陥が起こりまして、二六・三%の依存度にまた飛び上がっちゃったというような経緯をたどっております。基本的にはやはり世界経済の中の日本経済というのが非常なあらしに二回も見舞われまして、いま徐々にながら正常な軌道に復しつつあるのではなかろうかと思うわけでございます。
  77. 高橋高望

    ○高橋委員 お話を承っていると、経済にとって適当な財政支出水準もあわせ合理的に考えようとした、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。——そうなると私、実際問題としてすでに五十三年度の予算に取り組む時期に来ていると思います。まあ少し早いかもしれませんが、遅くともこの六月、七月には各省の要求が始まる。こういうときに当たって歳出に対して従来のような自然増、あるいは昨年の実績にプラス一〇%だ、一二%だといったようなそういう割り切り方で組まれてよいものかどうか、歳出面で。もしそういうことを続けていれば硬直性が増したり機動性が鈍ってきてしまう。言葉どおり転換期であるということを考えれば歳入あっての歳出だということをそろそろ取り入れなければいけないんじゃないか。とかく財政支出というのは既得権化しがちでございますから、なおのこと、そういった意味で少なくとも歳入考えての歳出。自然増とかあるいは頭から何%増しにすればいいといったような計算で歳出をお考えになるという態度はこの際転換、改めていただかなければならないと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  78. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 歳出のいろいろな考え方があるわけでございますが、御指摘のような点にも十分留意しながらやっているつもりでございますが、まだまだ足りない点があるので、そういう点を含めまして歳出の、要するに経費の優先順位の見方をどうするかということでございますが、そういうことに努力いたしたいと考えておるわけでございます。
  79. 高橋高望

    ○高橋委員 私が申し上げるのはその経費の優先順位にとどまらず、なぜか、私は絶対時間の問題も確かにあろうかと思うのですね。新しい年度の予算が始まって二月か三月で次の予算を組まなければならない。いろいろな形での問題点が新しい予算に盛り込めないうちに次のことを考えなければならない。したがって、ある乗数というか、係数を掛けたもので歳出を一応見込んでしまうということはわからないじゃないのですけれども、それを繰り返していたんでは、私は科学性のある歳出の計算の仕方にはならないであろうと思いますので、どうかそういった点で優先順位にとどまらず、歳出の組み方自体に、特に人件費等を含めてひとつお考えになっていただきたい、こう思います。  次に移らせていただきます。大臣国債は麻薬だという説があることは十分御承知だと思うのです。痛みどめを用いているうちにだんだん体自体むしばんでしまう、そういう意味だろうと私は思います。そうであれば、一つ考え方として、マネーサプライの目標値をある時期を区切って国民の前、あるいは少なくとも当大蔵委員会等には発表する意図というのはお持ちじゃございませんか。
  80. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 マネーサプライの変動は、御承知のようにいろんな要因で変動してまいっておりまして、日本の場合には定期性預金まで含めた数字を便宜用いておりました。ただ、いまのところやはりこれは政策判断の一つの指標、こういうところだろうと思います。したがいまして、なお日本銀行で特別の研究をいまいたしておりますが、まだこの目標値を定めてというところまではなかなかむずかしいんじゃなかろうか、これは統計の関係等もございますし、技術的な関係等もございまして。なおもうしばらくこれは勉強をいたしたい、こう考えております。
  81. 高橋高望

