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1977-04-26 第80回国会 衆議院 商工委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十六日(火曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君 理事 玉置 一徳君       青木 正久君    鹿野 道彦君       粕谷  茂君    藏内 修治君       田中 正巳君    中西 啓介君       楢橋  進君    萩原 幸雄君       林  義郎君    前田治一郎君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清二君    後藤  茂君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    渡辺 三郎君       長田 武士君    玉城 栄一君       西中  清君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君  出席政府委員         内閣審議官   大橋 宗夫君         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         総理府総務副長         官       村田敬次郎君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房審議官    栗原 昭平君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁指導         部長      小松 国男君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局指導課長   河内 莊治君         参  考  人         (産業経済新聞         社編集委員)  山本雄二郎君         参  考  人         (弁 護 士) 入江 一郎君         参  考  人         (東京大学教         授)      竹内 昭夫君         参  考  人         (慶応義塾大学         教授)     正田  彬君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   岡田 哲児君     高沢 寅男君   渡辺 三郎君     塚田 庄平君 同日  辞任         補欠選任   高沢 寅男君     岡田 哲児君   塚田 庄平君     渡辺 三郎君     ————————————— 四月二十五日  特許管理士法制定に関する請願外九件(羽田  孜君紹介)(第三八七五号)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律改正に関する請願宮地正介  君紹介)(第三九五七号)  中小企業事業分野確保する法律制定に関  する請願宮地正介紹介)(第三九五八号)  中小企業事業分野確保法制定に関する請願(宮  地正介君紹介)(第三九五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第七二  号)私的独占禁止及び公正取引確保に関す  る法律の一部を改正する法律案多賀谷真稔君  外八名提出衆法第二八号)  中小企業事業活動の機会の確保のための大企  業者事業活動の調整に関する法律案内閣提  出第七一号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案及び多賀谷真稔君外八名提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、参考人として、産業経済新聞社編集委員山本雄二郎君、弁護士入江一郎君、東京大学教授竹内昭夫君、慶応義塾大学教授正田彬君、以上四名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきまして、内閣提出及び多賀谷真稔君外八名提出に係る私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案の二案について審査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、両案に対しそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、最初に御意見をそれぞれ十分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員質疑に対してお答えをいただきたいと思います。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、まず、山本参考人にお願いいたします。
  3. 山本雄二郎

    山本参考人 山本でございます。  私は、日本経済の置かれているいまの立場環境といいますか、そういうところから見まして、ここで経済構造とか企業経営の根幹に触れるような制度改正にかかわる法律改正ということについてはいささか時期がどうかという感じを持っております。  御承知のとおり、まだオイルショックの後遺症から覚めない段階で、企業経営は、大部分の企業といたしましては、現在霧の深く立ち込めた海で漂流している状態じゃないかというふうに思っております。そして、いま企業がやっておりますことは、借金や人減らしを行うとか、管理費を節約するとか、保有資産を売却するとかいうようなことで、いわゆるスリム経営といいますか、ぜい肉を取るということなんですが、これはやはり一時的なことでありまして、いわば過去の蓄積を食って何となく食いつないでいるということだと思うのです。しかし、これは先行きの見通しがつかないということから来ている問題でありまして、本来の企業あり方ではないわけでありまして、いずれ新しい経済成長路線というものがはっきりしてくれば、それに対応して当然もっと前向きな経営に転じなければならないわけですけれども、現在はまだその段階に来ていないということだと思うわけであります。  そして、その企業の消極的な姿勢経済全体の不況脱出の足を非常に引っ張っているということはすでに指摘されていることでありまして、いまはむしろ企業にどうして活力を与えて需要を出していくかということが課題になっていると思うのですが、今回の独禁法改正に伴う、特に企業分割というふうな問題は、企業姿勢に対して非常に冷や水をかけるような効果になって、企業姿勢を非常に萎縮させているという感じがいたします。そういう意味で、いまは時期として適当じゃないのじゃないかというふうに思うわけであります。  それから、今度の企業分割のねらいでありますけれども、これは巨大企業経済力を乱用する、その弊害を防ごうという趣旨だというふうに承っておりますけれども、それは確かに理論的にはそのようなことが言えると思うのですが、現実にそれじゃいまの言われている企業がそうなっているかどうかということを見ますと、余りそういう問題が出てこないように思います。たとえば新規参入なんかにつきましても、ビールとか時計とかブリキ、フィルムなんか、いずれもすでに過去新規参入が起こっておりまして、むしろ上位企業占有率は下がる方向にあるのじゃないかということがあります。しかも、特に時計などは新しいデジタル時計などというものが開発されまして、新商品に伴って新規参入が起こっている。ビールについてもサントリーが新しく出てくるというふうなことで、むしろ対象業種と言われるものについてもそういう傾向が見られるのであります。  それから、問題は値段の問題があるわけですけれども、これについても、たとえばピアノについて見ますと、同じクラスの製品について比べてみますと、やはり一番トップメーカーのヤマハが小売標準価格で安いというふうなことがあって、むしろそれが全体の価格を引き下げているという効果も出しているのじゃないかというふうな感じがいたします。  それから、これは通産省の資料でありますけれども、過去の卸売物価上昇率業種占有率別に出したものを見ても、高度寡占状態の方がむしろ上昇率が低いという数字も出ております。  それから、国際競争という観点から見ますと、いまや自由化時代に入っておりますので、外資がやはり入ってくる。そこで、国内業者だけの寡占ということはいま余り通用しない。現にフィルムなんかは世界一のコダックが入ってまいりまして、非常に乱戦状態になっているということでもあります。  それから、もう一つは、同一業種だけでとらえないで発注先との関係で見る必要もあるのじゃないかという気がいたします。たとえばかん詰め用かんについては食品大手メーカー価格決定についてリーダーシップを持っている。同じようにガラスについても、いまや自動車メーカーやさらにサッシメーカー等がむしろ価格決定に対して非常に大きな力を持っているというふうなこともあるわけでありまして、いま言われている九業種について見ましても、具体的に巨大企業経済力を乱用して弊害を出しているということはどうも考えられないというふうな感じがいたします。  それから、むしろ企業分割規定を導入することによってどういう問題が起こるかということが心配なんですが、一つは、寡占という状態に入ってきたということはもともとは自由競争を通じて企業努力が結実したという面がかなりあると思うわけでありますが、つまり、自由経済体制基本である企業努力の結果をむしろ否定されるというふうなかっこうになる。それはまた要するに寡占企業は悪であるとか大企業だから悪いというふうな考え方がまた定着するのじゃないかと思います。これはいまの経済の中で大企業、中企業、小企業零細企業というふうな一つ秩序が形成されて、それぞれの分担があるわけだと思うわけでありまして、そこで、寡占企業が悪いというふうな社会通念がもしできるとすれば、これは日本経済全体にとっても非常に問題じゃないかという気がいたします。  それから、占有率が上がってくればいろいろ規制対象になるということになりますと、設備投資について手控えるという傾向が出てまいります。現に、麒麟麦酒はすでに数年前からビールの拡張はブレーキをかけておりますし、最近ではブリヂストンタイヤもこれ以上上がると危いということで投資を抑えるというようなことを聞いております。しかし、それは本来企業あり方として非常に問題でありますし、また、国民経済的にもそれでいいかどうか、つまり、合理化努力をそこで失うということにならないかという気がいたします。そして、最近は、必ずしもこの問題だけのせいではありませんが、企業設備投資をしないで、その金を別のところで運用していくという一種の投機家経済的な傾向があるわけですけれども、株を買ったり土地を買ったりというふうなことにますますいくのじゃないか、それは結局インフレの道につながるのじゃないかというふうな問題もあるのじゃないかと思います。  それから、消費者立場といいますか、そういうところから見ましても、特にブランド商品につきましては、それだけ消費者の心をつかんだというか、消費者の嗜好に合っているということで占有率が伸びているという面もありますので、それを抑えていくということは消費者にとってどうであろうかというふうな気もいたします。  それから、技術開発ということがいま非常に大きな問題になっておりますけれども、技術が停滞しているからいまの世界的な不況が脱出できないということもあるので、その意味技術開発力がいま大いに発揮されなければならないときでありますが、その場合は、スケールメリットといいますか、大きな企業の力がやはり評価されなければならないと思うわけであります。  結局のところ、いま選ぶ道は、大きいところを抑えるというよりも、むしろその後の二位、三位以下のメーカー対抗力をどうつけていくかということの方が大事じゃないかという感じがいたします。特に、ガラスとかピアノなんかについては特にそういう問題があるのじゃないかという感じがいたしますので、政策の方向としてはむしろそっちの方をいまやるべきじゃないか、そして、基本にかかわる問題についてはもう少し日本経済の動向が定まったところでもう一遍考え直して、これからの日本経済がどういう方向に動いて産業需要がどのように出てくるのかという構造改革方向をもう少し見る必要があるのじゃないか、そのように思います。
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、入江参考人にお願いいたします。
  5. 入江一郎

    入江参考人 入江でございます。  私は、このたび内閣から提出されました改正案要綱につきまして、一個の法律実務家という立場から意見を申し上げたいと思いますが、順序といたしまして、改正案要綱の項目の大体の順序に従って一応意見を申し上げたいと思います。  まず、第一に、不当な取引制限等に対する課徴金の問題でございますが、現行法ではカルテルに対する規制実効性が非常に薄い、いわばカルテルはやり得である、このような批判があることは事実であると思います。そこで、この規制実効性確保しよう、そして抑止的な効果をねらおうというところがこの改正案趣旨であるというふうに理解いたします。  確かに、公正取引委員会の命ずる排除措置は限界がございますので、見方によってはこれでははなはだ不十分であるという意見が出てくるのも当然であると思います。しかし、また、一方、独禁法では規制実効性を担保するために一方で罰則規定を設けておりますし、また、他方、損害賠償に関する規定を置いております。  この課徴金性格が果たして制裁であるのか、あるいは違法な行為によって得た利得を吸収するというのが趣旨であるのか、この点は問題があると思いますが、大体は不当な利得を吸収するということが趣旨であるように考えられますが、私は、必ずしも制裁的な意味が全然ないとは考えておりません。したがって、もしこれが制裁であるとすれば罰則との関係がどうなるか、また、不当な利得の吸い上げであるとすれば損害賠償請求規定との関係がどうなるか、この点が多少問題であるかと思います。ただ、現実の問題としては、罰則の適用あるいは損害賠償による請求が実際に余り抑止的な効果がないというところからこのような規定考えられたのではないかと思います。その点は理解できますけれども、ただ、一方で罰則を適用し、そしてさらに課徴金を取る、また、損害賠償請求に応じて損害賠償を支払ってさらに課徴金を払うということは二重に事業者に不利益を与えることになるのではないかという疑問がございます。  これは一つの疑問でございますが、ただ、法律論として問題があると私が思いますのは、実行期間というものをどう見るかという点であると思います。法文によりますと、実行期間というのは「当該行為実行としての事業活動を行った日から当該行為実行としての事業活動がなくなる日までの期間」であるというふうに規定しております。そして、この実行期間が長引けば長引くほど課徴金の額はふえていくということになっているようでございます。  そこで、この実行期間をどう見るかということが問題だと思いますが、この考え方として二つの見方があるのではないかと思います。一つは、当該行為実行としての事業活動がなくなるということは、具体的に不当な取引制限規定に当てはめてみますと、たとえば協定を結んで価格を引き上げたという場合に、その協定を破棄する行為で足りるのか、あるいはその破棄した結果現実価格をもとへ戻す時期が終了した日と見るのか、この点多少疑問があると思いますが、もし後者であるといたしますと、これは公正取引委員会価格に介入するということになって不当であると私は考えます。恐らく、これは、協定を破棄すれば実行期間は終了すると考えて差し支えないのではないかと考えますが、ただ、従来の考え方では、それだけでは足りないのだ、やはり審決によって排除措置をとるまでは実行が終了したことにはならないのだという考え方もあるように思います。もしそうだといたしますと、結局は審決によって排除措置が命ぜられ、それが実行されるまでは終了しないということになるのではないかというおそれがございます。もしそうなりますと、事業者としては審判で争うという権利の行使が妨げられる結果になるのではないか、また、事実無根であるとして審判で争うことを抑止してしまうような結果になるのではなかろうかという点が多少気がかりでございます。  そこで、この実行期間というものをどういうふうに見るかということについて、これは公正取引委員会の認定にかかる問題だと思いますので、できればその基準を明らかにしていただく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。  それから、次に、第二に、「不当な取引制限等に対する排除措置」として要綱に掲げられております点について申しますが、この規定の中で、「当該行為によって生じた影響排除するためにとることとなる具体的措置」ということが一体何を意味するのか、これはいささか不明であると私は思います。もしこれが価格の引き下げ、現状回復まで意味しているものであれば、先ほど申しましたとおり、これは公正取引委員会価格に介入することになるのではないか、しかし、そのほかに、「生じた影響排除する」ということは具体的にどういうことになるのか、いささか疑問であります。この点については、現在の排除措置で十分ではなかろうか、あるいは排除措置については、公正取引委員会の方でも今後いろいろお考えになって実効性のある排除措置をお考えになると思いますが、これは特に法律改正するまでの必要のない問題ではなかろうか、また、現行法におきましても六十四条で審決後の監査について規定を置いておりますので、このような規定を活用すればこのような改正は必ずしも必要ではない、こういうふうに私は考えます。  それから、第三に、すでになくなった違反行為に対する排除措置の問題でございますが、独禁法上の排除措置の目的は、違反排除して競争秩序を回復するという点にあると思います。過去の違反に対する責任の追及は罰則規定がありますので、これは排除措置対象ではないというのが原則であると思います。ただ、損害賠償との規定関係で、審決がなければ独禁法二十五条の無過失賠償による損害賠償請求ができないということになっておりますので、それとの関係において過去の違反行為に対しても審決をする必要はあるということはそのとおりであると思います。それについては、現行法で五十四条の第二項の後段に、いわゆる違法宣言の「審決」という規定がございます。  ただ、問題は、審判開始手続も全然行われないままで終わった場合には、これは損害賠償についての二十五条の規定による訴訟を起こすことが何らできないという点が問題でありますので、その意味でこのような規定は必要ではないかと思います。ただ、その内容は、審決の主文は違法宣言審決と同様に過去に違反行為があったということの宣言で足りるのではないか、すでになくなってしまったものに対してさらに措置を命ずるということは必要がないのではないかというふうに私は考えております。  それから、次に、私的独占状態に対する措置の問題でございます。いわゆる企業分割と言われております規定でございますが、現行法では、事業者の何らかの行為規制するというたてまえをとっております。たとえば私的独占においては、他の事業者事業活動の支配とか排除、また、不当な取引制限においては協定等による共同行為、これを規制するというたてまえをとっております。そして、単なる状態規制対象にはなっておりません。したがって、これでは不十分ではないか、独占または高度の寡占状態においては競争機能は十分に働かない、したがって、このような市場構造規制対象とするのが独禁法理念を生かす道ではないか、こういう議論があるのは周知のとおりでございます。この議論経済論として妥当かどうか、私はこれはわかりませんが、今回の改正はこのような独禁法理念を進展させるという方向にあることは十分に認められると思います。  ただ、私は、この市場構造規制する手段方法独禁法基本理念に照らして妥当であるかどうかということが問題であると思います。その規制方法企業活力をそぎ、その競争意欲を減退させるというような手段であれば、これはかえって独占禁止法理念に逆行することになるのではないかと考えております。この改正案においてはそういう点についても相当配慮がなされてい・ることは十分に理解できます。  私は、ただ一個の法律実務家として一つ疑問に思います点は、たとえば営業の一部譲渡を命ずる審決が出た場合に、果たしてこれが実際に執行できるかどうかという点に疑問を持っております。もちろん、審決を受けた会社代表者営業の一部譲渡を実現するように最大の努力をしなければならない義務があります。そして、これを怠れば審決に従わなかったという制裁を受けるということは当然でありますので、その意味において、審決の間接的な強制力のあることは間違いないと思います。しかし、ただ、現実営業の一部譲渡を実現しなければこの規定意味はないと思います。しかし、営業譲渡につきましては、その規模が大きくなればなるほど、この間接的な強制力だけで果たして実現できるかどうかが疑問であります。これを実現するためには、実際問題としては当事者以外の第三者協力が必要であると思います。たとえば譲り受け人あるいは株主、従業員労働組合債権者その他事件当事者でない第三者協力を得なければとうてい実現ができないのではないか、また、実現できるとしても相当長い期間を要することになるのではないか、その間に経済情勢が変動することもあり得るのではないかと思います。  このようなことは審決が出てから後に問題とすべきものだという議論も理論上はあると思いますが、しかし、実際問題としては、審決をするまでにその手続の中でこれらの点が十分に考慮される方がより現実的であると思うのであります。そのように審判手続当事者でない者の協力を必要とするという手続が果たして準司法的な手続に適合するかどうか、私はその点に疑問を持ちます。  たとえが適当であるかどうかわかりませんが、たとえば司法手続であると見ましても、裁判所が行う会社更生事件というようなものはいわゆる非訟事件的な手続で行われております。公正取引委員会のこの準司法的な手続はどちらかというと刑事訴訟的な性格を持っておりますので、こういう手続が果たして適当であるかどうか、私は疑問に思います。  第八条の四に規定されております要件、あるいはその際に配慮すべきこととされておりますような事項、こういうものについては、必ずしも個々の証拠によってこれを認定することには適しない点もあると思います。むしろ経済的な価値判断、あるいは政策的な考慮、そういうものが入ってくる可能性があるのではないかと思われます。  さらに、元来この独占状態に対する措置というものは行為規制ではなくて構造規制であります。事業者の違法な行為は必ずしも存在しない場合に適用されるわけであります。ところが、元来公正取引委員会の行う審査手続は間接強制、たとえば立入検査とか事件関係人を審尋する、そのような手段によって証拠を収集していこうという手続でございますが、このような手続が行われますと、事業者は何か法に違反する不当な行為を行ったのではないかという印象を世間に与えることになるのではなかろうかと思います。この改正は必ずしも事業者行為が社会的に非難されるべきものだということで規定されているものとは思いませんので、そのような印象を与えるような手続は適当ではないのではないかと思います。  以上のような点を考えますと、この手続が第八章第二節のいわゆる準司法的な手続によって行われることは必ずしも適当ではない、むしろ公正取引委員会経済部の所管として処理する方がより現実的ではなかろうかというふうに私は考えます。その場合の手続については規則なり何なりで規定して差し支えないのではないかと思います。ただ、結論は審決という形で出すことには別に異存はございませんが、手続について、果たして第八章第二節の手続によることが適当かどうかという疑問がございます。仮にどうしてもそれが必要であるとしても、現実の問題としてはいわゆる同意審決の形で結論を出すのでなければ実現がむずかしいのではないかと私は考えております。  次に、価格の同調的な引き上げに関する報告の徴収の規定でございますが、この規定現行法の四十条があれば十分であって、この改正は必要がないのではないかと私は考えます。  そのほか、株の保有制限とか、多少ございますが、これについては私は特に意見は申しません。  最後に、審判手続及び訴訟に関する規定の整備でございますが、要綱によりますと、まず、第十の一が、「公正取引委員会は、事件について審査官の職務を行ったことのある審判官その他事件審査に関与したことのある審判官にその事件審判手続を行わせてはならない」となっておりますが、この点でございますが、これは実際の公正取引委員会の実務においてはこのとおり行われているように私は思っております。また、審査審判に関する規則にもこれに相当する規定がございますので、それを法文化するという意味にとどまるのではないかと思います。  次に、「公正取引委員会は、」「証拠を採用しないときは、その理由を示さなければならない。」という規定は大した意味はないのではないかと思います。実際問題として、証拠を採用しない理由は大体被審人側にもわかることでございますし、もし採用しないとしても、たとえば心証が十分であるという場合には採用しないこともあり得ますし、この規定は必ずしも必要がないのではないかと私は考えます。  次に、審判手続審判官によって行われている場合にも直接委員会に対して陳述する機会を与えなければならないという規定も、趣旨は結構だと思いますが、審判官のした審決案に対しては委員会に対して異議を申し立てる機会がございますし、私は、これも必ずしもなければならないというほどの必要性は感じません。また、こういう手続はどのようにして行うのか、ちょっと疑問に思うのであります。  次に、証拠によって事実を認定すべきであることは当然のことでございまして、そのほかの規定、たとえば訴訟において実質的証拠について規定しておりますが、それらの規定との関連から見てもこれは当然のことであって、特に法文化するまでもないことではないかと思いますが、かえって被審人の争わない事実については証拠が要らないということになっていいかどうか、多少疑問がございます。いわゆる民事訴訟であればこのように考えられますが、刑事的な訴追、審判においては必ずしも争いのない事実でも証拠によって認定すべき場合もあると思いますので、その意味でこの改正は必ずしも必要とは考えません。  次に、第五に、審決の取り消し訴訟で新しい証拠の申し出をするについて、従来の現行法では過失がない場合には新証拠の提出ができる。つまり、前に審判手続提出しなかったことについて過失がない場合は裁判所でも新証拠が提出できますが、ただ、その「過失」が「重大な過失」というふうに変更されておりますが、これも現実の問題としては余りそれほど大きな意味は持たないのではないかと考えます。少なくとも、いわゆる実質的証拠法則が行われて、事実認定は公正取引委員会の認定した事実が裁判所を拘束するというたてまえをとっております以上はこの規定はそれほど大した意味はないのではないかと考えます。  ただ、私は、全般的に独禁法の実体規定改正強化されました以上は、審査審判に関する手続についても公正取引委員会の機能がさらに充実される必要があると思います。それは必ずしも法律改正による必要はないと思いますけれども、審判官については、これは希望的な意見でございますが、できれば審判官のうちに裁判官、検察官あるいは弁護士の資格のある方が少なくとも一人は入るということが必要ではなかろうかと考えます。ただ、現行法でも三十五条の第四項で、検察官または弁護士が事務局の職員の中に入らなければならないという規定がございますが、これをやはり審判官に適用すべきではないかというふうに考えております。  以上、簡単でございますが、私の意見は以上で終わらせていただきます。
  6. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、竹内参考人にお願いいたします。
  7. 竹内昭夫

    竹内参考人 竹内でございます。  現在提出されておりますいわゆる四党案と申しますか、それと政府案との違いについてでございますけれども、私は、この違いは、こういうことを申しますと与党、野党両方の方からきらわれることになるかと思いますが、どれもそれほど大事な問題ではないのではないかという感じがいたしております。  まず、第一に、政府案の七条二項でございますが、現行法の七条で公取は不当な取引制限影響排除措置についても届け出等をさせているんだからこういう二項を置くとかえって現行法の一項が狭く解釈されるおそれがある、したがって政府案の二項は削った方がいいという御意見相当有力のようでありますが、しかし、あってもじゃまではないだろう、現にいままで公取がやってきたことを法律がはっきり認めたということではなかろうかということと、それから第二の理由として、公取の審決では従来そういうことをやってきたとしても最高裁判所がそれで結構だと言っているわけではないだろう、そうだとすると、将来の法律解釈として、いままでやってきたことがそのまま最高裁判所でも認められるかどうかまた議論の余地がある、だとするとこれはやはりはっきりさせておいた方がいいだろうということ、それからもう一つは、一たんこういう政府案ができた上でそれが削られたということが将来の法律解釈にどういう影響を及ぼすだろうか、立法者の国会は、やはりこういうことを公取がやるのは望ましくないというわけで削ってしまったんだというふうな解釈がもし出てくるようでございますと、これは野党側の意図しておられるところと全く逆のことになるのではないだろうか、このように私は考えます。なくてもよいであろうけれども、まあ無理して削るまでのことでもないというのが私の印象であります。  次に、十八条の二に価格の同調的引き上げについての届け出と、それから四十四条でそれの国会への報告ということがございますが、これは公取の一般的調査権、先ほど入江参考人もおっしゃいました一般的調査権と、それから四十三条の公表権を使えば何とかなるのではないか、したがってこれは削った方がいいという御意見もあるようであります。私も削ったって構わないとは思いますけれども、しかし、むしろ存置した方がよくはなかろうかというように感じております。と申しますのは、四十条でこういうことができるかどうかということが、これもまた判例で確定していないんじゃなかろうかということが一つと、それからもう一つ公正取引委員会というのは常に使命感にあふれた正義の士だというふうに前提してその法律制度というのは考えるべきじゃない。いままでの、あるいは現在の公正取引委員会が仮にそのようなものであるといたしましても、公正取引委員会も人の子でありますからやはり怠け心が起きないとは限らないわけでありまして、その場合に四十条で一般的な調査をすることができると書いてあるだけよりは、これだけ具体的なことを書きまして、こういう場合には報告をとってそれを国会に出しなさいと言った方が——これは一般論を申しておるわけでありますから、公取の方に具体的にそういう怠け心があるというふうなことを申しているわけじゃないので誤解をしないでいただきたいと思うわけでございますが、そういう場合にそういうおそれをなくするのではなかろうか、その意味でこれはあった方がいいのではないかと私は思います。  ただ、これは報告をとりましても、それを国会に対して報告するまで眠らせておく必然性というものは何にもないような気がいたしますので、もし現行法のままで通すとすれば、それこそ四十三条の一般的な公表権を使って公正取引委員会はそれを公表するように法律を運用するのが妥当だろうと思いますし、それから、また、それも公正取引委員会が怠けるおそれがあるというのであれば、やはり一定期間内に公表するということを法律で書くということも考えていいというふうに思っております。その意味で、これもどうしてもなければならぬかと言われますとそうとも思いませんけれども、無理して削らなければどうにもならないかと言われるとそうでもなさそうに思うわけでございます。  それから、次に、四十五条の二でございます。独占状態について適当な措置をとるときは主務大臣に通知して、主務大臣に意見の陳述をさせるという規定でありますが、これにつきましても、公正取引委員会の独立性を害するから削れという議論があるようでございます。私も、あった方がいいかない方がいいかと言われれば、この点につきましては、それはない方がいいだろうというふうに考えております。しかし、その理由は、こういう規定がありますと公正取引委員会の独立性が害されるということにあるのではないのでありまして、主務大臣が意見を述べたぐらいでぐらぐらするような公正取引委員会であれば、それは新聞や雑誌にいろいろなことを書かれただけだってやはりぐらぐらするだろう、いわゆる公正取引委員会の独立性を守るというのはしょせんは人であり、制度だけでどうにもなるものではない、主務大臣に意見を述べられるととたんにぐらぐらするというふうなことであれば、これはその制度をどんなにつくったところで仕方がない、こういうふうに私は考えるわけでございます。  では、なぜない方がいいかと申しますと、いろいろ調査等をする前に主務大臣に意見を述べるということになりますと、世間から公正取引委員会は主務大臣の圧力に屈したのではないかというあらぬ疑いを受けるおそれが出てくる。手続は、公正であると同時に、やはり公正らしく見えるということも大事ではなかろうと思うわけでございまして、そういう意味からすれば、あった方がいいかない方がいいかと言われれば、私はない方がいいだろうとは思いますけれども、こういう規定を置いたからといって直ちに公正取引委員会の独立性が害されるというようなことになるかといえば、それはそうは思わないというふうに私は考えるわけであります。  以上が主な相違点でございますが、私は、以上三点よりももっともっと大事なことがあるのではないかという感じがいたしております。  それは、先ほども入江参考人がおっしゃったことでございますが、八条の四によりまして独占状態排除を命ずる審決をいたした場合に、その実効性をどうやって担保するかという問題であります。私は、独占状態排除するためのいわゆる企業分割などというものは軽々に発動すべきものでないということは十分に理解しております。問題は、完全独占というものが成立してしまいまして、これに対処するためにはもう政府による価格統制か企業の国有化しかないという場合になって、それと企業の分割と一体どちらを選ぶかということになった場合に、企業を分割することもやむを得ない、それが自由経済秩序を守るゆえんだと私は考えておるわけでございます。その意味で軽々に発動すべきものでないということは十分わかりますけれども、発動した以上は守ってもらわなければ仕方がないということも事実でございます。  ところが、審決違反につきましては、九十条三号で三百万円の罰金をかけるということになっております。これは審決で命ぜられた会社にかけられるわけでございます。しかしながら、代表取締役が誠心誠意取締役会において説明した、株主総会においても議案を可決してもらうように努力した、ところがいずれも成り立たないと言われた場合には、その代表取締役に対して両罰規定をかけることは無理でありましょう。そうだといたしますと、結局審決を出してみてもその会社は三百万円の罰金を払いさえすれば事は済むということになってしまうのではないか。毎年何百億かの利益を上げておるような会社に対しまして三百万円の罰金を払うかどうかなどということを聞いてみても話にならないわけでございまして、この点は、いわゆる四党案についても、野党案についても、実効性をどうやって担保するおつもりなのかという疑問を私は禁じ得ないのであります。  先ほど申しましたように、この規定は軽々に発動すべきものでないことは言うまでもございませんが、発動した以上は動くものでなければならない。そうでないことにはこんな規定はしょせんは張り子のトラだということになります。三百万円の罰金で片づくというなら、苦心惨たんして審決にこぎつけましたところで大山鳴動ネズミ一匹でありまして何の役にも立たない。役に立たない規定を役に立つ規定であるかのように見せかけるのは国民に対する欺瞞的な行為ではなかろうかと私は考えるわけでございまして、その実効性を担保するということについて十分御工夫をいただきたい。この点は、前回、昭和五十年の当委員会に呼ばれましたときにも自民党の方の質問に答えて述べたところでありますけれども、両方の法案ともその点はまだ考慮が不十分であるかのように思います。  それから、もう一つ独占状態排除を命ずる場合に、営業の一部譲渡ということが一番初めに上がっておりますが、これでは恐らく動かないだろうということは入江参考人のおっしゃったとおりで、私も同意見でございます。と申しますのは、営業譲渡というのは買い手があることがもちろん前提でございます。買い手と申しましても、独占状態にある企業営業の重要な一部を買えるというのはやはり相当多額の資金が要ります。それからまた相当の経験のある者でなければ軽々にそんな新しい事業を始めるはずがない。そうだといたしますと、こういう審決が確定した場合に、その営業の一部を譲り受けようということが言い出せるのは恐らく競争企業だろうと思います。競争企業がそういうことを申し出た場合にどういうことになるかと言われれば、それは公正取引委員会から営業の一部を譲渡せよと言われて弱り果てている、その弱みにつけ込んで私が買いましょうかなどと言ってくる者に対しましては、株主もそうでありましょうし、取引銀行もそうでありましょうし、労働組合もそうでありましょうが、下請も取引先もこぞってこれを恨むでありましょう。そうだといたしますと、これは百年遺恨を残すということになりかねないわけでありまして、あえて恨まれても買おうというのは、よほどそこでたたいてやろうというつもりがある場合でなければどうも考えられないのではないか。そうだといたしますと、この営業の一部譲渡を命ずる審決は競争状態を回復するということがねらいでありまして、たたき売れと言っているわけでも何でもない。そうだとしますと、値段の折り合いがつかないということになります。折り合いがつかなければ取締役会でまず通らない、株主総会でもちろん通らないということになります。買い手があるかどうか、出てきた場合にその折り合いがつくかというわけでございまして、そういう意味で、営業の一部譲渡を命ずるというのは、法案が通った場合でもそういうやり方をするのは望ましくないと私は思う。  では、どういうやり方をするかといえば、私は、企業を分けなさいという形で審決すべきだろうと思う。企業を分けるということと営業の一部譲渡というのはどう違うかと申しますと、企業を分けるというのは経済的、実質的な問題であります。営業の一部譲渡と申しますのは、それを達成するための法律手段一つであります。そういう営業を一部売ってしまえというふうな形じゃなしに、その法律手段については企業に十分な自主性を認めるということが手続を円滑に進めるゆえんであろうと思います。たとえば営業の一部を現物出資させて完全子会社を一たんつくらせた上で、その株を数年間にわたって市場において売らせていくというようなやり方をいたしますれば値段の折り合いなどという厄介な問題は起きなくて済む。私がこういうことを申しますのは、そういうことを命ぜられる企業を擁護したいというつもりではないのでありまして、公正取引委員会営業の一部譲渡を命じたところがにっちもさっちもいかなくなってしまって、結局罰金三百万円を取っただけで幕というようなことにならないようにしたいということを考えるからでございます。  最後に申し上げますが、私は、前回のここでの意見の陳述のときにも、独禁法違反行為によって被害を受ける一般事業者消費者の損害を十分に回復できるような手当てを完全にしてほしいということをるる申し上げました。そしてそのことは消費者被害の救済を図るということだけではなしに、独禁法を運用する者が公正取引委員会だけであり、独禁法運用の公取による独占という状態を打破して、国民みんなの手によってできるだけうまく独禁法運用のためのエルネギーを引き出すというためにもぜひ必要であるということをるる申し述べたのでございますが、この点は四党案にも政府案にも全くと言っていいほど入っておらないわけであります。私は、その意味で、今回の両方の法案は悪い意味での官僚的な色彩をやはり持っているのではなかろうかと思います。つまり、よらしむべし知らしむべからずと申しますか、公正取引委員会がやった後で国民は黙ってついてくればいいんだというふうなにおいがしなくもないという点を私は非常に残念に思うわけでありまして、そんなことはこの段階で申し上げてもお取り上げになるはずもございませんけれども、意見を述べる機会を与えられましたので、かねがね申し上げていることでございますので、この際そういう問題が残っておるということだけを私としては一言申し上げさせていただきます。
  8. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、正田参考人にお願いいたします。
  9. 正田彬

