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1977-03-01 第80回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月一日(火曜日)    午後七時二十八分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 山下 元利君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    鴨田 宗一君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       関谷 勝嗣君    原田  憲君       村上 茂利君    村山 達雄君       山崎武三郎君    山下 徳夫君       山中 貞則君    与謝野 馨君       伊藤  茂君    池端 清一君       大島  弘君    川口 大助君       川崎 寛治君    沢田  広君       只松 祐治君    村山 喜一君       貝沼 次郎君    宮地 正介君       高橋 高望君    荒木  宏君       小林 正巳君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君  委員外出席者         国税庁間税部長 大槻 章雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   永原  稔君     刀祢館正也君 同日  辞任         補欠選任   刀祢館正也君     永原  稔君 同月二十二日  辞任         補欠選任   沢田  広君     新盛 辰雄君   荒木  宏君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   新盛 辰雄君     沢田  広君 同月二十三日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     荒木  宏君   永原  稔君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     刀祢館正也君 三月一日  辞任         補欠選任   砂田 重民君     与謝野 馨君   林  大幹君     関谷 勝嗣君   刀祢館正也君     永原  稔君 同日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     林  大幹君   与謝野 馨君     砂田 重民君     ――――――――――――― 二月二十四日  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第六  号) 同月二十一日  支那事変賜金国庫債券償還に関する請願外一  件(市川雄一紹介)(第四九三号)  同外一件(森山欽司紹介)(第四九四号)  同外三件(小島静馬紹介)(第五五三号)  同(高橋高望紹介)(第五五四号)  同外二件(川合武紹介)(第五八九号)  同外三件(工藤晃君(新自)紹介)(第五九〇  号)  同外二件(戸沢政方紹介)(第六三三号) 同月二十五日  支那事変賜金国庫債券償還に関する請願外二  件(曽祢益紹介)(第六八一号) 同月二十八日  支那事変賜金国庫債券償還に関する請願(伏  木和雄紹介)(第八三七号)  同(草野威紹介)(第八九〇号)  同(伏木和雄紹介)(第九四一号)  大和基地跡地利用に関する請願長谷雄幸久  君紹介)(第八八七号)  同(山花貞夫紹介)(第八八八号)  同(長谷川正三紹介)(第九四二号)  税制改正及び税務行政民主化に関する請願  (山田耻目君紹介)(第八八九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月一日  昭和五十二年度税制改正に関する陳情書外二件  (第一四号)  勤労者のための所得税減税等に関する陳情書外  六件  (第一五号)  所得税寒冷地特別控除制度創設に関する陳情  書外一件(第一  六号)  景気停滞下財政金融政策運営に関する陳情書  外二件  (第一七号)  景気対策早期実施に関する陳情書外二件  (第一八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)  登録免許税法の一部を改正する法律案内閣提  出第八号)      ――――◇―――――
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  印紙税法の一部を改正する法律案及び登録免許税法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、政府より順次提案理由説明を求めます。坊大蔵大臣。     —————————————  印紙税法の一部を改正する法律案  登録免許税法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいま議題となりました印紙税法の一部を改正する法律案及び登録免許税法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  初めに、印紙税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  政府は、最近における財政経済事情等に顧み、今次の税制改正一環として、印紙税について、定額税率引き上げ等を行うこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  第一は、定額税率引き上げであります。  すなわち、現行定額税率五十円を百円に引き上げるとともに、これに準じて、定款、合併契約書定額税率現行の一万円から二万円に引き上げる等の改正を行うことといたしております。  第二は、階級定額税率の調整であります。  すなわち、現行階級定額税率最高価格帯に新たな金額区分を設けて税率引き上げることとするほか、不動産譲渡契約書等階級定額税率の一部の引き上げを行うことといたしております。  以上のほか、所要規定整備を図ることといたしております。  なお、これらの改正は、本年五月一日以後に作成される文書について適用することといたしております。  次に、登録免許税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  政府は、最近における財政経済事情等に顧み、今次の税制改正一環として、登録免許税について、定額税率引き上げ等を行うこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  第一は、定額税率引き上げであります。  すなわち、現行登録免許税定額税率は、昭和四十二年に設定されたものでありますが、その後の所得水準等の上昇に照らして、これを原則として三倍に引き上げることとし、更正の登記登記抹消等に係る定額税率につきましては、二倍に引き上げることといたしております。  