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1977-03-29 第80回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十九日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 山下 元利君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    鹿野 道彦君       鴨田 宗一君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    砂田 重民君       丹羽 久章君    林  大幹君       原田  憲君    村上 茂利君       村山 達雄君    毛利 松平君       山崎武三郎君    山下 徳夫君       山中 貞則君    伊藤  茂君       池端 清一君    川口 大助君       川崎 寛治君    沢田  広君       只松 祐治君    村山 喜一君       貝沼 次郎君    伏木 和雄君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    小林 正巳君       永原  稔君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         外務省経済局次         長       賀陽 治憲君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵大臣官房長 長岡  實君         大蔵大臣官房審         議官      額田 毅也君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省証券局長 安井  誠君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁次長   山橋敬一郎君         自治大臣官房審         議官      福島  深君  委員外出席者         議     員 山田 耻目君         警察庁刑事局保         安部保安課長  柳館  栄君         外務省アジア局         外務参事官   枝村 純郎君         通商産業省産業         政策局商務課長 鷲沢 亨一君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器電機課長  鈴木  健君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      福原 元一君         建設省道路局道         路総務課長   永田 良雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   丹羽 久章君     鹿野 道彦君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     丹羽 久章君     ————————————— 三月二十八日  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等  共済組合法に規定する共済組合が支給する年金  の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等  共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第六六号) 同日  税・財政金融制度改善等に関する請願外四  件(草川昭三紹介)(第二〇六四号)  米軍基地跡地利用並びに大企業に対する税制  の優遇措置撤廃に関する請願外二件(佐藤観樹  君紹介)(第二〇八〇号)  一兆円減税に関する請願森井忠良紹介)(  第二〇八一号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第二一三九号)  大和基地跡地利用に関する請願松本善明君  紹介)(第二一七九号)  府中市の米軍基地跡地地元利用に関する請願  (工藤晃君(共)紹介)(第二一八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  貴金属特別会計法廃止する法律案内閣提出  第四九号)  土地増価税法案村山喜一君外九名提出衆法  第一七号)  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第五〇  号)  税制に関する件      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。貴金属特別会計法廃止する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  3. 沢田広

    沢田委員 今回の貴金属特別会計法廃止する法律案関係をいたしまして若干の質問をしてまいりますが、大蔵大臣が残念ながらおりませんので、そのかわりその点は次官がお答えをいただきたいと思います。  最初に、この特別会計足跡、その当時の歴史的な使命をそれぞれ果たしてきたと思うのでありますが、昭和十二年といえば、支那事変の直後において金資金特別会計が生まれました。それから大東亜戦争になったわけでありまして、当時における国民状態から見れば、いわゆる大東亜戦争協力をする、こういう立場に立って、それぞれの結婚指輪であろうと、いわゆる家宝となっているような銀杯なり金杯であろうと供出をしていかざるを得ない、あるいは警察が来、憲兵が来、そういう状況で、戦前を知っている人であるならばこれらの供出なりその他、出さざるを得なかった実情については理解が得られただろうと思うのであります。  限られた時間ですから簡単にこのストーリーだけ申し上げますと、その後、今度は連合軍接収という時代があります。これはいわゆる連合軍の進駐によって貴金属接収ということが行われて、その行われた接収貴金属の行方というものは、これはこの特別会計とは直接関係ないにしても、多くの疑問と多くの疑惑を残して、今日児玉事件というようなものの一つCIA資金となり、あるいは多くの問題を提起して今日に至っております。しかし、それが今度返還されるに当たってはこの特別会計に入ってきているわけでありますから、これもこの特別会計足跡として度外視するわけにはいかない。  その後、高度成長時代においては非常に日本が外貨をためたわけです。札束をためたわけでありますが、当時、金の保有高はまだきわめて少なかった。金の保有高が少なかったにかかわらず西ドイツ等においては、あるいはイタリア等においてもそうでありますが、金の保有高を非常に高める努力をしていた。ところが日本札束だけをもらって喜んでいた時代があった。多くの国民は、米ドルの札束だけでは話にならぬ、もっと金の保有高を高めろ、こういう声があったにかかわらず政府拱手傍観をしてきた。そして今日に至って、それから金を幾らかずつ買い上げてきた。そして今回、この特別会計廃止するに当たって金の若干の放出を決めた、その間、金の自由化ニクソン声明があり、あるいは同時に金の固定化があり、自由貿易というかっこうになった。  こういう足跡を探ってみたときに、この特別会計廃止するに当たっての国民の感情というものをどういうふうに受けとめておられるのか。この点をまずお伺いをいたしますとともに、昭和十二年に始まって以来、戦前から戦後を通じてのこの特別会計の果たした役割り、それから国民に与えた被害、あるいは恨みつらみというものがこの廃止によってどのように報われていくのであろうか、あるいは報いる道はどこにあるのであろうか、あるいは報われなくてもいいというふうに考えているのであろうか、こういう点についての回答をひとつお願いをいたしたいと思います。
  4. 高鳥修

    高鳥政府委員 沢田委員お答えいたします。  戦時非常事態における国民全体からの貴金属供出の非常な御協力に対しましては、それが戦時という非常事態であったために、国民皆様方の温かい御協力をいただけたものと思うのでありまして、それに対しましては、きわめて不十分ではありましょうけれども対価も一応お支払いをしてあるわけであります。したがいまして、それがその後どう処理をされたかということにつきましては、おのずから別問題ではございますが、それは戦時非常事態のこととして御理解を賜りたいと思うわけであります。  それから、連合軍貴金属接収の問題でございますが、これは、この会計に残されました貴金属とは関係がないと私ども承知をいたしているところであります。  ところで、今回この特別会計廃止するに当たりまして、非常に長い歴史の中で、最終的に残されたものを処分をすることに相なるわけでございますが、一般会計において一千億円の収入を見込んでいるところでございます。これは、この会計廃止いたしまして処分をする一千億円につきましては、現下厳しい財政状態の中で、国民全体の福祉向上、さらにはまた景気の浮揚等、非常に多様な財政需要に応じて、広く国民一般のために生きた使われ方がされるようにいたさなければならない。そういうことで、一般財源として見込ませていただいておる次第であります。
  5. 沢田広

    沢田委員 関係ないということを言われましたけれども、この接収貴金属等処理に関する法律の中の第二十条によれば、「大蔵大臣は、」この後朗読は省略しますが、「戦時中、政府が決定した金、銀、白金又はダイヤモンドの回収方針に基き、政府の委託により、取得した貴金属等」、それから「前号の貴金属等のうち、政府指示に基き、金属配給統制株式会社が、交易営団又は社団法人中央物資活用協会から取得した貴金属等」、それから「社団法人金銀運営会が、戦時中、政府指示に基き、旧日本占領地域金製品を輸出するため、旧金資金特別会計から取得した金の地金」、あと「軍需品製造に従事していた者が、戦時中、軍需品製造又は修理するため、その材料として旧陸軍省海軍省又は軍需省から取得した貴金属等」、これらは特別会計に加える、こういうふうになっておりますが、その点はどうですか。
  6. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 ただいまお述べになりました接収貴金属処理法二十条の問題でございますが、これは、戦時中に、ただいまおっしゃいましたようないろいろ金銀運営会とかそれから交易営団その他が国民から供出を受けました貴金属は、これを国の一般会計の所有にするということを定めているものでありまして、特にその後、いわゆる一般会計に所属しました貴金属貴金属特別会計所管がえしたというものでありますが、その規定自身は、貴金属特別会計との関係を述べたものではございません。
  7. 沢田広

    沢田委員 少なくとも無関係ではない、こういうことで、一応特別会計を土俵として借りて、そこで接収された一般会計で得た金を特別会計に繰り入れをして、また繰り出しをする、そういうふうに特別会計をともかく一応通過させてきた、こういう歴史的な足跡については否定することはできないと思うのですが、いかがですか。
  8. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 戦後連合軍により接収されたものの中には貴金属特別会計に属していた国の貴金属接収されたものがあるわけであります。そういうことでその返還後同特別会計に帰属されたという関係では、そういう接収貴金属貴金属特別会計に戻ったという意味で関係があります。  それから、先ほど申し上げましたように、一般会計に属しました貴金属をその後貴金属特別会計所管がえしたという経緯はございます。
  9. 沢田広

    沢田委員 以上の経緯によって今日持っているこの特別会計、一応予算では九百九十七億、一千億ということで予算計上いたしておりまするが、この一千億になろうとしている予算の中には、この戦前戦後を通ずる国民の本当に血と汗の結晶であるべきものがそれぞれ含まれた経緯の積み重ねであったということが言えると思うのです。そういうことに立ってみれば、当然これらの金は、今日の金は少なくとも戦後それぞれ買い求めてきた金であることには変わりはないにしても、その歴史的な背景となったものについては、当時やむを得ず戦争協力した、ほとんど拒否をすることは不可能であった、そういう状況の中から協力した人々に返還をしていく、そういう要素を含んでいるものだと思うのでありますが、その考え方についてお伺いをいたしたいと思います。
  10. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 御指摘のような点もございますので、私どもといたしましては五十二年度予算編成の過程におきまして、いろいろ財源事情がございましたが、国民生活の安定と福祉充実という観点から諸般の施策の充実を図ったわけでございますが、その際にこの貴重な特別会計整理収入をそういうふうに活用さしていただいたというふうに考えております。
  11. 沢田広

    沢田委員 そういうふうに活用さしていただいたと言われておりますが、そういうふうというのはどういうふうになんでありますか。結果的には、抽象的であって、一般会計の中に入ってしまって、国民的に反映されたものは、それは何でもない空気みたいなものにしか反映しないということになるのであって、やはり目的的に使っていく、こういう姿勢が必要になるのではないかというふうに思うのでありますが、その点の見解を承りたいと思います。  あわせて、日銀に対してだけ一グラム当たり六百九十円という単価はどういう事情でこういう金額になったのでありますか。われわれ国民が当時供出したというようなものについても、恐らくこれは没収されてしまったわけでありますけれども、現在では時価は千四百円ぐらいするわけですが、それをわざわざ六百九十円という非常に安い金額日銀払い下げをする理由もいまの条件とあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  12. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 前段の点でございますが、特定財源特定目的に使うというような、そういう性格のものではなくて、一般的に国民的な観点から福祉充実あるいは国民生活の安定、そういう角度で使わしていただくのが事柄の性質上ふさわしいのではないか。それから、一つ財政論といたしましては、この貴金属特会整理収入というものは、そういうふうな特定目的に使うような、そういう性格のものではないのではなかろうかというふうに考えております。  それから後段の御質問は、国際金融局長の方から御答弁をお願いいたします。
  13. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 後段の点についてお答え申し上げます。  日本銀行に対しまして売り戻し約定がございまして売り戻す地金につきましては、御指摘のように、一グラム六百九十円ということで見込んでおります。これはそもそも戦時中に当時の金資金特別会計に金の余裕がございませんで、政府日銀保有金を将来買い上げ価格と同じ価格で売り戻すということを約束して買い上げたものでございまして、その売り戻し約定は一グラム四円八十銭または五円五十五銭となっていたわけでございます。しかし、その後、戦後の大きな物価変動等情勢変化がございまして、約定値段四円八十銭または五円五十五銭で返すというのは幾ら何でも適当ではないわけでございます。かといいまして、時価で返すということになりますと、これは売り戻し約定の実行ということではなくて、普通に売買するということにもなりますので、その両方の観点から考えまして、この特別会計取得価格運賃等諸掛かりを加えました、いわばそのコストを十分にカバーするという値段六百九十円というふうに見込んだわけでございます。こういう値段でございましたら、かつて当時の大蔵大臣が御答弁申し上げましたように、国民に特別の負担をかけないで売り戻し約定を実行できるということで、こういうふうに見込んだわけでございます。
  14. 沢田広

    沢田委員 二つの面があると思いますが、まず最初に、この六百九十円の算出根拠をひとつ言ってください。
  15. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 六百九十円の内訳でございますが、約六百八十六円が貴金属特別会計輸入コストでございまして、それに三円何がしかの運賃保険料経費等を加えまして六百九十円と見込んだものでございます。
  16. 沢田広

    沢田委員 この輸入コストとその前の約定書との関係はどうなんですか。なぜ輸入コストがここへ出てくるんですか。ちょっとその関係についておっしゃってください。
  17. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 約定価格を文字どおり読みますと、一グラム四円八十銭または五円五十五銭ということになるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、戦後の大きな物価変動等情勢変化がございますので、五円五十五銭あるいは四円八十銭をそのままとるわけにはいきません。そこで、この特別会計が取得いたしましたコスト、そのコストを割るということになりますと、今度は特別会計あるいは国が損する、国民負担をかけるということになりますので、この特別会計ロンドン市場から金を購入した場合の平均価格運賃保険料等の諸経費を加算して算出した価格が六百九十円ということでございます。
  18. 沢田広

    沢田委員 二つの面があるので、これも先ほど申し上げたが、一つは、とるわけにはいかないということを言われたわけでありますが、この点についての解釈は、もう一つ生命保険の例にとってひとつお伺いをいたしたいのです。金融局長で結構です。  この間も新聞に、戦後一万円で契約をしてみたらば、三十年たった後一万円の金をもらった。当時の一万円は非常な価値を持っていた一万円であった、しかし今日の一万円というものは、それは三十年後の一万円はきわめて価値が少ないものである。こういうことの一面があると思うのでありますが、そうすると、こういうものについてはこういう操作をするけれども、同じ金融関係を扱っておられるあなた方が同じ生命保険なり何かについてはそういう価値変動については何ら考慮しない、こういうことについては怠慢ということになりはしないですか。どうですか、その点お伺いしたい。
  19. 高鳥修

    高鳥政府委員 ただいまの売り戻し約定上の売り渡し価格の一グラム四円八十銭なりあるいは一グラム五円五十五銭なりという当時の価格を決定いたしましたのは、当時のやはり生産費相当額をそれぞれ計算して決定しているように、現在これは推論する以外にないわけでありますが、それぞれ調べてみますと、そういうことできわめて原価に近いものであったと思うのであります。そして、本来ならばこの金の日銀からの買い受けは余裕ができたときに売り戻す、こういう約定になっておって、それが今日までのような非常に長い時期を隔ててのこととは想定していなかったと思われるのであります。したがいまして、この約定基本精神は、きわめて短い間に売り戻しができるものということを前提にしてこの価格が決められており、しかもそれが生産原価ないし生産費諸掛かりを加えた程度のものであるとするならば、当時の基本的な考え方に基づいて約定を、本来ならば日銀との間にもう一回これは新たにこういう形で契約を変更してお返しをする、こういうことで改めて契約してお返しをする、売り戻す、こういうことになろうかと思うのでございます。
  20. 沢田広

    沢田委員 私の言っているのは、生命保険の例を取り上げて、生命保険のような場合には、戦前のときに入って戦後にもらった人たちも、ここにおられる皆さん方もそういう経験を持っているだろうと思うのですが、こういう措置は講ぜられなかった。いまでも講ぜられていない。インフレに対する対策というものは講ぜられていない。この価値が変わったという評価をなぜこの場合だけ適用するのか。その政府の一貫しない姿勢考え方についていまお伺いをしているわけです。もしそういうものがたとえば金科玉条であるとするならば、この部分だけ取り扱いを変えるということは過ちじゃなかろうか、もしそれが正しいとするならば。また、もしこういうふうに変えていくとするならば、時代とともに価値が変わるという考え方になるとするならば、当然それはすべてのものに平等に価値が変革していくような政治をとっていくことが正しいのではなかろうか。こういう点についての一致性整合性についてお答えをいただきたい。
  21. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいま政務次官からお答えを申し上げましたように、日銀大蔵省との間の約定がございまして、金資金特別会計に金の余裕ができた場合には現物で売り戻すというような約定になっておるわけでございます。それで、ただいま御説明がありましたように、本来現物というような考え方が背後にあるわけでございますので、その現物価格ということをどう評価するかというふうに考えたわけでございます。戦前の四円八十銭なり五円五十五銭、こういうもので現在金というものは買えるものではない。とすると、生産費的なものになる。そうすると、特別会計が金を外国から買いましてそして日銀現物で返すということは、約定余裕ができた際ということがございます。余裕ができた際ということで考えますと、四十七、八年の段階で、大体この特会廃止理由にもなるわけでございますが、余裕が出てきた、そのときの仕入れ値段というようなものを考えまして、諸掛りを入れて六百九十円と、こういうような考え方をとったわけでございます。  それから生命保険の場合でございますが、私どうも担当外でございますので的確な御説明ができませんが、いま至急に呼び寄せますので、それをお待ちいただきたいと思います。
  22. 沢田広

    沢田委員 いまいみじくも現物価格対価、こういう表現を使われました。だから、そういうことであるとすれば、当然これは現在は千四百円、恐らく年度末行くまでには、三月三十一日行くまでにはさらにこれが上がっていくであろうということは、ほぼ想像にかたくないと思うのです。そういうような状況で、恐らくこの予算の計上をされているこの後の分の一グラム千二百二十五円でも、すでに現時点においてこれは上がっているわけですから、当然その差は予算を上回ることになるだろう、こういうことだけは言えると思うのでありますが、その点もお答えをいただきたいと思います。  さて、もう一つ追加をするのは、基地跡地の問題であります。基地跡地の問題も、いまの論議からいけば、これは戦争をするために国民に対してこの土地を提供してほしい、こういう約束で基地を提供させた、あるいは戦争をするために国民からその土地を提供させた。いわゆる日銀契約が、約定というものがもし正しいと考えるならば、当然その対価というものは、この日銀約定を守るという前提に立てば、たとえば基地跡地現状対価という論理も、これは失われていくのではなかろうか、このように思うのでありますが、その点はどうお考えになっておられますか、お伺いをいたします。
  23. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 戦時中に軍がいろいろ購入しました国有地の問題でありますが、先ほど政務次官からお答えがありましたように、ああいう非常事態でありましたので、現在の平和な時代から考えますと、心情的にはいろいろな感概がおありかと思いますが、法律的に見ますと当時、通常の売買行為により適正な対価を払って国が取得した土地になっておるわけでございます。そういたしまして、その国有地処分する場合に当たりましては、いろいろ法律に基づきまして、用途によりましてはいろいろな優遇措置を講じて処分しておるということになっておるわけであります。
  24. 沢田広

    沢田委員 だから、非常に政府方針はめちゃくちゃということなんです。日銀についてだけはこういうスライド制をするんだ、しかし国民から取り上げたものについては、今度は高く現状価格でやる場合もあるし、また業界がやっているものについてはそのまま価格を据え置いて国民に犠牲を負わせていく、そういうことが、この特別会計払い下げ価格の中に如実に物語っていると、こういうふうに表現しても差し支えないと思うのですね。だから、いまの答弁で言えば、なぜ日銀だけこういう輸入コストに引き上げなければならないのか。五円五十銭でやったらいいじゃないですか、もしそういう約定であれば。現物価格ということになれば千四百円で、したらいいじゃないですか。現在が千四百円なんですから、千四百円にすべきじゃないですか。それのあいまいな態度をとっておるところに問題がふくれ上がっていくと思うのですが、その点いかがですか。
  25. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 財政法の九条にございますように、本来国の財産の処分価格というのは時価というような観念が通常でございまして、それ以外のベースをとる場合には法律の定めをいただくということに制度的になっております。この場合、日銀に対しまして約定以外の分は御承知のような時価でやるわけでございます。予算上は確かに千二百二十五円になっておりますが、その日銀に売却する際の時価で、これは上下いたすことは当然でございます。本件の約定にかかわる分につきましては、時価をとらずして、約定があるがゆえにただいま申し上げましたような貴金属特会の取得原価で売却する、これにつきましては財政法の規定によりまして、今回法律の定めをいただこうとしておるわけでございます。
  26. 沢田広

    沢田委員 これだけにこだわっているとあとのことができなくなってしまいますから、非常に不満でありまして、いままでの質問で明らかになったように、業界がやるものには保護的な政策をとって固定化をする、そして一般国民、大衆から取った土地などに対しては時価ということによって押しかぶせていって、また新たな収奪を行う。そして、日銀にはその約定書というものを見せてもらいたいと思うのですが、見せてもらえればもらいたいのでありますけれども、その約定書というものがどんなものであるかわからぬけれども約定書ということを金科玉条としながら六百九十円というあいまいな価格をもってこれは払い下げをしようとしておる。こういうことはきわめて遺憾なことでありますから、特に善処を要望して、次の質問に入りたいと思います。  日本の金の保有高が低水準になったのはだれの責任であるのか。イタリアが一応経済の破綻をするという状況の中で西ドイツその他から多くの借款が行われました。しかし、この表にもありまするように、イタリアの金保有高は三十三億ドル、A分のBでいきますと準備高の五〇%、こういうような金の保有高を持っている。しかし、日本は五%である。あの高度成長の時代に、先ほども述べたようにたくさんのドルが入ったにかかわらず金の交換を怠った。この事実は否定できないと思うのですが、いかがですか、その点お答えいただきたいと思います。
  27. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 ただいま御指摘になりましたように、イタリアの場合には、昨年末の数字でございますが、六十六億ドルの外貨準備のうち、金が三十三億ドル程度でございますので、約五〇%金で保有しております。日本が百六十六億の外貨準備のうち八億五千八百万の金でございますので、約五%ということになるわけでございます。これは戦後、日本が国際収支の危機、困難に何回か見舞われまして、経済成長を続ける過程におきまして金を購入する外貨の余裕がなかったということは、いきさつとしては一番実態に合ったことであろうと存じます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 ようやく日本が、国際収支が立ち直りまして外貨にゆとりができましたのは昭和四十六年の中ごろと存じますが、すでにその前に四十三年の三月にはいわゆるワシントン協定ができまして金の二重価格制が実施され、通貨当局は民間市場から金を買えないということになったわけでございます。そして四十六年の八月にはいわゆるニクソン・ショックがございまして、ドルと金との交換制が停止されるということになりまして、通貨当局間の金の取得もできなくなったというのが実情でございます。  一方、確かに日本の金の保有は少ないのでございますが、国際通貨制度のあり方といたしまして、私どもは金をこの制度の中心に据えるよりは、SDRを中心に据えて育成すべきではなかろうかという観点から、国際通貨制度の改革にも参画してまいったわけでございますので、経緯といたしましても金の取得が困難であったということに加えまして、以上のような通貨制度に関する考え方もあるわけでございます。もちろんそうは申しましても金の役割りあるいは重要性が一夜にしてなくなるわけではございませんので、非常に国際的にセンシティブな問題でございますので、今後の国際情勢を考えて金の問題について検討を進めていきたいと思っております。
  28. 沢田広

    沢田委員 先ほど質問は、今日のような金の保有高が少なくなった原因というものの責任はだれか、あの高度成長のときにたくさんドルを抱えた、そのドルを抱えたときにいわゆるドルの札束だけしか日本は抱えずに、西ドイツはせっせせっせと、いわゆる金を抱えていった、イタリアも抱えていった、ところが日本拱手傍観をしていた。これは言うならば米ドルに対する信頼かどうかわからぬけれども、当てにしていただけが主であって、いわゆる自分の体を鍛えていくという本来の精神に欠けていたというところに欠陥があったのではなかろうかという質問なんですね。では、金本位体制が崩れるのかということに対しては、どう思われていますか。
  29. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 国際通貨制度におきます金の扱いにつきましては昨今国際間の合意ができまして、いまIMF協定の改正を進めているところでございます。日本におきましては昨年国会の承認を得たわけでございます。それによりますと、従来の戦後続いてまいりましたブレトンウッズ体制におけるがごとく金を中心とした通貨制度ではございませんで、SDRを中心的な準備資産として育てていく、各国の通貨の価値を表示する場合にも、金ではなくてSDR等で表示をしよう、それからIMFの増資等に従来金で払い込む義務がございましたが、そういったものもなくしていこう、それから金の公定価格廃止しようということになっておるわけでございまして、金がだんだん役割りを通貨制度において低下させるということに国際的な合意ができておるわけでございます。
  30. 沢田広

    沢田委員 続いてちょっと違った問題を二、三してからまたもとに戻りたいと思いますが、この貴金属関係については、先ほども述べたように歴史的な過程がある。当時、五カ月なり七カ月なりの申請期間を置いて接収貴金属返還を行った歴史的な過程もありました。しかし、これを閉鎖するに当たって、もう一回、戦前戦後を通じて本人に申請をさせて、忘れていた、あるいは当時は忘れていたというよりもあきらめていた、こういうような状況になっていて、もしもらえるものならばもらいたい、証明が非常にむずかしいと思いますけれども、申請だけでも受け付ける意思はないかどうか。そういう多くの国民戦前供出したもの、それは当時は対価であったかもしれない。憲兵なり警察官がついてきた対価であったかもしれない。しかし、その対価は不当なものであると今日思えると思うのです。ですから、そういうことにおいて申請だけでも受け付ける、わかるものだけでも受け付けてみるということは行えないかどうか、その点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  31. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 戦争中に国民供出しました貴金属等は、先ほど政務次官の方からもお答えがありましたように、それらの回収機関が適正な対価を払って国民から供出を受けたということで、所有権はそれぞれの者からその後回収機関なり国に移っているわけであります。戦時中という非常事態であったために、いまから考えると強制的に徴発されたというようなことも心情的にはおありかと思いますが、法律的にはそれぞれの所有者から買い上げているということになっておるわけであります。そういうことで、それらのものは接収貴金属処理法に基づきまして国庫に帰属し、それぞれその法律に基づいていろいろ処理されたということになっておるわけでありまして、それをもとに戦時中の供出者にさらに申請をさせてということは、現在の時点では法律的にできないことであると考えております。
  32. 沢田広

    沢田委員 法律上できないということだけで私は了解するわけじゃないので、何らかの方法は講ぜられないかという切なる期待を込めて質問をしているわけでありますが、次の問題に若干触れていきたいと思います。  この払い下げを三十五トンにした理由はどういうものなのか、一応まずお伺いをしておきたいと思います。払い下げの中で百トンの処分をすることになりました、そのうち四十四・七トンについては日銀から売り戻し条件つきで買い取ったものである、三十五・三トンは、今度は外貨準備に計上している分である、こうなっておりますね。これを合わせると残りの二十トンがあるわけですね。そうすると、三十五トンということにした理由は何かということをちょっと。
  33. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 三十五トンの分はすでに外貨準備に入っておりますので、これは日銀に移転するのが適当であるということで日銀に売る。残りの分につきましては売却の値段だけ予算上見込んでおりますが、だれにということはまだ決めてないわけでございます。
  34. 沢田広

    沢田委員 二十トンの保有金は、これで閉鎖をされますと三月三十一日前にこれを処分するつもりですか、それとも三月三十一日以後まで持っていくつもりですか、その点どうですか。
  35. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 来年の三月三十一日までに処分したいと思っております。
  36. 沢田広

    沢田委員 時間の関係で次にいきますが、現在の金の自由化に伴いまして、金のいわゆるあり方というものが非常に時代的に変わってきた。郵便貯金をしても銀行預金をしても租税特別措置法によって税金もかかる、公定歩合の引き下げによって今度は金利も下がる。そうすると一〇%程度のインフレの中であって、価値を保存していくためには土地はもうだめだ。そうなってくると、いわゆる価格変動に対応していくには相場としての金というものが次の主要な場面を展開していく品目になっていくであろう、こういうことは想像にかたくないと思うのです。土地を買うこともむずかしい、預金をしても損をする、損をするというよりももうけが少ない。インフレに追いつかない。そうなってくると、どうしても金というものが次の時代の脚光を浴びていく。と同時に、この金というものを今度はその市場の相場の品目として相当荒かせぎをしている業者も相当多い。こういうことでありますから、これは通産省と警察当局にお伺いをするわけでありますが、そういう時代的な背景を考えてみると、そのことが如実に犯罪として多く出てきている。前橋であるとかあるいは広島であるとか、そういうようなところには非常に被害が多く出て、五百万だとか一千万だとか、相続の関係もあるでしょうが、土地を売った代金というものがそういうものに充てられていっている。これには税金もかからないから、その面においては置いておいたってちっとも値は下がらない、こういうような条件もあるから投資対象になっていく、こういう可能性も含んでいるわけですね。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう条件も含めて、二割を手付金として売買をしていく。そうして実際に流動しているものはそうではなくて、いわゆる小豆と同じ状態において相場の状況を示す、こういうことがいまの日本の国内状況として現出しているわけでありますが、これらの状況について通産省としてはどう把握をされているか。それから警察当局としてはこれらの犯罪に対してどういうような対応の仕方をしているのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  37. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 お答え申し上げます。  先生も御承知のとおり金は現在商品取引所法に基づく上場商品には指定されておりません。最近金につきまして、御指摘のとおり任意団体の組織でいわゆる直物取引あるいは延べ取引を行う市場が開設されているということも聞いておりますけれども、いま申し上げたような事情から、その実態の詳細についてはまだ把握していない段階でございます。  先生も御承知のとおり、商品取引所法におきましては、第八条で「何人も、先物取引をする商品市場に類似する施設を開設してはならない。」と規定しており、同法第二条第四項におきまして先物取引の定義を行っております。これによりますと、先物取引と申しますのは、第一に、取引所が定める基準及び方法に従って行われる取引をいう、第二番目に、将来の一定時期に売買の目的物たる商品及びその対価を現に授受するように制約される取引であること、第三に、現に当該商品の転売または買い戻しをしたときは、差金の授受によって決済できる取引であることとされてございます。したがいまして、現在行われております金の市場につきましても、いま申し上げましたような要件に該当するものは当然違法でありまして、調査の結果違法事実が判明した場合はしかるべき処置をとる所存でございます。  なお金の取引につきましては、現在商品取引所法の上場商品となっておりませんために、専門的知識、経験に乏しい者が参加することは非常に危険を伴うということで、このために通産省におきましても、消費者ニュース等の媒体を使いまして、一般消費者に注意を喚起しているという状況でございます。
  38. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  金の先物取引が行われておるということにつきまして、情報として私どもも承知いたしておるわけでございます。ところが、現在までに警察に対しまして、この金の先物取引をめぐっての詐欺であるとか横領であるとか、あるいはただいま通産省から説明のありました商品取引所法第八条違反といったようなことで告訴あるいは告発、さらには被害申告というようなものは警察に出ておらないわけでございます。しかしながら、そういったことを通じて犯罪の容疑が明らかになってまいりますれば、私どもはこれを厳正な捜査を通して摘発してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  39. 沢田広

