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1977-04-27 第80回国会 衆議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十七日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君       青木 正久君    粕谷  茂君       藏内 修治君    田中 正巳君       辻  英雄君    中西 啓介君       楢橋  進君    萩原 幸雄君       林  義郎君    前田治一郎君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       岡田 哲児君    加藤 清二君       後藤  茂君    清水  勇君       武部  文君    中村 重光君       渡辺 三郎君    長田 武士君       西中  清君    宮田 早苗君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         大蔵大臣官房審         議官      徳田 博美君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房審議官    栗原 昭平君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁指導         部長      小松 国男君  委員外出席者         厚生省社会局生         活課長     末次  彬君         参  考  人         (名古屋大学教         授)      飯田 経夫君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  影山 衛司君         参  考  人         (消費科学連合         会会長)    三巻 秋子君         参  考  人         (全国商工会連         合会会長)  辻 彌兵衛君         参  考  人         (日本商工会議         所専務理事)  高橋 淑郎君         参  考  人         (中小企業事業         分野確保法促進         協議会会長)  佐藤 公彦君         参  考  人         (日本商店連盟         専務理事)   三浦 正義君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   中村 重光君     安島 友義君 同日  辞任         補欠選任   安島 友義君     中村 重光君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業事業活動機会確保のための大企  業者事業活動調整に関する法律案内閣提  出第七一号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として、名古屋大学教授飯田経夫君、商工組合中央金庫理事長影山衛司君、消費科学連合会会長三巻秋子君、全国商工会連合会会長辻兵衛君、日本商工会議所専務理事高橋淑郎君、中小企業事業分野確保法促進協議会会長佐藤公彦君、日本商店連盟専務理事三浦正義君、以上の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下、中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律案について審査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、本案に対し、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに御意見をそれぞれ十分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員質疑に対してお答えいただきたいと思います。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、まず、飯田参考人にお願いいたします。
  3. 飯田経夫

    飯田参考人 飯田でございます。  初めに結論を端的に申し上げますと、私は、この法律案悪法であると考えます。もう少し正確に申しますと、少なくとも悪法になり得る可能性が非常に大きいのではないかと思います。伝え聞くところによりますと、幾つかの政党では業種指定考え方を盛り込みたいという強い御意向をお持ちであるというふうに伺っておりますけれども、もしそういう考え方が盛り込まれますならば非常な悪法になることは明らかではないかと思います。  ただ、私は、大企業中小企業活動分野の問題について問題点がないというふうにはつゆほども考えておりません。非常に問題があると思います。しかし、そういう問題は従来もあり、従来そういう問題が発生し、紛争が発生したときには行政指導によってほぼ正しく対処、解決されてきたと思います。従来のやり方で特に困ることはないのではないかというのが私の考えであります。  ただ一つ問題があるとすれば、行政指導はいささかあいまいであるといいますか、恣意的に傾く危険がありますのでそれをルール化し、かつ、審議会を設けて、当事者のみならず第三者の意見を聞いて調整の方法を考えるという考え方は一歩前進ではないかと思うわけでありまして、この法案にそういう考え方が盛り込まれている限りにおいてこの法案は正しいのではないかと思います。  ただ、この法案を実際に運用する場合に、かなりの自由度があるといいますか、いろいろな可能性があり得て、運用次第ではかなり悪法的になり得るのではないかと思うのです。その理由を以下申し上げます。  第一点として、もし非常に強い規制を行う場合には自由主義経済体制根幹に触れるといいますか、自由主義経済体制根幹から揺るがしかねない危険をはらんでいると考えます。こう申し上げますときに、私自身は、現在の日本経済を運営していく場合にいろいろ欠陥はあるものの、自由主義経済体制にかわるものはないというふうに考えているからでありますけれども、この考え方は私個人にとどまらず、実は、いろいろな世論調査意識調査等々から見る限り、国民の過半数がそう考えているに違いないというふうに私は判断しております。  申し上げるまでもなく、自由主義経済体制のいいところは、いろいろな企業が自由に競争をし、競争をすることを通じて進歩していくということでありまして、そういう競争を通ずる進歩が消費者利益を増大させるということが自由主義経済の一番のメリットであろうと思います。そういうメリットを大きく傷つけるようなことをやることは消費者利益に反し、ひいては日本経済の体質を弱め、国家百年の計にマイナスではないかということが第一点であります。  第二点は、もう少し具体的に考えまして、第一点のような自由主義経済体制メリットを強く主張するといたしましても、もし仮にわが国中小企業零細企業が非常に弱体であり、経営能力がなく、転換能力がなければ、自由主義経済体制に伴う、あるいは競争に伴うコスト——これは経済的コスト社会的コスト、これが非常に大きいことになります。しかし、幸いにも、わが国中小企業零細企業は、私の非常に強い印象ではきわめて優秀であり、高度の経営能力転換能力に恵まれていると思います。そういう多くの優秀な中小企業零細企業がいわば草の根を形成しているといいますか、すそ野を形成しているからこそ日本経済の今日の繁栄があったということは明らかであります。  経済というものは、一部の有名な大企業あるいはそこに働くエリートが優秀であるから優秀であるというようなことは絶対にあり得ないのであって、むしろすそ野草の根の優秀さが日本経済のいわば世界に冠たる力になっている。そうだとしますと、分野調整によって、特にそれを非常に厳しく運営して、いわばかきねをつくって中小企業零細企業保護するという考え方は、私がいま申し上げたような現実と非常に大きく矛盾するのではないかと思います。  ややとっぴな例を申しますと、私はかつてアメリカでインディアンリザベーションというものを見たことがあります。これは御承知のとおり、少数民族である、あるいは弱小民族であるインディアンを保護するために、それこそ金網をつくって、その中に住まわせていろいろと生活のめんどうを政府が見ているわけでありますが、私は、特に業種指定のような強い考え方を聞きますとこのインディアンリザベーションを思い出すわけでありまして、このように優秀な転換能力にあふれる中小企業インディアンリザベーション金網の中に入れてしまうということは非常に間違った考え方、まずい考え方でありまして、経済の発展に対して大きな阻害要因になることは明らかだと思います。  次に、第三点として申し上げたいことは、中小企業零細企業はもちろん長い過去があるわけでありますが、仮にたとえばいまから二十年ぐらい前のことを思い起こしますと、おしなべて言えば、わが国中小企業零細企業は現在に比べてはるかに弱体であり、はるかにもろいものであったと思います。そういうふうにはるかに弱体であった時代分野調整というような考え方が主張されなかった、あるいは今日のように問題にならなかったということは非常に興味のあることでありまして、ややきつい言い方をしますと、仮に二十年前には非常に弱かったために、自分生活を維持し伸ばしていくためにわき目も振らずに働いていて、分野調整のような考え方を言ういとまもなかった。それが、そういう努力の結果として、かえって多くの既得権益持ち、新たな分野を開拓しようというよりは、むしろ従来すでに持っている既得権益を守りたいという気持ちが出てきておられるのではないだろうか。そうしますと、昔から貧すれば鈍するということわざがありますけれども、私がいま振り返った過去二十年、三十年の流れは貧すれば鈍するの逆でありまして、富すれば鈍するというような色彩が非常にあるというふうに考えます。  私が第二点で申し上げましたように、日本中小企業零細企業は非常に優秀で、すぐれた転換能力経営能力をお持ちでありますから、そういう経営者方々の多くの心の中、つまりたてまえ論でなくて本音においては、そういう保護をしてもらわなくてもむしろ自分で大いにやっていけるんだと思っている人たちがたくさんいるのではないかというのが私の強い印象であります。  以上であります。
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、影山参考人にお願いいたします。
  5. 影山衛司

    影山参考人 影山でございます。  参考人として御指名をいただきました理由が、中小企業政策審議会分野調整小委員会におきまして私は主査代理を務めさせていただきまして、有沢主査のお手伝いをさせていただきまして、いわばまとめ役を務めたというような関係から恐らく参考人としての御指名をいただいたと思うのでございますので、そういう立場からの陳述をさせていただきたいと思うわけでございます。  中小企業政策審議会分野調整小委員会は第一回を七月七日に始めまして、開催以来十一回の審議を重ねたわけでございまして、広く中小企業関係者を初めといたします関係者意見参考人として聴取をいたしまして、十二月十四日、中政審に対しまして「中小企業と大企業事業分野調整の在り方について」という意見具申をいたすこととなったわけでございます。  この小委員会委員構成は、中小企業関係者消費者言論機関学識経験者から成っておりまして、その構成からわかりますように、立法化を必要としないとする消費者中心とする委員と、強い分野確保法とすべきであるという中小企業中心とする委員方立場と両極端からの議論が出たわけでございまして、一時はどうなることかと心配したわけでございますけれども、この問題は中小企業政策根幹にかかわる問題であるという重要性にかんがみまして、何とか多くの関係者納得し得るところのコンセンサスともいうべき考え方をまとめたいという有沢会長を初めとします委員の熱意が実りまして、最終的には最大公約数としての意見の取りまとめができまして中政審の「意見具申」となりました。これを受けて政府原案が作成されるということになったわけでございまして、さきに行われました当商工委員会立法促進の御決議の趣旨にも沿い、やっと間に合わせることができたことを私ども喜びとしておるところでございます。  委員会におきまして対立した意見歩み寄り方向に動き出したきっかけの一つは、消費者代表委員の一人が白熱した議論経過の中で、どうもこれは駆け込み寺が必要じゃないだろうかという御意見をお漏らしになったのでございまして、先ほど申し上げましたように広く参考人中小企業者お話等も伺いましたが、その中の事例等におきまして、大企業から不当な圧迫を受けておる中小企業者に対する社会的な公正、社会的な正義の見地からいたしまして何か手当てをしなければいかぬだろうということ、これが駆け込み寺が必要であろうかというふうな御意見になったわけでございまして、これをきっかけといたしまして両者から非常に歩み寄りが進んできたというふうに考えるわけでございます。  小委員会におきますところの問題点、論点の二、三を御紹介申し上げますと、まず、第一は、新規立法が必要かどうか、また、立法を必要とした場合には法律性格をどういうものにするべきだろうかということでございます。これにつきましては、業種指定によるところの事業分野確保法かあるいは調整法かというようなことが非常に議論になったわけでございまして、これもやはり豆腐の例等身近な問題もございまして、両論非常に対立したわけでございますけれども業種指定をするにつきましても、事例等でもわかるのでございますけれども、この事件、紛争が予測し得ない事例が非常に多いし、また、起こってからでは指定をしておっても間に合わない。あるいは中小企業性事業分野というものに対して非常にこれが流動的でもございますので、あらかじめこの業種指定をするということにつきましても、法律技術的にもむずかしい点があるというようなことや紛争の実態が非常に多様性に富むということを踏まえまして、具体的な事例に即したところの迅速な機動的な弾力的な行政指導を行い、それの裏づけになるところの調整法というふうなソフトな法律新規立法をすべきではないかというふうなコンセンサスができたわけでございます。  また、実質的な駆け込み寺につきましては、学識経験者から成るところの審議会を設けまして、紛争当事者等関係者意見も十分聞きながら審議会における論議を十分尽くしまして、大方の納得のいく調整案をつくろうではないか、すなわち話し合いと説得を前提とした、また、大企業の社会的な責任に基づくところの行動倫理前提とした自由経済体制下における中小企業を守るための新しいルールづくりをしょう、と、こういうふうな結論になったわけでございます。したがいまして、調整措置の手段につきましても、命令、罰則ということよりも、審議会等の中で十分論議を尽くして納得のいく調整案をつくり上げるということを前提にいたしまして、勧告による行政指導で十分である、また、これが大企業によりまして違反をされた場合には公表という社会的制裁によるので十分であろう、というような結論になったような次第でございます。  また、対象業種につきましても議論が行われたわけでございますが、その中で一番問題になりましたのは小売業対象に含めるかどうかということでございますが、御承知のように、小売業部門への進出につきましては、大規模店舗法とか小売業事業活動調整に関する法律小売商業調整特別措置法がございまして、これは一応の法律体系が整っておりますし、また、小売業につきましては商圏が比較的狭いということで、地域との密着性が強いし、地域的調整ということで、製造業等今度の分野法で主として問題となっております広域的な全国的な調整を要するものとちょっと性格が違うということで、一応小売業はこの対象業種から外そうではないかということになったわけでございます。  しかしながら、小売商業における最近の問題の重要性にかんがみまして、答申でもこの問題について、「引き続き現行法運用改善等所要の検討を行うことが望まれる。」というふうに答申をいたしておるわけでございますが、この含みといたしましては、産業構造審議会流通部会におきましてさらに引き続き所要措置について研究をするという含みも入っておると私どもは了解しておるわけでございます。  また、生協農協等を入れるか入れないかということにつきましても問題が提起されましたけれども、これはおのおの根拠法監督規定がございますので、それの厳格な運用の強化ということを要望いたしまして、この法律対象外ということにいたしたような次第でございます。  ほかにもいろいろと問題点はございましたけれども、以上、政府案の基礎、背景になっておりますところの中小企業政策審議会意見経過あるいは問題点等を簡単に御紹介いたしまして陳述を申し述べましたが、結論といたしまして、私は政府原案賛成という立場を明らかにいたしまして陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  6. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、三巻参考人にお願いいたします。
  7. 三巻秋子

    ○三巻参考人 三巻でございます。  本日、分野調整法の提案に際しまして意見の開陳の場をお与えいただきましたことによりまして、簡単にその賛否を申し述べたいと思いますが、まず、結論から申し上げますならば、この法律成立には私は反対でございます。その大前提といたします原則は先ほど飯田先生がおっしゃったことと同じであって、あくまでも自由競争原則を貫いてほしいという希望からでございます。  現在生活関係のある法律幾つもありますが、衛生とか健康とか安全を守ることは大いに歓迎いたしますが、経済立法をこれ以上つくってがんじがらめになりますことは、これを裏返せば、従来からある幾つもの中小企業に対する保護政策とともに、一般民衆法律仕組みを知らず、クモの巣の中を歩くようなもので、選ぶ権利があると言われる消費者保護法から見ましても、消費者は決してよくは育ちませんし、これを知っている業界のみがこれを強く推進しようとしている現状では、第一条の目的である一般消費者利益保護には決してならないからでございます。  そこで、次に、反対理由を三つに分けまして申し上げてみますと、まず、第一は、分野調整規定競争原理阻害することによりまして中小企業の活力を失わせます。そして固定化してそれぞれの分野の上で眠ってしまうからであります。第二に、消費者利益が守られない場合が出てきますと、消費者選択の優先を後回しにして、分野を固定化して消費者選択を追従させることにもなりかねません。第三に、一と二の両者物価との兼ね合いから出てくる阻害として、価格をしていつも上の方に張りつけさせてしまうことは従来の法律がこれを立証しているではありませんか。自然に物価を押し上げる結果となりましょう。  以上のような理由によりまして、商品が選ばれて生産して出てくるいまの時代になって、私はその芽を摘んでもらいたくないのでございます。また、最近の経済情勢のように、低成長時代を認識することなくして、どの業界構造改善をし、消費拡大に努力すべきときであるにもかかわらず、これではそれと逆にみずからを小さく守ってもらおうということのみを考えていることになり、業界にとっても自滅だと私は思います。  次に、分野調整関係資料を私はちょうだいいたしましたので、そのいきさつを見てまいりましたところ、三十八年に中小企業基本法が制定されまして以来何度か国会審議の場でこの法律が廃案または継続審議等によりまして時間を経て今日に至っておりますことは、四十六国会から七十七国会までの間を見ましても、二、三の業界和解成立をして姿を消していることは皆様も御承知のとおりでございます。  私たち消費者の知る限り、一番身近にあった北九州地区クリーニング屋機械化から争いが起きたことをいまも心得ておりますが、いまや何の問題もなく、当時大きくやり過ぎて品物の紛失等で信用を傷つけ自然淘汰したところもありましたが、消費者用途向きによりまして、高級品は大企業へ、実用品は配達費をかけない安上がりの機械化へみずからこれを運びます。急ぐものは無理のきく小さい町の業者へと、消費者は何ら法律によって保護されなくてもちゃんと選択してこれを利用していることを御理解いただきたいのでございます。  また、豆腐屋の例を見ましても、私の小さな町の豆腐屋さんを見ますならば、その店主の経営合理化は目覚ましく、近くのスーパーへ卸して大繁盛しております。主婦も水ものの豆腐等は近くの業者を利用するのが当然と言えるのではありますまいか。モヤシが出ておりましたが、またモヤシもこの例に似て、毎日小さいビニールで配達してくる八百屋さんの新鮮なものを選ぶのが常識でありまして、このように腐りやすいものは大量生産しても決して有利とは言えないはずでございます。  これらを考えてみましても、要らぬ政府の介入は必要なしということがおわかりと存じます。とかく日本人は法律づくり生活をかける人だけが団体をつくって真剣に議員先生方を動かして法律はつくるが、守らぬ人の多いのも定評がございます。これに反しまして外国人は、法律で縛られたくはない、ただし、できた以上は必ず守るといったように根っからの根性が違うということを私は聞かされたことがありましたが、法律のたてまえは消費者生産者の二面を守るということはいつも記されておりますが、運用では常に消費拡大につながらないことから、しわ寄せを常に消費者にかぶせるために消費の減退がいつもつきまとうものでございます。  一度法が施行されますと十年一日のごとく運用されまして、消費者リーダーあたりからは常に不満を買っております。しかし、残念なるかな、業界のまとまりに対しまして消費者団体はばらばらで統合されず、議員さんにも票にならない消費者団体のことは問題にされずにきたといまもひがんでおります。その上消費者はどんな法律ができても自分たち関係ないと言う人が多い事実は、残念ではありますが認めざるを得ません。  消費者運動三十年の経験は私をして消費者教育に重点を置くべきだということを考えさせまして、方向転換をしましたのが三十九年からでございまして、日進月歩の今日、いま現在生涯教育の必要を痛感して今日に至っておりますが、現在、物価高騰をとってみましても、とめることの効果のない悪循環の現状では、消費者みずからが財布のひもをかたく締めて、自衛作戦にわずかな抵抗感を抱いているのが関の山でございます。国際情勢圧迫資源有限論が避けられない今日、だれもがもう一度真剣に消費あっての供給であることを考える必要があるはずではないでしょうか。横の連携とか縦に連なる対処とか、いろいろな政策流通を含めてのもっともっと根本的な改善こそ急ぐべきであって、法律仕組みの悪さのつけを常に消費者へ持ってこられてはたまったものではございません。  経済事情のむずかしいいまこそ消費者優先の思想をもう少し取り入れてくださいまして、常識のある諸先生の御判断を期待してやみません。慎重審議あらんことをお願いいたしますが、先ほどから先生のお言葉を聞いておりますと、どうも、小売業をのけたのはあと大店舗法を強化するから恐らくいいだろうということらしゅうございます。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕  私は、この大店舗法につきましては五百人のアンケートをとりまして、共存共栄ができる、強化の必要なしという結果を得ておりますので、後で御質問がございましたならばまたお答えしたいと存じます。  これで失礼させていただきます。
  8. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 次に、辻参考人にお願いいたします。
  9. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 辻でございます。  先ほど影山さんのおっしゃいましたように、私もこの分野調整に関します小委員会委員として列席しておりまして、ほとんどの小委員会に出ております。先ほど来いろいろと参考人の皆さん方の御意見がございましたが、私は全国商工会連合会の副会長という立場委員に出ておりました関係上、その立場から今回の分野調整法の問題についての意見を申し述べたいと思います。  この分野調整法につきましては、先ほど影山さんのお話がございましたように、いわゆる最大公約数というところでまとめなければならなかったということから各委員ともそれぞれ若干の不満があったわけでございます。私どもは、十二月十四日の意見具申が出ました後、二月四日付をもちまして私ども全国商工会連合会としての分野調整法の制定についての意見を公表いたしましたが、その公表したものがここに二点ほどございますが、その第一点は分野調整法を今国会において可及的速やかに制定してほしいということ、それから第二点は先ほど来皆さんがお触れになりましたこの内容の問題でございまして、この意見具申立法のフレームに即したものとすることについては異論がありませんが、ただ、その審議の過程の中で、先ほど触れられました勧告、公表という問題につきまして、勧告を無視した大企業に対しましては営業停止の命令をすることができるようにしてほしい、そして、また、命令に違反した大企業に対しましては大規模小売店舗法に準じた程度の罰則を設けてほしい、勧告だけでは十分でないという考え方が一点と、それからもう一つは、これも先ほどお話がありました調整対象の問題でございまして、小売業と農協及び生協を除外しておられるわけでございますが、それらの理由につきまして、基本的には筋論としては納得ができますが、実体論としてやはりそういう法律が有効に機能しておりませんので、私どもはこの分野調整法小売業と農協及び生協を加えてほしい、対象から除外しないでほしいということ、この二点でございますが、これにつきましていろいろと私ども理由を申し上げたいと思います。  勧告の問題につきましては、勧告、公表ということは非常に大きな社会的な制裁でありまして、法律に違反して処罰を受けるということよりもむしろ大きなペナルティーだというふうに外国では言われておりますが、日本の場合とは若干違っておりまして、日本の場合は残念ながら勧告かということで軽くこれを受け流されるというおそれが多分にあるわけであります。これは日本人がそうであるということを私が申し上げるのは大変つらいわけでございますが、外国の例につきましていろいろとお聞きしたところでは、こういった勧告や、それからこれを無視した場合に公表されるということは社会的に大きな罰則でありまして、普通の場合にはとても耐えられないほどの恥ずかしい行為だというふうに理解されるそうでございます。残念ながらわが国におきましては勧告というふうなことでは十分に効果を発揮することができないということで、勧告を無視された場合には営業停止の命令もすることかできるんだ——もちろんこれは伝家の宝刀であることが望ましいわけでありまして、そういったことにならないように大企業が節度のある事業活動をやってもらいたい、かように私どもは思っておるわけでございます。  それから、調整対象の問題でございますが、小売商業を除外いたしました理由として、先ほど影山さんのお話がありましたように、小売商業地域性の非常に強い業種であり、しかもまたいわゆる一般法としては小売商業調整特別措置法があり、また、特別法としてはいわゆる大規模小売店舗法があるのでありますから、これらが有効に機能すれば別にこの分野調整法の中に対象として入れる必要はないんだ、むしろそういう法規か現存しておる以上は、これが現実に実体的に機能していないからということで分野調整法の中に入れるというよりは、むしろ分野調整法はいまのままにいたしまして、大規模小売店舗法なり小売商業調整特別措置法を十分に機能するように改めていただきたい、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。  先ほど三巻さんからも大店法を強化する必要は絶対ないというお話でございましたので、強化という言葉を使いますとおしかりを受けるかもわかりませんので、機能が発揮できるように充実した法律にしていただきたいというふうに申し上げたいと思います。そしてまたその場合に、小売商業調整特別措置法、大店法、事業分野調整法の三つがそれぞれ整合性を持って有効に機能することが大切でございますが、ただ分野調整法を強化する、それができないから小売商業調整特別措置法を強化するということで、この特別措置法だけを強化するということになりますとまたこの三つの法律の整合性というものが損なわれるというふうなことにもなりますし、特に大規模小売店舗の地方進出によってその生活を脅かされております中小零細小売業者を守る立場にある私どもといたしましては、このいまの政府原案につきましてはかれこれ申し上げることなく、むしろこの法案と同時に大店法の根本的な見直しをし、そして小売商業調整特別措置法と事業分野調整法の三つを総合的に考えて、この際三つの法律を見直して本当の意味の整合性を実現するように努力をしていただきたいと思います。  それと同時に、零細小売商業者も、ただこういう法律の制定によって大規模企業の進出に歯どめをかけるということで事足れりとしないで、小売商業者自身がもっと元気を出して、いわゆる自助努力と申しますか、そのためにも、商店街振興組合あるいはボランタリーチェーンといったような小売商業者の組織化を二つの柱として中小零細小売業者の組織を強化する、そして組織率を引き上げることによって小売商業調整特別措置法なり大店法なり事業分野調整法との総合的な整合性を図る、そういう意味で小売業者自身がそういう組織を強化していく必要があるんじゃないだろうか、かように私は考えるわけでございます。  なお、農協及び生協の問題につきましては、これも先ほどお話がございましたように、根拠法規なり監督規定があって、これを厳格に運用すればそれで大丈夫なんだということは、筋論として全くそのとおりでございますが、ただ、この二つの問題につきましては、その根拠法規なり監督規定というものがこれも十分に機能していないということは私どもは実感として受け取っておるわけでありまして、現実の私どもの商業活動において、地方におきましては農協の、都市部におきましては生協の、非営利法人でありながらそうでないような活動が目に余るわけでありまして、現在のこの根拠法規が十分に機能しておるとは私どもにはどうしても思われないわけでございます。そのために私どもはこの事業分野調整法の中に入れてほしい、これは筋としては違うかもしれませんけれども、背に腹はかえられないというふうな感じでこのことをお願いを申し上げたわけでございます。筋論は先ほど影山さんのお話しになりましたとおりでございますので、私どもは農協及び生協をはずすことについて納得はいたしますけれども、やはり、せっかくあります根拠法規なり監督規定をもっと厳重に運用していただきまして、実効の上がるような行政をぜひ行っていただきたい、かように考えておるわけでございます。  以上、私ども全国商工会といたしましてこの分野調整法に対して考えております意見を申し述べて、私の話を終わらせていただきたいと思います。  どうも失礼いたしました。
  10. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 次に、高橋参考人にお願いいたします。
  11. 高橋淑郎

    高橋参考人 ただいま御指名を受けました高橋でございます。  まず初めに私は、この法案につきまして、今国会での成立と、それから速やかな公布、施行を期待していることを申し上げたいと存じます。  日本商工会議所といたしましては、この中小企業分野調整に関する問題の重要性にかんがみまして、昨年来いろいろな角度から慎重に検討をいたしますとともに、東京商工会議所初め各地の商工会議所の意見を参酌いたしまして、これらを踏まえまして、昨年十一月にこの問題に対する意見を取りまとめて関係方面に建議、要望いたしたわけでございます。  御存じのように、商工会議所は中小零細企業から大企業までわが国の産業界の各層を幅広く会員といたしております地域総合経済団体でございますので、この取りまとめました意見は各界各層の意見を公平に反映させて得られたものであると存じます。  私どものこの問題についての基本的な態度につきましては、本来、中小企業と大企業とはわが国経済社会において相互補完的な、すなわちたとえて申しますと大きな石と小さな石とで組み上げられた城の石がきのような関係にありまして、今後ともそれぞれ固有の特質を生かして共存共栄しながらわが国の国民経済の健全な発展をすべきものと考えておるわけでございます。こういう見地に立ちましてこの問題を考えますと、あらかじめ業種の指定を行って中小企業事業分野を固定して大企業の参入を認めないとする分野確保的な考え方は、経済社会の進歩、経済効率、消費者利益確保等の観点からも多くの問題がありまして、賛同いたしかねます。  しかしながら、大企業者がその力に任せて、主として中小企業者企業活動を行っている分野にまで無秩序に乗り出してくることは問題でありまして、大企業者の社会的責務に対する自覚と自制が強く求められるものであります。したがいまして、大企業中小企業との間に現実の問題として紛争が多発する傾向の中にありまして、社会的公正の見地から、競争力の劣る中小企業者経営基盤を擁護するために必要な立法措置を講ずることが適当であると考える次第でございます。したがいまして、法律性格としては、中小企業事業分野の固定的確保を目的とするものではなくて、大企業者の進出によって生ずる事業分野をめぐる紛争につきまして調整の土俵づくりを整備し、消費者利益の擁護に慎重な配慮を加えつつ、紛争を機動的に調整、解決するためのものであることが望ましいということであります。  先ほど来お話のございます中小企業政策審議会の本問題に係る答申は、その基本的な考え方において、また立法のフレームにおいて、いずれも私ども商工会議所の考え方と基本的に同じものであります。ただいま提案されて審議中の政府原案はこの答申に沿って作成されていると承知いたしておりますので、私は本案に賛成であります。  次に、小売商業につきまして所見を申し述べたいと存じますが、全国各地で大型小売業者の進出をめぐって地元の中小小売業者との間に紛争が生じておりますが、大規模小売店舗法による基準面積以上の大規模店舗をめぐる紛争解決のために各地の商工会議所では商業活動調整協議会を設置いたしまして、大きな困難を克服しながら調整に鋭意努めておる次第であります。また、近年、基準面積以下の店舗の進出につきましては、条例や要綱による規制や調整措置をとる県や市が急激に増加しておることは、諸先生方御存じのとおりでございます。しかも、この県、市の条例や要綱は、その規制の内容あるいは程度がまちまちであります。それから条例について申しますならば、具体的にどの程度の内容であればそれが合理的であって法的に許されるものであるかどうか定かでありません。  大規模小売店舗法の附帯決議によりますと、基準面積以下の大規模店舗についても同法の調整措置に準じて適切な指導を政府が行うこととなっておりますが、これらの店舗に係る調整はこの附帯決議の趣旨に沿った大規模小売店舗法の体系で処理されるべきものか、あるいはこれとは別に、小売商業調整特別措置法の体系によりまして都道府県知事が紛争のあっせん、調停に当たるのが望ましいのか、これまた必ずしも明確でありません。そのところへさらにいま申し上げましたように県、市の条例、要綱等の措置が加わるということで、こういう基準面積以下の店舗につきまして、調整あるいは指導の主体が国であるのか地方自治体であるのか不分明であります。かつ、規制、調整の内容が区々まちまちでありますので、事実上調整を行わなければならない立場にこれから立たされ、あるいは立たされている各地の商工会議所としましては戸惑いを感じ、かつ大変な困難を感じているというのが現状であります。  以上のように、基準面積以下の大規模店舗の進出に対する調整方策につきましていま各地で相当の混乱が見受けられ、多くの問題が起きていると考えますが、小売商業活動の調整は、関係者の間の利害の対立がきわめて激しく、したがって多くの困難を伴うものでありますので、この際、政府、地方自治体におかれてはこの問題に対処する基本的な方向を明示されるように切望するものであります。  以上、私の意見を申し述べさせていただきました。
  12. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  13. 佐藤公彦

    佐藤参考人 御指名をいただきました中小企業事業分野確保法促進協議会の佐藤公彦でございます。  まず、本日本委員会にお招きをいただき、現在御審議中の分野法案について意見を申し述べる機会を賜りましたことに対して、心から厚く御礼を申し上げます。  さて、私どもは、大企業の進出を受けているかあるいはそのおそれのある中小企業団体が業種の違いを超えて団結し、二年余にわたって分野法の制定を関係各方面に働きかけてまいった次第であります。そうした経過の中でようやく今国会において政府提案がなされたというわけでございます。そこで私どもの要望といたしましては、去る三月二十四日、全国から業者代表五千名が参加のもとに分野法即時実現総決起大会を日比谷野外音楽堂で開催いたしまして、そこで七項目にわたる要望をまとめておりますので、以下に申し述べさせていただきたいと思います。  まず、その一つは、大企業の進出を事前にチェックできる業種指定等の措置を講じていただきたいということ。第二は、小売業における個々の業種に対する進出は同法の対象とすること。第三は、大企業の進出に対する自粛規定を設けること。第四は、規制措置のとられた中小企業業種に対する振興措置を講じていただきたいということ。第五は、同法の実効性を確保するために命令、罰則規定を設けること。第六は、審議会は当該中小企業者意見が十分に反映されるよう、その構成並びに運営に留意すること。第七は、主務大臣の権限は都道府県知事にも委任できるものとし、都道府県審議会を設置すること。以上七項でございます。  以上の中で、私ども分野法に不可欠なものであると考えている諸点とその背景等について申し上げてみたいと思うわけでありますが、まず、業種指定の問題であります。政府案業種指定方式をとっておりませんが、私ども業種指定方式の導入を一貫して主張してまいったのは次のような趣旨によるものであります。  この法律の制定の目的があくまで中小企業分野確保にあるという視点から、事業分野の本当の意味での確保業種指定によって初めて可能であるということであります。すなわち、業種指定によって大企業の進出を事前に届け出させることによって既成事実がつくられる前にチェックする必要があるということであります。また、政府案には当事者間の自主的解決の努力がうたわれておりますが、私どものこれまでの経験の中で、自主的に大企業側と交渉を行っても結局は経済的に弱い立場にある中小企業者が泣寝入りを強いられてきたという苦い経験の中から、中小企業側の立場を制度的に補完するためにも業種指定は必要だと考えたわけであります。もちろん、私ども法律家ではございませんから、国会で御審議の過程で業種指定等は立法技術上不可能であるということであるならば、私ども業種指定に期待すると先ほど申し上げましたような趣旨が十分生かされますよう御配慮いただきたいと思うわけであります。  次に、小売業の問題でございますが、促進協には書店及びめがねの小売業団体が加入しております。これらの業界分野に対して大手私鉄資本等の大企業が参入し、関連中小企業者の存立基盤を脅しておるのでありますが、このような大企業の進出は現行大店舗法では対処できないのであります。したがって、個々の小売商業における業種分野に対する大企業の進出は分野法対象とすべきだと考える次第であります。もし分野法対象とされないということであるならば、小売商業調整特別措置法の中に分野法の精神を織り込み、その諸手続を加えた法改正を行い、もって前述のような問題に対処していただきたいと思うわけであります。  次に、政府案においては調整措置が勧告、公表どまりとなっておりますが、これは勧告をし、これに従わない場合は命令をし、さらにそれに違反する者には罰則規定を設けなければ法の実効性は確保できないと思うのであります。と申しますのは、大企業が進出を行い、これに対して中小企業者反対をする段階では、すでにマスコミ等によりその大企業名は公にされておるのであります。また、勧告の内容等については、当該団体における検討の段階ですでに公になっているのであります。したがって、勧告に従わない場合に公表しても、すでにそのときは公になっているのでありますから何ら痛痒を感ぜず、したがって効果はないと言わざるを得ないのであります。また、公害等の問題と異なり、進出した大企業名が広く明らかになっても何ら社会的な制裁とはならないと思うのであります。したがって、命令、罰則によって法の実効性を確保すべきであると思うものであります。  最後に、都道府県知事への権限の委任の件でございますが、大企業の進出は全国市場または一定の地域対象として行われることもありますが、特定の地域に対して行われる場合は中央段階での調整ではなく、地域経済の実態に合わせた調整が必要だと思うのであります。したがって、都道府県知事が何らかの形で対処し得る措置を講ずるべきだと考えるのであります。  以上、私ども促進協として政府案に対する要望事項を申し述べさせていただいた次第でありますが、なお、本法制定に当たっては一部から若干の違った御意見もあるようでございますが、中小企業が国民経済の中に果たす役割り、とりわけ地域経済に果たす役割りを積極的に評価していただきたいと思うのであります。規模の利益のみを追求する現経済システムはすでに市場の寡占化、系列化を生み、多くの弊害が生じておるのであります。分野法の制定によって中小企業事業分野確保し、中小企業の積極的な育成強化を図ることはこのような経済力の過度の集中への対抗措置としても重要であると考えるものであります。  何とぞ慎重な御審議を賜りまして、一刻も早く本法が成立されますよう関係各位の格段の御尽力をお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。  ありがとうございました。
  14. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 次に、三浦参考人にお願いいたします。
  15. 三浦正義