なお、このような定額税率引き上げに伴い、これとの均衡を図るため、定率課税を行う場合の最低税額につきましても、現行の五百円を千円に引き上げることといたしております。  第二は、所有権移転に関する仮登記等定率税率引き上げであります。  すなわち、その負担実情等に顧み、所有権移転に関する仮登記税率現行の千分の一から不動産については千分の六、船舶については千分の四に、それぞれ引き上げるとともに、各種の財団抵当権及び企業担保権設定登記等税率現行の千分の一・五から千分の二・五に引き上げることといたしております。  以上のほか、農用地開発公団法規定による換地等の事業の施行のため必要とされる土地または建物に関する登記等非課税登記等範囲に加えることとする等、所要規定整備を図るここといたしております。  なお、これらの改正は、原則として、本年五月一日以後に受ける登記等について適用することといたしております。  以上、印紙税法の一部を改正する法律案及び登録免許税法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて両案の提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 小渕恵三

    小渕委員長 これより印紙税法の一部を改正する法律案について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  6. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ただいま大臣から提案されました印紙税法の一部を改正する法律案について、その内容、その前提となる条件について幾つか御質問をいたしたいと思います。  まず最初に伺いたいと思いますが、今回の税改正について、その背景あるいは経済条件見通しをどう考えているか。実は調べてみましたら、この前の改正は四十九年に行われているわけであります。平均二・五倍のアップということになっております。その前は四十二年、さらにその前は二十九年、前から振り返ってみますと、十三年目、七年目、今度は三年目というわけであります。何か税を取る方向に非常に急いでピッチを上げてこのような提案がなされているという感じがいたしますが、今回のこのような提案の中で、なぜあれから三年を経た今日、このような引き上げをすることになったのか、それをまず伺いたいと思います。
  7. 坊秀男

    坊国務大臣 今度の税制改正に当たりまして印紙税を取り上げたというのはどういうわけか、こういう御質問のように承りました。  租税の体系としては御承知のとおり、所得税法人税相続税など一群の直接税がございまして、そのほかに間接税がございます。その間接税としては、消費税流通税があることは御存じのとおりでございますが、その中の流通税は、財貨の流通に直接、間接担税力を見出して課されるものでありまして、その中には登録免許税取引所税有価証券取引税印紙税が含まれておるわけです。この印紙税性格は、文書作成行為の背後に軽度の補完的課税を行うに足る経済的利益ないし補完的な担税力が存在する、この点に着目いたしまして、そこでその文書作成行使の事実を課税機会としてとらえている文書作成税でございますが、これに対して税をかけた、こういうわけであります。
  8. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣がいま御説明になったようなことは、私もかねて勉強いたしております。端的に伺いたいのは、提案理由の中には、「最近における財政経済事情等に顧み、」とありますが、考え方二つあると思います。一つ税負担能力が高まっている、税金をもっとアップする余裕があるということで今回の一部改正法提案になったのか、そうではなくて、二つ目には、税負担能力は高まっていないということであるけれども、無理でもとにかく税金をよけい取らなければならぬということなのか、二つあるのじゃないかと思います。前の値上げのときその他議事録をずっと繰って調べてみますと、四十九年の手直しのときには、これは大臣答弁もあるいは政府委員側答弁も、四十二年から四十九年、この前の値上げですが、それまでの間に国民所得の面でも三・一倍とか、あるいは一人当たり所得の面でも賃金の水準でいいましても、それぞれ三倍ぐらい伸びている。それで税金の方は、四十八年には四十二年と比べると三分の一ぐらいにウエートが下がってしまっている。したがいまして、ある程度もとに直すぐらいの、その程度引き上げをやってはどうかという説明がなされておりました。今度の場合は、その基礎となっている税制調査会の「五十二年度の税制改正に関する答申」、これを見ましても、印紙税につきましては「最近における厳しい財政事情を考慮すれば、これに負担増加を求めてよい」と思うという表現になっております。非常に対照的な状況ではないかと思いますが、その二つのうちどっちなのかをまず聞きたいと思います。
  9. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまの伊藤委員の御質問は、ちょっと時間をかけまして恐縮でございますが、税制調査会における審議経過を御説明いたしたいと思います。  昨年六月以来、前国会にお出しいたしました中期財政収支試算もとにいたしまして、ある時期にどうしても何らかの税負担増加をお願いせざるを得ないように思われるので、一体どういう税目でどのような負担増加をお願いすることが可能か、まず現在ある税制をすべて洗い直していただきたいというお願いをいたしました。それが一般に言われておりますいわゆる中期税制審議でございます。この審議は、五十二年度改正のために五十一年の十二月で一応中断されておりますが、五十二年度の改正を御答申いただきますにつきましては、やはりそれまでの中期税制審議の経緯というものがかなり背景になっておりまして、中期税制の御審議をいただきます場合に、全体としてどのぐらいの増税をどういう組み合わせで考えるべきかということはまだ結論が出ておりませんけれども現行税制を洗っていただきました過程で、従来から言われております間接税のおくれを調整するということはある時期を置いてこれはまずやるべきであろう、現行税制の中で、という御指摘があったわけでございます。間接税のおくれと申しますのは、くどく申し上げる必要はないかと思いますが、定額税、あるいは従量税になっておりますものが所得物価水準動きについていけないという問題でございますので、端的に申せば従量税のものを従価税に直すか、あるいは実際の執行上従量税の方が適当であるというものは、ある時期を置いて負担水準を見直すということをやるべきであろうということが全体の基調でございます。  その中で、伊藤委員よく御承知のように、従量税制度によっておりますもののいわば大物は、昨年度揮発油税自動車重量税増税をお願いいたしました。さらに一昨年は酒、たばこについての増税をお願いいたしました。したがって、ある時期を置いて見直すというときの対象としては、ことしはやはり印紙税登録免許税対象として浮かび上がってきた。時間をいただきまして恐縮でございますが、そういう背景がございまして、上げ幅につきましては、従来の御説明にもございましたように、前回改正後の所得動き、あるいは物価動きというものを一応の参考にする、しかし必ずしも機械的に指数的に直すということではない、そういう考え方になっておるわけでございます。
