運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-03-22 第80回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十二日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 野田  毅君 理事 保岡 興治君    理事 山下 元利君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 永末 英一君       池田 行彦君    大石 千八君       鴨田 宗一君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    砂田 重民君       葉梨 信行君    原田  憲君       村上 茂利君    村山 達雄君       毛利 松平君    山崎武三郎君       山下 徳夫君    山中 貞則君       伊藤  茂君    池端 清一君       大島  弘君    川崎 寛治君       沢田  広君    只松 祐治君       伏木 和雄君    宮地 正介君       高橋 高望君    荒木  宏君       大原 一三君    小林 正巳君       永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵大臣官房審         議官      山内  宏君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省証券局長 安井  誠君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         国税庁次長   山橋敬一郎君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局参事官  藤野 典三君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   小泉純一郎君     葉梨 信行君   小林 正巳君     大原 一三君   永原  稔君     川合  武君 同日  辞任         補欠選任   大原 一三君     小林 正巳君   川合  武君     永原  稔君     ————————————— 三月十九日  景気回復のための減税措置等に関する請願(阿  部昭吾紹介)(第一五三一号)  支那事変賜金国庫債券の償還に関する請願外二  件(河野洋平紹介)(第一五七三号)  府中市の米軍基地跡地地元利用に関する請願  (長谷雄幸久紹介)(第一六六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第六  号)      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永原稔君。
  3. 永原稔

    永原委員 私は、国税地方税を通ずる体系化と言いますと少し大げさですけれども、この関連性について少し伺ってみたいと思います。  所得税につきまして税調では諮問に応じて答申を出されておりますが、この答申どおり今度の税法では改正を見ております。何か、原案というのは事務当局でお出しになるのではないかと思いますけれども、そういうような中で審議された答申ですので、大蔵当局の御意向も十分反映しているのではないかと思います。  そういう中でこの答申を見てみますと、「夫婦子二人の給与所得者課税最低限昭和五十二年度において実質的に昭和五十一年度とほぼ同水準になることを目安とすべきである」というような答申でございます。そういうことで、三万円の人的控除というのが決められておりますけれども、「五十一年度とほぼ同水準になることを目安とする」こういう中に、やはり経済指標の中で消費者物価指数の伸びというのが意識されているように見受けられます。  経済指標の数値を見ていきますと、五十二年度の消費者物価平均上昇率は八・四%、こういうように示されておりますけれども、これを吸収するための三万円の控除引き上げでしょうか、その点をまず伺いたいと思います。
  4. 大倉眞隆

    大倉政府委員 税調答申を十分御吟味願った上での御質問と思いますが、その中にございますように、今回の減税考え方は、やはり二年続いて減税を見送ることによって中小所得者負担感が強まるという懸念を無視するわけにいかないので、中小所得者負担軽減という角度から最小限減税を行ったらどうか、その場合の目安として、五十一年分と五十二年分の課税最低限が、その間における消費者物価動きを見た場合にほぼ実質的な水準が変わらないようにということを目安として控除引き上げ考えたらどうか、そういう流れになっておりまして、その意味で、諸控除政府案のように各三万円引き上げますと、課税最低限引き上げ率が一〇・一になりまして、それは予想される年度間平均上昇率八・四を若干でも上回るから、そういうような引き上げがよいのではないかという御答申に至ったわけでございます。
  5. 永原稔

    永原委員 その点が非常に気になるのですけれども、五十一年度当初においては、これはこれほど上がるとは予想してなかったのでしょうが、五十一年中に九・四%上がっている。そして五十二年度は、今後の推移によりますけれども、八・四%上がるであろう、こういう予測でございます。この予測に対して、五十一年度当初と同じ水準に持っていく、それを目安にするとすれば一〇・一%では余りにも低くないか、そういう気がするのですけれども、いかがでしょうか。
  6. 大倉眞隆

    大倉政府委員 それは五十一年分の所得税の悪税最低限水準と五十二年分の課税最低限水準、それが五十一年に対して五十二年に予想される物価動きと比べてどうなるであろうか、消費者物価でデフレートした場合の実質換算がほぼ同じになるようなことを目安として、中小所得者負担軽減のために諸控除引き上げたらどうかということでございますので、考え方としましては年度間上昇率を用いるという考え方もあるのかもしれません。年度間上昇率でございますれば、それは政府見通しでは七・七でございますから、その七・七を用いるか八・四を用いるか議論余地はございましょうけれども、説明の便宜としては、むしろ年度平均の八・四という大きい方の数字を使ってみてもなおかつ引き上げ率が一〇・一だから、その目安というものは達成できるではないか。逆に申しますと、七・七であれ、八・四であれ、それにぴたりと合うように直さなくてはならないという思想はないように思います。
  7. 永原稔

    永原委員 そこで、今度地方税に移るわけですけれども税調では、所得税において、すでに述べたように減税が行われその課税最低限引き上げられる際に住民税課税最低限を据え置くこととすれば、所得税のいわゆる控除失格者住民税所得割負担する所得層に対する配慮が全くなされない結果になる、そういうこともありますから、住民税についても、所得税と同様の考え方に立って引き上げもやむを得ない、こういうように報告されております。  そこで、引き上げられた人的控除というのは、これは課税最低限を比較してみますと八・三%、こういうことになっております。片方においては五十一年度当初と五十二年度の上昇率、こういうものをデフレートしながら同一に取り扱うというようなお考えで一〇・一%、結果的に出た数字かもしれませんけれども一〇・一%、こういうようにお考えになった。これとの均衡において、住民税控除失格者を何かとらえようという意味からすれば、この八・三%というのは数字が食いつかないような気がしますけれども、こういう点についてはどういう考えだったのでしょうか。
  8. 大倉眞隆

    大倉政府委員 住民税自治省が主管でございますけれども税制調査会総理大臣諮問機関でございまして、国税地方税両方御審議願っておりますので、便宜私からお答えいたします。  先ほど来申し上げておりますように、予想される物価上昇率でデフレートして必ず同じものにするということをまず目標にしたのではなくて、中小所得者負担軽減考えたい。その場合に、国も大変な赤字でございますけれども地方も大変な赤字、したがって、地方財政のみの角度から言えば、住民税減税は見送らしていただきたいけれども、しかしいまおっしゃいましたように所得税は払わないけれども住民税は納めておるという方のこともあるから、最小限地方住民税控除引き上げることはやむを得ないではないかというのが税制調査会の御議論でございまして、その場合に、諸控除を何万円上げるかということで、結果的にぴたりと八・四に合うような上げ方というものは実はないわけでございまして、今回の政府の提案しております地方税改正案では八・三でございますが、これは七・七、八・四という両方をにらみながら五十一年分の地方税と五十二年分の地方税との課税最低限が実質的にほぼ同じ水準になるという目安を達成していると言ってもいいのではなかろうか。片や〇・一低い、片や一・七高いということでございますけれどもそれなりに諸控除と申しますのは永原委員よくおわかりだと思いますが、八・四にぴたりと合わせるために三万円でなくて二万七千八百円上げるというようなわけにまいりませんものでございますから、何万円かを上げた結果がそうなる。結果をながめてみて、思想として五十一年分と五十二年分を国税地方税両方ながめ、また年度間上昇率年度平均上昇率をながめて、それぞれ目安といわれているものを達成しているといってもいいであろうという御判断でこのような答申になった、そう私は理解いたしております。
  9. 永原稔

    永原委員 自治省関係のことですので、また別の機会に聞きますけれども、この人的控除が国と地方でそれぞれ違っております。これについて、納税者側確定申告など書くときに非常に違和感を持つというようなことがありますね。こういうものについて、特に分けられた理由、これは税調答申にいろいろ書いてございますけれども、本当に何かこういうように分けなければならない理由を率直に承りたいと思います。
  10. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは実は多年御論議がございます。ここ数年は、少なくとも地方税住民税課税最低限を国の所得税課税最低限同一にしなくてもいい、つまり住民税には、住民に広く地方行政の費用を分担していただくという思想がより強くあってもよいという考え方が多くなりつつございますが、しかし全然別の角度から、ただいまおっしゃいましたように、納税者のサイドに立てば、所得税であれ住民税であれ、同じポケットから負担するのだから、それはやはり同じ控除の方がわかりがいいという御主張もございます。税制調査会の中にもございます。  さらにそれを一歩進めまして、同じ一人の納税者負担するのだから、むしろ国税に統一してしまって、それを交付税なりあるいは別途の形でもいいから譲与税なりというもので地方にお分けすれば、その方が納税者にわかりいいということと、もう一つ徴税費が非常に節約できるのではないかという角度からの御議論も依然として続けられております。  ただいまのところの税制調査会の一応の御結論は、永原委員承知のとおり、かなり詳しく書いてございまして、少なくとも当面は両者に差異があってもやむを得ないし、またそれなり理由があるということになっておりますけれども、しかし今後の問題としましては、やはり国税地方税納税者角度から、また徴税費効率化という角度から引き続いて議論していただく余地のある問題だと私どもとしては考えております。  ただその場合に、やはり一番大きな問題は、地方自治というものの考え方にかかわってまいるかと思います。つまり、地方住民地方団体に直接に税を負担するということが地方自治を支えておるのであって、それを同じポケットだからといって国の方に納めて、国の方から地方に金が回っているのだということでは、自治の基本的な考え方の主要な柱の一つが空洞化されるという、地方自治論としての非常にむずかしい御議論一つございますので、そのような地方自治論と、先ほど来申し上げております納税者の意識あるいは国、地方を通じての行政費節約合理化、あらゆる角度を入れながら今後とも検討をすべき問題ではないか、そのように私としては考えております。
  11. 永原稔

    永原委員 いま非常に地方自治のことまで御心配いただいているお話がありましたけれども、税の実態を見ますと、たとえば地方自治の中で税の大宗を占めている法人事業税、これなどは法人税との関連において税務署と非常に密接な関連で算出されてくるわけなので、地方自治税法を見ていきますと、ほとんど国税におんぶしているような面が多い、こういうようなこともあります。そういうような関連性考えていった場合に、いま、今後とも引き続いて議論する価値があるというようにお話しいただきましたけれども国税地方税の物の考え方をなるべく統一していただく方が、お話しのように徴税費においても納税者の側においても違和感を持たなくなりますので、そういう点について今後も御検討いただきたいと思います。なるべく是正の方に向かっていただきたい、こういうようにお願いいたします。  次に法人税関係ですけれども中小企業対策関連して数点伺ってみたいのです。  いま中小企業所得対策として税法上いろいろめんどうを見ていただいておりますけれども、三十年に低所得者に対する税率軽減があった。しかし中小企業を意識して四十一年の一月から資本金一億円以下のみに、特に中小企業に対して軽減税率を適用するというような方法がとられてきたことは、一つ画期的な意義があると思います。四十九年、五十年、この軽減税率上限引き上げが行われて現在七百万ということになっているようでありますけれども、四十一年、この制度がとられた当時の三百万、現在の七百万、こういう意義中小企業側にとって考えてみますと、たとえば四十一年の給与ベースから逆算していきますと、当時の三百万円というのは、特に小零細企業の五人から二十九人というような、そういう規模企業にとっては、平均しますと七・八人分に相当するというような恩典でございました。ところが下十年になりますと、この七百万の持つ意味、これをやはり給与ベースで換算していけば、五人から二十九人というような特に小零細企業においては四・四人分にしか相当しないというようになっております。仮に、五十年分もこの制度発足のときの七・八人、こういう程度まで課税の減免の上限を上げるとするならば千二百五十万円、こういうような数字になってまいります。支払い手形が非常に長期化し、これを割り引いた場合に、その割り引き額必要経費に算入されるにせよ、そういう零細の中で積み上げてきた利益、そういうものでありますので、本当に大企業と苦労の度合いというのは違うと思います。こういう七百万円の限度額、こういうものについて引き上げる意思があるかどうか、その点伺ってみたいと思います。
  12. 大倉眞隆

    大倉政府委員 従来の経緯は、永原委員非常に詳しく御承知でありますので繰り返して申し上げませんが、ある時期に法人税税率留保分あるいは配当分というふうに交互に引き下げられてまいりました。そのときには中小法人に対する特別税率も引き下げられましたが、昭和四十五年からは、法人税率はむしろ引き上げ方向に転じてきております。その法人税率を、留保分あるいは配当分引き上げます機会に、その都度、中小企業対策という意味から、二八%という中小法人のためにのみある税率は据え置くということで今日まで至っております。その点はひとつぜひ申し上げておきたい。  もう一つは、この二八%という税率適用範囲でございますが、おっしゃいますように三百万円と決められましてから約十年たちまして、これを六百万円に引き上げまして、さらにその翌年七百万円に引き上げました。これが五十年度改正でございます。その意味で、ここしばらくはこの七百万円のままで置いておいていただきたいというのが、私どもの正直なただいまのところの気持ちでございます。  もちろん、将来、ある時点においてまたこれを見直さなくてはならぬという時期は参りましょうけれども、少なくとも、ことし、来年というところではこのままに据え置いていただきたい。と申しますのは、法人税の中での大法人中小法人負担の問題は、もちろんおっしゃるような角度はございましょうけれども、やはり税の中で申しますと、もう一つ個人事業の場合の負担との比較というものもあるわけでございまして、中小法人利益として残っております部分というのは、結局経営者それなりの適正な報酬をお取りになったあとの部分でございます。いわば年間七百万円なり八百万円というものの報酬経営者の方に払われて、その上に残っている部分でございますので、やはりその税率を安ければ安いほどいいというわけにもまいらない。それは個人事業の場合とのバランスというものも別の角度考えながら適用していかなくてはならぬであろう。その場合に、個人所得が、ある税率が適用される範囲というのはどの程度であるかということも考えなくてはなりませんので、ここ当分は、五十年度に引き上げたばかりでございますので、七百万円というところはそのままにしておいていただけないかというのが私どもの率直な感じでございます。
  13. 永原稔

    永原委員 税務当局では確かにそういうようなお考えに立つと思います。まだ過去の経緯をたどって上げたばかりだというようにお考えになると思いますけれども、ここ数年の物価上昇率あるいは賃金のアップ率、こういうものを見ていきますと、この七百万円の数字というのはまだ非常に低いような印象を受けるわけです。特に、例として私は小零細企業を挙げたわけですけれども、一億円というような線で引かれておりますので、本当に資本金の百万、五百万以下というような小零細企業についてさらにめんどうを見ていただき、こういうような気持ちでいっぱいです。資本金の一億円以下というようなのをさらに細分化すれば徴税費がよけいかかるということはわかります。しかし、中小企業対策としていろいろ金融措置というようなものも講じながら中小企業の育成を図り大企業補完機能を果たさせるのだ、こういうようなお考え歳出面においていろいろな政策が展開されておりますけれども、一番均てんするのはやはり税の軽減ではなかろうか、みずからの力で、補助金を受けなくても、あるいは金融措置を受けなくても体質改善ができるような社内留保をより多くするためにはこの減税措置が特に必要だ。本当に小零細企業が置かれている立場を見ますと、こういう点については特に配慮をしていただきたい、こういう気持ちですが、お答えは同じでしょうか。
  14. 大倉眞隆

    大倉政府委員 永原委員のおっしゃる角度からの問題は、私どももかたくなに、一切だめでございますと申し上げるつもりはないわけでございますが、くどくて恐縮でございますけれども、やはり個人事業とのバランスというものも考えなくてはなりませんし、お言葉を返すようになるかもしれませんが、個人の場合には八百万、千万は高額所得者だとおっしゃっておられるわけですから、それとの関連もやはり考えなくてはならないという点で、少なくともここ当分は現在の制度のままにしておいていただけないかというふうに私は考えております。
  15. 永原稔

    永原委員 これは意見がかみ合いませんけれどもも、次の問題に移ります。  中小企業対策として、細かい問題になりますが、物品税の問題。現在、納期限について第一種物品は一カ月、物品が売られてからその日の属する月の翌月の末期に納められるようになっていますけれども、第二種物品は二カ月に納付期限が決められております。しかし、現実分割領収が非常に多くなっている、あるいは長期割賦販売という制度が新しく非常に一般的になってきている、受け取り手形の極端な長期化という現象が見られる、こういう中で非常に負担が重くなっているわけです。そういうような場合に、この納期限を一カ月追加することはできないでしょうか。第一種が二カ月、第二種が三カ月程度納期限の延長が認められないかどうか、そういう点について御意見はどうでしょうか。
  16. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっととっさのお尋ねであれでございましたが、二種の場合には法定納期限蔵出し後二カ月、その後にさらに申請による延納が一カ月ございます。それから一種の場合は、法定納期限が売り上げ後一カ月でございまして、これはやはり二種物品製造場課税と申しますか、蔵出し課税でございますので、物品税が観念的には少なくとも最終消費者負担になる、したがって、小売段階から資金回収がされてきて製造業者負担していただくという感覚があって、製造課税の場合の方が法定納付期限が長いし、また、製造者小売に渡す場合には、おっしゃるように手形取引もかなりあるというようなことで、実際に申請によってもう一カ月さらに延ばす制度がある。一般論としましては、一種小売課税の場合は圧倒的に現金取引が多いのではないか、小売で相手が消費者でございますから現金取引が多いのではないかという意味法定納付期限もそのように定められ、また、申請による延納という姿もない。それはどの段階課税するか、間接税としてそれをだれが負担することを予定しておるかという物の考え方からそのような制度になっていると私は理解いたしております。
  17. 永原稔

    永原委員 いま局長からお話が出ましたように、第二種物品製造課税、こういうことになっております。そういう中で、原材料が非常に高騰している。その原材料の高騰をカバーするために値上げをすれば、これは免税点が低いために課税対象となってまいります。そういうような現実を見て、いまの経済情勢から、総需要抑制策が今度は景気浮揚策の方に転換しつつある、そういう中で政府の方針も、補正予算において住宅投資を非常に重視している、こういうような状況に変わってきております。五十二年度で公共事業も、これは生活関連部面に重点を置くというようなことが述べられ、特に住宅には力点を置いていますけれども、この住宅関連する第二種物品、これは家具類が特に多いわけでありますけれども、こういうものについてお考えいただけるかどうか、この点を承りたいのです。  というのは、木製家具については、これは生産者規模が非常に小さい、零細である。全国生産者の九〇%に当たる約一万三千軒、こういう人たちは三十人以下の小零細規模企業でございます。私は静岡県ですけれども静岡の場合にはこれがさらに零細化して、九人以下の従業員を擁するところが全体の八六%、しかも、三十人以下でいきますと、全国平均をはるかに上回って九六%、こういうような零細企業生産をやっているのが実態でございます。  最近価値観が非常に多様化した、こう言われておりますけれども、そういう中で需要も多様化し、あるいは個性化しております。したがって、多品種を少量生産するというような傾向が非常に見られますけれども、これがコスト高になり、非常に経営を苦しめているというような実態にございます。そういう結果、いまのこういう木工家具生産状況を見ますと、近代化工場によって量産を図り、低コスト経営をしようという一つ方向と、零細企業によって高額品生産を図る、こういうような二極分化の生産形態というのがはっきりあらわれてきておりますけれども零細企業は勢い高額品を手がける以外に存続が困難になってきております。そういう中で製品の大部分課税対象になる。製造課税であるだけに、常に税務署の立入検査というようなものによって税額が決定されていく。そういう中で、非常に経営が苦しい、何とかこの家具類の二〇%の税率をもう少し引き下げることを考えていただけないだろうか、第二種物品免税点を五〇%程度上げるというような考えに立って、こういう零細企業、特に景気浮揚策関連した家具製造業のような、そういう面の恩典というのを考えていただけないかどうか、その点を伺いたいと思います。  と同時に、時間がありませんのでまとめて申しますけれども静岡は鏡台家具が特産品になっておりますけれども、鏡台については免税。ところが、さきに言いました需要の多様化というようなことで、また、個性化が進み、ドレッサー、化粧だんすというようなものがたくさん製造されつつございます。これは収蔵部分を持った鏡をつけた家具でございますけれども、こういうものが非常に需要が多くなっている。しかし、同じような鏡台でありながら、収蔵部門があるということでこれは家具としての課税がなされておりますが、こういうものについてもっと弾力的に考えられないだろうか。収蔵部門の大きさによって、たとえば奥行きが四十センチとか、地板から天板までの外のりが六十センチ、幅が百二十センチというような規制が設けられておりますけれども、こういうようなものについてもっと弾力的に考えられないか、これを第二点に伺います。  と同時に、木製家具の寸法のはかり方というのも、これも問題なんです。製造業者は自分のところで立入検査によって課税が決定されていきますけれども、外のりで全部はかっていく。収蔵部分だけではなくて、たとえば台がつけば台の下から天板の上まで、そういうようなはかり方をしていくので課税対象から外れなくなってしまう。そういうような苦衷も抱えておりますので、そういう点についてももっとお考えをいただけないだろうか。  これは話が横にそれてしまいますけれども、大手の楽器業者が、すでに廃材によって家具類へ進出しつつある。こういうのが先ほど申しました近代化工場の量産体制ということに結びつくわけですけれども、こういうものが特に経営形態の小さい木工家具類、これは全国に散在している、そういう地域の小零細企業に与えている影響が非常に大きい。そういうことを考えますと、どうしても分野調整法、こういうものによって小規模零細業者を保護するというような考えが必要だろうと思いますが、こういう点について大蔵大臣はどのようにお考えになりますか、御意見を伺ってみたいと思います。
  18. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問の中の免税点、それから可否判定につきましては私からお答えをいたしたいと思います。  免税点につきましては、ある程度コスト動きを見ながら物品税課税物品の中のバランスをとる、これは実は非常にむずかしいのでございますが、そういうことを考えながら引き上げを行ってまいっておりまして、四十八年にかなりの引き上げをいたしました。たとえば、これは永原委員よく御承知かと思いますが、たんすは四万円から六万円に、ダブルベッドは四万三千円から六万五千円に、シングルベッドは三万円から四万五千円に、というような引き上げを行いまして、ほぼ一段落かと思っておりましたところ、その後のいわゆるオイルショックで狂乱物価という時期がございまして、四十九年の十月に、年度内でございましたが再度引き上げをいたしました。たんすは六万円から九万一千円に、ベッドは、ダブルとギャッチベッドは六万五千円から九万五千円に、シングルベッドを四万五千円から六万六千円に、というふうに引き上げまして、その結果現在では、小売価格換算では、たんすは、これは平均でございますから実際はいろいろだと思いますが、平均的に換算いたしますと、たんすは十五万一千七百円までは免税、ダブルベッドは十五万八千三百円までは免税というようなところまで来ておりますで、私どもとしては、それ以後の価格の状態を見ましても、いま直ちにこれを引き上げなくてはならないという状況にはないのではないかと考えております。これは、現実に詳細御存じの永原委員からすれば御不満の点もあるのかもしれませんが、平均的に見まして木製家具の卸売物価指数は、四十九年十月からことしの当初までではむしろ下がっておりまして、上がっていない、これは日銀の統計でございますが、というような状況でございますので、四十九年十月の大幅引き上げの後、いましばらくこれで安定して推移していただけるのではないかというのが私ども考え方でございます。  なお、可否判定につきましては、いろいろお話がございました。これを実は物品税という個別課税の場合の非常にむずかしい一つの問題でございまして、膨大な量の通達もございますし、さらにその通達の実際の適用につきましていろいろと納税者との間にお話し合いをしなくてはならぬケースも多々あることを私なりによく存じておるつもりでございます。内のり、外のりではかるかどうかというような問題などを含めまして、ただいまの御質問の趣旨をよく国税庁に伝えまして、円滑な執行ができますように、私どもとしてもなお努力を続けてまいりたいと思います。  分野調整につきましては大臣からお答えしていただきます。
  19. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま主税局長からのお答えによりまして大体御了解いただいたかとも思いますけれども、この物品税という税は大変古い税でございまして、第二次世界大戦の端緒となりました支那事変とか、そういったようなときに臨時軍事費の財源をつくるために創設された税でございます。そのときに、この税をかけるのは、むろん財源が欲しかったわけですけれども、一意専心戦争にまっしぐらに進んでいくというために、いろいろな消費の節約も考え、奢侈品を使っちゃいけないといったようなことも兼ねてつくられたのがこの税金だと思いますが、この税金は、当時の価値観、それによりまして、これはぜいたく品だ、これは使わなくてもいいものだといったような標準、それからまたこれは国産品だ、これは外から入ってくるものだといったような価値観でもってこの物品税をかける課税物品を選択いたしまして、あれは何百点とあったでしょう。それがいま六十点か何かになって、だんだんと改正されてきた税でございます。これは生まれ立ちがそういう税でございますから、物品税に背負わされた宿命というものがありまして、今日、ひとつここがいけぬからこれを直す、ここがどうだからこれを修正すると言ってかかっても、とてもまともな姿にはなりにくいというような税であろうと私は思います。さような意味におきまして、これはいますぐにはいきません。いきませんけれども、本当にひとつの抜本的な根本的な考え方でもって直していかなければならぬ税の一つだ、かように私は考えております。たった一つ二つというものを挙げてそれを何とかしていこうということになってきましても、後から後へといろいろな議論が出てまいりまして、そうならもういっそこの考え方、構想を抜本的に改めて、それじゃ一般的消費税でいこうかといったようなことも税調において考えていただいておるというようなことでございます。
  20. 永原稔

