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1977-03-22 第80回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十二日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君       安倍晋太郎君    青木 正久君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       島村 宜伸君    辻  英雄君       渡海元三郎君    楢橋  進君       西銘 順治君    林  義郎君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       岡田 哲児君    後藤  茂君       清水  勇君    中村 重光君       渡辺 三郎君    長田 武士君       玉城 栄一君    西中  清君       工藤  晃君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         工業技術院長  窪田 雅男君  委員外出席者         通商産業省貿易         局輸出保険企画         課長      新井 市彦君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員異動 三月十二日  辞任         補欠選任   中村 重光君     武藤 山治君   安田 純治君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     中村 重光君   不破 哲三君     安田 純治君 同月十四日  辞任         補欠選任   板川 正吾君     藤田 高敏君   長田 武士君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     板川 正吾君   二見 伸明君     長田 武士君 同月十五日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     広沢 直樹君   西中  清君     二見 伸明君   松本 忠助君     近江巳記夫君   大成 正雄君     田川 誠一君 同日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     松本 忠助君   広沢 直樹君     玉城 栄一君   二見 伸明君     西中  清君   田川 誠一君     大成 正雄君 同月十七日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     玉置 一徳君 同月十八日  辞任         補欠選任   安田 純治君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     安田 純治君 同月二十二日  辞任         補欠選任   萩原 幸雄君     中西 啓介君 同日  辞任         補欠選任   中西 啓介君     萩原 幸雄君 同日  理事松本忠助君同月十五日委員辞任につき、そ  の補欠として松本忠助君が理事に当選した。 同日  理事玉置一徳君同月十七日委員辞任につき、そ  の補欠として玉置一徳君が理事に当選した。     ————————————— 三月十六日  中小企業事業分野の確保に関する法律の制定  に関する請願井出一太郎紹介)(第一四一  七号)  同(増田甲子七君紹介)(第一五一一号)  小売商業調整特別措置法厳正実施等に関する  請願安藤巌紹介)(第一五一二号)  同(田中美智子紹介)(第一五一三号) 同月十九日  小売商業調整特別措置法厳正実施等に関する  請願田中美智子紹介)(第一五六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第二三号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事松本忠助君及び理事玉置一徳君の委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。つきましては、これよりその補欠選任を行うのでありますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事に       松本 忠助君    玉置 一徳君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺三郎君。
  5. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 法案の具体的な内容に入る前に、最近のプラント輸出動向について若干お伺いしたいと思います。  まず、最初に、先進諸国の最近のプラント輸出動向ですが、主たる市場は大体どういうところになっているか、あるいは主としてどういうものが輸出されておるか、それから国際的に主要な国国の占めるそれぞれのシェアはどうなっているか、こういったことについて概要を御報告いただきたいと思います。
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問にお答えいたします。  最近、中東、中南米その他共産圏等地域におきましては社会経済開発の進展がまことに顕著でございまして、これに伴いまして先進工業諸国に対しまするプラントの需要が増大いたしておりますが、これに対応いたしまして、欧米諸国におきましては各国ともプラント輸出の増大に努力をいたしておる次第でございます。わが国もこのような情勢の中でプラント輸出の拡大に多大の努力を払ってまいっておりまするが、今年度は輸出承認ベースで前年度を大幅に上回るような次第でございます。  御案内のとおり、落ち込んでおりまする日本経済を回復いたしまするためにはやはり輸出ということが大きな要素でございまするが、これが貿易の場合におきましては、ECあるいはアメリカ等において見られますような輸出摩擦がいろいろと起こってまいっておるような状況でございます。しかるに、プラント輸出なり大型プロジェクトの場合におきましては、これを行うことによりまして先方の国も非常に喜び、同時にまた日本国内における発注に基づく波及効果は非常に大きなものがございます。われわれの方で調べておりまする波及効果から申しましても、普通の公共投資の場合は二くらいでございますが、このプラント輸出に対する波及効果は二・四と言われておるような状態でございまして、特に、いろいろな機材その他の発注わが国経済の回復のためにも非常に大きな貢献をするだろうと存ずるのでございます。  しかしながら、日本先進工業国におけるプラント輸出の全体におけるシェアアメリカ西独等諸国に比べましてもまだまだ非常に低いのでございます。今後さらにいろいろな施策とともに制度も整備いたしまして、プラント輸出を行いやすいようにしたい。現在御審議をいただいておる輸出保証保険創設もやはりプラント輸出に対する一つの大きな条件であろうと私は存ずるのでございまして、輸出保険法改正案が速やかにできることによってプラント輸出の促進ということは非常に影響力があるものだと私は存じまして、御提案を申し上げておるような次第でございます。
  7. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま、大臣の方から、最近のわが国状況も含めて大ざっぱな動向お話があったわけですが、実は、私がお伺いしたいのは、たとえばアメリカあるいは西ドイツイギリスフランスイタリアといった国々政府資料では——七五年までは大体私どもも手元に持っておりますが、七六年に入って、それまでの動向とほとんど変わりがないのか、あるいはこういう機種についてはどこの国のプラント輸出が際立って非常に大きくなったとかいうような動向が七五年から七六年にかけて特徴的に出ておるのかどうか、こういう点を少し具体的に、主要な国々でいいですから明らかにしていただきたいと思います。
  8. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど大臣答弁申し上げました趣旨につきまして、具体的に数字をもって答弁をさせていただきたいと思います。  まず各国別プラント輸出状況でございますが、ただいま渡辺先生が御指摘のとおり、若干古い数字しかわかっておりません。と申しますのは、各国OECDにレポートいたしました数字ベースにいたしましてOECD統計をまとめているわけでございまして、これは残念ながら二年おくれということになっておりまして、この間の実態がなかなか調査しにくいわけでございますので、若干古い数字でございますけれども、七四年の数字に基づきまして申し上げますと、まず、プラントの一番大きな輸出を行っております国はアメリカでございまして、全世界のうちの二五・五%を占めております。それから西ドイツが二二・八%でございまして、次がイギリスの九・四%、日本は四番目の八・一%ということでございます。そのあとフランスイタリアというふうに続いておるわけでございます。  一方、日本プラント輸出実績でございますが、昭和四十九年に三十八億六千万ドルになったわけでございますが、五十年には五十二億四千万ドルに達しているわけでございまして、五十一年度におきましては、十二月末までに、つまり四月から十二月の間に輸出承認ベースで五十一億ドルほどの承認をしておるわけでございます。  さらに、具体的にどういうプラント内訳があるかということを簡単に申し上げますと、このプラント種類統計をとりますことは大変むずかしゅうございまして、私ども統計をとっておりますのは一応四つカテゴリーに分けてとっておるわけでございますが、その四つと申しますのは、電気機械関係通信機械関係繊維機械関係一般機械関係という四つカテゴリー統計をとっております。そのうち最も多いのは一般機械でございまして、昭和五十年度で申し上げますと、全体の七〇・六%が一般機械でございます。次いで電気機械が二〇%、通信機械が五・七%、繊維機械が三・四%でございます。  さらに、一般機械の中で最近伸びておりますものは、石油化学関係プラント製鉄関係プラントというものがふえておるわけでございます。  以上申し上げましたのは日本の例で申し上げましたが、最近諸外国プラント輸出をする際にも大体同じような傾向でございまして、いま申し上げました石油化学プラントあるいは製鉄プラント等につきまして、諸外国とも重点的にやっておるものと、こういうふうに予測しておるところでございます。
  9. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 わが国プラント輸出が主としてどこに向けて出されているかということを政府資料でずっと見てまいりますと、東南アジア向けがやはり一番大きい。さらに共産圏向けが七四年、七五年の平均で一八%というふうに政府資料ではなっておるわけですが、この共産圏というのは、具体的に言うと、大ざっぱに国別に分けて大体どういう動向ですか、これを明らかにしていただきたい。
  10. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先生指摘のとおりに、わが国プラント輸出市場別内訳では、共産圏東南アジア、中近東、中南米といったところがいわゆる四大市場とされておるわけでございますが、その共産圏につきましては、圧倒的大部分ソ連向けでございます。そのほか若干東ヨーロッパ、いわゆる東欧諸国がございます。
  11. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 先ほど局長の方からわが国機種別動向お話があったわけでございますけれども、特に七五年の機種別の前年対比、この増加率などを見てみますと、化学肥料プラントの伸びがきわめて大きいというふうになっておるわけでありますが、この肥料プラントは主としてどの地域輸出されておりますか。
  12. 森山信吾

    森山(信)政府委員 化学肥料プラントは最近増加が著しいわけでございまして、先生指摘のとおりでございますが、それの主なる輸出先ソ連でございます。従来、ソ連におきましての化学肥料プラントヨーロッパ諸国比較的強い立場でございましたけれども日本の高度な技術信用を博しまして、このところソ連から日本に対する注文が殺倒いたしておりまして、これを受けましてソ連向け化学肥料プラントがふえておるという状況でございます。
  13. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これも先ほどの答弁と若干関連をするわけですけれどもわが国プラント国際競争力といいますか、こういう面について若干お伺いをしたいわけです。  先ほど言われた先進工業国といいますか、こういった国々比較をして日本プラント輸出競争力というものはどういう点が非常に問題があるのか。わが国も年々プラント輸出は非常に伸びておりますけれども、しかし、いまだに全体的に見ればまだまだ弱い面がある。そういう点で、特にこういう点が問題があるという点があれば御指摘をいただきたいと思います。
  14. 森山信吾

    森山(信)政府委員 私ども統計的にわが国プラント受注成功したケースと失敗したケース原因別調査をいたしてみましたが、その調査によりますと、まず、受注成功した場合の理由でございますが、一番高い比率を占めておりますのは日本技術信用を博したという理由でございまして、全体のうちの約三七%の理由となっております。それから、次に、価格が、つまり。プラントの値段がリーズナブルであるという理由が二番目の理由でございまして、これが三二%であります。それから、日本プラントがすでに実績を持っておるために比較的話がしやすかったというケースが三番目でございまして、約一八%であります。それから四番目が支払い条件で、これが理由となりましたのが六%でございます。最後納期が正確であるという理由が五番目になっておりまして、これが一・五%であります。こういうことでございまして、いま申し上げました技術力価格あるいは実績といったものが日本プラント一つ特徴ではないかというふうに考えられます。  さらに、敗退をしましたケース、つまり成功をしなかったケース理由といたしまして、一番高いのは価格が高過ぎるということでございます。これは全体の調査のうちの約四七%の理由になっております。それから二番目に、支払い条件が大変厳し過ぎるというのが約一五%でございます。それから実績がないという理由が三番目でございまして、同じく一五%程度であります。それから四番目に、技術力信用できないという理由が四・二%ございます。最後に、納期につきましては全然問題がないということでございまして、いま申し上げましたように、失敗しました例としましては、価格が高過ぎる、それから支払い条件が厳しい、あるいは実績がない、あるいは技術力が劣っておるというような理由でございまして、先ほど申し上げました成功した例と敗退した例とがちょっとオーバーラップするところがございますので、その中から日本としての問題点を見つけ出していきたいと思っております。  これは全市場オーバーオール調査したものでございますから、地域によりまして、同じ価格の問題が非常にメリットとされる地域と、それから逆にデメリットとされる地域とございますし、この中から相当な分析をいたしまして問題点を抽出してまいりたいと考えておるわけでございます。
  15. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま局長もおっしゃったように、成功の例と敗退の例でそれぞれ比率は確かに違いますけれども、同じ価格の問題とかそれから技術の問題が出ておるわけですが、これはこういうことでしょうか。  たとえばいまおっしゃった理由のほかに、機種によって、こういった機種についてはわが国外国と比べて非常に価格が安い、ところが別の機種については非常に高いとか、それから技術の面でも同じようなことが言えるわけですけれども、そういったように、わが国がいままで輸出をした、あるいはしようとしたプラント、こういったものの機種別問題点が相当あるのですか。
  16. 森山信吾

    森山(信)政府委員 一般論としてお答えいたしますと先ほど申し上げたとおりでございますので、細かい機種別にブレークダウンしてまいりまして、さらに地域別にブレークダウンしてまいりますと、ただいまの先生の御指摘のとおり、特定市場におきましては日本が非常に強いというケースもございますし、また、特定機種につきましては日本競争力を持っておる、つまり、価格がわりにリーズナブルな状態で出せる、あるいは特定機種につきましてはまだ価格競争力が劣っておる、こういうふうなことではないかと考えられます。
  17. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もう一ついまの問題に関連をして、ソフトの部門では日本は国際的に大体どういう水準になっておりますか。
  18. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ソフトという御指摘でございますが、これはコンサルティングあるいはエンジニアリングという意味の御質問ではないかというふうに了解いたしますが、私どもが考えますのに、端的に申し上げまして、日本ソフト部分はかなり劣っておるのではないかという感じがいたします。  と申しますのは、先ほど御説明いたしましたように、諸外国の中でアメリカ西独はずば抜けてプラント輸出比率が高いということは、いずれもこの両国は昔から古い伝統を持ちますコンサルティング会社あるいはエンジニアリング会社というものが発達いたしておりまして、プラント輸出は単に機器を売るというだけではなくて、コンサルティング段階あるいはエンジニアリング段階成功して初めてプラントが出ていくというケースでございますので、日本が劣っておりますのはそういう点にあるのではないかということでございまして、具体的な数字で諸外国に比べてどの程度関係にあるかという数字はなかなか把握がむずかしゅうございますが、定性的に申し上げますと、いま申し上げたように、現段階におきましては日本ソフト部分はそう高いとは申せない事情にあろうかと思います。
  19. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、具体的に今度の法案内容にかかわる問題について質問したいと思いますが、一つは、プラント輸出とそれから海外建設工事等の場合の契約書においては、通常の場合、各種ボンドについてどういうふうな規定がなされているのか、これをまず最初に御答弁いただきたいと思います。
  20. 森山信吾

    森山(信)政府委員 通常契約書の中におきましてボンド規定が入るわけでございますが、まず、ボンドにつきまして各種種類があるわけでございまして、入札保証につきましては、入札招請状におきましてその保証に関します具体的な提示が先方からなされるわけでございます。それから、たとえばパフォーマンスボンド契約履行保証と申しておりますが、あるいはリファンド・ボンド前払い金返還保証と申しておりますが、こういったものにつきましては、輸出契約あるいは技術提供契約等契約の具体的な中身におきまして、こういうボンドを積んでくださいということを規定しておるわけでございます。  大体、普通の一般的な入札招請状あるいは輸出契約等におきましては、ボンド提出期限、それからボンド発行者の資格、保証債務履行条件といったものが決められるわけでございます。
  21. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 入札者、それから輸出者、それと外国為替公認銀行、このボンド発行依頼実情、それから特に最近のボンド発行実績、これらについてできるだけ具体的に数字でもって明らかにしていただきたいと思います。
  22. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど申し上げましたように、ボンド種類といたしましては一応三つございまして、入札履行保証前払い金返還があり、このカテゴリーに従ってお答え申し上げますと、まず、入札保証でございますが、昭和四十九年度におきまして二百二十二億円のボンドが出されております。これが昭和五十年度におきまして八百四十六億円となっております。次に、パフォーマンスボンドにつきましては、昭和四十九年度に二百三十八億円、五十年度に八百二十二億円となっております。さらに、リファンド・ボンドにつきましては、昭和四十九年度に百九十八億円が、五十年度には九百七十二億円となっております。三つボンドを合計いたしますと、四十九年度におきましては六百五十八億円でございましたのが、昭和五十年度に二千六百四十億円となっておるわけでございます。  ただ、いま申し上げました数字は、契約額十億円以上のものにつきまして、私どもプラントメーカー及び海外建設工事をやっておられます建設会社の方々からヒヤリングをした結果でございまして、この二千六百四十億円が五十年度における全ボンド発行額とは思っておりませんが、恐らく二千六百四十億円をある程度上回る数字実態ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  23. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 こういった過去の実績、現在の状況ということになりますけれども、この場合、通常保証料実態は大体どれくらいになっていますか。
  24. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ボンドを発行いたしますときの保証料でございますが、これは金融機関ごとに、あるいは依頼者の形態によりましてまちまちでございますが、大体〇・四%から一%の間で行われているというふうに考えております。これは年率でございます。
  25. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 政府資料によりましても、現在、イギリスとか西ドイツフランスイタリア、オランダといったプラント輸出の主要な国々がすでにボンド保険制度を整備しているというふうに説明されておるわけでありますけれども、こういった諸国制度、それからいまわれわれが審議をしておりますこの法案、こういう比較においてどういう違いがあるか、あるいはほぼ同じなのか、もし違う点があるとすれば、今度わが国がつくろうとしているボンド保険制度というものの特徴、こういう点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  26. 新井市彦