  10. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いま検討の経過お話がございました。まあしかし、この印紙税のいままでの経過をずっと振り返ってみますと、さっき申し上げましたように、周りの経済条件も変わって税内容そのものの比率が非常にダウンしてしまった、もとに戻してもいいじゃないかという段階とは違って、とにかく税収を上げなくちゃならぬという方が先行している。後ほど申し上げますが、それと同時に、全体の構造展望ということを大きく問題にしたいというわけでありますが、そういう気がいたします。  これはこういう角度からも言えるのではないかと思いますがいかがでございましょうか。大臣からさっきお話もございましたが、印紙税流通税である、それから文書税という性格のものである、さらにまたほかの大きな税金と違いまして補完税として本来きわめて低い税率のものというふうに言われております。また、文書背景にある経済行為課税するという概念になっておるわけでありますが、それではその背景にある経済行為というのが、四十九年改正の時点と比べまして三年の間にどう変わったのか、非常に向上して当然今度税率をアップしていいということになっているかどうか。私は政府の方に年じゅう言っていることですが、景気状況その他を見ても非常に厳しい条件に置かれている、日本経済も端的に言ってこのトンネルを抜け出した状態になっていないというふうなことではないかと思っております。  ですから、文書背景にある経済行為課税をするという規定になっているわけですが、その経済行為自体は依然として冷たい状態になっている。それにもかかわらず、いま平均幾ら以上になりますか、そういう値上げをしなければならないというところですね、そのところは正直にまずお答え願いたいと思います。
  11. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回印紙税を取り上げました直接の理由一つに、何とかして現行税制の中で景気対策と矛盾しない範囲内ではできる限りの増収を図りたいという気持ちがあったことはまさしくそのとおりでございます。景気対策と逆行しない範囲内での増収を図るとすれば何であろうかということも一つ角度でございました。その意味流通税を取り上げてみたわけでございます。  それから御質問の第二点の、前回改正以後の経済の力が前回よりも強くなっていないではないか、むしろ弱くなっているのではないかという御趣旨のように伺いましたが、前回改正基礎となりましたのはいわば四十八年度でございまして、それから今日までは、昨年以降の伸び悩みは確かにございますけれども、やはり四十八年度に比べますれば国民所得も、経済取引の大きさも、取引の一単位もそれぞれにかなりの大きさになっているというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
  12. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 税金をもっとよけい取らなければならぬという事情が、率直に言って背景だろうと思います。私は後ほどさらに御質問したいと思いますが、そのこと自体、やはりいろいろな問題点が生ずるということだろうと思います。  その具体的な内容を申し上げる前に、何か今度の提案にしても、今後の税制全体あるいは経済見通しについて確実な見通しがつかない、そういう見通しがはっきりしない段階で、まず取りやすいものから急いで取っていこうという感じを非常に強く持つわけであります。それで、端的に伺いますが、今度の印紙税法値上げ、これが五十年代前期経済計画あるいは税調中間報告、それらとの関係において、それらと連結した考え方もとにこれが提案をされているのか、あるいはまた単なる見直しということで出ているのか、伺いたいと思います。
  13. 大倉眞隆

    大倉政府委員 なぜ印紙税を取り上げたかということにつきましては、先ほどの繰り返しになりますので重ねて申し上げませんが、御質問の最後にお触れになりました中期的展望との関連はどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、中期的に見てある時期に何らかの増税をお願いせざるを得ないという考え方からスタートしているということは確かでございます。  ただ、それが金額的に政府の中期的な見通しとどう絡んでおるかという点につきましては、率直に申し上げまして、五十一年度に私ども試算をいたしまして予算委員会にお出しいたしました中期財政収支試算、そこで中期的にこの程度税収の確保が必要であろうと申し上げておったものに比べますと、五十二年度の税収はそこには達しておりません。したがいまして、中期的展望から言えば、五十二年度は経済情勢のこと、景気対策のことを考えまして、財政体質を非常によくするような増税はやろうと思ってもできない、むしろやるべきでないという考え方一つございます。ただその中で、制度そのものとして負担増加を求めてもいいものであると言われ、しかもいまの時期の景気対策に矛盾しないだろうというぎりぎりの範囲のものを私どもとしては精いっぱい取り上げてみた、その一つ印紙税である、かように申し上げればよろしいかと考えております。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いまの御答弁の中で、抜本的な税制改革あるいは構造的な改革、それはやろうと思ってもなかなかできないという今日の段階で、まあ可能なものをというふうな意味お話がございました。私はこの前の改正、その前の改正からずっとこの経過を振り返ってみますと、何か全体の姿勢というもの、展望が非常にはっきりしない。展望がはっきりしない段階の中でまず取れるものを取っていこう、そういう姿勢が非常に強いのじゃないかという感じを強く持たざるを得ないというふうに思います。  それに関連いたしまして、四十九年の改正のときにもずいぶん問題になったことですが、このような私の判断する姿勢考え合わせてみますると、今度の印紙税値上げ、それらがこれから後の税制改革全般とのかみ合いの中で、大規模取引高税とか売上税とか付加価値税、そういう方向への傾斜を非常に強めるという姿勢を持っておるのじゃないか。もちろん、このような大規模税制改革と今回提案されている印紙税とかいうものは、税制として本来全く異質のものだと思いますし、また当然異質でなければならぬというふうなことだと思いますが、何かその方向へのきっかけとなる、あるいはその方向への傾向性をはらんでいる、その方向にのめり込んでいくというふうな感じが非常にするわけであります。その点は、絶対に違うというふうに断言できますか。
  15. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のように、将来わが国の税制改正ということは、どうしてもある程度のものはやらなければならないということはあります。しかし今日どういうことをやるかといったような改正計画はもちろんできておりません。しかしいまの印紙税がそういったことをやることについての何か先駆けというか前提というふうな考えは、これはもう全然さようなふうには考えておりません。