    三浦参考人 私は、日本商店連盟三浦でございます。  本日は、長年にわたっての中小企業者の念願でございました分野法審議に当たりまして、中小小売業立場から意見を申し述べる機会を与えられましたことを厚く御礼申し上げます。  まず、最初に、私は本法案には中小企業に携わる者の一人としてもちろん賛成でございますし、一日も早く公布、運用されることを望んでいるものであります。  実は、この法案論議の過程で、このような法律ができることは国民経済にとってマイナスであるという意見があちこちから出ておりますが、その理由としては、先ほども幾人かの参考人方々の御意見もございましたが、つまり、基本的には、自由経済根幹である競争が薄らぎ、そのために企業意欲をそぐことになるとか、また、大企業の技術開発がおくれて国際競争力を弱めるとか、また、中小企業はこの法律の上にあぐらをかいて経営努力を怠るとか、このようなことが重々相重なって、ひいては消費者、国民大衆に迷惑を及ぼすことになるという御指摘でございます。しかし、私は、そのような事態は起こり得ない、そのような心配は御無用だというふうに確信いたしております。むしろこの法律の趣旨がよく守られて、大企業は大企業でなくてはできない仕事の分野で大企業同士でりっぱな競争をしていただき、また、中小企業は全国五百万に余る中小企業相互の間で中小企業のよさを生かして、これまた相互に激しい競争を行って経済活動に生気をよみがえらすものであると期待することができると私は思うのでございます。  特に、競争が薄らぐなどということはとんでもない杞憂でございまして、常に生産過剰あるいは供給過剰の経済現象の中にあってむしろ競争は日に日に深刻となり、激甚さを加えておりまして、この程度の法律競争がなくなるなどとは夢にも考えることができません。むしろ放任しておきますれば、一部で御指摘のございますように、大企業の寡占化あるいは系列化がますます進んで、逆に競争がなくなっていくという弊害の方がむしろ進展するであろうと考えるのでございます。  私の所属する小売業界を見ましても、昭和三十二年に百貨店法が制定されましたが、もちろんそのときもこういう心配が非常に起こっておりましたが、これを実行してみますと結局ますます大企業は進出し、ますます競争は激しくなり、そこで昭和四十九年に大型スーパー等も含めた大店法に改正されましたが、自来三年半たっておりますけれども、またますます競争が激しくなっている。この経験、先例に見ましても、そのような心配は全く起こり得ないということを強く主張してもいいのではないかという気がするのでございます。中小企業が法の上にあぐらをかくなどというような、そんな法律ができるとすれば全く思いもよらないことだと言わざるを得ないのでございます。  さて、私は、他の参考人方々意見との重複をできるだけ避けるつもりで、限られた時間内で二、三意見を申し述べたいと思います。  まず、本法の争点の一つとなっておりました小売業の適用除外という点でございます。これを除外した理由は先ほどからもるる説明がございましたとおりでございますが、それぞれの法律はそれぞれ独自の性格あるいは目的を持っております。本法は大企業者による大規模な事業と中小企業との調整でございまして、大店法は単に大規模店舗と中小店舗との調整となっております。非常に似ておりますが、しかし、非なるものがございます。したがって、大店法では、たとえば基準面積以下の大規模な多数の中小店舗を広範囲に展開いたしましても、これを規制する方法は全くございません。つまり、資本規制ということではございませず、店舗規制でございますからそのようなことはできないのでございます。同じ規模の店でも、これを多数つくって全国的にチェーン化し、そして中央においてこれをコントロールし、大資本によるすぐれた経営ノーハウによって運営いたします場合と、同じ程度の規模のものでありましても、経営資源の薄弱な中小企業経営する場合とでは競争力において格段の開きが生じます。現行の大店法では何らこれをチェックすることができないことになっております。  そこで、御存じのように、地方の行政機関ではやむにやまれず条例や要綱を制定して、まさに全国的にはばらばらの状態がますます進行していくという現象が生まれているのでございます。また、大店法は店舗面積の規制でございますから、許された総面積の範囲内であるならば何を売ってもよろしい、初めはばらばらであったがめんどうくさいから一品目にしぼろうということもできるわけでございまして、そういたしますと、そういう重点品目にしぼられた周辺の小売商は何の発言もあるいは申し出もできないままに大きな影響をこうむるということも起こり得るのでございます。こういうことはいわゆる業種の指定というものによる分野法的な考え方でないと解決できないのじゃないかというふうに考えます。  また、全国で千二百団体ほどあります小売商が組合組織をつくりまして、そして組合員のための販売促進あるいはお客さんへの御便宜の提供といったふうなことで、昭和二十三、四年ごろのあの物資不足のときから、物を分割で、月賦で販売する割賦購入あっせん事業を行っております。地方の消費者の大変の御賛成を得まして、いまや津々浦々にまで隆々と普及しておりますが、昭和四十年前後から都市銀行が主となりましてクレジット会社というものをつくっております。これはもう北海道の層雲峡の奥から九州の山の上のホテルにまで、あるいはJCBでございますとか、あるいは富士銀行系のUCでありますとか、三菱銀行のDCでありますとか、住友銀行系の住友クレジットカードでございますとか、現在六社ほどございますが、これは現在のところカードによる信用販売しかしておりません。うっかり何十万円も買いますと一挙に銀行から何十万円差し引かれるというびっくりする状態が起こるのでございますが、そのような不便な中にございましても、わずか十年でこの六社の参加店は、百貨店、量販店を中心といたしまして全国に五十五万店舗以上に達しております。カードの利用客は実に七百万人を超えております。その売上額は五千億を超えるという大型企業に成長しております。  これはほとんど銀行が主となっておりまして、たとえばJCBの場合、三和銀行系の場合でも、その銀行の本支店が窓口になってお客さんの獲得に、まあ取引先を中心としてでしょうが、約二百二十行が参加しております。この二百二十行の支店が十店平均あるとすれば二千幾つかのブランチがこの事業の推進に参画しているという形になっておりますから、これはもう十年でこのくらい伸びるのは当然でございましょう。これを近く——近くでなしに、いままでも何遍もその割賦販売あるいは割賦販売の類似行為に持っていこうとする動きが明らかに見えております。仮にこれが割賦販売に公然と移行できるものといたしますならば、たちまち売り上げは三倍、五倍、いや二兆円、三兆円ということになりまして、せっかく全国に中小企業が組織いたしましたこの組合は崩壊の運命にさらされるということはきわめて明白でございます。こういうふうな大企業中小企業のそういう事業を営むのを何とかしていただきたいということの法的な担保を求めるために、それらの方々分野法成立を実は非常に念願し、期待しておったものでございます。  このように小売商は、大店法、商調法があるからといって単純に分野法の適用除外をするということになりますとむしろいろいろな問題がございますので、どうしても外さなければならないという御事情がございますならば、これらの問題が処理できるように大店法や商調法を改正していただくほかございません。  しからば、大店法、商調法をどのように改正していくかということは時間もございませんのでここでは触れませんが、後刻御質問がございますれば、われわれ小売商の団体は十分に情報を交換し、検討もいたしており、また、素案をつくってもおりますのでお答えさせていただきたいと思っております。  なお、この機会にぜひ一言つけ加えさせていただきたいことは、分野法や商調法あるいは大店法などの法律が次々に制定されましても、それはまことに重要なことではございますけれども、それだけで問題の本質的な解決はつかないということでございます。小売業の場合でも全国に百六十万店舗に近いものがございますが、実にその八〇%以上が中小企業であります。これを改善しない限り流通の近代化はなく、国民経済への真の貢献は不可能でございます。それがためには、政府は、まず、小売業の将来あるべき姿、ビジョンを策定していただきまして、このビジョン達成のために抜本的な施策を講じていただくことが第一だと存じます。中でも、小売商の八〇%が集中しておりまする商店街の近代化や、あるいはせっかく政策として取り上げられているボランタリーチェーン、連鎖店化というふうなものの推進、さらには大型店進出に苦しんでいる専門店の転換対策など、すでに制定されております中小小売商業振興法をこの際フルに活用して、むしろこういうふうな法律論議する必要のない状態をつくり上げていっていただきたいと存ずる次第でございます。  最後に、適当な例であるかどうかわかりませんけれども、私は商売柄いつもタクシーを利用しておりますが、中でも個人タクシーのお世話になっております。理由は申すまでもなく、何となく安全感があり親切であるというふうな気がするからでございます。すでに六十を超えた白髪の老運転手さんは、仕事をしていれば子供の世話にならなくて気楽でいいんだ、まともな生活のできない老人年金に頼らずに生きがいを感ずるんだ、いや、それどころか、まだまだお国のために、いただくのではなしにばっちり税金を払っているんだ、肩を張って、と話しておりました。大企業では合理化とか効率化とか言って、まだ働ける六十歳前の健康で経験豊かな、しかも働く意欲のある方を、定年という規則によりまして、後はお国のお世話になりなさいということで手放しておられますが、これでは幾ら福祉国家と言いましても限度がございましょう。こういう方々に働ける場所を提供する。つまり、中小企業をつぶさないで、再就職の機会を与え、あるいはみずから自営の道を講ずることこそ真の老人対策、福祉ではないかと私は思うのでございます。  一握りの大企業によって経済の合理性とか競争の自由とか言ってみましても、それによって中小企業を倒産状態に追い込めば経営者自身も結局お国の世話にならなければならないようになり、また、そこで働く人も、また、これからそこで働こうとする人もすべてそういったふうなことになってきますれば、そのつけは国に回り、税金に回り、いや、国民に、消費者に回ってくるのでございます。やはり国全体のトータルコストを考えていただきまして、そしてこのようなつけが国民に回らないような政策をやっていただくこと、このことが非常に大事なことではないかというふうに私は感ずるのでございます。まさに本法の第一条に書いてある「国民経済の健全な発展に寄与する」という崇高な目的、方向でこの法律を実現していただき、中小企業経営者、従業員に活力をよみがえらせていただいて、ぜひこの法律が一日も早く適正に運用されるようにお取り計らい願いたい、かように思うのでございます。  以上で私の意見を終わります。
  16. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  17. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入るのでありますが、影山参考人は所用のため正午に退席いたしたいとの申し出がありますので、さよう御了承ください。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻英雄君。
  18. 辻英雄

    ○辻委員 参考人の皆さんには非常に貴重な率直な御意見を賜りまして、厚くお礼を申し上げます。  二、三お尋ねをさせていただきたいと思いますが、与えられた時間が短いので、非常に短い言葉で御質問しますので詰問調にとれるかもしれませんが、そういう意味ではございませんのであらかじめ御了承いただきたいと思います。  初めに、飯田参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、現在の中小企業と大企業競争関係の中で特段に困ることは余りないんじゃないか、ただ、この法律によって分野調整紛争の起こったときに行政指導というものがやられることは結構なことだ、こういうふうに私にはとれたのですが、そのようにとってよろしゅうございましょうか。——そういたしますと、その場合に勧告なり何なりはどういう内容になるのか、どういうルールによって勧告をするのかということがややあいまいである。私も、従来の例から見ても行政指導のルールというものがはっきりしないんじゃないかという御指摘はごもっともだと思いますが、事柄の性質上文章に書いたルールというよりも一つの実態に即した取り扱いの積み上げのようなことになるんじゃなかろうかと思いますが、ルールにつきまして何か御意見がございましたら伺わせていただきたい。
  19. 飯田経夫

    飯田参考人 御指摘のように、こういう問題は紛争の個々のケースについて問題点が非常に多様だと思いますので、あるルールを設定して、そのルールですべてを割り切るということはとうてい不可能であろうと考えます。したがって、そうであるからこそ審議会を設けて、そこで当事者のみならず第三者の公正な立場に立つ調査及び討論を経て調整が行われるということ、これがルールだろう、私はそういうふうに考えております。
  20. 辻英雄

    ○辻委員 ただいまのお答えに関連しまして、中小企業政策審議会の小委員長でもあられた影山参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  論議対象になっておりますこの法律案の勧告を出しますことについての手続が御承知のように書いてございますが、こういう手続について、おおむねこのような手続でよかろうかどうかということについての御議論が何か審議会等でございましたかどうか、あるいは影山参考人個人の御意見でも結構ですが、お聞かせをいただきたいと思います。
  21. 影山衛司

    影山参考人 お答え申し上げます。  勧告の前提といたしまして、審議会でよく論議を尽くすということ、それから当事者納得のいく結論を出すということでございまして、その審議会を設けましたのが先ほども申し上げましたようにかけ込み寺的な考え方でございますので、中小企業者の皆さん方にとって手続はできるだけ簡素なものでなければいけない、こういうふうに出ております。
  22. 辻英雄

    ○辻委員 ただいま審議対象になっております勧告を出しますまでの事前調査を含めましたいろいろな手続がございますが、私もこれでおおむね妥当だと思うのです。したがいまして、当該のケースについて出されます勧告が、なるべく納得のいくものということをいま影山参考人が言われましたが、これはなるべく双方の納得でございましょうが、やはり第三者も入っておるわけですから、いわゆる進出する大企業の方が納得しないようなケースでも勧告をしなければならないという客観的な状態である場合もあり得ると思いますが、いかがお考えでございましょうか。
  23. 影山衛司

    影山参考人 そういう場合もあるかもわかりませんけれども、いままでの行政指導の実績等にかんがみましても、よく話し合いの結果大企業にも納得をしてもらい、また、社会的責任という行動ルールをこれからつくっていかなければいけないわけでございますので、そういう点で大企業もこれを守るべきであるというふうに私は考えております。
  24. 辻英雄

    ○辻委員 お話はごもっともでございまして、私も影山参考人の言われるようであってもらいたいと思いますが、現実の過去の例がすべてそうであったとは私は実は信じがたい。また、大企業がすべて悪いという意味じゃ毛頭ございませんけれども、いろいろなケースがあり得る。そういう場合に慎重な手続を経て出された勧告にどうしても従わない場合に、これは倫理的な問題でもあると思うのですが、その勧告が正しいものであった場合に、最後まで従わないことが許されるということであっていいのかどうかということになりますと、私は、正しいものにどうしても従わないものがあった場合に、その正しいものが通らないで、従わないままでまかり通るような考え方というものはやはりおかしいのじゃなかろうかと思うのです。  これは意見を言うわけじゃございませんが、そういうことについて、いわゆる必要な場合には正当な手続を経た勧告を前提にして、それがさらに手続を経て強制の命令が出されるという場合が必要なのじゃないかと私は思うのでございますけれども委員会ではその点についてそういうことがあり得ないというふうにお考えになるのか、あり得ても一遍にやらない方がいいのじゃないかというふうにお考えになるのか、これは委員会の御議論なり何なりを、くどくて恐縮でございますがもう一度お聞かせをいただきたい。
  25. 影山衛司

    影山参考人 委員会の中にも命令、罰則までいくべきであるという議論もあったことは事実でございます。しかしながら、やはり結局は勧告の実効性を何をもって担保するかということになるわけでございますが、罰則をもって担保するということもありますが、罰則も三百万円程度を払うかどうかという判断にもなるかと思いますが、それと現在の社会的な動きにおきましては、世論の力、社会的制裁というものが実効性の担保を図るという意味におきましては非常に有力なのではないかという議論が有力であったわけでございます。
  26. 辻英雄

    ○辻委員 最後にもう一つ影山参考人にお尋ねいたしますが、政策審議会答申以外にこの法案では事前調査手続というものが定められておりますけれども、これにつきましては、特に影山参考人の御意見として、答申と食い違う点について御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  27. 影山衛司

    影山参考人 事前調査は答申の線とは食い違っていないと思います。その線に沿った方向であろうかと思います。
  28. 辻英雄

    ○辻委員 次に、三巻参考人にお尋ねいたしますが、大規模店舗と中小店舗、これは商店の方になりますけれども、この共存共栄が望ましいというお話でございますが、私どもの知っております実情におきましても、大規模店舗ができたために周辺の中小店舗に有利であったという判断をされている例もあります。しかし、逆にそうでなくて、そのために非常に中小店舗が苦しい立場になったという話も実は実例としてあるわけでございまして、その辺につきまして、後者の場合については消費者利益というものを守るべきだという御基本はごもっともでございますけれども、何らかの調整をすることがすなわち消費者利益をすぐに損なうものだというふうにお考えになりますかどうか、お聞かせいただきたい。
  29. 三巻秋子

    ○三巻参考人 大店舗法の改正に当たりましては、ただいまの御質問ではございますが、私たちはその強化についていろいろとアンケート調査をいたしました。大都市三万以上の全国の人五百人についてこれを調査いたしまして、回収率は九四・八%でございましたが、年代から見て二十代が四・三、三十代が二一・五、四十代が三〇・六、五十代が二三・四、六十代が一六・九、不明が三・四ございましたが、総括いたしまして大店舗法は消費者利益に全く連ならない、何もそういう大店舗のないような地域には大店舗は認めるべきだ、これは消費者利益になるということです。しかし、小売とかがやたらに多いところはおのずから競争条件が発達して、現にもう大スーパーが倒れている地域があるじゃございませんか。これが何かを物語っていて、これを法律によってなお強化し続けることがわれわれ消費者利益だとは思いません。大いに出したいものがあれば出たらいいのでして、消費者は向こうの商店に必ず行くんだという契約も何もしてないわけです。だから、あの店が安い、きょうこうだわよと聞いたらすぐ飛んでいくような消費者も大変多うございます。安かろう悪かろうじゃございませんが、安くて品物がよくてということで、このごろは選ぶ消費者が大変出てまいりましたのも事実でございます。  それだけに、どこのバーゲンはたとえスーパーであろうと目玉商品だけであって安くはないというようなことも存じておりますだけに、おのずからそれは消費者に選ばせるべきだということがこの店舗法のアンケートにもはっきりと出てまいりまして、何か大きいものができた場合にはその周りがつぶれていくのじゃなくて、むしろそれとともに伸びていっているのです。ちょうど二子玉川の高島屋の出店によりまして、あそこにビルが六つ建つようになりまして、そしてこの間ちょっと電力会社で調べてみましたところが、九千キロワットの電力を使うようになった、そしてそのキロワットは一消費者の電力から見るならば六千軒がふえた町になったということでございます。そして、それぞれの趣によってこの品物はこの店へ、これはこの店へというように消費者は品物の選択についてもこのごろはもっぱら上手なはっきりした買い物をしており、いまの不景気のどん底で財布のひものきついのはこの景気がそうさせているのだということで御勘弁願いたいと思います。  共存共栄ができるということを申し上げましたのは、最後の、この店舗ができた場合にはという質問に対しまして申し上げますと、新規に大店舗のこれを無条件に認めよというのが六四・三に対しまして、消費者として全く無条件でもなく、小売専門店の大店舗にない特色を生かして共存共栄ができるというのが五一・九%ございました。私はそういうような意味において共存共栄はできるということを申し上げたのでございますが、しかし、いま問題になっておりますのは、むしろ調整協議会が委員の妥当性を欠いているということがあるのじゃないかと思います。その決め方によっては、もはや地方においては二百とか三百とかいう小さなものまで条例でもってこれを定め、ばらばらに規制しようとしておりますが、その中で委員は本当の単なる奥様であったりして、原案に対する理解もできないままに中小企業業界生活権に関係した方の発言がやたらに大きくて、発言の余地なしということで上部に上がってきて残念がっていらっしゃる方が大変多いという事実は見逃せません。そういう意味においての調整委員の決め方は今後の問題だろうと思います。
  30. 粕谷茂

    ○粕谷委員 関連して三巻参考人さんに再度お尋ねをしたいと思います。  この法律ができる背景というものはすでに御承知だと思いますが、私なりの考え方をちょっと申し上げさせていただきますと、いまちょうど商店街にスーパーなどが出てきたときのお話が出ましたから申し上げますが、三巻参考人は共存共栄できるというような御判断のようですが、私どもは、共存共栄ができない、そこでこういうものをつくってほしいということになってきたというように思うのです。営々辛苦商店街を形成してきた本当に零細の小売商人の方々としては、ある日突然に大企業がそこヘスーパーを進出してきた、そのために根こそぎ利益を持っていかれた、これじゃ困るのだ、それの規制が在来の大店法だとか商調法だとかいうものでは全然できないじゃないかということで、その切なる願いがこういう形にあらわれた面もあるというふうに私たちは理解しているのですが、そういう点の御認識がどういうふうにあるのか再度お尋ねしたい。  それから、もう一つ、競争原理阻害されていけないじゃないかという御指摘が先ほどありましたね。しかし、この競争原理をどんどん進めていきますと、アイデア売りますというのも一つの行き方かもしれませんが、大方は合理化、近代化が進んでいくと思います。そうなってまいりますと、資本の高の多い人、組織を持った者が合理化、近代化を徹底的にやっていきますね。そうすると零細な商いをしている小売商人などはそういう合理化とか近代化にはとても追いついていけないという現象が出てくるわけです。そういう場合に、これを多少保護してやる必要があるのじゃなかろうか、消費者保護すると同じように、こういう流通過程における末端の業者に対して政治が温かい手を差し伸べてやる必要があるのじゃなかろうかというように私は思うのです。もしこれを放任しておけば、近代化され合理化された大企業が後ろについている、また金融機関が後ろについているという大型小売店舗がどこでもぼんぼん出ていく。それでもいいというなら別ですね。また、片や法律的に保護されている生協などが法の網の目をくぐって員外利用をどんどんやっていくというようなことが放任されている。そんなことをやっていったら町の商人はみんな殺してもいいんだというふうになりはしないだろうかと私は思うのです。  そこで、三巻さんに、消費者保護ということももちろん念頭に置かなければいけませんが、この法律ができる背景の中の、そういう力の弱い組織力のない商いをやっている人たちを助けてやろうという精神についてはいいのか悪いのか、そういうことをぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 三巻秋子

    ○三巻参考人 ただいまの、消費者保護は大変結構だが、力の弱いものをどうしてくれるかということのお答えでございますが、力の弱い強いはおのずからその経営主の経営合理化にあると私は信じます。ただのほほんとしてどんぶり勘定でやっていて、そして大きいものが出てきたからいやだというのと、生活をかけてこの問題に対して——きゃあきゃあ言って国会議員の先生たちをつかまえて、法律をつくるためのそういう手段ばかり多くて、本当の消費者はそれを知らないということがいかにも多いということは御存じでございましょう。  公取の不当廉売法という法律がございますね。安く売ってはいけないという法律でございますが、この間もあるストアがチラシに一リットル百五十八円の牛乳がありますということを書いて皆さんに出したのですね。そうしたら、それを目がけて買いに行ったところが、表の広告に、当局の指示によりましてこの値段では売れなくなりました、百六十五円にいたしますということが書いてありまして、消費者を無視して値上げ勧告をしております。不当廉売ということは、私は長く牛乳運動を自分で続けてきたことでその原価は幾らか知っておりますが、それだけに、百五十八円でということは原価を割って売ったものじゃないということであるにもかかわらず、公正取引委員会は不当廉売という名のもとに、百六十五円で売れということでそれを売らした事実がございますが、これはいかがにお思いになりますか。私は、むしろそういう矛盾の点がこれまで幾つもあるということを知っているということを先生にお聞きしたいと思うのですよ。
  32. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 ちょっと待ってください。参考人から委員に対する質問は許されておりませんので、御了承いただきたいと思います。  それから、関連質問は質問予定者の時間の範囲内でお願いいたします。
  33. 粕谷茂

    ○粕谷委員 参考人から委員に質問することについて委員長から忠告がありましたけれども、これはまたフリートーキングでいいこともあろうと私は思いますので、三巻さんがおっしゃっていただいたことについて私も一言だけお答えをしますが、私もその問題にはタッチしていたのです。これこそは専業でやっている牛乳屋さんが当時リットル百九十円くらいで配達をしていたものを、スーパーの新聞広告のチラシの目玉に百四十七円で売りますという広告が出ていたのです。その開きは何と五十円からあるんです。どうしてそんなに安く手に入って売れるんだろうか、それでやっていけるんだろうかと調べたら、やっていけないのです。それは、この牛乳は農協から出ているのです。それで私は公取に行きました。これは不当廉売ではないか、それから目玉商品ではないか、なぜあなたたちはそれを放任しておくんだということをちゃんと言いました。それは消費者から見れば安かろうということで飛びつくかもしれませんが、もともと採算ベースに合わない値段で売って、それをおとりにして大ぜいの方に来てもらって、中へ入ってもらってほかのものを売ってもうけちゃおうということなんですよ。  その議論をあなたと私とここでしていると、参考人をお呼びしておいてディスカッションするようなことになってもまずいですから申し上げませんが、私どもも、少ない知恵ではありますが、いろいろな市場の問題点について、クリーニング屋さんのことでも何でも多少なりともその専門家と会って調べてやってきております。ただ、私は、三巻さんにこういう分野法ができる背景について御理解ある御協力をぜひ得たかったものですからちょっとお尋ねをしたわけです。  これで私の質問を終わります。
  34. 辻英雄

    ○辻委員 ただいま同僚の粕谷委員からお話がありましたので、私も同感でございますので、この話は打ち切りたいと思います。  次に、辻参考人にお尋ねしますが、あなたのお話の、農協、生協については規制する本来の法律がある、しかし動いていないじゃないかという点についても私も同感でございますし、監督官庁が常に一〇〇%のことをしているという前提に立つのは誤りじゃなかろうか、したがってそれにかわって方法が必要であるということは同感でございますが、時間の関係でその方は省略いたしまして、小売商業調整法の関連でお話が出ましたが、同様な、つまり小売商業調整法があるからこの法律の適用が外れたんだという経過政策審議会等でもあったようでございます。しからば調整法が機能しているのかという辻参考人の御意見については私もごもっともな点があると思う。ただ、答えだけでございますので、たとえば機械的に比較をしますと、いままでの調整法と今度の法律案とはここが違うという点はわかりますけれども、同時に、私は、製造業の場合の競争関係に立った場合の合理化、近代化という政策は比較的見やすいものがあると思うが、ところが、小売商業の場合には一定の猶予期間を置いたら簡単に商店の近代化、対抗力ができていくのかということになると、そこがなかなかむずかしいから対策の方法論は違うという気はいたしますけれども調整の方法論について、いまあなたが機能していないところがあるんじゃないかとおっしゃった点をもう少し具体的におっしゃっていただけるとありがたいと思います。
  35. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。  この商業の問題は、私が申し上げましたのは、この分野調整に関連いたしまして、いま小売商業対象除外になっておるが、その除外になっておるということにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、一般法として小売商業特別措置法があり、また、特別法としていわゆる大規模小売店舗法があるということでありますが、それか有効に機能していないからこそ現在各地に小売商業についての紛争がたくさんある。これは現実の問題としてもうはっきりしておるわけです。でありますから、たてまえ論としては、それだけの法律が二つあるじゃないか、だからこの二つがりっぱに機能すれば別に分野調整法の中に小売を入れなくたっていいんじゃないかということですが、むしろこの事業分野調整法は、先ほど先生がおっしゃるように、主として製造業関係に多くの問題があるわけで、この小売商業についてはそれだけ特別な一般法なり特別法があるのだから、これが機能していないからこっちへ入れるというのではなくて、機能するようにしたらいいんじゃないかということもそのとおりなんです。  ところが、それがおっしゃいますようになかなか現実の問題としては機能しない、したがってこれを整備していく時間が待てないというふうな問題、そういうことから、この小売商業の問題を、二つあるからということでそう簡単にのけてもらったのでは困るというのが私どもの考えでございますか、しかし、筋論から言えばあくまでもそうでありますから、この分野調整法調整法として除外するのであれば、筋を通してこの二つの法律を十分機能するように持っていっていただきたいということが私どもの願いでございます。  もう一つ、三法のいわゆる整合性ということを私が申し上げましたのは、たとえば小売商業調整特別措置法は御承知のようにいま都道府県知事に権限が委譲されており、それからこの分野法はもちろん主務大臣の権限でいくのだ、それから片一方の大店法の場合はいわゆる会議所なり商工会の中に設けられている商調協でやっていくのだということになっていきまして、その三つがお互いに意見が対立するというふうなことになったのでは困りますので、そういう法の運用の面で、全体的な立場で整合性が保てるようなやり方に変えていってあげたい。ただ、その場合に、それに対して先生から御指摘がありましたように、零細な小売商業というものは非常に組織率が低いし、したがって法律かできてもなかなかそれに対応できないし、また、その法律メリットが受けられないから、このメリットを受けるためには組織率を上げて、そしてその法律を有効に利用できるような力を小売業自身がつけなければいかぬということが私どもの考えだということを申し上げたいと思います。
  36. 辻英雄

    ○辻委員 ごもっともだと思います。その意味では、今回のこの法案からただ小売業が除外されたままでいいとは私どもも思っておりませんので、具体的な議論は時間がありませんのでやめますが、あなたの御趣旨はよくわかりました。  最後に、高橋参考人にお尋ねしたいと思いますが、現在の地方段階における大規模店舗の進出の問題について地方の商工会議所が大変御苦労になっておると私どもは伺っておりますが、ある県によりましては条例で三百平米以上のものをすべて対象に取り上げておる。その趣旨とするところはわかるのですが、三百平米となりますと、果たしていわゆる大資本と中小資本との競争なのか、既存の中小資本と新しい中小資本の競争なのか、ちょっと意味合いが違ってくるような気がいたしますので従来の大店舗法の思想と同じ思想で扱えるものなのかどうかという気がいたしますが、いろいろ御指導になっておられましてどんなふうに見ておられますか。  私は、大店舗法の趣旨は大と小の関係だ、この場合は中小と中小の、既存と新規との関係ではないか、ちょっと扱い方を考えるべきではないかという気がいたしますが、どういうふうにお考えになりますか、御意見を伺いたい。
  37. 高橋淑郎

    高橋参考人 私は冒頭の陳述の中で申し上げましたが、大規模店舗法が通りますときに当商工委員会が附帯決議をなさいました。その文言は「百貨店業者等の基準面積未満の大規模店舗についても、本法の調整措置に準じ適切な指導を行なうとともに、」云々ということでございまして、現在地方都市の基準面積は千五百平米でございますから、それにすれすれというような店を出して、これはもう全然法律の適用外だということではこの法律の精神にそぐわないではないか、だから、そういうような店の進出がある場合にはこの法律の精神にのっとってやるべしということだと思いますので、いまの先生の御指摘のような三百平米とか、そこらあたりの店舗についての規制を条例でやるということについては、大と中小との間の調整という趣旨からは遠く離れているのではないかと私は思います。
  38. 辻英雄

    ○辻委員 なお一、二お伺いしたいと思いますが、お約束の時間でございますので私の質問はこれで終わらせていただきます。
  39. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 影山参考人には、貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。  上坂昇君。
  40. 上坂昇

    ○上坂委員 影山参考人がお帰りになる前にちょっと一問だけ質問をさせていただきますが、いまは減速経済下であるものですから大企業が非常に多角経営に入ってきているということは実体的に証明できると思うのですが、その場合に、いい商品を消費者に与えるとか、あるいは技術革新等によってりっぱな製品を提供していくということを主眼にして大企業は進出してくるものなのかどうか。その企業利益というものが中心になって、いままでの高成長時代にとれなかったものをこの際別な面で補っていくという形で中小企業の中に進出をしてきているのではないかというふうに私は把握をしておるわけでありますが、その点について中政審等ではどういうふうな認識でこれを審議されたか、お聞かせをいただきたいと思います。
  41. 影山衛司