    新井説明員 現在、ドイツ、フランスイギリス、さらに最近アメリカを初めといたしまして世界十三カ国がボンド保険制度を持っております。これは各国それぞれ実情に応じまして制度をつくっておるという観点から、必ずしもすべて同じような制度ではないということは言えますが、共通している点をかいつまんで申し上げますと、てん補事由につきましては、つまり、保険事故がどういう場合に保険金を払うかという、その理由でございますけれども、これは大部分の国が受注者無責の場合にのみてん補するという方式を採用しております。この点はわが国も同様でございます。  それからてん補率、どの程度損害を補償するかという率でございますが、これはイギリスが一〇〇%、西ドイツが八五%、フランスは九〇%とまちまちでございますが、わが国の場合は包括が九〇%、個別が七〇%というふうなことで、ほぼ平均と言えるかと思います。  次に、保険料率でありますけれども英国年率で〇・五%、フランス年率で〇・二%、西ドイツは、これは期間と無関係でございますが〇・四%。いま申し上げた英国フランスにつきましては、これは年率でございます。ということで、まちまちでございますが、わが国保険料率は、個別が年率〇・三%、包括が〇・一%というふうなことでございまして、これら主要国の大体平均あるいは平均以下というふうな感じになっております。  それから、わが国の現在審議していただいております法案におきましては、この特徴といたしましては、ヨーロッパ諸国というか、十三カ国が大体個別保険制度を採用しておりますけれどもわが国はこれに加えまして包括方式を採用しているという点が特徴かと存じます。
  27. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこでお伺いしたいのですが、いま挙げられました幾つかの国の場合には、いわゆる個別保険だと思いますね。わが国の場合には包括と個別の両方つけておるわけですが、これはどういう理由に基づくものですか。
  28. 新井市彦

    新井説明員 わが国の場合におきましては、包括保険を採用する理由でございますが、本来的に個別保険は保険契約者の方に逆選択を許すといいますか、掛けたいときだけ掛けるという方式でございますので、勢い危険の率は高くなる。これに対しまして、包括保険の場合には、一定の要件に該当するものはすべて保険に掛けるという契約をあらかじめ保険契約者と保険者との間に結ぶわけでありまして、その意味において危険が低減する、したがって料率も安くなりますし、てん補率も高めてもいいというふうな利点がございます。  わが国におきましては、これまでやっております代金保険、それから普通輸出保険等につきましても包括保険を採用しておりまして、これが利用者の間に非常に好評を博しております。そういう観点から利用者の選択の幅を広めるということで、両方採用いたしたわけでございます。
  29. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 ところで、今度の輸出保証保険が創設されることによってボンドの発行増加がどの程度になるか。いままでの実績との比較になりますけれども、どの程度になるというふうに見込まれておりますか。
  30. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ボンド保険の実施によりましてボンド比較的発行しやすくなるというケースが予想されるわけでございまして、そういうものを入れましてどの程度今後ボンドが発行されるであろうかという御質問かと了解いたしますが、その発行の予測をすることはなかなか困難でございますが、私どもは、少なくとも現状の二倍は五十二年度において一応ふえるのではないかということを期待しておるわけでございます。  ただし、これはあくまでも推定でございますので、確固とした理由に基づきましてはじくわけではございませんが、このボンド保険を実行するに当たりましては、引き受け限度額というものを一応特定する必要がございますので、推計によりましてそういう推定を行っているところでございます。
  31. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは政府の出しておられるいわゆる引き受け限度額、昭和五十二年度の後半六カ月分といいますか、十月一日から数えて来年の三月三十一日ということになりますけれども、一応これは四千億というふうに見込まれておるわけですね。  いまの質問との関連ですけれども、これは算定の根拠が、いま局長が言われましたようにほぼ二倍、いままでの発行されている倍くらいになるだろうという、こういう大ざっぱな根拠ですか。
  32. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど御答弁を申し上げました五十年度の二千六百四十億円というものは、先ほどお答え申し上げましたとおり一部推計でございまして、私どもは、実際にボンドが発行されましたのはこれをかなり上回るのではないかと思っておりまして、約五千億近くのものが出されたというふうに考えております。全体を推計いたしまして、五十年度約五千億という推計をいたしたものが、五十二年度ではその倍ぐらいになるという数字でございます。  それで、いまの渡辺先生の御指摘の四千億という発行限度、引き受け限度でございますが、これは、御指摘のとおり半年分の予算ということでございまして、十月から来年の三月三十一日まで六カ月間を見通したものでございまして、この発行限度が著しく低いために、せっかくボンド保険を成立させていただきましても発行限度が頭打ちになるということでは困るということも十分わかりますので、そのボンドの発行の予想を倍にいたしますと同時に、さらに余裕率を一・五倍ほど見ておりますので四千億では十分まかなえる、こういうような感じを持っておるところでございます。
  33. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 先ほど御質問申し上げましたこれまでの各銀行の保証料の実体と関連をするわけでありますけれども、今度の輸出保証保険の創設によって、輸出者は保険料とそれから保証料を負担することになるわけです。銀行は保険によってリスクが減殺されるわけでありますが、こういうことになれば当然一般的には保証料が低減するように、いままでの実績から見て非常に低くなるように指導することが必要になるのじゃないかというふうに私は思うわけですけれども、その点は具体的にどのように対処されるおつもりですか。
  34. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ボンド保険を成立させていただきますと、従来保険なしに銀行は保証しておったわけでございますから、ある部分につきまして保証料を引き下げるべきであるという感じは私どもは持っておるわけでございまして、従来の保証料に加えまして保険料を上積みするということは好ましくないという気持ちを持っております。  ただし、この保険契約は言ってみますと輸出者と銀行の間の問題でございまして、この保証料率も両当事者間の契約によって決められるものでございますから、法律をもちまして具体的に保証料率をこれこれ引き下げるべきであるということはなかなか困難かと思いますが、私どもといたしましては、一般的に、保証料をできるだけ安く、保険料率保証料率が合わさって従来以上に過酷にならないような指導を十分してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  35. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 ところで、法案輸出保証のうち、いわゆる裏保証と言いますか、第三の形態である裏保証はどういう場合を想定しているわけですか。  それから、ついでに伺いますが、共同保証という形態もあるというふうに聞くわけですけれども、この場合の保険関係は一体どういうふうになっていくのか。その点、技術的な問題ですけれども、少し詳しく教えていただきたいと思います。
  36. 森山信吾

    森山(信)政府委員 裏保証でございますが、裏保証が行われるケースといたしまして予想されますのは、三つぐらいのケースがあるのではないかというふうに考えております。  まず、第一は、発注者が現地の銀行を保証人に指名いたしまして、この保証人に対する裏保証を本邦の銀行等に求めてくる場合でございます。つまり、A国におきましてプラント発注する場合に、そのA国に所在する銀行にまず保証人になることを要求しまして、それが本邦、日本の銀行に対しまして裏保証を求めてくるというケースでございます。  第二のケースは、本邦の銀行等がボンドを発行する場合でございますが、輸出者の担保だけでは必ずしも十分でないというケースにおきまして、他の銀行の裏保証を求めてくるというケースがございます。  それから、第三のケースといたしまして、複数の本邦銀行が共同で保証する場合に、手続の繁雑さを避ける意味で、数行のうちの一行をいわゆる表保証人といたしまして、残りの銀行をいわゆる裏保証人とするというケースでございます。  それから、先生の御指摘になりました共同保証という場合もいま申し上げました第三番目のケースに該当するかと思いますが、通常は共同の場合には代表者を表保証とし、その他の者を裏保証とするわけでございますけれども、共同の分担におきましてそれぞれがいわゆる表保証人になるというケースも予想されるわけでございますが、ただいままで調べましたところではほとんど共同保証とした例はないようでございます。  それから、さらにもう一つ日本の企業が外国とコンソーシアムを結びましてプラント輸出をするというケースがございますが、こういう場合は大ざっぱに分けまして二通りの考え方がございまして、外国発注者がプラント輸出する国といたしましてA国とB国の二つに発注する場合に、この二つが共同して受注するケースと、その二つがそれぞれ自分の分担を決めまして、それぞれ分担に応じてプラント輸出契約をするというケースがございますが、その場合は分担の比率におきまして保証が行われるということでございまして、その裏保証につきましては、先ほど御答弁申し上げたような順番に従って裏保証が行われる、こういうふうに考えておるところでございます。
  37. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと、いま御説明がありました共同保証の場合に、たとえば三つなら三つ共同保証をする、そのうちの一つの銀行が代表行としてそこと契約を結ぶというふうな形式の場合にはわかりますけれども、それぞれ共同保証の各銀行が保証契約を結ぶという場合の保証料というものは一体どうなりますか。これは一つの想定ですけれども……。
  38. 新井市彦

    新井説明員 ただいまの場合は、各行が別個に相手方に対しましてボンドを出すということでございますので、各行が出すボンド金額に応じた保険料を納付するということになるわけでございます。
  39. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと、いまのはそれぞれの保証をやった金額に見合うという意味ですか。
  40. 新井市彦

    新井説明員 そのとおりでございます。
  41. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと、たとえば金額別ということになりますと、先ほど局長の説明もありましたけれども、それぞれの仕事の内容別にそれぞれ割り振って、それに該当する保証というかっこうではなくて金額保証ということになりますと、たとえば三つなら三つの銀行を対象にして考えた場合には、一つプラント輸出がたとえば十億だったとすると、これは非常に単純な例をとりますけれども、三億なら三億ずつ分けるというふうなかっこうでの金額の保証なのか、あるいは十億をそれぞれ三つの銀行が保証するというふうな——結局はその場合には極端に言えば三倍になるわけですけれども、どういう形式になりますか。
  42. 新井市彦

    新井説明員 先生の御質問の趣旨が、三行が一本のボンドをまとめて共同で保証するというふうな場合でございますと、これは原則としては三行が均等に責任を分担するということでございます。ただし、特約があればその特約に従って分担するというふうな関係になります。
  43. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私がお聞きしておるのは、いま課長が金額ごとにというふうにおっしゃいましたから、その場合に、たとえば十億のプラント輸出であればそれはどういうふうな案分になるのか、保証料はどうなるのかということですよ。具体的に言えばそういうことです。十億なら十億のうち、それを幾つかの銀行で共同保証をやっても代表は一つだ、そのうちの代表は保証料を支払うべき、いわばボンド契約をするのが一つだということであれば話は簡単です。しかし、三つだというふうな場合に一体どうなるのかという、そういう具体的なことです。
  44. 森山信吾

    森山(信)政府委員 仮に十億円の保証をするというケースがございまして、銀行等が一社一行で保証をする場合は先ほど申し上げましたような保証料になるわけでございますが、これが複数になりました場合に、たとえば先生の御指摘ケースで申し上げますと、三行になった場合に、契約内容におきまして、その一行が表保証人になるというケースはわりに計算が簡単でございますが、その三行がそれぞれ共同保証を行うという場合は保証の対象金額は三等分されるわけでございますから、その十億円が三億三千万円ずつ分割されまして、したがって保証料の対象金額は三億三千万に対して保証料がかかるということでございますから、一行の場合と全く変更はないわけでございまして、したがって、複数の銀行が保証することによって輸出者に対して保証料が三倍になるというケースは全く想定をしていないわけでございます。
  45. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、輸出保証保険によってカバーされる銀行の損失ですね。これは不当にボンドを請求されて支払った場合というふうに限定をされるわけだと思うのですが、これは将来は正当不当にかかわらずまず保険でカバーをして、発注者のこの請求が正当なときには輸出者などに対して政府が求償権を行使するという、こういうふうなことも将来の問題としてあり得るのじゃないかというふうに考えるわけですけれども、その点はどういうふうに考えておられますか。
  46. 森山信吾

    森山(信)政府委員 私どもが御審議をいただいております法案におきまして、事故があった場合の保険の支払いは輸出者が無責であるというケースに限っておるわけでございまして、ただいま渡辺先生の御指摘になりました点は、まず、事故があったらとりあえず国が保険を払っておいて、その後でもし輸出者が有責である場合には国が求償すればいいじゃないかという、こういう御指摘ではないかというふうに了解いたしますが、そういうふうにいたしますと、輸出者有責の場合も結果におきまして保険の対象とするというふうになるわけでございます。  と申しますのは、仮に輸出者が有責ということになりまして、この有責の原因といたしまして破産ということを仮に例にとってみますと、国が保険金をまず払いまして、求償する相手方がすでに破産をして現実に存在しないというケースにおきましては求償権の行使のしようがございませんので、結果的には国が有責の場合も保険を払ったということになりまして、この制度に矛盾をすることになろうかと思います。  一方、有責の場合を保険の対象にしなかった理由といたしましては、諸外国におきまして大部分の国が輸出者有責の場合は保険の対象にしないということになっておりますし、それから、先ほどから御答弁申し上げましたプラント関係におきまして、わが国プラントがようやく外国におきまして信用を博しつつある現状におきまして、輸出者有責の場合も保険でめんどうを見ますということになりますとえてして安易な輸出が行われる危険性があるということでございますので、輸出者有責の場合は保険の対象にしないということに踏み切ったわけでございますので、その点を考え合わせてみますと、先ほど先生の御指摘になりました点は大変むずかしい問題ではないかというふうに考えておるところでございます。
  47. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 その点はわかりました。  次に、輸出者とそれから発注者のこの仕事の履行をめぐる紛争ですね。この契約書においては、その処理といいますか、こういうものは普通どのように記載をされるのか。それから、たとえば調停、仲裁、それから訴訟といったような問題についてはどのように考えておられるのか。あるいはその法的な根拠という点はどうなっていますか。
  48. 森山信吾

    森山(信)政府委員 履行をめぐる紛争が起こりました場合には、通常、両当事者間で折衝が行われまして、これが不調となった場合に第三者による仲裁や訴訟の場に持ち込まれるのが通例であるわけでございます。  通常におきまして、輸出契約を結ぶ際にこういう紛争が発生する事態を予測いたしまして、紛争が発生した場合にどういう手段で解決を図るかということが規定されておるわけでございますが、司法上の争いになるということになりますと、通常発注者の国の国内法規によりまして仲裁が行われるというケースが多うございまして、いわゆる裁判所の管轄権の問題等につきましては契約書の中で定められるということでございます。  一方、紛争が起こりまして、有責か無責かという問題をこういうふうに争っておりますと、なかなか時間もかかりまして輸出者等に著しく不利な事態になることも予想されますので、まず、有責、無責の判定を日本側におきまして、つまり国におきまして判定をしたいというふうに考えておるわけでございまして、この判定は一応国が判定をするというたてまえになっておりますけれども、現実の問題として、処理する際に、公正なる第三者をもって構成する審議会等で有責、無責の判定をしてもらおうというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、有責、無責の判定をいたしまして、輸出者が無責であるということが判明いたしましたならば国は保険金を支払う、それから保険金の支払いを受けました銀行等は、再び国際紛争を行ってまいりまして、そこで輸出者無責という結果が出ますと不当利得返還請求権が発生いたしまして銀行等が回収をする、こういう順番になる一わけでございます。
  49. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 発注者がたとえば東南アジアであれ中近東であれ、政府であるというふうな場合には、わが国は主として公正な第三者の機関を経て判定をしたいというふうにいまおっしゃっておりますが、相手が政府であったような場合には国際的な問題にもなりかねないことになると思うのですが、この場合には一体どのように対処されるのか。それから、どうしてもどっちにも認定できないというふうな場合には最終的にどういう方法をもって認定にこぎつけるのか。その点ちょっとまだ不明な点がありますから、考え方があればはっきりさせていただきたいと思うのです。
  50. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたのは、主として発注者がコマーシャルな場合でございますが、必ずしもコマーシャル以外のケースを含まないというわけでもございませんで、発注者が相手国の政府及び政府機関である場合も当然想定しておるわけでございますが、日本政府としての考え方についての御指摘ではないかというふうに了解いたします。  通常、コマーシャルなケースにつきまして政府が直接問題の解決に乗り出すということはケース・バイ・ケースで処理するわけでございますけれども、いま先生の御指摘のとおり、発注者が相手国の政府であるとかあるいは政府機関であるというケースにつきましては、特別に日本側におきましても政府が解決に乗り出さなくちゃいかぬというケースがふえてまいるのではないかというふうに予想いたしておりまして、コマーシャルなケースでも、何ら、政府は放置して解決は当事者だけでやりなさいという姿勢でもないわけでございますので、それ以上に、相手国の発注者が政府及び政府機関である場合には従来にも増して日本側が政府ベースで話を持ち出して解決に努力したい、こういうことを考えておるところでございます。
  51. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまの問題で、すでにボンド保険制度を持っている諸外国の場合、いま言ったような実例があれば、それを示しながらこういうふうな解決のケースがあるというふうなことを明らかにしていただきたいと思うのですが、前例、先例がございませんか。
  52. 森山信吾