    沢田委員 どうしてみんなそうそらぞらしい返事ができるのかと思うのですが、先週の週刊文春にも「「日本のゴールド・フィンガー」十一人」というのが出ておりましたが、全国貴金属取引協会、日本金市場の開設あるいは日本国際金取引協会、こういうようなものができていることは、これはどの関係ですか、通産省の関係では御存じなんでしょう。しかも、それにはいろいろな会社の名前が全部挙がっていて、その顧問には政界の大物の人の名前が皆挙がっている、こういうことも承知されて答弁されているのですか、どうですか。  それから、警察の方の答弁もそうなんですが、これは同罪だからなかなか告訴、告発が出ないわけですよ、いま取引が禁止されているものを取引するわけですから。自分がわざわざ縛られに行くばかもいないのですから。そういう意味においての告訴、告発がないからといって、この状態を野放しでいいかという質問なんですから、その点もあわせてお答えをいただかなければならぬし、善良な市民がそれによって被害を受けている実態があるじゃないか。告訴、告発がないから、それは野放しでいいんだという答弁では済まないのではないかと思うのですが、その点あわせてお答えをいただきたいと思うのです。
  40. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 先ほど申し上げましたとおり、金は現在商品取引所法の上場商品として指定されておりませんので、われわれとしては十分実態を調査していないというのが現状でございます。したがいまして、至急、今後あらゆる方法を通じましてこの実態についての把握を行ってまいりたい、かように考えている次第でございます。  なお、金取引に関連しての苦情あるいは被害等の訴えの事例の問題でございますが、本年に入りまして二、三の委託者から当課に対して電話でもって金の取引に関連して損をしたけれども、金は商品取引所法に基づいて認められているのかという質問はございましたけれども、具体的に紛議が持ち込まれたという事例はございません。また、地方通産局にも連絡をいたしまして、こうした事例があれば連絡するように指示をしておりますけれども、いまのところ被害例の報告は受けておりません。
  41. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  先ほどちょっと言葉足らずの点がございまして、告訴、告発と申しましたのは詐欺あるいは横領にひっかかった場合を念頭に置きまして申し上げたのでございます、しかしながら、先生御指摘の商品取引所法第八条違反というものはほうっておいてもなかなか申し出てくる者はないだろうと思いますので、この法律に照らして違反になるものは摘発をしてまいりたい、こう考えております。
  42. 沢田広

    沢田委員 そのままでちょっと残っていてください。私がこの週刊文春に載っている記事で記者に直に聞いてみた。記者は自分でこれを歩いて取材をしたわけですね。そして、ここに十一の商社、新生であるとか新和とかいろいろ会社が挙がっております。岸信介先生等も名が挙がっておるそうです。本人は知らないと言っておるそうですが、そう書いてあります。一応顧問には皆なっておるそうですね。そういう協会が実際には月何トンという金の売買を行っているということが記事になって出ている。これは社会一般に流布されておることなんです。私が直に記者に電話をかけて聞いてみた限りでは、あっちに飛びこっちに飛びして取材した方の実際の言葉としてぼくも聞いているわけだよ。単なるうわさではないのだ。そのことをいまのような抽象的な、これは通産省も含めてですよ、ただ単に実態がつかめませんからということで、ここで時間が来れば、その時間何とかがまんすれば時間切れで終わってしまうのだ、そういう姿勢答弁をされるのははなはだ遺憾だと思うので、この点通産も警察もあわせてもう一回姿勢を改めてお答えいただきたいと思うのです。
  43. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 先ほども申し上げましたとおり、週刊誌その他の報道でもっていわゆる商品取引所に紛らわしいものがかなり最近頻発しているという記事が出ていることは存じておりますが、たびたび申し上げておりますとおり、取引所法の上場商品でないために、その実態を把握することはきわめて困難であるという実態が従来ございました。しかしながら、当方といたしましても、この問題につきましては、それを放置するという態度ではなくて、先ほど申し上げましたように、あらゆる方法を通じましてできるだけ早急に実態を把握の上、もし第八条に抵触するというようなことがあった場合は、しかるべく処置をしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  44. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  金の先物取引につきましての詳細な実態は、私どもも報告を受けておらないわけでございます。しかしながら、実際に私どもがこれを犯罪として捜査してまいります場合は、情報そのものをもう一遍捜査資料に転化していかなければならないというような作業もあるわけでございます。しかし、そういった困難もございますけれども、そういうことも含めて心を新たにして捜査を進めてまいりたい、こう考えております。
  45. 沢田広

    沢田委員 今度またもとに戻りますが、二つ聞きたいと思うのです。  UPIの国連担当記者をやっておったタッド・シュルツという人が、これはタングステンですから貴金属にはならないかもわかりませんが、いまから二十年くらい前に——もっと前ですね、一九五〇年ごろですが、中国から日本に密輸して十五万ドルぐらい児玉譽士夫がふところに入れた。これを純金とダイヤということでトラック二台分を宮内庁に持ち込んだ。宮内庁は、きょうは質問答弁者に入れておりませんけれども、断った。一台分をGHQに渡した。その残りの一台分はどこに行ったのか、こういう疑問がそのまま残されているようでありますが、これは接収貴金属返還の中に含まれている分と解していいのか、それともそうでないと解するのか、当時の資料からこの点明らかにしていただきたいと思います。
  46. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 接収貴金属は、昭和二十年終戦直後から約五年間にわたりまして、連合国占領軍により接収された貴金属でございまして、それが講和条約発効とともに日本返還され、先ほど来申し上げておりますように、処理法に基づいて処理をしてきておるわけでありますが、そういうわけでありますので、ただいま先生のおっしゃいました問題の貴金属は、この接収貴金属とは関係ない。もしあるとすれば関係ないものと考えております。
  47. 沢田広

    沢田委員 関係ないということはどういうことですか。関係ないというのはあなたが関係ないということなんですか。どういうことですか。
  48. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 連合国占領軍により接収された貴金属ではないということであります。
  49. 沢田広

    沢田委員 あと二つばかりありますが、次に、関連をして、引き揚げ者の、これは貴金属になるものもあるであろうし、それから、貴金属でないものもあると思うのでありますが、引き揚げ者の物品の押収が行われた、これは台湾であれ、朝鮮であれ、あるいは満州であれ、中国の関係であれ、とにかく全部引き揚げ者の場合の物品の押収が行われた。それで、引き揚げ者の皆さん方からすれば、これは返してほしいと願っているものだと思うのです。この物品は、法律的にはどの会計に入っているのか、現在の財政的な取り扱いとしてはどうなっているのか、それから、これの処分についてはどう考えているのか、この点もお答えをいただきたいと思います。
  50. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 詳細をつまびらかにいたしませんが、多分税関でお預りをしてお返しをしたというふうに聞いておりますが、ただいま関税局の方を呼びます。
  51. 沢田広

    沢田委員 これは、いわゆる引き揚げ者の預置部に保管をされているはずなんでありますが、時間がもう来てしまって、皆時間切れでごまかされてしまうような気がするわけでありますけれども、後で答弁ということで留保をして、最後の質問に入りたいと思います。  先ほども述べたように、昭和十二年に金資金特別会計が始まって、まさに国民の血と汗と涙で、戦争協力をしようという立場でこの貴金属等国民から供出をされた。いまの特別会計でいって、いま対価は、いろいろな事情はあるにいたしましても、時価に直しても千四百億円にはなる。最低千四百億円になります。いまここでは九百九十七億組んであるが、実際の予算から見れば、千四百億の歳入には現在でもなるわけであります。これは差額は別にいたしましても、六百九十円に売らないで時価で売れば千四百億になる。せめて全国の県に十億ずつ、たとえば接収された人で不明な人、亡くなった人、行方不明の人、あるいはいろいろな関係で要求をしなかった人、そういう人々の気持ちに報いるために、それぞれの県に十億なら十億ずつ全部配る。供出されたりあるいは接収された人への恩返しという立場で各都道府県に十億なら十億を配付する。長崎と広島と沖繩は特にこれは被害の大きいところだから二十億ずつ加える。そうして五百十億、大体これが年度末には千五百十億には間違いなしになるわけだから、その余った分はぜひ各都道府県にいま言ったような予算の配付の方法によって県民の不特定多数の協力に報いる、それによって県民会館ができるか何かわからぬけれども、何ができるかは別として、それぞれの自治体にそれぞれの供出の産物として残す、こういう方法は考えられないかどうか。最後の質問としてお答えをいただきたいと思います。
  52. 高鳥修

    高鳥政府委員 先ほどお答え申し上げましたが、今回処分を予定いたしております金地金の総量は百・五トンであります。そのうち先生が御指摘のようないわゆる接収貴金属分と目されるものは、総体で約十一・六トンでございまして、全体の中では一割ちょっと程度でございます。したがいまして、先生が先ほど強調されておられました戦前からの一般国民の非常に大きな犠牲の上に成り立ったと思われるものにつきましては、十一・六トンであり、それもその当時の適正対価をそれぞれ支払いまして国が取得をした。それが現在から見たならば非常にわずかな金額であって大きな犠牲を払わせておるではないかという御見解は、御見解として承りますが、総量としてはそういうものである。かつまた、今回処分をいたしますことによりまして得ます対価につきましては、約一千億を予定いたしておりますが、これは福祉の向上、地方行財政水準の維持のために広く一般財源として活用させていただくというふうに考えておりますので、特定の県に幾らかずつお上げをして、それが必ずしも戦時中の犠牲者のためにお役に立つというふうな使途が適当に見出されるとも考えませんので、私どもとしては現在そのように対処をしてまいりたい、このように考えておる次第であります。
  53. 沢田広

    沢田委員 大いに不満がありますが、留保された件については追って御回答いただくことといたしまして、時間がありませんので、これをもって終わりたいと思います。
  54. 小渕恵三

    小渕委員長 佐野嘉吉君。
  55. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 ただいま議題になっております貴金属特会廃止する法案につきまして、若干お伺いをいたしたいと思います。きわめて普通のことをきわめてあたりまえな形でお伺いをいたしますが、丁寧に細かにお答えをいただきたいと思います。  この特別会計は、昭和二十四年に設置されて、それ以来、今日まで約四半世紀以上の長い間活動を続けてきておるわけであります。その会計を五十二年度末で廃止するということがねらいでありますが、その理由についてお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  先般ありました提案理由説明によりますと、四十八年四月の金の輸入自由化以降、民間による金の輸入は順調にずっと行われてきている。その間、金の輸入がとだえるというようなことも生じなかったかどうか。また、最近における金の民間輸入の状況というものがどんなふうな状況にあるのか、そういった点をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  56. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 お答えします。  昭和四十八年の四月から民間の金の輸入が自由化されたわけでございますが、第一年度におきましては、たまっておりました需要もございまして、輸入総額は百九トンでございました。四十九年度におきましては、その半分ぐらいの四十八トン、五十年度には五十六トンというふうになっております。五十一年度につきましては、一月までしか計数がございませんが、七十八トンというふうに、若干ふえてまいっております。
  57. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 いま年度年度の状況の御説明があったわけでありますが、世界で一年間に産出される金の総量、そういう中で世界じゅうのその金がどんなふうに流れていっているのか。通貨制度の中へ取り入れるということは協定で現在の総量をふやさないということがあるのですが、それ以外に工業用だとかいろいろなものに使われている。一部が、まあ日本人には余りそういう性向がないような気がするのですけれども、フランス人とかは財産保全の意味で金は自分で持っているというような傾向が非常にある。フランスの政府が持っているまりフランスの国民が持っておる金の方が多いんじゃないかというようなことも言われている。そういう中で毎年出る金の流れていく先がどんなふうなのか、それから工業用に使われる金、これはいろんなものに使われているんだろうと思うのですけれども、毎年毎年ずっと上昇カーブでいっているのか、たとえば平均した数字でいっているのか、そんなところをひとつ。
  58. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 世界的な金の取引につきましては、年によりまして非常に違っておるのでございます。七五年の数字が一番新しい数字としてございますが、大体供給が千トンくらいでございまして、その一部は共産圏からの売却もございますが、多くの部分は南ア等の新産金でございます。それの需要の方でございますが、いま御指摘のありましたようにほとんどが民間の需要を賄っておる。民間の中には装飾品用あるいは工業用もございますが、御指摘のように退蔵用というものもかなりあるわけでございまして、通貨当局といたしましては七五年には特に金を取得したということはございません。
  59. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 そういうような状況の中で日本の工業用というのですか産業用というのですか、そういうような需要、それは今後も引き続いて、この会計廃止しても十分支障なくやっていける——もちろんそういうことでこの会計廃止しようということだろうとは思いますが、その辺、全体の産量それから世界の消費の動向、そういう中で日本の民間の消費はもう確実に賄えるんだという、そこのところの考え方を。
  60. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本の金の需要は概数で申しますと年間百トンぐらいございます。その主なものは装飾品用それから最近ふえておりますのは電子機器その他の工業用、それに歯科医療用等があるわけでございますが、その百トン程度の需要に対しまして供給の方は、国内から出てまいります金はせいぜい五、六トンでございます。あとは銅を輸入した場合の精錬から出てまいります副産物としての物が二十トンから三十トンということになりまして、その差額の五、六十トンを輸入に仰ぐという状況でございます。  この輸入が円滑にいくかどうかということでございますが、四十八年の四月に金の輸入自由化をいたしまして以来順調に金は入ってきております。需給関係を反映して金の価格が非常に上がったり下がったりするという傾向はございますが、ロンドン市場その他の世界的市場において取引も順調に行われておりますし、それから最近におきましては、日本の輸入者が金の受け渡しを受けてそれを必要の都度払い出して決済するというコンサインメントのストックを持つという状態に至っておりますので、今後の需要に対して十分賄っていける、そういうことで今度特別会計廃止するという決意をしたわけでございます。
  61. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 次に、これはこの会計だけでなくて、一般的に特別会計を設置したりあるいは廃止したりすることについて、特別会計の設置については財政法の第十三条に根拠の規定があるわけでありますが、具体的にどういう必要があったときに特別会計を設置するあるいはまた廃止するというのか、そういうことについての基本的な考え方をお聞かせいただきたい。
  62. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいま御言及になりました財政法の第十三条の二項にございますように「国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」に限りまして設置することができることになっております。特別会計の設置は、当然のことながらみだりに行うべきではございませんで、また一方既存の特別会計についても、その必要性につきまして常に検討を行いまして、特別会計として一般会計から区分、経理する必要があるのかないのか、そういうことを見直して、廃止すべきものは廃止しなければいかぬというふうに考えております。  この特別会計につきましても、先ほど来の議論の過程で出ましたように、この特別会計の設置の理由それから存続の必要性、こういうようなことがなくなりましたのでこれを廃止することにいたしたわけでございます。  特別会計の数でございますが、最近大体減る方向にございまして、五十年度には木船再保険特別会計廃止いたしました。それから五十一年度には中小漁業融資保証保険特別会計、これを廃止いたしました。それで、今回貴金属特別会計を来年三月までに廃止いたしますことになりますと、特別会計の数は三十九になります。この三十九という数は最近時では一番小さい数になるわけでございます。
  63. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 今回のこの特別会計廃止に伴いまして、その保有する金地金処分が予定されているということでありますが、その点について二、三お伺いしたいと思います。  附則の二項で「貴金属特別会計に属する金地金のうち大蔵大臣の指定するものを、政令で定めるところにより算出した価格日本銀行に売り払うことができる。」こういうふうに規定しておりますが、「大蔵大臣の指定するもの」というのはどういうものを考えておられるのか、また、その売却価格については政令でどのように定めるのか、その点について伺いたい。
  64. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 附則の第二項の規定は、日銀に対しまして時価よりも安い価格で金地金を売り渡すことができることを決めております。この時価よりも低い価格で売り渡します対象とすることができる金の地金大蔵大臣が指定しようとするものでございまして、これは日銀に対して売り戻し約定のある約四十四・七トンの金地金を指定する予定でございます。この日銀に対します金地金の売り戻し約定のあるものにつきましては、昭和十八年、十九年、二十年と三回にわたりまして当時の金資金特別会計日銀から買い上げた価格、一グラム四円八十銭のものと五円五十五銭のものとございますが、これと同価格で売り戻すことを約しております経緯等があることにかんがみまして、先ほど来の議論がございましたように、特別会計が買い入れた価格、これはちょうど四十七、八年の両年度にまたがりまして金特会で金の数量が日銀に売り戻すだけに到達いたしましたので、そのときの帳簿価格、これに運送料あるいは保険料、こういう諸経費を加算いたしまして、取得価格がグラム当たり六百九十円になりますが、そういう価格で売却することを予定しておるわけでございます。附則の二項は、この大蔵大臣約定のある四十四・七トンの金地金、この価格について定めることにいたしておるわけでございます。
  65. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 日銀に売り戻す物以外の分について予算では一体何円で計算をしているのか。実際の売却価格はそのときそのときの時価によって行われるものと考えますけれども、どんなふうにお考えになっておられるのか、その点をひとつ御説明していただきたいと思います。
  66. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日銀以外にどこに売るかということはまだ決めておりませんが、それにつきましては時価で計算をしております。
  67. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 直接地金関係してのお尋ねは以上で終わります。  ついでと言っては大変恐縮でございますが、先ほどもいろいろ質問があり答弁もあったわけでありますけれども、金をどんなふうに考えるかということは非常にややこしい問題だと思います。金と人間とのかかわり合いというのは大変古い。金が交換手段にされたというのも五千年以上の歴史もあるのだろうということ、あるときには金が主役として前面に出たり、また後ろへ下がったり、いろいろな経過をたどって現在まで来ているわけです。先ほど来お話がありましたように、SDR、そういうものを中心にしてというような考え方でいまやっておられるのですけれども、それから一九七一年ですか、先般お亡くなりになられた水田三喜男先生が日本大蔵大臣としてIMFの総会へ出席されたときに、その総会ではSDRというものが非常に高く評価された総会であったようでありますが、そこで日本大蔵大臣がSDR本位にしたらどうだというような提案もされたやに承知をしているわけですけれども、そういったことは政府の統一見解といいますか、そういうことで発言をされたのかどうなのか。そうして、それを含めて、国際通貨制度の中で金が今後どういう位置づけをされるのか。だんだん金離れ金離れというふうに言われております。そうではありますが、世界じゅうの学者あるいは通貨当局者の現在の国際通貨制度についての改善というのですか改革というのですか、いろいろな意見やら議論やら星の数ほどあると言われておりますが、そういうことをいろいろ考えて、政府としては今後傾向としてはどういうふうになっていくのだろうか、そういう中で金をどういうふうに考えているのか、その辺のところをひとつお伺いしたいと思います。
  68. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 戦後できましたブレトンウッズと言われます通貨体制におきましては、金と交換性のあるドルを中心として通貨制度が運営されてまいったわけでございますが、これが昭和四十六年八月のいわゆるニクソン・ショックでこの体制が壊れてしまったわけでございます。その後通貨制度をどういうふうに再建していくかということで大変議論を重ねてまいったわけでございますが、先般まとまりましたIMFの協定改正におきましては、金の国際通貨制度における役割りを減らしていこうということに合意が成ったわけでございます。それにかわりましてSDRが中心的な準備資産として今後育成されていくということになるわけでございます。日本といたしましては、一九七〇年にSDRの創出を決めましたとき以来、通貨制度のあり方といたしまして、金という自然の産物に拘束される通貨制度は、これだけ世界経済が大きくなり緊密化しておりますときに、その動脈としての通貨のあり方として不適当でなかろうかという見地からSDRの創出に賛成してまいったわけでございます。それが今般の国際的合意におきましてもSDRを中心に育てようということになったのでございますが、SDRというものもまだ量的には非常に小さなものでございまして、相当努力をいたしませんとこのSDRが金に取ってかわるというふうなところまでにはなかなか量的にはいかないんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。日本といたしましては従来のような線で、SDR中心の国際協調体制で通貨制度を運営するということが望ましいとは思っておりますが、現実的に現在世界の外貨準備の総量、すなわち国際流動性が二千二百億ドルぐらいありますうち、金が一オンス四十二ドルで計算しても三百五十億ドルもある、一六%ぐらいになります。ましてこれを時価で評価するとはるかに大きなウエートを占めるということになるわけでございまして、その現実も無視することはできないということで、今後の通貨制度について臨んでいきたいと思っております。
  69. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 極端に言うと、通貨制度で金に基礎を置くといういわゆるメタリストですか、そういう考え方、それからいま御説明ありましたようないわゆるノミナリスト的な考え方二つが対立していると思うのです。私も余りよくわからぬですけれども、ノミナリスト的な傾向はどっちかというとアメリカが大いに進めようとしている、ヨーロッパの諸国はそうじゃなくてメタリスト的な考え方の方が多いんじゃなかろうか。いままでの通貨制度はいろんなときに混乱をしてきたけれども何とかかっこうをつけてきた、ばんそうこうを張ったりこう薬を張ったりしていままできているわけですからね。政府考え方としては大体ノミナリスト的な考え方でということにいまお伺いしたのですけれども、ただし現実問題としては云々ということもあったわけでありますが、そういう中で、これは先ほども議論があったわけですけれども、現在日本の準備高の中における金の保有高はよそに比べて非常に少ない。そのことが当を得ているのか不当であるのか、これは私自身にもわからないわけなんですが、これを今後何らかの機会に幾らかずつでもふやしていこうとするような考え方があるのか、それは絶対ないというのか、それで、またふやしていくとすれば、これも世界じゅうの相談で、通貨に組み入れられる金の総量はもうふやさないというようなこともあるようであります。そうすれば、どこかの国から分けてもらわなければならぬというようなことになる、そこらはどんなふうにお考えになっておられるのか。
  70. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本の通貨準備中持っております金は非常に少量でございまして、パーセントで申しましても五%にすぎません。これに対しまして、さっき出ましたイタリアの場合には五〇%、その他の国も相当高い比率で持っておるわけでございます。私どもといたしましては、先ほども御説明申し上げましたように、金を持ちたくないということで金の比率を減らしてきたということではございません。むしろ従来折があれば金をふやしてきたわけでございます。たとえばIMFから報酬を受けます場合に金で受け取るとか、あるいはIMFが円を調達する場合に金で日本が受け取るということでふやしてまいりまして、現在の八億五千八百万ドルというふうな金の保有になったわけでございます。これを今後どうするかということにつきましては、いま御指摘のございましたような国際的な取り決めがございまして、来年の一月末までは金の総量、これはIMFとG10との総量でございますが、それをふやさない、それからもちろん金の値段について価格支持のようなことはしないというふうな取り決めがあるわけでございます。この取り決めが期限が参りましたときにどうするかというのは一つの国際的な問題になるわけでございますが、私どもとしては、さっき申し上げました通貨制度の考え方からすればSDRを中心として育成するのは好ましいと思っておりますが、現実の問題というのはまたあるわけでございますので、国際情勢を見ながら金についての態度を今後も慎重に検討していきたいと思っております。
  71. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 それから最後に、これも小さなことですが、今度日本銀行へ渡しますね、それは準備高の中に入るわけですね、その辺のところはどうなんですか。
  72. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日銀に売却いたします金のうち三十五トン分についてはすでに外貨準備に計上されておりますので、外貨準備への影響はございませんが、その他の部分につきましては、日銀に売却いたしますと、これは日本銀行として持つわけでございますから、通貨準備に反映させるのが適当であると思っております。
  73. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 それで、通貨制度の中における金の量、これはふやさないというような相談が一応あるでしょう、ごくわずかでも今度は日本のがふえるわけですね、そのことについてちっとばかりだから別に問題ないと言えばそうかもしれませんが、どんなふうなんですか。
  74. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 金の総量をふやさないという取り決めは、十カ国蔵相会議のメンバーそれとIMFの持っております金の総量でございまして、実は先般来IMFが持っております金を競売に付しておりまして、その大部分が民間に流れておるわけでございます。その意味におきましてG10プラスIMFの金の総量というものは、約束のございました基準額よりも減っておるわけでございまして、わずかの金の取引で日本の外貨準備がふえましても、金の保有高がふえましてもそれには抵触しないということでございます。
  75. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 終わります。
  76. 小渕恵三