  16. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 印紙税付加価値税などに転化していくということは全然考えていないということでございました。しかし、いずれにしろこれから先税制についての根本的な改革が求められているということは当然のことだろうと思います。  それに関連をしてひとつお伺いしておきたいと思いますが、今年度の税制についての税調答申、この「基本的な考え方」の中に「いずれかの時期に一般的な税負担引上げが必要になるものと考えられる。」当然大幅なと考えるかもしれません。また前提としては「歳出面における節減合理化税制面における不公平是正を一層推進することが必要である」というように書かれております。しかし今度の提案、いままでの経過も調べてみますと、何か前提となる、あるいは必要となるというふうに言われている支出面におけるところの節減合理化あるいは不公平是正というよりは、取れるものから取ろうという感じを強くしてならないわけです。  大臣、お伺いいたしますが、「いずれかの時期に一般的な税負担引上げが必要である」というようになっていますが、いずれかの時期ということは、いまの財政事情からして五年後、十年後ということはもちろんないと思います。その辺、これから先非常に身近な機会にそれをやらなければならないということではないだろうかと思いますが、その点いかがでございますか。  もう一つ付加価値税などに直接転化することはないというふうに言われましたが、税調での議論されている討議メモとか、そういうものをいろいろと検討いたしてみますと、中期税制一環として論じられている新税等の概要について、いろんなメモの中にも、一面では土地増価税とか富裕税とか、その辺の問題と、それと同時にEC型付加価値税あるいは大規模売り上げ税、大規模取引税というようなこともテーマとして挙げられております。これはいずれも物価へのはね返りが大きい、国民生活には重大な影響を与えるということだと思いますが、これら話題となっております問題についてどの程度検討されているのか、あるいは大臣はどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  17. 坊秀男

    坊国務大臣 財政収支試算というものをいまつくっておるということについては御存じのことと思いますが、それを目標といたしまして日本財政を立て直していくということはどうしても必要だと思います。財政を立て直すためには、五十五年には例の特例公債というものは発行しないというふうな健全財政に持っていくということでございまするから、そうするとどうしても租税収入というものを充実していかなければならないということはもう必至のことでございます。しからば、その税収入をいかなる税によって充実していくかということにつきましては、いま税制調査会におきましてあらゆる直接税また間接税といったようなものにつきまして勉強してもらっておる過程でありまして、そういったものをどう勉強して、そしてその中で国民の皆さんが一体どういうものをおとりになるかということも一つの大きなファクターになるであろう、私はかように考えます。いずれにいたしましても、直接税、間接税その他の税におきまして何らかの手だてを講じていかなければなりませんけれども、しからば具体的にいまどれをとってどうというようなところまではまいっておりません。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間の関係もありますから、具体的な問題に入っていきたいと思います。  いま伺ったところでぜひ一言申し上げたいのですが、大臣言われましたように、これから具体的なことを本格的な展望について議論しなければならぬ、また検討しなければならぬということでございます。しかし今日の情勢を考えますと、むしろいまの時点ではっきりした展望を出す努力を積極的にやるべきではなかったか。そういう前提の上に、余り大きな額の税制改正ということではないかもしれませんが、こういうものについてもやはり大きな展望の上に国民の理解を求めていく、そういうことが一番必要なところではないだろうか。そうでないと、展望がはっきりしないままいろんな税率のアップが行われる。何か国民の目から見ますと、あるいは納税者の目から見ますと、せっぱ詰まってまず税収をふやしていくというふうに受け取れますし、あるいはまた、税制の手段としてもどうしてもこそくな手段に入ってしまうということになってしまうのではないかと思います。そういうような問題はこれから別の機会にさらに具体的に議論を進めさしていただきたいと思います。  そこで、幾つかこの改正自体の具体的な問題について御質問したいと思いますが、その一つとして、印紙税という税金についての実態把握の問題、これを伺いたいと思います。  大蔵省主税局から参っております説明によりますと、この改正によって税収見込みは初年度七百十億、平年度八百五十億というふうに見込まれております。その金額の積算の根拠、あるいは実態把握がどうなっているのかということを伺いたいと思います。  ちょうど確定申告の時期でもございますが、税についての国民の関心も非常に高まっている。それだけにしっかりした基礎を持って、あるいは国民にわかるようにやっていくということが非常に重要ではないかと思います。  なぜこの問題を質問するかといいますと、前回改正のときにもこの問題が大きな議論になりまして、印紙税についての実態把握というものは非常に不正確であるということが大分大きな議論になっております。またこれについて政府側の説明でも、他の税に比べましてなかなか実態がつかみにくい、あるいは総額自体も余り的確にわかっていない、さらには印紙税の調査というものはいろいろ困難があるという説明がございました。それでは今回の改正に当たりましてその後実態把握につきましてどのような改善の努力あるいは分析がなされているのか、伺いたいと思います。
  19. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいま伊藤委員指摘になりましたとおりの面が非常に多い税でございます。税としての収入そのものも、印紙収入の総額から、かなり後になって具体的な計算ができます手数料でございますとか登録免許税でございますとか、そういうものを差し引いた残りが印紙税であるはずであるというところからしか入れないことは認めざるを得ないかと思います。さらにそれを一層細分いたしまして一体手形の分の印紙税は幾らなんだろうか、領収証の分の印紙税は幾らなんだろうかということにつきましては、やはり各税務署を通じまして事業所に御協力を願って、ある一月間に使われた印紙をどういうふうにお使いになりましたか、どの文書にどのくらいのウエートになっておりますかということをお尋ねしてそれを集計してみまして、それを全体の印紙収入に延ばしてみるというようなやり方しかないわけでございます。したがってその計算の根拠自身もかなり大胆な推計を加えたものにならざるを得ない。その点はまさしくおっしゃるとおりの一種の弱点を持っておるということは認めざるを得ないかと思います。