    永原委員 私が御質問しているのは、そうではなくて、結局、大手の大企業がこういう部門に進出し、零細企業が特に圧迫を受けているので、分野調整のような、そういうことが必要だ、それについて、これは所管外かもしれませんけれども、大臣のお考えはいかがですかということでございます。
  21. 坊秀男

    ○坊国務大臣 物品税だと思いました。見当違いしました。  分野調整につきましては、これは大蔵省でない、通産省の方で検討されているところでありますが、御質問のようなことも十分勘案いたしまして結論を出していきたい、かように考えております。
  22. 永原稔

    永原委員 特に所得税関係のないことを御質問して申しわけなかったのですけれども、最後に、今度の特例債の発行に絡んで国の財政収支の見通しが直されましたけれども、この前、三月三日に御発表になったあの数値で見て、五十年から五十五年の租税の平均伸び率を二〇・九%、これはAケースにおいてもBケースにおいても二〇・九%という数字をとっていらっしゃいますが、果たしてこの低速経済の中でそれだけの税収というものが可能だろうか。ただ特例債を五十五年度においてゼロにするというための数字合わせにすぎないのではないか。これは失礼な言い方かもしれませんが、そんな気がするのです。今後の租税について、やはりいろいろ増収を図っていかなければならないということはよくわかります。しかし、最後の五十五年までどうしてもこの赤字公債をゼロにするような税の増徴、これを考えていかなければならないのかどうか、その点が疑問に思われますので、二〇・九%の平均伸び率が果たして可能かどうか。それがどうしても達成されなければならないのか。その二点について御質問してみたいと思います。
  23. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問の、先般予算委員会にお出ししました五十二年度ペースでの中期財政収支試算によりますと、五十五年までにGNPが一伸びれば税収が一・八三伸びなくてはこのような姿にならないということになっておりまして、その一・八三という値を現在の税制で期待することは無理だということは認めざるを得ない。ということは、五十五年までのある時期に何らかの税目で負担の増加をお願いせざるを得ない、避けて通れないであろうということでございます。そういう前提で、昨年の六月からすでに税制調査会で、増税をお願いするとすれば、どのような税目を考えるべきかという審議をしていただいておりまして、その審議経過につきましては当委員会に資料として提出いたしているわけでございます。  ただ、ただいまの御質問でどうしてもそれだけの増税をする以外にどうにもならないのかという点でございますが、それは中期財政収支試算が、実質百兆円の公共投資、振替支出を国民所得の一〇%程度引き上げる、なおかつ五十五年度には特例債依存から脱却するという前提を置いて描かれているわけでございますから、どうしても所要の額ほどの増税が適当でないということになるのであれば、それは社会資本の充実の方のスピードをダウンするのか、あるいはあえて社会保障の水準向上をスピードダウンするのか、あるいは五十六年度以降もなお特例債を出し続けるのか、それらの選択とあわせてこれから御論議を願うべき問題である、そのように私としては理解いたしております。
  24. 永原稔

    永原委員 総体的に陳情質問のようなかっこうになりましたけれども、意のあるところをおくみ取りくださいまして前進を図るようにお願いして、質問を終わります。
  25. 小渕恵三

    小渕委員長 池端清一君。
  26. 池端清一

    ○池端委員 きょうは大臣もお見えでございますので、まず最初に大臣に対して減税問題についての政治姿勢といいましょうか、そういうような問題について一、二お聞きしたいと思うのであります。  ここに本年一月十四日付の毎日新聞がございます。一月十四日と言いますと、大蔵原案の内示が終わった翌日に当たると思うのでありますが、「財政再建元年の夢消えて」こういう見出しであるわけであります。ところが、これを読んでみますと、なかなか大変なことが書かれているわけであります。たとえば政府原案にありました三千五百三十億円の減税について大蔵省の幹部は「経済的戦略が政治的戦略に敗れた」こういうふうに嘆いている。あるいは「所得税減税さえなければ、もうちょっと格好のいい予算になったのに……」こういうふうに減税を恨む。あるいはある幹部に至っては、この減税は「もったいなくてしようがないよ」とこう言う。またある幹部は、まさに「ドブに捨てたようなもの」こういうような発言をなさっているというふうにこの記事では書いているわけであります。  三千五百三十億円、ミニ減税であります。これすらもどぶに捨てたというふうに言い切る、この国民感情を逆なでするような発言、感覚に対しては私はどうも納得がいかないわけでありますが、大臣はこのような発言に対してどのように思われておられるのか。どぶに捨てたというふうに大臣自身もお思いになっておられるのかどうか、まずお伺いをしたいと思うのであります。
  27. 坊秀男

    ○坊国務大臣 毎日新聞に出た記事については、これは私は読んでおりませんので、はっきりとはわかりませんが、後で読みます。しかし、国民負担軽減を図っていくということは絶えず考えなければならぬことだと私は思っております。しかしながら、現状しからばどうかということを考えてみますと、今日の日本の国の所得税法人税について考えてみますと、御承知のとおり所得税につきましては、今度御審議を願っておるこの税制改正案におきましても世界のどの国よりも課税最低限が高い、それから個人の租税負担というものはほかの諸国に比して決して負担率が大きくないというような点、そういうふうに御理解願っていいと思うのです。法人税につきましては大体世界水準というようなところへいっておるというようなところから考えてみますと、今日財政事情が非常に苦しいときにどうしても所得税法人税を中心とした減税をやっていく、しかし無論不公正の是正だとかそういったようないろんなことはございますけれども、これは無視するわけにはまいらぬと思いますけれども、租税を全体において減税はしていこうか、それは決してどぶに捨てるとか、もったいなくてしようがないとか、そういうようなことを考えるわけではございませんけれども、そこのところは財政再建のためにもひとっこれを考えていかなければならないというようなことで、先ほど主税局長がお答え申し上げましたとおり、このままでおったのでは財政再建ということはなかなか困難である、そこで税制調査会にもひとつお願いを申しまして、日本の税制をどういうふうに持っていくかということにつきまして考えていただいておるというようなことでございまして、近いうちに大減税をやっていこうということは、私は率直に申しましてちょっと困難なことであろう、かように考えております。
  28. 池端清一

    ○池端委員 近いうちに大減税をやっていくということは考えておらぬ、私はそういうことをお聞きしたわけではないので、この三千五百三十億円の減税ですらそういう感懐を持っておられるということは、これは決して言葉じりをとらえて云々するのではなくて、やはり私は本音というものが出ているんじゃないかという気がしてお尋ねをしたわけであります。  また、一月十二日付の北海道新聞によりますと、自民党の税調で、自民党の皆さん方から、一体大蔵省は今日この重税に対する国民の不満を知っているのか、こういう質問が出たところ、大蔵省側から、国民の九五%は重税を訴えていますが、八〇%の人は自分の納税額すら知りません、そのうち二〇%ないし三〇%の人は納税義務のない人たちです、こういうふうにお答えになったというふうに、これまた新聞報道でございますが、出ておるわけであります。(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)ないならないで後ではっきりしたいと思うのでありますが、昭和五十年三月の第七十五国会の当委員会におきまして、当時の主税局長の中橋さんが質問に答えて、私自身にとりましても、それじゃおまえ月給から毎月税金が幾ら引かれているかということになりますれば、なかなか努力が足りませんのでその認識はございません、こういうふうに言っておる。どんな努力をしなければならないのか私はわからないわけでありますが、高級官僚の皆さん方ならいざ知らず、大幅減税と不公平是正を求める国民の声というものはいまやまさに燎原の火のごとく広まっている、こういうふうに言っても言い過ぎではないと思うのであります。  現実に五十一年度は十六年ぶりに物価調整減税すら実施されなかった。物価の上昇は九%を超えているのに労働者の賃金は平均八.八%。深刻な不況のもとで零細中小企業の皆さん方は倒産の不安におののいている。あるいはまた農民は冷害に苦しんでいる。こういう状況の中で大幅減税を要求する、そして例の五野党の一兆円減税となってあらわれて、最終的には三千億円の減税の上積み、こういうことになったわけであります。  私は、繰り返すようでありますが、三千五百三十億円の減税すらどぶに捨てるという感覚であるならば、今度の三千億円の上積み分はまさにどぶに捨てるどころか、ヘドロの海に捨てたような、そういう気持ちにいま大蔵省当局はなっておられるのではないか、こう思うのであります。その点についてはどうでしょう。
  29. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いろいろな表現をもって御意見をお述べになりましたが、私はさようなことは考えておりませんし、大蔵省の当局もさようなことは、新聞はそれはどう書いたか別といたしまして、さようなことは考えておりません。私は常に申し上げますとおり、政府のつくりました予算及び減税案というものがいまの時局におけるぎりぎりのものであって、非常に適切なる措置をとった、こういうふうに考えておりましたけれども、しかし野党の皆さん、さらに与党の幹事長も加わりまして六党が合意をして、そして今度の追加減税ということを考えられた。これはもう議会政治においては、私どもはこれが一番いいのだといってそれをあくまでも固執していくということは考えておりません。そういうふうに六党が議会政治において合意をしたということに相なりますれば、どぶに捨てるなんということは考えておりません。その趣旨に従って、そうしてりっぱな案をつくっていこうというふうに考えております。
  30. 池端清一

    ○池端委員 もうこれ以上この問題は申し上げませんが、私は、確かに大蔵省、とりわけ主税局というのは、世上よく言われておりますように、本当に名人芸で精緻に積み上げていく、まさに左甚五郎のような名人芸である、それほど御苦労なさっているということはわかります。しかし、そこに本当に庶民の感覚が生かされているかどうかということになれば疑問なしとしません。私は、もうちょっと庶民感覚に徹した立場でのたくましいテクノクラートへそれこそ脱皮する、そういう時期にあるのではないかということを一つ申し上げておきたいと思うわけであります。  次に租税特別措置についてお伺いするわけでありますが、ことしも若干の改正案が出ております。しかしそのほとんどはいまだなお温存されている、こういうふうに言っても言い過ぎではないと思うのであります。三月十八日の委員会でわが党の大島委員から、この租税特別措置というものは世界的にも悪名高いしろものである、こういうふうに言ったわけでありますけれども、そこでまずお伺いしたいのは、初歩的な質問でございますが、租税特別措置という制度はいつできて、その当時はどのような種類のものがあったのか、まずそれをお尋ねしたいと思うのであります。
  31. 大倉眞隆

    大倉政府委員 突然のお尋ねでございますので必ずしも詳細をまだ私自身がフォローいたしておりませんが、現在の租税特別措置法に相当する法律は、昭和十三年に臨時租税措置法という法律があったようでございます。その法律の中では、所得税、また当時ございました地租、営業収益税、鉱産税などの特例を定めていたようでございます。主な例示を見ますと、自作の田畑の地租の軽減の条文がございます。また、営業収益税の軽減所得税軽減という条文も約十カ条あるようでございます。また、新設鉱区の重要鉱物の鉱産税の免税という条文が二カ条ございます。それから砂金以外の砂鉱の特別交付税を賦課するという、これは課税強化の方のようでございますが、その条文がございます。さらには織物消費税について、当時の事情でございましょう、ステープルファイバー、人絹を免税するというような規定もあるようでございます。
  32. 池端清一

    ○池端委員 私は、戦後どういうような状況であったかをひとつお尋ねしたかったわけでありますが、これは私が調べたところによりますと、租税特別措置というのは、昭和二十五年のシャウプ勧告によって定められたもの、そういうふうに理解しておるわけですが、理解が不十分であればまた御指摘を願いたいと思うのであります。  それで、その当時シャウプ博士の考え方も、もともとこの制度というものは好ましいものではないのだ、したがってその適用は特殊なケースに限る、こういうふうに言われておったというふうに聞いておるわけであります。しかも、発足当時認められておった制度というのは貸倒準備金と船舶修繕引当金の二つだけであったというふうに私は理解をしておるわけであります。  ところが、その後これが拡大に拡大を重ねて、今日、昭和五十一年度版の「日本の財政」という書物によりますと、「五十年度の租税特別措置百九十六項目のうち、六十九項目が五十一年度において廃止または縮減される」ことになったというふうに述べられておる。それでも大変な膨大な数であります。例外のない原則はないと言われておりますが、いまや例外が原則になっている。例外、特別措置というものが原則になっていると言っても言い過ぎではないような実態ではなかろうか、こう思うのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  33. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたのが戦前の措置法に相当するような法律という意味で申し上げたわけでございますが、租税特別措置法という名前が出てまいりましたのは昭和二十一年のようでございます。昭和二十一年には登録公債の利子について、当時は分類所得税でございましたが、これを免除するとか、あるいはインターバンクの預金利子を免除するとか、あるいは山林の増伐所得の課税の特例、一部二分の一課税にするとか、あるいは不動産を物納に充てたときに、山林所得はこれを取らないということにしたのだと思いますが、その特例を設ける等々ございます。またさらに、国庫補助金の益金不算入あるいは価格平衡資金への繰入額の損金算入というような規定がいろいろ盛り込まれていたようでございます。  シャウプ勧告の基本的な考え方は、ただいま池端委員がおっしゃいましたように、この種の特例というものはできるだけない方がいいということであったのは御指摘のとおりだと思います。以後、三十年代から四十年代の前半にかけて租税特別措置の項目数並びに対象がかなりの拡大を示したということも、これもまた否定できない事実であったように思います。当初は内部留保の優遇でございますとか、企業体質の改善でございますとか、あるいは輸出の強化でございますとか、産業政策的な要請がかなり色濃くあらわれていた、これもまた歴史的事実として否定ができないであろうと思います。中ごろ以後、中小企業関係の特例、農業関係、それから住宅関係というような措置がふえてまいりました。やはり私なりに、四十年代の前半から後半に移りますところで、全体の考え方としましては、輸出振興関係措置をできるだけ縮減していく、内部留保関係措置をできるだけ現状維持ないし縮減に向けていく、反面社会的要請に伴う特別措置が漸次追加されていくというような歴史をたどったように、いまから振り返って考えております。  ただ、余りに数がふえ、また、一度つくったものがなかなかなくならないということで、税制調査会一種の基本的な考え方を整理していただきまして、これは私の記憶では、東大の小宮教授などが中心になって答申に盛り込んでいただいたわけですが、政策効果と、これによるデメリットを比較考量すべしということとか、あるいは既得権化、慢性化を極力排除すべしということで、以後その線に沿って期限到来ごとにできる限り縮減する努力をいたした。しかしその場合、やはり各方面からの要請が非常に強くて、ある時期に——私が担当課長をいたしておった時期でございますが、いまよりもう十年前になります。スクラップ・アンド・ビルドということを言い出しまして、新しい特別措置をつくるなら必ずそれに見合うぐらいの既存のものを切ってほしいということでやってまいりました。  それが、ある程度の時間を経過いたしまして、四十九年度、五十年度に非常な歳入欠陥に縫着した、財政の再建をしなくてはならぬ、将来増税も必要かもしれない。であるとすれば、政策税制については従来以上に厳しい縮減合理化をやらなくてはいけないではないかということで、スクラップ・アンド・ビルドということからさらに一歩を踏み込んで、方向としては、縮減するのだ、新規は一切認めないのだということで五十一年度改正をやらしていただきました。私どもなりにかなりの縮減合理化ができたと思っておりますが、国会におきましては、なお不十分であるというおしかりをたびたび受けております。  しかし、五十一年度にかなりの縮減をいたしました後でございますので、五十二年度は、期限到来後を中心にして、項目としてはある程度の縮減合理化をやらしていただいております。ただし、五十二年度の経済情勢考えますと、政策税制の縮減とはいえ、それが余りに大幅な企業増税につながることは景気対策としてかえって逆行する面があるかもしれないという点も念頭には置いておりましたので、五十二年度は、数として期限到来後を中心にかなりの縮減を図っておりますけれども実態的な大きさとしましては、五十一年度に比べれば控え目なものになっている、これもまた認めざるを得ないかと思います。
  34. 池端清一

    ○池端委員 経過についてはいまいろいろお述べいただきましたので、十分わかったわけでありますが、昭和四十九年の三月のこの大蔵委員会に、当時税調会長でありました東畑精一氏が参考人として出ておられます。そのときの会議録を読んでみますると、東畑会長も「非常にたくさんあるというのはごもっともです。」「消せばまた出てくる、また出てくるというようなことで。」「本来、政策目的であったのが特別措置であります。その意味では、初めから不公平をつくっていくという点でございます。」「その点が」——というのは政策目的がというふうに理解していいと思うのでありますが、「十分目的を達してもまだ持続しておる、ここが特別措置の一番大きな問題じゃないかと思います。」ということを率直に、当時の会長もお述べになっておられるわけであります。大変膨大な数であります。縮減に努めているというお話ではございましたけれども、われわれから見ますると、まだまだ不十分だ、びほう策を講じているにすぎないというふうに思うわけであります。  そこで大臣、日本の政策目標というのは、世界に追いつけ追い越せという、こういう国際競争力を強化するという立場から、いまや福祉型、福祉というものに変換をする、そういう時期に来ていると思うのであります。そういう意味では非常に遅きには失しておりますけれども、この租税特別措置というものを抜本的に検討し、思い切った改変を行うことが今日緊急の課題になっているというふうに思うのでありますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  35. 坊秀男

    ○坊国務大臣 租税特別措置法につきましては、その内容等、主税局長が御説明申し上げたとおりでございまして、その中には、政策的な租税特別措置とそうでないものもたくさんありまして、そこでこれをどうしていくかということで、御心配のように、政策目的でもっていろいろな特別措置をつくったら、やがてそれは変身していくことがたくさんあるということを東畑先生もおっしゃられたということでございますが、もちろんそういうこともあろうと私は思います。そういうようなことから考えまして、この租税特別措置をひとつ抜本的に見直してみたらどうかという御意見、私は、抜本的に見直してみましてもそれほどの見直しの効果というものは、出るか出ないかということはやってみなければわかりませんけれども、しかしながら、こういうふうになった租税特別措置法について、いますぐというわけにはいかぬにいたしましても、やはり抜本的な考え方でもって見直してみるということも一つの改善の行き方であろうと思います。しかし、それをやることによって、いままで日本服を着ておったのを洋服に着かえたというほどにはなるまいと私は思いますけれども、これも一つの御意見として考えていくべきものだ、かように私は考えております。
  36. 池端清一

    ○池端委員 時間がございませんので、次の問題に移ります。  次の問題は、最近非常に大きな問題になっております負の所得税と申しましょうか、マイナスの所得税あるいは逆所得税といったようなものの導入についてお尋ねをしたいと思うのであります。  減税というのは、課税最低限を上回る所得者に対して何がしかの恩恵を与えておりますけれども課税最低限を下回る、しかもなお生活扶助基準を上回る低所得者層に対しては恩恵が及ばない。こういう人たちがインフレの被害を一番受けるといいますか、直撃されているわけであります。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 そこで、これらの人たちを救済するために、今度も野党五党は、福祉年金の受給者等に対する特別給付金の支給という要求でまとまり、最終的には年金の改善時期の二カ月繰り上げということになったわけであります。こういうことは、負の所得税制度導入の一つの萠芽形態ではないかと私は思うのでありますけれども、このような負の所得税の導入の問題については、すでに昨年の秋、経済同友会でも問題の提起をされております。さらにまた、総理大臣諮問機関であります国民生活審議会、あるいはまた大蔵省内に設置されております財政研究所においても検討が進められているというお話を聞いておるわけでありますが、この問題についての大蔵省としての検討の現状というものをひとつお尋ねをしたいと思うのであります。
  37. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 財政研究所におきます研究の状況を御説明いたします。  福祉財政の基本構想というテーマで、五十年度、五十一年度と研究されておりまして、四十七年にイギリスの下院の特別委員会のタックス・クレジット・システムという報告書があるわけでございますが、これを中心に財政研究所で勉強されておりまして、ことしの三月に最終報告をまとめられるやに聞いております。その骨子は、負の所得税について積極的に導入しろというような見解ではなくて、社会保障全体の体系の中で、イギリスにおいてどういう問題があったかということを中心に研究成果をまとめられるやに聞いております。
  38. 池端清一

    ○池端委員 この負の所得税というのは、私は、各種の政策のらち外に置かれた谷間に対して光を当てるといいますか、そういう社会福祉の面と、もう一つは、消費の拡大を図るという景気対策の面からもきわめて積極的な意義がある、こういうふうに思うわけであります。技術的にはなかなか困難な面もあろうかと思いますが、やはり現行税制の基本的な問題点を見直しをして福祉型税制へ移行するという発想の転換が今日求められているのではないかというふうに思うのでありますが、大蔵大臣はこの問題についてどのような御見解をお持ちになっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  39. 坊秀男

    ○坊国務大臣 普通のいまの所得税は、納税者の方々から税を納めてもらうということであり、負の所得税というのは、逆に納税者じゃない、納税者までいかぬ人たちに対しまして、政府から交付金というかそういったようなものを出すということであって、税という見方からすれば、普通の所得税はまさにプラスの所得税であり、それから負の所得税は書いて字のとおりマイナスの所得税である。ところが、また政策の上から考えますと、負の所得税というものは、財政の上から見ますと財政の支出ということになるだろうと私は思うのです。それで、この負の所得税に対しましては、主税局ならざる主計局の加藤次長がお答えをしたというようなことで、負の所得税は結局は、おっしゃるとおり、社会福祉と申しますか、つまり振替所得といいますか、そういうものの支出であるということから、これは財政政策の上から考えますと、社会福祉といいますか、社会保障といいますか、そういったような政策の中における一つの行き方だということで、やはりその全般の中の一環として考えていくべきものではなかろうか。私は決してこれは悪いとかいいとかということを言っておるのではございませんけれども、将来検討するといたしますならば、国家財政の支出の面において考えていくべきものではないかというふうに——私も負の所得税について勉強したものでも何でもありませんけれども、そう考えていく方が合理的じゃなかろうか。これは私個人意見でございますが、さように考えております。
  40. 池端清一

    ○池端委員 もはや今日では、いわゆる戻し税方式といいますか、所得税の直接還付方式あるいは負の所得税の導入という問題は、拒否できないような時の流れになっているのではないかというふうに私は思うわけでありますが、なおこの問題についてはまた別途時間をとっていろいろ議論をしたい、こう思います。  そこで、次にお尋ねをしたいと思うのでありますが、附帯決議というものがこの委員会でも再三上げられております。この附帯決議の性格をどういうふうに理解をしたらよろしいのか、この点について、これまたきわめて初歩的な考えですが、ひとつお尋ねをしたいと思うのであります。
  41. 坊秀男

    ○坊国務大臣 委員会における附帯決議というものは、委員会においていろいろな政策について可決をしていただいた、私ども与党なり政府の方から申しますと可決をしていただいた、しかしながら、その内容についてなおいまだしのものがあり、まさにそのときの委員会におきまして、これを法律の上に実現していくということは、あるいはこれを実行する日時の問題とかいろいろなものがあってなお検討を要するといったようなものについて、当該委員会が将来においてこういうことをよく検討して、そして前向きにひとつ実現の方向を図ることを政府に要望せられるもの、これが私は附帯決議だ、かように考えております。
  42. 池端清一