    小渕委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時六分開議
  77. 山下元利

    山下(元)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長の指名により、委員長がお見えになりますまで私が委員長の職務を行います。  午前に引き続き質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  78. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 午前中の質疑伺いましても、財貨の王座にある金を話題としながら不景気な話といいますか、厳しい話ばかり続いているわけでありまして、私はやはり金の歴史を振り返ってみても、かつて王座を占めていた時代から今日国際的にも国内的にも金廃貨に至る、こういう経過は、言うならば日本の資本主義経済の曲折を表現したものではないだろうかという気もするわけでありまして、国際的にも国内的にも金廃貨という時代を迎えたこれから先、どのように対応していくのかということを私は主として伺いたいと思いますが、その前に直接この法案に関係をした点を二、三まずお伺いをしたいと思います。  約百トンの金を売り渡すということになっているわけでありますが、その中で日銀に特別に引き渡される三十五・三トンについてのお話は午前中にございました。その残りについては予算価格として千二百二十五円ということになっているようであります。最近の金相場あるいは国際的なロンドンあるいはチューリヒのマーケットの動きなどの中でだんだんじり高になるというふうなことにもなっているわけでありまして、この千二百二十五円という予算価格、四十四・七トンの六百九十円は別にして、それ以外の三十五・三トンと未定の二十トンの分の千二百二十五円というのは、今日の金の国際的な価格あるいはこれからの見通し、それについて適切かどうかということをまず最初にお伺いいたします。
  79. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 お答え申し上げます。  金の価格は非常に乱高下するものでございまして、将来の見通しをつけるのもなかなかむずかしいものでございます。たとえばここ数年間の動きをとって見ましても、四十八年の初めには一オンス六十ドルちょっとぐらいのときもございまして、それが二年たちまして、石油危機の後でございますが、百九十七ドルぐらいになりました。それからまた一年半余りでその半分の百ドルぐらいに下がる。その後またじり高になりまして、最近では一オンス百五十ドルに達しまして、昨日はまた下落しております。そういうふうに非常に上がったり下がったりするものでございますので、私どもが今回の歳入の見積もりとしていたしました算出方法は、ロンドン市場の上がったり下がったりする金の価格というよりも、IMFがいま国際合意に基づきまして保有金を競売に付しておりますので、それで出ました値段を参考にして計算する。それをいたしますと、第一回が七六年の六月にあったわけでございますが、千二百十八円、それから第二回目が七六年の七月にございましたが、千百四十九円、第五回目が十二月八日にございまして千三百六円、その平均をとりますと千二百二十四円九十六銭ということで、収入の見積もりといたしまして千二百二十五円という価格をはじいたものでございます。
  80. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いま伺いましたが、金の価格の見通しとしては、これから国際的にもじり高歩調をたどるのではないかということが一般に言われているようであります。まあ政府の方から日銀その他に幾らで売るのかという、政府日銀との関係でいえば内輪みたいなことにもなるわけでありますけれども国民の財産という観点から見ましたら、国の財政にとって適切な見通しと適切な処理をとりながらこれを扱っていただくように要望したいと思います。  次に伺いたいのは、二十トンの分についての処理方法は未定であるというふうに伺っているわけでありますが、未定ですから文字どおり未定なのかもしれませんが、考え方としてどういうふうになさるつもりか。午前中の質問にもありましたが、金の取引をめぐって延べ取引あるいは先物取引などいろいろ問題も生まれているというふうな指摘もあったわけでありますけれども、そういう状況の中で市中に放出するという措置をとるのか、あるいはまた六百九十円の分以外の三五・三トンと同じように日銀引き渡しというふうな形をとるのか、その考え方の問題をひとつ伺いたいと思います。  それから関連をしてもう一つは、昨年一月ですか、ジャマイカのキングストンの会議で金の市場価格を中央銀行あるいは政府は操作をしないという申し合わせになっておるわけでありまして、それとの関係も含めて未定という分についての考え方伺いたいと思います。
  81. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 この二十トンの分につきましては、とりあえず財政収入を見積もるという見地から先ほど申し上げました時価千二百二十五円で計算したのでございまして、どこに売るかということになりますと、そのときに慎重に考えたいと思います。  考え方といたしましては、いま民間では金の輸入が自由化されておりまして、順調に金が手に入るということになっておりますので、二十トンといいますと、日本で出ます金の分量が年間五、六トンというふうなことから比べましても相当多額の量になりますので、これを急に国内で売り払いますとやはり市場を乱すというふうなこともございますし、それからまた先ほど午前中にもいろいろ御指摘があったのでございますが、日本の持っております金が非常に少ないではないかという御指摘もあるわけでございまして、そういうことを考えながら、そのときに売り渡し先を決めたいと思うのでございます。一つ国際的に制約要因となっておりますのは、現在IMFの協定を改正中でございますが、改正前の協定では、通貨当局は公定価格、これは一オンス四十二・二二ドルでございますが、それよりも高く買ってはいけないというふうな規定がございまして、それはやがて協定改正によって削除されることになっておりますので、そういった国際情勢も考えながらそのとき決めたいと思っております。
  82. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いまの答弁に関連をして、ジャマイカの会議でも出されている中央銀行の金の自由買い入れを認めることについての新しい協定、いろいろ批准、取り扱い促進中とか伺うわけでありますが、それとの関連、見通しはいかがですか。
  83. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 ただいまの御質問は、自由借り入れというふうに伺いましたが、これは金担保借り入れのことかと存じますが……(伊藤(茂)委員「自由買入れ」と呼ぶ)買い入れでございますか。失礼いたしました。この自由買い入れは、いま申し上げました公定価格の制約がございますので、公定価格はIMFの協定改正発効によりましてなくなりますと、価格面での制約がなくなるということになるわけでございます。もう一つの国際的な制約要件といたしましてはいわゆるアウトサイドアグリーメントというのがございまして、十カ国蔵相会議の参加国とIMFの持っております金の総量をふやさないという合意があるわけでございまして、その範囲内におきまして取得することは価格の点を別とすれば、いまでも可能なわけでございます。このアウトサイドアグリーメントは来年の一月末で切れます。加れる後それを継続するか、修正するか、廃止するかそのとき検討しようということになっておるわけでございます。もしこのアグリーメントがなくなりまして、しかもIMFの協定が改正されましてどの値段でも買えるということになりますと、全く自由買い入れができるという状態になるわけでございます。これはそういう状態になるということでございまして、そのときに日本が買うかどうかということは別の問題ではなかろうかと存じます。
  84. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今後の問題に入る前にもう一つ伺っておきたいのですが、現在の日本の金準備の状況が、金準備という概念はもうすでになくなったと言った方が正確でしょうけれども、非常に少ないということが言われてまいりました。そういう中で現在の日本の金保有の状態、アメリカに預けてあるもの、日本銀行に持っているもの、外為の関係とあると思いますが、その辺はどうなっておりますか。
  85. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本の持っております金が物理的にどこに置いてあるかということでございますと、大きな部分がアメリカのニューヨークの連銀に預けてございます。
  86. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は今後の国際通貨と日本の立場、そういう中で金廃貨の方向が進んでいる、そういう中で今後の姿勢について幾つかお伺いをしたいわけであります。  昨年の一月にジャマイカのキングストンにおける第五回の暫定委員会で金廃貨の方向が固まったということになっております。国際的にも金が通貨の座からおりるということになったわけであります。そしてまた今後の方向としては金の持つウエートをだんだん低めていくというふうに先進主要国の中でも目指されているというふうにも言われております。そういう意味では、金をめぐる条件は国際的に大きく変化をしたという時代に入ったわけでありますが、にもかかわらず金を持っている国は強いし、持たない国は弱いというふうな認識といいますか、状態はやはりあるのではないかというふうにも思うわけでありまして、こういう新しい条件下で金の保有というものについてどう考えているのか。これから二年間は金保有を拡大しないというようなことにもなっているようでありますから、当面、来年、再来年どうするのかという意味ではなくて、長期的に見て国民の財産と日本財政の権威を高めていくあるいは守っていくというふうな視点から、このような新しい条件下における金保有というものをどう考えているのか、それを伺いたいと思います。
  87. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 国際通貨制度というものを考えます場合に、そこの中心的な準備資産というものが金という自然の産物であることは好ましくない、そういう見地から一九七〇年にSDRというものが創出されたわけでございます。日本の立場といたしましては、そういうふうな通貨制度を支持するということで今日までやってきたわけでございます。  しかし他面、御指摘のように、日本の持っております金は外貨準備の五%にすぎないわけでございまして、ほかの国は、たとえばイタリアが四〇%、それからドイツは一三%でございますが、オランダが二九%、ベルギーが三二%ということで非常に高いわけでございます。現実の問題として、先ほども申し上げましたが、いま世界の外貨準備の総量は約二千二百億ドルございますが、そのうちに金が占めておりますのは、一オンス四十二ドルで計算いたしましても三百五十億ドルくらいで一六%になっておるわけでございます。これをもし時価で評価いたしますと三割から四割くらいの非常に高い比率になるわけでございます。そういうときに日本の金の持っております比率がいかにも低いではないかということは私どもも感じておるわけでございます。それならばすぐ買えるかということになりますと、これまた日本が買うと言うだけで金の値段が恐らく暴騰するのではなかろうかという感じもいたしますので、これからの国際取り決めがどうなるかということをよく見ながら慎重に、日本の国益という点から考えていくべき問題ではなかろうかと思っております。
  88. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今日の時点で、長期的に見て日本の国益という立場からさらに努力をし検討していきたいというふうなことでございましたが、国際通貨の面で今日までの状況を振り返りますと、何遍かそういう面での準備不足といいますかあるいは努力不足といいますか、そのために非常に大きな損をしておるということではないかと思います。午前中の質問の中でも、一九六〇年代半ばアメリカがベトナム戦費で大赤字になる、それからニクソン・ショックという中で極端に言えばドルだけを持っていたために他国に比較しても大変な損をした、損をしたというのではなくて国民の財産に大きな被害を与えたということではないかと思いますし、あの当時も国会でもずいぶん論議になったわけであります。私は、あのとき論議されたこともそうですが、基本的な姿勢として、アメリカと関係を持っているほかのどの国よりも日本はアメリカのドル防衛に対して余りにも従属的な姿勢を持っていた、当時も円は単にドルのローカルカレンシーにすぎないというようなことも外国から言われた記憶がありますけれども、いじらしいほどアメリカの利益を一生懸命守ったというふうなことで大損をしたということではないかと思います。私は、あのときの問題だけではなくて、それ以後も同じような姿勢である限り問題は続くのじゃないだろうかという気がするわけであります。  この二年間にも金廃貨の方向に国際的にも動いていく中で、各国のいろいろな動きがあるように思います。たとえばフランスなんかでは、七五年一月のIMFの暫定委員会の後に公的保有金の再評価を、たしか一オンス百六十あるいは百七十ドルとわりかし高い値段で再評価して外貨準備に繰り入れていく、それで七四年末あたりに九十億足らず、八十九億ドルくらいの外貨準備が一挙に二百億ドルを超えるものにかさ上げをされたということもあるわけでありまして、単に、ベトナム戦費でアメリカはドルのウエートが低下して、それからニクソン・ショックという中で日本が国際通貨面で非常に大きな被害に遭ったというだけではなくて、この一、二年間の金廃貨をめぐる動きの中でも前と同じ姿勢のために日本が非常に損をするという立場になっているのではないかとも思いますが、いかがでしょうか。
  89. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本の金の保有量が少ないということにつきまして、けさほども申し上げましたように、戦後外貨事情が非常にきつうございまして金を買うゆとりがなかった。外貨事情が好転いたしましたときには、四十三年三月のワシントン申し合わせによりまして通貨当局は民間から金を買ってはいけないということになりましたし、四十六年八月には通貨当局間の金の取引も、いわゆるニクソン・ショックによりましてドルと金との交換性が断たれたためできなくなったわけでございます。したがいまして、金をふやそうといいましてもそういう形でふやし得なかったわけでございます。しかし、日本日本としてできる限りの方法で金の保有はふやしてまいったわけでございまして、五十一年末で約八億六千万ドルの金がございますが、たとえば十年前をとりますと、四十一年末には三億二千九百万ドルしか金がなかったわけでございます。その間徐々にふえておるわけでありまして、IMFとの取引でもし金での受け取りが認められる場合には金で受け取るということで、手数料の支払いを金で受けるとか、あるいはIMFに円を渡してかわりに金を受け取るというふうなことで、できる範囲の方法によりまして金をふやしてきたわけでございます。ただ、いまございますアレンジメントが来年の一月まで続きますので、その間は政府としても自由に金をふやすことはできない状態になっておるわけでございます。
  90. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 午前中からもそういう説明伺いましたが、私は正直言って、ささやかな努力をいろいろとされたという程度のことではないだろうかというふうに思います。六〇年代半ばの情勢を見ましても、ドルの権威が急速にダウンするということがあのベトナム戦争関係でも見通されたと思います。そういう中で、日本以外の国の方はそれぞれ自主的に自分の国の財産あるいは国民の財産をどう守るかという点で大枠の努力をされたと思います。しかし日本の場合にはアメリカの要請にきわめて忠実にこたえて、運命共同体といいますか、損をするのはこちらですから、運命共同体よりなお悪い状態であった。いま御説明があったささやかな努力はそれといたしまして、大枠の面ではそういう状態が続いていたのではないだろうかというふうに私は思います。国際的にも金廃貨、そしてSDRというふうなことを迎えている現在、そういう姿勢が今後の国際通貨の問題にも延長された場合に、形は違いますが、また同じような被害なり問題が起きるのではないか、その点をぜひ考えていただきたいと思うわけであります。  いままでの経過を振り返りましても、金の通貨の役割りは終わったということは、もう金で維持できなくなったということだと私は思いますし、また国際通貨の不安定の表現というふうなことも言い得るのじゃないかと思います。SDRの問題でも、当初はたしかSDR、ドル、それから金とリンクということがあったと思いますが、今日は御承知のとおりに各国の平均値をとる、バスケットで計算をするということになっているわけであります。それ自体安定するものかしないものか、まだ確たる見通しは持てないというのが今日の状況ではないだろうかという気がいたします。そういう大きな流れの中で、現実日本の外貨事情あるいは貿易決済、いろんな面で見ましてもドルを基軸にという体制は依然として変わっていないのではないだろうかと思うわけでありまして、ですからこのような情勢が変わった段階のもとでの今後の姿勢といいますか、その点についてお考えを聞かしていただきたいと思います。
  91. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 国際通貨制度を今後どういうふうに運営していくかということにも関連するわけでございますが、IMFの協定改正で国際的に合意ができておりますのは、金を中心にしまた金と交換性を持っていたドルとともに、金、ドルでできておりました通貨体制を変えていこう、その際SDRを準備資産として育てていこうということでございます。しかし、現実には国際取引にはドルが非常に多く使われておるわけでございまして、通貨制度上のドルの特殊な地位というものは次第に減ってきておるわけでございますが、現実の経済取引がドルでなされている以上、やはりドルの影響力も相当大きいのではないかという感じがするわけでございます。ただし、SDRの価値も、ドルだけではなくてその他国際貿易に大きなシェアを持っております通貨の加重平均で算出されるというふうに、ドルだけではなくて主要国の通貨によって支える通貨制度に徐々に動いていっているとは存じます。ただ、この過程が人為的にできるものではなくて、世界経済の動きを反映して進むものでございますので、相当時間がかかろうかと思いますが、国際通貨制度としてはそういう方向に少しずつ動きつつあるのではないかと思っております。
  92. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 国際通貨としてはそういう方向に少しずつ動きつつあるのではないかというお話でございました。しかし、現実を見ますと、先般の福田・カーター会談などなどの経過から見ましても、確かに各国の平均値あるいはバスケットで計算をしたものを基軸にしてSDRというものにだんだん権威を持たしていきたいというふうな構想になっているわけでございますけれども、現実的にはやはり円とマルクとドル、この三つが中心になってそういうもののベースにしていこう、あるいはしていったらどうかというふうなことが国際的にもいろいろ言われているということではないかと思います。それが先般の日米首脳会談でも出ました、アメリカ、西ドイツ、日本三重連機関車ですか、というふうなこともいろいろ言われている。しかも、アメリカの指導のもとにそれが組まれていくような方向というのが実は現実の動きではないだろうかというふうに思うわけでありまして、アメリカ、ドイツ、日本、三国の通貨の価値といいますか、それが基軸になってという方向がアメリカの希望として目指されていることではないだろうかというふうに思います。  そういう中で、私は国際通貨という問題は、金を離れたにしろいずれにしろ、各国の資本主義経済の不均等発展という現実がベースにあって起こるものでありますから、ある意味では宿命的なものであろう、また混乱は絶えない、いつも心配は絶えないというふうな問題ではないだろうかと思うわけでありますけれども、いま言われているSDRの大きなベースとしてのアメリカ、ドイツ、日本、三国の通貨取り決めというようなことになるのかどうかわかりませんが、とにかく言われておるわけでありまして、SDRの運用あるいは今後の国際通貨制度という中での円とか日本役割りというのをどう御認識になっておりますか。
  93. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 世界の通貨制度という観点からいたしますと、先ほども申し上げましたように、金の地位が減ってくる、それから金と結びついて、おりましたドルの特殊な地位がだんだん減っていく、そこで主要国がその経済力に応じて支えていく、それぞれ貢献していくという姿に次第に移るのではなかろうかと思いますが、現実の取引といたしましてやはり米ドルが非常に使われておる。そういうことから、世界の多くの通貨が、たとえばその価値をあらわす場合に米ドルで表示される、それから貿易金融が米ドルで行われる、それから資金の貸し借りが米ドルで行われるという姿になっておるわけでございます。こういうことも、たとえば円で申しますと、貿易に使われます円建ての割合が次第に最近上がってきたということで、徐々ではありますが、変化は見せておるわけでございます。  ドイツとアメリカと日本で世界経済の景気の回復をリードしていこうという考え方が昨今米国の方から出されておるわけでございますが、それは、経済力の大きなウエートを持ったこの三国が景気回復に貢献しようということでございまして、通貨面でたとえばその価値を三通貨連携するというふうなことを特に意味しているものではございません。むしろ経済成長を上げていく、それから、国際収支の大きな不均衡に対しまして力の強いこの三国が協力の手を差し伸べようというふうな発想ではなかろうかと思っております。
  94. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いろいろお伺いしましたが、この問題は、私が申し上げたいのは、今日の金廃貨に至る過程の中で、六〇年代半ばの厳しい問題とか、いろいろな経過がございました。そういう経過の中で指摘をされたのは、日本の経済それから財政国民の財産というものを守る意味での自主性あるいは主体性をどれだけ日本政府が発揮をしてきたのかという問題ではないだろうかという気がします、そういうものが混迷をし、あるいは失われていたというために、いろいろ厳しい思いを何回か味わったという経過ではないかと思います。ですから、国際通貨をめぐる構造が金からSDRあるいはその他の方向へ変わってくるという新しい状況の中で同じ姿勢がつながっていくということでは困るわけでありまして、これから先、日本の経済を守るという意味での的確な対応をぜひ要望したいというふうに思うわけであります。また、国際通貨面におけるこのような日本の曲折、外からも迫られました曲折といいますか、そういう問題は、日本の政治、外交全体の姿勢ともつながっていたということも言えると思います。六〇年代半ばのときには、ベトナム戦争協力をする、ほかのどの国よりもアメリカに協力するという姿勢ともうらはらの問題であったのではなかったかというふうに思うわけでありまして、いろいろ曲折を経ながら今後の通貨問題も進むと思いますが、金通貨あるいは金準備が大きくウエートを持っていた時代における諸問題というものをしっかり総括をしながら今後の問題に対応していただきたいというふうに要望したいと思います。  あと二、三伺いたいのですが、一つは、最近金の値段が、短期的には波乱がもちろんありますけれども、中期的にはじり高の歩調をたどるのではないかということが、国際的にも言われているようであります。  その中の一つ理由として、カーター政権が景気刺激対策をとっていく、それとの関連でインフレ懸念が拡大をする、またそういう中でインフレヘッジとしての金を買うという方向が出てきているのではないかとか、あるいは貿易面、アメリカの国際収支の状況から見てドルの信用が低下をする、そういう中で金の価値が高まってくるというようなことが原因ではないかというふうに言われているわけでありますが、金が国際通貨の主要な役割りから去った現在ですから、大分事情は違いますけれども、金の価格とアメリカの経済が関連をして言われている、そのようなことについてはどんな見通しをお持ちでしょう。
  95. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 金の市場価格は、最近で申し上げますと、四十九年の十二月に最高一オンス百九十七ドル五十セントというところまで参りまして、その後次第に下がりまして、五十一年の八月には、一番の安値が百三ドル五セントというところまで戻ったわけでございます。その後、ただいまの御指摘の点に関連するのでございますが、次第に高くなりまして、ことしの初めは百三十ドル台、そして三月、今月の二十五日には百五十三ドル、そして二十八日には百四十九ドルと急落しておりますが、そういうような動きをしております。  この最近の金価格のじり高の背景といたしましては、基本的には世界景気の立ち直りを反映いたしまして需給関係がタイトになってきた。民間需要、退蔵用もあろうかと思いますが、そういう需要がきつくなってきて、それが価格にあらわれてきた。それからもう一つには国際的な投資資金が金の方へ向かってきたということも言われております。たとえばスイスフランに向かっておりましたのが金に回るというふうな動きもあろうかと思います。それから最後にお話しになりましたように、ドルの先行きに対する見方も多少関係しておるのじゃなかろうか、カーター政権が経済成長に力を入れておられますが、米国の国際収支は必ずしも芳しくないということから、やはり金に投資資金が回るというふうな現象も一部あるのではなかろうかと聞いております。
  96. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういうことも関連をして、金(きん)持ちの国は金(かね)持ちで得をするし、金(きん)を持たない国は文字どおり金(かね)を持たないというふうな関係にならないような——金(きん)持ちは金(かね)持ちということになるわけでありますけれども、いままで金(きん)に関連をして日本がいろいろ苦い思いをしてきた、そういうことを繰り返さないような措置というものを新しい条件下でぜひお願いしたいと思います。  それから、先ほど午前中の沢田委員質問の中で、この金の価格と国内における需給事情という話がございました。私もいろいろ調べてみましたら、一つの基礎としては、日本の金価格ロンドン市場価格、それに手数料を上乗せしたものというのが基礎になっているというふうにいままで説明をされてきているわけでありますけれども、現実には日本の金の取引市場というものは非常に未成熟である、その未成熟な中で社会問題にもなりかねないようないろいろな状況も発生をしているというふうなことではないだろうかと思います。  私はそうつけ加えて言うことはありませんが、二つだけ関連して伺っておきたいと思います。  一つは、それらに対する指導の問題について、午前中の答えでは何か事故があるいは問題が発生した時点で対応する、こういうふうな姿勢のように私伺っておりました。それでは問題が起こった場合に常に後手ということになるのではないかと思います。その辺含めまして、健全な金の取引市場が国内でどう形成されていくのかということについての考え方をもうちょっと伺っておきたい。  それからもう一つは、現物取引ではなくて延べ取引が行われている。それに関連をして、投機性のある動きも起こっているということに関連をしたそういうお話がございました。調査中であるということでございましたが、関係当局の方では、特にこの一、二年のようでありますけれども、一部では雨後のタケノコのごとくなんということも言われておりますが、そういうたくさんの任意団体としての協会かあるいは取引所か生まれているというふうな姿ではないだろうかと思います。調査の初歩でございますから、そういう実態をどう把握されているのか、それも伺いたいと思います。
  97. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 午前中御説明申し上げましたとおり、現在金は商品取引所法に基づく上場商品にはなっておりません。したがいまして、巷間言われております任意団体の組織によります直物取引あるいは延べ取引が一体どうなっているのかという実態につきまして、われわれまだ現在詳細に実態をつかんでおらないというのが実情でございます。われわれといたしましては、決してこれを放置するつもりはございませんで、各方面からあらゆる情報を収集いたしまして、もしその実態から考え、第八条に違反するようなことがあった場合には十分これに対する処置をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  98. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つ、今後の日本の国内の金の需給関係あるいは金相場などについての考え方、どう思っているか。
  99. 福原元一

    ○福原説明員 わが国の金の流通経路は大まかに申しまして、国内の製錬業者がつくります金の地金とそれから貿易業者が輸入いたします輸入の金と二つがございまして、これが地金業者、いわゆる一次問屋と、それからあるいは貿易業者あたりから回ります二次問屋を経まして加工されましてエンドユーザーに回っていくわけでございます。これにつきましては、現在のところ大部分は適切な流通経路ということで流通していると私どもは考えておりますが、先生御指摘のように、最近、金に対する投機的な取引が行われているということにつきましては、商務課長お答えしましたように、実態についてはまだ十分把握されておりません。  ただ、こういう投機の傾向が拡大するということは、一般の投資家あるいは需要家に非常に大きな迷惑を生ずるということでございますので、私どもといたしましては、そのような実態の把握にただいま鋭意努めておる。同時に、そういういわば危険な取引というものがあるということで、こういうことに一般の投資家が近寄らないと申しますか、そういうものによって被害を受けないというふうな注意を喚起する方法をとりたいと思っております。
  100. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 同じような答弁伺いましたが、調査中ということでございましたが、要するに、調査をしているのか、あるいはこれからしようと思っているのか、むしろ後者の方ではないかという感じがいたします。傍観しないようにきちんとやってもらいたいと思います。  それから、あと二つ伺いたいと思いますが、一つは国際的な面からの今後の金保有、こういう国際通貨、金廃貨という新しい条件のもとでの金保有の持つ意味というようなことは先ほど質問をいたしました。もう一つは、年間百トンぐらいの消費と言われておりますが、国内における消費、これも減るよりは少しずつはふえてくるんじゃないかというふうに思いますが、そういう需給関係を安定をさせるという面で、今後安定した金の保有と流通ということについてどういうお考えをお持ちでしょうか。現実に何か社会問題になりそうなことについて、いま伺ったところではよくわからぬわけでありますけれども、やや政策的視野から、国際的なことは先ほど伺いましたが、国内的な状況の中で安定した金の保有と流通ということについてどのようにお考えになっておりますか。
  101. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 国内の金の需給につきまして全体的に申し上げますと、需要面では歯科医療用、工業用その他で年間百トンくらいあるわけでございます。これに対しまして国内鉱から出ますのは五、六トンでございますが、海外鉱を輸入いたしまして製錬の際出る分が二十トン以上ございます。その差額は輸入に仰がなくちゃいけないということになるわけでございます。五、六十トンあるいは今後これは少しずつふえるかと存じますが、この分につきましては、いま世界の金市場が円滑に機能しておりますので、自由な輸入制度のもとで需給の調節が図れるというふうに思うわけでございます。  もし、金市場が何かのことがありまして一時的に閉鎖されるという場合に備えましては、最近コンサイメントストックというものが普及しておりまして、これは海外から日本の金の輸入者が金の現物を手に入れまして、要るときにそれを使って決済するという以組みでございますが、その分がまた数トンぐらいございますので、たとえばロンドンの金市場が何日か閉まるというふうな事態がございましても、需給に大きな支障を与えるということはなかろうかと存じております。
  102. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 先ほど申しましたように、金について、国際通貨とも関連をしながら、日本の戦後の経過を振り返ってみましても、金なしで、あるいはそれに対する対応をしなかったために、いろいろ苦労をしたという経過ではないかと思います。  まあ、これから国際通貨の事情がどうなりますか、世界の資本主義経済自体が不均等発展ということは当然の姿ですから、私は、いろいろな意味でまだ曲折が予想されるということではないだろうかと思います。そういう中で、ドル、円、マルク、金、SDR、いろいろな手段があるわけでありますけれども、やはり金の保有が国際的に余りにも少ない、そういう状況が持つマイナスというのか、そういうことがやはり考えられるのではないかと思いますが、たとえばこういうことはあり得るのでしょうか。現在主な金産出国として南ア連邦、この南ア連邦に対する日本の外交的姿勢もいろいろと問われているわけでありますが、これは別の問題です。それからソ連——南ア連邦の方が最近金産出から売り渡しを手控えつつあるような情報も聞くわけでありますが、たとえばソ連とか、そういう主な金産出国と特恵貿易のような関係の中でやや有利な値段で金を買うとか、あるいはそういう中で二国間の貿易をさらに発展させるとか、経済交流、経済協力を深めていくとかいうふうなやり方は考え得るのでしょうか。
  103. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 南アが金の一番大きな産出国でございます。また、市場への放出で大きいところはソ連でございます。日本が金を将来仮にふやすとした場合、それを市場から買うのがいいのかあるいはIMF等公的な機関から買うのがいいのかあるいは金を持っている国との取引に関連して手に入れるのがいいのか、これはそのときに検討すべきこととは存じますけれども、いまの貿易につきましては、無差別のグローバルな貿易取引を原則としてやっておりますので、物資と物資とを交換するというふうなバーター取引、これは非常に例外的なことでございますので、なかなかそういう形で金を手に入れるということはむずかしいと思いますし、そういう場合でも、金の値段がどう決まるかということがあるので、なかなかこれは簡単にいくことではなかろうと存じます。
  104. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 以上で質問を終わりますが、繰り返し申し上げましたように、戦後の国際通貨と金、この経過をずっと振り返って読んでいましたら、いろいろな意味で、やはり国の財政あるいは国民の財産を守っていくという意味で、きちんとした姿勢と、また適切な見通しというものを欠いていたために、日本財政にとってもいろいろな損をしたり被害を受けたというふうな曲折があったのではないかということを感ずるわけでありまして、国際的にも金廃貨という事情、そしてまだまだSDRにしても確たる見通しが固まっていないという状況でございますから、これから後に開かれるIMFの会議あるいはロンドンの先進国首脳会議でもどのようになりますか、そういうことを含めながら、自主性のある確たる態度を持って対応していただきたい、このことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  105. 山下元利

    山下(元)委員長代理 坂口力君。
  106. 坂口力

    ○坂口委員 お伺いをしたいと思いますことの幾つかが、きょう午前中、そしてまたただいままでの議論の中でかなりたくさん出てまいりましたので、でき得る限り重複を避けさせていただきたいと思いますし、それからもう一つさらに突っ込んでお聞きしたいということだけ重ねてお聞きをしていきたいと思います。  貴金属の中でも特に国際金融上重要な意味を持つ金資産の処理に対する法案の審議になるわけでありますが、初めに、先ほどもこれはちょっと出ましたが、金の相場について伺っておきたいと思うわけであります。  と申しますのは、最近、各個人の方の中にも、金は非常に安定した投資対象だというのでかなり購入をされている方がふえつつあるというふうに私理解をしているわけであります。しかしながら、最近の動き、けさほども数字が挙げられましたが、私の方で調べてみましても、かなりな変動がございます。七四年が一オンス当たり二百ドル台、七五年から七六年にかけましては一オンス百ドル台、七七年に入りまして百五十ドル台というふうに上下がかなりあるわけであります。こうした金相場の動揺をどう分析するかということ、若干触れられましたが、もう少し詳しくひとつ、資料等ございましたらおつけ加えをいただきたいと思います。
  107. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 金の価格は、ただいま御指摘になりましたように、一年半か二年の間に倍になったりあるいは半分になったりということで、非常に乱高下が激しい、その意味におきましては商品相場と同じような動きを示しているわけであります。  なぜそういうふうな激しい動きがあるかということでございますが、これはやはり金に対する特殊な感じから金が投機の対象になるということにあるのではなかろうかと思います。この投機の対象になりますときに、金に対する投機物件としての見方が、やはり金に代替する他の通貨あるいは他の資産との比較になろうかと思います。通貨体制か非常に安定しておりまして、米ドルの価値も強くて動かないというときには金価格も安定したわけでございますが、ドルその他の通貨が揺れますと金価格も動く、それから世界の流動性が過剰になるときには過剰資金が金に回るというふうなことでも大きな影響を受けるのではなかろうかと思います。ことに金が国際通貨面での役割りをだんだん減らして、商品としての姿をはっきりさせるに従って、いま申し上げましたような傾向が今後とも続くのではなかろうかというふうに存じます。
  108. 坂口力

    ○坂口委員 金相場の動きが活発化しております要因の中には、いろいろあると思いますが、このところ、金を決済手段として使用する動きもかなり活発化しているというふうに思います。たとえば、中国でありますとかうラテンアメリカなどが金を処理して外貨の調整を図るというふうなことも、国の間でもございます。  こうした金の活用状況から見ましたときに、早晩この市場における価格操作、そういう動きが出てくる可能性というもの、これは考えなければならないと思うわけでありますが、そういう動きに対してどういうふうに受けとめておいでになりますか。そういう動きはいまのところ心配ないというふうにお考えになっておるのか、すでにそういう動きがある、こういうふうにお考えになっておるのか。
  109. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 金の価格は需給関係で決まるわけでございますが、いまロンドン市場あるいはチューリヒ市場等で取引されております金は、一日五、六トンではなかろうかと存じます。年間の新規の金の市場への放出が千トンということでございまして、時価で換算いたしまして数十億ドルになろうかと思われます。これに対しまして、各国の通貨当局が持っております金が、一オンス四十二ドルで計算いたしまして三百五十億ドルくらい、したがいまして、時価に換算すると恐らく千数百億ドルくらいになろうかと思います。  そういう状況でございますので、金価格は需給で決まると言いましても、やはり膨大なる金の量を持っております通貨当局の動きというものはこれに大きな影響を与えるわけでございます。そういうことで、かつては金価格を安定させるために一九六一年でございましたか、先進八カ国が金プールをつくりまして需給の調節をするという企てをしたわけでございますが、それは必ずしも成功いたしませんで、一九六八年には解散しておるわけでございます。  いま御指摘がありましたように最近赤字で悩んでいる国がありまして、その決済資金を調達するために金を使っているかということにつきましては、私は必ずしもそういう例は余り聞いていないのでございますが、金を担保にして借款をするというようなことは、昨今も幾つかの例があって行われているわけでございます。  で、いま御指摘の金価格を操作する余地があるかということでございますが、国際通貨体制がさらに混乱いたしまして金に対する需給が大きく動いてまいりますと、そういう意味の金価格に対する影響というものは出てまいろうかと思いますが、いまのところは、むしろ商品としての金に対する需給関係から金相場が決まってくる。この需給関係等を申しますときに、さっきも申し上げましたような投機的な需要も入っておるわけでございますが、そういうふうな民間の需給関係で金価格が決まっているというのが現状ではなかろうかと思います。
  110. 坂口力

    ○坂口委員 それでは次の問題に移ります。  これもけさ出ました問題の続きでございますが、簡単に触れておきたいと思います。  今回されます百トンの内訳の中で四十四・七トン分は一グラム六百九十円ですか、それから五十五・三トン分が一グラム千二百二十五円、こういうことになっておるわけですね。それで、戦争中の問題がけさも出ておりましたが、これはかなり突っ込んで御議論になりましたので私も余り深く触れるつもりはありませんけれども、現在二十トン残っておりますが、その中で三・六トンくらいは戦時接収されたものが含まれているというふうに聞いておりますけれども接収されたものは最初はどのくらいあって、いままでにどう処理されたのか、わかりますか。
  111. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 戦時供出された総量というのは、当時の供出に関する記録が現在残っておりませんのでわからないわけであります。それからまた、戦後接収された金の総量につきましても、これは占領軍が直接接収の任に当たって日本政府は直接これに関与しておらなかったために、その当時の総量はわからないわけでありますが、二十七年、講和条約の発効に伴いまして連合国占領軍から正式に返還を受けました数量は、金で百十八・五トンであります。  それで、この返還を受けました百十八・五トンのうち、十七・七トンにつきましては、三十四年にできております接収貴金属等処理法の施行前に、IMFへの出資に充てる等のために日銀返還したとかいうことで処理されて、結局、接収貴金属等処理法の対象となった金の総量は百・八トンであります。この法律の施行に伴いまして返還したものが八十九・二トンあります。差し引き国の一般会計に帰属したものが十一・六トンになります。この国の一般会計に帰属しました十一・六トンについては、逐次貴金属特別会計へ移管してきておりまして、現在残っておりますのは金地金にして三・六トンということになっております。
  112. 坂口力

    ○坂口委員 終戦直後、進駐軍によって接収されたものはわかりにくい点はある程度あるかもしれません。しかし、終戦になります前に日本政府が集めたものにつきましては、日本政府が行ったことでありますから、何らかの文献なり証拠書類というものが残っていると思いますが、それは本当にないのですか。
  113. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 戦時中に国民から供出されました金でありますが、それを扱っていた機関としましては交易営団とか中央物資活用協会等があったわけであります。それらが回収しました総量が幾らかというのは、先ほど申し上げましたように現在、記録がないわけであります。それで、回収と言いますか、供出を受けました金のうち、一部については当然当初の目的どおり軍事用等に使ってしまったということが考えられるわけであります。  ただ、わかっておりますのは、これらの戦時中の回収機関が戦後、連合軍により接収された金の量につきましては、これらの回収機関が持っていた金のうち一・六トンが連合軍接収されたという記録は残っております。
  114. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、戦争直前に多くの国民供出をいたしました金、銀、そういったものが現在、はっきりとした証拠書類もないし、それからまたその後、終戦直後において進駐軍関係によって接収されたものも、そのときにどれだけあったかわからない、こういうまことに寒々しい結果をいま知らされたわけでありますが、それはもういまの時点になって何とかしていろいろの書類等を見直してはっきりさせることができる可能性は全くない、こういうことなんでしょうか、それとも現在時点は皆さん方の手元にはないけれども、これからはっきりさせようと思えばもう少し、そう明確に何点、何トンというところまではいかなくともあらあらの数字というものはつかみ得るものだというふうにお考えですか、どうですか。
  115. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 戦時中の供出されました数量でございますが、先ほど申し上げましたようにこれらの供出事務を担当しておりました交易営団とか中央物資活用協会の当時の供出に関する資料が、すべて戦災により消滅しておりまして、供出されました数量が幾らかというのは現在、振り返ってみても判明しがたいわけであります。先ほど申し上げましたように、それらが戦後そのまま持っておって、連合国占領軍に接収された量というのはわかっておるわけなんです。
  116. 坂口力

    ○坂口委員 この問題、どうやら幾らやっておりましても結論が出ないようでございますので、これだけにしておきますが、IMF絡みの問題を一つ一つお聞きをしておきたいと思います。  IMFの新協定におきます金に関しましての合意事項というのがございます。この新協定の批准状況ですね、現在、どのくらいの国、批准になってますか。
  117. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 三月二十四日現在で二十カ国が協定改正案の受諾書を寄託しております。その投票権数は合計で三〇・三四%となっております。
  118. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、協定発効に達する八〇%の批准状況に達するためにはまだかなり開きがあります。今回の法律案は、これは一応達するという見込みのもとにこの千二百二十五円という数字も出ているわけでありますが、これは大蔵当局としては、このあとの批准というものはこの後早急にスムーズにいくというふうに理解をしておみえになるのだろうと思いますけれども、その点は大丈夫なんでしょうね。
  119. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 IMF協定改正の発効見通しにつきましては、各国の国内手続が関係いたしますので、確たることは申し上げられないわけでございますが、IMF当局や日本代表理事から常時見通しを聞いておりまして、それによりますと、おおむね本年中には発効が期待できるというふうに考えておるわけでございます。
  120. 坂口力