    影山参考人 大企業の進出が社会的公正、社会的正義の見地から中小企業業界に対して大変ひどいではないか、こういうものの事例もあるということを前提といたしまして審議をいたしました。
  42. 上坂昇

    ○上坂委員 飯田参考人にお伺いいたしますが、いろいろ御意見を承りまして、この法律立法化されるとあるいは悪法になるかもしれないというような御意見でございましたが、いま提出されている政府案と申しますか、この程度のものならば立法化してもいいというふうにお考えになっておられるのでしょうか。
  43. 飯田経夫

    飯田参考人 大変むずかしい御質問ですが、運用次第という面がかなりあるんではないかと思います。
  44. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一点お伺いしますが、運用次第によってはかなり実効の上がる法律というふうに解釈してもいいということでしょうか。
  45. 飯田経夫

    飯田参考人 実効という意味を私の立場から言いますと、非常に弊害を伴った実効という意味では御質問のとおりだと思います。
  46. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一点でありますが、実体的に見ますと、大企業の進出が実際問題として非常にいま中小企業の心配の種になっているわけです。これはあらゆる業種における進出を見てもわかると思うのですが、その場合、いまのようなお考えですと、これはいまの競争原理から言ってやむを得ないんだというふうにお考えになっておられるでしょうか。
  47. 飯田経夫

    飯田参考人 やむを得ないという言葉の意味だと思いますが、つまり大企業が進出して、先ほどどなたか委員の方がおっしゃいましたが、町の商人が皆殺しにされるというような事実認識といいますか、予測は私自身は持っておりません。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕  つまり、それほど中小企業者零細企業者が能力がないというふうには思っておりませんので、御指摘のとおりやむを得ないことだというふうに考えます。
  48. 上坂昇

    ○上坂委員 十一条に中小企業調整審議会構成というのがありますが、これは二十名の学識経験者を通産大臣が任命することになるわけですが、中小企業の部面を特に扱っておられる高橋参考人佐藤参考人に、この調整審議会構成はどうあるべきかということについて御意見をいただければ幸いだと思います。
  49. 高橋淑郎

    高橋参考人 私は、委員二十名以内の内訳として、どういう方ということについて具体的に深く考えておりませんが、たとえば商工業あるいは産業団体の代表者の方も中に入れていただくということは少なくとも必要であろうかと思います。  それから、やはり中心は学識経験を持っておられる方ですけれども、商工業について特に経験のある人、それから各般のことについて意見をまとめられる立場にある人、そういう方はぜひ委員の中に加えていただきたいと思います。
  50. 佐藤公彦

    佐藤参考人 ただいまの審議会のあり方に対する私どもの考えは別にまとまっておるわけではございませんけれども、私どもが希望したいのは、問題は、従来の審議会と申しますと何かどこかでいつの間にかつくられているような気がいたしますし、中小企業の今度の問題に関しましても、本当に深刻に身をもって体験しているという人が果たして審議会委員に入れるのかどうかということなんでありますが、したがって中小企業を論じても、いまだかつて中小企業にタッチもしたことがないような人が机上の空論でと言っては大変失礼ではありますけれども、そのような人が論議をして決められたのではせっかくの法案も精神が伴わないのではないかと思うわけであります。したがって、中小企業の本当の当該団体、当該業界、被害を受けている業界人たちの真意が本当に反映されるような委員構成をしていただきたい。敷衍すれば、私どもの現在構成しております促進協の加盟団体の中において、そのように身をもって体験しておるような者を委員に加えていただけるならば大変幸せだ、こういうふうに理解しております。
  51. 上坂昇

    ○上坂委員 辻参考人にお伺いいたします。  大企業進出についてでありますが、こちらの調査によりますと、大企業の進出に脅かされている者では小売業が一番多くて三〇%、製造業が一七%、サービス業が一五%、卸売業がちょっとふえまして一九%というふうになっているようでありまして、小売業に対する進出が非常に多いわけであります。したがって、この法律を十分活用するという面からいくと、この法律小売商業の部面を除いているということについては、こういう進出の面からいくと不十分のそしりを免れないのではないかという感じがするわけであります。  先ほど、大店舗法なり商調法等を通じてこれが十分機能すればいいというお話でございましたが、小売業を入れるということについて、これはやはりこの法律には入れない方がいいというお考えに立っておられるのか、それともできることならば入れた方がいいというふうなお考えに立っておられるのか、全国の中小商工業者の代表をしておられる辻さんにその点をお伺いいたしたい。
  52. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 ただいまの御質問に対しましてお答えを申し上げます。  小売業を除いてもいいか、あるいはまた除いてはいけないと考えておるかというお尋ねでございますが、実は私はこの小委員会の中で、この問題につきましてはぜひ小売を入れてほしいというふうなことを何回か申し上げたわけでございますが、そのときの皆さんの御意見では、やはり筋論としては法律が二つあるのだからということですが、その法律が機能しないからやむを得ずこの分野調整法の中へ入れてもらわなければいかぬのだということなんです。私ども中小企業者の切実な要望というのは、大型店舗法があるとか商調法があるとかいったようなことで商業は十分対応できるのだから除いたらいいんだということはあくまでもたてまえの論であって、そのとおりにいっておれば全国各地にこうした問題は起きないわけでありますが、それがなぜ十分に機能していないのか、どうしても小売商業を入れないで二つの法律でやっていくのがたてまえであり筋論であるということならば、筋論については私も納得いたします。  しかし、それであるならば、現在の大型店舗法は御承知のように千五百平方メートル以下のものについては全く野放しになっておるが、私ども地方の中小町村にありますところの商工会地域は人口わずか一万とか八千とかいったようなところが多いわけでありまして、そういうところに千四百九十平方メートルの準大型店が野放しに出てくるということは、これは東京の中で三千平方メートルの店舗が一つふえることよりもはるかに大きな影響を与えるわけであります。そういう準大型店に対して現在の大型小売店舗法が全くの野放しでありますから、もしどうしても入れないというのであれば法律を改正してもらいたいということをお願いしたわけでございますが、そのときの意見具申の中に、「小売商業の特性に即応しつつ、引き続き現行法運用改善等所要の検討を行うことが望まれる。」というふうに書いたわけでありますが、私はそのときに、「現行法運用改善等」というところで法律の改正をはっきりうたってもらいたい、「現行法の改正及び改善等」というふうにやってもらいたいということでありましたけれども、なかなかそこまで皆さんの御賛成が得られなくて、「改善等」の中に法の改正も含むのだからそれで折り合えということでああなったといういきさつもございます。  でありますから、私としては、たてまえとしては、筋論としては確かに二つの法律があるのですから、これはやはり本当に機能するように真剣にひとつ考えていただきたい、それならば入れなくても辛抱します、こういうわけでございます。
  53. 上坂昇

    ○上坂委員 三浦参考人佐藤参考人にもう一度お伺いいたしますが、紛争が各地に実際起きております。いままでもずいぶん起きました。これは地元でも通産省が間に入ったりしていろいろとある程度の調整をやってきたわけですし、これからもこの法律が適用されるということになりますと調整することになると思うのですが、調整した後またしばらくたってから、調整当事者であった大企業が、同じ業種であるか別の業種であるかは別にして、同じ業種のようなところへ進出していくというようなことがあった場合——こういうことは必ずしもないとは言えないわけです。したがって、その場合には事前に届け出をさせるような措置がどうしても必要ではないかというふうに私は思っておるわけでありますが、これらのことについて御意見をいただければ非常にありがたいと思います。
  54. 三浦正義

    三浦参考人 お答えいたします。  一遍調整いたしましても、現に大店法の場合でも一年たてばもうまたすぐ再申請ということがあちこちで起こっております。したがいまして、私どもでは、人口の増加、購買力の増加あるいは交通その他の変化等をその地域地域で十分に見定めをして、そしていわゆる総量規制と申しますか、このような状態になったときにはここまでというふうな一つの基準、物差しをつくっておかないといけないということで、いまのような、極端に言うとこの面積は向こう一カ年間は再申請しませんといったふうな——一カ年間にとう変わるか変わらぬかは別ですけれども、期限だけは決めておくといったふうな調整のやり方も間々ございますのですけれども、それではちょっと意味がないような気がいたします。
  55. 佐藤公彦

    佐藤参考人 ただいまの先生の御質問でありますが、実は、私どももかつて行政指導を受けたのであります。そうしたところが、その大企業がようやく行政指導を受けて一応進出の歯どめはできたと一安心した途端に今度はまた別の大企業が日ならずして出てきたということで、それに対応するのに大変な苦労をした経験を持っておるのであります。したがいまして、今度の法律におきましても、もしそのような措置をとられましてもそのままにしておかれたのではまたBの企業が出る、Cの大企業が出るというようなことにどうしてもなりますので、そういうようなケースがありましたならばこれを周知していただいて、同じようなことが拡大されないようにぜひ御配慮をいただきたいと思うわけであります。
  56. 上坂昇

    ○上坂委員 大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。  終わります。
  57. 野呂恭一

    野呂委員長 清水勇君。
  58. 清水勇

    ○清水委員 まず、最初に、時節柄大変お忙しい中を貴重な御意見をお聞かせいただいた参考人の皆さんに、私からも心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。  そこで、時間も少ないわけでありますから率直にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、まず最初に佐藤参考人に承りたいのでありますが、基本的に言って、いま審議中の本法案を皆さんがごらんになって、これは文字どおり中小企業者事業分野確保するという点にウエートを置かれているものだというふうにごらんになるか、あるいはそうではなしに、大企業者の新たな進出に伴って中小企業者との間の紛争が起こるので、そういうものの調整等に主眼が置かれているものであるとお考えになるか、そのいずれに主眼が置かれておるというふうにごらんになるか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  59. 佐藤公彦

    佐藤参考人 私どもは、今度の法律は一口にして申し上げるならば、いわゆる調整法であると考えております。私どものもともと求めておりましたのはいわゆる中小企業事業分野確保法でありましたけれども、現行出ておられるのは調整法であると理解しております。しかしながら、これまでにやっていただいたことは大きな前進でありまして、高く評価いたしますと同時に、また感謝申し上げている次第であります。あと、御審議の中でよりベターなものにしていただきたいとこいねがうものであります。
  60. 清水勇

    ○清水委員 重ねて佐藤参考人に承りたいわけでありますが、本法案の第三条に「大企業者の責務」という規定がございますが、この点について参考人は、これに期待を抱くことができるというふうにお考えになっておられるかどうか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  61. 佐藤公彦

    佐藤参考人 第三条に、いま仰せのとおりのいわゆる自粛規定があるわけでございますけれども、これは私どもは大いに期待していいのではないかと考えております。  ただ、問題は、企業モラルの問題でありますから、企業モラルの十分な企業であるならばもともとこのような法案も必要なかったのかもわからないのです。しかしながら、現在における大企業の中にはまさに企業モラルの失墜したものがあるように思われるわけです。ですから、ここにはっきり明確に企業モラルを打ち出していただいたことは高く評価しております。
  62. 清水勇

    ○清水委員 三浦参考人に承りたいわけでありますが、先ほど佐藤参考人から第四条の「自主的解決の努力」に触れて御意見がございましたが、大企業中小企業者との自主的な話し合いという過去の経過を振り返ってみると、力の強い大企業者に圧倒されて中小企業者が泣き寝入りせざるを得ないケースが多い、ゆえに、第四条の自主的な話し合いによる解決というものに対しては余り期待が抱けないという御説であったかと思うのですが、三浦参考人としてはどのような御見解でありましょうか。
  63. 三浦正義

    三浦参考人 この話し合いが、単に両者が相談し合って場所を決め、時間を決めて話し合うという場合にはそのような力関係が非常に大きく作用すると思いますが、法律できちんと審議会を決め、そしてその審議会のメンバーが各業界意見をかなり十分に反映できるという方々をもって構成されるとするならば、やはりある程度力関係を克服できるのじゃないだろうかと期待いたします。
  64. 清水勇

    ○清水委員 辻参考人にお聞きしたいわけでありますが、大企業が大規模な新しい事業の進出を行おうとする場合に、今日のような市場競争の激しい時代でありますから、計画の段階から社会的に宣伝をしてこれが行われるなんというようなケースは余りないのじゃないかと思います。秘密裏に用地の買収を行う、そして、準備を整えてある日突如として覆面を脱いで、それを通して中小企業者との間のたとえば紛争という問題あるいは調整というような問題に発展をする、ところが、現実には、紛争が生ずるような時点ではすでに大企業者による一定の資本の投下が行われ、用地の買収が済んで、ときには設備の建設に入っているという、こういうケースが間々あると見なければならないのじゃないかと思うのです。  したがって、そういう時点でどう調整をするかと言ってみても、たとえば新たなる事業が中小企業分野に大変な悪影響をもたらすものであると判断をしても、その全面撤退を期待するというようなことは非常にむずかしい。せいぜい時期をずらすか規模についての調整をするという程度にとどまってしまって、ある意味で言えば、結果としては大企業者の新たなる進出が容認されていくというようなことにつながっていくのじゃないかというふうな感じもするわけなんでありますが、いわば既成事実を大企業者につくらせないという意味で、一体どういう事前におけるチェックの方法を持つことが妥当というか必要というか、御見解としてお持ちであるか、お聞かせを願えればありがたいと思うのです。
  65. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思いますが、大変むずかしい問題でございまして、お役に立つようなお答えになるかどうかわかりませんが、おっしゃいますように、こうした分野調整法立法に対して中小零細業者が非常に強い願望を持ってきたということは、従来の行政指導によっても結局はいまおっしゃいましたようにすでに大企業が進出をして、これは非常に巧妙にやってきますから、気がついたときにはすでにもうある程度の投資もしておるし、事業開始の寸前だといったようなときにわかる。そうした場合に行政が仲介に立った場合には、とかく既成事実をある程度もう認めざるを得ない。たとえば設備をしたものを撤去するといってもどうにもならないとかいったようなことで、いまやったものはしようがない、しかしこれ以上の増設はだめだとか、あるいは営業の開始を若干ずらすとか、おっしゃいましたような程度のことしかできないわけです。ですから、これはそこで調整がうまくいったということにはお義理にも言えないわけであります。結局は中小企業が泣き寝入りというような形にとかくなりがちであるというようなことは、将来もそうだということは言えませんけれども、いままでの実績からして、そこに業者の方の不安があるわけだと思います。  そこで、事前チェックということになるわけですけれども、これがいま先生がおっしゃいますように非常に巧妙にやってきますからなかなか覆面を脱がない。脱いだときにはもう大分進んでいる。そういったことをやらせないためには情報を早くキャッチするということになりますが、ところが、私ども零細中小企業者はそういう情報を集める収集能力がきわめて弱いわけであります。大企業は、たとえば商社あたりは世界じゅうに情報網を張っていますから、三年、五年、十年先のことを考えてあらゆる手を打ってくる。だけれども、われわれ中小零細業者は目先のことに追われておるというふうなことでありますから、そういう点については行政当局に情報網、収集機能をさらに高めていただきまして、そういう正確な情報を迅速に私ども中小企業者団体へ流していただくことが各業界ごとに事前チェックに値するのと同じような効力を発揮できるのじゃないだろうかと思います。
  66. 清水勇

    ○清水委員 辻参考人に一事だけお答え願えればありがたいのですが、いわゆる事前チェックとのかかわり合いですが、たとえば大企業者の新しい進出について届け出を制度として行わせるということについてはいかがでしょうか。イエスかノーかで結構です。
  67. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 賛成でございます。ぜひやっていただきたいと思います。
  68. 清水勇

    ○清水委員 時間もございませんから最後になるかもしれませんが、三巻参考人にお尋ねをいたします。  先ほど来、この種の法制を講ずることはある意味で中小企業者競争原理を失わせる、あるいは活力を失わせる、それが消費者利益に反する結果につながるという御指摘でございましたが、率直に申し上げて、いま問題になっているところの、従来もっぱら中小企業者分野と言われたところへの大企業者の大規模な進出については、これは高度成長時代には全く見向きもされなかったような分野へ実はどんどん進出が行われてきているわけで、それが紛争の種になってきているわけです。御承知のように、それらを通して倒産とか転廃業を余儀なくさせられるとか、あるいは大企業による市場の独占が強められていくというか、経済の過度の集中の方向が強められるといいましょうか、長い目で見るとそういうものを通して結局消費者利益が損なわれているわけですが、こういったようなことなどをひっくるめて考えた場合に、まあ大企業が進出したっていいのじゃないかという御説なんでありますが、基本的なお考えとして、大企業が新たに進出する場合に、消費者に対してよい商品を恒常的に安く提供するということで、大企業企業の採算性などというものに余りウエートを置かないで、そういうためのものであるというふうに受けとめておられる部分がおありになるのかどうか。  それから、もう一つは、中小企業者は全国で五百五十万というふうに言われておりまして、従業員数を含めると約三千万くらいの数ではないかと見られていますが、その存立が危うくなるということはひっきょう国民経済の上で大変なマイナスにつながっていくというようなことになるのじゃないかと思いますが、こういった点についてお考えをお聞かせいただければありがたいと思うのです。
  69. 三巻秋子

    ○三巻参考人 いまのお尋ねでございますが、大企業が必ずしもコストの面で安いものをつくっているとか、消費者がこれを歓迎しているというわけではございません。いまの消費者はただ安いことだけを願っているものではございません。おしゃれもございます。ことに最近は売り手側から見れば本当にあっけにとられるような気まぐれな消費者を相手にしていろいろ生産しているのですね。そういうときに、そこにサービスがあり、何らかの消費者の魅力というものをつかみ得る経営主がやはり勝っていくのだと思うのですね。  だから、私が申しますのは、大企業だけが出たらいいということは決して言っておりません。むしろいまの中小企業中小企業なりに、ちょうど団体法で不況カルテルで構造改善までしながらやっている事実——私も委員の中に入っておりますが、この不況カルテルが組まれて生産調整、数量調整がやられても、この法律ができてそれに加わったならば十年一日のごとくその中に温存しちゃって、合理化しようとしないで、そして構造改善だというようなことを審議の材料に出されても矛盾する点だらけでございます。  それで一年延長、三カ月延長ということをたびたび繰り重ねてもはや十年以上になりますね。もう二十年以上になりましょうか。そういうようなことでは経営合理化どころか、われわれ消費者にとってはむしろコストが高くなるばかりであるということを考えておりますだけに、これから国際競争力が盛んになれば、韓国、台湾からの圧力などで悩んでいるのは中小企業も大企業も同じじゃないですか。日本の国全体が外国の圧力に何とかして耐えて企業を伸ばしながら、本当に時局を考えて、総一億の方法で商業も工業も伸ばしていきながら経済成長を安定させていくというのが本当の意味じゃないでしょうか。  そういう点において、何も大企業だけが伸びていくということでなしに、大きくなればそれだけ合理化されるということによってコストの安いものは当然できていかなければいけないのが原則だということを私は申し上げておきます。
  70. 清水勇

    ○清水委員 終わります。
  71. 野呂恭一

    野呂委員長 板川正吾君。
  72. 板川正吾

    ○板川委員 三人の参考人の方に伺いますが、私の時間は十五分ですから簡潔にお答え願えれば結構であります。  私どもは本法を推進し賛成する立場で、主として反対の意向を表明されております飯田参考人と三巻参考人に伺いたいと思うのですが、まず飯田参考人に伺います。  低成長時代からゼロ成長時代を迎えようという時代に、いままでの自由競争で弱肉強食の経済秩序を放任していくならば中小企業に甚大な影響を与えるだろうと思います。現に、例年月に六百件ぐらいの倒産の件数がすでに千七百件も常時出ておるという状況であります。これは一千万円以上の負債を負って倒産した方でありますが、一千万円以下の倒産というのはその五倍ぐらいあるだろうと言われておるのですね。こういう経済の激変下でいままでの自由放任の競争をそのまま認めていくならば、やがて、これは、すべての人の生存権を守り、あるいは文化的な最低の生活を保障するという憲法上の公共の福祉が阻害されてくるのじゃないだろうかという立場から私どもはこの法律を推進し賛成しておるわけでありますが、この点に関して飯田参考人に、どういう御意見か簡単に承りたいと思います。
  73. 飯田経夫

    飯田参考人 自由放任、弱肉強食という言い方をしますと、全くルールもなく規制もないというイメージを与えがちですけれども、実際は、この問題につきましても以前から紛争が起こるたびに行政指導が行われていたわけでありますし、弱肉強食、自由放任とはいえ、すでにきちんとしたルールなり規制なりに基づいて経済は動いていると思います。そういうふうに考えますと、ゼロ成長というのは非常に極端なケースかと思いますが、経済の成長率が若干下がったからといって、そのような経済のこれまでの運営の仕方に基本的に変化を要するとは考えません。  変な言葉ですけれども、すべての物事を二分法で考える考え方は、たとえば政治の世界で保革というような分け方がすでに意味がなくなっているのと同じように、大企業は強く悪らつであり、中小企業は弱く善良であるというような言い方ではなくて、あらゆる企業の中に強く有能なものもあれば弱いものもあるということではなかろうかと私は思います。  以上でございます。
  74. 板川正吾

    ○板川委員 恐縮ですが、飯田参考人のお話の中に、本法のような強い規制を与えると自由主義経済体制根幹を揺るがすという趣旨のことがございました。競争を通じて進歩を図るという自由主義経済体制根幹を揺るがすことになるのだとおっしゃられておるのであります。また、中小企業転換能力や優秀な能力を持っておるからさして心配はないという趣旨のことも言われております。しかし、私は、自由競争というものは絶対的じゃないと思うのです。御承知のように、憲法の条章から言いましても公共の福祉のもとに自由競争は許されるのでありまして、自由競争が絶対ではない。ですから、今後経済が低成長時代からゼロ成長へ——これは私の私見ですか、エネルギー制約からやがてそういう時代が来ると思うのでありますが、こういうときに公共の福祉を守るという意味において、この程度の法律では決して自由経済体制の根幹を揺るがすものじゃないと私は思うのです。これは全くささやかな規制ではないでしょうか。この程度の規制はそう大げさにお考えになることはどうかなと思いますが、いかがなものでしょうか。
  75. 飯田経夫

    飯田参考人 御指摘の点はよくわかります。公共の福祉が非常に重要であることは私も十分以上に認識しているつもりでございます。しかしながら、他方において公共の福祉という言葉に非常な拡張解釈の危険があろうかと存じます。したがってそういう拡張解釈をしてはいけないということと、それからもう一つ、たとえば公共の福祉を守るためにいまの分野調整分野確保だけが手段であるとはとうてい考えられません。ほかにいろいろな手があるわけでございます。ですから、そういうようなことはすでにいろいろな面でなされているし、今後とも強化されていくはずでございます。したがって、私は、公共の福祉を守るために分野確保あるいは固定化が必要であるというふうには考えておりません。  それから、ささやかということでございますが、ささやかであるかないかということはこれからの御審議いかんによるわけでございまして、あるいはその結果できた法律運用いかんによるわけでありまして、私は効果がささやかであることをむしろ祈っている一人でございます。  以上でございます。
  76. 板川正吾

    ○板川委員 この法律が発想された根源は、やはり大企業は一つの利潤追求のために中小企業分野に進出をする、大ぜいの中小企業がそれに甚大な影響を受ける、あるいは生存権も奪われる可能性があるということで、こういうことはまさに公共の福祉という立場からであろうと思うのです。先生の御意見はやや強者の論理で、強い者に都合のいい論理ではないかと私は感ずるのでありますが、お答えは一言だけで結構です。言いっ放しじゃ恐縮ですから。
  77. 飯田経夫

    飯田参考人 強者の論理ではなくて、私が申し上げていることは、つまり競争というのはだれにとっても非常につらいことです。だけれども、そのつらさに耐えて額に汗して一生懸命働こうとする人の論理を申し上げているというふうに御理解いただけたら幸いだと思います。
  78. 板川正吾

    ○板川委員 どうも失礼いたしました。  三巻参考人にお伺いをいたしますが、同僚の粕谷委員からも意見がございましたし、時間の関係もありまして私は多くを申し上げませんが、三巻参考人の御意見を承りますと、法律であえてこのような規制をする必要はない、したがってこの法律には反対であるというようにおっしゃるわけですが、消費者立場ということで率直な意見を開陳されたことに私は敬意を表します。  消費者は非常に利口であるからこんな法律で規制しなくても自由にやりたい者にやらせたらどうかという趣旨のように伺いますが、しかし、消費者はただ単に安ければいいというものではならないと私は思います。いまもお説があったようでありますが、安ければいいというものじゃない、安い物が安定した方法で供給されるものでなくちゃならぬと思うのですね。しかし、職業選択の自由といいますか、営業の自由といいますか、自由というものは相手方の自由を侵害しない範囲で許容されると思うのです。営業の自由というのは相手方の幸福を追求する自由を侵害しない範囲で許されるものであって、安ければ安いだけいいのだということではならないという感じがいたします。  われわれはそういう意味でこの法律を推進し、賛成して決定しようと思うのでありますが、このような意見についてどうお考えですか。
  79. 三巻秋子

    ○三巻参考人 敬意を表されまして大変恐縮でございますが、この法律のたてまえから見まして、業種指定で自由な競争の中へ介入されますということは非能率になって消費者利益阻害するということが一点と、秩序あるルールをしくということでございますが、何を基準に決めるのか、一つこれを決めますとだんだんと範囲が広げられていきまして、しまいに消費者優先の思想に反するようになるのは火を見るより明らかだと思います。  以上でございます。
  80. 板川正吾

    ○板川委員 もう一点お伺いをいたします。  三巻参考人消費者立場で五百からのアンケートをとって、消費者意見はこうだとおっしゃっておりましたが、まことに失礼な例でありますが、大企業の進出でもし三巻さんの身内の方がその被害を受けて倒産をし、あるいは転換をせざるを得ないという事態になったときでもやっぱり自由に大企業に進出をさせる方がいいというふうに果たして言い切れるかどうか、まことに恐縮ですがお答えをいただきたいと思います。
  81. 三巻秋子

    ○三巻参考人 私はそれには大変よい例を持っております。事実昭和二十九年から牛乳を十円牛乳から始めた本人でございますだけに、今日まで二十年近い間に、時代の進歩とともに牛乳の配達方法も次々と変えていきまして、業界のあり方について、パック入りにしたり、店頭へ買いに出なさい、家庭配達は高いんですよということで値段の差をつけたり、そういうことを身をもって小売業者の先頭に立って先手先手と実施してきたものでございます。いま使っております全酪のテトラパックなどは、ゼロであったものがいまでは六〇%までに紙容器を使用するようになっておりますのは、私がそれを始めさせたからでございます。しかし、店頭で買う方が安いんですよと、値段の差をつけさせるということで物価を抑えるということに懸命になった余り、私の配っております牛乳はだんだん減ってまいりました。恐らく町の小売業者の本数も減っていることでございましょう。  皆さんはスーパーの農協牛乳とかよつ葉牛乳とかいうような、北海道から来たものが新鮮であるというようなイメージで、「自然はおいしい」と書いてあれば、それが各地区の農協のものであるにもかかわらず北海道でつくったものであるかのごとき感覚を持って買っておりますね。しかし、そういうような事態は、これは流通機構の合理化でございますのであえて私は進歩の一過程だと思います。それがために私は、いまの人件費を出すためにいろいろの方法をもっていろいろな多角経営をいまやりましてやっと経営を立てているのが事実でございます。こういうことが御参考になれば幸せだと思います。
  82. 板川正吾

    ○板川委員 時間がございませんので三浦参考人に最後にお伺いいたしますが、小売商業がこの法律の適用から除外されておることですが、私も小売業というものが本法の対象になるのはおかしいと実は思っておるのです。これを規制するなら大店舗法との対比で考えなくちゃいけない問題だと思うのですが、先ほど大店舗法、商調法について意見がありますということでしたから、与えられた時間が一分間なものですから、一分間で簡単に開陳をしていただきたいと思います。
  83. 三浦正義

    三浦参考人 お答えいたします。  大店法と今度の分野法との間には、非常に似てはおりますけれどもちょっと違った面がある。たとえば大店法では規模の規制、物の大きさの規制ということになっておりますが、この分野法ではむしろ大資本の規制といいますか、企業を規制するというたてまえで、そこらにちょっと基本的大きな違いがあるのでございまして、そういう意味から言いますと、幾ら小さくしても大企業がたくさんつくって展開するといったふうなものを大店法ではなかなか規制しにくい。先ほどのお話にもあったのですが、三百平米といったものは規制しにくい。そういう場合に、そういう弊害を分野法で救済できないかという期待を持っておったわけでございますが、二重規制とかいろいろな問題があるとするならば、むしろ大店法あるいは商調法をこの際同時並行的にぜひ見直していただきたい、かような考えを持っております。
  84. 板川正吾

    ○板川委員 終わります。
  85. 野呂恭一

    野呂委員長 佐野進君。
  86. 佐野進

    ○佐野(進)委員 参考人の皆さんには大変御苦労さまです。午前中の参考人に対する最後の質問でございますし、時間がもうございませんのできわめて簡潔に質問をしてみたいと思います。  この法律をつくりますまでの間に、この委員会は二年半近く、まさに毎回の召集される国会の中で真剣に力を入れてこの検討を続けてきたわけであります。そして今回政府案として提案され、いま審議をしておるわけですが、先ほど来参考人方々の御意見をお伺いしながら、私ども立場からすると大変な誤解があり、あるいは認識についてもわれわれと大分違うなという気持ちでお話を聞かざるを得ない状況にあるわけであります。そういうことを申し上げていると大変時間が長くなりますから省略いたしますが、飯田参考人と三巻参考人に、先ほどの御見解を聞きながら私が大変残念だと思う意味を含めて御質問をしたいと思うのであります。  今日の社会情勢の中で大も中も小もない、競争原理だけ働けばいいんだというようなことはよもやお二方もお考えにはならないと思うのであります。そういうような形の中で、たとえば消費者というお言葉で表現されておりますが、中小企業者生産者でありあるいは消費者でもあるわけでございまして、国民の相当部分を占めている方々でございますから中小企業者消費者ではないという論理は成り立たないと思うのであります。したがって、だれでも、安くていいもので、そしてそれが有益に利用されるものがいいということは当然だと思うのであります。しかし、そういう形の中で中小企業者消費者利益のためにやっていくのだという存立の基盤が大企業の横暴なる行為の中で存立することすら許されないで、その横暴なる行為の中でもし死を選ぶかあるいは生きる道を選ぶかといったときに、生きる道を選ぶ努力の方向としてこの法律の制定に向かって努力したとするならば、その行為に対しては認めてやらなければならぬのではないかと思うのでありますが、飯田参考人、三巻参考人、いかがお考えになりますか。
  87. 飯田経夫

    飯田参考人 大企業の横暴がいいとはだれも思っていないと思います。しかしながら、現在は、たとえば世論の力で大企業の横暴はかなりの程度までチェックされているし、それから大企業の横暴をチェックする行政あるいは法律幾つもあると思います。ですから、そういうことで、まだまた不十分ながら——この社会に経済に十分ということは絶対にあり得ませんけれども、かなりの程度まで大企業の横暴をチェックする方法はあり、かつ、されていると私は思います。  したがって、大企業の横暴ということだけを——だけではないのですが、大企業の横暴ということを大きな根拠にして中小企業分野を確定、固定化し、かきねをつくってその中に入れてしまうというようなことは、実は、非常に優秀なすぐれた活力のある中小企業者に対して失礼ではないかという感じを私は持っているわけでございます。  以上です。
  88. 三巻秋子