    森山(信)政府委員 諸外国で行っておりますボンド保険制度を利用いたしまして保険事故になりました例といたしましてはイタリアケースがございます。これは中近東、アフリカ地域に対しましてイタリアの企業が海外建設工事等輸出をした場合に、送り込みました技術者を不当に国外追放したというケースでございまして、それによって契約どおりの工事ができなかったということを理由といたしまして相手国からボンドの支払い請求が来たということでございまして、この点に関しましては、イタリア側で保険金を支払ったという情報は聞いておりますけれども、その後イタリア政府と相手国の間でいかなる政府間交渉が行われたかはまだ情報として聞いていないところでございます。  いま申し上げましたように、各国それぞれボンド保険制度を発足させておりますけれども、現実に保険事故が発生いたしましたのはこのイタリアケース、具体的に申し上げますと十一件でございますが、それ以外の国でこういう事故が発生したという例はございません。
  53. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 このてん補率の問題をちょっとお聞きしたいのですが、包括契約の場合で九〇%限度、それから個別契約の場合で七〇%、それから保険料率は、包括の場合には年〇・一%、個別の場合には年〇.三%というふうにそれぞれ示されておるわけですけれども、この根拠を明らかにしていただきたいと思うのです。
  54. 森山信吾

    森山(信)政府委員 まず、保険料率でございますが、先生指摘のとおり、個別の場合〇・三%、包括の場合〇・一%と決めたわけでございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、イタリアでこういう事故が発生いたしました。  このボンド保険制度と申しますのは大数の法則がなかなか働きにくい制度でございまして、たとえば西独におきましては一九五一年以来実行いたしておりますけれども、多くの国はつい最近におきまして制度を発足したわけでございまして、比較的新しい種類保険制度でございます。しかも、事故率もいま申し上げましたように十一件ということで、大数の法則上、過去のデータに基づきまして、これこれしかじかの料率になる、あるいはこれこれしかじかの事故率になるということをつかむことははなはだ困難でありますけれどもボンド保険を採用いたしております各国が発行いたしましたボンド額と、それから先ほど御答弁申し上げましたイタリアケース比較いたしまして、一応事故率と申しますのを〇・三というふうに算定をしたわけでございます。それから、かたがた、ボンド保険につきまして、すでに発足をいたしております主要各国保険料率を勘案いたしまして、この〇・三%というものはおおむね妥当ではないかというふうに考えたわけでございます。  それから、包括制度を採用いたします場合には、通常個別の場合の料率の三分の一にするというのが原則でございますので、ただいまお答え申し上げましたように、まず個別のケースにつきまして〇・三%という料率を算定いたしまして、その三分の一というふうに決めさせていただいたわけでございます。  なお、てん補率につきましては、先ほど説明員からるる御説明申し上げましたように、世界各国におきまして統一的な線がなかなか決まっておりません。一〇〇%のイギリスケースもございますし、そのほかまちまちでございますので、まず料率を決定いたしまして、その料率とのバランスにおきましててん補率を決めたという次第でございまして、〇・三%の個別の場合には七割のてん補率、それからその三分の一の〇・一といたしました包括につきましては九〇%、これは料率とのバランスにおいて決定をした、こういうような状況でございます。
  55. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 第十条の五の関係の「権利の行使」に関連してちょっとお伺いしたいのです。  これは読んでみても非常にややこしいのです。「主たる債務者たる入札者等に対する求償権又は第一条の二第九項第三号に掲げる」——つまり、主たる債務者の賠償責任について「保証を受けている場合における当該入札者等の賠償債務について保証した者に対する保証に係る金銭の支払請求権を行使してはならない。」と、非常にややこしいのですけれども、ここでお聞きしたいのは、保険金の支払いを受けた銀行が求償権を制限されるということに結局なると思うのですが、その理由とその範囲をお聞きしたいわけです。
  56. 森山信吾

    森山(信)政府委員 まず、求償権を制限いたしております理由でございますが、ただいま渡辺先生から御指摘のございましたように、銀行が保険金の支払いを受けますと、その限りにおきまして、それ以上に輸出者等から求償いたしますとダブルで入金をするということになりますので、あるいはまた裏保証をしている場合には、裏保証人から求償いたしますと保険金とその分とがダブりますので、保険金を支払った場合には、その限りにおいて求償権を行使してはならないということで、いわゆる二重取りを禁止しておるところでございます。  それから、その制限をいたしております範囲は、保険金の支払いを受けた範囲内で求償権を行使してはならないということでございまして、それ以外のケースといたしましては、先ほども答弁いたしましたように、てん補率が七割とか九割とか決まっておりまして、言ってみますと、銀行等が保険料の支払いを受けますのは七割とか九割の範囲内で受けるわけでございまして、そのもらいました保険金の範囲内で求償権を行使してはならない、それ以外の部分については、たとえば個別の場合は三割、包括の場合は一割は依然として求償権は残っている、その部分だけ求償権を行使して、それ以外はやってはいけない、こういう意味でございます。
  57. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それから、中小企業者がこの輸出保証保険を利用しやすいようにするためにはいろいろな指導、考え方があると思うのですけれども、そういう点については一体どういう配慮がなされておるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  58. 森山信吾

    森山(信)政府委員 この保険制度をお認めいただきますと、申し込みの当事者は大企業であろうと中小企業であろうと問わないわけでございまして、中小企業も十分利用していただこうという期待を持っておるわけでございますけれども、現実の問題といたしまして、すそ切りという制度がございます。これは、包括の場合に一定の金額以上のものにつきまして保険の申し込みを受け付けるという制度をすそ切りと称しておりますが、そのすそ切りの限度が、つまり引き受け限度の最下限が高いものになりますと中小企業が大変迷惑をするということもございますので、この保険制度におきましては、できるだけすそ切りの数字を低いものにしたいというふうに考えておるわけでございまして、これは法律におきましてその限度を決めておるわけではございません。  その実行におきまして、具体的には私どもの保険約款におきまして決める事項でございますけれども法律の御審議をいただきました上で、このすそ切りの限度を中小企業の方にも利用していただきやすいような線に落ちつかせることによって、ただいまの先生の御指摘中小企業にも十分活用できるような制度にいたしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  59. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これはこだわるわけではありませんが、今年度の場合には半年分を想定して四千億という引き受け限度があるわけですし、それから、いま局長がおっしゃいましたように、ある一定の額の上での限度というものをどこに引くかということによっては、せっかくこういう新しい制度ができながら中小企業がすそ切りに遭って余り恩恵に浴さないというふうなことになったのでは非常に問題があると思うのです。そこで、いま言ったような趣旨を十分に配慮の中に置いてぜひとも対処されるように望みたいと考えておるわけです。  ところで、プラント輸出の問題についてはもう少し詳しく聞きたい点がたくさんありますけれども、これは相当時間が長くなりますから、そこで、輸出保険特別会計の運営、経理の問題に関連して若干時間お伺いしたいと思うのです。  法律の十六条以下に輸出保険審議会がありますけれども審議会の構成と、それから年に何回くらい開かれておるのかということを一これは定例に開かれていないとすれば過去の実績でも結構ですが、そういう点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  60. 森山信吾

    森山(信)政府委員 輸出保険審議会は、輸出保険法に基づきまして、通商産業大臣及び委員十一名以内で構成されておるわけでございます。委員内訳といたしましては、関係各省庁の職員及び貿易、金融または保険に関しまして、学識経験のある者のうちから通商産業大臣が任命することになっておるわけでございます。  輸出保険制度につきましては、経済環境の変化によりまして機動的に対処して制度改正を行ってまいりましたが、これらの制度改正に当たりましてその都度審議会の議を経ておりまして、輸出保険の運営に関しまして毎回貴重な御意見を得ているところでございます。  最近では、本年二月に審議会を開催いたしまして、輸出保険制度の創設につきましていろいろと御意見を拝聴したわけでございます。  なお、先生の御指摘の、どの程度の頻度において実施しているかということでございますが、ただいままでに二十七回実施をしておるわけでございます。
  61. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 十七条によりますと、法律で通産大臣が会長になられておるわけですね。そうすると、通産大臣が諮問して通産大臣がこれに答えるというかっこうになりますか。
  62. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、輸出保険審議会は輸出保険法に基づきまして運営されておるわけでございまして、先生の御指摘のとおり、通商産業大臣が会長でございますのでそういったことになろうかと思いますが、現実の問題といたしまして、通産大臣が諮問をして通産大臣が答えるということでは十分ではないというふうに考えておりますので、実際に審議会が行われます際には、議長を定めまして、学識経験者のうちから適当な方を議長に選出いたしまして、その議長の主宰のもとに審議会を行っておるという現状でございます。
  63. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 法律では「随時意見を述べることができる」というふうにあるわけですが、最近特に重要な問題について通産大臣あてに審議会として意見を提出されたとかあるいは意見を述べたということがあれば、こういった内容を——最近でいいですけれども、これがあれば明らかにしていただきたいと思います。
  64. 森山信吾

    森山(信)政府委員 審議会といたしまして文書をもって意見を提示したことはございませんが、審議会の開催の都度意見をまとめておるわけでございます。  先ほど御答弁申し上げました中で、去る二月に輸出保証保険の発足に伴います意見をいろいろお聞きしたというふうにお答え申し上げましたが、その代表的な意見を申し上げますと、保険金の支払いに際しましては迅速かつ的確なる処置を講ずること、第二番目に中小企業に対する十分なる配慮を行うこと、等の意見を賜っておるところでございます。
  65. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それでは、もう一つ伺います。  四十八年の会計年度で会計検査院から指摘を受けた項目があるわけです。この問題については時間の関係もありますから細かにはいま申し上げませんけれども、これに関連をして当時の——これは大臣が河本大臣でありましたけれども、省内に輸出保険業務改善委員会というものを発足させて、そして資料を強化しながら十分に正確な経理を行っていく、こういうふうな答弁が本会議であったわけですが、ここで指摘された内容は単に技術的な問題ではなくして非常に重要な内容を含んでおるのではないかというふうに当時私は考えておったわけであります。  その後発足をしましたこの業務改善委員会というものがどのような機能を発揮して、どのように処理をされたのか、この問題についてはひとつ正確にお答えをいただいておきたいと思うのです。
  66. 新井市彦

    新井説明員 御指摘の点につきましては、まず、その後の処理でございますが、保険料の徴収作業に努力いたしました結果、昭和四十九年度末までに全案件の作業を終了いたしまして、昭和四十七年度及び四十八年度の輸出保険特別会計決算参照書である財務諸表等の確定計数を把握することができましたので、会計検査院の実地検査を経た後、昭和五十年四月に内閣総理大臣名で財務諸表等を訂正いたしたわけでございます。これに関連いたしまして、再びかかる事態が起こらないように業務内容を改善するという目的をもちまして、昭和五十年四月に輸出保険業務改善委員会を設置いたしていろいろ検討を進めたわけでございます。構成は、委員長貿易局長といたしまして、あと関係課の課長をもって構成しております。  検討いたしました点は大きく分けまして三点ございまして、第一点は保険料徴収方法の改善を図る、それから第二点は、業務処理の迅速化のための改善を図る、第三点は情報収集体制等の改善を図るということでございます。その結果を踏まえまして、以下に申し上げるような措置を講じたわけであります。  第一点は、保険料の徴収時期につきましては、原則として保険契約締結後一月以内に納入告知をすることにいたしました。第二点は、決算関係の決裁範囲を従来局長専決ということにしておりましたのを事務次官専決にいたしたわけであります。第三点は、会計経理の適正を一層期するために関係職員の研修を行うということでございます。それから第四点といたしまして、現在の電算機処理システムの抜本的改善を図るということで、現在のシステムを第一期といたしますと二期目に当たるという意味におきまして、私ども二期システムと呼んでおりますけれども、この新しいシステムの開発を進めているわけでございます。
  67. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 その後十分に体制をとって処理をされたと思いますが、言うまでもなく、ここで指摘をされました輸出代金保険の保険料は保険の契約時に当然徴収しなければならないことになるわけですけれども、これが行われなかったというふうなことでありますから、技術的な問題もさることながら、この点については最も基本的な問題なので、二度とこういうふうな誤りを繰り返すことのないように重ねて指摘をしておきたいと思うわけです。  法案についてはいろいろ関連をして、特に先ほども申し上げましたが、プラント輸出の問題については非常に大きな問題がまだたくさんあるわけです。特に、今後どうするかというふうな問題も、単に輸出保証保険の問題だけではなくして、プラント輸出そのものについて日本はどう対処しなければならぬかというふうな非常に大きな問題があるように思いますが、これは法案審議の今後の過程においてさらに時間があればいろいろ御質問を続けて申し上げたい。こういう態度を保留して、きょうの質問はこれで一応終わらせていただきたいと思います。
  68. 野呂恭一