    ○池端委員 私が申し上げたのは、たとえば昭和四十九年の七十二国会における本委員会におきまして「深夜労働に伴う割増賃金については、一定の非課税限度を設けることの是非について検討すべきである。」というこの附帯決議が全会一致で可決せられているわけであります。ところがその後も、昭和五十年の第七十五国会においてもまた同様な決議がされ、当時の大蔵大臣から、趣旨に沿って十分配慮したい、こういう答弁もなされているわけでございます。ところがその後具体的に、その趣旨に沿った十分な配慮というその配慮の姿が一向に出てこないわけであります。夜勤手当に対する課税問題については一体どういうふうになっているのか、その後の検討の経過についてお尋ねをしたいと思います。
  43. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいま池端委員のおっしゃいました附帯決議は、その次に一番早い機会税制調査会に御報告をいたしまして、税制調査会で御審議を願いました。その意味で一番新しくは昨年の五月に、衆議院は四月でございますが、衆参両院の大蔵委員会で「深夜労働に伴う割増賃金については、一定の非課税限度を設けることの是非について検討すべきである。」ということが附帯決議になっておりまして、同様に昨年の政府税制調査会にもこのような附帯決議が成立いたしておりますということを御報告いたしまして、賃金の項目につけ加えていただいているわけでありますが、結論といたしましては、この種の勤務の特殊性に基づく手当をその理由によって非課税とすることは税制上適当ではないという御意見政府税調としてはなっておりますので、私どもとして政府案には提案いたしておらないわけでございます。このことの是非につきましては当委員会でもずいぶん詳しい御議論がございました。なお御質問がございますればお答えを申し上げたいと思います。
  44. 池端清一

    ○池端委員 この種の手当を非課税にするのは勤務の特殊性から言って税制としては適当ではない、こういうことですか。
  45. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回の答申はやることだけをお書きいただいておりますので、正面切ってこの問題を取り上げていただいておりませんけれども税制調査会での御議論としましては、特殊な勤務に伴って支給される手当についてその勤務の特殊性のゆえにそれを非課税とすることは適当でないというような御議論が多数意見なわけでございます。それは深夜割り増し賃金のみならず危険手当でございますとか特殊作業手当でございますとか、そういうものすべてを資料として御吟味願った上で、少なくともただいまのところはそういう結論になっておると私は理解をいたしております。
  46. 池端清一

    ○池端委員 私が調べたところによりますと、これは間違っておったら指摘をしていただきたいと思うのでありますが、たとえば在外勤務手当というのはこれは課税対象になっておらない。非課税です。この在外の勤務という勤務の特殊性から考えてみて、これは課税にするのは適当ではないという結論でこれは非課税になっていると思うのであります。そういう立論からいきますと、夜勤手当を非課税にするという、そういうことは決して矛盾はしないと思うのであります。その点はいかがでしょうか。
  47. 大倉眞隆

    大倉政府委員 一般論としてお答えいたしましたので、個別に現在課税になっている手当があるではないかという点は御指摘のとおりでございます。たとえば通勤手当、これは政令で定める一定限度までは非課税でございます。それから旅費、これも非課税でございます。在勤手当も非課税でございますが、これは実は国外に居住する方に対しまして日本に住所地を残したままで国外勤務をしておられる方をどの程度無制限納税義務者として課税をするかということと深くかかわり合っている問題でございまして、無制限納税義務者として課税する場合に、現地の物価状況その他が国内における同様の居住なり生活なりというものに比較しての格差を埋めるためという趣旨で出てきておる在外勤務手当については、これを無制限納税義務者としてあえて課税対象に加える必要はあるまいというのが在外勤務手当を非課税にしている基本的な趣旨であると私は理解いたしておりまして、御指摘の、深夜割り増し賃金なり特殊作業手当なり危険手当なり、それらの作業あるいは勤務の特殊性にかんがみて特に割り増して賃金が払われている、それを特殊性のゆえに割り増し分を非課税にするという考え方は、やはり税ではなかなかなじまない、それは給与の体系の方で勝負すべき問題ではないかということを一般論として申し上げたわけでございます。
  48. 池端清一

    ○池端委員 どうも理解できないのですが、いろいろな御説明はありましたけれども、結局は在外勤務手当あるいは通勤手当、その他の問題についても、結局これはその手当の内容あるいは勤務の特殊性というようなことから非課税措置が講ぜられている、こう思うわけであります。  夜勤手当の問題でありますが、たとえば鉄鋼産業でもって溶鉱炉の火を燃やし続ける鉄鋼労働者あるいは深夜にわたって日本国土を縦断する国鉄労働者あるいはまた不慮の事態に備えて深夜勤務をする看護婦さんの皆さん方、これは国民生活上から、またわが国の経済運営上からも大変な任務をしょっておられる方であります。しかもこの勤務は大変な苦痛と肉体的な消耗を伴う、さらにまた深夜勤務でありますのでいろいろな出費もかさむ、こういうような性格のものであります。こういうような割り増し賃金についてすら課税をするというのは、これはきわめて過酷な措置であり、非人道的な措置、こういうふうに言わなければならないと思うのでありますが、重ねて見解をひとつお尋ねをしたいと思います。
  49. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは池端委員のようなお立場から再々当委員会で問題の提起があり、それゆえにこそ重ねて附帯決議がその是非について検討するということで付されているわけでございまして、問題が全くないというようなことを私申し上げておるつもりはございませんが、しかしそれを税制として受けとめることが適当であろうかという点に関しましては、やはり溶鉱炉の火を絶やすわけにいかないという勤務の特殊性はよくわかるつもりでございますが、しかしそれなるがゆえに割り増し賃金をもらった場合に、その部分所得税課税するのが適当でないということになるかどうか、それはやはり給与の特殊性に応じた給与体系の問題として勝負をしていただきたい。税制において勤務の特殊性、困難性あるいは不愉快性というものを持ち込み始めますと、それは何と申しましょうか、いわば切りがないという言葉、これはあるいは非常に適当でない言葉かもしれませんが、線の引きようがないのではないか。高所作業手当というものをどう考えたらいいかというようなことをいろいろと御議論いただいた上で、少なくとも現段階においてはこの種の特殊な勤務に伴って受ける特殊な手当について、これを税法上非課税とすることは必ずしも適当でないということになっておるわけでございます。  なお、先ほどの答弁を補足いたしますと、在外勤務手当も、在外勤務手当が国を離れているからかわいそうだということで非課税になっているわけではないわけでございまして、それは条文を十分御承知の上の御質問だと思いますが、国外に勤務して居住条件、生活環境その他が違っておって、それが物価換算で手当として支給されており、それをもらうことによって何も国内勤務に比べて得をしているわけではない、その部分だけが非課税になるわけでございまして、しかもそれは無制限納税義務者として課税される場合の問題でございますから、国内における特殊勤務手当とはかなりはっきりと一線を画し得るものだと私どもとしては考えております。
  50. 池端清一

    ○池端委員 第七十二国会において、当時の主税局長の答弁は、いろいろな名目で出されている手当を給与の中で税制上仕分けすると給与体系を混乱させる、そこで勤務に伴う収入については一切区分しないということで政府は一貫しておりますと、こういう答弁をしておるわけだ。ところが、先ほど局長も言われたように、通勤手当についても一定の限度はございますけれども課税になっている、あるいは在外勤務手当、旅費等についても非課税という措置が講ぜられている。その均衡からいって、その手当の性格、内容から見ても、やはり課税するにふさわしくないものは相当あると私は思うのであります。夜勤手当もそうでありますが、もう一つ、私は北海道出身だから言うのではありませんけれども、寒冷地手当に対する課税問題でございます。  私も長いこと北海道で地方公務員をしておりました。毎年この手当、いまは寒冷地手当という名称になっておりますが、これを支給されておったわけでありますが、いつも矛盾を感じておったわけであります。実際に支給される内容というものは、その年一冬越すだけの燃料代を十分賄い得るものではない。加えて課税をされておる。だからもう北海道内の国家公務員や地方公務員の皆さん方は、手当でなくて現物をひとつ支給してもらいたい、こういう要望すら非常に強いわけであります。現に、北海道内で六者協議会という会が結成されて、この寒冷地問題について毎年陳情しておるわけでありますが、これには国家公務員の出先機関の長等も含まれているわけであります。こういうように寒冷地手当に関する課税というものもきわめて不合理な制度ではないか、こう思うのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  51. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど御引用になりました当時の主税局長のお答えは、私もそのとおりに考えているわけでございます。したがいまして、一般論としましては給与の内容となっておりますいろいろな手当、それにつきましてそれぞれの特殊性を抜き出して課税、非課税を決めていくということでは、税としてはとうてい受けとめ切れない分野がたくさん出てくるであろうという考え方から、一般的にこれらの非課税の御要望に対しましては消極的な見解を常に申し上げておる。寒冷地手当もそうでございまするし、現に国家公務員の手当の体系の中にございます特殊作業手当もそうでございますし、あるいは勤務地によって異なっておりますいわゆる調整額というものにつきましても同様に考えておりますし、超過勤務手当もそうである。強いて申せば通勤手当というものだけが、これは手当という名前で、常識外れのというのは言葉が悪いかもしれませんが、混乱を起こすような金額の支給しようがない、なおかつ政令で限度があるから、それはできるのではないか。旅費は、それはある国の法制によりましては旅費を非課税としないで課税対象にしておいて、そのかわり鉄道の窓口で領収証をもらう、ホテルでも領収証をもらう、それを経費として申告してもらって差額があれば課税するというシステムもございますけれども、日本の場合は旅費は大原則として皆さん実費しかもらってないということで旅費として取り出して非課税にしておる、その辺が限度ではないかと申し上げるのが逆にいいのかもしれません。それ以上に各種の手当を、手当の特殊性のゆえに給与の中を仕分けをして課税給与と非課税給与をつくるということは、やはり私どもの立場から申せばどうも適当な措置だと思えないというふうに申し上げるしかないように思います。
  52. 池端清一

    ○池端委員 時間が刻々と迫っておりますので、この問題についてこれ以上申し上げることはきょうのところは差し控えたいと思いますが、私はやはり、局長はいろいろなことをおっしゃっておるけれども、たとえば寒冷地手当の問題についても、よく実情を御存じないのではないかという気がするわけです。そういう意味からも、この問題についてはいまの答弁では私は納得いたしません。これからも機会をとらえて局長とも十分ディスカッションをしてみたい、こう思っておりますので、その点を申し添えて次の問題に移ります。  最後は、国税職員の処遇改善の問題につきまして国税庁並びに人事院にお尋ねをしたいと思うのであります。  今回は、さきにも触れましたように三千億円の減税上積みという状況になりまして、画期的な措置がされたわけでありますが、このことは、一方では現場第一線で日夜御苦労願っている国税職員に対して大変な御苦労をおかけすることになるのではないか、こう思うわけであります。そこで、その作業量なり、その作業に投入する労働量といいますか、そういうものをどのように押さえておられるのか、ひとつ国税庁に対してお尋ねをしたいと思います。
  53. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおりに税務の執行につきましては専門的かつ非常に複雑困難な仕事でございまして、最近におきましてはさらに納税者の増加とか経済取引の広域、複雑化等による事務量の増加によりまして一層非常にむずかしい局面を迎えているわけであります。こういうふうな局面に対応いたしますために、国税庁におきましては、定員の地域間あるいは事務間の再配分、あるいはコンピューターによるところの事務処理の推進等いろいろな施策を講じまして事務の効率化あるいは合理化を図りますとともに、必要な定員を確保すべく努力をしてきているわけでございます。また税務職員の処遇につきましても税務職員の俸給表の改善、それからさらには、さらに格の高いポストの新増設等、上位等級定数の拡大等によりましてその改善に努めてきているところでございますけれども、今後とも関係方面の理解を得まして、相当いろいろと理解をしていただいておるわけでございますけれども、さらに必要な定員の確保あるいは処遇の改善というふうな点に努力をしてまいりたいと思っております。  先生御指摘のとおりに今回の追加減税の処理につきましては、事務量の面でいろいろとまた増加をする要因がございますけれども、現在のところどの程度それがふえるかということにつきましては仕組みそのものにも関係、かかわりがあることでございまして、正確にどの程度ということは現在のところまだわかっておりませんけれども、われわれといたしましてはできるだけ職員の負担がよけいな無理な負担にならないように十分配意をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  54. 池端清一

    ○池端委員 大変な御苦労をしていただいておるわけであります。本委員会におきましてもすでに国税職員の処遇改善についての決議がなされて、その結果ある程度の改善を見ておるということは私も承知をしておるわけでありますが、抜本的改善にはいまだなお道遠し、こういう状況ではなかろうか、こう思うのであります一たとえば昭和二十三年当時に税務特別手当として最高二五%支給されていたものが、その後俸給表の改正によって漸次低下をして、現在ではその格差は一〇・二九%、一〇・三%程度になっている、こういうような問題点があるやに承っております。その職務の複雑さあるいは困難性、そして専門性という見地に立って考えますならば、抜本的な給与改善がなされてしかるべきではないか、こう思うのでありますが、この点について人事院の御見解をひとつお尋ねしておきたいと思います。
  55. 藤野典三

    ○藤野説明員 お答え申し上げます。  税務職員につきましては、職務の重要性といいますか、困難性につきまして人事院といたしましても十分考慮しておりまして、いわゆる税務職俸給表という形で一般職に比べまして二、三号高い給与を早くもらうという形で優遇しておるところでございますが、先生いま御指摘のございました二五%程度の優位性が昭和二十三年当時あったのではないかということでございますが、これにつきましては、二十三年当時ある一時期、ある一部の号俸につきましてそういうことがあったところもございますが、これにつきましては、昭和二十六年当時、社会情勢の変化等もございまして警察官、刑務官等行政職員よりも有利な取り扱いをしていた職員が全部半減されておりまして、そういうような優位性というものはほかの俸給表にも現在ではついておらない状況になっております。  そこで、現在の俸給表でございますが、現在の俸給表につきましては、先ほど先生からお話がございましたように、制度的には、各号俸ごとに見ますと、これは必ずしも低下するようなことではございませんで、毎年改善をしておりますが、実は、年々税務職員の場合、職員がかなり上位等級にいっているという関係がございまして、かなり経験豊富な職員が多くなりました関係もございまして、上の等級に移っておりまして、特に水準差というのは、第一線で働きます働き手の、特に中堅層を中心にいたしまして処遇している関係で、上位等級にいきますと、行政職との関係等ございまして、若干どうしても少なくなってくるということがございます。したがいまして、そういう関係で年々少しずつ落ちるわけでございますが、先ほど来の本委員会の特別決議等の趣旨を踏まえまして、昨年、一昨年と幾らかでも前進させたわけでございます。そういう意味でございまして、上下を通じまして全く同じような優位性を今後とも確保することにつきましてはいろいろ無理がございます。先ほど来減税等のお話もございまして、さらにいろいろの問題があると思いますが、いずれにいたしましても自主的に、税務職員の処遇の改善につきましては今後関係省庁とも打ち合わせ、検討いたしたいと考えております。
  56. 池端清一

    ○池端委員 最後でございますが、昨年一月に人事院が発表いたしました資料によりますと、国税職員の年齢別構成は四十四歳から四十七歳までの間の職員が九千三百九十六人と全体の一九%を占めておる。四十八歳から五十一歳までの職員は七千五百七十二人とこれまた全体の一五・三%の数字を示している。まさにひしめく四十代、こういう状況であります。このように中高年齢の層が非常に多く占めておるという事情は、戦後の混乱期に日本の国家財政を何とか確立しようということでいろいろ御苦労願った。そこに多数採用されたという経緯によるものだというふうにも承知をしておるわけであります。私は、こういう中高年齢層の職員、しかも現在なお多くの人たちが調査官のままに放置をされておるということであれば、人事管理上あるいはまた職員の士気高揚の面から言ってもこれは大きな問題があるのではないかというふうに考えるわけであります。したがって、今日までいろいろな関係機関の御苦労、御努力によりまして、税務特別専門職の増員が図られてきておるわけでございますが、特別国税調査官なりあるいは特別国税徴収官等の特別専門職の増員というものに今後引き続き努力される。そういうふうにしていかなければならないと思うのでありますが、これについて国税庁の見解をお尋ねしたいと思います。
  57. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘のとおり、国税庁におきましては中高年層の比重がきわめて高いわけでございます。したがいまして、関係各方面の御協力、御理解も得まして、いわゆる特三等級以上格づけ可能ポスト、これは課長以上相当ポスト、こういう形になろうと思いますが、そういうポストの確保あるいは増加ということを年々関係各方面に御要望いたしまして、非常な御理解を得まして、逐次その増加を見ておるところでございますが、さらにわれわれも努力をいたしたいと思います。また同時に、そのポストにふさわしい等級別の定数というものが別に仕組みとしてあるわけでございますが、その等級別定数の確保という点につきましても、ひとつ今後とも関係方面の御理解を得まして、さらに努力を続けてまいりたい所存でございます。
  58. 池端清一

    ○池端委員 国税職員の処遇改善の問題については、ひとつ真剣に対処していただきたいということを申し添えまして、質問を終わります。
  59. 山下元利

    山下(元)委員長代理 午後一時二十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十四分開議
  60. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。大島弘君。
  61. 大島弘

    ○大島委員 去る十八日にこちらへ五人の参考人が集まりまして、私も質問いたしたのでございますけれども、本日の質問はそういう意味におきまして、その参考人の諸意見も加味しまして質問いたすことになると思いますので、若干十八日の質疑と重複する点もあるかもしれませんが、その点は御了承願いたいと思います。  大臣は二時にお立ちになるようでございますので、非常に大事なことを先にまずお伺いいたしたいと思うのございます。  過日も申しましたように、イギリス、アメリカ、ドイツというようなアングロサクソン系的な国々は、直接税を中心とした税制になっておる。ところがフランス、イタリアというようなラテン系は非常に軽々しく安易な、税金の取りやすい間接税中心に移行する傾向があるということを私は申し上げまして、小倉税制調査会長の意見を聞いたのでございますけれども、つぶさに聞いてみますと、最初のうちは税調会長は、大企業といえども、大法人といえども担税能力のあるのも多々あるというふうなアングロサクソン的な意見も申されたのですが、結局後ほどになりますと、どうやら間接税、流通税も含めましてそういうふうな方向に移行しないと、昭和五十五年までの赤字解消ということはとてもおぼつかないというふうなことになって、場合によっては付加価値税をもというふうなことも言っていました。西欧諸国では付加価値税は非常に成功しているというようなことを言っていましたが、ヨーロッパとわが国は事情が全然別だと私は思うのでございます。わが日本社会党はこういう安易な大衆課税ということをきわめて恐れるものであるわけでございますけれども、大臣として大企業は果たしてこれ以上担税能力がないのかどうか、また税制の方向として今後直接税中心主義で行くのか、現在までのところ  一応日本は直接税中心と言ってもいいのでございましょうけれども、あるいは逆に間接税をも今後大いにふやして税収を確保していくというふうな考え方なのか、ちょっとその点につきまして御意見を承りたいと思います。
  62. 坊秀男

    ○坊国務大臣 アングロサクソン系統が直接税を尊重ということで、アメリカとかイギリスだとか、そういったような国が直接税中心主義で行っておる、こういうお話でございますけれども、ヨーロッパの諸国は、フランスが間接税の一番の大もとでございましょうが、だんだんと感染といいますか、そういう方向へ傾いていっておるということは御承知のとおりだと思います。直接税は何と申しましてもアメリカが一番直接税を大もととして税を取っておる。日本のいまの税制というものは、シャウプさんが来られて、そして指導を受けて、その後ずいぶん直してはきておりますけれども、まだその形骸と申しますか、骨組みが残っておるということは御承知のとおりでございます。  今日日本もアメリカに次いで御承知のとおり直接税国だと私は思っております。直間の比率が七対三、大体そういうようなことになっておる。そこでこれを一体どういうふうな比率に持っていこうかというようなことも一つの問題でありましょうけれども、初めから直間の比率をどうしようというような行き方ではなしに、これはやはりそのときにおける経済情勢とかあるいは税に対する国民の感情だとか、そういったものが標準になりまして、直間というものをどうしていくかということが決められるものであろうと私は思います。  いま御質問の、日本の国の法人税において、大企業に対してこれ以上税をかけられないのかどうかといったようなことも考えなければならないことであります。私は法人税はやや西欧諸国の法人税と実効税率ですか、それが大体肩を並べるところまで来ておる、そういうようなことも考えられるのです。いま日本は各国に比べまして所得税は低いのですが、法人税はそういうようなことであります。  そこで、今度中期税制改正に当たりましては、直間比率をどうするこうする、私は初めからそんなことを考えるのじゃありませんけれども、あらゆる直接税、間接税、それから消費税、資産税といったようなものについて慎重に考えてもらう。そうしてそのときに一体どういう税がいいかということを慎重に考えて計画を立てるべきであるというようなことで、いつも申し上げて恐縮でございますけれども税制調査会で昨年六月あたりからそういったようなことで慎重に熱心に研究をしていただいておるということでございまして、いま直間をどうするとかあるいは一般消費税をどうするとか所得税をどうする、法人税をどうするというところまで考えが到達していないというのが率直なる現状でございます。
  63. 大島弘

    ○大島委員 付加価値税と申しますのは全国中小企業があくまでも反対する税だと思います、その税の記帳の煩わしさあるいは秘密の漏洩というような面につきまして。いまの大臣の御答弁では、いまのところ付加価値税の導入というのは考えておらない、こう解釈してよろしゅうございますか。
  64. 坊秀男

    ○坊国務大臣 これは、いま現在考えてないとは私は申しません。いま中期税制の研究をしてもらっておる、勉強してもらっておるという事態におきましてその中でこの税だけはやらないのだということを申し上げるのは適当ではない、さればと言ってそれでは付加価値税をやるかと言われましてもやるのだということも申し上げられません、いま検討の過程にある、こういうことだけ申し上げておきます。
  65. 大島弘

    ○大島委員 いずれにしましてもわが党は付加価値税というものはあくまでも反対し、広くは間接税、流通税の導入ということも原則的には反対しておりますことをひとつつけ加えます。  先ほど大臣はヨーロッパ諸国と日本の法人の実効税率はほぼ等しい、あるいは余り変わらないとおっしゃられたと思いますが、悪名高きこの措置法によってこれほど優遇されている大企業の実効税率とヨーロッパ諸国との実効税率は変わらないはずはあり得ない、私はその資料を見ておりませんから言えませんが、常識的にはまずあり得ないと思うわけでございますが、そういう資料は主税局当局にはございますでしょうか。
  66. 大倉眞隆

    大倉政府委員 当委員会での山田委員の御質問に応じまして、ちょっと日取りを忘れましたけれども租税特別措置を適用した結果の実効負担につきましては資料として御提出いたしてございます。
  67. 大島弘

