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1977-05-17 第80回国会 衆議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月十七日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 橋本龍太郎君    理事 住  栄作君 理事 戸井田三郎君    理事 中山 正暉君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 大橋 敏雄君    理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       伊東 正義君    石橋 一弥君       大坪健一郎君    川田 正則君       戸沢 政方君    友納 武人君       山口シヅエ君    安島 友義君       大原  亨君    川本 敏美君       渋沢 利久君    田口 一男君       田邊  誠君    土井たか子君       森井 忠良君    草川 昭三君      平石磨作太郎君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働大臣官房審         議官      関  英夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山本 秀夫君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         公共企業体等関         係閣僚会議事務         局次長     伊豫田敏雄君         大蔵省主計局給         与課長     足立 和基君         大蔵省銀行局銀         行課長     猪瀬 節雄君         林野庁林政部林         産課長     輪湖 元彦君         通商産業省産業         政策局商政課長 野々内 隆君         通商産業省基礎         産業局鉄鋼業務         課長      石井 賢吾君         労働省労働基準         局補償課長   溝辺 秀郎君         参  考  人         (政府関係特殊         法人連絡協議会         専務理事)   西谷喜太郎君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   田口 一男君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     田口 一男君     ――――――――――――― 五月十四日  重度戦傷病者及び家族援護に関する請願(中曽  根康弘紹介)(第四九七六号)  被爆者援護法制定に関する請願荒木宏君紹  介)(第四九七七号)  同(安藤巖紹介)(第四九七八号)  同(浦井洋紹介)(第四九七九号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第四九八〇号)  同(小林政子紹介)(第四九八一号)  同(柴田睦夫紹介)(第四九八二号)  同(瀬崎博義紹介)(第四九八三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第四九八四号)  同(田中美智子紹介)(第四九八五号)  同(津川武一紹介)(第四九八六号)  同(寺前巖紹介)(第四九八七号)  同(東中光雄紹介)(第四九八八号)  同(不破哲三紹介)(第四九八九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四九九〇号)  同(正森成二君紹介)(第四九九一号)  同(松本善明紹介)(第四九九二号)  同(三谷秀治紹介)(第四九九三号)  同(安田純治紹介)(第四九九四号)  同(山原健二郎紹介)(第四九九五号)  全国一律最低賃金制法制化等に関する請願(  瀬長亀次郎紹介)(第四九九六号)  療術の制度化に関する請願高鳥修紹介)(  第四九九七号)  同(地崎宇三郎紹介)(第四九九八号)  同(西銘順治紹介)(第四九九九号)  政府関係法人定年制延長等に関する請願(東  中光雄紹介)(第五〇〇〇号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願(阿部未喜男君紹介)(第五〇〇一  号)  同外十件(伊藤公介紹介)(第五〇〇二号)  同(稲葉誠一紹介)(第五〇〇三号)  保育事業振興に関する請願田中六助紹介)  (第五〇〇四号)  歯科医療確立に関する請願井上一成君紹  介)(第五〇〇五号)  同(太田一夫紹介)(第五〇〇六号)  同(岡田哲児紹介)(第五〇〇七号)  同(春日一幸紹介)(第五〇〇八号)  同(木原実紹介)(第五〇〇九号)  同(佐藤観樹紹介)(第五〇一〇号)  同(栂野泰二紹介)(第五〇一一号)  同(西宮弘紹介)(第五〇一二号)  同(山田芳治紹介)(第五〇一三号)  同(吉原米治紹介)(第五〇一四号)  健康保険改悪反対等に関する請願外二件(川本  敏美君紹介)(第五〇一五号)  健康保険改悪反対等に関する請願大柴滋夫  君紹介)(第五〇一六号)  同(金子みつ紹介)(第五〇一七号)  同(佐野進紹介)(第五〇一八号)  同(柴田健治紹介)(第五〇一九号)  同(高沢寅男紹介)(第五〇二〇号)  同(山口鶴男紹介)(第五〇二一号)  同(米田東吾紹介)(第五〇二二号)  社会保険診療報酬引き上げに関する請願(春  日一幸紹介)(第五〇二三号)  同(栂野泰二紹介)(第五〇二四号)  公衆浴場法の一部改正に関する請願井上普方  君紹介)(第五〇二五号)  健康保険法改悪反対等に関する請願小川新  一郎紹介)(第五〇二六号)  短期雇用特例保険者の特例一時金の支給等に  関する請願枝村要作紹介)(第五〇二七  号)  老人医療費有料化反対等に関する請願小川新  一郎紹介)(第五〇二八号)  病院の診療報酬引き上げに関する請願池田克  也君紹介)(第五〇二九号)  健康保険法改正反対等に関する請願小川新  一郎紹介)(第五〇三〇号)  同(栂野泰二紹介)(第五〇三一号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願池田克  也君紹介)(第五〇三二号)  老人医療費有料化反対等に関する請願浦井  洋君紹介)(第五〇三三号)  政府関係法人における労働条件改善等に関する  請願浦井洋紹介)(第五〇三四号)  母性保障基本法制定に関する請願春日一幸  君紹介)(第五〇三五号)  同(宮田早苗紹介)(第五〇三六号)  医療保険改悪反対等に関する請願大橋敏雄  君紹介)(第五〇三七号)  雇用保障及び労働時間短縮等に関する請願(谷  口是巨君紹介)(第五〇三八号)  同(広沢直樹紹介)(第五〇三九号)  同(和田一郎紹介)(第五〇四〇号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願浅井  美幸君紹介)(第五〇四一号)  同(池田克也紹介)(第五〇四二号)  同(大野潔紹介)(第五〇四三号)  同(小川新一郎紹介)(第五〇四四号)  同外三件(大橋敏雄紹介)(第五〇四五号)  同(谷口是巨君紹介)(第五〇四六号)  同月十六日  全国一律最低賃金制確立に関する請願池田克  也君紹介)(第五〇九四号)  同(池田克也紹介)(第五一四九号)  同(池田克也紹介)(第五二一二号)  同(池田克也紹介)(第五二二二号)  健康保険法改正反対等に関する請願工藤晃  君(新自)紹介)(第五〇九五号)  同(池田克也紹介)(第五一五〇号)  同外二十八件(大原一三紹介)(第五一五一  号)  同(岡本富夫紹介)(第五一五二号)  病院の診療報酬引き上げに関する請願池田克  也君紹介)(第五〇九六号)  同外一件(池田克也紹介)(第五一五三号)  同(池田克也紹介)(第五二一二号)  同(池田克也紹介)(第五二二七号)  歯科医療確立に関する請願大橋敏雄君紹  介)(第五〇九七号)  同(河村勝紹介)(第五〇九八号)  同(工藤晃君(新自)紹介)(第五〇九九号)  同(鳥居一雄紹介)(第五一〇〇号)  療術の制度化に関する請願倉石忠雄紹介)  (第五一〇一号)  同(福田篤泰紹介)(第五一〇二号)  同(木村武雄紹介)(第五一四五号)  同(根本龍太郎紹介)(第五二二九号)  母性保障基本法制定に関する請願河村勝君  紹介)(第五一〇三号)  同(権藤恒夫紹介)(第五一〇四号)  社会保険診療報酬引き上げに関する請願(河  村勝君紹介)(第五一〇五号)  同(工藤晃君(新自)紹介)(第五一〇六号)  同(大原一三紹介)(第五一四八号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願外一件  (浅井美幸紹介)(第五一〇七号)  同(池田克也紹介)(第五一〇八号)  同(石田幸四郎紹介)(第五一〇九号)  同(大橋敏雄紹介)(第五一一〇号)  同外一件(権藤恒夫紹介)(第五一一一号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第五一一二号)  同(浅井美幸紹介)(第五一五九号)  同(池田克也紹介)(第五一六〇号)  同(小川新一郎紹介)(第五一六一号)  同(大久保直彦紹介)(第五一六二号)  同外一件(大橋敏雄紹介)(第五一六三号)  同(岡本富夫紹介)(第五一六四号)  同外一件(古寺宏紹介)(第五一六五号)  同外九件(和田耕作紹介)(第五一六六号)  同(浅井美幸紹介)(第五二一四号)  同(池田克也紹介)(第五二一五号)  同(大橋敏雄紹介)(第五二一六号)  同(浅井美幸紹介)(第五二二三号)  同(池田克也紹介)(第五二二四号)  同(大橋敏雄紹介)(第五二二五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第五二二六号)  健康保険改悪反対及び健康保険制度等改善に関  する請願吉浦忠治紹介)(第五一四三号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願池田克也紹介)(第五一四四  号)  同(池田克也紹介)(第五二一一号)  同(池田克也紹介)(第五二二〇号)  健康保険法改悪反対等に関する請願和田耕  作君紹介)(第五一四六号)  医療保険改悪反対等に関する請願和田耕作  君紹介)(第五一四七号)  保育器障害児医療改善等に関する請願(市川  雄一君紹介)(第五一五四号)  雇用保障及び労働時間短縮等に関する請願(野  村光雄紹介)(第五一五五号)  同(二見伸明紹介)(第五一五六号)  同(古川雅司紹介)(第五一五七号)  老人医療費有料化反対等に関する請願和田  耕作紹介)(第五一五八号)  保育費増額等に関する請願瀬野栄次郎君紹  介)(第五二二一号)  労働行政体制確立に関する請願大橋敏雄君  紹介)(第五二二八号)  は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十六日  医療保険制度改善に関する陳情書外八件  (第一九二  号)  国民健康保険事業財政健全化に関する陳情書  外三件(第  一九三号)  健康保険法改正反対に関する陳情書外十一件  (第一九四号)  日雇労働者健康保険制度改善に関する陳情書  外一件  (第一九五号)  老人医療費有料化反対等に関する陳情書外二  件  (第一九六号)  国民年金納付期間不足者救済措置に関する  陳情書(第一九七  号)  厚生年金給付改善に関する陳情書  (第一九八号)  じん肺法の一部改正に関する陳情書  (第一  九九号)  難病対策に関する特別措置法制定に関する陳情  書外一件  (第二〇〇号)  血液対策確立に関する陳情書  (第二〇一号)  医薬品の安全性確保に関する陳情書  (第二〇二号)  原爆被爆者援護法制定に関する陳情書外三件  (第二〇三  号)  戦時抑留者の補償に関する陳情書  (第二〇四号)  市町村社会福祉協議会法制化に関する陳情書  外三件  (第二〇五号)  母性保障基本法制定に関する陳情書外一件  (第二〇六号)  中小業者婦人健康保全対策等に関する陳情書  (第二〇七号)  生活保護基準引き上げ等に関する陳情書  (第二〇八号)  保育所設置に対する助成措置改善に関する陳情  書(第二〇九  号)  都市児童健全育成事業の拡充に関する陳情書  (第二一〇号)  身体障害者援護強化に関する陳情書  (第二一  一号)  産業廃棄物処理対策の推進に関する陳情書外一  件  (第二一二号)  都市における廃棄物処理対策促進措置に関す  る陳情書外六件  (第二一三号)  全国一律最低賃金制確立に関する陳情書外十件  (第二一四号)  失対労務者の賃金引き上げ等に関する陳情書  (第  二一五号)  季節労働者失業給付金特例措置継続等に関  する陳情書外一件  (第二一六号)  職業訓練技術向上のための技能開発センター設  置に関する陳情書(  第二一七号)  婦人労働権保障等に関する陳情書  (第二一八号)  母子家庭母等雇用促進に関する陳情書  (第二一九号)  林業労働者振動病絶滅に関する陳情書  (第二二  〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 橋本龍太郎

    橋本委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安島友義君。
  3. 安島友義

    安島委員 本日は、安宅伊藤忠合併にかかわる雇用問題について御質問したいと思います。     〔委員長退席中山(正)委員長代理着席〕  まず、質問に入る前に、四月十九日の本委員会石田労働大臣は、枝村委員質問に対しまして大要次のような答弁をされました。雇用問題の処理が、労働省に私が労働大臣として来ました最大の課題である。第二は、産業政策雇用政策関係については、産業政策実施に当たっては特に労働者雇用の安定に配慮するよう積極的に働きかけて調整を図る。次に、産業別雇用対策の展開に当たっては、関係労使の意見を十分聞いて実施するというようにお答えになったと思います。さらに、雇用保険法改正案に対する附帯決議については、その趣旨を十分尊重して実現に努力すると表明されました。  私は、去る三月十一日の本会議において、雇用問題に関して福田総理石田労働大臣質問をしたわけです。さらに、四月十三日の当委員会大臣事務当局から、詳細にわたりまして雇用問題に関して質問をし、答弁をいただいたわけでございます。その際にも指摘しましたが、これまでの政府雇用政策はきわめて不十分であり、後追い行政に終始しているのではないか。特に、政府の五十二年度予算案に提示された内容景気浮揚策では、今後景気が上向くにしても雇用不安は解消されそうもないと、私の雇用問題に関する現状の認識に基づいて具体的に問題を提起しました。さらに政府に対して抜本的な対策を求めたわけであります。まだその後時間的な経過がそれほどたっておりませんから断定はできませんが、現在までのところ、どうも私が指摘したような情勢が生じているように思われます。その当時約百万と言われました完全失業者は、最近の発表によりますと約百三十万に達しようとしております。今後も予断を許さぬ情勢にあるというように考えます。  こういうような前提の上に立って、冒頭申し上げましたように、安宅伊藤忠商事の合併にかかわる雇用問題について以下質問したいと思います。  まず、大蔵省の方、来ておりますね。——お伺いしたいのですが、きょうは雇用問題が中心でございますから余り多くは触れませんので、そのつもりで簡潔に要点のみお答えいただきたいのですが、本問題の本質と背景には、危険な火薬庫と言われる商社金融に大きくその要因があるように思われます。商社のほとんどは零細な自己資本で、巨額な資金を銀行から借り入れて活動しておるわけですが、順調に動いておるときはそういう問題点は表に出ませんが、一つ間違えば、今回の安宅のように一千億にも上るような巨額の焦げつき債権をつくるという結果を招きます。そしてそのことが、今日、安宅産業に働く従業員はもとより、関連企業に働く人々の大きな雇用不安となってきているわけでございます。また、安宅問題等は非常に大きな金額、規模が大きいものですから表面化しましたが、これに類似するようなことは他の商社にもたくさん例があるように思われるわけです。金融機関に対して監督指導立場にある大蔵当局責任は重大であると思いますが、この件に対してどのような御見解か、お伺いしたい。
  4. 猪瀬節雄

    猪瀬説明員 御指摘のように、商社というものが単に物品の販売業を営むだけでなしに、言うなれば原子力発電からインスタントラーメンと言われるほどの取り扱い商品を、多種のものを扱っております。それと同時に、あるいは海外における開発輸入、あるいはメーカーを子会社に持っての投融資というような、その業務内容がきわめて複雑多岐でございますので、これを総合的に把握することはなかなか困難でございます。また、先生指摘のように、商社も信用によって業務が維持されている面がございまして、一たん信用不安に陥った場合のその影響がきわめて大きい点は御指摘のとおりでございますので、私ども大蔵省といたしましても、今回の安宅問題をきっかけといたしまして、従来のように、大きな商社はつぶれないのだというような固定観念、あるいはあそこはかたいからというような固定観念から安易な貸し出しをやっていた点は、今回の安宅問題について銀行反省を求めるべきであるということできつく反省を求めております。  また、商社につきましては、一つの商社にある銀行大口貸し出しを偏るというようなことに相なりますと、その商社が一たん危なくなった場合の影響というものはきわめて大きな点がございますので、大口融資規制ということで、資本金一定割合しかそこに貸し出しを認めないというような指導をいたしております。  いずれにしましても今回の安宅問題を契機といたしまして、商社に対する金融につきましてはその情報活動の機能の充実と審査体制の能力の拡充というところで、今後二度と起こることのないように十分に指導してまいりたいと思っております。
  5. 安島友義

    安島委員 後でまたお伺いしたいと思います。  次に、通常、商社行政指導立場にある通産省当局にお伺いしたいのです。  これまでもとかく社会的批判のある商社活動について、その批判に対応するような指導が一体どういうふうに行われてきたのか。また、今回の安宅問題が起きてからこれまでの間、どのように本問題に関与し、指導してきたのか、お伺いしたいと思います。
  6. 野々内隆

    野々内説明員 御指摘のように、商社活動と申しますのは非常に多岐にわたっておりますが、現在そういう商活動自体は大半が自由化されておりますので、特に法令で規制されております以外のものにつきましては、商社自主的判断によりまして自由に行われているわけでございます。しかし、先生御承知のように、最近いわゆる総合商社というものに対しまして世上いろいろ批判が起こっておりまして、特に四十七年から八年にかけまして物価上昇とか物不足というような問題が起こりましたときに、各商社社会的責任を内外に明確にするという必要から、日本貿易会総合商社行動基準というものを作成されまして、そしてこれに準拠いたしまして、社会的責任遂行のための社内体制の整備とか、あるいは取り扱い商品の検討とか、社会貢献方策に関しまして、自主的にそれぞれ各社行動基準というものが作成されております。通産省といたしましては、各社がこのような行動基準というものを自主的に作成をいたしまして、それが整備され、遵守されていくような仕組みというのが最も望ましいというふうに考えておりまして、定期的に各社からヒヤリング調査実施いたしましてその実施状況をチェックするという方式をとっておりまして、本年度も近く行う予定にいたしております。御指摘伊藤忠安宅問題につきましては、昨年一月の業務提携発表以来逐次報告を受けておりまして、関連中小企業等に対する配慮等を要請してきている次第でございます。
  7. 安島友義

    安島委員 労働省は本問題に関して、これまで関係会社関係省庁からどのような報告もしくは相談を受けてきたのか。また、その相談に対してこれまでどういうふうに対処してきたのか、お伺いしたいと思います。
  8. 北川俊夫

    北川政府委員 安宅産業につきましては、まず昨年の春闘の際に賃金紛争が発生いたしました。これに関連しましては中労委のあっせんによって解決をいたしておりますが、それ以来、人員整理問題が必至であるということで、労政局あるいは職業安定局においてそれぞれこの問題に関しての情報の聴取、あるいは会社からの連絡を受けておるわけでございます。その都度、まず、第一次の希望退職募集につきましては組合との話し合いを十分にするように、第二点としては、就職あっせんについては万全を期するようにという指導を行ってきたところでございます。本年に入りまして、三月段階関連会社雇用の問題というものが焦点になってまいりましたので、この段階では、私が、安宅産業小松社長においでいただきまして、特に関連会社従業員雇用問題について温かい配慮をするように強く要望いたしたところでございます。先般は大臣から、第二次人員整理募集があるということに際して、会社側雇用問題についてはもっとよく労働省連絡をするようにという御指示もございましたので、前週の十一日以降、安宅小松社長あるいは伊藤忠のこの問題の担当者でございます青柳常務、さらに五月十四日には住友銀行樋口常務、昨日は協和銀行中島常務にそれぞれ私お会いをいたしまして、整理問題について話し合いがもっと十分行われるように要望いたしますとともに、解雇の場合にはその就職あっせんについては万全を期するように、さらに関連会社への影響についても慎重な配慮をするように要望してきたところでございます。
  9. 安島友義

    安島委員 この安宅伊藤忠合併問題が起きたころから今日のような状況はある程度予測され、つまり、いろいろな形、足したような形態はとっても、結局人員合理化に結びつくということは当初からわかっていた問題ではないかと思うのですが、いまの局長の御答弁によりますと、具体的に安宅問題に労働省が関与したのが賃金紛争の時点であるというのはちょっと納得しかねるのです。この種の問題は大きな社会問題として当然発展するおそれのあるものであり、そういう点から、このようなケースの場合には通産省等からの連絡はこれまで全然なかったのですか。
  10. 北川俊夫

    北川政府委員 通産省から人員整理が必至の段階というところで御連絡はいただきまして、その情報をもとに会社側にいろいろ事情を聞く等、通産省とは連絡を密にしてこの問題の対処に当たっております。
  11. 安島友義

    安島委員 冒頭指摘しましたように、いよいよもう火がついて、どちらかというと、労働省が関与するときにはかなり局面は進んでいるような場合が非常に多いわけです。後からこの問題に対してはさらにいろいろ質問をするつもりでございますが、労働大臣としてはこのような問題に対してはどういうふうに考えますか。
  12. 石田博英

    石田国務大臣 いままでの商社合併の場合は、大体全員雇用問題に影響なく合併が行われてきたわけであります。今回の商社合併は御指摘のとおりの事態になった。よく新聞等大蔵、通産その他の了解を得て云々という記事を読みまして、結局は雇用問題に持ち込まれるのでありますから、これは労働省の了解も当然とるべきものであるということを内部に指示をいたしまして、そしていま安定局長から申し上げたような処置をとっておるわけであります。なお、日にちはまだ決まっておりませんが、近々住友銀行の幹部も私のところへ来ることになっておるわけであります。従来までのこの問題の推移は、どうしてもやはり雇用問題というより先に企業の安全という方が頭にくる。したがって、それに結びつく大蔵、通産、銀行というようなところへ頭がいくことは大変残念であります。したがって、最終的にはこっちに後始末が来るわけでありますから、当然労働省の了解をとった案でなければならぬ、これは強く指示して、実施をいま急がせておるところであります。
  13. 安島友義

    安島委員 安宅産業伊藤忠との継承に関する関係会社関係銀行間の話し合いは現在時点でどの程度進んでいるのか。これは安宅関連企業を含めての話でございますが、特に雇用にかかわる問題について重視しておりますので、商権や人員の継承についてその概要を御説明願いたい。これは通産ですか。
  14. 野々内隆

    野々内説明員 安宅から伊藤忠への商権の移転その他につきましては、安宅の事業のうちで鉄鋼、化学の大部分が伊藤忠に承継をされ、また他方、繊維、木材、不動産などがそれぞれ別会社に引き取られるというような報告を受けておりますが、関連会社を含めまして詳細につきましては現在まだ関係者間で協議中というふうに伺っておりまして、まだきょうの段階では通産省といたしましても詳細については承知いたしておりません。
  15. 安島友義

    安島委員 五月末に合併に関する正式な調印が行われると聞いておりますが、いまの御説明でいきますと、五月末というその見通しは非常に変わるというか、おくれるということになるのですか、現在時点で進んでいないということは。
  16. 野々内隆

    野々内説明員 全体の進展状況が五月末に間に合いますかどうか、ちょっと私どもその辺までまだ承知いたしておりません。
  17. 安島友義

    安島委員 いろいろとむずかしい問題があるのは私も承知しておりますが、どうもそのことに少し気をとられ過ぎてお答えのようでございますが、常識的に考えまして、少なくとも安宅本体の伊藤忠への継承にかかわる問題が進まなければ、これは五月末に調印はできないわけです。関連企業の問題になりますとなお日時を要するというのは承知しておりますが、少なくとも五月末のこの合併に関する協定調印にはそのことが明確になるはずだと考えますが、その点についてはどうなんですか。
  18. 野々内隆

    野々内説明員 実は昨日も安宅の担当の者を呼びまして、特に関連会社につきましてどういう状態になっているか、承継が可能なものとか整理とかいうことで話を聞きましたのですが、わかっているものもございますが、まだ必ずしも全体としてはっきりしないというお答えで、今後一体どういうつもりかということを質問いたしましたところ、何とかして五月末までにはめどをつけたいということで鋭意関係者との間の話し合いを進めている、こういう回答でございます。
  19. 安島友義

    安島委員 ここで時間をとりますと私の持ち時間がなくなってしまいますので、いろいろといま詰めの段階だと思いますから、これは確認しますが、関連企業も含めて私が質問したような内容については後で文書で御報告いただけますか。
  20. 野々内隆

    野々内説明員 通産省といたしまして特に実際の問題をチェックするだけの手足はございませんが、安宅からの報告を聴取という形では御報告が可能かと思っております。
  21. 安島友義

    安島委員 私どもの考えではこれだけの大きな問題に対して、通産当局としてはその程度の立場にしかないのですか。
  22. 野々内隆

    野々内説明員 私どもの国内における大きな関心と申しますのはやはり関連企業への波及的な影響ということで、先生指摘のとおりでございます。私どもの持っておりますシステム、最も有効なものとしましては中小企業信用保険法に基づきます倒産関連補償システムがございますが、これの適用という点、それから金融問題、このあたりが大きなものでございます。こういうものは個別の企業から協力要請があって初めて発動できるという状態になっておりますので、その辺、今後安宅伊藤忠の間の話し合いによりまして、具体的に個別企業の援助の要請というものがありました段階で私どもとしてはそのシステムの発動というものを考えたい、かように考えております。
  23. 安島友義

    安島委員 私が申し上げましたようなことを当該関係会社連絡をとって、現在時点でどうなっているかということを通産省報告させる。その内容について私の方に御報告いただけますか。くどいようですが……。
  24. 野々内隆

    野々内説明員 お話をまずお伺いいたしませんとどこまでできますかわかりませんが、できるだけのことをさせていただきたいと思っております。
  25. 安島友義

    安島委員 現在、安宅の本体の方の従業員は何名おりますか。
  26. 北川俊夫

    北川政府委員 本年の四月現在で二千九十八名と報告を受けております。
  27. 安島友義

    安島委員 本問題が発生した当初は三千八百人と言われております。さらに、伝えられるところによりますと、合併に関する協定調印が五月の末、そして発足が十月一日と予定しているわけですが、少なくともこの十月一日発足まで、厳密に言うと九月三十日ごろまでの間に、伊藤忠の方としてはいわゆる継承する人員は千名程度の意向だというように伝えられております。これではもはや合併と言うよりも、私どもの考え方ではこれは安宅の解体ではないか、こういうふうに思います。また、本問題が起きてから、当時それまで組合はなかったのですが、組合を結成し、合併反対、自主再建を組合は要求して活動してきたわけですが、組合の主張は、合併という名のもとに人員合理化、つまり首切り必至と判断したからであって、その後の経過を見ますと組合の主張の正当性というのは、一部誤解や偏見の報道が新聞等で伝えられておりますが、私は当然ではないかというように考えているわけでございます。  この安宅伊藤忠の今日までの経過を考えますと、これは通常の合併と言うに値するものであるかどうか。私たちは特に雇用問題を重視するという立場ですが、これ、労働大臣はどう考えますか。
  28. 石田博英

    石田国務大臣 人数で判定することはなかなかむずかしいと思いますが、その人数以外の人たちに対する扱いはどうなるかという問題は、これは雇用問題としての大きな問題であります。ただ、合併であるか、吸収であるか、解体であるかという判定は総合的にさるべきものであると同時に、そういう言葉自体にはそう大した重要性がないのじゃないか。問題は言葉ではなくて、実際上後から出てくるものを使用者側はどういう責任を持って処理するか、またそれに対してわれわれがどう対処するのかというところにあるだろうと考えております。直接的に伊藤忠に引き取られる者以外の人たちがどういう道をたどっていくか。会社側に就職のあっせんをゆだねるか、あるいは自己縁故その他によって移っていくか、あるいは商権の移譲等に伴って他の商社に移っていく場合があり得るか、そういうことを総合して対策を講ずるのが私どもの立場で、それは合併と言えるか、吸収と言えるか、解体と言えるかという判定は、どうも私どもが下す立場ではない、こう思います。
  29. 安島友義

    安島委員 昨年十二月二十九日の本問題に関する合併覚書調印時に、組合に対して小松安宅社長は、第二次希望退職は考えていない——それまでに第一次希望退職の問題がすでに起きているわけですが、考えていないと言明しているわけですが、去る四月の二十八日、第二次希望退職者を募る旨を明らかにした。これは状況が変わったのかどうか、この点について労働省はどの程度承知しているのか、お伺いしたいのですが。
  30. 北川俊夫

    北川政府委員 第一次希望退職の後、第二次希望退職に至りました経過につきましては、伊藤忠との合併話し合いの中で、先ほど通産省から御報告のありましたように、商権をどの程度にしぼるか、それに対応して伊藤忠としてはそれに必要限度で人を引き取りたいというようなお話し合いがあったという点につきまして、中間的な報告は受けております。
  31. 安島友義

    安島委員 私はずっとこの問題の発生した経過をたどってみるならば、伊藤忠安宅のある部門を中心にしてこの合併話し合いが進んでいるときから、すでにその種の問題、人員の継承の問題、これは商権の問題が先になるわけですが、少なくとも伊藤忠として継承を強く望んでいる部門とそれにかかわる人員ということと、必ずしも継承したくないと考えているものは、その当時からもうすでに仕分け、そういう考え方があったと思うのです。したがって、この第二次希望退職募集はしないという社長の発言は、私は、その第一次希望退職という問題を行うための、会社のその当時の判断に基づく組合に対する説明というふうに受けとめていますが、これはどういうふうに考えますか。
  32. 北川俊夫

    北川政府委員 小松社長組合との交渉の中でどういう御発言になったか、私はその場におりませんし、その後それについての報告も聞いておりませんので、これについて私がとやかく論評する筋合いではないかと思います。
  33. 安島友義

    安島委員 組合は、第一次の募集で、いろいろなことを含めていやになったという人もいるし、この際やめて自分の能力を生かす道を探そうというふうなこと、いろいろでございましょうが、つまり出るべき人はもうすでに第一次希望退職によって出ている。したがって、今回の第二次希望退職というのは、名目は希望退職で、実質的に判断してほしいと言ってもそれは退職の強要につながるということを非常に懸念している。またそういう立場でこれまで会社側と交渉を進めてきたわけです。そういう点から、本人の意思を十分尊重するということを前提に、組合としてもただ反対ということだけでは済まないような事態になってきているというようなことも踏まえて、完全なる再就職のあっせんと、現行退職金の三倍程度の要求になりますが、それを要求しているわけです。この組合との話し合いがつかぬままに、すでに第二次希望退職募集が行われているというふうに私は聞いておりますが、いかがですか。
  34. 北川俊夫

    北川政府委員 第二次希望退職募集が、組合話し合いがつかない段階会社側から提示されているということは、私も先生と同様に存じております。
  35. 安島友義

    安島委員 窓口が局長のところだと思うのですが、第二次希望退職募集に関するそういうことを会社側が決意したという経過については、労働省に事前に連絡ないし相談はあったのですか。
  36. 北川俊夫

    北川政府委員 第二次希望退職につきまして会社側が一応計画をつくりました段階から、第二次希望退職については組合話し合いを持ちたいということについての連絡があり、かつ交渉の段階で、組合との交渉が現在ここまでいっておる、あるいは話し合いが全然進展をしておらないというような連絡がございましたけれども、最終的には、提案をする前日に会社側から、どうも話し合いについては見通しが大変暗いけれども、明日の段階希望退職募集をいたすことになりますという連絡は受けております。
  37. 安島友義