ただ、私ども、いま申し上げましたような個別の事業所の協力によりますいわば実態調査のようなものをベースにいたしまして、現行印紙税収入の構成比を割り出しまして、その構成比に応じまして今回の改正でそれぞれどれくらいの税収が出るであろうかという推計をいたしました。その結果がただいま御説明しております平年度八百五十億、初年度七百十億と推定しておるというふうに申し上げるしかないわけでございます。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いま告白されましたように、推計以外に手がないという税金だと思います。当然ながらほかの税金と比べて大変あいまいあるいは不確かな内容による税の計画というふうにこれは言わなければならないと思います。言わなければならないというよりも、これは非常にはっきりしているということだと思います。  そういうことで、七百十億とか、それから八百五十億とか、そういう数字は一体はっきりした自信があるんだろうか。実態把握がなくて税率を上げるというようなこと、これは税制自体のやり方として非常に問題をはらんでいるというようなことではないだろうかと思います。私、国税庁の事務年報を調べてみましたら、まだ昭和四十九年だけしか出版されておりませんでしたが、昭和四十九年に印紙収入が四千二百六十五億。その内容を見ますと、その中の相当な割合を印紙税が占めると思われるという表現になっております。これでは納税者の立場から見ても、税制としても非常に困った性格のものではないかというふうに私は思うわけでありまして、お伺いしますが、七百十億、八百五十億という数字ははっきりした自信があるのかどうか。それから、五十年の国税庁の事務年報の数字ももう出ているころではないかと思いますが、そういうのと比較をいたしまして、あるいは今回の推計から見て、今度の値上げによって五十二年度にどの程度印紙税部分の収入を推計できるのか、それを伺いたいと思います。
  21. 大倉眞隆

    大倉政府委員 収入見積もり及び税制改正による増収見積もりにつきましては、先ほど御説明申し上げたような手法を用いておりますので、非常に正確なものであると申し上げるだけの自信は率直に言ってございませんけれども、ただ私どもが手元にある限りのあらゆるデータを使ってみて最善と思われる推計をしておるということで御了解をいただくしかしようがないかと思います。増収後の印紙税収入は、現行法によります五十二年度の収入見込み額をまず二千三百五十三億と推計いたしておりまして、それに増収を足すわけでございますが、増収額は初年度としては七百十億を見込んでおりますので、三千六十三億という計算に相なるわけでございます。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いずれにしても、すべて推計によって想定をするというふうな状態になっておりまして、税金の問題について国民、納税者の関心が非常に高まっているという中では大変遺憾なことだと思いますし、また率直に言いまして、四十九年の値上げのときにもあれほど税の捕捉率あるいは実態という問題について非常に大きな議論があった。ところが三年たって今回さらに一部改正税率をアップすることについて、あの時点とは余り変わっていない取り扱いになっているということはやはり非常に遺憾なことではないかというふうに私は思います。  次に、それに関連もすることですが、いろいろな意味であいまいであると同時に不公平な部面もこの税金ははらんでおるのではないかということを感じます。性格上、文書税という性格を持っているというふうに規定をされておりますが、文書に印紙の貼付漏れということも当然あると思います。一定の調査もされまして、過怠料金を取るとかという措置もなさっているようでございますが、これもこういう性格あるいはこういう取り扱いの中ではそう十分に把握ができていないということではないかと思います。  特に私が問題にしたいのは、最近の商取引あるいは経済状況を見ますと、たとえば二十五号にわたる項目の中で、手形あるいは受取書、いろいろあるわけでありますが、この二十二号の受取書というものにつきましても、受取書を発行して消印を押すというケースから、だんだんに最近の経済慣習といたしまして銀行振り込み、そして通知だけが来る、あるいは現金決済とか、そういう比率が非常に増加をしているということがあるのではないかと思います。こういう面から見ますと、いまのやり方では性格的にも不公平さをはらんでいるということが言えるのではないだろうかと思います。前の税改正のときにもこれに関連をいたしまして捕捉率の問題などがいろいろと議論になっておりますが、特にこういう銀行振り込みなどがふえてくる、受取書に印紙を張って消印を押すという形の部分が少なくなってくるということは、この文書税背景となっている経済行為ということについてとらえ方も非常に不公平部分がふえてくるのではないか、構造的にそうなってくるのではないかというふうに思うわけでありますけれども、そういう傾向というものをどうつかんで、どうお考えになるのか、あるいはどういう見通しを今後とも持っているのか、それを伺いたいと思います。
  23. 大倉眞隆

    大倉政府委員 だんだんと経済取引が複雑になりまして、たとえばいま御指摘のようにその決済を銀行振り込みでやるということがだんだんふえてくる、それは傾向としてはおっしゃるとおりだろうと思います。そこが文書税であるという印紙税の限界であろうかと私ども考えております。したがって、それであるだけに余り高い負担というものはやはり求められない。おのずから負担水準そのものにも限度があるんだろう、そう考えております。ただ、そこをもっと発展させまして、およそあらゆる資金決済について何らかの軽い負担を求めるということになりますれば、それはやはりもう文書税ではできなくなってきて、取引税なりなんなりというところに発展していく。ただ、先ほど大臣も申し上げましたように、だから印紙税から必ずそっちへいくというふうに私どもとしていま考えておるわけではございません。しかし、文書税であるがゆえに流通税としても、いわば部分的なものにとどまってしまうということは、これは宿命的にどうもあるのだ、そう認めざるを得ないだろうと思います。
  24. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いまお答えの中でも認められましたように、この印紙税の実態というものが推計以外にない、税収見込みについてもそれしか手がないというあいまいさも持っている、基本的にそういう性格を持っているということが言えるのじゃないかと思いますし、またいまの答弁にもありましたように、取引形態あるいは決済の方式も、これは社会慣習としてだんだん違ってくる。この前の法改正のときには、こういう形式が日本において安定した社会的慣習となっておりますのでという説明が繰り返し行われておりましたが、あれから三年という期間の中にも急速にそれが変わっているということではないかと思います。私は、やはり税金あるいは税制というものは明確な根拠を持ち、不平等をなくし、あいまいさをなくして、国民のあるいは納税者の理解を求めるというのが当然のことでありますし、あるいはまたこれから先を考えますと、ますますこういう部面について心しなければならないということではないかと思います。