    正田参考人 今回国会に提出されております二つの独禁法改正の法案について意見を申し上げたいと思います。  政府案あるいは野党案というのですか、この両案とも非常に多岐にわたっておりますが、ただいま意見を述べられました竹内さんの場合にならいまして、この両案を比較しながら、あるいは両案の相違点を中心にして、若干それ以外の点を含めて意見を申し上げたいと思います。  全般的に独占禁止法制を強化しようということで独禁法改正が問題になり、いずれも独禁法強化ということをうたわれた改正案が提案されているということにつきましては、現在の日本経済の現状あるいは日本経済における民主制を確保し、さらに日本経済活力を注ぎ込んでいくための基本的な問題について、それを促進しようという意図を持つものとして大変結構なことだというふうに私は考えております。しかしながら、独禁法改正は、少なくとも強化のための改正という形で問題が出てきております以上、独禁法の強化という方向に向かっての改正が必要であるということは申し上げるまでもないわけでありまして、この点との関係で私の意見を申し上げたいと思うわけであります。  カルテル規制に対しまして、現在の提案されております両案とも課徴金の制度を導入しようとしているわけでありますが、この課徴金が、カルテルによる、いわば違法行為による不当利得を国庫に納入させるという趣旨で提案されていること自体は私は賛成であります。この内容が果たして不当利得を国庫に納入させるという実態に適合しているかどうかという点についてはまだ検討すべき余地もあるように思いますけれども、課徴金制度が導入され、ある点程度まででも企業カルテルのやり得という効果が減殺されるという点については結構なことだというふうに私は思っております。  ただ、私が課徴金につきまして一つ疑問だと思っております点は、事業者団体の違反行為に対して構成員に直ちに課徴金を命ずるという制度が組み込まれている点であるわけであります。事業者団体の違反行為が行われ、それにたとえば仮に構成事業者事業者団体の違法な決定に従ってはならないとか、あるいは事業者団体の違法な決定を具体化する行為をしてはならないという禁止規定が一項目入っておりますれば、これは当然事業者団体の構成員に対して課徴金を課するということがきわめてスムーズに出てくるわけでありますが、こういう規定がないまま、事業者団体の違法行為を理由に直ちに構成事業者課徴金の納入を命ずるという手続が開始されるという点については私は疑問を抱いております。可能ならば、この事業者団体の違反行為と構成事業者課徴金納付という関係について検討していただくことをお願い申し上げたいと思います。  カルテル規制につきましては、そのほかに排除措置についての規定改正が予定されているわけであります。「必要があると認めるときは、事業者に対し、当該行為によって生じた影響排除するためにとることとなる具体的措置の内容の届出及び当該具体的措置の実施状況の報告を命ずることができる。」という規定が七条二項に新設されるというのが政府提案でありまして、もう一つの案では、現行法影響排除するためにとるべき適当な措置を命ずることができるというような改正点が示されているわけであります。この点につきましては、先ほど来入江竹内両氏がお触れになりまして、不要なのではなかろうかという御意見であったように承ったのでありますが、私もこの点については現行法改正する必要はないのではなかろうかというふうに考えております。  現行法カルテルに対してどういう排除措置を命じ得るのか、あるいは排除措置というものの性格は何かという点につきましてはいろいろと意見もございます。しかしながら、違反行為排除するために必要な措置というのは、同法に違反してなされている行為の差しとめ、違反行為からもたらされた結果の除去等、直ちに現在において違反行為がないと同一の状態をつくり出すことがその中心となるけれども、それにとどまらず、さらにそれを越えて、たとえば将来にわたっての同一行為の反復を禁ずるとか、こういう形でもって審決を命ずることが独禁法の予定している措置であるという考え方が東京高裁によって示されているように、カルテルにつきましても、命令の内容は必ずしもカルテル協定破棄というところに限定されるものではないというふうに考えられるわけでありまして、従来の公取の審決カルテルによる競争制限を事実上除去していくための工夫をいろいろとこらしておられるというふうに考えられるわけであります。  この七条の二項の持つ危険性は、こういうさまざまな形でカルテルによる競争制限状態を除去するための排除措置命令というものを、当事者にとるべき措置を決定して届け出ろという形に移行してしまうということでありまして、この届け出の内容が何であるかということについては当事者の判断にゆだねてしまうわけでありますから、したがって、それが必要な内容を届け出てくるか、あるいはそうでないか、もし、必要でない、あるいは何らの措置もとらないというようなことが届け出られたときに、果たしてこれが審決違反という形でチェックができるのかできないのか。私は恐らくできないのじゃないかというふうに思います。そういう意味で、現在かなり進んできている排除措置命令についての従来の運用をむしろ混乱させ、そして従来命令として出し得たところのものを当事者の自主快走にゆだねるということになる危険性を持っている。そういう意味で、私は、七条の二項という規定改正の必要はないというふうに考えるわけでありまして、むしろ現行法のままが妥当なのではないかというふうに思っております。  次に問題になりますのが同調的価格引き上げについての提案であります。これは政府案に盛られておりまして、もう一つの案ではこれが落ちているという部分であります。この点につきましては、いわゆる寡占的な企業が競争制限的結果をもたらすような、あるいは効果をもたらすような同調的価格引き上げを行う場合に何らかの規制が必要であるという点については、私はこれを否定するものではないのでありますが、現在予定されております政府の提案が果たしてそういう役割りを果たし得るかという点について第一の疑問がございます。  報告を聴取する権限を公正取引委員会に認めると申しましても、先ほど竹内入江参考人がお話しになりましたように、この報告聴取は四十条で可能な範囲に含まれるのではないかということになってまいります。もし四十条で可能な範囲であるということになりますと、これは改めてそれを規定することの意味がどこにあるのかという点で問題になってくるだろうと思います。そして、それについては四十三条の公取の公表権がございますので、調査し、報告をとり、さらに必要であればこれを公表するということは現行法で不可能ではないような気がいたします。しかしながら、積極的にこの提案の方向を検討してみますと、一定の報告をとり、そしてそれはある一定の期間内に公表するという、こういうつながりのもとでこの報告聴取ということを考えるのが妥当ではないかという先ほどの竹内参考人の御意見に私は賛成でありまして、そういう形でこの規定を生かしていく道というものは考えられるように思うわけであります。  次に、独占状態についての規制の、この営業の一部譲渡の問題がいろいろと論議されているわけでありますが、この独占状態規制が構造規制であるというようにとらえられているのが一般だと思います。しかしながら、この独占状態規制につきましては、一定の市場の大きさであるとか、市場占拠率であるとか、参入障壁の高さであるとか、あるいは価格の下方硬直性という形で市場に規定されているという要因が一つの重要な材料になっておりますけれども、それ以外に、一定期間にわたって著しく高い利益を得ているとか、あるいは著しく高額な経費の支出が行われているとか、こういうことが独占状態の判断基準になっているわけであります。もしこの制度をそのまま運用してまいりますと、シェアの算定のところで同種の商品と類似の商品の混同がありまして、場合によっては、ある商品について独占であっても、類似の商品を合わせると一定の市場占拠率に達しない場合には独占状態がない、独占であって、独占状態がないという、こういう結果にもなるような非常に緩やかな独占状態のシェアの算定基準がまずございます。そして、同じ独占状態であっても、これは市場の面からであっても、次にその企業が得ている利潤であるとか支出している経費であるとかということが判断の材料にされて独占状態があるとかないとか、またここでもう一つふるわれるということになっているわけであります。  そういう意味で、私の考えでは、独占状態の定義自体が必ずしも十分であるとは思えないのであります。このような形でも、先ほど入江参考人のおっしゃいましたように、独占禁止法制のいわば一つの詰めとしてこういった方向が制度化され、さらにこれが極端な場合に運用されていく可能性があるということ自体は非常に大きな意味を持っていることだと思うわけであります。したがって、実体規定の中にかなり問題があり、この点について本来はさらに御検討いただきたいと思うわけであります。  その実体規定についてはともかくといたしまして、この両案の相違点として挙げられておりますところの、公取が立件し、調査活動に入る前に主務大臣に通知し、主務大臣は意見を述べることができるという条項が政府案に入っている点について一言申し上げておきたいと思いますが、実体的には公正取引委員会がしっかりしていればいいんだという竹内参考人の御意見は私もそうだと思うのであります。こういう規定があろうがなかろうが、公正取引委員会がきわめて弱腰であり、主務大臣の意向をそのまま尊重なさるという運用をされる可能性もないわけではございません。しかしながら、法律にそれが定められ、しかも主務大臣が意見を述べるという一定の権限を認められるということの意味は、その主務大臣の意見を無視することを前提にして法律がそれを定めるということはあり得ないわけであります。いい意見だったら入れる、よくなければ入れないという判断ももちろんあり得ると思いますが、少なくとも制度の上では、主務大臣の意見を尊重するということを予定しないで意見を述べる権限を認めるということは考えられないのではないかと思います。  そうなってまいりますと、独占状態があるかないかという判断、あるいは独占状態があることを前提にして考えられる他の措置についての意見、いずれにせよ一方は独占状態の有無についての意見でありますし、他方は独占状態があることを前提にして述べる意見でありますから、そこで独禁法の判断についての主務大臣の意見というものが出てくることになり、公正取引委員会はそれをとにかく考慮に入れるということを制度上義務づけられる。そしてそれが調査前、少なくとも公正取引委員会がまだ判断をする前に行われるということになってまいりますと、公取の判断がそこで制度的に影響を受けるような仕組みができ上がることが問題だということであります。実体的には公正取引委員会がその意見をどう取り扱うかというのは、運用の問題、公正取引委員会あり方の問題だということで解決がつくかと思いますが、そういうことを法律制度の中に規定するということ自体に問題があるということを申し上げておきたいと思います。この点は、政府案の追加された部分といいますか、政府案に盛られている点は削除していただくことがやはり望ましいのではなかろうかと思います。  最後に、手続的な規定の問題が今回あるいは昨年の政府案以来新しく出てきておりますが、この点につきましては先ほど来要らないのではないかという御意見入江参考人から出されてきておりますが、公正取引委員会審査審判等の手続が公正かつ迅速に行われ得るべくさまざまな努力あるいは検討を加える必要のあることは申し上げるまでもないわけでありまして、恐らく、常にこういう点についての検討は必要であろうというふうに考えられます。したがって、この点については、特に大きな弊害手続上出てきていないという状態のもとでは、その一部だけを抽出して、そして必ずしも合理的な抽出基準によったとは考えられない形で抽出して、一部は規則を制度化するという形でいじるということについてまず疑問を持つわけであります。公正取引委員会における手続規定の中にさまざまな問題があり得るとは思いますが、ここで出てきている点が本当に公正なかつ迅速な手続を進めるために必要な改正であるかどうかという点について疑問がある。この点は再検討を必要とするのではなかろうかと思います。  また、八十一条で、東京高裁における訴訟に際して新しい証拠を提出するという場合の条件の緩和が図られているわけでありますが、この点も先ほど入江参考人がお述べになりましたように、現在の法体系から申しまして、公正取引委員会で事実については最大限の努力を払って、被審人がそこで争うべきであるという基本的な原則というのは、公正取引委員会の現在の法体系における地位あるいは実質的証拠の原則というようなものと不可分に結びついているものであるだけに、しかもこのことを理由にして実際に裁判で一定の証拠の申し出がけられたという実績も事実もないようでありますので、そういう点を勘案いたしますと、この八十一条についての改正案というものの合理的な根拠は見出せないような気がいたします。こういう点につきまして、両案についての違いがありますので、いまそれぞれについて私の意見を申し上げたわけでありますが、その点を御考慮いただいて御審議をいただきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  10. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 野呂恭一

    野呂委員長 これより、参考人に対する質疑を行います。  なお、委員におかれては、質疑の際、まず質疑する参考人の氏名をお示し願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎拓君。
  12. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 まず、四人の参考人の先生方から貴重な御意見を拝聴いたしましたことを感謝を申し上げる次第であります。  まず、山本参考人にお伺いいたしますが、私は、独禁法改正案が審議に入りましてから常に念頭を離れない基本的な疑問があるのでありますが、それは、この法案と同時に中小企業分野調整法という法案がこの国会に提出をされており、独禁法改正は競争促進政策でありますが、分野調整法の方は競争制限的な法案になっておる。そのような法案が同時に国会に提出されて、しかも並行してこの商工委員会で審議されていることにつきまして非常な混乱を感じておるわけでございます。     〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕  しからば、この法案に共通している点は大企業規制するという点であろうかと思うのでありますが、独禁法改正に疑問を唱えることによって、あたかも日ごろ言われておりますように自民党は大企業の味方ばかりする、そして中小企業の味方をしない、あるいは消費者の味方をしないという批判を沿びますがゆえに党内におきましても非常にちゅうちょする向きがあるわけでございますが、お話をいただきましたように、石油ショック後日本の経済は全く新しい局面に入っているということだと思うのです。そして、そういう新しい経済環境の中でどのような新しいルールをつくったらいいのか、経済活力を与えるためにどういうルールをつくったらいいのかということであろうかと思うのでありますが、この二つの法案が提案されたということになりますと、結局、大企業規制することが新しい経済環境の中で日本経済活力を与えることになるというふうにしか考えようがないと思うのでありますが、大企業規制するという産業政策というものが果たしてあり得るのかどうか、そういう点について、まず、日ごろ感じております基本的な疑問をお伺いしたいと思います。
  13. 山本雄二郎

    山本参考人 いまの問題ですけれども、先ほど申しましたように、いま日本経済は非常な混乱状態を脱していない段階だと思うわけです。したがって、本来の市場メカニズムを通ずる自由競争ということには、いまの段階では、規制といいますか、計画化といいますか、そういうことはある程度必要じゃないかというふうに私は思っております。  いま御指摘の分野調整法並びに大店法の改正問題というものが出ておりますけれども、これは自由な経済活動を規制するという点では確かに問題があると思いますが、しかし、いまの状態でいわゆる弱肉強食の自由競争を展開するということは非常に問題だと思いますので、ここはある程度規制が必要だ、そして、新しい日本経済秩序をつくるまでの異常事態についてはそういうこともやはり必要じゃないか、こういうふうに私は思っております。  したがって、今度の独禁法の問題についても、そういう意味で競争条件を整備して市場メカニズムを働かせるということは非常にわかるわけでありますけれども、ただ、そこにはやはり大きな混乱が生じてはならないというふうなことで、ある程度大企業中小企業の調整が必要だということと同じように、大企業の活動についても、野放しの競争であってはならないというふうな感じがしております。
  14. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 山本参考人にはもう一問伺っておきたいのですが、この独禁法改正は時期は必ずしも適当でないということと、ここに改正の最も大きな柱になっております独占状態に対する措置でありますが、これはむしろ企業活力を与えるのではなくて、企業姿勢を萎縮させることになりはしないかということでいろいろと御指摘があったわけでございます。そして、それに関連いたしまして同調的引き上げに関する措置でございますが、これに関してどういう御所見をお持ちであるのか伺いたいわけでございます。  たとえば通産の、山中調査会に出されました資料を見ておりましても、価格硬直現象がある品目においても原材料価格影響というものを指摘しておりますし、あるいは需要者側の力が非常に強い場合というようなことも言っておりますし、そういう国際競争力の圧力ということも指摘しておるわけでございますが、このようにどうしても同調的引き上げ現象を示さなければならない寡占業種における実態というものがあろうかと思うのでありますが、そういうふうに考えました場合に、このような措置も日本の経済の中における企業活力をそぐ規定になりはしないかという疑問があるわけでございますが、いかがでございますか。
  15. 山本雄二郎

    山本参考人 同調的値上げでよく例に出るのは鉄鋼の場合だと思うのですけれども、そういう重化学装置産業の場合は、近代工業技術といいますか、それを設備にしていくという段階で非常に長い計画期間を要する。そして巨大な資金も必要とするわけで、それをさらに再生産を確保するためにある程度の利潤を確保していかなければならぬという問題が前提にあると思います。そして、各社も大体同じようなペースでそういう計画を進めていく。そしてそこで買ってくる原材料などの条件もほぼ同じであるということになりますと、コスト事情はどうしても似たような問題になってくるのじゃないかという気がいたします。  それから、もう一つは、鉄鋼の場合は製品の大部分は大口のユーザーとの間に契約されるということでありまして、薄板は自動車、厚板は造船というふうな形でビッグビジネス同士の取引ということになるわけです。その象徴的なものは、薄板については新日鉄とトヨタが、両方とも横綱同士が出会って、そこで丁丁発止と戦って決める、そしてそれに各社大体ならっていくというのが実際のところの姿じゃないかというふうに思っておりますが、そういうことはある程度もうやむを得ないというか、そういう形になってきているということだと思うわけでありまして、それが高いか安いかというふうな問題はこれは別の問題ですが、しかし、同調的値上げだから問題だということは余り言えないのじゃないか、むしろその間に不法なカルテルがあるのかどうかというふうなことがいまの独禁法で当然問題になるべきじゃないか、そういう意味で余り同調的値上げということで取り上げることはどうか、こういうふうに私は思っております。
  16. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 入江参考人にお伺いしますが、入江参考人の御指摘の中に、課徴金の問題で、実行期間をどう見るかというお話がございましたが、この場合に、審判で争っておる期間をどう考えるかによりまして、いわば企業側に泣き寝入りのケースも出てくるのではないかということであろうと思うのです。そこで、入江参考人は公取の認定基準を明らかにする必要があるということを申し述べられたわけでございますが、入江参考人とされましてはどのような実行期間の基準を設けるべきだとお考えになっているか、その点についてお伺いしたいと思います。
  17. 入江一郎

    入江参考人 御指摘の点につきましては私自身まだ適確な判断はいたしておりませんが、現在考えておりますことは、違反行為による事業活動がなくなったということは、やはり、協定をはっきり破棄したということが明瞭になった場合にはそのように認定すべきではないかと私は思っております。それ以上のことまで要求されるということになると、私は疑問に思います。
  18. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 同じく入江参考人にお伺いをいたしますが、営業の一部譲渡に関しまして、審決が出ました場合に、実際これを実現することができるかどうかという点についてお話があったわけでございますが、竹内参考人からも同様の御指摘がございましたが、間接的な強制力だけで、第三者協力なしに果たしてこれが実現できるかどうかが大きな問題であるということであろうと思うのです。私もそのように思うのです。そこで、第三者協力の中で挙げられました譲り受け人の問題、株主の問題、労働組合の問題等々だということでございましたが、株主総会と審決との関係につきまして少し伺っておきたいと思うのです。  株主総会、これはよく問題になるところでございますが、株主総会で否決された場合に、企業審決内容を実行することを免除されたというふうに考えることができるかどうか、この点についてはいかがですか。
  19. 入江一郎

    入江参考人 その点につきましてはいろいろ考え方があると思いますけれども、私は、審決の効力というものは株主総会の決議いかんにかかわらずある、したがってそれに違反することは代表者としては許されないと、このように考えます。  ただ、実際問題として、株主総会がもしこれに反対したという場合に、代表取締役の立場としてはやはり総会の決議に従う忠実義務もございますし、また、審決にも従わなければならないという非常に苦しい立場に立つということは否定できないと思います。ただ、審決が効力がなくなるとか、そうは考えませんけれども、実際問題として非常に困ったことになるのではないかというのが私の考え方でございます。
  20. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 いまお話しのように、株主総会の否決の決議によって審決が失効しないということでございますと、実際に当該の企業というものはこの審決にいつまで拘束されるということになるのか、その審決に対する賛成が得られるまで株主総会をいろいろ工作をやって開いていくということになるのか、その点はいかがですか。
  21. 入江一郎

    入江参考人 これは実際問題としてどういうことになるのか、非常にむずかしいと思いますが、代表取締役としてはやはり株主総会の承認を得るように最大の努力はしなければならないと思いますけれども、審決は個々の株主まで拘束する力はないと思いますので、総会がどうしても否決するということになりますと、これは実際問題として代表取締役としては営業譲渡ができない、そうなると審決に従わなかったということになって制裁の問題が起こると思います。その場合に、裁判所が果たしてそれを有罪と認めるかどうか、正当な理由があると認めるかどうかという問題にかかってくるのではないかというふうに私は考えております。
  22. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 この点について竹内参考人にもお伺いしたいと思うのですが、竹内参考人も同様の御指摘でございまして、結局三百万円の罰金で済むことになるのではないかというようなお話もございました。しかし、この規定には「営業の一部の譲渡その他」、ということになっておるわけでございますが、「その他」の解釈についてどのようにお考えですか。
  23. 竹内昭夫

    竹内参考人 この法案が通りました場合には、公正取引委員会としては、その他の措置という言葉の解釈によりまして、企業の分割を命ずるというような形で運用していかなければ動きがつかなくなるのではないかと思うのです。営業譲渡しなさい、何々工場を譲渡しなさいといった場合には、先ほども申し上げましたように買い手がつかない、買い手がついても値段の折り合いがつかない、総会が否決するということになります。しかしながら、何々工場を中心とする完全子会社をつくって、その株を数年間にわたって市場へ放出していく、それによって、当初は完全子会社でございますから分割した意味がないわけでございますが、数年たてばそこに競争状態が生まれてくるというようなやり方をすれば、いま申しました営業譲渡に伴う厄介な問題は回避できるのではなかろうか、それでも問題があるかもしれませんが、少なくとも営業譲渡を直接命じた場合よりは楽にできるだろう、したがって、その他の措置という言葉の中でいま申し上げましたような工夫を恐らくこらされることになるのではないだろうか、このように私は予測しております。
  24. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 ついでながらもう一点お伺いしますが、そうすると営業の一部譲渡という表現は避けて、もっと適切な表現を採用した方がいいというお考えですか。
  25. 竹内昭夫

    竹内参考人 それは、企業の分割という言葉を使いますと、このニュアンスが真っ二つにたたき切るみたいなとんでもないことを考えているように思われまして、そのことがまた紛糾の種になるということでは困りますけれども、しかし、実態からすれば企業を分割するということの方が事の性質から言っても合うし、それが競争を回復する。要するに企業を分けて企業間に競争状態が出てくるようにすることが独禁法の目的でございますから、そのためにとる法律的な手段について、公正取引委員会がこれは営業譲渡でいけ、これは現物出資でいけ、これは新会社設立でいけというふうなことまで一々口を出す必要はないのであって、結果的に企業が分割されて、その間に競争状態が生ずるような目的を達し得るような手段であれば法律的にはどのような手段をとろうと勝手だという意味企業の分割という言葉をとった方が妥当だと私は考えております。  しかし、これは最初に申しましたように、この言葉を使いますとまた大変なことのように思われて紛糾するということであれば、これはやむを得ないので、そうだとすればこのままの言葉でもって、いま申し上げたような解釈でもって実態に合うような運用をしていくことが賢明ではなかろうか、その辺は皆さん方にお考えいただいてお決めいただくことではないか、このように思います。
  26. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 もう少しお聞きしたいのですけれども時間がありませんが、配慮規定との関係で、営業の一部譲渡でも労働組合その他相当な抵抗が考えられるのですが、企業分割になるとなお一層の問題が出てくるのではないかと私は思っているのです。  きょうは限られた時間でございますので、最後に正田参考人に伺って終わりたいと思いますが、正田参考人が述べられました御意見の中で、独占状態規制に関しまして主務大臣に通知をする、そして主務大臣が意見を述べることができるという点についてお話がございました。そして、主務大臣が意見を述べるということは無視することを前提に規定するはずがないので、尊重することを予定しているからこれは削除すべきだという御意見でございましたが、私が思考いたしますに、この独占状態規制すること、すなわちただいま議論がありました営業の一部譲渡、これは企業分割と概括的に申していいと思いますが、企業分割というのは、元来の独禁法行為規制をやっておったのに対しまして構造規制だという議論があるわけですね。構造規制はまさしく産業政策に属するものだと考えますが、その点はどうかということと、もし仮にそうだといたしました場合には産業政策は当然内閣が責任をもって行うべきことでありまして、それを独禁法二十八条の規定によって独立した機関である公取がそこまでやることにつきましては私ども強い疑問を抱いておるわけでございますが、その点はどうかということをお聞きしたいと思います。  それであるにもかかわりませず、この産業政策を公取が行おうとする際に主務大臣の意見も差しはさむ。もちろん後段で審判手続を開始する前に協議するということはあります。しかし、審判手続を開始する段階というのは、公取の立件と申しますか、これが相当進んでおって、公取の見解、方針というものがコンクリートになっておると思うのです。そういう段階での協議よりも、相当段階で主管官庁の意見が当然申し述べられるべきである。私は、むしろ、産業政策であるからには主務大臣の同意なしには認めるべきでないという個人的な見解を持っておりますが、それはさておきまして、先生の御意見を以上三点についてお伺いしたいと思います。
  27. 正田彬

    正田参考人 最初に、独占状態についての規制措置産業政策ではないかということだと思いますが、何をもって産業政策という形でおっしゃっていらっしゃるのかが私はちょっとはっきりいたしませんけれども、もし、日本の経済法制全般の基本的な原則も含めて産業政策であるということをおっしゃるのであれば、これは個々の行政庁の判断によって決まるべき事柄ではなくて、日本の経済の体制の基本法律によって定められているわけでありますから、言いかえれば、現在の日本の経済基本は競争経済体制を基本にして、それを具体化した上でさまざまな政策が行われる。そういう意味で申しますと、競争経済体制あるいは競争秩序の維持それ自体も産業政策であるということになりますと、これは必ずしもいわゆる主管官庁自体だけの問題ではなくなるであろうと思います。  それで、そういうものをより狭く産業政策ということを解してまいりますと、これはそのときそのときの政策によって左右されるべき事柄ではなくて、法律の適用という形で進められるべき事柄であるという意味では産業政策の範囲から外れる。そして競争秩序の維持という基本的な原則を具体化するために法律が一定の制度を設けて、その制度を法律に従って運用するということに関しましては、そのときそのときの政策的判断によって法の適用が左右されるということは考えられないと私は思っております。  したがって、独禁法の適用ということになってまいりますと、これはまさに法と事実との関係でそれを動かしていくのが基本でありまして、その執行機関として公正取引委員会が制度的に設けられ、そこに独禁法の運用についての権限が与えられている以上、これは公正取引委員会が判断をして進めていくべき事柄であると考えているわけであります。したがって、法と事実、社会的事実に法をどう適用するかということが公取のこの点につきましての使命でありますから、その公取の法的な判断に対して、法的な判断が政策的な要因によって動かされるということ自体も問題がありますし、先ほど竹内参考人がおっしゃいましたように政策的判断によって動かされるのではないかという疑いを国民に抱かせるという意味でも当然問題があるというふうに考えております。  そういう点で、本来ですと、これは前から東大の矢沢教授が指摘しておられる点なのでありますが、事前協議とかあるいは事前の意見徴取というような、いわゆる両官庁間で密室の取引をするということよりも、独禁法には六十条、六十一条という形で関係のある公務所が審判手続に参加することができるという規定もございますし、また、公務所がオープンの場での意見を述べるという道も開かれているわけであります。これは一つの法的な手続の中でそれをはっきりと主張して、そして公取がそれに対して法的な判断をするという道はあるわけでありますが、こういう点を利用すべきだというのが先ほど申し上げた矢沢教授の御意見でありますけれども、むしろこういうことに重点を置いていくべきではなかろうかというふうに考えております。
  28. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 終わります。
  29. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 板川正吾君。
  30. 板川正吾

    ○板川委員 参考人にお伺いいたします。  最初に山本参考人に二点伺いたいのですが、山本参考人は、企業分割営業の一部譲渡規定企業活力を損なうし、この規定改正は尚早だという御意見のようであります。その理由として、新規参入が多いとか、価格に下方硬直性はない、あるいは外資が入りやすい、経済力の乱用の実態はないというようにおっしゃいましたが、そういう実態がなければこの法律は適用できないように縛りがかけてあるのに、尚早だと言う論拠があるのでしょうか。  もう一点は、大企業が悪だという風潮が定着することが危険だということもおっしゃいました。これは考え方の違いかもしれませんが、政治の場でも独裁政治はいけないということは憲法の示すとおりであります。経済の面でも、経済の独裁が行われることは国民の民主的な経済を損なうという面から見て、そういう危険性を持っていることは事実でございます。ですから、大企業は悪に走りやすい体質を持っており、そういう危険性を持っておることだけは事実だと思うのですね。ですから、無条件に大企業は悪だという風潮が定着することは危険だと言うことは逆に危険じゃないだろうかと私は思いますが、この二点についてまずお伺いします。
  31. 山本雄二郎

    山本参考人 最初のところですけれども、いろいろそういう事態が起こるのを防ぐための措置だとおっしゃるのは全くそのとおりだと思うわけですが、ただ、私が先ほど申しましたように、実際にいま灰色九業種とか言われているものの実態を見ますと、むしろそういうふうにいっていないということで、特に占有率の推移なんかを見ると、むしろ競争条件が出ているのじゃないかという感じがしているわけです。したがって、今後日本経済はどういう方向秩序づけられて、産業がどうなっていくのかということはまだわからないわけなんでして、その方向がどっちに出てくるかということをもうちょっと見きわめてからそういう基本的な問題は考えてもいいんじゃないか、だから、いまやれば、企業家がいま非常に心理的に不安な状態で、しかも消極的な態度になっているのをむしろますますそういう方向に持っていってしまうのじゃないか、それはかえって日本経済全般にとってマイナスじゃないかというふうに考えて申し上げたわけであります。  それから、もう一つ、大企業は悪かどうかということなんですけれども、これは確かにおっしゃるように、力の強い者が悪く立ち回ればそれだけ被害も大きくなることは間違いないわけです。人間が集まっている企業というものですから、それは悪い人がいれば悪くなるということもあることはわかりますけれども、ただ、いま力が強いか弱いかということはやはり国際経済の中で見なければならないという問題もあるわけですし、それから、産業分野の中で大企業が担当せざるを得ない部門というか、それは先ほど申しましたような重化学装置産業なんかではやはり大きな力を持った大企業でなければできないという部分もあるわけです。反面、第三次産業といいますか、そういう段階になれば、むしろ中小企業活力が非常に生かせるということで、日本経済全体を見れば第三次産業のウエートがふえていっているということでもあるわけなんですけれども、しかし、そうかといって、基幹産業がしっかりしなければ全体がうまくいかないということもあるので、そういう意味で大企業の果たすべき役割りというものを客観的に評価する必要があるのじゃないかというつもりで言ったわけであります。
  32. 板川正吾

    ○板川委員 入江参考人に伺います。  七条二項で「影響排除する」ということは、公取が価格に介入する五党修正案のことだろうと思うのですが、公取が価格に介入することになるおそれがあるから、したがって否定的な見解を述べられましたけれども、しかし、独禁法上不当な取引制限をしたり、あるいは不公正な取引によって価格をつり上げた場合に、公取がそれでも価格に介入してはいけないというお考えでしょうか。御承知のように中部読売新聞というのが月決め五百円で販売しようとしたのに対し、公取は不公正取引だということで八百十二円以下で売ってはならないと命じている。これは明らかに価格に介入しているのですね。ですから、公取が、どういう不当な手段価格をつり上げたものにも一切価格に介入できないという断定を下すのはどうかなと考えますが、この点が一点です。  それから、第二点として、既往の違反に対して審決をする。確かにこれは二十五条、二十六条の無過失賠償責任の問題に絡んでくるわけですが、この場合に公取の違反宣言でいいじゃないか、あえて審決をしなくていいじゃないかというお話でありますが、それでは二十六条は審決を待って請求権が発生するということになりますから、二十六条も改正しなくちゃならないのじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。  第三点として、これは竹内先生にも関連するのでありますが、株主総会で否決をしましても、公取の審決の効力は残ります。ですから、役員に、否決されたら他の方法でも実行を図るという義務がまだ残ると思うのですが、しかし、他の方法で一生懸命やってもできなければどういうことになりますかというと、他の方法も講じないで何もしなければ公取は七十三条で検事総長に告発をする以外に手はない。告発すれば、これは裁判の結果でありますが、単に三百万の罰金を納めればいいということだけにはならないと私は思うのですが、この点、入江参考人竹内参考人にお伺いをいたします。
  33. 入江一郎

    入江参考人 まず、第一の点でございますが、先ほど、私は、独占禁止法自由競争確保する法律であって、直接価格に介入すべきものではないという基本的な考え方を申し上げましたが、ただ、公取委の排除措置の中で絶対に価格に触れてはならぬということまで言い切れるかどうか、これは多少私も疑問に思います。中部読売の事件についても私はいろいろ疑問は持っております。ただ、国家がある一定の価格を決めてしまうという結果になることは、これはどうも独禁法趣旨には反するのではなかろうかという私の基本的な考え方を申し上げたわけでございます。  それから、第二点は、既往の審決の点でございますが、これは私の言い方がちょっと足りなかったのか、申し上げ方が悪かったので、これは必ず審決によってやるべきだと私は思っております。ただ、内容が違法宣言で足りるのではなかろうかという趣旨を申し上げましたのです。  それから、二十六条と申しますと……
  34. 板川正吾

    ○板川委員 済みません。ちょっと申し上げます。二十五条が無過失賠償責任の問題で、前条の請求権は「審決が確定した後でなければ、裁判上これを主張することができない。」という……
  35. 入江一郎

    入江参考人 いえ、これはこのままで審決が確定すれば主張できることになると思います。既往の審決でやるわけです。そういう考え方です。
  36. 板川正吾

    ○板川委員 二十六条で、審決が確定しなければ請求権が発生しないと書いてあるのですから、公取委員会宣言だけではその請求権が発生しないんじゃないでしょうかと私は伺っておるわけです。
  37. 入江一郎