    ○大島委員 大臣にもう一点だけ、大事なことでございますのでお伺いいたしたいと思います。  過日の参考人の意見におきまして私申し上げました無理論の租税特別措置法ないしは隠れたる補助金を与える租税特別措置法というのは原則として全廃して、これを毎年毎年国会でやれる、審議を受ける補助金に切りかえるべきだということを私は申し上げたわけでございます、実質的に同じでございますので。日本大学の北野教授はかねがね私もそういうことを考えていた、むしろこういうふうに隠れたる補助金を与えるのは議会制民主主義の冒涜である、こう申されたわけでございます。  一、二の例を申し上げますと、租税特別措置法には原子力発電工事償却準備金というようなものがございます。大臣も御承知のとおり和歌山県南部におきましては現在原発基地三カ所を関西電力が予定されておるわけでございます。そうして住民、漁民はまさに原発ということに恐れおののいているわけでございます。しかも諸外国においてもドイツやフランス、アメリカにおいてもこれの安全性というものはいまだかつて確証されない。いわんや和歌山の場合は、関西電力でございますけれども、関西電力は内部留保は恐らく日本でトップクラスの企業でございますが、こういう関西電力に、しかもまかり間違えば一発のもとに全人類が吹き飛んでしまうような原子力発電工事償却準備金という隠れたる補助金となぜするのか、なぜこれを毎年歳出予算として主計局段階において国会の議決を経ないのか。  私はたまたま原発の話だけしたので、ほかのものも全部大体同じでございます。新鉱床探鉱費の特別控除とか電子計算機買戻損失準備金とかいろいろございます、あるいは特別償却もございますが、こういうものは要するに補助金と一緒だからなぜ歳出の面で毎年毎年国会にかけないのか、このことにつきまして御意見を承りたいと思います。
  68. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先般日大の北野教授がそういうことをおっしゃったというのは私も報告を受けましたけれども一つの物の考え方であろうかとは思います。歳出で補助金に計上する場合には国会審議があり税法であれば審議がないというわけではもちろんない、その点重々御承知の上での御質問だと思いますが、期限が到来しない場合でも税法審議の過程で各特別措置の当否については十分御審議の機会があるわけでございますから、特殊な誘導政策を租税によって行うか歳出によって行うか、その点を含めまして当委員会で御審議をいただければ幸いでございます。
  69. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いまの御意見は非常に重大な御意見だと私思っております。そこで租税特別措置というものをこの際抜本的にやめるというか見直してしまって、必要のある場合は補助金でやれ、こういう御意見のように思いますけれども、これは本当に抜本的なんですよ。そこでいまここであなたに対しましてそれをやりますというお答えは私もいたしかねる。この租税特別措置というものにはいつも申し上げておりますとおり、いまおっしゃったような面としからざる面もあるということをよく御存じのことと思いますが、そういったようなことをよく内容を検討いたしまして一遍これを洗い直してしまうというようなことも私は一つ考えだと思います。と申しますことは、租税特別措置に一たん取り入れられますとそれにいつまでもかじりついておるという弊も私たちは決して軽々に見ておりません。そういうようなことも考えましてこれは中期税制にでも真剣にひとつ考えてそうして態度を決していきたい。いきなり全部を歳出の補助に立てかえるということにつきましてはここで承知いたしましたということは申し上げかねる次第でございます。
  70. 大島弘

    ○大島委員 大臣がそういうお考えを持っていただいたということは非常にありがたいと思います。先ほどの政府答弁におきましては措置法においても十分審議の余地があると言いますけれども、現にもうここに入れられてしまったら原発の問題なんか永久にこれは改正するまでは出てこないというのが実情だ。ところがこれを補助金として計上しますと毎年毎年議論対象になる、それがまさに議会制民主主義だというふうに私も思い北野教授もそう言っているわけでございますので、私はただいまの大臣の答弁にははなはだ満足しております。どうかひとつそういう線で議会制民主主義を冒涜するようなこの措置法を十分お考えになっていただきたいと思います。  それから次に措置法の関係でございますけれども、この前も参考人質問で私申し上げたのでございますが、過去十年間、四十三年から五十二年までの「租税特別措置による事項別減収額(平年度)累年比較」という表がございますが、措置法があることによってどれだけ税が減収するかという表でございます。この表によりますと合計額におきましてほとんど変わってない。四千億台からずっと、むしろ四十九年、五十年は五千億台になり、五十一年には四千九百億、五十二年度は四千四百四十億となって四十七年とほぼ一緒ぐらいになっているのでございますけれども、もし措置法が逐次、毎年毎年改正され、統合され、不要なものは廃止され、新規のものは認めないというのであるならば、この減収額はもう少し減ってしかるべきだ。ところが実際上はほとんど横ばい状況を保っているという、この理由はどういうところにあるのでございましょうか。
  71. 大倉眞隆

    大倉政府委員 特別措置につきまして、約十年前から、そういうことはほとんど問題にならなかった時期からスクラップ・アンド・ビルドということを言い出しまして、新しいものをつくるのであれば古いものはそれに見合ってやめていただきたいということを申し始めたその担当課長は私でございますが、それ以後それなりの努力を続けてきたつもりでございます。五十一年度以降はスクラップ・アンド・ビルドをさらに一歩踏み込んで、ネットで切り込むということで私どもなりの努力をいたしてまいったつもりでございます。何もしていないという御批判に対しては若干私どもとしては申し上げたいことがございますが、数字的に申し上げますと確かに絶対額は目に見えて減っておりませんが、それは背景にございます経済が伸びる、税収全体も伸びるということを背景にしておるわけでございまして、税収全体と租税特別措置による減収額との割合をごらんいただきますと、四十年度は六・九でございましたが、現在は四・六、これはグロスでございます。交際費課税の強化を含みますネットでは、四十年代は五・八、現在は二・四ということに比重を約半減いたしております。
  72. 大島弘

    ○大島委員 ただいまの大臣のようなお考えがもし実行に移されれば、これも大分変わってくると思います。  次の質問にまいります。同じく措置関係でございますけれども、今回の改正によりまして中小企業等海外市場開拓準備金というのが設けられまして、これは中小企業等という名前も書いたということでございますけれども、私ここで非常に疑問に思いますのは、中小企業といって考えておられるのは、いわゆる大企業に近い中小企業もあればあるいは本当の中小企業もある。しかし、その下にさらに零細企業中小企業とまでいかない零細企業、特に日本が圧倒的に多い。中小企業の割合は、日本は四〇%、アメリカは一八、西ドイツ一二というふうに圧倒的に多いんですけれども、私は、いわゆる中小企業とまではいかない零細企業を潤すようなこういう措置関係はまずまずここで見当たらないというふうに思います。ここで見当たるのは、大企業初め大企業に近いような中小企業、そういうものはある程度この措置法によって恵まれておりますけれども、そのいわゆる零細企業を恵むようなものがここに一体あるのかどうか、私はその点につきましてちょっと政府当局の御意見を伺いたいと思います。
  73. 大倉眞隆

    大倉政府委員 企業関係の特別措置によります五十二平年度の減収額は二千二百八十億円でございますが、そのうち大法人に該当します部分が一千二百八十億円、中小法人分が一千億円という推計をいたしております。  なお項目といたしましては、今回提案いたしております政府案の中で縮減をしないで延長をするというものは、企業関係は全部中小企業向けの措置でございます。零細企業を含む中小企業についての特別措置が項目としては非常に多いということは御承知のとおりでございます。
  74. 大島弘

    ○大島委員 私の質問は、その中小企業というのと零細企業というのは違うということで^零細企業は果たして潤っているかということの質問なんでございます。中小企業というのは非常に広い範囲で、その零細企業は日本は圧倒的に多い。店一店だけ構えて物を売っているというふうなこういうものが恵まれるような政策がほとんどここに盛り込まれてないということも、われわれこの措置法に対する非常な不満なんでございますが、その点はひとまずおきまして、政策優遇税制と非政策優遇税制を区別した資料が主税局から出されていますが、その区別の根拠は何ですか。
  75. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします前に、ないという御指摘でございましたので、項目を列挙させていただきます。もっぱら中小企業関係と私ども考えております項目を逐次申し上げます。  中小小売商業用店舗の特別償却、中小企業者の公害防止施設の特例、中小企業者等の機械の特別償却、中小企業構造改善計画策定に伴う特別措置、繊維工業構造改善計画策定に伴う特別措置、中小漁業構造改善計画に伴う特別措置中小企業構造改善等事業用共同施設の特別償却、中小企業事業転換対策臨時措置法に伴う特別措置中小企業近代化促進法に伴う特別措置中小企業構造改善準備金の特別措置、下請中小企業振興準備金、伝統的工芸品産業振興準備金、中小企業等海外市場開拓準備金、中小企業の貸倒引当金の特例、農業協同組合等の留保所得の特別控除。清算所得にかかわる課税の特例といたしましては、関連法を援用いたしまして特別措置を講じておりますものは、中小企業近代化促進法、中小企業事業転換対策臨時措置法、農業協同組合合併助成法、森林組合合併助成法、漁業再建特別措置法、漁業協同組合合併助成法、卸売市場法その他がございます。なお、新しいものといたしまして、事業転換法が入っているわけでございます。  後段の御質問でございますが、政策税制と政策税制以外の仕分けにつきましては、一昨年の八月以来約半年をかけまして税制調査会で御審議をいただいて区分けをしていただいたわけでございますが、引用さしていただきますと、「特定の政策目的に資するという租税政策上の配慮がなかったとすれば、税負担の公平その他の税制の基本的原則からは認め難いと考えられる実質的な意味での特別措置」それを政策税制として一括する。「それ以外の制度、すなわち、政策税制とは異なり税制の基本的原則からみて所得税法法人税法等の本法に規定されて然るべき制度及び現在のところ租税特別措置法に規定されているもののいずれは本法に吸収されて然るべきであると考えられる制度」、それらをその他の税制として分類されたわけでございます。
  76. 大島弘

    ○大島委員 第一のいまあなたがるる挙げられた中小企業対策はいろいろ講じられていますけれども、私の言うのは、そういう恵まれた中小企業ではなくて、中小企業の中の零細企業にどれほど恩典を与えているかという質問なんでございます。その点、ちょっと質問の趣旨がかみ合わないきらいがあるので、この点はこれでおきます。  そうしますと、非政策税制と言いますと、たとえば貸倒引当金あるいは価格変動準備金などは、これは非政策税制に入っているわけですか。
  77. 大倉眞隆

    大倉政府委員 貸倒引当金は政策税制以外のものとして分類されております。ただ、御承知のように政策税制以外のものとして分類されている引当金につきましても、その繰入率が適当であるかどうかは随時吟味をすべきものとされております。価格変動準備金は政策税制の方に分類されております。
  78. 大島弘

    ○大島委員 過日もお話しいたしましたが、ここに政策税制以外のものとして貸倒引当金というのが見えているのですが、たとえば銀行の貸倒引当金、これが今度改正になりましたが、これの実際の貸倒率はどのくらいの程度のものですか。
  79. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先般貸倒率についてはお答えいたしましたので、本日は実額でお答えいたします。  全銀協、相銀協等の資料によりますと、五十年度の都市銀行の貸倒引当金の残高は七千五百九十  一億円、五十年度の貸出金償却額は三十億円でございます。同様に地方銀行は三千六百三億円と二十億円、相互銀行は一千七百四十七億円と二十八億円、信用金庫は二千百四十二億円と五十六億円と相なっております。     〔委員長退席、野田(毅)委員長代理着席〕
  80. 大島弘

    ○大島委員 そうしますと、都銀におきましては、七千五百九十億円の残高に対して実際生じた貸し倒れは三十億円、こういうわけでございますか。そうしますと、この率はどのくらいになるのでしょうか。率にしますと実際の貸し倒れは微々たるものでございますね。
  81. 大倉眞隆

    大倉政府委員 率で申し上げますと、これは上下に分かれた数字になっておりますが、下期で都市銀行が千分の〇・〇三、信託銀行が千分の〇・〇四、地方銀行が〇・〇五、相互銀行は〇・一二、信用金庫は〇・三五でございます。
  82. 大島弘

    ○大島委員 そうしますと、現行の貸倒引当金の引当率は、これはもう明らかに政策税制といってしかるべきものだと私は思うのでございますけれども、これが政策税制以外のもの、こう書いていますのはちょっと私は理解しがたいものでございます。恐らく単位が違う、けたが違うというふうなものを銀行に多額の恩典を与えている、こういうふうにわれわれは解釈せざるを得ません。  そこで、現在中小企業等に対しては生殺与奪の権を持っている銀行、この銀行でございますけれども、税制面でもそのような優遇を受けている。しかも比較的経営は一般の事業に比べて安易な、安定した経営をやっている、そういう意味で民衆、大衆サービスというのは当然あってしかるべきものでございますけれども、歩積み両建ての問題はたびたび論議されておりますので、そのことについては私はいまここで申し上げる予定はございませんが、本日申し上げたいのは、特に虎の門というところは非常に都銀その他信託銀行等が集まっているところでございまして、特にここに政府関係の外郭団体が多数たむろしている、そういう政府の外郭団体に対して特別の金利、特利を与える、これがいわゆる虎の門金利ということ、この金利を銀行からもらうということは、あるいは会費というような名目であれ、あるいは寄付金というような名目であれ、名目は違いますけれども、そういう事態があるやに——これは虎の門金利という名前があるわけですから、そういう事態もあるとは思うのでございます。そういうことにつきまして銀行局はどういうふうな指導をやっておるか。また毎年毎年銀行検査がありますが、そういう事態が出てきたことがないかどうか、ちょっと御答弁願いたいと思います。
  83. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 いかなる名目でございましても、いまの受け入れました預金なり信託額に対応いたしまして特別な利益を提供するという問題は私ども常に関心を持っております。ただ個々のケースはいろいろなケースがございますので、たとえば、寄付というようなことをいたしました場合に、それが社会常識的になるほどなと思われる範囲のものかどうか、あるいはその寄付なり特別な金を払っておりますのが、預金額とかあるいは信託の受け入れ額とかということに比例しておるかどうか等々、個別ケースに即して考えなければならないと思っております。いっとき先生の御指摘のように虎の門金利というようなことが言われておりまして、私ども検査その他の都度にその是正を指導いたしたことがございますが、最近の時点におきましては、こういう特利というようなことにつきまして検査で何か発見をされて指摘したということはございません。ただ私どもこれからもやはりこういう点につきまして、銀行行政上関心を持って注目をいたしまして、過当なものは是正をするように指導いたしてまいりたい、こう考えております。
  84. 大島弘

    ○大島委員 私がなぜこういうことを申し上げるかと申しますと、銀行は貸す方ですからこわいものはない。銀行のこわいというのは要するに政府並びにその政府の外郭団体だ。これはやはり銀行もこわい。そういうことで、政府の外郭団体の要求されるままにそういう特利を払ったりあるいは寄付金を強要されたりする、そういうふうなことを私は非常に心配をしているわけでございます。たとえばある銀行が一千万円の寄付を外郭団体にする、その身がわりとして外郭団体から十億の信託をもらうというようなこと、こういうようなことがあった場合には銀行局としてはどういうふうな指導をされますか。
  85. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 どういうふうな場合にその一千万の寄付が行われたかでございますが、たとえばいま先生のおっしゃいますように十億の信託をしてもらうから、あるいは十億の預金をしてもらうから何千万払う、こういうような形でやりますのはやはり問題があろうかと思います。ただ寄付の中には指定寄付金などに指定されておりまして、税制上認められているというようなものもございますが、そういうものはやはり私ども、よほど過当なものでない限り問題とすることはないのではないか、こう考えております。それから特に信託の場合には、預金の場合と違いまして御承知のように金利調整法その他の金利規制はございませんから、むしろ受益者の平等の原則というような点から、やはり秩序の問題として問題となることであろうかと思います。  ただ先生がおっしゃいました十億と一千万、こういうことだけでにわかにこれがいわゆる特利に当たるとか、あるいはこれは問題のないものだとかいうことを断定的に申し上げることはなかなかむずかしいと思います。やはりそのケースに即して判断をいたしたいと思っております。
  86. 大島弘

    ○大島委員 それであるならば、ここでひとつ、興長銀、都銀あるいは信託銀行だけで結構ですが、過去三年間ぐらいにおいて、政府の外郭団体、その孫団体、子団体も含むが、そういうものに対して百万円以上の寄付をしたという資料は当委員会に提出できますか。
  87. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 どういう範囲のものがどう当たりますか、ちょっと私いまにわかに判断はできませんので、それを検討さしていただきたいと思います。その上で御説明をさしていただきたいと思います。
  88. 大島弘

    ○大島委員 これは私ぜひこの資料をいただきたいと思います。細かいものはいいとして、仮に百万円ぐらいで、対象政府関係機関、特に通産、厚生あたりが非常に多いように承っておりますが、通産、厚生あたりの政府関係機関並びにその政府関係機関の子機関あるいは孫機関、そういうところまで含めて、ひとつぜひこの資料を出していただきたいと思います。これはまた別途打ち合わせても結構だと思います。  次に、当委員会で問題になったことも余りない税法関連といたしまして、査察制度につきましてちょっとお伺いいたします。  最近の査察件数並びに査察実績というものを国税庁の方から簡単に報告してもらいたいと思います。
  89. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  最近三年間の査察実績でございますが、四十八年度着手件数二百十件でございます。四十九年度が二百五件、五十年度が二百六件ということでございます。告発をいたしました件数は四十八年度が百二十七件、四十九年度が百二十六件、五十年度が百四十七件、こういうことになっております。
  90. 大島弘

    ○大島委員 戦前は間接国税しか大体犯則はなくて、戦後アメリカ的に直接国税にも犯則を取り入れる、詐欺その他不正の行為により租税を逋脱した者は云々ということになって、これは刑事事犯とするということでございますけれども、当時の考え方として、脱税に刑事罰を科するのはどうだろうか、むしろ脱税したものは重加算税でぎゅうぎゅう苦しめて税金を取った方がずっといいじゃないかというふうな意見も戦争直後でございましたけれどもありました。現在、国税庁に対しては、査察制度、刑事告発制度というものをあくまで続けられるおつもりなのか。それともこれを廃止して重加算税、その他懲罰税でぐんぐん取るというのとどちらがいいのか、その点についてちょっと御意見を承りたい。
  91. 山内宏

    ○山内政府委員 制度の問題でございますので、主税局の方からお答えいたしますが、御指摘のように、租税制度申しますのは非常に大量かつ回帰的な処分を当然必要といたしますので、そういう意味から申しましても、問題が起こった都度直ちにその罰則に訴えるというのではなくて、いま御指摘のように、重加算税も含めましたところの加算税制度で行政上の処分を行うということが中心にならざるを得ないとは思いますけれども、同時に、たとえば詐欺あるいは不正な行為で非常に事柄の反社会性、反道徳性が著しく高いというものにつきましては、やはりそれと並行いたしまして刑罰ないしは犯則取り締まり制度によって担保しておく制度を維持していくということは非常に必要なことであろうと思いますので、私どもといたしましては、これを廃止することは適当でないというふうに考えておる次第であります。
  92. 大島弘

    ○大島委員 まあ、そうだろうと思いますが、それにしてはやはりこの取り扱いについては非常に慎重にしてもらいたいということを特に国税庁の方に要望するわけです。  といいますのは、一たん査察がかかれば新聞に発表される、公職は一切辞退しなければならない。いままで営々として築いた基礎は一挙にして失われる。こういう被疑者に対しましては致命的なものであるので、その取り扱いは厳に慎重でなくちゃならないと思います。しかるにかかわらず、ある地方国税局におきましては、本勘定から実在の人間に謝礼したい、二億五千万ほど出した。すべてこれは会社の本勘定を通っている。相手が実在の人間だ。たとえて言えば、ある中小企業経営者がわしはこの役者が好きだからこの役者にやろうと言って会社の本勘定から出して、その役者は役者で個人申告をするということと同じことだと思うので、むしろ国としては超過累進税率所得税で納めてもらった方がずっと得なんでございますが、そういう本勘定を通じて実在の相手方に支払ったという事例を現に告発し、しかもその事業主がすべてを失って現在悶々として裁判を仰いでいるわけでございますが、こういう事案についてどう思いますか。
  93. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  査察調査に当たりましては、国税犯則取締法の定める手続に従いまして、嫌疑内容というものを十分に把握した上で検察当局とも協議をいたしまして、告発の要否を決定しておりまして、先生ただいまお話しのように、非常に慎重な手続でこれを行っているところでございます。  御指摘の問題につきましては、目下刑事公判中の個別事件の事実認定にかかる問題だという感じもいたしますが、個別の内容に立ち入ってお答えすることは適当でないと思いますけれども一般論として申しますと、たとえば本勘定から実在の人物に金がいった。こういう事実がございましても、その支払いの事実関係とかあるいは支払いの目的あるいは趣旨というものを十分調査いたしまして、またそれに関連する証拠資料も十分念査をし、本当の真実の実態というものを把握した上で、その主張の当否を判断するというのがわれわれのたてまえでございます。いずれにいたしましても、本件は目下公判中の事件であるようでございますが、われわれといたしましては公判の推移を見守っていきたいというふうに考えておるところでございます。
  94. 大島弘

    ○大島委員 それはすこぶるおかしいので、普通租税逋脱犯といいますと、売り上げ除外、架空仕入れ、売り上げを除外して別途預金に留保する、あるいは架空仕入れをして別途預金で留保する、あるいは在庫調整をする。要するに税務署国税局の目をくらます、これは私は詐欺不正の行為だと思うが、だれが見てもわかる本勘定から実在の相手方に出した、それが査察だということになると、うっかり危なくて寄付もできない、何もかもできないということになる。その点はどうですか。
  95. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  本勘定から実在の人物に金が出たという、確かに形式的には、表面的にはそういう形をとっている場合でございましても、実際のその趣旨あるいは金のその後の流れ、あるいは当事者間のいろいろなやりとりというふうな問題を十分われわれも念査をいたしまして、実態を把握いたしまして、納税者の主張というものが本当にその実態に即した主張であるかどうか、あるいはその形式をとっているけれども、その形式が本当の実態はどういう実態なのかということを十分われわれとしては調べるわけでございます。その真実の実態というものをわれわれは判断をいたしまして、その上でその処理を決めておるというのが現在のわれわれのやり方でございます。
  96. 大島弘

    ○大島委員 私もいま個別事案を云々しようと思わないのですが、要するに、先ほど言いましたように、査察を受けるということは、その納税者にとって致命的なことなんで、その執行に当たっては念には念を入れてやっていただきたいということを私はここで申し上げておきます。  最近査察では新聞発表しておるのですか。
  97. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  査察の事件については新聞発表はいたしておりません。
  98. 大島弘

    ○大島委員 それでは最後に所得税関係に移りたいと思います。  給与所得控除、この点だけについて一つ伺いたいと思います。  現在給与所得控除を認められておるわけでございますけれども、いわゆる勤労所得と事業所得、この区別についてどちらがより多く控除さるべきだと思われますか。と申しますのは、勤労所得、いわゆる勤労者ですから、その人が死ねば何も残らない。事業所得というのは具体的に言えば資産所得プラス勤労所得で、勤労がなくなっても資産は残るという事業所得、これとの控除率というか必要経費率というか、御存じのとおりアメリカではこれは区別してないので、だからシャウプ税制のときにはあれほど渋い所得控除しかならなかった。最近はだんだん若干でもよくなったけれども、そういう意味におきまして、勤労所得と事業所得の控除率ということについてどういうふうに考えておられますか。
  99. 山内宏

    ○山内政府委員 事業所得につきましては、御承知のとおり、その収入を得るために必要な経費を控除するということに相なっております。それに対応いたしまして、いかに給与所得の場合に横並びに見ましてバランスのとれた控除を行っていくかというのが常に古くして新しい所得税の根本問題の一つであろうかというふうに考えます。現在わが国の制度といたしましては、そこを給与所得控除という制度でカバーをいたしておるわけでございますが、給与所得控除の性格といたしましては、われわれはまず第一には給与を得るための経費の概算的な控除、これを中心的なものに据えておりますが、そのほかに、いまお触れになりました問題に関連をするかと思いますけれども給与所得者、給与所得というものの本来的な性格、いわばその勤労に裏打ちをされた勤労性所得であるという意味合いも含めまして、給与所得の担税力をしんしゃくいたしまして、本来の経費の概算控除だけでは説明し切れない程度の大きな金額を給与所得控除として引いておるというのが現在のわが国の制度であろうかというふうに考えております。
  100. 大島弘

    ○大島委員 課税最低限度も大分上がってきまして、このごろ大体給与所得控除の第三分類、三百万から六百万クラス、これが非常に多くなってきた。これに対して給与所得控除率は二〇%ということになっております。先ほど言いましたように、アメリカ的な考えをとれば別ですけれども、ドイツ的な考えをとって、事業所得よりも勤労所得の方が控除率は多かるべきだという考え方に立脚すれば、私は理論としてはまさに正当だと思うんです。そういう点につきまして、三百万から六百万、この台の二〇%というのは、事業所得に比べて低過ぎやしないかどうかということを伺いたい。給与所得控除控除率が一般の事業所得に比べて低過ぎやしないか。これは感じだけでも結構。
  101. 山内宏