    ○坂口委員 それから合意事項の中には、金の量に対するものがありまして、二年間の期限付の項がございます。きょうはこのことにつきましても、もうすでに議論が出ておりますが、実質完全自由化しました後、わが国としてこの金準備状況というものを世界各国と比較をして高めていくのかどうかということも、先ほどから議論の的になったわけであります。  先ほどから金準備高を高めていくかどうかという議論をお聞きしておりまして、もう一つすっきりしないのでさらにひとつお聞きをしておきたいと思うわけです。  先ほどからお話を聞いておりますと、要約すると、国際通貨というものの中で金の位置というものは低下してきている、またドルの位置というものも低下してきている。それにかわるべき措置としてSDR等が位置づけられてきている。この構造の変化というものを先ほどからるる述べられているわけでありますが、日本政府としてどのように位置づけていきたいと考えておみえになるのかということ、その辺がすっきりしないために、今後の問題、どうあるべきかという問題もいささか議論が混乱をしてくるように思うわけです。その辺、ひとつお聞かせいただけないでしょうか。
  121. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 むずかしい問題でございます。といいますのは、IMFの今回の協定改正にあらわれておりますように、国際的な方向といたしましては、通貨制度における金の役割りを徐々に減らしていく、そしてそのSDRを中心的な準備資産として育成していくということでございます。しかし、先ほども申し上げましたように、世界の外貨準備の中に占めております金の量あるいは金の地位というものは依然として高いわけでございます。これに反してSDRは育てていこうというものの、一九七〇年の一月に初めて配分がなされまして、三年間で約九十億SDR程度出ただけであります。その後は出てもいないわけでございます。量的に見ましてまだ非常に微々たるものでございますし、それから質的に見ましても、SDRの取引について、今度の協定改正でより自由に扱われるという方向になっておりますが、他の従来の準備資産、たとえば金とかドルとかそういったもののように、民間で取引されるわけでもございませんし、取引の範囲というものにも制約があるわけでございまして、私どもは長い目で見て、通貨制度のあり方としては金からSDRに変えていくということでよろしいかと存じますが、急にそういった大きな変化が起きるということではないのでございますので、その辺の現実も念頭に置いて日本の国益を考える必要があるというふうに思うわけでございます。そういう意味におきまして、すぱっと割り切ってすぐ何ができるということではないという事情にあるわけでございます。
  122. 坂口力

    ○坂口委員 まあ方向性だけは、ベクトルだけははっきりいたしました。  それで、そういたしますと、この金準備率を今後も上げていく努力をするのかどうかということも、いまのお答えとこれは絡んでくると思うのですが、SDRを育成していくにしても、そう急にこれが実現可能なわけではない、長い目で育てていかなければならない。こういうことであれば、当面短期あるいは中期的に見た場合には金の準備率というものは少なくとも中期的には上げていくという努力をせざるを得ない、その方向だ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  123. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本の外貨準備中の金の比率が非常に低いということは御指摘のとおりでございまして、私どももこんなに低い比率でなくてはいけないということには思っているわけではございません。しかし、いまさしあたりは国際的な申し合わせもございまして、自由に金を取得するということもできないわけでございます。国際的な申し合わせがなくなった場合にどうするかといいますと、そのときに慎重に考える必要があるわけでございますが、通貨制度の方向として金の役割りを次第に減らしていきたいという考え方も一方にあるわけでございますので、その辺も十分に考える必要があろうかと思います。ただ、金の比率がいかにも少ない、たとえば中央銀行としては、金は依然として一つの優良資産として先進主要国の間でも持たれているという現実がございますので、その辺を念頭に置きながら国際情勢を考えて今後慎重に検討していきたいと思うわけでございます。
  124. 坂口力

    ○坂口委員 続きまして、最近の国際金融上の問題についてお聞きをしておきたいと思いますが、わが国のIMFにおけるクォータは約四・一一%、五番目ということで理解をしておりますが、間違いであれば指摘をしていただきたいと思います。  それからIMFに対する一般借り入れ取り決めの貸付枠を増額いたしておりますが、その結果、先進十カ国中三番目になっていると思いますが、間違いございませんか。大体そのぐらいだと思いますが。
  125. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 仰せのとおり、IMFのクォータでは、日本は五番目でございまして、GABによるIMFに対する貸し付けの取り決め枠では三番目ということになっております。
  126. 坂口力

    ○坂口委員 最近のIMFの対英借款に関しまして、一般の借り入れ取り決めに対しまして各国がいろいろ協力をしているわけでございますが、国際決済銀行の対英信用供与について、わが国もまた協力しているわけでありますが、わが国の協力度合いというものはどのくらいになっておりますか。
  127. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 IMFの対英借款は総額三十三・六億SDRだったわけでございますが、そのための資金といたしまして、IMFの通常資金から五億SDR引き出す、それからIMFの加盟国ではございませんが、スイス国立銀行から三億SDR借り入れる、残り二十五・六億SDRになりますが、そのうち米国が九億四千五百万、それからドイツが七億八千五百万、日本がそれに次いで五億五千五百万SDRを貸し付けしたわけでございます。  それから国際決済銀行を通ずる対英信用供与につきましては、先般全体で三十億ドルの枠のもとに主要国は協力することになったわけでございますが、それに対しまして日本負担額は米、西独に次いで三番目でございまして四・五億ドル出すということになっております。
  128. 坂口力

    ○坂口委員 IMFやそれから国際決済銀行についての日本の援助というものが私は決して現在のままでこれでいいと考えるものではありません。そんなに多いものではなくて、まだまだ協力すべきものはしなければならないと考えるものでございますが、しかし日本が最近かなり精力的に取り組んでいることもまた認めるものでございます。ただし、たとえば英国に対しまして日本が援助もいたしておりますが、しかしたとえばEC等は最近、貿易等の問題の絡みで保護貿易的なにおいもかなり強く打ち出してもきているわけであります。こういうことを余り考えに入れていては大局的に立って行動することはできないのかもしれませんけれども、一方において援助額をふやしていく、しかしその国々が保護貿易色を強めて日本の製品をボイコットする、こういうふうなことになってまいりますと、日本といたしましても何となくじくじたるものあるのではないかと思うわけであります。この辺についてどのようにお考えになりますか。これはできれば後で政務次官からも一言お話を伺えればと思います。
  129. 高鳥修

    高鳥政府委員 ただいまの坂口委員の御指摘、私も同感に存じます。対外貿易につきましてはやはりそれぞれの国の実情を正確に理解していただくことがきわめて肝要であろうと思いますので、対EC問題につきましても日本のあります現在の状況等についてなお一層理解を深めていただくと同時に、ECとの関係というものをもっと日本も、先ほどアメリカの方に非常にウエートがあるではないかというような御指摘がございましたが、ECとの関係につきましても日本といたしましても積極的に取り組んでまいらなければならない、このように思うわけであります。  それと同時に、IMFその他各種国際機関に対しまして日本協力を強く要請されております。その度合いが高まっておりますが、それはやはり各国の経済の力に相応じたものでなければなりませんし、協力をいたします以上はそれ相応の発言権も与えられてしかるべきである、こういう基本的な考え方に立ちまして交渉を続けてまいりたい、このように政府としては考えておる次第であります。
  130. 坂口力

    ○坂口委員 何か事務当局ございましたら……。
  131. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 いま政務次官が申し上げましたとおりでございまして、実は私どもがIMFを通じ、その他の場で資金面で大いに国際協力をやっておるわけでございますが、一つにはやはり世界貿易が自由に、貿易制限なしに発展することが望ましいという考え方もそこにあるわけでございまして、イギリスが先般ヒーリー蔵相の名前で大平大臣に対して英国の状況と経済再建の決意を表明し、日本協力を求める書簡が送られてまいりました際に、大平前大臣からもこれに対する返書の中で、「経済政策面における御努力とIMF借款とにより、貴国が貿易自由の原則を遵守しつつ経済の均衡回復の達成に成功されることを望む」ということで、あからさまな条件というわけではございませんが、そういう貿易自由の気持ちを大いにそこに込めて、経済面での資金協力をやっておるわけでございます。
  132. 坂口力

    ○坂口委員 これは最後にお願いをしておいて終わりにしたいと思いますが、いま政務次官お答えになりましたように、日本としてできるだけの協力もしていかなければなりませんし、特に今回の福田・カーター会談にも見られますように、アメリカ、日本、西ドイツが機関車として先を切っていかなければならないという現状でありますからその責任も重大でありますし、その責任もまた果たしていかねばならないと思いますが、しかし、あわせてその責任を果たすとともにその場における適正な発言の場の与えられるということもまたこれはしかるべき当然のことではないかと思うわけであります。そういうふうな面におきまして、いままでの秩序というものもありましょうし一概にこれもなかなかいけるものではないかもしれませんが、しかしその中でやはりそれに適正な立場というものを確保すべく、その辺の努力も政府としてはしていただきたい、これをお願いいたしまして、終わりにしたいと思います。
  133. 山下元利

    山下(元)委員長代理 高橋高望君。
  134. 高橋高望

    ○高橋委員 坂口委員もお述べになっていらっしゃいましたけれども、お尋ねすべきことまたそれにお答えをいただくこと、委員の方がすでにいろいろと御展開の後でございますので、私はまず金の問題については少し立場を変えまして、国内の現在の金相場についてちょっとお伺いしてみたいと思います。  商務課長日本国際金取引協会という任意団体がおありになることは御存じでございますか。
  135. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 存じております。
  136. 高橋高望

    ○高橋委員 その団体が現在金を商品取引の形で、実際には商品対象外であることを逆用して動きが始まっているということを言われますが、もちろん現段階では大した金額には至っていないかと思いますけれども、この辺について現在お聞き及びの点についてちょっとわれわれに御説明をいただきたいと思います。
  137. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 私の方で聞いております範囲におきましては、現在の第八条に抵触するようないわゆる類似施設ではなくて、仲間取引と言われるものであるというふうに伺っております。したがって法的な面では特に問題はなかろうという判断を特に私たちとしてはしておる次第でございます。
  138. 高橋高望

    ○高橋委員 実はその程度でとどまっていれば、まあ損をし得をするのもあくまでも業者間のことで、社会問題として取り上げるには直接の注意は不必要かと思うのですが、かつて商品取引が、現在もそうでございますけれども、そうであったように、最近、金を取引するということで、非常に電話あるいは外交員が出向いてきて、この金取引の場に一般市民の方を引き込み始めている。この現実は、実は私自身にもございます。商品取引の実態というのは、残念なことに、相場を張る以外の何物でもないというのが私の判断なのですが、また言葉をかえれば一種の虚業であると判断いたしておりますけれども、これが一般市民の間に広まってきつつある、あるいは勧誘を受けつつあるという実態がございますので、商務課長、通産省のお立場で、そろそろこの問題が大きな弊害の種にならないうちに摘んでおくべきじゃないかと私は判断いたしますが、いかがでございましょうか。
  139. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 先ほども申し上げましたとおり、金自体がまだ商品取引所の市場に上場されておりませんので、実態は十分に把握されておりませんが、決してこれを放置するつもりはございません。われわれとしては、できるだけ早急に各方面から情報を収集の上で、もし違反のような事態が発生していることが判明した場合には、第八条違反ということでしかるべき措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。
  140. 高橋高望

    ○高橋委員 重ねて伺いますが、金を商品取引所法第二条の二項による「政令で定める」対象にお加えになるお気持ちは、ここのところではございませんでしょうか。
  141. 鷲沢亨一

    ○鷲沢説明員 現在、金を商品取引所法に基づく上場の商品に指定するためには、金の生産、加工、流通等に携わっております関連業界におきまして、その上場に関する合意が得られることがまず先決であろうと考えるわけです。現在ではまだこういう合意が得られてないのが実情でございまして、当省といたしましては、もし関連業界のかかる合意が得られた上でその会員となり得る当業者のしかるべき筋から新規上場の要請があった場合には、その上場適格性等も一検討した上で、十分上場可能性についての判断をいたしたい、かように考えております。
  142. 高橋高望

    ○高橋委員 金の問題についての質問はこれで終わらしていただいて、これに絡めて相場の問題で証券局にお伺いしたいと思います。  前回、私はお時間をちょっといただいて証券会社の業務についてのお尋ねをしましたが、残念なことに途中で時間が参りましたので、少し続けさせていただきたいと思います。  十分御承知のように、証券業者の免許は、自己売買業と委託売買、引受業と募集及び売り出し取扱業、この四つであると思いますが、どう考えても、この四つの業務を一つの証券会社が兼業し得るということは、国民経済の観点から望ましいことではないと私は判断をいたします。その最たるものは、アンダーライター業務、引受業務とディーラー業務の重複によって、自己売買をする場合に、引受業として収集し得る資料あるいは持ち前の調査能力などをもって非常に有利なビジネスができるのではないか、このように判断するからでございます。この辺についてまずお尋ねをしてみたいと思います。
  143. 安井誠

    ○安井政府委員 先日先生から御質問がございましたときにも、ただいま御指摘のように、四つの業務を一つの証券会社でやっていることによって弊害があるのではないかという御指摘があったわけでございます。今回また、その中でも、アンダーライター業務とディーラー業務の兼営ということによりまして——御指摘のように、アンダーライター業務をいたしておりますと、証券会社としてはその企業の株式ないし社債の発行を引き受けるわけでございますから、当然、引き受け証券会社としてはその企業の財務内容なり営業内容を正確に把握しなければアンダーライターとしての責任を果たせないわけでありますから、それは十分知らなければいかぬわけであります。ところが、それを知っていることによって、その証券会社が、他方、ディーラー業務あるいはブローカー業務に関しましても、その知識、つまり証券会社しか知らない知識を有利に使って、不当なと申しますか、その地位を利用した営業行為を行っているのではないかという御質問でございます。  私どもも、アンダーライター業務で得た知識をそちらの方に使うことは非常におかしいということで、現に、総合証券会社と申しますか、アンダーライターをやっております十一社につきましては、その会社の中で申し合わせをやらしておりまして、法人関係の業務、つまり発行法人関係のアンダーライター業務において知り得た知識というものを、他の部門、特にブローカー業務等に利用することのないように、情報管理をしっかりしろということを言っているわけでございます。  それでは、この四つの業務を別々に分けてしまうとどうかということになりますれば、やはり証券会社としての引き受け業務というのはそれなりにリスクを負う仕事でございますから、別々にやらせますと、たとえば、引き受けたものを売り出しをいたしましたりするときに、やはりその間の調整がうまくいかないという問題がございますので、現在やむを得ないとは思っておりますけれども、その間の不当な情報の利用をしてはいかぬということは厳に言っておりますところでございます。
  144. 高橋高望

    ○高橋委員 引き受けたものだから危険性を考えてとおっしゃるのですが、現実の問題としては、たとえて言えば、大きな証券会社がある株を大量に仕込む、そして自分で株価をじりじりと上げる、それにつられて一般の投資家はその株がまだまだ上昇を続けるのではないかなと思い込むわけです。こういう気持ちを持たせる細工などというのは、大手の証券会社にしてみればまことに容易なことだろうと思うのです。たやすいことだと思うのです。思い込ませておいて、証券会社自体は買い込んだ価格よりも高い値段でお客に売りつけてしまう。売り込んでしまったら、業者は手を抜く。当然ながら株価というものは上がるどころか下がってくる。そして業者は、値下がり損はなく、売買手数料というものはきっちり入ってくる。業者の一方的な得になって、結局はお客が損になる、これが現在までに行われていた姿だろうと私は思います。  そこで、この辺については何か法的に、根本的に規制しない限り、この問題の解決はあり得ない。おっしゃるように、証券業自体が利益を追求する、証券業自体が株式会社なのですから、どうしてもその辺では、政府のお考えになるような理想的な形で運営されるということは期待する方が無理じゃないかと私は思う。  局長、その辺でもう一度お尋ねをいたしますが、こうした証券業のあり方について、さらに厳しく規制をなさるお気持ちはございませんでしょうか。
  145. 安井誠

    ○安井政府委員 いま先生が御指摘になりました事例と申しますのは、決してそれがないということを否定し切れないのは、私どもも非常に残念でございます。しかしながら、行政の立場から申しますれば、いまのような先生が御指摘のケースというのは、いわゆる推奨販売、あるいは一律に特定の銘柄についてだけ証券会社が勧めるというやり方が往々にして行われるわけでありますけれども、これはもともと私どもとしては、してはならないということで処理をいたしております。したがいまして、たとえば証券会社に対する検査等におきまして、そういう事例を発見いたしましたときには、個別に指摘もいたし、是正もさせているわけでございます。先生の御指摘のように、法律でディーラー業務というものを、アンダーライター業務あるいはブローカー業務と切り離すことがいいかどうかというのは一つの問題点かとは存じますけれども、私どもとしては、現在のこの証取法の範囲内におきまして、価格形成が公正に行われるように、あるいは当事者の保護に反することがないように、十分指導してまいりたい。当面そういうような形で処理をしていきたい。にもかかわらず、いま先生御指摘のようなことが仮に将来も行われるとすれば、私どもとしても法制上の措置も考えなければいかぬと思うわけでありますけれども、現在のところは、とりあえず指導をより強化してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  146. 高橋高望

    ○高橋委員 さらに、関連してのお尋ねになりますが、証券取引法六十五条というのは、御承知のとおり、他の金融機関との位置づけにおいて、証券業の独占的な立場を許している法律だと思います。しかし同時に、この六十五条の精神というものも、当然、ただ単に企業としての独占的な立場を許しているだけだとは私は思えない。この証券取引法六十五条についての基本的な考え方はどのようにお持ちでいらっしゃいますか。
  147. 安井誠

    ○安井政府委員 証券取引法の六十五条と申しますのは、先ほど先生が御指摘になりました証券業の四つの業務、アンダーライター、ブローカー、ディーラー、それからディストリビューティング、この四つの業務は、証券会社でなければやってはいけないという規定でありまして、証券会社の業務の範囲を明確にした規定であります。  この経緯と申しますか、六十五条ができました由来は、日本の証券取引法の母法でございますところのアメリカの証券取引法に同じような規定があるわけでございまして、アメリカでは、この規定が入りましたのは、銀行が証券業に従事することによって、銀行の持っている預金者の保護に反する、つまりブローカー業務の場合であればまだしもでありますけれども、ディーラー業務あるいはアンダーライター業務というものはリスクを伴うものでありますから、そのリスクを伴うことを銀行が行うことによって、預金者保護に反してはいかぬということから、六十五条の規定ができ上がったというふうに了解しているわけでございます。  しかし同時に、私ども現在この六十五条を考えてみますと、日本の場合には直接金融というのが非常に重要であるということを言われておりながら、現実には、御承知のように、間接金融が全体の企業の資金調達の八割から九割を占めているわけであります。直接金融の担い手である証券会社にこれだけの業務を与えることによって、直接金融が円滑に行われるようにという意味の、つまり銀行の立場を考えた規定であるだけではなくて、証券会社の直接金融の担い手としての立場を明確にした規定だというふうにも了解をしているわけでございまして、これをいま御指摘のように、権限があるからといって、その上にただ単に乗りかかって、あるいは寄りかかって、独占的な業務を投資者の利益のために働かさないということになれば、やはりこれは証券会社に対する批判がおのずから出てくることでございますので、六十五条の権限があるだけに、やはり営業姿勢等は十分考えてやっていただかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  148. 高橋高望

    ○高橋委員 次いで、法人の株式保有率について考えてみたいと思います。  三十年代の中ごろに、法人が法人の株式保有をする比率がかなり下がったかと思います。ここ一、二年、証券会社が盛んに個人株主の比率を高める運動をしておりますけれども、いま上場企業において個人株主の比率はどのぐらいになっておりますか。
  149. 安井誠

    ○安井政府委員 ただいまの、昭和五十年度の持ち株比率でございますと、個人が三三五%でございまして、残りが金融機関、事業法人等でございます。
  150. 高橋高望

    ○高橋委員 現在の証券行政のあり方としては、どれぐらいの比率まで個人の保有比率を高めたら適当であるというふうに御判断でございますか。
  151. 安井誠

    ○安井政府委員 一律に何%がいいかということは非常にむずかしい問題だと思いますが、過去の例から申し上げますと、昭和二十五年には、個人の持ち株比率が、現在三三・五といいますものが六一%、昭和三十年には五三%、昭和四十年には四五%と、いまよりは相当多かったわけであります。  証券取引審議会におきましてもこの問題が取り上げられまして、昨年の五月の証取審の報告におきましては、三つばかりこれに伴う弊害を指摘しているわけであります。  一つは、法人が相互に株主権を協調して行使することによりまして、実質的な経営者支配を容易にすることになるわけでありますから、株式会社制度本来の機能をゆがめるおそれがあるのではないかというのが第一点でございます。それから第二点は、相互に名目的な資本増加をもたらすので、資本充実の原則に反し会社財産の健全性を阻害する、要するに、持ち合いをいたしますと、両方で増資をして二つの法人が持ち合いますと、中身は実は空っぽになっている。これは大分前に春日委員長が大蔵委員会で大分強く御指摘になったことがあるわけでありますけれども、この資本充実の原則に反するという基本問題に触れてくるわけであります。あるAという会社が金を借りてその金でBという会社の払い込みをし、その金を今度はAという会社の増資に払い込んだということになりますと、A会社はそのもらった金で借入金を返したということになりますと、何のことはない、ただ持ち合っただけで一つ企業の実質的資本が増加しないということになるわけでありますから、これはやはり大きな問題だと思います。それから三番目には、法人の持ち株がふえますと、どうもいわゆる浮動株と申しますか、市場に出てくる株が少なくなってくる。つまり、法人は系列的な支配であるとかいうようなことのために持つことが多いわけでありますから、そのために、浮動株が少なくなりますと作為的な株価形成ができる要素がある、おそれがある。  この三つの理由を挙げまして、これは大問題なのでひとつ十分検討しろということを言っておられるわけです。特に二番目の、名目的な資本増加だけをもたらして資本充実の原則に反するという議論は商法にも非常に深く関連する問題でありますから、商法でも取り上げてほしいということを証券取引審議会で提言したわけでございますが、現在法務省の法制審議会におきましても取り上げられておりまして、相互の持ち株保有というものをどのように規制していくかということの議論が行われているわけでございます。
  152. 高橋高望

    ○高橋委員 安井局長大分お話が先に急がれたようでございますけれども、私も実はその辺はきょう伺いたかったことの一つなんです。というのは、産業構造の確立というような名前、あるいは新しいコンツェルンの編成というような形の中から企業間、特に法人間の株の持ち合いについてどうしても私たちがこの際考えておかなければならない問題が出ていると思います。いまお話しのように、企業集団グループ相互間で株を持つということ、それから親子企業間で持つということ、さらには提携企業間で株を持ち合うということが現実の問題として起こってまいります。この持ち合うことによっていたずらに大株主のみをつくり上げてくる。いまもお話しのように、相互に持ち合うことによって実際の資金調達は全然行われないのに、いわば融通手形の出し合いというような形が行われる。ところが、形の上では大株主ができてきますから、個人株主の株価というのは薄まってくるわけですね。しかも、浮動株の比率が減少して一見品薄株に見えてくる。株価が上がる。そして時価発行するというのが実は手口なんですね。時価発行によって大量の資金を導入する。これを繰り返されていたら、個人株主というものは被害が多くなってまいります。被害が多くなっているという言い分が当たらないまでも、少なくとも財産形成としての張り合いがなくなってくる。この辺についてはいまも商法の問題まで触れるとおっしゃっておられますけれども、どうも証券業界に対する証券行政のあり方として、この法人間の株の持ち合いについてはもう少し別の角度で厳しい監督下に置かなければいけないのじゃないかと私は判断いたしますが、局長、重ねてこの辺御決意を承りたいのです。
  153. 安井誠

    ○安井政府委員 いま先生の御指摘のような株価操作が行われやすい環境にあることは、この持ち合いが極端に進めばそういう状態になり得るわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、そういう事態が生じないように十分この株価の形成過程というものを見ていかなければいかぬわけでありまして、たとえば証券業界自身としていま取り上げております問題といたしましても、上場株につきましては一定の浮動株主がいないと上場そのものを認めない、上場基準というものをきつくするということも、いま東京証券取引所を中心にしてやっております。この浮動株が少なくなることによって株価形成がゆがめられることのないように措置をしていかなければいけないと思っているわけであります。ただ、形式的な株式の持ち合いをどこまで規制するかということになりますと、形式的なものと実質的なものと両方あるわけでありますし、この辺になりますとやはり商法の方で手当てをしてもらわなければいかぬということで、法制審議会にもお願いをし、取り上げていただいている、こういう状況でございます。私どもとしても十分気をつけてまいりたいと思います。
  154. 高橋高望

    ○高橋委員 見方をひとつ変えてお尋ねをしたいのですが、一年に五十回、一回二十万株以下の取引、これがいま証券の売買に伴う税を取れるか取らないかのポイントだと思っております。これは、現実にこの摘発をなさったことがおありになりますか。
  155. 安井誠

    ○安井政府委員 税金の問題でございますので、国税庁がお答え申し上げるべきことだと思います。幾つかの例があるというふうには私ども聞いておりますけれども、詳細はちょっと存じ上げておりません。
  156. 高橋高望

    ○高橋委員 お差し支えのないことで、ここに御出席のメンバーの中でお答えいただけませんですか。局長御存じでいらっしゃいましょう、この程度のことは。
  157. 安井誠

    ○安井政府委員 数年前に国税局長をしておりましたときの知識でございますけれども、調査をいたしてみますと、五十回、二十万株という規定がございますために、たとえば四十九回でとめるとかいうようなことが行われているのが多いようでございます。ただ、現実に五十回、二十万株を超えたために課税が行われている例も、何件あるかということは存じておりませんけれども、全国的  には相当数あるように私は承っております。
  158. 高橋高望

    ○高橋委員 私が実は申し上げたいのは、恐らくこれはほとんどできてない、やれてないと思うのですね。それは私は総括的に申し上げたいことなんですけれども、冒頭申し上げた金の相場の問題も含めていわゆる相場、これについてはほとんど、私たちの国の行政の中では監督、監視が行き渡ってないということを私はきょう申し上げたいのです。どうかひとつ、お願いがございますことは、一番最初に戻りますけれども、金の相場も含めてこの相場問題に対しての悪弊害が出ないように、行政御当局並びに政府の方で御配慮いただかないと、いろいろな意味での所得の不公正、不公平というもので国民感情が非常に波立つということを恐れますので、今後ともそういった意味での御配慮の中から行政についての展開をお願い申し上げたい。  以上、お願い申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。
  159. 山下元利

    山下(元)委員長代理 荒木宏君。
  160. 荒木宏

    ○荒木委員 二、三お尋ねしたいと思うのでありますが、本日いろいろ議論になりましたこの日銀へ売り戻す予定の八十トンのうちの四十四・七トン、これが戦時中の売り戻し約定つきで、このたびそれの履行として日銀に売り渡しというふうな御説明を伺ったのでありますが、今回この売り渡しをされる契約、これは、もとの契約というのですか、戦時中になされたと言われる契約の履行としてなされるのか、あるいは別の新しい契約になるのか、その点をまず初めにお伺いしたいと思います。
  161. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 昔の契約を更改する契約ということになろうかと思います。
  162. 荒木宏

    ○荒木委員 日本銀行の方の処理はどうなりましょうか。つまり、新しく買い入れとして処理をするのかどうかという点です。
  163. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 これが実行されました場合には、その取得価格によりまして簿価を決める。それから相手勘定には政府からの預かり金という勘定が計上される、普通の売買と同じ処理をされる、こういうことになる予定でございます。
  164. 荒木宏

    ○荒木委員 日銀処理としては売買。新しい契約といいますか、政務次官も、本来なら新しい契約として処理をされるべき性質のものだという趣旨のことを午前中の答弁でおっしゃったように聞きました。  そこで、もとの契約の趣旨でありますけれども、これは商品として売り買いされたものでしょうか、それとも決済手段として受け渡しされたものでありますか、そのどちらでありましょうか。
  165. 高鳥修

    高鳥政府委員 午前中に私お答え申し上げましたように、本来ならばもとの契約が生きておるわけでありまして、したがって、その契約に基づいて四円八十銭なり五円五十五銭なりで日銀に売り戻すということにしなければならないわけでありますが、それが現在の社会常識から見てきわめて不合理であるということからいたしまして、その原契約の改定という形で契約を結び直して売り戻すのでなければ六百九十円という単価で売り戻すことはできない、このように理解をいたしておるわけであります。  その原契約は一体どういう性格のものかということにつきましては、私どもは結局現物日銀から買い受けはしたけれども、それは実際には現物を借りた、ただ借りたというのが、帳簿上から言えば金額がついておらなければおかしいわけでありますから、売り渡し、買い戻し条件づきで借りた、こういう形でありますから、現物お返しする、そしてそのときの対価を、契約によってそのときの精神に基づいて対価を決めて売り戻す、こういうふうに理解をしておるところであります。
  166. 荒木宏

    ○荒木委員 契約の改定ということになりますと、もとの契約そのままではなくて、新しい契約といいますか、前のは一応御破算になって新しい契約が締結される、こういうことになると思うのですが、その場合に、仮に法律的に御破算になりましても、過去の歴史的な事実としてはあるわけですから、それがどういうふうに評価されるか、その評価の意味合いはそれぞれもとの契約の見方によっても違ってくるだろうと思うのですね。そこで、関連して元契約の趣旨を伺ったのですが、商品として現物を買い取るという場合と、対外決済の支払い手段としていわば決済用に買い入れる場合とは、おのずから趣旨に違った面がありはしないか、こういうふうに思うのですね、取り扱いあるいは契約の内容、あるいはそれの効果といいますか、にですね。     〔山下(元)委員長代理退席、小泉委員長代     理着席〕  そこで、元契約の方は、いまあるいは御答弁にあったかもしれぬと思うのですが、商品として買い入れられたのか、決済手段としてお借りになったのか、その辺はいかがですか。
  167. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 決済手段に使うために現送するものとしての金でございます。
  168. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、対内的な価値と対外的な交換価値は、これは理屈の上で別ですけれども、しかし価値尺度として買い入れたということになりますと、商品としての評価というふうなことは契約趣旨には必ずしも入っていないんじゃないかということが考えられると思うのですよ。  そこで、そういった幾つかのことを前提にいたしまして、いずれにしても三十年以上前の契約なるものが現在そのまま、前の条件のままで通っているということは、普通、事情変更と申しますか、世間の常識では法律的な意味合いはずいぶんと変ってこようかと思うのですが、そうしたことで前の契約法律的な効力は今日及んでいないというふうにも思われるのですが、いかがでございますか。
  169. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 法律的効果は生きておると思います。  それから三十四年、四十年の予算委員会におきましても議論になったことはございます。
  170. 荒木宏

    ○荒木委員 三十四年といま国会論議の御紹介があったのですけれども、そのときには、むしろ新しくどうするか、処理をする、処理方針はまだ全然決まっていない。つまり、前の法律的効果がそのまま生きておるのなら、政府の義務としてはその義務履行があるだけでして、政治的な配慮を加える余地はないと見なければいけない。法律的効果がないということが前提になっておればこそ、これをどういうふうに処理するか、その処理をいろいろと思案中なのだ、こういうことになるのじゃないでしょうか。
  171. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 権利を行使し得る状態にあるとは言えないので、消滅時効は進行していないと考えられるという見解を当時も持っておったわけでございます。
  172. 荒木宏