    入江参考人 私はそう考えておりませんので、現在の違法宣言審決でございますね。五十四条の二項の後段でございますか、あれによっても損害賠償請求はできると考えておりますので、それと同じ考え方でございます。  それから、第三点は、私はちょっと聞き落としましたのですが、株主総会の決議で否決されても何かほかの方法でやれるのではないかという御趣旨でございましょうか。
  38. 板川正吾

    ○板川委員 株主総会で否決をする、否決するには理由があると思うのですね。価格の問題とかいろいろの理由があるでしょう。しかして最高の決議機関で否決をしたのですから、それで通らないとしたら、その否決した理由を一つ一つ解消して再び審決命令を実行する責任は残るでしょう。しかし、それをやったけれども方法がないからといって会社で何もしないでおるということになれば、七十三条で公取は検事総長に告発することになるでしょう。そうしますと、竹内先生がおっしゃったように、ただ単に三百万の罰金だけでは済まないこともあり得るんじゃないだろうかという点をちょっと伺ったのです。
  39. 入江一郎

    入江参考人 これは代表者としてはあらゆる手段をとって株主総会の賛成を得られるような努力をしなければならないし、そういう義務は当然あると私は思います。ただ、どうしても得られない場合に、会社代表者としては果たして総会の決議に反したことまでやれるかという点が疑問だというふうに私は申し上げたわけでございます。
  40. 板川正吾

    ○板川委員 竹内先生の議論にもありましたように、結局、この企業の一部譲渡審決は同意審決的に取り扱わなければ実際上はなかなかうまく進むもんじゃないだろう。この点は公取としても、そういう同意審決の道があるのに無理やりに正式審決をすることも実際上はないんじゃないかなと思います。  竹内先生に伺いますが、七条の二項は無理して削ることもないという消極的意見ですが、無理して入れなくてもいいのじゃないかと思うのですが、この点はどういうお考えでしょうか、その点を伺っておきます。
  41. 竹内昭夫

    竹内参考人 お説のとおりでございます。無理して入れる必要もないと思いますけれども、無理して削ることもない。まあ、法律というものはでき上る過程には各方面に若干の不満が残るということはやむを得ないことでございますから、これは各党の間で十分御協議いただいて解決していただきたいというのが私の気持ちでございます。
  42. 板川正吾

    ○板川委員 それから、営業の一部譲渡に関してですが、竹内先生は、これは実際は一部譲渡というより分割するという規定の方がやりいいじゃないかというお話であります。それで、この営業の一部譲渡は現在の七条にもあるわけでありますが、私どもの考えは、これは営業譲渡する側に対する規定であって、第二会社をつくって分割をするということを禁止している項目ではないだろう、そういうことも当然含んでいるんじゃないだろうか、こう思いますが、いかがですか。
  43. 竹内昭夫

    竹内参考人 先ほどもお答えしましたところでございますが、おっしゃるように、その他の措置という中にそういうことも入っているというふうに解釈しなければうまく動かないだろう、このままでできたならばそういうふうに解釈されることが望ましいというふうに私は考えております。
  44. 板川正吾

    ○板川委員 一部譲渡については、どういう形で譲渡するかは法律規定をいたしておりませんから、他の会社譲渡する場合もありますし、新会社をつくって譲渡することもあり得ると思います。  それでは、時間の関係もありますので正田参考人に伺います。  七条の二項は現行法でやれるんじゃないだろうかとおっしゃっておるわけです。それは東宝、新東宝の判決例から見ましても、「一般に独占禁止法違反行為があるとき公正取引委員会はその違反行為排除するために必要な措置を命ずるのであるが、ここに違反行為排除するために必要な措置とは、現在同法に違反してなされている行為の差止、違反行為からもたらされた結果の除去等、直ちに現在において違反行為がないと同一の状態を作り出すことがその中心となるべきことは当然であるが、これのみに止まるものと解するのは、同法のになう使命に照らして狭きに失する。」と言っています。まあ、これは、独占禁止法の目的に照らしてこれだけに解釈するのは狭きに失する。そして、「将来にわたって右の違反行為と同一の行為禁止することは、むしろ右違反行為排除のため必要な措置というべきものである。」という御承知のような判決があるわけであります。  このところで、政府の方は、違反行為の結果というものを、結果の外に影響がある、結果は確かに判例のとおりだが、影響というのはその結果の外なんだという解釈をしておるのです。行為があって影響があって結果があると私どもは思っています。結果というのはこの判例から言っても最終的なことまでを言っておるんだろうと思うのです。違反行為があるとき、行為排除するため必要な措置ということになれば影響まで当然入ると思うのであります。影響は結果のうちに入ると思うのですが、政府の方は、この判決は結果までであって、影響はその外だという論理でありますが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。     〔橋口委員長代理退席、中島(源)委員長     代理着席〕
  45. 正田彬

    正田参考人 いま引用なさいました判例も一つの手がかりだと思いますが、独禁法違反行為に対する審決というのは、違反行為によって制限された競争を回復するために必要な措置というふうに私どもは考えているわけでありまして、その審決によって違反行為影響が除去されるというところまで審決に含まれると一般的には考えてよろしいのではなかろうかと思いますし、従来そういう影響が残らないように審決がさまざまな工夫をしてきていると考えます。したがって、一項と二項を切り離して、一項はそのままという形をとりますと、二項で一体何を考えるのか。違法行為によって競争秩序に対する侵害があり、いわばそれを原状回復するのが審決意味だといたしますと、原状に回復した後、影響というのは、心理的な影響等々が残る可能性もあるとは思いますけれども、再発の予防のための排除措置ということまで行われているわけでありますから、そこの後に何があるかという点については私ははっきり理解できないので、したがってそういう影響というものを切り離して規定することによって一項が制限的な影響を受ける危険性があるのではないだろうかと考えたわけであります。
  46. 板川正吾

    ○板川委員 独禁法一般について伺ってみたいのですが、現在の独禁法違反の事例はカルテルが一番多いわけでありますが、カルテル違反行為でひっかかるのは中以下の企業がほとんどであります。小さい中以下の企業カルテル値上げをすれば公取はトラのごとく襲いかかるという説もあるわけであります。しかし、独占的な市場支配力を持っておる企業が実質的にカルテルと同じような行為をやっても、いまの法律では、支配し排除することの証拠がない限りは独禁法の適用を受けない。また、市場支配力を相当持っておる寡占企業が同調的値上げをしても、いまの法律では何らの対策もない。四十条が働くということにはなっておりますが、今度の改正案で報告だけということになります。事業者がとった措置を報告する、届け出、報告だけになりますが、独禁法全体として、この程度の改正ではやがてもう一度独禁法改正を見直す時代が近々来るのではないかというふうな感じがいたしますが、いかがでしょうか。
  47. 正田彬

    正田参考人 先ほども独占状態規制、実態的な面について必ずしも十分な内容とは考えられないということを申しましたし、また、寡占的な企業のいわゆる協調的行為につきましては、どういう形でこれに対応するかという点は、これは各国とも独禁法制を持っております国はさまざまな工夫をこらし、いろいろと検討を進めておりますし、実験例もまた一、二は出てきていると思います。今回の改正で、そういった面について全般的な改正が必ずしも十分に行われているというふうには私は考えておりません。ことに、企業の集中は合併による集中もございましょうし、株式取得による集中もございますし、企業の結合が株式取得、合併等によって進められていくという点についての規制が全然手を加えられないまま現状で残っているというようなところは、やはり非常に大きな欠落部分ではなかろうかというふうに私は考えております。これは早晩問題になるかと思いますが、それは立法府のお決めになることでありますが、私としては、集中規制あるいは不公正な取引方法の中の特に悪質なものについての規制の強化というようなことを含めて立法が必要な問題点というものはかなり多く残されているというふうに考えております。  中小企業カルテルが圧倒的であるということは、私は正確に数字を覚えているわけではございませんが、中小企業カルテル規制対象になる場合も少なくないということは先ほどおっしゃるとおりでありまして、この点については、現行法の適用に際して、ことに立証方法に関する公正取引委員会の工夫が一段と必要なのではなかろうかというふうに考えております。
  48. 板川正吾

    ○板川委員 諸外国の例を見ましても、イギリスでは市場支配力を持つ独占企業を一社二五%というふうに規定をいたしておりますし、西ドイツでは一社三分の一、三社二分の一、五社三分の二という規定をしております。日本は一社五〇%、二社七五%、その点では市場支配力を持つ企業の認定というのが非常に甘いわけであります。アメリカではもうすでに御承知のように分割事例が二十六件もあるという事態ですから、私は、このいまの改正案は世界の大勢から言っても実はなまぬるいし、やがてもっと厳しい規制が加えられる時期が来るのじゃないだろうかというふうな感じがいたしますので伺った次第であります。  もう一点お伺いをしたいのですが、先ほど御意見がありましたように、ある新聞に、野党は独占禁止法改正、強化して市場の競争力をつけようと言いながら、一方において中小企業分野に大企業が進出することについては競争を制限する、これは矛盾した議論ではないかという報道がありましたし、先ほど同僚議員からもその趣旨の質問がありました。しかし、私は、独禁法改正、強化も、中小企業分野に大企業が進出することを規制することも同じ理念から発想しているものだと思うのです。これは矛盾していないと思うのです。独占禁止法は御承知のように公共の福祉に違反する行為があった場合に機能するわけでありますが、大企業が利潤を得るために中小企業分野に進出をして多くの企業の生存権を奪うようなことは公共の福祉に反することでありますから、この論理に矛盾はない。独禁法を強化することも分野法を制定することも、基本的には矛盾はないと私は思います。  経済の民主主義の上から、あるいは公共の福祉を守るという意味から矛盾していないと私は思いますが、これに対して参考人の御意見を、正田先生にお願いいたします。
  49. 正田彬

    正田参考人 中小企業分野調整法の性格につきましてはいろいろの議論があるところではなかろうかと思いますが、少なくとも中小企業分野においても、一定の競争秩序の維持という媒介口を通しての、その事業分野における民主性の確保ということが必要であろうというふうに私は考えております。そして、そういう競争秩序を維持するという方向に反するような形での大企業のいわば経済力の乱用に似た進出であるとか、市場支配力を形成するような形での進出に対して一定の規制を加えるということの必要性はあるというふうに私は考えております。  この考え方はある意味では独占禁止法を強化するという方向と一致することは御意見のとおりだというふうに私も思いますが、ただ、この中小企業事業分野の問題につきまして、独占禁止法と同じ形で理解することができるためには、中小企業分野における競争秩序を維持するという形で、競争秩序を媒介として中小企業の権利が擁護されていくという一つ基本的な考え方が必要ではなかろうかというふうに思うわけでありまして、直接中小企業の生存権というところから問題を出発させるということになってまいりますと企業者の生存権と企業の生存権とが混同されてしまう危険性もございますし、企業者の生存権という場合に、どこまで企業者の生存権として考えるべきかという非常にむずかしい問題が次に出てきてしまうように思います。  そういう意味で、独禁法の強化と中小企業の分野調整という両方を統一的に、現在の日本の経済体制を前提にしてその基本原則を適用していくという形で考えるとすれば、競争秩序が維持され、それによって支配力に対して一定のチェックが加えられ、かつ、同時にその事業分野あるいは市場の健全な発展が図られる、ここを中心にして考える、この限りにおいて両者一致するというふうに考えております。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着     席〕
  50. 板川正吾

    ○板川委員 では、時間となりましたので終わります。
  51. 野呂恭一

    野呂委員長 後藤茂君。
  52. 後藤茂

    ○後藤委員 竹内参考人にお伺いをしたいと思いますけれども、先ほどの御説明の中では、主務大臣の意見公正取引委員会がぐらぐらするようなことでは、仮に制度をつくっても物の役に立たないのだというような御趣旨の御意見でございましたが、ただ、今度の独禁法改正をずっと見てまいりますと、私どもからいたしますと、大変巧みにと申しますか、公正取引委員会が公正な競争秩序を回復するために行動をしていくという面を大変巧妙にチェックしてきているのではないかと考えるわけです。参考人の御意見の中にも、あってもじゃまにならぬではないかとか、あるいは無理して削る必要はないとか、あるいはない方がいいだろうとか、こういう幾つかの表現で大変微妙に御説明をいただいたわけですけれども、私は、内閣経済憲法を公正に運用していこうとする公正取引委員会との政治的な力学といいますか、それにはやはり相当力の差があるのではないかと思います。ですから、確かにおっしゃられるように、不公正な取引についてはどんどんやればいいじゃないかとか、あるいは競争を制限しているものについてはどんどん排除していけばいいじゃないかということになるわけですけれども、いままでの運用を見ておりますと、そういう力の弱さというものが現実的には大変出てきている。ですから、あってもじゃまにならぬだろうとか、あるいは無理して削る必要がないとか、あるいはない方がましだとかいう程度ではなくて、今度の改正案の中での幾つかの歯どめ条項がこれからの運用の面において差し支えないというふうに見ておられますのか、それともやはりいろいろと制肘をされて、これはなかなか大変だぞというようにお考えになっておられるのかをお伺いしたいと思います。
  53. 竹内昭夫

    竹内参考人 政治の力学の中で弱い地位に公取委があるというふうな御指摘でございますが、あるいはそうかもしれません。私は全く一介の法律屋でございますからその辺は不案内でございますが、もしそうだといたしますと、その問題はそれこそ政治の力学の中で解決する必要があるのではないかと思います。政治の力学の中で弱い立場にあるから法律的に何か手当てをしてやろうといっても、それは全然役に立たぬとは私は思いませんけれども、余り役に立たないのではないかというふうに感じます。したがって、公取なるものがもし弱いとすれば、それを単に法律的な制度の上だけでなしに、実質的に強化していくためにはどのような予算、人員等の配置が必要なのかという問題としてお考えいただくべきものではあるまいかというふうに思います。
  54. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの予算なり人員なり機構についてはこれだけむずかしい問題を抱えていく立場にある公正取引委員会ですから、政治の場でそういう制度なり枠組みなりというものを十分に配慮していかなければならぬということは当然だと思いますが、同じ質問ですけれども、正田参考人にこの点について伺いますが、私どもは、どうも歯どめがかかって大変やりにくくなっている面が非常に多い、一つ一つそれを配慮しながらやらざるを得ない方向に追いやられてくるのではないかというように判断をいたしておりますので、御意見を聞かしていただきたい。
  55. 正田彬

    正田参考人 基本的には、いま竹内さんがおっしゃったことと同じことだと思いますが、その前提として、法律制度自体が原則的な点についてはあくまでも堅持するということを保っていなければ問題がさらに生み出されてくる。もう少し具体的に申しますと、公正取引委員会の権限を制約するような条項が制度的に入るということには常に問題が含まれている。そして、それがどういう形で具体的に動くかということはまさに政治の場の問題だろうと思いますが、制度としてそういうきっかけが提供されることは好ましくないというふうに考えております。
  56. 後藤茂

    ○後藤委員 山本参考人にお伺いをしたいのですけれども、大変経済が混乱をしてまいっておりますし、また、今日のそれぞれの企業あるいはそれぞれの産業分野におきましても大変な問題を抱えているときに、特に企業分割と言われておる独占状態排除は、企業がいろいろと苦労をして努力をしていこうとするのに対して水をかけていくことになるのではないか、時期が適当でないのではないかというように御指摘がございました。また、心配をしておられます幾つかの御指摘につきましても私も決して否定をするわけではございませんが、ただ、今度の独禁法というものは、この商工委員会で私どもも議論をいたしておりましても、寡占は悪であるとかあるいは大企業は悪であるという立場に立っての論議は与野党ともしていないと思うのです。ところが、どうも、意図的かどうかわかりませんけれども、スケールメリットの大きいものを悪だとか、あるいは大きくなったら悪だとか——大変一生懸命企業努力をして、また消費者もそのグランドを非常に好んで消費をしてくれて、そういうことで大きくなったものまでも悪であるというように言うのはと言って少し議論を別の方向に持っていっているのではないか、そして、そのことが審議をしていく上において大変煩わしい面があるのではないかと思うのです。  この寡占独占、特に経済力を乱用しやすい立場に置かれているものに対しては、公取も言っておりますけれども、これは構造規制ではないのだ、むしろ影響排除規定なんだ、そういう抑止力を働かしていくということで、しかも、国際競争力の問題についても御指摘がございましたけれども、そういう幾つかの「ただし、」という措置でそれが発動できないようにされている。こういう最低の、つまり独占状態に対しての競争を回復させるために必要な措置を命じていくということ、このことは、国際的な情勢を見ましても最低のルールであり、基準ではないかと私は思うわけですけれども、山本参考人にこの点について再度お伺いしたい。
  57. 山本雄二郎

    山本参考人 いまおっしゃった意味は私も非常によくわかるわけでありまして、その点でどうのこうの言うのじゃないのですが、ただ、要するにこれは法律に明文化されて、つまり、寡占企業は非常に悪いという印象を一般に与える。今度の議論を通じても、たとえば九業種について灰色というような表現がされておりますが、これは一種の罪人扱いとまでは言わないでも、世間一般はやはりそういう通念で見るのじゃないかと思うのです。したがって、はっきり法律でそういうことがうたわれるということは、世間の受け方としては、寡占企業というのはやはり悪者だという印象が出てくるのじゃないかという、その辺を心配して言っておるわけでございます。
  58. 後藤茂

    ○後藤委員 山本参考人はマスコミで仕事をしておられるわけですから、寡占あるいは大企業即悪という論議ではなくて、経済力の乱用といいますか、その点はお互いに排除していくということを自主的にできればなお結構ですし、また、制度的にもそれをしていくことが国民の立場に立っても大切であるという観点からやっていただきたいと思うのです。  時間がございませんので最後に一点だけ伺いますが、きょうの四人の参考人の方からは触れられなかったわけでございますけれども、九条の二の持ち株の総量規制の問題は幾つかの例外規定が設けられているわけです。持ち株会社というのは独禁法制定のときに禁止されてまいりました。かつてのような三井合名だとか三菱本社というようなものはなくなってきたわけですけれども、しかし、最近では非常に大きな独占寡占、特に企業の連携が生じてまいっております。企業集団化の傾向はある意味においては必然的傾向があると思うのです。今度の九条の二におきましても持ち株の総量規制は出ておりますが、しかし、「産業開発及び経済社会の発展に寄与する事業」とか、あるいはまた「次に掲げる事業のうち」ということで、「国外における事業」あるいは「外国の政府又は外国の法人に対する出資又は長期の資金の貸付け」とかいろいろあるわけですが、これからの企業活動といたしましては、株式の持ち合いなり、あるいは人事の交流なり、あるいはまた技術供与なり、あるいは資金融資の問題もありますけれども、そういう問題が起こってくると私は思います。そして、そのプロジェクトに基づいて多くの企業が集団化していくという問題が起こってくるだろうと思うのです。これには新規参入も非常にむずかしいという傾向が生まれてくると思います。  これは正田参考人にお伺いしたいのですけれども、昭和四十九年ですか、独占禁止法研究会で——これは正田参考人も会員になっておられるようですが、会合を開き、「株式保有等の規制」というところで、「近年、とくに商社などを中心とする会社の株式取得、株式の相互持合いにより、企業の系列化や企業集団の形成が進みつつある。会社が多くの業種の他企業の株式を広範に取得することにより、他企業に対する会社の総合的な支配力を強化し、企業間の結合を強める傾向にあることは、経済力の集中を促進し、公正かつ自由な競争を阻害することとなる。」という指摘をしております。これを受けて公取の第一次改正試案が出てきたと思いますし、また、この総量規制のところもそれをある程度部分的に入れたのだと思うのですが、これからの問題として、経済の必然として、こういう方向スケールメリットを追求していき、あるいは大型プロジェクトを組んでそれぞれの企業協力していかなければならない。しかも、それは高度寡占ということよりも、非常に大きな独占的な体制に入ってくる。私は、これを独禁法で縛るだとかあるいは規制するとかいうわけにはまいらないのじゃないだろうか、これからの問題としては別の考え方を持っていかなければならないのではないかというように考えるわけです。  その意味で、単に持ち株の総量規制ということだけで済んでおりますけれども、もっと別の問題として、今後の産業政策とも関連すると思うのですけれども、どのように考えていけばいいかという将来展望を、ポイントをひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  59. 正田彬

    正田参考人 非常にむずかしい問題でございますので、私は恐らくお答え申し上げる能力を欠いているのではないかというふうに考えますが、株式所有の総量規制は、仰せのとおり、確かに持ち株会社禁止規定にあらわれております経済力の過度の集中に対する規制として登場したということが言えるわけだと思います。この株式所有の問題につきましては、株式所有による企業の集中という方向が恐らくかなり進んできているということが言えると思いますし、この企業営業の一部譲渡独占状態規制ということが行われる以上は、先ほど申し上げた集中規制一つの問題点として、株式保有による企業間の結合の問題というものがさらに検討を要するということになろうかと思います。  しかしながら、いまの御指摘は、そういう競争秩序になじまないような産業分野あるいはプロジェクトというものが考えられるのではないかという御指摘でありまして、これが競争秩序になじむかなじまないかということの判断は非常にむずかしい問題だと思いますけれども、一方で競争秩序維持のための原則を確実に推し進めながら、他方においては競争秩序の維持になじまない分野について、これにどういう形で一定の法的な規制を加えていくかということは当然考慮されていかなければならないというふうに考えます。  これは言うまでもなく、個別具体的あるいは政策的配慮によって独禁法の適用が外されるという問題ではなくて、やはり立法措置を通してそれが明確にされていくという可能性があることは否定できないと思いますが、どういう場合にどういうことということを申し上げるだけの前提を私は持っておりませんし、一般論ということで御了承いただきたいと思います。
  60. 後藤茂

    ○後藤委員 終わります。
  61. 野呂恭一

    野呂委員長 加藤清二君。
  62. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 与えられた時間がほんのわずかでございまするので、一点にしぼってお尋ねをいたします。  なすわち、公正取引委員会独占的な状態に該当する事実があったとした場合に、調査活動前に大臣が意見を述べる、それから審査手続の前にまた協議に加わるという、この案件はさきの全会一致案のときにずいぶん論議した問題です。それで、百害あって一利なしだからというのでこの点は削除されたのですが、性こりもなく、今度はおまけつきで、審判手続の前にも協議ということを繰り入れてきましたが、この点については是か非か、前進か後退かということを特に竹内先生と正田先生に承りたい。お教えを願いたい。  私どもがさきの全会一致案を——あえて会全一致案と申し上げますが、それを協議するときにこの問題についてはいろいろ検討したのです。その基本は何かといえば、絶対に行政は司法に介入しては相ならぬということ、これがその基本でございます。その基本にのっとって、通産省が常にモットーとしなければならない商法といえども法務省から提案されてくる。この独禁法はやはり通産省関係でございまするけれども、これは総理府から提案されてくる。つまり、提案する場所までが行政が司法に介入しないようにという前提で行われているのですね。これが第一。  それから、にもかかわりませず、この審議の過程におきまして、主務大臣というよりは委員長と申し上げておきましょうが、それと長官はこう答えているのですね。資料を集めるにも大変必要であって、悪影響はございませんという答弁をしてみえる。悪影響はございませんと言う。しかし、これをよく考えてみますと、これはどうも公務員法違反の疑いが発生すると私は思う。それからもう一つ、日本のよき商習慣であるところののみ行為禁止という体系を基本的に崩すおそれがある。それからもう一つは、裁判で禁止しているところの伝言証言は無効であるにもかかわらず、それを有効にするのみならず、それを圧力に悪用するおそれが十二分にある。かように存じます。  第一の公務員法違反は、資料を集めるのに公取の委員長が当該大臣に最初に意見を聞く。審判手続の開始前に協議をする。この場合に、通産大臣は、公務上知り得た問題、職務上知り得た機密、特に企業機密を長官に漏らす。そういうことがもしあり得たとしたならば、これは公務員法違反に問われるではないか。かつて外務省の某々女性が何かやったことがあったね。すぐに公務員法違反に問われました。いわんや大臣は、これは一体どういう方かといえば、直接自分が調査に行くはずはない。調査に行かない。私はためしにこの間ここで聞いてみた。日本鋼管のレールの生産高は何ぼありますかと言って聞いたら、それは機密だから言えませんという答弁が返ってきた。企業機密を守るのが業界の指導育成強化に当たる主務大臣の任務なんです。したがって、私は、レールの生産高の内訳を聞かなくてもまたやむを得ない仕儀であるというので次へ論を進めていったわけでございますが、そこで公務員法違反に問われるおそれがあるのではないか。  次に、のみ行為は商習慣で禁止しているところでございます。いわゆる商品取引所法におきましても、あるいは証券取引法におきましても、商品取引は九十三条、証券取引は四十七条と百二十九条、それから商法五百五十五条の中に例外措置を設けておりますが、これはその日の商品相場によって取引をする場合にのみ例外措置を設けている。つまり、私の言いたいことは、一人二役を禁止しているわけでございます。これが日本の商習慣なんです。調査活動に関与したこの審査官は本法の審決に加わることができないということをこの法案自体が規定しておるわけでございます。なぜ通産大臣だけが調査活動とそれから審判手続の前に協議を許されるのか、私はここが理解できないのでございます。  次に、もしまたこれが裁判になったとすると、その場合に通産大臣がこう言ったああ言ったといった場合に、これは果たして証拠として取り上げられるか上げられないか。通産大臣はおのれみずからが行くのじゃありません。日本鋼管の生産高だって通産大臣が自分で調べにいくわけではございません。みんな当該担当官が行ってくる。その場合の知り得た状況は伝言でございます。この伝言を裁判に持ち込んだ場合に、これを証拠として裁判所は取り上げるか上げないか。上げないと見る方が過去の慣例でございます。  したがって、こういう意味からいきまして公務員法違反の疑いがある。のみ行為禁止条項をおのれみずからが破る結果になる。いわんや、最後に伝言として無効のものを最初から有効として、事、行政裁判に援用するということはいかがか、かように思われますので、両先生の御高説をお教え願いたいと存じます。
  63. 竹内昭夫

    竹内参考人 四十五条の二について、主務大臣に通知して、主務大臣に意見を述べる機会を与えるというこの規定はない方がよろしいということは先ほど申し上げたとおりであります。  しかしながら、この規定が残ったままで法律ができたという場合には、公正取引委員会としては、にもかかわらず自己の独立性を守るための見識を持っていただきたいものだ、そうでなければ、この規定が一本入っただけでぐらぐらするようでは、この規定がなくたってやはりぐらぐらするだろうということを申し上げているわけでありまして、ある方がいいかない方がいいかと言われれば、私もない方が適当であろうというふうに思います。
  64. 正田彬

    正田参考人 先ほどからも申し上げましたとおり、いまの御質問の点につきましては、調査活動開始前に主務大臣に通知するという条項、そして「意見を述べることができる」という条項——ことに「意見を述べることができる」という条項についてはない方が好ましいと私は思います。  さらに、審判手続開始前の協議も、必要があれば公正取引委員会はいつでもどこの意見をも聞くことができるわけでありますから、公正取引委員会の必要に応じてそれに対応すれば事足りるというふうに基本的には考えております。  しかしながら、審判手続開始前の「協議」につきましては、そこで法律の要件等との関係で若干合理性もないとは言えない。そういう意味で、やむを得ない場合には審判手続開始前の協議という点については、好ましくないけれども、ある面で、そこで協議が行われる可能性もあるのではないかというふうに考えております。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 終わります。
  66. 野呂恭一

    野呂委員長 西中清君。
  67. 西中清

    ○西中委員 きょうは長時間にわたりまして参考人の皆様方には大変御苦労をかけております。お昼も飛ばしての大変な審議になっておりますが、よろしくお願いいたしたいと思います。  最初に山本参考人にお伺いをいたしたいと思いますが、山本参考人は、先ほど、大きな企業を抑えるよりも、むしろ、現在の経済事情の中では二位、三位といったところの企業対抗力をどうつけていくかということが重要であるというような御趣旨の御意見があったように思っておりますが、これはある面で言うと経済力の集中ということにつながるのではないかと思います。一例を挙げれば麒麟麦酒があり、そしてそこにサッポロだとかそのほかの会社があるが、サッポロだとか朝日に力をつけるという形になると寡占というものがなお一層進行するというような感じにもなるわけでございますが、その辺はどういうようにお考えであろうかと思うわけでありまして、その点の御意見をお伺いしたいと思います。  同時にまた、現在のこういった経済不況の時期の中でこの法案を成立させるということは時期的にまずいんじゃないかというような御趣旨があったように思います。われわれとしましては、この独禁法改正は今日に至るまでのさまざまの経過を経ておるわけでございますが、その経緯を踏まえてもなおかつそういう御意見なのかどうなのか。  この二点について最初にお伺いをいたしたいと思います。
  68. 山本雄二郎

    山本参考人 最初の点ですけれども、二位、三位以下と申しましたので、これは二位、三位だけをということじゃないのです。たとえばピアノ業界なんかを見ますと、中小企業がかなりあるわけなんですが、これが非常に力が弱いということがありますので、その辺をかなり結集すれば、いま日本楽器と河合楽器が飛び抜けているわけですけれども、そうするとかなり競争条件も変わってくるのじゃないかというふうな意味で言ったわけでありまして、いわゆるガリバー型寡占ということで一位だけがダントツの状態というのは、ほうっておけばそれが一〇〇%の独占になっていくという可能性もあると思うので、そういうことはむしろ余り望ましくない、その拮抗力をつける必要があるんじゃないかということで言ったわけでございます。  それから、二番目の、私が特に慎重に考えるべきじゃないかと申しましたのは企業分割の点でございまして、課徴金——これは不法カルテルのやり得なんということはいけないとか、それから事実上中小企業の支配につながるような持ち株制限とか、そういう点では評価しているわけでありまして、その慎重な態度をとるべきだというのはその一点でございます。
  69. 西中清

    ○西中委員 次に、入江参考人にお伺いをいたしますが、入江参考人は、同調的値上げに対する報告の徴取は四十条の規定があるので必要ないではないかというような御意見だったと思います。この四十条の一般調査権についてはさまざまな議論が今日まであるわけでございまして、そういう点で、私としましては、経済部の所掌事務の規定から見ても、公正取引委員会が必要とする場合は相当程度広い調査が可能だというように認識をしているわけでございますが、この辺について先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  70. 入江一郎

    入江参考人 私も御説のとおりでございまして、職務を行うために必要なことである限りは経済部としては相当広い調査権があると思っておりますので、それで必要ない、こういう意見でございます。
  71. 西中清

    ○西中委員 今回の独禁法改正について、野党は修正をして速やかに成立を図りたいといった立場で今日まで参ってきておるわけでございます。きょうあたりの新聞報道でもいろいろ言われているわけでございますが、これは正田先生と竹内先生にお伺いしたいと思いますが、新聞報道では自民党は政府原案それ自体も成立を渋る消極的な様子が伝えられているわけであります。総理は今国会中に成立を期するということを繰り返し言っておりますけれども、自民党内の様子はどうもそうなっていないような感じが頻繁に伝えられております。  このような動きについてどのようにお考えでありましょうか、御意見をお伺いしたいと思います。
  72. 竹内昭夫

    竹内参考人 各党内のいろいろな動きなどというものは、私ども国民からすればまことに雲の上のお話でございましてうかがい知る由もない、下下の者にとってはまことにわかる由もないことでございます。しかし、党の総裁であり総理大臣である方がやるとおっしゃり、また、自民党の中でも長年かけて御検討になり、今回政府案として提出されておるわけでございます。しかも、野党の方々も今回は修正は要求するけれども通すというふうな御意向のように伺っておりますので、そうだとすれば今国会で必ずや成立するに違いないというふうに私は考えております。
  73. 正田彬

    正田参考人 新聞の報道等についての私の考え方基本はいまの竹内さんのおっしゃったことと全く同様でありまして、どういう状況なのか私どもには全くわからないわけでありますが、いまも両案を拝見いたしますと、この間の調整、しかも論理的に筋の通った形での調整というものは決して不可能ではないように思います。そういう意味では全部の方々が責任を持って法案を提出していらっしゃるというふうに理解いたしますので、これは修正通過し、成立するものと考えております。
  74. 西中清

    ○西中委員 それでは具体的な問題について何点かお伺いしたいと思います。  最初に正田先生にお伺いいたしますが、先ほどからも若干論議になっておりますが、第七条の二項の問題でございますが、これまでの審議を通しまして政府の言っておりますことは、現行第七条は違反行為排除することを主目的としたものであり、新設の七条の二項は影響自体を排除することを目的とした規定であるというような見解を明らかにしておるのであります。  私は、現行第七条の違反行為排除規定の中には、当然のこととして影響排除ということも含まれておると考えておるのでありますが、この点御見解をお伺いしたいと思います。
  75. 正田彬

    正田参考人 私もただいまの御意見のとおりに考えております。
  76. 西中清

    ○西中委員 過日の本委員会におきまして、私たちは、先生も先ほど挙げられました東京高裁の東宝、新東宝の判例を引きまして、この中では独禁法違反する行為排除する必要な措置は、違反行為の結果の除去のみならず将来の予防措置までとれるということまで言っておるのではないかと繰り返し政府に問いただしておるわけでありますが、これに対して政府は、これは不公正な取引方法に対するものであってカルテルには当てはまらないという趣旨の答弁をいたしておりますが、この点は先生はどのようにお考えでございましょうか。
  77. 正田彬

