○澤田
政府委員 昭和五十一年における
公正取引委員会の業務につきまして、その概略を御説明申し上げます。
御承知のように、昨年の
わが国経済は、年初に
景気回復の傾向があらわれましたが、その後
回復の
テンポは緩み、
足踏み状態を続けました。
石油危機以降の
調整過程を経て、安定
成長期を迎えようとする
わが国経済におきましては、活力ある
経済社会を維持するために、競争条件を
整備することが従来にも増して肝要となっておりますが、
公正取引委員会といたしましては、このような点に十分留意しつつ、引き続き独占
禁止政策の厳正かつ積極的な
運営に努めてまいりました。
まず、昨年における独占
禁止法の
運用状況でありますが、
昭和五十一年中に審査いたしました独占
禁止法違反被疑事件は百六十七件、同年中に審査を終了した事件は九十件であり、そのうち法に基づき排除
措置を勧告したものは二十七件でございました。これら二十七件のうちカルテル事件が十九件を占めており、主な事件としては、
石油製品、家庭用プロパンガス等の一般消費財の販売価格についての協定事件があったほか、価格以外のカルテル事件としては受注調整に関する事件が増加しており、昨年は五件について勧告を行いました。このほか、近年目立っておりますのは不公正な
取引方法に関する事件が多くなってきていることであり、二十七件中八件を占めておりまして、再販売価格の維持行為、競争品の取り扱い等の
禁止行為について必要な排除
措置を講じました。
次に、許認可、届け出受理等に関する業務でありますが、まず、合併、営業譲り受けにつきましては、
昭和五十一年中にそれぞれ九百二十五件、五百十八件、合わせて千四百四十三件の届け出があり、一昨年より若干の増となりました。
内容的にはほとんどが
中小企業等の合併、営業譲り受けでありまして、特に問題となるものはありませんでしたが、特殊鋼メーカー三社の合併につきましては市場占拠率の点から問題のある品目がありましたので、慎重に検討し、所要の
措置を講じさせた上、合併届け出書を受理いたしました。また、近年
企業間の業務提携が活発になっていることにかんがみ、その実態を
調査し、結果を取りまとめました。
事業者団体については、事業者団体の成立等の届け出について督促に努めた結果、
昭和五十一年中に千四百件に上る届け出がなされておりますが、事業者団体はカルテルの温床になりやすいところから、その活動状況等について実態
調査を実施するとともに、そのあり方について基本的検討を行っております。
また、国際契約等につきましては、
昭和五十一年中に六千百三十二件の届け出があり、改良
技術に関する制限条項、競争品の取扱制限条項等を含む三百四十件について、これを是正するよう指導いたしました。
独占
禁止法の適用除外関係では、
昭和四十九年九月から再販指定
商品の大幅縮小が実施されているところでありますが、残された再販
商品につきましても、弊害が生ずることのないよう指導及び監視に努めております。
独占
禁止法上の
不況カルテルにつきましては、昨年中に小形棒鋼、ガラス長繊維製品及びセメントの三
業種について
不況カルテルが実施されまして、ガラス長繊維製品とセメントにつきましては昨年一月に終了しましたが、小形棒鋼につきましては、
景気の低迷と相まって需要の伸びがはかばかしくなかったため、昨年五月からの六カ月間の中断を経て再び
不況カルテルの申請がありました。これについては、認可要件に照らし慎重に審査した結果、
不況事態の克服に必要な限度を超えることがないよう所要の修正を行わせた上、認可いたしております。
次に、独占
禁止法の適用除外を受けているカルテルについてでありますが、その総計は、
昭和五十一年十二月末現在で、一昨年に比べ百二十八件減って五百三十一件となっております。これらのうち、昨年独占
禁止法によるもの以外の
不況カルテルとして主務大臣等の協議に新たに応じたものは、
中小企業団体の組織に関する法律に基づく生コンクリート、線材製品、黄銅棒等のほか、砂糖価格の安定等に関する法律に基づく砂糖のカルテルがあります。
さらに、
経済実態の
調査についてでありますが、昨年は
昭和四十八年、四十九年の生産集中度について
調査分析を行い、その結果を公表いたしました。また、従来から実施しております寡占
産業の実態を把握するための
調査を引き続き進めております。
なお、鉄鋼業界において一昨年に引き続き鋼材価格が同調的に値上げされたことに対しまして、事情を聴取する等
調査を実施いたしまして、独占
禁止法上の問題点を明らかにするよう
努力いたしました。
次に、下請代金支払遅延等
防止法の
運用状況について申しますと、長引く
景気の低迷下にあって親事業者の資金繰りは一層悪化し、下請代金の支払い遅延等の増加が懸念されましたので、昨年は約一万二千七百件の親事業者に対して
調査を行い、千二百十四件について支払い
改善等の
措置を講じさせまして、下請事業者の保護に努めました。
最後に、不当景品類及び不当表示
防止法の
運用状況について申しますと、
昭和五十一年中に
公正取引委員会が同法違反の疑いで取り上げた事件は千五百九十四件でありまして、このうち排除命令を行いましたものは十一件、警告により是正させましたものは六百七十件でありました。
また、過大な景品類の提供行為の規制基準を
整備するための検討を行っております。
公正競争規約につきましては、新たにトマト加工品の表示に関するもの等五件について認定し、
昭和五十一年末現在における公正競争規約の総数は五十八件となっております。
また、都道府県の行いました違反事件の処理件数は約二千六百件となっており、今後とも都道府県との
協力を一層
推進してまいる
所存であります。
以上、簡単でございますが、業務の概略につきまして御説明申し上げました。
なお、この際、独占
禁止法の改正問題につきまして一言述べさせていただきます。
独占
禁止法の改正については、従来の経緯も踏まえ、
政府において各方面と協議を進めた上で結論を得るという
方向で現在調整作業が進められておりますが、
公正取引委員会といたしましては、寡占化の進行等、最近における
経済社会の変化にかんがみ、独占
禁止法の
強化のための改正が速やかに実現するよう切に期待いたしております。
以上をもちまして
公正取引委員会の業務の概略についての説明を終わりますが、何とぞよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。(拍手)