    安島委員 私は、この第二次希望退職募集というのは住友銀行、また伊藤忠商事の意向によるものであるというふうに推測しております。そのことは恐らくお答えにならないでしょうから続けますが、自主判断の基準とも言うべき退職条件について組合の要求を無視する、という言葉が強ければそれは別ですけれども、少なくとも組合の意向に沿った回答が行われぬままに、要するに話し合いがつかぬままに見切り発車をして、五月末に行われる合併の契約調印までに、先ほどから申し上げております予定している人員に達するようないわゆる人員縮減を行おうとするような、こういう強引な会社の姿勢に対して、労働大臣はいかなる指導をすべきであると考えますか。
  38. 石田博英

    石田国務大臣 これは強制力を持つものではないと思いますけれども、やはり組合との合意に達することが前提として進められるべきものだと私どもは考えます。それから、私が、これは非公式でありますが、非公式にある程度の責任ある関係者から聴取したところによりますと、本社関係においては雇用問題は発生させないつもりだという意向を伝えてまいりました。それに対して私は、本社関係はあるいはそうかもしれないが、関連会社はどうするのだ、関連会社についての責任も当然負わなければならぬ問題なんだ、そういうことをひっくるめて改めて相談に来るというところにいまあるわけであります。
  39. 安島友義

    安島委員 私は、退職条件について会社は再考すべきであるし、またそういう指導をすべきではないかと考えるわけです。  それから、あくまでもこれは希望退職というからには当人の自主判断に任せる。あたりまえのことですが、先ほどから申し上げておりますように、計画的な人減らしを進めているということはあらゆる事情を総合してこれは明らかな事実です。そういう点から考えて、ある目的の人員に到達しようとするためのこの種の問題の会社のやり方については、私も労働運動二十五年の経験を持つ者ですから十分いままでもいろいろな問題にタッチして知っております。それを知らない労働省でもないでしょうし、ベテラン大臣である労働大臣もその辺は十分御承知だと思うのです。そういう観点から肩たたきというふうないわゆる強制、強要するようなことはもうすでに現在進んでいる段階ですから、これは一刻も余裕がない。その点に対しては、そういう行為が行われないように特に強く要望しておきます。  このように大量の人員整理を伴う問題、私が先ほど指摘しましたように、合併というよりもこれは解体である。しかも、関連企業を含む多くの従業員とその家族は、安宅の経営者に対してはもちろんのこと、実権を掌握していると思われる住友銀行伊藤忠に対しても非常に不信感が強いわけです。その辺で、今日まで安宅組合がぜひ当事者、安宅の経営者だけでなくて住銀や伊藤忠の首脳部にも、いろいろこの切実な気持ちを訴えたいということを申し上げているわけですが、一向に実現していない。特に伊藤忠の戸崎社長は記者会見において、はち巻きを締めている組合運動の活動家は伊藤忠は引き取らないと発言していると伝えられているわけです。また、伊藤忠に継承が確実な鉄鋼部門においても、組合に入っていると伊藤忠に行けないぞというような発言を管理者層にさせている。これまでに大量の組合員が離脱しているのはもうすでに御承知だと思いますが、これが事実であるとするならばこれは不当労働行為にも当たるというふうに考えますが、いかがですか。
  40. 関英夫

    ○関政府委員 昨年末の合併に関します覚書調印の際の記者会見におきまして、伊藤忠商事の社長が、合併に反対しているような人は、当社つまり伊藤忠には来ないのではないかというような発言をしたというふうには聞いておりますが、その間の本当に正確なやりとりについて私は聞いておったわけではございませんので、その実際のやりとりがどうであったかということはさらによく調べてみたいと思いますが、いずれにいたしましても、一般的にいいまして使用者が労働組合法の禁止している不当労働行為を行ってはならないことはもう言うまでもないところでございます。ただ、伊藤忠商事と安宅産業の間は現在まだ正式の合併契約がございませんので、伊藤忠商事の社長の具体的な言動、そういったものが不当労働行為に当たるかどうか、この辺は非常にむずかしい問題でございまして、公正なる第三者機関の判定にまつべきものだというふうに考えております。
  41. 安島友義

    安島委員 私は法律的にどうこうということをここで論議してどうというつもりじゃないのです。この一連の合併にかかわる経過をたどってみましても、どうもやはりそのしわ寄せがすべて働く者に来ている。さらに関連会社を含めますと、今後もこの雇用問題に対してはかなりいろいろ深刻な問題をすでに抱えている関連企業もたくさん控えているわけです。ですから、この安宅の本体にかかわる伊藤忠とのいわゆる継承に関する話し合いというものが円滑に行われるかどうかという問題は、当然のことながら、安宅従業員はもとより、関連企業に働く人たちにもこれは精神的に非常に大きな影響を持つ性格のものなんですよ。ですから会社側も、余り強引な手段やあるいは発言というものでいたずらに組合を刺激するようなことを慎むべきではないか。そういう点に対しては、少なくとも指導立場にある労働省としてはもっと強力にそういう指導をすべきではないかという観点で申し上げているわけです。  五月末の合併調印を間近に控えまして、事態は重要な段階を迎えているというふうに考えます。問題の性格上、双方ともに妥協しにくい側面を持っていると思いますけれども、誠意をもって話し合うならば解決の糸口もつかめると思うわけです。この段階における解決、ということですね。労働大臣は、この際、当事者間の協議を促進させるためにあらゆる措置を講じていただきたいと思うのです。当然のことながら、実質的な権限を掌握していると思われる住友銀行伊藤忠商事に対して、組合が要求している雇用の安定と身分の保障を求めるこの主張に、やはり誠意をもってこたえるように努力すべきではないか、またしてほしいと思っているわけです。  さらに、大蔵、通産当局に対して申し上げたいことは、いま申し上げましたようなことについて、それぞれの立場において、またその責任において、適切な助言、指導を講ずるように強く要望しておきたいと思うのです。これまで関連企業における倒産が相次いで行われておりますし、現在適切な措置を講じないと今後も関連企業におけるこの種の問題が続出するおそれがあると考えます。企業倒産は、一般的には親会社からの発注停止や銀行からの融資の道を断たれることによって起こるわけでございますが、特に現在のように社会的な雇用不安が続く中で一たんやめさせられるということは、これは非常に重大な問題です。またそれが社会的に及ぼす影響もきわめて大きいわけです。その点に関しては金融機関社会的責任は特に私は重要ではないかと思うのです。  冒頭申し上げましたように、きょうは余りそのことには多くを触れませんが、高度成長時代と言われるのは、商社活動だけではなくて、どちらかといいますと、一般的にわかりやすく言えばインフレ政策、つまり量産体制、よく言われるいわゆる生産第一主義、規模を拡大することのみに各産業、企業が集中し、そのバックになっていたのは銀行であり、また当時の政府金融政策というものがいろいろな意味でいろいろな問題を醸している。したがって、貸すだけであって、問題が起きたときに銀行が余り損失を受けないようにということで逃げてしまうのであるならば、これは大問題であります。少なくともその責任は最後まで負うような立場で考えるべきであります。特に商社指導立場にある通産省は、こういった、先ほどから言われておるような冒険的な商社活動というものを放置しておいた、その責任は私はきわめて大きいと思うのです。  何だかんだ言いましても、最終的には、雇用問題に関する責任は、問題発生の経過のいかんにかかわらず労働省、つまり労働大臣責任にかかってくるわけであります。この点からも、言葉は適切かどうかわかりませんが、とかく後始末だけさせられているような労働行政に対して、労働大臣としても、この種の問題が発生するおそれがあると思われる場合には各省庁に対して十分その責任を持つように、そしてその結果労働省として介入、関与しなければならないというふうな、少なくともそういう道筋をたどるべきではないか。  そういう点からも、こういう問題はこれからも非常に大きく問題が尾を引くと思われますので、特に、私が言うまでもなくもう非常にいろいろな体験をお持ちの大臣でございますから、今度の問題に対しても、少なくともぎりぎりの段階で、安宅の本体の従業員、それに関連企業従業員とその家族は非常に不安と不信の入りまじった気持ちでこの問題を注目している、その点に対して、労働大臣の本問題に対する決意といいますか、考え方をお伺いしたいと思います。
  42. 石田博英

    石田国務大臣 商社や事業場がどういう経営状態に陥っているか、あるいはどういう危険を胚胎しておるかというようなことまで労働省が事前につかめというのは無理だと思うのです。そういうものは通産省大蔵省の担当する分野だと思います。しかし、そういう事態に一たん立ち至った場合に、最終的に雇用の安定の責任を負わされるのは労働省。したがって、昨年の暮れですか、合併する条件について通産、大蔵、日本銀行等の了解を得てやるという旨を付記した文書が出されましたが、私はきわめて不愉快であります。したがって、そういう気持ち、そういう考えに基づいて、いま関係者に対しまして、雇用問題に対するどういう配慮がなされているかという点、また配慮すべき点、そういう点について厳重に申し入れを行い、その申し入れば進行中でございます。  ただし、合併に伴います退職その他の諸条件については労使双方が話し合うべきものであって、そういう話し合いを意識的に拒否するというようなことについては、先般の日産とプリンスの事案等にかんがみまして、合併することになっておる——合併することになっておると言うとおかしいけれども、相手方の企業もまたともに労組法上の使用者としての責任を負うことになっておりますので、そういうたてまえに基づいて反省を促したい。具体的な条件は労使間で話し合うべきものだと思っておる次第であります。それでいろいろな話し合いを通じまして、先ほどちょっと申しましたけれども、商社、商権の立場からの議論が行われても、雇用者あるいはその後に生ずる雇用問題についての配慮が一般的に当事者間において不足しておるような感じを私は持っております。具体的にだれがどう言ったとかなんとかという事例は私は承知しておりませんけれども、印象としてはそういう印象を持っておりますので、そういうたてまえからこの問題の処理に当たりたいと考えておる次第であります。
  43. 安島友義

    安島委員 終わります。
  44. 中山正暉

    中山(正)委員長代理 次に、川本敏美君。
  45. 川本敏美

    川本委員 先ほど来、伊藤忠安宅の問題について安島議員が非常に広い角度から当面の問題点を浮き彫りにして、ある程度関係各省庁あるいは労働省からも御回答をいただいたところでありますけれども、私は引き続いて、これに関連して、伊藤忠安宅合併の波紋が大きく関連産業に及んできておる、この問題についてもう少し具体的にお聞きしたいと考えておるところであります。  そこで、私、今度質問させていただくに当たってちょっと勉強をしてみたわけですけれども、まず、御承知のように、伊藤忠の本体の問題については先ほどからいろいろ論議がありました。ところが、すでに今日まで、安宅伊藤忠合併によって、安宅関連の会社があるいは百七社とも言われ、あるいは百六十社とも言われ、二百三十社とも言われる、見方によってその数はいろいろ違うわけですけれども、現在私たちが新聞報道等によって知り得ているだけでも、株式会社ホリーとか、株式会社ホクシーとか、株式会社デラップス、あるいは津田製作所とか、東京原子工業、協和自動車など、十二社という会社が倒産しているわけです。それに対しては、先ほど通産省の方からも安島議員に対する答弁の中で触れられておられたと思うのです。ところが最近になりまして、四月二十六日に、安宅産業が九八%の資本金を出資しておる、そして社長も安宅から赴任しておる、全く安宅産業の分身とも言うべき、名古屋にある中村合板が会社更生法の申請を名古屋地裁に出しておるわけですけれども、事実上倒産したような形になっておると思う。これはただ単に伊藤忠安宅合併の問題だけではない。いわゆる合板業界というものが今日このような構造的な不況に落ち込み、あるいは業界の再編成が要請されておる、こういう事態を、慢性的な不況というものをつくり出してきた原因の一半は、私は政府にあるのじゃないかと思うわけです。  それと同じように平電炉の問題があります。平電炉についても、私が調査いたしますと、全く合板業界と同じ状態をたどっておるわけです。昭和四十七年、四十八年当時は、高度の経済成長あるいは日本列島改造論、そういう中でいわゆる公共事業の拡大投資、設備の拡大、こういうふうないろいろな需要にこたえるために、合板業界においてもどんどん施設設備を拡充し増産しなさい。平電炉業界についても施設設備を拡充して増産しなさい。そのために、政府政府資金も財政投融資も、あるいは銀行からの大型な融資もやっていく。こういうような姿勢で進んできたのが、あの大きなオイルショックの影響で一挙に経済の成長率も変わる、公共投資も減る、こういうような事態の急変の中で、いま大きな雇用問題を発生しつつあるというのが現状ではなかろうかと思うのです。  そこで、まず林野庁にお聞きいたしたいのですが、合板業界の現在の構造的な不況の原因というものについて、中村合板が今度の伊藤忠安宅合併から倒産に追い込まれておるという問題とは別個に、全国的な合板業界の現在の不況の原因というのはどういうところにあるのか。政府はそれに対して責任があると思っているのか、ないと思っているのか、その辺ひとつお聞きしたいと思う。
  46. 輪湖元彦

    輪湖説明員 合板業界は、戦後、輸出向けの合板をつくりまして、昭和三十年代には当時の輸出の中でも花形産業として伸びてきたわけでございます。ところがその後、発展途上国の合板産業が伸びてまいりまして、それとの競争で負けてしまったということから、国内需要の開発に努めまして、いわゆる構造用の合板等をつくりましてさらに一息ついたわけでございますが、その後のオイルショックによりまして、特に普通合板につきましては需要が急変してしまった。これはもちろん住宅産業との関連もございますので、住宅の着工戸数が百九十二万戸から百三十万戸ぐらいに落ちたということが最大の原因であろうと思いますけれども、そういったことからその後の不況が依然として進んでいるという段階でございまして、いわゆる一般経済の景気循環的な不況に基づく産業不振という問題と、さらに構造的な問題もあるのではなかろうかということで、現在林野庁でも木材産業基本問題調査会等をつくりまして、これからの木材産業の不況対策につきまして検討を進めておる段階でございます。
  47. 川本敏美

    川本委員 木材産業基本問題調査会等をつくって、いまその構造的な不況の問題の対処を林野庁として進めておるということですけれども、今後の見通しについてはどういうふうに見ておられるのですか。
  48. 輪湖元彦

    輪湖説明員 今後の見通しでございますが、合板産業につきましては、先ほど申し上げましたような住宅の着工戸数がふえるとか、あるいは一般経済の回復に伴います土木建築事業、そういったものの増加が実現をいたしませんと、合板産業としての景気回復はできないというふうに考えております。設備能力から申しまして、今後の回復につきましては緩やかなテンポでは上りますけれども、現在持っております設備状況から見ましても、あと四、五年はいわゆるフル操業に近いかっこうにはならないだろうというふうに考えております。
  49. 川本敏美

    川本委員 大体昭和四十八年末を境にして、四十九年から合板業界は倒産、工場閉鎖といういわゆるあらしが吹きまくってきたことは御承知だと思うのです。私の手元で調べましたところ、去年の四月十六日の日経産業新聞の記事を読みますと、四十九年末に福井市の北山木材というのがまず倒産、工場閉鎖をした。それ以来ずっと全国的に波及をして、五十一年の四月にはいま問題の中村合板の空見工場というのが閉鎖をしている。さらにその後、九州荒尾市の三池合板工業の本社工場というのが閉鎖をしている。合計今日までで合板関係で二十二の会社、工場が倒産または工場閉鎖をやっておる。下請とか子会社関係まで含めると、この合板業界だけで過去三年ほどの間に約五万人という大量の労働者が失業をしておるということが数字としてあらわれてきておるわけです。  先ほど、五十年に百三十万戸まで建設戸数が落ち込んだと言われますけれども、今後の建設省の住宅建設五カ年計画等を見てみても、一年当たりの平均が百七十万戸程度だ。しかし、それが予定どおりいくかどうかということについてはやはり問題がある。百六十万戸と仮に抑えてみても、現在二十二工場が倒産、閉鎖をして、そして中村合板が今度倒産、閉鎖をしたとしても、なおかつ全生産量の大体一〇%、四ミリに換算して大体二億平米以上のものが過剰供給になるのではないかと言われておるわけです。こういう実態について、林野庁はどのように考えておりますか。
  50. 輪湖元彦

    輪湖説明員 現在の需給と生産能力ということからいきまして、現状では設備が過剰であるという認識を私ども持っております。ただ、これをどのようなことで調整をしていくかということにつきましては、将来の需給見通し、それをはっきりさせませんことには計画もできません。そういったものを見通しながら、なお、いろいろな各種中小企業の法律がございますので、そういったものに基づきます助成をしながら、転換する場合には転換助成法等の手を打つとか、そういったことで考えてまいりますけれども、基本的にはそういった将来の需給等をいま作業中でございます。そういったものを踏まえまして、合板産業の将来のあり方につきまして検討を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  51. 川本敏美

    川本委員 そこで、通産省基礎産業局の方からおいでいただいておりますね。平電炉の問題について、私ここでちょっとお聞きしておきたいと思うわけです。  平電炉につきましても、先ほど申し上げましたように、昭和四十八年の夏、一九七三年の夏に、産業構造審議会鉄鋼部会が「七〇年代の鉄鋼業」という答申をしておる。その中で、いわゆる小型棒鋼を中心とする平電炉の需要に応じていくために、公共投資やその他の政府の要請にこたえていくために、さらに平電炉をもっと拡張すべきであるというような考え方で答申が出され、それに基づいて業者や商社、さらに政府も一体となって設備拡張競争をやってきたという実態が四十八年まであると思うのですけれども、それについて通産省はどのように思っておられますか。
  52. 石井賢吾

    ○石井説明員 お答えいたします。  平電炉関係の主力製品でございます小型棒鋼及び中型形鋼、これは建設需要部門でございまして、この八五%が消化されております関係から、高度成長に伴います年率一〇%で四十八年度まで成長を遂げております。今後の社会資本充実という観点から、その種鋼材の需要がさらに増大をするであろう。それに合わせまして民間設備投資部門における消費ということを考えれば、相当大幅な増大が期待できるであろうという考えを持っておったことは事実でございます。現実に、四十七年の粗鋼カルテルの最後の時期におきまして小型棒鋼が急増いたしまして、いわば物不足の時代に入ったわけでございますが、あわせて、そういった時期におきます過剰流動性を背景としまして投資が非常に進んだという事実がございます。
  53. 川本敏美

    川本委員 現在、四十九年を境にして、平電炉業界というのはまた再び過剰生産で不況のどん底に陥っていると言われて、その中で過酷なまでのスクラップ・アンド・ビルドといいますか、いわゆる廃棄処分等のことが真剣に検討され、その中でまた雇用不安が再び起こってこようといたしておるわけです。現在の状態で、平電炉関係で過剰生産だと言われますけれども、どの程度の過剰生産になっておるのですか。
  54. 石井賢吾

    ○石井説明員 五十一年度末の段階におきまして私ども試算いたしました限りでは、供給が二千四百五十万トン、これは粗鋼ベースでございます。それに対しまして需要は千七百三十万トンということで、約七百二十万トン、ほぼ四割強の、需要に対する供給過剰ということが言えるかと思います。
  55. 川本敏美

    川本委員 そこで、これはこのまま放置してはいけないということで、通産省としても今度は一転してこれに対する合理化対策を考えなければならぬ立場になったわけですが、基礎産業局長が昨年の九月に平電炉基本問題研究会というのを発足させていますね。それの報告書が最近出されたやにお聞きしておるわけですけれども、その報告書の内容は主としてどういうことになっておるのですか。
  56. 石井賢吾

    ○石井説明員 ことしの二月の二十八日に平電炉基本問題研究会が報告書を局長あてに提出してございます。主な柱は三本でございます。それは、平電炉は七十四社ございますが、学者先生方がよく平電炉について言われるように、古典経済理論が全く適用するようなパフォーマンスを繰り返してきたわけでございますので、要はその経営の安定を図るために需給のバランスをとることが根幹であるということに基づきまして、第一に過剰設備の処理を行う。これはただいま申し上げました五十一年段階におきまして七百万トンの過剰といいますものが、五十五年度に至りましてもなお四百万トンないし六百万トンの過剰という、いわば構造的過剰状況が明確になっておりますので、五十五年度を目途にしまして、少なくとも最低限の過剰設備の処理、約三百九十万トンの処理を行うということが第一の柱でございます。それから第二に、過剰設備を有効ならしめるために、今後の新増設に対しまして新増設のルールを設定する。これにつきましては、今後産業構造審議会鉄鋼部会におきましてこのルール化につきまして検討を進める予定にいたしております。第三の柱は、五十五年度末におきまして最小限のバランスを確保するという目標でございますので、経過年次におきまして依然として供給過剰状況が続くわけでございますから、これに対しまして有効な生産調整の体制をつくるという意味におきまして、中小企業団体法に基づきます商工組合の設立を行う。これが主たる三つの柱でございます。以上でございます。
  57. 川本敏美

    川本委員 そこで、平電炉でもただいまお聞きいたしましたような状態で、いわゆる四十八年までの日本列島改造、高度経済成長、そういう中で設備の拡充競争を行ってきたのが、一転して安定成長、低成長という状態の中で、強い構造改善が要求されておる業界だと思うのです。こういう業界についてはほかに製糖業界等もあろうかと思うわけですけれども、特徴的な問題として私は合板業界と平電炉業界の問題をとらえてみたわけです。  そこで、大蔵省銀行局、おいでですね。——銀行局にお聞きしたいのですが、合板業界あるいは平電炉業界、こういうものが構造改善を要求されておる中で、従来商社とかあるいは銀行というものがメーカーとか業界に対して持っている政治姿勢といいますか基本姿勢といいますか、そういうものに、私たちから見るとまことにおかしい問題がたくさんあると思うのです。こういうものへの銀行の融資というような問題については、大蔵省は従来通産省やあるいは林野庁等からも協議を受けたり、あるいは銀行から相談を受けたというようなことがあったり、あるいは大蔵省独自の判断で指示、通達等を出しておるという状態がありますか。
  58. 猪瀬節雄

    猪瀬説明員 御質問の趣旨をあるいは取り違えたお答えになるかもしれませんので、その場合にはまた訂正させていただきますが、全く民間ベ−スで行われているようなこういった個別の取引につきましては、通産省なり農林省から相談を受けたことはございません。ただ、先ほど来先生指摘のように、こういった平電炉なりあるいは合板といった、構造的な問題を抱えているところにおきましては、それぞれの所轄官庁におきまして、あるいは不況カルテルであるとかあるいは合理化措置であるとか、そういったいろいろな御指導があろうかと思います。そういった合理化措置の一環といたしまして金融措置の必要があるということで御相談があれば、私どもといたしましては十分相談に乗ってまいりたいと思っております。
  59. 川本敏美

    川本委員 そこでもう一度話を中村合板の問題に戻したいと思うのですが、中村合板は去る四月二十六日にいわゆる会社更生法の申請をしたわけです。中村合板は安宅が九八%出資しておりますから、もう全く伊藤忠安宅合併の余波を受けたということになろうかと思うのですけれども、調べてみますと、中村合板では昔は従業員が千人からおった。それがもうすでに今日までだんだん整理をされて、現在五百三十人の人が残っておるわけです。ところが、仮に中村合板が倒産をするということになりますと、中村合板には直接の下請で名四産業というのが同じ工場の中にあるわけですけれども、これが従業員を二十五人抱えておるわけです。これ以外に、企業名は申し上げませんけれども、直接下請と言われるものが現在十二社ほどあるわけです。中村合板の下請ですよ。それがまた十二社ほどある。従業員数は二百人を超えると思うのです。さらに、直接下請ではないけれども、関連の企業が十二社を含めて全部で三十六社に上るわけです。この企業全部の従業員数を見てみますと、大体関連企業で五百人。そうすると、中村合板で五百人余り、関連企業で五百人、合わせて千人の労働者が今度はこの不況の中で失業者として町にほうり出される危険にいまさらされていると思うわけです。個々の名前を申し上げますとこれはまた信用不安等で問題がありますので私は申し上げませんけれども、もう深刻な状態です。千人の労働者といいますと、家族を含めると三千人ぐらいの人たちがいま生活不安におびえているという現実の姿だと思うわけです。  ところが、こういうものに対していま会社更生法の手続がとられておりますけれども、会社更生法の手続をとったから必ず会社が更生するという保証はどこにもないわけだと思うのです。そこで私はやはり問題というものは多岐にわたっていくと思うわけですけれども、先ほど申し上げましたように、安島議員も質問の中で触れられていましたように、ともかく伊藤忠安宅合併関連会社を巻き込んで、これから大きな社会問題なり、雇用不安をつくり上げていく原因になっておることは否めない。こういう状態の中で、私どもは、どのようにしてこの労働者の人々の雇用保障をしていくのか、労働者を保護していくのか、こういうことについて政府は基本的な方針がなければいけないと思うわけです。  そこで、労働省としてはこのような問題について現在実態を把握しておられますか。
  60. 北川俊夫

    北川政府委員 安宅産業の下請あるいは関連会社で、倒産その他の事態に至る危険のあるところにつきましては、その都度安宅産業からいろいろ個別的に事情を聴取いたしておりますが、いま御指摘の中村合板につきましても、会社からの事情聴取のほかに、愛知県の労働部を通じまして、会社更生法の適用申請の後の状況につきましてはいろいろ状況を把握いたしておるところでございます。
  61. 川本敏美

    川本委員 新聞にも載っておりましたが、中村合板が倒産をした四月二十六日に、会社更生法の手続をとった日に、この会社の営業マンがお酒に酔っぱらって交通事故で亡くなっておるわけです。これはただ酔っぱらい運転で、交通事故で亡くなったのだというのじゃない。いわゆる、会社が倒産したその日のその晩ですから、やはり本人としては精神的な大きなショックを受けて、もうすでに一人の従業員が死に至っておるという現状があるということです。いわゆる労働者というものは、これはだれでもそうですけれども、自分の勤めておる会社がしっかりやっていただいて、自分たち家族も含めて生活の見通しがあるということで初めて生きがいを感じておるわけです。それが一たび倒産ということになると、今後の生活はどうなるのか、会社はどうなるのか、自分たちの家族はどうなるのか、あらゆる不安におびえて、ついにこのような自殺行為に等しいような悲惨な問題まで起こってくる現実の姿だと私は思うのです。これは中村合板だけではなしに、先ほど申し上げた中村合板関連の三十六社の従業員も皆同じ気持ちに現在おるだろう。そこの家族もやはり同じ気持ちでおるだろうと私は思うわけです。  そういう方々の不安を少しでもなくしていくための努力というものが必要だと思うわけですけれども、中村合板の方々がまず当面心配しておられることは、五月からの給料がどうなるのだろうということ、退職金はもらえるのだろうかということ、会社は再建できるのだろうか、借金は払っていけるのだろうか、仕事は続けられるのだろうか、そういうもろもろの心配でおちおち夜も眠れないという実情にあると思う。ところが、もう中村合板は倒産の状態ですから、大本良一社長には実際の権限はなくなっておる。実際の権限は親会社安宅ですけれども、安宅自身が今度は先ほど来のお話のようなことで、伊藤忠との中でその主体性を失いつつある。五月三十一日に合併調印がされると、なおさら安宅の主体性がなくなってくる。そうなると、中村合板やその関連会社の方々が、いわゆる実際の権限を持っておる人として交渉できる相手というのは、私はやはり安宅の場合と同じように、住友銀行とか伊藤忠、特に住友銀行しか実際の権限を持っていないと思うわけです。  ところで、こういう関連産業のまた関連産業、そういうところの雇用不安対策というものについて、先ほど労働大臣安島委員質問に対して、近く住友銀行の代表者が私と会うことになっている、こういう御答弁をされている。それで、中村合板あるいは中村合板のさらにその関連会社安宅から言うと関連の関連会社のそういう人たちに対しては、五月三十一日以降になると中村合板も当事者能力を失ってしまう、さらに安宅産業はなくなってしまう、最終的には住友銀行しか当事者能力は私はないと思うわけです。ですから、こういう千人、あるいは家族を含めると三千人と言われる、安宅の木材部門の中心である中村合板、この倒産、あるいはその子会社関連会社の問題について、住友銀行がもっと積極的に労働者雇用保障、先ほど申し上げた、これからどうなるのだろう、給料をもらえるのだろうか、退職金をもらえるのだろうか、仕事はどうなるのだろうか、こういうような不安を解消するためには、住友銀行がもっと正面から正々堂々と発言をして、そして話し合いの場にも出て、今後の会社の見通しはこうなりますよというようなことを説明もし、話も聞くということが必要ではないかと思うので、そのことを労働大臣から住友銀行に強く、出会われた際に私は話をしてもらいたいと思うのですが、その点はどうでしょう。
  62. 石田博英

    石田国務大臣 私は、伊藤忠安宅の直接の責任者と直接まだ会っていないのです。いままでのところは安定局長がそれぞれの責任者と会って、いまお話しのような方向、いろいろ議論が出たような方向で話をしております。ただ、私のところへ個人的な関係で事情説明に来たいという申し入れがあった。その人に対して、大体こういう種類の問題は終末点は雇用問題だ、その雇用問題の担当者に一言の断りもなく、やれ合併条件がどうしたのこうしたのと言うのは筋違いなんだ、こう私が申しましたところが、先方からは、安宅から直接離職する人についての就職のあっせん見通しは皆ついている、こう言うから、私は、それはそうかもしれないが、一体その関連事業はどう考えているのだ、一体関連事業はどれくらいあって、その関連事業の見通しはどういうふうに考えているのだ、そういうこともめどを立ててから話にいらっしゃい、そう私は言ってありますから。無論これは総合的に判断すべきもので、直接の話だけがついたからそれで済むという性質のものではない、そういうたてまえで応対をするつもりであります。
  63. 川本敏美