    ○山内政府委員 事業所得の場合は、委員承知のとおり、業種の性格によっても控除する率がそれぞれ違ってまいろうと思います。先ほど申しましたように、それの収入を得るために必要な経費を引くということでございますので、たとえば仕入れを控除する、それから仕入れ以外に諸経費を控除するということに相なります。それはそれぞれ業種なり、あるいは同じ業種でありましても企業によって違うわけでございますので、そういう意味合いで、一概に事業所得の標準的な控除割合というのはどのくらいかというものは出てまいらないと思います。  それに対しまして給与所得の場合で申しますと、これはきちっと正確に経費を一々差し引くというたてまえに立ちまするならば、やはり人によって、あるいは従事をする業種によりまして、いろいろ違ってこようと思うわけでございますが、その前提といたしましては、まずしからば給与所得の場合に何を経費と考えるかという、非常に大きなむずかしい問題がございます。わが国の場合は、直接そういう問題を給与所得控除の金額の中に取り込むということをいたしませんで、先ほども申しておりますように、給与所得の性格の弱さもあわせ含めて考えまして、給与所得控除ということで控除をしております。三百万で申しますと控除割合は三五%になっております。
  102. 大島弘

    ○大島委員 最後に、超過累進税率につきまして、日本の現在の超過累進税率とアメリカのような極端な高額所得者に対する九一%の超過累進税率、こういうふうな方向へ行こうという考えはないですか。
  103. 山内宏

    ○山内政府委員 現在のわが国の超過累進の度合いとアメリカの場合とを比較をいたしてみますと、政府が提案をいたしております所得税法改正案がお認め願えました暁には、三千九百九十二万円のところでクロスをいたします。その三千九百九十二万円以下のところでございますと、日本の場合の方が安い。いまの金額を超えますと、日本の所得者の場合はアメリカの所得者に比べてかなり税額が高くなる。そういう形で、日本の場合の方がアメリカよりも原則といたしまして超過累進のカーブはきつくなっております。  このきついカーブをさらに一層きつくしなければならぬかどうかというお尋ねであろうかと思いますけれども、アメリカのみにかかわりませず、他の、たとえば西ドイツなんかに比べても、一層わが国の場合の超過累進のカーブはきつくなっておりますので、そういうふうな点もあわせ考えまするならば、いまこの段階で、われわれといたしましては、わが国のカーブをさらに一層きつくしなければならぬというふうには考えておりません。
  104. 大島弘

    ○大島委員 最後に、政務次官にお伺いいたします。  締めくくりでございますけれども、フランス的なあるいは間接税というのはいとも簡単な税、いわゆる一番取りやすい税で、流通税も含めまして、今回の当大蔵委員会におきましても印紙税あるいは登録免許税も出ましたけれども、これも広い意味において間接税的な意味と解釈して、わが党はこれに対してあくまでも反対をとっているわけでございます。大衆に転嫁されるということ、これがこわいということでございますが、今後の税制の行き方として、どうかひとつ取れるところから、取りやすいということだけでなくて、応能分担、取れるところから取るということ、あくまでもいわゆる直接税中心主義であって、しかもいま優遇されている不公正税制、世界に名高い不公正税制で大企業が優遇されている、こういうものをとにかく何とかしてでも改正して、公正な税に戻したいというのが、実はわれわれの考えでございます。  この際、安易な間接税を導入したり、極端な場合には付加価値税を導入するというようなことが万が一でもあれば、これは恐らく自民党自体が私は破滅するんじゃなかろうかと思うわけでございますが、政務次官のひとつお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  105. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 大島委員よく御存じのように、ただいま昭和五十二年度におきましては、直間比率は、直接税七〇%に対しまして間接税三〇%というような形になっておりますが、昭和三十年度で見ますと、直接税が五一・四%、間接税が四八・六%というような形になっておりまして、それから見ますと、二十年くらいの間に間接税の比率がずっと下がってきておるわけであります。こういうことから見まして、直接税中心主義とか間接税中心主義とかということではなくて、税制上から申しますと、それぞれの税の実態、これが一番ベストではないかというところを積み上げた結果が、いまのところ七〇対三〇という形になっておるのではなかろうか、このように思うわけでございます。  なお、今後の財政収支見通しにつきまして、いろいろと先ほど大臣も申し上げておるところでございますけれども、いずれにいたしましても、今後ある程度の税ないし税外負担の増加をお願いしないことには、これはなかなか赤字財政から脱却できないのではなかろうかというようなことも考えられておるところでございます。したがいまして、そうした中で、長期的な検討課題の中に一般的な消費税というものを考えてはどうかというような検討がされておることは、御承知のとおりでございます。ただ、いま直ちにそれが付加価値税という形で実現されるかどうかということになれば、日本の国情等十分考えながら、慎重にこれは十分検討した上でないとなかなかできないものであるということも、私ども十分承知しているところでございます。これらを踏まえまして、今後十分勉強してまいりたいと思っておる次第であります。
  106. 大島弘

    ○大島委員 時間が参りましたので終わりますが、政務次官勉強される意味におきましては、なるべくフランス的にならずにアメリカ的になってもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  107. 野田毅

    ○野田(毅)委員長代理 宮地正介君。
  108. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵省は、この三日の予算委員会に、五十二年度予算案を起点とした五十五年度までの財政収支試算を提出いたしました。これを見ますと、昨年の試算と同様に赤字国債発行ゼロ、健全財政への復帰の目標を五十五年度に置いているわけでございますが、具体的方途についてまず伺いたいと思います。
  109. 山内宏

    ○山内政府委員 御指摘のとおり、今回提出をいたしました財政収支試算の中の税収は、五十五年度において三十五兆五千八百億円、この中身は一般会計税収のほかにいわゆる専売納付金が入ってございます。この金額は、前回の五十一年二月に提出をいたしました当初の財政収支試算の金額と、五十五年度においては同じでございます。  しからば、その五十一年における財政収支試算の最後の税収の数字、これをどういうふうにして計算したかと申しますと、これは昭和四十八年度から五十年度までの平均の租税負担率、その租税負担率の中には、先ほど申しました専売納付金も入ってございますが、それも含めたところの負担率、これが平均で二二・七%になってございますが、これを五十五年度には三ポイント程度上げる必要がある。その必要があるということは、その前提といたしまして五十年代前期経済計画に考えておりますもろもろの財政需要を充足しました上で、いま申しましたような税収を確保いたしまするならば五十五年度において赤字公債に依存しなくても済む財政が確立できる、そういう目標を置いた結果の差額として出てまいりました数字でございます。  そういう意味合いで、五十五年度時におきまする三十五兆五千億余りの数字は今回の財政収支試算においても動かしておりません。前回に比べまして今回は、それ以後五十二年度予算を政府として御提案いたしておりますので、それによって新しく数字が決まりました分について数字を入れ直して、それから五十五年度までの間にGNPの伸び方に応じまして同じ率で毎年伸びていったとするならばどういうかっこうの数字になるかというのを年次別の内訳表として添付いたしましたものを提出いたした次第でございます。
  110. 宮地正介

    ○宮地委員 要するに、五十五年度に赤字国債の発行をゼロにする、ここが私たち国民から見ますと非常に重大な問題であります。赤字国債ゼロをこれから三カ年間でやるわけであります。現実にいまの財政需要を見ておりますと、これは大変に厳しい状況にあるわけでございまして、当然そうなればまず現行の税制の洗い直し、あるいは新税の創設ということが検討されてくるわけであります。そういう点についていま具体的方途というのは考えておられるのかどうか、政務次官、できたらちょっと……、大事な問題ですから。
  111. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 ただいま御指摘のように、昭和五十五年までの財政収支試算というものの中におきまして、五十五年度においては三十五兆五千八百億という税収を確保しないと、この間五年間ずっと、実質今年から三年でありますが、段階的に税収を二〇・九%伸ばしていかなければ必要な財政支出を賄えない。こういうことで、したがいまして、先ほど申し上げましたが、税収におきましては、税及び税外負担といたしまして対国民所得比で三%程度負担の増加をお願いせざるを得ないのではなかろうか、こういうことを試算いたしておるわけであります。  ただ、この試算に対応するところの税収を一体どこからどのような形で確保するかということにつきましては、いわゆる中期税制の問題として検討をいたしておるところでございますが、これは税制調査会等で十分御検討いただいた上で決定をしてまいることでございますので、いまここで、それでは具体的にどの税を幾らどのように考えているかということにつきましては、残念ながらまだ申し上げられる段階ではないということでございます。
  112. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、いま政務次官も五十五年度までに国民の租税負担率を三%引き上げる、こういうふうにお話しになっているわけでございまして、具体的にその三%の中身についてはいままだ申し上げるわけにはいきません、これでは大蔵当局としては大変国民に無責任であろうと私は思うのであります。  なぜならば、前回のこの大蔵委員会におきまして、小倉税調会長からも、すでに今後の新税の導入については付加価値税を検討するような発言もございました。これはまさに現在の日本の経済情勢を見たときには、大衆課税を増税し、国民生活を圧迫するものとして私たちは断固反対をしているわけであります。  また、さらに本二十二日に坊大蔵大臣から当委員会におきまして、物品税の廃止、それにかわるいわゆる一般消費税、すなわち付加価値税の導入を示唆するような発言もあったわけであります。私たちは、そういうように国民に背を向けるような大衆課税はいまやるべきではない。いまやるべきことは、まず国民の皆さんが熱望しております不公平税制の是正をやることが急務であります。そういうようなことからして、この一連の大蔵関係の発言というものはまた大変国民を裏切るものとして私たちはまことに不満でございます。そういう発言がありながら、いま政務次官から何か国民にあいまいもことするような御答弁があったことは大変に残念に思うわけでございますが、もう一度その点について具体的に御答弁いただきたいと思うのであります。
  113. 山内宏

    ○山内政府委員 やや事務的な問題もございますので、まず私から御説明をさせていただきます。  先ほど政務次官がおっしゃいましたように、御指摘の問題は今後当分の間の税制の最も中心的な命題であろうかと思います。その命題を一体いかに受けとめておるのかということでございますが、この点につきましてはすでに再々当委員会でも御説明申し上げておりますように、昨年の夏以降、税制調査会を中心といたしまして、かなり密度の高い御審議をお願いいたしております。  その前提といたしましては、ただいま御指摘に相なりました財政収支試算の五十一年版とか、あるいはそれのもとになりますところの五十年代前期経済計画とか、そういった今後五年間程度見通せる指標を手がかりといたしまして、それに対して税制として一体どんなような受けとめ方をしていくべきかという御議論でございました。その御議論の中身につきましては、なお結論を得ておる段階ではございませんで、十二月の初めに、第一部会、第二部会のそれぞれの部会長から税制調査会の総会に対して中間報告が行われたという段階でございます。  その中間報告の中身あるいはそれに至りますまでの経過につきましては、先般当委員会において資料として税制調査会の報告書を御提出申し上げましたので、その中に細かくは出ておりますけれども、ごく大ざっぱに申し上げますならば、この五十五年度までの間に何らかの時期に何らかの形でやはり増税をお願いせざるを得ないであろうということが大勢でございます。その中で、できますることならば所得課税を中心とした負担の増加をお願いできないものであろうかというのが一方からの問題へのアプローチでございますし、他方のサイドからの問題のアプローチは、現在の個別物品税を中心とした間接税制度に対して何らかの形で一層の負担率加重をお願いする方法がなかろうかということでございました。その両側から、といいますのは、いわば第一部会と第二部会と別々にという意味でございますが、そういう両側から議論を進めていただいて一応出てまいっておりますのが先ほど申しました報告でございます。
  114. 宮地正介

    ○宮地委員 すなわち、新税の創設あるいは現行の税制の洗い直しの両面からこの三%の租税負担率の増税、こういうことを考えておる、そういうふうに受けとめることができると思うのであります。そういう点で私たちは新税については、たとえば土地の増価税とか富裕税、こういうものを考えておるわけでありますが、どうも大蔵当局はそれには反対のようであります。そして言葉の変質過程の中において徐々にこの付加価値税というものを国民に押しつける、そういうような動きがこの三月に入って、税調の会長の発言あるいは大蔵大臣の発言などを見ておりますと、どうもそういうところに方向性を持っていっているような感じを受けるわけであります。今回の一兆円減税の問題も国民の注目の的でありましたように、これからの税制というものについては、何をさておいてもまず国民本位の不公平税制を解消していく、これが最も重大な問題であり、そして新しい低経済成長の中における今後の税制のあるべき姿としては、やはり富める強者には応分の負担を求め、また貧しき弱者と言われる方には配分をするという福祉型の税制にしていかなくてはならない、こう私たちは主張しているわけでございます。  そういう点から見て、どうもいまの審議官お話はあいまいもことして国民には、一体何を考えているのか、こういう疑問がわくわけでございます。その点についての基本的方向性、こういうものについてもう少しお話を伺いたいと思うのであります。
  115. 山内宏

    ○山内政府委員 いま御指摘の土地増価税なり富裕税なり、こういったものももちろん審議の対象に含めて考えております。第二部会、いわゆる間接税を中心とした部会でございますが、その第二部会におきまして、友末部会長の発案によって既存の間接諸税を一応洗い直した後で、これだけでは余り大きな負担をお願いできるような状態にはないので、別途現在までに諸方面で言われておるような新税あるいは増税の構想について少し勉強してみたらどうかという御指摘がございまして、それに基づいて御議論願いましたいわゆる新税の項目の中には、いま御指摘の土地増価税なり富裕税なりも当然入っております。ただそのほかに、いまお話のありましたようなEC型の付加価値税を含めましてもろもろの一般消費税も、これはやはり世間一般で議題になっておるという意味で項目として取り上げて御議論いただいております。そのほかに、やや個別的、特殊的なものといたしましてギャンブル税でありますとか広告課税でありますとか、そういったものもあわせて取り上げたわけでございます。  ただ、先ほどからしゃべり方が非常に茫漠としておるという御指摘でございますが、まさに私どもの頭の整理もまだその程度段階でございまして、これ以後むしろ精力的に、そういったいろいろな間接諸税の中で一体どういうものがわが国の社会、経済の上において一般消費税としてふさわしいのか、成り立つのか、あるいはなかなか成り立たないものであるのか、その辺も含めましたところがすべて今後の検討課題ということにわれわれは考えております。  いずれにいたしましても、いま申しましたような財政収支試算に暗示いたしますような経済状態あるいは財政状態を頭に置きました場合は、何らかの形で現在の租税制度というものを見直してまいらなければならぬと思いますが、それの中核が、果たして所得課税の方で受け持つのか、あるいは間接一般消費税の方で受け持つのか、あるいは両者それぞれある程度の分担によって受け持っていくのか、こういったことは、これは私ども役人ではなくて納税者全部の方々の今後の御判断に待たなければならぬと思いますし、そのためには、私どもといたしましてはなるべく問題を整理した形で、御判断をいただきやすい形で持ってまいりたい、そのための第一段階としていま申しましたような作業を税制調査会を中心としてやっておるということでございます。
  116. 宮地正介

    ○宮地委員 最近の特に社会的公正の確保を最重点にしたいわゆる減速経済時代に見合った税制のあり方というのは、非常に重大な問題であろうと思うのであります。特に国税地方税との望ましい関係というもの、あるいはいま申し上げましたような不公正税制の問題、新時代に対応できる国民本位の税制をつくる、これはもう、やはり現在における最大の政治的課題ではないかと思うのです。それに対しては大蔵省ももっとスピーディーに、そして本当に国民の立場に立った勇気ある検討というものがされなくてはならないと思うのです。  今回の五十五年度の国債発行ゼロの問題にいたしましても、昨年と何ら変わらない、何かこの一年間の分が大変にストップした、国民的に見ればこれは大変重大な大蔵当局の怠慢ではないか、果たして本当に国債の発行の、特に赤字国債が五十五年にゼロにできるのか、できないのか、絵にかいたもちに終わるのではないか、こういう感じさえするわけでございますが、政務次官にその決意を伺いたいと思います。
  117. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 五十二年度の税収見通しにつきましても当初は、今回政府案として御提案を申し上げておりますような三千五百億余の減税、それからさらに各党の合意に基づきまして成立予定の三千億減税、こういったものを前提にいたしませんで計画をいたしておりまして、それによりますれば五十二年度においては、いわゆる五十五年度において赤字公債を発行しないでも済むために確保しなければならぬところの税収額はほぼ確保できる見通しを一応立てながら作業を進めてきたところでございますが、御承知のような野党側の御要求を受けて三千五百億の減税政府が提案をし、さらに三千億の減税を追加する、こういう事態でございますので、当初の計画目標から見ますと五十五年度においてゼロにするということは、かなりむずかしい課題になってきておることは事実であります。  しかしながら、福田総理も非常にかたい決意で、これ以上赤字公債を五十五年度以降においてもなお発行し続けなければならないような場合には、国家財政の非常に厳しい状態になることを踏まえまして、五十五年度においてはぜひ赤字公債を発行しないで済む財政内容にいたしたいということことを強く断言をしておられますので、私どもはその方向に向かってベストを尽くさなければならない、このように考えておる次第でございます。  なお、現在の政府税調の方は、今年の十月までが任期でございますので、それまでの間に突っ込んだ御論議を各方面にわたって幅広くやっていただいて、その上に立って五十三年年度以降の税制問題を確立してまいりたい、このように考えておる次第であります。
  118. 宮地正介

    ○宮地委員 どうか絵にかいたもちに終わらないように、またそれが減税どころかとんでもない大幅増税によって穴埋めをされないように、これだけは厳重に留意をしていただきたいと要望いたしまして、次の問題に移りたいと思うのであります。  今回、与野党の保革伯仲の中におきまして、三千億円の減税上積みができたわけでございます。そこでこのいわゆる財源措置について福田総理は、赤字国債に頼らないで措置をしたい、こういうふうにこの十七日、衆議院の予算委員会で答弁をしております。  そうなりますと、考えられることの一つは、歳出を削減するかあるいは新たな年度内増税が考えられるのではないか、あるいは五十二年度に大幅な自然増収を大蔵省が期待をしているのではないか、いろいろ言われているわけであります。大蔵省として現在、この財源対策についてどのように進めておられるのか伺いたいと思うのであります。
  119. 山内宏

    ○山内政府委員 この点につきましては、大臣を初め何度かお答え申し上げておりますが、ただいまの段階では、今五十二年度の予算運営に沿いまして、歳入歳出両面から努力をしてまいるということしか申し上げられないと思います。なお、それにつけ加えまして、大体第三・四半期ごろには何らかの見当をつけたいということを予算委員会におきまして政府委員が御説明を申し上げておりますが、そういったところが現在の政府の態度でございます。
  120. 宮地正介

    ○宮地委員 問題は、現在は依然として景気も中だるみになっているわけでございます。この三千億円が、国民の景気刺激の一つのねらいを込めて、大きな、いい影響に活用していく、これはやはり重大な問題であろうと思います。そういう面で、国民の皆さんの手に一日も早くこの戻し税が行き届く、これは非常に大事な問題ではないか、こう思うわけでございます。この点について、いまどのように努力をされておるのか、また大体いつごろをめどに進められておるのか、この点について伺いたいと思います。
  121. 山内宏

    ○山内政府委員 この辺のところはいずれも大蔵委員会のお扱いとされておるというふうに私どもは受け取っております。大蔵委員会の方からは私どもに対しましてそういう意味におきましてのいろいろ御相談をいただいております。実務上も非常にむずかしい点がいろいろございますが、できることならばなるべく早期に、かつなるべく一括して還付できるような方向で御協力を申し上げるようにというふうに私どもは大臣から申しつかっておりますので、その方向で御協力をさせていただきたいと思います。
  122. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう点で国民の期待を裏切らないように、どうかよろしく、一日も早く、そしてまたそれが景気の刺激に効果のあるように配慮をしていただきたいと要望したいと思います。  具体的に租税特別措置法の第四十一条の住宅取得控除について少し伺いたいと思います。  この制度昭和四十七年の一月一日から本年の十二月三十一日までのいわゆる時限立法的な立場で創設されております。今回の法案では二年の延長、こういうことになっておるわけでございますが、この創設された住宅取得控除意義というものは、一つは国民の皆さんに住宅取得の一層の促進のため便宜を図る、あるいは第二としては住宅投資を通じて景気の刺激に何とか報いていこう、こういう趣旨でつくられたわけでございます。     〔野田(毅)委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕 私は、そういう意味合いからこの住宅取得控除というものはもう時限立法的なものは解除してしまって、本当にまだまだ日本の住宅政策はおくれておるわけでございますから、今後ともこれは持続していくべきである、むしろ恒久化すべきではないか、こういうふうに考えているわけでございますが、大蔵当局はどうでありましょう。
  123. 山内宏

    ○山内政府委員 御指摘のとおり、この制度住宅の取得をいたしますことに対するインセンティブとして設けられたものでございます。四十七年からこの制度が創設されたわけでございますが、その当時におきましては、なお住宅の絶対量の不足ということがこの制度創設の背景にあったかと思います。そういう意味合いからいたしまして、現在は新築住宅に限るということになっております。その後住宅戸数もかなり順調に増加をいたしてまいりまして、現在では住宅戸数の絶対的不足というのが、当時に比べますとかなり緩和されてきたと申しますか、むしろかなり充足されてきたというふうに言うべきかもしれませんが、そういう状態でございます。したがいまして、いまの制度を存置するように、特にいまの御指摘では、永久化するようにという御指摘でございましたけれども、他方には、新築住宅でなしにむしろ中古住宅についてもっとメリットを与えよというふうな御意見もございます。私どもといたしましては、現在の段階で建設省の建築行政の立場とも相関連をさせまして、ただいま、わが国の今後の建築行政がどういうふうに進むべきかということを頭に置きながら現在の御提案を申し上げておるわけでございますが、現在のような、新築住宅について他の住宅取得に比べて特別のメリットを与えて援助していこうというたてまえは、税制だけでございませんで、たとえば公的融資についても同じような考え方がとられております。もし国全体として従来のようなやり方をある程度再検討を加えていくということでありまするならば、やはりそういったものと横並びで、情勢に即応して考え方を変えていかなければならぬかと思いますが、そういう問題も含んでおりますので、私どもといたしましては今回建設省とも相談の上二年間暫定的に延長させていただいということでございます。
  124. 宮地正介

    ○宮地委員 いま、はからずもお話の出た中古の住宅でございます。現在の不況とインフレというこの経済環境の厳しい中におきまして、国民が家を持つということは、これはもう大変なことでございます。新築のみならず最近は中古の住宅を買う、そういう国民の皆さんも多くなりつつあります。いま新築だけということでございますが、新築を買えば一坪当たり千円の控除、それも三十坪まで三年間、これが所得税の中から定額で引かれる。庶民の淡い、大変な希望であり、また喜ばれている制度でございます。私は、いまおっしゃった中古住宅についてもこの際積極的にこの適用を拡大していくべきであると思う。また、最近の日本住宅公団などの高家賃制度、五万円団地ができるとか七万円団地ができるといった、全く庶民の家計から遠くかけ離れた高家賃のそういう住宅が建設をされてきている今日であります。私は、そういうような高家賃に対しても何らかこの制度を適用拡大して、そういう方々に対して恩典を設けていくべきではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この中古住宅の適用、借家人の高家賃に対する適用拡大、これについて大蔵当局はどう考えておるか、伺いたいと思います。
  125. 山内宏

    ○山内政府委員 先ほど私が申し上げました趣旨は、いま御指摘のような御意見も各方面にかなり強いわけでございますので、ちょうど現在の時期は、住宅行政について一つの転換期を迎えつつあるのではあるまいかという感じがいたします。従来の、要するに絶対的に物が足らないという時期から少し様子が変わってまいりまして、むしろその中古住宅も含めて質のよろしい住宅を供給するというふうに次第に転換をすべき時期にそろそろ差しかかりつつあるのではあるまいかという感じはいたしますが、現在のところまだ建設省も含めまして国の態勢といたしましては、政策の重点としては新築住宅を中心に捉えております。したがいまして、私ども税制でそれを援助する立場からいたしましても、やはり同じような方向に向いていかざるを得ないということでございまして、そういう意味で現在御提案をしたようなお願いをいたしたいと思うわけでございますが、ただいま委員御指摘のとおり、今後、いま申しましたような国の持ち家政策、住宅政策全体が転換をしてまいりますならば、私どもといたしましても、それに沿って改めて勉強してまいらなければならぬというふうに考えます。
  126. 宮地正介