    ○高橋委員 これはもうどなたもおわかりのように、国債残高が増加するということは、当然のことながら国債費の増大を招くとか、したがって財政自体の硬直化を招いてしまう、こういうことだと私は判断します。しかも国債のふえ方がこのところ、五十五年度までには何とか処置なさるとおっしゃいますけれども、ここ一、二年非常にふえているという現実からいって、何かこの辺で一つの指標というか、当局側としての見通しというようなものをわれわれの前にお示しいただけるというのがより親切なことじゃないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  82. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 ただいま御案内のように、マネーサプライの増加率は大体一二%程度、大変平静に推移をいたしております。御指摘のように、マネーサプライは確かに金融政策等の政策運営をします場合の一つの判断をする重要な指標ではございますけれども、これについて幾らという具体的な目標値をつけまして、そして政策をそれに合わせていくというのはなかなかまだ問題が多いんではなかろうかという気がいたします。外国の場合におきましても最近いろいろな使い方をしておるようでございまして、M2の段階でつかまえておるところもあり、M1というところもございますし、さらにはM3、M4というような段階等も見ておるわけでございます。したがいまして、そのあたりはなおよく勉強いたしまして、もう少し過去の分析あるいは変動要因によるマネーサプライの表現のされ方等もよく分析をしました上でなお判断をいたしたい、もう少し時間をかしていただきたいと存じます。
  83. 高橋高望

    ○高橋委員 私は、次に国債の消化構造についてお尋ねをしたいのですが、国債の市中滞留がふえて、当然のことながら、将来の形ですけれども国債市場価格が不安定になることは私はあると思うのです。いわゆる相場が立ってくる。現在の消化構造では、大量の国債というのは金融機関、都市銀行が保有されておりますけれども、今後これらの機関が、金融事情が逼迫すると国債の大量売却をいやでもするようになる。そうすると市価が急落する。これらを考えてなおかつ国債発行しようとすれば、金利は引き下げなければならないし、国債費がふえるのみならず、発行そのものあるいは借りかえ操作が従来より大変困難になってくる、こう思いますので、今後のこの国債を消化させる構造、これについて当局のお考え方をちょっとお願い申し上げたいと思います。
  84. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 御指摘のように、現在は環境がそういうところに来ておりませんので問題はございませんけれども、大量発行下におきまして将来資金需要が非常に強くなってきたというような場合に、金融機関が手持ちの国債を処分したいというような傾向は当然出てくると思います。ただ、その場合に急速な売りがございますと、また国債の価格の下落が急速に行われるというような市場撹乱の心配もございますので、私どもとしましては将来のそういう場合に備えて、金融機関の手持ちの国債が消化できるような金融環境あるいは市場環境と申しますか、そういうものを整備していきたいというふうに考えておりまして、いきなりいま大量な放出を行うということは現実にはございませんけれども、そういう時代が来ることもあり得るということの備えだけはいま研究をいたしておるわけでございます。
  85. 高橋高望

    ○高橋委員 ここで赤字公債に入らせていただきますけれども、残念ながらいろいろ考えましても、赤字公債という言葉もいけないんですね、政府側としては特別公債とおっしゃりたいと思うのですが、この特例公債がどうも常態化してきている、原則になりつつありそうだ。というのは、これは単なる印刷上の問題ですけれども、この間ちょうだいした資料などをちょっと拝見しても、特例公債というのはもう当然のことのように使われる、あるいは組み込まれているという資料が出てきている。私は赤字公債というのはもう一番たちの悪い公債だと思うし、個人の家庭で言えば家計簿が赤字になっちゃって、家を建てて一生懸命返済しているというお金じゃないと思う。だから赤字公債で集めたものがどこへ使われているのかといったら、ほとんど多岐にわたって、あえて言えば人件費などに使われるのかもしれませんけれども、逆に言えば非常に返しにくいお金になっているのじゃないか。それに対して現在のところ十年で返してみせる、こうたんかを切っておられるわけですけれども、この赤字公債の返済についてはもう少し正直にというか、科学性のある返済方法というものを、大臣、福田総理の一の子分のお立場で、この辺十年できれいに返すよという言い方だけではなしに、何かもう少し納得のできる返し方というのをお示しいただけないものでありますか。
  86. 坊秀男

