○田中(美)
委員 それはよくわかっていますが、
大臣も閣僚の一人ですので、いまの自民党
政府の一員ですので、全体の
責任というのはあるというふうに思うのです。ですから、最終的な
処理が回ってくるというふうなそこだけの観点で考えないで、もっと大きな観点で各省とも
話し合い、あちこちが無礼千万なことをしているときには、言葉だけでなくて強烈な力を出しまして
指導していただきたい、再建に力を入れていただきたいというふうに思います。
これは
安宅産業の「
労働組合ニュース」というもので二百三十九号、去年の八月二十三日のニュース、これを私、見ましたら、大変なことが書いてあるわけです。といいますのは、去年の八月の
段階で住友
銀行が次の十五の
会社を倒産に追い込みたい、つぶしていきたいのだというようなことを言っているということが書かれているわけなんです。これは、だれがどこからこの
情報を得たかということは、ここには「ジャーナリズムの人から得た
情報ですが」という形でこうしたうわさが流れているのだということが書かれているわけです。
そこで、この十五の
会社を、これは
会社側はデマだとかなんとか言っているようですけれども、住友
銀行ではデマだと言っているそうですが、私がこの十五社をずっと追ってみたわけです。そうしましたら、大体このうちの、私がいま調べることができた範囲で十五のうちの九社までが、これが倒産に追い込められていっているわけです。そういう中に中村合板も入っているわけなんですね。
これは単なるジャーナリズムから聞いたうわさかもわかりませんけれども、十五社と名前はっきり出ていますし、これが全部おかしくなってきているわけですね。そうしてその中の幾つかが倒産寸前に来たわけですけれども、
伊藤忠が引き受けたとか伊藤萬が引き受けたとかいうのも出てきているわけです。その
段階でうわさが流れたものですから、この十五社が全部倒産ということになりますと、これは非常に真実性が出てくるというので、幾つかはそうやって引き受け手を使ってやっているというふうに、いままた
労働者の間でも言われているわけですね。
そうだとすれば、これは住友
銀行が意識的に倒産に追い込んだのではないか。いま
大臣は、構造的ないろいろな問題がある、こういうふうに言われたわけですけれども、いまの日本の経済というのは、大きな
銀行というものが、自分の意のままにどこかを倒産させるというようなことがあちこちにあるということ、これはもう国民の相当の常識になっています。今度の中村合板がそれであるかどうかわかりませんが、少なくとも中村合板がその十五の
会社の中に名前が挙がっているということなんですね。
そういう点で、そこまで
大臣に
調査をしてほしいということは、管轄が違うと言われるかもわかりませんけれども、今度の問題はどこから出てきたか。これはやはり、住友
銀行と
安宅産業が一緒になりまして石油で大もうけをしよう、こういうことをやったところが当てが外れて、カナダのNRCとかいう
会社が倒産して、それで一千億円焦げついた、そういうことが発端で今度の
安宅と
伊藤忠の
合併になっていっているわけです。そうすれば、中村合板は
安宅の社員ではありませんけれども、仕入れも販売も全部
安宅を通してきているわけですから、
安宅の木材部みたいなところですね。ですから、
関連企業というよりも、もう
安宅そのものと言ってもいいような感じがするわけです。そういう
関連企業までが、住友
銀行のそうした
安宅と一緒になって金もうけをしようとしたのが当てが外れたということによって、
労働者がこんなひどい状態になるということは、どう見たってこれはいまの社会の機構から出てきた問題であって、
労働者の基本的人権というものは全く大海に浮かんだ木の葉のように、だれかの力によって振り動かされているという結果ではないかと思うのです。だからこそ私は、ただ単に構造的な問題だとか過剰生産があるとかというふうな問題ではなくて、中村合板の倒産の問題というのは、ある程度そうした意図的なものでなされているという面もあるというふうに思うわけです。
いずれにしても
大臣にお願いしたいことは、何としてもここの
労働者から犠牲が出ないように最大の努力をしていただきたいわけです。私は、いま具体的に
労働大臣にああせよこうせよと言っても、これは
大臣の権限ではないとか、いろいろあると思いますので、具体的に詰めるというのではありませんけれども、私の一方的な話になってしまいますけれども、いまこういう状態が起きています。