    川本委員 私はやはり、この安宅合併の問題によって関連会社、あるいはその関連会社のまたさらに関連会社というふうに、将棋倒しにどんどんと芋づる式に企業が倒産をしていく、労働者の失業という被害がますます拡大をしていく、こういうことをどこで歯どめをかけるかということが当面大切な問題だと考えておるわけです。だから、その被害の拡大というものを最小限に食いとめるためには、そのバックに立っておる住友銀行がどこまでてこを入れて、そういう雇用の保障という観点に立って企業の再建整備を図っていくかという、その姿勢にあると思うわけです。  このことは私は労働大臣答弁をいただこうとは思いませんけれども、まず中村合板の社長は百三十九億と言われる負債を抱えて、そして中村合板の労働組合に対する労働債権だけでも十六億だと言われておる。このような形の中で大本社長はもうすでにその力を失っておる、当事者能力を失っておる。     〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕 その後ろにおる安宅が五月三十一日で当事者能力を半分以上失ってしまう。そうなると、安宅関連企業の再建整備をして、そして雇用不安を拡大させない、被害を拡大させないという最終的な腹を持つのは、住友銀行以外は私はないと思うわけです。そこで労働省としても、あるいは大蔵省銀行局としても通産省としても、そういうことをこの際強く住友銀行に対して要請をして、この安宅関連の企業倒産を最小限に食いとめるために、雇用不安をなくしていくために、住友銀行が腹を決めてかかれということを強く要請すべきではないかと思うのですけれども、その点についていかがですか。
  64. 石田博英

    石田国務大臣 この問題が起こった原因は、無論金融機関の融資態度、それからいわゆるマーケットリサーチとでもいいますか、広く同時期時点における横のリサーチはやるけれども将来にわたってのリサーチに非常に欠けておったという点、これは融資態度のほかに、一種のボウリング屋のおやじ的感覚とでも申しますか、隣がもうかったから同じことをやれというようなあおられた経営態度、そういうところにも確かに原因があると思うのです。この問題に関するそういう融資態度その他の道義的責任は無論あると思いますが、雇用問題に関する第一義的責任はやはり伊藤忠にあると私は思う。その伊藤忠に対して、メーンバンクとしての住友の態度、あるいは、これは住友だけでなくてたしか協和銀行関係していると思いますが、そういうようなメーンバンクとしての考え方、こういうものは背景にはあるけれども、第一線の責任態度というものは伊藤忠が対処すべきものだ、こう私は思います。
  65. 川本敏美

    川本委員 そこで、時間がございませんので話をもう少し進めたいと思います。  先ほど平電炉の問題について通産省にお聞きいたしましたけれども、平電炉の場合、先ほどいわゆる報告書に基づいた対策についてお話がありました。その中で、五十五年に二八%、三百万トンか四百万トンを廃棄していく、こういうことを中心にして、不況カルテルとか、あるいは過剰設備の廃棄とか、いろいろの問題について触れられましたけれども、その中に雇用労働者対策というものがおのずからあるべきはずだと思う。それについて、この報告書の中ではどのようにとらえておられるのですか。
  66. 石井賢吾

    ○石井説明員 お答えいたします。  全体で三百九十万トン廃棄するということでございますが、平電炉メーカーがそのうち三百三十万トンを処理するということになっております。昨年七月、設備能力を調査いたした段階におきましては、三百三十万トンが廃棄されることを期待しておりますが、ほぼその半分の百六十万トンはすでに予備炉ないし遊休化してございます。さらに、昨年十一月、不況カルテルが発足いたしまして、生産を月間九十四万トン体制から七十五万トン体制に落としておりますから、現段階におきまして約二百三、四十万トンの平電炉につきましてはすでに従業員は張りついてないわけでございます。そういう意味におきまして、今後それを超えた三百三十万トンの目標達成にはおのずから人員問題、配置転換の問題が出てまいるわけでございます。私ども、報告書を作成する以前におきまして、労働省関係者及び鉄鋼労連と十分協議いたしまして、現在対策の方向を一応研究会の報告書には記載してございますが、今後その具体化のために、廃棄処理の実行計画を立てます段階におきましてさらに具体的対策を打ち出したい、かように思っております。
  67. 川本敏美

    川本委員 その報告書の中に、「再建するため、政府金融機関等においても、必要資金の融資等について支援することが要請される。」ということが書かれてあるわけです。政府並びに金融機関の支援を要請されるということですけれども、政府の支援、金融機関の支援ということについてはどういうことを指しておられるのか。これは通産省でも大蔵省でも、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  68. 石井賢吾

    ○石井説明員 現在平電炉業は七十四社ございますが、私ども、そのうち三十五社は経営分析に足るだけの資料を整備してございますので、その三十五社について見た段階におきましては、三社を除きましてすでに全体が債務超過の状態に入っております。そういう意味におきまして、今後これの更生を図っていくということのためには、金融問題と並びまして労働問題、この二つが大きな柱になるわけでございまして、金融問題につきましてはまさに企業ごと、ケース・バイ・ケースの問題でございますので、一応私どもといたしましては七十四社全体につきまして、先週末で廃棄につきましての実行計画のヒヤリングを終わりましたが、今後具体的な実行計画を求めまして、労働問題あるいは資金問題についての要望を出してもらうことになっております。それ以後の問題として、ケース・バイ・ケースで大蔵省及び日銀と相談しながら対策を進めていきたい、こう思っておるわけでございます。
  69. 川本敏美

    川本委員 それを進められるに当たって、仮に労働福祉事業団の金を使おうとしても、あるいは日本開発銀行あたりの融資をしようとしても、現行法規のもとではちょっと問題点があるのじゃなかろうか。これは合板業界についても同じことが言えるのじゃなかろうか。そういう場合にはやはり新たな立法措置といいますかあるいは制度といいますか、あるいは政府において何らかの措置を必要とするのではないかと思われるわけですけれども、その点について大蔵省はどう思っておられますか。
  70. 猪瀬節雄

    猪瀬説明員 ただいま御指摘の研究会の答申というものは、実は私ども、通産省から御連絡を受けてございませんので詳細を承知していないわけでございますが、もし、通産省におきましてそういった答申を受けまして、対策を検討してまいるというに当たりまして金融措置が必要だということで御相談が参れば、それを踏まえて十分検討いたしたいと思っております。
  71. 川本敏美

    川本委員 平電炉業界については、労働者については一人も生首は切らぬ、こういう基本的な立場に立って、時間短縮とか、勤務体制、いわゆる当直の変更等をやる、あるいは消耗不補充、そういうようなことによって時間をかけてやっていくということです。さらに雇用調整給付とか作業転換訓練とか、いろいろあろうと思いますけれども、そういうことも、あくまでも本人の意思のないものはさせないという基本的な態度でなければいけないと思うわけです。  先ほどの中村合板の関係についても同じことですが、もう時間がありませんので急ぎますけれども、この前、この社労委員会で四月十九日にわが党の枝村理事労働大臣質問をした、その第六番目の質問に答えて、労働大臣は、いわゆるこういう構造的な不況業種といいますか、そういうものについてはやはり政府も一端の責任があるのだから、あるいは個別延長とか業種指定というようなことをやって、職業訓練等を雇用保険法の中で積極的に努力をしていきたい、こういうことを答えておられるわけです。私は、合板業界並びに平電炉業界については、今度の雇用保険法の業種指定の第一号になるのじゃなかろうかと思うのですが、その点、労働省どうですか。
  72. 石田博英

    石田国務大臣 調整資金の業種指定の対象には十分検討に値すると思います。それは、こういう構造改善というか、産業構造の改善は、ある意味においては国際的な影響を受けた必然性もあることは確かですけれども、やはり企業に対する指導態度、融資態度、それから全体として経営者自身にも、さっきちょっと申しましたようなボウリング屋のおやじみたいな感覚があって、お調子に乗った責任は免れませんけれども、行政指導上の責任もやはり当然考えなければならぬと思いますので、そういうことを積極的に取り組みたいと思っております。
  73. 川本敏美

    川本委員 平電炉雇用対策本部というようなものを、平電炉の場合には通産省労働省の両省の間で設置する必要があるのではないかと思われるのですが、それはもう設置されておりますか。
  74. 北川俊夫

    北川政府委員 この問題につきましては、先ほど通産省からお答えのように、労働省とも緊密な連絡のもとで報告書等がつくられておりますので、今後の対策についても両省十分協議をいたしてまいりたいと思いますが、いま先生の御指摘のような点につきましては、いましばらく事態の推移を見まして、必要な事態に至れば直ちにそういうことに応じたいと思います。
  75. 川本敏美

    川本委員 中村合板の問題について最後にもう少しお聞きしておきたいと思うのです。  いわゆる会社更生法が適用されますと、十六億と言われる労働債権の問題が出てくるわけです。これはもし破産宣告でも受けるというようなことになると大変だと思うわけです。なぜかと言いますと、労働協約で退職金規定が決まっておる、決まっておっても、会社更生法が適用されて、更生資産といいますか財産ということに指定されると、先取りの特権を認められているのは三分の一か六カ月分ということになるわけです。あとは共益債権あるいは更生債権になってしまう。その上で破産した場合には、実質的に労働者労働債権というものは三分の一しか確保されていない。最近、会社が倒産していく場合に、一遍会社更生法の申請をして労働債権を三分の一に減らして、あとは共益債権に盛り込んでいってしまうというようないわゆる悪らつなやり方がだんだんふえつつあるように思うわけです。そういう問題について、労働省はあくまでも労働者の本来持っておる権利というものを保障するという立場で考えなければいかぬと思うのです。そのために私は、中村合板の労働組合と住友銀行あるいは伊藤忠労働大臣伊藤忠と言われましたけれども、伊藤忠とでも事前協議をさせるというようなことを指示すべきではないかと思うのですが、そういう点について労働省の見解をお聞きしたい。  さらに、先ほど来の平電炉業界あるいは合板業界、伊藤忠安宅合併の問題、こういうものをずっと見てみますと、いわゆる現在の構造的不況の原因というものはすべて全然政府責任ないとは言えないという実情にあると私は思うわけです。この問題について従来の対処の仕方を見ますと、通産省通産省、林野庁は林野庁、労働省労働省というばらばらの対処の仕方になっておる。内閣一体といいますか、政府一体の原則から処理するとした場合に、企業に対して政府が資金の援助をする、あるいは銀行が援助をする、そういう場合には、先ほど労働大臣安島議員にもお答えになっていましたけれども、企業に対する援助というものは労働者雇用保障労働者の生活保障も含めた支援であるということを明確に位置づけて、企業さえ守れば労働者の首を切ってもいいのだというようなやり方を今後なくしていくために、政府としては特段の内閣一体の原則に立って努力をし、そのためには一つの機構をつくっていくべきだと思うのですけれども、その点について最後に労働大臣にお答えいただきたい。
  76. 石田博英

    石田国務大臣 政府がそういう事態に特別の援助や、責任を分担するという場合は、企業経営に責任のある者の救済ではなくて、企業経営に直接責任がないのに犠牲を強いられる人たちの救済、それがあってこそ初めて政府は関与し得られるのであると考えております。ただ、機構の問題は、いずれが実効が上がるか、いろいろ検討した上でお答えをいたしたいと思います。     —————————————
  77. 橋本龍太郎

    橋本委員長 この際、お諮りいたします。  本件、特に政府関係特殊法人に関する問題について、本日、政府関係特殊法人連絡協議会専務理事西谷喜太郎君に参考人として出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 橋本龍太郎

    橋本委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  79. 橋本龍太郎

    橋本委員長 質疑を続けます。枝村要作君。
  80. 枝村要作

    枝村委員 政府関係特殊法人の賃金問題を含めた労使の自主交渉権の確立の問題についてお伺いしていきたいと思います。  これは御存じのように、労働組合法を適用される組織が給与改定等の問題で労使協定を行おうとする場合、いつも大蔵省の内示というもので大きく制約されておりまして、自主的に決定あるいは解決することが非常に困難である。むしろ不可能な状態に今日置かれていると私は思っております。そればかりではなく、団交権を事実上否認する、そのようなものにつながるような状況に置かれているのでありまして、そのために紛争が常に長期化しておるということであります。今日まで十年間引き続いてそのような状態に置かれておるのは、私ども非常に遺憾のきわみであると思います。  昭和四十七年五月三十日、政府見解に基づいて行われておる法人の給与問題に関係する労使からのアンケート、ヒヤリング、これは一つの解決手段を見出そうとする努力の結果であると思います。その当時、これは前向き的な方策であったと一定の評価はしておりますが、それから五年たった今日までなおその結論が出されないでおるのであります。これも私はきわめて遺憾な問題だと思いますが、政府は一体どのような考え方をしておるのか。俗な言葉で言えば、やる気があるのかないのか、そう思っております。ですから、その経緯あるいはその真意をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  81. 関英夫

    ○関政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、四十七年五月の当委員会労働大臣発言に基づきまして、関係労使から実情及び意見を聴取することいたしまして、現在までにアンケート調査実施いたしました。また労使からヒヤリングを行ってきているところでございます。その間相当の日時がたちまして、労使の意向も変化してきておりますので、現在このヒヤリング等の取りまとめをいたそうと思っておりますが、改めて前の労使のヒヤリングのほかにもう一度ヒヤリングを行うような必要も生じてまいりました。そんなことで非常に時間をとっておりますが、政府としては何らかの形でこのヒヤリングの取りまとめをいたしたい、こういうふうに思っております。したがいまして、できるだけ早期に取りまとめの作業をいたしたいと思いますが、取りまとめに当たりましては、四十七年当時と違います最近の関係者の意向といったものも十分くみ入れながら、諸般の事情を考慮しつつ取りまとめをしたい、こんなように考えておる次第でございます。
  82. 枝村要作

    枝村委員 この問題についてはそれ以後委員会でしばしば質問されておりますが、いつの答弁もそのような答弁で終わっておるような気がします。特に五十年の暮れには専門懇の結論が出るからそれを待って法人の問題についても考えようと言いながら、それもできない。そして今日になってもまだ、いま言ったような答弁しかはね返ってこない。こうなりますと、いろいろ文句を言うことはありますけれどもそれはやめて、もはやこのヒヤリングをやることについて労働者側は全く魅力を失っておる。当初の一定の前向き的な方策として評価したものも、今日ではかえってヒヤリングを継続することが足かせになる、特に理事者側のそれを理由にするいわゆる自主団交権の否認、こういうことに利用されておるような今日の状況になっておるというように労働者側は見ておるのです。  そこで端的に言いますけれども、こういうヒヤリングを行うことはもうやめるべきである、こういうように私は提案したいと思うのです。それは先ほど言いましたように、いまからでも、いつの時期ですか知りませんけれども、その時期も、いつ出すかということはあなたは明確にお答えにならぬと思います。そういうものに対しては期待が持てなくなったということから、私もそう思っておりますから、これはやめるべきではないか。むしろ置いておることが紛争の長期化をますます促す結果になる、自主解決ができなくなっておる、その妨げになっておる、こういうふうに思っておるのです。ですから、端的にいま提案いたしましたが、やめてもらいたいというこの私の提案に対してどのようにお考えになるか、ひとつこれも明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  83. 関英夫

    ○関政府委員 現在ではヒヤリングが自主解決の妨げになっているということでございますが、ヒヤリングの過程で改善すべき点、そういうようなものも浮かび上がってまいりまして、現在までの努力により、できる限り自主的な交渉が樹立するような改善の道も講ぜられてきたところであります。そういった意味もありまして、私どもとしては、ヒヤリングが全く無意味であったとか、あるいはヒヤリングが自主交渉の妨げになる、ヒヤリングがあるから自主交渉がうまくいかないということはないはずであるし、またあってはおかしいことだ、こういうふうに思っております。先ほど申しましたように、できるだけ早期に取りまとめをいたすつもりでございますし、なおその際、関係労使の御意向というものは十分含んで取りまとめの作業をしたい、こういうふうに思っております。
  84. 枝村要作

    枝村委員 政法連の専務理事にお尋ねいたします。  政労協といろいろ皆さん方が交渉しておることは私よく知っておりますが、政法連としては、このヒヤリングの問題について、いまから続行する、せぬということはあなたの権限でありませんけれども、こういう問題があるために、各法人がそれを一つの理由にして、いわゆる自主交渉、自主解決をサボるというわけじゃありませんけれども、そういう行動、発言が行われておるというように聞いておるのですが、それは事実かどうか。
  85. 西谷喜太郎

    ○西谷参考人 いま先生がおっしゃいましたようなことはないと思います。と申しますのは、確かにヒヤリングが非常に長くかかっておりますけれども、問題が基本的な問題にかかわりますだけに非常に困難である、非常にむずかしいという面をむしろあらわしておるものだと思いまして、そのことによって交渉を逃げておる、そういうことはないと存じます。
  86. 枝村要作

    枝村委員 しかし、早く出してくれなくては困るという意思は持っていらっしゃいますか。
  87. 西谷喜太郎

    ○西谷参考人 問題の性質上、早期に結論が出ることが望ましいとは考えております。
  88. 枝村要作

    枝村委員 たとえば日本住宅公団などは、いまあなたがおっしゃいましたようなことですが、ただ待つという姿勢ではない。そうなると、何か積極的な意見を政府に述べるか、あるいはあなた方自身の一つの見解というものを積極的にどこかに働きかける、こういうことになるのですか、それともそれではないのか。いまの言葉の表現はどういう意味なのか、ひとつお聞きしたい。
  89. 西谷喜太郎

    ○西谷参考人 私どもとしましては、関係省庁に会いますたびに、と申しては語弊がございますが、機会を得ては早期に結論が出るように要望しておるわけであります。それで、政法連として何か特別な名案があるかと申されますと、先ほど申し上げましたように問題が非常に基本的なもので、法令の制限もこれあり、時日の問題もこれあり、これといって現在名案はございません。
  90. 枝村要作

    枝村委員 それでは労働省にお伺いいたしますが、いまや政労協、労働組合側も、初めお話しいたしましたように全く魅力を失っておる。こんなものは打ち切るべきだという、こういう考え方を持っておる。そこには法人の理事者側と真っ向からこの問題について対決の様相を示しておる。ですからあなたが、何とかしてまとめて、いつの時期かそれはわかりませんよ、すると言っても、こういう労使の関係で大きな意見の対立、政府に対するきわめて不信感が満ち満ちておる中で、果たしてりっぱな結論を見出すことができるかどうか、こういうことの事情は御推察できますね。
  91. 関英夫

    ○関政府委員 労働組合側の最近のそういった考えについては、私もたびたびお会いして伺っております。ただいま参考人のお話もございましたが、問題が非常に基本的な問題でございますので、取りまとめの作業というものが一つの問題を抜本的に解決するものとなり得るかどうか、非常にむずかしい問題があろうかと思います。労使のこの問題に対する見解というものを十分含んで私ども取りまとめをいたしたいと考えておりますが、そういうふうに考えれば考えるほど、抜本的な新しい一つのものがまとまるということは非常に困難を伴うものであるというふうに考えております。
  92. 枝村要作

    枝村委員 私は最初に、直ちに打ち切るべきであるという端的な、きわめて率直な提案をいたしましたが、もしそれができぬとすれば、いまあなたも言われたように、抜本的に解決できる見通しについてもし諸種の事情を見て思われるとするならば、いま直ちにとは言いませんけれども、そういう情勢判断をして打ち切りを含めた検討をしたらどうか。これは一歩下がって提案するのですけれども、そういう私の提案はどうですか。
  93. 関英夫

    ○関政府委員 先ほども申し上げましたとおり、最近の労使の意向というものを十分含みまして取りまとめの作業をいたしたいと思っておりますので、そういう意味で、ただいまの先生のお話も含めて、十分最近の労使の意向も考え、そして取りまとめの作業をいたしたいと思います。
  94. 枝村要作

    枝村委員 次に、大蔵省来ていますか。——これは大蔵省の内示なるものについてお伺いしておきたいと思います。これは何回も取り上げた問題ですからすでに御承知でありましょうが、もう一度ここでその内示なるものの性格をひとつ明らかにしておいてもらいたい。五十年の三月十九日の本委員会で私が質問いたしました。大蔵省の吉居説明員は次のように答えておるわけです。「内示とは、承認の基準をあらかじめ関係省庁に示すことによって事務手続を円満に進める、こういう目的でもってやっているのでありまして、したがって、これは別に制度あるいは法律を根拠にしているものではない。」それから「法規的な拘束力は、そういう意味で、ない、」こういうふうに明確に答えておるのですが、そのとおりに間違いありませんね。
  95. 足立和基

    ○足立説明員 お答えいたします。  政府関係特殊法人につきましては、先生十分御承知でございまして御説明するのも必要ないかと思いますが、その性格が非常に特殊性、公共性を持っておるということ、したがいまして、その財政面におきましてもいろいろと予算上の補助金であるとか給付金であるとかをもらっておる。こういうようなことからいたしまして、職員の給与改定につきましても主務大臣の承認が必要ということが法律上定められておりますし、その変更をする際にはあわせて大蔵大臣に協議することが必要とされておるわけでございます。したがいまして、その大蔵大臣に協議される場合に、あらかじめ、こういう内容のものであれば大蔵省としては財政的な観点から協議に応じる、こういう内容を示すことによりまして、その主務大臣の承認、大蔵大臣との協議という手続を迅速化しよう、こういう意図のもとにおいて行われております事実上の行為でございまして、いま先生がおっしゃいました五十年の吉居説明員の答弁どおりの内容でございます。
  96. 枝村要作

    枝村委員 労働省にお伺いしますが、この特殊法人は言うまでもなく労働三法を適用されているのですから、両者が合意すれば協約を結べるのは当然ですね。ですから、法的な制約というものはこういう意味では何もないのでありまして、むしろ労組法上最大の保障がされておると見ていいと思います。それに間違いありませんね。
  97. 関英夫

    ○関政府委員 労働組合法の適用関係はそのとおりでございます。
  98. 枝村要作

    枝村委員 ところが実態はそうではない、ということは、先ほど言いましたけれども、法人の当事者能力はこのいわゆる内示によって大きく拘束されている。それこそ手も足も出ないばかりか、団交権の否認、不当労働行為的な法違反、そういう疑いが持たれるような行いをしている場合もあるのでありまして、そういう事実を御存じですか。     〔委員長退席、村山(富)委員長代理着席
  99. 関英夫

    ○関政府委員 現在の政府関係特殊法人のたとえば給与を考えてみますと、これは給与規程というようなもので決まっているようでございますが、その給与規程を決めます場合あるいはこれを改定していきます場合には、先ほど大蔵省の方から答弁もございましたが、特殊法人の公共性なり特殊性に基づきまして主務大臣の認可を必要とする、あるいはその主務大臣大蔵大臣との協議を必要とするというような法律制度になっている、その辺に先ほどの、労組法の適用関係はありながら、実際上給与を改定していく場合に、特殊法人の法人当事者がその認可の得られないようなものを勝手に協定するわけにいかないというような実情がございまして、先生のおっしゃるようなことになりかねない面もあり得るというふうには思います。
  100. 枝村要作

    枝村委員 労働省労働三法の監視役であり番人でありますから、二つだけこの問題で率直に質問しますので、イエスかノーかでひとつ答えてもらいたいのです。  いわゆる内示というものが、法人の労使が給与改定に関する協約締結をすることについて何ら妨げることはできないという基本的な問題についてどうかということ。  それから、法人側がこのような協定を結ぶことを前提とする団交を拒否することは、いまあなたもおっしゃいましたように、法に反することがあり得ることをお答えになりましたけれども、そういうことをすれば法を犯すことであるというように断定できるかどうか、もう一度。こういう二つです。
  101. 関英夫

    ○関政府委員 労使で給与に関する協約を締結することは何ら妨げないということは明確にお答え申し上げますが、ただ、具体的に考えますと、法人の理事者としては、そういう協定を結び得ない立場に置かれています場合には、何回団交を重ねましてもなかなか協約を結べないという現実があるということになろうかと思います。  それから第二点の団体交渉につきまして、団体交渉を拒むということは労組法上違反になるわけでございますけれども、またよけいなことを言うとおしかりを受けるかもしれませんが、同じことを繰り返してもしようがないじゃないか、もうこの前の団交と変わりないじゃないかというようなことも間々あるかとも思います。
  102. 枝村要作

    枝村委員 その次に、労使の自主交渉、自主解決を図るためには、現在行われておる人事院勧告の時期に合わして給与改定をするという、いわゆる国家公務員準拠ということになっておりますが、むしろ、この法人の給与改定時期は公企体の賃金改定期に合わせた方がいいのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、この点についての見解をお伺いいたしたいと思います。まず労働省から。
  103. 関英夫

    ○関政府委員 私どもとしては、特殊法人の特殊性、公共性からいたしまして、現在の人事院勧告、国家公務員準拠の方式、これはやむを得ないものというふうに考えておりますが、ただいまの先生の御意見、十分検討さしていただきたいと思います。
  104. 枝村要作

    枝村委員 いまの同一質問に対して、政法連は政労協といろいろ要求に基づく交渉を行われたと思うのですが、政法連とすればどういう態度をとられておるのでありますか。
  105. 西谷喜太郎

    ○西谷参考人 政府関係法人としてみますと、御承知のように、自主的な努力をやって経営の収益を上げるといったようなことじゃなくて、法に定められたと申しますか、公益的な、きわめて公共的な立場をとっておるものが多いわけでありまして、その勤務の形態、それから内容を見ますと、国家公務員と非常に似ておるわけでございまして、そういう面から見ましても、人事院勧告を待ちまして、政府関係職員とのバランスをとって決めるということの方が妥当じゃないか、そういうように考えておるわけであります。それから、組合の方からもそういう話がございますけれども、公労委の裁定というのは現業職員を対象にするということでございまして、大多数の政府関係法人と勤務内容が違うというようなことから、公労委裁定に準拠することは困難である、そういうように考えております。
  106. 枝村要作

    枝村委員 しかし、公務員に準拠いたしますと春闘から秋までかけて長期に紛争が続けられる。ことしはわりあいに政法連の方もいい回答をしたためにおさまったようでありますが、このままで続くことを考えますと、しかも特殊法人で、いわゆる他の公企体と大体同じような性格のものでありますから、むしろ公企体の賃金が決定した直後にそれを参考として法人の賃金を決めていく、そのことが紛争そのものを短期におさめることができるし、今日政労協ではきわめて強い要求となっておりますから、それにもこたえて労使が正常な姿で今後も運営できる、こういうように考えるのでありますが、いま一度西谷さんからひとつ御回答を得たいと思います。
  107. 西谷喜太郎

    ○西谷参考人 先ほど申し上げましたように、勤務形態その他から見まして、人事院勧告、政府職員とのバランスということに準拠することの方が妥当である、そういう考えをとっております。現在の段階では国家公務員に準拠ということはやむを得ない、そういうように考えております。
  108. 枝村要作

    枝村委員 大臣にちょっと聞きますが、今回の春闘は例年と違いまして、もちろんこれは労働大臣の力が大きく及ぼしたところもあると思いますが、私鉄の場合でも公企体の場合でも、労使の紛争を早期に解決しようとして、たとえば第一次の賃金回答もいままでのようなおざなりのものでなくして、だれもが一定のうなずきをするぐらいの有額回答を出されております。私はこの点は一つの、一定の前進的な評価だと思っております。全般的にこのような傾向にあるのですから、いたずらに紛争を長期化するというようないままでのようなものに比べると、大変私はよいことだと思っておるのです。ですから、政労協に対してもこれと同じような姿勢をやはりとるべきだと思います。そのためには、理事者側もその気になると同時に、政府としても、特に労働省がそういう方向で働きかけるということも大切ではないかと思っておるのです。関審議官から、私の提案したことも含めて今後十分検討するというようにお答えがありましたが、ひとつ労働大臣もそういう意味で十分腹に構えて、そういう方向で処理するように御努力をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  109. 石田博英

    石田国務大臣 今回の春闘だけでなく、ここ二、三年来、労使関係というものは、経営者も労働組合をパートナーとして考える、労働組合もまた近代社会の構成員としての責任を分担するという立場から、現状認識等においてもきわめて接近している。そして民主的な、国民に迷惑をかけない方向で問題を処理しようという方向に大きく足を踏み出したという点は、私も同感でございます。政府労働政策は、こういう傾向を助長することに力を注ぐべきだと私は考えております。ただ残念なことは、政府としては精いっぱいの有額回答を出したのにかかわらず、いろいろな配慮が加えられたことは私も率直に認めますけれども、われわれから言えば、いわゆる法律に違反した争議行為が行われたことは大変残念でございます。しかし、大きな方向として前進しておる、前進している方向は助長しなければならぬ、こう思います。  さてその具体的な問題でありますが、私どもが検討しなければならぬ基本は、政労協の業務内容が国家公務員の方に近いのか、あるいは公共企業体の労使関係のあり方に近いのか、そういう点を十分配慮しなければならぬ問題だと思います。しかし、私どもは労組法を守る立場である。したがって、労組法に重点を置いたことを基本としてこの問題の処理を検討するということは、私も同感でございます。
  110. 枝村要作

    枝村委員 労働大臣はいろいろこういう点については詳しいのですから、ひとつ労働省としてそういう方向で働きかけるように努力してもらいたいと思います。そして、全般の日本における労働問題について、いたずらなと言うとおかしいのですけれども、ひょんなことでつい紛争が長期化するようなことのないようにしてもらいたいと思います。     〔村山(富)委員長代理退席、大橋委員長     代理着席〕  それと同時に、ここで一言言っておきたいのは、公共企業体に対して、今日の法のもとではストライキをやれば違法行為になるのでありますから、そういうことがないように、スト権そのものについて、いま基本問題会議でいろいろ討議はされておりますが、ひとつ十分そういう多くの人たちの要望にこたえるように努力してもらいたいと思います。私、聞きませんでしたけれども、基本問題の結論が、来年の五月か六月に一つの取りまとめが行われるかもしれませんが、その時期に合わしてこの政労協の問題についても一定の何かを出そうということだろうと思っております。そうなればなるほど、ひとつ前向きの姿勢で取り組んでいただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  111. 大橋敏雄

    大橋委員長代理 次に、村山富市君。
  112. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間もございませんから端的にお尋ねをしたいと思うのですが、最近労働界で不当労働行為のデパートと言えばどこか、と言えば造船、重機ということになっておるようであります。この不当労働行為のデパートと言われておる造船業界において、今日まで労働委員会から命令の出された件数あるいは地労委や中労委や裁判所で争われている件数がどれぐらいあるか、御報告願いたいと思うのです。
  113. 関英夫

    ○関政府委員 全造船の組合調査で、これは昨年の三月から四月にかけての時点でございますが、七十二件の紛争事件が労働委員会または裁判所に係属中ということでございましたが、本年の三月で私どもが主要会社大手三社について調査したところによりますと、不当労働行為を中心とする紛争事件の五十二件が労働委員会または裁判所に係属中でございます。大手三社でございます。
  114. 村山富市