    野呂委員長 佐野進君。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、この輸出保険法の一部を改正する法律案について、この内容がいま渡辺委員から発言がありましたように非常に多岐にわたりますので、十分質問をしてみたいと思うわけでございますが、もう十二時十分になりましたので、きょうはその内容について具体的な質問をする時間的な余裕がございません。したがいまして、総括的な質問大臣を中心にしてしてみたいと思うわけであります。  この法律の提案される経緯につきましては、提案理由の説明ないし貿易局長を初めそれぞれの見解の表明がございまして、私ども理解をするにやぶさかではないわけであります。したがって、私どもはこの法案については前向きに評価し、できればこの質疑を通じて賛成の方向で取りまとめたいという考え方に立っておるわけであります。しかし、いま質問が行われておりましたとおり、この法案が提出されてきた背景ないしこれからの情勢を分析してみますると、そう簡単に賛成して法案を通していいのかという危惧もなきにしもあらずの状況でございまして、そういう意味合いにおきまして、私どもは慎重に内容の検討を続けてまいりたいと思うわけであります。  そこで、大臣にまず質問をしてみたいと思うわけでございまするが、日本経済の今日の現状の中で、海外との貿易はもちろん、プラント輸出というものが占める日本経済に与える影響というものは非常に大きいということはだれしも否定しないわけであります。しかし、否定をしないにもかかわらずいささかの危惧を持っておる。特に、その危惧が現在行われておる民間ベースによるところのプラント輸出を初め、海外における工事の金額が大きくなればなるほど、このことがもし失敗したならば、あるいはこのことがわれわれ日本の国としての立場に立つ当初の意図ともし相反したならばという心配は絶えないわけです。その種は絶えないわけです。  したがいまして、大臣は、この法律を提案する形の中で、特に海外におけるところのプラント輸出ないし工事に対して、この法案が成立すれば積極的に民間ベースによるところの取り組みが増加していくということはもう予想にかたくないと思うのでありまするが、それらの点について、法案内容についての歯どめではなくして政治的な面におけるところの歯どめ、経済的な面におけるところの歯どめというものについてどう御判断なされておられるか、この際基本的な考え方として御見解をお示しいただきたい。
  70. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問は、御提案申し上げましたプラント輸出あるいはまた大型プロジェクトに対しまする輸出保証の問題が、政治的にまた国際経済の面にどういう[意味を持ち、また、日本のこれからのプラント輸出等々についてどういう用心をしなければならぬのかということだろうと思います。  御案内のとおりに、今日日本が経済大国に相なりましたにもかかわりませず、また、現在獲得いたしておりまするドルの相当額の累積というものも、国際的に見ますれば非常に評価されておるのでございますが、反面におきまして、国際協力あるいはまた対外経済協力という面におきましては厳しい批判をこうむっておるような状況下にありますことは御案内のとおりでございます。その中におきまして、対外経済協力の中におきましても、ODA、いわゆる政府援助の問題につきましては非常に厳しい批判をまたこうむっておりますと同時に、国際的なGNPに対しまする一%の海外援助、これはODAも民間協力も含めました意味におきましての姿でありますが、一回だけ一%を超えまして、またさらに四十七年あたりからダウンをいたしてまいっております。この非常な民間進出につきましての約束についてはあちらでもこちらでもたくさんつばをつけますけれども、現実には一向にそれが実現しないじゃないかという非常に厳しい批判をこうむっておりますことも先生御承知のとおりでございます。  一体その原因が那辺にあるのだろうかという問題につきましてはいろいろと問題もございまするが、一番われわれがその問題について指摘いたしますことができますことは、先ほども政府委員からお話を申し上げたように、欧米各国が相当なプラント輸出をいたしておりますのにかかわらず、日本プラント輸出がコミットメントはいたしますがディスパースしない原因は、そこにはメカニズムの点におきましてやはり非常に不備がある。その一番大きなものは何かと申すならば、ただいま御提案いたしておりまするような、発注者がボンドの問題を要求したに対しまして、これを政府といたしましてギャランティーすることがない段階におきましてはみんな金融機関の自己負担にならざるを得ない。ことに、輸出の中におきましても、貿易品のような単体の輸出ならば別でございまするが、プラントあるいはプロジェクトというようになりますると、そこには役務あるいは技術といったような、つまり、担保力の点におきまして従来のような金融機関の保証がしにくいものがどうしても非常に多い。そういう面におきまして、これを金融機関がボンドを出し得るようにいたしまするためには、ただいまのような新しいと申しますか、そういう制度の改正をいたすことによりまして保証することによって初めて発注者に対しまするボンド量というものを金融機関が発行し得るに至るのだということで、いろいろと検討も加えました末に本改正を特に提案いたした次第でございます。  しかしながら、ただいまお話のように、プラント輸出というものは、オイルマネーと言われまする産油国の方面からいろいろと大型のプラントあるいはプロジェクトを申してこられる。この産油国のオイルダラーを日本にリサイクルするということは、国際経済の上から言いましても非常に重要なことであると存ずるのでございます。しかしながら、同時にまた日本経済にとりましても非常に重大な意義があることだと私は存じておりまするが、反面、また、プラント輸出というものは、場合によりましてはそれだけ貿易に対しまするシェアを指を詰めるような結果にも相なるということも考えなければなりません。でございまするから、その地域あるいはまた銘柄の検討を要することはもちろんでございますが、他方、また、もし日本がそのオファーに対しましてそれを承諾いたさなかった場合はどうなるかと申しますると、先進各国は非常な勢いにおいてプラント輸出なりプロジェクトを虎視たんたんとしてねらっておるというのが今日の国際競争場裏でございます。でありまするから、日本自体といたしましても慎重な配慮をいたしながらも、同時に、それにつきましてはある程度積極的に協力をいたしてまいりませんと、これまた現実に欧米各国からどんどんととられてしまっておるようないろいろなオファーが現実にあるわけであります。  そういう面からいたしましても、本制度を速やかに改正いたしまして実現することによって国際的に日本プラント輸出あるいはプロジェクトを積極的に獲得してまいりたい、同時に、それは国際的に見てもオイルマネーのリサイクルという点で非常に意味もあることでありまするし、また、日本経済にとりましても非常に大きな貢献度を持つものである、かように考えます。同時に、また、景気浮揚対策といたしましても、波及効果が非常に大きいということも詳細な御報告を申し上げたとおりでございます。  どうぞくれぐれもよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  71. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣の基本的な考え方はわかったのですが、私どもいささか勉強をさせていただいておるわけですけれども、その経過の中で、このボンド保険は、日本経済の現状ないし経済協力の実態あるいはその他いろいろな条件の中で、政府ベースによるところの法律改正の熱意が高くて、民間ベースそのものはこの法律に対してそれほど大きな期待というか、要求というか、そういうものがないのではないかという一部の批判というか、考え方等もあることを私ども聞いておるわけでございまするが、要するに、政府が保険をつくって保証してやる、そして、その保証を背景として海外に対してプラント輸出ないしプロジェクトによるところの建設業務等々を推進する、そして、その推進する方向はわが国経済の発展に寄与する、こういうような関係の中で、地元、いわゆるそれぞれの対象国に対する、対象国の立場に立つところのブラント輸出その他ではないというような考え方もその面からうかがわれるわけであります。  私は、そういう面からここで議論してみたいとは思いません。冒頭に申し上げたような形でございますから、したがって、そういう点については十分なる配慮をしていかなければならないと思うのでありますが、この法案成立に対して関係する各方面の意見はどのようなことであるか、これをひとつこの際大臣から明らかにしていただきたいと思います。
  72. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  これは政府ベースのいわゆる政府援助、ODAの関係と申すよりも、むしろ、このボンド保険の問題は、大型プロジェクトに対して民間のベースにおいてそれを受け切れなくなっておるというような国際的な大規模化の傾向に対しまして、その必要性を非常に厳しく痛感いたしておるわけでございます。というのは、従来のようなプラント輸出あるいはまたプロジェクトでございますればある業界の企業努力程度でもってできましたことが、これがだんだんと規模が大きくなってまいります。特に、OPECの石油ショック以来産油国の方から日本に対しまするいろいろな協力の要請があるわけでございます。御案内のとおり、三木総理、中曽根通産大臣、あるいは小坂外務大臣や河本通産大臣等々が産油国の各方面においでになりまして、いろいろな御要望にお約束をして帰られたことは御承知のとおりでございます。しかるに、そういうふうな産油国方面の要望というものが具体的な金額のあれから言いましても非常に多額なものになってまいります。  一例を申すならば、イランのテヘランから聖地に参ります新幹線の要望等というようなものもございます。これらは工事量からいたしますと三兆円程度に相なります。そうすると、そのフィージビリティースタディーであるとかコンサルティングだとかいうものもさらに必要でございまするから、加えますると、ボンドの場合の実際のビッド・ボンドでありますとか、パーフォーマンス・ボンドであるとか、そういうふうなことまで入れますと約三分の一ぐらいの金額に相なります。つまり、三兆円の工事量に対して一兆円ぐらいの資金が要る。  また、それだけではございません。ペルシャ湾に出ます鉄道の建設の問題でありますとか、あるいは肥料工場その他いろいろなオファーがみんな大型になりますと、民間業界では、企業連合、コンソーシアムをつくりましても、なおとてもこれを引き受けることができない。しかしながら、そのいまの向こうのオファーを受けることができれば、これは日本経済に対しましても非常に大きな貢献であると同時に、先方の国も日本技術日本の進出を非常に期待いたしておる。こういうものもとうてい受けられないというのが現実の問題でございます。さような要請にこたえてまいりますためには、いわゆる民間企業体の連合もつくりましょうし、同時に、また、それに対しましては、政府もバックアップする国際的な大規模な体制をとってまいらなくてはそういうふうな大型のプロジェクトやプラント輸出に対する要請に対してこたえられない。それが本制度の改正を最も強く期待し、要望するように相なった経過でございます。  さような意味におきまして私どもは数年来この問題に取り組んでまいったのでございまするが、まあ、いろいろと紆余曲折を経まして今日の改正案に相なったような次第でございます。
  73. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、私は、大臣ないし関係局長にいまの答弁を踏まえてひとつ聞いてみたいと思います。時間がございませんからきょうは総論だけで、あと、この次質問する内容についてはあらかじめ申し上げておきたいと思うわけであります。  いま言われたように、民間ベースによるところのプラントないしプロジェクトに対するボンド保険の創設というような形になるわけでありまするが、私どもが心配しておることは、先ほど来お話のございましたように、当面の政治の重要な課題である日韓癒着問題等を契機にして、かつて行われてきた問題等がさらに広がっていくのではないか、そしてまたそれを広げる背景としてこの保険が創設されるのではないかということで、したがって、その問題の本質をえぐり出す以外にこの問題に対して賛成するわけにはいかないのではないかという議論等もあるわけでありまするが、私どもは平面的にこれをとらえ、したがって、この問題でいま出されている政府の考え方がそこにあるというぐあいには判断しないで、大臣の御答弁をそのまま受け取って質問をしてみたいと思うわけであります。  そういたしますると、この法案は過去、現在、将来というふうになっていくわけでございますが、この法案の持つ意味が過去においてはどうであったか、そして、現在はいま御説明があったわけでございますが、将来はどうなるのかという点について若干質問してみたいと思うのでございまするが、基礎産業局長がお見えであるようでございますからお聞きしますが、たとえば過去に、海外経済協力ないしは大型プロジェクトとしての大きな仕事として、いわゆるウジミナス製鉄所の建設が日伯両国の合弁によって強力に進められておるわけですが、これがこのボンド保険との関連の中で、現在じゃなくて過去の問題としてどのように位置づけられるのか、この実績と相関連しながら将来への展望としてどういうぐあいになるのか、これをこの際お聞きしておきたいと思うわけであります。  それから、貿易局長にお聞きをしておきたいのですが、たとえばイランにおけるいまのお話がございましたが、これもすでにある商社が社運をかけて取り組みつつあるイランとの間におけるところのプロジェクトがその建設を進めつつあるわけであります。これはこのボンド保険との関連の中でもうすでに進められつつあるわけですから保険の業務は必要ないわけでありますが、将来の問題として、これらの問題が発生した場合、その企業そのものが十分その力を持ち得ているという状況の中でこの保険が創設されたという形の中においては当然これがその対象としてなってくるであろうと予測されるわけでありますが、これらの問題についてはどうなっていくのかということであります。  それから、もう一つ、建設関係でありますが、ここ数年来における最大の建設業務の中においてよく言われておる問題は、スエズの開削業務を某社が行っておるという形であります。これはスエズ、いわゆるエジプトとの間におけるところの取り決めであろうと思うのでございますが、これはどのような経過の中でその保証が行われておるのか。当然いわゆるボンド保険ではございませんから、海外におけるところの金融機関がそれを保証しておると思うのでございまするが、これらの問題について、これら建設業務というものは非常に当たりはずれが多い。特に、後進国と言うとちょっと言葉が過ぎますが、低開発国との間の協定においては政治的に不安定な要素等もあって、むしろこちらが保証してもらわなければならぬような状況下にもある場合があるわけでございます。これがこの保険創設に伴って、改正によりまして、国内における需要の不足を打開するために積極的に海外進出を図っていくということが当然予測されるわけであります。  この関連の中で三つの具体的な問題を質問申し上げましたけれども、その点についてこれらの問題がどうなるのかという点についてそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  74. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 ウジミナスの件についてお答え申し上げます。  突然の御質問でございましたので調査がよく行き届いていないかもしれませんが、感じを申し上げますと、ウジミナスの件は日本側が資本参加をしてナショナルプロジェクトとして進めたプロジェクトでございますので、先方側は日本信用いたしておりましたからボンドの問題は発生しなかったというふうに承知いたしております。
  75. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま佐野先生から御指摘のございましたイランの案件でございますが、恐らく石油化学のプロジェクトではないかというふうに了解いたします。  これは主として合弁企業という形で行われたものでございまして、現実にその事業の遂行に必要なプラントにつきましては今後輸出が出ていくというかっこうになっておりまして、巷間伝えられております金額は、合弁に要する、いわゆる資本参加的なもの全部を含めたものでございまして、佐野先生に御了解いただいていると思いますボンド保険の対象はプラント輸出そのものあるいは役務等の建設工事というものでございまして、いままではそういうものは保険の対象にはなっていない、今後の問題として保険の問題が出てくる、こういうふうに考えておるところでございます。  スエズの運河のしゅんせつの関係でございますが、これはいわゆる経済協力案件でございまして、時間的な制約もございまして保険の対象とはなっていないという現状でございます。
  76. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま質問をちょっとしてみたわけでございますが、御承知のように、この法律改正そのものは、われわれが批判をし、このものに対して反対をするというものでは決してない、今日の経済、社会ないし政治の情勢の中においては一定の評価をするにやぶさかでないということは冒頭申し上げたわけであります。しかし、いま質問を続けていく冒頭に総括的な質問を私はしておるわけでございますけれども、この内容はきわめて多くの問題点をはらんでおると思うのであります。  したがいまして、きょうはもう時間がございませんから私はこれで質問を終わりまするが、改正案内容はもちろん、いままでの輸出保険の運営の関係内容あるいはプラント輸出の問題、経済協力の問題その他等につきましては、次の機会に大臣ないし関係局長に十分質問をしてみたいと思うわけであります。  いずれにせよ、先ほど渡辺委員からも質問がありましたとおり、輸出保険法の一部を改正する法律案は、今国会への通産提出の法案としてはきわめて少ない法案一つの重要法案として出されておるわけでございますから、私どもも真剣にこれから質問をしてみたいと思うわけでございます。私も十分勉強いたしますが、大臣もこれらの問題についてこの次までの間に率直にお答えができるような体制をおつくりいただきたいということを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  77. 野呂恭一

    野呂委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  78. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  79. 玉城栄一

    玉城委員 それでは、この輸出保険法改正案につきましてお伺いをしてまいりたいわけであります。  この輸出保険法につきましては、午前中の質疑でも少し感じたのでありますけれども、いわゆるわが国貿易立国という特殊な立場並びにわが国の国際経済に果たすべき役割りと申しますか、そういう問題並びに国内における中小企業への波及的な効果の問題等、いろいろな問題がこのボンドの創設ということには絡んでくると思うわけであります。そういうわが国貿易立国という特殊な立場並びに対外経済協力の問題、国内の中小企業へのいろいろの効果の問題等をはずして、ただ、輸出保険法の改正、ボンドの創設ということのみをとらえていきますならば、この法案は言われるところの大企業中心的なものになりかねないというようにも午前中の質疑を通して私は感じたわけであります。したがいまして、この法案につきましては、政府の対外経済協力の問題等あるいは国内の中小企業等へ及ぼす効果の問題等が当然明らかにされていかなければならないと、私はこのように感ずるわけであります。  大臣も、この間の本委員会での所信表明の中で、この部分について、「世界経済の発展に積極的に寄与する観点から、経済協力の推進はきわめて重要であります。しかしながら、わが国の経済協力の実績は、国際的水準に比べておくれをとっております。このため政府は、五十二年度予算案において経済協力予算の充実に努めております。また、当省の予算ではコンサルティング企業の育成対策費を大幅に増加するとともに、プラント輸出海外建設工事を促進し、経済協力を円滑に実施するため、輸出保証保険を新設することといたします。」というようにおっしゃっておられるわけであります。並びに総理も施政方針において、開発途上国との経済協力の強化ということを同時に強調しておられるわけであります。  私はそういう政府の基本的な立場ということから理解をしておったのでありますけれども、実は、大臣が就任早々のある会合において、日本が協力、協力と力を入れてプラントなどを輸出するから東南アジアの途上国に輸出競争力をつけさせてしまう、今後の輸出プラントはセコハンにすればよい、と、こういう御発言をされたようでありますけれども、これは私はある経済誌の報道で読ませていただいたわけであります。したがいまして、この発言がもし事実だといたしますと、私が先ほど申し上げました政府の基本的な考え方と、この輸出保険法の改正の問題と、どうもちぐはぐな感じがするわけでありまして、その点で、まず最初大臣の基本的な考え方を、この対外経済協力の問題並びにボンド創設という問題についてお伺いをしたいのであります。
  80. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御質問のことは、私は実は全く言った覚えはないのでございます。私が考えますのは、むしろ、対外経済協力でいままであちらにも約束をし、こちらにもコミットをいたしておりましたものがみんな食言になっておる。日本の約束というものは、約束だけははでにするけれども実行を伴わないということで、いまやだんだんと国際的にも非常な厳しい批判をこうむっておるような現状でございます。  また、翻って国際経済という観点に立ちます場合に、御案内のとおりに、カーター大統領が就任するやモンデール特使を日本に派遣されて、それで西独日本アメリカとが三者相携えて世界景気を回復しようとさえ申されておるような状態で、そのことは何かと言うならば、産油国に偏在いたしておりまするオイルマネーを還流するということが国際経済的意義も非常に重大なものがあるのでございます。  反面、また、日本の経済のこの落ち込んだ状態を回復いたしまするためには、もちろん資源のない日本でありまするから自由貿易によります貿易立国でありまするけれども、しかしながら、単なる単体の貿易がECあるいはアメリカ方面でいろいろ問題を起こしていることを考えますれば、むしろ相手国の要請に従って、それにこたえて積極的に協力をして差し上げるというこのプラント輸出あるいは大型プロジェクトは非常に両国が喜び、かつまた日本にとりましても非常に波及効果の多い、景気回復の大きな要素であると思っておるのでございまして、ただいま御指摘のように、セコハンでもいいから、余っているからやれというような表現は私はつゆ考えてもおりませんし、申した記憶がありません。むしろ情熱を持ってこれを推進いたしておるというのが私の姿勢でございます。
  81. 玉城栄一

    玉城委員 ただいまの大臣のお考え方を承りまして安心したと申しますか、そういう立場に立ってこの法案審議並びに次の質問をさせていただきたいわけでございます。  午前中の質疑の中でも出てまいったわけでございますけれども、これまでのプラント輸出並びに海外建設工事等実績につきまして御報告があったわけでございます。その点で詳しい数字は私もまだメモをしていないわけでございますけれども実績としては非常に少ないわけです。そこで、わが国の経済協力という立場で現在までの実績をとらえて考えますときに、特に、わが国のいろいろのやり方に対して大きな批判の声が多く出ておるわけです。そういう中でボンドの創設によってどんどんプラント輸出あるいは海外建設工事を促進していこうという趣旨は理解できるわけであります。また、わが国の特殊な立場からしましても当然そういう方向でなくてはならない。同時に、並行して、わが国の国内において九九%を占める中小企業の方々に対して、ボンドの創設によってどういう効果があらわれていくのかということを具体的に政府の方で説明をされていかないと、最初に申し上げましたとおり、いわゆる大企業中心型のものになりはしないかという感じがするわけでありまして、中小企業関係に対する具体的な波及効果、これを重ねてお伺いをしたいわけであります。
  82. 田中龍夫