    ○荒木委員 いまお話しのような趣旨の答弁は議事録の中にはないように思います。これは商品、つまり現物として預かったわけじゃないんでしょう。つまり、預かったときのままのものを——これは物だとしますと特定性がありますね。だけれども、代替物を、同じ価値のものを返すというだけなんでしょう。だから、厳格に言えば種類債権というのですか、そういう性質のものだろうと思います。そうだとしますと、三十年以上たって、しかも特定物でない、同じ価値のものだけを返すという契約に、なお法律的に有効だというのは、ぼくはどうも常識的に納得いかぬのですけれども、それはどういうことでしょうかね。大体事情がずいぶん変わっておりますからね。こういう場合は普通はもう事情が変わって、そうした契約は前のままじゃ有効じゃないというのが世間の常識だろうと思うのですよ。それからまた特定されておる場合でも、これはたまたま不動産の例ですけれども、十年以上はもう除斥期間ということになっていますから、買い戻しの場合は。それを超えて売ったのをなお戻せということは世間の常識が許さない。いわんや特定物じゃなくて代替物なんですからね。それがまだ有効だというのがちょっと私は納得がいかないのです。三十四年のときにも、いまおっしゃる国会論議は私も読んでみましたけれども、どう処理するかということは今後決定されると、まだ処理方針ははっきり立っていないと。つまり義務が存在して、義務履行が残されておるというような前提のお話じゃないように思うのですが、前の契約というものはそういう意味合いで言えばもう法律的にはなくなっているのじゃないですか。それが普通の常識じゃないでしょうかね。
  173. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 日銀政府との間の約定の中に、金資金特別会計余裕が生じたるときはというようないわば停止条件といいますか、解除条件というようなものが入っておるわけでございます。     〔小泉委員長代理退席、山下(元)委員長代     理着席〕  そういう状況がいつ達成されるであろうかと、三十四年のときの議論はそれを踏まえた返し方をするかという議論で、その根底には、日銀政府との間の約定の中の金資金特別会計余裕を生じたるときはというのが前提になっておると考えます。
  174. 荒木宏

    ○荒木委員 これは多少理屈にわたりますから余りなにしませんけれども、大体、対象がはっきりしている場合でも、十年たてばどんな話があってももうそれ以上はだめだ、こういうことになっているのですからね、世間の常識では。時効が進行しようがしまいが、十年たったらもうだめだ、打ち切りだと、こうなっているのでしょう。だから、そういう点からいって、いわんや代替性のあるもので三十年以上もたってからなおかつ有効だというふうな考え方をとられるのは国有財産の——これは皆さんの個人のものならいいですよ、どんな約定をなさろうと。しかし国有財産の処理の衝に当たっておられる方の処理としては、いささかちょっと世間の常識外れじゃないかと思うのです。もしそうだということなら、私は日銀との間に交わされたその書類を一度拝見できないか、こう思っているのです。つまり、評価としては相応の評価である。三十年以上前の、だれも見たこともない約束を盾にとっていま生きておるのだというお話が出ておるわけですね。午前中、生命保険との対比の問題なんかもありましたけれども、世間の普通の人が聞いて納得するだろうかと。まあこれは政務次官に申し上げますが、古証文といいますか、かなり古い証文なんですが、そういう話があったときにいろいろ普通常識的に疑問が起こると思うのですが、やはりいや、こういう書面です、こういうしっかりした話です、その後こういう経過です、これが普通じゃないでしょうか、国民の立場から見まして。一遍その古証文というのを拝見したいと思いますが、いかがですか。
  175. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 これは大蔵省日本銀行のいわば官庁間内部の文書でございますので、いま御指摘のところをここで読ませていただきます。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 「昭和十九年十二月二十日、大蔵大臣石渡荘太郎日本銀行総裁結城豊太郎宛」となっておりまして、中身は、「今般対支向け現送に際し必要これあり候につき、金資金特別会計において貴行保有にかかる金地金左記を買い上ぐることと決定いたし候ところ、将来本会計所有金地金余裕を生じたるときは同一純量の金地金を同一価格をもって貴行に売り渡すことといたすべく候条、御了知相なりたく」といたしまして、「記」として純金量それから価格が書いてございまして、価格は、純金量一グラムにつき四円八十銭ということになっております。これはほかにもこういうのが何通かあるわけでございますが、その一例でございます。
  176. 荒木宏

    ○荒木委員 私、日本銀行の関係の方に聞きましたところ、内容も御説明をしますし、それからなんでしたら行って御相談をという話になったのですが、大蔵省の方から見せてもらっては困るというお話があったということなんです。  それだと、何も腹を探るわけじゃないですけれども、こうして今度特会廃止処理をされるについて、財政危機も大変な時期ですから価格ということも当然問題になりますし、そうした以前の言っておられる約款、約定なるものが果たしていかなる性格のものであるか、これは十分吟味をされるべしということで、むしろ進んで開示をされるような性質のものじゃないか、こう思うのですけれども、その点は特に指摘をしておきたいと思うのです。  いまのお話ですと、どうなりましょうかね、不確定期限ということになるのですか。余裕が生じなければずっとそのまま自然債務みたいな、出世払いみたいなものになるわけですか。それはどうでしょうかね。余裕が生じなければずっと返さなくてもいいと……。
  177. 高鳥修

    高鳥政府委員 先ほど加藤次長から御答弁申し上げておりますように、いわゆる金資金会計余裕が生じたときにお返しをするということは、つまり余裕が生じないときにはいつまでもお返しできない、そういうことになるわけでありますから、そして今日までの金資金会計の実情から申しますとお返しできるような状況ではなかったということからいたしまして、いま御指摘のように、いわゆる期限の確定しない債務が続いておると、こういうふうに理解せざるを得ないわけであります。  ただしかし、荒木委員が非常に専門的なお立場で御指摘になっておりますように、昭和十九年当時の売買契約というものはその時点において一応売買としては完結をいたしておるわけでありますから、一体その買い戻し条件というものがいつまで有効であるかということになると、いろいろと御意見の分かれる面もあろうかと、このように思うのでございます。  そうしたことを踏まえながら、価格につきまして当時の事情をいろいろと調査いたしましたところ、大体生産原価政府に売り渡しがなされておると、こういうことからいたしまして、売り戻しをする際におきましても、特別会計が輸入をいたしました原価の平均プラス輸送費等のコストということで、いわば買い受けをいたしましたと同じ精神で、価格には非常に大きな開きがもちろんございますけれども、そうしたことで算定をいたしまして、六百九十円という価格で売り戻しをすることが妥当であろうと、このように考えておる次第であります。
  178. 荒木宏

    ○荒木委員 その妥当性の判断の幾つかの要素として伺っておるわけですけれども、結局余裕が生じたか生じないかというのは借り手の方で判断するわけでしょう、政府の方で。ですから日銀の側にもうこれで条件が成就したと言って法律的に請求権が発生するような性格のものではないですね。だとすると、法律的な義務を負うというよりも、むしろ世間でいう出世払いといいますか、いわゆる自然債務的なもので、いやまだなかなか苦しいんだ、余裕がないということならいつまでも履行しなくていいという性格のもの。一方、先ほども私ちょっと触れましたけれども日銀の方では会計処理の上で三円何がしかでずっと計上してきている。だとすると、特に六百九十円ということで扱わなくても、政府の方で、ほかの何十トンかの日銀時価で売ると同じ扱いにしても、それはそれで通るのじゃないですか。元契約ということをしきりにおっしゃって、法律的な意味があるかのようなお話になるから、ちょっと話がややこしくなるのですけれども、それはむしろ言うなれば自然債務的な一種の、道義的といいましょうか、道義的というとちょっとニュアンスが違うのですけれども、過去の一つの経過にすぎないのであって、そういう意味から言えば、いまの財政危機の折、なべて同じ扱いにする、またそれが法律的にもそれで可能だということなら、どちらか選択の道があるのですけれども財政危機解決のためとおっしゃるなら、むしろそういうことでどうかということで、財政当局としては、国民のための国有財産の処理ということになりますと、そういうお話が出て当然じゃないか。日銀にそういうことをおっしゃったことがあるのでしょうか、千二百二十五円でどうかと。
  179. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 価格をどういたすかということを日銀当局と意見交換をいたしました過程では、もちろんいろいろな価格を議論したわけでございます。ただ、国庫当局と中央銀行との間の約束というようなことがございますので、両者でただいま御審議をお願いしておりますような処理に合意をいたしたわけでございます。
  180. 荒木宏

    ○荒木委員 これはこの程度にしておきたいと思います、経過が一応わかりましたから。  もう一言、今度は正金銀行が関与しておった十トンの方ですけれども、これは日銀の方が預かっておるのは正金の金地金証書だというふうに聞いたのですけれども、そうすると、まず日銀の方へ渡さなければならぬのは、正金銀行の方ということになるのじゃないですか。
  181. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 日銀と正金との関係は、契約を更改いたしまして、政府日銀との関係にいたして処理をいたすことにしております。
  182. 荒木宏

    ○荒木委員 それは政府が勝手にそう思っているのであって、正金銀行、つまりいまの日本中央地所ですが、そんな話は聞いておりませんというふうに私は聞いておるのですよ。だから、時価なり何なり国庫歳入を少しでもプラスにするという一つ観点から努力をするというよりも、一方的にそう決めちゃっているのじゃないでしょうか。むしろ話は正金と日銀の話になるのでしょう。
  183. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日銀と旧正金との間の取引につきましては、いま加藤次長が申しましたような線で日銀がやるということで、これから進む予定でございます。
  184. 荒木宏

    ○荒木委員 それはさっき伺ったのでわかっているのですけれども、直接日銀は旧正金の証書を持っているのでしょう。旧正金は日銀に国債を担保に入れていますね、旧正金は日銀に年に二回利息を払っているでしょう。だから、三十四年のときの論議もそうですけれども政府日銀の間ではなくて、日銀と正金の間じゃないですか。その日銀と正金の間がどういうふうになるか話が何もないのに、何も六百九十円でということを自分の方から決めちゃうことはないのじゃないですか。
  185. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 二つございまして、旧正金と日銀との関係、これはただいま申し上げましたように、日銀において政府との関係に整理をする。政府日銀との間は、ただいま申し上げましたような関係で六百九十円というような価格で合意をいたしておるわけでございます。
  186. 荒木宏

    ○荒木委員 方針答弁でそれなりに伺いましたから、正金との関係で入っておった証書の方ですね、この経過について、この論議の後で結構ですから、ひとつ説明をしていただきたいと思います。  それから、要望として申し上げておきたいのですけれども、正金の関係日本中央地所の関係でいろいろ事情を聞きましたときに、関係当事者から国会の審議のプラスになればということで説明をいろいろしていただいたわけです。ところが、それから少し突っ込んで聞こうという段になりますと、大蔵省の方からそういうことは言うてくれるなという話があるという連絡が来ましたので、私は非常に遺憾に思ったわけです。今後、こうした国有財産の処理、特会の処理に当たってそうしたことのないように十分留意をしていただきたいということを特に申し添えて、質疑を終わりたいと思います。
  187. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  188. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、村山喜一君外九名提出土地増価税法案を議題とし、提出者より提案理由説明を聴取いたします。山田耻目君。     —————————————  土地増価税法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  189. 山田耻目

    山田(耻)議員 土地増価税法案提出説明をいたしたいと思います。社会党の提案でございます。  私は、提出者を代表いたしまして、ただいま提案されております土地増価税法案につき提案理由及びその概要を御説明いたします。  わが国の経済はインフレと不況の共存というかつてない深刻な危機に陥り、国民生活は根底から脅かされています。今日の事態はもはや、一時的な対策で処置できる状況にはなく、抜本的改革を必要としているのであります。すなわち、インフレが富と所得の格差を拡大し、低所得者の生活を脅かす一方で、不況が失業の深刻化をもたらすとともに、未曽有の財政危険を招来していることが直視されなければなりません。  そこで、富と所得の適正な再配分を図り、深刻な財政危機を克服するための手段として、この際、税制を積極的に活用し、社会的公正の実現と租税収入の確保を図ることが強く求められていると言わなければならないと考えられるのであります。  今日のインフレを引き起こした原因の一つ土地価格の高騰にありますが、土地を担保にした信用インフレが地価をさらに引き上げるという悪循環は、昭和四十四年の土地税制昭和四十七年の法人の日本列島買い占めといった土地投機によって一層拍車をかけられたことは周知のとおりであります。地価の上昇は住宅事情を悪化させ、農業基盤を破壊し、地方行財政を圧迫していますが、逆に土地を所有している者は労せずしてキャピタルゲインを得ており、それは五十年の高額所得者百人のうち九十四人を土地譲渡所得者が占めていることでも明らかであります。  昭和三十年代の高度成長とともに始まった地価の高騰はこの二十年間に全国市街地価格で二十八倍という驚くべき上昇率を示し、このため、土地の含み資産は巨額に上り、法人所有地について見ますと、東証上場会社全体の含み益は六十八兆円との推計も行われており、さらに、資本金一億円以上の法人では、九十五兆円、全法人では二百兆円にも及ぶと言われております。また、土地の含み益は個人の土地所有者にも膨大な不労所得を与えており、たとえば、昭和四十八年から五十年の三年間に土地譲渡所得が百二十億円を超えるという高額所得者もあらわれているのであります。これらの利益は土地所有者にゆだねることなく、社会的な再配分の対象にして、公共の利益のために利用すべきものと考えます。  また、この間異常な高騰を続けた地価は五十年の公示で初めて前年より九・二%下落して、一部では、狂乱の終息、地価高騰の転換期などと言われましたが、五十一年には早くも〇・五%高を示し、しかも今年の地価の状況は、昨年を上回る上昇を見せており、地価の再上昇の動きが強まっており、とりわけ、大都市に比べ、相対的に安い地方での上昇率が高くなってきておりますことなどは、今後とも、地価の動きに十分な警戒を要する状態であると申さねばなりません。  特に、五十二年度予算では歳入のほぼ三〇%を国債収入で賄うという巨額の税収不足の状況にあり、インフレ利得吸収のための大胆な新税を採用して税収の確保を図ることが急務であります。同時に財政改革と相まって、新税による財源を高度成長過程で放置されてきた住宅、生活関連施設、農林漁業の再建、地方財政などの分野を中心に新投資と財政配分を行うことが経済、財政の改革の一環として進められなければならない課題であり、このような考え方により新税として土地増価税を創設することが、本法案提出理由にほかならないのであります。  次に、法案の概要を申しあげます。  第一に、本法案は地価の異常な上昇にかんがみ、土地等の増価額に対し土地増価税を課税し、増価益の適正な配分と租税収入の確保を図ることを目的とするものであります。  第二に、課税対象は、昭和五十二年五月一日現在の法人及び個人所有の土地及び地上権、借地権など土地の上に存する権利の増価額としております。ただし、法人及び個人の所有する農地等の増価額は対象としておりません。  第三は、課税標準でありますが、土地増価税の課税標準である土地等の増価額は、標準価格から帳簿価額額または取得価額を控除した金額とし、標準価格は、土地課税台帳または土地補充課税台帳に登録された価格、すなわち、固定資産税評価額を一・七五倍した金額としております。なお、土地の取得価額の把握が困難な場合について所要の配慮を行うことといたしております。  第四は、課税最低限についてであります。すなわち、中小零細法人の店舗等及び個人の居住用宅地には課税しないようにするという配慮から、法人については、増価額が五千万円以下であるときは、増価税は課さないこととし、増価額が五千万円を超えるときは、増価額から五千万円を控除することとし、また、個人については、増価額が三千万円以下であるとき、または土地の面積が三百三十平方メートル以下であるときは、増価税は課さないこととし、増価額が三千万円を超えるとき、または土地の面積が三百三十平方メートルを超えるときは、増価額から三千万円と三百三十平方メートルに対応する増価額とのいずれか多い方の金額を控除することとしております。  第五は、税率と納付についてでありますが、土地増価税の一時的課税という性格をも考慮して、税率を一五%とし、納付は五分の一ずつ五年間の分割納付としており、また、物納もできることにしております。  第六は、土地譲渡益課税との調整についてでありますが、土地の譲渡益に対する所得税及び法人税との重複課税を避けるため、調整措置として、十年以内に譲渡があった場合には、土地増価税を還付し、未納分は免除することとしております。  このほか、土地増価税は、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額には算入しないこととし、個人の不動産所得の金額または雑所得の金額の計算上も必要経費に算入しないこととしております。  なお、この法律の施行期日は昭和五十二年四月三十日としております。  以上が、土地増価税法案の提案の理由及び内容の概要であります。  何とぞ御審議の上、御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  190. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  この際、暫時休憩いたします。     午後三時三十六分休憩      ————◇—————     午後七時一分開議
  191. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  192. 只松祐治

    ○只松委員 総理は、カーター大統領に会われました。カーター大統領はモラルリーダーシップというものを強く訴え、新たな無知と不正に対する戦争にいどみ、他国における個人の自由と人権の問題については無関心ではない、こう言われた。しかしあなたは訪米第一声で、福田内閣は働こう内閣である、こういうことをおっしゃった。働こう内閣が福田内閣のモットーである、こういうふうにおっしゃったと日本のマスコミは報じておるわけであります。大変な違いだと私は思うのですけれども、しかしそういう過程を通じまして、アメリカの経済の動向をどういうふうにごらんになったか、お聞かせいただきたいと思います。
  193. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 アメリカはいま景気政策に向けて大変努力をしている段階である。見通しといたしましてアメリカ朝野の人が申しておるのは、先々明るい、こういうことを言っております。それから同時に日本の経済の動き、これに非常に関心を持っておりまして、六・七%成長、これはぜひやりたいんだということ、これには大変な関心を示しておりました。
  194. 只松祐治

    ○只松委員 後で税制の問題をお聞きいたしますが、カーター大統領は特に税制の問題について、減税、特に税の払い戻しは経済に資金を流通させ雇用機会をつくる唯一の短期的効果をもたらすと言い、国民に消費を促進し、庶民の購買力の増大を訴えておるわけでございます。しかし、福田内閣の今度の予算を見ますと、あるいは国会におけるいろんな論議を見ますと、どうも公共投資優先と申しますか、政府主導型と申しますか、そのことの方が景気浮揚策につながる、こういうふうにお述べになっておることが多いと思うのです。カーター大統領に会われて、カーター大統領の方が正しいか正しくないかということではありませんが、このお考え方を御理解してお帰りになりましたか、いかがでございますか。
  195. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 そういう経済政策の手段、方法、こういう問題につきましては両方とも全然触れません。ただ、モンデールという副大統領が一月に日本に来たときに、わが国では減税政策を景気のてこ入れにしたい、こういうことを申し、日本では公共事業だと言っておる、違いがあるが、この目標は同じなんで、景気浮揚だ、こういうことで、私は、違いのある点は、これは根拠があるんだ、アメリカはすでに租税負担率が非常に高い、そこで減税するというような余力を持っておる、それからアメリカでは公共事業というものをやろうとしても、その種がほとんどないんだ、そうでしょう、こういう話をモンデール副大統領にしたのです。そのとおりです、下水道も道路も住宅もほとんど整ってしまっておる、こういうような話。それから、とにかく私の国じゃ少しぐらいの公共事業費を使っても、国が広くてとてもそれで景気というようなわけにはまいりませんというようなことも申しておりました。わが国とすると、とにかく下水道なんか、これはもう先進国なんというような範疇の状態じゃないわけなんですね。それから、あるいは上水道、こういうものを見ましても、先々これは非常に心配です。道路はどうだというと、まだまだ舗装率が大変貧弱な状態だ、そういう際に景気対策とすると、これは公共事業、これしかわが国としてはない、かつて私は、何回か景気変動期に際会し、そして不況のときには必ずというくらい公共事業、これをやったんだ、それからあわせて金融緩和ということをやったんだが、公共事業の効果というものはわが国としては大変有効な手段であるという話をしましたところ、大変感銘を受けました、こう言っておりましたよ。  私は、日本日本の行き方があるということはアメリカとして十分理解しておる、そういう見解でございます。
  196. 只松祐治

    ○只松委員 まあ、考えが変わっておらない、こういうことでございます。私は、後でそうではないということを述べたいと思いますが、次に問題を移したいと思います。  対米の場合に貿易問題が非常に大きなウエートを占めておりまして、その特徴的なものとしてカラーテレビの問題があるわけですが、現状では三分の一ぐらいの輸出に抑えられはしないか、こういう懸念も表明されております。カラーテレビと自動車というものは、いま沈滞し切っておる産業界を引っ張っておる大きな牽引車でございますが、三分の一ということになればこれは大変なことになるわけでございますけれども、その点に対してどういう感触を持ってお帰りになりましたか。
  197. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 世界の問題を主に論じようというこの日米会談で、まさか私はカラーテレビの話なんかカーター大統領の口から出るだろうとは思わなかった。カラーテレビでなくて貿易アンバランスの問題があるいは出るなら出る、こういうふうに思ったのですが、その貿易アンバランスの話、これは一言、去年は大変な私の方の赤字でしたねというだけであります。だから、この問題はそう深い議論にはならないのです。むしろ私の方から、この問題についてそういう話があったから、貿易のバランス問題は、単年度というか十二カ月くらいな短い期間をとって論ずべき問題じゃないのですよ、これは三年、五年という長い期間で見なければならぬ、たまたま五十一年という年は、わが国は大変な対米黒字だったわけでありますが、二、三年前はどうだったですか、あなたの方の黒字なんだ、しかも貿易バランスだけで国際収支を論じてはいかぬ、貿易外収支とあわせて事を論じなければならぬという話をしておきましたが、向こうは何もその問題は言いません。ただ言ったのは、テレビのことです。テレビの問題はちょっと弱っています、こういう話です。それで、テレビは五十一年という年は異常な年だったのです、アメリカの在庫がうんと減ってしまって、在庫補充の必要があった、たまたま世界景気はよくなって、アメリカの景気も、また同時に私ども日本の景気もみんなよくなった、そこでわが日本のカラーテレビがアメリカに殺到して輸出される、こういうことになったのです、これは異常なことです、異常なことであるけれども、これはアメリカの皆さんの御迷惑になると思いまして、節度ある態度を業界に要請しておったんだ、だんだんそういう方向になってきておりますが、五十二年というこの年はもうそういうことはありません、こういう話を申し上げたわけですが、大統領は、この問題は、去年は去年として、政府間で話し合いをさせることにいたしましょうや、私もそれは大賛成です、政府間で話し合いをいたしましょう。こういうことで、私の印象といたしましては、これは双方が満足できる形で決定されるであろう、こういうふうに見ております。
  198. 只松祐治

    ○只松委員 国際問題は後で同僚の川崎君の方からまたお尋ねをいたしますので、国内問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  資本主義経済は、申し上げるまでもなく市場によって成り立っております。この資本主義市場というのは、自由市場あるいは自由な売買に基礎があるわけでございます。ところが現在、たとえば高校の進学率は九二・六%あるいは大学の進学率は三八・六%、このように非常に高学歴あるいは所得水準の向上、いろいろなことによりまして、国民の要求が多様化をしてまいっております。こういうふうに多様化をいたしてくるということは、たとえば社会福祉あるいは医療、教育、レジャー、芸術、こういうことを初めとして、生活関連、住宅関係などの消費が非常に増大をいたしてくる。  本当はここで、国民総生産とその中に占める消費等を数字を出して総理と論争すると、そのことはさらに明らかになると私は思うのですが、時間がありませんから、とにかく一口で言うならば、いわゆる市場性のない消費というものが非常に増大をしてくる、こういうふうに言えると思うのですが、総理はそのようにお思いになりますか。
  199. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は全く同じように思います。つまり社会消費ですね、個人の家庭の消費ではなくて社会消費、つまり国の消費といいますか支出といいますか、そういう形をこれからの世の中というものはたどっていくであろう、それが増大する。いわゆる学問的意味においての社会化じゃありませんけれども、社会化的な傾向というものが進んでいくだろう、そういう中で国の需要というものはだんだん増大してくる傾向を持つ。私はそれはいいことだと思うのですよ。一人一人の人が一人一人のことを考えても、限界があります。やはり共同の家庭というか、つまり日本社会、日本国という規模でわれわれの生活なりわれわれの生活環境を整える、それはいいことであり、またそういう傾向になるべきであり、なっていくであろう、そういうふうに思います。
  200. 只松祐治

    ○只松委員 そうしますと、かつて、鉄、石炭、セメント、こういう産業にあらずんば人にあらず、こういう言葉がありました。こういういままでの資本主義構造から見るならば、やはり経済そのものを大きく変えなければならぬ。いや、むしろ必然的に変わっていく。さっきちょっと触れましたけれども、確かに社会資本の面の上下水道やなんか、いろいろな立ちおくれた面がありますけれども、そういう面からの公共投資ではなくて、社会福祉を中心とした産業構造といいますか、あるいは消費構造といいますか、そういう面に移っていかざるを得ないし、移っていきつつある。こういうことになれば、当然にそこから出てくる税制の問題もまた変わってこざるを得ない、私はこういうふうに思いますが、そういうふうにお考えになりますか。
  201. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 まあ福祉というよりは、私はもう少し広く考えているのですが、私は、生活関連、生活環境の整備ということがこれからの日本社会、日本の経済力の中で占めるウエート、シェアを拡大していく必要がある、こういうふうに考えております。
  202. 只松祐治

    ○只松委員 そういうふうになれば、公共投資中心である、あるいは民間でも設備投資が中心である、こういう形の経済政策というものは変わるし、何としても変えていかなければならない。ところが総理は、先ほどもちょっと七%ぐらいということをおっしゃいましたけれども、本年度の経済成長率を六・七%、これは何としても達成したいということも、アメリカからお帰りになってもお答えになっております。ところが、日銀が四月から六月の窓口規制枠として、都市銀行で七・九%、長銀で一四%、信託銀行で二八・四%、金額にして一兆五千二百五十億円、昨年度よりもこれは減っているわけです。こういうふうに見てまいりますと、総理が六・七%あるいはいま七%の経済成長率を達成したいと言われたが、経済成長率が達成されなければ、当然に税収は伸びませんね。ところが、四月から六月の銀行の規制枠をこれだけ大幅に減らしたいというようなところから見て、そう簡単に、総理がおっしゃっているように景気の浮揚は容易ではない、私はこういうふうにこの数字から見られますが、この数字を通して、総理はどうお考えになりますか。
  203. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま挙げた数字は、これは設備投資に関連してくる数字ですね。設備投資は幾らか伸びますよ。つまり先行投資という問題が特に電力業界なんかにありますから、幾らかの伸びは、これはあると思う。しかし、過去の景気循環のときには、まずこの設備投資が始まって、そして公共投資と一緒になって景気を回復する、こういう力を持ったわけですが、今度は、私は設備投資というものは景気牽引の力にはなってこないと思うのです。これはある程度の力はあります、電力投資なんというのは相当の力を持っておるわけですからね。それは否定はできませんが、それだけに、もう金融政策だけでは景気のてこ入れというか、これはできないと思うのです。したがって、日本銀行が今度公定歩合を〇・五%下げましたが、これは普通の場合でありますれば、そういう措置をとると同時に、量的拡大をやるのです。これは量的拡大をやりません。どういう効果があると言えば、いま企業は収益が悪い。その結果、金利負担というものが相当重荷になる。その金利負担を幾らか軽減するという効果はありまするけれども、直接的に景気てこ入れという効果はないのです。  そうすると、どこにその景気回復の手段を求めるかというと、これは財政しかないです。そこで財政で、財源が幾らでもあるというのならいろいろの手を講じられますけれども財政は遺憾ながら非常に窮乏な状態だ。そういうときには、最も効率の高い公共投資を選ぶのがこれは当然だ、こういう考え方で公共投資を大いに伸ばす、こういうふうにしたわけです。  しかし、福祉を軽視しているわけじゃないのです。今度の予算は一七・何%でしたかな、拡大になるわけでありますが、そう拡大になる原因は公債費、それから交付税交付金なんですよ。その二つを除いてみると、これは普通の伸びになるわけですが、一三%そこそこです。その中で福祉の方には、社会保障ですね、こっちの方にはとにかく一七%台の伸びをというような予算を編成しておるわけです。ですから、公共事業によって景気の拡大を図る、同時に、福祉政策はそういう中でもこれは重視している、そういう性格予算を編成した、かように御承知願います。
  204. 只松祐治

    ○只松委員 公共投資政府主導、財政主導型とおっしゃいますけれども、いま時間がありませんから、一番身近な銀行の貸し出し規制枠をちょっと私は言った。  いま一つ挙げれば、本年度の国民総生産が百九十二兆円、その中で個人消費支出が百九兆円、こういうふうに過半数を占めるわけです。そういう中で物価は八%以内、こういうふうな目標でありましたが、名目九・二%、まあ生活感覚でお母さん方がはかった実質的な物価高は一六%から二〇%に及ぶ、こう言われておるわけです。そういたしますと、当然に購買力というものが落ちてくるわけでございますから、商品の生産というものもこれは鈍ってくる、こういうことになります。この面から見ても、先ほどアメリカの一例だけ申しましたけれども、これは時間があればEC諸国なりその他貿易の問題あるいは設備投資の問題あるいはこういう購買力の問題、こういう面から見てそう簡単に景気は回復しない。景気が回復しないと、後でお聞きしますけれども、本年度の税収はなかなかそう思うようにいかない、来年以降も容易ではない、こういうことになってくると思うのです。この購買力の面からどういうふうにお考えになりますか。
  205. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 五十二年度の経済につきましては、大体輸出が実質五%ぐらい、それから消費がやはり同じ程度の伸び、これじゃ六・七%になりません。そこで、財政にてこ入れの任務を負担させる、こういうことになるわけなんです。ですから政府投資の伸びは、これは実質の話ですが九・九、これは相当なものです。しかも、それを上半期に七割を消化というまではいきませんけれども契約をする、こういうのですから、上半期中に上昇の契機をつかみ得る、こういうふうに私は見ておるのです。  昨年の十−十二月の景気情勢が大変悪かったのです。前期比で〇・六というのですから、年率にすると二・四ぐらい、そんな速度になっちゃったんです。横ばいに近いですね。しかし一−三は、私は、補正予算ができたなんというようなこともありまして、これはかなり上がると思うのです。それを受けて、五十二年度の予算、そのような規模のものですから、これは必ず景気回復が実現できる、私はそういう自信を持っています。
  206. 只松祐治