    正田参考人 いまの政府の側のお話を詳細に伺っているわけではございませんが、いまお話の範囲で、不公正な取引方法についての排除措置であるということでありますと、不公正な取引方法については当該行為の差しとめを命ずることができるという条項に対する排除措置であり、もし差しとめを命ずることができるという条項についての排除措置がいま引用されましたような形で考えられるとすれば、違反する行為排除するために必要な措置という場合に、それをより広範に考えることができるのは当然だと思いますが、先ほども申し上げましたように、私は、影響排除するために当事者に決定し報告を求めるのに、具体的に何が意図されているのかという点について理解できないわけであります。  カルテル排除するという審決が従来さまざまな形でくみ上げられておりますが、それ以外にこういう点をどうしても排除しておかなければならないけれども、従来の審決ではこういうことは全く排除対象にならないし、しかも影響が大きく残っている、この点についてという、その具体的な問題ないしは内容という点が私には理解できないので、結局従来の審決の中の一部が二項の方に移されるという危険性があるという理解をせざるを得ないという意味で七条の二項の新設は妥当性を欠くのではないかというふうに考えているわけであります。
  78. 西中清

    ○西中委員 そういう意味で、私たちとしましても、第七条の二項という新設の問題については、やはりあくまでも五党修正案で——すなわち、「これらの規定違反する行為及び当該行為によって生じた影響排除するために必要な措置を命ずることができる。」という五党修正案でございましたけれども、こういう方向で修正すべきであるし、ぎりぎりのところそれが実現ができなかったと仮定しましたならば、むしろ現行法の方が望ましいというように考えておるわけでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。正田先生にお願いします。
  79. 正田彬

    正田参考人 私は、先ほど来申し上げておりますように、現行の制度によって違法行為によって生じた競争秩序に対する侵害を除去して競争秩序を回復するに足りる措置を命ずることができるというふうに考えておりますので、「影響排除する」という文言を新設することも必要ではないというふうに考えております。
  80. 西中清

    ○西中委員 引き続いてお願いしたいのですが、次に、独占状態排除についてお伺いをいたします。  先ほどからも何回かお話が出ておりましたけれども、重なるようで申しわけないのですけれども、公正取引委員会と主務大臣の協議の前にいわゆる通知制度というものが今回の改正に盛られているわけでありますが、これは公正取引委員会がこの事例が独占状態であるというような心証形成を完全に終えていない段階で主務大臣に通知をして、主務大臣が意見を述べるという形でございます。これはいままでの論議もございましたが、どう考えても公取の職権行使の独立性を侵害するおそれが非常に強いという意見を私は持っておるわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  81. 正田彬

    正田参考人 先ほど申し上げましたように、この点については、公正取引委員会の判断に対して一定の影響を及ぼすことを予定した制度の導入という意味で妥当性を欠くものだというふうに考えております。
  82. 西中清

    ○西中委員 さらに、同調的値上げに対する報告の徴取について学者先生方の意見書が出ておりましたのですが、この中で公表するための報告の徴取という形で修正すべきだというような御見解が述べられておるように思います。この点についてお伺いをするわけですが、私もこの御意見には好ましいものという判断をいたしておるわけでございますが、政府はこの点について第四十三条で必要があった場合には公表するという答弁をしてきたわけでありますが、こうなりますと、この年次報告で報告を義務づけるということは国会へ概要が必ず示されるという形になるわけでございますから、ないよりはあった方が前進ではないかというような考え方も出てくるわけでございます。  政府のこの答弁、四十三条でいつでも公表するんだというような答弁をまず前提にして、今度のこの報告の徴取の「報告」という問題は果たして本当に前進と言っていいのかどうなのか、義務づけが前進と言っていいのかどうか、この辺について御見解を伺いたいと思います。
  83. 正田彬

    正田参考人 私どもは、先ほども申しましたように、この同調的価格引き上げについての予定されております制度が、公正取引委員会に認められております独禁法四十条の調査権の範囲内の事項であるという前提に立てば、この四十条を当該規定の新設によって制限する結果をもたらすおそれがあるという点を一つのポイントといたしまして、第二のポイントはいま御指摘の四十三条の公表権との関係で問題があると考えたわけであります。  そこで、「公表」ということについては、報告徴取後いつでも公表ができるという前提に立つということでございますと、公表ということと結びつけた報告の徴取という方向と実質的な変わりはないように思います。  公表のための報告徴収という形であれば一応四十条、四十三条となぜ無関係かと考えたかと申しますと、四十条、四十三条は一般的な調査あるいは一般的な公表でありまして、一定の公表と結びつけて報告の徴取が行われるということであれば、これは四十条、四十三条とは関係のない報告の徴取で、したがって四十条の調査権を制限するということにも連ならないし、こことは関係を持たない、こういう別個の制度として考えることができるというふうに考えて、公表を予定した報告の徴取ということを私どもが考えたわけであります。  そこで、公表は自由にできる、制限するものではないという点との関係でまだ問題残る可能性がありますのは、四十条の強制調査権との関係についての問題は依然として残っているというふうに考えますので、可能であるならば四十条、四十三条とは関係のない制度であるという——立法技術上の問題はわかりませんが、そういう一項目が挿入されれば、これはまた一つ方法ではあろうかというふうに考えます。
  84. 西中清

    ○西中委員 竹内参考人にお伺いをいたしますが、最初のお話の中で、審判手続と訴訟手続改正について時間も制限されておりましたので御意見がなかったように思うのですが、どうお考えになっているか、お伺いをいたしておきます。
  85. 竹内昭夫

    竹内参考人 私が申し上げたかった点は、前回五十年の六月に当委員会において述べたところと同じことを申し上げたかったわけでございまして、たとえば二十六条のような規定は削除すべきだと思います。これは公正取引委員会審決が確定しなければ被害を受けた者も損害賠償請求ができないというわけでございますから、公正取引委員会がサボっておれば被害を受けた者は賠償を受けられないわけでありまして、行政庁は個人の被害救済をなぜそのような形で妨害することができるのかという疑問を禁じ得ないのであります。もちろん、故意、過失の立証をすれば民法の不法行為に関する規定でもって損害賠償請求ができるという解釈もありますけれども、公正取引委員会がサボるとなぜ一般私人は故意、過失の立証までしなくちゃならぬのかという疑問はどうしても残るわけでございまして、この点は政府案と四党案も含めて非常に大きな問題ではないかと私は思います。  その他を含めまして、要するに、前回も申し上げましたように、被害を受けた競争事業者及び消費者がその損害をできるだけ早く賠償してもらいやすくするようなシステムをつくることが次の二つの点から大切だと私は思いますが、第一は被害者の救済ということ、第二は、それによって、公正取引委員会だけでなしに競争事業者も一般消費者独占禁止法の運用に参加し得るということ、そして、行政庁だけのエネルギーで法律を動かしておくよりもその方がもっと合理的あるいは円滑に独禁法を動かすことができるであろうと思います。そういうような制度的工夫がぜひ必要であるにもかかわらず、その点の配慮がなされていない点が私としては最も不満であるということを昔から申しておりますので、それを申し上げたかったわけでございます。
  86. 西中清

    ○西中委員 最後に重ねて竹内参考人にお伺いいたしますが、いまの経済の状況はオイルショックの影響も払拭されていない非常に深刻な状況であり、この際に独禁法を強化するのは好ましくないという意見が一方であるわけでございます。しかし、また、逆な面から言うと、日本の経済が本格的にこれから低成長時代に入ることが必至な状況でございますから、むしろ独占寡占弊害もまたいろいろと出てくるのではないかという心配も一方ではあるわけでございますから、独禁法の強化改正はむしろ必要なのだという認識も成り立つんではないかと私は考えておりますが、どちらが的を射ておるのか、この辺の御見解を竹内先生にお伺いしたいと思います。
  87. 竹内昭夫

    竹内参考人 先ほどの山本参考人の御意見も、独占状態排除という部分については時期尚早ではないかという御意見でございまして、そのほかの点については必ずしもそうではないわけでございます。  そういう産業政策と立法政策とをタイミングの点においてどのようにすり合わせるのが適当かというふうな問題は非常にむずかしい問題でございまして、私のように一介の法律屋が十分判断できるだけの能力は持ち合わせないわけでございますけれども、しかしながら、そういうようにそれじゃいまは時期尚早だと言われましても、それでは次にちょうどよくなったというときに事はそんなにうまく動くものなのだろうかという感じがいたします。  独禁法改正などというものは大事業でございまして、これは国会でも次から次へと重要な法律案件が出てまいるわけでございますから、これにだけエネルギーを割くわけにはまいらない。そうだとすれば、ある程度各党間の合意ができたところでこれを通過させて、そして不都合な点はまたすぐ見直すということで、そのための準備研究は公取においても怠らないようにしていただきたい。そのことによって矛盾あるいは不都合な点ができたならば、細かいものでもできるだけ早く是正されまして、それによって経済政策との円滑な調整が行われること期待したいというふうに思います。
  88. 西中清

    ○西中委員 終わります。ありがとうございました。
  89. 野呂恭一

    野呂委員長 安田純治君。
  90. 安田純治

    ○安田委員 同僚議員が非常に各方面からお伺いをいたしましたので、時間の制約もありますので余り細かいことをお伺いするつもりはございませんけれども、竹内先生と正田先生にお伺いしたいのです。  端的に言って、両先生とも、五党修正案といいますか、今度四党で提案した案と現在の政府提案とを比較されながらお話しされたと思うのですが、現行法と政府のいま提出されている法案との間において、現行法よりも改悪になるといいますか、あるいは解釈の面で後退するおそれがあるという部分はどことどこかということを端的にお教えいただきたいと思います。  いままでの質疑の中で大体大まかには出てきておると思いますけれども、つなぎ合わせればここは現行法よりむしろ後退のおそれがあるんじゃないかというふうにおっしゃったような部分はわかりますけれども、現行法よりも後退もしくは後退のおそれがある部分——後退といっても何を基準にして後退かということになりますけれども、競争の回復とか規制実効性あるいは公取委の職権の独立性といいますか、こういう点において現行法よりも後退もしくは後退のおそれがあるという部分について端的にお教えいただきたい。
  91. 竹内昭夫

    竹内参考人 現行法よりも後退してしまう場合というのはいろいろな御意見があるかと私は思いますけれども、私自身は現行法よりも悪くなるということはまずないと考えていいのではないかと思います。それは、法律というものは常にいろいろな表、裏、表、裏の作用をいたしますから、その置かれた情勢いかんによっては立法当時には思いもよらなかった働きをするということも考えられますので、それを将来のあらゆる事態を見通すということはとうてい私にはできないことでございますけれども、しかしながら、法律ができればそれをできるだけうまく運用するような運用の努力もまたなされるわけでございまして、その意味から言って、こういうことをやったならば現行法よりずっと悪くなるというふうなことはまずないのじゃないかというように私は考えております。
  92. 正田彬

    正田参考人 非常にお答えがむずかしい点が幾つかございますが、一つだけ比較できますのは先ほど申し上げました七条二項の問題で、七条二項の挿入によってカルテルに対する排除措置命令が制限的な結果を伴うであろうというふうに考えられる点、これが一つであります。  あと、課徴金あるいは独占状態に対する措置という点は、これは制度自体が新設でありまして、したがって、制度自体の新設という側面と、それからそこに盛られている問題点ということになってまいりますので、現行法との比較ということが必ずしも妥当しない部分であろうかというふうに思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、独占状態に対する措置との関係での主務大臣と公正取引委員会との関係が、審判開始決定前に競争を回復するために必要な他の措置が講じられる場合、これを中心に主務大臣と協議するという合理的な可能性一つ認められるわけでありますが、それ以外の点については公正取引委員会の権限に影響を及ぼすということになろうかと思います。  また、手続的な規定、訴訟における新証拠の提出の問題については、これは少なくともたてまえの上では現行法よりも後退するということになろうと思います。  審査、ことに審判手続にかかわる問題につきましては、これは個別的に申し上げればまた問題の余地がいろいろあると思いますけれども、特に問題として指摘するといたしますと、「申出のあった証拠を採用しないときは、その理由を示さなければならない。」という条項は、これは運用のいかんによっては刑事訴訟においても要求されていないような判断を公取に要求することになるとすれば非常に大きな問題であろうというふうに考えております。
  93. 安田純治

    ○安田委員 いま、十八条の二の問題についてはお触れにならなかったわけですけれども、先ほどの十八条の二についての西中委員の方からの質問で大体わかったんですけれども、なおはっきりとお教え願いたいのですが、この点については現行法の運用上はどうなるのか、公表権の問題も含めましてもう一遍伺いたいと思います。
  94. 正田彬

    正田参考人 失礼いたしました。  価格の同調的引き上げに関する報告の徴取が四十条の一般的な公取の調査権で、四十条の調査権は、公正取引委員会がその法律の適用を適正に行うため、かつ公正に行うためにかなり重要な意味を持っている広範囲な調査権であるというふうに私は考えておりますので、この四十条でできないことを報告の徴取という制度の新設によって行い得るようにするという考え方がとられるとすれば、この点については調査権の制限であるというふうに考えられると思います。  また、公表権については、国会への報告、年次報告による報告というルートが引かれることによって公表が困難になるということになりますと、現行法で可能なものについて制限的に作用するということになろうと思います。  どうも失礼いたしました。
  95. 安田純治

    ○安田委員 いろいろ考え方はあろうかと思うのでございますけれども、十八条の二で報告を求める、そして四十四条の年次報告に概要を載せるということになっておるとすれば、タイムリーな公表の方を抑制する働きが実際上起きるのではないかというふうに心配されますけれども、その点について正田先生の御意見はいかがでしょうか。
  96. 正田彬

    正田参考人 私も、その点については、公表がしにくくなるという効果は伴うのではなかろうかと思っております。これは、もし公表ということを制度的には一切制限しないということが前提になっても、ということであります。
  97. 安田純治

    ○安田委員 それから、主務大臣に対する通知と、意見を述べるというところでございますけれども、独占状態の有無についての意見と、それから、その独占的な状態があることを論理的には前提としたその他の措置についての意見、この二つが同時にあの条文に出ているわけでございますけれども、これは何か論理的に矛盾するような感じもするわけです。また、公取委が独占状態について心証形成が行われていない段階で主務大臣が独占状態があることを前提にしての措置と、その意見を述べられるという二つの関係についてどう考えたらいいのか、正田先生と竹内先生の両方にお伺いしたいと思います。
  98. 竹内昭夫

    竹内参考人 おっしゃるように、論理的にはまず独占的な状態があるということを前提として、次にその排除措置についていろいろ意見を述べるということになろうと思います。しかし、これはたとえば訴訟の訴状なんかでもよくやることでございまして、金を借りた覚えはない、仮に借りたとしても返した、仮にそうでないとしても時効が完成しているという言い方をするわけでございますから、まさにそういうような関係に立つのではないかと思います。独占状態が自分はないと思う、しかし、仮にあるとしてもこういうような措置が適当であろうというふうな意見を述べるという趣旨で書かれた規定ではあるまいかと思っております。
  99. 正田彬

    正田参考人 独占状態の有無という点は、これはまさにこの法案でさまざまな要件が示されておりまして、それを全体を判断した上で結論づけられることであろうというふうに思います。したがって、その点について調査が始まる前の段階で一定の結論を出すということについては、それが独占状態がないという意見であっても、あるいはあるという意見であっても同様であろうというふうに考えます。  ただいま竹内参考人がおっしゃったような形での意見ももちろんあり得るかと思いますけれども、論理的には「競争を回復するに足りると認められる他の措置」という「他の措置」についての意見というのは、これはやはり独占状態がある、したがって審判手続を開始するという判断を公取が行った段階で出てくるのが本来のたてまえであろう、制度的にはそういう形をとるのが望ましい、こういうふうに考えますので、いずれにせよ、独占状態があるという意見を述べるにせよ、ないという意見を述べるにせよ、主務大臣がこの段階意見を述べることは好ましくないというふうに考えております。
  100. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  101. 野呂恭一

    野呂委員長 大成正雄君。
  102. 大成正雄

    ○大成委員 長時間に及んでおりまして大変恐縮でございますが、お許しをいただきたいと存じます。  私は四人の先生方に承りたいわけでありますが、まず入江先生に承りますが、今回の改正によりまして、第七十七条に、企業分割審決に対して三カ月以内の審決の取り消しの訴えの提起の期間が定められておりますが、この点はいたずらに事態の解決、処理を引き延ばすといった解釈にとれるかどうか、その点をひとつ承りたいのであります。
  103. 入江一郎

    入江参考人 私はその点は余り注意して考えておりませんでしたのですが、特に企業分割についてだけ一体提起期間を引き延ばすほどの必要があるかどうか、私はちょっと具体的にわかりません。どういう趣旨なのか、ちょっと私は理解しにくいのです。特に訴訟を提起するかどうかの判断について長期間を要するということはちょっと私は考えられない。もちろん、審決を出すまでには非常な時間がかかることはあり得ると思いますが、訴訟の提起について三カ月必要かどうかは、余りそう必要とも私は考えておりませんですが……。
  104. 大成正雄

    ○大成委員 山本先生に承りますが、先ほど企業活力ということについていろいろ触れておられたわけでありますが、この第八条の四には、分割措置命令の条件として、コストアップの問題であるとか、経理の不健全とか、国際競争力とかあるいは雇用者の生活安定とか、いろいろな条件がつけられておるわけでありまして、これだけの条件が配慮されるならば企業活力をいたずらに奪うといった考え方はとらなくてもいいのじゃないかと考えるわけでありますが、この点、今回の改正に設けられておるこれらの条件と企業活力との関係について御意見を承りたいと思います。  それから、国内的な問題だけでなく、世界経済と日本の産業との関係におきまして、たとえば総合収支で七億ドルの赤字を期待されておるとか、あるいは経済の伸び率、GNPの伸び率であるとか、単に日本の産業の位置づけの問題だけでは解決できないと思いますし、また、世界から見た日本の産業ということから考えたならば、やはりこの独禁政策というものは当然必要であるし、現行法をある程度改正することも当然のことと思うのですが、そのことに対してのお考えを承りたいと思います。
  105. 山本雄二郎

    山本参考人 最初の企業活力については、抑止力という意味では非常に理解できるわけなんです。しかし、最初に申しましたように、実際に分割されるかされないかという以前に、やはり寡占は悪いことだというふうな一般的な通念がそれに伴ってできるのじゃないかということと、それからそれに伴ってたとえば公正取引委員会のいろいろな調査活動が行われるということで、それは企業にとっては非常に萎縮することになってまいりますので、現実に、さきにも申しましたように設備投資を余りしない、これ以上占有率をふやしたくないという動きが実際に企業の間に出てきているということですね。これは企業あり方として果たしてどうだろうか、ではその余った力がどこに行くかという問題になりますと、それは資産運用の方に行ったり、また新しい分野を求めて中小企業と紛争を起こすとかいうふうなことが出てくるのじゃないかということで、その抑止力というだけじゃなくて、それに伴ういろいろな問題がやはりあるということを申し上げているわけでございます。  それから、国際的な観点という問題ですけれども、これはたとえばいまフィルム業界ではコダックというのが出てきて、これは日本ではまだ生産しておりませんけれども、近く生産するだろうとも言われておりますし、それからIBMという世界の巨人がありますが、これはいずれも世界で半分以上のシェアを持っているところでありまして、そういうところと日本の企業は闘っていかなければならぬということを見ますと、ただ日本国内の一定事業分野だけで判断していいのかどうか。いま日本経済はそういう時代に入っていると思うわけで、ですから、独禁法考え方もむしろそういう世界的な観点から見るべきじゃないかと私は思っております。
  106. 大成正雄

    ○大成委員 竹内先生に承りたいと思いますが、先ほど来繰り返し御意見をお聞かせいただいているところでございますが、四十五条の二の「意見を述べる」という問題でございますが、この大臣の「意見を述べる」ということが、この四十五条の二の規定あり方からいたしますと、公取が「独占状態に該当する事実があると思料するとき」という決め方をしていることからしますと、独占的な状態にあるかないかの判断は公取の権限だと思うのですが、その公取の判断に対して大臣がくちばしをはさむということの意味で、この「意見を述べる」ということは適当でない、公取の権限を制約するものであるというふうにわれわれは理解をしたいところでありますけれども、重ねてこの点を承りたいと思います。  ついでですから伺いますが、先ほど国民のこうむった損害回復の措置がないということは残念だということでありましたが、この点は価格の引き下げ命令とか、何か別のことを先生はお考えになっておられるのでしょうか、その点もあわせて承りたいと思います。  それから、もう一つ不況カルテルの問題でございますけれども、従来のあり方からいたしますと、生産制限をし価格維持をするということでありますが、こういったことだけで果たしていいのかどうか。結果においては国民の利益になっておらないという点があると思うのですけれども、もっと構造政策として取り組まなければならぬといった問題があるのではないだろうかと思うのですが、この不況カルテルに対する先生の考え方もあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  107. 竹内昭夫

    竹内参考人 私は、主務大臣が独占状態の有無及び他の措置というものについて意見を述べたからといって——それが望ましいというわけじゃございませんで、その意味では四十五条の二のような考え方は好ましくないと私は申しておるわけでございますが、それは、そのことによって公取がくちばしを入れられて、その圧力に屈服してしまうからだということではないのでありまして、大臣にそんな意見を述べられたぐらいで屈服するようでは最初から公取などはやめた方がいいようなものでございますから、ですから、そういうことを言っているわけじゃないのであります。一般に、主務大臣が意見を述べるというと、そのことによって公取は屈服するのではないかというふうな意見が世間では多いのですが、そういう意見が全然なくなれば述べたって構わないのですけれども、そういう意見が多いものですから、判断の公正さに疑惑を持たれるようなことは好ましくないのではないかという趣旨でございます。  それから、二番目の被害者の救済ということでございますが、これは価格の引き下げ命令というふうなことを考えているわけではございませんで、私は、損害賠償請求をやりやすくするということが必要だということをるる申し上げております。そのための措置としていかなる点について手当てを要するかということにつきましても、二年ほど前に当委員会で五、六点にわたってすでに私の意見を申し上げておりますので、それを御参考にしていただければ幸せに存じます。  それから、不況カルテル云々のことでございますが、これは私自身正直に申しましてよくわかりません。不況カルテルなるものが好ましくないということ、カルテルである以上はどんなものにしろ好ましくないということは確かでございますけれども、不況カルテル公正取引委員会があえて認めざるを得ないというのは、経済状況及び当該業種の置かれた状況からして万々やむを得ないという場合に限っているわけでございまして、好ましいか好ましくないかと言えば好ましくないに決まっているわけでございますけれども、より大きなマイナスを防ぐためにはこの際目をつぶるしかないというふうな形で運営されているのではないか、このように考えております。
  108. 大成正雄

    ○大成委員 ありがとうございました。  正田先生に承りますが、課徴金あり方が百分の三の二分の一とか百分の四の二分の一とかいうことで、国庫に納入するというような意味においてはきわめて軽微な課徴金になっておると思うのですけれども、これでは、一部の説にありますように、このような課徴金をあらかじめコストに算入して、やり得にするといったこともあり得ると思うのですが、諸外国の例等からしてこの課徴金が少し軽過ぎるのじゃないか、実効がないのじゃないかという説もあるわけですが、この点についての御質問が第一点。  第二点で、十八条の二の同調的な値上げの問題ですが、「三箇月以内」ということになっているのですけれども、では、九十五日とか九十六日とかといったように三カ月を一日でも超えているというような場合にはこの十八条の二の適用はされないのかどうかという点についての御意見。  三番目に、これはまだどなたもお聞きしておりませんけれども、持ち株制限、九条の二の関係ですが、この公取の発表した資料からしましても、この四千百七十七億からの持ち株の制限、この評価がいつの時点でどういう評価になっているかわかりませんけれども、あるいは金融機関の持ち株超過分とかいったものを考えますと大変な持ち株があるということがわれわれは理解できるわけです。これは経過措置が十年とついておりますけれども、この法が通って、あなたの会社は、あなたの銀行はこれだけのよけいな株を持っているのだということになりますと、社会的にもいろいろ評価をされるだろうと思うのです。そうすると、十年の経過措置をまつまでもなく、できるだけ早くそういう社会的な評価にこたえるような措置をとる。そうなりますと、優良株はだれでも持っていたいから、比較的優良でない株を先に放出するということになるだろうと思うのです。そうすると日本の株式市場に対してどういった影響を与えてくるのだろうか、また、この超過しておる株の処理については公取としては何も決めていないわけですが、この点に対する御意見をひとつ承りたいと思います。
  109. 正田彬

    正田参考人 第一点の課徴金の算定方法でありますが、課徴金カルテル行為による不当利得を国庫に納入させるという趣旨で設けられているということから考えますと、その算定がかなり困難であるとはいっても、具体的にカルテルによる不当利得の算定であるというに相応するような算定方式というものがやはり考えられてしかるべきであったというふうに考えます。とりわけ平均利益率、利益というところと課徴金というところを結びつけて、その二分の一という非常に遠慮した課徴金の算定というものは必ずしも妥当ではない。むしろ場合によってはといいますか、いまお話がありましたように、価格の引き上げカルテルをする場合に課徴金をあらかじめ算定することが可能であるという問題は残されているので、この算定方法は必ずしも妥当とは言えないというふうに考えております。  また、同調的価格引き上げの問題で、三カ月を一日オーバーすればということは、これは技術的に、いまの改正案のとおりでありますとまさにそういう結果になると思いますし、そのこと自体問題は残ると思うのでありますが、同調的価格引き上げというものをどの範囲で認定するかということについては、やはりある場合はやむを得ず一定の認定基準を設けるということもあり得るかというふうに考えます。まあ、これが三カ月が妥当か、それじゃ六カ月にしたらいいかということになってくるわけでありますが、本来は同調的な価格引き上げという形で期間で認定するよりも、市場支配的寡占産業という一定の産業分野が設定されれば、その価格引き上げが市場支配力の乱用であるか、あるいはいかなる理由によるものであるかをあらかじめ説明をするというような形で、この期間を設けるという措置を持たない方が望ましいというふうには私は考えております。一定の産業分野を確定して、そしてそこで価格競争が行われていないような状況のもとで価格の引き上げが共同行為によることなしに行われるという場合の措置としては、この何カ月以内にという限定を付さない方が望ましいのではないかというふうに考えております。  それから、最後の点は、十年間の経過期間ということを、これから十年間どういうことになるかわかりませんけれども、過去を一応の材料として考えてまいりますと、十年間の経過期間の間に段階的にどういう措置をということは決められていないわけでありますので、これがどういう形で動くのかということは全く予測がつきません。また、十年間の経過措置によって、場合によっては実効性が結果的には余りないという状況が生ずるということも考えられると思いますが、十年後に一応こういう状況が形成されるということであれば、これは一歩前進であろうというふうに考えております。  経過期間中に企業がどういう形で株式を放出するのか、あるいは株式を放出することをできるだけ避けて他の形でもって対応するのか、これも全くわかりませんし、実を申しますと私はその該当株式総数ということについて正確な事実を判断しておりませんので、証券市場に対する影響という点についてはお答えする能力がございません。
  110. 大成正雄

    ○大成委員 もう一問だけ入江先生に再度お願いいたしますが、この七条二項の問題でございますけれども、端的に申し上げてこれは四十五条の規定と重複するような気がするのですが、この点の先生の御意見はどうでしょうか。
  111. 入江一郎

    入江参考人 それは重複しておらないと思います。四十五条の方は、いわゆる違反があるということを公取に対して申し出た者に対して通知をしなければならないという規定でございますので、七条二項とは全然違った趣旨だと思います。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  112. 大成正雄

    ○大成委員 この四十五条第一項の規定も、これは重複していませんでしょうか。第七条の二項を設けてここに規定した内容というものは、これで用が足りるのじゃないかと思ったものですから……。
  113. 入江一郎

    入江参考人 七条の第二項の方は、これは審決の内容の問題だと思いますが、四十五条の方は違反があるということを申し出るときの問題でございますので、重複はしていないと考えます。
  114. 大成正雄

    ○大成委員 わかりました。  どうもありがとうございました。
  115. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  参考人各位には、御退席いただいて結構でございます。  午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後二時七分休憩      ————◇—————     午後三時七分開議
  116. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出中小企業事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田純治君。
  117. 安田純治

    ○安田委員 この中小企業の分野法の政府案は、七条の「調整勧告」にしても、九条の「一時停止勧告」にしても、まず勧告をして、そして勧告に従わない場合は公表するというふうにとどまっているわけでありまして、これでは実効性がないのではないかと思いますし、また、この法案と同様の立法目的を持っておる他の法律と比較しても緩やかになっておるというふうに考えられますけれども、これはまことに納得しがたいことであります。  そこで、まず次の点について伺いたいわけでありますが、一つは、大企業が勧告に従わなかった場合、その公表は制裁と解するのかどうか。もし制裁と解しなければ、これは制裁措置が何らついていないということになりますし、もし制裁であると解すれば、これはこの法案と同様の立法趣旨、すなわち大規模な小売店舗の活動を調整することによって中小小売業者の事業活動の機会を適正に確保するためのいわゆる大店法でも、その十条の勧告では、勧告に従うか否かを問わずに公表することになっておりますし、このような規定は、中小企業団体の組織に関する法律の三十条の四の三項にも、中小企業等協同組合法の九条の二の二の三項にもありますけれども、これはおのおの中小業者事業活動の機会を適正に確保するために、トラブルが起きた場合に調整をする、あるいは「調停」という言葉を使って調停案が示される、そのときにその調停案をのむかのまないかということと関係なく「公表することができる。」という規定がそれぞれあるわけであります。  ですから、このような同じような立法目的を持った法律でも「公表」というのがございまして、この場合には従わなかったからどうというふうには書いてございません。  この点を比較してみますと、この提案されている分野法の場合の「公表」というのは制裁という意味が実際はないのじゃないかというふうにも考えられますけれども、その点についてどうかということをお伺いしたいわけであります。
  118. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは、この御提案申し上げております法律に基づく「公表」は制裁措置であるという理解をいたしておるところでございます。従来、紛争につきまして、通産省がその問題に立ち入ってその解決に努め、そして大企業の進出について調整を図ったという事例がいろいろございますが、その運用の結果を見ましても、大体まず勧告の段階で十分大企業はそれにこたえて事業活動の調整を行うという経験を持っておりますので、勧告で相当効果を上げ得るし、それに従わないときの違反の公表ということがさらに加われば制裁意味は一層強まるだろうと思っておるところでございます。  お話の中に大規模店舗法で公表しておるではないかという点がございましたが、大規模店舗法の場合には、大規模店舗のいろいろの営業活動についての実質的な内容の調整を図る、そのことを一般の方々に周知徹底を図りませんとかえって買い物のときに混乱を招く、こういうことを配慮しての公表でございまして、この場合には制裁的な意味というよりは周知徹底を図るという意味での公表でございます。同じ「公表」でも趣旨が異なっておるというふうに理解をいたしておるところでございます。
  119. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、先ほど挙げました中小企業団体の組織に関する法律中小企業等協同組合法の当該規定を見ますと、これは調停案の勧告になっているわけですね。それを公表することができる。のまなかった場合はどうとかこうとかじゃなくて、調停案を示して、しかも公表するという、こういう条文があるわけです。  ですから、大店法の場合には第三者との関係で周知徹底ということがあるかもしれませんけれども、中小企業団体の組織に関する法律中小企業等協同組合法の場合の「公表」ということになりますと、調停案ですから、第三者、つまり買い物客や何かに周知徹底させるという必要はないのではないか。これは先ほど申し上げましたように、同じように中小企業事業活動の機会を確保するためトラブルが起きたときに調停をするという同じような条文ですね。これについても「公表」ということがあるわけですから、公表ということそれ自体に制裁意味があるかどうかということはきわめて疑問ではなかろうか。ただ、法文の形式上何々に従わなかった場合は何々すると書いてあるからそれは制裁なんだというふうにとることはできないのであって、制裁措置である以上は、その措置自体が制裁的役割り、つまり制裁を受ける者にとって不利益な内容でなければならないのじゃないか。そうしますと、この中小企業団体の組織に関する法律や何かの調停案の提示とそれの公表ということを考えますと、これは公表自体が制裁だということは言えないのじゃないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  120. 岸田文武

    ○岸田政府委員 公表に至りますまでに、実は中小企業団体から調整の申し出があり、その申し出に従って調査が行われ、そしてその調査を受けて中小企業調整審議会において関係当事者意見を十分徴して一つの公正妥当なる調整の方向が見出される。これは従来の行政指導におきまして話し合いの結果としてまとめられた調停案と比べますと実質的には法律の裏づけがあるということと、さらに審議会において慎重審議されたものであるという意味合いにおきまして相当権威のある調整勧告であるということが言えるだろうと思います。  先ほど申しましたように、調整勧告が行われましたならば当然常識的にはそれが守られるということが期待されますし、私どもも当然そうであろうと思っておるところでございます。それに追いかけて公表ができておりますのは、その勧告にすら従わなかったということを公表するわけでございまして、いわば大企業の進出について、社会的に見てもまた経済的に見ても公正妥当な意見を出されたにもかかわらずそれに従わずに勝手なことをするという、そういう企業である旨の公表でございます。  こういった意味合いの公表ということになりますれば、単なる事実の公表と違いまして、いわば社会的にも指弾をされることになるわけでございまして、制裁的な意味合いというものは十分あり得るだろうと私どもは思っておるところでございます。
  121. 安田純治