    田中国務大臣 計数その他中小企業に対する波及効果の問題は政府委員からお答えをいたしますが、その前に、先生がただいまおっしゃいましたところの、日本各国に約束して、しかもそれが積極的に履行できないというような問題に対しまして一言だけ申し上げておきたいことがあります。  対外経済協力は二つの種類がございまして、政府の直接援助によります、いわゆるODAという分が先進国におきましては相当程度、〇・三六ぐらいいっておるにかかわりませず、日本の場合には〇・二というようなのでありまして、これに対しまして内閣が新年度予算をつくりますに当たりましては、予算編成の大綱をつくります最初政府の直接援助は〇・二八ということをまず決めました。もう一つは、ただいまの民間その他のプラント輸出大型プロジェクトに対しまして、これが約束だけで履行できない最大の問題は、何と言いましても輸出保険、ボンド保険というものがないという機構上の欠陥でございまして、それが今回のボンド法律の創設によりまして銀行のボンド発行に伴います不安感が減少して、したがいましてプラント輸出が促進されるというふうな結果と相なります。このODAの関係政府援助と、それからもう一方はこのボンド保険の創設、この二つが今後の対外経済協力の積極的な推進の車の両輪とも申してよろしいと存じます。  さらに、御質問中小企業に対します波及効果あるいはまた実績につきましては政府委員から詳細にお答えを申し上げます。
  83. 森山信吾

    森山(信)政府委員 中小企業が占めておりますプラント輸出上のウエート等につきまして、まず御説明を申し上げたいと思います。  中小企業プラント輸出関連を持つケースといたしまして、三つくらいのケースがあるのではないかというふうに私どもは考えております。その一つは、中小企業が直接生産をいたしまして直接輸出をされるケース、それから中小企業の方々が生産をされまして、いわゆる大商社等を通じまして輸出をされるケース、さらに、中小企業の方方が生産をされまして中小商社を通じて輸出をされるケース、こういうケースがあろうかと思います。したがいまして、ただいまからお答えいたします数字は以上の三つをまとめて申し上げる次第でございます。  昭和五十年の輸出承認実績のうちで、ただいま申し上げました中小企業が関与している部分につきましては、件数で一〇%でございます。それから金額では〇・五%、これは金額は大変少ないわけでございますが、これをプラントの規模別に見てまいりますと、一件当たり一千万ドル未満のプラントについて見てみますと、中小企業のウエートは急激に高まりまして、件数で約五五%、金額で約二一%に達しておるわけでございます。このほかプラント全体について見てみますと、先ほど玉城先生から御指摘のございましたプラント輸出に占める生産の割合は、中小企業につきまして通産省でつくっております産業連関表を使いまして試算いたしますと三五・四%ということでございまして、これは言いかえますと、一つプラントの中に占める中小企業依存率が三五%に達しておるということになろうかと思います。  なお、比較といたしまして自動車の場合と鉄鋼の場合を計算してみたわけでございますが、この両業種とも通常非常にすそ野の広い産業で中小企業関連する分野が広いというふうに言われておりますが、その中小企業への波及効果は自動車の場合が二七・七%でございますし、鉄鋼の場合が二三・八%でございまして、先ほどお答えいたしましたようにプラントの場合は三五・四%と、従来総合産業と言われた自動車や鉄鋼に比べましてもかなり中小企業のウエートが高いということが数字で御説明申し上げられるわけでございます。  なお、こういったプラントに占める中小企業の非常に高い業種でありますものを、今後ボンド保険というものをつくらしていただきました場合に、その恩典を受けるのは大企業ではないかという御指摘でございましたが、その点につきましては、中小企業の方に十分に御活用いただけるような、たとえば引受限度の下限、これをすそ切りと言っておりますが、そのすそ切りを段階的に設けまして、かつ、最下限のすそ切りはできるだけ低いところに設けまして、中小企業の方々に十分御利用いただけるような配慮をやってみたい、かように考えておるところでございます。
  84. 玉城栄一

    玉城委員 最初大臣の御答弁の中にございましたけれども、このプラント輸出にしましても、これまでのわが国の経済協力の実績にいたしましても、私なりのもので申し上げますと、たとえば一九七四年と一九七五年の二年連続してわが国は縮小している。前年の〇・六五%から〇・五九%に低下をしている。そして、DAC加盟国の十七国中十四位というのが現在の経済協力の実態です。並びに、政府開発援助の実績にいたしましても加盟国中十三位という状態です。プラント輸出状況にいたしましても年々伸びてはおるわけですけれども、しかし、それにしてもやはり西ドイツの三分の一以下というような水準にまだあるわけです。海外建設工事発注あるいは海外コンサルティングのこれまでの実績にいたしましても、やはりまだまだという状態であるわけです。それらの理由から、今回ボンドの創設ということを先ほどから強調しておられるわけでありまして、そのことはよく理解できるわけであります。  そこで、やはり大事な問題は、こういうボンドが創設をされまして、プラント輸出なり建設工事、大型プロジェクトというものが海外にどんどん行われていく場合、御存じのとおり、現在でもわが国に対する批判といいますか、そういう声が大変あるわけですが、したがいまして、政府とされましては、こういう新しい制度を創設して促進していこうというからには、そういう関係企業の方々に対するきちんとした指導なりそういう方針というものが当然なくてはならないと思うわけでありますけれども、その点についての大臣のお考え方をお伺いをしたいと思います。
  85. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問の中にはいろいろな問題が含まれておると存じます。  七四年、七五年の落ち込みは、その前に七三年が一・四まで一遍上がったのでございますが、OPECの石油ショックで非常な不況が参り、同時にこの一・四まで参りました内容が、政府援助の方ではずっとコンスタントでありますが、民間の方の進出がそういう点では非常に投資意欲が喪失して七四年、七五年の落ち込みになっておることをまず申し上げます。  それから、第二の点は、プラント輸出の意欲でございますが、世界各国、なかんずく欧米先進国に比べますと、御指摘のように、まことにDACの中においてはお恥ずかしい次第でありまして、われわれはこの点はぜひとも改善をしなければならぬということでございます。  そこで、何のためにそういうふうな状態かということを分析いたしますと、民間の進出の関係というものが、いまの銀行保証ボンド保証というものがないがためにこの進出がよその国と比べまして契約の成立ができない、入札その他におきましてもみんな欧米の各国にとられてしまう、また、進出意欲を持っております企業体におきましてもこれが中途からお手上げになるというような結果でございますので、このボンド保険の創設によりまして今後はそれをバックアップしていかなければならぬ、こういうことでございます。  第三の点は、さて進出企業の今後のあり方でありますが、多国籍企業がいろいろ問題を起こしたり、あるいはまた過度の商社活動がいろいろな問題を起こしておるというようなことは、国連の中におきます多国籍企業に対しましての倫理性を強調いたしておるというようなことにもかんがみまして、われわれも今後、進出企業のお行儀と申しますか、その両国の間の橋渡しをし、両国の間の共存共栄の実を上げるという世界経済的な意味における非常に高い理想とまじめな活動がなされなければならない、その間に不当な不公正なことがないようにしなければならぬと考えております。  以上三点が御質問の中に含まれておることだと存じますので、お答えをいたしておきます。
  86. 玉城栄一

    玉城委員 そういうことで、一つの例にもなろうかと思うわけでありますけれども、最近サウジアラビアの政府高官が東南アジアの訪問で、懸案になっていた四つの電化プロジェクトをインド、パキスタン、韓国、台湾に正式発注したということが新聞にちょっと載っておったわけですけれども、通産省とされましてはその点を御確認なされたでしょうか、お伺いいたします。
  87. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  88. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま御質問のございましたところの、サウジアラビアの電化プロジェクトに関しましてパキスタン等近隣諸国発注を切りかえたということは、私どもも公電で承知いたしております。  その理由といたしまして、特にこういった電源開発関係のプロジェクトにつきましては、先生御承知のとおり大変に土木部分を伴う分野が多いものでございまして、近隣諸国におきましてたまたまその土木に対するサービスを提供するに足る十分なる労働力の確保ができて、これが一つの力になりましてパキスタン方面に発注をされた、こういうふうに了解をいたしております。
  89. 玉城栄一

    玉城委員 その理由は、ただいまおっしゃったことも一つの原因と申しますか、理由になろうかと思うわけですが、実は、これもある経済雑誌に載っておったわけですが、このサウジアラビアの政府高官が来日したときに、特別座談会の中で、日本側のプラント輸出価格が非常に高過ぎる、あるいは談合が行われているんじゃないかというような相手側の政府高官の方の話でありましたけれども、そういうように、価格が高い、あるいは価格決定の過程において非常に納得のいかない点があるというようなことなどが言われておるわけであります。  先ほど申し上げましたように、ボンド創設によって大型プロジェクトあるいはプラント輸出あるいは海外建設工事をどんどん促進していこうという政府の御方針の中で、こういう関係企業の方々に対するきちんとした指導が相伴っていかないと、いまでさえ多くの問題が出ている中でなおまた問題が広がってくるのではないかという点が心配をされるわけであります。したがいまして、関連しておりますのでお伺いしておきたいわけでありますけれども、このサウジアラビアの場合、向こう側のおっしゃるところの、価格が高いとか、あるいはいろいろと納得のいかない価格構成であるというような点につきましてお伺いをしたいと思うのであります。
  90. 森山信吾

    森山(信)政府委員 お答えを申し上げます前に、日本プラントがどういう理由成功したか、どういう理由成功しなかったかということを通産省で調べた数字がございますので、まず、その数字について御説明申し上げたいと思います。  最初に、わが国日本プラント成功した方を要因別に分類したわけでございますが、価格が非常にリーズナブルであるという理由成功したケースが二番目に多うございまして三二%程度、そういう理由ということでございます。  逆に、敗退をいたしました理由、つまりプラント輸出成功しなかった理由といたしまして、価格が高過ぎるという原因が一番多いということもございまして——実は、この価格が適当であるか価格が高いかということは諸外国との比例におきまして決まってくるわけでございまして、成功いたしたものは価格がリーズナブルであると言い、失敗したものは価格が高過ぎるという批判がございますので、この数字は大変分析を要する数字でございますが、そういう事実関係一つございます。  それから、玉城先生から御指摘がございましたサウジアラビアの件でございますが、日本入札価格あるいは契約予定価格が大変高過ぎるではないかという批判があることは私どもも新聞その他の情報でよく承知いたしておるわけでございますが、これには幾つかの理由がございます。  一つ理由といたしましては、コンサルティング段階に問題があるケースがございまして、日本プラント輸出の場合はできるだけ日本の行いましたコンサルティングを活用したいということは願望として持っておりますが、現実には外国のコンサルタントが行いましたコンサルティング結果に基づきまして図面を引くというケースが非常に多いわけでございます。その場合に、非常に忠実にコンサルタントの条件に従いまして工事予定額あるいは契約予定額を決めるということになりますので、比較的高いものになりがちである。つまり、一定の金額を想定いたしまして、それによって工事見込みをつくるのではなくて、すでにつくられたコンサルタントベースの話に従いまして見積もりを立てていくという日本のやり方が、ほかの国に比べまして日本は若干厳し過ぎるほどそういう面を忠実に行っているわけでございまして、これは当然高くなるわけでございまして、その辺につきまして相手国に対する説明が必ずしも十分でなかった面もございます。特にサウジアラビアの問題につきましては、そういう若干の誤解あるいは意思疎通の不十分さという点がございまして、そういう批判を受けたことは私どもも反省いたしておりまして、その点につきましての説明は今後十分に詰めていきたいというふうに考えております。  それから、もう一つの要因といたしましては、いわゆるプラント物と申しますのは相当長期にわたりまして工事を続けていかなくちゃならぬという問題がございまして、特に過去二、三年におきましては物価の上昇率はきわめて厳しいものがございました。今後どういう物価の上昇を示すかはまだ予測をしがたい点でございますけれども、一・応、日本入札業者といたしましては、コストエスカレーションと申しましょうか、物価が上昇することをあらかじめ見込みまして、それを入札価格あるいは契約価格に織り込んでいくというような問題もございまして、先ほど先生から特にサウジアラビアのケースにおいてはやや高いという御指摘を受けたところでございますけれども、その点につきましては、外交ベースにおきましても日本実情を十分向こう側に伝えまして、だんだんとそういう誤解を解いてもらいたいという努力をしておるところでございます。
  91. 玉城栄一

    玉城委員 ただいまの件につきましては政府側の方が詳しくおわかりだと思うわけであります。ただ、そういうことで相手側から不信を買われて、また新たなケースとしてキャンセルされたというようなことも伺っておるわけでありまして、先ほど申し上げましたように、わが国の対外経済協力の基本的な姿勢としていろいろと示唆に富むことをこの座談会の中で相手側の方はおっしゃっておるわけですが、この経済協力というのは、ただ単なる技術的あるいは資金的なものの協力ではなくして、ぜひ総合的な立場でやってもらいたい、そういう期待が大きいのだ、当然それに伴って教育の交流あるいは文化的な交流も同時に並行して行われるところに真の経済交流というものがあるのだ、また、そういう環境づくりを当然政府としてはやるべきではないか、と、そういうようなことも相手側としては言っておるわけであります。そういうことからいたしまして、やはり、これからのわが国の対外経済協力のあり方の基本的な姿勢が現在いろいろな角度から問われておるわけでありまして、これはきわめて大事な問題であると思うわけであります。  したがいまして、こういう問題に関連しまして、現在わが国の置かれておる世界の中におけるこういう経済的なあり方という立場から、ECの経済危機ということがいま言われておるわけでありますけれども、このECの経済危機につきまして、その原因あるいはわが国に対する影響、あるいはそれに対するわが国の対応の問題、あわせてEC関係の大使会議が行われたということも伺っておるわけでありますけれども、その内容、それらについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
  92. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま玉城先生からEC問題についての御質問が出たわけでございますが、まず、ECの今日の経済危機をもたらした原因と申しますか、これは一言で申し述べることは大変むずかしいと思います。  私ども感じております点を申し上げますと、まず、貿易収支の問題におきまして、ECは比較貿易収支が赤になる傾向の国々ではないかと思います。と申しますのは、日本と同じように資源、特に石油資源を持たない国が多いというわけでございまして、諸外国、特に産油国等から資源、エネルギーを買ってこなくちゃならぬという立場でございますから、当然に国際収支は赤になる性向を持った国々ではないかというふうに了解いたしております。  一方、そのECの中におきまして、ずいぶん昔からそれぞれ得意な分野を持っておる国々が幾つかございます。たとえて申し上げますと、イギリスでございますとか、あるいはフランスでございますとか、そういう国際海運あるいは国際金融あるいは国際保険の問題といったいわゆる第三次産業の分野におきまして非常にすぐれた特徴を持っておる国々が幾つかあるわけでございまして、その貿易収支と貿易外収支が相均衡することによりましてECのこれまでのバランスはとれておったのではないかと思いますが、最近におきまして、この貿易収支と貿易外収支の関係が必ずしも均衡を保てなくなったというところに現在のECの問題性があるのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。     〔橋口委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕  そこで、貿易収支の改善におきましては、いわゆる産業構造の変化という問題が絡んでまいるわけでございますが、この産業構造論におきまして、日本なりアメリカなりが過去十年間に行いましたような産業構造の転換というものが必ずしもEC諸国において十分に行われなかったのではないか。もちろん、ECのそれぞれの国々におきましてそういう産業構造が十分に転換していった国もございますけれども、中には、世界の、特に日本及びアメリカの産業構造の転換と同じレベルで転換が必ずしも行われなかった国々がございまして、そういう国々が若干の摩擦を生じまして今日の事態を招いたのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、そういった問題のあるECと日本との関係をどうしていったらいいかという御指摘でございますが、御承知のとおり、昨年、いわゆるEC旋風と申しましょうか、対日批判というものが起こったわけでございまして、これは一口に申し上げますと、日本からの輸出をある程度抑えろ、それから日本の輸入、ECから見ますと輸出でございますが、これを大いに促進しろ、と、こういう二つの注文があったわけでございまして、私どもの対応策は、確かに、ある一定の時期に集中的に輸出が行われることにつきましては好ましくないということもございまして、物によりましては秩序ある輸出を行うように業界を十分に指導していきたい、同時に、向こうの言っております輸出、つまりこちらら側から見ます輸入拡大につきましては十分な対応ができますように、特に通産省におきましては、つい最近もフランス向けに数十名の輸入促進ミッションを派遣いたしましたし、輸入を拡大することによりましてECとの貿易の均衡を図っていきたい、こういう思想で努力をしておるところでございます。  なお、EC大使会議の詳細につきましては、大変申しわけないわけでございますが、私は承知していないので、御勘弁をいただきたいと思います。
  93. 玉城栄一

