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山田(耻)議員
土地増価税法案の
提出の
説明をいたしたいと思います。社会党の提案でございます。
私は、
提出者を代表いたしまして、ただいま提案されております
土地増価税法案につき提案
理由及びその概要を御
説明いたします。
わが国の経済はインフレと不況の共存というかつてない深刻な危機に陥り、
国民生活は根底から脅かされています。今日の事態はもはや、一時的な対策で処置できる
状況にはなく、抜本的改革を必要としているのであります。すなわち、インフレが富と所得の格差を拡大し、低所得者の生活を脅かす一方で、不況が失業の深刻化をもたらすとともに、未曽有の
財政危険を招来していることが直視されなければなりません。
そこで、富と所得の適正な再配分を図り、深刻な
財政危機を克服するための手段として、この際、
税制を積極的に活用し、社会的公正の実現と租税
収入の確保を図ることが強く求められていると言わなければならないと考えられるのであります。
今日のインフレを引き起こした原因の
一つは
土地価格の高騰にありますが、
土地を担保にした信用インフレが地価をさらに引き上げるという悪循環は、
昭和四十四年の
土地税制、
昭和四十七年の法人の
日本列島買い占めといった
土地投機によって一層拍車をかけられたことは周知のとおりであります。地価の上昇は住宅
事情を悪化させ、農業基盤を破壊し、地方行
財政を圧迫していますが、逆に
土地を所有している者は労せずしてキャピタルゲインを得ており、それは五十年の高額所得者百人のうち九十四人を
土地譲渡所得者が占めていることでも明らかであります。
昭和三十年代の高度成長とともに始まった地価の高騰はこの二十年間に全国市街地
価格で二十八倍という驚くべき上昇率を示し、このため、
土地の含み資産は巨額に上り、法人所有地について見ますと、東証上場会社全体の含み益は六十八兆円との推計も行われており、さらに、資本金一億円以上の法人では、九十五兆円、全法人では二百兆円にも及ぶと言われております。また、
土地の含み益は個人の
土地所有者にも膨大な不労所得を与えており、たとえば、
昭和四十八年から五十年の三年間に
土地譲渡所得が百二十億円を超えるという高額所得者もあらわれているのであります。これらの利益は
土地所有者にゆだねることなく、社会的な再配分の対象にして、公共の利益のために利用すべきものと考えます。
また、この間異常な高騰を続けた地価は五十年の公示で初めて前年より九・二%下落して、一部では、狂乱の終息、地価高騰の転換期などと言われましたが、五十一年には早くも〇・五%高を示し、しかも今年の地価の
状況は、昨年を上回る上昇を見せており、地価の再上昇の動きが強まっており、とりわけ、大都市に比べ、相対的に安い地方での上昇率が高くなってきておりますことなどは、今後とも、地価の動きに十分な警戒を要する
状態であると申さねばなりません。
特に、五十二年度
予算では歳入のほぼ三〇%を国債
収入で賄うという巨額の税収不足の
状況にあり、インフレ利得吸収のための大胆な新税を採用して税収の確保を図ることが急務であります。同時に
財政改革と相まって、新税による
財源を高度成長過程で放置されてきた住宅、生活関連施設、農林漁業の再建、地方
財政などの分野を中心に新投資と
財政配分を行うことが経済、
財政の改革の一環として進められなければならない課題であり、このような
考え方により新税として
土地増価税を創設することが、本法案
提出の
理由にほかならないのであります。
次に、法案の概要を申しあげます。
第一に、本法案は地価の異常な上昇にかんがみ、
土地等の増価額に対し
土地増価税を課税し、増価益の適正な配分と租税
収入の確保を図ることを
目的とするものであります。
第二に、課税対象は、
昭和五十二年五月一日現在の法人及び個人所有の
土地及び地上権、借地権など
土地の上に存する権利の増価額としております。ただし、法人及び個人の所有する農地等の増価額は対象としておりません。
第三は、課税標準でありますが、
土地増価税の課税標準である
土地等の増価額は、標準
価格から帳簿価額額または取得価額を控除した
金額とし、標準
価格は、
土地課税台帳または
土地補充課税台帳に登録された
価格、すなわち、固定資産税評価額を一・七五倍した
金額としております。なお、
土地の取得価額の把握が困難な場合について所要の配慮を行うことといたしております。
第四は、課税最低限についてであります。すなわち、中小零細法人の店舗等及び個人の居住用宅地には課税しないようにするという配慮から、法人については、増価額が五千万円以下であるときは、増価税は課さないこととし、増価額が五千万円を超えるときは、増価額から五千万円を控除することとし、また、個人については、増価額が三千万円以下であるとき、または
土地の面積が三百三十平方メートル以下であるときは、増価税は課さないこととし、増価額が三千万円を超えるとき、または
土地の面積が三百三十平方メートルを超えるときは、増価額から三千万円と三百三十平方メートルに対応する増価額とのいずれか多い方の
金額を控除することとしております。
第五は、税率と納付についてでありますが、
土地増価税の一時的課税という
性格をも考慮して、税率を一五%とし、納付は五分の一ずつ五年間の分割納付としており、また、物納もできることにしております。
第六は、
土地譲渡益課税との調整についてでありますが、
土地の譲渡益に対する所得税及び法人税との重複課税を避けるため、調整
措置として、十年以内に譲渡があった場合には、
土地増価税を還付し、未納分は免除することとしております。
このほか、
土地増価税は、法人の各事業年度の所得の
金額の計算上、損金の額には算入しないこととし、個人の不動産所得の
金額または雑所得の
金額の計算上も必要
経費に算入しないこととしております。
なお、この
法律の施行期日は
昭和五十二年四月三十日としております。
以上が、
土地増価税法案の提案の
理由及び内容の概要であります。
何とぞ御審議の上、御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)