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1977-03-02 第80回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二日(水曜日)     午後六時十九分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 山下 元利君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    大坪健一郎君       鴨田 宗一君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    砂田 重民君       丹羽 久章君    原田  憲君       村上 茂利君    村山 達雄君       毛利 松平君    山崎武三郎君       山下 徳夫君    山中 貞則君       伊藤  茂君    池端 清一君       大島  弘君    川口 大助君       沢田  広君    只松 祐治君       村山 喜一君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    荒木  宏君       小林 正巳君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵大臣官房審         議官      佐上 武弘君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   林  大幹君     大坪健一郎君   沢田  広君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任   大坪健一郎君     林  大幹君   武藤 山治君     沢田  広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  印紙税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。愛知和男君。
  3. 愛知和男

    愛知委員 初めて質問をさせていただきます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  時間も限られておりますので、余り突っ込んだ質問をさせていただくこともできないかと存じますけれども、また、昨日の審議を通じまして、ある程度問題も出た面もございますので、重複を避けながら印紙税についての幾つかの質問をさせていただきまして、また、もし時間があれば印紙税法改正の背景になっておりますわが国財政危機の解消の問題について政府のお考えをお聞きしていきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。  まず初めに、印紙税性格あるいは税体系における位置づけなどにつきましては昨日政府のお考えを聞かせていただきましたけれども、今後それでは印紙税についてどのように対処しようとしていかれるか。たとえば印紙税などはある意味では小さな税だというようなこともございますので、それを縮小とかあるいは廃止とかいう方向考えていくのか。それとも、小さいとはいっても旧税は良税ということもございますし、今後とも存続させていくのか、この辺につきましてお答えをいただきたいと存じます。
  4. 坊秀男

    坊国務大臣 お答えを申します。  印紙税は、御指摘のように税額から申しましても余り大きな税ではございません。しかし、社会に果たしておる役割りというものは軽視できまいと思います。そこで、この印紙税地位というものを十分認めまして、やはりこの税は維持するというか育てるというか、そういうような方向でまいりたいと思いますけれども、詳細なことは主税局長からお答えさせます。
  5. 大倉眞隆

    大倉政府委員 大臣から申し上げたとおりでございまして、間接税等の中の流通税と分類されておりまして、しかもその中の文書税ということで、それ自身にいろいろな限界はある税ではございますけれども、やはり明治以来ずっと続いておる税でございますし、まさしく愛知委員のおっしゃるように、旧税は良税ということもございますし、経済取引の中にかなり着実に溶け込んで、いわば納税者が非常になれておられる税だという面もございますから、やはりそれなり地位を保持するように今後とも大切にしていきたいというふうに私ども考えております。
  6. 愛知和男

    愛知委員 それでは、今度の印紙税法改正当たりまして、伺うところによりますと、旅券に対する印紙課税というものを検討してこられたというふうに伺っておりますが、今回の改正案には盛り込まれなかったわけでございます。何か特別な理由があってそうなったのか、あるいは今後どうするおつもりでいらっしゃるかというようなことにつきまして、お考え伺いたいと思います。
  7. 大倉眞隆

    大倉政府委員 中期税制としての御審議と五十二年度改正の御審議と両方あったわけでございますが、中期税制のときには、昨日伊藤委員からも御質問ございましたように、印紙税として課税を適当とする文書があるならば、現行法にとらわれずに今後とも検討したらどうかという一つの基本的な御指摘は受けておるわけでございます。  五十二年度改正に関しましては、かなり関係の方々から、この際旅券に対して何分の印紙負担を求めてもいいのではないかという御主張がございましたことは事実でございます。課税論の根拠にございましたものを私なりに整理して御報告いたしますと、一つは近来非常に海外渡航者の数がふえてきた。一人当たり持ち帰り品などから見ても、かなりの消費をしておられるようであるし、やはり海外旅行というものについてはそれなり担税力があると考える限りは、文書の背後に担税力を推定して軽い率で課税するという印紙税性格から見て、旅券課税対象に取り入れるということは十分理由があるのではなかろうか。かたがた非常に財政状態が苦しいのだから課税していいというものならば、旅券に対して一通一万円ぐらいの負担を求めれば相当の税収になるのではないかという御指摘であったわけでございます。  これに対して、結論としまして、五十二年度改正におきましては、政府案に盛り込むことを見送ったわけでございますが、消極論をまた私なりに整理いたしますと二つございまして、一つは、OECDとかあるいは国連とかそういう国際的な機構の中に観光問題を専門に取り上げるところがございます。これはもう十数年前から国際的な人的交流自由化ということを一つのテーマにしておられまして、そのために海外への旅行者に対して特に差別的な課税をすることは好ましくない。また海外旅行に際して何らかの手数料的な負担を求めるしても、それはできる限り実費に近い安いものであるべきであろうという趣旨勧告が出ておる。したがって、日本の置かれているそれらの組織の一員であるという立場からすれば、勧告には強制力がないとはいえ、やはり海外渡航のための文書ということは、旅券というのは明らかにそうなんだから、これに手数料のほかにまた印紙税を課するというのはいかがなものかという反対論一つございます。もう一つは、いや、それは法的な拘束力を持っている勧告ではないのだし、それから一通一万円程度負担印紙税で求めたとしても、それが日本人の海外渡航者の数を減らしてしまうとかなんとかいうことにはとうていならないはずである。したがって、印紙税課税範囲をどうするかということは国内問題なのであって、国際的な勧告があるからということだけで印紙税課税ができないという論理はおかしいだろう。  しかしながら、その問題は離れまして、五十二年度というタイミングで考えると、やはり貿易収支の面から日本貿易収支黒字をもうちょっと縮めてくれないかという期待ないし要望が外国にあることも事実だ。それは貿易収支の問題であって、貿易外で申せば日本は相当な赤字を宿命的に持っておって、経常収支それなりのバランスがとれておるということのためには、日本貿易収支黒字がなくてはいけない国なんだから、そういうことを十分説明すればよろしい。外国理解を求めて、別にこれで海外渡航者が減るとも思わないし、貿易外収支赤字を減らそうという趣旨でもないのだから、それは外国十分納得を求めればいいではないかという議論をあやなしながら、しかし、何としてもいまの国際環境からいうとちょっと時期が悪いのではないかということでございます。  したがって、私ども税制当局としての考え方としましては、引き続き検討はいたしたい。国際的な勧告があるからだめだというふうには考えない。印紙税として負担を求めることにはかなり合理的な理由はあるであろうが、しかし、提案する時期としてはいまは必ずしも適当でないということで、今回は見送らしていただいたわけでございます。
  8. 愛知和男

    愛知委員 それでは次に、二十八日、一昨日ですか発表になりましたいろいろな経済指標なんかによりますと、たとえば鉱工業生産、これなんかも一月は全く横ばいであったというようなことですし、それから先行きの動向を占う製造工業生産予測指数といったようなものも二月、三月と見通しは非常に停滞感だということで、いまや景気回復基調にあるどころか完全に停滞状態になってしまったというような報告があったわけでございます。こういう経済環境の中で、この印紙税というのはまことに小さな税ではあるかもしれませんけれども、やはり流通税の一種として経済活動に間接的ではあるけれども課税をしようというものであるわけでありますが、この大幅な改正というのが、いま景気回復が一日も早く望まれている今日、そういった企業活動に悪い影響を与えないだろうかと心配をするわけでございますけれども、この点につきましてどうお考えでございましょうか。
  9. 坊秀男

    坊国務大臣 御承知のとおり、印紙税受取書だ、手形だといったようなものの文書作成当たりましてきわめて軽微なる補完的税を課するということでありまして、個々納税者にとってはそれほど大きな負担を感ずるものではございません。それからまた税収の総額がGNPの中におきましてもそれから取引高トータルの中におきましてもそれほど影響力を持つほどのものではございませんので、これからの景気に対しまして悪影響があるというようなものではないということを考えたわけです。
  10. 愛知和男

    愛知委員 この印紙税法改正というのもとどのつまりは、当面しております財政危機から何とか脱出しなければならないということで、税の増収を図っていかなければならないという点にその出発点があると考えるわけでございまして、ここで、印紙税法とちょっと離れますけれども、その財政再建という問題についてちょっと大臣のお考えを聞かせていただきたいと思っております。  現在のわが国財政の姿というのは、申し上げるまでもなく国の一般会計の三割を借入金で賄うという姿でございますし、しかもその借金が投資とかあるいは将来の資産を見返りにして出されるいわゆる建設公債の発行によるものだけならまだしも、毎年の経常費までも借金に頼るというような姿になっているわけでございます。しかもその経常費の中の借入金比率というのが相当な割合にまで達しているというような姿は、わが国財政史上はもとより、世界でもちょっとほかに例のない姿だというわけでございまして、このような財政の姿を一日も早く是正しなければならないというのは、単に財政自体のためというだけではなくて、国民経済全体の立場から言っても一日も早くそのようなことが望まれるのじゃないかと思うわけでございます。たとえば経常費借金に頼るということはその負担を次の世代に押しつけるということにもなるわけでございますので、租税負担の世代間不公平ということをもたらすわけでございますし、また赤字公債に依存するということは、歳入歳出との関係から申しますと、入る方を決める前にとにかく出す方を決めてしまって、後になって赤字を埋めるために借金をするということになりかねないということで、本来一本化して表と裏として考えるべき歳出歳入をばらばらに扱うということになりまして、ブレーキが効かなくなってしまって、結局のところ財政インフレという事態に陥ってしまうという可能性もあるわけでございます。  このようないろいろな理由から申しまして、大量に国債に依存した借金財政は何とか解消しなければならないわけでございますけれども、いまの姿は、規模も大変大きいわけでもございますし、ちょっとやそっとのことではなかなかうまくいかない状態だと思うわけで、かつて経験したことのないような大変な危機にあると言わざるを得ないと思います。ところが国民立場から申しますとどうも財政危機というものがもう一つぴんとこないということが言えるのじゃないかと思うのでございまして、たとえば毎日の生活を通じてそれをはだで感ずるというような状態になっていないと言えるんじゃないかと思うわけであります。  しかしこのような財政危機を解消していくためには、国民理解なり協力なりがなければ、とてもこれからは脱出することは絶対不可能でもございますので、そういう意味で、財政再建運動といったようなものを国民運動的に発展させていくてとも必要でもございましょうし、あるいは国会においても、特に財政の再建問題を取り上げて総合的に検討するために、たとえば財政再建特別委員会のようなものをつくっていくというぐらいの意気込みでこれをやっていかなければとてもその目的は達せられないんじゃないかとすら思うのでございますけれども、この財政危機というものに対しましてどのような御認識をお持ちか、大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  11. 坊秀男

    坊国務大臣 愛知さんの財政に対する認識に対しましては全く同感でございます。私個人としては非常に敬意を表しております。御指摘のとおり、いまの日本財政は本当に私は、そう大蔵大臣心配してしまったのじゃどうにもなりませんけれども、重大なる時期に来ておるということを覆い隠すことはできないと思います。だから、どうしてもこの健全化を図っていかなければならないというようなことで、今度の五十二年度予算幾つか大きな目的がございますけれども、その中の一番大きな目的一つとして財政健全化ということを考えた次第でございまして、これをどうしていくかということがこれからの日本財政に与えられた、また財政だけじゃない、政治、国に与えられた一番の大きな問題であろう、かように考えております。  将来におきましては、この財政健全化を果たしていくためには国民皆さんに大変なごしんぼうと申しますか、御努力と申しますか、これをお願いしなければならない。こういう事態におきましてそれだけ赤字が出てくるまで予算の大きなものをつくったじゃないかというような御意見もこれあるやにお聞きいたしましたけれども、何にいたしましても、日本の今日の国民生活ということを考えてみますと、これはどうしても財政規模というものはある程度規模を保たなければならないというようなこともありまして、それやこれやの兼ね合いを考えまして、そして御審議願っておる程度の五十二年度予算を作成したような次第でございますが、これをこのまま、ただルーズに安易にやっていきますと、日本財政というものが本当に崩れてしまうというようなこともありまして、今後の行き方と申しますと、相当苦しいと申しますか、力が要ると申しますか、財政の上におきましてそういうような措置を考えていかなければなるまい、こういうふうに考えております。  そこで、いまおっしゃられました、国会においても何かそういったようなものを研究していく機関といったようなものをつくったらどうか、こういうお話でございますが、実は、民主主義国会というものはそういうことをやっていくそのものであるというふうに私は考えます。しからばこの国会がそういう目的のためにうまく活用され、うまく運営されておるかといいますと、私は国会運営を批判する人間ではございませんけれども、物事というものは理想的にはなかなか運ばれていないということは言ってもいいと思いますが、国会そのものを、とにかく日本国会でございますから、そこでその国会機能を、与えられた議会制民主主義という機能を理想に近い運営をやってまいりますことによって、これはおのずからいけるんじゃないか。たとえば、国会におきまして、今日までお互いにやはり政策闘争理論闘争をやるということは、政党政治でございまするから、これはもう当然やるべきことであって、またやらねばならぬことでありますけれども、しかしながら、国会が本当に裸になって、腹と腹とでもっていまの日本のこの危機をどういうふうにやっていくかということを、いま五常か六党ございますけれども、そういうところで一つの話し合いをやっていくということも、私は国会のやるべき仕事であろうと思います。しかし、これは一大蔵大臣の申し上げるべきことではございません。国会のそういったようなことをやっていくということは、これはぜひ国会にお願いして、財政を担当しております私といたしましては、財政を堅実に運営し、それからだんだんと強固なものにしていくためには、何としてでもそういったような方法を選んでいただきたいということでございますけれども、これは、私は財政当局でございますから、国会にどういうふうにおやりになるかということについて私から申し上げるのは、僣越でございますから、これは差し控えますけれども、どうぞそういうおつもりでお願いいたしたい、かように考えます。
  12. 愛知和男

    愛知委員 私が御指摘申し上げたいのは、やはり国民的な合意といいますか、これをつくり上げていくということが大変大切なんではなかろうかと思うわけでございます。その点に関しまして、どうしてもその危機から脱出するためには、いずれの時期かに増税をしていくということも、方向としては必要なんであって、この印紙税法改正もその一つだと考えられるわけでございますが、そういう増税ということに対して国民納得をしていただくためにも、逆に今度は歳出という面を考えた場合にも、少しでもむだを削っていくというような努力を積み上げていく、これはもちろん大切なことでございますが、同時に、ただむだを省くというだけではなくて、歳出のある財源を重点的あるいは効率的に使っていくということも強力に推進すべきではなかろうか、こんなふうに考えます。  このような点から、次の点、ちょっと財政当局の見解をお伺いしたいのでございますけれども、まず第一点は、いまの財政はいわゆる単年度主義ということになっているわけでございますが、こうなりますと、ことしはことし、来年は来年でございますから、どうしてもいろいろな要求をことしじゅうに何とかやらなければならない、また、要求をする方もことしに入らなければ来年はどうなるかわからないということになりますと、どうしてもことし何とか入れてもらいたいということで、この単年度主義を守ってまいりますと、どうしても予算使い方が散漫にならざるを得ないんじゃないか、こんなふうに考えるわけでございますが、この財政の単年度主義というものをもう少し弾力的にしていくようなお考えはないかどうかということをお伺いしたいと思います。
  13. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいまの財政健全化を図っていく上で長期的な視点財政運営考えなければいかぬというような御指摘は、全くそのとおりだと思います。憲法に毎年度予算国会に出さなければいかぬという規定がございまして、通称これを単年度主義と言っておるわけでございますが、この規定も例外がないわけじゃなくて、債務負担行為だとか繰越明許費だとか、そういうような制度も現にあるわけでございます。そこで、私どもといたしましても、ただいま大臣が申し上げたとおり、この二、三年来財政も困窮をきわめておりますので、そういうような、ただいま御指摘のような問題意識のもとに、財政制度審議会で小委員会を設けまして、いろいろな制度的な勉強をいたしておりますが、その中の一つとして、財政運営視点を長期的な観点から制度的にどういう改善を図るべきであるかというような検討を現在しつつあるわけでございます。
  14. 愛知和男