    玉城委員 この法案改正に関係をいたしまして、こういう問題をお伺いしているわけであります。  ただいま、御存じのとおり、日米間におきましてはカラーテレビの問題とか、あるいはECとの関係ではベアリングの問題とか、あるいは発展途上国の問題とか、こういう貿易面と申しますか、わが国との関係でいろいろな問題が現実に出ておるわけであります。そういう中でのこれからのわが国としての対外経済協力のあり方はきわめて重要なものがあると思うわけでありまして、そういう中で、先ほども申し上げましたとおり、今度のボンド創設に伴いまして、特にプラント輸出あるいは海外建設工事等の促進に当たりましては、政府としてのきちっとした厳しい姿勢あるいは指導方針と申しますか、そういうものがないと、また繰り返しますけれども、いろいろなまた新しい問題が出てくるのではないかということが懸念をされるわけであります。  非常にこだわりますけれども、このボンド創設ということに非常に関係が深いだけに、そういう点を政府としてどのように考えておられるのか、重ねてお伺いをしたいわけであります。
  94. 田中龍夫

    田中国務大臣 戦後三十年、経済大国になりました日本の海外に臨みます根本的な姿勢の問題の御質問だと存じます。  確かに、今回のボンド保険の創設によりまして、経済的な面におきます大型プロジェクトプラント輸出等で、外国並みとまでいきませんでも、外国の驥尾に付してでもおつき合いできるような道が開けた。まだまだこれでもって十分だとは思いませんけれども、少なくとも援助国のびりっかすでついていくようなことがないだけのワンステップであろうと存じます。  ただ、もう一つ私が申し上げたいことは、経済協力だけで済ませるものではないと思うのでございます。その中で一番大事なことは、国と国との間の心の触れ合いと申しますか、文化的な協力の面あるいはその他いろいろの後発途上国に対します社会福祉関係の接触で、こういうふうな丸みを持った対外的なおつき合いがなければ、本当に欧米先進国に伍していくことはできない。  そういう点で私どもが一番残念に思いますのは語学の問題でございまして、欧米各国におきましては大量の人間がアラブの言葉をしゃべる。ところが、日本におきます外交官を初め、社会生活の面でアラビア語のしゃべれる人も少なければ、あるいはまたマレー語をしゃべる人も少ないというふうに、語学の点では非常に劣っておりますことにつきましても、これから大いに勉強もしなければならぬと思います。  それから、もう一つは、フイフイ教の回教社会に対するアプローチというものが非常に少ない。これもまた今日の日本の姿の大きな欠点でございます。  対外経済協力という経済面の進出と相まって、人道上の問題、文化上の問題あるいは語学上の問題というふうな人間と人間との間の接触という問題をさらに深めなければ本当の対外経済協力は実らない、こういうふうにさえ思っていることを一言申し添えます。
  95. 玉城栄一

    玉城委員 日本世界経済に果たすべき責任を果たしておらないというような声もあるわけでありますが、ただ、わが国の一方的な立場で今回の改正に伴うような促進というものがなされていったときに、なおまた多くの問題が起こらないように、政府としては当然厳しい立場で臨んでいくべきではないかと思うわけであります。  次に、最近、日中経済交流につきましては、七一年が往復九億ドル、七二年十一億ドル、七三年二十億ドル、七四年三十二億ドル、七五年三十七億九千万ドルと順調に伸びてきておるわけですが、七六年に来まして三十億三千万ドルと、約二〇%落ち込んでおるわけでありますけれども、その理由について御説明を願いたいわけであります。
  96. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま玉城先生から御指摘がございましたように、日中貿易につきましては、約三十八億ドル近くまで往復でいったものが昨年は三十億ドルに減ったわけでございます。  その原因につきまして私どもはいろいろ探索をしたわけでございますけれども、去る三月の二日、三日、四日の三日間にわたりまして、中国側から対外貿易部の第四局長の聖業勝と言われる方が団長となるミッションが東京へ来られまして、日本側と混合委員会というものを開いたわけでございます。この日中混合委員会と申しますのは、日中の貿易協定に基づきまして、行政ベースで相互に、つまり北京と東京で交代に委員会を開こうという取り決めに基づいて行われたものでございまして、先ほど申し上げましたように、今月の初めに行われましたものは第二回目ということでございます。前回は北京で開かれております。  この混合委員会におきましてまず冒頭に中国側から指摘されました点はただいま玉城先生指摘の点でございまして、三十八億ドル近くいったものが三十億ドルに落ち込んだ理由といたしましてどういうものがあるだろうかという検討をまずやったわけでございます。  これに対します中国側の基本的な考えをまず最初に申し上げておきます。異業勝団長は、いま御指摘のございましたような数字は中国側としてもとらまえておるけれども、これは長い目で見た場合に、自分たちとしては文句を言うつもりは決してありません、貿易というものは多い年もありますし少ない年もある、しかし、長い目で見ますと、日中貿易は今後必ず拡大基調をとるでございましょう、と、こういう前置きをまず説明いたしまして、その後に減った中国側の理由といたしまして二つ挙げておりました。  一つは、四人組と申しますか、これは異業勝団長の表現をそのまま使わせていただきますと、四人組という問題がございまして、中国の中において貿易に対する考え方についていろいろな意見の相違がありまして、昨年、一九七六年は中国側において貿易を促進するマインドが若干欠けた点があったという点が一つ、それからもう一つは、地震を初めといたします天変地異と言いましょうか、災害が中国で起きたことが中国側の理由である、と、こういうふうに中国側が申しておりました。  それから、日本側の理由といたしまして、中国側が見ておりますポイントは二つ言っておりまして、その第一点は、日本がオイルショック以降ある程度景気が立ち直ったといってもまだ完全に十分でなかったという点が一つ、それから、日本市場分散政策というものがある程度行われたためではないか、と、こういう見方を中国側が指摘したわけでございます。  これに対しまして、私どもの見方は、市場分散政策というのは、もともと私どもはできるだけ多くの地域、多くの国々と友好的な貿易関係を結びたいということでございまして、これは何も昨年急に行われたことではございません。やはり、何と言いましても、オイルショック後の経済立ち直りというものが必ずしも十分でなかった、特に一九七六年はその冷え込みの度合いがきつかった、これが理由ではないかというふうに考えておるわけでございまして、中国側の見方と日本側の見方とはおおむねのところで大体合致したのではないかというふうに考えておるところでございます。
  97. 玉城栄一

    玉城委員 日中経済交流につきましてはただいまの御説明でほぼわかったわけでありますが、十八億六千万ドルの累積赤字が中国側にあるわけです。しがたいまして、わが国としましても、当然、その受け皿づくりというものは今後の日中交流の発展のためにも急いでいかなくてはならないが、その点についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか、お伺いいたします。
  98. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたところが若干舌足らずでございまして、ただいま先生から御指摘を受けたわけでございますが、今後の日中の貿易関係といいますものは、一時的な減小はともかくといたしまして、長い目で見ますと発展生々の過程にあるというふうに考えておりますし、私どもも中国貿易というものは十分伸ばしていくべきであるということでございまして、その点、今後の展望ということも、先ほどお答え申し上げました日中混合委員会一つの議題となったわけでございます。  中国の基本的な考え方としましては、自力更生を主にいたしまして、対外貿易を従たる立場ということで今後の中国の国内の経済建設に努力をしていきたいということを強く言っておられましたし、私どもは、その中国側のおっしゃっておられる従たる立場の対外貿易につきまして、中国側の考え方を十分理解した上で日中貿易関係について対応を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  99. 玉城栄一

    玉城委員 わが国を取り巻くただいまの中国あるいは東南アジア、あるいは産油国、あるいはアメリカ、あるいはEC等、そういう国際環境の中で多くの対応を迫られていくわけでありますが、その中でも特に東南アジア、発展途上国とわが国との関係はいろいろな意味でこれからも大事な関係が保たれていかなくてはならない。そういう中での経済協力ということはわが国の大事なとるべき道であるわけでありまして、わが国東南アジア、開発途上国との関係について、改めて経済協力という立場からどのように認識をしておられるのか、お伺いをしたいわけであります。
  100. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  東南アジア方面に対しまする経済協力、これは経済協力全般の発足の過程から申しましても、また過去の実績から申しましても、われわれの経済協力の志向の重点は当初から東南アジアにございました。さような関係で、東南アジアに対しまする各国の協力というのは、日本といたしましては一番実績を残しておると存じます。しかしながら、御案内のとおりに、仏印半島のいろいろなデタントの問題やら、あるいはまたASEANの問題やら、そのほかいわゆる東南アジア、南東アジア方面におきましては、東西問題、南北問題が実はふくそういたしておる関係にありますので、経済協力としては最もむずかしい、しかもまた意を使わなければならないところだろうと思うのでございます。  と同時に、また、アジア民族が互いに手を取り合い共存共栄をいたしてまいらなければならぬという大きな理想に向かいましても、私どもはこれに対して真剣な努力を払いますと同時に、アジアの各国がかつてのいわゆる帝国主義的な植民地でありました中から民族自決として独立をいたしました、そのために貢献いたしました過去の日本努力というものも、これもまた評価されていいものがあります。  何はともあれ、資源のない日本でございまして、特にわれわれの経済になくてはならない原料、材料というものの給源として東南アジア方面があるわけでありますから、こことの関係の問題を、さらに別途な意味で南北問題を十分に理解しながら処理していかなければならない。しかも、あるいはソ連の勢力、あるいは中華人民共和国の勢力、あるいはアメリカの勢力、その他ヨーロッパの勢力までもここには錯綜してまいっておりますので、その間の情勢も非常にむずかしいものがございます。  何はともあれ、ASEANの問題につきましては新たな観点から重視していかなければならぬ、かように考えております。
  101. 玉城栄一

    玉城委員 このボンドの創設ということは、ただ単にこの改正案の中での新しい制度の創設ということではなくして、この問題から多くのわが国のあり方というものがとらえられてこなくてはならないと思うわけでありまして、特に、最初にも申し上げましたとおり、経済協力の問題あるいは国内における中小企業の問題等いろいろな問題が総合的にこの問題には絡まってくるわけでありまして、現実に、現在においてもいろいろと問題が起きている。そういう中で総合的な立場で、特に対外経済協力の面から考えますならば、あるいは文化的な交流とか、いろいろな総合的なものが当然樹立されて行われていかなくてはならないと考えるわけであります。  その中で、これはちょっと変わった問題でありますけれども、民芸品の問題ですが、これはやはり民族的ないろいろなものが表現されている。こういう民芸品の海外への紹介ということは、その一環としてまたそれなりの意義を持つと思うわけであります。したがいまして、民芸品のわが国の振興の状態、あるいはそういう輸出状況、これについて少し御説明いただきたいと思います。
  102. 森山信吾

    森山(信)政府委員 民芸品につきましては、プラント輸出とはまた変わった意味で重要性を持っているのではないかというふうに私どもは基本的に考えておるわけでございます。  つまり、私どもプラント輸出の振興を叫んでおりますゆえんは、経済協力の問題あるいは国内の波及効果の問題等もございますが、付加価値の高いものをつくりたいということでございまして、こういう意味で民芸品と申しますものは、言ってみますと伝統的なわが国の特異な生産物であるということでございまして、他に追従を許さないという貿易上のメリットを持っているのではないかということを基本的に考えておるわけでございまして、外貨取得率ということから考えますと、プラントと比べますとその比率は必ずしも高くはないかもしれませんが、先ほどお答えいたしましたように、ほかの国の追従を許さない、わが国古来の伝統的な産品であるという特徴は十分認識をいたさなければならぬのではないかというふうにまず考えておるわけでございまして、もちろん、民芸品と申しますのは、範疇といたしますと軽工業製品ということになるのが大部分ではないかと思いまして、現在の貿易構造の中でいわゆる軽工業品はだんだんとシェアを低めておりますけれども、その中におきましてやはり伝統的なもの、ほかの国の追従を許さないようなもの、こういうものの振興には大いに力を入れていきたい、これが基本的な姿勢でございます。  なお、具体的に申し上げますと、中小企業一般といたしましての施策のほかに、民芸品につきましては、伝統的な技術あるいは伝統的な技法を用いてつくられる伝統工芸品につきましては、伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づきまして、一般会計予算、金融及び税制面から総合的な助成措置を講じており、その体質強化を通じまして輸出競争力も強化されるものと期待をしておるわけでございます。  さらに、海外に対します輸出振興策といたしましては、民芸品の海外紹介を通じまして輸出振興を図るために、日本貿易振興会、ジェトロの行います海外見本市事業におきまして政府ブースというのがございますが、そこに昭和五十一年度から民芸品を展示するコーナーをフランクフルトで新設をいたしましたほか、五十二年度におきましても、海外向け広報誌によりまして民芸品を紹介するようなことをいたしておるわけでございます。さらに、昭和三十年以来日本優秀デザイン商品開発指導事業というものがございまして、それによりまして民芸品の諸産地の輸出向け製品のデザイン開発を指導しておるところでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 玉城栄一

    玉城委員 最後に申し上げますが、先ほどのサウジアラビアの例にもございましたとおり、いわゆるわが国の経済協力というものが相手側の期待どおりにスムーズに行われておらない。その理由一つとしてコミュニケーションの欠如ということを相手側も指摘をし、政府としてもまた、大臣の先ほどの御答弁の中にあったわけでありますが、そういういろいろな角度から、その一環としまして、ただいま申し上げましたわが国の多彩なその地域地域にあるところの文化、それに伴うこういう民芸品等を大いに振興せしめることは、大いに海外にわが国を知ってもらうという立場からも、また経済協力の一環としてもそれなりの大きな意義を持つものであると私は思うわけであります。  最初に申し上げましたとおり、このボンドの創設ということで、わが国の経済協力のあり方あるいはいろいろな問題を申し上げたわけでございますけれども、この法案の改正によりまして新たな問題が出てくるという懸念を私はいろいろ感じましたがゆえに、先ほどからいろいろと御質問を申し上げておるわけであります。  以上で質問を終わります。
  104. 野呂恭一

    野呂委員長 工藤晃君。
  105. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私は、共産党・革新共同を代表しまして、輸出保険法の一部を改正する法律案について御質問をします。  この問題は、これまでの高度成長政策のもとで進められた輸出政策、貿易政策、対外経済政策等が一体どういうものであったかということと、そしてまた、今日の内外の情勢において、日本はこれらの面でどのような道を選択しなければならないかということと結びつけてこの新しいボンド保険の問題を検討しなければならないと思いますが、きょうはひとまず総括的な質問ということで、最初にこの改正法案内容を正しくつかむという点で、まず二、三の点を質問する予定であります。  これは改正点と運用についてのことでありますが、第十条の二の関係で保険契約のところがありますが、この保険契約は、私の理解するところ、保険会社に当たるものは政府であり、被保険者は発注者に保証状を発行した外国為替銀行ないしは損害保険の会社である。この場合、いままで聞いたところでは外国銀行や外国損保も含むということであります。そして、保険契約政府輸出者との間で結ぶということになっております。  さて、第十条の二の二項で、政府保険金をどういうとき支払うか。これは保証人に対してあるいは裏保証人に対してでありますが、その一つは、保証対象債務の本旨に従った履行、つまり輸出契約技術提供契約契約どおり履行したけれども、いわゆるアンフェアコーリングでボンドを取られたという場合、それから二つ目に、契約を履行できなかった場合であるけれども、一定の免責ないし無責事項のうち無責について当事者が一ここで言う当事者は受注者発注者というふうに理解しますが、それが定めた事由による債務不履行である。このいずれかが要件となって保険金の支払いが行われるというわけでありますが、その場合、だれかがこれを判定しなければならない問題があると思いますが、それはだれが判定するのでしょうか。
  106. 森山信吾

    森山(信)政府委員 有責、無責の判定は国が判定をするということでございまして、具体的に申し上げますと通産省ということになろうかと思います。  なお、有責、無責の判定は、現実に起こった場合きわめて専門的な知識を要することが多いと思われますので、公正なる第三者をもって構成いたします審査会を設けまして、通産省といたしましては、その審査会におきまして十分意見を聞いた上で判定をする、こういう仕組みを目下のところ考えておるところでございます。
  107. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 有責、無責という場合に、オール・オア・ナッシングといいますか、それとは限らずに、部分的なミスについて一定額の請求という場合もある、小さなミスにもかかわらず全額請求という場合もある、そのように理解してよろしいのでしょうか。
  108. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  109. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) このように、この判定あるいは査定と申しますか、これは非常に複雑な問題になってくると思いますが、先ほど専門的な知識が要るから審査会を設けると言いましたが、それは大体どういう構成を念頭に置いておられるのですか。
  110. 森山信吾

