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三浦参考人 私は、
日本商店連盟の
三浦でございます。
本日は、長年にわたっての
中小企業者の念願でございました
分野法の
審議に当たりまして、中小
小売業の
立場から
意見を申し述べる
機会を与えられましたことを厚く御礼申し上げます。
まず、最初に、私は本
法案には
中小企業に携わる者の一人としてもちろん賛成でございますし、一日も早く公布、
運用されることを望んでいるものであります。
実は、この
法案論議の過程で、このような
法律ができることは国民
経済にとってマイナスであるという
意見があちこちから出ておりますが、その
理由としては、先ほ
ども幾人かの
参考人の
方々の御
意見もございましたが、つまり、基本的には、自由
経済の
根幹である
競争が薄らぎ、そのために
企業意欲をそぐことになるとか、また、大
企業の技術開発がおくれて国際
競争力を弱めるとか、また、
中小企業はこの
法律の上にあぐらをかいて
経営努力を怠るとか、このようなことが重々相重なって、ひいては
消費者、国民大衆に迷惑を及ぼすことになるという御指摘でございます。しかし、私は、そのような事態は起こり得ない、そのような心配は御無用だというふうに確信いたしております。むしろこの
法律の趣旨がよく守られて、大
企業は大
企業でなくてはできない仕事の
分野で大
企業同士でりっぱな
競争をしていただき、また、
中小企業は全国五百万に余る
中小企業相互の間で
中小企業のよさを生かして、これまた相互に激しい
競争を行って
経済活動に生気をよみがえらすものであると期待することができると私は思うのでございます。
特に、
競争が薄らぐなどということはとんでもない杞憂でございまして、常に生産過剰あるいは供給過剰の
経済現象の中にあってむしろ
競争は日に日に深刻となり、激甚さを加えておりまして、この程度の
法律で
競争がなくなるなどとは夢にも考えることができません。むしろ放任しておきますれば、一部で御指摘のございますように、大
企業の寡占化あるいは系列化がますます進んで、逆に
競争がなくなっていくという弊害の方がむしろ進展するであろうと考えるのでございます。
私の所属する
小売業界を見ましても、昭和三十二年に百貨店法が制定されましたが、もちろんそのときもこういう心配が非常に起こっておりましたが、これを実行してみますと結局ますます大
企業は進出し、ますます
競争は激しくなり、そこで昭和四十九年に大型スーパー等も含めた大店法に改正されましたが、自来三年半たっておりますけれ
ども、またますます
競争が激しくなっている。この
経験、先例に見ましても、そのような心配は全く起こり得ないということを強く主張してもいいのではないかという気がするのでございます。
中小企業が法の上にあぐらをかくなどというような、そんな
法律ができるとすれば全く思いもよらないことだと言わざるを得ないのでございます。
さて、私は、他の
参考人の
方々の
意見との重複をできるだけ避けるつもりで、限られた時間内で二、三
意見を申し述べたいと思います。
まず、本法の争点の一つとなっておりました
小売業の適用除外という点でございます。これを除外した
理由は先ほどからもるる説明がございましたとおりでございますが、それぞれの
法律はそれぞれ独自の
性格あるいは目的を持っております。本法は大
企業者による大規模な事業と
中小企業との
調整でございまして、大店法は単に大規模店舗と中小店舗との
調整となっております。非常に似ておりますが、しかし、非なるものがございます。したがって、大店法では、たとえば基準面積以下の大規模な多数の中小店舗を広範囲に展開いたしましても、これを規制する方法は全くございません。つまり、資本規制ということではございませず、店舗規制でございますからそのようなことはできないのでございます。同じ規模の店でも、これを多数つくって全国的にチェーン化し、そして中央においてこれをコントロールし、大資本によるすぐれた
経営ノーハウによって運営いたします場合と、同じ程度の規模のものでありましても、
経営資源の薄弱な
中小企業が
経営する場合とでは
競争力において格段の開きが生じます。現行の大店法では何らこれをチェックすることができないことになっております。
そこで、御存じのように、地方の行政機関ではやむにやまれず条例や要綱を制定して、まさに全国的にはばらばらの状態がますます進行していくという現象が生まれているのでございます。また、大店法は店舗面積の規制でございますから、許された総面積の範囲内であるならば何を売ってもよろしい、初めはばらばらであったがめんどうくさいから一品目にしぼろうということもできるわけでございまして、そういたしますと、そういう重点品目にしぼられた周辺の小売商は何の発言もあるいは申し出もできないままに大きな影響をこうむるということも起こり得るのでございます。こういうことはいわゆる業種の
指定というものによる
分野法的な
考え方でないと解決できないのじゃないかというふうに考えます。
また、全国で千二百
団体ほどあります小売商が組合組織をつくりまして、そして組合員のための販売促進あるいはお客さんへの御便宜の提供といったふうなことで、昭和二十三、四年ごろのあの物資不足のときから、物を分割で、月賦で販売する割賦購入あっせん事業を行っております。地方の