    愛知委員 同じ趣旨でもう一点お伺いをしたいのでございますが、現在の歳出は、前年度実績主義と申しますか、前の年度実績に基づいてことしは何%伸びたというようなことをもとにして、いろいろ財源配分をしているわけでございますけれども、特に、私は東北でございますが、財源の重点的な使い方ということになりますと、たとえば地域格差をなくす、東北格差をなくすというような点からいいましても、もっともっと重点的に財源配分してほしいと思うことがあるわけでございます。前年度比率何%ということになりますと、どうしてもこれが抑えられがちになるわけでございます。  そういうことを打開するために、たとえばいまのアメリカの大統領がジョージア州の知事のときにですか、言い出したと言われるゼロベースバジェットというような考え方があるわけでございますけれども、このような考え方を導入していくつもりはないかどうか、お伺いをしたいと思います。
  15. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ゼロベーシスバジェットというのは、またほかの言葉で連邦の予算局ではゼロベーシスレビューというようなことで、かねて問題にしておりますが、要するに予算根っこから見直すというような考え方を言うわけでございますが、私どもといたしましても、本年の場合、たとえば予算編成方針でそういうような趣旨をうたっておりまして、確かに御指摘のような前年度予算額にどうもとらわれがちであるということは事実でございますが、そういうことのないような努力は絶えずいたしております。  カーターの話、いろいろ議論もございますが、このゼロベーシスバジェットデメリットもあるわけです。たとえばデシジョンパッケージというデメリットがある、要するにお任せみたいになってしまうというか、仕事量が非常にふえるわけですね、そういうような指摘アメリカ予算局では議論されておりますので、御参考までにつけ加えさせていただきますが、御指摘のように、ともかく予算はすべてこれ根っこから見直すということが非常に重要な点かと思います。  たまたまいま東北地方公共事業配分の問題の御質問がございましたが、御承知のように、公共事業個々事業緊急性とか進度とか、そういうようなものを根幹にして実施計画の際に各事業省庁の方で積み上げをやるわけでございます。その結果が県別であるとかあるいは地域別というかっこうに出てまいるのが本来のあり方でございます。御指摘のような点が皆無であるとは思いませんが、基本的な考え方はそういうような考え方でやっておりまして、そういうような各省庁の積み上げたものを実施計画というかっこう大蔵大臣の協議がございまして、私どもといたしましても、そういう前年度増分主義というような考え方予算配分されないように、絶えず注意はいたしております。
  16. 愛知和男

    愛知委員 実はこの財政危機の脱出の問題が大事な課題としてある一方、いま所得税の減税の問題が大変大きな議論になっているわけでございまして、その点につきましてちょっとお伺いをしたいと思いましたが、時間もなくなりましたので、ほかの場での討論に譲らしていただきまして、以上で私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  17. 小渕恵三

  18. 只松祐治

    只松委員 大変な財政危機のときに九百七十億程度印紙税法改正案、これが皆さん方としては一番大きい目玉といいますか増税案ですね。私はこういうのをずっと見ておりまして、確かに総選挙を終わって直後だからいろいろ困難だったという面もあるかもしれない。しかし、大蔵当局というのは大蔵当局で厳然とあるわけだ。これ一つ見ても行き当たりばったりと言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、きわめて恣意的な、これだけの財政危機の中における大蔵当局のきわめて恣意的な安易な法案だ、こういうふうに私は思っております。したがって私は、いま与党議員からも質問がありましたから、皆さん方増税をされようとしておるこの印紙税法の前段になる諸問題を若干聞いておきたい、こういうふうに思うのです。  そこで、福田総理大臣も大蔵省の出身であるし、坊さんも絡んでいたわけですけれども、施政方針でお話しになった今年度財政の見通し、これに寸分の誤りがないかどうかまず大臣のお考えを聞きたい。
  19. 坊秀男

    坊国務大臣 はからずも大蔵大臣に就任いたしまして、就任するなり予算編成の真っ最中に飛び込んでまいった私でございますが、私は今度の財政予算につきましてはいろいろ御批判もあることはよく承知いたしておりますけれども、現事態に際しまして、これは神様のつくったものじゃございませんからそんな大きなことは言えませんけれども、今日私及び大蔵省のなし得る限りの力を注いでつくった、とにかくわれわれがつくったものとしてはこれが最善と申しますか、そういうふうに私は考えております。
  20. 只松祐治

    只松委員 それはそう言わなければならぬ、これは中途半端につくったとかいいかげんなものだとはおっしゃらないと思うのです。しかし、たとえば六・七%の経済成長の見通しをお立てになっておりますが、与党の議員さえも景気の浮揚は容易でないと、いま質問をいたしておりましたね。そういうことを見なくても、指数を少し見れば、わりと輸出を中心に伸びておった家電業界でさえもいま横ばいで頭打ちだ、こういうことになっておりますね。こういうことをちょっと考えてみても六・七%の経済見通しに間違いございませんか。
  21. 坊秀男

    坊国務大臣 去年からの経過をたどってみますと、春先はどうにか調子がよかった、それが夏以来だんだんと成長が緩慢化してきたということでございますけれども、去年の末あたりには、生産にいたしましても出荷にいたしましても前年同期に比べましては一〇%ばかりふえておる、こういうようなことでございましたが、それにつけましても、去年の十一月に七項目の景気浮揚の緊急措置をやった。それからまた先般御審議願って可決をしていただいた五十一年度の補正予算というものをつくった。そして今日、五十二年度予算を御審議願っておりますが、そういったような一連の財政の行為と申しますか、やりましたことは何よりも景気の浮揚ということを眼目といたしましてつくったものでございまして、私はこれらのことによりまして、経済がいまは御指摘のようにそれほど安心できるものではございませんけれども、これらの一連の行為がやがて芽を吹き、日本の経済というものは回復してくるということを信じておるのでございます。
  22. 只松祐治

    只松委員 信じておるだけじゃどうにもならないので、これがたとえば一%低く、五・七%しか伸びなかった。それならばすぐ税収は落ち込んできますね。そういうことで去年も大きな赤字公債を出されており、ことしの赤字公債なんかも結局そういうことで出ているわけですね。これは単年度だけではなくて、全体の、高度経済成長政策の失敗あるいはいろんな面からきているわけで、まあきょうはこれが主題ではありませんから、こういう問題についてそう討論しようとは思いませんけれども、ただこういう見通しが根本的に狂ってきますと、税収から何から全部狂ってくるわけですよ。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 だから、信じているということでございますから、信じておることが当たればいいけれども、これは神様を信じてやるものではない。当たらなければ、これは国の財政を預かる者として大変なことになる。  そこでもう一つだけ聞いておきますけれども、世界経済も大体順調に回復軌道に乗っておる、特に社会主義国までなかなかおわかりにならないでしょうが、資本主義国もそう見通しは狂わない、こういうふうに思いますか。
  23. 佐上武弘

    ○佐上政府委員 財政演説でも述べられておりますけれども、確かに一九七三年の石油ショックによって、OPECの国々を除く先進諸国及び発展途上国も非常な打撃を受けまして、先生御案内のとおり、七五年には主要な七カ国のうち日本とカナダの二国を除きましてみんなマイナスになりまして、七カ国平均がマイナスの一・三というような数字になったわけでありますけれども、昨年、七六年に入りましてからやはりそういったショックを若干吸収しまして、最近のOECDの発表いたしました主要七カ国平均の成長率、実績は、一・三のマイナスが、これらの国は世界のGNPの大部分を占めておると思いますけれども、それが五・五%のプラス成長になった。とりわけアメリカの成長が、従来は四%の年率でありましたけれども六%、最近のカーター政権の発表によると、実績は六・一%というような数字になっております。確かに秋筋からドイツやあるいは米国におきましても、盛んにポーズと申しますか中休み的な傾向がございましたけれども、昨年の暮れからアメリカも西独もかなりピッチを取り直してございます。ただアメリカは御存じのように大変な異常な寒さでございましたけれども、これも一時的なものであって、大体米独を中心にし、日本も当然でございますが、昨年ほどの非常な急激な上昇は、インフシの問題もございますから期待できないにしても、従来の、過去のパターンより若干上の方の景気回復のパターンをするであろうというように私ども理解をいたしております。
  24. 只松祐治

    只松委員 あなたたちの論議を聞くと、経済成長、成長と、成長すれば経済はいいかのような論議ばかりだ。福田さんが演説したのを聞いてごらんない、何を言ったかというと、資源有限時代というのを四回か五回言っていますよ。いいですか。資源有限時代というのは、何かといったら、成長とは別な意味で反することでしょう。いわゆる有限な資源の中においてどう世界の経済を持っていくか、あるいは資源のない日本という国を考えた場合、極端に言うならば成長なくしてどうやって日本経済を持っていくか。したがって、その中枢を占める金融、財政、税制をどうしていくか、こういうことを考えなければだめじゃないですか。あなたたちの答弁やら物の考え方、発想というのは、いままでもそうですが、すべて成長経済というものに基本がある、いまの事務当局の答弁を聞いておったって。ぼくは事務当局でなくて、大臣の答弁を聞こうと思っているのだけれども、そういうふうに成長だけを頼みにして、成長すれば何とかなる、こういうことなのだ。それじゃ資源有限時代だと言った福田総理の趣旨には大変反することじゃないですか。資源有限時代だということになれば、当然限定されたものの中における別個の経済政策、別個の金融財政、あるいは別個のもっと抜本的な税制というものを考えなければならない。あなたたちがそういうことを考えておるから、後にもぼくは国債や何か多少聞くけれども、これだけ大きな落ち込みが来て、どうにも、につちもさっちもいかない、こういう事態になってきているでしょう。大臣どうです、そういうお考え
  25. 坊秀男

    坊国務大臣 総理が資源有限ということを何回か言っておりますが、資源有限ということは、かって日本も世界もとにかく経済が高度成長をした、そのときには、資源による制約というものはまだあらわれてなかった。そういう状態から石油ショックという、ほかにも資源有限はありますけれども、一番大きな資源の有限にぶつかりまして、そういったような事態が生じたから、そこでかつての高度成長時代とは違うのだ、この資源有限の時代においては、経済をどう運営していくかということについて総理がいろいろなことを考えたり、いろいろなことを実施に……(只松委員大蔵大臣はどうだ」と呼ぶ)大蔵大臣は福田内閣の一閣僚です。私の意見は総理大臣にも言いますし、総理大臣からまたいろいろな指示も受けてやっております。そういうことだと私は思っております。
  26. 只松祐治

    只松委員 じゃ高度経済はいいことではない、こういうお答えですか。
  27. 坊秀男

    坊国務大臣 いいことではないとは申しておりません。高度経済成長時代のような行き方、心構えでもっては、この資源有限の現実の世界におきましては経済をやっていけないぞ、だから、高度経済の夢を払拭してかからなければならない、こういうふうに考えております。
  28. 只松祐治

    只松委員 俗に言われておる安定経済成長、こういうことになるのだと思いますね。じゃ安定経済成長というのは大体経済成長率何%を言い、また日本の場合には何%が望ましい、こういうふうにお考えですか。
  29. 坊秀男

    坊国務大臣 これは私は、あながち数字によってここまでいけば安定成長だ、ここまでいかなかったらどうだというものではないと思います。
  30. 只松祐治

    只松委員 それは毎年毎年、ことしは五%がいい、来年は七%がいい、そういうものじゃないですね。だから、それは一定の計画というものが必要だ。さっき予算でもそういうことを与党の議員が話をしておられましたね。当然に、行き当たりばったりではなくて、やはり何年かの計画を立てる、そういうことを展望して私は言っておるわけです。だから、ことしは税金が余り伸びなかったから七%にしよう、いやことしは三%にしよう、そういうことではなくて、大体七%くらいを安定成長と見るのか、いや五%を安定成長と見るのか、そういう形で、とにかく望ましい日本の経済成長の姿というもの、それがあれば次の税収の見通しもまた立ってくる。それがなくて、経済成長を何%にさせていくかわからないで、これだけ落ち込んでしまった税収をどうするかということが大変な問題になってきておるわけです。だから、私が聞いておるのは単に経済論議をしておるのじゃなくて、税金の問題、税収の論議をする前提としてお伺いしておるわけです。何%が望ましいと思うか。
  31. 坊秀男

    坊国務大臣 五十年代の前期経済計画というのは只松さんも御承知のとおりだ。一応のそういったような目標、五十五年度における日本の国の経済の姿というものを一応試算いたしまして、その試算の方向へ持っていこう、こういうふうに考えておりますが、その五十五年度を試算した経済計画、その経済計画を足がかかりとしまして、御承知のとおりの財政収支試算というものを去年の二月に国会へお出ししましたが、去年の十二月から一月にかけて予算ができましたから、今度現にできた予算をこれに置きかえまして、そして目下大蔵省で試算をつくっております。この試算につきましてはもう御承知のことと思いますけれども、事務当局から概要の説明をさせていただいたらどうかと思います。
  32. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんから、余りこういう問題だけ論議できませんから……。  さて、そういう前提に立って、それではことしの税収ですが、当初十八兆二千四百億円、これは大体間違いない、こういうお考えですか。
  33. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは只松委員よく御承知のとおり、一番最近までわかります実績を基礎にいたしまして、それに政府の経済見通しの予想値を加味して税収を見積もっておりますので、大臣が申し上げましたように、政府経済見通しで予想されている程度の経済運営である限り、税収もほぼそのとおりに入ってくるという前提で積み上げておるわけでございます。
  34. 只松祐治

    只松委員 これは、大体真ん中をとってあるのですか、それとも少しは余りそうだ、こういうふうに下をとってあるのですか。いや、ことしは足りなくなる、上をとってある、目いっぱいですか、どうですか。
  35. 大倉眞隆

    大倉政府委員 政府経済見通しの中の雇用の伸びでございますとか、一人当たり雇用者所得の伸びでございますとか、生産の見込みというもの、それをそのまま使っておりますので、何と申しますか、正直ベースの見積もりでございます。
  36. 只松祐治

    只松委員 どういうふうに正直か、正直にと言っておったって計画よりうんと落ち込んで——大蔵官僚は天下の秀才が集まっておると言われておるのですが、その天下の秀才が集まって、そしてこれだけのコンピューターを使いながら大変な見込み違いというものをおやりになっておるわけですね。だから、世界経済に大変な影響を受ける日本、世界経済あるいは日本経済の動向、そういうものがぴちっとしないと、当然税収の見込みというものは出てこない、違ってくる、こういうことになる。そういう中で、十八兆二千四百億の税収、二兆九千六十億円の自然増収、こういうふうになっておる。そういう中でこの印紙税が九百七十億円初年度増収になる、こういう見通しをお立てになっておる。この二兆九千六十億円からいたしますと、九百七十億円なんてこれは大した額ではない。で、私がきわめて恣意的で、場当たりほどではないけれども安易だと言うのは、これだけのいわゆる自然増収、あるいは次に聞きますけれども、公債というものを抱えて、本当に日本はいま財政危機だ、こういうふうにいま大臣がおっしゃておりましたけれども、抜本的に解決しようという案じゃないでしょう、この九百七十億くらい。これが一番大きな増収財源だ。ほかに自然増収はありますよ、別に。だから、これは余りにもイージーゴーイングだと私は思うのですね。さっき大変だ、大変だとおっしゃた。大変なら大変らしい税制に対する取り組みをしていかなければならぬ、こういうふうに思うわけです。  次に、そういう若干の自然増収を見込みながら、結局なおかつ本年度八兆四千八百億円の公債を発行なさっておるわけですが、よく赤字公債についてここまで赤字だ、ここまで黒字だということをおっしゃいますけれども、これは色分けしたり線を引くことはなかなかむずかしい。福田さんが大蔵大臣のときに戦後初めて赤字公債が発行された。そのときに質問をし、本会議で反対討論をしたのは実は私なんです。いや、これは税収に思わぬ不足が生じましたのでやむを得ず出しますが、というようなことで、しかも増大はいたしません、当時いろいろなことをおっしゃっていますよ。それで戦後初めての公債発行ですから、私も余りわからない。戦時公債の発行しか前例がないわけですからね。それで一生懸命に私も勉強をした。福田さんはその後絶対にふやさない、こういうことも繰り返しおっしゃっていますよ。ところが今日残念ながら、現在でも二十兆円からになっておるし、ことしのものを含めれば二十九兆円を超しておる。こういう大変なことになってきつつあるわけです。大蔵大臣は、現在の税体系のもとで税金がなかなか伸びない、それでさっきの六・七%経済成長をしても、二兆九千億からの自然増収があってもなおかつ四兆円からの赤字公債、実際上は全部で八兆円からの公債を出さなければならない、こういう事態をどういうふうに受けとめておいでになりますか。
  37. 坊秀男