    森山(信)政府委員 審査会におきましては、通常、常設的に行うケースと臨時にその都度行う形式と両方ございますが、本件につきましては、対象貨物によりまして、プラント種類あるいは海外建設工事種類によりまして相当違った専門的な知識が要求されますので、そのプラント種類海外建設工事の業態に応じまして、その都度必要な人を委嘱を申し上げたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  111. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) その場合、通産省が委嘱するということで、人選はそこに任されるというふうに判断されるわけでありますが、これからのプラント輸出の額は非常に大きくなる。したがってボンドの額も大変大きくなることが見込まれる。それだけに恣意的な判定を防止しなければならない。  この恣意的な判定を防止するためにも、具体的な物差しや非常に詳細な調査を行わなければならないと思いますが、その点についてはどのような用意をされているでしょうか。
  112. 森山信吾

    森山(信)政府委員 現在、ボンド保険をつくっております諸外国が十二カ国でございまして、つい最近アメリカが運営を開始いたしましたので、それを入れますと十三カ国ということになります。  先生の御指摘のとおり、ボンドの発行金額はずいぶんふえてまいっておりますし、今後も増加を見込まれておりますので、一たん事故が起こったときの支払い保険金額と申しますのは相当膨大なものになるということでございまして、世界的にそういう問題が起こるのではないかということを予測いたしまして、ただいま御答弁申し上げました十三カ国で共通に——まあ十三カ国全部ではございませんけれども、その中の大部分が入っておりますベルンユニオンという国際的な組織がございまして、そういうところで常時連絡をし合うような体制づくりをひとつ固めておきたい。これはいま申し上げましたボンド保険加入者間の情報連絡ということが一つでございます。  それから、わが国の体制といたしましては、プラントなり海外建設工事なりを発注する国々に駐在いたしますわが国の在外公館あるいはジェトロ等の組織を通じまして十分なる情報がとれるような仕組みを考えておるところでございます。
  113. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 続いて、この改正案内容の理解を正しくするための質問になりますが、履行せず、履行することのできなかった場合で輸出者が無責とされる事由の一つに、輸出保険法の第三条六号として、「前各号に掲げるものの外、本邦外において生じた事由であって、輸出契約の当事者の責に帰することができないもの」とありますが、これはたとえばわが国輸出者外国の会社と何らかの形態で組んでプラント輸出を行い、相手側の外国の会社が本邦外における事由で契約どおりの履行を不可能にするような条件をつくり出した場合は、輸出者は無責として保険金が銀行に支払われることになるでしょうか。その辺についてお答えください。
  114. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま工藤先生から御指摘のございました点につきましては、連帯保証の問題ではないかというふうに理解をいたしましてお答えを申し上げますが、まず、その連帯責任のございます外国の企業の有責によりまして、つまり、本邦の企業が無責であるにもかかわらず相手国が有責となる場合にどうなるかという御質問だと了解いたします。その点につきましては、保険の対象にはしないというふうに考えております。  なお、連帯の相手方でございます者に責任がありまして、それを無責とするという場合に、特約によりまして、そういうケースにおきましても責任は追及しないという特段の定めがあれば、それはまた別途のことでございますが、一般論としてお答えいたしますと、先ほど申し上げたとおりでございます。
  115. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまのお答えだと、一般論としては外国の会社に責任がある、そのときは本邦の会社が無責であっても保険対象にしない、しかし、もし特約があるならばそうとは限らない、保険の対象にする、と、そのように理解しますが、それでよろしいですね。
  116. 森山信吾

    森山(信)政府委員 私の先ほどのお答えが若干舌足らずでございましたので補足して申し上げますと、連帯して契約を履行する義務がある場合には、連帯の当事者である外国企業と日本企業との間には連帯責任が生じますから、連帯先の外国企業に責めがある場合、つまり、有責の場合は当然にわが国企業も連帯して有責義務を負いますので、そういう限りにおきましては保険金を支払うことはない、有責である、こういうふうに了解するわけでございます。  先ほど申し上げましたケースは明らかに有責——連帯先の外国企業に若干のトラブルがありまして、つまり不可抗力という問題がありまして、それを輸出契約におきまして、それもそういうケースは免責にいたします、責任なしというような特段の定めがあった場合は別途の観点から考慮します、と、こういうことを申し上げたわけでございます。
  117. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) では、さらに追加して伺いますが、第十条の二の第二項の第二号に、「それが第三条各号に掲げる事由その他の」として、「その他の当該入札者等の責めに帰することができない事由」ということがありますが、ここでは普通の輸出保険の場合よりも広く「その他の」とありますが、これは具体的にはどのような内容を指すわけでしょうか。
  118. 新井市彦

    新井説明員 輸出保険法第三条は普通輸出保険についての規定でございまして、貨物の輸出についてのケースを列挙してございます。しかるに、ボンド保険におきましては、これと違いまして、プラントの場合は貨物でございますが、海外建設工事エンジニアリング、それからコンサルティング等、これはサービスでございますので、その意味におきまして第三条の規定ではカバーし切れない部分を含むということで、それをふくらますと申しますか、カバーする意味において「その他」云々というふうに規定してございます。  もう一つ、第三条は主として海外で起きた不可抗力を規定しておりますが、輸出保証保険におきましては、国の内外を問わず、不可抗力ということになりますと、その不可抗力に基づいてボンドを請求される場合は保険事由ということになりますので、その点国内における不可抗力もカバーする、この二つの意味を持っております。
  119. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) そうしますと、たとえばこれまで普通輸出保険についてどういう事件が起きたかということで、貿易局輸出保険企画課の「輸出保証保険制度の概要」の五十年二月によりますと、最近の主な保険事故事由がいろいろ挙げられておりますが、中にはイラクのバスラ港の滞船あるいはカナダの港湾ストなどの例がありますけれども、本邦内における港湾ストによる契約不履行という場合もいまの国内の不可抗力という事由にたとえば入るわけですか。そのように理解していいですか。
  120. 新井市彦

    新井説明員 ただいま御指摘ケースが当事者間の契約規定してありますれば、不可抗力に該当いたします。
  121. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 普通輸出保険では無責の事由に入れられていないところの国内におけるさまざまな事情、それを不可抗力として——普通輸出保険では国内の事由が入ってこないのに、今度のプラント輸出に関しては、そしてそのボンドの保険に関しては、なぜそこが広げられたのか、その点について非常に理解がむずかしいわけでありますが、どういう考え方なのか聞かせていただきたいと思います。
  122. 新井市彦

    新井説明員 普通輸出保険におきましては、一部の例外を除きまして、本邦外において生じた理由による輸出損失等をてん補するということにしてございまして、これは海外で起きました事件につきましては不明確な点が多く、事前に状況の変化に対応する方策を講ずることが困難であるというふうなことが理由になっております。  一方、輸出保証保険の場合は、輸出者に責任がないにもかかわらず海外発注者が不当にボンドの支払いを請求してくる場合を対象にしておる。すなわち、当然の不可抗力で契約が履行できないということでボンドがとられないと思っているのにとられてしまうというふうな危険をカバーするわけでありまして、このような海外発注者の不当な請求は、その背後にあります、そのベースになります履行不能原因が国内的な事由であれ、あるいは海外的な事由であれ、予測困難な、いわば本邦外において生じた理由ということができるわけでありまして、この意味において、海外で起こった理由、不可抗力を保険事故とする普通輸出保険の考え方と基本的な差はないというふうに考えております。
  123. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この点はいまの説明でも私は十分理解することができませんし、また、今後もう少しはっきりさせなければいけませんが、それにもう少し加えまして、いまのように契約不履行でも無責とされる事由は、第三条の各号の事由と、それに加えてその他の事由、その事由の中にはそういう国内的なものが盛り込まれ得る。しかも、それは当事者間、発注者、受注者間で決めればいいということになっている。普通輸出保険の方の規定比較的明確であるのに、ここで当事者間がそれを定めればいいということになっているために、たとえば当事者間で大変あいまいなことをいろいろ決めてしまう、非常に抽象的に決める、あるいはまたよく言われる玉虫色に決める、どうでも解釈できるような、というようなことが事由の一つに加えられてしまう、そういう可能性が出てくるのではないかというように考えざるを得ないのですが、その辺はどのように縛るわけですか。
  124. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま工藤先生のおっしゃいました当事者間で取り決めをするといいますのは、ボンドの保険契約ではございませんで、輸出契約そのもので決められた場合でございまして、言ってみますと、輸出保険にかけるかどうかまだわからない段階におきまして輸出契約というものがあるわけでございまして、一方の当事者と申しますのはわが国の企業でございますが、もう一方は相手国の政府なり政府機関なり、あるいは外国の企業でございまして、その両当事者が具体的にどういうケースに免責をいたしますということは非常にシビアな線でやっておるわけでございまして、保険に絡めましてこの免責の扱いを特に玉虫色にするということはないというふうに私どもは了解しているわけでございます。
  125. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いま、通産省として、ないものだというふうに考えているということでありますが、世の中はなかなか複雑でありますからいろいろなことが起きると思います。  このように、以上の点をいろいろ伺いましても、普通輸出保険に比べて免責とされる事由が広げられるようにされる可能性もあり、事実規定の上でそうなっており、そしてまた可能性としてはかなりあいまいな内容が盛り込まれる。それで、それがいよいよ事故といったときに判定ということになりますと、それをもとにいろいろ判定せざるを得ない。そういうことをいろいろ考えますと、非常に甘い判定で、金額としては非常に大きい保険金を銀行が手に入れてしまうような可能性があり、あるいは銀行はますますリスクを恐れないでボンドをつけるために、輸出者、たとえば総合商社などが担保の負担が非常に軽くなる、条件が緩和されるということから非常に冒険的な態度で入札に臨むということも可能性として考えられます。  特に、輸出者保証状を発行する銀行との関係を見ますと、いま行われており、それからこれからますます行われるであろうところの巨大なプラント輸出というと、恐らく三菱グループとか三井グループとか、同じグループとして銀行も商社も関係を結んでやるというようなことで行われるわけだと思いますので、相互にシビアにやるというようなことが一般的に言われるとしても、このような判定が非常に厳格にやられるかどうかということに私はまだいろいろ疑問を感じるわけでありますが、その点についてもう少しお答え願います。
  126. 森山信吾

    森山(信)政府委員 工藤先生のいま御指摘の点でございますが、ひとつ御理解を賜りたいことは、ボンド保険を創設させていただきました暁におきまして、この保険によって必要以上にプラント輸出が行われるんではないかということにつきましては、私どもはそう考えていないわけでございます。つまり、プラント輸出なり海外の建設工事なりというものの、わが国の企業の実力に応じまして入札に参加したい、あるいは契約を結びたいという場合に、ボンド保険の制度がないためにそのチャンスを逸するというようなケースをカバーするためにぜひ創設をさせていただきたいということでございまして、この制度ができましたら、それをバックにいたしまして大銀行が大商社に対してどしどしボンドを発行いたしまして、それに対して保険をつけていくというような性格のものではないというふうに私どもは基本的に了解しているわけでございます。  それから、先生には御理解いただいていると思いますが、担保率という問題がございまして、包括の場合九割、個別の場合は七割というようなことを考えておりまして、たとえば個別の契約の申し込みをいたしますと銀行は三割の範囲内で責任を負うわけでございますので、その点につきましては、冒頭に申し上げましたような気持ちで十分なる審査を行っていくというふうに了解いたしておりますし、私どもも、保険運営そのものにつきましてはそういうような性格のものだというふうに理解をしているところでございます。
  127. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 要するに、判定に当たっては非常に厳格な態度で臨むというふうに理解してよろしいですか。
  128. 森山信吾

    森山(信)政府委員 輸出保険制度そのものは国で運営をいたしておりまして、長期的に見て収支相償うということが要求されておりますし、その点につきましては先生指摘のとおり厳格に処置をしたいというふうに考えております。
  129. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 収支相償うという立場での厳格さというのと一件一件についての判定の厳格さというのは大分意味が違うと思います。  それはさておきまして、商工委員会調査室でつくられました「輸出保険法の一部を改正する法律案の要点及び問題点」はこの法案を検討する上でいろいろ参考になったものでありますが、この三十一ページ以後にこのようなことが書いてあります。「このため、保険給付にあたっては、当該損失の前提となるプラント輸出契約等の履行又は不履行の責任の有無の認定、換言すれば発注者の保証債務履行請求の不当性の有無の判断が重要な問題となる。」と、まず重要性を指摘してありますが、「もとよりこの認定は公平かつ客観的でなければならないが、ケースによっては極めて困難なものもあると考えられ、余り厳格に過ぎては保険給付の対象が狭小となり、プラント輸出者等に求償権が行使される場合が多くなる等、制度創設の趣旨をそこなうおそれもなしとしない。従って、輸出保証保険制度の運用にあたっては、可能な限り広く保険給付によって損失がてん補されるよう一般的な認定基準を策定し、具体的な個別案件について慎重に判断する体制を整備することが必要と思われる。」となっております。  この説明によりますと、判定がきわめて困難な場合もある、余り厳格にやると保険給付の対象が狭くなる、それではこの制度を創設する趣旨を損なう、だから運用に当たっては可能な限り広く給付が受けられるよう一般的認定基準を策定する、と、大体こういう筋で書いてありますが、この考え方と通産省、政府とは大体同じでありましょうか。
  130. 森山信吾

    森山(信)政府委員 基本的には同じだと思っております。  それで、先ほど私が厳格に行いますというふうに御答弁申し上げましたが、この厳格という意味は公正に行うというふうに御理解賜れば大変ありがたいと思います。
  131. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) なぜ厳格という言葉を後になって公正と置きかえるのでしょうか。その意味をもう少し聞かせていただきたいのです。厳格ではいけないのですか。
  132. 森山信吾

    森山(信)政府委員 厳格という言葉のニュアンスを私はちょっと考えまして、本来無責と判定すべきであるにもかかわらず、ことさらに厳しくするというふうなニュアンスにとられますと私の考えているところと若干違いますので、公正に十分審査をいたします、と、そういう意味であるということを申し上げさせていただいたわけでございます。
  133. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 政府のお考えがこの商工委員会調査室の説明に大体近いということであり、厳格というよりも公正という方がいいということで、この辺は今後もこの法律改正案の審査に当たって大いに問題にしなければならないと思いますが、ともかく、余り判定にやかましいことを言うと、それがそもそも今度の制度を設ける意味をなくしてしまう、弱めてしまうというたてまえでこれがつくられるとすると、それが判定においての甘さになり、先ほど言いましたように、大体このくらいならば心配ないというので相当乱暴な入札ということもどんどん出てくるとか、いろいろ予想されるわけであり、これは今後わが党としても追及していく問題でありますが、それはさておいて、この法案内容の理解のためにもう少しいろいろなことを聞いておきたいと思います。  これはもちろん仮定の場合として聞いていただきたいのですが、たとえばプラント輸出代金に発注者あるいは仲介者へのコミッション、謝礼金が入れられて水増しになっていた。たとえば契約金が五千億円で、それが一〇%で五千五百億円と水増しにされた。そうするとボンドの方も、たとえばパフォーマンスボンドが、契約金額の一〇%として、その場合は五百億円から五百五十億円の方に、このボンド金額の方もそれに比例して水増しになってしまう。そして政府が仮にこれをてん補しなければならないというときに、いろいろ判定の末、そのとき包括保険契約になっていれば九〇%のてん補ということになるわけでありますから、四百五十億円でなしに四百九十五億円という四十五億円増しになってしまう。こうすると、こういう不当なことがやられたために、それに同時に合わさって四十五億円がかすめ取られるということがあるし、これは当然防止しなければならないという考え方だと思いますが、一体これはどういうところで防止することができるのか。  判定に当たっては、問題は、先ほど言いました二つの大きな柱に沿いまして、アンフェアコーリングであるかどうかということ、あるいはまた、履行できなかったけれども、これは無責のケースであるということが認められたということになる。その段階ではそこが判定されるだけであって、そもそもこのようなプラント輸出のあり方に問題があったということは問題にならないと思いますが、そのように考えていいと思いますか。
  134. 森山信吾