消費者の大変の御賛成を得まして、いまや津々浦々にまで隆々と普及しておりますが、昭和四十年前後から都市銀行が主となりましてクレジット会社というものをつくっております。これはもう北海道の層雲峡の奥から九州の山の上のホテルにまで、あるいはJCBでございますとか、あるいは富士銀行系のUCでありますとか、三菱銀行のDCでありますとか、住友銀行系の住友クレジットカードでございますとか、現在六社ほどございますが、これは現在のところカードによる信用販売しかしておりません。うっかり何十万円も買いますと一挙に銀行から何十万円差し引かれるというびっくりする状態が起こるのでございますが、そのような不便な中にございましても、わずか十年でこの六社の参加店は、百貨店、量販店を
中心といたしまして全国に五十五万店舗以上に達しております。カードの利用客は実に七百万人を超えております。その売上額は五千億を超えるという大型
企業に成長しております。
これはほとんど銀行が主となっておりまして、たとえばJCBの場合、三和銀行系の場合でも、その銀行の本支店が窓口になってお客さんの獲得に、まあ取引先を
中心としてでしょうが、約二百二十行が参加しております。この二百二十行の支店が十店平均あるとすれば二千
幾つかのブランチがこの事業の推進に参画しているという形になっておりますから、これはもう十年でこのくらい伸びるのは当然でございましょう。これを近く——近くでなしに、いままでも何遍もその割賦販売あるいは割賦販売の類似行為に持っていこうとする動きが明らかに見えております。仮にこれが割賦販売に公然と移行できるものといたしますならば、たちまち売り上げは三倍、五倍、いや二兆円、三兆円ということになりまして、せっかく全国に
中小企業が組織いたしましたこの組合は崩壊の運命にさらされるということはきわめて明白でございます。こういうふうな大
企業が
中小企業のそういう事業を営むのを何とかしていただきたいということの法的な担保を求めるために、それらの
方々は
分野法の
成立を実は非常に念願し、期待しておったものでございます。
このように小売商は、大店法、商調法があるからといって単純に
分野法の適用除外をするということになりますとむしろいろいろな問題がございますので、どうしても外さなければならないという御事情がございますならば、これらの問題が処理できるように大店法や商調法を改正していただくほかございません。
しからば、大店法、商調法をどのように改正していくかということは時間もございませんのでここでは触れませんが、後刻御質問がございますれば、われわれ小売商の
団体は十分に情報を交換し、検討もいたしており、また、素案をつくってもおりますのでお答えさせていただきたいと思っております。
なお、この
機会にぜひ一言つけ加えさせていただきたいことは、
分野法や商調法あるいは大店法などの
法律が次々に制定されましても、それはまことに重要なことではございますけれ
ども、それだけで問題の本質的な解決はつかないということでございます。
小売業の場合でも全国に百六十万店舗に近いものがございますが、実にその八〇%以上が
中小企業であります。これを
改善しない限り
流通の近代化はなく、国民
経済への真の貢献は不可能でございます。それがためには、
政府は、まず、
小売業の将来あるべき姿、ビジョンを策定していただきまして、このビジョン達成のために抜本的な施策を講じていただくことが第一だと存じます。中でも、小売商の八〇%が集中しておりまする商店街の近代化や、あるいはせっかく
政策として取り上げられているボランタリーチェーン、連鎖店化というふうなものの推進、さらには大型店進出に苦しんでいる専門店の転換対策など、すでに制定されております中小
小売商業振興法をこの際フルに活用して、むしろこういうふうな
法律を
論議する必要のない状態をつくり上げていっていただきたいと存ずる次第でございます。
最後に、適当な例であるかどうかわかりませんけれ
ども、私は商売柄いつもタクシーを利用しておりますが、中でも個人タクシーのお世話になっております。
理由は申すまでもなく、何となく安全感があり親切であるというふうな気がするからでございます。すでに六十を超えた白髪の老運転手さんは、仕事をしていれば子供の世話にならなくて気楽でいいんだ、まともな
生活のできない老人年金に頼らずに生きがいを感ずるんだ、いや、それどころか、まだまだお国のために、いただくのではなしにばっちり税金を払っているんだ、肩を張って、と話しておりました。大
企業では
合理化とか効率化とか言って、まだ働ける六十歳前の健康で
経験豊かな、しかも働く意欲のある方を、定年という規則によりまして、後はお国のお世話になりなさいということで手放しておられますが、これでは幾ら福祉国家と言いましても限度がございましょう。こういう
方々に働ける場所を提供する。つまり、
中小企業をつぶさないで、再就職の
機会を与え、あるいはみずから自営の道を講ずることこそ真の老人対策、福祉ではないかと私は思うのでございます。
一握りの大
企業によって
経済の合理性とか
競争の自由とか言ってみましても、それによって
中小企業を倒産状態に追い込めば
経営者自身も結局お国の世話にならなければならないようになり、また、そこで働く人も、また、これからそこで働こうとする人もすべてそういったふうなことになってきますれば、そのつけは国に回り、税金に回り、いや、国民に、
消費者に回ってくるのでございます。やはり国全体のトータルコストを考えていただきまして、そしてこのようなつけが国民に回らないような
政策をやっていただくこと、このことが非常に大事なことではないかというふうに私は感ずるのでございます。まさに本法の第一条に書いてある「国民
経済の健全な発展に寄与する」という崇高な目的、
方向でこの
法律を実現していただき、
中小企業の
経営者、従業員に活力をよみがえらせていただいて、ぜひこの
法律が一日も早く適正に
運用されるようにお取り計らい願いたい、かように思うのでございます。
以上で私の
意見を終わります。