    ○宮地委員 転換の時期が来ておる、こういう答弁でございます。国民の生活実感というものをよく認識され、それに即応した税制というものをつくる、これも税制に対する国民の信頼をかち取る重要な問題ではないか。むしろこういうような問題に大蔵省が力を入れていくところに——国民の皆さんから不公正税制である、大企業優先の税制であるなどといっていろいろ批判されている現行制度に対する反省、またこういう面も積極的にやっているんだということも示していただきたい、ぜひ期待したいと思うのであります。  また、租税特別措置法第二十五条の二にありますみなし法人課税の選択の問題について、少しお伺いをしたいと思うのであります。  この制度昭和四十八年七月から明年度分までということで取り扱いが定められております。果たして実行成果は上がっているのでありましょうか。その点について伺いたいと思います。
  127. 山内宏

    ○山内政府委員 この制度は事業所得者、それも中小事業所得者でございますが、事業所得者におきまして、その経理を明確にし、今後における経営の近代化をしていくということの裏表といたしまして、何らかの形で法人に準じたような経理のやり方を個人形態のままでやった場合に、あたかも法人になったと同様な税負担にしてもらいたいということから発した制度でございます。しかしながら、これにつきましては、制度そのものが、法人になったという前提でございますので、そういう意味で、この制度対象となるような比較的小さな個人事業者にとってみれば、制度としてなかなかむずかしい制度でもございますので、そう大規模に利用するというような制度ではもともとなかったのだろうと思いますが、五十一年末の実績によりますと、青色申告者総数の中で四・三%の人がこれを利用しています。
  128. 宮地正介

    ○宮地委員 ところが、いわゆるこの不況の中で、私も何軒かの中小零細企業の皆さんと話し合った中で、これを果たして本当にお使いになっているだろうか、いろいろ聞き、調べてみました。しかし、実態は、中小零細企業の近代化という大変な創設目的の中でつくられたこのみなし法人課税の選択の問題が、実際は十軒に一つぐらい。いま四・数%と言われておりますが、実際は一割に満たないという実行率が実態であります。それはなぜか。それはいまの経済の不況が物語っているわけであります。  御存じのとおり、この制度を選択する場合には、前年の十二月三十一日までにきちっと事業主の報酬額というものを届け出をしなければならない。ところが、届け出をしたはいいが、途中で経済の不況で経営が悪化した、倒産寸前になった、その事業主の報酬額の認定をいまの制度では変更できない。でありますから、いまのようなこういう経済で、中小零細企業の皆さんから言うならば、どういうふうになるか全くわからない。そういうことでこれを適用すると、近代化どころか、かえって事業主の首をくくってしまうのではないかという危惧があって、実はこれの活用に踏み切れないでおる、これが実態なのであります。  こういう経済変動の激しい、また不況のときでありますから、こういうような問題についても洗い直しをして、特例事項としてこの事業主の報酬額の変更を認めることについても、来年で一応時限が来るわけでございますから、そろそろここいらで真剣に調査をして、実態に即した制度に切りかえていくべきであると思うのでありますが、その点についてどう考えておるか伺いたいと思います。
  129. 山内宏

    ○山内政府委員 この制度が非常に活用が少ないというのは、おっしゃるとおりでございます。それの一番むずかしい点が、事前にいわゆる給与相当額を決めて、その給与相当額はなかなか動かせないという点にあるのだということも、恐らく御指摘のとおりであろうかと私も思います。  ただ、この制度はあくまでも、法律的な形態は法人にはしないけれども実態法人と全く同じにやるということが事柄の前提にございますので、そういった場合に、法人になりましたならば、これはいわゆる企業主が給与を取るということに相なります。その取ります給与というのは、事業の好不況に関係なしに雇用関係によって決まるということでございますから、そういう意味で、現在の給与類似額の届け出制度を非常に緩やかにするというのは制度本来の趣旨に全くなじまないものであろうかと思います。そういう意味合いからいたしまして、こういうむずかしい制度は恐らく比較的零細中小企業の方々にはなかなかなじみがたいのではないか。どちらかと申しますならば、もっと単純な準備金制度なりあるいは特別所得控除制度なり、そういったものの方が物の性格に合致しておるのではあるまいかというので、実はこのみなし法人課税制度の前身はそういうものであったわけでございますけれども、それでは法人になったと仮定した場合と食い違うからぐあいが悪いんだ、手間が非常にかかってもいいからこういう制度をつくってもらいたいという非常に強い要望がございまして、現在の制度になっていることは先生御承知のとおりだと思いますし、その点を考えますと、逆に申しまして、いま御指摘の給与額を動かすというのは他の法人の場合にあり得ないことでございますから、そういう点で非常にむずかしい、むしろ単純化あるいは利用の簡便化を図るならば、もう少し制度そのものを簡単な制度に持っていく方がベターなのではあるまいかと思います。そういうようなこともいろいろ勘案をいたしまして、五年間試行的に、トライアルとしてやってみようというのが現在の制度でございますので、来年期限が参りますにつきましては、それまでの間、いま御指摘のような問題点も含めまして、さらに研究を進めてまいりたいと思います。
  130. 宮地正介

    ○宮地委員 他の制度にも切りかえられないという言い方をしておりますけれども、一般のきちっとした企業法人の場合は、役員の報酬あるいは事業主の所得というものはある意味では自由自在にできるわけです。この場合は、審議官が言っているのとちょっと意味合いが違うのです。もう少し実感的といいますか、実際面というものをくんでいただいて、この当初の創設の意義というものは非常にいいと思うのです。中小零細企業に、いわゆる法人の分、自分の私の分を明確にして、企業の合理化を図って、今後その繁栄のためにこの税制度を使ってほしいという創設の意義、目的というものは確かに意義があるわけでありますけれども現実にそれが運用になるとまことに実態からかけ離れておる。そういう点をどうか大蔵当局も、当然勉強されておると思いますが、もう少しこの国民の底辺に首を突っ込んで、実感の上から実質的な運営に切りかえていただきたい、趣旨と実際ができるだけ合致するように運営していただきたい、これをぜひ要望したいと思うのであります。  時間がありませんので、次に移りますが、特に最近のサラリーマンの家計の中における社会保険料というものの比率は大変大きくなってきております。サラリーマンの標準報酬額の月額のうち大体七、八%になってきておる。ところが、実際この社会保険料というものは、たとえば厚生年金などは五十一年度で三兆円、あるいは国民年金などは六千億円、こういうものの使途は財投によって公共事業に回るわけです。ある意味ではこれは目的税的な感じがするわけです。この負担を見ましても、たとえばサラリーマン個人負担と国及び企業負担、こういうものを諸外国の例で見て、合計を一〇〇とした場合でも、日本が先進諸国では一番高い。フランスが一六%、英国は二〇・七%、アメリカは二三・二%、西ドイツは二四・七%、日本は二六・九%であります。実際に被保険者の負担率が高い。ところが、自分の身の回りを見てみると、福祉というものがどうも低福祉である、何か低福祉高負担の端的な実例ではないか、こういう国民の御批判もあるわけでございます。私は、この社会保険料について目的税的なそういう考え方に対して、まず大蔵省はどういうふうに考えておられるか伺いたいと思います。
  131. 山内宏

    ○山内政府委員 私も社会保険につきましては全く素人なのでございますが、おっしゃいますように受益者負担的な意味合いから申して目的税とどこが違うかということに相なりますならば、やはりある種の意味では保険という機構を使いながらの受益者負担的なものというふうに考えてもいいのかというふうに考えます。
  132. 宮地正介

    ○宮地委員 大変失礼でございますが、勉強はされていると思いますが、国民のいろんな貴重な意見というものはいろいろ文献に出ておりますからね。こういう点について、社会保険料は目的税の一部として考えられるのじゃないか、こういう論議もいま出てきているわけですよ。税金を預かる大蔵省としてはやはりもっと真剣に耳を傾け勉強していただきたいと思うのです。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 いまのような御答弁をいただきますと、国民は大変にがっかりするのじゃないかと思うのです。これだけの莫大な国家財政を運営している大蔵当局にとって——時間がありませんのでまた次の機会に譲りたいと思いますが、私たちが給与をもらっても、皆さんでもそうだと思うのですが、税金も確かにあれですけれども、社会保険料がばかにならない。そういう面で、この問題についても、そういう論議がいま醸し出されてきているそういう大きな国民的話題を呼んでいる問題でございますので、ぜひ御勉強をさらにしていただいて御検討をいただきたい、こう思うのであります。
  133. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 ちょっと申し上げたいと思います。  ただいまの御意見でございますが、各種の社会保険ないし社会保障制度に伴う負担、これらにつきましては、今後各種制度のなお一層の充実の中で、ただいまお話のございましたような社会保険税的な形で統一的にこれを賦課することができるかどうか、こういうようなことは今後さらに検討をしていかなくてはならないと思いますが、現在のところ、社会保険については非常にばらつきがございまして、これを一律的な扱いをすることはきわめて困難ではなかろうか、このように考えるわけでございます。  ただ、低福祉高負担ではないかという御指摘につきましては、御承知のとおり日本では所得に対するいわゆる租税負担というのは決して欧米各国に対して高くないわけでありますし、かつまた、社会保険負担と国民所得の対比を昭年五十二年度予算で見ましても、日本の場合には六・九%でありますが、アメリカの場合には四十九年度で九・一%、西ドイツの場合には一七・七%、あるいはフランスの場合には一九・七%というような数字が挙がっておるわけでありまして、日本の場合、国民所得対比で見ました場合には、こうした国々に対して決してそう高負担であるということではないと私ども思うのでございますが、なおそうした制度の面については今後整合性を考えながら充足をしてまいらなければならない、このように思っております。
  134. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほど私の挙げた数字の被保険者の負担の割合、これについてはやはり現実に高いわけです。たとえば厚生年金なんかにしましても、国の負担が二〇%、それに比べて被保険者は四〇%。国民年金などは国が三三・三%に対して被保険者は六六・七%。そういう点から見れば明らかに社会保険料の中における被保険者の負担というのは高い。そういう中から国民の生活を実感的にとらえていきますと、いまのようなこういう経済の不況、インフレの中で、社会保険料が高いという声、これはやはり何らかの形で目的税ではないのか、こういう御意見もあるわけでございますので、これは謙虚に御検討していただきたい。要望したいと思います。  さらに、国税の徴収事務における問題について国税庁に少し伺いたいと思います。  最近十カ年における国税の事務量というものが大変に多くなってきておる。また、それに比べて国税職員の現状というものは、総定員法などによって決められてやはり大変に厳しい。今回の戻し税の問題でも最大のネックになっているのがこの辺の事務の問題であると言われております。こういう点について国税庁としてまず円滑にこの問題が運営されておるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  135. 山内宏

    ○山内政府委員 ちょっと先ほどの社会保険の問題に関連をいたしまして数字の点でございますが、国民所得に対する社会保険負担の割合は日本の場合五十二年度の予算で六・九%でございます。それに対しまして、アメリカは九・一%とか、西ドイツ一七・七%とかというふうに、必ずしもわが国の場合は絶対額として高いかどうかという点については、いま申しましたようなことでございます。  なお、先ほど御指摘の目的税にするかどうかの問題でございますが、これは保険収入でもって保険支出に充てるという形でのいわゆる完全な特別の会計という形で進んでいきます限りは、現在の形でやってまいって特に問題はなかろうかというふうに考えます。これに対して、一般会計あるいは一般財源を差し込むかどうかという問題になりますと、これはその形式の問題ではなしにそういう意味での予算の問題ということでございますので、これはこれとして別途の検討を要することであろうかというふうに考えます。
  136. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、この十年間を見ますと、申告所得税の面におきましては納税者数というものは約四割を超える増加でございますし、また、法人税におきましては、法人数が六割五分の増加という形で納税者数というものが非常に増加をしている状況でございます。それに比べまして、国税庁全体の職員の定員というのはほぼ横ばい、わずかに二%弱の実は増加でございまして、税務行政が量的にも質的にも年々非常にむずかしい局面に来ていることは、御指摘のとおりでございます。  このような状況でございますが、われわれといたしましては、できるだけこの人の効率的な配置、たとえば定員の地域間あるいは事務間の再配置、たとえば徴収あるいは間税系統の職員を所得税あるいは法人税というふうな仕事へ再配置をする、あるいは電子計算機の事務処理の範囲を拡大をしていくというふうないろいろな施策を講じまして、事務の消化に努力をしているところでございますし、また毎年、十分ではございませんけれども、定員の増加を一応図りまして、必要最小限の職員を確保してきておるところでございます。  そういうふうな努力を通じまして、職員に過重な負担をかけないように現在努めているところでございますが、今後とも事務量が増加をいたしましても、職員に過重な負担をかけることがないように、さらに合理化に努力をいたしますと同時に、定員の確保等に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  137. 宮地正介

    ○宮地委員 問題は、国税職員の皆さんは、やはりある意味では専門的な知識あるいは豊富な経験というものが必要になってくるわけであります。一般に、税務についていろいろ調査をしたり研究をするわけでございますから、三年から五年くらいたたないと実際に専門官としての知識の修得はむずかしい、こういうふうにも言われているわけでございます。それだけに、その養成というものは重要な課題であろうと思います。国税職員の専門知識などの養成についてどういうふうにいま進められておるか、伺いたいと思います。
  138. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  国税職員が特に専門的な知識を要求されるということは先生御指摘のとおりでございます。われわれといたしましては、いわゆる高卒の新入税務職員につきましては、一年間の全寮制度によりますところの特別な教育を施しまして第一線に配置をいたします。この教育過程におきましては、専門的な知識を中心にいたしまして、その他一般教養等も含めて高度の教養、知識を身につけた、専門的な知識を十分身につけた職員というふうな形でこの養成を図ってまいっておるところでございます。  また、最近におきましては、大卒の国税専門官という制度を設けまして、これもまた毎年数百名ずつ採用しているわけでございますけれども、これも採用と同時に三カ月間の研修期間を設けまして、専門的な知識を養成し、さらに一定年数がたちましたところで、もう一度六カ月間の研修をするというふうな形で、新入税務職員の研修にはできるだけの実は配慮をしているところでございます。  さらに全体といたしまして、現在各職場におきまして日々いろいろな事務にまつわるところの知識というものを絶えず積み重ねていく必要があるという観点から、職場の研修、いわゆる第一線におきます職場におきますところの研修という問題も重視をいたしまして、ブロックごとに集めてその調査技法あるいは税法等の知識をさらに再修得させるというふうな努力も組織的にこれを行ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  139. 宮地正介

    ○宮地委員 いまお話しのように、専門の知識を非常に必要とする、これをお認めになっているわけでございます。ある意味ではやはりスペシャリスト、専門官であろうと思います。そこで、いま国税職員の中にはだんだん年をとってまいりまして、特に中高年層の職員の待遇改善の問題だとか、あるいは専門職としてのそのプライド、地位の向上といいますか、そういうものがどうも改善されておらない。そういうことでモラルの低下、意欲の低下が始まりつつある、こういうことも言われているわけでございます。その点についての抜本的な改革についてどう真剣に取り組んでおられるのか、伺いたいと思います。
  140. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  いま御指摘のとおり、非常に専門的な知識を必要とするということは、そのとおりでございますし、また、税務の職場におきましては、いわゆる中高年層のウエートというものが非常に高いという点につきましても、先生御指摘のとおりでございます。私たちは、この税務の職場におきますところの中高年層の処遇、この士気をいかに高めていくかという問題は実は非常に大きな重要な課題だというふうに考えておりまして、まずその処遇というものを、その年齢あるいは職務にふさわしい処遇に持っていきたいということでこの数年来鋭意努力しているところでございます。具体的に、その職務にふさわしい格の高いポスト、たとえば特別調査官、特別徴収官というふうなポストの新増設あるいはそれにふさわしい上位等級定数の拡大というものを通じましてこの中高年層の処遇改善というものを図ってまいりたい。幸いにして関係各方面の御理解も徐々に得ておりまして、徐々にその処遇改善は図られてきていると思いますけれども、なお十分だとは私たちは思っておりません。今後ともその方面におきまして鋭意努力を重ねてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  141. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほどもお話がありましたように、量の拡大、それに伴っての質の充実、やはりこういう重要な問題があるわけです。そういう意味で事務の合理化なり標準化が進められておるというふうに伺ったわけでございますが、具体的に現在の電算機処理の地域は東京、大阪、名古屋あるいは関信の一部、このように伺っておるわけでございますが、さらにそれを拡大していく考えはないのかどうか、それを伺いたいと思います。
  142. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  現在電算機がカバーをしておりますところの税務署の数は、東京、関信、大阪、名古屋の各国税局を中心といたしまして百四十三署が五十一年度におきましてはカバーされるという計画でございます。ただ、電算機の拡大という問題は、それに付帯するいろいろな業務というものを考えませんと、これを一気にやることはなかなかむずかしい点でございますけれども、われわれといたしましては、逐時事務の合理化に努めまして、その範囲をできるだけ、事務量あるいは所要の経費というものをにらみながら拡大を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  143. 宮地正介

    ○宮地委員 国民のそういう税金を調査または研究していく重要な立場にあるわけでございますので、どうか、モラルの低下だとか、あるいは事務の停滞だとか、そういうことのないように、また、健全なる国民の立場に立った調査活動、こういうことが行われるようにぜひお願いをし、また期待もしたいと思います。  そういう中で、残念ではございますが、最近、大手商社の脱税問題、これが大変社会的に国民の大きな批判の的になっております。その内容も、輸入価格の水増しだとか、あるいは伝票の偽造だとか、その他脱税の手口も多岐にわたっている、このようにも言われているわけでございます。こういうような点について、国税庁は、特に五十一年三月期の決算に基づく申告法人税について調査中と聞いておりますが、どの程度進んでおられるのか、また、いつごろ国民の前に公表できるのか、その点について伺いたいと思います。
  144. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 調査事務につきましては、先ほど来申し上げておりますように限られた人員で多数の法人あるいは納税者を相手にしてその事務を進めてまいらなければならないわけでございますので、われわれとしては大口あるいは悪質者を重点的に調査をするという体制をとっております。  御指摘の商社につきましては、これはすべて大法人ということでございまして、国税局の特別調査官がこれを所掌いたしておりまして、ほとんど毎年のように実はこの調査をしておるというのが現在の実態でございます。調査官も相当数動員いたしまして、相当長時間をかけましてこの調査を行っておるわけでございますが、その調査の個々の内容につきましては、私たちとしては守秘義務という観点から、内容についてこれを公表するあるいは発表するということは考えていないわけでございます。
  145. 宮地正介

    ○宮地委員 税金の徴収事務、これについても、国民の皆さんに本当に期待されるような円滑な、そして健全な形で行われるためにも、ぜひそういう面の事務の標準化、合理化、また中高年齢層の皆さんが意欲をなくすような、そういうことのないようにしていただきたいと思いますし、また一方では主税局の方にいたしましても、これからの重要な税制改正に当たっても国民本位の立場から不公平税制の問題などを中心として、本当に福祉型税制に切りかえていくように、その御努力を期待したいと思います。  最後に、政務次官からこの一連の問題について所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  146. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 租税特別措置法につきましては、御承知のように昭和五十一年度全面的な見直しをし、五十二年度におきましても期限到来のものを中心といたしまして整理、検討をいたしたところでございますが、今後ともさらに検討を続けてまいる所存であります。  さらに、不公平税制と言われるものにつきましても、これはそれぞれ会計原則あるいはその他の政策上の目的から設定をされたものであろうと思いますけれども、その内容がその時々の経済情勢、政治情勢によっておのずから検討さるべきものであろうと思いますので、御趣旨を体しまして十分また見直し、検討をいたしたい、このように考えております。
  147. 小渕恵三

    小渕委員長 高橋高望君。
  148. 高橋高望

    ○高橋委員 私も冒頭、三月三日に発表された「財政収支試算(五十二年度ベース)」についてお尋ねをしたいと思いますが、その前に政務次官にお尋ねしたい。  政府関係の方がいろいろ財政にいたしましてもその他指標あるいは目標を発表なさる、これに対して前回、政府としてのこういう発表なさる数字に対しての取り組む基本的なお考え方政府の発表したものは、私は努力目標であったり、希望値であったりしたのでは困るというお話を申し上げたところが、大臣から、ないよりもいいでしょうというようなことを言われたのですが、それでは困るので、まず政務次官に、政府が発表なさる数字に対しての基本的な考え方、この辺をひとつお伺いしてみたいと思います。
  149. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 政府の発表いたします数字につきましては、もちろん十分検討した上で根拠ある数字を発表いたさなければならないことは当然でございます。ただ、その数字そのものが、たとえば計画の場合と、それから特に昭和五十二年度ベースでの財政収支試算でありますが、これは、いろいろと御指摘ございますように計画と申すほどには実はまだ申し上げられない、そういういわば試算であるということであくまでもお出しをしておるものであるというふうに御説明を申し上げておるところでございます。
  150. 高橋高望

    ○高橋委員 そのお立場は、次官のお立場としてはそうおっしゃるのですが、国民の立場あるいはは私たちの立場からすると、こういう指標に対して、経済に対する私たちのかなりの配慮というものが出てくるわけです。どうぞこの辺をお踏まえいただいた上で、これからのお答えを願いたいと思います。  まずお伺いしたいのは、五十二年度の税収十八兆七千九百億円を見込んでいらっしゃいますが、この達成の見通しはいかがでございましょうか、まずこの辺からお伺いを申し上げたいと思います。
  151. 山内宏

    ○山内政府委員 これにつきましては、まだ年度が始まってもおりませんので、ここでどうこうと申し上げるのは差し控えたいと思いますが、私どもといたしましては政府の見込みました五十二年度の経済の見通しに乗りまして最も適正な算定をいたしたつもりでございますので、この前提となります税制改正を頭に置いていただきました限度で、この金額がなるべくこれに近い数字に実現をすることを期待しておる次第でございます。
  152. 高橋高望

    ○高橋委員 私は実は非常にこの十八兆七千九百億という見通しはむずかしいように思う一人なんです。特に対前年比で一六・四%の増ということで、現在の景気の状況からいって、こうした税収が望めるかということについてはなかなかむずかしいのではないか。しかしこれはやってみなければわからないとおっしゃればそれまでなんですが、私のようにむずかしいという立場をとる、とらないは別にいたしましても、五十三年度、五十四年度、五十五年度と三年間にわたって毎年、たとえば五十三年度は対前年比二七%の税収の増を見ていらっしゃる、五十四年度は二二%、五十五年度は対前年比同じく二二%という税収の伸びを見ておられますが、こういった税収の増加というものを既存の税制の中から考えられると御判断になりますか。
  153. 山内宏

    ○山内政府委員 ケースAなりケースBなりについております年次別の内訳表の税収の数字、これは下から積み上げたものでございません。委員も御承知のとおりでございますが、五十五年度の所要税収、これを一応五十年代前期経済計画をもとにいたしまして、その中で財政がどの程度の役割りを果たすべきかを前提を置いて計算をいたしまして、その必要額を逆算的に出したものが五十五年度の三十五兆余りの数字でございます。その間、五十三、五十四年度はそれぞれ五十二年度から五十五年度までの間に予想されるGNPの伸びを前提に置きまして、それに対して一定の割合で税収が伸びる、いわばその入り口と出口を結びまして、あとはGNPの伸び方を推計をして、その推計に一定割合、等率で税収も伸びるという前提を置いておきました数字にすぎませんものでございますから、ここに書いてあります数字はそういう逆算の数字というふうにお受け取りをいただきたいと思います。
  154. 高橋高望

    ○高橋委員 私は、それでは困ると思うのです。と申しますのは、五十三年度の税収をお考えになる、この時期はこうすでに恐らく七月、八月までにいろいろの予算をあるいは税制をお考えになると、こういう時期が来ているさなかで数字合わせだと一口でおっしゃられて、ああそうですかと言うわけには私たちとしてはいかない。こういう考え方に立った場合には当然この五十三年度あたりから新しい税をすでにお考えになっていらっしゃるのじゃないか、そのように思いますが、いかがでございましょうか。
  155. 山内宏