    坊国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、日本の今日の経済を健全化していくためには、これからが容易ならぬということでございまして、年々ある程度の増収を図っていかなければならない。ところが、その増収を図るに当たりましては、一体どういう方法があるかということなんですが、普通収入を図っていくためにはやはりある程度増税ということはどうしたってやっていかなければならない。そういうために中期税制をどうしていくかということにつきまして、去年の六月から税制調査会におきましていろいろな勉強をしていただいておるというような状態でございます。
  38. 只松祐治

    只松委員 はからずも増税という言葉をお使いになりました。これは福田さんもこのごろちょいちょいおっしゃっていますから、ある意味では事新しいことではないかもしれませんが、この問題については後で聞きます。しかし、この中期税制はいつどういうふうに出てきたり具体化するのか、わかればお教えをいただきたいと思いますが、恐らく五十三年度あるいはその翌年あたりも一挙に大幅な税制改正ができるとは私は思いませんね、いまの国会、与野党の関係なりいろいろ政治情勢を勘案して。そうしていきますと、いまの税体系の中では、多少の自然増収がありましてもやはり赤字公債は増発して続けなければならない、こういうことになると思う。いまのままの状態で三〇%——〇・何%減らして、いや少し減らしましたなんというつまらぬことをおっしゃっていますけれども、とにかく三〇%前後のものをあと二、三年続けていけば五十兆円は必ず超しますね。日本の国家予算が幾らふくらんでも、あと二、三年のうちに五十兆円を超すことはないでしょうね。そういう中で、あなたたちが大インフレーションを起こすという腹なら別ですが、そのときは自民党がつぶれるときでしょう。そうでないならば五十兆円を超さない。ところが公債の方は五十兆円、平年度予算を超す、いまの状態を続けていくとこういう恐るべきことが当然いまから予測されますね。こういうことをどうお考えになっておりますか。
  39. 坊秀男

    坊国務大臣 だから先ほど来、日本財政というものは今日非常な危機に臨んでおる、そこでこの危機を解消していくためにはよほどの決意が要るんだ、こういうふうに申し上げておる。しからば、それを一体どういったような方法でもって、具体的に申し上げれば、税の改正をやるということになれば一体どういう税でやるかということになるのですが、それにつきましては、これは税制調査会に真剣に研究してもらっておる、こういうことでございます。
  40. 只松祐治

    只松委員 まあ何かあると悪いくせで、何とか調査会に研究してもらっているとかその答申を受けてとか、こういうことが逃げ口上のあれですね。そういうことじゃなくて、やはり政党政治ですから、あなたも自民党を代表して大臣になっているんだから、ちゃんと答えなさいよ。わが党は自民党はこういうあれを持っているんだあるいはわが内閣はこういう考えがあるのだ、それで国民にこういうふうに訴えたい、こういうのがぼくは政党政治だと思うのですよ。調査会や何かを隠れみのにしたりしないで、とにかくこうやって行き詰まっている、しかしわが内閣、わが党はこういうふうにしたいんだ、こういうことをひとつ言ってください。
  41. 坊秀男

    坊国務大臣 もちろん自由民主党におきましても、税制調査会あるいは政調審議会というようなところにおきまして、この政策については真剣に検討しておるということでございます。
  42. 只松祐治

    只松委員 検討している具体案がありましたら、ひとつ骨格でもいいからお話をいただきたい。
  43. 坊秀男

    坊国務大臣 いまその具体案を申し上げる段階にはなっておりません。
  44. 只松祐治

    只松委員 そこいらが行き当たりばったりで、結局ことしの予算案、税制を審議しているんだからことしのことだけ言っておけばいい、こういうことだと思うのです。そうじゃないと思うんですね。来年を予測したって、いまの状態の中で大きな自然増収は出てきませんよ、あるいは大きな税の増収は図れませんよ。図ろうとするならば、たとえば不公正税制の一つである医師の税制くらい手をつけ切らないで、こんなこと一つさわり切れないで、そうしておいて何ができますか。抜本的にやるなんて、冗談じゃないですよ。そこまではまだいきませんけれども、ただ時間がないからあれですが、もう少し具体的に来年、再来年を展望して、とにかく赤字公債を減らしたい、だからこうだということを、ひとつ初めての委員会のしょっぱなですからもう少し基本的なことを、ことしだけのことじゃなく、一年や二年くらい展望した大臣考え方を、大臣も半年や一年でやめられるわけじゃないでしょうから、言ってください。
  45. 坊秀男

    坊国務大臣 具体的に何税をどうするというような段階にはなっていないということを申し上げておるのです。
  46. 只松祐治

    只松委員 まあこれ以上言ったって、確かに、ないというよりも腹の中にないんだとぼくは思うんですよ。医者の税制一つ当たり切れないで、抜本改正なんて腹の中にないと思う。それで答えられないのじゃなくて、ない。あるならひとつ言ってもらいたいけれども、ないんだと思う。しかしそんなことを言っておったってしょうがないので、また公債は来年も再来年もどんどん、恐らく来年は十兆、その次は十二兆だ何だと出していかなければならないでしょうね。大変なことになりますよ。当然に、私が質問する前に、あなたが先にみずからおっしゃったけれども、この税制の抜本的な改正、本年のようなちょこっといじくるような形じゃなくて、少なくとも来年あたりは抜本的な、どんなにおそくても再来年までには抜本的な改正をしないと、公債は五十兆円を超します。どうしようもなくなりますよ、日本のあれは。そんな五十兆円も借金をつくってもらって社会党に政権を渡してもらったって、これはどうしようもないよ。  だから、そういうことはさておきましても、とにかくこの日本の国家を考えて、五十兆円をどこにめどを置くかということもいろいろありましょうが、五十兆円を超した公債を抱え、あるいは平年度予算を超した赤字公債を抱えた財政政策は、これはまずだめですね。破産会社と同じようなことでしょう。そうすると、どうしてもここで税制の抜本改正ということが問題になるのですよ。その点について、ただ単に税調が中期税制の展望、見直しなり何なりを行っている、こういうことだけじゃなくて、あなたが国民にしんぼうとか努力なんかをお願いしなければならない。それをするなら、先に財政当局大蔵当局がその骨格ぐらいは国会で——ことしだって八兆から出しているのですから、来年も出さなければならぬでしょう。どんなことを言ったって、あなたが大蔵大臣をしている限りにおいては、六・七%経済成長したって来年も出さなければならないのですよ。来年、赤字公債を出しませんか。出すでしょう。当然にこれは税制の抜本改正を行わなければならない。その骨格ぐらい、どういう方針でいくかぐらい述べてください。
  47. 坊秀男

    坊国務大臣 腹にあるとかないとかというようなことでございますが、それはあなたの御想像、自由に御想像していただいたらいいと思います。しかしながら、税をどう改正していくかということにつきましては、いろいろな私は検討の事項があると思う。たとえば、あなたは玄人だから御存じでございましょうけれども、税の中には直接税があり、間接税があり、あるいは資産税があり、それからいままでの現行法による税があり、さらにまた新しく考えていくべき税がある。もう数限りなく税があろうと思います。その中で、いま勉強してもらっておるその税の一体どれをとるとかどれをどうするとかということを、今日私はまだそういう段階にまでは至っておりませんということを正直に申し上げておるのですがね。(「不公正税制を是正する」と呼ぶ者あり)それもあります。
  48. 只松祐治

    只松委員 たばこの値上げをしろとか酒やビールの税金を下げろとかなんとか、具体的に言っているのではないのですよ。間接税、直接税をどうせいとか言っているのではない。たまたまここでやじが出ましたが、たとえばいま私たちが一兆円減税ということを言っていますよ。これは、私たちからすれば別な意味の不公正税制を正せということを言っているのですよ。したがって、いまからいずれにしたところで、名前を言ってもいいけれども、ある政府高官は、三割は増税しなければどうにもいまから日本はやっていけない、こういう具体的な数字を挙げて、公式の席じゃないけれども、準公式の席で対外的に発表したこともありますよ。だから、そういうことも考えて、ぼくはなるほどそういう考えもあるのかなということを頭の中に置いておる。これも一つの骨格ですよ、言っておくけれども。三割なら三割やはり増税を図っていかなければ日本財政はやっていけない。だから、個々の税金までぼくはまだあなたに聞こうとは思っていない。しかし、大体二割なり三割なりいまから増税していかなければならない。所得税やなんかありますから、各国の税率や負担率なんかの論議はまた別の機会にいたしますけれども、とにかく増税はおよそ何割ぐらいしていかなければならない。それから、当然にそういう増税をあなたたちがするならば、増税しなくてもとにかく不公正税制の是正はしていかなければならない。これだけ国民が税金に目を向けてくる、これはあたりまえのことです。背は、幾ら言っても、いままで労働者さえもなかなか税金に目を向けなかった。しかし、こうやって税金に目を向けてきた。こうなってくれば、当然に不公正税制の是正はしていかなければ、もう税金なんてなかなか取れるものじゃないですよ。そういうことを言っているのです、骨格というのは。そういう基本方針ぐらい話されたらどうです。
  49. 坊秀男

    坊国務大臣 何遍お聞きいただいても、何割減税をするとかなんとかということを、今日の事態におきましては、これは申し上げる段階に来ていない、こういうことですよ。
  50. 只松祐治

    只松委員 じゃ、いまの税制は正しい、いまの税制でいい、こういうことですか。
  51. 坊秀男

    坊国務大臣 今日、五十二年度予算及びその予算の根幹をなすところの減税というものは、私は、これがわれわれのつくり得た最善のものである、かように考えておりますが、いまおっしゃる五十三年度あるいは五十四年度、五十五年度における税制の改正計画を出せ、こういうようなお言葉のように思われますが、それは今日ここで申し上げる段階には来ておらないということを申し上げております。
  52. 只松祐治

    只松委員 それだから、ぼくはつけたりだ、余り論議もしていないと言うのですよ。たとえば印紙税やら登録税やら、もうできたもの、通ったものと思っている。いまから審議するのですよ。あなたたちはできたもの、通ったものという前提に立っているから、ことしのことはもういい、ことしのことはりっぱなものだ、来年、再来年のことはまだ言う必要がない、こういうことを言っているのですよ。ことしのことはいま審議しているのですよ。自民党が多いから通るだろうという前提に立ってあなたたちはそういうなめたことを言っているだけの話であって、いまことしのことを論議しているのです。ことしのことを論議するならば、当然来年、再来年のことも展望して税制の論議なりをしていくのはあたりまえじゃないですか。いいですか。だから、ことしのことも論議しているし、いま法案を審議しているのですよ。五十三年度、四年度のこともあわせてしているわけですよ。そういう基本的な公債という面一つからだけ見ても、あるいはこれはのけて、税収というものを、あなたはプロだが、ちょっと玄人が考えても、伸びないということはわかっていますよ。そうすれば、抜本的に税体系を何とかしなければ大変だということはわかりますよ。さっきからあなたが言っているように、税のことは増収、増徴以外にないということを抽象的には言っているのでしょう。それをもうちょっと具体的にどうかということを聞いているわけですよ。具体的に言えないの。
  53. 坊秀男

    坊国務大臣 いま御審議を願っておるのは、われわれが一生懸命になってこれが最善だと思ってつくった税制なんですよ。だから、これはぜひともひとつ成立をさせていただきたい。何もこれが今日すでにでき上がったものだというようなことは考えておりません。ぜひともこれをひとつ成立させていただきたい、審議して通過をさせていただきたい、こういうふうにお願いをしておるのです。それで、その次のことを一体どうだとおっしゃられましても、私は隠しも逃げも何もしておりません。いまのところはそういったような計画はまだできておりません、こう申し上げておるのです。
  54. 只松祐治

    只松委員 だから、いまの税体系、税制度は公正であるし、りっぱなものとお考えになっておるかどうか、こういうことです。
  55. 坊秀男

    坊国務大臣 だから、いまの税制というものは、これは改正していかなければならないということは考えておりますけれども、それならおまえ、改正するのならどう改正するのだというふうに追及をせられましても、私にはいまのところそういったような案ができておりません、こう申し上げておるのです。
  56. 只松祐治

    只松委員 きょうは、ほかに法案がありますから、この問題はまた別にしたいと思いますが、やはりいまの税制は不公正があるのですね。利子の特別措置だけじゃなくて、細かいいろいろな問題があるんですよ。きょうは時間もありませんし、私は論議しようと思っておりません。ただ、私、いまから租税特別措置やらあるいは所得税やら法案審議するのに、最初に大臣のそういう法案やあるいは全般に対する考え方を聞いておきたい、こういうことで聞いているんだけれども、なかなか中に突っ込んだ返事を一向されないから、これは時間がないから押し問答しておったってしようがないから、印紙税を若干聞いておきたいと思うのですが、印紙税が若干上げられますと、どこの層にどういうふうに影響を及ぼしてくるか、それを想定はされましたかどうか。
  57. 大倉眞隆

    大倉政府委員 昨日伊藤委員にもお答えいたしましたように、印紙税が、その全体がどういう文書にどのように張られておるかということを把握するのは非常にむずかしいわけでございますが、私どもなりに納税者の御協力を得ましてサンプル調査をいたしまして、それを結果としてかなり大胆な推計をいたす以外にないのですが、非常に大ざっぱに申し上げますと、いわゆる大企業分と中小企業分というのはほぼ半々ぐらいの感じで負担していただいているのではないかという推定をいたしております。
  58. 只松祐治

    只松委員 あなたの方も調査なさったんだろうと思いますが、私が二、三聞いてきた会社の範囲内で、月商一億円前後、だから年商十億円ですね。月に大体二十万円ほどのところがあるんですね。それから、これは月商一千万、年商一億円ですが、これは年間二十万円。(大倉政府委員「年間でございますか」と呼ぶ)それから年商五千六百万円で——この場合月商ですね。いや、前のところも月商です。月商一億円で二十万円。五千六百万円で四万円。これは業種によってやはり相当幅が出てきますね。どういうところに多いかといいますと、やはり自動車とかあるいはトラックあたりの運輸、運送業ですね。こういうところは、毎月手形でずっと出てますから、相当大きいですよ。それから、そうでもない一般の商店は、一万円前後から幾らということです。したがって、運送業なんかやっている人は、たとえば十万円だと百二十万円年間払っている。これが二百四十万になるわけですから、今度は相当の重税になってくるわけですね。こういう点について幾つかお調べになったことがありますか。
  59. 大倉眞隆