    ○村山(富)委員 その企業名と件数はわかりますか。
  115. 関英夫

    ○関政府委員 三菱重工関係で二十四件、石川島播磨関係六件、住友重機関係二十二件、計五十二件ということでございます。
  116. 村山富市

    ○村山(富)委員 これはいま係争中の事件ですね。
  117. 関英夫

    ○関政府委員 はい。
  118. 村山富市

    ○村山(富)委員 組合報告によると七十二件。それで、現在まで命令が出されて決着した事件もあるかと思うのですね。命令が出されて決着した事件が何件あるか、命令が出された後裁判所の方に提訴された件数が何件あるか、わかりますか。
  119. 関英夫

    ○関政府委員 これは調査時点の関係組合調査と必ずしも一致しないわけでございますが、主要な会社につきまして、命令、決定の出たもの計六十三件のうち、上訴したもの十三件、ただしこれは履行せずに上訴している。それから履行はしているけれども上訴しているものが二件。それから履行したもの四十八件。なお一件、履行はしたが組合の方から就労を拒否したというのが一件ございますが、そんなことで、命令六十三件のうち、履行しているものが四十八件、上訴中のものが十五件、他が一件、こんな状態でございます。必ずしも組合調査の結果とは一致いたしません。
  120. 村山富市

    ○村山(富)委員 私どもの調査した範囲では、件数ももっと多いし、同時に、地労委なり中労委が命令を出して、その命令に基づいて決着をした事件よりも、裁判所の方で争っておる事件の方が多いというふうに聞いておるわけですね。  これは時間もございませんから具体的な個々のケースには入りませんけれども、私は、一つの産業、企業でこれほど多くの不当労働行為事件が起こるというのは、まさに異常な労使関係にあるというふうに思われるわけですね。これは第二組合なんかがつくられてこういう事件が起こるのだと思いますけれども、問題は、地労委や中労委に提訴して、そして地労委や中労委が明らかに不当労働行為である、労組法七条違反だと言って命令を出す、その命令が聞かれずに、裁判所の方に出されて争われる、こうなってまいりますと、本当の意味で労働者が救済されるということはなくなってしまうわけですよ。しかも、これは労使関係ですから、労働組合会社側という形で争われるわけですね。その過程には、必要以上に労働組合内部の切り崩しもあるだろうし、そういう事件が影響してまた不当労働行為が加わっていく、こういうふうな問題も起こってきます。まして、不当な差別を受けた、不当労働行為に類する案件にかかわった労働者の救済というのは、最高裁まで行けば何年かかるかわからぬわけですよ。そういう事態に対してどういうふうにお考えですか。
  121. 関英夫

    ○関政府委員 確かに、先生のおっしゃいましたように、造船業界におきます不当労働行為事件の係争件数というのは多うございまして、通常見られるところとは言いかねるわけでございまして、異常事態と言えば異常事態であろう。そこには、先生のおっしゃいましたように、複数の組合が存在し、組合がそれぞれ活動を行っているということが非常に影響している面があることも確かでございます。その辺の実情につきまして、私、労働組合の方から要請を受けまして、労働組合ともお会いしていろいろ実情も聞き、会社側も呼んで、不当労働行為にわたることがないよういろいろ助言、指導もいたしておるわけでございますし、会社側もまた、労組法の規定その他はもちろん十分承知はいたしておるわけでございますが、そこに複数組合の存在ということが絡みまして、いろいろ問題の解決をむずかしくしているというのが現実でございます。  ただ、労働委員会の命令がなかなか履行されないというような状態、これは非常に制度本来の趣旨に反するわけでございます。しかしながらまた一方で、法的手続に従いまして訴訟を行うことも認められていることでございますので、それ自体をどうこうと言うことはできませんので、私どもとしては、関係者の十分な話し合いと理解によりまして、問題を未然に防ぎ、また起こってきた紛争を円満に解決するようにできる限り努力してもらうよう期待し、かつ指導、助言を強めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  122. 村山富市

    ○村山(富)委員 当該の労働組合の方からも再三再四、労働省の方に申し入れなり要請がございましたね。特にその中で、こうした不当労働行為が異常に発生する事態に対して、労働省として、労働者を保護する、守るという立場からもっと積極的な指導をしてもらいたい、こういう要請もありますし、実態を調査して具体的に問題点を明らかにしてもらいたい、こういう要請もございます。そうした再三再四にわたる当該労働組合からの労働省に対する申し入れ、要請に対して、具体的にどのような対策、措置を講じたのかということについてお答えいただきます。
  123. 関英夫

    ○関政府委員 労働組合の要請がございました場合に、私どもとして、関係会社担当者を呼びまして実情も聞き、また不当労働行為にわたるようなことのないような助言、指導もその都度いたしております。単に一回限りというのではなく、いまここにちょっと回数を持っておりませんが、再三にわたり指導をいたしてきております。
  124. 村山富市

    ○村山(富)委員 再三にわたって会社を呼んで指導している、こう言いますけれども、地労委や中労委が命令を出すということは、明らかに不当労働行為をしていると思われるから命令を出すわけですね。この命令をできるだけ経営者側に聞いてもらう、そして再び起こらぬようにしてもらうということに対する具体的な措置がないと、これはある意味からしますと、不当労働行為をやりっ放しで構わぬ。仮に地労委や中労委の命令が出ても裁判所で争えば、最高裁まで行けば何年かかるかわからぬ。ある意味では会社側の目的はそのことによって達せられるわけですよ。会社側の目的が達せられるということは、それだけ労働者の権利が侵害される、不当な扱いを受けておるということがそのまま推移するわけですからね。したがって、労働関係の法令が遵守される、守られるということは当然労働者が保護されるという前提に立っているわけですが、その法律がそういう形で骨抜きにされて、実際には効力を発しないというような事態がこの事件に関する限りは私は多いと思うのです。そういう事態に対して、ただ指導しておりますと言うだけでは問題の解決にならぬと思うのですね。どうですか。
  125. 関英夫

    ○関政府委員 不当労働行為事件というものは他にもずいぶん起こっているわけでございますが、そういうものがただいま先生おっしゃるようにすべて履行されず、すべて裁判所に行き、最高裁まで行くというようなことになりますと、これは何のための制度か全くわけがわかりませんが、大方の事件につきましてはそれぞれの段階で解決を見ているわけでございまして、この造船関係につきましては、先生のおっしゃるように、履行されているものも多いわけでございますが、裁判所へ行っている数はほかの例と比較いたしますと多いということは確かでございます。そこには、最初申し上げましたように新しい組合ができてくる、新旧の組合との間の複雑な問題、そういうことも絡みましてよけい解決をむずかしくしている、そういったことがあるのじゃないかと私も思うわけでございますが、そういった特殊事情があるにせよ、できる限り、先ほど申しましたように関係者の間で事態を円満に解決することが望ましいし、また今後の新しい紛争の発生を避けていかなければならないと思いますので、そういう立場で再三にわたり会社側に私ども指導をいたしておるところでございます。
  126. 村山富市

    ○村山(富)委員 これはもう時間がございませんから、またいずれ個々の具体的なケースについて一体労働省はどう判断するのか、しているのかといったようなことについても聞かなければならぬと思いますけれども、時間もございませんから、大臣にちょっとお尋ねいたします。  いままで答弁もあり、私が質問もいたしましたように、地労委や中労委に不当労働行為で問題を出しますね。そして地労委や中労委で審理して、一定の結論を出して命令を出すと、その命令を労使ともに遵守してもらうというのは当然でしょうね、前提としては。しかし、手続としては裁判所に出すこともできるわけですから、それをどうこうするということはできないと思いますけれども、労働省としては、明らかに地労委や中労委で命令が出れば、これはやはり不当労働行為だという断定に立って、できるだけそういうことのないようにして、そして労働者の保護をしていく、権利を守っていくという役目を担っているのは当然だと思うのですよ。いま審議官が言われるように、職場の中に二つの組合があって、大変複雑にしているとかいう条件はあると思いますよ。しかし、どのような条件があるにしても、個々のケースで提訴されて、そしてこれは明らかに不当労働行為だという命令が出たら、やはりその命令を守ってもらうというふうにしてもらわないと、これは地労委や中労委というものは一体何なのかという立場も問われることになりますし、機能も問われることになりますよ。同時に、そういうことではやはり本当の意味で労働者の権利というものは守られない。同時に労働組合の団結権も守られない。労働者の団結権や労働者の権利を守るために労組法もあり、あるいは労調法もあり、いろいろな関係法令がつくられているわけですから、そういう機関の結論が出たらやはり守ってもらうというくらいの強い何らかの措置なり指導なりをやってもらわないと、この法律が実際には骨抜きにされてしまう。そして会社の目的はそのことによって十分達成されるということになるケースが多いわけですよ。そういう問題に対して、大臣、どういうふうにお考えですか。
  127. 石田博英

    石田国務大臣 不当労働行為に関する紛争について、いわゆる労使関係の紛争あるいは労働関係の紛争、いずれにいたしましても、私どもの方の立場である労働委員会が審決をし、命令を下した以上は、私どもはその立場を守る立場にあります。そしてそれが労組法上の諸般の措置によって相当程度履行されていると考えております。もう一つは、そういう労働委員会の不当労働行為に対する審決その他に少し時間がかかり過ぎる、こういう点も、整備充実を行うことによって排除をいたしたい、こう考えております。
  128. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間もありませんからこれでやめますけれども、冒頭に申し上げましたように、これは全く異常な状態です。こういう異常な状態がずっと続いておって、しかも、地労委や中労委から命令が出てもその命令が履行されないまま裁判所に移されていく、最高裁まで行けば決着がつくのは何年かかるかわからぬ、その間は全く労働者の権利というものは守られていかない、こういう事態があるわけであります。ですから、やはりこういう特殊なケースに対しては特殊な指導をするなり調査をして、そうしてもっと経営者を戒めるとか、あるいはそういうことが起こらないような具体的な措置を講ずるとかいうことをしてもらわないと、これはなまやさしいことでは、さっきから何回も言いますけれども、なあに、命令が出たって裁判所に出してとことん争っていけば時間もかかるし、そのうちに相手はくたばってしまう。そのうちに組合はつぶれてしまう、こういうことになれば、悠々と法の網をくぐって向こうの目的は達成されるわけですよ。そういう事態を、労働省は、裁判所に出す権利もあるのだからそれはしようがありませんと言って、手をこまねいて見ておったのではやはり怠慢だと私は思うのですよ。  ですから、こういう異常な事態に対しては異常なように対処していく。そしてこういう問題が起こらないように、仮に起こっても命令が出れば命令で決着がつけられるような、そういう具体的な厳しい措置を講ずる必要があるのではないか。これは四十八年に同じような質問がなされておりますけれども、そういう悪質なと思われるような企業に対しては、金融の面とかあるいは発注の面とか、そういう面でも若干のクレームをつけて、そして何とか守らせるようにするといったような措置も当然講じてしかるべきではないかというように思うのですけれどもね。悪質であるか悪質でないかという認識が違えば、これはまた議論になりませんけれども、しかし、個々の具体的なケースで見る限りにおいては、これはきわめて悪質な労働組合崩しであるし、不当労働行為が公然と行われておる。しかも、一つの企業なり産業界で八十件近くもこんな事件が続出して起こるなんということは珍しいケースですよ。それだけに、異常な事態に対する厳しい措置を十分今後検討してもらいたいということを、特に要望しておきたいと思うのです。  それからもう一つは、去る三月二十九日に中央最低賃金審議会の小委員会が中間報告を審議会の総会に対して提出しているようでありますが、このことについて大臣は承知しておりますか。
  129. 石田博英

    石田国務大臣 承知しております。
  130. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは中央最賃審議会が議論をした中間報告ですからここで議論をしたってしようがないのですが、ただ、いままでの経緯をずっとたどってみますと、全国一律最賃制の創設については、七五年の一月に、総評、同盟、中立労連、新産別といった日本の労働界を代表する労働四団体が統一して政府に要求している。その要求を受けて国会の中でも議論になって、そして社会党、公明党、民社党、共産党、四党が一致して共同法案をつくって国会に提出しているわけです。しかも、いろいろな事態がありましたけれども、その事態の解決の時点で、労働大臣の方から中央最賃審議会に諮問をする、その諮問をする際にはこの四野党法案というものを重要参考資料として諮問に付する、こういう経過があっているわけでしょう。  私どもはこうした経過を踏まえて、中央最低賃金審議会がこの重要参考資料としての四野党案についてどういう計らいをするだろうか、どういう扱いをするだろうか、審議の中でどのように生かされていくだろうかということについては関心を持っていましたし、当然真剣な審議がなされるだろうというふうに期待もいたしておりました。ところが、諮問から二年もたっていますけれども、いままでの審議会の経過を聞く限りにおいては、この重要参考資料というものがそれほど重要な扱いをされておらないように私は判断をするわけです。しかも、今回出されました小委員会報告内容を検討してみましても、全国一律制問題に全く触れておらない。四野党が共同で法案を提出し、かつ労働大臣も重要参考資料として諮問した経緯から考えてみても、こうした経緯がほとんど無視されている。しかし、この中間報告は、現行の最賃制度の運用について若干の改善策は指摘されておりまして、その改善策自体について私どもは何も否定するものじゃありませんけれども、しかし、事の本質というのは、四野党法案が重要参考資料として審議会に付されているわけでありますから、したがって、審議会ももっと真剣な計らい、議論をしていただきたかった。真剣な取り扱いをしてもらいたいという期待を持つのは当然ですよ。だけれども、その限りにおいては、先ほど来申し上げておりますようにそういう扱いはされていないのではないか。  私どもが最賃制を要求したのは、いまある最賃法では実効を期し得ない。客観的な社会的条件や経済的条件というものは、もう全国一律最賃制を必要とするような条件ができておる。そこで問題になって、労働大臣も審議会にそういう諮問をされたと思うのです。ところが、先ほど来言っておりますように、現行制度の運用を若干改善したからという理由では、私はこの四法案を重要な参考資料として真剣に扱ってきましたということにはならないと思うのです。こうした状況を判断する際に、私は、中賃がどうのこうのということよりも、労働省自体が、もっと言うならば労働大臣自体が、最賃制に対する考え方を明確にしておらないというところに問題があるのではないかと思うのです。  最近のように経済が低成長に落ち込んでまいりまして、いま雇用問題やいろいろな問題が起こっておりますけれども、労働者雇用不安に追い込まれていますよ。しかも、中高年の賃金ストップや、あるいは臨時やパートの首切り、そうしたことがあっちこっちで起こってくるような状況の中で、そういうものから労働者の最低生活を守るという意味からしますと、私はやはりいまこそ全国一律最賃制というものが大きな役割りを持ち得ると思うのですよ。しかも、いつでしたか、最賃制問題でここで議論しましたけれども、そのときに、できるだけ全国的に符合のとれた賃金決定をしてもらう必要がある、最賃を決めてもらう必要があるという指導も現に労働省はしておるのですから、余り最賃にアンバランスがないように、額についても時期についてもできるだけ足並みをそろえるようなものにしていきたい、こういうお話もございましたね。それはやはりそういう必要性に基づいてされていると思うのですよ。いまの経済情勢なり社会的条件から考えても、その必要性はますます高まっておるのではないかというふうに私は思うのです。これは大方の認めることだと思うのですよ。  そういう状態の中で、いま申しましたように、中央最賃における扱いというものは、いままでの経過に関する限りは、私どもは、重要な参考資料としての取り扱いはされておらないというふうに思っていますが、これはやはり、先ほど来言っておりますように、労働省なり労働大臣がそれに対する明確な見解といいますか、方針を持っておらないというところに一番大きな原因があるのではないか。もちろん私どもが出した四野党法案というものについても万全と思っておりません。だから内容についてはまだまだ検討する余地があると思いますけれども、しかし、基本的な考え方として、全国一律最賃制を設ける必要があるということについては、私は大方のコンセンサスは得られるのではないかというふうに思っております。少なくとも政府は、四野党法案を受けて中央最賃審議会に重要参考資料として審議してもらいたいと付託をした立場上、責任もあると思うのですけれども、こうしたものに対して私どもはもっと誠意をもって取り組んでもらいたいというふうに強く労働省に要求をしておきたいと思います。
  131. 石田博英

    石田国務大臣 私は、最低賃金制度というものが一番最初に施行されたときも労働大臣でありました。あの当時はいわゆる業者間協定であって、非常な不満でありましたけれども、不満は両方にあった。それ以後の経過、経緯はよく知っております。  それから、今度の小委員会の答申は、野党四党の共同提案、それから労働四団体の出された提案というものも十分に組み入れているから、全国的に整合性があるようにしろ、それから中央最低賃金審議会はその決定に当たって一定の方向づけをするようにやれということで、このことは、私は二つの案を十分に参考にしておるものだと考えております。
  132. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間がないから、またいつかやります。
  133. 大橋敏雄

    大橋委員長代理 次に、土井たか子君。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 労災法にいう白ろう病として認定をされております、現在適用対象になっている人員、それから職種、作業場、それぞれについて大体簡略にまずお聞かせをいただきたいと思います。
  135. 溝辺秀郎

    ○溝辺説明員 先生がおっしゃいました適用対象人員につきましては、現在、私どもといたしまして、白ろう病が林業のみに限らず随所で起こってきております関係から、対象人員という数では御説明いたしかねますけれども、現在、振動障害として認定している者の数は、林業を含めまして、五十一年三月末現在で一千百五十一名でございます。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 職種、作業場ということになりますと、それはどのようなぐあいになっておりますか。
  137. 溝辺秀郎

    ○溝辺説明員 林業を主体といたしまして、建設業、それから採石業あるいは金属鉱業等かなり広範に及んでおると思います。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 かなりその範囲は広範に及んでいるという中で、いままで船内荷役の会社に働いている作業員の方々が、チェーンソーを使用しているというために白ろう病症状になったという例を聞いていらっしゃいますか、どうですか。
  139. 溝辺秀郎

    ○溝辺説明員 白ろうとして認定した事例はございませんが、船内荷役ではございませんが港湾の関係で、白ろうの疑いありということで鹿児島で一件事例として申請されたものがございます。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 実は神戸港で、船内荷役のチェーンソー作業員の方の中から白ろう病とおぼしき方が出てまいっております。これはもうすでに関西労災病院の方でその作業員の方について白ろう病と認定をされるだけの診断があるわけで、現にその診断を受けて労災認定の申請を五月の初めにされている事例がございますけれども、これについて御存じでいらっしゃるかどうか、ひとつ承りたいと思います。
  141. 溝辺秀郎

    ○溝辺説明員 地方から報告を受けまして、その概要については承知いたしております。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 私も先日この実情について調査をするために現場に行ってまいりました。その当事者の方は五十四歳になられる竹内重義さんという方なんでありますが、十年余りチェーンソーの作業に従事をされてきて、昨年の十二月の初めごろから、冷え込みがきつい朝は全然手が麻痺をしてしまって、指先が麻痺をしてチェーンソーを足の上に落としてしまうというふうな状況にまでなられて、そして痛みやしびれがだんだんひどくなって、ことしの三月、まず神戸の医療法人共和会東神戸診療所を訪ねられて、そこでの診断結果、精密検査をした結果では、知らされた病名というのはどうも白ろう病だということで、驚いて関西労災病院の方に足を運ばれて診断を受けられた結果、ここにも私は診断書を持ってきているわけでありますけれども、大体その白ろう病の特徴すべてこれは診断結果として認められているということになっているわけであります。  私も船の中に入り、船底まで行きまして、チェーンソーを使用されている現場で、現にチェーンソーを使用して三、四回角材を切ってみたりしたわけでありますけれども、あの船の中の作業場というのは、冬は冷え込みが非常にひどい場所らしゅうございます。夏は室のように蒸す。冬は大変に冷え込みがきつい。その冷え込みがきつい中でなぜこのチェーンソーを使用しているかというのは、御存じだと思いますが、船の荷役として荷崩れを防止する目的で、貨物の下に敷く角材をスピーディーに切るというのが労務内容ということになっているわけなんですね。特にこのスピーディーに切るというところがポイントでありまして、出港時間に間に合わすために大急ぎで、半日以上もぶっ続けでチェーンソーを使用しなければならないというふうな事情もときにあるようであります。労務を終えて帰ってこられる作業員の方に二、三私はお尋ねしてみますと、その方々がおっしゃった発言の中にも、出港時間に間に合わすということが一番大事なことなんで、半日以上もぶっ通しでチェーンソーを使わされることもときどきある。手足がだるくて過労状況になっても、荷役時間に追われて休憩する暇もない。体を壊している仲間というのは多いのじゃないか、こういうふうに言われております。  そういうふうな実情がその現場においてはあるわけでありますが、労働省とされては、こういう白ろう病発生の防止対策としてどのような対策をいままで行い、またどういう行政指導というものを行ってこられたか、これをひとつ簡単に御説明賜れませんか。
  143. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 振動障害の防止につきましては、私ども重要な行政の重点といたしまして地方に十分指示をいたしておるつもりでございます。特に問題は、チェーンソーの規格と申しますか、できるだけ振動数の少ないものを使うというようなこととか、操作時間と申しますか、そういったものを規制するとか、それからまたできるだけ健康診断を徹底いたしまして、そういう障害が起こらないような事前措置をするための健康診断をやるとか、それから不幸にして起こりましたものについては、治療方法についても統一した方法をとるためのいろいろな手引きみたいなものをつくって関係病院等に送ったりということをいたしておりますが、いずれにいたしましてもこの問題は、安全衛生の問題、労働時間の問題、そういった総合的な手を打ってやっていかなければなかなかこれは防止できない、こういうふうに考えております。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 いま御説明のような、労働省からすれば通達があるわけでありますけれども、現場に行ってこの会社責任者の方などにいろいろお尋ねをしてみますと、この通達のあること自身を御存じないくらいでありまして、実情は、この内容は一つだに守られていないということであります。チェーンソー使用者に対して行われるべき定期健診は何らない。それからまた、使用について大体何時間以内ということに抑えていかなければならないという注意事項というのも、会社側が率先して当たっていらっしゃるというふうは全くない、こういうふうな実情が現にございます。  現にこの職場で働いていらっしゃる方々、ずっと平均してみますと、平均年齢が四十歳前後ということでありまして、十年近くこの作業に従事されている作業員の方々が半数以上だそうであります。若い方々がなかなかこの職種ではないということらしくて、臨時雇いのような形で若い方が入ってこられても、それは力仕事の方に行かれるために、チェーンソーを使用される方々というのが自然と平均四十歳以上、十年近くそれだけに従事なさる方に限定をされていっているという現象が現場においてはあるようです。  したがって、潜在患者という数をいま数えてみればどれくらいになるかというのは、憶測してみたら数十人に上るのではないか。竹内さん一人の問題ではないということが大分深刻な問題として出てまいっておりますけれども、御存じのとおりに、潜在患者がありましても顕在化しないというのは、解雇の問題だとか、休んだ場合の賃金カットの問題なんかを考えて、そういう不利な労働条件を恐れたために、患者さん自身がこれを公にしないという風潮が現場においてはあるのじゃないか。これはもう現場にちょっと行っただけでもそのことはよくわかります。また事業主も、労災の適用を故意に避ける、報告をしないで、むしろ隠す方に懸命になるという風潮なきにしもあらずであります。患者さんが症状を訴えて、認定申請をしたときに、雇用関係に対して悪影響を及ぼさない、しかも適正な治療が受けられる、さらに患者さんに対して不利な労働条件を与えない、こういうふうな方向で労働省側としては労使双方へ指導するということが必要なのじゃないかと私は思うわけでありますが、この事例に対してはどのように考えていらっしゃるかをひとつあらましお聞かせいただきたいと思います。そうして調査をぜひお願いしたいのです。いかがですか。
  145. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 いま先生のおっしゃるような問題があることにつきましては、私ども監督の立場から見まして、もしそれが事実であるとすれば非常に遺憾なことであると思います。したがって、私どもといたしましては早急に、もちろんこれは事業主が当然やらなければならぬことでございますから事業主を集めまして、何か関連事業の協会があるようでございますからそれを集めて、そこで十分指導してまいりたいと思いますし、また先生指摘調査もやりたいと考えます。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 それで、神戸港だけではなくて、全国にはやはり貨物を取り扱っているところの港湾があるわけでありますから、そういう流通基地、港湾等においても同様の問題があろうかと思いますので、ひとつこの問題に対しては大急ぎで徹底した調査というのをやっていただかなければならないと思います。私どもも、調査が進められた段階でさらにこの問題に対しては質問を展開するということを予告させていただきます。  さらにもう一つ、これはもう時間がございませんから簡単に申し上げますが、思いもかけないところにまた白ろう病とおぼしき症状の方がいられる。それはヤクルトを販売されている御婦人であります。労災認定を近く申請しようということでございますけれども、問題の場所は大阪府の箕面です。この箕面で、ヤクルトのセンターから商品を仕入れて販売作業をしておられる方がその当事者の方ですが、当初は自転車を使用されていた。ところが昭和四十六年ころから大体オートバイによって販売をやるという業務内容に変わったわけであります。最近いろいろと手足がしびれる、ときにはもう新聞を五分と手に握って読むことができないという症状になられまして、関西医科大学の方で診断を受けられたわけでありますが、細川助教授の診断によりますと、親指を除く両手の指全体に蒼白、白ろう現象がございまして、多発神経炎、末梢循環障害、末梢知覚鈍麻、頸肩腕症候群、自律神経失調、こういうふうな診断結果が出たわけであります。私はここに診断書も持ってまいっておりますが、このバイク運転、配達作業による結果の振動病だということの因果関係も含めて診断意見書が出ております。  この問題は、会社と、この当事者である女性の名前は野田さんと言われるわけでありますが、その御本人との雇用関係というのが問題になろうかと思います。ヤクルトの場合なんかは、容器をわざわざ水で冷やして配達をしなければならないという状況にもございますので、手の冷え込みはきつい。さらにそのオートバイによる振動の結果、白ろう病として認定をしてよいような症状になってきているということでありますが、ただ問題は、これが労災認定ということに該当して考えられるような雇用関係ありやなしやというところが実は大変なポイントになってこようと思うのです。この点はすでに鳥取の労基局の方で出ている事例もありますので、その点もひとつ御検討願って、この事例にも調査の手を伸べていただきたいと思うわけでありますが、この事例はお聞き及びでありますか、いかがでありますか。
  147. 溝辺秀郎

    ○溝辺説明員 先ほど申し上げました兵庫の事例と同じように、本省には一応の報告は受けておりますが、内容細部につきましては残念ながら承知いたしておりません。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 それならばひとつしっかりこれについても調査をまずやっていただきたいと私は思います。この例についてもまた、調査の進んだ段階質問を展開するという予告をいたしまして、時間が参りました、本日の予告質問はこれで終わりたいと思います。
  149. 大橋敏雄

    大橋委員長代理 この際、休憩いたします。なお、本会議散会後直ちに再開することといたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  150. 橋本龍太郎

    橋本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続行いたします。草川昭三君。
  151. 草川昭三

    ○草川委員 草川でございます。  まず第一に私は、いわゆる激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律というのがあるわけでございますが、その中の二十五条に関しまして、少し具体的な例を挙げて御質問を申し上げてみたい、こういうように思うわけであります。     〔委員長退席大橋委員長代理着席〕  まず最初に、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の第二十五条というのがあるわけでございますが、この中には雇用調整給付金に関連する項があるわけですが、ひとつどういうことか具体的に御説明を願いたい。
  152. 北川俊夫

    北川政府委員 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の二十五条で、激甚災害を受けた地域における雇用保険の適用の特例を定めておるわけでございますが、この制度は、激甚災害によりまして事業を休廃止した事業所及びそのため休業を余儀なくされた被保険者が大変多く、水にずっとつかっており、かつ土石が埋もっておるというような状態が継続をしまして、事業の再開までに相当長期間の日にちを要する、そういう見込みの事業所が多い場合に、これを失業とみなしまして、求職者給付を支給いたしまして、激甚災害のときにおける被保険者の生活の安定を図ろうとするものでございます。
  153. 草川昭三

    ○草川委員 続きまして、激甚災害時における雇用保険法による求職者給付の支給の特例に関する省令というのがあるのですが、この省令の中で、第一条に、所在地を管轄するところの公共職業安定所の所長が休業の確認をするということがございます。この点については、具体的にいまおっしゃられました内容を、現地の公共職業安定所の所長独自で、一人で判断することになるのですか。この省令についての御説明を願いたいと思うのです。
  154. 北川俊夫

    北川政府委員 これは求職者給付の支給の手順を定めておるわけでございまして、事業主が安定所長に申請をして、事業所の休業の確認を受ける、こういうことになっておりまして、休業しておるかどうかの事実につきましては安定所長の独自の確認、こういうことになると思います。
  155. 草川昭三

    ○草川委員 そうしますと、この休業というものの認定というのは、具体的にどういう状況を指すのか、休業の具体的な認定の内容について御説明願います。
  156. 北川俊夫

    北川政府委員 もちろんその原因が、激甚災害によりまして、先ほど申し上げましたように、事業の再開までに相当長期間休業を要する見込みである、そういうことが直接の原因でございますけれども、結局そういう原因によって事業所が休業をし、その間労働者が仕事ができずに待機をしておる、こういう休業状態を失業とみなして求職者給付を受ける、そういう確認をするわけでございます。
  157. 草川昭三

    ○草川委員 それで私どもも十分理解ができるわけでございますが、ここで一つ具体的な例を申し上げたいわけでございます。  昨年十七号台風というのがあったわけでありまして、これは九月十二日のことでございますけれども、特に知多半島一帯に集中豪雨の災害がございました。もちろんこの地域だけではないわけでございますけれども……。これは記録的な豪雨でございまして、この地方におけるところの織布企業、いわゆる織物業者でございますけれども、これは現地からの情報によりますと、伊勢湾台風をしのぐ壊滅的な災害を受けたわけであります。そこで、知多地方におきます知多織物工業協同組合あるいは知多綿スフ織物構造改善工業組合理事長の名前で半田公共職業安定所に対して雇用保険法の、先ほど触れられました激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の適用の申し入れがあったわけですが、そのことについては御承知でございますか。
  158. 北川俊夫