    ○安田委員 公表自体が制裁だというふうにお考だになる点についてはわれわれとしてはどうも承服しかねるわけですが、仮に公表されること自体が大企業にとって不愉快なことかもしれませんが、しかし、この程度のことではとうてい制裁措置とは言えないと思うわけです。というのは、いま長官もおっしゃいましたように、勧告自体が相当権威のあるもので、普通はそれに従うのが常識だ。ところが、そうなりますと、この勧告にさえ従わないようなお行儀の悪い企業ということが前提ですね。ですから、勧告というものが非常に権威が高くて、勧告に従うのが常識だということを強調されればされるほど、それを無視するようなお行儀の悪い大企業に対して、公表は不愉快かもしれないけれども、その程度で一体制裁と言えるのかということがますます疑問になってくるわけです。  お行儀のいい企業で、大体勧告を受けただけで素直に従うだろうという程度の遵法精神といいますか、それがある企業なら公表されるだけでも不愉快かもしれませんけれども、勧告に権威があると言えば言うほどこれをも無視するというような企業に対して一体公表で抑止力があるのかどうかということになると、これはきわめて疑問であると言わざるを得ない。ですから、制裁だと仮にしても、これは抑止力にほとんど欠けておると言わざるを得ないんじゃないかと思います。  まして、前回の委員会でも答弁された中で、旭硝子の例などを挙げて、従来の勧告でも相当効果があったという意味のことを同僚委員に対して答弁されておりますが、仮にそうだとすれば、いままで効果を上げてきたはずの勧告にさえも従わないというお行儀の悪い大企業に対する制裁なんだから、公表程度で実効性があると考えるのは余りにも楽観的ではなかろうか。勧告自体がそれほど意に介するほどのこともない軽いものだというならば、勧告に従わなかったら次に公表とだんだんエスカレートしていくということは考えられますけれども、勧告自体がそんなに権威のあるものであれば、ますますそれを無視する大企業には公表程度では抑止力はないんではないかと言わざるを得ないのですが、その点はどうでしょうか。
  122. 岸田文武

    ○岸田政府委員 世の中にはいろいろな人がいるもので、罰金を払ったって何ということはないやと思う人もいたとすれば、これはどういう制裁措置を講じても問題は解決しないわけでございますが、ただ、私どもは最近の新聞等を見ておりまして思うのですが、天下周知の事実として、これは社会的に一応公正妥当だと認められたルールに対してルール破りをしたというような形で公表されることは、その企業のイメージを相当強く傷つけるだけではなくて、やはりその会社営業等にもいろいろの反響を巻き起こす一つの大きなきっかけになるのではないかと思っておるわけでございます。私どもは、実質的には公表というのは相当強い制裁効果を持ったものだと理解をいたしております。  先生のお話のように、公表ではなまぬるい、もっと強い命令、罰則をというような御意見は確かに中小企業団体の中にもございますし、私どももいろいろ議論をしたところでございます。ただ、こういった大企業の進出に伴う中小企業の打撃をどう食いとめるかということについて一般的なルールをつくります場合には、もしその事態が一つ一つ予見でき、そしてそれに伴う被害の程度が一つ一つ立証できるものであるならばそれを防止するために必要な手段というものも一つ一つ明らかになってまいるわけでございますが、どういう業種へどういう形で出てくるかわからない、いわば一般法としてのルールづくりをしようということになりますと、強く規制をするということにもおのずから限界があるのではないかと思っておるところでございます。  特に、これを命令という形で強い規制をかけますと、御承知のとおり、命令を発動するためにはその要件を確実に明記し、また、命令の内容も一つ一つ明らかにしておきませんと法的な安定性に対して阻害をするおそれが予想されるわけでございます。したがいまして、仮に命令を書くといたしましても、非常に限られた形の命令ということにならざるを得ないのではないかと私どもは思っておるところでございます。  したがいまして、今後予想される万般の事態に対して機動的に対応するという意味からいたしますと、命令にこだわりましてその前提となる勧告自体も窮屈な形になる、あるいは後ろにそういうものがあるだけに一層その運用が慎重になってくるというような事態を考えますよりは、むしろ勧告というものがかなり機動的に使えるような形の方が実際に問題をおさめる上では実効があるのではないかという、こういった基本的な気持ちからいま御提案申し上げましたような法律的な形をとることにいたした経緯でございます。
  123. 田中龍夫

    田中国務大臣 一言お答えいたしておきましょう。  「勧告」「公表」で効果があると思っているかというのでございますが、本法案におきまして、第三者機関である審議会において、審議会のメンバーはもとより紛争当事者等の関係者が論議を十分尽くして大方の納得のいくような調整案をつくるということでございますが、このような方法で調整を行う以上は、従前の行政指導におきます経験や現在の社会情勢下での世論の影響等が考えられるわけでありまして、これらの勧告によって十分所期の目的は達し得ると——「勧告」「公表」で効果があるのかという御質問でありますが、効果があるとわれわれは考えておる次第でございます。
  124. 安田純治

    ○安田委員 この問題についてはまた後で時間があればお伺いしたいと思いますが、「調整勧告」の内容が事業開始の無期延期もしくはこれと実際上同視されるような内容の勧告もあり得るのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  125. 岸田文武

    ○岸田政府委員 調整の内容といたしましては、法律に書いてございますように、事業規模の縮小とそれから事業の開始または拡大の時期の繰り下げ、その他多様なものが考えられるわけでございますが、その際に、無期繰り延べと申しますか、永久に中止をしてほしいというような、率直に申しますと未来永劫にわたって出てはいけませんというようなことまでは考えておりませんが、ケース・バイ・ケースに内容を見ておりまして、実際問題としてこれは放置できないというような判断が立ちますれば、進出時期の繰り延べの期間相当長くするというようなことは場合によっては必要ではないかと思っておるところでございます。したがって、もし相当程度の長い期間を繰り下げるというようなことができますれば、御趣旨のような点はほぼ実態には沿い得るのではないかと思っておるところでございます。
  126. 安田純治

    ○安田委員 そこで、未来永劫というわけにはいかないとしても、実際上ほとんどこれと同視されるような内容の勧告があり得るとすれば、ますますもって企業が公表程度でこれをじっと守ってがまんの子をしておるかどうか。三分間ぐらいなら待つけれども、ほとんど実際上無期延期に近いというような繰り延べがあった場合に、公表程度で抑止力があるのかという点がまた疑問になってまいります。  もしそうでなくて、そういう長い繰り延べはあり得ないのだということになりますと、結局これは一時的な延期にすぎなくなって中小企業の分野確保にはならない、結局は分野が侵されるということになると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  127. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは従来たくさんのケースを手がけてまいりまして、その実態に応じたいろいろのおさめをやってまいったわけでございます。設備の稼働率を下げるというような内容をやったこともございますし、あるいは着工の時期を繰り下げるというような内容を最後に取りまとめたこともございます。場合によっては、直販の形式をとらずに従来の既存の販売ルートを活用するというようなおさめ方の例もございます。また、組合に入ってお互いに話し合いをしながらやっていこうというようなおさめ方の例もございます。ケースによりまして、実際は大企業の調整と申しましてもおさまり方は多種多様でございます。  その中で、たとえばこれはたしかヤクルトの豆腐の例でございましたかしら、これは現に計画がいろいろ進められておりましたものの、話し合いをしました結果白紙還元をして中止をするというようなことで解決を見た事例もございます。したがいまして、私どもは、問題の事案によりまして、そんな分野にわざわざ大企業が出てこなくてもいいのではないか、現にこれだけの影響を受けておるというようなことについて十分立証ができた場合には、大企業として中止というか白紙還元を応諾する場合というものは今後はかなりあり得るケースだろうと思っておるところでございます。  御意見ではございますが、私は、まず勧告段階で内容によっては中止というか白紙還元するという場合は当然あり得るという考え方でございますし、そして、そういうような勧告をすればそれは相当聞いてもらうというか、大企業として自主的に調整する可能性は大いに高いというふうに思っておるところでございます。
  128. 安田純治

    ○安田委員 勧告の段階で聞いてもらえばそれもいいのでしょうけれども、勧告を聞かなかった場合に、先ほどの話に返りますけれども、それをも無視して進出してこようというのに公表程度ではどうも抑止力が乏しいのではないかというふうに思わざるを得ないわけでございます。しかし、この点だけをやっていますと時間がございませんので次に進みます。     〔中島(源)委員長代理退席、橋口委員長     代理着席〕  勧告することが必要だろうと判断した場合に、個別企業対当該業界という関係だけでとらえるのかどうかということですね。たとえばA社、B社、C社各五%ずつのシェアで進出しようとした場合に、トータルで見ると一五%になるという場合のことを考えますと、言葉が適当かどうかわかりませんけれども、いわば総量規制といいますか、グループ規制という考え方を採用することができるのかどうか。もしこれを採用しないんだ、個別企業対業界だというふうに考えまして、いま申し上げましたように、各一社のシェアから見ると大したことはない、足せばえらいことになるという場合のことを考えますと、これは中小企業の分野の確保は困難である。もしそういうグループ規制や総量規制などを採用するというふうに考えますと、今度は早い者勝ちになっちゃって、最初の五%はスムーズに認められるが次の五%のときはやや首をかしげられる、次の五%のときは合計して一五%になるからこれはだめだということになってしまい、そういうように早い者勝ちになるという難点があると思うのですが、採用、不採用どちらか、それの説明をお伺いしたいと思います。
  129. 岸田文武

    ○岸田政府委員 理論的にはいま御指摘のようなことがあり得るかと思いますが、実際に出てまいりますのは、やはり特定の企業が特定の分野に進出をいたしまして、そこで問題が起きかけているときにまたほかの企業が追いかけてくるというケースが過去の経験でも二、三ございました。私どもは、一応法律の解釈の上では、それぞれの企業がいま法律考えております要件に該当したときにあの法律が動き出すというふうに理解をいたしておりますものの、現実問題としては、やはり最初の会社ですでに問題が起こるべきときには起こってくるし、そしてそれについて何らかの調整をする、そしてそれを見ておってあとの企業の方は、これは問題があるからそれは深入りをしないで済まそうというような形で問題が処理されるケースが一番多いのではないかと思っておるところでございます。
  130. 安田純治

    ○安田委員 そういうことが多いかもしれませんけれども、私が伺っているのは、私が先ほど例に挙げたようなこともあり得るが、この場合にどうするかということを聞いているわけです。レアケースかもしれませんけれども、やはり立法当時予想されるものは、仮にレアケースであってもそれに対するそれなりの考え方を持っていなくちゃならないじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  131. 岸田文武

    ○岸田政府委員 特定の会社が、先ほど五%とおっしゃいましたが、仮に一%拡大したという程度では恐らく問題にならないだろうと思います。やはり、これはある程度の規模以上の拡大が行われ、それが結果として当該業界の従来の需給秩序一つの衝撃を与え、そしてそれが結果として中小企業の従来の経営に大きな打撃を与えるという程度の進出であることが一つの前提要件になろうかと思うわけでございます。そうなりますと、仮に一社が出てきたことに追いかけて数社が出てくるとか、あるいはたまたま軌を一にして出てくるという場合にも、第一社で、ある程度の企業であれば恐らく私どもは調整の対象とせざるを得ないと考えておりますし、また、それが複合したという場合には一層大きな問題であるということで、中小企業への打撃も当然大きくなるし、また、調整の方法についてもさらに強い調整が必要になってくる、こういう関係にあるだろうと理解しておるところでございます。
  132. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、背後にやはり総量規制的なものも考慮するということに伺ってよろしいかと思うのですが、もし違ったならば、時間がございませんのでそれはそれでまた後でお答えをいただきたいと思います。  勧告があって進出のときに規模を縮小したが、一、二年後にその縮小分を取り返すことになるといいますか、拡張の動きがあった場合にどう対処するのか。これは許容すべきではないと思うのですけれども、どうでしょうか。  このことと総量規制考え方は、実際問題として、いまの御答弁ですとやはりあり得るというふうにも解されるのですが、この点も一緒にお答えいただきたいと思うのです。
  133. 岸田文武

    ○岸田政府委員 勧告によりまして、事業開始の時期の繰り下げまたは事業規模の縮小を勧告するというときには、大体今後何年間はこのような規模で、あるいは今後何年間はスタートしないようにということで、期間の観念が大体勧告の中に入ってくるのが常識的であろうと思っておるところでございます。その意味合いといたしましては、一方では経済情勢がその後どういうふうに変化するかわからないという要因もございますが、他方では進出の対象となった分野で、既存の中小企業自身もこれから合理化をし、近代化を進め、そのことによって国際競争力を確保し、また一方消費者の期待にもこたえるという、こういう努力をする時間的な余裕を与えるという意味合いもあろうかと思うわけでございます。  したがって、先ほどの調整、勧告の期間内にもう一度約束をたがえてというようなことは恐らくあり得ないにしましても、その次に期間が満了したときに出てくることをどう思うかということは、その時点における新しいケースとしてもう一度申し立ての対象とするか、あるいは勧告の対象とするか、その時点における判断にまつというような形を予想しておるところでございます。
  134. 安田純治

    ○安田委員 そういうこととも多少絡むのですけれども、進出後のトラブルについては、この政府案を見ますと、自主解決の条文、つまり原案で言えば四条ですか、どうもこれしかないように思うわけであります。大店法の十条には、進出後の客の送迎や何かいろいろな営業のやり方について、進出後のトラブルについての規定がちゃんとございます。それと同じようなものをなぜ分野法の場合には入れることができないのか、あるいは入れるべきであると考えるのかどうか、この点を伺いたいと思います。  時間がございませんのであと質問をまとめてやってしまいますが、一つは、大店法十条に該当するような進出後のトラブルについての解決の条文が必要だと思うけれどもどうかということと、それからもう一つは、「一時停止勧告」の制度がございますけれども、この一時停止勧告というのは、やはり確実に停止させる必要があるからまさに一時停止の勧告の制度があるのだろう、ならば、なぜ「停止命令」としないのかという点が疑問になるわけであります。命令とすれば発動要件が厳重になって機動的な発動ができないというような答弁の趣旨があったようでございますけれども、しかし、仮に命令にしてみたところで、まず審議会の意見を聞くこと、応急の措置であること、期間の定めがあること、必要限度を越えない範囲内でしか出せないこと、このくらいの条件はもうついているわけですから、このくらいの縛りがついていればこれは命令としたってちっともおかしくない。発動の要件としては十分だし、とれ以上の厳重な要件がなければ命令が出せないと言ったら、行政法上の命令なんかほとんど出せなくなってしまうのじゃないかと思うのです。調整審議会の意見も聞いて、応急の措置であり、期間の定めがあって、必要限度を越えない範囲内だ、と、ここまであるわけですから、そうしたら命令とするのが当然ではなかろうかというふうに考えるわけです。しかもこれは制裁措置ではなくて、現状の一時的な凍結の必要性があるからその制度が認められているのだろうというふうに思いますので、ますます確実にとめなければ意味がないというふうに思いますけれども、どうでしょうか。この点をひとつお伺いしたいというふうに思います。     〔橋口委員長代理退席、中島(源)委員長     代理着席〕  それから、時間がございませんのでもう一つやってしまいますけれども、中小企業の政策審議会の意見を尊重してこの原案を出されたようなことを御答弁されますけれども、われわれから見ると、悪く言えば、どうもこの意見のうちの都合のいいものだけをつまみ食いしているのじゃないかというふうにも思われないことはないのです。というのは、中小企業政策審議会の意見の中でも、昭和四十七年の八月八日付の意見によれば、産地保護の振興が必要であるというふうに言っているわけですね。この意見もまた尊重するとすれば、やはり、産地保護のために地域を限った知事の権限を認めるべきではないかと思うのですが、こういう点もお伺いしたいと思います。
  135. 岸田文武

    ○岸田政府委員 第一点にお尋ねのございました大店法の十条のことでございますが、これは大規模店舗が事業を開始するときに店舗面積等についての調整がいろいろ行われるわけでございますが、一たん開始した後にも営業活動の内容においていろいろトラブルが起こることを予想しまして、それを防止するために設けられた措置であるというふうに理解をいたしております。ただ、大規模店舗法の方は要件が一つ一つ非常に明確にされておるわけでございますが、私どもの分野法におきましては、いわばそれらが勧告の内容という形で処理し得るものであるし、また、そういうふうなことを予定した条文であるという、こういう理解でございます。大規模な事業の開始または拡大をするに際し、それ以降の事業活動について先ほど幾つかの例を申しましたが、たとえば直営店舗を持つことは二店舗以内にとどめて、それ以外は既存の販売ルートを使うことなどというような勧告を従来いたしておりましたが、これもいわば営業開始後のいろいろな仕事のやり方についての勧告をその内容としている事例になろうかと思います。したがいまして、先ほどの法律の中にございますその他必要な措置を勧告するということの中に含んで読んでいいのではないかと思っておるところでございます。  それから、第二番目に「一時停止勧告」ぐらいは「命令」にできないのかということでございますが、これは従来の実績を見てみますと、一時停止勧告は問題が起こるとわりあい早く、いまのままでちょっとしばらく待っていてくださいというようなことを行政指導の形で実施をいたしてまいりました。その事実上の一時停止勧告、従来やってまいりましたものはかなりの程度守られております。これは既成事実がどんどん進んでしまって、工場が動かす寸前というようなときにはいろいろ問題が起こる場合もあり得るかと思いますが、しかし、従来の実績で見る限りは問題は非常に早目に処理されておりまして、停止勧告によって問題を一応凍結し、その凍結された状態において両当事者の話し合いをし、あるいは必要によって主務大臣が入って大企業の活動についての調整を行う、こういったことが事実たる慣行としてかなりの程度定着しておると思っておるわけでございます。したがいまして、先ほどの、公表をあえて待つまでもなく勧告自体が相当意味を従来も持ってきたし、法律ができれば一層その意味合いが強くなってくるであろうということは一時停止の場合にも同様当てはまるのではないかと思っておるところでございます。  それから、三番目に審議会のことについてお触れをいただきましたが、実は、四十七年八月八日の答申というのを私は正確に承知をいたしておりませんのですが、その中で産地保護ということがうたってあるとすれば、それなりにいろいろの施策がすでにとられてきたのであろうと思っておるところでございます。  ただ、産地保護の問題に絡みまして分野法で特定産地についての地方調整を考えてはどうかということになりますと、これは別途私どもとしては考えなければならない問題があるように思うわけでございます。と申しますのは、たとえば製造業であって特定の産地に生産されたものでございましても、その流通範囲はその都道府県だけに限るものではなくて、ブロックの範囲あるいは場合によっては広く全国範囲に流通するものでございます。したがいまして、一つの府県だけで調整をしたら問題が解決するというものではなくて、ほかの産地との関係というものが当然問題になってまいりまして、こういうようなことを念頭に置きながら、この法律におきましては主務大臣が一応中央において調整するというようなルールをとったわけでございます。いわばこれは製造業等の実情を踏まえた一つのルールづくりであると御理解をいただきたいと思います。
  136. 安田純治

    ○安田委員 時間が来ましたのでもうやめますけれども、中小企業政策審議会の四十七年八月八日の答申は、六十三ページにその産地業種の振興対策について書いてございます。これはひとつよく読んで検討していただきたいというふうに注文をしておきます。  それから、通産大臣にお願いしたいのですけれども、調整審議会の構成について中小業者意見が十分に反映される構成とすること、このことをぜひお願いをしておきたいわけです。この間までの答弁を伺いますと、まだ具体的には調整審議会の構成について考えていないというような御答弁が前にあったようですけれども、これはとんでもない話でございまして、中小業者意見が十分反映される構成とするということについてぜひお約束いただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  137. 田中龍夫

    田中国務大臣 先生のおっしゃるお考えも、私どもの考えていることも全く同じでございます。
  138. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  139. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 大成正雄君。
  140. 大成正雄

    ○大成委員 お許しをいただきまして、分野調整に関しまして御質問申し上げます。  過般の本会議におきまして、本法に関しましては質疑、答弁等もなされたわけでありますが、これを受けての委員会質疑でありますから若干掘り下げて御質問をさせていただきたいと存じます。  まず、第一に、この「適用除外」の問題でございますが、政府案ではこの業種指定をしない。なおかつ適用除外としてこの小売商の分野の調整を除いておるわけであります。御答弁の中では、いわゆる大店法と商調法の運用の改善に努めるという御答弁がなされておるわけでありますが、いま政府が考えておる小売商業分野の紛争解決のために大店法並びに商調法の運用改善策として考えていることは何かということをまず承りたいと存じます。
  141. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話がございましたように、この御提案申し上げております法律におきまして小売商を適用除外にいたしましたのは、大規模店舗法、小売商業調整特別措置法といういわば小売についての特別の分野法がすでに制定されておるということがその理由でございます。ただ、お話にもございましたように、別の法律があるからということだけで問題が解決するのではなくて、やはり、その別の法律をいかにうまく動かしていくかということが大きな課題であろうと思っておるところでございます。  大店法につきましては私は直接答弁をする立場にはないわけでございますが、私が聞いております範囲内におきましても、大規模店舗法の実際の運用は、御承知のとおり商工会議所等に設けられております商業活動調整協議会の場を通じて地元の実情に沿うような解決をするというのがまず第一歩になっておるわけでございます。しかしながら、いままではその商調協におきまして事実上の意見交換ないし討議の上に答えを出すのが例でございまして、各地でもさまざまな対応がとられてきておるかと思っております。これらについて何らか共通の物差しあるいは共通の指針ができることによって、いわば同じ土俵で同じ方向議論が積み重ねられるのではないかといったことを頭に置きまして、いま申し上げましたような指針づくりというようなことがいま現に進行いたしておると聞いておるところでございます。  それから、他方、小売商業調整特別措置法に関連いたしましては、従来からその十五条ないし十八条におきまして都道府県知事を通ずるあっせん、勧告、調停という規定が用意され、場合によっては主務大臣による勧告という制度が法律上用意されておりました。しかし、御承知のとおりこれが直接に動かされたという事例は非常に乏しゅうございますし、たかだかこの法律があることを前提にした都道府県の行政指導による問題の解決が行われてきたという実情にあるわけでございます。しかし、法律の形としてはかなり弾力的に使える条文が現に用意をされており、これをこの際もっとうまく使えるようにしていきたいということを私どもも考えておるところでございます。  したがいまして、たとえば紛争として取り上げ得る内容をどう考えていくかという問題、あるいはあっせん、調停の申請があった場合の調査といった点につきまして、いままではとかく都道府県知事の自主的な裁量にゆだねられ、しかるがゆえに自分のこととは余り思わずにこの法律を受け取っておったのに対しまして、こういう使い方ができるのだ、またこういうふうにすればいいのだというようなことにつきましての指針を用意いたしたいと思っておるところでございます。近くこれを通達の形にまとめたいということで、いま部内でいろいろ議論をいたしておるところでございます。
  142. 大成正雄

    ○大成委員 ただいま長官がいみじくも御指摘のように、最も紛争事例の多い小売商業分野におきまして、百貨店法またはこの商調法の運用というものが十分でないということだけはお認めのとおりであります。かといって、ただいまの長官の御説明のように商調法十五条ないし十八条の運用の指針を出すだけで問題が解決するかどうか。  私はこれは通産大臣に承りたいのですが、もうこの段階では、現実の問題として、大店法の千五百平米ないし三千平米という床規制値以下の紛争事例に対応できるような商業調整立法というものが考えられていいんじゃないだろうか、要するに大店法と商調法とを一体化したような調整立法というものが提案される時期に来ているんじゃないだろうかというように考えるわけでありまして、与野党を通じてそういった意見がいま非常に濃密に出ておるわけでありますが、大臣の御意見を承りたいと思います。
  143. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまメモもちょうだいしたわけでございますけれども、いまの事務当局のいろいろな経過や何か等とは別に離れまして、先生に本件につきまして申し上げたいと思うのは、大店法ができたときはちょうど私どもも当選してきたばかりで商工委員になっておったわけでありますが、あのころは百貨店法というものがございまして、それをつくるつくらないの問題から、その後またスーパーの問題になりましたり、それからさらにまた小売の寄り合い店の問題がありましたり、そうなってきますと商調法の対象になる小売自体が大規模な店舗を持つようになってまいりまして、この商業関係、つまり不特定のお客に対して販売行為をするいわゆる小売業というものの中におきましても、その間になかなかいろいろな新たな紛争が生じてくるような状態になって、当初のような百貨店対小売というような姿ではなくなってまいっております。こういうふうな非常に客観的な情勢を踏まえまして、いずれの日かこの小売の問題は解決しなければならぬというような客観情勢下にあることも私はよく存じております。しかしながら、こういうふうな問題につきましては総合的に検討すべきものと考えておりますけれども、通産省といたしましてはこれらの問題につきまして意見の調整を図りつつある、かように考えるのでございます。  それ以上申し上げなくともよく御理解いただけると思うのでありますが、現段階におきましてはさように考えております。
  144. 大成正雄

    ○大成委員 いずれにいたしましても、この分野法から小売業が除外されたということからいたしまして、いまの体制を何とか改善するという必要性のあることだけは事実であります。その具体策が商調法なり大店法の整備といった方向に行くのか、あるいは単なる行政の指導、指針といった方向で行くのかは別といたしまして、日本全国にいまいわゆる中規模店以下の紛争が頻発しておりますので、この分野法の大きな抜け穴としてこの問題が立法後において問題にならないように、ぜひ早急に対処していただくことを要望申し上げておきたいと思います。  次に、ただいま長官からその地域ごとの目安、指針といったものが必要だと言われたことは全くそのとおりでありまして、現益、豊中式であるとかあるいは京都方式とか、それぞれの地域の消費人口、商圏動態、業種別の床面積の実態あるいは大型店の実態というものをファクターといたしまして、将来の予測される大型店の許容限界値をその目安として出すということは非常に大事なことだと思うのです。この本院の審議の中でも過去においてそういうことが指摘されているにもかかわらずそういった具体的な指導が今日までなされないできたところに問題があります。豊中市の事例から見ましても、そういった目安をつくるためには市自体が五千万ぐらいの投資をして、コンピューターにファクターを打ち込むためにはそのくらいの基礎費用をかけているわけでございますが、国としても、来年度予算でも結構でありますが、そういった単なる指導だけでなく、思い切った中身のある具体的な目安づくり、基準づくりの行政を展開していただくことを要望しておきます。  次に、各地方団体の条例の問題でありますが、ただいま長官がおっしゃるような商調法の運用指針といったものと地方団体の条例というものとの位置づけを、解釈を承りたいと思うのですが、簡単にそのことだけを、時間がありませんので先にお述べいただきたいと思います。
  145. 山口和男

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、ただいま大規模店舗法の基準面積に満たない面積を持ちます小売店舗に関しまして、これを条例あるいは要綱の形で各府県あるいは市町村等において一応のルールをもって実施されておるようになっております。  現在、条例によりますのが、県が一件、市町が八件、それから要綱によりまして行政指導的な形でやっておりますのが、県が十四件、市町で十四件ございます。  それで、大規模小売店舗法による基準面積は、御承知のとおり、大都市におきましては三千平米以上、その他におきましては千五百平米以上になっておりますが、これを下回るものにつきましても、昭和四十八年の大規模小売店舗法の改正の際に附帯決議がございまして、基準面積未満のものについても本法の調整措置に準じて適切な指導を行うようにということになっておりますので、私ども通産省におきましても、そういった問題が持ち出されてまいります限りにおきまして最大限の努力をして適切な指導に努めておるところでございます。一方、府県におかれましても、そういった問題についてはできるだけ地域の特性、特殊事情等に応じて解決を図っていきたいということでただいまのような状況になっておるわけでございます。
  146. 大成正雄

    ○大成委員 これは建設大臣に要望としてお伝えいただければと思いますので、あえて御答弁を要しませんが、最近の事例からしますと、いわゆる都市計画事業としての、たとえば駅前の再開発といったようなことで、都市再開発法の適用を受けて立体空間の開発がなされる。そういった事業によりまして、いわゆる保留床が造成されるわけでありますが、この保留床が処分をされるのに、各店舗としてはほとんどのケースが大型店が誘致され、それによって周辺小売業との紛争が起こる。藤沢なんかもいい例でございましょう。そういう事例が多いわけでありますが、この都市再開発事業と大型店の床の問題というものは、ある程度事前に調整をされなければならないと思うのです。そういう意味で、通産大臣には、いわゆる都市再開発事業と大型店の床規制の問題とが事前に何か合理的に調整ができるような方法について、建設大臣とぜひ相談をしておいていただきたい。いずれまたこのことについては機会を改めて建設大臣との協議の結果を承ることといたしますから、以上、要望だけを申し上げておきます。  次に、命令、罰則について承りたいと思うのですが、中小企業基本法のたてまえから言うならば、基本法第三条一項七号あるいは十九条から言いましても、素直にこの基本法の精神を受け取るとするならば、この分野法においては、自主的な話し合いといったことでなく、この命令、罰則というものが位置づけられるという立法体系が当然だと私は思うのです。同じ調整立法でもそういう形になっておるわけでありますから当然のことと思うのですが、現在政府案にはこのことがない。これが与野党一致した修正点の大きな問題だと考えておるわけであります。  そこで、いままで命令、罰則を設けないで公表で効果があるという御答弁がなされておるわけでありますが、しからば承りますが、他の立法において、公表によって効果があったという事例がありましたら、その一、二をお示しいただきたいと思います。
  147. 岸田文武

    ○岸田政府委員 従来の紛争事例を扱っておりまして、私どもも、一つ一つその内容が違っており、また、その背景が違っておるので、やはり問題をよほど詰めて勉強していきませんと正しい答えが出しにくいという感じがいたしております。しかしながら、放置しておきますと中小企業はあしたからの経営に困ってしまうというところまで追い込まれてしまいますので、やはり急速に勉強をし、そして急速に答えを出すということが大切であろうと思っておるところでございます。従来の事例におきましてはできるだけそういう努力をしてまいったつもりでございますが、その結果私どもが取り上げて間に入りました案件につきましては、特に強制的な手段を講ずることなく、一応円満な解決にほとんど到達をいたしております。一、二その過程におきまして問題を生じたことも、率直に申せばございますが、それもさらに調整を重ねました結果、今日では、従来問題になったケースにつきましては一応のレールが敷かれておるというところでございます。したがいまして、公表を待たずして、勧告の段階でほぼ目的を達成し得るのではないかと私どもも思っておるところでございます。  ただ、そうは申しましても、問題は次から次へと起こってまいります。特に、これから安定成長経済に入ってまいりますと一層問題が微妙になってくることが予測されますが、その場合には、何と申しましても早く問題をキャッチをするということが大切でございます。今回の条文におきまして事前調査の規定を設けましたのもその趣旨でございますし、また、五十一年度から分野調整官あるいは分野に関するモニターがスタートし、それなりに早く情報を集める機能を果たしておるというような点も今後とも大いに活用してまいりたいと思っておるところでございます。  これらの考え方中小企業基本法等の関係でございますが、中小企業基本法は、第十九条におきまして、「中小企業事業活動の機会の適正な確保を図るため、」として、その具体策として、「紛争処理のための機構の整備」を例示をいたしておりまして、本法のような勧告により調整をするという方式は基本法の考え方に即したものであるというふうに一応考えておるところでございます。
  148. 大成正雄

    ○大成委員 過去の紛争事例からいたしまして、非は大企業側にあるということだけは本会議質疑の中でも指摘したところでございますが、事の本質からいたしまして、命令、罰則のないこの分野法はざる法であると言わざるを得ないのでありまして、できるならば、減税ではございませんけれども、政府みずからの手によって、いまからでも遅くありませんから、命令、罰則をつけ加えて、そして部分的に再提案をしていただければなおありがたいと思いますが、これは要望にとどめます。  次に、通産大臣に承りたいと思いますが、現在の情勢からいたしますと、下手をするとこれは独禁法と分野法が無理心中しなければならぬかといった情勢もうかがえるのであります。大臣は自民党を母体にして大臣におなりになっておられるわけでありますから党内の事情はよくおわかりであろうと思うわけでありますが、独禁法絡みでこの分野法が今国会で無理心中するようなことが断じてあってはならないと思うのですが、この点についての御所見をこの機会に承っておきたいと思います。
  149. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  さようなことは考えられないことでありまして、政府といたしましては、御提案申し上げました両案を党並びに国会の側におきましてぜひ一日も速やかに通過させていただきますように、改めてここにお願いを申し上げます。
  150. 大成正雄

    ○大成委員 この際、関連いたしまして大臣に承らせていただきたいわけでありますが、政府は過般二回にわたりまして公定歩合の引き下げを行いました。〇・五%の引き下げの効果は大してなかった。若干の普通預金の連動はありましたけれども、これは景気対策としてさしたる効果はない。そこで、去る十九日に一%の思い切った公定歩合の引き下げをされたわけであります。もちろん、このことは、当面公共事業の七三%の前倒しの問題と関連いたしまして、一にかかってこの不景気を短期間に浮揚したいという大臣のねらいもあったと思うのです。今日企業向けの貸出状態を見ますと、一年未満の短期貸し出しが八兆五千億、長期の貸し出しが三十六兆九千億、これは昨年末現在であると言われておるわけでありますが、この公定歩合の引き下げによって、けさの新聞ではプライムレート〇・八%といった発表がなされておるわけでありますけれども、通産行政を所管する大臣とされまして、この金利引き下げによって民間の設備投資にどの程度の刺激が与えられるものと期待しておられるのか、この点を承りたいと思うのであります。  同時に、また、この公定歩合の引き下げが単なる企業財務の改善あるいは体質の改善といったことだけになされるとか、あるいは分配の方に回って、ボーナスや賃金の方に回ってしまうということだけであってはならないと思うのでありまして、下請代金の支払い条件の改善とか、そういった面にもこのメリットは向けられなければならないと思うわけでありますが、この二つの点についてこの機会に大臣に承らせていただきたいと思います。
  151. 田中龍夫