    ○三巻参考人 飯田先生がおっしゃいましたのと同じように、私も大企業だけが伸びていくということではございませんで、物により大企業もあり、中小企業もあり、小企業もあり、零細企業もありということだと思いますが、それを中小企業を一本で、零細企業を別にあらわさないで、一緒くたにただ中小企業と言う。しかも、その基準たるや三百人以下の人員とかというような規定そのものがもはやいまの時代に即さないということを私は常に感じております。三百人も従業員がおればもう大企業ではないでしょうか。  そういう意味において、いまのようないろいろな形態の違った組織の上に立った人の行き方というものは、中小なり零細はそれぞれ手づくりをとかいうような特殊性を持った行き方があるんじゃないかということをもって、片方の大企業は設備投資による大量生産のコスト安という方面に生きていくというようにみんな分かれているということを認識しておりますが……。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの三巻参考人の御判断は私どもの考えていることとそう違わない表現として受けとめてもいいような気がいたします。私どももそのような考え方で、単に中小企業者を盲目的に守ればいいんだということではなくして、中小企業が自主的な努力をすることを前提としながら、なおかつ今日の社会情勢の中で存立する条件をいかにして与えてやるべきかということを考え、しかも、その存立条件を与えてやる場合に、大企業の横暴の一方的な自我の欲望に基づく行動を行政指導なりあるいはその他法律的な措置の中でできるだけ抑制するための措置を三年あるいは五年、十年と続けてきた経過の中で、今日の段階ではそれをとらざるを得ないという認識に基づいてこの法律審議いたしておるわけであります。しかも、当初政府はこの問題に対しまして飯田参考人と同じような見解を披瀝されておりましたが、政府みずから、日本商工会議所の専務理事が先ほど申し述べられたとおり、今日の時代においてはこの法律を通すことが最も必要であるという認識に立たされておるわけであります。  そういう面からいたしますと、飯田参考人の先ほどからのお話を聞いておりますと大変公式論で——原則論でありますからこれはやむを得ないといたしましても、法案の内容を見ていただけるならばその御杞憂は全くないのではないかと思うわけで、私から申し上げるのは大変恐縮でございますが、私どもの真意をいま一応ひとつ御判断していただきたいと思います。  さて、その次に関係者に質問をしてみたいと思うのでありますが、佐藤参考人は主として製造業に——小売商業関係がございますが製造業に関係をし、三浦参考人小売業関係しておるように認識いたすわけでございますが、今日、この法律対象となり得ましたのは最初は製造業がその中心であったことは間違いないと思うのであります。三巻参考人あるいは飯田参考人等がいろいろ御見解を申し述べられておりますけれども、両方が一緒になっておるような気がいたします。私どものいま申し上げておるところの、当初この法律をつくる必要性を感じましたものはその対象が大部分製造業でございました。しかし、その後小売商業方々が、要するに大店舗法におけるところの措置が不適当であるという形の中で大規模店舗が法律の網の目をくぐって進出していくことについて、こういう形の中で大規模小売店舗法の見直しをし、分野法ができるなら分野法の中にも入れてくれという要求になって今日のそれぞれの対応がなされておると思うのであります。しかし、これはもう先ほども質問をいたしましたし、時間がございませんから三巻参考人に対する質問はやめまして、佐藤参考人三浦参考人にお尋ねしたいのであります。  私どもは、この法律について、いわゆる中政審答申、さらに第一次政府案要綱、さらに第二次政府案要綱、政府案というような経過の中でこれに取り組んでまいりました。そして、いまなおこれでは不十分であるということを考えながら、修正をして本国会で通そうと意図いたしております。そして、その修正の方向は先ほど佐藤参考人がお話になりましたような方向でございますけれども佐藤参考人といたしましてはこの法律をつくるに際して相当大きな抵抗があるという社会的客観情勢をよく御認識なされておると思うのでありますが、この法律成立した際、最も力を入れてこの法律を生かしていき、その精神を生かしていくためには——先ほど来反対的見解を述べられておる参考人意見等を踏まえながらこの法律を生かしていくためにはどういうような措置をおとりになることが一番いいと御判断になっておられますか。促進協の会長としての御見解をお聞きしておきたいと思います。
  90. 佐藤公彦

    佐藤参考人 私ども自由主義経済原則も十分に理解しております。同時に、また、それは競争経済であるから、大企業が出てこようと、それに当然対応しなければいけないことも知っております。しかしながら、現在の大企業の出方というものはまさに弱肉強食の出方でありますから、本当に社会的に必要なものをつくってやろうというのではなくて、不況に転じてから、いろいろな経営上の問題で国内に何か目ぼしい業界はないだろうかというような発想のもとに出てきているような気がするわけであります。しかし、このような法律をつくっていただいたからといって、私どもとしては安閑としてぬるま湯につかる意思は毛頭ございません。中小企業というものはもともと小さくて数が多くて小回り性があるところに特質があるわけなんです。ですから、私どもはその特質を生かしながら精いっぱいのみずからの企業内における自助努力をし、さらに国の構造改善事業等の指導を受けながら精いっぱいの近代化努力をしているわけであります。ですから、いままでやってきましても、大企業が出てきた方が体質改善の活力になるのではないかとか刺激になるのではないかというようなことをよく言われておりますけれども、私ども中小企業者は、大企業が出てきて、その刺激によって体質改善をしたという記憶はいまだかつてございません。  私は軽印刷業に所属しておりまして、ガリ版印刷から始まって現在まで至っておりますけれども、しかし、その間大企業の刺激によったことは一度もなく、中小企業者みずからの企業努力によってやってまいりました。今後も、この法律をつくっていただいても、それに甘えることなく、ぬるま湯につかるようなことなく精いっぱい企業努力をし、そして体質改善をし、国民経済のために精いっぱいの努力をしていくということを考えております。私ども促進協加盟の団体はもちろん、日本中小企業者はすべてそのように考えて、精いっぱい努力をしていくという覚悟でおります。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 三浦参考人、いま佐藤参考人からお話がございましたけれども小売商業がこの法律対象から外れ、先ほど来御意見がございましたが、私どもはいま対応いたしておるわけでございますが、分野法成立したけれども小売商業関係が後に置かれるということに至った場合に、小売商業界においてはどのような不利益というか問題があるか、その点について簡単でよろしゅうございますから御指摘をいただきたいと思います。
  92. 三浦正義

    三浦参考人 私は、大店法あるいは商調法があるから適用除外ということでございますようですから、外されてもその大店法、商調法がぜひ十分機能するように改正していただきたいと思います。特にそういう状態があり、もう現実に実質的に大店法の大改正が市や県によって行われており、しかも物すごく厳しく行われようとしている。こういうばらばらな状態をこの狭い日本で一体ほうっておいていいかどうかということを考えれば、当然そういう実態は改正すべきだという方向へもう突入している、かように思います。  それから、もう一つついでに申し上げますが、消費者側の御意見で、非常に不便になるとかいろいろ迷惑をこうむるということがございますが、日本小売業の数あるいは売り場面積は、人口対、購買力対というようにいろいろな面から見ましても世界じゅうで一番多い。それから営業時間でも、ヨーロッパ諸国はもちろんのこと、ついせんだって豪州あるいはニュージーランド等へ行ってみましたけれども、ああいう国でさえ日曜日は全部休み、土曜日も正午まで、その他はもう五時までというように、法律も何もないのにそのように動いているのですよ。だが、そこに一つも消費者の不便も起こっておりません。消費者から日曜も営業しろという意見も出ておりません。そして平和な、大中小が共存できる社会が構成されています。日本の場合はもちろんそういうことは知っているのでございますけれども、余りの供給側の過剰がますます問題を混乱せしめているということだと私は思うのでございまして、ぜひそういう方向で大店法、商調法も御改正を願いたい、かように思います。
  93. 佐野進

    ○佐野(進)委員 どうもありがとうございました。  質問を終わります。
  94. 野呂恭一

    野呂委員長 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  95. 野呂恭一

    野呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人に対する質疑を続行いたします。長田武士君。
  96. 長田武士

    ○長田委員 私は、分野調整審議に当たりまして、本法案中小企業事業活動機会を適正に確保するためのルールといたしまして、この分野調整については評価をいたしておるわけでありますが、先ほど飯田参考人のお話を伺いますと、運用次第では悪法になるという仰せでございますが、私も自由競争の原理に反対するものではございません。しかし、資本力や組織力がすぐれ、さらに近代化が進んでおる大企業中小企業を同一次元でとらえて競争させるということでありますが、そういうことが自由競争の原理から言って果たして公正であるかどうか。公正な自由競争を守るためにも大企業の進出に対する何らかの歯どめが必要であると私は考えておるのでありますが、この点についての飯田参考人からの御意見を伺いたいと思います。
  97. 飯田経夫

    飯田参考人 同一次元でとらえて競争させるのはまずいのではないかということですが、この問題は実はかなりむずかしい問題だと思います。  非常に変な別の例をとりますと、たとえば先進国の企業が発展途上国へ進出した場合に、その発展途上国側でいろいろな規制をする。これはつまり先進国から来た企業と発展途上国の企業との経営能力あるいは経営資源に格段の差があるから当然のことだろうと思いますが、そうしますと、日本において果たしていま申し上げた例と同じような状況であろうかどうかということを考えますと、そうではないのではないかと思います。午前中から何回も繰り返して申し上げておりますように、私は日本中小企業経営者の方のすばらしさを最も高く評価するものでございまして、次元を著しく異ならせるといいますか、非常に大きなハンディキャップをつける必要はないのではないかと思います。ただし、現にこれまでもこの問題について紛争が起こり、調整が行われてきたし、この法律ができますとそれが行われる。そうすると、私の考えでは、これが御指摘の同一次元でとらえるということでないことになるのではないだろうかというふうに考えております。
  98. 長田武士

    ○長田委員 私はよく交通法規に例をとるのでありますけれども、道路交通法についてもやはり自動車もありますし、歩行者もあります。あるいは自転車をこいで走っておる人もおるわけでありますが、そういう中にあって一番規制が強いのはやはり自動車であります。そういう意味で、力の強いものには何らかの規制措置を加えて、たとえば歩行者を守るとか、そういうルールが交通法でできておるわけであります。経済界においてもこの交通法的なルールはやはり必要ではないかという意味で、私は分野調整というものは必要ではないかという考え方を持っておるのですが、端的に言ってどうでしょうか。
  99. 飯田経夫

    飯田参考人 交通の例で言いますと、歩行者も自動車もオートバイも青信号のときには進み、赤になるととまる。そういう意味では同じ規制に服している。御指摘のように自動車の方が規制が強いという面もございますけれども、同じ規制に服しているという面もございます。私は、日本中小企業というものは——午前中もほかの参考人の方からこういう言葉が出ましたが、つまり、日本中小企業というのは非常に小回りがきくし、きめの細かいサービスをし、地域に密着している。これを裏返して言いますと、大企業ではきめの細かい小回りのきく地域に密着したサービスはできない。そうすると、中小企業の方がより強い分野があるわけでございまして、そうであるとするならば、青信号ならばみんな進み、赤信号ならみんなとまるというような色彩をかなり加味したそういうルールでよろしいのではないかという考えでございます。
  100. 長田武士

    ○長田委員 辻参考人にお伺いしたいのでありますが、分野調整審議の過程におきまして、本委員会において業種指定についてずいぶん論議がされたわけでございますが、審議会においては業種指定の問題についてどのような論議がなされましたでしょうか。その点について端的にお教えいただきたいと思います。
  101. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思いますが、この件につきましてはすでに午前中にどなたかからもお話があったと思いますが、私どものこの小委員会におきまして、業種指定ということについて、きょうおいでになっております佐藤さんを中心とする促進協の皆さん方から個別にも最初に最もきつい形で私どもはたくさん聞きましたし、それから委員会審議の過程の中でもそうした御発言がありましたし、私どもも、現実のこの中小企業者が置かれております非常に困った状況におきましては、業種指定をしてほしいと言われる皆様方のお気持ちもわからないことはございませんけれども、そういう中小企業の業種をフィックするということはどの時点でどのような基準でやるべきかということが非常にむずかしいわけでございますし、そうしたきちっとした法律で業種を指定して、そこからは大企業を締め出すという形のものでは——中小企業もきわめて流動的に中堅企業になっていき、あるいは大企業になっていったり、そうした過程の中で経済は成長しておりますので、ある時期においてある業種だけをここで固定してしまうという考え方はどう考えても、少なくとも自由主義経済体制の中で経済の運営をやっていこうという場合には余り好ましくないのではないかという考え方委員の方が多数を占めておりましたので、この業種指定につきましてはそれほど大きな問題はなく——いわゆるこの「意見具申」というのは、申し上げるまでもなく最大公約数ということで委員長がおまとめになったわけでありまして、個々の点につきましては各委員がそれぞれ若干の不満を皆持っておったと思います。  したがって、少数の方々があくまでもこの業種指定について強く御主張されたことは事実でございますけれども委員会の十一回の審議の中におきましては、こういう業種指定をやることはいろいろな面から総合的に考えて好ましくないんじゃないかという意見が多数を占めておったように記憶しております。
  102. 長田武士

    ○長田委員 次に、高橋参考人からお伺いしたいと思います。  小売業界では種々の紛争がたくさん出ておりまして社会問題となっておりますが、本法案では小売業界が適用除外されておりますが、この点について日本商工会議所といたしましてはいままでどのような御論議がございましたでしょうか。
  103. 高橋淑郎

    高橋参考人 いまの御質問に対しましては午前中の冒頭陳述の際に考え方を申し述べたわけでございますが、基本的な考え方としましては、小売商業にかかわる紛争はその範囲が地域的に限定されるという特質を持つものがほとんどでありまして、製造業等中心にする紛争形態というのは全国的な広がりを持った場合が非常に多くて、両者の間には質的な異なりがあるということでございまして、小売商業につきましては現行の商調法と大店法と二法がありますので、小売商業の問題についてはこの二法の体系で取り扱うことが適当であろう、こういうように考えた次第でございます。
  104. 長田武士

    ○長田委員 次は、佐藤参考人にお伺いをいたします。  大企業中小企業分野への進出による紛争が各地で頻繁に起きております。あなた方の協議会でもこういう紛争事例があったと思いますが、そこで、代表的なものについて、その概要をお聞かせいただければありがたいと思います。
  105. 佐藤公彦

    佐藤参考人 私どもの促進協加盟は現在全国レベル十五団体でございます。さらに、地方支部にはまた多くの団体が加盟しております。  いまお尋ねの大企業の進出によりまして被害を受けたという例でございますが、まず、その一つは、私どもが所属しております日本軽印刷工業会でありますが、四十八年の十一月に大日本印刷がいわゆるダミーのキュープリントという会社をつくりまして、そして京橋にその代理店をつくり、そして全国にこれを出すというようなことがありました。そして行政指導で一応抑えたのでありますけれども、それらの行政指導を無視して千葉にあるいは帯広に出ております。  それから、ガラスの業界でございますが、旭硝子でございますが、これが岩城硝子がやはりアメリカのコーニング社と提携いたしまして、そして大きくやりまして、十五社ほどが転廃しております。さらに岩城硝子は年間百万個賄える自動機を導入してその進出を図ったけれども、それは通産省の行政指導である程度量の点で規制されまして、現在はその行政指導の範囲内で製造しておる。しかし、これはいずれにしても行政指導でありますから、有限でありますからその期限が切れましたときは、解除されますと当然その業界は恐らく壊滅するであろうというふうに思っております。  それから全国紙器業界、いわゆる紙の箱の業界でありますけれども、これはいわゆる製紙メーカーがいままでは紙を売ったのだけれども、今度はその箱もみずから直接受注してやってしまうということで、紙器業界が大変な被害を受けております。  それから、大阪方面で特にありますが、レンズ業界ですが、これは中小レンズ業界でありますが、保谷硝子あるいは日本光学等の進出によりまして、従来持っていたシェアのうちの七〇%をすでに奪われまして、現在はすでに三分の二が転廃業に追い込まれておるというようなことであります。  さらにもう一つ申し上げたいのは清涼飲料水の業界でありますが、これは御存じのようにいわゆるコカコーラの上陸によりまして、それまで清涼飲料水をつくっていたのですけれども、すでにいまやもうわずかに従来持っていたシェアの七%で細々と生きており、まさに反対運動を展開する気力さえもないというような状況になっております。  そのほか、クリーニング業界、あるいはもやしの業界にユニチカが出る等々、数えればまさに枚挙にいとまがございません。  そういう状況であります。
  106. 長田武士

    ○長田委員 ただいま細かくお教えいただいたわけでありますが、もう一度佐藤参考人にお伺いしたいのでありますが、その進出によりまして行政指導がなされましたが、しかし、結果的に中小企業への大企業による影響が排除されていないかどうか、その点はいかがでしょうか。
  107. 佐藤公彦

    佐藤参考人 私ども業界の例をとりますと、私どもはもともと大日本印刷の進出によって行政指導を受けたのでありますけれども行政指導ではとうていこの問題の解決にはならないとして、いわゆる分野法制定を求めて行動を起こしたわけであります。  なぜ私ども行政指導ではだめかと申しますと、まず、行政指導にはその物差しになる基準がないのですね。つまり、担当官その人の性格等によりまして大きく左右されます。同時に、また、その文書をつくってありましても、それを引き継いだ人の性格によって今度は運用に大きな差が生ずる。そこで、最初は名案のようでありましても、やがて時期を経るに従ってそれはまさに迷案になってしまうということであります。そういうような意味で、しかも有限であります。向こう二年間にという前提があります。二年間で体質改善をして、そしてあの巨大な大企業競争できるようになれというような趣旨の行政指導でありますから、いまこれが解除されたならば大挙進出して、私ども業界は恐らく壊滅するしかないだろうと思います。  また、理化医の業界も同じように行政指導を受けてはおりますけれども、受けておってもやはり同じように相当の進出を受けておりますから、いずれにしても相当の被害を受けて、行政指導ではいずれは破られてしまうということはもう既定の事実だというように思っております。
  108. 長田武士

    ○長田委員 大変恐縮ですが、佐藤参考人にもう一点お願いいたします。  中小企業者から今回の法案については調査の申し出をする、その調査には通産省の担当局が当たるとの政府の答弁でありましたが、この調査で中小企業者が期待する結果が得られるというお考えでいらっしゃいましょうか。また、調査についてほかに何か御希望されることがございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  109. 佐藤公彦

    佐藤参考人 私どもはもともと業種指定を求めておりまして、その趣旨とするところはあくまで事前チェックを求めたわけであります。しかしながら、それはいろいろな立法技術上の問題で大変むずかしいと承っておりますので、よりベターなもの、よりそれに近いものとして、そして私どもの事前チェックが生きるような方法を講じてもらいたいと申し上げておるわけであります。  そこで、どこに期待するかといいますと、まさに法の運用で、私は、調査条項等の中でトラブルの起こった業界に対しては必ず事前チェックができるように、十分御審議の中でそれを取り入れていただきたいというように思っておるわけであります。そして、それは一つにはあくまで運用の問題で、その実効が上がるかどうかを考えているわけであります。
  110. 長田武士

    ○長田委員 次は、三浦参考人にお願いしたいと思います。  本法案では小売業が適用除外になっていることから、三浦参考人は大店法及び商調法を実効性のあるものに改正すべきであるとの御意見でございましたが、どのような点について改正を希望されておりましょうか、御意見をお伺いしたいと思います。
  111. 三浦正義

    三浦参考人 大店法につきましては、まず、第一に、現在の大店法の中で一番大きな問題として、従来百貨店法から大店法に改正されたときに許可制をやめて届け出制にしたということがございましたが、現行届け出制はやはり事前調整に手間取り、また、事前調整が困難な場合には届け出後一定期間を経ますれば自然発効という危険性もございますので、やはり、許可制で二十年近くもやって別に問題がなかったのだから、これは許可制にひとつ戻していただきたいということです。  それから、二番目には、いわゆる審査基準をつくるべきであるということと、同時に総量調整方式を導入していただきたい。特に、小売商の場合は地域の問題でございますので、その都市都市における人口あるいは交通手段あるいは購買力等いろいろな条件を勘案いたしまして、大型店の売り場面積はこのような外的条件の場合には大体このくらいの面積であろうという基準を一応つくっていただきまして、その条件が変化するまではその基準を守っていただくというふうな方向で改正をしていただきたい。  それから、基準面積を引き下げること。いわゆる大都市で三千平米、政令都市以外の都市では千五百平米となっておりますが、千五百平米といいますと約五百坪近い、四百七十坪でございますが、そのような店舗は東京の真ん中でもあるいは地方の都市でも、専門店、一般店舗にはほとんど存在しません。何百坪という店は存在いたしません。それが一つできれば町全体が全く変わるというくらいの影響力を持っておりますので基準面積を変えていただきたい、大東京のような場合と仙台のような場合あるいは人口三万のようなところと、もう少し段階を設けてきめ細かく決めていただきたい、こういうように考えております。  それから、第四番目には、地方自治体に大幅な権限を任すべきではないか。というのは、これは実は地方自治体の問題でございまして、したがって、地方自治体ではこれが法律違反かどうかは後回しとしても、背に腹はかえられず、現在条例あるいは基準をつくらざるを得ないというところまでいっております。このように地方自治体がお困りになっているのは法律の欠陥もございましょうけれども、一つは地方の特殊な問題であるということでございますので、これはむしろ地方自治体に大幅に許可権等を譲渡して、敏速果敢に対応できるような形にしていただきたい、かように存じております。  それから、もう一つ、いわゆる建築確認の申請でございますけれども、建物はできたが営業はさせないということは社会的にも非常に無理がございますし、また、資本的にも大変ロスがございます。だから、あくまでもここで営業ができるという目安ができるまでは建築確認は延ばしていただくといったような配慮もお願いしたい、かように思っております。  商調法につきましては、商調法という法律そのものが実は市場との調整でございますとか、あるいは中小小売商以外のものとの調整ということになっておりますけれども、当時の経済情勢と現在の経済情勢は全く違う。市場の定義にいたしましても、現在のショッピングセンターあるいは場合によっては地下商店街、その他寄り合い百貨店等いろいろなものがこの定義の中にそっくり入るということになっておりまして、余りにもこの法律が鋭利なる機能を持ち過ぎているために全く使われないというのが実情じゃなかったかという気がいたします。現状に合わせて機能できるように、それと同時に大企業との調整ができることも一つの目的であるというふうに追加願った改正をお願い申し上げたい、かように思っております。  したがって、分野法と大店法と商調法とはできれば同時並行審議をし、仮に物理的にあとの二法がおくれるにいたしましても、当委員会ではぜひひとつこれを最短距離で改正するというふうな御方針を御決定願えれば大変幸いだと存じます。
  112. 長田武士

    ○長田委員 三巻参考人にお伺いいたします。  今回の分野調整法においては、中小企業調整審議会を設置いたしまして意見を言うことになっておりますが、このあり方と委員会の性質について御意見がございますればお伺いしたいと思います。
  113. 三巻秋子

    ○三巻参考人 大店舗法の前身であります百貨店法の百貨店審議会でございますが、それあたりから、商調協と申しますか、商工会議所が主になってこれを人選いたしまして決めておりますね。東京で中央の機構が大臣許可命令にかわるわけでございますね。それと同時に、関東並びにそれぞれの通産省関係の所管の中で商調協というものができるわけでございますが、商工会議所が選ぶ人選というものの中で、消費者の代表が少ないということがまず一つと、それと同時に、その人に当を得ているかどうかということは、大変失礼でございますが、私はどうかという懸念がなきにしもございません。それと同時に、村、町、市の有名人がそこへ入られますね。そういたしますと、商調協の業者方々並びに商工会議所の人とは本当に角突き合わせての論争ができないという状態がいままでの現状ではなかったのでしょうか。  それと同時に、何かこれはと思うときには、その商調協の主婦の人たちに知らせない間にそろっといつの間にか通ってしまいました。そして、私たちは存じませんでしたという声が地方から上がってきているのを私は耳にしております。そういうように生活をかけての商調協の人と、一般の町の有名人としての、法律の解釈もできないと言えば失礼でございますが、そういう人とは太刀打ちがならぬのじゃないかと思うのですね。ですから、そういう意味においてのこれから先の商調協の役目に入る人は、流通機構のあり方とかいままでの法律経過とかをよほどよく知った者が入って、そしてあくまでも厳正なる立場学識経験者としての能力が発揮できる者が入らなければ、ただ消費者立場だけ主張する者では役に立たぬと思いますね。  だから、そのときどきに応じてケース・バイ・ケースで判断のできる人をなるべく多く消費者として入れていただきたいというのが希望でございます。
  114. 長田武士

    ○長田委員 それでは、佐藤参考人にもう一度お願いいたします。  調査の申し出は、大企業中小企業事業分野に進出しようとしている時点で中小企業者がキャッチしてするわけでありますが、こんなことを申し上げては大変失礼かとは存じますが、情報収集力が非常に弱い皆様方はどういう方法でこれをキャッチされるのか、具体的にお教えいただきたいと思います。
  115. 佐藤公彦

    佐藤参考人 この法律政府提案で政府につくっていただいたのでありまして、私どもの方の最初の希望は、いわゆる業種を指定して、その業種に出るときは事前に報告を提出してもらうという考えに立っておりました。ところが今度はそうではなくて、中小企業者も調査する、できないときは政府でやってやるということであります。したがって、私どもは全日本軽印刷工業会でありますから、日本じゅうの各地に支部等もございますので、これから十分にそれらの支部を活用して事前チェックをする、同時に、促進協傘下の十五団体もそれぞれまた横の連絡をとりながらその動きをいち早く察知していく、こういうことであります。そのために私どもは各地方それぞれの道府県に支部を目下結成中でありまして、その支部の力を活用して事前にその情報をとらえるようにしていきたいというふうに努力しておりますが、あわせてそれで足りない場合はもちろん政府の力をお借りする、こういうふうにいまのところ考えております。
  116. 長田武士

    ○長田委員 時間が参りました。  ありがとうございました。
  117. 野呂恭一

    野呂委員長 宮田早苗君。
  118. 宮田早苗

    ○宮田委員 まず、飯田参考人にお伺いをいたします。  本日の参考人方々の御意見を拝聴しますと、関係業界団体の皆さんはおおむね政府案で早期成立をというニュアンスだったと思います。私どもは、行政指導型からもう一歩踏み込んだ、大企業の中小分野への進出を命令、罰則によって排除する、より強制力のある法律にする、こういうことに修正をすべきだと主張してまいっているところでございますが、独占禁止法との関連の議論が一方ではあるわけでございますので、この関係についての先生のお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
  119. 飯田経夫

    飯田参考人 独禁法というのは、私の理解では、自由主義経済体制のいいところを働かせるために、その阻害になっている要因を取り除くための法律だと思います。そういう意味では、もし仮に自由主義経済体制を保守的だというふうに言うとしますと、独禁法というのは非常に保守的な法律だと私は思います。  この分野調整法との関係ということになりますと、分野調整法がもし非常に強い形で成立し、かつ運用されますと、自由主義経済体制の機能あるいは活力をより少なくするといいますか、減らす方向に働く懸念がかなり大きい。それはほかの見地、つまり午前中の審議でどなたか委員の先生がおっしゃったところの、たとえば公共の福祉というような観点からすればそのことがいいか悪いかずいぶん議論がございますけれども自由主義経済体制をどう扱うかということになりますと、独禁法の強化と分野調整法の強化とは相反するのではないかというのが私の解釈でございます。
  120. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ、御意見の中に、日本経済の繁栄は草の根の優秀さによって今日を築いたというふうにおっしゃっておられまして、私ももちろんそうだと思うわけでございますが、しかし、発展途上ではそうであったといたしましても、今日のように経済が百八十度の変化をしているときには相当な矛盾が起きてきているのじゃないかと思うわけでありまして、この矛盾を何らかの形で打開することが必要だと思います。  そこで、これは、今日の実態に合わせて、この打開の一つの方法としてのルールづくりだというふうに私は思っております。そしてそれが結果として共存共栄の基盤になりはしないかと私は思っておるのですけれども、先生のお考えはどうですか。
  121. 飯田経夫

    飯田参考人 私も、御指摘のように、日本経済がいま大きな転換期に差しかかっているということはそのとおりだと思います。ただ、百八十度というのはいかがかと思うわけでございまして、つまり、いままでといいますか、数年前までの一〇%高度成長というのが実は歴史上もあるいは国際比較上も例のないことでございまして、それが終わったということは、いわばノーマルな状態に戻ったというふうに考えてみればそれほど大きなことではないのではないかということになりますと、それを打開するための方法という場合にも、おのずから、御指摘の点と私の考えとはニュアンスが違うわけでございまして、現在の時点あるいは過去二、三年のあれというのは不況の問題がプラスアルファで乗っております。  この不況の問題というのは不況対策によって打開すべき問題でございまして、この不況によって生じた問題までたとえば分野調整のようなことで解決しようというのは産業政策に対してやや過重な負担を負わせることになるのではないだろうか、こういうふうに考えます。
  122. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つまたお伺いいたしますけれども、私は、この問題については、不況だからルールづくりが必要だということではなしに、構造的な変化といいますか、これから長い目で日本経済を考えていかなければならない一番重要な今日でございますだけに、この行動規制といいますか、行動を何らかの形で正常な方向に戻していかなければならないと思います。ほうっておきますとそこに非常に大きな矛盾というものが出てまいるわけでございますから、行動規制をしながら、同時にその流通部門も改善をしていこうというふうに思っておりますが、その点についてもう一度お伺いいたします。
  123. 飯田経夫

    飯田参考人 いま御指摘の、転換期であるから構造的な問題を直していかなければいけないということは、私個人の考え方でいきますと、たとえばいままでに行政指導で、いわばアドホックといいましょうか、その都度その都度やられていたことをこの法律政府案に盛られているような形でルール化したということで、その御指摘の点についての打開の方向が示されているのではないかというふうに考える次第でございます。
  124. 宮田早苗

    ○宮田委員 大変恐れ入りますが、もう一つだけ、中小企業の役割りについて御質問いたしますが、企業事業活動消費者に対する活動は消費者に対するサービスにあると思うのです。特に、中小企業の活動は流通機構の原点だとも思うわけでございます。  そこで、大企業の今日の諸情勢から判断をいたしまして、その無定見な進出によって流通機構が阻害されるのではないかというおそれもあると思うわけでございますが、この点についてのお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  125. 飯田経夫

    飯田参考人 無定見な大企業の進出によって流通機構が阻害される可能性はもちろんあると思います。と同時に、大企業の進出を非常にしゃくし定規に規制することによって流通機構の正常化が阻害され、消費者利益阻害されることがあると思います。  そのことを私は一消費者として例を挙げて申し上げますと、私は名古屋に住んでおりますが、名古屋というところは二百万の大変大きな都市ですけれども、大きい書店がほとんどありません。それで、何年か前に東京に本店を持つある大きな書店が名古屋のビルのワンフロアを借りて、非常に豊富な品ぞろえをして進出しようといたしました。私は職業上学術書を非常に必要とするものですから、品ぞろえの豊富な大きな本屋が非常に私にとって必要なわけですが、しかし、そのときに名古屋の書店の人たち反対によって、その進出しようとした書店はフロアの面積を大幅に削減しなければならなかった。そのことによって私は自分が必要な本をちょっと行って買うということが依然としてできなくて、本屋に頼んで東京から取り寄せてもらわなければいけない。  ですから、こういうふうに規制することが消費者にプラスかマイナスかということはケース・バイ・ケースでございます。だといたしますと、そのケース・バイ・ケースに審議会議論を尽くして調整の方法を考えるという方式以上のものは考えられないのではないかというふうに思っております。
  126. 宮田早苗

    ○宮田委員 どうもありがとうございました。  次は、辻参考人にお伺いいたしますが、審議会での審議の内容についてお尋ねをするわけですが、政府案では業種指定の条項はないわけですが、企業性の高い分野の技術開発にこれまで大企業が果たしてまいりました役割りは評価しなければならぬと思いますし、また、大手の技術をむしろ積極的に活用して運営の近代化を図る中小経営者も多いと思うわけです。本法のような法律ができると大手企業の技術開発の意欲をそぐといった意見もあるわけでありまして、審議会での審議の過程でこういう問題についていろいろ論議されたと思うのですけれども、簡単でよろしゅうございますから、その御意見を聞かせていただきたいと思います。
  127. 辻彌兵衛

    ○辻参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、いわゆる業種指定を非常にきちっとフィックスするということは、そういう業種を固定することをある時点、ある基準によってやるということは、いろいろな情勢から考えまして、経済が生々発展しております過程の中では非常にむずかしい。現在はそれをやらなければいけないというふうなことがあっても、そういう中小企業の中にも将来中堅企業に成長していくものもありますし、階層的にはいろいろときわめて流動的でございます。  いま御質問がございましたように、中小企業がその独自の技術を開発しまして、それが大企業に成長していくというふうな場合も現在までに当然たくさんのケースがございますが、そういった点で、そういう技術をここで固定すればそういうものが大きくなっていくのを阻害していくのだ、そういう中小企業が中堅企業に成長していくのを抑える形になるのだといったようなことについて審議会の過程の中でいろいろと議論が出たことも事実でございます。しかし、そういったような過程の中で、この業種指定をやることは全体的に見てやはり好ましくない影響を与えるのじゃないかということで現在のような意見具申になったように記憶しております。
  128. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、三浦参考人にお聞きいたします。  組織の問題についてお聞きするわけですが、皆さん方の御期待に反して、この分野の中に小売商の関係についてなかなか問題になっておるわけでございますが、いずれにしましても、今日いろいろな御意見がありますように改正ということになろうかと思うので、参考人の皆さんに関係がございますからお聞きするわけですが、各地域にそれぞれ商店組合なり連合会というものがあるわけであります。ところが、私の知る限りにおきましてはこの組織が思うように機能していないような気がするわけでございます。法律をつくり、それを運営する場合に、組織と機能との関係というものが非常に重要になってくると思うわけです。  そこで、組織の充実といいますか、連携強化といいますか、同じ地域に二つも三つも組織がある。これはもちろんいろいろな事情もございましょうけれども、これではせっかくつくった組織の運営に思うような御意向を実行するということにはならないと思うわけでございますので、これからの指導者の立場にございます三浦参考人でございますので、この組織の充実と連携強化についてどのような構想をお持ちか、その点をお聞きいたします。
  129. 三浦正義