    北川政府委員 そういう申請のありましたことは承知いたしております。
  159. 草川昭三

    ○草川委員 ところが、この申請というのは最終的には受け入れられなかったわけであります。なぜそうなったのかということをいまから申し上げながら、一体どういう場合がこの激甚災害の適用になるのかということを本委員会で私は質問をさせていただきたい、こう思っておるわけでございます。  たまたまこの十七号台風では、この地方で六百三十三の企業の中で百六十一企業が大変な打撃を受けたわけであります。川がはんらんをいたしまして、一メーターに及ぶ工場の浸水が三日間から四日間続いたわけであります。最近の織物工場というのは、当然近代的な機械が入っておりまして、昔のような、ばたんこと言うのですか、少しぐらい水につかっても油を差せば稼働するという状況ではありません。ほとんどミニコンピューターも入っておりますし、それぞれの機械が非常に高度化をいたしておりまして、場合によってはNCマシンのような形に機械が非常に高度になっておりまして、少しでも水につかりますと、もうそれだけで機械自身がだめになってしまう、こういうことがありますし、実際問題といたしまして、一メーターに及ぶ水に三日間から四日間工場がつかっておるわけでありますから、仕掛かり品の原糸がまずだめになる。ビームというものに巻いてあるわけでございますので、このビーム自身が腐ってまいりまして、糸にはのりがついておりますので、そののりが溶けてまいりまして糸自身がだめになってしまうというわけでございまして、一般的な中小企業の場合でも、十五日間から二十日間工場が閉鎖をしてしまって、全くの休業状態になったわけです。いま局長の方からもおっしゃられたような、いわゆる休業状況というものがあるわけであります。  さらにこの工場を、私どももいろいろと調べてみたわけでございますけれども、電気の配線等の取りかえが、水が引いてからもあるわけでございまして、大体二カ月から三カ月ぐらい工場がとまっておるという例もさらにございまして、当然、知多織物工業協同組合としては法の適用を申請するということになったわけでありますけれども、それが具体的にどういうように半田の公共職業安定所の方に申請になり、それがどのような段階で却下になったのかお答え願いたい、こういうように思います。
  160. 北川俊夫

    北川政府委員 昨年九月の台風十七号の際に、愛知県の半田市を中心といたします織物工場等が浸水いたしまして、それに対しまして、台風のための休業について、いま先生指摘のように、激甚災害に対処する特別の財政援助等に関する法律の二十五条の適用についてすぐに事業所から申請があったわけでございます。われわれといたしましては、その際に当該地域の被災の状況をつぶさに調査いたしまして、その状況が激甚災害の基準に該当するかどうか、そういうことの処理をいたしまして、その結果、台風十七号による半田公共職業安定所内における事業所の罹災状況が、ここに言っております法律の激甚災害の基準には該当しないという結論になって、その申請につきましては適用をしないという結論を出したわけでございます。
  161. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、いま該当しないという結論になった理由が明確でないわけでございますけれども、私の手元の書類に「十七号台風によるところの集中豪雨被害の一覧表」というのが添付されてございます。これは恐らく労働省の方にも行っておる数字ではないかと思うのですけれども、たとえばトップに山田紡績という会社がございます。そしてそこに機械の名前が書いてございまして、従業員の方も四百十七名、一メーター五十の浸水が続きまして、この工場も約二カ月の休業になっておるわけでございますけれども、五億五千万円の被害状況報告しておるわけであります。そのほか、ずっと各企業の名前がありまして、十月末、九月中旬とか九月末とかいうところまで休業をしておる、こういうデータが出ておるわけです。このような陳情というのですか、要請が出ておるにもかかわらず、該当しないと言われておるのは一体どういう理由によるのか、さらに一歩突き進んでお答え願いたい、こういうように思います。
  162. 北川俊夫

    北川政府委員 いま先生指摘の半田公共職業安定所管内における台風十七号による被害は、私たちの把握しております限りでは、この半田の公共職業安定所で雇用保険の適用事業所が二千五百五カ所ございます。そしてそれに従事しております被保険者の数が七万四千二百五十七人でございます。このうち、先生いま御指摘のように、山田紡績以下いわゆる被災事業所全体としましては二百八カ所、被保険者の数で約九千三百人、こういうことになっておりますけれども、おおむね大半は三日ないし七日の休業で旧に復しまして操業を再開いたしておりまして、いま御指摘のように事業を一週間以上、長期にわたって休止した事業場は十四カ所であった、こういうふうにわれわれ把握しておるわけでございます。  私が先ほど申しました激甚災害の地域指定の基準といたしましては、当該災害によりやむを得ず一週間以上事業を休止し、または廃止するに至った失業保険の適用事業所数がおおむね三千カ所、または当該適用事業所に雇用されておる被保険者の数がおおむね九万人を超えたとき、これが一つの条件、あるいはそれがそういうことでなくて、もう少し別の観点から見ます場合には、当該災害によりやむを得ず一週間以上事業を休止し、または廃止するに至った失業保険の適用事業所数がおおむね千カ所以上であって、その数が当該都道府県における適用事業所数の十分の一以上であること、こういうことを指定基準といたしております。  先ほど申しました半田の公共職業安定所を中心に出てまいりました台風十七号の被害は、このわれわれの考えております指定基準には該当しない、そういうことで激甚災害に基づくところの雇用保険法の適用、先生の御指摘の二十五条の適用をしなかった、こういうことでございます。
  163. 草川昭三

    ○草川委員 いま局長の方から指定基準というのが出たわけでございますけれども、その指定基準というのは、一つの地域の判断が問題だと思うのです。どこを一つのゾーンというのですか圏内にするかという問題、たとえば愛知県なら愛知県だとか、東京都なら東京都だとか、大阪府なら大阪府という非常に大きな範囲に決めるようなものになるのか、あるいは最近のように乱開発が始まってまいりますと、いままで予期しない豪雨というのですか、水の被害というのは局地的に出る場合があると思うのです。たとえば非常に大きな地域、県でも市でも町でもいいのですけれども、その全体がとっぷりと水につかるというようなことでない場面があると思うのです。     〔大橋委員長代理退席、戸井田委員長代     理着席〕  たまたま私は、いま半田市の例を申し上げましたけれども、半田市に乙川地域という一つの地域があるのですが、その地域は八割方が織物工場で、ここはたしか同じ町名だと思っておりますけれども、ここの一〇〇%が一定の地域で一カ月からの、十月末まで災害に遭っておるわけであります。人数から言いましても、半田市あるいは東浦地域というところ、これの申請は全部半田市だと思いますけれども、一定の地域でパーセントで言うならば、私はその指定基準を満たしていると思うのですけれども、その点はどうでしょう。
  164. 北川俊夫

    北川政府委員 いまの指定基準が都道府県単位になっております点につきまして、その地域の指定範囲が果たして適当であるかどうかという御指摘の点につきましては、私たちも今後の検討課題にすべきかと思いますが、ただ、その半田公共職業安定所管内におきます今回の場合の被害につきまして、先生のおっしゃるのは、恐らく何らかの被害を受けて休業をした事業所全部トータルの数で、先ほど私が申し上げましたように、被害総数としましては適用事業所の二千五百という数に及んでおりますけれども、休業期間といたしましてやはり一週間以上、これは地域の限定をいかに変えようとも、この基準については私たちは将来とも必要ではないかと思います。一週間以上の休業をしたのは、私たちの把握しておる限りは十四事業所ということでございますので、たとえ地域の単位あるいは区域につきまして今後検討するといたしましても、この場合にやはり適用は大変困難ではないか、こう考えるわけでございます。
  165. 草川昭三

    ○草川委員 御存じのことと思いますけれども、織物工場なんというのは、こういう水害がありましても、実態としては大変なことだというので、全員が後片づけをやったり工場の再開に備えていろいろな準備をするわけであります。そういうものを安定所の方が事業再開とみなしておるのではないか、ここが私、非常に重要な点だと思いますけれども、実際はもう災害があったら、社長以下従業員が全部一丸になりまして災害復旧のために努力をする、この災害復旧に努力をしておることを、半田の職業安定所の方は企業が一部稼働しておるというように認定をしたのではないか、こう思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
  166. 北川俊夫

    北川政府委員 恐らく先生の御指摘のとおりだと思います。  ただ、復旧作業といえども、事業主が復旧のために労働者を働かしておるわけでございますから、これは当然事業主の負担で給料を支払うことを前提としての労働である、雇用保険法の失業給付を受ける対象とはなり得ないのではないか、そう考えております。
  167. 草川昭三

    ○草川委員 そこが私は、現実の問題として、雇用調整給付金の支給を目的にするのなら、また、いろいろな不正受給ということではないのですけれども、やはり中小企業ですし、集中豪雨でもう企業自身が大変なことになっておるわけですから、正直なことを言って、まずは再建、そして一体これにどういうように賃金を払ったらいいのかというので企業の方々が心配をしまして、いわゆる国の方からの激甚災害指定法によるところの政府系のいろいろな金融公庫があるわけですから、そこから金を借りてきて、とりあえずはやはり給料は給料で払おうというのが私は経営者の実態だと思うのです。だからこそ、日本の一つの労使関係というのもそこで生きてくるわけでございますけれども、そこは私、たまたま復旧を前提とするから使用者側が命令をして復旧工事に従事をさせた、それを直ちに生産に携わる賃金として見ていいのかどうか、いわゆるこの法の第二十五条の精神というのは、明らかにこの激甚災害に対処するための特別の財政援助でありますから、その趣旨がなぜ生かされないのか。  ここは私どももよく現地で聞いてまいりますと、安定所の方からも、災害復旧に従事をした従業員に賃金を支払ったからこれはもうだめなんだというのが非常に強い意見でございまして、失業状態ではないと言う。ところが私は、いま言うように、二十五条の激甚災害に対処するこの法の精神から言えば、やはりこれは当局としては休業状況にあったと見るべきではないだろうか。そして本当に災害復旧のためにそれぞれ支払った賃金があるとするならば、それを差し引いて、そしてトータルな期間で若干の調整をするということがあってもいいと私は思うのですけれども、その点についてお考えはどうでしょうか。
  168. 北川俊夫

    北川政府委員 この法律で、本来は休業であって失業でない者を、激甚災害がその起因であるがゆえに、特に失業とみなして雇用保険の失業給付を出しておるわけでございますから、先生の言われるこの法律の趣旨そのものからの解釈という御見解について私、わからぬでもございませんが、余りそこのところを弾力的に解しますと、この法律そのものが非常に悪用される危険もございまして、この二十五条に定めております「事業の休止または廃止によって休業するに至り、かつ、労働の意思と能力を有するにかかわらず、就労できず、かつ、賃金を受けることができない状態」というのを、先生のおっしゃるように、復旧の事業はこれから除外するのだという解釈は、この法律のたてまえ、文言上からはちょっと不可能かと存ずるわけでございます。
  169. 草川昭三

    ○草川委員 私、現地を見ておりますので、この法律自身を非常に希望的というのですか、私の立場からの発言になるかと思うので非常に申しわけないと思いますが、あのような十七号台風の被害でもしこの法の適用ができないとするならば、一体どういうような状況ならば適用になるのか。先ほど指定基準にさえ達しておるならば当然だとおっしゃられましたが、それだとこれはもう大変な、実は産業界全体が麻痺をするような、極端な状況じゃないだろうか。  私は、災害というのは、特にこのような二十五条の激甚災害という形は、やはり局地的だと思うのです。だから、局地的なら局地的の対策を立てて、乱用をされないようにチェックするならチェックするという、これが行政の基本の姿勢ではないだろうか、私はこう思うわけです。  特に今回は、この地方の市長もわざわざ労働省へ来て、具体的に陳情というのですか、非常に強い要請をしておるわけです。このときに市長と会われた労働省の担当の方は、どなたか私は知りませんけれども、現地の市長からも非常に強い要望があったわけでありますから、まず乱用というようなことは私はないと思うのです。地方自治体の方からもそのような要請事項があるわけでありますから、この二十五条の適用ということを最大限にやられるならば、ずいぶん中小企業の経営というのは助かったのではないだろうか、こう私は思います。いわゆる法の本来の目的によって救われる事件というものがなくなってしまったという意味で非常に私は不満があるのです。  ついでにここで、これは変な意味で聞くわけではございませんけれども、ごく物理的に聞きたいと思うのですが、昨年の十月十二日に出ました官報、この中に政令二百七十五号というのがございまして、昭和五十一年九月七日から十四日までの間の豪雨及び暴風雨についての激甚災害の指定並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令というのが出て、これで激甚になったわけでありますが、激甚災害の期間、認定した事実と適用すべき措置というのと備考というのがございまして、「この政令は、公布の日から施行する。」というので、それぞれ内閣総理大臣以下大蔵、文部、厚生、農林、通産、運輸、建設、自治大臣の署名というのですか、それがあるのですが、たまたまここに労働大臣がないわけです。現地の方からは、なぜあれに労働大臣がないのか、二十五条の適用がないからこういうことになったのか、こういう御質問もあるわけでございますが、この点は適用になったときにそういうことになると思うのですけれども、他に激甚災害で適用した例があるのか、あった場合には当然大臣はこの中にお加わりになれるのか、お聞きしたいと思います。
  170. 北川俊夫

    北川政府委員 いま御指摘の政令二百七十五号につきましては、先生指摘のように、関係大臣の署名ということでございます。したがいまして、五十一年九月のこの十七号台風の災害につきましては、雇用保険の給付に関しての特例は適用をしないということで、この政令には労働大臣が参画をしなかった、こういうことになります。  なお、ではどういう災害について過去においてこの二十五条の適用により失業給付をしたかという点につきましては、三十九年の新潟地震の場合にこの適用をしておるわけでございます。
  171. 草川昭三

    ○草川委員 これは、もう済んだことでございますけれども、この中で、たとえば一部の方でございますけれども、特に女子だと思いますけれども、使用者側の命令で生産再開に従事できないというので一たん故郷なら故郷へ帰したという場合があります。もちろん賃金は、それなりの手続で六割保障だと思いますけれども、払って帰したと思うのですが、そういう事実が出た場合に、それはやはりこの適用の遡及というのですか、さかのぼって支給するという対象になるのかならぬのか、お聞かせ願いたいと思います。
  172. 北川俊夫

    北川政府委員 この場合、地域全体につきまして二十五条の適用をする激甚災害であるかどうか、これは失業給付の場合とかいろいろの場合で違うのでしょうけれども、少なくとも二十五条に関しては、この地域について激甚災害の措置を適用しないのだということが決まっておりますれば、いま先生の御指摘のような場合であっても、これをさかのぼっての適用ということは不可能かと思います。ただ、もし適用がされるということの決定があって、なおかつ、いまのような休業の状態があれば、これは事態によりますけれども、遡及して適用することも可能ではないかと考えます。
  173. 草川昭三

    ○草川委員 いろいろと御質問申し上げましたが、最終的には、やはりいま労働省の方が言われた指定基準に問題があると思うのです。せっかく二十五条という激甚指定の問題について雇用保険の適用といういい方向があるわけでございますけれども、指定基準というところで結局これが対象にならないというのがいまの結論だと思うのです。でございますから、私、先ほどもくどいように申し上げておりますけれども、いま千カ所以上だとか十分の一だとかいうことを言いましたが、集中豪雨なら集中豪雨という一つの場面に限れば、大概八〇%とか九〇%の企業というのが対象じゃないか。ただ、いま労働省が言うところの指定基準というのは、非常に大きな範囲で網をかけますから、除外になってしまう。これでは本来の意味がない。本来の意味がないから、多分恐らくいままで適用になったことはないのでしょう。
  174. 北川俊夫

    北川政府委員 新潟地震です。
  175. 草川昭三

    ○草川委員 そういう新潟地震のような大きな例以外にはないとするならば、この指定基準の範囲をもう一回見直していただいて、特に集中豪雨等がこれからも多発される、予想されるわけでございますから、乱用は戒めなければなりませんけれども、ぜひ指定基準を本来の目的に合致するように改善をしていただきたいということを要望して第一の質問を終わりたい、こういうように思います。  では、第二番目に移りますけれども、第二番目の問題は、労働安全衛生法の改正がこの前本委員会でも満場一致で通過をしたわけでございますけれども、それに関連して、その他のことにも関係をいたしますので、若干御質問をさせていただきたい、こういうように思うわけであります。  それは御存じのとおりに、今度の改正案の中では、職業がんの多発が問題になり、労働省は特に企業に新規の化学物質と発がん性化学物質の有害調査を義務づけるように改正をしたわけでございますけれども、その中で、意見を求められた学識経験者がその秘密を外に出した場合には処罰される、懲役六カ月、罰金三十万円という、いわゆる守秘義務というのがあるわけでありますが、そのことをめぐりまして、関係する消費者団体だとかいろいろな労働団体などの中からいろいろな意見がいま出ておるわけでございます。そういうこともございますので、ひとつ念のためというとあれでございますけれども、改めて御質問をさせていただきたいとお願いをするわけであります。  一つは、現在の刑法の改正案等も一面では準備をされておるわけでございますけれども、企業の秘密の漏洩罪というのが一方ではあるわけでございまして、これがそれぞれいま問題になっておるわけですが、そちらの方は企業秘密に関する一定の枠というのがあるわけでございますけれども、こちらの方では調査を依頼された学者なりあるいはまた、それの作業に従事をする人に対する企業秘密は無制限ではないかという意見もあるわけでありまして、たとえば企業側の方とか労働省の方から、それは企業秘密ではないかというような判定というのですか、一たんそういうことを言われた場合には、たとえば職業病を内部から告発する、告発をするという言葉が適当であるかどうかわかりませんけれども、それを問題にしようというような運動家の人たちも、これは企業秘密漏洩の対象になるのかならぬのかという問題が出てくるわけでございます。ですからひとつ、その点についてお聞かせ願いたい、こう思います。
  176. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 今回、労働安全衛生法の中で化学物質の有害性の調査の規定を設けましたのは、先生御承知のように、とかく新規物質を、有害性をわからずに使っておって、いろいろながんその他の病気が出てくるということを私ども経験いたしておるわけであります。ですから、そういうようなこと、特にまた、そういう災害隠しみたいなことが過去ありましたわけですから、そういうことがないようにしたいというのが、私どものこの法案のねらいでございます。  したがって、私どもといたしましては、そういう新規物質を扱う場合には、できるだけ早く届けてもらってその有害性の調査をしていこう。問題は、新規物質でございますから、非常にむずかしい判断を要するわけでございますから、それで、学識経験者の意見を聞くということになるわけであります。  問題は、やはりこういう新しいものを使います場合には、企業のノーハウ、あるいは疫学調査については、個人のプライバシーの問題その他の問題もありますので、そういう点については十分配慮をしてやりませんと、現実にそういった新規物質を届けないというような面も出てまいりますので、それとの関連も十分考えながらこういった新しい改正をいたしたわけでございまして、むしろ企業の中にあります、そういった非常に病気が発生しやすいような問題について、早くそれを発見しようということでございまして、いま先生のおっしゃるような内部告発を予期するというようなことは全くございません。むしろそういうものを早く取り出して、早く防護措置を講じて、労働者に健康障害がないようにしようというねらいでございます。  有害調査につきましては、私どもは、早くその判断を決めた場合には公表いたしたい、こういうふうに考えております。
  177. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、ちょっと具体的な話になりますけれども、たとえば学識経験者が、特定の有害物質について知り得た一それが秘密かどうかは別としまして、知り得たものがある。ところが、もちろん従来の生産工程と違うわけですから、恐らくいままでのものは大体明らかになり対処されておるわけですから、これからどのような化学工場ができるかもわかりませんし、あるいはまた、その材料を使ってどういう加工物が出るかわかりませんが、やはり新しいものなるがゆえに、ノーハウは別として、その中で知り得たところのいろんなものを組み合わせをして、たとえば論文に発表してみる、こういう事例があったという事例研究を、これは学会なら学会でしてもいいわけですし、たとえばいろんな文献、雑誌等に発表するという場合があったといたします。ところがたまたま、ノーハウはないけれども、その中から出てきたところによる、新しいこういうものがありましたよという場合にも、それは企業秘密の漏洩になるのかならぬのか、該当するのかしないのか、お聞かせ願いたいと思います。
  178. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 ケース、ケースによりませんと、むずかしい判断だと思いますが、私は、そういった学者の方々が一つの文献にいろいろと発表されることが、特定の企業の名前と関連して、ノーハウと絡んでくれば問題でございますけれども、一般的なそういった、特に名前が出ませんで、学術的に発表されることについては、何らこの条文とは関係がない、こういうふうに思っております。
  179. 草川昭三

    ○草川委員 そういう場合には、やはり企業名が出た場合には、ノーハウは一切触れないとしても問題になるわけですか。
  180. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 この法案は、先生御承知のように、私どもが一定の有害調査をしまして、いろいろなことをお聞きした段階においての問題でございます。     〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、それ以外の学者先生方は全く問題がございませんし、有害性についての論文については、一定時点において私どもは公表をいたしますから、その後は全くそういう企業秘密との関係はないのではないか、こういうふうに思います。
  181. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、その会社の名前がたまたま出ることはいいわけですね。どこどこの会社でこういうような新しい災害が生まれたとか、あるいはどういうような生産工程の中で出たとか、たまたまそれはノーハウには関係がない、ノーハウというのは非常に細かい点があるわけですからね、それはいいですか。
  182. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 それはケースの仮定の話でございますから、非常にお答えしにくいのですけれども、特定の企業とそのノーハウが絡んでまいりましたら、やはり問題ではないかと思います。ただ、有害性があるというようなことでいろいろな防護措置をする関係から、そういう企業との関連が出てくることは、これはノーハウと関係なければ問題ないのではないかと思います。
  183. 草川昭三

    ○草川委員 だから私は、これは明確にノーハウならノーハウというふうに、びしっとそこだけ限定をしておく範囲内でこの法というのはつくってまいりませんと、罪刑法定主義でございますから、明確にしていきませんと、やはりこれは問題が残ると思います。  これは人はどんどん変わっていくわけでありますし、また、どういう例が出るかわかりませんけれども、学者先生自身が、何か一つこの種のもの、具体的な例でないので申しわけございませんけれども、これから早急にとめていきたいとか、こういうようなものについて警戒をして注意を喚起していきたいという場合に、やはり学会で発表されたり、いろいろな本に書いたり論文に発表するということも非常に重要だと思うのです。同時に、労働省も事前になるべく速やかにそういうものは世間に公表するということですが、もし労働省の方がお役所仕事でといういやな言い方をしませんけれども、役所ですからそう簡単にぽんぽんと発表するというわけにはまいらぬ場合が多いと思うのです。そこで非常に慎重な態度であった。たまたま委託をされた学者先生が、これは放置をすると大変なことになるというので、早目に警戒の意味でアピールを出そう。それはもちろん、ノーハウは別としての話でありますが、結果なら結果だけでも発表したい、企業の名前もある程度出したいという場合に、これがひっかかっていくようなことになってまいりますと、いわゆる企業だとか行政から告訴を受けるということになってくるわけでございますが、そのようなことを労働省としては予想をしてこの法案をつくられたのかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  184. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先ほどの限定的な書き方はないかというお話でございますが、いままでの立法例を見ますと、特に限定をして書いた例はございません。私どもとしては、これは刑事政策の観点でございますから、労働省だけで立法を云々することはできないのではないかと思います。  それから、こういった有害性調査をするのは、あくまでもこれは労働者に健康被害を与えないために、いろいろな防護措置をすることが必要でございまして、ただ単に、こういうものはがんの心配があるというだけで出しては、それはただ世間様を騒がせるだけでございますから、私どもとしては、そういった防護措置なんかも、学者先生に十分聞きながら発表していきたい。それはできるだけ早く、労働者の健康に関する問題でございますから——必要な時間は必要でございますけれども、できるだけ早く対応措置を考えながら発表してまいりたいと思います。
  185. 草川昭三

    ○草川委員 ひとつ有害性の調査や疫学調査の結果を、局長の方でなるべく速やかに発表することによって、いまわれわれが心配するようなことはなくなるわけでございますから、やはり早くそういう——まず第一のアクションは、何と言ったって役所の方が委託をする、あるいは企業の方も先生を頼む、この第一番目のアクションが問題なのでございますけれども、あったら、ある程度の期間がたったら発表するというような、それこそ内規のようなものもこれはつくりませんと、非常に片一方でおくれて、あるいはそのような学者先生調査をして出したとなれば、従業員側でも大変心配になってくるわけですから、その先生が入ってくるということは、もうその企業の中ではわかるわけですから、どういう結論なんだろう、ところが、役所の方がたとえばなかなか発表しないということになると、先生のところへたとえば聞きに行くというような場合だってあるでしょう、だからここは、やはりある程度のいろいろな条件というのをたくさんつくっていきませんと、無制限に一方では拡大をするということになりますと、それこそ企業秘密ということを盾に、逆にいまいろいろな段階の方々が心配するようなことの裏づけになるわけでございますので、ひとつそういう私がいま言ったような点について、具体的な制限というのですか条件というものをぜひつくっていただきたいと思うのですが、その点についてはどうでしょう。
  186. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもは、できるだけ早く解明をし、それに対する防護措置を講じながらやってまいりたいと思いますし、いま先生の御指摘のような面についても検討いたしてまいりたいと思います。
  187. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、これも時間の関係がございますので最後になりますけれども、いまのような一つの方法、いつ公表するのか、たとえば企業から届け出のあった結果をどういうような形で発表するのかという具体的な問題は、われわれの方へも意見の反映ができるような、そういう機会をぜひ設けていただきたいと思います。  最後に、職場の中の働く従業員の側からの、先ほど内部告発という言葉を使いましたけれども、たとえばある一定の問題提起があるというようなこと、あるいは外部からの公害反対をする諸団体があるわけでございますが、必ずしも公害に限りませんけれども、いろいろなそういう市民団体等がある、彼らのそのような運動というものが不当に制限をされないような形、もちろんノーハウとかの産業スパイのようなことになれば、これはまた別な話でありますけれども、ひとつ民主主義的な権利というものだけは絶対に保障をするというのですか、当然のことでございますけれども、それがないと問題があると思うのですが、最後にその点についての見解を賜りたい、こう思います。
  188. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 こういったがんとかその他むずかしい病気が新しい化学物質の関連で出てまいりますことは、できるだけみんなで防がなければいかぬという気持ちでおります。したがって、いまお話しのように、労働者の方々もそういった点に自分が一番さらされておりますから心配もありますし、当然そういった方々の情報も私どもいただかなければなりません。そのこと自体は今度の法案の改正と全く関係がありませんし、守秘義務が全くかかるわけでもございませんので、私どもは、みんなの力でこういった職業性疾病を未然に防止するという立場でやってまいりたいと思います。
  189. 草川昭三

    ○草川委員 では次に、少し沖繩の失業問題について話を進めていきたいと思います。  沖繩は、御存じのとおり本土に復帰して五年になるわけでございます。しかし、雇用という面に焦点を当ててまいりますと、沖繩の条件というのは、本土復帰以後非常に厳しいものがあると思うのです。  現在の沖繩県におけるところの失業者数あるいは失業率、有効求人倍率等、いわゆる労働統計の五十二年の数字があればあれでございますけれども、最近の数字があればお知らせ願いたい、こう思います。
  190. 北川俊夫

    北川政府委員 沖繩におきます現段階におきます失業情勢でございますけれども、完全失業者数は本年三月時点で約二万七千人でございます。したがいまして、失業率は六・五%の高率を示しておりまして、全国の失業率の二・四に比べまして著しく高い、こういう情勢でございます。また、沖繩県におきます公共職業安定所における求職者の数でございますが、これは本年三月現在で約一万七千人でございます。求職倍率、これは内地の場合には求人倍率で示すのが普通でございますけれども、沖繩の場合には、その数値が非常に逆転をしておりますので、求職倍率というのを使っておりますが、求職倍率が一〇・四倍、すなわち求職の方が求人よりもうんと多い、こういうことになっておるわけでございます。
  191. 草川昭三

    ○草川委員 いま局長もおっしゃられましたように、沖繩というのは、本土の私どもに比べまして相当失業率が高いということ、あるいはまた求人倍率も非常に条件が悪いという御報告でございますが、この沖繩におけるところの失業率の高い原因というのは、たくさんの原因があると思いますけれども、主な点はどこにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  192. 北川俊夫

    北川政府委員 先生指摘のように、いまの沖繩の非常に厳しい失業の情勢というのは、いろいろの原因がふくそうして出ておると思いますが、その中で私たちがやはりこれがかなりの大きな要素になっておるという点を二、三挙げさせていただきたいと思います。  一つは、やはり沖繩における産業の発展が十分でない、したがって、沖繩県内における雇用機会が著しく乏しい、これがやはり一番大きな原因かと思います。  それから第二に、本土復帰に伴いまして、いわゆる復帰失業者及び米軍基地の整理統合に伴うところの関係離職者の発生というものも、雇用情勢に相当悪い影響を及ぼしておるということが第二点でございます。  それから第三点としまして、沖繩のこういう情勢を打開するために行われました海洋博でございますけれども、その後におきまして、むしろわれわれの考えとは逆に、企業倒産がかなり続出をして、そういうことの影響もあって、現在沖繩の企業が大変求人の手控え、いわゆる求人に対して慎重である、こういうことが挙げられるわけでございます。
  193. 草川昭三

    ○草川委員 いま高い失業率の原因についてそれぞれ言われたわけでございますが、基地労働者の大量解雇という問題については触れられてなかったようでございます。基地労働者の将来の——将来というよりも、ここ当面の雇用の推移というのはどういうことになるのか、労働省としてつかんでみえる点だけお答え願いたいと思います。
  194. 北川俊夫

    北川政府委員 基地労働者の離職の状況でございますけれども、昭和四十七年に二千七百人の離職者がございました。四十八年には二千九百人、四十九年には三千二百人、五十年二千二百人、さらに五十一年二千七百人、復帰後五年間におきまして一万三千八百四十九人の離職者、非常に大量の離職者が出ておる、こういう現状でございます。
  195. 草川昭三

    ○草川委員 その大変な大量の失業者が、実際問題としてどう職業転換をしていくかということが問題になってくるわけでございますけれども、実際は他府県への流出数というのが非常に多いと思うのです。一体他府県へどの程度流出をしておるのか、最近の資料がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  196. 北川俊夫

    北川政府委員 沖繩県の職業紹介状況でございますけれども、五十一年を例にとってみますと、就職件数が、学卒を除きまして一般の場合に年間に一万人でございます。そのうち県外が約半分の四千九百人、こういうことになっております。なお学卒について言いますと、中卒が五十一年には四百六十五人就職しておりますが、うち県外が四百三十三人とほとんどが県外でございます。高卒につきましても、大体それに近うございまして、就職件数が五十一年四千百四十四人でございますが、うち県外が三千三百二十七人、こういう状況でございます。
  197. 草川昭三