    大倉政府委員 只松委員おっしゃいますように、業態によりましてかなり印紙を張る文書をたくさんつくられるものと、たとえば普通の小売屋さんのように領収書は出しているけれども、ほとんど一〇〇%は免税点以下だというようにいろいろ違うと思うわけでございますが、ただいま御指摘のは、いろいろお話を伺っておりますと、手形に張るための印紙が相当多いというケースのように伺いました。今回、手形は、階級定額になっております部分は変更いたしておりません。一番上は直しておりますが、真ん中のところは直しておりませんので、一番小さい金額の手形の枚数がある程度多ければ、その分は二倍になりますけれども、おっしゃったような年商ですと、ちょっと見当で申し上げて申しわけないのですが、一番下の手形よりももうちょっと大きい手形ではないかなという気はいたします、金額的な対比からしまして。階級定額の真ん中はいじっておりませんので、そこで急に負担がふえるということはないだろうと思います。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 只松祐治

    只松委員 要するに泣き面にハチというか火の車みたいで、手形を年じゅう切っておるところとかあるいは年じゅう借金して書きかえ書きかえしている、こういうところが一番今度の場合被害を受けるというか直撃されるわけですね。いわば優秀な企業というか、手形なんか余り使わないし、そういうことをしないでコンピューターを使って銀行決済をしている、こういうところは全然被害を受けないというか、無関係なんですね。だから、銀行決済している、それでコンピューターで処理されているところは、印紙税の何の関係もこれは受けていかないのですよ。だから、大きい会社と中小企業の会社と半々くらいじゃないか、こういう答弁があったけれども、私はそうじゃないと思うな。大きい会社でコンピューターを使って、コンピューター処理をやっているところは、一番最初契約か何かするときに百円やっておけばそれで済むことでありて、後の決済要らないのですよ。要るのですか。
  61. 大倉眞隆

    大倉政府委員 決済そのものを銀行振り込みでいたしますと、それは印紙税文書税であるために印紙は張らなくて済んでしまうという点は、御指摘のとおりでございます。契約時には契約金額に応じまして、大きな契約ならば大きな印紙を張っていただくということに通常なるわけでございます。
  62. 只松祐治

    只松委員 そう言ったって、全部一々調べれば出てくるかしれぬけれども、通常大会社と大会社でやってある程度の支払いをするときは、事改めて契約するときは収入印紙張るかもしれないけれども、張らないのが多いのですよ。それはあなたたちの中の人が、おれのところに説明に来た人がちゃんと知っているよ、それは銀行に行って聞いたってわかるよ。要するに、そういう意味では一番苦しいような、泣き面にハチみたいな困っている企業が一番、その次は中小企業、これが印紙税の今度の場合一番上げられて困るところですよ、大臣。これは私は会社にも幾つか行って聞いてきたし、税理士さんにも聞いてきて取り扱っている会社のところに私行ったんだから。そのかわり業種によっては小さい一万円くらいのところありますよ。年間一万円くらい。だけれども、今度の印紙税が上がって一番困るのはそういうところです。  これを別な面で言えば、すべて税制でそういうふうにされているように、取りやすいところから取る、こういうことの一つのあらわれですよ。あなたさっき、いやこれはりっぱな、現情勢下における一番私たちが正しいと思った税制の改正である、こうおっしゃていますが、何ということはない。これは一番抵抗の少ない、ない間接税のちょこっと取りやすいところから取っていこう。この政治情勢では抜本的な改正やら大きなところへ手をつけたんじゃとてもじゃないということで一番取りやすいところ。取りやすいから取っているその内容も、いま言うように非常に困っている、資金繰りに年がら年じゅう手形を書きかえたり何かしている、こういうところの人が一番困るという事態になってきているのですよ。あなたたちは恐らく雲の上みたいな存在で、そういうふうに年がら年じゅう手形を書きかえたりあるいはあっちから借りこっちから借金をしたりしているということで、そういう人ほど今度は不安心ですから、これをとっておかなければならない。ところが優秀な会社あるいは銀行に金のある会社は、ぽんぽんと全部コンピューターで処理しちゃうというところは、この適用から逃れていくわけです。だから、できれば後の附帯決議でそういう問題についても私は処理したいと思っておりますけれども、そういう実態であるということを大臣よくひとつ知っておいてくださいよ。決してあなたたちが考えているような公正なものではない。どういう層に受けるかというと、いまのように困った層に一番受ける。  そこで、具体的な問題として、今度は、きのうも伊藤君が聞いたときも、この前引き上げたからということですが、課税最低限を引き上げていくか何らかの、救済措置とまでいきませんね、しかし将来にわたってそういう人に対して何らかの処置をしていってやる、こういうことをしなければならないだろう。  それからいま一つは——そういうふうに言い逃れる。一遍契約を結んで処理していく、いわゆる何億、何十億、もっと大きいのがありますかね、そういう高額のやつ、これも大体五億か十億くらいで頭打ちになっておりますから、もう少し上を上乗せしていなければならない、こういうふうに思いますが、どうです。
  63. 大倉眞隆

    大倉政府委員 免税点と最高額の見直しの問題につきましては昨日伊藤委員お答えいたしましたので、ちょっと時間がかかるかもしれませんので、繰り返しになるかと思いますが、その前に、ちょっと申しわけございませんが、ことし印紙税を取り上げた理由というのは、これまた昨日お答えしましたように、いまの景気情勢の中で、しかし精いっぱいの増収を考えるとすると、やはり流通税に着目するということになるのではなかろうかという気持ちでございましたので、お言葉を返すようになって恐縮でございますが、増税というのはいかなる場合でも取りやすい増税というのは決してございません。やはり納税者の方にはそれなり負担をお願いするわけでございます。
  64. 只松祐治

    只松委員 時間がないと言うのですが、その最低と最高のやつはどうですか。
  65. 大倉眞隆

    大倉政府委員 免税点につきましては、政府の税制調査会でも十分御論議を願ったわけでございますが、一番文書数の多い売上代金の受取書につきましては、私どもなりの実態調査から推計いたしますと、ほぼ九割はいまの三万円の免税点で落ちてしまうだろうということになりましたので、残りの一割はやはり金額の大きい領収書が残っているのだということで、いま三万円を上げる必然性はないのではなかろうかという御論議であったわけでございます。最高価格帯の見直しは経済取引が大きくなるにつれて、ある時期を置いてやはり見直すべきであろう。  それから今回の見直しは、一番下の上げ幅との関連もございまして大体二・五倍なり三倍まで一番上を引き上げておりますので、今回の改正としてはこの程度かという判断をさせていただいたわけでございますが、今後とも御指摘の点を含めまして、将来の問題として検討を続けてまいりたいと考えております。
  66. 只松祐治

    只松委員 もう時間がありませんからやめますが、きょうの論議だけじゃないからまたやりますけれども、これがきわめて——お言葉を返すようだがと言って、時宜に適した、これだけするのが税の改正であるかのようなことを言ったり、前に触れましたように、これだけの公債を発行したりなんかするときに、これだけちょっと手直しして、これでこれが時宜に適しているとか、これが最良の税改正であるとか税収の方法であるなんて、余り子供だましみたいな、坊さんだって大蔵委員会も長く、大蔵大臣もやられているのだから、余り子供だましみたいなことではなくて、もう少し本当に腹を割った話をひとつこの次からしてくださいよ。それを要望して終わります。
  67. 小渕恵三

    小渕委員長 貝沼次郎君。
  68. 貝沼次郎

    貝沼委員 きのう、きょうと政府答弁を聞いておりましたが、私はまだ納得のいかない点が実はたくさんございます。そういう点で問題もダブりますけれども、ひとつ誠意ある答弁をしていただきたいと存じます。  そこで、大臣の提案理由の説明の中で、ただいまもお話がありましたけれども、「最近における財政・経済事情等に顧み、」というくだりがございまして、これの認識の問題なんですけれども、いままでの話ですと、今年に限り判断をし、それによって見解を述べられたような気がいたします。  ところが、総理大臣のあの所信表明演説などを聞きましても、先ほどからお話がありますように、資源有限という言葉が何回も出てくる。これは政府の経済計画というものが一年や二年ではなしに、さらに一九八〇年であるとかあるいは一九八五年、一九九〇年、こういったところまで考えた上での発言であろうと私は理解をしておるわけであります。したがって、そういうふうになってまいりますと、当然日本の資源問題というものが非常に大きくなってまいりまして、日本の経済成長というものは果たして考えどおりいくのかいかないのかというのは、いま日本国じゅう挙げての重大問題になっておると私は思っております。そういう時期に、今度アメリカの方から、たとえば原子力の問題にいたしましても再処理の問題等で相当厳しい話がきております。そして三月には福田・カーター会談が行われる、こういうふうになっております。  私は、科技特の方でもこの問題は取り上げてまいりたいと思っておりますけれども、何といったって日本の場合、予算を組むのは大蔵省であり、大蔵大臣の見解というものがある程度しっかりしておらないと日本方向を誤るのではないかという気がいたしますので、この福田・カーター会談について大蔵大臣はどのような見解をお持ちなのか、また、それに対してどういうような要望をお持ちなのか、また、どういう点が話題になろうと想像しておられるのか、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  69. 坊秀男

    坊国務大臣 日本の国内の状況につきましては、財政経済について先ほどから私の考えを申し上げました。  これから大事なことは、日本の経済というものは、日本がひとり孤立してやっていけるものではないという、その程度がだんだん強くなってきておる。そこで、どうしても世界の各国と経済的に手を握ってやっていかなければならない。そういう点につきまして、総理が今度カーターさんにお目にかかるということは非常に意義の多いことであろう、私はかように考えております。
  70. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただ、会うことは私もわかっているのです。それから、重大だということも私は認識をしていま質問をしたわけでありますが、それに対して、ただ、総理が行って話をしてくるんだから、私は大蔵大臣なんだから、帰ってきてから話を聞いて何とかやろうということでは日本の国は進まないと私は申し上げているわけであります。したがって、行く前に大蔵大臣としての考え方あるいは日本の国はこういう立場にあるからこういう主張は絶対してもらわなければならぬというような、そういういろいろな面について大蔵大臣はどういうお考えを持っておるのか、その辺を聞きたいと言っているわけであります。
  71. 坊秀男

    坊国務大臣 それは今度総理がカーターさんに会うに当たりましては、今日日本がとっておる財政政策あるいは予算の問題とといったようなものを申し述べて、そして世界の米日独その他の国と——一国がインフレになったり、一国が物価が上がってしまったり、一国が財政が破綻したりするというようなことは世界経済と各国の経済にきわめて影響するということでございますから、そこで日本の国の財政経済をどういうふうに持っていくかということについて忌憚なき、腹を打ち割った話をカーターさんとやるということのために、そして将来ますます緊密に経済提携をしていこうということのために今度カーターさんにお会いする、こういうことでございますから、私どもがつくったこの予算にいたしましても税制にいたしましてもそういったようなもの、それを総理はカーターさんとよく話し合うということであろうと私は思います。
  72. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうも話が合わないのですけれども、実は経済問題、日本の経済とアメリカの経済の関係は非常に深いつながりでありますから、これは話し合いがあるのは、私は当然中の当然だと思うのです。  ただ、しかし、政府の経済計画というものを見ると、ことしは、あるいは十年先とかそういったことだけでは片づけられない問題がある。特に、先ほど私は具体的に申し上げましたけれども日本の核燃料の再処理の問題が絡んでおるわけですね。そういったことが実現できるかできないかということで大きく日本の将来が変わってくるわけでありますから、そういったものは話題に上るというお考えで経済問題を討議するように大蔵大臣はお考えなんですか。
  73. 坊秀男

    坊国務大臣 私は、総理に対しまして、万般のことについてこれをお話し申し上げるようにというようなことは申し上げておりませんけれども、今日の日本財政経済についてはひとつじっくりとカーターさんとお話をして、そうして御理解を求めてくるようにということは申し上げて、万般のことにつきましては私は申し上げておりません。
  74. 貝沼次郎

    貝沼委員 この話、もう合いませんから、あと言いませんけれども、要するに、非常に大事な問題でありますから心得ておいていただきたいと思うのです。なぜこんなことを言っているかというと、政府の計画どおりでいきますと、たとえば一九八五年とか九〇年とか、こういうふうになってきますと、外貨の半分以上燃料を買うために使わなければならなくなってくるのです。そんなようなことが果たしてできるのかどうかという問題がありますので、この際の会談は非常に重大である、こういうふうに私は実は見ておるわけでございます。  そこで、今回の、この経済事情等に顧みてというふうになっておりますが、これについて、一体財政上の問題というのははっきり言って何なんだということですね。要するに赤字だからという意味なのか、それ以外のものが何かあるのか。それからさらに、経済事情というのは一体どういうことを意味しておるのか。くどくどは説明を必要といたしませんけれども、端的に、そしてこの印紙税法が通って印紙税をやった場合に一体どれだけの効果があるのか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  75. 大倉眞隆

    大倉政府委員 「財政・経済事情等に顧み、」という非常に省略した表現を使わしていただいたわけでございますが、財政事情の方は、要するに特例債に依存せざるを得ない厳しい状態、したがって、現状において負担の増加をお願いすることが適当であると思われる税目、適当であると思われる程度においては負担の増加をお願いせざるを得ない、つまり幾らかでも赤字を減らしたいという趣旨財政事情の方でございます。  経済事情の方は、さりとて、非常に大きな借金を抱えておりますけれども、それを大きく埋めるような、非常に直接に所得に食い込んでいくような増税というのはいまはやるべき時期ではないだろう。したがって、景気政策に矛盾しない範囲内で何があるかと考えると、まあ非常に軽い負担で一般の流通に対して課税するという流通税がこの際は対象になるんではなかろうか、それが経済事情の方のバックにございます私ども考え方でございます。
  76. 貝沼次郎

    貝沼委員 結局、財政赤字になったから何とかして埋めたい、そのために何か負担感のない、そして何となく取れそうなそういう税制はないかとあちこち見たら、印紙税が適当ではなかろうかと判断をした、こういうことでございますか。
  77. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほどの私の言葉が足りなかったかもしれませんが、負担感がないという意味じゃなくて、負担を求めることによって、現在の景気情勢に逆な効果を与えるということを心配しないでも済むのではないかという意味でございます。
  78. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは、心配しないで済むということは私はないと思うのですね。これは非常に心配がある、こういうことを私はこれから申し上げたいわけでありますけれども、先ほど、たとえば大臣の答弁の中に、景気に悪影響はないと考える、こういう言葉がございました。しかし、これは金額だけをもとにして言った言葉だろうと私は思うのですね。しかし、いまこういう不景気のときに、中小零細企業というのはとにかく一円でも十円でも取られるということは、出さなければならないということは、非常に精神的な負担を感ずるわけであります。御存じだと思いますが、現在の中小企業の実態は、もうけようと考えるよりも損をしないことを考える方が先なんであります。したがって、どうして企業をつぶさないようにしていくかということに実はきゅうきゅうとしておるわけであります。こういうような実態を御認識ならば、こういう軽々な発言は私はできないと思いますけれども、この点についての大臣の所信を伺いたいと思います。
  79. 坊秀男

    坊国務大臣 税は、たとえ少額であろうとも負担をしてもらうということでございまするから、そういったような税をつくる方にとってみましても、これは非常に慎重な考慮の上やったことでございます。そこで、この税を新たに課することによって何らの痛痒を感じられないというふうには考えておりません。これはひとつ国民としてごしんぼう願いたい、負担をひとつがまんをしていただきたい、こういう気持ちはもちろんあります。
  80. 貝沼次郎