    三浦参考人 お答えいたします。  特に中小小売商の場合は団結がむずかしく組織化がむずかしい。といいますのは、大企業も大変重苦しい存在ですけれども、同時に、また、隣近所の同業者といったふうなものも、商売がたきといいますか、大変ライバルの関係に立っておるわけなんです。また、それが商店街を形成して、一つの町の商店街が近隣の町の商店街とすべて非常に厳しい競争関係にあるということがあるわけでございますから、なかなか組織化ということが進展していないのがやはり実情でございます。  しかしながら、協同組合法という法律に基づく協同組合あるいは商店街振興組合法に基づく商店街振興組合も全国一万五千のうちすでに二割近い組織化が進んでおります。また、任意団体といたしましてもいまの商店街がかなり底流をなしつつあるのではないかというふうな気がいたします。  そこで、私ども考えてみまするのに、やはり組織の中の一つの目標でございますね。たとえば労働組合なら労働組合、農業組合なら農業組合といったふうなものはかなり明確な目標が打ち立てられているわけなんですが、そういう明確な目標を確立するということが非常に重要でございまして、そのためにはたとえば商店街の近代化というふうな目標を一つ与えますと、みんなが近代化することによって受けるメリットというものが判断できましょうから、やはり組織の方へ移ってくる。組織に入れば必ず何らかの御利益があるというものをいろいろの角度から与えていかなければならない。いわゆる自覚に基づく組織というものも非常に重要でございますけれども、同時に、中小企業のことでございますから、それの明確なメリット、御利益をはっきりさせていくということが非常に重要じゃないかと思います。  同時に、こういった組織ができていくのを政策の上でむしろ助長していただくように、そしてその組織を破壊する外的要因はこれを十分にチェックしていただくように、こういうことが相まって組織化はまだまだ進んでいけるのだと、かように私は存じております。
  130. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後に、佐藤参考人にお聞きいたします。  促進協の要望が七つばかり出されておるわけでありますが、まず、一の、大企業の進出を事前にチェックできる業種指定等の措置を講じてほしいということでございますが、業種指定ということがなかなか困難なような状態でございます。そこで、さっきも質問の中でお答えのようでございましたが、事前のチェックということについてのむずかしさですね。たとえば住宅団地ができまして、そこにだれがどこが入るかということを察知することは非常にむずかしいのじゃないかと思います。というのは、業者そのものが直接その団地を手に入れてそこに計画するということでは最初はないはずでございますから、それをチェックすることはちょっと至難のわざじゃないかというふうに思っておるわけでございますけれども、この点についての考え方ですね。  もう一つの問題は、小売商関係は今度の分野法の中には入れられない。そこで大店法と商調法の問題が起きてまいりますが、しかし、促進協の気持ちとしてはこの分野法の中にぜひ入れてもらいたかったという意向がまだ強く残っておるのかどうか、この点を率直にお答え願いたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  131. 佐藤公彦

    佐藤参考人 先生の御質問の最初の、いわゆる事前チェックをどうしてやるかということでありますが、いまの先生御指摘のとおり、私どももこれは一体どうして事前チェックをしようかと——先ほどの長田先生からの御質問と全く同じなのですが、いずれにしてももともと事前チェックをするのは相当困難でむずかしいのだから、事前にそれがチェックできるためには業種指定をし、そしてそこの業界に出てくるときは事前届け出制によってと、こういうような考えを私どもは持っていたわけなのです。しかしながら、これは立法技術上大変むずかしいということで織り込まれておりません。  そこで、先生方の御審議の中で立法技術上むずかしいということであるならば、これは私どももいまさらどうするわけでもありませんし、また、法律家でもありませんからこの方がいいということでもないのですが、ただ、事前チェックをするのは本当にむずかしいのです。ですから、先ほども申し上げましたように、役所に依存する反面、自分たちの組織を挙げて、各都道府県段階においてそのような少しでも煙らしいものがあったならばチェックをして、それを役所の方に報告して、本格的な調査をしていただいて事前調査をする、こういうことであります。  それから、その次の商調法の問題でありますが、小売店を入れていただきませんと大変私が困るような情勢の中にあるわけなのです。これは促進協の構成上からもそうでありますし、また、同時に、小売商も当然分野法の中に含まれるべきだという信念はいまでも私は変わりません。しかしながら、これも立法上の問題でいろいろ問題があるようでございますからまあやむを得ないとして、ただ、いわゆる分野法の精神をそのまま取り入れまして、そしてもろもろの手続を加えた上で商調法を改正して、そして小売商も分野法と同じような立法精神に基づいてめんどうを見ていただきたい、そのように御審議の上でぜひひとつお願いしたい、こういうように思うわけであります。
  132. 宮田早苗

    ○宮田委員 どうもありがとうございました。
  133. 野呂恭一

    野呂委員長 安田純治君。
  134. 安田純治

    ○安田委員 参考人の皆さんには大変長い時間貴重な御意見を承りまして、ありがとうございます。  若干の時間質問をお許しいただきたいと思いますが、同僚議員がいろいろの角度から伺いましたのでなるべく重複は避けたいと思うものでございます。  御意見を伺っておりますと、大体この分野法反対だといいますか、商品やサービスの供給といいますか、その側面から主としてごらんになっているように感ずるわけですけれども中小企業のあり方に対してどう取り組むかという問題は必ずしもそれだけではなくて、たとえば地場産業で言えば、地域の過疎過密の問題その他の問題、つまり、社会的な問題や地域的な問題と非常に密接に結びついておるという側面からもやはり考えなければならないのではないかというふうに私は思うわけでございます。  ことに、私のくになどは田舎でございまして、そういう田舎へ行きますと、たとえば小売業の場合も、駅前なんかに大きなビルディングができてデパートみたいなものが進出すると、そのすぐそばにあったお店はコバンザメ的にお客さんの流れが多くなったりしてかえって得をするなんという場合もあるわけで、むしろ汽車に乗って二十分か三十分の距離の近郊の人口一万、二万の町の商店街が打撃を受けるという問題があるのです。  また、メリヤスとか家具などというものが特定の町で主要の産業をなしておって、その町では大体七、八割が何らかの形でメリヤス業や家具業に関係して生活をしておるということになりますと、単に流通問題や商品、サービスの提供という側面からだけではなくて、そういう中小企業をどうやって振興し維持していくかという問題は地域全体の経済問題に非常に結びついているわけです。もしこれが無視されますと、たとえば単に消費者の便利だけだと言いましても、地場産業が壊滅状態になったり、あるいは商店街が振興しない町が過疎化していくのは当然でして、私の近所の町でも、お医者さんがいなくなり、お医者さんがいなくなると今度は通院する患者さんがますます近所の大きな町の方へ行く、そうすると通院の帰りにデパートで物を買ってくるというようなことで、悪循環でその町の小さな小売業者はますます売れなくなる。  そんなことで汽車の線路を外されちゃったところもありますけれども、学校の生徒もだんだん少なくなっていき、したがって複式授業ということになる。しまいには学校の統廃合だということで、子供たちが何里も通わなければ学校にも行けなくなるというようなこともありまして、東北地方なんかへ行きますとこれは過疎過密の問題とも非常に結びついている問題だろうと思います。  ですから、そういう点からも考えなければいけないのじゃないかというふうに思うのでございますけれども、その点について三巻先生と名古屋大学の飯田先生から御意見を承りたいと思います。
  135. 三巻秋子

    ○三巻参考人 いま、商品のサービスとかいうものから見まして過疎化の問題にまで言及されましたが、ともあれ、町の発展ということを考えてまいりますと、お互いに全部が消費者であり、企業そのものの方でも、自分のつくっているもの以外については全部消費者であるわけですね。そういう意味から申しますならば、お互いにかきねをつくって自分たちが守ってもらおう守ってもらおうとばっかり思うと他に影響するのは当然じゃございませんか。そういう意味で、なるべくオープンで競争ができるようにして、それぞれの持ち味を生かしていくことによって真のサービスが生きてき、しかもそこへ人が集中するというのが自然の原則ではないでしょうか。そういう意味において、いままで余りにもいろいろな法律がありまして、過保護過ぎておりますよ。過保護の上にあぐらをかいておりますよ。それをまたしても今回の法律によってやるのかということを私は言いたいのでございます。そういうことでございます。
  136. 飯田経夫

    飯田参考人 御指摘の過疎の問題あるいは地場産業の問題、あるいは医者、学校を含めて、消費者の便利だけでなくて社会を考えなければいけないという問題については、これは御指摘のとおりだと思います。しかしながら、経済が変化するといいますか、成長すれば、社会が当然その影響を受けて変化することは避けがたい事実でございます。ですから、こういうことではないでしょうけれども、御議論をやや極端に拡張解釈しますと、経済成長に伴う変化をすべていけないものだという議論になりかねないのではないかと思います。そこのところが実は非常にむずかしくて、その変化で社会のあり方が変わってコミュニティーのあり方が変わったということで住民が影響を受ければ、一人一人にとってこれはいままでの人生の積み重ねですから非常につらいことであるということはもちろん考えなければいけない。だけれども、同時に、だからといってそのすべての変化がいけないということにはならない。  つまり、大企業進出による影響を排除するという議論が先ほどからしょっちゅう出ているわけですけれども、しかし、完全に排除するということは初めから現実的な本音の議論をすれば考えられないのではないかと私は思います。ですから、影響があることを前提にした上でマイナスの影響をどういうふうにできるだけ排除していくかということでございまして、それこそがまさに政治に求められる大変なアートといいますか、芸術的な力量であるということしか言えないのじゃないかと思います。
  137. 安田純治

    ○安田委員 この問題については、必ずしも中小企業分野法だけではなくて、いろいろな社会的な制度なり、すべての総合力でもって調整していかなければならない問題であろうと思いますけれども、ただ、両先生のお話を伺っておりますと、東北地方の過疎化した農村の——極端に推し進めていけばあらゆる経済の変化の影響を認めないというふうにまでは私は考えないのでして、ただ、実際に東北の近郊都市といいますか、ちょっとした県庁所在地を少し離れた町などの過疎化というものの現象は、自然の法則のしからしむるところだなどと言っていられるのはやはり都会に住んでいらっしゃるからだろうというふうに思いますけれども、ここは議論する場所ではございませんのでこの程度にしておきます。  実は、法の間にあぐらをかいておるとかいろいろな話が出ますけれども中小企業も必ずしもこの法律によって大企業の新規参入についてとめるというだけではないわけですね。もちろん一時停止勧告とかいろいろありますけれども、第十条を見ますと、調整勧告をするときには中小企業調整審議会意見を聞いて、この調整勧告の申し出をした中小企業団体に対し、「当該勧告に係る事業と同種の事業に係る中小企業競争力の強化及び一般消費者利益の増進のために当該中小企業団体構成員たる中小企業者が講ずべき設備の近代化、技術の向上、事業の共同化その他のその事業活動改善のための方策を示して必要な指導を行うものとする。」とちゃんと書いてございまして、ただ新規参入を防いで中小企業がその上にあぐらをかいていればいいんだというような法文にはできておらないというふうに私どもは思っておるわけでございますが、いま読み上げました十条の条文だけではなおかつやはりあぐらをかいておるというふうにおっしゃるのかどうか、その点を三巻参考人にお伺いしたいと思います。
  138. 三巻秋子

    ○三巻参考人 私が冒頭に、こういう規制をすればするほど固定化してしまう、眠ってしまうということを申し上げたことからしてそうおっしゃったんだと思いますが、事実それが証明されているのがいわゆる不況カルテルの中小企業団体法であり、それから環境衛生法による十八業種の価格がすべて上に上がっていき、私たちがパーマネント屋やら先生方が散髪屋へいらしたら行くたびに値段が上がっているという現象等は、これはもはや——法律があって、そしてどこかでそれが暗黙裏に認められて、そして消費者が不利益をこうむっているという事実はもう幾らもあるじゃございませんか。その上にまだまだこういうものが必要かということの上で申し上げているのであって、なるべく近代化をするとか設備の合理化をするとか、あるいは根本的な設備の改善をするとか、そういうことを十分に考えての対策というものがまずなければならぬということが先決ではないでしょうか。そういうことをほっといて大店舗法を変えてみるとか、ちょっと小手先のことだけを考えてああでもないこうでもないと言っていても問題は片づかないということを申し上げているのでございます。
  139. 安田純治

    ○安田委員 次に、佐藤参考人にお伺いしたいのですけれども、実は、この政府の提案に係る法律案でございますが、この「調整勧告」の中身を見ますと、「当該事業の開始又は拡大の時期の繰下げ、当該事業の規模の縮小その他の当該事態の発生を回避するために必要な措置を執るべきことを勧告することができる。」となっております。したがって、事業開始や拡大の時期の繰り下げと規模の縮小だけではなくて、その他の必要な措置をすることができることになっておりますが、もし仮にその他の必要な措置というところを取って、事業の開始または拡大の時期の繰り下げと規模の縮小の二つしか勧告できないというような条文にした場合にはこれはどういうふうな作用になるということをお考えでしょうか。
  140. 佐藤公彦

    佐藤参考人 法律の内容で大変むずかしいのですが、時期の繰り下げとそれから規模の縮小だけだといたしますと、つまり進出はしてくるわけでありますね。ですから、私どもの方は、それはやむを得ないと言えばそれまでですけれども、当然中小企業性の業種で大企業が出てこなくてもいいような業種にまで出るときは、これは進出の停止までひとつやっていただきたいと思っておるわけであります。  たとえば大企業が、いまの段階で言うとまさにミサイルからラーメンまでというようなことでありますけれども、そこに中小企業性の業種というものはありますので、それらに対してはもうどこからどのような角度で検討してもこれは中小企業者に任しておいてよろしいというような判断に立つならば、これは時期の繰り下げと縮小だけでは困るのであります。時期の繰り下げというのはいわゆる進出の時期を明示することであり、縮小ということは規模を一時この程度にしなさいということで、いずれにしても従来の行政指導の域を出ない、いわゆる進出の仕方あるいは進出の時期の決定という意義以外何ものもないと、そこで私どもはこの二つに合わせまして、中小審議会で十分審議した結果、これは中小企業性の業種で大企業の進出は必要ないと認められた場合は停止までやっていただきたい、こういうふうに考えております。
  141. 三巻秋子

    ○三巻参考人 ちょっと申し忘れましたので……
  142. 安田純治

    ○安田委員 いや、私は佐藤参考人にまた質問を継続したいのです。  停止というだけではなくて、たとえば事業の開始についても、あるいは規模もそのとおりでいいけれども、ただし流通機構については既存の流通機構を使いなさいというようなことだってあり得ますね。そういうことだってあり得るわけでしょう。ですから、私の質問は、単に事業の開始または拡大の時期の繰り下げあるいは当該事業の規模の縮小だけじゃなくて、その他の措置というのはいろいろな措置ができるようにできておるのではないか、かえってその方が皆さんの考えているような実情に合うのじゃないかと思いますが、これを削った方がいいのじゃないか、その他の必要な措置という文章は要らぬのじゃないかという意見もなきにしもあらずのようなのでちょっと御意見を伺ったわけなんです。  ですから、停止ということだけにこだわらずに、二つになった場合と、そうじゃないその他の必要な措置があった場合とでどう考えられますか。
  143. 佐藤公彦

    佐藤参考人 これは先生のおっしゃるとおり、私どもは繰り下げと縮小だけでは困るのであります。そこで、この条文は、「必要な措置を執るべき」と、「必要な措置」というものは十分生かしておいていただきたいというふうに思うわけであります。
  144. 安田純治

    ○安田委員 次に、調査を申し出る団体でございますけれども、政令で定める団体というふうになって、いわば窓口の一本化ということになっておりますけれども、この点についてはどういうふうにお考えか、佐藤参考人の御意見を承りたいと思います。  これは第五条に「中小企業団体」と書いてありまして、その中でいろいろ書いてあって、「その構成員の大部分が中小企業者である団体であって政令で定める要件に該当するものをいう。以下同じ。」というので、そういう団体だけが調査の申し出ができるようなふうに法文はなっておるわけですが、もっと広く認めた方がいいのじゃないかという意見があるのです。先ほど参考人がおっしゃられましたように事前チェックというのは非常に困難だ、全国に情報網を張りめぐらすとしても、それでも非常に困難だというお話ですから、こういうふうに狭く限らない方がいいのじゃないかという意見もあるようですけれども、いかがでしょうか。
  145. 佐藤公彦

    佐藤参考人 この団体性格で、いわゆる申し出のできる団体というのは非常にむずかしいので、私はこの間傍聴しておりまして、この中から私どもみずからがはみ出るのではないかという大変な危惧を持っていたのでありますけれども、それは答弁の中で排除されないということを確認いたしております。しかしながら、無制限にあらゆる団体がどれでもいいということは、これもまた私ども法律の専門家でもございませんし、答えられないのですけれども、可能な限りなるべく広い範囲にして、そして十分に事前チェックができるような措置にしていただきたい。これは先生方の御審議の中で、事前チェックは十分できるような範囲の団体というふうにしていただきたい、こういうふうに思います。
  146. 安田純治

    ○安田委員 私は終わりましたけれども、では、三巻先生から……。
  147. 三巻秋子

    ○三巻参考人 大変恐縮でございます。  先ほどのお答えのときに私はちょっと考えたのでございますが、とにかくこの問題はもう二、三年来の懸案の問題でございますね。廃案になったり継続審議になったりしていますね。それを考えてみますと、どうも選挙のある年ごとにこれは浮かび上がってくるというような気がしてなりません。そこでやはり政争の具になさって、地方へ帰って、おれがここまで変えてやったんだ、通してやったんだというお手柄のために本日のような大急ぎで仕上げなければならぬような段階になったんじゃないかと、大変失礼な言い分でございますが、私はそう考えられてなりません。  経済問題というものは政治にそう左右されて起こる問題ではなく、消費者としても買い物の価値観というものは大変に変わってきております。それだけに、そうたやすく一人一人がこうあるべきだというようなことを言ってみても、本当に気まぐれにどう買うかわからぬからこそ在庫品が余ったり、いろいろなものができ過ぎて困っているようないまの社会情勢というものをどう変えていくかということのもっともっと根本的な問題が多くあるということを私は指摘したいと思います。  どうも失礼いたしました。
  148. 安田純治

    ○安田委員 時間が来ましたし、参考人議論するのはきょうの目的ではございませんのでこれでやめますけれども、三巻先生の意見には大分私は異論はございます。
  149. 野呂恭一

    野呂委員長 大成正雄君。
  150. 大成正雄

    ○大成委員 最初に佐藤参考人に承りたいと思うのですが、先ほど都道府県知事に対する権限委任を希望するという御発言がありましたが、佐藤さんのお考えではどういったようなお考えがあるのか、ちょっと承らせていただきたいと思います。     〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕
  151. 佐藤公彦

    佐藤参考人 大企業の進出は大体全国市場、あるいは一定の地域対象として行われることもあります。けれども、特定の地域に対して行われる場合は、中央段階の調整ではなくて地域経済の実態に合わせた調整が必要だという考え方に立っているわけであります。特に、地場産業等を保護するためには絶対必要であります。私はよく地方などに支部その他の大会で参りますけれども、地方独自に非常に困っていて、こうだという申し出があるわけであります。同時に、特定の地域を限って大企業がそこに大工場をつくって、そして中小企業分野とされてきた仕事をそこで大きく展開していき、そのためにその地方の仕事が一遍に吹っ飛んでしまい、そして倒産、転廃業に追い込まれるというケースが今後も続々出てくると思うのであります。  そういうような意味合いにおいてよく掌握し、あるいは実態を詳細に把握して対処するためには都道府県知事にも権限を委任し、かつまた地方、都道府県にも審議会を置くべきであるという考え方に立って申し上げたわけであります。
  152. 大成正雄

    ○大成委員 次に、同じく佐藤さんに承りたいと思うのでありますが、事前チェックはどうにか入って、それから命令、罰則については与野党を超えてこれは何とか御期待に沿えると思うのですが、問題は、この業種指定が除外されたということによりましてさらに事前チェックが非常に大事な問題になってきているわけですが、業界団体の組織強化ということは非常に大事だと思うのです。  先ほどその事前チェックを法の上で何か制度化してほしいというお話もございましたが、調整官あるいはモニターの配置といったこともありますけれども、それだけでは不十分で、要するに、佐藤さんが中心となっておられますでしょうけれども、いわゆる業種対象指定となり得るような業界団体の結束というか、これが非常に大事なことだと思いますが、これはむしろみずからのことだと思うのですが、この点の考え方を承りたいと思います。
  153. 佐藤公彦

    佐藤参考人 そのとおりでございます。事前チェックをするためには、いわゆる官庁のモニターその他ももちろんいろいろとありますけれども、しかし、問題は自分のことでありますから、自分たちみずからの力で事前チェックができるような組織を考えなければいけないと思います。  現在私どもの促進協は、先ほども申し上げましたけれども、全国レベル十五団体で、さらに地方にも多くの団体が加盟しておりますが、そのような考え方に立ちまして地方都道府県支部を目下続々つくっておるわけであります。そこで促進協の各都道府県支部の横の連携を十分保ちながら、それぞれの中小業界に対する大企業の進出をまさに煙の段階でとらえるように十分な配慮をしていきたいと思っておりますが、それは今後機関で諮りまして、専門委員会でもつくりまして、そして事前にいかにしてとらえていくかを検討して対処をしていきたいというように考えております。
  154. 大成正雄

    ○大成委員 ぜひしっかりやっていただきたいと思うのですが、次に、高橋参考人に承りたいと思うのですけれども、御承知のとおり商調協は大店法第七条二項ですかによりまして会議所、商工会等の意見を聞くということになっておるわけですが、その会頭、会長の諮問機関として商調協というものがあるわけであります。しかしながら、この商調協というのは何ら法的な裏づけがあるわけではないわけでありまして、この会議所、商工会の事務当局が指導要綱によって運営しているといった実態であります。したがいまして、先ほど来いろいろな御意見でも指摘されておりますけれども、この運用の問題では確かに問題があると思います。たとえば関係者意見を聞くということについて大店法では、この七条第一項には、周辺人口の規模とかあるいはその推移、中小小売業の近代化の見通し、他の大規模小売店舗の配置とかあるいは小売業現状とか、あるいは周辺の小売業事業活動に相当程度の影響を及ぼすおそれがあるかどうかの審査といったようなことがありますけれども、まず、第一に、こういうようなことを審査する商調協の調整の目安、基準がない。その地域の商調協の盛り上がった雰囲気で決められておるといったことが多いわけであります。地域によってはそういった目安をつくっているところもありますが、大方はそういう状態でございます。  なお、小売人の業者の代表といっても、たとえば会議所で言うならば小売商業部会の部会長がなるとか、商店連合会会長がなるとか、卸売部会の部会長がなるとかいったことで、直接問題が起こっている関係地域の商店街の会長とか、あるいはその業界の食品、産品業界の代表者だとか、そういったような方々意見を商調協の意見として反映するということはなかなかむずかしいわけであります。  したがいまして、この商調協の運用について、高橋参考人として、全国の商工会を御指導されておる立場からどのようにお考えになっておられるのか、その点を承りたいと思います。
  155. 高橋淑郎

    高橋参考人 ただいま大成先生から御指摘のありましたとおりでございまして、商調協の運用というのは本当にむずかしゅうございます。商工会もそうだと思いますが、各地の商工会議所は大変苦労をいたしております。  いまお話のございました調整の尺度と申しますか、それになる基準のことでございますが、これは全国一律に当てはまるような基準をつくるということはとてもできないとは思いますけれども、相当程度幅の持ったもので何か目安になる基準が欲しいということがわれわれ関係者の願いでございまして、ただいまそういうわれわれの要望もくみ取っていただきまして、大規模小売店舗審議会の中にこの問題を取り扱う部会でございましたか、委員会でございましたか、設けていただきまして、早速検討をいただいておるところでございます。  それから、商調協の委員の人選につきましては、これまた非常に苦心の存するところでありますが、極力公正な公平な人選の行えるようにということで鋭意努力をいたしておるところでございます。
  156. 大成正雄

    ○大成委員 いわゆる商調法の問題でありますが、都道府県知事は一般的な中小小売業者と他の業者紛争の調停ができることになっているのですが、過去十八年間この条項というものは活用されないできたことに対しまして、高橋参考人はかつての中小企業庁長官でもあられますが、どんなふうにお考えでございましょうか。
  157. 高橋淑郎

    高橋参考人 たしか商調法は昭和三十四年にできた法律でございまして、この法律の立て方は三つありまして、小売市場の問題と、それから購買会事業に関する事項、それといわゆる中小小売商と製造業者との間の問題、それから卸の業者と中小小売商との間の紛争、それと中小小売商とその他の者との間の紛争、これを都道府県知事があっせん、調停ができるというようなことでございまして、運用の仕方によったらいろいろなことができるたてまえになっておりますが、恐らくはこれを運用するということについては非常にむずかしい個々の問題があって、いま御指摘のように、この法律を背景にしながら実際上の行政指導で事が処せられていたことがいろいろあるということであろうと思いまして、昭和三十四年にできた法律でございますので、これを現在このまま運用するということについてはなかなかむずかしいことがあるのだろうと思います。
  158. 大成正雄

    ○大成委員 けさの新聞によりますと、自民党の商工部会を初めとしまして、この商調法のただいま御指摘申し上げました点の修正がなされるという動きが非常に出てまいりました。委員長も御関係であろうと思うのですが、必ずやそういった御期待に沿えるような商調法の改正を私どもも期待を申し上げておるわけであります。  しかしながら、そういった試案の内容等を見ましても、大型店では地域の商調協の意見を聞くということになっておりますが、商調法では抽象的に、「中小小売商団体及び当該申出に係る大企業者並びに主務省令で定めるところにより選定した一般消費者、関連事業者その他の利害関係者意見を聴かなければならない。」ということにけさの新聞の内容ではなっておるわけでありますが、これは非常に抽象的でございます。大店法においては、地域の会頭の意見を聞く、それがためにまた四者構成の商調協の意見も聞くということになっておるにもかかわらず、その千五百平米以下の問題についてはこういう大ざっぱな規制の仕方だけでは非常に不公平にわたると思うのですが、この点について高橋参考人はどのようにお考えでしょうか。
  159. 高橋淑郎

    高橋参考人 申しわけありませんが、私はきょう出がけに日経新聞をさっと見ただけでございますので、いまどういうような調整法の改正が考えられておるか定かではございません。ただ、大規模店舗法の体系と商調法の体系というものはやはり別建てのものであろうと思いますので、大店法のいわゆる審議会中心にした仕組みがそのまま商調法の体系の中で同じようなかっこうで取り上げられなければならないかどうかということについてはやはりよく考えてみる必要があるのではないかと、とりあえず私はそのように思います。
  160. 大成正雄

    ○大成委員 三浦さんと高橋さんにもこれは御意見を聞きたいと思うのですが、クレジット会社が割賦販売を大規模に計画しているということで、この分野規制をという御意見が先ほどあったわけです。これは非常に大きな問題だと思うのですが、御承知のとおり、割賦販売については割賦販売法という法律があるわけで、通産大臣の許可を得なければなりませんけれども、御指摘のクレジット会社の割賦販売移行の問題については、この割賦販売法との関係はどのように解釈しておられますか。
  161. 三浦正義

    三浦参考人 お答えいたします。  割賦販売法という法律は、法のたてまえ全体が実は消費者保護で、ああいう割賦という長期の契約なものですから、途中で払えなくなったらもうあとは品物を取り上げて知らぬふりするとか、あるいは契約内容が消費者に不利になっているとか、そういうことがチェックの非常に重大な要件になっております。  ところで、いまの通産大臣の許可を受けなければいけないということは、私の理解する範囲では届け出をしなければならないということじゃなかろうかと思います。若干の保証金を積んで届け出をして、そこで届け出を受理する窓口の通産省がどのような場合には届け出を断っていいかということになりますと、中小企業に迷惑をかけるから受け付けしないよというたてまえには必ずしもなっていないような気がいたします。私の理解が十分でないかもしれませんがそういうことでございまして、現在実はそれを補う意味で大臣ないし企業庁の通達というものが出ておりまして、大企業が百貨店あるいは量販店を加盟店として割賦行為のあっせんを行う場合にはその地区における商調協の審議を経なければならないというたてまえになっております。これは法律ではございませんで通達でございますが、行政指導ということの基準になろうかと思うのでございます。  そういう意味でございまして、現在われわれが非常に危惧いたしておりますのは、銀行というきわめて独占的な、しかも社会的に非常に大きな役割りを持つ、むしろ企業を育成するものが中小企業と同じ土俵で相争うということで、これは銀行の周辺業務の面から見ても当然おかしいのじゃないかという気がいたしますけれども、これをチェックする法的基準がいまの割賦販売法とかあるいは通達という程度のもの、あるいは大蔵省の銀行の周辺業務に対する規制の行政指導という程度のものにとどまっているのではあるまいかと思うのでありまして、今度の分野法では、全国的に中小企業が行っているこういったふうな事業に対してのまさに大企業による中小企業への圧迫といいますか、影響を与えるということでございますから、この割賦販売あっせん事業が果たして何業に当たるかということで、小売業から除くということに神経質になるべきかどうかということはちょっとまだ問題がありますけれども小売業はほとんど自分たちでやっておりますので、小売業的色彩が非常に強いからぜひこれはそのような面も分野法で扱っていただけないかと、かようにお願いしておるわけでございます。
  162. 大成正雄

    ○大成委員 この問題については、金融機関が協力しなければ成り立たないシステムだと思います。  そこで、高橋参考人に承るわけでありますが、日本商工会議所には全国金融機関がその組織に参加しておられますし、金融部会もあるはずであります。この金融政策の部会として、日本商工会議所として、クレジット会社が割賦販売を大規模に展開することによっての中小小売業に与える影響等の問題について日商独自で何か御審議があったかどうかということと、また、これに対する高橋参考人個人の御意見はどうであるかを承りたいと思います。
  163. 高橋淑郎

    高橋参考人 私自身としての本件についての確たる意見もまだ持っておりませんが、ごく最近にこのクレジット会社と割賦販売法の関係について特に審議をいたしたことはまだないように思います。
  164. 大成正雄