    田中国務大臣 時間のないところで長く申し上げては申しわけありませんが、簡単に、できるだけ要を得て申し上げたいと存じます。  公定歩合の引き下げの問題、金利の問題、これだけで済まされる問題ではないのでありまして、問題は、景気の浮揚というものがあらゆる面におきまして総合性をもって行われなくてはならない。ことに最近は相当程度の資金の枠を流しましても、問題は中小企業等におきましては仕事がないということが最大の問題でございまして、先般の三機関の三兆六千億でありますとか無担保無保証の四千七百億というような枠を出しましても、枠だけもらってもどうにもならぬ、仕事をくれというようなことに相なっておるのでありまして、これに対しまして、予算の成立ができました直後、御案内のとおりに、公共投資等波及効果の多い対象のものにつきましては、年度の予算の半分を、上期の分を、上期に七三%の工事を発注しよう、それからまた、特に四—六で五〇%を出していこう、そのためにはやはり大蔵大臣が中心になって推進本部をつくって関係各省を動員して仕事を出していこう、それからまたこれと相関連して、御承知の官公需というものをぜひとも三四%の発注をし、さらに地方の分を合わせると五〇%の分を中小企業に食わしていこう、と、こういうふうな一連の対策とあわせての公定歩合の引き下げ、金利の引き下げでございます。  ところが、日本の企業体質というものは自己資本対借入金の比率が非常に多いのでありまして、そういうことから金利の重圧というものが非常にのしかかってきておる。こういう点では大蔵省も、拘束預金、つまり歩積み両建てといったような問題に対してもきめ細かく信用の少ない中小企業には配慮していこう、こういうものと両々相まって、この金利の引き下げというものは、大量の予算並びにその他の民間設備の繰り上げ発注というものもあわせて、必ずやここに景気回復に大きな貢献をするだろう、と、かように存じておる次第でございます。  整合性を得て、また総合的な意味において、そのグラウンドの上において預金金利の引き下げとさらに公定歩合の引き下げというものが大きな相乗効果をもたらすことを待望いたしておる次第でございます。
  152. 大成正雄

    ○大成委員 終わります。
  153. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 山崎拓君。
  154. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 いわゆる中小企業分野調整法の質疑を行うに当たりまして、最初に二、三基本的なことを伺っておきたいと思います。  御案内のとおり、中小企業は、事業者数におきまして九九%、従業員数におきまして七八%、生産額におきまして五二%を占めており、自由主義社会の中で国民に多くの機会と選択と可能性を与えまして、戦後の日本経済の発展の原動力となってまいりましたことは御案内のとおりでございます。同時に、地域と非常に密着した活動を行っておりまして、社会の安定に大きな役割りを果たすなど、社会的側面における貢献も非常に大きいわけでございますが、このような中小企業の役割りについては申すまでもないことだと思いますけれども、改めて政府はどのように認識されておられるか、また、その認識に基づいてどのような施策を講じておられるか、まず最初にお伺いしたいと思います。
  155. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘の中小企業がわが国経済に持っておりまする重要性というものは、仰せられるとおりに、むしろ中小企業対策こそが経済対策の最も大きな分野であると申してもよろしいのでございます。企業はみんな生命力を持った生き物と考えておりまするが、大企業のように十分な活力を持ったものに比べまして、非常に大きなウエートを占めながら中小企業は脆弱であるということから、政府としましてはこれにあらゆる協力をしなければならぬというふうに考えます。  すなわち、わが国の経済の基盤でありまする中小企業に対しまして経済的、社会的な不利を是正するとともに、中小企業者の自主的な努力を助成することによって、助け上げることによってその成長、発展を図っていくということが通産行政の根本の課題でございますが、そこで、本日閣議で発表いたしました中小企業白書というふうなものもその重要性を特に強調いたしまするとともに、いわゆる中小企業対策を総合的にわかりやすく国民大衆に訴え、同時に新しい展開の希望を持たせる、そういう意味におきまして今回の中小企業白書が本日閣議決定をした次第でございますが、どうぞそれらをごらんいただきまして、中小企業の対策につきましてなお一層の御協力をお願い申し上げます。
  156. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 この法案の趣旨説明を読んでおりますと、中小企業をめぐる諸情勢の変化にかんがみ、中小企業事業活動の機会を適正に確保するためこのような措置を講ずるものであるということになっておりますが、最近における中小企業をめぐる諸情勢の変化ということになりますと、それはもう申すまでもなく、ドルショックであるとか、石油ショックであるとか、そういったことを一つの大きな契機として経済が減速経済、安定成長経済へと大きく変化してきており、あるいは繊維産業の実例に見られますように、発展途上国の追い上げ等がございまして、いろいろな面において中小企業が非常に困難な状況に立ち至っておること、このようなことを指摘しておるものと存じますが、政府におかれましては、この諸情勢の変化ということについてどのように受けとめておられるのか、かつ、また、その情勢の変化に対応いたしましてどのように対処しようとしておられるのか、その点についてもう一度伺っておきます。
  157. 田中龍夫

    田中国務大臣 一口に申すならば構造変化という言葉でありましょうが、数年前の高度成長という時代のつくりましょう、使いましょう、捨てましょうといったような時代から、今日はOPECの石油ショック以来非常な客観的な苦境に立って、しかも今日ようやっと低成長から安定成長へ向かっていこうという構造的な一大変革に処しまして、当然起こってきますのは、かつてのたくさんいたしました設備投資中小企業に非常に重圧をかけておるので、この体質を何とかして改善しなければ中小企業自体が過去の過剰投資と莫大な金利負担に追い込まれてしまう、一同が総沈没してしまうというような状態でございます。そういう中に立って、中小企業がこの環境の変化の動向を速やかに的確に見きわめて、そして機動性、創造性を十分に発揮してこの構造変革に対応していくように指導してまいるのがわれわれ通産行政の本務でなければならぬ、こういうふうに考えております。  中小企業経営の安定と近代化、高度化というふうなことを、口先だけでなく、改めて本当に身をもって具体的に指導してまいらなければならぬということから、従来にも増した——今日お願い申し上げておりますような大企業中小企業との問題の処理、しかしそこには消費大衆というものを忘れてはならないという一本の筋がございますけれども、大企業中小企業の分野をどう一体調整していくかということも大きな問題でありますし、それから、そのほかいろいろなきめの細かい単行法を今回の国会にもお願いを申し上げているような次第でございます。
  158. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 ただいま大臣もお触れになった点でございますが、要するに、この法案は時代の要請に合致した新しいルールをつくるということであろうかと思うのです。福田総理も本会議におきます本案の質疑におきまして、わが党の中島議員の質問に対しまして、企業家の協調と連帯の精神を経済社会に浸透せしめたいというような答弁をなさったのを私は記憶いたしておりますが、要するに、そのようなことは、いままでの激しい弱肉強食的な競争のルールにかわって新しいルールをつくろうということであろうと思います。しかしながら、このような法案あるいは法案の理念というものがもし仮に自由競争を否定し、かつ、競争制限によって消費者の利益を損なうおそれがございましたら、中小企業の近代化がおくれ、業界ぐるみ衰退してしまうという懸念もあるわけでございまして、その点について政府としてはどのように対処しておるかということが重要なポイントではなかろうかと私は思考いたします。  そういう意味で、この法律中小企業の自助努力を行うための時間調整であるというようにも私は考えるわけでございますが、そのような点につきましていかがでございますか。
  159. 田中龍夫

    田中国務大臣 さて、そこで、ただいま御指摘になりましたように、大企業の圧力というものが従来中小企業が持っておりましたシェアに対して割り込んでくるという問題についての調整をするということ、これは特定のはっきりとした銘柄のものが規定されるのではなくて、社会のいろいろな変化に対応していろいろな分野に出てくるということから、業種を指定するということの困難さということは審議会でも十分に検討され尽くしたことでありますけれども、やはり、問題は、大企業中小企業という二つの対立した問題として見たくはないのでありまして、同じ業種の中の連帯もあれば協調もあり、それが両々相まって相ともに業界としての有終の美をなしていくということから考えれば、そこにはむしろこれを調整するのにきめの細かい中小企業対策を——しかもそれはこの法律でお願いいたしております調整官でありますとか、あるいはまた商工会議所の指導員といったようなものを中央におきましても地方におきましても十分に活用いたしまして、その両者の紛争を、大変苦しいことではありますけれども、円満裏に調整していくということが必要なのでありまして、そこにあるいは罰則あるいはどうこうというような事を荒ららげた姿でなく、できるだけ協調と連帯によってやる。同時にそれはお互いが助け合っていかなければならぬ同じ業種であるというようなことに社会的な背景があるわけでございます。  しかしながら、資本主義経済というものを放任しておきました場合には弱肉強食というようなことに相なる。そうなってはいけない。あくまでも競争の自由、取引の自由というようなことを前提に置きまして弱肉強食にならないようにする。そこに初めて市場を独占するようなことがないための独禁法もこの分野調整もともどもに必要性を認めるゆえんでもございます。
  160. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 大臣から話がございましたけれども、長官、ちょっと補足してお話しをいただいておかなければいかぬと思うのですが、ただいま私が指摘いたしましたことは第十条の「指導」というところで規定せられておるわけでございますが、主務大臣は、調整勧告するときは「中小企業調整審議会の意見を聴いて、」云々となっておりまして、「中小企業の競争力の強化及び一般消費者の利益の増進のために当該中小企業団体の構成員たる中小企業者が講ずべき設備の近代化、技術の向上、事業の共同化その他のその事業活動の改善のための方策を示して必要な指導を行うものとする。」と規定しておられます。これは非常に抽象的なことになるわけですけれども、中小企業がただ温室に入るということではなくて、中小企業自体がこのような試練に耐え得るような実力といいますか、競争力というものを常に身につけて鍛えていくということが必要なことであろうかと私は思うのでありまして、そういった意味でこのような規定は非常に重要な規定だというふうに私は認識をするわけでございますが、そういう点についての長官の御認識と今後の方策についてお述べいただきたいと思います。
  161. 岸田文武

    ○岸田政府委員 お話しにもございましたように、日本の中小企業日本経済のいわば基盤をなす分野でございまして、今日の日本経済が世界的にも注目をされております背景は、日本の中小企業が非常に営々として努力をしてきたということを抜きにしては考えられないのではないかと私は思っておるところでございます。私どもは、今後とも中小企業活力のある経営と安定した経営をねらいとして一層活躍していただけるように中小企業の方々の御努力も望みたいし、また、中小企業対策としても力を入れていきたいと思っておるところでございます。  この法律は、大企業が突如として進出することによって中小企業がばたばた倒れるということは国民経済的に見ても問題でございますし、ましてや社会的にも大きな問題であるということから、それを何とか調整しようという趣旨で用意した立法でございますが、この法律の適正な運用と並行いたしまして中小企業自身が強くなっていくというための施策も相伴っていくことが必要であろうということはまさに御指摘のとおりかと思っておるところでございます。  具体的な施策として思いつきますのは、まずは中小企業近代化促進法でございます。これによりまして指定業種として指定をし、それによって業界としての近代化を図り、また、特定業種として指定をして業界ぐるみの構造改善を図るということは、従来紛争事例の対象になりました業種につきましても幾つかすでに実行に移しておるところでございますし、私どもその跡を見ておりますと、非常に努力をし前進を図っておられるという事例がたくさんあることを心強く思っておるところでございます。そのほか、中小企業振興事業団を通ずる高度化事業などもこれからは大いに活用の道のある方策ではないかと思っております。  今後、この新しい調整法の実施に伴いましていろいろの問題が出てまいると思いますが、その問題に対応いたしまして、中小企業の方々がこの際われわれも前向きにやってみようということであるならば、従来の施策をフルに活用し、また、場合によってはそれの強化も図って応援してまいりたいと思っておるところでございます。
  162. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 今後中小企業対策の施策は非常に重要になってくると思いますので、私どもも大いにバックアップしたいと思うのでございますが、なお一層の政府の真剣なお取り組みを期待し、要望申し上げる次第であります。  次に、先ほど大臣がちょっとお触れになりましたのですが、私もばかの一つ覚えみたいにこの質問に立ちますたびに申しておることでございますけれども、独禁法改正とこの分野調整法が一緒に審議のテーブルに乗っておるということがどうも気になるわけであります。こういう競争を調整する法案と一方は競争を促進する法案でございますが、そういうことでこれは一体どう考えていったらいいのか。これは同じ政府が出しておる法案でありますけれども、やはり、今後の新しい経済環境の中で日本の経済に常に活力を与えていくためにはどうしたらいいかということをよほど真剣に考えるべき問題であると私は認識をいたしておるわけであります。  そこで、中小企業分野に大企業が進出している事例といたしまして、清涼飲料の業界から私どもも苦情を聞いておる問題があります。たとえばシャンメリーというものがありまして、これはシャンペンの一種だそうでありますが、森永乳業がこの分野に出てきております。それから山崎パンが清涼飲料水を始める、あるいは国分という会社がラムネのかん詰めを始めたというように、いろいろな具体的な例が出てまいっております。これは所管が農林省でございますので、やがてこれが具体的な問題として調整が行われるような場合には通産省にも協議があろうかと思うのでございますが、その一つといたしまして、麒麟麦酒がトマトジュースの業界に新規参入をするそうであります。それからまた、キリンレモンというのはずいぶん昔からあったそうで、もう五十年くらい前からあるそうでございまして、これは新規参入でも何でもないのでありますけれども、最近非常に販売促進が行われておる。同時に、どっちが刺激したのかわかりませんが、三ツ矢サイダーが、これは朝日麦酒がやっているそうでありますけれども、非常に販売促進の競争をやっている。こういうことで、中小企業がやっております清涼飲料水の販売高に非常に大きな影響が出てきているそうであります。  そこで、私は産政局のお考えを聞いてみたいと思うのでありますが、独占禁止法改正案によりますと、麒麟麦酒が独占状態の中の構造要件を満たしておるわけでございまして、要するにシェアが一社で五〇%を超しておるわけです。そういうことで、この数年独占禁止法改正議論せられましてから、ビールの生産量あるいはシェアが上がらないように自粛をしてきたということは事実だと思います。したがって、企業といたしましては、当然人件費の増高等もございますから、ただ生産量を抑えるということだけでは済みませんので、どうしてもビール以外の商品を拡販していくということに努力する。それはそういう企業努力をやらなければ企業自体が疲弊していくわけでありますから、そういう努力が行われるのは当然だということになると私は思うのですが、そこで、そういうことから派生的に出てくる問題として、たとえばちょうどこの中小企業分野調整法が問題にしている中小企業の分野に出てくるトマトジュースの問題でも、カゴメやデルモンテというのは非常に大きいそうでありますが、その他は非常に中小の業者がひしめいているそうでございまして、それに非常に影響を与えているということになっておるわけでございます。  そういうように具体的実例を考えていっても、分野調整法と独禁法改正とはどうも矛盾を来しておるというふうに思わざるを得ないわけでございますが、これは産政局審議官あたりに御意見を伺っておきたいと思います。
  163. 山口和男

    ○山口政府委員 少々むずかしい問題じゃないかと存じますが、申し上げますまでもなく、独占禁止法改正問題はわが国の経済の将来の方向づけに関連する非常に重要な問題でございますし、特に、私ども産業を所管いたします者の目から見まして、企業活力なり国際競争力を損なうというようなことのないように十分に配慮していく必要があるというような点等を含めまして、ただいままで衆知を尽くして検討が行われたものと理解いたしております。私どももそのような観点から意見を申し述べてきたわけでございますが、そういった点の総合判断の上に立ちまして最終的に政府案が決定されまして、ただいま国会の御審議をお願いしておる状況でございます。私どもは、この独禁法改正法案が自由経済に新しい活力を与え、国民経済の一層の発展に寄与していくということを期待しておる次第でございますが、独禁法の方は、いわば競争を促進するということによりまして国民経済の健全な発達に資していくという目的が基本にあるわけでございまして、そういう意味では、原則としてあらゆる事業活動分野に適用されていくという一般法的な性格を持っておるわけでございます。  しかし、特定のいろいろな問題が出てまいりました場合に、これが競争政策上ややいろいろ問題があるかという場合におきましても、やはりある範囲ではそういった競争制限と申しますか、そういったものをやる必要がある場合が出てくる。これは御高承のとおり、中小企業関係では団体法なり、あるいは商業関係でも商店街振興組合法等におきまして、共同行為をやる場合には独禁法の適用除外をしていくというような法律もすでにあるわけでございますが、ただいま御審議いただいております中小企業分野調整法もそういった趣旨からの一つの調整の法律ということになるのではないだろうかと存じます。  そういうことで、独禁法との一般的な法案の性格に対応していろいろと具体的な特別な問題が出たときには、この分野調整法で調整を図っていくという点でその間の整合性というものを保つような行き方を期待しておるわけでございます。
  164. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 もうすでに何度も議論された問題に入りますが、この分野調整法には小売が適用除外になっておるということでございます。しかしながら、スーパー等と従来からありました地域の小売商業との紛争がいろいろな地域におきまして絶えない状況でございます。かつまた条例の制定が相次いでいるということでございます。このことはもうすでに議論し尽くされたことでございますけれども、大規模小売店舗法が基準面積を設けておって、先ほどの答弁を聞いておりましたら附帯決議があるので努力をしておるということでございましたが、もしその努力が十分成果が上がっておれば条例を制定するというようなことにはつながらないはずでございます。したがいまして、この基準面積以下についてどうしても実効の上がる調整ができない。言葉が過ぎると思いますけれども、その面でざる法化していると思うのです。  したがいまして、大店法を改正しろという声は非常に強いわけでございますが、これについて簡潔で結構ですから産政局のお考えを述べてください。
  165. 山口和男

    ○山口政府委員 現在ございます大規模店舗法あるいは商調法による小売に関する規制をどういう形で検討していくかという問題につきましては、高度成長からただいまの安定成長に入っていく変化の環境の中で、これからの小売業界のあるべき姿あるいは小売商業をどういうように振興すべきかというような点を含めまして、総合的な検討の上に立って進めていく必要があろうかと思われます。申し上げますまでもなく、日本の小売業界につきましては、まだ、流通近代化の問題等いろいろな問題を含んでおります。そういった意味で総合的な検討を進めてまいるべきものかと考えております。
  166. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 私は、基準面積以下、三千平米か千五百平米かの問題については小売商業調整特別措置法で調整できる、これは今日まで十分運用されていないきらいがある——後ほどその面もお聞きしたいと思っておりますけれども、そういう御答弁があるのではなかろうかと思っておったわけでございますが、見解はいかがですか。
  167. 山口和男

    ○山口政府委員 御承知のとおり、大規模小売店舗法は、基準面積が特定市における三千平米、その他における一千五百平米以上の店舗に適用されるわけでございます。法律の方から申しますと、ただいまの先生の御指摘のとおり、昭和三十四年から施行されております小売商業調整特別措置法がございまして、この方ではいろいろな紛争が生じた場合におきまして都道府県知事があっせん、調停を行うことができることになっております。ただ、勧告の問題につきましては大規模小売店舗法に譲るというような規定になっております。そういった両方の法律を活用していろいろ問題の解決を図っていくことになろうかと思います。
  168. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 条例の中で非常に有名になっておりますのが熊本県の条例でございます。これは命令、罰則を加えたということが非常に問題になっておることもございますが、同時に、熊本県の条例には事前調整の規定がございます。大規模小売店舗を新設しようとする者は、その新設の四カ月前までに届け出なければならないという規定があるわけでございます。これは建物が建ちましてからでは事実上調整がきかないのだということであろうかと思うのですが、そういう面で大店法を改正する必要があるのではなかろうかと思います。  また、私はいろいろな中小企業団体の会合、とりわけ小売商業の会合に最近頻繁に出ますけれども、その際に、商調法の問題よりも大店法改正を要望する声が非常に強いわけです。それは、商調法に対する認識がまだ浅いということもございましょうが、やはり大店法自体に非常に問題があるということも言えると思うのです。  もう十分御承知と思いますけれども、この大店法の問題点として指摘されておりますのは、ただいま申し上げた事前調整の件、それから許可制に改めてもらいたいということ、地方自治体に権限を移譲してもらいたいということ、それから先ほども質問がありましたが総量規制の制度を設けてもらいたいということ、建築確認申請にかかる認可は商調協の結審後にしてもらいたいということ、閉店時刻、休業日数等は単なる届け出基準とせずに遵守事項にしてもらいたいということ等、そういう諸点が常に小売商の団体側からは提起せられておるわけでございます。これはもう時間がございませんから一々見解をお聞きしませんが、そういうことをすべて含めまして、大店法改正につきまして、すぐとは申しませんけれどもその必要がありと私は存じますが、産政局としてどういう考えか、承っておきます。
  169. 山口和男

    ○山口政府委員 ただいま御指摘のございましたところの、たとえば事前届け出の際の期間の問題等でございますが、御高承のとおり、大規模小売店舗法では第三条によって大規模店舗建設の届け出を行いますが、届け出の後に公示がございまして、その公示以後六カ月以内には営業の開始ができないという形になっております。これをさらに運用の面でできるだけ早い時期に事実上の調整を進めていくというような運営を私どもはやっておる次第でございます。  そのほか、ただいま御指摘のございました都道府県知事への委任の問題あるいは総量規制の問題、その他いろいろと要望事項が出ておることは私どもも十分承知いたしておりますが、ただ、先ほど申し上げましたように、小売商業の規制がいかにあるべきかという点につきまして、これからのあるべき姿あるいは振興策等を含めまして総合的な見地からこれに検討を加えてまいりたいというように考えている次第でございます。
  170. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 そこで、中小企業庁に商調法の関係で伺いたいのですが、この法律は最近だんだん有名になってきたのですけれども、死んだはずだよお富さんなんということを言われますが、この法律に基づきまして、大店法の基準面積以下の問題につきましても、いろいろ欠陥はございますが相当な調整ができるはずでございます。  それにもかかわらず、私が同僚の議員から聞きましたところでは、本法に基づきあっせん、調停が行われたのはわずかに二件、昭和三十四年でございますか、この法律ができましてからそれだけの件数にとどまるということでございます。ただ、本法を背景とした行政指導はこの五年ばかりの間に四十件ほどあるということも聞いておりますけれども、なぜこのようにこの商調法の運用が十分ではなかったのかということについて、過去の状況をお話いただきたいと思います。
  171. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この商調法の十五条から十八条までの規定の運用実績につきましては、いま山崎委員から御指摘のございましたとおりでございます。  なぜ運用実績が乏しいのかという点でございますが、ある意味では、これを背景にして数十件のあっせんが行われたということ自体は評価してよろしいと思いますが、もっともっと活用できる道具であると私どもは思っておるところでございます。  正直に申しますと、従来はこの法律の中に「流通秩序の適正を期するため必要」というようなことが要件として書かれておりまして、これを非常にかたく解釈いたしておった傾きがあったような感じがいたします。私どもは、この法律の立法の趣旨が中小小売商とその他の者との間の問題について有効な道具になっていこうということであるとすれば、従来のようにかたく考えずに、現実を踏まえて、問題があって解決を要するというときには積極的に使うという姿勢の転換を図ってみることがまず基本において必要なんじゃないか、また、それが有効なのではないかと思っておるところでございます。  また、実は府県にお任せしておりまして、私どももその運用について指導する面で不十分でございまして、この辺を反省いたしまして、先ほどちょっと答弁にも申し上げましたように、これらの関係条文の運用につきまして新しい通達を用意いたしたいと思っておるところでございます。たとえば取り上げる内容などにつきましても、建設前でも問題がキャッチできたらこの条文の適用を受けられるのだ、計画段階から受けられるのだというようなことについて、恐らく府県の方はまだ十分徹底していないと思いますので、こういった点についても通達の中に盛り込みまして、この法律がうまく動かせるようにしていきたいと思っておるところでございます。
  172. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 商調法を、その運用をいまから生きたものにしていきたいという長官の御意向であると受けとめましたが、そこで、そうなりますと、先ほど申し上げましたようにこの法律にはいろいろ問題点がございます。  たとえば分野調整法との整合性から指摘をいたしますと、この法律の十五条に定める「あっせん又は調停」の申し出者は分野調整法では中小企業の団体ということになっておりますが、ここでは団体でなくて個人の商店でもできるということの規定になっておると思うのでありますが、その点は改める必要がないのかということと、さらに、また、あっせんまたは調停を行うのは紛争が生じた場合でございまして、分野調整法に定められました事前調査の規定がございません。そういった点を改める必要があるのではないかということですが、御見解はいかがですか。
  173. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまのお話の中にたまたま出ておりましたように、この商調法の十五条から十八条の規定は、いま御提案申し上げておりますいわゆる分野調整法と比べますとかなり弾力的に使える道具になっておるわけでございます。その意味合いから、この分野調整法に入れずに処理しても十分調整の道を達成し得ると考えた次第でございます。特に、小売の問題は地域に密着した問題である、したがってやはり第一次的には都道府県の調整というようなやり方の方が問題を解決するときには有利であるという、そういうようなことから私どもはいま申し上げたような道を選んだということもあわせて御理解を賜りたいと思うわけでございます。  そこで、さらに一歩進みまして、新しくできます分野調整法と従来からございます商調法と条文をしさいに比較しますと、幾つかの点でやはり相違点があることは御指摘のとおりでございます。私どもは商調法の問題を基本的に考えてみますと、商調法の中には購買会の規定もございますし、市場の規定もございます。また、御指摘のようなあっせん、勧告、調停の問題もございます。政府としてこの商調法についてどう考えるかということになりますと、それらのいわば一つ一つの厄介な問題を抱えている問題につきまして総合的に頭の整理をし、また、対応策を用意するということが必要でございまして、一つの部分だけを取り出して改正云々と言うことは政府の立場からはなかなかむずかしい問題がありますので、この辺はあわせて御理解をいただきたいと思うわけでございます。  ただ、そうは申しましても、先ほど申しましたように、個々の字句の点につきまして、たとえば事前調査が欠けておるではないかとか、あるいは一時停止勧告が欠けておるではないかとか、これらの諸点につきましては、私どもは、当面、先ほどお話し申し上げました通達の中におきまして、都道府県の行政指導によってカバーできるものはカバーしてもらうような形で通達を書いていきたい、それによって事実上少しでも新しい法律との整合性が保てるような運用を実施していきたいと思っておるところでございます。もちろん、法律を全般的に見直しをするというようなときには、私どもとしては、そのような点についての法律的な整合性もあわせてとっていくことが必要であろう、また適当であろうと考えておるところでございます。
  174. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 法律的な整合性を十分考えなければいかぬということでございますが、そこで、ただいま二点ばかり指摘をいたしましたが、その他の点につきましても申し上げておきたいと思うのです。  勧告、公表の規定というものが分野調整法にはございます。ところが、この法律はもちろん勧告はございますが、公表の規定がございません。ただ、調停員による調停、あっせんの際に、あっせん案を調停員は「当事者の双方に示してその受諾を勧告するものとする。」とか、さらに、都道府県知事はこの勧告があった場合において、「必要があると認めるときは、その勧告に係る調停案を理由を附して公表することができる。」とか、こういうふうになっております。したがって、調停員によるあっせん、勧告、そして公表ということがございますが、知事の勧告あるいは主務大臣の勧告、それぞれ規定がございますけれども、これにつきましては公表という規定がございません。そういう点は中小企業分野調整法と整合性がないということが言えると思います。また、仮に分野調整法の審議が進みまして、各党間で命令、罰則規定が挿入せられるということになりますと、当然この商調法におきましてもそのような規定を設ける必要が出てまいるのではないかと思います。  さらに、逆に、この商調法の規定では都道府県知事に相当な権限があるわけでございますが、一方、大店法や分野調整法には都道府県知事に対する権限の移譲がないと言えます。そういう点の不整合な面もあろうかと思います。  以上のような点につきまして十分な御検討を煩わしたいと思いますし、場合によれば改正をぜひやってもらいたいと思うわけでありますが、その点について、長官、いかがですか。
  175. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど申し上げましたように、いま商調法というものがあって十分使われない点を補うために新しい通達を用意し、その活用について積極的に都道府県知事を煩わしていきたいと考えておるところでございます。特に、分野法ができます際に、それとの整合性を少しでも図れるようにできるだけのことはカバーする通達を用意いたしたいと思っておるところでございます。  ただ、そうは申しましても、法律的な整合性という面ではなお幾つかの問題が残っておることは御指摘のとおりでございますが、その点につきましては、私どもも小売商に関する各種の法制のあり方基本的に考え直す時期に来ておると思いますので、今後、そういった総合的な検討の中におきまして一つの問題点として勉強をし、また、必要な対応策を詰めてまいりたいと考えておるところでございます。
  176. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 さらにもう一点だけ伺っておきたいのですが、それは生協と農協の問題でございます。この商調法には購買会事業の員外利用の禁止規定がございますし、それぞれ農協や生協にはみずからを律する法律があるわけでございますが、そうは申しましても、生協や農協による員外販売のための紛争というものは頻発いたしております。私どももそのような種類の陳情、苦情をよくいただくわけでございますが、そういうことから、生協や農協の員外販売に対する規制をもっと効果的に実効が上がるようにやってもらいたいと思うのであります。  商調法十五条の三号に、「中小小売商以外の者の行う一般消費者に対する物品の販売事業に関し、」とありますが、この規定の中に生協や農協が含まれるということを明確な御答弁として聞きたいわけでございますが、いかがですか。
  177. 岸田文武

    ○岸田政府委員 各地で生協や農協をめぐっていろいろの紛争が起こっておりますことは私どもも十分耳にいたしております。生協、農協につきましては、御承知のとおり、員外利用についていろいろの規制を設けております。特に、生協法におきましては、員外利用を許可するに当たっての周辺の中小企業者への配慮規定というのが明確に設けられております。私どもはこういった規定が設けられております趣旨をよく理解し、関係各当局におきまして十分配慮をした御指導を賜りたいと思っておるところでございます。  それでもやはり現に問題が起こっておるといった場合に対応いたしまして、いまお話がございましたが、商調法の中には、中小企業者とその他の者との間の紛争についてあっせん、勧告、調停ができるという規定が用意をされております。その中小企業者以外の者という中には、もちろん、代表的な事例として大規模店舗も入りましょうし、あるいはいまお話がございました生協、農協等もその中に含まれると私どもは理解をいたしております。
  178. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 時間が切迫してまいりましたので、あと二点だけ具体的な分野調整の問題について伺っておきたいと思います。  まず、産政局に伺いますが、実は、書籍業界から相当数多くの陳情が出されておりますが、一つの陳情の文面を読ませていただきまして業界の言わんとするところを紹介したいと思うのですが、それによると、「他業界から書店業界への進出問題が新らたに発生しました。その結果業界に大きな混乱を起しているのであります。書店の競争条件は、立地条件と売場面積の大小が大きく左右する商売であり、大資本を背景に立地のよい場所に、しかも面積五〇—一〇〇坪以上で新規開店されるため、前記の通り中小書店には、売るべき商品が平常でもあまり配本されていない現況を、さらに窮地に追い込む実情にあるわけです。大型書店にはベストセラーが平積みされていながら、既存の中小書店には一冊も送られて来なくなったという流通上からも格差を生ぜしめ、進出による経営危殆に、さらに輪をかける現象をきたしている」というような文章になっております。具体的な経営上の影響、被害状況というものも資料を付して述べられておるわけでございますが、割愛いたします。  そこで、書籍業界がぜひ積極的に調整をしてもらいたいという彼らの論理の中に、書籍類は独禁法第二十四条の二の第四項で法定再販の指定になっておる、したがって、先ほどの陳情書にも書いてございましたように、価格競争というものが全くないのだ、競争条件は立地と売り場面積に限られる、そうなった場合には大企業の資本力に対して対抗力がないのだということでございまして、書籍雑誌類は情報教育社会に大きな貢献をし、影響を与える商品であり、それが中小書店の存在によって広く一般国民に普及されて今日の高度な文化国家を形成しておる、こういう過去の経緯にもかんがみ、ひとつ中小書店の救済のために調整の労をとってもらいたいということでございますが、これに対する政府の見解を聞いておきたいと思います。
  179. 山口和男

    ○山口政府委員 書籍販売業におきまして、大企業の分野に入る企業が進出していくということによりまして中小書籍店に対するいろいろな問題が出ておるというケースにつきましてはたびたび話を聞いております。ある例では、その地域の商調協と申しますか、商業活動調整協議会は、大店舗法の関連におきまして商調協での審議が活用されておるわけでございますが、そういった場でいろいろとあっせん、調停の労をとって当事者間の話し合いがうまく決まったというような例も伺っております。ということもございますが、いずれにいたしましても、大規模店舗法の適用が可能な場合、あるいは店舗面積によりまして小さいような場合には、商調法によりますあっせん、調停の活用というようなことによりまして最大限の努力を払って解決に向かって努力を進めたいと存じます。
  180. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 最後にもう一点具体的な例で伺っておきたいのですが、これは厚生省にお伺いいたします。  最近、理容業界におきまして低料金アウトサイダー進出にかかわる混乱の問題が発生しておりますことは御承知のとおりだと思いますが、これはもう具体的な実例は省きます。そこで、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律、いわゆる環衛法の第五十六条の二の「組合員以外の者に対する事業活動の改善の勧告」という規定をちょっと読ませていただきますと、「厚生大臣は、当該組合の地区内において、当該営業者で当該適正化規程の適用を受けないものの事業活動により、当該営業の健全な経営が阻害されている事態が存し、かつ、このような事態を放置しては適正な衛生措置確保又は当該営業経営の維持に支障を生ずると認めるときは、厚生省令の定めるところにより、当該組合員以外の者に対し、当該適正化規程の内容を参酌して、当該営業について、料金若しくは販売価格又は営業方法を改めるよう勧告することができる。」となっております。しかしながら、これは「第九条の規定による適正化規程が実施された場合において、当該組合の申出があったとき」でございますから、したがって第九条が問題になってくるわけでございますが、第九条には「適正化規程の設定及び認可」ということが定めてございます。  環衛法に基づきまして理容組合はこの適正化規程を設定いたしておりますが、これは何年か正確にわかりませんけれども、昭和三十年代の前半だと思います。そのときに定められました最低料金が百五十円か百六十円だそうでございます。したがいまして、それからずいぶん時代もたっておるわけでございますし、この適正化規程に基づいて五十六条の二あるいは五十七条というものを発動することは実際上はできないわけです。そういうことで、適正化規程を改めることが必要でございますが、中央におきましても環境衛生適正化審議会に諮られるということになっておりますがその後一度も開かれていないということを聞いております。  このような問題が発生いたしておる折から、この際審議会を開いて適正化規程を改めるよう指導されてはどうかと思うのですが、いかがでございますか。
  181. 河内莊治