この点を強く指摘をしておきたいと思います。  関連しまして、私は、こういう税の捕捉率という問題は、印紙税だけに限らないという状況が最近特にふえているのではないだろうかというふうに感ずるわけであります。全般的にこの問題があるんではないかと思います。税の執行面での不平等、まあ個人、法人を含めて所得の捕捉率にアンバランスがあれば納税者にも大きな不信感を生む、あるいは大きな脱税が出てくるほど納税意欲を大変減退するという問題があるわけであります。  ここでロッキード、田中金脈の問題を持ち出すつもりはありませんけれども、最近の状況を幾つか検討いたしてみますと、たとえば法人企業に対する税の実態等、実地調査などがどう行われているのか、これらにつきましても、月々あるいは年々チェックされる度合いというものも、何かだんだんに少なくなっているという傾向を持っているのではないかと思います。時間の関係もありますから、一々私の調べました全法人に対する調査のパーセンテージまでは申し上げません。そういうことが数字でも一あらわれております。そういう傾向の中で、調査をされる回数も非常に少なくなってくる。したがいまして、ひどいときには脱税の時効期限の三倍にもなるような期間、調査もされないというふうな問題も指摘をされているところであります。  さらには、法人税のいわゆる脱税白書によりましても、国税庁が疑問を持って、昨年ですか調査をした九万二千社のうち、実に八〇%が過少申告をして更正決定を受けているというふうなことも聞きますし、最近また新聞でも話題になりましたが、一部の大企業が例年多額の使途不明金を計上している。全国の資本金五千万円以上の企業の使途不明金は、合計二百五十億にも達しているというふうなことも聞くわけであります。  細かくこれを質問するのはここでの趣旨ではございませんけれども、やはり印紙税について指摘をされなければならない問題と同時に、税制全般にわたってこういう努力がもっと行われなければならないということではないかと思います。  詳しくお聞きするつもりはございませんけれども、簡単にお答え願いたいと思います。
  25. 大倉眞隆

    大倉政府委員 きょうは印紙税でございましたので、国税庁の間税部長が参っております。ちょっと越権でございますが、便宜私から、直税部系統のことでございますので、私の知っております範囲でお答えさせていただきたいと思います。  伊藤委員の御指摘の実調率が下がる傾向にあるということ、これは、国税庁は一生懸命やっておりますけれども、ずっと同じぐらいの定員で仕事をこなしておるものでございますから、どうしても重点主義でやっていく。一般の納税者に対してはできるだけ指導をして、また税理士、青色申告会などの協力を求めて申告水準を上げていく。国税庁の調査としては、やはり脱漏があるのではないかというところを集中的にやっていくという態勢でないと、納税者も税額も非常にふえながら職員数はふえておりませんものですから、どうしてもそういうことでないといまの運営がやっていけないというふうに私としては聞いております。したがいまして、実調率が下がる傾向にありながら、しかし調べるときには重点的にやり、しかもその結果、おっしゃるように執行面の不公平が出ないようにできるだけ直していくということで、現在一生懸命努力をしておるということであろうかと考えております。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次に進みたいと思います。  今度の税改正では、全体にわたって税額も上がり刻みも変わっているということになっております。税額が上がっておりますが、免税点は据え置きということになっております。私は税額あるいは税率を上げるならば、当然のことながら免税点も上げるというのが普通ではないだろうかというふうに思います。税調に出されました全国のいろいろな団体あるいは経済団体などからの税制についてのいろいろな要望などを読んでみましたり、あるいは幾つかの団体の話を聞いてみますと、税率のアップに反対でありながらも、しかもやはり免税点は引き上げてもらいたい、これが現在の経済状況からして当然ではないだろうかという要望が、たとえば全国中小企業団体中央会とか横浜商工会議所とかいろいろなところから出ているのを資料でも読むわけであります。税額は上がるが免税点は同じという、私は率直に言って今回の提案の大きな矛盾の一つだろうと思いますが、これについてお伺いいたします。
  27. 大倉眞隆

    大倉政府委員 免税点の引き上げをどう考えるかという御議論は、税制調査会でも出されまして、御検討を願いました。  印紙税につきましては、一つの議論は、事柄の性質上、これは免税点は要らないのではないかという御議論がございます。現に現在の課税文書表にございます各種の文書の中でも、免税点のついていない文書もございます。現在免税点がございますのは、手形とか、ただいまおっしゃいました売上代金の領収書などに免税点があるわけでございますが、これは非常に数の多くなる場合に、余りに小さな金額の領収書まで一々印紙を張っていただくということはいかがであろうかという感覚ででき上がっておるものだろうというふうに従来から説明がされてきておるわけでございます。  その意味でいまの三万円という免税点の水準を御検討願ったわけでございますが、これは伊藤委員よくお調べのように、四十九年の改正のときに当時の一万円から三万円に一挙に引き上げたわけでございまして、当時の実態調査、それ以後の諸方面からの意見聴取によりまして、三万円のいまの水準で、これまた推計で申しわけないのですが、恐らく領収書の作成枚数の九割近くは免税点以下に外れておるだろう。したがって、中小企業の方の非常に小さな金額で手間がかかるという問題は、やはり九割近くが外れているのならそれでいいのではないだろうかということで、前回引き上げが三倍であって三万円ということになったということを踏まえてみれば、今回の改正ではそのままでいいんではないだろうか、手形につきましても、十万円という水準だからそれでいいんではないだろうかという御議論を経まして、今回の改正には免税点の引き上げを織り込んでいないわけでございます。
  28. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そのような局長の答えがございましたが、現実に税制についていろいろな経済団体の意見を求めますと、免税点を引き上げてもらいたいという要望が非常にたくさん来ているということは、いま局長からお答えのあったそういう内容の判断だけで済まされることではないのではないかという気が非常にいたしますが、これは次の話題にも関連をしながら御質問を申し上げたいというふうに思います。  次に、二十五号にわたる項目がそれぞれこの中に記載をされております。二十五項目あるわけでありますが、若干この内容について触れたいと思います。  その前に、大まかに見て、この税収税収といっても推計ですね、この税収から見たこの二十五号の内容の比率、特に大きいもの、これはどのようになっておりますでしょうか、それを伺いたいと思います。
  29. 大倉眞隆