    ○大成委員 終わります。
  165. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  参考人各位には御退席いただいて結構でございます。ありがとうございます。     —————————————
  166. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 引き続き、政府に対する質疑を続行いたします。渡辺秀央君。
  167. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 今日のいわゆる分野調整法の問題につきまして質問をいたします前に、私の問題点のとらえ方の前提を申し上げたいと思うのであります。  今日、長期にわたる不況とインフレ的経済のもとで中小企業零細企業は全く危機的状態に置かれているというのが実際の姿であると思います。自由な経済活動の結果、常に強者が勝ってますます大きくなり、弱者がますます弱くなるのでは不公正であると言わなければなりません。公正を期するためには自由意思が多少の政治的、社会的制約を受けるのはいたし方のないことであり、自由と公正との関係の中でバランス点が模索されなければならないと考えます。私は、低成長期に入ったわが国経済の今後は、調和と調整の作用の中で自由経済の限界に挑戦しながら各企業企業意欲を持ち続け、あるいは零細企業が各誉と誇りを持って、かつ安心して事業を維持することができ得るよう、行政的にはきめの細かい指導と施策がいよいよ必要として要請されている今日であると思うのであります。その意味で、政府の提案されている中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律案、いわゆるこの分野調整法の今日的意義があるのだと信じます。これまでの役所の苦労をねぎらうと同時に、今後いよいよ中小零細企業者を守るための温かい思いやりのある親切な指導をお願い申し上げておきたいと思います。  さて、労は多としながらも、各条にわたってのいささかの疑問点について御質問を申し上げてみたいと思いますが、これまでの質問者の皆さんと多少重複がありましたらお許しを賜りたいと思います。  前段で申し上げましたごとく、低成長期の今日といえども、大企業や大資本の中小零細企業分野への直接参入あるいはダミー、子会社による進出など、あるいはまた同業種大企業の事業拡張という形の進出、下請化、系列化による進出などいろいろな形で活発でありますが、まず、政府は大企業企業モラルの確立のために今日までどのように指導してこられたか、あるいは今日厳しい状況下にある中小企業を今日のこの分野調整法案で今後守るのに果たして十分であるのかどうか、その姿勢と見通しと確信のほどを承っておきたいと思います。
  168. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま大企業企業モラルの御質問であったと存じますが、御案内のとおりに通産行政というものは生命体である企業体の、その自主的な努力を容認いたしますことが大前提でございますけれども、しかし、その企業の行動につきましては、おのおの個人におきましても法人におきましても一定の限界があることは申すまでもございません。その社会なり経済に及ぼします影響の大きさにかんがみまして、むしろ大企業の良識のある行動が期待されなければならないと考えております。このために、基本的には大企業みずからの国民のための、大きく言うならば憲法上の一つの社会的な期待にこたえるだけの姿でなければならぬことは当然でございます。  政府といたしましても、企業の自主努力につきましては容認いたしますけれども、たとえば大企業中小企業との間の摩擦が生じたような場合におきましては所要の指導を行いましてこれの調整を図り、あるいはまた摩擦の解消等に努め、さらに新たな産業倫理に関します国民的、国家的な合意を形成するように努力してまいる所存でございます。
  169. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 今日の分野調整法でもう一点大臣にお伺いしますが、中小零細企業を守るのに果たしてこれは十分なる法律だとお考えでありましょうかどうか。よろしくお願いいたします。
  170. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  現行法制がいろいろと必ずしも十全を期しがたいことは御案内のとおりでございますが、近年のわが国経済は高度に成長をいたしておりましたが、これが石油ショック以来非常な沈淪した姿になってまいりますと必然的にそこには非常な構造的な変革が来て、同時に中小企業にひずみが参ることも当然でございます。そういうことから、中小企業と大企業との競合問題も非常に厳しい局面が出ておるのでございまして、大企業の進出をめぐりまする紛争というものも従来にもなく増大いたしております。  この法案がこのような環境の変化の中におきまして中小企業を守る新しい競争及び調整ルールづくりをどう行うかということでございますが、中小企業事業活動を適正に確保いたしますために、所期の効果を挙げますように今後とも十全を期してまいりたいと思いますが、つきましては、御案内のとおりに中小企業というものは今日の日本経済の基盤をなすものであり、同時にまた今日国民の六〇%以上を占める中小企業関連の人口でございますことを考えますれば一大社会問題でもあるという点から、いろいろな意味できめの細かい施策をし、同時にまた法制的にも幾多の整備を必要とするのでございまして、皆様方のなお一層のわれわれの努力にも増しました御協力をひとえにお願いを申し上げます。
  171. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 時間が余りありませんので、各条項についての御質問に入らせていただきたいと思います。  第一条の「目的」のところでございますが、「大規模な事業の開始又は事業の大規模な拡大に関し、」ということで、「大規模」という言葉が使ってありますが、大規模ということは一体どの範囲をおっしゃっておられるか、お聞きしたいと思います。
  172. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この法律の中で「大規模な」という表現が何カ所か出てまいっておりますが、私どもは、この大規模な事業の開始または拡大ということにつきましては以下のように考えておるところでございます。  大企業が設備の新増設等によってこれまでの事業規模を一段と拡大し、これによって業界の需給バランスが大きく崩れるような事業活動といった意味合いで「大規模な」という表現を用意いたした次第でございます。  実は、この表現に至ります前に、一体いかなる事業の開始、拡大をこの法律対象とするかということにつきまして部内でもいろいろ議論がございましたし、また、法制的に詰めます段階でも議論がございました。たとえば従来の設備のままで稼動率が上昇した場合というのをどう考えるかとか、あるいは一たん設備を休止してさらにそれを復活するという場合にはどうであろうかとか、さまざまなケースにつきまして、これは取り入れるかこれは取り入れないかということで議論をいたしたわけでございますが、そのような個々のケースをこの条文の中に取り込みますことは条文としても非常に長くなりますし、またかえって機動性を欠くというようなことから、いわばそれらを簡略に表現する用語として「大規模な」という表現を用意したというのが経緯でございます。  したがいまして、この「大規模な」という表現を実際に運用するに当たりましては、やはり、業種ごとの実情、また、その当時置かれております経済環境というものを頭に置きながら適切なる解釈を施していくということが必要なのではないかと思っております。
  173. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 この法律の目的は中小企業事業活動機会を適正に確保することにあるわけでありますから、そのことに支障が生ずる限り、大企業者の進出は、大規模であろうとなかろうとこの法律対象とすべきではないかというふうに私は考えるわけであります。  いまおっしゃられたような各般のお考えの中で適正、適時に御処理をお願い申し上げたいと思いますが、同時に、地域的にも今日の企業に被害が甚大である場合にはこの適用をすべきであるというふうにも考えるわけでありますが、そういう点はいかがでございましょうか。
  174. 岸田文武

    ○岸田政府委員 要件といたしましては、進出する側で「大規模な」という要件を満たし、また、そのことが結果として中小企業経営に相当程度の悪影響を及ぼすということがこの法律の発動の前提となっておるわけでございます。  その場合に、中小企業の被害の範囲をどの程度に把握するかということでございますが、やはり、一つ一つの中小企業ということになりますと、これこそ大企業との間にケースは無限に起こり得るわけでございます。たとえばお隣との間の日照権の問題も当然大企業との間の問題でございましょうし、各般の大企業中小企業との間のトラブルがあるわけでございましょうが、私どもは、それらの各種の問題の中で、国民経済的に見て放置すべからざるものをこの法律対象として取り上げて適切な対策を図るということがこの法律の使命であろうと思っておるところでございます。その意味におきまして、中小企業の被害につきましてもある程度の広がりを持った被害ということがこの対象として適当であろうと思っておりますし、実は、そういう意味合いを頭に置きながらこの法律仕組みの中で組合の申し出制などを採用したという経緯になっておるわけでございます。
  175. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 たとえばある程度の広がりというのは一県を指されますか。あるいは地方的なものをお考えでありますか。あるいは業界とか、そういう意味合いでございましょうか。
  176. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまの御質問は先ほどの答弁と関連をいたしますが、申し出適格団体の範囲をどう考えるかということにもつながってまいるかと思うわけでございます。申し出適格団体の範囲につきましては、商工組合あるいは一定の資格を備えた環衛組合、事業協同組合等しかるべき団体を政令で指定いたしたいと思っておるところでございますが、そのときに念頭に置いております組合の大きさにつきましては、原則としては大体都道府県の区域を超えるような広がりを持ったものということを念頭に置いて私どもは考えておるところでございます。  ただ、産地業種などの場合に、府県の中の特定の地区に特定の業種が集中しておるといった場合に多少の弾力性を持たせることが必要な場合も出てくるのではないかと思いますが、その辺はもう少し実情を詰めた上で答えを出したいと思っておるところでございます。
  177. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 第五条の「調査」、第七条の「調整」の申し出というようなことの質問に移りますが、中小企業団体の申し出により初めて動き出すことにこの二つの条項はなっておりますか、主務大臣が申し出があるなしにかかわらず必要と認めたときに自主的に調査や調整を行うことができないものでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  178. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大企業が進出をしまして中小企業の相当の方々に対して大きな影響を与えるというケースは、考えてみますとあらゆる業種に起こり得る可能性を持っておるわけでございます。また、いつどういう形で出てくるかということが予測できません。したがいまして、法律的な政府の義務として、起こり得る事態をすべて職権として調査をし、そしてそれについての万全の調整をするということは理想的ではありましょうけれども、現実問題としてはそこまでカバーするということは恐らく不可能に近いことなのではないかと思っておるところでございます。  したがいまして、私ども分野調整官を使い、あるいはモニターを使い、できるだけの問題の発掘をいたすように従来も努力してまいりましたし、今後とも努力いたしたいと思いますが、法律的な要件といたしましては、組合の申し出ということを一つのきっかけとして調査を行い、また調整に入る、こういうことが一番現実的なやり方ではないかと思っておるところでございます。
  179. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 時間がありませんからちょっと先を急ぎます。  主務大臣は日常所管の業務については一般的な調査を行っておるのであるから、第六条第一項の事態が生ずるおそれがあると認めるときには主務大臣の判断で自発的に当該中小企業団体に通知するとともに、調整勧告の措置が講ぜられるようにすべきだという考えですが、これについてどのようにお考えでありましょうか。
  180. 岸田文武

    ○岸田政府委員 調整措置について組合の申し出という方式をとりましたのは、単にその方が便宜であるからというだけのことではございません。私どもは、一つの大企業の進出について中小企業方々はさまざまな影響を受けられるであろうと思いますが、それがある程度の広がりを持っておるということを立証するためにも組合という形を使うことが適当であろうとまず第一に考えるわけでございます。それと同時に、大企業の活動を調整するという場合にも、他方の当事者がはっきりいたしておりませんと、多数の中小企業方々が、私はこう思う、私はこう思うということで別々の意見を言われ、それらの方々のすべての個々の納得を得るというようなことは実際問題として不可能でございます。その意味におきまして、組合としての意思統一をされ、そして組合を一つの当事者として、それらの組合の納得が得られるような解決をするというようなやり方が実情に即したやり方になるのではないかと思っておるところでございます。  さらにつけ加えまして、大企業の活動を調整すると同時に、中小企業方々自身も今後さらに合理化をし、競争力を強めていくというようなことが必要になってまいるわけでございますが、そういった中小企業者方々合理化努力というものを進める上につきましても、組合としてまとまり、組合として力を合わせていくというようなやり方がやはり一番効果的ではないかといったさまざまな意味合いを込めまして組合の申し出という形を法律上採用いたした次第でございます。
  181. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 中小企業団体の中には、幹部がいわゆる進出をしようとしている大企業の下請あるいは系列下にあって、相当数の当該団体構成業者が進出に反対していても、団体として調査、調整の申し出が適正に行われない場合があると思うのですが、こんな場合にどのように対処されるか、お伺いをいたしたいと思います。
  182. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大企業が特定の分野へ進出しました場合に、すべてこれは中小企業にとって害悪をもたらすというふうに一概にきめつけるわけにはまいらないと思います。むしろ業界全体として大企業と新しい、いい組み合わせをつくり、それによって中小企業自身も発展向上する機会をつかむというような場合もあり得るわけでございます。ただ、御指摘のように、組合の中でも必ずしも利害が一致しがたい場合があり、それを個々にとらえて片一方は絶対反対、片一方は絶対賛成というようなことでありますと私どもとしても調整する立場から非常にむずかしい問題に入ってしまいますので、むしろその問題は組合としての思想統一を図っていただきたいということで組合を経由する方式を考えたわけでもあるわけでございます。  そのときに、特定の幹部の方々団体の意思を強いて曲げるというようなことは、基本的にはやはり団体の運営のあり方として問題があると思うわけでございますが、ただ、それらを全部整理統合するために総会を開けとかいうような形式的な要件に余りこだわりますとかえって時間をとってしまうことになると思います。したがって、役員会であるとか理事会であるとかさまざまな応用の仕方はあるだろうと思っております。  いずれにせよ、そういった機関としての意思をうまくまとめていただいた上で、それを受けて立つというようなやり方によって処理していきたい、そして、その機関の決定のやり方というものは必ずしも画一的に考えずに、少し実情に応じたような運用もあり得る、こういう前提でこの法律制定後施行いたしたいと思っておるところでございます。
  183. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 本当は、私は、先ほど申し上げたような意味からも、主務大臣の自主的な調査、調整勧告というようなことが必要だというふうに考えているわけでありますが、それはさておきまして、こういうケースはどういうふうにお考えでありましょうか。  Aという大企業が進出し、勧告措置のとられた中小企業が類似の進出をする場合、当該中小企業団体はB、Cのいわゆる新しい大企業の進出についてそれぞれまた新たに主務大臣に申し出なければならないのか。そんなことよりも、私は、勧告措置のとられた中小企業の業績を公示するなどして、これに対する類似の大企業の進出をあらかじめ届け出させるようにすることが双方の事務的な手間が省けるのではないかというように思うのです。いわゆる事前チェックがこれによってできるのではないかというような気がしますが、どういうものでしょうか。
  184. 岸田文武

    ○岸田政府委員 従来私ども経験いたしましたところでは、まず特定の大企業が進出し、その結果トラブルが生じて、そしてそのトラブルに対して主務官庁が入って調整を図るといった場合には、そのこと自体が新聞等で報道されまして、次に出てくる人というのはまずちゅうちょをしまして、その結果が出るまで様子を見ておるのが普通でございますし、また、ほとんどの場合そうであったと思っておるところでございます。ただ、御意見のございましたように、そういうケースが問題になっているということ自体を知らずに出てくるというようなことが少しでもなくなるような工夫はないかという点は私どもも考えておいた方がいいことではないかと思います。  その意味におきまして、私ども実際やっておりますと、申し出があり、それについて審議会が行われ、そしてそこで各般の意見聴取が行われるというような事態になれば、普通であれば同業の方々はほとんど御承知になるだろうと思いますものの、そういったことの状況についてある程度個々の会社の名前を引用するわけにはまいらないと思いますが、こういった問題が起こっているということについて他の同業の方々にもわかるような、そういう工夫は私ども運用の上において考えてみたいと思っておるところでございます。
  185. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 第九条の「一時停止勧告」のところでありますが、一時停止勧告に従わない場合は公表するというペナルティーはあるのでありますが、一体これで実際の効力を確保できるのであろうか、非常に疑問とするわけであります。  私は、勧告を聞き入れない場合には命令を発動して、なお従わない場合には罰則を適用するということで初めて中小企業を守り得ると考えるのであります。この公表というペナルティーではいかがかと思うのでありますが、長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  186. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私ども、これまた従来の経験でございますが、最後に大企業の活動を今後どう調整するかという結論を出しますまでにはいろいろ紆余曲折がございまして、本当に精力的にしかも粘り強く主務官庁が努力をしなければならない場合が多いわけでございますが、ただ、その前提として、しばらく現状のままで大企業を凍結しておいてほしいというような措置を従来何回か出しております。こういう前提としての一時停止勧告に当たるような措置は大企業方々もわりあい素直に受けておられるということが実情でございます。  と申しますのも、それをどんどん進めていよいよトラブルが大きくなるというようなことでは大変だということと、半面では、まだまだ手をつけた初期の段階でございますから、一時停止をするということについてもそう深刻な問題にならずに済む、そういう段階で一時停止勧告が発動される、そういうことがいま申し上げましたような事実の背景にあるのではないかと思っておるところでございます。したがって、一時停止に関する限りは勧告の段階で相当守られるだろうというふうに私どもは思っておるところでございます。  さて、一般的に、この一時停止勧告にしても調整勧告にしても、勧告、公表どまりで本当に実効を上げ得るかという点は、この委員会でも何度か御説明をいたしておりますように、実は審議会段階から相当議論の的になった問題でもあるわけでございますが、私どもといたしましては、この自由経済下におけるルールづくりということになりますと、これは厳しければ厳しいほどいいというものでもない、やはり全体のバランスというものを考える必要があるという点が第一点でございます。  それに加えまして、仮に命令、罰則という非常に強い規制を採用しようと思いますと、やはり要件が非常に厳しくなるし、また、発動の態様も限られてくる。そういう限られた命令というよりは、むしろ勧告を機動的に使えるような仕掛けの方が、これからどんな問題が起こってくるかわかりませんので、かえってその機動性が生きてくる場合が多いのではないかといった気持ちがございまして、やはり原案として勧告、公表という方式をお願いしておるわけでございます。
  187. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 この分野調整法案が本当に実効を上げ得るかどうかということは、一つには審議会構成とその運営に負うところが非常に大きいと思うのですが、この審議会のメンバー構成と運営の方法についてどんなふうにお考えであられるか、お聞きいたしたいと思います。
  188. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業調整審議会委員構成につきましては、これから関係主務官庁の意見調整を図って最終的に決めてまいる段取りになっておるわけでございますが、やはり、この審議会の持っております使命からいたしますと、一方では業界の実情というものをよく心得た委員方々が相当数含まれることが必要でございます。しかし、それと同時に一般消費者あるいは言論界、学界等、いわばこの問題の持っております経済的な広がりを背景にしましたような、そういった方々意見も徴することが必要であろうという意味でバランスのとれた人選ということが大切であろうと思っておるところでございます。  それから、運営の仕方でございますが、中央に置かれております審議会で出てくる案件をすべて一つ一つ処理するということは実際問題として大変でございます。私どもがいま中で考えております運営の仕掛けとしましては、でき得れば下部機構として部会のようなものを設けまして、案件が起こってまいりますとその部会で少し実情も調べ、調整の下ごしらえをして、そしてそれをある程度まとまった段階で本審議会にかけて承認を得るというようなやり方が一番機動的であり、また能率的になってくるのではないかと思っておるところでございます。  その意味におきまして、委員だけではなくて、ある程度の専門委員というようなものをこの審議会に含めて考えていくのがやはりいいのではないかと思っております。
  189. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 意見具申のところでは、大企業の進出計画に対して事前調査には触れておりません。分野調整法では自発的にやることとなっておりますが、具体的にそういうことをやっていくについての予算や人員などというような体制といいましょうか、そういうものが整えられているであろうかということを今日的な問題として考えた場合にいろいろ問題点があるのではないかと思うのであります。  具体的かつ速やかに調査をして回答してやらないと、結局は調査している段階で計画がどんどん進んでいくというようなことにもなるわけでありますから、そういった点の体制は一体大丈夫でございましょうかということを老婆心ながらちょっとお聞きしておきたいと思います。
  190. 岸田文武

    ○岸田政府委員 御意見のとおり、この法律運用が一番大事でございまして、十全な運用ができるような体制の整備ということは当然必要なことであろうと思っておるところでございます。正直に申しまして、この法律ができまして、どのくらいの件数の問題が持ち込まれるかということはやってみないとわからないという面がございます。  それから、もう一つは、この問題は関係各省がそれぞれの分担ごとに調査に当たり調整に当たるという仕掛けでございまして、いわば関係各省にまたがっている問題でもございます。しかしながら、やはり、問題ができたときに機動的に対応するだけの体制はこの法律ができるまでに少しでも整備をしておくということが必要であろうと思っております。  中小企業庁自身といたしましては、この分野問題に関する予算も増額をいたしましたし、また昨年新たにスタートいたしました分野調整官につきましても、五十二年度でさらに一名増員するというような形で着々体制の整備を図っております。そしてこの法律運用してみました上でもっと充実強化が必要であるということであれば、必要な人員あるいは予算というものを確実に確保するというように今後とも努めてまいりたいと思います。
  191. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 これは直接中小企業庁と関係があるかどうか、厚生省の方の分野であると思いますが、農協と同時に生協の、特に生協の中でも地域消費生協の員外利用が横行していて、法律的にこれが規制されるべきものが今日ではないわけであります。あるいはまた、このような横行によって中小企業者が非常に迷惑を受けている例も地方には多々ございますが、この分野調整法では生協関係対象にはなっていませんし、ほかにも対象となり得るような法律がないのではないかと思いますが、このチェックをやるのに新しい法律を考えるか、あるいはいままでの法律を見直すのか、それらの問題について長官に伺いたいのと、それから厚生省の関係でも、この消費生協小売業が主体だということですが、しかし製造もやっているところもあるわけでありますから、それらの中でひとつお考えをお聞きしておきたいというふうに思います。
  192. 岸田文武

    ○岸田政府委員 厚生省から別途お答えがあろうかと思いますが、中小企業庁の立場から御説明を申し上げます。  御承知のとおり、生協につきましては生協法が用意をされておりまして、その条文を見ますと員外利用というのは許可制にかけておる。そして、その許可をするに当たっては関係中小企業者への影響について配慮をした上で行うというような仕掛けが用意をされておるわけでございます。  私どもはこの法律が適正に運用されるということを心から期待をいたしておるところでございますが、御承知のとおり、現実には各地でいろいろな問題が起こっております。私どもは、何とか生協自身でこういった中小企業者への影響というものを判断し、配慮されまして、問題を起こさないようにしていただくということが基本かと思っておるところでございます。  それと同時に、いまの生協法の運用につきまして、厚生省あるいは都道府県知事とよく連絡をとり、中小企業意見を反映したような運営をしていただけるように今後とも努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  193. 末次彬

    ○末次説明員 生協を担当しております立場から補足させていただきます。  概要はただいまの長官の御答弁のとおりでございますが、消費生活協同組合と申しますのは、消費者の自主的な活動と申しますか、消費者がみずから生活に必要な物資を購入し供給するという趣旨で構成されている組織でございまして、その範囲内でございますれば、これは消費者の自主的な活動ということでこれを育成していかなければならないというふうに私どもは考えておりますが、ただ、この枠をはみ出した部分につきましては、いわゆる員外利用の問題として問題になるわけでございます。この点につきましては、私どもは、消費者の自主的活動という点から、まず組合がみずから員外利用の防止措置を講ずるというような措置をとっていただくということを従来から指導しているわけでございます。  ただ、必ずしも現在までその趣旨の徹底が十分でないというような御指摘を受けておる点もございまして、私どもといたしましては、消費生協につきまして、消費生協の事業につきましては組合員以外の者に利用させないという旨の掲示をさせるなど、員外利用防止につきまして、都道府県を通じましてさらに指導を徹底するということを考えておるわけでございます。
  194. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 時間が参りましたのでもう一点だけ長官にお聞きしたいと思うのであります。  さっきの調整のところでありますけれども問題点を指摘する局か——一つの省の中において考えた場合に、通産省なら通産省を考えた場合に、各分野によってそれぞれ局があるわけですが、指摘する局と、あるいは今度調整する側に立った局とが出てくる場合があるように思うのです。そういう関連性というのは実際にその場に当たってみなければわからないということかもわかりませんが、協調的にうまくいくものでしょうか。
  195. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この法律の規定によりますと、進出先を所管する主務大臣が調整に当たるという形になっております。通産省の場合には各生産原局の区分に応じてそこへ進出する問題が起きたときに調整を担当するわけでございます。  ただ、実際問題としましては、大企業の親元の方から少し説得してもらうというようなことが実際に役に立つ場合もございます。その辺はたてまえとは切り離しまして、いかに実効を上げるかということが課題でございますので、いわば協力関係にあって相互に連絡をとりながらやっていくということも応用問題としては必要ではないかと思っております。  さらに、各主務大臣あるいは通産省内の担当各局によりまして余り取り扱いがアンバランスであるというようなことでもかえって不都合でございますので、その辺の調整はやはり中小企業庁が情報の交換あるいは意見の開陳等を通じまして図っていくようなやり方が適当なのではないかと思っております。
  196. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 これで最後でありますが、あるいはこういうような考えも出ているかもわかりませんが、いろいろこの法案について見てまいりますと、大規模な進出を規制したり、あるいは団体に申し出を限定したり、同種事業間の競合問題に対象をしぼったり、結局調整対象というものが非常に狭くなっているように感ずるわけであります。また、そういうふうになるおそれがあるように思うのであります。その点についてもお聞きしておきたいと思うのでありまして、どうぞよろしくお願いいたします。
  197. 岸田文武

    ○岸田政府委員 長い経緯を経ましてようやく法律がここまでまいったわけでございます。いま御指摘のいろいろな問題につきましては、議論をしながらなかなか実現を見なかった問題も含まれておるわけでございます。ただ、せっかくここまでまいりました法律ですから、私どもといたしましては、早く成立を見まして、与えられた法律の範囲内でできるだけの努力をするということによりまして中小企業者方々の期待にこたえたいと思っておるところでございます。
  198. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 どうもありがとうございました。
  199. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 中島源太郎君。
  200. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 十分程度で御質問をいたしたいのでありますが、私が質問いたしたい要点は割賦購入あっせん事業についてお聞きをいたしたいわけであります。  まず、現在の割賦購入あっせん事業の実態について、簡単で結構でございますがお答えをいただきたいと思います。
  201. 山口和男

    ○山口政府委員 割賦購入あっせん事業につきましては、割賦販売法の規定によりまして事業を行う場合には登録が必要でございますが、現在登録されております業者は九十七社でございます。そのほかに、特定の法律に基づきまして設立されました組合等につきましては登録を要しない適用除外の規定がございまして、現在事業共同組合等で行われておりますものが約千五百件ほどあるというように承知いたしております。
  202. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そうしますと、登録約九十七社、それと、もう一つ登録を要しない割賦購入あっせん事業というのは、小売商の方々がみずから相互的に協同組合をつくって、相互活動並びに消費者に対する利用活動に大いに貢献なさっておると思うわけでございますが、実体面でもう一つ伺いたいのは、こうした小売店を主体としたチケット事業と登録九十七社の間に競合による悪影響というものが出ておりますかどうか、簡単に伺います。
  203. 山口和男

    ○山口政府委員 御指摘の点につきましては、ただいままでのところ、登録業者と協同組合等におきまして特に問題があるというようには伺っておりません。     〔橋口委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  204. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 次に、別の角度から伺いたいのですが、クレジットカード会社というものがございますが、これは一般に銀行系クレジットカードと申されております。たとえばJCB、UCその他でございますが、現在こうしたクレジットカード会社というものはどのくらいな数がございますか、伺います。
  205. 山口和男

    ○山口政府委員 ただいまいわゆる銀行系のクレジットカード会社と称されておりますものには大体六社ございまして、中には、古いものは創立以来十数年を経過しておるということでございますが、このクレジット会社というのは会員にクレジットカードを渡しまして、その加盟店でカードを提示しまして、そして銀行で自動的に支払いが行われるというものでございます。
  206. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 加盟六社の内容を私はよく存じませんが、銀行系クレジットカード会社と申す限りは銀行の出資率がある程度高いと思いますが、出資比率と申しますか、持ち株比率がおわかりになりましたらお示しいただきたいと思います。
  207. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  いわゆる銀行系と申しますのは、銀行が出資しておりますクレジット会社に対しまする銀行、相互銀行等あらゆる金融機関を含めた出資比率でございますが、JCBは六七%でございます。それからユニオンクレジットが七三%でございます。住友カードが一〇%、ミリオンクレジットが五六%、ダイナースクラブが一〇%、ダイヤモンドクレジットが五四・五%、このようになっております。
  208. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 二社を除いては五〇%以上の比率を持っているわけであります。ただ、私の知り得る範囲では、一般にこのようなクレジット利用というものはカードで物品を購入いたしまして、その代金支払いは月末あるいは特定の日に利用者の預金口座からクレジットカード会社に引きおろされるということであろうと思いますが、現在の活用方法はそれだけでございますか。念のために伺います。
  209. 山口和男

    ○山口政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたような事業のほかに、たとえば旅行あっせんの仕事とか、あるいは不動産売買あっせんというような付帯的な業務をあわせ行っているところが多いようでございます。
  210. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そのほかに、たとえばいま言われました六社の名前でと申しますか、あるいは封筒でいろいろな物品の購入、購買あっせんというような広告が入ってまいる場合があります。その中に、いわゆる割賦で物が買えるという広告が入っておるわけでございますが、これは銀行系クレジットカードという限りは銀行が主体で、五〇%以上の持ち株比率を持っておる。しかも、その会社がたとえ広告であるにしろ、いわゆる割賦販売のあっせんをいたすということは割賦販売法にひっかかりませんか。この点を明確にお答えいただきたいと思うのです。
  211. 山口和男

    ○山口政府委員 割賦購入あっせん事業の場合には、一定の所定の証票を利用者に交付いたしまして、その証票を利用して物品を購入した場合に分割して支払いができるということになっておりますので、その証票、いわゆるチケットを媒体として行われない場合には購入あっせんということにはならないわけでございます。  クレジットカードの場合には、これは割賦支払いではございませんので、その点は証票を通じて割賦が行われるかどうかというところに差があるのじゃないかと思います。
  212. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 たとえば一例でございますが、ここにAならAというクレジットカード会社から封筒で送られてきまして、たとえばこういう水入れなら水入れという物品を割賦で販売いたしますという場合、その申し込みはAというクレジット会社に申し込んで、Aというクレジットカードを使って購入の支払いをする。それがたとえば一万円でございましたら十カ月で月千円ずつ預金口座から支払われる。これは割賦販売ではないのですか。これは少なくともあっせんであり、クレジットカード会社のカードを使いまして申し込みがクレジットカード会社であればあっせん事業だと思いますが、その点はいかがですか。
  213. 山口和男

    ○山口政府委員 そのクレジットカードそのものが割賦の支払いを意味しておるということになりますと、先生御指摘のように、これは割賦購入あっせん業の疑いがあるということではないかと思います。したがいまして、JCBカード等にいたしましても、それがそういうように利用されるということになりますと非常に問題があるのではないかと思います。
  214. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そういう場合に、はっきりこれをその業務に従事させるならば少なくとも登録か必要であろうと思いますが、登録されていない、未登録である場合にはそのようないかがわしい——いかがわしいと言っては失礼ですか、疑われるようなあいまいな業務はひとつ注意をいたしてほしいと思いますが、もう一つ伺いたいのは、そういうクレジットカード会社と一部の大型店舗、たとえば百貨店などが契約をいたして、AならAというクレジットカードを持ってまいればその百貨店では割賦販売がいたせるという事実は現在まで全くございませんかどうか。
  215. 山口和男

    ○山口政府委員 やや問題になるようなケースが過去まれにございましたものでございますから、そういったケースが生じました際に、当該クレジット会社を指導いたしまして、そういうことを取りやめるようにということをやった経緯がございます。
  216. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 その点は、もしそういうことがございますというと、一般の小売店の皆さん方がせっかく相互扶助を前提として協同組合等をつくって消費者利益にも貢献をいたしたいという活動があるのに、それを大いに圧迫すると思いますので、厳重に注意をしていただきたいと思います。  ただ、もう一つ伺いたいのは、現在の銀行系クレジットカードではなくて、全くの銀行カード、いわゆるバンクカードと申しますか、このバンクカードで一部百貨店等大型店と契約をいたしまして、支払いは一時銀行が立てかえるという形になりますか、その辺の支払い状況はよくわかりませんが、バンクカードが一部の契約百貨店等で使用できるという実態はありましたか、ありませんか、伺いたい。
  217. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘のように、金融機関の発行しているキャッシュカードが一般の百貨店におけるいわゆるお買い物カードと兼用になっているというような形態をとっている場合は、若干実例としてございます。
  218. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 その場合、クレジットカードも銀行出資がそれだけ多いわけでございますし、また、キャッシュカードとなりますと、銀行がそのものを出しておるわけであります。  いまのは割賦ではございませんが、ほかの百貨店で物を買えるとか、あるいは百貨店とかそのほかの一般の契約店舗で割賦販売ができるような疑わしいあっせんをいたすということは少なくとも銀行法第五条の他業禁止の規定に抵触する疑いがあると感ずるわけでありますが、この点はどうお考えになりますか。
  219. 徳田博美

    ○徳田政府委員 いまの先生の御指摘のケースでございますが、このような銀行のキャッシュカードと百貨店のショッピングカードを兼用した場合における銀行の役割りでございますけれども、その場合にはあらかじめ銀行に提出されました預金者、つまりこの場合には百貨店の顧客になるわけでございますが、そこから提出されました預金口座振替依頼証の約定に基づきまして買い物代金の預金口座振替決済が行われるわけでございますので、銀行の行っている行為自体は銀行法に違反しているものではない、このように考えられます。  しかしながら、問題はそのようなキャッシュカードとショッピングカードを兼用したカードの発行形式にもございまして、完全にその金融機関と百貨店とが共同して一枚のカードを作製するというような行為につきましては、これは銀行法上は問題があるかどうか、さらに検討してみる必要があると思いますけれども、少なくとも現実面の運営としては必ずしも適当とは認められませんので、そのようなカードの作製はしないように現在指導しております。
  220. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 時間が参りましたので、最後に要望を申し上げておきます。  現在までも、クレジットカード会社との割賦購入あっせんあるいは、に類すると思われるような感じが残っておりますし、それから先ほどのお答えでも、クレジットカードと某大型店との間で契約があって割賦販売ができるというような類似行為が過去にあったということでございますので、今後はこれを厳重に注意していただきたいのと、また、銀行系クレジットカード会社が今後割賦販売に進出するために登録をいたして進出するという動きもあろうかと思いますが、これは、今度の分野法の精神と抵触いたしまして小売商業方々に大きな影響を及ぼすおそれがある場合には慎重に審議をいたして、軽々にこの登録を認めて小売商を圧迫することのないように私は厳重に要請をいたしておきたいと思うわけでございます。  お時間で済みませんが、この点産政局から一言御意思のほどを伺って質問を終わりたいと思います。
  221. 山口和男

    ○山口政府委員 ただいま御指摘のございました割賦購入あっせんにかかわる大企業の進出問題、特に銀行系クレジットカード会社の進出問題につきましては、割賦販売法の第一条に特に第二項がございまして、「中小商業者の事業の安定及び振興に留意しなければならない。」という規定もあるところでございまして、十分にその辺を解しながら、この問題につきましては従来からいろいろ問題が起こらないように行政指導いたしてまいっておりますが、今後とも慎重に対処してまいりたいと存じます。
  222. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 終わります。
  223. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 板川正吾君。
  224. 板川正吾

    ○板川委員 政府提出の中小企業事業活動調整法ですか、これについて政府と公取に若干質問をいたしたいと思います。  実は、ある新聞の報道に、野党は独占禁止法を改正して競争政策を促進しようという主張をしておりながら、他方では中小企業分野法を提案して逆に競争を制限しようとしておる、これはまことに矛盾した態度ではないかという報道が実はなされたことがございます。実は、この意見は一見ごもっとものようでありますが、全く誤解もはなはだしい意見だと思うのであります。私どもは、長年この法律の制定を推進してき、あるいは成立を望む立場としてこうした誤解を解消させたいという気持ちから、主としてこの問題に関連したことについて若干の質問をいたしたいと思うのであります。  私どもが独占禁止法を強化しようという根拠も中小企業分野確保しようという理念も同一の理念から発想されているのでありまして、少しも矛盾しておるとは考えていないのであります。その意味から質問いたしますが、これは中小企業庁長官に伺います。  本法案の制定の過程で一番苦心したところは、憲法が保障する公共の福祉の要請と営業の自由をいかに調整するかという点にあったと思うのでありますが、この点についてどういうふうにお考えになっておられますか。
  225. 岸田文武