    坊国務大臣 御承知のとおり特例公債赤字公債は十年で償還をするということで、そのときに返すために他の公債を出して、いわゆる借りかえですね、それでもって返すということはしないこととしており、赤字公債はどんなことがあっても十年でもって返済をしよう、こういうことでやっておりまして、赤字公債なるがゆえに非常に返しにくいということでなくして、これはほかの公債よりも先に優先して返そう、こういう決意をいたしておるわけです。
  87. 高橋高望

    ○高橋委員 私は集められるときにはそういうお考え方、発表のなさり方だと思うのですが、この赤字公債についても、お話しのように他に先駆けて返すあるいは借りかえなさらない、こういうことで、国民が皆その言葉をそのままいただきますので、どうぞひとつ御展開を十分にお願い申し上げたい。  さてここで、私従来から大臣並びにこの間は総理にも実は伺ったのでございますけれども、当然のことながら、いろいろの形で税収との兼ね合いがどうしても浮かんでくると思います。ここで総理あるいはまた大臣も三%の税負担増をおっしゃっておられますが、この三%の負担増というものの中身は、私はあくまでも公正さを取り戻した上での負担増でなければならないと思いますが、大臣、この辺についてはいかがでございましょう。
  88. 坊秀男

    坊国務大臣 しばしば私が申し上げておるとおり、税というもの、これは何と申しましても国費を調達するための手段でございますけれども、その手段が国民にきらわれたんじゃあ−−むろん、税を徴収するというその税法を好いてくれる人はおらぬでしょう。しかしその税法がせめても国民に、歓迎されるとまではいかなくても甘んじていただくというためには公正でなければいけない。だから少なくとも財政当局は改正に際しましては、まず何よりも収入を集めるということが一番目的でございますけれども、そのためにも必ず公正でなければならない。いわんや大変多額の税を法律改正によって調達しようというような場合にはなおさら公正にしていかなければならないということ、これはもうかたく実現していきたい、私はかように思っております。  ただ、公正ということにつきましてはいろいろまた議論もありまして、議論をしていただかなければならない、かように考えておりますが、公正でなければならぬということは、不公正は後世恐るべしだと私は思います。
  89. 高橋高望

    ○高橋委員 どうも恐れ入ります。大臣そろそろお疲れだと思いますけれども、もうしばらくおつき合いを願います。  私が申し上げたいのは、現行税制の中でそのまま三%を上げるんではないんだよ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  90. 坊秀男

    坊国務大臣 私は説明が大変下手でございますけれども、三%ということについて、むろんこれは御存じのことだと思いますけれども国民所得に対しまして日本の国の税が一体何%になっておるかということで、四十八年で国税、地方税を合わせましてそのときの国民所得に対して二二・七%、これはもちろん御存じのことでございましょうね。それを今度五十五年には三%ふやす、こういうことでございます。だから先ほど主税局長が申しておりましたが、五十五年に一遍にやろうとすれば一遍にそれへ持っていかなければならぬ、それを五十三年、四年というふうに順次やっていきますれば増税の坂道が非常になだらかになってくる、こういうことでございます。
  91. 高橋高望

    ○高橋委員 大臣、私がお願いしておきたいことは、結果として三%の負担増になるということであって、その過程においていわゆる公正な税制をお考えいただいて、そして結果として負担率が三%増になった、こういうふうに御展開をいただきたいというのが私のお願い事でございます。
  92. 坊秀男