    ○草川委員 いまのように県外の方へどうしても頼らざるを得ない、こういう条件は他の府県には見られない状況だと思うのです。一種の異常事態とも思えるわけでございますけれども、当局として具体的にこの沖繩に対する雇用の促進という面でどのような対策を立てておみえになるのか、お聞かせ願いたいと思います。     〔委員長退席大橋委員長代理着席
  198. 北川俊夫

    北川政府委員 やはり失業者の再雇用の確保のためには、雇用の場を沖繩の県内につくっていく、いわゆる産業の振興ということが一番基本でございます。ただ、そう申しましても、当面そういう産業の振興が急速に進むということが期待できませんので、労働省としましては、昨年の五月に、沖繩県の労働者の職業の安定を図るための計画、こういう特別の計画をつくりました。  この計画に基づきまして現在積極的に取り組んでおります事項は、まずやはり、いま先生指摘のように県外就職の促進ということが、いまの時点ではとらざるを得ない措置でございますので、県外就職が可能な若い方につきましては、県外への広域職業紹介を積極的に進めております一  それから第二としまして、先ほどから御指摘の駐留軍離職者あるいは沖繩の復帰に伴うところの関係失業者につきましては、御承知のように特別の離職者対策といたしまして、就職促進手当の支給等、各種の職業転換給付をいたしておるところでございます。  さらに、県内における吸収のためといたしまして、もちろん県内の職業紹介あるいは職業相談、求人開拓、そういうものも積極的にやっておりますけれども、当面なかなかはかばかしい成果を上げ得ませんので、公共事業による失業者の吸収ということで、事業官庁と協議をいたしまして、適宜適切に公共事業の発注等をお願いしておる、こういうことが現在の状況でございます。
  199. 草川昭三

    ○草川委員 いま緊急雇用調整給付金等の問題だとか、それから駐留軍関係の離職者就職促進手当ですか、それから沖繩復帰関係離職者の促進手当等が五十二年度の予算でそれぞれ計上されておるわけでございますが、実態は、現地からのお話によりますと、なかなかうまくいっていないようであります。  そういう点でもう少し、関係方面の方々との御連絡も強化をされる、あるいは本当に何か現地に適当する職業訓練というようなものも活発に行っていただいて、やはり原則的には現地における、県内における雇用というものを増大するということを、抜本的に私は立てなければいかぬのじゃないか、こう思います。ひとつ、そのようなことに対する、もっとより強い予算措置を講じてやっていただきたいと思います。  沖繩の件について最後になりますが、ひとつ大臣の方からも、この沖繩の雇用の問題について見解を承っておきたい、こう思います。
  200. 石田博英

    石田国務大臣 特に過密過疎がまだ依然として解消されていない現状において、沖繩に限らずなるべく現地で働く場所を見つけていくことが望ましいことは、原則的には無論異存はございません。しかし、沖繩の場合は、それを望むと申しましても、他の地域に比べて非常に高い失業率であります。それから沖繩の置かれておる条件が、そう急速に雇用の促進を望めるような経済情勢にはない、そういう状態でありますので、とりあえずとにかく働く場所を見つけていくということになりますと、どうしても県外の需要に応じていくということにならざるを得ない。若年労働力については、沖繩に限らず一般的にまだ売り手市場でありまして、問題は中高年であります。中高年齢層の人になればなるほど生まれ故郷を去りがたいという気持ちが強いわけでございますので、そういう点に主眼を置いた職業の訓練、あわせて総合施策としての産業の振興を図ってまいりたいと考えております。
  201. 草川昭三

    ○草川委員 では次に、今度は職業訓練の方について御質問をしていきたいと思います。  まず第一に、労働省にお伺いしますが、いま労働省は職業訓練計画というものを、それぞれ県段階で出すように各県に何か御指示なすってみえるわけでございますか、その点について内容をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  202. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 毎年新年度予算を執行し、計画を実行する前提といたしまして、各県それぞれその年度ないしやや長期的な見通しを立てて、その県内における公共訓練施設の運営のみならず事業内訓練の振興、助成その他職業訓練全般につきましてのその県の事業計画並びにそれに伴う予算執行の計画につきまして、これはそれぞれ国から補助金を支給するというようなこともございまして、全体の見通しの中でそれぞれ計画並びに予算を位置づけていくということで各県に、私どもヒヤリングと言っておりますが、訓練計画を持って来ていただいて、ひざ詰めでそれぞれ担当者が話をいたしまして、そうしてその訓練計画の実行に伴う予算の付与ということについて詰めて、新年度の事業並びに予算の執行に当たっておるわけでございます。
  203. 草川昭三

    ○草川委員 各県の段階でそれぞれ産業界とも話し合いというのですか、相談が実際上はやられておると私は思うのですけれども、職業訓練計画に対する一般的な意見というのが、企業がいま当面する減量経営というのですか、企業としては当然激しいインフレの中で企業競争が激しいわけでございますし、技術革新というのが非常に進行してきておるというような段階の中で、企業の当面する今日的な課題という問題が、なかなか職業訓練にうまくかみ合っていないという声が正直なことを申し上げて非常に多いのです。  具体的には、たとえば若手の技能教育等の問題でも出ておるのですけれども、職業訓練の中で、人格形成のための教育というのが、まず対象外になっておるわけですね。ところが、実際仕事をする場合には、ただ単に技術というものだけではなくて、今日の企業というものの厳しさなり、あるいは経営分析というのでしょうか、原価管理というのですか、そういうような教育があわせて行われていきませんと、たとえば溶接工をいかに訓練するといっても、溶接棒のむだ遣いが一方で行われてみたり、あるいは電源の使用等の問題についても、コストと仕事の関係がどうあるべきかというような指導がないと、ただ覚えてきましたでは、また、その企業の中で改めて訓練をしなければいかぬというようなこともあるわけでありますが、そのような目の細かい職業訓練に対する労働省としての指導が実際は各地方に行われておるのかどうかお聞かせ願いたい、こう思います。
  204. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 確かに、先生が御指摘のような点については、今後も十分に検討していかなければならない問題かと思います。  先生指摘の点は、公共訓練施設における職業訓練、養成訓練ということが主体だと思いますが、現在養成訓練には、中学卒で一年間の課程と、それから中学卒二年間、高等学校出の人が一年といういわゆる専修課程と、その上の高等訓練課程というのがあるわけでございますが、これは、いずれもそれぞれの技能についての熟練とまではまいりません、基礎的な技能の付与、これに要する学科並びに実技の訓練ということが主体になって、現在訓練基準というものが形成されていることは事実でございます。  いま先生指摘のような、いわゆる学校教育にありますような人格形成、それから高度のそういった企業の経営の中にまで立ち入ってのいろいろな知識、能力等につきましても、私ども学校の教育におきます人格形成的な面におきましては、これは訓練工という形でやはり集合して教科に従って訓練をしてまいっておるわけでございますから、学校教育と同じようなことが、それぞれの特に学校の校長並びに指導員の工夫の中で行われているとは存じますが、後段の問題につきましては、現在の養成訓練の主体となっております専修並びに高等の訓練課程では、必ずしも十分に行われていないと思います。  ただ、今後だんだんに高学歴化してまいります中での技能者養成ということも、将来いわゆる職長ないしその上というような管理能力を持ったような高度の技能者ということで、これを私どもテクニシャンというふうに名づけておるわけでございますが、これを養成するための短期訓練大学校の訓練課程におきましては、現在試行過程でございますが、将来の課題として、そういった先生のおっしゃるような能力付与の点についても、十分課程の中に組んでいくべきものだと考えております。
  205. 草川昭三

    ○草川委員 いまおっしゃられましたように、最近では一般の大学卒業生が非常に多く、高学歴化しておりますが、実際上の産業界の受け入れというのは、すべてを管理職として受け入れるわけじゃないわけですから、大学卒の職業訓練というものの需要もかなりあるように聞いておるわけであります。  ところが、そうなってまいりますと、ますます職業訓練というのが多層化してまいって、訓練のやり方も非常にむずかしかろうということが当然予想されるわけです。それだけに私は、ひとつ訓練所の指導員に民間企業の実務家というものを随時に、契約というとあれでございますが、話し合いで相互交流というのはできないのだろうか、あるいは現実の訓練校なんかの教師もある一定の段階には産業界に行って現状というのを勉強しながら、たとえば短期留学というと言葉は悪いわけでございますが、交流をしてみる、そういう中で企業として求めておる今日の職業訓練というものがおのずとわかってくることになると思いますし、いわゆる生きた職業訓練というものが成功するのではないだろうかと思うのですが、どの産業を選ぶかが問題でございますし、各地域によっても産業の違いがあるわけですからあれでございますが、ひとつどんなようなお考えを持ってみえるか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  206. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま先生おっしゃられる点は、まことにそのとおりでございまして、私ども現在の段階でも、一つには民間でも訓練指導員の資格を持っている方々に委嘱という形で公共職業訓練施設の訓練の教科につきまして実際に指導訓練をしていただいておりますと同時に、公共訓練施設の指導員を、そういった民間の現場に一定期間派遣して、新しい技術革新に伴う技能なり、あるいはそういった企業の管理全般についての知識なりというものを付与するための、言ってみれば指導員の向上再訓練というようなこともやるように努力はしております。今後その点の拡大は十分に図ってまいりたいと思います。
  207. 草川昭三

    ○草川委員 それからもう一つは、この職業訓練が今後どのように伸びていくかという問題もありますけれども、一つは、現在の企業の実態が終身雇用であることは事実だと思うのです。いわゆる原則的な企業というのは、年功序列が柱になりまして終身雇用制度でございますから、途中採用というのは非常に限られてきます。でございますから、私、一つ心配をしますのは、これからの日本の雇用構造というものに格差が出てくるのじゃないか。いわゆる今日の一流大企業というものは、もう中途採用というのは原則的に行わずにいく、そうすると、この職業訓練校を卒業して入るのは、こういう言い方は悪いのでございますけれども、どうしても中小だとか下請というところより受け入れ体制がないのじゃないだろうか。  そのような点について、一体展望として職業訓練の行政に携わる立場から、大企業に対して職業訓練校の卒業生の受け入れについてどういうような考え方を持ってみえるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  208. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生指摘の点は、まことにむずかしい問題でございまして、私どもも毎週、毎日のように議論をしている中の一つの大きなテーマでございます。  大臣も先般申し上げましたとおり、現在、職業訓練、技能養成含めましての全体の展望の中でどのようにこの基本的な見直しをしていくかということの作業に取り組んでおりますが、確かにおっしゃるとおり、現在、公共訓練施設で養成をしております訓練生の大部分が中小企業の技能に対する需要に応じている、そして力のあると申しますか、大企業におきましてはその中での養成訓練というものを、独自の企業内の訓練をいたしまして、さらに、いろいろ配置転換をやっていきます中で向上訓練なり再訓練ということを企業の中でいたしますので、日本の場合、それが非常に外国と違いまして、一つの技能に労働者が固執するということでなしに、非常に順応性があるものですから、終身雇用制度と絡みまして、先生の御指摘のような、その企業では最初に採用した労働者をいかようにでもつくり直しながら終身使っていくというようなことになると思います。同時に、下請とか社外工というような、いわゆる系列の中小企業の訓練につきまして、一部企業ではそこまで手を広げてやっているところもあります。  それにもう一つは、中小が集まって共同の事業内訓練ということをやっておりますが、一つの考え方としては、私ども、そういった共同事業内訓練をやっておりますような事業内訓練の中に、大企業の場合にはたとえば系列的な下請、そういった人たちの訓練も包摂するような指導をし、また、それに対しての助言、援助等ができないだろうかということを考えますと同時に、公共訓練施設が実際にやっております技能工の養成、その人たちを、大企業が必要といたしますそういった技能に採用を積極的にするというような指導もできないだろうか。現実にたとえば二、三造船会社などでは、特定の、たとえば溶接工というようなものについては、公共訓練施設で養成した者を優先的に採用するというようなやり方をとっていまに至っているところもあるわけでございますが、こういったことの関連づけができないだろうかというようなことも含めましていろいろ検討しております。今後ともに検討を詰めてまいりたいと思っております。
  209. 草川昭三

    ○草川委員 いまのは基本的な問題でございますし、そう簡単にけりがつくことではございませんが、やはり国の費用というものをかけてやるわけでございますから、まず、その大きな壁というものをどこかで破っていく、そのことによってこの職業訓練というものが飛躍的に見直されていく、こう私は思うのです。いまの指摘についてはぜひ取り上げていただきたいと思います。  それから、職業訓練校の二年課程で現在電子工学というのがあるのですが、一番最初に私、大臣の所信に対する質問でも申し上げたことがあるのですけれども、電子工学というものは、残念ですけれども、受け入れ側の方に聞きますと、大学を卒業しましても直ちに間に合わぬと言うのです。役に立たぬと言うのです。職業訓練校二年課程を卒業して電子工学を学んで、まあ中卒の方が役に立たぬという意味ではないのですけれども、中途半端じゃないだろうか。だから思い切って、電子工学だとか、あるいは最近、コンピューターのプログラマーなんということを簡単に言っておりますけれども、実際上役に立つ方を養成するには、特別なコースというのが必要じゃないだろうか、そういう意味では。ところが、いまの体制だと、二年課程は二年課程だということに限定されてしまうことになりますので、大胆な、今日の産業界の技術革新に対応するところならどんどん送り出すことができる、その場合は、もうクイックアクションで、三年なら三年、四年なら四年あるいは半分ぐらい企業に入れて、もう一回学校へ戻ってきて行くとかいうようなことの組み合わせが必要だと私は思うのですが、そういうことについてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  210. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いまの点につきまして、先生質問ということで私ども現状を調べてみたわけなんですが、電子工学とおっしゃいますもので、私どもが現実に高等職業訓練校で中卒の二年課程としてやっておりますのは、電子機器訓練科というものであったわけですが、実際に間に合っているかどうかということなんですが、これを何を基準にしてそういう判断をしたらいいかと思いましたけれども、就職状況からまいりますと、ほかの訓練科出身者と同じく、二年課程の電子機器科卒業の者は九六%ぐらいの就職率になっていることはなっているのでございます。     〔大橋委員長代理退席、住委員長代理着席〕  そこで、先生いま御指摘の点は、まことにごもっともでございますので、私ども、今後の訓練課程の持っていき方につきましては、十分に参照させていただきながら検討してまいりたいと思います。
  211. 草川昭三

    ○草川委員 時間がございませんので、最後に一つ、職業訓練の中で特に身体障害者の問題について質問をしたいと思いますけれども、身体障害者の方々の訓練の現状というのは、大変なむずかしい問題があると思いますが、ぜひがんばっていただきたいと、要望を申し上げておきたいと思うのです。  ただ私、これは少しいやみではございませんが、労働省の広報課が各新聞に広告を出しましたね、身体障害者の。これは訓練課ですか、それともどこが出したのですか。各新聞に、身体障害者の方で「シスコ市警が、アイアンサイドを手離さない理由」で、半分アイアンサイドの写真が出ている広告が各新聞に出ているのですが、これは原局はどこですか。
  212. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 まず、事務的なお答えを申し上げますが、総理府で一括して政府広報をやっております。総理府の広報室から実は相談がございまして、身体障害者雇用問題について取り上げたらどうかというお話がありました。それで、実際には恐らくそういった広告の専門家のデザインによりまして、私どもが盛り込みたい内容を盛り込んで——ですから、そのデザインそのものは全く専門家任せということになったわけでございます。
  213. 草川昭三

    ○草川委員 私は、これは誤解を招くと大変なことになると思うのです。そのデザインの専門家のアイデアはいいと思うのですが、テレビに出るサンフランシスコ市警のアイアンサイドというのは臨時雇いでしょう。極端なことを言えば正規の従業員じゃないのです。私も余りテレビのことについては詳しくありませんが、筋は、これは障害を持ったお巡りさんですけれども、警部ですか何ですか、とにかく特別な扱いで、彼の頭脳なり才能ということが特別扱いなんです。正規の従業員じゃないのです。正規の国家公務員というのですか、市警の人間じゃないのです、これは。そういうような人を「アイアンサイドを手離さない理由」ということで、身体障害者の方々の雇用促進のこういう資料にするというのは、これは私、もってのほかだと思うのです。  本来ならば、簡単な質問じゃないと思うのですが、まあそのことはいいです。何とかをあげつらってというつもりはございませんけれども、やはり真剣に、障害者の方々の雇用促進という意味で見るならば、もっと訴えるPRの方法はあったと私は思うのです。だから、簡単に専門家に任せるのはデザインだけで、障害者の方をモデルにしてかくあるべきだというならば、やはり正確な条件の方々の紹介をモデルにしてこれは取り上げていただきたいということを、最後に苦言を呈しまして、私の質問は時間が来たようでありますから終わりたいと思います。
  214. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、和田耕作君。
  215. 和田耕作

    和田(耕)委員 今年の春闘も、もうごく一部の企業を除いて大体終わっておると思うのですけれども、今度の春闘のいわゆるベースアップの率の問題は、いま労働省としてどのようにおまとめになっておられるのか。また、まだまとまっていなければ、いろいろな傾向についてお伺いをしたいと思います。
  216. 関英夫

    ○関政府委員 毎年春闘の状況を、労働省で主要な各社について調べておりますが、現在まだ全部が妥結いたしておりませんので、取りまとめが終わっておりません。  主な企業あるいは産業と申しますか、については、もういろいろな報道で先生十分御承知かとも思いますが、たとえば鉄鋼関係が率で八・五四、造船八・八〇、電気が二通りございまして、総合の方が九・五〇、家電の三社が一〇・七六、自動車が九・七七、私鉄が九・二〇、海運が七・八〇、電力が八・一八と、こんなようなことになります。いずれもこれは組合員ベースの単純平均でございます。従業員全体ではございません。そんなような状態になっております。
  217. 和田耕作

    和田(耕)委員 中小企業関係のはどういうふうにお調べになりますか。それは組合の方のレベルからの発表として、もっとたくさんの中小企業サイトの傾向——傾向で結構です。
  218. 関英夫

    ○関政府委員 中小企業につきましては、現在まだ多く未解決のところがございまして、一部上場の大きなところの調査が先にまとまりまして、中小企業関係はまた後になるわけでございます。そういう意味で、現在まだちょっと何とも申し上げかねるところでございます。
  219. 和田耕作

    和田(耕)委員 理解できますけれども、大体このままでの傾向、これはまあほとんど大企業、しかも非常に強い組合をバックにしておるところだと思うのですけれども、これでいて、この平均をざっと見ると、やはり八・五ぐらいのものですか、それは何か試算したことありますか。
  220. 関英夫

    ○関政府委員 別に正確な試算をしてございませんが、大体八・八%といった昨年に近い、その前後というような感じがいたしております。
  221. 和田耕作

    和田(耕)委員 多分そういうものだと思いますし、今後全体の産業の状態がわかってくると、八からもっと下へ下がる可能性もあると思うのですけれども、労働大臣、今年、去年、一昨年と三年間、今年は物価のアップは九・二という数字が出ておりますけれども、三年間、物価のアップに対して労働賃金の引き上げ率が下回っておるという事実があるわけですね。これは、まあ石油ショックの後の去年、おととしあたりはまだ理解できるとして、大体もう産業のレベルは平常に戻っておる。まだ戻ってないというあれがありますけれども、特に大企業の場合は、大体戻っておるというような段階でなおこの物価のアップに及ばない賃上げという問題は、これは労働行政を預かる責任者として重大な関心を持たなければならない問題だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  222. 石田博英

    石田国務大臣 ごもっともでございまして、私も、きょう閣議で、緊急物価対策の三目標が十三日の物価担当官会議で決まったという報告がございました。それに対して私は特に発言を求めまして、この数年来日本の労使関係は非常に変わってきた、労使双方とも共同の認識の上に立って日本経済の将来に対処しようという姿勢が見えてきている、労働組合も近代社会の一構成員として責任を分担するし、使用者も労働組合をパートナーとして見ていくという動きが非常に強まってきている、これをわれわれが助長していくのが労働省の仕事だと思っている、そういう場合に、賃金決定に当たってやはり物価上昇率というものが非常に大きなファクターになる、おととしと去年はその物価上昇率の政府の当初見通しよりもさらに若干いい成績であったので、それを対象として組合幹部は取りまとめに努力したのだ、ことしも同じ努力をしようとし、実際はしたのにかかわらず、物価上昇率が政府見通しを上回ったことははなはだ遺憾である、これは健全な労使関係の助長の妨げになる、したがって、今後はその点にひとつ強く留意をして物価対策に当たってもらいたいという発言をいたしました。経済企画庁長官の方からは、自分たちもそれが非常に気にかかるものであるから、見通しの狂いについては、労組の幹部に特に集まってもらって、事前に事情の説明をした次第であるという旨の発言がございました。賃上げが妥当であるか妥当でないかということについての論評は、私、いたす立場ではございませんけれども、しかし、勤労者の生活の実質的向上を図っていくというのが私どもの立場でございます。そういう意味からいいますと、物価の上昇率をできるだけ少なくするというのは政治の責任であると考えております。
  223. 和田耕作

    和田(耕)委員 きょう私が質問したいと思った第一点は、労働行政責任者である労働大臣として、三年にわたって物価のアップに追いつかない賃上げの実情という問題に強く関心を持たれて、政府に対して強い一つの申し入れのようなことをぜひともしてもらいたいということを私は申したかったのです。  きょう閣議でそういうお話をなさったようでございますけれども、これはできるだけ国民にわかるように、労働大臣として、そのような態度で勤労者の生活を守っていくための正しい施策を政府はしておるのだということを、国民に呼びかけるといいますか、気持ちをあらわしていくということをぜひともやっていただきたいと思うのです。  これは今後、たとえば経営状態が非常に苦しいところでなかなか出せないところもあるでしょうけれども、しかし、生活水準を下げないということのためには、ほかの支出を多少抑えても賃金の問題だけはカバーしなければならないという感じを、経営者としても持つべきだと思うのです。そういう感じを持てば、つまり労働者の方もそれに感応して、しかるべき正しい態度になるという感じがするのですけれども、全体から見れば、そういうふうな風潮はまだまだできてないと思うのです。  ですから、これはうまいことをやったというような感じを持っている経営者もかなり多いようだし、ここで政府、その責任者である労働大臣としては、物価のアップに対して深い関心を持ち、労働者の生活水準を下げてはいけないのだという趣旨のアピール、あるいは方針説明をしかるべき場でぜひともやるべきだ。必要があれば記者会見でもして、きょう閣議でこういう発表をしたのだというようなことをして、一般にわかるような形でこの問題を明らかにしていくことが必要だと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  224. 石田博英

    石田国務大臣 本日、特に発言を求めまして、いま申しましたようなことは、閣議の後で必ず記者会見がございますので、十分説明をしておきました。  いまの経営者の責任と資格と賃金との関係でありますが、私は、いまから二十年前に初めて労働省に参りましたときに、例の業者間協定による最低賃金制度というものをスタートさせたわけであります。この説明で日本各地を歩いておりますと、どこへ参りましても、中小企業の人たちは、自分たちは簡単に言えば低賃金を背景として商売が成り立っているのだ、その背景の方を土台から取ってしまったら、われわれの商売は成り立たぬじゃないか、こういう声が一般的でございました。そこで私は、声を張り上げまして、つまり勤労者の通常の生活の保障ができないということは、それ自体が使用者としての資格がないのだ、ましてやこの程度の最低賃金が払えないということは、しかも業者が入って協定したことが払えないはずがないのに、そういうことを人前で言うこと自体、経営者としての資格に欠けるのだと言うてまいりました。今日においても私はその考えは変わりません。  よく米価決定の際には、米価がその地域における購買力になるという意味で、地域ぐるみの運動になる。ところが、賃金の場合にはそうはならない。ですから、賃金も明らかに購買力ですよということを言って回っておるつもりでございます。
  225. 和田耕作

    和田(耕)委員 きのうもある会合で、日本の経営者の、最高責任を持っておられる人たちがこういうことを特に強調しておられた。たとえば韓国の労働賃金は日本に対して何ぼだとか、フィリピンのあれが何ぼだとか、日本の賃金も余り上がっているとこういうところにすぐしてやられてしまって、だめになっちゃうのだ。つまり、このような比較を経営者はよくなさるのですけれども、こういう問題は、その場その場ではある説得力を持っておるようですけれども、しかし、余りこういうことをなさらないように指導するためにも、私は、いまの物価のアップに対する賃金の問題を正しく提起していくことが必要だと思うのです、先進国の労働者は、賃金が上がったら上がっただけその労働が価値化されるような労働体系に入っていかなければならない。また、その方法もあるわけですね。そういうふうなことを考える場合でも、この賃金の問題については、ぜひとも前向きの姿勢といいますか、それを堅持してもらわなければならないというふうに私は思います。  特に最近では、賃上げだけでなくて、たとえば時間外労働が減るとか、あるいは奥さんとか家族のパートタイマーの仕事がなくなるとか、かなり所得は下がってきているという感じがするのですが、この問題はいかがです、ちょっと首をかしげておるようですけれども。
  226. 石田博英

    石田国務大臣 前段の問題でございますけれども、いまとは経済情勢が違う時代でございましたから、いまから考えてみて夢のような話ですが、たしか私、二度目に労働省に参りましたときに、繊維産業に労働力が非常に足りないということが起こりました。それで、関西へ参ったときであると思いますが、韓国あるいは台湾から一時的に労働者を入れてくれという声がかなり強く起こりました。私は、次の二点からこれを拒否いたしまして、今日に至るまで労働省の方針としてとっておるわけであります。  それは一つの理由は、われわれは日本の勤労者の生活水準を上げるのが役目であって、安価な労働力を導入することによってそれを抑制することは、われわれの仕事でないということが第一点であります。第二点は、日本という国が単一民族国家であるということは非常にありがたい、このありがたい状態を子孫に残したい、いま苦しいからといって人を導入して何年たったら帰すといっても、必ず滞留が起こる、その滞留の重なりが子孫に大きな負担を与えることを避けたい。この二点から拒否してまいりました。  今日、韓国や台湾あるいは香港その他の低労賃を背景とする競争力が、わが国にいろいな圧力をかけていることは事実であります。しかし、それを克服するのは、先進国としてのわれわれが技術の改良あるいはまた産業工程の革新というようなことによる生産性の向上によって克服していくのが当然であって、安い労働力には安い労働力をもって対処すべきだなどということは論外である、私はそう考えております。
  227. 和田耕作

    和田(耕)委員 それで、今年の春闘について私ちょっと問題だと思いますのは、これは労働大臣、どのようにお考えになるか、公共企業体の仲裁裁定の額ですね。あれは率は幾らぐらいでしたかね。
  228. 関英夫

    ○関政府委員 仲裁裁定は、きょう午後ということですので、恐らくそろそろ提示されているころかと思いますが、仲裁に移行します場合の調停委員長の見解によりますと、単純平均でたしか九・一〇%だったと思います。
  229. 和田耕作

    和田(耕)委員 いまの九・一二というのは、常識的に見てそう不当な数字ではないと私、思いますけれども、ただ、あの当時の民間の数字からすれば、かなり上回った数字を出しているという感じを持ったのです。ですから、これを問題にする人がかなりあちこちにおると思うのですけれども、こういう関係、つまり民間の平均的なものが公共企業体、公務員の賃金の一つの基準になるという考え方からして、あのような不法なストライキ等を構えた後でのああいう賃金の設定の仕方というものはどういうものだろうかなという疑問を私は感じたのですけれども、これは私だけではないと思うのですが、こういう問題についてどのようなお考えを持っていますか。
  230. 石田博英

    石田国務大臣 公共企業体の賃金は民間に準拠する、民間に準拠するという基準は、同種同規模の賃金に準拠する、こういうたてまえになっているわけであります。しかし、公共企業体の経営形態、当事者能力というものの現状については、よく御承知のとおりでございます。政府といたしましては、そういう条件の中でも最大限の有額回答をいたしたつもりでございます。その最大限の有額回答をしたという誠意は、これは組合側もわかってくれているわけであります。しばしばその会議場でも発言があった。それにもかかわらず、違法なストライキを組んだということは、はなはだ遺憾だと私は思います。できれば、そういうスケジュールによったそういうことが行われる前に、調停なり仲裁なりに移行していくべきものだと思うのですが、それは今度は時間的に民間準拠の原則というものにぶつかってくるわけでございます。  そこで、民間の同種同規模の、経済団体あたりでまだ春闘の相場が半分ぐらいしか決まっていないときに、一般的な水準よりも高い調停を出すというのはけしからぬというような議論はございますけれども、残っているのは、同種同規模という点になりますと、余り該当しない部分も多いわけでございます。あれだけ誠意を示したにかかわらず、その誠意を認めているにかかわらず、国民に迷惑をかける争議行為をやったことは、私としては大変残念であり、遺憾であると思います。しかしながら、全体から見ますと、やはり戦術ダウンとかいろいろ苦心の跡はある程度は見られる。  それから、九・一〇という数字の適、不適でございますが、これは全体として見ないで、個々の企業体でごらんいただきますと、年齢構成その他いろいろな構成から見ますと、それまで決まった民間よりも高いということにはならないように思います。全体からは九・一〇になりますが、たとえば国鉄のように年齢構成の非常に高いところなんかと比較いたしますと、低いところも出てまいります。
  231. 和田耕作