    ○岸田政府委員 憲法では御承知のとおり営業の自由をうたっております。ただし、公共の福祉に反しない限りにおいてという条件がついており、これをどう理解するかということか、いま御指摘になりましたように大企業の進出問題についての考え方を整理する一つの大きなポイントであろうと思っておるところでございます。  私どもの理解といたしましては、大企業であるとあるいは中小企業であるとを問わず、やはり日本経済の中において活力のある存在であってほしい、しかもその活力の源泉というのは、いい意味での競争というものが行われることが有効な刺激剤になる、こういうことは一般論としてある意味では当然のことかと思っておるところでございます。ただ、現実にそういう理想的な形ですべての問題がうまくいくかということになりますと、現に問題になっております大企業が突如として中小企業分野へ進出して、それによって中小企業が大きな打撃を受けるといった場合には、やはりそれなりの対応策をとることが長い目で見ての公共の福祉につながるという理解のできる場合もあるし、また、現にそういう事例が起こっておるのではないかと思うわけでございます。  中小企業方々が長年経営してこられたいわば営業資産が無効になってしまう、そのことの結果として設備がむだになり、あるいは労務者の訓練がむだになる、こういったことは一面では社会問題であると同時に、経済的にもやはり国民経済的にロスが生ずるということになろうかと思うわけでございます。一方でいい意味での競争というものを生かしながら、他方で競争のもたらすある種の弊害というものを除去していき、それによって新しいルールをつくっていくということがこの法律に与えられた課題ではないかと思っておるところでございます。
  226. 板川正吾

    ○板川委員 今朝来経済の活力ということが非常に強調されているのですが、経済の活力ということを言うときには大企業の活力を念頭に置いておるのですね。日本経済を支えている企業の活力というのは、大企業にも活力がなくちゃならぬけれども、それよりも大事なのは、やはり、大きな分野を占めている中小企業の活力も守ってやらなくちゃならないことだと思います。  そこで、次に伺いたいことは、社会党が昭和三十九年来提案してまいりました中小企業分野確保に関する法律とこの法律との根本的な差異ですが、その違いというのはどの点ですか、念のために伺います。
  227. 岸田文武

    ○岸田政府委員 細かく対比すれば幾つかの点が挙げられると思いますが、私どもが立案の過程におきまして特に社会党の御提案と対比しまして議論の的になりましたのは、いわゆる業種指定の問題であったかと思っております。
  228. 板川正吾

    ○板川委員 私どもが提案しておりましたのは、業種指定が大きな柱であります。今度の政府案を見ますと、政府案はいわば受け身で、紛争調整、予防的な機能だけにとどまっております。社会党の案は一種の経済秩序的なものを持っております。経済秩序法とまで言わないにいたしましても、経済秩序的な一つの基盤を発想としておる点が大きな違いでありますが、この業種指定がなぜ取り入れられなかったのか、その間の理由を伺いたいのであります。  実は、私どもも、業種を指定したらその業種が永久に指定業種になっているということであるべきじゃないと思っておった。十年なら十年の期限を限って業種を指定をして、そして十年近くなったら見直しをして、存続すべきなら存続すべきだし、打ち切るべきなら打ち切るということであれば業種指定も可能であったんじゃないだろうかと思います。また、同時に、業種を指定するということは、その業種の分野を幾分狭くして、同時に公共の福祉の観点から厳しく規制はできるという考え方があるわけでありますが、業種を指定しない一般的な規制方式ですとどうしても厳しく制約ができない。こういう点が政府案とわれわれの方で出しておった案との大きな違いだろうと思うのでありますが、業種指定をしなかった理由はどこにありますか、それを伺いましょう。
  229. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも、この法律の骨組みを考えますときに、どういうやり方が適当であろうかということで非常に議論をいたしたわけでございます。すでに各党案の中に業種指定という構想が盛り込まれておる、これに対してどう考え、どう受けとめるべきかということが私どもとしても大きな課題であったわけでございます。  ただ、いろいろ議論をいたしてみますと、一つは競争政策上の問題がございますが、別途実務的に見ましてどういう業種を指定するかという明確な基準が得られないで、ここが実際問題としては非常に大きなネックでございまして、そういった議論の結果採用は適当でないと考えたわけでございます。  実務的な問題ということを申しましたが、正直に申しますと、大企業が一体どういう分野へ出てくるのか、どういう出方をしてくるのか、それの見きわめがつけばあるいは業種指定が可能なのかもしれませんが、過去の経験からいたしましても、予想もできない分野へ予想もできない形で進出してきております。したがって、まずこういった面での業種指定の難点が出てまいりました。  さらに、それをある程度カバーするために少し割り切って、たとえば中小企業の出荷比率が一定比率以上のものを採用するというような整理の仕方はできないかということでの勉強もいたしてみました。中小企業の出荷比率が七割以上の業種というものを一応とりまして業種数を数えてみますと、製造業全体で四けた分類で五百四十七ございますが、いま申し上げました七割以上の出荷比率のものだけで三百二十七、全体の六割余りに相当するわけでございます。それらの業種について一々大企業の活動をチェックし、これはいいとかこれは悪いとかいうようなことは実務的にも不可能でございますし、また、それの仕分けが済むまでは経済活動をストップさせるということは経済全体の効率から申しましていかにも問題があるのではないかと考えたわけでございます。  さらにもう少し補足をいたしますと、もっとしぼったやり方はできないかということで、出荷比率が九割以上の業種というような線の引き方も考えたことがございました。しかしながら、それで線を引きますと、過去いろいろ問題になった事例の中でその線の引き方に合致するものはむしろ少数でございまして、それでは現実に起こった問題をカバーできないということが経験上明らかになったわけでございます。  社会党の御提案ではたしか業者数で五分の四でございましたか、出荷数で三分の二というようなことが要件に書かれていたかと思いますが、仮に三分の二ということになりますと、先ほど例示に挙げました七〇%という比率よりももう少し大きな業種がカバーされなければならないということになりまして、いずれにしてもやはり実際問題としての困難に遭遇するのではないかと、私どもは実務を担当しております立場からそういうふうに考えた次第でございます。
  230. 板川正吾

    ○板川委員 この政府の事業分野調整法ですか、略称いたしますが、この案はどうも営業の自由という点に重点が置き過ぎてあり、公共の福祉というものを実は軽く見ている感じがするわけです。  そこで、お伺いをしますが、憲法が保障する公共の福祉という概念について政府は一体どのような見解を持っておられますか。この立法に当たって公共の福祉ということをどういうように考えておられたか、その点を伺いたいと思います。
  231. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のごとくに、法人、個人を問わず自由というものは同時にまたそこに憲法上の一定の制約があり、社会生活を営みます者といたしまして、生きとし生けるものがすべてそこに自己の存立の主張をいたす場合におきましても、社会共同の生活から参ります制約があることは当然でありまして、そこに本当の自由がある。それを越えます場合におきましては社会に害毒を流し、同時に自滅の道にさえ落ち込む可能性がある。こういうことから申すならば、通産行政の対象になっております企業というものはみんな生き物であり、そして自活能力を持ったものであって、そしてそれは自己の創意と工夫と活力を持って伸びていくものでありまして、通産行政というものは、その活力を持った企業体に対してわれわれがいかにしてその自助努力に対する協力をしてあげるか、側面からいかに幇助するか、同時にまた非常にむずかしい段階においてはそれをいかに伸ばすか、あるいはまた過剰な場合にはそれをいかに制約するか、そこに本当の意味の通産行政というものの特色がある、かように私は信念を持っておるのでございます。  そういう点から申しましては法人がやはり同様でございまして、その場合におきましては一応の憲法上の制約を受け、同時にまた大企業が余りにもその強大な力でもって横暴をいたす場合におきましては、特に構造変化の厳しい現時点におきましては、通産行政というものは弱きを助けるという、一つの自助努力を助けてあげて救ってあげる、守ってあげるというのが中小企業に対します行政の根本理念だろう、かように私は思っておるのでございまして、それをいまの長官のお話に補足いたしまして私から一言お答えをいたしました。
  232. 板川正吾

    ○板川委員 実は、この法律をつくる上において公共の福祉という概念をどう理解しておられたかという質問をしたわけなんでありますが、先ほど言いましたように、この法律は公共の福祉をどう理解し、営業の自由というのをどう理解するかという、それの理解の仕方によってこの調整の仕方が違うわけであります。大臣が学校で習ったときは明治憲法でしょうから公共の福祉という言葉はなかったと思いますが、現行の日本国憲法では御承知のように十二条、十三条、二十二条、二十九条の文理からして、営業の自由というのはいずれも公共の福祉に従うという原則になっているわけですね。だから、企業の活力も営業の自由ということもやはり公共の福祉を書してはいけないという憲法の要請があると私は思うのです。  宮沢俊義教授の説によりますと、「公共の福祉とは各人の人権を実質的公平に尊重すべきものとする原理であり、各人に人間的な生存を保障しようとする社会国家的公共の福祉を意味する。」と言っておりますね。そして、「私有財産の絶対化が多数の国民の窮乏化をもたらす傾向があることは、過去の経験によってあまりに明らかである。この欠点を直すのが、ここでの公共の福祉の狙いでなくてはならず」と、こんなことを言っておりますが、この説にありますように、私有財産権あるいは営業の絶対的な自由——この営業の自由というのは大体大企業に都合のいい自由でありますから、そういうことが結局多数の国民の窮乏化につながってきたという過去の歴史があると言って、公共の福祉というものを優先する考え方に立っておるわけであります。ですから、日本国憲法は営業の自由というものを無条件に認めているわけではないのでありまして、公共の福祉が優先するということを理解してもらいたいと思います。     〔山崎(拓)委員長代理退席、中島(源)委     員長代理着席〕  そこで、公取に伺いますが、独禁法は御承知のように公正な競争確保すると同時に公共の福祉を守るということが原則になっておるのでありますが、そういう意味で独占的な大企業の活動を規制しているわけであります。ですから、御承知のように、独禁法の中では、今度の法律でも大企業の行き過ぎをチェックすることが可能となりますし、また、経済的な優越した地位を乱用してはいけないという規定もあるわけであります。大企業中小企業分野に進出していくということは公正な競争阻害するし、また、経済的な優越した地位を乱用することにもつながると思うのであります。ですから、今度の中小企業分野法と言われるものは独禁法と同じとは言いませんが、経済秩序的なもので、それから公共の福祉を守る上において大企業の行動を規制しようという考え方でありますから、ある意味では独禁法の理念と一脈共通するものがあると私は思うのでありますが、公取委員長はどうお考えですか。
  233. 澤田悌

    ○澤田政府委員 ただいまの御質問は、実は考えようによっては大変むずかしい基本的な問題に関するように思います。それで、おざなりな答弁を申し上げては失礼でありますから私の私見を申し上げて御批判をお願いしたいと思うのでありますが、大企業中小企業も独占禁止法上の事業者でございまして、一般消費者に対して商品なりサービスを提供しておるものでございます。したがいまして、この両者が互いにその特色を発揮し合って共存共栄して、公正な競争のもとに一般消費者利益確保するということに相なりますれば独禁法第一条に掲げる目的にかなうわけでございまして、御指摘の公共の福祉にもかなうわけでございます。そして、もし大企業が不当な手段を用いて中小企業事業分野に進出するというような場合には、独占禁止法を厳正に運用してこれを排除するということは申すまでもないのでございます。  ところが、私は、この分野調整問題の経過を考えてみますと、資本や事業規模において優越しておる大企業中小企業分野に進出することそれ自体が問題であるということ、逆に申しますと大企業中小企業の間には自由で公正な競争ということは元来あり得ないのだというような考え方が色濃く入ってきておるようにも思えるのでございます。そこに独占禁止法によって——これはいわゆる競争法でございますが、その競争法によって問題を解決する場合のむずかしさというものがありますし、この分野調整問題はやや次元を異にするのじゃないか、一つの立法政策の問題にまで発展しておるという問題があるのじゃないかというように私は思うのであります。  そこで、大企業といえども、正当な手段で市場に新規参入することをどこまでも制限するというのは公正かつ自由な競争の促進を目的とする独占禁止法の観点から見て原則的に好ましいとは言えないのではないかという、そういう考え方との調和をどうするかということが非常に重要になってまいるわけでございますが、私は、現在、公共福祉を考えて大企業の進出を抑制して、中小企業を守って大企業中小企業の調和を図るというメリットを認めるわけでございます。同時に、また、独占禁止法の競争理念を越えた立法政策の問題という面もあるということも考えて、かつまた独禁法体系にも入っております弱者保護の精神ということにも十分かんがみて、さらに中小企業保護対策の意味合いにおきまして、こういう問題についてのある程度の統制的施策は独禁政策上の観点からもやむを得ないものがある、こういうふうに考えざるを得ないのではないかと思うのでございます。  したがいまして、私は、分野調整問題の考え方がすべて独禁法の理念と矛盾しないとか矛盾するとかいうふうに断定してしまわずに、競争法と統制法の接点にある非常に重要な問題であるから、どの程度の施策がそのときの実態に即して大事なのであるかということを常に念頭に置いてこの問題に対処するという姿勢が最も大事ではないか、こういうふうに考える次第でございますが、これは私の私見でございますので、いかがなものでございましょうか、御批判をいただければと思います。
  234. 板川正吾

    ○板川委員 この議論はまた機会を改めて伺いましょう。しかし、独禁法が公正な競争を維持する、それから公共の福祉を守る、あるいは優越した経済的な地位の乱用は禁止をするという、こういう理念から大企業中小企業分野に無条件で入ることは好ましくないといって規制しようとするのですから、その意味では一脈共通なものがある。私はイコールとは言っておりません。そういう点でほぼ私の主張の理解もされていると思います。  実は、あと三分しか時間がございませんが、第九条の一時停止命令に従わなかった場合の罰則が公表にとどまっているのは、先ほどから質疑もありましたように、すでに公知の事実を公表したって実は罰則に合っていないという意見もございました。これは罰則を強化することに応ずる用意はあるわけですね。改正、強化、修正することに……。
  235. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは、基本的には、いま御提案申し上げております勧告、公表というやり方がルールとしては適当であるし、かなり十分な効果を上げ得るというふうに考えております。  ただし、先ほど来のお話のように、各党で一致してぜひそういうふうな強化を図るべきだというような御意見が出てまいりますれば、これは私どもの判断を越えた高度の政治的な問題として受けとめる考え方でございます。
  236. 板川正吾

    ○板川委員 次に、二条の「定義」について若干伺います。  この二条の「定義」によりますと、中小企業者とは「資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、工業、鉱業、運送業その他の業種に属する事業を主たる事業として営むもの」という規定がございますが、この中に消費協同組合、農協というものは当然入っていないと理解してよろしいですね。何かちょっと誤解もあったように伺っておるものですから、その点をもう一回明確に答えてください。
  237. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この条文で書いております大企業の中には、いまお話がございました生協、農協は含まれておりません。それぞれの根拠法規によって規制されておるということが主な理由でございます。
  238. 板川正吾

    ○板川委員 もう一点、大工、左官などの職業の方から業種指定をしてほしいという要求がありましたが、当然本法の対象になりますね。
  239. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この条文をごらんいただけば、適用除外業種は非常に特定をして列挙されております。建設業はこの法律対象になると理解をいたしております。
  240. 板川正吾

    ○板川委員 もう二、三ございますが、時間となりましたので私の質問は終わります。  ありがとうございました。
  241. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 清水勇君。
  242. 清水勇

    ○清水委員 限られた時間ですから、できるだけ具体的な問題でお尋ねをすることにいたしますが、いま制定されようとする法律は言うまでもなく実効性のあるものでなければならない。したがって、そのために必要な修正に政府が同意をすることあるいは法律運用ということが非常に重要な課題になると思います。そういう意味でできるだけかいつまんでお尋ねをしたいと思います。  もう今日の段階になると総論的なことを改めてお尋ねしても仕方がありませんので、いま申し上げたような角度で御質問をするわけでありますが、一つだけ、その前提として、これは大臣からもはっきりさせておいてもらいたいと思いますが、言うまでもなく本法制定の目的は中小企業事業活動機会確保にある、つまり私どもがかねて申し上げてきているような中小企業事業分野確保にある、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  243. 田中龍夫

    田中国務大臣 冒頭に私に対する原則的な御質問でございますのでお答えいたします。  仰せられるように、中小企業企業活動というものを確保する、かような立法の根本趣旨でございまして、大企業の、なかんずく構造変化に基づく社会的な一つの要請といたしまして中小企業を守っていかなければならない、かような意味を持ってここに立法をいたした次第でございます。
  244. 清水勇

    ○清水委員 それでは、そういう前提に立って中小企業庁長官にお聞きをしたいと思います。  そこで、大企業の進出についてなんですけれども、一体どういう進出は許されるのか、あるいはどのような進出は調整対象または規制の対象になるのか、そういういわば本法にひっかかるとかひっかからないとかいう基本的な問題について判断の基準をどのように求めていくというふうに考えておられるのか、まず、最初に簡明に聞かせておいていただきたいと思います。
  245. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大企業の活動におきましては、やはり、大企業日本経済の中において果たすべき役割りというものに応じまして、その期待に応ずるような活動が望ましいと思うわけでございます。もう少し砕いて申せば、国民が希望しておりますところの、よりよいものをより安くより安定的に供給してほしいという希望に合致するような経済活動が基本としては望ましいかと思っております。ただし、そのような活動におきましても、大企業が持っております社会的責任ということを絶えず念頭に置いて活動してもらうことがいわば要件になろうかと思います。  この意味からいたしますと、たとえば環境問題への配慮であるとか中小企業問題への配慮とか、こういった摩擦を起こさないような形で先ほどのような社会的要請にこたえる進出、これが望ましい進出になってくるのではないかと思います。
  246. 清水勇

    ○清水委員 大企業が進出をしようという場合に、技術の革新というものをその前提的な立場にしながら出てくるようなケースが多いと思うのです。しかし、ここで考えてみなければならぬのは、技術の革新という点については当然中小企業の場合にも日常不断に腐心をしているわけです。また、国の中小企業振興政策といったようなものを通して、たとえば大企業の持つ技術を中小企業が受け入れられるような素地を持っている場合には、国が技術の移転政策といったようなものを積極的に促進する、そういうことを通しながら大企業が並みの技術を中小企業確保する、こういうことのために国が努力をすることは当然だと思うのです。  そういう両々相まっての努力を通じてやることが必要だが、たとえば大企業者中小企業者の技術レベルが同程度といったような場合に、無理に大企業者中小企業者を転廃業に追い込んでしまうような進出をすることは、先ほど来長官も述べておられるけれども、設備がむだになるだけではなしに、経済的なデメリットというものが非常に大きいんじゃないか、そういう意味での大企業の進出というのは、言葉をかえて言えば経済的なデメリットしか残さないのじゃないかということも考えられるわけですが、こうした点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  247. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これからの経済情勢の中で中小企業がその経営を安定させ、さらに発展をさせていくということのためにはやはり従前にも増したいろいろの努力が必要であろうかと思っております。なかんずくいまお話ございました技術の面というのは、とかく中小企業は従来技術は他人任せというような面がありましただけに、これからは特に重視していかなければならないファクターではないかと思っております。  この面につきましては、従来から中小企業自身の技術開発のために特別の補助金も用意をいたしております。また、特別の融資制度も用意をいたしております。また、中小企業に身近な指導機関として、都道府県にあります技術指導諸機関に対するいろいろな助成も図ってまいりました。さらに五十二年度予算におきましては、従来のように自分自身で技術を開発するというだけではなくて、大企業がいままで持っております技術を買ってきまして自分なりに翻訳をして生かしていくとか、こういう面の新しい応援も補助金面あるいは金融面でスタートさせた次第でございます。  しかしながら、これからのことを考えてみますと、中小企業なるがゆえに技術の面ではもう劣っているんだというふうに一概に決めつけることは適当でないと私は思っております。すでに、先例におきましても、中小企業ならではという技術を身につけて、市場の中で独特の地位を持っておられる企業が現にございます。また、これからの世の中はいわば個性化した商品、ほかの人の持っていない商品ということが消費者の大きな欲望になってくる。そうだとすれば、やはり中小企業なりに新しい分野が開けてくるという面もあろうかと思っております。私どもこれから中小企業政策を考えていきます場合には、そういった個性を備えた中小企業、大企業に伍しても堂々と自分の力を示せるような中小企業をぜひ育てていきたいと思っておるところでございます。  先ほど、同じような技術を持っておるときには、かえってそういった場合には出てくる必要もないのではないかというようなお話もございましたが、同じような技術と言いましてもいろいろの形があると思います。中小企業がそれで一応平穏にやっているときには、特にそれがその分野へ同じような技術で出てきて、そのために中小企業がばたばた倒れるというようなことは余り好ましいことではないと思いますが、また別の出方として、本当に新しい技術を身につけて出てくる、しかも中小企業と一緒になって中小企業業界も潤うような形で共存共栄する、こういう形もあり得るわけでございまして、この辺は大企業がこれから自分経営を考えるときに、先ほども申しましたように中小企業立場も考えて経営をするというようなやり方が身についてまいりますれば少しずつでも改善できる問題なのではないかと思っておるところでございます。
  248. 清水勇

    ○清水委員 いまの答弁でほぼいいと思います。しかし、どうも最後の部分が少し引っかかるような感じですので念を押しておきたいと思うのですけれども、実際問題として、中小企業それ自身が技術的にも新しい開発のために努力をして、そのことを通して技術の革新を促しながら全体として消費者へのサービスも大きくしていく等、こういうような努力をしながら一定の分野を営々辛苦して確保しているというようなときに、同程度の技術で大企業が進出をするというようなことは、先ほど長官が言うような、つまりいたずらに中小企業者との摩擦を呼び起こす以上の何ものもないのじゃないか。したがって、そういう点についてはやはり運用を通じて厳格に対処してもらわなければならないというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  249. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま思い出しましたのがモヤシの例でございます。モヤシのような分野でございますと、技術といっても特別な技術があるわけではございません。そういった分野におきまして大企業が大規模な進出をし、それが中小企業の将来の生命にかかわるというような影響を及ぼすということは私どもとしては望ましいことではないと思っております。
  250. 清水勇

    ○清水委員 そこで、次にお尋ねをしたいのですが、大企業の進出のケースというものは多種多様だと思うのです。現在までに大企業中小企業者との間に起きているたくさんの紛争例がございますが、二、三について指摘をしながら見解をより具体的にお聞きをしたいと思うのです。  まず、最初に、サービス業で特徴的なケースとしては三越の葬祭業への進出があると思います。率直に言って三越が葬祭業に進出するというのは一体どういう意味があるのかと考えるのですけれども、平たく言って三越自身の持つネームバリューと大きな資本力を背景にしているにすぎないのじゃないか。三越がこの業界に進出をするというようなことを通して特別に技術の革新なんというようなことがあるはずもありませんし、あるいは需要が新たに喚起をされて、そのことを通して消費者利益の増進が促されるなんというようなことも考えられないところでありますが、問題は、現在通産省も仲に入った形で、日本橋店だけに凍結をされているという状況なんですけれども、これは本法が成立をすれば当然何らかの形で始末をしていかなければならない。つまり、調整を余儀なくされるという事例になるのじゃないかと考えるわけなんですが、この点について法制後何か調整というものを予定されているのかどうかお聞かせいただきたいと思います。
  251. 岸田文武

    ○岸田政府委員 葬祭業の問題は、いまお話がございましたように、三越につきまして本店どまりということで一応の決着を見ております。したがいまして、そのままの状態で今後推移するのであれば、今後新しい立法をいたしましても特別の措置は必要がないのではないかと思っております。別途さらに他の企業におきまして大規模な進出が起こったときにこの法律の適用にはなり得ると考えております。
  252. 清水勇

    ○清水委員 その場合に、いま私が申し上げたように、たとえばデパートが葬祭業に進出をするときに、一、二、三と具体例を挙げて、技術の革新も需要の喚起も消費者サービスもそこから特段に新しく出てくるはずがないというような進出について、具体的に調整対象となるような場合に一体どのような立場で臨まれるのか、考え方があったらひとつお聞かせを願いたいと思うのです。
  253. 岸田文武

    ○岸田政府委員 問題は、大規模な進出によりまして中小企業の数多くの方々に大きな影響を加えるかどうかということがチェックポイントであろうと思います。  御指摘のように、従来の技術のままでという場合は当然のことといたしまして、多少新しい技術が加わっております場合におきましても、それが非常に大きな影響を与える、それに対して中小企業が対応するいとまもないうちに大打撃を受けるというような場合にはやはりこの法律調整対象になり得るというふうに理解をいたしております。もちろん、その間にありまして中小企業自身が技術開発の努力を重ね、あるいはお互いに力を合わせて対抗するような形まで高められていけばそれは一番望ましいことであろうと思っておるところでございます。
  254. 清水勇

    ○清水委員 次の例は、これまた代表的な紛争の例であった軽印刷の関係についてお尋ねをしたいわけであります。  大日本印刷のキュープリントをめぐる紛争についても、私の考えでは、ひとまず本法制定まで凍結をされているというような感じに受け取られるわけなんでありますが、その辺のところも具体的に、そうであるのかどうなのか聞かせておいていただきたいというふうに思います。  さて、そこで、いまたとえば軽プリント業界に大日本印刷のダミー会社が進出をする。その進出に当たっては新しい技術といったようなものを導入しながら、いわば経済的な効果を増幅していくようにしたいというようなうたい言葉があるようでありますが、しかし、長官も御存じのように、軽印刷業界というものは、戦後三十年余りにわたって、例のガリ版屋と言われる謄写版から始まって、今日ではコールドタイプシステムの導入といったような、そういうみずからの努力あるいは国の構造改善事業という面での援助も含めながら、ともあれ新しい技術を開発し、また、近代的な技術革新をなし遂げながら今日のような一定の分野というものを築き上げてきているわけなんですね。いまの大日本印刷のダミーであるキュープリントが既存の軽印刷業界における技術水準にまさるというふうにはとうてい思えないわけなんでありますが、キュープリントの進出は単に業界を混乱に陥れるにすぎない、あるいは全国何百軒というフランチャイズ制をとることを通して大日本印刷の利益拡大しようということ以上の何物でもないということだとすると、国家的な立場で見て、日本経済という視点で見て、大企業が軽印刷業界に進出をするということはメリットは少しもないじゃないかというふうに考えられるわけであります。  たとえば本法制定後、今日の凍結という状態からまた新しい進出というような動きが出てきた場合、当然これが紛争となり、あるいは調整対象になっていくのではないかと考えるわけなんでありますが、そうした場合に、つまり調整をどうするかといったような場合に、いま私が申し上げたような意味での大企業の進出のあり方というものをどうチェックをしていくというのか、どう調整をしていくというのか、一定の基準があってしかるべきではないかと考えるわけなんでありますが、その辺はいかがでしょうか。
  255. 岸田文武

    ○岸田政府委員 軽印刷の問題についてお触れになられましたが、軽印刷に関する協定は一応三月が一つの区切りになっておりましたものの、お話がございましたように、この法律が制定されるまで一応自動延長されておるという形でございます。私はあれを見ておりまして従来の方式に比べますと、やはり新しいものを持っておりますものの、しかし、その新しいやり方で直営店をどんどん広げていっては既存の業界に対して大打撃を与えるということから、主務官庁が間に入りまして、直営店二店に限り、その他はフランチャイズチェーン方式をとるということにおさまったわけでございます。  私は、やはり、中小企業者自身が一つのチェーン組織を持ち、そこに大企業が開発したかもしれませんが、新しい技術を入れて需要家の要望にこたえていくということ自体は結構なことではないかと思っておるところでございまして、いまのような形で進んでいくことが一番望ましい姿ではないかと思っておるところでございます。  いまのお話の中に、これらいろいろいまお示しになりました問題について共通の物差しはできないかという点の御指摘がございましたが、正直に申しますと、従来私どもが手がけた案件案件ごとにやはり背景が違っておりますし、問題点が違っておりまして、共通の物差しということはなかなか簡単にはできにくいような感じがいたしておりますものの、これからさらに経験を積んでいきまして、こういう先例もあった、ああいう先例もあったというようなことについて考え方の整理ができましたならば、それが少しずつルール化していくというような関係になるのではないかと思っております。
  256. 清水勇

    ○清水委員 さらに関連してちょっと尋ねておきたいのですけれども、たとえば軽プリント業界の場合には、その全国的な工業会組織などを通して不断に技術の開発とか革新に努めている、あるいは業界というネットワークを通して一定の協業化ができる部分などは協業化をする、こういう形である程度かなり進んでいる状況をつくり出しているわけですね。どう見ても、大日本印刷が大企業なるがゆえにと言ってみても、それ以上の技術水準を今日的に求めることは困難なんじゃないか。そうだとすれば、営々辛苦三十年の長きを通して一定のシェアを確保してきている中へただいたずらになだれ込んでくるということは、摩擦を増幅したりいろいろな意味で混乱を起こす以外の何物でもないのじゃないか。ですから、そういう点については印刷業界なんというのはそう複雑じゃないのです。また、ケースがたくさんあるわけじゃないのです。ケース・バイ・ケースによって判断するというようなものではないと私は思うのです。  ですから、これはむしろ一定の物差しをつくって、単純明快にある程度調整のあり方を考えていくということがどうしても必要なんじゃないかと思うが、そういう点について検討をするつもりがあるかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  257. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話がございましたように、軽印刷業界は、まさに自分自身の体質を改善するという心組みで現に組織をつくり、そして組織の力で近代化に努力しておられます。私どもも町を見ておりまして、中小企業方々の新しいチェーンがかなりふえてきたということを感じておるところでございます。  いまお話の中にルール化を急ぐべきではないかという点のお話がございましたが、先ほど来申しておりますように、いまの段階では一つのルールをつくるというようなところへ行くにはまだまだ時間がかかるのではないかと思っておるところでございます。  ただ、そのルールができるまでの間どうだという点で重ねて御質問があろうかと思いますが、私ども見ておりまして、一つの業界で非常に大きな問題が起こったときには、その決着というものを同業の他社は非常に気にし、注目をしておるところでございまして、もう一度ああいうようなトラブルを起こすことは大企業立場から言って避けるべきことであるという認識は最近非常に広まってきておるのではないかと思っておるところでございます。
  258. 清水勇

    ○清水委員 次に、豆腐関係についてお聞きをいたしますが、いま現在では森永が日産一万五千丁という水準で凍結をしています。長官、この法制後これは一体どうなるのですか。凍結が解除されるということになるのでしょうか。まず、その点をお聞きしたいと思います。  そして、続けて申し上げますが、森永では大量生産による廉売といったものを通しながら、森永としてのスケールメリットといいましょうか、企業利益をどう確保するかということのために豆腐業界への進出を行ってきつつあるのじゃないかというふうに私は見るわけなんであります。現に生産されている豆腐は、たとえば食品衛生センターなどの分析によっても御承知のように、栄養価や量において町の豆腐屋さんのつくる手づくりの豆腐と比べて見劣りがすると言われているわけでありますから、そういう面あるいは、中小というよりもまさに零細規模の豆腐屋さんに現に大変な悪影響を及ぼすであろうと見られる面、こういうものと両々相まって観察をした場合に、仮にこの法制がなされた後において再びこの種の問題が出てきた場合、たとえば消費者利益という点から見ても、あるいは既存の中小企業者がどうなるかという点を見ても、その進出はまことに不当と言わなければならない性質のものだと思うわけでありますが、調整を余儀なくされる場合にどのような観点でこれが調整に当たられるのか、考え方がありましたらお聞かせを願いたいと思います。
  259. 岸田文武

    ○岸田政府委員 豆腐の問題は主として主務官庁たる農林省の御判断にまつ問題でございますが、私ども見ておりまして、大企業中小企業、特に零細企業の問題と別途に機械化豆腐対手づくり豆腐の二つの問題が入り組んでおりまして、頭の整理がなかなかむずかしい問題があるような気がいたしておるところでございます。  しかし、それは別におきまして、森永につきましては一応一万五千丁というラインで話し合いがつきまして、いまのところ平静に推移をいたしておるわけでございます。そのままの形であれば当分問題が起こらないと思いますが、別途これが大規模な拡大が図られるということであれば、それはまた別の問題としてこの法律対象として処理する問題が起こり得ると理解をいたしておりますが、それはそのときにおける進出の程度、内容にかかっておるのではないかと思うわけであります。
  260. 清水勇

    ○清水委員 いまの答弁の中で長官は、大企業中小企業という争いであると同時に機械豆腐対手づくりの豆腐というふうな見方をされたわけなんですが、しかし、日本人の食生活を通して、国民は長い間手づくりの豆腐で十分に満足をしてきている。いわゆる地域住民にこたえてきているのです。そういう豆腐という分野にあえて大量生産を前提とした機械化豆腐というようなものを容認していかなければならない社会的な必要性か何かがあるというふうな御認識でしょうか。
  261. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この辺は一番むずかしい問題でございまして、実は、審議会でこの分野調整問題を議論いたしましたときにも豆腐のケースがケーススタディとしていろいろ議論されまして、消費者方々からは、選ぶ権利があるんだ、手づくりのほしいときには手づくりが買え、機械豆腐がほしいときには機械豆腐も買えるという形の方がより望ましいのだというような御意見がございましたので、私としても、こういう問題はなかなかむずかしい問題だなというふうに思っておったところでございます。伝統のよさというものはそれなりに消費者はこれから一層大切にするような風潮が強まってまいると思いますものの、それだけですべて世の中を処理できるかどうかということになりますと、やはり、消費者の中にもいろいろな層があるということを考えていかなければならないと思います。  したがって、先ほど申しましたように、大資本、中小資本の問題と別に機械と手づくりの問題が残るんじゃないかということを申し上げた次第でございます。
  262. 清水勇