    ○只松委員 政府がさきに予算委員会に試算として提出をいたしました、それによりますと、御承知だと思いますけれども昭和五十五年度に公債を含めて四十三兆五千八百億円という、いわゆる大増税をいたす、こういうことになっております。そのときの公債残高は五十四兆七千億になるわけでございます。これを弾性値で見てまいりますと、昭和四十年から四十九年、いわゆる高度経済の一番成長期で、税収の伸び率は一・三五です。ところが、この数値でいきますと、五十三年度で五兆一千五百億、あるいは五十四年度で五兆二千五百億円、五十五年度で六兆三千九百億円、こういう伸びを示さなければならない。約一・八の弾性値を必要とする。私は、いま論じましたようなことから、あなたは強気でございますけれども、高度成長の経済のさなかでもとてもできない——きょうは時間がありませんから、あなたのお得意とする資源有限時代という問題に論及することはできませんけれども、資源有限時代ということになれば、これはいわゆる低成長——きのうのテレビでも、草柳さんとの討論で何かそれに近いことをおっしゃっておりました。そういうことになりますと、こういう税収というものは、いまの税体系では少なくとも望み得ない。大蔵担当の坊大蔵大臣も、あるいは主税局長も大蔵委員会で、当然に何らかの形で増税をいたしていかなければならない、その増税は、早ければ早いほどその増税率を下げることができる、したがって早い機会に行いたい、こういう答弁をすでに本委員会でなさっておられるわけです。かつて大蔵大臣の経験があり、財政通の福田さんですから、そのとおりだと思いますが、総理もそのように思いますか。
  207. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 それはそのとおりと思います。
  208. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、これは後でお聞きしますけれども、本年度この委員会において三千億の所得税の減税が行われました。当然に残されるところは間接税あるいは法人税、こういうことになるだろうと思います。きのうのテレビでも、総理になったのは、私は大胆に自分の思うことが述べられることだ、これが一番うれしい、こういうふうにおっしゃっておりましたが、ひとつ大胆率直に増税の基本的な方針をお話し願いたいと思います。
  209. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これから先々、先ほど只松さんからお話があるように、社会投資ですね、社会消費といいますか、国の財政需要、これがだんだんだんだんふえる傾向を持ってくると思うのです。というのは金額的という意味じゃない。国の財政の中でのシェアですね、これはだんだんふえる傾向を持ってくる、こういうふうに思うのです。これはそのほか公債費の増加なんというのがあるでしょう。そんなようなことを考えますと、どうも全体の財政規模というものがだんだんふくらんでくる。それに対して租税弾性値なんというのは、そう低成長下で多くを期待することはできません。そうすると、大観いたしまして、ここ数年間に租税負担率、これは三%ぐらい上がる傾向になってくるであろう。そうしないと財政が運営できない。つまり、基本といたしましては五十五年度に特例公債をなくすという前提なんです。その実現ができない、そうしますと、この三%の租税負担率を一体どうやって充足するのだ、これはなかなか容易なことではないのです。私だってそれははでにやりたいですよ。一兆円減税、ようし、一兆円減税どころではない、二兆円、三兆円やりたいんだという気持ちでございまするけれども、そう簡単にいかない。それで皆さんにもいろいろお気に召さないことを申し上げたわけなんであります。結局私は、既存の税による増収とかあるいは新税を創設して増収とか、何かとにかく新しいこともまた考えなければならぬだろう、こういうふうな見当なんです。その新しいものを一体どうするかというと、税では、大きく分ければ法人税と所得税とそれから消費税、こういうようなものですからね、そのどれに中心を置いて考えるか、これは広く国民の意向、それから税制調査会の考え方、そういうものを十分お聞きしましてひとつ選択を誤らないようにしたい、こういうふうに考えているのです。
  210. 只松祐治

    ○只松委員 それとともに、公債がこれでも五十五兆近くなりますが、これはいよいよ時間がなくなってきましてあれですが、十二年前に公債を発行されたのは福田さんが大蔵大臣のときで、反対討論を行ったのは実は私なんです。そういう意味では私は福田さんを公債大臣だと思っておるわけです。今度はその福田さんのときに、五十五年度で少なくとも赤字の公債をなくそう、こういう努力をなさっておられるわけです。本当になくす自信がありますか。なくすとするならば、いま申しますような税制と表裏一体をなしていかなければならないことは当然でございますが、時間がありませんからお覚悟だけ聞いておきたいと思います。
  211. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ぜひなくさなければならぬ、こういうふうに思っているのですよ。また、なくすことはできる、こういうふうな見解です。私がいま一番心配しているのは何だというと、この公債の問題です。これが取り扱いを過ちまするととんでもないことに日本社会がなってしまう。公債の問題、この一点をにらんでいると言ってもいいくらいで、私はこの問題を大事にしている。そして、ぜひ特例公債だけは五十五年度にはおしまいとしたい、こういうふうに考えております。
  212. 只松祐治

    ○只松委員 今度、一兆円減税を要求いたしましたが、結果的には約三千六百億ぐらいの減税の増がある。これはある意味では福田内閣の最大の功績だと私は思うのです。いままで自民党は出したものはなかなか修正されませんでしたけれども、されたわけです。そういう意味では憲政史上画期的なものだ。社会党もいままでになく所得税法案に賛成したというのは、そういうところにもあるわけでございます。  そこで、そういう点から見るならば、ことしだけじゃなくて来年もやはりしていかなければならぬと私は思うのです。今度の幹事長、書記長会談の申し合わせは一年限りということになっておりますが、これも、ことし標準家庭で大体二百二十万にしておいて、来年二百五万だ、二百十万だということは政府もよもやなさいますまいが、野党としてもそれはできないわけですね。当然に二百三十万なり二百四十万ということになっていかざるを得ないと思うのです。この点に関して、ことし限り、こういう一応の約束はありますが、いまの政治情勢の与野党の力ということになれば、来年も引き続き減税が行われる、またこういう減税を行っていかなければ、今度の春闘でも賃金が上がってまいりますが、当然に下層階級ほど累進率が高くなってまいりまして重くなります。こういうことで、来年も引き続き減税に当たるべきだと思いますが、総理のお考えをお聞かせいただきたい。
  213. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 来年、再来年、その次の年、考えてみますると、本当に財政事情は大変な状態だと思うのです。とにかくそういう状態の中で六党の間つまり与野党の間で合意ができた。私はいろいろ感想は持っておりまするけれども、しかし、合意ができたという経過が大変よかった、私はこういうふうに思っております。せっかくできた合意ですから、その合意で今度の減税は一年限り、こういうふうに言っておるのですから、それをいまあげつらってとやかく言うというようなことは私はしたくない。いまの心境はひたすら合意を尊重してその精神を生かしていくということにあるわけであります。
  214. 只松祐治

    ○只松委員 多分そうおっしゃるだろうと思っておったのですが、しかし、御承知のように、デンマーク、カナダ、オランダ、こういう国家は毎年物価に自動的に調整しております。あるいはフランス、スイス等では法律によって裁量的な調整を行っております。あるいはOECDでは、インフレに伴って減税すべきである、こういう勧告を行っておることは御承知のとおりです。そういうふうに考えますならば、私がただいま申しましたように当然にこれは行わなければならないと思います。ただ、時間がございませんから、このお答えは次のものと一緒にしていただきたいと思うのです。  いままでは申し上げるまでもなく所得控除方式です。ところが、今度の場合は、広範な意味の戻し税方式であるし、言葉上は税額控除方式、こういうことになります。いわば木に竹を接いだと言われておるわけですが、税額控除方式は世界的にも進んだものである、こういうふうに言われております。私もそう思います。総理は今後も税額控除方式というものを取り入れる意思があるかどうか、お聞きしたいと思います。
  215. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この問題を論じておると相当の時間を要しますからそれは省略しますが、私は、いまの所得控除方式、これは大変合理的だと思っているのですよ。税額控除方式、これは非常に簡明率直でありますけれども、やはり税体系といたしますと、いまの所得控除方式、これは非常にすぐれた制度である、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、これから先々税の問題は非常に重要な問題になりますので、税が根本的にどうあるべきかということまでいろいろ考えなければならぬ時期が来るのじゃないか、そんな感じがいたしますが、よく私も検討してみます。
  216. 只松祐治

    ○只松委員 御承知のようにイギリスでは一九七二年タックスクレジットという非常に進んだ方式を大蔵大臣が議会に提案いたしております。福祉国家に進めば進むほど、いまの国税庁のあり方とそれから社会保険庁というもののあり方、これが全然別個であるということにいろんな問題が出てくる。逆な面で言うならば、社会保険庁と国税庁が一体化をしたといいますか、そこまで行かぬでも、きわめてこれが友好的といいますか関連した運営がなされなければならない。これが一つの税の払い戻し方式というものにもつながっていくわけでございますが、福祉国家になればなるほどそういうふうに社会保険庁と国税庁との関連性というものを要求されてくると思うのです。いわゆる国家の税体系と福祉国家へ移行していくこういう問題。  それから、先ほどから述べてまいりました、この二、三年だけを見ましても税の問題は大変な問題になってくる、国債の問題も、これは大変な問題になってくる。こういうことを考えますと、あなたがお会いになったカーターは、来年度は予算はゼロベース予算とする、こういうことですべてを洗い直してゼロから出発するというふうに言っておるわけです。福田さんも長い間大蔵大臣等をおやりになって、財政通をもって任ぜられておるわけですが、せっかく総理におなりになったわけですから、この税制財政等の危機に当たって、そういう抜本的な覚悟でやるべきではないか。やらなければもうどうすることもできない。具体的には資産所得税の強化、特別措置廃止、富裕税の創設、大企業課税の強化あるいは分離課税の場合に、所得八千万円以上は七五%取られる、しかし、分離申告すれば何十億あっても三〇%、来年から三五%、こういう税制がいま温存されておる。こういう問題等にどうしてもやはり手を触れていく、抜本的な改正をしていかなければ、もうどうすることもできない。国民は納得しない。私が一番最初に申しましたように、とにかくどうすることも、高学歴化をした国民がそう簡単に納得はしない、こういうふうに思います。  そこで、最後に一つ、カーター大統領じゃありませんけれども、これまた大胆率直に根本的なそういう改革をする勇気があるかどうかお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  217. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ゼロベースという話、カーター大統領がしたと言いますが、私どもは毎年もうすでにゼロベースから出発して予算を審査しておるわけですが、私はそれよりもさらに行財政の整理をやってみたいと思うのです。これはすぐ財源には結びつきません。やはり予算は砕いていけばみんな人件費になってしまうようなものですから、これは相当むずかしい問題で、あるいは歳出予算の整理という上ではそう大きな期待は持てませんけれども、世の中が変わっていくのに対しまして、政府の機構、行政のあり方、これはやはり再検討する必要がある、こういうふうに思いまして、それはやります。  それから、税制につきましては、これはいろいろなことを考えなければなりませんけれども、特にこの間の合意がありますから、合意を踏まえまして、十分特例措置等については検討いたします。
  218. 小渕恵三

    小渕委員長 野田毅君。
  219. 野田毅

    ○野田(毅)委員 総理には連日本当にお疲れでございます。  限られた時間でございますので、簡単に二、三きわめて初歩的な事柄についてお伺いをしたいわけでございますが、いま御答弁の中でもお話がありましたように、先般来、いろいろ与野党の間で、減税の追加問題について話があり、あるときは総理もそういうことをやればわが日本国は自殺行為を選ぶことになるんだということで、いまも恐らく胸の中にはいろいろ言いたいこともあると思うのです。私は総理のその発言は正しいと思うのです。やはり最大の問題は、減税を二兆円でも三兆円でもしたいのですよ、しかし、財源がないじゃないか、財源論をどうするんだということが一番の問題である。ところが、この前の与野党の幹事長、書記長会談では、きわめて遺憾ながらその財源問題については全く触れないで、政府において善処せよというようなことだけで、減税の方式の方に技術的に入っていったわけでございます。しかし、いずれにしましても、その合意の結果、政府においては何らかの形で財源措置を講じなければならない羽目に陥ったわけでございます。その点についてどういう財源措置を講じようとしておられるのか、ひとつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  220. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この財源が決まらぬままで減税ということになっちゃったわけなんですが、これは財源につきましては、いま率直に申し上げまして見当がついていないのです。大体秋、まあ十一月ごろの時点でしょうか、その辺になれば、ことしというか、五十二年度の税収はどういうふうになっていくかとか、あるいはそれより前にわかりますけれども、五十一年度の収支の状態はどうであったかとか、いろいろの素材が出てくる、こういうふうに思うわけでありまして、その大体の財源の読みができるその時点で判断し、その判断がついたら、予算を補正する、こういうふうにしたいと思っているのです。
  221. 野田毅

    ○野田(毅)委員 実はなぜそういうことを聞いたかと申しますと、あれは予算委員会でしたでしょうか、総理が今回の財源措置の問題で特例公債の上積みをしない考えであるというような発言をされたやに承っておるわけでございます。率直に申し上げて、今後どういう形の措置を講ずるにしても、余りいまからそういうことはおっしゃらない方がいいのじゃないかなという気持ちがするわけでございます。その点はいかがでございますか。
  222. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は率直に私の気持ちを申し上げたのですよ。また特例公債を上積みするというのじゃ、これはあなたのお考えにも反する、こういうようなことにもなるわけなんで、率直に私の気持ちを申し上げたわけですが、何とかしてそういうことにならぬようにしたい、こういうふうに考えています。
  223. 野田毅

    ○野田(毅)委員 もう一つ非常に初歩的な質問でございますが、これは総理からの御答弁というよりも、あるいは主税局の方が適切かもしれませんが、所得税をいずれにしても三千億円減税するということがはっきりした。ところが、歳入見積もりでは三千億円減っていないということなんで、このところ非常に素人的な発想なんですが、いろいろ技術的に理屈はあるのかもしれませんけれども、何か大蔵省はやっぱり隠し財源があったのじゃないかというような誤った考え方というものが意外とあるわけでございます。私どもも非常に返答に窮するわけでありますけれども、その点はどうなっておるのか、御説明をいただきたいと思います。
  224. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 隠し財源なんて本当に一文もありません。素っ裸の予算を編成し、それが大きく修正されたのですから、私は修正が行われるというふうに決まったとき、これはでかい荷物を大蔵省はしょったな、こういうふうに申した。それが新聞に出ましたが、大きな荷物というのは、その合意それ自体のことを言っているのじゃないですよ。何とかして特例公債を出さないで、そうして財源を工夫しなければならぬ、これはでかい荷物だ、そういう意味だったのです。
  225. 野田毅

    ○野田(毅)委員 この問題については余りもう深く申し上げません。  このところあちらこちらで小学校の百周年記念事業とかいろいろあるのですけれども、そういうことを見るたびにやはり明治の人は偉かったなと思うのです。あの当時は食うや食わずで、いまは米が余っておるとは言いますが、本当に貧しい時代であった。それがああいうりっぱな学校、教育制度を残しておる、あるいは鉄道を残しておる、あるいは郵便事業というものを残しておる。それが率直に言って、今日のわれわれの繁栄につながっておるわけであります。  翻っていま私どもが後の世代にどういうものを残そうとしておるのかというと、今回の追加減税のごときもそうでありましょうが、これからの財政収支の見通しを見ますときに、きわめて寒々しいものを感ずるわけであります。率直に言って、いまのままでは後世に大増税か、インフレか、何かをおみやげとして残さなければとても解決できるような現在の財政状況ではないと思うわけであります。先ほど只松委員の御質問に対しても、増税は率直に言って必要であるという総理の御答弁があったわけでありますが、いよいよこれを抽象的に言葉だけをもてあそんでいるような時期は過ぎ去ったので、具体的にどういう税をやっていくのかということは、単に税制調査会に任せておるからというだけではなくて、いよいよもう政治的決断の時期に入ってきたのではないか。仮に、いろいろうわさされております間接税の中に新税を創設するというような話にしましても、いきなりというわけにはまいりませんでしょうし、そのためには事前にある程度国民に対する了解のための事柄もやらなければなりませんでしょうし、事務当局としてもそのための下準備もしなければならぬと思うのであります。その点についてひとつもう少し突っ込んだ御答弁をいただきたいと思うわけであります。
  226. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 全くお話しのとおりの状態だと思うのです。ぼつぼつ財源をどうやって充実していくのかということを考えなければならぬ段階に来ておるのでありますが、頭の整理ができたそういう段階になりますれば、これは率直に国民にそれを訴えて御理解を得たい、さように考えております。
  227. 野田毅

    ○野田(毅)委員 なかなかまだ頭の整理が進んでおられないというような御答弁でありますけれども、実は与党でこういうことを申し上げるのもいけないかと思うのですが、やはりこういう大きな問題は一つの大きな選挙にぶつけて、そして判断を仰いでいくということが、実は本当に大事なことではないかと思うのであります。これからの政治の形態というものがいわゆる迎合的なことばかりじゃなくて、国家国民あるいは民族的見地から見てどうしても大事なんだということを少し勇気を持ってやっていっていいような気がいたすわけであります。その点で、これはまだ私の個人的希望でありますが、ひとつ今度の選挙前にそういう間接税体系を、もう一遍新しい税をも含めて実際に真剣にやっていくんだという姿勢を打ち出してもらいたい、そうでなければ総理の好きなわが日本国は自殺行為を選んでいくことになるんじゃないか、こう思うわけであります。  もう時間がございませんので最後に一つ。これはちょっと税制問題から離れますけれども、総理がよく出直し的改革ということをおっしゃるわけであります。現在のわが国の経済の状況、先行きの資源エネルギー問題を見てもきわめて困難であります。経済の面においても出直し的大改革が必要かもしれません。特に財政においてはその面が必要だと思います。そういったことを考えますと、かねてからどちらかというと総理はデノミ積極論者であるというような印象を私も持っておったわけでありますが、この点について、いずれ遠からずそういうことを考えるべきではないかという気もいたすわけであります。その点について総理のお考えを承りたいと思います。
  228. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 前段の御所見は貴重な御意見として、また勇気ある発言として傾聴いたしました。  それから、デノミの問題は、私はかねてからそう考えているのです。ただ、物価が安定し、また社会が余りざわざわしないという、そういう時期にこれをやることにしませんと、大変いろいろ混乱を起こすようなことになるだろうと思うのです。そのような状態を早く実現するということを一生懸命やっていきます。そして、その暁においてはデノミというようなことをやらなければならぬ、そういう考えです。
  229. 野田毅

    ○野田(毅)委員 終わります。
  230. 小渕恵三

    小渕委員長 保岡興治君。
  231. 保岡興治

    ○保岡委員 時間が限られておりますので簡単に質問をしていきたいと思うのであります。  いま只松委員や野田委員からも指摘がありましたとおり、政府の五十年代前期経済計画に基づく財政収支の試算、先ほど総理が御答弁になったように、昭和五十五年には赤字公債をゼロにするのだ、ある程度また経済計画に基づく投資もしていかなければならない、財政規模も維持しなければならない、したがって自然増もある程度見込んである、この財政収支をどうしても果たさなければならないと、こういうことを先ほど来述べられておるわけでありますけれども、そうしますと、五十五年度には三十五兆五千億という税収を見込んでおる、ところが自然増からいっても五、六兆円足りないということが予想されることから、どうしても税収を上げなければならない、こういうことになるわけです。  そこで、先ほど来出ております増税の問題でありますけれども、あるいは税収の削減の問題でありますけれども、やはり不公平税制の是正とか行政改革による経費の節減、先ほど総理もおっしゃっておられました。これには、こういう大きな税の負担を軽くするというか税収あるいは歳出を調整するというのはなかなかむずかしいと私は思うのです。そこで所得税ということになりますと、これは所得税減税が実施されなければならない、物価調整程度は必要である、こういうことで、また法人税にしても、ことしの春闘のベアが先ほど出てきた減税分の上乗せを入れても賃金の引き上げの一・一%に相当するというようなことが交渉の中に織り込まれるという予想がされておる。そうすると、これは法人に対する一種の人件費の補助みたいな形、国家がそれほどしなければならない、労使が厳しい交渉の中で決める賃金というものの中に政府が減税したものも見込んでいかなければならないんだ、実質賃金の維持のためにはどうしてもそれが必要だということになってくると、法人税の税収もなかなか見込めない。こうなってまいりますと、いろいろ政府が税調に求めている新税構想の中でも、これだけ五、六兆円という大きな税収が見込めるということになりますと、やはり付加価値税、一般消費税というものを考えていく以外にないのではなかろうか、こういうことが大方予想されているわけであります。先ほど野田委員からも指摘がありましたとおり、やはりこれだけ大きな、シャウプ税制改革以来の大きな税制改革を目前にどうしても実行しなければならない段階として、これをどのように検討していくか、総理に御決意をまずお伺いしたいと思います。
  232. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 さっきから申し上げているのですが、これは増税となるとやはり所得税、法人税、それから一般消費税、この三つですよ。あと細々したものはありますが、それは多くを期待することはできない、こういうふうに思います。その中で付加価値税、いわゆる一般消費税ですね。これは物価政策と非常に対立しちゃうんです。それだけ、消費税をかけただけ物価が上る傾向が出てきますから、よほど物価の安定基調というものが固まった時期でないと考えられない、考えても実行することは妥当でない、こういう性質のものですから、さあその三つの中でどういう選択をするかなかなかむずかしいのですが、いろいろ組み合わせてやるのかあるいは多少偏った選び方をしますか、その辺非常に機微な問題なので、ずばりというお答えができないのはまことに残念ですが、考え方としてはその三つしか対象はないのじゃないか、それをどういうふうに選択するか、こういうことだと、かように考えています。
  233. 保岡興治

    ○保岡委員 そうすると所得税も法人税もあわせて考えて、これはまあ当然だと思うのですけれども、見込まれる大きな税収を考えると、多少の税率の引き上げで一般的に広く多くの税収を上げる一つの付加価値税の検討ですね、これは検討の中でどうしても避けられない新税目だ、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  234. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 検討はもう前から大蔵省はしておるはずです。そうでしょう。(「そうです」と呼ぶ者あり)検討はしておるんです。要は、どれをどういうふうに採用するかという選択ですね。それをいかに決断するか、こういう問題なんです。
  235. 保岡興治

    ○保岡委員 そうすると、検討する、前からやっておられる、こういうことでありますが、先ほど野田委員からもお話がありましたとおり、国民に具体的な案をできるだけ早く示して、検討を求める。また、成案を得てからも、先ほど総理も言われましたとおり、経済を失速させないとか、物価の問題との関連もあるので、やはり実施時期は十分慎重にしていかなければならない。こういういろいろな問題を抱えておりますので、できるだけ早く具体案を得るということは大事なことだと思うんです。  そこで、私は先ほど来付加価値税にこだわって話を進めておるようですが、これはどうしても避けられない検討課題であるとすれば、ヨーロッパ諸国、EC諸国その他、各国で実施されている実情とか、あるいは合理的な根拠が定着しておるかどうか、わが国との関係がどうなるかというような調査団とか、各界各層から構成されるような、そういった思い切った調査をやっていって、政府としても具体的案を早くつくる。税調の答申を待つだけじゃなくて、そういう検討を積極的に進めるということが必要だと思うんですが、いかがでございましょうか。
  236. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この問題はつとに検討はしておるんです。まだ結論は出しておらぬ、そういう段階でありますが、やはりこういう重要な問題でありますから、付加価値税というばかりじゃなくて、広く、世の中が非常に変わりつつあるこういう際に、租税政策を各国がどういうふうにやっているかということをつぶさに見ておく必要がある。これは重要なことである、私はさように考えます。
  237. 保岡興治

    ○保岡委員 そうすると、これだけの税制の改革を目前に控えて、国民的な合意をもってこの改革を実施していくということになりますと、先ほど総理も言われましたとおり、行政改革による経費の節減だとか、あるいは不公正税制の是正だとかということについても、これはもう財政の健全化に常に要請される問題ではありますけれども、やはりこの税制改革の際に思い切って見直して、具体案を国民に示して、あわせて実行していくということが必要ではないかと思うんです。その点について、先ほど御決意は述べられたんですが、今後の見通しなどについて総理としてさらに具体的な御答弁がいただければお願いを申し上げたい。
  238. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これからの財政を考えますと、この税の問題ばかりじゃないんです。歳出の問題、これも見直しをしなければならぬというふうに考えておりまして、行財政の改革、そういうような立場でいま検討を始めておるんです。大体八月ごろまでに見当をつけて国民に訴えるというか、理解を求めるというふうにいたしたいと思っています。
  239. 保岡興治

    ○保岡委員 それでは、時間も参りましたので、これで質問を終わります。
  240. 小渕恵三

    小渕委員長 川崎寛治君。
  241. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 明治三十八歳が時差を超えてがんばっておられることには、御苦労さんと申し上げます。ただし、日米首脳会談の中身なりあるいはいろいろな施策について支持をしておるということではありませんので、はっきりしておきたいと思います。  そこで、日米首脳会談の問題でありますが、カーター政権は福田政権よりも後に発足したわけですね。私は、カーター政権というのは、ベトナム戦争、ウォーターゲート事件、それから米韓の癒着、そういう問題をいかに克服するかという、つまり現状打開という方向がありありと出ておると思うのです。その世界戦略はやはり明確にありますね。しかし残念ながら、福田内閣にはその現状変更、つまり国際的な緊張緩和に向かって日本は何をすべきか、この基本戦略というか、基本方針はないまま今回の日米会談に臨んだ、こういうふうに私は思います。そういう基本的な問題を議論いたしますのには余りに時間がありませんから、それはいずれ改めて機会を持ちたいと思いますけれども、アジア外交を考えます場合も、日本外交、これは福田内閣だけではなくて、歴代の自民党内閣の一番欠けておるのは何かと言えば、人権感覚がないということです。これは朝鮮戦争にしましても、ベトナム戦争にしてもそうであったわけです。でありますから、日本外交あるいはアジア政策ですね、私はきょうは少しアジアの問題に中心を置いてお尋ねをしますので、アジア政策を問いたいのでありますが、福田内閣の最大の外交の柱は東南アジア外交だ、こういうふうにも力説をしておられるわけです。そこで、福田内閣のアジア政策というのは何なのかということを詰めてまいりたいと思います。  田中前総理が東南アジアを回りました、そのときにはゴーホーム、大変手ひどい民衆の反撃を受けたわけです。三木総理がランブイエ会議の後、訪問しようとしましたけれども、これは拒否をされました。五十一年の一月ですね。五十二年の八月、ASEANの首脳会議に福田総理は出かけようという計画と聞いております。私は四十九年と五十二年、今日を見ますときに、環境は大変変わっておると思います。といいますことは、まず第一に、福田総理が行かれても恐らくゴーホームということはないでしょう。それはアジアの環境が変わっておるわけです。何が変わっているかと言えば、一つは、つまり四十九年にはインドシナ三国の社会主義圏の確立ができていなかったということ、そのことが一つだろう、こう思います。一方では、ASEANの方における強権政治が進んでおるということであります。でありますから、タイにおける軍事クーデターあるいはシンガポールにおける反対党の弾圧、これは社会主義インターからも非難を受けておるわけでありますが、そういう問題があります。そしてさらに、インドネシアにおいては五月に総選挙があります。民衆の政府批判というものは厳しいわけですね。ですから、そういう強権政治が進んでいる中で、石油危機以後の東南アジアの各国が日米に依存をしておる度合いというのは、非常に変わってきているわけですそういう国際環境を考えますときに、アジアの外交というものをどう進めようとしておられるか、まず基本方針伺いたいと思います。
  242. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 日本はとにかく武力を持たぬ。それも他国を侵すあるいは脅威を与える武力は持たぬということを国是としておるわけですね。持たんとすれば世界一級の武力を持ち得る力まで持っておるにかかわらず、そういう姿勢をとっておる。では、何をもって世界に貢献できるかというと、やはり私は経済力以外にはないと思うのです。そういうことを考えるときに、近隣のアジア諸国、とにかく隣りづき合いから始めなければならぬ、そういうふうに考えております。そういう基本的な考え方でございますが、アジアの環境は、三年前に田中総理がああいう目に遭った、あのときからちょっと疎遠になっておるということを率直に私は感ずるわけであります。まあASEANの国々などからの接触はいろいろある。あるけれども、こちらから積極的な接触というものが欠けておった。そういうふうに思いますので、この際、とにかくアジア近隣の諸国との関係を濃密にしていかなければならぬ。さような立場に立ちまして、特に疎遠でありましたASEANの国々、またビルマも加わるでしょう。そういう国々との関係を修復というか正常に戻そう、こういう考えです。そしていま川崎さんが、私がASEANの会議に出席するかのごとき話でございましたが、これはASEANはASEANで集まるので、私がそれに出席するはずはないのです。ただ首脳が集まるものですから、空気としてはその際福田に来てもらったらどうかなんというような、そういう空気がありますが、正式に招請がありますれば私はそういうような考えを持っておりますので、国内の政治情勢が許す限り出かけていって、胸襟を開いてアジアの諸問題を論じ合いたい、そして自立の精神に燃えておる、そして協力を求められるというそれに対しましては、私は喜んでわが国としては協力すべきである、そういうふうに考えております。
  243. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ワシントンで言われた調子といま言われた修復をしようという表現とには大変トーンダウンがあるわけでありますけれども、それは私は結構だと思うのです。カーター大統領からアジアにおける強力な政治的な役割りをと、こういうことでおだてられてアジアに関係を持っていったら、私は大変危ない、こう思いますから、その点はいかにして修復をするかということが基本だ、こう思います。現に田中氏が行かれたときはSEATOがありました、ASPAC盛んでした、そして車南アジア開発閣僚会議、これは昭和四十九年十一月のマニラ会議では、当時の木村外務大臣は、さらに発展をさしてアジアの政治の場所にしよう、政治を話し合う場所にしようとまで言ったのです。それは前の年なんですね。ところが翌年はもう崩壊をしておるわけなんです。つまりサイゴン政権は崩壊をしておるわけです。そして結局第十回のシンガポールにおける東南アジア開発閣僚会議というのは主宰国が開かないまま今日に来ておるわけです。そうしますと、日本が修復をしていく、アジアの関係をどう直していくかといいます場合には、いまのSEATOが崩壊をし、つまりマレーシアを初め、歴史のくずかごの中にもうSEATOもあるいはASPACもほうり込んでしまったわけですから、そういう事態を考えますと、それらをどう総括するかということが大変大事な問題だろう、こう思います。しかしきょうはその問題をやっておりますと時間がございませんので、そのことを指摘しておきたい、こういうふうに思います。  今日、東南アジアのASEAN諸国が大変大きな累積債務を抱えておるわけでありますが、先般シャカルタで開かれましたこのASEANのフォーラムにおいて、日本の外務省の方からも中江アジア局長が出席をしておるようでありますが、東南アジア、ASEAN側から日本にどういう要求があったのか、それが一つ、これは外務省の方です。それから総理には、有田審議官を、日米首脳会談の中身を伝えよう、こういうことで派遣されておるようでありますけれども、その姿勢方針伺いたいと思います。
  244. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 有田審議官を急遽ASEAN諸国並びにビルマに派遣をすることにしたのです。それは、私がアメリカへ行くに先立ちまして、これらの国のほとんどのところから、アメリカのASEAN諸国に対するプレゼンスというか、存在ですね、これを弱体化されないように要請せられたい、いまアジアは安定のために非常に大事な時期であるからと、こういう要請を受けたわけなんであります。そういう要請を受けたことをカーター大統領に率直に申し上げて、カーター大統領は、アメリカのプレゼンスは、これは減退させません、それからアメリカがこれらの国々と結んだ約束は必ず守ってまいります、こういう返事なんですよ。なかなかいい返事でありますから、ぜひ早くお伝えしておきたい、こういうふうに存じまして派遣したわけであります。
  245. 枝村純郎