    ○河内説明員 現に存在いたします料金等の制限に関する適正化規程は、御指摘のとおり昭和三十六年から三十七年ごろ設定されたものでございまして、その後改定が行われておりませんが、これは御指摘のように必ずしも業界の実情に即したものとは言えなくなっていることは事実でございます。しかしながら、理容美容業は国民の日常生活に密接したサービス業でございますし、とりわけその料金につきましては消費者は利害関係を有しております。  こういったようなことから、厚生省といたしましても、ただいまの料金等に関する適正化規程の改定につきましては、この改定が営業料金の引き上げを促すような結果をもたらすおそれがございますために従来から慎重な態度をとってきたものでございますが、今後厚生省といたしましても、この適正化規程の運用につきまして、環境衛生適正化審議会等の意見を踏まえまして実情に促するよう善処してまいりたいというふうに考えております。
  182. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 ただいま厚生省の見解を聞きましたが、これが営業料金の引き上げをもたらすおそれがあるというお話でございましたが、そのとおりではございますけれども、しかしながら、現在の物価のレベルから申しまして余りにもそぐわないものになっておりますことは申すまでもないことでございまして、実態に即した適正な料金に引き上げをされますように御要望申し上げまして、質問を終わります。
  183. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 武部文君。
  184. 武部文

    ○武部委員 私がこの分野法の法案の最初に質問をいたしたいことは、大企業の進出にかかわる経済対策の問題であります。  大企業中小企業の分野に進出してくる問題というものは、昭和四十八年石油ショック以後の不況期になってから特に頻発しておると理解できるのでありますが、経済が高度成長のときには経済規模全体が拡大しておるわけですから、そういう意味では大企業中小企業のシェアを食うというようなことはなくても共存共栄ができる時代であったと思うわけです。しかし、今日の状態は戦後最悪の不況状態を迎えておるわけでありますが、大企業経営の多角化という名のもとにいろいろな事業の機会を求めるという観点から、従来中小企業の分野であったところにも進出をし始めてきており、そこで大企業中小企業の相互の間に紛争が生じてくるということになっておると思うのでありますが、それは政府の経済政策あるいは経済運営のまずさがこういうトラブルを生んでおるのじゃないかと私は考えるわけであります。  そこで、まずお伺いいたしたいのは、今度中小企業の分野に対する大企業の進出ということが起きてきて、紛争は今後ますますふえるというふうに通産省は考えておられるかどうか、この辺が最初の質問であります。
  185. 田中龍夫

    田中国務大臣 大企業中小企業の問題は、御案内のとおりに石油ショック以来非常な不況となりまして、それ以前にどんどん伸びてまいりました高度成長経済が一転して今度は縮小してまいったのでありますが、そんな関係から、一つ企業内において食い合うと申しますか、力の強い大企業の方が中小企業の分野にいろいろと進出してくるという問題を起こしました。これはやはり一つ経済の波でありまして、弱者を守るという意味から通産行政としましてはあらゆる面で中小企業を助けていくということが行政の最も大きな問題となりました。  しかしながら、たとえばある段階におきまして、われわれ商工行政と言われる面におきましては、企業の系列化といったようなことで、大企業中小企業とが一つの縦の系列のもとにおのおの分担を持って業務を営むという製造工業あたりの指導をしたこともございます。でありますから、大企業中小企業というものは、当面、構造変革に際しましての今日の姿におきましては両方が相克対立いたすことになりますけれども、これがあくまでも協調と連帯のもとにお互いが共存することが一つのあるべき姿でもあります。当面はさような状態ではありませんけれども、ある段階におきましてはまたこれが両々唇歯輔車、助け合っての近代化、系列化というようなことになることもございましょう。  そういう点でいまの分野調整という問題が非常に激しい姿に取り上げられますけれども、やはり、整合性を持って日本経済の全体を考えました場合には、ここに時代に応じたいろいろ行政の対応がなければならないと私は考えております。
  186. 武部文

    ○武部委員 いまは大量生産に向かない業種にまで大企業が進出してくるという事態になっておることは御承知のとおりでありますが、これは大企業が追い詰められてそういうところに進出してきたのか、あるいは別な目的を持ってやっておるのか、いろいろな見方があると思うのですが、この分野法という法律が出てきた背景というものをお互いによく考えてみなければならぬと私は思うわけです。ということは、これは中小企業者の運動の中からこういう分野法という問題が起きてきた。つまり、これは上からの政策ではなくて、下からの積み上げがこういう形になってきたんだという点で、そういうものが一つの法制定の要求になって出てきたというところに大きな意味があると私は思うのです。いままでの政策というものは、中小企業基本法に見られるように上からの押しつけでやってくるという傾向があったが、それがそうではなくて、むしろ下から、中小企業の団体の中からこういう運動が盛り上がってきたというふうに見るところに大きな意味があると私は思うのであります。  現在、中小企業と大企業との間に未解決のままで、そして大きな紛争が起きておるが、そういう事例がもう数え切れないほどあるんだという状態ではないわけです。そうではないにかかわらず、中小企業の皆さんは、今後大企業がわれわれの分野に進出してくるだろうという危機感が出てきて、自分たちの経営基盤を侵されるかもしらぬというふうに考えてきた。ここにこの法律意味が非常にあるんだというふうに私は考えておるわけですが、そういうふうに中小企業に危機感を与えたということは、一体その背景は何だろうかということを考えてみるならば、現在の通産行政が中小企業に対して非常に冷たい、通産省の行政というものが大企業べったりだと言われるところにあるのじゃないかと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  187. 田中龍夫

    田中国務大臣 さようなことは絶対にございません。なぜかなれば、われわれの執務の大部分と申しますか、いまの中小企業対策、しかもいろいろの変化いたしまする様相に従いまして、あるいは下請代金の防止法とか、さらに不況業種の指定でありますとか、あるいは連鎖倒産に対しまする特別金融措置でありますとか、あるいは官公需におきまする中小企業の業務の確保とか、その他いろいろな政策をここのところ数カ月の間におきましても次から次にいろいろと努力をいたしておるのみならず、あるいは金融の面におきましては政府系三機関に対しまする三兆六千億の予算でありますとか、あるいは商工会の御要望の無担保無保証の問題についての四千七百億の枠組みでありますとか、予算にせよ、あるいはまた一般行政にせよ、ほとんど大部分の力を中小企業対策に全力投球いたしておりますのがただいまの通産行政の内容でございます。
  188. 武部文

    ○武部委員 先ほどの与党質問の答弁の中に、中小企業日本経済の根幹だという答弁がございましたが、私もそう思っています。日本の経済の根本は、基幹産業は農業と中小企業だと思っています。特に中小企業は、その事業所数において、あるいは従業員の数において、生産高において、すでにここで論議されたとおりです。しかし、現実に五十一年度、そして今度決まった五十二年度の予算の中小企業対策費をとってみても、その総額は金額においては確かにふえておるけれども、総体の予算の中に占める割合というものは〇・六%です。六%ではない、〇・六%です。去年もことしも同じことなんです。中小企業の予算というものは、いかに基幹産業だとかやあどうだこうだと言ったって、現実にそのようにしかなっていない。これも〇・六という数字は間違いない。  こういうふうに見てくると、この分野法が出てきた背景というものは、やはり、通産行政というものが大企業中心の政治をやっており、その中から、金力に物を言わせた大企業中小企業が押しまくられてしまう、そうなれば自分たちの存在は全く大変なことになるという危機感からこういう問題に対して非常に強い運動が起きてきた、そういうふうに私は理解をしておるわけです。ですから、あなたといまここで論争したってしようがないわけですが、この分野法というもののよって起こった原因というものをぜひ十分に考えていただいて、今後の通産行政の中において中小企業に対する対策を考えていただかなければ困るという点を申し上げたかったのでありますが、何か御見解があれば承りましょう。
  189. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど、中小企業日本経済の根幹であるという大臣のお話でございまして、私どももまさにそういう認識の上に立って中小企業対策を一生懸命やっておるところでございます。国際的に見ましても日本の中小企業というものは非常に注目をされております。日本経済の非常な発展の中で、いわば推進力としての役割りを中小企業がやっておるということについて各国が非常に注目をしておる状況でございますし、また、日本のとっております中小企業対策というものにつきましても各国がいま一生懸命勉強しておるという状況でございます。日本の中小企業というものは、これからのいろいろな変化の中でたくましく伸びていく素質を持っておるし、また、その素質を生かしていくようにすることが中小企業対策として大切なことだろうと私は思っておるところでございます。  ただ、素質は持っておりながら、個々の中小企業はやはり小そうございますし、また、力も一人一人をとってみれば弱うございます。そういう状況の中で大企業が突如として進出して中小企業がばたばた倒れるというようなことがあってはせっかくの素質を生かすことができなくなってしまう、これは日本経済にとっても非常に大きな問題であるということからこの法律を用意したという次第でございます。  中小企業対策費が限られておるということ、これはまさに数字の面では御指摘のとおりでございまして、私どもも少しでもこの予算をふやしていきたいということで毎年努力をいたしております。今年、中小企業対策費としては約一六%余りの伸びをいたしましたが、これは国債費であるとかあるいは公共事業等、特殊の今年の事情に基づく伸び率の非常に高い項目を除いて見ますと、一般の予算の伸びの中ではかなりウエートを置いた予算配分が行われたと思っておるところでございます。さらに、それに加えまして、一般会計には出ない財政投融資の面では中小企業対策費はかなり大きなウエートを占めております。しかし、決してそれで私どもは満足をしておるわけではございません。中小企業対策が本当に役に立って中小企業の方に喜ばれるような形に持っていくためにはもっともっと私どもも知恵をこらし、また、対策費の充実を図っていくということが必要でございます。  今後とも精いっぱいの努力をさせていただきたいと思っております。
  190. 武部文

    ○武部委員 私は、次に、この法案の中で、消費者との兼ね合いのことについてお伺いをいたしたいと思います。  本法律案について、消費者の利益との兼ね合いが問題になっておるわけですが、大臣の趣旨説明の中でも、「消費者利益の増進といった自由経済のメリットを可能な限り損なわないよう配慮しつつ、」というくだりがございました。また、第一条と第七条の目的及び調整の中身をそれぞれ見ましても、消費者の利益の増進とか、あるいは消費者の利益を不当に害するおそれのないようにとか、そういう言葉が出ておるのでありますが、消費者の利益とは一体どのように理解されておるのだろうか、私はまず最初にこれをお伺いしたい。
  191. 岸田文武

    ○岸田政府委員 消費者の素朴な願いといいますのは、やはり、自分の欲しい商品が手近に入って、しかもそれが安く供給されるということになるのではないかと思っております。  自由経済の体制の中で、一般的にはそれは競争を通じて実現をされる仕組みになっておるわけでございまして、その意味から、この法案を立案しました当初におきまして、消費者の方々からは、こういう法律をつくるとかえって競争を阻害し、結果としては消費者の利益を害することになるのではないかというような懸念が何度か出され、私どもも話を聞かされた次第でございます。しかしながら、他方で、中小企業の方々も消費者に対して日常生活をする商品を供給する立場にあるわけでございまして、それらの方々がしっかりして経営に当たっておられるということもまた同時に消費者の利益につながるわけでございます。したがいまして、大企業が出てきて中小企業の方々が倒れ、それによって日本経済にもいろいろのマイナスを生じ、社会的にも不安を起こすといった面のマイナスの要因と、他方で消費者の利益というものとどういう兼ね合いをとったらいいのかということがこの法律考えるときの一番のむずかしい点であり、また、ポイントになる点ではないかと思っておるところでざいます。  私どもは、中小企業の方々をお預かりしまして、緊急避難としての調整というものは経済的合理性を持っておるということを信じておりますが、しかし、それについてもある程度の調整の幅というものがやはり必要でございまして、無制限に調整をしたらいいというものではなく、同時に消費者の利益ということも絶えず頭に置きながらこの調整を進めていくという態度が必要なのではないかと思っているところでございます。
  192. 武部文

    ○武部委員 時代の進展に伴って消費者の価値観も変化するし、あるいは所得の変化に応じて需要構造が変化するということから、消費者の欲求に即応した商品あるいはサービスというものが提供されなければならぬ。いわゆる品種と品質の問題が消費者の利益につながる。これは言うまでもないことです。いまあなたがおっしゃったとおりです。  同時に、できるだけ安くという、この価格の問題があります。消費者の権利というのは、御承知のように、知る権利、選ぶ権利、安全の権利及び意思反映の権利などがありますが、その中で最もこれと関係するのは選ぶ権利だと私は思うのです。選ぶ権利というのは、競争があって初めて選ぶ権利がそこに生ずるのであって、競争がなければ選ぶ権利は消滅してしまう。ここが問題だと思うのです。  そういう意味で、消費者の利益とは一体何であるかということをお聞きしたかったのは、そういう選ぶ権利があり、選ぶためには競争がなければならぬのであって、その競争がもしこの法律によって阻害されるというようなことになるならば、消費者の利益はそこで侵されることになると、私はそのように思うのですが、いかがでしょうか。
  193. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私の理解いたしますところでも、消費者の各種の権利の中で選ぶ権利というものはやはり大きな意味を持っておるだろうと思っておるところでございます。  そこで、この法律ができたら選ぶ権利を阻害することになるのではないかという御懸念に対しましては私はこのように考えておるところでございますが、それは、選ぶ権利といいますのはやはり長い目で見て考える必要があるということでございます。当面大企業が出てまいりまして新しい商品が供給されようとしており、それによってたまたま中小企業が大きな打撃を受けることによりまして、それではいけないということで調整した場合、確かに当面一つの選ぶ権利がマイナスに働くことになろうかと思いますが、私は、一時的にそれを調整することによって、その間に中小企業の方々も新しい合理化を進め、新しい商品開発に努められて、長い意味での中小企業としての体制を整備され、そして中小企業からも選ぶ権利を満足させるような商品が供給されるようになるという姿が一番望ましいことではないかと思っておるところでございます。  往々にして大企業の方々が一つの分野へ進出して、その結果として、仮に中小企業の方が全部つぶれてしまったというようなときには、いわば単一の大企業の製品のみが市場を支配するという形になることもあり得るわけでございますが、それよりも、中小企業の方々がそれこそ小回りのきく、また機動性のある、また各中小企業の方々の創意工夫に基づく個性のある商品を長い目で供給できるようにするというようなことも選ぶ権利から見れば一つの評価すべきファクターになるのではないかと思いますが、この辺のところは実際問題としてはなかなか調和のむずかしい問題でございまして、運用上は一つ一つの問題に当たってみなければなりませんけれども、大企業の進出を調整したということが選ぶ権利を全部マイナスに働かせるようになるということでは必ずしもないと私どもは考えておるところでございます。
  194. 武部文

    ○武部委員 私もそういう考え方です。別にあなたと意見は違いません。ですから、大企業というものは法律で保護しなくとも結構やっていけるが、ところが中小企業というものは法律で保護しなければやっていけないというのが現在の姿だと思うのです。そういう意味では確かに法律で保護していかなければならぬわけで、大企業の進出を法律によって分野調整をして確保していかなければならぬということは私も賛成です。そういうことはやらなければならぬが、ただ、法律をつくっただけで中小企業が保護されておるから大丈夫だということであってはならぬというのが私の言い分なのであります。消費者にそっぽを向かれてしまったら中小企業は成り立たぬと思うのです。いかに法律で保護しておっても、消費者がそっぽを向いてしまえばどうにもならぬ。だから、近代化、合理化あるいは競争というものを常に念頭に置くようなあり方でないと、法律をつくっただけではこの問題は解決しないということを私は申し上げたいのであります。  大企業の分野は寡占であって、中小企業の分野は競争だと私は思いますね。だから、寡占に対しては独禁法でもって競争を促進させようというねらいが片一方にあり、片一方の中小企業の方は競争で、その競争を阻害しないように法律をつくっておくけれども、競争というものはやはり続けていかさなければならぬ。ここが寡占と競争の分野に対するところの、独禁法と分野法の二つの法律の内容がそれぞれ違った意味を持っているところだというふうに私は理解をいたします。当委員会でいろいろ聞いておりますと、この二つの問題が兼ね合って出てきたことについて、何か非常にふつり合いだという意見がございますけれども、私はそう思いません。大企業の現在の状態寡占状態、そこで寡占価格カルテルというものが起きてくる。それに対する歯どめは独禁法改正でやらなければならぬのです。同時に、中小企業の分野というものを確保して、そして調整をしていかなければならぬ。しかし、それは競争という原理を抑えてはならぬ。こういう意味で、それは法律の運用によってできると私は思うのです。そういう面で、いまのあなたのおっしゃったことについて私は異存はございませんが、そういう配慮をお互いがぜひしていかなければならぬのだということを申し上げたかったのであります。  大企業にはもちろん節度が求められる、しかし、大企業が進出することによってかえって競争が促進される、そしてよりよい商品がより安く手に入る、だからこの法律には反対だという意見が一部にあるように私は聞いています。しかし、大企業に節度を求めるなんということを期待する方がどだい無理だと私は思うのです。それは、現在までの大企業や商社がやってきた歴史がそれを明確に物語っておる。ですから、金融やあるいは市場に大企業が進出してきたという具体的な事実を考えたときに、節度を大企業に求めるからこの法律は必要ないんだというような意見には私は反対であります。そういう意味では、この分野法というものの制定によって大企業の進出をどうしても食いとめていかなければならぬ。その中で、さっき申し上げたような近代化や合理化や競争というものが自由濶達に行われるという仕組みをこの法律制定後にも通産省の指導としてやっていく必要があるんじゃないかということを私は申し上げたかったのであります。  そこで、具体的にお伺いいたしますが、これは先ほどちょっと長官の答弁にもございましたが、この法律制定された場合に消費者の利益に及ぼす影響はどういうものがあるだろうかという点が第一点で、第二点は、第七条に消費者の利益を不当に害するおそれ云々ということがございますが、いわゆる消費者保護条項とも言うべきこの二つの条文についてこれをどう生かすことができるだろうかということです。これは大変重要な課題ですが、長官、もう一遍ひとつ聞かせてください。
  195. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは、競争の利点というものをいかにしてうまく生かしていき、同時に競争がもたらすマイナスをいかにして少なくしていくかということがこの法律を運用するときの非常に大きなポイントになってくるのではないかと思っておるところでございます。確かに、新しい商品が供給され、そしてそれによって消費者が喜ぶであろうということは当然でございまして、それを促すために競争を促進すべきであるということも当然一面は言えるわけでございますが、同時に、それのもたらすマイナスの面と比較考量しながら適切な運営を図っていくということが必要でございます。私どもは、そういった意味合いで、この法律ができました暁は十分その辺のバランスをとりながら運営をしていきたいと思っておるところでございます。したがいまして、この法律ができたから消費者に著しい悪影響を及ぼすというようなことはないような形で持っていきたいと思っておるところでございます。  この法律の中には幾つかのところで消費者利益の配慮をうたってございます。たとえば第一条の目的の中にもございますし、また、第七条の「調整勧告」の中にもそのような規定がうたわれております。実際の運用といたしましては、審議会の委員の中に消費者代表の参加を求めるつもりでございますし、また、審議会が調整案づくりを行うに当たりましては一般消費者等の意見を聞かなければならないことになっております。また、第三番目に、主務大臣が中小企業団体を指導するに当たっても一般消費者の利益の増進を考慮することということになっております。  これらの条文を運用するに当たりまして、先ほど申し上げましたような長い目で見た消費者利益というような考え方消費者の方々へも理解を求め、そしてまた関係当事者にもそこのところを理解を求めた上で適正な調整が行われるように運営を図っていきたいと思っておるところでございます。
  196. 武部文

    ○武部委員 中小企業調整審議会の構成のことについていまお触れになりましたが、中小企業の代表の人は当然のことですが、その中にも消費者の代表を入れるというお話でございましたから、それはそれで結構です。この分野法に対して、消費者団体の中でも賛成、反対、慎重というようにいろいろ意見があったというふうに聞いておりますが、特に、この分野調整小委員会の中には二名の消費者団体の代表が入っておられるようですが、今後の調整審議会の意見というものは非常に重要な意味を持っておるわけですから、いま御説明があったことで了解をいたしますから、その点はよろしゅうございます。  そこで、もし調整審の答申内容が申し出人たる中小企業団体を納得させられない場合、調整審の答申の内容が一たん出て、その出た内容が申し出人であるところの中小企業団体の納得を得るようにならないというような場合、調整勧告の内容が変更されるということがあるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  197. 岸田文武

    ○岸田政府委員 分野調整問題といいますのは、いわば利害が相反する当事者の間において一つの答えを見出していかなければならないという大変むずかしい課題でございます。したがって、こういったときに主務大臣が勝手に答えを出し、それを押しつけるというようなことではなかなか両当事者の納得が得られない場合を考えまして、第三者機関としての審議会というものをこの法律の中で特別に用意をし、そしてその審議会を通じて大方の人の納得を得られるような答案づくりということをやっていきたいと思っておるところでございます。  法律をごらんいただきますとおわかりのとおり、審議会の運営に当たっては、委員はもとより中小企業団体等の紛争当事者その他関係者の議論を十分尽くした上で答えを出すという形になっておりますので、御懸念のようなことを生ずることはないのではないかと私どもは思っておるところでございます。
  198. 武部文

    ○武部委員 それならば、第五条の「調査」の中で申し出をすることができる中小企業団体の資格要件は「政令で定める要件」というふうになっておりますが、この資格要件の「要件」とは一体どういうことでしょうか。
  199. 岸田文武

    ○岸田政府委員 申し出の適格性を持つ団体としては、法律の中に、一つは同業者の団体であるということと、それから二つ目には中小企業者のウエートの高い団体であるということが書かれてございます。さらにそれに加えまして政令において要件を定めることになっておりますが、この政令の内容といたしましては、原則としては都道府県の区域を越える地域的な広がりを持っているものであることと、それから第二番目には、その地区における同業者の一定部分以上を構成員としているというようなことをその内容として定めたいと思っておるところでございます。
  200. 武部文

    ○武部委員 それならば、次に、第七条の「調整勧告」の内容は「事業の開始又は拡大の時期の繰下げ、当該事業の規模の縮小その他の当該事態の発生を回避するため」と書いてありますが、「その他の当該事態」というのは一体どういうことを想定しておるのか、これをお伺いしたい。
  201. 岸田文武

    ○岸田政府委員 過去に私どももいろいろの紛争の調停に当たってまいりましたが、事案の内容によりまして、勧告の内容といいますか、最後のおさめの内容はいろいろの形が現に行われておるところでございます。  その他の措置の具体的事例を思いつくままに申し上げますと、チェーン方式の採用によって既存の中小企業者を活用していこうというようなこと、これはたとえて申しますれば営業方法の変更でございます。それから、生産品目を調整しようというような形で調整案がまとめられた事例もございます。それから、中小企業に関する組合への加入ということで、今後話し合いをし、相談をしながらお互いに力を合わせていこうというような形でまとめられたケースもございます。それから、販売先について、こういうような方向での販売をということでおさめをいたしたケースがございます。  その他の措置の内容というとになりますと、いわば業種、業態によりますし、また、紛争の実態によりましてかなり多種多様なものが考え得るだろうと思っておるところでございます。
  202. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、今度は第十条の「指導」ですが、この「指導」という内容によりますと、調整勧告をするときは、主務大臣は、「中小企業者が講ずべき設備の近代化、技術の向上、事業の共同化その他のその事業活動の改善のための方策を示して必要な指導を行うものとする。」と書いてありますね。この指導の内容というのは、まさに中小企業政策の基本にかかわる問題だと私は思います。  特に、この条文の中にこれを設けたという理由は、現在の中小企業政策の不備を補うためにそういう項目を入れたのか、「必要な指導」とは一体どういうことなのか、その点はいかがでしょうか。
  203. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大企業の進出に伴いまして大企業の活動を調整するというような事態が生じましたときに、それだからといって、たとえば国際競争力などを考えてみますと、中小企業としても安心をしておるわけにはいきません。絶えず中小企業自身の近代化、合理化ということを心がけてまいることが必要でございます。また、そのことが先ほど御指摘のございましたところの長い目で見て消費者に喜ばれる中小企業づくりということにもつながってまいるかと思うわけでございます。  ここでこの条文を設けましたのは、いまの法制において不備があるからそれを補うというような趣旨ではなくて、現在ございます各種の法制をフルに使って、いま申し上げました中小企業努力を支援していこうという考え方でございます。事案、事案によりまして活用の道具がさまざまでございますが、それらの活用の道具をうまく組み合わせ、そして政府としても積極的な指導をし、また、中小企業の方々もこれを機会に一層の奮起をされるというような形になることが最も望ましいことであると思っておるところでございます。
  204. 武部文

    ○武部委員 第十条はそういう考え方であればわかりました。しかし、中小企業政策というものについては現実にいろいろと問題点があることは私が指摘したとおりでありますから、特に、必要な指導を行うという点については、従来からのような蛇足で中小企業政策というものをやらないで、新しい観点に立って中小企業に対する必要な指導を行うということでなければならぬと思うわけです。  別の側面から見ますと、今度は中小企業側の対応というものが考えられるわけです。もちろん、その中には、中小企業の体質の強化であるとか、あるいは協業化であるとか共同化であるとか、そういういろいろな点があると思うのですが、その中に事業転換をしなければならぬというような場面さえ想定しなければならぬと思うのですが、事業転換の能力のない業種だってあるが、そのときには中小企業に対してどのような方策を考えられるのだろうか。いまのように協業化とかあるいは共同化とかいろいろなことも考えられますが、事業転換も不可能だというようなことすら想定されるわけですが、その場合には通産省としてはどういう方策がありましょうか。
  205. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これから先の経済情勢考えてみますと、さまざまな変化をする要因がございます。たとえば国内的にも安定経済成長に移っていく、そして国際的に見ましても発展途上国の追い上げが進んでいく、さらにその間にありまして、公害規制等の新しい規制が次々に中小企業に対して新しい対応を迫ってくる。これらの環境の変化に対しまして、ある中小企業の方々は、自分自身の合理化を進めてこの波を乗り切っていこうとお考えになる方々もございましょう。それらの方々に対しては中小企業対策を挙げて応援をするつもりでございますが、一部の中小企業の方々におかれましては、従来の仕事にしがみついておるよりはむしろこの際新しい分野で自分の力をフルに発揮したいと考えられる向きもあろうかと思います。こういった後者の方々を支援するために昨年の暮れに事業転換促進法ができまして、金融上、税制上あるいは労務面で、さらには情報の提供等各般の面において応援をする体制ができたわけでございます。  そのどちらを選ぶかということは企業者自身の判断でありながら、しかし、企業者自身がこの際思い切ってやっていこうという前向きの意欲を示されたことについては、どちらの道を選ばれようと私どもは全面的に応援をしていきたいと思っておるところでございます。  さて、いまの問題と今回御提案申し上げております事業調整法との関係でございますが、この調整法は、基本的な発想といたしましては、むしろそういった衝撃を少しでもやわらげるための法律だと私どもは理解をいたしておるところでございます。極端にショックを受けて倒れるということのないようにするための方向でございまして、多少方向は違っておりますが、しかし、その衝撃をやわらげております期間に自分の方向を将来考えてみて転換しようという方々がもしあればそれは先ほどの制度に乗っていくわけでございますし、また、いまのままでひとつがんばっていこうということであれば、それなりの応援をするというふうな形で理解をすればいいのではないかと思います。
  206. 武部文

    ○武部委員 時間が余りございませんのであとは割愛いたしますが、特に、先ほどから申し上げるように、中小企業活力を弱めるのではないかというような反対意見や、あるいは競争が制限されるのじゃないかというようないろいろな意見が今日まであったことは皆さんも御承知のとおりです。ですから、活力もある中小企業あるいは競争のさらに存在する中小企業のために、この法律の運用上十分な措置をぜひしてもらいたいということを私は特に要望しておきたいのであります。  もう一点、これに関連して、現行の制度のうちで特に次の点をお伺いいたしたいのであります。  中小企業団体法の第三十条の二で「特殊契約」の制度が設けられていますが、この特殊契約の制度が設けられておるにかかわらず、今日まで一度も発動されたことがなく、そしてすべてが行政指導にとどまっておるが、それはどういう理由なのか、これをお聞きしたいのであります。
  207. 岸田文武

    ○岸田政府委員 特殊契約の制度は、基本法ができました翌年にスタートした制度でございますが、お話がございましたように活用の実績は乏しゅうございます。その理由は審議会でもいろいろ議論をされたところでございますが、基本的には、その当事者として商工組合というものに限定をいたしておりますが、商工組合は御承知のとおり設立の要件が非常に厳重でございまして、問題が起こったから簡単にすぐつくるというわけにもまいりません。また、特殊契約を締結いたします場合の議決についても厳しい要件が課せられておりまして、理念としてはいわば非常に高い理念をねらいながら、実際の運用に必ずしも適していなかったという点が反省をされるわけでございます。  特に、中小企業の方々は、手続でいろいろ時間をかけるよりはむしろとっさに何か手を打ってもらいたいというようなことが率直な希望である場合が多く、その意味からしまして、現実には主務官庁に問題を提起され、あるいは都道府県知事に問題を提起して、その場で解決への糸口をつかむというような形が多かったことも、これが必ずしも十分活用されなかった背景になるのではないかと思っておるところでございます。
  208. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、この問題については、いまあなたの方の御答弁がございましたけれども、この分野法が成立した暁にこの特殊契約制度というものはどういうふうに変わるのですか。その点はいかがでしょうか。
  209. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この特殊契約制度というのは、先ほど申しましたように商工組合としての特殊の権能を与えた条文でございまして、御提案申し上げております分野調整法とは多少次元を異にしておる面がございます。ある意味では、これはかなり理想を追ったやり方のような気もいたします。場合によってはそういう使い道も将来はあり得るのではないかという気もいたしまして、今回提案いたしました分野法が制定されたから直ちにこれを廃止するというのもいかがかという気がいたしております。ただ、従来の実績が乏しかったことは事実でございますし、なおしばらくこれの運営の状況を見た上でこの取り扱いを最終的に考えてみたいと思っておるところでございます。
  210. 武部文

    ○武部委員 公取委員長、わざわざおいでいただきましたが、この独禁政策との関係についてちょっとお伺いしたいと思います。  この独禁政策の点から言いますと、大企業の進出それ自体が独禁法違反ということにはならぬと思うのです。しかし、現実に進出してくるやり方、ダンピングあるいは地域的な差別価格で参入してくるというような場合には、その進出の方法かんによっては独禁法違反するというふうに考えられると思うのですが、いままでにそういう例があったかどうか、これをお聞きしたい。
  211. 澤田悌

    ○澤田政府委員 大企業が進出して独禁法違反で具体的に問題になり、審決に至ったというような例は従来ございません。スーパーあるいは大規模店で牛乳等の不当廉売というような問題はございましたが、特に審決に至ったという例はないのであります。これはそういう問題がいきなり独禁法違反の疑いとして取り上げられるよりは、まず当事者が主務官庁、中小企業庁等へ御相談に行かれて、行政指導で解決が図られるというようなことが普通の形であったためかと考えられます。
  212. 武部文

    ○武部委員 時間の関係で私は委員長一つお聞きしたいのですが、前回の委員会で聞いておりましたところが、この分野法というのは独禁法の次元を超えている問題だという発言がございました。これはどういう意味だろうかと思っていろいろ頭をひねってみたわけですが、よくわかりませんが、一体どういう意味でああいうことをおっしゃったのだろうか、ちょっとこれを聞かせていただきたい。
  213. 澤田悌

    ○澤田政府委員 委員会等で御質問がございまして、一、二度そういった意見を申し上げたことがございますが、御承知のように、分野調整法は独禁政策上も非常に重要な関連を持つのでありまして、独禁行政上も中小企業の保護あるいは弱者保護という観点では努力はいたしておりますけれども、独禁法のみではなかなか対処し切れない面があるという考えで申し上げたのでございます。  つまり、独禁法あるいは競争政策のたてまえから申しますと、大企業中小企業も一般消費者に対しまする関係から申せば商品を提供する事業者でございます。それで、規模の大小にかかわらず、公正な競争のもとでともに共存共栄して繁栄していくというのが理想でございますが、大企業が不公正な手段あるいは不当な方法等で中小企業分野に進出するというような場合は当然独禁法の条項に照らして対処されるわけでございますけれども、この分野調整の問題の経緯を見てまいりますと、必ずしも手段の当、不当というようなことでなしに、大企業中小企業の分野に進出すること、そのことが問題であるというふうな色彩がかなり濃いのでありまして、そのことを解決するのが大事だという問題になってまいっておるように思います。  そうなりますと、不公正な競争等を排除するという独禁法のたてまえからはちょっと次元が違うのではないか——これはいい悪いの問題を言っているのではございません。これは競争法のたてまえではなかなか解決しにくい、一つの統制法的立法で解決されるのもやむを得ない面が出てくる、ただその場合には消費者というものをよく考えて、大企業中小企業の調和のほかに消費者を加えた三者の調和を考えた立法なり運用なりが望ましいという、こういう趣旨で申したような次第でございますので、御理解を願いたいと存じます。
  214. 武部文