    貝沼委員 当然そういう気持ちで私はやっていただきたいと思いますが、時間がだんだん過ぎていきますし、幾つか私、質問するようになっておりますので、お伺いいたします。  この改正の行われた過去の歴史、もう何回か質問にも出ておったようでありますが、昭和二十九年、四十二年、四十九年、五十二年と、初めが十三年、その次は七年、三年という間隔で改正が行われました。そして昭和四十九年の改正案審議のときに、私が議事録を調べてみますと、こういう改正はどういうふうな期間を置いてやるべきであるかという考え方に対し、当時の高木政府委員はこのように答えております。「この印紙税という制度は、非常に大ぜいの方に関係がございます。非常に大ぜいの納税者関係がございます。そして御存じのように、あの小さい印紙をいろいろな文書に張っていただかなければならないという関係もございます。そうすると、それぞれの事業をやっていらっしゃる方に、従来でございますと、この文書は二十円でいいんだな、これは幾らだなということを大体頭に入れておいていただく必要があるという関係がございまして、まあ私どもは、ときおり上げていくのがいいか、しばらく間を置いてまとめて上げるほうがいいかということの選択という意味では、いずれかというと、後者のほうがいいのではないかと考えているというふうにお答えしたらいかがかと思うのでございます。」と、こういう答弁があるとおり、ある間隔、これは相当の間隔ですね、間を置かなければ事務上非常に繁雑で大変だという認識が当局にはあるようにうかがわれます。  ところが、今回は三年でもって上げておるわけでございます。したがって、そのように三年間で上げなければならないというふうになぜ急がなければならないのか。しかもこの不景気のときに、そういうふうにあわてて増税をすることは私は必要ないのだと思いますけれども、この点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  81. 大倉眞隆

    大倉政府委員 確かに当時の主税局長がそのようにお答えしたということを私も存じております。ある程度の間隔を置いた方がいいだろう。しかし、そこに五年ならいいとか、三年ではいけないという絶対的な基準はないんだろうとは思いますけれども、もっとも逆に申せば、毎年上げるというようなことはしない方がいいという性格の税であるとは私も考えております。それを四十二年から四十九年までは七年だったのに、今度はなぜ三年で急ぐのだという点につきましては、率直に申し上げて、苦しい財政事情ということを申し上げるしかないのではなかろうか。いまの時世に負担の増加をお願いするということは、もう一切やらないというのも確かに一つ考え方かもしれません。その点も税制調査会でずいぶん御議論いただきました。しかし、いまの状態負担の増加を求めてもやむを得ないではないかというものは、財政当局としては幾らかでも赤字を減らすための努力をすべきだ。また企業増税につきましても、一般的に企業増税をやるということは適当な時期ではないけれども、しかし一昨年の夏以来ずっと政策税制の見直しを続けてきておりまして、昨年かなり大幅の整理をいたさせていただきました。しかし、ことしはその考え方をつないでいって、租税特別措置の整理縮小というのは企業増税だけれども、しかしそれはこの期間にやるべきことはやるんだという御判断をいただいたわけでございまして、やはりこれだけ苦しい財政でございますから、一切増税はしないという考え方にはとうていたどりつかなかったというふうに御了承いただきたいと思います。
  82. 貝沼次郎

    貝沼委員 財政が苦しい苦しいということをにしきの御旗にしておりますけれども、中小企業はもっと苦しいわけでありますから、その辺のところをよく知っていただきたいと思います。それで、私は時間の関係で実は高木政府委員一つの議事録しか読みませんでしたけれども、この後四年とか五年とかいう言葉も実は出ておるのです。私はまあ不思議なことを言っているなと思って実はびっくりして見たのですけれども、(大倉政府委員「三、四年というのもあります」と呼ぶ)三、四年ですか。そういうふうに、ただ改正をするときに、その都度いろんな理屈をくっつけてやるというのは、私は国民的なコンセンサスは得られないのではないかと思うのです。したがって、こういうような税制については、たとえばこういう点とこういう点を考えて、そしてその点から判断をして、この税制見直しというものは考える要素がそろった、こういうような基準というものをやはりつくっておく必要があるのではないかと考えるわけでありますけれども、この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  83. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは五十二年度税制改正を御議論いただくときに卒然として飛び出してきたということではないわけでございます。先ほど大臣も申し上げましたように、昨年の六月以来現行税制の中で、ある時期に負担の増加を求めるとすればどの税目を取り上げるのが一番いいのかという御議論をずっと続けていただいておるわけでございまして、その中期税制の御議論の中で印紙税の問題も取り上げていただきました。部会長の報告という形で出ておりまして、お持ちかもしれませんが、お許しを得れば御審議の参考として改めて当委員会に提出さしていただきたいと思いますが、その中でも印紙税というものについては、所得水準などの上昇に応じて随時負担水準の見直しが検討されてしかるべきであるということが言われておりまして、所得水準等の上昇に応じて直すべき部分というのは、それは定額税率の部分であるあるいは最高価格帯である。比例的になっているものについては、特に印紙税負担を実質的に何倍かに引き上げるという判断があるかどうかの問題であるけれども、定額課税、最高価格帯の問題というのは、背後にある経済が大きくなり、所得や物価も動いたときにはいわゆるおくれを取り戻すために随時見直しを行うべき税目であるという御指摘は受けておるわけでございまして、そういう中期財政の流れの中から、くどくて恐縮ですが、五十二年度の経済情勢で何を取り上げるかということで今度印紙税と登録免許税の定額部分が取り上げられた、そのように御理解いただきたいと思います。
  84. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう答弁になってくると、私は実は異論があるんですね。それは研究の結果ですからいいですけれども、たとえば所得水準の上昇に伴ってというふうになると、じゃ五十円が百円になったのが所得水準が二倍になったのですかと、こういう議論が出てきちゃうんですね。そうすると、それはまた別だとこうなって、この税法ずっと議論していきますと全然わからなくなっちゃうんですね。何が基準なのか。恐らく私がこれだけもうわからないと思っておるのですから、答弁する方はもっとわからなくてやっているのじゃないかと私は同情するわけですけれども、実は先ほどもお話がありましたように中小企業、特にたとえば零細の商業とかこういった方々と私も何回か会合あるいは話し合いをして、そしてどういう種類の印紙というのを使っておるのか、こういうことを実は聞いてみたわけであります。そうするといままでほとんど五十円なんですね。それ以上のものというのはめったに使わない。しかもこの印紙というのが、先ほども話がありましたけれども、私が聞くところは小規模でありますから、年間大体十二万円ぐらい。ところが十二万円で、張るときに買ってきて張るものじゃありませんから、やはり何ぼか買ってそれを持っていてその都度張っていくわけであります。しかし張ったときに国税になるのではなしに、買ったときに国税にすでに入っておるわけですね。こういうようなところから印紙をどれだけ使ったから印紙税が入ってくるという考えではなしに、どれだけ売れたかということが実は大事なんですね。  こういうようなことから考えると、印紙というものが国で出しておる以上、どれだけ売れたかということはこれはわかるはずなんですけれども、実際これはわかっておるのでしょうか。
  85. 大倉眞隆

    大倉政府委員 印紙収入というものは毎月把握できるわけでございます。ただ印紙印紙税のためにしか使えないというものでございませんのですから、登録免許税にも使えますし、ある種の罰金や手数料にも使える。それはまたその方が、お使いになる方のために便利だからそうしているんだと私は思いますけれども、したがいまして、毎月の印紙の売上高の中で幾らが印紙税分であるかというのは、その都度はわかりません。ある時期を置きまして登録免許税や罰金手数料の方はかなり詳しい実績が出てまいりますので、それらを差し引いた残りが印紙税に使われた印紙であるというふうに計算をいたすわけでございます。
  86. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう頼りないことを基本にして、それで上げなければならないとかあるいはこれが百円が妥当だとか、そういうようなことはおおよそ余り意味のない議論なんですね。ですから、たとえば私も実際どれぐらい売れておるのかと思って調べようと思ったら、あっちこっちからややこしくてその数字というのはなかなか見つからなかったのですけれども、しかし郵政省関係で幾らかわかったところだけを見ますと、昭和四十八年、四十九年、五十年というふうに各一円、二円、五円、十円から二万円までずっと仕分けした枚数、売れた枚数というものを調べてみると、一番大きいのが五十年度はやっぱり五十円が一番多い。これは先ほどの答弁のようにいろんな場合に使われるでしょうけれども、それにしても多い。それから百円というものなんですね。したがってこういう小さなものを使う人が非常に多いということなんですね。こういうようなものが実は二倍になるわけでありますから、非常に底辺の人たちの、いわば弱い立場の方々に非常に負担を強いる、そういう税法の改正ではないか。こういう考え方に対しては私は賛成できません、こういうふうに申し上げたいわけでありますが、これについてはどういうお考えでしょうか。
  87. 大倉眞隆

    大倉政府委員 券種別に申しますと、まさしくおっしゃるように五十年度では五十円の印紙というのが販売枚数は一番多いわけでございます。ただ、販売枚数は八割超しておりますが、販売金額で申しますと一割五分ぐらいでございます。それだけたくさんの数は売れているけれども、全体の収入の中から申しますと一割五分ぐらいであるということはまず申し上げておきたい。  それから五十円の印紙というのは、すべて中小業者が使うわけではもちろんございません。それで再々申し上げるのでございますが、中小企業の方が一番お張りになるであろう領収証というもので考えますと、大体おつくりになる全部の大きな領収証を含めての総額の中で、九割ぐらいは三万円以下なんだということでございますから、零細業者とおっしゃる場合には、恐らくその印紙を張らなくてはならないような領収証がそうたくさんあるとも思えないのでございますが、そこはいずれにいたしましても全部を、私はこの印紙をこのために張りましたという申告をしていただいているというような制度でございませんものですから、私どもなりの推計でお答えするよりしょうがないわけでございますが、枚数が非常に多いからこの負担は全部中小企業のものであるというふうには私ども考えておりません。
  88. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうには考えていないということは私もわかるのです。だけれども、すべて推計なんですね。そうでないという理屈はないのですね。私は端的に聞きますが、局長はそういう零細企業の方と一年間に何回ぐらいお会いになりますか。
  89. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私は自分からいろいろお話を伺いに参る機会というのには残念ながらなかなか恵まれませんけれども、役所まで足を運んでくださる方々にはできるだけお目にかかるようにいたしております。
  90. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうようなことでなかなか実態というものは把握できない。それをもとにして推計をし、そして答弁をなさっておるわけでありますから、私ははなはだ信用しがたいという結論になるわけであります。これは理の当然であります。  それからもう一点は、この印紙税法目的とか性格というものについて私はいろいろ調べてみたのですけれども、これがまた奇々怪々、非常にややこしいぐあいになっておると思うわけであります。そこで、この法律の目的性格、これは一体何なのか、またその根拠となる租税原則、こういうものは何によっておるのか、これは簡単に一言でいいですからお答え願いたいと思います。
  91. 大倉眞隆

    大倉政府委員 できるだけ簡単に申し上げますと、複数の税目をもって負担を求める体系の中における文書税という特質を持つ流通税の一種である、したがって課税の根拠になる理論は所得あるいは資産に対する課税を補完するものとして、流通の背後にある担税力を推定してきわめて軽度の負担を求める税であるというように理解いたしております。
  92. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは応能の原則によるのでしょうか、それとも応益の原則によるのでしょうか。
  93. 大倉眞隆

    大倉政府委員 応能原則によるものであるという考え方は、比例的な部分については一部採用されておると申し上げていいかと思います。しかし、全体としては非常に軽度の流通税でございますから、それは所得課税のようにかなり応能的なものとは性質が違うと思います。
  94. 貝沼次郎

    貝沼委員 応益ということですか。応益に近いという考え方ですか。
  95. 大倉眞隆

    大倉政府委員 応益的という言葉は、つまり特定の行政サービスを受けているという狭い意味での応益的なものではないと思いますけれども、しかし民主社会を支える国民負担を自分の所得の大きさなり資産の大きさ以外のもので担っていただくという意味では、それはまさしく応益的な負担であると思います。
  96. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうするると、これはどっちにもつかないという、何となくわからないけれども何かによって課税をする……。どうもはっきりわかりませんですね。
  97. 大倉眞隆

    大倉政府委員 課税理論は、経済取引という流通に着目し、その背後にあると推定される担税力に着目をして、きわめて軽度の負担をお願いするという流通税でございますから、流通税というものは税の中ではだれが負担を予定しておるかということが一番わかりにくいという意味で、これは応能税であるとか応益税であるというふうな割り切り方はなかなかしにくいものであると思います。
  98. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、取引の金額によって税金の額が違うというのは何によっておるのでしょうか。
  99. 大倉眞隆

    大倉政府委員 取引額が大きければそれなりにその背後に推定すべき担税力も大きいであろうという意味で階級定額部分はほぼ比例的な負担を求めようとしておりますから、その意味では応能比例的な負担を求めておる。累進的にはなりません。
  100. 貝沼次郎

    貝沼委員 取引金額が大きいからもうけが大きくて、取引金額が小さいからそれに対するもうけが小さいという原則はありませんね。そうすると、その後にどういうふうな担税力というものが発生するのですか。
  101. 大倉眞隆

    大倉政府委員 背後にある担税力を推定しておるわけでございまして、完全に所得として把握するという体系ではございません。したがって流通税というものは一切税として成り立たないのかというと、やはりそれはどこの国でも流通税というものは持っておりますし、またそれが取引の背後に必ず所得があるかあるいは赤字であるかということはむしろ問わない。そのことのために負担率はきわめて低いというのがこの税の特色であろうかと思います。それは有価証券取引税などがまさしく同じグループに入るわけでございます。
  102. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、なぜこの取引の金額に応じて税金の額が変わるのかということを聞いておるわけであります。
  103. 大倉眞隆

    大倉政府委員 取引の金額が大きい場合には、取引の金額が小さいものよりも比例的に大きい負担をしていただいてもいいではなかろうかという比例的な応能負担考えておるわけでございます。
  104. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうもこれは平行線をたどってうまくいかないのですけれども、やはり担税力ということを考えたときに、ただその説明だけでは国民は恐らく納得いかないと思いますよ。  しかもこの印紙税には、ただ単に取引の金額だけでなしに、いろいろな場合がありますね。割賦販売の場合などは、たとえば十万円のテレビを割賦販売いたしますというような場合、二回に分けて支払う場合、契約書で一枚張りますね。それからさらに一次金を納めたときに一枚張りますね。そうでしょう。それからもう一回納めたときに一枚張るでしょう。そうするとこれは三枚張ることになるのですね。契約書は十万円全体に対して張るのです。それから一次金、二次金はおのおのそのときの金額に応じて張るわけですね。三枚。これは金がある人が一発で払ったら一枚で済むわけですね。そうするとこれはどういう違いがあるのでしょうか。
  105. 大倉眞隆

    大倉政府委員 でございますから、その金額が大きければ大きいようにという理屈がそこから逆に出てくるわけでございまして、同じ百万円を三回に分けて三十万円、三十万円、四十万円なら三回印紙を張っていただく、百万円一遍なら一遍でよろしいということになるから、やはり百万円と三十万円はそれなり負担を変えたらどうだろうかというふうに私ども考えるのでございますが。
  106. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうじゃないのですよ。十万円は今度は百円でしょう。
  107. 大倉眞隆

    大倉政府委員 それは例が悪かったかもしれません。
  108. 貝沼次郎

    貝沼委員 五十万円も百円。ですから、契約書も百円です。百円、百円、百円、三百円なんです。一回で納めれば百円なんです。同じ金額なんです。どうして三百円と百円の違いが出てくるのでしょうか、こう言うのです。
  109. 大倉眞隆