    大倉政府委員 改正後の姿として推定いたしておりますところによりますと、全体の収入を一〇 〇といたしまして、約三割が二十二号の金銭、有価証券の受取書であろうと考えております。さらに、次の大きいものが手形、これがやはり同様に約三割、私どもの計算では二九・一というふうに計算いたしておりますが、受取書が三〇・七、手形が二九・一ということで、大体その二つで三分の二ぐらいになっているのではなかろうか。  あとは際立って大きなものというのはございませんけれども二つ三つさらに申し上げますと、請負契約が九・二%、不動産の売買契約が五・五%、預貯金通帳等が四・七%という推計をいたしております。
  30. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いま伺いましたように、二十五号の中で言いますと二十二号それから三号、これが大きな比率を占めている。この二つで三分の二かそれ強というふうなことではないかと思います。私は、やはりこの二つの項目、これとの関係で、今度の改正が大きな企業あるいは中小零細企業の場合、それの持つ影響がいろいろ違ってくるのではないか、経済規模の上の方と下の方とそれぞれ違った影響力を持ってくるのではないかというふうに思うわけであります。  これは実態調査上の問題としてお伺いしたいと思いますが、たとえば二十二号受取書、これらについて金額別の大きな構成と言いますか、そういうことがおわかりでしたら伺いたいと思います。
  31. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これまた非常にラフな推計で申しわけないのでございますが、受取書で階級定額になっておりますものにつきましては約五割五分が大企業分ではなかろうかという推計がございます。それから定額になっておるものにつきましては、これはやはり数としては圧倒的に中小企業の分が多いのではなかろうかという推計になっております。  ただ、定額に、なっておりますものは、ちょっとくどくて恐縮でございますが、全体の作成枚数から申せば約一割が相手になるのだ……(伊藤(茂)委員「一割が……」と呼ぶ) 一割が印紙を張らなくてはいけない、九割の方は免税点で落ちてしまうということでございますから、残りの一割の中では、やはり金額の小さい受取書というのは、どうしても中小企業がつくっておられるものが圧倒的に多いだろうという推計になっております。
  32. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いま言われたような実態が非常に明瞭に現実のものとしてあらわれているというようなことではないかと思います。  たとえば二十二号の受取書についての上と下ということ、それにどのような影響の違いがあるかということを申し上げましたが、今回の改正で刻みの上の方をふやしていく、上限も高くするし刻みもふやした、一見この前の改正と比べますと、上の方にも負担がちゃんとなるということで公平になったような感じが持たれるような気がいたします。しかし現在の経済実勢からしますと、決してこれは実態に合っているということではないのじゃないだろうかというふうに思うわけであります。  たとえば一号、二号に関連いたしますが、不動産の譲渡とかにつきましても、小規模不動産屋でも数千万あるいは数億、大手の方では何十億、何百億という額を扱っているというふうなことがあるのではないかと思います。またこの請負契約とかそういう面でも、大手企業にいたしますと大きなビルをつくるとかそういう工事の関係、まあ想像いたしますと数十億あるいは数百億というようなことがあるのではないだろうか。  四十九年の改正のとき大変論議もあったことでもあり、今回の改正では上の方の刻みをふやしたということになっておりますけれども、項目によって違いますが、十億円超が上限とかいうようなことではまだまだ経済の実態に即していないのではないか、まだ上に甘いのではないかというふうな気がいたします。税調のこれに関連する答申の中でも、「最近における取引規模の拡大等に即応して、最高価格帯の見直しを中心とした税率の調整合理化を行う」、それに基づいてなされたことでございましょうけれども、現在の取引あるいは経済の実態に即応していない面が依然として強いということではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいま御質問の中でお触れになりましたように階級定額税率の最高区分の見直しにつきましては、前回、当委員会で各委員からの御指摘も受けまして今回このような改正案を御提案しているという点は御指摘のとおりだと思います。どのくらいまで上に上げればよろしいかということで御議論を願ったわけでございますが、たとえば手形につきますと、いままでの最高二万円が、最高として五万円までまいりますので、今回の改正としてはこのあたりが妥当ではないのだろうかという御判断でこう決めていただいた。大体最高のところは二・五倍とか三倍とかというところまで引き上げている案になっております。たとえば一号文書は、従来は最高五万円が今回は最高十五万円ということになっております。二号文書も同様でございます。今回の改正として御提案するのは、決め手があるわけではございませんけれども、この辺が大体妥当な線ではなかろうかという御判断をいただいたわけでございます。
  34. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 どうもその基礎となるような根拠というのは、科学性、具体性がないという感じを非常に強くするわけであります。上の方の問題についても、先ほど申し上げましたような指摘ができると思います。下の方の問題についても、やはりもっと深刻な影響のある側面もあるのじゃないかというふうに思うわけであります。  私も具体的に一々申し上げませんが、中小零細の企業について、月どの程度印紙税負担があるのか等々、幾つか例を聞いてみました。もちろん、業種によって受取書をたくさん発行しなければならぬ場合とそうでない場合と違うわけでありますけれども、ケースによりましては、大体月三千万くらいの水揚げの中小の企業で、たとえば印紙を買う額が月十万円近いとかいうふうな話も聞くわけであります。まあそれらは業種によっていろいろとケースが違うと思いますけれども。  今度の改正の中で最高価格帯の見直し、上限を上げて刻みを大きくしたということにはなっておりますけれども、上の方から見ても、中小零細企業などの関係から見ましても、依然としてやはりこのような不公平といいますか、経済実態に即さないといいますか、そういう側面があるのではないか、こういう点はもっと正確に調べて科学的な根拠の上に税制が扱われることが必要ではないかというふうに思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  35. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私ども、先ほど申し上げた各事業所の御協力を得て、一月当たり何枚くらい領収書そのものが出ておるか、その中で免税点以下のが何枚くらいかということを集計してみた結果が、その九割くらいは免税点の下に埋没をしておるということなんでございますが、おっしゃいましたように特定の業種につきましては、御指摘になったようなケースがそれは確かにあるかもしれません。それは、できますればまたいろいろお教えいただいて、今後の検討の材料にぜひ使わせていただきたいと思います。  それから、上の方をどの程度まで引き上げるかということにつきましても、今回もまた御指摘を受けておるわけでございますから、今後の検討に際しましては十分御指摘を含んで考えてまいりたいと思います。