    坊国務大臣 そのとおりでございます。
  93. 高橋高望

    ○高橋委員 それではこれはちょっと事務当局の方あるいは御専門の勉強をなさっていらっしゃる方にお伺いしたいのですが、いまの私たちの立場ですと、ここで公債発行する、赤字公債であれ何であれ、とにかく国債発行すると、返済時の納税者に大変な負担がかかるというのが私たちのとっている考え方です。ところが一部の考え方としては、今日の人が国債を消化するということは今日活用する資源や機会を犠牲にしたんだから、もう今日で国民は支払い済みになるんだ、こういうふうな解釈をなさる説がありますが、現在の当局の取り組む姿勢として、私たちのように今日国債を購入し、また協力した者、その子孫が将来大変な負担になるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  94. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 公債負担論はアダム・スミス以来非常に議論があるところでございまして、古典的な考え方は、公債負担というのは世代間にシフトする、新正統派といいますか、ケインズやなんかのいまの多数説は、いまお話のあったように、公債を出したって現世代の経済資源がふえるわけじゃないんだから、結局同一世代で負担するというような議論があるわけでございますが、物の本によりますと、その場合に負担の概念がいろいろ違うわけでございます。前者の古典的な考え方の場合には、負担というのは——犠牲といいますか負担といいますか、要するに租税の場合には強制的に所得なり資源が移転する、公債の場合には任意的に所得なり資源が移転する。その場合に負担とか犠牲とかいうのは、強制的に行われた場合に、それが負担であり、犠牲であるという概念をとっているわけでございます。多数説の方の同一世代で結局公債負担というのは負担されるという考え方の場合には、そうではなくて、公債の場合には自発的に引き受けるわけでございますが、多数説の場合には主として民間の方から政府に資源がシフトするというのを負担とか犠牲とかというふうに概念されているという整理がなされております。第三の立場として古典的な考え方整理した考え方が出てまいりまして、消費の転嫁だとかあるいは公債を出すと民間の資本蓄積が減る、その結果所得が減るというような論理構成によって、公債負担というのはやはり将来にシフトしていくんだという考え方が出てきておるわけでございます。  私どもは四十一年のときに公債を導入する際に、公債負担論もかなり勉強いたしたわけでございますが、非常にわかりにくいわけでございます。そこで学説的に言いますと、資産説とか生産力説とかという説明をしておるわけでございます。投資的経費の見合いに資産ができる、その資産が長年にわたって便益を国民に提供する。そして回り回って税源の涵養、国民経済の引き上げになるという説明を四十一年のときもしておるわけでございますが、その場合にそのインプリケーションといたしましては公債負担というのは世代間にシフトするというような説の方に若干近い考え方をとっておるわけでございます。こういう学説はともかくといたしまして、実務的に考えますと、利払い費なり償還費というようなものを負担することを一応負担の概念だといたしますと、現世代が公債を出す、そうして利払い費や償還費というのは将来の納税者が負担する。そういう意味においては、公債負担というのは将来の納税者が負担するのではなかろうかというのがきわめて常識的な考え方ではなかろうかと思います。
  95. 高橋高望

    ○高橋委員 大変よくわかりました。ありがとうございます。  時間が参りましたので最後に申し上げておきますが、私たちの党で歴代の大蔵委員が皆様方にお訴えもし、また立場を貫いてきたかと思いますけれども財政には金額と同時に時期と展望が必要だということ、昨年までの竹本前委員がそのようなお話を絶えずしていたかと思います。その立場に立つと、どうも政府のいろいろな御展開、当局の御努力にもかかわらず、三つのツーがあるということを私たちはよく言っております。一つはツーレイトだ、遅過ぎる、それから一つはツーリトルだ、何かおどおどしていてやることが小さい、それから三番目はツーローだ、トーンが低い、こういう三つのツー、ツーレイト、ツーリトル、ツーローであってはならないということをお訴えしてきたと思います。私も残念ながら今日、この場所でまたこのことを繰り返さざるを得ないのは大変遺憾でございますけれども、要は国の将来をお考えいただいて、思い切った手段、方法を勇猛果敢に断行してほしい、こういうことだと思います。特に、近く予想される新税構想展開等に当たって、こういったいろいろな意味での、私個人の立場を含めたわれわれの党の立場、この三つのツーレイト、ツーリトル、ツーローにならないようにお願いを申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  96. 小渕恵三

    小渕委員長 次回は、来る八日金曜日午後五時理事会、午後五時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十二分散会