    ○山内政府委員 財政収支試算の中で最も意味のあります数字は最初のページにございます、いわゆる財政収支試算の本表の五十五年度の数字でございます。それを輪切りにいたしました五十三、五十四の数字は付表としておつけをしてありますとおり、あくまでもこれは参考のためにおつけした数字でございます。そういう意味でこの途中の年度については、計算の前提として先ほど申し上げましたような意味以外には特にないわけでございます。したがいまして、この数字があるから五十三年度は必ずこういう数字にさや寄せするような増税を考えておるのかとおっしゃいますれば、それは必ずしもそうではございません。ただ五十五年度には少なくともこういう形で歳入を確保したい、確保いたしませんことには、この計表の前提といたしておりますところの特別公債に依存しない財政、特例公債つまり赤字公債から脱却をした財政というものが実現できないものでございますから、しかもそういうことは単に政財のみでなく国民経済全般にいろいろな意味で悪影響を及ぼしますものでございますから、そういう意味で五十五年度までにはこういう形でぜひ持ってまいりたいというのが政府考え方でございますが、そのためにいついかなるときにどういう形で増税をやるべきかということにつきましては、これは先ほども御説明を申しましたように、今後の詰めていくべき問題だというふうに考えております。
  156. 高橋高望

    ○高橋委員 しかしお言葉ですけれども、時間的にすでに五十三年度の予算はお組みになる準備がもうそろそろ始まるときでございましょう。そうであるならば、当然のことながら新税の構想はお持ちのはずだと私は思いたい、むしろ逆にこれは額も含めてこういった御配慮がそろそろ出ているのではないか。  私はここで次官にお尋ね申し上げのでございますけれども、この与野党接近の中で、こういった基本問題をより時間をかけて、いままでの慣習よりははるかによけい時間をかけてこの税の問題などは取り上げないと、ある時期が来てから大変な争いが起こる、そして今回の予算のように押し詰まってからの大騒ぎをした上で、いろいろと国民に対して政治に対する不信を持たせる、こういう点から配慮いたしまして、私はどう考えても大蔵の御当局が新税構想をお持ちでないとは思えない、これはそろそろこの大蔵委員会に、仮に非公開にするような決意がおありになっても、少なくとも新税構想ははっきりとおっしゃって、与野党の討議をする時期が来ているんじゃないか、こういうように思いますが、次官いかがでございましょうか。
  157. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 本委員会におきまして日ごろ委員各位からいろいろと御提言などいただいております。そうした御意見政府税調にそれぞれまとめましてお出しをいたしまして御検討をいただいておるところでございます。昭和五十一年十一月二日、第四回会合というところで「中期税制の一環として論じられている新税等の概要について」という審議が行われておるところでございます。ただ内容的には、まだこれを直ちに今後二、三年の間にやるというようなものではなくて、それぞれの項目につきましていろいろとそれぞれ意見を出し合ったという程度のものでございますので、残念ながらいまここで、こういう構想がございましてこんなことはどうでございましょうかと言って、大蔵省の責任において申し上げられる段階にまで詰まっておらないというのが実情でございます。
  158. 高橋高望

    ○高橋委員 おっしゃるように十一月二日から四日にかけての「中期税制の一環として論じられている新税等の概要について」これは友末部会長の御担当かと思いますが、これが出ている。この中で大きく八つ取り上げて、あと追加すれば出国税と選別雇用税ですか、十ぐらいの対象に一応しぼってお考えが出ておりますけれども、いずれにいたしましても私は新税の適用があるのではないか、もうその御発表をなさり、検討される時期に来ているんじゃないか。むしろあえて申し上げれば、間に合わないじゃないか。しかも二月二十六日の予算委員会で小川自治大臣が、地方財政の改善問題で御発言なさっておられる、その中にあっても、たまたま、主題ではございませんけれどもも、新税を創設する場合には、従来の所得税法人税、酒税という地方交付税に、その一定割合を地方に配分することを考えないでもない、考えるべきだということをもうすでにおっしゃっている。そうすると私は、閣内でも、あるいは関係当局の中では何かすでに新税問題というものはもうかなり煮詰まっている状態があるんじゃないか。首を振っていらっしゃいますけれども、そのように考えざるを得ない。  それからもう一つは、今度の一兆円減税に対して、これは私の勘ぐり、あえて勘ぐりと申しますけれども、わりあいに財界が強い反対をしなかった。いろいろのお話の中で、新しい税に対して財界に対して説明をなさっておられるようなことはないのでございますか。あるいは全国知事会などが外形標準課税を取り入れるということについて最近強く求めていない、こういうことも踏まえていきますと、何か裏側で新税に対しての配慮があって発言をすることが少なくなっているのではないかというふうに、これはあくまでも勘ぐりですけれども思いたいのですが、この辺はいかがでございますか、重ねてひとつお願いいたします。
  159. 山内宏

    ○山内政府委員 財界その他に対して、こういう新税はいかがでしょうということで私どもの構想として御説明していることは一切ございません。
  160. 高橋高望

    ○高橋委員 それでは少し観点を変えまして、仮に新税をお考えになったとしたときに取り組む姿勢として、政府は今後応能税で進まれるか応益税で進まれますか、この辺の基本的な方向はいかがでございますか。
  161. 山内宏

    ○山内政府委員 まさにその辺がむずかしいところでございまして、先ほども委員御指摘のように、昨年の六月ごろから政府税制調査会を中心にしていろいろ勉強はいたしてまいっております。かなり日を詰めて勉強願っておるわけでございますが、まだ現在までのところそれがどういうふうな方向に参るかということまでは議論は熟しておりません。先ほどもちょっと御説明をいたしましたように、第一部会と第二部会に分けまして御議論願っております。第一部会の方は主として所得課税でございます。第二部会の方が資産課税と消費課税といいますか、間接税関係、そういうサイドからのアプローチをお願いをしておりますが、いずれにいたしましても、先ほど御指摘のありました財政収支試算、それからそれのもとになります五十年代前期経済計画、そういったものを前提にして物事を考えてまいります限りは、やはりその期間、五十五年度までの間に何らかの形で何らかの程度の新税の導入を考えざるを得ないというところまでは大方の御意見がまとまってまいっておりますけれども、それを果たして、たとえば所得税でやるのか法人税でやるのかあるいは間接税でやるのか、それともそれらの中のそれぞれ幾つかのものをそれぞれの割合に従って分け持ちをするのか、その辺のところは挙げて今後の御議論であろうかと思います。  先ほど御指摘をいただきました五十一年十一月二日の御審議は、その中の第二部会、つまり間接税担当の部会の中におきまして、今後新税をもし勉強するとすればどういった方向に勉強していったらいいだろうかという、いわば問題の提起でございますし、そのときに挙げられました税目は必ずしも実現可能性があるとかないとかいうことではなくて、この税制調査会の部会長報告にもございますが、いま御指摘のようないろいろな税目を拾い出しましたそのメルクマールは、実施可能かどうかは別として、従来から国会及び当税制調査会等において論議されている新税について収録してみたらどうかという友末部会長の発案に従って引っ張り出したものでございます。そういう趣旨で引っ張り出した税目でございますので、これが果たしてうまく物になるかどうかということは挙げて今後の御議論かと思います。
  162. 高橋高望

    ○高橋委員 大変くどいのですけれども重ねてお伺いいたしますが、この新税は仮に現在お考えにならないとしても、もう焦眉の急の問題として出てくる。一体いつごろこの新税構想は発表されるお気持ちがありますか。
  163. 山内宏

    ○山内政府委員 現在の税制調査会委員方の任期がことしの十月に切れますので、恒例によりますと、任期切れの前には大体、いわば卒業論文式にその調査会の御議論をおまとめいただくのが通例でございます。特に今度の場合は、いま委員御指摘のような背景もございまして、非常に熱心に中期税制問題について取り組んでいただいておりますので、その点について、私どもとしてもぜひしかるべき機会におまとめをいただきたいと思っております。恐らくそういう形で任期満了前にお出しいただく答申が、いま御質疑の対象になっておりますような事柄に対する一つ税制調査会としてのお答えという形で出てくるのではあるまいかと私どもは期待いたしておる次第でございます。
  164. 高橋高望

    ○高橋委員 では、この問題、最後にお願いになろうかと思いますが、次官、与野党接近というもう大変な事態、それから、当大蔵委員会の権威という問題を兼ね合わせて、どうぞこの税制に対しては従来以上のオープンな状態で、少なくともこの大蔵委員会にあってはそういった問題を討論できるような今後の運営をお考えになっていただきたい。次官、いかがでございましょう。
  165. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、本委員会におきまして御論議をいただき、あるいは御主張いただいておりますようないろいろな御見解につきましては、それぞれ政府税調等にもお出しをしておるわけでありますし、かつまた、政府税調で検討されましたものの資料につきましては、できる限り委員各位に差し上げておるところでございます。政府といたしましては、政府税調というものをお願いいたしております限りは、税調答申というものを尊重しながら取り組んでまいらなければなりませんが、ぜひいろいろな機会にこれらをもとにしてまた大いに御論議をいただいて、まさに今日の政治情勢の中で円滑に税制が改正されてまいりますように努力をいたしたい、このように思っております。
  166. 高橋高望

    ○高橋委員 お願いついででお諮りをしておきたいことが一つございます。  それは四十八年ごろから国税と国民所得の各増加率の相関度が非常にばらつきでひどくなっている。省内ではこの相関表は恐らくつくっていらっしゃると思うのですが、企業などでも収入、支出の急激な変化のある場合には毎月のようにチェックをするというのが企業の常識なのですが、国の財政のあり方としても、足りなくなってから補正予算を後へいって組むといったようなやり方ではなしに、せめて四半期ごとぐらいにこういった国税と国民所得の各増加率の相関などについては、大蔵委員会には資料を提供していただきたいと思いますけれども、この辺についてはいかがでございましょう。
  167. 山内宏

    ○山内政府委員 御指摘のような点はあろうかと思います。特に最近商法の改正に伴いまして、法人税の税収の入り方が従来とは違った形になってまいっております。つまり、従来は大企業がほとんど半年決算であったのでございますけれども、現在はそれが一年決算が主体になりました関係上、景気の波と税収の波とのタイムラグが従来よりもひどくなるという点がございます。それから、ここ数年間の特殊の事情といたしましては、個人の土地の譲渡所得に対する課税制度がほぼ二年置きぐらいに制度が変わってまいっておりますので、その関係で、譲渡が多発する年とそうでない年とがあるというふうなことで、これは景気の実勢とは余り関係なしに税収が変動するというふうなこともございました。そういうふうな関係で、いろいろラグがあるわけでございますが、いま御指摘のような点につきましては、これは毎月一般会計税収については委員会の方に提出申し上げておりますので、それでごらんをいただきたいと思います。
  168. 高橋高望

    ○高橋委員 前半に時間を少しとり過ぎましたが、きょうは私は実は証券の問題でお尋ねしたいと思って、証券局長においでいただいたのですが、お尋ねをいたします。  いま国民の不公平感の中に、ストックインフレの格差の拡大がひどくて、これが社会的不公平感を増幅してしまう、国民の連帯感を失わせているいう現実があろうかと思います。これに対して基本的にストックインフレに対する格差の拡大についてまずお伺いをしてみたい。どのようにお考えになられますか。
  169. 安井誠

    ○安井政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、私がお答えする資格があるかどうか非常に問題だと思いますけれども、恐らく御指摘の点は、昭和四十七、八年の物価騰貴を通じて、金融資産をお持ちの方と、あるいは不動産の資産をお持ちの方との間では非常に資産の格差が出ておるということを御指摘なんだろうと思います。そういう意味での不公正感というのがあるということを否定するわけにはいかないだろうと思います。
  170. 高橋高望

    ○高橋委員 私はきょうは証券の立場を伺いたいということで、実は証券の——証券というよりも一般的には株という言葉で広くなじまれてしまいましたが、株というものが、本来の株の性質から逸脱しまして、言葉は悪いのですが、スペキュレーションといいましょうか、もっと極端に言えば賭博の対象みたいな感じで、一般の方がお持ちになっている印象が強くなっている。もっと言えば、一番お金を持っていない人は競輪に走る、サラリーマンは競馬程度で憂さを晴らしている、そして小金持ちと大金持ちあるいは企業というものは株をいじる、こういう動きが最近出てきているように思いますが、株の問題にこういう風潮をつくり出した証券行政あるいは監視の仕方に何か問題があるのじゃないか。はっきり申し上げれば、証券業の仕事、営業内容について、一体証券業の営業内容というものはどういうものだというふうにお考えになっておられますか。
  171. 安井誠

    ○安井政府委員 ただいま御指摘になりました最近の株の問題でございますが、私どもも最近の株価というのが、たとえば昭和四十六年ごろと比べてみますと、アメリカの株価に比べますと日本の株価は上がり方が大体倍になっております。日本の株価がなぜこれだけ高くなっているのかということを裏返して申し上げますと、株価収益率と申しますか、株価に対する配当の比率が日本の場合には二%を割っているわけでございます。アメリカの場合にはこれが三%から四%に近い利益率になっているわけでございまして、非常に株価が高くなっていることは事実でございます。  それで、先生はこれの理由がどこにあるのかということの御指摘だろうと思いますけれども、私どもも恐らくこれは一つには、先ほど申し上げました四十七、八年ごろの非常に著しい価格騰貴ということに原因があるのだろうと思いますけれども、また、その相当の部分といいますか、少なくない部分は、株主の構成が非常に変わってきているわけでございます。と申しますのは、戦後昭和二十五年ごろには株主総数の約六割が個人だったわけでありますけれども、これが現在約三〇%が個人、つまり株主構成は、七割が法人、三割が個人という形になってきているわけであります。この意味で、少なくとも法人の場合には、法人で売買するというよりは、いわゆる系列化その他の関係でお持ちになる場合が多いわけでありまして、個人のように——個人の場合にも、もちろん資産としてお持ちになる場合が多いわけでありますけれども法人よりは株の売買も行われるわけでございまして、こういう株主構成が変化してきている、個人株主の割合が減ってきているというところに問題があるのではないかということを実は証券取引審議会が昨年五月の審議会の報告で申し述べているところでございまして、その対策として幾つかの、株式の魅力をつくれというようなことであるとか、あるいは証券会社の営業姿勢を直せというようなことも申しているわけでございます。  先生がいま御指摘になりました証券会社の営業の目的は一体何かということでございますが、先生も御承知のように、実は四つあるわけでありまして、一つがブローカー、つまり株式の売買を委託して行うブローカーであります。第二がディーラー、つまり株式を自分の責任で売買をいたしますディーラー業務であります。三番目がアンダーライターと申して、たとえば株式であれ、あるいは社債であれ、引き受けをして、責任をもって消化をしていくという引受業務。四番目がセーリングと申しておりますが、この引き受けた株式なり社債を売る業務でございます。この四つの業務があるわけであります。  私どもとしては、証券会社というのは、もう先生に申し上げるまでもないことでありますけれども、資金の供給者でありますところの投資者と、資金の需要者でありますところの企業であるとかあるいは国とか地方団体、この供給者と需要者との間に立って、つまり証券市場、これは株式市場と公社債市場があろうかと思いますが、両方の仲介の役割りを果たすということが本来の業務だろうと思います。投資者あるいは資金の需要者、両方から信頼をされていかなければいかぬということだろうと思うわけであります。そういたしますと、証券会社が自分の責任でこの売買をする、いわゆるディーラー業務といいますのは、むしろ主たる業務であってはおかしいわけでありまして、お客さんの売買に伴いまして、証券市場に関する限りは、この流通市場に関します限りは、お客様の委託を受けて売買するという形の業務が望ましいのであろうと思うわけでございます。これは、現に証券会社があくまでもブローカー業務を主として営みなさい、ディーラー業務の方はそれの補完的に行えということを免許のときにも言っておりますし、またたびたび通達などでも指示しているわけであります。現に、五十一年九月期の数字を見てみますと、このブローカー、お客様の委託でやっております売買業務から生ずる収入がいま申し上げました四つの業務の中では約六割を占めております。証券会社自身の責任で売買いたしますディーラー業務の方の収入は一五%でございます。古いときと少し比べてみますと、四十年、十年ばかり前に比べますと、十年ばかり前にはその証券会社の中で株式の売買が行われているもののうち、自己売買、いまのディーラー業務の方が四五%を占めていたのでありますが、五十一年にはこれが二三%と半減しております。したがって、ブローカー業務を主体とする業務に移っていることは事実でございますけれども、いま先生の御指摘のように、証券会社が少なくとも顧客に対して株価形成の公正さを疑われるようなことをいたしてはいかぬということは常々申し上げているところでございます。
  172. 高橋高望

    ○高橋委員 おっしゃるように、四つの業務が証務の免許の中でうたってありますから、四つだと思いますが、実は私が取り上げたいのはこの四つを一つの証券会社が兼業をし得るというところに問題があるのではないかということをお尋ねしたいのです。申し上げれば、有価証券の売買、ディーラー業務というものを、いまのお話でも五十年とおっしゃったですから、恐らく私の調べた資料と一緒だと思いますが、大手の某証券会社、一八%を占めるところがございますね。そうすると、有価証券の売買ということを二割近くやっておる大手、最大手、そう言うと名前が浮かんでいらっしゃると思いますけれども、これほどの有価証券の売買益を出している。ちょうど過剰流動性が問題になったときに、商社が株を売ったり、あるいは製造会社の一部で定款を変えて、株の売買などを定款の中にうたい込んだ会社がずいぶん非難され、弾劾されましたけれども、証券会社自体が有価証券の売買をお客と一緒になってやるという、しかも片方では御承知のようにアンダーライター業務をやる、あるいはセーリングと申しますか、ディストリビューターというか、そういう仕事をなさる、この辺についてはどう考えても私は証券業の特権、あるいはあえて言うならば、いままで放置しておいたのがおかしいような業務でないかと思うのですが、この辺についていかがでございますか。
  173. 安井誠

    ○安井政府委員 先生御指摘のように、証券会社がやっております業務について、相互にと申しますか、それぞれ独立して行うべきで、一社で行うべきではないという御議論があることも承知いたしております。しかし、考えてみますと、ブローカー業務だけ証券会社がやっておりますと、お客からの売り注文はあったけれども買い注文が現に出てこない場合があるわけでございます。そのときにはやはり仲介をいたしております業者としては、それにこの買いの方を自己の責任においてディーラー業務を使うことによってその価格形成ができないものを補うという補完的な役割りがあることも否定ができないわけであります。私ども、したがいまして先ほど申し上げましたようにブローカー業務があくまでも主である、約六割を占めているわけでありますが、このディーラー業務の方を極力それの補完的な範囲にとどめておくようにということの指導をいたしておるつもりでございます。いま先生の御指摘のような形での、たとえば大証券が一律にある特定の株を推奨販売をするというようなこともしてはいかぬということを私どもも言っておりますし、また証券業者の中でもそういう自主規制をしておりますし、さらには証券取引所の方も株価に著しい変動あるいは少し疑問となるような売買が行われているということになりますれば、たとえば東京証券取引所にも売買審査室というのを設けてそういうものを監視するという形をとっているわけでございます。
  174. 高橋高望

    ○高橋委員 局長、話をちょっともとへ戻していただいて、さっきは有価証券の売買の収入に対する率をお答えいただいたのですが、額として、たとえば四大証券全部で、一番新しい年次で結構ですけれども、どれくらいの売買益を出しておられますか。
  175. 安井誠

    ○安井政府委員 調べてお答えいたしたいと思います。ちょっとお時間をいただきたいと思います。
  176. 高橋高望

    ○高橋委員 それでは、局長、後ほどで結構です。  私は引き続いてお伺いしたいことは、証券会社が自己の計算で証券の売買を行った場合には、手数料はどうしておられますか。
  177. 安井誠

    ○安井政府委員 手数料は委託販売の場合にのみとっておるわけでございますから、自己の売買に関する限りはその売買差益がそのまま益になるわけでございます。
  178. 高橋高望

    ○高橋委員 それでは、あれほど騒がれた、非難をされた商社やあるいは一部製造会社、要するに過剰流動性をめぐって金もうけを図った連中が、それでも彼らは力関係で手数料が決められた手数料よりも少々低かったかもしれません、しかし手数料を払っているのに、証券会社自体はこの売買に伴っての手数料は全然構わずにそのままで済まされてしまっているのですか。
  179. 安井誠

    ○安井政府委員 証券会社が売買いたしましたものにつきましては、証券取引所の方には手数料を払っております。しかし、その証券会社自身が売買するのが商売でございますから、自分の商売からは手数料をもらうのもおかしくなるわけでございますから、売ったり買ったりするときによってその差額が得をしたり損をしたりする形になるわけでございます。商社の場合には商社が証券会社を通じて売買をなさるわけでありますから、証券会社の手数料をいただき、その手数料の中から証券会社は取引所の方に手数料を払う、こういう形になっているわけでございます。
  180. 高橋高望

    ○高橋委員 恐らくそれは平和不動産さんに手数料を払われるのだと思いますね。
  181. 安井誠

    ○安井政府委員 取引所でございます。
  182. 高橋高望

    ○高橋委員 取引所の方ですか。それにいたしましても一それでは仮に商社が証券免許をとればこの手数料はただになるのですか。
  183. 安井誠

    ○安井政府委員 商社が直ちに証券業の免許を与えられるかどうか。たとえば他業の禁止というようなことがございますからできないと思いますけれども、少なくともこの手数料を払わないで済むというのは証券取引所の会員にならなければならないわけでございますから、直ちにはそういうことはできないかと存じます。
  184. 高橋高望

    ○高橋委員 まさに私は証券会社の不当な特権の一つでないかと思うのです。しかもあの過剰流動性の時代でも商社並びに他の法人は株の売買益を出して収入としたことにずいぶんと国民の世論が高ぶった。弾劾の声が上がった。ところが一方株を本来の目的から外れたこういった売買益の中で済ましてしまっている証券会社があったということをお認めになりますか。
  185. 安井誠

    ○安井政府委員 先ほども申し上げましたように証券会社としては主たる業務はあくまでもブローカー業務でなければいかぬ。それを補うものとして、いわば潤滑油としてディーラー業務を認めておるわけでございますから、ディーラー業務の結果利益が出たりあるいは損を出したりすることがあろうと思います。ただああいう株価上昇のときには株を買うことによって利益が出たということも推察はされるわけでございますけれども、少なくともそのために証券業者が営業しているのではないということは申し上げられるかと存じます。
  186. 高橋高望

    ○高橋委員 残念ながら時間が来てしまいました。またの機会にお伺いさせていただくことにいたしまして、きょうはこれでやめさせていただきます。ありがとうございました。
  187. 小渕恵三

  188. 大原一三

    大原(一)委員 私は租税負担並びに今後における税制改正の見通し等について二、三お伺いいたしたいと思います。  先ほども議論になっていたようでありますが、大蔵省が今度おつくりになりました新しい財政収支試算における五十五年の租税負担率は幾らになるのでございますか。
  189. 山内宏

    ○山内政府委員 五十五年度におきましては専売納付金を含みましたところで国税負担割合は一五・〇%と考えております。
  190. 大原一三

    大原(一)委員 私いま手元に財政収支試算をお借りして持っているのでありますが、現在の負担率が一一・七%でございますね。それは間違いないとすれば、差額の三・三%負担率が上がる計算になっているのでありますが、これは新規の増税を織り込んで計算されているのでしょうか。
  191. 山内宏

    ○山内政府委員 先ほど一五%と申し上げましたのは一般会計税収プラス専売納付金でございます。いま大原委員のおっしゃいました数字は、恐らく特別会計も含めましたところの国税負担割合かと思います。財政収支試算の場合は特別会計は除外をいたしまして一般会計だけで数字を組み立てておりますので、五十五年度は先ほど申しましたように一五%でございますが、それは五十二年度におきましては一一・四%でございます。
  192. 大原一三