  36. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間の制約もございますから、また、それらの問題点が現実に明らかになればもっと勉強し、検討したいということでございますから、これぐらいにしたいと思います。  一つ伺いたいのですが、税調審議経過の中で、こういうことが言われております。「現行課税文書のほかに相応の担税力があると認められる文書があれば、これを課税対象に取り入れることも検討する必要がある」。関連して前に話題になりました旅券税の問題とかあるかと思います。そういう一項目がございますが、特に文書税性格を持ったこの印紙税に関係する問題ですから、「現行課税文書のほかに相応の担税力があると認められる文書があれば、」と、こういうことについて何か具体的な検討内容があればお伺いしたいと思います。
  37. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいま御指摘になりましたのは、部会長報告だろうかと思います。この部会長報告は、さっき申し上げた中期税制審議の過程をおまとめになっているものなんでございますが、そのときには、現行税制を根元から全部一遍洗い直すということでやっていただいておりましたので、ただいま御引用になりましたような審議が現実にあったわけでございます。  そのときに具体的に話題になりましたのは、前々回の改正のとき以来話題になっているものがあるからということがございまして、四十二年改正のときに旅券、それから自動車の運転免許証というものが話題になったことがございます。そういうことが税調の場所でも話題に出ました。
  38. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 伺いましたが、いずれにいたしましても、新たな財源を求めるということが必要でしょうが、新たな財源を求める場合に、何かかっこうなえさを見つけるようなかっこうではなくて、やはり国民生活あるいは中小零細企業というふうないま一番しわ寄せを受けている立場をどう守っていくのか、どう対処していくのかというふうな角度から物事を今後も考えていただきたいというふうに思います。  時間ですから、最後に一つだけ、これは大臣に要望を含めてお伺いしたいと思います。  いま幾つかの問題点を挙げまして、提案されました印紙税改正について御質問したわけであります。やはり税の実態調査、実態の把握の問題あるいは捕捉率の問題また商取引の全体の経済運営の変化に伴って大変何か対象として不公平なり片寄ったりということになってくるのではないか。まあ銀行振替の形式がふえていることとの兼ね合いですね。その他、非常にあいまいな基礎で、また不確かな基礎でこの税制改正提案が行われているという感じをどうしても強く持たざるを得ないと私は思います。  また、この前の税制改正、四十九年の改正のときの議事録その他も私も詳細に読み直してみました。あのときにやはり議論をされております問題点、それに対する答え、大変失礼ですが、この前のときと同じ問題点が出ましても、この前と全く同じような発想の御答弁になっているというふうなことではないだろうかと思います。私はやはり四十九年時点と比べまして——狂乱インフレの終末の時期でございましたか、あのときと比べまして、今日の財政事情というものは全く違った、非常に深刻な状況になっていると思います。それだけにやはり、この税制改正あるいは税率を、大きな金額のものではないにしろアップするということについては、前とは違った慎重な検討あるいは真剣な態度というものが非常に要望されるということではないかと思います。それがありませんと、納税者がこれは協力をしようという気持ちにならないというふうなことではないかと思います。  そういう意味で最後に申し上げたいのですが、展望をはっきりさせないまままず上げるというのではなくて、これからの税展望について早く明確な展望を出して、それを国民の理解が求められるようなものに仕上げていくという姿勢が非常に重要なことではないだろうかということを、この印紙税改正の取り扱いについても痛感をするわけであります。  私が大臣に申し上げる必要もないことでありますけれども、やはり財政事情は非常に深刻になっております。私ちょっと調べまして、これから本格的な国債の償還期に当たる十年後ですね、六十年以降はどうなっているだろうか。いろいろなケースがこれから出てくるでございますでしょう。それらについても数字をちょっと調べてみましたが、やり方を間違えたらこれはまさに破産というよりも破局状態になってしまうというふうなことになっているわけであります。こういう中で一番必要なことは、本当に思い切った転換が求められている。しかもその転換の方向とは何かというと、構造的な改革といいますか民主的な改革といいますか、本当に国民の立場に立った新しい租税原則、そういうものを追求する中に、大きな法案もあるでしょう、小さい法案もあるでしょう、しかしそれらを大小にかかわらず扱っていくということがいま非常に求められている。国民的な合意あるいは納税者の理解の上に成立する税原則というものを求めていくということが重要ではないかと思います。  大臣は税の不公平是正ということを一貫した信条とされているとも私伺っておりますし、あるいはまた、日ごろ、大正、昭和の大政治家であった高橋是清元大蔵大臣を大変尊敬されている。大蔵大臣に就任された直後にも、何かお墓参りに行かれたということを伺っておりますが、かつて高橋蔵相が軍部の圧力に抗して健全財政主義を貫いて、ついには凶弾に倒れられたというわけでありますが、その最期まで見習えということはもちろん言うつもりはございませんけれども、それぐらいの決意を持ってこの財政改革に当たらなければならないという非常に大事な時期ではないだろうか、そう思うわけであります。  そういう意味で、今度の法案についての内容考え方、あり方、それからこれからの税制のあり方ということについてやはり真剣にひとつ考えていくことが求められているということではないかと思います。まあこれは要望と同時に、御見解があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  39. 坊秀男

    坊国務大臣 大変ごもっともなる御意見だと思います。私も、何か財政計画、税制計画——計画とまではいかないにしましても、一つの目標と申しますか、そこへやってまいる、たどるべき道というものをつくることが非常に必要なことであって、できるだけ私はそういう方向に向かって努力をしてまいりたいと思っております。
  40. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから、質問を終わります。
  41. 小渕恵三

    小渕委員長 次回は、明二日水曜日午前十時理事会、午後五時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十八分散会