    大倉政府委員 それは例示として最低定額の部分で申し上げるとまさしくおっしゃるようになるのです。それはやはり文書税という特質からしまして、文書をおつくりになる都度印紙負担をしていただくということから出てまいりますが、しかし分割払いにはそれなりにその方がよしとしてやっておられることもあるわけでございましょうから、それはむしろ経済の実態の方に任せる、どういう取引をなさるか、どういう文書をつくられるか、それは流通税である文書税の限界としか申し上げようがない。それをすべてきっちりと合理的にやろうとすれば、もう流通税というものは率直に申し上げて、ちょっと成り立たないんだろうと思います。
  110. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、私は不公平だと言っているわけであります。  それからたとえば文書を作成する場合、文書を作成する人としない人とおるわけですね。たとえば明治の時代であるならば、これは印紙を張った場合に、明治六年ですか、受取諸証文印紙貼用心得規則というのがあって、印紙を張らないと民事裁判において効力なし、こういうことになっておったのでありますが、明治三十二年にこの印紙税法が制定されてから、これは廃止になっておる。したがって印紙を張ったからといって別に何の恩恵もない。反対に印紙も張らないでおったら、これは脱税に問われてひどい目に遭ってしまうというようなぐあいでありますから、私は本当に厄介なものじゃないかというような感じがするわけであります。  しかも、いまコピーというものが発達いたしまして、たとえば賃借の問題にいたしましても、一通作成をし、印紙を張り、割り印を押し、そして、それをゼロックスでとって両方が一部ずつ保管をするようにした場合に、法的にはこれはすべて証拠となるわけであります。そうすると、これは印紙を張る人と張らない人と出てくるわけでしょう。こういうような問題で、果たして公平と言えるのかどうか、この辺のところはどうでしょう。
  111. 大倉眞隆

    大倉政府委員 印紙を張らないと法律上の対抗力を持たないという制度は、御指摘のようにもう明治のときになくなりまして、それ以後は、印紙を張っていないと裁判上の証拠力を持たないということはございません。しかし、契約書とか受取書とかはそれぞれ大事な文書でございますから、長年の慣行としてこれに印紙を張るという慣習は非常に根強く定着しておるように私ども考えております。納税者の善意に信頼してでき上がっている制度であると言えばまさしくそのとおりでございますが、私どもの知る限りにおきましては、非常に広く印紙を張ってくだすっておる。もちろん国税庁の方も適時適切な調査はいたしておりますけれども、とにかく印紙を張らないまま契約を結ぶという慣行は、おっしゃるように広いとは思いません。
  112. 貝沼次郎

    貝沼委員 要するに印紙を張るという制度も、私はどういうふうにできたか知りませんが、恐らく印紙を張ったら効力を持ちますよということで、みんな大騒ぎして張って、そして国税がふえたんじゃないかと私は思うのです。そういうことはまずいから途中でやめたんでしょうけれども、しかし、いずれにしても印紙税の国税に占める割合というものが年々ふえておるわけですね。どういうものを根拠にして、この数字が出てくるのか、私ははなはだ疑問ですけれども、ふえておることはどうも確かのようであります。四十八年、四十九年、五十年、どれだけの印紙収入があり、そしてそれは国税に対して何%かという数字はお持ちでしょうか。お持ちであったら発表していただきたいと思います。
  113. 大倉眞隆

    大倉政府委員 四十八年度印紙税収入が九百二十四億円、租税収入中のウエートは〇・七でございます。四十九年度が一千七百六十五億円、一・一、五十年度が一千九百十三億円、一・三でございます。
  114. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういうように、算定基準が果たして確かなものかどうか知りませんけれども、いずれにしてもふえてきておることは間違いない。しかも、今回の予算を見てみますと、昭和五十一年度印紙収入の予算額というものが五千三百億、こういうふうになっていますね。恐らくこれだけ見積もっておるのでしょうから、相当ふえてくると私は思っております。  しかし、先ほどからいろいろとお尋ねをしましたけれども、すっきりとした、なるほどこれなら税金を納めたくなるというような理屈は私は生まれてきてないと思うのです。何となく、その都度つじつまを合わせて、そうして通り過ぎていくような感じが非常に濃厚なわけであります。こういうようなところから、こういう中小零細の方が非常にかぶっていくような税金、こういう増税、こういうものは私は賛成できない、こういうふうに申し上げたいと思います。  それからもう一点は、その内容についての問題でございますけれども、先ほどからこれも質問に出ておるわけですが、たとえば日本司法書士政治連盟というところからの意見書が出ております。それによりますと、最低部分を二倍の百円にしたこと、それから不動産譲渡や消費貸借の契約書中、五百万円から一千万円の契約金額に張る印紙を三千円から五千円にしたこと、これらについて、一般庶民、中小商工業者に関係の深い部分であるから、その増税傾向が非常に顕著であるという指摘をしております。したがって、こういうようなものに対して非常に疑問を持っておるという意見があるわけでありますが、これについて当局はどういうふうな答弁をされますか。
  115. 大倉眞隆

    大倉政府委員 最低税額五十円を百円というのは、先ほど来申し上げております、現下の財政経済事情に顧みてここまでの負担をしていただきたいという考え方でお願いをしておるわけでございます。  階級定額部分の中間部分をごく一部手直しいたしておりますのは、最高価格帯を上に引き上げました結果、従来最高価格帯が天井を抑えられていたために比例税率部分が若干縮まり過ぎていたものを今回調整しようという趣旨でございます。  なお同時に登録免許税も改正をお願いいたしておりますので、日本司法書士会とは十分意見交換をいたしました。日本司法書士会は政府案に対しては異議を持っておられません。
  116. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから細かい点でお尋ねいたしますが、この五十円が百円になった理由、それから三千円が五千円になった理由、こういうのは何か根拠があるわけですか。
  117. 大倉眞隆

    大倉政府委員 五十円を百円に引き上げをお願いいたしておりますのは、前回改正以来三年を経ておりますので、定額税率の引き上げをお願いしたい。ただ、それは貝沼委員もおっしゃいましたように、その間の所得の動きや物価の水準にぴたりと合っておりません。それはやはり現在の財政事情のもとで、ひとつ最低百円ということで負担をしていただきたいというお願いをしているわけでございます。  中間税率の調整は先ほど申し上げたとおりでございまして、最高価格を引き上げますにつれまして、中間部分の比例的負担でほかのブラッケットと同じになるようにこの際調整を部分的にいたしたものでございます。
  118. 貝沼次郎

    貝沼委員 五十円から次はやはり百円だなという感じだということですね。  それから上部段階の方で、累進制と言ったら語弊があるのですけれども、段階が設けられておるわけですが、そういう金額に応じて累進制を考えるということは、いろいろな意味でいい面も悪い面もあると思うのですけれども、もしこれがそういう流通税の中で何か付加価値税への考え方が少しでもあるならば、これは大変なことだと思うわけでありますので、そういうことは今後ないように希望したいと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  119. 大倉眞隆

    大倉政府委員 中期税制の中では、先ほど申し上げました部会長報告を資料として提出申し上げますが、現在の間接税の中で負担の増加を求める余地があるとすればどこであろうかという御議論を経ました後に、昨年十一月二日に、やはり何らかの新しい税を考えざるを得ないかもしれないから判断の材料を出してほしいということでお出しをいたしてございます。しかしそういう中期的な検討を別といたしまして、印紙税が付加価値税に発展するという考え方は私どもはとっておりません。
  120. 貝沼次郎

    貝沼委員 適当でないと言ったわけですね、一応考え方は。
  121. 大倉眞隆

    大倉政府委員 印紙税はどこまでまいりましても文書税でございますので、これが付加価値税に発展することはないと思います。
  122. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから税額の件でこれはお尋ねだけしておきたいのですけれども、十万円に対する百円、これは計算すれば千分の一ということになりますね。ところが十億円に対しては十五万円、これは万分の一・五、千分の〇・一五、こういうふうにずいぶん比率が違うわけでありますけれども、これはどういう理由によって違うのでしょうか。
  123. 大倉眞隆

    大倉政府委員 階級定額部分は、最低税額の部分を別といたしまして、売上代金領収書で申しますとおおむね万分の一と二の間を走っている比例税率になっております。しかし、一番下の部分は免税点ぎりぎりのところで計算いたしますと、どうしても万分の一よりは高くなります。それは最低税額を決める結果宿命的にそういうふうになると思います。
  124. 貝沼次郎

    貝沼委員 宿命的にそうなっても率が高いことには変わりはないわけでございますから、こういう点も不公平にならないようにしなければならぬと私は思うのです。  そういうような関係から見てまいりますと、いかに理屈をいろいろ言われても何となく不公平だな、何となくその場限りのやり方だな、適当でない金額だなという感はぬぐい切れないわけでありますので、そういう面について当局として、税を納めるいわゆる納税者が本当に納得のいくような説明、納得のいくような方法を今後考えることが私は必要ではないかと思うわけであります。これは徴税の関係から見ましても非常に重大な問題だと考えます。この点につきまして、大臣はどのような見解をお持ちでしょうか。
  125. 大倉眞隆

    大倉政府委員 もちろん納税者の自発的な協力にまたなければ適正な負担をしていただけない税でございますから、納税者立場に立ってぜひ御理解をいただくように、私どもとしてあらゆる機会を通じて、国税庁とも一緒に努力をいたしてまいりたいと考えます。
  126. 貝沼次郎

    貝沼委員 次に、各党から御意見がございましたけれども、免税点の引き上げの問題であります。  ただ税額だけを上げて免税点を上げないことは非常に気分的にうまくないと思うので、これはやはり検討すべき——検討と言ったらいつになるかわかりませんから、きちっとやるべきだと私は考えます。この点についていかがでしょうか。
  127. 大倉眞隆

    大倉政府委員 伊藤委員只松委員お答えしましたように、税制調査会でそういう御意見をお持ちの方もあり、十分御検討願ったわけでありますが、一番枚数が多いと思われます売上代金領収書につきまして、私どもの実態調査からの推計によりますと、全作成枚数の九割はいまの三万円以下であるということでありますので、いまの三万円の水準をさらに引き上げる必要性はないという御判断をいただいたわけであります。
  128. 貝沼次郎

    貝沼委員 最後に一点だけお願いをしておきたいと思いますが、それは税法、たとえば印紙税法別表第一の二十三号にある非課税のところですね。「信用金庫その他政令で定める金融機関の作成する預貯金通帳」云々となっておりますが、これは非課税のところであります。ところが中小金融機関は窓口にすわっておるだけではお金が入ってまいりませんで、一生懸命歩いて外回りをしてやってこなければならない。ところがその都度全部印紙を張ってこなければいかぬということで、非常に負担になるという声が出ております。しかし窓口に持ってきていただけば、これはただいま申し上げました法律によって通帳が非課税でありますから、払わなくてもいい。こういうようなことで非常に困っておるという声がたくさん出ておりました。したがって、こういうようなものを何とか救う道はないのかということであります。つまり古い話になりますけれども、昔大福帳というのがありまして、その大福帳に記載してくればよかったという制度がありますが、私はそういうような大福帳を言うわけではありませんけれども、たとえば中小零細企業あたりにそういう通帳にかわるような何かを考え、そしてそれに印なりサインをしてきた場合にもう印紙を張らなくても済むような方法は考えられないかどうか、この点について質問をして終わりにいたしたいと思います。
  129. 大倉眞隆

    大倉政府委員 いわゆる戸別勧誘をされまして、その都度お預かりになった金額に対して仮預かり証のようなものをお出しになりますと、これは印紙を張っていただかなくてはならない。しかし窓口へ来ていただけばその負担がなくて済むという点はおっしゃるとおりです。それは預かり証を出すだけの実益があるという考え方で取引をなさる場合にはやはり張っていただきたい。  ただ、実際上はその問題を実務的に解決するために一種の通帳形式を用いて勧誘をしておられる例も聞いておりますので、それは実務上の慣行の問題としてなお工夫の余地がある問題だろうと思います。
  130. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  131. 小渕恵三

    小渕委員長 永末英一君。
  132. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣印紙税というのはどういう場合に増税する御方針でございますか。
  133. 坊秀男

    坊国務大臣 先ほど来申し上げましたが、取引に際しまして領収書、手形、そういった文書を作成する、そのときにその背後には担税力があるということを推定いたしまして、そこできわめて軽微なる税を課税する、こういうことでございます。
  134. 永末英一

    ○永末委員 いま大蔵大臣お答えになりましたのは、印紙税を課する理由をお述べになった。私が伺ったのは、どういう場合に増税をされる御方針か。いま増税法案がかかっておるわけですから、印紙税を課するその理由を聞いているのではないので、どういう場合に坊大蔵大臣増税するのだろうか、これをお伺いしているわけです。
  135. 坊秀男

    坊国務大臣 印紙税増税する理由、それは何と申しましてもこの財政状態に際しまして、この財政を処理していくのにいろいろな基本方針がございますけれども、その基本方針にもとらない限りにおきましてやはり国民に正直なところ負担をひとつ新たにやってもらいたい、こういうことであります。
  136. 永末英一

    ○永末委員 あなたが提案理由説明で言われましたのは「最近における財政・経済事情等に顧み、」こう言っているわけです。いまも財政事情ということを理由に挙げられた。つまり金が足らぬから印紙税で補う、こういうことですね。
  137. 坊秀男

    坊国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  138. 永末英一

    ○永末委員 ことしはあなたの方も中小所得者に対しては減税をするというので、国税につきましては三千五百億円程度の減税をされる。租税特別措置法等の改正を通じては増税をやっておられる。したがって、その趣旨が坊財政あるいは坊税制であるとするならば印紙税にも貫いておられるわけですね。そう解釈してよろしいか。
  139. 坊秀男

    坊国務大臣 ある年度に税制を改正するという場合にはやはり増税の部分——これは絶対に減税だ、絶対に増税だというようなことではなくて、若干のそういったような増税の部分もあるということもあることがあり得る、私はこういうふうに考えます。
  140. 永末英一

    ○永末委員 私が伺いたかったことはもう少し詰めますけれども、先ほどの、つまり金が足らなければ印紙税を取るというような、いつでもそうされますか。ああ、ことしは大分金が足らぬな、印紙税上げておけ、これが御方針ですか。
  141. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっと御質問がきつ過ぎるので……。あるときにどうしてもこれだけの歳入を確保しなければならない。しからばその年の経済情勢なり過去の改正の経緯なりからしてその年度としてはどの税目に負担を求めるかということで常に考えてまいるということになろうかと思います。五十二年度改正印紙税と登録免許税を取り上げましたのは、中期税制審議の流れを踏まえながら、ある時期に印紙税、登録免許税の定額課税部分の見直しはやってもいいであろうという中期的な方向がございまして、それを踏まえた上で五十二年度の経済情勢を考えて、租税特別措置の整理合理化は別として一般的な企業増税なり、これは極端な例でございますが所得税増税なりということを考えられる情勢ではない。しかし、幾らかでも赤字国債は減らしたいということで、考え得る税目を探した結果が印紙税になったということでございまして、来年度も再来年度赤字財政は続きますけれども財政のために来年度印紙税増税考えるというようなことではございません。
  142. 永末英一

    ○永末委員 五十円が百円に定額部分が増税になれば二倍でございますね。それを、印紙なんというものは国民の頭で、大体五十円でいいんだと言えば五十円と思っておる。三年前までは二十円なら二十円だと思っておる。これがぽっぽっと上がるということは、社会生活の慣行上きわめて重大な心理的影響を及ぼしますね。現在の大衆社会は心理的あるいは心理学的時代、大衆心理がいろんな事象に及ぼす影響は多いのであって、二倍上がるというのはとんでもないな、おれのやっている商売も二倍値段を上げようかと思っては、坊財政がインフレを抑圧しようとしておられる趣旨に反するわけです。したがって、五十円が百円にと簡単に言われますけれども、それが上がるについてはやはり政府としては上げざるを得ない重要な国民納得のいく標識、ある一つのメルクマールと申しますか、こういう理由だから二倍に上げるんだということがなくてはならぬのではないか。いまの御説明ですと何かこういろいろ説明がございましたけれども、あるいは三年たったから上げるとか物価水準がここまで上がったときに上げるとか、何かその理由がなくてはならぬ。いま赤字財政であるということと物価のこともちょっと言われましたが、どの程度物価上がったら印紙税が上がるのか。そういう何か基準なしにそのときどきの気まぐれで、所得税を上げるわけにはいかぬ、そうしたら印紙税を上げておけというと、印紙を張っている国民の側に立ちますといつでもぽいぽい上げられるのではなかろうか、こういう心配がございますので、この際明確に、一体どういう基準に合わして今回印紙税が上げられる、この後もそういう状態が来たら上がるんだぞということを、もし国民生活になだらかな変化が——私は変化あるとしても必要だと思いますけれども、そういう予測を裏切ることのないような生活の環境が望ましいと思いますので、そこで増税理由というものを聞いているわけです。お答え願いたい。
  143. 大倉眞隆