    大原(一)委員 それは新税は見込まれているかどうかということです。
  193. 山内宏

    ○山内政府委員 五十五年度までの間に新税を予測しておるのかどうかという御質問でございますが、これは先ほど来しばしば御説明を申し上げておりますように、現在の財政収支試算の三十五兆余りの数字は、これはあくまでも国の五十年代前期経済計画に乗っかりまして、それに示されておる諸指標をできるだけ財政の面でどういうふうに受けとめるかということを考えまして歳出を計算いたし、それに対応して五十五年度までに特例公債に依存しないで済む財政を形づくるためには税収に何がしが期待されるかという数字を算出いたしたものがこの三十五兆余りの数字でございます。それを租税負担割合に置き直して申しますると、四十八年から五十年度までの平均の負担割合一三・二%に対しましてほぼ二%程度国税においては税負担が上がる、地方税も合わせますると約三%上がるという中期経済計画の予測に合うわけでございます。そういったいわば積み上げではなくて試算の形で出しました数字でございますので、その税収の中身がどのようになるかは挙げて今後の議論になるわけでございます。  私どもといたしましては、昨年以来税制調査会におきまして中期税制の方向についての御議論を願っております経緯におきまして、やはりこういう形の財政をもたらすためには五十五年度までのある時期においてある金額の増税は避けて通るわけにはいかないだろうというところまでは覚悟をいたしておりますが、それがいかなるものになるかというのは、なお今後の問題として残されておるということでございます。
  194. 大原一三

    大原(一)委員 別の角度からもう一つ御質問申し上げたいのでありますが、このケースAの場合は一五、一二、一二という成長率になっておるようでありますが、これに単純にいままでの経験律による租税の弾性値をぶっかけまして税収をはじいた場合にはどういう形に負担率がなるのでしょうか。
  195. 山内宏

    ○山内政府委員 大原委員はよく御存じでお話しになっておられると思うのですけれども、租税の弾性値と申しますのは後から追っかけてみてなるほどそういうことであったかなということになるのでございますが、先行的に弾性値をもってかなり正確な税収の試算をやるということは非常にむずかしゅうございます。つまり、同じGNPの成長の度合いでありましても、その前が上り坂であったのか下り坂であったのか、それからその坂の険しさがどの程度であるのかといったようなことで、同じGNPの時期におきましても弾性値は必ずしも一つではないということでございますので、これは釈迦に説法みたいなことですが、どうもなかなか弾性値だけでは今後黙っておってどの程度税収が入るかということを的確に予測することはむずかしいわけでございますが、お話でございますので、仮に弾性値を丁三ということで計算をいたしますると、三十五兆と予測しております五十五年度には、一・三で延ばしてまいりますと三十兆程度にしかならないということでございます。
  196. 大原一三

    大原(一)委員 そうしますと、やはりこれは五兆円相当のものは新税ないしは租税の増徴という形でやらないと埋まらないという計算にはなっておるわけでございますね。
  197. 山内宏

    ○山内政府委員 先ほども申しますように一・三が果たしてよろしいのかどうかはいろいろ御議論のあるところだと思います。過去五年間で申しまするとこれが一・三九でございましたし、過去十年間で申しますと一・三五でございますが、これはその背景にありますところのGNPの動き方によってもかなり左右されておるのだと思います。そういう意味で、いま御指摘の五兆が動かない数字とは思いませんけれども、私どもといたしましても常識的に考えまして、増税がなくて三十五兆五千億になることはとても期待できないだろうというふうには考えます。
  198. 大原一三

    大原(一)委員 よくわかりました。  われわれ、ことしは減税適状にありという経済的判断から減税をお願いしたことになったわけでありますが、私は将来きっと増税の季節がやってくるだろう、いや将来じゃなくて、もう来年度、再来年度の税制改正からそういう問題が日程に上がるだろうと思うのであります。  私考えますのに、租税負担率のあり方というものをどういうふうに考えたらいいか。たとえば社会保険負担と税金の負担を合わせて五割に近い国というのが先進国の中で相当ございます。たとえばイギリス、それからスウェーデン、イタリア等々ですね。課税最低限を超えたところから五割も税金がかかるような税制、これは私は問題があろうと思います。やはり経済の活力というのは、国民の手元にそれだけの豊かさを残さないと経済自身が活力を失い、成長力を失っていきやせぬかということを私は考えるわけでありますが、そういう意味においていま例に挙げました国はみんな余り生々発展しない老いぼれ国家、こんなことを申し上げたら大変あれでありますが、だろうと思うのです。五割というのはいかにもきつ過ぎる。ところが日本の場合は大変低いわけでございますね。先進国の中では一番低いわけでありますが、これはまたいかにも低過ぎると思うのであります。  そこで、いわゆる適正な負担率、社会保険負担と合わせてどの辺がいいであろうかということを先進国の数字、そして一番低いところにわれわれがあるわけでありますが、並べて見ながら私もいろいろ考えるわけでありますが、税制当局としてはその辺にどういうめどをお持ちか、お聞かせいただきたいと思うのであります。
  199. 山内宏

    ○山内政府委員 最初の点はおっしゃるとおりであろうかとわれわれも思うわけであります。しかしながら、いかに何でもわが国の租税負担というのは諸外国に比べますと低い段階にあるのは、これは数字の点で明確でございます。他方、財政におきます赤字の大きさというものは、これまた諸外国に類を見ないほど現在大きくなっておる。そういう状態のもとで今後数年にわたっていかにすべきかということでございますが、これはわれわれといたしましては、国の中期経済計画に示されておりますように、やはり非常に多額の負担を短い期間にお願いをするというわけにはなかなかまいるまいと思いますけれども、いま、四十八年から五十年の平均に比べて三ポイント程度負担のアップというのは何とかお願いをしなければならぬのじゃあるまいかというふうに考えております。それが結局、先ほど申しましたような財政収支試算の数字になっているわけでございます。
  200. 大原一三

    大原(一)委員 私たちだけでなくどこかの党にも入ったようでありますが、新しい税金構想の中に富裕税の問題をわれわれは提唱しておるわけであります。これは戦後、シャウプ勧告によってわが国にも導入され、たしか税率は一%だったであろうと思うのでありますが、外国でも富裕税を取っている国が幾つかございます。わが国では三年間だけ実施しまして、これを廃案にして、その分だけ所得税の累進率を上積みしたという経緯があります。一%の富裕税をやめたことによって所得税の最高税率五五%を六五%に変えてしまったという経緯がございますが、これをやめました一番大きな理由は何でございますか。
  201. 山内宏

    ○山内政府委員 主として執行上の理由からであるというふうに承知をいたしております。
  202. 大原一三

    大原(一)委員 私はいま所得階層分布の状況を見ましても、やはりかなりの開きが出ておる、高額所得者と低額所得者の間の開きがだんだん広がってきておるという感じがいたします。そういう意味におきまして現在の累進率は七五%でございますけれども、何とかこの富裕税を新しい税制として導入することによって所得の不均衡是正に役立てる必要があるのではないかというふうに考えておりますが、この中期税制の御審議の中にも富裕税構想は——構想といいますか、議論が出ておるようでございますが、この辺について積極的にお取り組みになるおつもりはないかどうか。仮に一%の税率でもって旧来のやり方で課税をした場合に一体どれくらいの税収があるであろうかということでございますが、その辺何か数字がありましたらお教え願いたいと思います。
  203. 山内宏

    ○山内政府委員 富裕税につきましては、御指摘のように去年の秋の税制調査会段階でいろいろ御議論をいただいております。賛否相半ばするというふうな状況でございました。賛成論の方の観点から申しますと、いま御指摘のように富の保有の不均衡を是正するということに非常に役に立つのではないか。それからたとえば税の執行上の隘路につきましては対象者をうんと限定する、非常に高い範囲から富裕税をかけるということで何とか解決できるのではないかといったような御意見がございました。これに対して反対の側の御意見としては、やはり表現資産と不表現資産の価格の差が生ずる、そういう意味では結果的にアンバランスが生じるといったようなことが主体であったかと思います。  いずれにいたしましてもすでにわれわれとしてはかつて経験を持っておる税目でございますし、それからヨーロッパのある種の国々ではこういう制度現実にございます。それはそれなりにある種のメリットがあることも、私どもはそのとおりだと思います。ただ何といたしましても、やはり執行の面でいかに円滑にこれがやっていけるかというのが、この制度現実化できるかどうかの分岐点になろうかと思う次第でございます。  なお御質問の税収の点につきましては、これは先ほど御指摘のようにどの辺のところから足を切るかということによっても非常に違ってまいりますし、またその把握体制のつくり方いかんによっても大変変わってまいりますので、ここにちょっと私どもとしては数字を持ち合わせておりません。
  204. 大原一三

    大原(一)委員 私の手元にいただいた資料でありますが、西ドイツ、オランダ、スウェーデン、オーストリア、オーストラリアにつきましてやはり一%内外の税率での富裕税が実行されております。所得税の最高税率もオランダのごときは七二%でわが国より三%低いだけでありますが、〇・八%という富裕税を持っております。これらの国においては表現資産と不表現資産とをよう把握しないから実行できないという理屈はあり得ないんだろうと思うのでありますが、税務執行面の努力によっては、税制の公正化あるいはまた社会的公正というような見地からは、私は大変貴重な税目であろうと思うのであります。  そこでいま税務執行面の障害ということを御指摘になったので御質問申し上げたいのでありますが、アメリカはたしかケネディさんが大統領になられた一九六三年でございますか、いわゆる国民背番号制を採用した、社会保険番号をもって納税者番号とするというような制度を果断に採用されたということだそうでありますけれども、こういったことも私は前向きに検討されていいのではないかと思うのであります。寡聞にして私はアメリカしか知らないのでありますが、そういうシステムをとっておる国はアメリカ以外どこどこにございますか。もし資料がございましたらお教え願いたいと思います。
  205. 山内宏

    ○山内政府委員 他の国にもあるのかもしれませんが、私どももいまのところ具体的に把握いたしておりますのはアメリカの例だけでございます。
  206. 大原一三

    大原(一)委員 これを税制調査会等において取り上げられる気持ちがあるのかどうかですね。現在、銀行さんから、郵便貯金が二億口もあってけしからぬという議論が一方出ておるわけでありますが、この方法を採用すれば、たとえば名寄せという問題も非常に簡単に行われるのではなかろうか。銀行さんも困られるのかもしれませんけれども、いずれにしても、そういう資産が把握できないということは、富裕税ができないからいけないのじゃなくて、現在の税務執行そのものに見落としがあるということに対する御確認の発言だと見ざるを得ないわけでありまして、富裕税の問題とは別に、現在の税務執行のより公正を期するために、背番号と言うと大変きつうございますが、納税者番号を簡単に導入できる状況にあるのではないか。たとえば社会保険番号でいいですから、これはもう国民全体をほとんどカバーしておると思うのでありますが、そういうものを代置させて導入することは技術的には不可能でないと思いますけれども、その点について御意見をもう一度お伺いしたいと思います。
  207. 山内宏

    ○山内政府委員 いま御質問の点は、利子配当所得に対する分離課税をどうするかということを税制調査会議論願いました際に、やはり問題として出まして、これにつきましては、税制調査会から、現在私どもが御提案申しております税率引き上げということで御結論をいただいているわけでございますが、その際、それに付帯的に次のように申しております。ちょっと文章を読みますと、「利子・配当所得に対する適用税率が不安定であることは必ずしも望ましいことではないので、上記の経緯をも考慮し、改正後の特例措置については、その適用期限を昭和五十五年末とし、その間はこれをそのまま据え置くこととし、」その後でございますが、「これと併行して、利子・配当所得に対する完全総合課税を実現するための方策について、具体的、専門的な検討を一層推進することが必要である」という御指摘をいただいておりまして、私どもとしては、何が何でも五十五年末までには、そういう趣旨で利子配当に対する把握体制の改善に取り組まなければならぬことになっておるわけでございます。そのことは、ひいては、いま御質問の富裕税の前提条件を整備する、そちらのサイドから整備するという意味にもなろうかと思います。方法はいろいろあろうと思います。御指摘のいわゆる納税者番号制度もその一つであろうと思いますし、そのほかに、たとえば告知制度の厳格化とか税務執行体制の整備とか大口預金取引についての通知制度の創設とか、いろいろ考えられる制度がございますので、私どもといたしましては、そういうものも総合的に考え合わせまして今後勉強を続けてまいりたいと考える次第でございます。
  208. 大原一三

    大原(一)委員 いままでの税制調査会議論の中で、納税者番号制度を導入しようという意見はあったのですか、なかったのですか。
  209. 山内宏

    ○山内政府委員 そういう御意見を非常に熱心にお持ちの方はいらっしゃいまして、そういう御意見も出ております。
  210. 大原一三

    大原(一)委員 現在の税務執行面における一番大きな問題は、表現資産、不表現資産がつかまらないことによって看過されておるという実態ですね。どんなりっぱな税制をつくりましても、実行面でそういう抜け穴があるということは、やはりほかの税制をつくる前に直していかなければならない一番大きな問題であろうと私は思います。それがためには、いろいろ御議論があるようでございますが、民主主義の先輩国のアメリカさんも導入しておりますし、それはほかには何ら支障を生んでいないだろうと思いますので、新しい税制の発想の前にそういう見地から踏み込んでいかなければ、私は今後の合理的な税制の組み立てばできていかないのじゃないかという感じがいたします。特にわれわれも富裕税構想を持っておりますので、そういう見地からアプローチをしていかない限り富裕税問題も解決できないであろう。それから、付加価値税にしても、わが国は小売課税の流行しない国でありまして、一回やっちゃすぐ取引高税をやめちゃうようなところでありますが、こういう付加価値税構想の前提作業としても、そういう税務執行面における技術的な改革がなされないと不公平税制の上にさらにまた不公正税制を積み上げていくことになりはしないだろうかという危惧を持っているために、さような問題を御指摘申し上げたわけでございます。どうかひとつ前向きで御検討いただくようにお願いしたいと思います。  それから、私、企業の社会的責任という考え方から、代表的に二つの問題を税制面で取り上げてみたいと思うのであります。  まず第一番目は交際費課税の問題です。これは税務当局の歴年の御努力によりまして、毎年毎年改正されて、八〇%、八五%というところまでのし上がってきたのでありますが、いかんせん、配当が一兆五千億円、企業の飲み食いが二兆一千億円というのは、企業人として社会的責任論をぶつ資格はないと思うのです。飲み食いをなさるなら税金を払って飲み食いしていただきたいという意味で、私はできるだけ早い機会に交際費の一〇〇%課税を実行していただきたいと思います。  大体、企業というのは飲み食いするのが目的じゃなくて、まず配当するのが企業存立の目的でありますので、その配当金額が一兆五千億円、飲み食いが二兆一千億円というのは全くナンセンスだと思います。アメリカ、ドイツの税制のように、これはレギュレーションに入っているのか、どこに書いてあるのか知りませんけれども、一人の飲み食い代が二十マルクとか、日本流で言えば六千円とか七千円、それを超えたら否認いたします、銀座へ行って高級バーのビール一本分にも相当しないそうでありますが、そういうきつい規制までしている税制が先進国に現にあるわけでございますから、この交際費課税は、私は御努力は高く評価するわけでございますけれども、何とか一〇〇%課税水準まで持っていっていただきたい。  さらにまた、中小企業の四百万というのは、ちょっと多いのじゃありませんか。私、実態を十分調べてないのでありますが、四百万飲み食いしたらつぶれちゃうよというような中小企業がたくさんあるわけでありまして、それは中小企業の温存政策になるのかどうか。交際費課税をやるときに、よく税制当局では、中小企業に切り込むことになるから、こういう御説明もあるわけでございますが、四百万という数字がいいのかどうか、私はもう少し下げて三百万ぐらいになさってもいいのではないかという感じを持っておりますけれども、以上二つの点についてお答え願いたいと思います。
  211. 山内宏

    ○山内政府委員 まず最初の、一〇〇%課税をしてもいいのではないかという点でございますが、これは企業みずからが飲み食いをするのではなくて、やはり企業利益を得るために商売相手をつかまえて飲み食いをさせるというのがこの二兆円の主力だろうと思います。もともとそういう意味合いの経費でございますから、企業会計上は当然損金に落ちてしかるべきであろうというふうに思うわけでありますけれども、現在の交際費課税制度は、それにもかかわらず社用交際費に対する世論の強さということからこういった特別の措置を講じておるというふうに私どもは理解をしておるわけであります。  先ほどアメリカの例をお引きいただきましたけれども、恐らく交際費に対する物事の考え方、組み方というのは、わが国の場合とアメリカなりドイツなりの場合と少し違っているのではないかと私は考えております。と申しますのは、わが国の場合は御指摘のとおりある一定の枠を設けまして、その枠の中で支出をした交際費の認定につきましては、比較的緩やかと申しますか、お金を払っておることがある程度確認をされ、それが個人ポケットに入っていないんだということさえわかるならば、それは比較的緩やかに交際費として認定をされておるわけでありますが、そのかわり一定の枠があって、枠の外へ飛び出したものについてはそれなりの否認を行われる。一方、アメリカ式の場合はどうかと申しますと、これはむしろ個々の交際費が企業として経費になるのかどうか、あるいはそれを受けた相手方が所得課税を受けておるのかどうか、そういった個別の交際費に対する認定なりあるいはその後始末の課税なりということについて非常に厳格でございまして、その一つ一つについて右であるか左であるかということの点においてはわが国の交際費の税務調査よりははるかに厳しいように思われます。ただ、しかしながら、わが国の場合と違いまして、それぞれの企業にとって一定の枠というふうなものを与えられているものではなくて、いま申しました個別のチェックで通過をいたしました交際費はいずれも全額損金になるということで、わが国と諸外国とは少しその仕組みの仕方が違っているように思いますが、そういう意味でいずれが適正に行われておる、いずれがきついということはなかなか申しかねるわけでございます。  そういう状態でおります関係上、私どもといたしましては、わが国の交際費課税が直ちに一〇〇%損金不算入にならないとおかしいとは考えられないわけでございます。しかしながら、他方、いま委員御指摘のように税制を強化しても、あるいは全般的に不景気であるというふうな状態であるにもかかわらず、交際費だけはどうも順調に成長をいたしておるようでございますので、そういうふうな点をも勘案をいたしまして、私どもといたしましても今回ごらんのような形で御提案をさしていただいたわけでございます。  それから第二番目の四百万の点でございますが、これにつきましては、私どもとしても基本的には御指摘のとおりかと思います。大体全体二兆の交際費の中で、一億未満の中小法人はその一兆五千億、約四分の三は中小企業によって占められております。しかも、その支払った交際費の中で何がしが否認をされておるかという否認割合を見てみますと、中小企業の場合ですと一六・七%でございます。百円支出をしたら十六円七十銭が否認をされるという状態でございますが、大企業の場合はそれが六四・五%でございます。そこら辺が非常に大きく差が出てまいっておりますのは、いま委員御指摘の四百万が大きく働いておるからでございます。毎度税制改正、特に交際費の課税改正を試みますごとに、われわれといたしましても四百万についてこれでいいのかということを議論いたすわけでございますが、片や中小企業におきましてはみずから意図せざると申しますか、大企業の押しつけを受けて払わざるを得ない、そういった意味では、大企業とかなり前提と申しますか、根拠の違った交際費に対する支出圧力があるというふうなこともございますし、また他方、四百万につきましてはかなり長らく、昭和三十九年以来四百万ということで維持をしてまいっておりますので、その間の物価その他の上昇を考えまするならば、相対的には四百万もある程度の節約になっておるであろうということもあわせ考えまして、四百万のままで御提案を申し上げておる次第でございます。
  212. 大原一三

    大原(一)委員 もう時間がございませんので最後の問題でありますが、これは若干奇抜に聞こえるかもしれませんが一これは主税局長にお聞きしていいのかどうか、政務次官がいらっしゃるからあれですが、たとえば上場会社で売り上げの三分の一ぐらいを、これはめどはどこがいいかわかりませんけれども政府受注によって食って生きている会社がございますね。三分の一がいいのか二五%がいいのかわかりませんが、そういう企業はいわゆる標準配当、平均配当率と申しますか、過去三年間でもいいのですが、それを超えて配当してはならないと配当制限を考えたらどうかということを、私は物にも書いたし、言ったこともあるのでございますが、政務次官、唐突でございますけれども、どうお考えになりますか。そういう会社がたくさんあると思うのです。それがいわゆる一般企業が一割配当のときに、これを二割も三割も超えて配当するというのは、相手先が政府受注でございますから、私はやはり企業の社会的責任ないしは公正論からいって当然な措置ではなかろうか。また、さらにそれを超えて配当したものについては税制上の特例措置は適用しないというようなことも考えたらどうであろうか。一時そういう時期がございましたですね。戦後シャウプ以後の税制の中で配当制限をやったケースがございましたですね。これは主税当局の仕事なのか、まあ大蔵省の仕事には間違いないのでありますが、その点について御意見を承りたいと思います。
  213. 高鳥修

    ○高鳥政府委員 突然の御質問なので的確なお答えができるかどうかと思いますが、売り上げの三分の一なら三分の一を政府発注の仕事でやっておるという会社の場合に、その三分の一でもうけている場合と必ずしももうかっていないという場合もあり得ると思うのであります。これはそのときの経済情勢によりまして非常に変動がありまして、その三分の一なり何なりをとらえて、それがあるがゆえに配当制限を加えるということは技術的には非常にむずかしいことではなかろうか、このように思うのでございます。いずれにいたしましても、利益が上がり配当がたくさんできるような会社であれば、それだけ法人税もたくさんいただけるわけでありますから、それはもうけたからといって決して放置をしておるわけではなくて、有効税率で結局五〇%近くのものは国なり地方なりに納めていただくということでございますので、そうした会社に的確な課税をするということの方が当面重要ではなかろうか、このように思っております。
  214. 大原一三

    大原(一)委員 私が考えましたのは、そういう会社が非常にもうけてたくさん配当をやるということを制限する効果は那辺にあるかと言いますと、やはりその会社のやっているものの値段が下がるということであります。消費者サービスが充実するわけでございますので、政府受注等によって存立しておるような会社につきましては、そういうことも考えていいんではなかろうか、これは長期税制の中に入ってくるのかどうか知りませんけれども。  それともう一つ、最後になりましたけれども、これは質問予定ではなかったのでありますが、税制の弾力性を確保するために、景気調整基金をつくる構想その他はともかくとしまして、外国でも二、三例がありますが、たとえば消費税等について大蔵大臣権限でもって景気を見計らいながらできる幅をあらかじめ法律によって大臣に授権をしておく。たとえば五%増税いたします、五%減税いたします。それはもちろん税目を指定しなければ——所得税法人税じゃたまったものじゃないから、とりあえず間接諸税について、まあ付加価値税でも導入されれば大変いいのでありますけれども、今後、そういった行政的枠内における景気調整が税金を通じてできますというような仕組みも、御検討なすったらいかがなものでございましょうか。新自由クラブはそういう税制に賛成でございますので、私はそういう意味でもやはり発想の転換がここらでなされていいのではないかと感じます。これをお答えいただきまして私の質問を終わりたいと思います。
  215. 山内宏

    ○山内政府委員 直接税について申しまするならば、これまた委員十分御承知のところでございますけれども、わが国の租税制度はかなり強い景気に対する弾性を持っておると思います。これに対して、さらにまた諸外国が持っておりますような形の景気調整税制をつけ加えるかどうかという点になりますると、これは中期税制の御議論の際に税制調査会においても一応御検討いただいておりますが、機動的な、要するにタイミングのいい発動というのを確保するためには、どうもいまのままではなかなかうまくいかないのではないか、何らかの形での事前の経済指標の開発をもっと急がなければばならぬのではないかというふうな問題、あるいはもっと根本的には、現在のように公債を抱くような財政になってしまいましたものでございますものですから、そうした場合に、たとえば上がってきた金を公債の消化に回すのか何らかの特定の財源の形で保留をするのか、それがさらに発展をいたしますると、やはり現在の単年度主義の予算制度が果たしてそういった問題を受け入れ得るものなのかどうか、そういった点の御議論に触れてこようかと思います。  そういう意味で、御提案は一つのお考えと存じますけれども、いまのところ政府税調の御議論などに徴してみましても、やや消極的な御意見の方が多いような感じがいたします。別に、たとえばかなり大規模な一般消費税がわが国の租税制度の中に組み込まれるといたしますと、これはやはり御承知のとおり、比較的そういったものにつきましては景気に対する弾性が少ない税目でございますから、それを確保するために何らかの形でレギュレーターを採用するというのは諸外国の例に徴してもこれはあるようでございます。ただ、こういった問題につきましては、まずその前提になりますところの一般消費税の可否いかんという大問題に頭をぶつけておるというのが現状でございます。
  216. 大原一三

    大原(一)委員 ありがとうございました。終わります。
  217. 小渕恵三

    小渕委員長 次回は、明二十三日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会