    和田(耕)委員 私ども、あるときに、つまりストをやる前に政府の方も出したらいいし、そしてストによっていろいろな数字が出てくるということは好ましくないということを強く申し上げておったのですけれども、いまおっしゃるとおり、これは各年齢その他の条件がありますから、この率そのものでは比較できないと思いますけれども、しかしそれにしても、民間に比べて若干高目のあれが出たなという感じをたくさん持っていると思うのです。特に、あの直前の鉄鋼とか——いまの自動車は景気がいいですから別ですが、造船とかあるいは当時出ましたものに比べると、一回り大きい数字を、政府は貧乏なのに、また公共企業体はずいぶんと困っているのに、よくあれぐらい出したなという感じを皆持っている。これは親方日の丸というような空気を醸し出しておる。ちょうどそのときに、私鉄の交渉の仕方が非常に良識的な仕方をして、ストを構える前に団体交渉をぎっちり詰めて、そしてある額を返答さして、しかしそれじゃ足らないからというのでストライキをやる、ああいうふうなことがあっただけに、この公共企業体の場合のあの調停の額というのは、何か納得できないような空気をいろいろな方面に醸しておると思うのです。  最近、私、二、三カ所でこの問題について座談会に出たのですけれども、かなりこういう問題を指摘する人が多いので、これは一遍労働大臣の所見をただしておかなければならぬと思ってきょう質問しているので、私もそういう感じを持ったのですけれども、いまの御答弁でよくわかったということにいたしますが、やはり公共企業体の人たちは、民間の人に比べて、これは実際どういう尺度で物を言うかわからぬが、働きが少ない、努力が少ないというのが一般の印象なんですね。また、恐らくそうだろうなという感じを私も持っておるのですけれども、そういうことがあるだけに、こういう問題については、もっと民間の同規模の労働者と似通ったような責任感と就労の態度について、ある条件をつけるのはおかしいのですけれども、それが聞き入れられなくても、政府としてはそういうふうな要望を絶えず出すべきだと思うのです。そういうことを出さないで、それとは逆のような、同時に、あってもやらぬのと同じような処分をするとかいうようなことと並行してやるものだから、どうも納得できないような問題があるという感じがするのですけれども、そういうような問題はいかがでしょうか。
  232. 石田博英

    石田国務大臣 公共企業体のベースアップの率につきましては、たとえば国鉄と私鉄と比べた場合、必ずしも国鉄の方が高いとは言えないと思うのです。ただ、私鉄の交渉態度、繊維の交渉態度というようなものはいままでとがらっと変わりました。そういう態度は私どもは高く評価をしたいと思います。  それから、いまの勤務態度の問題ですが、実は私も、おとつい羽田飛行場へおりようと思いましたら、羽田飛行場がパンアメリカンの事故でおりられなくて名古屋におりたのです。それで、名古屋におりまして、新幹線に乗るために名古屋の駅の駅長室に入りましたら、やはり数人の人が中へ入ってまいりまして、私の顔を見まして、ちょうどいまあなたがおっしゃったと同じような詰問を私にいたしました。こういう国民感情があるんだなという気持ちをひとしお強くいたしましたし、しばらくではございましたが、運輸省をお預かりしておっただけに非常に責任も感じました。  ただ、国鉄の再建ということを考えてみます場合に、やはり前提は労使の協力でありまして、対立ではないのであります。そういう点から問題を処理いたそうとしますと、余り急速な変化を求めるのではなくて、やはり漸進的な相互信頼の回復ということに努力をするのが基本である、私はそう考えております。親方日の丸という点から言いますと、組合員だけじゃないのです。全体として長い間独占の上に文字どおりあぐらをかいた姿勢というものが方々に見られるのでありまして、それを、組合員だけが親方日の丸だときめつけるのは、私は、やはりいい労使慣行をつくる上において適当でないと考えております。
  233. 和田耕作

    和田(耕)委員 私も、おととい国鉄OBの会という会に呼ばれて行って、いろいろざっくばらんに一杯飲みながら話を聞いていて、なるほど国鉄一家だなあという感じを受けたのです。これは非常にいい面があって、それがよく働いて、世界に冠たる国鉄をということならいいのだけれども、世界で最も不冠な国鉄をこの一家がつくっていくということになってきますと、これは将来の問題として大変な問題だ。  なるほど、やはり労働者だけじゃないと思いますよ。労働者でない人たちの中にそういう空気が非常に強い。また、国鉄に物を入れておる会社なんかが私の選挙区にも幾つかあるのですけれども、もっとこういうことをしたらいいがというふうなことをほとんどやらないですね。たとえば広告的なことをほとんどやらない。自分のところはこういうことをやっています、これを販売するのにこういう努力をしておりますというようなことを一切やっていないところが大部分じゃないでしょうか。そして国鉄の職員は、やめると全部そういうところへ天下るという言葉は大げさですが、職を求めていくという形、これは非常にいいことなんですけれども、こういう人たちが非生産的な雰囲気になっていく、これは何ともならないという感じを受けたわけですけれども、これはきょうの質問とは違うのですが、国鉄の労使に大事なわれわれの足を預けているのですから、何とか考え直して自分の任務を果たしてもらえるように、ぜひとも労働大臣としてそのことを念頭に置いていただきたいと思います。  それと関連しまして、一昨年来大問題になっておりましたスト権ストの問題ですけれども、その後どういう経過になっているか、総理府の官房ですか、関係の方から経過をあらましお聞かせいただきたい。
  234. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 スト権スト、労働争議権問題につきましては、御承知のように一昨年の十一月に、公共企業体等関係閣僚協議会の専門委員懇談会というところから意見書が出ております。その意見書の趣旨を尊重するという方針のもとに、さらにその具現化を図るために、昨年新たに閣僚会議が設けられ、さらに、そのもとに公共企業体等基本問題会議というものが設けられまして、有識者九十七人にお願いいたしまして、ただいま精力的に審議を進めている状態でございます。  現在の進行状況は、昨年五月、第一回の座長連絡会を開始して以来、主として部会単位に現在までに延べ六十一回の審議を重ねております。今後の問題につきましては、昨年の五月から起算いたしまして、おおむね二年間を目途に同基本問題会議において結論を出すべく審議が進められていると承知しております。
  235. 和田耕作

    和田(耕)委員 組合の方はこのような進め方に納得しておりますか、あるいは異議を申しておりますか、いかがでしょうか。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  236. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 組合と申しましても、いろいろな組合関係の方もおられますので一般的に申し上げることはできませんけれども、ある系統の組合の方は基本問題会議の解散を要求なさっておるようですし、ある組合の方は必要に応じては自分の意見を席上で言ってもいいというふうな意見をお持ちと伝え聞いております。
  237. 和田耕作

    和田(耕)委員 あの時分の非常に急迫した状態で八日間のストを打って大問題になって、今後何とか早くこの問題を解決しなければならぬという空気だったのが、かなりテンポの緩い、しかも百人という膨大な人たちで腰をおろして検討するというようなことになっているようですけれども、私は、いまの話を聞きまして、やる気があるのかなということよりも、解決する見通しを持っているのかな、あるいは総評も国労も余りやかましく言わなくなったので、このまましばらくほうっておこうということになっているのか、いずれにしても、これを解決するという気魄がどうも見られないような感じがするのですけれども、いかがですか。
  238. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 問題の重要性と緊要性につきましては、政府としても十分承知いたしておりまして、速やかに結論を出していただくよう基本問題会議の方にもお願いをしているような状態でございます。
  239. 和田耕作

    和田(耕)委員 労働大臣労働省の設置の目的あるいは守備の範囲から見て、こういう問題について労働省としてはどういうふうな関係の地位にあるのか、これはいかがですか。
  240. 石田博英

    石田国務大臣 いわゆる普通の一般の勤労者と同じような勤労者という立場から見れば、私どもは、労働組合法そのほか労働法規の遵守によって、その人たちの権利と生活を守るという立場にございます。しかし一方、経営形態というものの状態から見れば、これは公務員に準ずる職というようなたてまえになりまして、それぞれの所管の大臣責任を持ち、制度全体としては内閣全体の問題である、こう考えているわけであります。したがって私どもは、公共企業体の勤労者の持っておるそういう性格から見て、私どもの役所の専管事項であるとは考えておりません。
  241. 和田耕作

    和田(耕)委員 公共企業体等労働関係の法律というのは、労働省の所管ですね、したがって、関係があるというよりは、むしろ公共企業体の労働の基本的な問題については、労働大臣が主たる関係者だというふうに私は理解するのですけれども、これは間違っていますか。
  242. 石田博英

    石田国務大臣 いま申しましたとおり、労働者という立場に立っている人たちを対象にする場合、それは公共企業体であるから公共企業体等労働関係法という特別法規でやっております。しかしながら、たとえば団体交渉権あるいは自主交渉能力あるいは経営形態、そういうことから考えますと、政府の予算編成権あるいは国会の予算審議権、そういうものとの関連がございますから、そういうものとの関連も公労法の中にはありますけれども、実際上の運営の上においてはそういうものとの関連を考えなければならない。それから、それぞれ所管の官庁がございます。所管の閣僚がおるわけでございますから、そういう人たちの自分の預かっている企業体の運営というものについての方針、そういうものとの関連も当然ある、こう考えております。
  243. 和田耕作

    和田(耕)委員 いや、それはよくわかります。わかりますけれども、労働基本権という中にストライキ権というものがあるわけです。しかも、これは団体交渉権と連なったものだ、補完するものだというような位置づけがある。この団体交渉というものもストライキの問題も、労働基本法として労働大臣の所管の守備範囲に入っていくものですね。そういうものですが、しかし、それと関連すると経営権の問題が出てくるし、予算の問題が出てくるということでありまして、この問題について、やはり労働基本権の問題に主たる責任を持つべき労働大臣として、これらの問題の解決を促進していく立場にあると私は思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  244. 石田博英

    石田国務大臣 私も、むろん促進していく立場にあると考えております。  それから、いまの中山先生を座長とする会合は、いまさっき説明ありましたように、サボタージュしているわけではないので、八月には一応ヒヤリングを終わって、そして最終段階の調整に入ろうという日程もすでに立てられておるように承っております。
  245. 和田耕作

    和田(耕)委員 質問する前にお聞きしたのですが、昨日総理も出て、この問題の審議の状況について相談をしたそうですね。中山さんから、三度目の正直という言葉があるけれども、本当にやるかと言われて、四度目の正直という言葉はない、三度目の正直でやるのだということを総理が言ったそうですが、何だか話を聞いていて、のんびりしていて、とても大事な問題——非常にむずかしい問題がありますけれども、しかし、いろいろ煮詰められている論点でもあるわけですよ。これをやるかやらぬかというようなことは言いたくないのですけれども、もっと早くこれをやる意思があればもっと早く解決できたし、また、しなければならぬような問題だと私は思うのですけれども、その点いかがですか。そういう空気が中山さんの座長連絡会全体にあるのか、あるいは政府としてそれを何とかしたいという空気があるのか、その点ひとつお伺いしたい。
  246. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 決してそのようなことはないと考えております。私が出席しております限り、そのようなお話あるいは空気を感じたことはございません。この問題は、御承知のとおり経営形態あるいは当事者能力、先ほど大臣からもお話がありましたように、予算の問題、その他非常に各般にわたりますので、その点の詰めを一遍しっかりしておきませんと、結局先の方で困るという問題が生じますために、ただいまじっくりやっております。じっくりやっていると言いながら回数は十分こなしておりますし、この秋以降につきましては、問題点の整理に入っていく、あるいは実質的な激しい討論が重ねられていく、このように考えております。
  247. 和田耕作

    和田(耕)委員 総評の方はこれを無視している、認めてないということを聞いたのですけれども、それにしてはわりあい反対の行動の意思表示が、何かいままでとは違ったテンポで、かなりゆっくりした反対のような空気に思うのです。これは総評あるいは公労協として、この問題に取り組む態度に若干変化があると思われますか。
  248. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 私の承知しております限り、特別の変化はないのではなかろうかと考えております。
  249. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは、そのままで過ごせる問題ならそれでいいと思うのですけれども、政府の方も、労働組合、総評、公労協の方も、何か一段とオクターブが下がったみたいな感じでございまして、それはそれで結構だと思うのですが、労働大臣、この問題について大臣としてあなたが一番の責任者だと私は思うのです。余りやかましく言わぬからしばらくほっておけという態度なのか、あるいは何とかしなければならぬという態度なのか、お聞かせをいただきたい。
  250. 石田博英

    石田国務大臣 何とかしなければならぬという態度であります。もちろん私は、しばしば労政をおあずかりしましたから、この問題について私自身の意見はあります。ありますが、人様に審査をお願いしている途中において私が自分の意見を言うことは適当でないと思っているだけのことでありまして、これは早急に何とかしなければならぬ、こう考えております。
  251. 和田耕作

    和田(耕)委員 一言でいいのですけれども、条件つきのスト権付与ということをすれば、大臣としての個人的な感触ではストライキがふえると思いますか、あるいは減ると思いますか。現在の関係労働組合の体質から考えていかがに判断なさいますか。
  252. 石田博英

    石田国務大臣 これは、ずばっと言って私は減ると思います。
  253. 和田耕作

    和田(耕)委員 そのとおりであれば、何とかこの問題を早く解決していっていただきたいと思います。  質問を終わります。
  254. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、浦井洋君。
  255. 浦井洋

    浦井委員 神戸港に発生をした白ろう病の問題について簡単に質問をしたいと思うのです。  大臣も午前中に聞かれたと思うのですけれども、神戸港では数年前から、まず第一にフォークリフトに乗って運転しておる方のフォークリフト病という職業病、今度は腰痛障害が出た、骨筋肉の障害、今度はチェーンソーを使っておる労働者の中で白ろう病が出た、港湾関係者はもとより、市民が非常にショックを受けておる、いま大騒ぎをしておる、こういう状態であります。  そこで、先ほどの一人の患者、実は私の病院の患者でありますが、この方を私の病院で診断をしたところ、筋力も低下をし皮膚温も低下しておる、こういうことで、これは明らかに振動障害だということで改めて関西労災病院にお願いしたところ、やはりレイノー氏病だ、こういうことになったわけです。だから私は、大臣に端的に早くお願いをしたいわけなんですが、本人も精神的に非常にまいっておられるわけですし、ひとつ所轄の基準監督署を督励して認定の方向で努力をしていただきたいと思うわけですが、大臣の所見を伺いたい。
  256. 石田博英

    石田国務大臣 方向までは、実態がわかりませんから私がお答えする範囲ではございませんが、速やかに審査をしてまいりたい、こう考えます。
  257. 浦井洋

    浦井委員 局長にちょっとお尋ねするのですが、この方の場合は、チェーンソーを使っておるわけですから、この認定業務は別に中央でなしに出先の基準監督署で判断する、こういうふうに理解してよいですね。
  258. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 こういった労災の認定業務自体は、原則として監督署でやることになっております。特に御設問の問題は、チェーンソーによるものでございますから、すでに認定基準もございますので、第一線の監督署で当然に処理できると思っております。
  259. 浦井洋

    浦井委員 大臣、それで実態調査の問題なんですが、ちょっと想像されるようなフォークリフト病が出てくる、あるいは腰痛症が出てくる、それから今度は白ろう病、何が出てくるかわからぬ。振動病も船大工さんだけではなしに、たとえば機動ばしけと言いまして、エンジンのついたはしけをしょっちゅう運転している人にも出てくる。午前中に出てきたように、ヤクルトのおばさんというようなこと。だから、これは単に船大工さんの実態を調査するだけでなしに、港湾に関係をしたいろいろな業種の一遍職業に関する洗い直しをやらなければいかぬと私は思うわけなんですが、こういう点について大臣の決意と局長の具体的な答弁を求めたいと思います。
  260. 石田博英

    石田国務大臣 私は、振動病というのは実は製材業だけに、しかもチェーンソーが出てから初めてできたものだと長い間考えておりました。今度久しぶりで労働省へ参りまして、それだけでなくていろいろなことが原因をなすということがよくわかりました。そういう意味において、いわゆる振動病の原因になるもの、なりそうなものについての調査検討はしっかりしたいと思います。
  261. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 確かにチェーンソー以外にも振動障害ございますので、私ども、そういった実態を十分調べて、チェーンソー以外の振動障害についての認定の進め方についても、いろいろと研究してみたいと思います。
  262. 浦井洋

    浦井委員 そこで、これは港湾からちょっと外れるのですけれども、道路工事なんかのときに、コンクリートブレーカーというのですか削岩機の上下に働くもの、そういう理解ですけれども、これによってやはり白ろう病が起こる可能性が非常に強いと思う。これから問題になってくるだろうと思うのです。私、聞きますところによると、これは振動工具の中に入っておらない。あるいは入っておるのか入っておらないのかはっきりしないというような話であります。だからこれは、やはり削岩機であるとかチェーンソーとかいうものと同じように扱って、この作業に従事することによって起こってきた人は、労災認定をするという方向でひとつ労働省として対処していただきたいと思うのですが、これはどうですか。
  263. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 コンクリートブレーカー、私ども振動障害の一つの前提になる機械ではないかというふうに思っておりまして、現在専門家の御意見を聞いておりますが、できるだけ早く結論を出したい、こういうふうに思っております。
  264. 浦井洋

    浦井委員 ひとつ大臣、この件についてもですが、特に白ろう病の竹内さんの件について早く認定をしていただく、その方向で努力をするということでよろしくお願いしたいと思います。
  265. 石田博英

    石田国務大臣 結論を見ないうちにお約束はできませんけれども、調査を急がせます。
  266. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、田中美智子君。
  267. 田中美智子

    ○田中(美)委員 まず最初に、中村合板の倒産のことについて大臣質問したいと思います。  いま、四月の二十六日に会社更生法を申請したわけですけれども、各新聞にこんなに大きな字で「中村合板」、これは名古屋にある会社ですけれども、こうしてよその大阪などにもこういう大きな形で出ているということは、中村合板の倒産というものが、そうした合板の関連や、また、そういう同じ業種で働いている労働者にとって、非常に大きな関心というか、不安を呼び起こしているということが、やはりあちこちの新聞に大きく報道されているということだというふうに思います。  これは、ことしの四月十二日に、参議院の予算委員会で、共産党の内藤功議員が安宅産業の問題を取り上げているわけですが、その中で、関連企業の倒産がこれから出てくるので、これについて対策を立ててほしいという要請に対しまして、大蔵大臣が「関連中小企業に悪影響が及ぶことのないように、十分に配慮していくよう要請し指導しておるところでございます。」というふうに答えています。それからまた、労働大臣もそのときに、内藤さんの質問に対しまして「特別の配慮と努力が必要である。」というふうに言われています。  そこで、労働大臣にお聞きするわけですけれども、「特別の配慮と努力が必要である。」これをしていくと言われるのは、どのような特別の配慮とどういう努力をしていかれるのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  268. 石田博英

    石田国務大臣 中村合板の事件は、直接的には安宅産業の倒産というものの影響を受けた。安宅産業が九八%も株を持っている会社ですからね。しかし、もう一つ大きな背景は、構造的に平電炉なんかと同じように、合板自体の販路が、一時の物すごく外国で売れた時代、それから昭和四十七年、八年ぐらいまでの非常な好景気で売れた時代からいま一変しておる。現在、設備の方が消費よりもうんと多いという構造的なものがもう一つ背景にあると思います。  そこで、たしか中村合板というのは、約六百名ぐらいの直接の従業員、それから下請その他を入れて千人未満だと思うのですが、会社更生法の適用を申請しておって、現在のところは失業者はまだ出ておりません。私どもといたして、まず第一にいたしておりますことは、この安宅産業の倒産ということに関連をした善後処置というようなものは、これは伊藤忠合併することを前提としておりますが、それについての諸条件その他は、大蔵省通産省それから日本銀行、そういうものの了承を得つつ進められているわけでありますが、ただし、そういうことは表に出るけれども、結末というかおしまいは私の方にくるわけなんです。     〔委員長退席枝村委員長代理着席〕 しかし、そのおしまいが私の方にくることについての連絡が第一不十分であったので、そういう整理計画を立てるのに当たって、われわれの方と連絡をとり、了承を得ることが大きな前提なのだということをまず関係者に徹底させております。極端な言葉で言ったら、無礼千万だという言葉を使ってやっております。  現在のところは出ておりませんけれども、中村合板だけでなくて、安宅産業の子会社というのは、計算のしようによっては、どこからどこまでが子で、どこからどこまでがおいだかわからぬけれども、一応子だと言われているのは百六ぐらいある。そのうちで伊藤忠に引き取られるのは何ぼあるか、それから業務の形態によって、ほかの商社が引き継ぐのはどれぐらいあるか、それから単独でやれるのはどのくらいあるか、どうにもならぬものはどれくらいか、そういうようなものを調べ上げて、それについて関連して出てくる雇用問題というものも調べ上げて、われわれの方に連絡をするようにと、逐次関係者を呼んで連絡をさせつつ、いまあるところでも関係者を呼びまして、一組だけまだ残っておりますが、そういう処置をやっております。  中村合板だけに限って言いますと、いまのところは出ておりませんけれども、それをどうするつもりだという処置を聞かなければならぬ。それによって合板はむろん、下請けも全部、それに対しては雇調金なり職業のあっせんなり、現在われわれのできる処置を最大限にとるつもりでおります。  それからもう一つは、十月一日から雇用安定資金が発足いたします。それとの関連をやはり配慮しないとぐあいが悪い。簡単に言えば、それより早くつぶれてもらうと処理がしにくくなるので、そういう点とも関連をした配慮をしてもらいたい、そういうことも要求をいたしております。
  269. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま労働者が一番心配しているのは、いま大臣は、何遍も失業者がまだ出ていないと言っていますけれども、出たらどうするか。いまおっしゃったように、雇用安定資金にしたって十月でなければできないわけですしね。ですから、いま出たら大変なわけです。だから、出ないようにやっていただきたい。いまのような御努力というものをやっていただいていることは、大変いいことだと思いますが、いま出ないように、これが破産されてしまいますと、いまおっしゃったように十月にも間に合わないということですので、これがちゃんと再建できるように、そういうことがやはりまず第一の労働者を救う道ですし、再建できない場合には、また救う道はあるわけですけれども、まず第一の段階の努力というものを十分にしていただきたいというふうに思います。
  270. 石田博英

    石田国務大臣 それはわれわれも国務大臣としてやらにゃいかぬけれども、直接的にやる役所は、これは通産省であり、大蔵省でございます。
  271. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それはよくわかっていますが、大臣も閣僚の一人ですので、いまの自民党政府の一員ですので、全体の責任というのはあるというふうに思うのです。ですから、最終的な処理が回ってくるというふうなそこだけの観点で考えないで、もっと大きな観点で各省とも話し合い、あちこちが無礼千万なことをしているときには、言葉だけでなくて強烈な力を出しまして指導していただきたい、再建に力を入れていただきたいというふうに思います。  これは安宅産業の「労働組合ニュース」というもので二百三十九号、去年の八月二十三日のニュース、これを私、見ましたら、大変なことが書いてあるわけです。といいますのは、去年の八月の段階で住友銀行が次の十五の会社を倒産に追い込みたい、つぶしていきたいのだというようなことを言っているということが書かれているわけなんです。これは、だれがどこからこの情報を得たかということは、ここには「ジャーナリズムの人から得た情報ですが」という形でこうしたうわさが流れているのだということが書かれているわけです。  そこで、この十五の会社を、これは会社側はデマだとかなんとか言っているようですけれども、住友銀行ではデマだと言っているそうですが、私がこの十五社をずっと追ってみたわけです。そうしましたら、大体このうちの、私がいま調べることができた範囲で十五のうちの九社までが、これが倒産に追い込められていっているわけです。そういう中に中村合板も入っているわけなんですね。  これは単なるジャーナリズムから聞いたうわさかもわかりませんけれども、十五社と名前はっきり出ていますし、これが全部おかしくなってきているわけですね。そうしてその中の幾つかが倒産寸前に来たわけですけれども、伊藤忠が引き受けたとか伊藤萬が引き受けたとかいうのも出てきているわけです。その段階でうわさが流れたものですから、この十五社が全部倒産ということになりますと、これは非常に真実性が出てくるというので、幾つかはそうやって引き受け手を使ってやっているというふうに、いままた労働者の間でも言われているわけですね。  そうだとすれば、これは住友銀行が意識的に倒産に追い込んだのではないか。いま大臣は、構造的ないろいろな問題がある、こういうふうに言われたわけですけれども、いまの日本の経済というのは、大きな銀行というものが、自分の意のままにどこかを倒産させるというようなことがあちこちにあるということ、これはもう国民の相当の常識になっています。今度の中村合板がそれであるかどうかわかりませんが、少なくとも中村合板がその十五の会社の中に名前が挙がっているということなんですね。  そういう点で、そこまで大臣調査をしてほしいということは、管轄が違うと言われるかもわかりませんけれども、今度の問題はどこから出てきたか。これはやはり、住友銀行安宅産業が一緒になりまして石油で大もうけをしよう、こういうことをやったところが当てが外れて、カナダのNRCとかいう会社が倒産して、それで一千億円焦げついた、そういうことが発端で今度の安宅伊藤忠合併になっていっているわけです。そうすれば、中村合板は安宅の社員ではありませんけれども、仕入れも販売も全部安宅を通してきているわけですから、安宅の木材部みたいなところですね。ですから、関連企業というよりも、もう安宅そのものと言ってもいいような感じがするわけです。そういう関連企業までが、住友銀行のそうした安宅と一緒になって金もうけをしようとしたのが当てが外れたということによって、労働者がこんなひどい状態になるということは、どう見たってこれはいまの社会の機構から出てきた問題であって、労働者の基本的人権というものは全く大海に浮かんだ木の葉のように、だれかの力によって振り動かされているという結果ではないかと思うのです。だからこそ私は、ただ単に構造的な問題だとか過剰生産があるとかというふうな問題ではなくて、中村合板の倒産の問題というのは、ある程度そうした意図的なものでなされているという面もあるというふうに思うわけです。  いずれにしても大臣にお願いしたいことは、何としてもここの労働者から犠牲が出ないように最大の努力をしていただきたいわけです。私は、いま具体的に労働大臣にああせよこうせよと言っても、これは大臣の権限ではないとか、いろいろあると思いますので、具体的に詰めるというのではありませんけれども、私の一方的な話になってしまいますけれども、いまこういう状態が起きています。  水田実さんという二十八歳の方ですけれども、この方は営業マンなんですが、七年間やっています。それで合板の中ではどこから首を切られるのだという不安があるのです。営業から一番先にやられるのではないかというふうなことが出てきているわけです。ですから、そういうことでは一番ショックを受ける場にいた労働者です。そしてこの方が、この会社会社更生法の申請をしたその晩、車で本屋に行っているわけなんですが、その帰りに事故を起こしているのです。それは確かに本人の不注意かもわかりません、私にはよくわかりませんけれども、とにかく事故を起こして亡くなったわけです。本屋へ行って何を買ったか。「会社更生法」という本を買ってきているのです。そして、これからこれで勉強しようということで、それが運転台の横にあったというのです。これを会社労働者や家族が聞きまして、泣いているわけなんですよね。ですから、この労働者にとっていかにショックであったかということだというふうに思うのです。  そういうことを一つ一つ言っていきますと際限がありませんけれども、いま会社では、現在まだ六〇%操業していますので、それで仕事をとってきて、その荷を送ろうとしますと、もう倒産した会社ですから、運送会社が押さえちゃうわけです。いままでの金が取れないというので、品物を押さえてしまうわけです。ですから、せっかく生産しても、これを持っていこうと思っても、労働者がつくったものがお客さんに届かないわけです。そういうことが起きるということが大変な不安になっている。  ここはベニヤ板ですけれども、これは原木とのりと油があればできるわけですが、そういう油やのりなんというものも一週間買いをいましているんですね。そういうことが労働者にとっては、破産宣告になるのではないかと非常に不安なわけです。そういうことが今度は家族にしても、家族は社宅を出されるのじゃないか、そうなったら、ある日突然出ていくとなったらどこへ行こうか、それにはお金もないし、謝礼金や敷金が払えないということになれば、どこへ引っ越していこうかということで毎日夫婦がこそこそ話し合って、あるときは夫婦げんかにもなる。そうした状態になっている上に、今度は近所の酒屋に行く、雑貨屋に行く、自動車のガソリンスタンドに行く、それがいままでは全部ツケで買っていたわけです。月給日に払えばよかったわけです。それが全部現金でくれと、近所の商店からまでも現金買いをしてくれと言われるということは、もう奥さんにとっては大変なショックなわけですね。それでも五月は何とか出すと言っているようですが、六月からは全く当てがないという中で現金買いをしなければならないということが、ますます夫婦の気持ちを暗いところに追い込んでいるわけです。  夫婦が夢中でそういうことをやっている間に、今度はそれが子供に知らない間に大きな影響を与えてしまっているわけです。それで、子供の方から突然、お父ちゃん、もう来月から学校給食のお金を持っていけないのかと子供に言われて、お父さんとお母さんは偶然とする。それから高校に行っている子供が、お父さん、僕は高等学校やめようかと、こういうことを言い始めているということです。  それから中村合板は、道徳という学区にあるわけですけれども、その学区の周辺に、そこの労働者を対象にした小さなお店があります。飯屋さんとか、それから魚屋さんとか、そういう店があります。そういうところが非常に心配している。もしこれが破産宣告を受ければ、そこのお店も、直接下請とか、いわゆる関連ではないわけですけれども、これはもう当然のことですけれども、そこの労働者を当てにして街ができているわけですから、そこの地域にとっては非常に影響力を持った大きな会社なわけですが、そこの商店街までが変わってくるという状態に来ているということを私は大臣に訴えたいわけです。これは大きな社会問題になります。  これは、ただ一つの例外ではなくて、これがつぶれるということは、これは次々と波及していくので、よその大阪でもあんな大きな字の新聞を出すというほどの問題ですので、ぜひこの中村合板を歯どめにして抑えていただきたい。そうしないと、大臣は次々と、さっきおっしゃったようなしりぬぐいをさせられるということにもなってくるのだというふうに思います。  その点で大臣に再度ですが、先ほどの住友銀行の、八月の段階で言ったという十五の会社をつぶすという話と、そしていまの労働者の実態について、中村合板をめぐるこうしたみんなの不安な状態について大臣はどのようにお考えになるか、見解を聞かせていただきたい。
  272. 石田博英