    森山(信)政府委員 まず、ボンドの発行についてでございますが、幾ら幾らのボンドを積む、たとえばパフォーマンスボンドを幾らにするということは契約によって決まるわけでございまして、私ども保険を引き受けます立場から言いますと、この契約が先行しておるということがまず一つ前提条件でございまして、その契約の具体的中身までの審査につきましては考えておりませんが、その契約金額に対しまして何%のボンドを積めという当事者間の契約に従いましてボンドを積んだ者に対する保険をカバーする、こういうことで対処しておるわけでございます。
  135. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの御答弁にありましたように、契約の中身は別に審査の対象にならないということだと思います。  実は、この前の予算委員会でわが党の正森議員が、ソウル地下鉄問題で、一両当たり約千五百万円、百八十六両分で約二十八億円の不明金のあることを指摘しました。参考人として出席された三菱商事の田部社長の答弁は、海外経済協力基金に出した申請書では利益二%としていたけれども、この段階では大変乱暴な話でありますが、メーカーからの買い値がわからないけれども、売り値の方だけでそういうことを決めたと言うんですが、その後利益は二%より多くなったと答弁されました。ここに正森議員が指摘した水増しを裏づける結果が出てきたと思いますが、もう一つ、三月十六日の毎日新聞によりますと、新韓碍子の問題で日商岩井が東京地裁に提出した七四年八月二日付及び七六年七月八日付準備書面では、通産省に出された輸出承認申請書の内容と大きく違って、機械代金は二百七十九万ドルではなくて二百十一万ドルであり、コミッション、つまり相手側への謝礼金など六十八万ドルに及ぶ水増しが入っていた。これに対して、毎日新聞社が伝えるところによると、通産省機械情報産業局通商課の大山信課長は、「機械代金をふくらませて謝礼など違法な代金まで含めていてもチェックするすべがない」ということだったと伝えられているわけであります。  これは今後事実を明らかにしていかなければならない多くのことがあると思いますが、このようなことと、それから、先ほど言われましたボンド段階ではとてもこの契約そのものの内容を審査することはできないということになっておりますが、しかし、それではそのほかにどういう手段でこういったことが防止されるであろうか、この点についてどういう体制をつくらなければいけないのか、いまそういう体制がないのかどうか、この辺について伺いたいと思います。
  136. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、保険を掛ける前の前提条件といたしまして当事者間の契約があるということを申し上げましたが、仮にプラント輸出契約でございますと当然に通産大臣承認を得るということになっておるわけでございまして、契約輸出に実行されます際に、通産省におきましてその輸出承認につきましての審査を十分にするということでございまして、まず、このスクリーンを経ましたものが輸出契約が合法化されるということになっておりまして、その審査とボンド保険の審査とにブリッジをかけてみたい、こういうふうに考えております。  まだ、いまのところボンド保険が創設されておりませんので、この御審議を賜った上で、この制度の発足が認められますならばそういう方法を検討してみたいというふうに考えておるわけでございます。
  137. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 輸出においての承認というのは、標準決済外のものに入るということでこれが承認を得るということですが、恐らく、これは大体書面審査で終わるんじゃないですか。
  138. 森山信吾

    森山(信)政府委員 標準外決済の審査は、一応形式的には書面審査でございますが、いろいろヒヤリングその他をやっておるところでございます。
  139. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 先ほども、新韓碍子の例で、毎日新聞社が伝えるところでは、ともかく通産省に出された書面がそれを明らかにしていなければどうしようもないというふうなことを言われて、私はその方が大変正直な受け方だというふうに感じたわけでありますが、これらの点も今後一応私たちは追及していきたいと思います。  ただ、ついでに申しますと、この前の予算委員会の集中審議で、三菱商事の田部社長が参考人としておいでになって、その中ではっきり述べられたこととして、地下鉄の車両はたしか百八億円ぐらいですが、その五%をパフォーマンスボンドとして積まされたと答弁されておるのですが、普通、パフォーマンスボンドの場合は、これは輸出専門家によりますと、商社とかいわゆるエクスポーターですね、それが銀行にそれをまるごと積むということはないというふうに言われておるのですが、そういうことはあるのでしょうか。
  140. 森山信吾

    森山(信)政府委員 詳細は私も承知いたしておりませんが、田部社長が言われましたのは、相手からの要請に応じまして、本邦の銀行のボンドの発行を要求されて、それの保証料を要求された——要求という言葉は若干語弊がございますけれども、支払った、恐らくこういう意味ではないかというふうに了解されます。
  141. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 速記録はいま印刷に入ったところなので、時間的にちょっと持ってこれなかったわけですが、聞いた人によると、いろいろな新聞のこの辺の報道が正しい。それから、私は正森議員からも直接聞いたのでこういう理解でありますが、また、契約の五%のパフォーマンスボンドを積まなければならないというふうに田部社長がお答えになったわけで、この五%を積むということと、保証状を発行してもらうために手数料を出すということとは天と地ほどの開きがあります。  私たちが商事側に一応聞いてみますと、やはり積んだのだということを言っております。ですから、一応ここでは商事側がそのように言ったということを前提にしてお答え願いたいのですが、そういうことはわりあい多くあることかどうか、その点についてであります。
  142. 新井市彦

    新井説明員 私は、具体的な案件については全く存じませんが、御質問の趣旨をボンドを積むという観点から御説明いたしますと、ボンドは商社ないしはメーカー自体が差し出すというものではございませんで、必ず銀行ないしは損害保険会社に発行を依頼しまして、その銀行ないし損害保険会社が相手方に出す、こういう構成でございます。  先生は三菱商事が五%ボンドを積んだというふうにおっしゃいましたけれども、推察するところ、それは銀行ないしは損害保険会社がボンドを発行するに当たりまして、その裏づけとして三菱商事の方からそれに相当する担保を取ったという意味ではないかというふうに推察いたします。
  143. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この辺の事実関係は私どもも調べますし、どうか政府の方でも調べていただきたいのですが、それはともかくとして、先ほども言ったように、輸出者がそういうパフォーマンスボンドをまるごと銀行に積むということはパフォーマンスボンド制度から言っても大変おかしい。私たちも大変奇異だと思ったからこそいろいろ調べたわけでありますが、それが韓国政府側とか向こう側の要求でそういうことが行われているということが想像できますか。韓国との経済協力の場合のプラント輸出などのパフォーマンスボンドではこういうことは従来一度もなかったことでありますか。あるいはたまにあったことですか。あるいは韓国の場合はかなり起こることでありますか。その辺についてお答え願いたいと思います。
  144. 森山信吾

    森山(信)政府委員 実態につきまして承知いたしておりませんので、調査をしてみます。
  145. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) それでは、この問題は引き続き調査して、後で報告を願いたいと思います。  さて、政府は今度のボンド保険を創設する目的をプラント輸出の促進ということに置いておりますし、それが国際的、国内的に経済のいろいろな発展の上でいい効果をもたらすのであろうということを言っております。わが党ももちろん正常な関係輸出が促進され、あるいは機械やプラント輸出が促進され、そしていま特に困っている中小企業の危機が打開されるというだけでなしに、日本経済の産業構造を正しい方向へ転換させるということは積極的に主張しているわけでありますが、しかし、私が冒頭に申しましたように、これまでの自民党政府のもとでの経済発展、対外経済政策のあり方、輸出政策のあり方等々から、今度のプラント輸出を促進すれば政府側がいろいろ宣伝しているような効果を生むということは一概に言えない事情が数々ある、非常に多くあるということを考えているわけでありますが、その一つとして、韓国の軍需産業育成に日本からのプラント輸出が貢献しているのではないかという問題があります。  それは、一昨年の七月二十八日に韓国の朴大統領の指示、覚書というものが出されましたが、これによりますと、機械類の国産化五カ年計画を遂行するけれども、この機械類の国産化五カ年計画の目的の一つに——目的の全部というわけではありませんが、輸出産業の振興ということもうたってありますが、それは軍需産業に機械産業を利用するのだ、そしてそのために重要な役割りを果たさせなければならないのは昌原の機械工業団地である、そしてすべての機械工業を軍需産業に利用できるよう指導育成しなければならないのだということがこの覚書として伝えられたわけであります。  昨年の十月四日の朴大統領の施政演説は、これは予算案の提出に際しての演説ということでありますが、これも詳細に、要旨でありますが伝えられております。それを見ましても、たとえば「自主国防の基盤となる防衛産業の育成に拍車を加え、七八年末までは基本事業を完了できるようにしたい」ということや、「機械工業は第四次五カ年計画の核心業種であり、重点的に育成しなければならない」ということや、そして、特に、「機械工業前進基地としての機能を担当する昌原機械工業基地建設を促進し、一九八一年までに完了するよう拍車をかける。」と、朴大統領の演説はこれらを明確にしたわけであります。  さて、朴政権のこういう意向、計画に対しまして日本の財界の反応はどうかというと、これは一つだけ例を挙げますと、「選択」という雑誌の七六年二月号に河野文彦経団連防衛生産委員長が、「アメリカは韓国から退きつつある。まさか日本が戦闘員を派遣できないであろうから、武器輸出、さらには韓国の自国兵器生産力を高めることを含めてお手伝いできないか」と、かなりはっきりと、このような軍需産業育成に日本の財界もお手伝いしたいということが打ち出されたわけであります。しかし、また、これをただ経団連のことだからこういうことを言ったといって済ましておけないのは、その後昨年の暮れに訪韓した政府派遣の韓国経済調査団の団長の見解で、たとえばこれはことしの一月二十一日の新聞にも報道されたことでありますが、「韓国経済には日本にない活力があり、相互協力の余地は大きい。韓国側は、日本に対し、五カ年計画に」——これは先ほどの五カ年計画ですが、「総額十八億ドル程度の援助を期待しているようだが、それくらいは助けてやるべきではないか」という見解を発表している。その政府派遣の調査団の団長である中安宇部興産社長がこのように語っています。  それに加えて、このインタビューの方の、「韓国は新五カ年計画で、機械工業の振興を重点に据えているが、これによって軍需、兵器産業を育成しようとしているともいわれる。これへの協力は、わが国としてはまずいのではないか。」という質問に対して、「在韓米軍撤退問題もあって、韓国側が兵器産業の育成、武器国産化に熱心なのは十分承知している。だが、私のみるところ、米軍撤退は相当遅れるだろう。また、韓国の意気込みはともかく、工業化の歴史がたかだか十数年にすぎず、新鋭の兵器産業を早急につくり出せるとは思えない。心配することはないよ。」と言っている。これは少しニュアンスが違うと思います。つまり、経団連の方は武器輸出であっても軍需産業育成であっても直接やりたいということだが、しかし、この政府調査団の団長の方は、武器生産に結びつけられた解釈は少し困るけれども、たとえそういうものがあったって、それは将来先のことだから、少なくともいまの段階では心配する必要はないというような解釈でいずれも同じような方向でこの五カ年計画への協力という意向をはっきり示したわけであります。  これではまさに軍事的な対韓協力になるのではないか、日本国の憲法の恒久平和の精神に反するのではないか、朝鮮民族の平和統一の願いに反するのではないか、朴政権のいまの非常に非民主的ないろいろな抑圧への協力になるのではないか、ということを私は考えざるを得ないわけでありますが、ところで、こういう財界などにある韓国への軍需産業育成、それへの協力という方向に対しては、政府は一体どういうお考えを持っておられるでしょうか。
  146. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  武器輸出の問題につきましては、昨年の二月二十七日でございますが、政府の統一見解を明らかにいたしております。御承知のように、従来のいわゆる三原則につきましての解釈問題並びに武器の製造設備に対する考え方といったものを明らかにしたものでございます。武器そのものの輸出につきましては、これは平和憲法のもとで自粛をするということで政府の統一方針が出ているわけでございますが、先生のいまの御指摘のいわゆる製造面での協力ということになりますと、武器の製造設備の問題を御指摘になっているのであろうと思いますが、武器製造関連設備につきましても、この政府統一見解におきまして武器に準じた扱いを行うということになっておるわけでございます。  御指摘の韓国につきましては、いわゆる紛争当事国あるいはそのおそれのある国ではございませんが、この政府の統一見解に従います紛争当事国に準じた扱いをいたしておりますので、韓国につきましては、この武器製造関連設備というものにつきましても同様の取り扱いが行われるということになろうかと考えておるわけでございます。  ただ、同じく製造設備と申し上げましても、私どもが考えておりますものは、いわゆる武器の生産にもっぱら使われるといった設備でございまして、一般の工作機械といったものにつきましてはこの対象だとは考えていないわけでございます。  これは各設備の汎用性という点から言いまして、一体その設備がどういったところで使われるかということを日本側においてチェックすることは不可能でございますので、汎用性のあるたとえば工作機械等につきましては、これを武器関連設備だとは考えておりません。  以上でございます。
  147. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 政府側の武器輸出に関する方針は、これは武器の定義において大変狭過ぎるという問題もありますし、それから、したがってそれを製造する工作機械等々、しかもそれは専門的に、と入っているわけでありますが、それも当然狭くなってしまう。  いろいろ大きな問題がございますが、その問題はさておきまして、先ほどのお答えで、いわゆる三原則の地域に韓国は入っていないけれども準じて、と言っておりますが、三原則地域と準じてと、一体どういう違いがあるのですか。具体的にはどういうところで差別があるのですか。完全に同じようにしているわけですか。
  148. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 武器三原則の対象地域は、御承知のとおり、紛争当事国またはそのおそれのある国、その他ココム地域共産圏地域等がございますが、いま問題になっておりますのは、一体紛争当事国という対象地域に韓国を含めるかどうかという問題でございますが、私どもの方としてはそういうふうには考えておりません。  ただ、全く緊張状態がないかと言えば、そうではございません。将来そういった事態も全くなしとしないということから、武器三原則の対象地域ではございませんが、それに準じた扱いをする、こういうことでございます。
  149. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) その似た扱いというのははなはだあいまいだと思いますが、それもまたさておきまして、先ほどの御答弁にありました専用機械でなくて汎用機械ならば、兵器あるいは軍事的な諸物資の製造に役立つものはいまの日本の体制としてはチェックできないし、出ていっている、そのように考えますが、それでいいわけですね。
  150. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 武器製造関連設備は武器に準ずる扱いでございますが、私どもの考え方としましては、兵器専用の工作機械、加工機械、ほかにその試験装置あるいは軍用の火薬類製造設備といったものを対象に考えておるわけでございまして、具体的には輸出貿易管理令の別表第一の七九の項、それから一〇九の項に含まれているものを考えておりまして、一般汎用の機械類はこの対象とは考えていないわけであります。
  151. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの御答弁で、要するにそれが兵器の専用機械で、しかも非常に狭い定義のもので、それ以外は実際に軍需産業育成の方針によってどんどん輸出される——汎用と言われてしまえば自由に出ていっているという現状が明らかになったと思いますが、さらにもう一つ伺いたいことは輸出貿易管理令ですね。  これは戦略物資に関しては輸出承認品目としてチェックされているように見えますけれども、しかし、韓国の場合はいわゆる甲地域に入っていないという意味で輸出承認が不要となっているというふうに考えますが、それでよろしいですか。
  152. 森山信吾

    森山(信)政府委員 いわゆる戦略物資につきまして、輸出貿易管理令の中で甲地域に指定されておりますのは国際的合意に基づくものを指すわけでございまして、韓国につきましては別段そういう合意もございませんので、甲地域には入れておりません。
  153. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この甲地域の指定を見ますと大変いろいろなことを考えさせられるわけでありますが、たとえばエジプトは入っている。そこへは戦略物資を送るときには輸出承認事項になるけれども、イスラエルは入っていない。たしかそうですね。それから、朝鮮民主主義人民共和国はもちろん甲地域に入っているけれども、韓国は入っていない。  いろいろと平和ということを考えるときに、中東の場合でも何度も中東戦争が起きたし、一方、あるいはまた朝鮮半島の平和ということについては、この緊張した状態が非常に重要な問題としてわれわれ国民に重くのしかかっているわけでありますが、その韓国に対しては、甲地域に入っていないがゆえに戦略物資は自由に——自由にと言うか、輸出承認を受けないで輸出されるということがある。この体制はきわめて異常なことであると思いますし、そして、また、これが先ほど言いましたさまざまな汎用機械という名前ならば軍需産業の育成のためのプラント輸出も認められていくということとあわせて考えますと、先ほどの財界が述べていた五カ年計画への協力、軍事的な協力という方向がこういう体制の上で急速に進むことが恐れられているわけであります。  私の予定した時間がいよいよ終わって、また改めて質問を続けなければなりませんが、先ほど言いました韓国朴政権の軍需産業育成ということに対して政府はどういう考え方を持っているか、その点に関して御答弁願いたいと思います。
  154. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私ども輸出を担当している者としましては、韓国の軍需産業に一体どういう設備が具体的に予想されておりますか、その点の詳細はわからないわけでございますが、私どもの立場としましては、先般政府が統一方針を出しました線に沿いまして取り扱いを行ってまいりたいというふうに考えております。
  155. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 最後ですが、田中通産大臣からいまの問題について御答弁願います。
  156. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問をいろいろと拝聴いたしておりましたが、私が就任いたしましてから以後、政府といたしましての特段の格別の意思決定をするというようなこともなく、いままでのとおりの姿において実施をいたしております。
  157. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これで、あとは改めていろいろ質問を継続したいと思います。  本日はこれで終わります。
  158. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明二十三日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十二分散会