    ○枝村説明員 三月二十三日にジャカルタで開かれました第一回の日本・ASEANフォーラムでございますが、このフォーラムは、従来バイラテラルに各国と関係を持って非常に親密な関係にありましたわけでございますけれども、機構としてのASEAN、それと日本の間でも対話を持っていきたい、こういうことで開かれたわけでございます。したがいまして、今後はそういうASEANとして域内協力を進めていくいろんな計画がございますが、それについて親密に日本と話し合って協力の可能性を探していくということでございます。  しかし、当面一番に、優先的にASEAN諸国が考えておりますのは、やはりバリの首脳会議で決まりました五つの産業プロジェクトでございます。これに対する日本協力の可能性ということが一つでございます。それからもう一つは、貿易の分野におきまして、特にASEAN産品の日本市場への輸出を増大したい、こういった気持ちが強く看取されたように承知いたしております。
  246. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そこで総理にお尋ねしたいのですが、つまりASEAN側からは総理がアメリカに行く前にいろいろと要望があった、それでアメリカのプレゼンスについても安心せよ、こういう伝えをするんだ、それからいま外務省の方からは、いろいろASEAN諸国からの要望についての報告がありました。そこで日本はこのASEANに対して経済協力を進めていくということは、ASEAN諸国が、いろんな複雑ないきさつはあります、いろんな複雑ないきさつがありますから、これは一つ一つ議論していかなければならぬのでしょうけれども、大ざっぱに言えばインドシナ三国に対抗する力を持ちたい、ASEANにはこれがありますね。その力をつけてやるために日本協力をする、そういう方向にあるのでしょうか。
  247. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 そうじゃないのです。インドシナ三国に対しましてはわが国は外交関係を持つに至っておるわけです。もう早々とそういう関係を持っているわけで、ベトナムに対しましては経済援助まで、経済協力ですか、経済協力までする、こういう関係になっているのです。私は、インドシナ半島、これはやはりソビエトロシヤの勢力も入ってきておる、また中国の勢力も入ってきておる、またアメリカも接触を始めておる、わが国は外交関係を持っておる、そういうようなことで、何といいますか、ASEAN諸国に比べますと希薄でございますけれども、中立性をだんだんと持ち得るようになってきておる、こういうふうに思うのです。そういう地帯にあの半島がなることが好ましいのじゃないか、そんなような感じがいたし、カーター大統領に対しましても、アメリカが、ベトナムとああいういきさつがあったけれども、この際接触を持つということは歓迎さるべきである、こういう意見を申し上げたところ、私もそう思います、こういうことだったことを申し上げておきます。
  248. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 日本が少なくともアジアにおいてアメリカより優位に立っております外交上のカードというのは、中国と国交正常化をしておるということ、それからいま総理も言われましたが、ベトナム社会主義共和国との国交を持っておるということ、この二つはアメリカよりもアジアにおける外交上の優位性なんです。しかし実際にはこのカードは使われないまま今日まで来たのです。アメリカがベトナムで敗退をいたします過程においても、これらの問題については私もいろいろと歴代の外務大臣とも話し合ってきましたけれども、しかし結局使えなかった。いまアメリカがベトナムとの国交正常化をやる、これはもうパリですぐ進みますですね、総理が帰られたらもうすぐ間髪を入れずにベトナムに対する大統領の返答があったわけでありますから。そうしますと、私は、いま総理が言われたように、日本がASEANに対する協力をするということは、インドシナ半島に対する対抗の状態をつくるというのではなくて、インドシナ三国とASEANとの平和共存を日本がどうつくっていくかということの役割りを果たすべきだ、こう思います。そういう方向で、朝鮮半島についてはもうきょうは触れませんのであれですが、少なくとも朝鮮半島の冷戦構造を残そうとする朝鮮半島との関係と違うインドシナ半島との関係だと思いますから、この点について私は積極的に平和共存の方向を進めなければならない、こう思います。  そこで、いまベトナムとの間で問題になりますのは、旧サイゴン政権にやられておりました百五十八億円の円借款、これをどう処理するかということがいまベトナムとの間で問題になって、じくじくとした問題もあろうかと思うのです。この旧サイゴン政権、特にこれは田中元総理が七二年の八月、ニクソンとの会談において約束をいたしましたのがこのサイゴン政権崩壊直前の応援になるわけです。それが百三十三億円あるわけですね。それで、緊急商品輸出やらそういうものでベトナム政権崩壊の直前に日本は百三十三億円という大変多額の円借款をやったわけです。でありますから、これは当然ベトナム側が言っておりますように、これを引き継げ、南側が崩壊をして政権が統一をしたのだからその債権はベトナム社会主義共和国が引き継くべきだ、こういうことで議論もあったようでありますけれども、しかしそういうものを乗り越える段階に来ているのではないか、こう思います。  そこで、ベトナムに対する経済協力について積極的にどうしようとしておるのか、その方向を明確に伺いたいと思うのです。
  249. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ただいまの旧サイゴン政府に与えました借款、これは私は川崎さんとは違うのです。これは貴重なわが国民の金ですから、そう簡単にこれを放棄するというわけにいかぬのです。今度できたベトナム国は、これは南北統一されてできた国ではありますけれども、これはどこまでも承継国家ですよ。承継国家としての態度でやってもらわなければ後のつき合いがなかなかこれはむずかしいことになるのではないか、そういうふうに思います。それはそれといたしまして、新しいベトナムとは国交ができたことでもありますので、今後真に必要な問題があるというようなことでありますれば友好的な話し合いをしてみたい、さように考えます。
  250. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 大事な国民の金だということ、それはまさにそのとおりなんです。だから、崩壊をする政権にやるなということを私たちはあの当時厳しく指摘をしたのであって、それをやられるからこういうことになったわけですから、この点はもう非常に見解の違うところであって、これはいずれまた改めて議論をいたしますけれども、しかしこの問題はやはり政治的に解決をして、経済協力の方向を大きく出していくということが大事ではないかと思うのです。  そこで、次にはアメリカは国交正常化を進めるでありましょうし、あるいはことしの秋の国連では加盟の問題も前進をするでありましょうと思います。そういう中で、ニクソン時代に約束をいたしましたベトナムに対する経済復興については、しかしなかなか直接乗り出しにくい状況にあろうか、こういうふうに思います。そうしますと、ベトナムはいまアジア開発銀行にも入っております、IMFにも入っておりますね、そういう状態を考えますと、日本先ほど総理が言われたような姿勢で臨むならば、私は、こうした世界銀行なりアジア開発銀行なりIMFなり、そういう国際機関を通して積極的にベトナムを初めインドシナ三国の経済復興に協力をしていく、こういう方向で日本がイニシアチブをとるべきだ、こう考えますが、いかがですか。
  251. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 それは貴見のとおりとお答え申し上げます。
  252. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 なお、私はこれまでやってきましたいろんな中で実態も見てきておるのです。たとえばメコン川流域の問題でラオスにありますナム・グム・ダムも見てきました。こうした方向というものに今後ぜひ日本協力してほしい、こういうことをラオスのカイソン総理も言っておるわけですね。でありますから、そういう方向にはぜひひとつ積極的な役割りを果たしていただきたい、こう思います。  そこで、次に、三月に日米首脳会談、五月にロンドンにおける世界の首脳会議、それから五月の末には国際経済協力会議、CIECですね、そして総理の東南アジア訪問、こういうふうなのがずっと続きます。先ほど来いろいろ議論もございました。それに持っていくためにはなかなか経済の福田も、いま物価、景気、為替、この三重苦に大変悩まされる方向にあるんではないか、こういうふうに思います。  そこで、まず円高の問題でありますが、総理の昨日のテレビ番組を拝見いたしました。円相場は市場自主性にゆだねる、こういうことであったのですが、自主性であるかどうかわからぬ、投機が行われておるような感じもするわけでありますが、きょうの午前は二百七十六円五十五銭、ドル安という方向に来ております。このことに対して、貿易収支の不均衡問題をもっぱら為替レートで解決しようとしておるんだ、こういう批判もあるわけです。円高の方向にさらに進もうとしておる。そのことは、では輸入がふえるのかと言えば、輸入物資の八割は石油等の基礎物資でありますから、果たしてこれで日本の輸入の増大にかかわってくるのか、むしろ景気の回復はブレーキがかかり、輸出は減退をしてくる、そういう方向がいま懸念をされております。どうして乗り切ろうとしておるか、その点についての総理の御見解を伺いたいと思います。
  253. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま私どものたどっておる道というのは非常に狭くて、そうして険しいのですよ。もう右を見ればインフレの谷底でありまするし、左を見ればデフレの谷底だ、その間の細い道をとにかく安全運転をしなければならぬ、そういうところでありますからいろんな面に気を配りながらいかなければなりませんけれども、事為替につきましては私は介入はしない、日銀が介入をする、こういうことにつきましてはこれをせしめない、こういう考え方をとっておるわけです。それによって輸出業者は多少苦しい立場に立ちます。しかし、海外から多くの物を輸入するわけですが、それはそれだけ安く入ってくる、こういうことにもなり、両面の功罪があるわけでありますが、要するに為替相場というのはその国の経済状態を全体として世界がどういうふうに評価する、そういう象徴ですから、ああ日本の経済は世界の経済の中でよくいっているな、こういうことになる。そういうことになれば、自然に為替相場というものは円高、そういう形になってくるわけでありまして——余り乱高下する、こういう状態は好ましくない、投機が起こって、そして為替市場が混乱する、こういうときには、これは介入しますよ。これはクリーン介入というので、どの世界でもとがめられることはありませんけれども、普通の状態で放置いたしまして、じりじりと円が高くなるというようなことがありましても、これには一切介入しない。国際的なわが日本に対する評価が高まった証拠である、こういうふうな理解をしていきたい、かように考えております。
  254. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 前に衆議院の予算委員会でも、村山委員でしたか、の質問に対しても、円高は国内の物価を引き下げるのに役立つ、こう言われた。しかし、現実にはそれが役立っていないわけですね。いかがですか。
  255. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これは大変な役立ちですよ。つまり、それだけ物が安く入ってくるのですから、安く売れるわけです。もし安く売るというようなことをしなければ、それだけ事業の収益がふえるわけですから、経済、社会は活発化する、こういうので輸出の面はまたマイナスの面がありますけれども、とにかく物価には偉大な貢献をする。すぐそれが、もうきょう為替が下がったから、来月物価が下がります、そういう近い効果ということでなくて、多少時間は置きましょうが、これは相当の効果がある、こういうふうに考えております。
  256. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 石油会社などは大変、史上最大のもうけをしておりますけれども、しかし実際に、現実に国内の消費物価の引き下げには影響が出ていないわけです。この点はいま総理が言われた方向ではないということを申し上げておきたいと思います。  私は、カラーテレビの輸出問題について少し触れておきたいのであります。それはアメリカの大統領通商交渉特別代表部は、ストラウス氏が代表になるであろう、こういうことでありますが、そのアメリカと日本政府との政府間協議の方向はどうあるのか、それが一つ。それから、アメリカのCOMPACT、カラーテレビ産業を守る会というのがございますが、これは十六団体です。これには電機産業の労働組合とか、あるいはテレビメーカーとか、部品メーカーが入っておるのです。  そこで私はお尋ねしたいことは、時間の関係で細かには追及できませんけれども日本における電機労働者の立場で私は少し申し上げたいと思うし、伺いたいのです。  日本の電機労連は秩序ある輸出をやれ、このことを経営者に絶えず要求してきた。しかし、大変な集中豪雨的なやり方をし、駆け込みもやり、今日のような事態を招いたわけです。電機労働者はアメリカの電機産業労働者とは絶えず話し合いをやっておるのです。しかし、絶えず話し合いをやっておるこの電機産業労働者がそのCOMPACTに入っておる、そして攻撃をかけてきておるということには、日本の労働者もやはりショックを受けておるわけですね。そこでアメリカ側の代表者が参りますときに、私はぜひ日本政府はこれらの代表者と日本の電機労働者が会談をするということができる方向づけというものを、これは総理でなくてもいいですね、通産省でもいいですが、ひとつあっせんをしてほしいというのが一つです。  それからこの電機産業労働者がこういう形で、これは決まり方によって大変雇用の問題その他が出てくるわけですから深刻に受けとめておるわけでありますが、日本政府はこれら日本の電機労連の労働者の代表諸君と話し合って、率直に意見の交換をやってほしい、この二点を伺いたいと思います。
  257. 鈴木健

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  日米首脳会談におきまして福田総理が今後両国の事務レベルにおいて接触をし、この問題の解決を図るようにさせるということをおっしゃいました。それを受けまして日本側におきましてもその準備を鋭意進めておるところでございます。また、日本の労働組合、電機労連等の御意見もわれわれ伺っておりまして、そういった御意向を踏まえて今後交渉に当たっていきたいというふうに考えております。
  258. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私、いまアメリカの労組の人が来る話は知らなかったものですから、かわって答弁を願ったのですが、私とカーター大統領との会談では、私の感触では、これは両国政府で話し合いをしますれば、これは労組を含めてですよ、双方が満足し得る解決になる、こういう印象でございます。
  259. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 いまの問題は、STRには労組代表は入らぬわけです。つまりアメリカ政府の代表ですから。だから、そのアメリカ政府の代表と日本の労働者の代表が話し合えるようにひとつあっせんをしてくれということです。
  260. 鈴木健

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  今回の日米政府間レベルの接触は政府政府の接触ということになりますので、われわれは当面労働組合等の御意見も拝聴した上で、政府としてアメリカのSTRと接触したいというふうに考えております。
  261. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 わかっているのですよ。わかっているが、向こう側は労使一体になってかかってきているわけでしょう。だから日本でも労働者の意見をあなた方は聞きなさい。そしてまた、向こうの政府代表に日本の労働者が会うことを、何も公式になにしなさいというのではないのだけれども、そういうあっせんはしなさい。それはできないというのですか。政府間だけだから、いまは労働者なんかが出てくる段階でないんだ、こういうことなんですか。
  262. 鈴木健

    ○鈴木説明員 御趣旨の方向で検討させていただきます。
  263. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 最後に、時間をとって済みません、私、文句を言われているのだけれども先ほど只松委員に答えられました、この三%ぐらいは増税を図らなければならぬ、増収を図らなければならぬ、こういうことを言われましたが、間違いありませんね。
  264. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 そういう見通しでございます。
  265. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 終わります。
  266. 小渕恵三

    小渕委員長 坂口力君。
  267. 坂口力

    ○坂口委員 大臣がお元気でアメリカからお帰りになりまして、社交辞令抜きにしまして、心からお喜びを申し上げたいと思います。  きょう、新聞を見まして驚いたことがございます。それは二百海里の問題でもなくて、また総理のアメリカからお帰りのお話でもなくて、大きな広告がございます。「日本経済は世界をリードするところまで回復しています。」という経企庁の大きな広告が出ておりまして、西ドイツの連邦共和国の首相とアメリカのカーター大統領の間に、福田総理のにこやかなと申しますか、自信に満ちた顔が出ておりまして、これだけ大きな広告を出されるというのは、それほど自信がないか、それとも心理的なものが非常に景気というものには影響するから、あえて出されたのか、その辺のところは少しわかりかねるところがあるわけでございますけれども、この辺のところを踏まえて、中に書いてあります物価の上昇の問題、それから六・七%の経済成長率の問題もここに書かれておりまして、自信を持って「世界をリードする」と、こう書かれているわけでございますから、外交問題を絡めましてひとつお聞きをしたいと思います。  先ほどもお話に出ておりましたように、カーター大統領との会談の中で、先ほど総理大臣は、まさかカラーテレビのことが出てくるとは思わなかったということを言われましたけれども、カラーテレビを初めとする日本との貿易の問題を御議論なすったことを、新聞でもわれわれ読ませていただいたわけであります。そこで、カーター大統領はどういう表現で言われたか、私どもには知る由もありませんが、とにかく自主規制というものとそれから関税の引き上げというものとの、どういうニュアンスであったかわかりませんが、その辺のところのお話が向こうから出たやに聞いているわけでありますが、およろしければその辺のところをもう少しお聞かせいただきたいと思います。
  268. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、カラーテレビの話が出るとは思わないで、貿易不均衡ですね、この話が出ると思ったんです。ところが、大統領の方から、貿易は大変私の方がマイナスでしたねという、その一言だけで、あとテレビの話が出てきて、そして、テレビは弱ったものですね、こういうような話でした。私はそれに対して、貿易の問題に触れたんです。貿易は確かに五十一年は不均衡だったけれども、これは一年で見るべきものじゃないんだ、数年間のレンジで見るべきものであるし、また同時に貿易だけじゃなくて貿易外収支、これも一緒に考えてもらいたいんだという話ですね。その問題はそれでおしまいです。  それからテレビの問題につきましては、テレビは確かに去年は大変御心配をかけました、それは非常に特殊な事情があったんだ。つまりアメリカでは、テレビのストックが非常に減少しておりました。そこへ昨年の春から大変な世界的景気になりまして、アメリカの景気がいい、そこでテレビを買いたいという人が出てくる、そこへ日本の方が売り込んだ、こういうことで、異常な環境の中での輸出であった。しかし私は、そういうことはおたくに御迷惑をかけますので、業界に自粛を促しております、業界もその気になっております、五十二年におきましては、昨年の二百七十万台というようなことにはとうていなるはずはないような状態にいまなっております、この上とも私は注意してまいるつもりであるという話をしたところ、大統領は、政府間の話にしましょう、こう言うんですよ。何をどういう内容にするか、そういうようなことは全然話はなかったんです。ただ、私が得た感触といたしましては、これはそう両方ともいらいらするような形じゃなくて、両方まあまあというところの結論がこの交渉で得られるんじゃないかという強い印象を持って帰ってきました。
  269. 坂口力

    ○坂口委員 その話の内容は、カラーテレビのことであったかもわかりませんが、貿易の不均衡の問題、広く言えばそういうことであったろうと思うんですけれども、私はお聞きしたかったのは、関税の引き上げというものを非常に強く心に持って、そして自主規制をやるのならいいけれども、そうでなければ関税引き上げますよという非常に強い態度だったのか、それとも先ほどおっしゃるように、まあまあお互いに自重いたしましょうということだったのかということを少しお聞きをしたかったわけでありますが、次の機会に一緒に答えていただければと思います。  それで結局、集中豪雨的な去年のようなことはことしはないとしましても、ある程度の自主的な規制というものも余儀なくされるのではないかと思います。しかし、それにいたしましても、これに限度もございますし、いつまで自主的に規制をいたしましても、もっと自主規制をやれとつけ込まれることもあるわけでありまして、先ほどもお話が出ておりましたように、電機関係の中でも働いておみえになる日本人たちも非常に多いわけでありますから、これが余りにも厳しい自主規制を強いられるというようなことになりますと、またこれも大きな問題にもなってくるわけでありまして、そういうふうな意味からいきまして、これは一つの限度というものがあると思いますが、向こうにおける日本のシェフ等を含めて、自主規制の目標というようなものをもしもお考えになっておりましたら、あわせて先ほどのお話と、簡潔にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  270. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これからいよいよ交渉が始まる、そういう段階でございますので、どういう目標かというようなことを申し上げるのはちょっと御勘弁願いたい、こういうふうに思いますが、私の印象ではそうぎしぎしした交渉にはなるまい、まあまあという常識的なというか、そんなところで決着がつくのではあるまいか、さように考えております。
  271. 坂口力

    ○坂口委員 これからの貿易の問題につきまして、いま保護主義と自由化の双方が世界のあちこちでぶつかっておりますことは、いまさら言うまでもないわけでありますが、先日夜私はテレビをつけましたら、総理がABC放送ですか、向こうの放送のインタビューにお答えになっている番組を、夜十二時過ぎに実は見せていただいたわけであります。そこで、向こうの質問に対して総理がお答えになっておりますのに、日本が関税というものを引き下げるかということを向こうの人が聞いたと思いますが、それに対してガットの東京ラウンドを成功させたいんだ、こういう御答弁をしておみえになりました。少なくともそういう簡単な答弁であったというふうに記憶をしております。この東京ラウンドのことにつきまして、一時、一部新聞には、これが来年にずれ込むのではないかというような記事が出たりしたこともございましたけれども、総理がおっしゃるように大きな問題点として本年度中にこれが開かれるのかどうかということが第一点。それから東京ラウンドの中で最も大きな問題となるであろうところは何か、この二点についてひとつお伺いをしたいと思います。
  272. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この見通しは多少ずれておる、そういうふうに率直に申し上げざるを得ないのです。と申しますのは、世界的に不況な状態です。そしてややもすれば輸入阻止手段をとる国も出る、そういうような環境でございますので、あの東京ラウンドを進めにくい環境、そういう状態です。しかし一面、そういう環境であればこそこの際東京ラウンドを早く成功させなければならぬ、こういう見方もまた、私は一つの正しい見方だ、こういうふうに思うわけであります。カーター大統領との間ではとにかく全力を尽くしてこれを急ぎましょう、こういうことにしたのです。それが年内になるかあるいは多少来年にずれ込むことになるか、その辺はまだこれからの推移を見なければならぬし、またこれからいろいろ国際会議があるわけです。特にロンドンのいわゆる七カ国会議、これなんかもあるわけでございますから、ここで年内じゅうに必ずできる、こういうふうには申し上げかねますけれども、とにかく全力を尽くしてみよう、こういうことで意見が一致したわけです。  問題になりますのは、関税、それから非関税障壁、この二つが一番大きなテーマになるだろう、こういうふうに思います。
  273. 坂口力

    ○坂口委員 いま述べられましたように、この関税の問題、米国の方は一律引き下げというようなことをいままでも言っておりますし、若干意見の違うところもありますけれども日本やECはハーモナイゼーション、すなわち高関税率のものほど引き下げ率を大きくするような方針というものをどちらかというと主張しているやに、私聞いているわけでありますけれども、これらのことが、恐らく東京ラウンドも始まるとすればその中で主要なテーマになるだろうと思うのですが、このことについて、日本がいままで言っておりましたように、このアメリカとの対立点というものをどう解きほぐしていかれるかということもお聞きしたいと思いますし、それから非関税障壁の問題もどのように取り組まれるのかということも、よければもう少し詳しく、もう一歩突っ込んだお話を聞きたいと思います。
  274. 額田毅也

    ○額田政府委員 お答えいたします。  関税引き下げ方式につきましては、先生御承知のとおり、日本、ECのハーモナイゼーション方式とアメリカの一律方式とがございます。この問題につきましては、いろいろ各国の立場によりまして、関税引き下げの結果受ける利益というものを考慮をして考えておるわけでございます。それが交渉の過程でどのようになりますか、交渉でございますので、それぞれの国益同士の中での一つの解決点を見出していかなければならないと思います。  日本の場合の関税引き下げ方式は御承知のようにハーモナイゼーションでございまして、製品関税のような高い関税とそうでない原料関税のような低い関税というものがあります場合に、これを順次、製品関税の方をなるべく下げていくということによって貿易の国際化を図っていきたい、こういう考え方でございますので、この方式は私どもとしては引き続き主張していくことになろうかと考えております。  それから、もう一つの非関税障壁の問題でございますが、これも各国のそれぞれにいろいろな非関税障壁がございます。たとえばEC等には輸入制限といったような問題がございますし、日本におきましても一部の物資につきまして輸入割り当て制度、IQと呼ばれておる制度がございます。これらの制度は関税面の制度と違いまして、各国ごとにそれぞれの制度でございますのでなかなかわかりにくい制度でございますが、そういう貿易面の量の規制といったような問題についても、できる限り各国協調してこれを少なくしていこう、こういう立場で日本としても努力してまいりたいと考えております。
  275. 坂口力

    ○坂口委員 詳しく聞いたわけですけれども、時間がありませんのでこれだけにしておきたいと思いますが、とにかく東京ラウンドに対する総理のお考え方をいまお聞かせいただきました。これとあわせて、これも先ほど少し話題になりましたが、五月に首脳会議がございます。これらの問題、もしも行われれば一連の会議になっていくだろうと思うのですが、フランスあたりは首脳会議のメインテーマとして経済をどうしても据えるべきだということを言っておりますけれども、当然そういうことになりかねない実情もあると思うわけであります。このことに対して何かお考えがございますか。
  276. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これは一部に政治的問題、そういう問題も話し合ったらどうだろうというような国が一つぐらいあるのですが、大勢は経済オンリー、経済会議にしよう、こういう大勢でございます。そうなるんじゃないか、こういうふうに思いますが、経済問題とすると、いまお話しの保護貿易体制、これが大勢として保護貿易化しますと、みんなそろって経済が萎縮する、世界の大不況、こういうことになってきますので、これをどうやって防ぎとめるか、こういう問題、これが大きな問題だと思いますが、同時にエネルギーの問題それから南北の問題、そういう種類の問題もあわせて議題となるであろう、こういうふうに考えております。
  277. 坂口力

    ○坂口委員 これは経済問題が主要テーマになるということを総理もお認めになっているわけでありますが、貿易の保護主義、それから自由化の問題で、日本もどうしても自由化を主張しなければならない反面、それによって痛手を受ける職種もあるわけでございます。その辺のところを今後どう煮詰めていくかということが日本の経済にとりまして非常に重要な問題になるのではないかと思います。先ほどから話が出ておりますように、テレビでありますとかあるいはまた自動車でありますとか非常に輸出の盛んなものもあるかと思いますと、逆に輸出とは縁遠い職種もあるわけでありまして、その辺の業種間格差というものが貿易の発展とあわせて大きな問題になってくると思うわけであります。  ことしも税制の問題がいろいろ議論をされまして、また一兆円減税等の問題が議論をされましたときに、野党の方からは昨年のような、会社臨時特別税のようなものはどうかというような案も出たりしたわけであります。貿易の進んだ職種等を含めて、非常に格差が大きくなっていることは事実でありますけれども、この辺を埋めるために、これは貿易でたくさんできなかったところだけとは私も申しませんけれども、その辺のところに特別に出してもらうという税制みたいなものを考えて、そして一方において非常に外国からたくさん入ってくる、たとえば繊維のような職種で、日本の職種が非常に苦労するというようなものを救済の一部に回すというような意味からも、ぜひそういうふうな税制の中にやはり今後は取り組みというものを検討しなければならないのではないかと考えるわけでございますが、いかがですか。
  278. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この間の与野党の合意、その付帯的な決議というかそういうような了解事項といいますか、五十三年度税制のときは、その合意に至る過程で野党の方からいろいろ言われた税制上の諸問題、これを政府において検討する、こういうことになっているんですよ。その中に、ただいまお話のあった会社臨時利得税問題なんかも入っておるわけですが、私どもがそれをことしなぜ回避したかというと、いまとにかく経済界全体として非常に不況である、それで設備投資が起こってこないのです。設備投資が起こるとするとそういう公共業種なんです。その公共業種の頭を抑えるようなことになるとまた景気の回復をそれだけ妨げるというようなことになりはしないか、それを恐れたわけでありますが、会社臨時利得税に限らず、あの会談において問題になった事項、これはこれからよく検討いたしまして、五十三年度の税制問題として御論議願いたい、かように考えています。
  279. 坂口力

    ○坂口委員 きょうも金の特別会計の改正案が出まして、お昼にこの会場で議論があったわけでありますが、その中でもIMFの問題が出まして、そこでも実は議論をしたことでございますけれども、IMFは増資の見直しというものを二年くらい早めて一九七八年に予定しているというふうに聞いているわけであります。このIMFの問題と絡みまして、いわゆる非産油途上国全体の赤字が三百二十億ドルと聞いておりますが、非常にふえてきている。この対外累積債務というものが非常に大きな問題になってきておりますが、南北問題等との絡みでこの問題が大統領との話の中で取り上げられたかどうか。もし取り上げられなかったといたしましても非常に大きな問題だと思うわけでございます。  そこで、これらのことが日本の経済の今後どうなるかということとも非常に大きな結びつきがあると私は考えている一人でございますが、どのようにお考えになっているか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  280. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 その問題は大統領との会談では論議されておりません。恐らく南北問題の一つとして七カ国ロンドン会議、この辺では話題なるのではないか、こういうふうに見ております。これは私の見解としては、棒引きなんかしたら、これから先経済協力をするなんというような気持ちにならない国が多くなってくるんじゃないか、こういうふうに思いますから、そういう過激な措置というものは私はこれはとるべきじゃないし、また採用はされない、こういうような感じがしますが、結局ケース・バイ・ケースじゃないでしょうか。一つ一つの問題としてその処置が違ってくる、そういうことが妥当なところであり、そんなところに落ちつくんではないかというような感じがします。
  281. 坂口力

    ○坂口委員 わが国の国際舞台におきます出資も、十分とは言いませんけれども、ふえてきていることは私も認めるものでありますが、国際決済銀行の対英信用供与でありますとか、こういった面でもかなりふえてきていることを数字上知っております。しかし、この額の拠出とそれに見合うべき日本の発言力という問題がございまして、きょうも昼に議論をしたことでございますが、当然のことながらやはり日本の発言力というものも高め、それこそ、ただ日本のためではなしに世界のために本当に世界をリードしていくという立場に立たなければならないと思うわけでございます。この辺少し日本の方は遠慮をしがちになっているのではないかという気がしますが、いかがですか。
  282. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 わが国は持たんとすれば持ち得る力がありながら強大な軍備は持たぬ、世界からただ乗りしている、こういうふうに言われるのですが、そういうわが国の姿勢としますれば他の国に比べて余力がそれだけ出てくるわけなんですが、やはり日本の国とすればその余力を世界のおくれた国々なんかに対しまして協力すべきだ、こういうふうに思うのです。しかしこれはなかなか国民理解を得ることはむずかしい問題です。さあ住宅が足らぬ、道路の舗装も十分でない、下水道は惨たんたるものだなんというそういうときに、海外へ金を出すというのは何事かというような感じを持つ人もあると思いますけれども、やはり世界が繁栄し、世界が平和でなければ本当にわが国の繁栄も平和もないわけですよ。ですから国民にもっともっと私は世界の中で生きていく日本の姿というものを理解してもらわなければならぬ、こういうふうに思いますが、そういう理解を進めながら対外経済協力、これはもう強力に進めていかなければならぬ、そういう考えでございます。
  283. 坂口力

    ○坂口委員 時間が迫ってまいりましたから最初の問題に戻っていかざるを得ないのですが、いろいろ外交上の問題をお聞きをいたしましたけれども、いずれにいたしましても、日本の経済が内需というものをもう少し盛り立てて、そして貿易におきましても輸出と輸入とのバランスをとらなければならない。それは内需が達成できるかどうかということに一にかかってくるであろうと思いますし、その辺の決意を総理も述べておみえにはなると思うのですけれども、はたからわれわれ見せていただきまして、なかなか総理がおみえになるような調子にいくのであろうかという心配もするわけでございます。先ほどの新聞の広告のような調子にいけばいいわけでありますけれども、なかなかああいう調子にいきにくいのではないかという気がいたします。特に公共事業にかなりな金を投入したというお話をきょうも総理なすったわけでありますが、公共事業の中で特に国が行いますものは、公社、公団を含めましても約三割、七割近くは地方の方で受け持つ。国がやりますシェアというのはそれほど私は多くないと思うわけであります。たとえ一歩譲って、ことし打ち出されました公共事業が非常に予算全体の中で伸びていたということを認めたといたしましても、その全体の中でのシェアはそれほど大きくない。これで果たして伸びるであろうか。特に一−三月はかなり伸びていると思うというお話でございましたけれども、たとえば一月のマネーサプライ等を見ましても、一三・一でしたか、非常に低迷しているというような状態の数字が出ているわけであります。そう予断を許せるような段階ではない。また、予算委員会でも多く議論をされましたけれども、五十一年の一月から三月、いわゆる五十年度の分の三・三%というげたばきであった。実質的には五十一年の四月からの分はあと二・四%ぐらいで推移をしてきているわけです。今回はもう五・六%いくかいかないかというところでありますから、総理がおっしゃる六・七%、これはまるまるいかなきゃならないわけであります。特にいまのような状態でありますと、第一・四半期におきましてはそう多くのことが望めない。しかも、物価は何ぼ上がってもいいから景気を上げるというのは楽でしょうけれども、物価を抑えながらなおかつ景気を上げるということは非常にむずかしい問題であることは、私どももよくわかるわけであります。それだけに心配もするわけであります。特に後半にこれを急激に上げるということになれば、物価の上昇ということは必ずついて回るであろうと思いますし、おしなべて年中に一定の角度でいこうということになれば、総理が言っておられるほど安心し切れたものではないと思うわけであります。総理もいろいろおっしゃいますけれども、その中でこれだからという決め手がどうも私ども聞いておりましてないわけで、それは公共事業、こうおっしゃるわけですけれども、その公共事業がいま言いましたようなシェアしかない。そのことを最後に総理に簡単にお聞かせをいただきたいと思いますのと、時間がありませんから、あわせてもう一つ申し上げておきたいと思います。  これは最近新聞に発表になりました、これも経企庁から出たものでございますが、経企庁はいやに宣伝これ努めておみえになるわけでありまして、社会指標というものを新しく発表になりまして、これはGNPは減速したけれども福祉のテンポは非常に速まっているという物の見事なる社会指標を発表になっているわけであります。その内容を見せていただきますと、たとえば四十八年から五十年までの間台風等が余りなかったから、それによる破壊がなかったからというので非常にプラスの面になっていたりとか、一番大きなものはそれに左右されていたりとか、なるほどそれは考えれば台風がそれまでに比べると余り大きいものがなかったから指標が上がっているのは納得できるわけでありますけれども、それを福祉テンポが速まるという言葉に置きかえられると、果たしてそうだろうかという気持ちになるわけでありますし、私がいま聞きたいのは、経企庁が発表になりました限りは経企庁は自信を持って発表になったのだろうと思いますが、今後の経済政策の中にこの指標の結果を取り入れられるということになりますと、ちょっと待ってほしいとわれわれとしては言わなければならないわけです。その辺のところをあわせてひとつお答えをいただきたいと思います。
  284. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 自由社会の中の経済ですから、これが六・七なんといってぴしゃっといくというふうには私は申し上げかねますが、その辺のことはぜひ実現をするように、これは国民もそれを期待しているし、同時にこれは国際社会に対するわが国の最大の責任である、こういうふうに考えておりますから、そのように経済運営をやってまいります。多少これが怪しいというような状況があれば、それに対して何らかのまた施策も考えるということまで加えて、これをぜひ実現したい、私はこういうふうに考えております。  それから企画庁の指標ですね、あれは初めての試みでありまして、まあああいうふうに社会の動き全体を一覧できるという仕組み、これは大変私はいい試みだった、こういうふうに評価しておりますが、初めてのことでありまするから、これが今後の政策樹立のための基礎資料だ、こういうようなわけにはまいりません。横目で見ながら参考にしていくというぐらいな気持ちでこの指標をながめる、同時にこの指標をだんだんいいものにしていくということは大事なことであろう、かように考えます。
  285. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  286. 小渕恵三