    石田国務大臣 今度の安宅の問題は、これは住友だけじゃなくて、協和銀行を初めほかの幾つかの銀行関係しております。住友銀行だけではないんですね。それから割合も、住友は一番大きいんですが、協和銀行もそう大して違いがない金額を貸し付けている。この事件の原因というのは、先ほど申しましたが、直接的には安宅、第二番目は産業構造の変化に原因はいたしますが、しかし、金融機関金融態度というようなものにも大きな責任があるわけであります。したがって、そういう責任金融機関も感じてもらわなければならぬし、安宅がだめであれば、安宅と吸収合併する伊藤忠の方は、前にも日産とプリンスの合併のときと同じように、今度は労組法上の使用者ということになるわけですから、そういう意味において責任を持ってもらわなければならぬと思います。  ただ、いまの住友の幹部が十五社を倒産に導くのだと言ったというようなことは、私は、これは信じません。というのは、倒産に導いてだれも得する者はないんですよ。できるだけ倒産はさせないようにやっていってこそ金融機関もメリットがある。それから、どことどことは倒産しそうだというところをわざわざ並べれば、その企業の信用は失墜しますから、ますます加速度を加えることになります。だから、そういうことを言うこと自体が、また、組合の新聞に書いたりすること自体が倒産を促進するということにもなるので、そういうことも慎んでもらわないと、こことここが倒産しそうだ、住友がさせようとしているのだなんということを宣伝すれば、それは今度そっちの方の信用失墜に関係するのですから、そういう点の自粛も求めたいと思います。  それから先ほど、現在のところ中村合板に失業者が出ていないと言ったのは、現状を報告したのであって、将来にわたってまで出ないと言っているわけではありません。  それから、先ほども申しましたように、安宅の関連の産業のうちの伊藤忠に引き取られるのは何ぼ、それから、ほかの商社にもかなり引き取られていく商店もあるようですから、それが幾ら、それから自前でやれるのはどれくらいというような調査をして数字をはっきりさせてもらいたいということをいま要求しております。雇用安定資金はなるほど十月一日からですけれども、したがって、それと関連をさせてもらいたいことはわれわれの立場ですが、どうしてもできない場合は、たとえば雇調金とか雇用保険金とか、あるいは職業訓練とかあらゆる手を講じます。それから賃金債権、これは法律もございますし、賃金債権の確保について最善を尽くします。  したがって、そのことによって、いま御指摘のような、突然困窮に陥るというようなことはいたさせませんし、将来の職業のあっせん等につきましても、全力を挙げるつもりでございます。
  273. 田中美智子

    ○田中(美)委員 最後に私は、いま住友銀行がそういううわさを流しているということの方が問題で、労働組合がそれを言ったということは決して問題ではないというふうに思うので、その方が問題だと思うのです。——結構です。  それで、銀行に対して、住友銀行責任を持って合板の再建をするように、大臣の持てる力で最大の努力をしていただきたいということを申し上げて、時間がありませんので次の質問に移ります。  これは大臣に直接聞きたいわけですけれども、三月二十三日に私が山口放送と東海テレビの男女差別の問題について質問いたしました。この質問のときに、どういう指導をしたか報告をいただくという形で報告をいただいたわけですが、このときの私の質問の中身というのは、現在男子は社員だけ、女子は嘱託だけ、これが普遍的にかつ継続的にこうなっているのは差別だということで大臣はお認めになり、これが事実ならば差別だ、だから、これを改善するとはっきりとおっしゃっているわけです。これははっきりと大臣が言われているわけです。たくさん書いてありますので、議事録を読んでいただけばわかると思います。それにもかかわらず、私に報告に来ました人は、婦人少年局の婦人労働課の課長補佐という人ですが、この人が来まして、労働基準法四条違反でないので、私どもには権限はありません——私は何も四条違反でもってやれと言っているのじゃないし、大臣も、それではなくて、確かに恒常的にこうなったのは差別だから、これは指導するのだ、こう言っている。その指導をどうしたかというのに対して、実にそれこそ先ほどの大臣の言葉ではないけれども、無礼千万な態度で、そして労働基準法四条違反でないのだから権限はないのだという報告を私にしているわけです。  それから大臣、まだ聞いてください。採用試験を女にも受けさせる、こういうことを言ったから、これは可能性として非常に前進だ、こう言っているわけです。しかし、その会社報告書というものは私には絶対に見せない。私は、うそでなければ見せなくてもいいと思います。しかし、私はよそから手に入れました。それを見ますと、いろいろな条件がついていまして、会社側が認めた場合でなければ試験を受けさせないとかいう形で、決して男女差別はその報告の中では直っていません。しかし、向こうの山口放送は、こういう報告を出したのに労働省が何も言ってこないということは、これでいいということだ、こう言っているわけです。  そして、もう一つ聞いてください。森山さんも聞いておいていただきたいと思うのですけれども、ことしは新規採用がないと言っていながら、男子は社員として採用しています。一人採用しています。女子はいままで嘱託であった人が任期切れになった。いままでですと、任期切れでまた半年契約で採用になったわけですが、それを今度は首を切りまして、そして五日たった後に同じ人間をまた採用する。今度は前よりもっと悪い状態で、嘱託ではなくてアルバイトという形で、むしろあなた方のやった指導というのは現状より悪化させているわけです。  これを私がなぜここでまた取り上げたか。大臣がこれだけの返答をしているのですから、労働省大臣の部下たちが、まともにこのとおりに指導すれば、後は私は労働省とけんかしようと思いません。仲よくどこまで進んだか、一〇〇%にならなくても少しずつでも前進していくというならば、こんなに私は怒りません。しかし、実際には後退して、嘱託をアルバイトに切り下げている。そうしていながら、来たこの課長補佐というのは、無礼千万な態度で、第一、こんな質問をしたことがけしからぬというような態度なんですね。私の秘書が烈火のごとく怒ったわけです。秘書に対してそういう態度が平気でできるということ、私はいなかったわけです、そういうことに対して大臣、自分が国会で答弁なさったことを部下が守らないということをどう考えるか、これをまずお聞きしたいと思います。
  274. 石田博英

    石田国務大臣 私がここで答弁をいたしましたことは、部下はそれを忠実にやるものと思っております。  いろいろ処置をした報告は、ここにありますので、いま読んでおるところでありますが、森山君、ひとついま御指摘のような事実があるかどうか……(田中(美)委員「簡潔にお願いします」と呼ぶ」)
  275. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 山口労働基準局の徳山監督署が所管をいたしておりまして、徳山の監督署が十月四日に指導票を交付いたしまして、十二月二十日に会社がどのような検討をしたかということを照会いたしまして、会社側指導票の意向を尊重する方向で検討しているというふうに答えたわけでございます。そして三月二十三日に先生の御質問がありましたわけでございます。その後三月二十九日に、徳山署に山口放送の取締役が出頭いたしまして、口頭で、今後の採用は幹部を採用する社員採用試験とそれ以外の人を採用する嘱託採用試験というふうに二つに分けて、この試験のいずれにも男女の区別なく受験をさせるということに決めた、そして現在の嘱託の女子についても、社員の採用試験……
  276. 田中美智子

    ○田中(美)委員 時間がありませんので、そんな長ったらしいのはもう結構です。そんな報告なら結構です。
  277. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 簡単に締めくくらせていただきます。  現在、嘱託の女子についても、受験資格のある者については社員の採用試験も受けさせるということを報告いたしまして、その趣旨を文書に書いて出したというふうに聞いております。二十九日の指導に当たりましては、婦人少年室の職員も同席いたしまして、婦人少年行政立場から指導をいたしておるというふうに報告を受けております。
  278. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣、時間がありませんけれども、いまの森山さんからの報告というのは、森山さんの代理だと思いますけれども、課長補佐が来ているわけです。それが森山さんの回答だというふうに思うわけですけれども、それがもし誤りであるというならば、森山さんが私のところに直接に報告に来ていただきたいと思うのです。  そして嘱託をアルバイトに切り下げたという問題は、改めて大至急これに対して指導をしていただきたいということと、それから試験制度は、いま言われたような男女差別がなくなったやり方では決してありません。そういう点でもう一度この御指導をしていただきたい、これを要請しておきます。大臣、一言お答え願いたい。
  279. 石田博英

    石田国務大臣 一番最後の、こちらが注意をしたために、その本人が不利益な処置をもし受けたとするなら、これは非常な間違いでありますし、そういうことについては、そういう結果が生まれないように指導をいたします。
  280. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では次に、大急ぎでやりますが、これは五月七日に、もう御存じだと思いますが、新日鉄の八幡製鉄所で松山昭治さんという三十五歳の方が、勤務明けのときに、会社の十二分間走という、十二分間でどれだけ走れるかという体力テストみたいなものをやらされて、そこで心筋梗塞で亡くなられたわけです。この方にはお二人の子供さんがいます。奥さんもいます。この問題で、いま労災であるかどうかということが問題になっているわけですけれども、会社側ではこれは自主活動だ、こう言っています。労働者の方では自主活動ではない、強制的にさせられた問題なんだということを言っているわけです。  この新日鉄の八幡製鉄所では、前から、去年の十月に共産党の寺前さんがやはり質問しているわけですけれども、実際の残業を自主的なものであるといって残業手当を出さないというような形でやっていたというようなこともあるわけです。これも完全に解決していないのですけれども、今度は死亡するということが起きました。これは会社側としては自主活動だと言うのですけれども、私が持っています資料では、これは薄板部体力づくり委員会というのが自主管理だというのですけれども、この委員会委員長が池田忠弘という工場長なんです。工場長が自主管理だという形でこういうものをつくりまして、十二分間走テストに参加させろ、できるだけ全員参加するように配慮せよ、こういう指示を出しています。判こをついて出しています。そして「記録表の処理について」という題目で「記録表は各工場組織表に従って全員提出して下さい。十二分間走テスト未実施者についてはその理由を記録表に赤で記入して下さい。」こういうふうな形で完全に会社の指示である。これでは労働者としてはこれをやらないということはとてもできないわけです。ですから、こういう状態で亡くなったというのに対して、一日も早く労災の認定をすべきだというふうに思うわけです。     〔枝村委員長代理退席、委員長着席〕 いま会社側では、初めは労災ではないと主張していたわけですけれども、労働組合の強い要請で労災であるかどうかを、労働省にお伺いを立てるというふうな態度で非常におかしな申請をしています。  そういう点で、これはどこから見ても自主管理ではない、池田という工場長の指示でやっているということですので、早急に大臣がこれを労災に認定させて、遺族の方たちに対してきちっとした措置をとっていただきたい、早急にやっていただきたいと思います。
  281. 石田博英

    石田国務大臣 これは、いま報告を受けましたら、そういう申請が監督署へ出たのがきのうだそうです。ですから、まだこっちへ来ておらぬわけです。できるだけ早く事実の認定に努めたいと思います。
  282. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では、大至急にぜひこれをお調べいただいて、必ず労災に認定されるように努力していただきたいと思います。
  283. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、工藤晃君。
  284. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) きょうは、けさほどから安宅産業に関連いたします失業問題あるいは社会不安の問題について深刻な話がたくさん出てまいりました。きょうの課題は、そういう意味においては、聞いておりましても大変深刻であろうというふうにとらえております。  きょうの課題とはおよそまた離れまして、私自身が大臣にお聞きいたしたい点は、具体的にあるいは明確にお答えをちょうだいできるような問題ではないというふうには思いますけれども、やはり国民の素朴な心配、こういうものについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、政府の御見解を承りたいと思います。  世界経済も不況が強調されておりますし、日本におきましても低成長が持続していくだろうと言われております。一方におきましては、高齢化社会に伴う定年制の延長の問題あるいは産業構造の変化に伴う日本国民の総サラリーマン化、全産業につきましては三千七百万人と言われておりますけれども、そのような総サラリーマン化の問題あるいは人口の自然増加、こういう問題を踏まえてわが国が雇用の問題を考えた場合には、どうしても市場の拡大とかあるいは新しい雇用市場の開拓というものが絶対に必要な条件というふうに考えられますけれども、あるいは逆に日本列島の過疎過密の問題も含めまして、こういう問題について大臣はいかがお考えになっていらっしゃいますか、簡単で結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  285. 石田博英

    石田国務大臣 全体としての背景がもう高成長を期待できない状態にある、しかも、もう一つの背景は資源、特にエネルギーというものの限界、これは新規開発の余地はあると思うけれども、ほかのエネルギーはあるとしても、持続年限は別といたしまして、それぞれやはり有限なものである、そういう背景の中で世界経済なり日本経済を、ミクロ的に見る場合とマクロ的に見る場合、ミクロ的に見る場合は、どうしてもこれを現在の失業、雇用情勢というものの改善ということに重点を置いて、そこに多少無理でも景気浮揚策というものを使っていかなければならぬと思う。ただマクロ的に見た場合、そういうことにしておっていつまで一体資源が続くのだろうかというような問題が、その背景には当然残るだろうと思います。  それから、特にわが国の場合は資源がないわけでありますから、ない状態のもとで日本人がこれから生存をしていくためには、やはり人の力というものの開発以外にはない。人の力の開発をするのには個人の力と集団としての力がありますが、集団としての力を扱う場合には、これは労使関係改善というものがどうしても重要な課題となると思います。  それから、労働市場から見ますと、昭和六十年ぐらいには二百五、六十万人近くの労働力の増になるだろう。そしてその中で中高年齢層が百万人くらいを占めるのじゃないかと思います。現状でも、また、そのときにおいても、私は若年労働力はやはり売り手市場だと思うのです。問題は中高年労働だと思うのです。したがって、雇用問題を処理するのには中高年労働というものの処理が最大の課題になる。それを背景としていく場合、つまり、それだけふえていくものを、いまの失業者の失業率を低下させつつ消化していくにはどうすればいいか。それには年率六%程度の経済成長を目指していかなければならぬと思います。しかし、年率六%の経済を成長させようと思えば、熱エネルギーだけでも毎年六%ないし七%よけい要ることになる。それをどう処理していくか。原子力の発電所をつくろうと思えば、立地条件が整わない。それだから、石油をそれに応ずるだけのその計算でいくと四億二、三千万トン要るそうですが、それでは、いまの二億八千万トンから一億五千万トンも多い石油を一体どこから買ってくるのかという問題があります。  そこで、そういうことを配慮しつつ、いわゆる人類永遠のエネルギーだと言われるものの実用化にどう到達し、それにどう結びつけるかということをマクロ的に考えなければならない。しかし、ミクロ的にそうやって、現在予想される増加労働力というものを消化して、完全失業率を低下させるためには、やはり六%前後の経済の成長を続けていかなければならぬが、それを続けていく背景の条件と並行して、長い時間にわたってどう持続できるかという問題が深刻な課題だ、こう私は思っております。
  286. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) 大変深刻な課題であるということにおいては共通の認識を持っておりますけれども、また逆に企業側に立って考えますと、やはり日本の産業構造から見ますと、合理化とかあるいは省力化、こういう近代化が今後ともに進められていかなければならないというような宿命を持っているように思いますが、そういう点について大臣はどのような御見解をお持ちになっていらっしゃいますか、お伺いいたします。
  287. 石田博英

    石田国務大臣 私は、構造変化に伴うものはいろいろ出てくると思いますが、いわゆる合理化、省力化というようなものは一巡したように思うのです。というのは、昭和三十年代の後半から四十年代の中期以降にかけていわゆる人不足の時代が十何年続いた、そのために各企業においての省力化というものは相当程度進んでいると思うのです。ですから、単純な意味の省力化、合理化というものは一巡したように思う。ただ、構造変化に応ずるためのいわゆる転換的雇用変動というものはこれから新たに起こってくるだろう、こう考えます。
  288. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) それと関連いたしまして、一方においては勤労者の学歴が非常に高くなる社会が訪れようとしております。労働者の質的向上も今後著しいものとなるというように考えられますし、将来もその方向が推進されると思いますけれども、大臣、その点についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  289. 石田博英

    石田国務大臣 これは、学歴が高くなるから労働者の資質が上がるとは私は必ずしも考えない。問題は、社会の需要、要するに新しい雇用構造というものと技能あるいは教育、就業者の希望というようなものがどうマッチするかというところにあるだろうと思うのです。現在でも、百二十七万、季節修正をいたしましても百万を超える完全失業者がいる反面、八十万近くの技能労働者の不足が別の面にあるわけです。それから若年労働力の有効求人倍率は三に近い、ところが中高年になると〇・一ないし〇・二になる、そういうようなアンバランス。それから大学卒業者の就職希望をとってみますと、管理部門、事務職希望が非常に多くて、販売職、サービス職というものは少ない。ところが一方、求人の方はサービス職、販売職の方が多くて、いわゆる管理部門の方は少ない。企業の中で、一つの事業体の中で管理部門というのは一体平均して何ぼぐらい必要だろうか。二七%ぐらいだと言われておりますが、大学卒業生は四〇%、大企業にばかり行きたがって中小企業に行きたがらない、そういう点のアンバランスを是正していくということが、これからの一つの大きな課題だと思っております。
  290. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) 関連いたしまして、いまもお話に出ました企業の省力化、合理化が一巡したということで、職場の環境もそれに並行するような形になっておると思いますが、いま私が高学歴層がふえてきたということを質問いたしましたのは、そういう省力化あるいは合理化に伴って作業が非常に単純化する部門がふえてくる、それから、いわゆる単調なものだけが非常にふえてくるというふうな環境が増加してまいろうと思います。また、このような単調な労働に従事する労働者の中にも高学歴層がふえてくるのではないか、あるいはふえつつある、アメリカなんかでもそうでございますけれども、そのように思いますが、その単調労働の積み重ねが、そういう教育を受けたがために人間性の喪失というか、単調な仕事に耐え切れないために、いろいろな精神面における、これは機能的な障害でございましょうけれども、ノイローゼのような精神疾患がそういう職場に起きてくるのではないか。あるいはまた、アメリカの例でございますけれども、単調な仕事に耐えられないために、麻薬を常用する人間が非常にふえてきておる。あるいはイギリスなんかにおきましては、無断欠勤あるいは職場からの蒸発なんというようなものも大変ふえてきたように伺っております。こういうふうな諸外国の例を見ても、日本においても同じような環境が育成されつつあるのではないかと心配するわけでございます。  そこで、そういう生きがいを喪失するという傾向が日本にも起きてまいろうと思いますけれども、今後わが国において人間らしい生活、すなわち生きがいを求める要求は逆にさらにまた強くなってまいろうというふうに思われますけれども、労働環境と人間性の確保との関連をどのように連動されていかれるのか、そういう点についてお聞かせいただきたいと思います。
  291. 石田博英

    石田国務大臣 機械化が進み省力化が進み、それから作業工程等の合理化が進む、そうすると、作業分割が細かくなって、したがって作業が単純化する、こういう方式は一つあると思うのです。それを私は決して否定はいたしません。一方において高学歴化が進んでいるから、そういう単純な分割された工程だけの繰り返しには満足しなくなる、そういう経過もあると思うのですが、それだから麻薬を飲むとか、それだからどうこうということは非常な甘えだと思うのです。そういう甘えに直ちにそれが結びつくなら教育なんてない方がいい、そういうものではないと私は思います。  それから、いま御指摘になったような一つのそういう系列だけの変化ではないだろう。日本の勤労者の特質の一つは、単能工でなくて複能工にたやすくなりやすい、順応性が非常に強いということです。そういう点はアメリカあたりやヨーロッパなんかでは、自分の教わった仕事を一生がんこにやる。そういう点は日本と違うと思うのです。それから一方において、たとえば和紙をすくとか木版をするとか伝統的な日本の技術というものにいかない、それに関心を示さない。逆に言うと、単能工をいやがりながら、単純労働をいやがりながら、伝統的なもの技術的なものを同じようにきらう、そういう傾向もあるわけだと思うのです。  だから、生きがいの見出し方というものは、仕事の中でもむろんでありますが、仕事の中で自分自身の才能に合ったものを発見されれば、そういう人たちの雇用の場というのはうんと多いのです。雇用されないでも自営の機会も多い。多いにかかわらず、そういうものは後継者難にみんな陥っておる。だから、そういう方向で見出すこともできると思うし、仕事以外の場において、それぞれ趣味活動なりレジャー活動なり、そういうものの中に新しい生きがいを見出していく、そういう時間もできる、設備もできる、そういうことが並行して起こるのじゃないか、こう考えております。
  292. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) いままで幾つかの質問をいたしてまいりましたのは、やはりいまおっしゃったように、低成長は今後持続するという前提のもとに、その延長線上にそういう問題をとらえて考えますと、老後の保障とかあるいは雇用問題といったようなことで、その量とかあるいは数の問題とか、あるいは質の向上あるいは労働条件の向上、そして質の問題としましては、賃金及びいまおっしゃったような生活環境を含めての質の向上も考えなければいけない。そうすると、人生五十年と言われてから平均寿命が二十五年以上も延びた現在において、それだけ生き延び得る雇用条件というものをどのように保持するかということは、一方において大変重要な問題であると同時に、いまわれわれが考えても、果たしてそういうことが十分満足されるような形で維持できるものかどうかという大変不安な気持ちに陥るのも当然であると思うわけです。  そういう点から、先ほどの朝からの大臣の御回答の中にも、失業問題をわれわれが一番最後にしりぬぐいしなければいけないのだというような、最後にしりぬぐいするというような言葉で表現されるごとく、いまのように日本国民すべてがサラリーマン化してしまったという現状においては、発想を逆にして、日本国民全部の完全雇用をいかに達成するかという雇用という問題を中心にしてあらゆる産業、あるいは経済の発展、あるいは世界の中における日本の位置づけ、こういう問題について発想を逆にした考え方が起きてきてもいいのではないか。そのためには、やはり無制限に一方だけはふくらんで片一方の方はしぼんでしまうというふうな産業構造のあり方ではなくて、第一次産業にどれぐらい、第二次産業にどれぐらい、第三次産業にどれぐらいの人数を配置していくことが、日本のそういう問題を含めての重要なことになるのか、あるいは円滑な運営ができるのか、そういう点とか、あるいは比較的日本人の欠点として、いままで無形のものに対して価値観を置く習慣が非常に少なかった、戦後の日本の産業の発展も、ほとんどの技術というものは、外国から輸入したものをできるだけ安易にうまく利用して成長してきたという点がございますけれども、こういう点もそろそろ頭打ちになってしまった、そういうやり方では今後の日本産業というものは維持しにくい、やはり無形のものに対する価値観というものを再認識して、あるいは科学技術の振興のためには、相当大きな投資をしながら、先行投資をして、新しい産業の開発、あるいは日本の経済の発展は、そういうところにも十分注目しなければいけないと思うのですが、そういう点について、労働問題だけを枠の中で考えるのではなくて、やはり日本人類の総雇用を逆にどういうふうに解決していくかということを、逆の部門を吸収してプロジェクトをつくって考えてみたらどうだろうかなというふうな発想の転換を、私はいまここで感じるわけでございます。  そういう点について大臣にお聞きしながら、いままでにそういう発想があったかどうか、あるいはあったとすれば、そういうことはどういう形で発表されてきたか、あるいは検討されているか、そういう点についても具体的にひとつお答えいただきたいと思います。
  293. 石田博英

    石田国務大臣 第一次世界大戦の直後に、ドイツの崩壊を契機といたしまして世界的な恐慌が起こった。各国とも非常な不況に悩まされ、しかも深刻な失業がほとんど先進各国を覆ったわけですね。そのときに雇用機会を増大する、つまりフルエンプロイメントを目指す、そのためには仕事をつくって、仕事をつくることによって雇用機会を増大させる、仕事をつくるといっても、その仕事をだれがつくるか、それは国家財政でつくる、国家財政でつくるといったって、税金がためてあったわけじゃないですから、したがって、公債の発行等によって仕事をつくっていけば、これは通貨の増発となってインフレーションを招く、物価騰貴を招く、招くけれども、それによって仕事が創出されて失業は救済されるのだ、こういう考え方がいわゆるケインズの考え方でありますね。それが現実に移されたのがテネシー・バレー・オーソリティーです。これによってアメリカの不況が克服されて、世界全体の景気回復が導かれた。ところが、これに自然的に備わっている運命というのは継続的な物価騰貴です。そこで、インフレーションを抑えるということと完全雇用を実現するということを同時に実現することは不可能なんだ、こういうケインズに対する深刻な批判が生まれて、それを批判したハイエクという人はノーベル賞をもらった。学者の議論としては私はある意味ではもっともだと思う。  しかし私どもは、インフレか完全雇用かどっちかしか選べないのだから、そのうちのどっちかをこれから選択するのだぞでは済まないのであります。したがって私どもは、やはり物価を抑えつつ雇用の増大というものを図っていかなければならぬ、これが基本的な姿勢でなければならぬと思います。しかし、それだけに困難なんです。つまり学者が言うように割り切れば、インフレーションか完全雇用か、完全雇用を達成しようと思ったらインフレーションを覚悟せい、物価を安定させようと思うのなら失業を覚悟せいということに結局なる。だから、それをどこで調和を保っていくか。  労働力の日本の国内における将来の見通しを考えると、先ほど申しましたように、昭和六十年ごろになると二百七、八十万現在よりふえる。そのふえた者をどう吸収し、消化していくかということになると、六%の経済の成長を図っていかなければならぬ。しかし、背景の条件がありますから、いまあなたの御指摘のとおり、これを物の面だけで処理しようと思ったってこれはむずかしいのです。したがって、そういう物の面だけで生活の豊かさ、生きがいを見出すことがむずかしいとするなら残るのは何か、物を使わないでも人生を楽しめる方法をわれわれは採用していかなければならぬ。それは文化、芸術もむろんそうでしょうけれども、それ以外に若い人々が山野を跋渉するとか、あるいは生活環境を改善するとか、そういう方向に向かっていくようにしていくべきだ。そうなると、労働力の配分といたしましては、一次、二次と三次とが大体似通った、一次、二次足したものと三次とが似通ってくる、三次は急速に伸びてくる、こういう方向に雇用構造が行くのではなかろうか、こう考えておる次第であります。
  294. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) いま大臣おっしゃいましたように、確かに、いままでは生きる目的が働くことであったというふうな感覚が日本人には多かったと思うのですが、それでは十分満足し切れないような社会環境が生み出されつつあります。そういう意味において、精神的な生きがいをいかに求めていくかということも強い要求になってまいろうと思うし、それからまた、そういうものが十分労働者の中に普及していかなければ、労働力そのものも十分円滑には運営されないであろうというふうにも考えるわけです。  そういう意味において、現在は私的財あるいは公共財、自然の緑、静けさ、安らぎなどは労働賃金の問題以外に労働者の要求として強く出てまいろうと思います。そういう面についても、やはり労働行政の一環として、そういうものも含めた一つの対策あるいはPR、そういうものも今後十分検討に値する問題じゃないかというふうに考えますので、その点大臣の御見解を承りたいと思います。
  295. 石田博英

    石田国務大臣 したがって、私どもの方といたしましても、いわゆる雇用の増大とか、あるいは工場内における勤労者の保護ということだけにとらわれることなく、あるいは雇用促進事業団あるいはまた労働福祉事業団などを通じまして各種のレクリエーション施設というものの増設にいま努めているところでございます。これは年々非常な勢いでふえ、社会からも歓迎されておるわけでありまして、最近は農村にまで進出をいたしまして、勤労者に農村で緑に親しむ機会を与えるような予算的配慮もいたしておるところでございます。
  296. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) ぜひその面においての推進をお図り願いたいと思います。  それから、先ほど私はアメリカにおける単純作業に従事する勤労者の中に麻薬患者がふえているような話も聞きましたので、それを例に挙げましたが、それについて大臣からの反論がございましたけれども、私は、その麻薬を日本において常用するという疑い、あるいは危険性を持っているという意味でなくて、やはりそういう同じような精神環境に置かれていくのじゃないかというふうな心配をしたために申し上げたので、そういう意味においては、ぜひそういう環境に従事する勤労者の精神状態のあり方を御調査していただきたい、あるいはもし過去においてそういう調査を十分なさっておられるならば、そういう資料がありましたら、それをお示し願いたい、こう思うわけでございます。
  297. 石田博英

    石田国務大臣 資料は後で事務当局から御説明申し上げます。  数年前からソビエトにおいて酒による作業能率、あるいは勤労者の勤労態度、生活態度というものに対するいわゆる酒害、これがかなり深刻な問題になっている。それで、ウォツカを高くしてブドウ酒を安くしたりいろんな苦労をしておりまして、そういうものは無視できないと思いますし、それから作業が単純化してくれば、その中だけにいれば、今度はその単純化というようなものに精神的影響を受けるだろうと思うが、ただ、そのために麻薬を使ったり、生活が乱れたりすることを、そっちの、人様の原因にすることは、私は間違いだと思う。それは同じ環境にあっても麻薬におぼれない人の方が圧倒的に多いわけです。ですから、そういうことでなく、そういう人たちがそんな甘ったるいことではなくして、みずからが他に生きがいを見出せるような設備をわれわれがしてやるということであって、麻薬を飲むのは作業が単純なせいだというのは、私は余り甘えがちに過ぎる、こう考えます。
  298. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) 大変積極的な御発言をいただきましたが、確かに問題は、要するにそういう単調な仕事に耐えるだけでは生活の生きがいを見失うだろうから、何かそこにプラスアルファのものをつけて、単純な仕事も生きがいの中に入っていき得る、そういう状況の場をつくっていただくことをこいねがうから申し上げたわけでございます。  最後に大臣に、これは過去においても質問が出たと思うのですけれども、やはり日本におきましても、総サラリーマン化が進んでまいりました以上、労働者の企業に対する経営参加の問題は大変大きな今後の課題になろうと思います。また、そういうことについても、やはり成功している国もあるようでございますので、必ずしもそのとおりというわけではないのですが、そういう方向に進むべきかどうか、そういうことについて大臣の見解を簡単にお聞きいたします。
  299. 石田博英

    石田国務大臣 労働者の経営参加の問題は、御承知のように西ドイツで合同決定法というものができていますが、先般これは改正されまして新合同決定法というものになりました。内容の説明は省略をいたしますが、成功していると思うのです。しかし、それが成功しているから、それでは、それを日本に直ちにそのまま採用できるかと言いますと、問題点が幾つかある。一つには、ドイツはこれに五十年間の歴史をかけている。それからもう一つは、労働組合のナショナルセンターが一つだけなんです。日本のように四つも五つもあるわけではない。したがって、労働者の代表を選ぶという選び方においても、きわめて合理的に出てくる。そこへもってきて労働組合運動それ自体が、非常な落ちつきを示しているということが言えると思うのです。わが国においては、労使協議制というものが早くからありまして、これが次第に巧みに運用されるようになってきておるわけであります。それから労働者の経営参加ということ自体に対して、労働組合のナショナルセンターによっては賛成と反対とがあるわけであります。そこで、現状におきましては、労使協議制を活用することによって実質的に労働者の経営参加というのを推し進めていく、こういう方針をとってまいりたいと思っております。
  300. 工藤晃

    工藤(晃)委員(新自) ありがとうございました。これで時間が参りましたので失礼いたします。      ————◇—————
  301. 橋本龍太郎

    橋本委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  北海道における雇用・失業問題に関する実情調査のため、議長に対し、委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  302. 橋本龍太郎

    橋本委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、派遣の日時、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  303. 橋本龍太郎

    橋本委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は、明後十九日木曜日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十四分散会