    ○武部委員 公取委員長が何を言わんとしておるかということがわかりました。あなたのこの発言の背景がよくわかりました。それで結構です。  これで終わりますが、中小企業庁長官に私は一言申し上げたいのであります。  先ほど商調法の質疑を聞いておりまして、協同組合の話が出ました。生協、農協の話ですが、協同組合法、いわゆる協同組合設立の目的というものをあなたはよく理解しておられぬのじゃないだろうかというふうに私はさっき聞いておって思ったのです。確かに若干の紛争はありますよ。しかし、農協と生協とは、その販売額なりあるいはシェアの中において、員外利用の内容においておのずから違いがあります。しかし、現実に生協の年間の総売上高は全国の総売上高の一%と二%の真ん中ぐらいですよ。スウェーデンは二五%ぐらい超していますね。そういう具体的な事実の上に立って、この生協というものがいまの市場に対して一体どういう影響力を持っておるか、このことについて……。  大小さまざまな生協があるわけです。確かに一番大きなものは、いつかも話が出たように灘生協かもしれません。しかし、あなた方のこの提案理由の中にあるように、そういうものは現実に当該の関係する法律によって規制することになっておるわけです。ですから、あなたがいまおっしゃったように、そういうものをこの商調法の中においての一つの紛争の理由にして、これからもし仮に規制しようという考えがあったならば、これは間違いだというふうに私は思うのですが、どうですか。一つだけ最後に聞いておきましょう。
  215. 岸田文武

    ○岸田政府委員 生協というものは、いわばロッチデールの原則に従って、組合員の相互扶助の考え方のもとに長い歴史を持っておりますことは私どもはよく知っております。ヨーロッパにおきまして生協の販売店がかなりのシェアを占めておる実情も私は承知をいたしておるところでございます。それに比べますと日本の生協は、販売量としては確かに全体の小売売上高の中の比重はまだまだ少ないということが言えるかもしれませんが、ただ、現実に私どもが小売行政をやっておりますと、各地で問題が起こっておるということも同時に事実でございます。非常に大きなお店ができ、そしてそれが一応員外利用が規制されているにかかわらず、周囲の小売商の方々の指摘では、それがかなりルーズに運用されておるというようなことから問題が起こっておるように思っておるわけでございます。  ただし、先ほど申し上げましたように、これにつきましては、生協法の中で法律的には員外許可に関する、特に中小企業への配慮規定まで用意をされておるという形でございますので、それが適正に運営されるということであれば問題が解決できるわけでございます。その意味におきまして、先ほど適切な運営ということを私どもの立場からもお願いをしたいという発言をいたした次第でございます。
  216. 武部文

    ○武部委員 お願いならばよくわかるのですよ。所管はこれは厚生省ですからね。生協は厚生省が所管ですね。ですから、あなたがいまここでおっしゃったことについて私はちょっと疑問を持つわけですが、ここでは時間がありませんから、私の質疑はこれで終わります。
  217. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 上坂昇君。
  218. 上坂昇

    ○上坂委員 分野法について質問を申し上げます。  分野法の目的があるわけですが、この法律は一体中小企業事業分野確保するというところに重点を置いているのか、あるいは調整というところに重点、主眼を置いているのか、その辺がどうも明確でないのですが、ここのところをひとつはっきりしてもらいたいと思うのです。
  219. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま御指摘の点につきましては、この法律の題名をごらんいただければ私どもの気持ちがお察しいただけるのではないかと思います。題名にもございますように、「中小企業事業活動の機会の確保のための」ということがうたってございます。これはいまさら申すまでもなく、中小企業基本法十九条におきまして「中小企業事業活動の機会の適正な確保」ということが書かれており、それを受けての法律であるという意味合いをこの題名の中にうたい込んでおるわけでございます。  それを基本的な目的としながら、具体的な手段としては大企業事業活動を調整する措置を講ずるのだということで、大変長い名前でございますけれども気持ちを率直にあらわした題名であるというふうに私どもは考えておるところでございます。
  220. 上坂昇

    ○上坂委員 これは中小企業の分野を確保するというふうに言われておったわけですが、いまの中小企業は大別して大体四つに分けることができるのではないかと私は思うのです。一つは、大企業と競争している分野にある中小企業があると思うのです。もう一つは、特に専属に中小企業が占めている業種におけるところの一つの分野があると思うのです。もう一つは、特殊な産業、特産物をつくっているいわゆる地場産業と申しますか、その分野がある。それからもう一つは、大企業の下で大企業を補完するためにいろいろ仕事をしている下請企業がある。大別して大体この四つくらいになっているのじゃないかと思うのであります。  その中で、減速経済下に入ってきまして、大企業はいままでの高度成長下におけるところの利潤追求がなかなかできにくくなっているという点で、別な面のところへ目を向け始めている。そういうところで、一つは、いままでの大企業中小企業の分野が競合関係、競争関係にある分野では市場をだんだん拡大してしまって、業種をどんどん広げていって、大企業の市場占拠率をうんと広げてシェアを大きくしていく、そういうことで中小企業を追い詰めていくという一つのやり方があると思うのです。これは非常に強いと思うのです。それから、もう一つはいま問題になっている中小企業の専属の分野に対して進出をしていく。この二つがやはり非常に問題になってきて、そこでこの法改正というものが出てきているのだと思うのです。  ある統計によりますと、いわゆる新しい分野で大企業中小企業の分野に進出しているのは実は四一%もあるというふうに言われておりまして、一企業当たり大体二件ずつ占めているということも言われているわけです。そのくらい実際に進出が強いわけです。したがって、これは本当のことを言うと調整などではとてもおさまりのつかないような条件というものが出てきているから、そこで私たちは分野を確保してもらわなければいけない、どうしても確保させなければいけないということで、調整ではなくて業種指定をやって、そこで確実に分野を確保しろというわけで、こういう法律を対案としてずっと前から実際に出してきたわけです。  そういうことを踏まえて今度の法案を私はながめてみた場合に、いま提案されている法律案状態の中では、長官がどんなふうに言われようとも、何となく調整して紛争を調停するというところに重点が置かれているような感じがどうしてもしてならないわけですが、そこのところを本当にふっ切って、完全にこれは中小企業の分野を確保するのだというかたい決意のもとにおいてこの法律制定し、この法律の運用に当たってもらいたいと私は思うわけでありますが、この辺について今度は大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  221. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、一口に中小企業と申しましても、四種類、五種類と、考え方によってはいろいろ分かれるわけであります。一例を申すならば、大企業ではやれない一つの特殊な伝統工業とか手工業とかいうような分野もございましょうし、あるいはまた従来の系列企業として組み合わさったセットの中小企業もございましょうし、こういう点はたとえば下請の問題やら、何やかやといろいろと紛争が起きておるような状態であります。あるいはまた御案内のとおりに、後発途上国と言いますか、後進国方面から突き上げられてまいって非常に苦しい状態になっておる中小企業もございましょう。  そういうふうに幾つか分かれるというお話はまことにそのとおりでございまして、そのおのおのに対しましていろいろな対策を講じなければならないと、かように存じておる次第でございます。
  222. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで、第三条に関連して質問したいわけですが、「大企業者の責務」ということがありますが、これはいわゆる節度を保ってやらなければいけないということになると思うのです。中小企業の分野を、とにかく利益を不当に侵害することのないように節度を持って対処していくという形になると思うのですが、いままでの大企業中小企業の分野に進出してくる場合、そういう企業のモラルなり節度というものが一体あるのかどうか、そういうところに私は非常に疑問を持つのです。やはり、最大限の利潤を求めることを基本にして、とりあえずもうかるところへは進出していかなければだめだ、それから減速下において非常に利益が少なくなってきた面は別なところへの進出によってカバーしていくのだという形で、中小企業が気の毒だからその分野に対しては手心を加えようとかなんとかいうようなことは一切ないのだろうと私は思っているわけです。  したがって、たとえばその中には、非常に技術革新をやってりっぱな製品をつくり、あるいは安い製品をつくって、先ほど武部さんからも話がありましたように、消費者の利益を守るという立場中小企業のところへ進出してくるとか、そういう消費者を守るというモラル、節度というものはむしろないと私は思うのです。もうやみくもに、とにかくもうかるところへは進出するというかっこうではないかと考えるわけでありますが、大企業の進出について、基本的にどういう形での進出なんだとお考えになっておられるか、大臣にお聞きしたいと思うのです。
  223. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほど申し上げたように大企業それ自体が、ことにこういう低成長になってまいった場合におきましては、高度成長時代の拡張に拡張を重ねた景気のいい時代から今度は転換をしなければならぬということになりまして、特に激しいさま変わりがありますこともよく理解できる次第でございます。  しかし、そういう場合におきましても、われわれはむしろこの中小企業の方々を一体どうやって守っていくかということをただ単に思うだけではだめでありまして、それを機構的にも制度的にも筋を立てていかなければならぬというのが今日の現状であろうと、私はかように存じております。
  224. 上坂昇

    ○上坂委員 いま私が言ったところの企業の進出ということを、長官は基本的にどういうふうにお考えになりますか。
  225. 岸田文武

    ○岸田政府委員 確かに、こういう世知辛い世の中になってまいりますと、大企業としては何かもうけ口はないかということで新しい仕事を探して、それが結果として中小企業との衝突に至るという事例は私どももたくさんの経験を持っておるわけでございます。本来であれば大企業に当然その辺のところも配慮してやってもらうべきであるし、それが本当に行われているならばこういう法律はなくても問題が解決し得えたはずであるにかかわらず、現実にこういう法律が必要になってきておるという事態が今日の状況ではないかと思っております。大企業にとりましては新しい分野の進出ということで軽く考えておりましても、受ける側の中小企業にとりましては死活にかかわる重大問題であるという場合、これはやはり大企業においても十分考えてもらわなければならない。特にこれからはこれは考えてもらう必要のある問題ではないかと思っておるところでございます。  大企業の自制ということにつきまして今回新しく条文ができまして、大企業の責務ということがこの法律の中にうたわれ、そしてその条文が国会の御審議を経て一つ法律になるということは、私どもはやはり一つの画期的なことになるのではないかと思っておるところでございます。
  226. 上坂昇

    ○上坂委員 構造改善であるとか、あるいは近代化であるとか、あるいは技術革新とかあるいは知識集約型産業とか、こういうようなかっこうで施策がだんだん進められて、特に中小企業の分野ではそういうものに非常に熱心で、十分大企業と対抗できるものを持っているという分野ももちろんありますし、そういう企業がもちろんあるわけでありますが、しかし、総体的に言ってやはりまだまだいろいろな面でおくれている。そういうところへ進出する場合、進出する大企業が実はそういう技術革新を主体にして、そしていい製品、安い製品を消費者に提供するという考え方の上に立って進出しているものではないというふうに私は言ったわけでありますが、その辺のところの私の考え方について、それはそうではないんだ、大企業のいままでの進出というのはモラルをもってやっているんだというふうにお考えになっているのかどうか。いまのお答えではどうも私にはわからない。もう一回はっきり答えていただきたいと思うのですが、長官、どうですか。
  227. 岸田文武

    ○岸田政府委員 実は、私どもも、先般、大企業が新しい分野へ進出するときにどういう動機をもってやるのかということについてのアンケート調査をいたしたことがございますが、それを見ておりますと、やはり一番多いのは、経営の多角化を図って経営を維持し発展させようというような動機が一番多いようでございます。それに続きまして、いま先生が御指摘になりましたけれども、新しい商品を提供して消費者に喜んでもらいたいというような理由を挙げておるものもございます。恐らくこれは一般論としてはなかなか言えない問題でございまして、個々の企業の伝統なり社風なり、あるいは担当者の物の考え方なりというようなことに左右される面が多いのではないかと思っておるところでございます。しかし、それをあえて一口に言えとおっしゃいますれば、従来のやり方は必ずしも中小企業立場を全部よく配慮した進出が行われてきたとは言いがたい面が多々あるように感じられるわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着     席〕  しかし、これからは、一つの部門へ進出するときに、一体その業界では中小企業がどういうふうに活動をしておるのか、そして進出したことによってどういう影響をもたらすであろうかということを、進出計画をつくるときからも一つの配慮要因として考えていただくということが必要であろう、また、そういうことを「大企業者の責務」という条文を特に設けたことによって期待しているのだというように私どもは考えておるところでございます。
  228. 上坂昇

    ○上坂委員 大体においてやはり多角経営で結局営業状況をよくしていくということになっていた。ですから、アンケートでいろいろなことがあったにしても、少しぐらいいい商品を提供するぐらいのことを言わないと進出の理由にならないからそういうことを言っているのだろうと思うのですが、そこで今度は私は具体的な問題を一つとりながら考えてみたいというふうに思うのです。  前に取り上げましたキュープリントの問題があります。御承知のように、昭和四十九年ですか、大日本印刷が京橋にキュープリントを設立しまして、それでフランチャイズ式で全国に五百店のフランチャイジーを募ったわけでありますが、そのときにわれわれが間に入って、通産省にあっせんを願って、構造改善をやっているところでそれに応ずるという体制があるならば、その場合は容認することがあるかもしれないというような条件をつけながら二店にとどめた。その後帯広にもう一店開店があって、そしてまた千葉の方にも開店するというような状況になってきたということは御承知のとおりであります。こういう状況でありますが、これはいま一体どういうふうになっているのか。いまの状況では二店でとどめるということになっておりますが、必ずしもとどまることができないということがあるのじゃないかと私は思います。  そのほかにもいま非常に大きく進出してきている企業も実際にあるわけでありまして、非常に困っておるわけです。最近はダスキンがインスティー・プリントという東京の印刷会社と提携して、そしていまキュープリント式の会社をつくって軽印刷の業界に進出をしてきているという状況であります。こういうものを阻んでいかなくちゃならないわけでありますが、これは三月が来ておりまして、もう二店でなくてもいいというようなことで——あのときの調停の条件というのはことしの三月に外れることになっちゃったわけです。  これについては具体的にどういうふうにされるおつもりなんですか、その点をお伺いいたします。
  229. 岸田文武

    ○岸田政府委員 きょう生活産業局の者が参っておりませんので、必ずしも正確でない面がございましたならば後刻訂正をさせていただきますが、まず、キュープリントの問題につきましては、直営店二店ということで一応の了解ができた後、帯広店で若干のトラブルがあったという経緯は私どもも聞いております。  直営店の解釈あるいはフランチャイジーの解釈をめぐってトラブルがあったというふうに聞いておりますが、それもまあ一応おさまりまして、いまのところキュープリントに関連しまして特に新しい問題があるようには私どもは聞いておらないところでございます。  その間私どもも町で見ておりますと、軽印刷の分野でお互いに力を合わせて軽印刷分野の確保を図ろうということで、中小企業の方々自身がいろいろの組織化の努力を続けておられるように思っております。  私どもはそういった面での努力につきましてはできるだけの応援をしていきたいし、また、相談にも乗ってまいりたいと思っておるところでございます。さらに、ほかの大資本が出てくるというようなことになりますと、せっかく一応の解決を見た問題についてまた新しい波紋を巻き起こすことになるかと思いますので、私ども実情はまだよく知りませんけれども、もし情報がおありであれば教えていただきたいし、少し実情の調査をいたしたいと思っておるところでございます。  それから、三月で期限切れになる問題については、恐らく生活産業局の方でいろいろな対応策を考えておるのだろうと思いますが、その結論について、あるいは検討の方向について私はまだ耳にいたしておりませんので、これは後刻別途御報告させていただきたいと思います。
  230. 上坂昇

    ○上坂委員 軽印刷の部面についてはなお十分に監視をして、よく実情を調査してもらいたいと思います。  その次に、葬祭業ですが、これはこの前私が取り上げた問題ですが、三越で葬祭業をやるという問題で、これは一店で落ちついているわけです。前には松屋で葬祭業を始めたということで、いまのところ二つに落ちついているわけでありますが、葬祭業を見ますと、これはいわゆる大資本を背景にして、技術革新をやって何とかするというような性質のものじゃないわけですね。それから、需要がこれからうんと拡大していくなんということになるのも葬祭業の場合はおかしな話なんですね。これはたくさん死ねばいいということになってしまいますからおかしくなるわけです。  そこで、葬祭業の場合には、これは地方に任せていくということが必要だと思うのです。ただ、葬祭業の人たちは、地方に行くと特に花輪屋さんというふうに言われておって、最近は政治活動の規制で花輪は余り出せなくなったものだから非常に収入が減って困っているという問題も事実あるわけですね。したがって、葬祭業の中に大企業がどんどん進出したらまた大変なことになってしまう。  そこで、大企業の進出というものは、要するにどんなところでもいいので、いわゆる大企業の持っているネームバリューとか、販売経路であるとか、そういうものを通じて広げていくということが一番先に言ったように基本になっていると私は思うのですね。そういう意味で、こういう進出を許してはいけない、それは禁止をしていかなければだめなんだ、進出してきてから何とかしようと思ったってなかなかできないんだ、そういう性格のものが大企業の中にはあるんだ、ここのところでいわゆる事業指定をやってそれを禁止しろ、こういうふうに私たちは言っているわけですね。ところが政府の方では、それはできないんだというふうに言っているわけです。しかし、進出の実態から見て、どうしてもこれを禁止するというような方向にしていかないと目的であるところの中小企業の分野を守るということにはならないというふうに私は思うのですよ。  そこのところがどうも少し違うようでありますが、葬祭業がこれからまた広がるようなことがあったらやめさせるという形の中で方針を進められていくのかどうか、そこのところも含めてもう一度答弁をいただきたい。
  231. 岸田文武

    ○岸田政府委員 葬祭業の問題に入ります前に一般論として少しお話を申し上げておいた方がいいと思いますが、これから中小企業がむずかしい経済情勢の中で生きていくためには、個々の中小企業の力だけではおのずから限界がございまして、やはり、それを組織化して、みんなで力を合わせて伸びていこうということが必要であろうと私は思っておるところでございます。そういった場合に、局面によっては大企業技術を提供し、あるいはノーハウを提供し、あるいは場合によっては資本的な応援もするというようなことが必要であるという場合もあり得るのではないかと思っておるところでございます。現に、小売商の近代化を進めるためにボランタリーチェーン運動を一生懸命進めておりますが、また、これこそがこれからの小売商の一つの大きな生き方になるであろうと思って支援をしておりますが、その中でも小売商の方々が相互に協同組合をつくる場合もありますし、別途卸売商の方々がまさにそういった意味での知恵なり力なりを提供して応援をするという形もやはり必要な形態なのではないかと思っておるところでございます。ただ、これは一般論として申し上げたわけでございまして、個々の業種に即して見ますと、それ自体がまた問題であるということがあり得ることは十分承知をいたしております。  葬祭業の場合でございますけれども、三越のケースについては一応一件の落着を見たところでございますが、なおそういうようなことが今後起こらないように——このことはあれだけ新聞でもいろいろ取り上げられまして、百貨店等も問題の深刻さというものは十分頭に入っておるはずでございますので、そう軽々にまた進出を企てるというようなことは余りないと思いますが、もし起こりました場合にはまた必要な調整を当然やってまいりたいと思っておるところでございます。  それから、いまの問題に関連いたしまして、いろいろ考えてみたけれども業種指定が一番的確な答えになるのではないかという点につきましては、私どもも当初そういうことが可能であるかどうかということについていろいろ議論もいたしました経過があるだけに、一つの御意見ではあると思います。ただ、正直に申しまして、そういうような形でやりますと、営業の自由と申しますか、競争制限との関係一つの問題になります。それに加えて、この委員会で数次申し上げておりますように、技術的に一体どの業種を指定すべきかということが一番の問題でございまして、むしろ実務的な面からの制約ということが一番大きなファクターになりまして、業種指定というものはとるべきではないし、また、とれない問題ではないかという答えに達したわけでございます。  ただ、そうは申しましても、既成事実をつくらないようにするというお気持ちは私どもも同感でございまして、そういった意味合いから特に事前調査の条文を設けまして問題を早くキャッチする体制をつくりましたし、また、中小企業分野問題の調整官の配置を特に今年度は増員もいたしましたし、また、モニターの活用というようなことによりまして少しでも問題を早くキャッチし、早く解決をするための努力を精いっぱいやってまいりたいと思います。
  232. 上坂昇

    ○上坂委員 業種指定は実務的に非常にむずかしいということで、この法律にするしかないというお答えでありますが、いまの葬祭業は小売サービス業の範疇に入るのじゃないかというふうに思いますが、こういうところへどんどん進出しているということについては、先ほど書店の問題が出てきたとおりです。  書店については、過日郡山で西友が床を広げるということに機会をとらえて進出を図って、ある点であれはおさまっているわけでありますが、あの協定の内容を見ますと、最初二百坪にするというのです。二百坪というのは郡山の書店二十六店が全部集まった面積と同じなんですね。それで六百坪なんですが、そのうちの三分の一を占めるわけですね。そこで二百坪では困るという問題が起きて調停に入ったのですが、実を言うと百二十七坪プラスアルファという数字になっているわけです。そうするとこれは百三十坪ぐらいの面積になるわけですが、これは大変な売り場面積になる。おさまったにしても書店は非常に困っているわけです。ですから小売業から除くんだと言っているけれども、現実小売業のところへ入ってきているということをどうしても防ぐことができない。そこで、私たちは、小売業を入れるということと業種指定をやるということについてはぜひともこれをやってもらわなければならないという立場で質問をしているわけであります。  次に、いまの問題で紙の問題がありますね。紙器、ダンボールの部面に本州製紙が入ってきている。原料を提供するメーカーが実際にはそういう中小企業の持っている部面にまで実は入ってきておるという問題がある。また、御承知のようにもやしの業界にもユニチカが出てくる。あるいはかまぼこ業界には日本水産が出てくる。いろいろと枚挙にいとまがない状況が出てきているわけであります。したがって、調整はするのだとかあるいは事前に調査をするのだと言っても、ある程度の一定の基準を設けなければこれはとても防ぎ切れるものじゃないと思うわけです。  そこで、この法律がこのまま制定されるとすれば、そういう点で事前調査なり何なりをやる場合に、それの調査をする場合の基準、あるいはその基準に該当させる場合には禁止をするとかなんとかいうきちんとした規則なり何なりをやはり決めておかなければならないのじゃないかという感じもするわけなんですが、その辺についてはどんなふうにお考えですか。
  233. 岸田文武

    ○岸田政府委員 もしそういうような基準があって、この分野こそ大企業が出てきそうだし、また、出てきたら大変なことになるということがはっきり言えるのであればむしろ業種指定も可能なわけでございますが、先ほど来申しておりますように、過去の経験を見ておりますと本当に思いもかけない分野で問題が起こるわけでございます。私ども、葬祭業が問題になりましたときには、本当にああこういう分野もあったのかという感に打たれた経験がございますし、もやしなどというようなケースが問題になろうとは、事前にいろいろケースを想定してもなかなか思いつかなかったのではないかと思うわけでございます。その意味におきまして、業種指定をするとかあるいは特定のところにおける事前調査を義務づけるとかいうようなことは、やはり実際問題としてはむずかしゅうございます。したがって、これからどういう問題が出てくるかわかりませんけれども、しかし、出てくるたびに機動的に対応できるようにするという心構えと、また、それができるようなこちらの体制づくりということに特に力を入れていくことによって問題を少しでも早く円満に解決するように努力する、これは精いっぱいの努力をすることによって問題解決を図っていくようにいたしたい、こういう気持ちでございます。
  234. 上坂昇

    ○上坂委員 どうもなかなか根本的に解決を図っていくという形が出てこないような気がするので非常に心配になるわけであります。せめてこの法律の中でそういうふうな形にするとすれば、これは調停をしたりあるいは勧告をしたりするようなことでは、いま長官がおっしゃったような解決の万全を期するとか、万全まで期せなくても解決になるという形がどうしても出てこないというふうに思うのです。  そこで、勧告をして勧告に従わなかったら公表するとか、それでもだめならばこれは進出しちゃいけないぞと命令をするとか、そして命令に従わなかったら罰則に当てはめるとか、本当にここまでいかないといま言ったような大企業の進出をとめるという形にはならないのじゃないかと思うのです。だから、どうしてもこの法律にこだわって私たちが言う業種指定なりあるいは進出を禁止するというような形ができないということであるならば、せめてもっとこれを充実させるようなところへ進めていくということがやはり必要ではないか。それは実態的にもたくさん例があるわけでありますから、ここに私はこれだけ資料を持っているわけですね。これを全部言っていたのでは二時間も三時間もかかちゃうからやらないわけでありますが、したがって、今度のあれでいま言ったような命令、罰則というところまでどうしてもやる必要があるというふうに私は思うのですが、その点はいかがですか。
  235. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは、この調整のルールをどうするかということにつきまして従来から審議に審議を重ねてまいりました上で、いまの段階においては勧告、公表でやるのが一番機動的、弾力的にやれる道であるし、また、従来の実績からしまして、公表等の手段がつけば相当の実効を上げ得るという考え方のもとに御提案を申し上げた次第でございます。  ただ、この商工委員会の御議論を通じまして命令、罰則をぜひつけろという御要望がかなり多く聞かれておるわけでございますが、これは大臣からも御答弁申し上げましたように、政府としては政府の原案が適当であるという立場ではございますものの、この商工委員会議論を通じまして各党において別途の高度の政治的御判断が行われるということであれば、私どもはそれは尊重せざるを得ないし、また、尊重させていただくという心づもりでおるところでございます。
  236. 上坂昇

    ○上坂委員 われわれが修正するところに一致すれば修正は応ずる、やむを得ないということなんでしょうけれども、そういうことですからできるだけ修正するようにがんばるしかないですね。  そこで、問題なのは、最後に小売商業の問題なんですが、「飲食店業を除く。」となっているが、これは何で除いたのですか。
  237. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほどの命令の問題にちょっと返りますが、私どもがどういう気持ちでどういう議論を経ていま御提案申しましたような考え方に達したかという経緯は十分おくみ取りの上御判断をお願い申し上げたいと思っておりますし、また、仮に命令ということになりましても、その要件につきましては十分御吟味をいただき、慎重な御配慮をお願いいたしたいと思うわけでございます。  いま御質問のございました飲食店の問題でございますが、「適用除外」として、「小売業(飲食店を除く)」というものを適用除外にいたしておりますが、もっと素直な言い方をすれば、飲食店につきましてはこの法律が適用になるという形になるわけでございます。と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、なぜ小売商を適用除外にしたかという背景には、その地域的特性に即しまして大規模店舗法があり、小売商業調整特別措置法という法律がすでに用意されており、小売商についての分野法がすでにあって、それを使うことによって実効を上げ得る道が開かれておるということから除外したわけでございますが、大規模店舗法におきましては法文上明らかに「飲食店業を除く」ということが書いてございます。また、小売商業活動調整法におきましては、条文のところには正確には書いてございませんが、従来の解釈上、一般の需要に応じて物品を販売する小売商を対象とするということになっております。  したがって、飲食店は大規模店舗法あるいは商調法でも適用除外になっておりまして、したがって一般法に返って今回の事業活動調整法の対象になる、こういう関係で御理解をいただければと思います。
  238. 上坂昇

    ○上坂委員 適用除外から飲食店を除いたことについてはわかりましたが、小売業はやはりこれから一番問題になってくると思うのですね。先ほど言ったように、書店にしましても、それから生菓子にしましても、これは小売業の分野がこれからどんどんどんどん多くなってくると思うので、この点については本当に十分事前調査なりをやるような形を進めてもらいたいというふうに思います。  そこで、時間が来ましたから最後の質問でありますが、いわゆる全建総連というものがありますが、御承知のようにこれは一人親方の畳屋さんであるとか大工さんであるとかいう人たちが組織をしております。ある程度何人か使っている工務店などもこれにもちろん入っているわけであります。こういう団体は、これは労働組合というかっこうになっているわけでありますが、現実にはこれは中小企業団体でもあるわけなんですね。  これをどういうふうに解釈をしていくのか、この全建総連等の組織がもし調査を依頼をするという形になった場合には依頼することが一体できるのかどうか、また、それを受けるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  239. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この法律の第五条に書いております中小企業団体は「特定の事業を行う者」ということを構成員の資格といたしております。全建総連でございますか、労働組合連合組織につきましては、やはり字句の解釈上はこれに該当しないというふうに理解をいたしております。  なお、全建総連に所属する事業主たる中小企業者に関しましては、それぞれの業種に応じまして、法第六条の要件に該当する団体がございますれば、それを通じて申し出をするということは可能であろうと思っております。
  240. 上坂昇

    ○上坂委員 その構成員が、組合員が所属する中小企業団体に入って、そこを通じてやる場合には構わないということ、これはわかりますが、もう一つは、いわゆる全建総連の中で、この構成をしている人たちが連名でこの調査を依頼するということをやる場合、それは認められるのかどうか。この点についてもお答えをいただきたい。
  241. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この第六条の要件に該当する団体の定義にかかわる問題でございますが、私どもは、商工組合あるいは特定の要件を備えております事業協同組合、さらには環衛組合等々を念頭に置いて第六条を書いたわけでございます。  平たく申しますと、特定の事業を行う団体であって中小企業をその主たる構成員としておる団体、しかもある程度の地域的広がりを持っておるものというようなことを政令で書いてまいりたいと思っておるところでございます。単なる連名ということでは不十分でございまして、やはり法律の定める要件を備えた団体として申し出をしていただくという形が必要なのではないかと思います。
  242. 上坂昇

    ○上坂委員 いまのハウス55とかなんとかという形で垂直にだあっと住宅の建設が行われてきて、それで大企業がそれを受け持って、そして地方に行ってどんどんどんどん住宅をつくっていく、その結果いわゆる伝統的な木造住宅というやつが駆逐されていく傾向にあるわけですね。ところが、実際問題としては、そうしたハウス55にしましてもいろいろなやり方にしましても、大企業が実際にそれを建設しているんじゃないわけです。これはやはりほとんどが地域の全建総連なら全建総連に入っているいわゆる組合員、その一人親方あるいは工務店、そういうところが実際は受け持って仕事をするかっこうになっているわけですね。ですから、実際問題としては、この人たちは大企業の大変な進出によってその分野を侵食されているということが言えるわけであります。その場合にこれを阻止していくという形でなければ伝統的な木造の建築も実際には守れない、技術も守れないというような状況が出てくるおそれがあるわけであります。  そこで、私は考えるのですが、全建総連がたとえば組合の規約なら規約に仕事を全体で受け持つことができるんだというような目的を入れたとしますね。そうした場合はそれは中小企業の団体と同じような形で認められるのかどうか、この点はいかがですか。
  243. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私はまだ内容がよくわかりかねますのであるいは見当違いなお答えになるのかもしれませんが、全建総連というのはいわば建設労働組合でございまして、そういう組織が同時にいまのような事業者団体を兼ねられるものかどうか、私どももその辺を少し研究してみないと、とっさのお答えをするにはちょっと問題が大きいのではないかという気がいたします。これは建設省の方でもいろいろ情報をお持ちであろうかと思いますので、少し建設省にも実情を伺ってみたいと思います。  もっと素直に考えますれば、このメンバーの方方の中には直接自分で事業をしておられる方がかなりおいでになると、先ほどそういうふうなお話を伺いましたが、そういう方々で別途組織をつくって、そして問題を提起されるというようなやり方の方が後々——今度その方が当事者となって解決の道を探るわけですし、また、その解決の道を探るのと並行して関係中小企業者の方々の近代化、高度化の指導を進めていく、こういったことも後を追って進んでいく、こういった長い目で見ますれば、いま申し上げましたような別の道を選ばれる方があるいは簡便なのではないか、また、実質的なのではないかという気がいたします。  もし間違っておりましたら御叱声をお願いいたしたいと存じます。
  244. 上坂昇

    ○上坂委員 これで最後になりますが、いまの点は十分ひとつ調査をしてもらいたいと思うのですが、建設業の場合をとってみた場合に、実際に進めているのはいま言ったように建設省が進めて、あるいは通産省もこれは一緒になって進めているわけですが、そうした場合にはこれは通産大臣が主務大臣としていまの建設大臣なら建設大臣の方に強く申し入れをして、そして大企業の進出をできるだけ押さえていく、こういう形のものをこれからやっていかれようとしているのかどうか。  これは建設省ばかりじゃなくて、大企業というものは予想できないようなところに進出してきまして、その管轄というものがいろいろなところにわたってくると思うのです。これは運輸業ならば運輸省に入るし、あるいは厚生省の関係のもあるだろうし、たくさんあると思うのですね。そういうところに主務大臣の通産大臣として、いま言った企業の進出というものに対する押さえを十分やるように要請していくという強い形のものを考えておられるかどうか。その点を最後にお聞きしまして私の質問を終わります。
  245. 岸田文武

    ○岸田政府委員 主務大臣が勧告するに当たりまして、通産大臣としましては中小企業行政を総括調整するという立場から意見を述べることができる旨の規定が用意されております。もちろん、主務大臣もそれぞれの所管事業の立場を踏まえまして中小企業の育成振興を図るということが当然の任務となっております。したがいまして、中小企業庁と主務大臣とが十分意見を交換することによりまして御懸念のようなことが起こらないように善処いたしたいと思っておるところでございます。
  246. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明二十七日水曜日、午前九時四十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時五十九分散会