    小渕委員長 高橋高望君。
  287. 高橋高望

    ○高橋委員 総理、大変タイトなスケジュールを消化されて、また恐らくタイムディファレンスで、いろいろどうぞひとつお気をつけくださいますようお祈り申し上げます。  それでは、私は与えられた時間が二十分でございますので、総論と申しましょうか総体のことについてのお伺いをさしていただきたい、かように思います。  総理、率直にお伺いするのですが、わが国の現在の税金というのは重いというふうにお考えになられますか。
  288. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は国際社会広く税はどんな状態だということを知っておるものですから、税は日本ではそう重い状態ではない、そういうふうに私自身は見ています。
  289. 高橋高望

    ○高橋委員 ところが私たちの党の調査によりますと、現在の日本を支えている中流層の七〇%が重いというふうに考えております。この主因はどこにあるというふうにお考えになりますか。
  290. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 税は軽いにこしたことはない、なければなおいい、こういうふうに一般の人は思っておるのじゃないかと思います。そういう軽いにこしたことはないという感じを持つ人が多い、そこでいま税は高いと感ずるか低いと感ずるかと言うと、高い、こういう回答を出すのじゃないかという感じです。
  291. 高橋高望

    ○高橋委員 私は必ずしもそう思わないのです。国民も国の置かれている環境をよく知っております。だから税が高いというふうに判断する場合には、まず税を納めているときの不公平感、税制のあり方、これが一つ、それからもう一つは、納めた税金というのはどういうふうに使われているか、政府国民の必要を満たすだけの仕事をしていない、または国民が必要としているといって政府がよけいな仕事をしていたり、またそのために少々機構を大きくしているのではないか、こういう二つの面から税に対しての重いという訴えをしているのではないかと私は思うのです。したがって不公平税制の是正と行政改革というものを同じ比重で真剣に取り組むべきだと考えますが、御決意はいかがでございましょうか。
  292. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 まあ結論といたしますと、両方同じ比重で取り組むべきである、こういうふうに思います。ただ、不公平税制とおっしゃいましたが、これは皆さんがそうおっしゃるので、私どもの方は不公平税制とは申しておりません。いわゆる不公平税制だ、こういうふうに申しておるということを申し添えておきます。
  293. 高橋高望

    ○高橋委員 それでは角度を変えてお尋ねいたします。  私は今回の場合は時間の関係もございまして、納めた税金がどう使われたかという問題についてはこの際触れないことにいたします。  五十五年度には特例公債をゼロにして、しかも国民の各種の要求、声を盛り込んでいく、政府財政試算の数値で示されておりますように、これはいやでも増税の方向に行かざるを得ないと私は判断します。しかもこの国民の声というものは福祉を求めるものでございますから、当然受け入れざるを得ない。とすると、福祉財政をしっかりと組み上げるということになる。そして、まず福祉財政を組むための租税負担率というものを今後どのようにお考えになられますか。
  294. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 租税負担率というと、大体最近の平均の二二が二五ぐらいなところに行かざるを得まいというのが大方の見当でございます。
  295. 高橋高望

    ○高橋委員 当然のことながら、私たちの国の租税負担率は上がるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  296. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 上がるという方向でございます。
  297. 高橋高望

    ○高橋委員 それでは、この負担率を考えるときに、税負担の公正と租税上の公正が要請される。言葉を改めるならば、税制改革の基本は、税の公平、公正の徹底でなくてはならない。こうした公平、公正の実現によって負担率を高くすることにならなければならないと思いますが、いかがでございましょうか。
  298. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 税は公平でなければならぬ、これはもう鉄則だと思います。制度的に見ましても、また徴収の行政上の措置から見ましても、公平、これがかなめである、こういうふうに思います。ただ、いろいろ政策上の理由で、それに特例を設けておるのですよ。それを不公平税制とかそういうようなことで言われますけれども、これはこの間の与野党の合意がありましたそのときの付帯的な了解事項として、五十三年度にはその論議のいきさつを踏まえた上、検討するというようなことになっておりますので、そういうふうな方向で処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  299. 高橋高望

    ○高橋委員 実は、私がお伺いしたいのは、そのようなこともさることながら、いま政府で、それぞれの国の負担率の比較ということで、われわれの国の租税負担率が低いという言い方をとかくなさっております。私は、各国の負担率の比較というのは単純な数字の比較にとどめるものではなくて、実際の税負担がどのような配分になっているかに問題があろうかと思うのです。公平か不公平かというのは、税制の中における租税の負担率によってはわからないんじゃないか。国民企業とのどの部分がどれだけの税を負担しているかという税源の負担率が必要であり、このことが税負担における福祉の問題となると考えますが、いかがでございましょうか。
  300. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 負担率、負担率というのは、国民所得に対しまして税を幾ら国民負担しているかという相対的な比較、そういうことになっておるわけでありますが、そういう中で税の仕組みというものはいろいろあるわけです。  わが国の税制は、国際水準から見るとわりあいによくできている税制じゃないかと私は思っておりますが、それにいたしましても、特例措置というものがありまして、これが皆さんの間でいろいろ御議論がある、こういうので、これはまた五十三年度税制の際に再検討してみたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  301. 高橋高望

    ○高橋委員 もっと極言さしていただきますと、わが国の租税負担率が低いというのは、税負担が不公平なため十分な税収を上げていないのではないかということを私は申し上げたいのです。それが福祉財政を妨げていると考えるべきである、こう思うのです。だから、これからは、直接税、間接税、財産税、いろいろありますけれども、どの税に重点を置いて臨まれるかということをお尋ねしたいと思います。
  302. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 やはり近代国家の税制は大体直接税が中心になる、こういうふうに思います。例外としてECなんかの中には間接税を重視する国もありますけれども、大方直接税が中心になる税制である、こういうふうに理解しております。
  303. 高橋高望

    ○高橋委員 さらにお伺い申し上げますが、とかく福祉財政財源不足が言われます。しかし、財源の見直しによって改善は私は可能だと思うのです。例を挙げれば、法人税率を引き上げる、あるいは特別措置の見直しをする、あるいは所得税の総合課税の徹底を行えば、まだまだ私は数兆の財源はあると思う。ですから、ここで一般的な形の高負担ということではなくて、公平性の実現をし、公平の拡大と財源の拡大とが結びついている、結果として租税負担率を高めることになる、このように解釈をしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  304. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 結局、お話を伺っておりますと、それは増税につながっていくわけだろうと思います。わが国の徴税機構、これは諸外国に比べて決して遜色のあるものとは私は思いません。苛斂誅求というわけじゃございませんけれども、相当厳格にやっている方だ、こういうふうに理解しております。
  305. 高橋高望

    ○高橋委員 そこで、来年度以降の税制についてのお尋ねをしたいのですけれども、いまも申し上げたとおり、私は、税の負担率が高まるだろうということはある程度覚悟します。しかしながら、いま申し上げた公平な税制を期待する国民感情から言って、またそれが税の基本であるから、来年度の新税構想としてはこれらを満たさした上での税制でなければならない。したがって、いまうわさされているような付加価値税などはもっと先の展開として考えるべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  306. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 まだ一般的な消費税体制を採用するかどうか、その辺まで考えていないのですよ。いまお話しの付加価値税、これは付加価値税というといろいろ特殊な響きがありますが、一般的な消費税ですね、これは物価政策と非常に対立をするわけなんです。物価かおさまらぬときにそれをやりますと、これはまたそれだけ物価を引き上げてしまう、こういうことになるので、その制度の採用はよほど慎重でなければならぬというふうに考えております。いずれにいたしましても、これからどういうふうにして五十五年度特例公債を消すか、こういうことを検討するわけでありまして、またいろいろお知恵を拝借させていただきたいと思います。
  307. 高橋高望

    ○高橋委員 先ほども与党の委員の方から要望を兼ねてお願いがあったようでございますが、私は別の形から、どうかひとつ総理、この税制の展開に当たって、くれぐれも公平な税の徴収に当たられるようお願い申し上げまして、私のきょうの質問を終わらせていただきます。
  308. 小渕恵三

    小渕委員長 荒木宏君。
  309. 荒木宏

    ○荒木委員 お疲れさまでございます。  早速お尋ねをいたしますが、先日当委員会に所得税法の審議で参考人においでをいただきました。そのときの御意見では、いろいろありましたのですが、いわゆるサラリーマン訴訟の中にあらわれました税の不公平の問題、これに関して、いまの税制調査会の総会に御出席になる委員の中に、公平ということが法律上問題になる、そういった関係で、憲法学者あるいは税法学者の方がお一人もお入りになっていない、これはぜひ法律関係者として要望したい、こういう強い御意見がございました。  申すまでもなく、税制調査会の委員さんは総理が任命されることになっておりまして、大蔵省の担当者から、総理大臣の大臣官房の方にはしかとお伝えをいたしますという回答はいただいておりますけれども、総理は訪米もされておりましたし、あるいはお耳に入っていないかと思いますので御披露申し上げる次第ですが、私どもはそのとき、せっかくの御意見決して聞き流しにはいたしません、こういうふうに申しましたので、ちょうど十月が任期切れで改選の時期になっておるようでございますが、そうした点について総理の御所見を伺いたいと思います。
  310. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ちょうど十月にいまの委員の任期切れになりますので、その際十分検討いたします。
  311. 荒木宏

    ○荒木委員 ところで、総理から、景気刺激を公共投資で進めたいという御意見を本院でも再々伺っておるわけでありますが、本日は税制の審議でございますので、私は投資税制ということについて総理のお考えを伺いたいと思うのです。  公共投資といいまして、河川、砂防あるいは道路、住宅、下水道、公園いろいろあります。ありますが、その財源としまして特定財源の仕組みがとられておるのがいま道路財源ということになっております、御承知のように、道路整備緊急措置法に規定がございまして、揮発油税の税収、それから石油ガス税の税収の半分、これを道路財源に充てねばならない、こういうことになっておるのですが、今日のこの公共投資の要求せられる中身ですね。生活基盤重点ということは総理も再々おっしゃっておるのですけれども、そうした点から、この道路財源にだけこうした特定財源の仕組みがとられておるというやり方は、いま再検討と申しますか見直す必要があるのではないかというふうにも思うのですが、まずその点について総理のお考えを伺いたいと思います。
  312. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 あの税の仕組みは、利用者負担という考えから出てきておるわけであります、現実の問題として、あの特定財源だけで道路事業になお足らぬというので、一般財源をかなりつぎ込んでいる、こういう状況でありますが、道路投資はもうそう必要ないのだというような状態になりますれば、これはその際は再検討してしかるべき問題である、さように考えております。
  313. 荒木宏

    ○荒木委員 これは物の見方だと思うのです。道路だけを取り上げて、さてどの程度必要かというふうな観点もあろうと思うのですが、同時に、もろもろの公共投資、さまざまな社会的な需要、国民的な要請、ニーズを総合的に考えましたときに、果たしていまのそういう仕組みが適正妥当であろうか、私は、長年続いてきている制度ですから、そもそもの出発点を検討するということも一つ必要ではなかろうかと思うのです。  一番最初の二十九年に道路整備費の財源に関する臨時措置法としてできましたときには、いまお話しの趣とはかなり違っておったように承知しておりますが、その当初の立法趣旨を、建設省の方でお見えでしたら簡単に説明をお願いしたいと思います。
  314. 永田良雄

    ○永田説明員 お答えいたします。  昭和二十八年当時の道路整備緊急措置法第三条の立法の趣旨でございますが、これは一つには、わが国の道路整備の水準が欧米主要国に比べてまだずいぶん劣っておる、したがいましてこれを緊急に整備をする必要があるということ、それから、道路整備の財源につきましては、その受益者である道路利用者が負担する自動車の関係税というものをもって充てることが負担の公平に合致する、こういう趣旨からつくられたわけでございまして、揮発油税等の収入額に相当する額を道路整備五カ年計画の実施に関する財源とする、こういうふうに決めたものでございます。
  315. 荒木宏

    ○荒木委員 当時の論議をいろいろ記録その他によって振り返ってみますと、当初予算が約八千億円余りで、道路予算が百億にもならないというふうな指摘がありました。比率にしますと一%です。これではということで、議員立法の提案者がそのことを繰り返し繰り返し説明をされました。そうして何とかこれをもう少し上げる方向に持っていきたい、それにはこういう特定財源ということで法律的に義務づけをしないと財政当局が動かない、つまり一たん予算編成をやられておったようでありますけれども、それをこういう仕組みをとることによって少し引き上げたいということが、何度も繰り返して趣旨の説明答弁の中に出ておるようなのであります。そういう点からいたしますと、その後七次までの道路整備計画が遂行されてまいりまして、五カ年計画ですから一年度当たりに割って考えますと、当初予算との比率は昭和二十九年では五・二%でありましたが、四十八年には二七%にまで上がってきておるわけであります。  また、受益者負担ということも、当時の論議では、それじゃそういうことでいけば競馬の費用は全部競馬場へ入る人が負担するかとか、あるいは競輪の方の上がりも全部それでは競輪につぎ込むか、そういったような論議もいろいろな意見の中に出ておりまして、必ずしもそうした受益者負担が必然的に結びついておるものではない、ほかにも似たような事例は幾つもあります。だがしかし、道路に限ってこの仕組みをとるというのは、やはり道路予算というものが予算全体に比べて余りにも低いからだというのが一番のポイントであったようです。  ですから、そういったその後の経過を見まして、当初の立論の趣旨、いろいろありましょうけれども、私は道路予算の中身を見まして、地方道路の問題その他ありますから、決してこれでいいとかそういう論を言っておるのではないですけれども、こういう法律的な義務づけをする仕組みというものを道路に関してだけいまなお維持するということは、再検討の必要があるのではないか、こういう趣旨で申し上げておるのですが、いかがでしょうか。
  316. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 特定の税を特定財源としてある特定目的に使うという仕組みは、これはきわめて例外的に考えなければならぬ。税は一般に総合いたしまして、そうしてこれを必要な目的のために配分する、これが本則です。これは、そういうことにおきましては、荒木さんと私、もう考え方は異なるところはありませんが、この道路事業というのは金が相当かかる、しかもまだおくれておりまして、そうして議員立法でできた財源だけでは足らないので、さらにこれを一般財源から投入しておる。こういうような状態の中で、強いてこれをまた一般財源として扱う、つまり特定財源を解く、こういう積極的な必要はどうもないんじゃないか、そういうふうに思うのです。まあ一般財源をもう投入する必要もない、あるいは一般財源の方に特定財源の中からこれを分け与える、こういうようなくらい道路が整備されるということになりますれば、これはもうそのときは特定財源制は当然解いていい、こういうふうに思いますが、いまそれだけまだ道路整備の必要という問題が切実な課題である今日、この制度改正をするのはどうだろうかということを申し上げているわけなんです。
  317. 荒木宏

    ○荒木委員 私は、財政のいまの状態はただごとではないと思うのです。つまり目的財源なりあるいは利用者負担なり、そういう考え方をとっておる比例税制もあることは承知しておりますが、しかし、いまの日本財政状態から見まして、公債費比率が高まってくる、つまり財政の手がそれだけ縛られるわけですね。また既定経費もいろいろな面でままならぬ状態がある。そのときに、福祉の要求あるいは公共投資の要求というものが多面的に発展してくる中で、特に道路だけ法律でもって財源の手を縛り上げる、それがいまの財政危機の中で硬直化を打開して弾力化の方向に向かわなければならぬという要請が強いときに、果たしていかがなものであろうか、こういう点で申し上げておるわけです。ですから、そういう財政運営の点、そこのところをひとつお考えいただきたい。ちょうどこれは五十二年度が五年度の切りですから、五年ごとの緊急措置法できているわけですから、一つの見直しの時期にもなり、先ほど総理も、財政は大変だ、公債が一番気にかかる、こうおっしゃっておるわけですから、そういう時期にひとつ見直し、あるいはその中には、特定財源の比率が国道と地方市町村道ではずいぶん違います、そういった比率の見直しも含めてやはり検討が必要なのではないか、こう思っておるのですが、いかがですか。
  318. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 道路整備が進みまして、もう財源特定してそれに充当する必要もないというようなことになりますれば、これはもう特定財源制を廃止していいと思うのですが、いまはまだ道路整備の必要というのは非常に高くて、一般会計からも財源を投入しているというような状態なんです、そうして、しかもガソリン関係に相当高い負担を課しておる。なぜ課しているのだ、これは道路整備の必要があるからだ、その特定財源であるから課しておるのだ、こういうふうな関係もあるその際に、さあいまの制度を改正するということになった場合に、いまのその高い税制が維持できるかどうか、そんなような問題もあろうかと思うのです、しかし、道路整備が進みますれば、進んだ段階でこの制度は改正する、これはもうそれにやぶさかではございません。
  319. 荒木宏

    ○荒木委員 時間が余りなくて、賛成をいただけないようで残念だと思いますが、ただ、見通しという点から言いますと、この十年ほど前に、自動車の保有台数は一千万台前後であります。いまはもう二千九百万台という、三千万台になろうとしています。これから先の見通しは、産業構造審議会の見通しによりますと、五十五年には三千三百万、六十年になっても三千七百万ということで、それぞれ一〇%あるいは十数%の伸びにすぎないという見通しです。実際百人に三十台という自動車の保有台数になっています。それ以上余りふえては困るということは、一般の国民は感じているのじゃないでしょうか。ですから、そういった将来の見通しと、それから、そもそもこの仕組みができましたときに声を大にして言われたのが、産業の発展は道路から、経済の発展は道路からという、高度成長型の考えではなかっただろうかと私は思うのですけれども、そういった転換という、そういう点からも見直しは必要なのではないかと考えておるのですが、これは御答弁いただく時間がありませんので、ひとつ念頭にぜひとどめていただきたいと思うのです。  最後に、この燃料関係諸税の中には国税もあり地方税もあります。たとえば揮発油税、これは国税でありますが、地方道路税は地方税になっております。こういう中にある国税と地方税の税率比率が国の方に有利になっておるという指摘もあります。単に燃料税だけではなくて国税、地方税全体の税の再配分の見直し、これは地方制度調査会の中でも指摘をされておるところであります。自治省からお見えいただいておりまして、ちょっと時間がなくてお尋ねできませんので、まことに申しわけないのですが、こういった税の国と地方の再配分の問題につきまして、総理は三月一日の本会議の御答弁で、慎重にかつ積極的に取り組みたい、しかし八月の行政改革見直しのときには間に合わないという趣旨の答弁をしておられます。地方税源の充実、特に市町村の税源充実の方向でこの見直しということをお進めになるかどうか。また、八月に間に合わないとすれば、時期はいつごろがめどになるか。地方公営企業金融公庫の問題も、本年、来年に向けての積み残しということになっておるようでありますが、そういったことも含めて、地方財源充実の方向と結論の出る時期の目安といったものを伺って、質問を終わりたいと思います。
  320. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私が本会議答弁したのは、ガソリン関係の税の問題ではないのです。一般的な税源の問題でありますが、これは先ほど来申し上げておるのですが、国民負担は、この両三年の間に負担率において三%ぐらいふえなければならぬ、そうしないと円滑な行政の執行を妨げるし、また特例公債をなくすることができないような状態だ、こういうことなんですが、その三%というのは、その中の二%分は国の分なんです。一%分は地方の分なんです。その地方の分である一%を頭に置きまして、地方は税源の充実を図る必要がある、こういうことを申し上げたわけです。  それから同時に、国からもう少し地方に税源を移譲したらどうかというニュアンスの質問がありましたが、これは仕事との関係だ、事務の配分、これと相関連して検討さるべき問題だ、こういうふうにお答え申し上げたわけですが、私はいまでもそのとおりに思っております。
  321. 荒木宏

    ○荒木委員 時期のめどは大体いつごろになりますか。
  322. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 国税の方につきましてもまだいつどういう税制をということが申し上げられない段階でありますので、地方につきましても同じでございますが、中央、地方の事務の配分をどうするか、こういう問題はまた別個の問題といたしまして検討しなければならぬ問題ですが、これはまたなかなかむずかしい問題でありまして、そう簡単には結論は出かねる問題で、相当時間をかけなければならぬ問題だ、そういうふうに存じております。
  323. 小渕恵三

    小渕委員長 永原稔君。
  324. 永原稔

    ○永原委員 お疲れですが、私にとりましては残り物に福ありということですので、ぜひリラックスしてお答えをちょうだいしたいと思います。  福田総理が四十一年、時の蔵相として戦後初の公債導入をなさいました。その政策転換をなさってあの経済不況を乗り切られた功績は非常に大きかったと思います。あの積極さ果敢さというのが安定路線の道を切り開いた、これは否定できない事実だと思います。しかし、いまの経済情勢はあの当時よりはより深刻であり、世界的に同時的に不況を起こしている、こういう状況の中で、先ほど来お話しになっていますように経済大国としてリードしていくのだという意気込みで積極的な姿勢を見せていらっしゃるのはりっぱだと思いますが、そこで先ほどの御質問に関連して伺いますけれども、六・七%、自由主義経済の中でぴたりとはいかぬだろうけれどもおおむねその線を実現したい、こういうことで、これが達成できないときには何らかの措置を講じたい、こういうようにお話しになりました。過日の参議院の予算委員会において、やはり同じような質問に対して、世界が見守っていることであり、景気が思うようにいかない場合、年度途中で臨時応変的な措置をとってでも目標を達成したい、こういうようにお答えになったように伺っております。先ほどお答えも、国際的な責任ということまでお話しになりました。そういう中で、年度当初から景気浮揚策としてあるいは公共事業あるいは減税あるいは公定歩合の引き下げ、こういうことが論議されていたわけですけれども、いま何らかの施策をお考えになるあるいは臨時応変的な措置をお考えになる、こういうようなお気持ちの中に補正予算というようなことが含まれているのでしょうか。とすれば、その財源が増税になるのかあるいは公債になるのか、その辺を伺いたいと思います。
  325. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私はこの五十二年度予算、また五十一年度補正予算、これで景気は上昇に向かう、こういう見通しなんですよ。景気がここでまた挫折するというような場合は、世界的に相当異変のあった場合以外には考えられない、こういうふうに思っておるのでありますが、万一国内的な事情でどうも見通しが違ったというようなことがあれば、そのときはそのときで臨機応変の措置をとる、こういうことで、まだ補正予算をそのとき組むとまでは考えておらないのです。
  326. 永原稔

    ○永原委員 財政収支試算について先ほどからお話が出ていますので、もう税収のことについてはあえて触れません。こういう中で、私やはり過去を顧み現状を分析し将来に備えるという考え方が必要だろうと思いますが、時の状態を比べますと、経済基盤も違う、産業構造も違う、そういう相違はあるにせよ、昭和初期の井上財政、高橋財政、あの運営を思い起こします。井上財政の緊縮財政が失敗に終わった、高橋財政の積極さが非常に成績を上げたというような事実を見ますときに、やはりこの公債についての考え方、これを余り憶病に考える必要がないのではないかという気がしてならないのです。もちろん総理の立場は慎重でなければなりません。しかしまた一方では、果断でなければならないと思うのです。総理の愛する国民は、経済不況に悩む中小企業者もあるいは先行き不安を感じている農民、漁民、こういう者もいろいろ心に不満を持ちながら営々として働いてきた。もちろんこれも繁栄をもたらしたのが政治の力のみではなくて国民一人一人の精進と向上を求める努力の結果であったと私は思います。そういう中でこの発展が支えられておりますが、いま、公債について、とかく将来の子孫に借金を残す、こういうようなことで、いかにも悪のような考え方がとられておりますけれども、私は公債というものが、見方を変えれば元利償還される一つ金融資産である、こういうような考え方もできようと思うのです。そういう中で、もっと積極的な政策をとってもいいのではないか。いまのような、公債が社債市場が整備されない中で金融機関引き受けだけにとどまっていれば、これは民間の設備投資にも影響してまいりましょう。しかし個人消化に向かっていったならば、それほどの影響がないのではないかという気がするのですが、そういう観点からこの赤字公債について、どうしてここ二年ないし三年の間にゼロにしなければならないのか、その辺が少し私には理解ができないのです。  というのは、建設公債は五十五年までには零になりません。また、することができないと思います。建設公債にせよ赤字公債にせよ、やはり財源が不足しているために発行されるという点については同じだと思います。そういう中で、建設公債については借りかえ制度が認められ、赤字公債については借りかえが認められない。減債制度そのものは根本的には両公債について変わっていない。ただ借りかえがあるかないかというところが違うだけです。ということになるとすれば、あえて五十五年に限定しないで、償還年限を延ばしていくということの中で、増税という問題も解消できるのではないだろうか。やはりGNPとの関連における弾性値において自然増収を図っていけば、この増税率というのも引き下げることができるのではないだろうか、そういう気がしてならないのです。やはり歳出まで御検討になるというお考えの中で、こういうような公債論をもう一度洗い直す必要があるのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか、その点伺いたいと思います。
  327. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、公債性悪論ですね、これはとらないのです。しかるがゆえに、私、昭和四十年、あえて公債政策を採用するということに踏ん切りをつけたわけです。ただ、公債というのは、これは両刃の剣のようなところがあるのです。これはうまく使えば大変いいですが、これを誤って使いますと大変な過ちを犯すことになる。私はそのいま非常にむずかしい段階に来ていると思うのです。ひょっとしたらこれは過ちを犯すかもしらぬ公債になってくる。良薬たるべき公債が、これは害毒になりそうな段階まで公債が増発されておる、こういうふうに思うのです。去年も多額の公債が出た。円滑に消化をされたのです。ことしも多額の公債を出す。まあ円滑に消化される見通しです。ですけれども景気がよくなってくる、こういうことになりますと、これは銀行はそう公債を抱きませんよ。だれが買ってくれるのか。日本銀行がしょい込むほかはなくなっちゃうのです。これは公債インフレになってくるのです。そういうことを考えますと、これはどうしたっていまのような八兆円を超すというこの規模の公債を長く発行していくというわけにはとうていいかぬと思うのです。私は、いま日本の政治の運営の中で一番むずかしい問題はここにあるというくらいに思って、神経質にこの問題と取り組んでいるのですが、ひとつ節度だけは持ちながらやっていきたいなあ、こういうふうに思うのです。公債性悪論、これでないという点は、永原さんと私も一致であります。
  328. 永原稔

    ○永原委員 いずれまた、減債制度については大蔵大臣に法案審議のときに伺いますので、この点は、いま総理のお話で私も下がります。  先ほど大臣のお話で出ましたけれども、デノミの問題ですが、物価安定の状況を見ながらというようなお話が総理からございました。いま国際情勢の中で、国際的な価格によって非常に左右される国内物価ですけれども、そういう中で、特に第三世界の影響を受けやすい日本、そういう中で一体物価がどの程度安定したときにデノミが実施されるのか、いろいろ問題が大きゅうございますので、この点、慎重に考えなければならないと思いますが、どういうお気持ちでいらっしゃるか、もう一度伺いたいと思います。
  329. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 物価の安定を見ながらじゃないのです。物価が定着したら、こういうことです。しかも、デノミを行う場合には、やはりあらかじめ、デノミとはこういうものだというPRを相当する必要があると思うのです。そういう段階を経まして、デノミが行えるという日の一日も早からんことを期しながら、早く経済を安定さしていきたい、かように考えております。
  330. 永原稔

    ○永原委員 遅くなりますのでやめます。      ————◇—————
  331. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、貴金属特別会計法廃止する法律案を議題といたします。  本案については、先刻質疑を終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。貴金属特別会計法廃止する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  332. 小渕恵三

    小渕委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  333. 小渕恵三

    小渕委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  334. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由説明を求めます。坊大蔵大臣。     —————————————  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  335. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいま議題となりましたアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  アジア開発銀行は、アジア・太平洋地域の開発の促進を目的とする地域開発金融機関として、昭和四十一年に設立されましたが、その後十年の間に、加盟国は当初の三十カ国から四十二カ国へと増加し、融資承認累計額も約三十四億ドルに達しております。また、小開発途上国を含め広く域内各国にわたって融資を行うとともに、技術援助についても積極的な活動を行うなど、域内開発途上国の経済的、社会的発展に大きく寄与してまいりました。  アジア開発銀行は、域内開発途上国の旺盛な開発資金需要にこたえ、昭和四十七年には第一次の一般増資を行うなど業務規模の拡大を図ってまいりましたが、その融資財源は、本年後半には枯渇することが見込まれております。このような事態に対処して今後とも同銀行が円滑な事業活動を継続し得るよう、昨年十月、総務会において総額四十一億四千八百万協定ドルの第二次一般増資を行うことを内容とする決議が、採択されました。  わが国といたしましては、決議の定めるところに従い、同銀行に対し、六億七千五百万協定ドル、現在の合衆国ドルで約八億一千四百万ドルの追加出資に応ずるため、所要の国内措置を講ずる必要が生じたものであります。  わが国は、域内における最大の先進国として、また、同銀行の最大出資国として、その円滑な事業活動の継続を確保するため、率先これを支援していくことが強く要請されております。このため、政府といたしましては、本法律案により新たな出資についての規定を設けることとし、この法律の成立後、速やかに増資に応募する旨の通告を行いたいと考えております。  以上、この法律案につきまして、提案理由と内容の大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  336. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、来る四月一日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時七分散会      ————◇—————