    大倉政府委員 増税理由の中の財政事情というのは、大臣からも申し上げましたし、私も他の委員お答えいたしましたように、いまの厳しい財政環境のもとでということでございますが、同時に印紙税の税率の引き上げを提案する一つ考え方としましては、先ほど貝沼委員お答えいたしましたように、中期税制審議の中で、間接税等の中の従量税あるいは定額税の部分はある時期を置いたら見直すんだという考え方が一番根元にあるわけでございます。  さらにそれを詰めてまいりまして、一体物価なり所得なりが何割上がったら必ずやるかという点につきましては、それはむしろ余り事前に機械的に決めない方がいいという考え方もあるのかもしれないと思いますけれども、それから、印紙税のように取引の都度印紙を張っていただくというものにつきましては、やはり余り端数が出るという改正はしない方がいい。覚えやすい金額、端数のない金額というような感覚もどうしても必要であろうかとは思います。その意味で、一種のインデクセーションのように必ず上げていくというふうにあらかじめ決めることは必ずしも適当ではないのではないかという気もしております。
  144. 永末英一

    ○永末委員 この種のものが覚えやすいものでなくてはならぬことはおっしゃったとおり。覚えやすいというのは大衆の生活慣行の中に溶け込んでおるからですね。だから、上がるということは大変なことですね、変わるのだから。あなたがおっしゃったように覚えたものを変えなくちゃならぬというのは、これとんでもない努力を要するわけである。  ある時期が来たらこういう種類のものを上げる。そのある時期というものが唐突に来たのでは国民は困りますわね。その意味合いで、何らか基準があってやっておられるのか。ある時期は一にかかって大蔵当局大蔵大臣の主観的なる判断でお決めになるのか。その辺はやはりもう少し明確に国民に知らせておいていただきたいと思いますね。いかがですか。
  145. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御趣旨はよくわかるつもりでございますが、先ほど申し上げましたように、あらかじめ固定的に決めてしまうということもまた必ずしも適当ではないのではないか。感覚としては先ほど貝沼委員が四、五年なのか、三、四年なのかとおっしゃいましたが、それはその間に非常な物価の上がりがあるかないかというようなことでもおのずから変わりましょうし、上げ幅というものも、先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、たとえば百円の次が百十円というふうなことはまた必ずしも適当ではないだろう。それらをあわせながら判断をしてまいる。  それから、変わるということについてはかなりの周知期間が必要だという点、これはおっしゃるとおりだと思います。その意味で、私どももできるだけ早く御審議の末成立させていただきたいということをお願いいたしておりますが、適用は五月一日以後の作成文書ということで、少なくとも一月程度は法律が通った後で周知徹底をするという期間は欲しいなと考えております。
  146. 永末英一

    ○永末委員 なかなか十分に理解でき得ない。客観的な基準をお示しがございませんからよくわからぬのでありますが、この増税で、あなた方はどういうところから税金をたくさん取るのだというお見込みがございますか。
  147. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど只松委員でございましたかに、お答えいたしましたように、私ども全体としては非常に大ざっぱな数字でございますけれども、税額では大体大企業と中小企業は半々くらいではないかという推定をいたしておるわけでございます。
  148. 永末英一

    ○永末委員 この印紙というのは売れた金額はわかっておるけれども必ずしも中がはっきりしておらぬということは、繰り返しいろいろな委員質問に対してお答えになっておるようでございます。私もわからぬのでありますが、印紙をもってする歳入金納付に関する法律というのが昭和二十三年に出ておりますけれども、これによりますと、「国に納付する手数料、罰金、科料、過料、刑事追徴金、訴訟費用、非訟事件の費用及び少年法」云々、これらは印紙をもって納めることができるということでございますから、印紙で納めているものがあるはずでございます。そうしますと、今回は要するに印紙税法に書かれた一号から二十五号、類別された課税文書についてこれだけの引き上げをいたします。しかし、そのほかにいろいろなものに印紙が張られているわけですね。その分量わかりますか、金額は。
  149. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは、ある程度の時間がたちますと印紙税以外の部分はそれぞれわかってまいりますので、そういう意味で決算ベースで申し上げますと、五十年度印紙収入総額が四千七百九十七億でございまして、そのうち登録免許税は二千四百八十六億、それからただいま永末委員のおっしゃいました罰金、手数料等、それが三百九十八億でございます。したがって差額が印紙税です。
  150. 永末英一

    ○永末委員 今回の法律は印紙税だけについての増税をやろうするのですが、いまのお話から伺いますと、印紙税は五十年度ベースでいきますと約五分の一程度であって、ほかのものの方が多い、こんなような感じでございますけれども、ほかのものはどうなるのですか。どういう方針ですか。これは大蔵大臣の所管でないかもしれませんが、印紙収入全体があって、ある部分は大蔵大臣所管だから増税する。ほかの部分で同じ印紙を払っているのは、同じ行為があっても、それは変わらぬのですか、変わるのですか。内閣全体としては変えられるのですか、どうなんでしょう。
  151. 大倉眞隆

    大倉政府委員 印紙収入の中でウエートの非常に大きいのは、ただいまの数字から御推察いただけますように、印紙税のための印紙の分と登録免許税のための印紙の分でございます。これはそれぞれ印紙税法、登録免許税法の改正をお願いいたしまして、その改正が通って初めて印紙収入がふえるわけでございます。ほかの罰金、手数料等につきましても、それぞれ根拠法あるいは根拠になる法令がございまして、その改正をお願いしなければ、印紙収入だけが上がってくるというわけではございません。なお、今回の予算では登記手数料の引き上げを予定しているように聞いております。登録免許税と別のものでございます。
  152. 永末英一

    ○永末委員 いま印紙税だけを質問していますので印紙税だけを申しましたが、もう一つ、登録免許税の引き上げ法案も当大蔵委員会にかかっております。その二つはわかりますが、その二つを寄せますと大体五分の四ぐらいですね。あと罰金等のもの、ほかの根拠法に基づく引き上げ部分は少ないのでありますけれども伺いたいのは、それも引き上げられるのでしょうか。これは、大蔵大臣、内閣全体としての話です。あるいはある部分につきましては国だけの理由でないかもしれませんが、どうなんでしょうね。
  153. 大倉眞隆

    大倉政府委員 印紙税と登録免許税を合わせますと、印紙収入全体の九割をちょっと超すかと思います。それ以外の先ほどの数字で申し上げますと、三百九十八億円というのがもろもろの罰金、手数料等になるわけでございますが、私もちょっと専門家でないので詳細を知りませんけれども、本年度予算では、この中の登記手数料と称するものを約五十五億円増収になるような改定を予定していると聞いております。これは税法ではございません。
  154. 永末英一

    ○永末委員 先ほどこの増収部分は大企業、中小企業半々だと申しましたけれども、今回の増税案で目立つことは、低額のところが二倍になって、そして非常に高額のところが段階がつけられて上がっておるというようなことでございまして、定額税率の部分だけで行われるものは、低額でございますと、それは一律に二倍になっておる。階級定額税率は先ほど申し上げましたようなことでございます。しかし知りたいのは、その低いところが二倍になっておるということの方が社会的影響が多い。先ほど申しましたように、心理的に非常に影響が多くなる。経済的な負担よりはそちらの方に影響が多いだろうと私は思う。それはインフレを促進せしめる要素にもなりかねないということを心配しますので、そういう点についてひとつあなた方の方がどういうような計算をしておられるかをこの際聞いておきたいと思います。  課税文書の一号のところでございますが、この一号のところで、たとえば不動産等々の契約書、契約金額がいままでは十万円以下が五十円になっている。今度はその十万円以下を百円に、二倍にされた。これでどれぐらいの増収があるとお見込みですか。
  155. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは私どもの実態調査でございますと、枚数はかなりウエートが小さいものでございますから、おっしゃいました文書だけでの増収額は四億二千万円程度にしかならないだろうというふうに見込んでおります。
  156. 永末英一

    ○永末委員 枚数はどれくらいですか。それは割れば出ますな。
  157. 大倉眞隆

    大倉政府委員 枚数の推計は八百三十五万枚でございます。
  158. 永末英一

    ○永末委員 上の方へいきますと、五千万円を超えて一億円以下というところから刻みが変わってくるのですが、それからずっと十億円以上と、四段階に分かれておりますが、この五千万円以上一億円以下から以上のところでは、どれぐらい増収見込みですか。
  159. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど私の答弁がちょっと舌足らずであったかもしれません。先ほど四億二千万円という推計を申し上げましたのは、定額税率の適用部分だけでございまして、最高価格帯の方は別に計算をいたしておりまして、不動産と消費貸借につきましては、最高価格帯の引き上げによる増収額は二十四億五千万円と推計いたしております。
  160. 永末英一

    ○永末委員 第三号、請負に関する契約書につきまして、百万円以下が二倍に上がっておりますが、これは金額、枚数、幾らですか。
  161. 大倉眞隆

    大倉政府委員 枚数はいま調べまして申し上げますが、増収見込み額の請負分は、定額税率の引き上げ分が十億三千万円、最高価格帯の引き上げ分が十億五千万円。なお、このグループにつきましては中間見直しをしておりますので、中間税率引き上げ分が四十三億二千万円という推計をいたしております。
  162. 永末英一

    ○永末委員 このグループでは、五百万円を超えて一千万円以下というのが、いままで三千円であったものが五千円になっておる。これはその前後が現行どおりであって、これだけ上がっている理由というのはどういうことなんです。
  163. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは比例的な負担を階級に分けますものですから、請負契約につきましては比例税率相当に換算いたしますと、万分の一から万分の一〇までの間を走るわけでございますが、先ほど申し上げましたように、最高価格を従来一億に抑えておりました結果、ただいま御指摘になりました五百万円から一千万円の間の比例負担が万分の三ないし六ということで頭が抑えられていたわけでございます。その頭の万分の六を万分の十に直す、つまり、大体各ブラッケットを通じまして万分の十までの間の負担になるということにしたい、こういうことで中間部分だけを直すように御提案しているわけでございます。
  164. 永末英一

    ○永末委員 いままで決めておったのは間違っておったんだから直した、こういうことですか。
  165. 大倉眞隆

    大倉政府委員 最高価格帯をあるところで押さえまして、そこへつないでいく過程で最高が抑えられているために中間の階級の頭の負担が抑えられるという部分がございます。最高価格を上へ持っていきますと、中間でおもしがかかる部分が外れますので、それを通常の中間のブラッケットの最高まで調整してもいいではないか、そういう考え方でございます。
  166. 永末英一

    ○永末委員 必ずしもよく了解はできません。第三号の約束手形または為替手形、これはいままで五十万円以下があったのでございますが、今度は百万円以下になってしまいました。五十万円から百万円のところは変わらないのでありますが、五十万円以下が二倍になってしまったんですね。五十万円以下がいままで五十円でよかったものが百円になった。これはどれぐらいの増収をお見込みですか。
  167. 大倉眞隆

    大倉政府委員 十万円から五十万円までの手形の増収分は四十八億六千万円と推計しております。なお、手形の中で最高価格帯の引き上げによります増収は八十二億円と推計いたしております。
  168. 永末英一

    ○永末委員 同じ現象が、二十二号の受取書がございますが、それらの最低のところと最高の区分のところとお知らせ願います。
  169. 大倉眞隆

    大倉政府委員 受取書は、最低税額引き上げ分が二百四十億円、それから最高価格帯の引き上げが十七億五千万円と推計いたしております。
  170. 永末英一

    ○永末委員 いま極端な最低と最高と聞いてみたのでございますが、それぞれこの区別がございますが、一番よく出ている受取書の中で最低のが二百四十億ふえて、二億円を超えるもの等についてはたった十七億しかない。こうなりますと、小さな金銭の授受をやり有価証券の授受をやって受け取りをしている者に二百四十億という大きな増収を政府が期待しておる。そうすると、小さな取引をやる者から金をとってやろうというのが、大蔵大臣、あなたの御方針ですか。
  171. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど全体について申し上げましたように、受取書だけで申せば永末委員がおっしゃるような傾向が確かにございますけれども、今回の改正の全体を通じましては、大企業分と中小企業分というのはほぼ金額的に半々になるのではなかろうか。受取書というものは、やはり非常に小額な受取書は枚数が多うございますので、結果的に増収額がこれだけ大きくなっているということで御理解いただきたいと思います。
  172. 永末英一

    ○永末委員 それは根拠を示していただかなければわからぬのであって、大企業もそれは小額の受取書を出すかもしれませんけれども、客観的な考えからしますと、小さな金を動かすのは小さいのが多いわけであって、大企業はおのずから少し多くなる。よくわからぬのは、階級と称してそれぞれ刻みがございますが、これが全然手を触れられておらぬというのがよくわからない。下の方でふやしておいて上の方もふやしておりますが、真ん中をなぜ手を触れないのでしょうか。
  173. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまの御質問お答えします前に、受取書の増収分につきましては、これは中小企業部分のウエートが、さっき申し上げた全体としての半々ではなくて、恐らく八割ぐらいは中小企業部分であろうという推計をいたしまして、ほかの文書全部を合わせまして全体で半々ぐらいであろうと申し上げているわけでございますが、その点を別にいたしまして、階級定額税率という組み立て方は思想的には比例税率でございます。ただ比例税率で、たとえば万分の一というふうに決めますと、実際の取引というのは端数が必ずございますので、万分の一ですからちょっとややこしいですが、万分の一を一億円なら一万円でいいと考えるときに、一億二千三百万円だと一万二千三百円にならなくてはいかぬというのは余りに繁雑だということで刻みをつけるわけでございます。したがいまして、階級定額税率の真ん中の部分というのは比例的な負担を、つまり比例税率の部分を引き上げようというふうに考えない限りは手をつけないでいいだろう。最高価格帯というのは比例税率の頭が切れている部分でございますから、それは取引が大きくなるに応じて頭をだんだん継ぎ足していったら上まで比例が伸びていきますから、それはそれでいいんではなかろうか。最低税額というのは定額税率の調整をある時期を置いて行いたい、そういう趣旨でございます。
  174. 永末英一

    ○永末委員 定額と比例と二つの考え方一つにごちゃごちゃにしまして、こう並べておる。だからいまみたいなことが合理化されるわけですな。しかし払う方から見たら、何でわれわれ五十円の方を百円にしておいて上の方は手を入れないのかということはわからないわけですな。したがって、低い方は定額だから当然だ、ほかのものも五十円が百円になっているやないか、こういうのがあなたの御方針だけれども、受ける方はそうはとりませんわね。その辺にこういう増税のやり方に対する、特に低い印紙が上がった人々は納得できない、これが実情ですよ。中小企業者で小さな金を動かし、受け取りをし、あるいは手形を切っておる人々が、印紙はいままで五十円でよかったのに百円だということは、これはなかなか納得できない。これは一つ一つやっておりますとまだ大分時間がかかりますが、すでに割り当て時間が参りましたので、続ける余裕はございません。  一つ大蔵大臣に聞いておきたいのは、先ほどちょっと触れたことですが、そういう経済行為の一番末端におる人々に、そして忠実な日本国民として印紙を張らなければいかぬと思っている人に二倍になったという印象を与えることがわが国のインフレにどういう影響を及ぼすと思いますか、それをひとつ、あなたのお見込みを伺って、質問を終わりたいと思います。
  175. 坊秀男

    坊国務大臣 最低の階級と申しますか、定額部分ですね、そこが二倍になって、その上の方が変わらずにおる、最高が相当また上がった。全体を見て、二倍になった人たちは確かにおれの方は二倍になったという感じがあるかもしれませんが、これ全体の体系を見ていただくと必ずしもそういうことではないということでございますので、何とかそこいらのところをよく御説明を申し上げて御納得を願いたい、こういうふうに考えております。
  176. 永末英一

