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大倉政府委員 御指摘を私なりに二つの面に分けまして
お答えいたしたいと思いますが、
一つはやはり資産増加と、それを未実現であれ何であれ、そういう角度から負担を求めるという感覚があっていいのではないかと、そういう角度が
一つ御
質問の中にあるように思います。一般的にキャピタルゲインを未実現の
段階で
所得課税をするということにつきましては非常に問題が多いし、政府としてなかなか踏み切れないという
趣旨のことを総理
大臣も
大蔵大臣も
予算委員会で
お答えしておるように思いますけれ
ども、
所得課税としてではなくて、資産
課税というジャンルで何かそういうことが
考えられるのかどうなのか、それは具体的に申せば非常に多額の資産、純資産を持っておられる方に富裕税のようなものを
考えてみたらどうかという御提案に場合によってはつながる問題提起ではないかと思います。富裕税につきましては、それなりに執行の困難さとかいろいろな問題が指摘されてもおりますけれ
ども、ただいま税制
調査会に昨年十一月十二日に
一つの検討材料の中に入れまして問題提起をいたしてございますので、もう少し税制
調査会での御審議の推移を見守らせていただきたいと
考えております。
もう
一つの側面は、実現したキャピタルゲインとして有価証券の譲渡益についての
課税を取り上げないと、やはりこの時期に、そこをいまのままでいいというわけにはいかないのではないかという御指摘のように承りました。これは実は私
どもも基本的にはおっしゃるような気持ちでございます。それで
所得税法では原則的に非
課税という
規定を置きながら、これこれこういうものは
課税ですよというふうな仕組みになっておる。その中に継続的取引でございますとか——継続して有価証券を売買するという
所得でございますか、それから買い占めでございますとか、あるいは事業譲渡類似、一番最近追加いたしましたものとしては、ゴルフ場の会員権というようなものがあって、逐次非
課税という原則の中で
課税の
対象として取り上げるべきものが追加されてきたという経緯はございますけれ
ども、もう少し突っ込んで
課税すべき範囲を洗い直すべきではなかろうか。一般的に全部
課税の方に切りかえていくということにつきましては、これはやはり完全な把握の体制ができるかできないかという利子
所得の総合
課税の場合と同じような非常な難問がございますので、それを待たずに、むしろ原則非
課税というシステムの中でも、いまのここまでは
課税しなくてはいけないという範囲をもう少し広げて
考えるべきではないだろうか。
そこで、率直なところ、昨年の秋以降、利子配当
課税を強化したいということで
関係局に相談を持ちかけますのと並行いたしまして、いまのキャピタルゲイン
課税の強化ができることならやるべきではないだろうか、勉強してほしいということを頼んだわけです、先方の担当局長も、御承知の男でございますから、まともに受けとめまして勉強をしてくれたわけでございます。ただ、残念ながら、今回の改正につきましては具体的な成案を得るに至らなかったのでございますが、もう少し時間をいただいた上で何らかの、漸進的ではあれ、
解決法をお互いに見出すように勉強しようではないかということに私と彼との間はなっております。
その場合に、最大の問題としていま言われておりますのは、昔から言われておりますことでもございますが、資本市場に対して非常に不測の影響を与えることがないようにという配慮、これはやはりどうしても必要だろうと思います。それから、原則
課税ということにはなかなかいけないというその裏には、やはり個人株主が非常に減ってしまっておる、非常な小口の投資家というものに無用の恐怖心を与えないというような、きわめて現実的な物の
考え方というものも必要だろう。ただ、有価証券市場が全体としてシュリンクしてしまうというようなことは、これは
制度改正がたとえば発表になったとかあるいは記事になったというときの心理的な問題はともかくとして、ある時期を経過すればそんなことはないんじゃないのかな、そこをもう少し勉強しようではないかということでございますが、それにつきましては、
村山委員のおっしゃいましたように、現に少なくともたてまえ上は
課税している国でちゃんと資本市場が成り立っているんではないか。いや、それじゃ一体どうやってその国は
課税しているのか、
税法が現実にどう動いているのかということもひとつなるべく早い機会にもう少し具体的に勉強をしてみて、それが日本の市場の場合にうまく適合できるという自信を持ったいい
解決策を二人で探そうではないかということになっております。具体的な案がいまだにお出しできないのはまことに申しわけないのでございますが、もう少し時間をいただきまして、いま私が申し上げたような方向で努力をさせてみていただきたいと思います。