○
松本(忠)
委員 ぜひこのあっせんが成功し、そしてお互いに仕事ができ、同時にまた代金の支払いが円滑にいくように私は希望するわけでございます。
そこで、長官と公取
委員長に御
出席をいただいておりますので、私が以下申し上げますことはわれわれが
調査した結果でございますが、こういう
実情を聞いていただいて、それに対して当局としてどのようなお考えがあるかをお伺いしたいわけでございます。
繊維
産業が非常に長期の
不況の中で構造上多くの問題を持っておることは御承知のとおりでございますが、繊維
産業の中でも特に縫製業者及びメーカーからの下請構造に関して伺っておきたいわけで、これは実例をもって申し上げたいわけでありますが、これは東北のある地方でのことです。はっきり申し上げますと、われわれが
調査いたしましたのは秋田県でございますが、この中で、大メーカーが製品の加工を下請に出すときに、私どもも初めて耳にした言葉でありますけれども、ふれ屋と称するブローカーを使っております。そして下請の零細縫製業者に仕事を出しまして、衣服の加工をさせます。ところが、納品をいたしましても加工代金の不払いがあるとか、あるいは期限前に納品をいたしましても常識外の一部手直しを要求されるということがありまして、やっと納めましても納期の期限切れであるとかいうふうに言われて加工賃を支払わないというようなことがあるわけであります。そして、零細業者が経営に行き詰まりまして倒産に陥っている例が少なくないわけでございます。
これは縫製業の下請
過程にも
種々の問題はあると思うのでありますけれども、こういう中間ブローカーがメーカーと下請の零細業者との間に介在して甘い汁を吸っているように見受けられるわけでございますし、また、メーカーもなれ合いでやっているような節もあるのでございますが、この実態を少し長くなりますけれども申し上げてみたいわけでございます。
秋田県の農村の中で、相当に富俗な農家あるいは山林を所有していて何か事業をもくろんでいる人たちに対しまして、東京の有名な工業用ミシンの営業マンがまず接触をする。そして、縫製業の有利な点を吹き込んで、仕事もあっせんするという条件で工業用ミシンを売り込むわけです。そして
工場を建築いたしまして、ミシンの据えつけが終わり、約束どおりに東京から仕事が来ます。そして一年ぐらいたちますとだんだん仕事がふえて、しかも仕事にもなれ、加工賃はきちんと入ってくるので
工場の増設をし、さらに工業用ミシンを買い込むと途端に仕事が来なくなってくる。こういう例を私どもは二、三聞いたわけでございます。手をあけておりまして、何とか仕事をやりたいということで若干の焦りが出てきたところに、先ほど申し上げました工業用ミシンの有名な
会社の営業マンの紹介でふれ屋と称する者が有利な仕事を持ってあらわれるわけです。そこで飛びつく思いで仕事をするわけでありますが、こういう順序で秋田県の片田舎の無知な農家のだんなさん方を食い物にしている状態がございます。
このふれ屋と称する中間ブローカーは東京の繁華街にビルを構えているかのごとき名刺を持って訪れてまいりますが、これは後に発見したわけでありますけれども、行ってみるとビルの中の一室に数名で部屋を借り、電話は共用で一本、机が
一つ、女子事務員は一名、そして電話の受け付けはできますけれども非常に通話中が多いということでございます。むしろ受話器を外しておいて、時間を決めて受話器をかけて、その数分だけは外部との連絡が可能にしておくというのではなかろうかと思われるくらいでございます。そして、メーカーとの連絡あるいはブローカー仲間との連絡はやれるようにしておくわけで、まことに手の込んだやり方をしているようでございます。
もちろん、こういうことは、数カ月後に加工賃が入らなくなり、連絡もとぎれましたので、いたたまれなくなってそれらの業者が上京してきて初めて発見した状態でございますが、このようなふれ屋と称する者が、レインコートならば○○印という指折りのメーカーの仕事を持ってくるわけでございます。そのメーカー製造を証明するところの、どこの製品という小さなきれがえりのところなんかについていますが、ああいうものまでも持ち込んできて製品に縫いつけろというようなことで、手の込んだ芝居をして信用をさせます。したがって、無知な方々は有名
企業の渉外業務を一手に取り仕切っているかのごとき印象を受けますので、契約書も取り交わさないでまず仕事を始めるわけです。それは先ほど申し上げましたようなせっぱ詰まっている
状況だからやむを得ないのだろうと思うのでありますけれども、現に契約書は取り交わしておりません。ここいらに問題があるわけであります。
もちろん、このふれ屋と有名な工業用ミシンのメーカーの営業マンとは何らかのつながりがあることは後日判明したわけでございますが、こういう人物を通じないと零細
企業は下請仕事ができません。有名メーカーと直接契約で仕事をしているということはまことに少ないのが
実情であります。先ほども申し上げましたように、レインコートなら〇〇印と言われるほどのメーカーさんでも、直接自分の
工場で加工製造するということはなくて、むしろそういう東北の各地にまで原反を運んで加工をさせ、その製品を東京に持ち帰るということは往復の運賃をかけても採算が合うようであります。そしてこれはこの間にはいろいろな問題があるのでありますが、中間に入りましたふれ屋と称するブローカーを通じてでないと仕事も入らない。加工賃も入らない。たとえて言いますと、ボタンのごとき部品の一
部分が来ないためにいつまでも完成品として納品ができない、それさえ来れば完成品として納品ができるのですが、参りませんので納期限ぎりぎりまで待つ、そうするとその部品が届きますので、昼夜兼行でボタンをつけて納品をするとわずかながら期限切れとなるということで、それが加工賃不払いの原因となってくるわけであります。
納期に間に合わなくなる原因というのはむしろメーカー側にあるのではなかろうかと思われるわけでありまして、零細な下請加工側にはないわけでございますけれども、時期外れで売り物にならないということのクレームがついて、結局、加工した方では、それではしょうがないから原反と部品代は払いましょう、だから製品を返してもらいたいと言いますと、なかなかその製品を返してくれない。もう加工賃は要りませんから、原反と部品代を払いますから製品を返してほしいと言っても返さない。これも後日判明したわけでございますが、こういう製品がバザーとか大特売とかいうところですでに販売済みでございますので、現品はもうメーカー側にもないのです。メーカー側は加工賃は払わないで、現品は販売済みであるにもかかわらず無理難題をふれ屋を通じて言ってくるわけでございます。そういうことでいたたまれなくなって交渉に上京してみまして初めて
実情がわかりまして、先ほど申し上げたようなことになるわけであります。
こういう問題が起きましてその事務所に行ってみると一回ぐらいはいるわけですが、二回目に行ってみるとその事務所が移転してしまってわからなくなってしまっている。田舎のおじいさんたちが東京の町をうろうろしながらその移転した事務所を探して歩くわけだけれども、結局どうにもならなくなって最終的には倒産に追い込まれているという
実情があります。
非常に長々と
実情を申し上げたわけでございますが、このようなブローカーを取り締まることはできないのかどうかという点を私は一応伺いたいわけでございます。
それから、公取の
委員長さんに伺いたい点は、このようなブローカーは自己資本もございませんし、いわゆる一匹オオカミという部類でございまして、仲介あっせんをした行為についても責任逃れをいたしますし、また、こういうブローカーであることを万々承知で使い、しかもなれ合いではなかろうかとさえ感ぜられる行為をするメーカーに対しても
法律上から問題にできないのかどうかという点を私は伺いたいわけでございます。
これは
中小企業庁長官と公取の
委員長さんから
お答えをいただきたいと思います。