水田実さんという二十八歳の方ですけれども、この方は営業マンなんですが、七年間やっています。それで合板の中ではどこから首を切られるのだという不安があるのです。営業から一番先にやられるのではないかというふうなことが出てきているわけです。ですから、そういうことでは一番ショックを受ける場にいた
労働者です。そしてこの方が、この
会社が
会社更生法の申請をしたその晩、車で本屋に行っているわけなんですが、その帰りに事故を起こしているのです。それは確かに本人の不注意かもわかりません、私にはよくわかりませんけれども、とにかく事故を起こして亡くなったわけです。本屋へ行って何を買ったか。「
会社更生法」という本を買ってきているのです。そして、これからこれで勉強しようということで、それが運転台の横にあったというのです。これを
会社の
労働者や家族が聞きまして、泣いているわけなんですよね。ですから、この
労働者にとっていかにショックであったかということだというふうに思うのです。
そういうことを一つ一つ言っていきますと際限がありませんけれども、いま
会社では、現在まだ六〇%操業していますので、それで仕事をとってきて、その荷を送ろうとしますと、もう倒産した
会社ですから、運送
会社が押さえちゃうわけです。いままでの金が取れないというので、品物を押さえてしまうわけです。ですから、せっかく生産しても、これを持っていこうと思っても、
労働者がつくったものがお客さんに届かないわけです。そういうことが起きるということが大変な不安になっている。
ここはベニヤ板ですけれども、これは原木とのりと油があればできるわけですが、そういう油やのりなんというものも一週間買いをいましているんですね。そういうことが
労働者にとっては、破産宣告になるのではないかと非常に不安なわけです。そういうことが今度は家族にしても、家族は社宅を出されるのじゃないか、そうなったら、ある日突然出ていくとなったらどこへ行こうか、それにはお金もないし、謝礼金や敷金が払えないということになれば、どこへ引っ越していこうかということで毎日夫婦がこそこそ話し合って、あるときは夫婦げんかにもなる。そうした状態になっている上に、今度は近所の酒屋に行く、雑貨屋に行く、自動車のガソリンスタンドに行く、それがいままでは全部ツケで買っていたわけです。月給日に払えばよかったわけです。それが全部現金でくれと、近所の商店からまでも現金買いをしてくれと言われるということは、もう奥さんにとっては大変なショックなわけですね。それでも五月は何とか出すと言っているようですが、六月からは全く当てがないという中で現金買いをしなければならないということが、ますます夫婦の気持ちを暗いところに追い込んでいるわけです。
夫婦が夢中でそういうことをやっている間に、今度はそれが子供に知らない間に大きな
影響を与えてしまっているわけです。それで、子供の方から突然、お父ちゃん、もう来月から学校給食のお金を持っていけないのかと子供に言われて、お父さんとお母さんは偶然とする。それから高校に行っている子供が、お父さん、僕は高等学校やめようかと、こういうことを言い始めているということです。
それから中村合板は、道徳という学区にあるわけですけれども、その学区の周辺に、そこの
労働者を対象にした小さなお店があります。飯屋さんとか、それから魚屋さんとか、そういう店があります。そういうところが非常に心配している。もしこれが破産宣告を受ければ、そこのお店も、直接下請とか、いわゆる関連ではないわけですけれども、これはもう当然のことですけれども、そこの
労働者を当てにして街ができているわけですから、そこの地域にとっては非常に
影響力を持った大きな
会社なわけですが、そこの商店街までが変わってくるという状態に来ているということを私は
大臣に訴えたいわけです。これは大きな社会問題になります。
これは、ただ一つの例外ではなくて、これがつぶれるということは、これは次々と波及していくので、よその大阪でもあんな大きな字の新聞を出すというほどの問題ですので、ぜひこの中村合板を歯どめにして抑えていただきたい。そうしないと、
大臣は次々と、さっきおっしゃったようなしりぬぐいをさせられるということにもなってくるのだというふうに思います。
その点で
大臣に再度ですが、先ほどの住友
銀行の、八月の
段階で言ったという十五の
会社をつぶすという話と、そしていまの
労働者の実態について、中村合板をめぐるこうしたみんなの不安な状態について
大臣はどのようにお考えになるか、見解を聞かせていただきたい。