    ○永末委員 いま委員長、発言を許されましたので……。国民は全体を見ないわけだ。大蔵大臣は全体を見ておられる、だからこの税制でいいと思いますが、国民は五十円から百円になったということに関して与えられる印象で経済行動をせざるを得ない。したがって、全体を説明するよりは、——だから一番当初あなたに伺ったように、どういう場合に増税されますか、どういう基準をお持ちですかということを伺ったのはここにあるのである。税は、これがやはり経済活動をやって印紙を張っていく人々の中に、なるほど値上げ機運だな、三年ぶりで坊大蔵大臣はインフレ来るのを見越して印紙を上げたなと、こういう印象を持って経済活動をするとえらいことになりますね。御忠告を申し上げまして、質問を終わります。
  177. 小渕恵三

    小渕委員長 荒木宏君。
  178. 荒木宏

    ○荒木委員 いまも論議がありましたが、どういう階層の人たちがこの増税負担するか、大変重要なことだと思います。私は、中小企業者、勤労者、一般の国民が日常なじんでいるような文書、これは税負担を軽くすべきである、こういうふうに考えております。負担を軽くする方法はいろいろありましょう。税率あるいは税額の据え置き、それからまた免税点の引き上げ、非課税範囲の拡大、いろいろありますが、時間の関係もありますから、そういう立場から、委任状の問題を少し伺ってみたいと思います。  これは一般の国民の日常生活に大変密接な関係があります。この印紙税法課税根拠としては、従来から文書の背後にある経済行為、これに担税力があるということに着目をして課税するというふうに言われておりますが、なるほど印紙税法の別表第一の一から二十五までのうち、十七号の委任状を除いては、確かに経済行為に関する文書があり、その意味では担税力が認められるというのは指摘できると思うのですが、御承知のように、委任行為は必ずしも財産権に関する委任行為だけではなくて、非財産権に関する委任行為、無償委任というのも決して少なくありません。だとすると、その部分については印紙税法の中でこれは異質のものだと言うこともできるのではないか。したがって、そういう部分については、非課税文書にするなり、印紙税法の適用対象外にするなり、措置すべきではないかというふうに思いますが、局長のお考え、を伺いたいと思います。
  179. 大倉眞隆

    大倉政府委員 この問題は、四十二年に全文改正をいたしましたときにかなりの御議論がございました。四十二年の全文改正前は、現行法のような限定列挙主義でございませんで、およそ財産権の移転、得喪に関する文書は、原則として印紙を張っていただきたいということで、これは財産権の移転に関する文書であるかどうかということが、各号に名前が明示されていない文書について実務上の問題が非常にたくさんございました。通達が山のように出ておりました。それを何とか限定列挙にして、わかりやすいものにして、実務上のトラブルをなくそうではないかというのが四十二年の改正の一番大きな柱の一つでございました。そのときに、おっしゃるように、委任状の中には純粋に経済行為と言い切れないものが入っているではないか、それは外したらどうかという御議論がずいぶんございましたけれども、結論としては、やはり個々の委任状の中身に立ち入って、これは課税委任状である、これは非課税委任状であるということがとてもできないだろうということで、委任状という形式に着目した文書税として構成するという経緯をたどったわけでございます。
  180. 荒木宏

    ○荒木委員 とてもできないというお話ですが、現行法でも、もっぱら金銭の受け取りに関する委任状であって、営業に関しないもの、これは線引きをして外しているわけですね。だから、区分けができないというのではなくて、ある意味での線引きは現にやられているわけです。問題は、そうした実務上のいろいろな問題がある事案について、全体として課税対象から外すか、あるいは線引きを実態に即したようにやっていくか、あるいは全部を課税対象にしてしまうか、いろいろな扱いがあると思います。私は、そうしたときに、印紙税法の本質といいますか、課税根拠は一体どういうことであるか、これは原則として外せぬと思うのですね。実務上問題が出るから、本来課税すべからざるものに、区分けできないからといってまるごと課税してしまう、これは原則上いささか問題があろうかと思うのです。また、印紙税法に関する趨勢がどうなっておるか、これも無視できぬと思うのですね。  私も余りよくは知りませんが、たとえばアメリカでは外国企業の保険証券について印紙税を課する。ほかは印紙税はない。西ドイツの場合には手形でしたか、手形税というのがあって、あとはもうありません。つまり、先進諸国では印紙税というものは、だんだんと取引が大衆化、日常化していくに従って課税対象が狭くなっていく。そして一般国民経済活動に参加するという上に配慮しているという経過がありますし、このことも無視できないだろうというふうに思うのですが、そうした印紙税の本質、それからいままでの経過、あるいは大きく言えば国際的な趨勢という点からしまして、実務的に非常に区分けがむずかしいから本来課税対象にならぬもの全部ひっくくってしまうというやり方はどうでしょうかね。
  181. 大倉眞隆

    大倉政府委員 最初におっしゃいました外国の例でございますが、アメリカ、ドイツ、フランス、それぞれ荒木委員の御指摘になったような形だと私ども理解いたしております。ただ、フランス、ドイツの場合は、もっと根元に一般的な一般消費税がございますものですから、流通税としての印紙税というのは非常に限定された範囲になっているという背景もまたあるにはありますが、もう一つ、委任状の問題は、おっしゃいましたように、委任状として負担を求めていいかどうかという議論をずいぶんいたしまして、そのときに、営業に関しない金銭の受取書の委任状ということでここに書きましたものは、たとえば給料を一括して受け取るときに全員から委任状をもらわなければいかぬというようなことを問題にいたしまして、それは委任状一通につき幾らというわけにはいくまいではないかというような実態的な判断が根元にあったわけでございます。そのほかの委任状というのは、通常——委任状としていま一番課税の多いのは株主総会の委任状でございます。これは明らかに財産権の行使に関する非常に重要な文書であろうという判断になると言われておりますが、一般論としまして、委任状をつくる場合には、他人を自分の完全な代理人として行為してもらうということにおいて、委任行為の背景にやはり文書の重要性なりまたそういう行為を行うことに伴う非常に潜在的な担税力なりを推定していいのではないかという議論を重ねた結果が現行法になっているわけでございます。
  182. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの給料の受け取りのお話がありましたけれども、私も法律実務に長年関与しておりましていろいろ矛盾を感じておったのは、たとえば公害患者の方がいろいろ公害の被害補償ということで、法制度が十分じゃないものですから訴訟ということになる。ところが、実際経済的には恵まれない人たちですから、訴訟上あるいは御承知と思いますが、訴訟救助という制度がある。費用は出さなくてもよろしいと国の方で扱っているわけですね。しかるに、その場合にたくさんの方から受任をしてやる場合に、委任状をつくれば一つ一つ印紙税を徴収しておるわけですね。なるほど給料の場合を一つ例をおっしゃったので、これは私もよくわかります。当然だと思うのです。しかし、同種の事例、賃金受領の場合はそれでよくて、そういった健康被害を受けた人たちが集団でいろいろ交渉なさる場合、もう事例は社会的常識として御存じと思うのですが、そういった場合に、今度の扱いで言いますと、二十円から百円ですから、三年前に比べて五倍になるわけですね、途中階段はありますけれどもね。一方、国の制度として救助という扱いをしながら、こちらは三、四年の間で五倍になる。もっと言いますと、法律扶助という制度がある。単に費用免除という救助だけじゃなくて、さらにいろいろ要る費用は国の方から援助して、一つの財団をつくって渡しましょう、こういう制度があるでしょう。それは制度意義を認められたからこそ、今度その扶助協会に対する寄付はたしかに免税のお取り扱いになるはずですね。これはいろいろ御議論もあったと思うのです。そうしますと、費用はよろしい、いや逆に差し上げましょう、それについては免税ですよ、こう言っておきながら、実際にその人たちがさあ行動を起こそうとするときに、委任状に貼用する印紙をうんと上げていく。まあ金額としてはそうあれかもしれませんが、倍率はうんと高くなる。これは取り扱いの整合性という点から言いましても、それから印紙に関する税体系全体の扱いから言いましても、国民の側から見ますと一体総合的に整合性を持つんだろろうか、こういう疑問は当然起こると思いますね。だからこそ実定法の上でも別表第一の中の十五号の債務保証については身元保証という分は除外してある。これは財産権に関するものとは必ずしも言えないからだと思うのです。あるいは二十二号文書の受取では、これは委任者、受任者という間の文書の扱いはありますけれども、その委託者、受託者の間の文書の金銭と有価証券に関する分だけは課税対象にする、それ以外は対象にしない、こうなっていますね。ですから現行法の取り扱いあるいは現行の行政の取り扱いからして整合性を欠く扱いではないか。そうなっておるのも、一に賃金の場合の受領、そこで線を引いてしまって、あと全部課税対象にしているということ、そういう扱いから起こっておる不整合ですね。線引きが決してできないというわけじゃないですから。現に個別に吟味をして非課税物件を決めているわけですからね。いまのような事例も取り上げて、そして非課税物件の範囲を非財産権の範囲に適合させていくような、実態に合うような努力というものが当然されるべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  183. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまの具体的な例につきましてはもう少し私ども考えてみたいと思いますけれども、先ほど例示いたしました給料の受け取りというのは毎月のことでございまして、毎月毎月委任状をまとめて一人の人が受け取るというところがかなり議論の対象になったように私は記憶をしております。訴訟代理の場合はやはり非常に大事な行為ではないか。おっしゃいましたように、まさしく倍率は高いわけですが、五十円が百円に、二倍でございますが、訴訟代理をしてもらう委任状に百円張っていただくということが非常な負担であろうかという問題も、これは毎月のような問題じゃございませんから、もう少し考えさせてみていただきたいと思います。おっしゃるように法律扶助なり訴訟援助なりがある場合には、むしろ法律扶助の方で、たとえ百円とはいえその分も扶助協会が負担してあげましょうというようなことにまでいくかいかないかというようなこととあわせまして、もう少し勉強させてみていただきたいと思います。
  184. 荒木宏

    ○荒木委員 原則を伺っておきますが、本来同じように課税対象になるべきという性質を持っておるものですと、これはいろいろ程度の問題もありましょうけれども、いま私は訴訟委任は一つの例として申し上げたのですが、局長のおっしゃった十年前のいろいろな論議でも、たとえば団体交渉のときの委任状がどうだ、あるいは、いろいろな民主団体や各種の団体が会合を開いて役員選挙をする場合はどうだ、そういったいろいろな非財産行為にかかわる事例が取り上げられておりましょう。ですからその原則はひとつはっきりしていただきたいのです。非財産行為は、本来印紙税の対象にはならない。だって、担税力という点から言いまして、それはたぐりたぐってずっと奥底までたどれば、どこかで結びつくかもしれませんけれども、しかし文書の直接背後にある行為については経済的行為と言えないのだから、その意味ではほかの文書とは違う、このたてまえはどうですか。
  185. 大倉眞隆

    大倉政府委員 それは経済的行為というのをどの程度のものと考えるかというところが一番むずかしいので、先ほど申し上げたように、個々文書の内容を判読してこれは経済行為であるか非経済行為であるかという判別はとてもできないだろうから、ある部分を物の考え方として排除するとすれば、それはやはり明文をもって排除する、それが限定列挙主義に切りかわった後の現行法考え方であろう、まずそう思うわけでございます。したがって、明文をもってこの非課税物件欄にただいまおっしゃったような委任状を掲名するかどうかという問題として、もう少し勉強させてみていただきたい。たとえば役員選挙のための委任状というのは、それはまた広い意味では一種の経済行為ではないかという議論もございましょうし、学会出席のための委任状も当時議論されました。やはりどこまで経済行為というものを考えるかということと非常に密接に絡んでおりますものですから、しかし実務上の観点から申せば、それは具体的に法律上範囲がはっきりわかるように書くというのがいまの法律の思想だと思っておりますし、その両面をあわせまして今後の研究課題として、もしそういうふうなものを外すという判断に立った場合には、どこまで外せばよろしいかという問題としてなお検討課題にさせていただきたい。
  186. 荒木宏

    ○荒木委員 あと持ち時間が五分ほどありますので、私、もう少し伺っておきたいのですけれども、十年前に主税局長が同じ答弁をしているでしょう。同僚議員がこの委員会でその問題を指摘された。検討させていただきたいという答弁がありますよ。会議録に載っている。(発言する者あり)十年検討して、私、いまからまた少し勉強させていただきたいと言うのは、これは単に法律の解釈、適用の問題ではなくて、政治的な観点から考えていかなければならぬと私は思うのです。いまお話しの村山喜一委員がそのことをずいぶん御指摘になっておるのですけれども大臣、このことはよくお聞き取りいただきたいと私は思うのです。いま線引きがいろいろむずかしいという問題がありました。確かにそうかもしれません。そういう問題もあるでしょう。しかし民事訴訟用印紙法の扱いでは、前はたとえば期日の続行の申請に印紙を張る、準備書面に印紙を張る、いろいろなものに印紙を張るように言っておりまして、取り扱いに法務省はずいぶん困った。そこで、昭和四十六年にこれを費用法に変えるときにそういうものは外してしまった。つまり、印紙税法のたてまえからいって問題がある課税対象は外すというのが、日本現行法制の歴史的経過にかんがみてもとられておる道ではないか。そうしますと、十年かかっても、検討するというお約束が、その後一つずつ非課税物件を実態に合うように進めていく作業が、めんどうくさいからと言ったら言葉に角が立つかもしれませんが、それが十分やられないままでひっくるめて課税されているというところに問題があると思うのです。  私はきょうは二、三の例しか申し上げませんでしたけれども、実務上そうした矛盾を感ずる事例というものは幾らもあります。法律的にも、有償行為と無償行為というのは実定法の上ではっきり概念が決まっておるわけです。たとえば民法で無償贈与というのがあります。あるいは無償の使用貸借というのがあります。またそうした契約総則は売買以外の有償行為に準用するというように有償と無償という考え方、財産権と非財産権という考え方は、いまの日本の実定法の上では、はっきり法律概念として決まっていることなんですよ。そしてそれをそれぞれの省庁皆さんが、苦労しながら各税法、印紙税法の本質に照らして課税物件にするかしないかを区分けする作業をやっておられる。法務省なんかは四十六年のときの作業は一つ大変だったでしょうし、それをどちらにするかという議論が大いにあったと思うのですが、そうした論議の末にこれは非課税にしようという扱いになった。大蔵省もぜひそうした他の省庁の扱い、そして実情に見合った扱いになるように、そうして印紙税法の本質を損なわないように、これはひとつ大臣、十年前の検討すると言われた当時の局長とは、いま人がかわっておられますからあれですが、言葉も踏まえて、いま研究とおっしゃったんですが、やはりこれは実態に合うように少しでも手直ししていくという方向を含めて大臣の御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  187. 坊秀男

    坊国務大臣 私も大蔵委員を長く務めておったわけでありますが、十年前にいまの大倉局長が答弁をされた、(荒木委員「別の局長です、たしか」と呼ぶ)そうですが。それを私は知らなかったものですからね。大倉さんはまだ局長にもなっていないし、ほかの局長が答弁されたわけですか。(荒木委員「そういうことです。」と呼ぶ)それはいろいろな問題がありまして、その問題について、その局長が勉強をする。こういうようなお答えがあったのではないかと思いますが、その中の一つが今日はからずも問題になって、で大倉局長がこの問題で別にその局長と打ち合わせたり、相談したり何かするわけのものではありませんが、相当むずかしい問題を御指摘なすったので、大倉局長がこれを勉強しよう、こういうふうに答弁をされたんじゃないかと思いますが、ひとつうんと勉強をするように私もしりをたたいていきたいと思います。
  188. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来る四日金曜日午前十時理事会、午後六時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時三十一分散会