    ○清水委員 余り時間もありませんから、いつまでもその点でやっているわけにいかないので次に進みます。  いままでの質問を通して一つ考えるわけですが、現在出されている法案の第三条で「大企業者の責務」ということをうたってあるわけですが、問題は、不当に中小企業者利益を侵害しないように、大企業者がそのモラルで十分な配慮をしなければならないということをうたっているわけなんです。しかし、これはまさにモラルの問題であり、また、訓示規定とも言うべき性質のものだけに、大企業者という立場から言わせれば、いやそういう点を十分おもんぱかって判断をしたんだ、たとえばこういうことでとどまるということになり、しかしその結果は客観的に言うと大企業者のエゴイスティックなものがぐっとクローズアップをされてくるといったようなことはえてしてあることだと思うのです。ですから、せっかくのこの規定が実効性のあるものにならなければ価値がないというふうに私は思うわけですが、もともと大企業者中小企業者との間に紛争が起こる場合には、えてして大企業者にモラルが欠ける場合が多いのです。  そういう経過、状況があるだけに、この規定を空文にしないために長官としてはどういうふうな実効確保考え方を持っておられるのか、所信を聞かせていただきたいと思います。
  263. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大企業が絶えず中小企業業界のことを考えて、そしてそれに迷惑をかけないようにということで行動するのであれば分野をめぐる紛争はそもそも起こらないで済むわけでございますが、しかるにかかわらず現実にいろいろな問題が起こっておるということは、大企業自分自身では多角化の手段あるいは新しい製品の販路というようなつもりで進出しましても、現実に中小企業に大きな打撃を与える場合が起こってきておるということの立証ではないかと思うわけでございます。  私どもは、この条文の中で「大企業者の責務」という一条が設けられたことの意味は大きいと思っておるわけでございます。それは、これから大企業がさまざまな経済活動をするときに、国会の御審議を得ました法律の中でこういう条文が設けられたということは、社会的なルールとしてこういう考え方が認められたし、また、それが必要な時代になったということをいやでもおうでも認識させるきっかけになるのではないかと思っておるところでございます。  いまお話がございましたように、この条文自体はいわばそれを配慮すべき旨の規定でございますが、実は、それを一つの基本的な考え方にしながら、この法律で用意をいたしております事前調査以降勧告に至る一連の規定が動いていきまして、そしてその実効を期するということになるのではないかと理解をいたしております。
  264. 清水勇

    ○清水委員 多少意見がありますが、時間の関係で先へ進むことにいたします。  次に、第四条で「自主的解決の努力」を規定しているわけでありまして、「双方の当事者は、早期に、かつ、誠意をもつて、自主的な解決を図るように努めなければならない。」というわけでありますが、過去の紛争経過に立ってどういう状況が展開されているかというようなことを見たり、あるいはきょう午前中多くの参考人の皆さんからの御指摘等を承ったりいたしますと、なおさらのこと、過去の紛争の解決のための話し合いというものを通して感じ取っているところではどうしても力の強い大企業に結果的には圧倒される、あるいは言い負かされる、そして中小企業者の側が泣き寝入りを余儀なくされる、そういうケースに終わってしまうことが一般的である、と、こういうふうに言われてもいるし、また、事実が示している。  そこで、ここでせっかくいま私が読み上げたようなことを規定しても、たとえば話し合いの中で大企業者が一定の資本を投下し、そして設備の建設等に入る、いまさら撤収することはできないというような事態になって、話し合いがこじれたりあるいは進展を見ないというようなことは容易に想定できるケースだと思うのですね。そうした場合に、それは過去にも行政上の指導をなさっておられるのだが、せっかく新しい法制をされるという今日の時点で判断をして、今後そうした場合にどうするかという点を行政当局からお聞かせを願いたいと思います。
  265. 岸田文武

    ○岸田政府委員 お話がございましたように、既成事実が進めば進むほど、それを解決するためには苦労が要するわけでございます。私どもは、問題を早目にキャッチしまして、そして、その状態で将来どうするかということを考えていくということがいま御指摘の問題についての一番の解決策につながるのではないかと思っておるところでございます。その意味におきまして審議会答申には積極的にうたわれておりませんでしたが、事前調査という規定を設けましたのも、いわばそういうことがあることによって審議会答申にうたわれております調整勧告というものが一層生きてくるだろうと期待をしたからでございます。  また、私どももモニターを配置しまして、各地で問題が起きていないかどうかチェックをいたしておりますが、モニターの活動によって問題を発掘し、それによって解決されたというケースもすでにかなりの数に上っておるところでございまして、今後ともそういう意味での努力を続けていきたいと思っておるところでございます。
  266. 清水勇

    ○清水委員 いま長官から既成事実というような言葉も出てきているわけでありますが、そういう意味から言えば、いま述べておられる事前調査は非常に大事だと思うのですね。ところが、第五条の規定によると、第六条の調整の申し出も同じですけれども中小企業団体の申し出によって初めて活動が開始される。言ってみれば受け身であるし、消極的であるし、どうも気構えが少し乏しいのじゃないかというような感じをせざるを得ないわけなんです。  そこで、この際、主務大臣という立場で、業界等の実情に通暁しているというような点を生かしながら、察知したものについてはできるだけ中小企業団体に知らせてやるとか、あるいは中小企業団体からの申し出がなくても調査に取りかかるとか、このくらいの積極的な姿勢というものが発揮されていいのじゃないか、そのことが冒頭に通産大臣が言われた中小企業事業分野確保のために努めるという本法の精神にこたえる道じゃないかというような感じがするのです。ですから、法律上はいま規定をされているような内容でもいたし方がないと、不満ではありますが言わざるを得ないのでありますが、やはり事前調査を迅速、スピーディーにやって、既成事実がどんどん形成されていかないようにしなければならぬ。つまり言葉を変えて言えば、煙のうちにこれを消すというような意味合いで、受け身ではなしにもつと積極的に事前調査に当たる、あるいは紛争調整に当たる、紛争というか、大企業者中小企業者調整に当たる、こういう点を運用という面でどうしても考えてもらわなければいけないのじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  267. 岸田文武

    ○岸田政府委員 申し出の段階から中小企業団体というものを当事者にいたしましたのは、先ほど他の方にも御答弁申し上げましたように、実際に調整勧告の段階になりますと、やはり当事者をしぼっておきませんと、さまざまな立場から個々の中小企業方々が御意見を持っておられるのを一つ一つ全部の方が納得されるような形でおさめるということになりますと時間が幾らあっても足りないわけでございまして、いわば調整の手段として中小企業団体というものを活用することが実効のある、また機動的な処理につながってくると思っておるからでございます。そういった法律的な骨格を踏まえまして、調査段階におきましても、中小企業団体というものを申し立ての適格者として法律の中にうたったわけでございます。  ただ、お話がございましたように、煙の段階から問題を処理するという気構えが必要なことはもう当然のことでございまして、私どもも先ほど申し上げました調整官あるいはモニターの活用によりまして問題をなるべく早くキャッチして、そして既成事実にわたってこじれるというようなことのないように精いっぱいの努力をいたしたいと思っておるところでございます。
  268. 清水勇

    ○清水委員 私の持ち時間は四十分までで、もう時間がございませんので終わることにいたしますが、いまの答弁の中の言葉ですが、私は中小企業団体の申し出がいけないと言っているのではないのです。  それはそれとしても、同時に、たとえば事前に主務大臣の立場で察知し得たような場合には調査活動に早速にも取り組むという積極性があっていいのじゃないか、そういうことがあって初めて法の目的、精神にかなうのではないかということを私は言っているのであって、それゆえに運用が非常に大事なんじゃないかと思うのですが、そういうことについて最後に大臣から決意のほどを承って私の質問を終わりたいと思います。
  269. 田中龍夫

    田中国務大臣 まことにごもっともな御意見でございまして、われわれが事前調査という問題を特に申しておるのもそれでございます。申し出によりましてこれを調査をする、案外御心配がないくらい早い機会に申し出が現実にはあるのではないか、このように私は思うのでございます。また、場合によっては逆に企業活動に対する介入になってもいけませんから、その点は両々相まっての呼吸というものがなかなか要ると思いますけれども、今度はこういうのが進出するそうだというようなことは皆様方よく御体験でございましょうが、ずいぶん早くから人のうわさに乗り、また同時に地元の方ではいろいろと御心配になるので、その辺が適当な段階ではないかと存じます。  同時に、また、勧告の問題は、今回は御案内のとおりにそれが進出して泣き寝入りになるのではなくて、停止までの勧告の内容も出ておりますから、スタートの場合は申し出によって調査を開始し、また、最後の聞かぬときには一時停止の強力な勧告というところで十分に目的が達するだろうと私は思います。  本法の成立につきまして、どうかくれぐれも御協力のほどをこの機会にひとえにお願い申し上げます。
  270. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 松本忠助君。
  271. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 きょうは分野調整法につきまして午前十時から長時間にわたって審議をしてまいりました。きょうの質問につきましては私で一応幕を閉じるわけでございますが、まず、最初に、大臣に二、三の点についてお伺いをいたしたいと思います。  今回提案されました政府案につきまして、私どもがかねがねいろいろの主張をしております中で特に不満に思っておりますのは、本法の対象小売業が含まれていない点、除外されている点でございます。私ども小売業がこの対象から外れている点については片手落ちであると考えまして、ぜひとも小売業対象に含めるべきであるといままでもしばしば言ってきたわけでございます。さらにこの論を一歩進めましても、小売商業調整特別措置法、商調法あるいは大規模小売店舗法、大店法の改正が必要であることをわれわれは主張してきたわけでございます。  けさの新聞を見ますと、自民党部会案といたしまして商調法の改正内容が発表されておるのを拝見したわけでございます。自民党の中でこのような部会案が発表されておるわけでございますが、この商調法の改正について大臣はどのようにお考えになっておられるのか、まず御所見を承りたいわけでございます。
  272. 田中龍夫

    田中国務大臣 実は、政府案に対しまして各党ともに御不満であって、政府案はまことにソフトであるが厳しさがないということにつきましてはいろいろと御意見を承った次第であります。自由民主党におかれましても、その問題につきまして部会その他でいろいろと御検討になっておるやに聞いております。  実は、けさほどの日本経済新聞ですかに出ておったそうでありますが、私は朝から出ておりましてその記事を見ておりませんが、いまだに私の手元には自由民主党の方から正式に申し出もないような状態でございまして、党の中間的な部会の原案につきまして政府の責任者の私がとやこうの意見を申し述べることはこの際控えさせていただきたいと存じます。
  273. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 要するに、自民党の内部でそういうことが討議されておるが大臣はまだ聞いておらぬ、しかし、これが表になってきたならばそのときには大臣としても取り組む用意がある、こういうことでございますな。
  274. 田中龍夫

    田中国務大臣 用意があるという言葉はまことに幅の広い議論でございまして、それに対してまだ内容の検討も遂げておらないような状態でございますから、それを正式にもらいまして考えさせていただきます。
  275. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大変慎重なお考えであります。よくわかります。しかし、今回の分野調整法の中に小売が除かれていることについては、これをどうしても直すべきである、それには一応商調法を改正すべきである、あるいは大規模店舗法を改正すべきであるという意見はしばしば私どもも申し上げておりますし、御存じだと思うわけでございます。いずれにしましても、自民党のああした部会案というものが表へ出てきている段階で、これが正式に何らかの形で表へ出てきた場合にはその段階で議論をしなければならないと思うわけでございますが、いま大臣に一つだけ伺っておきたい点があります。  ということは、大臣のいまの御答弁からすると、この点についてもあずかり知らぬと言われるかもしれませんけれども、けさの新聞を見て一応気がかりな点は、自民党の商調法の改正案では、ただいま審議している分野調整法のシステムを商調法の中にも導入しているという点を見受けるわけでございます。この場合に、各地方自治体で制定しております大規模店舗法関係の条例との関連はどうなるかという点が私は気がかりになりますので、この一点だけは伺っておきたいと思いますが、お答えになる用意がございますか。
  276. 田中龍夫

    田中国務大臣 案をまだ見ておりませんいまの時点におきましては、いまだその用意がないと申した方がいいと思います。
  277. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまの段階では大臣からそういうお答えが返ってくると思います。しかし、私どもは、地方の自治体でいろいろと状態を加味して、そして地方独自の調整が必要ということで条例をつくっているわけでございますので、この条例は尊重すべきではないかというふうに考えているわけでございます。  それで、大店法の改正についてはお考えはございませんか。
  278. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  279. 山口和男

    ○山口政府委員 先生御承知のとおり、現在の大規模小売店舗法は、昭和三十一年から制定されました百貨店法がずっと長い間続きまして、その後スーパーの進出あるいは寄り合い百貨店等が出てくるというような状況に応じまして、昭和四十八年に改正されましてただいま現在に至っておるわけでございます。小売業についての規制につきましては最近のオイルショック後の高度成長時代から安定成長時代に入るといった経済環境を踏まえまして、小売業のあるべき姿、また小売業の振興策をどういうようにとるべきであるかというような総合的な観点から十分検討をいたしまして、規制のあり方というものを考えていくという必要があろうかと存じます。  そういう意味で、そういう観点に立ちまして、大規模小売店舗法につきましてはそういう方向での十分慎重な検討をすべきものと私どもは考えております。
  280. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大店法の改正という問題も当然議題に上ってくると思うわけでございますが、ただ、現在問題になっておりますものの一つに、基準面積以下のいわゆる中規模店舗がちょっと問題になっておるようでございますが、この調整を商調法でやるというふうにお考えになりますかどうか、この点はどうでしょうか。  もう一点は、このいわゆる商調法でやるのかどうかというお答えをいただくと同時に、大規模店舗法の附帯決議をつけて調整されている現在は調整法のシステムと違うわけですから商調法でやるということにはならないと私は考えるのですけれども、この点を長官はどうお考えになりますか。
  281. 岸田文武

    ○岸田政府委員 商調法の条文をごらんいただきますとおわかりになりますとおり、商調法の中で十五条から十八条の規定が用意されており、その内容におきましては、中小小売商とその他の者との間の紛争についてのあっせん、勧告、調停の規定でございます。したがいまして、いま御質問がございました大店法の基準面積以下の店舗と中小小売商との関係につきましては、現行の商調法におきましても紛争調停の対象となり得るという形になっておるところでございます。別途大規模店舗法が制定されましたときに附帯決議がつけられておりまして、それは基準面積以下の場合についても行政指導等によって十分カバーするようにということが書かれております。  率直に申しますと、商調法の活用という方法とそれから附帯決議の活用による方法と、二つの方法を機動的に活用して問題の解決に当たるようにというのが従来の御趣旨ではないかと理解しておったところでございます。
  282. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、大店舗法の改正あるいは商調法の改正という問題については一応それだけにとどめておきまして、本論に入りまして分野調整法についてお伺いをいたしますが、この五条の二項でございますが、「主務大臣は、前項の規定による申出があった場合において、当該申出に相当の理由があると認めるときは、当該申出に係る事項について必要な調査を行い、その結果を当該中小企業団体に通知するものとする。」というふうにございますが、この規定によりますと、「相当の理由」がないとなった場合には調査をしないということに受けとめてよろしいわけでしょうか。
  283. 岸田文武

    ○岸田政府委員 そうではございませんで、私どもは、この条文を特に条件をしぼるとかあるいは拘束をするとかという意味で理解をいたしておりません。中小企業自身がすでに公知の事実として知っておるというようなことは当然のことといたしまして、中小企業としてわかりにくいことはいろいろあるだろう、そういうような事情があるときは主務大臣としてもその調査について補完をし、必要な情報を提供してやろうという意味でこの条文を理解しておるところでございます。
  284. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうすると、相当な理由がないと調査をしないということでもありませんし、申し出があった場合には当然いろいろな条件もつけずに全部やるのだととっていいのですか。要するに、あらゆる申し出については条件をつけずに調査をするのだと受けとめていいのですか。
  285. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この調査の条文をごらんいただきますとおわかりのとおり、申し出の前提といたしましては、何か大企業の方で企業拡張の動きがあるという、いわば先ほどのお話の中に出ておりましたところの煙が立っておるということが一つの要件であり、また、自分自身ではこういうことを調べたけれどもこういう点かわからないのだというようなことが第二の要件になる、こういう法律仕組みになっておるところでございます。  先ほど申しましたように、この条文は、その立法の趣旨からいたしまして、中小企業がいろいろ心配をしておるということについて、自分でわからないところを応援して調査をしてやろうということがそもそもの発想でございますので、これは申し出があったときにはできるだけ協力をして調査してやりたいと私どもは思っておるところでございます。
  286. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それではできるだけ調査をしたいということですね。中小企業の方というのはなかなか調査の機関も持っていませんし、相当理由があるからこそ申し出をするわけでありますから、この場合は、「前項の規定による申出があつた場合において、」「当該申出に係る事項について必要な調査を行い、」と、ずばりそのものにはいかないのですか。その点はどうでしょうか。
  287. 岸田文武

    ○岸田政府委員 従来問題になりましたケースを見ておりますと、中小企業業界方々は大企業の進出ということについては絶えずいろいろ心配もしておられまして、業界団体の集まりでも情報の交換をされ、話題にもされておられます。また、最近のように情報が発達しますと、大企業がいろいろなプランを持っておるということは非常に早目に一般の人々が知るような機会がたくさん用意をされておるわけでございます。したがいまして、従来のケースでは、既成事実がどんどん進んでしまってから問題が発覚したというケースはほとんどございませんで、むしろわりあい早目に問題がキャッチされておるというのが一般的でございます。  したがいまして、ここで申しておりますのは、そういった業界を通じあるいはマスコミを通じて知り得た情報は当然のことといたしまして、それ以外でやはりどの程度の規模なんだろうか、本当に具体的な時期はいつなんだろうかという、この辺のところは中小企業としても核心に触れた情報は恐らくなかなか得にくいだろう、そういった部分について調査をしてあげようという意味を素直に私どもなりに表現したものでございまして、特別に制限をする趣旨でないことは先ほど来申し上げておりますとおりでございます。
  288. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 この問題ばかりにかかっておれませんので、次に進めます。  私が懸念しておりますのは、中小企業者はいまも申し上げましたように情報網というものを多く持っておりませんし、したがいまして、いろいろな商品が市場に出回ってきて初めて気がつくというようなことも間々あるわけでございます。そして、そういうことにつきまして具体的な事例も当委員会でも質疑が出たわけでございます。こういう場合でも何らかの措置がとれるようにしなければいけないのじゃないかと私は思うのですけれども、その場合はどうでしょうか。
  289. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど、一般的にはわりあい早目にキャッチできるというふうに申しましたが、そうでない場合だってあり得るだろうという御指摘につきまして、新製品が出回って初めて気がついたという場合が仮にあったといたしますれば、その場合には、それ自体中小企業経営に大きな打撃を与えるというようなケースに該当いたしましたときには調整勧告の対象になり、そして規模の縮小というようなことによって問題を解決するという場合があり得るだろうと思います。
  290. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから、七条の「調整勧告」のところに移っていくわけですが、七条の「調整勧告」のところに「当該事業の規模の縮小その他の当該事態の発生を回避するために必要な措置を執るべきことを勧告する」というふうにございますが、「その他の当該事態の発生を回避するために必要な措置」という中に、いままでの答弁でございますと、商品の転換であるとか、あるいは国内向けを輸出に振り向けるとか、こうした趣旨の御答弁があったように聞いておりますが、この点についてもう一度明確にお答えをいただきたいと思うわけです。
  291. 岸田文武

    ○岸田政府委員 従来問題を解決した事例を見ますと、たとえば直営店によらずに既存の流通経路を活用するとか、あるいは組合に入ってお互いに相談をしながら今後の営業活動を決めていくとか、あるいは極端な場合には中止とか、さまざまな事例があることは先回この委員会でも御報告申し上げたところでございます。私どもが勧告という方式をとっておりますのは、その辺につきまして機動的に対応できるようにすることがこれから起こり得る千差万別の事態に対応するためには適当であろうということで考えた次第で、いま申し上げましたように非常に含みの多い表現をとったわけでございます。  その内容を一つ一つ書くというようなことも条文上長くなってしまいますので、いま申し上げましたような表現に一括した次第でございます。
  292. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 長官、もう一度確認をしますけれども、勧告の中身ですね。系統立てて言えば、まず一番目に時期の繰り下げ、二番目に規模の縮小、三番目にその他必要な措置とありますね。その三番目のその他必要な措置の中で、一つは中止、第二番目に既成事実についてどうするかということと、それから、商品の転換、国内向けを輸出に振り向けるというようなことがいままでの答弁ではあったわけですが、この点はもう一回はっきりしておいていただきたいと思うのです。勧告の中身ですね。
  293. 岸田文武

    ○岸田政府委員 事例から申せば、いまお話がございましたのはまさに一部分でございまして、そのほかに価格の安定化を図るとか、あるいは生産品目の限定をするとか、あるいは業界の協調を図るとか、原料購入についての調整を図るとか、さまざまなケースがございます。いわば、勧告という機動的な方式をとることの結果といたしまして、置かれた条件に応じたような処方せんが出てくるということでございまして、画一的に例示をするということはむずかしいのではないかと思います。
  294. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、次の問題ですけれども、公表される場合に、これに従わないときには命令規定を入れるべきだというふうに私どもは考えるわけですが、これについての御見解を伺いたいのと、さらに、政府は、たとえば命令規定を置くとすると、いま申し上げた第七条の勧告措置の内容を限定しなければならないというような意図のようでございますが、何ゆえに勧告に命令をつければ限定しなければならないのか、この点はどうでしょうか。
  295. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは繰り返し申しておりますように、こういう問題についての一般的なルールということを考えてみますと、やはりおのずからの限界がございまして、勧告というやり方が一番穏当なやり方ではないかと思っておるところでございます。それに加えまして、いまお話がございましたように命令という方式をとると、どうしても要件を限定せざるを得ないということも第二の理由に挙げることができるかと思います。  さらに申し上げれば、第三の理由としまして、従来からの実績におきましても勧告が相当の効果を上げておりますし、ましてや今回法律の裏づけを得、そしてその前提として公正な審議会議論を経た勧告であるということであれば、大企業としてそれを尊重するということは当然のことではないかと思っておることが第三の理由に挙げられるかと思っております。  そこで、いまの要件がなぜ厳密になるかということは、いわば憲法で考えられております営業の自由に対する一つの制限になるわけでございまして、命令ということであるならば、法的安定性への配慮からしまして要件というものをはっきり法律の中にうたい込み、また発動の態様ということも限定的に書くことがいわば法律上当然の制約になってくるのではないかと思っておるところでございます。
  296. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 長官かいろいろとくどくどしく述べられましたけれども、われわれは、中止勧告あるいは既成の進出についても勧告ができるということですから、法律の趣旨から言っても、こういうものに対して命令をしても何ら疑問は生じないのではなかろうかと思うわけです。もし命令規定を入れれば中止勧告とか既成の進出についての勧告もできないというのであれば、切り離してはっきり別に条文を立てるべきではないかという考えを私ども持ちますけれども、この点はどうでしょうか。
  297. 岸田文武

    ○岸田政府委員 命令の問題につきましては、先ほど来申しておりますように、政府としては御提案申し上げましたようなラインが一応穏当なラインではないかと思いつつ、別途この商工委員会の御議論におきまして各党から命令を入れてはどうかと強い御意見がございますので、それにつきましては、もし各党の方で御意見が固まり、高度の政治的な判断からそれが必要であるということになりました場合には、それは尊重させていただきますということをお答えいたしております。  その命令の態様がどうであるかというようなことにつきまして私ども立場から申し上げるべき立場にはいまのところないので、その辺のところは御了承いただきたいと思います。
  298. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 わかりました。それではその趣旨に従いまして進めることにしましょう。  それから、次の問題は、調整命令を出すようになったと仮定しましても、この場合、勧告し、公表という規定が現行法にあって、勧告の段階で中小企業調停審議会意見はもとより、主務大臣は通産大臣の意見を聞いているわけですから、再度こうした手続をとる必要はないのではなかろうかというふうに思いますが、この点はどうでしょうか。
  299. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これまた一つの仮定の問題でございますので、私は一般論としてしかお答えできないわけでございますが、やはり、命令が出され、それについては罰則がついておるというようなことでございますれば、それを発動することについては相当慎重なる配慮が必要ではないかと思っております。また、慎重なる配慮の上に出された命令であればこそ、一層その命令の重みが増すというような関係になるのではないかと思っておるところでございます。  仮定の議論に対する一般的なお答えということで御理解をいただきたいと思います。
  300. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 では、あと十二分ほどになってしまいましたので次の問題に移りますけれども、私どもの考えというものを一応明確に申し上げておくわけでございます。  それから、勧告に従わない場合は公表し、それでも聞かない場合は直ちに調整命令を出せるようにして、この調整命令に従わない場合にはまず営業停止処分、そして罰金、こうなるのが筋ではないかと思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  301. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これまたいわば同様のお答えになるわけでございますが、一つの新しいルールをつくるときにどの程度の強制力を背景にすることが必要であるかということは、一方における法的安定性の要求と、一方における中小企業者利益確保ということとのバランス論から出てくる問題ではないかと思っておるところでございます。  私どもは、勧告、公表という段階で効果を挙げるということを期待し、また、それが相当実現性のあることであると思っておるところでございますが、それをさらに強くするということが政治的課題として要請されました場合、それをどういう形で担保するかということにつきましてもあわせて御議論をいただいた上で答えが出されるものと思っておるところでございまして、それらの御審議経過も踏まえて私どもはお受けをするということになるのではないかと思います。
  302. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私どもはこの点については最も厳しい姿勢を堅持しておりましたのでお伺いしたわけでございますけれども、大店法の中にこうした規定があるように私は思いますけれども、ございませんか。
  303. 山口和男

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  大店舗法の第十四条で、「一年以内の期間を定めてその小売業の営業の全部又は一部を停止すべきことを命ずることができる。」という規定が入っております。
  304. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そういう面を踏まえまして私どもはこうした提案をするわけでございます。  それから、「一時停止勧告」について伺いますが、一時停止勧告をする場合、これはまあ応急措置でございますので、中小企業調整審議会意見を聞いているような時間的な余裕がないのではないかという懸念がございますが、この点についてはどうでしょうか。
  305. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど大規模店舗法にお触れになりましたのでちょっと補足させていただきますが、大規模店舗法の場合には、対象小売業、しかも一定面積以上のものということが最初から特掲をされておりまして、そういうような規模のお店で営業活動するときには、自後の一連のいろいろな制約条件についてはいわば前提条件として入ってくるという関係にございます。  これに対しまして御提案申し上げておりますいわゆる分野調整法におきましては、個々の大企業の活動は、それが平穏に行われている限りは特に問題がないが、しかし、中小企業へ大きな打撃を与えるというような結果を生じたときに問題になるという形でございまして、その辺は多少ニュアンスが違っておる面があるということは御理解を賜りたいと思います。  それから、一時停止勧告について審議会の議を経る必要はないのではないかという点につきましては、私どもは、問題が起こりましたらなるべく早く審議会を開きまして、そして基本的な対応を決めていきたいというふうに思っております。審議会の運営におきまして分科会あるいは部会という方式をとろうと思っておりますのもそういった考え方のあらわれでございます。  一つの問題が起こりましたら、その問題についての特別のグループをつくりまして、まず必要があれば一時停止勧告をかけ、そして実態が明らかになるにつれてその調整の方法を逐次固めていくというようなやり方を考えておりますので、審議会にかけるから時間かせぎになるとか、あるいは問題に対する対応がおくれるというようなことのないようにしたいと思っておるところでございます。
  306. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうしますと、審議会のオールメンバーを集めてやるのではなくて、部会であるとか小委員会であるとかいったものを逐次開いていくということでそれに対応するというような、いわゆる小回りのきくものをやるということで、時間的余裕のないようなこともなく本当に速戦速決的にできる、そういう対応をとる、こういう御答弁ですね。——それでは、その点はわかりました。  次の問題でございますが、当初の通産省の考えの中に特殊契約という制度がございますが、この制度を廃止する意向だったというふうに最初聞いておりました。これは今回はそのまま存続するというような様子でございますか、廃止する意向は全くないのか、そして、また、これを存続していくという理由はいかなる理由によるのか、この点をお答え願います。
  307. 岸田文武

    ○岸田政府委員 特殊契約制度は、いわば中小企業者を代表して商工組合が進出大企業と話し合いをいたしまして、その結果締結しました両当事者間の契約を行政庁が公認するというような形でございます。いわば紛争当事者間の自主的解決を基本にした紛争処理制度ということが申せるかと思うわけでございます。その意味におきまして、この新しく御提案申し上げました法律とは多少ニュアンスを異にしておる制度でございますので、とりあえず本法制定後も併存をさせていきたいと思っておるところでございます。  ただ、御案内のとおり、この特殊契約制度は創設以来運用実績がそう数多くあるわけではございません。したがいまして、せっかく新しい法律ができる際に従来の制度を整理してはどうかという御意見も確かにございましたが、私どもは、この新しい法律ができましてしばらく様子を見た上で、従来の特殊契約制度の存廃は別途考えてみたいと思っておるところでございます。
  308. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうしますと、将来にわたってこの制度を活用されなかった、利用されなかったというときには廃止をしてもよろしい、こういうふうに考えているわけですか。
  309. 岸田文武

    ○岸田政府委員 そういうこともあり得ると思っております。
  310. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それではもう一点伺いますが、第十条に「指導」の規定というのがございますが、この指導の規定について、具体的にどういう指導をしようとしているのか、この点について伺っておきます。
  311. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業方々がこれからのむずかしい経済環境の中で、とりわけ大企業が進出するというようなことのある環境の中において何とかして自立をし、そして日本経済の推進力として活躍されるという御努力に対してはできるだけの応援をしてまいりたいと思っておるところでございます。  そこで、すぐ思いつきますのは、中小企業の近代化促進法による指定業種にすること、あるいは特定業種にするということによりまして企業ごとの近代化を図り、あるいは業種ぐるみの構造改善を図るという手段でございますが、これはすでに問題になった業種の幾つかにおきまして現に適用されておるところでございます。そのほか、中小企業振興事業団を通ずる高度化事業を展開するとか、その他中小企業対策として持っておりますいろいろの道具を特定の業界にうまく組み合わせ、そしてうまく利用していただいて、先ほど申し上げましたような課題にこたえるようにいたしたいと思っておるところでございます。恐らく適用される手段というのは業種によって違ってまいりましょうし、また、経済情勢によって違ってまいろうかと思っておりますが、いずれにせよ、中小企業方々の前向きの努力を応援するためには全力を尽くしてまいりたいと思っておるところでございます。
  312. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまの答弁で中小企業団体に対する指導という点は一応わかりますけれども、いままで大企業の非常な横暴があったわけです。そうした面について指導をすべき必要があると私は思いますけれども、大企業に対してはどう考えていますか。
  313. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大企業につきましては、この法律によりまして「大企業者の責務」という条文が設けられましたのを機会に、やはり中小企業の実情というものをよく理解し、そしてそれに対する配慮ということが企業経営のいろいろの指針の中でも一つの大きなファクターになるようにという意味合いで指導をすることが必要であろうと思っておるところでございます。  最近はこういう問題についての認識がかなり広まってまいりました。せっかく法律ができました機会に一層その認識を深めてもらうように配慮してまいりたいと思っておるところでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  314. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 時間が参りましたので最後に大臣にお尋ねを申し上げますが、要するに、中小企業を取り巻く情勢には最近は大変な変化が次々と起きているわけでございます。そうした中において中小企業事業活動を適正にしていき、大企業圧迫から守っていかなければならない。大企業が資金力においても人的にもいろいろの組織力を応用して非常に大規模な拡大をしていく。そうなりますと中小企業圧迫を受ける。そうしたことを何とかして分野調整して中小企業も育成し、同時にまた一般消費者利益も図っていかなければならない。こういうところが大いに必要だと思うわけでございます。  そういう意味から今回事業活動調整の制度を設けようというふうに政府も考え、御提案があったわけでございますが、これからも情勢はいろいろと変化していくと思いますので、これらの情勢の変化に従って適切な措置をとっていく用意が大臣としてあるかないか、この点をお答えいただきまして私の質問を終わることといたします。
  315. 田中龍夫

    田中国務大臣 弱者でありまする中小企業をいかにして守っていくかということが経済政策の上から申しましても最大の問題であると存じます。御案内のとおりに、中小企業を守り、育成し、そうして日本経済を安定化いたしまするためにあらゆる努力を払わなければなりませんが、当該立法に際しましても、先生と同じ思いのもとにわれわれはこれが法案審議に当たりたい、かように存じております。
  316. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 終わります。
  317. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明二十八日木曜日、午前九時四十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十五分散会